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あと3話で完結ロワスレ

675ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:20:13

「不思議だよな。俺も、多分お前らも、“あなたが死んだって、そんなのどうでもいいよ”って心の底では思ってるだろ?
 でも今の状況って、なんか脅迫じみたもんがあると思わねーか? 自分の命を人質にして互いに差し出してるみたいなもんに思えてきたんだ」

佐藤さんが言った。確かにそうかもしれない。自分が仮に死にたくなかったとしても、恐らくこの状況では生きたいとはとても言い出せないだろう。
しかし生憎、今この部屋の中に生きたい奴は居ないだろうし、この話に中身があるとは俺には思えなかった。
ただ、不思議な状況であるというのは俺にも何となく理解できた。集団自殺もこんな雰囲気なのだろうか。

「……誰も言わないから、俺が訊いとくぜ。俺達は今から死ぬ。そうだよな?」

佐藤さんが続けた。俺は周りの皆を見た。岩倉も、鈴木さんも、頷いている。
ピノは未だに理解していなさそうな表情だったが、死ぬことで幸せになれるとか、死ぬことが理解できないとか言うアンドロイドだ。
最早彼女が理解していようがいまいが、どうでも良かった。無理に理解させようとして話が拗れる方が面倒だ。

「だよな。まあ良いんだけどよ。飽き飽きしてたんだ。ただぶらぶらと宛てもなく、変わらない毎日を生きるって事に。
 なぁ、不謹慎だけど本当は皆思ってたんだろ? 今まで生きてきて、初めて生きた気がしたってさ」

胸の奥がいやにざわついた。
その言葉は、たしかに本質を突いていたからだ。誰もが思っていながら言わないであろう、黒い感情だった。
不謹慎と黙殺されるが、人間はきっと何時だってそうなのだ。誰かが死んで、目の前で事件が起こって、災害が起きて、戦争が起きて。
大変なことだと思いながら、きっとそれにワクワクしている。高揚している。

「映画とか、漫画とかにはさ。起承転結があって、感情の爆発があって、結末がある。でも元の生活には、そんなもん無かった。
 だけど、此処はそれがあった。程度はあっても確かに始まりがあって、小さくてもドラマがあって、感情の爆発があって、約束された結末があった」

バトル・ロワイアル。まるでハリウッド映画やゲームの世界の出来事だった。北野武の映画の中だけの事件だと思っていた。
ところがある日目が覚めると、自分が参加者。笑っちまうよマジで。目の前で人が死んで、毎日誰かが死んで。でもそれに目を背けた。
不知火を看取った。葉山を殺した。紅麗や黒神の死を間近で見た。
その度に妙な高揚感があったのは確かだ。

「辛い思いをしてまであの灰色の世界に帰るのと、このファンタジーの世界で、役者としてエンドロールを迎えるの。
 どっちが良いかなんて、考えるまでもなかったのかもな……」

約束された、結末。
俺は胸の中でその言葉を繰り返す。その時俺は何を思って、何を感じて、どんな表情で死んでいくのだろう。


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