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チラシの裏 3枚目
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ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに
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「ヴァジュリーラが変身した… エックス、気をつけて!」
新たなる体を得たヴァジュリーラが剣を構える。
マンダレーラから得た力でその剣は大幅に長くなり、巨体に見合う長剣となっていた。
「跪け!」
ヴァジュリーラは在り得ないほどの速さで剣を振るい、衝撃波を発する。
直径3mほどはあろうかという斬撃が放たれエックスを斬り…壁へ衝突、部屋全体に激震を巻き起こす。
「…くっ…!」
クロスチャージショットをヴァジュリーラへと放つ。だがマンダレーラのボディ部分に当たり、ビクともしない。
壁へと逃げ、上からヴァジュリーラの顔面を狙い撃つ。
「レイスプラッシャー!!」
当たるが…あまり大したダメージにはならない。
ヴァジュリーラはマンダレーラの四肢を前足後ろ足へと変化させている。
その巨大な4つの脚で跳びあがり…ヴァジュリーラの両腕でまたも剣を振るう。
「ああああああああああ!」
吹き飛ばされる。
この部屋の中ではヴァジュリーラがあまりにスペースをとっているため、うまく立ち回りが利かない。
ヴァジュリーラの上半身にマンダレーラの体が用いていた莫大なエネルギーが集中しているのだろう。
「…我が手の中で踊るが良い!」
凄まじいパワーを持ったヴァジュリーラの左手がエックスの頭を掴む。
身動きが取れない…体が吸い寄せられているようだ。…そうだ。これは…
マンダレーラの使った強力な磁力と、ヴァジュリーラの拘束輪の作用。
「うあぁああ!!」
そして天井へとそのまま突き上げる。
「うぐっ…!!」
ヴァジュリーラの眼前まで下ろされるとそこには右腕が。
「!!!」
「哀れなり!」
そのまま右腕が作る拳がエックスの体をそのパワーで壁まで突き飛ばし、エックスの腹を潰す。
「ゴホッ…………!!」
今度は頭を狙うつもりだろう。
エックスは再びバスターを構え、ヴァジュリーラに向かいチャージショットを放つ。
「まだ足掻くか…」
腕を振るい、サーベルでエックスを斬る。
ハイパーチップがなければ死んでいるところかもしれない。
エックスも立ち上がり、レイスプラッシャーを放つ。
そして今度はフロストシールドに変えて、ヴァジュリーラを貫こうとするが…効かない。
そもそも全然ダメージを食らっている様子がない。…そんなはずはないのに。
どれほどの耐久力を持ち合わせているというのだろうか。
斬られながら一発、また一発と攻撃を放っていく。
「これで終わりだ…イレギュラーハンター!」
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合体してからヴァジュリーラの言葉がここで初めて出た…。
戦いを終わらせるべく、ヴァジュリーラはまたも腕を使いエックスの頭を掴み…
天井へぶつける。
「うぅううううっ!!!」
…そう、怒りに満ちた声だ。
彼は新しい存在でも神の類などではない。仮面の奥で…マンダレーラの敵を取るべく憎しみを燃やし続けている
ヴァジュリーラそのものでしかないのだ。
…ビートブードの暴走を思い出す。彼は一体どうしてああなったのか?
………憎しみに囚われてしまったのだろう。
その深い憎しみに打たれ、エックスは力を失う。
「エックス…しっかりしてエックス!!」
オペレーターの声も届かない。
そしてまたもヴァジュリーラの眼前へ。
そこに通信が割り込む。
「エックス!!何をためらっている…!」
「…ぜ、ゼロ…」
「ビートブードと戦ったのだろう…
解っているはずだ!奴らは復讐を遂げようとしている以上に…
憎しみに囚われた自分をも憎んでいるんだ」
「でも…」
「奴を殺すしかないんだ!…仕方ないことだ!
例えお前が死んでも、これから奴は次々とお前の仲間を、人間を殺し続ける。
殺せ!…それしか憎しみを終わらせる手段などありはしない!」
その言葉は何より強かった。ゼロにもまた、守りたい仲間がいるから。
力を振り絞る。
「死ね…エックス…!」
右腕が近づく。
「うぉおおおおお!!」
左腕、右腕とチャージショットを放ち、クロスさせる。
クロスチャージショットの完成。
5つの弾が一列に並び、ヴァジュリーラの体へと当たり…狐の面を貫く。
その瞬間、腕がボトリと落ちる。
「……な……なに…?」
力が入らない。動かぬまま、体の各所から煙が生じ、火花が散る。
…ヴァジュリーラは全ての痛覚を遮断していたのだ。
故に、どれだけ攻撃を食らっても…何も痛みも感じず、自分の傷もわからなかった。
自分が…どれほど憎しみを持っていたかも解らぬまま。
二人の戦士は、地獄へと引きずりこまれていった。
「………すまない、ゼロ」
「いや、いい。先へ急げ。俺は上のフロアで待っているぞ」
ここへ忍び込む前のことだ。
「エックス、ゼロ。お前達が倒してきたレプリロイド達の
記憶チップを抜き出し、解析してみた結果なのじゃが……
奴はレプリロイドが持つ『特殊能力』に目をつけているらしい」
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咲おもすれー
麻雀まったくわからなくても楽しめる
これは久々の原作衝動買いかも
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「俺は先へ進んでいる。ついて来い」
ドップラー研究所の上のフロアへと足を踏み入れる。
そこは破壊されつくした…なんとも痛々しい場所だった。
レプリロイドも装甲を削られ、天井も壁も床もボロボロ。
「ゼロ………」
「俺じゃない!!」
…本気でそう思っていたエックスは、ならば誰がこれを行ったのかと
敵たちの中から考えてみた。
…凶悪な敵がまだ一人居た。VAVAだ。
「その下は足場が不安定よ 飛ぶ方法があればいいんだけれど…」
ここで集めたライドアーマーが成果を発揮する。
「ライドアーマー…ホーク!」
「撃ち落とせえええええ!」
敵を射撃しながらライドアーマーは空を飛んでいく。
更に上まで行くと針の壁が。
カタツムリ型メカニロイドの殻を外し、出てきた棒を足場に上のフロアへと登って行った。
大きな開けた空間の先で…彼は待っていた。
「VAVA…」
「ククク…よく来たなエックス。この俺が最新式ライドアーマー『ブラウンベア』でお前を捻り潰してやる」
ラビット、カンガルー、フロッグ、ホーク。
動物の名前がついたこのライドアーマーの最も強いとされるものは熊だった。
「死ねえぇえエックス!」
ブラウンベアは物騒なその腕をエックスへと向け、突撃をしてくる。
ライドアーマーが変わってもすることは同じ…。
クロスチャージショットを放ち、上方向へのエアダッシュでブラウンベアを高さを稼ぎ、続けて横方向へのエアダッシュで交差する。
これがフットチップの能力だ。
ライドアーマーの攻撃を回避することは容易。そう思い、間髪入れず次の攻撃を追わせる。
「甘いんだよエックス!」
ブラウンベアの腹から何かが発射され、エックスを弾き飛ばす。
…チャージショットだ。ライドアーマーにバスターが装備されたのだ。
またもブラウンベアは腕でエックスを潰しにかかる。
エックスは敵を壁に追い詰めようとする…が。
「面白い機能を見せてやろうか!」
ブラウンベアから何かが放たれる。
回転する小さな筒がいくつも。
「?」
その筒は床と垂直な方向で止まると壁を生成する。
そう…生半可な攻撃では壊れず、ブラウンベアの攻撃では一瞬で壊れるこの壁は
ブラウンベアの餌食となる敵を逃がさないようにするためだけのものなのだ。
「回りくどい戦い方だな」
シュリンプァーの能力、スピニングブレードを放つ。
赤き二つの回転する刃がブラウンベアを刻み…刺さった。
派手にライドアーマーが爆発する。既存のライドアーマーとは比べ物にならない量。
特Aランクのレプリロイドに値するほどだった。
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「そう来なくっちゃあ面白くねぇな…エックス!」
ライドアーマーの残骸の中でVAVAが立っていた。パワーアップ後の前回も戦った相手だ。
「食らいな!」
エックスの体を飛び越すと同時に彼の膝から何かが飛び出る。
床へ衝突すると同時にそれは渦巻く炎の柱となって走り、壁まで追い続ける。
「速い…!」
そう。本気を出したVAVAは自分の武器を改造していた。
本来なら在り得ないほどの速度で走る炎にエックスは包まれた。
「うぁあああ…!」
「そらそら!!」
空中から指のバルカンを放ち、エックスを狙う。
絶えず走ることでこれを回避し、VAVAへスピニングブレードを当てる。
回転する刃が今度はVAVA自身を襲う。
「少し黙ってな!」
跳びあがり肩から強化された拘束弾が散らばる。
「動けない……!」
そしてまた炎の柱でエックスを包む。VAVAは思わず笑みを浮かべる。
「うううぅうっ…!」
そしてVAVAはまた空を飛び、バルカンを見舞おうとする。
だが…エックスはこのときを待っていた。
「チャージ・スピニングブレード!」
バスターから棒を射出、先端から巨大なチェーンソーが生成される。
「ま、まさかお前…!!」
「食らええええええええ!」
刃がエックスの周囲をぐるりと回転し…
軌道上にあるVAVAの股から左肩までを深く深く斬る。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そのまま落ちてきたところに…
「チャージ・ドリルファング!」
エックスの腕そのものがドリルに変化し…
VAVAにそのまま突進していく。
「エックス、キサマアアアアアアアアアアアア!!!!」
スピニングブレードによりバッサリ斬られた傷をドリルで広げる。
VAVAの体全体にヒビが広がり、砕け始める。
VAVAは最早動けないまでになっていた。
エックスは右腕の螺旋状のチャージショットをVAVAに当てる。
だが…VAVAも諦めない。
肩に大量のエネルギーをチャージし……痛みに体を引き裂かれそうになりながら
エックスを焼き殺す準備をしていたのだ。
「これで最後だ!!」
二人が声を合わせる。
エックスはVAVAへ跳びかかり、その右肩の砲身へとバスターの口を合わせる。
VAVAもそんなエックスのバスターの口へと砲身を向ける。
そして…
「うぉおおおおおおおおお!」
VAVAは肩を中心に円形に、胸までが大きく奪われる形となった。
原型を留めていない、かつてないまでの酷いやられ様。
機能そのものが停止しそうになりながら。
「これで…終わりと思うな……」
エックスは腕を下ろす。
「お前を殺すまで、俺は地獄から…何度でも…」
エックスは黙って見つめる。
「よ…み…が…え…っ…て」
「…………や……………る……………」
ぴくりとも動かず。静かにVAVAの体に火がついた。
「…レプリロイドの特殊能力を…ですか?」
「うむ。どうやらドップラーは、それを集めて
『究極の戦闘用レプリロイドボディ』を作ろうとしているらしいのじゃ」
「究極のボディ…!?」
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ドップラー研究所の上層。厳重なセンサーによる警備が強いられ、
いよいよもってドップラーが近づいてきたことを確認する。
扉を潜った先は9つのカプセルが待ち受ける。そのうちの一つはアイテムカプセルだ。
残り8つが一体何を意味するかは…容易に想像がついた。
復活した8人のレプリロイドをそれぞれに対応した武器で制し、
エックスはいよいよもってドップラーの前まで来た。
「…究極のレプリロイドボディ…ドップラーがそんなものを」
「…ドップラーは戦闘用レプリロイドではない。
だから、ドップラー自らが使うためにそれを作っていると…思っていた。
だが…どうやらそれは間違いらしい。
ドップラーは…誰かに命令されそれを作らされているらしいのだ。」
「…ようこそ、エックス君。我が側近を倒しここまで来るとは…流石だな」
研究所の最深部。背後に巨大な謎の装置の見える部屋に、彼はいた。
「ドップラー……!」
「エックス君。君のその力は実に素晴らしい…
どうだね…」
ありきたりな台詞をエックスに投げかける。
「私の元で動く気はないかね?
私の右腕となって、…我らと共に『シグマ様の下で』世界を平和へ導こうではないか」
そう。ドップラーにボディを作らせていたのは他でもない。
シグマだったのだ。
「黙れ。お前も、シグマの計画も…ここまでだ!」
「フン…ならばお前には消えてもらう他ないな…
さらばだ、エックス!シグマ様のボディパーツとなるがいい!」
白衣を脱ぎ捨て、ドップラーが自らを改造し作った戦闘用ボディを露にした。
「食らいたまえ!」
指から大きな電撃球を生成、エックスに向かい飛ばしてくる。
1発、2発、3発。
単純な軌道のその攻撃の回避は容易。
続けて空へ飛び上がるドップラー。腕から高熱のバリアを生成し、エックスに向かい突進してくる。
軽々と回避しチャージショットを撃つ。
最早敵ではない。降りてきたタイミングでもう一度クロスチャージを放つ。だが…
「ははははは、甘いぞエックス!」
緑色の何かを両腕の間に作り出し、クロスチャージを吸収する。
「さぁ私の番だ!」
ダメージがみるみる塞がっていく。
「私の回復力と君の戦闘力、どちらが持つか…いい勝負になりそうだよエックス君」
攻撃されては回復され。戦いは長引くがドップラーは一撃たりとも食らわせることなどできず。
ドップラーはクロスチャージの前に敗れていったのだった。
体がスクラップと化したドップラーは呟く。
「…よくぞ…私を倒してくれた、エックス君」
「………正気が戻ったんですかドップラー博士!」
戻ってきたドップラー博士に対し敬語に戻るエックス。
「君にも、ゼロにも、部下達にも、招待客にも、世界中にも…私は大変なことをしでかしてしまった…。」
だが謝罪より聞きたいことがある。それはドップラーもわかっていた。
「……シグマは……悪性のコンピュータ・ウイルス…『シグマウイルス』なのだよ。
奴は…私に作らせたボディで…世界を襲うつもりだ…」
「そのボディは一体どこに!」
「アレは…地下ある。…頼む、エックス君……シグマの手に渡る前に…」
「はい……。解りました!」
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地下室。シグマの入ったカプセルが目の前にあるが、恐らくシグマ自体は目覚めていない。
「エックス。俺はこのまま、ドップラーの研究室へ向かう。お前はシグマのボディを破壊しろ!」
「ゼロさん…大丈夫ですか?エックスさんにシグマの相手を任せても」
「俺も後で加勢するつもりだ…それと、やっぱりさん付けも堅苦しくて好きじゃない」
「…ではやはりゼロ隊長に?」
「…それはもっと要らん。…呼び捨てにしろ。エックスに対してもな」
「ええええっ…!?」
エックスは縦穴を登っていく。だがその瞬間…カプセルが割れる音がした。
嫌な予感をしながら、ボディの安置されているはずの場所へ行くとそこには。
「やあエックス…また会ったな」
2度死んだ男の姿がそこにあった。
蜘蛛のような飾りを背負った、目覚めたばかりのシグマがそこにいた。
「ドップラーを利用しここまで来たが…お前のせいで全て台無しになったよ。
やはり、レプリロイドの進化を賭けお前とは戦う運命にあるようだ…行くぞ!」
今回のシグマの武器は火炎弾と盾だった。
上下に癖のある弾道を持つ火炎弾を撃ち分けるシグマの攻撃を避けてスピニングブレードを放つ。
「何っ…」
跳びあがり、真下へ向けて炎を撃ち続けるがこれも隙がある。スピニングブレードで追撃。
「おのれ…!」
盾を飛ばし、エックスを刻もうとしてくる。だがその程度の攻撃は効かない…
チャージショットを盾が戻る間に撃つ。
「貴様、どこまで私をコケにすれば済む!!」
壁に逃げるエックスに今度は8の字を描くように盾を飛ばす。
だがこれも避け…
「チャージ・スピニングブレード!」
円形のチェーンソーはシグマを頭から真っ二つにしていった。
…シグマは毎回の通り、魂が抜けたかのようにして消滅していった。
…実際、このボディからシグマ本体たるシグマウィルスが抜けていった後なのだろう。
「………ククク。これで終わりと思うなエックス。
ドップラーに作らせたこの、究極のレプリロイドボディの力…今ここで見せてくれるわ!」
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「エックス…まさかこんなのに勝ってしまうなんて…」
戦いはかなりの激闘となった。
だが決め手はアームチップの力、クロスチャージのストック。
これにより、次から次へと連射されるクロスチャージで究極のボディを持ったシグマを圧倒することができた。
「シグマ…諦めろ。お前はもう俺達の敵じゃない。」
「…まさか…こんなはずは!!!」
明らかに焦っているシグマ。
再び、以前のようにワイヤーフレームだけのウィルス体でエックスの前に現れる。
「…ええい、ならば…お前の体を私が乗っ取り、再び世界を手に入れてくれる!!」
噴出した炎に飲み込まれる研究所の中、シグマはエックスを追い始める。
炎に飲み込まれないようにしながら、シグマに乗っ取られないようにしながら。
全力で逃げ続けるエックス。
一本道をどんどん逃げ続けるが…
「しまった…行き止まりだ!!」
「道…道は…ないわ!!」
壁を叩いてもどうにもならない。一体どうすればいいのか……
「今です、ゼロ!」
その瞬間、天井に穴が開き剣を振り、彼は現れた。
「ゼロ…どうやってシグマを…!?」
「待たせたな、エックス…。
どうだ、シグマ。ドップラーが開発したシグマウィルス用抗体の味は!」
「ゼロ…貴様…またも!
ぐあああああああ!!!!!
…き!消えていく…!私の…!データ…が…!」
シグマウィルスが歪み、消滅していく。
透明なシグマの顔が…歪んでいく。
「さ、脱出よエックス!」
大平原へと降り立ったエックスとゼロは遠くから燃え盛るドップラー研究所を見つめる。
エックスはそして…目を閉じる。
あの時のことを思い出していた。
「シグマ隊長、何を!」
「ぐあああああああ!」
「どうしたエックス!私を撃って見ろ…さぁ!」
シグマはゼロの頭を持ち、彼を持ち上げている。
「さぁよく狙え!さもなくばゼロは死ぬぞ?フハハ、フハハハハハ…!」
第17部隊隊長シグマが豹変した日のことだった。
「エックス。この世に…犠牲のない進化など…」
…この先は思い出したくもない。
エックスは引き金を引くのをずっと躊躇っていた。
人質を取られると自分は弱い。殺してしまうことばかり考えて。
…事実、そうである。同僚のハンターが巨大メカニロイドに捕まった際、
エックスは撃てなかった所をシグマ隊長が攻撃したのだが…人質は死ななかったにせよ無事ではなかったのだから。
…ゼロでも無理だったと聞いている。
果たして…今の自分ならそれが出来るのだろうか。
そんなことを…考えていた。
「え…っく…す…」
声が聞こえる…シグマの声だ。
…いつの声だろう。1度目か、2度目か?さっきのことを思い出しているだけか?
いや、違った。
「エックスうううううう!!」
「!」
気がつくと、シグマを斬ったゼロのセイバーに小さくシグマの顔が浮かんでいる。
「ゼロ!ビームサーベルを投げろ!…早く!」
「ああ…!」
シグマの取り付いたビームサーベルを力いっぱい投げるゼロ。
「終わりだ…シグマ!!」
空に向かい放たれたエネルギーの塊の中で……ゼロの剣ごと、シグマは今度こそ消滅していった。
新しい剣など、また作ってもらえばいい。
「…ゼロぉ…。」
安堵するゼロのオペレーターの声が聞こえる。続けてエックスのオペレーター。
「…帰ってきて、エックス!」
「行こう、ゼロ!」
「…ああ」
澄んだ気持ちの中、彼はゼロを呼び…走っていく。
ハンターベースへと……帰っていく。
やがて訪れる…ゼロとの戦いを、今はまだ何も知らないまま。
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「………………。」
夕方のハンターベース。
…そろそろだ。ベッドから起き上がり、シャワーを浴びる。
…そしてスーツ、続けてアーマーを着、髪を束ね、部屋を出て歩き始める。
ドップラー軍との戦いからもう1年半が経過した。
自分が居ない間に、エックスとゼロと…
あの時の研修生オペレーター・『アイリス』はまた一つ事件を解決したらしい。
ラグズランド島での、ベルカナと呼ばれる女性科学者との対決だったという…
『イレイズ事件』。
シグマはその事件で復活してしまったといわれているが…
…今はとりあえずは平和。
もう平和を守るのはイレギュラーハンターだけじゃない。レプリフォースもいるのだ。
それはそうと…。ハンターに就職することとなった彼女は挨拶をすべくエックスの帰りを待っていた。
この日もハンターベースは多忙。イレギュラーは尽きることがないからだ。
もうそろそろ帰ってくるだろうか?
ロビーで待っていると…来た。
「エックス?」
「…ああ、オペレーターか。また遊びに来ていたのかい?」
疲れた様子のエックスが歩いてきた。
「…私ね、明日からイレギュラーハンターの正規オペレーターをすることになったの。
今日は…、その挨拶。」
「へぇ…そうなんだ」
「…あら。ゼロは?」
「ああ。ゼロ?ゼロならアイリスと一緒にいるはずだけど。」
会話に耳を傾けてみる。
「新しいビームサーベルなの?それ…」
窓際に座り、アイリスがゼロの隣で話している。
「ああ。ゼットセイバーだ。
ビームサーベルと比べ軽量で扱いやすい。威力は格段に落ちるが…これで思うとおり動ける」
「で、でも凄く危険そう…」
「オペレーターのお前が心配しなくてもいい。」
セイバーを収めてゼロが言う。
アイリスは実の所新しい剣など眼中にない。うっとりとゼロを見つめていた。
…それにしても目立つ部分がある。
「アイリス…あの子、なんだか成長したわね」
「そうだね。落ち着きが出てきて。彼女無しではイレイズ事件は辛かっただろうね」
「…いえ…そうじゃなくてね。…やっぱりゼロは女の敵ねって話」
オペレーターの視線はアイリスの胸部だった。それが何を意味するか、彼女には想像がつく。
「…そうかなぁ。」
「私にとっては十分イレギュラーよ」
「そうそう、話を戻すけど、担当は出来れば………。」
「ああ。新しい子を担当してくれよ。君に担当してもらえば俺も確かに安定はするけど、一人で大丈夫だし。
君のオペレーションの腕で、新しいハンター達を育ててあげてくれ!」
にこやかにエックスは去っていった。
「…………」
続けてケイン博士の元へ。
…以前から気になっていた事を相談するためだ。
「…おお。君か………」
生命維持装置の繋がるケイン博士のベッド。
「ケイン博士、お久しぶりです」
「……ハンターへの就職が決まったそうじゃね…おめでとう……」
「……いえ。 …少し、お聞きしたいことがあってお伺いしました」
「…エックスの、事かね。」
ケイン博士には解っていた。
「……ロックマン・エックス。」
その単語にケインがニヤリとする。
「…カウンターハンターのサーゲスが使っていた言葉ですよね。
…心当たり、在りませんか」
「…君は、全てを知りたいのか」
「………はい。」
「よいだろう………
私も、もう長くない………君に、昔話をしよう。私の知る…エックスのこと…。 そして、シグマとゼロの事を、な」
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「ゼロ、倒せ…アイツを!ワシの敵…ワシのライバル!ワシの…… 生き甲斐!」
老人の声で目が覚める。ここの所、ずっとその夢が続いていた。
「……またあの夢か」
ゼロは呼び出し命令を聞き、司令室へと向かっていった。
「空中都市スカイラグーンにてイレギュラーによる破壊事件が発生。
暴れているメカニロイドはレプリフォースのものであるという噂があり……」
レプリフォースが…?
そんな筈はない。そう思いながら、ゼロは現場へ向かうこととした。
遡ること5分前。
スカイラグーンでの異変を最初に聞きつけたハンターが
いち早くスカイラグーンへとたどり着いていた。エックスだ。
「スカイラグーンと言えばゼロとアイリスのデート先だとよく聞いていた…。」
綺麗に整備されたスカイラグーンの外部通路を進んでいると突如としておびただしい数のイレギュラーがこちらへ向かってきて、
爆弾を投下して飛び去っていく。
これがレプリフォースのものなんだろうか。
その先で巨大メカニロイドと格闘し、退けた末にエックスはスカイラグーン内部へと侵入していく。
メカニロイドを退け、動力室へ。そこには…14部隊のハンターがいた。
「ドラグーン!どうしてここに…!?」
「エックス!ここはもう無理だ…事情は後で説明する!今はお前も逃げるんだ!」
「くそっ…!」
スカイラグーンは地上へと落下してしまう…エックスはとりあえず避難することとなった。
スカイラグーンが落下してすぐ。その下敷きになった町に急行した一人のハンターの姿があった。ゼロだ。
「まだ生存者がいるかもしれない…クソッ、レプリフォースを騙るなど許せん…!」
地形がまるまんま変化したその町は最早火の海…。
イレギュラーが破壊の限りを尽くし、歩けば瓦礫が上から降ってくる。
愛刀ゼットセイバーでイレギュラーを切り刻む。
飛んで一撃、走って一撃。素早く敵を斬りながら先へと進むと…そこには。
「アイリス!」
道路で倒れている少女を発見する。ドップラーの事件でゼロを担当したオペレーターでもあった…
レプリフォースのオペレーター、アイリスだ。
「大丈夫か、しっかりしろ!」
「ゼロ…急に巨大なメカニロイドが襲ってきて…。」
「…解った。お前はここで待っていろ。イレギュラーは俺が倒す!」
アイリスを庇っての戦闘。
そこにはエックスがスカイラグーンで倒しきれなかった巨大イレギュラー・イレギオンがいた。
強力なイレギュラーのようだ。
爪で攻撃したり、口からビームを吐くなどして攻撃してくる。
だがゼロの敵ではない。こまめに近づき、胸部へとダメージを与えていき…
すぐにイレギオンはゼロの攻撃の前に沈んでいった。
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アイリスは保護され、安心かと思われた時…駆けつける者がいた。
共にドップラーとの戦いに尽力したレプリフォースの最強の男…アイリスの兄、カーネルだ。
「ゼロ!アイリスは何処だ!」
「アイリスならさっき俺が保護した…お前はどうしてここにいる。
これはレプリフォースの仕業なのか?」
友の言葉にカーネルは声を荒げる。
「お前、何を言っている!?私はアイリスを救出しに来ただけだ!
我々とてたった今到着したばかりなのだぞ!」
「…実はお前達にイレギュラーの疑いがかかっている。
武器を捨てて、同行してもらいたい」
その言葉にカーネルは激昂した。
「ふざけるな!!武器は軍人の誇り…!捨てるくらいならば死ぬ方がマシというものだ!
イレギュラーと呼ぶなら勝手にするがいい!さらばだ!」
「待て、カーネル!」
カーネルは姿を消した。
「…クソッ、このままではレプリフォース自体が本当にイレギュラーと認定されてしまう!」
そしてスカイラグーンの事件の翌日。世界中に中継されたのは…世界最強の軍隊・レプリフォースの独立宣言。
レプリロイドだけの国を新たに作ろうという、レプリフォース長官ジェネラル及びカーネルの言葉であった。
「……………。」
「兄が、独立を宣言しました…」
「知っている…。保護された身のお前はともかく、他のレプリフォースとは戦うことになるかもしれんな…」
「…そんな!やめて、ゼロ!お願いだから兄さんとは戦わないで!」
「…出撃する」
一方エックスもまた、その様子を見ていた。
「大変なことになったデシね隊長…」
エックスの目の下に、小さな男がいた。
黄色いまんまるいボディに愛嬌のある憎めない顔立ち。
「17部隊のハンターか。お前、名前は?」
「ダブルデシ!エックス隊長、宜しく頼むデシ!」
「ダブルー、貴方は早く情報の整理をお願いね」
ダブルを担当することになった、オペレーターの声が聞こえてくる。
「…それにしても大変なことになった。
イレギュラーハンターとレプリフォースの戦いか…」
後にレプリフォース大戦と呼ばれる戦いの火蓋は、こうして切って落とされたのだった。
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ハンターベースの中が慌しくなってきた。
シグマについていったもの、洗脳を受けたもの…。
イレギュラーハンターはあまりに多くの実力者を失っていた。
世界の頂点たる英雄・エックスとゼロは居るもの…
彼らの体は残念ながら一つしかないのである。
「ダブルといったか。レプリフォースの情報は集まっているか」
「は…ハイ。これがレプリフォース内の実力者のリストデシ」
ダブルから手渡された資料に目を通すゼロ。
「…なるほどな。オペレーターを呼べ。出撃する」
突き抜ける青空。生い茂る緑。
虹のかかるジャングルの滝の上に立つゼロの姿があった。
「ではゼロ、これからは私がオペレーションを勤めます
ここでは半漁人型の戦士レプリロイドが主力となっているようです。武器は槍…近距離戦になりますね」
「問題ない。全て俺が切り伏せるのみだ」
滝から飛び降り、川に沿いメカニロイドとレプリフォース兵を破壊していく。
「…カプセルがあるな。だが俺では開かないだろう…エックスに後々来させよう」
滝を流れる流木を乗り継ぎ、半漁人兵の待ち構える中滝を登り…
いよいよ森林内の基地への入り口が現れる。
「邪魔だ…」
兵を連続で斬りつけ、続けて扉を破壊。
トンネルの奥へと進んでいく。
光が差し込んだ先は…
「大分森の深くまで来たようだな…」
「蜂型の迎撃メカニロイドや蛇型の追尾メカニロイドが目立ちます。」
「近距離で何とかできる俺には打ってつけというわけか」
高さは問わずに目の前に現れたら即切り刻む。
チャージショットを多用し、対処までに時間のかかり上下からの攻撃に弱いエックスには向いていないだろう。
緑が揺れ、葉が落ち…基地内に入ってすぐに敵は姿を現した。
レプリフォースゲリラ部隊隊長だ。
「…久しぶりだなスパイダス」
「へっ…優先的に俺を倒しに来たってワケかい、アンタは」
そう。スパイダスは元イレギュラーハンター第0部隊隊員だ。
かつての部下を真っ先に止めてやるのが上司の務め…
ゼロはすぐさまセイバーを構えた。
「アンタに何を言われようと、俺はレプリフォースを信じさせてもらう!
ここを通すわけには行かんのだ!」
ゼロが飛び、スパイダスの胴体を一閃。
「ぐえええ!」
「シャッシャッシャッシャ!」
糸を巻き取り、緑の中に隠れる。
やはりサーベルと違い効きが悪い。
「それええっ!」
素早く落下、それと共に蜘蛛の巣を吐き出す。
ただの糸の塊ではない。敵を痺れさせる電流網『ライトニングウェブ』だ。
勿論捕まりはしない。
敵を誘導する性質を持つそれを飛び越えると同時にスパイダスの背を斬りつける。
「うげえええ…!」
スパイダスがまたも体から直結した糸を縮ませて逃げる。
次に来る手も予想している。彼は用意しているのだ。
「焦っているか?
…全力で来い、スパイダス。悔いの無いよう戦え」
-
スパイダスは少しの間を置いて落下してきた。
巨大な蜘蛛の巣で部屋を包んで。
スパイダスが自由自在に動ける場が出来上がった。
「行けぇえ!」
尻のハッチが開き、子蜘蛛型爆弾が射出される。
だが地上に落ちるまでもなくゼロはそれをスパイダスもろとも斬る。
「ぬ…ぬうう…!!」
スパイダスの顔から余裕が消えていく。
どうした。それでも元忍び部隊の者か……とは言わない。
追い詰めるだけだからだ。
罠を張り、戦闘では攻撃してすぐ逃げるヒット&アウェイ。
自分の有利に進むよう努力したのはゼロも認める所であった。
「く、くそぅ!!くそぅ!!!!」
ライトニングウェブを撒き散らす。
一発を避けて斬る。また一発避けて斬る。
ゼロも勿論容赦はしない。
そして…
「無念ーーーーーーーーーー!」
スパイダスの体が燃え尽き、蜘蛛の巣に引火。巨大な灰が出来上がった。
-
「やっと会えたか、エックス。
ここではお前を更に覚醒させるフットパーツを授けよう」
いつものようにライト博士がエックスに遺したメッセージを再生する。
「それにしても、戦いがとうとうまた始まってしまったな…
この戦いは、起こってはいけない戦いだ…早く終わらせるべきだ。」
……何かがおかしい。
ライト博士のホログラフィが…現状を知っている?
