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チラシの裏 3枚目
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ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに
-
「おかえりなさい、ゼロ。 …その子が参考人?」
エイリアが言う。
「お前達の内輪揉めのせいで、どれだけの被害が出たと思っている!!」
エックスが続ける。
「落ち着け、エックス。
……それで、ゼロ。何か情報はつかめたか」
シグナス。
「…どうやらレッドアラートから逃げてきたのには訳がありそうだ。これから追々聞くこととしよう」
その時。
「!? …何者かに通信がジャックされたわ!」
「よし、繋げろ」
「……?」
「よぉ、イレギュラーハンターの皆さんよ。
俺ぁレッド。…レッドアラートのリーダーを努めさせてもらってるモンだ」
映った姿にその声。アクセルは声をあげる。
「レッド!?」
エックスが言葉を被せる。
「…お前は黙っていた方がいい。」
「なぁ、そちらに一人ガキが来ていやぁしないかな?
俺達の要求はただ一つだ。そのガキ、アクセルを俺らの所に返してもらいたい。
手荒な真似ァしたくないんだ。」
シグナスはアクセルに視線を移す。
「…ごめん、僕はもう…」
シグナスは冷静に彼に語りかける。
「お前達の企みが解らない以上、嫌がっているアクセルをそちらに返すことで何があるかわからん。」
「そうかい。…言うだけ言っては見たものの…すぐに返してもらうことぁできそうにないな。
…そこでだ、ここで俺から少し提案があるんだ。
ハンター対決、ってのはどうかな? 勝ったらアクセルはアンタらにくれてやる。
だが負けたらアクセルはこっちに返してもらう」
エックスが吼える。
「ふざけるな!お前達の戦いのせいに巻き込むんじゃない!」
「現役を引退した腰抜けにゃあ黙っててもらいたいね。
これから8箇所のポイントを指定して、俺らがいる所にアクセルを連れて来てもらおう。
そこで勝負だ。…いいな? 俺らだって負けるわけにゃあいかねえ。腕利きの奴らを集めさせてもらうぜ
じゃあな、イレギュラーハンターさんよ!」
レッドからの通信が切れた。
「………クソッ、また戦いが始まってしまう…なんでこんな無益なことが毎回、毎回…」
頭を悩ませるエックス。エイリアもつられて暗くなる。
「…エックス」
そこにアクセルが声をかける。
「…エックスが言っていることは、解るよ?面倒を起こした僕が言っちゃダメかもだけどさ。
でも…戦わなきゃ解決できないことって…あるんだよ」
幼い言葉は的を得ていた。
「…そう言うなら、お前には覚悟があるんだな?」
ゼロは彼を見下ろす。
「…もちろんさ。 …ダメなんだよ。僕の手でレッドを止めないと。
僕はハンターになりたいんだ。…こんな所で捕まっていられない」
「まだ言っているのか!」
「本気だよ!僕、エックスとゼロに憧れてたんだよ?
レッドアラートに入る前、
僕イレギュラーハンターに入りたかったんだから!」
「……憧れだけで勤まる仕事じゃ、ないんだ。」
エックスの言葉は厳しく、辛く…悲しかった。
「エックス、その辺にしておけ。
…もうアクセルを返して解決する問題でもあるまい。」
「…とにかく、僕はこれからゼロと一緒に行くからね!
絶対見ててよ!」
押収した銃を投げる。
「………いいだろう。…俺を、納得させてみせろ」
「!
ありがとうエックス! よーし!行くよゼロ!」
「元気なことだ…。」
凸凹な身長の二人の戦いが始まる。
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着いた場所はジャングルの奥地。
「あっついなー、僕さ、こういう蒸し蒸ししたところ、苦手なんだよね」
「なら交代するか?」
嫌味でもなく、ゼロは言う。
「冗談。僕の力をエックスに見せるためにも、やっぱりここは僕が戦わないとね!」
「いいだろう。やってみろ」
アクセルに任せゼロは転送装置で姿を消す。
「どうかな、僕が作った新型転送装置は。」
コンピュータの中から合成音声が発せられる。ゲイトだ
「ああ。ゲイト… 具体的にどこが変わったのか教えてくれるかしら」
「二人交代で戦うことが出来るようになった、と言えば解りやすいかな」
ゲイトが力説する。
「待機中のハンターはこの装置から戦っているハンターの姿を見ることが出来て、
いつでももう一人のハンターの居る地点を目標として転送することが出来る。
緊急時なんかには便利だろうね。」
「後、場所を選ばないから通信妨害があろうともすぐに駆けつけることが可能になったんだよ。
より自由な戦いが可能になるはずだ」
「そういうわけだ。お手並み拝見と行くぞ」
「まっかせときなよ!」
森林を進む。
「ルインズマン、って言われてるね。
遺跡なんかを守護しやすいようにああいう格好してるんだって。耐久力もなかなかのものらしいよ」
「俺に説明しているのか」
彼の武器はアクセルバレット。拳銃である。
「よ、っと」
ルインズマンを倒しながら進むと遺跡を探索中の民間レプリロイドが助けを求めていた。
「大丈夫ー?」
「いやぁ、助かったよ」
簡易転送装置にてハンターベースへと転送していく。
モアイの並ぶ遺跡を進むと。
「結構な崖だねえ」
「俺なら跳び越えられるが」
「跳ぶ、か。それもいいけどそれよりは僕なら…」
ひょいとジャンプ、そのまま背中の翼と足から噴射する。
「ふふふーんと」
ホバー能力。彼の代表的な力の一つである。
「それで……超えたところでまだまだトゲだらけか…嫌な所だねー」
そう言った瞬間。
「む?」
アクセルが何と、トゲの上を平然と動き出したではないか。
「…お前、そんなに強いボディを持っていたのか」
「………」
暫くしてトゲの植物を乗り越え。
「詳しくは後で話すよ…」
-
森の高台の一番上。森を見渡せるそこは太い柱を中心として
円形に石の床が広がっている。
「アクセル、ゼロ。そこが敵との待ち合わせのポイントみたい」
「あれれー?」
そこにはモアイがびっしり。誰もいない。
「…倒せ、ってことだね」
エックスバスターは腕を水平に伸ばさないと十分な効力を成さない。
しかしアクセルバレットは敵の位置をお構いなしに攻撃できるのだ。
「あー、もうしつこいなー……」
モアイは空を飛び、岩の塊をアクセルへ向けて撃ってくる。
ぐるりとローリングして回避しながらどんどんこちらも撃つ。
「…ふー…。」
何とか全て破壊。輪になったモアイは森の茂みへと消えていった。
「強力なエネルギー反応!」
「ウッホーーーウ!」
それを見届けた途端、レッドアラートは姿を現した。
レッドアラート・メンバーの一人ソルジャー・ストンコングだ。
「ストンコングさん!哲人って言われたアンタまでこんなことに協力してるの?どうしちゃったの!」
「ワシは…ただ、リーダーに借りがあるのだよ。アクセル、悪く思わないでくれ」
盾を構えた腕を地面へ叩き付け…がっしりとした体躯の老人は戦いを始める。
「ガイアシールド!」
腕についた岩のような丸盾を飛ばす。
「よっと!!」
ホバーで浮きつつ回避、バレットを連射。
「ホーーーーウ!」
石斧を取り出しアクセルに向けて振り下ろす。
「ぅわわぁっ!」
慌てて距離をとる。
「危なっかしくて見てられん」
ゼロがここで強制交代。
盾に対し剣。ゼロの攻撃が始まる。
「トウ!」
「タァ!」
「セァ!」
大きく踏み込み三段斬り。
「ぬぉぉぅ…!?」
「これは避けられるか…!?」
柱にしがみつき、長い盾を投げる。
すると盾は二つに分かれ……周り込み、柱を中心にゼロを潰しにかかる。
「だが少しばかり距離が足らなかったんじゃないか?」
盾は円形の場所をぐるりと囲うように動くが…足りなかった。
「………!」
「本当にタダの計算ミスか」
跳びあがり空中でセイバーを振るう。
「うぉおおおおお!!!」
ストンコングがその厚い胸板をたたき始める。
「来るか」
突進だ。
円形の足場をぐるりぐるりと走り始める。
その速さは素早く、ゼロといえどそう簡単に追い越せるものではない。が……
その巨体を跳びこせるならそれ以前。飛び越し後ろから斬りつける。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
ストンコングの体から閃光が発し…球状に爆炎が上がり砕け散る。
「盾を飛ばすまでは考えはよかったが…そんなものか。」
-
「………なんだ、お前は!?」
ゼロの前に現れたのはルインズマン。岩で出来たごつごつとした遺跡の守護者。
「……!…!…!!」
ジェスチャーで何かを伝えようとする。
ゼロはお構いなしにセイバーを抜いた…その瞬間。
「待ってってばゼローーーー!」
「…なんだお前か」
そう。彼はアクセルだった。
「えっとね。僕のアクセルバレットの能力の一つなんだけどさ。
僕、実はこうやって変身できるんだ。この、コピーショットで倒した相手にね。」
「………お前、流体金属か何かで出来ているのか」
いつぞやのどこかのダブルを思い出しながら。
「ううん。そんなことはないよ?
でもどうしてか解らないけど、僕は相手のDNAをこうやって手に入れることが出来るようになってたんだよね。
DNAがルインズマンのそれそのものになるから、僕は森の中を自由に、トゲを気にせず歩けるようになった、ってわけ。
…普通に歩いたら痛いもんね。」
「へぇ…面白い能力だねー」
「わわぁ! 君いたの!?」
おデコの目立つあの子が後ろにいた。
「あれ?こうやって会うのは初めてだったっけアクセルー。」
「いっつの間に名前まで…。 この前の聞こえてた?」
「ゼロさんに連行されてる時ー? 何か話してたかな?」
どうやら聞こえてはいなかったようだ。
「いや、いいよいいよ。それじゃ僕これからミッションに向かうから」
「あ、少し待ってて。エイリアさん今技術室で休憩してるところだからー。」
続いてのミッションは海上。
レッドアラートはレプリシーフォースが放棄したバトルシップの多数を自分のものとしていた。
「経験を積んでからの方がよかったんじゃないのか?ここは相手の巣の中だぞ」
「気にしない気にしない。 さ、行こうよゼロ」
いきなり船に入るなり、爆弾を二人に向かい投げつけるレッドアラート隊員達。
「ターゲットのいる船はこの船じゃないわ、救助者だけ助けて後は無視して先へ進んで!」
「了解ー」
救助者を救出、次の船へと跳び移ろうとすると…
鳥型の大型メカニロイドが行く手を阻む。台の上に乗っている…
よく見るとこれは砲台の一種であり、敵はぐるりぐるりと回転しながら甲板を高速で滑っているようだ。
「不恰好な敵だな」
「これ、ゼロには向かない敵じゃないのー?」
アクセルの真価が発揮される。
銃の照準を敵へと向け、集中砲火。だが…
「わわっと…!」
さすがに撃っている間に動くことは出来ないらしい。
攻撃と回避の両立は難しいようだ。
…敵が壊れる。
「よくやった。次へ行くぞ」
「最短ルートで行くならその次の船にターゲットがいるわ。その船も無視して」
敵を倒しながら先へと進む。
「………うわぁ」
3本の首が海から顔を出し、船を覆う。3体の海竜型メカニロイドのようだ。
「…こういうデカイのはゼロにお任せ、っと。交代!」
ゼロにより、炎を吐き出す3本の動かぬ首が次々に刻まれていく。
「さ、次だね次ー!」
「アクセル、着地に注意して!!」
降り立った先は…なんとオイルの上。
「!?」
「アクセル、すぐにホバーを!」
オイルの上からホバーで浮く。その瞬間…船に炎が放たれた。
「あっぶないなー……!!」
燃え盛る船上。…でも船そのものには燃え移らない様子。ここは…出来が違う。
「バトルシップの母艦みたいね。こんなものを燃やすなんて…
アクセル、そこにブリッジが見えるわね?」
「…あれかな。」
「あれは巨大なメカニロイドになっていて、あそこにターゲットが乗り込んでいるの。
そこを目指す…んだけど、」
「!」
コンテナとコンテナに挟まれたエリアがせり上がり、武装を満載した壁に変化する。
「まずはそれを破壊して」
-
これは僕の出番だ。そう思ったアクセルだが…
「代われ」
強制交代、ゼロが壁へと突進…壁をセイバーでガリガリと削り続ける。
「早っ…!?」
「ゼロらしいわね…」
壁は遠距離に攻撃をするが、セイバーでその前に破壊すればまん前にいるのが最も安全。
攻撃を開始する前に武装は一気に削られ…壁は斬り崩されたのだった。
「行くぞ」
その先で待っていたのは管制室。
腕が生え、頭が飛び出、人型メカニロイドの上半身の形を取る。バルカン砲が360度に配置され…ぐるぐると回転し始める。
「イルミナ級にエックス垂唾……」
戦闘が始まる。まずはゼロに交代、下部の回転バルカンを次々に潰していく。
そしてアクセルに交代、空へ浮きバレットを乱射し続ける。
「はっはー!」
顔が変化。どうやら敵は砲弾をぶっ放すつもりらしい。
「食らえ!」
ゼロはセイバーでこれを跳ね返し管制室に当て…爆発させる。
続けてアクセルに再び交代、銃弾を当て続け…
「やったわ!!」
バトルシップが崩壊。…海の中へ消えていく……。
「空のコンテナがあっちにあるわ!それに乗って!」
間一髪脱出。瓦礫を乗り継いでいった所…。
「…出て来なよ」
渦潮から姿を現したのはレッドアラートのメンバー・スプラッシュ・ウオフライだ。
「よぉ、裏切り者」
「やぁ、卑怯者。」
嫌よ嫌よも何とやら…というレベルではない。
お互いがお互いを元から機会があれば殺すつもりだったのだ。
「いいチャンスが巡ってきて、こちとらお前に感謝してるくらいだぜぇ!!」
「そりゃどーも。」
「ひぇひぇひぇ!しっかしお前らバカだなぁ!わざわざ…」
「俺が戦いやすい地形にしてくれるなんてよ!!」
こっちが不利になっても勝てないことを解らせてやるんだよ。
…そう思いながらアクセルは笑う。
戦いが始まるなり、ウオフライは海水へ潜る。
「あらよー!」
「ゼロ。ここは僕に任せといてよね、こんな奴はすぐに片付けるから、さ」
「ひゃっははは!」
ウオフライは勢いよく跳び出ると手に持っていた薙刀・Dグレイブでアクセルを連続で斬りつけようとする。
「よっと。おっと…甘い甘い!」
「てめぇ!」
単調なその動きをあざ笑い、距離をとって弾丸を放つ。
「そのホッソい体、穴だらけにしてやるよ♪」
「生意気言ってんじゃねぇ!!」
彼の必殺武器、スプラッシュレーザーが口から放たれる。
圧縮された水が貫通力を持ち、敵を貫くのだ。
「うわぁっと、ばっちぃ!!」
口から放たれた水を間一髪で避け、また銃を放つ。
「テメェにはそれで十分さ!」
グルグルと薙刀を回転させて歩く。
「ウザい攻撃するねぇ」
攻撃は弾き追いかけてくる癖に動きは遅い。別の瓦礫へ跳び移り……
「最後だよ!」
バレットに力を込め……巨大な弾が放たれる。
「チャージショットか!?」
ゼロは言う。だが…違う。赤い弾がウオフライに激突、貫通。大きな衝撃で吹き飛ばし……
「ちきっしょおおお!!」
貫かれたウオフライを海へと帰して行った。
アクセルの手元に海から何かが取り出される。
「よっと♪」
手で握りつぶす。…これで終了らしい。
「今のは何だ」
「ああ、DNAデータだよ。武器生成に必要なのはこの後コイツの体から出るでしょ?」
「……コピーするのに必要な弾というのはそれか」
「そ、コピーショットって言うんだ。覚えといてね」
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「…しかしお前もアレだな、ゼロ。
一番最初に女の子と仲良くなった割にエックスにもアクセルにも先を越されるなんてなぁ」
「……何のことだ。」
「いや、最初はお前に凄い嫉妬してたものだけど、今となってはなんかな……ま、頑張ろうや」
ダグラスは技術室へ去っていった。
ふと目をやると、ベンチの上で同じ袋のおやつをアクセルとおデコの目立つ娘が二人で一緒に食べている。
「あー、ヘホー!(あー、ゼロー!)」
「食べながら喋っちゃダメでしょアクセルー。」
「楽しそうで何よりだ。」
「ああ。ごめんごめん、僕自身のこと話さなきゃならないんだっけ?」
「…いや、別に後でも構わんが。」
「いやいや。やっぱ今ここで話しておくよ」
「ポップコーンを口に入れながら話さないことだな」
アクセルが話し始める。
「変身能力がある、そこまでは話したよね」
「コピーショットを使うらしいな」
「そ。それでね 僕はその能力を持っているからレッドに追われているみたいなんだ」
「…やはり組織でもお前だけなのか、その力を持っているのは」
「他に見たことないからね、そんな能力持ったレプリロイド。」
…合点が行った。
「けど…僕の能力もそんなに万能じゃあないんだ。」
「…というと」
「限度があるみたいなんだ。背丈が僕と近いレプリロイドじゃないと難しいみたい。
…ああ。とはいっても、エックスとか、ここにいるキミとかは大丈夫。
ゼロになると…難しいけど行けるんじゃないかな?」
「広いじゃないか」
「あくまで僕と同じく人間に近い形であることが一つの目安かなぁ。
例えば…」
イレギュラーハンターの功績として、過去ハンターが撃破したイレギュラー達が並べられている。
「この、バイオレン、とか アジール、とか。 シグマとか。そういう感じの奴は多分無理。
レッドアラートのみんなにもなってみようとしたけど…無理だった。」
「…どういう理屈だろうな」
「多分、変身に凄く力が要る。正確には『今の僕じゃ無理』なのかも」
「…ほら、アクセル、ゼロ。次のミッションが始まるわよ。…急いで!」
話はここまでだった。ミッションが…始まる。
「お姉さん、エイリアっていったっけ?何をそんなに急いでるのさ。」
「次のミッションは…緊急なのよ。」
次なるミッションはすぐ近く。
高速道路内に作られた、レーシングマシン用のサーキット。
使うのは勿論、ライドチェイサーだ。
「そのライドチェイサーは使いづらいから気をつけてね、アクセル。」
「お、新型かなー?凄く乗り心地がいいよ」
「…アクセルにやらせて大丈夫か?」
エックスが言う。
「うーん。見てみるしかないわね…」
「具体的に何をすればいい」
ゼロは聞く。
「見えないかしら。サーキット上に爆弾が沢山仕掛けられているの。
それを一つ残らず回収して欲しいのね。…敵の妨害を潜り抜けた上で。」
「そんなの簡単だよー!」
ライドチェイサーは好みが分かれるとされる。
アーマーはごつごつとしていて、好むのはVAVAやエックスくらいのものだが。
エックスが愛用するは昔ながらの加速力に優れた「チェバル」
ゼロが愛用する、攻撃性に優れた「アディオン」
女性陣はもっと違ったものを好むらしいのだがそれは置いておいて。
…そう。このライドチェイサーは正に…彼向きと言えた。
「ひゃっほーう!」
チェイサーはノロリノロリと走り始める。
爆弾を回収し、敵を蹴散らしながら進み始める。
少し、速くなり始める。横転したトラックを横目に、もっとスピードがついていく。
更に速くなる。速度を落とす床に一瞬だけ触れて爆弾を回収、そして…
-
いつしか、乗りこなすのが難しいまでに加速し続けたチェイサーは手がつけられない速度に達していた。
「1週で全て取りつくすつもりなの!?」
何回も何回も巡れば時間内には取りきれるだろう。そういう推算だった。
だが…何回も、ではない。1ラップでアクセルは、全ての爆弾を手に入れようとしていた。
「道が途切れてるぞ!」
「そんなの知らないねっ!」
ジャンプ台から豪快に飛ぶ。着地してすぐにボディを急に曲げ爆弾を2個回収。
そして…
「終わりぃー!」
あっという間のタイムで彼はサーキットから安全を取り戻したのだった。
後は…サーキット上部の『彼』を倒すだけ。
「ブヒブヒーー!オラオラー!どけどけぇ!このイノブスキー様に跳ねられてぇかー!」
個性的な男が現れた。
体ごとバイクへと変形するそのレプリロイドは…ヘルライド・イノブスキー。
「何だ。ロードアタッカーズの残党か」
ハイウェイで暴走していた、エックスに撃たれたレプリロイドの総称だ。
「ああぁん!?て、テメェ今なんつった!!」
「…ロードライダーズの方か?」
砂漠でエックスのチェバルを劣化チェバルで暴走していた暴走族だ。
「テンメェェェェ!上等だぁオイ! タイマンで勝負しろやぁ!」
「だそうだ」
「じゃあ僕下でチェイサーに乗ってるね、アレ楽しいー!」
戦いは始まった。
「ブヒブヒー!続けぇ続けぇ!続けぇ!続けぇ!」
戦いの舞台は金網の檻。
彼の特殊武器・ムービングホイールが彼のボディ後部から射出され…
走る彼に続いていく。
そして放つ。
「全く騒がしい奴だ…」
武器をウオフライのDグレイブに持ち替え…
「水烈閃」
勢いよくグレイブを突き出す。
「ぶひぇぇええええ!!」
イノブスキーの体がグッサリと刺される。
「口ほどにもないな」
そのまま跳びあがり、上から一撃。そのまま横へ縦へと払い続ける。
それは巨体を軽々と持ち上げていく。
「………オイ…マジやべえ…!」
「お前がこの程度で弱音を吐くほうに俺は驚くがな」
「テメェ……!」
暴走を始める。金網の周りを高速で回転し続ける。
「タイマンか…」
見ると周りには爆弾を抱えたイノブスキーの部下が沢山。
恐らくは、イノブスキーの攻撃で壁に激突させられたゼロに向かい、爆弾を一斉に投げ込むつもりなのだろう。
「食らわなければいい話だ。…来い。決着をつけてやる」
「ブヒヒヒヒヒヒ!!」
挑発に乗ったイノブスキーは変形、ゼロへと向かってくる。
「来い」
持ち替え、セイバーを構える。そして…
こんな相手には勿体無い技…そう思いながらも放つ。
単なるガードではない。
イノブスキーの体が当たった瞬間、ゼロはそれを一直線に払った。
ゼロの側へ向かうイノブスキーの体に、払われる剣が食い込み…裂く。
一刀両断。早くも今回最強の技がここで放たれる。
「獄門剣」
ゼロはセイバーを戻した。
「ねえゼロゼロ! このチェイサー、僕がもらっちゃっていい?」
「む…」
「ああ。これね、実はアクセル用に作ったもので、実は名前も決められてないのよ。」
「私の好みじゃあないんですけどねー…」
「キミが作ったの!?」
おデコの娘が作ったとされるその名無しのチェイサー。…アクセルはきっと、これを大事にし続けるだろう。
その証拠にそれ以後、彼は危険な任務にそれを乗ってきてはいない。
-
「あれ?迎えに来てくれたんだ!ごめーん。 あ、それじゃ私行って来ますねー!」
紫色の髪の少女に連れられ、オペレーター養成学校へと登校していくおデコの女の子。
「行ってらっしゃーい。」
エイリアが見送りに出ていた。
「へぇ…制服かぁ なかなかこういうのも…」
ハンターベース入り口にアクセルはいた。
「……健全ねぇ」
「な、何だよ」
「………記憶がない?」
ゼロが来るまでの間はエックスが話を聞く。
「うん。レッドに拾われる以前の記憶が…僕にはないんだ。名前だけは覚えてたんだけど。
一体僕がどうして変身能力を持っているのか…そこも解らない。」
「………記憶喪失、か」
誰かがデータを抜き出したか、はたまた製造されてすぐに放り出されたか。
「そうだ…レッドが突然変わった、って前言ったよね」
「そうだったな」
背もたれに体を預けながら。
「…いきなりのことだから、少し驚いちゃったんだよ
『お前の持っているDNAデータを俺に渡せ』って…。」
「………DNAデータを。」
「うん …次の日から、僕以外の何人かのハンターがメキメキ強くなり始めちゃって。
以前勝ってた相手に全く勝てなくなったんだよ…」
エックスが顔をしかめる。
「……そんなお前がこれから大丈夫なのか?」
「待って待って。最初こそ戸惑ったけど、レッドを除いたら全く勝てなくなったのは1人にだけだよ
他は何とか勝てる相手だと思うし…僕だって強くなってるって!」
「…信じよう」
そういったところで次なるミッションのときがやってきた。
「待たせたな、アクセル」
ゼロがやってきたのだ。
まずは転送。
「さてさて!次は何処で誰と戦えばいいのかな」
エイリアの声が聞こえてくる。
「今から行く先はコンビナート。……レッドアラートが火をつけている。…正直、危険過ぎる
辺りは文字通り火の海。
「な、何だよコレ…!?」
タンクの上で、油を含んだ炎に照らされる男の顔があった。
そう…レッドだ。
「さぁ来いよアクセル… お前がどこまで強くなったか、ここで見てやるよ」
大型人型メカニロイドをアクセルが遠距離から撃つ。
火炎放射を備えたものはゼロが近距離で対処する。
「…ゼロ。ちょっと僕に代わって。そこの飛行レプリロイドになる」
「…任せた」
空の上から様子を見る。
「クソッ、何だよコレ…!!」
「見渡す限り爆弾だらけでしょう…?」
「それだけじゃないよ!救助するべき民間レプリロイドが沢山残ってるじゃん!…爆弾の前に!」
「動けねえのさ……」
分析のために呼ばれたダグラスの声。続けてゲイト。
「確かに。その爆弾は…移動する物体を感知して作動するもののようだね…
待ち合わせ箇所である施設内部への唯一の入り口に行くためには……」
「爆弾をいくつも解除しなきゃならなくなるの!?」
「敵もその程度の爆弾じゃ死なないことは見通してるよ。 …君達がね」
「何て野郎だ…」
「…クソッ!飛んでいこうにも時間が足りなかった!!」
変身解除。1つ目の爆弾が作動する。
「助けてくれーーー!お願いだぁあ!」
「火が、火がぁ!」
「急がなきゃ!!」
跳びまわり、爆弾を回収。
「次の爆弾が動き始めたぞぉ!」
「あああ!!」
「次はあっちよアクセル!」
「ええい…!!」
「次は遠くみたいだ、急ぐんだゼロ」
「チィッ!」
馬車馬のように駈けずり回り、爆弾を回収、人々を助けてゆく。
ダメージは…もう気にしている暇などない。
「おー、おお…いい動きしやがる…。」
-
そして爆弾は全解除。
コンビナート内部へ戦いはもつれ込む。
「敵の場所…どこか解る?」
「ごめ……さい 熱…影響かし… 通信…でき……の!」
通信機器が動かなくなった。
「…やっばいよコレ……」
火の海に頼りなく浮かぶ足場を乗り継ぎ、救助者を助け先へ、先へ。
「そこの人!」
「え?あぁああ!?」
見ると背後には竜のイレギュラー。噛まれる寸前でタッチ、転送装置で転送。
「あそこ、行き場所が全くないよ!?」
「クソッ……アクセル、頼んだぞ」
飛行レプリロイドに変身し移動、救出。
そんなこんなで救出活動は難航しつつ、死傷者は出さずにカプセルの前までやってきた。
「…こ、この先だね」
「ぜぇ…はぁ…はぁ…げほっ」
息を切らしたゼロとアクセル以上に苦しんでいるレッドアラートメンバー。
「ハイエナード…!」
フレイム・ハイエナードだった。
「アクセルゥ……お前…お前が俺を殺しに来たのかぁ…!?」
「アンタらが待ってたんじゃないの!」
「…苦しい、俺、もう苦しいよ…暑い…暑い…!!あつい……熱い…熱いぃいい…熱い…熱い…!!熱い!!
どうすれば治る… どうすれば… が、ががが…がああああがぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
イレギュラー化を発症。
それも自我を崩壊させるほどの重度のものだ。
彼は突如として跳びあがり…炎の海を歩く、全長20mはあろうかというガゼル型メカニロイドへと跳び移る。
「とりあえず奴を倒すぞ!」
「うん…」
アクセルはガゼルの関節に向かいバレットを乱射。
ガゼルの動きを止めるとともに、しゃがませる。…これなら登れる。
「ゼロ!」
交代し、二段ジャンプを駆使しガゼルの背へ。
「助けてくれええええええええええ!!」
「来るよゼロ!ハイエナードの能力は…」
叫んだ後…ハイエナードは…増えた。
「分身だ!」
ゼロの周りをグルグルと高速回転し、炎を吐き出す。
「サークルブレイズは着弾すると燃え広がるから気をつけて!」
「炎系ならさっさと言え」
Dグレイブを手にする。水烈閃の構えだ。
「どれが本体だ…?」
敵の攻撃を避けながら小刻みに斬っていると…。
「ギャォオオオ!」
「これか…」
感触があった。後はコレを追いながら…
「水烈閃!!」
グレイブを真っ直ぐに突き出し突き刺す
炎を抑えるこの技で攻撃を加え続けるのみ。
だが相手とて炎を吐くだけではない。
時折り突進し、位置を入れ替え、シャッフルする。
「…何なんだコイツは…!」
本体の位置を把握し…
「水烈閃!」
突く。斬る。この連続でなんとか……
「空中まではハイエナードは追わない。解るよね」
交代。
「交差した時を見計らい…撃つのさ!」
跳びあがり、ホバーで空中からスプラッシュレーザーを真下へ見舞う。
「ぅ…ぉぉおおおあ…あぁぁぁぁあああああああ…冷てぇぇぇぇぇぇ!!!」
脳天から股下までを高圧水流で貫かれ、風通しもよくなり二重に冷たい。
「……………」
そのままガゼルに振り落とされ…炎の海の中へ。
もう、熱さを感じることもなかろう。
「………イレギュラーになっちゃったのかな、みんな」
「ウイルス反応は見られなかったのだがな」
一方、その頃。
「……………。」
青き彼は、悩み続けていた。
-
「イレギュラーハンター。
世界を滅ぼしても尚人間に尻尾を振る愚かなる生き物… そうは思わんかね」
「…イレギュラーハンターは確かに気に食わないが…
これといって俺から何かしようって気はねぇな …アンタ誰だ。」
「私か? お前達を強くするために現れた者だよ、レッドアラート。」
それが数ヶ月前のことだった。
「ふぁーあ…眠いなぁ」
今日は休日。オデコの娘は学校が休みで今起きたばかりだった。
「エイリアさぁん…おはようございますー。」
ダグラスを親代わりとし、毎日ハンターベースを家にした生活。
身寄りのないアクセルもハンターベースに住まうこととなっている。
「…あれ?エイリアさん、シグナス総監。何か静かですねぇ」
「あら、おはよう♪」
「どうしたんですか?エイリアさん。」
次なるミッションはトンネルベース。
「ライドアーマーって僕初めて乗るんだよね!」
「…やめておいた方がいいかも知れんぞ、今回は最新式ライドアーマーらしいからな。」
ライドアーマー・ゴウデン。
遠距離攻撃に特化したショット能力の高いライドアーマーだ。
「やっほぅ!」
乗り込み、壁を突き崩し、敵を撃ち殺しながら先へと進んでいく。
時には踏み潰したりもしながら。
「随分荒々しい使い方だな」
「へーきへーき。結構これ丈夫じゃない!」
毒ガスが床に立ち込めるフロアでは壁を破壊して更に先へ。
「おお!? ライドアーマーが沢山だね。こりゃ楽しいや!」
ライドアーマー・プロトライドに乗った敵たちが大勢押しかける。
「さぁ、いくらでも相手しちゃうよー!」
そう言った次の瞬間。
「あれ?動かな…あれ?」
「だから言ったんだ…!」
ライドアーマーが爆発。一気に使い物にならなくなってしまった。
「………えっと」
ライドアーマーは大勢押しかけてくる。
「お前、相手できるのか」
「まっずいなー…ぜ、ゼロ…お願いできる?」
「喋ってる暇もないみたいだな」
敵のパンチをかわすも、他のライドアーマーが攻撃をする。
「ちょっ…」
身動きが取れなくピンチ…と思われたその時。
「!?」
突如として辺り一帯が超高温に包まれる。
逃げ場のない死の炎が辺りを包み、敵ライドアーマーは動力炉を一気に暴走させられ爆発。
敵ライドアーマーが爆風避けとなり、アクセルは1mほど吹き飛ばされるだけで済んだ。
「…大丈夫か。」
そう、今の攻撃はギガクラッシュ。
…エイリアの上機嫌の理由がやってきた。
「……エックス!!」
-
「どう?久々の現場は」
「…正直、あまり戦い心地はよくないかな。」
「エックス!本当に戦ってくれるのかい!?」
「……ずっと考えてたんだ。武器を持って生まれてきた事の意味って奴を…ね」
「…でも、考えるよりまず…コンビナートで逃げ惑ったり動けずにいるレプリロイド達を見て…
思ったんだ。今こうやって見てるのは…いいことじゃない」
後ろめたさは今でもある。けれど…今は戦うときなのだ。エイリアが声をかける。
「……辛いかもしれないけど。…嫌味かも知れないけど。…嫌われるかも知れないけど。
………やっぱりね、」
エイリアの口からこの一言が発せられる。
「…やっぱり貴方には現場が似合うのよ。…私は、そう思う。」
「確かに…その言葉は傷つくね」
「…でもライドアーマーも似合うと思うわ。
さ、私に嫌なこと言われたストレスを発散しちゃって!」
ゼロは特定の人物のため戦う。
アクセルは自分のために戦う。
『他人が傷つくのは耐えられないでしょう? 自分に対する痛みは耐えても…。』
彼を突き動かしたのは青きロボットが持ち続ける真理だった。
それは否定のしようがない。…例えそれを気付かせたのが…善でも、悪でも。
「いっけぇ!!」
ライドアーマー・ライデンⅡ.
