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あと3話で完結ロワスレ

496 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:03:07
 ムラクモ。結局、お前もおのが力を自分自身にさえ使ってやれないんだ。おのが現状、そのありようの正しさを示すお前は、
相手方から「話にならない」と見放されることさえも「受容」とみなして、人の身で神に至らんとする自身を守り続けている。
 そうして自身が餓えないために他者と闘って意味を喰らうけれど、自らの意味は喰らわせない。
 魂が死んでいるなんて濡れ女は言ったようだが、何にも満たされ得ない自分に、お前はうんざりしていないのか。
 もちろん、あの玄冬を息子として育て、世界を内側から見ることで変化したのは私個人の問題で感じ方だよ。
 だけどそんなにもお前だけが正しくて、お前だけは変わらないのなら、ずっと自分だけを見ていれば十分じゃないか。
 なのにお前はこの期に及んで終わりきれずに、他のものを殺そうとするんだな。


  ゆっくりと息を吐き、ならばと黒の鳥は続ける。
  言葉が空に散じてほどけ、そのたび無為に心を凍らせてなおも口を開く。


 そうであるなら、そんなお前に『足りないもの』というのはいったいなんだ。
 過去を殺して未来を潰して、切り捨てるものばかりしかない現在にあって満たされもしない現人神。真理に到達しても
腐るばかりの死体を満たし得るなにものかは、死よりほかに与えるものの無い手を伸ばした先にあるというのか。
 いま、完全者が世界を無理矢理に抱き締めているけれど、それを儀式忍法に活かしてしまったのはお前だ。
 その先でも傷つかず繋がり得ず、すべてを投げ出して死んでいけるなら、……そうだな。赦さないよ。
 箱庭を滅ぼすものとされても世界や人々を憎まず、未来をも望み得たあの子<玄冬>。
 自身の罪を知り、玄冬と救世主とで創られた世界のシステムに抗おうとしたちびっこ<花白>。
 世界の平和をまえに萎れたちびっこを見つめて、籠の鳥と定義する己の心を揺らがせたあの人<白梟>。
 ああ、それとまぁ……代わりは創らないと仰った主の言葉を無視して、『代わり』にされた私<黒鷹>もだろうな。
 個人で完結など出来ない者どもの魂を、お前の裡の矮小なものを慰撫するために歪めたのなら、私はお前を赦さない。



 ◆◆



 言いたい放題言ってみたけれど、ここまで言えば、貴方にも伝わったかな。
 気分? よくはないね。私自身に心当たりがあることを札にしたんだから、すっきりなんてするわけがない。
 それでも口を開かなければ、『思考され得たものは棄却されない』この場のルールを利用出来ないじゃないか。

 ……あの儀式忍法の力で死に終われるかもしれないのに、自身の主観で世界を弄ぶ気分はどうかな。
 去ると決めたはずの世界に手を伸ばし、貴方を排斥したものにさえ手を伸ばすのは、どうしてなのかな。
 手を伸ばして、結局は消えていくだけなのが解っているのだと、私は勝手に思っていたんだが。

 ああ――だって、そうだろう。
 救いを綴って優しい物語を受け取ろうにも、他の誰かのためにあるようで腰が引けるのが貴方だ。
 息をひそめた背中は気持ちの悪い言葉に刺され続けているし、グリム・グリモワールの『魔法』だけに沿おうとしたって
迫る無意味が恐ろしいし、だけど足を止めることは一時しのぎにもならないと理解しているのも貴方だ。
 それでもまだ朝は、変化は自身の胸中にすら訪れていないのだと目を閉じれば、そこに何もありはしないことへの
焦燥にさいなまれると知っているから、膝の上に世界があるように振る舞うことさえかなわない――。
 逸脱しようにも、常軌を逸することさえ出来ないのが貴方や、あの男たちなんじゃないか。
 だから暴力を蹂躙を殺戮を短絡を欲望する自分から目を背けても胸中の自身<他者>にさえ呆れられる有様で、
 それでもまだ、かたりたいものがあるんだろう。
 かたりたいものを語るか、それとも騙るのか。私はどちらでも構わない。
 いずれにせよ、それは何かを信じるということか、こうあって欲しいと祈り願う思いなんだから。
 貴方の目に対面の打ち手さえ見えなくても、そもそも打ち手がいないとしても、ゲームはまだ続いている。
 たまらず汚した世界、詰みかかっている自分の手筋に殺されようとも、それでも好きだと貴方だけは言えるはずさ。


 ◆◆


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