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タブンネ刑務所14

1名無しさん:2017/05/06(土) 00:36:57 ID:v4JFFnrY0
ここはタブンネさんをいじめたり殺したりするスレです
ルールを守って楽しくタブンネをいじめましょう。

2名無しさん:2017/05/08(月) 22:30:29 ID:dbZJ0Jh60
いちおつ

3名無しさん:2017/05/11(木) 01:28:37 ID:ys3cYoQE0
乙ンネ〜

4ショーケースの裏側で:2017/05/20(土) 04:58:10 ID:y/7xbpL.0
「フィッ、フ、フィィィ〜ン!」
「うわっ、汚っ!こっちくんな!」

チビママンネは気が利く社員にずりずりと這い寄り、ベビを連れてかないでと懇願するが
気が利く社員はその汚さにたじろいで思わず身を引いてしまう
そしてさっさと奇麗どころのベビをカゴに回収し、逃げるように準備室から出て行く
二度までも子を奪われた母の悲痛な叫びは、猿轡とドアと雑踏にかき消されて誰にも聞こえる事はなかった

2回目の授乳体験ショーはベビたちがややご機嫌斜めだったものの
大したトラブルもなく順調に終わった

小ベビンネはカゴに入れられてからずっと放置されていた
世話係の筈の女子社員は接客やトラブルの対応に追われて会場中を右から左へと忙しく歩き回り
気にしてはいたのだが小ベビンネに目を向ける余裕がなかったのだ

そして、イベント終了の時間も間際の午後6時手前の事である

「ねぇねぇ、何か持ってるよ?怖がりなタブンネだって」「へぇ〜、でも見た感じそうでも無くない?」
「ミッミィ〜♪」

客がまばらになったにも関わらず、今日一日の疲れからボーッとしてた女子社員
その耳へ不意に客の会話が流れ込んできた
話の内容に何か違和感を感じて声の方に目を移してみると、
女性二人組の客とその足元で餌をねだる1匹の子タブンネが
その子タブンネは両手で薄いプラスチックの板のようなもの…
デパートで使っているポップを両手で大事そうに持っている
会話の内容からして、小ベビンネの籠に付いていたポップだというのは容易に分かった
恐らくイタズラで取ってきてしまったのだろうということも

「ミッミィッ!ミッミッミッ!ミィ〜ン!」
「それは大事なものだから返してください〜
 …あっ、すいません、イタズラで取っちゃったみたいなんです」
「あらら、大変ですね〜」

ポップを取り返そうと女子社員が引っ張ると子タブンネも引っ張り返して抵抗した
何が琴線に触れたのかは分らないがけっこう気に入っていたのである
もちろん子タブンネの握力で引っ張り合いに勝てる筈もなく、ポップはあっさりと手から離れてしまう

「フ、フ、フミィィ〜ン!」
「よしよし、おやつあげるからご機嫌直してね」
「あっ、お心遣いありがとうございます」

せっかく気に入ってた玩具を取り上げられ、子タブンネは泣きだしてしまう
それを憐れみ、二人組のうちの一人が子タブンネに頭を撫でながら餌をあげて慰めた
女子社員はお礼もそこそこにポップを戻すために小ベビンネのカゴへと早足で戻ったのだが
そこに待っていたのは目を疑う光景だった

「え、うそ、これって…」

小ベビンネがいるはずの買い物かごの中にに見えたのは、山盛りのゴミ
餌の袋や餌の破片、買い物袋や空のペットボトルまで大量に捨てられていた
上からも横からも外から小ベビンネの姿は見えない、ゴミの底に埋まっているのだ

「うわわわわわ、ごめんなさい、ごめんなさい・・・!」

女子社員はゴミをかき分けて小ベビンネを探した
お客様が見ているというのも憚らず涙を流し、無我夢中で謝りながら
ゴミの底、空き袋の中に残ってたフーズの粉が溜まった場所で小ベビンネは見つかった
全身の毛皮は使用後のほこり取りの如く粉まみれ、顔は涙や鼻水に粉が付着して見るも無残なグチョグチョに
ただ、悲惨な姿になってはいるが幸いにも怪我はしていない

なぜこんな事になったのかというと
買い物かごケージのあまりにも質素すぎる作りに、
小ベビが小さい上に怖がって隅っこであまり動かなかったので客からよく見えなかったのと
注意書きのポップを子タブンネに取られてしまったという要因が運悪く重なり
そこに誰かが気まぐれで餌の欠片を放り込んだのが切っ掛けで
客たちは小ベビンネのケージをゴミ入れと勘違いしてしまったのである

「チィ… チィ…」
「かわいそー」「なんでごみ箱から?」「だれか捨てたの?」

野次馬と化した客たちが見守る中、ゴミの中から抱きあげられた小ベビンネ
瞼に粉がびっしりと付着し、開けられなくなった両目からタラタラと涙を流し続ける
その涙は粉が目に沁みたからだけではない
悲惨な姿の小ベビンネを抱いて指で丁寧に粉を取り除きながら、
女子社員は様子を見に行けなかったことを深く後悔した

5名無しさん:2017/05/20(土) 14:11:40 ID:5q0aHaws0
子ベビざまああああああああああ

6名無しさん:2017/05/20(土) 16:28:43 ID:XMfBKQKQ0
ママに助けを求める小ベビの声がどんどん小さくなってゆく…
って前回の引きの文の裏側でこんな有様になっていたなんて!!
むしろこれからが本番ですね

7名無しさん:2017/05/20(土) 21:04:30 ID:wo9i9/NI0
ショーケースの続き、待ってました!
ありがとうございます。

ポップを外した子タブンネGJ!

8名無しさん:2017/05/21(日) 22:51:10 ID:gvcgfbFM0
傷薬なめて苦みに悶えたり、アルコールで股間拭かれたり、
偶々踏まれたり、ゴミに埋もれたり等と意図せずに嫌な目・酷い目に合う
子タブ・ベビ達かわいい!
そして嫌な目・酷い目のレベルが地味なのがイイ!
買われていった子達にもそんなことが起きていますように

9名無しさん:2017/05/24(水) 21:35:55 ID:tgw8GItM0
今は痛い目が地味だけど、だんだんと苛烈になってほしい!

10ショーケースの裏側で:2017/05/25(木) 22:46:06 ID:c3D.s5k20
『店内のお客様にお伝えします。
 只今を持ちまして本日開催のイベント「タブンネと遊ぼうMiMiパラダイス」終了とさせて頂きます
 誠に恐縮ですが、会場内のお客様は、速やかに会場内からご退場くださいますようお願い申し上げます」

小ベビンネのに着いた粉を取り終わらぬうちにイベント終了の時刻となった
未だ半泣きで粉を取り続ける女子社員の所へに気が利く社員が駆けつける

「チカちゃん、終わりの時間だ。その子は一旦置いといてお客様を出してあげないと」
「は、はい!」

小ベビンネをどこかに置いて仕事に移らねばならなくなった女子社員だが
買い物籠はゴミで一杯のままで片付けなければ戻せない
仕方がないのでゴミの上に持ってたハンカチを敷いてその上に小ベビンネを置いて客の誘導へ向かう

「チッチ… チッチ…」

女子社員に抱かれていた時にはほとんど動かなかった小ベビンネだが
ハンカチの上に置かれてから少しすると弱々しくもぞもぞと動き出した
音がゴミに遮られる事が無くなってチビママンネの声がよく聞こえるようになったからだ
粉に塞がれた目もまだ見えるようにはなっておらず、(小ベビにとっては)過酷な環境で心も体も弱りきっている
それでも母に会いたい一心で小虫にも等しい力を振り絞り、声がする方向へとゆっくりと這っていく
そしてそのままハンカチから外れ、誰にも知られる事なくゴミの中へと落下してしまった

「え?あれ?いない?!」

誘導を終えて戻ってきた女子社員は小ベビがいない事に驚き焦ったが
ゴミの中に手を突っ込んで手探りで探すとすぐに見つかった
再び助け上げられた哀れな小べビは女子社員の腕の中でチィーチィーとか細く鳴き続ける
聞いているだけで胸が締め付けられるような切ない鳴き声で
それが母親を呼ぶ鳴き方だということを女子社員は心に沁みて分かった
まぶたにこびりついた粉に塞がれているが、きっと涙も流しているのだろう
いてもたっても居られず、小ベビンネを抱きながらざんす男の所へ駆ける

「お願いします… 早くお母さんの所へ帰してあげないと、この子は…」
「まぁ〜、そんな泣かなくてもいいざんすよ。…ふむ、確かにけっこう弱ってきてるざんすねぇ。
 じゃあチカちゃんはこのベビィちゃんをマーマさんに返してあげて、
 それからチビちゃんたちの回収に合流するざんすよ」

女子社員の目に涙を浮かべながらの懇願、それはあまりにもあっさりと聞き入れられた
そのやり取りを横から聞いていた気が利く社員が準備室に戻ろうとする女子社員を呼び止めた

「ちょっと手間だけど、母タブンネの方もかなり汚れちゃってたから一緒に洗ってあげて
 子タブンネの回収作業は僕たちだけで進めておくから」
「え? お母さんタブンネもですか?」

11ショーケースの裏側で:2017/05/25(木) 22:47:35 ID:c3D.s5k20
女子社員はなぜチビママンネも洗ってあげなければいけないほど汚れてるのだろうかと疑問に思ったが
これといって納得がいく答えが出ないまま準備室ののドアを開ける
その時目に飛び込んできたのは、「かなり汚れちゃってた」という軽い言葉からは想像できるはずもない惨状だった

「なに… これ…」

目の前にある汚れきった使用済みのモップの塊のようなもの
それがチビママンネだと女子社員は最初見たとき理解できなかった
その塊は塞がれた口の端からフゥ、フゥ、と苦しそうに息をしながら
泣くベビンネのウンチがついた尻に自分の頬を擦りつけていた
よく見ると両手足は結束バンドで縛られ、そこから血が滲み出ている

何でこんな事になっているのか、誰が縛ったのか、いろいろな疑問が女子社員の頭の中を回ったが
「早く助けてあげないと」という思いが先立ち、小べビンネを近くにあった座布団に置いてチビママンネの側へ駆け寄る
ポケットからハサミを取り出して手足の拘束を切り、いろいろな液が染み込んで最悪に汚いタオルの猿轡も外した
女子社員が助けてあげた瞬間、チビママンネの曇りかけていた瞳からぶわっと涙が溢れた

「ンミーッ!ンミーッ!ンミィィーッ」
「痛い、痛い、痛い!やめてーっ!」

拘束から解放された瞬間、チビママンネは女子社員を両手でバシバシと叩きだした
「赤ちゃんが連れ去られる時近くにいたはずなのに、何で助けてくれなかったの?」
ただその思いからくる悲しみと怒りからの攻撃であった
だが、涙を流しながらのそれは怨敵に対する怒りの反撃というよりかは
小さな子供が駄々をこねて母親を叩いてしまっているという様相に近い

「痛いよ、やめて… やめてよぉ…」

だが、弱い方とはいえ成体のポケモンに本気で叩かれればかなり痛い
叩かれた箇所は赤くなり、手についていた血や汚物は制服や髪を容赦なく汚していく
女子社員は野放図に振り回される腕がお腹に当たってうずくまってしまい
動けぬまま両手で顔を守りながら頑張って耐えるが、絶え間なく続く痛みに涙を流してしまう

「ミィ!ミ?」

誰かがこちらに向かって走ってくる音にチビママンネが気づいた瞬間
その眼前にあるのは黒い革靴のつま先だった
それは何の迷いも遠慮もなく顔面の中心に真っ直ぐに叩き込まれ、鼻先にめり込んでいく

「ミッビフィィ!!!?」
「いたい、いた …え?」 

あまりにも突然のキックにチビママンネは為す術もなく吹っ飛び、転がって壁に激突した
この黒い革靴の主は気が利く社員
子タブンネを入れるケージを取りに来たらこの場面に出くわしたというわけだ

「フィッ!ビィッ!ギィッ!ミッ!ミッ!ミフィーー!!!」
「ヂィィィィィィ!!ヂィィィィィィ!!」

チビママンネが身を捩らせて悶絶し、傍に居たベビンネが号泣していても攻撃を緩める事はなく
腹に、胸に、顔に、手足に、ガンガンと踏みつけるような蹴りを入れていく

12ショーケースの裏側で:2017/05/25(木) 22:48:37 ID:c3D.s5k20
「もうやめてください!!!」

突然女子社員が両者の間に割って入り、体を覆うようにチビママンネに抱きついて蹴りから庇う
チビママンネは全身が糞尿で汚れきっているが、そんな事を気にはしていられなかった
いきなりの事に気が利く社員は驚き、ピタリと蹴りを止める

「この子はずっと縛られてて、赤ちゃんを取られて・・・ 
 痛くて辛くて、悲しんでただけなんです、なにも悪くないんです、
 だから、だから…」
「わかったよ… ごめん、チカさん」

怖くて、痛くて、可哀そうで、混乱して訳がわからなくなってる頭から
チビママンネを庇う言葉を必死に絞り出す女子社員
その言葉も詰まって出てこなくなり、ウッウッと嗚咽して泣き出してしまう
助けてくれた感謝よりも、目の前でポケモンに躊躇いなく暴力を振るう気が利く社員への恐ろしさが勝っていた
ここまで泣かれたとあっては、気が利く社員も足をひっこめるしかない

「ミィ… ミ」

抱きつかれたチビママンネは触れた触覚から女子社員の心を感じ取っていた
慈愛と自分たちに対する罪悪感に満ちた、優しくて暖かいけど悲しい心
なぜ、どうして、自分はこんなに優しい人を泣くまで叩いてしまったのか…
蹴られた痛み以上に、チビママンネの心は罪悪感で重く苦しくなった

「そうだ、赤ちゃんを返してあげないと…」

女子社員はゆっくり立ち上がり、座布団に置いた小ベビンネへとふらふらと歩いていく
その姿は到る所に茶色い汚れが移り、顔に叩かれた痕が残る見るに堪えぬ有様だ
近付くと小ベビンネはチィーチィーと母を呼ぶ声で鳴き始めた
先ほどよりも心なしか鳴き声に力がある。
眼は見えていなくても、母親が近くにいるのが分かるのだ

「ミッ!ミィミ… ミィミ」
「ヂィィィィィィ!!ヂィィィィィィ!!」
「あれ、この赤ちゃんは放っとくのかい?」

べビのけたたましい鳴き声の中でも小べビンネの微かな鳴き声が聞き取れたのだろう
チビママンネはおぼつかない足取りで小ベビを抱く女子社員へとよろよろと歩み寄ってきた
気が利く社員は泣いたまま放置されるベビが気になって一言入れたが
その突っ込みはチビママンネの耳をスルッと通り抜けて行く

「おちびちゃん、ほら、お母さんだよ…」
「チッ!チィィ… ヂィィ…」
「ミィ、ミィ…」

チビママンネと5時間ぶりに再会した小ベビンネ、その胸の中に顔を埋めて泣いた
数時間ぶりに触れた母の毛皮は糞が混じった小便でぐっしょり濡れ、悪臭を放っている
だがそんな事は今の小ベビンネには些細なことだ
間近に聞こえる鼓動の音が与えてくれる「母と一緒にいる」という安らぎ
ただそれだけが今の小ベビンネが求める全てなのだ
チビママンネは優しく鳴いて慰めながら、その小さな頭を愛おしそうにいつまでも優しく撫で続ける

「さあ、次はお風呂の時間ですよ。そこの泣いてる赤ちゃんも一緒に入りましょう」
「僕はケージを持って戻るよ、それじゃまた後で」

折りたたんだケージを何段にも載せた台車を押しながら気が利く社員は出て行き
その後女子社員は特大のタライにお湯を張り、タブンネたちを洗い始めた
女子社員がタライの外からチビママンネを洗ってやり、
タライの中でチビママンネがベビンネ達を洗うという構図だ
もちろんベビがおぼれないよう女子社員が気をつける必要があるが
二匹のべビは呑気なもので、小さくない方は泡まみれのままチビママンネにじゃれついて
小ベビンネは眼に付いた粉が洗い流されて母親の顔が見えるようになり、太ももの上でチィチィと喜んでいる

「ミッミッミ、ミィ」
「ふふ、私のはいいですよ」

女子社員の服の汚れが付いた個所を泡が付いた手でごしごし擦るチビママンネ
自分たちが奇麗になったのに女子社員だけ汚いままじゃ申し訳ないと思ったのだ

その後、タライのお湯を2度も取り換える長風呂とドライヤーの温風によって
チビママンネとベビたちは奇麗な姿を取り戻した
弱っていた小ベビンネもチビママンネに抱きつきながら「チィチ、チィチ♪」と笑っていた
女子社員は汚れた上着を脱いだ後、ベビたちがお腹を空かしてるのを察してミルクの準備を始めた
コポコポと哺乳瓶を湯煎している機械の周りに、部屋のベビ達が集まりだした
長時間ミルクが飲めずにお腹を空かしていたのだ

「チィィ」「チッチ!チッチ!」
「こらこら、熱いから触っちゃダメです」

今の準備室は痛みも苦しみも、汚さも悲しみもない平和そのものの光景だ、
つい先ほどまでべビンネ達が泣き叫び、糞まみれのタブンネがのたうち回っていたのが嘘だったかのように
小さな親子の苦難の時は、今ここに一旦の終わりを迎えたのだ

13名無しさん:2017/05/25(木) 23:11:37 ID:UZyy8o9o0
いつの間にか、チカちゃんが主役みたいになってるw
彼女をこれ以上苦しめないために、チビママンネも小タブも早く始末すべき

14名無しさん:2017/05/26(金) 00:55:20 ID:rkilafSE0
いやーチビママンネと子ベビはいつかもっと痛い目みてほしいね

15名無しさん:2017/05/26(金) 03:00:12 ID:XFRlpJFE0
チカちゃんは嫌いじゃないけど、虐タイムの妨害は勘弁してw

16名無しさん:2017/05/26(金) 10:18:48 ID:bzUDYVr.0
可哀そうだからチビママと小ベビは逃がしてあげよう。
肉食系がたくさん棲んでいる森へ。

17名無しさん:2017/05/26(金) 21:53:40 ID:foapnmNg0
気が利く社員さんはこれにめげず、これからもガンガンいってほしい!

18名無しさん:2017/05/26(金) 22:12:08 ID:3dqfOJbc0
>>15
ストレスが爆発して、愛情が殺意に一変する展開を期待しましょう

19名無しさん:2017/05/29(月) 03:51:15 ID:WpMjTE.s0
あーママンネと子ベビセットでいじめ抜きたい

20名無しさん:2017/05/29(月) 23:45:42 ID:R6Qz4.Do0
チカさんもタブンネ親子も優しいなぁ。

21ショーケースの裏側で:2017/05/30(火) 03:13:55 ID:e/cxg9oA0
全てのベビにミルクを与え終わったその後、準備室に受付をやっていた女性社員が入ってきた

「チカちゃ〜ん、着替え持ってきたよ〜。ミナツ君たちがが早くタブンネの回収に参加してほしいってさ」
「は、はい!着替えたらすぐ行くと伝えてください」

数分で着替えて会場内に戻ると、男性社員三人は子タブンネ達を回収するのに四苦八苦していた

「ヒィ〜ッ!チビちゃんたち逃げないでざんすー!」

一匹ずつ捕まえては出入り口を上にして置いた大きなケージに上から入れていくのだが
子タブンネが四方八方に逃げ回ってなかなか簡単ではない
逃げる子タブンネたちを追いかけ回す様がまるで鬼ごっこのように見え
それを面白がった買い物客達が柵の外を取り囲んで見物していた

「オレの方が泣きたくなってきたよ… あーこら暴れるな!」
「ミィッ、ミィッ、ミィ〜ン! ヂビィィィィィィ!!」

体格がいい社員が特に苦戦していて
その大きな体と低い声を子タブンネ達に怖がられて近づくのもままならないのだ
幸い子タブンネの走る速度は遅いので追いかければ捕まえることは容易だが
捕まえたタブンネはまるで肉食ポケモンに捕まったかの如く泣き叫んで暴れ
それを見た買い物客の子供たちからタブンネを苛めるなとヤジが飛ぶのだった

「ビャァアアア!ビィ!」
「よし、これでこの檻は満員か」

気が利く社員は手際がよく、次から次へと子タブンネを捕まえては素早く檻の中へ入れていく
逃げる方向を読んで先回りしたり、大きな音で驚かして動きを止めるなどの小技も駆使し
その効率はざんす男と体格のいい社員の2倍近い
しかし、その速さと引き換えに子タブンネの扱いが少々乱暴で、
急所である耳を掴んだり檻の中に投げ落とすように放り込んだりと作業の度に悲鳴は絶えない
そのため彼もまたポケモン想いの子供たちのヤジを受けるのだった

「遅れてすいません!すぐそっちに入ります!」
「おほ、来てくれたざんすね、1檻に10匹ずつ入れてって欲しいざんすよ
 後で数えるから、数を間違わずにきっちり10匹いれていくざんす」

指示を受けた後、早速子タブンネを捕まえようとした女子社員だが
男性社員たちに追いかけまわされていた子タブンネたちはすっかり怯えてしまっていて
女子社員すら怖がって逃げ出すようになっていた
子タブンネを気遣ってやさしく捕まえようとしていた女子社員だったが
そんな力が入らない挙動では一匹も捕まえられない

「怖くないですよー。ミィーミィーミィー…」
「ミ?」「ミィー!」「ミッミッミ!」「ミッピ!」

そこで女子社員は戦法を変え、自分はしゃがんだまま動かずに
チビママンネの鳴き真似をして子タブの方から来てくれるのを待つ作戦に出た
女子社員の綺麗な声質も味方してその目論見は上手くいき
怖がっていた子タブンネたちもよちよちと女子社員の下へ集まってきた
仲間たちが怖い男に捕まっていく恐怖の中、誰かに助けてもらいたかったのである

「ミッミ、ミィ〜♪」
「はいはい、この中でゆっくり休んでてくださいです」

集まってきた子タブンネ一匹ずつ抱き上げるように捕まえて優しく檻の中へ入れていく女子社員
その様子はまるで母親に抱っこされているようで、羨ましく見えたのか
自分も抱っこしてとピョンピョンと飛び跳ねながら催促する子タブも何匹かいた
そのタブンネの保育園のような光景に野次馬たちの口角も緩む

22ショーケースの裏側で:2017/05/30(火) 03:15:56 ID:e/cxg9oA0
その後子タブンネの回収は滞りなく終了したのだが、その後にひとつ問題が起きた
子タブンネの数が売れた頭数を差し引いても1匹足りないのだ
檻のどれかに一匹多く入れてはいないか?
社員たちは動き回るピンクとクリーム色の極彩色に目をチカチカさせながら数えなおしたが
檻の中の子タブンネの数に間違いは無かった

「もしかしてして万引き?」
「それならまだ明らめがつくざんしょ
 ほかの売り場に逃げ出して忘れたころに腐乱死体なんて事があったら大変ざんす!」
「…! とにかく探しましょう!」

慌てて探し始めた社員たちだったが、消えた子タブンネは意外なほどあっさりと見つかった
イベント会場の片隅、授乳体験ショーで使う様々機材が置かれている場所
そこに置いてある重ねられた座布団の隙間で発見された
かなり怖がりな子タブらしく、自分が見つかった事を認識した途端ガタガタと震えだした

「ふぇー、かなり怯えてるみたいざんすね。ここはチカちゃんに任せるざんす」
「はい、やってみます …ほーら、怖くないですよ〜 ミィーミィーミィー…」
「ピィィ!!」

女子社員はそっと手を差し伸べて、子タブンネの方から触れてくるの誘おうとしたが
この臆病な子タブンネはそれすら怖がり、悲鳴を上げて目を背けてしまう
さっきは有効だったチビママンネの鳴き真似もまるで効果が見受けられない

「うう、ぜんぜん近寄ってくれないです…」
「だったら力ずくで行きましょう。僕が座布団を剥がすから、ヤマジくんが捕まえて」
「おう、わかったぜ」

女子社員は止めなければと思ったがこの二人の動作は素早く
制止の声が喉から出る前にサッと座布団を持ち上げられ、
それから寸分の間もなく子タブンネは体格のいい社員に抱えあげられてしまう
その身長は50cm強。イベントで売られてる子タブンネの中でもかなり大きい方だ

「ミギュルビッピ!!ブヂィィィィ!!!」
「結構チカラ強ええぞ! なんだこいつ!?」

腕の中で恐慌し、激しく暴れる子タブンネ。その力は他の子タブンネとは一線を画していた
しかし体格のいい社員も力自慢、どんなに暴れても腕の中からは逃すことはない
口の端から泡を吹き、涙も鼻水も尿も垂れ流し、狂った声で絶叫し、シビルドンの如く激しく体をくねらせ…
3分近くもの狂ったような大暴れの後、臆病な子タブンネはやっと大人しくなった
うつろな目で舌をだらんと出しながら、ハァーハァーと過呼吸気味に苦しそうに大きく息をしている

「しかし… あの赤ん坊だけじゃなく大きい方にもこんなのが居るとはなぁ…
 ある程度の個体差は仕方がないとはいえ、限度というものがあるよ」
「それにしてもちょっと度を超えた臆病さざんす。タブンネの群れのいじめられっ子かなんかざんすかね?」

その異様な様に社員と野次馬たちは心の病気だの知的障碍者だの出まかせのような論を口々に語り合った
しかし、ここにいる人々の誰もがその正体に気づくことは出来ないだろう
この臆病物がその勇猛さからほかの子タブンネたちから尊敬され、大人タブンネたちがその将来を期待した
「勇者」と呼ばれていた子タブンネであることに

23名無しさん:2017/05/30(火) 09:47:48 ID:hQwL80gc0
元勇者ンネが紛れてたかwwww
売れるとは思えない・・・売れ残りペットポケモンの末路を知りたいですね

24名無しさん:2017/05/30(火) 21:54:27 ID:0h9LOua60
>ほかの売り場に逃げ出して忘れたころに腐乱死体なんて事があったら大変ざんす!

それはそれで見たかった気がするw

25ショーケースの裏側で:2017/05/31(水) 01:15:15 ID:WdETeYA20
だが元勇者の肩書など人間たちには関係なく
問題はこの怖がりぶりでは他の子タブンネに混ぜて売ることもできないということだ
このままでは客が餌をやることすらままならないだろう

「この際業者さんに返品できないか問い合わせてみては?」
「いやー、それが仕入れる時に返品、交換は無しという契約をしてしまったざんすよ
 急な話だったとはいえ面目ないざんす」
「そうだったんですか、…だったら後で電話して対処法を聞いてみます」

男性社員たちが扱いを決めあぐねている中、女子社員にはある妙案が思い付いた

「準備室のお母さんタブンネに預けてみてはどうでしょうか
 あの怖がりな小さいタブンネだってお母さんが近くにいると安らいでますし・・・」
「ふむ、いい考えざんすね。あのマーマさんは自分の子でないベビィちゃんにも優しかったざんすから」

こうしてチビママンネに預けられる事が決まり、体格がいい社員は勇者ンネを抱えたまま準備室へ
突然入ってきた大きな男にチビママンネは少し驚き、咄嗟に腕で覆って抱いていた小ベビンネを庇った

「おっ、子守り頑張ってるな。大変なところ悪いけどこいつも世話してくれよなー」
「ミー?」
「ミ… ミ… ミ…」

ベビを守る体制のままのチビママンネの眼前に、勇者ンネがそっと置かれた
体格のいい社員の手から離れてもなお、がたがたと脅え続ける勇者ンネ
床に突っ伏したまま「チィチィ、チィチィ」と震えた声で鳴き続ける
チビママンネは慰めてあげようと優しく声をかけたが、何の変化も反応も見られもない

「ミィー…?」
「うーん、こりゃ駄目かなぁ…」
「チィチ!、チィ!」

体格がいい社員とチビママンネが困って首をかしげていると
一匹の大きいベビンネが勇者ンネへの所へよちよちと歩いてきた
このべビは勇者ンネと同じ群れのベビンネで、顔見知りでもある
そして勇者ンネの頭の前に座り込み、嬉しそうに頭をペチペチと叩く
幼すぎる故に様子がおかしいのもわからず、純粋に再開を喜んでいるのだ

「チィチ、ミィ…?」
「チッチ!」

勇者ンネは顔を上げ、涙で霞む瞳に見知っているベビンネが映る 
その瞬間、目の前が真っ白になり、冷気とも電流とも思える何かが頭の中を駆け巡った

「ゴ゙ギュルボッググゥィェエ!!ギュルルルルイギギギギギ!!」
「チチィッ!?」

勇者ンネはまるで狂ったブレイクダンスのように滅茶苦茶に暴れまわった
ピンク色の怪物がベビンネを喰い殺す光景がフラッシュバックしパニックを起こしたのだ
血のあぶくを吹きながらのベビの断末魔も、肉が骨から剥がされ噛み千切られる音も
骨が見えるまで食いちぎられたベビの顔も、血まみれの口から吐き出される血生臭い吐息も
すべてがはっきりとした幻覚となり、目の前で起こってるかの様に感じられていた
狂乱ぶりに驚き、べビンネは高速でハイハイしてチビママンネの所へ逃げ
小ベビンネは訳も分からず泣き叫んだ

「な、なんだ?こいつ赤ん坊がキライなのか??」
「ミーッミー? ミー?!」

余りに突拍子もない事態にチビママンネも体格がいい社員も訳がわからないでいる
べビに危険が及ぶかもしれないので、チビママンネは小べビンネを離れた所に置いてから
どうにかして宥めようとしたが
(子タブンネにしては)力が強いので抱っこして抑えることができず
それどころか闇雲に振り回された手足が何度も顔面に当たってかなり痛い目を見た

「あっ、大丈夫か? うーむ、こいつでダメなら俺があやしも上手くいくはずがないし…
 …そうだ、あれを使おう」

体格がいい社員が目をつけたのは、部屋の片隅に逆さに置かれていた消化用と書かれた大きなバケツ
早速持ち上げてフッフと溜まっていた吹き飛ばし、暴れる勇者ンネの近くに寄って狙いを定める
そして疲れて動きが鈍った隙を突き、一気に上から被せてしまう

「ガキュイィィィブギッバ!!ギュビグィィーー!!」

暗闇のバケツの中、勇者ンネはさらに恐怖し一層激しく暴れ
ガンゴンとバケツに体を打ち付ける音が部屋中に響く
その激しく耳障りな音をベビンネ達は顔を引きつらせて怖がった
体格のいい社員が体重をかけバケツを押さえ続けると、やがてその音は止んだ

「ふぅ… やっと静かになったか。でも大人のタブンネに預けてもだめとなると
 一体どうすりゃいいんだろうな…」

体格がいい社員は芝生の点検と清掃など他の仕事もあったので
勇者ンネをバケツの中に残したまま準備室を出て行ってしまう
次にをどうするかはとりあえず後回しにする腹づもりなのだ

26ショーケースの裏側で:2017/05/31(水) 01:16:00 ID:WdETeYA20
「ミィミ…」

泣きやんだ後もベビ達は怖がってバケツに近づこうともしなかったが
チビママンネはどうしてもバケツの中の勇者ンネを放っておく気にはなれなかった
体格がいい社員には何も聞こえなかっただろうが
「チィチィ、チィチィ」と今にも消えそうなか細い声で必死に鳴き続けているのだから
この鳴き方は子供が母親を求める時の鳴き方。それも幼いベビンネの鳴き方である
こんな大きい子がこんな鳴き方をするのは異常だ
それにこの声の奥には、尋常じゃないほど深い恐怖の感情が聞き取れた

「ミィミ、ミィー」

チビママンネはどうすればいいか少し考えた後、優しく上から覆いかぶさるようにバケツを抱きしめた
本能による偶然か、それはタマゴを温める時の体勢と似ている

「チィチ…? チィ…?」

暗闇のバケツの中に、トクントクンとチビママンネの心臓の鼓動が響く
人間にはただの心音にしか聞こえないだろうが、勇者ンネはその音に不思議な安らぎを覚えていた
まるで産まれる前のタマゴの中、優しい母親に暖められている時のように
その命の音は、恐怖で壊れかけていた勇者ンネの心に少しずつ平穏を取り戻させていく

「ミィー♪ ミミミーミミミー♪ ミミミー♪」
「チ… ミ…?」

鼓動に続き、チビママンネの子守唄がバケツの中に優しく響く
その優しい歌声を聴いてるうちに、勇者ンネの瞳から涙が流れてくる
恐怖や悲しみからの涙ではない、だがとても熱くて切ない涙だ
やがて胸が熱くなり、息も苦しくなってくる
「この優しいタブンネに会いたい」
だんだんとその欲求が心の中で抑えられなくなっていく

「ミミィ!ミィ!ミィーッ!!」
「ミッミッ!」

その欲求は頂点に達し、勇者ンネは何が何でも出ようとバケツをガタガタと揺らす
心の中で愛が恐怖に打ち勝った瞬間である
チビママンネはその心を察し、バケツを倒そうと試みる
自分の背丈ほどもある巨大なバケツで苦戦はしたが何とか横倒しに出来て、中の勇者ンネが露になった
滅茶苦茶に暴れたせいで毛並みはボサボサ、顔は涙でくしゃくしゃで酷い見た目である

「ミ、ミ、ミ… ミビィィィィイイイ!!ヂィィィィイイイ!!ビュワァァァッエ、グミィィーー!!!」
「ミーミ、ミーミ」

勇者ンネはチビママンネの胸に飛び込みミンミンと泣いた
背丈の差が35cm程度しかなく、傍から見ると親子というよりかはまるで姉弟である
生まれた年月だって半年ほどしか離れていない
それでもチビママンネの心は子供を慰める母親のそれで
勇者ンネはママに甘えるベビと同じだった

その後、勇者ンネは30分近くも泣き続けた
捕食者への恐怖、救えなかったベビへの罪悪感、弱い自分への絶望…
心に積もった暗いもの全てが涙となって溢れ出し、チビママンネの胸へと吸い込まれていく
そんな勇者ンネをチビママンネは全てを許し、いつまでも優しく頭を撫で続けるのだった

それからまた時は流れ、仕事がひと段落ついた女子社員が様子を見にきた
体格がいい社員がチビママンネでも駄目でしょうがないからバケツに閉じ込めてきたというので
心配で居ても立ってもいられなかったのだ

「ミーミーミィ…」
「あれ、その子はさっきの子…」

部屋に入った女子社員が最初に見たものは、チビママンネの周りでベビンネに混ざって眠る勇者ンネの姿だった
その様子からは先ほどの狂気は全く感じられない、とても安らかな表情で寝息を立てている

「ふふ、大丈夫じゃないですか。ヤマジさんは大きいのにせっかちさんです」

安心して軽口を叩きながら、女子社員は再び仕事へと戻っていった

27名無しさん:2017/05/31(水) 09:50:26 ID:K.sWXbyQ0
これでもう一度勇者ンネから希望を取り上げる事ができますねw

28おやすみ前の20行タブンネちゃん虐待2:2017/05/31(水) 23:26:17 ID:aGSPm5iM0
5月31日はタブンネの日なんだってね
おめでとう、みんなの人気者タブンネちゃん!
「ミッミッ♪ミッミッ♪」
お祝いにケーキを作ってあげよう
え?なんで縛るんだって?
それはもちろん、ケーキの材料には新鮮な卵が必要だからね
タブンネちゃんの生みたて新鮮卵をいただくためさ
そーれ、パカッ 「ミィィィィィ!!」 うんうん、美味しそうだね
でもって、小麦粉と砂糖と水を適当にかきまぜておしまい!
焼くのがめんどくさいし、どうせ胃に入れば同じじゃん
ちょっとドロドロしてるけど、さあ、タブンネちゃんめしあがれ
「ンググゴェェェガァァァァ!」
涙が出るほど美味しいのかい、作った甲斐があったねえ
おっと、ケーキと言えば蝋燭がつきものだけど
買うのを忘れてたから、タブンネちゃんの触角で代用だ、はい着火
「ムグゥゥーーー!!」
のた打ち回ってまで喜んでくれてうれしいよ、
おや、顔色が変色して痙攣してきたぞ、さては窒息しちゃったかな?
まあタブンネの日に、卵と一緒にあの世に行けるなんて最高じゃないか
虐待アイドルタブンネちゃん万歳!

29名無しさん:2017/05/31(水) 23:26:58 ID:aGSPm5iM0
今日はタブンネの日らしいので、ささっと書いてみました。お目汚し失礼。

>>25>>26
消火用バケツの中で暴れる勇者ンネ可愛いけどウザいw どう始末されるか期待。

30名無しさん:2017/06/01(木) 08:43:45 ID:1ahk9OTY0
素敵な短編でした!
子供を食べさせるのは斬新で良いですねww

31名無しさん:2017/06/01(木) 23:34:15 ID:x/jUfwbk0
67スレ目の「タブンネ製品カタログ(おもちゃ編)」を読んで思い付いたネタです

タブンネスクイーズ1個324円(税込)
最新技術で生み出した、生きているタブンネのスクイーズだ。
握ったり引っ張ったりしてストレス解消しよう。
皮膚や内臓に特殊な止血剤を埋め込んであるので、ちぎっても出血せず部屋を汚さない。超強力な止瀉薬を投与しているので排泄することもなく安心だ。
※タブンネの体の一部がちぎれてしまっても数時間〜数日で再生します。ちぎれた部位に傷薬を塗りますと更に再生が早くなります。
※タブンネが排泄しないよう、強力な止瀉薬を投与して胃洗浄した上で出荷しておりますが、お客様がご購入後に食べ物をお与えになりました場合、腹部を強く握りますと宿便が飛び出す可能性がございます。予めご了承下さい。
※声帯除去手術を施した、音の出ないタブンネスクイーズもご用意しております。
─使った人の声─
・手は小さいので強く引っ張るともげやすいのですが、もげると泣き出して可愛いです。
・餌を与えないのは可哀想なので毎日3食与えていたら、数日後に酷い便秘で苦しみ始めました。その状態でお尻にパチンコ玉を入れてお腹を思い切り握ったら大量の便と共にパチンコ玉が勢い良く飛び出て面白かったです。

32名無しさん:2017/06/01(木) 23:54:31 ID:dXEasQys0
泣き声が聞きたいので、声帯除去してないやつを10匹ほどくださいw

33名無しさん:2017/06/02(金) 09:23:52 ID:oq3sj3/cC
餌をやらないと短期間で死ぬから使い捨て前提なんだね
だからあんなに安いのかw

34名無しさん:2017/06/02(金) 21:05:20 ID:ICI.dwk20
止血剤や止瀉薬使って、この値段…
儲けとか度外視してタブ虐を目指してますねw

35名無しさん:2017/06/02(金) 22:25:05 ID:d7w6wuXs0
便秘ンネかわいい

36ブヒヒンネ:2017/06/04(日) 23:54:59 ID:oQkB8pfI0
虐待愛好会はついにタブンネ愛護会員に対して
最終作戦を開始した

集められたのは大量のベビンネと子タブンネだ

イッシュのあちこちの群れを潰して連れてきたのだ
まずは子タブンネの足首と手首を切る

ミィギャァァァという鳴き声が4かける200回ほど
して作業が終わると切断面をシャンデラに弱火で
あぶって止血してもらうと
腎臓に毒をうち機能不全にして
手首足首切除ンネ通称費用ンネの完成だ
腎臓が働かないと書いた紙を入れ
緩衝材にベビンネを入れて
一箱に5匹詰めて愛好会に贈る
素晴らしい流れ作業だ

37ブヒヒンネ:2017/06/04(日) 23:58:49 ID:oQkB8pfI0
これで愛好会はこの子タブンネや運よく生き残ったベビンネどもの世話で忙殺されるだろう
子タブンネは一回2万の治療が週に二回必要だ
また足と手が使えないので排泄も食事も大変だ

38ブヒヒンネ:2017/06/05(月) 00:02:25 ID:xqutJBbY0
3日後愛好会のやつらはポケモン病院に駆け込んだようだ
ポケモンセンターとは違い有料だから大変だろう
院長から封筒の入った菓子折を受け取り帰宅する

39ブヒヒンネ:2017/06/05(月) 00:09:46 ID:xqutJBbY0
子タブンネやベビンネの鳴き声は愛好会の周辺の住民をタブンネ嫌いにするのに十分だった
ついにタブンネは第一種騒音公害に認定され
防音でない部屋では飼えなくなった

愛好会員は足と手のないタブンネにイラつき
精神的にも肉体的にも経済的にも限界をむかえた
やり場のない会員の怒りはタブンネに向き
タブンネ愛好会はタブンネ虐待愛好会へと進化した

40名無しさん:2017/06/06(火) 00:02:29 ID:0UZeSuWM0
愛情なんて簡単に憎しみに変わるものよ、相手がタブンネなら猶更w

41ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:50:44 ID:9mShWw2U0
その後会場の片付けも終わり、退社の時間もとっくに過ぎているというのに女子社員はまだ準備室にいた
今朝の事もあって自ら泊まりの夜勤を志願したのだ。そして今、チビママンネのご飯を準備中である

一応気が利く社員が事前にチビママンネの餌を用意しといてくれたのだが
蓋を開けて見ると生のブロッコリーの芯3本と萎びかけたさつま芋2本が無造作に入っているだけだった
一日中あんなになるまで頑張ってくれたのにこれは可哀想と女子社員は思い
自腹でオボンの実を買ってきてメニューに足したのだった
そしてその足で休憩室に行き、チビママンネ用の夕食の調理を始めた
ブロッコリーの芯は柔らかくなるまで茹でて野菜スティックのように細長く切り分け
萎びたさつま芋は電子レンジでふかして皮がついたまま潰したあとで丸めてきんとんに
オボンの実はくし切りに切り分けるだけなのだが皮が硬くて女子社員の腕力では切るのに難儀した
そうして出来上がった三品をそれぞれタッパーに詰め、チビママンネが待つ準備室へと持っていく

「ミッミ〜」「ミィミィ!」
「チチィ」「チィチ〜」「チッチチッチ!」「チチピィ!」

準備室の中では、チビママンネが自分の周りで自由にベビたちを遊ばせていた
ハイハイで追いかけっこをしたり、空になった哺乳瓶を転がしたり、タオルをくしゃくしゃと弄んだりと
面白いものは何もなさそうなベビーサークルの中でも楽しそうに遊んでいる

「ミッミッミッ!」
「チッチッチ!」「チーチ!チーチ!」

勇者ンネもチビママンネを助けてベビたちの遊び相手になってあげていた
遊びの内容は男の子らしく戦いごっこ
勇者ンネがフシデのように這い回ってベビ達に迫り、ベビたちはその頭を叩いて迎え撃つという内容だ
正気に戻った今、ベビのように甘えていたのが恥ずかしくなって自分から世話に励んでるという訳である
小ベビンネはチビママンネの太ももに抱きつきながらも、勇者ンネたちの遊びを興味ありげにじっと見ていた
そんな笑い声が絶えない部屋のドアが開き、女子社員が部屋へと入ってきた
もちろんチビママンネの食事を持ってきたからである

「タブンネさん、ご飯をもってきました」
「ミミッ?」「ミーミ?」「チー?」

女子社員はチビママンネの目の前にタッパーを並べていく
たが野生育ちのチビママンネはそれを食べ物だと認識する事が出来ず、自らの夕食を目の前にしてキョトンとしているだけだった
むしろベビンネ達の方がタッパーに興味を示し、次々とその周りに集まるのだった

「チチッチ、チィ〜」「チッチンチ〜」「チチチッチ!」
「悪戯しちゃだめですよぉ、これはお母さんのご飯です!」

タッパーの蓋を太鼓のようにぺしぺしと叩いたり縁に手をかけてひっくり返したり上に座ってみたりと
ベビンネたちの悪戯三昧でとても食事どころではない
女子社員が困ってるのを察して、チビママンネはもちろん勇者ンネも止めに入るが多勢に無勢でベビ達は止められない
そうしてゴタゴタしてうちにタッパーの蓋に手をかけるベビンネが出てきてしまう

「チチィ?!」「チッチ?」
「ミッ?」「ミィー!」

タッパーの蓋が空くと、温められた野菜の甘い匂いがふわっと漂う
その匂いに惹かれたのか、ベビンネたちは一斉に蓋の開いたタッパーに注目する
ついでにチビママンネと勇者ンネもそれに釘づけになっていた

「おっと、危ないです」
「チチー!!」

ベビンネの動きが止まった隙をつき、女子社員はささっと3つのタッパーを回収する
少しかき混ぜられてはいたものの中身は無事で女子社員は安堵した
ベビンネ達はおもちゃを取り上げられたかのようにチィチィと悲しそうに騒ぎ立てたが
女子社員は機転を効かせ、机の上にポケモン用の餌皿を用意して中道を全部出したあと、
空のタッパーをベビ達に渡して事を納めた
いろいろあったが、やっとチビママンネの夕食の時間だ

42ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:53:37 ID:9mShWw2U0
「チッチッチッチ!」「チィィ〜♪」「ンチッチ」「フチィ〜」
「よしよしです。さあ、たくさん食べてくださいね」
「ミミーッ!!」

ベビ達がご機嫌を直してタッパーで遊びだしたのを見て女子社員は安心し
餌が山盛りになった皿をチビママンネの前に差し出す
見た目は乱雑になってしまったが、そんなことはチビママンネは気にならなかった

「ミッミ!ミッミ!」
「ミッミ!」
「あれ、おちびちゃんも食べたいんですか?」

朝から何も食べられずにお腹が空いてるはずで、出されたらすぐに食いつくかと思いきや
チビママンネは食べる前に勇者ンネを呼び寄せた。一緒に食べようと言っているのだ
勇者ンネはずっと逃げ隠れしていた為にお客さんから餌を貰えず、今日一日何も食べていないのだ
それどころか、あの男達に捕まって以来ショックから丸一日以上何も口に入れていなかった
正気に戻った今、勇者ンネが感じている空腹は想像に余りある
チビママンネは泣きつかれた際にそんな勇者ンネの体調を感じとり、食事に誘ってあげたというわけだ

「ミッミ!ミッミ!」

目の前のごちそうの山に目を輝かせ、耳をぱたつかせて興奮を隠せない勇者ンネ
誇り高い戦士でも心を壊されかけた負け犬でもない、純心な子タブンネの姿がそこにはあった
二匹はどれから先に食べるか少し目移りした後
チビママンネはブロッコリーの芯から、勇者ンネはきんとんから先に食べ始めた
ブロッコリーの芯は十分に加熱してなお硬い繊維質の食感を残していたが、元は野生ぐらしのチビママンネには気にもならない
それよりも加熱したことにより引き立てられた甘みにとても美味しく感じられた
萎びたさつま芋の金団も少し筋っぽかったが、人里離れた山間の草むらに生まれ育った勇者ンネには未体験の美味しさだった
タブンネの最高のご馳走、オボンの実の美味しさは言わずもがなである

「チィ、チィ、チィチ、チィチ」
「ミミッ」「ミーミ?」

2匹が夢中で食べていると、大きなベビンネがよちよち歩きで近寄ってきた
このベビは勇者ンネと同じ群れ出身のベビンネで
乳歯が生え揃う途中の離乳するかしないかの時期なのだ
それは親や仲間が食べているものに興味を示しだす時期でもある

「ミーミー」「チッチ!」「ミィミィ」

勇者ンネはそんな同郷ベビを快く迎え、自分の隣に座らせた
そして「好きなのを食べていいよ」と促すようにごちゃ混ぜに盛られたを餌を指差す
チビママンネも食べる手を止め、その様子をにこやかに笑いながら見ている

「チーチィ、チ、チーチィ…」

食べていいとは言われたものの三種類のうちどれを食べるべきか分からず
嬉しそうな顔をしながらも少し迷っていた同郷ベビだったが
意を決して皿の中で一番興味が惹かれた食べ物をキュッと掴む
それはよりにもよってブロッコリーの芯だった

「あっ、それは…」「ミミミ!」

その瞬間、女子社員はぎょっとした
茹でてあるとはいえブロッコリーの芯は筋張っていて独特の臭いとえぐみもあり、
とても赤ちゃんに食べさせられるような代物ではない
チビママンネもまた女子社員と同じ考えで、両者とも慌てて口に入れるのを止めようとした
だが、同郷ベビは一目惚れしたそれをためらいも無く口に入れてしまう

「チィチィチィチ…」

まずくてすぐに吐き出すかと思いきや、口に含んだまま顎を動かしだしてモムモムと咀嚼し始める
だが、食べ物を歯で噛むというよりかはチュパチュパとしゃぶっているだけの様だ
歯がまだ完全に生えそろっておらずうまく噛めないのである
それでも、シャクッ、シャクッと歯で噛み切る音も時々ではあるがは聞こえてきた

「まずかったら、吐き出してもいいんですよ…」
「チププ…」

女子社員の心配とは裏腹に、同郷ベビはブロッコリーの味を嫌がる様子はなく
それどころか歯で噛む回数もだんだんと増えていき、ついにはゴクンと飲み込んでしまった
この一口を食べている間に同郷ベビはカミカミが格段に上手になっていた
茹でたブロッコリーの芯の程よい硬さが物を噛む練習にちょうど良かったのだ

「ミッミミミ〜!」「ミィーミ!」「チィチィ!チィチィw」
「ええっ、食べれたんですか?」

ブロッコリーの芯を食べられたことにチビママンネと勇者ンネは驚き喜び、
二匹でミィミィと嬉しそうな声で笑いながら同郷ンネを褒め、その頭を撫でた
当の同郷ベビはそれに喜びつつも気持ちは餌の方に向いていたが

43ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:54:34 ID:9mShWw2U0
(そうか… タブンネたちは赤ちゃんが硬いもの食べられるようになった事を、
 成長した事を喜んでいるんだ)

そう解釈した女子社員は優しく声をかけながら二匹の後から加わるようにそっと頭を撫でた
こうやって大人の真似をしながらも時には冒険し、子供たちは成長していくのだと
この大都会のデパートの片隅で、タブンネの親子の野生での生き方を垣間見た気がした

「チ、チィ」
「え、おちびちゃん?」

喜びの余韻が残る中、チビママンネの後ろから小ベビンネが出てきて餌皿へと這い寄っていく
何をするかと思えば餌皿に乗りかかり、その中からブロッコリーの芯のスティックを手に取った
チビママンネたちに褒められてる同郷ベビが羨ましくなり、自分も同じものを食べて褒めてもらおうという魂胆なのだ

「キュェッ!!」
「あっ、やっぱり!」

何も考えずに芯を口に入れた小ベビンネは、二、三回チュパチュパとしゃぶったかと思うと
すぐさま嗚咽とともにそれを大量のよだれと一緒に餌の上に吐き出してしまう
ミルクの味しか知らない未熟すぎる舌に独特の癖のあるにおいと味は耐えられなかったのだ
その後当然小ベビンネは号泣し、チビママンネが大慌てで抱っこして揺さぶりあやし始める

「ど、どうしようこれ…」

皿に残っていた餌は小ベビンネの唾液がたっぷりと掛かりあんかけ状態となってしまっていた
こうなっては勿体ないが捨てるしかないと女子社員はゴミ袋を用意しに行って戻ると
勇者ンネと同郷ベビは気にせずパクパクと食べていた
野生暮らしだとベビンネの唾液程度では汚物扱いしないのである
その様子に女子社員は少し引いてしまったが、まあポケモンだからしょうがないと自分を納得させた

その後小ベビンネが泣き止んでチビママンネも食事に戻り、3匹一緒に餌を食べ始めた
同郷ベビはミルクも飲んでいたので数口で満腹になって食べる手を止め
勇者ンネとチビママンネは夢中で食べ続けているように見えたが
残り1/4程残して食べるのを止めてしまった

「あれ、もう食べないんですか?」
「ミッ、ミィ」

2匹で食べるには少し足りないくらいの量だったので満腹になるのは妙だと女子社員は思ったが
チビママンネが皿を持って笑顔で差し出してきた事でその意図を理解した
これはあなたの分だから食べてと言ってきてるのだ

「い、いいですよぅ」
「ミィ、ミィ?」

女子社員は夕食がまだでおなかが減っているのは確かだ
チビママンネはタブンネ特有の優れた聴覚によりそれを察したのだろう
しかし、食べてと渡されたものはベビンネのよだれにまみれたポケモンの餌だ
さすがにこれは食べられないと突き返しかけたその時

「チィィ?」「チー?」

同郷ベビと小ベビンネが自分を不思議そうにじっと見ていることに気づいた
同時に、先ほどのタブンネの子供は大人の真似をして育っていくという事が頭に浮かぶ

(あの赤ちゃんだって不味い野菜を頑張って食べたんです
 この子たちに大人の私が好き嫌いをする所を見せるわけにはいかないです…!)

変なところで発揮されてしまった持前の責任感により、
人生最悪の野菜あんかけを無理やり笑顔を作りながら涙目で完食するハメとなった女子社員であった

44名無しさん:2017/06/06(火) 04:33:36 ID:NAFoZwkQ0

タブ虐タイムはよう

45名無しさん:2017/06/06(火) 10:10:26 ID:DHn.UH3M0
タブンネの生育の様子が丁寧で面白いです!
小ベビンネは早く死んでくれ。

46名無しさん:2017/06/06(火) 10:47:45 ID:8sU26//o0
乙!
タブ達を擁護する訳では無いけど、スキを見て洗って食べれば良かったのでは…と思ってしまう
タブは苛つくが社員のちかちゃんは名前が同じ主役のあの子と合わさっておバカ可愛く見える
ケモ〇レネタといい、がめついざんす男(シェーのアイツを思い出す)といい、パロディ満載で面白いです
社員達が早く報われてほしい

47名無しさん:2017/06/06(火) 20:57:12 ID:5ABke8ic0
チカちゃんは本当にいい子だな
早くこいつらを皆殺しにして俺と結婚してくれ!

48名無しさん:2017/06/12(月) 00:28:59 ID:cGfbRp9o0
今頃兄貴たちはまた子タブやベビ達を捕獲していて
女社長は今回の儲けでエステとかに通ってそう

タブンネ虐アフターのラスト来てほしい・・・

49名無しさん:2017/06/12(月) 03:05:50 ID:K4CLl.Os0
子ベビや勇者ベビは考えうる限り惨たらしく死んでほしいなあ
ママンネや女子社員という一時の安らぎを得たからこそ

50ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:11:44 ID:ddkwLB.g0
タブンネたちの食事の後、遊び疲れたベビンネたちはうつらうつらと眠そうにしていた
するとチビママンネはベビを一匹ずつ優しく抱っこして次々と寝床へ運んでいく
寝床は女子社員がたまたま準備室にあった毛布を折りたたんで作った即席の物だが
初めて体験する毛布の柔らかさと心地よい肌触りにベビ達も気持ち良くに眠りに落ちていった

「ミィ… ミィ… ミ…」
「あぁ、お母さんタブンネもお疲れさんですね…」

寝床にベビたちを集め終えたチビママンネは自分も寝床の上に寝そべり
自分に密着させるように抱き寄せてるうちにいつの間にか眠ってしまっていた
親子がくっついて眠るのは母親の体温で温める事によってか弱いベビたちを夜の寒さから守るという
誰に教えられた訳でもないタブンネの自然の知恵、つまりは習性だ
女子社員はそんな事を知る由もないが、目の前の暖かな親子のふれあいにほっこりとした気持ちになっていた
しかしチビママンネが寝ると毛布の上は満員で、
勇者ンネは女子社員が新たに持ってきた座布団の上で体を丸めて男一匹寂しく眠るのであった

現在は閉店時間の午後10時。タブンネ達の声が消えると騒々しかった部屋も一転して静かになり
することが無くなった女子社員は思い出したように遅い夕食をとった
メニューは買っておいたコーヒーとカツサンド
冷めきってはいるが、ソースの濃い味が未だ口内に不快感を残す小ベビンネのよだれの口直しにはちょうどいい
食べてる音でタブンネ達が起きるといけないので準備室の外で立ったままこっそりと食べる
この時、会場に置かれたままの子タブンネ達が入れられたケージが不意に目に入る
数時間前まではミィミィミィミィと群れたムックルの如く喧しかったが、
店の照明が消えて暗くなった今では火が消えたように静まり返っていた

「おちびちゃん達は大丈夫かな?」

女子社員はケージを見ているうちに気になってきてしまい、その様子を見に行く
ちなみに大勢の檻に閉じ込められている子タブンネ達は夕食抜きである
昼に客たちから餌をしこたま貰っているから大丈夫だろうというざんす男の判断だ
女子社員は内心、本当に大丈夫なのかなと心配していたのだが
いざ様子を見てみると大多数が気持ち良さそうに寝息を立ててるので、この判断は間違ってはいなかった様である
ここで「大多数」と表現したのは、そうでない子タブンネもいるからだ

「ミ… ミ…」「ヒィック… ヒィック…」「ズッ… グズッ…」

檻の傍に居ると子タブンネの寝息やいびきに混ざって、かすかにすすり泣く声が聞こえてくる
女子社員はどうしたのかと不安に思い、聞き耳を立てて泣き声の出てる檻のひとつを探し当て、
起こさないよう気をつけながら懐中電灯光量を弱くして照らし、出入り口の格子の隙間から中をのぞいてみる
そこには数匹ずつ固まってすやすやと眠っているタブンネ達の姿が見えた
泣いているのはその中のうつ伏せで壁に顔をくっつけながら寝ている2匹の子タブンネだった
他の子タブンネと見比べると小さく幼い子タブンネで、薄暗い中だとベビンネのようにも見えてくる
懐中電灯の光をそっと当てて目を凝らしてみると、確かにその頬にはキラリと反射する真新しい涙の跡が
だがキラリと反射したのは頬だけではなく、子タブンネの顔の付近のケージの壁もテカテカと濡れていた
最初は涙が壁に付いたのかと思った女子社員だったが
よくよく見てみると涙にしては量が多く、顔の位置から考えて舌で舐めた跡だなと何となく推理した

「…ごめんなさい」

懐中電灯を消し、小声でそう呟いてからケージから離れていく女子社員
本当はあの子タブンネたちをケージから出して慰めてやりたかった
しかし、あのケージの金属製の扉は開け閉めするとガチャンと大きくて耳障りな音が鳴る
唯でさえ耳が敏感なタブンネたちだ
せっかくぐっすり眠ってくれてるというのにそんな音を鳴らしてしまったらどうなるか…
他の子タブンネの事も考えると、あの子たちは泣くままにしておくしか仕方がない
泣いてる子タブンネは他にもいるが、睡眠が心を癒してくれる事を願うほかなかった

51ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:12:51 ID:ddkwLB.g0
欝々とした気分になった女子社員は、その足で従業員用の出入り口からデパートを出る
向かう先は近くにある24時間営業のスーパー銭湯
明日もイベント場内で接客の仕事。お客様に不潔な姿を見せるわけにはいかない
湯船につかりながら、何であの子タブンネたちは壁を舐めていたのか気になっていたが
その確たる理由は思いつかぬまま風呂から上がり、ジャージに着替えてデパートへ戻る

「チーチ、チー」「チチィ…」「チィー、チィー」「ミィ、ミィ…」
「…? 赤ちゃんたちが起きてる…?」

準備室に戻った女子社員は、暗い中で寝ているはずのべビンネとチビママンネの声を聞いた
べビンネの声は何かを必死に求めるような切ない声で、チビママンネのは悲しい声だ
どうしたのかと思い電気を点けてみると、
寝床の上、寝そべるチビママンネのお腹の前で3匹のベビンネがもぞもぞと動いている
その中の一匹はあの小ベビンネだ
チビママンネは起きてはいるが眠っている時と同じ横に寝そべる体制のままで、眼にはじんわりと涙を浮かべていた

「チーチー…」「チーチ」「チチッチ」

起きているベビたちの様子をよく見てみると、
チビママンネのお腹の毛皮に顔をうずめながらヂューヂューと口を鳴らしたりクイクイと押したりしている
チビママンネは歯を食いしばって切なそうな表情をしているが、べビンネ達のするがままにさせていた
そうさせておくしか仕方がないといった様子だ

「あ、おっぱい!」

女子社員が正解であるそれに思い至るのは容易なことだった
そして行動は早く、即座に3本の哺乳瓶に粉ミルクを作って暖め始める

「ミィ、ミ…」

その様子を見てチビママンネは安堵した。目に涙は消えぬままではあるが
ミルクが温まるまでの間、女子社員は心に残るモヤモヤが何か気になってい仕方がなかった
なぜあのチビママンネはお乳が出ないのかという疑問もそうだが、
もう一つ嫌な何かがチクリと引っかかっている
そうして物思いに耽ってるうちにミルクが適温に温まった

「赤ちゃんたちお待たせです、ミルクが出来ましたよ」
「チッチィ!」「チチ〜!」

女子社員がミルクを持って近づくと2匹のベビがチビママンネのお腹から離れてくるりと方向転換し
眠る他のベビを乗り越えながらも女子社員へ向かってハイハイしていく
踏まれて痛かったたのではないかと女子社員は焦りかけたが
寝てるベビ達はむず痒がるような仕草はしたもののまるで平気そうで起きる気配すらない
野生の薄暗い巣の中ではこの程度の事は日常茶飯事なのだ

「チッチ!チッチ!」「チチィチィ!」
「…あれ、今回は手伝ってくれないんですか?」
「ミーミ、ミィ」

ミルクを与える時必ず手伝ってくれていたチビママンネだが、今回は寝そべったまま動かない
それは眠いからとか疲れているからではなく、小ベビンネが乳首を銜えて離さないからである
他のベビは乳首を見つけられなかったので哺乳瓶が来たらすぐに諦めたが
小ベビンネだけは諦めきれず、乳の出ないいびつな形の乳首を小さな口で懸命に吸い続けている
その切ない様に無駄だからとやめさせる事もできず、チビママンネはただ諦めてくれるのを待つしかなかった
そして2匹のベビに授乳しながらもこちらを気にかける女子社員に、もう少しだけ待ってあげてと哀しい瞳で訴えるのであった

52ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:14:25 ID:ddkwLB.g0
「ミピッ!?」「ヂボェッ!!」
「えっ!?どうしたんですか?」

チビママンネが突然悲鳴を上げたかと思うと、同時に小ベビンネが嗚咽とともに乳首から口を離す
何が起きたか全く分からずただ驚くばかりの女子社員だったが、
2匹のベビが悲鳴に驚いてミルクから口を離したので、授乳を一区切りして何があったのか慌てて見に行った

「え… お乳…?」

チビママンネのお腹の正面から見て右下の所、小ベビンネが吸いついていた乳首
そこからドロリとした白っぽい液体が流れ出ていた
一瞬は母乳が出てきたのかと勘違いした女子社員だったが、すぐにそれは違うと気づいた
気味の悪い黄色がかった色をしていて、鼻を近づけると嗅いだ事のある嫌な匂いがしたからだ
その臭いから、これは母乳などではなく膿だとすぐに判断できた
そしてあろうことかそれを小ベビンネが口に入れてしまったという事も

「おちびちゃん、ちょっとだけ我慢してください!」
「ヂェ、ヂィェッ!ァェッ!!ビグェッ!」

エッ、エッっと嗚咽混じりの咳をしている小ベビンネを女子社員は仰向けに返し、
軽く押さえつけながらティッシュを巻いた人差し指をその口に突っ込んだ
小ベビンネは突然の事にパニックになって反射的に噛みついてしまったが、
まだ歯が一本も生えていなかったので女子社員は驚きはしたものの大して痛くはない
噛まれたまま無理に指で口内の膿を拭き取ろうとしても、
小ベビンネは腕の中でじたばたと暴れ、イヤイヤと首を振ったり顔を反らしたりして順調にはいかなかった

「ミィ!ミィ!」
「ヂヂーッ!ヂィーッ!!」

女子社員が苦戦している所にチビママンネが立ち上がり、助けに入った
両手で頭を押さえて動かないようにしながら、ミィミィと優しく声をかけて荒ぶる小ベビンネをなだめる
それでも小ベビンネは抵抗し続け簡単には拭かせてはくれなかったが
騒ぎ疲れて動きが鈍った隙に女子社員はなんとか口の中の膿をほぼ全部拭き取る事が出来た
小ベビンネの口から、不気味な薄黄色の液体にまみれたティッシュが指とともに引き抜かれる

「お水です、おちびちゃんのお口を奇麗にしてあげてください」
「チチ・・・ チィ…」
「ミィ、ミ」

女子社員が空の哺乳瓶に水を入れて渡し、チビママンネがそれを小ベビンネに飲ませた
少し元気を無くしていたが、喉を小さくコクコクと動かしているので飲んでいるのが分かる
一目盛ほど飲むと落ち着いたのかフゥフゥと大きく息をしながらも安らいだ顔になった
チビママンネはその胸に耳の触覚を当て、ホッと息を吐き安堵の表情に
耳の触覚で体調が大丈夫かどうか調べたのだ
これをやったタブンネが安心しているということは、もう大丈夫ということである
無事で良かったと安堵した女子社員だが、やることはまだ色々と残っている
次に手をつけるのは、未だ黄色い膿に汚れたままであるチビママンネの乳首だ

「ちょっと痛いけど、我慢してて下さい」
「ミィィ…!」

女子社員乳首にティッシュをあてがいながら、膿を絞り出そうとする
チビママンネは治療してくれると分かっていたので従順に乳首を触らせていたが、
その顔には痛みに対する恐れが隠せていない

「ミキィーッ!!」「キャッ?!」

ギュッと乳首をつままれた瞬間、チビママンネは反射的に両手で女子社員を突き飛ばしてしまった
あのタブンネ卸業者の女社長に乳首をむしり取られたトラウマが痛みでフラッシュバックしたのだ
不安定な前かがみで膿を絞ろうとしていた女子社員はバランスを崩してドタンと尻もちをついてしまう

「ミィッ!?、ミィッ!!」
「うう、大丈夫です… ごめんなさい、痛かったんですね…」

ハッと我に返ったチビママンネは慌てて女子社員に駆け寄り、助け起こそうと小さな手でその腕を懸命に引っ張った
後悔と罪悪感に満ちた今にも泣きだしそうな無様な顔で、その心は膿吹く乳首に負けぬほど痛めていた
同時に、あの憎たらしい社長と青いポケモンの事が頭に浮かぶ
あいつに乳首を取られてさえいなければ、こんな事にはならなかったのに…
一方、トラウマの事など知る由もない女子社員は痛かったんだろうなとしか思っておらず、
チビママンネに軽く詫びてから素直に助け起こされるのであった

「今度は我慢しててくださいね」
「ミ、ミィ…!」

今度は膿絞りの痛みに耐える覚悟を決めたチビママンネ
女子社員もそれに応え今度は躊躇わずに一気に絞り出す方針だ
いざ絞り始めると神経が集中してる箇所なのでかなり痛く、
歯を食いしばりながら女子社員の髪と服をギュッと握りしめて必死に耐える
膿はプリュプリュと音を立てながら大量に出てきた
絞り続けると固体のような塊の膿が出てきて、やがて血が混じりに変わり
最後に透明の体液だけが出てくるようになった、こうなると完全に膿が出きった証拠だ

53ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:15:56 ID:ddkwLB.g0
「ミ〜、ミ」
「あっ、掻いちゃ駄目ですよ、消毒しますから待っててください」

痛みが消えスッキリした乳首を嬉しそうにさわさわと撫でるチビママンネ
女子社員はそれを制止し、乳首に消毒薬を塗る
傷に沁みる感覚に身震いするチビママンネだったが、その痛みにはすぐに慣れ
最後に消毒薬をしみ込ませたガーゼを絆創膏で貼り付けて処置は終わった

昨日のデパートに来たばかりのチビママンネなら人間にこんな事はさせなかっただろうし
目の前でベビの口に無理やり指を突っ込んだりしたら激怒していただろう
自覚は薄いだろうが、今日という一日だけで女子社員はチビママンネの確実な信頼と友情を得ていた

乳首を見ているうちに、女子社員は何故このタブンネはお乳が出ないのかが再び気になって
くすぐったがるチビママンネの毛皮をかき分けて他の乳首を見てみることにした

「うそ… 何これ…」
「ミ?」

そこに見たものは、乳首があるはずの部分に残っていた傷痕だった
既に皮が貼り治ってはいるものの、ここからお乳が出てくるとは到底思えない、完全に破壊された乳首の痕だ
何よりショックなのは、ほかの部分には一切傷がなく乳首だけがピンポイントで破壊されてるということ
不慮の事故でこんな傷がつくはずはないし、野生のポケモンがこんな襲い方をするはずがない
こんな痛めつけ方をするのは、悪意を持った人間しかいないだろう

「なんで・・・ こんな… ひどい…」
「ミィ・・・」

女子社員は義憤と悲しみに震えた
一体何を思えば、赤ちゃんを育てている母タブンネの乳首をむしり取るという残酷極まる事ができるのか
なぜこんな行為に及んだのか、全く想像も出来ず、ただ名も顔も知らぬ悪人に怒りを燃やす
実際は言う事聞かなかった上に叩かれたのでブチギレという割と単純な理由なのだが、それは置いといて
そして人間がポケモンにこんな事をしてしまったという事実が、あまりにも申し訳なくてたまらなかった

「ミーミ、ミーミ、ミィ…」
「はっ、タブンネさん…」

チビママンネは心配して優しい声で鳴きかけながら女子社員の頭にそっと手を乗せた
「許す」とか「あなたのせいじゃない」とかそういう難しい事を伝えたい訳ではなく
ただこの優しい人間に心を痛めてほしくない、ただそれだけの思いだった
だが、女子社員はこの温かい手によって少しだけ心が軽くなった

「チィチィ…」「チーチ…」「チィ、チィ…」
「あっ…赤ちゃんたちが…」「フミィ…」

安心したのも束の間、今度は眠っていたベビたちがこの騒ぎで目を覚ましてしまい
くしゃくしゃになった毛布の上で鈍くもぞもぞと動き出した
不安そうにビクビクと脅えており、今にも泣きだしそうで爆発寸前といった所だ
これには流石のチビママンネも弱った様子で
今日一日の疲れが一気に襲って来たような限界に近い精神状態だった

「…タブンネさん、頑張りましょう」「ミ、ミィ!」

女子社員とチビママンネはこれが最後と限界な体にムチを入れ
泣きそうなベビたちを自分たちも泣きそうになりながらも懸命にあやし
中断していたミルクを温めなおす所から始めて睡魔と闘いながら再び与え、
どうにかこうにかベビを再び眠りに付かせることが出来た
時計は既に12時を回っており、限界を超えた眠気と疲れで両者ともふらふらと憔悴しきってい

54ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:16:37 ID:ddkwLB.g0
「あれ?まだ寝ないんですか?」「ミーミィ…」

すぐにでもベビの傍で寝たいはずであろうが、チビママンネはすぐに横にはならなかった
解決すべき問題があと一つ残っていると思い込んでるからだ
ベビーサークルの柵のごしにキョロキョロと何かを探すように周りを見回しているが
女子社員はその意図がさっぱり分からなかった

「ミィミ、ミ」「えっえっ?これを私に?」
「ミィーミミ〜」

目を覚ましていた勇者ンネが自分が寝ていた座布団を女子社員の下へずるずると引きずってきた
そしてチビママンネと一緒にミィミィと何かを訴えかける
なぜ自分の寝床を渡そうとするのか最初は女子社員は分らなかったが、
ふかふかの座布団とチビママンネの心配そうな顔を見比べるとその心を察する事ができた
チビママンネと勇者ンネは女子社員の寝床が無いことを心配していたのだ
タブンネたちの無垢だけどちょっとズレてしまった優しさに、女子社員はフフッと噴き出しててしまう

「ふふ、心配ありませんよ」
「ミィ?」「ミー?」

女子社員はベビーサークルのすぐ傍に部屋にあった座布団を三枚並べて即席の布団を作り
その上に掛け布団代わりのバスタオルを無造作に置いた
この11月、本当はもっとちゃんとした掛け布団が欲しかったが、これ以外に掛けられそうなものはない
実はベビンネたちが寝てる毛布は気が利く社員が女子社員のために用意したものなのだが、
その事を伝えてなかったので残念ながらその意図は伝わらずに終わってしまった

「ミーミィ〜」「ミィ〜ミ〜」「みんな、おやすみなさいです」

寝床が出来たことでチビママンネは安心して寝床に戻ってベビたちの傍で横になり、
勇者ンネも座布団をチビママンネの隣へずるずると運んでそこで丸くなる
やはり一人で寝るのは寂しかったのだ
女子社員も部屋の電気を薄明かりに変え、座布団の上で横になった

眠りに落ちるまでのまどろみの間、チビママンネは奇妙だが、どこか覚えのある安らぎを感じていた
それはまるで、かつて夫と一緒に眠っていた時のような不思議な安心感だった
自分の傍で眠るあの優しい人間
怖い人間の暴力から守ってくれて、でもその後にベビンネみたく泣いちゃって
夫ンネみたいな強さとベビンネみたいな弱さを一緒に持っている不思議な人間
彼女の事を考えると、今までわからなかった人間と一緒に暮らしたがるポケモンの気持ちがよく分かる気がした

チュパ・・・ チュパ…

(…ん? またお乳?)

真夜中、微かに聞こえる濡れた音によって女子社員は不意に目が覚めた
まだ夢うつつのまま枕元に置いておいた懐中電灯で音がする方をそっと照らしてみると
小ベビンネがまたチビママンネのお腹にむしゃぶりついていた
また膿を吸ってしまわないか心配になったが、どうやら寝ぼけて闇雲にお腹を吸っているだけのようだ
その様子が可笑しくて様子を見ているうちに、ある事に気づく
うつ伏せで母親のお腹を吸うその姿勢が、昨晩見たケージの壁を舐めていた2匹の子タブンネと全く同じなのだ
そう、あの子タブンネたちは引き離された母親の夢を見て泣いていたのだ
小ベビンネが舐めているのは温かい母親のお腹だが、あの子タブンネたちが舐めていたのは冷たい金属の壁だ
そこに救いは何もない

その事に気づいた瞬間、罪悪感がおぞ気となってぞわぞわと全身を走った
そして少しでも逃れようとしたのだろう、体を丸めバスタオルを口元までたくし上げ
両目を力いっぱいギュッと瞑って必死に眠りに逃げようとする
もしかして、自分も仕事だからと言い訳して無自覚にタブンネたちを傷つけていて
あのチビママンネとベビンネ達からお乳を奪った悪人とそう変わらないのではなかろうか?
どんなに体を震わしても、女子社員の体の中から冷たいものが消えなかった

「ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・」

どんなに女子社員とチビママンネが仲良くなったとしても、明日はきっと辛い一日になるのだろう
女子社員は子タブンネをお金に変える店員で、チビママンネは子タブンネたちを守る母親なのだから

55名無しさん:2017/06/14(水) 03:22:54 ID:LJIplb5w0
更新待ってました!

56名無しさん:2017/06/15(木) 22:28:36 ID:5ng6xatQ0
頑張れチカちゃん!
小タブンネは残留した口内の膿から全身腐敗のフラグかな

57名無しさん:2017/06/18(日) 16:54:07 ID:eja1zTXY0
レンタル扱いのチビママンネはイベント後どうなるんだろ?

用済みとして処分されるのもいいけど、
女社長達の元で乳母として奴隷の日々を送るとかでも面白そうw

58名無しさん:2017/06/18(日) 19:21:26 ID:YDmqCR3c0
>>57
>乳母として奴隷の日々

もちろん実の我が子達(小ベビも漏れなく)を全て失った絶望を抱えながらだろうな

なんか肉屋の日常ってSSの乳母ンネ以上に悲惨な思いをさせられそうだけど果たして…
今後に期待しております

59ショーケースの裏側で:2017/06/19(月) 05:03:56 ID:j7k4MZwk0
チュウ・・・ チュウ…
(・・・また舐めてる?)

早朝、女子社員は目覚ましのアラームが鳴る前に小さいが聞き覚えがある音によって目を覚ました
準備室には窓がないので電気を点けないと部屋は暗く、寝起きでぼやけた視界では何も見えない
睡眠不足の重い身体をよいしょと起こして電気を点けると、毛布の上に座りながら小ベビンネを抱くチビママンネの姿が
小ベビンネはその小さな手でチビママンネの毛をしっかりと掴みながらお腹に顔を押し付けている
その押しつけてる箇所は、あろうことか昨日膿が噴出して処置しておいた所と同じだ
よく見ると、チビママンネのすぐ傍に昨日張り付けたガーゼが剥がれ落ちていた

「え…? 膿は…? 」
「ミィミィ♪」

困惑する女子社員にチビママンネが優しく微笑みかける
その顔に苦痛や切なさは一切なく、喜びと安らぎに満ちた心温かい笑顔だ

「まさか…」
「ミィ♪」

チビママンネの横に回り込んでその足の上に乗せられながら抱かれている小ベビンネを覗き込んでみると、
乳首に吸いついてこくこくと喉を鳴らしている。母乳を飲んでいたのだ
乳首のうちの一つだけ完全に千切り取られてはなかった悪運、
女子社員の治療で膿を出し切った事、そしてタブンネ特有の強靭な再生力
その三つが功を奏しチビママンネの乳腺は一夜のうちに再生を果たしてしていた

「すごい!すごい!おっぱいが出るようになったんですね!」
「ミィ、ミィ♪」

母タブンネの温もりに抱かれながらベビンネが乳を吸うその光景
哺乳瓶で行うような無機質な栄養補給ではない、美しささえ感じる暖かな母と子の繋がりの姿がそこにはあった
小ベビンネも哺乳瓶で飲む時よりもずっと心穏やかな様子だ
もう出ないと思ったお乳が再び出た事に、女子社員は眠いのも忘れてまるでわが事のように喜び、
チビママンネもまた人間の友だちと喜びを分かち合おうとしていた
が、喜んだのもつかの間、女子社員はある事が頭を過ぎり、その喜びは風に吹かれた蝋燭の火のように消え失せる
この子を母親から引き剥がして商品として売らなければいけない事を

「…よかったです、おっぱいが治って」


そう呟いて女子社員は再びと座布団に横になる
辛くて顔を見る事が出来ず、チビママンネに背を向けて
まだ全然寝足りないはずなのに、目を閉じていても眠ることができない
「仕事だから」
そう言い訳してしてタブンネたちの苦しみを知らぬふりしている私に、なぜこんな美しい光景を見せるのか
この小さな親子の暖かい繋がりを、自分の立場と生活の為に永久に引き裂こうとしているというのに

60ショーケースの裏側で:2017/06/19(月) 05:06:47 ID:j7k4MZwk0
「ミ、ミィ?」

チビママンネは様子がおかしい女子社員を心配していた
一瞬ぱっと花が咲いたように喜んだかと思ったら、途端に悲しそうな顔をして寝転んでしまう
なぜ心が苦しんでいるのか? チビママンネに人間の複雑な心理はよく分からないが
この人間の助けになってあげたい、苦しみを和らげてあげたい、ただ純粋にそう思っていた
自分もベビも明日をも知れぬ囚われの身でという状況で、女子社員の心配をしてしまう性格
お隣ベビや見ず知らずのベビをただ放っとけないからという理由で受け入れた時もそうなのだが
ある意味自己犠牲的とも、若さゆえの愚直さとも取れる優しさだ
それは人間の感性では美徳にも感じられるが、野生で暮らす生き物としては弱点に他ならない
本当はチビママンネのようなタブンネこそ、人間と共に暮らして幸せになれるタブンネなのだろう

「チィチィ…」「ミィ…」

だがそれが叶う事は無いだろうし、チビママンネも望んではいない
今は理解不能な人間たちからベビたちを守り抜き、生きて巣まで帰る事だけが目標だ
お乳を満足に飲んで腕の中で眠る小ベビンネをしっかりと抱きしめる

小べビンネが完全に眠ったのを確認すると、そっと寝床に置いてからすり足で女子社員の所へ
その後ろに寄り添うように横になり、背中に触覚を触れる

「ミィ…?」

女子社員の心音から伝わって来たのは、罪の意識
キリキリと茨の弦で心臓を締め付けられるような、痛々しくて耳を塞ぎたくなるような心の音だ
この優しい人間がどうして罪の意識に苦しまなければならないのか?
昼間にベビ達を遠くへ連れ去られてしまった時の事を悔やんでるのだろうか?
理由はとにかく、チビママンネは女子社員が苦しんでいるのが辛くてしょうがなかった

その後30分ほど、チビママンネは女子社員の背中に添い寝したままだった
未だ止まぬ女子社員の罪悪の音を聞き続けながら
あなたは悪くないよ、苦しまなくていいよと伝えたかった
しかしタブンネは人間の言葉が喋れないし、人間には心が伝わるタブンネの触覚は無い

「チィチ…」「チィー…?」「チー、チ…?」

母親が傍にいない事に気づき、3匹のべビが不安そうな声でか細く鳴きながら目を覚ました
その声を聞いた瞬間、チビママンネは慌てて寝床へ戻り再びベビたちに寄り添った
触覚がチビママンネのお腹に触れるとベビ達は落ち着きを取り戻し、不安な声は消えた
ひとまずホッとしたチビママンネだが、頭に浮かぶのは女子社員の事だ
乳首のズキズキする痛みを取り去って再びお乳が出るようにしてくれたのに、
自分はこの人の心のズキズキを取ってあげられないなんて
安らいでに眠るベビたちが眼前にあっても、チビママンネの心は痛んでいた

その後、一人と一匹の痛みが癒えるのを待たずにいつもと同じくに太陽が顔を出し、
チビママンネと女子社員、そしてベビたちの別れの日の始まりを告げるのであった

61名無しさん:2017/06/19(月) 09:38:32 ID:K9xHRs/Q0
お別れの時が楽しみですなあ

62名無しさん:2017/06/19(月) 09:39:48 ID:9LCQkfzI0
乳首再生しちゃったんだ...
授乳ショー失敗フラグかな?

63名無しさん:2017/06/19(月) 13:35:45 ID:PPNdKoq60
>>62
おっぱい独占とはまた…
今まで泣いても小ベビ優先で放置されてきたベビ達の

溜まりに溜まった小ベビへの鬱憤が晴らされる時でもあるのかな

64名無しさん:2017/06/20(火) 23:30:52 ID:LxJhqu5E0
DQMンネ ※他作品ネタ&グロ有りなので苦手な方は閲覧注意
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288641.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288647.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288650.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288654.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288656.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288658.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288661.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288663.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288667.png.html

パスは3131

65名無しさん:2017/06/20(火) 23:42:13 ID:H2nIQlSA0
ようやくお別れか、小ベビンネは捨て値なら売れるかな?

乳首が再生・・・生えなくなるまで何度でも切除してやりたいw

66ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:50:14 ID:rZcSsmAg0
その後始業時間となり、
起床して身支度を終えた女子社員は準備室の前で出社してきたざんす男達を出迎えた
顔色の悪さを隠すためだろうか、化粧がいつもより濃い目だ
女子社員は何時ものように振舞おうとしたが様子がおかしいのがすぐにばれ
心配した男性社員たちは昨日何があったのか問いただすのであった
色々考えた後、女子社員は叱られようが言うべき正しいことを主張する覚悟を決めた

「このイベントは、今すぐ止めるべきだと思います…
 タブンネの子供たちをお母さんから引き離して売り物にするなんて、残酷すぎです…
 あの子たちはすぐにでもお母さんの所に…」

女子社員は男性社員たちの目をしっかりと見つめながら、
喉の奥から無理に絞り出したようなかすれた声で心からの本音を吐き出す
こんな声になってしまっているのは社会人として間違った事
すなわち、会社に損をさせる事を言っているという自覚のためだ
どうして何百万円もかけて仕入れたタブンネたちを何の利益も出さずに手放す事が出来ようか?
そんな事を提案したら自分の立場が悪くなるのは必至だ
だがそれでも、必死に自分の正義を通すべく頑張る
優しいが気が弱く、小動物のように臆病な女子社員だが、この時ばかりは守るべき者のために戦い抜く気だ
しかし、言いたい事を言い終わらないうちに気が利く社員が話の隙に割って入った

「そのお母さんというのは何所に居るか分かるのかな?」

その一言に女子社員は言葉に詰まってしまう
確かに、あの子タブンネたちがどこから来たのか、自分たちは何も知らない

「もし、このままタブンネたちを売るのを止めて、野生に返したらどうなると思う?
 餌の採り方も知らないまま飢え死にするか、もしくはもっと酷い最後になるか
 あのタブンネたちはもう人に飼われるしか生きる道はないんだよ」

女子社員は顔を赤くして震え、下の瞼には涙が溜まる
言い返す言葉が思いつかないのと、子タブンネたちの残酷な末路を想像してしまったためだ
気が利く社員は酷い事を言ってるようだが理がある。これじゃあ、無責任に考えていたのは自分の方ではないか
だが、それでも最後の一線だけは譲る気はない
涙を堪えながら震える唇をゆっくりと開く

「だったら、せめてあのお母さんタブンネとベビちゃんたちだけは…」
「お乳が出ないタブンネが、自然の中でどうやって赤ん坊を育てるんだい?」
「出ますよっ!!!」

女子社員は感情が爆発したかのように大声で叫んだ
叫ぶ所を見たのは初めてで、3人とも驚いてポカンと固まっていた

「昨日出るようになったんです、あのお母さん… 悪い人間に人間におっぱいを取られて
 膿を出したら治って、今朝飲んでたんです、あの赤ちゃん、ちっちゃい赤ちゃん…」

静寂の中、女子社員は心に浮かぶ言葉を整理する余裕もなく次々に並べたてる
最早我慢する気もなくなった涙を止めどなく流し、時折グスグスと鼻をすすりながら、
その様子に男性社員たちは気まずい雰囲気になり、気が利く社員の額からは冷や汗が流れる

67ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:51:13 ID:rZcSsmAg0

『ヂィーッ! ヂィーッ! ビーッ!ビッ!ビーッ! ヂャァァァァァ!!』
「ん?ちょっと、何かベビィちゃんたちが騒がしいざんす」
「…えぇ?ちょっと様子を見にいきます」

困惑の中、準備室の中からベビたちが騒ぐ声が聞こえてきた
何かに怒ってるような声と、泣き叫んでるような声と、つまりは喧嘩をしてるような騒ぎ方だ
それを聞いた女子社員はぴたりと泣きやんで正気に戻り、急いで準備室へと入る
この時ばかりはタブンネ達に感謝した気が利く社員だった
三人は何があったのか気になって女子社員を追って準備室へと入って行く

「ヂャーッ!!」「ビィィ!!ビィィ!!」「ウヂーッ!チギュビーッ!!」「ギッ!ギーッ!」
「ミィィ!ミィィ! ミィィ〜ン」

「え、え?どうして?寝る時はあんなに仲良かったのに?」

先陣を切った女子社員の目に飛び込んできたのは、寝そべるチビママンネのお腹に群がって争うベビンネ達だった
皆ヂーヂーと怒りや苦痛に満ちた悲鳴にも似た叫び声を上げ
小さな手で他のベビを押しのけ、ベビとベビの隙間に頭を突っ込んで割って入ろうとし
やっと乳に吸いついたベビを頭で押しのけて乳首を奪い、また奪われの繰り返し…
お乳を取り合って喧嘩になってしまったという事は、見ればすぐに分かることだった
チビママンネもミィ!ミィ!と厳しめに鳴いてベビたちの間に片手を入れて争いを止めようとしてるが効果はなく
小べビンネは押しのけられて争いの中にすら入ることができず、
差し出されたチビママンネの片手に縋りついてただ泣きじゃくるだけであった

「ふぇ〜、ベビィちゃんなのにこれまた壮絶ざんす。チカちゃん、ミルクの準備を頼むざんす、
 ヤマジくんとミナツくんは私と一緒に喧嘩を止めさせるざんすよ」

指示のもとに社員たちが一斉に動き出す
女子社員はタブンネたちを気にしつつも急いで粉ミルクを急いで溶いて暖め
体格がいい社員とざんす男はベビを抱き上げてチビママンネから引き離し喧嘩を止めようとしたが
傷つけないように気を使いながらなので思ったように捗らない
ベビに触られて威嚇の声を上げたチビママンネだったが
社員たちは気にする余裕もなく、傍にいる小ベビンネを意味もなく怖がらせただけだった

「ちょっと試してみます」
「ミィッ?!」

そんな時、気が利く社員が練乳を染み込ませたガーゼを持ってベビーサークルへ飛び入り、
ベビたちにへ近づいていく
その顔を見たチビママンネはビクッと恐怖し威嚇すらできず硬直した
昨日暴行された事がトラウマになってるのだ
だが気が利く社員はチビママンネには構いもせず、喧嘩し続けるベビンネたちにガーゼを近づける

「さあ、こっちのお乳は甘いよ〜」
「ヂィィィィィ!! …チ?」「チーチィ!」

すぐに数匹のベビンネが匂いに食いつき、喧嘩をやめてガーゼの方に寄って行く
なおもガーゼを振って甘い匂いを振りまくと、
なんと小ベビンネ以外の全てのベビがガーゼに引き寄せられたのだ
そのまま少しずつ後ろに下がっていくとベビたちもガーゼを追って早めのハイハイで付いていく

「ミィ、ミィーッ!」

チビママンネは大声で鳴いてベビたちが怖い人間に止めようとしたが
数匹のベビがちょっと気になった程度で振り向いただけで、戻ってくるベビはいなかった
ベビたちにも母親に甘えたい気持ちは大いにあるのだが、今は食欲と練乳の魅力の方が勝っていた
自分よりもタブンネに平気で暴行する悪い人間をベビたちが選んだという事実に、チビママンネは恐怖した

68ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:52:21 ID:rZcSsmAg0
「ん、お前たちはどうしたんだ?」
「ミィ…」「チィーチ…」「チィチ…」

一方、ちょっと手持ち無沙汰になった体格のいい社員
ベビーサークルの片隅にいる勇者ンネとその横でちょこんと座る大きいベビンネ2匹に目が向いていた
勇者ンネは大きいベビが争いに加わらないよう引き止めていたのだ
あの争いに力が強いベビが混ざる事によって他の小さなベビが怪我をしてしまうのを心配しての事で
本当は他のベビの争いも止めたかった勇者ンネだったが、力不足でそれは不可能だった
大きいべビは空腹でチュパチュパと指をしゃぶりながらもお乳を我慢している
普通べビは我慢などできないのだが、勇者ンネのカリスマ性の成せる技だろう

「ミルク温まりました!」
「オーケー、みんな、ベビィちゃんたちにミルクをあげるざんす!