4本脚で支えられたボディから繰り出されるドリルが強力な近距離戦闘向けライドアーマーだ。
トンネルベース中心部のライドアーマー戦でエックスは鬼神のごとき動きを見せた。
敵をドリルで貫き穴を広げ、敵の体にドリルを突き刺し突進し、
時には大きく跳んで地盤を破壊、巨大な穴を作り出す。
ライデンⅡは正に豪快な戦い方をしたい彼の欲求に答えた形のライドアーマーと言えた。
だが、自分に似合ったライドアーマーに乗っていたのは何もエックスだけではない。
「キャーッキャキャキャ!壊れろ壊れろー!わーいわーい!!」
レッドアラートメンバーの一人。少年レプリロイド バニシング・ガンガルンである。
「やめろ!トンネルベースを破壊するんじゃない!」
「何をー!? 生意気だな。ライドアーマーでボクと勝負するっての?身の程知らずな大人だねー!」
カンガルー型巨大ライドアーマーはアームでジャブを行う。戦闘開始だ。
ドリルと拳。二つのライドアーマーのアームが激突する。
「わぁああ!?」
「うぐっ!!」
跳びあがり、踏み潰す爆破攻撃を行う。
ガンガルンのライドアーマーはジャンプで回避、そのままダッシュパンチへとつなげる。
「くそっ!」
「ほらほらー、かかって来なよー」
その後もボディとボディがぶつかり合い火花を散らす。そして…
「やったなぁあ!」
ガンガルンのライドアーマーが爆発。中からガンガルン本人が現れる。
「ガンガルン自体も強い格闘家だよ、気をつけて!」
「俺も今降りて戦うよ」
ライドアーマーを飛び降り、戦いがスタートする。
「ちっち、ちっち、ちっち…」
ステップを踏み、部屋の中を跳びまわるガンガルン。
「三角キーーーック!」
脚に炎を巻きつけ小さな体で重いキックを放ってくる。
「速い…」
これを回避、チャージショットを放つ。
「食らえ!」
新たなるチャージショットは3発同時。巨大なプラズマチャージショット一つに、
2つの小さなエネルギー弾が付属する形である。
「わぁ!?わわ!」
追尾攻撃は強い。
「行くぞ」
跳びあがり、再びチャージショット。
「わぁ…!」
相手と一定の距離をとっていればガンガルンの動きには対応できる。
こちらの方が速いのだから。
「舐めるなよ!!」
今度は近づきアッパー。これを回避してまた一撃。
「ううう…!」
「エクスプローーージョン!!」
「何だその名前!?」
腕から気を発し、一直線に爆発させる。技の名前としては珍しいものだ。
敵との位置をずらし回避、そしてそのまま…
「三角キーーッ」
「トドメだ!!」
またもチャージショット。敵を貫いていく。
「わぁああん…!」
幼き少年レプリロイドは戦いの末…敗れていった。
そして、ハンターベースに帰ってきた彼の背中に……あの声がかかる。
「三角キーーーック!」
「ガンガルンか!?」
振り向きバスターを向けた。だが…そこには。
「……ご、ごめん」
引きつり笑いのまま両手を挙げるエイリアの姿が。
「も、物真似してみただけよ……」
-
「なっ…………アンタ一体、何をしたんだ!?」
「見ての通りだ…DNAデータの正しい使い方って奴だレッドよ…。」
モニターに映るは今までにない、レッドアラートメンバーの戦闘性能。
「………。」
「どうだ?これでお前の部下達も世界に誇れる働きっぷりが出来るようになっただろう」
「……すまねぇな。恩に着るぜ」
「……日本って女の子多くないかしら?」
救助者レプリロイドのリストは…女性ばかり。
「タートロイドに向かわせたイナミテンプルも日本だったね。
だが…気のせいじゃないかな?統計はあまり詳しくはないのだが」
次の場所は日本のラジオタワー。
らせん状のその塔の屋上でレッドアラートが電波をジャックしているらしい。
「アクセル、鼻の下伸ばさないようにね」
「ここにいるレッドアラートのメンバーも女の子ならよかったのになー…
まぁ、いないけどさ…」
ラジオ塔は巨大メカニロイドにより警備されていた。
ヤドカリ型のそのメカニロイドは、ドリルをらせん状の床に突き刺し、エックスらを殺そうとしてくる。
「救助者達を巻き込まないように迅速に助け出さないと…」
かといって先に回りこまれる可能性もある。その「先」に救助者がいたら目も当てられない。
螺旋通路に整列して救助を待つ女性達を次々と助けていく。
瓦礫の上を伝い、中層へ。
ここは展望台であり、円形に通路が走っている。
「ここでメカニロイドを倒しましょう!」
口からのビームと同時にチャージショットを敵の口に叩き込む。
「よっと!」
アクセルに交代、敵の腕を攻撃し、腕をまたホバーで避けて口へ集中砲火。
「倒したわ!…うん。下層へ落下していったけど被害はないみたい」
「上へ急ごう」
上ではバットンボーンなどがはびこっていた。
「DNAデータをコピーできる敵もいるみたいだね…」
敵を倒し、螺旋階段を登りずっと、ずっと上へ。
そして……
「アクセル。ここから先は俺がやる」
「ターゲットの位置を確認…」
エックスの顔の角度を調整。
「そう。その方向に飛び出てまっすぐ走って!
すぐにレッドアラートがいるから取り押さえるの!」
3…2…1…。
「動くな!」
瓦礫から飛び出てすぐにダッシュ、ソレを追い詰めた。
「なななな、何するダスかぁ!?」
「あっちゃー、コイツだったんだ…!」
まんまると太ったシルエットのレプリロイドが姿を表す。
トルネード・デボニオン。レッドアラートきってのお笑い芸人だ。
「自分のコントを1発ギャグを世界に流すつもりだよ、コイツ…」
「エックスさんダスかぁ……?
オイラを…オイラを今のうちに倒して欲しいんダス…」
「…? どうしたんだ」
「だ、段々…頭が痛くなってきたダスよ…段々オイラがオイラじゃなくなっていくようで……うぁぁぁう!!」
遅かった。
「同じだよ…ハイエナードと」
「…今楽にしてやるからな…。」
デボニオンが体を高速回転させ始める。
「グルグルンダス!!」
ボルトトルネード。強力な磁場を発生させる雷の嵐だ。
「通信が使えなくなった…!」
デボニオンは太っているのはシルエットのみ。彼の本体は極度に細いのである。
それ以外は表皮型のシールドであり…
攻撃時には展開される。
「ある意味、ストンコングよりシールドを活用するかもしれない。気をつけて!」
「寒かったダスかぁ……?」
渾身のギャグ、ワイパーを回避してのエックスのチャージショットがデボニオンの細い体をポッキリと折る。
「………。」
その死に方、その言葉は…目に染みた。
-
「……しかし驚いたな。これがDNAデータか…センセイ。」
「クックク…満足してくれて何よりだ…。
DNAデータは使えば使うだけ効果をあげるもの…更なる力を手に入れたいかね?」
センセイと呼ばれた彼は口元を歪め提案する。
「ん? …ああ。このままでも仕事にゃ何の問題もないだろうよ…。
悪いが俺らはこれ以上の力は必要ねえな…」
その言葉にこめかみが動く。
「…ならんぞレッド。…奴らを…イレギュラーハンターを倒せると思っているのか、その程度の力で…」
「何の話だ?」
「お前達は更なる力を手に入れるべきなのだよ」
「……オイ…アンタ、俺らを謀って何をしようってんだ?」
「…それはだなぁ…」
「いやぁそれでさそれでさー。エックスの部屋って案外…」
「ええぇえ!?それ意外だよーアクセル…」
長い、長い間談笑し続けるアクセルとおデコの娘の姿。
…彼女に話し続ける彼は、どこか必死ささえ見て取れる。
「……………次のミッションのこと、聞かれちゃってたみたいね」
大事な戦いなのはわかっている。
レッドとの戦いに次ぐ重要度であると言っていい。彼から聞いた話の通りならば。
次の日。話し疲れ寝てしまったと思われた彼は、毛布の中で目を覚ます。
「…………。」
『一人でも出来るって所、エックスに見せて安心させてあげて。 エイリア』
書置きだった。
目の前には…一丁だったはずのアクセルバレットが二丁。
次の行を読む。
『アクセルへ この銃は、正規ハンターになったら、きっと返してね? がんばー!』
おデコの娘かららしい。ドリンクもつけられている。
「………」
ごくりと飲む。アクセルバレットをくるりと回し、ホルスターに収める。
『早起きして、お弁当作ってきたんだ』
「…………。」
ピンク色の包みがある。ドリンクを片手にお弁当箱の、その名前を発見する…
『ZERO』
「ぶほっ、ごほっ、げほっ…!!!」
通りでこの行は字体が違うと思った。
飲み物を喉に詰まらせたアクセルは、ゼロからのお弁当を食してダグラスの飛行機へと向かう。
…バツの字の傷を、指で押さえながら。
「行くよ、カラスティング」
戦闘機が無数に連なった空の上。彼は飛行機を乗り継いでいかねばならない。
「救助者は昨日エックスが助けてある! 空母まで一直線に進んでいけ!」
ダグラスとサインをかわし、アクセルは……跳んだ。
「いっくぞー!」
高度4000mでアクセルバレットが火を吹く。
飛行機から飛び降りては攻撃、撃ち落とし別の飛行機へ。飛行機の動きに乗っかり撃ち落としまた別の飛行機へ。
どんどん、危険な道を乗り継いでいく。
「大分飛行機は落としたかな…?」
そうしていった結果…巨大な飛行船へとたどり着く。空母だ。
「…鳥!?」
メカニロイドが竜巻を起こす。砲台がビームを吹く。アクセルは銃で撃ち抜き、更に先へと進む。
待っていたのはレプリロイド。コピーショットで変身、気付かれないようにどんどん奥へ。
非常用回復アイテムも入手、倉庫などのある船体後ろへ移動し……
敵を倒す。ハッチを蹴破り…出た先は。
「…………来たな、アクセル」
「やぁ、カラスティング。」
アクセルのバツ字の傷をつけた張本人。彼の親友にしてライバルだった青年…カラスティング。
Vハンガーと呼ばれる双剣の使い手だ。
「どうだ、イレギュラーハンターに行って何か見つけたものはあったか」
「……さあ。どうだろうね あるとしたら、これから見ることになるんじゃないかな」
同時に取り出し両手でクロス。二丁アクセルバレットを装備する。
「格好ばかりつけやがって」
巻き起こる風。黒き翼が空を翔けた。
-
「ウィンドカッター!!」
Vハンガーから放つ真空波が甲板に傷をつける。
「…!」
ダブルバレットを撃ち出す。
更に速まった連射速度でカラスティングを攻撃する。
「その程度で撃ち落せると思ってやいないだろうな!」
甲板に降り…凄まじい速度でダッシュ。剣を交差させ斬る。
「その手には…また乗らない!」
とっさに回避、
「やぁああ!!」
コピーショットを放つ。
「っく」
「お前の弱点はその隙の多い動きだ!」
地を蹴り宙を舞う。その翼もまた剣のように使い、アクセルを斬り滑空する。
「それくらいのハンデくらい必要じゃないの?」
「何……!」
「情けない声だ…」
剣を交差させ衝撃波を放つ。
「ちょっとおおげさにしてみただけじゃん」
両方の翼にそれぞれ弾丸を撃ち込む。
「ならそんな反応は…もう無しだ」
カラスティングはVハンガーの両方を投げる。
「双燕舞!」
「!?」
二つの刃が空を舞い、微妙な風向きにより変化しアクセルを斬る。
「くそっ…!!」
1発目は腹に。2発目は背中に。
「どうだい、風のブーメランは!」
ぐるりと後方回転、同時に剣を交差させ衝撃波を作り出す。
「うぁぁぁぁあ!!」
速い動きを捉えられるような技は現在持ち合わせていない。
ならば……。
「コピーショット!」
「…遅い」
「ボルトトルネード!!」
アクセルを中心に、電撃を帯びた竜巻が発生、カラスティングを包んで上昇していく。
風を名乗る以上、きっとこの攻撃が通用するはず…!だが。
「…中々、やるな」
弱点ではなかった。
遠くへ飛び、またもウィンドカッターの嵐。
アクセルは構わず銃を撃ち込む。
「くっそぉ…!!」
戦いはアクセルが押している。あと1つほど明らかになれば…勝てる。
「行くぞおおおおお!」
「…カラスティング!!」
アクセルへ向け、剣を交差させながら、きりもみ回転でアクセルの首を取ろうと急降下。
「今だ…!」
アクセルは二丁バレットを、落下するカラスティングへ向け…
「うぉおおおおお!!」
「行けえええええ!」
跳びあがるアクセルと飛び降りるカラスティング。攻撃は果たして…?
「らぁぁぁあああああ!」
「うごっほ…!!」
銃弾に真上へ持ち上げられるカラスティング。
そのまま上空へ上昇…そして床へと叩きつけられたのである。
「ぎあぁぁぁぁぁぁ!!!」
黒き翼がバサバサと舞い、アクセルの視界を多い尽くす。
「…だから入れるのはヤだったんだよ」
「でも、入ってなければこうやって出て来てもいない」
「……屁理屈じゃないか」
-
「レッド。お前はアクセルのことをどう思っているのだね?
逃げ出したのだろう……。」
「……ああ。アイツは…もう俺は止めはしねぇさ。
アイツには、こういう埃臭せぇ場所は似合わねぇよ…」
そんな父親の顔のレッドをニヤリと笑う。
「…フフフ… そうか。ならば……」
彼の部屋にぞろぞろと入ってくるレッドアラートの実力者達。
「…な、何だ?お前ら」
「…ぐううう…」
「うげぇぇぇ…」
「ぉぉぉぉぉぉ」
「………お、オイ、どうしやがったお前ら!
…アンタ、まさか」
「少し、パワーアップの謝礼が貰いたくてな」
「仲がよくて結構。こやつらにはお前を殺すように指示してある。
そして…その後奴ら自身も死ぬようにな…」
それは…人質だった。
「どうする?私の命令を聞けば奴らは苦しんだ記憶は消え、
日常が戻ってくるはずだぞ…?」
「…何がしてぇんだ、テメェは!!」
「一芝居打ってもらおう。」
口の端を吊り上げる。
「逃げ出したアクセルを捕まえろ!
そしてエックスとゼロのDNAを私へと寄越すのだ!!」
「偽りの青、蘇りし赤……見える、見えるぞい」
電子の海に浮かぶ六角形のパネルで構成されたサイバーフィールド。
表にも裏にも重力が働くこの美しい迷宮を通過した先に待っていたのは…
レッドアラートのメンバー、スナイプ・アリクイックだった。
「世界の歴史は、それ即ち戦いの歴史…
過去から今に至るまで積み重ねられた情報の山は死体の山。」
「何が言いたい。」
「全てはあらかじめ決まっておることなのじゃよ…
それに抗うことは出来ん………」
心臓部へと繋がる電脳世界の芯での戦いは壮絶なものとなった。
エックスと違い芯の周りを360度沿って、重力を無視し移動できるアリクイックと違い、
芯は単なる筒でしかないエックス達にとっては、即落下となるからである。
だが、新しいエックスバスターは芯を通り抜け敵を攻撃することが可能。
角度をつけた攻撃が出来るようになったことで戦いは有利に進んだのだ。
「見事じゃあああ…!!」
アリクイックの体がデータとなり解け……吸収されていった。
これにてレッドアラートの指定ポイント8箇所は全て攻略。
後はレッドアラートの出方を待つだけとなった。
「親父、鯖。」
「あいよーっ!」
モノクロで悪い音質のテレビが野球の中継を映し出す。 …これはオプションでこうやって設定しているのだ。
寂れた町の寿司屋。カウンター前の席に腰掛ける、男の背中があった。
「………旨い」
彼はわかっていたのだ。明日…自分が死ぬことを。
デボニオンから、自分のファンが経営すると言われる
この店を紹介されたことがきっかけで通うようになった。
-
「イレギュラーハンターからレプリフォースに移った男がいる。」
長い髪の男が入ってくる。
「…………。」
「そのレプリフォースに行った男の部下に、レッドアラートを立ち上げた男がいる。」
「おう兄ちゃん、何食うんでい」
メニューを指差す。
「そのレッドアラートを立ち上げた男にはイレギュラーハンターへ行ったガキがいる…と。
中々面白いもんだねー」
ダイナモだ。
「で、コロニーを落とす大馬鹿モンがいるってぇワケか」
「おいおーい…物騒なこと言わないでくれるかなぁ」
「誰もお前さんだなんて言っちゃいねえよ。
………ガキねぇ …へっ、俺ぁあんなのの親になった覚えァねえ」
あがりを一口。
「アイツはな。こんなつまんねぇ俺とは違うのさ」
「へぇー…部下の皆さんが聞いたら成仏できないんじゃないかなぁー?」
「DNAデータを吸収してってどんどん汚い仕事やっていってたからなぁ…
…後悔してもしゃあねえが」
話を戻す。
「アイツは…俺とは違うのさ
これから…、どんなところにだって行けて…どんな奴とでもつるめるだろう。」
お茶を置く。
「アイツは……何にでも変身できるのさ」
それが、彼の目をつけたアクセルの変身能力だった。
ダイナモは苦笑する。
「親父ギャグだっねぇー…俺白けますわそういうの。」
「親代わりってんなら、アイツが必要とするかどうかはともかく
すぐにでも見つかるんだろうよ」
「あの跳ねっ返りがねえ」
ダイナモは高級なネタを食べ続ける。
「…ダチも必要だが……それより、アイツもそろそろ年頃だしな」
「案外、ハンターんトコでいいオンナでも捕まえてたりしてな?」
「ヒャーッハッハッハッハ!」
笑うダイナモの声に被り、ヘリの音が外から聞こえてくる。
「御殿へお迎えみたいだぜ旦那?」
レッドに似合うとは到底思わない物々しい出迎え。
…裏で蠢く彼のものだ。
「…ウルせぇお出迎えご苦労さん…
さて…『ウザいクソ親父』を全うしに行くか」
果たして彼女はレッドの言う所のいいオンナなのだろうか。
「アクセルぅ、ハンバーグ巻あとアボカド巻取ってー!」
ハンターベースは決戦の日を前に、回転寿司屋へやってきていた。
明るい雰囲気の中、彼らは思い思いのネタを取っていく。
「ねえママー、僕大トロ4つウニ5つ頼んでいいかな!」
「誰がママよ。」
エイリアがピクリと反応する。アクセルはニヤニヤと笑いながら
話をエックスに振る。
「えー?そう思うでしょ、パパ。」
「…俺、君よりそんなに上に見えるかい」
エイリアが顔を逸らす。…耳が赤い。
「アクセルー、さすがにエイリアさんはそういう年じゃないでしょー?
…私はアクセルのお姉ちゃんですからねっ!」
「ハァ?それはないよ、僕がお兄ちゃんでしょー?」
一夜限りの休息…親子連れの多い中、彼らもふざけてみる。
続きは戦いが終わってからまたふざけあえるといいな、などと思いながら。
「じゃあ俺は海老にするかな。…はい、来たよ」
「サラダ巻ね、ありがと」
「お茶…。」
「は、はい!」
ゼロが座る隣の席に、アルバイトの紫髪の女性が来ていたが
おデコの娘は黙っておくことにした。
その頃、ハンターベースではシグナスがポイントRにレッドアラートのアジトを発見していた。
…正確には、裏で蠢く『彼』のアジトだ。
-
あいつのことか ああ知っている
話せば長い そう テスト期間の話だ
知ってるか?学生は3つに分けられる
講義にも出てテスト勉強する奴 講義には出る奴 テスト勉強だけする奴
この3つだ あいつは――
履修生へ 必修科目からの撤退は許可できない 受験せよ
だろうな 一発勝負だ
10日前――大学を巻き込んだ戦争があった
『エリア301号教室』で大規模な試験!
上も下も学生だらけだ!
2回生、掩護に向かえ!
よう相棒、俺たちにお似合いのテストだ
彼は『教室の妖精』と呼ばれた優等生
『彼』の情報源だった男
ドイツ語Ⅰ接近!すべて撃墜し、単位を確保しろ
リスニングでお出迎えだ
私は『彼』を追っている
今までのリスニング問題より速い
旧館のスピーカーだ! 油断すんな
答案用紙が白いのがいる、噂に聞いた奴か
怠け者どもには贅沢な墓場だ
ここは『大学』 死人に口なし
そして――『妖精』の言葉で、物語の幕は上がる
あれは良く晴れた暖かい日だった
生き残るぞ!試験番号0811036
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R地区に存在する…レッドアラートのアジトと見られる地点への道…
『パレスロード』。
チームはエックスとアクセル。
ゼロはハンターベースの守護に当たる。
彼らは長い長いアジトへの一本橋を走り始めた。
「な、何だよコレ…!」
ドガッ、と音を立てて落下してきたのは…
「モルボーラー…!?」
悪夢再び。
いつぞや、アルマージのいた鉱山でエックスを追いかけ回した掘削用モグラメカニロイドが…
前回とは比べ物にならない強化を施され帰って来たのだ。
「アクセル、動きは速いな!?逃げるんだ!」
「何かヤバそう…!!」
前からは敵の大群、後ろからはモルボーラー。
追いかけられつつ、敵を倒し、橋から転落しないように気をつける。
「あぶなーーーい…!!」
ゴツンゴツンとモルボーラーは腕を叩き付け、スピードを上げてこちらへ近づいてくる。
と思えば、近づいてきたところで回転、アクセルを弾こうとしてくる。
「…………どうしよう」
こんな状況下で、全く先が見えない。
長い長いパレスロードを走り切るしかないのだ。
「グライドアーマーは…ゆっくりとした移動しか出来ないからな…」
「何のための飛行機能だよ、もー……」
その代わりかつてなく攻撃力の高いアーマーと言える。
ホバーでさっさと移動、どんどん進んでいきそして…
「見えた!!」
レッドのアジト、『クリムゾンパレス』だ。
「後はコイツを倒すだけだね!」
通路も広くなった。これで全力で戦えるというものだ。
交代。
「エクスプロージョン!」
ハンマーを吹き飛ばす。これで相手は防御手段攻撃手段を失い、突進しかできなくなるはず。
「食らえ!!」
チャージショットを放つ。やはり効いている。
「エックス、危ない!」
「!!」
モルボーラーの新たなる能力はレーザー。
鼻先から極太のレーザーを照射し、360度回転するのだ。
「…ふう」
グライド飛行で回避。再びエクスプロージョンを当て…
「最後だ!」
モルボーラーは走りながら爆発、クリムゾンパレス入り口ともども爆発していった。
「………行こう」
クリムゾンパレスは綺麗な形をした城だった。
「…げええ!!?」
「何だあのデカイのは…」
巨大な鉄の塊が上のフロアへのを転げ落ちてくる。更に上の階でも、その上の階でも。
途中まで進んだ所で…アクセルに交代。
ワープした先は霧のかかった中庭。柱が何本も立っている。
そう高い場所ではないはずなのに、その下には何もない。……空間として歪んでいると見ていいのだろう。
…彼が現れた。レッドだ。
「よう、やっと来たなアクセル。」
「やぁ、レッド。元気で何よりだよ」
レッドは…よく見ると宙に浮いていた。
「センセイのおかげで力がみなぎってきてなぁ!
…ま、おかげでこのザマだが。」
DNAデータを注入され続けた結果だった。
「さ、世間話はここまでにしようじゃないか。
アクセル… 行くぞ!」
-
柱の上でのアクセルとレッドの対決が始まる。
アクセルは柱を跳び渡り続け、レッドの元へと踏み込み…
「ぉおおおおおお!」
ダブルアクセルバレットを乱射する。
「消し飛べぇぇえ!」
鎌を振りかざし、衝撃波を発する。
「波断撃…!?」
ガンガルンからゼロが得たはずの技だ。
「DNAデータってまさか」
「そうだ、その通りだ…!」
黒い闇に紛れワープ。
アクセルを斬りつける。まともに動くことは出来ないようだ。
「随分な格好じゃないか」
続いてコピーショット。効かない相手とはわかっているが。
「ハハハハハ、おかしいか!?」
巨大な竜巻を発生させる。デボニオンの技、雷神昇のようである。
「ああ、おかしくて笑いも出ないね!」
巨大ランチャーを装備…そのままレッドを撃つ。
「ぐぉおおおおお…!?」
レッドがよろける。
「…それに何なんだい、ここ」
続けて変身。高威力なランナーボムへ変身する。
レッドが分身、アクセルの前に現れ鎌を振るう。
「いたっ……!」
爆弾をレッドの前に放り投げる。
「これがレッド、アンタのアジトだってのかい!?」
前、後ろ、右。
レッドの視点の様々な場所に移動し、レッドを狙い撃つ。
「僕らのアジトはこんな所じゃなかったはずだ」
Gランチャーを装備、上からバズーカを放つ。
レッドはすかさず逃げるがそれを追い…
「やるねぇ…」
「僕らのアジトは…薄暗くて!」
ダブルバレットを乱射。
「汚くて!」
コピーショットを発射。
「埃まみれだけどみんなでそれなりに楽しくやってきた場所のはずだよね!」
再びGランチャー。
「くっ………焼きが回ったかねェ」
攻撃の隙もない。今の状況ではレッドはまともに戦えもしない。
「そろそろ本気のことを言ってくれ…」
トドメのための銃へと変更する。
「……何のことだ?…戻って来いよアクセル。」
言葉とは裏腹に彼は卑怯者として遠くへワープ、鎌を片手に憎まれ口を叩く。
「テメェは結局どこにも行けやしないんだからよ!」
本心と逆を言って見せる。
レッドの言うことなどもうわかってる…。
やるなというのは、やれという遠まわしな意味。
戻って来いというのは……。
もどかしい気持ちが彼を包み…引き金を引かせた。
「お笑いじゃあるまいしさァァァァァァ!!」
最強の銃、レイガンを放つ。真っ直ぐに飛んだ光は……
柱の集まったこの場所の端から橋までを一瞬で進み…。
レッドの腹を突き抜ける。
「…………………!!」
-
…遠くならバレまい。…にやりと笑い、その場に倒れた。
辺りが一変。突然室内へとワープする。
「…へへッ………ヘヘヘヘ……」
「強くなったじゃねえかアクセル。よくトドメを刺したな」
レッドは嬉しそうだ。
「……何の音だよこれ」
「…崩れ始めてるのさ。
俺の……死が確定すると同時に…な……」
柱が次々に、崩れ始める。
「……さぁ行きな。センセイはこの先にいるぜ…」
「アクセル!」
「やだよ!!レッドも行こう!」
「アクセル、甘ったれてんじゃねえ…!
…お前はな。…お前のやりたいように生きていきゃいいんだ。」
「ああ、解ったよ!でもとりあえずこっちへ来て!まだ間に合うから!」
「アクセル!もうダメだ、逃げるぞ!」
エックスが取り押さえる。
「ヘッ、何も解っちゃいねえ……」
アクセルのいた柱は残り、
レッドの周りの柱が崩れていく。
「…俺は、先に行って待ってる。
……お前は、まだまだ焦なくていい。 ゆっくり生きて………いずれ…来な。」
レッドの足元が崩れる。
「レッドーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
彼の体が落下していく。
霧が彼の体により形を変え…奈落の底へ続く穴になる。
落ちる音さえ聞こえないまま……彼は落ちて行った。
「…アクセル。君は待っていろ 俺がこの先を進むから」
転送装置で交代、エックスが進んでいく。
行く手には二つのワープ装置。
エックス達は知らなかった。
…実は両方のワープ先でスイッチを押さないと動かせない仕組みなのだ。
二手に分かれなければならないところだが、
エックスはそれを知らず単身進み始める。
……左へ向かった。
左はトラップ地獄。敵を弾き飛ばす音波、メカニロイドが狭い足場の中にいたり
潜るのが困難なレーザートラップがあったり。
「どういう繋がりをしているんだか解りやしない…」
だがその一方で、右を進む者が一人居た。
ここで右側を突破した時、更なる深部への扉が開かれるのだ。
「ライドアーマーがこんなに…」
エックスが来なくて正解だった模様。
ライドアーマーに乗った兵がいつぞやの如く大量配備され
次から次へと現れる。
「流石にこんな相手がいるなんて予想外でしょう?
…さあ、ライドアーマーさん…かかってらっしゃい
私が相手するわ。…新人ハンターの…エイリアがね!」
エイリアは右側フロアの転送条件をパス。
ここでエックスは知らずに合流フロアへ移動、そのまま深部へと進むことが出来た。
「………。」
合流フロアにて、狼型メカニロイドが現れた。
「後はエックス達の元へ進ませないよう、この敵たちを食い止めるだけね」
-
クリムゾンパレス上層。
霧に包まれたテラスにメカニロイドが大量に配備されている。
モアイ型メカニロイドを乗り継ぎ、長い道のりを突き進み扉を潜る。
「何か嫌な予感がする……」
空間的におかしな繋がりのこの城には何があってもおかしくない。
…でも、ここまで奇妙な空間があろうとは予想しただろうか。
「………えっ」
静まり返った部屋に時折、心音だけがこだまする。
夜の海のような真っ暗な空間の中に浮かぶは小さな光の粒。
ぼんやりとした明かりが9つばかり。
…墓だった。
中心部と、彼らが倒したレッドアラートの8人の物と思われる墓に明かりがついている。
恒例のイレギュラー達の復活だが…これは奇妙。
よく見ると光の粒が集まり、空間の奥で巨大な螺旋を形成し昇っていくのが解る。
…一体どこへ?
墓の中へとワープすると、そこは……ジャングル。
「…え?」
だが辺りの景色がおかしい。変色している。
自分以外の全て…現れたストンコングさえも。
狂気の空間での戦いの幕開けであった。
戦え、と結局言ってしまった。
エックスに辛いことを言ったつもりなのは解っている。
しかし、言うからにはエイリアにも相応の覚悟があるのだった。
もう、見送るだけの身にはならない。
その言葉を実行できるだけの力を手に入れるべく、今まで必死に訓練を繰り返してきていた。
エイリアはクリムゾンパレス上層との境界線で戦いを延々続ける。
ハンターに就職する際、ケイン博士からエックスの過去と託された『その武器』を手に。
「なぁ、姿を見せておくれよエイリア。」
優しい声がする。
「え? …… あ、…あの、私が来てることバレちゃった?エックス」
「ああ。当たり前じゃないか。君は目立つからね。美人だからね、」
…ここで気付く。
…ニセモノだと。
「エイリアぁぁぁ!!」
「ここで気付く自分が恨めしい!」
「かわされたかー…残念だなぁ。実はさ、まーた頼まれちゃってね。足止め
…ゼロの旦那が潜入してくると思ったらアンタが出てきちゃうんだものなぁ。
割と有名なんだぜアンタ。」
「足止めしようにも歯ごたえがなかったと思っていたところよ。
全力で来なさい、ダイナモ。貴方の戦い方はオペレートで調査済みなの。」
彼女は構える。
「来なさい」
彼に足止めを頼んだ者とは…そう、奴である。
最後の一人を倒した所でワープゾーンが開く。墓から先には一体どこへ繋がっているのか。
…落下するエレベーターの中だった。
ここでアクセルが漸く口を開く。
「なぁ、いるのは解ってるんだよ。
…早く出てきなよ セーンセ。」
奴が出てくる。
「ハハハハハハハハハハ!!」
「シグマ!?…またお前だったのか」
驚くのはエックス一人。
「何度もエックス達が戦ってる相手なんだってね。
薄々センセイの正体にも勘付いてた所さ。ほんっとにゴキブリみたいに何度でも蘇るみたいだね」
「ハハハハハハハ!
何とでも言うがいい!エックス、それにこの場にはいないがゼロ。
キサマらの命を我が物にするまで、私は
何度でも、なんどでも、な・ん・ど・で・も! 蘇ってくれるわぁああ!
さぁ、諸君。熱い戦いを期待しているよ?」
-
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
謎の渦が発生する上で戦ったのは巨大ボディを手に入れたシグマ。
巨大ロボットアニメのロボのようなシグマの姿に惑わされながらも、
とうとうエックスとアクセルはこれを倒したのだ。
「…ぬ、ぬううううう………!」
ゲイトの研究所で現れたときのように、ボロボロのシグマが現れる。いや、それ以下かもしれない。
マントの下にはグロテスクなボディ。
体からチューブが無数にわらわらと飛び出て束となっていて、ドクンドクンと体中をエネルギーが巡る音が聞こえる。
「わ、わあああああああああああああ!!」
アクセルが恐怖のあまり、ダブルバレットを乱射する。
「んぬううううう!」
シグマが粗暴に腕を振るい、アクセルを吹き飛ばす。
「アクセル!」
「まだ、まだだぁぁぁぁ……」
シグマが一歩、また一歩と歩いていく。
「私は」
ずるり。
「何度でも……」
ずるり…。
「…蘇る。」
ゴトリ。
「姿を変え、」
グチャリ。
「形を変え…、」
腐ったその目を見開く。
「なんどでもおおおおおおおお!!」
その時だ。
「…見つけたぞ…エックス!!」
「そんな…!?」
レッドの姿だ。何故ここに…?
