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あと3話で完結ロワスレ
666
:
ep298.主人公はもう居ない
◆LO34IBmVw2
:2013/08/22(木) 21:54:40
「一番俺達がわかってるはずじゃないかっ。現実は、創作じゃないって。
青春や、起承転結や、奇跡や、ドラマなんてものは……自分の世界には無いんだって」
青年は少女を見た。横たわる少女の目は見開かれ、瞳孔は開き、焦点は合っていない。
彼女は死ぬ。放っておいても、どうせ死ぬ。苦しみながら死ぬ。痛がりながら死ぬ。無様に死ぬ。
虫螻蛄の様に。畜生の様に。ゴミ屑の様に。もうすぐ彼女は、人間でなくただの肉の塊になる。
引導を渡すのは、誰だ?
「主人公はいつも別に居て、成功も、金も、才能も、名声も、処女も、どうしようもないヤリチンが奪ってくんだっ、いつも、いつも!」
そうだ。現実はいつだって非情だった。それを一番知っているのは、生き残ってしまった俺達みたいな、どうしようもない底辺じゃないか。
だけど。
「だから、始まらないんだーーーーーーーーー俺達は産まれた時から、負けてる」
だけどさ。それでも諦めたくないのだと、勝ちたいんだと思う事は、罪なのか?
「あのさぁ……」
ーーー寝耳に水とは正にこの事だ。
青年と男はははっとして、声の主へ顔をがばりと向けた。傷だらけのコンクリートの床に、退屈そうに少年が胡座をかいている。
「……なんか面倒なんで、もう最初に言い出した佐藤さんがやればいいじゃないですか? 埒があかないですよ」
少年が目を逸らしながら、さらりと言った。肩を竦めて、やれやれと溜息を吐きながら。朝におはよう、夜におやすみと言う様に。
「な、な、ななっ」
青年の顔からみるみるうちに血の気が引いてゆく。当然だった。ここで少年が敵に回るとは毛ほども思っていなかったのだから。
「なんでだよ! お前だって殺せばとかなんとか言ってただろ! だったらお前がやれよ!」
「……いいぜ」
「ファッ!?」
思わず、青年がよろめく。少年は気怠そうに立ち上がると、口をあんぐりと開けた二人の元へ足を進め、そして言った。
「俺がやるって言ってんの」
少年は彼等に視線すら寄越さない。足も止めず、目もくれず。少年は地面に臥す少女だけを見ていた。
「お、おい引企谷……お前……」
「何だよ」
青年の問いに、背中を向けたまま少年が苛立った声で応える。
「い、いや……」
青年は助けを求める様に男を見た。男は目を逸らして、額の汗を拭うだけだった。
少年はゆっくりと歩く。コンバースのオールスターが、地面を擦る様に叩いていた。
かしゅっ、かしゅっ、と、ソールが擦れきった右踵が規則的に悲鳴をあげている。
「死……たく、ない……」
消えてしまいそうな声が、少年の耳を打った。桐敷沙子の声だった。けれども少年は表情一つ変えず、その命乞いの主へと足を運ぶ。
落ち着いた桔梗色の長髪に不釣合いなほど華奢な手足が、床に転がるランタンに照らされていた。
飴細工のように繊細そうな体躯は、触れると壊れてしまいそうだった。こうして見ると、ただのいたいけな少女なのだ。
尤も、利発そうな顔は涙と鼻水で台無しになっていたし、右足は捻じ曲がり、右手は砕けていたが。
それでも肌は雪の様に、或いは病的と言っても良いくらいに白く透き通っていたし、顔立ちはやはりフランス人形の様に端正過ぎた。
完璧過ぎる程に、彼女は完璧だった。怖いくらいに、引いてしまうくらいに。
身体は木の枝の様にすらりと細く可憐に伸び、薄紫のワンピースはキュプラ生地が上品でーーー惜しむらくはその全てが赤黒い血に染まっていた事だ。
ねぇ、と少女が震える声を投げ掛ける。ランタンの炎が再びぐらりと揺れて、影と光がぐにゃりと歪んだ。
少女の枕元に立つ少年の顔は、影で暗く、窺えない。
ーーーお願い。
か細い声が地下室の暗闇に消えてゆく。少女の懇願に応える者は一人も居ない。異様な光景だった。
数拍置いて、少年はくたばり損ないの少女を目線だけで見下し、口を開いた。
「……そう言っていた奴等を、お前は何人手に掛けてきた?」
黒神、神楽、行橋、三日月、不知火、アンジェリカ、宇白、レキ、来栖、リル、志熊、ナナ、山崎、志布志、ダイアナ、霧江、小金井、中田ーーーーー雪乃下。
ぽつぽつと、起伏の無い声が念仏を唱える様に犠牲になって来た者達の名前を呟く。
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