「………どうした、元気がなさそうじゃなエックス」
その時に気付いた。
「………ま、まさか!! …博士、博士ですか!!」
「…おお。やっと言葉を返してくれたか、エックス。」
初めて実現した、自分の生みの親との対話。
エックスはまずはその疑問を彼にぶつけた。
「…しかしどうして博士は俺の目の前に現れるように?」
「……うむ。それなんじゃがな」
博士は重い口を開いた。
「……お前は私の設置したカプセルをほとんど訪れてくれていたが…
過去2箇所、お前が訪れなかったカプセルがあったのじゃ。
アルマージの居た鉱山と…カウンターハンターのアジト、北極点じゃ」
…なんだってそんな所に。
「修行を積んだお前のためにと、厳しい条件を課した上で現れるよう細工をしておいたんじゃ。
…じゃが。…居るものなんじゃな、それをこなす者がこの世にお前以外に。」
ライト博士の口から驚くべき言葉が。
「待ってください。それじゃあ…つまり、俺以外の誰かが修行を積みカプセルを開け…パーツを手に入れたと」
「いや違う…私がそのカプセルでお前に渡そうとしていたのは知識じゃ。
私からお前に、ある技のヒントをな。…つまり、ワシの技を覚えた者が二人、世界のどこかにいるということになる。」
「二人…」
「だから私は、こうしてお前の顔を直接見てパーツを渡すことに決めたんじゃ。
…お前とはそろそろ話をする頃と思っておったしな」
「……お会いできてよかった。」
「また、会えるじゃろ。この話はここまでじゃ…パーツを受け取るがよい」
エックスは新たな力を得て次のミッションへと進む。
「兵器製造はここでも行われていたか………。
すまないな、バッファリオ。戦いは…まだ終わりそうもない」
極寒の中、自らが氷像となったバッファリオのスクラップを見上げて呟く。
そう、彼はレプリフォースが引き取り、こういう形で墓標としたのだった。
イエティ型レプリロイドの警備を強引に突破し、吹雪の森の中を進んでいく。
すぐに崩れる氷の橋を走り渡り…
たどり着いた場所は氷の洞窟。
「これは長丁場になりそうだな………」
レプリフォース基地の入り口を守る大きな一つ目のメカニロイドは氷を纏って攻撃してくる。
ツララを落としたり、氷を飛ばしてきたり、爪の形になり刺そうとしてきたり。
長い戦いの末それを撃破したエックスは、基地内へと入る。
基地の中は人工氷のバリケードで来訪者を阻んでいた。
懐かしきメットールなども蹴散らしつつ、切り崩し先へと進んでいく。
開けた通路に出たが…何かが怪しい。
「?」
ふと見るとそこには鳥型メカニロイドが飛来してきて…何かエネルギーを溜め始めている。
「まさか…!!!」
そのまさかだった。鳥は冷気を放ち、一瞬にして部屋を凍らせ、戦いづらい環境へと作り変えてしまうのだ。
とはいっても範囲は割りと狭く、一度に全てを凍らせることはできない。
鳥型メカニロイドを優先的に倒しながら先へと進んでいくと…
冷気から発せられた霧が床に溜まった開発室で待っていたのは以前出会ったレプリフォースのレプリロイドだった。
「…キバトドス。勝負だ」
「ヘッ、あのときのガキか!根性叩きなおしてやるぜぇ!!」
冷気を吐き、左右の拳を突き合わせ、自分のパワーをアピールする。
事件はレプリフォース関連のみでは決してない。
バイオ研究所でのイレギュラーの暴走鎮圧を担当したのはゼロだった。
「長い螺旋階段だな…」
「今日は月が綺麗って聞いたわ。」
「…それが、どうかしたか」
「そう言えば…ゼロも上のフロアまで行く気になるかなと思ったんだけど…ダメだったかな」
「…いや、意図があってのことなら俺は咎めん。進むぞ」
階段の上を転げ落ちてくるイレギュラー達、壁や天井を容赦なく破壊する、暴走した装置たち。
「床の下にイレギュラー反応が!」
外部通路で蛍型大型メカニロイドを切り捨てて、隣の棟へ。
同じことを繰り返し、巨大エレベーターで暴走する植物ユニットを破壊してバルコニーへ上がると…
-
「巨大なエネルギー反応。ゼロ、多分この暴走の犯人よ!」
ぐるんぐるんと回転して落下してきた謎の物体が。…声がする。
2回のバウンドの後、毒を撒いて姿を現した。…レプリロイドだ。
「名前を聞かせろ」
「ボクー?ボクはスプリット・マッシュラムだよー。
何かね、おじさんに頼まれてゼロって人と遊ぶように言われたんだー。遊んでくれるよね?」
「…ほう。それは誰だ」
「いいから遊ぼうよー?ヒーローごっこしよう。君が悪者ね?」
壁へと飛びつくマッシュラム。腕から自分の分身を作り出し、突進させてくる。
「な…!?」
沢山のマッシュラムが回転し、ゼロを襲ってくる。
「…クソッ…避けられたものじゃない!!」
斬ろうとしても斬れやしない。次々とゼロの体へとぶつかっていく。どうやら実体を持っているようだ。
「ぐうう…」
高く跳び、月をバックに回転するマッシュラム。
レプリロイドを狂わすウイルス入りの毒が撒き散らされる。
「何……を…!」
「どうしたの、ゼロ!」
「…気にするな」
マッシュラムが二人に分かれる。恐らくはゼロの感覚を狂わせて見せる幻覚だろう。
…長いこと戦っていれば自分自身がイレギュラー化しかねない。
誰かさんが好みそうな特殊能力持ちのレプリロイドだ。
ゼロの周囲を高速回転するマッシュラム。
こういったときは迷ってはいられない…重なったところをまとめて斬るのがセオリーだ。
どんどん動きを速める二人のマッシュラムに剣を振るう。
だがマッシュラムはぐるんぐるんと回転、壁を三角跳びの要領で跳びまわり、地面へ落下、毒を撒く。
遊んでいるだけなのに…全く隙を感じさせないこの攻撃。しかも…分身から貰う痛みは本物と来ている。
「…ゼロ、一体どうしたの…」
アイリスにはゼロの動きが全く理解できない。モニター越しなのだから。
…しかしゼロにはそんなアイリスが待ってくれているだけでも、戦いを見てくれているだけでも十分に意味がある。
平常心を保てるのだ。
ゼロは痛みをこらえ…スパイダスから得た技を繰り出す。
セイバーの刀身を消し、体勢を低くし…
一直線に刀身を腕ごと突き出す!!
「あぁああああああああああ!」
雷神撃と呼ばれるこの技はマッシュラムの体を一気に串刺しにした。
「あ!あ!あ!あ!あ!ひゃぁああああ!?」
マッシュラムの毒が無力化され、ゼロの意識が強烈な電撃と衝撃により目覚める。
そして…マッシュラムはセイバーを通した穴を中心に焼け焦げ爆発した。
「……任務完了だ。クソッ頭が痛い……」
一方のスノーベースでも。
「終わったか…。 戻ろう」
-
「エックスは…動いているな
アイリス、悪い…俺は少し休む。具合が……悪い」
「大丈夫!?」
ゼロは真っ直ぐメンテナンス室の扉に入っていった。
「エックス。これ…ゼロがミッションで貰ってきたDNAデータです。」
…半端な言葉遣いだなぁ。そう思いながら
エックスはアイリスからマッシュラムのデータを手に入れる。
「ソウルボディ…か」
手に入れたのは分身攻撃。エックスは次なるミッションへと進んでいく。
「………ついでにこれも借りていこう」
新型ライドチェイサー・アディオンに跨りレプリフォースが活動しているとされる都市地下へと急行する。
「やはり誰かいないと物足りないな」
「…今なら暇デシからオペレーションできるデシよ?」
不安な男が出てきた。
「ダブル!お前は仕事がないなら休んでいていい!」
「先輩が心配デシよー」
しかし思ったとおり、ダブルは当てにならない。
指示がものすごく遅く、ダブルの言った方向が敵の仕掛けた爆弾の場所だったりも度々。
「ゲホッ…ゴホッ… いい。後は俺一人でやるよ…」
バリケードを突き破り、外へ。
外は…港。水上走行へと切り替わる。
「チッ、追ってきたなエックス…!」
ターゲットが現れる。ジェット・スティングレンだ。
「ここで止まってもらう!」
アディオンの追加機能、ウィリー走行により発動する車体下部のビームサーベルでスティングレンの背中をバッサリと斬る。
爆発を起こし、スティングレンは退避していく。
続けてまた敵が現れ、エックスへと射撃を行う。
これもまたうまく回避し、チェイサーに搭載されたショットで破壊。
「クソッ…舐めやがって!」
またもスティングレンが現れた。突進攻撃を見舞おうとする…が。
「もう一発!」
ウィリー走行、そしてビームサーベル。スティングレンは頭をバッサリと斬られた。
「わ、わわ…!」
見るとそこには壁。
「先輩ーーーーー!」
「でぇええい!」
間一髪それを飛び越える。そのまま車体から離れ…壁へと叩きつける。
「…ふぅ」
「それじゃボクはここで仕事が入ったからここまでにしますデシ!頑張ってくださいデシー!」
ダブルは何をしにきたかわからないが…まぁ出来の悪い部下だが面白い奴ではある。エックスはリラックスした状態で
敵の待つ扉を開いた。
「…どこまで追ってくる気だ、お前…!」
「ここで大人しく捕まる気はないか、スティングレン!」
「ふざけるな…ここまでやられて引き下るワケには行くまい。軍の誇りをかけて貴様を倒す…!」
脚からエイ型の機雷を発射するスティングレン。地面を這うこの武器はグランドハンターと呼ばれていた。
一方、ゼロもアイリスに看病されながら着々と回復していた。
「くっ…、お前はそろそろ戻れ。休むにしても俺から離れることだ…感染るだろう…!」
「ダメよゼロ!安静にしてないと…」
そこに、スティングレンとの戦いを終えたエックスが駆けつける。
「何だ…。お前まで来たのか、エックス」
「ゼロ、ゼロ! …実は…」
カーネルが、レプリフォース独立宣言の場所、メモリアルホールで彼を待つとのことだった。
「…なるほど。どの道、カーネルとは戦わなければならない相手だ…。 行ってくる」
-
「………まだか、ゼロは。」
「見損なったぞ、カーネル!」
ホールの上部入り口から、ステージ中央のカーネルに呼びかけるはゼロ。
有無を言わさずカーネルに切りかかる。
「今からでも遅くない!クーデターを中止しろ!」
だがカーネル相手には流石に本気にはなれない。
「…断る。」
「そうか…!」
その言葉を合図にカーネルに向かい斬りかかる。
思えば、カーネルがスカイラグーン事件のときに大人しく武器を捨てていれば今頃は…。
自らが斬り捨てたスパイダス。
そしてあの日あの場に倒れていた傷だらけのアイリスの姿。
それを思うとセイバーを握る手にも力が篭る。
「ぬ…!」
「ぐう……!」
レプリフォース最強とイレギュラーハンター最強である両者の力は伯仲…。
交わる二本の剣が悲鳴を上げる。
その時である。
「やめて!!兄さんやめて、ゼロは私の命を助けてくれたのよ!」
兄と、仲間。二人ともアイリスに割り入られては戦いを続けることはできない。
「ここは引こう。だが…次は容赦しない!」
カーネルは去り、ゼロもそれを追うことはしなかった。
「ゼロもお願い!兄さんと戦わないで!二人が戦えば、どちらかが…!」
だが…勿論それをゼロは最早聞くつもりはない。
「…だが。誰かがレプリフォースを止めなければならない。止めなければ行けないんだ。」
ホールの外に向かい、ゼロは歩いていった。…たった一人で。
-
スパイダス、キバトドス、スティングレン。
レプリフォースの幹部が次々と倒されていく中、
病み上がりのゼロはエックスに提案をする。
「…レプリフォースとの全面的な対決がもしあったならば…俺はその時はお前に頼みたいんだ」
「…そうか。ゼロはアイリスの所に居てあげないとね」
「………だからお前はそれまでの間、任務より先にお前自身の強化を優先しろ。
レプリフォースの他幹部は俺が倒す」
「解った。有難う、ゼロ」
部屋から出て、オペレーションルームへ向かう。
アイリスにかける言葉が見つからない。彼女の背中を見ながら黙って立ち尽くしていると…
「ゼロ。」
女性の声がする。ダブルを今担当している、金髪のオペレーターだ。
「…貴方、変わったミッションへ向かう気はない?」
「…ここに…何があるって言うんだ」
「とりあえずこの転送装置にあがってみてよ。大丈夫、行き先は通信が通じるから…」
「俺に行かせる理由は何だ」
「…危険だからよ。とてもね」
転送装置に脚を踏み入れると…いつもと様子が違う。
ゼロの体が光に包まれるのは同じだが…何か違う。
「!?」
いつもはワープするための光だが、今回は違う。
ゼロの体が光に包まれたまま、光の粒になり……
その光が一箇所に集まり、光の球となりそして…機械に吸い込まれていった。
…ついた先は奇妙な空間の中。
コンピュータの内部のような…それでいて、不可思議な物体が蠢く場所。
「うわぁ、凄い…物理原則を無視したような場所ね…」
他人事のようなオペレーターの声が聞こえる。
「そこは…サイバースペースよ。プログラムの世界…電脳空間。
貴方は今、データに変換されて電子の世界にいるのよ」
なにやら頭が痛い。…マッシュラムのそれを引きずっているのだろうか?
「さて…それじゃ私はここまでよ、後はオペレーションお願いね、アイリスちゃん」
「は、はい…!」
オペレーターが去っていき、アイリスが受け継いだ。
「…大丈夫なのか、お前」
「私、レプリフォースと戦うことは出来ないけれど…そうじゃないなら戦うゼロの役には立ちたいの!」
「…すまない。この世界の仕組みは俺にはわからない…オペレーション、頼むぞ」
「…はいっ!」
あたりをうろつく監視プログラムは黄色い目玉の形をしている。
これはエックスのバスターやゼロの通常のセイバーでは切り刻めない。一発では…。
「空円舞!」
マッシュラムから得た回転斬りでそれを一刀両断、先へと進んでいく。
警備プログラムが正三角形の形をしゼロを襲うがこれもまた斬り、先へと進んでいく。
「…電脳空間での戦いはこちらではどういう扱いになるんだ」
「あなたというプログラムが敵のプログラムをデリートした形になるわ」
「…デリートか。いい響きだ」
敵を素早く倒し、巨大なモニターの前に立つ。ランクS…という表示。
「何だこれは」
「サイバースペースを暴走させている犯人が、侵入してきたものを戦闘能力で振り分けているみたい…。」
「通過基準は…何かあるのか?」
「ランクA以上…みたいよ」
スペアボディを手に入れて更に先へ。
色んなパターンを組み襲いかかるプログラムを消しながら先へ。
3つ目のモニターでランクSを取ったとき、第2エリアへの扉が開く。
第二エリアの重力反転の罠を潜り抜けた先が、サイバースペースの最深部だった。
何もない空間に、何かのフレームが現れ…その姿を画像として表示し始める。
「…レプリロイドが入っていたのは俺だけではないようだな」
「レプリロイドではないみたい。これは…プログラム。暴走しているから…ウイルス!」
-
美しい羽を持った美しい顔立ちのプログラムから発せられたのは極太の男の声。…オカマだったようだ。
「プログラム名…サイバー・クジャッカー!多分これが犯人です!」
「マァ、潜在能力未知数なんて驚いちゃうわね」
「………」
「大丈夫、震えてるわよゼロ」
「武者震いという奴だ。……多分」
「悪いけどアタシ、ある人から貴方を抹消するように言われてるのよ…死んでもらえないカシラ。
お仕置きの時間よぉん♪」
姿を文字通り消滅させる。
「何処にいる…」
「何処見ているの?何処を見ているの?何処を見ているの?何処を見ているの?」
同じ言葉を繰り返し、虚空から現れては消えることを繰り返す。
やや素早いが動きは特別速くはない。敵の動きに対応し、セイバーで着実に斬る。
「これでどうぅっ!」
X字の脚で体勢を低くすると、クジャッカーの翼は剣と化して伸び始める。
「何!」
「ゼロ…!」
サイバースペース上では物理原則は必ずしも通用しない。
ゼロの防御もいとも簡単に破られ、剣が突き抜ける。
「くそっ…」
どこからでも現れ、どこへも消えるクジャッカーは空の上に今度は現れた。
「逃がさないわよっ?」
両手で球を包み込むような形に手を添えると、手と手の間にはフレームが現れる。
それはありえないほどの速さでゼロを捉えた。…照準だ。
「エイミングレーザーよぉん♪」
エイミングレーザー。照準を合わせてそこへ向けて翼を光に変えて飛ばす高度な技だ。
クジャッカーの主な武器は恐らくそれであろう。
「ぬううっ」
問題はその照準よりもその追尾能力。どこまでも追いかけ、ゼロを焼く。
何度も何度も連発するため、ゼロはその度にクジャッカーに近づき、斬ることとなる。
1発の攻撃を当てるために2発の攻撃を食らわなければならない。
ここはデータの世界、奴のホームグラウンド。
クジャッカーはここでは驚異的な防御力を誇るため、長期戦は間逃れられない。
そうなると…ゼロは追い詰められる。
…だが、この攻撃も当たらずに不発に終わることもある。
ただ、それまでに大分逃げ続けなければならないだけだ。
防御を先にした手堅い戦い方ならば勝てる。
そう確信したゼロはひたすら彼を避け、避けながらクジャッカーを斬る方法を取った。
「んもう。諦めたらいいのにっ。しつこい男ってアタシ嫌いよぉ…これでどう!」
痺れを切らしたクジャッカーは姿を消し、今度は羽を剣にしたこの攻撃を行う。
だが…ゼロは上にいた。
「氷烈斬!」
氷を纏ったセイバーが、その重みも加えて一気に床まで落下する。
「あらやだ♪」
プログラム・クジャッカーに爆発のエフェクトがかかる。
彼…女というプログラムがデリートされた瞬間だった。
「……任務完了だ」
「ご苦労様… 大丈夫だった?」
「…面白い場所だ。平和になったらお前も行ってみるといい」
-
あいつのことか?ああ、知っている
話せば長い、古い話だ
グラディウスは3つにわけられる
最後まで楽しめる最高傑作、難易度は高いがマニアに好かれる傑作、
弾幕が展開される最新作だ この3つだ だが、あれは―
ビックバイパーパイロットへ、撤退は許可できない、ゴーファーを倒すのだ
だろうな、パワーアップカプセル上乗せだ!
数年前、グラディウスを巻き込む戦いがあった
グラディウス南半球で大規模な戦闘!上も下もバクテリアンだらけだ!
ビックバイパー、ヴェノム艦へ向かえ!
よう、2P お前のオプションは俺のものだ
彼は「ラーズ18世」と呼ばれたパイロット
ビッグコア接近!レーザーに武器換装、応戦しろ!
次ステージでお出迎えだ
私は彼を追っている
5速は今までより速すぎる!
誘導ミサイルだ!油断すんな!
あの動き、噂に聞いたスコアラーか
初級者には贅沢な時間だな
ここはゲーセン、初心者に時間なし
そして―――スコアラーの言葉で物語の幕は上がる
あれは雪の降る寒いプラントでのことだった
生き残るぞ、バートン!!
-
「……ドラグーンが…暴走を?」
「はい。彼を止められるのは今エックスしかいません。お願いします!」
ゼロの報告からサイバースペースへ向かい、ライト博士からパーツを得て帰ってきたエックスが
帰り際にアイリスから聞いたのは…ドラグーンによるハンター殺しと、
レプリフォース側につくと残し逃走した事実だった。
「ドラグーン…俺より早くスカイラグーン事件のときには急行していたくらいなのに…」
マグマード・ドラグーンと言えば、第14部隊の隊長である。
して、その14部隊とは…白兵戦部隊。直接戦闘のスペシャリスト。2年8ヶ月前の…あのシグマの反乱前の時点で、
隊長である彼の戦闘能力は隊長格の中では17部隊隊長シグマに次いで強かったとされている。
もっとも、同じ17部隊所属だったゼロにはやや劣っていたようであるが。
そして彼はそれからもその力を増し続けている。
イレギュラーハンター第三の実力者とされた彼のイレギュラー化は深刻な事態と言える。
…いや。そもそも、現在戦闘におけるイレギュラーハンターはエックス、ゼロと彼しか最早残っていないのだ。
…彼を失ってしまえば最早ハンターはこれからのハンターの成長に期待する他なくなる。
「ここか…。」
「イレギュラーがいなくとも危険な場所。気をつけて下さい」
場所はいつぞやのように火山。炎系のレプリロイドはよく火山で敵を待ち伏せるものだ。
燃え盛る岩が転がったり落ちたり、マグマが足元から噴出したりする。
蝙蝠型メカニロイド、バットンボーンをバスターで焼きながら火山を奥へ奥へと進んでいく。
レプリフォース兵がドラグーンを守るべくライドアーマーでエックスを襲ってくる。
とうとうマグマ溜まりの層までやってきた。
敵がライドアーマーに搭乗していたのはエックスを迎え討つためだけでなく、
マグマの中も歩行可能なその性能があるからだったのだろう。
格闘用ライドアーマー・ライデンに飛び乗りマグマの中を進んでいく。
「来たか、エックス」
ドラグーンだ。
「…何故イレギュラーハンターを裏切った、ドラグーン。」
「聞きたいか? …お前と戦いたかったからだ、エックス。」
エックスは確かに強くなっているが、戦いの度…手に入れたパーツを失っている。
ドラグーンはそれと関係なく、実力を増し続けている。
今ならば或いは、ドラグーンはエックスといい勝負が出来るのかもしれない。
「…それだけのために、裏切ったのか。」
「ここまでしてやっても嬉しそうじゃないな?エックス…」
「当然だろう。数少ない仲間をイレギュラーの道に走らせたのが自分だというんだ」
チッ、と舌打ちをするドラグーン。つまらない奴だ、とエックスを睨み付け、
次の言葉を発する。
「…それじゃ不足みたいだな。」
口元を歪め、呟く。
「なら…… スカイラグーンを落としたのが俺だと言ったら…どうする」
…燃え盛る炎の中で一瞬にして、エックスが凍りついた。
「……何だって」
聞き返す。
「もう一度言ってみろ、ドラグーン」
ドラグーンは易々と言ってのける。
「ああ、そうだ!スカイラグーンを落としたのは、俺だよ。」
そして高らかに笑う。
「ハハハハハハ!最高の気分だったぜ、町があんなに滅茶苦茶になるなんてな!」
体の震えが止まらない…ドラグーンへの怒りで。
そしてドラグーンもまた、震えが止まらなかった。エックスが自分に怒りを露にしようとしている。
これでやっと奴の本気が見られるのだと。
「…お前は」
声がうわずる。震える。喉の奥からひねり出した声を、煮えたぎる怒りを込めたバスターを、ドラグーンへと向けた。
「お前はドラグーンじゃないっ!!ただのイレギュラーだ!!」
ドラグーンのボルテージが最高潮に達する。
「そうだ、その通りだ!お前の力を見せてみろ、エックス!!」
-
「さぁ容赦なく行くぜ!波動拳!」
ドラグーンが両手首を合わせ前へと突き出し、熱エネルギーを放つ。
凄まじい威力の熱波がエックスへ放たれる。
それより…今ドラグーンはその技をなんと言った?
「波動拳?」
もう一度放ちながらドラグーンが話す。
「どうやら気付いたようだな!」
カプセルの中でエックスが聞いた技の名前だ。
「昇龍拳っ!!」
前方へと身を乗り出し、炎を纏ったアッパーをひねり出す。
「昇龍拳!?」
この技もだ。
「ああ、そうだ!2つのお前の製作者のカプセルを見つけ、開けたのは俺だ!」
また波動拳を放ちながら話す。
「それほどまでに修行を積むやつが誰かと思ったが…お前だったのか!」
バスターを放つ。
「ぐぉおおっ…!
だが勘違いしちゃいけないぜ!俺は他人の技を受け継いでそれで満足はしねえ…!」
ドラグーンの昇龍拳をかわす。
「お前が受け継ごうとした技は確かに強力無比!最強の技だったさ!」
壁へと逃げるエックス。
炎の球を指先から作り出し、マグマへと放る。
容赦なくエックスはバスターを当てる。
「だが如何せん威力だけだった!」
マグマの流れがエックスを包み込もうとする。
そして回避。
「放つのにとてつもないパワーを要し」
そこを波動拳をまともに食らってしまう。
1発。
「ボディへの負担が大きく」
2発。
「隙が大きい!」
3発。そして昇龍拳へのコンボ。
「だから俺は負担を少なく作り変えたんだよ!自分の技にな!」
またも跳びあがり、超高速のキックをエックスに放つ。
「ぬああああああああ!!」
「カプセルを開けたときに思ったんだよ、お前に求められた強さ、
お前がこれから得るであろう強さ!」
口を大きく開ける。
「シグマすら殺したお前と、一戦交えたくなってなぁ!」
圧倒的な炎エネルギーの塊がドラグーンの口から放たれ…通るもの全てを焼き尽くし、溶かし、飲み込む。
「だが…もうそろそろ決着をつけさせてもらう!」
口からマグマの弾を大量に噴射、ドラグーンが体からエネルギーを開放する。
すると炎の弾はまるで隕石のようにエックスの頭上へと降り注いでいく。
「…なんてパワーだ…」
「行くぜええええ!」
隕石に当てられたエックスに向かい波動拳を上へ、下へと撃ち分けるドラグーン。
エックスもこれをかわし、ダッシュ撃ちで対応、素早く距離をとる。
「これで最後だ…!昇龍拳!」
エックスを突き上げるべく強力な技を放つ。
エックスもドラグーンへ向かい跳びあがり…
「!!」
バスターを放った。
「ぐ…うぉおおおおおおおお!!」
一瞬満足気な笑みを浮かべた後、ドラグーンは光に包まれ、自らの体を炎へと変えていった。
上半身だけになったドラグーンを見下ろす。
「…それから俺はどうしても、お前に勝ちたいと願った。
…どうやらその思いが奴を呼び寄せたらしい」
「…奴? …奴というのは誰だ!」
そして、その言葉に答えないまま…
「ドラグーン!!」
イレギュラーハンターはまた一人、実力者を失っていったのだった。
-
「ドラグーンの始末、ご苦労だった。…話は聞いている」
ハンターベースでゼロが出迎える。
「ゼロ。ドラグーンのDNAデータだ。これからまたミッションだろ?」
「すまないな。行ってくる」
今度のミッションはレプリフォースとの対決。
よってアイリスは今回は休みだ。
「ゼロ先輩ー、ボクがオペレートするデシ」
「通信オフ」
今度の行き先は軍用列車。兵器を積んだ長い長い列車の上だ。
「…何々。この先のトンネルの中で積み込みのため停止する…」
ターゲットが居るのはこことは別の列車だ。
兵器をその列車に積み込むべく、一時停止するというものだ。
その間にターゲットの居る列車へ乗り込む作戦。
「ハンターが来たぞ、切り離せ!」
「了解!」
目指すは先頭車両。
レプリフォース兵が前の車両から爆弾を投げ、後ろの車両を切り離しにかかる。
ゼロは前の車両へと跳び移り、敵を倒しながら進んでいく。
「む?」
後方から何かがやってくる。
3つのトゲのついたポールと、その上には砲台。戦闘用車両のようだ。
すぐ近くまで踏み込み、セイバーで切り刻む。難なく車両の破壊に成功すると
列車はトンネルの中に入っていった。
「ライドアーマーか…」
レプリフォースが配備している戦闘用ライドアーマー・ライデン。
これに乗り込み、拳をセイバーへと変形させて突っ込み、殴るような動作で斬って行く。
暫くして停車。穴だらけのレールの上を渡り、敵の居る車両へ。
走り出した列車の先頭車両近くまで来た。…相変わらず誰もいない。
サーチしてみても、先頭車両にエネルギー反応は見られない。
「……………」
どうしようもなく、辺りを見回してみると…
なんと後ろから凄まじい脚力で迫る一人のレプリロイドが。
高く跳びあがり、ゼロの居る車両へあがり、コンテナを踏み潰し現れた。
「お前がレプリフォース陸軍のスラッシュ・ビストレオか」
ホーネックのいた基地でエックスは会ったことがあるとされている。
「ああ、そうだ!小僧、随分俺様の部隊を滅茶苦茶にしてくれたみたいだなぁ!」
「陸軍…カーネルと同じ所属になるようだな。」
これまでセイバーで戦った相手は3人とも特殊な戦い方のもの。
パワー、防御、速さといった純粋な戦闘力の高い者はいなかった。ビストレオは恐らく後者。なので…
「いいだろう。カーネルとの戦いのいい練習になるかも知れないな」
セイバーを抜き、本気の構えになる。
「生意気なクチを利きやがる…!
気に入った…超特急であの世に送ってやる!」
-
「ガアオオオ!」
士気を高めるべく雄たけびをあげる。
高く跳びあがり…体重をかけ、ゼロを踏み潰しにかかる。
「空円舞!」
跳びあがり、縦に回転し荒く切り刻む。マッシュラムから得た技だ。
そのまま、其の技の特性で宙を蹴り用い方向転換。
床に脚をつく。
「ガルルル!ツインスラッシャー!」
雄たけびの後、体を捻り二つの爪を勢いよく突き出し、衝撃波を発生させる。
これも避けて…
「テイ!」
横へ払う一段。
「ハッ!」
斜めに斬る二段。
「トウ!」
上から大きく振りかぶり3段。ゼロの得意技、三段斬りだ。
その3発は素早いビストレオでさえ全く感知できないほどの速さで行われる。
そして素早く飛び越え、次の体勢に入る。
「グァアアアアウ!!」
ビストレオはゼロを噛み千切るべく掴みに襲い掛かる。
「龍炎刃!」
両手で剣を力いっぱいに握る。
そして炎を纏い、高く高く跳びあがり、敵を斬り上げる。
ドラグーンのDNAから得た技だ。
「氷烈斬!」
そのまま今度は氷にセイバーを包み…
体重を乗せて急落下。ビストレオの背を貫く。キバトドスから得た技だ。
「てめぇええ…!」
また吼える。その隙を逃さず空円舞で刻む。
「ウォラアアアアアア!」
「飛燕脚!」
ゼロを貫くべく、腕の爪をビームクローに変え残像が出るほどの速度で猛突進。
ゼロもまた、空の上を滑走する技でそれを回避。スティングレンから得た技だ。
「ウォオオオオオオ!」
その技は往復。すぐさま向きを変えもう一度突進する。
「雷神撃!」
またも回避し、後ろから体勢を低くしセイバーを一気に雷と共に突き出す。スパイダスから得た技だ。
「次から次へと…!!」
ビストレオは列車に追いつけるほどに恐ろしく素早く、
コンテナを一撃で破壊できるほどに強力なパワーを持ち合わせ、
ゼロのあらゆる攻撃にも耐えうるほどに強靭な肉体を持っていた。
だが…その全てを上回っているゼロからすれば、全ては隙の塊。
特殊能力の持ち主でないことが却って裏目に出たのだった。
全ての技を回避、あらゆる技で反撃された。
怒りが頂点に達した瀕死のビストレオはまたも飛びかかる。
そしてゼロも最大の攻撃で迎え撃つ。
「落鳳破!!」
これはクジャッカーのDNAから得たもの…
アースクラッシュを更に強化したものだ。
拳を地面に突き出し、その余りあるエネルギー全てを一気に注ぎ込み…
一瞬にして爆発させる。
巨大なエネルギーの弾が鳥の羽のように辺り一面に散らばる。
反応すら出来ず、ビストレオの体は散り散りになって景色の中へと流れていった。
「…ふむ。カーネル戦でこの動きのどこまでを活かせるか」
ビストレオから新たなる技を習得し、ゼロは去っていった。
-
「巨大空母か……」
大事になってきた。ゼロは次のターゲットの顔写真を見ながら
転送装置へと向かっていく。
「ゼロ。少しビストレオのDNAデータを借りたいんだが」
「……ああ。いいだろう。次の相手にはあの技は役に立ちそうもない」
町明かりが豆粒のように見える。
高い高い空の上に浮かぶ沢山の飛行船の上にゼロは立っていた。
「空母そのものまではこれを乗り継いでいくしかないか…」
飛行船の背に立ち、空母へ近づくべく走り出した。
ふと、ライドアーマーを見つける。
「…レプリフォースはいいものを持ってる」
ホークの能力を強化したライドアーマー・イーグル。
腕からはショットを発射することは勿論、チャージショット、
ホバー、エアダッシュが出来るという優れものだ。エックスが見たら喜ぶことだろう。
「な…!?」
飛行船の船底から、地上へと直径数メートルはあろうかという巨大ビームが注がれている。
あまりに危険。早く空母の指揮官を探し出し倒さねば。
空母の中へ入り、ビーム砲メカニロイドを呼び出す目の形をしたセキュリティシステムを破壊し、空母の甲板へ。
…竜巻を巻き起こしそれは姿を現した。レプリフォース空軍、レプリエアフォースの責任者ストーム・フクロウルだ。
「…ストームとはあるが…イーグリードとは関係なさそうだな」
脚を持ち上げ、腕をあげ、敬礼。その敬礼一つでダァン!という大きな音を響かせ、空母全体を激震させる。
「よくも我々の軍隊を破壊してくれたな。我々を敵に回した報いを受けよォォ!」
小さな体だが戦闘能力は極めて高い。
空を悠々と飛び回るフクロウルを警戒しつつ、素早く近づき空円舞を当てる。
「ハァ!ハァ!ハァ!」
羽をはためかせ、腕からレーザー銃を発射する。見た目ほど速い動きでも、数を連射しているわけでもない。
発光する弾であるため、視覚を惑わしているに過ぎない。
弾のみを見極め、切り刻み…フクロウルへと三段斬り。
再びフクロウルはあたりを飛び回る。
声を出さず、無造作にゼロへと風を放っていく。ただの風ではない。発光体を中心にして風の刃が高速回転している…
ダブル・サイクロンと呼ばれるフクロウルの得意技のようだ。
「フォーッフォッフォッフォ!」
気配を殺して近づき、笑い声と共に急降下。ゼロを掴むつもりだ…。きっと掴まれればその圧倒的なパワーで
床へと叩きつけられることだろう。
すぐに回避、フクロウルのわき腹を龍炎刃で斬る。
「そこだ!!」
フクロウルがダブルサイクロンを連射し始める。気が狂ったわけではない。その証拠に、直線的に動くはずのそれは
一箇所に留まっている…配置しているのだ。
4つのダブルサイクロンが配置される。ゼロを囲うように。
…することは一つ。
何も言わずに翼を動かす。これを合図とし、サイクロンはゼロを刻むべく勢いよく飛ぶ。
「くっ…」
合間を縫って回避、またもフクロウルへ一撃。
「行けぇええ!」
フクロウルが風を巻き起こすと巨大な竜巻が3つ発生、ゼロを巻き上げ360度刻み付けるつもりだ。
勿論そんなものは効かない。発生の前に飛び越し、フクロウルの間近で技を放つ。
「落鳳破!!」
地面を叩き、エネルギーを巻き上げるこの技でフクロウルを焼く。
「フォーー!フォッフォーーー!!」
笑い声のようにも取れる絶叫をあげフクロウルが焼かれる。
「奥の手だ!!」
フクロウルは羽を動かし、自らを中心に巨大サイクロンを巻き起こす。
それは激しく動き、フクロウルの周り全てを塵に変えるだけでなく、フクロウル自体にも近づけない。
攻防一体のフクロウル最強の技だが、ゼロには関係ない。
ゼロなら風の動きにもついていける。風に乗って全てを回避…
「いい勝負だった」
空円舞でフクロウルの羽を捥ぎ、一刀両断したのだった。
-
あいつのことか ああ、知っている
話せば長い そう、古い話だ
知ってるか?焼き肉は3つに分けられる
まだ赤見が残ってる焼けてない奴、ちょうどよく焼けた奴、
黒こげになっていて炭と化してる奴、この3つだ
あいつは―
彼は『生肉の妖精』と呼ばれたゲテモノ食い
『彼』の相棒だった男
よう相棒、いい匂いだ ここから見ればどの肉も大して変わらん
私は『彼』を追っている
あれは雪の降る寒い日だった
『三千里』で大規模な肉の取り合い!