社員たちは次々にミルクを手にとって授乳に向かう
ベビたちは待ってましたと言わんばかりにそれに吸いつき、美味しそうにゴクゴクと飲んでいる
ざんす男と気が利く社員と女子社員の三人は両手に哺乳瓶を持って同時に2匹のベビに授乳しているが、
大きなベビを受け持った体格のいい社員は一匹のベビにもうまくミルクを与えることが出来ないでいる
吸い口を口に無理やり押し付けるような形で授乳しようとしていた為、ベビがそっぽを向いてしまったからだ

「ミィッ!ミィッ!ミイッ!」
「ん、お前も飲みたいのか?」

勇者ンネはベビを苛めるなと威嚇をしたが、迫力不足のため鈍感な体格のいい社員にその怒りは伝わらず
勘違いされて哺乳瓶をそのまま渡されてしまう
この時勇者ンネも意図を勘違いし、哺乳瓶をよいしょと両手で持ち上げて傍にいた同郷ベビに授乳を始めた
満タンになった哺乳瓶は子タブンネにとって結構重く、時折大きくぐらりとふらつくが
それでも同郷ベビはゴクゴクと美味しそうに飲んでいる

「おっ、上手いじゃねぇか。俺もちゃんとやんねぇとな」

隣で美味しそうに飲むベビを見て自分も飲みたくなり、
体格がいい社員が授乳しようとしていたベビもミルクを吸いだした
これで全てのベビがお腹を満たせるかと社員たちは思ったがそれは違う。
あの手のかかる小ベビンネがミルクを飲んでいないからだ

69ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:54:17 ID:rZcSsmAg0
一方、切ないのはチビママンネである
せっかくお乳が出るようになったのに、人間が作る粉ミルクの方がいいだなんて…
確かに一つの乳首を10匹で分けると量が足りなくなるのは当たり前で
しかも争いをしながらではとても腹を満たすどころではない
ついでに言うと味も粉ミルクの方が美味しい
つい昨日までは心安らぐ光景だった哺乳瓶でお腹を満たしていくベビたち
だが今ではそれに激しく心乱され、嫉妬や悲しみ、やり場のない怒りすら覚える
チビママンネは歯噛みしてそれをじっと見ているしかなかった

「チィチィ… チィチィ…」「ミィ…」

だが、小ベビンネにとっては何があろうとチビママンネの母乳が一番だった
争うベビ達に次々と乱暴に吸われ、乳首はヒリヒリと赤く充血し
母乳はもはや枯渇寸前で唇を濡らす程度にしか出なくなっている
しかし小ベビンネは必死に吸い続け、チビママンネは授乳の体勢を崩さずその痛みを必死に堪える
大勢のベビのお腹を満たせる人間と哺乳瓶、そして一匹のベビのお腹をも満たせない自分
チビママンネは情けなさと自分への怒りで母乳よりも量が多い悔し涙を流すのだった

「ん?ひょっとしておっぱいが出尽くしちゃったざんすか?
 じゃあマーマさんに代わって私がミルクをあげるざんすよ」
「チィィ!」「ミィィ! ミィィ!」

一足早く授乳が終わり、小さな親子の事が気になったざんす男
母乳の出が悪い事を察し、小ベビンネに哺乳瓶の吸い口を向けるも逆に怖がられてしまう
チビママンネは声を張り上げてやめてと懇願すると、ざんす男は突然の大声に驚いて一歩退いてしまう

「そのちっちゃい子は甘えっ子でお母さんタブンネの手からしかミルクを飲まないんですよ」
「あー、ナルホドナルホド。それじゃあマーマさんにお任せするざんす」
「ミィー…」

女子社員の助言に納得したざんす男はチビママンネに哺乳瓶を手渡す
渡されたその後、チビママンネは胸に哺乳瓶を抱きしめてブルブルと震えだした
せっかく母乳が出るようになったのに、こんな物に頼らなくてはならないなんてという悔しさのためだ
ざんす男が心配そうに見つめる前で一分近く震えた後、
チビママンネは片手で小ベビンネを遮って吸うのを止めさせ、すっくと立ち上がった
プライドより小ベビンネの空腹を満たすのが先決だと覚悟を決めたからだ

「ミィ!」
「チィチィ… チィチィ…」

チビママンネは哺乳瓶の吸い口を小ベビンネの口元に向けるが
小べビンネはそれに見向きもせず、母親の足にすがりついた
チィチィ、チィチィとお乳を求める鳴き方で鳴きながら

「んー… やっぱりマーマさんのおっぱいが一番なんざんすかねぇ」
「ミィィ… ミィィ…」

チビママンネは哺乳瓶をゴトリと落とし、立ち尽くしたままさめざめと泣いた
人間も、子タブンネですらやっていた哺乳瓶でミルクを与えることすらも自分は出来ないのかと
チビママンネの母親としてのプライドは、皮肉にも母乳が出たことによってズタズタになろうとしている

「まぁー、そう泣かないでチョーダイ。美味しいものを食べればおっぱいも出るようになるざんすよ
 ミナツ君、マーマさんに滋養のある物を持ってきてあげるざんすよ」
「はい」

チビママンネと小ベビンネの問題は残ったが騒ぎは収まり、社員たちは準備室を後にする
その時、食品売り場に行こうとする気が利く社員を女子社員が呼び止めた

「ミナツさん… ごめんなさい。ミナツさんの方が正しかったです
 私はただタブンネ達がが可哀そうだと、家族と一緒にいる方が幸せだとそれだけしか考えてなくて」

チビママンネが単独でベビンネたちを育てる力が無いことを目の当たりにし
女子社員の考えはすっかり変わっていた
あのベビンネたちは優しい人間に飼われるしか幸せになる道はなく
自分はその橋渡しの勤めを全力で果たすしかないと
ただ、心配なのはあの小さなベビンネだ
チビママンネの傍らでしか生きられないあの子は、一体これからどうすればいいのか…

「…チカさんが言った事は何も間違ってないと思います
 ただ、言うならもっと早く、できれば企画の段階で意見すべき事であったというだけで…」

女子社員はこの企画を言い渡された時、
かわいいポケモンがいっぱい見れると少し楽しみにしていた自分を思い出し、そして恥じた

70名無しさん:2017/06/21(水) 03:20:59 ID:kTqPBn6o0
更新乙です!

71名無しさん:2017/06/21(水) 21:43:17 ID:.kEcs6zc0
醜い子豚どもめ、俺が全部買い取って精肉売り場送りにしてやりたい

72名無しさん:2017/06/21(水) 22:54:34 ID:jyCzUGpQ0
どれだけの数のベビンネが優しい人間に出会えるか興味あるな・・・

チビママンネと憎たらしい小ベビンネさえ陰惨な末路を迎えてくれれば
他は別に幸せでもいい、対比とかになって面白そうだしw

73名無しさん:2017/06/22(木) 07:59:49 ID:.BhnDHJo0
チビママンネにシカトされて
「チィのことがキライチィ…」なんて悲嘆にくれていたベビもなかなかに香ばしいよな
嗜虐心煽られそうなので自分はこの子を買いに行きたい

74ショーケースの裏側で:2017/06/27(火) 23:52:30 ID:XiTm8Bg.0
その後、昨日と同じように会場の準備を終え、子タブンネたちもチェックして汚れを取ってから場内へ放された
何をされるか知られていたため抵抗されて昨日よりかは苦戦したが、兎に角イベントの準備は整った

「あの小さいのも午前中から売り場に出しときますか?」
「それがいいざんすね、様子を見に行ってオッパイを飲み終わってたら売り場に出すざんすよ」

指示を受けた気が利く社員は再び準備室に戻ると、チビママンネとベビたちは毛布の上で眠ってしまっていた
社員たちが前準備をしている間に与えられた餌(ゆで大豆とオレンの実)を平らげ
栄養補給により再び湧き出した母乳を小ベビンネに与え、その後眠くなってまた寝てしまっていた
一度は離れていったベビたちもチビママンネのお腹の前でひしめき合って眠っている
乳は出なくとも、血が繋がってなくとも母は母、その愛とぬくもりは何物にも代えがたい

「…あれだな、ちょっと面倒そうだ」

ベビンネが9匹もかたまっているのでその中から小ベビンネを見つけるのはちょいと難儀
…と思いきや気が利く社員は一目であっさり見つける事ができた
小ベビンネはチビママンネの胸の中、両腕でしっかりと抱かれながら眠っているからだ
では、何故気が利く社員が困っているのかというと、
連れて行く際にチビママンネを起こしてしまうのは避けられないからだ
その時に必死の抵抗にあうのは想像に余りある

「ミッ!?」

足音を殺してそろりそろりと近づこううとした気が利く社員だが、
三歩目でチビママンネがハッと目を覚ましてむくりと起き上がり、
恐怖と警戒が混じった表情で気が利く社員に目を向けている

「…耳がいいんだったっけ、まあいいや予定より早いけどこいつを使おう」

気が利く社員は懐からモンスターボールを取り出し、チビママンネの足もとに投げる
そこから閃光とともに現れたのは少女のようにも見えるポケモン
白い顔に赤い瞳、緑色の髪の毛に見える葉っぱに赤い花、ドレディアと呼ばれるポケモンだ
気が利く社員が少年時代に育てていたポケモンで、実家に預けていた所を急遽送ってもらったのだ

75ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:05:06 ID:tYPZp40w0
「ミィ、ミィィ…」

唐突に現れたドレディアにチビママンネはビクッと驚き、そして戦慄した
一見穏やかな外見の優しそうなポケモンではあるが、この個体はただならぬ雰囲気を放っている
かわいらしい丸い顔つきに似合わぬ攻撃的な赤い眼光、体内を脈々と流れる雄大な植物の生命エネルギー
このドレディアは野生でも鑑賞用でもなく、幾多のバトルで鍛え上げられた百戦錬磨の戦鬼である
その戦闘力は若い野生のタブンネなど比べ物にならない
チビママンネはこのドレディアが只者でないことは雰囲気と身体からの音で理解していたのだが
判った所で胸にベビ、足元にベビの今の状況では戦うことも子供たちを連れて逃げることもままならない

「ミィィィィィィィィィィィ!!」
「ミィッ?!」

その強さと恐ろしさが分からなかったのだろう。
勇者ンネがドレディアに向かって突進してスカートの部分にポテンとぶつかった
チビママンネへの恩義を心に込めたの渾身の一撃だったが
その突進はドレディアに何のダメージも与えることもなく、逆にチビママンネが驚いて隙を作る結果になってしまった

「ドレディア、鼻っ面に眠り粉だ。赤ん坊にはかけるなよ」

指示を受けた瞬間、ドレディアはチビママンネの眼前へと一足飛びに降り立ち、顔面に頭の赤い花を突きつける
視界が赤い花に覆われた次の瞬間、チビママンネは驚く間もなく意識が暗闇に落ち、ガクンと膝を落とした
花弁からの眠り粉を直に吸わされたのだ
強制的に眠りに落ちてもなお抱いていた小ベビンネを放すことは無かったが、
倒れる直前にドレディアが腕の中からたやすくスポッと引き抜いてしまった

「よし、一応そこのチビにもかけといて。量を少なめにな」

勇者ンネは反動の痛みにもめげず未だに臨戦態勢だったが
眠り粉が振りかけられると風船から空気が抜けるように力が抜け、眠りに落ちてばたりと倒れた

「そいつらを外に連れてって誰かほかの人に渡すんだ。僕はまだやる事があるから後で行く」

ドレディアはこくりと頷き、両脇に小ベビンネと勇者ンネを抱えて準備室の外へ出て行く
その際、植物のひんやりとした肌触りを不快に感じ、小ベビンネが「ヂィィ…」と辛そうなうめき声を上げた
それに反応し、倒れたチビママンネの耳がピクッ、ピクッ、と小さく動く
意識が確かなら何が何でも取り返しに行く所だろうが、寝不足の体に眠り粉は効きすぎた

「あれ?何ざんすかこのドレディアちゃん?」
「キュー、キュルルン」
「あらまおちびちゃんたち、私にくれるざんすか?、ありがとざんす〜
 チカちゃん、おちびちゃんのケージを持ってくるざんすよ」

こうして小ベビンネとチビママンネは再び離れ離れになり、
タブンネとあそぼうMIMIパラダイス・二日目が幕を開けた

76ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:05:48 ID:tYPZp40w0
二日目は初日にも増して客足が多く、開始20分前には会場前に長蛇の列が出来る程だ
社員たちの苦労もそれに伴って増える… かと思いきやそうでもない
他の部門から助っ人が手助けに入ってくれてよりむしろ昨日より余裕がある感じだ

「かーわいいー!」「餌だよ〜」「こっちおいで〜」
「ミィミィ!」「ミーッミ!」「ミィミ、ミィミ!」

場内の子タブンネ達も跳んだり跳ねたり、鳴いたり擦りついたりと餌をくれアピールに励み
大喜びで貰った餌を頬張る姿は客たちを大いに喜ばせた
人懐っこい子タブンネは客に抱っこされながら餌を食べたりもしていた
一緒に遊んだ子タブンネとの別れを惜しみ、連れて帰るとダダをこねる子供
可愛らしい小さな家族を迎え入れ、微笑みを隠せない老夫婦
カップルが子タブンネを可愛がる姿は、まるで本当の家族のようだ
滑稽な腰ふりダンスを披露し、餌のおひねりを大量に貰い大喜びの子タブンネ姉妹
新しいお母さんを見つけた甘えん坊の子タブンネ
せっかく貰った餌を横取りされて客の女の子に慰められる気の弱い子タブンネ
餌が欲しいのに怖くて自分から人間に近づけず、片隅でミィミィと泣き続ける小さな子タブンネの兄弟
会場のがやがやとした雑音の中には悲喜こもごもの人とタブンネの声が混ざり合っていた

「チィチィ… チィチィ…」

さて、会場に移された小ベビンネはどうしてるかというと、自分が置かれている状況に怯え戸惑っていた
チビママンネの暖かい腕の中で眠っていたハズなのに、目を覚ましたら昨日と同じような人ごみの中…
母親と再開し、一緒に過ごしていた時間が夢だったかのように思えるほどの急激な環境の変化だ


「ミィーミ!」「ミーミ!」「ミッミッ!」
「チィィ…」

しかし、その状況は昨日よりか幾分かはマシである
ケージは買い物籠から展示用の水槽に変わり、注意書きのポップは取れないよう結束バンドで頑強に固定された
これで昨日のようにゴミ箱と間違えられることも無いだろう
それに加え、勇者ンネが仲間に声をかけて護衛隊のような物を作り、ケージの周りを守っている
メスの子タブンネは周りを警戒しながらも時折ガラス越しに小ベビンネを慰め、
オスの子タブンネは人間が近寄ると気を引いて水槽に近づけないようにしていた
人出が増えて余裕ができた女子社員もマメに様子を見に来る事が出来
皆の助けによって小ベビンネはチビママンネが傍に居なくてもでもいくらか安寧を保っている
あくまでも昨日に比べたらの話で、常に泣きそうになってる状態ではあるが

77ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:06:51 ID:tYPZp40w0
『ご来店のお客様に連絡いたします
 本日、午後1時より、タブンネの赤ちゃんの授乳体験を開催いたします
 まるで天使のように愛らしい赤ちゃんタブンネたちを、この機会にぜひともご覧ください』

大したトラブルもなく社員たちが接客に追われているうちに、授乳体験ショーの開始を告げる放送が流れた
すなわち、チビママンネの手からベビンネが奪われる時がやってきたのだ

「…私が行きます」
「え?、大丈夫ざんすか」

女子社員は自らベビンネを連れてくると申し出た
気が利く社員は面倒な客の質問責めにあっていて動けない状況だったのだ
ざんす男は心配したが、女子社員は覚悟を決めていた
あのチビママンネに憎まれようが嫌われようが、
優しいお客さんの下で育ててもらう以外にベビ達が生き延びられる道は無いからである

「フーッ、フゥ…」

準備室の中のチビママンネは気が利く社員によって猿轡を噛まされ、足を手拭いで縛られていた
昨日の反省から、両手は自由にしてベビの世話ができるようにしている
あの最後に残った乳首は赤く腫れ、母乳はベビたちに吸い尽くされていた
しかし8匹のベビたちの空腹を満たす事はできていない

「フ、フゥ、フゥ!」

女子社員の顔を見たチビママンネは嬉しそうな顔をして塞がれた口でフゥフゥと鳴いた
この拘束から解放してくれると思っているからである
だが、女子社員は何も言わず目も合わせず、
部屋の片隅に置いてあるあのショッピングカートの乳母車を持ち出しベビーサークルの柵に横付けした

「フゥ…?」
チビママンネは覚えていた。怖い人間がベビを連れ去るときにあの道具を使う事を
そして困惑している。なぜ優しい人間があれを使おうとしているのかと

「ベビちゃんたち、おいで ミルクの時間だよ」
「チィ♪」「チチー♪」「チッチ!チッチ♪」
「フッ?!」

女子社員は柵の前でしゃがみながら淡々とした口調でベビを呼び寄せた
「ミルク」という単語を覚えていたのだろう、ベビ達は嬉しそうに女子社員の下に集まって行く
そして一番早く近づいてきたベビンネを抱き上げて籠に入れた

「フッ、フッ、フゥゥーー!!」

最初のベビンネが乳母車に入れられた瞬間、チビママンネはハイハイで女子社員へと向かっていった
溢れる涙を抑えることもせず、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして
その様は身体が大きくはあるがベビ同士の競り合いに負けて母親に甘えんとする小ベビンネそのものだ
やはり血のつながった親子である

そんな哀れなチビママンネも、抱き上げたベビンネが時折振り向いて母親を気にするのも
女子社員はなるべく見ないように、気にしないようにして心を押し殺しながら4匹のベビを載せていく

78ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:09:52 ID:tYPZp40w0
「フフィーーーーーーッ!!」

ベビーサークルの金策にしがみ付き、遠ざかる女子社員の背中に向かって叫ぶチビママンネ
それは怒りの雄叫びではなく、悲哀に満ちた懇願の叫びだった
まだ怒りをぶつけられた方が女子社員は気持ちが楽だっただろう
動揺から一度はぴたりと足を止めたものの、チビママンネを振り返ることもせず再び歩き出し
ベビが乗ったカートを押しながら部屋を出て行ってしまった

「チィチィ!」「チーチ…」

カートの上のベビたちはミルクへの期待もありながら、不安の色を見せ始めていた
もちろんみんなチビママンネが泣いてるのを気にしていたのだが
ベビのうちの一匹だけは女子社員の泣きそうになっている顔を、憐れむようにじっと見上げていた

「フーッ、フゥゥゥゥ!!フゥゥゥーッ!!! フィユゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

部屋に残されたチビママンネは4匹のベビたちを抱きしめながら激しく慟哭した
ベビを奪われた事だけではなく、女子社員に裏切られた事への悲しさに
信じきっていた優しい人間にベビを奪い去られるだなんて思ってもみなかった
今朝罪の意識に苦しんでいたのは何だったのか?昨日暴力から庇ってくれたのは何だったのか?
もう人間の事は何もわからず、何も信じられず、ただ嘆き苦しみ泣き叫ぶばかりであった

「ヂィィ…」「フィィ…」

選ばれなかったベビの方もチビママンネの感情が伝わってきて自分も悲しくなり、泣く寸前であった
空腹なのにミルクが貰えなかった悲しみもあったが
ちなみに最後に残ったベビの内約はチビママンネの実子が2匹、お隣さんのベビが1匹、第二飼育室の大ベビが1匹である

「あっ、チカちゃんごめん。機材の準備は終わったから早速始めてよ」
「…はい」

女子社員は胸が張り裂けそうな罪悪感を堪え、笑顔を取りつくろって司会を始める
授乳体験ショーは秘めた悲しみを知る由もなく盛り上がり、拍手と笑い声の中で順調に終わり
出演したベビたちは30分もしないうちに4匹とも売れていった
これは女子社員が慣れない営業トークで頑張ったからでもある

「フゥゥ〜ン!フゥゥ〜ン!!」

4匹のベビが全て売れていった後、準備室にはチビママンネの息が詰まった泣き声が響いていた
ベビーサークルの金柵を血が出る程に握りしめ、ガクガクと体を震わせている
連れ去られたベビの声が遠ざかっていくというのに、
止めることも追いすがることも、お別れの挨拶すらもできなかった
残ったベビたちは空腹でチィチィとお乳をねだり始めたが、今飲ませても一吸いで終わってしまうのは自分がよくわかっている
ベビたちに何もしてあげられない無力さに、自分もベビと同じように泣きじゃくるしかないのだ

79名無しさん:2017/06/28(水) 02:08:56 ID:z853ZngA0
更新乙ンネ
チビママンネざまああああwwwwww

80名無しさん:2017/06/28(水) 21:35:37 ID:2/Wt6G/Y0
ナイス!
小ベビンネは当分売れそうにないが、
その分苦しみも長く続くんだな

81名無しさん:2017/06/28(水) 23:58:57 ID:CncU5Viw0
勇者ンネの護衛隊も長くもちそうにない、護衛自体が売られて最後に小ベビンネが残りそう

82ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:21:46 ID:lwVIkV220
午後二時、会場に異様な客がやってきた
フリルがついた黒紫色の長いスカートのワンピースに、それと似たような色の無造作なウェーブがかかった長い髪
常に見開いたような目をした背が高い薄気味悪い女だ
その女は子タブンネに餌をあげる事もなく、ただきょろきょろと何かを探しながら会場をうろついている
異様な様に子タブンネたちは女を避けていき、場内の社員達は何かしでかすのではないかと警戒していた
女は闇雲に会場を歩きまわった後、ある場所でぴたりと歩みを止めた
小ベビンネのケージの前だ

「ミ、ミィ」「ミ、ミィ〜ン ミィ〜ン…」「ミッミッ!ミッミッ!」

気を引こうとしたり威嚇したりと、子ベビンネ警備隊は怖い女を小ベビンネに近づけまいと頑張っているが
女は気にする様子もなくしゃがみこんで注意書きと小ベビンネを交互に見比べている
自分を見下ろす紫の瞳に小ベビンネは恐怖し、声も出せずにケージの隅で丸まって震えていた

「店員さん、ちょっといいかしら…」
「はい、どういたしましたか?」

怖い女は近くでさりげなく見張っていた気が利く社員に声をかけた
不意を突かれたようで少し動揺した気が利く社員だったが、何とか普通に対応できた

「このタブンネ、怖がりってかいてあるけどどのくらい怖がりなのかしら?」
「そうですね、知らない人に触られたら暴れて泣き叫ぶくらいの人見知りで怖がりですね
 正直あまりお勧めできる子ではないです」
「いーえ… ちょうどそういう子を探していたのよ…。触ってもいいかしら?」
「嫌がって騒ぐと思いますが、まあ軽く触れる程度でしたら大丈夫ですよ」

嫌がると言ったにも関わらず怖い女は嬉々として小ベビンネに手を伸ばした
その手は獲物ににじり寄るアーボのようにゆっくりとした嫌らしい動きで小ベビンネに迫る

「フィッ?!フィッ!フィィィッ!!ゥヂーーー!!!」
「ふふふ、いい哭き声だわ…」

小ベビンネは迫りくる手に恐怖して狭いケージの中を必死のハイハイで逃げまどい
追いつかれて指先で触られた瞬間悲鳴をあげた
本来はタブンネが嫌がる行為はルール違反なのだが
止める役の気が利く社員は買ってくれるかもしれないという期待から黙認していた
周りの客たちも変人と関わり合いになりたくないという心理から助けてくれる様子はない
おまけに女子社員は休憩中である。つまり小ベビンネをこの女から救って人間はいないということだ

「キヂーッ!ギヂーッ!ギヂーッ!!」


首の後ろの皮を掴まれ、持ち上げられてしまう小ベビンネ
痛みと恐怖から大声で泣きわめき、股間からはポタポタと尿の滴が落ちる
弱弱しく短い手足を振り回して抵抗らしきこともするが、何の効果も意味も無いのは明らかだ

「このタブンネ買わせていただくわ」
「ありがとうございます。これがそのタブンネの値札になりますので、こちらを場外のレジに…」

小ベビンネの苦しみとは裏腹に、気が利く社員は嬉々として小ベビンネの値段とバーコードが書かれたカードを取り出す
やっと心配事がひとつ片付いたと安堵しているのだ

「ヂィヂィーッ!ヂィヂィーッ!」

この鳴き方、ベビンネが母親に救いを求める時の泣き方である
準備室のチビママンネもこれを聞いて歯噛みして激しく苦悶してることだろう
怖い女も気が利く社員もそんな事知る由もなく、値札を受け取ろうとしたその時

83ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:23:43 ID:lwVIkV220
「ミッミッミィーーー!!」
「な、何?」

怖い女が痛みと声に驚いて振り返ると、1匹の子タブンネがペチペチとお尻を叩いていた
勇者ンネである。小ベビンネの危機に居ても立っても居られず攻撃に転じたのだ

「ああっ、すいません。すぐにやめさせますんで」

すぐさま勇者ンネは気が利く社員に両腕を掴まれて持ち上げられたが、その攻撃の意志は折れない
怖い女をキッと睨みつけて、短い脚をバタバタと動かし眼前の敵に向かって当たらぬ蹴りを繰り出し続ける

「何?わたしと遊びたいのぉ?」
「ピィィッ!?」

怖い女は小ベビンネをケージに戻し、勇者ンネの眼前にヌッと顔を近づける。鼻と鼻がくっ付きそうな近さだ
眼前に広がる悪意に満ちた不気味な笑顔、見開いた紫の瞳、裂けたようなニヤついた大きな口
人間でも恐ろしいと思われるそれに、子タブンネである勇者ンネは耐えられなかった

「ヒッ!ヒュイッ!ピィッ!ヂュアーーーー!!!」

勇者はンネは一層激しく足をバタつかせた
だがそれは攻撃の意思などではなく、目の前の恐怖から必死に逃れようと足掻く哀れな様だ
両目をぎゅっと瞑り、悲鳴を上げながらもがく様にはもはや勇者の姿はない
その様子に怖い女は口角を上げて嬉しそうにエヘエヘと小さく不気味に笑い
攻撃に参加しようと身構えていた護衛隊の子タブンネたちは唖然として戦意を喪失していた

「やっぱりこっちの子にするわ。渡して頂戴」
「かなり荒れているようですのでお気を付けください」

怖い女は暴れる勇者ンネを蹴りが胸に当たるのも気にせず強引に抱き寄せた
気が利く社員は女の腕の中で暴れて怪我をするのではないかと心配したが
抱かれた瞬間勇者ンネはピタリと大人しくなった
もちろん安心しているのではなく、更なる恐怖で動けなくなっているのだ
その抱き方は赤ちゃんを抱っこするような優しい抱き方だったが、
腕の中の勇者ンネはガチガチと歯を鳴らしながら激しく震えている

「ではこちらの値札でお願いします」
「ありがとう、いい買い物したわ…」

怖い女は値札を受け取った後M勇者ンネを抱いたまま出入り口に向かって歩いて行く
その際、勇者ンネは震えながらも時折ミィミィと通り道のタブンネ達に何かを訴えかけていた
「さよなら、元気でね」「こいつに構わないで」「ぼくは大丈夫だよ」
鳴き声の意味は様々だが、その中に誰かに助けを求める言葉は何一つ無かった
仲間やチビママンネをこの恐怖に巻き込まないようにする勇者ンネの最後の強がり、いや勇気である
場内のタブンネ達は餌を食べることも、客に媚びる事も忘れ
これが今生の別れになるであろう勇者の姿をずっと見つめていた

「こんなに怖がって震えちゃって… 私の心が分かるのねぇ?」
「ミィィ…」

これからの勇者ンネの暮らしはそれはそれは恐ろしいものになるのだろう
だが心配はない。仲間を心配する必要も、守る為に戦う必要も、群れのリーダーの息子として振舞う必要もなく
思う存分恐怖と苦痛に泣き叫べるのだから

84名無しさん:2017/06/29(木) 04:32:44 ID:8zAw2Z9I0
盛り上がってまいりましたw

小ベビ命拾いしたみたいだけど
まだまだ恐怖が足りないよね

85名無しさん:2017/06/29(木) 21:53:29 ID:KLeRMVqE0
いいねぇw できれば勇者ンネの悲惨な生活と末路も書いてほしいものです

86名無しさん:2017/06/29(木) 23:07:15 ID:WBUiYk.c0
勇者・チビママ・小ベビンネの末路は気になるよねw
楽には死なせずゆっくり苦しめてくれると嬉しい!

そして小ベビンネには、紫女を上回る恐怖が待っていてほしい。

87ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:08:49 ID:AxR/HFe.0
その後、特に面白いこともなくあっという間に午後3時、最後の授乳体験ショーの時間だ

「ムフゥゥゥ!!ムフゥゥゥ!!」

今度は気が利く社員がベビを連れていくべく準備室にいるのだが、室内は荒れていた
ベビーサークルが尽く引き倒されて無造作に転がり
敷かれていたペットシートはズタズタに裂かれてて部屋中に散乱していた
チビママンネが怒り狂って暴れたからという事は想像に難くない
たぶんさっきのアレだろうなと気が利く社員はうんざりしながらも自分で納得していた
チビママンネは怒りの表情でフーフーと荒く息を吐いて威嚇を繰り返すが、ベビの姿は見えない
姿が見えないというだけで、気が利く社員は居る所はちゃんと分かっていた
寝床の毛布が不自然に盛り上がりモゴモゴと蠢いているのだから

「それじゃあドレディア、頼むぞ」
「ピチュチュ」
「ムフーーッ!」

目の前にあのドレディアを出されてもチビママンネは怯むことは無かった
自分の後ろのベビの事を想うと、心の底から力が湧いてくる
それが全身に満ち渡り、熱い闘志が漲る。これが愛の力というものだ、
そして愛するベビを守る為、小さなタブンネは大敵に立ち向かっていく。ハイハイで
だがその切なる愛の力も、顔面への眠り粉の直撃で一瞬で闇に沈んでいった

「フィ… フゥ…」

まさか戦うことすら出来ずにベビを奪われるとは…、チビママンネの無念は計り知れない
気が利く社員は悠々と毛布を剥がし、中にいた4匹のベビを回収し
練乳で機嫌を直してからカートの乳母車に載せてドレディアと共に準備室を去っていく
遠ざかる最後のベビたちの楽しそうな声に、チビママンネの閉じた瞳から一筋の涙が流れた

「なにあれ?」「きれーい」「あっ、赤ちゃんだ」「かわいーっ」
「チィ!チィ!」「チィ〜チ♪」「チッチィ〜♪」

ざんす男の案で会場までドレディアに乳母車を押させた所、客の受けは上々だ
ベビンネを世話する優しい森の保母さんか、
森からベビたちを連れて遊びにきたお姫さまにも見えるシチュエーションだ
実際は実母を昏睡させて掠め取ってきた鬼畜なのだが、その可憐な見た目からは何もわかるまい
見物客のの歓声にベビ達も楽しい気持ちになり、呑気にチィチィと可愛さを振りまく
普段は無表情な気が利く社員のドレディアも心なしかうれしそうだ

「兄貴、あのドレディアかなり強そうですぜ…」
「ああ…、どう見てもバトル用のドレディアだな、それもかなり鍛えてる」

客の中にもちらほらとドレディアの強さを見抜くものがいた
このセリフの男二人もそうだ、この男たちはこのイベントで使う子タブンネたちを調達した
あのペットポケモン業者の兄貴分と弟分である
二人とも朝から社長と共にイベントの様子を見に来ていたのだ
…のだが大金が入った直後に巨大デパートに来たもんだから社長がはっちゃけてしまい、
4時間も荷物持ちさせられながら買い物に連れまわされて今に至るというわけだ
そのため二人とも憔悴しきっていてかなりテンションが低い

88ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:12:30 ID:AxR/HFe.0
「ふたりとも!そんなところで見てないで中に入って近くで見ようよ〜」

一方、社長は夏休み中の小学生の如く元気いっぱいである。どこからそんな体力が出てくるのかは乙女の謎だ
三人揃って入場受付を済ませて中に入ると、ざんす男が早足で駆け寄ってきた

「社長さんも社員の皆さんもようこそお越し頂いてありがとうざんすよ
 お陰様でご覧の通りの大盛況ざんす!」
「いえいえ、こちらこそ大量に購入頂いてありがとうございます
 …ところで、授乳体験の方は大丈夫でしたか? 何かトラブルとかございませんでした?」

内心、社長は授乳体験ショーが上手くいくか不安だったのだ
ベビンネも子供も不確定要素の塊、どうしても順調にいくとは思えない

「あー、初回はトラブル続きだったざんすが、2回目3回目は順調そのものだったざんす
 ベビィちゃんたちが思いのほか素直ないい子で助かったざんすよ」

どちらかというよりは素直というよりは単純か楽天的と言ったほうが正しい
感情に敏感な性質が仇となって、ベビンネは好意の感情を向けてくる者に簡単になびいてしまうのだ
もちろん個体差はあり、簡単には心を開かない小ベビンネのような子もいるが

「ミッミ!」「ミーミィ♪」「ミーミ、ミー♪」
「あら、タブンネちゃんたち…」

どんなトラブルかを詳しく聞こうとした所で、社長の周りに5匹ほどの子タブンネが集まってきた
第一飼育室で社長が管理していた子タブンネたちだ
この子タブンネたちにとって社長は地獄のような生活の中、甘いオボンと微笑みと優しい言葉をくれた唯一の人である
そのため、たくさん餌をもらえるようになった今でも顔を覚えていて、そして慕っているのだ
最も、社長はタブンネの個体ごとの顔など覚えてはいないが

「ほらほら、ごはんだよ〜 あわわ、順番順番だよ」
「ミミ〜♪」「ミッミ、ミッミ」「フミィ〜♪」「ミリミィ?」

社長の周りの子タブンネはぞろぞろと増え、20匹近くにに囲まれてる状況となった
子タブンネたちは餌をねだったり足に擦りついて甘えたりと皆社長が大好きな様子だ
そんなタブンネ達に社長は少々窮屈そうにしながらもしゃがんで一匹ずつ手渡しで餌を与えていく

「ふへぇ〜、モテモテざんすね」
「どういう理屈かはよく分からんですけど、社長は子供のタブンネに好かれるタチなんすよ」
「やっぱりちょっとタブンネに似てるからかな?」

弟分がタブンネに似てる発言をした瞬間、社長の餌をやる手がぴたりと止まった
周りの子タブンネたちは恐怖し、ゾゾゾッと一斉に後ずさりして社長から距離を取った

「リマくん、女の子にそんなこと言っちゃあダメだよ…」
「ひっ?!!すいませモガガ…」

社長はおもむろに立ち上がり、謝ろうとする弟分の口に残りの餌を全て突っ込んだ
弟分は冷や汗を流しながらモガモガと苦しんでいる
タブンネは可愛いがぽっちゃりしたイメージがあるので、
女性にタブンネみたいに可愛いなどと迂闊に言うと嫌な思いをされる事があるから注意が必要だ
社長のような最近体重が増加傾向で気にしている女性には特に

「あのバカ思いきり地雷踏み抜きやがって…」
「わ、私も言葉には気をつけるざんすよ」

社長がなんとなくタブンネに似てるという事はざんす男も兄貴分も常々思っていた事で
ざんす男は言わなくて良かったと安堵して、兄貴分は呆れるばかりであった

「ボフフェエ!!」
「フミィ〜ン!」

耐えられなくなった弟分の口から餌の塊が鉄砲水のように噴き出した
その吐き出されて地に落ちたグチャグチャの餌に一匹の子タブンネが駆け寄り、四つん這いになって食べ始める
それは偶然にも、あのざんす男が会社を訪れた際に餌をあげた浅ましいタブンネだった

89ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:17:57 ID:AxR/HFe.0
混沌極まる状況だが、ショーが始まると皆そっちに意識が集中し
授乳体験ショーで子供たちが喜んでいるのを見ているうちに社長の機嫌はすっかり治った、
そして終わった後の余韻も消えたときに社長はある事を思い出す
最初のショーで起きたトラブルの詳細をざんす男に聞こうとしていたのだ

「小さいベビィちゃんが触られるのを嫌がっちゃって、ショーに出た子供が泣いちゃったんざんすよ
 何とか代わりのベビィを用意して事なきを得たざんすけどね
 あとは授乳の時哺乳瓶の蓋を外して飲ませた子供がいて…」
「あらら、それは… ところで、その子供を泣かせたという赤ちゃんタブンネは何所に?」
「まだ売れ残ってる筈ざんすよ。あー、あの水槽の中で隔離して販売してるざんすよ
 触っただけで大騒ぎするざんすから正直売れる気がしないざんす」

ざんす男とともに小ベビンネの水槽へ様子を見に行く社長たち
表情や言葉には出してないが、社長は不良品を選別できずに売ってしまったことを後悔し
そして八つ当たり気味に小ベビンネに憤慨しているのだ

「うぇ〜… これは売れないわけだよ〜」
「こりゃ完全に怯えきっちまってますぜ」

社長一行が水槽を覗き込んだ時、小ベビンネはチィとも鳴かずにケージの隅っこで丸くなって震えていた
怖い女のショックは大きく、これでも周りの人間たちから必死に身を隠しているつもりなのだ
護衛隊は既に全滅していた。人間に積極的に構っていったのが災いし売れるのが早かったのである

「この子だったら返品して頂いても大丈夫ですよ」
「ホントざんすか! いや〜良かったざんす。悪いざんすね契約書に返品不可ってあったざんすのに」
「いえいえ、悪いのは私どもの方です。ここまでペットに向かない子が混ざるのはこちらとしても想定外でした
 本来なら選別で弾くべき個体でしたのに気づかずに売ってしまって…」

社長たちが返品について色々と話し合っている所を気になって、女子社員はわりと近くからその様子を見ていた
それに気づいたのは兄貴分である

「おっ、司会をやってたお嬢さんですな、どうかしましたかい?」
「えっ… いえ、あのおちびちゃんを買ってくれるのかなと思って」
「いや、俺たちはここのタブンネたちを納入した会社でね、あのチビを返品する方向で話が進んでるんだ」
「返品!?」

驚いて叫んでしまった女子社員にざんす男と社長が振り向いた
女子社員は失礼なことをしてしまったと焦ったが、
社長がにこやかに笑って軽く挨拶をしたので安心し、思い切って気になることを聞いてみることにした
女子社員が社長に会った第一印象はとても柔和で優しそうで可愛らしく、
子タブンネたちに好かれそうなお姉ちゃんといった感じで
チビママンネの乳首をむしり取った犯人だとは想像にも至らなかった

「あの、あの、返品された後そのおちびちゃんはどうなるのでしょうか…?」
「うーん、うちの飼育室で少しずつ人に慣らしながら育てて、人に懐くようになったら出荷 …かな」

これは社長の体裁を保つ為の嘘
子供を泣かせるようなベビンネなど、くびり殺した後ドブ川にでも捨ててやるつもりでいるのだ

「じゃあ、じゃあ、この子のお母さんタブンネは…!」
「あーそうですな、元いた場所に帰しましょうか」「うん、それでいいよ」

これに答えたのは弟分、本当の事を言っている
野生に返せばまた来年にベビンネを産んでくれるという期待を込めてのことで
乳首をむしり取られてるという事を知らないからの提案であるが

「あの、あの、お母さんタブンネとおちびちゃんを一緒にはしてあげられないんですか?
 このおちびちゃんはお母さんがすごく大好きで、離れたら怖がって泣いちゃって
 粉ミルクよりもお母さんのおっぱいの方が大好きで、…とにかく一緒じゃなきゃ生きていけないんです」
「いやしかしそう言われてもこっちも商売だから、せっかくの商材をみすみす無駄にすることは出来ませんぜ
 でもまぁアンタもずい分入れ込むねぇ」
「この子はベビィちゃんたちのお世話の担当もしてたざんすから、情が移っちゃったみたいなんざんすよ。いやはや」

たとえ恨まれようとタブンネの子供たちを飼い主の下へ送ると決心していた女子社員だが
小ベビンネだけは実の母親がいないと生きていけないだろうと思い続けていた
水槽の中で怯え震える小ベビンネを見ると、その考えに疑う余地はないと確信できる
他のベビンネたちなら優しい飼い主の下で幸せに生活できるだろうが、この子だけは…

「そんな… おちびちゃん…」

女子社員は黙りこくって少し考えた後、注目する4人の前で意を決して口を開く
この状況から小ベビンネを救える方法は、もはや一つしかない

「このおちびちゃん、わたしが買います」

90名無しさん:2017/07/01(土) 02:24:56 ID:p1QSbCu20
乙ンネ

91名無しさん:2017/07/01(土) 04:53:56 ID:4oOWLKvA0
乙乙
小ベビンネはくびり殺された後ドブ川に捨てられる運命は回避したが
チカちゃんの手にかかるコースに変更か

92名無しさん:2017/07/01(土) 07:21:48 ID:QnuqWmzc0
主婦とかならともかく、仕事が有るのに
こんなクソめんどくさい奴飼えるのか?

93ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:50:06 ID:ESC9g.5c0
「ふぇっ!?チカちゃんが買うざんすか!でも大丈夫ざんすかね?このおちびちゃん飼うの難しそうざんすよ?」
「あのお母さんタブンネも一緒に買うつもりです」
「それはいかんざんすよ、あのマーマさんは借り物ざんすのに」
「あ、そういう事なら返さなくて大丈夫ですよ。オマケとしてつけてあげてください」
「なら大丈夫ざんすね、それじゃあ私もオマケして特別に仕入れ値で売ってあげるざんすよ」
「ありがとうございます!」

トントン拍子で買うことが決まり、女子社員は水槽をよいしょと持ち上げて控室に持っていこうとした
買うことが決まった以上ここに置いとけないという理由だが

「あー、買うんだったらこれに入れちまったほうがいいですぜ
 一番安いやつだけどこんなチビなら一個で大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます」

そう言って弟分から手渡されたのはモンスターボール
女子社員が小ベビンネにそっと押し当ててみると、小ベビンネは光とともにボールの中に吸い込まれ、
手の中で2、3度揺れたかと思うと、しゅんとその動きを止めた

「私、ちょっと控室に行ってきます!」

お礼もそこそこに女子社員は控え室に急ぐ、早くチビママンネに会わせてあげたいという気持ちからだ
一人暮らしを始めたばかりでポケモンを2匹も飼うのには不安はあったが、今は楽しみの方が勝っている

「これからずっと一緒かぁ… ふふふ」

準備室に向かう途中で、女子社員は色々と妄想していた
フカフカの寝床を作ってあげて、でも寂しがったら皆で一緒のベッドで寝て
オボンの実とポケモン用のおやつ、どっちが好きかな?
おちびちゃんが大きくなったら、一緒に公園にでも行ってポケモンのお友達も作ってあげよう
大きくなったらきっと怖がりも直ってて…
さみしい一人暮らしで、帰りが待つポケモンが居ることはどんなに素敵な事だろう!
女子社員の中で、タブンネたちと一緒の生活への期待がどんどん膨らんでいった

「フゥゥ…フゥゥ…」

一方、控室ではチビママンネが目を覚まし、そして絶望していた

目覚めたときには居て然るべきはずのベビの姿はなく、愛しい声もすでに遠く聞こえない
ショーの後購入希望者が殺到し4匹とも一瞬で売れてしまったのだ
さらに外からの小ベビンネの声も聞こえなくなっている
ベビたちがいなくなった部屋はシンと静かだ
自分がここで大勢のベビの世話に奮闘していたことが夢だったかと思えるほどに

「フフゥ… フゥ… フフ…」

ひとしきり絶望しきった後、チビママンネはもそもそと奇妙な事を始めた
糞や尿やヨダレのシミがついたペットシートの切れ端を拾い集め、寝床の毛布の上に乗せていく
掃除をしているかと思われるかもしれないがそうではない、ベビたちの痕跡を集めているのだ
知らない人から見れば汚く臭い紙屑だが、チビママンネにとっては大切なベビがここにいたという証、
すなわち形見。ベビのうちの誰も死んではいないが
こんなことをしてもベビが帰ってくる訳ではない、何の意味もないのはチビママンネも分かっている
だがそれでもやらずにはいられない、心が壊れてしまいそうなのだ

94ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:51:17 ID:ESC9g.5c0
「タブンネさん!」
「フィフィィ?」

そんな淀んだ空気の準備室に女子社員が飛び込んできた、チビママンネとは対照的にとても嬉しそうな顔だ
そして突然帰ってきた女子社員に目を丸くして驚くチビママンネ

「ダブンネさん!私と一緒に家へ帰りましょう!友だちに… いや、家族になるんですよ!」
「フゥ?フゥ?フゥゥ??」

チビママンネは女子社員が言ってることがまるで理解できなかった
そして拘束を外してあげようと迫る女子社員に怯えながら後ずさりで遠ざかる

「どうして逃げるんですか?、それを外してあげるんですよ」
「フゥッ!フゥッ!フゥッ!」

女子社員がさらに近づくとハイハイで逃げ出して
寝床の上に置かれた紙片に覆いかぶさり、そして抱きしめた
それは自分の体を盾にして子供たちを守ってるかのような姿だった

「タブンネさんどうしたんですか、なんでそれを…」
「フゥッ!フゥッ!フゥーッ!」

それでもなお猿轡を外そうと差しのべられた手を、チビママンネはペチンと叩き払った
そしてフウフウと悲壮に女子社員へ訴える、「いじめないで、これ以上私から何も奪わないで」と

「フゥーッ!フゥーッ!フゥーッ!」
「タブンネさん…」

酸欠で顔が赤くなっても、チビママンネは涙を流しながら塞がれた口から強く息を吐き続ける
威嚇してるようにも許しを乞うようにも見えるその様は、まるで天敵にでも追い詰められてるかの如くだ

「…そうですよね、私はタブンネさんの大切な赤ちゃんを取っちゃったんです
 一緒になんか、居たくないですよね・・・」

95ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:05 ID:ESC9g.5c0
女子社員は悟った、自分は絶対に許されることはなく、チビママンネとは二度と仲良くなれない事を
小べビンネを救ったと思いこんで舞い上がって、チビママンネの気持も何も考えないで…
楽しい暮らしを呑気に妄想していた自分を殴りたくなる
今の自分がチビママンネにしてあげられる事は、ただ一つしかない

「アレを捕まえるにゃやっぱりポケモンで少々痛めつけなきゃ厳しいんじゃ」
「いや、チカちゃんの目の前でそれをやるのは可哀そうですよ
 僕のドレディアが眠り粉を覚えてるからそれで頑張りましょう」
「それならなんとかなりそうですな、そうしましょうや
 それでダメならこっそり兄貴のルカリオの真空波を…」
「この際奮発して高いボール使っちゃおうよ」

一方、準備室の扉の前では会社の会社の3人と気が利く社員が何やら話し合っていた
連れ帰るにはチビママンネも捕まえさせなきゃいけないという事に後で気づいたからだ
作戦の方針を決めた後、4人は扉を開けた

「あ、皆さん…」
「チカちゃん、それは…」

3人の目に飛び込んできたのは、嬉しそうに小ベビンネを優しく抱きしめるチビママンネと
その姿を見て涙を流しながら微笑む女子社員だった
彼女の足元には、蝶番の所を踏み折られたモンスターボールが

「あ… ごめんなさい。せっかく貰ったものなのに…」
「いや、気にしねぇでいいですぜ。いや、でもそいつらを買うのをやめちまうんで?」
「いいえ、買う事には変わりありません。でも…」

女子社員は社長の顔を見つめてこう切り出した

「あのタブンネさんの親子を、元いた場所に帰してあげてください」
「えぇ! 1万5千円も払って野生に帰しちゃうの!?」
「いいんです、それがあの子たちにとって一番幸せですから
 それで、もう捕まえずにそっとしておいて欲しいです」

女子社員の選択に皆が困惑していると、チビママンネが部屋に危険な人間が集結してる事に気づき
小ベビンネに覆いかぶさって自分の身を縦にして守ろうとした

「チィチィ♪」「フォッ?!」

母親が傍にいると小ベビンネは暢気なもので、乳首に吸いついて母乳を飲みだした
社長はそれを見て「あれ、1個ミスってたかな?」と口から零してしまったが
運よく女子社員に聞かれる事はなかった

96ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:49 ID:ESC9g.5c0
「私、あのお母さんタブンネにすごく嫌われちゃったんです。だから、もう一緒には居られないんです
 …でも、最後にもう一回だけ」

そう言いつつも女子社員はチビママンネに歩み寄る
チビママンネ息を荒くして警戒したが
女子社員はそれも気にせず床に膝をつき、チビママンネを抱きしめた

「…ファ?」

チビママンネが感じた女子社員の心の音は温かく優しく、そして切ない
それは昨日、怖い人間から守ってくれた時に抱きしめられた時と何も変わらぬままだった
だったら、なぜあの時自分からベビたちを奪ったりしたのだろうか…?
いくら考えようが、チビママンネの頭では納得する答えは出てこない

「それじゃ、眠らせますよ」
「まったく羨ましいぜ、俺も早く眠りたいよ」

その後チビママンネは眠らせてから箱に入れて持ち出す事が決まり
ドレディアによって再び粉がかけられた
さすがに日に3回もかけられると効きが遅くなってくるようで
眠っているというよりかは微睡んでいるといった様子だ

「チィ… チィ…」

朦朧したまま箱に寝かされる際、
小ベビンネが女子社員に向かってその小さな手を伸ばしているのが見えた
それはまるで、別れを惜しんでるかのように
この人見知りな子が好きになるって事は、やっぱりあの人はいい人間なのかな…
そんな事を最後に思い浮かべ、チビママンネの意識は闇に落ちた


「・・・ミィ!?」

チビママンネが目を覚ました時、そこは車に揺られる暗い箱の中だった
またベビを奪われたのかと一瞬焦ったが、
自分の隣からは聞きなれた小さな可愛らしい寝息が聞こえてくる
ホッと一安心したが油断は出来ない、外からはあの恐ろしい男二人と社長の声も聞こえてくるのだから

「あんないい子に飼われたらあのタブンネも幸せだと思うんだがなぁ」
「そうですぜ、代わりに俺が飼われたいぐらいでさ」
「うぇー、リマくんの変態!」
「まー、一人暮らしだっつうし、それで2匹飼うのは辛ぇもんがあるなー」
「大人になると1メートル超えちまいますからね、そうなると餌もかなり食うし」

97ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:53:42 ID:ESC9g.5c0
そうこうしてるうちに3時間近く経ち、チビママンネの故郷の林に辿り着いた

「それじゃタブンネちゃんたち、出てきて〜」
「ンミミ…」「チィ・・・」

3人は林の近くに車を停め、そこでチビママンネ親子を解放した
2匹ともマーカーをつけておき、間違えて捕まえないように配慮も万全だ
11月の午後6時はもう夜だが、星と月が林を薄明るく照らしている
社長はビデオカメラを回していた。後で証拠として女子社員に送るつもりなのだ

「ここがタブンネちゃんたちの故郷だよ〜」
「ミィ… ミィ…!」「チィ!」

チビママンネは小ベビンネを抱きながらキョロキョロと辺りを見回し、聞き耳を立てた後
トテトテと走りだして脇目も振らずに林の藪の中に入って行った
一刻も早く社長たちから逃げたかったのだ

「…行っちゃったね」
「…はい」
「…私たちも帰ろうか」

社長一行も車を出して帰っていく。3人とも往復6時間の長旅でとても疲れていたのだ

「ミィ!ミィ!ミィ!」

わが子を落とさないように気をつけながらも、林の中を全速力で走るチビママンネ
帰ってこれた事が嬉しくて気持ちは逸るばかりだ
思えば地獄のような三日間だったが、思い出すのはあの女子社員の事だ
一緒にベビの世話を頑張って、おいしい食べ物をくれて、怖い人間から守ってくれて
痛かったお乳を治してくれて、おっぱいも出るようにしてくれて…
悪い人間たちからこの子を取り返してくれたのもあの優しい人間かもしれない
ひょっとしたら、優しい人間は悪い人間にに脅されるか騙されるかして
無理やり酷い事をさせられていたのかもしれない
もしそうだとしたら、悪い人間から助け出して、ここに連れてきてあげたかったな…

「ミィ!」
「ミッミ!」

チビママンネの妄想は不意に浴びせられタブンネの声によってストップさせられた
その声の主はあのお隣さんタブンネである

「ミ、ミィィ…」

本来ならば再会を喜ぶべき場面だが、チビママンネは後ろめたさを感じていた
ベビたちを全員連れ戻してくると言って飛び出したのに、助けられたのは僅かに自分のベビ一匹
お隣さんのベビは一匹残らず人間に連れ去られてしまったのだ

「ミッミミィ! ミィ!」
「ミミィ…!」

それにも関らず、お隣ンネは再会できたことに素直な大喜びだ
お隣ンネは自分のベビの事を人間にさらわれた時点で死んだと思って諦めていた
もちろんベビたちが可愛くない訳はないし、大事じゃない訳でもない
以前に思い知った人間の強さと恐ろしさと兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネの看病
この二つの要因での断腸の思いでの決断である
チビママンネも2日帰って来なかった時点で死んだものと思っていたのである
しかし、この自分よりずっと若い小さなタブンネは諦めずに人間の棲家へと押し入り、
遂には一匹だけであるがわが子を取り戻してしまったではないか
その勇気と奇跡にはただただ賞賛し喜ぶばかりだ

98ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:57:09 ID:ESC9g.5c0
「ミィミ!ミィ」
「ミィーミ!!」

お隣ンネの喜ぶ顔で心も軽くなったチビママンネは一緒に巣のある場所に戻った
そこにあるのは懐かしい我が家
しかも、ドリュウズに破壊された屋根が奇麗に修復されている
留守の間にお隣ンネが直してくれていたのだ

「ミィ… ミィ…」「チィ!チィ!」

巣の入り口の前、生きてここまで帰ってこれた事に、チビママンネは嬉し涙を流す
腕に抱かれた小ベビンネもぱぁっと嬉しそうな笑顔で
巣に向かって小さな両手を伸ばし「早く入ろう」とせがんだ

幸せの絶頂のような様相だが、チビママンネとお隣ンネはある事に気が付いていなかった
いや、気が付いていたけど気にしなかったというべきか
いやいや、「気にしないようにされていた」というのが一番正しい表現だろう
自分のすぐ後ろを、四足歩行のポケモンが付いてきた事に

「あのタブンネ親子、あの後どうなるのかな?」
「んー、結構大丈夫じゃないですかね。あの辺にゃでかい肉食ポケモンもいないし
 食い物だって根っこが食えそうな草やドングリもありましたし、山の芋のむかごだって見かけましたぜ
 まぁー赤ん坊が沢山いたら持たねぇでしょうが、母一匹子一匹なら何とかなるでしょう」
「へぇー、じゃあ、なにも心配いらないねー」
「タブンネの心配するなんてらしくないですなぁ」

車の中で呑気な一行だが、社長もまたある事に気がついていなかった
タブンネたちとは違って撮影に夢中で素で気が付いていなかった…
自分のカバンの中に入れていたモンスターボールがパックリと口を開けている事に

「フィッフィーー!」
「ミィ?」「チィィ?」「ミ?」

巣に入ろうとするチビママンネと小べビンネは、不意に聞こえてきた澄んだ高い声に振り返る
そこで月光に照らされて小さな親子を見つめるのは長い耳とリボンの触角を風に揺らすピンク色のポケモン
「シルフィ」と名付けられた社長のペットのニンフィアだった

99名無しさん:2017/07/02(日) 06:16:45 ID:pGRz5IdI0
あーあwww

100名無しさん:2017/07/02(日) 07:23:06 ID:Xj4zVvbI0
小ベビにとって一番の恐怖と絶望とは何か…
あとはわかりますね

101名無しさん:2017/07/02(日) 11:51:54 ID:uz9vm7IU0
助かるはずだったのに自ら破滅して様は面白いな、しかもお隣さんまで巻き込んでww
何はともあれ、これ以上女子社員の手を煩わせなくて良かった。

102名無しさん:2017/07/02(日) 23:23:59 ID:TGS7MXro0
チカちゃんは早くいい男を見つけて幸せになってほしいね
タブンネに心を動かされてはいかん

103タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:16:23 ID:Gixssyhs0
イッシュ地方カラクサタウンの一角にタブンネショップ ミィミィが開店した

文房具や小物、学用品などから子タブンネやタブンネの餌などペットショップの

ようなこともやっていた

店員は店長とタブンネ三匹だけだがタブンネ好きにはたまらない店だった

だがそれはタブンネ好きでない人にとってはどうでもいい店ということでもあった

人口の少ないカラクサタウンではだんだん経営が悪化し店は人手に渡る事になった

104タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:25:35 ID:Gixssyhs0
俺はAタブンネショップミィミィとかいう妙な趣味した店を買い取ったものだ よろしく

早速だが友達のBとCとともに店を改装だ

ちなみに一応俺が店長でこいつらが店員 ジャンケンで勝ったからな

まず奥の部屋からだ部屋の隅にはポケモン用のトイレを設置

壁の何ヶ所かに給水機と餌箱

入り口付近に卵を温めやすい毛布とカゴを置いた

俺たちは元は部屋のリフォームが仕事だったからこの手のものには慣れている

105タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:36:29 ID:Gixssyhs0
店と一緒に買い取ったメスタブ三匹はBのルカリオが連れ出して町の外れにいる

部屋を一旦Bらに任せ町の外れを目指す

タブンネどもを見つけると気づかれないようにトゲキッスを出し

作戦を実行する

まずトゲキッスはルカリオに神速を放ち受けたルカリオは大げさに倒れる

メスンネどもは何が起きたかわからずミーミー騒ぎ出す

すかさずキッスが一匹の耳にエアスラッシュを放つ

片耳が綺麗に切り裂かれ「ミギャァアアア」と耳を抑えて泣き叫ぶ

うるさいと思っているともう一発今度はもう片耳も取れ

バシン バシン キッスの波動弾が触角を撃ち抜くと気絶した

他の二匹は声も出ず足もとを黄色く濡らしている 汚ねえ

106タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:51:04 ID:Gixssyhs0
ビュッ バシン ビュッ バシン 他ニ匹もマランネになって気絶すると

ルカリオが起き上がり小型の波動弾をメスンネの口に入れ声帯を潰した

相変わらず器用なやつだ

俺が出て行きトゲキッスをボールに戻すとルカリオはタブンネどもに

癒しの波動を打つ

メスンネどもは目を覚ますと目の前にいる俺に何か言いたげに口をパクパクさせるが

声が出ない まあ出たところでミィミィしか言わんしいいだろ

店に帰ると奥の部屋が出来ていたのでメスンネたちを入れついでにトゲキッスも放つ

タブンネたちの顔が恐怖に染まる

お前らは一生子作りだ

ひとしきり行為が終わり合わせて20ほどのタマゴができるとトゲキッスを戻し

餌箱に産地直送の新鮮な生ゴミを入れる

タブンネは母性が強いからどんな相手とのタマゴでも育ててしまう

奴らも早速悲しそうな顔で卵をカゴに入れ毛布をかけている

ただ悲しそうだがマランネなので笑える

今日はここまでにして部屋に鍵をかけ帰宅する

107名無しさん:2017/07/05(水) 16:16:34 ID:Gixssyhs0
今日も朝からいい天気だ

店に入るとチィチィチィチィすごい声だ

やはり防音設備は必要だなタブンネ農場から世話用メスンネを調達に行っているCに

メールし防音材を買ってきてもらおう

今日は店舗の表の改装だ

5分ほどしてきたBとルカリオと大型の段ボールを運び入れる

108タブンネショップ:2017/07/05(水) 18:10:59 ID:Gixssyhs0
ダンボールから水槽やゲージを出し組み立て式の台に乗せていく

前のオーナーが残していった「タブンネ」「用」「エサ」っていう文字が

可愛らしく書かれたプラスチックの薄い板を

エサ用タブンネに並び替えて貼り付ける

そうしているうちに午前中が終わった

品質チェック兼食事を兼ねてトゲキッスとガブリアス、ヒヒダルマを出して

タブンネの子育て部屋へ

ドアを開けた途端タブンネたちは部屋の奥に逃げて子供を抱えてこっちを睨んできた

109名無しさん:2017/07/05(水) 19:07:25 ID:bT6jz0Mo0
エサ用タブンネ・・・ベビンネを肉食に食わせるとか?ww

睨んでくるのは腹立つな、
子供を大人しく差し出すくらい従順にしつけないと

110タブンネショップ:2017/07/05(水) 20:22:50 ID:Gixssyhs0
すると突然ガブリアスがグルルルルと音を立てた

途端にママンネたちは子供を前に立てて尻を見せて丸くなった

さすがガブと撫でようとすると恥ずかしそうにしている

どうやら腹の音だったようだ

何はともあれベビンネを三匹回収してBがどこからともなく持ってきた七輪をセットした

水槽に入れているベビンネはヒヒダルマとルカリオに覗き込まれて声も出ない

111名無しさん:2017/07/05(水) 20:51:13 ID:Gixssyhs0
水槽に入れた三匹のうち一匹を掴み持ち上げるとぢーぢー

とものすごい声で鳴いて涙とよだれを垂れ流した

ベビの首にロープを巻き上から吊るし七輪の金網にギリギリ足がつくようにして

七輪に火を入れる

もう二匹はポケモン達にやったらキッスが見事に両方真っ二つにしたので

仲良く食べている

キッスからしたら自分の子供なはずだがタブンネだから気にしないのだろう

112タブンネショップ:2017/07/05(水) 23:05:48 ID:Gixssyhs0
七輪が熱くなってくるとチィチィと騒ぎながらステップを踏んで踊り出した

肉球が焼ける匂いが漂い始めるころ太った首からロープが取れて腹から熱くなった

金網に倒れこんだ すかさずトングで押さえつける

チィギャァァという鳴き声を聞いていると鳴き声が小さくなるほどいい匂いがしてきた

最後にチィという声がすればホカホカ炭焼きベビんねの出来上がりだ

113名無しさん:2017/07/05(水) 23:10:40 ID:CA40zzBw0
いいねぇ、やはりベブンネは焼くのが一番

114ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:12 ID:wkpBM6l60
「ミィィ?」「ミィ?」

捕食者、いやそれ以上にタチの悪いケダモノを前にしているのというのに、チビママンネとお隣ンネはポカンと呆けていた
なにせニンフィアはイッシュには生息していないポケモンで、タブンネ達はその存在すら知らない
容姿から判断しようにも自分たちと同じ桃色の毛並みに青い瞳の容姿はタブンネたちに親近感を覚えさせる
その鳴き声は敵意や威圧感を全く感じさせない澄んだ優しげな声、
そして躊躇なく自分たちの前に姿を現す無邪気さ
これらによってタブンネたちが捕食者と見抜けないのも無理はなかった
つまる所勇者ンネと全く同じ勘違いである

「ミィミ?」

お隣ンネの巣の入り口から子タブンネが出てきた。あの一昨日兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネである
幸い大した怪我ではなく、お隣ンネの献身的な介抱の甲斐あって2日のうちにすっかり完治していた
お隣さんの声と知らないきれいな声がしたので気になって様子を見たくなったのだ

「フフィー♪」

蹴られンネが出てきたのを見るとシルフィはにっこりと笑い、スタスタと歩み寄った
それは獲物に飛びかかる獣と言うよりか、オモチャに駆け寄る子供とも言うべきなんとも無邪気な歩き方だった

「ンミ?」
「フィッフィ!」

体高が自分の身長の2倍程もある知らないポケモンが眼前にまで迫っているというのに、
不思議なことに蹴られンネは全く恐怖を感じていなかった
触覚からの波動のせいもあるが、そのあまりにも天真爛漫な仕草に警戒心を持てなかったのである
ポカンと呆けている蹴られンネを目の前にしてシルフィはとても嬉しそうに一鳴きし
まるで皿に盛られた餌でも食べるかのようにその耳にカプリと食いついた

「ヂギュピーーーーー!!!」
「ンミッ?」「ミミッ??」「チチッ!?」

あまりにも突然な激痛に蹴られンネは泣き叫び、成獣二匹は何が起きたかわからずただ驚くばかりだった
シルフィは加えたまま引っ張り上げ、ブルブルと首を振って蹴られンネを振り回す
手始めに耳を噛みちぎろうとしているのだ
兄貴分の蹴りにも勝る耳が千切れる激痛に蹴られンネの悲鳴はさらに大きくなる

「ミィッ、ミィーーーーッ!!」


わが子の危機に気づいたお隣ンネが全速力でニンフィアに向かっていく
片手間で出した波動では思う心からくる闘志を抑えきることは出来なかったのだ

「フィッ?」

その叫びにシルフィは軽く驚いてピタリと振り回すのを止め、うっかり口の力が緩んで蹴られンネを地に落としてしまう
そしてあろうことかその隙にお隣ンネに子供を奪還されてしまった

115ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:47 ID:wkpBM6l60
「フィッフューー!」

シルフィはムッとして高い声で吠えて威嚇したが、声が怖くないのでお隣ンネは意に関さず
子供を抱きかかえたまま巣の中へ飛び込むように潜り込む
逃げ場のない巣に逃げ込むのは愚策かと思われるかもしれないが、このお隣ンネに限ってはそうではない
お隣ンネはなかなか聡明なタブンネで、逃げ切れる作戦があった

夜の巣の中は月の光さえ届かぬ真の闇で、敵はこちらを捕捉することに難儀するだろう
巣の中はタブンネ臭で充満しているので、鼻が利く敵も自分たちを察知するのは困難だ
一方、自分たちは耳のレーダーを使えばある程度は暗闇の中でも自由に動き回れる
敵が巣の中で右往左往している隙にもう一つある出入り口からこっそり逃げ出し、仕上げに入口を塞いでしまう
こうすれば安全な場所まで逃げるのに十分な時間が稼げるだろう
この作戦は父タブンネから受け継いだ生き抜く知恵であった

「ミッグ… ヒグゥ…」「ミーミィ…」

グズグズと泣く蹴られンネを抱きしめて慰めながら、
お隣ンネは巣の中心部で聞き耳を立てあの捕食者が入るのを待ち構えていた
暗さゆえに分からないが、蹴られンネの右耳は幾つもの裂け目が入りズタズタだ
治ったとしても元の形には戻らないだろう

「ミ…?」

その予想に反し、謎の捕食者は何時まで経っても巣に入って来ない
諦めてくれたのならそれが一番だが、気配は未だ入口の前に居座ったままだ
こうなると外に出ることも出来ずただじっと待つしかない
親子で息を殺して耐えていると突然巣の中に甘い匂いがする風がヒュウと吹き込んできた
外は風もない筈なのに変だなと思ったお隣ンネだったが、
思慮する合間もなく体の風が当たっている部分に猛烈な痛みが走った

「ギギギギィッギ、ギィィ!!」「ギヂヂヂヂヂヂ!ヂヂィ!!」

その痛みはお隣ンネ親子にとって全く未体験の痛みだった
例えるなら、グラスファイバーの粉塵を肌の柔らかい所に擦り込まれるような
金属ブラシで全身をメッタ刺しされるような、そんな感じのチクチクした嫌さがある激痛だ

これはニンフィアが使う「妖精の風」という技で、
フェアリータイプのエネルギーを帯びた桃色の風を相手に吹き付けるという技である
しかし屋外や広い場所では相手に当たるまでにエネルギーが飛び散ってしまい
相手に当たる時には大した威力では無くなっている為に弱い技とされているが
このタブンネの巣のようなかなり狭い密室では話は別だ
風に乗ったフェアリーエネルギーが飛び散ることなく濃密なまま容赦なく襲いかかるのだ

116ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:20:23 ID:wkpBM6l60
「フューッ、フィー、フィ〜」
「ググググッ!グググッ!ギギ…!」「フ… フィ…」

悲鳴から効果を確信したシルフィは、加減することなく妖精の風を巣の中に送り続ける
狭い巣の中では風が逃げ場なく全体に吹きわたり、さながら妖精の食器乾燥機といった様相だ
その地獄と化した我が家で、お隣ンネはわが子に覆いかぶさって風から守っていた

妖精の風が当たる箇所、すなわち背中全体は激痛と共に毛が抜け落ち、じわりと血が滲む
敏感な耳はそれにも遙かに勝る想像を絶する激痛に覆われ、お隣ンネの精神を幾度となく気絶寸前に追い込んだ
瞼にも風が当たって血が滲み、目を開けようものなら失明は免れないだろう
呼吸も満足にできない。一息吸っただけで肺に激痛が走ったからだ

だがそんな拷問にもお隣ンネは子供を守るために歯を食いしばって必死に耐え続ける
激痛に震えながらも庇う姿勢は崩さず、床に敷かれた枯草の床から僅かな土臭い空気を吸って息を繋ぐ
蹴られンネもそんな母の強さを触覚から感じ取り、息苦しさと痛い隙間風を懸命に耐えた


「…ミ、ミ?」
「フィッフィ…」

反応が芳しくないのが気に食わず、シルフィは妖精の風を煽るのを止めた
巣の中では突然風が止んだことに親子でひとまずはホッとしたが、
お隣ンネは油断をせずにすぐに次の行動に移った
入口を完全に塞いで風を送れないようにしようと、床の藁をひと固まり手に取った瞬間である
その時、タブンネの親子は暗闇の巣の中で月を見た

一方、巣の外のチビママンネであるが、怯えるわが子を抱いたままでは攻撃する事もできず、
かと言ってピンチの仲間を見捨てて逃げることも出来ず
つまり何をしていいか分からずただうろたえながら見ているだけだった
その見てる前でシルフィの体が光り、何か光の塊のようなものを巣の内部に吐き出していく
そしてキーン、キーンと高い音がしたかと思うと、お隣ンネの巣の屋根がまるで電灯のようにパッと光った

「ミ、ミィ?!」

異常な事態に困惑し、恐れるばかりのチビママンネの目の前で屋根は6回も光った
この頃になると一応お隣ンネが攻撃されているということだけは分かっていた
光るたびに巣の中からお隣ンネの悶え苦しむ音が聞こえてきたから
もはや小ベビンネは関係なく、ただ恐怖で足が竦んで動けなかった

「フィフィー!」
「ミッ?!ミッミ!」

巣の反対側からガサガサと草を踏む音が鳴り、シルフィはタタタと小走りでそこに駆け寄り
チビママンネも距離を取りながらも焦ってその後を追った

「ミヒィ・・・!」「フフッフフィ〜♪」
「グジィー グジィー…」


巣の中から這い出てきたそれが目に入った瞬間、チビママンネは戦慄し、シルフィはフィッフィと嬉しそうに笑った
居た、血と粘液に塗れた赤い肉の塊。お隣ンネのなれの果て、全身の皮を失った姿である
もちろん顔の皮も全て無くなっており、眼球もなく、折れた歯と歯茎を剥き出しにしたそれは何ともおぞましい
肘から先が無くなって白い骨が突き出た腕、ひん曲がって動かなくなった足で地面を這い、
地面に血の跡を残しながらゆっくりとではあるが逃げるように巣から遠ざかっていく

ここで説明しておくとシルフィの放った光の玉はムーンフォースと呼ばれる技だ
現在確認されているフェアリータイプの技の中では最も強力とされている技で
月から由来するエネルギーを炸裂する光弾として打ち出すという何とも美しい技だ
しかしシルフィのそれは見た目とは裏腹に余りにも残酷無比である

何の加減もなく闇雲に巣の中へ打ち出した光弾はお隣ンネ直撃はしなかったものの、
狭い巣の中での破裂は妖精の風のダメージを残していた半身の皮膚を容赦なく吹き飛ばした
その後のムーンフォースも直撃だけはしなかったものの、手足目耳、ついでに残ってた皮まで奪い去り
今の肉ダルマ状態になるに至ったというわけだ

「グジッ、グジッ、グジィィィィ」

お隣ンネ余りの負傷に恐慌して巣から逃げ出したかと思うだろうが、そうではない
この逃走は自分が食われているうちにわが子を逃がすという最後の作戦、哀しき最後の母の愛なのだ
だが誤算だったのはシルフィは食うために蹴られンネを襲ったのではない
タブンネで遊ぶために襲ったのだ

117ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:22:25 ID:wkpBM6l60
「フィフィフィッフィィ〜」

お肉丸だしのお隣ンネを前にしてシルフィがやった事は捕食ではなく、妖精の風だった
コレにムーンフォースやったらすぐ死んで面白くないという悪魔的な判断からの技選択だ

「ガゥゴギュルブゲヂギギュビグバァァアアアアア!!!!」

全身急所となったお隣ンネの全身に妖精の風は万遍無く染み入り、
その激痛の上塗りにもはやタブンネの声では無くなった奇声を上げながら
グネグネと激しく体を捩らせたり転がったりしながら悶え苦しんだ
粘液まみれに体じゅうに枯草の切れ端が付着し、それはそれは悲惨なサマだ
暴れているうちに腹が裂けて腸が露出し、それにも妖精の風が当たって苦痛はさらに倍増した
血のあぶくを吐き散らし、はらわたを振り乱しながらのたうち回る様はこの世のものではない
夜の林の片隅に、一匹のポケモンによって地獄が体現していた

「フィフィフィフィフィフィーーーwwww」

シルフィはその命を尽くしたリアクションに興奮して大笑いし、
チビママンネはうずくまってその地獄から必死に目を逸らしていた、
大泣きする小ベビンネを抱きしめ、逃げるために震える足を必死に動かそうと心の中で頑張っているのだ

「ミィッ・・・ ミィッ… ウッミィィィィィィィ!!!」
「フィィ!フフフィ〜♪」

リアクションも鈍り、終わりも近付いて来てるだろうという時に、
突然藪の中から蹴られンネが現れ、シルフィに突進していく
お隣ンネからも草むらに逃げ込んで動かないでと言いつけられていて、その通りこっそり抜け出して隠れていたのだが
母の悲痛な声を聞き、最後の家族を守るために戻ってきてしまったのだ

だが、庇われていたとはいえその体は無事ではなく
方耳は完全に千切れ、片手も手首から先を失い、体の所々で皮が剥がれ赤い肉が見えていて、
普通の子タブンネなら動けなくなる程の辛い怪我だろう
しかし、この蹴られンネはどんなに怖くとも痛くとも、最愛の母を見捨てるなんて出来やしないのだ
その悲痛な勇気と愛に、シルフィは小笑いしながらのムーンフォースで応えた

「ミミーーーーッ!!」
「……!!!」

チビママンネは叫んで蹴られンネを止めようとしたが既に遅く
光弾は胴体の真ん中に直撃し、驚く間も悲鳴をあげる間もなく
蹴られンネは閃光とともに赤い霧となって消えた
骨や肉の破片がポタポタと降り注ぎ、枯れかけた草むらをおぞましい赤い斑点で飾った

「グジィーグジー、グジュグギュルルァゴギィギュググググググググ…」

その時、糸が切れたようにお隣ンネはその命を終えた
耳も目も既に無いというのに、どういう訳かわが子の死がわかったのだろう
その死に顔には安らぎなど一切なく、妖精の風責めの苦悶にも勝る歪みきった絶望の表情だった

「フィッフィ♪ フィッフィ♪」

対照的にシルフィは笑顔で小躍りするように跳ねて大喜びだ
ママ(社長)から禁止されてる妖精の風やムーンフォースもこっそりたくさん使っちゃった♪
でもまだまだまだ遊びたい、こんどはちっちゃい子と遊びたいなぁ
たとえばあのちっちゃい子!

そうしてシルフィは、泣き崩れたチビママンネの腕の中の小ベビンネに熱い視線を向けるのだった

118名無しさん:2017/07/06(木) 19:23:59 ID:Ol0WuxzU0
タブンネは草むらのハッピーセット。
これを教えたのが、同族の勇者ンネwwww

蹴られンネは無謀だったけど、片耳片手損失した子タブが
野生を生きれる訳無いから楽に死ねる最善の選択に感じた。

119名無しさん:2017/07/07(金) 01:40:31 ID:snJqtsJY0
乙乙!盛り上がってまいりました!

120名無しさん:2017/07/07(金) 03:20:28 ID:mFo2WtWo0
ついに小ベビンネ処刑の時ですね!

戦わず逃げもしないチビママンネ、
想像以上のポンコツぶりw

121名無しさん:2017/07/09(日) 23:25:30 ID:ijU4HYBc0
おおーwニンフィアやりおるw
ここまで来たらタブンネだけに絶望を与えるために生きているようなものだなw

ニンフィア「僕と契約して、タブンネ虐待愛好家になってよ!」

122名無しさん:2017/07/10(月) 01:27:10 ID:0AoNiqfM0
チギュピーっていう泣き声に萌える

123名無しさん:2017/07/13(木) 19:17:15 ID:6uRddFuk0
今話題になってるヒアリをタブンネに襲わせたい

124名無しさん:2017/07/15(土) 03:59:48 ID:3XRDVj260
更新が待ち遠しい

125名無しさん:2017/07/28(金) 21:49:10 ID:7CMONjYQ0
ラストの展開に迷っておられるのだろうか?

126名無しさん:2017/08/02(水) 23:44:05 ID:6uZfIeqM0
のんびり待つのが正解よ

127名無しさん:2017/08/03(木) 00:51:28 ID:dVDxYrFQ0
過去の作品を読み返してたら
「チギュピー!」って叫び声が結構有って面白かったw

128名無しさん:2017/08/03(木) 07:32:57 ID:XgiV6czs0
自分は「チイチ♪」って喜び声がムラッと言うかイラッとしてきて嗜虐心が煽られます

129ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:08:18 ID:9tntAZXM0
「ミィィィ…」

シルフィと目が合ったその時、チビママンネはガクガクと震えだした

悪い人間たちの元からからやっとの思いで我が家に帰ってこれて、
最後に残ったベビちゃんと、仲良しのお隣さんと平和に暮らせると思ってたのに…
あっというまに仲良しのお隣さんは赤ダルマに、可愛かったその子供は赤い飛沫となって消えた
冒険の終わりに待っていたのは平穏などではなく、血に飢えた捕食者
いや、捕食者ですらない、あまりにも残虐極まる桃色の皮を着た悪魔である
そして今、その凶悪な眼差しはこの腕の中で震え泣く幼いわが子に向けられているのだ

「ウッ、ウミィ… ウミィィィィィィィィ!!!!!!」

チビママンネは恐慌して泣きながら走り出し、ただガムシャラに木々の隙間を逃げ続けた
足がが震えてもつれ、何度も転びそうになったがその足は止まらない
母親の恐怖の感情を感じ取って小ベビンネは大泣きし、
シルフィはそれを頼りに足に余力を残しながら悠々と追ってくる
それはまるで幼児と大人の鬼ごっこの如き圧倒的な差だ
命を掛けた追いかけっこの間、シルフィの頭に浮かんでいたのは
母親の前で赤ん坊をいたぶり、その反応を見て楽しむという邪悪極まりない遊戯である

「フミミン!フミミン!ンミーーーッ!!!」
「フィッフィッフィ〜〜♪」

どんなに頑張ろうとも両者の距離は詰まっていき、それが1メートル半にまで縮まった次の瞬間…

「ンミミッ?!」

「バチッ」と破裂したような音とともにチビママンネの両腕が突然軽くなり、
そこにあって然るべきはずの小ベビンネの姿が忽然と消えた
掌と腕にヒリヒリと痺れるような痛みだけを残して
チビママンネには知る由もないが、電光石火という技をシルフィが仕掛けたのだ

「ヂィィィィー!!! ヂィィィィー!!!」
「ン、ンミィィィィィィィィィーーーーッ!!」

悲鳴にハッと振り返ったチビママンネの目に映ったのは、
見ただけで気絶してしまいそうな有りうべからざる光景だった
一番の甘えっ子で、いつもチィチィとママに甘えてきたあの子が
どんなに情けない姿を見せても、最後までママだけを頼ってくれたあの子が
自分のベビも、友達のベビも、知らないべビもみんな奪われて、
優しい人間のお陰で最後にたった一匹だけ守りぬけたはずのあの子が
悪魔に足を銜えられ、ヂーヂーと泣き叫びながら逆さ吊りのままじたばたともがいているのだ
しかも噛まれた所からタラタラと血が流れ、お尻と尻尾の一部を赤く染めている

「ミミーッ!!ビィィーッ!!」

チビママンネは大慌てで取り返そうと両腕を掴んで引っ張るが、シルフィも口を離すことなく引っ張り返す
もちろんその引っ張り合いの負荷は小ベビンネの体に掛かることになり
足首の噛み傷はさらに広がり、両肘はコキリと脱臼してしまう

「ウゴバァァァァァァーーーーー!!!」
「ミッヒ?!」

小ベビンネはさらに増した激痛に泣き叫び、それにチビママンネはハッと気づいて手を放した
ここが南町奉行所のお白洲ならばチビママンネは子供を取り返せていた所だが
残念なことにこの小さな林に大岡越前はいない

130ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:09:05 ID:9tntAZXM0
「ミィ… ミィ… ミィ…!!」

祈るように返してほしいと涙ながらに懇願するチビママンネだが、
それに対する悪魔の返答はまるでぬいぐるみを弄ぶかのように小ベビンネを振り回しながらの拒否であった

「フミ、フミ、フミ〜〜〜ン」

その挑発に対するチビママンネのリアクションは、涙ながらに額を地面に何度も叩きつけての連続土下座であった
母親なら激怒し、反撃に出て然るべき暴挙ではあるが、恐怖する心がそれを止めていた
先の出来事からも判るように、チビママンネは母性が強く子供のために辛苦に耐え抜く強い心はあるのだが
どうしても暴力だけには滅法弱いのである

「フィッフィw」

そのブザマな有様はシルフィを大いに喜ばせ、笑いで顎が緩ませる、
その時、小ベビンネは牙から解放され地に落ちた
叫びすぎて喉を傷めたのであろう。その母に助けを求める鳴き声はガラガラに濁っていた

「ヂイヂィ! ヂィヂイ!」
「ミミミミィ〜〜〜!!!」

情けない歓喜の声を上げ、ペタペタと地面を這いずり小ベビンネに手を伸ばしたチビママンネ
しかし手が触れるよりより早くシルフィは再び小べビンネを銜え上げてしまう。今度齧った所は右耳だ
再び返してと懇願するチビママンネをシルフィは首をプルプルと振ってそれを拒否した
小ベビンネは振り回され、耳を根元から裂く激痛の悲鳴が夜の林に響く

「フィッ!!」
「ンミッ!?」

ベビの耳は弱く、遠心力でブチッとた易く体から離れ、
小ベビンネはその勢いで70センチほど吹っ飛び土の上に投げ出された
あまりの痛さにもはや泣き叫ぶ事もできず
うずくまって痙攣しながらグミッ、グミッ、としゃっくりにもにたうめき声で泣き続けている
生き血が滴る千切れた耳はシルフィがコリコリと食べてしまい
その始終を見たチビママンネはガクガクと震え戦慄した

おちびちゃんの耳は一生元に戻らない。どうしてこんな事に…
涙を流し続けた小さな母の下瞼はヒリヒリと赤みを帯びていた
今日という日ほど、青い瞳が乾かぬ一日はなかっただろう…

「ミィッ… ミィッ… ミィ!!」

哀れな母親は投げ出されたわが子に駆け寄る、
しかし、素早く回り込んできた悪魔にいとも簡単にと赤ん坊を奪われてしまった
次に噛みつかれたのは尻尾だ
またもシルフィは首を振って振り回すが、先ほどよりもかなり動きが激しい
肉が千切れる感触と飛んでいくのが面白かったのだろう
さっきのような事故ではなく、今度は意図的に千切ろうとしているのだ
しかし尻尾は耳に比べて流石に丈夫でどんなに振り回してもなかなか千切れない
その為シルフィはベビをいっそう強く振り回し
チビママンネは取り返そうとそこに手を出したものの
手に顔に激しくわが子を叩きつけられて指は数本折れ、鼻血は出る
それでも諦め事無く何とか掴もうと頑張るが取り返せる気配はまるでない

131ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:09:38 ID:9tntAZXM0
「ンギ゙ィィィィィィィィィーーーー!!!!!!」
「ン゙ミ゙ィ!!?ミ゙ィ!」

「バチン」という太いゴムが切れるような大きな音と同時に、小ベビンネは再び飛んで落ちた
すかさずチビママンネはトタトタと痛めつけられたわが子に駆け寄るがその目前にまで近づいた途端…

「ギッオゴゴゴグオッシュ!ゴブギャァァァァァァ!!!!」
「ンミッ??!」

どういう訳か、小ベビンネが今まで聞いたこともないような激しい濁った声での悲鳴を上げたのだ
ハッとして小ベビンネをよく見てみると、ピンクの肉が露になった血まみれの無残な尻から
グニャグニャした紐のような物が伸びているのだ
そしてそれを自分が踏んでしまっている事に気がつく
チビママンネはこれが何なのか知る由も無いが、皆さんはお判りであろう。これは小ベビンネの腸である
千切れる際に尻尾の周りの皮が下の方に裂けて肛門を巻き込み
吹っ飛ぶ際に尻の皮と共に肛門が取れてしまっていたのだ

「フミミ、ミィ!!」

痛がってる様子から一応は体の一部だということだけは理解できたチビママンネ
慌てて足をどけ、下半身が赤く染まりきったのわが子を素早く抱き上げる
ようやく悪魔の牙からわが子をその手に取り戻す事が出来た
しかし、安らげるはずの母の腕の中にいる小ベビンネは苦痛に顔をゆがませ
口をぱくぱくとさせながらクィー・・・クィー…とか細い苦しそうな声で鳴き続けている
その声は母に救いを求める声だとチビママンネは痛いほど理解できていたが
飛び出したはらわたが地面に触れ夜風に晒され、母親に踏まれるという想像も出来ぬほどの苦しみに
癒しの波動も使えぬ未熟な母タブンネが出来ることなど何一つなかった

「フィッフィッフィ?」

一方、悪魔シルフィはというといまいち状況が掴めず、尻尾がついた血まみれの肉片を口にしながらポカンとしていた
そして母の腕に抱かれた玩具から伸びる紐のような物に興味が移る
それは網の目のような血管に赤い血が流れ、ヒクヒクと鼓動する小さな腸
肉食獣の本能のためだろうか、人間には気味悪く嫌悪するであろうそれに強く惹かれ
何の気なしに前足でその先端ををベシベシと叩いて玩具にし始めた

「ゴギュウルルルグボボッ!!グギギィグギギグゥ!!!」

シルフィが叩くのに同調して、小ベビンネは腕の中で激しく暴れまわる
大腸が1メートル半も離れた小ベビンネに導線のように激痛を直に伝えて来るのだ
苦痛のあまり、小ベビンネはここが母親の腕の中だということも忘れたように荒れ狂う
口の端に赤みの混じった泡を吹きながらヘドバンの如く頭を四方八方に振り回し
それが何度も母親の顔面に当たり痣を作らせた

「ミーミ!ミーミミィ!」

チビママンネは自分の痛みも忘れて必死に宥めようとするが、
小ベビンネが感じている苦痛はそんな事で和らぐような甘いものではない
遂には赤ん坊とは思えないほどの大暴れによって抱きしめる腕が滑り、再度地面にわが子を落としてしまう
シルフィはその時のドサリという音に気をとられ少しだけ腸遊びを止めた
小ベビンネは普通なら痛がって大泣きする所だろうが、地面に横たわったままハァ、ハァと大きく息を吐き続けている
弄るのを止めたことによって苦しみが和らいだからである
落ち葉が積もる地面に打ち付けられる痛みなど、獣にハラワタを直に弄ばれる地獄の責苦に比べたら愛撫にも等しい

「キィッ!!ピィッ!!クキィィィィィィ!!」
「フィッフィwフィッフィw」

シルフィが再び腸で遊び始めたのだ
もはやどうしたらいいかわからなくなっている母の眼の前で小ベビンネはビクンビクンと激しく悶え苦しみ、
泣きわめき白目を剥きながら落ち葉の上をのたうち回る
腸の先端を刺激される度に身をよじらせながらバタバタと暴れる構図
それはまるであのポンプを握ると跳ねるカエルの玩具の様である

「ミ、ミィ・・・
 ミィミィ!ミィミィ!ミーミ、ミッミ、ミミミ、ミィ!!…」

命がけの大冒険の末にたった一匹守り抜いた小さなベビンネ
その命よりも大切なわが子が無残にも玩具にされる様をあまりにも間近で目の当たりにし、チビママンネは思い、叫び訴えた
ベビちゃんがこんなにも苦しんでいるのに、どうしてあなたは喜んでるの?
怖いくらいに遠くへ遠くへ連れ去られて、悪い人間にひどい目に遭わされて、兄弟もお友達もいなくなって…
それでも、優しいひとに出会って助けられて、ようやくこのお家にまで帰ってこれたんだよ
ぴこぴこした小さなお耳も、ふんわりしたちいちゃな尻尾も、お空とおんなじ色のお目目も
とっても、とってもとっても可愛いのに、どうしてそんな酷い事が出来るの?
あのお母さんも男の子も、おちびちゃんも、だれも何も悪いことなんかしてないよ…

132ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:10:31 ID:9tntAZXM0
「ミィーッ!!ミィーッ!ビィーッ!!」
「フィ〜w」

チビママンネが声の限り叫ぶの心からの訴えを、シルフィは鼻で笑って流した
たかが使い捨てのオモチャ風情が何を訴えようとマトモに聞いてやる気などないのだ

「ギョグァァァアアアアアアアアア!!!!キハァァァァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーババババババブァ!!!!!」

そしてその必死さを煽るように腸を噛みしめながら引っ張り、小べビンネに一際大きな悲鳴をあげさせる
それは、普通に生きていたら一生出すことはないであろう声の、赤ちゃんが絶対に出してはいけない声の、
口からはらわたを吐き出すが如き狂気と苦痛を孕んだ凄絶な絶叫だった

「フィフィ〜ン♪フィィ〜〜♪」
「ミ、ミィ…」

その叫びにシルフィは大いに喜び、腸を銜えたまま嬉しそうに鼻歌を歌い
チビママンネあまりの光景には泣くことも喚くことも出来ずにガクガクと震えながらただただ絶句していた
そんなチビママンネに、シルフィは腸を口にしたままニッコリと笑いかけた
リアクションが思ったのと違うのでさらに挑発を重ねようというわけだ

「ミィィィィ… クィィィィ…!」

その効果は覿面で、恐怖により縮み上がっていたチビママンネの怒りが再びふつふつと湧き上がってきた
どうしてあんな悲しい苦しい叫び声を聞いて、笑っていられるの?
こんなに可愛いベビちゃんを苦しめて痛めつけて、ズタズタにして泣かせるのがそんなに楽しいの…?
べビちゃんが死んじゃったら、みんなが悲しむんだよ!
わたしも、ここにはいない優しい人間も、いつかここに帰ってくるパパンネも・・・
女子社員と夫ンネの顔が頭に浮かんだ瞬間、怒りとは別の熱いものが湧き出してきた
それは立ち向かう勇気である

「ギィーッ!グミ゙ィィーーーッ!!!」

咆哮を上げ、チビママンネは目の前の悪魔に捨て身の突撃を仕掛けた
それは昔のポケモントレーナーによって「捨て身タックル」と名づけられた技で
本来ならチビママンネの錬度では使えないはずの技だ
だが、心体の全力を以て真っ直ぐ怨敵に突撃するそれは奇しくも技であるそれに一致していた
その勢いにシルフィは突き倒されて腸を放し、チビママンネもまた反動でドンと強く尻もちをついてしまった

133名無しさん:2017/08/05(土) 08:20:33 ID:1b2treDc0
首を長くしてお待ちしてました

134名無しさん:2017/08/05(土) 17:29:54 ID:WikkpBy20
腸をいじるとは思いもよりませんでした!
耳も食べられてまさにハッピーセットですねw

135名無しさん:2017/08/05(土) 20:06:58 ID:Jb2T.oN20
ウゴバァァァァァァーーーーー!!!
グミッ、グミッ
ギッオゴゴゴグオッシュ!ゴブギャァァァァァァ!!!!
クィー・・・クィー…
ゴギュウルルルグボボッ!!グギギィグギギグゥ!!!
キィッ!!ピィッ!!クキィィィィィィ!!
ギョグァァァアアアアアアアアア!!!!キハァァァァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーババババババブァ!!!!!

小ベビの悲鳴の表現が、逐一最高すぎるwww素晴らしいwwww

136名無しさん:2017/08/06(日) 11:45:19 ID:m.FBWBAQC
ニンフィアってこんな性格だったの?!イーブイ進化形の中で一番凶悪じゃ
同じ属性でピンクってとこに敵がい心があるのかな

137名無しさん:2017/08/06(日) 12:54:14 ID:UIBeVwtM0
肉食であるという設定はありますね
凶悪なのは個体差かと

138名無しさん:2017/08/06(日) 18:07:41 ID:W5R8YGQ60
べビンネに無理矢理口を開けさせて触覚を突っ込み、「自分で噛みちぎって食べろ。でないと殺すからな」と脅してみたい

139名無しさん:2017/08/07(月) 20:47:53 ID:J4qGePqU0
想像してたよりも凄惨な痛めつけ方で素敵です!