すぐにエックスを蹴り飛ばしシグマの元へ。
「おお、レッド!!キサマのボディをてにいれ、
ワシは…わしは、わしはこんどこそせかいをぉおおおおおおおおおおお」
…よく考えればレッドがシグマに協力するわけはない。
「これなら、」
二つの声が重なる。一つはレッド。もう一つは…
「どうかな!!」
アクセルだった。
零距離でコピーショットを放つ。爆発…シグマの体が吹き飛ぶ。
「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ガラスの窓を突き破り、どこかへと落ちていく。
「……レッドのDNA、いつ手に入れたんだ?」
「あ。…えっとね、内緒!」
「エックス、エックス!シグマを倒したのね!」
「…ああ。エイリアか。すぐに戻るよ」
「その近くに抜け道があるわ、早く脱出して!」
アクセルとエックスは並んで走っていく。
…エイリアの声が二重に聞こえた気がしたが、エックスは気のせいだと思うことにした。
それから3週間後。
「エックスー、エックス!どう?また僕事件解決したんだよー!」
アクセルが手を振る。
「……まだまだだな。負傷者が出てるじゃないか。状況によってはこれは許されない」
「えー?ケチー…」
「まーまーアクセル。私はいつでも待ってるから♪」
「え…おでこちゃんと何かの約束したのアクセル?」
エイリアが真顔で聞く。
「は!? いや、そういうわけじゃなくて!!」
「え?じゃあ貰いっぱなしー?」
「貰うって!?」
ダグラスが首を突っ込む。
「いや、説明する!説明するからエイリアは黙ってて!」
「へぇー…」
だがそんなこんなしている間にも。
「アクセル。また事件発生のようだよ」
ゲイトがメッセージを発信。
「え? いや、だからさ!おーい、ちょっと!」
「ただちに出動したまえ」
「うー……」
誤解は消えそうにない。
「解った! 行って来るからねエックス!僕のこと早く認めてよー!?」
彼は走りだした。
「……この1週間で30件もアクセルによって解決されているイレギュラー事件があるわ。
どれもこれも彼のお手柄よ。
…ねえ、いい加減、もうアクセルのこと認めてあげたら?エックス。」
エックスは口をへの字に結び。
「いいや!ダメだ。…俺のようなハンターを目指すなんて持っての外だよ」
「…どうして?」
エックスを目指しているのは1人じゃないというのに。そういう意味も含まれていた。
「俺は…とても褒められたハンターじゃない。
こうやって、ずっと戦いを続けている…これじゃ…ダメなんだ。俺みたいになったら…。」
「…エックス」
シグナスが口を挟む。
「…だがどの道、この先お前なしでハンターの存続は難しいだろうな」
「………」
「これからは凶悪なイレギュラーによる犯罪が増えていくことだろう。
…お前の言う、戦わずして解決できる問題は、ますます減っていくだろう」
「でも…。」
混乱を増す時代の中。エックスはただ、黙っているだけだった。
-
穏やかに流れ続ける川。
大地を遥かな上から見守る太陽。
柔らかく浮かぶ雲は描く夢を映し出す。
道を彩る草花が風に踊る。
立ち並ぶビルは中の人々の生活を映し出す。
車は今日も誰かの元へと向かい走る。
電波はそれぞれの今日を乗せて町を行き交う。
今日も画面は人々の生活を潤わせ、笑いを届ける。
その風景の中、画面にはノイズが紛れ込み…、陽気な一人の老人の顔が映り込んだ。
「ごきげんよう、世界の諸君!」
陽気に、ガハハと老人は笑う。
「突然だが!ワシはこの世界を征服することにした!
詳しい声明は後で発表することとしようじゃないか!」
ロボット好きのこの老人は話を続ける。
「まずは、諸君らにこれをご覧にいれよう!
世界に刻んで見せよう!諸君らの支配者の名はっ!」
太陽を覆う灰色の影。
雲を突きぬけ、何かが落下してくる。
「Drワイリー!」
轟く激震に草花は折れ、川が恐れる。
ビルからは人々の悲鳴。車はブレーキの音を重ならせる。
灰色の、一つ目巨大ロボット『プロトアイ』の落下だ。
電波は交錯し、パニックを煽る。
プロトアイは跳び、道路を凹ませ、大気を振動させながら近づく先は二人の少年少女。
「どどど、どうしようロック!」
「ロールちゃん、研究所に逃げて!」
研究所というのは、この近辺に居を構えるロボット工学の第一人者、
『トーマス・ライト』博士の研究所のこと。
若き頃から日本人女性科学者に招かれたネットワーク工学の道より、
友と共にロボット工学の道へ進むことを選らんだ彼は、研究に没頭するあまり、いつしか老人になっていた。
子供の居ぬ彼が作り出した機械の子供こそ、このロックとロールである。
「…え、えーーーい!」
彼は道端のボールをプロトアイの目へとぶつける。得意とするサッカーの技術だ。
「ビギョ!?」
プロトアイがぐるりとボディをのけぞらせる。効果があったようだ。だが…
2発は打てない。今逃げても逃げられるかどうか…と思ったその時である。
「兄キ兄キーーーー!」
取っ手のような耳をつけた、銀色のハサミをつけたロボット達がやってくる。
「カットマン!」
彼らもライト博士が作り出したロボットであり、ロックの弟達にあたる。
「ここは俺達に、任せろぉおおおおおい!」
ファイヤーマンと呼ばれる、熱きロボットが叫ぶ。
「ロックさんは、今のうちに研究所へ避難して欲しいでありますっ!」
風景に似合わぬ厚着。アイスマン。
「オラぁ!ほぉい!そぉい!!」
気がつくと体格のいいロボット、ガッツマンがプロトアイが攻め込めぬよう壁を形成している。
「てやんでぇ!俺っちの爆弾で、こんな奴ぁぶっ飛ばしてやるからよぅ!」
花火職人、ボンバーマンだ。
「みんな…ごめん!」
「気にすることないっす兄キ!さ、早くー!」
ロックは走り出した。
…皆のことが気がかりではあるが…ロールちゃんが途中で危険に遭っているかも解らないし
まずは博士への報告が第一だからだ。
-
「!?」
近づいた研究所の屋根が焦げ、穴が開いているではないか。
コレは一体…
研究所へと入ったロックは、驚くべき光景を目にする。
「博士!! ロールちゃん! ……!」
研究所の一室に、腰を抜かしたロールちゃんの姿。
その一歩ほど前には焦げ付いた床。ライト博士は気が動転し、何も出来ずにいる。
そして……屋根に穴を開け、床を焦げ付かせた犯人がそこにいた。
「……え、エレキマン……?」
「ほぅ、ロックですか。君も死にに来たのかい?」
黄色いマスクのスリムで気障なロボット…エレキマンだ。
彼もライト博士のロボットなのにどうして……?
「博士には危害は加えませんが、ロールちゃん、君には容赦できないよ?」
左腕の人差し指を真上へ突き出す。
「痺れなさい、サンダー…ボルト!」
「危ない!!」
指を真下へ向けたその瞬間、雷が屋根を突き破り、床へと突き刺さる。
ロックはロールの腕を握り、後ろへ引っ張り逃がす。…間一髪だった。
「ろ、ロック…」
ロックは叫ぶ。
「エレキマン、どうしたの!?」
「…解りませんか?」
「解らない!」
「僕はワイリー博士の所で働くことにしたんだよ。
彼の方が技術力が上なんでね。これは博士の命令さ…研究所を破壊するようにとね」
「や、やめてくれエレキマン!」
彼は声をあげるしかない。
「話はもう終わったよ。それでも邪魔するつもりかい?」
指だけではない。掌に電撃を溜める。
「やめるんだ!!」
「消えてもらうしかないな!」
彼の能力、サンダービームが手から放たれる。
「うぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
ロックに流れる高圧電流。
全身を駆け巡り、その各電子部品を次々とショートさせていく。
焼かれたロックの体はそのまま、真っ黒になり床へと転がっていった。
「…や、やめてくれ……やめてくれ…エレキマン…お願いだ…」
「黙りなさい。それではさらばですよ、ロック…」
その時。
「…………」
「…エレキマン?」
「…ロ……ロールちゃん…今のうちに…今のうちに!!!
今のうちにロックと博士を連れて逃げなさ…い……!!」
「え、エレキマン!?」
体全体が震えている。…エレキマンの様子がおかしい。
一体どうしたのか?そう思ったところに…
壁を突き破り、黒きロボットが飛び込んできた。
「どけどけーー邪魔だYO−−−−!」
給油ロボット、オイルマンだ。ライト博士が作ったロボットである。
「ぎゃあああああああ!!」
エレキマンの横顔にゴツンとぶつかり、突き飛ばす。
「ヘイヘイ!どうしたんだYOエレキマン!」
「うぁぁああ!?」
エレキマンが衝撃のショックで、溜めていたエレキビームを放ってしまう。
これではロールに直撃…そう思われた瞬間。
何とロールは一瞬でこれを回避。電撃はドアを吹き飛ばしたのみだった。
「予定通り。」
時間操作ロボット、タイムマンが時間をとめてロールとロックを逃がしていたのだ。
「くうううううう!! コントロールが不完全じゃったか!」
画面の中で聞こえていた声が聞こえる。Drワイリーだ。
赤いUFOに乗った彼はぷかぷかと天井の穴から研究所へと入り込んでいた。
「じゃが、まあいい!プロトアイは犠牲にしたものの、
これで6体のロボット達を捕まえることが出来たんじゃからな!」
UFOの下部にはモゴモゴと蠢く袋が。 …ロボット達が入っているのだろう。
アームがエレキマンを捕まえ、袋の中にポイっと投げる。
「今日の所はこれで引き上げてやろう!それではさらばじゃライト!」
「…! ま、待て!待つんじゃワイリー!」
-
ワイリーはどこかへと飛び去ってしまった。
それよりも、である。
「……ロック、ロック!大丈夫なの、ロック!」
「ロー、ルちゃん… 博士…」
…ロックはその短い命を終えようとしていた。
「…博士… …僕…悔しいです」
彼の心は、エレキマン達を救えなかった気持ちで一杯だった。
電撃を食らったロックよりも、兄姉を攻撃することになったエレキマンの方が辛かったに違いない。
「ロック……」
「博士、ロックは、ロックは助からないんですか!?」
「……残念じゃが」
「そんな…!」
「…残念じゃがこのボディでは無理なんじゃ…スペアの体もない…
最早…ロックは助かるまい」
頭脳は今は無事なので話せている。だが…
あと1時間もすればAIは狂い、停止。彼は死を迎えることだろう。
ロールが膝をつき、涙する。
ライト博士は……考え続けていた。何か出来ないかと。
…そう思ったとき、机の上にあった何かを目にする。
「………!」
動力パーツ。
「…博士…!博士!あれを使っちゃダメなの!?」
「…博士!」
「あれはなロール。…あれは…」
それは…戦闘用の動力炉だった。
このボディのパーツを現在のロックに移植することで、彼は蘇るかもしれない。
…だが、そうしてしまったらロックは…。家庭用ロボットではいられなくなる。
そして、彼は敵を倒す運命を強いられるのだ……命の限り。
そんな運命をわざわざ背負わせることなど博士には絶対出来なかった。
「アレは…アレは、不良品なんじゃ。使えない」
嘘をつく。彼を死なせてあげることが最善だからだ。
それに、ある意味本当でもある。戦闘用としては、あまりに武器が弱いためだ。
オイルマンやタイムマンもいる。これから、彼の弟を作り……彼の分まで生きてもらおう。
「そんな…」
そう覚悟を決めようとした…その時だった。
「…博士。不良品でも構いません」
「何を言い出すんじゃロック」
「…僕、みんなを助けたいんです…
カットマン、ガッツマン、アイスマン、ボンバーマン、ファイヤーマン、エレキマン…。
そしてこれからワイリーの被害に遭う…みんなを。」
「………ロック」
「僕自身の痛みならいくらでも耐えます。だから…」
腕を伸ばし、しわくちゃの手を掴む。そして、命の限り叫んだ。
「僕を…、僕を戦闘用ロボットに改造してください!!」
どうせ死ぬ命だというのならば、せめて試してみてからでも違いはない。
例え欠陥があろうと、弱かろうと。
ロックはせめて、彼らを助けてから死にたい。そう思ったのだ。
「………解った。ロック、改造手術はすぐにでも行う。…いいな」
彼を手術台へと運ぶ。
…改造の始まりだった。
戦闘用ボディから各パーツを取り出し、ロックの壊れたボディと交換する。
まずは動力炉の交換。これにより、彼の命はひとまず繋ぎとめられる。
新品の美しいそのパーツが彼の胸に挿入され…
次に体の各所を新しいパーツへと変え、繋ぎ合わせていく。
材料も強固なものに差し替える。
…作業すること数時間。
いよいよ、皮膚と外部装甲を取り付けるのみとなった。
…ライト博士はロックに一つの質問をする。
「ロック。お前は…何色が好きだい」
むき出しの機械で、人工皮膚の残る唯一の部分、顔。
ロックは目を開け、ライト博士の方を向く。
これから自分が取り戻したい平和な空の色。
落ち着きをもたらす色。
これから戦闘用として、ただの子供ロボットではいられなくなる自分を示した色。
「…青…です」
「…ああ、青か…青か。 …解った…いいだろう。」
それからまた作業は長く続き。
「…………目を開けていいぞ、ロック。」
「…………。」
「ロック…」
-
ロールの目に映ったのは青いボディの、生まれ変わったロックの姿。
「……これは」
腕が丸みを帯びた筒型へと変化している。
「…それが、お前の武器じゃよ」
エネルギー弾を撃ち出す、弱き武器。
彼が用いることからロックバスターと名づけられた。
「…有難うございます、博士。」
青いボディに、彼は満足な様子でもある。
「じゃがなロック。お前はこれから、
色んな色に染まっていなければならない。
戦いを潜り抜け…色んなロボットの体を貫き、
その色を自分が受けなければならない」
「…はい」
その言葉の真意はその機能にこめられていることを、
彼は後に知ることとなる。
「……お前は何色にも染まらねばならない。これからお前は、
お前は…平和の虹をかける奇跡の子供…」
「レインボー戦士、ミラクルキッドじゃ!」
…博士から貰ったその名前。だが…
ロックは自分の意見を出す。
「…すみません博士、自分で決めた名前じゃダメですか?」
「…ダメかのう。まあ…いいじゃろ、言ってみなさい」
戦闘用になっても『ロックはロックである』こと。
そして…彼は子供ロボットではない。
戦闘用である『1体のロボット』であること。
ライト博士製ロボットによくつけられるこの名称と、
自分の名前とを組み合わせた名前。
「僕は……『ロックマン』」
風の吹き抜ける、真っ青な空の下に立ち並ぶはビルの群れ。
切り立った崖で彼はヘルメットを一旦置いて…
黒き髪を靡かせる。
これから守ることとなる………
そして今まで自分がいた、 みんなの暮らしを遠くに見つめていた。
200X年。
ここは、ロボットと人間がともに平和に暮らしている未来の世界―――
まだ、平和だった世界。
-
今日は非番。
エイリアは、オペレーター学校を卒業した
紫髪の女性レイヤーとおデコの娘パレットとを呼びつけ談笑していた。
「へぇ…エックスさんも鈍感ですねぇ」
「まぁ…ね、私あまり積極的な方じゃないし」
「…エイリアさん、地味に結構美人なのにねー…」
エイリアをじろじろと見つめてみる。
5秒ほどして。
「………解った!」
「えっ?」
「きっとエイリアさん、お姉さん的存在と思われてるんですよー!」
お姉さんも何も、この世界のレプリロイドでエックスより年上は、居てゼロ位のものじゃ?
エイリアはムッとしながらも思っていた。
「この際、イメージチェンジなんてどうでしょうか!」
「まあ。いいですね」
レイヤーも賛成した。
「エイリアさんエイリアさん。エックスさんと手繋いだこととかありますー?」
「へ!? …あ、あるわけないでしょ!」
「……やっぱり。
ねえねレイヤー。エイリアさんって身長どれくらいに見える?」
「私よりも…もっと上に見えますね」
レイヤーは175。
「…エックスさんは?」
「…私からは165と言った所に見えますが」
座ったままのことが多いから気付かなかったのか。
或いはエイリアの中でエックスは大きく見えていたのか。
…異様に脚が長く、彼女はエックスより遥かに背が高かったのだ。
「後髪型もあると思うんですよね。」
「私、昔は髪ほどいてたわよ?」
ゲイトの件までは。
「んー。ちょっと解いてみましょか。」
「…そうね」
目を閉じ、髪の後ろの髪を収納するパーツを開けると……
セミロングの金髪が、ふわりと開放された。
「…エイリアさんって結構美人だと思ってましたけど…」
「失敗?」
「…結構カワイイですよね。」
「そ…う?」
「はい。10歳は若返った気がしますよ」
「じゃあアーマーも私的なデザインに作り変えちゃいますね
あまり、背の高さを感じさせないデザインにしたいんですよ」
「……あ。それなら…これ、外してみてもらえる?」
「? はいはい」
外してみる。
「………え」
唖然。足のパーツは……結構な比率で、脚を包む空白部分だったのだ。
「…あー………。」
パレットが見上げることなくエイリアを見据える。
「…………エイリアさんって、エックスさんより背小さかったんですか?」
「ほんの2,3cm差…じゃない?」
「そういうことじゃなくて!わざわざ何でそんな格好してたんですかっ!!」
「そう言われても…」
-
「反省しましょう。さて…アーマーの話に移りますね。
……んー。エイリアさんって、割と派手な格好してると思うけど」
動きやすいよう、腰周りはアーマーはなくスーツのみ。
「やっぱりほら。我々オペレーター職は
顔含む上半身に印象的なパーツがあると『違う』と思うんですね」
パレット先生のご高説は続く。
「例えば私だと、この髪型とオデコっ!レイヤーは……言わなくても解りますよね」
「……ええ」
「エイリアさんは割と目立つパーツがないんですよね…どこか強調する点を作りたいんです。」
「ええ」
「まず下も取ったことだし、上のパーツも取……」
その瞬間。
「きゃあああ!?」
内側からの弾力で、アーマーが吹き飛びパレットのオデコに激突。
現れたものは。
「なっ……………!」
額の痛みを押さえ、パレットが半泣きになって震える。
「…え、エイリアさん…」
レイヤーも驚く。
「お……」
爆発する。
「表へ出てくださいエイリアさん!ハンター勝負ですハンター勝負!
いよいよ私を怒らせちゃいましたね!
何なんですか!?わざわざ髪型そんなにしちゃって背まで無駄に伸ばしちゃって!
何が相談ですか女の子でありながら女の敵じゃないですか!おまけになんですかその巨」
「お、おおお落ち着いてくださいパレット!」
その頃。
「わっ!」
剣の形をしたレーザーポインタがエックスに向けられる。
…子供の玩具だ。
ハンターベース内にある、リフレッシュフロア。
様々な草花が飾られたその場所に、眼鏡をかけた一人の少年がいた。
「…危ないじゃないか。」
「……レプリロイドだからいいけど、
人間にこんなことしたら危険だよ、覚えておいてくれ。」
「やだなぁ。ここにレプリロイド以外がいるわけないでしょ。…僕以外。」
「………人間?」
「ああ、そうだとも 僕は人間様だよ?」
「……そうなのか。」
「滅多なことを言うのはやめた方がいいぞ、エックス」
「…シグナス」
真っ黒な巨体が現れる。
「この子はな、エイリアやゲイトと同じ科学者なんだ。
この年にして並み居る研究者達の最前線に立つ…大天才さ」
「…へえ」
「………ハンターはこの子には頭が上がらないよ。
この子はユーラシア事件で祖母や祖父を失い、
…後遺症で、家族をみんな失った。けど…協力をしてくれるって言うんだ」
「そうか…」
「…なあ博士君。君は、この社会についてどう思ってる」
「…そうだな」
未来を担う有望な子供の、しっかりとした意見は貴重。
-
「ロボットからレプリロイドになったことが、僕は失敗と考える」
「なっ…
………そ、そうか。すまなかった」
「仕方ないよ人間も人間だから。
君達レプリロイドは確かに優秀だよ。でもそのレプリロイドに全てを任せ
今や地下に篭って出てこない…。ゲイトって科学者も言ってたことだよ」
非常にシビアな視点を持つ少年。
けれど………それだけで終わる子ではなかった。
「こうやって、言ってるばかりじゃ何も始まらない。
だからさ。僕も出来ることがあれば何でもやるつもりだ。方法なんて選んでられないだろ?
僕はまだ子供だがもう僕が若いうちには無理だと思っている
いつか人間もレプリロイドも幸せで居られる…自然に溢れた社会を僕は作りたい。」
エックスはポカーンと口を開けていることしか出来なかった。
「……有難う。頑張ろう お互いにね」
パシン、と博士君はエックスとタッチをかわし、シグナスとその場を後にした。
「エックスさんに会いに行ってみたらどうですー?鼻血出しちゃうかも♪」
パレットは技術室を後にした。
鏡を見てみる。
背伸びしないありのままの身長、
強調された豊かな胸、
シェイプアップしたそのアーマー。
以前のように跳ねた髪でなく、ふわりとしたゆるめの長い髪。
…少女エイリアの姿が、そこにあった。
髪を弄ったりしてみる。
オペレータールームへ向かう。
ライフセーバー、ダグラス、ゲイト、先輩オペレーター、シグナス総監、
エックス、ゼロ、アクセル、レイヤー、パレット、自分。
他にも沢山のハンターたちがいて、ハンターベースは何時しか、昔のような賑わいを取り戻していた。
みんな…それぞれ色々なことがありつつも今を生きているのだ。
パレットは、一足早く部屋に戻ったレイヤーを相手に、
ナビゲーター教本を見ながらオペレートの練習をしている。
「はい」
「『アクセル、聞こえますか。』
『ゼロさん、聞こえますか。』 …あっ」
「違うーーー!だからレイヤー、キッチリしたかったら先輩相手でも、任務中はさん付けとかしないの!
名前そのものがハンターとしての名前なんだから!」
「……すみません。もう一度…」
先輩に教えてもらった…臨時で入ってきた頃を思い出す。
「うん。最初のオペレートにしてはいい出来ね。あなたたち相性いいんじゃない?」
「そうですか?」
「ええ。私はそう思う。…あ、一つ言うとすればそうね。任務中、ハンターにさん付けは要らないわよ
ハンターは名前一つでハンターとしてのコードネームともするわけなんだから。」
「はぁ…」
「俺もあまり堅苦しいのは好きじゃないしね。敬語要らないのはさっき言ったけど、呼び方も『エックス』でいいよ」
B級ハンター・エックスと臨時オペレーター・エイリア。
先ほど言ったようにこの頃エイリアは、髪を下ろしていたのだ。
…今のように。
「もういいよレイヤー。ゼロさんだけはさん付けで行く?」
「………」
草花に囲まれたリフレッシュルームを
扉の影から体を曲げ、ちらりと覗く。…彼の背中がある。
少し、昔の呼び方で呼んでみる。
「エックスさん」
形容しがたい表情で振り向いたエックスに、自分の姿を見せてみる。
そしてその感想。
彼女と、それを聞いたレイヤー、パレットはその日一日…偉く上機嫌であった。
-
レッドアラートとの戦いが過去の話となって
更に歳月は進む。
人類とレプリロイドの総人口は、ユーラシア以前の頃まで回復していた。
その間の出来事を3つほど紹介しよう。
1つ目はおデコの娘パレットと、紫髪のその同級生レイヤーがオペレーター養成学校を卒業、
また、アクセルも功績を認められ正規イレギュラーハンターになったこと。
長い長い年月をかけながら彼らは戦いの中で様々な物事を学んでいくこととなった。
2つ目は謎の鉱物物資が発見されたこと。これはエネルギー物資として用いたり、
広い用途に資材として製品開発などに貢献できるものとされており、
世界を大きく騒がせたものだ。
そして、社会全体にも動きが見られた。
3つ目は各国政府が度重なる会議の末、人類、レプリロイドに対し
平和な生活を取り戻すための…1つの計画を発表したこと。
『ヤコブ計画』。
全世界から数十億にものぼるレプリロイド達、また死を迎えていった様々な過去のレプリロイド達の
DNAデータが提供され、それらの開発の末に世界を背負う、
従来では考えられないほどの高性能レプリロイドの開発に当たるものである。
それは『新世代型レプリロイド』と名づけられた。
そのプロトタイプとするべく政府は特殊能力を持つイレギュラーハンター『アクセル』へ協力を要請。
彼の構造を徹底的に調べ上げ、様々なレプリロイドの情報を持った上でDNAを書き換える変身機能を持つ
『コピーチップ』を搭載し…いよいよそれの開発に着手した。
それらがいかにして社会を豊かにするのか。何故『ヤコブ計画』と呼ばれるのか。
それについても報告がなされ、着々と計画は進む。
「エックス、いつ帰って来られそう?」
「いつでも帰れるよ。転送装置一つあればね」
「…うん。
もしよかったら、私のいた研究所が近くにあるから寄ってね?」
エックス、ゼロ、アクセルは旅立って行った。
「あの、失礼ですがエイリアさん。ゼロさん達は今日からどちらへ?」
「えっ…?」
「れ、レイヤー知らないのー!?」
俯く。
「す、すみません……」
「ニュース、見てないかしら。エックス達はガラパゴス諸島に行くことになったのよ」
「………今の時期にその場所というと、まさか…」
さすがにレイヤーもそこは知っている。
「そ、軌道エレベーターの警備のお仕事ですよー! エックスさん達流石ですよねー。
でもお二人が有能だから、アクセルなんて出番ないかも知れないですね」
そう、ヤコブ計画とは軌道エレベーターを建設し、新世代型レプリロイドを宇宙という
過酷な環境下に送り出し、人間やレプリロイドの新天地を作り上げるものだった。
その新天地とは…いつも夢と共に彼らが毎晩見ていた… 『月』。
「へぇー…そんなこと言ってアクセルには早く帰ってきて欲しいのかしら、パレット。」
「んもー、そういうことじゃないですよぉ!」
ゼロさん達が帰ってくるまでに正規オペレーターの職につけるように頑張ろう。
レイヤーはそう思っていたのだった。
ハンターベースの仲間達が毎週、報告書を楽しそうに見る日々や、
休日のエックスやアクセルを彼女達が連れ出す。そんな日々がそれからずっと続いた。
それは実に15年以上もの間。
軌道エレベーターが完成しても、彼らの任務は終わらないのである。
-
天高くそびえる軌道エレベーターの一角が……運用開始のその日、爆発を起こした。
夜空を照らすは燃え盛る炎、夜空を曇らすは立ち上る煙。
すっかり青年になった彼が近づく。
「こちらエックス。 下り4番ゲート付近にコンテナの落下事故が発生、
至急、救助用メカニロイドの出動を………」
その時である。
拉げたコンテナの扉が、ベコリと膨らむ。
「…?」
中から有り得ない顔が姿を見せた。
「………………。」
無言のまま。
ズシリ、ギシリ、ギシリ…。地面を踏み鳴らし、彼が姿を現す。
スキンヘッドに、がっしりとした体躯。
「……シグマ!」
信じられない光景は続く。もう一人シグマが現れたのだ。
…言っている間に、もう1人。
…続けて2人、3人、4人……
炎の海の中を……シグマの大群が闊歩する。
「………………………」
声が出ない。口をあんぐりと開けて光景をただ見るばかり。
「大丈夫ですよ」
…シグマの大群の中から女性のような声がする。
「安全のため、頑丈で高性能なシグマボディを、コピーしておいたのです。」
現れた小さなレプリロイド。
その言葉と共に、シグマ達は次々と姿を光に包まれ…
「シグマをコピーしても、何の問題もありません。」
毎日目にする一般レプリロイドのソレとなんら変わらぬ姿へと変わっていく。
「私達『新世代型』は、完全な耐ウイルス性能がありますから。」
事故は意図したもの。これは…新世代型の耐久テストの一環だったのだ。
「…君は?」
炎に照らされ、軌道エレベーターが貫く夜空の下。
涼しげな声はエックスに紹介をする。
「私は……『ルミネ』」
「軌道エレベーター…『ヤコブ』の管理者です」
-
その翌朝、久しぶりのイレギュラー発生を告げるアラームが鳴り響く。
「WARNING!WARNING!」
ゲイトの声だ。
「軌道エレベーター周辺にて大型イレギュラー反応が発生!
ポイント・ガラパゴス!付近のハンターは急行してください!」
エイリアが研究員時代を送っていた研究所の存在する『ノアズパーク』
そこに、イレギュラーが発生したのだ。
エックスとアクセルが降り立つ。
「エックス、今回のイレギュラーはどこか今までとパターンが違うみたいなの。」
「解った、調べてみるよ」
「倒したらAIサンプルの回収をお願いできるかしら。
そうそう、もし危なくなったらアクセルに交代してね」
「へっへーん、僕と交代なんてしちゃったら、エックスの出番がなくなっちゃうかもよー?」
アクセルが調子づく。
「後でゼロも応援に向かわせます。」
「それじゃ二人とも、頑張って!」
ゲイトにより更なる機能を何か追加したと思われる簡易転送装置でアクセルは待機に入り、
エックスがミッションに移る。
イレギュラー化したメカニロイド達を倒して川を渡るとすぐに例のイレギュラーは姿を現す。
「二人とも、注意して!このイレギュラーは、相手を捕まえて動けなくするタイプよ」
蟹のような形をした巨大メカニロイドとの戦いが始まる。
とはいっても所詮はメカニロイドである。
ハサミでの攻撃は難なく回避、そのまま巨大なチャージショットを放つ。
相手を引き寄せるため後ろへ下がる所更に撃ち、すぐに敵は逃げていった。
「エイリア。敵のAIサンプルが手に入った」
「ありがとうエックス。それじゃそれを届けるために一度ハンターベースに戻ってきて」
「了解」
エックスは転送装置でワープ、
「…おかえりなさい、エックス。どうだった?」
「異様に耐久力が高いのが気になったかな。そっちは何か変わったことは?」
「えーとね…」
そんなやり取りをしてる間にアクセルは滝を横切っていく。
ホバーにローリング、1丁に戻ったアクセルバレット。
洞窟に入って敵を倒して進むとすぐに3人目が現れた。
「手間取っているようだな、アクセル」
「遅れてきてそれはないんじゃないのー?ゼロ。こんなミッション、僕にかかればすぐなんだからね」
「元気なことだ」
「敵は滝の裏で待ち構えているわ。戦闘の準備はいいわね」
アクセルはそのまま洞窟を抜け最も大きな滝へと飛び降りると…
水の中から小型メカニロイドを放ったり、ハサミを飛ばしてきた。
顔を出したところをバレットで撃ち続ける。ガガガガガガ、とアゴの一箇所に一箇所に集中して弾丸が叩き込まれる。
……そうしてすぐに敵はまた逃げた。
「私のいたノアズパーク研究所が近づいてきたわね…」
「へへっ、楽勝ー♪AIサンプルゲットだよ」
「うむ。ではお前はそれを持って一度戻れ」
「はーい!」
アクセルは帰って行った。
そのまま海をバックに彼はメットールやライドアーマー型メカニロイド、
懐かしいタイヤ型メカニロイドと戦いながら崖を横切っていく。
研究所の入り口だ。
「ゼロ。貴方が今居るところは裏口前の倉庫なの。
裏口へは梯子を昇っていかなきゃいけないんだけど」
「今は降りている。」
することは解っている。二段ジャンプでその場を登り、裏口から入っていく。
設置されたジェネレーターから発生する蜂型メカニロイドを倒し続け、いよいよ内部へ。
窓から海の見えるそこで彼は現れる。
「待たせた、ゼロ。状況は?」
「問題ない。行くぞ」
コンテナを破壊し、レーザーを放つメカニロイドを倒したりしつつ進んでいく。
迫る壁を抜けた先で、いよいよ3度目の戦いに入る。
「ここは俺に任せてもらおう」
壁を破壊し、三度メカニロイドが現れる。
ハサミでガードしつつ攻撃を加える戦法を取ってきたが、
ハサミをセイバーの三段斬りで吹き飛ばして本体を斬る…これを続けて撃破。
-
大破したメカニロイドからAIサンプルを入手しようとした…その時である。
「ゼロさん!!」
彼の足元へ向かいミサイルが大量発射される。とっさに回避したが、それ以前にミサイルの軌道がずれた。
「キ…キサマァァァァァァ!」
発射寸前にミサイルを撃った彼を攻撃したのだ。
「私が相手です」
紫色の髪が靡く。
彼を攻撃したのはVハンガーを手にしたレイヤー。
ミサイルを撃ったのは……VAVAだった。
「シツコイナ…!!」
Vハンガーを腕に構え、斬りつけにかかるが
「ディスタンス・ニードラー!!」
腕から放たれた、彼愛用の貫通弾が放たれる。
「!!」
レイヤーはそれをVハンガーでガードする…が
「甘イゾ?」
彼が狙ったのは手元。
「ぁあっ……!!」
貫通力を見誤っていた。
カラスティングの形見Vハンガーは、ディスタンスニードラーによりあっけなく破壊されてしまう。
「ヒャーハハハハハハ!武器ノ使イ方ヲ誤ッタナ!!」
そのまま電磁弾を放ち、レイヤーを動けなくした所で話を始める。
奇怪な合成音声が発せられる。
「マタ 会エタナァ、エックス!」
「…VAVA!?」
到着早々、ワケの解らないといった様子のアクセルに向かい説明。
「元イレギュラーハンター。今は…俺達の敵。お尋ね者のイレギュラーだ」
地獄の底から、漸く蘇ったようだ。
「オ前達ト遊ンデヤリタイ所ダガ、今ハ マダ、ヤルコト ガ アルノデナ?」
よく見ると電撃で痺れさせるタイプの捕獲用メカに少女が捕らえられている。
「…ルミネ!?」
「コレデ軌道エレベーターハ 我々ノ手ノ中トイウ訳ダ!」
「貴様… 何を企んでいる!!」
「ィーーーッヒッヒッヒ! 始メルンダヨ 新シイ世界ヲ、ナ!」
VAVAはホバーで飛び去っていった。
エックスは追う術がない。
レイヤーはパレットにより転送させられ、エックス達もハンターベースへと帰還した…。
「ルミネ。軌道エレベーター管理者の彼を浚って一体何をするつもりなのかしら」
「…解らない。一体VAVAは何をするつもりなんだろうか。
…それより今、君…『彼』って言った?」
「ええ。…間違えられがちだけど、ルミネは男性レプリロイドよ?」
エックスに衝撃が走る。
「…ともかく。こうしてる間にも何かが裏で蠢いているのかもしれない」
まずはこれからの動きが何かないか、目を光らせる必要があろう。
-
初めてのミッションは、いつ訪れるか解らない。
その前に、彼女はエックスに話しておくべきことがあった。
「エックス。」
エイリアは胸に手をあて、言葉をとうとう発した。
「次のミッションは私にやらせてくれないかしら」
「…本気かい?…危険だよ」
にっこりと笑う。
「なら、私の力見てみてくれない?」
転送装置の行き先にトレーニングスペースを入力する。
「……」
ワープしたエイリアを追って、エックスも行く。
トレーニングスペースは仮想空間。
修復プログラムの行き届いたこの場所でなら思い切り戦うことが可能である。
がらんと開けたバトルフィールド。
「…来たわね、エックス」
「どういうつもりなんだ、エイリア」
タッ、タッ、と音だけが響く。
「私は長年、貴方の背中ばかりを見送ってきた。
でも私の胸にはやはり戦いへの憧れと、
貴方達をサポートしたい気持ちがある。」
冷静に彼は話す。
「パレットはアクセルバレットを自分用に改造したようだし、
レイヤーは自分で持ってきた……確か5種もの武器がある。」
「…君は一般用の武器しか持って居ないはずだし…戦闘経験はないんだろう?」
腕を後ろに組み話す。
「…ダブルをハンターベースから撤退させたのは誰だと思う?」
そう言えばそうだった。
「!!」
「スカラビッチやヴォルファングを倒したのはどうやってだと思う?」
「……そう、なのか?」
「私だって強くなろうとしたのよ。
少し……あなたに直接戦ってもらうことで力を試してみたいの」
エックスは聞く。
「どうして、俺なんだ?」
理由は2つある …そのうちの一つは言えないので、
もう一つの理由を音で答える。
キュイイイイイイイン………
「…………!!」
有り得ない光景が広がる。
エイリアの胸部…動力部にエネルギーが収束していくのだ。
ゼロのバスターはエックスとは違う。
チャージ中は光の色と作り出す模様で違いが理解できる。
それだけではない。今まで見てきた、様々な…
今まで戦ってきた相手のどれもが異なるチャージ方法。
…だが…エイリアのそれは…全く、同じだったのだ。
キイイイイイイイイイイイン…
チャージ完了の音へとすぐに変わる。
「……馬鹿な」
「いっくわよーーーーー!!」
エイリアはダッシュして…腕を変化させる。
身の丈よりも大きい、蒼き巨大なエネルギーが…
その腕から放たれたその瞬間。
彼女の武器…それは…
「『エイリアバスター』!!」
-
勝負は3本勝負、2本先取で勝利となる。過去56種類の特殊武器全てから選択可能な戦いとなる。
まずはエイリアが攻めに入る。
「ストームトルネード!」
長く連なる竜巻を撃ち出す。
「この攻撃は隙が大きい…わかってるさ!」
エックスはこれを壁を蹴り回避。
エイリアは反対側の壁を蹴り、天井まで移動。落ちながら次の特殊武器を発する。
「ソニックスライサー!」
壁を反射する刃。
その軌道を見切り、重力に任せ壁から落下
潜るように避ける。
「レイスプラッシャー!」
床へと落ちてきた所に遠ざかりなが光の散弾銃を放つ。
扇状に広がっていくその攻撃範囲は最大限に広められることとなる。
「何…!?」
壁を蹴りジャンプ、エイリアの体を飛び越し回避する…が。
エイリアがにやりと笑う。そこを狙ったのだ。
「ライジングファイア!!」
上方向への攻撃をされるとこちらは弱い。
腹を突き上げられるように炎が飛んでくる。
ここで一本を取られる。
「ぐうう…!!」
「ぃよーーっし!」
エイリアはガッツポーズ。
エックスとエイリアは部屋の端へと戻り…
2本目。
「出方はもう見切ったぞ、エイリア!」
ここからはエックスはアルティメットアーマーを着用する。
エイリアは素早くチャージショットを放つ…が。
「スパイクロープ!」
「…!!」
茨の塊で防御され、そのままエックスもチャージ攻撃を発動する。
「メタルアンカー…チャージ!」
宙へ浮いて大の字になる。
ゲイト製のレプリロイドの技は強く…この技なら回避できないだろうと踏んだのだ。
「行けっ…イーグリーーード!」
「待たせたなエックス!」
メタルアンカーの力で鉛色で蘇ったイーグリードが大量に滑空。
「…しまった…!」
エイリアを突き飛ばし、
空へと帰っていく。
「きゃっ……!」
素早く2本目が取られた瞬間だった。
3本目。
チャージに入るエイリアに対しエックスは攻めに転じる。
-
「スナイプミサイル!」
エックスはミサイルを発射、エイリアを追撃する。
「まだまだよ!」
…ここでエイリアは驚くべき行動に出た。
ミサイルを通常弾で全て破壊、そのままチャージショットをエックスに向かい放ったのである。
「嘘だ!?」
撃った時点でチャージは途切れる。
チャージショットで対処されたところでエックスが攻撃に転じるつもりだったのに。
「はああぁっ!」
紙一重でこれをかわし、再び攻撃。
「どうなってるんだ!?」
バスターはバスターで、チャージショットはチャージショットで相殺される。
その上でエイリアはエックスが通常弾を撃つタイミングでチャージショットを放つ。
一歩、手数で上となる。
「エックスさんが押されてますー!」
実況パレット、
「エックスさんとエイリアさんは攻撃力、機動力、アーマーなしでの攻撃力…
どれも互角のようですが…アーマーでの差を知識でどこまで埋められるか」
解説レイヤー。
「プラズマチャージショットも相殺されたらおしまいだからねー…」
「アルティメットアーマーはその全ての力を引き出す」
エックスのダッシュと交差するようにエアダッシュで彼の上を潜る。
「けれどその実、無限に能力が使えることを除けばフォースアーマーとそこまで変化はしない」
チャージショットをダッシュジャンプで回避する。
「だがその能力を君は忘れてるみたいだ!」
通常弾をかわしたそのタイミングで…
来る…。
ノヴァストライクだ!!