宴会か?どこの会社だ!
―YAKINIKU ZERO―
パパへ、焼き肉店を目前にしての逃走は許可できない
だろうな、お小遣い減りまくりだ
こちら母、可能な限り食べる
タレを混ぜるなら俺の見えないところで頼む
焼き肉の取り合いには謎が多い
誰もが満腹となり、誰もが空腹となる
そして誰がカルビを取ったか、誰が通か
一体、『焼き肉』とは何か
焼き肉屋接近、店内に入って席と肉を確保しろ
金網でお出迎えだ
―THE ROUND TABEL 『円卓』―
―父親たちに与えられた家族との交流の機会―
肉争奪戦だ
上質の肉だ!油断すんな
ハチノスがなんだ!俺が食ってやる!
焼き肉にルールはない、ただ肉を食すだけ
この戦いはどちらか食い終わるまで終わらない
―人は彼らを『焼き肉の騎士』と呼んだ―
受け入れろ、小僧 これが焼き肉だ
―変化する肉―
―変われない消費量―
アメリカの肉が!
食えよ!お父さん!
YAKINIKU ZERO THE FAMILY WAR
―交戦規定はただ一つ、食べまくれ―
食べまくるぞガルム1!
-
エックスは準備に追われ、まだ帰らない…。
レプリフォースが宇宙港に集まり始めている。この情報を手に入れたゼロは、計画を変更…
自らがレプリフォース長官ジェネラルを倒しに行くことに決めたのだった。
「待ちわびたぞ、ゼロ」
「カーネル…そこをどけ」
以前から戦いに備え準備はしていたが……あくまで最悪の場合という話だ。
やはり…カーネルとは戦いたくはない。
「…お前が死ねば、アイリスが悲しむ。」
しかしカーネルは聞く耳も持たず。
「甘い…甘いぞゼロ。そんな台詞は私を倒してからにするんだな!」
彼の頭には、戦う以外の選択肢は最早用意されていなかったのだ。
「一度本気で戦ってみたかった。手加減無用だ……… 本気で来い!!」
カーネルが背景に溶け込み、消す。
ゼロの戦闘体勢に入る。抜いたセイバーの刃は紫色…ゼットセイバーの第二形態…天空覇だ。
どこから来る…?
「うぉりゃああああああ!」
ゼロの背後に現れ、思い切り斬りつける。
「ぐっ…!」
紙一重で避ける。
「でええええええええい!」
怒号と共に距離を置き…
「はっ!!はっ!フン!」
真空波を上下に撃ち分けてくる。上へ、下へ、上へ。ゼロにこれをかわすことは容易だ。
「疾風牙!!」
「ムッ…」
ビストレオから手に入れた技だ。ダッシュで近寄り、カーネルの足元を掬うように斬る。
そしてまた姿を消す。
「でりゃあああああ!」
今度はカーネルの斬撃をかわしつつ…
「空円舞!」
カーネルの胸から肩にかけてを斬る。
「まだまだ…!」
姿を消したと思うと天に向かいサーベルを掲げ、180度回転、床に対し垂直に下へと向け…
「これならどうだぁぁぁぁぁぁぁ!」
床へと突きたてる。一定間隔で雷がサーベルから放たれ…地から放射、天へと還っていく。
間を縫ってこれを避け…
「龍炎刃!」
力いっぱいに斬り上げる。
「やるな…」
またも姿を消すカーネル。この技はゼロにとって回避がギリギリのものであると解っているようだ。
だが。
「なっ!?」
「…」
ゼロは背から斬りつけようとしたカーネルのセイバーを振り向かずに受け止めた。
「3度も通じると思ったか!」
そのままカーネルを斬りつけ、反動で間合いを取ろうと…
「お、おのれ…!」
「雷神撃!」
下がろうとしたカーネルを追撃。ここでカーネルの奥の手が発動した。
カーネルの戦い方には特徴がある。地上でしか戦わないのだ。
だが…それが破られた。
カーネルは高く跳びあがり………
地上へとまっすぐに落下。サーベルを振り下ろし、大震撃を見舞った。
「グランドスラァム!!!」
サーベルから離れるにつれ威力を増し、大波となるこの衝撃波。
「飛燕脚」
ゼロは冷静にこれを避け…
「龍炎刃!」
力いっぱいに斬り上げ、上空へと飛んでいく。
「少しばかり距離が足りなかったようだなゼロ!」
当たってはいなかった。だが…それは狙い済ましてのこと。
この技へ繋げるためなのだから。
「氷烈斬!」
セイバーに氷を纏わせ、一気に落下する…カーネルの右肩、腹、右脚へと一気に貫く。
「ぬぐうううううううう…………!!!!!」
…カーネルが膝を突いた。
「…流石だなゼロ。 だが…もう遅い。我々レプリフォースは新たなる国を作り上げる…!宇宙でな!!」
「…待て、カーネル!まだ死ぬのは早い!」
「アイリスに伝えておけ… 兄は満足して死んでいったとな!!」
セイバーを地面に突き立てたまま、高熱に包まれてゆく。
レプリフォース最強の戦士はこうして敗れていった。
「………くっ!」
こうしては居られない…。アイリスの所に戻らねば。
-
一方ハンターベース。
エックスはゼロからの情報を聞きつけ、ゼロと交代し宇宙へ向かうこととなった。
「ダブル、貴方は今回の戦いには関係なくなったけれど…
次の戦いでは実戦をすることになるかもしれないのよ、さあ、ボケっとしていないで働く!」
「すいませんデシー…」
「まずは持ってきてもらいたいものがあるの、技術班、医療班の所からそれぞれ取ってきてもらいたいものがあるの」
「解りましたデシ!」
ダブルは一生懸命だ。ダメながらも走り…そしてまたコケる。
「まーたお前か!まったくダブルはドジだなぁ」
何時の間にか彼は…ダメながらもみんなを和ませる、不可欠な存在となっていた。
だが…そんな日々は一瞬にして終わりを告げる。
「私だ。エックスに来られては困る…やれ!」
「…了解。」
「13人のハンターの現存する残り4人は着々と腕をあげております。
新型レプリロイドの研究は…5体のうち、4体は順調に進んでおりますが…
1体は失敗作ですなぁ。処分しておきました。後、そのうちの1体にはまだまだ…時間がかかりそうですじゃ」
サーゲスの言葉だ。
ヘチマール、マイマイン、モスミーノスの成功作3体と違い
まだまだ時間がかかるとされていた特殊レプリロイドの残り1体。
「ああ、解っているよシーフォース。
リキッドメタルの研究は私もまだまだ進歩の余地があると見ている。お前はいい試作品だった…
お前の能力を活かし、更なるレプリロイドを私は作り上げよう」
一年半前の…ドップラーの言葉だ。
…ドップラーはこの後、ヴァジュリーラとマンダレーラの融合機能の追加のみをし、
新たなるレプリロイドを作り上げることはなかった。
だが…彼が正気に戻る前。
彼は…シグマにシーフォースの作製技術を渡していたのだ。
「おい、ダブル、どうしたぁ?」
残りの1体を作り上げるにあたりサーゲスを阻んだ壁。
それが…ドップラーから得られた技術により取り払われ…シグマの手によって完成を見たのである。
「ぬぉおおおお……」
彼が目指したのは変身能力を持つレプリロイド。
ハンターベースに難なく忍び込むことが出来、且つエックスを騙し、その懐へ付け入ることが出来る…
今までの3体とは比較にならないほど残忍な内面を備えたレプリロイド。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
人懐っこい「おデブちゃん」の姿と…痩せた長身の、血を求めて止まない真の姿。
二つのボディを持つそのレプリロイドは……
「ぎやあああああああ!」
「うぁああああああああああああ!!」
「エックス隊長ーーーーーーーーーーーーーー!」
「ぬああああああああああああああああああ!!!!」
『ダブル』と呼ばれた。
「どうした、何かあったのか?」
エックスの通信の声だ。
「何でもないデシ、すみませんデシー…」
「ったく。任務のときは必要以外の通信入れるな。切るぞ?」
鮮血に染まるハンターベースの中、間の抜けた声が響く。
そしてそんなことを知らぬ者の声もまた。
「ダブルー?あなたまた他のハンター達に迷惑かけてー。
全くいつになったら…」
「すいませんデシーーーー!」
「!!!」
「ゼロ!おい、ゼロ!俺だ!」
「…なんだ?技術班の…名前を忘れた。」
「ああ、そこは何でもいい!ダブルが…ダブルが!」
「…ダブルとアイリスが消えた!?…………まさか……人質か!」
-
「………俺は今からこれに突入するのか…」
エックスの目に映るは宇宙に浮かぶ黒き花。
それは…レプリフォースがコロニーを改造して作り上げた…巨大なビーム砲だった。
ファイナルウェポン…最終兵器。
その中にレプリフォース長官、ジェネラルは居るのだ。
宇宙航行用一人乗りシップは一気にスピードを上げ…その中核近くへと突入していった。
「とはいってもジェネラルの居る位置までは大分あるな…流石の警備だ」
敵がひしめく中進んでいくと…
すぐそこに居たのはダメな部下…ダブルだった。
「! ダブル、お前どうしてここにいるんだ…」
彼に駆け寄る。
「実は、先輩が心配で追ってきたら突然レプリフォースの兵士に連れ去られたんデシ」
「…なんだってそんな事が…」
「先輩を探したくて色々聞いて周ってたんデシー…」
…馬鹿な部下を持っちゃったものだ。
エックスはため息をつくが、ダブルを見ていると不思議と心が落ち着く。
まぁ…いいか。
「? ダブル。何かついているぞ」
彼の足元に何か赤いものがこびりついているのを発見する。
…オイルのような。
…それでもエックスは見落としていたかもしれない。
ダブルは戦場に飛び込んできたならばそんなことがあってもおかしくはないと。
ダブルは震えていた。
「まぁ…解るよ。お前死ぬほど怖いんだろう」
死ぬほど笑いが止まらないのだ。
そして震えに身を任せ、ダブルは急速変化を内部から始める。
あと3秒もあればエックスを斬ることができる。
…だがその瞬間。
「エックス、避けてっ!!」
「!?」
オペレーターの声だ。
思わずエックスはその場から跳び退く。
「チィ!」
その瞬間、ダブルは変身を解き、ビームクローで飛び退く前エックスの胸のあった位置に向かい一突きにしていた。
「女ああああああ!
余計なことをしてくれやがったなァ!!」
…これは…誰だ? エックスは呆然と目の前のレプリロイドを見つめる。
「…レプリフォースがダブルに化けていたのか!?」
エックスのためだ。この際鬼になるしかない。
「聞いてエックス! その敵を…『それ』を倒して!」
ダブルとアイリスが姿を消す少し前。
「すいませんデシーーー♪」
「!!!」
オペレーターに向かいビームクローで胸元を刻もうとするダブル。
だが…
「何するのよっ!」
オペレーターは即座に反応、ひらりと身をかわし…ダッシュで回避。
そしてダブルの背後に回りケイン博士から貰ったある武器で反撃。
…応戦していたのだった。
今、ダブルと戦っているのはエックス。
オペレーターは事実を言わない。ダブルだと告げることでエックスの戦いが楽になろうか。
「コイツは多分ドラグーンを唆した者やクジャッカーを暴走させた者、マッシュラムを復活させた者と
同じ『誰か』の部下!」
「……待ってくれオペレーター。何を言っているのか解らない」
「解らなくてもいい、貴方にはここで死んでもらったら困るの!」
オペレーターはエックスに一言を刻む。
「目の前の敵を倒してっ!」
「………。」
バスターを向けた。
-
「まぁいい、俺ぁ俺で戦いを楽しむだけさァ!」
エックスに向かい突進する。
「ダブル…お前なのか!?」
小さなチャージショットを1発放つ。
「だからそうだと言ってんじゃねえかエックスよぉ!」
勢いよく天井へと張り付き、床へまっさかさまに落下、
そのままバネのように跳躍、エックスに向かい爪で突き刺し突進する。
「げふっ…どうして…どうして!?」
チャージショットを2発、3発と食らわせる。
「エックス…」
悔しさより悲しさの方が大きい。
「ザマぁねえな!ヒャーーーーーーーッハッハッハァ!」
跳躍と同時に衝撃波を発する。アジールの如き動きだ。
上へ下へ。彼とは比較にならないペースで衝撃波を放つ。
「うあああああああ!!」
「いい顔すんじゃねえか!!
待ってたぜぇ、貴様を切り裂くこのときをなぁ!!」
再びエックスに爪を向ける。
「…………オペレーター。」
「…何」
「もしかして…コイツ、ダブルなのか」
「…ええ、ダブルに化けた…敵よ」
「本当のことを頼むよ。」
「…」
凄まじいパワーで壁へと激突、激震を巻き起こす。
「…そうなんだね」
「………ええ。」
「そうか。なら…解ったよ」
「地獄へ行ってくださいよ先輩ーーー♪
…なっ!?」
1発、2発、3発、4発。
目にも止まらぬ速度でチャージショットを放つ。
これがエックスが手に入れた新たなるアームパーツの能力、
「ストックチャージ」だった。
最大4発までチャージショットをストックしておき、好きなタイミングで放つ事が出来る。
新たなる強化のパターンと言えるものだった。
「俺は確かに悩んでばかりだ。けど…それは戦いの後にする!」
フットパーツの効力で宙に浮きバスターを構える。
エックスは…また悩んでしまう。オペレーターの胸中は複雑だった
けれど…戦ってくれるというならばそれを応援するのみ。
「行きましょ、エックス!」
「ダブル、お前を倒す。お前の弱点は…風だ!」
「何っ!?」
ダブルが動揺する。
「白々しいわよダブル」
「え?」
「私も試したもの。解っているわ
エックス、コイツは貴方を倒すために作られたレプリロイドよ。
つまり、貴方が弱点を突いて攻撃してくることも計算に入れている!
ダブルサイクロンは確かに強力よ、ダブルの流体金属の体を切り刻める。
けれど…彼は斬られたボディをビットとして射出、攻撃のために使えるのよ!」
「つまり…」
「弱点で突くのは相手の思う壺… 残念だったわね、ダブル!」
「どこまでも邪魔しやがって…!」
-
「でも…弱点なしで勝てそう?」
「俺をそう甘く見られても困るよ。…あと一撃で終わらせる」
「…どうやって」
「君はまだ知らないんだったな」
ダブルがまたも突進攻撃に入る。天井に張り付き、天井を蹴り、床を蹴り…。
そしてエックスもまた、そんなダブルに向かい、何故か地面を蹴り、宙に浮き近づく。
オペレーターも理解できない行動だった。
…ロボット史には、こんな逸話がある。
かつて世界を何度も救った青きロボットがいた。
彼の代名詞と言える必殺技は有名なものだ。
だが…それも最初から覚えていたわけではない。彼はその4度目の戦いから使い始めたといわれる。
そして、その技の片鱗は2度目の戦いにおいて、炎を操る強敵から得たものが原型とされる。
偶然似ただけ、とも…言われているが。
それが…現在のチャージショットの始まりといわれているのだ。
…そして、歴史は繰り返される。
2度目の戦いにおいてゼロに勝った技、チャージ・ラッシングバーナー。
フレイムスタッガーから得たその技によく似たその技が…
4度目のこの戦いにおいて初めて放たれる。
22世紀の青き英雄、エックスの…後世に語り継がれる最強最大の技が、今ここに姿を現す。
エックスは光に包まれ…いや、彼自身が光の矢となり…ダブルの流体金属の体を一直線に突き抜ける。
まるで、間になにもなかったかのように鮮やかに。目にも止まらぬスピードで。
それが…『ノヴァ・ストライク』だった。
ダブルは顔だけを残し跡片もなく蒸発していった。
「……ダブル。どうして…信じていたのに」
「ヒャ…ハ…ハ…
俺は…元からお前を殺すためにあの方からお前の元に…送り込まれてきたのさ…。
地獄で待ってる…ぜぇ、エックス…!」
「………信じていたのに!」
…しかし、ダブルを倒してもそこにはアイリスの姿が見当たらない。
一体どこへ?
…一方、別の入り口からゼロは侵入を試みていた。全ては、アイリスを救うため。
-
「アイリス!どこだ、アイリス! …クソッ、何処にいるんだ…」
最終兵器は左右対称な作りとなっている。
エックスがダブルを倒したのと全く同じ構造の通路がゼロの向かった側にもあったのだ。
「…だが。…会ったところで俺はどうすればいい。
アイリスに…何て声をかければいい」
彼はひたすら走り続ける。懸命に…。
そして…彼の目の前にアイリスが現れる。何かを持ったアイリスを。
「! アイリス! 大丈夫かアイリス!」
「…ゼロ」
彼女の目は悲しみを湛えていた。そして…彼は何かを持っていた。紫色の球だ。
「…ロ! ゼ…! ゼロ!」
ノイズ混じりの通信が聞こえてくる。調整し、はっきりと聞き取れるようにする。
「こちらゼロ。…アイリスを発見した。あとはエックスに任せてもいいな?」
「………」
オペレーターは口を開く。
「……ゼロ 貴方に少し…話しておきたいことがあるの。
同じことがエックスにあったら私はとても話せない。けど…」
「何でもいい、話せ」
そしてアイリスも重い口を開いた。
「ゼロ…兄さんを倒しちゃったのね」
「アイリス…すまなかった。でも…仕方のないことだったんだ」
「もう、後には戻れないのね…?」
「アイリス、…一体どうしたんだ!!」
ゼロの語調が強まる。
「…私は、力づくでもあなたを止めたい。さようなら、ゼロ!!」
紫色の球が宙に浮く。
「……あれは…」
何かもう一つの気配をあの球から感じる。まさか…あの球は。
その瞬間、球から雷が発せられ、アイリスの頭に落ちる。
手を真っ直ぐに伸ばし、体を十字にしたアイリスは目を瞑り、その雷を受ける…
「……どういうことだ」
アイリスを大きな翼を持った紫色の鎧が包み込む。
そして…正八方体の形を取った紫色の球体はそのまま、アイリスの体内へ吸い込まれていく。
「ごめんなさい、ゼロ!」
「……ゼロ、調べた結果よ。少し、聞いてくれるかしら。
…どうしてカーネルが、最強であるはずの貴方と互角に戦えた程強かったと思う?」
「…」
レプリフォースという新たなる世界最強の軍隊を作り上げるにあたり。
科学者達は、ある一つのプロジェクトを立ち上げた。
『究極のレプリロイド計画』
エックス、ゼロと並ぶ、或いはそれを超えるようなレプリロイドを作る計画だ。
その究極のレプリロイドとは、他者を慈しむ慈愛の心と、悪を許さぬ勇気とを兼ね備えた…体のみでなく、完全な心をも持つレプリロイドのこと。
計画は、着々と進んでいた…だが…計画は破綻した。
一つのレプリロイドの中には、その相容れない二つの心は一つの体には収まらなかったのだ。
他者を愛する心と、他者を憎む心とでは…。
そして彼らは、それに対する手段として一つの方法を打ち出した。
二つの心を…二つのレプリロイドに分けてしまうことを。
結果、悪を許さぬ強き心を持った勇ましきレプリロイドと、
何者をも愛する心を持った、慈愛に満ちたレプリロイドとが生まれたのである。
そう。それが…
「…馬鹿な…!」
アイリスからの攻撃は無数のビット攻撃。敵を追い詰める無数の目玉がゼロにまとわりつき、誘爆を起こすのだ。
ゼロはその全てを斬り続ける。
「…カーネルが死んだ今、そのカーネルのコアを手に入れたことで…アイリス自身が壊れ始めている。
そしてまた、戦いを続ける…愛するゼロを止めたいと思う心と兄を殺したゼロとを許せない気持ちが一つになり…」
「俺を倒すという行動で結びついた…」
その瞬間、ゼロの肩でビットが爆発を起こした。
そう。究極のレプリロイド『アイリス』は、ここに完成を迎えたのだ。
-
「………待て。それでは…それではまるで」
片割れが死んだことでもう片方が暴走を起こした…それではまるで。
「嘘だ…嘘だ!!嘘だ!!!!」
「ゼロ!?」
ビットから逃げ続ける。ゼロの脚力を持ってその全てを回避する。
「ビートブードと戦ったのだろう…
解っているはずだ!奴らは復讐を遂げようとしている以上に…
憎しみに囚われた自分をも憎んでいるんだ」
「奴を殺すしかないんだ!…仕方ないことだ!」
「殺せ!…それしか憎しみを終わらせる手段などありはしない!」
過去の…エックスに投げかけた言葉全てが今…自分に向かい牙を剥く。
…自分がどれほど残酷なことを言っていたのか。
「…ゼロ…まさかあなた…。」
…仲間の死には慣れていた。イーグリードの死、ホーネックの死、スパイダスの死、カーネルの死。
目の形をしたビットは容赦なくゼロへと打ち込まれ、爆発していく。
その目その全てが…自分に向けられていること。それが何を意味しているのか。
「やめろ…やめろアイリス!」
アイリスの腕から巨大なビームが放たれる。
ゼロは真っ直ぐにそれに貫かれる。
「新しいビームサーベルなの?それ…」
「ああ。ゼットセイバーだ。
ビームサーベルと比べ軽量で扱いやすい。威力は格段に落ちるが…これで思うとおり動ける」
「で、でも凄く危険そう…」
「オペレーターのお前が心配しなくてもいい。」
…今、自分が手に持っているものは…なんだ。
「う…うぉおおおおおおお!!」
ゼロはアイリスに斬りかかる。
要はカーネルが生成した鎧さえ破壊すればアイリスは無事なはずだ。
そうすれば…そうすればアイリスは助かる。
そう信じ、アイリスへと剣を振るう。
…だが力が入らない。…究極レプリロイドが持つ超硬度もあって、全く刃が立たない。
「………。」
オペレーターはゼロに話しかけるのをやめた。
「………俺は何もしてない。…いい仲間を持ってたんだね…ゼロ」
「お前にも居るだろう。俺にも…まだ居る。」
「………」
斬り続ける。
「龍炎刃!氷烈斬!雷神撃!」
技を繰り出し続ける。
…しかし…。
…ここでアイリスの体からカーネルのコアが離れる。
ゼロがそれを睨み付ける。
「食らえええええ!」
三段斬りを放つ。効いているようだ。
「落鳳破!」
コアに向かって放つ。だが…
「ごめんなさい!」
アイリスの声と共にまた巨大なビーム砲が発せられる。
ゼロは壁へと逃げる。だが…今度はカーネルのコアも射撃してくる。
隙のない十字砲火だった。
…何故自分はここまで追い詰められているのか。
何故アイリスだけは斬れないのか。…まだ助かるからであろう。
そう…そうに違いない。
助ける方法は一つ、カーネルのコアを破壊することだ。
ゼロは一心不乱に攻撃を仕掛け続ける。
「疾風牙!空円舞!」
またもレーザー。飛燕脚で回避するがまたも撃たれる。
ゼロは満身創痍。…相手が完全な力を手に入れているからか?違う…。アイリスとて悩んでいるはずなのだ。
…恐らくはゼロを引き下がらせるため彼女は戦っている。
だが…このままではアイリス自身が崩壊を起こすのだ。
それがアイリスを救う唯一の方法と信じ、攻撃を加え続ける。そして…
「ぬ…ううう…うぉおおおおおおおおおお!!」
両手にセイバーを持つ。
脚の下にまでセイバーを振り下ろす。
力強く握り…跳びあがり…
腕を力いっぱいに振り上げる。
最後の一撃、龍炎刃により…カーネルのコアは破壊された。
カーネルのコアが眩い光に包まれ爆発。アイリスのアーマーが砕け…
中からアイリスの細く小さな体が投げ出された。
-
ゼロは…一心不乱に走り出していた。
「アイリス!! …アイリス!」
横たわるアイリスの元まで。
「ゼロ……」
弱弱しいアイリスの声。
「しっかりしろ…、アイリスっ!」
声が震えていた。
「…お願い。もう…レプリフォースに手を出さないで
一緒に… レプリロイドだけの世界で…暮らしましょう?」
それはレプリフォースの理想だ。カーネルのコア越しに伝わっていたのだろうか。
…彼女の言葉は、もはや壊れていた。その気持ちは…ともかく。
不器用なゼロには、黙って真実を告げる他ない。
「…アイリス。レプリロイドだけの世界なんて、まやかしだ!」
アイリスの表情が暗くなる。
「…そうだね
でも……信じたかった。
レプリロイドだけの世界で…あなたと…」
弱弱しく手を伸ばす。
ゼロはその手をがっしりと掴み、目を見て語りかける。
「アイリス…!」
…そして…
「…えへ…」
アイリスは微笑み…息絶えた。
…ゼロは理解していなかったのだ。
カーネルとアイリスは、元々一つのレプリロイド。
同期し、合体したその時点で…コアは共有されていたということに。
「……アイリス?
アイリス…アイリス! …アイリス!!
アイリス…!」
肩を掴む。持ち上げる。揺さぶる。
名前を叫び続ける。上ずった声が枯れるほどに。
…そんなことをしてももう…命は戻らない。
「アイリス……」
「クソぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
アイリスの体を抱き上げ…吼える。
「俺は…!俺はっ…!?
一体何のために…戦っているんだ……………!」
…その答えが出る日は来るのか。それは誰もわからない。
通信越しに聞こえてくる声。
「……ゼロ…一体…どうしたんだろう」
「…………エックスには…解らないわよね。」
オペレーターはただ、エックスに悲しい微笑を送ることしか出来なかった。
-
知ってるか?餅を食べる奴は3つに分けられる
ただ焼いた餅に醤油をつけのりをくるむ奴、
煮物にとりあえずぶっこむ奴、焼かないでそのまま食おうとする無謀な奴、
この3つだ
俺は―
-
エースコンバットって
1:ほとんどが最初の任務は爆撃機の撃墜任務
2:主人公たち途中からあだ名をつけられる(メビウス、鬼神、ラーズグリーズ、リボン付き)
3:それを倒そうとする敵エース部隊登場
4:ってかトンデモ兵器まで登場
5:レーザー兵器も意外と常連
6:そして最後の任務はトンネルに突っ込む無謀な任務 仲間もできないと嘆く
7:というより主人公神格化されすぎ…
8:ジャマーは思ってるより出ない…が、敵地への侵入は結構出る
-
エース4:メビウス 敵味方からリボン付きと言われる
エース5:ブレイズ 味方からはブービーと、敵からはラーズグリーズと言われる
エース0:サイファー 味方からはガルム1、ウスティオの傭兵と、敵からは鬼神と呼ばれる
エースX:グリフィス1 味方からはグリフィス1、敵からはネメシスと言われる
共通点:無口
-
「革命に犠牲はつき物だと…?
アイリスも…アイリスもそうだというのか!!」
「君とは、戦う運命にあったようだ…」
それから暫くして…最終兵器・玉座の間。
レプリフォース長官ジェネラルに怒りをぶつけるゼロ。
行き場のない力の前に、その巨体がたちまちねじ伏せられる。
だが突然、兵器全体が大きく揺れ始める。
「な、何だ…?」
「…馬鹿な、この兵器が動き出すはずなど…誰かが、動かしているというのか!?」
「…お前はここで待っていろ。俺が原因を突き止める」
そして動力部へ向かうゼロ。
動力室行きのカプセルは現在機能を停止していて…周りの8つのカプセルを停止させないと
起動しない仕組みとなっていた。
「この攻撃…かわせるかぁー!」
スパイダス。
「醜いモノは滅びておしまいっ!」
クジャッカー。
「目標捕捉!五分以内に撃破する!」
フクロウル。
「命がけで戦ってこそ意味がある!」
ドラグーン。
「さらばだ!海の藻屑に消えるがいい!」
スティングレン。
「早く遊ぼうよぉー」
マッシュラム。
「嬉しいぜぇ、久しぶりの戦いだぁ!」
ビストレオ。
「氷のベッドでお寝んねしな!」
キバトドス。
全てを倒したゼロは先へと進んでいく。
「…………大方予想はついているがな」
身を包む黒衣の奥から目を輝かせる、鎌を持った…地獄からの死神がそこにいた。
「シグマ…やはりお前か!」
セイバーを抜く。
「くくく…まさかカーネルやアイリスまで容赦なく殺せるとは思わなかったぞゼロ…」
全てを知るシグマはゼロの傷をいとも簡単に傷を抉ることができた。
「黙れ…黙れ!!お前がそうさせたのだろう!」
そしてシグマはその言葉を待っていた。
目しか見えずとも解る、彼の目が笑うのが。
「本当にそうか…?」
ゼロはその口調が気に入らなかった。
「何が言いたい…!」
「お前は戦いを望んでいるのだよ、ゼロ。
私の目の前であれほど楽しそうに戦っていたではないか…」
「クソッ、ダメだ!カプセルがまるで起動しない!ゼロはこの先に居るんだろう!?」
「……ええ。今となってはもう、通信も繋がらないわ。
…多分シグマよ、今回の黒幕も」
「…君もそう思うかい?」
「……ゼロとシグマの対決、か」
「?」
「……ねえ、エックス。ゼロを待ってみない?貴方はここで休んでいて。ゼロは勝てると思うし」
「…ああ。」
オペレーターは、ケイン博士からの話を思い出していた。
「そう、あれはお前と初めて会ったときだ。
私がまだイレギュラーハンター17部隊隊長であった頃…」
-
「エックス。貴方とゼロが発見されたのは……『禁断の地』って…呼ばれているの」
岩がごろごろと転がる砂漠の工場。
その日……シグマ隊長は意気揚々とその場所へ向かっていた。
「し、シグマ隊長!」
「ガルマの部隊を全滅させたという、紅いイレギュラーがいるのはここか?」
頻発するイレギュラーの暴走事件。
その中でも身元不明の謎のイレギュラーの暴走だった。
イレギュラーハンターの一部隊を無傷で壊滅させるその、圧倒的戦闘力。
最強のハンターたるシグマがとうとう彼に目をつけた。理由は一つ。
「これ以上、お前達に死なれては困るのでな。」
その背中は、実に勇ましかった。
威圧感のあるその巨体と顔つきだが…目は優しかった。
扉を開き、放たれた日光が工場を照らす。…彼を照らす。
「…………」
獲物を、血を求めて止まないその目。
無限に戦いを続けられるかのようなその底なしの体力に、勿論エネルギー補給など必要ない。
捕食でもなんでもない。ただひたすら…戦いを求め続けるその…目。
「あの時のお前の目は実に素晴らしかったぞ…」
背を向けた紅きボディのイレギュラーがそこにいた。
「む…?」
シグマの姿を感知する。
金の髪を後ろへと流し、飛び込んでくる。
「フフ…」
いい闘志だ。シグマはイレギュラーの打撃をひらりとかわす。
「ウァアアアアアア!」
猛烈な勢いでラッシュをかけるイレギュラー。
シグマは心地よいその速さを頭一つの動きで避けていく。
「フンっ!」
隙を見て一撃を叩き込むとイレギュラーはいとも簡単に吹き飛んだ。
「グア!ガァァァァ!」
だがすぐさま起き上がりシグマに向かいパンチのラッシュを繰り出す。
「甘い!!」
シグマはイレギュラーを掴み、天井へと投げ飛ばす。
「ウォオオオオオアアアアア!」
…いい勢いではあったが、やはり最強のイレギュラーハンターに敵うはずもない。
そのイレギュラーは頭を天井にめり込ませ、動きを止めた。
シグマはそのイレギュラーを見上げる。
だが。
「ククククク…!」
天井のパイプに手をかけ、ニヤリと笑いながら天井から頭を出す。
「!?」
飛び降り、シグマに向かいパンチを放つ。
シグマも拳を突き出し…
二つの拳が衝突。火花が散る…。
そして互いに吹き飛ばされる。
どうやら互角な力を持っていたようだ。
今まで出していなかっただけなのか?
