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あと3話で完結ロワスレ

687剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:02:34
 崩落する仮初の世界、無へと還る殺戮の舞台。
 そこに大神の筆しらべが走り、異空へと繋がる幽門が開かれる。
 黄金神と大神の導きを受け、戦いの中で散って逝った数多の剣士達の魂は、還るべき世界へ還っていった。
 それは、彼らの振るった幾多の剣も同じ――。




 エピローグ 剣の還る場所
 其の一『聖剣イルランザー』




 ガルディア大陸から遥か南方に位置する、幾つもの島々からなるエルニド諸島。
 かつては大陸で名を馳せた蛇骨大佐率いるアカシア龍騎士団によって統治されていたが、数年前に中枢メンバーが死海へと遠征に向かい全員が行方不明となり、少し前にその死海も消滅してしまった。
 現在は交易の中心である港町テルミナを始め、本島はパレポリ軍の統治下――事実上の支配下――にある。
 そんな世間の喧騒から隔絶された、小さな離れ小島があった。
 豊かな緑に囲まれたそこは一見無人島のようだが、中心部には小さな小屋があり、そこには1人の女性が住んでいた。
 彼女は今日も、2人分の茶器を用意して、2人分のお茶を淹れて、じっと、椅子に座ったまま待っていた。机を挟んだ対面の席に来るべき人が来ることを、帰るべき人が帰ることを。
 女性の顔にはおよそ精気と呼べるものは見られず、悲しみや嘆きのような感情すらも垣間見えない。
 ほんの数年前、この離れ小島に大怪我を負った騎士が記憶喪失の状態で流れ着くまで、彼女はずっと1人だった。それが当たり前だった。
 世間から隔絶された場所で、彼女はずっと1人で生きて来た。死が訪れるその時までそれは変わらないと、そう思っていた。
 だが、彼が現れてから彼女の世界は一変した。
 彼は命を救われた恩を返す為だと彼女の手伝いを買って出た。木を伐ったり薪を割ったりと力仕事が主だ。
 彼女もそのお礼にと、彼には腕を振るって食事を御馳走した。
 またそのお礼にと青年が、またそのお礼にと彼女が、とその関係はずっと循環していた。
 彼と共に暮らし、語り合う内に、彼女の心に今まで感じたことの無い感情が芽生えた。
 それが恋であり、愛なのだと悟ることに、さして時間はかからなかった。
 その想いを自覚すると同時に、彼女の内に一つの恐怖が生まれた。それは、彼と別れる時が訪れること。
 彼はいつか、記憶を取り戻すかもしれない。或いは、彼の知り合いがここに来るかもしれない。そうなってしまったらと思うと、胸が張り裂かれるようだった。
 彼がここに来る前の日常に戻るだけだと頭では理解できているし割り切れるものだと思えるのに、心は、そんなものには耐えられないと叫んでいた。


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