だが、幾度か見たその攻撃の対処法もエイリアは心得ている。
ノヴァストライクは飛んだその位置で攻撃位置を固定し、攻撃後の隙は大きい。
それ即ち。
「誘導してしまえばこちらのもの!」
小さく跳んだときにこちらは壁際にいて、大きく跳べば、『発動前の回避』が可能になるのだ。
以前よりいっそう巨大な力…太陽のような光に包まれエックスが突進する。
エイリアはこれをエアダッシュで回避…
彼の着地地点の1歩後ろに着地。
「いっけーーーーーーーーーーーーー!」
振り向き、体を大きく捻り彼の背後からチャージショット。
「うっ………!」
「そこまでです。 2本先取、これにてエイリアさんの勝利となります」
手の内を読むまでに時間がかかりすぎた。
バスターと特殊武器のハイブリッド攻撃、そして通常弾とチャージショットの使い分け。
そしてこれまでの長い長い時間を費やし、こちらの手の内を見られていたこと。
それらを考慮してこの結果だったが、彼女は実戦に耐えうるレベル。…そう判断せざるを得ない。
「私もすでにアクセルに勝ってるから、これで私達3人とも戦えますね!」
「どうして…俺がこんな目に…」
体育座りで落ち込むエックス。
ハンターチームS級はこれにて6人となり……いよいよ戦いへの準備は整った。
アーマーでの強化が出来るエックス。 特殊武器とバスターを完全両立させるエイリア。
セイバー技を自在に使いこなすゼロ。 5種の武器の使い手レイヤー。
変身能力を持つアクセル。 様々な銃を扱えるパレット。
最後の事件は、こうして幕を開けた。
-
次の日、ハンターベースに警告音が鳴る。
「事件発生ね、現場は…ピッチ・ブラック。
それではイレギュラーハンター・エイリア、出動いたします!」
相方は勿論。
「エック…」
シグナスがそれを阻む。
「待てエイリア。能力も整っていない今だ、
君の能力ならパートナーに選ぶのは別タイプの方がいいだろう」
「…そう」
その様子を見てパレットが気を利かす。
「それじゃ今日はひとまず私とエイリアさんで行きましょうよー!」
「……まぁそうねぇ。」
【エイリア&パレット担当事件:ピッチブラック潜入】
真っ暗な闇の中…。ここは何かが行われているとされる地下の兵器工場。
「……潜入ってことでこうっ…、ピッチリボイーンって言う…大層えっちなスーツ着て行くことになるかなぁと思ったんですけどー…」
「どういうイメージよ。そういうのはレイヤーでしょう」
しかし場所としては、彼女が持つそういったスパイものの潜入先としては
ここのイメージはそのままであるといっていい。
真っ暗な中をファンが回転、警備メカニロイドが飛びまわり、警棒の代わりのビームサーベルを持った新世代型が巡回している。
赤外線スコープで見ると…どうやら肉眼では見えぬ、殺傷力の高いレーザーが警備に用いられている模様。
「あの小型メカニロイド可愛いと思いません?」
「最近あれがヤコブ周辺施設にわらわら沸いてて、そんな気にもなれないわ…」
その名を豆Q。
通気口から別の部屋へ侵入、暗い中をバスターで攻撃しつつ……
「あぶなっかしいものが運ばれてるんですよー、きっと!」
コンテナにしがみつき、レプリロイドに当たると殺傷力のあるものに切り替わるレーザーセンサーを降りていき。
「ひゃああ…敵が沢山出てきますよ!」
「私達どちらも遠距離型だからこうやって来られると少し困るわね」
チャージショット、続けて通常弾。
波状攻撃で一気に敵の数を減らしにかかる。
「交代ですー!」
パレットは銃を構える。
「…何その変な銃」
「アクセルバレットを私風に改造してみたんですよぉ」
パレットバレットというらしい。
妙な銃から放たれる弾は敵を次々貫き、次の部屋への扉を開ける。
「…警備兵がいますね」
「ここは私がやるわ」
敵に近づき、弾丸を一気に浴びせ、飛び越える。
感づかれたらその瞬間倒すしかなく、その前に隠れる。
下のフロアまで見つかることなく進むと…今度は真っ暗な部屋に出る。
「…豆Qが光ってますね」
「なるほど、あれが明かりになるわけか……パレット、目はいい?」
「眼鏡かけてるの解りませんー?いつもはコンタクトなんですよぉ」
「私が進むしかないか」
豆Qを始末、トラップだらけと思われるその部屋を慎重に通過、そしてまたコンテナにしがみつき…。
「よう、お嬢ちゃん達。俺に刻まれに来てくれたのかい。」
ここを取り仕切る危険な匂いのする鎌使い。
「ダークネイド・カマキール…だったかしら」
「エイリアさーん、何かアブなそーですよぉ?」
「可愛いツラしてんなぁ。アンタらにも見せてやりたかったねえ。新しい世界って奴をさ…。
ま、旧世代なアンタらが悪いんだ…せめて」
光の鎌が飛び出る。
「俺を悦ばせてくれよぉおお!!」
猟奇的なイレギュラーだった。
-
「…コイツ、戦いをスポーツとして捉えている戦闘狂ってタイプじゃないわね」
小刻みに跳び、鎌を楽しげに振る。
「ぇへ、へへへ!!シャドウランナー!」
楔形の、ボディによく食い込む漆黒の刃が放たれ、床に壁に張り付く。
「!!」
「へへ、へへへ…」
壁を蹴り、空中を移動。
この間にパレットはエイリアと交代する。
敵を撃つ。
「生意気なお嬢さんだなぁ、結構結構!」
「え”」
「よろこばせてくれよぅ…♪」
ガバッとパレットを床に倒し跨り鎌を突き刺し始める。
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
鎌を振り上げたところにエイリアが一撃。パレットを助けることに成功する。
「だ、だだだだだだだだだめ!!コレはさすがに楽しめませんエイリアさん!」
「そうだそうだ、その苦悶の表情が、ハハァ…俺にとっちゃ楽しいんだよぉ…!」
「…まず私に任せて」
交差、後ろからチャージショット。
通常弾2発、チャージショット。
敵の攻撃にリズムを合わせ、一定の距離を置いて攻撃を仕掛ける。
「へへっへ…!」
鎌が巨大化する。
「そらよ!」
カマキールの体が発光、更なる攻撃に移る。
「血を見せてくれよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
身の丈の3倍ほどに出力上昇した両腕の鎌が……思い切り振り下ろされる。
鎌だけで部屋を覆い尽くせるのではなかろうか。
「何…!?」
右腕、左腕。急激な動きの前に…
「きゃぁぁあああっ……!」
人間で言う肩から肋骨の辺りまでを斬られる。
「へへへへー、いいねいいねオイルのにおいってのはさ!!」
巨大化したままの鎌を手に陽気に跳ねるカマキール。
「…変態は黙ってなさい!」
新しい転送装置の機能が発動。
『ダブルアタック』だ。
「な!!?」
これはエネルギーを大量に消費するこの必殺の攻撃…。
転送時に移動するサイバー空間へ敵を連れ込む。
ここでは数秒間の間ハンターは更なる力を開放する。
「いきますよー!」
パレットの全弾発射、エイリアの最大出力のレーザーチャージショット。
「なんてこったあああああああああああああああ!!」
元の空間に戻ったときにはターゲットは巨大な傷を負っていることとなるのである。
体のあちこちが爆発、ガクリガクリと倒れていきそして…大爆発。
「…………あ、アクセルに後で慰めてもらったら?」
「はい…そうします……」
遭遇したのは新世代型のイレギュラー。その感性、理解できぬ者だった。
-
「へ?変なイレギュラーに襲われた…?どういう風にさ。」
「正直聞かない方がお互いいいんじゃない…?うん」
次なるミッションは火山の中。毎度のことである。
【エックス&アクセル担当事件:ドロップデッド火山の破壊活動阻止】
「………随分ぽっかりと開いてるね火口」
「足場を乗り継がないと危険だ。アクセル、待機しとくんだ」
「そりゃエックスでしょー?僕はホバーがあるから。」
「うーん…。」
ひとまず待機するはエックスとなった。
「よっと、ほいっと、やぁー!」
飛び降りながらホバー、続けて敵メカニロイドの破壊。
リズミカルに事は進み、横穴へ。ここが正規ルートの模様。
「これは焼却炉?」
「みたいだね。パレットが怖がってたよ。ここはレプリロイド焼却施設だって」
嫌な事を聞いてしまった…新世代を倒して更に先へ。
パイプから熱風が発せられる火山内部。
「…嫌がらせ?」
「俺も文句言いたい位だ……」
そこは針だらけの危険な箇所。
「へんしぃーーん!」
ハイテンションな声をあげて変身。
飛行レプリロイドのそれだ。
注意深く飛行、下へと降りていく。
「また焼却炉か…」
豆Qが飛び出す中、敵をどんどんと倒していく。
「………また降りるんだな」
単調な降下作業がまた続く。
「ええー…飽きたぁ」
「我慢するんだ。モルボーラーに追いかけられるよりはいいだろう」
一番下で、何かの大きな音が聞こえてくる。
ガツン、ゴツン、ゲシッ、ゲシッ、ゴスン。
…一番下でマグマの制御装置を蹴り続けている謎のレプリロイド。
黙ってみていると…
「こけっ。」
咳払いをして跳びあがる。
「!」
真上に落下。一歩退きこれを避けるとレプリロイドは突然空の上へ浮いた。
「何をしている」
-
「こけっ。俺はな、ここにイレギュラーの認定を受けて溶かされていった
レプリロイド達の怨霊の声をこうやって聞いているのさ」
「新世代型レプリロイド…バーン・コケコッカーだったな」
「ぷっ…うくくくくく……んく…いや、な…なんでもないよエックス…」
明らかにアクセルが通信越しに笑っている。
炎の中、真っ赤なとさかが揺れる。
「いかにもだ。ケッコー頭に来ちまったぜ俺はー。ああ、トサカに来た!
こんなんだから今の世界は狂ってるんだよ!」
また現状の世界の話。
「こけっ!焔降刃!!」
空中から鋭い、矢のようなキックを斜めに落とす。
壁へとぶつかりながら蹴り降りる。
「こけけけ!」
炎の弾がぐるりぐるりと回転、エックスに向け降って来る。
「なっ!?」
回避するが…
どうやらコケコッカーは炎に包まれて防御の態勢にあるようだ。
そんな相手である意味よかった。
今回エックスが装備したのは高機動力の『ヘルメスアーマー』。
短時間でのチャージからの3方向チャージショット、
一定以下のダメージを一切カットし、
回避力機動力に優れたアーマーである。
「食らえ!!」
3方向のチャージショットは二度続けてコケコッカーを撃つ。
「ほあ!?」
続けてエックスはコケコッカーの蹴りを回避。
「メルトクリーパー!」
脚を振り上げて床に叩き付ける。
彼の技が発動…炎の波が吹き上がり、相手へと走っていくというものだ。
「エックス、交代!」
アクセルに交代。彼は上空からバレットを乱射する。
「おぉおおおおおおお!」
今度は後ろの装置へと移動、そのパワーで火山活動そのものを活発化させる。
「これで解ったか!?俺がこの火山の亡霊たちと通じ合ってることが!」
「…………そんなわけがない!」
二昔前のエイリアのようなことを言い、交代したエックスはチャージショットを再び放つ。
「思い知れ!!」
すると光に包まれた彼は今度は炎を吐き出し、辺りを炎の柱で狭めたのだった。
「何…!?」
「どうした、戦いの場が狭くなったくらいで先ほどの自信はどこか行ったか!?
コッケーなものだな!!」
「それが言いたいだけじゃないのか!」
エックスは背中を撃つ。
「悪いかよ!!」
辺りをいきなり炎の海へと変える。…一瞬で消えるとはいえこの炎は強力。
すぐに回避、3方のチャージショットは彼のトサカ、クチバシ、腹を貫き倒すのだった。
「…ハーーーーッハッハッハッハッハッハッハ……!」
コケコッカーが爆発しながらこちらへ歩いてくる。それも炎のついた体で。
「コケ!」
だがそのまま後ろ向きに倒れ消滅。彼はマグマと一緒になることも、エックスを倒すこともできなかった。
「エックス!火山活動がコケコッカーのせいで激しくなったわ!
今すぐ…お願い、逃げて!」
エックスは落ち行くリフトを次々と昇ることを強制されたのだ。
「どうしよう!?」
「俺だってこれくらい行ける…行けるさ!」
回避力抜群なそのダッシュ、上へ、上へと乗り継いでいく。
「間に合うかしら…火口よ!」
光が見えた…
「あそこだ!!」
アクセルは直前で交代、出口の目印たるレアメタルを手に入れられてしまうが細かなことだ。
「……ふう」
あっついその場所から彼は飛び出していった。
-
コケコッカーを撃破し、戻ってきた彼は呟く。
「……まただ。」
エイリアは彼を心配する。
「…どうしたの?エックス…。 まだ、始まったばかりよ?」
「ああ…そうだ また始まってしまった。
…こうやって、レプリロイド同士の無益な戦いがまた始まるんだ」
「へっへーん!僕はこれからイレギュラーをもっと狩れると思うと腕が鳴るよ!」
「アクセル!!」
「…いや、アクセルの言う通りだ。始まった以上は…戦わないと」
次なるミッションが幕を開ける。
「…場所はセントラルホワイト。南極の気象管理センターの通称ね
そこにはレイヤーと……私が行こうかしら」
「いえ!」
パレットが声を張り上げる。
「エイリアさんは待機していてください、ここは私が行きますから!」
「……随分やる気なのね」
「前回のこと、これでも反省してるんですよー…。」
「無理しなくてもいいのに。」
パレットにはこのミッションは自らがストレスを発散する意味もこめられていた。
このミッションではライドチェイサーが主体となる。
そのライドチェイサーはレイヤーとパレットがそれぞれ好むものであったからだ。
【レイヤー&パレット担当事件:セントラルホワイト気象制御システム正常化】
全ては気象制御システムの誤作動によるものである。
局地での厳しい条件下での新世代レプリロイドの動作を見るべく作られたこの施設だが、
その新世代レプリロイドにより占拠され…システムが暴走を開始、酷い吹雪を発生させているのだ。
ライドチェイサー・バリウスを走らせる。
「カスタマイズしてきたー?」
「勿論です」
バリウスの従来のライドアーマーと違うポイントは、
様々な使用者に合わせ機能を色々と変更できるということにある。
レイヤーとパレットの使うバリウス二機はそれぞれ、
レイヤーのものはセイバーのような刃を射出する機能が、
パレットの場合はオート連射機能が追加…と大きく変化している。
今回の敵もまた新世代型レプリロイド。量産型ライドチェイサーに乗り、次々と向かってくる。
氷の橋での戦いを制し、クレバスに落ちたりしないようにジャンプ台で急加速、飛び越えていく。
「アレは一体…?」
尾のようなパーツのつく飛行船から降りてくるはレプリロイド達。
それらを倒し、飛行船に一気に近づいて連射。
退散したところを更に進んでいく。
更に過酷になるその道。
氷の壁が迫り、段差も激しいものへと変わっていく。
氷の海を船体まるごとぶつかりに来た飛行船をまた攻撃したところで…
いよいよ到着だ。
壁へ激突、バリウスは大破する。
「…実は過去にチェイサーが壊れなかった事例って1件しかないんだけど、何かの慣習かなぁ」
センター内部は入り口から入ってすぐ地下に向かう構造なのだが、
階にして2階分も雪で埋まっていた。
「ふわっふわの雪ですよー!!」
「寒く…ないんですか」
ぼふっと落下、雪と戯れるパレット。
ターゲットが現れる。
盛り上がった雪から登場する。
ガッツリと大きなそのボディから、じとっとした目が覗く。
「ワシの名はアイスノー・イエティンガー。来たな、旧き者よ」
「悪いけど、お爺さんみたいな口調のイエティンガーさんに言われたくないです」
「我々はいくらでも姿を変えるのだ…そんなものに縛られるお前さんは、それだから旧世代なのじゃよ」
言うことは同じなようだ。
-
イエティンガーはホバーで宙に浮き、腕から氷を乱射し始める。
「アイスガトリング!」
雪の上に突き刺さり、壁にも突き刺さる。
「私が相手です!」
レイヤーに交代。
「Dグレイブ!」
レイヤーが持つ武器の一つ。ゼロからパレット伝いに貰ったものらしい。
正式名称『ドゥルガー・グレイブ』。
「えい、やぁ!!」
斬る、払う、振り回す。
「うぬう…!!」
Dグレイブはその形状ゆえ、扱いには癖がある。
イエティンガーは体が大きく、当たれば縦に横にと満遍なく切り刻めるのだが。
「食らうがいい!!ドリフトダイヤモンドーーーー!!」
跳びあがり、氷をまとって突進してくる。
「!!」
体が大きいレイヤーはこれで突き飛ばされ、氷付けにされてしまう。
「出番ですねっ!」
現れて氷を一撃。パレットへと交代。銃からブラックアローを撃ち出す。
「当たりますよー?」
当てる気なのだが。
「ぐううう…ええい!!」
くるりくるりと回転するその矢は、イエティンガーの背から頭から、次々に食い込む。
「まだまだ!!」
部屋の隅へと移動、イエティンガーが必殺の技を使用するための紫色の光を発する。
「…なるほど。新世代はそこも凄いトコなんですねえ……」
真似しきれぬ専用の能力とでも言うべきか。
イエティンガーは吹雪をはき、空中で巨大な氷の結晶として降らせる。
それはかなりの重量を持ちながらふわふわと移動する特殊なものであり、よく見ると刃となっている。
「きれいな技ですけど怖いなー…!」
再びレイヤーへと交代。
「レイヤーレイピア!」
武器を元に戻し…
「羅刹旋!!」
レイヤーはぐるりと回転しその刃を切り刻み、三段斬りでイエティンガーを攻撃。
「ぬっ…ぐ………!!」
イエティンガーが深い深い、雪の中へと姿を消す。そして…
「どこを動いてるか解るよね、レイヤー!」
「勿論です。次の一発で…最後にしましょう」
雪の中から突き上げるアッパー。
「氷龍昇!!」
「なっ……!?」
その速度、上昇高度。
レイヤーの体は吹き飛ばされる。
「避けられまい!!」
またも氷龍昇。
レイヤーの胴体全体を覆うサイズのその拳が、レイヤーを高く吹き飛ばす。
「くっ………」
だが、次なら行ける。イエティンガーは雪の中でレイヤーを追う。
敵を引き付け………敵へと近づく。
ここでイエティンガーは必ず氷龍昇を仕掛ける。
「食らうがいいっ!」
だから一息にイエティンガーの位置と交差する。
「何!?」
跳びあがり、武器を交換。
「さよならです!」
Tブレイカー…タイタンブレイカーへと武器を交換。
これは、巨大なハンマーであり、防御も何もかもを貫通し…
「はあああああああ!」
叩き落とした!
「んごおおおおおおおおおおおお!!!」
「見事だぁぁぁぁぁ……!」
内包する高エネルギーを体から放出…爆発。氷が一気に蒸発した。
-
あの方のことか ああ知っている
話せば長い そう 古い話だ
知ってるか?姫様は3つに分けられる
勝気でおてんばな姫様、おしとやかで綺麗な姫様、庶民的な姫様
この3つだ あの方は―
騎士団へ、謁見拒否は許可できない 謁見せよ
だろうな ドキドキ上乗せだ
十日前――姫様を巻き込んだ争奪戦があった
『エリア第二ダンスホール』で大人数による姫への告白!
左も右も貴族だらけだ!
騎士団、エスコートに向かえ!
よう相棒、俺たちにお似合いの任務だ
彼は『姫様の護衛』と呼ばれた騎士
『彼』の相棒だった男
隣国の貴族接近!姫をエスコートし、隣国の貴族に御帰りを願え
しまった!玄関でお出迎えだ
私は『彼』を追っている
今までの奴より告白するのが速い
大国の王子だ! 油断すんな
この国の姫の護衛がいる、噂に聞いた奴か
野良犬どもには贅沢な会場だ
ここは『宮城』 フラレに口なし
そして――護衛の言葉で、物語の幕は上がる
あれは雪の降る寒い日だった
守り抜くぞ!姫様を!
-
暇でやった、反省は…たぶんしてない
エリ「反省しろよおい」
-
あれのことか ああ知っている
話せば長い そう 古い話だ
知ってるか?空母は3つに分けられる
全長150mくらいの軽空母、全長200mは当たり前の正規空母、
全長130mぐらいの護衛空母
この3つだ、あれは――
聯合艦隊へ、撤退は許可できない、索敵せよ
だろうな、被害上乗せだ
60年前――世界を巻き込んだ戦争があった
ミッドウェー諸島沖で大規模な戦闘!
どこもどこも攻撃機だらけだ!
大和、掩護に向かえ!
よう中将、俺たちにお似合いの任務だ
彼女は『死神』と呼ばれた駆逐艦
一時期聯合艦隊の旗艦を務めた女
米国雷撃機接近!全機撃墜し、空母を死守しろ
サイパンの基地でお出迎えだ
私は『彼女』を追っている
今までの奴より正確だ
SBDだ! 油断すんな
塗装の派手のがいる、噂に聞いた奴か
米兵どもには贅沢な墓場だ
ここはミッドウェー 死人に口なし
そして――四空母の撃沈で、物語の幕は上がる
あれはよく晴れた日だった
生き残るぞ!雪風!
エリ「またかい!」
いいじゃないかよー…
-
レイヤーとパレットは雪まみれになって帰って来た。
「う”ー、あううう、寒いですー」
カマキール、コケコッカー、イエティンガー。不可解な言動をする3体は、どれも新世代レプリロイドである模様。
「能力も比較にならないなら思考も突飛…最早別パターンね。 『新世代型イレギュラー』…といった所かしら」
「新世代型イレギュラーか…。」
エックスとエイリアは話していた。パレットが顔をアクセルに拭かれつつ口を挟む。
「どうせシグマウイルス食らったりとかしてるんじゃないんですかー?」
「それはないわ。新世代型は完全な耐ウイルス性能を持っている。
というのも、新世代型はコピーチップによりDNAパターンを変えることが出来るから。ウイルス反応も一切見られない…
内部から壊れたタイプのイレギュラーと見るしか」
「誰かが裏で操ってるんじゃないですかねー。」
戦いは続く。次は昔ながらのエックスとゼロのコンビ。
「よし、行こうゼロ!」
「ああ。次はお前の好きなライドアーマーが絡む事件だそうだぞ。 …敵は、悪魔のような名を持っているらしいがな」
「…悪魔か」
【エックス&ゼロ担当事件:ブースターズフォレスト開放】
ヤコブ計画のスタート前、ロケットを作っていたとされるこの場所。
廃ロケットの森とも呼ばれていて、作業用ライドアーマーもそのまま放置されている。
そのライドアーマーを乗りこなしここを占拠しているのもまた、新世代レプリロイド。
森の中を進むとそこには旧式ライドアーマー・サイクロプス。
設置台数の少ないこれを量産化したものがライドアーマー・ゴーレムである。
「いっけぇぇ!!」
搭乗、進み始める。このライドアーマーの特徴はなんといっても、そのハイパワーにある。
「オラオラアアアアアアアアアアアアア!!」
敵を粉砕。
「でやああああああ!」
踏み潰す。
「以前のライドアーマーほど使い勝手がいいとは言えないんじゃないのか?」
「この動きの重さがいいんだよ」
「そうか。」
エイリアからの通信。
「いいわねぇエックス…私もライドアーマーで暴れてみたい」
「任務が終わったら君は非番だろ?一度ここで暴れてみなよ」
「お前達さっきから何をイレギュラーな会話をしている」
ベルトコンベアに乗り進んだり、コンテナを破壊しながら進む。
ライドアーマーが大量に出てくるゲートでは本領発揮。
「止まれ!」
肩パーツに備えられたキャノンで動きを止め…
「オラオラアアアアアアアアア!!」
ストレスを乗せて粉砕。
「…ふう」
扉を潜り、また森を進んでいく。エイリアとエックスが話し始める。
「ここは重さで動くリフトだろう?」
「そうそう。それでね、このスイッチを使って…」
あれやこれや思いを巡らせる。
「それで、ここでは衝撃でコンテナを破壊しないように」
「ソフトに移動だね。」
「コンテナが壊れたら進めなくなるから慎重にね」
施設内を、動きの限られたライドアーマーでいかに突破するかの相談だった。
結果、スムーズな移動と戦いで次の扉を潜ることが出来た。
「ヒーーーーーーヒッヒッヒ!!」
始まりの戦いの役者、エックス、ゼロ。一応エイリアもいて、そして奴もいた。
「VAVA!」
3人の声が重なる。
「オ前達ハ、マダ無駄ナコトヲシテイルヨウダナ…?」
だが今回はこちらがライドアーマー。VAVAは乗っていない。以前と逆。
一度VAVAにこの攻撃をやってみようと思っていた…
「コレカラ世界ハ滅ブトイウノ…ニ!?」
ライドアーマーは大きく跳び…
「キ…キキキキ…キサマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
立っている状態のそのVAVAの頭を
重い、重い……膨大な質量を持ったライドアーマーが踏み潰す。
「グガゴゴゴゴゴゴ…ガ…」
形容するでもなく、本当にVAVAは潰されていった。…また蘇るのだろうけれど。
更に進み次の扉にはエレベーター。ライドアーマーのエックスを持ち上げ、建物の最上階へと連れて行く。
シャリ…ブチッ、モシャリ。
巨大な塊の後ろで何かの音がする。これは一体?
