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あと3話で完結ロワスレ

446300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:58:17
 
 それでも、やり遂げると決めた。
 自分たちの想いを遺すため――いいや、それだけじゃ、ない。

 297話近く積み上げられた物語が、全て台無しにされたそのあと。
 少し優しい顔で眠りにつかされた死体からは、なにもかもが奪われてしまっていた。
 ある少年は良かれと思ってそうしたという。
 人の死には付属する物語なんて、悲劇なんて喜劇なんて、英雄譚すら、邪魔なだけだと思ったという。

 確かにそうなのかもしれない。
 死はけして美談ではないのだから。
 けれど――そうしてしまったら。物語を消してしまったら。
 そこにあるのはただの「死」だ。

 誰が死んでいても一様に同じ、代替の利く現象でしかない。
 そんな死に、個性はない。

「だからあたしたちは、この物語を書く。死んだのが誰なのかを分からせるために」
「かけがえのない、たった一人の、わたしが、みんなが、一人一人が! 死んだんだって知らしめるために!」
「そのための、本当の物語が失われてしまったのなら――たとえ嘘であっても構いません」
「伝えたいのです。残したいのです」
「ただひたすらに――『みんなはちゃんとここにいた』って、伝えたいだけなんだ!」

 もちろん少女たちは分かっている。それはそうあってほしいと言う願いでしかないということを。
 嘘で作られた100人の登場人物の生き様は本当のものではけしてなく、
 他人では100パーセント本人を再現することなんて、不可能だということを知っている。
 だけれどそれがなんだというのだ?
 不可能だからと言って筆を置くのか?
 違う。
 違うのだ。
 例え願いでしかなくても――そう願おうとする気持ちは。
 本物であってほしいと言う気持ちは、嘘をもうひとつの本物に、変えるのだ。

 少女たちは書いて。
 書いて。
 書いて。
 くだらない嘘を紡ぎ続けた。

 20話が描かれて。
 40話が描かれて。
 第一放送が描かれて。
 80話が描かれて、
 100話が、200話が、
 第三放送が、第五放送が……。

 そして――50時間が経過して。
 最後の禁止エリアが、指定される。

「「「「「……はは」」」」」

 ぴぴぴぴと鳴り始めた首輪の警告音は、少しうるさいファンファーレだ。

「「「「「みんな、お疲れ様、そして・……」」」」」」

 財部依真は。与次郎次葉は。鰐塚処理は。喜々津嬉々は。希望が丘水晶は。
 クマだらけの目で力なく、それでもやりきったような笑みを浮かべ。
 腱鞘炎になりかけの手でグーを作って、乾杯をするようにそれをぶつけ合って。
 人生最後のガッツポーズを、した。


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