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あと3話で完結ロワスレ

450300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:06:10
  
 だが探偵が考えたそのシナリオも一欠片の無茶がないシナリオとは言い難い。
 候補生たちのスペックから考えれば、
 5人の候補生と球磨川禊だけが都合よく生き残らなければならないし、
 さらに球磨川が主催と相討ちになって消滅したあと、都合よく少女たちがメモを捏造しないといけない。
 では他の探偵の考えた推測はどうかというとやはりどこかに綻びは存在し、他の推測も同様、その他も……。

 ――現実はえてして数奇なものであって、こんなことありえないということがやすやすと起こり得る。

 結果として残っている「外傷がない99体の首なし爆殺死体」という無茶苦茶な謎を前に、
 だから誰一人として完璧に無茶のない推測を立てることはできないし、
 だから誰一人として、参加者が描いた手記という絶対的な証拠を超える信憑性を出せない。

「……結局きみも知ってのとおり、この事件は先日、大規模な捜査を打ち切られることになった。
 他に証拠がない以上、この手記にのっとるしか、なかった。
 そして手記通りに『バトルロワイアルなんてなかった』という『答え』が採用されて、
 しかも主催が消滅した以上、死亡者の誰にも罪はなくなった。後は細かい事務処理だけさ」
「ああ、だから事件の名前もバトルロワイアルとかじゃなく、拉致監禁殺人になったわけですか?
 確か最初のころは、現代に実際に開かれてしまった殺し合いゲームが〜とかニュースで言ってたけど、
 最後のほうは死者の生前の功績とかしかぴっくあっぷされてなかったような」
「そういうこと。事実上は違うけど……真実に対しては、この事件は迷宮入りってわけさ」

 結局は、そういうことだ。
 沢山の好奇心によって0から作り出されるはずだった真実を探る手は、
 大きな嘘で形作られた偽物の壁を突き破れない。
 つまり皮肉なことに――いや、運命だったのか――結果的には、
 とある少年がとある少女のために行おうとしたバトルロワイアルを『なかったことに』するという願いは、
 ふたりが消えたあとに5人の少女たちによって、『完成』されたのだった。

「なんというか、アレですね。黒い真実を明かさせないための、学園規模の白い嘘、みたいな。
 本人たちにそのつもりがあったのかは分かんないけど――きっとその子たち、優しかったんですねぇ」
「そうだね――うん、大分きみもいい意見を出せるようになったね。
 普通の探偵たるぼくの助手にふさわしくなってきた。帰りにジュースをおごってあげよう」
「まじです? でも、褒めるくらいならいいかげん、
 あなたの名字を教えてほしいんですが……あ。来ましたよ雪(そそぎ)さん。警部だ」
「おや、もうそんな時間かい。……珍しく感傷にひたりすぎてしまったかな?」
「悪いな雪! 遅れた! さて、では始めようか。で……今回の事件はなんだっけっか!?」
「わすれてるんかいー!?」
「おやおや、しっかりしてくださいよ警部。――ぼくはこの事件、『なかったこと』には、させませんよ……?」

 資料室の扉が開いて、探偵に協力してくれる警部がいかめし面をして入ってきて。
 探偵と助手の、無意味で無価値な雑談は終局を迎えた。
 資料は棚へ戻される――。
 しかし大事件の記憶は人々の記憶に長く長く残り続けるし、
 その証人である少女たちの手記も、そこにつづられた箱庭学園への愛(i)も、
 彼女たちの名前と共に末永く語り継がれて、向こう千年は消えることがないだろう。
 
 だから彼らは、そこに居た。
 例えすべてが『なかったこと』になっても――確かにそこに、在ったのだ。





 第297話までは『なかったこと』になりました  ‐完‐


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