のっそりとそれは向き直った。…手には…笹。そう、彼こそは。
-
「パンダだ………。」
エックスが言う。
「…パンダだったのか。」
彼らが探していたのは新世代レプリロイド、バンブー・パンデモニウムだった。
笹をかじりながら、低い低い声で、もそもそと喋り始める。
「やぁ…。 知っているかい……? ロケットの始まりは…戦争に使われるミサイルだったんだよ…。人が、人を殺すために作った道具だったんだ。」
「………」
「そうやって、戦争の末に社会は、役に立つ存在を世に生み出していっているんだ…。
僕らは…この滅びたがっている世界を滅ぼしてあげて、新しい世界へ行く。」
「待て、それは…!」
「うん。それはイレギュラーな考えだよね。だから僕らは…戦わなきゃいけないんだ。」
「グリーンスピナー!」
竹の形をしたミサイルが腕から発射される。
「行くぞパンデモニウム!」
エックスはチャージショットを放つ。今回装備したイカロスアーマーは攻撃力特化型。
チャージショットは貫通力がとても高い、巨大レーザーとなる。
「んぉ…。」
「ほっ…!」
今度はのんびりとした動作で大きめの爆弾を二つ落とす。間に入り回避、そのままチャージショットへ繋げる。
突然、足元に巨大な竹が4本生え始める。
「何!?」
グリーンスピナーがその合間に落下してくる。パンデモニウムは突進して竹を破壊。3重攻撃だ。
「そ、それなら…!」
高いジャンプ力で飛び越し、後ろから攻撃。
「いっくぜぇ!」
ゼロへと交代、ゼットセイバーで斬る。
「おぅ…」
パンデモニウムは次なる攻撃が発生する。
「あーららららららららら!」
さながらライドアーマーのするそれのような、チャージしての連続パンチ。
「ぐぉおあああああああああ!」
吹き飛ばされる。
「ゼロ、やっぱり俺が戦うよ!」
エックスへ交代。
「白黒つけるよっ」
「!?」
…パンダだけに。パンデモニウムはエックスを捕まえ…鯖折りにしたのだ。
「ぐあぁあああああああああ!」
「俺が相手だ」
ゼロへまた交代。今回はピンチがあまりにも多すぎる。
「氷龍昇」
イエティンガーから得た技。宙へ昇る回転斬りだ。そしてそのまま
「焔降刃!」
刃を下に向け、炎の力を纏い突き刺す。
「あっちゃあぁぁぁあ!!」
パンデモニウムの弱点だったようだ。…黒の部分が増える。
「あーあららら」
紫色の光を発する。…パンデモニウム最強の攻撃が…来る。
「くっ…!?」
「葉断突!」
パンデモニウム最強の攻撃。一時的に恐ろしいほどの加速力を得て、相手を粉砕するパンチを放つ。
「ぐぁあああああああああああああああああああああああああ!」
ゼロの体が勢いよく吹き飛び、ボディが砕け散る……まさかの瀕死状態。
「メルトクリーパー!」
「あぁぁあああああ…!!」
真っ黒になったパンデモニウムはもっさりと倒れ、爆発。
……稀にみる強敵との戦いはこうして幕を閉じた。
-
「今まで調べた結果から、捕まえたイレギュラー達にある一つの共通点があることが見つかったの」
エイリアは調べ続けていた。
「結論から言うわ」
画面に映し出されたのは一人のレプリロイドの画像。シグマだ。
「………どういうことだい」
「新世代にとってはDNAデータはいくらでも変えられるものであり、
本体の姿とはまた別のものであり、問題はないの
だから、そこから共通項が見つかることなんてほとんどないはず。
…でも、あったのよ… どのイレギュラーも、シグマのDNAパターンに似たパターンを持っていた」
「……」
「これが何を意味するのか、まだよくは解らないけど…調べてみる価値はありそうね」
次なるミッションへ。
「さ、調べ物も終わったことだし…今度は私がミッションへ向かうわ」
エイリアは張り切っている。
「どうしたんだい、エイリア。」
「次のミッションは全力で当たらせてもらうわ。私の愛機でね!」
エイリアの愛機…ライドチェイサー・シリウス。お洒落なデザインで空をゆったりと走る…空の散歩を楽しみたい夢を叶えるチェイサーだ。
「俺はかっ飛ばせるチェバルがいいよ…君よくあんなのに乗れるね。」
「ダメよ、エックス。町の中を安全に走るにはアレじゃないと。」
もっとも、安全な走行とはこのミッションは行かないだろうが。
「…そうだ。練習がてら今度一緒に…町に出かけてみる?」
さりげなく言ったつもりで上ずった声でデートの約束をつけて彼女は任務へ向かう。
【エイリア&レイヤー担当事件:ダイナスティ暴走レプリロイド捕獲】
そこは人工の明かりが照らす夜の街…ダイナスティ。
競い合い立ち並ぶ高層ビル。透き通る看板が人々を誘い、標識は行き交う車に注意を促す。
車はどこへ行くとも知れず空の上を走っている。
「夜の街ですか………なかなか綺麗ですね。あまり出歩くことはありませんが」
「オトナな世界が似合いそうな見た目してるのに。意外ねぇ…」
「…エイリアさんはどうなのですか?」
「私も…そうね。研究に、汚い仕事に……その後もハンターの仕事でみんなのオペレーター。
気がつけば仕事ばかりする、大人のお姉さんを演じてたけれど。」
頬を染め、本心を呟く。
「やっぱりダメ。私は…似合わないな。
朝の明るい町をチェイサーで散歩したりとか、そういうのがいいかな。…隣にエックスなんか呼んだりして」
「そうだね。来週の日曜日とかになる?」
通信は入っていた。
「…………………!」
エイリアの頭がストップする。
「え、エックスさん……」
机をダンダンと叩く音が聞こえる。
「プククッ…あはは…はー、もう! あーーっはっはっはっは!ひゃーーー、もう…苦し!!」
「アクセル!!」
そしてターゲットが現れる。
「HYAHAHAHAHAHAHAHA! BREAK OFF! SHOOT!SHOOT! BREAK OFF!!」
奇声を発して暴れ回る柔らかな物体。
「市民の皆さん、速やかに退避をお願いいたします!」
スピードは出ないものの、小回りが効くのがシリウスの特長だ。
ブースト機能で敵を追尾する。
「ターゲット確認。攻撃に移ります」
「了解」
カーチェイスが始まる。
備え付けのショットで攻撃し、敵の電撃や半透明の弾を避ける。
「加速装置が各所に備え付けられていますからそれを!」
「解ったわ!」
丸いそれを取り加速…素早い相手との距離を縮めていく。ショットを当て続けるが…看板が来る。
「きゃっ!」
慌てて回避。続けて大きな柱。
「おっと…」
これもかわす。
「下へ向かいましたよ、エイリアさん!」
アイテムを取り加速、下降。
「トンネルの中なら戦いやすいわ!」
奇声が反響するトンネルの中で敵を集中攻撃。相手からの攻撃も一つ一つ丁寧にかわしてまた一撃。
「逃がしませんよ!」
ここで交代、町の下部へと降りていった敵を加速して落下、追う。
三次元のカーチェイスはしばらくの間続き…敵の体が燃え始める。そして。
「追いつきましたね!」
-
奇声が止まり、町を走るリフトの上で戦いがスタートする。
どうやら大きなターゲットはアーマー部分だったようで、中身は小さいレプリロイドだったようだ。
手足が伸び…顔を現す。
「……お、オレ…イレギュラーじゃないよ………」
暴走してるときはあんなに五月蝿かったというのに、
話となると話せずにオドオドする。奇妙なタイプのイレギュラーだ。
「それなら、止まりなさいと言ったときに止まりなさい!」
「…だって。あの方が…シグマ様が大都市を必要とするから………」
「やっぱりシグマの命令ね…… 悪いけどやられてもらうわよ」
ギガボルト・ドグラーゲンとの戦いが始まる。
「GET YOU!」
またも奇声。
ぐるりぐるりと回転し、半透明の弾を作り出し…遠隔操作で動かし始める。
「いっけぇー!!」
チャージショットも阻まれた。
「交代です」
レイヤーが交代。
「Vファン!」
バショウファン。扇子の武器だ。
足をあげた色っぽい姿勢で身を守りながら…
「はっ!てい!そぅ!」
華麗に、かつ激しく敵を斬る。
「HURRY UP!!」
次なる攻撃は弧を描いての突進から始まる。
まずこれを斬りつけ、敵に備える。
「NOT AT ALL!」
半透明の弾が合体、一つの大きなクラゲ型メカニロイドとなって動き出す。
「な…」
ゲル状のボディがレイヤーを包み込む。
「もご…むぐぐ…!」
「大丈夫!?」
エイリアが敵を撃ち分裂させる。交代である
ドグラーゲンは電撃を放つが
「はぁ!」
1,2,3発とバスターを撃ち
「いっけえええ!」
チャージショットを一発。相手に続けざまにダメージを与えた。
敵は避難、レイヤーの上へと移動する。
「FALL ON YOU!!!!!」
紫色の光を発し、エネルギーチャージ。
「来る…!」
複数に枝分かれした雷が、まるで爪で引っかくかのように床に衝撃を加える。
「はっ…!」
1発目、2発目、3発目と回避。
「終わりよーー!」
チャージショット。
「NOOOOO……!!」
ドグラーゲンは横文字を発したまま宙に浮かび消えていった。
落下することなく。
「………やっぱり新世代ってわからない」
「イレギュラーの考えなど、と言ってはそれまでですが、…何か考える必要もありそうですね」
-
「おかりなさーい、エイリアさん、レイヤーさん!」
ドグラーゲンのミッションが終わり、二人が帰還。
パレットはどこかニヤニヤしているようにも見えるが。
「さてさてー。お二人にはここで休んでもらうとして…
実はもう次のお二人にはミッションに向かってもらっているんですよ」
「次は誰と誰かしら」
エックスが顔を覗かせる。
「残ってるのはあの二人しかいないよ」
【ゼロ&アクセル担当事件:メタルバレー・メカニロイド暴走停止】
荒涼とした大地。クレーンに鉄骨、ライドアーマー。
男性陣に向かわせるにはうってつけの、男の現場という所か。
「へぇ…こんなトコにいったい何が…」
ドガンと大きな音が鳴り響く。
「げっ!?何アレ」
「……アレが今回倒すべき相手ということになるか」
単眼の、全長10mはあろうかという巨大メカニロイドが落下してきたのだ。
「アクセルー、聞いてー」
「ん?何さ」
「そのメカニロイドね、物凄い危ない奴らしいの。
力任せに壊そうとするとメタルバレー全体が大爆発を起こしちゃうみたい」
「へ、へー…で、どうすればいいって」
「まずは逃げてみて」
「もう逃げてる!」
敵から逃げつつ雑魚のメカニロイドに躓いたりなどしないように。
巨大メカニロイドのパンチなどをかわしながら逃げ続ける。
「まずは高さのある場所まで逃げてみて!」
行き止まりと思われた場所には崖…その上にクレーンのレバーがある。
「なるほどね」
レバーをバレットで攻撃。すると…?
「よーし!」
クレーンが急激に移動、アーム部分がメカニロイドの頭に激突した。
「もう一か……わぁあああああ!」
目からビームを出し、アクセルの体を焼く。
「うっ……」
続けてメカニロイドのパンチが崖とアクセルのボディに叩きつけられる。
「ぁああああああああああああ!」
「交代だ」
しかしゼロは近距離型。レバーを攻撃するのには向いていない。
だがそこはゼロ。うまく敵の攻撃の合間を見計らいレバーを斬り、作動させる。
「よし、追うぞ」
敵が方向転換した。
「エネルギーが暴走してるみたいですー!早く追ってください、ゼロさんっ!」
「うむ」
先ほどとはうってかわって、追う側になったが今度は時間に追われるハメとなる。
ジャンプ、破砕音と共に屋根が砕かれる。
「内部か」
メカニロイド倉庫に入ると…そこで待っていたのは。
「ククク…復活シタゾ ゼロ、後アクセルとやら!」
「チッ、メカニロイドに踏み潰されることはなかったか」
「ハッハッハ、危ナカッタガナ!」
「危なかったんだ……」
面倒な奴との戦いになる。
「アッハァァァァァァ!?」
少しの戦いの後VAVAは逃げ、ゼロたちは再びメカニロイドを追う。
-
「……えっと、レバーは左右に動く…と。」
昇降機で昇ってすぐに現れた。
「よっと!」
アクセルがレバーを作動、左右へ動くレバーはメカニロイドの頭を直撃。
「もう一発だ」
交代、またもレバーを攻撃。
「…何」
まだ余力はあるようだ。ビームを目から放ち、ゼロを焼こうとする。
「物騒な物を向けるなよ」
クレーンが直撃、メカニロイドの頭がぐわんと横を向く。交代。
「いっけー!! …わっ!?」
腕につかまれ、床に叩きつけられる。
「いってぇええ…」
「後は俺に任せろ」
アクセル戦闘不能。ゼロはレバーを攻撃、これにてメカニロイドは機能を停止。
「ゼロさーん、この先に巨大な反応があるんです。行ってみてくださーい」
「…うむ」
床から水晶が飛び出…その中から現れたのは
「ゴキブリ!?」
「違うよパレットー。…なんだろ」
「ゴキブリだな」
アースロック・トリロビッチ。
「俺は三葉虫モチーフだ、覚えとけポンコツどもがぁ!」
老人のような声がする。
「俺達の考えなんて旧世代のジジイなお前らにはわからんだろう!」
「悪いけどあんたの方が年取って見えるよー?」
「お、俺を馬鹿にするなよー!能無しどもがー!」
しゃがれた声の若者との対決。
「ほらよー!」
水晶が足元から湧き出、トリロビッチは突進でそれを崩す…。
ゼロは水晶から飛び降り、三段斬りでその甲羅をはがす。
「ぎぁぁぁ…」
「葉断突!」
そのまま攻撃、ダメージを与える。
「羅刹旋!」
ぐるりぐるりと回転、敵を刻む。
「これでも食らえー!」
水晶の壁で複雑な反射に変えた上で、真ん丸い…反射弾を放つ。
「面倒な敵は嫌いだな」
くるりくるりとそれらをかわしてまた一発。
「うっひゃぁああ!」
紫色の光を早くも放つ。
「もー、怒ったぞお!」
水晶が足元から、天井から湧き出る。
「ほらよーーー!」
それを波のようにしてゼロへと滑らせてくる。
どうやら破壊できる代物ではなさそうだ。
「面白い攻撃をするな」
地形攻撃を全て回避。これで潰されるのはよほど遅い者のみであろう。
「最後だ」
三段斬りでまたも殻をはがし、一撃。
「嘘だろぉおおおおおお…」
すぐに倒れたのだった。
「メカニロイドの強さに頼るとやはりその程度か……始めに倒すべき敵だった。」
-
エックスとエイリアは数えていた。
「俺とゼロ、ゼロとアクセル、アクセルと俺」
「私とレイヤー、レイヤーとパレット、パレットと私…これで全員出たことになるから
次にミッションが来たときにはどうしましょうか」
ちらりとレイヤーを見る。
「え?」
【ゼロ&レイヤー担当事件:トロイアベース・ヘリオス暴走停止】
ヘリオス……
今から数百年後の世界の人物ではない。
ヘリオスとは、ハンターとしての高い技術を誇るトロイアベースが持つ
自慢の高性能訓練プログラムである。
戦闘のため自分の力を少しだけ解放したとされる、黒きボディのゼロが言う。
「お前、名をなんと言う」
「れ、レイヤーです、ゼロさん…」
「うむ。行くぞレイヤー」
近い能力を持つ二人同士で組み合わせた場合はどうなるか?
それを試してみたのだが、図らずもレイヤーの望みが叶う形となった。
そんな二人を待ち受け、牙を研ぐは復讐者。
彼らは知らない。100年の時を重ね続けてきた憎しみが、ゼロを追っていたことを。
「私は戦いにおいてその…未熟な所が目立つと思いますので、その…ゼロさん」
「サポートはするが、お前自身の成長のため、敢えて戦ってみるのもいいだろう。
…最初の訓練が見えてきた。まずは俺がやろう」
「はい!」
バーチャルシフト。場所は海の上。
訓練に使われるのは小型メカニロイド豆Q。
空から一定パターンで5体で現れるこれをどれだけ効率よく斬り刻めるか。
最初にして一番難しいものである。
「厄介なものだが…いつもこうなのか」
「暴走して有り得ない難易度に設定されていると思うのですが…」
だが究極のレプリロイドはあっさりと豆Qを切り刻んでいく。
5体、10体、15体、20体……
110体でクリアして次へ向かう。
「む?」
「どうやら、違うみたいですね」
難易度が上昇する。
「…わ、私にやらせてください、ゼロさん!」
「いいだろう。やってみろ」
Tブレイカーへ変更、入っていく。バーチャルシフト。
…そこは無限に続く空。無限の落下をしながら、空を飛ぶ豆Q1体を倒せるかどうかというもの。
「はぁああああああ!」
殴り続け、何とか破壊。
「…何とか保てたようですね…。」
次は移動するリフトの上での豆Q破壊。
その次はベルトコンベアの上での豆Q破壊。
その次は巨大豆Q破壊。
「あの変な物体の相手するの疲れないか」
「い、いえ…全然疲れません!」
その次にやってきたのは…
「レイヤー、次の相手は普通の兵士を相手にした訓練プログラムみたいだよ?頑張ってー!」
ワープした先は。
「ヒーッヒッヒッヒッヒ!」
「昇龍拳!」
「あっはぁぁぁぁぁ!?」
レイヤーはVAVAを蹴散らし進む。
「豆Qの方がまだ戦っていて面白いというものだな。」
最後は巨大な龍のようなものに包まれた豆Qの破壊。
尋常でない耐久力だが、ゼロの攻撃の前にあっけなく敗れた。
「訓練プログラムはこれで終わりのようだ……行くぞ」
そこにエイリアが割り込む。
「待って、ゼロ、レイヤー! …そこに、何か不明なデータがあるの!」
「何」
-
電子の海を渡り歩いてきた、100年の復讐者。
その復讐者の『名前』を彼女は読みあげる。
「ファイル名『C・M』! 古い反応で、カプセルの反応でもない!…これは、一体…!?」
復讐者C・Mが待つその光の柱。
ゼロが進むとそこには………。
「おい!ワイリーのロボット!オイラが成敗してやるッスよー!」
「何だお前は」
「カットマンっス!必殺ローリングカッt」
しかし敵ではなかった。剣が…振り下ろされる。
「最後に兄貴として… エックス、コイツには気をつけるッスよーーーーーー!!」
そしてターゲットが現れる。
滑稽な姿をしたそれは…
「オプティック・サンフラワード…だな?」
ひまわりの形をしていた。
「私はこの場所からよく人工衛星を通し宇宙を眺める。」
「…そうか」
「この地球は可哀相だ。あなた達古い世代の者達に取り付かれているんだから」
プログラムのみで姿を現した新世代が相手だ。
草花に包まれてきゅるりきゅるりと姿を消すサンフラワード。
「ここだ! あーっはっはっは!」
ひまわりの、太陽のような眩しい笑顔で地形を変化させる。
「厄介な相手ですね…」
レイヤーが交代。
「Kナックル!」
カイザーナックルに持ち替え攻撃を始める。
「竜巻旋風脚!!」
「なぁーにぃ!?」
長い脚を勢いよく回転させサンフラワードを攻撃。
「ほーらほら!」
サンフラワードは虹色の球状の網を放つ。
これは恐らく相手に当たると閉じ込める性質のものだろう。
縦横無尽にバウンドするそれを何とか回避し
「焔降脚!」
植物型ならこれが効く…と思っていたがそんなわけではなかった。
「甘い甘いー!」
そのまま捕まってしまう。
「大丈夫か」
虹色の網を破壊、ゼロが交代する。
「これならどうだ!!」
宙に浮き、回転ビーム。
ゼロはサンフラワードの周りを一回転、またもセイバーで斬る。
「まだまだ行くよ〜」
声を震わせてビーム。
今度は二つのビームであり、奇妙な動きをしていた。
「………なんだこれは!?」
一定の高さから、床へと垂直にかけられるビームが、端まで行ったらまた天井に。
「光を自在に操る、ということでしょうか」
「あっはっははー!」
踊る。
「アースクラーーーーッシュ」
背後には人工衛星。
「懐かしい技の名前だな」
殺傷力のないレーザーが収束、ゼロを捉える。
「なっ!」
天から降り注ぐは光の柱。巨大レーザーがゼロの体に打ち込まれたのだ。
「ぐぉおおおおお!!」
「ゼロさん!!」
「これで終わりだ!」
もう一発。
「んぐう…」
最後の一発。
「ぐああああああああああああああ!!」
レイヤーへと交代。
「どうやら撃ち止めのようだ…この攻撃を最後までとりあえずは受けきれたようだ…」
「喋らないでくださいゼロさん!」
「よくもゼロさんをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「何ぃいいいいいい!?」
気迫がまるで違う。レイヤーの怒りが…その手に何かを生成し始める。
「…な、何でお前その剣を……シグマ様の…!?」
ヘリオスに訪れた者のデータはある程度、あらかじめ探し出すことが出来る。
その中にはなんとシグマもいたのだ。
…シグマが使っていた剣のデータをコピー、自分用にとっておいたのだ。
その形状はゼットセイバーの2倍ほどのサイズであり、
驚異的な重量と破壊力を備えている。
「葉断突!!」
怒りのレイヤーによる、最強の武器の、偶然にもサンフラワードにもっとも有効な攻撃。
圧倒的重量の剣がサンフラワードに突き刺さり……貫き、バキリと体を折り、砕く。
「こんな者にいいいいいいいいいいい!?」
手足が、葉となって散っていきしおれる。ひまわりの最期だった。
-
「ということは…ヤコブ関連施設にシグマが?」
「ええ。彼の言葉で確定と言えそうです。
そ、それよりゼロさんは!?」
「ゼロは毎回無茶するよ… 今はライフセーバーの所にいるんじゃないかな。」
そしてレイヤーはゼロの元へ。
「…大丈夫かしらあの子」
「………!? 重力研究所上空に奇妙な物体が発生。これは…?」
「何だろう。調査してみた方がいいな」
「それじゃ私達が行きますねー!」
「えっ…」
「僕らにかかれば楽勝だよーこんなの!ね、パレット!」
「そうだねアクセルー!」
「………ちょっと私ライフセーバーの所行って来るわ……」
「ああ。行ってらっしゃい」
【アクセル&パレット担当事件:ブリムローズ・巨大物体調査】
「あまり考え無しに動かないようにねー。何があるかわかんないから」
「重力関係の施設なのかなー?」
「どうかな?重力研究所の上空にあるからってそうとは…」
あれこれ話しながらワープ。
「このスイッチ何かな」
赤色のでっぱりが見える。
「アクセルの方が考え無しに動いてるよー!」
ぐるり…。部屋が…180度回転する。
「わぁあああ……!!」
ように見えた。実際は重力の向きが変化するのだ。体感としては実は変わらない。
「お。敵が落ちてきた」
「部屋全体が変わるってことだね」
そして、彼らの危なっかしい戦いが幕を開ける。
「あぶなーーーーーーーい!」
天井にはトゲ。この状態でスイッチを踏むと…?
「ひゃああああああ!?」
ホバーで何とか回避。
天井にトゲ、下にブロックがある状態でスイッチを踏むと…?
「お。降って来た」
ブロックは敵に降り注ぎ破壊。同時に安全に移動することが可能となった。
「…緑色のスイッチって何かな?」
「パレットーーー!危ないから!」
踏む。…部屋が90度回転した。
「…なるほどー!」
もう一度踏むと更に90度。
「で、ブロックに囲まれちゃったけどどうするー?」
「もう一度押すとどうなるかな。」
答えは…潰される。
「…………え、エイリアさーーーん?」
「はいはい…」
ハンターベースへ転送。もう一度突入する。
「長い道のりだったね…」
トラップを抜け、トゲのトラップ部屋を抜け…どんどん先へと。
「そういえば私達だとやや火力不足だけどどうしよう?」
「うーん……でもまぁ火力不足なだけじゃないよ。僕ら身軽だから何とかなるでしょ」
コピーショットでレプリロイドを倒し、トゲの足場を渡っていく。
「メタルゲーット!」
「そこまでしてって…随分がめついのねーアクセルー。」
更に進み、最深部。いよいよ現れるは…ターゲットだ。
立方体が落下、床で砕けて中から現れる。
「!! 下の研究所のアントニオンさん!?…優秀だったんでしょ、どうしてこんなことするの!」
「アントニオンさんー?何何、プロレスラーか何かー?」
「200年前の話でしょそれ!」
「ふむ。私らのプロトタイプがやってきましたか。…貴方は新世代だ。解らないんですか?」
「ああ、解るよ!何が正しくて、何が間違ってるか位」
「そうですね、私にも、解ります。」
「間違っているのは、この世界だということ位ね!」
-
部屋が回転するのか、アクセルたちが回転しているのか。
アントニオンは重力にお構い無しに動く。
「私は重力に逆らいますよ。いや、私自身が重力を発生させることも出来る。
見せてあげましょう、私の力を」
ぐるりと回転、設置したブロックが落下する。
「危ない!!」
回避。ブロックが持ち上がる…アントニオンが床の下からブロックを持ち上げたのだ。
「なっ!」
投げ飛ばし、アクセルへと落下する。
「覚悟なさい」
ぐるりと回転。
壁や天井を走るアントニオンはここで技を使い始める。
「スクイーズボム!」
小型ブラックホールを発生させるというものだ。
様々な攻撃を吸収する。
「パレットー、交代!」
「出番ですね!」
銃を持ち替えて交代。
「ブラックアロー!」
すぐさまその頭で弱点を捜し当てた。
「無駄ですよ!」
ブラックアローは吸い寄せられ、消えていく。
「とう!」
緑色の粘液を吐き出し、パレットの動きを封じる。
「きゃあああぁあ…」
「食らいなさい!」
柱を持ち上げ、触覚で掴みそれで叩く。
「きゃあああああ!」
「僕の出番だ!」
アクセルが交代、パレットを助け攻撃に転じる。
「おららー!!」
バレットを至近距離で乱射。スクイーズボムに吸収されないように。
「邪魔をするなーーーーー!!」
紫色の光を放つ。
「えっ!?」
ブロックが発生し…落下。
真ん中、右、左、真ん中、真ん中、左、右…
次々に降り注ぐブロック。
「クソッ……!」
「アクセルーーーーーー!」
…何とパレットが庇った。
「えっ!?」
パレットはブロックの下敷き。
頭部を強打してしまう。
「パレットーーーーーーーーーー!?」
「…うぅう……」
交代。アクセルの出番だ。
「叫ぶ暇があるなら攻撃することですね!」
柱を持ち上げ、振り回す。
「ぐあぁぁあ…!」
「さぁトドメです!」
持ち上げる。
「コピーショット!」
「ぐっ…不完全ですよ、貴方のコピー能力は……!」
攻撃のためのコピーショットではない。
一度コピーショットで攻撃。もう一つの腕で…パレットの撃とうとした武器を使う。
「ブラックアローーーー! …だったかな!?」
「!?」
二発連続でのダメージはさすがに痛い。かわしたい…が…
もう吸い込めないのだ。矢は追いかけ、近づいてくる。…そして。
「この、私がああああああああああああ!?」
背中にグッサリとブラックアローが刺さり…そのままアントニオンは落下。
打ちつけると同時に更にブラックアローを食い込ませ、倒れていった。
「うっ…………ううぅ…」
アクセルはフラつく。
「まだ…だ…!」
アントニオンが起き上がる。
「全て飲み込んでご覧にいれよう!!」
スクイーズボムが拡大…あらゆるものを飲み込んでいく。
「!?」
施設全てを包み込み……大爆発。
「うぁああああああああああああああああ!!」
エイリアが緊急の転送でハンターベースに帰したときには、ボロボロだった。
-
「結局、この事件もシグマの仕業か……」
「そうなるわね。VAVAもやっぱり絡んでいるようだし」
今は忙しく、手が離せないものも多い。
気がつけばハンターベースの司令室に居るのもエックスとエイリアの二人だけ。
「ゼロ、アクセル、パレットが重症、レイヤーもゼロの看病で手一杯…か」
「………。」
シグナスは会議、ダグラスは血の繋がらない娘であるパレットの様子を見ている。
ライフセーバーは勿論医務室だし、ゲイトはコンピュータの中。
そこに桃髪の彼女がやってくる。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「先輩!?どうしてここに。」
「人手が足りないんでしょう?協力するわ」
「…有難う御座います」
そして…すぐにアラームが鳴り響く。
「通信が割り込みます! …これは!?」
「何だ!?」
シグナスも駆けつけた。
画面いっぱいに六角形のシグママーク。
真っ赤に染まるその画面。
そしてそれらがパラリパラリと、
パズルのように解けていくと………
「!」
エックスがその顔を認識する。
敵は顔をあげる。
「シグマ!!」
奴の顔が…またも現れたのだった。
「久しぶり、というべきかな…?エックス。」
-
「…シグマ!」
「そう、呼ぶことを許そう。いかにも私は…シグマだ。」
「今回の事件もお前が仕組んでいたんだな!」
「そう、私だ…そしてお前との因縁もここで終わりだ!
私は衛星軌道上で待っている…そろそろ決着をつけるぞ…!」
言葉はそれだけ。あっさりとしたものだった。
「エックス。私の考えをここで言わせて貰いたいんだけど」
「?」
「…ヤコブ計画が最初からシグマに狙われていた?」
「ええ。そうとしか考えられない。
「今回事件が起こったのは…」
新世代用プログラム、宇宙のための重力研究所、新世代レプリロイドの地下基地
ヤコブ計画以前に作られていたロケット開発所、大規模な電力を用いる海上都市
宇宙開発材料の鉱山、新世代の耐久性テストの施設、イレギュラー廃棄用の火山
「…何らかの方法でヤコブ計画や新世代型のそれと関わりがある。」
「つまり…」
「今回の事件は大掛かりなもの。ずっと前からすでに練られていた計画なのよ。」
「そう…なのか。」
そして、敵は衛星軌道上から通信していたと推測される。
つまり…敵は宇宙にいる。
「小型機の出番だな…」
だがシグナスは口を挟む。
「ダメだな…アレはハンターが独自に作ったものだったんだ。
それに、衛星軌道上にそんなもので行こうとしたら…確実に落とされる」
「そう、か…」
「ロケットを使おう。パンデモニウムのいた場所に何か!」
「大掛かり過ぎるだろう。その前に目をつけられ、破壊されるのが関の山だ」
「…ワープは?出来ないのか」
「誰かが宇宙にいれば或いはそれも可能。
でもハンターは誰も宇宙へ行っていないし…直接の転送には遠すぎる」
…エックスは机を叩く。
「クソッ……どうすれば!!」
「方法、あるわよ」
「…エイリア。それは…まさか。」
エイリアは画面にその位置を打ち込み、衛星写真で表示する。
「そう、この空高く、星空にまで届く『ヤコブ』………」
金の髪を振り乱し、振り返る。
「私達で、乗り込みましょう。 …軌道エレベーターに!!」
【エックス&エイリア 担当事件:ラストミッション】
-
「コラー!カットマン、早く帰って来なさーい!
おー!しー!おー!きー!よーーーー!」
「ヒィィィ!!」
そんなやり取りもあった。
「ワイリー博士から聞いたんっス… 兄キ、悪いロボットになっちゃダメっスよ…!」
「僕達の言葉を信じてくれないのかい、カットマン…!!」
記憶を書き換えられたカットマンとの戦い。
撃ち出された弾丸は……弟を貫く。
「グスッ………うぅ…っ、くっ…うぐ……」
体中の切り傷に涙を染み込ませ、手にした初勝利は嬉しくなかった…これっぽっちも。
「親方が現場放り出してどないするっちゅうんじゃ!お前こそ叩きだしたるわぁ!!」
投げ出された岩を砕き…そのボディの力を発揮する。本来の力を超えて。
「諦めるんだ…ガッツマン!」
「ボクがロックさんを止めるしか…!少しの間、凍るですー!」
「立ち止まるわけにはいかないんだ!」
見た目中身ともに最年少の幼きロボット、アイスマンも例外に非ず。
「てやんでぃ、泣きべそかくなよーーー?」
「…ここでかわさなきゃ……やられる!!」
単眼の量産兵、スナイパージョーの守る都市の地下で対峙したボンバーマン。
爆弾という、兵器を操る力を持つ彼を相手に、いよいよ戦いを学び始める。
「燃える、燃える、お前に萌えるーーーーーーーー!」
「た、助けてロック!!ファイヤーマンが何かおかしいの!」
他人を助ける戦いで、己の戦いの意味を見出す。
「…元からだったんだよ、ロールちゃん。」
「では正式な声明をここで発表しよう、私はこの世界を掌握する科学者…アルバート・W・ワイリーである!」
彼の掌が世界へ向けられたその日。
「電波塔へ向かうのじゃロックマン!」
エレキマンとの再戦を迎える。ロックマンに刻まれた恐怖が呼び覚まされる。
「また焼かれに来たのかい、ロック。」
「ロックはもう、いないんだ。」
「………こんな力で君とは戦いたくなかった。けど」
ロックマンの体が、灰に染まる。
「これしか方法は、ないんだ」
「その力は…!?」
6つの力を手にし、彼はいよいよ研究所へ乗り込む。
「ぶも!!ぶもも!ぶも、ぶももも!ぶもー!」
「それは困るよ!」
長き宿命が始まりを告げる。
後ろからやってきて前を阻むは黄色き悪魔、イエローデビル。
その悪魔の巨体の先で待ち受ける、過酷な戦い。
「よおオリジナル。お前の持ってる力、随分ズルいじゃねえか!」
戦闘用としての自分に気付かされたこともあった。
「ま、そのお前をコピーしたこの俺が一番ズルいんだけどな?」
向けられたロックバスターに向けるは勿論ロックバスター。
「侵入、ヨクナイ!削除、スル!」
止められようとも…彼はもう、立ち止まれなかった。
-
そして迎えた最深部での戦い。
ワイリーの赤いUFOが飛来し……何かと結合する。
そして暗闇が晴れたその時。
「ガーハッハッハッハッハ!よく来たなぁ、ライト博士のロボットよ! 随分な能力を持っているそうじゃないか!」
「ワイリー博士…」
彼は見上げる。
「何か言いたげじゃな?」
「……ライト博士の、大学での友達だったんでしょう。
他人のロボットを奪って世界を支配するなんてこと…やめてください!」
UFOと直結した巨大な搭乗マシンに乗った、Drワイリーを。
それは今まで戦ってきた人型ロボットより遥かに大きく…
「何をぉ?生意気な口を…」
そして、イエローデビルとは比べ物にならぬ硬いボディをしていた。
「キサマなど、この最強マシン『ワイリーマシン1号』で、 けっちょんけっちょんのぎったんぎったんにしてくれるわぁ!」
今までに得てきた能力を駆使…降り注ぐ弾丸を潜り攻撃を浴びせる。
ワイリーマシンが大爆発を起こす。
だが…。
「エマージェンシー機能、発動!」
マシンの搭乗部が露になる。マシンの更なる力が開放された瞬間だ。
だが、それ以上に彼の精神を圧迫する要因が存在した。
「どうじゃ、人間の顔を前にして戦いをする、気分は!!」
「……………」
「何も言葉は出ぬか?」
「くっ…」
身を乗り出して彼は嘲った。
「ガーーーーッハッハッハッハ!」
「弱きバスターを戦って得た力でここまで来たキサマは確かに強いじゃろう、
じゃが、所詮キサマのAIはその程度ということじゃな!」
広げられた両腕。
「非情のヒーローになりきれなかった、哀れなライトのロボットよ!」
拳を握る。
「お前は戦闘用ですらない……」
拳がバスターに代わる。
「ただの家庭用じゃ!!」
「………!」
彼は……跳んだ。
「うぉおおおおおおお!!!」
腕をバスターに切り替える。最後は自分の手の決着となる。
一発の光のつぶてが…ワイリーマシンのコアを粉々に砕く。
「何っ!?」
コアを通じマシンの各所に破壊の衝撃が注ぎ込まれ、末端から噴出すように爆発を起こし始める。
「な……!?」
「……」
そして爆発は連鎖、大きな爆発へと変わって行く。
「ば、ばかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
…大破。
「ぎゃああああああああああ!!」
ボディから投げ出されるはDrワイリーの体。
「……」
とうとうワイリーの顔はロックマンの下になった。
「……す、すまん!」
「すまなかった、もう悪さはしないよぉ…!
