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あと3話で完結ロワスレ

590Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:25:57


「ん、休憩終わったようだね」

リオウがふたりの元に戻ってきたのはそれから数分も経たない内だった。

少年はリムスレーアが先程よりも青い顔をして俯いていることやユーラムの役割を果たすことのない瞳が薄く濁っていることにも気付いていたが、それに対して何かを言うつもりはなかった。
とりあえず、とリオウはリムスレーアに数枚の札を渡す。《癒やしの雫》の込められた札が一枚、《氷の息吹》は三枚。グレミオの懐を漁ったら出てきたものだ。
支給品に回復アイテムはない、と言っていた主催者を信じるならば恐らくは誰かに作らせたものだろう。

「(水の紋章が残っていた方が良かったのにな)」

もう過ぎたことだが思わずにはいられない。
札と引き替えに消失してしまった水の紋章…特に傷口を全て癒やす強力な回復魔法《癒やしの雫》はこれからの決戦にかなり有利に働いただろうに。

「(愚痴言っても仕方ないか)」

ユーラムにはかなりの量の封印球と華美な装飾のついた杖を袋ごと渡す。
残りのメンバーを合わせても、唯一まだ紋章術を使っていない青年はある意味で最終兵器だった。

「ユーラムは適性が合いそうな紋章宿しておいて」
「はい」

既に真の土の紋章を宿してしまっている彼には不要かもしれないが、リオウには副作用があるかもしれない強大な力を持つ真の紋章を多用させるつもりはなかった。

しかし結局ユーラムが宿せる紋章は見つからなかった。
というより彼が宿しているもうひとつの紋章―音の紋章がこれ以上紋章を宿すのを拒絶したのだ。
その紋章を外せば彼は歩くこともままならないだろうから打つ手はなく。

「仕方ないなぁ。ユーラムには後方支援を任せるね」

情報が確かならばルックのしもべたちは宙に浮いている筈だ。土の紋章による攻撃魔法は無効化される可能性が高い。
それに、いくら勝ちたいと願っていても盲目の人を前線に立たせるような人でなしにはなりたくない、というのも本音ではあった。

「いいえ、私も前に出て戦います」

しかしユーラムは自らその提案を蹴った。
光ない瞳には強い決意の中に僅かに諦めと虚無が混じっているような気さえするが考えすぎだろうか。

「そうすればリオウ君たちへ攻撃が行く可能性が減ります」
「…わらわからも頼む」

しかも驚いたことにリムスレーアも賛同している…その可愛らしい表情に陰りはあるが。
少年は困ったなぁ、とばかりに頭を掻いた。

「(アラニスちゃんやテンガアールなら強い調子で駄目って言ってただろうな。
 ルカやキカさんは足手まといだってはっきり言ってくれただろうし)」

押しが弱い少年にとって彼らのそういうところは素直にうらやましく感じられた。

「分かった。ただし無理はしないように」

無茶とは思ったが言わずにはいれなかった。しかし頷いてはいたのだけどユーラムがそれを承諾したようには思えない。

「(リムちゃんが心配そうにあなたを見つめてるよ、とでも言えば別なんだろうけど…人間関係って複雑だからなぁ)」

やれやれと心中で溜め息を吐きつつリオウは二人を先へ促す。

…その時、上空から5日間で何度も聞いた、あの声が場に響いた。


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