残った身体パーツも滅茶苦茶に解体されてほしいwww

140ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:28:38 ID:F.uk4T/o0
「ミ、ミィ!」

倒れた事で一瞬安心して、わが子に注意を移したのがいけなかった
シルフィが素早く立ち上がりチビママンネに飛びかかってきたのだ
チビママンネは慌ててそれを受け止めて喉笛を噛みちぎられる事だけは避けることができ、
結果的に両者は押し合いの体制になった

体躯も膂力も大分負けているはずだが、チビママンネは何とか地面に押し倒されずに踏ん張っている
子を思う母の心
その奥底から湧き出る怒りによって小さな母の身躯には普段の何倍もの力が漲っていた
愛の力を以てしても押し倒されずに踏んばるのが精一杯なのが悲しいところだが

「ンミ…! フミィ…!」

組み合っている最中、チビママンネの耳はシルフィの心の奥底にあるもの
この鬼畜以下の所業を笑いながら為す邪悪な心の元、その正体を感じ取っていた
それは何の珍しくもない、肉食の生物が持つありふれた狩猟本能、そしてポケモンとしての闘争本能
発散される事無く心の底でドス黒く凝り固まったそれらが、シルフィの心を醜悪極まる悪魔に歪めているのだ

141ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:29:20 ID:F.uk4T/o0
チビママンネに判るのはこの程度の事だが、ここで少しシルフィが何故このような残忍な性格に成るに至ったのか
その来歴をもう少し踏み込んで説明しておこう
元々シルフィはアローラ地方・アーカラ島の野に生きる幼いイーブイであった
それがトレーナーであった社長の妹に捕獲されて彼女の島巡りの旅に加わったのだ
社長の妹は姉とは違い、本当に優しく思いやりがある性格であり
時を待たずしてシルフィは仲間のポケモンたちと同じように戦いを以てトレーナーの助けになりたいと思っていたのだが
扱いはその思いとは真逆の物であった

幼さゆえの力不足、そして愛くるしい見た目のため無理な実戦投入を躊躇われ、
学習装置やリゾートアイランドのアスレチックといった安全な手段で
戦わずして力をつけていくという悶々とした日々を過ごす羽目となる
それでも社長の妹の事は大好きで、可愛がられていくうちに仲良しになりニンフィアに進化し、
地味な努力の結果練度も上がり十分に実践に耐えうる力を身につけた
だがその時には既に遅く、社長の妹は既に島巡りの旅を終えてしまっていた

社長の妹は旅を終えた後はリーグに挑戦せずに普通の生活を選び
シルフィもまた戦いとは無縁の日々を送ることとなる
そしてある時社長が実家を訪れ、可愛らしさに一目ぼれしたため譲り渡されたというわけである
その後のペット暮らしは言わずもがな平和だが退屈なものだ
美味い飯も暖かな寝床も上等な玩具も十二分に与えられ、新しい飼い主とも気が合う
だが、シルフィは常に飢えていた

上に述べた境遇だけではこのような凶悪な性格には成るに至らない
シルフィを狂わせたのは、他でもない社屋で飼育されている子タブンネ達であった
もちもちふっくらとした餅かマシュマロのような柔らかさを思わせる体系、
心に残るミィミィチィチィとか弱く何所か切なさを含んだ鳴き声、
思わず飛びつきたくなるぴこぴこフリフリと扇情的な耳と尻尾
ケージの格子越しにあるその愛くるしい肉の塊は、シルフィの捕食者としての本能を容赦なく焚きつけた
アローラのイーブイとその進化系は人の管理の下でも本来の獣性を大いに残している
何代にも渡るブリーディングによって野性を失いかけている他の地方のそれとは大いに違う
これは地方毎のポケモン図鑑の表記の違いを見比べても判る事だ

シルフィもまた同じく野性を心の隅に置いたままであるが、彼は自分が人に飼われている身分ということをよく理解している
あれらを傷つけるなどしたら飼い主に迷惑がかかってお叱りを受けるであろう事を察し
格子の向こうに決して手を出すことは無かった

辛抱の日々の中、シルフィは子タブンネたちを狩り殺す様を妄想する事で自分を慰めていた
現実で満たされる事無く妄想だけを続けていくうちに、その内容は日々過激さ、陰惨さ、残酷さを増していく
脳内に悪魔を植え育てるが如きその行為は、人知れぬうちにその心までも闇に染めていった

142ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:29:55 ID:F.uk4T/o0
社長に木の実や菓子などを与えられた時、わざわざ第一飼育室にまで持って行って子タブンネたちの目の前で食べることがあった
貧相な餌しか与えられぬ子タブンネたちに御馳走を食う様を見せつけての憂さ晴らしかと思われるだろうが、真実はなお悪い
この時、シルフィは妄想の中でタブンネを喰っていたのだ
目の前のオボンを、ポフィンを、血に塗れて悶え苦しむベビンネに見立て乱雑に千切り喰らう
傍目には餌をやや乱暴に遊びながら食べているようにしか見えないが…
甘味に飢えた子タブンネ達にとっては羨望極まる光景だが、その実は蒲焼の匂いだけで白米を食うが如き惨めな食事であった

そしてある時、シルフィの夢は唐突に叶った
あの子タブンネの反乱に困り果てた男二人に呼び込まれた時である
生きたベビンネを目の前にして、もはや理性も忠義も何もかもが吹き飛んでしまった
思う様目の前の肉を引き裂き喰らい、必死に仇を討たんとする小さな愛と勇気を腹ごしらえに蹂躙した後
シルフィの心に訪れたのは束の間の満足と喜び、そして地の底よりも暗く深い嗜虐への飢え
この喜びを大好きな飼い主と分かち合いたく、ベビンネを銜えて社長のもとへ走った

あの時の勇者ンネと餌食となるベビと出会った事が切欠で、理性という殻を破って魔獣シルフィが現世へと産まれ出たのである

143ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:30:33 ID:F.uk4T/o0
チビママンネがその悪魔と組み合うこと2分弱、動けぬ間にも小ベビンネの命の灯火は刻々と小さくなっていく
しかしチビママンネは何もできない
少しでも力を抜こうものなら眼前にあるこの牙が己の喉に向かう事が容易に想像出来るからだ

一方、シルフィの方はというと次の一手、この遊びのフィナーレに相応しい強烈な一撃を思いつき
何の躊躇もなくそれは実行に移した

「ミミッ!!?」

シルフィの顔面がチビママンネのそれに当たりそうな程に近づいたかと思うと
チビママンネの視界は月に覆われた

その光により目が眩んでいる隙に、シルフィは身を翻してチビママンネから離れる
チビママンネは何のつもりなのか分かりかねたが、間もなくぞわぞわとした胸焼けのような不快感に襲われた
ふと自分の胸を見てみると、提灯のように赤く光っているのが見て取れる
口から体内にムーンフォースを撃ち込まれたのだ

「ンミ… ンミ? グィィィィィィィ??!!!! ジビーーッ!!!」

疑問に思う間もなく不快感は熱さへ、熱さは激痛へと胸の中で目まぐるしく形を変え
食道をゆっくりと下に降りながらチビママンネの体内を蹂躙していく
想像を絶する激痛にのたうち回り、両手で胸を加減なく搔き毟る
その胸は古木のささくれの様に皮膚がめくれ血の合間に剝き身の胸肉を覗かせ
搔き取られた無数の桃色の毛玉がタンポポの綿毛の様にふわふわと宙に舞う
胸の中にある苦痛の元を素手で掻き出さんとしているのだ
余りの激痛に気が狂い分別がつかなくなった事による、正しく狂気の沙汰であった

ブリュリュリュィビチチチィ!! ジビビビビビビ グロロロロェ!

全身が悲鳴を上げ、崩壊しかけているチビママンネの身体から逃げ出すようにあらゆる物が外へと躍り出る
大便、小便、屁、胃液と胃の中身、汗、涙、涎、鼻水。いずれも血の赤みを帯びていた
ムーンフォースの光の塊は止まることなく、五臓六腑を蹂躙しながら体内を下っていく
今度は腹を裂かんばかりに掻き毟るが傷ひとつつかない
既に手の爪が全て剥がれ落ちてしまっていたからだ
一時も頭から離れなかったわが子の姿が、声が、露と消えるほどの苦痛
先ほどまでの母としての覚悟など最早消し飛んでしまっていた

「ギッヒ… ギィィィィィィ!!!!グビィィィィィィィ!!!!」

狂乱の末、チビママンネが最後に取った体勢は
中腰で前かがみにしゃがむ和式便器に跨っているかのような排便の姿勢であった
意外に思えるかもしれないが、物凄く腹が痛い時に取る体勢と考えれば自然な事だろう
とにかくもう、この光の塊を何としてでも体外へひり出してやろうとしているのだ

「キィィィィィィィィィィィィ!!!!!アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「ボムッ」という爆発音、そして閃光と共にチビママンネの姿はシルフィと小ベビンネの前から消えた
ムーンフォースが尻の中で炸裂し、その勢いでで吹き飛んで行ってしまったのだ
まるで屁が爆発して吹っ飛んだ様なコントのオチの如き最後である
彼女がいた筈の場所には夥しい血痕と骨と皮が付いた肉片、そしてズタズタになった両足だけが残されていた

144ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:31:31 ID:F.uk4T/o0
「…… フィ…?」

小べビンネはあまりに凄惨な光景に身を硬直させ、泣くこともできなかった
大好きで信頼しきっていた母親が目の前で苦しみ抜い末に無残にも消えうせるという始終
それを余すところなく見てしまった絶望は痛みすら忘れさせるほどだ
対照的にシルフィはスッキリとした満足げな笑顔である、こんな派手な遊びは又と出来まい

一瞬の静寂の後、近くの木の上の方がガサリと鳴り、何かが落ちてきて木の枝が折れた所に突き刺さった
それは変わり果てたチビママンネである
全身血と汚物にまみれ、腰があるべき所には血が滴る内臓がぶらりと垂れ下がっていた

「……」

タブンネの生命力はかくも強く、このような状態になっても意思を失う事は無かった
片目には視力が、血に汚れた両耳には聴覚が辛うじて残されている
しかしこの深手である。それらが命とともに消えうせるのは時間の問題であろう
シルフィは落ちてきたそれを死んだものと思いこんで興味を向けず
小ベビンネは変わり果てたそれを愛する母だと認識できなかった

「チィ… チィ…♪」「フィー?」

チビママンネの目の前で繰り広げられるそれは、あまりにも信じがたい光景だった
愛するベビが腸を引きずりながら悪魔の足に縋りつき、甘え声を出しているのだ
チビママンネの心は再び震えわが子の元へ向かい止めようとした、
が、声は出ず、手は動かず、両の足は何処にあるのかすらわからない

この時、小ベビンネはあまりの絶望で既に心が壊れていた
「ママが死ぬはずが無い、いなくなるはずがない」と思い込むあまり、
あろうことか目の前にいる悪魔を母親だと認識してしまったのだ
桃色の毛皮に青い瞳、間違える要素も無くもないのだが

「フィッフィッフィ〜」「チィ… チィ…」

意外なことに、シルフィは座ってから前足で小ベビンネを優しく抱きよせた
自分を母親だと思い込んでいる事を何となくではあるが理解していたのだ
優しそうなポケモンに無邪気に甘える光景に、チビママンネは気の迷い程度に安堵した
ベビちゃんの可愛さに負けて改心し、もしかして助けてくれるのではないか、と
その時、小ベビンネの無事な方の耳の触覚が不意にシルフィの胸に触れた

『これからたくさんもがき苦しんで死んで あたちを楽しませてほしいな♪』

「チピャァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

それは、この世に生まれ落ちて34日にして生きる希望を全て断たれた赤ん坊の、あまりにも悲壮な慟哭であった

そしてシルフィは己を母と慕う子を嗤いながら痛めつけ始めた
耳を千切り取り、足を噛み折り、突き出して許しを乞う小さな両手を容赦なく噛み千切る
両目は爪で潰された後にほじくり出され、上唇に噛みついてから額にかけて顔の皮を剥ぎ
全身まんべんなく妖精の風を浴びせ、最後に爪で胴を裂き動く内臓を露にしてシルフィの責苦は止まった
口が無事な間、小ベビンネは泣き叫んでいたが、
それは助けを求めるというよりか、母に許しを乞いているような泣き方だった
小ベビンネにとって目の前のピンクは未だに母であり
愛する母に八つ裂きにされるという絶望感は余りにも計り知れない

「…ァ …ァ」

何よりも守りたかったわが子が、守らなければならなかったわが子が、目の前で肉塊にされる
この世で最後に見る光景にしては、余りにも無慈悲が過ぎている
怒ろうが悲しもうが手も足も動かず、祈ろうにもチビママンネは神を知らない
もはや苦しまずに安らかに眠ってくれと願うことだけが、チビママンネが出来る唯一の愛情だ

「フィッフィッフィ〜♪」

そんな切ない母の願いを冒涜し嘲笑うかのように、シルフィは瀕死の小ベビンネに更なる追い討ちをかける
悪魔が選んだトドメの一撃は、剥き出しの内臓に目がけての放尿であった

「ヂュブルルルルルルン!ボルンッ!!」

肺に肝臓に心臓に肺にジョボジョボと放尿され、
湯気が立ち上ると同時に動かなくなりかけていた小ベビンネの身体は激しく痙攣しだす
やがてそれも弱弱しくなり、小便が止まるのを待たずして小べビンネの命の音は完全に消え去った
赤ん坊の消えかけた命の灯火を、母親の目の前で小便でかき消すという邪悪極まる暴挙

それは、チビママンネの心を肉体が滅ぶより早く死に至らしめるのに十分な殺傷力を持っていた

145名無しさん:2017/08/10(木) 09:21:05 ID:E.cC3vGE0
更新ありがとうございます!
シルフィはバトルできなかった欲求不満をようやく晴らせたのですね。

トドメが臓器に小便(笑)
苛立たせてくれたチビ親子に相応しい死に方だwwww

146名無しさん:2017/08/10(木) 09:55:50 ID:3dtleJPI0
しかも小ベビ視点から見れば
他の子を放置してまで自分最優先でいてくれたはずのママからの暴力&とどめの放尿
最後の「あたちを楽しませて♪」の一言もシルフィをママと見間違えていた小ベビにはこのためにママは自分を構っていたのかと言う誤解と更なる絶望を与えるものになるとか悲惨がすぎる

147名無しさん:2017/08/10(木) 20:31:31 ID:FmMU.vIw0
陰惨とか残虐とか通り越して、もはや感動的なくらいw
腹の底から小タブざまぁという笑いがこみあげてくるw

148名無しさん:2017/08/10(木) 23:35:52 ID:27gSByis0
更新乙ンネ
あー子ベビに囲まれてりゃそうなるわな…

149名無しさん:2017/08/11(金) 04:52:33 ID:AxUw3JsM0
エヴァ2号機の補食シーン思い出した。
あの時はもうやめてくれと思ったけど、
相手がタブだといいぞもっとやれに変わるw

そして、ここまで嫌われるベビンネは今まで居なかった気がする

150名無しさん:2017/08/12(土) 12:37:19 ID:8t1evfeIC
ニンフィアが肉食ってのこの話で初めて知ったよ
パルレのイメージしかなかったから意外だったわ

151名無しさん:2017/08/12(土) 15:53:08 ID:46BYY41g0
どっちかっていうと雑食じゃね
完全な肉食や草食はそう多くない

152ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:12:44 ID:JxXnoVAA0
「フィッフィ〜♪」

静まり返った林でシルフィはただ一匹歓喜の声をあげた
小便の湯気が立つ血肉の塊と吊られたズタ袋はそれに何の反応も示すことはない

チビママンネの愛と勇気も女子社員の慈悲と友情も
悪魔によっていとも簡単にズタズタに踏みにじられ、汚辱と絶望に塗れながら打ち捨てられた
もし、チビママンネが女子社員が受け入れてたら、女子社員がベビを運ぶ役を買って出なかったら
小ベビンネが怖い女に売れていたら、社長一行がシルフィが逃げ出したのに気づいていたら…

この胃の物がこみ上がって来るような最悪の結末は避けられていただろう
一旦その牙を剥いた運命というものは、血に飢えた獣よりも残酷なのかもしれない

153ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:13:28 ID:JxXnoVAA0
「…残っちゃったですね」
「ミィィ…ミィ」「ミッミッ」

ここで場面は再びデパートに移る
イベントは終わって後片付けもひと段落し、
女子社員は檻に集められた売れ残った子タブンネたちをぼんやりと眺めていた
会場を桃色に埋め尽くす程沢山いた子タブンネも、売れ残ったのは19匹
いずれも人見知りしたり人間を怖がってたりしている消極的な子タブだった
皆一様に怯えきっていて、抱き合ったり丸まったりしながらすし詰めの檻の中でプルプルと震えている
心優しい女子社員も、この子タブンネ達にとっては人間という恐ろしい生き物のうちの一匹でしかないからだ

「きっとこの子たちにも優しいお母さんがいたのだろう」「この子たちはどこに連れて行かれるんだろう」
女子社員は子タブンネ達の切なさと行く末を案じ、気持ちを落ち込ませていた

「この子たちは、これから何所に行くのでしょうか…?」
「う〜ん、まだ決まった訳ではないざんすけど、
 ここに入っているポケモンショップに移してそこに販売するざんすかね〜」
「そうなのですか…」

まあ納得できる返答ではあったが、心のもやつきはさらに大きくなる
この子たちはもはやどうあろうと商品でしかないという冷酷な事実を改めて認識させられたからだ
救われる道は優しい飼い主に買ってもらう以外にないのは分かっているが
こんなに怖がってる子が売れるのだろうか
いや、売れたとしても人間と共に暮らして本当に幸せになれるのだろうか…?

「ハハハ、やったなテイツ君、大成功じゃないか!」
「あっ、どうもこんな所までお疲れさまでざんす!
 いや〜お陰様で200以上いたチビちゃん達も今やこの通りざんすよ!」

憂いの女子社員とは対照的に、やたらテンションが高い中年男性が催事場に現れた
このデパートの本社の社長である
言うまでもなく上機嫌の理由はイベントの大成功によるものだ

「おお、君はショーの司会をやってくれてた子だね!いやー結構な名司会だったよ!」
「それ以外にも早出してトラブルを解決してくれたりお世話も泊まり込みでやってくれましたざんすよ
 今回の一番の功労者と言っても過言ではないざんすね〜」
「…ありがとうございます」

せっかくの店長から直々のお褒めの言葉であるが、女子社員はあまり嬉しさを感じられなかった
作り笑いで愛想は尽したが、その心内では憤りすら感じている
タブンネたちの涙を知ろうともせず、ただ数字だけを見て手放しで喜んでいるこの二人にに

「この成功ぶりなら他の支店でもやる事になりそうだよ、クリスマス前あたりに
 ここでも来年の夏あたりにもう一度くらいやりたいねぇ」

154ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:14:36 ID:JxXnoVAA0
「…子はいつか必ず親から離れていくもの。このタブンネたちはそれが早まっただけだよ」

あまりにも言い訳じみた暴論。だが確かに聞いたはずの女子社員は俯いたまま口を紡ぐ
不思議なことに、その心はこの屁理屈に反論するどころか無理に納得しようとしているのであった
それは、小売の平社員の自分からしてみれば雲の上の存在である本社の社長の言葉という事と
自分が許される理屈を探していた心の弱さのためなのだろう
どんなに心正しくあろうとしようが、
彼女も仕事だからと言い訳してタブンネを傷つけた者たちの一員に変わりはしないのだから

一息程の沈黙の後、女子社員は顔を上げ、最後の反論を喉の奥から絞り出した

「それでも、突然に家族とお別れするのは悲しすぎるのです…」

女子社員は幼少期に母親を事故で喪っていた
それ故、あの母性溢れるチビママンネにあれ程まで入れ込んでいたのかもしれない

155ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:15:27 ID:JxXnoVAA0
またまたところ変わって高級住宅街にあるお屋敷と呼んで差し支えない程の大きさの小奇麗な一軒の家
そこには実業家の夫妻と大学生の娘が暮らしていた
こう書くと何不自由なさそうな裕福な一家だが、夫婦は娘のことで深刻な悩みを抱えていた

「そういえば、アルマ(娘)はどうしてる?」
「デパートに行って帰って来てから部屋に閉じこもってますよ」
「また例のお化け趣味か… 変なポケモンは飼い始めるし全くどうなってるんだ…」

高校まで何の問題もなく優等生そのものだった娘だが、大学に入ってからオカルト趣味に凝り始め
今ではすっかりオカルトマニアと化していた
そんな娘の部屋からは、防音部屋にも関わらず子タブンネの悲鳴が漏れている

「ンビィィィィーーーッ!!ンビィィィィーーーッ!!」
「フフフ、もっと遠慮なく怖がっていいのよ♪」「ムキュウウ♪」

お屋敷の2階の一室、魔道書やまじないの道具などオカルトグッズに飾られた部屋
そこに全身紫ずくめの女と小さなムウマ、そして籠の中で泣き叫ぶ子タブンネの姿があった

娘とはデパートにやってきたあの怖い女で、ムウマはそのペット
そして泣き叫ぶ子タブンネは言わずもがなあの勇者ンネである

「ヒッ?!ヒッ!ヒィッ!!ヒギャァァァァァァァ!!!」

しかし、ここから出してと籠の格子を掴んで揺らしながら泣き叫ぶ姿に、もはや勇者の面影はない
両耳には3本ずつ大きな銀色のピアスが通され、腹と背には大きな魔法陣の焼き印がこんがりと押され
尻尾は溶かした蝋で固められ、左足には鎖鉄球つきの小さな足かせがガッチリと嵌められている
ここに連れてこられた時には勇者ンネは必死に暴れ抵抗していたが
怖い女によって縛りあげられ、上記の装飾が施されると一変して怯えるばかりになった

終の棲家になるであろうゴシック調の装飾を施された大きな黒い鳥籠は比較的まともではあるが
問題はその中に床材として敷かれている物で、それは無数の子タブンネやベビンネの頭がい骨である
ポケモンの頭蓋骨はオカルトショップで各種売っていて、その中から小さいタブンネのそれだけをまとめ買いした物だ
どういう訳だかタブンネの物だけ他のより異様に安かった為に思いついた装飾である
人間がそうであるように、勇者ンネもまた足もとに敷き詰められたそれに本能的な恐怖を覚え震え上がった

156ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:16:05 ID:JxXnoVAA0
「ムキュッキュッキュ〜♪ ムキュキュッキュ〜♪」「ふふふ、美味しそうねぇ… どんな味がするのかしら?」

勇者ンネが泣き叫ぶ様に笑顔で大喜びのムウマ。
赤い玉を光らせながらくるくると宙返りして喜びを表現している
ここでの勇者ンネの役割は、前述の扱いが示すとおり愛玩ポケモンなどではない
では何かというと愛しき悪霊への生贄、すなわちムウマの餌である
恐怖を餌とするムウマの腹を満たすために、命尽きるまで心を搾取されるというのが勇者ンネの運命だ

「ハァ、ハァ、ハァ… ハァーッ… ハァ・・・」
「あらぁ、もう限界?」

あまりに泣き叫び過ぎたために疲れ果て、膝をついてゼェゼェと息を切らす勇者ンネ
怖い女はそんな哀れな勇者に情けをかけることなく
「これで元気を出してね」と尻尾の先端にライターでカチリと火をつけた
蝋で固める際に予め蝋燭の芯を仕込んでおいたのだ

「クピャアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!!!」

自らの尻尾が燃えているという事実に恐怖し、勇者はとうに枯れ果てた喉で泣き叫び髑髏の上を転げまわる
火は小さいので毛皮に燃え移るということは無かったが、
チャームポイントであるしっぽを焼かれるという精神的ダメージは人間が思うよりもずっと大きい

「フフフ… 元気になったみたいね。…でもこの仔はなんでこんなのを怖がるのかしら?」

先ほどから勇者ンネを泣かせていたもの、それはノートパソコンに映る動画であった
動画サイトで映画の恐ろしい怪物やら肉食ポケモンの捕食シーンやらいろいろ見せていたのだが
その中で一番怖がったのは、女にとってはまるで意外なことに
手違いで再生したニンフィアが餌を食べるだけの可愛らしい動画であった

157名無しさん:2017/08/17(木) 15:05:27 ID:IOZH/SZQ0
乙ンネ

158名無しさん:2017/08/17(木) 19:10:07 ID:pZ9OUFoY0
おっと、ここで場面転換と来ましたか
勇者ンネも楽に死ねそうにないね

159名無しさん:2017/08/18(金) 20:55:05 ID:HFcL1BMw0
勇者ンネがどうなったか気になってましたけど、良い飼い主に沢山遊んでもらえているので安心しましたw

160名無しさん:2017/08/22(火) 22:11:48 ID:NTPdUjlE0
元々の避難所死んじゃったみたいだな

161ショーケースの裏側で:2017/09/13(水) 23:01:35 ID:DoeBjDB60
「シルフィ〜!! 何所にいるの〜?」

ペット業者の社長と男二人のの声が夜の林に響く
社屋に戻ったと同時に居ないことに気づき、急ぎ戻ってきたのだ
フィッフィーと元気のいい返事が聞こえてきたので、3人は藪を分け入り林の中に入って行った
男二人にはその居場所に思い当たる節があった。あのタブンネたちの巣がある場所である

「なんだいこりゃあ…」 「え…? シ、シルフィは大丈夫だよね…?」

その場所に立ち止まった瞬間、血とはらわたの匂いがぷうんと鼻についた
懐中電灯で照らしてみると、血と肉片と、散り散りになった桃色やクリーム色の毛皮が辺り一面に散らばっている
そして一目みただけではその正体が分かり得ぬ赤黒い肉の塊も

「…ニンフィアのじゃねぇです、こりゃタブンネの毛皮ですぜ」
「そーなの、良かった〜」

もしかしたらシルフィのではないかと身震いしたが、違うと知ってほっと一安心した社長
タブンネが惨殺されてるという事はまるで気にしてないのが彼女らしい

「フィッフィ〜」
「あ、あっちにいますぜ」
「シルフィ!!」

足が取られやすい林の中だというのに、社長は躊躇わずにシルフィヘと駆け寄った
シルフィも嬉しそうにしっぽを振りながら走り寄り、社長に抱き付く
残虐な悪魔も大好きな社長の前では子供に戻ってしまうのだ

「良かった〜… も〜、勝手にボールから出たらダメだよ〜っ!」
「大事は無いみたいで良かったですなぁ… ん?」

不意に兄貴分はシルフィが居た方向に何か異様なものがある事に気がつく
木にぶら下がっている何か…。それが肉塊、タブンネの惨殺死体だと男二人が気づくのにそう時間は要さなかった

「ゲッ!! こりゃさっき放した奴じゃねえか!!」
「な、なんだってこんな事に…」

背格好が似ていたので兄貴分はもしやと思い、死臭に顔をしかめながら亡骸を検めると
予想通りに逃がす際に肩につけたマーカーが見つかった

(ひょっとしてシルフィがやったんじゃないのか?だがどうやって?それにしても酷過ぎる…)

様々な疑問を頭に浮かべながらも、兄貴分はとりあえず社長にこのことを報告した

「えーっ!もう死んじゃったの!?」

野生に返して一時間足らずの間にまさかの死亡。これには社長も声を張り上げて驚いた
言うまでもなくタブンネが可哀想とはそれほど思ってはいないのだが、別の大きな心配がある
これではとても契約を果たしたとは言えず女子社員に代金を返さなくてはならないということだ

「そういえばあの赤ちゃんはどうしたの? 一緒に死んじゃった?」
「あ、そういや見てませんでしたぜ」 

弟分が遅れて死体のある藪の中から戻ってきた

「赤ん坊の死体は近くに転がってましたぜ、いやはやしかし酷ぇ事になってます」

弟分が指したところに兄貴分は向かい、社長も怖いもの見たさで付いてきた
懐中電灯で照らされたそれは、余りに惨たらしく変わり果てたものだった

162名無しさん:2017/09/14(木) 00:01:49 ID:762N629k0
「うーわー、酷いよ〜」
「な、何だってこんな事に?」

乱雑に引き裂かれた胴体から臓器を覗かせ、尻からは腸が巻尺のように飛び出て
手足と耳と尻尾は千切られて無造作に散らばっている
だがそれらより何よりも異常性を示していたのは、ビショビショの全身から立ち込める強い尿臭である
それは下手人が悪意を以て引っかけた物だという事は全員が容易に思い至る事ができた

「食うためじゃねぇ、遊びで殺したんだ」
「えっ?!変質者がこの辺に居るって事?」
「いや、人間の仕業とも思えねぇです」

刃物によるそれではない腹の裂け目と手足の切り口、
そして落ち葉に混ざり転がっているズタズタの耳に残っていた歯型
弟分はその二つから人間の仕業ではないと判断した

だが三人は別の理由から薄々ながら確信していた、尿の臭いに覚えがあったからだ
これをやらかした犯人はシルフィだ… と

「もーっ!シルフィっ!お客様のものに手を出したら駄目なんだよっっ!!」
「フィフィーッ!!…」

突然の叱責にシルフィは驚き、耳を下に下げて困惑した表情をしながらササっと木陰に身を隠した
叱るべき点がややズレている所が社長らしさである
ポケモンを叱るのも大事だが、やらかした事はトレーナーが責任を取らねばならない
社長もまたそれを理解していて、謝罪と返金でもって全うしようとしていた

「…うん、それはそれとして、あの子にちゃんと伝えなくちゃ」

苦虫を噛み潰した様な表情で携帯を取り出し、
デパートを出る際に登録しておいた電話番号にかけようとする社長
しかしポチポチと操作し始めた所で、弟分が止めに入った

「待ってくだせぇ社長! それだけは止めてくだせぇ!」

その言葉で社長の指がピタリと止まった
覚悟は決めていたが、躊躇いと思うところがあったのだ

「そんな事して何になるんすか、だれが得をするんですか!
タブンネの親子は森へ帰って幸せに暮らしてる。そう思い続けていた方があの子にとって幸せですぜ!
 自分が野に離したせいで死んじまったなんて知ったら、どんなに悲しむか…」

普段は社長に頭が上がらない弟分だが、この時ばかりは躊躇いもなく考えを通そうと頑張る
あの女子社員に何か恋でもしたのだろうか? 横で見ていた兄貴分は何も言わずただそう思った

「そうだね… これは見なかった事にしちゃおうか」

ここは優しい嘘をつき通した方がお客様にとって一番いい。そう思うことにして、社長は携帯を閉じた

こうして社長一行はこの惨劇を誰にも教えることはなく、自分たちの胸にしまっておく事にし
すっかりしょぼくれたシルフィもボールにしまって車で会社へと戻って行った

163名無しさん:2017/09/14(木) 06:54:31 ID:oGLFmbSA0
乙乙
シルフィには罪はないね、遊んだだけだしね

164名無しさん:2017/09/14(木) 20:02:51 ID:NKZi4ypY0
更新乙ンネ

165名無しさん:2017/09/15(金) 18:39:56 ID:ayRasExs0
切なさを感じる終わり方。

166ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:11:41 ID:5I/tEMbc0
「ただいまです」
「ミィミィ♪」「…チィ?チィ♪」

帰宅した女子社員を出迎えたのは可愛い二匹の新しい家族
眠る我が子を胸に抱き、満面の笑みを向ける小さなママンネ
そしてうつらうつらと目を覚まし、帰ってきたのに気づくとチィチィと嬉しそうに笑う小さなベビンネ
寂しさや悲しみとは無縁の、今までとは違う暖かな我が家がそこにあった

「ミミー♪」「チッチ!チッチ!」

チビママンネに手をひかれて玄関を上がり、楽しいふれあいが始まる
二匹の頭を撫でたり、オモチャで一緒に遊んだり…
あの時のわだかまりは心が通じ合うとすっかり消え去り
人見知りの小ベビンネも、女子社員に大分心を許すようになってきた

「チカー、ご飯ですよ〜」

皆で居間に行くと、食卓には晩御飯のおかずが並べられていた
ハンバーグ、ポテトサラダ、ほうれん草のバター炒めにコーンポタージュスープ
どれも女子社員の好物で子供のころよく食べていたものだ
チビママンネも見たことがない御馳走に目を輝かしている
そして、嬉しい食卓の向こうに、エプロンを着けた母親がにっこりと微笑みかけていた

「あれ… お母さん…」

あまりにも当たり前のようにそこにいたので一瞬は素のままに受け入れたが
その違和感に気づいた瞬間、女子社員の目の前は白い光に覆われた

167ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:12:21 ID:5I/tEMbc0
「うぁ…」

無機質な蛍光灯の光が寝起きでぼやけた目に突き刺さる
デパートから帰ってきた時には疲れ切っていて
着替えもせずにそのままベッドに倒れこんで眠ってしまっていたらしい
意識がはっきりしていくうちに、ぼんやりと記憶が蘇ってくる
あの小さなタブンネの親子は元いたお家へ帰って行って、お母さんは…
気を逸らすように時計を見てみると既に午前2時を回っていた

「…何か食べなきゃ」

夕食を食べていなかったので普通ならかなり空腹のはずなのだが、あまり食欲がない
とりあえず手軽に小さなカップ麺で軽く済ますことにした
夢の中で見た食卓と頭の中で比べてしまい、女子社員は少し悲しい気持ちになった
食べ物だけじゃない、シンとした中にファンヒーターの音だけが響くこの部屋のなんと寂しいことか

食べ終わって何の気なしに携帯電話をチェックしてみると、一件の見慣れない宛先が
あのペットポケモン業者の社長からだ

「…タブンネさん、森へ帰ったんですね」

メールに添付された画像には、森へ向かっていくタブンネの後姿が写っていた
ベッドに寝転びながらその写真をまじまじと眺める
チビママンネの姿を見ていると冷え切っていた心が暖かくなっていくのがはっきりとわかる

「今頃おうちの中で、親子一緒に仲良くおやすみしてるのでしょうか…」

もし、女子社員が小さな親子の無残な末路を知ってしまったら、
自分の行いを気が狂うほどに後悔し、その心に人生を狂わす程の深い傷を負う事になるだろう
しかし幸いなことか、彼女がそれを知りうることは永遠に無いのだ

女子社員がが見た夢は、何も知らぬ偽善者の身勝手な妄想か、朦朧のうちに彼岸を垣間見たか…

168ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:12:54 ID:5I/tEMbc0
「ミッ、ミッ?!」「グミーッンミーッ!!」
「ちょ、ちょっとなんなのよコイツら!?… ギャァーッ!!」

勇者ンネの目の前であの怖い女が吹っ飛ばされた
最強の戦士にして偉大な群れの長、勇者ンネのパパンネがわが子を救出しに来たのだ

「うわぁーん!覚えてなさいよ〜!!」「キュルルルゥ〜!」
「ミーミィ!ミーミィ!」「ミ、ミィ〜」

長ンネの猛攻に怖い女とムウマは泣きながら一目散に逃げ出していき
勇者ンネは一緒に来ていた自分のママンネに籠から救出された

「ミギュルグ… グミィィィィィィ!! グミィィィィィィィィィ!!!!」
「ミィ、ミィ♪」「ミーミミー!」

勇者は母の胸に飛び込み、今までの恐怖と苦痛を洗い流すように思い切り泣いた
次代の長として常に強くあろうとしている勇者ンネも、母の前ではただの子供なのだ
長ンネもそんなわが子を叱ることなく、微笑んでその頭をそっと撫でた

「ミッミッ」「ミミ!」

母の胸でひとしきり泣き、顔を上げた勇者ンネの目の前にいたのはあのチビママンネだった
泣いている所を見られてアセアセと恥ずかしがったが、そんな勇者を小さな母は抱きしめた

『あかちゃんをたすけてくれて ありがとう』

チビママンネが伝えたかったことはこの感謝の気持ち、ただそれだけである
心から心へ熱いものが伝わり、勇者の心は誇りで高鳴った

「ミィッ!ミィ!ミィィ!!」

長ンネは腕を振り上げ、勇ましく鬨のような大声を上げた、
これから皆で、人間捕まった子供たちを取り戻しに行くと宣言したのだ

「ミィミィ!ミィミィ!」

勇者ンネもそれを真似るように腕を上げ気合いを込めて叫ぶ
これからタブンネの戦士たちの、奪われた仲間を取り戻す勇者の旅が始まるのだ

169ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:13:45 ID:5I/tEMbc0
「ミィィ!?」
大きなガシャンという金属音で勇者ンネは飛び起きた
そして曖昧なままの眼に映るのは、格子越しに見下してくる怖い人間
父に倒され、泣きながら逃げ出した筈のあの人間だ!

「ピーィッ!!??」
「何驚いてるのよ ご飯持ってきてあげたのに」

そう言って怖い女が格子の隙間からねじ込んだのは、緑のヘタがついた白い種の塊のような何か
一体何なのかと具体的に説明するとピーマンの芯だ
無造作に投入されたそれはあろうことか漏らした糞の上に落下してしまった

「ンミ、ミィィ…」

この糞の付いた残飯は自分に与えられた食事だと勇者ンネは理解できていたが
もちろん食べる気になれるはずもない。腹は死ぬほど減っているにも関わらずだ
この最低最悪の食事を前にして、勇者はただ立ち尽くすことしか出来ない

「何してるの、さっさと食べなさい。さもないと…」
「フミュギュギュググワァ!!」

女がライターをカチッカチッと鳴らすと、勇者ンネは震え上がり慌ててピーマンを拾い上げて口に入れた
焼印と尻尾を?燭にされた時の恐怖と苦痛がフラッシュバックしたのだ
無理やり飲み込もうとして何度も嗚咽し、死に物狂いで噛み砕こうとして舌や口内を噛みながら頑張るが
それでも苦みと臭みが2重に重なるそれはなかなか喉を通ってくれない

「ミグーッ!ミグーッ!ンミ゙ッ!!」

涙を流し、目一杯の血が混じった唾液とともに汚物を無理やり喉の奥に流し込む
それが胃に落ちた後、勇者ンネはゼェゼェと苦しそうに息をしながらポロポロと大粒の涙を零した
苦しみは過ぎ去った筈なのに、命令されて糞を食べてしまったという屈辱で涙が止まらない
勇者と呼ばれた子タブンネなら尚更だ

170ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:17:05 ID:5I/tEMbc0
「食べたわね、じゃあまた寝ていいわよ…」

怖い女はそう言いながら勇者ンネの籠に厚手のカーテンのような黒い布をかけた
もともと部屋が薄暗いこともあってか、籠の中は自分の手もまともに見えぬほどの真っ暗闇だ

「クミィ・・・」

勇者ンネは寝ころんではいるが眠れない
硬い髑髏の床が、ジンジンと痛み出した焼印と尻尾蝋燭の痕が、化膿しだした耳のピアスの痛みが
口内に残る気持ち悪さが、ピーマンの芯一本では満たされるはずのない空腹が
糞を食わされた屈辱が、弱い自分への悔しさが
勇者ンネが眠りにつくのを寄ってたかって妨げていた

「ミ… ミ…」

眠りもせずにじっとしていると、色々な思い出が頭に浮かびあがってくる
先ほど夢に見たためだろう、一番強く思い出したのは両親の最後の姿だ

聞きなれない大きな音が鳴って、見たことないやつ、人間というやつが現われて…
群れにあった巣はみんな壊され、強かったはずの群れの戦士たちは人間の味方のポケモンに次々と倒され
泣き叫びながら子供を連れて逃げ惑うママンネたちも襲われて子供たちはみんな捕まっていった

その中で父である長ンネはルカリオの波動弾の直撃で臓物をあたり一面に撒き散らしながら息絶え
最愛のママンネは自分や兄弟たちを守ろうとしてドリュウズのアイアンヘッドを顔面に受け倒れた
骨ごとグチャグチャに砕かれた母の顔面を、急速に静まり死に向かっていく父の心音を
勇者ンネは生涯忘れることは出来ないだろう

「フミィ… チィィ…」

その記憶はあまりにも鮮明だ。先ほどまで見ていたあれが夢だということがはっきり分るほどに
自分は何もできず、助けてくれる者はもう誰もおらず、一生ここから出られずに苦しみぬいて死んでいく
そんな絶望が幼い心を夜の闇よりも暗く覆っていた

「チィィ… チィィ…」

だが、そんな勇者ンネの心にただ一つ光明がある
この恐ろしい人間から恩タブの子である小ベビンネを守ったというただ一つの功績だ
それは勇者としての誇りとなり、支えとなって押しつぶされそうな心を正気に保っていた

もし、勇者ンネがあの小さな親子があの忘れえぬ悪魔の牙にかかり
凄惨極まる死を迎えたという事実を知ってしまったら
張りつめた心は粉々に砕け、二度と正気には戻れないだろう
幸か不幸か、この狂っていた方が気が楽な地獄の中、勇者ンネはその真実を知りえることは無いのであった

171名無しさん:2017/09/30(土) 10:45:13 ID:nmNNgb/M0
乙ンネ

172名無しさん:2017/09/30(土) 21:11:08 ID:UdOZI2uI0
チカちゃんには悪いが、死んでくれて本当に良かった
夢で見た様な展開は怒髪天モノなので

173名無しさん:2017/09/30(土) 21:25:59 ID:zDc9/MU60
夢オチ&「現実は非情である」

チカちゃんは早いとこ忘れなさい
その分、勇者ンネが代わりに苦しんでくれるから

174ショーケースの裏側で:2017/10/02(月) 02:19:08 ID:kZV2RQug0
『いや、人が考えるいい物が必ずしもポケモンにとってもいい物だとは限りませんぜ
 このドリュウズも高いフーズよりも車に轢かれたフシデの死骸の方を喜んで食べやがりますし…』 

寝巻に着替え、寝室でベッドに腰掛けるペット業者の女社長
ボーっとする中で先ほど交わした雑談の弟分の何気ないこの一言をぼんやりと思い出していた
寝室にはシルフィも一緒だ
先ほど怒られてしょんぼりしていたが今はケロリとして呑気に毛づくろいなどしている
社長はそんなシルフィを少しの間見つめた後、何かを思い立ったようにふらりと部屋から出て行った

「フィ〜?」

シルフィはトイレに行ったのだろうと思い、特に気に留めなかったが、トイレにしてはずい分と長い
さすがにおかしいと思い、様子を見に行こうかと気迷い始めたとき
社長が両手に何やら色々と下げて部屋に戻ってきた

「シルフィ、今日は特別にお夜食を食べちゃお。好きな方を選んでねっ」
「フィィ〜!」

シルフィの目の前に出されたのは洒落た餌皿に盛られたいつも食べさせている上等なポフィン
もう一つの方なのだが床にゴミ袋を敷き、そこにバケツから何やら薄汚れたピンクの塊をドサリと落とした

「アゥ… ァゥゥ…」
「どう?この子を好きにしちゃっていいんだよ?」

その塊の正体は皆さんお察しの通り血で汚れたの子タブンネだ
腕と足、そして口元から夥しく血を流し、グネグネと腰を曲げながら苦悶の表情でのたうっている
大きな毛抜けがあってデパートに出荷されなかった個体を持ってきたのだ
それにしてもなぜ血まみれなのかというと、社長が食べやすいようにと加工したからである
逃げられないように金槌で脛を両足とも潰し、
叩かれると痛いからと両肘にナイフを入れて関節を壊し
噛みつかれないよう顎を外してからペンチで全ての歯を一本ずつ丁寧に抜いて出来上がりだ
抵抗されてシルフィが怪我などしないようにという親心なのだが
最も、シルフィにしてみれば完全に余計な御世話であり、子タブンネにしてもただの拷問され損である

175ショーケースの裏側で:2017/10/02(月) 02:20:09 ID:kZV2RQug0
「フィッフィィ〜〜♪♪」

シルフィが選んだのは子タブンネの方だ。その選択には全く迷いは見られない
トレーナーの許しをもらって堂々と出来るという喜びも大きかった

「ゥゥゥゥゥゥ!! ァァァ!!!」

本能的に命の危機が分かったのだろう
シルフィが迫ると子タブンネはぎこちないハイハイでバタバタと逃げ出した
手足を動かすたびにズキン!ズキン!鋭い痛みが全身を走り
声が出なくなった口からは音にならなかった悲鳴を赤い涎と共に絶え間なく吐き出し続ける
普通なら体を動かすこともままならぬ針の筵の如き激痛であるはずだが
鼻息が当たる距離にまで迫る死への恐怖がこの哀れな子タブンネを突き動かしている
だがそんな辛苦に塗れた命がけ逃避も、幼い寿命を30秒程伸ばす事だけしか成果は無かった


「ァァァァァァァボボボボボボギュギュ……」

耳に噛みつかれて振り回され、ビタン、ビタンと強く床に叩きつけられると
子タブンネはぐったりと動かなくなった
だが息絶えたわけではなく、背骨にダメージが行って動けなくなっただけである
普通の肉食ポケモンならここで喉笛を噛みちぎって止めを刺すのだが
シルフィは息があるうちに食べたほうが楽しいという理由でそれをしなかった

「クプププププポポポポ・・・」

生きながら臓物を食いちぎられ、白目をむき口と鼻からコポコポと血のあぶくを吹き出す子タブンネ
シルフィは腸を引っ張ったり、肺を噛みつぶして中の空気が弾けるのを楽しんだりと
顔中血まみれになりながら臓物を玩具にしてのお夜食を満喫した

社長は眼前で振り拡げられる惨劇を止める事も諌めることもせずただ見つめていた
その視線は陰惨さへの嫌悪や残虐な光景に対する恐怖などもなく
遊ぶ子供を見つめる母親のような優しいものだった
そしてシルフィが食べ終わるのを待ち、その頭をそっと撫でながら語りかける

「ごめんねシルフィ、私、今までシルフィの事を分かってあげてなかったんだね」
「フィー?」

その謝罪の言葉の内には何か吹っ切れたような爽やかさがあった
すぐ横に転がる無残な骨肉にはとても不釣り合いな

「でもね、私、シルフィの気持ちならよーくわかるよ」
「フィ?」
「私ね、お仕事でたまにいらないタブンネを処分… 殺しちゃうんだけど
 その時に心がきゅーんとなって、すっごく気持ちよくなっちゃうんだ」
「フィ〜??」
「それだけじゃないよ、普通にお世話する時もタブンネちゃんたちをちょっとだけ苛めちゃうんだ
 わざと冷たいお水で洗ったり、おやつをちょびっとしかあげなかったり…
 ふふふ、赤ちゃんたちの前でお母さんタブンネのお乳をペンチで千切っちゃったりもしたんだよ
 怖いね、シルフィ」
「フィーフィ♪」
「ふふふ、おかしいよね。こんなこといけないって、変だって分かってるはずなのにね
 …これは私とシルフィだけの秘密だよっ」
「フィー♪」

そうして社長は先ほどまで可愛い子タブンネだった赤くてヌメつくものをゴミ袋に閉じ
生臭い床を雑巾がけして、シルフィの顔もタオルと濡れティッシュで奇麗にしてから
愛するポケモンと共にベッドに入るのだった

176名無しさん:2017/10/02(月) 19:42:53 ID:/GojdRq.0
更新ありがとうございます!
遊びつつエサを与えるという点はポケリフレっぽいw

177名無しさん:2017/10/03(火) 00:15:33 ID:5gaCr5kE0
わかる!社長さん、その気持ちよーくわかります!w

178名無しさん:2017/10/19(木) 22:37:51 ID:k0EXRYh.0
個人的に萌えるタブンネちゃん虐待シチュエーション
・出掛ける前に下剤入りのフードを食べさせ、戦闘中に粗相させて恥をかかせる。帰宅したら罰として粗相した物を耳、鼻、口に詰め、肛門を溶接する
・手足や耳を切断して食べさせる
・複数匹飼ってわざと極度のストレスに曝した上、食事を与えずに共食いさせる
・生まれたてを踏み殺す
・全身に灯油をかけて燃やす
・オーブンにブチ込み、不安がって泣き出した所でオーブンのスイッチを入れて苦しみながら焼け死ぬ所を観察する
・触覚を固結びして観察
・異物を大量に誤飲させて苦しませる
・土下座させた所を写メる
・触覚を片方引きちぎって肛門に差し込んで溶接する
・口か肛門から内臓が飛び出るまで何度も踏んづけ、飛び出した内臓を炙る

179名無しさん:2017/10/21(土) 00:04:21 ID:DHTmp2vw0
なかなか素敵なシチュエーションw自分だったら・・・

・洗濯機に放り込み、回転水責めでトラウマを作成
・親の前で子供を痛めつける(逆パターンも有り)
・孵化したベビンネを生かさず殺さずで虐待し続ける
(成体は可愛くないので、飽きたらチビンネの内に処理)

180名無しさん:2017/10/21(土) 00:14:16 ID:LYe4pJus0
往年の名作
押し入れの隠し子
空き巣ベビンネ
あたりが思い起こされるシチュエーション

181名無しさん:2017/10/25(水) 20:24:09 ID:0brSP26w0
自分は閉じ込め系かな

.競られていく時籠から必死に手を伸ばし助けを求めるベビンネ達
.調理されながら鍋やフライパンの中で抵抗する姿
.水槽観察物は最高
.箱詰め子タブンネも捨てがたい

となるとどうしてもベビチビ系になってしまうけど

182名無しさん:2017/10/28(土) 00:13:36 ID:aFG7HAuQ0
大切に育てられた後に、天から地獄に突き落とされるのも良い。

例えば、「冷凍子タブンネ」
ママンネが子供達の前でボコられ、子供達も少しずつ凍っていくのが萌える。
善良個体だからイラッとせずに読めるのも良かったw

183ショーケースの裏側で:2017/11/01(水) 04:39:38 ID:7pG2fGlk0
「…いたぞ、」

二日続けてのイベントでの激務
足は棒になり、背骨は微かに痛み出し、瞼は見開けぬほどに重い
だが、気が利く社員は胸に滾るものを抑えきれずに市街地の外にある草むらをうろついてた

遅い来るミネズミやチョロネコをドレディアが退きながら30分ほど歩きまわり
ようやく目当ての物を見つけた。いや、音が聞こえてきたというところだ
それはガサガサと草が揺れる音

(焦ってはいけない… ここで焦れば全てがオシャカだ…)

自分の首元にまで届く草むらを、足音を殺しながら慎重を極めて歩く
もし、この時に他の野生ポケモンと出くわして戦闘にでもなったらその隙にこの音の主は姿を消してしまう
そして音に近づいてる事を感じ取りながら揺れる草むらの眼前に辿り着いたその時

「ミッミッ!」
「でかいな…」

草むらからタブンネが飛び出してきた
小柄なチビママンネに見慣れていたからだろうか。目の前のタブンネは110cmの標準サイズだが
気が利く社員にとってはなかなかの大形の個体に感じられた
威嚇の声を上げ、一触触発の状態である

「行け、ドレディア」

ボールから飛び出したドレディアの前に野生タブンネは一瞬たじろいだが
向けられた戦意を敏感に感じ取り、目の前の敵を打ち倒すべく腕を振り上げた

「ギガドレインだ」

体から緑色に光るものが抜けて行くと感じた次の瞬間、野生タブンネはバタリと地に倒れ伏した
疲れ切ったかのように体が動かせず、反撃どころか立ち上がることすらできない

「ミ゙… ミ゙…」

普通のポケモンバトルならこの時点で勝負ありで、トレーナーはこれ以上手出しをさせないのだが
血に飢えた今の気が利く社員は様子が違った

「あっけないなぁ、こんなんじゃあ全然満足できないよ!」

興奮が抑えられなくなり、倒れたタブンネをサッカーボールの如く蹴り飛ばす気が利く社員
「グェッ」と悲鳴を上げながら転がる野生ンネを間髪入れず耳をつかんで引き起こし
そのままふっくらとした柔らかな頬を何度も殴りつけた

「ミッ?ミッ!ミビャァァァッ!!」

その狂気を伴った暴力に瀕死の体力では何の抵抗もできず
不運な野生タブンネはただその拳を受けて訳もわからぬまま泣き叫ぶ事しかできない
ドレディアは狂ってしまった主人を悲しみも怒りもせず
そこに生えている植物の如くただ黙って見つめていた

184ショーケースの裏側で:2017/11/01(水) 04:40:14 ID:7pG2fGlk0
「ハァ… ハァ… ん?これは…」

目鼻が判別出ぬほどボコボコに殴りつくした後、
少し落ち着いた気が利く社員は何気なく野生ンネの胴体に目を向ける
そこである事に気づいた瞬間、気が利く社員の口角が嫌らしく上がった

「ドレディア!コイツの巣を探すんだ。もっと遊べるぞ」

もはや目を開けることも出来なくなったタブンネを投げ捨て、気が利く社員は乱雑に周りを探し始めた
地に積もる枯草を蹴り上げ踏みつけ、落ちていた木の枝でザクザクと突きながら
ドレディアはキョロキョロと地面を見まわしながら周りを探している
やがて気が利く社員は枯草の下に子供がギリギリ入れる程度の大きさの地面に空いた穴を見つけた
その穴を懐中電灯で照らすと、「ピィッ」という甲高い声の悲鳴が
そう、気が利く社員が探していたのはタブンネの巣、そしてそこにいる子タブンネである
野生ンネの腹部に変色した乳首を見つけ、子育て中のタブンネであると判断したのだ

「グィー… グィー…」

野生ンネは鳴いて威嚇するが、弱り切ったその声が威嚇である事を分かって貰える筈もなく
ドレディアが巣に押し入り中の子タブンネたちは次々と巣の外に追いやられていく

「ミィーッ!!」「ミィ?ミィ!?」「ビィィ!ビィィ!」

訳も分らぬうちに寒空の下に追いやられ、3匹の哀れな子タブたちは不安と恐怖に鳴きしきる
そのうちの1匹が倒れている母親に気づき、助けを求め泣きながら駆け寄ると
それを気が利く社員はザクリと足で背中から踏みつけた

「ミ゙ッ・・・ ブベェ…クミィィ…」

足をばたつかせ、小さな両手で必死に地を掻き、脱出しようと必死にあがくが
40センチに届かない小さな体では成人男性の体重からはそう簡単に逃れられず
少し力を込めて足首を捻り踏みにじると、未消化物と共に白いミルクをゲェェと嘔吐した
まだ離乳が完全に済んでいない子タブンネだったのだ

「ミィィン!ヂィィィィィ!!」

その足に少し大きな子タブンネが駆け寄り、必死に持ち上げて兄弟を助けようと健気にも頑張る
この子は三兄弟の一番上の姉であり、弟たちの世話を率先して手伝ういいお姉ちゃんであった
そんな頼りになるお姉ちゃんも鬼畜と化した気が利く社員によって首根っこを攫まれて捕まってしまうと
すると頼りになるお姉ちゃん一転パニックになってベビのように泣きわめき、小便まで洩らす有様だった

「ドレディア!もう一匹はお前にやるよ。好きに遊んでいいぞ」

その場でただオロオロするばかりであった最後の子タブンネはドレディアに捕まった
当然泣きわめくが、ドレディアの方もどう遊んでいいものかいささか困っている

「キィィ… キ…」

家族が絶体絶命の状況の中、野生ンネはパタパタと弱弱しく地面をたたいて威嚇することしかできない
その顔が無傷であったならば、さぞかし歪みきった絶望の表情を見せてくれた事だろう

「ビュ… グ… ギ…」「クヒィィィ…」「ミヂィィィィ!!ミヂィィィィ!!」

悲鳴と呻き声が身を切る夜風と草のざわめきに交じる
己の衝動を律する事なく子タブンネの首を絞め、踏み潰す気が利く社員
手の内の子タブンネは痙攣とともに力が抜けていき、
足下のタブンネは折れる寸前まで背骨が軋み胃液を吐きながら窒息に喘ぐ
この2匹の哀れな子タブの絶命を以て気が利く社員の疼くものは満たされようとしていた

185ショーケースの裏側で:2017/11/01(水) 04:40:49 ID:7pG2fGlk0
「やめてください!!」

突然聞こえた人間の声に頭が真っ白になり、背筋には冷たいものが走る
「女子社員に見られた」
振り返ってその声の主を確認した瞬間、気が利く社員はそう勘違いした

「…誰だ?」

背丈は女子社員と同じくらいだが、よく見たら男の子。それもまだ声変わりする前の少年
赤い帽子に群青色のジャケット、腰には数個のモンスターボールが付いたベルト…
月の光で判ることはこの程度か
ともかく、目の前の少年がポケモントレーナーであることを気が利く社員は理解できた

「何の理由があってそんなちっちゃな子たちを殺そうとするんですか!
 すぐにその子たちを放してください!」

気が狂ったヤバいやつなのではないかとトレーナーの少年は声をかける際に覚悟していたのだが 
振り返った悪人の顔は狂人のそれではない
悪事がばれて必死に言い訳を探している、小ずるい大人にありふれた情けない表情だ
少年は毅然と気が利く社員を睨みつけ、子タブ達を助けるべくつかつかと向かっていく

「ヒュルル、キュウ!」

両者の間にドレディアが割って入り、少年の前に立ちふさがる
泣きじゃくる子タブンネを両手の葉っぱで抱えている事が、
少年にこのドレディアが悪人の手持ちポケモンであることを理解させた

悪人がポケモンを繰り出してきているならば、少年もポケモンを出して対抗するほかない
投げられたボールから光とともにチャオブーが飛び出し、ありふれたポケモンバトルの始まりである

ポケモンバトルにおいて、操るトレーナーの心理状態は勝敗に大きくかかわる
心不確かならば格下相手に敗北することはままあることなのだ
これによりイッシュ地方のチャンピオンがバッヂの一つも持たぬ少年に敗北した事は有名な話だろう

さて、今の気が利く社員はというと、相手がポケモンを出しているというのに指示を出せていない
いわずもがな、決して見られてはいけない場面を見られてしまった動揺のためである

一方のトレーナー少年に目の前の非道に対しての正義感と闘志に燃えている
勝敗はこの時点で決まっている様にも思えた

「チャオブー、ニトロチャージ!」
「…!
 ドレディア!はなびらの舞いだ!」

火の玉と化したチャオブーが迫ってからようやくの指示。相性が悪い相手を前にしてあまりにも遅すぎる
戦って勝つ、トレーナーが思いを通すにはこれに勝る方法なはない
チャオブーは今まさに、トレーナーの義憤を炎に変えて悪の傀儡へとぶつけようとしている
しかし

186ショーケースの裏側で:2017/11/01(水) 04:44:48 ID:7pG2fGlk0
「そんな… 何で…」

この可憐な赤い花は少年の正義も怒りも優しさも、何一つ主人の所へ通さなかった
それは、舞いと呼ぶには余りにも暴力的で、怒りに荒れ狂う竜にも匹敵する破壊力を秘めていた
チャオブーは一度は耐えて炎の一矢を報いたもののすぐに吹き飛ばされ
相性を考えて繰り出されたココロモリは何も出来ずに地に落ち
最後に残ったシママもまた無情にも花の嵐の中に倒れた

この結果はつまるところ、あまりにもポケモンの練度の差が開きすぎていたというだけである
ブランクがあるとはいえ10年近く戦いを繰り返してきたドレディアにとって、
旅を始めてから数か月のトレーナーのポケモンたちを倒すにはただの一言の指示で十分だったと言う訳だ

ドレディアに抱かれていた子タブンネはいつの間にか姿を消していたが
トレーナーのズボンにかかった血しぶきと辺りに散らばる骨肉の欠片がその末路を物語っていた

一方で気が利く社員は肩の力が抜け、踏まれていたタブンネは這いずって靴の下から抜け
首を絞められてたタブンネはボトリと落ちた

「フィィ…」「フィー、フィー…」

2匹のタブンネはよろよろとおぼつかない足取りで気が利く社員から逃げ出す
まだダメージが残りうまく歩けないのだ
トレーナーは抱き上げて助けようと歩み寄ったが
草の隙間から2匹のチョロネコが飛び出し、子タブンネの首筋に噛みつくと
引きずりながらも素早く草むらの奥へと連れ去っていった
追いかけたトレーナーだったが気が利く社員にリュックを掴まれて止められた
ポケモンが戦えぬ状態で草むらに入るのは危険であるからだ
そして弱々しい悲鳴の後、クチャクチャと生肉を咀嚼する不気味な音が聞こえてくる
未だ倒れたままの野生タブンネの腫れた目から一筋の涙が流れた
姿は見えずとも、その耳で最愛の子供たちの最後を知ってしまったのだ

「あっ、あああ… あああ…」

打ちひしがれ、立ち尽くしたまま震えるトレーナー
悪人にポケモン勝負で一方的に惨敗し、守ろうとした子タブンネたちは全員死んでしまった
少年にとっては今までの人生で一番のこの上ない完全敗北
目の前が真っ暗になるというのはこういう事なのであろう

バトルの勝者であるはずの気が利く社員も苦い表情だ
勝負に勝とうとも、ポケモンの子供を苛めてる所を見られたという事実は変わらないのだから

やがてトレーナーの少年は涙を流しながらトボトボと去っていき
気が利く社員も興をそがれ、自宅へと帰ることにした
先ほどまでの興奮はどこへやら、満足感など何所にもなく
心のもやつきと共に一日の疲れがドッと押し寄せてきていた

それにしても、気が利く社員は何故こんな行動を取ったのであろうか?
昔は他の多くのトレーナーと同じようにポケモンを育てるためにタブンネ狩りをしてきた彼だが、
ただ昔のトレーナー時代を懐かしんでの行為ではない。
チビママンネを殴る蹴るしてるうちにトレーナー時代に幾度となく感じていた衝動がぶり返してきていたのだ

それは、見てるとつい苛めたくなってしまうというタブンネが持つ魔性じみた性質の為なのである
学者などが証明したわけではないのでまだ俗説の域を出ないのだが
タブンネの虐待事件は保護団体などに認知されてるだけでも他のポケモンのそれより圧倒的に多い
あのペット業者の社長もまた、その魔に憑かれてしまっているのだろう

「…早く帰って寝よう」

だが、自分の衝動の理由など今の気が利く社員の頭に無く
あの少年がいつか勤務先のデパートに来るかもしれないという事を考えると
たまらなく憂鬱な気持ちになるのだった

187名無しさん:2017/11/01(水) 08:47:50 ID:317LEQLk0
乙ンネ!

188名無しさん:2017/11/02(木) 00:41:22 ID:.piL6pZg0
少年が誰かは知らないけど、人のささやかなストレス解消は邪魔しないで欲しいですなw
チョロネコは後始末グッジョブ!!

189名無しさん:2017/11/02(木) 09:47:48 ID:YB3MF/eQ0
>タブンネが持つ魔性じみた性質

媚びた顔、ピンクチョッキ、不用意に草むらを揺らす、変な触覚…苛めたくなる要因が多いw

190名無しさん:2017/11/08(水) 21:32:45 ID:fq6HHygg0
ポケダンでは、タブンネは教師やってたけど、冤罪吹っ掛けて、村八分にして路頭に迷わせたい

191名無しさん:2017/11/26(日) 23:09:22 ID:1mi9K5q.0
USUMで助け呼ぶ無限湧き経験値タンクポジになれるかと思ったけどラッキーに取られちゃったな

192名無しさん:2017/11/29(水) 02:02:35 ID:6M7cHQs20
タブンネは助けを呼んだ!

タブンネ「同胞たちよ助けてミィ!!!」
しかし、誰も来なかった…
タブンネ「ミィ…」
トレーナー「よし。助けがくるまで、みねうち連打だ!」
タブンネ「ミィィィ―!!!!」

こうなるのやりたかった…

193名無しさん:2017/11/30(木) 08:55:06 ID:2G8Cqgj60
助けが来ないのは、こいつが最後の一匹とかいうオチだったりしてww

194名無しさん:2017/12/10(日) 15:11:17 ID:.jMHm6WY0
モグラ叩きならぬタブンネ叩きをやりたい

195ミィミィタブンネ学園文化祭:2017/12/17(日) 02:15:02 ID:IMquuUJo0
少し思いついたのを一つ投稿します
学園祭に行った時に思いつきました、駄文でしょうが楽しんでいただけたら嬉しいです

今日はアローラ地方にあるとある高校の文化祭の日だ
クラスの生徒達はそれぞれ出し物や劇や出店を行い、来校した客を楽しませ、もてなすのだ

パンフレットの見出しに
今回は第10回目記念として可愛いタブンネが主役の文化祭を行います!
皆さん遊びに来てください!
というなんとも気になる見出し文が書かれていた

俺は早速相棒のルカリオを連れて遊びに行くことにした

ミィーッ!ミィーッ! タブタブネ〜!!
教室から聞こえてくるこの声はタブンネの声だ
元々ここにはいなかったのだが、他地方の誰かがタブンネを捨てたらしく、アローラ地方に住みつき、その物凄い繁殖力で勢力を伸ばし生態系を壊しているため、アローラではタブンネは嫌われているのだ
アローラで嫌われているタブンネが何故文化祭の主役なのか?
学祭に来たのは暇なのもあるが、俺はその理由も探る為にここに来たのだ

このクラスの出し物はタブンネジュースという露店のようだ
アローラ地方のポケモン、ガオガエンがタブンネの足と頭を掴んで雑巾絞りの様にタブンネを絞っていた
ただ力が強いので、タブンネの血を絞り出すどころか、何回かに一回爆散させてしまってる
これじゃジュース屋さんところかただのスプラッター会場だが、絞られる瞬間のタブンネの絶望した表情とダブダブの身体がキュッとスリムに捻られるところは何度見てもルカリオと一緒に笑ってしまうのだった

早速ルカリオが俺におねだりしてきた
ルカリオは肉食ポケモンだからな、よし買ってやろう

俺「タブンネジュースくれ」

ガオガエンは頷くとデヤッ!!という掛け声と共に新鮮な生きたままのタブンネを捻ってコップに注いでくれた
その際血肉が飛び散ってしまうが、新鮮なものをその場で絞ってくれてるから仕方ない
ルカリオに渡すとルカリオは喜んでタブンネジュースを飲んだ、やはり新鮮は美味いらしい

すると俺達の足元にチビンネ共が泣きながら走り寄ってきた
その視線はタブンネジュースに注がれている
そうか、さっきの絞られンネはこいつらのママンネって事か

ルカリオはまだタブンネの臭いの残る生暖かいタブンネジュースをチビンネ共にぶっかけた
チビンネ共は初め、まだ親の匂いのするこの生暖かい液体の匂いを嗅いで、親の事を思い出し若干安心したのかミィ…♪と鳴いていたが、やがてジュースが冷たくなりベトベトと気持ち悪く身体にまとわりついている事に気付くとミッ…とまた悲しそうに泣き出し始めた

「あーコラ!逃げんなってば!」
そんなチビンネをガオガエンと男子生徒がつまみ上げ、籠の中に乱暴に放り込む
籠の中に放り込まれるごとにチビンネ共はチギャアとかチビッ!とか鳴いている
まあお前らも次でママンネのところに行けるから安心しろ

男子高校生にお金を払って俺達はタブンネの絶望ミィミィボイスを背にして教室を後にした

196名無しさん:2017/12/18(月) 23:47:27 ID:wBeE7HKg0
>>195
乙乙
たまに爆散するってひどいなw 食べ物は無駄なく絞らないとね!

197ショーケースの裏側で:2018/02/28(水) 00:45:17 ID:NkxHpBdU0
「ミ…」
イベントから一週間後、デパートの中に入っているペットショップの店舗
イベントで売れ残った子タブンネのうちの一匹が店先のショーケースに入れられていた
その前を幾人もの人間が通り過ぎていき、
時折、人の流れから外れて何人かが展示されてるポケモンたちを見に来る
無論彼らはペットショップのお客さんで可愛いポケモンを見に来ているだけなのだが、
未だ人に慣れない臆病な子タブンネにとっては巨大な怪物が迫ってくるに等しい
近づいてくるたびに脅え、展示ケースの隅に逃れて丸まりながら立ち去るのを待つ
この対応だと人間がすぐに飽きて立ち去ってしまうので子タブンネにとっては正解だったのだが
ショーケースに並ぶ商品。すなわち看板商品としてはあまりいただけない

「ピッピキピィ〜♪」「ミィィン…」

売れ残りンネを苦しめるのは見に来るお客だけではない、人間に劣らず慣れ難いお隣さんだ
壁に遮られて姿は見えないがピィピィと甲高い声で楽しそうに鳴くのが堪らなく耳ざわりであり
しかもその鳴き声が恐ろしい人間を引き寄せてくる事さえある
それに明るいうちにだけうるさいならまだしも、
どういう訳か真夜中に突然起きだしてドタドタと遊びだす事があるのだ
夜行性の気があるのはそいつのポケモンとしての習性で仕方がないのだが
この哀れな幼いタブンネにはそれを理解できる頭も許容できる心の余裕も無い
さりとて正体不明のポケモンに対して抗議したり威嚇したりする勇気もなく
小さな両手で懸命に耳を塞ぎ、脅え震えながら耐えるしかなかった

「クミィ…?」

そんな売れ残りンネだが、密室に一匹だけの暮らしは多感な子供時代にあってあまりにも退屈
暇つぶしになるような事と言えば怖い人間が沢山いる外の世界をガラス越しに見る事しかない
ボーッと眺めていると、色とりどりの見飽きた怪物の群れの中に懐かしい桃色を見つけた

「ふふ、おやつ買って帰ろうね」
「ミィミ、ミィ♪」

それは、自分が知っている子タブであり、同じ群れの年上の幼馴染
自分がいた巣の近所に住んでいてベビ時代からよく世話を焼いてくれたお姉ちゃんタブンネだった
イベント会場で一度はぐれたきり一度も会っていなかったのが
今、あろうことか恐ろしい敵である人間に抱っこされて笑っているのである

「ミィッ!ミィッ、ンッミィ!」
「ミミ?!」
「ん、どうしたの?」

居ても立ってもいられず、売れ残りンネはベチベチとガラスを叩きながらお姉ちゃンネを必死に呼ぶ
お姉ちゃンネはそれを逃さず聞き、驚きとともに振り向いた
もちろん一緒にいる人間にも自分の存在を気づかれ、一緒に自分の前に来てしまったのだが
そんな事は構いやしなかった

198ショーケースの裏側で:2018/02/28(水) 00:46:27 ID:NkxHpBdU0
「ミィ!ミィ!ミィィ!!ミィ!」
「ミミ、ミーミ!」
「…? ひょっとしてお友達なの?」

人間が正解であるそれに至るのはそう不思議な事ではなかった
お姉ちゃンネを買ったのは言わずもがなこのデパートのイベントなのである
2匹のタブンネはショーケースを間に挟みミィミィと語り合う
売れ残りンネはガラスに両手をつけ悲壮に目元を濡らしながら
お姉ちゃンネは飼い主の人間の女性の腕の中で動揺し困惑しながら

『ここから出して!一緒に帰ろうよ!おうちに、ママとパパの所に帰ろうよ!』

売れ残りンネは必死に訴えたが、お姉ちゃンネは何の答えも口に出せない
この一週間の商品としての乾いた日々
売れ残りンネはあの群れで過ごした幸せな日々を夢に見ない日は無かった
パパンネもママンネも兄ンネも姉ンネも傍にいて、群れのタブンネたちもいっぱいいいて
友達のちょっとやんちゃな子タブに自分にヨチヨチついてくる年下の子タブ
お隣さんの巣にいるちっちゃくて可愛い生まれたてのベビたち
そして、いつも優しくしてくれていたこのお姉ちゃんタブンネ…
いつまでも続くと思っていた日常。あの2人と2匹がやってくるまでは

「お姉ちゃんはいつもボクを助けてくれた。お姉ちゃんなら何とかしてくれる」

愛と信頼による盲信か、追い詰められたか弱い心が生んだ妄執か
売れ残りンネは一週間のうちに胸に貯まりきった切ない願いを止め得ぬ涙とともに吐き出した
今の彼にとってお姉ちゃンネとの出会いは地獄の底に垂れ下がる蜘蛛の糸
どんなにか細くとも、縋らずにはいられない

「ンミィ…」

その期待に対しお姉ちゃンネは俯き、唇を噛みしめるしかできない
彼女は頭が良いとまでは言わないまでも、物わかりのいいタブンネである
自分は売れ残りンネを故郷に連れて帰る事はできないし、この透明な箱から出してあげる力もない
自分の、いや、自分たち子タブンネの無力さはよく分かっている
出来る事と言ったら、飼い主の顔を物欲しげに見つめる位だ

「いや、一緒にしてあげたいのは山々なんだけどねー…」

幸か不幸か、この飼い主はタブンネが身長が1m以上にも育つのを知っていた
イベントで衝動買いしてからネットで調べて知ったという経緯なのであまり褒められたものではないが
自分の住宅事情では体重30kgのポケモンを2匹飼うのは無理だという最低限の分別はついている

「フミィ…」

言われるまでもなくその考えを敏感に察し、お姉ちゃンネはしゅんと俯いて落胆してしまう
群れにいた時もそうだったのだが、彼女は我儘を言わないし、言えない子だった

「ンミーッ!!グミッ!!ビィッ!!クミィィーーン!!ヒィィーーッ!!」

口を閉ざしたお姉ちゃンネとは対照的に売れ残りンネの懇願は一層強く、激しく
そして見苦しくなっていく
キュウキュウと耳障りな音を出しながらガラスを引っ掻き、
顔を涙と鼻水でくしゃくしゃにしながら甲高い声で必死に呼びかけ続ける

「ミィミィ、ミミッミッミ、ミィミ…」
「ミミッ…!」

「わたしは今、しあわせだよ。早くあなたもいい人間に出会って、しあわせになってね」
お姉ちゃンネが売れ残りンネにしてあげられる事は、この言葉をかける事だけだった
こんな言葉が救いになる筈もなく、言われた瞬間売れ残りンネは絶句してしまう

199ショーケースの裏側で:2018/02/28(水) 00:48:55 ID:NkxHpBdU0
巣を壊し、パパやママやみんなを殺傷し、子供たちを攫い
そして仲間たち一緒に袋の中にぎゅうぎゅうに詰め、冷たい水をかけ、
狭くて暗い所に閉じ込めて何時間も揺さぶり
ヒリヒリする何かで股間を拭かれ、解放されたと思ったら大勢の人間が迫ってきて…
怖くてずっとずっと逃げ回ってたらまた捕まって、この透明な箱に閉じ込められて

…イベントの時に餌を貰ったのを差し引いても、人間が嫌いになる所以としてはあまりにも十分すぎる
この小さくて臆病なタブンネは人間を信じることができず
「いい人間」なるものがこの世に存在ことなどとても信じる事ができなかった
それ故にイベントで最後まで売れ残ってしまったのだ

その一方、お姉ちゃンネの方はというと一週間のうちにすっかり人間との暮らしに順応していた
もちろん買われた当初は業者たちのひどい扱いによる人間への警戒心や不信感、
そして家族と引き離された怒りと悲しみは少なからず心にあった
しかし、今の飼い主と一緒に暮らすうちにそれらは薄まり消え去ろうとしている

ママンネが作ってくれた草の寝床より柔らかく暖かい毛布つきのフカフカベッド
パパンネが頑張って採ってきてくれた森の木の実よりもずっと美味しい食べ物
恐ろしい捕食者の気配が全くしない安全な住処
そしてベビの世話や食べ物探しなどの練習を兼ねたお手伝いもする必要なく
ただ遊んでいるだけで褒めて可愛がってくれる新しいママ
草むらの中ではあり得ない満たされた生活にお姉ちゃンネは虜になり、
自らを金で買った人間を本当の母親以上に依存し慕うようになっていた

売れ残りンネが毎夜夢に見るほどに求め、恋焦がれていたかつての群れでの生活は
今のお姉ちゃンネにとっては最早懐かしくほろ苦い思い出でしかない

「ゴメンね。あとでおっきいおやつあげるからさ」
「ムミィ…」

お姉ちゃんネは涙声で一鳴きし、飼い主の胸に顔を埋めてしまった
それは後ろめたさから売れ残りンネの顔を見ていられないからと、
本当の姉のように慕ってくれていた売れ残りンネに涙を見せたくないからか
それは彼女自身にもにもはっきりとは分からない
そして人間はそんなお姉ちゃンネを売れ残りンネから隠すようにショーケースに背を向け、立ち去っていく

「ミィミィ!ミィミィ!ミィーーーーーーーーーーーーン!!」

人間に抱かれたまま自分の目の前から去っていく最後の希望に
売れ残りンネは必死で追い縋ろうとケースの中で必死に足掻いた
何とか引き止めようと先ほどよりも一層大声で力の限りに叫び、
眼前の透明な壁を壊すべく、赤くヒリつく手の痛みも忘れて必死に叩き引っ掻いた
しかしどんなに頑張ろうとガラスにはヒビのひとつも入らないし、人間は歩みを止めない

「ミィミィ… ミィミィ…」

やがて飼い主の姿は見えなくなり、憎い一人と愛しい一匹の音もタブンネの耳が届く範囲からすら消えた
しかし売れ残りンネはそれでも諦められず、力が入らなくなった手で弱弱しくガラスを引っ掻き
哀しげな声で涙を流しながらお姉ちゃンネに呼びかけ続ける
その絶望の涙に覆われた目には周りの状況など全く見えて無かった

「ピッピ〜♪」
「おとーさん、おとーさん、ピッピ欲しーっ!」

自分のすぐ近く、お隣さんのケースの前に恐れていた筈の人間たちが居る事も

200ショーケースの裏側で:2018/02/28(水) 00:54:22 ID:NkxHpBdU0
すみません、USUMで遊んでいたところここまで間が空いてしまいました
でももう少し完結ですのでもう少しだけお付き合い下されば幸いです
関係ないけどウルトラホールのせいで色違いタブンネさんの価値がダダ下がりですね
自分も2匹ゲットしました

201名無しさん:2018/02/28(水) 19:24:36 ID:yglag/XU0
おおー乙!!
お待ちしておりました

202名無しさん:2018/03/02(金) 03:43:17 ID:49avPu6w0
ショーケースの続き、ありがとうございます!

ここで冒頭に戻ってきましたね、この子は順応できるのかな?

203名無しさん:2018/03/04(日) 13:35:01 ID:S3qoe5Fc0
乙ンネ
やっぱり子タブには、泣きながらガラスをぺちぺち叩く姿が良く似合う

204名無しさん:2018/03/29(木) 01:56:33 ID:iyuOG52g0
今年も来ました桜シーズン。お花見で出たゴミ(ごちそう)を野良タブンネ達が貰える季節です

205名無しさん:2018/03/29(木) 04:40:15 ID:6G5JMGTc0
>>204
そのお花見料理のどれだけにタブンネの肉が使われてるやらw

唐揚げとか丸ごとくすねたらその唐揚げがいつの間にかいなくなっていたベビンネで驚愕の再会なんてことも…

206名無しさん:2018/03/31(土) 21:28:45 ID:PVt0cX320
自分の子どもを当てろゲームとかやらせたいな

207名無しさん:2018/04/01(日) 11:12:46 ID:PuFH98O60
タブンネと桜は面白かったな

208ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:47:07 ID:Dxc7CVbQ0
ちょうどその頃、ペットポケモン業者の社長はあの地獄の第二飼育室で男二人を待っていた
かつて男二人が管理していた悪臭に満ちた汚い部屋とは打って変わって
殺風景とも言えるほど小奇麗な一室となっている
とある目的の為三人で頑張って掃除をしたのだ
掃除中、糞尿や死体由来の悪臭やベビンネのミイラが出てくるなどのトラブルにより
社長は終始不機嫌で男二人は作業中に冷汗が流れっぱなしだったが
それでも何とか方付けは終わり、今は新たな計画の次の段階に移っている最中というわけだ

「ふぅーっ、社長!早速見つけて来ましたぜ」
「おっ、また早かったね〜、見せて見せて〜」
「いや〜ひとつ30キロはいくらなんでも重すぎますぜ」
「おー、3匹と赤ちゃんたちも捕まえちゃったんだ!でもボールに入れてくれば良かったのに」
「いや道中のセンターで調達しようと思ったんすが、運転中に急に見つけたもんで」

そう言って男たちが持ってきたのは、中身が詰まった麻袋が4つ
あの捕まえた子タブンネを運ぶ時に使っていた物だ
だが、4つのうちの3つがグネグネと身をよじらせるように動いていて
中身がいつものそれとは違う事をと示している
それを一人二つずつ両脇に抱え、その重さに額が汗でテカテカと照り返している

「ミヒッ?!」「ンミ!?」「ミミ!」

男たちはそのうちの3つの袋の口を開け、その中身をずるりと床に下ろす
中から出てきたのは両手両足を縛られた成体のタブンネたちだ
不安そうにキョロキョロと周りを見回したり、呆然としていたりと皆困惑した様子である

「ミィ!?ミィミィ」「ミミ!ミィ」「ミーミ?ミーミ!?」

3匹のタブンネのうちの一匹、比較的体が大きいタブンネが何かに呼びかけるように鳴き出す
それに釣られ、2匹のタブンネも焦りだし何かを探してるような素振りだ

209ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:48:09 ID:Dxc7CVbQ0
「ほれほれ、心配しねーでも赤んぼはちゃんとここにいるぜ」

そう言って兄貴分がもう一つの袋から取り出して見せたのは、中身が入った青い洗濯ネット
その中身は言わずもがなベビンネである。かなり恐怖しているようで、体を丸めブルブルと震えている
3匹のうちいずれかの実子なのだが、男たちに母子の区別はつかないし気にもしていない
兄貴分は床を滑らせる様に投げてタブンネたちの近くに寄こした

「チィ!チィィ!」
「フミッ!ミミー!!」

タブンネのうちの一匹が縛られた手でベビを抱き上げ、ネットを噛みはじめる
どうにかして出そうと頑張っているのだが、太くてごわごわの合成繊維の網はそう簡単に噛み切れはしない
悲しいかな、野に生きるタブンネにジッパーの仕組みを一目で理解することは出来なかった

「ミィ!ミッ!!ミィィ!ミー!!」「ミ゙ッ!ヴミ゙ィー!」
「あらら〜、怒っちゃったよぉ。もっと丁寧に扱ってあげなきゃ」
「あー、すいません」

他の2匹のタブンネが怒りの声をあげた。
一匹は子供がだだを捏ねて大声で喚くように、一匹は太い声で吠えるように
怒りの理由は言わずもがなであろう
が、3人はこの程度の威嚇は日常茶飯事で、いちいち相手にしててもしょうがないという態度だ
社長は半笑いしながら申し訳程度に注意し、兄貴分は少しだけ顔をしかめてポリポリと頭を掻いた

ここでなぜこの3匹と子供たちが捕まったのか説明すると
3匹のうちの1匹、具体的に言うとうるさい声で威嚇してるタブンネが
落ち穂を拾っていた所を見つかったのがこのタブンネたちが捕まった切掛である
まず手始めにうるさいタブンネがメスであることを確認してからルカリオとともにふん縛り
それから様子を見にきた網噛みタブンネも勢いで捕獲し、その足跡を辿っていったら近くにある巣も見つかり
守っていた唸りタブンネとベビと子タブたちもあえなく全員御用という運びである

「とりあえず赤ん坊を返してやりましょうや、そうすりゃ少しは落ち着くでしょうぜ」

弟分は麻袋から残りのタブンネたちを一匹取りだし、洗濯ネットから出して仰向けに床に置く
するとベビンネはハイハイをしだしタブンネたちの所へ真っすぐ向かっていった
本タブからすれば全力を以て敵から逃げているつもりなのであろう
しかし、涙声でチィチィと高い声で切なげに鳴き、
綿毛のように小さくて白い尻尾を小刻みにぷりぷりと揺らしながら一生懸命に這っていくその姿
電池で動く動物の歩く玩具のように滑稽で愛らしく、社長はもとより兄貴分ですらも口の端が緩むほどだ

210ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:48:58 ID:Dxc7CVbQ0
「ハハハ、面白ぇ。オモチャみてーだ」
「あっ、わたしもやる〜」

その様を面白く思った社長と兄貴分もネットからべビンネを取り出し、床に置いた
3匹のベビンネが一斉に母親の所へ向かっていく様はまるでレースのようでもある

「ミィッ!! ミィッ!!」「ミギーッ!ンギーッ!!」「ミーミ… ミーミィ!」

そんなベビンネたちを一匹は早くこっちへ逃げてこいとし、もう一匹は助けに行こうと足掻き
そしてもう一匹は洗濯ネットに手こずりながら無理をしないでと慰める
ちなみに網の中に入れられたままのベビは未だ出されないままであった

「チッチ、チッチ…!」

社長の放ったベビンネは弟分のそれと同じく順調にタブンネ達の所へ向かって行ったが
兄貴分のベビンネだけは他のベビとは様子が違う
一匹だけハイハイが下手で明らかに進むのが遅い

「チィーチィー… チー…」

そのベビンネは余りにも幼すぎる小さな手足をプルプルと震えながら小刻みに動かし、
小虫にも等しい筋力でその体を何とか引きずって前に向かっていると言った具合で
「ハイハイ」というよりかは「モゾモゾ」と表現するのが正しい
見た目も他のべビに加えて一回り小さく、毛並みもまだ生え揃ってはおらず薄い
それもそのはず。こいつは他のベビと比べてもかなり幼く
生後十日ばかりの昨日ようやく目が開いたばかりのベビンネなのだ
ハイハイレースどころか、ハイハイの練習にすら時期尚早だ

「チィッチ…チィッチ…」「ヂィ!ヂヂィ!!」「チヒー… チヒー… チ…」

3人からは見えてはいないが、幼いベビは泣いていた
光を授かって間もない両の目は涙の海に沈んで霧中の如く霞み
まだ触覚が短くて巻き切ってない幼い耳は他のタブンネや人間の騒ぎ声に苛まれる
それでもなお眼差しは真っすぐに温かな桃色を
ヒヤリングポケモンの聴覚は雑音の中から忘れえぬ声をしっかりと捉え
大すきなママンネの元へ頑張って、いや、命を懸けてたどり着こうとしている

しかし、そんな健気な頑張りを兄貴分は全くもって理解してはくれなかった

「なんか俺んだけ遅ぇな? ホラホラもっとガンバレよ。ムチ入れんぞムチ」

兄貴分は遅いのをまどろっこしく思い、小さなお尻にペチペチとデコピンを入れた
それでも全力ではなく、丸めたハナクソを飛ばす時のように軽くはじく程度なのだが
強い刺激に慣れてないベビンネにとっては結構な激痛である

「チィィッ!チッ!ピッ!ピィィッ!!」
「あははっw あんまり苛めちゃ可哀そうだよ〜w」

幼ベビンネは一層甲高い、まるで天敵に襲われた小鳥のような悲鳴をあげた
前に進むだけで精一杯というのにこの仕打ち。幼いベビはもう耐えられない
一匹のタブンネは怒ってビャアビャアと威嚇し、もう一匹はミィミィと涙ながらに慈悲を乞いた
そうしてもう一匹は…

211ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:49:46 ID:Dxc7CVbQ0
「ミッ… ミッ… ミゴォォォォォォォォーーッ!!!!!」

怒声と共に立ち上がり、兄貴分へ突進していった
儚くか細い力を、無垢で繊細な心を必死に奮わせ、母親の元に向かおうとする小さな、だが尊い命
それを大きな手で弄び、流す涙を嘲笑う… そのような非道、何が相手だろうと許せるものか!
両手足を縛っていた筈の紐は、怒りにより限界を超えた膂力で引き千切れていた
その時に相当な無理がかかったのだろう。手首と足首から床に赤い滴が落ちる程に流血している
だがその痛みも、烈火の如く胸に滾るものに遮られ前頭葉には届いてはいない
そして兄貴分はあまりに突然のそれに反応しきれず、タックルで転がされてしまった

「おお?!痛ってぇ!!何だいきなり?!!」
「あ、兄貴!大丈夫ですかい?」
「え、あれ?縛ってたんじゃないの?!」

次にタブンネが怒りの矛先が向けたのは社長だ
ベビを救うためにまずは兄貴分を攻撃した怒りのタブンネだったが
実の所、幼いベビの純心を弄ばれるのを笑っているこの女の方が許せなかったのだ

「ミ、ミィッ!!ミミィ!」

しかし踵が地から離れようとしたその瞬間、仲間の声が一瞬の正気を取り戻した

「ミッミ!ミッミ!」『ミィィィィィ!!ビィィィィィ!!』
「ミィ!」

ハッとして振り返ると、赤ちゃんを助けてと訴える仲間たちと、
異常な状況に張りつめた心が限界を迎え、怯え泣き叫ぶベビたち
踵を返し、ベビたちを救うべく駆け寄ると目の前にボールが落ち、閃光とともにポケモンが現れた

「ガウッ!」

ルカリオである
至近距離、驚く間もなく発射された真空波を怒りンネは避ける術はなかった

「ミグッ…」

急所である鳩尾に見えぬ衝撃がめり込み、床に崩れ落ちる
まだ意識と感覚はあるものの手足が言う事を聞かず、立ち上がることが出来ない
ポケモン勝負であれば「勝負あり」の状態である

「お〜、すっごい早わざ。ルカリオちゃんつよ〜い」

元来の無愛想な性格ゆえ、社長に褒められてもルカリオはムスッと黙り込んだままであった

「オメ、いちおう社長なんだぞ!ちっとは愛想よくしろや!」
「ワウ、ワウ」
「そんなことより社長、兄貴、いいかげん準備を始めましょうや」

呆気に取られるタブンネたち、そしてさらに激しく泣くベビたちの前で3人の人間は作業を始める
作業といってもタブンネたちの拘束を解き、べビを網から出すだけなのですぐに終わるのだが
「いちおうって何?」と兄貴分に言いたかった社長だが、
話題が変わると残念ながら完全に突っ込むタイミングを逃してしまった

212ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:53:00 ID:Dxc7CVbQ0
「…ミィ?」

ハッと起き上った怒りンネ、その眼前には2匹の友とベビたちの姿が
仲間たちは固く縛られていたはずの手足は解かれ、慣れない環境に怯えるベビたちを宥めようとしている
そして怪我をしていたはずの自分の手足には白いものが巻かれている
包帯で治療した後なのだが、野生のタブンネにその意味を理解することは出来なかった
先ほどまでいた人間たちの姿はない。が、そう遠くない場所に潜んでいる事は丸わかりだ
他に違和感があるものと言えば、天井から果実のようにぶら下がる見たことがない物体だ
シャー、ウィーンと聞き慣れぬ音がかすかに聞こえる事と、
目玉のような光る何かがこちらに向いていて、何かに見られているような気になる事が怒りンネの不安を煽る

「さ〜て、このタブンネちゃんたちで大丈夫かな〜」
「…期待できる気がしませんがね」


その頃、3人は別室でノートパソコンを見つめていた
ウィンドウの中に映るのは、先ほどの部屋のタブンネたち
一般家庭用の防犯カメラで監視をしているのだ
既に察している方も多いだろうが、
このママンネたちは商品となるベビの世話をさせるために連れてこられたのだ
わざわざモニターで監視しているのは。都合のいいタブンネかどうか見極め中というわけだ

「あっ、ベビちゃんたちがお乳をせがみだしたよ」
「へぇ、ちっとは環境に慣れてきたみてーですな」

さっきのドタバタした状況ではどれがどのタブンネかすら分かってなかったが、
腰を据えて観察してみるとタブンネそれぞれの個性が見えてくる
ちなみに男たちが一緒に連れてきたベビは8匹。どれがどれの子か3人ははわかっていない

「ミミィ!ミーミ!」「チィーチ!チィ!」「ヂャァァァァァ!!!ビャァァァァ!!!」
「…こいつぁガキの扱いが下手ですな」「うぇ〜、泣かせちゃってるよ〜」

連れてきた際に威嚇していたタブンネ。
後頭部に識別用の青いマーカーが付けられているので以後青ンネとしておく
8匹のベビの内なんと6匹がこいつの実子なのが観察のうちに判明した
だが見るからにベビの扱いが下手であり
母乳を飲ませる際、位置が悪いと尻尾を引っ張ったり顔を押して退かしたりと粗雑そのものだ
当然ベビも母の胸の前で泣くわ怒るわの大混乱だ
元来自信過剰で無鉄砲な性格であり、自分の親としての器を知らずに産み過ぎた結果である
ちなみに先ほどデコピンをされていた幼いタブンネはこいつの子だ

「ミミ!ミッ!」「チィチ!」「チチ…」

兄貴分に突進したタブンネ。
先のそれと同じ箇所にに黒いマーカーが押されたので黒ンネと呼称する
8匹中2匹がこのタブンネの実子である
こいつはなかなか堅実でしっかりした性格なのだが、母親としてはいささか頭が堅すぎるきらいがあるようだ
授乳を済ませると甘えようとするベビたちを諌め、胡坐をかいたまま聞き耳を立てて周囲を警戒している
このような状況ではベビに甘えさせてる場合ではないというのは賢明な判断だが
ベビ達にそんな理屈が分る筈もなく、泣きそうな顔でしょぼくれてしまうのであった

「ミィーミ、ミーミ」「チィィ…」「チーチ」

最後にベビ入りの洗濯ネットを開けようとしていたタブンネ
赤いマーカーが付けられたこいつは赤ンネと呼ぶ事にしよう
授乳をしないことからママンネではない事が判明した
青ンネと非常に仲がよく常にすぐ側に居るので、姉妹なのではないかと推測されている
このタブンネは青とは違い優しく気配りができる性格で
青ンネが授乳してる際に、泣いてしまったりお乳が上手く飲めなかったりしたベビのフォローをしている
泣くべビがいれば人間がするように抱っこしてゆさゆさと揺すってあやし
怒るベビがいれば抱き寄せて頭を撫でながら宥め
ウンチをしてしまったベビが居ればお尻を拭いてあげたりと授乳をしなくてもかなり忙しい
というか、授乳以外の全てを赤ンネに任せっきりと言っても過言ではない

213ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:53:59 ID:Dxc7CVbQ0
「青の奴はダメっぽいですなぁ、」
「そうだね〜、あの子と比べるとね。でも一応次の実験を見てからにしようよ。リマ君、おねがい」
「へい、行ってきまさぁ」

弟分は大きな袋を持って部屋に戻ってきた
中身はタブンネたちの餌となる野菜クズとそれからあと一つ大事な物だ

「ホレ、メシの時間だぜ」
「ミッ?!」「ミッミ!!」「ミィ!」

弟分はガチャリとカギを解いてドアを開け、大小の紙袋を置いて素早く外に出る
大きいものは30kgサイズの米袋、小さいのは社長のアレを買った時のドラッグストアの紙袋だ
大きいほうの中身はタブンネたちの餌として近くの町のスーパーや農場からタダ同然で調達してきた物で
言うまでもなくママンネたちの餌なのだが
餌が入っているのを知らないタブンネ達にしてみれば敵が置いて行った得体の知れぬ物体
もちろん警戒し、近づこうとしない

「ウミ〜〜ン♪」
「ミ!ミィ!」「ミッミィ!」

しかし不意に袋が倒れてキャベツの尻とサツマイモの端が姿を覗かせると
青ンネが授乳をおっぽり出し、黒ンネが止めるのも聞かず食べに行ってしまった
乳に吸いついていたベビは振り落とされ号泣し、赤ンネが慌ててあやしに入る
刈り取りが終わってしばらく経つ麦畑でわずかな落ち穂をチビチビ食べていたという行動からお察しの通り
青ンネはこの数日間かなり空腹だったのだ。ほかの2匹も同じくらい空腹だということはさておき
もちろんこの様子はカメラでバッチリ取られており、見ていた2人の失笑を買った