だからぁー、そのすまん!許しておくれぇぇぇぇ…!」
ぺこりぺこりと土下座で謝るワイリー博士。
安堵し、彼は息をつく。
…ヘルメットを脱ぐときがやってきたようだ。
いつかカットマン達も復元されて元に戻っていくはず。
彼は…家路につく。
こうして、Drワイリーの野望は終わりを告げた。
だが…ロックマンはまだ知らなかった。
これが、終わりなき戦いの始まりであったことを……
ワイリーの背後にあった、彼に気付かれなかった8つのカプセルと、
ワイリーの開発した兵士ロボット・スナイパージョーの存在がそれを示していた。
何故、優れた設計のライト博士のロボット達を洗脳できたのか、その答えが。
戦え、ロックマン。…平和の、ために。
-
―元帥・将官の名称―
地上軍:大将軍・将軍
宇宙軍:大提督・提督
空軍:大空将・空将
ストーム・トルーパー軍:大将軍・将軍
―地上軍、ストーム・トルーパー軍の単位と司令官―
帝国軍団:40個師団を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界軍団:24〜40個師団 元帥、上級大将
宙域軍団:12〜20個師団 大将
星系軍団:6〜10個師団 中将
師団:9840名 少将
旅団:6560名 准将
大連隊:3280名 上級大佐
連隊:1640名 大佐
大隊:820名 中佐、少佐
中隊:205名 上級大尉、大尉
小隊:41名 中尉、少尉
分隊:10名 上級曹長、曹長
班:3名 軍曹、伍長
―宇宙軍の単位と司令官―
帝国艦隊:スター・デストロイヤー24隻を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界艦隊:24隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 グランド・モフ、元帥、上級大将
宙域艦隊:12隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 モフ、大将
星系艦隊:6隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 モフ、中将
機動艦隊:3隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 少将
警備艦隊:2隻以下のスター・デストロイヤーと補助艦艇 准将、代将たる上級大佐
スター・ドレッドノートの艦長:准将
スーパー・スター・デストロイヤーの艦長:上級大佐
スター・デストロイヤー、ヘヴィ・クルーザーの艦長:大佐
ミドル・クルーザー、エスコート・キャリアーの艦長:中佐
ライト・クルーザーの艦長:少佐
フリゲートの艦長:上級大尉、大尉
パトロール艇の艦長:中尉、少尉
―空軍の単位と司令官―
帝国航空軍団:40個航空集団を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界航空軍団:24〜40個航空集団 元帥、上級大将
宙域航空軍団:12〜20個航空集団 大将
星系航空軍団:6〜10個航空集団 中将
航空艦隊:2048機 少将
航空群:512機 准将
航空大隊:64機 上級大佐、大佐
航空中隊:16機 中佐、少佐
航空小隊:4機 上級大尉、大尉
航空編隊:2機 中尉、少尉
-
ノアズパーク研究所…倉庫上。
海を臨むその建物の縁に一人腰かけるはエイリア。
崖を眺め、待ち人が来るのをずっと待ち続けていた。
「…………。」
エイリアは……すでに覚悟を決めている。
明日、エックスがもし危険な目に遭ったら…その時は。
「エイリア」
「きゃあああ!?」
後ろから声がかかるとは思っていなかった。
慌てて落ちそうになる体をエックスに引き上げてもらう。
「……いえ、ごめんなさい」
背中合わせで座る。エイリアが縁、エックスは入り口の側を向き。
…そしてエイリアは研究の結果、今まで聞いた話から一つの推論を立てていた。
敵の目的、その考え。
「……ねえエックス」
「うん?」
「始めのミッションから今まで数えて25年…ね」
「…。 最初の戦いからカウンターハンター、ドップラー博士の事件、レプリフォース大戦、コロニー落下、ゲイト事件までで…
そうだね。3年と1ヶ月だ」
「そこからレッドアラートまでが9年、今に至るまでが15年。…ね」
「こんなことになるなんて思っていなかったでしょう。」
「…そうだな」
風に吹かれ、ブロンドの髪が靡く。
「ここはいい場所よ。…空は高いし、吹く風は優しい。」
「…でも私はこうやって研究所を出て…戦いたいと思った」
「ゲイトの事件から逃げたいと思ったのか…或いは」
「貴方を発端とする、レプリロイドの進化の行く末を
私なりに見たかった部分もあるのかも解らない。」
今となってはそんなことは言い訳でしかないのかもしれないが。
「…君は…一体どこまで知っているんだい?」
いよいよエックスが不審がる。
彼方の軌道エレベーターを眺めつつ。
「………さぁ。ただ、全てを知るわけじゃないのは確か」
「新世代が出てきて…一体どこへ向かうのか?
果たして彼らが旧世代と呼ぶ私達がどうなっていくのか。」
「…何か思いつくものはある?」
「………喜べるものと喜べないものがある。
…喜べるものは…どうなのかしらね。…現実的じゃない」
「…そうか」
「あくまで想像。まだ未来はどこへ繋がっているか解らない…。
ただ、貴方の辛さを少しでも共有できたら、と思う」
「…俺の…辛さか」
「戦い続けることでエックスがどうなっていくのか。
こうなったら、一蓮托生…てね」
バスターに腕を変える。エイリアにつられエックスも。
「………明日が最初の私達のミッションね」
「…ああ。」
手を握るとか、何かをするとか。そういうよりも、こういう方が自分達の柄には合っている。
エックスバスターとエイリアバスター、二つのバスターをこつんと突き合わせた。
地球と月…二つの世界をかけての人間とレプリロイドのこれからが、明日きっと動くのだろう。
決意の言葉。
「…立ち向かおう」
「…少し昔話をしましょうか?」
「……いつまでそこにいるつもりだい。」
「ちょっと話してみたくなったのよ。貴方がナウマンダーのいた工場で黒こげになった時のこととか」
「…あれはちょっと笑い話にはならないと思うけどなぁー…」
-
そして夜は明け…。
朝日が海に登り始める。
「………」
エックスを寝かせたまま、エイリアはその場を立つ。
朝日を受け、新しい光を受け入れるエイリアの目。
その背に高い声がかかる。
「ハンターベース総出でのものだそうだね 今日の作戦は僕も参加させてもらうよ」
例の少年博士だ。
「…………今までこのピンチに何をしていたのかしら?博士君」
「というのも、僕はそもそもがヤコブ計画に反対だったからだよ」
くすりと笑い、エイリアは返す。
「…それでも今日は参加? …素直じゃないのねぇ。」
歯を軋らせ、眼鏡が太陽光を反射する。
「そういう解釈が一番腹が立つ」
小石を蹴り、海へと落とす。
「…まぁ。機械人形の頭では理解できないんだろうね」
「僕ら人間は、今まで誰かさんのおかげで、ずっと地下に避難していて…
どこかくすんだ明るさの中、太陽光も、川も、海も、森もまともにない暗い地下世界で生きてきたんだ
どんどん死者が増えて、腐って土に同化していくのを見守りながらね。」
「こうして極少数の人間がこうやって地上にやっと、やってこられたんだ。どういう気持ちだと思う…?」
「………。」
「一種の憧れすら感じていたよ。新世代の奴らは目新しいことにだけ気を取られてるようだが。」
「それで、この計画が無事に終わったら今度は僕ら人間を宇宙に放り出す? ハッ…なーにを考えておるのやら。
もっと歯がゆいのは何もそれに不自由を感じないという無能な人間の存在だ。自分の脳みそでものを考える気がないのだろうね」
「何が言いたいの…」
「聞きなよ。
そうも言っていられなくなった、っていうわけさ。地上を再生しようにも、
その地上を破壊されちゃあどうしようもない」
「目の前の火の粉は自分達で払わなきゃ、ということだ」
「結局は協力するのね」
「話を聞いてたなら確認の必要もないんだがな。」
地上世界を再生するため。これからも世界を続けるため。
最後の戦いが今、始まる。
「な、何だ!?」
エックスが起き上がる。水平線から…煙と火の手。
「さぁ、作戦開始だ。僕も行かないとね」
「突撃始めええええええええ!」
シグナスが指令を出すとハンター達が次々にヤコブ前に陣取る兵達へと突進していく。
持っている武器は重火器がメインとして、少数近距離戦用のものもいる。
「おらおらー!」
ダグラスはエニグマ砲を小型化した破壊兵器を投入、レーザー砲として敵を焼き払っていく。
「大丈夫ですか!」
ライフセーバーは負傷したハンターを救助する。
「さぁ、どんどん僕が焼き払ってあげよう!」
ゲイトが戦車に指令を出し、自動操縦で相手を攻撃していく。
「さぁ僕の自慢の兵器の力だ!」
相手を狂わせる音波兵器で、敵の方向感覚を狂わせる。
「…始まってる!」
「……激しい戦いだ」
全てはエックスとエイリアに降りかかる敵を減らすべくだ。
……この作戦は彼らの双肩にかかっている。…負けられるわけがない。
「行こう!」
最後のミッションはこうして幕を開ける。
-
「軌道エレベーター。
これで一気に宇宙まで… 乗り込むわよ!」
オペレーターは啖呵を切る。
戦火の中を掻い潜り、皆の声援を受け
彼らはいよいよ最後の戦いへと足を踏み入れたのだった。
軌道エレベーター…ヤコブ。
地上から、遥か空の上までを貫くその果てしない塔。
「宇宙へ旅立つ、宇宙に進出する、宇宙に飛び出す、宇宙に足を踏み入れる。
…色々表現はあるけど」
「まさか『宇宙に乗り込む』という気持ちになるなんて思わなかった!」
「…あら。エックスもそんな感じ? …さー、やってやろうじゃないのっ!」
まずは彼らは9つあるエレベーターのうち、搬入用の中央のものに乗った。
「………戦闘準備はいいね」
「勿論!」
急加速が始まる……それでも大分長い戦いとなるだろう。
見上げても見えないほど上まで続くこの塔であるが、
とりあえずすぐ上が黒い何かの影でびっしり覆われているのが解るからだ。
「行っくわよー!!」
まずは飛来し襲いくるメカニロイドを吹き飛ばす。
続けてゆっくりと近づいてくるは新世代型レプリロイド。
「サンダーダンサー!」
雷が踊り、次々に敵を感電させていく。
一度停止、敵が乗り込んでくる。
「来る!」
「任せて!」
「グリーンスピナー!」
盾を持ったレプリロイドはパンデモニウムから手に入れたミサイルで攻撃。
一気に防御を突き崩しそのままチャージショット。
手榴弾を投げつける新世代は近くまで踏み込み一撃。
更に上へ。
捕まえようとするメカニロイドも意味を成さず。すぐに倒される。
「ドリフトダイヤモンドー!」
氷の弾で斜め上方に攻撃。敵を凍らせてエレベーターの急加速により粉々に粉砕する。
そして交代。
「クリスタルウォーール!」
敵の攻撃を防ぎ、短いチャージ時間を稼ぐ。
そして…
三方向に分かれるヘルメスチャージショットが敵を攻撃。
「割と進んだんじゃないかしら」
雲の上に来た。地上が遥か下に見える。
今度は液体窒素を用いる新世代。これは炎で返す。
「メルトクリーパー!」
地面を這う炎が敵を焼く。
「…リングか!」
加速装置がエレベーターにつき、更にペースを上げて加速していく。
「はぁあああ!! チャージ・シャドウランナー!」
大量の黒き矢が放たれ、敵を追尾攻撃。
「交代よ!」
続けて再びサンダーダンサーとチャージショットの二段攻撃。
「スクイーズボム!」
敵の攻撃を吸収した状態で連射攻撃。敵を蜂の巣にしていく。
空が見えなくなった。大気圏を超え、更に上へと行くのだろう。
更に新世代は乗り込んでくる。今度は盾と腕が一体化しているのか、破壊が出来ない。
「ふっ…!」
ダッシュジャンプ、ギリギリの位置で回り込んで一撃。
だがこれは何発も連続は出来ない。
「メルトクリーパー!」
防御を突き抜けるこの攻撃をもう一度。
「……!」
「エイリア?」
-
交代してみる。
「星空を見てたの?」
「…あ、ごめんなさい……。」
いよいよ宇宙が近づいてきた。これでもかと敵がひしめく。
「シャイニングレイ!!」
空へと放ち、空中で炸裂する花火のようなこの攻撃だ。
「いよいよ宇宙ね…」
もう止まりはしない。敵もいなくなった。
「エックス、エイリア。そろそろ最上階よ 準備はいい?」
「はい!」
「勿論だ!」
最上階。…月が見える。きらきらと輝く星、流れる星、銀河も見える。
「……。」
エレベーターが…止まる。
「来るわ!」
やってきたのはVAVAだった。
「軌道エレベーター、宇宙開発材料、ロケット…貴様ラノ希望ハ俺達ガモウスデニ握ッタゾ!」
「…だからなんだというの?早くシグマに会わせなさい」
「ククク、ソウ怒ルナ…オ前達ハコレカラジックリト料理シテヤルノダカラナ!」
またもVAVAは戦いを挑んでくる。
「逃ゲラレン!」
肩から電撃の弾を連射する。この場合の弾は敵を追尾するもののようだ。
「ドリフトダイヤモンド!」
「アッハァァァァァァ!?」
落下。レイヤーから弱点は聞いてある。当てやすいこの武器を当てればよいのだ。
「ヒヒヒヒッ」
またも弾を放つ。これは多方向に一度に攻撃できるタイプの撃ち方のようだ。
これも間を潜って簡単に回避。
「燃エロ!」
膝の辺りが開き、何かが射出される。炎の柱だ。
「…危ないエックス!」
エックスと交代。
「うっ……!!」
エイリアに炎の柱が襲い掛かる。
「ドウシタドウシタ…?」
次の弾は連射する弾。単純にVAVAの動きに合わせた軌道。
「これが厄介みたいね…」
ドリフトダイヤモンドで強制的に動きを止められているからいいのだが。
「…ヒッヒヒヒイヒヒ!」
紫色の光がVAVAから放たれる。…VAVAもだったのか!エックスは驚く。
どうやら新世代になったのはAIの中だけではなかったらしい。
「逃ゲラレルカ!?」
VAVAの体が震え、電撃が放射状に広がる。
「……違う。これは技じゃない!!」
「ミギギギギ…ギュギュギュ…勝テバイイトイウノニ 下ラン事ニ五月蝿イナ…!!」
ビクビクと体が痙攣しながら、電撃を放っていく。
こんな攻撃、何度も連発できるわけではない。
「自ら狂うことが出来なければ…だったかしら?」
シグマがVAVAに言った言葉だ。
「ヒヒヒヒヒ…!」
電撃がVAVAを中心にぐるりぐるりと回転し、エイリアやエックスを攻撃しにかかる。
「エイリア、交代だ!」
「え?どうしてここで… ああ!!」
ヘルメスアーマーの能力だ。ダッシュ能力を使っている間は如何なる攻撃も通しはしない。
「ナ!?」
VAVAが体を張って放ったこの技もエックスには無意味となる。
「オノレレレレレレレ!」
ついにVAVAが怒った。
キャノン砲から大きな電撃の弾を放ち、炸裂させてエックスを追わせる奥の手を使い始めたのだ。
この攻撃は予想がつきづらい。ダッシュ一つでは回避することなど…
しかし。
「全ての弾が俺を追うなら同じこと!」
全て一斉に引き付けてかわす。これを繰り返し…
「ドリフトダイヤモンド!!」
氷の弾が横に回転、VAVAを撃ち落した。
「アッハァァァァァァ!?」
そして…VAVAはそのまま姿を消した。
「待て!!」
「……VAVAはとりあえずいつでも仕留められる。
シグマだけを、追いましょう」
「そうだな」
こうして彼らの体は、星空の中に溶けていくのだった。
-
星の海を泳ぎながら、エックスとエイリアはハンターベースと通信を取る。
「先輩、シグマの反応がどこにあるかわかりますか?」
「ええ。解るわ
どうやら月との中継施設みたい。そこから移動してみて」
その場所はゲートウェイと呼ばれた。
「静かだけどどこか……不気味ね。」
辺りを見回しながら進んでいく。通路を抜けた先には…
「…え?」
巨大なパイプオルガンのパイプのような装置。
その各所には色とりどりのカプセルが8つ。
「今回はここで…か」
今回は再生レプリロイドでもコピーレプリロイドでも記憶が作り出した幻でも亡霊でもなく、
新世代型レプリロイド達の変身だった。
8人の新世代に変身した新世代との戦いは長い時間をかけ行われた。
そして……
「…爆発する!!」
「エックス、エイリア!急いで脱出して!」
部屋全体が炎に包まれる。
最上部から飛び降り、扉から脱出、床が落ちつつある繋ぎ目の通路を駆け抜け…
「…だ、大丈夫?」
「ああ!もうすぐだ、急ごう!」
…いや。8人のレプリロイドを倒した所で突然爆発。このパターンは以前エックスは経験したことがある。
扉を潜り、入り口へと戻った…所で。
「エイリア、危ない!!」
「きゃっ!?」
レーザーがエイリアへ向けられた。
間一髪エックスに体を引き寄せられ、ダメージを負わずには済んだ。
「………シグマ!」
「フハハハハハ!よく来たなエックスよ」
「全人類、全レプリロイドに仇なすお前の行為…許しはしない!」
バスターを向けられてもシグマは動じない。
「ククク…我らが月を手にしたことか?
我々が新たな世界、月を手に入れた時点でお前たちが何をしようとも無駄というもの!
まずはエックス、お前との決着を先につけようではないか!」
そして手から炎を迸らせ笑った。
「全力で来い!」
シグマはまず構えている。
「ハァ!!」
シグマは目にも止まらぬ動きでサーベルを抜き、斬りながら走り床を蹴り、天井へと舞い上がる。
エックスはそれより少し早く、それと交差するようにチャージショットを放つ。
「やるな!」
もう一度同じ動作を繰り返すが、勿論エックスになど食らうわけは無し。
「これならどうだ!?」
指先から弾丸を様々な方向へ発射、床、壁、天井へと反射し縦横無尽に部屋を跳びまわる。
「エックス、私に任せて!」
交代、スクイーズボムを放つ。
小型ブラックホールの中に次々と吸い寄せられる弾。
そしてチャージショット。シグマへと直撃する。
「貴様ぁぁぁぁ…!」
跳びあがり、額からレーザーを発射。それは床を走り、炎の海へと変える。
「ぬぉおおおおおおおお…!」
エネルギーが集まる音。チャージ攻撃を繰り出すつもりだ。
「そうはいかないわ!」
チャージショットでそれを止め、そのまま通常バスターでダメージを与える。
「お、おのれ…!?」
弾を放つもスクイーズボムで全て吸収される。
炎の中を斬り上げ攻撃をするもエックスのインビジブルエアダッシュで回避、後ろから撃たれ……
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう……!」
爆発に包まれながら、苦しみながら。
天井へ向かい手を伸ばし……
「…やはりね。」
その姿を何の変哲もない、新世代型レプリロイドの本性へと変え、散っていった。
「解っていたのか!?」
「ええ。レイヤーがコピーした武器はシグマの剣。ビームじゃなく物質で出来た剣なんだけど
あんな強力な武器、ゼロの力でパワーアップし続けるゼットセイバーでもまだ追い抜けはしない。
……シグマだったら、アレを持たずあんなビームサーベルで戦ってくる訳がないのよ。」
それならシグマの場所は…?
「どうやら…この施設はもう移動していたようね。…行きましょう」
目の前に、その場所が現れる。
「…月…!!」
-
月面へ降り立つ二人。
デコボコとした地面、目の前に見えるのは…巨大な城、『シグマパレス』
新世代達の本拠地にして、新たなる世界の中心地となる場所だ。
「…通信はもう繋がらないみたいね」
「もう、引き返す理由なんてない。行こう、エイリア」
新世代の兵が城を厳重に警備している。
撃ち、跳んで撃ち、回り込んで撃ち。とにかく敵を撃ち殺して、その煙の背後の城へと急ぐ。
扉の中へ入ると…そこには。
「ヒーッヒヒヒヒヒヒ!」
「VAVA…!」
エントランスにて現れたのは毒々しい色のライドアーマーに乗ったVAVAだった。
「頑張ルヨウダナ、エックス! オ前達ガ何ヲシヨウトモ、モウ手遅レダト言ウノニ…!」
「話すことなど何もない。そこをどけ!」
「ソウ怒ルナ… 破滅ノソノ時マデ、楽シモウデハナイカ!!」
ライドアーマー・デビルベアが連続パンチで搭乗者の闘志を示す。
「…膨大なエネルギーを中に感じる…。このライドアーマーを破壊したら爆弾何個分もの爆発が来るわ!」
「…じゃあVAVAだけを狙おう!」
チャージショットでVAVAを確実に吹き飛ばす。
「ヌォオオオ!?」
ドリフトダイヤモンドで攻撃、宙に浮いたVAVAを叩き落とす。
「アッハァァァァァ!?」
攻撃を避けてみても、特に何も目新しいことはない。
ライドアーマーを使っての攻撃が今回の手。
VAVAはその持てる力をヤコブ最上階での戦いですでに使い果たした後だったのだ。
3発攻撃したタイミングでまたライドアーマーへと戻る。
「グリーンスピナー!」
今度はミサイルを使い、バスターより確実にVAVAを操縦席から切り離す。
「クソォォォォォオオオオオ!」
またも攻撃。
「ゴゲ、グゴ、ガゴ、ゴゴゴゴゴゴ…ギニェェエエェエエエエエエエエエエエ!」
いよいよVAVAの精神が先に崩壊を始める。
「エックス、エックスゥゥウウウウウ!」
暴走。力任せに攻撃を続ける。
狡猾なそのやり口はすでにもう、全て防がれた後なのでもう変わりはないのだが。
「ドリフトダイヤモンド!!」
凍らせ、内部から熱で吹き飛ばし…その連続。
「ア”ア”ア”ア”ア”、ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!アアーーーーーーーーーー!」
ライドアーマーへと戻る。
「最後は私がやるわ!」
エイリアへと交代。
まずはチャージショット。吹き飛ばしたVAVAをドリフトダイヤモンドで1発。
「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!」
2発。
「ベッグズウウウウウウウウウウウ!」
3発。
「ォア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
VAVAのAIが完全瓦解。その体は床へと転がっていった。
-
「…有難う。後はシグマだけだな 急ごう!」
「……うん。」
自分は無事にVAVAを倒せた。無事なエックスがいる…
…その事実に安堵する。
そして、最後の戦いへと急ぐ。平和な日々がもうすぐ…やってくるのだから。
……そんなエイリアの背中が、突如として荒々しく突き飛ばされる。
「きゃっ…!! …え、エックス?一体…」
次の部屋の入り口へ倒れこむエイリアの体。
ちょっとした悪戯だとわかり、叱ろうと振り向いた瞬間……全てを理解した。
「ァアアーーーーーーーッハッハッハアアアアアアア!!
ハァアーーーーハーーーーーハアアァアーーーー! アーーーーーーーーーーーーー!」
動き出したライドアーマーと、それへに向かうエックス。
強力爆弾何個分ものエネルギーを蓄えたそのライドアーマーが今、爆発しようとしていた。
「エッ…クス」
彼を抱きとめ、一緒に逃げようと叫ぼうと、叫ぶより早く跳びつく。
「……。」
だがその腕は硬い、厚い…扉にぶつかることとなる。
ライドアーマーが突進する中、最後にニッと笑い、エックスは扉を閉めたのだ。
「エックス、エックス…!?開けて、お願いだから!!」
開けるわけにはいかない。これはVAVAが仕掛けたトラップでもあり、
そしてこれにより、ライドアーマーがどうなろうとエイリアのいる部屋から先には害を及ぼさないためだ。
叩いても、蹴っても、頭で突いても何も起こりはしない。
「エッ……………!!!!」
爆発音に全てがかき消される。
……膨大なエネルギーが中で炸裂したのだ。
…音が消えた頃には……エイリアの喉は叫ぶこともままならなくなっていた。
VAVAは、最後に復讐を果たしたのだ。
これが、自分達の初めてのミッションだったのに。
苦しみを幾分か和らげ、引き受け、エックスがもし危険にあったら庇う気でいたのに。
彼女は彼の名前を、最早うわごとのように呟くしかできない。
彼女の目の前で………彼は死んで行った。
かつてゼロが彼の前で彼を庇い、VAVAの前で散り…シグマの元へ導いたその時のように。
かつて彼女は臨時オペレーターとして一人のハンターを担当し、
彼をサポートし、戦いへ導き、そしてその内惹かれていった。
…そして彼は、助けられる側から助ける側へ回り…最期を迎えた。
だが…彼の最期を看取るハンターは、いない。
エイリアの孤独な戦いの幕を開けであった。
-
エックスの遺志を継ぐべく。
エイリアは腕のバスター片手に、シグマパレスの中を突き進む。
彼女の怒りはエックスのそれと同じように、彼女を覚醒させた。
シグマの姿をした新世代の兵らを、的確な動きで回避、撃ち抜いていく。
水晶の針が植物のように生い茂る場所を登り、シグマの形をした兵を撃破。
彼女は、スムーズな動きでとうとう最後の通路までたどり着いた。
扉が開く。開けた段差のある通路に、柱が綺麗に立ち並んでいる。
眩い星が照らし、一直線に絨毯は続いていく。
…玉座へと。
そして…その玉座へとたどり着いたエイリアを見たシグマの最初の一言は勿論。
「だ、誰だ貴様は!?」
驚愕するシグマ。その姿は、幾度もの戦いを経て、炭と化していた。
…でもそれでいい。その間抜けなリアクションでいい。エイリアは思っていた。
「まぁ、よい…誰だか解らぬが、この玉座の間へたどり着いた事を褒めてやろう。
…エックスの仲間だな?」
「……黙りなさい」
「ぬ?」
「貴方と話すことなんて何もない。貴方に名乗る名前も。
炭に玉座なんて似合わない。ここは貴方の墓場よ!!」
「……随分と生意気な口をきく小娘よ。
まぁいい…旧世界への私の勝利はこれで完成するのだから」
エイリアはバスターを向ける。
「それもないわね。」
話を始める。
「貴方の敗北は、まだ名も知らなかった赤いイレギュラーへの敗北から始まる。」
「そしてその次には目を付けていたとはいえ格下のB級ハンターに。」
「その次にはかつてハンターとして貴方が倒す気でいたイレギュラーだった者に。」
「やがては貴方は自分が利用しようとした少年レプリロイドにすら倒されている……」
震え、ひくつく声でエイリアは一つ一つ、声をひねり出す。
「そして今!!」
チャージを始める。
「貴方はこうして!!
名も知らぬ!一介の新人ハンターに敗れ!
永遠の死を迎えるのよ!!」
彼女の赤くなった目は腕を前へ、前へと…突き出させた。
「それが貴方の末路っ…………!!」
その表情を見て全てを察したシグマはニタリと笑い、玉座から立ち上がる。
「ククク…なるほど。いい殺気だ。あらゆる感情が含まれている。
…これはこれで面白い戦いになりそうだ…!」
柱二つに挟まれ、玉座をバックに戦いが始まる。
「全力で来い!!」
-
エイリアの動きに迷いはない。
素早く走り、チャージショット。それと同時に後ろへ跳び、柱へ張り付く。
「クフフフ!!」
シグマは消える。
そして上から剣を手に落下、剣を振るう。その剣とは勿論レイヤーが使っていたもののオリジナルだ。
「行くぞぉ!!」
とっさに通常弾で攻撃しながら回避。
「はぁああ!」
逆方向に降って来たシグマをまた回避、今度はチャージショット。
「やるなぁ…」
腕からフープショットを放つ。
輪の形をしたエネルギー弾が柱へと飛んでいく。
「ハァアアアア!!」
エアダッシュで輪を潜り一発。
輪そのものを飛び越し一発。もう一度エアダッシュで潜り一発。
「ぐぬううう……!?」
これは早々に必殺の技を使わざるを得ない。
そう判断したシグマは、新世代特有の紫色の光を発し、その能力を発動する。
「終わりだああああ!!」
何もない場所にエイリアが引き寄せられる。
「くっ…離しなさい!!」
何もない空間からシグマの手が現れ、全体が現れる。
エイリアの頭を掴んでいる。
「ハーーーーーッハッハッハ!やはり素晴らしいぞこの力は!!」
「くっ…!」
「新世代の王となった、この私の前では貴様など無力に過ぎぬわ……!」
「滅べ、滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ……!!」
このままでは……。
奇しくもそれは、ゼロに対しかつて行った技が強化されたものだった。
これにより頭を掴まれたゼロはこの後、気絶させられ、床へと転がることとなる。
エイリアに成す術は……
そう思われた時、激しい音が辺りを轟かせる。
凄まじい勢いで走ってきた一つの風が、跳びあがり………
「何っ!?」
「!!!」
エイリアの頭からシグマの手を吹き飛ばしたのだ。
「大丈夫か、エイリア!!」
「エッ…………クス?」
倒れこむその体を支える。
「………」
表情でわかる。変身などでもなく…
「…エックス…!? エックス!!」
「ああ。俺だよ 待っててくれると思ったら、まさかこんなトコまで来ちゃうなんて……」
エネルギー反応で感知しても、何もなかったはずである。そこにはいなかったのだから。
通信が途絶えても転送は出来る。
エックスはとっさに、VAVAを引き付けライドアーマーが壊れるその瞬間に
ハンターベースへ戻り、再度月まで転送してもらったのだ。
…VAVAの罠でエックスが死に、エイリアが絶望し、後から何事もなかったかのように現れる。
その時と、何ら変わりなかったのだ。
だが、エックスは知らず成長した姿を見せ付けていた。
戦いの始まりのとき、こうして頭を掴まれた人質のゼロを彼は助けだせなかった。
そして、ゼロがかつて死んだときも、ゼロはその後エックスを助けることは流石に出来なかったのだから。
彼は、ゼロも、かつての自分も超え、シグマの前に再び姿を現したのだ。
「エックス………!!!」
エイリアの顔が歪む。
様々な感情が混ざり合い、洪水のように押し寄せ、何も言えずにいる。
怖かったのだろう。恐らくそんな顔は同じハンターには向けたくないはず。
そう判断したエックスは目を閉じ、顔を見ないようにしながら、エイリアを後ろに立たせ、背を向けシグマと相対する。
「…エイリア、有難う。 君は待機していてくれ……
コイツは俺が倒す」
バスターの色はピンクから青へ。
「フハハハハハハハ!来たかエックス!!
