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あと3話で完結ロワスレ
664
:
ep298.主人公はもう居ない
◆LO34IBmVw2
:2013/08/22(木) 21:49:33
「だから……もう知ってるはずなんだぜ、おっさん。こいつを殺さなきゃ何も始まらない事くらい」
はじまる? 男が震える声で鸚鵡返しした。はじまる、だって?
地面に横たわるランタンの中で、炎が揺れた。わなわなと肩を揺らす男の顔に、深い影が落ちる。
「今更何が始まるってんだっ。俺達みたいな社会のゴミが集まったところで、何も始まるわけがないっ!」
男は叫んだ。腐っているのを知っているから、せめて綺麗で居たいのだと。
35年。夢を見る事も、生きる事すら、疲れきって諦めてしまうには十分な歳月だった。
成程ならばそれは確かに尤もな意見なのかもしれない。何故って彼等は自他が認める紛れもない屑なのだから。
幾ら烏が集い雲の上を目指しもがいたところで、ただ煩いだけなのだ。誰もが嫌というほど知っていた。
ただ天井が見える年齢になって、それを諦めるか諦めないか、たったそれだけの違いだった。
しかし、いやだからこそその一言は青年の琴線に触れた。分かっていて、それでも逃げてきたのだ。諦める事から目を背けてきたのだ。
同類にだけには、絶対に言われたくなかった台詞だった。
「ふざけんなよ……」
だから、青年は先ず最初に思った事を口に出した。ふざけんな、と。
「まだ負けたわけじゃねぇだろ……」
冗談じゃない。このまま終わるだなんて。全部無駄になるなんて。
「まだ終わったわけじゃねぇよ!」
「いいや終わってるねっ!!」
びくり、と青年の肩が揺れる。喉はからからに渇いていた。心臓がばくばくと、子供が叩く太鼓の様に鳴り止まない。
終わりなんかじゃない。自分に言い聞かせるその想いには、およそ自信と呼べるようなものが悉く欠落していた。
ならば、これから、少女を殺してどうすると?
心の底の波を荒立てるその鉛色の疑問に、青年は何も答える事が出来なかった。
途方に暮れるもう一人の自分の薄汚れた双眸の前には、救いの道など残されていなかったのだ。改めて問われるまでもない。
屑は何処までいこうが屑なのだから。
されど、だが、だけど、でも、しかし、けれど。だからと言ってーーー認めろというのか。
詰みきったこのどうしようもない現実を、未来を。受け入れろと、そう言うのか。
山崎も、柏先輩も、岬ちゃんも、委員長も、城ヶ崎さんも、皆、皆。
皆みんなみんなッ、無駄にしろって言うのか。
「……ふざけろ!!」
気付いた時には、青年の右手が男の胸倉を掴んでいた。青年は自分の行動に、しかし呆気にとられる。
何をしている? 青年は思った。自分は今、こいつに何を言いたいんだ?
ぎしり、と胸の奥が軋む様に痛んだ。
「勝手に俺まで終わらせんな! 何で! 何でそう言い切れるんだよッ!
まだ何もわからないだろ! 未来なんて!! 誰にも!!!」
どこかで聞いた様な台詞ばかりが、頭の中をごうごうと渦巻く。不意に、デジャビュという単語が浮かんだ。
それは漫画やアニメで、何度も見てきたシーンだった。目の前と重なり、繰り返す。作り物で、偽物で、馬鹿みたいな青春御伽噺。
主人公はいつだって現実に辟易としていながらも何もない日常をなんとなく生きていて、童貞で、幼馴染と妹がいて。
クラスにはエロい男友達が居て、委員長はツンデレで、教師は適当な人間で。理事長の娘は、決まってプライドが高い生徒会長。
主人公の性格は普通で、部活にも入ってなくて、奥手で難聴の癖して稀に無駄に熱くて、何故かは知らないがやたらとモテる。
演出と作画も良くて、BGMも良い。脚本は虚淵にでもすればなお良い。死人を出せば感動もカタルシスも出来るし満足だ。
寄せ集めテンプレ設定でも、それだけでゲームやアニメの台詞には中身があるように見えた。
ところが、現実はどうだ?
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