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あと3話で完結ロワスレ

506 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:23:11
「ま、嫌がるなら仕方ないな。お前の悔しがったりとかするところ、一回見てみたかったんだけどさ」
 へらへらとしながら一歩後ろに下がった少年は、まだ動かせる左手を振って汗を払うふりをした。
 文字。情報。影。種々のしがらみを纏ったままで、力に目覚めた事無草は同族喰らい<ウロボロス>の左手を伸ばす。

「さあ、綱引きを始め……始められない……?」
「なんだと……」
「だって俺、もうお前のこと選んじゃったじゃん。なんでこんなに『真面目じゃないけど変な話』に行くんだよ!」
「私の知ったことか! それを悔やむのならば、少しは考えてものを言え――」
 開いた指の銀花に冷えてゆくその先で、ムラクモの眉がしかめられた。
 許容とかけ離れた怒りと自制が前にでた顔つきへ、新たに加わった色は困惑。
 眉間をひくつかせている彼の視界から左手が収められ、その先では藤林修羅ノ介が『腹を抱えて笑っている』。
「やったぜ。『真面目じゃないけど変な話』……茶番や楽屋落ちって死ぬほど大事なもんでさ。
 楽屋なんざ必要なさげなアンタがそういうコト出来るように、雰囲気を壊して、まずは楽屋を創らせてもらったよ」
 真の創造は、破壊なくしてはあり得ない。
 日常を壊され家族を奪われ力の使い方さえ去勢され、それらすべてを手放してなお影に囚われた、
 少年は外界から引いてきた言葉を諦観に拠らず受け容れて、なおも抗うようにひねた笑みを口角に刻み付ける。


「なぜなら、『破壊こそが創る事そのものだからさ』。
 師匠……イゴさんのゴッドハンドにゃ及ばないが、これが俺の忍法『イゴイゴリサイクル』だ!」


 ――――口上を放った藤林の、修羅ノ介の出で立ちからは、冬の気配がゆるやかに拭われていた。
 痛みを喪わず、なれど傷に固執せず。ヒトガタを成したときの言葉どおりに動く少年は、今こそ世界という激流に、
自分自身という濁流に、無自覚という清流に正しく抗うものとしてある。
「さあ、だから、今度はそっちが選べ。ロイスなんざ一方通行の片思いだけど、それでもここで選んでよ」
 先ほどの言に沿うのならば、「壊してよ」と同義の言葉を、彼は優しい響きでさえずる。
 世界も人も赦せないのに手放したり見放したりすることだって出来ない、お前、この世界がけっこう好きだろ。
 好きだという言葉の白々しさを知っていながら、それを口にすることで生にすがる化け物が、
「それならもう、ここでかみさまを殺して全部終わらせて、誰も悲しまない世界にしよう」
 世界へ色を、音を光をつけるように甘く、せつない声でうたう。
「……でもリリカルポップ・ダンジョンシアターは恥ずかしいんでちょっと今風に」
 言い終わって、はじめて羞恥心の存在を思い出したとでも言いたげに、でたらめな言葉をつなぐのだ。


「『カミサマヤメマスカ』――ッて、え?」


 ああ、ああ。……歌を覚えたばかりの声でわめくな。
 何を無理をしているのか、何に堪えているのか何を望んでいるのか、
 そのすべてを知らずともお前は。『お前たち』は自儘に、自力で救われて征くのだろうに。
 失ってなお喪わぬものどもは、こうして、命を落としてなお落とし得ぬものさえ奪ってゆくのだ。
 そうして、それが。このひととき、命を賭け金として遊戯に興じることが、なにゆえかひどく面白い――。



 ◆◆


 ▼ムラクモ用リバースハンドアウト
 シナリオロイス:完全者  推奨感情 ポジティブ:懐旧/ネガティブ:侮蔑

 キミは、過去に箱庭の楔となる『星の意志』の声を聞いたことがある。
 魔戦の始まる前、旧世界に死をもたらす黒き鳥・ヴァルキュリアを打倒した一因もそこにあった。
 だが、星の意志を取り込んだという九重ルツボは、キミに向けてこう言った。
「『いびつな戦役<バロック・キャンペーン>』を私戦<フェーデ>に変えられるときは、今より他にありませんよ」
 すなわち終わるしかない世界で、ここからは一騎討ちをするしかないほど限定された状況に向かってしまうのだから、
 自分の好きにしてよいのではないかと。

 キミは、完全者の手で望んだ世界――無価値と断じた人間が減った世界を創られている。
 だが、それでもキミはあの魔女に刃を向けた。
 あのとき、キミは、掲げた使命以上のなにを望んだのだろうか。


 ◆◆


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