貴様が来なくては面白みに欠ける!」
剣を振りかざす。
「決着をつけるぞぉおおおおおおおおおお!」
-
シグマはまたも消え、フープショットを撃ち始める。
新たなるアルティメットアーマーを装備したエックスは、
フープショットを通過してプラズマチャージショットを放つ。
「それがお前の力か…!」
またも消え、今度は剣を振り回して上下に連続で跳び始めた。
「思い知れええええええええ!」
背後に回り一撃。
「くううう…!!」
「燃え滾れ…!」
レーザーで壁を燃やす。
シグマは宙へと浮いて、チャージを始める。
「ぬぉおおおおおお!」
エックスはとっさにチャージショットでそれを解除、再び攻撃へ転じる。
「行くぞ!!」
またシグマが剣を手に降って来た。
「はぁああ!」
2回。
「食らええええええ!」
3回目。
チャージを始めたシグマに対しチャージショットを一撃、
次に現れる位置を予測し…
「シャイニングレイ!!」
8方位に攻撃できるこの武器で広範囲攻撃を狙う。
「ぉおあおあおあおああああ!?」
弱点だったようだ。シグマの体が床へと落ちる。
「くうう………!!」
フープショットを放つ。今度はフープ自体が回転するタイプである。
「効かない!!」
一つ一つを飛び越し、チャージショットを思う存分当てる。
「貴様ああああああ!!」
シグマはまた天井から降り、剣での攻撃を行う。3連続で。
「ゆくぞおおおお!!はーーーーーっはっはっはあああ!」
チャージが完了。腕から巨大な衝撃波を放つ。
「…何!?」
エックスにはそれは通用しなかった。
インビジブルダッシュで回避、そのままチャージショットへとつなげていた。
「くっ!?」
ここまで醜くも頑張ってきたシグマに対し、エックスは最後に花火を見せることにした。
「チャージ・シャイニングレイ!!」
-
バスターを上に向け、光を放つ。
それは空中で分裂、
そして分裂した光自体が空中で炸裂、綺麗な花火となって消えていく。
「がはああぁあぁあぁっ……!!」
シグマはそれをダイレクトに受け、体が吹き飛ぶ。
「…ば、馬鹿な… 新世代の王が…滅ぶというのか…!?」
シグマの体が震える。
「滅ぶのは…奴ら、…旧世代の………!」
体の各所が爆発。シグマの体が激しく動き、そして…大の字になり…
「がはっ……」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!」
濃い叫び声を残して…最期を迎えたのだった。
音一つ残らないシグマパレスの玉座。
後に残るはシグマの破片のみ。
絨毯の上のそれをエックスは見下ろしていた。
…エイリアもそっと出てくる。
後はルミネを救出するのみ。
玉座の後ろから、足音を響かせ歩いてくる少年が一人。
「君は…… 君はルミネ!無事だったんだな!」
そう。軌道エレベーターが動いているということは
管理者である彼も生きているということ。
「やっぱり生きていたのね」
ルミネはシグマの死体を見下ろして言う。
「無事? ええ、当然じゃないですか」
彼は冷めた笑いをエックスに向ける。
「…あなた方も、もうシグマを倒して満足でしょう?」
…エイリアの推測が、彼女を疼かせ始める。
「…あなた、シグマに利用されていたんじゃ…ないの?」
ルミネは首をかしげる。
「利用?」
シグマの死体に足を乗せる。
「…違いますね。
シグマはただ……役目を果たしただけです」
そして…砕く。
「私達、新世代型を目覚めさせるという 役目をね」
-
そう。考えてみれば、シグマは初期レプリロイドであり、
VAVAともども旧世代レプリロイドの最たるものではないか。
考えてみれば、ルミネが無抵抗で軌道エレベーターを動かしたままでいることも不完全だったではないか。
ルミネの周りには六角形の結晶が8つ。
白、黄色、水色、赤、緑、オレンジ、紫、黒。
……新世代型のコピーチップだ。
「来なさい」
彼こそが新世代レプリロイドの頂点に立つものだったとは。
宙を自在に浮く彼をエックスはチャージショットで攻撃。
「……はあぁぁ!」
彼の前に現れた驚くべき敵は、驚くべき戦いを始める。
ルミネはコピーチップのうちの一つを自らに取り込んだ。
その色は……オレンジ。
ルミネは床に手をかざすと、床からは水晶が発生、波のように現れ始める。
そう。…トリロビッチの技だ。
「くっ!!」
エックスは攻撃できない。襲い来る水晶の波を避けるのが精一杯であるためだ。
「スクイーズボム!!」
…だがその攻撃ももう遅く。水晶の波の中ではルミネには届かなかった。
「哀れ。」
次にコピーチップを取り込む。今度は…黒。
ルミネは宙へと舞い上がり、腕をビームの鎌へと変化させる。それも物凄く巨大な。
「とう!!」
カマキールの技だ。
襲いかかる巨大な鎌。左…次は右。
かわしきれない…その時である。
「天照覇!!」
光の柱が現れ、ルミネを攻撃する。
「くっ…!?」
「大丈夫か、エックス!」
そう…ゼロだ。
「来てくれたんだな、ゼロ!」
「シグマも随分と小さな体になったものだな?」
「…面白い冗談ですね」
続けて取り出したコピーチップは白。
「美しい雪の結晶をご覧に入れましょう」
ルミネの手から吹雪。雪の結晶が空を舞う。
「さぁ、いきますよ」
雪の刃が降る中、次のコピーチップは水色。
「FALL ON YOU…」
そう、ドクラーゲンの技だ。
ルミネの体に電撃が蓄えられ、
雷の爪となって降り注ぐ。
「いきますよー!」
「くう…!」
音波の弾があらゆる方向に反射、ルミネの体に当たる。
「面白いお仲間達だ…」
次なるコピーチップは赤。
「思い知りなさい」
コケコッカーの能力だ。
炎を手から放ち、シグマパレスの柱を燃え上がらせる。
炎の中での戦いへと移行する。
-
エックスはチャージショットで攻撃。
次なるコピーチップは紫。
「だが、邪魔をしないでいただきますよ」
ルミネは部屋中にブロックの雨を降らせ始める。
「何!?」
ズゴン、ガゴン。
ブロックは床へ落下、砕け散る。
これを避けるのは困難…そう思われたが。
「竜巻旋風脚!」
「ほう…」
レイヤーが現れ、ルミネの胴を蹴りつける。
「皆さんの回復が間に合い、本当によかったです!」
続いてのコピーチップは黄。
「地を砕く光よ」
レーザーがエックスを捉え…光の柱が打ち込まれる。
「なっ…!?」
「危なーーーい!」
手榴弾、ブラストランチャーがアクセルにより投げ込まれる。
「僕を真似したにしちゃ、ちょっと明るさ足りないんじゃないのー?」
「容赦のない方々だ。だが出揃った様子…
ここでエックスを失えばどうなるやら」
最後のコピーチップは緑。
「さよならです」
ゼロを瀕死に陥れた最強の技、葉断突だ。
「メルトクリーパーーー!」
エックスを庇い、最後に現れたのはエイリア。
炎の波が、突進するルミネを焼き、炎を纏わせる。
「うっ……!!」
軌道が逸れ、エックスの横を通り過ぎ…柱へと爪は激突。
「有難う。」
「さっきのお返し、それだけよ。」
…ここで8つ全てのコピーチップが音を立てて割れる。
「…それでこそ、滅び行く者達。」
ルミネの体が宙に浮き始める。
「真似の技ねえ…貴方、エックスのファンか何か?」
エイリアが言う。
「ちょっとそこまで行くとズルいんじゃないですかー?」
パレット。
「…皆さんお気をつけてください。…エネルギーが未知数…測定できません」
レイヤー。
「そんな小手先の戦い方で俺達を倒せると思うな」
ゼロ。
「…そろそろ本気出してみなよ。 ……アンタの戦い方でさ」
アクセル。
「…ルミネ。君もイレギュラーなのか?」
-
「イレギュラー…?
そんなものでないことは、あなた方も理解しているのでは?」
レイヤー、パレットが一時転送の限界時間を過ぎハンターベースへと帰還する中、
ルミネが口の端を吊り上げ話し始める。
「私にトドメを刺せないのは、それがわかっているからでしょう」
そういいながら、ルミネの傷はみるみる塞がっていく。
「……どういうことか、まず説明してもらいたいわね」
ルミネは話す。
「私達新世代型は、数え切れない沢山の旧世代型レプリロイドを参考にして作り上げられました」
アクセルが動揺する。
「コピーチップに……シグマ!?じゃあ僕もいつかシグマみたいに狂ってしまうってこと!?」
「残念ながら、プロトタイプである貴方にはそれほどの能力はありませんし…
変身もまた不完全です。…それに、」
「シグマは狂っていたわけではありませんよ」
炎の海の中を歩くは大量のシグマの群れ。その中心にいたのは他ならぬルミネ。
そう…あの光景は皮肉にも、新世界そのものを暗示していたのだ。
ルミネはこれからの世界を見据え、立ちはだかる敵に向かい語る。
「私達は、自らの意思であなた方の旧世界に戦いを挑むことが出来る。」
そして見下ろす。
「あなた方にわかるように言えば…」
「私達は、『自らの意思でイレギュラーになれる』のです。」
軌道エレベーターを描いた一人の小説家が提唱したロボット三原則。
ロボットは人間に危害を加えてはならない。
人間に与えられた命令に服従しなければならない。
これらに反しない限り、自己の身を守らなければならない。
………それが皮肉にも、軌道エレベーターの管理者により、ここに破られたのだ。
故障でも、ウイルスでもなく。
考えの中に人間が存在しないロボット。
人間から解き放たれた……完全に生命体として確立されたロボット。それが…
新世代型レプリロイドだったのだ。
-
「フフッ…どうですか?エックス。 私達が撃てますか。」
ライト博士は言っていた。
エックスには無限の可能性があり、無限の危険性も存在すると。
エックスの無限の危険性は、その戦闘での強さ以外発現することはなかった。
だが…ここに、同じく姿を変えることなく相手の能力を手に入れる力を持った
ルミネという、もう一人のエックスを以って、
「所詮は人の道具に過ぎない、旧い世代のあなた方が」
無限の危険性は…ここに開花したのだ。
「進化し、自由になった私達に何が出来ると。」
エックスは…バスターを下ろさねばならない。
ロボットは、自由になりたかったのだ。
勝利の快感がルミネの体を駆け巡る。その快感は顔を歪める。
「フフフフフフフ…ウクククク…
アアハハハハハハハ、アーーーッハッハッハッハッハ!」
新しい世界の宣言。
「世界は変わったのです!!」
人間からの独立宣言。勝利宣言を口にする。
「旧い生命が、より進化した生命に取って代わられるのは、自然の摂理です!!」
「大人しく…… 滅んでおしまいなさいっ!」
ルミネが腕を振るう。
その瞬間…彼の肩に銃弾が。
「……エックス、迷うことないよ」
少年の言葉は、単純な発想から来るものだった。
「コイツは悪いヤツだ… 敵だよ。」
そんな言葉は虫唾が走る。ルミネは口にする。
「敵…味方…。
そんな単純な問題ではない。」
「生命のあり方が変わったのです。これからの世界に、あなた方は必要ないのですよ」
エイリアは言う。
「そうやって、あなたはこのレプリロイドの戦い全てを、
レプリロイドの進化の言葉で片付けようっていうわけ?」
ルミネは返す。
「科学者ならわかりませんか。」
「悪いけど………
この戦いはそんな言葉できっちりまとめられるほど、
簡単なものでも 筋の通ったキレイなものでもないのよ!」
チャージを行う。
「そんな辻褄合わせは… 要らない!」
そしてゼロがセイバーを強く握る。
「滅べといわれて…黙って滅んでやるつもりはない!!」
4人の気持ちが一つとなった。ハンターベースで見守る3人も同じであろう。
そして最後にエックスが……ルミネへとバスターを向けた。
「…………それでこそ、ですよ」
ルミネが更に高く飛び始める。そして…光に包まれる。
「我々は…自由だ!!」
ルミネの姿が変化していく……
-
場所は暖かな光の差し込む天の上。
ヘキサゴンパネル一枚の上にエックスは乗っていた。
ルミネの第二形態。
現れたのは、6枚の翼を背負い生まれ変わったルミネ。
究極の力を持ったレプリロイドがここに現れた。
バサッ…と翼をはためかせ、空を滑空する。
だが実際、空を飛ぶのに羽を使っているわけでも、ホバーを使っているわけでもない。
ルミネ独自の、重力を完全に無視した能力で空を飛んでいるのだ。
「来なさい!」
6枚の翼を広げ、戦いがいよいよもって始まった。
凄まじいエネルギーの高まり。かつてない最強の敵として立ちはだかるはルミネ。
「当たれ!!」
空飛ぶルミネへ向かいプラズマチャージショットを放つ。
「フフフフフ……」
ルミネの能力がここで明らかになる。
ルミネが持つ6つの翼から、滑らかな光が放たれる。
強力なレーザーだ。
それは次々に折り重なりエックスを襲う。
「ぐぁぁぁあっ…ぐっ……!!」
いきなりの大量ダメージ。サブタンクで回復を行う。
逃げても逃げてもレーザーはエックスを追う。
攻撃の隙もありはしない。
「いきますよ」
空を滑り更なる攻撃へ。
「こうして世界は変わっていくのですよ」
ルミネから、辺り一面へ放射するように光の輪を放つ。
そう、ルミネの戦い方は「光」そのものを操る力。
自由自在に、どこからでも、どこへでも攻撃を行える極めて自由度の高い能力。
-
光の輪はルミネを中心として展開、エックスを切り刻んでいく。
「くぁぁあっ……!!」
ここでエイリアに交代。
「ハァァア!」
ルミネへとチャージショット、続けて通常バスターを食らわせる。
だが…ルミネには一切ダメージが通らない。シールドで防護されているためだ。
いかなる攻撃も防御される。だが攻撃を加え続ければ破壊できないことはない。
長期戦を覚悟しながら、エイリアはルミネへバスターを放ち続けるが…
2つ目の光の輪が展開され、収縮し始めた外側の輪と交差、エイリアを襲う。
「きゃあああああ…!!」
続けてゼロに交代。
シールドを破壊したところでレイヤーからもらったシグマブレードでルミネを斬る。
「くっ………」
「屍を晒しなさい」
今度は光を両腕から放つ。
二つの光は明後日の方向へと飛んでいき……猛スピードで戻り、
「何っ!!」
ゼロを串刺しにし、
「がはああっ……!!」
貫いた。
「僕が相手になるよ」
「かわすのが精一杯でしょう」
放たれ続ける貫通性の高い光の弾。
貫かれながらもいくつかかわし…
アクセルがバレットを乱射、ルミネを再び攻撃する。
「私を怒らせましたね?」
ルミネのボディが展開、光の束を頭上へ向かい放ち始める。
それらは上空で分かれ……
「何だよその攻撃!!」
光の矢となって降り注ぐ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
エックスへと交代。
光の槍を合間を縫ってかわし、ルミネへとバスターを撃ちつづける。
「くっ………!」
だがやはりシールドの上。攻撃の効きは悪い。
何度も何度も繰り返すが…
その間に何と光の槍は重力に逆らい、今度は上に向かい戻ってくるではないか。
「な!?」
全く同じ速度で『下から降ってくる』光の槍に体を貫かれる。
「くっ…そ…!!」
そして同じように光の槍は一本の光の束になりルミネの元へ戻る。
「随分な格好ですね、エックス」
続けてまたも6枚の翼によるレーザー。
折り重なる光がエックスを焼く。
「諦めない!!」
サブタンクをまたも使用。
「ノヴァストライク!!」
エックスはノヴァストライクでルミネに突進を仕掛ける。
だが…これもまたシールドの前に通用せず。
エックスはまたプラズマチャージをルミネに向かい放つのみとなる。
「哀れですね」
またも滑空、次なる攻撃へと移る。
-
紫色の光が放たれ…ルミネ最強のものと思われる攻撃が発動する。
「はぁあああああああ!!」
それを止めるべく高く跳び、ルミネを撃とうとするがその瞬間。
光の束を今度は胸から正面に放ったのだ。
「ぐぁぁああああああ…!!!」
そして光の槍は今度は左右からエックスを串刺しにするべく飛び交い始める。
「くそっ…………!!」
もうダメージなど構っていられない。
エックスはひたすらチャージショットを放つ。
「私もやるわ!」
エイリアも交代。同じくダメージを気にせずルミネへ特攻を仕掛ける。
「くっ…野蛮な物だ…所詮は旧き世代の浅知恵…ですか」
光の槍が呼び戻され始める。
交差していた光の槍は戻り、逆方向へとエックスを引き裂き始める。
「まだまだ……!!」
そして戻る。破壊力よりも、その自在な光の前に彼らは苦戦を強いられる。
後は…体力が持つかどうか。
もう残った僅かな残量しかないサブタンクを使用、なけなしの回復を図る。
「そこまでですよ」
またも2本の光がルミネから放たれ、エックスに向かいクロスし始める。
これを何とか回避し攻撃。
「くっ……!」
大分削ったはずだ。なのにルミネはまだ何かをし始める様子だ。
天の中心へと飛び始める。そして……
ルミネの最強最後の攻撃が放たれようとしていた。
彼から、膨大な光がルミネから放たれ、辺りの空間を染めていく。
ダブルアタックのときのそれのように、しかしルミネから大きな大きな…波動が放たれる。
人間は、悪魔から差し出された罪の果実を口にして、目覚めたのだ。それは創造した神への反逆。
同じことだ。
新世代レプリロイドは、シグマという悪魔から差し出されたコピーチップにより、創造した人間へ反逆し目覚める。
世界全てを書き換えんとする最強最後の攻撃。その名は。
「『パラダイスロスト』!!」
-
辺りが真っ暗な闇に覆われ、ルミネが発動の準備に入る。
6枚の翼を閉じ、詠唱に入っている。
これが完成すればどうなるか、全く見当もつかない。
ルミネを倒さねば。
「行くぞルミネ!!」
チャージショットで翼の防御を解く。それだけでは足りない。
「グリーンスピナー!!」
これにより防御を解く。もう一度チャージショット。
これにより防御は解いた。後はルミネ本体を攻撃するのみ。
「行くぞ…!」
1発、2発…3発。
だが足りなかった。ルミネは再び翼を閉じ、辺りを更なる闇へと包みながら詠唱を続ける。
「私もやるわ!」
エイリアと交代、チャージショットとグリーンスピナーの波状攻撃。
一気にルミネの防御を解きにかかる。そして最後の防御を解き…
攻撃力ならばエックスだ。再び交代。
「行けえええええええええええええ!!」
チャージショット。
…だがまだ足りない。最後の一撃を……!
「エックス!ダブルアタックよ…!!」
「……ああ!!」
最後の攻撃。空間を変える力を持つなら、こちらが更に変えてしまえばいい。
ダブルアタック。
転送空間へとこの歪んだ空間ごとルミネを連れ去り……
「いっけえええええええええええええええええ!」
最大出力のエックスとエイリア、二人のバスターが交差、ルミネを貫いていく。
そして。
「くっ…………!! ぐあああ…!! がっ………!!」
闇が晴れる。ルミネのボディの大破によって。
「うぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
-
風景はシグマパレスへと戻っていく。
そこには、膝をつき力尽きたルミネの姿。
「くっ………」
「……私を倒した所で、最早…何も変わりはしない」
アクセルは強がりながら、胸を押さえて言う。
「お前みたいなのが出たら、いつだって相手してやるさ」
そんな彼らのプロトタイプの様子をルミネはあざ笑う。
「ククッ… 本当に……何も解っていないのですね」
そして彼は機能を停止する。
「まあ………いい ………いずれ…… ………わか」
言葉はそこで途切れた。
破壊され尽くしたシグマパレスの絨毯の上に膝をつくルミネの姿。
「………コイツのコピーチップを調べてみる必要がありそうだ。」
アクセルは、ゼロに話しルミネへと近づく。
天を見たまま、口を開け、何も言おうとしないルミネの顔…
…が、突然ガクリと動き始める。
「!?」
何とルミネの胸部から黒き触手が発生。
わらわらと、アクセルを掴もうと伸び始めたのだ。
「ぐああああああ!!!!」
アクセルの頭のクリスタルが割られる。
「アクセル!」
ゼロは飛び出し、触手を切る。
パン、という妙な音を立てて触手は切れ、弾けた。
「うぉあああああ!!」
チャージショットを放ち…ルミネに今度こそトドメを刺した。
「ゼロさん、ゼロさん…!状況報告をお願いします!」
レイヤーだ。
「……アクセルが負傷した」
「ええーーーーーーーーーー!」
パレットからの声が耳を攻撃する。
「…だけど無事だよ。…これより、帰投します」
そしてエックスの隣には頬を染めたエイリア。
…それぞれを待つ所へ、帰ることとなった。
「少し、私寝ているわね……」
「…ああ。ゆっくり休んでいてくれ。初ミッションご苦労様」
彼は肩を貸してあげることにした。
-
「ゼロ、急いでそこから逃げて!」
「ゼロ、本当にいくの!?」
「…………を倒してしまうなんて、あなた本当にゼロなのね」
「行き過ぎた正義、力による支配。………………………を作ったのは、私なのよ!」
帰りの軌道エレベーターの中、謎の少女の夢をゼロは見ていた。
「………最近は変な夢を見るな」
ゼロは考えていた。
……ルミネが言っていたことが本当ならば、
もうシグマは復活しないだろう。 …いい、潮時かも知れんな
エイリアを傍らに、地球を見つめるエックスを見つめ…自分よりも優秀なハンターがいる、そう確信しながら。
…そして彼には宛てもある。彼の体を安心して任せられそうな者が。
彼に任せることにしよう。あの…少年科学者に。
彼は何より、自分が平和を乱す存在になることを恐れていた。
「おお、エックス…お前は本当に人間のようだ」
「すまない、エックス…。 お前を世に出してあげるには…時間が、なかった…」
「ああ、ワシも願っておるよ… お前の力が、正しいことに使われることを 世界の人々が…… それを望むことを。」
「お前のような存在を受け入れるには…人間はまだ…幼すぎるのかもしれん」
エックスもまた、アクセルを抱えながら夢を見ていた。
遠い昔のこと……ライト博士に自分が作られているときの夢だ。そしてエックスは考える。
『覚醒』ルミネはそう言っていた。これは『進化』であるとも。
それが、レプリロイドのあるべき姿であるならば……
自分達のしていることは、何なんだろう。
目を閉じて考えてみる。
「…… 大方、ルミネの言っていたことでも考えていたんじゃないのか?」
「………」
エックスは否定しない。
「シグマのようなヤツばかりになるのが… 進化などであってたまるか。」
単純な答えだ。
ゼロは背を向ける。
「…それにな、エックス。」
「?」
ゼロは声のトーンを落とし、呟く。
「もし、本当に進化のときとやらが来て」
エックスは目を見開く。
「俺達が滅ぶのが、運命だったとしても。」
ゼロは、エックスの背中に、最後の言葉を刻む。
「俺達は、戦わなきゃいけねぇんだ …その、運命ってヤツと」
エックスはただ、黙っているばかりだった。
破壊されたアクセルの額の…その妖しい輝きに気付くことなどなく。
そして待ち受けていたのは、残酷な処置と、その後。
ルミネのイレギュラー化を受け、政府は新世代型レプリロイドの初期ロットを破棄。
しかし、更なる宇宙開発の隆盛から高性能なレプリロイドの開発要請は尽きず……
厳重なプロテクトを施し、政府はコピーチップの開発を再生した。
『人間とロボット 相容れぬ二つの生命が共存する世界
それは、私が願ってやまない理想郷だ トーマスライト』
その理想が実現するのは、果たして何時になるのであろうか。
エックスが託された想い、遺された過去があり…
ゼロへ託される想い、引き継がれる未来がある
そして、彼らはただ、『今』を戦っている。
To be continued...
-
「エックス!帰って来てからもそのアーマーつけてくれてるの?」
赤いビームマフラーをなびかせ
エイリアお手製のアーマーを身に纏い、エックスは今日もミッションから帰って来た。
「ああ。これ、結構使いやすいからね」
世紀は変わり22XX年。
エックスは、ゼロ、ハンターのシャドウと共に人工島ギガンティスへ潜入し…
自分の謎を知るべくやってきたアクセルと合流、
そして最近、やっと帰って来たのだ。
パレットがやってくる。
「気に入ってくれてるみたいですねー、エックスさん。」
「ええ。デザインした甲斐があった…」
喜んでいると、突然彼女に声がかかった。
「あのぉー…。」
「?」
ふと目をやると…。
そこには、金髪をゆらゆらと揺らせる、白い…
メイド服のような、ナース服のような格好をした…手に猫の前足のようなグローブをはめた
可愛らしい幼い娘がそこにいた。
「…………何、その格好」
「…ダ、ダメですかぁ?」
「いや、別にダメじゃないんだけどもね。
…えっと、あなたは?」
「へぇ…シナモンっていうのね。」
「はいっ!私、今日からハンターベースの医務室にお世話になることになりましたぁ!」
『怪我人』を名乗る者も増えることだろう…。
「とすると、もしかしてあれかしら。エックスがギガンティスでお世話になった、っていう…」
「お世話になったのは私の方ですよー♪」
えへへ、と笑う。
「……所で、行かなくていいの?」
「はいー。そうなんですけど、
ちょっと会っておきたい人がいるんです♪」
「…はぁ。」
頬を染める少女。……これは恋をしている顔だ。
嫌な予感がするので聞いておく。
「ところで。…あなた、所で誰か好きな人いない?」
「わぁああ! …な、何で解ったんですかー…?」
一応、一応聞いておこう。
「……ヒント教えてくれない?」
シナモンは喋りたがっているようでもあったので、すぐに話してくれた。
「えーとですね!
実は、髪が長くってー…赤色のアーマーを着ててー…
カッコよくってー…背が高くってー…それで、ズバーって戦いのときは敵を切っちゃうんですよ!」
「…ああ。もうそれだけ言えば解るわ。うん」
レイヤーにライバル出現か。
…最も、アイリスが生きていれば彼女もまた強力なライバルだっただろうが。
「ちょっと待っててねー」
ゼロを呼びに彼女は向かった。
-
「おや!シナモンじゃないかい。どうしたんだい?」
ふと見ると、そこには緑色の長い髪を靡かせた、
赤みがかった桃色のアーマーを身に着けた
ビームナイフを携帯した背の高めの、くのいちレプリロイドが一人。
彼女は、先日からハンターの諜報部で活躍しているマリノだ。
「あーー、マリノさぁん♪」
とてとてと走り、その豊満なバストに顔を埋める。
「ちょっ、もうシナモンったらいきなり何するんだい。」
そう言いつつ頭を撫でる。
…レプリロイドの恋も複雑なものである。
「何だ?誰も居ないじゃないか」
「変ねぇ。さっきまでシナモンって子がいたんだけれど」
「ぜ、ゼロさん……」
するとそこにはレイヤーが。
「お前は……ああ。確かレイヤーだったか。俺に話があるのか」
「あ、いえ…実はエイリアさんに。」
「私?」
「はい。ギガンティスから、本日付でハンターベース配属になる
オペレーターが一人見えているようですが」
「ふうん……」
というなり、ゴツンと何かがエイリアの背中にぶつかった。
「ご、ごめんなさい………」
見ると桃色の髪に前髪の一部だけが白くなった美少女がやってきていた。
エイリアより背は低く、可愛らしい顔つきをしており…
何より目立つのはレイヤーに勝るとも劣らぬそのはちきれんばかりのバスト。
「………もしかしてあなたが?」
「は、はい。ナナといいます。エイリアさんですね。宜しくお願いします!」
「ええ。宜しく… 所であなた、どういうことをしていたの?」
「主にメカニロイドの派遣業務が多かった気もします…」
「実戦をオペレートする経験なんかは少ないのかしら。」
「…そうでもない…筈ですけど」
「とにかく、そうね。…今日はもう忙しいし、
あなたはもう帰って大丈夫よ。明日から来て?」
「は、はい!」
そう言って、エイリアは足早に歩き始める。
エックスの元へと、急いでいく。
「エックス、元気でしょうか…。」
やがて来る、ナナとの戦いを… 今はまだ、知る訳もなく。
-
「それじゃ、これからはまじめに活動してくださいね、Drワイリー!」
ロックマンはほっとした心地で家路を急いだ…その1分後。
「危うい所でしたねー、Drワイリー…」
声の高い、小柄で四角いロボットがカプセルから出てくる。
「俺ら流石に見つかったらヤバかったんじゃねえのか?」
奇怪な形をした青いロボットが続けて現れる。
「へーン!オレの爆弾であんなのはぶっ飛ばしてやるよ!」
バイザーのついたロボットが現れる。
「迷惑な真似ややめろよオイ! みんなお前みたいに頑丈なボディ持ってるわけじゃないんだぜ」
頭の輝くロボットが現れる。
「フン!馬鹿を言うな…お前達は性能テストもまだじゃろう!」
ワイリーは土下座のポーズを止めて立ち上がる。
「…Drワイリー。ヤツと戦えるのは何時頃になりそうでしょうか。」
長身のロボットはワイリーに聞く。
「何じゃ?クイックマン」
クイックマンと呼ばれたロボットは答える。
「ヤツと戦いたいのです。俺が最強であることを、ヤツに見せてやりたい。」
その目は真っ直ぐだった。
ワイリーは腕組みをして考える。
「……そうじゃな。予定を早めるとしよう… まぁ…1ヶ月もあれば十分じゃろう」
「…い、行くならクイックマンが行ってよ…」
足ヒレをつけた弱気なロボットはぼそぼそと喋る。
「お、オイ!今から仲間割れしていてどうするんだ!」
長男の責任というものか。最初に作られたロボットはあたふたする。
「…いや。 …あながち、その意見も的を得てるかも知れんのう」
どっしりとした体格のロボットは長男の肩に手をやる。
「…何でだよ!?」
こもった声で彼は話し続ける。
「バブルマンはまだ自分の能力に自信を持てずにいるのだろう。実際、能力はまだ未熟な点がある。
…一番強い者がロックマンを潰しに行けば、一番安全というものだ」
「…で、この中で一番強いのは…誰だ?」
それから28日が経過した日のライト研究所。
ロックマンとロールは、カットマン達の修復作業に明け暮れていた。
だが…TVは突然またも乱れ…
彼の姿を映し出す。
「先日は遅れを取ったなライト…いや、
ライトの所にいるロックマン!」
「…Drワイリー!!」
またも電波はジャックされた。
「ううむ…ワイリーめ、このために時間を空けていたのか…」
大手を広げ、拳を振り上げるDrワイリー。
そしてその背後にはロボットのシルエット。
「お前に挑ませるべく、ワシは戦闘用ロボット集団、
『ワイリーナンバーズ』を組織した!」
V字の飾りを頭につけた長身のロボットを先頭に、
頭のない大柄のロボット、
小柄で足ヒレをつけたロボット、
頭にバイザーをつけた両腕がとがったロボット、
真ん丸い頭をした、何の変哲もないように影では見えるロボット、
直方体に手足のついたようなロボット、
真ん丸い円柱形の体をしたがっしりとしたロボットが続く。
-
「これから8体のロボットが様々な場所で事件を起こし、お前をおびき出す!
そしてロックマン、お前はこのワイリーナンバーズに敗れることになるのじゃ!!」
博士はビシッと指を指し宣言する。
「……あれ?」
「7体しか見えないわね…ワイリーの後ろ?」
そう思った瞬間。
「な、なんじゃこの音は!?」
ライト博士が見上げた天井。
そこにはヒビが入り…鋭い何かが落下してきた。
「博士ーーーー!」
ロックが庇う。
天井からの巨大なドリルだ。
「………何じゃ…!?」
ドリルに乗って現れたのは赤いボディの一体のロボット…
ワイリーナンバーズ最初の刺客だった。
「オレはメタルマン!
さぁ、ロックマン!はるばるやってきたんだからオレと勝負しやがれ!!」
頭につけた円形の刃が輝く。
「えぇえええーーーい!」
「!?」
メタルマンの背後から殴りかかるロールちゃん。その手には…箒。
「…戦えるロボットはオレ以外にもいたっていうのか!?」
目が飛び出んばかりに驚いているメタルマンのわき腹に今度は爆発音。
「のああああああ!?」
…ロックバスターが火を吹いていた。
「…メタルマン。僕が相手だ」
「私だって戦えるわロック!」
前から後ろから。知らず、メタルマンは挟み撃ちに遭っていた。
「…ひ、卑怯だぞ!!」
「とはいっても、お前さんは奇襲を仕掛けてきているしのう」
ライト博士にまで突っ込まれる始末。
メタルマンは手足をじたばたするしかない。
「もういい、メタルマンよ。ちょっと戻って来い…」
頭を抱えていることが一発で分かる疲れた声がメタルマンの耳元から漏れる。
「…まぁいい!次は1人で来いロックマン!」
天井の穴からメタルマンは去っていった。
「…お前はこうじゃからダメなんじゃ…」
「も、申し訳ありませんDrワイリー…」
とぼとぼと帰っていくメタルマン。ワイリーはクイックマンの元へ歩く。
彼は壁を背にしていた。
「…本来、お前が行く予定だったんじゃぞ」
「1号機であるメタルマンに華を持たせたまで。
…それに俺はロックマンの能力の全てを手に入れさせた上で戦いたいのです。」
呆れた様子でワイリーは言う。
「…じゃからヤツはロックバスターしか使えんと言っておる。」
そして、彼の無言でワイリーは勘付く。
「………」
「まさか、お前…」
「ええ。ワイリーナンバーズの他全部の能力を手に入れたロックマンと俺は戦いたいんです。
能力を得ることもヤツの力のうちでしょう。」
「非情なものじゃな…」
「…俺との戦いでヤツの快進撃は止まる。
そうでなかったらそれ以前に敗れる、それまでの奴だったということですよ。
どの道スペアボディで蘇ることは可能なのでしょう」
「誰が用意すると思っておる、全く…」
「申し訳ありません。
俺は…ちょいとコイツでロックマンとの模擬戦闘をしてみますので」
クイックマンは窓際にいた一体のロボットを親指で指す。
「…慣れなれしい真似はやめてもらおう。」
サングラスをかけたロボットがそこにいた。
「…今回の敵は僕を倒しに来ている…か。」
夜の高層ビルの屋上から夜景を眺める。
今度の戦いの舞台は…町のどこになるのだろうかと。
-
ビームが左右から交差し、彼を撃ち殺そうとする。
だが危なげなく、彼はそれを素早い動きでそれを回避、
見る見る内に下のフロアへと落下していく。
「…タイムは更新できたようだ」
最下層に着地。
「そろそろロックマンがやってくる。…お前は最深部で待機しておれ」
ワイリーの声。
「…はい」
メタルマン、エアーマン、バブルマン、クラッシュマン、フラッシュマン、ヒートマン、バブルマン。
7体のロボットは全員、すでにロックマンにより倒され、
今はスペアボディを作成している最中だ。
…彼らの仇は勿論彼が取るつもりでいる。
最強のロックマンを倒すことで自分が、そしてそれを作ったワイリーが最強であることを証明するべく。
彼は、あるときのことを思い出していた。
「クイックマン。
ワシはな、赤と黒という色が好きなんじゃ」
卓球のラケットを手にワイリーはニヤつく。
「俺のボディも、赤ですね」
「その通り!最初に作ったメタルマンもじゃな!」
ワイリーは力説を始める。
「赤という色はな。
人間が最も最初に知覚する色であり、人間の興味を最も引く色なのじゃ」
クイックマンは黙って聞いている。
「赤子ですらワシの存在を知れるように!
世界全体がワシのことを、ワシの技術を完全に認めるように!
ワシは赤という色を、傑作中の傑作であるお前や、最初の1号機であるメタルマンに与えたのじゃ」
その熱さに少しだけ体力を削がれながら。
「そして黒という色は全てを染め上げる色!光すら吸収する、完全な無じゃ!