イレギュラーは突然楽しそうな表情になり、再びパンチのラッシュを繰り出し始めた。
「こ、コイツ…!?」
速い。先ほどとは別次元の速さにシグマは対応するのが精一杯。
一瞬で形勢が逆転した…『押されている』。
後ろへ跳び、間合いを取り。
「クソぉおお!」
ビームサーベルを抜く。
「フフフフフフ…」
イレギュラーもまた鉄パイプを握る。
…そんなものではビームサーベルに勝てるはずもない。
それを斬ろうとするが…何故か斬れない。
宙を跳びまわり、鉄パイプとビームサーベルでの斬り合いが始まる。
ぶつかり合う二つの武器。
だが…先端を破壊した。これで終わりだ…イレギュラーに向かいシグマは斬りつける。
…一刀両断。
-
しかし、それは…イレギュラーの体ではなかった。
…シグマの腕だ。
「な!?」
シグマがトドメを刺そうとしたその瞬間に、余裕を持ってイレギュラーは
シグマの目にも止まらぬ速さで彼の腕を斬りつけ、サーベルごと吹き飛ばしたのだ。
…互角などではない。イレギュラーはシグマを上回ったのだ。
そして、シグマが見誤ったのではない。戦いの始まりの時点でシグマに対し敵は本気を出していた。
…戦いの短い間で、イレギュラー自体がシグマを上回る『成長』をしたのだ。
…もうシグマは彼の敵ではない。
「フーーフフフフフフフフフ!」
イレギュラーが近づく。
シグマの顔に…恐怖が宿る。
…暫くして。
殴る、蹴る、踏まれる。
ボディが損傷し、皮膚が剥がれ、目に大きな大きな傷がついた。
…随分の間、シグマはイレギュラーのその強大な悪意に弄ばれていた。
「ッククク…!アーッハッハ!ギャーーーーハッハッハッハッハッハ!!!!」
「グアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
シグマのアゴを掴み持ち上げる。首が捥げそうなほどの激痛。
シグマにはもう、為す術がなかった…
しかし、その瞬間。
「ウ?ウァア…ガアアア!アアアアアアア!ハァアアアアアアアアアア!」
金色の髪を振り乱しイレギュラーが突然苦しみだす。シグマは目を疑った。
今にも自分を殺そうとしていた相手が突然のた打ち回り始めたのだから。
…見るとイレギュラーの頭には『W』の一文字。何を意味していたのか?そんなことは全く解らない。
とにかく…シグマにはこれしか解らなかった。「やるしかない」
「う、うおおお!うぉおおおおおおおおお!!」
イレギュラーの頭のクリスタルを砕く。
…イレギュラーの体が宙を舞い飛んでいった。
そして外へと出る。部下達の喜びの声が聞こえる。
「…おお、シグマ隊長だ!」
「やった、戻ってきた!!」
「Drケインに連絡を!あのイレギュラーを調査する!」
「さすがシグマ隊長だ!隊長に敵うレプリロイドなどいるわけが!」
「うるさいぃいいいい!!」
怒鳴りつけ、部下を突き飛ばし…シグマは消えていった。
「…………」
「オペレーター、それで…何があったんだい?シグマとゼロに」
「え? ああ…特になんでもないわ。ごめんなさい…」
「そう、お前こそがイレギュラーだったのだよ!」
「…そうか。そんな話で…俺が驚くでも思ったか」
「あの時の決着をつけようではないか…待っているぞ、ゼロ…」
…言葉ではそうは言った。
だが……ゼロは漸く知った自らの過去を前に、平静を装うのが精一杯だった。
-
「地獄に旅立つ準備は出来たかね?」
最終兵器・動力室。熱で満たされたその空間で、死神は戦いを始めた。
「…………なぁオペレーター。少し俺の話を聞いてくれないか」
「え…? …う、うん」
出口で待つことにしたエックスは、最終兵器を入り口へと向かい歩いていた。
「……君はイレギュラーハンターはイレギュラーを倒すことが当然だと思うかい」
「………。…いえ。殺すか殺さないか。そもそもイレギュラーかどうか判別するため
逮捕の処置を取る場合だって多いわね。…どうしたの」
オペレーターは椅子に深く腰かけ…飲み物を片手に息をついた。
「フハハハハハハ、これで終わりと思うな!?これからだぞ…?
お前と戦うのを待っていたのを待っていたのだからな!」
黒き衣がゼロにより焼き斬られ、シグマの顔が姿を現す。鎌を手に…戦いは次なる局面へと進む。
「黙れ。すぐに終わらせてやる」
「俺は…どんどん仲間を失って行っている。
…でも、ダブルを倒して思ったんだ。俺はもう、仲間を失いたくない」
「…そうよね」
「そして、段々戦いに慣れていく自分にも気付いた。そして…思ったんだ。
…何も感じなくなるのも、それは…イレギュラーじゃないのかって」
エックスは、宇宙を見ながら話を続け、窓の外の星空を見上げながらオペレーターはその話を聞く。
「…うん。それが故障なら定義的にはそうなるわね。でもそれを言ったらイレギュラーハンターは皆…」
「…それもそうか」
「ただ、悩むというのはいいことかも知れない。考えた末、また新しい答えが…出せるならね」
「…………。」
「ケイン博士も言っていたわ。それがエックスの最大の特性だって。」
「シグマもそれを聞いていたかな」
「…そう言っていた。…レプリロイドの可能性にかけていた彼が興味を示さない理由もないわね」
シグマの体は崩壊。床が崩壊し、ゼロは下へと落ちる。エネルギー炉の並ぶ、動力炉深部へと。
ワイヤーによって繋がれた巨大な人型の装置が現れる。その頭に供えられたのは…シグマの顔だ。
「ハーーッハッハッハッハ!死ね、死ねえ!死ぬがいいゼロ!
あの世でアイリスが待っているぞぉ!?」
「その名前を出すな………お前をあの世に送ってやる!二度と蘇るんじゃない!」
「宇宙の、塵になるがいい!」
-
出口だ。青き大地に頭を向けた、小型シップが目に映る。
「少しゼロに話をしてみたいんだよ。…ゼロになら任せられると思うから」
「…何を?」
…もし自分がイレギュラーになったら、ゼロに殺してもらおう。
エックスは…そう言った。
「馬鹿…!縁起でもないことを言わない方がいいわ…あなたに限ってそれはないわ」
オペレーターは確信していた。…あるとすればきっとエックスではなく…。
「とにかく。…無事に帰ってきて。ハンターベースで待っているわ」
椅子を倒し、星空を見上げながら。
「ハハハハハ…少し遅かったなゼロ!この兵器はすでに地上へ向かっている!
さらばだ…!ハーッハッハッハッハ!」
「クソッ、そうすれば…!」
走り出すゼロ。…だがコントロールを変えるには最早発射まで間に合わない。
地球に甚大な被害が出てしまう。…エックスには通信は繋がらない。
…頭を抱えるゼロの前に、汚れに汚れた巨大な将軍が現れた。
「………すまなかったな、ゼロ。」
「お前は…!」
「部下達に罪はない。全てはシグマの罠に嵌った私の責任だ…
…私のボディを使えばこの兵器を止めることが出来る……」
「…早まるな、ジェネラル!」
「さらばだ…」
それから暫くして、最終兵器は爆発。ゼロも間一髪脱出に成功した。
「…………」
カーネルが自らに向けた刃。
結局哀れなシグマの被害者でしかなかったジェネラルとの戦い。
そのジェネラルに憎しみをぶつけ続けた自分。
そしてアイリスからの攻撃、アイリスの言葉、アイリスが最期に自分に伸ばした手。
…幸せだった頃のアイリスの、微笑み。
「…俺は…結局、何も守れなかった………」
そして待ち受けていたのはシグマ。…一番の元凶は笑いながら去っていった。
だが…シグマの話の通りならば…。
…シグマの話の通りならば… シグマは…あの笑い声は…。
自分は何のために戦っているのか。ゼロの終わらぬ問いに悩まされる日が始まることとなる。
二つの流れ星がその日、流れていった。
-
「さぁ 南南西の、風を受けー!?
曖昧なんて、はき捨ててー!
パッション、セッション、グッドコンディション!
セイ イェー! セイホー!」
ストレスを晴らすべく熱唱するはエックス。
技術班のダグラスが合いの手を打ち、ゼロは飲み物を頼み続ける。
エックスは意外に多趣味だ。
カラオケでこうして熱唱してみせたり、フィギュア集めが好きだったり、
ライドアーマーやライドチェイサーを乗り回して見せたり。
以前教えてもらったオペレーターはその歌を聞きながら、次の番を待つ。
「相変わらず凄いわねーエックスは……さ、次は私の番ね?誰か一緒に歌う人が必要なのだけど……」
レプリフォース大戦終結。…これにより、社会は大きな変化を見せた。
レプリフォースをイレギュラーと誤認し、甚大な被害をもたらしたこと。
イレギュラーハンターには大きな責任がある。
…これにより、イレギュラーハンターの総監は辞任。
ハンター全体の大きな体質の変化が要求された。
世界最高の頭脳を持つ若き新総監、シグナスの元で。
そして、エックス達とて例外ではない。
戦いにおいて尽力した彼らは株を上げこそすれ、批判の対象にはならなかった。
だが…エックス達の心中は複雑だった。いっそ、責められた方がまだマシだったというものだ。
その翌日。
-
「…そういうわけで。今日からは私が貴方達の正規オペレーターを担当させて頂くこととなりました。」
オペレーターがエックスの前で挨拶をする。
「…宜しくね、エックス。」
こちらが本当の挨拶というべきか。
「こちらこそ。だが…ゼロも担当するんだろう?」
「後々挨拶をしておくことにするわ…ゼロは何だか最近大変そうだし」
「以前と比べミスが増えたっていう風にも聞くね」
ゼロは…あまり成績が芳しくないらしい。今日もうっかり怪我を負ってしまった。
「そうねぇ…今はライフセーバーの所に行ってるんじゃないかしら?」
「そうそう。これから担当するというなら、もうオペレーターとばかりも呼んでいられないわね」
「…何て呼べばいい?」
少しの静寂の後、オペレーターは口にする。
「そうね…他のハンターベースの仲間と同じでいいわ。名前でお願い」
「そうか。解った」
思いがけずあっさり通ってしまったことに内心驚きつつ。だが…ここで思いがけないことが。
「それじゃあ今日から宜しく頼むよ…えっと……」
「? …もしかして恥ずかしいとか」
違った。
「君の名前、何だっけ?」
「………」
唖然とするオペレーター。
「…………え?話しているはずよ」
「…そうだったかな」
思い返してみる。
ハンターベースに、長く巻いた金髪の少女が入ってくる。
「対シグマ対策のため、本日から臨時オペレーターとして担当させて頂きます。」
「ああ、宜しくお願いするよ。まず、覚えてもらいたいことがいくつかある。
仕事の内容も合わせて、少し俺の方から説明するよそれじゃあ あ。名前は?」
さばさばとした様子で少女は言う。
「ああ、いいですよ別に。すぐの間だけですし」
「そんなに畏まらなくていいよ。それじゃあオペレーター、まず画面の画面の見方からなんだけど」
「………あっ」
目を真ん丸くして驚く。
「多分、聞いてないな」
ばつが悪そうに頭を掻く。
「確か当時からすでに結構偉かったゼロには教えたと思ったんだけど…
まぁあの人は覚えないでしょうしね。 …解ったわ。それじゃあ私の名前を教えるわね」
ホワイトボードに名前を大きく書いていく。
「エー…エル… …アイ… エー。…
『Al鄯a』。」
「……エイリア?」
口からとうとう発せられた自分の名前。オペレーターの口元が少し綻ぶ。
「そうそう。…書いてみて」
「え?」
「まあまあ。いいから早く」
「………そう。…改めてまして。私は、あなた達のオペレーターを担当する…
『エイリア』です。」
握手を交わす。
「…よろしくね、…エックス。」
「ああ、これからも頼むよ、エイリア。」
「ほほーう。エイリアの奴やっぱそーだったんだなぁ。堅物にもそんな所があるモンだねー」
丸い眼鏡をかけた緑色のボディの中年男がその様子を見ていた。
「何を見ている?ダグラス。メカニックのお前が何をそんなに興味を示すものがある。」
「ああ、ゼロか!すまねえすまねえ。お前には今はちょっと辛いもんかもだな。ま、とにかく何でもないよ」
…こうして、多忙なハンターベースは……その日を迎えるのだった。
-
時は数ヶ月前に遡る。
黒き花、最終兵器が散り…シグマは宇宙を漂っていた。
「ジェネラルによる破壊……これもまた私にとっては想定内でしかない。
…しかしゼロの力はやはり凄まじかった。
最終兵器のエネルギーを以ってしても敵わぬ相手だとは」
…体が動かない。次なる体を得るまでには時間がかかりそうだ。
彼は…眠ることにした。
どしゃぶりの雨が窓をを濡らし、何も見えない。
壊れた照明の中、雨音と雷のみが聞こえる静かな部屋。
上半身だけで目覚めた彼に声をかける声が。
「…お久しぶりですなぁ、シグマ様」
彼が以前聞いたことのある…それは老人の声。
「…お前は…… その声は、サーゲスか」
しかし、そのシルエットの丈は以前と比べ随分と伸びている。
「…私はその名を捨てましたわい。
それよりも…私が復活させたあのゼロの力。如何でしたかな」
「なかなかのものだな…奴はやはり強い。」
眉を器用に動かし、彼は笑う。
「フム。…私の見立てによればあやつの力はあんなものではないでしょうな。
いずれ本当の力を引き出せば…そう。
エックスなど軽くひと捻りにご覧にいれることが出来ましょう」
「ほう…奴を目覚めさせる…と。……やはり、貴方だったのか」
カツ、と足音を鳴らし一歩近づく。
「プランはすでに練り、協力者も用意して御座います、ご安心あれ。」
曇天を貫く轟音。
稲光は、壁にもたれ掛かり彼らの話を部屋の隅で聞く長い髪を映し出す。
「…やはり、と言いましたな?貴方もなかなか鋭いようだ。
そう、サーゲスの名も我が偽名の中の一つ…」
そしてバサッ…と白衣を翻し、ドアノブに手をかける。
「この通り…私は今、闇の世界に身を隠す身でしてなぁ。
…そうですな、私は今こう名乗っております」
世界の影で蠢く悪は、新たな悪を引きずり込み…動き始める。
一方ハンターベース。
「エックス、どうだったかしら?」
「…ああ。いいトレーニングになったよ。有難うエイリア」
ゼロはパトロール中…エックスはハンターベースで別仕事。
エイリアが考案したトレーニングプログラムのテストだった。
「…でもね、言わなかったかな。あれ…ビギナーのハンター用のテストなんだよ」
「…ダメだった…?」
「ああ。壁蹴りを強制したり、弱体化させたドラグーン戦シミュレーションは幾らなんでも。」
エックスの口からのはっきりとした評価。
「あれじゃ現メンバーでは俺やゼロ以外は突破できないだろう…。俺達を基準にしすぎてる。」
…エイリアは頭を垂れる。
「でも、それ以外はいいんじゃないかな。
新しくハンターに導入された道具の使い方も盛り込まれているし。
…君自身、実際にやってみるといいと思うよ」
「………。」
突破できたなんていえない。
と、そんな所に通信が割り込む。
「オペレーター、オペレーター!」
「エイリアよ、いい加減覚えて」
「パトロール中にイレギュラー事件が発生した。……シグマだ!やつが現れた!」
「町中で!? …大変、エックス!」
「ああ。急ごう!」
-
「シグマは現在建設中の、沿岸部の女神像に移動した様子。
ゼロは先に行って戦っているらしいわ。」
シグマとの戦いで使用したフォースアーマーを身に纏い、エックスは町へ降り立った。
陥没した道路。シグマに続けて現れたイレギュラーは勿論、
民間の乗用車もイレギュラー化し襲ってくる。
「そうそう。貴方の装備はストックチャージじゃない方のアームパーツだけどそれでよかったかしら?」
「いいよ。シグマ相手にストックチャージの火力では少し心許ないからね」
崩れゆく建設現場を乗り越え、新しくハンターに支給された道具、ハンガーを用い
ロープに掴まり町をショートカット。眼下に海の広がる町の中、
とうとう女神像までたどり着いた。
「ゼロ、大丈夫か!」
「すまないエックス。腕をやられてしまった…
気をつけろ…姿を消しているが奴はすぐそこにいる!」
辺りを見回してもその存在は感知できない。だが…きっとどこかにシグマは存在する。
「…どこだ……」
「神経を研ぎ済ませろ。目やデータでは解らないものがある。…奴が持つ強い悪を逃すな……」
そう言いつつも、ゼロは悩んでいた。
追うもの、追われるもの。結局は破壊するのみの存在。
イレギュラーハンターとイレギュラーは…本当は似たもの同士なのではないかと。
その瞬間、背後の女神像の頬が剥がれ……女神の首が消し飛ぶ。
…そして中から巨大な顔が現れる。
「…シグマ!」
「愚かなイレギュラーハンター達よ!エックスの死を以って…ハンターの真の姿を知らしめてくれるわ!」
巨大な顔のみのシグマとの戦いが始まる。
「エックス、シグマを攻撃するときはうまくタイミングを見計らって!
ボディ表面が物凄く硬いのよ。…内部から破壊するしかない。解るわね」
「口か!」
シグマは目から雷の球を発生させ、エックスを追わせる。
これを避けたところに準備を完了したシグマは口を開け、エネルギー弾を大量に撒き散らしてくる。
「今だ…」
チャージ。そして発射。
「食らええええええ!」
…エックスの腕から発射されるは、雷を纏った青きエネルギー。そのサイズはエックスの身長ほどもある。
その巨大な塊はシグマの内部を貫通していく。そして後に残るは電撃による追加ダメージ。
プラズマチャージショットと呼ばれる、ライト博士がエックスに用意した…エックスのチャージショットの中で最強のものの一つだ。
「ぐぉおお…!」
シグマが消える。
そして再度現れ…今度は口を開けたまま突進を始める。
これは明らかな隙。シグマに再びプラズマチャージを放り込む。
「これで…最後だあああ…!」
大口を開け、口のキャノン砲を最大限にチャージ…発射する。
エックスの身長の2倍はあろうかというサイズの巨大なビームが放たれる。
これをしゃがんでかわし…
「そうだな…終わりだ、シグマ。」
エネルギーが枯渇した瞬間を見計らいまたプラズマチャージショット。
-
その攻撃を当てた瞬間…何も言わぬままにやりと笑ったシグマの顔に亀裂が生じる。
「…まさか」
「しまった、…エックス、逃げろおおおおおおおおお!」
シグマは大破。
中から現れたのは無数のシグマウイルス。
「エックス…大変、大変よ!!」
…そのウイルスは遠くへと光の速さで世界各地に飛び去り…
凄まじい速度で増殖を始めた。
1体のシグマが死に10体に。
10体のシグマが100体に。
100体が1000体に………。
…在り得ないことが巻き起こっていた。
分裂が止まるまでは数分といったところだったが…
その間に無数のシグマウイルスは……あっという間に世界に広がっていったのだ。
…数分。
これまで、4度以上に渡りシグマから守ってきた世界が…数分でシグマに汚染された。
事態が全くつかめない。
「何てこった…」
「…それだけじゃないわ、見て……これ。」
エイリアはある画面を見せる。地球に謎の物体が接近しているとの情報だ。
「同時進行の作戦だったのよ。…あれは、スペースコロニー・『ユーラシア』。
…ユーラシアは…すでにシグマウイルスの巣になっていて…コントロールも効かない。
……地球に向かっているの。」
高速で地球へ向かう巨大なスペースコロニーが地上へ落下したときの衝撃は計り知れない。
地球そのものに大きな損傷を与えると思われる。
…恐らく、世界中の陸地が裂ける程の大惨事。
そしてそれを生き延びたとしても……ウイルスが世界を覆い尽くす。
全くもって予測できなかった事態。
…冷静とか、興奮とか、そういう段階ではない。
誰もが、現実をどこか信じきれないでいた。
「…おいおいエイリア。そんなんじゃあ地球が危ないんじゃないのか?」
技術担当のダグラスが言う。
「………ユーラシア衝突までにどれくらいかかりそうなんだ」
続いて総監・シグナス。
「17時間。
………それまでの間に、ユーラシア破壊を実行しなければならない。
みんな…いい? …1時間の間に……全ての作戦の案をまとめるのよ。
エックスとゼロは戦闘の準備をお願い」
「解った」
「……………」
これが、地球最後の日など信じられるわけがない。
…かといって、信じる信じられないと言っていたら、それは確実なものとなるだろう。
悪夢の一日が…始まろうとしていた。
-
各国への対応、方法の模索、情報の収集、ウイルスの除去…
…1時間でまとまるわけなどなかった。
史上最悪のパニックの中、時間は刻一刻と過ぎていく。
…結局意見がまとまったのは、残り12時間のときだった。
あっさりと地球に残された時間はこんなにも切り捨てられていったのである。
エイリアがエックスとゼロを呼びつける。
「エックス、ゼロ。聞いて!ユーラシアを破壊する方法が見つかったわ…
そのために貴方達にはミッションに行ってもらうことになる。
悪いけどミッション中の説明になるわ。」
「いいだろう」
「解った!」
エックスとゼロはそれぞれの場所へ転送される。
新たなる戦いのスタートだった。
緑色のボディに身を包んだダグラスが彼らに語りかける。
「『エニグマ』を使うんだ。これは古い砲台でね。まさか使う事になるとは思わなかったんだ」
間を確認して、ダグラスは続ける。
「…だがな。エニグマを使うには資材が足りないんだ。」
そしてエイリアがリスト化したものを読み上げる。
「必要な物は『オリハルコン』『エネルギーカートリッジ』『レーザー装置』そして大量の『水素』。
…そして調達手段もすでに調査してあるわ。」
そして、エックスゼロそれぞれに通信を切り替えて話しかける。
「形振り構っていられないからね…オリハルコンはゼロ、あなたに取りに行ってもらうわ。
今あなたがいるトレーラーが向かう先、裏社会の武器のブローカーの所ね」
「…待て、このトレーラー…メカニロイドだろう」
「え、ええ…まさか!?」
「…イレギュラー化しているぞ!進路には問題ないが自爆する可能性がある!」
「先へ進んでゼロ!」
「水素はエックス、貴方に取りに行ってもらうことにしたわ。
貴方が行った先は海洋博物館。そこに海の使用許可を貰って、大量の海水から水素を確保するの」
「…ここが博物館?」
「……ど、どうしたのエックス」
「…どう見ても海の中だよ。どうやら転送先がずれていたらしい」
二つの行き先に二つのトラブル。エイリアは…
「俺は一人で行ける、問題ない お前はエックスをオペレートしろ」
「そうさせてもらうわ。エックス!その場所は以前クラブロスのミッションで行った場所よ、覚えてる?」
「ああ。確かアジールと戦った……」
その前に巨大メカニロイドと戦った気もするが。
「転送装置自体が壊れているみたい…直すまでかかるから、エックスは自力で水族館まで行って!」
「…………!」
深い海の中、エックスの背後に巨大な魚が現れる。いや…これは…。
「…戦闘艦デスエベンジ…!耐久力だけは一級品の厄介な相手ね」
「エイリア、どうすればいい?」
そう言いつつもプラズマチャージをデスエベンジのレーザー砲たる口へと放つ。
「…倒すしかないわ。厄介な相手だけど。その後水族館へ向かいましょう」
海中の追いかけっこがここにスタートした。
海底の沈没船にはカプセル。現れたのは勿論ライト博士。
「おお。エックス……お前が来たか」
「ライト博士…」
「大変なことになってしまったようじゃな…
地球を頼むぞ、エックス。
…ここでは、お前の機動力を高めるアーマー…『ファルコンアーマー』のデータの一つを渡そう」
「…データ?」
「ああ。安全性を高めるべく、今回からワシはパーツを4つに分けてデータとして転送することにしたんじゃ。
エイリア、と言ったかな?
…あの子に頼めばデータを解析、4つ全て集めることで一つのアーマーに出来るじゃろう…。」
エイリアの名前はライト博士に覚えられていた。
「…すまんな。どうやらゼロに呼ばれているようじゃ」
武器ブローカーのアジトにてゼロもまた、ライト博士のカプセルを開いた。
「おお、ゼロ…よく来たのう」
「…エックスのためパーツを頂きたい。その前に一つ答えてもらいたい。」
もし、この老人がエックスを作ったとされる、遥か昔の偉大な科学者であるならば。
「…夢でよく俺はある老人に会うんです。心当たりは…ありませんか」
ゼロが珍しく敬語で話す。
「…残念ながら私には、よく解らんな…何かのデータの間違いじゃろう、気にしない方がいいだろう」
「…解りました」
ライト博士は無論、全てを知っている。…だが、ゼロの言う老人の話となると明言しようとしなかった。
「すまんのう」
そして、海の先で、武器ブローカーの根城で。彼らはそれぞれのターゲットと出会う。
-
「避けてみせてくれ!」
最深部でエックスを出迎えたのは水族館館長タイダル・マッコイーン。
彼との戦いは終局に差し掛かっていた。
彼が持つ技・水の力を操るジェルシェイバーの応用。
巨大な氷を口の中で一瞬にして作り出し勢いよく吐き出す。
その勢いも重量も凄まじい。一度当たってしまえば、壁際まで一気に押しつぶされ、
イレギュラー処刑用に設置された針の餌食となる。
だが反面、ジェルシェイバー自体の殺傷力は極めて低く、
エックスのフォースアーマーはおろか、ノーマルボディを損傷するにも到底至らない。
針の餌食にすれば一撃。そうでなければ一つの傷も負わせることも出来ず敗れる。
彼はそれを難なく潜り抜けるエックスの力を見たかったのだ。
「いい動きをしてくれるなぁ!」
ゼロの前に現れた、目に大きな傷をつけた兵器ブローカーのクレッセント・グリズリー。
ゼロとの過去の交戦での傷がうずくと、ウイルスに冒され死ぬ前に戦いを挑む。
右腕のドリルを使い、穴から穴へ。
爪でなぎ払うべく大きく腕を動かす。ドリルを突き出す…そういった隠れての戦法が破られたグリズリーは
爪を素早く振り、三日月型の衝撃波でゼロを追い詰めようとする。
クレセントショット。美しい弧の形をしたそれは部屋の向こう側へと真っ直ぐに飛び、壁に大きな傷をつける。
イレギュラーハンター、レプリフォース。
彼らの中の上位数パーセントに匹敵する実力者は世界にまだまだいたのだ。
しかし、エックス、ゼロの両名とも…最早彼らは敵ではなかった。
「大分腕をあげたようだな」
グリズリーの傷にもう一度剣を振り下ろす。
「食らえ!!」
ジェルシェイバーを貫通したプラズマチャージがマッコイーンを貫き、電撃がその体を包み込む。
それぞれの戦いの最後だった。
「…海水を確保するまで大分かかるんじゃないのかい」
「そうね…エックスは暫くそこで作業をしてて。ゼロを次のミッションに向かわせるから」
ユーラシア衝突まで…残り11時間。
「随分とクレイジーな作戦じゃないかい?シグマの旦那」
「自ら狂える者でなければ革命は起こせぬものだからな…」
「それも、そうかい。…ま、俺にとっちゃどっちでもいーんスけどね
旦那に歯向かい続けるバカな連中もいたモンですね…とうとう本気にさせちまった。
…さて。俺はちょっとハンターベースの皆さんにお手紙でもしたためますかね」
長い髪をなびかせた男は赤いバイザーを下げ、瓦礫から飛び降りた。
…それが数日前のことであった。
-
そして、30分前に届いたメッセージ。ハンターベースを襲撃するというのがその内容だった。
「ゼロ、奴が来たみたい。今はエックスがいないから…迎撃をお願い!」
「ああ…。」
長身の男がエニグマの前に姿を現した。
「やーやー、アンタ、ゼロさんだね。はじめまして、俺、ダイナモって言うんだ」
「シグマの部下か?VAVAのような真似をしやがって」
その名前を聞くや否や、情報通の彼は明後日の方向を向きため息をついた。
「VAVA−?あんな肩肘張った怖い人と一緒にしないでもらいたいなー
自己流で戦うのはそりゃそーだけど、俺の場合はそういうんじゃないんだ。
こうやってハンターベースにお邪魔したのも、ユーラシア落としたのも…お仕事だけど、遊びなワケよ。」
バイザーを落とし、くるりと指先で回した柄を手で持ち、セイバーのスイッチをオンにする。
「軽くやりましょーや、スポーツな感じでね!」
これから滅ぶ世界には表も裏もない。シグマの雇った闇の世界からの傭兵・ダイナモとの戦いが始まる。
「食らいなっ!」
くるりと回したセイバーを恐るべき速さでブーメランのように投げつける。
ゼロは勿論これをかわし、セイバーで攻撃。
「おーおー。殺気立ってるぅ」
戻ってきた刃をまたかわし、また一撃。だが…
「おーっと…」
セイバーを片手でグルグルと回転させ、それを弾く。
続けてダイナモは跳ぶ。
「へっへ!」
地面に向かって垂直にバスターを発射。それは地面で二つに分かれる。
隙だらけのその攻撃をゼロは跳びあがりかわすと同時に技を当てる。
「三日月斬!」
クレッセント・グリズリーから得たばかりの技。
空円舞の強化技であり、円形になるその剣の軌道には三日月が二つ。
鋭さを増したその剣は一瞬でダイナモの脚を裂く。
「イッテテ…ったく、マジかよ。」
「ふざけるなと言っている!!」
「…アンタさぁ。もう少し力抜かないといつか死ぬよ?マジで」
「本気を出さぬまま死んでいくお前よりはマシだ。」
やれやれ、といった表情で苦笑いし、ダイナモは去っていった。
「ハンターベース防衛を含め、どれくらいかかった」
「おおよそ1時間。エックスも帰ってきたみたいだし、次のミッションに進みましょう」
-
「ごめん、遅くなった!エイリア、状況は?」
「おかえりなさい、エックス。
作業中に話していたシグマの傭兵だけど…ゼロが追い返してくれたわ」
まずは報告。
そしてそれが終わると今度は残る二つの物資、
エネルギーカートリッジとレーザー砲の入手方法についてだ。
「レーザー砲にはレーザー工学の権威に譲ってもらうことにしたわ
エネルギーカートリッジについてはあるレプリロイドが持っているの。こちらもエネルギー工学の研究所ね」
「……心当たりがある。…俺にはレーザー工学の権威とやらの所に行かせてくれ」
「よし、それじゃ俺がエネルギーカートリッジ!」
二人がそれぞれミッションを決定する。
「…少し危険な場所なのよね…エックス、転送先にはアディオンを置いておくから、それで向かって。」
「所でゼロ。レーザー工学の博士とは知り合いなのかい」
「いや…そうじゃない。苦手なんだ、エネルギーカートリッジの持ち主が。」
「ゼロが苦手なタイプ……か」
そこはオストリーグのいた砂漠やスティングレンを追った水上都市とは比べものにならない悪路。
エックスの、ライドチェイサーの腕が問われる。
「……また俺は一人か。…しかしここは…何だ?
