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あと3話で完結ロワスレ

510 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:31:46
Scene 09 ◆ 断簡・散り往く桜の語部


 ああ、やっと起きたね。おはよう。
 目覚めはど……え? 寒くはないのかって、なんで、僕の側がそんなこと訊かれるのさ。
 そりゃ、こんな雪だけどさ。
「ここはどこだ」とか「なぜ助けた」とか「お前は誰だ」とか、まずはそういう質問をするんじゃないの?
 え、あ……うん。そう。僕がきみを助けたんだ。この――雪がやまないから上着かけたり、焚き火とかしてみたりで。
 きみは戦いだけが得意なのかと思ってたんだけど、そうやって、自然に聞き出すことも出来るんだね。

 でも、やっぱり名前とかは忘れちゃってるか。
 ……ああ、ごめん、こっちの話。きみは知らなくても平気だからさ。

 きみの名前は『アカツキ』。 
 日の出とか黎明とか、そんな意味合いの言葉だね。
 ここ、底なしの迷宮だから太陽なんて見えないんだけど。きみの戦いぶりは、たしかに太陽みたいだったよ。
 うん。あの森の向こう、見える? 大陸間弾道列車砲『グングニル』――えっと、なんか、ものすごい射程の鉄砲……?
 あ、それ。大砲。そんな危ないモノが、あそこにあった要塞を見つけたヒトたちを一網打尽にしてさ。
 それだけなら【発射台】の拠点を壊しちゃえばいいんだけど、この迷宮の核を支配したヤツ……ものすごい雷使いの、
黒須左京ってバカが魔物まで呼び出しちゃったんだよね。小鬼とかバンダースナッチとか、ザコならともかく火炎魔神みたいな
ヤツらまでいる砦なんて、下手に行ったら各個撃破されるのは目に見えてるでしょ?

 だから、僕らはアイツらに戦争を仕掛けたんだ。小隊<ユニオン>を組んで魔物の群れと戦うのが普通だったっていう
侯爵様……ダヴィッドってヒト……ミトラっていう種族なんだっけ?
 あー、うん、ゴメン。訊かれたって覚えてないよね。
 ソイツと、ソイツの脇を固める四将軍……うーん。二刀を使う女の人の他には、四本腕の猫<ソバニ>とか、二本の足で
歩ける魚<ヤーマ>とかカエル<クシティ>とか、変だけど強くて、ムカつくくらい真っ直ぐなヤツらがいたんだ。
 で、ソイツらのところに忍者とかオーヴァード、ランドメイカーみたいな強いヤツらがたくさん集まってきてたんだよ。

 それでも、結果はこのとおりさ。
 この平原って、もとは森だったところだし、一緒に戦ってたヤツらも、もう何人も生きちゃいない。
 完全者を一回倒すまではいけたんだけど、本陣に【リセットスイッチ】ってのが仕掛けられてた。ほとんど、っていうか
全部そのせいだな。
 なんていうか、ひどい名前の戦罠<トラップ>だよね。
 そいつを誰も見つけられなかったのが悪かったんだけどさ、攻め込んでいった側は消耗したままなのに魔物や罠は全部
元に戻りました、なんて身も蓋もなさすぎると思わない?
 で、そのままダヴィッドたちも初手を取られたから、最後は撤退戦にもならなかった。
 攻めれば大抵の敵は蹴散らしてたし、護りにまわっても鉄壁だったのに、兵の士気って簡単に上下するんだね。
 僕? 僕は後方にいたよ。剣なら少しは使えるけど、あのとき風邪をひきかけてたから。だからきみを拾えたんだ。
 う……うるさい。子供だからなんて言うな。『始末屋』のアリサやエヌアインは、僕より年下だったんだぞ。

 名前? そっか。僕の名前も、もう一回言わなきゃいけないんだ。
 花白。僕は花白っていうんだ。きみの切り札の名前は、たしか『桜花』だったよね。
 ん。春に咲いて、この雪みたいに空から降るしろいはな。――これは、桜と同じ名前だよ。


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