ワシはその二色をいつか、傑作とするロボットに使いたいと思っておる」
初号機としてのメタルマンとは違う。
その性能からその色を授かった彼は、負けるわけにはいかない。強さをアピールせざるを得ないのだ。
真っ赤な、この部屋で。
…ロックマンはきっと上の部屋にあるレーザー地獄を潜り抜けてくるだろう。
フラッシュマンのタイムストッパーがあればそれも可能なはずである。
部屋の扉に青い色が入り込んでくる。
「…よお、ロックマン」
「君がクイックマンだな」
「気をつけてね、ロック!」
ロックマンの耳から、オペレートするロールちゃんの声が聞こえてくる。
そしてその妙な凹凸のあるその部屋は、全体が一つの装置になっていた。
その装置とは。
「博士の研究所のバリアを解きたければ解け。」
そして高く舞い上がる。
「ただし、俺という存在がこの基地にいる限りバリアは解けない仕組みだけどな!」
「行くぞクイックマン!!」
ロックマンは素早くジャンプ、クイックマンの落下を回避するが
クイックマンはそれを追尾するようにタックルをかます。
「うああぁああっ…!」
「どうだ、超高速のタックルってものは!」
再び跳びあがる。
彼の能力はそう。名の通り、恐ろしいほどの速さにあったのだ。
だがそれだけではない。
「メタルブレード!!」
メタルマンの特殊武器。バブルマンだけでなく、フラッシュマンまで沈め、多くのロボットを倒してきた
彼の愛用する特殊武器となっていたものを放つ。
だが…
「効くか!!」
クイックマンはそれをガード、全てはじいてしまう。
「そんな刃は俺には効かない!」
更に突進。
「くぁぁぁっ…!!」
手に刃を持つ。そして…
「クイック・ブーメラン!!」
勢いよく射出。それはロックマンめがけて一気に3つ飛んで行く。
「うぁああ…!!」
肩を裂かれながらもロックマンは逃げる。だが。
「俺の能力を甘く見るんじゃない!!」
突進。ロックマンはそれを回避 …した瞬間。
「うあああああああああああああああ!!」
クイックマンが加速から着地に入るそのタイミングでニヤリと笑う。
クイックブーメランは2段追尾の必殺技。
一度避けても、当たっても、次にもう一度食らうことがある。
彼のブーメランすら越える速度での移動で誘導したなら尚更当たりやすい。
-
「食らえ!!」
半端な攻撃力ではない。すでにエネルギー缶を一度使ったロックマンは
バスターでクイックマンを撃つ。
だが。
「やっぱりな…?」
弾は遅く、弾道はするするとクイックマンの体を通してしまう。
「なら!!」
この方法だ。
クイックマンへ近づき、バスターを放つのだ。
「ぐう……!!」
「ああぁああああああああああ!」
相打ちになる。だが…
「そのダメージのままいつまで戦うつもりだ、ロックマン!!」
攻撃力、防御力、速さ。全てにおいて勝っているクイックマンには
それだけではダメージが割りに合わないのだ。
………例え、エネルギー回復という手段があっても。
「ロック、アレを使って!!」
「………仕方ない」
ロールちゃんはあらかじめ、敵のボディを研究。
そこから、今までの弱点から考えクイックマンの弱点を割り出していたのだ。
「…まさか!!」
「うぉおおおおおおおおお…!!」
バスターを前へと突き出す。
「タイムストッパーーーー!」
「ぐぉおおおおおおお、おああああ……あああああああ…!!!」
辺りが輝き…
クイックマンの視界を真っ白に染め上げていく。
ワイリーナンバーズには通用しないはずのタイムストッパー防御装置が故障していたのだ。
『よりにもよって』 ワイリーはそう言っただろう。
彼には特に致命的な欠陥があったのだ。
時間を制御する光を放つ、フラッシュマンのその武器だが、
特にクイックマンの場合、それを食らうと大変なことになる。
…加速装置の暴走。
不安定に時間を止めることによりクイックマンの体は硬直、内部で暴走が起き…エネルギーが増大し続けるのである。
クイックマンの体が…光に包まれる。
「…ば、馬鹿な」
ロックマンは全てのタイムストッパーのエネルギーを使い果たしたがクイックマンは倒れはしなかった。
クイックマンを驚かせているのは、ここでタイムストッパーを使ったという事実である。
クイックマンのいたバリア基地は、
クイックマンの性能テストにも使われていた場所である。
その性能テストとはその素早さを試すもの。実際彼が先ほどやってみせたように、
殺傷力の極めて高いレーザーを壁の左右から照射し、それを一息で乗り越えさせるというものだ。
…クイックマン以外に出来るわけがないそれを、出来るものが2人いた。
そう。時を止められるフラッシュマンと、その力を得たロックマンだ。
だがあいにく、タイムストッパーは一度発動すると使い切るまでそのままである代物。
故に、クイックマンの元へつくまでに使い切っており、本来ロックマンが使えるはずなどないのだ。
「…何故だ。」
その、消耗させてからの戦いをクイックマンは抗議した。自分は全ての力を使うロックマンと戦いたいのだと。
けれどワイリーはそれもロックマンの力の一つといったのはお前であると反論した。
「…簡単だよ。
…あのレーザーを何も使わず抜けるルートをロールちゃんに解析してもらったんだ」
「…なんだと…?」
さらりと言ってのけた彼に対し。そんなことが出来るのか、ではない。
それを発見したところで、隙なくそれを実行できるのか、ということだ。
「…どうしたんだい、クイックマン。」
ニヤリと笑う。
そして、ニヤリ笑いが…大笑いへと変わる。
「フフ…アハーーーーッハッハッハ!」
「!?」
跳躍。
「ありがとうよ!!ロックマン!
いっそう楽しい戦いにしてくれたってわけか!」
弱点を使われても、むしろそれが嬉しい。
通常ではありえぬ方法でここへ来たロックマンに、全力で相手してもらえているのだから。
「気分がいい! ちょっと外へ出ようぜ!」
赤い光が消えていく。
「待て、クイックマン!」
青い光となって消えていく。
-
「風が気持ちいいだろう…。」
吹き抜ける風。いつぞやに夜景をバックにビルの上に立つロックマン。
アンテナの上に立ち、それを見下ろすクイックマン。
「決着はここでつけよう。」
ビルを渡り歩き、どんどん高いビルへと登っていくクイックマン。
『アイテム1号』を使い上へ上へと進んでいくロックマン。
「さぁーーーー、行くぜ!!」
月夜に跳躍。
「クイックブーメラン!!」
重力加速も加わり、破壊力を増したブーメランが二つ放たれる。
「フッ!!」
1つ目。
「ハッ!!」
2つ目。
「食らえっ!!」
ロックバスターが勢いよく火を吹く。
「二段追尾を忘れちゃ困るぜ!!」
勿論忘れてなどいない。
ロックマンはビルを蹴り反動でブーメランをかわす…
ブーメランが発電所へ激突……辺りに停電を起こす。
そして宵闇が両者の体を隠す。
「さあああああ、行くぞロックマン!!」
空の上から刃を手に飛び降りるクイックマン。
「これで最後だ、クイックマン!!」
屋上を蹴りジャンプ。
バスターを上へ、クイックマンへと突き上げる。
……予備電源が作動。二人の体を…照らす。
「……………!!!」
ロックマンの色は…
「アトミックファイヤーーーーーーーーーーーーー!」
赤だった。
「わっ!?」
「ぉああああああああああああああ…………!!」
そして夜に太陽が打ち上げられる。
アトミックファイヤー…ヒートマンから得た、原子の炎。
ロックマンですら知らなかった。
準備している間に、一発をと思い残していたら、いつの間にか膨れ上がっていたのだから。
特殊武器は本来、敵の技を真似るのみのもの。
だが彼はその力を更に拡張、
エネルギーをバスターの内に溜め…最大出力でチャージし、放つことが可能となっていたのだ。
後に世は、それをチャージショットと呼ぶこととなる。
彼は最後にロックマンの全力を見た。
初代ワイリーナンバーズ最強の男の…ロボットとしての、ロックマン最初のライバルの最期だった。
-
「ゼロか。話は聞いているよ…部下に話はしてある。宜しく頼む」
少年科学者がゼロに斜めに手を差し伸べる。
「…ああ。」
彼は自らを封印しに来たのだ。
「本当に…それでいいのですか?」
ゼロの功績を知る科学者は言う。
「失礼ですが、もしこのような事が今後あったときに。
…貴方抜きで、果たして対処できるのでしょうか」
「…何とかやっていけるだろう。
ハンターには、俺なんぞよりよほど優秀な奴がいる筈だ」
「…俺は、自分自身が平和を乱す存在になる事の方が、辛いんだ。
それで…俺が目覚めるのは何時頃になる」
「はい…おおよそ」
「み、見つけた…見つけたぞーーーーーーー!」
一人の男が声をあげる。
その部屋に、まもなく煙と共に光が差し込む。
「……シエル様、ここは俺たちに任せてくれ!」
「急ごうシエル!」
「う、うん!」
シエルと呼ばれた少女は、部下に任せ、
一人のレプリロイドの男と共に先へと進む。
男の名はミラン。
組織で1、2を争う戦闘能力を持つ彼が得意とするのは銃。
敵組織の主力兵を、普通なら数人で1人を相手に戦うところを
1人で5人も、ものの1分で倒すことが出来るほどの実力を持っていた。
彼女が見つけたものは。
金の髪を垂らし、腕が千切れ、体の各所がコードで繋がれた
一人の赤いレプリロイドの姿。
「…これが、100年前の英雄………ゼロ」
100年の眠りについていたその英雄の力を借りるべく、
彼女はやってきたのだ。
100年前の戦争で破壊神と呼ばれたそのレプリロイドは死んだように眠り続けている。
「…どう?パッシィ」
「…ダメだよ、プロテクトがかかってる……」
小さな光が彼女に、見えない光の壁が彼女らを遮っていたことを教える。
よく見るとその小さな光は、小さな小さな少女の形をしている。
「…どうすれば………」
その瞬間、背後から叫び声がした。
「うわああああああ!」
「…!」
部下の頭を踏み潰し、敵の兵がやってきた。
「シエル!危ない!!」
ミランは入ってきた敵に向かい銃を放つが。
「ぐあぁああ…!」
肩を撃たれ。
「うあああああ!!」
シエルの目の前でオイルを噴出し…倒れた。
-
「…………」
愕然とするシエル。
「……ねえ、シエル」
「………」
「シエルってば!」
「…え?」
パッシィと呼ばれた光は、プロテクトを外す手段を彼女に教える。…たった一つの。
「…私の力を使って!」
「……え…!?」
バスターを構えた敵が迫る。
「…お願い!みんなが死んじゃってもいいの!?」
「でも…!」
…更に迫る。
「…シエルの帰りを待ってるみんながいるんだから!」
パッシィの必死の言葉。
小さな光はサイバーエルフと呼ばれ、プログラムの生命体である。
その力は様々なことに活用されるが…
…サイバーエルフは、一度力を使ったが最後、消えてしまう運命にあるのだ。
「………解った。」
少女は決意する。
「……ごめんなさい、パッシィ」
その様子を見て、ほっとする。
「…ううん。いいんだよ、シエル」
寂しくはある。けどそれはお互い様であり…
例え死ななくてもシエルはいなくなってしまうのだからこれで最後には変わらないのだ。
それならば。
「……今まで有難う、シエル」
「……パッシィ」
パッシィの体を手で支え……
放つ。
「パッシィーーーーーーーーー!!」
別れの時だ。
振り返らずに彼女の体はプロテクトの光に到達。
光を突き破り…
ゼロのボディへと届いていく。
そして…彼女の命を動力として………
光がボディから発し……千切れた腕が再生、
ボロボロに朽ちた体が再生されていく。
その光は、目の前の敵達を焼き滅ぼし………
青いレプリロイドをかつて彼は助けた。
黒いボディの少年も彼は助けた。
…助けを待つ者の前に……… 彼はまた、現れる。
彼こそが伝説の英雄。
「……ゼロ…!」
「…………。」
何も言葉を発しない。
「…ゼロ。聞こえる?ゼロ」
「……?」
「お願い、ゼロ。…助けて!」
-
「………」
何も言わぬまま、
足元の、ミランのバスターショットを手に…彼は駆け出した。
駆ける、撃つ、避ける、跳ぶ。
瞬く間に、敵の体に穴が開き、破壊されていく。
敵がトラップとして仕掛けた空中爆弾も利用して更に沢山の敵を巻き込んでいく。
青いボディの敵組織の主力兵。
ミランが1分に5体倒したものだが… それはまるで比にならなかった。
1秒に1体…それ以上のペース。
凄まじい連射速度と俊敏性。
彼は…1分もせずに………敵の群れをほぼ全滅させながら突っ切ったのだ。
…シエルには傷一つ与えることなく。
…だが、そこはもう行き止まり。
入り口はすでに、これ以上近づけないようにとシエルの部下達が爆破していたのだ。
「…行き止まり…? …ど、どうすれば…」
踏み出したその時。
「…危ない!」
「きゃあああ!!」
シエルの足元が崩れる。
ゼロはとっさに崩れる足元へ駆け出し、シエルを抱きかかえる。
長い髪が流れ、遥か下のフロアへと一気に落下していく。
「!!」
着地。気がつくと彼女の頬は染まっていた。
「あ、ありがとう…」
そう。シエルの部下も通路を爆破するのには意味がある。
他に入り口があることを知っていたからだ。
「…ここは、旧時代の研究施設か何かかしら…。」
「…」
ゼロは何も言おうとしない。
「もしかしたら、脱出に使える何かがあるかもしれない」
だがそこも瓦礫。
「ダメ、ここも崩れちゃってる。戻りましょうか?」
…見ると、シエルの背後の瓦礫がボロボロと崩れかかっている。
「下がれ!!」
「!?」
背後から伸びた巨大な手がシエルの体を掴んだ。
「きゃああ!!」
奥には研究室。そこにいたのは……
「ゴーレム!? ま、まさかこんなものまで投入されていたなんて…!!」
そこにいたのは巨大メカニロイド。
「逃げて…こいつには…バスターショットが…!」
戦闘が始まる。
ゼロはバスターをボディへ当てるが、敵のボディは硬質なものらしく、ちっとも当たりはしない。
「………」
壁を蹴り登り、頭へバスターを当てる。
ここならば頑丈ではないはずだ。
見事に相手のボディに命中。手ごたえがあった。
だがゼロの存在を感知した敵の口が開き…
「!」
レーザーを放つ。ゼロは落下、敵の足元へと移動。
レーザーは壁に撃ち込まれ、そのまま天井を撃つ。
ゼロの背後に瓦礫が降り注ぐ。レーザーが破壊した位置をゼロは感じ取ったのだ。
瓦礫を登り、瓦礫を破壊しに突進をするゴーレムを撃つ。
続けて床から壁へのレーザー。
これは難なく壁を蹴り回避、そのまま撃つ。
…だがやはり攻撃力に難がある。
「…チッ」
長期戦は避けられない。そう思ったときだった。
-
「ゼ………ロ………」
「?」
彼の耳に誰かの声が聞こえてくる。
「これを…使って………」
「それは……!」
ゴーレムの腕の中のシエルが反応した。
何かが画面の中から飛び出し、地面に刺さる。
「…剣、か?…お前は誰だ」
「いいから…早く、彼女を助けないと」
「……」
何も言わずにそれを取る。
突然、ゼロに力がみなぎってくる。
そして…壁を登り、勢いよく蹴り……
「………!」
無言でそれを振る。
ゴーレムの巨体の上から下へ…一筋の線が刻まれる。
そして…線の色が黒から白へ。
エネルギーが発せられ………消し飛ぶ。
「きゃあああ!!」
シエルを救出、爆発から遠ざかる。
「……大丈夫か。」
「え、ええ……」
光の剣をしまう。
シエルが唖然とする。
「…輝く剣ゼットセイバーを使いこなす……
そしてあのゴーレムを倒してしまう…。」
そのために来た、それはわかっているのだが…信じられない。
「あなた、本当に…… 伝説のゼロなのね」
「…ゼロ… …俺の名前…か? …すまん、思い出せん」
彼は…全ての記憶を失っていた。
「100年も寝ていたんですもの。仕方ないわ」
扉の奥へ。
「!」
扉に入るなり、何かを見つけたシエルは作業を始める。
30秒ほどか。
「…うん。『トランスサーバー』が生きてたみたい。
これに乗って?座標は入力してあるから。」
どうやらそれは転送装置のようだ。
「着いたら、話すわ。 この時代の…この世界のこと。」
シエルに導かれるまま、彼は…光となり消えていった。
「あなたが今戦った… 相手のこと。」
-
ネオ・アルカディア。
「…それがお前達を追っていた組織の名前か?」
「ええ」
それは大きな、とても大きな組織。
「…お前達は一体何故殺されかかっていた?」
故障、社会的反逆者である『イレギュラー』を粛清すべく動いている。
問題はその基準。
彼らは何の罪もないレプリロイドを、イレギュラーとみなし処分しているのだ。
「………イレギュラーの作り出した組織というわけではなさそうだな。」
その組織によって、無能とされた、能力のないレプリロイドは弾き出され、
あらゆる手で処分を行われる。
「……どこにそんな権限がある?」
その組織は全てが滅び去った世界の各地にドームを構え、その中で人間もレプリロイドも生活している。
その中心地は赤道直下の軌道エレベーター。
エネルギーの無駄となるレプリロイドは破壊される。
全ては、人間の生存圏拡大のために。
少しでも問題とされたレプリロイドも、破壊される。
全ては、人間の平和のために。
「………人間を住まわせている?生存圏の拡大? …待て。それではまるで」
「…ええ。」
敵となる組織『ネオアルカディア』
それはそう…世界そのもの。
「……お前達はネオアルカディアからイレギュラーとして認定されてきた。そういうことか」
「ええ。私達は『レジスタンス』 科学者である私を中心にして逃げてきたの。
…信じて、いい人達ばかりなの!」
「そうなると、奴らからすれば俺もイレギュラーというわけか」
ゼロはため息をつく。
「そしてあなたは、100年前の戦争で戦った伝説の英雄。
その…ゼットセイバーで数々の戦いを切り抜けてきた」
「…………。」
「今はね、調査に出かけているメンバーもいて…正直不安も大きいの。」
ゼロの手を握る。
「手を貸してくれないかしら…ゼロ」
目を閉じて、5秒ほど考える。
「……お前が言っていたことが本当かどうか。」
手をどける。
「どこまで信じられるかは、これから考えてみよう。」
部屋の入り口へと向かっていく。
「ひとまずは力を貸すことにする。…だが、少し待っていろ」
ひとまずはその姿を見て、シエルは安心するのだった。
「…力は貸して貰えるのか。…よかったじゃないか」
「セルヴォ!」
軽く皺のついた、優しげな目の中年レプリロイドが入ってくる。
彼はセルヴォ。レジスタンスの技術者を担当している者で、メンテナンスも担当している。
そして…シエルを父親のような目線で見守っている人物。
「私は技術室に戻るよ。
…後でゼロにエスケープユニットを渡しておくことにする」
「ええ」
-
意外にもゼロは、律儀にレジスタンスのメンバーに挨拶していた。
…シエルの言っていたことを確かめる意味もあったのだろう。
「あ!ぜ、ぜぜぜゼロ様ですね!トランスサーバーのお使い方お解りますか?」
「…妙な喋りをするやつだな。」
「あー、お腹がすいて動けないよー…
ねえ君、悪いけどEC(エネルゲン水晶)持ってないかな。」
食いしん坊のイブー。
「おお、新入りかい。ワシは『アンドリュー』と言ってな。これでも昔は船乗りだったんじゃよ?
…先輩達を見習って、一人前になるんじゃぞ?」
「ああ。」
老人レプリロイド、アンドリュー。
「あの… こ、こんにちはっ……」
「…何だ?」
ぬいぐるみを抱いた少女、アルエット。
「次の作戦を立てないと… って…君がゼロかい?100年前のレプリロイドかぁー…」
まとめ役、コルボー。
「わー、あなたがゼロさんーーー!? へぇー、結構カッコいいね!」
女性レジスタンスもいた。
「…アンタは…技術者か」
「ああ。私の名はセルヴォ。宜しく頼むよ
…ミランから受け継いだ銃と、ゼットセイバーを見せて欲しい。」
「…解った」
10分ほどして。
「…ふむ。やはりか」
「何か解ったか?」
そして彼はシエルの待つ司令室へと戻る。
「…ひとまず一回りしてきた」
「練習なんかはしなくて大丈夫?」
「…特に体はなまっていない。
技は……戦いの中でしか取り戻せないものだろう。戦いが今、何より必要になる」
「そう。それじゃ少しミッションをあなたに授けたいんだけど…それよりも、
まず言っておきたいことがあるの。」
「……確かに一つ聞き忘れていたことがある」
場所は変わってネオアルカディア。
人工の草花が風に揺れる庭園にて。
「結果は?」
風に乗り空へ浮かぶ緑色のレプリロイドに、
部下と見られる青いレプリロイドが膝をつき報告をする。
「ええ… 残念ながらシエルの生け捕りには失敗しました。
今頃は…爆発に巻き込まれ研究所の下敷きかと…」
「……そうか。レジスタンスとはいえ、
人間を殺してしまったとなると残念だ。」
宙に浮かぶ画面にはプール。水に半身を漬かした青い女性レプリロイドがその報告を聞いていた。
「あらあーら。また失敗したの?この前も確かレジスタンスを逃がしていたんじゃない?」
「捕獲することは出来ないまでも、死んだのならもうレジスタンスの動きはまとまらないだろう。
…少し奴ら相手に力を出しすぎたようだ」
続いて、隣の画面の赤いレプリロイドの足は、床をガスッとカカトで蹴り、火花を散らす。
「あーあ。どっかにオレの腕を満足させられる強えヤツがいないかなー!」
そんな戦闘狂には目もくれず、彼は風に乗り、遥か上空へと飛んでいく。
『彼』へと報告するためだ。
黒いレプリロイドが柱の影に潜む中、彼は玉座の彼へと報告する。
「……そうか。 僕としても残念だね 彼女はまだ利用価値があったと思うんだが」
「…聞き覚えのある名前だな。」
「ネオアルカディアの君主として…彼は今でも生きているの。」
「100年前の戦争であなたと共に戦った… もう一人の、伝説の英雄。」
彼の報告した相手は…足を組み座っていた、ヘルメットの似合う青いレプリロイドの少年。
世界の頂点たる…その存在。
「申し訳有りません…『エックス様』」
-
「後1時間か…」
瓦礫の山に風が吹く。
旧時代の何かの施設を利用しているレジスタンスたちのアジト、
レジスタンスベースは地下にあり…
梯子を登るとそこは、ユーラシア落下からそのまま放置された都市の跡。
「…………………。」
町をうろつくネオアルカディア兵、パンテオンを斬りながら、瓦礫の町を走る。
(…上か)
敵が、タイヤ型のメカニロイドを放る。
跳びあがり斬る。そして着地したところを後ろから斬りつける。
(一体何があったんだ?)
瓦礫の上のパンテオンをバスターショットで動きを止め、跳んで斬る。
瓦礫の山を登り、鉄骨の上を登り、ビルの上に登り……
「…………」
「ぜ、ゼロ…あの、私が何か話せることは…」
「何か注意すべき点でもあるのか。」
「……その、特にないんだけれど…」
「なら、話さなくても問題ないだろう。報告なら後でだ」
突如雨が降りだし、強風が吹き荒れる。
飛行タイプのパンテオンを撃つ。
(………コイツは一体…。)
パンテオンは青き兵。腕を銃口に変化させて、エネルギーの弾を撃って来る。
警棒を使うものも中にはおり、バリエーションは多彩と見る。
青いヘルメット、青のアーマー、水色のスーツ、赤い目。
…見覚えのあるその格好の、このパンテオンとは一体?
考えていても仕方がない。
強風はどうやら人工的に起こされていたもののよう。強風を発生させる装置を破壊、
瓦礫の山を飛び降りる。
(…邪魔な敵だな)
地面からせり上がる砲台を斬り、先へと進む。
「……ゼロ、処刑場はこの先よ。
…高エネルギー反応がする…… 気をつけて!」
「高エネルギー反応…具体的に頼む」
「ゴーレムとは比べ物にならない、恐らくは強敵よ… 勝てないようなら帰ってきて、ゼロ」
「了解した」
扉を潜るとそこは丸い部屋。
壁にはオイルがびっしりと塗りこまれており… レプリロイドの捥げた手足が確認できる。
…手足だけではない。 腹や胸… 内臓パーツも確認できる。 そして…これは…。
「何だ?お前」
ゼロに話しかけてきたのは翼を持った、大きなレプリロイド。
「…お前、何しに来たんだ」
その問いに、セイバーを軽く振って答える。
…レプリロイドがニヤつく。
「…ほう? …スクラップどもの仲間、って訳か」
腕を広げる。
「この俺を、『エックス様』をお守りする『ネオアルカディア四天王』の一人…
『ハルピュイア様』の部下、『アステファルコン』と知ってのことだろうな」
「覚えておこう。」
「お前……一緒に処刑してやるよ!」
アステファルコンが駆け出した。
「気をつけてゼロ、コイツは『ミュートスレプリロイド』よ!!」
「…後で説明してもらう」
「ひぃいいいい!助けてくれぇぇぇぇ!!」
下階から声が聞こえる。
-
戦闘体勢へ移行。
(床が下がり始めたか…)
ゼロはその突進を避け、後ろからセイバーを一撃。
「なっ…!?」
その威力に驚きながら、アステファルコンは壁へ張り付く。
「食らいな!」
雷の矢を3つ、同時に放ってくる。
ゼロにその攻撃は通用せず。
軽く避けてバスターを見舞う。
「ちょこまかと…!」
腕を広げ、強力磁力でゼロを吸い寄せにかかる。
だが距離をとるゼロを吸い寄せきれず。
そのまま腕を閉じ、腕から雷の矢を撃ち始める。
下…飛び越える。
上…撃つ。
下……
ここでゼロはダッシュし…バスターショットから強力な一撃を見舞った。
「何…!?」
飛び出すは強烈で鋭いエネルギーの弾…チャージショット。
セイバーを手に入れた際、入手した力である。
「…チィッ…!!」
「だが…もう時間がないんじゃねえか?」
アステファルコンはダッシュ。
「この下に何があるか、教えてやろうか!」
それを飛び越えバスターショット。
「テメェの仲間がこの下にいる…そして」
アステファルコンは壁へと張り付き…
「俺らがいるこの床は、下のフロアの針天井になっていてな……」
翼を大きく広げ、床へ持てる電撃を全て流し込む!
「ヤツらはこれから串刺しになり押しつぶされるのさァァァァァァ!!!」
「酷いっ……!!」
シエルが言う。
残虐なやり方でこれまでそれほど多くのレプリロイドが。
ゼロは大きく跳びそれを回避。
「…んなっ…!?」
素早くダッシュ………
そしてセイバーでその体を股から、腹、胸、頭へかけ………一刀両断した。
爆発。
「テメェ………一体………………!」
床をトゲごと粉々に切り刻み、落下。
その下には…レジスタンスの泣き顔があった。
「…ああ… あああー…!! 助かっ…た…!?」
「…大丈夫か」
「は、はい! た…助かるだなんて思ってもいませんでした…!」
ミッション完了である。
「有難う、ゼロ! …これでやっと、誰もこの処刑機にかからないで済むわ!」
「…どういう状況に置かれていたんだお前達は…。」
レジスタンスが置かれている極限状況を理解。
ゼロは振り返らず、レジスタンスベースへと戻ろうとした、その時。
「……………何だ、アレ…は………。」
スクラップの一部が、動き始める。
「……どうした、アステファルコン…」
少年の声がスクラップから発せられる。
「ハル… ピュイア様…… レジスタンスに…赤い…」
「…」
チャージショットで破壊。 今度こそアステファルコンは消滅した。
「…敵に気付かれた…。 すまない」
「…ううん。いいの…」
「気付かれた分はこれから俺が働こう。ひとまずは…帰る」
「…ゼロ、アステファルコンと一緒に今何かを破壊しちゃったような」
-
「…ネオアルカディアには、実力のある神話の神々を模した、
『ミュートスレプリロイド』という、強力なレプリロイド達が何人か存在するの。」
「アステファルコンがその一人だったというわけだな」
ゼロはアルエットの頭に手を置き話をする。
「そして…それらをまとめているのが、生存圏の拡大とイレギュラーの排除に
それぞれ2人が当たっているとされる『ネオアルカディア四天王』」
「…らしいの」
「らしい?」
シエルは俯く。
「ごめん。私はあまり知らないのよ…多分、私がレジスタンスを組織する前後辺りに生まれたのかもしれない。」
「そうか」
「後、あなたが倒したアステファルコンのことだけど…」
「…ああ」
「どうやら、私達にとって有益になるはずのチップを持っていたみたい」
チップの欠片を見せる。
「……すまない。」
「ううん。仕方ないわ とりあえずこのチップの欠片は、アルエットにセルヴォの所に持っていってもらうことにするわね」
そして次なるミッション。
「どうやら、私達が使っていたサイバーエルフがネオアルカディアに盗まれてしまったようなの」
「サイバーエルフについても説明が欲しい所だが…」
「100年前にはなかったのかしら… まぁとりあえず、実際見てもらった方が早いと思う。」
地下鉄跡。
「ネオアルカディアは、物資と共に列車でサイバーエルフを運ぶつもりよ
プラットフォームに行って乗り込んで!」
梯子を落下、壊れた地下通路を進んでいく。
「ゼロ。君はゼットセイバーを手に入れたとき、何か力がわくのを感じなかったかい」
「……確かに。」
「君は確かに尋常ではない強さを持っている。 だが…君はどうやら、
まだ戦争時代の能力を取り戻していないようだ」
「…戦いの中で、それが目覚めていっている…ということか」
「その通り。…だからゼロ。これからバスターショットやセイバーをうまく使って、戦っていって欲しい
得るものが何かあるかもしれないぞ」
前ミッション前のセルヴォとの会話だ。
(俺の力か…)
走行、突進してくるメカニロイドを横へ払う。
そこに袈裟切り。
(…なるほど)
隙のない二段斬りを彼は取り戻した。
メカニロイドを倒し続け、いよいよプラットフォームへ。
「これか…。」
飛び乗った瞬間…列車が突然動き始める。
「……遅かったか」
列車はネオアルカディアへと向かい走り始めた。
「ゼロ…ごめんなさい、間に合わなかったわ!
エスケープユニットで転送は出来るから、列車を破壊してエルフを助け出して!」
「…解った」
列車の機関室は先頭車両。列車の屋根へ登る。
感づいたパンテオン達がわらわらと沸いてくる。
飛び越えて二段斬り…破壊。ミサイル発射メカニロイドもミサイルを撃ち落とし、破壊。
バスターショットとゼットセイバー、二つの武器を使って彼は進んでいく。
「これが先頭車両だな?」
「ええ。エンジンを破壊して… でも、何かおかしい…」
扉を潜ると…そこにはパンテオンの顔が据え付けられた巨大な動力システムが。
「…なんだ、コレは」
「………サイバーエルフが捕まってるのもそこよ!気をつけて!」
敵はパンテオンの頭脳を移植した生きたレプリロイド動力、『パンテオン・コア』だ。
まずは炎を吹くパンテオンコア。火炎放射ならば…
壁に飛び乗り、チャージショット。
火炎放射が収まった瞬間を見計らいセイバーで一発。
流石に動かない敵なら攻撃は容易。ありとあらゆるタイミングを見計らい攻撃を行う。
炎をかわし一発、炎が伸びた所に一発。炎が収まった瞬間に二段斬り。
次々に敵の動力を削っていく。
(……随分な耐久力のようだな)
半分を削ったところで、敵が炎を吹き、じりじりと迫ってきた。
床のタイルが伸び、トゲで出来た天井へと押しつぶそうとし始める。
(…なるほど)
これは時間との戦いとなった。
パンテオンコアの体力を奪い続けるが、敵は炎を吹き、こちらへ近づいてくる。
押しつぶされる前に対決を終わらせる。
更に近づく。炎は回避、更に削り続け…そして。
「フンッ!」
パンテオンの顔面部が破壊され…エンジンが爆発。列車は停止した。
「………サイバーエルフ…これか?」
光の球を回収、レジスタンスベースへと戻っていく。 …シエルには聞かねばならぬことがまだある。
-
今更ながらMoira聴いてみた。
じまんぐと若本が相変わらずじまんぐと若本だった。
マトリョーシカに詰め込んだのは不条理と書いてじまんぐ汁ですね分かります
アルバム全体としては敢えて言うならクロセカの系譜なのかねえ。
伏せたカードはいつもよりかなり少ないような。それとも隠したカードがあるのかね?
しかしまあ今回はいつにも増して歌詞カードが読み辛い
台詞が書いてないのは仕方ないんだろうけど、今回台詞多いしなあ
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―1BBY.(大提督創設 12人)―
ディミトリアス=ザーリン(新)
グラント(新)
ニアル=デクラン(新)
オスヴァルド=テシック(新)
ルファーン=ティゲリナス(新)
マーティオ=バッチ(新)
アフシーン=マカーティ(新)
イシン=イル=レイズ(新)
ダネッタ=ピッタ(新)
ジョセフ=グランガー(新)
ペッカッティ=シン(新)
ミルティン=テイケル(新)
―3ABY.(ザーリン大提督の乱 12人)―
スローン(新)
グラント
ニアル=デクラン
オスヴァルド=テシック
ルファーン=ティゲリナス
マーティオ=バッチ
アフシーン=マカーティ
イシン=イル=レイズ
ダネッタ=ピッタ
ジョセフ=グランガー
ペッカッティ=シン
ミルティン=テイケル
―4ABY.(エンドアの戦い 9人)―
スローン
ルファーン=ティゲリナス
マーティオ=バッチ
アフシーン=マカーティ
ダネッタ=ピッタ
ジョセフ=グランガー
ミルティン=テイケル
ファーマス=ピエット(新)
十条 翼(新)
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―5ABY.(ヒッサ大総督の乱 4人)―
スローン
マーティオ=バッチ
ファーマス=ピエット
十条 翼
―6ABY.(ケイン大総督の帰還 10人)―
スローン
グラント(復帰)
ファーマス=ピエット
ギラッド=ペレオン(新)
ロース=ニーダ(新)
カーギー(新)
テリナルド=スクリード(新)
デラク=クレンネル(新)
テラドク(新)
十条 翼
―11ABY.(ファーマス皇帝の第2帝政開始 16人)―
スローン
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン(新)
タイタス=クレヴ(新)
デラク=クレンネル
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク(新)
ミル=ギエル(新)
テラドク
オキンス(新)
キラヌー(新)
カーギー(新)
ザミュエル=レノックス(新)
十条 翼
―14ABY.(クレンネル大提督の乱 17人)―
スローン
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン
タイタス=クレヴ
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク
ミル=ギエル
テラドク
オキンス
キラヌー
カーギー
ザミュエル=レノックス
ナターシ=ダーラ(新)
サークリィ(新)
十条 翼
―22ABY.(テラドク大提督の乱 15人)―
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン
タイタス=クレヴ
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク
ミル=ギエル
オキンス
キラヌー
カーギー
ザミュエル=レノックス
ナターシ=ダーラ
サークリィ
十条 翼
大提督在位期間 Best3
1.グラント (2年間の離脱を除く21年間に渡って大提督)
2.スローン (22ABY.に大元帥になるまでの19年間に渡って大提督)
3.十条 翼 (ヴェイダーによって任命された唯一の大提督で、18年間に渡って大提督)
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