エイリアの奴、過去へ転送した訳ではないだろうな。」
偏屈な博士の研究所は…中世ヨーロッパの城のようであった。老朽化していないことからも、
この城がかつてあったものを再利用したものでなく、博士の趣味で新しく作られた施設であることを意味している。
「………思ったより時間を費やしてしまったわ」
ハンターベースにて、エイリア、シグナス、ダグラスは顔を見合わせる。
「…正直、資材を揃えたところで必ず成功する訳ではないからな。…あ、いや…気を抜くなってだけだ。成功するさ」
「今はエックス、ゼロを信じる他ない。我々は見届けよう」
侵入者を押しつぶすつり天井、針だらけの床、レーザー装置。
螺旋階段を落ちる敵はマッシュラムのバイオラボを思い出す。
ありとあらゆるトラップの仕掛けられた城にもカプセルが存在した。
「先ほどもう一つあったカプセルでエックスにパーツを渡したよ。
これでファルコンアーマーが完成することじゃろう」
一方エックス。電磁ロックで何重にも守られた面倒なセキュリティシステムを潜り、
いよいよ最深部へ到達しようとしていた。
「はぁい…。 アナタが来るとは思っていなかったわエックス。」
「…クラーケン………」
エネルギー工学の研究者ボルト・クラーケン。
イカのような姿をした彼…女が、細い体をくねらせて現れた。
「…エネルギーカートリッジの事とは関係ないが、オクトパルドのことを謝っておきたい。」
「…いいのよ。アナタ達イレギュラーハンターなんだから。
それより…アタシを殺してちょうだい、エックス。」
「いきなりどうした、クラーケン」
「アタシね、もうハンターのやり方にはついていけなくなっちゃったのよね…
これ以上本音ではモヤモヤしてる自分も嫌だし…私は…もう、ウイルスに…」
クラーケンの様子が変わる。
「正直早くしないとマズいわよ。みんなイレギュラー…に…イレギュラーニ…
イレギュ、イレ、イレギュギュギュギュギュギュギュギュギュギュ」
「…!」
「ミンナ死ンデシマウノヨ!オクトパルドノヨウニナ!!」
一方、ゼロはシャイニング・ホタルニクス博士の部屋へとたどり着いた。
「私は常々ハンターのやり方に疑問を持っていたのだ。力だけでねじ伏せるやり方はどうにも好かない。」
「…そう言っている場合か。何とかしてもらわないと困るんだ。」
「私の研究成果は君達には渡せない…。私から願うことがあるなら………
ウイルスにかかった私を……助けてくれないか」
「………」
-
ウイルスは広がりつつある。協力者との戦いはここでも行われることとなった。
「う…ぐ…!体が動かない…!!」
戦いも後半。蛍型の誘導弾ウィルレーザーの使い手だった博士は手ごわい。高速移動を行い、光が消えるのを合図に姿そのものを消す。
そして尻からは極太のレーザーを発射。…己の研究成果を誰よりも理解する彼の、最も望まない戦いは続いていった。
一方クラーケンとの戦いも熾烈を極めた。
電撃を自在に放出し、上下左右に自由に動き回る強敵・クラーケン。
元イレギュラーハンターである彼…女の記憶を手繰り寄せ、ウイルスにより戦わされる。
足に似たようなワイヤーを張り巡らせての電流攻撃・トライサンダーは、死角の少ない実に厭らしい攻撃と言える。
クラーケン同様とても回避の難しい攻撃の数々だったが…
難なく二人は彼らを撃破し、資材を手に入れるのだった。
ペンギーゴ、ナウマンダー、クワンガー、カメリーオ、マンドリラー、イーグリード、アルマージ、クラーケン、
ヒャクレッガー、スタッガー、クラブロス、アリゲイツ、オストリーグ、ホーネック、ビートブード、ドラグーン、クラーケン、
マック、VAVA、ダブル、シグマ。
この、挙げられたイレギュラーハンターにいた実力者達のそのほとんど…
いや全て、彼が葬っていったのだ。
…シグマを信じた者、シグマのせいで狂わされた者、復讐に身を滅ぼした者、自らの意思で狂った者。
様々な者たちが居て…全てこの世から去っていった。
エックスが憎んだ者、悲しんだ者、怒りを覚えた者…沢山居た。
彼らの死を乗り越え、エックスは成長して行く。
「いよいよ…揃ったわね!」
「取り付けに入る。あと1時間待ってくれ!」
ダグラスが声を張り上げる。
1時間の後。エニグマ砲は…上を向いていた。
「漸くこのときが来たな…数時間しか経っていなくとも、長く感じたもんだ…」
「では行くぞ!」
エネルギーが一点に収束する。
「3…」
砲身がユーラシアを見据える。
「2…」
砲身が震える。
「1……」
エネルギーが高まっていく。そして…
「発射!」
前から。
「発射!」
後ろから。
「発射!」
横から。
…様々な角度から彼らはそれを眺めた。
爆発するかのような轟音を発して一筋の光が…宇宙へと放たれていくのを。
いや、実際爆発である。…とっさにこさえたこの材料では、一発が限界。
…ユーラシアに着弾。宇宙で大きな炎の花が咲く………
しかし。
「ダメ…!破壊率18%!…ユーラシアの軌道をずらして、衝突までの時間を遅らせたに過ぎない!」
エイリアがはっきりと正確に結果を告げる。
「…エニグマが………」
ガックリと膝を落とすエックス。
ゼロは、目を伏せていた。
「………ならば仕方ない。先ほど話していた最後の作戦を使う」
-
「…シャトルだな。」
「……出来れば使いたくなった作戦なんだけどね」
スペースシャトル作戦。
スペースシャトル自体をユーラシアに向け突撃させ…破壊するというものだ。
使用されるシャトルには脱出用ポッドが備え付けられているとはいえ
極度に危険なものであり、その上ユーラシアがある程度近づいていないとならないリスクが存在した。
「残り時間は後6時間。 エックス達に行ってもらうミッションが決まったわ」
「…ミッションという事は…足りないんだね、資材が」
ダグラスが頭を掻く。
「…すまねえ。」
エックスとゼロの二人が転送装置から放たれる。
「ゼロに行ってもらったのはオービターエンジンが設置された、密林内にあるレプリフォース施設。
エックスに行ってもらったのはレプリエアフォース。そこにはオービターウィングがあるわ」
今回はどちらもレプリフォース関連の施設だ。
「さてさて…依頼のあった場所はここかな?
あのボウヤがどれだけ慌てふためくか楽しみだなーコリャ」
自動操縦の戦闘機から見下ろすはダイナモ。手にはリモコン……
レプリエアフォースに、スタイリッシュなデザインに身を包んだエックスが降り立つ。
「なるほど。この装備があるから空中戦が有利になるというわけか」
エイリアがライト博士からのデータを解析し作り上げたファルコンアーマー。
特殊武器のチャージが出来ない欠点はあるものの、エックスの飛行能力を特化した強力なアーマーだ。
「レプリフォース兵もイレギュラー化しているか… …って何だ?この音…」
「エックス!部屋の隅に時限爆弾があるから!破壊して!…もう3秒しかない!」
「え、えええええ!?」
辺りが真っ白な光に包まれる。
「ゲホッ…ゴホッ」
「大変ね……エックス、まだあるわ。最優先で破壊するようにしましょう」
「! またあったわ!」
「あれか!!」
時限爆弾を見つけてはショットで破壊する。
「食らえ!」
エックスの腕の細い発射口から放たれたのは青く細長いショット。
貫通力と威力が高いそのショットは、昔のゼロを彷彿とさせた。
3個、4個、5個と次々に破壊していき、落ち着いた頃。
「エックス、上にカプセルがあるわ!」
「上…?何もないじゃないか」
「遥か上…空でも飛ばない限りはいけない場所になってるわ。付近に出入り口がまず存在しない。」
「…壁蹴りでもどうしようもないんだろ?諦めよう。爆弾から命を救うのが大事だ」
「それもあるけどカプセル、取ってみましょうよ。 …飛べるのよ?エックスは」
「………ファルコンアーマーの能力は伊達じゃない、ってことか?」
背中の翼から炎が噴出、体を青いバリアが包み込む。
時間以内なら上下左右自由自在に移動してしまうその能力は「フリームーブ」と呼ばれた。
「…エックスか。よく来てくれたな……。
それでは次にお前にはガイアアーマーを授けよう。私がかつて試作していた…癖の強い戦闘用アーマーじゃ」
「…戦闘用…。それなら関心が持てますね」
「ゼロにもついさっき渡した所だ。さぁ、持って行きなさい」
-
そしてエックスは施設最上階にたどり着く。
しかし飛行機や空母には直結していない。その扉の先は…空だった。
眼下に見えるは戦闘機だ。…どうやらこの上へと降り立つらしい。
顔の整った、美形の青年が翼の上に降臨する。。
「……よく来たね、エックス。
…俺はレプリエアフォース長官…スパイラル・ペガシオンだ。その節はハンター達に多大な迷惑をかけた」
「……俺達の方こそ、悪かったと思っている…」
そしてまた同じパターンは繰り返されてしまう。
ペガシオンもまたイレギュラー化していた。
「ジェネラル…サマノ…カタキ……う、うぁああ…あああああ!!」
「………ペガシオン。」
ウイルスにより…冷静な若き長官の、その心の内が開け放たれる。
「…………」
ゼロからの通信が入る。
「エックス!奴を倒せ…!前も言っただろう、奴は憎しみに囚われているんだ!」
「でも…!」
ペガシオンは続ける。
「ゼロ…ダマレ…ダマレ…アイリスヲ…アイリスヲ……アイリスヲ返セ…返セ…!」
「……」
ゼロも無言になる。
「おいおーい、いきなりどうしたんだ。俺に縛られたいのかーい?」
「なっ!?」
シグマウイルスと環境コントロールユニットが融合して生まれた奇跡のイレギュラー、
スパイク・ローズレッドはトゲのムチをゼロに伸ばす。
ゼロは戦闘に集中、あっけなく勝利を収めたが……
エックスはそうは行かず。
あのフクロウルの上司だ。風の扱いには彼以上に長けたペガシオンは強敵だった。
「…しかも…その戦い方は!」
「その勉強熱心な所はレプリフォース以外にも向けられていたみたいね」
翼で大空を舞い、敵を大きく囲いこむように何度も何度も空を切るその戦い方。
イーグリードのそれと全く同じだった。
「だから戦い方が解る……一番無防備なのはこのとき!」
ペガシオンの翼をチャージショットが貫通、穴を開ける。
落ちてきたところに…悩み苦しみ、怒り続けるペガシオンの頭へと一発。
…綺麗に、チャージショットはそれを貫いていった。
-
「やーやー、今度はエックス君が出てきたかー。また遊びに来ちゃったよ!」
ダイナモがまたも現れた。
「実はさー。あの後ちょっと後悔しちゃったんだよね、流石にうん…」
エックスは黙ってバスターを向ける。
「やっぱりほら……遊ぶのはいいけど、それなりにサッパリしたいじゃないか」
「…五月蝿い!」
チャージショットをダイナモに撃つ。
目にも止まらぬ速度でそれは風を斬り、ダイナモの首筋へと…だが。
「だからさ。今回、俺もちょーっとだけ、本気で行かせてもらいますわ。 …ね?」
手に持ったセイバーによりそれは弾かれた。
跳びあがり、エックスを斬りつける。器用に伸縮するそのセイバーが宙を舞う。
エックスはそれを潜り一撃。
「やるやるー」
そのまま反対側へ跳びあがり…地上へ向けてバスターを2発。
「さてさて、手品の始まりだー!」
グルグルとまたもセイバーを回転させる。
すると…何とそこからはセイバーの刃が次々と飛び出し、エックスを追ってくるではないか。
「何…!?」
「ほらほら、どうしたー?」
チャージショットを再び撃った…と、突然ダイナモが動きを止める。
「ちょっと痺れるぜーーー!?」
ダイナモが腕に力を込める。バチバチと電撃が球の形で腕に集まっている。
「せやぁああ!」
拳を床に叩きつけると床からは光の柱が。
エックスは僅かな柱と柱の間をぬって回避。
「2回目ー!」
ダイナモの近くに。
「3回目ー!」
ダイナモの遠くに。
「あ…あれれ…?効かなかった…? …まーいいや!もう一回だ!」
「そうはさせるか!」
エックスはフリームーブを用い空の上へ。そして…その技を放った。
「はぁああああ!!」
ギガクラッシュほどではないが、広範囲の技だ。
翼からエネルギーの弾を…チャージショットのように放つ。
数え切れない量を。
「ま、さかぁ…?」
拡散する。
「行けっ!」
「おいおーーーーい!」
青き矢となったチャージショットは地上へと降り注ぎ、地上からまた空へと戻っていく。
縦方向への…刃の雨。この技はダイナモに直撃。…刺さる。エネルギーの塊が…肩に、膝に、頭に。
「ったくこれだから嫌だよ…マジだもんなぁ………。」
…だがダイナモはここでシグマの言っていた言葉を思い出す。
「…ま、そんなんだからアンタらは早く死んじまうんだよ。」
また同じ台詞を吐く。
どうやら、彼の中でエックス達の死は確定らしい。
「せいぜい生き延びようとあがくこったな…
俺は楽させてもらうぜ? 生き延びるために、な」
ダイナモは再び去っていった。
-
「エックス、有難う… 今ので時間がまた大分縮まってしまったわ。後…3時間!」
帰還したゼロも揃った。ここでエイリアはミッションの話に入る。
「必要なものは燃料タンク、後ブースターロケット。」
「ブースターロケットか……熱いところに行くことになりそうだな」
「そう。それならゼロは行ってくれるわね?ブースターロケットの保管場所、サンハウスマウンテンへ」
「…何故『それなら』なのか解らないが…いいだろう」
「そしてエックスだけど……燃料タンクのある場所は……」
エックスは星空の中に居た。
「…ここは」
「プラネタリウムよ。綺麗ねぇ… ただし…。ここにも多分細工をしてあるはず…気をつけてね」
一体どんなものなのか…?
「トゲ…!?」
そう。星空と星座の中を歩いていると突然上部からトゲが降り注いできた。
「……移動用リフトも通常のルートを全く通っていないわ。
…敵の罠だらけだけど…頑張ってエックス!」
その先は何と重力反転フロア。
…あらゆるトラップを抜けたその最深部、タンクがずらりと並ぶ部屋にそれはいた。
蝙蝠型メカニロイド、バットンボーンの群れから現れた…それは奇怪なレプリロイド。
「…………お前は?」
「キキキキキ!世界がやばい中だけど、この環境…こりゃ心地いいなぁ…キキキ」
「…ウイルスに耐性を持っている?お前は…一体」
エイリアが割り込む。「こいつは…ダーク・ネクロバット。
大きな力を持ちながら、失敗作として見放された…
ヘチマール、マイマイン、モスミーノス、ダブルと同じ、3年前に製作されていたレプリロイドよ!」
天候操作、時間操作、吸収能力、変身能力。…では、ネクロバットの能力は?
「キキキーー!」
戦いが始まる。
ネクロバットの基本攻撃はバットンボーンの生成と、吸血…そして超音波。
さしあたって強力ではないその攻撃に、『楽勝だ』と安心しようとしていた…所に。
「かかったなぁぁあ!」
ネクロバットが翼を閉じると突然辺りの景色が歪み始める。そして…
「ダークホールド!!」
「何…?」
そう言った瞬間……
一瞬にしてエックスの体は傷だらけになっていた。
「うああああああああ!!」
…これは一体どういうことなのか。
一瞬で傷を作り出すダークホールドのその性能……
…そう。それが彼の能力だった。マイマインのそれと違う、『時間停止』。
スローに能力だけなら完全なものとしたマイマインとは異なったものだ。
要求されたものが大き過ぎると…失敗として判断されるラインが高くなる。
…そういうことなのだろうか。
再びダークホールドを発動、動きの止まったエックスに襲い掛かるネクロバット。
血を吸い、自らの糧とする。…戦いは長引くものと思われた。
…だが、能力は強力でも性能一つ取れば貧弱。そうそう連発できる能力でもない。
ガイアアーマーの最後のパーツを受け取ったエックスにネクロバットは倒されていったのだった。
一方その頃。
「……ネクロバット……あれは処分した筈ではなかったのか」
「いやぁ、捨てるのを思わず躊躇ってしまいましてな。
……ま、彼を外界へ放つことでいつか能力が開花するのを待っていた節も、勿論ありますがなぁ…
…実に面白いレプリロイドでしたわい」
「……その眼力…。伊達に沢山の『ロボット』は見てきていない、ということか」
「まぁひとまずは待ちましょう。…奴らがネクロバットのDNAを背負ってやってくるところをね」
一方、ライドアーマー・ライデンに乗りマグマの中に潜り込んでいたゼロも、
パワー、スピード、耐久力全てを備えた炎使いの強敵…
レプリフォース災害対策チームのバーン・ディノレクスを撃破。
ここにやっと、シャトルの資材は全て揃ったのだった。
「……後1時間ね…ギリギリ……何とかシャトルの準備は間に合いそう。
二人とも、お疲れ様!」
-
そしてその時はやってきた。
ユーラシアを破壊すべく宇宙を破壊するロケットを打ち上げる時が。
「大分地球に接近している…十分な加速を得られるかしら」
ロケットの自動操縦システムはウイルスに冒されている。
誰かが乗り込まねばならない…。
その役を引き受けたのはゼロ。…彼は自ら志願した。
例え自分が死を迎えたとしても、確実にエックスは生きる。
アイツならこれからの世界を任せてやれると。
「ゼロ…今からでも遅くない、俺と代わるんだ!」
「…エックス。これからはお前がこの世界を背負っていくんだ。
こんな所で喚いているんじゃない」
「ゼロ…!ゼローーーーーー!」
「…エックス」
エイリアに押さえつけられ、エックスは留まる。…後は、ゼロの無事を祈るのみだ。
シグナスはエニグマのときと同じように、ロケットへ命令を出す。
「………準備はいいな、ゼロ」
「…ああ。俺を信じろ。…絶対にユーラシアまで到達する」
彼には少しの迷いも、恐れも感じられない。…昔からそういう所は感じられたが。
「……いいだろう」
エンジンにエネルギーが収束する。
「3………」
ゼロは目を閉じ、深呼吸する。
「2……」
…そして目を見開く。
「1…」
「発射!」
「無事に帰ってきてくれ、ゼロ!!」
エンジンが火を吹く。
片道だけの燃料を乗せ、ロケットが今……重力に逆らい… 空へと…宇宙へと旅立っていった。
「信じましょう、ゼロを」
どこかの星へ着陸する訳でもない。破壊が第一。自らの命は二の次……
ゼロはひたすら加速を続ける。
「…………こちらゼロ。ユーラシアへ向かい加速中」
「ああ、順調に進んでいるな!頼んだぞ!」
ダグラスの言葉。
「…ゼロは助かるのか」
「……並大抵のレプリロイドなら即死でしょうな。
…………しかし、彼ほどのレプリロイドなら、或いは。」
…『或いは。』それに賭けるというのは酷なものだが…今はそれしかない。
見えた。…恐ろしく巨大な物体…ユーラシアだ。
確かにこれが地球に落ちては…ひとたまりもないだろう。
シグマウイルスを大量に積んだそれは…ゼロには、ヤツに他ならなかった。
「……これで終わりだ……シグマ!」
更なる加速。そして…………。
地上からでも観測できた。大きな大きな…巨大な花火が薄暗い空であがるのを。
………ユーラシアの最期だ。
「破壊率92%… 成功よ」
-
だが………エイリアの表情は暗い。
…………まさか。
「…遅かった……! …もうユーラシアは重力に引き寄せられてる!」
……それから暫くして…
無数の巨大な破片が地球に降り注いだ。
アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、太平洋、大西洋、オーストラリア、南極、北極。
…地球の全てに……拡散された破片は考えられない速度で急接近。
………炎の雨が降り注いだ。
空を貫き、大地を裂く。町が廃墟と化し、森は焼かれ、山は形を変え、海は暴れる。
…地球上からその日、いくつの生命が死を迎えたのだろう。
何千…?何万…?いや。
…何十億もの人間やレプリロイドの命が、その日……失われていったのである。
動物、植物などを含めればその数は…膨大な物だった。
何も言えない。…言葉が出ない。
…何のために、シグマはこんな事をしたのであろうか。
「……そうだ、ゼロは!」
…ユーラシアがそのまま直撃していたらきっとそれ以上の惨事だったに違いあるまい。
失われていった沢山の命を考えると、だからよかった、などと言う気にはとてもなれないが。
だがシグマウイルスは地球上から消えてなくなった。
…流石にもうこれ以上の惨事は引き起こされないであろう。
「………信号があるわ。生きてる…」
「行こう、ゼロを助けにいかなきゃ!」
ケイン博士がカウンターハンターに盗まれた、コントロールチップ。
これを抜き取られ、プロテクトをも施されていた彼は…
ずっと、一介のハンターで居られるはずだった。
だが…VAVAからエックスを庇い自爆した時にそれは破られた。
ビームサーベルを携え蘇り…悲しみを背負い、戦う意味を見失った。
そうして彼へと…いずれ訪れる日はとうとう足音を響かせてきた。
…覚醒の日だ。
痛みが感じられない…瞼が開かない。
…暖かさと、土の匂い、そして手の冷たさだけが感じられる。
…体を起こす。
暖かな感触はレプリロイドの血…オイル。
それに引火した炎が、辺りを包んでいた。
燃え盛る炎を彩るは沢山の血。
翼がばきばきと折れたイーグリード、腹に穴の開いたVAVA、尾の千切れたヒャクレッガー、
下半身の潰されたホーネック、四肢を断ち切られたスパイダス、粉々に砕け散ったジェネラル、
顔がグシャリと潰れたカーネル、以前戦ったときの様に脳が露出したシグマ、眼球に穴の開いたエックス。
…解らない。そこは…無数の死体の山だった。
……自分の左腕に冷たい手が重ねられているのが解る。
顔を動かすと傍らには、アイリスの死体。
幼く可愛らしい顔は笑顔のまま焦点の合わない目をしており…
豊かな胸の間にはゼットセイバーが突き刺さり、貫いている。
…戦いの果てに待っていた光景が…これだ。
自分は一体何のために戦っていたのか。
こんな光景を見るために、ずっと戦ってきたというのか。
「…ゼロ。 起きるのじゃ、ゼロ。
忘れたのか…?お前が戦うその意味を。起きるのじゃ…目覚めるのじゃ、
我が…最高傑作よ。」
炎に照らされ、ゼロに手を差し伸べる老人の姿。
「お前が戦うべき相手がいるはずじゃ…」
老人の視線の先を追うとそこには黒きゼロ。
「そう、一人は目覚めようとしないお前自身。もう一人は…」
その背後にいたのは…。
「ゼロ!!」
…エックスの声が聞こえ、ゼロは目を覚ました。
-
「…エックスか。…俺は…」
「ゼロが目を覚ましたわ!」
エイリアの声はハンターベースの仲間達を呼ぶ。
視界がぼやける…どうやら夢だったらしい。
「よかった…ゼロ、本当によかった!!」
続けてダグラス。
「全く頑丈なヤツだよお前は…」
二人が喜ぶ中、
ライフセーバーはエイリアを呼ぶ。
「エイリアさん。少しお時間を頂けますかな」
「?」
医務室にてライフセーバーから驚くべき言葉が発せられる。
「…ゼロのボディを調査した結果、こんなものが…」
「まさかこれは…シグマウイルス…?」
「ウイルスのデータ…。 …ユーラシアにあったものを浴びたのかしら」
「…そう思いましたよ、初めはね。 …だが、これを見てしまっては……」
「………!」
シグマウイルスはゼロに感染することで形を変えていたらしい。
その形はまるで…。
「シグマウイルスを凌ぐ毒性を持つといわれております。
あなたはこれを…何と名付けますか」
「……………『ゼロウイルス』…。」
「…でしょうな」
…その瞬間。
けたたましいアラートが鳴り響く。
「…!?」
エイリアはオペレートルームへと急ぐ。
「………これは」
ある一箇所のポイントに、突然強大なエネルギー反応が感知された。
常軌を逸したエネルギー反応。
…ウイルスの反応も見られる。
世界から姿を消したはずのウイルスが…一箇所にありえないほどの反応を作り出している。
「調査するのか」
「出来ないわよ!…転送禁止地域に指定するわ!絶対に誰も近づかせないで!」
あまりに危険すぎる。調査なんて今現在誰もさせられるわけがない。
……野放しには絶対に出来ないが…だが今は。
エイリアは今自分に声をかけたのがゼロだとその時気付いた。
「…あら?」
「おい、エイリア。ゼロは一体何処に行ったんだ…?」
ダグラスが飛び込んでくる。
「…え?今そこに居たと思ったんだけど……」
「大変だエイリア! …ゼロがいない! 消えてしまった!」
「そんな… みんな、ハンターベース付近をサーチして!」
…それから数分…。何処にもゼロの反応は見当たらなかった。
世界崩壊、ゼロウイルス、謎のポイント、ゼロの失踪。
…それはやがて全て、一つの単語へと繋がっていく。
-
「いやー、大変なことになっちゃったみたいだねー、ごめんごめん!」
ダイナモがハンターベースに3度現れた。
何だかんだ言いながら奴の妨害は成功したといえる。
「貴様…!」
エックスはダイナモに詰め寄る。
「今回、俺は戦わないよ?
いやはや、皆さんはご無事のようで何よりでございますからねー、うんうん。」
チャージショットをひらりとかわして。
「…けどな。 …お前らん中の仲間、もうすぐ一人居なくなるぜ」
「…ゼロか」
「ハイ、エックス君正解」
癇に障る男だ。
「ゼロの旦那が例の場所につくまで、大体そうだな…3日って所か。
せいぜい準備するこったな」
「……あなた、何を知っているの」
「聞きかじっただけだよ。ただ…ゼロはもうアンタらのトコには戻らないってことだ。
そして…アイツはこれから、沢山の人間やレプリロイドを殺して廻るぜ
コロニー落下で沢山の命が失われた…が、まーまだ幸せだったんじゃないのか?…一瞬で死ねた訳だから」
その言い方ではまるで。
「ゼロがイレギュラーになるとでも言うのか!」
「またもや正解。ハワイ旅行獲得まで王手だね
ま…イレギュラーっていうなら…今までアンタらが知っていたゼロの方こそイレギュラーみたいだけど」
「何を言っている!!」
「まぁどっちでもいいか…。早い話がね。シグマの旦那はゼロをイレギュラーにするため
こんな大掛かりな事を俺にやらせたんだ。本番はこれから、てこと」
そしてダイナモは背を向け、帰っていく。
「さーて。これからが楽しくなりそうだ」
「エイリア…。」
「…例の場所に近づいた者がいればすぐに反応に出るわ。今は…まだいない。
あなたはガイアアーマーの性能テストを兼ねて各地に向かってみて。
私は…ごめん。少しオペレーション出来なくなる」
「…ああ。」
「行けええええ!」
短いチャージ時間で若草色のチャージショットがイレギュラーを木っ端微塵に砕く。
力の壁に守られたエックスが敵を押しのける。針の上を難なく歩き渡りきる。
「な、何だこの癖の強いアーマーは……。」
ガイアアーマーは戦闘用アーマーとしては実に有能だった。そのパワーはかなり強力。
防御力においても他のアーマーより高いと思われる。
その様子をダグラスが観察する。
「…チャージ速度は格段に早く、攻撃力も高い。針の上にあろうと問題なく移動可能。
バスターは遠くまで飛ばず……俊敏性はガタ落ち。
…強くはあるが…用途が限られてやがるな」
そして結論。
「完全地上用…か。…だがどうやら、切り札はこれで決まりみたいだな」
そこに割り込む一人の男。
「果たしてそうか?」
「シグナス。」
「…総監なのに誰も敬語も役職で呼ぶこともしてくれないな。 …まあいい」
-
シグナスからの分析が行われる。
「エックスの戦闘における特性とは何だ?
…多彩な特殊武器が使用できることではないのか」
「…ん?特殊武器…!?
