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あと3話で完結ロワスレ

633虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:33:59
「……嫌じゃ。」
(……)
「そんな世界、嫌じゃ。
 産まれた時からこの世の生き物のこと全て知り尽くしておる世界など、わらわは嫌じゃ。
 そんな世界、『救い』でも何でもない。」
(………)
「わらわは……毛虫が蛹になって、蝶になるのを見るのが好きなのじゃ。
 初めて見る毛虫が、どんな蛹にこもって、どんな蝶になるのか……
 成長する過程、そして、わらわがそれを知っていく過程が好きなのじゃ」
(…………)
「じゃから……シアンのこれからやろうとしていることは、
 とても『救い』であるとは思えん。わらわが、わらわでなくなってしまう。
 ……のう、どうにかしてしあんを止めることはできぬか?」
(……オ前ハ、ワガママダ。
 貴人ノ娘トシテ何一ツ不自由ナク生キテキタカラ、ソンナコトガ言エルノダ。
 全テノ生キ物ガ心ヲ通ジ合ワスコトガ出来レバ、
 人間ドモガツマラヌ争イデ苦シムコトハナクナルノダ。
 餓エテ死ヌ子ラモ大勢救ウコトガデキルノダ。)

「……駄目なのか?……ならば、わらわだけでも行く。行かせてたもれ。」
(イヤ……待ッテイタゾ、ソノ言葉ヲ。『しあんヲ止メル』トイウ、ソノ言葉ヲ。
 オ互イ殺シ合イ、喰ライ合イ、餓エテ倒レ……ソレデモ生キテユクノガ、人間ナノダ。
 生命ナノダ。ダカラ……『コノ者タチ』ト共ニ、チカラヲ貸ソウ、『虫愛ヅル姫君』ヨ。)

いつの間にか姫の周りには、喰われずに残っていた魂が集まっていた。
シアンに『触媒』として集められ、蟲毒の足しにならぬからと捨て置かれていた、ただの人間の魂。
姿は視えないが、確かにそこにいる。会ったことがある者も、顔も見ることも無く死んでしまった者も。
そして、魂を喰われて尚、子の為に戦わんとする土蜘蛛の半身も、そこにいた。
彼らが護ってくれている。姫は武器を手に、立ち上がった。

(君ならできるよ)
「そうとも、わらわたちなら……できる!」

これが最後の闘いだ。


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