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あと3話で完結ロワスレ

592Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:31:24


ルカ・ブライトは自分の前で必死に穴を掘っている娘を、特に何も感じることなく視界の中に映していた。
死体など朽ちるに任せろ、死した者に情を向けても無駄だ―それは「狂った」今でなおルカの中に染み付いた持論である。
テンガアールもそれに薄々と気付いているようで手伝いを強制することはなかった。
ルカは目を閉じると、身体を休めるべく眠りにつく。

放送が始まったのは日が暮れて…テンガアールがやっと、3つめの穴を掘り終え、埋葬をすませた頃だ。
その頃にはルカも休息を終えて、放送を聞き逃さないように集中していた。
放送前は13人生存者がいた―死んだと確認したのは、リオウと協力して殺した青い奴がひとり。
此処に転がる遺体はテンガアールの仲間が3人にマーダーの黒ずくめ。
リオウたちが斧使いと不気味な笑みを浮かべていた女を殺しているのならば残り人数は6人になる。

視線を移すとテンガアールは天井を仰ぎ見ている。ルック、と掠れた声が耳に届いた。

《こんばんは。
 今から死者を発表する》

ただ、淡々と事務的に届けられる年の割には高い声。
ウィンディと名乗った魔女とは対照的に必要なことだけを参加者に伝えていく。

《最終日、無残に死んでいったのは
 フリック
 アラニス
 レツオウ
 キカ
 ユーバー
 ソニア・シューレン
 ファルス
 グレミオ
 以上の8人だ。
 これにて放送を終了する》

あっけなく放送が終わる。
テンガアールの半ばで焦げ落ちたお下げが跳ねるのを見ながらルカは今、呼ばれた内のひとりを脳裏に浮かべる。
ファルス…リムスレーアの兄、人格者で何があっても諦めず立ち向かった青年。
妹思いの優しい性格をしていて、彼と合流してからリムスレーアの笑顔が増えていたことはルカも気付いていた。
戦力的にも武術に優れ、紋章の扱いも上手い。生きていてほしい人員だった。
それにあの面子の中で死ぬなら盲目な上に戦闘能力もそんなにないユーラムの方だとばかり思っていたから、衝撃を受けなかったといえば嘘になる。

「(それほどあの斧使いは強かったのか…貴様は妹を残し、どんな死を迎えた?)」

しかし、ルカはすぐにファルス王子のことを脳内より切り捨てる。そしてへたり座っている娘を立たせた。

「早く行くぞ、小娘」
「………行けないよ」

テンガアールは泣いていた。

「ボク、リムちゃんに酷いこと言ったんだ。
 『きみの大切な人も死んじゃえ!』って」

別行動する前、少女2人が何かを話していたが、リオウが想像していたようなふわふわとした内容ではなかった、と本人から聞かされる。

「ヒックスがいなくなったからって、リムちゃんに八つ当たりして…ボクは酷い奴だ。
 リムちゃんに合わせる顔がなあよ」

恐らく娘はファルスの死に責任を感じているのだろう。
本来ならここで慰めるべきなのだろうが、記憶喪失時の「爽やかなルカ」ならともかく今の彼にはその選択肢は浮かんでこない。
代わりにルカはテンガアールを片手で器用に担ぎ、歩き出す。そして抵抗しようとキーキーと暴れる娘に

「懺悔や謝罪はリムスレーアにしろ、それに今の貴様は猿のようだ」
「………」

途端に静かになるテンガアール。少し歩くとありがと、と小さな声が耳に届いた。
しかし何故礼を言われたのかが分からないルカはああ、と彼にしては間の抜けた返答をするに留まった。


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