……本当だ、このアーマーじゃ使えなくなってやがる」
「防御力も確かに高められた。…だが、考えても見ろ…
俊敏性が低くなった時点で、
元よりエックス以上の俊敏性を誇る相手とは戦いづらくなったとは思わんか」
僅かな速度の差が命取り。戦いは厳しいものとなるだろう。
「……まぁな。」
「そして強化パーツの取り付けも出来ない。
チャージ速度の高速化は素直に評価できるが…
それはパーツで行えることだしな」
シグナスはため息をつく。
「…これでは、通常のミッションだけならいいが……。」
シグナスからの結論。
「エックスになかった特性が付く代償は大きかったか。
これはエックスの長所を殺し、エックスの短所を強めている」
ダグラスは頭を抱えていた。
「うぅううううーーーん………どうするかねコレ。
誰か他の意見も聞いてみたいところなんだが……」
そこにエックスが帰ってくる。
「おう、エックス!そういやエイリアはどうした?」
「…エイリア?どうして俺に。」
「何となく知ってそうな気がしてよ」
うっすらニヤついた様子のダグラスに気付くことなく。
…ダイナモの言う通りなら、
ゼロが例の高エネルギーポイントに到着するのは恐らく明日。
「…エイリアなら…確か…」
その時、エイリアがエックスの前に現れた。
「エックス!」
「…驚いた。どうしたんだい」
「行くんでしょう、明日…」
「……ああ。」
「じゃあ…お願いエックス。後で、屋上に来てくれないかしら」
エイリアは真剣だった。
「…え? …ああ。」
ダグラスの顔は緩んでいた。
エイリアはエックスを待つべく、自室へと足を進める。
その間、手に入れた情報を整理してみる。
-
遡ること3日。
ゼロが失踪してからずっと…。
エイリアは自室に篭り、見ていたのだ。 …ゼロの戦闘データや、戦闘の映像を。
「……………」
レプリフォース大戦時の映像。
まずはスパイダス戦、次にマッシュラム戦…
ここからだ。ビストレオ戦、フクロウル戦、カーネル戦。
この戦いの中でフクロウルのみ、空中戦を強いられる相手だった。
空中での彼の戦いぶりを見てみる。
……やはり空円舞には隙が少ない。
それよりもビストレオとカーネル。
地上の戦いを行う相手にゼロは如何にして動くのか。
「強い………。」
…戦うほどに強くなっていくゼロの強さがそこで解る。
……答えはすぐに出た。彼の使う技はどれも敵のDNAから得たもの。
一見、エックスのそれとなんら変わらないように見えるかもしれない
…しかしエックスは、どれほど強くなっても本質的にすることは二つ。
撃つことと、チャージして撃つことだけである。
そのパターンが増えるわけであり、戦い方そのものは変化しない。
…だがゼロは違う。
手に入れた技は全て平常時の自分のものであり、その技は全て全く異なったモーションで繰り出すものであり…
それらを組み合わせて戦うことが出来る。龍炎刃→氷烈斬→雷神撃の3連撃のように。
そして彼は防御がエックスと比べ薄いものの、持ち前のセイバーで攻撃を対処できる点は高い。
…次に昨日までの1日の戦いぶりからだ。
グリズリー戦…これはスパイダス戦と比較してみる。
「やはり能力だけじゃない…か」
DNAデータのない状態での戦い同士。だが動きから隙がなくなっていっているのが解る。
ホタルニクス戦。
…三日月斬は空円舞の強化版であるらしい。円形の回転に2つの三日月が見える。
…威力は更に増している上、範囲も広がっている。
そして飛水翔というのは飛燕脚に水の刃がついたものだ。
…強い。敵との距離を構わず、攻撃をしつつ移動を行えるのだ。
…ローズレッド戦。
「しつこいなぁ、アンタも!」
植物型特有の柔らかい体をバネのように使い、細いボディで部屋を大きく跳ぶローズレッド。
そこでゼロは低めに跳び三日月斬で斬り、ローズレッドとは逆向きに跳ぶ。
「さぁかわせるか!?スパイクロープ!」
バラの弦を絡め作り出したような、毒々しい色をしたトゲの球を発射、部屋中に高速でバウンドさせ続ける。
だが…
「電刃」
ゼロはセイバーを両腕に持ち、力を入れてセイバーを力いっぱい振り上げ、スパイクロープを一刀両断、
加えてそのセイバーから発せられた高圧電流でロープ自体を感電させ、動きを止めたのだった。
「落ちてきたな、そん時を俺は待ってたんだぜ…?」
トゲの塊から生成されるはもう一人のローズレッド。この戦闘で幾度も繰り返されてきた光景だ。
だが今回は部屋の左隅にいるローズレッドの分身が右端に出来た。意味することは…
「さぁ叫んでもらおうか!」
バラのムチを両端から伸ばす。部屋のどこにいてもこの攻撃を避ける術は存在しない。
地上に落下して無防備なゼロは格好の的……しかし。
「滅閃光…!」
拳を地面へたたきつけ、エネルギーを放射する。
名前とはうってかわって、暗黒の力が解き放たれ、ローズレッドを黒き光が焼き尽くす。
「ぎやああああああああああああ!!!」
決着のときだった。
「………技は着々と強化されているってことね…。
龍炎刃やアースクラッシュを更に強化するなんて」
-
ディノレクス戦。
「潰れちまいなぁぁぁ」
丸まって突進、壁に激突する。すぐさま回避、飛水翔で通り抜け滅閃光を浴びせる。
「うぉおあああ…!」
敵も諦めない。壁に張り付き、次々と炎を吐き出す。
「グランドファイア!」
地面に残り、次々と小さな炎を撒き散らす特殊なもの。どうやら…燃えてはじけ飛ぶ何か固形物を吐き出しているようだ。
「双幻夢!」
ゼロは自らの分身を生成、二つ分の体で大きく動き、三日月斬でその厄介な炎を斬り捨てる。
ショットイレイザーと呼ばれるパーツによる能力だ。
「さあクライマックスだああああ!」
高高熱の炎が口から床全体に吹かれる。床が全て火の海と化す。
「逃げる場所は壁っきゃねえよな!」
そして壁を蹴りその巨体で突進を放つ。
しかしゼロは飛水翔でそれをギリギリで回避。飛水翔には従来のエアダッシュと違い、
水平に飛ぶのみでなく、斜めに飛ぶことも可能になっているのだ。
「何…!?」
グランドファイアのように炎は地面には残らない。
ディノレクスは口から炎を放ったため、ディノレクス自身の近くの炎から早く消えていくのだ。
着地、そして…
「疾風!」
ペガシオンの技を繰り出す。高速でのダッシュから、それ以上の力で逆方向に力をかけ急停止。
その差で巻き起こった風はディノレクスを襲い、竜巻を生成する。
「な…なんだあぁあ!?」
風がディノレクスを巻き上げ彼の体を刻みつけながら天井へ叩きつける。
「おぁああああああああああああああ!」
ディノレクス自身が炎になっていった。
「……現在までで技は6つ。…この後シャトル作戦に入ったから
ディノレクスとネクロバットの技は見れずじまいね…。エックスの特殊武器は全て見たけれど」
クレッセントショットは三日月型のショット。チャージすると刃がエックスを覆うバリアと化す。
ジェルシェイバーは地面を這う液体窒素。チャージするとエックスは左右に氷のブロックを巻き上げる。
トライサンダーは3方向へ進む電撃。チャージするとエックスの付近に雷が数発落下する。
ウィルレーザーは蛍型の誘導弾。チャージするとエックスの胴をすっぽり覆うほどの極太レーザーを腕から発射する。
ウィングスパイラルはエックスを中心として発生する竜巻。チャージすると敵へと走る巨大竜巻を発生させる。
スパイクロープはエックスの近くにトゲの球を撃ち出す。チャージすると辺りを跳ね回る紫色のトゲの球に変化する。
グランドファイアは地面に残り、炎を散らし続ける火炎弾。チャージするとエックスの左右からマグマの津波が発生する。
そして、ダークホールドは時間停止。
「…………」
続けてミッション中の様子をチェックする。
「…これは!?」
ゼロのエネルギーが一気に上昇していく時があった。
ホタルニクス研究所でゼロがウイルスにかかったときである。
「…信じられない」
エックスでさえ、ウイルスを浴び続けることで少しずつ衰弱していったというのにだ。
「………………嘘」
ウイルスを食らうほどに戦闘力を増したゼロは…とうとう、ウイルスに完全に感染した瞬間…。
…思い出すのはそこまでにしておこう。
もうすぐ待ち合わせの時間がやってくる。
-
「……………」
エックスの足音が聞こえて来た。
「…どうしたんだい、エイリア。」
来た。まずはエイリアから言うべきことを話す。
「…エックス。貴方は…止めたいのよね、ゼロを」
「ああ。危険な場所に行くというのならね。
…その場所に一体何があるか…解らないけど」
「…そう。」
後ろめたげにエイリアは視線を逸らして言う。
「……なんとしてでも止めたい?」
「…勿論。」
背を向けて話す。
「………結論から言うわ
ゼロを話し合いで止めることはもう不可能だと思うわ」
「………そうか」
「彼は……、多分しては行けないことに手を染めようとしている。
…一切の通信を途絶えて姿を消したことからも…その危険さも解った上であることは明白。
そしてそう彼を突き動かしているのは多分とても強い感情だと思う。」
夕焼け空に風が吹き抜ける。エイリアはエックスに…いつぞやの言葉と同じことを告げなければならなくなった。
「………戦えるの、仲間と」
「…ああ」
「…勝てるの、本気のゼロに」
そして彼はその時と同じように、しかし言葉を変えて返す。
「ゼロにはいなくなって欲しくない。…やらなきゃ。」
その目はとても強かった。
エイリアはエックスに近づき、その掌にそっと何かを握らせた。
「………これは?」
「…DNAデータよ。3種類のDNAデータが…その中に入ってる。
レプリフォース大戦時に戦ったレプリロイド達の中からね」
「………どうして?」
「あなたとゼロは…互角な強さを手に入れていると私は思う。
けど、貴方達が直接戦うのなら話は変わってくる。誰しも相性がある…」
自分がオペレートしたハンターだからこそ、穴が見えるのだ。
「残念ながら貴方とゼロとでは、ゼロに分があると言える。
…ゼロの戦闘パターンを見た結果から言うとね。」
「……そうか」
「…これを、何処で手に入れたと思う?」
「…解らない。」
毎回、イレギュラーから手に入れたDNAデータはハンター上層部が保管、
もしくは処分してしまうからだ。
-
エイリアはエックスの掌を見つめ呟く。
「…アイリスのデスクよ。」
「!?」
「貴方達をオペレートした彼女はイレギュラー認定されたから、
彼女の私物はダブルと同じように私が処分を任されたの。」
「……もっとも、その認定も今では解けているから、私は問題なくそれに触れられるのだけど」
「…アイリスが……」
「ゼロは彼女の死から自分を見失いかけ…新しい、危険な自分へ生まれ変わろうとしている。
彼女が生きていたら…そんなことを望むと思う?」
「…それもそうだな」
「そのDNAは、一つだけ私が手を加えてあるの。特殊武器がより実用的なものになっているはずよ」
正直、それでもゼロに勝てる見込みは薄い。
「ゼロに戻ってきて欲しい、これはハンター皆の願い。
ゼロに死なないで欲しい、これはアイリスも願うことだと思う
貴方に死なないで欲しい、これは私が願っている
貴方に勝って欲しい、これは貴方の製作者が望んでいるでしょう
みんなの願いを背負って明日…貴方は行くのよ。
だから」
最後の一押しを喉の底から声を張り上げる。
「勝つのよ、エックス!」
エックスは昔から任務成功のときにするように…力いっぱいに拳を振り上げる。
「……ああ!」
エイリアは安心した微笑みを向ける。
……そして振り返ることなく、エックスは階段を降りていった。
「…………。」
…エイリアの笑顔は一瞬で暗くなる。
エックスは強くなったはずなのに…自分はエックスがシグマとの初めての戦いに向かうときには、
あれほど安心して任せていたというのにだ。
「DNAデータの任務外所持、そして改造。…法規を忘れたか」
影で話を聞いていたシグナスが現れる。
「………。」
「いい、今回は事が事だ。…今回だけは見逃してやろう。
ハンターの信頼など、今回の件で地に落ちただろうしな」
そして翌朝。
そのポイントへの転送がエイリアの手で行われる。
「………。」
エイリアの目が何を言わんとするか、エックスにだって流石に理解できる。
「………」
不自然なまでに笑ってエックスは消えていった。
-
やってきた決戦の地……
そこは大きく開けた穴。
ファルコンアーマーのフリームーブで内部へと飛行していく。
「………これは」
異様な光景が広がっていた。物理的に地面に開いただけの穴の中に、
地面を構成する土から別世界が繋がり、開けているのだ。
どこまでもどこまでも続く青い空間にヘキサゴンパネルが浮かび、光が行き交い、
透明な床の中にはまるで何かの回路のように光のラインが走っている。
零空間 表層『起源』
この層では下へと降りていくこととなる。
メカニロイドを撃破し、下へ行くと……
「レーザーのトラップか…!」
貫くレーザーではない。当たったものを消滅させる特殊なレーザー装置のようだった。
消されるわけにはいかない。
エックスはひたすら空間を下へと落ちていく。
インターバルとなるフロアで待ち受けていたのはライドアーマー。
盾を構えたライドアーマー『イーグルG』だった。
ファルコンアーマーを使いそれを倒して更に下へと落ちる道を見つける。
「レーザーの雨………」
食らえば恐らく一撃。…確実にこれを回避するためには………
…エックスには何故かすぐにその方法が解った。
「ダークホールド!」
ネクロバットの能力を使用する。
全ての動きが止まった世界をひたすら下へと降りていく。
無数のレーザー砲が自分に向けられているのが解る。
これを一斉に発射されたら危険だっただろう。
途中で特殊武器のエネルギーを取り更に下へ………。
どうやら壁のレーザー地帯は超えたようだ。扉が見えるので今度は横へと進むことになる。
「しまった!!」
天井からレーザーが発射される。今度は床から。
跳ぶ、潜るを繰り返し、逃げるように扉を潜った。
「………色が、消えた」
空間から青色が抜けていくのが解る。
変わって背後にノイズのかかった映像が映し出される。
何かのマークのように見えるが…確認は不能。
その瞬間。
「!!」
黒い塊がどこからか飛来してくる。
「何だ…一体」
飛来した塊は部屋の向こう側で停止していく。
1,2,3,4,5個……
16個目を避けたところで塊は床へ落ち…溶ける。シーフォースやダブルのような流体金属製のようだ。
塊は持ち上がり、球体に変化する。
球体から手足が生え…目玉が出現した。
「ぶも!」
-
「な…なんだ?」
それは、この時代の人間が知らないある悪の科学者の代表作、イエローデビルの生き写し。
シャドーデビルだった。
目玉からエネルギー弾を発射する。
エックスは本能的に特殊武器を選択、
「トライサンダー!」
敵を狙い撃つ。
「ぶもおおおおおお!」
「よし!」
全体がひどく感電する。…どうやら武器の選択は最善であったようだ。何故だろう。
シャドーデビルは目を閉じ溶け、またも16個のブロックへ変化し、エックスを追い始める。
否。これはシャドーデビルにとって移動でしかないのだろう。
ランダムなその移動を避けるとまた溶け、球になり、目玉を出し攻撃を始める。
このパターンを繰り返すらしい。
これなら勝利も近い…そう思ったがそうも行かないらしい。
シャドーデビルの移動が8個目に差し掛かり、左右同数になったとき、変化が起きた。
「!!」
「ぶもっ!も!も!も!も!も!」
8個のブロックが左右から次々に入れ替わり続けるではないか。
移動距離は短く、左右両方から飛んでくる。回避は困難なものとなる。
何とか…何とかかわしつつ、そのパターンを終えたシャドーデビルは残りの8個も移動し、
体を生成する。
大分削ったが、まだ戦いは終わらない。
また左右のパターンが来られたら危険と、エックスは部屋の隅の隅、天井近くの壁をけり続ける。
何とか全てをかわし終わった…と思ったら。
「ぶもももももも…」
シャドーデビルは何と球体からいつもの姿になるのではなく、何かドクロ型の目立つ何かに変化したのだった。
「………何だ?…これ」
大きくすれば搭乗用マシンのように見えなくもない。
目を開き、影は重量を増し、飛び上がりエックスを踏みつけてくる。
…隙だらけだ。
エックスはチャージを行い…
「チャージ・トライサンダー!」
雷をシャドーデビルへ向け落とす。
1発、2発、3発。
上から下へと貫く電撃の槍がシャドーデビルを貫通し、そして。
「ぶもぉお…も…」
蘇りし悪魔は大爆発を起こし、文字通りに散っていったのだった。
「……この先に進むんだな」
ファルコンアーマーは機能を果たし、外れた。
ガイアアーマーを装着し、彼は果てない世界を進み続ける。 振り返らずに。
-
「………何なんだ、この空間は…」
色が先ほどの青からうってかわって、紫色へと変化する。
ライドアーマー・イーグルGが大量に配備された先は崖。
それより驚いたのは、エックスはこれから「上」へと進まなければならないこと。
零空間 中層『哀愁』
…この地形はどこかで見たことがある…
ライドアーマーを倒しながら進むと、底なしの空間の中をリフトが浮遊している。
「…………」
…耳を澄ませてみる。…波の音が聞こえる。擬似的に作り出されたものだとは解りつつ。
…波、崖、大量のリフト、進む方向は上。
「…この場所は。」
……まさかと思いつつも、空中戦に向かぬ体でリフトを乗り継ぎ、入り口へと到達。
そこには狭い通路にイレギュラーが犇き合っていた。
…いや、忘れもしない。 場所やその構成物体こそ完全に零空間であるが、
ここが再現している場所はひとつ。
はじめにシグマが居た、海上のシグマのアジトだ。
もう少し進めばそこでゼロと別れ、VAVAを倒したあの場所がある。
「……?」
エックスの見当違いだったのか。記憶にないフロアがそこに続いていた。
大きな縦穴に、壁に張り付くメカニロイドが多数。
一体これは何なのか…?
…いや、もしかすると別の場所との混合なのかもしれない。
数分前。ゼロはこの通路を通過していた。
「………シグマのアジトが途切れたと思ったら。」
この縦穴が意味するところは一つだ。…カーネルが待ち受けていた、宇宙港。
「ここでカーネルを殺していなければ、あんなことにはならなかった…。」
ゼロは自らの記憶の地を通って、先へと進んでいった。
そうとは知らず、エックスはフロアを上へと進む。
最上階と思しき場所に何か、扉がある。また何かが待ち受けているのだろうか。
潜った扉が閉まると、また色が抜ける。
先へと進むとそこには………
「…嫌な文字まで復元したものだな」
「Σ」のマーク。
そしてゆっくりと空間はマークを遮る何かを構成していく。
「……懐かしいな」
-
巨大な顔がそこに現れた。ランダ・バンダと呼ばれる巨大な壁画のメカニロイド。
両目と鼻とがターゲットへと次々に攻撃を仕掛けてくるものだ。
今回は鼻の代わりに…太陽のような口の模様が見て取れる。
新たなるランダ・バンダ… ランダ・バンダWがこの層でエックスを阻んだ。
「青は突進!」
青き目が飛び出し、エックスを追う。
「緑は攻撃だったな」
緑色の目は強化されていた。エネルギー弾が恐るべき勢いでマシンガンの如く連射される。
「赤は両方…あれ?」
赤い目もそのときのようには行かない。
エックスを追いながら炎を左右から出し、ぐるりぐるりと回転させていく。
だがもうエックスの敵ではない。目を攻撃していく。
若草色のチャージショットが青、緑の目を破壊した。だが…。
「両目を倒してもまだ目が出てくる!?」
このメカニロイドは変化していた。色の変化する両目と鼻というパーツではなく、
3色の目と口が入れ替わり攻撃をするというスタイルに。
トゲが下から生成され、壁が狭まってくる。
「何…?」
狭まった壁からもトゲが出現。…これはガイアアーマーの能力に助けられた。
口が自由自在に蠢く。
エックスはこれをかわし、口を攻撃。
壁が元に戻り、再び目の攻撃だ。
「来た!」
赤い目が飛び出してきた。
そして炎の柱を作り、エックスを焼こうと回転してくる。
チャージショットで難なくこれを破壊。
壁が狭まり、口が動く。…もうこれでトドメだ。
エックスは左腕に全エネルギーを集中させ…
「はぁあああああ!」
ガイアアーマー最大の攻撃を口にぶつける。
掌からチャージショットとは比にならないほどの圧縮エネルギーを発し、エックスの目前の敵を押し潰すのだ。
太陽のような形をした口は大地のエネルギーにより圧壊。
そしてランダ・バンダW自体が崩壊、そして開いた穴がそのまま戦いの場への扉になった。
「…………ゼロ」
ただただ、深く……。
最後の戦いが、目前に迫ろうとしていた。
-
今度の色は赤。
目が痛くなるような真っ赤な赤が空間を支配していた……
先へ進まんとするものを拒むような、針だらけの通路は下り坂に…
ずっと下へ、下へとのびていた。
その先に待つのはきっと。
零空間・深層『覚醒』
…ガイアアーマーすら効力を成さなくなってしまった。
もう、自分の力で進むしかない。
青きボディのエックスはメットールを倒し、下の層へとどんどん下っていく。
大きな谷が開ける。底なしの谷だ。
ロープをハンガーを使い伝って、対岸へと渡りきる。
そして先へと進むにつれ、不安定になっていくのだ。
…何かの反応が下にある。
そこに何が…?
…あったのはカプセルだった。勿論待っていたのはライト博士。
「エックス。…アーマーも着けずにこんな所までやってきたのか」
「…すみません。もう、引き返す訳にはいかないんです」
ライト博士は肩をすくめる。
「……すまないな、こんな運命に巻き込んでしまって。
…この先で待ち受ける戦いは今までのどんな戦いより過酷なものとなるだろう。」
「もう、エイリアに言われましたよ…そういうことは。」
「…そうか。…お前にはもう、勝ってもらうしかないな」
生みの親の言葉を貰った。これからの戦いに、エックスは気を引き締めなおす。
「…ここではお前に授けるのはとても危険なものだ。」
「…それは一体?」
ライト博士はとうとう、その名を口にした。
「…『アルティメット・アーマー』
私がお前に託したその、無限の力を全て引き出す事の出来る…
究極のアーマーだ」
「…………!」
「それは、余りにも危険な力であり…お前にとっても危険なはずの力だった。
だがお前は、随分と経験を積んだ。フォースアーマーを使いこなせるようになった事が
このアーマーを装着できることの一つの証だったのだ」
「つまり…そのアーマーを最終的に装備するためにこれまでのアーマーはあったと?」
「ファルコンアーマーやガイアアーマーは違う。
あれはお前の能力を一定方向に進化させるためのものだ。
…さあ。エックス、このアーマーを…。 戦いを、終わらせるのじゃ」
「………はい」
カプセルの中へと足を踏み入れる。
光がエックスを包み…雷が落ち、エックスの全身へとその光が打ち込まれた。
エックスの脳に、アルティメットアーマーを使いこなすための知識は全て焼き付けられた。
「……行こう」
最後の力を手に、エックスはいよいよ最後の一本道を走り出した。
リフトを飛び移り、途中から壊れたリフトを設置することで引き返せない仕組みになっているその地帯を抜け。
扉を潜ると色が抜け落ちる………。
3度目だ。
長い長い通路を走る。走り続け………
扉を…、開けた。
背を向けた彼がいた。
「ゼロ!!」
-
「………エックスか。」
背を向けたまま話す。
とうとう目の前に現れたゼロにエックスは言葉を続ける。
「やっと見つけた…」
「…エックスか。どうしてここに来た。
俺は…この先へ進まなければならないんだ」
エックスは一歩踏み込む。
「まだ言っているのか!?
…この空間は危険すぎる。…戻ろうよ、ゼロ!」
ゼロが振り返る。
「危険はあいにく慣れているものでな。…お前こそ帰れ。
そんなアーマーのない体でこんなウイルスまみれの場所を先へ進めると思うなよ」
エックスは近くにいながら、遠くなりつつあるゼロを追う様に言葉を投げ続ける。
「……どうして、どうしてこんな所に来た
こんな所に一体ゼロの求める何があるっていうんだ!?」
「…………。」
「答えてくれ!」
「この先に、俺の求める何かがある。
…俺の記憶が、そう告げている。…こんな空間だから違うかもしれないが…
お前も辿ってきたんじゃないのか? …記憶が作った道を」
ゼロには、エックスの知らない『起源』部分の記憶すらもあった。
「………この先でどうなろうと、俺は先へ進ませてもらう。
…俺を信じろ」
「…ゼロのことは信じたいさ。
けど…ゼロの言葉を信じているからこそ言いたい。」
「この世には、目で見たり、データでは捉えられないものがある。
…そう言ったのは、ゼロ。君だよね」
女神像でのシグマとの戦いのときの言葉だ。
「………俺は、この先から…
とても強い、悪を感じるんだ。………俺には、その悪にゼロが包まれる予感しかしないんだ!」
ゼロがセイバーを設置した背に手を添える。
「………俺を、どうするつもりだ」
エックスがバスターに手を添える。
「決まってるだろう」
「……そうか」
セイバーを抜く。
「俺はダブルとの戦いで、もう懲りたんだよ…仲間を失いたくないんだ!」
両腕に力を込め、踏ん張る。
「俺はアイリスとの戦いで、もう俺という存在をハッキリさせたくなったんだ!」
セイバーが空間を切るかのように刃を走らせる。
「こんな事で戦いたくはなかったが…。」
「この先は俺が戦う。君を連れ戻す…力づくでも!!」
手を顔の前でクロスさせる。
ゼロには解った。これはエックスがいつもミッション開始時にアーマーを自動装着するときのポーズだと。
ゼロは構える。
「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
轟音と共に空気が振動する。エックスを中心に。
エネルギーが全てエックスに集中する……究極のレプリロイドがまた、ゼロを止めに来たのだ。
目を閉じる、そして。
「はああああああああああ!!!」
3方に伸びる額の角。突き出た肩。バスターの左右端と両脚に機械翼が現れる。
エックスの最終形態……これが、アルティメットアーマーだ。
戦いの場に巨大な「W」の文字が浮かぶ。
究極のレプリロイド二人の戦いが、今…始まった。
-
いよいよ戦いが始まった。
…100年の因縁が運命づけたこの戦いが。
「行くぞゼロ!」
エネルギーチャージ。力をバスターへと込め続け…
「行けええええ!」
チャージショットを放つ。フォースアーマーでも使われたプラズマチャージショットの…
強化された姿だ。
「フンッ!」
ゼロは紫色のセイバーで斬る。
「はぁっ!」
「甘い」
高い硬度を持つアルティメットアーマーでのダッシュと、
ゼロがマッコイーンから手に入れた力飛水翔。
二つのボディが激しく接触、交差する。
「エイリアから貰った力だ!!」
チャージして放つはソウルボディ。
「お前…!?その色は」
エックスが持っている筈はない。これはレプリフォース大戦でゼロが破ったマッシュラムの能力だからだ。
「行け!!」
エックスの体から、エックスのシルエットがバスター以上の速度で射出される。
こんな技は以前のソウルボディにはない。
1発、2発、3発、4発…避けるが5発目。
「ぐぁああああ!!!」
「当てた!」
エックスは続けてもう一度ソウルボディを放つ。
1発、2発、3発…だが。
「同じ手は食らわんぞエックス!」
三日月斬。巨大な円を描き、三日月の刃がエックスを切り裂く。
「うぁああああああああ!」
「くっ……」
だがダメージを与えることは出来た。…合い打ちだ。
「食らえ!」
チャージショットを今度はダッシュし、加速力で更に破壊力を増し放つ。
「双幻夢!」
ローズレッドの力。ゼロの隣にゼロのシルエットが登場、エックスを切り裂く。…ソウルボディと同系統の能力だ。
「うっ… だが!」
「疾風!」
ペガシオンから得たゼロの攻撃を回避しそのままエックスは壁を蹴る。
そして壁を勢い良く蹴り…宙を大きく舞う。このパターンは一度目の戦いで学習した方法。
そしてゼロの背後に着地し…
「行け!!」
「何!?」
零距離でのプラズマチャージがゼロを吹き飛ばす。
「クソッ…」
もう一度、エックスは壁を蹴る。
大きく宙を舞う。そして今度は更に加速して撃つ…だが。
「はあああああああ!」
ゼロはプラズマチャージを斬り、そのままクラーケンから得た電刃でエックスを斬り上げた。
「うぅうう…!」
-
「断地炎!」
そのままセイバーを空中で持ち替え、ディノレクスから得た力でセイバーに灼熱を纏わせて落下する。
エックスの肩を貫くべく。
「ダブルサイクロン!」
フクロウルから得た力だ。エックスは左右の腕から何者をも刻む竜巻を発生させ…ゼロを吹き飛ばし、切り刻む。
「くそっ………!」
壁へと吹き飛ばされる。
そしてエックスはチャージ・ソウルボディへと繋げる。
この攻撃はゼロには反撃不可。その上攻撃力も高く範囲も広い。戦いにおいて幅広く使える。…エイリアの改造の力だ。
だが。
1発、2発、3発、4発…
5発目を避けると同時にまたもゼロは今度は異なる技を用いた。
「滅閃光!!」
ホタルニクスから得た技だ。エネルギーを持った拳を床へたたきつけ、暗黒のエネルギーを放射する。
「うぁああ…!!」
そしてゼロもまた新たなる力を解放した。
…ウイルスの力か、何故かはわからないが。
今まで以上の力が、ゼロにあふれ出てきたのだ。
「バスター…!? まさか!」
そのまさかだった。
封印していた腕のバスターを解き放つとゼロはいつかのように一切のチャージ無しで
チャージショットを二発連続で撃つ。
トリプルチャージだ…!
だがチャージショットが片腕1発づつの2発ではない…と思ったら。
「電刃零!」
電刃の強化版。バスターを一切通さない刃がゼロの一振りで放たれ、エックスを裂く。
「んなっ……!?」
オイルがほとばしるが、ゼロはまたトリプルチャージを放つ。
エックスは学んでいる。この攻撃の回避法を。…壁へ逃げれば上までは刃は追ってこない。
だが…電刃零は違った。180度ほぼどの方向にでも刃を飛ばせるのだ。
またもエックスは刃の餌食となり、床へと落とされる。
「まだまだ…!」
新たな力を得たゼロがダッシュで近づいてくる。
エックスはこれを飛び越そうとするが…
「真…!滅閃光!」
その瞬間、ゼロの拳に圧倒的な力が集中した。
何もかもが吸い寄せられるような、闇の力が腕に集まる…そして叩き付けた。
床一面が爆発する。空間そのものを破壊しかねない大地震が巻き起こる。
エネルギーは一つ一つがチャージショット以上の威力を持ち、許容量を超えた地面から放射される。
「……………………………!」
口を開けたまま、叫び声すらも轟音にかき消され、エックスの体が軽々と宙へと巻き上がる。
最強のアーマーを持ってしても、この程度だというのか…。
…一方その頃。
ハンターベースでエイリアはエックスの帰還を信じ待つ傍ら、ケイン博士の言葉を思い出していた。
…彼がエックスを見つけたときのメッセージだ。
カプセルの埃を払うとそこには一文字…『X』。
「私はトーマスライト…ロックマンエックスを設計・開発した科学者である。
これは、人間のように悩み、考えることの出来る新しいロボットである。
私の命は残念ながら長くはない。また、研究を引き継いでくれる者もいない。
そこで、彼の安全性を確かめるカプセルをここに置いておくことにする。
悩み、考えることが出来るということは…彼は進化の可能性を秘めていることを意味する。
彼には無限の可能性が満ちている。だが…エックスには危険という意味もある。
エックスは無限の可能性と共に、無限の危険性をも秘めているのだ…」
ライト博士が託した無限の可能性のロボットが…本来の力を以て今戦いを続け……
その余りある危険な力をここに解放した。
「うぉおおおおおお…おああああああああああああああ!!」
エックスが再び雄たけびをあげる。
「!?」
-
セイバーを構える。ゼロもこの攻撃は避けきれないと判断したようだ。
エックス最大の攻撃…それはゼロにも予想がついていた。
「ノヴァストライクか!」
エックスは大きく跳び…
その体をアーマーごと変化させた。…翼を中心に、推進力へと機能全てを集中させた飛行形態に。
そして…
更なる力を持ったノヴァストライクが放たれる。
エックス自身が光と化し、捉えられない速さでゼロへと向かっていったのだ。
「ぬああああっ…!!!」
ゼロの回避は遅れ、正面衝突を逃れ、わき腹を抉られ…横に吹き飛ぶ。
「ああああああああああああああああああああ!」
「!?」
驚愕した。…がそれもすでに遅し。
エックスは反対側からゼロへともう一発ノヴァストライクを放っていたのだ。
…一撃必殺のこの技が…どうして。
そう思ったときにも遅い。
背中をエックスに追突され、壁へと叩きつけられたゼロを、そのまま引き剥がし3発目のノヴァストライクを放っていたのだ。
腹へと真っ直ぐに突き刺さるエックスの体。
反対側の壁へと一直線に叩きつけられる。並みのレプリロイドならば貫かれていた所だ。
「終わりだぁあああああああああああ!」
飛びあがり…最後の技を放つ。
エックス最強の特殊武器攻撃、フロストタワー・チャージ。
側面からの攻撃の後は、脳天から氷をぶつけ、ゼロの動きを止めるのだ。
まず一つ。
…ゼロはそれを避ける。
次に二つ。
また数を増やし、真っ白で冷たい刃はゼロの頭上へと降り注ぐ……
ゼロは戦闘力を増強する能力も使い果たし、よろけた体で…
なけなしの最後の一撃を放ったのだった。
「滅閃光!!」
天から降り注ぐエックスの攻撃。
地から吹き上げるゼロの攻撃。
…相手を貫いたのは………
ゼロだった。
「……………!」
エックスの体は床へと堕ち………
大爆発を起こす。アルティメットアーマーの最期だ。
全てが閃光に包まれ……巨大な爆発に包まれる。
真っ白な光が何もかもを覆い尽くした………
その時。
「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「…………!!」
言葉も出ない。力を使い切ったゼロに、エックスが向かってきたではないか。…実体を持たない、魂だけで。
ライト博士からの願い。
ハンターの皆からの願い。
アイリスが遺した願い。
そして、エックスからの心そのものが……
エイリアから託されたソウルボディの最後の機能となってゼロを貫いていったのだ。
「……………最後の最後にソウルボディ…か …流石だな…エックス」
-
「…う……うう…」
「ゼロ………」
二人揃って零空間の深層に倒れている。
体が一切動かない………
力を使い果たしていたのだ。
だが…ゼロはここでようやく理解した。
こうまでしてエックス達は自分を止めに来たのだ……
本当の自分がどうであれ…帰るべき仲間はいるのだと。
ゼロは…自分が先へ進むより大事なことを知った。
…この戦いは、ゼロの敗北だった。…エックスは勝ったのだ。
そう、思った瞬間だ。
「ゼロ、残念だよ もう少しで真の姿に目覚められると思っていたのに
…だが、お前達はよくやった……
今殺してやる!」
謎の声がこだまする。そして腕から謎の力を放ち二人を殺そうと……
その時。
ゼロが起き上がり、真横へと一直線に跳んだ。
「お前の企みなんぞ、お見通しなんだよ!!」
チャージショットをその腕から放ち…敵の攻撃を相殺する。
…そう。シグマだ。
「しぶとい奴だ……まぁいい。この先で待っているぞ…!」
シグマは姿を消す。
…エックスは起き上がらない。
もう、全ての決着をつけよう。
自分の命が、あとわずかであっても。
…満身創痍のゼロは全てを決意し、前へと進み始めた。
何もない小さな足場から飛び降りる。
辺りはさっきまでと打って変わり、広大なフィールドに広大な情報の海が広がっていた。
零空間 最深層『生誕』
深く深く…どんどん潜っていくとそこには8つのカプセル。
エックスとゼロの記憶が作り出した8つの幻を倒し、先へと進む。
データの海を転がるはプログラムの魔物。
これらをうち倒し、プログラムの世界をゼロはひたすら進んでいく。
もう、迷うことはない。悩むこともない。
…例え滅んだ世界でも。
例えエックスのしてくれたことを無に帰そうとも。
……ゼロは命をかけて守るべきだと思った。エックスが創り出すこれからの世界を。
-
地は続かず、大きく隔たれた谷をブロックに乗り継ぎながら……
最後の扉を潜る。色が抜ける。
進んでいくとそこには壁がびっしりと、コンピュータの基盤に変化していった。
そして………最後の戦いの場へとたどり着いた。
床にはケーブル、赤と、青のカプセル、
基盤をバックに描かれるは二人のレプリロイドの設計図。
そこは…はじまりの部屋だった。
「よく来たな、ゼロ」
「…下らないウイルス遊びに、決着をつけに来た。」
「下らないか…ククク…全く愚かな奴よ」
「何故お前はコロニーを落とした…」
「知れたことだ。ウイルスにより…お前の体を清めようとしたのだよ。
俗世にまみれ、正義などという甘い理想に漬かってしまったお前を、
再び無二の破壊神に戻すためにな!」
「…そんなことのために…そんなことのために世界をあんなにしたのか!」
「エックスにも言ったよ、犠牲のない進化など、この世にはないとな!!
…さあ、まだチャンスはあるぞ、ゼロ。
私がどれほどの命を犠牲にしてこの計画を練ったと思う…?無駄にはするな…。」
シグマが叫ぶ。
「最強の力を呼び覚ませ!!今覚醒せねばお前は死ぬぞ!!」
ゼロはそれより大事なものがある。
「知ったことか。」
「ええい…ならばここで死ぬがよい、ゼロ!」
シグマのボディを三日月斬で切り刻む。シグマのボディが爆発する。
…そして、辺りが暗くなる。
「…シグマ。どこだ…?姿を現せ」
「…焦らずとも近くにいるぞ?ゼロよ……」
暗闇が晴れるとそこにいたのは…
巨大ロボの姿をした…シグマだった。 ゼロの目の前に、ゼロの身長の5倍はあろうかという顔があった。
半分データ化したその頭はそのままに、巨大なボディを纏ったシグマが話を始める。
「実は…今回、よき理解者、協力者がいてな…色々、手伝ってくれたのだよ。
実に頼もしい仲間…いや、同志だった。」
零空間に響き渡る声は彼の耳にも届いていた。
「過去に数え切れないほどの『ロボット』を作ったらしく…
今お前に見せているこのボディも作ってくれた」
息を切らしながら、ゼロは耳障りなシグマを睨み付ける。
「まぁお前なら知っているだろう」
「…誰だ?それは」
豪快に笑う。
「ハハハ…とぼけなくてもいいのだぞ? お前なら確か…夢でよく会うはずだ。
聞かないかね、奴を殺せと」
「知らん…知らん!」
ゼロの背筋が凍る。
「そう、私以外に、居たのだよ… エックスを憎む者が。
…彼は、お前のことを大層気に入っていてな。」
空間の片隅で、老人がニヤリと口元を歪める。
「お前のこと、随分入れ込んでいたようだぞ…?