「ウハハ!あいつやっぱりバカタブですなー」
「ぷぷ〜っw いくらなんでも食い意地張りすぎだよ〜w」

「ンミ?」

聴力の賜物か、誰かにバカにされているのを感づいた青ンネ
無駄にプライドが高いタブンネであり、バカにされるのが大嫌いなのだ
それでも食べるのを止めない所が最高にバカなのだが

「ヂィィ…」
「ミ?」「ミィ?」

今度は小さいほうの紙袋がガサガサと音を立てながら倒れ、中からベビンネが這い出してきた
このタブンネたちのベビより少し大きい、ようやく立っちが出来るようになった位のベビだ
このベビが今回の実験の肝、このタブンネたちが仕事に使えるかどうかの試金石である
見知らぬべビにどう対応するかを見て、商品となるベビンネを保育させるのに使えるかを判断するのだ
ちなみに前日に調達して来たベビで、実験に都合のよい状態にするべく
閉所監禁24時間、絶食16時間の処置を施され、心身とも程よくやつれた状態になっている

214ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:55:15 ID:Dxc7CVbQ0
「チィィ、チィ…」
「ミッ? ミーミ」

まず最初に試金ベビの一番近くにいた青ンネである
一瞥してお互いに目が合ったものの、特に構う事もなくプイと顔を逸らしまた食事に戻ってしまう

「チィィ、チィチィ!」
「ミミ!!」
「ヂィィ… 」

それでも大人に助けてほしくて縋りつく試金ベビを、あろうことか手で押しのけて大声で威嚇
人語で表すなら邪魔するなと叱りつけて追い払ってしまった。
久しぶりのまともな食事を邪魔されたくなかったのであるが、あまりにもあんまりな対応である
哀れな試金ベビは半ベソかきながらのよちよち歩きで逃げて行ってしまった

「ミッ?」
「チーチ、チィ…」

次に試金ベビが頼ったのは黒ンネ、今だに寝そべって授乳中である
先ほどの青ンネから受けた心傷から、助けて欲しくて近づいたのは変わらないが若干恐る恐るだ
あのバカとは違い、迷い子を捨てては置けぬという良識が黒ンネにはあった

「チィーチィ… チィー…」
「ミミ…」

静かに眼を閉じ、聴覚を研ぎ澄ませて聞き耳を立てる
回り、いや、辺り一帯の音でこのベビの親タブンネを探そうというのだ
タブンネがタブンネを探す時はこれが一番確実なのである
しかし聞こえてくるのは聞きなれぬ人間の機械の音に十数匹の子タブンネの悲しげな声
さらに耳を凝らしてみても入ってくるのは車の音、タブンネではないポケモンの足音…
結局、試金ベビの母親と思しきタブンネは黒ンネの耳に入る範囲には居なかった
実際に居ないのだからその聴力は正確無比ではあるのだが

「ミッ、ミッ、ミミミ…」
「チィー…」

母親の不在を伝えられると、しゅんと耳が下がり、悲しそうな顔をする試金ベビ
ママがいなくて大ショックという様相でないのは、ベビ自身も聴覚で薄々分かってはいたからである
黒ンネはそんなベビを頭を撫でながら慰めた
「そのうち会えるさ」と何とも無責任な慰めをしなくてはならなかったのが
彼女にとってとても悔しい所だ

「チィィ…」
「ミグッ?!」

ベビの心は幾分かは落ち着いた
しかし、その視線が乳を飲む黒ンネのベビ達に移ると黒ンネはギョッとして体を強張らせた
前述のとおり黒ンネも腹ぺこの栄養不足、授乳できてはいるものの乳の量は僅かで
はっきり言って他タブのベビに分けてやる余裕などない

「ミッ!ミッ!」

サッとわが子を隠すように片腕で覆い、軽い威嚇の様にキツめに鳴く黒ンネ
体に余裕があれば分けてやったのだろうが、今はどうしても駄目だ
乳を飲んでる筈の自分のベビ達も肥立ちが良くなく、かなり不安なのだ
しかし、それでもベビはその視線を別に向けなかった。すごく怖がってはいるが
飢え切ったベビが母乳を目の前にして、どうして我慢ができようか、

「チィチィ… チィチィ…」

ベビンネは空色の瞳に溜めた涙をぽろぽろと零しながら、お乳をせがむ鳴き方でか細く鳴いた
『おちちちょうだい… おちちひとくちだけちょうだい…」
その切なく、悲痛な声は黒ンネの心を揺さぶり、息が詰まるほどの罪悪感で大いに苦しめる
そして、とても残念なことに、今の彼女はその心の痛みに耐えることは出来なかった

215ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:56:46 ID:Dxc7CVbQ0
「ミガァーーーーーーーーッ!!!!」
「ヂィィィィーーーーーーーーーー!!!!」
「ビビッ?!」「ヂッ?!」

切なる懇願によってベビにもたらされたのは、剣道の気合の如き怒声である
あまりの声量と迫力に部屋のタブンネたち
そして、別室に置かれている子タブンネたちすらもみな一様に驚きびくりと体を震わせる
罪悪感を怒りに変え、相手に叩きつける… ある意味逆ギレに近い心境か
これを至近距離で直撃した試金ベビは全身が凍てつくほどに恐怖し
コテンと尻餅をついておまけに糞までちびってしまう
そして恐れおののきながら早足のハイハイで黒ンネにしっぽを向けて逃げて行ってしまった

「ヂィィィィィ!ビィィィィ!!」「ビャァァァァー!!ヂュィィィィ!!」
「ミィ、ミィミィ、ミィミィ…」

試金ベビのみならず、乳を飲んでいた黒ンネのベビたちも巻き添えで泣き出す始末だ
慌ててわが子をあやそうとぎこちない手つきで頑張る黒ンネだが
生来どうにもこういった事は苦手である
決して表に出すことは無いが、心の中で目の前のわが子にも負けぬ程に泣いていた
お腹を空かせたベビを怒鳴って追い払うなど、誰が好んでやるものか
本当は助けてやりたい、抱きしめて乳だっていくらでも吸わせてやりたかった
だが今の自分は赤子の空腹すら十分に満たせぬ無力なママンネ
わが子の命を守るには鬼にもならねばならぬのだ
唇を噛みしめ、尻を汚して己から遠ざかる哀れな母無し子に胸の内で必死に詫びた

「ヂィ… ヂグゥ… グズッ…」

もはや同族のタブンネさえも信じられず、部屋の隅で丸まって震えながらメソメソと泣く試金ベビ
両親は消え失せ、他のの大人タブンネたちからは疎まれ拒まれる…
他者の助けが無くては生きられないベビにとって、この状態には死にも等しい
赤子にそんな小難しい理屈は分る筈もないが、その小さな心の中はは絶望で一杯だ
そんな時、急に手足が床から離れ、体が宙に浮く

「ヂヂッ?ヂッ!ヂヂーッ!!」

何が起きたかわからず怖くなって手足をバタつかせていると、背中に温かいものがふわりと触れた
どうにかベビたちをあやし終わった赤ンネが試金ベビを抱き上げたのである

「ヂヂィ!!ヂヂィー!!ヂャーーーー!!」
「ミィィ、ミィミィ♪」

未だ恐慌状態の試金ベビは訳も分らず腕の中で手足を振り回して大暴れするが、
赤ンネは手慣れた様子で宥めながらそれをいなし、
そして疲れて暴れるのを止めたのを見計らい、ベビの耳をそっと胸に押しつけながら抱きしめた
チビママンネや女子社員もやっていた、あの心音でベビンネを落ち着かせる方法である

「ヂヂィ… ヂヂ…? ヂヂィ… ヂィ…?」

ようやく優しい大人に出会って安心したのか、胸に顔を埋めて落ち着いた様子だ
こうすることで怖い他のタブンネを見ないようにしてるのだ
ところで、上記の鳴き声に不自然に疑問符が混じっているが
これはベビンネが安らぎつつも何か違和感を感じているからである

216ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:57:25 ID:Dxc7CVbQ0
「ミーミ、ミィ」
「ミンミ〜?」

さて、落ち着かせた後にどうするのかというと、赤ンネは姉の前へ向かった
既に食事は終わり、袋の傍で涅槃仏のように寝そべっている青ンネ
勢いづいて食べすぎたために見て分かる程に腹が膨れていた
だいぶリラックスしていて、至福の表情で歯に挟まった食べかすを爪でほじっている
そんな青ンネでも試金ベビはまだ怖いらしく、さらに脅え一層強く赤ンネの毛皮にしがみついた
なぜ赤ンネは青ンネの所になど行こうと思ったのか?それは乳を分けてもらう為である

「チィィ…」
「ミ〜ミィ〜」

満腹になった青ンネはとても上機嫌で、掌を反すようにあっさりと受け入れた
どんな生き物でも腹が減っているとふだんより凶暴になるものだが、こうも極端な奴は珍しい
受け入れたといっても「動かないから勝手に吸っててよね」といった具合の横柄な態度なのだが
ある意味無責任とも、軽率とも取れる寛容さだ

「チィ〜チ、チィ…」

少し怯えつつも青ン根のお腹に向かい、乳首を吸う試金ベビ
どんな奴から出てきても乳は乳。お腹が空いたベビにはお預けなどできない
青ンネの子が飲んだ後だったので3口吸ったら無くなってはしまったが
試金ベビにとっては大切な命の一滴だ

「チィィ…」
「ミミ、ミィ」

少ししか飲めなくてがっかりしているべビを赤ンネは頭を撫でて慰める
「もう少ししたら、もっと飲ませてあげるからね」と
自身は乳が出ないが栄養を取ると乳の出が良くなる事を
本能からか、もしくは経験からかは定かではないが知っていて、
腹いっぱいな姉の所に連れてきたのはその為だ

「ミミ〜ミィ〜」

青ンネも頭をポンポンとはたいて試金ベビを慰める
寝そべったままニヤついてそうやる姿は限りなくおっさんに近い
が、試金ベビはちょっと痛かった物のそれほど悪い気分ではなかった

「ミッ、ミッ…」
「ピィッ!!?」

黒ンネも泣く子を宥め終わり餌を食べに来た
青ンネよりかは我慢が利くが、空腹なのは変わりはない
当然近くにいた試金ベビは驚き叫ぶが
黒ンネの方はというともじもじしながら目を合わさない程度にチラチラ見て
なんとも居心地が悪そうな、申し訳なさそうな様子
仕方がない事情があったとはいえ、さっき怒鳴ってしまった事を気に病んでいるのだ

「ミミミ、ミミミミ」
「チィチ、チィ… チチチ〜!」

赤ンネが「怖いタブンネじゃないよ」と諭そうとしたが
一度焼きつけられた恐怖心はそう簡単に消える事はない
首を振ってイヤイヤしながら赤ンネのお腹に顔を埋めてしまった
こうすることで怖い黒ンネを見ないようにしているのだ

「ミグゥ…」「ミッミミ〜w」「ミー、ミ〜」

意気消沈の黒ンネとそれをすかさずからかう青ンネ。
そしてそれにムッとする黒ンネとやんわりと制止する赤ンネ
喧嘩の寸前というよりかは、仲のいい子供たちがじゃれ合ってるようにも見える
このタブンネたちは物心付いたころからの仲良しで、ずっと3匹一緒にいるのだ

「よーやく落ち着いてきたね〜」
「腹が減ってたら気が立つのは人間もポケモンも同じですからなぁ」

観察が続く中3匹で餌を食べ、曲がりなりにもいつもの調子を取り戻してきたタブンネたち
ベビたちも満腹とは言い難い所だが幾分か異常な状況への恐怖心も納まり、
どの青黒のベビも試金ベビも混じってチィチィとじゃれあっている
しかし、この平穏は10分も続かなかった

217ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 00:58:57 ID:Dxc7CVbQ0
「ミ!」「ミミ!」「ミンミ〜!」

ある時、一斉に緊張が走り、部屋の空気がピリリと張り詰める
人間の足音が近づいてきているからだ

「あれ?リマくん」「んあ、一体どうしたんだってんだいあいつ?」

餌を置いたら戻るはずの弟分がガチャリとドアを開けて入ってきたのだ
なにやら図鑑のような大きな本を開いて眺めていて、タブンネたちとそれを見比べている

「ミミ!!」

黒ンネは盾になるようにベビたちの前に立ちふさがり、
いつでも迎撃にうつれるように腰を落としタックル臨戦態勢だ
が、弟分はそれにまるで意に関さず、赤ンネの体全体を舐めるようにじろじろと見まわしている

「ミ、ミミ…」

赤ンネはその意図を掴み難い奇妙な様にたじろぎ、じりじりと後ずさりする
背を見せて逃げれば逃げ切れず、さりとて戦えばズタボロに負けて痛い目を見ること必至
生来の察しが良さによりそれを察する事ができた
が、その姉は真逆に場の空気がまるで読めぬ直情的な性格であった

「ンミィィーー!!」

赤ンネを守るべく両腕をぶんぶんと振り回し、勢い良く弟分に向かっていく青ンネ
しかし「邪魔」と言わんばかりに顔面を手のひらでドンと押され、ごろりとひっくり帰ってしまった

「ピュミィィ〜ン!」
「あっちゃー… わりぃ、痛ぇとこ当たっちまったな…」

弟分としてはぶちのめそうとしたつもりは毛頭なく、
驚いて咄嗟に手を突っ張って止めた程度のはずだったのだが
相手の方が顔面からぶつかりに来てしまってはそうはならない
青ンネは情けない声で喘ぎながら鼻を押さえて悶絶している

「ミィミ〜!」

赤ンネはあわてて介抱に向かって、傷を見るべく前かがみになった際、お尻が弟分の方に向いた
それを見た弟分は納得した顔でスタスタと部屋を出ていく

「…ミギ?」

肩すかしを食らったのは黒ンネである。あの人間が何をしたかったのか
いくら考えても野生のタブンネの知識と頭脳では分る筈もなく
今はただ青ンネの醜態に呆れるばかりであった

218ショーケースの裏側で:2018/04/06(金) 01:05:42 ID:Dxc7CVbQ0
「赤の子は必ず残すとして、青い子はダメダメ。黒の子もちょっと厳しいかな〜」
「いえ、青みたいな欲望に忠実な奴は逆に扱いやすいですし、
 黒いやつはまぁ、扱いにゃ気ぃ使わにゃですが責任感が強そうで悪くないですぜ
 乳はやらなかったですが、あの赤ん坊を嫌ってもなさそうでしたし」
「それもそーかも、うーんよく考えたらあんまり可愛がらせすぎるのも売るときに良くないし
 あれくらいがちょうどいいのかなー」

観察にもそろそろ飽きが入り、
社長と兄貴分だけでとりあえず3匹とも残す方針で話を進めてると、弟分が戻ってきた

「あ、リマくん。本なんか持ち出して一体どうしたの?」
「へぇ、赤いやつにちょいと気になる所があったもんで
「何ぞ変な病気でもあったのか?」
「いえ、あの赤いマークのやつ、♂でしたぜ」

予想からまりにもズレた答えに、一呼吸の間の混乱と沈黙が2人を包む

「そ、それは読めなかったよ…」

偶然から始まったこの雄雌のタブンネを一緒に放し飼いをするという状況
ここから「人間の管理下でタブンネを産み増やさせる」という手段に思い至るのに
そう時間はかからないだろう

219名無しさん:2018/04/07(土) 20:53:53 ID:NXAxh0Hk0
乙です
読むからに可愛いベビと小憎らしい親タブがどんな目に遭うのか楽しみ

220名無しさん:2018/04/08(日) 02:35:23 ID:UqQS.Plw0
乙ンネ
長く続いてくれて嬉しい限りです

221名無しさん:2018/06/01(金) 06:39:47 ID:GBGOBtd20
ピュミィィ〜ン!に萌えました

222名無しさん:2018/07/16(月) 17:47:42 ID:mniYbLQQ0
「タブンネここで少し待ってね」と言って、冷房着け忘れた車内に放置したい

223名無しさん:2018/07/16(月) 21:53:37 ID:Tyf2WuTg0
舌を伸ばしてハァハァ言いながら窓を叩くタブンネちゃんを見守りたい

そう言えばオーブンとか水槽の窓を内側から必死になって叩くタブンネってツボだわ
空き巣ベビンネまた読もうかな…あくまでベビンネちゃんを可愛らしく描写してるのがいいんだよねあれ

224名無しさん:2018/07/19(木) 06:19:14 ID:HDaWAiYI0
わかるわそれ
押し入れの隠し子に出てくるベビンネたちとかどうよ
押し入れから出てきて部屋の中を動き回る描写はなかなかほほえましい
そのあと洗濯機に放り込まれるんだけども

225名無しさん:2018/07/19(木) 20:01:14 ID:ECHF80io0
浅い川で遊んでいた親子ンネが、上流の大雨で鉄砲水に流されるのみたい。親タブンネは「なみのり覚えているから大丈夫!」って油断してて、あげくの果てに自分だけが助かる展開みたい

226名無しさん:2018/11/08(木) 15:57:13 ID:N8dxZW0A0
残念だけど公式での食肉ポケモンはイーブイだよ☆

227名無しさん:2020/01/04(土) 22:57:12 ID:LGGr5VLI0
テスト

228名無しさん:2020/01/05(日) 12:48:20 ID:0zEliRHw0
牢獄のベビンネ
話が進まなければ残った素直な善良ベビンネちゃん達は
ケージの中でいつまでもそれなりに平和に生きてくんだろうね
帰ってこない兄弟はどこにいるんだろうとか考えないでスヤスヤおねむしているところで話止まってるしね

229名無しさん:2020/01/05(日) 19:01:07 ID:UTI/z3f.0
すまん
牢獄のベビンネはここじゃなくて避難所の方だった

230名無しさん:2020/03/24(火) 14:33:56 ID:nEyPyToE0
ショーケースの裏側で
長すぎ
女性社員に虐待させてない時点で無能

231名無しさん:2020/04/24(金) 20:32:24 ID:7R46KfCU0
うちのタブンネ♀は食いすぎと運動不足で太ってしまいました(高さ1.0m・重さ80㎏)。

ある日、うんうんうなっているのでお尻を見たらタマゴが出てくる途中で肉に引っかかって詰まっていました。

「よしよし、油を塗って滑りをよくしよう。」

私はオリーブオイルを塗ってやりましたがタマゴは出てきません。

具合がおかしくなってきたので「こうなったら卵を諦めて割って出そう」と言いましたが、
タブンネはそれは嫌だと首を振りました。

本をめくってみるとポケモンは原則、「総排泄孔」という糞をする穴と卵を産む穴が同じだそうです。
「もしや?」と思いヘーデルというおならを増やす薬を飲ませてみた所、お腹がもこもこ膨れてきました。

「チィチ〜ィ!チィチ〜〜ィ!!」

あ、卵が少しずつ出てきたぞ!

シュッポォォォォンッ〜〜〜〜〜〜〜〜グシャッッ!

卵は壁に勢いよく発射されて割れてしまいました。
何のためにタブンネは今まで苦しんでいたんでしょうか・・・

232名無しさん:2020/04/30(木) 21:49:32 ID:pmVfzHWU0
久々の新作乙ンネ

233名無しさん:2020/05/07(木) 14:25:52 ID:EsiSqex60
ある所にポケモンの虐待が好きな悪〜い男がいました。

しかし、今度引っ越してきた街では条約で「ポケモン側から攻撃を挑んできた時(野生とのバトル)」と
「自分の飼っているポケモンへのしつけ(過剰なものはNG)」以外人間がポケモンを痛めつけてはいけないというのです。

男は捕まるのは嫌だったので「不器用なタブンネ」を手に入れるとそれを飼い始め、失敗するたびにしつけと称して叩きました。

ある日の事・・・

「チィ!」(あ!)

今日もその不器用タブンネが野良ポケモンの巣を見つけました。
ご主人様はこのタブンネがいたずらや失敗をするとビシビシ叩きましたが「子育てをする」のは褒めてくれるのです。

「おお、卵をこんなにいっぱい見つけてどうした? 飼いたいのか?」
「チィチィ!」(はい!親に捨てられたこの子を育てます!)
「だが前回、お前は卵を全部落として割って全滅させたぞ。」
「チィ・・・」(え、それはその・・・)
「それでも飼いたいというなら今度は注意して持って行け…そうだな、赤ちゃんが1匹死ぬたびに責任としてお前を10発ぶつぞ。」
「チィ!」(はい!覚悟はできてます。)
「よく言った。よーし、先に行きなさい。」

こうしてご主人様がくれた箱にタブンネは一生懸命注意して卵を5つ全部詰め込み、恐る恐る運んでいきました。

「・・・さて、襲い掛かってくるレパルダスからわしのタブンネを守らねばなぁ・・・」

そう言うとご主人様はコジョンドを出すと、卵を盗まれて追いかけてきたレパルダスを瞬殺させました。
「『ポケモンの卵を人間は盗んでない』セーフ、『ポケモン側から攻撃を仕掛けてきたのを返り討ち』セーフ・・・」

234名無しさん:2020/05/07(木) 14:26:43 ID:EsiSqex60
ご主人様のわくわくとは別に、今度はタブンネはちゃんと卵を家まで持っていきました。

そして、巣の中にそれをどきどきしながら置くと、その上にそっと乗って・・・

グチャッ!

タブンネは足を滑らせて卵を1つ潰してしまいました。

「・・・あれほど言ったのになぜ丁寧に扱えんのだ!」

「チ〜ィ・・・」(す、すいません・・・)

「こっちへ来い」

ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!
ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!

「チギャァァァッ!チギャァァァッ!!チギャァァァッ!!!」

ステッキでお尻を叩かれてタブンネは悲鳴を上げて逃げまどい、しばらくしてご主人様が見つめる巣箱に戻ると
割れた卵から出てきた目も空いてないチョロネコの赤ちゃんに触角を当て、間もなくその命が絶えるのを感じてしくしく泣き始めました。

ご主人様も死体と割れた卵を濡れた敷き藁ごとゴミ箱に入れ、新しい敷き藁をタブンネにくれました。

「よいな、生まれてくる前に卵を無理に割られて死んだこの子はどれだけ苦しかったか、その痛みでわかったろう。」

「チィ・・・」(うう・・・)

「ならば、お前が飼いたいといった以上、お前には残りの卵の面倒を見る責任があるのだぞ! もしお前の不注意で赤ちゃんが苦しむことがあればそのたびに1発叩く。」

「チィ!」(はい!)

ご主人様はよく言ったとタブンネを誉めましたが、内心ではもう40発タブンネを打てるのはいつかなと楽しみにしていました。

235名無しさん:2020/05/07(木) 14:28:35 ID:EsiSqex60
それからタブンネは真面目に餌も食べずにそっと卵に中腰で乗って温め続け、翌々日にチョロネコが生まれました。

ミャーミャー

そうやってうごめく目も空いてないチョロネコを見て、ご主人様はすぐに全部ぶち殺したい衝動にかられましたが、
タブンネが心配そうに見ているので理性でそれを抑え、ポケモン用の哺乳瓶とミルクを置きました。

それからご主人様の予想通り、チョロネコは数々の悲惨な目に遭い、そのたびにタブンネはお尻を叩かれました・・・

・熱湯ミルクを飲まされ喉をやけどするもの(でもママの癒しの心で回復) ベチーン!!!
・ママの抱っこ中に落とされるもの(これくらいで死ぬほどやわではありません) ベチーン!!!
・作り置きの腐ったミルクを飲まされ食中毒にry(でもママの癒しのry) ベチーン!!! 
・ご飯の最中に疲れてママが寝てしまい、素に戻ってくれず全部凍えてしまったりも…(でもママのry) ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!!ベチーン!!! 

1週間ほどしてお尻が2倍ほどに肥大したタブンネママと、ボロボロで成長不良のチョロネコ4匹を見てご主人様は、
「よくやったのぉ。もう今までほど付きっ切りでなくていいから、少しは遊んでストレス解消じゃ。」とおもちゃを渡しました。

タブンネはご主人様に褒めてもらったのが何よりもうれしく、与えられたかえんだまで遊び始めました。

「ミィミィ」「ミュー!」「ミィ!」「ミ…」(ママ それちょうだい)(わたしにちょうだい!)(わーたーしー!)(…)

「ミュッ? ミュィ!」(え? じゃあ順番よ!)

これを隠れて見ていたご主人様はもうすぐ合法的に嫌いな野良ポケモンがのたうち回るのと、
タブンネを合法的に打ち据えられる未来を思い浮かべ、鼻血が出るほど興奮しましたとさ。

236名無しさん:2020/05/07(木) 21:32:50 ID:aJ3fbKa.0
乙ンネ

237ゴールドラッシュの残渣(1/3):2020/05/12(火) 16:30:52 ID:87IdQaJw0
イッシュ地方から少し西に行ったところの山…と言いましても皆が思い浮かべるような大きな山じゃありません。

小さな町から少し離れ、柵に囲まれた標高百mもない、低木や草ばかりの山(丘というには切り立っている)です。

そこにタブンネの一家が住んでいました。

パパンネとママンネ1匹づつ・チビンネ3匹の5匹の家族です。

彼らは他の野良ポケモンたちと同様に麓の住宅地の河川敷や公園に住んでいたのですが、
ある日からそれまで餌をくれたりしていた住民が、なぜか狂暴化して野良ポケモンたちを襲うようになったのです。

例えば公園で人間から餌をもらうのが一番得意で、この一家にも食べ残しをよく分けてくれた優しいイーブイ・・・
彼女はママンネの見ている前で人間からもらった餌を食べた後血を吐いて死にました。
驚いて逃げかえる途中「この泥棒ネコ!」という人間の声に殴られる音とチョロネコの断末魔の悲鳴も聞きました。

無論同族たちも例外ではありません。

警戒してなかったタブンネたちはねぐらを囲まれ火をつけられ、逃げれないベビンネや卵はみんな焼け死にました。
焼け死ぬ前に飛び出した大人のタブンネ達も、みんな取り囲まれた人間によってぶち殺されてしまいました。

このタブンネの夫婦だけはママンネが前述のイーブイ達が人間に殺されたのを目の当たりにして警戒してたので逃げれました。

「皆、逃げるミィ!」 「もうダメ…チィ・・・」 

追いつかれる直前に土手を乗り越え、草むらの陰にあった窪地に5匹は飛び込みました。

5匹を見失った人間はさらに向こうの柵の金網の小さな破れ目を見て、そっちに逃げたと誤解し諦めて去っていきました。

「あっちに行ったなら追う必要もない、早く戻らないようにふさごうぜ。」

タブンネの夫婦はその時人間がキィキィ針金を動かす音を聞いて、初めてそこに破れ目があるのに気が付きました。
そして人間が去った後、何とかそこを広げて柵の向こうにあった山に逃げ込むことにしたのです。

238ゴールドラッシュの残渣(2/3):2020/05/12(火) 16:31:38 ID:87IdQaJw0
逃亡して一週間ほどの夕方・・・

「今日はごちそうがたっぷりとれたミィ。」

そう言いながらパパンネが尻尾にいれて持って帰ってきたのは、ドングリが数十個と干からびたような小さなオレンの実が8つ。

「うわーい!オレンがあるチィ!」「オレンだチィ!」「オレン!!」

大喜びするチビンネにオレンを2つづつ与え、自分達は1つづつだけで我慢する両親。

「街にいた時は、もっと簡単に食べ物も巣も手に入ったのにミィ・・・」

ママンネはそう心の中でつぶやくと、数か月ほど前の事を思い出しました。

毎日どこかのゴミ箱をあされば十数個は真黒くて甘いナナの実や、茶色のモモンの実がありました。
(ただここのところ奪い合いが激しくなっていたので、隙を伺って人間の家に上がって探すご飯探しも増えてました。
 タブンネはまだ音に敏感なのでつかまりにくいのですが、見つかったら危険だとは本能的に分かっていました。)

その辺をあされば段ボールという、触り心地のいい上に最初から覆うような巣材もありました。

でもここは人間がごみを捨てないので山中を捜索して食べ物を探さないといけません、水も麓の池しかないのです。
巣も穴を掘れないかと思ったのですが、この山は砂利の塊みたいな山で掘りにくいし、掘っても崩れるだけで無理でした。
木のうろを探してみたけど、これも大きな木がないここでは無理。毎日やぶの中で寝て、雨の日は寄り添って耐えました。

「でも生きていられるだけましだミィ、ここには僕たち以外誰もいないミィ。」

パパンネがそういって慰めてくれました。

・・・タブンネたちは気が付いていませんが、実はここは自然の山ではなく人間が鉱山の土砂を捨てた山だったのです。

ここは荒野に鉱山ラッシュで人間が住み着いた町で、タブンネを含むポケモンはほぼ全部人間が捨てた野良。
最初の内は人間も野良ポケモンを可愛がっていましたが、敵がいないのでドンドン増えてしまい、
それによって住民の迷惑になりつい先日に全種類の駆除が決まってしまったというわけ。

ママンネもこの山に他のポケモンがいない(耳がいいのに全然気配を感じない)のを変だなぁと思いましたが、
敵がいないのは安心ですし、殺されるぐらいならこの苦労も仕方ないなと思っておりました。

239ゴールドラッシュの残渣(3/3):2020/05/12(火) 16:33:17 ID:87IdQaJw0

そして暗くなって…それも月が雲に隠れた時を見計らい…夫婦は子供3匹を連れて麓の池に水を飲みにきました。

ここも他生物の気配はありませんが、周囲に草むらがなく丸見えなので暗くなるまでタブンネたちは寄り付きません。

「のどかわいたチィ…」
「でもここに水辺があってよかったでチィ」
「ここの水、甘くておいしいチィ。」

今日は乾物を食べたこともありごくごく水を飲むチビンネ達。

周囲を見張る(聞張る?)パパンネも溜め水なのに清んでいて底が見えるのを不思議に思いました。
飲み終えた後、パパンネはいつものように池のほとりの看板をゆすって見ましたがびくともしません。

「もし外せたら、雨除けの屋根に手ごろな大きさなのにミィ・・・」

もっともあてにしているわけでもないので、タブンネ一家は長居せず今日も平穏無事に山に戻りました。


・・・それからしばらくして、雲から月が出てきて先ほどパパンネがゆすった看板を照らしました。


 『危険 ここで泳ぐな』 『この水は重金属が含まれ有毒です』

240名無しさん:2020/05/14(木) 13:55:21 ID:VMvOdNuw0
>>223
個人的には密集・密室・密閉空間にベビンネがうじょうじょいるのが好き。

241名無しさん:2020/05/18(月) 21:45:01 ID:aQ.Rrg.A0
ある日いろんな♂とやりまくったタブンネがたくさん卵を産みました。

「ピィ、プゥ、ミィ…うわー、全部で6つもある。こんなに育てられないから、
 情が移る前にラッキーさんがやっているみたいに非常食にしましょう!」

そういうとタブンネは保存食に『ピータン』を作り始めました。

まず塩と灰と泥を混ぜ、それにもみ殻をまぶすと段ボール箱にそれを詰め込み封をしました。
…え?人間の作り方と違う? タブンネには用意できないものが色々あるんですよ。
そして段ボール箱を雨の当たらない秘密の所に置いて、そのままタブンネは遊びに行きました。


1ヶ月後・・・
保存食を食べようとして封を切りかけた時、タブンネは段ボールの中から音がするのに気が付きました。

(・・・あ、あれ?密封したんだけど虫か何かが湧いちゃった??)

少々もったいない気もしたけど捨てようと外に持って行って、向こう側を向けて封を切るとグチャッという音と共に、
中からは ド ロ ド ロ と 蠢 く 赤 茶  色 の 物 体 が出てきました。
ちょうど、工作が苦手な人が赤茶色の粘土でミミッキュを作れと言われて水を多めに混ぜるとこうなるかもしれません。

ウビィ・・・ウビィ・・

その物体は不気味な声を揚げながらタブンネの方に迫ってきます!

「ギェピィィィッ!!」

実はピータンの原料の灰に昔トレーナーから盗んだ「聖なる灰」を入れてしまってたのです。

この為、タブンネの赤ちゃんは灰のアルカリで体を溶かされ、泥に埋もれて窒息ても死ぬことが許されず、
だからと言って、丈夫な段ボールを内側から破ることもできないまま、お互いを共食いしあって(でも死なない)。
最終的に泥やもみ殻と混ざった化け物になってしまったのでした・・・

242名無しさん:2020/06/03(水) 23:44:57 ID:6SC9b4B60
ポケモントレーナーになって早半年・・・
バトルだけじゃなくタマゴから育成もちゃんとできるようになって一人前になった僕は、
その日もポケモンリーグ挑戦のために修行をやっていた。


そこにあったのは大人のタブンネ(多分お母さん)の白骨死体と、タブンネの赤ちゃん1匹。
赤ちゃんは何も知らないらしく、腹ばいでお母さんの死体のそばでモゾモゾしていた。

「…可哀そうに…」

きっと子育て中のママが病気か事故で死んじゃって赤ちゃんだけ取り残されたんだ。

そっと抱えてみると、プルプル震える柔らかくて暖かい感触が手に伝わり、
赤ちゃんはぼくの手に驚いたのかチィィーとか細い声で一声鳴いた。

以前、知り合いに見せてもらった卵から返したタブンネよりずっと小さくて目が開いてない。
きっとママが死んでご飯貰えないから餓死寸前で痩せちゃったんだろうね・・・

そんなことは絶対にさせない! 僕はこの赤ちゃんを家で育てることにした。
(あとで野生に返すつもりだからボールでゲットはしなかった)


帰り道、僕に抱えられて赤ちゃんはチィ‐!チィ‐!とずっと鳴き続けた。 ずっと寂しかったんだね。

そうして赤ちゃんに気を取られていると、「ピィーーッ!!」と甲高い声が聞こえ、この辺では珍しいピッピが赤ちゃんを狙ってやってきた。
“狙っている”と言い切れるのは、僕の手を狙って赤ちゃんをひったくろうとしたのだから間違いない。

僕は寸前で手を引っ込め、手持ちのラッタで迎撃した。(ピッピはそんなに強くなかった)


「・・・ふぅ…でもピッピってタブンネを食べるのかな…もしかして見た目が似ているから自分の子と間違えた?」
(念のため倒れているピッピの尻を確認をしたら♂だった。ピッピは♂も子育てするのかな?)

赤ちゃんはすっかり怯えてピッピの方に手を突き出し「やめてー!」とでもいうようにチビャァー!チビャァー!と悲鳴を上げていた。

もう大丈夫だよ。

243名無しさん:2020/06/03(水) 23:45:44 ID:6SC9b4B60
家に帰るとまずこの子のご飯を作ってあげた。

知り合いのタブンネは僕がラッタにやっているポケモンフード(ドライタイプ)と同じ奴を食べてたから、これで大丈夫。

「お腹すいただろ、たっぷりお食べ。」

お皿に山盛りのポケモンフードを置き、そばに水飲みも置いたけど赤ちゃんはチィ‐!チィ‐!と鳴き続けるだけで口にしようとしない。
ラッタならポリポリすぐに平らげるのに・・・
目が見えないからわからないのかと、口元にポケモンフードをつまんで当てたけどチィィーと泣いて顔をそむけてしまう。

・・・もしかして、弱ってて食べることもできないんじゃないかと“強制給餌”に取り掛かった。

まず少々高かったけどパチリスが喜ぶ缶詰の奴を注射器みたいな奴に詰めて、タブンネの口元を抑えて差し込む。

む?この子、歯がないじゃないか!! 病気で抜けたのか事故で取れたのか…だから食べなかったんだ。

でもこれなら柔らかいから大丈夫…でもやっぱり強制給餌されるのは嫌らしく、「チブチブッッ…チボッ!」って何度も吐こうとした。

食べなきゃ死んじゃうんだ!飲み込んでくれ・・・

そのうち赤ちゃんは大人しくなってくれたので、段ボールに布を敷いたベットに置く。

お腹いっぱい食べて赤ちゃんのお腹はぽんぽこりんだ、これならしばらく餓死の心配はないよね。


翌朝、もう慣れたのかほとんど鳴き声を立てなくなった赤ちゃんはすやすや眠っていた。

まだ赤ちゃんのお腹はぽんぽこりんで波打っている。
そういえば糞をまだ一度もしてないけど、お腹の中が空っぽだったのかな?
起こすと悪いからそのままにした。


夕方、もう一度見たら赤ちゃんのお腹は動いていなかった。

もしやと思って触ったら、赤ちゃんタブンネは冷たく硬くなっていた・・・

244名無しさん:2020/06/03(水) 23:47:56 ID:6SC9b4B60
>>242-243まとめ
【ウツギ博士のポケモン口座】
人が飼っているポケモンは安全だと分かるらしく、卵の中でだいぶ大きく育ってから孵化します。
だから孵化してすぐにバトルとかできますが、野生のポケモンはすぐ孵化する小さな卵をたくさん産み、
小さいままで誕生させるので、種類によっては動けないどころか目も開いてなかったり
固形物を食べれなかったり…場合によっては排便すら自力でできません。

こうした赤ちゃんポケモンは保温したり、乳や半分消化した食物を与える親がいないとすぐ死んでしまいます。

皆も野生の赤ちゃんポケモンを見つけたら、素人で育てようなんて考えずにそっとしておいてあげてね。

245242-244:2020/06/04(木) 08:27:38 ID:sDHG6Kqw0
すまん、>>242の3行目と4行目の文章(ベビンネ発見の下り)が校正時に抜けてた。

「修行が終わって帰ろうとした矢先、手持ちのパチリスが何かを見つけて僕を呼ぶ。
 こいつのものひろいには重宝しているけど、僕を呼ぶのは珍しいので行ってみると、」

がここに入る。
(缶詰フードの下りで唐突にパチリスの名前が出るのは本来ここで登場してたため。)

246名無しさん:2020/06/13(土) 17:19:42 ID:UX1bFx.I0
>>240
経験値34スレ目の小ネタでプラスチックのカゴに30匹単位で詰め込まれ泣きながら必死で助けを求めてるのとか
温泉で茹でタブンネにされる間際の鉄籠の中の阿鼻叫喚とか
牧場である程度育ったところを片っ端から捕まえて
籠に"ぱんぱんに"入れられる
(逃げ惑うけど無駄な抵抗)
やつなんか一押し
そう言えば冷凍子タブンネなんか麻袋詰めにされて
「ミィミィとママを探してもがいています」なんて一文にかなりときめいたっけな

247名無しさん:2020/06/22(月) 03:41:43 ID:X8b1wbgw0
>>244
リアル犬猫みたいだなw

248名無しさん:2020/06/22(月) 07:16:17 ID:1HGpw1E.0
リアル犬猫といえば
海外でこんな記事があったのでちょっといじってみた


これはある女性と子タブンネ達の心暖まる素敵なお話。

ある日女性は相棒のリオルと一緒の散歩の帰り道
側の草むらからチィチィと
悲しげな声が聞こえてきたのに足を止め
そっと覗き込んでみると
なんと10匹もの生まれたばかりの子タブンネ達が捨てられているのを発見しました。

女性はこれは大変と思い
まずは家に戻って車を取りに行こうと足早にそこを離れて先を急ぎました。
ところがしばらく行った辺りでリオルが呼ぶので後ろを振り向いてみてびっくり。
10匹もいた子タブンネ達がみんな必死に草むらから飛び出して来て
女性のあとをついてくるではありませんか。
ミィミィ、チィチィと口々に鳴きながら涙を浮かべんばかりにして両手を伸ばし
小さな体でテッテッと
走ってついてくる子タブンネ達。
それもそのはずでしょう
女性は車を取りに行くのにそこから離れたのですけど
子タブンネ達から見たら女性が立ち去ってしまったように思えたのでしょう
女性とリオルはひときわ体の小さなタブンネを何匹か抱き抱えながら子タブンネ達にあわせてゆっくりした足取りで家までつれて帰りました。
10匹の小さな小さな子タブンネ達は
みんなそれぞれの居場所を見つけ、一番小さな赤ちゃんタブンネは女性の家に引き取られる事になったのです。
10匹の子タブンネは生まれてすぐに捨てられて辛い思いはしましたが
心優しい女性のおかげでみんなそれぞれの幸せを見つける事が出来て良かったですね。
pokeTubeニュースより抜粋

249名無しさん:2020/06/22(月) 07:26:12 ID:wIgp.Emg0
(リオルside)

バトルガールの主と一緒に今朝も山越え修練に行ったその帰り道。

チィチィ、チィチィと脇の草むらから声が聞こえる。

さむい、こわい、おなかがすいた。
おもらししちゃった、
ママはどこ?
さみしい、さみしい、さみしいよぅ…

そんな波導が高い声よりキンキンと僕のところに響き渡って来る。
ああ五月蠅い。
主もその五月蠅さに目を丸くしてそっと草むらを覗いてみると
いるわいるわ、ピンクの毛玉みたいな生まれたばかりのタブンネが10匹

主の顔を見るとチーチーと歓声を上げて両手を伸ばす。
そんな五月蝿いとああ、ほら。
ハブネークが舌なめずりしながら寄ってくる

ひとっ走りして車を取ってこなくっちゃ!
そう言って主はダッシュでそこから走り出す。

あ、1匹ハブネークに呑まれてしまった。
みんなハイハイがやっとの赤ちゃんのように
抱っこをせがむ甘えた顔をしてよちよち草むらを這っていたタブンネ達なのに
途端に蜘蛛の子を散らすみたいに道路に飛び出し ピーピー泣きながら自分の足で全力で駆けていく。

なんだい、走れるんじゃないか
主、あいつら自分でついて来れるって。
まあ、とてもとても足は遅いけれども。
と、思ったら2匹ほどポーンと言ういい音とともに僕らを追い越し飛んで行った。
なんで道路に飛び出したんだろう。
車も走ってて危ないのに

夢中で僕らを追いながらころがるように走るタブンネ達
タスケテ、タスケテ、 ツレテッテ!って
必死の波導が一緒に追ってくるけれど

ファイトぉ!と主譲りの
激を飛ばしてあげたら
一番大きなコロコロした子がチィアーッ‼と叫びながら鳥ポケモンに持っていかれた。
続いてつがいにもう1匹が嘴に尻尾を捕まえられて
チギョェアー‼とか聞いた事もない奇声を上げてともに大空に消えていく。

道路の端でペタンコになっているさっき飛ばされた2匹を剥がすのに夢中になっていた主は
そちらに気付きもしなかったけど。
一番最初に漏らしたって言ってた奴が道路の真ん中に水の跡を引きずって
ハイハイしてくるのが見えたので
葉っぱで綺麗に後始末をしてやると目覚ましみたいに
ピーピー鳴いて止まらなくなったのでそのまま首の後ろを掴んで主の所に引っ張っていくと
追い付くまでに残り4匹がそれぞれに違う奇声を上げて別々のポケモンに引き取られていく姿が見えた。

みんなあんなに元気な声で僕らにお別れを言っている。
バイバイ、タブンネ幸せになるんだよ。

「ペタンコの2匹はガーディとムーランドがくわえて連れて帰っちゃったよ…ん、その子は?」

主に首根っこ掴んだタブンネを見せてあげると
タブンネは途端に鳴くのをやめて代わりにガクガク震えてる。
家の裏庭にぶら下がっている身欠きタブンネの声でも聴こえたかな?
数が減ったのは残念だけど主だっていつも言っているからね。
おいしいものは人とポケモンみんなで共有しないとね。
心優しいタブンネはそれが一番幸せなんだって。
人間と僕達ポケモンと
タブンネの心暖まる素敵なお話はこれで終わりだよ。

250名無しさん:2020/06/22(月) 23:02:53 ID:FjswN6Zw0
【この物語はタブンネをイジメる悪い奴は出てきません】

今日はパパに「ポケモンほごパーク」に連れて行ってもらえました。

そこにはたくさんのポケモンがほごされていて、つかまえたりイジメたりしてはいけないそうです。
だから人前でもポケモンたちはのんびりしてくらしていました。

そこにあった名物の「ポケモンオムレツ」のお店に行くと、ポケモンの卵でいろんな料理を作ってました。
「ここはほごくなのに卵を食べていいの?」と聞くと「ちゃんと親のポケモンがくれたんだよ」とのこと。

なんでもポケモンが増えすぎるとポケモンたちも食べる物がなくなって困るとわかっているので、
卵のうちにここに渡して自分たちの食べ物とこうかんしてくれるそうです。

「外に探しに行ったり、人の食べ物を取ったりはしないの?」と気になったけど、
ここのポケモンは外が危ないことや、人の食べ物を取ったらばつを受けると分かっているそうです。

「でもね、人間が『あげてもいい』という食べ物ならポケモンたちは食べていいんだよ。」

そういうとお店の人は「ベビミート」というのをポケモンたちにあげれる食べ物として紹介してくれました。

これは卵をよこすのが遅れてかえりかけの卵を割ると出てくる赤ちゃんの死んだのを加工したもので、
普通にえさとしても上げているけれど個数を決めてお客さんが食べさせてあげれるようにしたそうです。


そうしてぼくが餌やり場に行くとちょうど可愛いチビンネ達が「チーィ! チーィ!」と次々寄ってきました。
ぼくがベビミートを投げるとチビたちは「おいしぃおいしぃ♪」って言いたそうなえがおで食べてたけど、
親のタブンネたちは止めはしないけど悲しそうな顔でじーっとこちらを見ていました。

パパが横で「お前はどちらが悲しいと思う?」とボクに聞いたけどどういう意味だろう?

251名無しさん:2020/06/23(火) 20:58:59 ID:pf1cCE0w0
【この物語はタブンネを助けてくれる優しいポケモンしか登場しません】

ある晩秋の夕暮れ、カビゴンのおばさんが木の実をもいでバクバク食べていると、
「チィ!」という声が足元から聞こえ、下を見たら小さなタブンネ(チビンネ)がいました。

大きなカビゴンに見つめられておどおどするチビンネちゃんに、
おばさんは「どうしたの?」と聞くとチビンネちゃんは尻尾から木の実を出すと、
「このおちた木の実ちょーだい」と恐る恐る言いました。

おばさんは「別にいいのよ」というと、チビンネちゃんはほっとして近くのやぶに行き、
そこから出てきたさらに小さな赤ちゃん(ベビンネ)に木の実をあげました。

「貴方たち?親はいないの?」と尋ねると、数日前食べ物を取りに行って戻ってこないそうです。
心配になったおばさんは「今日はもう遅いし、今夜は私の家に止まりなさいな。」と誘いました。
2匹もおばさんから更に木の実をもらえて大喜び、すぐに承諾しました。

食事が終わってからカビゴンおばさんは2匹を連れて巣穴に戻ると入り口をふさぎ、
「私は地べたに寝るけどあなたたちはそこに寝るといいわ」と段ボール箱を差し出しました。

こうしてチビンネとベビンネのきょうだいは「おいしーおにく」と書かれた段ボール箱に入りました。


夜が更けると2匹は震えて目が覚めました。

カビゴンおばさんは太っているので平気ですが、この巣穴は隙間風だらけ・・・
おまけに段ボール箱は箱だけで巣材がないので寒いのです。
まだ自分たちの密閉が良くて枯草を敷いた巣穴の方が寒さをしのげたでしょう。

「ねえ、おばさんさむいよ・・・」

チビンネはそういってはみたものの、カビゴンおばさんは目覚めません。
その時、チビンネはカビゴンおばさんの毛皮はとても暖かそうだと気が付きました。

(そうだ、ママはねる時だっこしてくれてたよね。)

イビキをかくカビゴンおばさんの懐へ潜り込むと、そこは優しい暖かさでした。

「あったかいね」「チィチィ」

凍えてたベビンネちゃんも大喜び、2匹は今度こそ幸せな眠りにつきました。

252名無しさん:2020/06/23(火) 20:59:50 ID:pf1cCE0w0
「チ…」「いたぁっ!」

ふいに激痛が走り、目を覚ましたチビンネちゃんは体が動かないのに気が付きました。

ベビンネの方からは一瞬悲鳴が聞こえてから何も…心臓の音さえも聞こえません。
目の前は真っ暗で顔にふわふわしたものが当たり、カビゴン臭くてカビゴンの息や心臓の音。

(いたい・・・いたいよぉ・・・な・・・なに?)

「ウウーン・・・」

寝返りをうったカビゴンの胸の下でチビンネちゃんもつぶれていきました。
あばらはポキポキ折れ、内蔵はとっくの昔につぶれて息もできないから悲鳴も上げれません。

最後まで持ちこたえた頭蓋骨もミリミリと音をたてていきます。

苦しさと痛さはもう終わりでした、ペチッと脳がつぶれてチビンネちゃんは楽になったのです。


翌朝・・・

「うわぁぁぁ!何よこれ?!」

カビゴンおばさんは目が覚めたあと自分の胸でぺったんこになった2匹を見て絶句しました。

253名無しさん:2020/06/25(木) 20:46:22 ID:YrIO8i5Y0
SS作品いっぱいで嬉しい

どっかで見たリアル捨て猫記事とか(もちろん元記事は全員ちゃんと保護されてたが)
淡々と無邪気に酷い事を語るリオルの可愛さや
他のポケモンも保護されてても食べられる卵やベビミート達はきっとほぼほぼタブンネの奴なんだろうなと予測できる哀しさと
何をどう転んでも不運な方向に追いやられてしまう
チビベビタブンネに大草原

254名無しさん:2020/06/26(金) 01:49:13 ID:1z0zgqXA0
ここ最近新作SSが立て続けに投下されて嬉しい限りなのはもちろんだけど
なぜ急に…

255名無しさん:2020/06/26(金) 22:55:03 ID:/W3UuioY0
ヤブンネ先生シリーズ(仮)みたいなの書いてみたい。

藪医者のタブンネが言葉巧みにポケモンだまして治療(過失致死)しまくり、
最終的にみんなから報復されるまでのシリーズもの。

・・・ただこれ展開の都合上最終回までは他のポケモンが殺されまくるけどいいかな?
(ヤブンネ先生は最終回まで基本気が付かれないor逃亡、患者に同族のタブンネが来ることはある)

256名無しさん:2020/07/05(日) 16:26:59 ID:fBGZbTGQ0
>>250-252
よそで書け

257名無しさん:2020/07/18(土) 02:01:48 ID:yJpvEf5U0
箱詰め子タブンネって話があったけど
あれを増水した川の 流れに乗せてみたい
なあにみっちり詰まっていたから振り落とされて川の中にダイブするような子はいないでしょw

いない…かな?

258名無しさん:2020/07/21(火) 12:38:22 ID:uY4QcA920
川岸にいた母性ある♀ンネがそれを見つけて何とか陸に引き上げようとするも途中で箱が壊れてベビたちが川にぶちまけられてしまい
♀ンネの見てる前でバスラオとかに次々に捕食されていくのもいいなー

259名無しさん:2020/07/22(水) 02:04:02 ID:/VuBYaEI0
>>257>>258
いいアイデアいただきました!

260箱詰め子タブンネ2(その1):2020/07/22(水) 02:04:46 ID:/VuBYaEI0
「チィ、チィチィ…」「チィーチィー…」
子タブンネの鳴き声が、公園の隅っこにひっそり置かれた段ボール箱の中から聞こえてきます。
中にいるのは生後1か月足らずの子タブンネが4匹です。持て余した飼い主に捨てられました。
以前も見たような光景ですが、もちろんその時のとは別の子タブンネです。
どうやらこの公園は、捨てタブンネ場として有名になってしまったようです。

「あっ、またタブンネが捨てられてる」
通りかかった小学校高学年くらいの男の子が声を上げました。
この子は以前も、このような光景を見ていました。
気の毒には思ったものの、母親がポケモンを飼ってはいけないというので、見送っていたのです。
彼は一緒にいた友達と、段ボール箱の中を覗き込みました。
「チィチィ…」(おなかすいたよう、おちちほしいよう)
4匹の子タブンネは箱の中で背伸びして、男の子にすがろうとします。
男の子は友達と顔を見合わせました。
「またかよ、拾ってあげたいんだけどなあ」
「うちのママも相変わらずだよ。下手にお願いすると『勉強しなさい』って言われちゃうし」
「そういうわけだ、ごめんな」
男の子達は子タブンネの頭を撫でただけで、行ってしまいました。
子タブンネ達はがっかりしたのと腹ペコでへたり込みます。世間の風は相変わらず冷たいようです。

261箱詰め子タブンネ2(その2):2020/07/22(水) 02:05:32 ID:/VuBYaEI0
しばらくすると、また誰かが箱の中を覗き込みました。
「チィチィ!」
今度こそ救いの神が現れたと思い、子タブンネ達は小さな手を伸ばします。
ところがその顔が引っ込んだかと思うと、代わりに1匹の子タブンネが降ってきました。
「チィ!?」
さらに2匹、3匹…子タブンネはどんどん段ボール箱の中に投げ込まれ、
最終的には20匹以上となって、箱の中はぎゅうぎゅう詰め、身動きもとれません。
「チギィー!」「キュゥゥ!」(うごけないよう!)(くるちいよう!)
苦しくてもがいても、みんなで押し合いへし合いするため、余計みっちり詰まってしまいます。

子タブンネを放り込んだ男もまた、以前ここに大量の子タブンネを捨てて行ったトレーナーでした。
「だーかーら、恨むならお前らの母親を恨めっての!本当にあいつは学習能力がねえな!」
以前あれだけきつく言ったにもかかわらず、またも彼のタブンネがどこかで交尾し、
しかもこっそりと自分の目を盗んで20匹もの子を育てていたため、
さんざんしばき倒した上で、子タブンネ達を同じところに捨てに来たというわけです。
「ったく、肉屋にでも売ればよかったかな。でも衛生検査とか面倒くさいし…」
男はぶつくさ言いながら、子タブンネ達の入っていたモンスターボールを拾い集めて去っていきました。

262箱詰め子タブンネ2(その3):2020/07/22(水) 02:08:41 ID:/VuBYaEI0
「チィー!ヂィィー!」
苦しさに耐えきれず、子タブンネ達は必死で鳴いて助けを呼びますが、もはや公園には人影はありません。
日は傾き、天気は悪くなる一方。空は暗く、風が強くなり始めました。雨も降り始めます。
「チィーッ!チィーッ!」
恐怖でいくら泣き叫んでも、その声は風にかき消されるだけでした。
その内、一段と強く渦巻く風が近づいてきました。竜巻です。
枯葉や砂を巻き込んで近づいてきた竜巻は、一瞬で子タブンネ達の段ボール箱を吸い上げ、空高く吹き飛ばしました。
「チィィィーー!!」
何が起こったかわからず、泣きわめく子タブンネ達。ほとんどが失禁し、段ボール箱はおしっこまみれですが、
誰もそんな事を気にしている場合ではありません。

そして竜巻から外れた段ボール箱は落下していきます。その先には増水して流れが激しくなっている川がありました。
直接川面に落下していれば、衝撃で段ボール箱はバラバラになっていたかもしれませんが、
幸いな事に、ちょうど不法投棄されていたベッドのマットレスが流れており、その上にボヨンと落ちたのです。
「チィッ!?」
それでも衝撃を全て吸収してくれたわけではなく、勢いで1匹の子タブンネがスポンと振り落とされ、
マットレスの上にコロコロと転がりました。そのまま転がって流れに落ちそうになります。
「チィー!」「チィチィチィ!」
必死でマットレスの淵につかまった兄弟を、段ボール箱の上から顔が出せている子タブンネ達が励ましますが、
悲しいかな非力な子タブンネの力では、激しい風雨には勝てませんでした。
「チィィィーーー…!」
手が滑り、転落した子タブンネはかすかな悲鳴を残して激流に呑まれてしまいました。
残された面々ははらはらと涙を流しますが、その涙すら雨が洗い流していきます。

263箱詰め子タブンネ2(その4):2020/07/22(水) 02:12:50 ID:/VuBYaEI0
しかし悲しんでいる暇すらありません。ガクンと衝撃があったかと思うと、
段ボール箱はマットレスから滑り落ちて、川に放り出されました。
マットレスが水中の岩に引っ掛かって止まったため、箱だけが激流に放り出されたのです。
「チィー!フィッ、フィッ、ピヒィー!」
吹き荒れる雨風、闇の中を、地獄のジェットコースターは流れ続けます。
極限の恐怖に子タブンネ達は泣き叫びますが、無情にも段ボール箱の下の方が浸水してきました。
「チゴボボ…」
下の方に詰め込まれて身動きすらできない数匹が溺死します。箱の中の水位は徐々に上がってきます。

その時、子タブンネ達の声がようやく天に届いたのか、段ボール箱は川の浅瀬に引っ掛かりました。
しかしほっとしたのも束の間、ここから脱出しなくては死あるのみです。
浅瀬は川岸まで辛うじてつながっていますが、刻一刻と増水する水に沈み、面積が減っていきます。
何とか段ボール箱から出なくては…でも1匹減ったくらいでは密度はあまり変わらず、
ずぶぬれになった毛皮が重くて、ますます脱出は困難です。
「チィィーーーー!」(おかあしゃあん!)

264箱詰め子タブンネ2(その5):2020/07/22(水) 02:15:36 ID:/VuBYaEI0
その時でした。
「ミッ!ミィーッ!!」
「チィチィチィ!!」
奇跡が起きました。何と川の側の道路に、子タブンネ達の母親が現れたのです。
トレーナーに折檻され、顔も全身もボロボロでしたが、「公園に捨ててきた」と聞いて、
居ても立ってもいられず、悪天候の中を探しに出てきたところで、我が子達の悲鳴を聞きつけたのでした。

「ミッミッ!」(坊や達、すぐ助けるからね!)
ママンネはよろよろと道路から川岸に降りましたが、既に浅瀬はほぼ水没し、
段ボール箱は川の中央にかろうじて引っ掛かっているような格好です。
膝くらいまできている水の中、バシャバシャとママンネは段ボール箱に駆け寄ります。
「チィチィー!チィー!」(おかあしゃあん!はやくぅ!)
歓喜の声を上げる子タブンネ達にママンネは近づきますが、その顔が引きつりました。
たくさんの水しぶきを上げる何者かが、すごい勢いで段ボール箱に迫ってきたのです。

それはバスラオの大群でした。
運の悪い事に、先刻1匹だけ投げ出された子タブンネは、バスラオの住処に流れ着き、
あっと言う間に食われてしまいました。
「何やら美味い物が上流から流れてきた」と知ったバスラオ達は、荒れる川を物ともせずに狩りに来たのです。

265箱詰め子タブンネ2(その6):2020/07/22(水) 02:21:23 ID:/VuBYaEI0
「ミーッ!!」
顔色を変えたママンネは、段ボール箱を抱えて何とか持ち上げようとします。
しかしあいにく、20匹以上の、しかもずぶ濡れで重量の増した子タブンネ入りの箱を簡単に持ち上げられるわけがありません。
それ以前に、風雨に曝され、あちこちぶつかりながら川を流れてきた段ボール箱の耐久性はもう限界でした。
箱が半分に千切れ、ママンネは尻餅をつき、子タブンネ達は水面に投げ出されました。

待ってましたとばかりに、バスラオの群れが襲い掛かります。
「チギャアー!!」「ピャアアー!!」
ママンネの前で阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられます。頭から齧られる者、手足をもがれる者、丸呑みにされる者など、
子タブンネ達は次々とバスラオの餌食になっていきました。
「ミ、ミッ…」
ママンネは茫然となりながら、腰を抜かしてガクガク震える事しかできません。

その時、ママンネの目の前に1匹の血だらけの子タブンネが落ちてきました。
尻尾を噛み切られ、触覚も引き千切られた、見るも哀れな有り様です。
「チ、チィィ…」
バスラオが獲物を争って奪い合ったどさくさに、弾き飛ばされてきたのでしょう。
「ミッ!」
ママンネはその子タブンネを救おうとしましたが、ふとその手が止まりました。
その子は最初に段ボール箱に捨てられていた4匹のうちの1匹、すなわち彼女が生んだ子ではなかったからです。

266箱詰め子タブンネ2(その7):2020/07/22(水) 02:22:34 ID:/VuBYaEI0
「ミィ…」(この子は助けたいけど、他に助かったうちの子はいないかしら?)
ふとそんな淡い期待を抱いて、周囲を見回した一瞬が、子タブンネの運命を分けました。
「チィチ…チギャァァーー!!」
ママンネに手を伸ばそうとした子タブンネに、2匹のバスラオが容赦なく同時に襲い掛かりました。
1匹は頭に、もう1匹は下半身に食らいつきます。そしてお互いに「これは俺の獲物だ」と言わんばかりに、
左右に勢いよく引っ張ると、子タブンネは胴体から真っ二つに千切れてしまいました。
「ミヒィーッ!!」
悲鳴を上げるママンネの前で、絶望の涙を流したまま、子タブンネの頭はバスラオの口の中に消えていきました。

「ミ…ミギャアー!!」
そしてママンネは再び悲鳴を上げました。別のバスラオが尻尾に噛みついてきたのです。
さらに1匹、耳に食いついて引き千切りました。
振り払う暇もありません。次から次へとバスラオが食いついて、ママンネを水中に引きずり込もうとします。
その子だけでも助けて、すぐに逃げていればママンネも命拾いしたかもしれませんが、
躊躇している隙に、バスラオに周囲を取り囲まれてしまったのです。

子タブンネを食い尽くしたバスラオが、より大きな獲物を狙うのは自明の理。
1対1の体格だけならママンネとバスラオは同じくらいですが、多勢に無勢です。
「ミッ!ミッ!ミイギャアアアーッ…!!」
川に倒れたママンネに数十匹のバスラオが襲い掛かり、断末魔の絶叫はすぐに途絶えました。
後はひたすら雨と風が吹きすさぶのみでした。



翌朝。昨日の荒れ模様が嘘のように晴れ上がった中、トレーナーがママンネを探していました。
「おーい、ちょっと殴り過ぎて悪かったよ。出てこいよー」
彼は公園から川の辺りを探し回りましたが、ママンネや子タブンネの姿はどこにも見つかりませんでした。
水が引いた川の浅瀬には、わずかばかりの骨と毛皮が残っていましたが、彼が気付く事はありませんでした。

(END)

267名無しさん:2020/07/22(水) 10:16:42 ID:zsHkChu60
乙ンネ

268名無しさん:2020/07/22(水) 17:26:21 ID:yJltJWTw0
望まれない命そのものだと思われていた子タブンネ達にも
価値が見つかって良かったじゃないか
まさか実母(以前もやらかしたママンネ)が来るとはだけど
こんなタブンネは他にもいそうだからまた子タブンネ捨て場が賑わうんだろうなw

269名無しさん:2020/07/23(木) 12:52:35 ID:7pBJCOJI0
SS化ありがとうございます!
一瞬の気の迷いで地獄へ行ってしまうのが切なくて堪りませんな
我が子を優先してしまうという本能に抗えなかった屑とは言い切れない哀れなママンネだった

270名無しさん:2020/07/24(金) 21:01:17 ID:FW81yzOY0
>>269
たとえ箱のベビンネ全員助けられたとしも4匹増えた赤ちゃんを分け隔てなくなんてこのママンネには無理そうな気がするなぁ
最初の段階で(おちちほしいよう) ってチイチイ泣きながら見つめられても

「ごめんねご主人様におこられちゃうミィー!」とか言って自分の赤ちゃん20匹もつれてそそくさ帰っちゃったりなw

271名無しさん:2020/08/08(土) 21:57:04 ID:2Pjg3La.0
20匹ものベビンネか…
やっぱりカゴにミチミチに詰め込んで台車に積んで市場引き回したい
喧々囂々の殺伐とした雰囲気に怯えながらも
助けを求めずにいられずに
泣き叫んでは「うるせぇ子豚!」と怒鳴られてますますパニクって必死にママを呼ぶベビンネちゃん達は絶対にかわいい
抵抗虚しく競り落とされてお肉屋さんのトラックに載せて吹きっさらしのまま運ばれちゃうのもまた無情

272名無しさん:2020/08/09(日) 00:54:15 ID:vAi1vd1A0
>>271
ああ^〜いいですねぇ

鉄籠にギチギチに詰め込まれ、台車に乗せられて市場を引き回される20匹のベビンネたち
既に競り落とされ、これから捌かれ生肉か惣菜として今日のうちに店先に並ぶ運命なのだがベビ達には知る由もなく
ただ市場の喧騒に怯え、息苦しさに喘ぎ、そしてママンネと引き離された悲しみで
籠の隙間からか小さな手を伸ばしながら助けを求めてヂィヂィと絶え間なく悲痛に泣き叫ぶのだった

「ヂッ…? ヂヂーッ!!ビーッ!チーッ!!チーーッ!! チィ!!ピィィ!!ヂャァ!!チピィーーーッ!!!」

そんな折、火が点いたように突然ベビンネ達が一斉に騒ぎだした
そのうるささはキンと耳が痛くなる程で活ベビを扱って長い買い手のおじさんも辟易する程だ

「うるせぇ子豚!」

おじさんが怒鳴りながらガンと鉄籠に蹴りを入れるとベビたちは一瞬は怯んだのだが、すぐにまた更に酷い大声で喚きだした

「…ったく何なんだよ」

このまま市場を練り歩くのは迷惑だし恥ずかしい
そんなことを思いながらおじさんが何となく横を見ると小さな店があり、その奥に手を縛られて宙吊りにされた成獣のタブンネがいた
必死に足をバタつかせながら何やらミィミィと喚いている
だがそれは痛みや恐怖に怯えているのではなくこちらに何かを必死に訴えかけているかのように見えた

「あー、これか」

おじさんが何となく原因を察した時、店先にいた黒いゴムのエプロンをつけた若い男が話しかけてきた

「すごいイキのいい子豚ッスね〜」
「いやね、あの奥のタブンネが何か言ってきてるっぽいんだよ何か」
「メスのタブンネっスからね〜、まぁ、大方ママと勘違いでもしてるんでしょうねー」

吊られたタブンネは母性と愛情が強い♀ンネであり
閉じ込められたベビ達に見つけると自分の絶望的な状況も省みず今助けてあげると呼び掛け
ベビンネたちも助けてもらえると思ってここぞとばかりに全身全霊で泣き叫んでいたのだ

「あー、じゃあとっととここから離れた方がいいな、邪魔したな」
「いやー、それよりもいい手があるっスよ」

若者はおじさんをうるさい籠と一緒にタブンネのいる店の奥に入れると、刺し口に刺してあった包丁を手に取った

「子豚の籠はそこらへんに置いて下さい。スモーで言うところの砂かぶりってヤツっすよ〜」
「お、おう」

おじさんが籠を置くとベビたちは籠の隙間から一斉に手を伸ばし、クイクイと何かを掴もうと、触ろうとしているような仕草を繰り返す
それは天から降りてきた愛の女神に、を求めるかのようだ

273名無しさん:2020/08/09(日) 02:44:38 ID:vAi1vd1A0
間違って直してる途中で書き込んじゃった

おじさんが籠を置くとベビたちは籠の隙間から一斉に手を伸ばし、クイクイと何かを掴もうと、触ろうとしているような仕草を繰り返す
目の前にある愛と温もりに少しでも触れようと必死なのだ
思うままに泣き、息の限りに叫び、苦しみと悲しみを吐き出すように訴えかけている
それはまるで、天から降りてきた慈悲の女神に救いを求めるか弱き民衆を描く宗教画の構図だ

バチィ!!「ミ゙ッ!!」

宙を蹴り、身をよじらせ、子供たちを救うべく必死に地に降りようとする女神を
肉屋の若者は少し錆が目立ちだした小汚い電気ショッカーで黙らせた
聞いたことのない大きな音とタブンネの悲鳴に驚き、ベビンネ達はビクッと震えて騒ぐのを止めた

「それじゃあまずモツいきますよー」

若者はタブンネの腹に包丁を宛てがうと、慣れた手付きでザクザクと縦に腹を裂いていく
裂け目から血しぶきと共に腸が流れ出るように飛び出し、ベチャリと不快な液体音と共に下に置いてあったタライに落ちた
体外から出され、タライの中にあってなおひくひくと脈動している

「おー、でけぇと結構迫力あるなー」
「モツも最近はよく売れるんスよね。もつ鍋がここらの居酒屋でちょっと流行ってて」

おじさん達は呑気に雑談してるがタブンネの方はそれどころではない

「オゴゴゴッ!!オゴゴッ!」

メスタブンネは口の端から赤い泡を吹き、タブンネとは思えない声を出しながら身体をくねらせて悶絶している
切腹に介錯が必要な事が示すとおり、腹を裂かれた程度ではすぐには死にきれないのだ

「チッ…? チチッ…?? ヂー??」

ベビンネの方はというと何が起こったのか分からず狼狽えるばかりなのだが
タブンネが発した苦痛の音はベビの小さな耳と触覚にもしっかりと届いており、泣くことすらできなくなる程の強い恐怖が無垢な心を覆い尽くした

「だいぶ大人しくなってきたッスね、次は首やっちゃいますよ」

包丁をタブンネの首筋に突き刺すと、プシュウとスプレーのように血が吹き出したのち、ドクドクと滝のように血が溢れ出て胸を赤く染めた
こうなるとタブンネも悶絶を止め、ピクピクと痙攣するばかりとなった

「それじゃあ子豚ども、最後の挨拶しとけや」
「チッ?! チィィ…?? チ-? チ… チィ…」

そう言ってベビンネの檻をタブンネの檻に押し付けると、みるみる表情が変わっていった
目は瞬きを忘れ乾いたように輝きを失くし、口は声を忘れたかのように力なく薄く開いたままとなり
耳は張りを失いしゅんと下がる
つまりは絶望の表情である
たった今まですぐ側ににあった愛と温もりが想像を絶する苦痛の渦に飲まれながら闇のなかに消えていく、タブンネが死にゆく音
生まれて1ヶ月のベビンネの無垢で小さな心を殺すには十分をだいぶ過ぎていた

「あれ? おーい …ちょっと大人しくなりすぎたな?」
「死んではいないみたいスけど刺激が強すぎたみたいッスね」
「まあーいいや。 仕込みがあるもんでまた今度なー」

おじさんは今晩の肴にとこの店でモツのたれ漬けを一袋買ってから自分の店に戻り、早速仕込みを始めた

「ピィィィィ……」

おじさんが包丁を手にすると、まな板の上のベビンネはガクガクと震え上がる
自分があのタブンネと同じようにされることを幼いながらに分かっているのだ

その日、おじさんの店で売られたベビ肉や煮ベビンネや唐揚げは特別美味しく
買っていったお客さん達は当たりを引いたなと思ったという

おしまい

274名無しさん:2020/08/09(日) 10:39:55 ID:/UD3bEFo0
イイネイイネー! もつ鍋が食べたくなってきたw
他のベビちゃんたちもさぞかし絶望と恐怖で
ミィアドレナリン全開だったんでしょうね

275名無しさん:2020/08/09(日) 10:45:34 ID:RqmGN19Y0
出たな籠ベビンネマニア
乙です

276名無しさん:2020/08/23(日) 19:39:08 ID:QF7v1LXI0
>>272-273
文章化ありがとうございます
やっぱ籠ベビンネたまんねぇ
捕獲器の猫みたいにグニーンと肩まで檻の外に手を伸ばすような器用さなんて
ベビンネどもにはないんだろうな
短い両手をいっぱいに出して必死で高速
パタパタしてもすぐに息切れするし
後ろのベビに押しくらまんじゅうされて変顔になりながら両手抜けなくなって
ヂィヂィ泣くのもいい塩梅

277名無しさん:2020/08/26(水) 00:06:13 ID:/pp83iYU0
ベビンネと言えばやはり料理だが
そうやって籠とか網に入れたまま
茹でたり揚げたりする料理って何かあったかな?

278名無しさん:2020/08/26(水) 06:19:25 ID:mUCRzckY0
>>277
温泉卵ならぬ温泉子タブンネってのがあったな

ドジなママンネのせいで赤ちゃんが温泉で溺れてしかも喰われるとか草生えた
まあ全ては温泉街を荒らしたタブンネの群れが悪いんだがな

279名無しさん:2020/08/26(水) 07:22:07 ID:tql6/ows0
ちなみに調理法は
生まれたてのベビンネを
数匹ごとに鉄籠に入れ
クレーンで源泉にぶちこんで茹でる
この手の話では省略されるけど洗浄も下処理も何もなし
ちゃんと洗って調理したのって「レストラン始めました」か最初の方に親の前で洗って水遊びかと思わせてからの唐揚げってネタ位じゃないか

280名無しさん:2020/08/27(木) 21:50:52 ID:jEaLythA0
凍みタブンネもな
あれは仕込みの一環だけど

281名無しさん:2020/09/01(火) 18:29:48 ID:osmfLr0Q0
同じベビンネ食材系でも
希望いっぱいで生まれてきたはずの赤ちゃんが
最初のお世話すら受ける間もなく物理的な苦痛と共に調理されるのもいいけれど

ママンネの授乳を覚えた辺りで引き離されて精神的な触れ幅を狙うのもまた楽しからずや

282名無しさん:2020/09/12(土) 19:08:51 ID:ny.f9I9s0
最近の作品に多いけど
ベビンネ達がミルク取り合って
泣きすぎて吐いたりしてるやつ

283名無しさん:2020/09/12(土) 19:16:39 ID:PlBPnEJo0
>>282
途中で送ってしまったわ

個人的イメージだがタブンネって一度口に入れたものは意地でも吐かない感じがしてたから
普通の赤ちゃんのように
吐き戻しするようなか弱いタマかよなんて思いながら読んでたわw

284名無しさん:2020/09/21(月) 05:50:44 ID:10bg1vNk0
そう言えばタブ虐関係ないけれど
ここのしたらばってサーバー落ちしてるのか?
書き込みは出来るしここで読めるから利用してるけど新着レスが6月の末あたりからブラウザに出なくなってるわ

285名無しさん:2020/09/27(日) 07:24:51 ID:aBxvSDyE0
ハイハイするベビンネちゃんが可愛すぎてつらい
特にママンネやミルクを求めて泣きながら必死でよちよちしてるのがたまらん

分別日に回収されたり
保健所なんかに連れていかれるママンネを追いすがる姿なんて最高

286名無しさん:2020/09/30(水) 20:30:37 ID:S9cQAI/M0
>>277
籠はいくつかあったけど
網は見かけないなぁ
ベビンネ捕獲する時も
網とか使わないしね
何せ複数匹逃げ出したとしてもすぐ追い付いて素手で袋積めできる位だし

287名無しさん:2020/10/02(金) 16:49:28 ID:R6OfXppc0
網とか聞いて思い浮かぶのは…
タブンネチャーシュー?
それか駅でミカン売ってる網(赤いネット)にベビンネ無理矢理詰め込んで変顔させたいとは書いた事ある

288名無しさん:2020/10/03(土) 14:25:06 ID:NiGtVYBs0
食材系で思い出したけど、
PKMNカフェMixのアプリにタブンネが実装されてたね
ここまでそれをネタにした話が少なくて、ちょっと意外だった
このスレだとやっぱりタブンネは、
カフェの従業員っていうより、カフェメニューの具材になるイメージが強いんだろうか

289名無しさん:2020/10/03(土) 18:27:36 ID:edxWmQDQ0
>カフェメニューの具材

それな

しかもウェイトレスのママンネちゃんが
自分で生んだ子タブンネちゃんを調理してお出ししているイメージ

290名無しさん:2020/10/24(土) 13:57:25 ID:YZjrcFp60
冠雪原にタブンネちゃん出てきたけどこっち見た瞬間逃げだしてきてすっごい可愛い
後ろからウーラオスにインファイトさせてマウントポジションとってから水流連打撃たせたい

291名無しさん:2020/10/26(月) 07:39:50 ID:jUAQPd2E0
>>290
オンバットみたいに人が近付くと逃げるタイプなのか

子タブンネとかが人に追いかけられてヨチヨチ逃げる姿が再現できるとは素晴らしい

292名無しさん:2020/10/27(火) 01:03:15 ID:c0Y4E23c0
タブンネちゃんが出てきた時だけ、猟銃を使える仕様にならないものか。
散弾銃食らったベビンネの頭が吹っ飛んで、泣き叫ぶママンネが見たいよ。

293名無しさん:2020/10/27(火) 06:02:54 ID:bbUgqqdA0
>>291
実際追いかけ回してみるとおっそい逃げ足で必死に逃げるタブンネが再現できてめっちゃ楽しいよ
惜しむらくは時間経過でロストしてしまうところだけど

294名無しさん:2020/10/29(木) 22:37:17 ID:l5FCOxL.0
Newポケモンスナップ出たらイヤイヤボールぶつけまくりたいなぁ

295名無しさん:2020/11/04(水) 18:32:59 ID:1iCnJzds0
昔タブンネがミキサーにかけられる絵描いてた人の別の作品持ってる人いる?
Wikiの方にミキサーの絵だけあったんだけど他全然見つからなくて

296名無しさん:2020/11/04(水) 18:41:23 ID:18abRB6I0
どの人だろう
pixivにまとめてあがってるやつかなあ

297名無しさん:2020/11/04(水) 19:10:08 ID:1iCnJzds0
たぶんりょんぶさんって名前の人だと思う
pixivが消えちゃってるみたいで見つからないんだよね

298名無しさん:2020/11/05(木) 22:43:06 ID:A3mCn0v20
三つまたヶ原のタブンネはどうして吹雪の時だけ動きが活発になるのか
こういうところにSSの材料が転がってそうなんだよな

299名無しさん:2020/11/05(木) 23:15:23 ID:dQYOwhk20
>>295
「ryonbu audino」で画像検索すると出てくる海外の画像サイトにあるよ

ちなみに自分は「アチャモとベビンネ」の絵師さんが好き
兄弟タブ丼の絵は最高だった
彼の絵がwikiにあまり無いのが悔やまれる・・・
持ってる方、是非上げてくださると嬉しいです

300名無しさん:2020/11/05(木) 23:50:18 ID:A3mCn0v20
>>299
ほんとだ!出てきた!ありがとう
アチャモとベビンネの絵師さんいいよね
アチャモに啄まれるタブンネがすっごい可愛い

301名無しさん:2020/11/10(火) 09:36:12 ID:7YVIhKwM0
冠雪原ネタならわざと辛口のドガース級カレー食べさせてイヤそうな顔になるタブンネさんを見てみたい気持ち
(ヌルいじめなら後でお詫びに甘い木の実のデザートをあげるまでがワンセット)

302名無しさん:2020/11/17(火) 16:34:58 ID:DtyQgzJo0
wikiにリンクされてるミィミィうpロダってまだ見れるの?
パスワード分からないから入れない……

303名無しさん:2020/11/18(水) 23:31:30 ID:dsfgMZ4g0
>>302
あのwiki荒らし対策で新しく立て直してるから
確かに見れなくなってるな
タブンネさんお絵描きも
リンク切れてて残念

304カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:28:31 ID:T3kMW8xE0
吹雪が吹き荒れる極寒の雪原、三つまたヶ原。
意思無き者が足を踏み入れれば瞬く間に白い闇に飲まれてしまいそうなその土地を、一人のトレーナーが歩いていた。
トレーナーは鼻の下を覆うパリパリに凍った鼻水を手袋越しに指先で剥がす。しかし数分としないうちにまた鼻水が覆ってしまった。
何故トレーナーがこんな辺境へと足を踏み入れたのか。それはある噂を耳にしたからである。
曰くこの三つまたヶ原にある遺跡の中には恐ろしく強い伝説のポケモンが眠っていると。
トレーナーはその強いポケモンとやらには全くと言っていい程興味がなかった。既に手持ちには強力で全幅の信頼を置けるポケモンがいるからだ。
しかしこのポケモンがずいぶんと育つまでに時間がかかるポケモンで、加えて最近伸び悩んでいたためここはひとつ強いポケモンとやらを倒し多くの経験値を得ようと考えたのである。
やがてトレーナーは入口の開いた遺跡のような古びた建物を見つけると、まるで砂漠の中にオアシスを見つけたかのように駆け足でその遺跡へと入っていった。

古びた建物の中に入ると、そこはまさしく遺跡と呼んで差支えのないような場所であった。
意味ありげな石造に床には丸いタイルが左右対称になる形で並べられている。
トレーナーは如何にもなその遺跡の雰囲気に飲まれ浮足立つが、ふとその割にはポケモンの気配を一切感じない事に気付いた。
一通りあたりを散策してみる。銅像に近づいて触ってみたり、足元に置かれたタイルを踏んだりするが反応は帰ってこない。
嫌な考えがトレーナーの頭をよぎる。
その後も遺跡を調べ倒したが何の成果を得る事もないまま時間だけが過ぎていく。
噂が嘘だったのか、それとも既に誰かが捕まえてしまったのかは定かではないが、既にこの遺跡は主を失いもぬけの殻となっていた。
吹雪の中やってきてお目当ての物も無し。トレーナーは遺跡の中央で深く落胆した。

305カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:29:02 ID:T3kMW8xE0
何時までも落ち込んでいても仕方がない。気持ちを切り替えたトレーナーは遺跡の階段を降り外へ出る。
しかし相変わらず猛吹雪は継続中。トレーナーは折れそうになる心をグッと奮い立たせ、吹雪の中へ一歩踏み出した。
一歩一歩と歩みを進めているとふと視界の端に異物を捉えた。
視界が白が埋め尽くされ見通しが悪い中でもなお存在感を放つピンク色のシルエット。

「タブンネか……このまま帰るのも癪だしあいつだけでも狩って帰るか……」

幸いトレーナーの立ち位置はタブンネの後ろ側、吹雪による轟音のサポートもありタブンネはまだトレーナーの存在に気付いていない。
トレーナーは腰に携えたモンスターボールに手をかけ放り投げる。モンスターボールの中からジヘッドが勢いよく飛び出してきた。
モンスターボールの音を聞いたタブンネは異常を察知し背後へ振り替えるが既に手遅れだった。
逃げる間もなくジヘッドに飛びかかられたタブンネは頸動脈ごと喉元に喰らい付かれ、勢いよく左右へと振り回される。
ジヘッドの口元から溢れ出たタブンネの鮮血が積もった雪へ飛び散り赤く彩られる。

「ミゥッ……カハッ……」

抵抗もできないまま気道を噛み砕かれたタブンネはまもなく力なく項垂れ、その命を落とした。
ジヘッドはタブンネが絶命したことを確かめると勢いよく遠方へ放り投げた。すると放り投げた先から「ミィッ!」という叫び声が聞こえてきた。
先ほどのタブンネは確かに殺したはず、トレーナーが放り投げた先を注視するとそこにはもう一匹別のタブンネが存在していた。
首が折れ曲がり苦痛に歪んだ顔をした同族の死体を見てしまったタブンネはその場で腰を抜かし尻もちをついている。
トレーナーが自分の存在を検知したことに気付いたタブンネは這ってその場を離れようとするが、ジヘッドに上から飛びかかられ後頭部に噛みつかれてしまう。

「ミギィィィィィィ!!!!ミァァァァァァァ!!!!!」

タブンネは痛みから逃れるため必死にバタつき抵抗するが、ジヘッドから逃れる事が出来ないでいた。
頭蓋骨を砕き割ろうと渾身の力を込めるジヘッド。次第に分厚い骨にヒビが入る音が鳴る。
タブンネは痛みから逃れるため必死に手足をバタつかせていたが、抵抗空しくジヘッドにより頭蓋骨ごと脳みそを噛み砕かれてしまう。
「ア……ガァ……」と掠れた断末魔を上げたタブンネはそのまま雪原へ倒れ込み、わずかに痙攣した後動きを停止させた。

306カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:29:49 ID:T3kMW8xE0
トレーナーは珍しい事もあるものだと思っていた。
このカンムリ雪原ではタブンネの出現率はそんなに高くない。二匹連続で見かける事は極めて珍しい。
まぁ元より運が回っていなかったのだ、揺り戻しでもあったのだろうと思いジヘッドをモンスターボールへ戻そうとする。
その瞬間だった。再び遠方にタブンネの姿を捉えたのだ。しかも一匹だけではない、今度は三匹ほどの集団で行動している。

「これは流石にツキが回ってきたってだけじゃないよな……少し調べてみるか……」

興味の湧いたトレーナーはジヘッドと共に気配を殺し、タブンネの集団へとにじり寄る。
ジヘッドの攻撃圏内に足を踏み入れた途端、集団のうち一匹がこちらの存在に気付いた。
だがもう遅い、ジヘッドは真っ先に気付いた一匹に飛びかかり組み伏せた。

「ミィィィィ!!!!」─ 二人とも逃げろ!! ─

組み伏せられたタブンネが叫ぶと残りの二匹は一匹を見捨て逃げ出す。しかしトレーナーはそれも織り込み済みだった。
モンスターボールを放り投げもう一匹のポケモン、フーディンを登場させる。
フーディンは手早く電磁波で一匹を麻痺させた後残りの一匹をサイコキネシスで岸壁へ叩きつけた。
岸壁に叩き付けられたタブンネは脳震盪を起こし気絶してしまう。トレーナーは気絶したタブンネを縄で縛り上げた。
一瞬で無効化され目の前で仲間を生け捕りにされたタブンネ達は絶望の表情を浮かべる。

「調査には一匹居ればいいから残りの二匹はどうなってもいいな。ジヘッド、フーディン、そいつらは好きにしていいぞ」

ジヘッドとフーディンはその言葉を聞くと互いにそれぞれの獲物へと向き直った。
組み伏せられたタブンネは涙を浮かべ「ミゥ、ミゥ」と泣きながら首を左右へ振る。
そんな姿を心底面白そうに眺めながらジヘッドはタブンネの口元へと喰らい付き持ち上げた。
タブンネはジヘッドの頭に手をかけモゴモゴとくぐもった声を出しながら抵抗する。
するとタブンネへ喰らい付いた口の方から青白い光が漏れ出し始める。ジヘッドはりゅうのはどうをタブンネの口の中へと撃ち放ったのだ。
バァン!という激しい炸裂音が鳴り、タブンネの後頭部からりゅうのはどうが炸裂する。波動と共に脳漿、肉片、歯などの骨片が飛び散る。
その様はまるで風情のない打ち上げ花火のようにも見えた。
ジヘッドは咥えていたタブンネの死体を解放する。顎のあたりが欠損したタブンネの死体はどさりという音を立てて地面へ崩れ落ちた。

307カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:30:27 ID:T3kMW8xE0
「ミイイイィィィィィ!!!!!!ミヤアアアァァァァァ!!!!!」─ 嫌だぁ!!死にたくない!!死にたくないよぉ!! ─

先ほどのタブンネの姿を見ていた麻痺タブンネは半狂乱になりながら叫んでいた。
フーディンはそんなタブンネをサイコキネシスで宙に浮かせ、両手足を大の字に広げた状態で固定する。
首や手足を動かしなんとかサイコパワーの束縛から抜け出そうとするタブンネ。そんなタブンネの前後にフーディンは二枚のリフレクターを展開した。
リフレクターはタブンネの首から下、胴体部分を挟み込み徐々にプレスしていく。
ミシミシと骨が軋む音が聞こえ、苦しそうにもがくタブンネ。まだ多少自由の利く両腕でバンバンとリフレクターを叩くが割れる気配は無い。
やがて肺が圧迫され、呼吸が浅くなり始める。そしてバキッという音が鳴った後タブンネが口から血を吐き出した。
折れた肋骨が肺に刺さったのだ。まだ喉奥には血が溜まっている状態で、それでも酸素が必要なため血液ごと酸素を取り込もうとするタブンネ。

「ガハッ……ミ……ァ……」─ 助……け…… ─

死にゆくタブンネは光が失われつつある虚ろな目でリフレクターの操縦者であるフーディンに命を乞う。
その言葉を聞いたフーディンはタブンネを見つめフッと笑い、リフレクターでタブンネの胴体を圧砕した。
バン!というリフレクター同士が重なり合う音が鳴り、タブンネの体が肉の一片までぐちゃぐちゃに粉砕される。
タブンネの頭部は肉体から解放され、リフレクターからはみ出た血肉と共に地面へと落下した。
三匹いたタブンネの内二匹はトレーナーが従えるポケモン達の経験値となった。あとは残りの一匹からタブンネの多さについて調べるだけ。
しかしここはあられが降り注ぐ平原の真っただ中である。トレーナー自身の体温低下もそうだがポケモン達へ降り注ぐあられのダメージも心配だ。
トレーナーはひとまず生け捕りにしたタブンネを担ぎ、ジヘッド達と共に先ほどの遺跡へと引き返した。

308カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:31:14 ID:T3kMW8xE0
再び遺跡へとたどり着いたトレーナーはジヘッドとフーディンに傷薬を使いダメージを癒す。
その背後で生け捕りにしていたタブンネが意識を持ち直し始めた。
目覚めたら見知らぬ場所、目の前には恐ろしい人間とポケモン、自分は縛られて身動きが取れない。
微睡んでいた意識はすぐさま現実へと引き戻された。あまりに絶望的な状況を理解したタブンネは恐怖で身を竦ませ「ミッ…」と短い悲鳴を上げる。
その悲鳴でタブンネが目覚めたことに気付いたトレーナーはタブンネの方へと向き直り、フーディンと一緒にタブンネの元へ近づく。
カンムリ雪原に生息するタブンネ達は皆イッシュ地方でトレーナー達に虐げられてきたタブンネの子孫だ。
脈々と受け継がれる血筋と同時に口伝としてトレーナーの恐ろしさが語り継がれてきた。
初めて出会う恐ろしき伝承の存在。これから自分が味わう事象を想像すると恐怖で震えが止まらない。
タブンネがガチガチと歯を震わせながらトレーナー達を見上げていると、後ろで控えていたフーディンが前に出てきた。
フーディンは両手に持ったスプーンをかざし、さいみんじゅつをタブンネに向けて放つ。
一瞬強張ったタブンネだったが次第に意識が遠退いていき、寝息を立てて眠り始めた。

「タブンネは眠ったか……じゃあフーディン、ゆめくいでこいつの過去を遡って見てくれ」

トレーナーの指示を聞いたフーディンはタブンネへゆめくいを行い、タブンネの過去へとダイブしていった。

309カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:31:55 ID:T3kMW8xE0
タブンネという種族は頑丈な歯や武器を持たず、生存競争に置いては常に被捕食者としての立場を強制させられていた。
どこに居ても大型の肉食ポケモンの恐怖に晒され続ける日々。
そんな中、捕獲されたタブンネは海鳴りの洞窟に生息するバンギラスの群れと共に生活していた。
何故タブンネとバンギラスが共生しているのか、理由は三つある。
一つ目は回復要員として使用するため。
絶えず縄張り争いを繰り広げるバンギラス達はその分怪我をすることも多々あった。強敵との闘いで勝った後、手負いのままのバンギラスを放っておくポケモンは決して少なくない。
故に回復要員としてのタブンネを数匹確保しておこうと判断したのである。
二つ目はミストフィールドの展開要員として。
近隣の三つまたヶ原にはドラパルトやクリムガンといったドラゴンポケモンが生息している。
縄張り争いになった際それらを優位に撃退するために手元に控えているのである。
そして三つ目の理由は───

海鳴りの洞窟の一角で一匹の母タブンネが赤ちゃんタブンネへ授乳をしている。
母タブンネの周りには子供のタブンネが八匹存在していた。この八匹のタブンネ達は捕獲されたタブンネにとって妹や弟にあたり、彼女は長女ということになる。
母タブンネの近くで長女タブンネが弟の子タブンネをあやしていると、母タブンネの乳に突然痛みが走った。
「ミッ!」と声を上げた母タブンネは授乳をやめ赤ちゃんタブンネの口の中を確認する。口の中には数本の歯が生え始めていた。
赤ちゃんタブンネが母タブンネの乳を噛んでしまったのが痛みの原因だったのだ。
本来であれば喜ばしいはずの赤ちゃんタブンネの成長。しかしそれを見た母タブンネはさめざめとすすり泣き始めた。
長女タブンネはあやしていた赤ちゃんを置いて母タブンネに声をかける。

 ─ ママどうしたの?お腹痛いの? ─
 ─ 何でもないのよ、ごめんね急に泣き出して ─

母親は優しい長女タブンネを抱きしめ、頭を撫でた。
何でもない、そう口にする母タブンネだが触れている触覚からは悲しい気持ちが止めどなく流れ込んでくる。
母タブンネの悲しい気持ちに触れた長女タブンネも泣きそうになるが、それに気づいた母タブンネは長女タブンネを離した。

 ─ ママ、ちょっと行くところがあるからこの子と一緒に大人しくお留守番しててね ─

母タブンネは長女タブンネの頭を撫でながらそう告げると、抱えていた赤ちゃんタブンネを長女タブンネに預ける。
そして周囲にいた八匹の子タブンネを連れてその場を離れた。
きっと母タブンネの行く先に悲しみの原因があるはず。そう思った長女タブンネは赤ちゃんタブンネをその場に置いて母タブンネの後をこっそり付いていった。

310カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:32:33 ID:T3kMW8xE0
母タブンネが向かった先は海鳴りの洞窟にある小さな洞だった。
その中には母タブンネの他にも複数の子供を連れたタブンネが三匹ほど存在していた。その面持ちは皆一様に暗い。
洞の中で母タブンネ達が子供をあやしているとその場に緑色の巨大なポケモン、バンギラスが現れた。
岩陰に隠れて状況を見ていた長女タブンネは初めて見た恐ろしいポケモンに思わず悲鳴を上げそうになる。
しかし長女タブンネはすんでの所で悲鳴を飲み込む事に成功し、そのまま岩陰から状況を見守った。
バンギラスが現れた途端母タブンネ達はかしこまり、洞の中に居る子タブンネ達へこの場所に留まる様言い聞かせながら洞から出て行った。
子タブンネ達は母タブンネ達を不安そうな目で見つめる。そんな不安そうな子供達を他所にバンギラスは洞の中にいる子タブンネの数を数え始めた。
バンギラスの後ろで待機している母タブンネ達は顔面蒼白で今にも倒れてしまいそうだ。

 ─ 今回は全部で二十匹か……まぁ問題ねぇ。木の実はいつもの場所に置いてあるから持っていけ ─

バンギラスは子タブンネ達の数を数え終わると後ろの母タブンネ達にそう告げると、洞の近くに置いてあった岩を押して閉じようとする。
子タブンネ達は母の姿が見えなくなっていくことに不安を感じピィピィと鳴き始めた。
洞が閉じられようとしたその瞬間、出入口に近くに居た子タブンネが走りだし洞の外へと飛び出してきた。
先ほど長女タブンネがあやしていた弟タブンネだ。弟タブンネは泣きながら母の元へ向かう。
するとバンギラスは弟タブンネの耳をガッと掴み持ち上げた。タブンネにとって敏感な部分である耳を乱暴に掴まれた子タブンネは痛みで泣きながら暴れ狂う。

 ─ ちょうどいい、さっそく今日の分を頂くとするか ─

そう言うとバンギラスは大きな口を開けて子タブンネを飲み込んだ。
ざらざらとした舌の上に転がされたのも束の間、弟タブンネはバンギラスの歯で小さな足をすりつぶされてしまった。
バンギラスの口の中から「ピァァァァァァ!!!!!」という甲高い弟タブンネの断末魔が聞こえる。
母タブンネはついにたまらず耳を抑えその場に蹲ってしまった。隣にいたタブンネ達が母タブンネの背を摩り介抱する。
口の中で弟タブンネがたくさん苦しむ様に念入りに咀嚼するバンギラス。やがて弟タブンネの声が聞こえなくなるとペースト状になったそれをごくんと飲み込んだ。

これがタブンネ達と共生する三つ目の理由、食用である。
木の実さえ与え続ければその繁殖力で次々と数を増やしていく。バンギラスはその繁殖力に目を付けたのだ。
タブンネ達を子飼いにすることで食糧難を解決する。いわばポケモンによるポケモンの養殖である。

311カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:33:06 ID:T3kMW8xE0
先ほどの様子を見ていた長女タブンネは岩陰で声を押し殺し涙を流していた。
先ほどまで可愛がっていた大事な弟があの恐ろしい化け物に喰われてしまった。
恐ろしさ、くやしさ、悲しさ。様々な感情が長女タブンネの心を押し潰し、涙となって溢れ出る。
だけどこのままで終わらせてはいけない。弟タブンネの仇を討って他の弟妹達を解放しなければならない。
長女タブンネは岩陰から飛び出しその場を離れようとしているバンギラスの元へ駆け寄った。
母タブンネは留守番しているはずの長女タブンネが現れた事に驚愕する。バンギラスも突然の来訪者に対し振り向き対応する。
いざ近づいてみると恐ろしい程の巨大さだ。長女タブンネは折れそうになる心を奮い立たせ、精いっぱいの大声でバンギラスへ叫んだ。

 ─ 弟を……弟を返せぇ!!! ─

バンギラスは長女タブンネを見下ろした後、竦んでいた母タブンネの方へ目を向け「こいつはお前の娘か?」と問いただす。
母タブンネが震えながらこくりと頷くとバンギラスは大きく足音を立て、長女タブンネへ一歩踏みよった。
圧倒的なプレッシャーに長女タブンネは身じろぎ一つ取れず硬直する。
喉が渇き目じりにじわりと涙が浮かぶ。先ほど奮い立たせた心はバンギラスの圧倒的な圧によっていとも簡単に消し飛ばされてしまった。
長女タブンネの心を恐怖が覆っていく。怖い、怖い、怖い───
バンギラスが長女タブンネへと手を伸ばした瞬間、長女タブンネを庇う様に母タブンネが抱き着いた。

 ─ こ、この子は次の母体です! きちんと言い聞かせますのでどうかお見逃しください! ─

そう強く叫びながら母タブンネはきつく長女タブンネを抱きしめる。
震える母タブンネの胸部に当たった長女タブンネの触覚からは焦りや恐怖と言った感情が読み取れた。
母から流れ込んでくる感情の大きさ、それに気づいた長女タブンネは「ごめんなさい」と口にした。
その言葉が母か、バンギラスか、それとも救えなかった弟に対してなのかはわからないが少なくともこの場は収めることができたようだ。

 ─ きつく言い聞かせておけ ─

バンギラスは母タブンネにそう告げると足音を立てその場から去っていった。
九死に一生を得た母タブンネと長女タブンネはその場で抱き合いながら涙を流した。

312カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:33:46 ID:T3kMW8xE0
巣に戻った長女タブンネは母から事の経緯を聞いた。
海鳴りの洞窟に生息している全てのタブンネはバンギラスの管理下にある事。
一週間に一度子タブンネを食用として謙譲することで身の安全と生きていくために必要な糧を供給してもらえる事。
そして母タブンネの次に子タブンネを産む母体の役割を継ぐのは長女タブンネである事。
全てを聞いた時、長女タブンネの心には反抗心のようなものが芽生えていた。
母タブンネに対してではない。バンギラスの庇護下で食用として飼いならされ続けるシステム、それそのものに対する反抗心だ。
長女タブンネは母タブンネにその思いを告げる。きっと外にはタブンネだけでも安全に過ごせる場所があるはずだ、と。
その発言を聞いた母タブンネは観念したような顔をし、長女タブンネを巣とは別の場所へ案内した。

案内された先は海鳴りの洞窟と三つまたヶ原の境にある小さな洞窟だった。
その洞窟の奥へと進んでいる途中で開けた場所にでた。
そこには火を囲むような形で複数のタブンネ達が暖を取っており、突如現れた長女タブンネ達をじっと見つめている。
突如見知らぬタブンネ達に視線を向けられぎょっとして後ずさる長女タブンネ。
母タブンネはそんな長女タブンネに彼らがどういったタブンネ達なのか説明をし始めた。
長女タブンネと同じように、安全に過ごせる場所を求めるタブンネ達は他にもたくさんいた。
そう思ったタブンネ達はバンギラスから配給される木の実を配分し直し、通常よりも多く繁殖していたのだ。
通常よりも多く繁殖した後はそれぞれの役割の再編成だ。バンギラスの元で繁殖をする班と海鳴りの洞窟から遠征し安全な住処を探す班に分かれる。
ここにいるタブンネ達はその役割の後者。安寧を求めて探検を進めるタブンネ達なのだ。

 ─ 私達もね、ずっとバンギラスに飼いならされたままなのは嫌なのよ ─

一通り語り終えた母タブンネは長女タブンネにこう告げる。
長女タブンネはその話を聞いて気分が高揚していくのを感じた。
同じ思いを持つタブンネは他にも居たのだと。平和を求めて闘っていうタブンネ達が居たのだと。
長女タブンネは母タブンネに彼らと共に自分も外に出たいと告げる。母タブンネは少し悲しそうな顔をしたが、それを受け入れた。

313カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:34:19 ID:T3kMW8xE0
長女タブンネが遠征班へ加わった後、班をまとめているリーダータブンネから遠征に関する一通りの話を聞いた。
大型の肉食ポケモンから逃れられる可能性を少しでも上げるため視界の悪い吹雪の日に行動していること。
このカンムリ雪原では見た事はないが、人間を見かけたら直ちに撤退すること。
遠征を行う事で多くのタブンネ達が亡くなっており、常に死と隣り合わせで活動をしていること。
教育と戦闘訓練を受けた長女タブンネ。数か月後、成体となった長女タブンネにはしっかりと戦闘能力が備わっていた。

そしてついに吹雪の日がやってきた。長女タブンネにとって初めての遠征である。
同じく遠征が初めてのタブンネと、自分たちの教育係を務めてくれたベテランタブンネ。初めての遠征はこの3匹で執り行われる事となった。

 ─ 緊張してるか? ─

ベテランタブンネは長女タブンネともう一匹のタブンネに声をかける。
長女タブンネは「ミッ!」と元気よく返事をしたのに対し、もう一匹のタブンネは震え声で返事をする。
やる気はある。だが臆病な性格なため脅えが隠せず体が少し震えているのがわかった。
長女タブンネは臆病タブンネの背中をやさしく撫で、「一緒に頑張ろう」と鼓舞する。
その姿に少しだけ、臆病タブンネも勇気づけられたようだ。体の震えはいつの間にか止まっていた。
勿論、長女タブンネにも恐怖心がある。肉食ポケモンに捕食されたり極寒の海で溺れ死んだり、目を逸らせない真実の話をベテランタブンネから聞いていた。
だけど、それでも自分は外に出たい。外の世界で、誰に縛られることもなく安全に暮らしたい。
二度と自分の弟を見殺しになんてしたくない。
長女タブンネには恐怖心よりも大きな決意を希望が宿っていた。

 ─ 吹雪が強まってきた。そろそろ出発するぞ! ─

ベテランタブンネの号令が響き渡る。
視界は吹雪覆われ、一寸先の景色すら見えない。それでも遠征班たちはまるで恐れを知らないかの様に皆吹雪の中へと飛び出していった。
意思無き者が足を踏み入れれば瞬く間に白い闇に飲まれてしまいそうなその土地へと、長女タブンネは大きな決意を抱き一歩足を踏み出す。
その先に待つ絶望も知らずに───

314カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:35:24 ID:T3kMW8xE0
長女タブンネの記憶を読み終えたフーディンは、テレパシーを使って内容の一部始終をトレーナーへと伝えた。
ポケモンによるポケモンの養殖。トレーナーはバンギラスというポケモンに対し非常に大きな尊敬の念と感心を抱いた。
そしてもう一方の存在、タブンネにもトレーナーは感心を抱いていた。
タブンネを倒せばその分早く強くなれる。これは自分以外のトレーナー達も知っている話だ。
当初は与太話の類かと思っていたがそうではないというのは先ほどの戦闘で既に実証されている。
トレーナーは思案する。吹雪の日に活動するそのタブンネ達を一斉に倒せばジヘッドは、俺のポケモン達はもっと強くなれるのではないか、と。
ここにきて、トレーナーは伝説のポケモンよりも価値のある事実へとたどり着いたのだ。

一方、微睡みの中にいた長女タブンネは再び目を覚ます。
嫌な夢を見た、過去に自身の弟が目の前で捕食される夢だ。
ふと景色を見渡すとやはりそこは見知らぬ建造物の中。徐々に覚醒していく意識の中でふと長女タブンネは疑問を覚えた。
先ほど見たのは夢だったのか。
夢にしては嫌に実感の籠った、それこそ過去を追体験したかのような夢だ。
嫌な考えがよぎりじわりじわりと不安が心を蝕んでいく。
かつて母から聞いたことがあった。エスパータイプの中には寝ているポケモンの夢を食べる技を覚えるポケモンがいると。
自分たちの祖先にはエスパータイプのポケモンに虐待されていた過去を夢に見せられ、精神を破壊されてしまった事があると。
長女タブンネが顔を上げるとそこには不思議な力でスプーンをくるくると回すフーディンの姿がある。
フーディンはフッと笑みを浮かべると長女タブンネの脳内へと直接語り掛けた。

 ─ お前たちタブンネの遠征班は我々が有効活用させて貰う事にするよ、ご苦労だったな ─

先ほど見たのは夢ではなかった。夢を通して過去を、自分たちの知られてはいけない秘密を知られてしまったのだ。
長女タブンネは顔を青くさせる。止めなければ行けない。あの場所にだけは行かせてはいけない。
勢いよく立ち上がろうとしたが両腕を縄で縛られそのままうつ伏せに倒れ込んでしまう。
長女タブンネは顔を強打し鼻から血が出る。痛みを堪え顔を上げるとそこには紫色の不定形生物、メタモンがいた。
トレーナーはフーディンから長女タブンネの過去を見せてもらった後、携帯ボックスからメタモンを引き出していたのだ。
ゴマ粒のような瞳で長女タブンネを見つめるメタモン。数秒見つめ合った後メタモンはぐにゃぐにゃとその姿を変形させていった。
メタモンが変身したのは長女タブンネだった。メタモン特有の細部の変身が苦手な癖を克服し、傷や顔の特徴まで完全に一致させている。
自身と全く同じ姿をした存在。それが表す意味を長女タブンネは完全に理解してしまった。
あの洞窟にはもちろん面識のあるタブンネ達も残っている。同じ姿で、同じ声で、安全な場所があったと伝えられてしまったら───

315カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:36:20 ID:T3kMW8xE0

 「ミィ!!ミィィィ!!!」─ ダメ!!それだけは絶対にダメ!!! ─

何とか縄から抜けようともがく長女タブンネをよそ目にメタモンは軽い足取りで遺跡の外へと出て行った。
長女タブンネの目から涙が零れ落ちる。自分の不祥事とどう足掻いても変えられない事実に対し、罪悪感が胸を押し潰す。
だがもしここで諦めてしまったら、同胞たちの多くはあの残虐なトレーナー達の餌食になってしまうのだ。
折れそうな心を奮い立たせ、ゆっくりと這って行く長女タブンネ。
力では敵わないのなら話を聞いてもらおう。
私達タブンネはただ平和を望んでいるだけなのだと。敵対する意思はないのだと。
そうすればきっと見逃してくれるはず。心にわずかだが希望の火が灯る。そんな長女タブンネの行く手を黒い影が遮った。
ジヘッドだ。ジヘッドは這って動く長女タブンネを見下ろしニヤニヤと悪意の籠った笑みを浮かべている。
その背後からトレーナーがジヘッドに対して声をかけた。

「そいつももう用済みだから好きにしていいぞ」

希望は一瞬にして消し飛ばされた。長女タブンネの顔から表情が消える。
長女タブンネは知る由もないが、彼らは明確にタブンネに対して敵意を持ってここにやってきたのではない。
強くなるためにこの三つまたヶ原へ訪れたのだ。そこに現れたタブンネに対して掛ける情など元々ないのである。
トレーナーからの指示を聞いたジヘッドは、まず長女タブンネを拘束していた縄を喰い破り自由にした。
長女タブンネにはもはやジヘッドの行動理由を考えてる余裕などなかった。ただ逃げなければ行けないと必死だった。
恐怖により腰が抜けてしまいうまく立ち上がる事ができない。
それでも逃げるために四つん這いになり真っ直ぐに出口へと向かう。
突然長女タブンネの尻尾の付け根に激痛が走り、「ミィィッ!!!」と悲鳴を上げてしまう。
ジヘッドが尻尾へと喰らい付いていたのだ。ジヘッドは尻尾を起点に長女タブンネを遺跡の奥へとフルスイングした。
遺跡の最奥部にある伝説のポケモンをかたどった石造へ叩きつけられる長女タブンネ。
全身を強打し、辛うじて繋がっている尻尾の付け根からはどくどくと血が流れ出ている。
長女タブンネの体にはもはや痛みが無い場所など存在せず、心も体も既に限界へと達していた。

316カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:36:58 ID:T3kMW8xE0

 「ミィ……ミゥ……」─ 早く……逃げなきゃ…… ─

仰向けの状態でそう呟くが体が言うことを聞かない。
息をすることすら辛い状況でもはや長女タブンネに残された道はただ一つだけだった。
にじり寄ってきたジヘッドに対して長女タブンネはこう告げる。

 ─ お願いします……助けてください…… ─

長女タブンネが行ったのは命乞いだった。
死にたくない、その一心だった。
その言葉を聞いたジヘッドは、長女タブンネが想定していたのとは全く異なる反応を示した。
右側の頭部は心底愉快そうにゲラゲラと声を上げて大笑いし、左側の頭部は悔しそうに歯をむき出しにしながら怒りを露わにしている。
事情が読めていない長女タブンネに右側の頭部が語り始める。

 ─ 賭けをしてたのさァ。アンタが命乞いをするかしないか ─

進化した後の人格の主導権を右と左、どちらが担うかを賭けて長女タブンネでギャンブルをしていたとの事だ。
右側の人格は命乞いをする。左側の人格は命乞いをしないを選択しており、右側の人格が勝利する結果となったのだ、と。
目の前の存在は自分の命なんてなんとも思っていなかった。それだけではなく自身の命をベットにしギャンブルへと興じていたのだ。
長女タブンネはいよいよ生きる意志さえ手放してしまった。膝をつき項垂れ、涙が溢れこぼれ落ちる。
するとジヘッドの左側の頭部が長女タブンネの鼠径部へと喰らい付いた。
鋭いキバは皮膚を破り、肉を裂きその中にある内臓、子宮へと到達する。
左側の人格は非常に獰猛な性格だった。自身が賭けに負けてしまったうっ憤を長女タブンネで晴らそうとしているのだ。
とてつもない痛みに思わず長女タブンネは大声をあげてしまう。その声がさらに傷へ響き痛みを強くする。
右側の人格は残虐な性格をしており、今回は左側のフォローへと徹する。
左側を立てているわけではない。そのほうがより長く長女タブンネを苦しめられるからだ。
今回は気道をつぶさないよう気を使いながら喉元へと喰らい付く。
長女タブンネはわずかに首が閉まる感覚はしたが発声も呼吸も正常通り行う事ができていた。
左側の噛みつく力は留まる事を知らず、むしろ増していく一方だった。
気を失ってしまいそうになるほどの激痛が長女タブンネを襲う。
高い生命力を保持するタブンネという種族は少しの事では死に至る事はない。今回はそれが裏目に出てしまった形になる。
やがて左側の頭部は鼠径部をそのまま喰い破り、内臓を露わにする。
鋭いキバで引き裂かれた子宮と、それを維持している骨盤が露わになる。
長女タブンネはもはや叫ぶことすらできなかった。ただただ早くこの痛みの地獄から解放されたかった。
こうなってくるとジヘッド達はもはや興奮に任せ、ひたすら長女タブンネの体を貪るのみとなる。
長女タブンネは薄れゆく意識の中、なぜこうなってしまったのか、ただひたすら後悔していた。
外の世界の恐ろしさは十分に伝え聞いていたはずだった。バンギラスの元で飼われているタブンネの様に、穏やかに死ねるわけではないと。
それでもどこか、もう少し綺麗な死に方をできるのではないかと思っていたのも事実だった。
だが実際はそんな綺麗な死に方とは全く無縁だった。
尊厳を弄ばれ、心の中まで蹂躙され、さんざん痛めつけられた後に捕食され死んでいく。
こんな死に方をするだなんて想像もして居なかった。
長女タブンネの目から一筋の涙がこぼれる。痛みと後悔に苛まれながら長女タブンネの意識は闇に飲まれていった。

317カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2020/12/20(日) 03:39:19 ID:T3kMW8xE0
後編の虐殺編は……年末ごろ作れたらいいなぁ……
あと直接は関係ないけどキャラゲー板の方に投稿したカンムリ雪原のタブンネの設定を一部引き継いでるからもしよかったら見てほしい。
ttps://medaka.5ch.net/test/read.cgi/pokechara/1342010998/430-444

318名無しさん:2020/12/22(火) 21:58:56 ID:jUkEXOaU0
乙でした!
どこまで行ってもタブンネには安息の地などなく、あるのは絶望だけ。
捕食の描写がなかなかリアルでGoodです。
後編を楽しみにお待ちしておりますよ。

319名無しさん:2020/12/26(土) 01:23:51 ID:NzhRixf20
乙でした。設定がリアルで面白かったです。目が合うと逃げ出す雪原のタブンネちゃん虐めがいありすぎる。続編期待してます!

320名無しさん:2020/12/29(火) 18:23:02 ID:r2p8Ckzo0
ガラル地方でも、タブンネ養殖が流行ると良いな。
同族が調理される所を是非見て欲しいw

321名無しさん:2021/01/04(月) 19:08:03 ID:RSvv7y2g0
>>320
ガラルと言えばやっぱカレーだよね
ヤドンのしっぽや肉や魚の缶詰(多分ポケモン)があるんだし
てか肉缶詰の中身がそれの可能性もある

322ガラルタブンネ牧場:2021/01/09(土) 17:43:08 ID:ZAjoONAk0

 ここはガラル地方南部に位置するカンムリ雪原と呼ばれる広大な大地の一画、巨人の寝床と呼ばれるエリア。
 末が見えぬ程の範囲まで高さ2メートル程の頑丈な金網のフェンスに仕切られた巨大な敷地に300匹以上は居るであろうか、ピンクの体毛をしたポケモン、タブンネ達がミィミィ チィチィ無邪気な鳴き声を至る所で弾ませながら、思い思いにのんびりと暮らしている。

 2メートル四方、深さ50センチ程の穴に干し草が敷き詰められ、その上に真っ白なシーツが敷かれ、更には各穴に2、3枚毛布が与えられた場所が一家族単位の巣として充てがわれ、各巣の前に打ちつけられた質素な杭に「1」「2」・・・とナンバリング管理され、その数現在「38」にまで昇り、世界有数の規模であろう牧場としてガラルの新たな一大産業として定着しつつある。

 タブンネ達は完全に安全な環境に野生味をすっかり失っている。
 広場で追いかけっこをするチビンネ達。
 周りを全く気にする様子も無く交尾に勤しむ夫婦ンネ。
 数カ所作られた人工の小川に顔を突っ込みゴクゴクと水を飲むタブンネ。
 牧場の飼育員から何やらタブレットの様な
画面を見せられては目を細め、ミィミィとしあわせそうな声を上げる夫婦ンネとその子タブ3匹。
 巣の中で横になり、5匹居るベビ達におっぱいを飲ませるママンネ。・・・etc.


 その牧場の片端(氷点雪原と呼ばれるエリア側)には大きな建物がある。ここは牧場従業員の宿舎、タブンネ販売の受付所、且つ体調の優れないタブンネの為の診療所、また定期的に行われるトリミングを行うブース等としての役割などを併せ持つ複合施設である。
 その建物から更に氷点雪原側にはこれまた大規模な木の実牧場が広がっていて、そこにもまたちらほらタブンネが居て、木の下で人間から木の実を受け取ってはミィミィと笑顔で籠に詰めていく。
 ここに住み着いた(あるいはここで産まれた)タブンネ達は人間を完全に信用しており、野生産の者は匿って貰い快適で安全な住処を与えてくれた恩義から、そうで無い者も手厚く世話をしてくれ、愛情を注いでくれる事への忠誠から、タブの出来たタブンネ程こうして自ら進んで人間の手伝いをするのである。毎日定時に充分な量の餌を与えられているため、摘み食いの心配も無い。あちこちからミィミィ賑やかな鳴き声が聴こえてくる。

323ガラルタブンネ牧場:2021/01/09(土) 17:52:24 ID:ZAjoONAk0

 午前10時頃であろうか、一台のアーマーガアタクシーが建物前にやって来て、一人の青年が降り立つ。どうやら本日最初の顧客である。受付に入ると
「いらっしゃいませ、あ、お客さんいらっしゃい。今日も生き餌用チビで宜しいですか?」
「こんにちは。はい、また50センチ未満位のを2匹お願いしたいんですが。」
「かしこまりました。ではお手数ですがこちらに記帳をお願いします」
「はい。えーっとブラッシータウンの・・・」

そのやり取りの傍ら、1人の事務員がカタカタとパソコンの前でデータを確認する。
「何番?」
奥から現れた作業着を着た男性飼育員が尋ねる。
「えーっと20番のツガイの子ですね。一番上のメスが3ヶ月2週、その次が2ヵ月3週のオスです」答える事務員。
「20番だな、巣に揃ってればラクなんだが…」
そう言うと飼育員は牧場側の扉から出て行き、その出口付近に止まっていた大きな自転車(前方後方に一つずつ、成タブ一匹乗れるくらいの座椅子が付いている、ママチャリを少し豪華にしたような作り)に跨り、一気に駆け出して行く。何せ敷地が広く、移動には自転車が必須なのだ。
道中飼育員を見かけては、至る所に散らばるチビ達がミィチィ嬉しそうな声を上げながらその自転車に駆け寄って来る。木の実をくれるか遊んでくれるか思っているのだろう。とにかくここのタブンネ達は人間が大好きだ。
「こらこら寄って来るんじゃねえ。今はエサの時間じゃねえぞ。後で遊んでやるからな!」
チビ達を轢かないように注意を払いつつ、建物から200メートル程進んだであろうか、20番の巣の前に辿り着き自転車を止める。

「ミィ?」自分達の巣の前に降り立った飼育員に気付いたパパンネが声を上げる。ニンゲンさんがやって来て嬉しい反面、少し寂しそうな表情を浮かべる。中々に賢い個体のようで、この大きな自転車に乗って来た事の意味をわかっているようだ。
「ミッ!」少し遅れてママンネもその存在に気付く。巣の真ん中に寝そべり、4匹のベビ達におっぱいを与えている最中だった。
ミッミッと優しく声をかけながら、乳首に張り付くベビ達を引き剥がして行くと、少し雑だが折り畳み重ねられた毛布の上に1匹ずつ寝かせて行く。ヂーヂー泣き喚くベビ達だったが
「ごめんミィね。おっぱいはまた後でたっぷりあげるから、ニンゲンさんが遊びに来てくれたミィよ!」
ママが優しく声を掛け、一匹ずつ頭を撫でると、飼育員の存在に気づき皆チィチィ嬉しそうに鳴きだした。偶然だがこの飼育員はこのベビ達の孵化に立ち合い、産湯につけてくれた人物なのだ。まだ目は見えていなかっただろうが、匂いで本能的に憶えており、このベビ達は皆パパママ同様に慕っている。

「よう!皆んな元気か?」優しく声を掛け巣の周りを一瞥していく。
パパママ、先のベビ4匹に離乳が済んだばかりの30センチ丁度位のチビが3匹。更に巣穴の奥、少し厚めに積まれた干し草の上に4つの卵が置かれている。
(結構大所帯になったもんだなあ。えーっと目当ての子は...)

飼育員が気付くより僅か先
「ミッミッ!」
(お姉ちゃんお兄ちゃん、こっちに来るミィ!)
パパンネが声を掛けると、巣の数メートル先、玩具のポケボールを引っ張り合っていた姉弟(姉が40センチ丁度位、弟はそれより若干小さいくらい)がその手を止め、ミィミィ嬉しそうにトテトテと掛けてくる。パパンネは先程と違い、何か吹っ切れた様な笑顔を浮かべている。目尻を薄っすら光らせながら。
「おう居たか!突然なんだがお前達、お別れの時間が来たんだよ」
飼育員もまた少し寂しそうな笑みを浮かべ、姉弟の頭を優しく撫でる。
「ミィ?」最初不思議そうな顔をする姉弟だったが、「おわかれ」という言葉の意味と、嘗て自分達の上に居た姉を連れて行った自転車の存在を確認すると 「ミィ・・・」2匹とも複雑な表情を浮かべる。弟は今にも泣き出しそうである。
 パパンネは姉弟の頭にそっと両手を乗せると「2人とも今日でお別れミィ。パパもとっても寂しいミィけど、大きいお姉ちゃんみたく新しい家族と一緒にしあわせになるミィよ」
少し遅れて事態を呑み込んだママンネも姉弟の元へ歩み寄ると、パパ同様少し悲しい笑みを浮かべ、涙を流しながらそれぞれを抱擁する。

324ガラルタブンネ牧場:2021/01/09(土) 18:09:58 ID:ZAjoONAk0

 程なくして建物へ帰ってきた飼育員。

「お客さんお待たせしました!こちらの子になります。」
弟ンネは飼育員の左腕に抱かれ、姉ンネは右手をちょこんと掴み、2匹とも新しい家族、飼い主となる青年を一心に見つめている。

 青年は既に会計を済ませ、受付の椅子に座って待っていた。ちなみにだがここのタブンネの値段は成タブ一匹で10,000円、80〜60センチ個体で8,000円、50センチ以下のチビで5,000円、離乳の済んでいないベビが3,000円。家族セットや兄弟セット、又は傷モノ等で割引となり、今回の売買も8,000円での買い上げとなる。またここでは詳述しないが、餌用ではなくペットとして購入し、ある条件を満たすと全額、もしくはそれ以上の返礼金がある。生き餌以外の目的で買われる事はかなり稀なのだが...

「ありがとうございます。元気そうな子達ですね!」
「大きい子がお姉ちゃん、少し小さい子が弟です。そら、お前達、新しい飼い主さんだぞ。向こうのポケモンさん達にもよろしくな!」
飼育員に背中を押され促され、2匹はやや恐る恐るという足取りではあるが、チョコチョコとトレーナーの元へと歩み寄る。無意識のうちに触覚から読み取った彼から流れ出る感情が優しさだったことから、幾ばくか緊張もほぐれた様だ。決して自分達に向けられた優しさではないのだが。


 職員一同に見送られ、青年と共にアーマーガアタクシーに乗り込み、カンムリ雪原駅まで着くとそこからブラッシータウン駅行きの列車に乗り、程なくして目的地の駅へとたどり着いた。
 その道中、上空から見た自分達の生まれ育った広大な牧場、その先に見えるどこまでも広い大地とその先に見えた巨大な木、大きな山とその頂上に聳え立つ荘厳な神殿、列車の車窓から見たどこまでも続く深い森・・・。産まれてから今まで牧場の外に出た事のない姉弟には見るもの全てが新鮮で、道中ミィミィ感嘆の声を上げっぱなしであった。

「2人共着いたぞ!ここから少し歩くからね。」
初めて見る人間の街。目に映るもの全てが新鮮で、家族と別れた悲しみなど完全に消え失せ、緊張も無くなったのかその道中(ものの5分ほど)姉弟はトレーナーの左右の手をそれぞれちょこんと握り、時折ミィミッ♪と間の抜けた鼻唄の様な声を上げながら、すっかり新しい生活への期待と希望に胸一杯といった様子である。

のどかな街の少し外れ、広い庭と大きな家屋の前で青年が足を止める。
「さあ着いた。ここがボクのおウチだよ!」洒落た作りの門を開けると、青年は玄関ではなく庭の方にタブンネを促す。
「ちょっとここで待っててね。すぐボクのポケモン達を紹介するよ!」

姉弟は綺麗に整備された庭、その中のあちこちに咲く見た事のない色とりどりの花、レンガ造りのお洒落な建物、高く伸びる煙突、目に見える範囲のあらゆる物を見回しては幼心に感動が芽生える。
「お姉ちゃん、新しいおウチとってもキレイで大きいミィ!」
「そうミィね!きっと大きいお姉ちゃんが言ってたみたく木の実よりもおいしいお菓子もこれから一杯食べられるミィよ!弟ンネは新しい家族のポケモンさん達と仲良くできるミィかな?」

325ガラルタブンネ牧場:2021/01/09(土) 18:27:49 ID:ZAjoONAk0
 度々会話に出てくる大きいお姉ちゃんとはこの姉弟の両親がまだ野生で、雪中渓谷と呼ばれるエリアに巣を構えていた頃、夫婦にとって最初の出産だった3つの卵のうちの唯一の生き残りで、姉弟より8ヶ月程先駆けてこの世に生を受ける。

 卵のうち1つは夫婦の巣穴がユキノオーに荒らされた際、庇いきれずに踏み潰された。夫婦懸命の思いで孵した2つの卵のうち、片割れの男の子はママの栄養失調の影響か体が弱く、離乳が済み自分の足で歩ける時期に差し掛かっても、双子の妹の半分くらいの速さでしか走れなかった。

 ある日、餌不足と度重なる襲撃に意を決し、家族総出で新しい居住を探して旅出った際、またしても栄養不足による体力低下が祟ってか、自分達のことを嗅ぎつけ、後方から追いかけるクリムガンの存在に気付くのが遅れ、あっさりと足手纏いの息子を見捨て、その隙に親子3匹その窮地を命からがら脱する。
 双子の妹もとい、大きいお姉ちゃん(これより長女ンネと呼称)は後方で響く血を分け合った兄の断末魔に大きなトラウマを心に残し、両親の非情な判断を非難したが、それは厳しい野生を生き抜いて来た夫婦ならではの極めて的確且つ結果的に正しい判断。タブンネは家族愛のポケ1倍深い種族で、無論夫婦も心に深い痛みを残す。
 生育状態も野生にしては悪くなく、そこそこにだが賢くもあった長女ンネも、そんな両親の心情を慮ってか非難する気持ちも次第に無くなる。一家は巨人の寝床に新たな巣を設け、それから程なくして先の牧場に辿り着き、苦労が報われてか安住の生活を始める。

 安全な住処を得てすっかり牧場の暮らしにも慣れ始め、新たな2つの命も設け家族一緒に幸せに過ごしていた時、長女ンネにペット用として貰い手がついて、お別れの時を迎えることになる。
 初めての人為的なお別れ、また最初の子供達の唯一の生き残りで、共に厳しい野生を過ごし、愛してやまなかった娘との決別に最初は難色を示す夫婦であったが、この時長女ンネは既に成タブ近い体格で、野生のままであったらそろそろ独立を考える時期。
 また長女ンネも、過酷な経験からか無駄に自信を持っており、新しい生活にも適応できる確信を持っていて、大した抵抗もせずにあっさりと人間の手に身を委ねたことから、夫婦も次第に納得し、長女ンネは新たな家族との生活を始める。

 それから僅か2週間後、新しい家族となった女性と共に長女ンネは家族の元を訪れる。面会したのは小一時間ほど、その間長女ンネはチビ姉弟や両親に新しい暮らしの様子をやや自慢げに話し聞かせる。
 カレーと言う不思議だが凄く美味しいニンゲンの食べ物を食べさせて貰ったこと。きのみよりも甘いポフィンやヒウンアイスと言ったお菓子のこと、あったかいお風呂に入れられいい匂いの泡でカラダを綺麗にして貰ったこと、等々。チビ姉弟にとっては未来への期待を焚き付けるには充分、また両親も、こうして娘を連れてきてくれる人間の優しさに心底安心し、不安や寂しさを取り除く充実の凱旋であった。女性が長女ンネを連れて来たのには親切心よりも大きな理由があるのだが。

 新たに長女ンネの飼い主となったこの女性。興味本位で最近噂のタブンネを買うことを決め、最初こそその可愛らしい容姿と行儀もよく綺麗好きでもあった手の罹らない長女ンネを直ぐに気に入り可愛がって居たのだが、段々と持て余し気味になって来る。元は野生産で様々タブ生経験も積んできた為か、無駄に賢く一定の警戒心も持ち合わせ、彼女の元々のペットポケであるイーブイやチラーミィと全く反りが合わないのである。
 長女ンネの牧場凱旋から僅か1週間後のこと、完全に情が移る前に、また今なら金銭的に損失はおろか利益になり得るとのことで、長女ンネが嬉しそうにご飯を食べる様子、フカフカのベッドで気持ち良く眠る様子、ポカポカのお風呂にご満悦の様子など、手短にスマホロトムで動画撮影し、その翌日、事もなげに知り合いのエリートトレーナー♂に引き渡す。
 唐突に飼い主の元を離れ、見知らぬ男性に手を引かれ人里離れた草むらまで連れて来られ、不思議な顔でキョロキョロと辺りを見回す長女ンネ。直後トレーナーの持つボールから繰り出されたサザンドラに悲鳴を上げる間もない程あっさりと喰われ、一年にも満たぬそのタブ生に終わりを告げる。この話の冒頭から2週間程前の出来事である。

326名無しさん:2021/01/11(月) 09:47:26 ID:raqF4FSo0
性悪ではないがどこか鼻につくタブンネ・・・まあ処分対象ですよねw
一年にも満たないタブ生でも良い思いした後、即死だったし幸せな方だ。

327ガラルタブンネ牧場:2021/01/11(月) 20:27:28 ID:AO.5I2e20
ところ戻って青年トレーナー宅の庭。
「おまたせ!ふたりとも大人しく待ってたな。偉い偉い。」
姉弟もミッ!とその声に笑顔で応え、新しい家族との対面を楽しみにしているようだ。

「ルカリオ、出てこい!」
トレーナーが勢いよくボールを投げると、姉弟、トレーナーのいる位置から5メートル程先、青く強そうな見た目をしたポケモンが現れる。

「ミィ・・・。」
 見た事のないポケモンの登場に感嘆の声を上げる姉弟。弟ンネの方はちょっぴり怖い様で、トレーナーのズボンをちょこんと掴んで立ちすくむ。
 そんな弟をよそに、先に動きだしたのは姉ンネ。ミッミッ♪という鳴き声と共に、可愛らしく尻尾を振りながら新しい家族の元へ歩み寄る。

「はじめましてミィ!ミィ達はタブンネミィ!あなたは・・・」

 ガッ!「ミ゛ィ!?」
姉ンネの可愛らしい自己紹介を遮るように、待ちきれないと言わんばかりの表情を浮かべたルカリオがその首元を描き掴む。

「ミィ?」
弟ンネは口をポカンと開き呆けた表情を浮かべその様を見つめる。

 ボンッ!  ビチャッ

「ミ゛ッ!?ゴフッ!ミボルルルッ...!」

 ルカリオの波動弾が姉ンネの下腹部を貫通し、肉も尾も臓器も跡形も無く消し飛ぶ。辛うじて原型を留めた大腸の一部が僅かな肉片毛皮片と共に姉ンネの後方5メートル程先の芝生の上に転がり、生まれたてのヤクデの如く微かに蠕動している。

「おいおい、ルカリオ。そんな派手にやったら喰うとこ無くなっちゃうぞ!」
 優しい笑顔を浮かべ青年が言う。

「ミゴッ!ミヒィン...ゴブルルルル」
 血の泡と共に漏れる姉ンネの声はもう言葉として意味を為していないだろう。眼からは力なく涙が流れ、無惨に千切れた下腹部からドバドバと血が流れる。股まで完全に割かれており、両脚は脇腹から続く肉に何とか繋がっている状態である。
 ルカリオは追撃するでも食べ始めるでも無く、暫し絶望に満ちた姉ンネの瞳をしげしげと見つめている。
 
 
 ここガラル地方ではまだミィアドレナリンの存在は殆ど知られておらず、この青年トレーナーもその例に漏れないのだが、ルカリオが生き餌として子タブンネを与えられるのはこれで4度目。即死させず、心臓や肺を避けながらじわじわ食した方が旨味が増すことを理解しつつあるようだ。
 因みにだが下腹部を躊躇なく破壊したのは過去に食してきた経験から、腸に残っている場合の多い糞の味がこのルカリオの口には酷く合わなかった為である。

「ミ⁉︎・・・ミ、ミ゛ィーーーーーー!!ミビィーーーーーーーーー!」

 あまりの惨劇に一瞬硬直した弟ンネだったが、姉ンネの凄まじい悲鳴と見るに耐えない身体、更にはみるみる弱っていく心音に現実を理解し、尻餅をつき大量にお漏らしし、街中に響き渡らんばかりの絶叫を上げる。
 
ただこの弟ンネ、少しは♂らしい意気地があるようでいつまでもヘタり込んでは居ない。流石にルカリオに向かって行くことはしないが、立ち上がるとトレーナーのズボンに必死にしがみつき
「お姉ちゃんが死んじゃうミ゛ィーー!早く、早くやめざぜでびぃーーーー!」
 全身全霊の懇願にトレーナーは見向きもせず、穏やかにルカリオを見つめるだけ。この場に居る誰も知らないことだが、こういった人間の無反応、平常心はミィアドレナリン分泌に大役を買っている。

 頃合いと見たのかルカリオは両脚両腕、次いで両耳及び両触覚と綺麗に食い千切っては、その未熟な骨ごと美味そうに咀嚼していく。
その度姉ンネの身体はビクッと大きく痙攣し、
「ミッ、ヒッ」と僅かに声とも息ともつかぬ叫びが小さな口から漏れていたが、ルカリオがチロチロと出入りしていた可愛らしい舌を根っこから引っ掴み、思いきり引っこ抜くと
「グゲッ」という僅かな音が姉ンネ今生最期の言葉となった。

 両眼から生気が感じられなくなった事を確認すると、ルカリオは残った胴体、顔までをペロリと平らげ、姉ンネだったものは最初に飛び散った僅かな腸とルカリオの足元にある巨大な血溜まりを残して全てこの世から消え去ってしまった。

328ガラルタブンネ牧場:2021/01/11(月) 20:37:25 ID:AO.5I2e20
必死の懇願も全く聞き入れられず、状況に絶望していた弟ンネはその場に蹲っては両耳を押さえ、顔を俯き目を固く閉じ、大量の涙、尿を撒き散らしガタガタと大きく震えるだけであった。

 大好きなお姉ちゃんとの永遠の別れから来る悲しみ、信じられないほどの惨劇を目の前で見せられた恐怖。様々な感情が渦巻いている中、一番強く思うことは奇しくも姉ンネが意識を失う刹那感じた事と同じ
(何でニンゲンさんは助けてくれないミィ?タブンネがこんなに苦しんでるのに平気で居られるのミィ?)
といった事だった。

「バウッ!」   「ミヒィ⁉︎」

 いつまでも感傷に浸っている場合ではない。姉ンネを平らげたルカリオはマスターの足下でうずくまる新たな獲物に目を向けると一目散に駆けてくる。

「ミ゛ッ⁉︎ミビャーーーん!」
「戻れ!ルカリオ!」
弟ンネにルカリオの手が届くすんでの所で、トレーナーがルカリオをボールに戻す。
ミフウッ!感情が落ち着いた訳ではないがひとまず目の前に迫った危機を脱し、弟ンネは尻餅と共にひと息つく。

「ごめんなルカリオ。お前はまた今度な。」
「出てこい!オノノクス!」

「グルルルルッ!」
先程姉ンネが作った血の海の真ん中に新たなポケモンが繰り出されると、ボールの中で自分の番を今か今かと待ち侘びていたのだろう。美味しそうなエサを一心不乱に見つめている。

「ヒャッ!」
恐怖の余りまともに叫ぶ事すら出来ない。この弟ンネ、その生い立ちからか野生的危機意識にはだいぶ欠けているようだが、姉が目の前で喰われ、次いで新たにいかにも獰猛なポケモンが繰り出されたことの意味が理解できる程には賢いようである。

「ミ゛ッ!ミィーーーーーー!ブヒェーーーーーン!」
(おねがい!あのポケモンさんをすぐにしまって!ボクをたべさせないで!)
ここまでで一番の剣幕と声量で、トレーナーのズボンを引っ張り喚き散らす弟ンネ。

「お前ちょっとうるさいぞ。そこに居たらオノノクスが食べづらいだろ。」

ポフッ!  「ミビッ」

人間とポケモンによる見事な会話のキャッチボールが成立した後、これまた見事なインサイドキックでトレーナーが可愛いタブッ腹に蹴りを入れると、オノノクスの脚にポヨンとぶつかりその前に転がる。

「ーーーーーーッ」
弟ンネが声にならない叫びを上げるや否や、もう充分に旨味が凝縮されているのであろう、その間僅か10秒に満たないであろうか、オノノクスは左手で弟ンネの頭を引っ掴むと
「グチッ」
首から下の胴体を一気に噛みちぎりほぼ丸呑みすると
「ミ゛・・・ビ・・・。」
断末魔と呼ぶにはあまりにも弱々しい叫びの余韻に浸る間もなく、綺麗なブルーをした両眼と一瞬見つめ合った後、残った頭も丸呑みする。その喉元を通る際、「ミィ--!」と最後の叫びが聞こえたが、オノノクスもトレーナーも全く意に介していない。

 満足そうなオノノクスをボールを戻すと、伸ばしたホースから水を流し、淡々と血溜まりを掃除していくトレーナー。
 この様な凄惨な場面もすっかりここガラルでも日常的光景として定着しつつある。この日もあらゆる街々、道路やワイルドエリアと至る所で、老若男女沢山のタブンネ達が高価な栄養源として、その命の役割を終えていく。

 このガラルの新産業、(実質)生き餌用タブンネ牧場が興るに至るまでの紆余曲折を少し紹介する。

329名無しさん:2021/01/14(木) 02:30:03 ID:PH6MKxI60
タブっ腹という表現すき

330ガラルタブンネ牧場:2021/01/15(金) 15:16:27 ID:bbOL8jOs0

 事の発端は遡ること1年半ほど前。ガラル政府、フリーズ村始動によるカンムリ雪原開発政策プロジェクトが立ち上がる。
 歯止めの掛からぬ過疎化、少子高齢化に悩むフリーズ村議会と、広大な領土がありながらそこに根を下ろす企業も無ければこれといった産業もない僻地に、開発計画が持ち上がっては頓挫していたガラル政府の思惑が合致し、この土地に大規模な木の実農場を構えて多くの雇用と利益を産み出そうというものであった。

 ガラルの農業分野では最大手である「ゆめ牧場」からの有志社員10数名と、政府公募で募った20名程の就職希望者から始まり、フリーズ村からほど近く、雪原にあって降雪量の比較的少ない巨人の寝床エリアに白羽の矢を立て、大規模な農地開発を終え、そこに100を越える実のなる木を植え、種類も様々な木の実が順調に育ち、いよいよ収穫第一陣も迫り、農地拡充の計画が進み始めた頃である。

 ガシャーン!
 害ポケ対策用に設置された金網のフェンスがけたたましい音を立てた(高さ2メートル程のもので、事前の簡易調査からニドラン系統、ブーバー系統、ニューラ系統などを意識して作られたもの。かなり頑丈な耐熱性。またこのエリアに木の実を啄む様な鳥ポケモンは生息しないとの調査結果から、農場内の空は全面開けている)。ニドキングでも突進したかと数名の農員が駆けつけると、誰も見たことのない、傷だらけで燻んだピンク色のポケモンが金網にしがみつき、ミッ!ミッ!と弱々しく泣きながら木の実を見つめ、涎を流している。
 始め戸惑う農員達だったが、酷く憔悴し目に見えて弱っているその様子と、薄汚くはあるが可愛いくなくもないその姿に同情してか、金網越しに手頃なオレンを一つ与えてやると一心不乱に貪り食い、幾ばくか元気を取り戻したのか、お礼のつもりなのか片手を上げ、笑顔でミッ!と声を上げると、草むらを掻き分けトテトテとその場を走り去っていった。この出来事は取るに足らないこととして会社として全体に共有される事はなかったのだが、この後似たような場面に遭遇し同じように木の実を与えてしまった社員は他にも複数名居て、中にはご親切に傷の簡単な手当てをしてやった者までいた。この餌付けがいけなかった。

331ガラルタブンネ牧場:2021/01/15(金) 15:20:20 ID:bbOL8jOs0

 このカンムリ雪原に現存するタブンネ達は100%野生産で、元飼いポケの個体は一匹も居ない。野生の知恵というのは偉大なもので、殆どのタブンネは群れを成さず、つがいや核家族単位、或いは単体で巣を作り、外敵を警戒しながら自生する僅かな木の実を採ったり(大体獲得競争に負ける)、運良く見つけたユキハミの死骸などを食しては、細々と暮らしている。
 大勢の群れを成せば、そこをマニューラやツンベアー、その他ドラゴンポケモンなどの捕食種に運悪く嗅ぎつけられた場合、全滅かそれに近い状況に陥ることを、各タブそれぞれの経験や種族保存本能から理解しているのである。
 それでも生来タブンネは家族愛や慈愛がポケ1倍強い種族。群れこそ形成せずとも独立した元家族、又は偶然知り合った同族などと時折コンタクトを取ることも多々あり、近すぎずも遠からずといったコミュニティが各エリアで形成されていた。


 ある朝のことであった。木の実も第一陣の収穫を終え、いくつかのコンテナが農場に積まれ、中にはぎっしりと瑞々しい木の実が詰め込まれている。
 農員達が次なる収穫作業の為宿舎から出て来て農園を見渡すと、その光景にギョッとする。
 農園周り一面のフェンスに、あの燻んだピンクのポケモンがぎっしりと群がり、金網にしがみついてはミィミィ弱々しく声を上げている。中には血豆の出来た手でギシギシと網を引っ掻く者、今にも倒れそうな程衰弱していて目から生気を感じられない者、また辛うじて息をしているような状態の体長15センチくらいの赤子を抱え、涙を流している者、親子と見られる集団はこの他にも多数見受けられる。この時農員達は知る由は無いが、どの個体も共通して皆酷く痩せていた。

絶句するしかない農員一同。ざっと見てもその数50はいるだろうか。以前の様に木の実を与えてやる訳にもいかない。これだけの数、しかも癖になってしまえば当然利益に影響が出る。追い払っても逃げる体力も無さそうな様子だ。
 黙っていても始まらない、まずはその素性を明かす為、何枚かの写真に収め、政府の害ポケ対策課に転送し調査を依頼する。

332ガラルタブンネ牧場:2021/01/15(金) 15:24:28 ID:bbOL8jOs0

 調査によるとこのポケモン達はその名をタブンネと言い、イッシュ地方を主な生息域とし、極めて発達した聴覚を有し、野生は木の実やドングリなどを食す種族である。好戦的な種族ではなく同地域ではナースとして採用されるなど優しいポケモンとして知られるが、その弱さ故か野生は飢えが深刻化すれば農地を荒らす等の被害報告も出るということ。また繁殖力が強くそこそこ環境適応力もあるのかイッシュでは全域に生息するが、生態系では底辺に属する為、爆発的に増える事は稀で一定数以下に収まるポケモンである。との内容が報告された。

 とりあえずはこの場を鎮めるため政府備蓄のポケモンフーズを輸送してもらい、各個体に与えると皆食べてはくれたのだが、また予想外の事態に陥る。木の実を与えた時と違い去って行かず、この場に留まり続けているのだ。
 

 カンムリ雪原に生息するポケモンの種類を考えればタブンネの生活が地獄そのものである事は想像に難くない。どの個体も目の前で親や兄弟、または子供が食べられたり、ご近所ンネや生家を訪ねてみるとそこがグチャグチャに荒らされ僅かな血痕を残すのみになっていたり、もしくは自身が捕食種に襲われ、運良く逃げきっては何とかその命を繋ぎ止めたり....
 そんな絶望的日常の中、数匹の個体が人為的なこの農場に偶然辿り着き、そこで施しを受けたことを巣に帰った後、家族や仲間達に伝える。少しずつだが噂話のようにその情報が広がり、このままいつ襲われて死ぬか餓死するかの生活を続けるよりはと一縷の望みにかけ、噂のきのみ畑に足を運んだ個体が集まりこうした状況を生み出すに至ったのである。
 

 とにかくこのまま此処に居られ続けても困る。最悪は駆除という選択しかないのだが、どうもみんな乗り気ではない。餌付けをした者を中心に、その容姿やおとなしい様子から、皆一様に情が湧き出しているのである。
 となると産業利用を模索するしか方法は無く、イッシュ地方に官民広域更なる調査を進めると、思いも寄らぬ利用価値が浮かび上がる。ポケモン用の食肉利用である。

333ガラルタブンネ牧場:2021/01/15(金) 15:43:04 ID:bbOL8jOs0

 調査をまとめた結果はこうだ。

 イッシュでは各地にタブンネ牧場やそれを取り巻く加工場が点在し、繁殖力の強さから安定供給が見込めるが、子どもや乳飲児、或いは卵を人間の手により回収し続けると、そのうち不信感からかあるいは精神的疲弊からか、産卵のペースが著しく落ちるかもしくは全く産まなくなる。廃タブとなった親個体はフーズ加工され、同族の餌となるのがオーソドックスな処理方法。
 またにわかには信じられない報告であったが、対ポケモンではなく対人間用の食肉として加工される場合も多くあり、それには何らかの方法で強い精神的苦痛を与えるという特殊技術を要するとのこと...。


 調査を進めるうちにも農場は取り留めのつかない状況になっていた。更にタブンネ達が集まりはじめ、既に100体近い、大集団に成り果てていたのである。自慢の聴覚で同族の集団の存在を嗅ぎつけたのか、先にやって来たタブ達同様きのみ畑の噂に望みをかけたのか。

 こうまでなってしまえばもう仕方がない。駆除という方法を採用しない以上は産業利用、すなわち生き餌用としてここで飼育し繁殖させる方向へ事業転換する事に仮決定し、元は木の実農場を拡充する予定だった土地にタブンネ達を住まわせ、一日数回木の実を与え育て始めると、ものの1週間程で骨の浮きだす程痩せていたお腹は皆ぷっくりと膨れ、毛艶も随分と良くなったようである。中には元気になった為か早速子作りを始め、ここで産卵するつがいまで現れ始めた。

334ガラルタブンネ牧場:2021/01/15(金) 15:49:46 ID:bbOL8jOs0

 タブンネ達の栄養状態も良くなって来たところで、いよいよ生き餌としての商品価値を試す実証実験が行われる。
 
 
 ここガラルではポケジョブと呼ばれるトレーナーが自分のポケモンを様々な企業に貸し出すシステムがあるなど、ポケモンは人間の産業発展に寄与する貴重なパートナーとしての一面もあり、世界随一人間とポケモンの共生が進んでいる地域柄、トレーナーもペットとして飼う者も、木の実やフーズなどで育てるのが主で生き餌という慣習が存在しない。自身のポケモンに他のポケモンを食べさせるという行為に抵抗があるのだ。


 先ずは手始め、政府主導で一部の有力トレーナー、今期のトーナメント出場権保有者を中心に協力者を募り、10名弱の同意が得られ、早速5家族計20数匹のタブが各人に充てがわれ、政府役人立会いの下捕食実験が行われる。
 そのうちの一人、ケンギュウという名のトレーナーの現場を紹介する。彼が用意したポケモンはその相棒のうちの、ウオノラゴン、オノノクス、オンバーンの3体である。ここにはある家族のうちのパパンネ、50センチ弱の子タブ、30センチ丁度くらいのベビ上がりのチビンネ、計3匹が配布された。
 
 ケンギュウ氏の自宅近くの草むらで向かい合う両組、同氏のポケモン達はイマイチ状況が呑み込めず、皆キョトンとした表情を浮かべ、目の前のピンクの一行と主人の顔を交互に見やる。タブ親子の方はパパンネは明らかに警戒した様子で、2匹の子を自分の背後に隠すように手配せし、ややではあるが対面する3匹を威嚇するような顔つきを見せる。大きい方の子は完全に怯え切った様子で、パパの背後でガタガタ震え、足元を薄っすらと湿らせている。
 膠着する状況に痺れを切らし、氏がポケモン達を促そうとした時だった。周りの景色を眺め楽しんでいる様子だった小さい方の子タブが動き出す。ヨチヨチと無防備な笑顔で歩き出し、ウオノラゴンの前でその脚を止める。このチビンネは野生産まれだが、つい先日までは授乳期、分別着き始めた頃には既に牧場に居た為か、野生的危機意識に乏しいようである。またタブンネ生来の他者と仲良くしたい感情もパパや上の子と違い失われていないようだ。
「ミィッ!ミィー!」
(チビお兄ちゃん!戻っておいで!)
パパの必死の呼びかけ虚しく、挨拶のつもりなのだろうか、
「ミッミッ♪」片手を上げ、天使のお耳をパタパタと上下させるチビンネ。

335名無しさん:2021/01/16(土) 00:52:27 ID:j1TgKGzk0
乙ンネ。その可愛い天使のお耳がもうすぐ血に染まるかと思うとワクワク。

336名無しさん:2021/01/17(日) 10:49:50 ID:/J1kYPRY0
>>330
続き待ってましたー
このチビがどうなるか楽しみです♪

ところで、どなたかクワガノンがタブンネを虐待する話を書いていただけないでしょうか?
ダイマックスタブンネにやられて悔しいのでお願いします。

337ガラルタブンネ牧場:2021/01/17(日) 20:17:42 ID:zo7uE3Y60

 目の前で健気に鳴く声、その仕草に体臭。古代の本能を呼び覚ますに充分だったのだろう。
「ウオーン!!」
ウオノラゴンがその大顎をしゃくり上げ、一気に振り翳すと
ブチッ!
 大きく何かが千切れる嫌な音と共に、空中に頭部だけとなったチビの身体が高らかに舞い上がる。
ボトッ。という音と共に狼狽える親子の目の前に落下したそれは、見知らぬ大きなポケモンさんにご挨拶した時の表情そのまま、驚く間すらなかったのだろう、幼く屈託の無い笑顔を親子に向けたまま絶命している。ウオノラゴンは嬉しそうにその胴体を咀嚼する。暫し顔だけとなった我が子、かわいい弟と向き合い硬直する親子。しかし悪い予感が的中してしまったこととこの後起こるであろう未来を理解したのであろう

「ミッ…...、ミィーーーーー!!」
大きな絶叫と共に残った子の手を引き180°方向を向き直すと、全速力駆け出すパパンネ(人間の大人がやや早歩きするようなスピード)、残ったチビも全力、目からは大量に涙が流れるが震える脚を何とか動かし、パパに追随してドラゴン一行からの距離を広げる。
 数秒間、目の前の光景に理解が追いつかぬ様子だった氏のポケモン達だったが先に動き出したのはオノノクス。隣で嘗て見たことも無いほどの満足感を醸しながら食事をする同胞のウオノラゴンと、自身からほんの少しずつ遠ざかる2つのピンクの塊を交互に見やると徐に駆け出し、あっという間に追いつくとチビンネの尾を掴む。その小さな手は親の手を離れ、ビタンとその場にズッコケる。次の瞬間にはその逃走手段を断ち切るように、グシャッ!という音と共に、その右脚を踏み潰された。

338ガラルタブンネ牧場:2021/01/17(日) 20:21:15 ID:zo7uE3Y60


「ミ゛ガーーー!ミビバァ゛ーーーーー...!」
(パバーーーー!いたいミ゛ィこわいミィーー!ミィの、ミィのあんよがァーーー)
 突如手が離れた感覚と息子の絶叫に、一瞬振り返るパパンネだったが瞬時に踵を返すと、目に涙を浮かべながらそのまま逃げ続ける。非情極まりないこの行動も、くどい様だが決して珍しいことではない。雪原の野生を生き抜いたタブンネであれば全滅を避け、1匹でも多く生き残るという有事の判断は常に備えるものである。より愛情深い母親なら違う行動を見せたかもしれないが、今回の場合はどの道結果に変わりはないだろう。
(ごめんミィ、ごめんミィお兄ちゃん...。パパは、パパだけはきっと逃げ切って生きるミィ。お兄ちゃんやチビちゃんを絶対忘れないミィから...)
 パパの一世一代の懺悔の念もどうやら杞憂のようで、息子ンネの絶叫から時間にして僅か7秒後、足下から舞い上がった暴力的風の渦に飲み込まれ、その身体は先のチビンネ顔負けの高さまで浮き上がり、やがて虫の息で落下する。オノノクスに少し遅れてオンバーンも動き出したのだ。その後オノノクスにほんの一瞬で平らげられた息子に後悔を向ける暇があったら、寧ろ自分の心配をした方がよかったかもしれない。
 オンバットの頃から飼い慣らされ主人に忠実だったオンバーンだが、野生の同種は残忍な性格として知られ、その本性を垣間見るような狩が始まる。
「ミ゛...ミ゛ッ.......」
 先のぼうふう攻撃をまともに喰らい、仰向けに横たわり微かに震えながら意識も遠のき始めるパパンネだったが、その捕食者は気絶すら許さない

339ガラルタブンネ牧場:2021/01/17(日) 20:23:39 ID:zo7uE3Y60


ザクッ!ザシュッ!

「ミ゛ミ゛ィー!?ミギャーー!」
 無数の真空の刃がパパンネに襲い掛かり、肉の裂ける音と共に大量の血飛沫を撒き散らす。やがてパパの絶叫は聞こえなくなる。身体中に走る激痛から意識ははっきりとし、また主要器官は無事な為死ぬことも許されないのだが、声帯が完全にやられ叫ぶことも出来なくなったようだ。
 オンバーンは攻撃の手を止めると、血だるまと化した獲物を少しずつ啄み食べ始める。
脚に下腹部、腕、耳や触角、、ミンチさながらの状態となった各部位は、口先が少し触れるだけで脆くも崩れ落ちるほどの容態で、自身の身体が喰われていく度
「ァィ-。ヒィ゛--。ァ゛---...ミァ゛----。」
嗄れ過ぎて声にもならぬ音を発するパパだったがやがて絶命し、その全身は完全にオンバーンの胃の中に収まった。


 この世の物とは思えぬほどの凄惨な光景に、暫し言葉を失うケンギュウ氏と立会人の政府役人であったが、自身の相棒達の心底嬉しそうな様子に、同氏は段々と満足感を得たようだ。
 2度と見たくないとは思いつつも、役人もこれを実験成功として本部に報告、逐一詳述はしないが、他の各所でも今件と同様の実験結果の報告を受け、木の実農場もといタブンネ産業はその成功を少し形作り始める...

340ガラルタブンネ牧場:2021/01/17(日) 20:26:03 ID:zo7uE3Y60
 少し日が進むと更に朗報が舞い込む。経験値タンクの名は決してダテではないようで、実際にタブンネを食したポケモン達はその後体調も頗る良く、バトルでも皆大活躍をした様で、実験参加者は皆こぞってタブンネ購入を熱望し、またその話を聞いた他のトレーナーにもタブンネ購入希望者が日増しに現れ始める。

 農場では作業が進み、タブンネ達の仮住まいだった空き地を整備し巣を充てがい個体管理を始め、バリケードも設置し完全に外部から囲い、いよいよ牧場の輪郭ができ始めていたのだが、ここで新たな懸念が生まれる。
 先の実験ンネ達と懇意だったタブ達を中心に、人間の前では餌を食べない、人間が近づくと巣に潜り込み、近づくと威嚇するなどの行動がチラホラ見え始めたのだ。おそらく人間が連れ去った複数の家族がいつまでも帰って来ないことに、少しずつ不信感が芽生え始めたのだろう。

 ここで思い出されるのが先だって行われた種族調査。もしこのまま不信感からの産卵不足や拒否が起これば、商品の安定供給が見込めない。廃タブと化す個体が増えれば再利用するための工場も加工技術も持ち合わせない以上、完全に予算割れである。
 そこで持ち上がったのが、生き餌としての販売と並行してのペット用販売で、連れ去ったその後の生活を伝え、タブンネからの不信を拭おうという方法であった。

341ガラルタブンネ牧場:2021/01/17(日) 20:36:22 ID:zo7uE3Y60

 先ずは無料で、フリーズ村の有志中心に、また本土からも希望者を募り健康状態も良く、比較的人当たりも良い子タブンネ達を選んでは配布し、可能ならば時折農場に遊びに連れて来ること、無理であればペットとして暮らす様子を動画や画像で撮影し、それを牧場まで送信して貰うことをお願いして、連れ去った子タブのその後を親タブに見せる、会わせるという取り組みを始める。
 
 事業従事者の大半はその効果に疑問を持っていた。一般にポケモンとはそこまで低脳ではない。そんな子供騙しみたいな方法で欺ける筈は無いというのが大方の意見であった。
 しかしそんな懸念に対しこの取り組みは大成功。タブンネ特有の本当は皆んなと仲良くしたい性質。また野生での苦労辛々たどり着いたこの場所が、真の意味で安住の地であると信じたい心情が相まって、人間不信の個体は徐々に減り、やがてゼロになる。当初子を奪われることに抵抗する個体も居たが、自分達とは違う何処かで幸せに暮らしていること、また外敵や飢餓に怯える心配も無いことから次々産卵できる為か、今では目立った抵抗も見られなくなり、いよいよ牧場はタブンネ量産体制に入る。

 尚このタブンネペット販売は今でも継続され、牧場に連れて来れば買上額と同額、画像、動画送付でその半額が返礼され、1個体につき計3回までその恩赦を受け取る事ができる(その制度によってか3度以上牧場に連れて来る飼い主はこれまで一度も居ない)。

342カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/18(月) 18:37:28 ID:nYTuWa.60
カンムリ雪原の投稿遅れてゴメンネ
今月末には投稿できそう
一つ相談なんだけどサザンドラの鳴き声って文字にしたらどんな感じになるんだろう

>>341
乙ンネ
やっぱり追い立てられて食べられるタブンネさんはいいね
タブンネさんの悲鳴からしか摂取できない特別な栄養素ってあると思う

343名無しさん:2021/01/18(月) 19:11:50 ID:YAKJbo020
>>342

後編期待してますぞ。

正直
「サッザーンドラー」以外の音に聞こえた事ないです

344ガラルタブンネ牧場:2021/01/20(水) 15:56:39 ID:ueEbvqjc0

 そんな経緯を経て、このカンムリ雪原に根を下ろしたガラルタブンネ牧場。今では飼育員、(完全にタブンネの餌用と化した)木の実栽培の担当者、常駐される医師やトリマー、事務員などを含め、従業員200以上、事業発足当初の予定を大幅に上回る官民連携の一大産業として、今日もまた沢山のタブンネが産まれては連れ去られ、この僻地に利益がもたらされていく。

 現在の牧場の様子を少し覗いてみる。屋舎から少し距離を隔てたその敷地は拡充を重ね、今や10haにまで届くだろうか。
 ある広場では人間の投げたポケボールを嬉しそうに追いかけるチビンネ兄弟。
 広場に設置された人間の子供も遊べそうなほど立派な遊具で戯れる子タブンネ達。その末端の滑り台をチィチィ楽しそうに滑り降りるチビ。その先で待ち構えた人間が乱れた毛並みをブラシで整えてやり、傍らで見つめるママンネも幸せそうな笑顔。
 別の広場ではではサッカーのミニゴールの様な物が設置されたコートに人タブ入り乱れ、小さなゴムボールを蹴った子タブのシュートがころころと転がりゴールに吸い込まれると、ミィー!と嬉しそうな雄叫びと共に万歳の様な姿勢を見せ、人間や親タブらしき個体が笑顔でその子の頭を撫でている。
 随所に植えられた木の一つに凭れては、
ミヒー...。チビィー...。気持ちよさそうに寝息を立てる親子ンネ。野生時だったら日向ぼっこすら頃合いを見計らい、親は常に耳をそば立る命懸けの行為だっただろう。巣から離れ無防備に昼寝をする姿は平和の象徴そのものだ。
 ある巣では人間がチビンネを3匹回収している。親も子も目に涙を浮かべるが、我が子や自身の幸せな未来を想像しているのであろう、その顔は寂しそうながら屈託のない笑顔だ。
 朝昼晩には人間の運んで来る新鮮で美味しい木の実をおなか一杯に食べ、おやつの時間にはほっぺたが落ちそうな程甘いきのみジュースを味わう。夜になれば各巣で家族身を寄せ合って幸せな眠りにつく・・・

345ガラルタブンネ牧場:2021/01/20(水) 16:01:03 ID:ueEbvqjc0

 優しい飼育員やタブンネ達の笑顔や笑い声の絶えない牧場。しかし細かくその姿を観察すると、親個体を中心に野生での、辛い過去が随所に垣間見える。
 あるタブは原型こそ留めているが片目の焦点があっておらず、完全に光を失っている。或いは隻腕の者、歴戦の古豪の如く背中一面に痛々しい切り傷を負う者、またあるタブは脚の骨が完全に変形し、真っ直ぐ歩くことができない者...。

 ある巣穴に甲斐甲斐しく2つの卵を暖めているつがいが居る。旦那の方は片耳が完全に切れており、もう片耳は半分だけ残り、そこから伸びる触角は干からびたミミズのように巻かずに垂れていて、もう感覚器官として機能していないだろう。半ダルマンネの様な姿だ。雌の方はホイップクリームの尻尾が完全に落ち去り、臀部は火傷跡の様に爛れ変色した地肌を晒している。
 いずれも野生時に捕食種に襲われた際負った傷で、重要な異性へのアピールポイントを失ったショックから半ば結婚も諦め、それぞれ単体で巣食って過ごしていたのだが、ある日偶然にこの場を見つけ辿り着き、ここで出会った2匹は互いの良く似た心と身体の傷跡からすぐに意気投合し、やがて寝床を共にし待望の産卵を迎えたのだ。
「ママ、卵の様子はどうミィ?もうすぐベビちゃんと会えるミィ?」
 最低限の音しか聞けなくなった雄の方が最愛の妻に尋ねる。
「慌てないでミィ。まだ産まれて2日目なんだミィから。命の音はしっかり聞こえて来るミィ。産まれてくるベビちゃん達には私達みたいな苦労はさせたくないミィ。愛情たっぷり育てるミィよ!パパ!」
タブ1倍の苦労も一入、我が子と向き合うときの喜びやきっと想像以上だろう。

346ガラルタブンネ牧場:2021/01/20(水) 16:03:56 ID:ueEbvqjc0

 「ミィーー!ミッミッ!」
 ところ変わってあるバリケード付近、敷地の外をさしながら、必死に何かを人間に訴えるタブンネ親子が居る。

ガシャガシャ... 「ミィ...、ミビィ...。」
敷地の外側から、酷く汚れて痩せ細った1匹のタブンネが金網にしがみつき、弱った鳴き声をあげている。

「大変だ!凄く弱ってるじゃないか!」
 すぐに飼育員数名が現場に駆けつけ、タブンネを保護すると医務室へと運び、治療を施し一通り回復すると、農場を案内してやる。      
逃げ出すような態度を示すならば解放してやるのだが、今までそのような素振りを見せた個体は1匹も居ない。この保護ンネも第一発見タブとなった親子を見つけると、ミィミィ嬉しそうに語りかけ、すっかり打ち解けたようである。
 早速また新たな巣穴をセッティングし新たな商品候補、または商品増産器候補が牧場の仲間入りする。
 
 今回同様に野生のマニューラやタチフサグマがここを見つけ、中に居る獲物を威嚇したり脅かしたりすることもあるのだが、相当頑丈な金網に参っては踵を返していく。賢い個体ほど無駄な再来も無い。
 ここに来て間もないタブ程そういった襲来を騒ぎ立てるが、古参タブになってくると段々意に介さなくなる。自分達を守るバリケードの優秀さを理解し出すのだ。

347ガラルタブンネ牧場:2021/01/20(水) 16:07:22 ID:ueEbvqjc0

 新参タブンネの馴染んだ様子に胸を撫で下ろす飼育員達。ここの従業員は皆打算的な意思でタブンネを見ていない。黎明期より働く者達は当初「生き餌用」という飼育に抵抗があったが、今では割り切って、より愛情深くその仕事にあたっている。元は駆除の可能性もあったここのタブンネ達。ただ人間都合で殺処分されるより、命の役目があるだけ幾分かマシである。せめてここに暮す間だけでも幸せに、というのが大方の思いのようだ。


 今この時を生きる全てのポケモン達は、トレーナー飼いの者は皆日々激しいバトルに繰り出されるかその鍛錬に明け暮れ、そうでなくともポケジョブと称し人間の仕事に貢献する。また野生の者は常に生きるか死ぬかの過酷な環境を過ごしている。
 対してここのタブンネ達は食糧も住処も安泰、果ては糞尿の始末すら人間に任せっきりの状態で、何ら生産性も無い、側から見れば怠惰そのものに写るかもしれない。
 しかし彼らもまた元は野生の底辺で泥水を啜り続け、やっと手にした安住の生活。しかも地方が変われば彼らの同族は経験値狩りと称される理不尽な暴力に見舞われ、または謂れの無い虐待の限りを尽くされ非情な最期を迎える個体も多く存在するのだ。
 

 ここでも生き餌として連れ去られ、予想もしない死を迎える個体も多く居る反面、歴史が進めば最後まで売れ残っては、ここで家族や沢山の仲間、優しい人間達に見送られながら、幸せにタブ生の最期を迎える個体も今後多く現れるだろう。
 世界にたった一カ所でも、そんなタブンネ達の理想郷が存在したってきっと神もお許しになるだろう・・・

 
 はずは無いのだ...!

348名無しさん:2021/01/20(水) 23:55:59 ID:IrG1Djr.0
神「もちろん許さぬ!」

ですよねーw

349名無しさん:2021/01/22(金) 08:09:30 ID:gUVh/xWU0
発見タブとかタブ一倍って表現、良いですね。
最後の手のひら返しも最高!売れ残りのタブたちはどんな目に遭うのかな〜

350ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/22(金) 19:11:35 ID:Trqk4oRs0

 破滅は唐突に訪れる。

 ある日の夕方、農場では木の実栽培の作業も終わり、そのお手伝いをしていた数匹のタブンネ達も自分の住処へと戻っていた。また牧場内でタブンネの世話をしていた飼育員達も徐々に屋舎へと戻って行き、退勤の準備を始め夜勤の者に引き継ぎの準備をしていた頃であった。

〜♪♪♪
受付の電話が鳴る。
「はい、こちら雪原タブンネ牧j....」
「こちらマックスダイ巣穴研究所です!緊急事態なんです!施設内で時空乱入が起きて何かでっかいの...!とにかく、とにかく避難して下さい!未確認の巨大生物が出てきて、森を焼きながらそちらに向かってます!にげて」ブツッ

 電話が一方的に切られると、事務員は血の気の引いた顔をする。明らかにパニックを起こし要領を得ない電話だったが、その様子からイタズラ電話の類いではないこと、何か不吉を孕む危機が迫っていることを伝えるに十分な電話だった。

 「どうしたの?イタ電?」横に座る事務員が小声で話し掛けると、電話を受けた者は受話器を投げ出し、ガバッと立ち上がると、
「マックスダイ巣穴研究所から緊急連絡です!みんなここから出ないで!窓もドアも閉めれるだけ閉めて!ヤバい生き物がここに向かってるみたいです!」

「ヤバい生き物?」
「なんちゃら研究所って?」
「あの駅の近くの洞穴で科学者みたいな連中が何か怪しげな研究してたとこじゃない?」

 困惑する周りの従業員達だったが、その剣幕や顔つきから、ひとまず指示に従い各戸締りを確認していくと、外の異変に気付いた者からその危機に顔を青ざめる。氷点雪原の各所の木々が燃え山火事を起こし、その上空に高さ10メートルはあるだろうか、巨大な生き物が両腕から火を吐き出し、こちらに近づいてくる。

 後にうちあげポケモンと分類されることになる、テッカグヤである。

351ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/22(金) 19:26:37 ID:Trqk4oRs0

 まだ3〜4名程の飼育員が牧場に残っていた筈だし、しかもそこには沢山のタブンネ達も居る。すぐさま緊急無線が流される。

「緊急連絡です!危険な未確認生物が現れこちらへ向かっています。牧場内に居る作業員は直ちに屋舎内に避難して下さい。急いでください!」

 牧場内に居た幾名の飼育員もその放送を聞き、北の方から焦げ臭い風が流れてくること、またまだ離れてはいるが上空に見たことのない飛行物体が浮かんでいることを確認すると、
「おーいみんな建物まで逃げろ!急げ!早く!」
 周りに散らばるタブンネ達を大声で捲し立てながら、自身も全速力で避難をする。
 約1分半後、一番遠方に居た飼育員も屋舎に辿り着き、全員の避難終了にひとまず安堵する人間一同。幸いこの屋舎は厳しい気候災害、または大型の野生ポケモンの群に総攻撃を受けようが無事な程の頑丈な設計で、ここに居れば大きな被害を受けるとはそう考えにくい。   
 しかし外に居た飼育員はここで大きな誤算に気付く。振り返ると、タブンネがただの一匹もここに辿りつかない、どころか殆どこちらへ向かってすらいないのだ。

352ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/22(金) 19:39:38 ID:WnymyG7k0

 牧場に取り残されたタブンネ達、特にここで産まれたチビ達の危機意識の低さは顕著であった。
 緊急無線を流したいくつかのスピーカー、以前よりその存在を視認していたが、始めて音声を発したことに驚いたあるチビ兄妹は、それを括り付ける鉄柱をペシペシ叩きながら
「このボッコもオモチャだったのチィ?」
「でも一回しゃべっただけでまただまっちゃったミィ」
 またある広場では笑顔でかけっこをするチビ。サッカーに興じるチビ。健やかな顔をして巣穴で毛布に包まり、寝息を立てるチビ....。皆人間の様子や突如鳴り響いた電子的な音声に一瞬反応はしたが、またそれぞれの遊びや昼寝に戻り、呑気に過ごしている。

 しかし一部の親ンネ達は
「何だか焦げくさいミィ?」
「あっち見てミィ!森がいっぱい燃えてるミィ!」
「何か飛んでるミィ!アイツが森を燃やしたミィ?」
 ようやく危機を察し、徐々に焦り始めるピンクの仲間たち。
 ただ多くの個体が野生を離れて久しいこと、ニンゲンさんの様子が変なことは察したが「にげろ」「ひなん」とか「いそげ」といった初めて聞く言葉の細かい意味を理解し得なかった事などが、致命的な避難の遅れを生む。

 屋舎側に住むタブ達を中心に、建物から必死の形相で手招きする人間達に気付き、そこへ逃げ始めようとするが中々足が進まない。安全な環境で調子に乗って作りまくった子供達が足枷となったのだ。
 急いで散らばる子供達を巣に集め、比較的育っている子達にベビや卵を抱かせ、避難の段取りを進める家族。また野生時のような危機意識を取り戻したのか、卵やベビに見切りをつけ、夫婦と自力で走れる子たちだけで逃げ出そうとする家族...。

 活発に動き出したタブンネ達だったが、その数分の遅れを悪魔は見逃してくれなかった。

353ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/24(日) 20:12:51 ID:cF5n9EJc0

 人間の避難が完了してしばらく、それぞれが家族で纏まり、ゾロゾロと動き始めたピンクの軍団。その先頭を行くのは先に紹介した、あの半ダルマンネと尾無しンネ夫婦。
 彼等は屋舎からはさほど近くない位置の巣に住んでいるが、呑気なタブ達の中でもいち早く人間の様子から危機を察し、また大所帯でもないため直ぐに人間の建物を目指し始め、その距離をあと30メートル、20メートルと縮めた時、その上空に巨大な影が迫る。

 産後間もなく、少し体力的に厳しい尾無しの妻が先に居て、それを1,2メートル後ろから、必死に励ましながら片耳の夫が追随している。
「ママ、あと少しだミィ!ニンゲンさんの建物でバケモノからベビちゃん達を守るミィ!」
「ブミィ...。足が重いミィ。あと少し...!ベビちゃ......」
 それぞれはその両腕で一つずつ、中から命の鼓動が伝わる、綺麗な卵を力強く抱えている。他の一部のタブとは違い、この2つの命を守る絶対的な意思がある。おそらく彼等は、この雪原のつがいの中でも一番と言っていい、自身の子供への、揺るぎない強固な愛情を持っている。

 しかし夫の視点、目の前の最愛の妻の身体が突然暗い影に飲み込まれると次の瞬間

 ブチャッ! バリッ!
絶対に聞こえてはならない音と共に、視界が光沢を帯びた緑で埋め尽くされる。

354ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/24(日) 20:17:12 ID:cF5n9EJc0

 決して戦闘に秀でる訳ではないタブンネを思って堅牢な檻で囲われたその牧場。しかし空が一面開けていた事がここへ来て仇となった。

 丁度屋舎の人間からタブンネ達の姿を遮るように着地したテッカグヤ。
 片耳の夫はその圧倒的風圧に後のめりに転倒し、見上げたその先、その巨躯の割に小さな顔の口元はやや笑みを浮かべている。見た事も聞いた事もないバケモノが徐にその巨体を持ち上げると、夫ンネはハッと我に帰る。

(ママは!?ベビちゃんは...!?)

 恐る恐るその巨体の下を見ると、粉々になった卵が血塗られた芝生の上に散らばり、その手前にペシャンコになったピンクに赤黒さが混じった肉塊。その付近には無造作に飛び散った心臓なのか腎臓なのかもはやわからない物体がピクピクと蠢いている。
 不運にも、誰よりも愛情深かった尾無しの妻は、突如襲来した悪魔の下敷きになってしまった....
 いや、違う。テッカグヤはおそらく狙ってこれをやっている。今のはバトルで言うところの、ヘビーボンバーという技であった。

「ミッ・・・、ミッ・・・。」

 最愛の妻と愛しい我が子の残骸を見つめる夫ンネ。口を僅かに開けてブルーの瞳を大きく見開いては、静かに鳴き声をあげる。
 今、彼の心を支配するのは恐怖でも悲しみでもない、完全なる「無」である。目の前の現実を受け入れる事を脳が拒否しているのだ。

355ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/24(日) 20:21:05 ID:cF5n9EJc0

 思った程の動きを見せないことに、少し口元を歪めたテッカグヤ。しかし目の前で硬直するピンクダルマの姿を見やると、再び口元に冷笑を浮かべる。現実を受け入れずとも最後までしっかりと抱えていた卵の存在に気づいたのだ。
 巨大な両腕を少し持ち上げると、無数の真空の刃がそれに命中する。

 バリッ!  「チィ-....」
 ぶち撒けられた生暖かい粘液と共に、小さな身体が胴体をまっぷたつにしながら夫ンネの目の前に現れ落下する。あまりにも小さな音で、今生最後の言葉となる愛しい産声を、聴覚の大半を失ったパパが認知できなかった事は幸か不幸か。

「ミ....ミヒャヒャヒャヒャ!ミバアーッヒャッヒャッ....!」
 仰向けに寝転び、両手両脚を大きくバタつかせ、全身を激しくくねらせる夫ンネ。精神の限界を超えるに充分な攻撃だったようだ。完全に狂ってしまった。
 想像を超えるリアクションに大満足のテッカグヤ。ここへ降り立って初めて、不気味で甲高い声を上げる。

「ミッ...、ミィーーー!」
「ミ゛ミ゛ーーッ!」
「ギャミーーー!」・・・

 足が竦み、一部始終を黙って見ていた周りンネ達の恐怖を煽るに効果抜群の雄叫びだったようだ。屋舎を目指し固まっていた大行列は一目散に散らばり、大声で喚き散らしながらドタドタと短い脚で四方八方逃げ出していく。

 この愉快な光景は、テッカグヤの嗜虐心を大いに煽っていく。

356カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:02:19 ID:.pjsQMZQ0
長女タブンネから完全に反応が消えた事を確認したジヘッドはトレーナーの元へと駆け寄る。
トレーナーが「満足したか?」と優しく尋ねると、ジヘッドは満足気な表情で「ガウッ」と吠え返事をした。
すると突然ジヘッドの体が輝き始め、その姿に変化が生じ始めた。先ほどの戦闘で成長したジヘッドが進化しようとしているのだ。
緩やかにフォルムを変えていくジヘッド、光が消えるとそこには三つ首の妖龍、サザンドラが存在していた。
サザンドラはふわりと空中を一回転してからトレーナーの元へと駆け寄る。
二人にとって念願だったサザンドラへの進化。トレーナーとサザンドラは互いに抱き合い喜びを分かち合った。

ジヘッドがサザンドラに進化したことにより当初の目的は達成することができた。
だがタブンネを入れ食いすることができるこの奇跡的な状況を逃すという手はトレーナーにはなかった。
トレーナーはサザンドラと目を見合わせ「進化祝いだ、タブンネと一緒に派手にパーティをしようか」と発言する。
サザンドラも思いは同じで、悪い笑みを浮かべながらこくりとうなずいた。

357カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:03:03 ID:.pjsQMZQ0
一方、ここは海鳴りの洞窟と三つまたヶ原の境にある小さな洞窟。
長女タブンネ扮するメタモンは野生ポケモンの目を掻い潜りこの場所へとたどり着いた。
あたかも命からがら逃げだしてきたかのような演技をし、洞窟の中へと入っていくメタモン。
洞窟内部には少数のタブンネ達が火を囲んで暖を取り、待機していた。
突如入ってきた傷だらけのタブンネに周囲は戸惑いの反応を見せる。
すると一番奥で鎮座していたリーダー格と思わしきタブンネとその傍らで控えていた番いのタブンネがメタモンの元に駆け寄ってきた。
怪我を見た番いタブンネはいやしのはどうを放ち、メタモンの傷を治していく。

 ─ 大丈夫か、何があった? ─

リーダータブンネはメタモンに肩を貸してゆっくりと火の近くまで運びながら訪ねる。
火の近くで少しだけ温まり、落ち着いたように振舞ったメタモンはゆっくりと語り始めた。

 ─ 見つけたんです……タブンネ達が暮らせる安全な場所を!! ─

その発言を聞いた瞬間、その場にいたタブンネ達は皆一様に期待に胸を膨らませるような反応をした。
メタモンは続けてタブンネ達に説明を続ける。
野生のポケモンに襲われている途中、扉が開いている遺跡がありその中に避難した事。
野生ポケモンはその遺跡に入った段階で踵を返し、追ってこなくなった事。
遺跡の中を少し調べたが他のポケモンの気配は感じられなかった事。
メタモンの虚実を織り交ぜた報告に、タブンネ達は皆真剣な面持ちで耳を傾けた。
報告が一通り終わり、あたりはしんと静まり返る。
反応が薄いのは恐らく自分たちが救われることに対する実感が湧かないからだろう。

358カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:04:16 ID:.pjsQMZQ0

 ─ これでやっと……やっとバンギラスから解放されるのね…… ─

一匹のタブンネはすすり泣きながらそう発言する。
その言葉を聞いたタブンネ達は徐々に歓声を上げ始めた。そうだ。自分たちはこの地獄から解放されるのだ。
浮足立つタブンネ達にリーダータブンネが「静かに」と声をかける。するとあたりは再び静寂を取り戻した。

 ─ 安全な場所を見つけられたことは喜ばしいことだがまだ確証は持てない。
   これから私を含めた数匹で対象の遺跡へ向かい、現地調査を行う事にする! ─

リーダータブンネの号令を聞いたタブンネ達は皆同様に畏まり、「ミッ!」と勢いよく返事をする。
このリーダータブンネが組織のブレイン、中核なのだろう。タブンネの癖に存外しっかりしていて少し面倒だ。
メタモンは心の中でそうぼやきながら事の成り行きを見守った。

リーダータブンネは洞窟の中にいたタブンネ達の中からさらに少数を斥候班として分配し直す。
自身と番いタブンネを含めた成体のタブンネが六匹、幼体の子タブンネが二匹。
それにメタモンを加えた計九匹で斥候へ向かうことにする。
リーダータブンネは洞窟内に残るベテランのタブンネに次の業務を引き継ぐ。

 ─ 後の事は任せたぞ ─
 ─ まぁ、どうせすぐに必要なくなりますよ。そっちでオボンでも食べながら待っててください ─

引き継ぎを受けたタブンネはリーダータブンネの言葉に軽口で返す。
二匹は互いに笑みを浮かべ固い握手をした。

 ─ それでは、行くぞ皆! ─

リーダータブンネの声掛けと共に斥候班たちは三つまたヶ原へと足を踏み入れた。

359カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:04:50 ID:.pjsQMZQ0
メタモンのスカウトもあり、斥候班のタブンネ達は全員遺跡の前へとたどり着いた。
リーダータブンネはメタモンを含む成タブンネ六匹を二人一組の三組に分けて周囲の哨戒を行うよう命令する。
なぜ直ぐに遺跡の中に入らないのか。それは外敵と遺跡の構造の確認のためである。
この遺跡に出入口が一つしか無い場合、階段へ踏み込んだ後に野生のポケモンから後を追われれば袋小路へ誘い込まれてしまう。
そうなった場合群れの全滅は免れないだろう
故に遺跡に入るその前に、外観からわかる範囲での構造の把握と、野生のポケモンへの警戒が必要なのである。

 ─ こっちにおいで、一緒に体を温め合おう ─

一方で周囲の哨戒に加わらなかった子タブンネ達は軒先で身を寄せ合い体を温めあっていた。
体格が大きい方の子タブンネがそういうと小さい子タブンネはその子タブンネの懐へもぐり体を預ける。

 ─ お兄ちゃん、あったかい…… ─

一番小さい子タブンネは大きい子タブンネの胸に頭をこすりつけ甘えている。
この子タブンネは大きい子タブンネの妹のようだ。
兄と呼ばれたタブンネは妹が寒い思いをしないようできるだけ全身を包み込むように抱きかかえる。
本来であればこの二匹はこの探索に加わる予定はなかった。
しかしこのタブンネ兄妹は他のタブンネが覚えない特殊なわざを覚えていたため、いざというときのキラーカードとしてリーダータブンネが同伴を許可したのである。

一寸先で吹き荒ぶ猛吹雪を見ながら兄タブンネは考える。
もしこの遺跡がタブンネにとっての安住の地になるのであれば、今まで行われてきた凄惨な営みから解放される。
そうすれば妹も、望まぬまま子を産まされることも無くなるんだ、と。
兄タブンネは先ほどの長女タブンネ同様、目の前で喰われていく兄弟たちを目にしたことがある。
あの時、兄弟たちを救えなかった屈辱から、末の妹タブンネだけは何としてでも守ってやりたいと決心したのである。
例え自分の身が犠牲になろうとも───

360カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:05:58 ID:.pjsQMZQ0
哨戒を終えたタブンネ達が戻ってきた。外敵の存在は確認できなった旨、出入口も一つしか見当たらなかった旨を報告する。
出入口が一つしか無い事に少しためらいを感じたリーダータブンネだが、意を決して遺跡へ入り込んだ。
一歩一歩、常に周囲を警戒しながら歩みを進めるリーダータブンネ。ふと階段を上っている途中で遺跡の中から異音を耳に捉える。
手をかざし「ミッ!」と全体に静止するように命じる。耳を澄ませると微かに聞こえる、自分たちとは異なるポケモンの息遣い。

 ─ 遺跡の中から異なるポケモンの気配を感じる! ─

リーダータブンネがそういうと周りのタブンネは一斉にどよめき始めた。
このまま引き返すか、それとも進むか。リーダータブンネは思索する。すると傍らからメタモンが語り掛けてきた。

 ─ リーダー、いったん私が先行して内部を確認してきましょうか? ─

このリーダータブンネは警戒心が強い、それ故に生き残れたという背景はあるのだろうが、自分たちとしてはこの警戒心はなかなか厄介だ。
先に内部を確認し安全であることを確認し手引きする。そうすることで警戒心を和らげる。
可能性としては五分だがリーダータブンネの答えは───

 ─ 分かった。君に託そう。危険を感じたらすぐに帰ってくるんだぞ ─

かかった! メタモンは心の中でガッツポーズを取る。
メタモンは「ミィッ!」と返事をすると階段を上がり遺跡の中央部へと向かった。
遺跡の内部はパッと見た限りではトレーナー達と共に見た時と同じ装いだった。
石造前へ向かい床を見てみるとわずかだが血痕が残っていた。これがあの厄介者に見つかってしまえば計画は破綻してしまうだろう。
軽く足でパッパッと払い、小石や砂で目立たなくする。
他に何かないか、周囲を見渡しているとふと射貫くような視線と殺気を感じる。
間違いない、ジヘッドのものだ。
どこから見ているか分からないがここで声を出すわけにも行かない。
メタモンはとりあえず自分は敵ではないことを示すため音を立てないよう細心の注意を払いながら片手だけメタモンへと戻し周囲へアピールする。
すると室内に漂っていた殺気は一気に緩和し霧散していった。
ふぅ、と一息つくと片手をタブンネに戻し、周囲の調査へと戻った。
トレーナー達が居た痕跡は目に見える範囲にはない。後はただ主賓の活動までタブンネ達がのんびりしてくれているだけでいい。
メタモンは階段中腹で待機しているタブンネ達に異常がなかったことを告げた。

361カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:07:11 ID:.pjsQMZQ0
リーダータブンネを先頭にタブンネ達が恐る恐る遺跡内部へと足を踏み入れる。
周囲に敵の姿が見えない事にリーダータブンネ以外のタブンネは緊張を緩める。
だがリーダータブンネは違った。そこには確かに外敵の姿は見当たらなかったが、未だポケモンの息遣いだけは聞こえていたのだ。
こいつだけは早々に何とかしないといけない。そう考えたメタモンは一芝居うつことにした。
遺跡の最奥部にそびえ立つポケモンの石造、その裏手を確認し「ここを見てください!」とリーダータブンネを呼び出したのだ。
リーダータブンネはメタモンに誘導されるまま石造の裏手を確認する。だが当然そこには何もなかった。

 ─ 何も見当たらないな。いったいここに何があるんだ? ─

リーダータブンネは怪訝そうな顔をしメタモンへと尋ねる。

 ─ いえ、ここには何もありませんよ ─

メタモンはにこやかな表情でリーダータブンネにそう返す。
すると突然遺跡の中央部に上から何かが落下してきた。バキバキと何かが砕ける音がする。
リーダータブンネが勢いよく振り返るとそこには無残にも食い荒らされた同胞の亡骸があった。
その亡骸の顔を注視する。この顔を自分は知っている。
この顔は───!!

