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あと3話で完結ロワスレ

732名無しロワイアル:2014/01/16(木) 00:57:47
「深く、黒く、愛に血を流す……素晴らしい戦いだったよ。だが、残念だな。あんなにも美しい憎しみが、完全に掻き消えてしまったとは」
 滅びの塔への門、巨大な黄金と白銀の梟の像の間にある柱の上に、声の主は立っていた。
 身の丈ほどの大鎌を軽々と振り回す、少年の面差しを残した魔人フェイト。その傍らには、蒼い鎧装束に身を包んだ錬金術師・無限法師の姿もあった。
「お前は……フェイト!」
「それに、無限法師か」
 切歌とアバンスはそれぞれに怒りを籠らせた声で、忌々しい2人の主催者の名を呼ぶ。
 特にこの2人の声は放送の度に幾度となく聞かされていたのだから、殊更に討つべき敵として記憶に刻まれている。
 マローネは一言も発さなかったが、このバトルロワイアルで最初に手を差し伸べてくれたヤマネコの亜人――セルジュの本当の体を、そして一番大切な女性を奪ったというフェイトに対して、静かに怒りを燃やしていた。
 アマテラスは早くも臨戦態勢となって2人の魔人を威嚇しているが、フェイトは自分に向けられる怒りや敵意を全て受け止めた上で、全員を睥睨しているようにも、誰も目に入れず虚空を見ているようにも思えた。
「この世で唯一純粋なものは憎しみだけだ。だからこそ、心が憎しみに染まりきった姿は、憎しみが広まっていくその様は、とても美しかった」
 唐突に始まった、フェイトの狂った価値観と美意識の吐露に、無限法師以外の全員が困惑する。
 そんなことはお構いなしに、フェイトは焦点を眼下のアバンスに合わせて、続く言葉を紡ぎ出す。
「リチュア・アバンス。お前がその憎しみでガンダムを……劉備をも取り込むことを期待していた。とても残念だよ」
「超融合のカードとダークネスローダーは返してもらおうか」
 恍惚とした表情で語り続けるフェイトを尻目に、無限法師は淡々と事を進め、目的の物を回収する。
 十代とキリハから必ず取り戻すように言われていた2つの重要アイテムを先んじて回収されてしまったのだが、そこまでは頭が回らず、マローネは感情を吐き出した。
「あなたたちは……一体、何者です!? どうして、こんな酷いことをするんですか!」
 怒りと悲しみ、そして純粋な疑念が織り混ざった問い掛け。
 これにアマテラスも切歌もアバンスも、無言の視線で以って同様の問いをフェイトと無限法師に投げ掛ける。
 事実、このバトルロワイアルを主催した5人を知る参加者は、彼らが放ったジョーカーを除いて、彼らの思惑や真意を全くと言っていいほど知らなかった。
 何故、どうして、なんのために、なにがあって、こんな殺し合いに自分達を、様々な世界や時代から100人もの参加者を集めて殺し合わせたのか。
 バトルロワイアルに関する最大の謎の答えが得られるかもしれない。
 そんな予想から来る緊張感は、フェイトからの返答によって一瞬で吹き飛んだ。
「私は、お前達を……人間を愛している。狂おしいほどに、狂わずにはいられないほどに。だから、私は……お前達と、一つになりたい。その為に、このプログラムが必要だったのだ」
 身の毛もよだつ思いというものを、3人は初めて実感した。
 フェイトの声色は優しく、言葉にも慈愛が込められていることがよく分かった。
 だが、爛々と輝く瞳と恍惚とした面貌には、狂気の二字以外に見出せない。
 切歌が勇気を振り絞って何故そこで愛なのかと言い返そうとしても、口を動かせなかった。


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