……そう、
…まるで…」
シグマの狂気の笑いが最高潮に達する。
「生みの親のようになぁああああああああああああ!!!!」
「黙れぇぇ!!これで終わりにしてやる、シグマ!」
-
「…ゼロ……!? ゼロ!」
シグマの爆発から暫くして、エックスがゼロの元へ駆けつけた。
体は上半身だけ。爆発の衝撃で吹き飛んだらしい。
「ゼロ、ゼロ…!しっかりしてくれ、目を開けてくれ…!」
ゼロの上半身を揺さぶる。
だが。
「シ……シネェ………」
ふと見ると背後には、瓦礫の集まりがあった…それは瓦礫で骸骨のような一つの顔を形成している。
「…シグマ」
認識したが遅し。
口からビームを放ち…エックスの腹が貫かれた。
「…がはっ……!!」
ゼロが最後の力を振り絞り…目を覚まし……
「…全く、しつこい…奴だぜ………」
チャージショット。シグマへと最後の一撃を見舞った。
…エックスは倒れた。
だが、傷が浅い。自然に修復する範囲と見ていいだろう。
ゼロは…。
「………最後まで、甘さが出たな…エックス。
…俺は最後まで…迷惑をかけて、すまなかった…。」
最後の一言を…エックスへと遺す。
「…エックス。お前は………い…生きろ……」
目を閉じる。
……いよいよ、ゼロがあの世へ旅立つときがやってきた。
-
「…!? シグマ…?」
死の寸前に記憶データが暴走。過去の映像を再生し始める。
…それは人間が、死の前に走馬灯のように人生が巡るのと同じように。
「…俺の昔の戦い…か」
続けて……世界を背に高笑いを浮かべる老人の姿。
「…コイツは…これが……シグマに協力した…俺の…」
…その次は…製作途中の自分自身。
「…俺…か やはり…俺は奴に作られたのか………
……お前は一体…何を…?」
『ロボット破壊プログラム』。
それが…ゼロウイルスの正体だった。
全てのウイルスの根源が自分であると…ここで漸く彼は知ったのだ。
その次は。
「……………。」
言葉が出ない。
……アイリスの笑顔だった。
「…アイリス……… 俺は……」
かける言葉が見つからない。
ただただ…感情が湧き出て止まらなくなる。最期のときになって…
「…すまないエックス。
俺は…やはり死ななきゃならない。…これでいい。…全部……これで終わるんだ」
ゼロの視界は…闇に包まれていった。
「おい、エックスだ!エックスが帰ってきたぞーーー!」
「…驚いたものですな」
「イレギュラーハンター・エックス。よく無事に帰ってきた!」
ダグラス、ライフセーバー…そして改まったシグナス。
「……みんな」
皆が彼を出迎える。
「………エックス!」
エイリアは彼にゆっくりと近づいた。
彼女は彼が戻ることは信じていたから。
「………ご…ごめん、俺……俺っ…」
今にも泣き出しそうな声のエックス。レプリロイドだから…泣けないのだが。
手には…形見のゼットセイバー。
…その様子を見て、歓喜のエイリアの表情が…崩れていった。
一度失って…もう一度やっと蘇ってくれたゼロを…今度は自分との戦いの末に失ってしまった。
また一つ、エックスが大きな悲しみを背負ってしまったのだ。
手にはセイバーが握られている。強く…強く。
……彼が持つ意思は…強かった。
-
零空間は消滅、辺りはただの砂漠へと戻っていった。
白い影に、黒い影が近づく。
「やーれやれ。派手にやっちゃったもんだなぁ 面白かったと思うのになー」
歩いていた老人は立ち止まる。
「フン、ダイナモか。お前さん生きておったのか」
「わかってないなー。俺だってしぶといんだぜ?アンタには到底及ばないけど。
…で?どの辺りにいるのかなー。シグマの旦那とゼロの旦那は」
靴音を響かせて老人が彼に近づく。
「……ゼロ。改善すべき点は多々あるようじゃが……
ワシはこれでも満足しておるぞ。
アルティメットアーマーを使ったエックスに覚醒しないお前が勝利したのだからな。
…正直ライトの奴もアレを持ち出すとは思っていなかったわい」
気がつけば、シグマも、エックスもゼロも…いつしか、二人の科学者の戦いに巻き込まれていたのだ。
「不意打ちにも屈せず最後に立ち、余力であれほどの力を見せてくれたのだから。
覚醒すれば今とは比較にならない力になっていたじゃろうがな…。
……まぁいい」
白衣を翻す。
「ワシを追いたければ、追うがよい。
そこから自力で蘇ってこそ、世界最強のロボットじゃ……」
続けてシグマの元へ。
「すみませんな、ワシの発明は未完成なのは昔からでしたなぁ……」
転がるシグマの首を見下ろし、老人は話す。
「…また蘇ったら私の所に来てくだされ、またお力になりましょうぞ。ハハハハハハハ!」
それはまたすぐのことだろうと、理解しながら。
「アイ…ゾック………!」
こうして、世界の裏で蠢く悪は、再び闇へと帰って行った。
一方、ハンターベース。
「エックス。イレギュラー事件の発生だ、直ちに向かってくれ」
セイバーを振り続けるエックスに向かいシグナスが直に指令を伝える。
「ダメよシグナス。今エックスは忙しいんだから。
今日は訓練だけで、後は休養させて頂戴」
「いや、有難うエイリア。でも、いいよ 俺がゼロを引き繋がなきゃ……」
「……そう。」
エックスはセイバーを片手に、駆け出していった。
「エイリア、お前さ。最近エックスに少し甘いんじゃないの?」
「…そうだな。先日の違反の件を挙げるわけではないが…」
「え?…そんなことないわよ。私はあの人を近くで見ていたから、調子がわかるだけ。」
「へぇ?他に理由でもあるんじゃねえの?」
「な、何よ…それじゃまるで」
自分で言っていて、何かおかしいことに気付く。
「………………も、…もしかして私」
エイリアは漸く気付いた。…暫くの間動きが停止する。
「…え?いや…… ……けれど」
「…気付いてなかったのか…自分でも」
ダグラスは頭を掻く。
「世界が半壊したというのに呑気な娘だ」
シグナスは半ば呆れていた。
「…………そうなのかしら、私。」
-
「一体…何が起こったというんだ?
…コロニー破壊作戦は、成功したと聞いたが」
零空間跡地。
吹き荒れる風の中、一人の青年が立っていた。
「…これでは、失敗したも同然ではないか」
辺りを見回すと、レプリロイドの遺体と思しき鉄片が。
「…一体、どれくらいのレプリロイドや人間が、命を落としたんだろう。
こんな争いが、一体いつまで続くんだろう」
…破片は、何も語ることは出来ない。
あれから3週間。ハンターベースは地球の復興作業に尽力。
地球は、ようやっと地表での活動が出来るまでに汚染が回復していた。
…レプリロイドが起こした災害。
これにより、レプリロイドと人間の種族としての上下が明るみとなった。
レプリロイドという種そのものへの責任。
…人間は、守られる側になり、地下へ避難。
これから、レプリロイドは責任を果たさなければならない。
世界を元に戻すという…責任を。
シグナスは世界各国へと深く謝罪。
しかし、具体的な対策や彼以上の適任者もいなく……
これほどの甚大な被害を蒙りながら、彼は世界から思ったほどの非難を浴びることはなかった。
ライフセーバー達は各地のレプリロイドを保護、手当てして周り
ダグラスは技術力のあるレプリロイドを集め、
エイリアは主に中級以下のハンター達の育成に精を出していた。
「…大型のイレギュラー反応!?貴方達、行ってくれるかしら」
割と腕の立つルーキー達に対処を任せることとした。
「…オイオイエイリア。アイツらだけで大丈夫な相手かよ」
「じゃあ人員を増やせば…」
まどろっこしくなってダグラスは言う。
「ああ、もう。 …エックスを呼べよ。アイツ、今休んでるだろ」
「………でも」
「……アイツを起こしてやりなよ、エックスも流石に喜ぶかもだぞー?」
「…何を…」
ゼロの声が聞こえる。
「…エックス ……エックス!」
霧の中から話しかけるはゼロ。
「……今お前が世界を守らなくてどうするんだ…
目を覚ませ、…エックス!」
「エックス…、 エックス!」
声が変わる。女性の声だ…
「…エイリア。」
回復用カプセルを覗き込むエイリアの姿が。
「…おきて、エックス。
イレギュラーが暴れているの。至急現場へ向かってくれないかしら」
「………ああ、解った。すぐ行くよ」
現場はコロニーの落下地点のすぐそば。廃墟となったビルだった。
「エックス。頑張ってファルコンアーマーを復元してはみたんだけど…
不完全な部分があって、フリームーブは使えないの」
「そうなのか…」
「その代わり、エアダッシュの機能をそのアーマーにつけて、
フリームーブの攻撃力をみたわ。」
「…そうなのか、有難う。オペレーション頼むよ」
セイバーを手に、エックスの久々の戦いが始まった。
スクラップと化したメカニロイドを破壊、廃墟の内部へ。
内部では転がってくる合成金属製の円形物体やブロックをゼロの形見により斬って進む。
ゼットセイバーは彼には使いこなせないらしい。ゼロのような素早い挙動がまるで出来ない。
階段を登り、壁を蹴り…繰り返しながら上のフロアへ。
途中、天井を突き破ってドリル装置がエックスを襲うが、これも回避して先へと進む。
屋上までの通路を繋ぐ扉を開けるとそこには。
-
「え、エックス隊長!来てくださったのですか!」
狭い通路で2人のハンターが息を切らしていた。
片方は歩けなくなり、もう片方が肩を貸している。
「状況報告を頼む」
「奇妙なメカニロイドのイレギュラーが屋上で暴れているんです…
何か、様子が変です……エックス隊長、お願いします!」
「様子が…。 有難う、よくやった。君達は帰還してくれ」
よくやった、という言葉にハンター2人は安堵し、ベースへ帰っていった。
その様子に、エイリアはほんの少し笑顔になった。
「すっかり先輩が板についたわね、エックス。」
「…戦闘の前にからかうのはやめてくれないか…?」
「ごめんなさい、それじゃエックス、準備はいい?」
「ああ。」
屋上の扉を開くとそこには…。
ドスン! …と大きな音を立てて落下してきた大型メカニロイドが。
どこからか現れた球形装置が信号を送ると、それは動き出した。
「…これは!」
「何か嫌な予感がするわね」
大きな動きで空を浮遊し、アームで攻撃したり口からエネルギー弾を発するイレギュラー。
「食らえ!!」
威力自慢のファルコンアーマーのチャージショットを当てる。…効かない。
「…クソッ、このメカニロイドも特殊合金製か!」
続けてゼットセイバー。
「ハァ!」
ゼロの戦い方を思い出しながら、一太刀を浴びせる。
…効かない。
「となると……」
「やっぱりアレを破壊しましょエックス。ゼットセイバーで一気に!」
「了解!」
大きく跳び、ゼットセイバーを体に対し真横に払う。
球形装置は一刀両断…は出来ず。刃がかすめた程度だ。
「これを繰り返せってことだな!」
反対側に現れた球形装置を1発、2発、3発。
…球形装置は真っ二つに叩き切られた。
「…よし!」
メカニロイドが爆発を起こす。任務完了…と思いきや。
完全破壊はならず。そこへと転がっていた。
「…!?」
その瞬間…信じられない光景を目の当たりにした。
どこからか現れた、揺らめく影が剣を目にも止まらぬ抜刀で一刀両断。
靡かせるは灰の長髪。
ボディは淡い紫色…頭部クリスタルは水色。
色は違えど、その影は……
「………ゼロ?」
メカニロイドの爆発が終わると、そこには何もいなかった。
続けて高エネルギー反応を感知する。
「エックス、避けて!」
その場から飛び退くエックス。
空からエックス目掛け、巨大なエネルギー弾が降ってきたのだ。
「……イレギュラーハンターよ。…奴をどうするつもりだ」
黒き巨体のレプリロイドがそこにいた。
-
謎の黒いレプリロイドとの戦いに入る。
襲撃してきた彼に向かい、エックスはチャージショットを浴びせ続ける。
「無駄だ」
相手の攻撃も回避出来るものだが…なかなかの強さを持っていると見える。
…それより、攻撃は効かないとはどういうことなのか。
「食らえ!」
ファルコンアーマーの必殺技、チャージショットの雨で敵を攻撃する。
…が、何も効かず。エックスの攻撃は何一つ彼には通用しなかった。
「こんな事ならアルティメットアーマーを復元するべきだったかしら…」
「…まぁいい。今日はここらで退こう …俺の名は…『ハイマックス』
……次はこうは行かぬ。お前達は奴を悪用するつもりなのだろう、イレギュラーハンター」
何かあらぬ誤解を招いたまま、黒きレプリロイドは宙に浮き、消えていった。
「…何はともあれ、任務完了ね」
「……ゼロの夢を見たと思ったら、まさかあんなものが出てくるなんて。」
…攻撃が一切効かない相手。エックスは、自分の非力さを感じていた。だが…。
「……あれは、幻だったのかな」
メカニロイドの残骸を見ると……
「…私にもよく解らない。エックス、貴方疲れてるのよ。休んだら?
「……私も、寝る。」
エックスに自分がしてあげられるのは、もう休ませることだけなのか。
大切なものを失い、戦いが終わったのに……まだ戦い続けるエックスに。
…エックスだけではなかった。
エイリアは自分の非力さに打ちひしがれながら、眠ることにした。
…こんなことが、前にもあったような気がする。
エックスのオペレート中か… いや、そうではない。
「…少し、先輩に相談してみるのもいいかしら」
翌朝。
エイリアのベッドに何者かが現れる。
「エイリア。起きてくれ、エイリア!」
「…んー…。 …エックス…?」
「ああ、俺だよ、エックスだ。早く起きてくれ!」
「……………え?」
どたばたとアーマーを着用して、歩きながら髪を整えてエックスとエイリアは廊下を歩く。
「え?無名科学者が研究結果を発表するって? ……やだ、もう顔が熱い……」
「そうなんだ。何だか解らないけど」
「エイリアはオペレーターの仕事があるから研究が進まなかったろ?
ハンター自体の身の振り方を考えるためにも聞いておいた方がいいと思って。」
「そ、そう…?あ、有難う… ……あ、先に言っててくれるかしら?あの、私みんなを呼んでくるから」
「……? ああ。解った」
世界へ向けての演説の場はハンターベースの近くだった。
レプリロイドが大勢集まる中、科学者『アイゾック』の演説が始まる。
「地球上に生き残った、レプリロイド諸君!」
「始まったよエイリア!」
-
「諸君らは今、この地球上で不可思議な現象が起こっていることを、ご存知であろうか!」
机の淵を掴み、老人レプリロイドは声をあげる。
「その現象とは、レプリロイドに珍妙な幻を見せる謎の不可思議な現象であるとされている。
それはまるで、人間が見る『悪夢』のようであると、されている!
故に我々はこの現象を、『ナイトメア現象』と呼んでいる。」
ハンターがイレギュラーとの戦いに奔走している間に、そんなことが地球上に起こっていたのか。
エックスは注意深く話を聞くことにした。
「それにかかった者は、何でも 暴走を起こしたり、イレギュラー行為に走ってしまったり、
果ては自殺にまで至ってしまうこともあるとされている…
これは実に恐ろしい現象である。」
…シグマウイルスより性質の悪いそんなものが、今世界を。
アイゾックの口から、信じられない言葉が続けて飛び出した。
「何でも、この現象は……
かの名を馳せた伝説のイレギュラーハンター、『ゼロ』の亡霊が引き起こしているという噂まで立っている。
我々は…それを『ゼロ・ナイトメア』と呼ぶことにした…」
今、エックスは聞き捨てならない言葉を聞いた。
「…ゼロが…ナイトメアの原因?」
エックスは言う。
「…そいつぁちょっと酷いんじゃないかい」
ダグラスも続ける。
「今まで我々を守ってくれた、イレギュラーハンターも、レプリフォースも今となっては最早、壊滅状態。
…我々の手は、是非自分自身で守りたいものである。」
「そこで今、有志を募ろう!我々と共に、恐るべきナイトメア現象に、今こそ立ち向かおうではないか!
このアイゾックは、強く平和を願っている!」
もし、我こそはという勇気ある者は、是非この、8つのエリアへ潜入する8名の調査員の元に来て頂きたい!
尚、調査隊のリーダーとして、この最新レプリロイド『ハイマックス』も参加してもらう。
我々の手で平和を、掴み取ろうではないか!」
「…待っているぞ、諸君!」
……エックスは震えていた。
「…間違っている。おかしい… ゼロがあれほど頑張ってやっとシグマから世界を守ろうとしていたのに
どうしてゼロが世界をおかしくするなんて言えるんだよ!」
「……でも、私達の前に現れたのは確かに…。」
エイリアは強い言葉は、今は言えない。
「…エックス、落ち着け。
私もアイゾックの調査団は少しおかしいと睨んでいる。我々も…調査に参加する必要がある。
ナイトメアの実体を掴むべく動く必要はどの道あるだろう」
「……ああ。」
「乗り込むぞ、エックス。8箇所のエリアに…!」
…エイリアが強く言えなかったその理由は…ケイン博士から、凶暴なゼロのもう一つの人格を聞いたためだ。
ゼロを素手で倒し、シグマへとウイルスを感染させ、…シグマを狂わせた。
ならば、シグマは最早… ゼロのもう一つの姿の被害者、というより… もう一人のゼロの影と言ってもいい存在だったのだろう。
『彼』がもし…… もし、ゼロの体から解き放たれ、ゼロなき世界でゼロとして振舞っていたとしたら?
…根拠はもう一つある。 以前、ホタルニクスのミッションで見せたウイルスに囲まれたゼロの姿。
それは………まさしく、あの紫色のゼロの姿そのものだったからだ。
…その戦闘力は凄まじかった。
ゼロとの戦いの運命は…まだ終わってなかったのかもしれない。
「ヒャヒャヒャ…アイゾックの爺さんの演技力は半端ねーなぁ。
さて。俺も独自調査を開始しますかね、っと。」
影で話を聞いていた男もまた、消えていった。
「それでは、これから我々は8つのナイトメア現象が深刻なエリアへと潜入することにする!」
シグナスがハンター全体に呼びかける。
デスクに座り、エックスの横顔を見ながら……。 言葉が…でない。
「…エックス、あのー………」
これは…『ゼロ』との戦い。
そして…それぞれの、過去との戦いだった。
「ん?どうしたんだい、エイリア。」
「……う、ううん、なんでもない。 …気をつけてね」
-
暖かな気温に、
吹き抜ける夜風が気持ちいい。
…月の綺麗に見えるその場所は…アマゾンエリアだ。
「静かな場所だね」
「…ええ。落ち着いた雰囲気ね 任務が終わったら行ってみたいわ。
マイマインのいたクリスタルだらけの鉱山に、キバトドスのいた冬の森に…
ネクロバットのいたプラネタリウム。」
エイリアはガラにもなく、うっとりとした様子で話す。
含み笑いをしながら、エックスは眉をひそめて話す。
「レプリロイドを殺した場所ばかりじゃないか。俺は…嫌な思い出のない所がいいな」
エイリアは俯く。
「……ごめん」
「? エイリア一人が来るなら問題ないだろ?」
エリアに入ってすぐ、救助を求めるレプリロイドの姿が見えた。
「大丈夫ですか!」
「ああ、エックスさんか!? た、助かった……」
「敵を倒す、それだけがハンターの仕事じゃないわ。
これならエックスもやる気が起きない?」
「ああ。…それもそうだね」
民間レプリロイドを救助しながら、洞窟の中へと落ちていく。
「今あなたがいる方向から見て真っ直ぐ奥にカプセルの反応があるわ。」
「有難う」
「…世界は大変なことになってしまったな。正にレプリロイドにとっても人間にとっても地獄じゃ。
お前に『ブレードアーマー』の4つのパーツのうちの一つを授けよう」
次なるアーマーはブレードアーマー。
エックスは洞窟を注意深く探索していく。
「暗い…。モニターからナビゲーション画面へと切り替えるわね」
「頼む」
「…何だ、コレ…」
「こちらからは反応は見えないけど…何があったの?」
腹から下と両腕が千切れたような形をした…単眼レプリロイドの上半身が宙に浮いている。
非常に不気味な形をしている。
「こっちに来る…!」
チャージショットで撃退。
「ど…どうしたの?」
「ステルス機能を持つと思われる奇妙なイレギュラーを倒した。
何か出てきたから送るよ」
中から出てきた青い球体をハンターベースへ転送する。
「…何度倒しても消えない……」
その先では蟷螂型のメカニロイドが何度も復活する。
ワイヤーフレームだけが残り、再生をそこから続けるのだ。
「…何も見えない…か………もしかして貴方…それはメカニロイドじゃなく…」
「…見間違いなわけがないよ。そんな幻覚は…」
…幻覚…幻。まさか。
「ナイトメア現象…!?」
そう。このアマゾンエリアに発生していたのは蟷螂のナイトメア。
何度倒しても無限に再生し、襲い掛かってくるのだ。
「厄介ね…幻覚なのに正確に貴方を襲ってくるんでしょう?」
「…おまけにダメージまであるよ。後で傷を見せる」
「………痛い?」
「…うん」
鍾乳洞を抜け、洞窟の外へ。崖から突き出た岩を乗り継ぐ形で、調査員の下へ。
「……………」
「エイリア、どうした?」
「…あ。ごめんなさい、どうやら調査員は知っているレプリロイドだったみたいで…」
「そう、なのか」
こほん、と一回咳払い。
「ここの調査員はコマンダー・ヤンマークよ。穏やかな性格のはずよ。『基本的には』。
何か得られるものがあるかとりあえず話を聞いてみるだけ…聞いてみた方がいいわ」
「穏やかな性格なんだろう?何でそんな言い方を…。
………俺がその、例外だっていうのかい」
「ええ。まぁ…」
-
扉を潜る。
トンボ型のビットを引き連れた赤色のバイザーの下に真ん丸い目を覗かせるレプリロイドが姿を現す。
「コマンダー・ヤンマーク。君に話を聞きたい」
「…アンタ、エックスだな…? 悪いがイレギュラーハンターと話すことなど何も、ない!」
「………落ち着いてくれ。君達は何か騙されているんじゃないのか?アイゾックに」
「騙しているのはアンタたちだろう!? 俺はアイゾック博士の言うことを信じるからな!」
「…ごめんエックス。話が通じる相手じゃないの」
「………くそっ」
戦闘が始まる。
「撃てえええ!」
ヤンマークの能力はビット操作。
トンボ型ビット・ヤンマーオプションからはエネルギーの弾が大量に発射される。
「うわ…!?」
まず一斉射撃。壁を蹴り逃げる。
「エックス。ヤンマークの能力は音声認識によるビットの完全制御よ!」
「完全制御…?」
「自分の手足のようにビットを使いこなす。勝つには能力で単純に上回るしかない」
バスターの乱射でヤンマークのビットを攻撃しようとする。
「フォーメーション…ガード!」
ビットが動く。どうやらエックスの弾を全て、ビットの弾で迎撃するつもりのようだ。
「なかなかの制御のようだけど…」
「あぁーー!」
チャージショットが簡単に効く。
…彼の能力は、確かに精度が高く、幅広い『作業』に向いているだろう。
だが…あまりにも弱いのだ。
「フォーメーション…ウィング!」
上下に展開、一斉射撃を行いながら近づいてくる。
「下級ハンターなら勝てない相手だな…数で押すタイプのようだし」
だが速さ、攻撃力、防御力、貫通力、移動速度…どれを取っても平均的。
優れたレプリロイドであることは間違いない、のだが。
簡単に
「フォーメーション…ファイ」
「終わりだ!」
チャージショットがヤンマークの細い腹を貫き…
「うわぁあーーーーー!!」
真っ二つにした。いつも以上に大きな爆発を発し、ヤンマークは消滅した。
…敵ではなかった。
「DNAを回収した。 …何か体が馴染まないな」
「…そりゃそうね」
「…え?」
「あ、ううん。何でもないの。 …ご苦労様。」
頭上に何かが降ってくる。…先ほど見つけた青い球に似ているが…緑色をしている。
「…これは何かな」
「調査してみるわ」
-
「どうだった?エイリア」
ハンターベースに戻ったエックスが聞く。
「うーん…反応がないものはほぼナイトメアと見てよさそうね……。
ごめんなさい。今はよく解らないわ。
この球の中身が完全な形では残らないみたいなの…。」
「ヤンマークが持っていたこの緑色の球は青い球と同サイズに効力が凝縮された…
単純に強力なものと見ていいわ。比べ物にはちょっとならないのだけど」
そして彼女は、その球に名をつける。
「ナイトメアの基本体はその奇妙な単眼メカニロイド…ならばそれはウイルスとして…
『ナイトメアウイルス』と呼ぶことにしましょう。
そしてこの青い球はナイトメアのコアであるエネルギー体。『ナイトメアソウル』と呼ぶわね」
「ふふっ… …あ、ごめん」
「…何かおかしかった?」
笑ってくれるのはエイリアには何だか嬉しい。エイリアも聞く。
「そのネーミング、エイリアが考えたのかい」
「? …ええ」
「アイリスもそんなネーミングしてたなぁと思って。」
「………そうなの?」
次なるエリアはセントラル・ミュージアム。
「静かな場所ね……ここには被害者はいないみたいね」
「よかった………」
先へと進んでみる。
「……音という音が何もしないね」
「そうね…イレギュラーまでいないなんてことはないでしょうし。」
通路の真ん中に、邪魔な柱が一本。ただの柱では、ない。
「………何だ…?これ」
「どうしたの?」
モニター画面で確認してみる。
「…奇妙ね。トーテムポール?」
「みたいだ…。 透明なものだね。…物体ではなさそう」
「ナイトメアかしら………。 触ってみて」
「…解った」
その時である。
「わ!!」
「? …エックス、エックス…!? 」
トーテムに触れた瞬間、エックスの体が消滅。
別の場所にワープしていた。
「…!?」
背景は海。…水族館の立体映像のようだ。
そこには無数のナイトメアウイルス。やられた…
ここは、トーテムポールという強制ワープのナイトメアに支配された場所だったのだ。
これに触れたが最後、仮想空間内のナイトメアウイルスの巣に放り込まれ、戦わされるハメとなる。
出口を、見つけない限り。
「ナイトメアソウルがガンガンたまっていくな、ここは…
って、大丈夫ですか!?」
勿論、巣に放り込まれたのはハンターたるエックスのみではない。
民間レプリロイドもそれに当たる。
簡易転送装置でハンターベースに避難させつつ、出口を探すと。
「…あの装置は」
チャージショットで破壊すると…
-
「…エックス!どうしたの?」
「ナイトメアウイルスの巣に放り込まれていたよ…。」
「先へ進む方法が解らないわね…」
進むと…何と今度はトーテムが実体化しているではないか。
…いや、ナイトメアであるから実体とは言えないのだが。
「食らえ!」
チャージショットで各ブロックを破壊、トーテムを蹴り…エアダッシュで飛び出したブロックも破壊。
トーテムは砕け散り、下のフロアへの道は開かれたのだった。
「……今、ナビゲーション画面において貴方完全に宙に張り付いたわね」
「ナイトメアは完全に触れられるみたいだ…」
実体があるのかないのか。奇妙な存在、ナイトメア。
「…頑張って、エックス!」
下へと進むとまたトーテム。…またワープ。
「今度は…… 砂漠か?」
砂漠の中の石造りの遺跡。
現実では絶対にありえないような地形の中、エックスはナイトメアとの戦いに明け暮れた。
「…ただいま」
「言うのはトーテムを倒してからがいいわね」
破壊、休憩フロアを挟みまた下階にトーテム。
「………恐竜展のための立体映像か」
そこにはカプセル。また一つブレードアーマーの完成に近づきながら、
エックスはまたナイトメアと戦い、救助活動もしつつ脱出。
「………少し意地悪な場所じゃないかな、今回」
「最後だしね。 …針の上…か」
針の上のトーテムにエアダッシュで突進、また転送される。
「最後は宇宙か」
大きな坂道。ナイトメアウイルスがひしめくこの場所を通り抜け、
トーテムを破壊した先…。
「………ここの調査員はグランド・スカラビッチ。また知ってるレプリロイドに当たったわ」
「それなら戦い方を教えてもらえるかい」
「貴方なら苦労はしない相手だと思う。…歴史学者だから、頭脳はとんでもないんだけど
戦闘力は大したことないと思うのね」
「うんしょ、うんしょ。」
尻をむけ、土の塊を転がしてきた中年男の姿は滑稽だった。
「…おや、エックスさんではないですか。」
「調査員か。何をしている」
「いやぁ、ここにいると色んな情報が手に入りましてなぁ。
私、古いデータには目がなくてですね」
「…ナイトメアについて教えてもらおう」
バスターを向ける。
「物騒な真似をなさる。私は逆に欲しい所ですよ?