リーダータブンネが声を出そうとした瞬間上空から何かが勢いよく降下し、タブンネを一匹掴んで階段の前へと立ちふさがった。
トレーナーのサザンドラだ。サザンドラは左頭でタブンネを捉えている。
捕まったタブンネは逃れようと必死もがいて暴れるがそのたびにサザンドラの牙が柔らかな腹肉へ食い込んでいく。
ギザギザの歯で腹肉を裂かれる痛みにか細く「ミッ、ヒッ」とうめき声をあげるがそれでも暴れる事はやめなかった。

362カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:08:05 ID:.pjsQMZQ0
やはり遺跡内部にはタブンネ以外のポケモンが居たのだ。
リーダータブンネはメタモンの方へ振り返る。こんな状況なのにメタモンは表情一つ崩していなかった。

 ─ お前は一体何者だ!? ─

リーダータブンネがそう吠えた傍らで、メタモンは涼しい顔をして遺跡の中央にある長女タブンネの亡骸の元へ歩いていく。
長女タブンネの頭部を持ち上げ死に顔がよく見えるようお腹のあたりまで持ってくる。
かたや苦悶に満ちた死に顔、かたや不気味な笑顔。表情こそ違うが確かにそこには同じタブンネの顔が二つ並んでいた。

 ─ さぁ? 私は誰でしょうね。 ─

リーダータブンネにそう言い放つとメタモンは持っていた長女タブンネの頭部をぽいと放り投げサザンドラの方へ駆け寄っていった。
メタモンとサザンドラは互いに見合う。するとメタモンは楽しそうに笑いながらサザンドラへ左手をあげた。

 「ミィッ♪ミィッ♪」─ 進化できたんだ! 立派になったねー、すごいじゃん! ─

メタモンのその言葉で気をよくしたサザンドラは空いている方の右頭をメタモンの左手に軽くぶつけ、ハイタッチをする。
周囲のタブンネ達は状況を飲み込めていなかった。
中央にあるタブンネの遺体は間違いなくあのサザンドラに手によるものだろう。
そして実際に自分たちの仲間の一人がそのサザンドラに捕捉され、今も苦しんでいる。
そんなサザンドラとあのタブンネはなぜ仲良く会話をしているのだろう。あのタブンネは一体何なのだ。
メタモンはタブンネ達の方へ向き直り、タブンネ特有の左手を振るポーズをとる。

 「ミッミッ!」─ それでは皆さん、ごきげんよう ─

メタモンはそれだけ言い残すと軽い足取りで階段を駆け下りていった。
それと同時にサザンドラがドラゴン族特有の腹の底まで響くような咆哮を上げる。

 「ミィ……ミイイイイィィィィィ!!!」─ ハメられた……俺たちはハメられたんだ!!! ─

リーダータブンネは自分たちが貶められたことに気付き叫ぶ。しかしそれに気づいた所で既に手遅れである。
既にこの遺跡はイッシュ地方きっての捕食者、サザンドラのコロニーだ。

363カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:09:10 ID:.pjsQMZQ0

 「ミィッ!ミィィィ!!!」─ 助けてぇ!誰か助けてぇ! ─

サザンドラに捕まっていたタブンネはついにたまらず周囲に助けを求める。
中央にあるタブンネの死体を見ればこのままだと自分がどういった運命を辿るのか、一目瞭然だった。
するとサザンドラはタブンネを眼前へと持ってくる。サザンドラと目が合うタブンネ、ついにタブンネは緊張感に耐えきれず泣きながら小便を漏らし始めた。
あまりにも情けない姿にサザンドラはたまらず吹き出してしまう。
そしてタブンネもそれに合わせて引きつりながら笑いだす。ともに笑い合えば見逃してもらえるかもしれない。その可能性に賭けたのだ。
しかし現実はそうはならなかった。
サザンドラはタブンネの頭部を右頭で掴み、一切の抵抗など出来ないほどの強力な力で首を回し始めた。
「ヴ……ギィ゙ィ゙」と声を上げるタブンネ。やがで首が180度ほど回転し、遺跡内部にいる他のタブンネ達と目が合った。
この時点でまだタブンネには意識があった。首がねじれる痛みで涙を流し、口をあけ舌を出し「ヒィ……ヒィ……」と掠れる声で悲鳴を上げながら周りに助けを求める。
周囲のタブンネは異様な光景に恐怖してしまい、動く事ができなかった。
やがてタブンネの首が360度、一回転する。首がぶちぶちとなりついには頭部と胴体が分割されてしまった。
サザンドラはタブンネの頭部を放り投げ、胴体から勢いよく溢れ出てくる血流をまるでシャンパンの様にあたりへぶちまける。

 ─ パーティの始まりだァ!!!! ─

サザンドラはそう吠えるとタブンネの体を放り投げリーダータブンネの方へと勢いよく向かっていく。
高速で向かってくるサザンドラに対し回避することもかなわず、リーダータブンネは掴まれてしまい空高く持ち上げられてしまった。
生まれて初めて見る高所からの光景にリーダータブンネは恐怖する。

 ─ 良い眺めだろォ…? お前ら地面を這いつくばるタブンネ達じゃ一生見れない景色だ ─

自分と同じくらい大きかったタブンネ達が遠く、小さく見える。ここから落とされたら自分はただでは済まないだろう。
いや、違う。自分は既に殺されてしまったのだ。この恐るべきポケモンに。
いまこの場において考える事は助かる事ではない、一匹でも多く同胞たちをここから逃がす事だ。

364カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:09:56 ID:.pjsQMZQ0

 「ミイイイィィィィ!!!」─ 皆今すぐこの場から逃げるんだ!!! ─

リーダータブンネは自分の生存を諦め仲間たちを逃がすためそう叫ぶ。

 ─ へぇ、自分の事は諦めんのかい。潔いねェ ─

他のタブンネが逃げているにも関わらずサザンドラは余裕そうな表情を浮かべている。

 ─ それじゃお望み通り……ぶち殺してやるよォ! ─

サザンドラはそういうとリーダータブンネを下方向へ勢いよく投げつけた。
重力に従いリーダータブンネは顔から落下していき硬質な床面に叩き付けられる。
顔の骨や首、肩に強い衝撃が走り骨が砕け割れる。だがリーダータブンネへの攻撃はそれだけでは終わらなかった。
空中から降下してきたサザンドラはリーダータブンネの上で一回転し、加速を乗せたしっぽをリーダータブンネに叩き付ける。
アクロバットという飛行タイプの技だ。
ミシミシという音が全身から鳴り響き、全身の骨や内臓にまでダメージを食らってしまう。
もうすでに虫の息であるリーダータブンネをサザンドラはしっぽで壁面まで叩き飛ばした。
首や四肢があらぬ方向へ折れ曲がり、目の焦点はあっていない。

 「ミィィィ!」─ あなた! ─

「アァ……ウー……」とうめき声をあげているリーダータブンネに番いであるタブンネが駆け寄る。
まだ息はある。治せるかは分からないが番いタブンネはリーダータブンネへいやしのはどうを行い始めた。
するとそこにサザンドラが現れる。サザンドラは心底楽しそうな笑顔を浮かべながら二匹のタブンネを見下ろす。
リーダータブンネはサザンドラに向かって折れ曲がった手を伸ばす。差し詰め「妻へは手を出すな」といったところだろう。
サザンドラはそれを見てニヤリと笑い去っていった。

365カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:11:04 ID:.pjsQMZQ0
続いての標的は階段に向かったタブンネ達だ。二匹のタブンネ階段を駆け下りている。
外の景色が見えた、もう少しで脱出できる。
先頭のタブンネが外に出ようとすると目に見えない何かに防がれ、勢いよく尻もちをつく。
何故出られないのか。何が起こったか分からないタブンネ達は一度外へ向かって駆け出すがやはり目に見えない壁のような何かに阻害されて出る事は敵わなかった。
出口にはフーディンによりリフレクターが張られていたのだ。
タブンネ達は顔を青ざめさせながらリフレクターをバンバンを叩く。

 「ミィィィィ!!ミィィィィィィィ!!!!」─ 出して! ここから出してぇ!! ─

サザンドラはそんなタブンネ達を階段上部から見下ろしている。
二匹の内後方にいた一匹がサザンドラがこちらを見ていることに気付き「ミィィ!!」と悲鳴を上げる。
先頭にいたタブンネもそれに気づきより強くリフレクターを叩き始めた。
そんなタブンネ達を見下ろしながらサザンドラは大きく息を吸い始め、巨大な火球を吐き出した
火球は空中で大の文字に変化し、階段を下りタブンネ達の方へ向かっていく。
だいもんじという炎タイプの技だ。
燃え盛る炎はじりじりとタブンネ達へとにじり寄っていく。
後方にいたタブンネは恐怖のあまりしゃがみ込む。その上をだいもんじが通過するが背面に火が移り尻尾と背中が燃え上がる。
先頭にいたタブンネはよけきる事が出来ずだいもんじが直撃し、炎に飲まれてしまった。
だいもんじが直撃したタブンネは火だるまになりながらその場に倒れ込んでしまう。
倒れた事により炎が気道へ入り込み、喉の奥を焼き尽くす。その苦しさは想像を絶するだろう。

 「ミ……ギァ……ァ……」 ─ 熱……い……苦しい…… ─

タブンネは苦しさのあまり喉を掻いてしまう。
しかし焼けただれケロイド状になった皮膚がぐちゅりと破れしまい、その中からさらに炎が入り込んでしまった。
これではもはや声を出す事すらできない。
激痛に苛まれ朦朧とする意識のなかで、タブンネは仲間が居る方へ手を伸ばした。
だがその手は誰に取られることもなく、ただ空しく空を掻く。
苦しいと叫ぶことや涙を流す事さえできない。地獄のような業火に飲まれるこの時間はタブンネにとっては永遠の様に感じられた。
やがてタブンネは体中が焼かれていく激痛と全身の水分が枯れていくのを感じながらこの世を去った。

366カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:11:55 ID:.pjsQMZQ0

 「ミッ!ミッ!ミィィィィィ!!!」─ 熱いぃ!誰か助けてぇ!! ─

背中に炎がついたタブンネは急いで階段を駆け上がりゴロゴロと地面を転がり消火を試みる。
必死の消火活動の甲斐あってか炎を消す事は出来たが、背中の毛は全て焼き尽くされ焼け爛れた皮膚が丸出しになっていた。
タブンネはうつ伏せになり、ぜぇぜぇと息を切らしながら痛みに必死で耐えている。
ふと、目線の先にはリーダータブンネにいやしのはどうを放っている番いタブンネの姿が見えた。
彼女に治してもらおう。そう思った火傷タブンネは這いつくばりながら番いタブンネの方へ向かっていく。
痛む体に苛まれながらタブンネは「なぜ自分はこんな苦痛を味わっているのだろう」と考える。
本当であれば今頃は安全な土地でオボンの実を食べながら仲間たちと共に笑っていたはずなのに。
火傷タブンネはかつて夢見ていた未来と現実を比較し、現実の惨めさ、苦痛さに耐えかね歯を食いしばり涙を流し始める。
それでも生き残りたい一心で進んでいると突然頭上から声をかけられた。

 ─ ちんたら這いつくばってんじゃねぇよ、すぐ追いついちまうぞ ─

声の主はサザンドラだった。サザンドラはニヤニヤと笑みを浮かべながらタブンネをからかう様に周囲を飛び回る。
火傷タブンネは恐怖で体が竦んでしまった。歯をガチガチと鳴らし体を震えさせている。

 「ミゥ……ミゥミゥ……」─ い、嫌だ……死にたくない……見逃して…… ─

恐怖に耐えかねた火傷タブンネは頭を抱え丸くなりながら、サザンドラに命乞いをする。
その姿はあまりにもみすぼらしく、みっともない。酷く滑稽でついついサザンドラは吹き出し、笑ってしまう。
自身が馬鹿にされていることは当然火傷タブンネにも分かる。だがそれ以上に自分が何もできないことも理解していた。
ただただこの場がこれで終わり、サザンドラがどこかへ行ってくれることを願う。
しかしそんな火傷タブンネの願いは脆くも崩れ去った。
「見逃すわけねェだろ」と言い放つとサザンドラは火傷タブンネの背中に両頭で思いっきり噛みついた。
神経がむき出しになった皮膚にギザギザの鋭い歯が刺さり激痛が走る。火傷タブンネは目をチカチカとさせ声にならない悲鳴を上げる。
サザンドラはそのまま脆くなったタブンネの背中を喰い破り始めた。
ぶちぶちと背中の皮膚が喰い破られる痛みで「ミギァァァァァァァァァ!!!!」と遺跡全体に響き渡る叫び声をあげるタブンネ。
気絶できればよかったのだがタブンネ特有の頑丈さがそれを許さなかった。
サザンドラも勿論それを理解していた。皮膚を喰い破る時は臓器を傷つけないよう注意を払いながら行っていた。
火傷タブンネは自身の血液でできた血だまりの中央で背中の皮膚を失い臓器をさらけ出した状態になっていた。
胸椎とあばら骨の間から弱弱しく心臓と肺が動いているのが分かる。
だが当のタブンネ自身はすでに虫の息だ。舌をだらりと垂らしながら消え入りそうな呼吸を繰り返している。

 「ミ……ミゥゥ……」─ なんで……僕たちが……こんな目に…… ─

火傷タブンネは自身の境遇を嘆きながら事切れた。

367カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:12:47 ID:.pjsQMZQ0
サザンドラが次の獲物を物色していると一匹、逃げ遅れたタブンネと目が合った。
恐怖で体が竦んで動けなかったのだろう。部屋の隅で胸に両手を当てながら涙目でこちらをじっと見ている。
次はあいつにしよう。思い立ったサザンドラはそのタブンネへと近寄る。
返り血にまみれたサザンドラに対し「ミヒィッ!」と悲鳴を上げへたり込むタブンネ。
目の前の存在がただただ恐ろしかった。この恐ろしいドラゴンから一刻も早く解放されたい。
タブンネはなんとかしてサザンドラから逃げられないかを考える。
サザンドラはもちろんタブンネが何か考えて行動しようとしているのを理解している。
理解しているからこそ今はまだ何もしない。タブンネ達が行うささやかな抵抗、それを踏みにじるのが楽しいから。
恐怖で追い詰められたタブンネはふと、自身のしっぽにオボンの実を隠し持っている事を思い出した。
少し前の遠征で見つけたのを有事に備えてしっぽの中に隠していたのだ。
オボンの実はタブンネ達にとっては貴重品だ。きっと目の前のサザンドラもオボンの実を欲しがるに違いない。
しかしこのオボンの実を投げたところでサザンドラからは逃げきれない。
だったら、このオボンの実を使ってサザンドラと仲良くなろう。
そうすればきっと、きっとみんな生きてここを出られるはず───
そう考えたタブンネはしっぽからオボンの実を取り出しサザンドラへ差し出した。

 「ミゥミゥ……ミゥゥ……」─ オボンの実を上げるので私達を見逃してもらえませんか…? ─

サザンドラはこのタブンネのあまりにも局面と違う行動に面食らってしまう。
こちらの顔色を伺うようなヘラヘラとした顔で変色したオボンの実を差し出すタブンネ。
そもそもこういった交渉事はリターンが釣り合っていない限り受け入れられることはない。
タブンネ達にとっては貴重品であるオボンの実も、サザンドラからすれば毎日好きなだけ食べれるようなものだ。
このタブンネは知ってか知らずか、タブンネから得られる経験値をそんなオボンの実一つで諦めろと言ってきたのだ。
あまりにもリターンが釣り合っていない交渉、当然サザンドラもそんな交渉を受け入れるつもりはない。
だがここで普通に断ったところでパフォーマンス的に面白くはない。
目の前の存在の生殺与奪の権を握っているのは自分だ。であればもっと面白さや楽しさを意識したい。
そう思ったサザンドラその交渉を受け入れるそぶりを見せた。

368カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:13:21 ID:.pjsQMZQ0

 ─ あぁ、いいぜ。それじゃ遠慮なく貰うとするかねェ… ─

その言葉を聞いたタブンネは先ほどとは打って変わりパァっと明るい表情になる。
目じりに涙をため満面の笑みでオボンの実を差し出すタブンネ。
サザンドラはゆっくりと近づきタブンネの差し出しているオボンの実に腕ごと喰らい付いた。
タブンネの笑顔が突然苦痛の表情に歪み、「ミギィッ」という悲鳴を上げる。
サザンドラは首をぶんぶんと振りタブンネを痛めつける。牙が肉を裂き、骨へと到達する。
あまりの激痛に目をつむりボロボロと大粒の涙を流しながらタブンネは振り回され続ける。
やがて骨が砕け割れブチリという音が聞こえるとタブンネは遠心力に任せ遠方へ放り投げられた。
背中から地面に叩き付けられるタブンネ、リーダータブンネ達と違いぶつけようとして投げられた訳ではないので背中へのダメージは軽い。
約束を破られた悲しみを感じつつ早く立ち上がって逃げなければと思い立つタブンネ。腕に力を入れて立ち上がろうとするがうまく立ち上がる事はできない。
それもそのはず。タブンネの両腕はサザンドラに食いちぎられ喪失していたのだ。
自分の両腕の肘から先が無くなっているのを見て絶句するタブンネ。すると今まで感じていなかった痛みが急に襲い掛かってきた。

 「ミ…ミィ……ミァァァァァァ!!!!!」─ なんで…私の腕……私の腕がぁ!!! ─

自分の腕が無くなったショックと激痛で半狂乱になるタブンネ。
すると目の前にその両腕を奪った張本人であるサザンドラが現れた。

 「ミゥ……ミッミッ……」─ どうして……見逃してくれるって言ったのに…… ─
 ─ なァに寝ぼけたこと言ってんだよ。てめぇらとの約束なんざ守るわけねェだろ ─

タブンネの問いにサザンドラがそう回答する。

 「ミ、ミゥ……」─ そ、そんな…… ─

そう呟くとタブンネはその場に倒れ込んだ。両腕があった場所からはどくどくと止めどなく血が流れ出ている。
もはやこの傷では生き残ることも無理だろう。
ぼうっと天井を見上げながらタブンネは思う。ポケモンの神様が居るならどうか、どうか教えて欲しい。
なぜタブンネばかりがこのような目に合わなければいけないのか!
私達はただ幸せを願っているだけなのに!
何かに脅える事もなく日々を暮らしたいだけなのに!
素朴な幸せを願ったタブンネの心の叫びは誰に届くこともなく、彼女の意識と共に闇へ飲まれていった。

369カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:14:01 ID:.pjsQMZQ0
番いタブンネの見える範囲にはリーダータブンネ、火傷タブンネ、両腕を無くしたタブンネの三匹が存在していた。
そのうち後者の二人は既に死亡、リーダータブンネも"まだ死んでいない"という状態でしかない。
次は自分の番だ、そう考えると背筋におぞけが走る。
心臓の鼓動が強く、早くなっていくのがわかる。焦りが放っているいやしのはどうに揺らぎを生じさせる。
これではいけない、精神を落ち着かせなくては。
きっと大丈夫だ。いやしのはどうでリーダータブンネを治し、二人でこの窮地を脱する事ができれば。
そう考えていると突然、ぷつりといやしのはどうが途切れて出なくなってしまった。
番いタブンネははたと出なくなってしまったいやしのはどうに驚き「ミッ!?」と声を上げてしまう。
このままではいけない、早く彼を治さないといけない。そう思ってもいやしのはどうが出てくることは無かった。
PPが尽きてしまったのだ。番いタブンネは自身の両手を見て顔を青ざめさせる。
いやしのはどうを打ち続けたリーダータブンネは、やはり完治には至らず辛うじて意識だけは保てている状態だった。
もはや希望などない、番いタブンネは打ちひしがれた。

 ─ よーうお嬢さん、そっちのタブンネの調子はどうだい? ─

サザンドラはリーダータブンネの状態が絶望的であることを知りながら番いタブンネに明るく語り掛ける。
どこまでも底抜けに明るいサザンドラの声。このポケモンは私達の命や尊厳を弄ぶ事を心の底から楽しんでいるのだ。
何故私達がこんな目に合わなければいけないのか。悔しくて涙が出てくる。溢れ出てくる気持ちを抑える事ができない。
会話になるとは思わないがどうしても問わずには居られなかった番いタブンネは、零れ落ちる涙を拭うこともなくキッとサザンドラを睨みつけながら叫んだ。

 「ミィ……ミィィィィィィ!!!!!」─ どうして……どうして貴方はそんなにも楽しそうに私達の命を奪えるのですか……!
  私達は貴方に対して恨まれる事なんて何もしていないはずです!! ─

興奮したようにミフーミフーと息を荒立てながらサザンドラを睨みつける番いタブンネ。
別段怖くもないし、ともすれば答える必要もない問いに、サザンドラは気まぐれで回答した。

 ─ てめェらを殺す理由なんて簡単な話さ。"倒せばより多くの経験値が入る"それだけだよ ─

370カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:15:10 ID:.pjsQMZQ0
サザンドラからの回答を聞いた番いタブンネは己の耳を疑った。
自分たちの命が、自分たちの意思が、そんな理由で奪われていたなんて。
因縁や確執があったなら、この殺戮にも何か意味はあったと思えたのかもしれない。
到底納得などできないが、それでも、それでも心のよすがくらいには出来たのかもしれない。
だが現実は非常だった。この殺戮には何の意味もなかったのだ。
この目の前のサザンドラも、自分たちを飼育していたバンギラスも、タブンネを一つの命としてカウントしていない。
いや、もしかしたらそれはサザンドラとバンギラスに限らず、この世界にある全ての生物たちもそうなのかもしれない。
恐ろしい考えが頭を巡る。頭を抱え体が震えだす。認めたくない、こんな現実認めたくない。
世界の残酷さを悟り、震えている番いタブンネの首をサザンドラが左頭で咥え、上へ浮遊する。
番いタブンネは苦しそうにサザンドラの腕を掴みながら足をばたつかせる。

 ─ 大体てめェらが誰かから恨まれるようなタマかよ ─

サザンドラは追い打ちをかけるように番いタブンネへ語り掛け、右頭のキバで番いタブンネの腹を裂く。
血があふれるよりも早く右頭を体内に侵入させ、臓器を絡ませるように腕をくねらせながら胸の方へと深く潜り込ませていく。
自分の体内に異物が入り込んでくる不快感で番いタブンネはより一層強く暴れだすが、サザンドラの力の前では何の意味もなさない。

 ─ 恨まれるヤツってェのはなァ……オレサマみたいに強くて ─

サザンドラが腕を潜り込ませているうちに内臓が傷ついたのだろう、番いタブンネは血を吐き出す。
あまりの痛みで叫ぶことが出来ず、か細く「ミィ……」と鳴き目線で命乞いをする。
もちろんサザンドラはそんなものに応じるつもりはない。

 ─ オレサマみたいにカッコよくて ─

右頭はやがて番いタブンネの心臓部分に到達する。
腹部から腕を突っ込まれ、内臓をぐちゃぐちゃにかき乱されてなお心臓は脈動している。
傷つけないように優しく、しかし力強く右頭の口が心臓を咥え込む。
番いタブンネは自分の心臓が何かに掴まれる感覚を感じる。
その先の結果を悟った番いタブンネは口元から血を流し目じりに涙をためながら首を左右に振りイヤイヤをする。

 ─ オレサマみたいに残虐なヤツのことを言うんだよ ─

ニィと笑いそう言い放つとサザンドラは内臓と共に番いタブンネの心臓を引きずり出した。
ぶちぶちと音を立て番いタブンネの"生命活動を維持していたもの"が大量の血液と共に対外へ排出される。
番いタブンネは体を弓なりにしならせる。目を大きく見開き口をパクパクとさせたあと、力なく項垂れた。
サザンドラは右頭に絡まった内臓を払い落した後、軽くなった番いタブンネの死体をリーダータブンネの前へ放り投げた。

371カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:16:15 ID:.pjsQMZQ0
一部始終を見ていたリーダータブンネは目前に落下してきた番いタブンネと目が合った。
美しかったサファイア色の澄んだ瞳はどこまでも深い暗黒のような色に変色しており、彼女の死を何よりも如実に物語っている。
リーダータブンネは「ァー…ゥー…」と喃語のような声を上げながら折れた両手をサザンドラに向かって伸ばす。
この凄惨な営みを見せつけられて初めて抱いた感想は"美しい"だった。
あまりにも圧倒的すぎるサザンドラの力量、上空で自身の愛する妻を惨殺したポケモンは、自分が持っていないものを全て持っていた。
心の内に芽生えた感情がなんなのか気付いたリーダータブンネは、直ちに思いなおそうとする。奴は仲間を殺し尽くした忌むべき存在だ、と。
同胞を殺し尽くした憎き邪龍への怨嗟。
ふわりふわりと空中を自由自在に空を舞うその妖艶さ。
もはや正常通り生きる事すら敵わなくされた事に対する憎悪。
タブンネとは天と地ほどの差もある生物としての格。
異なる二つの感情に苛まれたリーダータブンネは、ついに涙を流しながら射精をするという不可解な現象を起こしてしまった。
もはや生殖になど使う事のできない、不能になった男性器からトクトクとこぼれる様に精液が流れ出ている。
理性としての感情は涙として溢れ出て、本能としての感情は射精という形で表れてしまった。

その姿を見たサザンドラはあまりにも情けなさ過ぎてまたもや吹き出してしまった。
そもそも自分は雄だ。雄相手に射精する雄なんていうのはあまりに滑稽でみっともない。
思えばこの場所でパーティを始めてから、サザンドラは終始笑いっぱなしだった。
タブンネが燃え盛り死んでいく姿を見ては笑い、あまりにも無様な命乞いを晒しては笑い、的外れな非難を受けては笑い。
あまつさえ、まさか同性相手に射精をするほど情けない姿を見せてもらえるとは。
サザンドラの心にあまりにも大きな余裕と慢心が生まれる。
命を賭して、尊厳を捧げて自分に娯楽を提供してくれた彼らに対するお礼をしたいとすら思うほどに。
サザンドラはお礼も兼ねて、リーダータブンネに見せつけるように空中を飛び回る。
まだ乾ききっていない番いタブンネの返り血を飛び散らし、自身の優雅さを演出する。
その姿にリーダータブンネの目はくぎ付けになってしまった。
美しい、なぜ自分はああはなれない。あの目の前のドラゴンポケモンのように強く、美しくなりたい。
もはやリーダータブンネは理性で己の本能を律することなど出来なくなっていた。
ただただ目の前の存在を渇望することしかできなくなっていた。

だが、やがてそのサザンドラのパフォーマンスも終わりを迎える。刺し貫くような殺気を感じ取ったのだ。
殺気を放つその主は、彼らと共に入ってきた兄タブンネだった。
兄タブンネは妹タブンネを庇う様に仁王立ちし、鋭い視線を向けている。
今までのタブンネ達は皆戦う事してこなかった。以下にしてこの窮地から脱するかを念頭に置いていたのだ。
だがあの兄タブンネは違う。確実に自分を殺すつもりだ。
面白い、そう思ったサザンドラはやはりいつものように口角を上げて笑いながら兄タブンネへ語り掛けた。

 ─ 先手は譲ってやるよ。早く来い、ボウズ ─

372カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/01/24(日) 22:18:14 ID:.pjsQMZQ0
あと3、4レスくらいで終わりそうなんだけど月末までにまとまりそうに無かったから投下しちゃった
あともう少しだけお付き合いください


>>355
乙ンネ
これからテッカグヤさんがどんな手を尽くしてタブンネさんたちを蹂躙するか楽しみ

373名無しさん:2021/01/25(月) 11:00:45 ID:.bgrawJs0
リーダータブンネがいちいちウザかった

捕食者を見てイクって顛末良いっすねw

374名無しさん:2021/01/25(月) 18:56:31 ID:vCayd4QI0
>>372
乙ンネです! 読み応えのあるお話でありました
サザンドラはやっぱり悪タイプなだけあって、ヒール役が板についてますね! 
スパイ役のメタモンとの掛け合いもかっこいい

375ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/26(火) 16:43:02 ID:.T4VtOPE0

 テッカグヤが辺りを見回すと、バラバラに逃げ出したように思えたそのオモチャたちは、どうやら一定の集団を保っていた。
 
 家族単位で固まるタブンネが一定数。または片親、もしくは成タブ近いお兄ちゃんお姉ちゃんの周りを複数のチビが群がる集団。大タブンネは手に卵やベビを抱える者、両手でヨチヨチ歩きのチビンネの手を引く者、その様相は様々だ。
 10匹以上で固まるような集団が見受けられないのはタブ知恵から来る習性か。

 おあつらえ向きに用意された愉快なオモチャたちに逃げ切られても癪だ。
 先ずは目の前、五月蠅く抱腹絶倒している耳無しの個体の胴体を目がけ思い切り体重を乗せると

ブチャッ!

「ミバーッヒャッヒャッ!ミヒーミヒーッ...」
 ペチャンコの胴体から離脱し顔だけになって尚、涙を流し爆笑していた狂いンネだったが、約10秒後その表情のまま絶命した。

・・・彼は充分に楽しませてくれた

 テッカグヤは視線を上げると、両腕に白銀を帯びた光線を纏う。近場を逃げ惑う、ベビを抱いたママンネ、30〜50センチくらいのチビ3匹の集団に目標を定めると

ボッ!
 強力なラスターカノンが集団に命中。チビ1匹が身体の右半分を失った状態で前方10メートルくらい吹き飛んでいき、ママンネは胴体の下半分がグチャグチャになっていて、ドサリと転倒する。手に抱いていたベビは身体の輪郭は無事のようだが、舌を垂らし絶命している。残りのチビ2匹は素粒子レベルまで粉砕されたようだ。

「ミ゛・・・、ミィッ...。」
ママの発する音は助けを求める声でも、我が子の死を悲しむ声でもない。当たりどころが悪く、自身の最期を悟ったのだろう。
「ミゴブハァッ!」
壮大に吐血した後、目から光が無くなった。複数内臓が破裂していたようだ。

376ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/26(火) 16:45:35 ID:.T4VtOPE0

 あっさりとまた一組の集団が殺され、さらに慌てふためくタブンネ達。

 テッカグヤはその場で4,5メートルほど上昇する。この敷地の全容を確認しているようだが、おそらくテッカグヤからも果てまでは把握できないだろう。
 しかしおびただしい数のオモチャが存在していること、また殆どの集団がどこかを目指している訳ではなく、唯々走り回っている事を何となく理解すると、三たび口元に不気味な笑みを浮かべ、次なる標的の目星をつけてその巨体を移動させていく。
 
 今殺したママの死体から20メートル程先の広場で、1匹のパパンネが両手に30センチ弱くらいのチビ2匹の手を掴んで走り回っている。その後方には両手チビより一回り大きいチビンネが4匹、必死にパパの背中を追いかける。
 テッカグヤ視点、自身からの距離を広げる訳ではなく、ただ円を描いて半径2〜3メートルくらいをドタドタ周回しているだけである。さぞかし滑稽に映るだろう...。
 
「パパー!!おウチのベビちゃんたちとタマゴはどうするチィ⁉︎こわいバケモノにこわされちゃうチィ」
「ベビちゃんや卵は助からないミィ!いいからチビお兄ちゃんはパパと一緒・・・、ギャミーー⁉︎チビちゃ....」

 卵やベビに見切りをつける判断力があるのなら、こわいバケモノが近づいて来ることに気づいて欲しかったものである。
 小さな弟妹を心配していた健気なチビは突如パパの右手を離れ、ピクピク動きながら後方に転倒している。
 気づけばすぐそこに大きなバケモノが居る。倒れチビは両脚が千切れ、付け根の部分からドバドバ血を流している。
 他チビは硬直し口をあんぐり開けているだけだが、パパは大量失禁している。やがてキッとした顔をすると、空いた右手で別チビ1匹の手を掴むと、今度はテッカグヤから逃げるように、またトテトテと駆け出した。
 残された3匹のチビは、痙攣する弟、ニヤニヤするバケモノ、離れていくパパを交互に見やるが、「チビィ!」と倒れた弟に声を掛けると、皆チョコチョコとパパを追いかけ始めた。つい最近までベビだった齢、動かない弟も心配だが、親から離れることが一番恐ろしいことのようだ。

 
 このオモチャたちが予想より遥かに脆いことに気づいたテッカグヤ。ジワジワと蹂躙していくつもりのようだ。
 小さいモノだけを先ずは集中して狙い、甲高い声を発し旋回しながら、適当な集団に目星をつけては、エアスラッシュを放っていく。ただでさえ短いタブ脚の、しかも幼子のそれに確実に命中させていくその技は、見事としか言いようがない。

377ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/26(火) 16:48:47 ID:.T4VtOPE0

「ヂィーッ!いだいチィ、たてないチィー!」
「...ミチィ...」  「チ...チビィ...」
「チィのあんよが・・・あんよ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・」
「チビェーーン!おね゛えぢゃーーん!おいてかないでビィーー!」
「じにだぐな゛いヂィー!だれかたすげチィー‼︎」
・・・・

 次々と出来上がってゆく、テッカグヤの脚なしチビンネコレクション。その数30、いや、40に登るだろうか。この牧場で一番の売れ筋は離乳後〜50センチ未満個体なのだが、改めてタブンネの繁殖力の強さが窺える。

 先のパパンネ同様、引率タブたちは手を引いていたチビが倒れても直ぐに見限ってまた別のチビの手を引き、追随チビが倒れても見向きもしない有り様。ベビや卵を度外視しても、甘え盛りでまだまだ手の掛かるチビンネはこの牧場内に五万と居るのだ。

 ありとあらゆる場所に散らばる、握り拳ほどの大きさのタブ脚。そこから覗かせるハートの肉球が実に可愛らしい。
 
 何匹かのチビンネは既に失血死してるかショック死している。微かな鳴き声を上げるチビンネも見受けられるが、じきに死ぬだろう。比較的傷が浅いか、もしくは体力に優れるチビンネが必死に叫び声を上げるが、やがて死ぬだろう。つまりみんな死ぬだろう。

378あらびきヴルスト製造工場(プロローグ):2021/01/27(水) 11:07:06 ID:AVp3Wh460

 ここは穏やかな田園風景や、近代都市、雄大な大地に険しい雪山と、様々な顔を持ち合わせる、ガラル地方。

 その中の代表的な産業都市、ナックルシティの一角に、大きな工場がある。そびえ立つ煙突から流れ出す煙は、食欲をそそるような良い匂いを含ませている。

 ガラル地方では今とあるブームがある。
「カレーライス」という料理で、今日も至る所でポケモントレーナーが自身の相棒達と共に、その料理に舌鼓を打っている。
 そんなカレーライスの具材のど定番。
「あらびきヴルスト」という食材がある。
その正式名称は
「タブンネの腸詰め」というのだが、そう読んでしまうとトレーナーが引いてしまうので、その呼び方を知っている人はあまり居ない。

 このお話ではそんなあらびきヴルストの製造過程を紹介する。

379あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:08:10 ID:AVp3Wh460

 舞台をナックルシティの工場へと戻す。

 一台の大きなトラックがその敷地へと入っていく。その大きな車体の側面には、タブンネがおいしそうにあらびきヴルストを頬張るかわいい絵がプリントされている。

 そんなかわいい絵とは裏腹、コンテナの中は地獄である。
 真っ暗な中にギュウギュウに詰め込まれたタブンネ達。
 彼等の生息地であるカンムリ雪原で、突如現れた人間達に乱暴に捕まえられては無造作にコンテナに詰め込まれ、そこからはかなり長い道のり、トラックが大きく揺れる度に悲鳴が上がる。
 誰かがバランスを崩す度に、端に位置するタブンネは圧迫され、運の悪いタブンネは工場に着く前に死んでしまう。
 
 狭いコンテナの中で皆んなが悲鳴を上げるとその声は大きく反響し、ポケモンの中でも一番耳の良いタブンネには拷問に近い状態になる。それでも喧嘩になったりしないのは、タブンネが優しいポケモンだからであろうか。そもそもみんなで悲鳴を上げるのを我慢すれば拷問から解放されるのだが、誰も気づいてないのはご愛嬌。

 耳の痛さと酸欠と仲間達のブクブク太ったお腹の圧迫、更には誰かが漏らしてしまった糞尿の激臭という生き地獄に耐えながら、タブンネ達はその牢獄からの解放を待つ。

380あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:08:58 ID:AVp3Wh460

 舞台をナックルシティの工場へと戻す。

 一台の大きなトラックがその敷地へと入っていく。その大きな車体の側面には、タブンネがおいしそうにあらびきヴルストを頬張るかわいい絵がプリントされている。

 そんなかわいい絵とは裏腹、コンテナの中は地獄である。
 真っ暗な中にギュウギュウに詰め込まれたタブンネ達。
 彼等の生息地であるカンムリ雪原で、突如現れた人間達に乱暴に捕まえられては無造作にコンテナに詰め込まれ、そこからはかなり長い道のり、トラックが大きく揺れる度に悲鳴が上がる。
 誰かがバランスを崩す度に、端に位置するタブンネは圧迫され、運の悪いタブンネは工場に着く前に死んでしまう。
 
 狭いコンテナの中で皆んなが悲鳴を上げるとその声は大きく反響し、ポケモンの中でも一番耳の良いタブンネには拷問に近い状態になる。それでも喧嘩になったりしないのは、タブンネが優しいポケモンだからであろうか。そもそもみんなで悲鳴を上げるのを我慢すれば拷問から解放されるのだが、誰も気づいてないのはご愛嬌。

 耳の痛さと酸欠と仲間達のブクブク太ったお腹の圧迫、更には誰かが漏らしてしまった糞尿の激臭という生き地獄に耐えながら、タブンネ達はその牢獄からの解放を待つ。

381あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:10:45 ID:AVp3Wh460

 トラックは工場の中庭のような場所に停まると、ドシャドシャと乱暴にコンテナ内のタブンネ達をぶち撒けていく。

 今回やってきたタブンネは全部で54匹。
 内2匹のタブンネは死んでいた。一匹は脇腹が破れそこから何やら臓器がはみ出している。もう一匹は身体は無事だが、白眼を剥いてだらしなく舌を垂らしている。死体は乱雑に古びたカートに積まれ、施設内の焼却所で燃やされる。

 中庭は所々錆びた古い鉄製の柵で仕切られ、タブンネ達が居るのはその片側。皆んな四つん這いになって、肩で大きく息をしている。よっぽど息苦しかったのだろう。
 大体のタブンネは大人だがその中に4匹、大人の半分くらいの大きさのタブンネが混じっている。

 やがてどこからともなく、1匹のローブシンが現れ、小さいタブンネの頭を引っ掴んでは、ポイポイと柵の反対側へと投げ込んでいく。
 その度に何匹かのタブンネがミィミィ叫び出し、ローブシンに捨て身タックルを仕掛けるが、ローブシンはへいきな顔をしている。

 小さいタブンネが投げ込まれた側にはカイリキーとドリュウズが居る。カイリキーが1匹ずつ、小さいタブンネの手足を掴んで固定すると、ドリュウズがつのドリルで丁寧に心臓を破壊していく。
 柵を掴んで何匹かのタブンネが必死に抗議の声をあげている。さっきまで捨て身タックルしていたタブンネ達のようだ。きっとこの子達の親だったのだろう。
 この工場では子供タブンネは使わないので、死んだ子供タブンネ4匹は先程の死体同様、カートに積まれて後で燃やされる。

 抗議していたタブンネは涙を流し、他のタブンネ達は子供の断末魔を聞かないように、みんな耳を押さえている。
 子供が混じった場合はこうして親の前で殺すのがこの工場のルールだ。

 今回は48匹のタブンネが、無事にあらびきヴルストになる事ができる。

 よかったね!

382あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:11:58 ID:AVp3Wh460

 やがてローブシンの側にカイリキーとドリュウズも加わり、可動式の大きな鉄檻にドカドカとタブンネを投げ込んでいく。
 
 中庭から工場内に移動したタブンネ。今度は「洗浄室」という沢山のシャワーのついた小さな部屋に入れられ、その不潔な身体に高圧で塩素洗浄液を浴びせ続けられ、その後水洗いされる。塩素水が目に入ってしまったタブンネは失明する。

 適当に送風機を当てられ大雑把に身体を乾かしてもらったタブンネ達。
 1匹づつ耳に穴を開けられ番号のついたタグをつけられる。神経の集中した耳を傷つけられるのは相当痛いようで、皆ミギャーミギャー大暴れするが、ナゲツケサルやヒヒダルマといった屈強なポケモン達がしっかりと押さえつけるので、作業は滞りなく終了する。
 
 ナンバリングが済むと、今度は「保管室」という一面を真っ白な壁で覆われた無機質な部屋へとブチ込まれ、ここで1週間過ごす。
 水飲み場が設置され水は自由に飲めるが、大好きな木の実はもちろん、フーズなども一切与えられない。かわりに一日一回高栄養剤の注射を無理矢理打ち込まれる。腸内を空にし、この後の工程を楽にするためだ。
 1週間、身体は弱らないが常に付き纏う空腹感と、何の刺激もない環境に辟易するタブンネ達。ここを出る時は鳴く元気もなく、皆黙って人間に手を引かれるとそのまま身を任せる。

383あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:13:49 ID:AVp3Wh460

 保管室から連れ出されたタブンネ。次に連れて来られたのは「毛刈り室」。抵抗する間もなく、鉄製の拘束器具で手足をしっかり固定される。
 人間が手に持ったバリカンで丁寧にその体毛を刈っていくと、やがて地肌が剥き出しのハゲダルマのような姿になる。
 またこの部屋は側面全体が鏡張りになっている。食品となるタブンネに自身の醜い姿を見せつける為だ。
 段々と禿げ上がっていく自身の姿を見てはミィミィと弱々しく鳴き、目に涙を浮かべるタブンネ。最後の工程で尻尾を切断され、大きな耳の接合部を半分くらい切られると大きな叫び声を上げ、やがてしゅんとして再び押し黙る。
 なるべくこの過程でタブンネが死なないよう、簡単にマルヤクデやウィンディが火炎放射で炙って止血してやると。拘束されたまま次のラインへ運ばれる。


 次なる工程では人間が鋭利な刺身包丁でタブンネの下腹部を一部切り裂いていく。腸の端が完全に露出したら完成だ。
 勿論麻酔なんかかけられず、自分の身体が斬られる激痛にヂーヂー喚き声を上げるタブンネだが、体力も気力もなく、激しく暴れたりはしない。その綺麗なサファイアアイはもはや生気を失い、さっさと殺してくれと言わんばかりの表情を浮かべている。

384あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:15:18 ID:AVp3Wh460

 死んだ魚のような目をして、禿げ上がった身体を固定されたまま次の作業場に運ばれてきたタブンネ達。
 ここへ来ると皆一斉に生気を取り戻す。この作業場には沢山のタブンネが居る。
 禿げ上がった自分達とは違い、皆綺麗な毛並みをしていて、中にはかわいいリボンをつけたタブンネもいる。

 これまで登場してきたポケモン達はみんなポケジョブで集められた、いわゆる飼いポケだ。ガラルでは人間の仕事をポケモンに手伝って貰う伝統がある。
 ここに居る綺麗なタブンネ達も飼いポケで、この工場では一部の工程をこうして同胞のタブンネにやらせるのだ。

 禿げ上がった方のタブンネ達はみんなでミィミィ大合唱。
 さっきまでは早く死にたいくらいに思っていたのに、こうして綺麗な同胞達を見つけると生気が蘇る。助けてくれると期待しているのだろうか。自分達の醜い姿を恥ずかしがる余裕もない。

 しかし綺麗な方のタブンネ達は皆、禿げ上がった仲間たちの顔をなるべく見ないようにし、助けを求める声も無視して、顔を俯き落涙している。

 やがて工場員の人間が促すと、破れたお腹から腸の末端を引っ掴み、一心不乱に引き抜いていく。
 この作業をする時みんな目を固く瞑り、手はガタガタと震え大量に涙を流す。

ーごめんなさいミィ、ごめんなさいミィ

 タブンネによって引き出されたタブンネの腸は、やがて人間達が籠を持ってきて回収し、別の場所で綺麗に洗われる。

 禿げ上がった方のタブンネ達は皆
「どうして!?」という顔をして、悲しそうな目で小綺麗な同胞を見つめる。
 この状態になってもまだ生きているのが、タブンネちゃんの素晴らしい所だ。

385あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:16:53 ID:AVp3Wh460

 大きな希望を与えられた後再び深い絶望に落とされた禿げタブンネ達。
 次の部屋へ運ばれると、そこにもまた1匹のタブンネが居た。

 このタブンネは今回始めてこの工場のお手伝いに駆り出されたようだ。
 四肢を固定され、滑車でガラガラと運ばれて来た生き物を見てギョッとした顔をする。
 ハゲダルマのような見てくれで、お腹が破れ骨盤が丸見えになってはいても、この生き物が自分と同じタブンネであると気づいたようだ。


 このタブンネも勿論飼いポケ。ガラル地方でタブンネが生息するのはカンムリ雪原だけであるから、ハゲダルマ達とは同郷の同胞ということになる。
 ガラルのポケモントレーナーにタブンネを持つ人が増えたのは、割と最近のことだ。
 深い雪地帯であるカンムリ雪原まで電車が延伸されると、多くのトレーナーがこぞってそこを訪れるようになった。
 カンムリ雪原にはそこにしか生息しないポケモンが数種類居て、ガブリアスやメタグロス、ニドキングにボーマンダといったポケモンを見つけてはみんな次々と捕まえていった。そんな流れでタブンネもまたトレーナーに捕まえられる。
 
 雪原から本土に還り、ジム巡りに舞い戻るとタブンネは段々とボックスの肥やしと化していく。他のポケモン達と違いバトルで使い物にならないからだ。

 そうなると皆今度はポケジョブにタブンネを送り出すようになる。その流れである日、一人のトレーナーがこの工場の依頼にタブンネを向かわせた。
 工場の人達は最初大困惑。何せここはタブンネを食品加工する工場なのだから。
 仕方なく途中の工程をタブンネに手伝わせる。するとどうだろう、タブンネが手伝った商品は今までとはまるで別物、絶品の美味しいあらびきヴルストが出来上がったのだ。

 それ以後、工場長は喜んでタブンネの依頼を募集する。
 ガラル地方ではポケモンが人間のお手伝いをするのは当たり前のことだから、普通ポケジョブの報酬はわずかばかりの金銭か、気持ち程度のアイテムが貰えるくらいである。
 しかしこの工場に、仮に一匹だけのタブンネを四時間だけ送り出しても、¥10,000もの報酬を貰うことができ、多くのトレーナーは嫌がるタブンネを何度もこの工場へ送り出しては、ニチャニチャ顔で私福を肥やしていく。

386あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:18:45 ID:AVp3Wh460

 舞台を現在の工場へと戻そう。

 タブンネと同じ部屋にいる監視員がハゲダルマの千切れかかった耳を指差して
「さあ、タブンネちゃん。このお耳を思いっきり引っ張って引き千切ってね。」

 タブンネは涙を流しながら、首をブンブン横に振ってイヤイヤしている。

すると監視員
「手伝ってくれないのかなタブンネちゃん。だったら飼い主さんに言いつけてキツく叱って貰うことにするけど。」

 その言葉を聞くとタブンネはビクッと背筋を伸ばし、顔を強張らせる。
 このタブンネはつい最近まで雪原で野生として過ごし、トレーナーに捕まえられたばかりで、勿論虐待なんて受けたことはないのだが、何故かこの類の言葉は効果的面である。
 
 雪原に住むタブンネ達は何故か皆人間を極端に恐れている。
 タブンネだってポケモンなのだから、素手の人間と一対一で本気で戦えば勝てるような気もするのだが、タブンネというポケモンは何故だか人間を怖がるように、DNAレベルで刷り込まれているようだ。
 ご先祖さまになんか悲しい過去でもあったのかな?

 タブンネは重い足取りでハゲダルマに近づくと、意を決した顔をして震える手でその耳を掴む。
 ハゲダルマの方も何をされるか察したようで、ミ゛ーミ゛ー喚いて懇願の目を耳元の同胞へと向ける。希望と絶望を何度繰り返しても、耳を千切られるのだけは物凄くイヤなようだ。さすがはヒヤリングポケモン。

 タブンネは目を固く瞑り、ミィー!と気合を入れると、思いっきり仲間の大切なお耳を引き千切る。

387あらびきヴルスト製造工場:2021/01/27(水) 11:21:20 ID:AVp3Wh460

 その後次々と運ばれてくる同胞達の耳をひたすら千切り続け、ようやくお手伝いを終えたタブンネ。
 監視員はそのかわいい頭を笑顔でナデナデしているが、タブンネはヘタり込んで肩で息をし、大量のお漏らしで床を汚して涙をながしている。
 タブンネちゃんは本当に優しいポケモンさんなんだね!

 
 その後の作業は簡単。耳無し毛無し尾無しのタブンネは両手だけ拘束を解かれ、今度は逆さ吊りにされるとキリキザンが器用に頸動脈を切り刻み、血抜きをされると三十分くらいで絶命する。

 死んだら大きな機械に投げ込まれる。粗めのミンチにされ、更に別の機械でフィラのみやザロクのみといった香辛料と塗されていき、しっかりと加熱処理される。
 出来上がったミンチをゴム手袋をした人間たちが丁寧に先程の腸に詰めていくと、後はパッキングされて美味しいあらびきヴルストの出来上がり!

388あらびきヴルスト製造工場(エピローグ):2021/01/27(水) 11:22:33 ID:AVp3Wh460

 ここは長閑な田園風景が広がる街、ターフタウン。

 その外れにある4番道路という場所に、テントが張られている。
 一人の女の子トレーナーとその相棒達、エースバーン、アーマーガア、ワタシラガにシャワーズが嬉しそうに遊んでいる。彼女の自慢の相棒達だ。

 おや、よく見るとテントのそばに、一匹だけ元気が無さそうに座り込んでいるポケモンがいる。ピンクのチョッキ模様をしたヒヤリングポケモン、タブンネだ。
 シャワーズがタブンネの元に歩み寄り、一緒に遊ぼうと誘うがタブンネは静かに首を振り、その誘いを断った。

 このタブンネ、1ヶ月程前にこの女の子に捕まえられ、飼いポケとなったまではよかったものの、ここ2週間くらいは毎日のようにポケジョブと称し人間の仕事場へ駆り出され、あろう事か同胞を痛めつける仕事をさせられ、とても遊ぶ気分になんかなれないようだ。

 しかし数分後、タブンネは小さい鼻をヒクつかせると顔をあげる。
 どうやら飼い主さんがポケモン達の為に、カレーを作ってくれてるようだ。
 そういえばここ何日かなにも食べていない。カレーの美味しそうな匂いを嗅ぐと、タブンネもお腹を鳴らして飼い主さんの元へと歩き出す。

「ごめんねタブンネちゃん。ここ最近働かせてばかりで。タブンネちゃんの分を一番最初によそってあげるから、いっぱい食べてね!」

 優しい飼い主さんの気持ちに触れ、タブンネも少し元気を取り戻したようだ。他のポケモン達も、そんなタブンネの様子を優しい笑顔で見つめている。タブンネは少し照れ臭そうにはにかむと、女の子からお皿を受け取る。

「今日は辛口ヴルストのせカレーだよ!」

「ミ゛ィヤァーーーーーー!!!」

   (おしまい)

389あらびきヴルスト作者:2021/01/27(水) 11:34:58 ID:AVp3Wh460
本編1ページ目二重投稿ゴメンネ。

長編SSの更新、楽しみに待っておりやす!

390名無しさん:2021/01/27(水) 19:35:08 ID:fQe6QE5o0
>>389

やっぱりヴルストと言ったらタブンネちゃんを思い出すよね

391ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/28(木) 16:00:28 ID:vhC4ms0g0

 テッカグヤが遊んでいる界隈、脚無しのチビを抱えながら走り回る成タブの姿がチラホラと見られるようになってきた。
 愛情から来る行動でもあるだろうが、守るべきチビが他に居なくなったことが最たる理由だろう。

「チィ...チィ...」
「チビお姉ちゃん、しっかりするミィ!必ず後でニンゲンさんがあんよ治してくれるミィ!」

「おにいちゃ、、キモチわるいチィ...」
「ごめんミィ!今はバケモノから逃げないと...!ちょっと揺れるの我慢してミ!」

「マ、マ..なにもみえな・・・」
「ミ゛ミッ⁉︎頑張るミィ、チビちゃん!今ママがいやしのはd・・」

ボンッ!    「...マ...?」    

 最後の生き残りチビを抱えていた一匹のママンネが、立ったまま絶命してしまう。背中一面が爛れ、口から僅かに白煙を吐いている。
 ひとしきりチビを虐めた悪魔は、今度は保護者の破壊を始めたようだ。

ドッ!ドッ!ドッ! ・・・・

 テッカグヤは次々と手に光の弾を作っては、手負いのチビを抱き、ただでさえ遅い脚が更に遅くなったタブンネ達に次々命中させていく。テッカグヤからすれば大分威力を落としているのだが、命中したタブンネ達は皆即死するか致命的な重傷を負っていく。

392ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/28(木) 16:03:02 ID:vhC4ms0g0

「...ミ゛..」「ミボハァッ!」「・・・」
「チビちゃ...にげ...ミィ...」
「いだミィ...だれか、だれがたすげて...」
「ミブルルルッ」「・・・」

 盛大に吐血するタブ、息絶えたタブ、背中一面の皮膚が破れ骨や臓器が露出するタブ、横腹が千切れタブ....。様々なバリエーションで横たわるタブンネ達。

「チィ!チッ、チビッ...」
「チィ?...チィ...」   ・・・・
 介抱されていた立場一転、地面に投げ出され、すぐそばに横たわるパパママ、お兄ちゃんお姉ちゃんを虚な目で眺めるチビンネ達。牧場産まれ、お花畑思考の弱タブといえど、聴覚は優秀。いつも聴こえていたはずの心音が著しく弱っていることと凄惨な傷を見ては、本能的に両親兄姉の状態を悟ったようだ。皆さめざめと涙を流している。
 実にいじらしい光景だが、きっと大丈夫。自身の重い傷を治してくれる存在がいなくなったということは、じきに同じ所へ行き、再会できるだろう。


 広大な牧場のまだほんの一画ではあるが、一通り遊び終えたテッカグヤ。次は無防備に放り出された、一定間隔で並んでいる簡素な巣穴に目をつけたようで、不気味な笑みを浮かべながら大きな巨体を移動させていく。

393ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/28(木) 16:06:53 ID:vhC4ms0g0

 幾多も並ぶ小さな巣穴。
 少し乱れたシーツや毛布を残すのみとなった場所。乳飲児のベビンネ達、数個の卵が放置されている場所。その数半々くらいであろうか。

ヂィッ!ヂィ--!...
 まだ産まれて間もないくらいのベビ達は、皆オシッコや軟便を垂れ流し、シーツや下腹部一帯を茶色く汚している。まだタブ語にもなっていない鳴き声で訴えるのは下腹部の不快感か、糞尿の悪臭が嫌なのか、それともおっぱいをせがんでいるのか。

「ママ、どこにいるチィ?」
「おっきなおと、コワイよ、ママ」
「おっぱいのみたいチィ、おなかすいたチィ」
 人間や両親の手を借りて歩く練習を始めた齢のベビ達は、チィチィ鳴いてはママや人間を求めて必死にハイハイして移動しようとしているが、干し草の上にシーツや毛布という不安定な足場、うまく進むことができず皆その場でモゴモゴと蠢いているだけである。

 
 テッカグヤがそこへ近づいてくる。目が見えているベビは勿論、そうでないベビも耳や触角はある程度発達しているようで、みな声を潜めてはガタガタと震え出し、小さな手で毛布やシーツを掴んだり、兄弟ベビと固く抱き合ったりしては、メソメソと涙を流し出す。

394ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/28(木) 16:10:08 ID:vhC4ms0g0

 テッカグヤは一通り巣穴を見渡すと、生命体の存在が見受けられない箇所はスルーし、小さなオモチャが蠢く場所に大きな両手を向け、火炎放射とも呼べないような、火の粉くらいの炎を吐き出す。

 ボッ!   ・・・
バチバチバチ ゴォーーーー!
 衛生的でよく乾燥した干し草、シーツ。火を放たれると瞬く間に引火しては轟音と共にけたたましい火柱を上げる。
 テッカグヤは次々とベビ、卵の居る巣に向け火を放っていく。

パーン!パーン!...ヂィッ!ヂィ--!..
「ママ゛ァー!アツイチィ!」「た...だすけ...」「ギャヂィーー!けしチィー!」
「ニンゲンさ、、おみず...み..ッ」
 業火に飲まれ卵は次々と破裂していき、小さな身体のどこにそんなパワーがあるのか、ベビ達は大声で断末魔や助けを求める悲鳴を上げる。
 次々と火柱が増えていくが、各巣穴一定の距離を隔てていることが功を奏し、幸い牧場全体が大火事になるような惨事には至らない。

 四方八方散らばっていた残存タブ達の中に足を止め、目に大粒の涙を浮かべながら火柱を見つめる集団が現れ始める。最後の叫びを上げたベビ達の親、兄姉達のようで、耳が良いことがここでは災いし、その悲鳴を拾い聴いてしまったようだ。
 緊急事態で致し方なしの判断だったとはいえ、いざ我が子の悲鳴を聞くと強烈な罪悪感が込み上げてきたのだろう。タブンネなりの懺悔なのか、皆両手を胸の前で合わせたり、チビンネは地面にひれ伏すような体勢をとっている。皆フルフルと身体を震わせ、ミィチィ悲しい鳴き声があちこちで木霊する。

395ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/28(木) 16:14:39 ID:vhC4ms0g0

 テッカグヤが放火遊びを始め、徐々に屋舎からの距離を広げていく間、その巨体の右後方、遊具や木々がやや密集している箇所に、2,3組のタブ集団が集まってきて、何やら企んでいるようだ。


 言葉を重ねるがこの牧場は頑丈な金網のフェンスで囲われ、それは果てまで続く。
 屋舎側の一面も同様だが、その丁度中央、幅1.5メートルくらいのゲートがあり、人間やタブンネにとって、つまりそのゲートが唯一牧場と外部の出入りを可能にする場所となる。
 普段ここは開放超厳禁。野生の捕食種が侵入すればどうなるかは目に見えているからだ。しかし今、ゲートは開いている。自分達人間が避難した後、続々とタブンネ達もついてくる未来を想像していた最後の避難飼育員が開け放してくれたからだ。
 ゲートを出て10メートル程進めば、人間の居る屋舎の扉の一つがある。そういう地理を、殆どのタブンネが理解している。


 集結タブ集団。そこにベビを抱いた1匹の成タブ、必死に走ってそれについて来た50センチくらいのチビ2匹がやって来て輪の中に加わった。
 すると別の成タブ1匹が「ミィッ!」と気合の入った掛け声を上げ、大集団で屋舎へ向けトテトテと駆け出した。

 どうやらこの集団、大所帯の一家族のようだ。パパママ、遠目から見ればわからないが、親よりほんの少し背の低い長兄長女、50センチチビが3匹、30センチ強のチビが4匹。パパママ、長女は手にベビを抱き、長兄は卵を抱いている。

 一旦はバラけた家族であったが成タブ4匹を中心とした4グループで行動し、大きなバケモノの隙を見計らい、一家この場所に再集結し、屋舎へ逃げる算段を立てていたようだ。
 中々統率の取れた家族だし、出口が一ヶ所しかない以上、テッカグヤの隙を窺いそこを目指す方法はかなりベタであると言える。
 しかし最後の過程でわざわざ一家集結するのはどう考えても悪手である。自力で走れタブだけで数えても11匹。遅い脚にピンクの体毛、目立たないワケがない。

396名無しさん:2021/01/28(木) 19:08:28 ID:9YnwpJFM0
残された赤ちゃんタブンネ達まで丁寧に描写して頂いて乙です

料理系SSだと生まれたばかりを揚げたり焼いたりは鉄板のベビンネならではですね

397ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/29(金) 17:57:39 ID:edEWkb1g0

 家族が集結した地点からゲートまでは直線距離でおよそ40メートル。身重のタブンネやチビンネからすれば結構な距離である。
 成タブ4匹が先頭、50センチチビが少し遅れだし、30センチチビがさらに遅れだす。成タブは皆真剣な表情。チビ達は恐怖や疲労からか目が潤み、涙する者もいる。

 家族が動き出して間もなく、テッカグヤは愉快な火遊びの手を止め、家族の方へ今日一番の速度で向かい出す。視界の隅に捉えたのか、足音や荒い呼吸に気づいたのか。
 ピンクの集団を追いながら、その大きな右腕は僅かに紅潮し、ややではあるが湯気をあげている。

 テッカグヤはそれ程スピードがある訳では無いが、身重タブのそれに比べれば充分速い。やがて先頭集団に追いつくと力を溜めていた右腕を思い切り振り回す。

ゴッ!  トテトテトテ....バタッ 「ヂッ!」

 渾身のばかぢからがパパンネの顔面を吹き飛ばし、目や耳、歯茎、顔のあらゆる部位が細切れで辺りに飛び散る。
 顔なしとなったパパはその姿のままヨタヨタと数十歩前進したが、前のめりに倒れ、腕に抱いていたベビを下敷きにし殺めてしまった。

 ママ、長兄長女は足を止めず、表情も崩さない。しかしパパの亡骸に追いついたチビのうち、4匹が足を止め、チィチィ泣きだした。
 ママは顔半分だけチビの方へ振り返ると、走る速度を少し緩め(本人はそのつもり。そもそもの最高速度がおっそいので、そのスピードの変化に気づくタブンネ以外の生き物はたぶんこの世に存在しない)
「パパとベビちゃんは助からないミィィ‼︎いいからチビたちはママについて....ミミィー⁉︎ベビちゃん⁉︎」
 スピードを緩めたのはともかく、前方不注意というのはとっても良くない。エアスラッシュがママの腕ごとベビに襲いかかり、乳飲児には致命的な傷を負った。

「チヒィ...チヒィ...」
 ママは慌ててベビを芝生の上に寝かせ、両手を翳し、いやしのはどうの姿勢をとる。自身の両腕からも血飛沫が噴き出すが、お構い無しという様子だ。
 今自分がチビ達に言わんとした事と矛盾しているし、強烈な悪意と対峙している現状況を考えれば悠長な行動だ。ただ自身の腕の中で赤児が命の危機に瀕していて、母親が咄嗟に取る行動としては、正しいことのような気もする。

398ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/29(金) 18:01:08 ID:edEWkb1g0


「ママ!!」
 一喝の叫びを上げたのは長兄ンネ。足を止め、後方に振り返る。やがてそこまで追いついた50センチチビのうちの1匹に自身の抱いていた卵を託すと、ズンズンとテッカグヤの元へ歩み出す。

 ママはキッとした顔つきに戻ると、寝かせた瀕死ベビを再び抱え、ゲートに向け走り出す。ベビはタブンネのいやしのはどうでどうにかなる容態ではない、人間の医師による本格的な治療が要る。今自分が取るべき行動は屋舎を目指し、全力で走ることだ。
 一足先、長女ンネは相変わらず足を止めず、真剣な表情を崩していないがその両眼からはボロボロと涙を流している。同じ時期に産まれ、野生生活と牧場生活、苦楽を共にしてきた片割れの兄の意図を読み取ったのだろう。何としても自分自身と胸に抱く小さな弟で逃げ切る意思を固める。

 長兄ンネはテッカグヤの正面に立った。その可愛い右腕を巨大な悪魔に向けると

「聞くミィ!バケモノ!ここはタブンネとニンゲンさんの、平和なおウチだミィ!おまえは立ち去れぇっ!ミィッ!これ以上ミィの大切な家族や仲間たちをイジメるのなら、ミィをたおs..

ドコン!

 未婚のメスタブが聞いていたとしたら惚れてまうこと確実なセリフは、最後まで聞けなかった。
 
 テッカグヤが片腕で地面を叩くような素振りをすると、鋭利な岩刃が地面から突き出し、長兄ンネのタブ肛門とタブチンチンの間からその身体を突き破り、貫通こそしなかったが先端は脳天にまで達し、串刺しになった身体は地上3メートル位の高さまで持ち上がる。
 尾を激しく左右に振り、両耳に両腕、両脚を前後にバタバタと動かし、白目を剥き、小さな鼻や口から赤やピンク、黄濁の混じった半固形の液体を激しく噴き出し、やがてそのままストーンエッジの頂点で息絶えた。

399ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/29(金) 18:03:59 ID:edEWkb1g0

 瞬く間にやられてしまった勇敢な長兄。しかしながら彼の命を賭した戦いは決して無駄ではなかった。
かもしれない

 兄の戦いには目耳を向けず、必死に歩みを進めた残り家族ンネ達。
 ベビを抱いた長女が先頭、先程よりも距離を詰めたチビ達がその背中を追い、一悶着あって遅れを取った、瀕死のベビを抱いたママンネが最後尾につくタブフォーメーション。
 屋舎の牧場側の各窓に張りつく従業員達、また扉を半開きにし、必死にタブンネを励ましながら手招きする飼育員。

 その声援は長女の耳にも届いている。ゲートまであと2メートル、1メートルと距離を縮め、腕に抱いたベビがそこへ差し掛からんとした時、安堵なのか気合いなのか、「ミッ!」と長女が雄叫びをあげ、いよいよ第一生還タブ誕生かという刹那

ガラガラガラガラガラ・・・

 直径7,80センチはあるだろう大きな岩が大量に空中に現れ落下し、長女と追随チビ7匹全員をその下敷きにする。まるでこのタイミングを見計らったかのようだ。
 ブチャッ!ブチャッ!と肉を潰す音を響かせた後、一瞬「ミ」という短い悲鳴が聞こえた。
「ーーーーーーッ」
 落石から唯一逃れたママ。発する言葉も無く、芝生の上に短いタブヒザをつく。無意識的に触覚で確認する心音。確かにそこにあった筈のチビベビのそれは感じられず、長女のそれはみるみる弱っていく。数秒後死ぬことがママにも理解できるほどに。

ポッポッポッ ザシュ!ザシュッ!ザクッ

 ママの傍までフワフワとやって来たテッカグヤ。やどりぎの種を植え付け身動きを封じた後、完全に立つ意思を失った両脚を綺麗に切断。ワザと浅く、頚動脈へもエアスラッシュを放つ。

「ヂッ....ヂッ...」「......ミィ......」
暖かいママの胸を離れ、地面に投げ出されたベビンネ。まだ目も開いてない齢、それでも重篤な身体に鞭打って必死にママに向け何かを訴え鳴くが、ママはそれには応えない。完全に生きる意欲を失ったようだ。失血が先か宿木が先か、ママもベビもきっと後で家族と同じ所へ行けるだろう。

400ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/31(日) 02:37:33 ID:8pzBNc/I0
 絶句するしかない屋舎の人間たち。
 人間は人間でただ黙って殺戮を見ていた訳ではなく、テッカグヤの位置を見計らって、せめてゲート付近へ来た子供だけでも救出に向かおうと機を窺っていたのだが、テッカグヤの行動範囲から、中々タブンネ達が屋舎側へ寄れなかったのだ。ゲートが大量の岩で埋められた今、もうそんなチャンスすらやって来ない。

ミギィーー! ミィャーー! ・・・・

 ゲートが塞がれたことに絶望するのは人間だけではない。実はタブンネの中にも、逃げ惑いつつも出口へ向かう機を窺っていた者は結構いたのだ。先の大家族とはゲートを挟んで逆サイド、2,30匹のタブンネがいつのまにか集まっていた。
 しかし一部始終の殺戮と塞がれた出口を見てパニックを起こし、大声で喚き散らしながらまたドタドタ走り回る。
 元々出口のことなんか頭に無く、最初からパニクってたバカンネ達はパニックの2乗といった様相で、静まり返った人間と違い牧場は非常に賑やかだ。


 集まっていたタブンネ達の大声に気づき、そちらを見やるテッカグヤ。これだけ広い敷地でありながら、偏った分布、先程の集団の行動....。
 どうやらテッカグヤ、ここの出入り口がさっき岩雪崩で塞いだあの小さな隙間一ヶ所であることを察したようだ。
 薄気味悪く、表情を歪ませる。一瞬だが意表を突かれ、せっかく遊んでやってるのに、コソコソと脱出を企てられたことに些か機嫌を損ねたようだ。

 鉄蹄光線か破壊光線かわからないが、両手に怒気を孕んだ巨大な光を集める。今までの攻撃とは比にならないすさまじいエネルギーだ。バチバチと音を立てて、周囲の芝生が落雷に撃たれたごとく真っ黒に変色している。パワーが熟したところで、ポテポテと駆け出しバラけ始めた集団に両腕を向けると

ドーーーーーーーーーーーン!!

401ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/31(日) 02:39:37 ID:8pzBNc/I0
 轟音と共に直径4,50メートルの光がタブンネの集まっていた辺りやその周囲広域を包む。
 
 やがて光は消え去るも、濃い白煙や土埃が舞い上がり、なかなか現場を確認できない。

 さっきまでミギャーミギャー騒いでいた残りの生存ンネ達も皆押し黙り、固唾を飲んでそちらを見る。自然現象ではあり得ない程の爆音と衝撃。彼らの感情は恐怖というよりも、興味というそれに近いのかもしれない。

 徐々に煙が晴れる。辺り一面の芝生は一切捲り上がり土色を見せ、その中にちらほら、尾や耳、腕に脚、かつてタブンネだったモノの一部が散らばっている。
 
 直接光線を受けなかった者も爆風で吹き飛ばされフェンスにぶつかったのだろう。フェンス前にはコウベを垂れ、僅かに舌を出し絶命しているタブが数匹転がる。敷地の外まで吹き飛んだタブも2,3匹居るようだ。どれも毛皮の一部や身体の一部が完全に捲れるか消え去るかしている。
 それら残骸を含めても数が合わない。どうやら40匹以上のタブンネが跡形も無く消し飛んだようだ。


フゥーーー!フゥーーーーー!

 静寂に包まれた牧場の沈黙を破ったのはテッカグヤ。今日一番のボリュームで薄気味悪い雄叫びを上げ、またも不敵に笑みを浮かべる。全力の攻撃と殺戮で幾ばくか鬱憤も晴れたようだ。

「ミ、ミミ゛ィーーーーーーッ!!」
「ミヒャーー!」「ミバギャーー!!」

 静観と発狂を繰り返すのはここ数十分で何度目だろうか。圧倒的な攻撃と凄惨な残骸を見て、また喚きながらドタバタと走り散らかすタブンネ達。

 野生時の他種からの襲撃でもあり得ないような惨状。無理もないかもしれないが、今までよりも大きな混乱。ベビや卵を抱いていた親ンネはそれらを放り出し両手をバタつかせ、親子で固まっていた集団も完全にバラけ、大タブ小タブみんな涙に尿、糞を撒き散らしながらあちこちを走り回り、まさにカオスといった様相だ。

402ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/31(日) 02:43:03 ID:8pzBNc/I0
 そんな中、何匹かのタブンネが金網のフェンスの一ヶ所に集まって来て、ガシガシとそこにしがみつき、「ここから出して!」と言わんばかりに泣き喚いている。
 今まで何度も自分達を守ってくれた金網。マニューラのしつこい辻斬りやユキノオーの本気のウッドハンマーでも傷一つ付かない代物だ。タブンネの力でどうにかなるワケないのだが、みんなここを破らんとばかりに引っ掻いている。
 やがて「ミィもミィも!」みたいなノリで他のタブ達も集まって来て、10数匹のタブが固まってガチャガチャ大きな音を立てる。

 今の状況で冷静になれというのはタブンネじゃなくても難しいだろうが、この金網にしがみつくという行為が良くなかった。

 手当たり次第、色んな技を駆使してタブ殺しを楽しんでいたテッカグヤ。この哀れな金網タブ達に気がつくと、不気味な笑い顔でそこに両腕を向け、火炎放射を撃ち放つ。

 成タブの体力を考えればテッカグヤの火炎放射自体は即死や即致命傷になるような威力ではない。
 しかしこの網、クイタランやブーバー系統を意識して作られた耐熱性。科学の力って凄いもので、摂氏2000℃の炎を数分間浴びせ続けても溶け出さない代物だ。
 集中的に火炎放射を浴び続けるとその温度はある点を境に加速度的に上昇し、手に体重を乗せていたタブンネはそこから順に身体があっという間に溶けて無くなり、断末魔を上げる間もなくこの世から消え去った。

 テッカグヤが火の手を止めると、そこには魔界の炎で焼かれたかの如く黒い影だけが残る。金網に黒い模様がつくその様はまるで何かのアート作品のようだが、よく見るとカタチがタブンネなので、悲惨なのに笑えてしまうのが非常に気の毒だ。

403ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/01/31(日) 02:45:34 ID:8pzBNc/I0

 その後もあらゆる手段を尽くし、ピンクのオモチャ達を蹂躙していったテッカグヤ。

 テッカグヤ襲来時点、タブンネ達に充てがわれた巣の数は「51」に登り、居住タブはおよそ400近い数字であった。
 現在おそらく40番の巣あたりまでのタブが死亡。テッカグヤにも若干だが疲労の色が見え始める。


 時折触れて来たが、この牧場内には随所、木が植えられている。野ざらしの敷地の為、強い日照時を考えタブンネに日陰を用意してやることと景観保持が主な目的だ。
 牧場内には2ヶ所、横一列に木々が密集する箇所がある。要は防風林の役割で、20番と21番の巣穴の間と、40番と41番の間にあり、つまり牧場は上空から見ると、屋舎側・中央・いにしえの墓地側3ブロックに分かれることになる。

 これまでテッカグヤとタブンネが遊んでいた場所は全て屋舎側のブロック。避難が遅れながらも殆どのタブンネが屋舎近くまで進んでいて、強敵襲来後、引き返す事を試みタブも居たが遅い足が災いするなど、何やかんやで殺されて今に至る。


 屋舎ブロックに居たタブンネ全員と戯れ終えたテッカグヤ。中央ブロックに差し掛かる数メートル手前で、一度立ち止まった。
 20-21間の防風林から、何やらチィチィ木霊する声が聞こえてくる。木々をよく見ると、各所の木陰に身体を隠し、顔だけ出してテッカグヤを覗き込む10数匹のチビンネが居る。
 
 このチビ達は21-40、皆中央ブロックに住む家族の子供だ。
 異変に気づき、大声で帰ってくるよう促すパパママのタブボイスに耳を貸さず、いつまでも遊びに没頭していたチビ達で、痺れを切らした家族に置いていかれ、気がつくと林の向こう側で大きな音や悲鳴が鳴り響き、おウチに帰っても誰も居ない、言わば急造みなし子チビンネといった個体である。

404ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 15:56:36 ID:vyLKK.qA0
「チィ〜」「チィ、チビィ?」「チミィ...」
 皆小さな身体を木陰に隠しては居るがキョトンとした表情で、初めて見る大きい生き物を見つめている。怖くはあるんだけどついつい心霊番組を見てしまう人間の子供の感覚に似ているだろうか。
 タブ好きの人が見れば悶絶モノの光景なのだろうが、この状況では完全なアホである。やはり過保護というのは良くない。おそらく自分のパパママがとっくに御霊タブとなっている事もまだわかっていないだろう。

・・・まあ暇つぶしにはなるか

 テッカグヤは両腕を上げると、真空の刃を放ち端から順に木を切り倒していく。
ズシーン!ズーン!...
 大きな音を立て順に倒れて行く木々。やがて一番端側に居るチビンネの隣の木が倒れると

「チィーーッ!」   トテトテ...
 一つ内隣の木まで移動し、また身体を隠し、顔だけちょこんと出してテッカグヤを見つめるチビンネ。かくれんぼでもしている感覚なのだろうか。
 テッカグヤは逆側も同じように、端から少しずつ木を倒していった。
 やがて防風林としての機能は無くなり、中央に5本の木が残り、その陰に2,3匹ずつチビンネが隠れている、よくわからない状況が出来上がった。木に隠れることに拘る意味があるのだろうか。子供は健気である。
 チビの内訳を見ると小さいのは25センチくらい、大きいので40センチ弱、計12匹居る。巣が近いことから顔見知り、普段からの遊びタブ仲間のようだ。

・・・なんかバカらしくなってきた

 テッカグヤは右腕で地面を叩くような素振りをする。

ガタン!ガタガタガタ...

 周辺の地面が大きく揺れ、地盤がぐらぐらする。テッカグヤは何度も右手を上げ下げし、しつこくじならしを繰り返す。

405ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 15:58:51 ID:vyLKK.qA0
 繰り返される激しい縦横の振動にチビンネ‘sはみんなズッコケて、可愛いお腹やお尻をポヨンポヨン弾ませながら地面にバウンドする。
 やがて足場を崩した残りの木が全て倒れたところで、テッカグヤは手を止める。

「チビャー!」「チビィー!」

 大事な隠れ蓑を失ったところで、チビ達は叫びながらトコトコ駆け出し、大きな生き物から少し距離を置いた所にみんなで固まり、澄んだ瞳でその生き物を見つめる。
 うっすら涙を浮かべるチビも居るが、恐怖から来るものでは無く身体の痛みからであろう、ぶつけてしまった顔やお尻に手を当てている。なんだか楽しそうな気配を醸し出す子さえいる。とても平和な光景だ。

 テッカグヤは再び腕を振り下ろす。ガラガラと音を立てて大きな岩がチビの周りを取り囲む。
 直径3メートルくらいの空間に閉じ込められたチビ達。チィチィ叫びながらペシペシと硬い岩を叩いている。
 テッカグヤが徐にその上に現れる。大きな腕を健気なチビ達に向ける

 シュッシュッシュ...

「チヴァァーー!」「ヂミ゛ィッ!」....
 エアスラッシュという技は実に便利である。
 真空の刃がチビの両腕、両脚、両耳を次々ちぎっていき、大量の鮮血を撒き散らす。半数、6匹が芋虫の様な姿になったところで撃ち方やめ、テッカグヤは不気味な笑みを浮かべてその場に佇む。たいへん器用なテッカグヤだ。

ピィー...ピィー... ...ヂ...ヂ...
....チビッ.... ヒュー...チヒュー... .....

 芋虫チビ達は自分の身体を傷つけられて初めて、動物的危機感を感じ始めたようだ。しかし呼吸をするのもやっとの状態になってきた。
 耳を押さえ、ガタガタと震えながらへたり込んでいた無傷チビ達であったが、攻撃が止んだことに気がつき顔を上げると
「チィッ!」「チィチィ!」みな近くで横たわるお友達や兄弟を見て、傍に座り込んで両手をかざす。ママの使ういやしのはどうを真似してるようだ。
 もちろん手から波動なんて出ないのだが皆真剣な表情、「ボクが治してあげるからね!」と言わんばかりである。
 
思いやりの強いポケモンだ。

406ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:01:27 ID:vyLKK.qA0

 必死に看病するチビ。瀕死の重傷を負いながらも辛うじて呼吸をし、なんとか生命を維持するチビ。それを傍らで見守る心優しいテッカグヤ。

 しかし段々飽きてもきたし、体力も回復して来た。テッカグヤはその巨大な両腕の先端の触手で1匹ずつ看病チビを摘み上げる。
 残った4匹の無傷チビ達は両手を伸ばし、かえしてかえして!とでも言うようにチィチィ鳴きながら、その場でピョンピョン跳ねている。
 テッカグヤは猛スピードで、そのまま上空へと飛び上がった。グングンと高度を上昇していき、1,000ftくらいの高さで止まる。地上から見れば豆粒くらいの大きさだ。
 両手チビはこのサイズでも10kgくらいはあるだろう。仮にこの高さから自由落下すれば地上に達する時の速度は...

・・・各々で計算してみてほしい

 チィッ!チィチィ! 両腕のチビンネ、触手の中でバタバタと暴れている。急激な高度変化に気絶しなかったとは大したものだ。はなしてはなして!と訴えるように鳴き声を上げる。ならば放してやるのが道理。テッカグヤはパッと触手の力を緩める。

「ヂィーーーーーーッ......ッ..........」
「チヒィーーーーーーー.................」

・・・・・・

ズドーーーーーーーーーン!×2

 地上チビ達の岩場の左右数10メートル先、何処までも深い穴が2つ出来上がった。きっと身体中の骨が粉々、速やかに土に還れることだろう。
 テッカグヤ、実は岩場の中に落とすことを狙っていたのでちょっぴり残念そうだが、ゆっくりと残りのお友達の待つ地上へと戻っていく。

407ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:03:54 ID:vyLKK.qA0
 だんだんと高度を落とし、ちっちゃなお友達の待つ岩場へと戻ってきたテッカグヤ。6匹居たチビ芋虫ンネのうち、2匹は死んでいた。残りの4匹はもう声も出さず、微かにお腹を上下して、なんとか呼吸している。
 
 まだ遊んでやってない4匹のチビは、皆頭を抱えてヘタり込んでいる。落下チビの上げた激しい轟音、それが聴覚の鋭敏なタブンネには相当効いたらしく、体力の未熟なチビ達はおそらく脳震盪に近い状態になっている。

 テッカグヤは再び触手で1つずつ、脳震チビを摘み上げる。「チッ..チビッ...」と僅かなレスポンス。それではつまらないので、両腕を思い切りグルグルと旋回させる。

「ギヒャーーー!チゴブルルッ...!」
「ヂィーーー!チゴポッ・・・・・・」

 高速でブン回されるチビ。オヤツの時間に与えられたきのみジュースを戻してしまい、小さなお口から汚い液体を撒き散らす。片方は吐瀉物を誤飲してしまい、触手の中で死亡してしまったようだ。
 テッカグヤは頃合を見て握力を緩める。メジャーリーガー顔負けの豪速球が敷地の外へ解き放たれる。

「チボファーーーーァーーッー.....」

 ガシャッ!   ベシャッ!

 猛スピードの舞空術を見せつけた2匹のチビ。その身体は金網を貫通し、敷地外に着地した。
 金網には僅かな毛皮片と血痕が2ヶ所残り、牧場の外には網目の形にトコロテン状に加工されたピンクと赤が混じったミンチが2つ転がっている。1匹は既に死んでいたが、最期にお空を飛べてさぞ楽しかったであろう。


「チィ、ヒッ。」「チィチィッ、チビッ。」
(もうヤメて) (ボクたちをイジメないで)
 
 テッカグヤが岩の中を見やると、残り2匹の五体満足チビがシクシクと涙を流している。別に遠慮する事はないのだが、テッカグヤはその言葉に応えて彼等とは遊ばないことにしたようだ。
 もはや職人技と言っていいだろう、軽いエアスラッシュを放つと2匹の首筋と大腿部の付け根、太い動脈の走る箇所に綺麗な切り込みを入れ、お別れの挨拶としてやどりぎを植え込み、その場を後にした。

「チ...チィッ!.....ブギャーー!ビガァーー!」
「チフッ、ヂフッ...。..チボァーーーーーーーッ」

 コワイ生き物が立ち去った安堵、突如絡みついてきた不快な蔦、それを振り解こうとしてもがいた途端噴き出した鮮血と激痛。
 最後まで愉快なリアクションを見せてくれた2匹のチビンネ。バタバタと動く度に血が飛び散り、元気な叫び声を上げる。暴れれば暴れるほど失血の速度が早まるが、早く苦しみから解放される意味では最善の行動かもしれない。

408ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:06:53 ID:vyLKK.qA0

 時を遡ってテッカグヤがみなし子チビンネと遊び始める少し前、中央ブロックでは大小30匹弱のタブンネ達が小さいタブ脳をフル回転させ、あたふたと思慮を巡らせていた。

 このタブンネ達は皆いにしえの墓地側に住んでいて、比較的野生を離れてからの日が浅い者達である。
 テッカグヤがマックスダイ巣穴に現れた時点でその存在を聴覚で確認し、人間が叫び声をあげるや否や、すぐさま避難を始めた。
 言葉の詳細はわからずとも、不気味な生命音が迫って来る事は察知できていたし、人間の意図が「建物へ逃げろ」というモノであると理解することができたのだ。
 慌ててチビやベビ、卵を抱いて走り始めるが、いかんせん自分の巣から屋舎までの距離が遠すぎ、2つ目の防風林を越える手前でテッカグヤが襲来、最初の犠牲タブが出る様を遠目で確認した。

 野生の知恵や危機管理能力がさほど衰えていないこの残存タブンネ達。テッカグヤが暴れ始めてもパニックを起こしたりせず、注意深く巨大な敵の能力や行動を確認していた。

 
 雪原のタブンネが他種族を認知する際まず見るのは自分との素早さ関係。ここが一番命に関わる。その上でカテゴライズを行う。

①自分達を食する種族。マニューラやドラゴン族等がこれに該当する。この分類で且つタブンネより素早い(ほぼ全種)種族は足音や鳴き声を覚え、できれば巣の位置まで把握するのが望ましい。
②タブンネを食べないが、襲うことのある種族。雪原ではユキノオーやオーロットが主。彼等がタブンネを襲う際は縄張り意識か産卵後、子育て期のナーバスな時期の場合が多く①と違い交渉の余地がある。
③アマルスやバイウールーなど自分達に友好的な種族。あんまり居ない。

 残りンネ達は自身の経験や親からの伝聞で、そのような視点で敵を把握しようと試みた。
 どうやら今回の敵は自分達よりやや足が早く、①にも②にも該当しない。ましてや③ではない事は野生産ならチビンネでもわかる。
 
 ただただタブンネの命を弄ぶ事を楽しんでる模様、野生でも経験した事も伝え聞いたこともない純粋で強烈な悪意と対峙した彼等は、ある意味強運なのかも知れない。

409ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:09:19 ID:vyLKK.qA0

 途方に暮れるタブンネ達。まだ牧場に来て間もない新参ンネの中には、建物側のゲートの他に出入り口がないかと辺りを物色する者も居たが、そんなモノは無い。人間の善意による牧場の構造が結果的に仇となった。もう遅い。

 敵は間もなく、確実にここまでやってくる。野ざらしな敷地だし、逃げ切ることは現実的ではない。まして闘うなんて死期を早めるだけだ。とんでもない攻撃力はイヤと言うほど確認できた。


 そんな中、一匹のパパンネが「ミミッ!」と声を上げると、放り出された仲間の住処の干し草を掻き分け、そこに自分の子供達とつがいのママを滑り込ませていき、自身も潜り込むと中から短い手を必死に伸ばし、シーツを被せ身を潜めた。

 最初?顔でその様子を眺める周りンネ達だったが、その意図を理解すると

そいつはナイスなアイディアだミィ!

 という表情にうって変わり、次々と空いた巣穴に潜り込んで行った。
 仲間が見限ったベビや卵まで一緒に隠してやった者も居る。タブンネとは本当に素晴らしい生き物だと思う。

(「パパ、いきくるしいチィ..」)
(「チョットの間ガマンしてミ。そのうちコワイコワイ居なくなるミィから。」)

(「他ベビちゃん、どうか泣かないでミィ。ミィがママの代わりに、守ってあげるミィからね」)

 耳を澄ますと微かにミィチィ聞こえる中央ブロックだったが、親ンネからの意図や優しさが伝わったのか、チビやベビも次第に黙り、やがてもぬけの殻の様に静かになった。

410ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:12:00 ID:vyLKK.qA0

・・・

 愉快なチビ達とのお別れを済ませ、歩みを進めてきたテッカグヤ。不思議な顔を浮かべ辺りを見回す。かなりの数ブチ殺したが、まだ少しオモチャは残っていたハズだ...。
 高度を上げ、牧場の果てまで飛び回り様子を確認していく。


(ミヒヒ、困ってるミィ、困ってるミィ...!)
(もう誰も居ないミィ。さっさとどっか飛んでけミィ!)

 息を殺し身を潜めるタブンネ達。シーツの中の暗がりで、ドヤンネ顔で鋭敏な耳をそば立てる。


 この牧場へ来てから初めて、じっくりとその全容を確認したテッカグヤ。出入り口らしきモノは見当たらないし、逃げ出した形跡も無い。自分の勘違いで、もうあのピンクの生き物は全滅させたかと考え始めた。

 やがて切り倒した林まで戻ってくると、次の行動を思案し始める。
 身を潜める存在を知っての上ではないが、石ころを蹴飛ばすような感覚でポッと火を吐くと、数個先の巣穴がけたたましく燃え上がった。

 すると炎で歪み形を変えたシーツの端が少しモゴモゴと動き出す。

・・・

「ミバババババババババババババババッ!」

本人達は必死極まりないのだろうが、ギャグみたいな声を上げながら、火ダルマが2つ、穴の端から飛び出して来た。

 もう目もロクに見えていないだろうし、触覚が焼け落ち自慢の聴覚も半減以下になっているだろう。
 それでもなんとか自分達の水飲み場、各ブロック3ヵ所ずつ設置されている人工小川の1つを探し当てると、ジュージュー音を立てながらゴロゴロと転げ回る。

411ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:14:16 ID:vyLKK.qA0
 この小川は幅1メートルくらいで、深さ10センチ程。流れも極めて緩やかで、ベビ上がりのチビンネが絶対溺れないよう作られた安全設計。成タブサイズの火ダルマを消火するには小さ過ぎる。人間の親切心はことごとくタブンネを苦しめる結果を招いた。

 本人達からすれば永遠のような時間を要したが、やがて燃え上がる全身の体毛が鎮火し、辺りに毛が焦げた時独特のイヤな臭気が漂う。

「バマ゛ァ?ぞごでぃいゔどマ゛マ゛ビィ?いぎでゔビィ?」
「ビィば、ビィばぶじだビィ。でぼヂビぢゃどベビじゃんば?や゛げじんじゃっだビィ?」

 よく燃える干し草。更に一時的ではあるが蓋の役割を果たしたシーツが仇となり、熱波や煙の籠った巣穴内は相当な地獄と化したようだ。
 気道に火傷を負っている。もう喋らない方がいい。こんな状態でも死なないのがタブンネ達の長所だ。

・・・愉快、これは愉快だ。

 テッカグヤは本日何度目か、口元に悪い笑みを浮かべると手当たり次第、次々と空いた巣穴に火を放っていく。


「ビュー...ビュー...」「ビギィー..ィ--」
ダメージを受けた喉を鳴らしなんとか呼吸をする火ダルマ夫婦ンネ。しかし貴重な水場を独占してはいけない。沢山の後続が控えている。

「ビィー!ばづびビィ!ごだいでビィー
!」
「よげでビィ!びがぎべだだらよげでビィ!ばづいビィ!じんざゔビィー!」

 よくわからないハスキーな会話がどんどん盛り上がりを見せる。

 テッカグヤはこの区画の巣穴、半分を燃やし終えると一度手を止め、ニヤニヤと楽しい会話を眺める。

412ガラルタブンネ牧場_殱滅編:2021/02/01(月) 16:17:40 ID:vyLKK.qA0

「シュー...ビー..」「ざっぎばごべんビィ...」
「ビズン...ベビぎゃんゆゔじでビィ...」
「ビィッ...ィィ-..」「ァィーーッ...ビヒィー...」

 普段はミィミィチィチィと笑顔が絶えず、チビ達の大好きな遊び場でもあった、綺麗な石畳みの小川。今は戦場の一画のようだ。

 体毛の炎が完全に鎮火したのを見計らうと、冥土の土産のヘビーボンバーが降ってくる。

ボスッ!ボシュッ!...

