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あと3話で完結ロワスレ

690剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:15:49
「ダリオから、あんたの事は聞いていた。全てを失った自分を救ってくれた、誰よりも大切な女性だと。だから、こいつを預けるならあんたしかいないと、そう思ったんだ」
 帰ってきた答えは、予想はおろか今の今まで、ただの一度も思いもしなかったことだった。
「ダリオが、私を……?」
 彼女には負い目があった。ダリオが記憶喪失のままずっと自分の傍にいて欲しいという、浅ましい欲望。
 そんな欲に目がくらんでダリオに少しの真実も教えようとしなかった自分に、ダリオが好意を向けてくれているなど、考えたことも無かったのだ。
「ああ。全部の記憶を取り戻した上で、あいつがそう言っていた」
 彼女の反応からその内心を僅かながらも察したのか、ゼロは肝心の事を付け加えてくれた。
 或いはダリオが何も知らない、思い出せないからこそではないかという不安も、その言葉で消えた。
「ゼロ、そろそろいいかい? 次の世界への入り口が見つかったみたいだよ」
「了解した、すぐにそちらへ向かう。……俺はもう行く。ダリオの剣を……イルランザーを頼む」
 外からゼロを呼ぶ青年の声が聞こえた。ゼロはその声に応えて、彼女に一礼をしてから小屋を出た。
 彼女は自分でも気付かぬ内に、イルランザーを受け取り、それを両腕でしっかと抱き締めていた。まるで、愛しいひとの体を抱きしめるように。
「ダリオ……」
 本来なら感ずるはずの無い、まるで自分自身も抱かれているような温もりを、彼女はイルランザーを通じて感じていた。





 こうして、聖剣イルランザーは緑豊かな名も無き小島の小さな小屋に住む女性の下へと辿り着いた。
 彼女はその剣をアカシア龍騎士団の宝剣ではなく、ダリオの形見としてとても丁重に扱い、大事にした。
 後に修羅の如き剣士の手の中で風のように舞い、輝ける聖剣と共に星のように輝いた、もう一つのイルランザーを携えた冒険者達が彼女の下を訪れるのだが、それはまた、別の物語である。


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