最強のイレギュラーハンターのDNAをね!」
「無念ーーーー!!」
岩を転がし、飛ばすだけのレプリロイドはすぐに倒された。
「彼は…一体何をしたんだい?」
「実は…彼は数ヶ月前、一度死んでるのよね…。 遺跡の盗掘をしようとしていたの。
貴方とゼロが見つかった……『禁断の地』を」
「それで、その時彼を倒したのが…」
-
「さて…次のミッションへ行きましょう、エックス。」
ハンターベースへ戻ったエイリアは、次なるポイントを指定した。
「…次の相手は少しエックスには戦いづらい相手かもしれないわね…」
「…事前に調べてあるのか…。 ……って、エイリア。
つまりは君もまた知ってるレプリロイドなのかい」
「…ええ、まぁ」
次なるミッションはレーザー研究所。曇天に浮いた空中研究所だ。
「ターゲットの場所まではここから2分かからないんじゃないかしら。」
…それはそうと、いきなり変な光景に出くわしたわね」
空に浮いたメットールに囲まれ、空に浮きながら救助を求めるレプリロイド。
「…これは一体…」
「ナビゲーション画面には映っているから…ナイトメアじゃないわね」
勇気を出して足を踏み出してみると……
「…! 歩ける!」
「見えない足場ね。光学研究の賜物かしら。」
先ほどから、妙なハエがエックスの周りを飛び、バスターを体を張って妨害してくる。
その耐久力はありえないほど強く、エックスの動きを制限するのだった。
そう。ここに発生したのはハエ型のナイトメア。動きを制限する意図だろう。
内部に進むとそこには強力なレーザー装置。
その先には何かが置かれている。
…鏡のようだ
「……兵器として使うためのレーザーを使った反射実験ね」
そしてレーザーを当てることで開く仕組みの扉。
することは…一つだ。
「エックス、鏡の付け根を狙って。それで鏡を動かせるはずだから」
レーザー光を鏡を使って誘導し……扉にぶつけて開く。
…そういうことだ。
「…面倒ねぇ
…今私の力を使ってレーザー装置を遠隔操作で起動させてみるわ!」
先へと進んでいく。
「この先は二つの扉か…調査員のいる部屋は目の前だけど、地下にはカプセル反応…。」
「下へ向かおう。この短い道のりならハンターベースからもう一度行っても時間のロスにはあまりならない」
その先が手ごわかった。
「ダメ…レーザー装置が1個以外作動させられない!」
「…なるほど。作動させるとか以前に、電源自体が他のレーザーから発せられたものということか…」
レーザーを鏡を動かし反射させ、反射させたレーザーで別のレーザー装置を作動させ…それを繰り返して最後に扉にぶつけて開ける。
「…………面倒だなぁ」
「隠し通路があるわ。その横!」
カプセルからアーマープログラムを手に入れ、一度ハンターベースへ戻りもう一度。
エイリアの言う通り、すぐに調査員の部屋の前だった。
「…調査員はシールドナー・シェルダン。
恐らく以前より強くなっていると思うわ。気をつけて」
「…彼だったのか…!」
-
以前、エックスは彼の事件を受け持ったことがある。
まだドップラー事件の影響で科学者に対する目が厳しかった頃。
ジム博士と呼ばれるレプリロイド博士の起こしたレプリロイド事件で、
彼を処分するべくエックスはジム博士のガードをしていたシェルダンと交戦、そして撃破したのだ。
ジム博士がイレギュラーとするのは誤認だというのは、処刑完了後発覚した話。
「シェルダンさん!」
「エックスか。…久しぶりだな」
口元の特徴的な紳士、シールドナー・シェルダンは水の張った最深部の池の前にいた。
「シェルダンさん、その節はすまないことをしました…。」
「…いや、いいんだ。君が言いたいことは大体解った。」
「…君はイレギュラーハンター、私はイレギュラーと誤認された博士の護衛だった。それだけの話
……すまないが私は今回こそ自分の務めを果たそうと思っている。」
「……また、戦うんですか」
有無を言わさず、シェルダンはアーマーに包まり姿を消した。
「はっ!ほっ!」
二枚連続で投げるは体の左右に着ていたアーマー。
ガードシェルと呼ばれるそれの防御力は高く、バスターを通そうとしない。
だが…
ダッシュしてシェルを回避すればすぐのこと。
「ハァアア!」
セイバーで一撃。
光の穴に体を滑り込ませワープするシェルダン。
シェルを閉じ、無敵状態で辺りを跳びまわる。
「は、速い!?」
「どうかね」
目にも止まらぬ速さ、しかも自分で制御できるものと来た。
アルマージなどよりよほど手ごわい敵と見える。
「逃がさんよ!」
ガードシェルを光の盾に替え、エックスを追ってくる。
「衝撃にあわせて打ち返す特殊シールド。
近接攻撃は禁物よ!」
「それなら!」
ヤンマーオプションを使い、そのオプションから放たれる大量の弾でシェルダンを包んだのだ。
「ぬぐっ!」
シェルダンは消え…そして奥の手を使い出した。
「見切ってみるがいい!」
4つのシェルが部屋の端に現れる。
「はぁ!」
シールドからシールドへ、どんどん移動を始めるシェルダン。
「隙が少ないな…」
「攻撃したら反撃を食らう。ここはギリギリまで見極めて!」
シェルの中でワープを繰り返しているのだろう。
どこから来てどこへ行くのか…。
「そこだ!」
部屋の中央に陣取り、移動してきた隙にセイバーを一振り。
「認めん…断じて……!」
シェルを離れると防御に乏しいシェルダンは、すぐに倒れていった。
「……あまり気の進む相手じゃなかったね」
「そろそろ、ゼロナイトメアへの糸口を掴みたいところなんだけどね」
-
精密系レプリロイド、科学者レプリロイド、防御特化系レプリロイド。
正直、これまでの3体はどれも強くは無かったといえる。
だが……運が良かっただけに過ぎない。
残り5人。
アイゾックの送り込んだ調査員の恐ろしさをここで知ることとなる。
「兵器研究所ね。私達が向かうのは巨大兵器整備ブロック。
建物自体がらせん状になった開けた場所なの」
「…物騒な場所にナイトメアが発生したものだね。」
「今は特に兵器などはないから、ナイトメアウイルスと延々と戦うことになるわね」
巨大な施設の中。
兵器研究所についてすぐ…このエリアが如何なるナイトメアに冒されているかを知ることになる。
「………な、何だ…あれ」
「え?」
「……兵器、あるよ?」
「……どれくらい?」
いや、エックスにも薄々気づいていた。
「見えないかな。………この円柱状の巨大な建物を…フルに利用するほどのメカニロイドが動いているのを」
「………かつて作られていたと、聞いているけど
…『見えない』わ」
「…………やっぱり!?」
そう。ナイトメアはそこまで巨大だったのだ。
かつてここで生み出された超巨大メカニロイド『ビッグ・ジ・イルミナ』。
それは…ナイトメアとなって復活していたのだ。
「…………男の子の夢って奴かしら…。」
エイリアの笑顔も引きつる。
「来る!」
巨大なエネルギー弾がイルミナの手から発射される。
「ナイトメアウイルスに、敵メカニロイドに、要救助者……
忙しい戦いになりそうだ!」
エネルギー弾を避けながら螺旋階段を下りていく。
この巨大な建物には外壁しか壁がない。
この建物のどこにいようと…イルミナのターゲットだ。
「動きはどう?」
「流石に距離がある、狙い撃っては来るが誘導可能な範囲だ」
「ナイトメアを発生させているコンピュータがどこかにあるはず。
探し出して破壊して!」
発生源は言うなればイルミナの電源。
メカニロイドの襲撃にあいながら、それを破壊していく。
「…強い………」
「気をつけて、イルミナの攻撃パターンが変化した!」
首が取れ、付け根からはビットを複数射出、レーザーでエックスを照らそうとする。
当たればクロスレーザーの餌食…といったところだ。
「ヤンマーオプション!」
オプションを展開、エネルギー弾の連射で素早くビットを破壊する。
全部破壊する暇などない。前方のものだけ破壊し、イルミナの電源コードへ。
「…壁!?」
侵入者を阻む壁が前後から。
「その壁は実体があるわ」
エックスから見て、前方はイルミナコードと壁、後方は防護壁、
向かって右側は外壁、向かって左には…イルミナ。
…閉じ込められたのだ。
-
「レーザーよ!……どうすればいいかしらコレ」
「うまくかわして破壊するしかない…!」
前から後ろからレーザーの雨、左からはイルミナの攻撃。
レーザー地獄…。息苦しい戦いは長くに渡り続いた。
「食らえ!!」
チャージショットに貫かれ…イルミナは電源を失い、爆発。整備施設は静まり返ったのだった。
「な、何だ?」
「イルミナを倒した時の衝撃で何かが誤作動したみたいね」
青い扉が現れた。…どうやら閉じる様子はない。
「…ターゲットはこの先かい」
「いえ…下の階にいると見られているわ」
ならばそちらが優先だ。残ったナイトメアウイルスを倒し、最下層にて…。
「アーハーン!」
「ここの調査員は…見ての通りの変わり者。…インフィニティー・ミジニオンよ」
小柄な、液体合金製のレプリロイドだった。
「何何?何でハンターがここにいるノ?もしかして え?何 イルミナちゃん壊しちゃったとか?」
「あまりにアレは危険すぎる!」
「………な、何てことをしちゃったんだヨ!アレで頭の固い君らみたいな連中を倒して、
ボクちんはg」
イルミナの頭が背後で大爆発を起こす。
「…様に褒められるつもりだったのに!」
「……………!!!!!」
エイリアは…聞いていた。
「…解ってたはいたが、やはりナイトメアを動かしていたのがお前らだったんだな。
アイゾックの好きにはさせない…行くぞ!」
「やれぇ!!」
強酸性の液体を分泌、球状の塊となる。コアとなる微小マシンによりそれはエックスに近づき…取り込み、溶かすつもりだ。
「厄介な相手よ、気をつけて!」
「くっ!」
思いのほか、その液体の耐久性は高い。破壊までにチャージショットを何発か消費することになるまでに。
「破壊しても無数に彼はその塊を生み出すわ」
「………かといって壊さなかったら増える一方じゃないか!」
ミジニオンにバスターを当てる。
「あっははん♪」
今度はチャージショットだ。
「わぁあああ!」
壁に衝突する。 本体は軽いようだ。…効いていたかはともかく。
「かかったねおバカちゃん♪」
…エックスは見た。ミジニオンの体がちぎれ、ミジニオンと同じサイズになっていくのを。
ミジニオンもまた、ちぎれた部分を再生、元通りになっている。
「…増えるのか!?」
コアはあるらしい。コアを破壊するのが先か、ミジニオンの攻撃に押しつぶされるのが先か。
増え続ける敵との戦いが始まった。
「やれぇ!」「やれぇ!」「やれぇ!」「やれぇ!」
「ほっほー!」「あっはは!」「食らえ!!」
泡がどんどん増えていく。ミジニオンは時折、腕のバスターから光の弾を発射し、拡散したりする。
「エックス…!!」
「……あまりに、…多すぎる…!」
泡。弾。ミジニオン。部屋にもう隙は存在しなかった。
「アローレイ!」
ぐるりと回転、床に突き刺さると…天井から光が降り注いでくる。
だが…そんな攻撃より何より…エックスは追い詰められていた。
泡が溶かしにかかる。
弾がエックスを攻撃する。
大量のミジニオンの突進を食らう。
こちらの方が劣勢。こんなことは今までなかった………
「ガードなら…せめて…せめてガードシェルを…!」
シェルダンから手に入れたガードシェルを使う。
焼け石に水。だが……何か対策を講じなければ。
「ほっほー!」
またもアローレイ。
ガードシェルで何とか防げはしないか…そう思ったとき。
「あーーーーーーはーーーーーーー!?」
ミジニオンが吹き飛んでいった。
「アローレイのエネルギーを吸収して…撃ったのね!」
ガードシェルの真価が発揮された瞬間。
弱点はガードシェルだった。そうと決まれば。
「最後だ!」
ガードシェルをチャージして放つ。4枚のシールドがミジニオンの周りに配置され…
「撃て!!」
4つのシールドからの一斉掃射。
「何すんだヨーーーーー!!」
4つの弾は全てコアに命中。ミジニオンはそのまま……彼自身が泡となって弾けていった。
「……今サーチしてみたわ。…どうやらカプセルの反応はその青い扉の中にあると思っていいみたい。
何が待っているかわからないけど…行きましょう、イルミナのあったところに」
-
イルミナ跡。
青い扉が宙に浮かんでいる。
「……その先で通信が繋がるかどうかはわからない。
気をつけてね」
「…ああ。行って来る」
…一体何が待ち受けているのだろう。
エイリアが調べた実例の中に、確かにゼロの形をしたナイトメアに襲われたケースは多々あった。
ゼロは一体、何をしようとしているのだろう。
『彼』と、そしてアイゾックと手を組んで。
ゼロナイトメアが何かの見間違いならいいのだが。
…先ほど、ミジニオンから聞いた名前が…聞き間違いなら、よかったのだが。
「…エックス」
彼の名を呟く。
「……ごめんね」
「エックス。ここではブレードアーマー最後のプログラムを渡そう。
このアーマーは、チャージセイバーを使うことが出来る…セイバーでの戦いを考えて作られたアーマーなのじゃ。
また、マッハダッシュもうまく使いこなしてもらいたい」
「解りました。」
そしてブレードアーマーを着用…。
スッキリとしたラインと、個性的な色使いのアーマーがエックスを包んだ。
「…これほど大きな谷が…」
底なしの谷にナイトメアウイルスが大量配備。
救助者をナイトメアから助けつつ、扉を潜ると…。
「ゼロ…。 どこじゃ… ワシのゼロは……」
老人の声がする。
…アイゾックに似ている気がしたが。
その瞬間…奴が現れた。紫色の淡く光る影。…全ての元凶『ゼロ・ナイトメア』だ。
「…お前、ここで何をしている。どうしてゼロの真似をする」
「エックス。…俺がわからないのか?」
「…ああ、解るよ 下らないニセモノだ、ってね」
「…お前達を、あれからずっと探していたんだぞ…?」
ゼロナイトメアがニヤリと笑う。
「皆殺しにするためにな!!」
内に秘めた凶暴性が姿を現す。
ゼロナイトメアが姿を消す。
「くっ!?」
部屋の端に現れる。
「……」
何も言わず、トリプルチャージを放ってくる。
チャージショット、チャージショット、電刃零。
あの時のゼロのパターンだった。
今でも避けづらいこの攻撃。
電刃零をかわしてチャージショット。
「くっ」
距離をとるが…
ピシュッ… と風を斬り、また消える。
「電刃零!」
背後から現れてエックスを斬る。
「うぁあああああ!!」
思わず距離をとる。
「逃げるなよ」
ダッシュして剣を振るう。
エックスは間一髪、攻撃をかわし跳ぶ。
「終わりだ」
軽い動作で真滅閃光を放つ。
「ぐああぁあっ…!!」
地に拳を叩き付け、地を割り…強力なエネルギーを噴射する。
威力こそ弱いものの…どれもゼロの攻撃を彼は完全にコピーしていた。
再び現れたゼロナイトメアに向かってチャージショット。
「ほう?」
また消える。
-
「…逃げるなと言っておいてお前は逃げるのか?」
「冗談はほどほどにしておけ」
エックスの背後に現れ放ったのは…
「何…!?」
1,2,3,4,5,6……
無数のチャージショットを、バスターからありえないペースで乱射し始めたのだ。
…そんなことは、ゼロには出来ない!
姿を消す。
「威勢はいいがそれだけのようだな!」
「終わりだ!」
真滅閃光。
まずはこの攻撃を回避できねば勝ちはない。
だが…エネルギー攻撃というなら。
「ハァアア!」
大きく振りかぶり、チャージセイバー。
ゼロの吹き上げたエネルギーを叩き斬る。
「食らえ!」
続けてチャージショット。ゼロナイトメアの体力を削る。
「大したものだが……お前はこの技は知るまい」
セイバーを両手で持ち、掲げる。 …すると…セイバーが伸びた。ゼロナイトメアの身長の倍するほどのサイズに。
「…さぁ終わりだ」
一振りが放たれる。
「幻夢零・改!」
「………!!」
連続して3回。ありえない速度で飛ぶ斬撃が発せられ……
エックスの体を3度に渡り切り裂いた。
「がはっ………」
口からオイルを吐く。体からも染み出る。
「その程度の奴がゼロと互角とは笑わせる」
またも真滅閃光。
「ぐあぁあああああああああああああああああ!」
「お前は所詮ゼロにも俺にも勝てん」
チャージショットを2発、そして電刃零。
「お前が役に立ったことがあるとすれば…」
消える。
「VAVAからお前を庇ってゼロが自爆するきっかけを作ったあの時くらいのものだ!」
スプレッドバスター。
言われ放題で…いてたまるか。
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
チャージセイバーでバスターを斬る。
「これから威勢だけの者は困る」
ワープ。
「これで最後だ」
セイバーを突き上げる。
幻夢零・改の構えだ。
「死ね」
一発、二発は低速…
「そこまでだ!」
三発目は高速。緩急をつけることでクロスさせる、クロスチャージと同じ原理だ。
エックスは跳びあがり…早々にブレードアーマー最強の技を放つ。
セイバーを背中まで振りかぶり…。
「ゼロはもう…」
目を閉じ……現れたゼロの形をしたそれに向かって剣を振り下ろす。
「いないんだ!!」
地へと叩きつける。
衝撃波が発生…幻夢零・改と激突。そして……
破った!!
「うぉおおおおおおおおお……!!」
…後に残るのは空しさだけ。
………悪夢はこれで終わった。エックスは、そう思った。
「……俺も随分と鈍ったものだな。
こんな奴と一緒にされるとは、な」
エックスの背に声をかける者が一人。倒したばかりの敵と同じ声をしたその者は……
「……ゼロ!!」
-
「……ぜ、ゼロ…?」
「おお、まさか戻ってくるとは……」
「迷惑をかけてすまなかったな。現在の状況を教えてくれ」
何事もなかったかのような、ゼロの復帰。
「ダメージが回復するまで、身を隠していたんだ。」
ゼロからの言い分は、たったそれだけ。
…本当にただそれだけなのだろうか。
「…………嬉しそうね、エックス」
「当たり前じゃないか!!」
ひとまずは安心。
エイリアは、次なるミッションに彼らを向かわせる。
「俺はどうすればいい」
「ゼロは…すでにミッションを終了したエリアを頼むわ。
救助者はまだいるかもしれない」
「了解した」
「………どうしたんだい、エイリア」
「大分集まってきたわね…データ解析は3分の2まで進んできたわ」
「…ナイトメア?」
「ええ」
次なるミッションはイナミテンプル。
「…ここは数少なかった女性の有志隊員達が捕らえられている所ね。
鼻の下伸ばさないように」
「?」
「なんでもない。」
世界遺産とされているこの場所もすっかり瓦礫の山となっていた。
魚型メカニロイドを倒して鳥居を潜ると…
「うわ、何だ…この雨」
「…こちらからは確認できないわ…。 …ナイトメアね」
このエリアでのナイトメアは雨のナイトメア。
強酸性の雨が体力を奪っていくというものだ。
「ここの調査員はレイニー・タートロイド…成る程ね」
つまりはタイムリミットが設けられていることに等しい。
バリアを解き降雨装置を、救助者を助けながら何とか破壊しなければならない。
エックスの体力が尽きるその前に。
だが、そんなときに限り高耐久力の敵が多数配備されているもの。
焦らされつつも順調に倒し、降雨装置のバリア発生装置4機を破壊、
降雨装置を破壊して先へと進んでいく。
「随分大きな池だな…」
「動くバーに掴まっての移動になるわ。…随分不安定なことになるから、対応はしっかりとね」
タートロイドの場所は近い。またも雨が降り出したが…
「この隙間が気になるな…」
「そこは…針もあるし狭くて…出られないかもしれないわよ」
「一応、ね」
進んだ先にはやはりカプセル。
「危険な場所だなぁ………。」
「来てくれたか、エックス。ここでは『シャドーアーマー』のプログラムを渡そう」
シャドーアーマー。
その響きにどこかワクワクしながら、エックスはプログラムを受け取る。
洞窟内を跳びまわり、バリア装置を破壊し、降雨装置を破壊し……
面倒な作業はこれで終わり。タートロイドのいる社の前までやってきた。
ドスッ…。 大きな足音を響かせ、巨体が現れた。
…8mはあろうかというサイズだ。
「タートロイド。君がここの調査員かい」
その時。
「エックス、ちょっと…」
「ん?」
「タートロイドと話させてくれないかしら」
またも知り合いだったらしい。
-
「…タートロイド。私の声、解る?」
「おお。エイリア殿か」
「そうよ…
…聞いて。目の前にいる彼が……『エックス』よ。
あなた、エックスのこと尊敬してたでしょう?」
「…………!」
エックスが照れた。
「…おお、おお……!あなたがエックスか…!通りで優しい目をしている…。」
「……ああ。」
戦うことになると思うとエックスの表情は暗くなる。
「なぁタートロイド。アイゾックの命令だからって、こんな……
雨を降らせて女の子達を蝕むような真似はやめるんだ。 頼むよ」
「……いや、命令には逆らえはせぬ。…もう、戦うしか道はないだろう」
「…だが」
「信念を守った結果、あなたに殺してもらえるなら、私は…幸せだ。」
どっしりとしたその体についた顔は…あまりに優しげだった。
「…………ごめんね。戦いづらくしちゃって」
「………いや、いいんだ」
「でも、一度彼に言っておきたかったのよ。貴方が…エックスだ、ってこと。」
「…………タートロイド!」
「すまぬ、エックス!我が命、貰ってくれぇ!!」
「嫌だッ、戦いたくない!!」
だが戦いは始まる。
「ぐあぁあああああああああああああああ!!」
突如として大量のミサイルが甲羅から発射され、
エックスを集中砲火。
辺りが爆炎に包まれる。
「タートロイドの攻撃はミサイルの雨よ!セイバーで対処して!」
「くそっ……」
チャージセイバーで一気にそれを叩き斬り、タートロイドの甲羅を斬る。
「硬い…!?」
「タートロイドのボディは物議をかもしたほどの防御力!
アルマージやマイマインのそれとは比べ物にならない!」
「……動きを止めるにはどうすればいい!」
「ミサイルの発射口よ!それを破壊して、中にセイバー攻撃を叩きこんだり、バスターで攻撃するの。
そしたら内部からタートロイドを攻撃できるわ!」
「……ああ」
斬って、タートロイドの甲羅についた発射口を破壊する。
「…うっ! …くっ!」
斬る、撃つ。 …なんでこんなことをしなきゃ。
「そうだ、それでいいのだエックス!
…メテオレイン!!」
甲羅でぐるんぐるんと回転、水の球を撒き散らす。……ユーモラスなその技。
絶対に…絶対に攻撃向きではない。
「クソッ…クソぅ……」
チャージセイバーを当てる。
ドスン、ゴスンと壁に激突し続けるタートロイドの巨体。
もう…倒すしかないのか。
「タートロイド…もう一度聞く。信念を曲げる気はないか」
「…ない」
「俺に倒されてそれで幸せなのか!!」
「そうだ…!トドメを刺してくれ、エックス!」
壁へ飛ぶ。壁を蹴る。そして………
「ぐぉああああああああ!」
背中を一刀両断するチャージセイバー。
ミサイル発射口から広がったヒビは……大きくなり、そしてボディごと砕け散った。
「有難う…本当に、有難う… そしてすまない…エックス」
「…タートロイド…。」
「……すまない。私の……製作者を止めてくれないか」
「…アイゾックか」
「いや…そうではない…私の製作者の…名…は…ゲ……………」
そのまま、息を引き取った。
「…エイリア。どうして…どうして彼らのことを知っているんだい」
「………後で話すわ」
エイリアは思い出していた。…3年前のことを。
-
3年前…。
一人のイレギュラーハンター、エックスによりシグマが倒されたその翌日。
冷房のよく効いた研究室にて、彼女は研究員全員の拍手で出迎えられた。
「いやぁ、よく頑張ったねエイリア。どうだった?イレギュラーハンターは。」
研究室の沢山のメンバーに出迎えられる中、
コーヒーを飲んで待っていた一人の長身の青年がいた。…彼女のライバルだ。
「結構ハンターも捨てたものじゃないと私は思ったわ。
シグマっていう実力者がいなくなっても…まだ強い人達は残っていたのね」
「興味深いな。もしかして君が担当したハンターがそれというわけかい?」
「ええ。そういうことよ …名前は…… 『エックス』。」
「………! …ハハハ、それは驚いた。
シグマを倒したハンターをオペレートしたのがエイリア…君だっていうのかい」
「ええ。あのゼロが勝てなかったハンターにすら勝ったっていう話だし」
「…成る程。じっくり聞かせておくれよ、エックスの話。
そして、機会があるなら次も必ず彼をオペレートするようにお願いしたいな。」
「エックスとゼロ…か」
エイリアは呟く。
「…ゼロ。次はセントラルミュージアムに向かってくれないかしら。
あそこならナイトメアソウルが稼げそうだし。」
「ああ。いいだろう」
「エックスは北極エリアね」
「北極か…カウンターハンターのいた場所でもあるね」
北極圏に存在する氷の洞窟内。
凍りついた坂道からミッションは始まる。
「ブレードアーマーのマッハダッシュを使ってね。
雪崩がいつ来ても対処できるように」
そう、ここでは雪や氷のナイトメアが猛威を振るっていた。
「避難用のポイントに救助を待ってるレプ……メカニロイドがいます」
いつもならレプリロイドを救助している所なのだが…
「大丈夫か?」
「ワオ、アオーーーン!!」
尻尾を振る。
ここでは犬型メカニロイドが救助を待っていた。
「同型のメカニロイドがイレギュラーとして混ざってたりするから…
見誤って噛まれないようにね」
更なる高速化を果たしたブレードアーマーの能力『マッハダッシュ』で高さを稼ぎ、雪崩を飛び越える。
「まだまだ来ると思うわ」
雪崩を数回に分け飛び越えると……
「今度は上から降ってくるね」
「侵入者を阻むためのものね、これは」
クレバスを飛び越えた先には…
「カプセルの反応があるけど上ね……
調査員のいるポイントに向かうには、まず洞窟を一旦下の方へ降りないと」
雪崩のナイトメアをマッハダッシュで…今度は突き抜けながら下へ。
「…氷の塊が降ってきた!?」
「氷…どんな?」
「直方体型の氷のブロックだ……」
「宙に浮いてゆっくり落ちて来るイレギュラーはもしかして…」
「ああ。ナイトメアの上に乗ってる!」
イレギュラーの乗った氷のブロックは…エックスを生き埋めにしようとしている。
イレギュラーを倒しながら氷の上へ。
その上のフロアで。
「……この縦穴は…壁を蹴って上へも行けないし…。」
「…何とかならないかしら その上に調査員がいる感じなんだけど」
そしてナイトメアで出来た氷のブロックが列になって落下してくる。
「仕方ない。このブロックを乗り継ぐしか!」
マッハダッシュで上へ、また上へ。救助者を助けながらずっと上へと登っていく。
「…私から見れば完全に宙に浮いてるわ……」
ナイトメアの上を走り、空気を蹴って駆け上がる。
そしていよいよ。
「ここの調査員は…ブリザード・ヴォルファング。…………気をつけて」
「何か、声のトーンが低いね。…そんなに強い敵なの?」
「…え?ああ…その…ごめん、ヴォルファングには話したいことがあるの」
-
扉を開くとそこは暗闇。
「イレギュラーハンター…俺を始末しに来たか」
暗闇の中で目が光る。
「…………ヴォルファング。私のことを恨んでる?」
「……何も知らなかったのだろう。仕方ないことだ
蘇ったからには…今度は俺は役目を果たすのみだ」
暗闇が晴れ、狼型のレプリロイドが姿を現す。
「だが、アンタが俺を始末したのも仕事なら、
俺がそのハンターを倒すのも仕事だ!済まないが消えてもらおう!」
大きく雄たけびをあげ、戦いが始まる。
「三角跳びの使い手よ…気をつけて…」
「……何となく、解った。
君はこの戦闘ではオペレートしなくていい…俺が、倒す」
「えっ…、ま、待ってエックs」
通信を切る。これで…1対1だ。
エックスは思った。エイリアも自分と似ている。
きっと同じなのだ。シェルダンを始末したことに負い目を感じていた自分と。
「アイスフラグメント!」
氷の塊をマシンガンのように吐き出す。
「ペンギーゴのショットガンアイスよりも数段速いな…!」
素早く移動して回避。
「逃がさん!」
ヴォルファングは機敏に動き、天井にはつらら、床には氷のトゲを発生させてくる。
「ヴォルファングが走った場所全部に発生するのか!?」
動いた場所全てがトラップになる。
氷の生成、破壊の追いかけっこの形となるだろう。
チャージショットで氷のトゲを一気に破壊、ヴォルファングへ当てる。
だが…天井のものは破壊できない。
「しまった…!」
上から降り注ぐ氷のトゲ。
トゲは一斉に降りはしない。
それぞれの時間差を考え、合間を縫って回避する。
「行くぞ!」
壁を蹴る、天井を走り…エックス目掛け跳びかかる。
「甘い!」
エックスは飛びのき、チャージセイバーを一発。
床、壁、天井。
速い上に部屋というフィールドをフルに使った戦い方をする強敵だった。
しかし天井が使えなくともエックスの方が攻撃力において遥かに上。
マッハダッシュを使えば機動力でも上回る。
最後にはそれが物を言い…
ヴォルファングはチャージセイバーで斬られていった。
「ぐぉおおおお………!」
……しかし、流石に話が出来すぎている気もする。
エイリアの知るレプリロイドが何故、こんなに?
ナイトメアソウル、DNAデータを入手し帰還したところをエイリアは待っていた。
「…お疲れ様。…貴方に任せちゃってごめんなさい」
「こっちこそ、要らない気遣いだったかもしれないな。
……過去に何かあったからこそ、エイリアの手ですっきりさせたかったろ?」
「そうね…。気持ちは…嬉しかった。
…けどどうやら…これからに持ち越しになりそうね。
ナイトメアウイルスの解析、終了したわ。」
改まってエックスに椅子を向け…エイリアは話を始める。
「…私から、話があります」
-
「解ったの。…ナイトメアの正体が」
「…ナイトメアは…私が思ったとおり。…ウイルスだった
高いエネルギーを持った…ね」
最近はシグマウイルスのような、可視プログラム体の研究も盛んである。
そして次にエイリアはそのナイトメアの作用を説明する。
「ナイトメアは…その高いエネルギーでレプリロイドやメカニロイドに取り付き、
それを操ってしまうの。…場合によっては、自らをデリートする場合もあるみたいね」
そこまで聞いて、エックスは思っていた。
「…まぁ、貴方もそこまではイレギュラー化と同じだと思うでしょう?」
「…ああ。そこまでは、ほとんど同じだ」
「…でも、ナイトメアの本当の恐ろしさは、ここからよ」
「………。」
「ナイトメアは、一見ただのイレギュラー化に見えるけど、
一つ違うところがあるの。
…それは、あるコードのみ受け付けて、そのコードを入力することで
ナイトメアに取り付かれたレプリロイドを…自在に操ることが出来るようになるの」
「…それじゃあつまり」
「そう。ナイトメアの本当の狙いは…。『破壊』ではなく、
…『支配』だったのよ」
世界を変えるべく、レプリロイドを狂わせたシグマがいる。
純粋な破壊のためにウイルスを使用した、真のゼロがいる。
世界を変えるべく、ナイトメアウイルスはレプリロイドの支配をもくろんでいたのだ。
でも、そのナイトメアを作り出したのは一体?
「………でも。
そんなことが一体出来る奴なんているのか?
ケイン博士の技術力でも…ドップラー博士の技術力でも無理だ。
洗脳は確かに以前から出来たみたいだけど大掛かりなものだし…
後は単純に破壊行動を起こさせたり、それ以外のときは動きを止めたりとかその程度だった」
「…一人、思い当たる人物がいるわ。
………こんなものを作るのは、また…こんなものを作れるのは、『彼』しかいない」
ヤンマーク、スカラビッチ、シェルダン、ミジニオン、タートロイド、ヴォルファングの生みの親。
「…私の研究所時代の同僚……『ゲイト』」
「……………同僚?」
「ええ。
私がいた研究所にいた、天才…としか言いようのない、素晴らしい頭脳を持つレプリロイドよ」
だが、天才は天才故の孤独をいつも抱えていたのである。
「彼は、素晴らしいレプリロイドを作り出したわ。
あらゆる方面でね。…貴方達が戦った相手もそれ。
ナイトメアの力を取り込んで、姿形が変わってしまったものもいたけれど……
全て、彼の作り出したレプリロイドよ」
「でも、高性能ゆえに、その仕組みを誰も理解できなかった。
…そして、理解できなかったのは仕組みだけじゃない。…ゲイトという、存在自体もよ」
「あまりに高性能すぎたレプリロイドを作り続けた彼は、いつしか
それを理解させることに必死になり…孤立していった。
そしてその内……上層部は彼を邪魔者と扱うようになった。」
「…そして、彼は処罰を食らったのよ。
色んな形で………事故に見せかけて、彼のレプリロイドを全て処分されるという、ね
…私も、騙されてその始末を手伝わされた」
エックスを見つめる。
「……それだけの理由で?」
「…ええ」
…理解できない仕組みのレプリロイドにだって、その存在は理解されているものもいるのだ。
彼女の目の前に、彼女の理解できない存在がいて…それを理解するのに日々頑張っているのだから。
いや、それが例え理解できなくとも……
「俺だって、まだ機能が理解されない部分が沢山あるのに…」
-
ヤンマークは、改造を施され事故を起こし死亡。
タートロイドはあまりにも強力な装甲を持つために周囲から妬まれ疎まれ嫌われ、最終的に自害。
シェルダンの守っていたジム博士のイレギュラー認定も誤認だった。
ヴォルファングを始末する命令を出したのは他でもない、彼の上司であり
ミジニオンは性格の問題を理由に事故に見せかけ破壊された。
スカラビッチは探究心が高じてエックスとゼロの見つかった禁断の地に踏み入ったところをエイリアに倒されただけなのだが。
「…言いづらいことなんだけどね。
ゲイトは…究極のレプリロイドとされたエックスとゼロ、貴方達を目標としていたの。
いつか、貴方達を越えられるレプリロイドを作れるように、ってね。」
「………そういえば、言っていたね。最初にシグマのアジトに潜入する前の日。」
「え?」
『研究所で同僚に言っておくわ、ゼロ以外にも目を付けるべきハンターがまだいるって。』
…エイリアの、過去の言葉である。
「…私、そんな恥ずかしいこと言ったかしら………」
頬を染め、顔を赤くしながらエイリアは頭を掻く。
「…そして…全てを失ったゲイトは研究所を出るときに私に言っていたわ。
いつか、自分の研究を理解できなかった下等な者達を…思いのままに支配してやる、って。」
「…………それじゃあ」
「ええ。その時出た言葉が『支配』 ナイトメアが…ゲイトが作り出したものだとするなら、
これは…彼の研究を理解できなかった世間への…『復讐』 そしてナイトメアウイルスは…彼の憎しみの心、そのものなのよ」
「…………だとしたら、止めなきゃ」
「…エックス」
「ゲイトの悲しみも理解は出来るよ、けど…間違っている。
今は人間もレプリロイドも、世界のこれからがかかった大切な時期なんだ。
それを、復讐のために滅茶苦茶になんてされたくはない」
「…ええ。そうね」
「…エイリア。ゲイトの作ったレプリロイドを始末した時、辛かったろう…」
「……正直ね。戦いへの憧れっていうのも実は持っているけど……
ああいうのは…嫌だった」
お互いに敵を倒す辛さは理解している。
……意見が一致した時だった。
「…よし。ゲイトを倒そう……!絶対に!」
窓のない暗き研究室。
フラスコを片手にした、一人の科学者の姿があった。
「8体中6体が倒されたか…流石だなぁ、エックスは
さて…そろそろ気づく頃かな、エックスとエイリアは。」
セントラルミュージアム。
「な…何故、俺が…負ける…?」
「ハハハハハ…!まさかゼロ、お前がハイマックスを倒すとはな!
エックスですら倒せなかったあやつをいとも簡単に倒してくれるとは!」
アイゾックは自分の側のレプリロイドを倒され、偉く上機嫌だった。
「黙れ。その減らず口を聞けなくしてやる!」
跳びかかる。
「おっと、危ないのう…」
腕から電撃の檻を発する。
「くっ……!?」
「すまないのうゼロ。やられてあげたい所じゃが…
お前の戦う姿をもう少し見ていたくなってな。」
ゼロは新調したセイバーを床に突く。
「お前のことはワシが一番理解しておる。お前自身よりもじゃ… …今日の所はここまでじゃ。
体を休めておくのじゃな、ゼロ!ガーッハッハッハッハッハ!」
「待…て…!アイゾック!」
「おお、ゲイト様ですか。これから戻りますわい」
「敗北の割りに随分調子がいいものだな、アイゾック。
これから僕は少しエックスに挨拶をして来ようと思う。お前はどうする?」
「ワシは少し準備に取り掛からせてもらいますわい。ハイマックスをパワーアップさせねば!」
そしてその翌日、ハンターベースに等身大ホログラフィが現れる。
整った顔に切れ長の目。白衣を身にまとう若き科学者の姿がそこにあった。
「流石だね、イレギュラーハンター・エックス。僕の作り出したレプリロイドをことごとく倒してしまうとは」
「誰だお前は!」
「僕はゲイト。レプリロイドの新たな統率者、理想国家を目指す者」
-
「お前…自分が何をしているのか、わかっているのか!?
世界が滅びかけたんだぞ!」
「解っているさ。だから今が絶好のチャンスなんだ
やっと時代が僕に追いつこうとしているんだ…誰にも邪魔はさせないよ」
「お前…!」
「詳しいことは研究所で話すこととしよう…
研究所の入り口を開けておく、いつでも入ってくるといいさ」
ゲイトからの通信は途絶えた。
「…エックス。今のままじゃまだ心配よ。貴方は今までのエリアを捜索して準備に当たって。
残り2人の調査員の所へはゼロに向かわせるから」
「ああ…有難う」
「…それで、次のミッションは?」
「やっと動けるようになったようね、ゼロ。
それじゃゼロにはこのミッションに行ってもらうわ。
…先輩、オペレートお願いします」
「何だか久々ね……任せて。」
エイリアやゼロですら名前の知らない、切り揃えた桃髪の女性が現れる。
最初のシグマの反乱の際、エイリアがエックスをオペレートする傍ら、
ゼロをオペレートしていた女性だ。
カウンターハンターの戦いまではゼロは死亡。
復帰後すぐゼロは研修生アイリスを自らのオペレーターに抜擢、
それと入れ替わるようにして彼女は新人ハンターのスカウトへと仕事を変えていた。
臨時オペレーターだったエイリアの手本となった女性がここに現れたのだ。
たどり着いた先は火山。だが…
「どういうことだ。マグマが青いぞ」
「こちらからだと見えないわ。エイリアからの話によるとこれがナイトメアという事になるかしら
……色だけは涼しげで新鮮かも知れないけど」
「温度も低ければよかったんだがな。俺はマグマの中に入る趣味はない」
「ないの?」
散々自爆し続けたゼロなら或いは。彼女はそう思っていた。
どんな趣味だ、そう思われながらもゼロは飛び降りる。
「…何だこれは……」
赤い、輪のような巨大な物体があるのがわかる。
「今度は何?」
「メカニロイドのようだな。輪のような形をしているが…よく見ると尾を噛んだ蛇のようにも見える」
「反応がない。…これもナイトメアって事ね。様子は?」
「ボディの4箇所に緑色のコアらしきものがあり…そこから弾を発射している。
動き自体は左右に動くだけの単純なものだ。…すぐに片付ける」
新たなるゼットセイバーは前のものより長かった。
そして、以前のものより遥かに攻撃力が高い。それは、一切揺らがないセイバーの形からも見て取れる。
「ハァ!!」
コア破壊など容易い。ゼロは厄介なそのレプリロイドのコアを次々と破壊し…
沈めていった。
ナイトメアで出来た虫がゼロにまとわり付く。
「セイバーやバスターは効かない。
ならば、虫には虫を…というわけだ。ヤンマーオプション!」
オプションからの弾でそれを破壊し、下へと潜っていく。
「炎が噴出する箇所がある様子。うまく避けて潜っていって」
広い部屋に出た。…と思うと。
「…何だ、ここは」
「どうかしたの、ゼロ」
またも赤い輪が目の前にあったのだ。
「……またあのナイトメアだ。もう一度だけ、相手をしてやろう」
ぐるぐると部屋を回るそれを倒し、扉を潜ると…。
「その部屋の上部に…随分古い、装置のようなものの反応があります」
「多分カプセルだろう… 向かうぞ」
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