 半分炭と化していた黒焦げンネ達。変な音を発しながら黄泉の國へ旅立っていった。
 原型がなんだか分からない黒い肉塊と、一部無事だった真っ赤な臓器のコントラストが辺りの景色を彩る。

 テッカグヤが残った巣穴を攻めにやってくると、火を放つ前に、各所のシーツがモゴモゴ動き出した。

「ブヒーーン!ブヒィーーン!」
「ブミャーー!ブヒぇーーーン!」

 タブンネのそれとは思えない間の抜けた鳴き声を上げながら、穴から出てきてポテポテと駆け出す残りのタブンネ達。親ンネの中には他ベビや他卵を抱いている者もいる。タブンネより尊い生き物って居ないように思えてくる。

 そんな中、1匹の♂タブ(独身)がテッカグヤの前までやって来て、両膝と両手を地べたにつき、頭をガンガン打ちつける。

「お願いしますミィ!私たちを見逃して下さいミィ!どうか、どうかこれ以上イジメないでくだミィッ。」

あらゆる局面で役に立ってるの見たことないタブンネ必殺の媚び。しかし逃げてもダメ、隠れてもダメ、闘ってもダメとなると、媚びる以外の手って無い気もする。

 テッカグヤはその懇願に、得意技のエアスラッシュで返事をした。
 交渉タブの右脚が身体から離脱し、激痛に叫ぶ間もなく、テッカグヤはその身体を摘み上げる。
 種族を代表して交渉した彼の功績を讃え、最後の遊び相手に任命したようだ。先程のみなしごチビンネの居る岩場まで運ぶと、ポイっとその中に投げ込んだ。

「ミ゛ィッ。ミ、、ミギャーー!ブホッッ!」
 脚の激痛に悶えるや否や、周りの光景を見て絶叫し、嘔吐した。

 パッと見なんの生き物かわからない両耳両手足が無く失血死した子供と、蔦が絡まりミイラの様に干からびている子供。普通のタブ生を送ったタブンネは一生見ることのない物体だろう。

 テッカグヤはこのラストタブンネに暫しの別れを告げ、ゆっくりと残りの仲間達の元へ飛んで行った・・・

           殱滅編、終わり

413ガラル牧場 作者:2021/02/01(月) 16:25:28 ID:vyLKK.qA0
ダラダラと何の纏まりも無いssを投下してしまって申し訳ありません。
登場タブンネ数を増やし過ぎてしまい、取り留めがつかなくなってしまいました。

感想コメント下さった方、本当にありがとうございました。

後日、結末譚を投下して終わります。
あと数レス、ご容赦下さい。

414名無しさん:2021/02/01(月) 20:07:06 ID:3MG1zz920
乙乙
毎日更新楽しみにしてたよ
タブンネがド派手に虐殺されていく描写が凄く爽快感があってよかった
後日譚も期待してる

415名無しさん:2021/02/02(火) 07:46:43 ID:i0GK8JAo0
お疲れー
上空で放して〜ってバカですねw
タブ脳だからこんなもんなのかな?相変わらず、タブを煽るようなナレーション面白かったです!

416キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:41:20 ID:gc55JBXY0

ここはガラル地方北東部に位置する街
   「キルクスタウン」

ガラルの降雪地域の中では唯一と言っていい街である。

寒冷地であり他の主要都市のような工業地帯や近代的な街並みは無いが、温泉資源に恵まれることからガラルの主要観光地の一つであり、多くのホテルやレストランが建ち並ぶ。

静かな街並みの中で一際大きな建物
 「ホテルイオニア」

そのホテルの裏手側、複数の針葉樹が植わる中庭のような場所。
厨房の裏手に当たる位置に廃棄場があり、豪華なホテルに似つかわしくないそれを隠すように、少し木々が密集している。
その廃棄場の少し外れ、木々のブラインドで敷地外から見えにくい場所に汚いダンボールが敷かれ
その上に1匹のタブンネ(♀)が力なく、座り込んでいる。

タブンネはガラル地方にも生息域があるが、この個体はイッシュ地方の産まれ。同地方からの観光客としてやって来た一人の男がこの街に捨てていった個体である。

両触覚の巻きが緩く、左目は破裂してしまったのか周りが腫れ赤紫に変色し
ホイップクリームと比喩される尾はケバ立ち右半分がドス黒く塗られており
右手は腕の半分より先がグシャグシャになっていて異臭を放つ
胸には血でも拭いたのだろうか、真っ赤なボロスポンジのような物体を抱いている。
サファイアアイとは呼び難い濁った右目の瞳でただただ一寸先の地面を眺め、微動だにせずその場に留まっている。

 このお話では一匹のタブンネの、悲壮に満ちた半生を紹介する。

417キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:43:15 ID:gc55JBXY0
(以下、冒頭で紹介した個体をタブンネと呼称、その他の個体をタブンネとの続柄により呼称する)

タブンネはイッシュの大都市、ライモンシティのあるゴミ置き場付近でこの世に生を受ける。


パパンネは月並みだがタブンネが産まれる前に死亡。
 
つがいのママが身籠ったことから多くの食糧、栄養源を求め、危険と認知していたがライモンドームの廃棄場を漁りに行き、アメフトの大会日であったその日、運悪く敗戦チームの戦犯選手と鉢合わせてしまう。
腹いせに首元を掴まれ顔面をひたすら殴り続けられ、頸椎損傷、頭蓋骨陥没骨折、直接の死因は脳挫傷、脳裂傷と痛みのフルコースの末この世を去った。

イッシュは半ば公式的にタブンネを経験値の宝庫とみなしている地域柄、タブンネの遺体が街なかに転がっていようが取り立てて騒ぎも起きず、また収集も早い。

ママンネが遅すぎる帰りに不安を覚え、現場を訪れた際にはもう亡骸は回収済み。
現場に残ったわずかな毛皮と血痕。夫のそれと断定できる物は無かったが、狩場の状況と女の勘で夫の悲報を悟り、泣きながら引き返した。


夫婦はライモンドームに程近い空き地、いくつか放置されていた土管の一つにボロ布を敷き、住処としていた。
周囲に上手くカモフラージュしていた為か、ここへ来てふた月ほど襲撃も一切なく安全な住処であったが、複数の狩場から遠い欠点があった。
 
夫が居ない以上、今後自分で狩りに出なければならず、やがて産卵すれば子供を長い時間放置しなければならなくなる。

ママンネは悲しみに暮れる間もなく、思案を巡らせる。
苦労辛々辿り着いたこの住居は捨てがたいが、お腹の子供だけは何としても守り抜かなければならない。
熟考の末、パパの狩り場の一つだった、ある人間のゴミ捨て場が思い浮かんだ。
産卵が済めば、動けなくなる。意を決し、腹に子を抱えた体に鞭打ち、人間の足音に警戒しながら、必死に足を動かした。


一画に3つのアパートと1つの戸建てが建っていて、各建物が作る裏路が十字に交差し、十字の通り側4ヶ所のうち2ヶ所にゴミ捨て場が設置されていて、死角も多く、質や量はともかく比較的安定して食糧が手に入る為、パパは重宝していた狩場であった。

新居に到着して間もなく、タブンネの宿るタマゴを産卵したママ。
死産ではなかったものの、中から聞こえてくる心音が極めて小さいことに一抹の不安を抱いた。
自身初めての出産であったが、チビ時代に弟妹のタマゴを暖めていた経験から、通常の音がどれくらいのものかわかっていた。

418キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:45:46 ID:gc55JBXY0

産卵してからおよそ3週間、食事と排泄の時以外は常に胸に抱え暖め続けたママンネの努力の甲斐あって、遂にタブンネ孵化の時を迎える。

最初にタマゴにヒビが入ってから赤ん坊が完全に出てくるまで実に30分。
ママの不安が的中し、低体重で低体力。身長は17cm、体重は500g程。未熟児でも特に小さい部類に入り、ましてタブンネは早産どころか通常の何倍もタマゴの中に居た。

母体の栄養不足に夫を失った強い精神的ショック。更には転居のため長い距離を走った事も乳児の発育不足を招いた。

それでも殻を自力で破り産まれてきたベビタブンネをママは抱き上げるが産声はなく、身体に付着する粘液は既に外気で乾き、至るところの体毛がガベガベに固まっていた。

ママは短い両腕を巧みに使い、左腕でタブンネを抱き、右腕で優しく背中を叩き続けると、やがて
「ヂッ」とかすかな第一声を上げ、ママはケバだった体毛を必死に舐め続け、身体がある程度綺麗になると小さな口を乳首に当てがい、授乳を試みるが一向に飲んでくれない。

抱きしめて撫でる。身体を舐める。乳首に押し当てる、の流れを小一時間繰り返すとようやく乳を飲み始め、コクコクと喉を鳴らし終えた後
「チピッ」と小さなゲップをし、そのまま眠り始めた。

涙を流しながら、眠りについた我が子を眺めるママンネ。しかしその姿に更なるショックが待っていた。
タブンネ最大のチャームポイントであり、野生では生命線でもある触覚が、注意して見なければ気づかない程短かったのだ。

狭い路地裏でゴミを漁り、日中は常に人間の存在に注意を払わなければならない不安定な生活。
弱々しい我が子を育てられるか不安なママンネだったが、大好きだった亡き夫を思いだし
「ミッ!」と短い気合を入れると、夫婦の愛の結晶を胸に抱いたまま、やがて自身も眠りについた。

419キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:48:25 ID:gc55JBXY0

未熟児のタブンネをママは酷く心配した。
自身のことだけ考えたって将来には何の望みも無い。
低体力のこの子は生涯自分が付き添わなければならないだろうと勝手に考えていた。

しかしママの不安に反し、タブンネが先天的に弱いのは聴覚だけであった。

ママが知ることは無かったが、身体も成長が遅いだけ。知力も普通のタブンネのそれと何ら変わらない程に発達する。
サイズは最終的に90cmにしかならなかったが、体力にも何も問題はない。
ただ触覚だけ十分に伸びきらずに巻きが緩く、聴覚は人間と同じレベルまでにしか成らなかった。

ベビタブンネの成長が遅いことは、むしろママにとって好都合な面もあった。

一番は排泄だ。タブンネはママが下腹部を優しく叩き、股や肛門を舐めて促すまでは決して自力で排泄することがなかった。
ハイハイで勝手に出歩き、あちこち糞尿を撒き散らせば住処がどんどん臭くなるし、それは人間に気づかれる可能性が高くなる事も意味した。

次には食事。離乳期を迎える時期をとうに過ぎても、タブンネはママのおっぱい以外のものを口にしなかった為、必要以上にゴミを漁る必要はなかった。

あとは鳴き声が小さいことだ。ベビタブンネは時々夜泣きがあったが、それは聴覚に優れるママンネでなければ気づかぬほど小さな声で、建物間で反響してもそれほどうるさくはならなかった。


しかしいつまでも人間の住居の間近で暮らすことは得策ではないとママは思っていた。

ママパパは自分達なりによく人間という生き物を観察し、細かい情報を共有していた。

夫婦で暮らしている頃、狩りは主にパパの仕事だったが、時よりママも同行し、4,5ヵ所の狩り場の位置はママも全て把握しており、この新居にありつけたのもその為だ。

ここに来てからのママの狩り(ゴミ漁り)も秀逸だった。
やたらと手をつけず、ビニール袋の上からある程度観察して、中の残っている弁当やスナック菓子、野菜の芯などを見つけると爪で亀裂を入れ、目標物だけを綺麗に抜き去った。

あまり派手に荒らすと収集箱を頑丈なモノに変えられたり、または狩り現場を張り込まれて棒で叩かれたりする事はパパの実体験で引き出した教訓だ。
間近に住んでいるのなら尚更、自分達の存在を嗅ぎ付けられる訳にはいかない。

ママは生ゴミ以外にも時折手をつけ、潰れたダンボール、ボロ毛布に汚いタオルケットを寝床用に、また鉢型の食器2つに雨水を溜め飲料水にした。
ゴミから出たゴミは、朝方や夜中に反対側の通りまで持っていって捨てた。
決して贅沢ではないが、食住には困らずにこの場で生活を続けた。

420キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:52:25 ID:gc55JBXY0

タブンネが生まれて3ヶ月が経った。身長35cm程の大きさになり、少しずつ野菜の芯を齧ったり、残飯の米粒を口にするようになった。
しかし足取りが覚束なく、時折手をついて4つ足歩きになった。元々が小さいだけでなく、この路地裏からほとんど出てない事が発育を遅らせた。

タブンネの発育不足はママの予定を狂わせた。
ここへ来ると決めた段階で、これくらいの時期にはここを離れ、夫婦で暮らしていた空き地へ舞い戻るつもりでいたのだが、タブンネが自力で走れるくらいになるまでは得策ではないと判断した。
ものの400mくらいの距離だが、大都市の街柄昼も夜も人通りのある道を抜けなければいけないのだ。


結局その後2ヶ月、タブンネが生まれて計5ヶ月が経ち、ようやく脱出の算段をママが考え出した頃、親子に悲劇が起こった。

ママの秀逸な狩りや慎重さ、常に怠らなかった人間への警戒から無事に過ごせていたが、ママは気づかない落とし穴があった。自身の体臭と口臭である。

まだ幼体で食事量も少なかったタブンネはともかく、生ゴミを主食にし、摂取水分量もかなり少ないママンネは少し話せば数メートル先まで激臭が漂い
また親子は朝方人間が活動する前、早朝の弱い朝陽を浴びる以外に日光に当たらない生活をしており、水浴びも雨水だけであって、全身にフケが浮き立つママの体は強烈な体臭を発していた。

アパートの外気口からの異臭に住人が気付き、大家に苦情が入っていた。


ある日突然、この路地裏に侵入して来た人間の足音にママは驚愕した。通りの足音はいつも警戒していたが、姿さえ見られなければ裏路内部まで入ってくることは無いと思っていたし、これまで実際に無かった。

「うわっ!クセえ!汚ねえ!野良タブンネだったかゴルァー!!ブチ殺してやる!!」

狭い路地、全力で走れば逃げ切れるかもと一瞬考えたママだったが、その場で立ち止まった。
ちょうどタブンネが通りに一歩出た場所、親子がトイレにしていた排水溝に用を足しに行ってる時の襲撃だった。
今自分が犠牲になればおそらく娘の存在に気付かれない。娘をひとりぼっちにするのは不安だが、より安全にタブンネを逃す方を優先した。

「チビちゃん!逃げて!走ってミィィーー!」

421キルクスタウンのタブンネ:2021/02/04(木) 19:55:06 ID:gc55JBXY0
その後ママンネは清掃用の火バサミや箒でひたすら殴り続けられ、10分後にこの世を去った。

タブンネはママの言葉を聞いても逃げ出す事ができず、死角に身を潜め、ガタガタと震えていた。
産まれてこの方この一画を離れた事がなく、無理もないことだった。
泣きながらママの悲鳴と殴打音を聞き続け、音が収まった後、恐る恐る住処へ戻った。

寝床だったダンボールとボロ毛布がなくなり、かわりに見慣れた毛皮の欠片、いくつかの歯、血痕が残っていた。

ママ!ママは⁉︎辺りを探し始めたタブンネ。すぐにママは見つかった。

ママがゴハンを探してくれるゴミ置き場、その中の大きなビニール袋の中に、苦痛に顔を歪ませ、全身が赤紫色になってパンパンに腫れ上がったママが居た。触覚で生命音を探る術を持たないタブンネでも、死んでいるのは一目瞭然だった。

タブンネは滝のように涙を流し、袋越しにママに抱きついたが、すぐにその場を後にした。
ママの機転のおかげでタブンネの存在は気づかれなかったのだが、慎重で警戒深いママをずっと隣で見ていた為か、ここに居たら危ないと判断したのだ。

生まれ育った一画を出て、人間の住む街中を当てもなく、ただひたすらに走った。
幼心に、ママが守ってくれた自分の命を生き抜くことを心に誓い、泣きながら走った。

422名無しさん:2021/02/05(金) 19:33:15 ID:LISjUnsY0

これからタブンネさんがどんな悲惨な生を歩んでいくか滅茶苦茶楽しみ

最近タブンネさんのSSが多くて嬉しい

423カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/07(日) 04:22:58 ID:rSKwBOTM0
とりあえず文章は書き終えたぞー!あとは添削と校正だけだー!
ほんとは1か月くらいでサクっと終わらせるつもりだったのにめっちゃ難産だった……
途中で心折れかけて別の作品書き始めちゃったくらいには難産だった……

13日か14日には投稿できたらいいなぁ……

424ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:10:33 ID:bY.ytdS.0

 テッカグヤが牧場にやって来てからおよそ1時間後、いかにも屈強なアーマーガアとリザードンが飛んできて、牧場の最深部に降り立った

 その背中から精悍な2名の男が飛び降りる。ガラルではレジェンドと言っていい、マスタード氏とダンデ氏だ。
 満を持してヒーローが登場したワケだが、タブンネ達からすれば時すでに遅しどころでは無い。
 比較的殺風景な牧場の果てのブロックで、テッカグヤは片脚を失ったラストタブンネをゴロゴロと転がし、次はどこへ行こうか考えていた頃だった。

 
 牧場と研究所からの通報を受けた政府のポケ災対策課。警察レベルで対応できる案件ではないとの判断は的確で、最小限の精鋭を向かわせるという決定までは良かったのだが、レジェンドトレーナー2名の行方を政府として把握できておらず、連絡が難航し、この時点での到着となってしまった。
あとでタブンネに謝ってほしい。


 これまでのオモチャ達とは違うポケモンの到着に気づき、遊びの手を止めそちらを見やるテッカグヤ。今までとは気色の違う笑みを浮かべる。
 このテッカグヤ、ただ弱い者イジメを楽しむだけの臆病者ではない。いかにも鍛え上げられた難敵の登場に武者震いのような感覚を覚える。自分の強さにも相当自信を持っているようだ

 両氏はウーラオス、レントラー、ギルガルドドサイドン・・・etc.
 次々と自身の手持ちの精鋭を繰り出していき総勢12vs1の闘いが始まる。
 ガラルを危機に陥れ兼ねない事態。バトルのルールもトレーナーの誇りもへったくれも無い一斉攻撃を仕掛ける。

 約10分後、テッカグヤのかなり弱った様子を見て、ダンデ氏の投げたモンスターボールにその巨体を納め、ひとまず事態は収束した。
 こんな不平等バトルであったにも関わらず、ガラルリーグ最強クラスの両氏のポケモンのうち、何匹かはかなりの深手を負った。
 一体何処の時空から現れたのか、相当強いテッカグヤだったようだ。元野生や牧場産まれのタブンネでどうにかできた筈がない。

余談だがラストタブンネの息の根を止めたのは両氏の手持ちのうちの誰かであった。

425ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:12:22 ID:bY.ytdS.0
 再びアーマーガアとリザードンの背に乗り、屋舎へ向け飛び立った両雄。
 あちこちに散らばるかわいいピンクの手や脚、顔、顔なしの胴体、臓器。所々けたたましく燃え上がる炎。凄惨な光景に、百戦錬磨の彼らも沈痛な面持ちだ。どこかに生きてる個体が居ないかと探したが、すぐにやめた。明らかにみんな死んでる。

 どうでもいいことだが、この時リザードンだけはバツの悪そうな表情をしていた。
 さっきの闘いのさ中、なんかこんな生き物にだいもんじ当てちゃった気がする。
助けてやらなきゃいけないヤツだったのか...

 屋舎に辿り着いた両氏。常駐していたドクターに深手のポケモン達を治療して貰い、みんな元気になった。みんな無事でよかった。


 やがて署員ほぼ総出で氷点雪原の山火事消火に当たっていたガラル消防署員が牧場に到着し、牧場内随所で起こっていた火事も全て消火。
 ガラル政府の役人数名もやって来て、牧場に設置されていた幾多の照明が灯され、本災害の実況見聞が行われることになった。災害を引き起こした未確認の生き物は、仮に「ブラスター」と名付けられた。

 入り口ゲート付近を埋める岩をウーラオスがよけていくと、数々の修羅場を潜って来たマスタード氏も思わず顔を顰めた。
 小さな子供や卵が血塗られてグシャグシャに潰れ絶命していた。赤児を抱いた大人もいて、顔半分と下腹部が潰れ尻から大腸が飛び出している。

 どうでもいいことだが、この時ウーラオスだけはバツの悪そうな表情をしていた。
 さっきの闘いのさ中、なんかこんな生き物に暗黒強打当てちゃった気がする。
殴っちゃいけないヤツだったのか...

 
 みな虚な目をして、ゾロゾロと敷地へ歩みを進める従業員。災害録をつける為にやって来た役人達ですら、吐き気を催す程の光景だ。まともな死体がひとつもない。

426ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:14:15 ID:bY.ytdS.0
 入り口付近、聳え立つ岩に刺さって絶命しているお兄ちゃんタブンネ。屋舎上階に居た従業員は、彼がブラスターに立ち向かって行く姿を見ていた。
 普段からタブンネに接している飼育員でも、目立った外傷のない個体はさすがに見た目だけで区別はできないのだが、この一家は初期からここへ住み着いていて、最後まで警戒心の強い両親に手を焼いた、有名な家族だった。
 その分心を開いてくれた時は飼育員一同も喜び一入、このお兄ちゃんは毎日のように木の実仕事を手伝ってくれていて、次期種付け用候補の筆頭だった。
 脚立を持ってきて岩から外してやると、ネチャッという嫌な音がして、岩肌に夥しい血痕が残った。
本当にタブのできたお兄ちゃんだった。

 少し歩みを進めると、首チョンパの耳無しタブンネの遺体。最初に犠牲になった夫婦。この夫婦は牧場が軌道に乗り始めた頃それぞれやって来て、ここでつがいとなったタブンネだ。
 気の毒な外傷から飼育員一同もとりわけ愛情深く接していたのだが、自身の見た目がコンプレックスだったのかタブ見知りが激しく、中々他のタブンネ達に馴染めない夫婦だった。
 やがて産卵を迎えた時は、夫婦揃って大声で号泣し、木の実を食べる時も排泄をする時も、常に卵を抱いていた。
この凄惨な墓場で唯一満面の笑みを浮かべ死んでいるのが非常にシュールで気の毒だ。
 
 その遺体の少し先、タブンネの水飲み場として最初に作られた人工川が流れているはずの場所、今はタブンネの死体で埋め尽くされている。
 黎明期から働く者には思い出深い場所だ。始めてこれが出来た時、タブンネ達は一心不乱にここに顔を突っ込み、ゴクゴクと音を立てて水を飲んでいた。野生では水すらまともに飲めなかったのかと不憫に思う中、1匹の赤ちゃんが上流でオシッコをしてしまい、下流のタブンネ達は大パニックだったのだが、そんな微笑ましい光景を見ることももうない。
 15匹並ぶタブンネの死体。他に目立った外傷は無いが、みんな両耳をちぎられ、絶望に満ちた表情で舌を半分くらい垂れている。
 ブラスターなりの遊びのつもりだったのだろうか、皆の頭から足先が綺麗に揃えられ、並んでいるのがタブンネでなければまるでクローン戦争で使われるドロイド兵のようだ。
 そしてここの遺体は全て、本来内股のはずのタブンネの脚がなぜかガニ股になっている。生物学者が見たらどうやって殺せばこんなふうになるのか興味深いことだろうが、従業員にはただただやるせない光景だ。

427ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:15:19 ID:bY.ytdS.0
 敷地に入ってすぐ左手、辺り一面の芝生が消え去り、その中にタブンネ達の身体の一部が転がっている。従業員は間近で見ていた惨劇。ブラスターの最大火力の攻撃に、自分達の無力さを感じた瞬間だった。
 ダンデ、マスタード両雄もこの光景には目を見張った。こんな凄まじい攻撃を喰らえば、自分のポケモン達も無事では済まなかったろう。力をためる隙を与えなかった自分達の作戦が正しかったことになる。消沈する従業員達に申し訳ないが、心の中で静かにドヤ顔する。

 また歩みを進め、焼け焦げた巣穴を確認していく従業員達。ここには卵や赤ん坊がいたはずだ。火の手が強すぎ、今やどれが藁やシーツで、どれがタブンネの遺体なのかの区別すらつかない。
 そんな中、1人の飼育員が辛うじて赤ちゃんタブンネの原型を留めた焼死体を見つけ、そっと抱き上げた。自分達が産湯につける為か、この牧場の赤ちゃんタブンネは皆よく懐いてくれたものだった。そんな事を思い一粒の涙を零すと、その一滴で焼死体に穴が空き、ボロボロと砂人形のように崩れていった。

 タブンネの為に植えられた幹の太い樹。日差しの強い日はよく木陰に凭れて、親子がお昼寝していた光景が目に浮かぶ。今はそんな木々の太い枝に、沢山のタブンネが腹からブッ刺さって絶命している。直ぐには死にきれず暴れたのだろうか、生々しい血痕が飛び散っている。サイコ野郎の家に飾ってあるクリスマスツリーはこんなだろうか。許せない、ブラスター
 すぐそばには子供用の遊具。階段部分から滑り台を結ぶ吊り橋の柵ひとつひとつに、可愛いチビちゃんが腸を引っ掛け、逆さまにぶら下がっている。こうゆう遊び方をする遊具ではない。チィチィと言ういつもの笑い声も聞こえてこない。

428ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:16:21 ID:bY.ytdS.0

 奥へ奥へと歩みを進めていく一行。時おり何かを踏んづけてしまい、ネチョネチョと靴裏に嫌な感覚を覚える。あらゆる所に落ちている、子どもの足とタブ糞がその正体だ。
 千切れた足から胴体まではどれも一定の距離があって、その間の芝生にベットリと血痕が着いている。何かを求めて必死に這いつくばったのだろう。
 糞特有の臭気が鼻をつん裂くが、従業員は不快に感じる事なく、タブンネへの憐みを一層強める。ここのタブンネは例外なく綺麗好きで、随所設置する砂場以外で用を足すことは子供でも稀だった。それが今は辺り一面が糞だらけ。よっぽど怖かったのだろう。
 その各所のトイレ砂場には、大小沢山のタブンネが頭から身体の半分くらい突っ込まれ、タブ神家の一族みたいになっている。綺麗好きのタブンネには屈辱だったろう、辛かったろう...。

 一番凄惨な屋舎側を過ぎ、中央部へ足を進めていく。それを分け隔てる防風林の木々が、全て伐採されている。タブンネの命だけでは飽き足らなかったのか。ここまでやるか、ブラスター。
 
 数組の家族から始まったこの牧場。日増しに拡充していき、やがて作られたこの防風林。
 これが出来た時子供達は大喜びで、子供に混じってよく自分達も、かくれんぼをして遊んでやったものだ。タブンネは子供でも触覚で隠れ場所を探れるので、正直何が楽しいのかわからなかったが、それでも真底楽しそうで、いつも笑い声の絶えない場所であった。

 そこを超えて中央部へ入ると、ウェルダンに焼かれたタブ頭と臓器が各水飲み場の周りに複数転がる。毎晩家族で固まり、健やかに眠っていた小さな巣穴も全てが焼き尽くされている。
 一ヶ所に岩が固まっていて、それをどかすと無惨な子供の死体。目に入るもの全てが地獄絵図であった。

429ガラルタブンネ牧場_後談:2021/02/08(月) 18:17:25 ID:bY.ytdS.0

 だいぶ周りに遺体も減ってきて最深部まで歩みを進める一行。次点の防風林は無事だったようだ。
 防風林の手前で皆一度立ち止まった。惨劇跡は終わりかと思ったが、よく見ると林の各所にもタブンネが点在していた。顔だけになって細い枝にブッ刺さるタブンネ。胴体が捻じ曲がった状態で茂みに乗っかる子供タブンネ。割れた卵を頭に被り、死んだ胎児を抱いて自分も立ったまま死んでるやつも居る。これどうやったんだろう。

 これまでの地獄と違い、最深部は非常に殺風景だった。
 ここは割と最近拡張されたエリアで、巣穴とトイレと水飲み場があるだけだった。そのうち遊び場を作ってやるからなと言い聞かせていた矢先の惨劇だった。約束を守れなくてすまない、タブンネ。

 その殺風景の中一際目立つ、中央に寂しく1匹横たわるタブンネが居る。最後の1体となって、ブラスターに弄ばれたのだろうか。
右脚がちぎれ
(エアスラッシュ)
胴体左半分は焼け焦げ
(リザードンのだいもんじ)
右脇腹が破れ臓器と肋骨が飛び出し
(ウーラオスの暗黒強打)
クルッと巻いていたかわいい触覚は爛れて変色していて
(レントラーの10万ボルト)
小さな口の周りは骨が砕けて血塗られ殆どの歯が折れるか欠けている
(ドサイドンの岩石砲)

・・・

牧場の実況見聞は終わり、翌日一日かけて全ての遺体を埋葬し、厄災は一幕を閉じた。幸い道中のフリーズ村はスルーされたようで
・森林一部消失
・死者0名
・死タブ392匹
という被害で収まった。

牧場事業経営陣、政府関係者は頭を悩ませた。せっかく根付いた新産業、沢山の雇用。商品が全滅してはどうしようもない。

でもきっと大丈夫だろう。このカンムリ雪原にタブンネがいる限り。たぶんね。
                (完)

430作者 あとがき:2021/02/08(月) 18:40:46 ID:bY.ytdS.0
特に内容のないオチですみません。

私は前スレ『チビンネ兄妹の小さなお話』が何度も読み返すくらい大好きで、自分も「馬鹿ではないけど幸せ思考の子タブンネが何も知らず生き餌にされる」SSを書いてみたくなり

またいくつか該当作品があるかと思いますが、「平和なタブンネの群れが全滅させられる」タイプの話も大好きで、2つ無理矢理纏めて本SSを書き始めたのですが、最初の段階で群れの規模を大きくし過ぎて後半偏重になってしまいました。

本SSをお読み下さった方、ありがとうございます。ほんの少しでもお楽しみいただけたら幸いです。

冠雪原のタブンネちゃん、本当に可愛いですよね。
個人的にマグマストームか根源の波動を喰らうときのエフェクトが可愛くてオススメです!

431名無しさん:2021/02/08(月) 23:39:23 ID:bdgGlmHs0
乙です。
無辜のタブンネ達が突然降って湧いてきた災いに為すすべなく命を奪われていく描写が素敵でした。
あと今まであんまりなかった後談で今までタブンネ達がどんな目にあってきたのかを振り返っていく展開が個人的にすごくそそられて良かったです。

432名無しさん:2021/02/09(火) 08:09:16 ID:QG/0B7n60
お疲れ様です。滑り台の遊び方と無意識の内に攻撃してたリザードンとウーラオスw
テッカグヤの目的は何だったんでしょう?タブの殲滅?
何はともあれタブ以外の死者が出なくて良かったです。
タブたちは、あっちの世界で「助けに来るの遅いミイ」とか言ってるんでしょうね。
多分ね。

433カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:47:57 ID:cGUalhbk0
サザンドラの言葉を皮切りに兄タブンネは駆け出した。
肩を突き出しすてみタックルの構えを取り、サザンドラへ激突する。サザンドラはそれをボディで受け止めた。
ノーマルタイプの中では比較的強力な技だ。使った相手がタブンネであったとしてもダメージはそう低くない。
兄タブンネのすてみタックルを受け僅かに後退したサザンドラは、反動を利用し反対方向に着地した兄タブンネを鋭い眼光で見据える。
先手は譲ってやった。次はこちらの番だ。
接触物理のアクロバットでは距離が開きすぎている上にタイプ不一致で威力も見込めない。ここは手堅くりゅうのはどうで攻めることを選択する。
大きく口を開け波動を放つ準備をしていると、兄タブンネは地面に手を当て精神を集中させ始めた。
サザンドラは兄タブンネの次の一手を考える。
この距離でタブンネが行える攻撃手段はない。この辺り一帯のタブンネは遠距離の攻撃を基本的に覚えなかったはずだ。
であれば、まずは攻撃を優先することを選択する。
所詮はタブンネだ。できる事は限られている。
サザンドラがりゅうのはどうを口から放つ直前、兄タブンネは地面につけていた手を高くかざし「ミィッ!」と一声上げた。
その途端、遺跡内部に不思議な霧が滞留し始めた。
ミストフィールドと呼ばれる領域を兄タブンネは展開したのだ。そしてその効果は状態異常の無効化とドラゴン技の軽減。
兄タブンネはサザンドラのタイプを推察し、その主砲に併せてフィールドを展開したのだ。
放たれたりゅうのはどうはたちまち勢力を衰えさせる。兄タブンネの計算通りだ。
りゅうのはどうを正面から受け切った後、サザンドラに駆け寄り距離を詰めた。
両者共、近接戦闘の間合いで睨み合いをする。
次はアクロバットで迎撃を───そう考えていたサザンドラの目の前で兄タブンネは大きなあくびをした。
それを目にしたサザンドラは途端に強烈なねむけに襲われる。
サザンドラは目を抑え頭を振るい、眠気を堪えながら後退する。
次の一手はどうする。りゅうのはどうは威力が軽減されてしまう。
次の一手はどうする。だいもんじを放ったとしても火傷が見込めない現状では有効打にはならない。
次の一手を考えようにも眠気で頭が回らない。まずは眠気を何とかしなくては───
サザンドラが見せた大きな隙を兄タブンネは見逃さなかった。
強く拳を握る。助走をつけ飛びあがり、サザンドラに向かって最大出力で殴り掛かった。

 「ミイイイイィィィィィ!!!!!!」─ 喰らええええぇぇぇ!!!!! ─

それはタブンネが覚える最強の物理技。兄タブンネはとっておきを繰り出した。
その拳はサザンドラの前頭部にクリーンヒットする。
額から血を吹き出し、大きな雄叫びを上げながら仰向けに倒れこんだ。

434カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:48:43 ID:cGUalhbk0
兄タブンネは肩で呼吸をしながらもまだサザンドラから視線を外さない。
瀕死になったかはここからでは分からない。だが瀕死でなくてもあくびの効果が効いていればサザンドラは眠っているはずだ。
ここで追撃を緩める手はない。
兄タブンネは乱れた呼吸を少しだけ整え、倒れ込んだサザンドラに向かって再び駆け出した。
サザンドラは目前。あとはとっておきを振るうだけとなった瞬間、突然兄タブンネの見ていた景色が切り替わった。
目線の先は遺跡の天井。何故自分は天井を向いているのだろう。
僅かにだが顎の下に痛みが走る。そうか、自分は尻尾か何かで顎下を叩かれ顔を押し上げられたのだ。
兄タブンネは視界の切り替わりに気付き、目線を地上に戻す。
それは時間にして数秒の出来事だった。
だがサザンドラが形勢を逆転させるには十分な時間だった。
視線の先に先ほどまで倒れていたサザンドラが存在しない。一瞬の事で兄タブンネは困惑する。
ヤツはどこにいる。
ヤツは───サザンドラは───上にいる!

そう気づいた瞬間、兄タブンネにサザンドラのアクロバットが放たれた。
空中で一回転し加速をつけた尻尾をサザンドラは兄タブンネの背面に打ち当てる。
兄タブンネは地面へと倒れ込みミシミシと背骨が軋む痛みが走る。
だが攻撃はそれだけでは終わらなかった。
サザンドラは倒れている兄タブンネを持ち上げ、力任せに地面へと叩きつけた。顔面を酷く強打してしまい右瞼がぽっこりと腫れあがり鼻から血がだらだらと流れ出ている。
サザンドラは左頭で兄タブンネの首根っこを掴み持ち上げ、眼前へと持ってくる。
とっておきを食らった額からは血が流れ出ており、右目を閉じたままサザンドラは不敵な笑みを浮かべていた。

435カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:49:46 ID:cGUalhbk0

 ─ やるじゃねぇかクソガキィ! ミストフィールドでドラゴン技を軽減して突っ込んでくるなんざ思いもしなかったぜ! ─

兄タブンネは理解できなかった。倒せなかったことそのものもそうだが、何故こいつは眠っていないのだ。
兄タブンネが困惑顔をしているとサザンドラは嬉々として語り始めた。

 ─ だがあのミストフィールド、アレは悪手だったなァ。フィールドを展開するときは相手も利用できるって事を念頭に置かねぇとな ─

その言葉で兄タブンネはハッとする。
そうか、このサザンドラはあの時わざととっておきを喰らったのだ。
回避できないはずの眠りを回避するために、大仰な演技で倒れ込みミストフィールドを利用したのだ。
サザンドラが眠っていないからくりを理解した兄タブンネは、悔しそうに歯を食いしばる。
だが、まだだ。まだ終わっていない。
例えここで刺し違える事になったとしてもこいつはここで倒さないといけない。
妹のためにも。惨殺された仲間たちの為にも。そしてタブンネの誇りのためにも。
兄タブンネはこの絶望的な状況下で覚悟を決め、自身の命をも視野に入れた逆転のプランを考え始める。
その様子を見てまだ兄タブンネに諦めがないことを理解したサザンドラは次の一手に出た。

サザンドラはゆっくりと右頭を近づけると、持ち上げていた兄タブンネを地面に下ろし解放する。
あまりに突然の事で足に力が入っておらず、解放された一瞬だけよろけてしまう。
そんな兄タブンネをサザンドラは優しく正し、付着した砂ぼこりを払い始めた。
兄タブンネにはその意図が理解できなかった。先ほどまで殺し合いをしていた相手にするような行動ではない。
どういった思惑で自分を解放したのか、兄タブンネが警戒しながら睨みつけてる。
するとサザンドラ額の傷を弄りながらゆっくりと語り始めた。

 ─ それにしてもまさかここまで手酷い傷を負う事になるとは思ってもみなかったぜ。
   てめぇらタブンネにここまでしてやられるなんざ本来ありえないことなんだが……まぁ相手が何であれ慢心はするべきではないってことだな ─

相変わらずの上から目線ではあるが、兄タブンネ自身それを否定するつもりはなかった。
確かにサザンドラには油断や慢心と言った弱点があったことを理解していたからだ。
そしてそれらが無ければ今こうして一矢報いることすらできなかっただろうということも。
サザンドラは少し気恥しそうにしながらも言葉を続ける。

 ─ まァ……アレだ。今回はてめぇに勝ちを譲ってやるよ、ボウズ。どこへなりとも好きなところに行きな ─

436カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:50:57 ID:cGUalhbk0
サザンドラの言葉を聞いた兄タブンネは耳を疑った。
そもそもこいつは平気で約束を違えるヤツだ。いざ逃げる段階になって後ろから襲ってくるに違いない。
兄タブンネの不信の目を見てサザンドラは言葉を続ける。

 ─ もちろん続きをやるってんならそれもいい。その時は全力で相手をしてやる ─

兄タブンネはその言葉を聞いて戦慄する。
放たれている気や言葉の抑揚で今の言葉に嘘がないことが分かる。
このまま続けたら確実に自分は殺されるだろう。
目の前に君臨する確実な死の象徴は、穏やかに、時折言葉を詰まらせながらも話を続けた。

 ─ だがまァ……何度でも言ってやるが今回は俺の負けだ。俺は強いヤツには敬意を払う主義なんだぜ ─

サザンドラはそういうと兄タブンネの頭を左頭でやさしく撫で始めた。
その言葉と行動で張り詰めていた戦意が優しく解かれていく。
自分よりはるかに強い強者からの賞賛と、生きて帰れるという安堵。
本当ならこんなことを思っていいはずがない。仲間たちの為にも最後まで戦うべきだ。
だが兄タブンネは心を満たす喜びの感情に抗いきれず、零れ落ちる涙を止める事ができなかった。

ふと周囲を見渡すと殺された仲間たちの亡骸が転がっている。
彼らの事を思うとやはり胸が痛む。彼らを残して帰還することにも強い後ろめたさを感じる。
だが、かつてリーダータブンネが言っていた。誰かひとりでも帰還すればそれが成果だ、と。
きっと自分が帰還しなければこの遺跡の危険性を誰も知らないまま、また同じように仲間たちが犠牲になるのだろう。
それだけは避けなければならない。既に亡くなった彼らの家族を同じような目に合わせないようにするんだ。
兄タブンネはそう心に言い聞かせ、サザンドラの横を通った。
目的は部屋の隅で震えながら自分の生還を待っていた妹タブンネ。
彼女は先ほどの戦闘を見ていた。だけどもう脅える必要もない。兄タブンネの笑顔を見て妹タブンネも顔を綻ばせる。
二匹の間に安堵の、穏やかな空気が流れる。その瞬間、兄タブンネの横を高速で何かが駆け抜けた。
それは目にも止まらないスピードで妹タブンネを掴み高く持ち上げる。

 ─ さぁそれじゃパーティの再開といこうかァ!!! ─

妹タブンネを掴んだサザンドラは高らかにパーティの再開を宣言した。

437カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:53:01 ID:cGUalhbk0
あまりに突然の事で呆気に取られる兄タブンネ。
しかしすぐに意識を切り替え、サザンドラに向かって吠えた。

 「ミッミィ!ミィミィ!!」─ 見逃してくれるって言ったじゃないか!あれは嘘だったのか!! ─

そう叫ぶ兄タブンネに対し、サザンドラはとぼけたような素振りを見せながら返答する。

 ─ お前は見逃してやるって言ったがお前の妹まで見逃してやるって言った覚えはカケラもねェなァ…… ─

どこまでも卑劣な詭弁を……! やはりあんなヤツの言葉なんて信用するんじゃなかった。
兄タブンネは怒りのあまり強く拳を握り、唇を噛みしめる。
サザンドラに向かって駆け出す兄タブンネ。とっておきを放とうと拳を構える。
そんな兄タブンネに対しサザンドラは巨大な叫び声をあげ強く威嚇した。
それはなんてことの無い、ドラゴン族が戦闘前に行う威圧、気当たりのような行動。
死を覚悟していた兄タブンネにはそんなものは通用しない───はずだった。

眼前にある死への恐怖に対し兄タブンネ目をつむり防御の姿勢を取ってしまう。
勢いを急激に殺したものだからついにはバランスを崩しその場に尻もちをついてしまった。
目を開き、前を向く。見上げた先にあるサザンドラは先ほどに比べてあまりにも巨大で、凶悪で、絶望的な力の差を感じてしまう。
恐怖で体が竦んでしまう。妹を助けるために動かなければいけないのに体が動かない。
脈打つ心臓の鼓動が、流れている血潮が、自分を構成している全てが目の前の存在から今すぐ逃げろと警鐘を鳴らす。
だけどここで逃げてしまえば妹は仲間たちと同様に惨たらしく殺されてしまうだろう。
サザンドラは今にも泣きだしそうな顔でこちらを見つめる兄タブンネにもう一度威嚇する。
再び目を閉じ両手で頭を庇い防御姿勢に入る兄タブンネ。
目の前で放たれた強烈な殺気に耐えきれず失禁をしてしまった。
貧相な男性器からチョロチョロと流れ出た黄色い液体は、股の間で小さな水たまりを作り湯気を放っている。

 ─ お漏らしとはなっさけねぇな! さっきまでの威勢はどうしたァ? えぇ、おい!! ─

サザンドラは兄タブンネを煽り、嘲り、彼のプライドを傷つけていく。
妹を人質に取られた上にあまりにも情けない失態。恥ずかしくてしかたなかった。
兄タブンネは顔をかぁっと赤らみ、熱くなっていくのを感じる。
目頭がじんわりと熱くなって、喉の奥が突き刺すように痛い。
敵前であるにも関わらずとうとう兄タブンネは泣き出してしまった。

438カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:55:20 ID:cGUalhbk0
サザンドラはわざと大げさに笑い声をあげ、目の前の兄タブンネを嘲笑する。
その姿を見てサザンドラは目論見通り事が成ったことを確信していた。

先ほどの戦闘で、兄タブンネの闘志を支えていた要素は三つあった。
一つ目は妹タブンネを守らなければいけないという意思。
二つ目は仲間たちを惨殺したサザンドラに対する憎悪。
三つ目は決死の覚悟、"ここで死んでもいい"という前提で兄タブンネは戦っていた。
では、この三つの要素の内二つを崩したらどうなるだろうか。
決死の覚悟に対し、"死なずとも生き残れる道はある"と示したら。
標的への憎悪に対し、その標的から強者と認められ褒められればどうなるだろうか。

答えは明白だ。
自分が抱いていた闘志を維持できなくなる。
瓦解してしまうのだ。

今の兄タブンネには妹タブンネを守らなければという意思だけしかない。
元々後付けの覚悟しかない兄タブンネではそれだけで立ち向かう事なんて出来やしない。
サザンドラは自分に一発くれたクソガキに対しての意趣返しを行ったのだ。

 「ミィィィィ!!ミイイイイィィィィィ!!!」─ いや!!助けて!!お兄ちゃん助けてぇ!! ─

そして最後の残り一つの要素である妹タブンネ、こいつを目の前で惨殺する事で兄タブンネの全てが終わる。
手の内でもがき、助けを求める妹タブンネ。じたばたとかわいらしく揺らしているその左足をサザンドラは右頭で根元から咥え込んだ。
鋭いキバが肉を裂き骨まで到達する。強烈な痛みにたまらず妹タブンネは「ミイイイイイイイイイィィィィ!!!!」と悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞いて兄タブンネは我に返った。そうだ、妹を助けなければいけない。
ゆっくりと立ち上がりサザンドラに対して手を差し出す兄タブンネ。
もはや戦う事ができないのは自分でも分かりきっていた。
だがそれでも妹タブンネを諦める事など出来なかった。

439カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 18:59:06 ID:cGUalhbk0

 「ミッ……ミッミィ……」─ お願いします……妹を……妹を解放してください…… ─

兄タブンネは藁にも縋る思いでサザンドラに懇願する。だがサザンドラはもちろん妹タブンネを返すつもりなんてない。
サザンドラはしっぽで軽く兄タブンネの体を押し返す。
腰の入っていなかった兄タブンネはその勢いに流されるまま後ろに下がり、躓いて小便だまりの上に尻もちをついてしまった。
綺麗な白色をしていたしっぽの下側が小便を吸い黄色く染まっていく。
サザンドラは再び妹タブンネに集中する。
キバで太ももの肉を裂きつつぐりぐりと動かして股関節を外そうと試みる。
ぶちぶちと自分の肉や繊維が断ち切られる度「ミヒッ!ミィッ!」と痛みにあえぐ妹タブンネ。
ついにはボキッという少々乱暴な音が鳴り、妹タブンネの左足と体が分離した。

 「ビヤアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

気が狂いそうになるほどの激痛。
妹タブンネは目を見開き肺にたまった空気を全て出すかの如く大きな叫び声をあげた。
悲鳴を叫び終えた後は肩で息をしながらぐったりとしている。
左足のあったところからはドバドバと血が流れ出ていた。
サザンドラは切り離した妹タブンネの左足を兄タブンネの目の前で揺らして見せつける。
可愛らしいハート型の肉球が鮮血を滴らせながら兄タブンネの前でプラプラと揺れ動いている。
兄タブンネは「ミゥ……ミゥゥ……」と悲しみの声を漏らしながら絶望顔でそれを見つめる。
妹タブンネを守れなかった今、彼の心を支える最後の一つが崩れ落ちようとしているのが分かる。
続いてサザンドラはその左足を妹タブンネの目の前まで持ってくる。
妹タブンネは歯を食いしばり首を横に振る。
左足があったところから感じる耐えがたい痛みがそれを現実であると証明しているが、認める事なんて到底できない。
サザンドラは一通り見せつけて満足した後、妹タブンネの新鮮な左足を口へと運んだ。
まずは足裏、ハート型の肉球に付いた血液を啜った後、おもむろにかじり取る。
タブンネのチャームポイントであるハート型の肉球はえぐり取られ、グロテスクな足裏の肉が露見してしまった。
その様子を見せる事でタブンネ達の心を痛めつけたのち、左足全部を口の中に放り込む。
あえて大仰に骨を砕き、二匹に咀嚼音をしっかりと聞かせる。
やがて咀嚼し終えるとそれを飲み込み、次は残りの右足へと手をかけた。
再び妹タブンネを激痛が襲う。度重なる痛みで感覚がマヒしていたのか、先ほどのような大声を上げる事はなかった。

 「ミゥ……ミゥミゥ……」─ お願いします……これ以上はもう…… ─

兄タブンネは再び立ち上がりサザンドラの足を掴んで揺らす。
このまま蹴って振りほどくこともできたが、もはや戦士として不能になった兄タブンネなんぞ脅威ではないのでこのまま揺らさせておくことにする。
再び股関節を外して妹タブンネの右足を切り離した。サザンドラは切り離した右足を小便だまりの上に放り投げる。
黄色一色だったそれに右足から血が流れ、赤のコントラストで彩られた。
妹タブンネは体を小刻みに痙攣させ、顔を上にあげながら「ミヒィ……ミヒィ……」と浅く、短く呼吸をする。
痛みと失血により消耗が激しく、少しでも少量の力で大量の酸素を供給しようとしているのだろう。

440カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:00:04 ID:cGUalhbk0
続いてサザンドラは妹タブンネを顔の前に持ってきた。
互いに目が合うと妹タブンネは声をふり絞り助けを乞う。

 「ミゥゥ……」─ お願い……もうやめてよぉ…… ─

サザンドラはその言葉を聞いてニヤリと笑みを浮かべた後、「ゲェップ」と下品な音を立て口から猛烈な臭いのする毒ガスを放った。
ゲップという毒タイプの技である。
目をぎゅっとつむり呼吸をしないようにしながら手でパタパタと仰いでいた妹タブンネだが、ついにはその毒ガスを吸い込んでしまった。
鼻孔を刺激する不快なにおいと、焼け爛れているのではないかと錯覚するほどの強烈な胸焼け。
妹タブンネはたまらず嘔吐してしまった。彼女の口から胃液と共に未消化の木の実がベチャベチャと地面に降り注ぐ。

 「ミゥ……ミ゙ァ゙ァ゙ァ゙……」─苦しい……ぐる゙じぃ゙よ゙ぉ゙……─

血の涙を流し胸を掻きながら言葉を絞り出す妹タブンネ。
両足を失った上に毒タイプの技まで食らったのだ。限界が近い事は誰の目から見ても明らかだった。
兄タブンネはさらに力を込めてサザンドラの足を揺らし始める。

 「ミィィ……ミイイイィィィィィ!!!」─ 妹が……妹が死んじゃうよぉ!!! ─

441カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:01:38 ID:cGUalhbk0
その言葉を聞いてサザンドラは妹タブンネをゆっくりと地面へ下ろす。
両足がないのでそのまま倒れ込んだ妹タブンネの元に、兄タブンネはすぐさま駆け寄った。

 「ミィミィ!?ミィミィ!!」─ 大丈夫か!? しっかりしろ!! ─

肩を掴んで体を揺らし声をかけるが様子がおかしい。呼吸はしているが視線が遠方を見据えたまま動かない。

 「ヒゥ……ヒィィィィ……」─ お兄ちゃん……クル……シ…… ─

掠れた声で返事をしだすと妹タブンネはおもむろに胸を掻き始めた。
ガリガリと、毛が毟られ皮膚が裂けるほど力強く胸を掻く妹タブンネ。
ただでさえ傷ついているのだ、どれだけ苦しくてもこんなことが体にいいはずがない。
兄タブンネは妹タブンネの両手を掴んで固定する。すると今度は引きつけのような症状を起こし始めた。
全身が痙攣をおこし呼吸できているかも怪しいような浅さで「ヒィッ!ヒィッ!」と呼吸をする。泡を吹き目をぎょろぎょろと不規則に動かしながら何度も瞬きをする。
妹の体内で何か異常が起きているのはわかっていた。
だが兄タブンネにはそれが何なのか分からず、ただただ困惑することしかできなかった。
やがて妹タブンネの喉が大きく膨れ上がると、口から赤黒いゼラチン状の何かが吐き出された。
兄タブンネはそれを手に取り顔の近くに持ってくる。
漂ってくる強烈な鉄臭さ。これは───妹タブンネの血だ!

ゲップという技は名前こそ生理現象と同じであるが、れっきとした毒タイプの技である。
体内で生成されたガスに僅かな毒素を混ぜ込み放出するそれは、ごくごく健康的なポケモンに対しては中毒症状を引き起こさないだろう。
だが衰弱しきっている幼体のポケモンに対してはどうだろうか。
微量であっても毒は毒。その性質に変わりはない。
妹タブンネはゲップによるサザンドラの毒素にその身を侵されていたのだ。

442カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:03:22 ID:cGUalhbk0
血の塊を吐き出した妹タブンネに再び変化が訪れる。全身から流れ出ている血液が同じように凝固し始めたのだ。
ポケモンがそれぞれ持つ毒素は種族ごとに多少異なる。
サザンドラが保有している毒素はハブネーク等と同様、血を凝固させる性質を持っていたようだ。
そしてその性質は体外に排出された血液だけに適用されるものではない。
妹タブンネの体の中では今、甚大な出血障害が引き起こされていた。
兄タブンネは妹の血流と心音が急速に弱まっていくのを耳に捉える。
なんとかしなくてはいけない、だがどうすることもできない。
体を揺らしても、声をかけても、体を摩っても、涙を流しても、事態は一向に好転しない。

 「ミィィ!!!ミッミッミィ!!!」─ しっかりして!!! ねぇ! ねぇ!! ─

兄タブンネの懸命の声掛けも空しく妹の命の鼓動はどんどんと弱くなっていく。
ついには聴覚に優れたタブンネでもその音を捉えられない程に小さくなってしまう。
それは数秒後に訪れる確実な死を意味していた。
妹タブンネは弱々しく兄タブンネの頬に触れ、口を動かし何かを伝えようとする。
認めたくはなかった。でもこれが妹の最後の言葉になるのかもしれない。
兄タブンネは涙を堪え、彼女の言葉に耳を澄ませた。
妹タブンネが「ミ……」と声を発したその瞬間。

サザンドラがそれにかぶせるようにして巨大な咆哮を上げた。
全てをかき消すほどの力強い鳴き声が周囲を支配する。
兄タブンネは恐怖と、「何故今この瞬間なのだ」という絶望の感情で、ただ吠えているだけのサザンドラから目を離す事ができなかった。
やがてあたりが静まり返ると、兄タブンネは抱きかかえていた妹タブンネに目を向ける。
そこには苦しみに塗れた表情で息絶えていた妹タブンネの亡骸が存在していた。

 「ミゥミゥ……? ミィ……ミッミィ!!」─ 嘘だよね……? 返事してよ……ねぇ!! ─

兄タブンネは妹の頬をペチペチと叩き反応を探る。
先ほどまで元気だったのだ。
この遺跡に入るまでは自分と一緒に温め合っていたのだ。
洞窟に居た頃だって何をするにも自分の後ろについてきて、自分の事を慕ってくれて、いつも朗らかに笑っていて───
そんな妹タブンネがこんな表情で、こんな結末を迎えるなんて……
妹を守れなかった。それだけでなく最後の言葉すら聞き届ける事ができなかった。
兄タブンネは膝をつき愕然とする。
これで彼の心を支える要素はゼロになった。
サザンドラは兄タブンネの頭を掴み、後ろに倒し目線を合わさせる。
兄タブンネの顔には喜怒哀楽、どういった表情も映っていなかった。
満足気な笑顔を浮かべるとサザンドラはこう口にした。

 ─ 分かったかクソガキ、これがタブンネの末路だ ─

そうか、自分たちはこうなるために生まれてきたのか。
兄タブンネはもはや抵抗することもできず、その言葉を真正面から受け止めた。

443カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:04:30 ID:cGUalhbk0

 「お疲れーサザンドラ……って結構手酷くやられてるなぁ」

兄タブンネが愕然としていると背後から声が聞こえてくる。
そこにはメタモンを頭に乗せ脇にフーディンを携えたトレーナーが存在していた。
先ほどの鳴き声は狩りの終了を知らせる合図だったのだ。
トレーナーはサザンドラの風貌を見るなり鞄からかいふくのくすりを取り出して散布する。見る見るうちに傷口が塞がりサザンドラは全快した。
これでいよいよもって兄タブンネの勝ち目も完全に潰えた事になる。
だが兄タブンネにはもはや抵抗しようという意思などなく、ただ然るべき時が来るのを待つだけだった。
トレーナーも兄タブンネがまだ生きていることに気付いたようだ。「こいつはいいのか」とサザンドラに声をかける。
しかしサザンドラは「そいつは別にいい」といったジェスチャーでトレーナーに返事をした。トレーナーもサザンドラがそういうなら、と納得したようだ。
兄タブンネはサザンドラを見つめる。
彼はなんて優しいポケモンなのだろう。タブンネである僕の事を見逃してくれるなんて。
サザンドラの意図を汲み取った兄タブンネは立ち上がり、ヨタヨタと覚束ない足取りで遺跡の出口まで歩いていく。
その風貌はもはや生きているのに死んでいるとさえ思えるほどだった。
だがきっとそれは間違いではないのだろう。
彼の心を支えていた要素は全て無くなった。今の彼は意思のない、歩く死体でしかない。
兄タブンネが遺跡の出口へと向かって行ってると不意に後ろから声をかけられた。

 ─ 忘れモンだクソガキィ!! ─

サザンドラはそういうと妹タブンネの亡骸を兄タブンネに向かって放り投げた。
兄タブンネの少し前に落下したそれは衝撃で首の骨が折れて変な方向に曲がっている。
自分たちの命は全て彼らのモノなのに、見逃してくれるだけでなく妹タブンネの死体まで授けてくれるなんて。
やはり彼はいいポケモンだ。
暖かさの無くなった妹タブンネの亡骸を抱えると兄タブンネはサザンドラにお辞儀をし、遺跡の出口へと向かった。

444カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:05:25 ID:cGUalhbk0

 「さて、とりあえず掃除から始めないとだが……ってもう一匹生きてるやつがいるじゃないか」

トレーナーは続いてもう一匹の生存者であるリーダータブンネを発見した。
先ほどのタブンネもそうだがこのタブンネもまぁずいぶんと……汚い。
中々派手に暴れたようで感心半分、面倒な気持ち半分になるトレーナー。
すると頭の上にいたメタモンがリーダータブンネを指で指し怒り顔になりながら「モンモン」と叫び始めた。

 「あー……こいつがメタモンの言ってたあっためんどくさいタブンネか」

サザンドラが暴れている間、外でトレーナーはフーディンのテレパシーを介しメタモンから報告を受けていたのだ。
その際にずいぶんと群れから信用されていて警戒心の強い、きわめて対処が面倒だったタブンネが居たと聞いている。
トレーナーはリーダータブンネにモンスターボールを投げ、ゲットする。

 「よし、じゃあ次の狩りの時はこいつに変身して誘い込むとしようか。
  あと……そうだ、良いことを思いついた。フーディンにこいつの記憶を覗いて貰ってどんな凄惨な目にあったかを見ながらティーパーティでもしようぜ」

トレーナーはにこやかな笑顔で三匹に向かってそう発言する。
時折、人間というのはポケモンでは想像も及ばないような悪意のある発想を思い浮かべるものだ。
あまりにもナチュラルに外道な発言をしたので三匹はトレーナーに対しドン引きの姿勢を示していた。



トレーナーとポケモン達の笑い声が遺跡内に響き渡る。それを聞きながら兄タブンネは遺跡の階段を一歩一歩下っていた。
やがて現れたタブンネの焼死体の脇を通り、門を通過する。何の障害もなくすんなりと遺跡の外に出る事ができた。
外は相も変わらず吹雪が吹き荒れており、一寸先は白に覆われて何も見えない状態だ。
一歩、雪原へ足を踏み入れる。
突き刺すような雪原の冷たさも、今の兄タブンネには感じる事ができなかった。
行く当てもなく歩みを進めていく。次第に兄タブンネは三つまたヶ原に吹雪く白い闇へと飲まれていった。

445カンムリ雪原のタブンネ 三つまたヶ原編:2021/02/09(火) 19:08:42 ID:cGUalhbk0
吹雪の日の三つまたヶ原でタブンネさんが多く出てくるのはなんでだろうって疑問から作った話なんだけど思いのほか作るのに時間がかかってしまった……
個人的には善良だけどどこか脳内お花畑なタブンネ達が人やポケモンの悪意で滅茶苦茶にされるお話が好きだから結構満足いくものがかけたと思う
またなんかタブンネさんのお話書きたいな。書こう

446名無しさん:2021/02/09(火) 19:35:25 ID:cLbasE9g0
>>445
完結乙ンネ

妹の死体を抱えて去っていく兄ンネの姿を想像したらたまりませんわ。

個人的にあまりにもゲームとかアニメの世界観からかけ離れてるSSって読み飽きるんだけど、最近のSS全部良かった。

作者様の次回作に期待!

447名無しさん:2021/02/10(水) 08:52:16 ID:3VZ4YLAk0
各職人様乙です。

冠雪原の全マップ、全天候低確率なのに三つ又の吹雪時だけ出やすいって確かに謎だよね。

なんか裏設定あるのかと勘繰ってしまう...

448名無しさん:2021/02/11(木) 02:45:45 ID:N922eJow0
今タブンネさんのWikiって活動停止してるんだっけ

449名無しさん:2021/02/11(木) 14:18:30 ID:DQzNGR/M0
どうなんだろう

去年ここに上がってたSSって記事になってないよね

450キルクスタウンのタブンネ:2021/02/11(木) 20:46:39 ID:DQzNGR/M0

「ミィ!目が覚めたミィ?よかったミィ〜」

ママ⁉︎  綺麗な芝生の上で目を開けたタブンネ。目の前の生き物に驚く。
一瞬ママと見紛うたのは野生のタブンネ(♂)。しかしよく見るとママより少し背が低く、体毛も綺麗で、顔立ちも少し違う。
自分の額の上にはヒンヤリと冷たい真っ白な軍手が乗せられていた。


生家を離れ、一心に走り続けたタブンネ。
錯乱状態でもあったし、触覚で人間の気配を察知できないタブンネはその道中何度も人間に遭遇したが、ぶつかって蹴られたり、悪ガキに遠くから石を投げられたりしただけで、幸い重い傷は負わなかった。

宛ても無い行脚であったが、結果方向が正しかったのか、ライモンシティの東外れ、16番道路の迷いの森付近の沢辺まで辿り着いて、やがて気を失った。
ショックで心も不安定であったし、ロクな運動をしたことのないタブンネには体力の限界だった。


しばらくして沢まで水を飲みに来た冒頭の♂ンネに介抱され、今に至る。
いくつかの傷を負い、普段から不潔なママンネが舐めて毛繕いをしていたタブンネは相当臭かった筈だが、♂ンネは嫌な顔せずタブンネを看病した。
気立ての良い、優しい個体だった。

♂ンネは16番道路と人間の街を隔てる柵の付近に穴を掘り、一人で住んでいた。
宛ても身寄りもなかったタブンネは半ば巣食う形で♂ンネと共に住むことになり、やがて自然とつがいとなった。

路地裏で声を潜め、最低限の会話しかしてこなかったタブンネは当初口数が少なかったが、別に内向的という訳ではなかった。
♂ンネ改めダーリンネと過ごすうち、タブンネの言葉をどんどん覚えていき、次第に明るくなっていった。

つがいはお互いの経緯をよく話した。

ダーリンネはこの林地で生まれ育ち、パパはきのみを取りに行った帰りにレパルダスの群れにタカられ死亡。
ママは突如現れたトレーナーのポケモンに散々痛めつけられ弱った所で捕獲され、行方知らずとなった。

それからは1人で暮らしたが、優しくて明るい性格だったダーリンネはこの林に何匹かポケモンの友達がいて、時々だがチラーミィやエモンガがきのみをお裾分けしてくれたりもした。
食性の被る異種族と打ち解けるのは珍しいことだが、それだけダーリンネはポケ当たりが良かった。
同族の知り合いも何匹か居たのだが、みんないわゆるタブンネ狩りに遭い、死亡してしまった。

今この林地には、おそらく彼らの同族はほとんど生息して居ない。

ダーリンネは決して恨み節を言わなかったが人間は怖い生き物だという認識はつがいで一致していた。

2匹は林に僅かだが自生するきのみやドングリを食べ、平穏に過ごした。
人間の生ゴミを食して生きてきたタブンネは最初その味に感動を覚えた。
種族として適正な食生活になったことで、毛艶も前より良くなり、体力もついてきた。

451キルクスタウンのタブンネ:2021/02/11(木) 20:49:10 ID:DQzNGR/M0
優しいダーリンと過ごす中、タブンネは性格的に色々な変化があった。
口数も格段に増えた他、自分の身なりをよく気にするようになった。

これまでどんどん不潔になっていくママと過ごすのが当たり前だったし、ここに来るまで狭い路地裏から通りを歩く人間の姿をたまに見るだけで、他のポケモンどころかママ以外の生き物を間近で見ることも接することもなかったタブンネ。

水場の沢に行くたびに身体を綺麗にし、よく水面に映る自分の姿を確認した。
いつも気になったのは耳元の触覚。
ママやダーリンのと違い自分のは巻いていなく、短かった。
ママが毛繕いをしてくれる度に自分の耳元を見て、少し悲しそうな顔をしていたことをよく思い出した。
いつも触覚を気にするタブンネを見て、ダーリンネは個性的で可愛いとよく褒めてくれた。

タブンネとは元来綺麗好きな種族。生活が健常化したことで種族としての特徴を取り戻し、自意識も芽生えた。
いつも燻んだ色をして、フケや土埃で汚かったママの姿を時折思い出しては不憫に思った。ママともこんな生活がしたかったと思い、しばしば涙を流した。

つがいは次第に交尾をするようになった。
最初タブンネに行為を求められた時、タブンネが明らかに成獣より小さかったことからダーリンネは躊躇したが、お互い本能的な欲求には抗えなかった。
タブンネの身体が小さいのは先天的なもので、生殖機能は十分に育っていたのだが、どちらかに子種が無かったらしく、中々子宝には恵まれなかった。

月に何度か産卵したタブンネだったが、いつも無精卵だった。
無精卵とわかる度、ダーリンネは残念がったが、タブンネはそれ程気にしていなかった。

452キルクスタウンのタブンネ:2021/02/11(木) 20:51:13 ID:DQzNGR/M0
細々とはしていたが、確かな幸せを感じていたタブンネ。

だがそんな生活も、長くは続かなかった。
タブンネは知る由もないが、ダーリンはパパと似たような動機から、その命を落とすことになった。


ある日、産卵がピタッと止まったタブンネ。
不思議に思ったダーリンネが、タブンネの下腹部に触覚を当てた。

「ミィー⁉︎ハニー!鼓動が聞こえるミィ!ついにやったミィよー!」

タブンネはなぜダーリンがここまで喜ぶのかピンと来なかったが、とにかく嬉しそうな姿を見て、幸せな気持ちになった。
いつかパパになりたいと思っていたダーリンネには待望の着妊だった。


この懐妊時期は結果的に最悪だった。

ただでさえ食糧が多くなかった、つがいの住むこの林地。
最近きのみの不作がひどく、夫婦がこの1週間で口にしたのはドングリを4つずつ、また申し訳ないとは思ったが、たまたま見つけたクヌギダマの死骸を半分に分けて胃に流し込み、あとは沢の水で飢えを凌いでいた。
自分の食糧すらままならないので、お友達からのお裾分けも当然なかった。

飢餓を感じた2匹の身体は動物的習性で一時的に生殖能力が高まっており、懐妊は自然なタイミングでもあった。


子供を宿した妻のため、巣から遠い位置まできのみを取りに行くと言い出したダーリンネ。
16番道路の人間が行き来するコンクリ路付近の少し開けた草むらに、比較的多くきのみの手に入る場所があった。ダーリンネには知り合いの同族の遺体を2度発見したことのあるいわくの場所で滅多に近づかなかったが、妻子を想う使命感と、また気分的に浮かれていたところもあった。
自分を置いて遠くに行かれることを不安に思ったタブンネも、ダーリンの反対を押し切り、この遠征に同行した。

程なくして目的地に辿り着いたつがい。大量とはいかず、どれも早熟ではあったが、いくつかのオレンやモモンを拾って、尾の中に詰め込んでいる最中、ダーリンネが異音に気づく。

「ミミッ⁉︎ハニー、大変ミィ!人間が凄い速さで近づいて来るミィ!急いで隠れるミィ!」

慌てて走り出した2匹だったが、隠れ場所の少ない立地、また身重のタブンネのスピードが足らず、人間に見つかってしまう。
折角高度な集音レーダーを持っていても、逃げ切る素早さが無ければ意味がなかった。

453キルクスタウンのタブンネ:2021/02/11(木) 20:52:41 ID:DQzNGR/M0

「あっ、いたいた!しかも2匹もいるじゃん!もうこの辺いねえのかと思ったわ。」

自転車を猛スピードで漕ぎ回っていた1人の男、小太りで、身長は165cm程あるが顔や声にはだいぶ幼さがあった。

人間の声を無視して必死に林に向け走っていくつがい。
男は逃すまいと2匹の前まで自転車でやって来ると、急いで腰に手を掛け、ボールからズルッグを繰り出した。

足止めされ、恐怖に竦む夫婦。しかしダーリンネはタブンネに走るよう促すと、自分は必死に懇願を始めた。
人間が話の通じる相手だとは思っていなかったが、どうやら自身のポケモンに闘わせる様子。ポケモン同士なら対話ができると思ったのだ。

「お願いミィ!奥さんのお腹にタマゴがあるんだミィ!どうか見逃し・・・っ」

ダーリンネが言葉を紡ぎ切る前に男が蹴手繰りを命じ、大した威力ではなかったのだが、無防備な身体に技を喰らったダーリンは後方に吹っ飛び、不運にも岩に首元をぶつけてしまい、頸椎が折れて絶命してしまった。

ダーリン⁉︎ 衝撃音に振り返るタブンネ。変な角度に首が曲がって白眼で舌を垂らした最愛の夫が視界に入るや否や、自分にも蹴手繰りが飛んできた。
ロクに闘った事もなく、効果抜群の技を受け立ち上がることができなくなったタブンネ。容赦なく男がボールを投げると、抵抗虚しくその中に収まってしまった。

「デカイ方はそれ死んじまったのか?まあいいや。どうせ1匹だけの予定だったし。おつかれ!戻れ、ズルック!」

男はズルッグをボールに戻すと、再び自転車に跨り、鼻歌を唄いながらその場を後にした。

タブンネはボールの中、幾分かダメージは収まったが、一瞬で変わり果てたダーリンの姿が脳裏に焼き付き、涙が止まらなかった。

幸せな生活から晴天の霹靂、憎き夫のカタキとの地獄の生活が始まった。

454名無しさん:2021/02/13(土) 12:37:31 ID:hQ4kepr60
乙乙
哀れダーリンネ、お前はいいやつだったよ
目の前でつがいを殺されたタブンネがどんな目に合うのか期待が膨らむ

455キルクスタウンのタブンネ:2021/02/14(日) 20:32:40 ID:HQTbt5GE0

タブンネを捕獲したこの男、ライモンシティに住む駆け出しのトレーナーだった。

駆け出しということを差し引いてもだいぶ実力にもセンスにも欠けていて、ジムに挑戦しては負け、通常のトレーナーバトルをしては負け、彼の手持ちポケモンは内容の乏しいバトルで負け続けている為か、一向に成長しなかった。

ほとんど勝てないこのトレーナーは、自分を負かした相手にアドバイスを乞うようになったのだが、その中で何人かに勧められたのがタブンネ狩りだった。
早速各所草むらを探し回り、これまで3体ほど倒したのだが、中々目標をピンポイントで探すことができず、野生のタブンネに遭遇する前に他種の野生ポケモンにやられることも多々あった。それほど腕が無かった。

経験値狩りの効率を上げるために考えたのが1匹を捕獲してそれを何度も倒すという方法。
思いたってやって来たのが16番道路で、ひたすら走り回って探し当てたのがタブンネ夫婦。ダーリンは犠牲となり、タブンネはこの世の地獄行きとなった。


ライモンのアパートの一室に帰ってきた男。
天井から下げられた洗濯棒に2つロープが結びつけられている。経験値タンクを固定するためあらかじめ用意していたものだ。

先のズルッグにチャオブー、ヒヤップ、メグロコを繰り出すと、タブンネもボールから出した。

出て来るや否やキッと男を睨みつけたタブンネ。生まれて初めて憎しみという感情を覚えた。

ママが殺された時はまだ幼く、怒りよりも恐怖が勝り、またママを手にかけた者の姿を見ていなかったこともあり、天災のように捉えていた。
しかし今は自我も芽生え、あらゆる物事を判断する知恵だってある。到底受け入れられる理不尽では無かった。

しかし男の周り、気合の入った目つきで自分を見つめる4匹のポケモンに気づくと恐怖で足が竦み、怒りに満ちた表情は怯え顔に変わってしまった。

男はタブンネの手を乱暴に引っ張り棒の下まで連れてくると、器用にロープで両手を締め上げ、万歳のような姿勢で固定された。

これから何が起こるのかという恐怖でタブンネは気づかなかったが、先程蹴手繰りを受けたダメージは完全に回復していた。
サンドバッグの稼働率を上げるため、男はヒールボールでタブンネを捕獲していた。それくらいの頭はあったようだ。

456キルクスタウンのタブンネ:2021/02/14(日) 20:35:33 ID:HQTbt5GE0
身構えるタブンネに4匹が歩み寄ると、みんなゲシゲシとタブンネを叩き始めた。

男のポケモン達は皆低レベルであるし、攻撃はポケモンの技とは呼べないようなモノだったので、重傷を負うような威力ではなかったし、気を失うようなこともなかった。
こんなことで強くなるのか謎だが、ここは野外ではなくアパートの一室。強力なタイプ技を使うことを男は禁じていた。
しかしタブンネもこれまで戦闘経験はない。弱打でじわじわと鈍いダメージを蓄積されるのは逆に苦痛で、恐怖も感じ続けなければならなかった。

ここへきて人間への、男への恐怖心が蘇ってきたタブンネだったが、先程ダーリンネがしたように、自分を叩き続けるポケモン達に交渉しようと彼等の顔を見たが、結局何も言わず、押し黙った。
自分を叩く4匹のポケモンは皆真剣な表情をしていて、触覚で相手の感情を読み取れないタブンネでさえも、悪意や敵意といったモノは感じられなかった。

彼等はただ強くなりたい一心、いつも負け続けて悔しいし飼い主に申し訳ない気持ちもある。
タブンネを痛めつけたい訳ではなく、アスリートがトレーニングをするような感覚で、一心にこの"タブンネ狩り"に取り組んでいるだけだった。

やがて4匹が疲れを見せ始め攻撃の手が止まると男はタブンネをボールに戻し、その日の"タブンネ狩り"は終了した。


次にタブンネが繰り出されたのは翌日の朝。
ボールから出されてすぐに昨日同様縛り上げられたタブンネ。またアレが始まるのかと視線を上げると、卓袱台の上に人間の食事が用意され、その周りで男のポケモン達が器に盛られたポケモンフーズを食べていた。

男はこうしてポケモン達と共に食事を摂っていて、朝食の時だけタブンネもボールから出されるようになった。
タブンネに与えられるのはフーズではなく、安売りされる規格外品や期限間近品のオレンに激苦の漢方粉をまぶされたモノ。それを厚手のゴム手をした人間が口元まで持ってくると、タブンネは半ば惰性で飲み込んだ。かなり苦い味に顔を顰めたが、栄養としては問題ない食事だった。

457キルクスタウンのタブンネ:2021/02/14(日) 20:38:11 ID:HQTbt5GE0

タブンネは一瞬で食事を終えたが、目の前では男と彼のポケモン達が食事を続けていた。
昨日自分を殴り続けた4匹の他に、イーブイも居た。

タブンネはもう生に対する執着を失っていた。命を賭して自分を守ってくれたママやダーリンに申し訳ないと思ったが、彼らの居ないこの世界に何の未練もなかったし、彼らと同じ所へ行きたい気持ちの方が強かった。

ぼんやりと1人と5匹の食事を眺めるタブンネ。いつまでも口内に苦味が残り、量も少ない自分と違い、まともなゴハンを食べる目の前の一団。
別に食事の内容を羨むことは無かったが、楽しそうに会話をする様子はタブンネに過去の生活を思い起こさせた。

タブンネはこれまで一人ぼっちになったことが無かった。生まれてからしばらくはママがそばに居たし、ママと別れてからはすぐにダーリンと出会った。

ママとの食事はいつも残飯で特に美味しくはなかったし、常に声を潜めての生活だったがママはいつも優しく、自分よりも大きな身体に抱き締められると幸せな温もりがあった。
ダーリンはママに負けないくらい自分に愛情深く、林での食事は侘しいことが多々あったが美味しくて、ダーリンと楽しく会話しながら食べたきのみの味が鮮明に思い出される。

タブンネが一筋の涙を溢したところで一団は食事を終え、タブンネは再びボールに戻された。


次にタブンネが出されたのはその日の午後。
視線の先に1人の男と、その相棒4匹が居る状況は昨日と変わらなかったが、皆タブンネの姿を見るや、驚愕の表情を浮かべた。

タブンネは胸の前に綺麗なタマゴを抱いていた。
これまで散々殴られて流産しなかったのはかなり幸運なことだが、タブンネにはそれほど関心がなかった。

暫し驚いた顔で突っ立っていた一団だったがじきに男が顔を紅潮させると、タブンネからタマゴを引ったくりそれを床に置き、4匹の相棒達をボールへと戻した。

458キルクスタウンのタブンネ:2021/02/14(日) 20:41:40 ID:HQTbt5GE0

「いつの間に俺のポケモン誑かしやがったテんメぇーー!ザコのくせによ!ぶっ殺してやる!!」

男はタブンネを仰向けに押し倒すと馬乗りになり、もの凄い力でタブンネの顔面を殴り始めた。

タブンネを捕まえたのは昨日のことで、それ以後自分の前以外ではずっとボールに入れていたのだからそんな訳ないのだが、男は自分の目を盗んでタブンネが誰かと交尾したのだと勘違いし、なぜかブチ切れてタブンネを殴り出した。
色々と頭の弱い男だった。

しかしそんなことはタブンネには関係ない。
なぜ男が怒っているのかタブンネには謎だったが、その剣幕と力の強さにタブンネは本気で恐怖した。昨日の“狩り”よりもダメージが大きく、改めて人間への恐怖心が強くなった。

やがて手を止め、ハアハアと荒々しく肩で息をする男。床に置いたタマゴをタブンネに抱かせると、タマゴごとタブンネをボールに収めた。

男に殴られた後タブンネの顔はパンパンに腫れていて、その日は“狩り”は行われなかった。


翌朝再びタブンネはボールから出される。男はタブンネからタマゴを奪い床へ置くと、ロープで縛り上げ、昨日と同じように激苦のオレンをその口に押し込んだ。

味は相変わらず不快だったがひとまず人間に殴られなかったことに安堵するタブンネ。
ヒールボールの効果か顔の腫れはほぼ引いていたが、所々内出血で紫色に変色していた。


それからは毎朝食事のために出され、一日に一度か二度、狩りのために出されを繰り返す生活が1週間程続いた。

タブンネが一番恐れた人間からの殴打は無かったが、ポケモン達の殴る力が日増しに強くなっていき、タブンネを苦しめた。
男はタブンネを出す度にタマゴを引ったくり、ボールに戻す度に抱かせた。
自分の相棒の誰かが父親だという男の勝手な勘違いのおかげでタマゴは割られずに済んだのだが、タブンネにはもうどうでもよかった。何かの拍子に死ねたら一番良いくらいの心境であった。

459キルクスタウンのタブンネ:2021/02/14(日) 20:44:18 ID:HQTbt5GE0

“タブンネ狩り”を続けた男はある日、意気揚々とジムへと向かった。
サンヨウジム。新人トレーナーの登竜門と位置づけられるジムで、ジムリーダーもそんなに強いポケモンを繰り出す訳ではないのだが、男はこれで4回目の挑戦だった。

特訓の成果があったのか4回目のチャレンジにして初めてバッジをゲットし、2日後にはシッポウジムに挑みそこでもバッジを獲得。
気を良くしてさらにその2日後にはライモンジムに挑むがここで躓く。その後何度か挑むが負け続けた。


自宅で行う“タブンネ狩り”も次第に頻度が減っていった。いくら経験値の宝庫とは呼ばれていても、戦闘経験もなく、男に捕らえられてからもただ一方的に殴られ続けているだけ。タブンネ自体のレベルが低すぎれば効果なんて知れていて、さすがに男もそれに気づき始めた。

“狩り”が減ってもタブンネには苦難が続いた。
男はバトルで負ける度、タブンネを繰り出してはロープに括り付け、鬱憤を晴らすようにタブンネを殴った。
当初の目的とは違い、文字通りのサンドバッグとして使われる日々が続いた。


やがて男はバトル自体をしなくなった。元々飽きっぽい性格であった。
タブンネは誰にも殴られることが無くなり平穏だった。一日に一度、朝だけボールから出されて漢方粉きのみを喰わされてはボールに戻されるだけの日々が続いた。

もう面倒くさくなったらしくロープに縛られもしなくなった。
タブンネは一団から少し離れた位置から、ボンヤリとその食事風景を眺めた。

食事の様相は少し以前と変わっていた。かつてタブンネを殴っていた4匹はただ無言でフーズを口に運び、イーブイだけは嬉しそうで、男は時々イーブイだけには話しかけたが、会話数は格段に減っていた。
どうでもいいけどいつまでこんな生活が続くのだろう。タブンネの頭の中はそれだけだった。


そんなタブンネの想いが通じたのか否か、生活の変化は唐突に訪れた。

ある日男は知り合いのトレーナーから、ガラル地方への旅行券を譲り受けた。
そのトレーナーは男が初めてジムに挑んだ時に一緒だった女性で、イッシュ各地で行われるバトルコンペの一つで優勝した商品として旅行券を得たが、彼女は既にジムバッジ7つを獲得、イッシュリーグ挑戦も視野に入る状況で旅行などに興味は無く、暇そうだった男にそれを譲り渡した。

男はそれから上機嫌だった。生まれて初めての海外旅行が楽しみで仕方なかった。

やがて出発日を迎えると、バトル用ではなく唯一ペット用として所有していたイーブイだけは旅に同行させようと思い、ヒールボールを鞄に入れ、フキヨセ空港へと向かった。

タブンネはサンドバッグ効率を上げる為、イーブイは単にデザインが可愛いからという理由でヒールボールに入れられていた。
普通中身を確認するように思うが、ただでさえ注意力に欠け浮かれていた男にそんな脳は無く、旅行にはタブンネが同行することになった。

こうして思い掛けずして生まれ故郷であるイッシュを離れることになったタブンネ。
タブンネの物語は新たな土地へ舞台を移すことになる。

460名無しさん:2021/02/15(月) 16:11:59 ID:fWQIoVSM0
生まれてくるベビは父親が誰であれタブンネだからな

ベビンネの運命にも期待しております

461キルクスタウンのタブンネ:2021/02/15(月) 20:43:27 ID:GEvDQ6rs0

フキヨセを発ち、ガラルの大都市、シュートシティへと降り立った男。
生まれて初めて見るイッシュ以外の街並み。男は一人で子供のようにはしゃいでいた。

そこから電車を乗り継ぎ、大都市圏を離れてからは空のタクシーに乗り、宿泊場所のあるガラルの古都、キルクスタウンに辿り着いた。

その間目にした異国の光景全てに感動していた男。
中でも興味を引いたのはバトルスタジアム。イッシュのジムよりも遥かに作りが大きく、男の頭はそれで一杯になった。
ホテルイオニアにチェックインするや否や、比較的田舎であるここキルクスにも公認ジムがあると知り、一目散にそこへ向かった男。
旅の幸先良くその日はジムチャレンジャーとリーダーの対戦が見られた。

旅行券を譲ってくれた女性から少し聞いてはいたが、ガラルのポケモンバトルはイッシュのそれと少し違う。
ポケモンが巨大化するという不思議な現象、巨大化したポケモンが繰り出す強力な技、そしてスタジアムの観衆の多さと熱狂、その全てに感動を覚えた男。しばらくご無沙汰だったがイッシュに帰ったらまた自分もジム巡りをする意欲が湧いてきた。

異国でのジムバトル観戦を堪能した男。
腹も減ってきて街中のレストラン街が彼を誘惑したが、蜻蛉返りで足早に宿泊先のホテル自室へと舞い戻った。
浮かれ過ぎていて、愛ポケのイーブイちゃんを鞄のボールに入れたまま置いてきてしまった。
この異国の風景を見せてあげたら喜ぶだろうなと想像すると楽しみで仕方なかった。

部屋へ着き、大きな鞄を弄ると、ヒールボールからポケモンを繰り出した男。
中から出てきたのはイーブイの3倍近い体躯のある、大きな耳の短足2足歩行の生き物。

想定外の光景に男はあんぐりと口を開け暫し硬直する。やがて我に帰ると、乱暴に鞄の中身をブチ撒けていくが、他にボールは無い。

タブンネは両手でタマゴを抱き、見慣れない部屋をキョロキョロと眺めていた。

462キルクスタウンのタブンネ:2021/02/15(月) 20:46:18 ID:GEvDQ6rs0
全ての成り行きを理解し、両手を目一杯握りしめ、プルプルと全身を震わせる男。顔は茹で上がったように紅潮し、額にはくっきりと血管が浮き出す。

状況が理解できず、辺りを見回していたタブンネはその怒気に気がつくと、全身の血の気が引く感覚を覚え、金縛りにあったように動けなくなった。

タブンネからすればとんだとばっちりだが、男の怒りの矛先は全て彼女へと向けられた。

「…おい、...おいっ!!なんでテメエがついてきてんだこのメスブタァ!!初めての海外旅行なんだぞっっ!水差すなよ!ムカつくツラしやがって!殺す!今日こそ殺す!!」

男はタブンネを思い切り突き飛ばすと、マウントポジションを取り身体中を殴りつけまくった。
短い両腕を離れたタマゴは宙を舞ったが、ベッドに着地して幸い無事だった。
相当運に恵まれているタマゴだが、タブンネはもうそれどころではない。かつて無い程の怒気、殴打の力。
ミッ!ミ! と殴られる度に短い悲鳴を上げるタブンネだったが、やがて呼吸もままならなくなってきた。パンチと膝蹴りのラッシュ、本気で命の危機を感じる暴行であった。


5分、10分程続けられた虐待だっただろうか。男は手足の動きを止めると立ち上がり、ゼエゼエと大息をつき、肩と腹を上下しながら目の前の生き物を眺めた。

タブンネは微動だにせず仰向けに横たわり、虚な瞳で部屋の天井を見つめた。
脳が揺れ、目の焦点が合わず身体の至る箇所の感覚が無くなっているが、息をすると胸元に激痛が走る。
一寸先から聞こえる人間の荒い呼吸音。疎らな意識の中でタブンネは自分がまだ生きていることを感じ、生気を失った両眼から静かに涙を流した。
こんな苦痛を受けても死ねなかった自分の生命力を本気で恨んだ。


しばらく男の息の音だけが響き渡った一室。

膠着を破ったのはタブンネ。手負いの身をゆっくり持ち上げ立ち上がると、目の前の人間に視線を向けた。

「どうしてっ、どうしてこ、こんなことができるミィ?ヒッ、ミィは...ミィ達は、なんにも悪いことはしてないミ!ダーリンに、ダーリンとママに謝って!っ。ミィを、ミィを放して!もう関わらないでミッ!」

人間がポケモンの言葉を理解できないのは知っている。しかしタブンネはどうしても自分の思いを吐き出すことを我慢できず、肋が折れ呼吸すら苦しい身体で必死に言葉を紡ぎ、男に訴えた。
状況が変わるとも思わないし、また脈絡の無い怒りが飛んでくるかもしれない。
それでも抗議する勇気が湧いたのはもう失うものが何もないからだった。

463キルクスタウンのタブンネ:2021/02/15(月) 20:49:49 ID:GEvDQ6rs0
一連の暴行で疲弊し、肩で息をしていた男、再び顔を紅潮させ、プルプルと震え出した。

ミィミィ喚くだけで何を言っているかなど勿論わからないが、その顔つきや声色、自分に対して怒りをぶつけているのは明らかだった。

不快な態度に激昂した男。テーブル上に置いてあったガラス製の灰皿を手に取ると、思い切りタブンネの顔面へ振り翳した。

固く、重い凶器での攻撃。タブンネは咄嗟に顔を背けるが、避けきれずに左眼に命中してしまう。
ブリュッ! という嫌な音が響き、床に少しの血が飛び散る。タブンネはバランスを崩し、右腕を床について後方に倒れた。
再び脳が激しく揺れたが、無意識的に患部の左眼を触ると、その感覚に驚愕し、ハッと我に返った。

患部に触れた手を見ると、付着していたのは血と嚢、サファイアブルーの欠片。
激痛と半減した視野。
タブンネは片目を失明したことを悟り、強烈な吐き気を催した。

人間の攻撃はそれだけでは終わらなかった。
男は部屋の窓を開け放つと、重体のタブンネの体を持ち上げ、窓から投げ落とした。
タブンネは真っ逆さまに落下したが、空中でほんの少しだけ体勢を変え、辛うじて右腕に体重をかける形で着地した。

「...ッッ!ーーーァッ......」

声にも成らぬ悲鳴を上げたタブンネ。感覚神経のキャパシティを超える激痛の連続で、もうどこが痛いのかすら解らなかった。
男の宿部屋は地上3階。降り積もっていた新雪で幾分か衝撃は緩和されたが、それでも生きていたことが奇跡と言える出来事だった。

うつ伏せに突っ伏しながら僅かに顔を上げたタブンネ。やがていつも抱かされていたタマゴが上から降ってきて、少し離れた位置、より深く雪が積もっていた場所にボスッ!と着地した。

思わず無事だった左腕をそこへ向け伸ばすタブンネだったが、すぐに意識を別のことへ向けた。男が追ってきてまた暴行を加えられることが何より怖かった。

移動しようと試みたが立つこともできず、左腕を動かし這って前進しようとするが殆ど進めなかった。
文字通り瀕死の状態であったタブンネ、どんどん意識が暗闇に呑まれていき、やがて気を失った。

464名無しさん:2021/02/15(月) 22:01:31 ID:b.qHoiNw0
あまりにもタブンネさんに容赦なさ過ぎてめっちゃ引き込まれる
凄く続きが気になる

465キルクスタウンのタブンネ:2021/02/17(水) 20:17:22 ID:dkLwmxsc0

気を失って数時間後、ホテル中庭の雪の上で目を覚ましたタブンネ。
怪我の状況は右前腕粉砕骨折、左眼球破裂、肋骨数本骨折、全身各所が強い打撲に内出血、歯は半数以上折れていてとにかくボロボロだった。

軽く低体温症にもなっていたが、男から逃げ出すためにわずかだが匍匐前進していたタブンネ、意図せずして建物排気口下に当たる位置で気絶しており、流れ出す暖気の為か幸いにも一命を取り留めた。

—水、水を...

酷く喉の渇いていたタブンネ、人間並しかない聴覚を研ぎ澄まし、必死に水音を探る。
すぐにそれは聞こえてきた。中庭を一歩出た先、あまり使われないがホテルの宿泊者が時々足湯で利用する、小さな野外泉がある。

身体中が痛むが何とか立ち上がったタブンネ。よろよろと歩みを進め小さな温泉までたどり着くと、顔を突っ込みゴクゴクとお湯を飲み始めた。
白湯のように温かい水はタブンネの傷だらけの身体を潤し、生き返るような心持ちであった。

やがて顔を上げたタブンネ。水面に映る自分の姿を見てギョッとした。

左眼が完全に原型を留めておらず、辺り一体が大きく腫れ上がっている。
顔や身体中至る所が紫色に変色し、タブンネは知らないが色違いの同族と見紛うほどの体毛色。
右腕は半分より先がグシャグシャに砕け、付け根から真っ赤に腫れていた。
変わり果てた自分の姿はかつて見たママの遺体を思い起こさせた。

タブンネは野外泉を後にすると、トボトボと踵を返し歩き出した。無事だった右眼からポロポロと涙が流れた。

別に宛てもなかったが、来た道を戻って行く道中

—あ......

