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あと3話で完結ロワスレ

505 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:20:14
「俺の思ったコトを叶えるなら、たぶん出来ることはふたつ。
 お前が、自分が無意味である事実を嫌になるくらいに愛していくか、アンタが自分のたましいを守りたくなるくらいに
傷つけてやるかだと思うんだけど、そっちのコトよく知らないから後者は選びやすいんだ。
 ホント……戦争とかおぼろげに覚えてるコトはあるし、学園にいた頃とかの想い出もきっちり刻んでんだけど、魔戦の
全貌となるとハイライトみたいな記憶しかないんで、俺自身、再構成にゃ苦労したんだよねぇ」
「……まるで、最終決戦<クライマックスフェイズ>からセッションが始まったように、か?」
「は、――え、セッションッ?」
 紙の身体を突き放して、同時に『砂時計週報日本語版』の縮刷版をほうってきたかみさま。
 自分と同じ『人間のなりそこない』が、鏡像のように触れ得ども奪えぬ他者であるのだと認めて、
 この世界に、不可侵の他者が。自身の餓えをしのぐためにあるのでない者がいることにこそ安堵を、覚えたい。

「『次のリプレイのセッションあり。至急連絡求む』――って、すげえ。
 リプレイってラノベになるヤツでしょ? あンの猫耳、莫迦っぽく見えてガチの遊侠<テーブルパンク>なのな」
「兵棋演習か、それを基に作られたウォーゲームのようなものだろう。騎士ならばやっておいて損はない」
「えっ、なにこれ。お前がそういう遊びをしてりゃ楽だったなと思うけど、それがないコトに安心する……だと?」

 そうして、ひどく殊勝なことを考えていたのに、言葉を交わせば思考は回転の速度を増した。
 安堵でいいのかと問う声はカミでなく安堵に浸された胸から届いて、そのたびに自分が憎らしくなる。
 火のつきかけた憎しみを怯懦や惰性に拠らずいなし、衝動に溺れることなく、この足で歩きたくなってしまう。
「さて。だったらやるべきコトも見えてきたよね。けっこう、俺のやりたいコトともかぶってるかも」
「フ……もう、手数というべきも残されてはいないというのにか?」
「まあ、そうだなあ。白子ちゃんとか【電撃作戦】得意だったけど、ソレももう使える局面じゃねえから」
 挑発的な笑みへ応えないことに、ムラクモががっかりでもしてくれないだろうか。
 忘れ水のごとくに沸いた思いを受けて、修羅ノ介は肩をすくめた。『天下忍名録』から取り出したというほかない
九重ルツボも瑣末な歯がゆさを重ね、それでも他者を解体する行いへの誘惑を殺し続けていたに違いない。
 そのはずだが上っ面をなぞるようなやり取り、その手応えのなさへ、自分はすでに寂しさを感じ始めている。
 いっそ戦ってみたほうが、お互い楽しくなれるのではないか。いいや。では、なぜこの男から戦わない――。

「だけど、戦う理由が……俺たちの知らない昨日に来て欲しいってのは、そっちだって同じだろ?」

 回転する思考の転回を受けて言葉が口をつき、修羅ノ介は、この男に感じる親近感の源泉を視た。
 想像出来ない、世界は創造出来ない。完全者――ミュカレらも、それは同じだ。この世界は嫌だと思っているくせに
常軌を逸した世界の土台から妄想することは出来ないまま、これまでに『旧世界』から受け取った意味を拾って言葉を。
最終解決策に最終戦争、新世界に現人神といった語を繋げて、幻想を、なんとか現実にしようとしているだけの、


  少しく影に色がついたばかりのヒトビトが盤上へ唐突に放り込まれて理由のひとつもなく戦えるわけがない。


 転瞬、修羅ノ介を動かしたのは自身に対する恐怖であった。
 絡んだロープをほどく程度であった思考の回転が加速しすぎて、このままでは相手を構成する螺子や歯車さえバラバラに
分解してしまう。常軌を逸するのと他者を守らないのとは違う。
 守られなくとも生きて死んでしまえるようなヤツであるからこそ、自分はこれを喰らいたくはない。
「なんだ、それは……?」
 違う、違うと繰り返してどうにかヒトの側にとどまろうとしたくせに、指が甘えてムラクモの服を掴んだ。
「あー、えっと、その。手汗がひどいなーって錯覚がしたからつい」
「ならば、せめて外套にしておけ」
「え、なに、脇腹弱いの?」
「……………………死ね」
 だのに、この反応さえシナリオに見えてしまうまでに掴んで良かったと心から思えた。
 ああ、そこはお前は死ねでいいんだ。斬らないと負けるのに殺すとは言わないのか言えないのか、だったらアンタは
どれだけ優しく殺されてくれるのかみさま。これを胸中に留め置く藤林修羅ノ介もずいぶん優しくなったではないか。


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