自分が横たわって居た位置から数メートル先、いつも胸に抱かされていた楕円球体が新雪の上に、刺さるように埋まっていた。

幸いヒビ割れも破損もない。タブンネは辺りの雪を掻き分けると、無事だった左腕で脇に抱き、排気口下まで持ち返った。

それは愛情や使命感から来る行動ではなかった。
初めて有精卵を産んだのはアパートに幽閉されてからであったし、仕方のない事かもしれないが、タブンネはどうも母性というものに欠けていた。
他にやることもないし何となく回収したという感覚だった。

わずかな暖気が流れてくるホテル中庭の排気口ダクトの下。そこがタブンネの拠点となった。
雪を少し除き、右腕の使えない身体で幾つかの落ち葉を集め敷物にし、そこに腰を下ろしてタマゴを抱き、冷静になったタブンネは状況を振り返っていった。

466キルクスタウンのタブンネ:2021/02/17(水) 20:18:33 ID:dkLwmxsc0

経緯を思い返すタブンネ。

ここ最近は毎朝苦い木の実を食わされるだけの日々が続き、割と平穏だった。
それが突然いつもと違う部屋で繰り出され、あの男がいきなりキレだし、散々殴られた後窓から落とされ、いつの間にか気を失ってしまった。

—そうだ、アイツは....⁉︎

辺りをキョロキョロと見回したタブンネ。周辺は新雪が積もっていて、自分の足跡以外に生き物が往来した形跡はない。

タブンネに「旅行」なんて概念は無いが、見知らぬ部屋で自分一匹が繰り出された状況。ボールの中では距離感覚が無いし暫くアパートで軟禁されていて野外に出るのは久しぶりだが、今自分の居る辺りの風景から、ここが生まれ故郷のイッシュではないことは何となくわかった。

・・・・・・

しばらくあれこれと思考を巡らせたタブンネ。
おそらくあの男は何かしらの事情でこの地まで遠征をし、なぜか自分が連れてこられ、理由はよくわからないが怒りだし、あの凶行に至った。
どれだけ眠っていたか不明だが、追ってきていないことから自分は見限られ、この異郷に放り出されたのだろう。そういう結論に至った。


タブンネの推理はかなり正しかった。

もうタブンネの人生に関係無くなった人物だが、男はタブンネを放り投げた後、一瞬後悔の念がよぎった。

自分のポケモン達を鍛え上げる為、割と苦労して捕まえたあの小柄なタブンネ。
しかしよく考えたら経験値稼ぎの効果は次第に落ちていたようだし、ここ最近は自分のストレス発散用の役目しかなく、餌代なんか考えたら別に飼い続ける意味なんて無い。

とはいえ窓から投げ捨てるというのはちょっとやり過ぎだったかもしれないと思った。男は別にタブンネを殴りつけること自体に快楽を感じてるわけではなく、あくまでやり場のないストレスをぶつけていただけだった。

ここは地上3階だし、アレはたぶん即死しただろう。男はそう思い、少し寒気がした。
アレを捕まえた時、一緒にいた個体は殺めてしまったが、手をかけたのはズルッグだし、事故にも近い事象だった。
勢いに任せてタマゴまで捨ててしまった。相棒の誰かが父親だと思い込んでいた男は、相棒を悲しませるのではと不安になった。
自分が直接生き物を、ポケモンを殺したことに若干後ろめたさを感じた。態度や言動の割に気の小さい、臆病な男だった。

しかし場当たり的で気分屋でもあった男、自身の空腹に気がつくと、レストランに向かい夕食を摂り、ホテルに戻ってからはキルクスの資源である天然温泉を堪能した。
その後2日間、ガラルの各観光地やジムバトル観戦を楽しみ、大満足でイッシュへと帰って行った。つまりタブンネへの執着なんて最初から微塵もなかったのだ。

この男が今後タブンネの人生に交わることは無い。イッシュに戻った頃にはもうタブンネのことなど頭に無かった。

467キルクスタウンのタブンネ:2021/02/17(水) 20:19:38 ID:dkLwmxsc0

改めて周りの状況を観察するタブンネ。もうすっかり夜深くなっていて、人間も寝静まっているようで、辺りは静寂に包まれていた。
今更ながら一面を包む雪景色に意識が向いた。

イッシュでも冬季には雪が降り積もるが、タブンネにはそれほど馴染みのあるものではない。
イッシュでタブンネが越冬を経験したのはベビ期〜ベビ上がりチビ期。狭い路地裏でママと暮らしていた時だった。
ちなみにだがキルクス到着時点、タブンネは間もなく生後1年となる齢であった。

この白い地面は冷たく体温を奪うし、やたらと動けば足跡がついてしまう。正直厄介で邪魔な物体だ。

雪はさておき、自分の居る場所の立地条件を確認していった。
人間の建物の間近で、辺りは明らかに人里。しかし大きな木が生い茂るおかげで通りからは見づらく、壁にくっついていればホテルの窓からも顔を出して覗き込まなければ見つからない。

野外でかなり寒いが、ダクトから流れ出す気流によって最低限の暖は取れる。しかも先程の水場までの距離も近く、住処にするには割りかし好条件であった。

あとは餌場だ、タブンネは鼻をヒクつかせると、すぐに懐かしい匂いを感じ取った。
タブンネの座っていた場所から4,5m先、ホテル厨房の裏口があり、すぐそばに廃棄場があった。
足跡が目立たぬ様、壁際を歩いてそこまでたどり着いたタブンネ。

残飯に当たるものはタブンネと同じくらいの大きさの蓋つきポリバケツ容器に入れられていたが、剥き出しに置かれているビニール袋の中に、紙屑やプラゴミに混じり、野菜芯や木の実の外皮、いわゆる産廃に当たるモノが入っていた。

タブンネはかつてママがやっていたように、ビニールに爪で亀裂を入れ、食べられそうなモノを綺麗に抜き去ると、ダクト下まで持ち帰り、チビチビと齧って食事を取った。
量も大したことはなく、野菜芯は特に味がしないし、捨てられる木の実皮はバコウやリリバといった固いモノ。

甘いモノを好むタブンネの嗜好には全く合わない食事だが、林での暮らしから飢餓には慣れていたし、幼少期は残飯暮し、人間に捕まってから口にしたのは激苦オレンだけ。
酷い食糧事情に対する肉体的、精神的耐性をタブンネは備えており、何とかここで暮らして行ける算段が見えてきた。


空腹も少し満たされ、さすがに破裂した眼球や粉砕した右腕は痛むままだが、持ち前の再生力でほんのわずかだが元気を取り戻したタブンネ。
左腕でタマゴを胸に抱き、ダクト下に腰を下ろしながら今一度物思いに耽った。

憎き、乱暴な人間からはおそらく解放された。とりあえずだが寝床と、餌場、水場は確保した、と思う。

だけど、それがなんだっていうのだろう。
自由になったってママや、ダーリンが帰ってくるわけじゃない。
自分は酷い傷を負わされ、これは一生治らないだろう。
たぶんここは自分の知らない、故郷からは遠い土地。ダーリンと過ごした簡素な巣穴に帰ることすら許されない。

幼少期と同じく人間のゴミを漁る生活。望んでいたことではない。今思えば林での生活は至福の時間であった。自分は残飯漁りの暮らしが適所であるように感じてしまい、強烈に自己嫌悪を抱いた。
残ったモノといえば自分の股から出てきた、この楕円形の球体だけだった。

ミスン。ミッ、ヒッ、ミンミン...  タブンネは仕様のない虚しさを感じ、さめざめと泣き続けた。
さっきの暴力や、窓から落とされた時に死ねたら良かったのに。
本気でそう思った。

468キルクスタウンのタブンネ:2021/02/20(土) 15:52:54 ID:PwpugYIc0

それからタブンネの新たな生活
イッシュを遠く離れたガラル地方、キルクスタウンでの日常が始まった。

ホテルイオニア中庭を拠点とし、この街の人間達の生活パターンを、タブンネは細かく観察していった。
幼少期の経験が活きたのか、それとも両親から受け継いだ血筋なのか、タブンネの洞察力はなかなか鋭かった。

まずは自分の寝床周辺の事情。
この場所に人間が出入りするのは、ほぼ毎朝ゴミ収集にやって来る業者。
それからモーニング、ランチ、ディナー終わりに厨房ゴミを捨てに出てくるホテルの調理師。特にディナーの時間帯は複数回出てくることがあり、より注意が必要だった。
調理師が出てくる時はドア付近で足音が聞こえてから外に出てくるまで若干のタイムラグがあるので、その僅かな時間で木陰に隠れた。
中庭に面した裏通りは日中若干の人通りがあるが、木々が上手くブラインドになってくれて、下手に動かなければ気づかれることはなかった。

次は水場の事情。
裏通りの小さな野外泉は時々だが足湯に訪れる人間が居て、しかも四方から丸見えな立地であった。なるべく人間が寝静まってから利用するようにした。

後は排泄場所。
幼少期していたように、中庭から一歩表に出た場所にある排水溝をトイレとして利用した。
日中は人通りがあるためそこに行きづらく、昼間に催してしまった時はやむなく寝床付近の雪の上で用を足し、夜中になってから雪ごと掬ってトイレまで持っていった。
右腕が使えないことからそれは意外と難儀な作業であった。真夜中の暗がりの中、何度も自分の糞を落としては拾うを繰り返す行動にタブンネは惨めな気持ちになり、しばしば涙を流した。
それでも住処の周りに糞を溜めるのはタブンネの衛生意識が許さず、また臭いが篭れば人間に見つかる怖さもあった為、タブンネはほぼ毎晩この糞運びをした。

右腕の負傷はタブンネにとってかなりの枷となったが、タブンネは排泄時と餌探し時以外の間、常に左脇にタマゴを抱えていた。
別段意味を感じていたわけではないのだが、辛うじて母体としての本能が残っていたのかもしれない。
タマゴを放置して遠方に行くことには、なんとなく気持ち悪さを感じた。

人間の行動パターンからタブンネは必然的に夜行性になり、日中浅い仮眠を繰り返して生活した。おそらく飼いポケだったら不十分な睡眠であるが、野生生活の長いタブンネは結構逞しさがあった。

また聴覚が健常な同族ほど優れていない分、タブンネは生き物の気配を感じることに長けていて、勘も割りかし鋭かった。
高度な聴覚に頼りきる一般の野生タブンネよりも、ある意味街中での暮しに向いていたのかもしれない。

469キルクスタウンのタブンネ:2021/02/20(土) 15:54:06 ID:PwpugYIc0

タブンネは夜中に拠点を離れ、全域とはいかないまでも、キルクスタウン街中を歩き周り、あらゆる場所を観察するようになった。

主な理由は他の餌場を確保すること。また今の寝床は悪くはないが、より死角が多く目立たない立地に新居を構えられるならそれに越したことはないと思った。

イオニアの廃棄場で得られるのは野菜芯や木の実皮だけ、量も安定しているとは言い難く、少食なタブンネでさえも時々侘しさを感じた。
蓋の隙間から流れ出る匂い、また木陰から観察した人間の行動などから、ポリバケツの中に残飯が多く入っていることは想像に易かった。
これを倒して中を漁ろうかと何度も頭によぎったが、自分と同じだけの高さがあり、重量もかなりある。倒した後元通りに片付けるのは相当に難儀なことが明らかで、その中を物色するのは涙を飲んで諦めた。

人の寝静まった古都を歩き回ったタブンネ。
ここにはいくつかの集合住宅や宿屋があったが、この街は通年降雪地。ゴミ捨て場は殆ど蓋つきの頑丈なタイプで、タブンネにはどうしようもなかった。

幼少期ママがゴハンを探してくれた場所は木柵の一側面が完全に開けていて、上から網をかけるタイプの簡易なものだった。
結果死んではしまったが、街暮らしの長かったママンネはかなり賢い位置に住処を構えていたと言えるかもしれない。


夜中の徘徊を始めて3日目、タブンネは新たな餌場を発見することに成功した。
イオニアから程近い位置に店を構える
  「ステーキハウス」
キルクスの中では比較的大きく、人気店でもあったその建物の片脇に、イオニアのそれと同じような条件の廃棄場があった。
蓋つきポリバケツに残飯、剥き出しのビニール袋に産廃という事は変わりなかったが、産廃の量と種類がイオニアよりも多かった。
マトマやロゼルといった香辛料が割と実を残した状態で、またトリミング処理された生肉の端部分が捨てられていて、タブンネには高栄養な食事を可能にした。

タブンネは肉食種ではない為、生肉が美味しいと感じるわけではなかったが、それは貴重なタンパク源となり、マトマは辛かったが、それを食せば体温が高まる効果があった。また特に嬉しかったのはロゼル。少し香りは強いが、その甘い味はタブンネの嗜好に合っていて、久しぶりのご馳走であった。

ステーキハウス廃棄場は対面に集合住宅が建っており、その窓から丸見えの立地になっていた為住処にすることはできなかったが、住宅と廃棄場の間には柵があって、万一姿を見られてもすぐ逃げれば問題は無く、タブンネにとって非常に貴重な餌場となった。

470キルクスタウンのタブンネ:2021/02/20(土) 15:55:13 ID:PwpugYIc0

新たな餌場を得たタブンネ。
日中は浅い眠りを繰り返し、夜中になると糞を片付けてからステーキハウスに出向き、帰り道に野外泉に寄って、イオニアの廃棄場を漁って非常食を蓄え、ダクト下で静かに過ごす、というルーティーンが出来上がってきた。

タブンネは水場に向かう際、温泉を飲むだけでなく、そこに浸かるということもするようになった。
常に寒冷地の野外で過ごすタブンネにとって、それは至福の時間であった。
温泉には幾ばくか湯治効果があり、勿論破裂した眼球が治ったり、粉砕した前腕が回復するまでの効能は無いが、皮膚表面の化膿や壊死を防せぎ、疲労回復の効果もあった。
温浴のそういった効能はタブンネも感じており、あったかく、不思議な魔法の泉として認識し、タブンネには日常の中で幸せを感じる時間となった。


トレーナーの男の元を離れてから、タブンネがキルクスタウンにやって来てから、10日が経った。

母親譲りの警戒心の強さから、これまで人間と鉢合わせたことも、姿を見られたこともなかった。

しかしながらタブンネのコソコソとした行動は、過剰防衛と言えたかもしれない。

野生ポケモンに対する扱いには、地域差がある。
たとえばアローラなら”自然の恵みはみんなで分け合おう“のような考えがあり、ガラルはアローラのそれとは少し違うが、ポケモンは単なる戦う道具ではなく、人間の大事なパートナーという一面がある。あらゆる仕事の現場をポケモンが手伝っている光景からもそれがよくわかる。
ガラルでは野生ポケモンが人里に現れてもよほどの理由がなければ邪険に扱われたりしない。現にここキルクスにもあちこち野生のユキハミが住んでいるが、殺されたり駆除されたりはしていない。

これまで人間によって母親と夫を殺され、自分も散々な目に遭わされてきたタブンネが人間を警戒するのは当然だったかもしれない。

しかしこの地には“タブンネを倒してたくさん経験値を手に入れよう!“のような残酷なスローガンなど存在しないし、そもそもタブンネを知っている人自体がガラルでは稀だ。

タブンネは明らかに獰猛な見た目でもない。おそらくだが手負いの身体でタマゴを抱いたまま人間の前に姿を現わせば、治療して貰って保護されたか自然に返されたかした可能性が十分にあった。

極度の回避行動を取り続ければ心労も増えるばかりだし、余計な事故を招くだけであった。

471キルクスタウンのタブンネ:2021/02/20(土) 15:56:22 ID:PwpugYIc0

ステーキハウス通いを始めて6日目、タブンネに悲劇が起こった。

いつものようにステーキハウス廃棄場を訪れていたタブンネ。タマゴを脇に置き、ビニール袋から取り出したロゼルのみを頬張っていた時、突如店裏手の扉が開いた。
営業時間は終わっていたが、その日は不定期的に入る床清掃の業者が入る日であった。

突然の出来事にギョッとしたタブンネ。これまで安定した生活を送れていたことから、少し緊張感を欠いていたかもしれない。
軒間に向け慌てて走り出そうとした時、圧雪アイスバーンで足を思い切り滑らせてしまい、勢いよく転倒すると、置かれていた廃油缶容器の中に胴体の右半身が突っ込んでしまった。

「ーーーィィッ...!......ギギッ。....ゥァァッ....!」

廃棄処理されてから一定時間を経ていたが、まだ120℃以上の温度があった。すぐに飛び出したかったが、そうすれば確実に小さくない物音が立ち、人間に気づかれてしまう。
強烈な苦痛の中、タブンネは悲鳴を必死に殺し、歯を食いしばって悶え続けた。

業者の人間は休憩時間にドアを開けて一服していただけで外まで出て来ることはなく、ゴトッという音と水が飛び散るような音がしたのを少し気には留めたが、すぐに仕事に戻って行き、タブンネやタマゴの存在は気づかれなかった。

ドアが閉まり人間の気配が無くなったことを見計らうと、タブンネは左半身をくねらせるように必死に動かし、バチャバチャと油の跳ねる音を響かせた後、ドサリと雪の上に落ちた。のたうち回るように廃油に浸かった部分を雪に押し当て、患部を冷やした。辺りの雪は茶黒く変色した。

ハァッ!ハァッ! 苦しそうに息を吐き、軒裏の雪の上で少しの間仰向けに倒れ込んだタブンネだったが、すぐにタマゴを回収してその場を後にした。人間が居ることからここに留まっては危険だと判断した。

いつも以上に人間の足音を警戒しながら、野外泉へたどり着いたタブンネ。汚れを落とす為お湯に入ると猛烈な痛みが右半身を襲い
、タブンネ付近の湯が薄黒く汚れていった。

ヌルヌルとした不快感がある程度無くなったところで温泉から上がったタブンネ。水面に映る自分の姿を見て愕然とした。

身体の右半身が火傷と廃油汚れで赤黒く変色していて見るに耐えない状況になっていた。
それに加え眼球や右腕の痛々しさは相変わらず、完全にバケモノのような見てくれだった。

中でもタブンネにとって一番ショックが大きかったのは尻尾だった。
タブンネ族の尻尾はピカチュウやキュウコンのそれと違い、機能的に重要器官なわけではないが、耳の触覚同様、異性へのアピールとなる大事なチャームポイントである。
廃油に浸かったタブンネの尾は右半分がドス黒く変色し、ケバ立つという状態を通り越して針金のような触感になっていた。

472キルクスタウンのタブンネ:2021/02/20(土) 15:57:46 ID:PwpugYIc0

温泉を後にし、左脇にタマゴを抱え、トボトボと歩き出したタブンネ。右眼から止めどなく涙が溢れた。

ヒィッ!キヒィッ! 住処となったダクト下に腰を下ろすと、呼吸するたび変な音が鳴り、吐く息がかなり熱かった。
半身火傷のダメージは想像以上に大きく、右半身はヒリヒリとした痛みが残った。
タブンネはその後何時間も右半身を雪に押し当て続け、必死に患部を冷やした。


2,3日経つと次第に痛みは癒えてきたが、火傷跡と心の傷は癒えず、タブンネの右眼はサファイアブルーとは言い難い、濁った群青のような色をして、ただボーっと目の前の地面を眺めて過ごす時間が増えた。

この地に来てからしばらくは、幸せとは言えないまでも、何となく充実していた。
1匹で過ごす寂しさや虚しさ、眼と腕に外傷を負ったショックこそあれど、それ以上に新しい環境を生き抜くことに必死だった。

火傷を負ってからタブンネはステーキハウスに出向かなくなった。突然ドアが開いたことと廃油に突っ込んだことが心に大きなトラウマを残した。

黙って座り込む時間が増えたことは、精神衛生上とても良くなかった。
タブンネは男に投げ出された直後同様、もしくはそれ以上に虚無感と自己嫌悪に苛まれるようになった。

水面を覗いて自分の姿を見ることはしなくなったが、事故の直後に見たそれが脳裏に根深く焼き付き、時々夢にまで出てきた。

昔、ママはよくタブンネの尻尾を爪で梳かしてくれて、薄汚くも尻尾はいつもフワフワだった。
林で過ごすようになってからはこまめに身体を綺麗にし、ダーリンはいつも自分を可愛いと言ってくれた。
彼等に今の姿を見せたら一体どう思うだろう。それを考えてはタブンネは仕様のない悲しみを感じ続けた。

夫を亡き者にし、自分を捉えたあの男。彼には他の手持ちも居て、自分とは違い沢山の愛情を注がれる様をいつも間近で見ていた。
この場所でも時々、ホテルの窓から人間とポケモンの楽しそうな声が漏れ聞こえてくることがあった。タブンネはいつもそれを泣きながら聞き続けた。

自分達だって、タブンネだって同じポケモンなのに、どうしてタブンネだけこんな想いをしなければならないのか。恨めしい、悲しい感情が込み上げては、一体何のために生まれてきたのか、考え続けたがわからなかった。


一日のほとんどの時間を黙って過ごし、夜になると糞を片付け、温泉に浸かりお湯を飲み、イオニアの廃棄場で少しのゴミを漁るだけの狭い範囲での生活がしばらく続いた。
もう感情をほとんど失い、惰性で身体が勝手に動いているようだった。

473名無しさん:2021/02/20(土) 21:43:06 ID:LWGiapTc0
日常生活を得てタブンネがじわじわと追い詰められる描写が大変良い……
続き楽しみにしてます

474名無しさん:2021/02/21(日) 04:36:16 ID:WEz.BkAE0
乙です
そんな悲劇の中生まれてくるベビはいったいどうなるのやら
期待が高まりますね
綺麗に生まれても醜く不自由な体で生まれても更なる悲劇しかない気がする

475名無しさん:2021/02/21(日) 15:45:08 ID:uGtlm29w0
SSのネタがまとまらないからずっとタブンネ狩りしてる
禁伝級の高火力でボロ雑巾にされるタブンネさんが可愛

476名無しさん:2021/02/21(日) 16:59:05 ID:j.us/HZE0
>>475
自分もタブンネ追い回しているけど
先頭がバドレックス王なので
ちょっと罪悪感が沸いてしまう
でも王力比べがお好きなようだからタブンネちゃんとお戯れしたっていいよねw

477名無しさん:2021/02/21(日) 19:47:28 ID:EsUSep0I0

SS作り頑張って

禁伝じゃないけど
もえあがるいかりで殺すと可愛いよ

478キルクスタウンのタブンネ:2021/02/22(月) 17:40:59 ID:CMvvbtm.0

生気も失いなんの希望も無い、生存本能のみが身体を動かすだけの、生きながら死んでいるような暮らしを続けたタブンネ。

キルクスにやって来てから早3週間が過ぎていた。

機械的な生活の変化は、タブンネにとって予想外のところから訪れた。

人間の寝静まったある日の深夜、いつものように糞を排水溝まで運び、水場の温泉にやって来てお湯を飲み、数分間そこに浸かったタブンネ。
湯から上がり、傍に置いていたタマゴを惰性的に左脇に抱えると、中から響く感覚に驚愕した。

ドクン!ドクン!...

タマゴはハッキリとわかるほど振動し、いつも抱いていたこの物体の中には命が宿っているという事実をタブンネに知らしめた。


タブンネは決して知恵遅れでは無いが、“命の理”というものを理解する知識と経験に欠けていた。
物心がついてからずっとママと2人ぼっちで、群れで過ごしたわけでも無いことから、“あの子はパパが居るのにミィには居ない”のような考えが浮かぶことはなかったし、ママンネは幼いタブンネにいつ父親の話を伝えるか決めかねていた時期に死んでしまった。
ダーリンの口から一度だけ“パパ”という単語を聞いたことがあったが、お互いの経緯を伝え合ううち、ダーリンネはタブンネに父親の記憶が無いことを推し量り、気を遣ってその言葉を使わないようにしていた。


タブンネは雪の上にタマゴを置くと、少し距離を取って口をあんぐりと開け、一心にその球体を眺めた。
タブンネの中に渦巻いたのは喜びではなく驚愕、もしくは恐怖と言った方が近かったかもしれない。

(もうじきこの中から“何か”が出てくる...!)
タブンネは身を硬直させながら、今のうちにコレをどこかに捨ててこようかと一瞬本気で考えた。
しかしかつてダーリンが自分の下腹部に触覚を当て、子供のように喜んでいた姿がフラッシュバックし、また流石に倫理的罪悪感を感じて、思いとどまった。
何よりも怖くて動けず、タマゴから視線が離せなくなっていた。

何度か受けた弱くは無い衝撃。また寒冷地の野外というタマゴを育てるには全く適さない環境下であったが、胎児は決して絶命することはなく、極めてゆっくりとだが、それでもしっかりと育っていた。

おそらくこれを産んだ時点で、耳を押し当てれば鼓動を確認することはタブンネにもできた筈だが、あまりにもタマゴに無頓着であったことから、この時まで生命音を意識することがなかった。

タマゴはもう孵化寸前の状態だった。

479キルクスタウンのタブンネ:2021/02/22(月) 17:42:33 ID:CMvvbtm.0

暫し膠着を見せた野外泉付近の裏路。

やがて親の手を放り出されたタマゴが雪の上で一人でに動き出し、その殻に一筋の亀裂が入った。

ピキ... バリッ!バリバリッ! パカッ

チィッ!チッチィ~ッ‼︎

元気な産声と共に、薄ピンク色の小さな生き物がモゾモゾと這い出てきた。

—あ.........あ.........

その物体の約2m先で、呆気に取られ立ち竦んだタブンネ。
赤児はヨチヨチと必死に這いずり、割れた殻から完全に飛び出したところで前脚が雪に触れ
ヂッ! と短い悲鳴を上げたところでタブンネはハッと我に返ったように動き出し、その赤児を抱き上げた。

タブンネにタマゴが孵化したらどうすればいいかなんて知識は皆無だったが、無意識的に、自然に体が動いた。
温泉に入れて粘液を洗い、顔の周りを舐めて綺麗にしてやった。
湯から上がるとプルプルッと可弱く湯雫を飛ばしたベビンネ。
タブンネはその小さな口を恐る恐る自分の乳首に当てがうと、チュピチュピと音が立ち、胸にこそばゆい感覚がした。

ベビンネの口が乳首を離れ、チプゥッ!と小さなゲップをすると、タブンネは両腕を使ってその幼体を抱き上げ、自分の視線の前まで持ち上げた。粉砕したままの右手には激痛が走った筈だが、タブンネは全く意に介さなかった。

「チュイ~~♪ピィピィ!チミィ~~ン♪」

おっぱいと母の温もりに満足したのか、心地良さそうな鳴き声を上げたベビンネ。
まだ目も開いておらず、体毛も細くて所々薄ピンクの地肌が剥き出しで、まだパッと見ではタブンネとはわからないような赤児。

人間から見ればベビンネの個体差など区別はつかないが、心なしか微笑んでいるようなその表情にタブンネの目は釘付けとなった。
決して勘違いなどではない、大好きだったママとダーリンの面影を、タブンネは確かに感じ取った。
じわじわと、これまでどういう訳か欠落していた母性というものが強烈に湧き上がった。

「あ、、べ...べべべベビぢゃっ....ベビぢゃああああああん!......あじがどビィっ!ミィのどごろに生まれてきてぐれてありがとビィっ!ビィがっ、ミィがあなだのマ゛マだビィッ!!ずーっと一緒ビィ!これからずうっといっじょだミィッ!!ビミィーイ゛インミン!ブヒィーーンヒンヒン!ミヴォオオン!ミオォォおおおおン゛ン...!」

静寂に包まれた古都を翻すかのような慟哭が響き渡った。
途中タブンネの頭の中にこんな大声を出してはマズいという考えが浮かんだが、全身に溢れ出す感情を抑えられなかった。
歓喜や感動という言葉では言い表せないような、巨大な感情だった。

チィッ⁉︎ と一瞬驚いたような表情を見せたベビンネだったが、母からの底なしの愛情を喜ぶように口角を上げ、やがてそのまま眠りについた。

何人かの宿泊客や住人はその鳴き声に気づいただろうが、親子の幸せなひと時を邪魔する者は誰も居なかった。

480キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:48:45 ID:pt4juP.Q0

ひとしきり叫び終え、冷静さを取り戻したタブンネ。
イオニア中庭と裏通りの境までやってくると辺りを見回し、必死に耳をそば立てた。

結果杞憂に過ぎなかったのだが、自分の声に気づいた人間がやって来て、危害を加えられるのではと恐れていた。

警戒に警戒を重ね、約10分その場で周辺を窺うと、安全を確認しトコトコと寝床へ足を進めた。

—ミィ......!

その道中、タブンネの表情がパァっと明るくなった。
イオニアの廃棄場に、懐かしいものを発見した。少し汚れていたが、畳まれたダンボールが3枚捨てられていた。

タブンネにとっては小さい頃のおウチの床。
ベビ誕生で幸せ絶頂だったタブンネ。これを天国のママからのプレゼントだと確信し、心の中で何度もママにお礼をした。右眼からポロポロ涙が流れたが、今まで何度も流してきた悲しい涙ではなかった。

それを回収し、早速寝床に敷き重ねたタブンネ。今まで落ち葉の上に座っていたのに比べると、格段に暖が取れた。

何ヶ月ぶりかのニコニコとした笑顔でそこに腰を下ろすと、静かに寝息を立てるベビを改めて抱き上げ、その姿をマジマジと眺めた。
ここへ来て右腕の先の痛みに気づいたのもあるが、確かな我が子の重みを感じたタブンネ。この段階ならば孵化前のタマゴの方が重かったはずなのだが、それだけタブンネはタマゴに無頓着だった。

身長22cm、体重800g、まだ巻いていないが触覚は通常のベビンネサイズ。股の間には生まれたての可愛い陰茎がちょこんとついていた。
やや小さいが、健康体の♂だった。

タブンネは右の脇と左腕で優しくベビを抱きしめると、やがて自身も眠りについた。
暖かい温もりに包まれた、人生で一番幸せな睡眠だった。

481キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:49:45 ID:pt4juP.Q0

新たな伴侶を得たタブンネ。
キルクスタウンでの彼女の生活は第二章に突入した。

日中は相変わらず、イオニアの中庭で過ごした。
時折安全な時間帯を見計らってベビンネを自分の胸から離してやり、寝床前の雪の上で遊ばせるようにした。

チャイ~!チィチィ♪ まだハイハイもまともにできず、雪の上でパタパタと手足を動かすだけであったが、生後間もない乳児の運動としては十分であった。

ベビは一日の半分以上の時間を寝て過ごしたが、起きている時間の大半は日中の明るい時間帯であった。

タブンネとは本来昼行性の種族。
このタブンネと同じような理由から夜に行動する野生タブンネも存在するが、本能のままに生きる生まれたてベビが親に合わせることはなかった。

日差しのある日は少しだが親子の活動域にも木漏れ日が差し、ベビンネに日光浴を可能にした。
十分な量と言えるのかは謎だが、ベビンネの発育は何ら問題はなかった。

我が子を胸に抱き、浅い睡眠を取っている際中、ベビの泣き声でタブンネが目を覚ますことが多々あった。
ベビが泣く理由は主に乳をせがむか排泄後の不快感。目を覚ましたタブンネが自分の腹部を見ると、茶色や黄色で汚れていることがよくあった。
その度タブンネはベビの股間や肛門を優しく舐めて綺麗にしてやり、自分の汚れた腹は雪に擦り付け、またウンチ臭くなった口内は雪を含ませて吐き出し濯いだ。

タブンネは相変わらず声を潜めて過ごしたが、ベビは気の赴くままにチィチィ鳴き声を上げ、少しずつボリュームも増していった。
愛しいベビの鳴き声にいつも悶絶するだけだったタブンネ。声を出したら人間に気付かれる、なんて思考が完全に抜け落ちていたが、キルクスタウンの環境が功と成った。
成獣のタブンネはともかく、ベビの声はあちこち点在するユキハミのそれと似ていなくもなく、いちいち人間が気に留めることはなかった。

元々十分ではなかったタブンネの睡眠はさらに条件が悪くなったわけだが、タブンネは全く苦に感じなかった。
むしろベビが生まれる直前よりも表情も明るく体調も良く、まさしく“母は強し”という姿を体現するような様相だった。

寒い屋外で野ざらし生活という環境を何とか改善してやりたいと感じていたタブンネ。
せめて自分の幼少期のおウチにあったようなボロ毛布やタオルケットが欲しかったが、そのようなモノが得られる事はなかった。
しかしそんなタブンネの親心は杞憂、タマゴ時代の殆どを寒冷地で過ごした為か、ベビは寧ろ母親よりもこの環境に適応していた。

タブンネとは生命力にも適応力にも優れる種族、現にここガラルに生息する野生タブンネも皆通年降雪地域に分布している。
ママタブンネの心配とは裏腹、ベビは寒さを苦にすることは殆ど無く、生まれてから一度も乳児低体温症を起こすことも、腹下しをすることも無かった。
キルクスは決してタブンネの住めない地域ではないのだ。

482キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:50:24 ID:pt4juP.Q0

今まで同様、人間が寝静まった夜中になるとタブンネの活発な行動が始まる。

眠るベビを右脇に抱え、左腕を器用に使い、頑張って糞運びをした。


ベビが生まれる直前まで、タブンネは負傷した右腕を使うことが一切なかった。
糞運びをする時はいつもタマゴを寝床に放置していた。今はベビを置き去りにするなんて発想は毛頭無い。

タブンネの右腕、手先の粉砕は相変わらずで、指爪を使うことは許されなかったが、半分から付け根の部分はいつの間にか腫れが引いていて、今のように脇にベビを抱いたり、左腕の補助として添え手をするくらいは充分に可能だった。
これはベビンネが気付かせてくれた事実。野生で生きる上ではかなり大きなことだった。


2匹分の糞や、汚した雪まで片付けなければならないので糞運びの大変さは倍増したが、それでも4往復くらいして寝床付近を綺麗にした。
今までと違ってこれを惨めに思うことも、ストレスを感じることもなかった。

糞運びを終えると、足早にステーキハウスへと向かった。しばらくご無沙汰だったが、授乳の為により多く栄養をつけたかった。
ベビ誕生の翌晩からステーキハウス通いを復活した。

廃棄場にたどり着くと、すぐにはゴミ漁りを始めず、建物裏口前に立ち必死に耳をそば立てた。過去の失敗からより慎重さを増していた。

人間の気配が無いことを確認すると、裏路の雪の無い場所にベビを寝かし、袋に手をつけた。
苦手なマトマやフィラ、そんなに好きではない生肉も選り好みせず、沢山食べた。

ステーキハウスでの食事を終えると野外泉には向かわず、イオニアの廃棄場で野菜芯や木の実片、日中の非常食を少し蓄え、一度寝床に戻った。
温泉に行くのはベビが夜鳴きをしたタイミングや早朝、ベビが目を覚ました時に、一緒に向かった。

ベビンネも温泉は好きだったようで、タブンネに抱かれて入浴する度、「チィチィ♪」と嬉しそうに鳴いた。

タブンネはこれまで以上、よく身体を綺麗にした。ベビの排泄物処理も行う為、口内も入念に濯ぎ、水分もしっかりと摂った。

温泉から上がり、側路に置いてやると四つん這いでプルプルと湯雫を飛ばすベビンネ。タブンネはベビのこの姿を見る度に悶絶し、目尻を限界まで下げて顔を綻ばせた。完全に親バカだが、とにかくタブンネはベビに溺愛、幸せ一杯だった。

湯浴みを終え住処に戻ると授乳をし、親子で静かに過ごした。

483キルクスタウンのタブンネ:2021/02/25(木) 19:51:57 ID:pt4juP.Q0

タブンネはベビの一挙手一投足全てが愛おしく、まさに夢中といった様子であった。

何かを訴え鳴く時、おっぱいを飲む時、
チュピー、チヒィー...。 可愛らしい寝息を立てる時、その寝顔・・・。


湯浴みを終えた朝方、タブンネは胸に幸せな温もりを感じながら、ふと物思いに耽った。

これまで何度も自暴自棄な感情に陥ったこと、タマゴを気にかけてこなかった自分の行動を猛烈に省みた。
だがしかし、とにかくベビちゃんは無事に産まれてきてくれたのだ。これからしっかりと愛情を注いでやればいい。

かつてダーリンが自分のお腹に触覚を当て大喜びしていたこと、今ならその理由がよく解った。
ダーリンにも、せめて一目だけでもこの子の姿を見せてあげたかった。
そんな想いでタブンネが一筋の涙を溢すと、頭にその雫を受けたベビが目を覚ました。

「チィ~ッ?チュビィ~?」

小さな手を目一杯伸ばし、母の顔へ向け手を伸ばすベビンネ。
タブンネは涙を拭うと、笑顔でベビの顔を舐め、右脇と左腕でしっかりと抱きしめた。

ダーリンも、ママも、この子の中に、確かに生きている。
もう、悲しむ必要なんてないのだ。
今、自分がすべきはこの子を守り、しっかりと育て上げること。タブンネは人生で最大といえる生き甲斐と幸せを感じていた。

484名無しさん:2021/02/25(木) 20:59:42 ID:ISb1Lq5k0
母性覚醒しちゃいましたかー
ぶっちゃけ孵化前のメンタルのままなら虐待コースにいくかと思ったけど
いぢめた挙げ句に死なせたらベビの泣き声や遺体を気付かれてタブンネの存在も危ないもんね

485名無しさん:2021/02/25(木) 22:59:26 ID:sEH1OHpQ0
乙です
幸せの絶頂にいるタブンネがどうやって不幸のどん底に落とされるかワクワクする

486名無しさん:2021/02/26(金) 20:40:37 ID:Cd65AMqQ0

タブンネちゃんイッシュ15位おめでとう!!

これからも沢山楽しませてね!

487名無しさん:2021/02/27(土) 09:50:51 ID:V4tAQdhw0
レンティル地方と昔シンオウにはタブンネさん居るのかな

雄大な自然の中でのびのび殺されるタブンネさんめっちゃ見てみたい

488名無しさん:2021/02/27(土) 11:41:09 ID:5OFwwpgM0
昔シンオウにタブンネさん居たらまた追い掛け回したいな
欲を言えば野生のポケモンに殺されたママンネの死体が道端に転がってたりその傍らでチビンネ達が死体に縋り付いてピィピィ泣いてたりしたら滅茶苦茶興奮する

489名無しさん:2021/02/27(土) 18:39:42 ID:UMjpsKMg0
>>488
そのチビンネ達を片っぱしからすがり付いてるママンネの体から引っ剥がし
ケージの中にぶちこみたい
必死で動かぬママンネに助けを求めていやいやをする可愛らしい抵抗を間近で見たい
顔の見えない麻袋とかじゃなくケージにするのは
もみくちゃになって隙間から抜け出そうとしたり小さなおててを伸ばしたりするとこを眺めていたいから
「緊急時に親を呼ぶ」チイーチイー泣く声をBGMにゆっくりと自転車でママンネちゃんから遠ざかりたい

490名無しさん:2021/02/27(土) 21:42:13 ID:5OFwwpgM0
>>489
ゲージの隙間から母親の死体に向かってめいっぱい手を伸ばしてヂイーヂイーって泣き喚くチビンネの声を漕ぎながら自転車漕ぐの滅茶苦茶楽しそう
そういう楽しい遊びをするためにもママンネにはいっぱい繁殖していっぱい死んで貰いたい

491キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:32:55 ID:vGNA8xdA0

ベビンネ誕生から丁度1週間、ベビの身体に一つの変化が起き、ママタブンネの心情、行動にも一つの変化が生まれた。


いつものように深夜の活動を終え、タブンネは我が子を胸に抱きコクコクと眠りについていた明け方、ベビがいつもと少し違う声色で鳴き出した。

その声に目を覚ましたタブンネ。
腹部を見るがオシッコやウンチをしていた訳ではない。ならばおっぱいかと思い、口元を乳首に当てるが吸い付いてこない。

心配になって抱き上げ顔を見ると、今までずっと閉じていた瞼がモゾモゾと蠢いている。

フミィ~、フミィ~。 少しこそばしいような声を上げるベビンネ。やがてその小さな瞼がピクピク上下すると、パチッと目を開いた。

「ミィ...!」

こびりつく目垢を舐め取ってやると、2つの綺麗なサファイアブルーが現れた。少し遅い開眼であったが、ベビはパチパチと瞼を上下させながら不思議そうに辺りを見回した。視力も問題なく育ったようだ。

「ミィッ。ミィミィ...!」

我が子の開眼に喜びの声を上げたタブンネ。しかし嬉しさも一瞬、すぐに表情を曇らせ、大きな両耳を垂らした。
ベビが生まれて舞い上がっていてこれまで完全に忘れていたが、自分の姿はタブンネなのかもわからないような、外傷だらけの醜いバケモノなのだ。

こんな母親の姿を見てベビちゃんはどう思うだろうか。怖がって大泣きするのではなかろうか。
そんな事を思い、少しベビから顔を背けた。
右目からは涙が滲み出たタブンネだったが、小さな我が子は決してママを恐れたり、蔑んだりしなかった。

開きたての両眼をキョロキョロ動かしていたベビンネだったが、ママの顔を見つけるとそこに視線を定め、破裂が癒着し醜く腫れ上がったその左目へ向け、小さな手を一生懸命に伸ばした。

「チュイ~~..?チィチィ。チビィ~?」
—ママ、おめめケガしてるの?イタイイタイの?

その鳴き声はまだタブンネの言葉としての意味を成していないが、心配そうな表情に声色。ベビの優しさに満ちた意図を、ママタブンネはしっかりと感じ取った。

「べ、、ベビちゃん...。ううん。なんでもないミィ。ベビちゃんはなぁんにも心配しないでミィ。ママとっても幸せミィ...!」

タブンネは右目からポロポロと涙を流し、ベビをそっと抱きしめた。

弱冠タブンネの思い込みでもあったろうが、優しい我が子の心根は亡きダーリンをハッキリと思い起こさせた。
タブンネはベビへの愛情と、守り抜く決意をより一層強く、胸に誓った。

492キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:34:11 ID:vGNA8xdA0

その日の昼過ぎ、寝床前の雪の上でベビを遊ばせながら、タブンネはある算段を企て、思慮を巡らせていた。
人里からの脱出である。

ベビの這いずりはいつの間にか力を増し、言っても1分放置して2m進めるかどうかという程度のものだが、ハイハイとして成立するまでになっていた。
腕や脚の筋力も順調に育っている。

今まで浮かれていて思いもしなかった、いや、考えを遠ざけていたのかもしれないが、いつまでこの場所でこんな生活を続けるのだろう。

この子もいずれは2足で歩けるようになり、タブンネの言葉を話すようになって、身体だって大きくなる。

自分の幼児期を振り返る。
ママには申し訳ないけれど、ダーリンとの暮らしの方がどう考えても幸せで、健常だった。
この子にも森や林で伸び伸びと暮らし、人間の廃棄物ではない木の実を食べさせ、できればタブンネの、そうでなくとも林地に居たエモンガやチラーミィのような、ポケモンのお友達を作ってあげたい。


同日夜、タブンネはいつもより気持ち早めに動き出し、糞を片付けステーキハウスで食事を摂ると、ベビを抱いたまま、街の西外れまで歩みを進めた。

軒間を一生懸命進み、足を動かしてやがて市街地を抜けたが、辺り一面は相変わらず雪景色。鬱蒼と生い茂る木々はイオニアの庭と同じ針葉樹。イッシュ16番道路のような見慣れた広葉樹ではなく、目視できる限り木の実のなりそうな木は1本も無い。

結局その日は踵を返し、トボトボ住処へ戻った。

493キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:35:33 ID:vGNA8xdA0

それからタブンネは、毎晩町外れまで足を進め、新居となりうる森林地や草むらを探し回った。

3日かけてキルクスの西側一面を探索し終えたが、芳しい成果は無かった。

道中、見慣れぬ小さな鳥ポケモン(ココガラ)に2度ほど遭遇し、目が合った。
驚いて身を屈めたタブンネだったが、いつも相手の方から逃げて行った。タブンネの左目と右腕の傷に加え、他の野生ポケモンから見て恐ろしいのは火傷跡。
タブンネの胴体は尾まで含め、ザ・センターマンのように綺麗に左右の色違いができていて、初見では強そうな見た目に成り果てていた。

ココガラはともかく、タブンネにとって厄介なのは深い雪景色だった。
生まれてから10ヶ月程野生を過ごしていたことから、タブンネには“四季”という概念が備わっていた。

せめてもう少しあったかくなり、この白い地面が無くなってくれればより広範囲動けて、辺りの観察もしやすくなる。
少しでも早い春の到来を心底願うタブンネだったが、それは叶わぬ願い。タブンネには理解の及ばぬことだったがここは通年降雪地である。

またもう一つ枷となったのは胸に抱き続けるベビの存在。
順調に育つベビの身体は既に1kgを超えていて、ただでさえ速くはない歩みを更に重くした。
せめて、この子がタマゴの中に居た段階から新居探しを始めていればと何度もタブンネの頭をよぎったが、その都度「ミッ!」と短い気合いを入れ、その考えを拭い去った。
愛しい我が子を重荷と捉えるなんてあってはならない。自分が頑張ればいいだけのことだ。

深夜の徘徊中概ねベビが寝ていてくれて助かったが、ベビの日中の起床時間は日増しに長くなり、タブンネの睡眠時間、質はどんどん下がっていった。
しかしタブンネの気力は衰える所を知らず、疲労が蓄積していく身体を動かし、毎晩探索を行った。

494キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:37:17 ID:vGNA8xdA0

新居探しを始めて4日目は街中を通り、北側へ向かった。

市街地を抜ける間、タブンネにとっては驚くことであったが、何度か人間の気配を察知し、物陰に身を隠しながらの行脚となった。

広い道を歩くのはこれが初めてではない。この地へ来て間もない頃、餌場探しであちこちを2,3日歩き回った。その時はこんなに気配は感じなかった。だから夜中になればこの街の人間は動かないと思っていた。

今一度褌を締め直し、タブンネは息を殺しながら北へと歩みを進めていった。

数時間かかって漸く果てが見えてきたが、その行手を阻むように、街中のそれとは違う大きな建物(キルクススタジアム)が視界に入り、足を止めた。
タブンネにその用途を理解することはできなかったが、その壮大な造りに恐れを抱いたのと、朝までに補水を済ませ住処へ戻る時間的余裕がなかったことから、北は諦め踵を返した。

キルクスは大して広い街では無いのだが、身重のタブンネからすれば少しの探索でも壮大な冒険と言える行脚であった。

—明日からは東側を探そう。

そう思い住処へ舞い戻ったタブンネ。
その計画を邪魔するように、まるで何かの不吉を告げるように、翌朝からキルクス一帯は猛吹雪の荒天が続いた。


北側を探索した後の日中、吹き荒れる暴風と横殴りの雪がタブンネ親子を襲った。

ダクトの排気も意味を成さず、これまで寒さをもろともしない様子だったベビでさえもプルプルと震え出し、タブンネも鼻水が凍るほどの寒さに苛まれたが、親子抱きしめ合って何とか暖を取った。

夜になっても荒天は収まらなかったが、タブンネはこれをチャンスと捉えることにした。
時折ホワイトアウトさながらに吹き荒れる降雪と地吹雪。自分からも周りがよく見えないが、逆に人間からも自分が見つかりにくいということになる。それにこれだけ雪が降っていれば足跡が残らない。自由に路を歩けるということだ。

いつもとパターンを変え、近場のイオニアでゴミを漁り少しの食事を摂ると親子温泉で暖を取り、キルクス東側へ歩みを進めた。
ステーキハウスを経由してしまうと遠回りになってしまうことからの判断だった。

吹雪吹き荒れる中の行脚はいつも以上に体力を奪ったが、できるだけ軒間を選び、歩き続けて街の東果てにたどり着いたタブンネ。
視界の悪い中必死に目を凝らし辺りを探ったが、条件は西側を探った時と変わらないようだった。

ベビも寒さにやられたのか
ヂッ...ヂッ... と苦しい息で鳴き震え、下痢とまではいかないがいつも以上に柔らかい便と尿を垂れ流した。

「べべべビぢゃ、ごごべんビィっ。ぎょうばもうがえろうミィィね...っ...」

タブンネも寒さで声が震え、方向感覚も定まらぬ中帰巣本能と根性で何とか来た道を戻り、やがていつもの温泉に辿り着いて朝ギリギリまで親子で湯に浸かり、住処へ戻った。


6日目も同じく東側、相変わらずの天気の中、少し距離を伸ばし北東側を見に行ったが、昨日同様、これといって芳しい成果は得られなかった。

東側は全域を確認したわけではなかったが、これまでの状況と野生の勘からここで探索を打ち切ることにし、翌日からは最後の望みを掛け、南へ足を進めることにした。

495キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:38:32 ID:vGNA8xdA0

東側探索を終えた翌日中、気力よりも先に、タブンネの身体が悲鳴を上げ始めた。

小さなベビにも増して寒さへの耐性の弱いタブンネ。連日の荒天と睡眠不足、夜中に行われる長い行脚。幼少期からのことで慣れているとはいえ、決して衛生的とは言えない食事。

酷い腹痛がタブンネを襲い苦しめた。
止むことを知らぬ吹雪の中、タブンネはベビをダンボールの上に寝かせると、近場の雪の上で排泄の姿勢を取った。

ブリュッ!ブリブリブリッ!ビチャーッ!

—ミボッ!ミィォォォォぉぉっ!?

猛烈な勢いでケツから飛び出した液体。
腹痛がほんの少し和らぎ排泄を終えたタブンネはその凄惨な雪上を見てギョッとした。
噴射した液状便は2mくらい先までその跡を残し、茶色に赤が混じり、糞の臭いに血特有の生臭さが立ち込めている。

コレこの量あとで片付けるなんて絶対無理だ。
タブンネは焦燥感を抱いた。

おそらくタブンネはただの腹痛ではなく急性腸炎を患っている状態だった。ポケモンセンターで診てもらったら即入院になるレベルだっただろう。

幸い吹き続ける雪のおかげで血便痕は次第に薄くなり見えなくなったが、タブンネは常時腹痛を感じ続けた。

ダンボールの上に戻りベビを抱いて座り込んだタブンネ。肛門にヒリヒリとした感覚がいつまでも残ったが、ベビは幸い時々震えることと、少し便が軟くなったくらいで、タブンネよりも寒さを堪えていた。

こんな状態になってもやる気は衰えなかったタブンネ。より一層夜の行脚に向け気合いを入れ、寒さに震えながら必死に身体を休めた。


やはり野ざらしの生活には無理がある。
何処かの林地や草むらで、深い穴を掘るなり雨風を凌げる巣を構える必要がある。

結果ダーリンは人間によって殺されてしまったが、あれは不運が重なったまでのこと。やはり人里に住んでいる方がいずれ見つかり、ママのように殺されてしまう可能性が高くなる。

体力も厳しく思考力も低下した頭で、タブンネはどんどん自分の思惑を正当化していった。

496キルクスタウンのタブンネ:2021/03/01(月) 18:39:08 ID:vGNA8xdA0

野外探索を始め7日目の夜、またイオニア廃棄場で食事を採った後、少し長めに温泉で暖を取ると、キルクス広場を抜け、9番道路と呼ばれる道へとたどり着いたタブンネ親子。

吹雪による視界の悪さは相変わらずだが、これまでと違い完全に開けた野外に出たことで、タブンネの胸に一縷の希望が灯る。

少し進むと水場を発見した。温泉と違いかなり水温が低かったが、水場の確保は野生で生きる上では必須条件。
後は餌場と、出来るだけ目立たないような住処候補地。

更に足を進め橋を渡ると草むらがあった。

—どこかに、どこかに実のなるような木はないか

タブンネは視線を上げ、吹雪の中必死に草むらを掻き分けて進む道中何かに足がぶつかり、ネチョっとした感触を覚えた。

「キョーーッ!グチョグチョグチョ」

草の中で寝ていた見知らぬポケモン(トリトドン)を蹴飛ばしてしまい、起こして怒らせてしまった。

「ヒッ!ご、ごめんなさ......ッ」

タブンネが謝る間もなくトリトドンは紫の体液を吐き出し、咄嗟に避けたがタブンネの右脇腹にモロにかかってしまった。

驚いて逃げ出したタブンネ。幸いベビにはかからず、毒などでもなかったようでダメージを負うこともなかったが、浴びた箇所は変色し、タブンネのバケモノ度はより一層凄みを増した。

トリトドンは追ってくるようなことはなかったが、精神的に驚きと恐怖を感じたタブンネはこの日の捜索打ち切り、一目散キルクスまで踵を返し走り続けた。


やがて温泉までたどり着き、汚れた体毛をゴシゴシと擦ったが痕は落ちきらず、タブンネはショックを受けた。

これまでの捜索の中で一番と言っていい、手応えを垣間見た行脚だったが再度訪れる気にはなれなかった。

あのポケモンが自分達と仲良くしてくれるとは思えない。闘うということを知らないタブンネにとって、非友好的な種族との共存は考えられなかった。

後は、南西部。この街の南西外れにも、今日と同じような開けた道があること(湯けむり小道)は、初日の行脚で視認していた。勘としては良さげな道であった。
希望を失いたくないが為か、これまでは敢えてそこに足を向けず、半無意識的に最後までその進路を取っておいたタブンネ。

—明日は、明日こそはきっと新居を見つける...!

落ち込んでいても仕方ない。タブンネは心の中で気合を入れると、ベビを胸に抱き、ダンボールの上に腰を下ろした。

497キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:32:37 ID:Wgdv5XHc0

タブンネがイッシュからガラルに拠点を移して、優にひと月を過ぎていた。


トリトドンに遭遇した後の午前中、タブンネはまともに睡眠が取れなかった。
腹痛があまりに酷く、眠りにつける状態ではなかった。

ここ数時間で何度目か、タブンネはベビをダンボールの上に寝かせると、寝床を少し離れ、排泄に向かった。

—ミォォぉっ!ミフぅーっ......

荒天の中、タブンネは通常の排便姿勢よりも上体を起こし、人間で言うところの空気椅子のような体勢で、排泄を行った。
昨日の経験から、なるべく排泄物を撒き散らさない為のタブンネなりの工夫だった。
苦しい体勢で体重30kg弱の身体を支える短い両脚には相当な負荷がかかったが、タブンネは歯を食い縛って必死に耐えた。

ハアッ!ハアッ!...

タブンネが排泄を終えた後の雪上は筒状に直径10cmほどの穴が空き、そこに新雪をかけ、後始末をするとまたダンボールへ戻った。
この時にはもう固形物は一切無い、ヌメり気のある赤い液体が噴射するだけであった。


正午を過ぎた頃、何とか繰り返す便意が鎮まり、腹痛もほんの少し和らいで浅い眠りについていたタブンネ。

「チッチィ!チィチィチィ。」

胸のベビの声で目を覚ました。
この時にはベビの鳴き分ける声色で、何となくその意図を読み取れるようになっていたタブンネ。これは乳を求める鳴き方だった。
優しく微笑みかけ、乳首にベビを当てがった。

ミヒン! 思わず小さな悲鳴を上げたタブンネ。胸にチクッとする痛みを覚えた。
おっぱいを飲み終えたベビの口を見ると、口内上下に小さな白い歯が生えだしていた。

「ベビちゃん...!すごいミィ!こんどママと一緒に、おいしい木の実を食べミィね!」

喜び一杯、小声でベビに語りかけたタブンネ。前腕骨折も何のその。たかいたかいのようにその身体を上下させた。

チミュイ? お耳をパタパタと前後させながら、不思議そうに、ママに問いかけるように声を上げるベビンネだったが、ママタブンネはそれには応えず、ベビを胸に下ろし、目を丸くして辺りの空を見上げた。

—ミィ......!

相変わらず涔々と雪は降っていたが、いつの間にか強風が止み、空は所々晴れ間が覗いていた。

ベビの嬉しい成長に、何日かぶりの穏やかな空。全てが吉兆にしか思えなかった。

—今晩、何かが変わる。きっと変えてみせる...!

タブンネはベビを緊と抱きしめると、やる気に満ち満ちた顔つきをし、今一度懸命に体を休めた。
喜びと気合いで、体調不良も意識から除外されていた。
タブンネは母親として、本当に逞しくなっていた。

498キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:33:23 ID:Wgdv5XHc0

その日の夜、ホテルイオニアディナータイム終わりに2回ゴミ捨てに出てきた調理師から身を隠し、その後2,3時間ほど、住処に座り込み、静かに息を潜め過ごしたタブンネ親子。

頃合いを見るとスクッと立ち上がり、ホテル全体を見上げたタブンネ。ホテルの宿部屋は全て灯りが消えていた。この消灯確認がタブンネにとっての行動開始の合図となっていた。

住処を一歩出ると振り返り、床にしていたダンボールを暫し眺めたタブンネ。改めて見るとベビの排泄物で、随所汚れがこびり付いていた。

—ママ、ありがとミィ。バイバイ......

心の中で、礼と餞別の言葉を述べたタブンネ。もうここには戻らない予感と意志があった。

いつしかタブンネの中で、このダンボールはママンネの形見と化していた。

湿った地面に癒着していたのもあるだろうが、それでもここ数日の暴風雪にも吹き飛ばされず、形も崩さずそこにとどまり続けたそれは、もしかしたら本当にママンネだったのかもしれない。


ミッ!  気合いを吐き出すと、一目散温泉に向け走り出したタブンネ。胸の中のベビはスヤスヤと寝息を立てていた。

今日は温泉には浸からず、ただゴクゴクと音を立ててお湯を飲み、その場を後にすると裏通りから市街地へとつながる階段へ向かった。

階段の最上部まで来るとそこから顔を覗かせ、辺りを窺いながら必死に耳をそば立て、人間の気配を探った。

人間の気配の無いことを察すると、身を乗り出してまた必死に脚を動かした。今日は通り道であることから、3日ぶりにステーキハウスへ寄る算段を立てていた。
階段を登り切ってからキルクスのメイン通りの一つを横切ると、ベビを抱いたタブンネの全速力でおよそ1分でステーキハウスにたどり着く。


駆け出してから餌場へと向かうその道中、タブンネのその心意気と計画を邪魔するように、異変が起こり始めた。
空模様が怪しくなって来た事に加え、下腹部を体内から引き裂くような強烈な腹痛と、それに付随する便意がぶり返して来たのだ。

—なんで今、こんな大事な時に...

歯を喰い縛ってそこから意を背けようと試みるタブンネだったが、次第に視界が明滅し、意識が朦朧としだした。

本人の気持ちとは裏腹、タブンネの腸は“病は気から”なんて言葉では片付けられないような病状だった。
温泉水の消化すら受け入れず、また走った事による揺れさえも危険な刺激になり得る容態。脆い生き物ならとっくに失神、悪ければ絶命する程重篤な状態であった。

いつもの倍近く時間を要したが、何とか餌場の建物へたどり着いたタブンネ。
片眼失明に悪天、朦朧とする意識、3重の意味で疎らな視界とフラつく足元の影響で何度も柵や外壁にぶつかりながらも、狭い横路に侵入していったタブンネ。

ポリバケツの影にベビを下ろすと、自身はフラフラと排水溝を探した。こんな体調でも餌場で用を足さないのは野生タブンネ特有の習性からであった。

499キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:34:04 ID:Wgdv5XHc0

暗がりと悪視野で排水溝を探し倦ねたタブンネ。それでも千鳥脚を通り越した状態で歩みを進めると、軒間へ入り込み、その中央部でドサリと転倒した。

ブリュリュリュ!ビチャッ!ビチーーッ!

「ヒンッ......ヒッ...ィッ......」

尻から赤い液体が噴出され、尻尾の付け根、両腿裏と内腿が真っ赤に糞塗られた。

ビチチッ!  バリッ! ブチブチブチィッ...

「...ゥァァ...........ゲッ.....ェェェッ.....」

繰り返される血便の噴射の連続に肛門の皮膚が耐えられなくなり、タブンネの尻が音を立てて切り裂け、真っ赤な直腸が10センチくらい、体外へ飛び出してしまった。
深刻な容態と相居るように空模様もどんどんと悪転し、周辺はゴォーーーッという轟音に包まれ、健常者でもホワイトアウトする程の様相を呈してきた。
タブンネは白眼を向いて舌を垂れ、口と鼻腔全域から透明な粘液を吐き出し、ダラーっと糸を引いていた。

(べ....びちゃ....ご......い....い......ま........)

もう目も見えず、耳も聞こえず、感覚神経も殆どの運動神経も機能していない状態であったが、それでも尚タブンネは気を失うことなく、意識をその身に留めていた。

こんな状態でも“ベビちゃんを手放し、置き去りにしている“という現実を明確に把握していた。意識を手放さぬよう、左手の爪で必死に硬い地面を掻いていた。



「チィ~~ッ....チィ...チィ...」

時をほんの少し遡ってタブンネの尻が張り裂けたのと同刻、ポリバケツの陰でベビが目を覚まし、弱々しく泣き出した。
手に入れてほんの1週間の視覚で捉えるモノは一面の真っ白さ。その脇に見慣れぬ青い物体を確認したが、最愛の母の姿は無い。
鳴り響く風の轟音は乳児の心に大きな恐怖心を与え、薄い毛皮の小さな身体には厳しい寒さを覚えた。

「ヂィッ!ヂィヂィッ!チィーーーッ!」

今度はより声量を増した声で泣いた。
酷い環境の中、泣いても何も状況が変わらないことへの抗議、乳児特有の癇癪を含ませるような泣きかただった。
しかしその叫びが重体の母の耳に届くことなどなかった。

「・・・・・・」

一頻り泣き終えると、今度は目を閉じ、耳を研ぎ澄ませた。
幼体ながらも母親より優れた聴覚を有したベビンネ。道のりにして7,8m先に、母の心音を捉えた。
恋慕の強さがそれを可能にしたのか、“ママが困っている”という大まかな感情までもを読み取り、ベビンネは吹雪の中、バケツの脇から飛び出し、そこを目指して這いずり出した。

500キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:35:15 ID:Wgdv5XHc0

「...べ.....ビ.....い......っハッ...ぃっ....」

タブンネの意識は混濁を極め続けた。
裂けた尻穴付近はトクトクと血が流れ、辺りの毛は真っ赤に変色しているが、痛みを感じることすらなかった。

ただ、ただベビちゃんのため。千切れかけた糸のような意識をかろうじて繋ぎ止めたタブンネ。地面を掻き続ける左手には血が滲んでいた。

「......フィ......フィ.........」

一方でベビも、ポリバケツ横から吹雪の中へ這い出し、極めてチャチな歩みを必死に進めていた。

風除けを失った今、ベビの身体は何かの拍子に吹き飛ばされてもおかしくない程の暴風だった。

—ボクがママを、ママをたすけてあげないと...!
ベビの想いも真剣。小さな両手脚で必死に雪路を這い、ほんの少しずつだが確かにその標を伸ばしていった。

・・・・・

親子がこの建物へ到着して30分を経た。
タブンネ、ベビンネはそれぞれのフィールドで、それぞれまさに命懸けの闘いを続けた。

先に状況の変化が訪れたのはベビンネサイド。その小さな身体の後方より、ひと筋の光が吹雪を照らすように現れ、雪の軋む音と一つの生命音が背後から迫った。

「......フィ?.............」

何かがやって来ることには気づいたが、悴んだ顔を動かせずに居ると突然左耳に激痛が走った。

「ウギィーーーッ!い゛ィィッ......——」

抵抗と苦痛を示すように大声を出したが、暴風の轟音がそれを掻き消した。

「ヴォォォぉぉっ....!...ァッ....」

次の刹那には腹部にも激しい痛みと違和感を感じたが、まともに声が出なくなった。
畳み掛けるように身体が浮き上がるような感覚を覚え、ホワイトアウトの視界がブラックアウトに転じた。

何が何だか、体力を消耗した乳飲児には理解が追いつかなかったが、耳と腹の激痛に違和感、暗転した視界と立ち込め出した激臭、本能的に命の危機を感じ、強烈な吐き気を催し、小さな口から白いゲロをタラタラと漏らした。

・・・・・

—ハッ⁉︎ベビちゃん⁉︎ベビちゃん!

ベビの視界が暗転してから時間にして30秒後、タブンネの意識が突然明晰化し、暗い軒間でスクッとその身を起こした。

補足を述べるがタブンネの容態はいつ絶命してもおかしくない程のものであった。
それでも彼女の意識と体力を蘇らせたのはベビの発した母を求めるSOS、いわばテレパシーのようなもの。
親子の絆深さが生み出した医学では説明のつかない奇跡。神通力のようなものがタブンネの身体を動かした。

しかしそんな感動的な奇跡も、新たな悲劇の序章に過ぎなかった。

501キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:35:48 ID:Wgdv5XHc0

慌てて軒間を出、ステーキハウス廃棄場へ駆け出したタブンネ。ベビを下ろした筈のポリバケツ影にその姿は無く、代わりに自分の居た軒間に向かって2m程続くハイハイ跡、それが途絶えた先端には僅かな血痕が残っていた。

「ベビちゃん!!置いてってごめんミィ!ベビちゃん!?どこ?どこに居るミィ!?」

左右をキョロキョロと見回すがその姿はどこにも見えない。まさか風で吹き飛ばされたのかと思うタブンネだったが、右眼をそっと閉じると、一心に聴覚を研ぎ澄まし、その気配を探った。

その後、急いでポリバケツに両手を掛けると、渾身の力でそれを押し倒したタブンネ。
タブンネの触覚はその中から確かに我が子の息遣いを聴き取り、救出のための行動に転じた。
聴覚の健常な同族ならば訳もない芸当なのだが、タブンネには一世一代の集中力であった。

ありとあらゆる残飯がぶち撒けられたステーキハウス店横の細い裏路。その残飯の先頭に全長40cm弱の小さな身体が横たわり、微かに腹を上下させていた。

「ベビちゃん!ごめんミ!もうママどこにも......っ!ああ゛あ゛っ!ベビちゃ......!」

「.....ヴッ......グボッ.........」

ベビの元に駆けつけたタブンネ。その変わり果てた姿に猛烈な不安を抱き、長らく放置してしまったことへ巨大な罪悪感が込み上げた。

ベビンネは左耳がペシャンコに潰れて血塗られ、巻が強くなり始めていた触覚は爛れて、左右で非対称が出来上がっていた。
綺麗なサファイアブルーをしていた瞳は全体が白みがかり、完全に焦点が合っていない。
口元はお乳がそのまま戻されたような吐瀉物にまみれ、胴体はステーキソースやらケチャップ、パスタの麺にご飯粒に細切れの葉物野菜その他、あらゆる残飯が付着し、さっきまで綺麗だったピンクチョッキ模様は見る影も無い。
いつもポッコリと膨らんでいたおなかは萎み、口から漏れる吐息は今にも消え入りそうで、変な濁音を含ませている。

—どうして、どうしてゴミバコの中に?どうしてこんなケガを。なんでこんなことに...!?

困惑と混乱が渦巻いたタブンネの思考回路。
タブンネが一連の経緯を解することは無いが、ベビに傷を負わせ、ポリバケツに放り込んだのは1人の人間。この街の警察官の男であった。

502キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:36:22 ID:Wgdv5XHc0

これまで鉢合わせなかったことがかなりの幸運であったが、ここ1週間ほどキルクス市街地は深夜の巡回が強化され、警官による見回りが随時行われていた。
4日前の行脚で感じた人間の気配もそれによるものだ。

その原因を作ったのは他でもないタブンネ。

ベビ誕生以後、授乳の為、日増しにステーキハウスで漁るゴミの量が増していった事に加え、足跡を残さぬよう選んだ進路、やたらと荒らさない物色の痕跡、その全てが仇となった形であった。

細かい経緯は割愛するが、廃棄場が漁られている事に気がついた回収業社とステーキハウス店主。
その形跡からポケ災ではなく人災と判断し、警察に通報、パトロール強化を依頼していた。


タブンネ親子がこの裏路でもがいていた頃、1人の警官がそこへと足を踏み入れた。

いつもと違うことはなかったが、変わったことといえば途中で生肉らしきモノを踏んづけたこと。それをゴミ箱の中へ片付けると踵を返し、猛吹雪を掻き分け市街地へとトボトボ舞い戻っていった。

一連の流れで軒間のタブンネの存在が気付かれなかったことがまず幸運だし、ステーキ屋の廃棄場という立地に鳴き声の聞き取れぬほどの轟音からベビンネが生き物と認知されなかったことも幸運、いや、寧ろ気付いて貰った方が幸運だったのかもしれないが。



オロオロとした表情をキッと引き締めたタブンネ。混乱している場合ではない。右腕でベビの後頭部を少し持ち上げると、舌と左手を使って汚れを落とし始めた。

毛皮に染み付いた調味料や細かいカスは拭えなかったがおよその固形物は取り除いた。小さな右足の付け根から少し上の腹部にこびりつく赤い紐のようなものに目を向けると、それを落とすために爪で引っ掴み、思い切り引っ張った。

「ビャァァーーーーッ!ギャギャーーアアァァあ゛あ゛ああっ!」

ベビがこれまでの容態からは信じられない程の絶叫を上げた。その声にハッとして、手を止めたタブンネ。掴んだ紐はベビの体内から伸び出ていて、ギョッとして手を放すとそれは小さなお腹からU字にダラリとぶら下がった。

「あっ...!あ゛あっ!!ごめ....ベビちゃ....」

タブンネの掴んでいた物は汚れではなく、人間に踏まれた際に未熟な皮膚が破れ、一部体外へ露出していた小腸。
タブンネは臓器なんて見たことはないしそんな存在を知ることもなかったが、今の状況から自分が引っ張ったモノがベビの大事な身体の一部で、それを自分が傷つけてしまったことはハッキリと理解できた。

...カヒッ!.......ケヒッ!......

ベビは大きな音で、口から乾いた咳を吐き出し始めた。
普段のチィチィという声からは想像もつかぬような、生物の発する音とは思えない音色であった。

「あ......ああっ......どうし....っ.....」

両手でベビを抱き上げたタブンネ。ベビは青目と白目を上下にギョロギョロと動かし、口角からコポコポと小さな泡を吹き出して、全身をピクピクと痙攣させていた。

時間が解決してくれない傷であることはタブンネの目にも明らかであった。


—そうだ、あの泉ならば...!

暫し逡巡を見せたタブンネだったが、やがて何かを思い出したように立ち上がり、ベビを抱いたまま、一目散に駆け出した。

503キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:37:05 ID:Wgdv5XHc0

全速力で走り、小さな野外泉まで舞い戻ってきたタブンネ。
ベビは咳すらも出なくなり、まさに虫の息という容態。不思議な治癒能力のあるこの泉がタブンネにとって最後の望みの綱だった。

「ベビちゃん、チョット苦しいけどガマンしてミ!おケガ治さないと...!」

右腕で両脇を抱え、左手で口鼻を塞ぐような形に抱き直すと、親子共々ザブンと温泉に入った。ケガした耳が浸かるようにと、ベビは全身である。

「ミィォォっ!ミィ〜〜ん゛んっ......」

入るや否やお尻に激痛と強烈な不快感を覚え、思わず右目を固く瞑ったタブンネ。
タブンネの直腸も体外に飛び出したままだった。

「ベビちゃん...キモチいぃ...?ミィあ゛あ゛あ゛??イヤァあああ゛あ゛ーーーッッ゛!!!」

数秒後目を開けると、目の前の光景に絶叫し慌てて湯から上がったタブンネ。辺り一面の温泉水が真っ赤に染め上がっていた。

側路にベビを寝かせると、その身体は震えるという状態を越し、ガタガタと大きく左右に揺れ出した。まるで生命の最後を告げるような、非生物的な異常な動きだった。
辛うじて繋がっていた左耳の触覚は完全に千切れ、破れた下腹部はもう血を出し切ったのだろうか、透明な液体がトロトロと流れ出ていた。
口はカクカクと僅かに上下し、両眼は完全に白目を剥いて、全身の体毛が真っ赤に染まっていた。

無論、全て良かれと思って行ってきたタブンネの行動。
非常に酷な現実だが、その全てが手負いのベビンネに更なる追い討ちをかけ続け、小さな命は風前の灯であった。


数秒オロオロと狼狽えるタブンネだったが、誰に教わった訳でもなく、何か思惑があった訳でもなく、ベビに向けて両手を翳した。

—ママ、ダーリン、おねがいミィ!どうかベビちゃんを助けて!おねがい!おねがい!


...ポウッ

ミィ⁉︎  タブンネのおねがいがあの世の母や夫に届いた訳ではないだろうが、タブンネの掌から優しい光が現れ、ベビの身体に降り注いだ。
それは癒しの波動というポケモン技だった。
通常は対戦で経験を積み、鍛錬を積まなければ習得できない技であるが、タブンネのベビを想う気持ちの強さからか、奇跡的にそれを使うことを可能にした。

「......フッ......フィ?.......」

何が起こっているのかわからないタブンネであったが、光を浴びたベビはほんのわずかにだが呼吸を取り戻した。

「ベビちゃん、ベビちゃん!しっかりして!ママが、ママが必ず助けてあげるミィ!」

タブンネは両手を翳し続け、必死に不思議な光線をベビに浴びせ続けた。

504キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:39:33 ID:Wgdv5XHc0

新規習得した癒しの波動を用いてベビの介抱を続けること約10分。
不思議な光は段々と弱くなり、やがて完全に出なくなってしまった。

—どうしてミィ?どうして!おねがいおねがい!もう一度出て!ベビちゃんが...ベビちゃんが......

愕然と両膝を着き、ベビを見つめたタブンネ。
必死の介抱の甲斐なく一瞬だけ息を吹き返したベビは再び呼吸をやめ、もう振動することもなく、動かなくなった。

癒しの波動はそもそも命の瀬戸際の者を回復させる技ではない。
奇跡の新技習得は、タブンネに余計な希望を与え、ふたたび絶望させる無駄な時間に過ぎなかった。

暫し膠着を見せた親子であったが、ベビンネの胸元がかすかに上下し、息とも声ともつかぬ音を小さな口から漏らした。

......マ......マ.........ス......ス...ッ........———

ベビちゃん⁉︎ カッと右眼を見開いたタブンネ。今確かにベビの漏らした吐息はタブンネの言葉として何かを紡ぎかけていた。

「ベビちゃん!ベビちゃんおねがい!しっかりして!ベビちゃん!ベビちゃん!」

ひたと抱き上げ、膝の上に乗せると我が子へ向け必死に呼びかけ続けたタブンネ。


グ...グジュルルルグギギ...ッ...グジィーーィッ...ゴププルッ...

我が子の口から漏れた返答は、生物の発する音とは思えぬ、残酷な音であった。
鼻腔から一筋、深紅の液体を垂らすと、口角からそれと同じ色のあぶくをコポコポと吹き出し、ガクッとこうべを垂れた。

「.......ッッ......ベ..........」

タブンネはまともに言葉も出なかった。触覚で生命音を探る術を持たぬタブンネ。それ故か第六感には多少秀でていたのかもしれない。ベビの最期を、はっきりと理解した。

生後15日、ひと月にも満たぬ、短い生涯であった。

505キルクスタウンのタブンネ:2021/03/04(木) 10:40:14 ID:Wgdv5XHc0

やがてタブンネは白眼を剥いたベビの瞳に瞼を被せてやると、その身体をそっと地面に下ろした。

「ベビちゃん、少しだけ待っててミィ。ベビちゃんのお耳、取ってこなくちゃ...」

タブンネはジャバジャバと温泉を掻き進むと、その中間にプカプカと浮かんだ小さな触覚を回収し、湯から上がった。

ベビの亡骸をそっと抱き上げる。酷い破れ方をした下腹部の為その両脚は少し引っ張れば胴体から離脱してしまいそうな状態で、それらを包み込むように、慎重に持ち上げた。

ソロソロと、ホテルイオニア中庭を進んで、すっかり住み慣れたダンボールの上に腰を下ろしたタブンネ。
最後のお別れからたったの2時間程で再会を果たした。

血の温泉に浸かったことで全身が真っ赤に染まっていたベビンネ。
タブンネはペロペロと顔一体を舐め回してやると、驚くほど綺麗な死に顔が浮かび上がった。

「ベビちゃん。もうママ、ベビちゃんを置いてどこにも行かないミィ。今度こそ約束ミィ。ずうっと、ずーっと一緒に居るミィからね。」

呼びかけるママの声に応えるように、ベビの顔は薄っすら微笑んでいるように見えた。
タブンネはその身体を緊と抱きしめると、一寸先の地面を眺めた。
その右瞳は落涙することはなかった。
だがそれは澄んだサファイアブルーではなく、この世の哀愁を全て含ませたように、何とも形容し難い色合に濁っていた。

—もういいミィ。もう、もう......。

タブンネは全てを諦めたような感情で、ひたすらその場に座り続けた。
これまでに2度、人間によって奪われた幸せな生活。大好きだった家族。
そんな哀しみを吹き飛ばす程の存在だった新たな命、その命は自分がとどめを刺し、殺めてしまった。

—ミィは、どうやっても幸せにはなれないんだミィ。そんな資格もない生き物なんだミィ。

胸に抱くベビは完全に体温を失い、次第に硬直し、固まっていった。

———

それから3日3晩、タブンネはその場に座り続け、場面は物語の冒頭に繋がる。

断っておくが、タブンネは絶命している訳ではない。人間並に耳は聞こえ、右眼は地面を捉えている。

その間何度も中庭に人間が現れたが、誰も彼女に気づくことはなかった。

まるで菩提樹の下で瞑想を行う釈迦の如く、荘厳な、静かな佇まいであった。


様々な理由から草むらや森を離れ、人里に住処を構える野生タブンネはこの世界に五万と居る。

今回紹介したのはほんの一例、その中の一匹の、少し小さなタブンネのお話。
ここでタブンネの半生を追うのは終わりとする。

物語冒頭の翌日、ホテルイオニア中庭には汚れたダンボールはなくなり、その一面は真っ白な綺麗な雪で埋め尽くされていた。

(終)

506キルクス:2021/03/04(木) 10:43:14 ID:Wgdv5XHc0
尻すぼみで申し訳ない

もう一つSSを書き始めてしまったので来週あたり投下するかも

誰か仕事くれ

507名無しさん:2021/03/04(木) 19:45:34 ID:IEgVIcbo0
>>506
完結乙でございます
ベビンネも結局幸せって何だっけなんて物心もつかないうちに呆気なくなってしまうとは…
しかしこの主人公ンネちゃんのじわじわ不遇を積み重ねていくタブ生にゾクゾクさせて貰いました
次もまた期待しております

508名無しさん:2021/03/04(木) 21:22:35 ID:Le.BaqDI0
>>506
完結乙 毎回楽しみにしてた
結局タブンネちゃんは幸せにはなれなかったね……それがお似合いだよ……
次回作も期待してる

509名無しさん:2021/03/06(土) 01:21:14 ID:rJsj1Is60
>>506
乙でした。生肉と間違えられて踏んづけられるベビちゃん可愛い。
次も頑張ってくださいね!

510タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:15:29 ID:WE5UtLtA0

※あくまでタブンネを虐める、殺すことを目的としたSSであります。
作者に一切の他意がないことをご理解の上お読みください。

———

イッシュではあらゆる街のスーパーで売られ、他地方にも常に輸出され続ける、安くて美味しい家庭料理のお供。タブ肉。

カントーやホウエンなど、タブンネの生息しない地域の人間の中には、「タブンネ」と聞くとポケモンではなく、食材として認知している者も多いかも知れない。

イッシュには多くの地にタブンネを取り扱う牧場や加工場、レストランが点在する。

このお話ではそんなタブンネ産業のひとつ
とある食肉用養タブ所の様子を紹介する。

———

ここはイッシュ地方本土を離れた南西部の工業都市

  「タチワキシティ」

その市街地を離れた湾岸エリア、大規模コンビナートの一画に、幅20m強、奥行き100m程の屋舎に総計200匹を超えるタブンネ達の犇めく養タブ舎がある。

こんな空気の悪い場所にタブ舎を構える意味は特にない。
解体途中だった廃工場の建物を、あるタブ産系企業が格安の居抜きで買い取ったまでである。

建物の側面に壁はなく、数多の鉄柱が古びた三角屋根を支ているその屋舎。
工業地の排ガスが常に流れ込む為、タブンネ達の生育を考えればかなり悪条件である。

基本は雑居なのだが、屋舎前面に60cm×1.3m程のストールが40ヶ所
中間部に離乳後〜成獣以下のサイズのチビンネ達の犇めく雑居スペースを隔て
後面に前面同様のストールに、左右幅1m×前後幅50cmの囲いが連結する箇所が設けられている。

前面、ストールのみの場所は生産器に選ばれた雌タブンネの種付け場。
後面、囲いの連結するストールは産卵スペース兼授乳スペースとなっている。
(授乳スペースは上から見て「回」の字を縦長にしたような作り。中央の四角にママンネが居て、外側の四角でベビンネ達が過ごす状態)

ストールは丁度成獣のタブンネ1匹が収まる程の大きさで、このスペースでは立つ、座る、寝る、以外の動作がほぼできない。
生産器に選ばれた雌タブンネは種付けストールと授乳ストールを行き来して、その生涯を終えることになる。

屋舎の前面側の野外広場の中央には巨大なフードプロセッサーのような機械が1台設置され、その周りを埋めるようにオボンとオレンのなる木が所狭しと植えられている。

空気の悪さからか木の実はどれも黒ずんでいたり、歪な形をしているが、どれもタブンネに喰わせるための物なので別に問題はない。

そんなタチワキ養タブ舎の内部を覗いてみよう

511タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:17:56 ID:WE5UtLtA0

ブミィー!ミ゛ミ゛ィー!ミギャー!
ヂギャー!ミィーッ!ミ゛ャー!・・・

タブ舎の数十メートル前まで近づいた段階で、けたたましい鳴き声と強烈な異臭が耳と鼻をつん裂く。

聞こえてくる鳴き声は通常のタブンネのそれよりも濁っていて、声量もデカいように思われる。

ブミッ!ブゴッ。ミゴプッ!...

雑居房の床にばら撒かれた飼料を貪り喰うチビンネ達。
およそ排泄場所の区別なんか無く、多くの個体が口にしているのは餌とタブ糞のハイブリッドである。

ゴフッ!ガフッ!ミブフッ・・・

雑居房中央部に幅、深さ10cm程の用水路が縦一線流れ、そこに顔を突っ込んでガブガブと水を飲むチビンネ達。
流れる水はやや白濁しており、ドブ臭さに酸味臭が混じっているようだが、みんなお構い無しといった様子である。

殆どのタブンネが不潔に慣れており、このタブ舎の環境に馴染んでいる様子。

タブンネはそのイメージと裏腹、健全な生育環境を与えれば案外綺麗好きな種族なのだが、生産性最重視のこの汚いタブ舎で生まれ育った為か、多くの個体がその特徴を失っている。
いつまでも不潔に慣れない個体は自然淘汰され、出荷前に処分される末路を辿る。

———

「いやだミィ!じにだぐないミ゛ィィッ!」
「はなせブヒィ!ヤメろブミィー!」
「ママに!さいごに一度だけママに会わせてミィ!おでがいだミ゛ィーッ...」
・・・

産卵スペースと種付けスペースの間
横幅10m強、それが端から端までつづく雑居房がこのタブ舎のメインスペースとなっている。

そのメインスペースで2名の飼育員がそれぞれズルズキンとダゲキを引き連れて、出荷時期を迎えたタブンネを捕らえては、屋外に停められたトラックへと連れ込んで行く。

周り雑居ンネ達はそれを心配そうに見つめる者、ミィミィ喚きながら出荷ンネや飼育員に縋り付く者
もしくは見向きもせず食事に勤しむ者、取っ組み合いのケンカをする者、その様相は色々である。

タブ舎の床はコンクリートで、その上に砂利や、適当に撒かれる飼料、またタブンネ達が辺り構わず撒き散らす糞尿で埋め尽くされ
どのタブンネも膝から下が茶黒く汚れ、ハートの肉球が視認できる個体が1匹も見受けられない。

———

「ミィミィッ!ミンミン!」

上の場面と同刻

タブ舎片端に設置される人間の事務所
そこから数えて3番目に位置する産卵スペースで、1匹の雌タブンネが声を上げた。

この雌タブも例に漏れず脚が汚れ
腹部に本来8あるはずの乳首は1つが完全に落ち去り、2つが腐りかけているらしくドス黒く変色している
また汚れと区別が難しいが膝付近に褥瘡ができて赤紫に変色し
口内は歯の全てが折れているか欠けていて、歯茎には裂傷傷と腐敗痕が随所見られる。
片耳には赤いタグがつけられ、「3」の数字が書かれている。

雌タブの居るストールの少し後方、地面から高さ50cmくらい、2本の鉄パイプからなるホルダーの上に嵌め置かれた4つのタマゴが順次ガタガタと振動し始めた。


その声に気付いてではなかろうが、やがて事務所から2名の飼育員が出てきて、雑居房に犇めくタブンネ達をドカドカと蹴飛ばしながら、雌タブの居る3番授乳スペースまで歩みを進めて来た。
2名の後ろには1匹のローブシンが追随し、雑居ンネ達にマッハパンチを打つ素振りを見せてビビらせ、怯えるその様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべている。


...バリッ!バリバリッ...! ボトッ...ボトッ.....

チギャー!オギャー!ギャギャーッ!......

4つのタマゴは順次孵っていき、生まれたベビ達はパイプの隙間から次々と地面に落下していき、ぶつけたお尻やお腹に向けて小さな手を必死に伸ばしている。
落ちどころが悪かったベビはママのタブ糞を踏んづけてしまい、初々しい地肌と体毛が真っ黒く汚れてしまった。

512タチワキコンビナート養タブ舎・アバン:2021/03/15(月) 12:22:21 ID:WE5UtLtA0

飼A「おっ、よしよし。未熟児ナシ。奇形児ナシ。オマエ10週目だっけ?よく粘るなぁ。エライエライ。」

雌タブ「ミィッ!ミィミィ!ブミィッ!」

4ベビ孵化から間もなく到着した飼育員の1人が雌タブに語りかけ、頭を撫でているが雌タブは怒った顔をし、抗議するように鳴き声をあげている。

もう1人はベビ達を1匹ずつ抱き上げては、小汚い濡れタオルでその身体を拭き、粘液や糞を落としていく。

飼B「3番って残り居ましたっけ?」

飼A「いや、居ねえよ。コイツだいぶペース落ちてっから。上のヤツらみんな出荷したか死んだ。前んとき全部無精か奇形だったしな。」

飼B「了解。じゃあ1〜4でいいっすね。」

そう言うと若い方の飼育員がポケットから黄色のタグを取り出して油性ペンで数字を書き込み、ベテランらしい飼育員にそれを渡していく。

タグを受け取ったベテラン飼育員は1匹ずつベビを抱き上げると、小さな耳にスキンテープラーを当て、バチンバチンとタグを打ち込んでいく。

ヂィッ‼︎ヂヂィッ!ミギャギャーーッ!......

神経の集中した耳に穴を開けられるのは相当痛いらしく、ベビ達はそれぞれけたたましい鳴き声を上げる。
4ベビは3-1〜3-4の数字を与えられた。

タグを打ち込まれた後はみな乱暴に囲いに投げ下ろされ、生まれて間もなく続いたダメージにやられ、ベビ達は床に横たわり、わずかに腹を上下させて苦しそうに呼吸をしている。

飼B「ええっと1,2,4がメス。3だけオスっすね」

飼A「オッケー、オス1匹ね。メスは一応生育確認しとくぞ。母親そろそろ使いモンなんねえから、それ。」

若い飼育員が倒れベビ達の股を確認した後、2人と1匹は事務所へと舞い戻って行った。

一連をストールの中から、精一杯首を傾け心配そうに見つめていた雌タブは人間が立ち去ると、一度うつ伏せに横たわり、身体4分の1くらいを持ち上げストールの鉄棒1ヶ所に左腕を掛けて安定を取った。
かなり苦しい体勢であるが、これは彼女の授乳姿勢である。
完全に横を向ければラクなのだが、ストールに腹がつっかえてしまうのでそうすることを許されないのだ。

「ベビちゃん達、大丈夫ミィ?もうイタイイタイ終わったミィからね。がんばってコッチ来てミィ。ママのおっぱい飲んでミィ!」

チィ...チィ...チヒッ...チビッ......

4ベビは小さな耳からポタポタと血を流し、弱々しく息を吐きながらモゾモゾと必死に這いずり、およそ5分して全員ママの元へたどり着き、チュピチュピと音を立てながらおっぱいを飲み始めた。

不自由な体勢のママは精一杯首を動かし、愛しい我が子の姿を見やった。

———

これ以後、今回生まれた4匹のベビンネに焦点を当て、このタブ舎で産まれたタブンネ達の生涯を紹介する。

513名無しさん:2021/03/17(水) 21:32:16 ID:T.GttBo20
新作乙!
如何にも絶望的なタブンネ生産プラント……
これからタブンネ達がどんな目に合うのか期待してる

514タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:16:16 ID:HrzmMaMw0

これまでの登場タブンネ

・4ベビの母親→ママンネ、ママ
・3-1→長女ンネ、長女
・3-2→次女ンネ、次女
・3-3→弟ンネ、弟 or お兄ちゃん
・3-4→妹ンネ、妹

その他の個体を他ママ、他ベビ、モブタブンネなどと表現します

———

4ベビは生後2,3日、ママのストールの左側で、暖を取るように4匹固まって過ごした。

長女、次女は割とすやすや眠る時間が長かったが、弟、妹は「ヂッ...ヂッ...」と常に泣き続け、目の下に涙痕ができていた。
タブ舎に立ち込める激臭が辛かったのか、騒音が不快だったのか、もしくはその両方か。

長女、次女共に聴覚や嗅覚は通常のタブンネのそれと変わらぬ機能を有していたが、いち早くこのタブ舎の環境に馴染んだようだ。

4ベビは生後間もなくより排泄場所をママの後方一箇所に固定、ママンネの遺伝子なのか、タブンネ特有の衛生意識も同族愛も失われていないようだった。

このタブ舎のタブンネ達は品種改良(改悪)が自然進み、概ね生育が早い。
4ベビはみな生後2日目には眼が開き
3日目には長女ンネは鉄柵に手を掛けながらだが、ヨチヨチと2足歩行するようになっていた。

———

4ベビ生後5日目

この日は弟ンネに、災難が訪れる。

長女「マンマ、おちちちょうだい...」

長女ンネは片言ではあるが、タブンネの言葉を発するようになっていた。
いつものように、ママの居るストール下を這いずり、内部へ侵入しようと試みる。

チィ。チィチィ!残り3ベビもそれに呼応するように、嬉しそうに鳴きながら姉に追随する。

ママ「ベビちゃん達!ごめんミィね!もう入ってこないでミィ!おちちはちゃんとあげるミィから、おそとから飲んでミィ!ごめんミィ、ごめんミィ...」

ママは必死に声をかけながら、横脚や手を使い、泣く泣くベビ達を押し返した。

長「どうちて...?マァマ?」

チィッ...。チスン。チュビッ...

4ベビはママの行為が信じられないといった様子で、さめざめと泣き出してしまった。

——

この時ベビ達の体高は35cm前後。
長女、次女に至ってはストールに侵入する際、腹をつっかえさせながら、なんとか入り込むくらいまでに身体が成長していた。

ママがベビ達を押し返したのには理由がある。
挟まり事故を防ぐためだ。

ママの過去の産卵個体、すなわち4ベビの兄に当たる個体が、身体の成長を考えず、無理にストール内に侵入を試み、首が完全に挟まり動けなくなるという事故が起きたことがあった。
押しても抜けず、引いても抜けずで手こずるうち、挟まりベビの悲鳴に気づいた飼育員がやって来て、囲い側からローブシンが無理くりその胴体を引っ張ると、ブチィ!と大きな音が鳴り、未熟な皮膚が破れ、首から下の体皮がズル向け、骨と臓器が剥き出しになり即死するという凄惨な結果を招いた。

無論ママの心には大きなトラウマが残り、その記憶をくり返さぬよう、今回の行動に至った次第。
それはこの先二度と4ベビを抱いてやれなくなることを意味する。

生まれて間もなくはストール内に入れてやり、代わりばんこに1匹ずつ抱きあやしてやっていたが、これくらいの時期に侵入癖を治さなくてはいつでも事故が起こりうるのだ。

——

4ベビはママに突っ撥ねられたショックから食欲も失せたようで、ストールから少し距離を置いて固まり、身を寄せ合ってチィチィ涙を流している。

我が子を想っての行動ながら、子供達が自分から離れて行ったことにショックを受け、ママの目尻にも涙が浮かぶ。
こんな不自由な檻に閉じ込められ続ける自分の運命を本気で恨めしく思った。

そんな傷心の親子に追い打ちをかけるように、やがて1人の飼育員が3番授乳スペースまで足を運んできた。

515タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:16:48 ID:HrzmMaMw0

飼育員は囲いに足を踏み入れてベビ達のタグ番を確認していくと弟ンネの片足を掴み、逆さ吊りに持ち上げた。

飼「よーしよし、みんな順調に育ってるな。お、いいねお前。タマと竿わりとデカいぞ。こんならやりやすいな。」

弟「ヂィッ!ヂィヂィッ!ギャギャーッ!」

弟ンネは手足を必死にバタつかせ、精一杯の声を上げて抵抗を示す。
恐怖からか陰茎からはオシッコが、肛門からは乳児特有の軟便を撒き散らし、飼育員の作業着や囲いの床を汚していく。

女の子ベビ3匹は弟ンネに向けて両腕を伸ばし、チィチィ鳴きながらピョンピョン跳ねている。まだ足元の覚束ない妹ンネは何度も転ぶが、それでも兄を助けようと、必死に姉2匹と同じ行動を取る。
ママンネはストールの中で座り込むと固く目を瞑り、フルフル震えながら両手を胸の前で合わせ、祈るような仕草を見せる。

ベビ達の抵抗、抗議を全く意に介さず、やや老齢なその飼育員はポケットから大きめのカッターナイフを取り出すと、弟ンネの尾、その下の小さな肛門よりも前面部に亀裂を4つ入れるとうつ伏せに床に組み敷いた。

かなりベテランの飼育員のようで、その所作には一切の無駄がない。
亀裂を入れられたことに弟ンネが気づかなかった程である。

弟ンネを組み敷いたまま尾の下に手の甲をあて、思い切り体重をかけた。

ポンッ!ポンッ!

弟「イグァーーー!ゴバァーーーー!ギギィーいい゛ッ!チゴブルルゴバガガフブリュリュミアガババベベッ...!」

弟ンネの股間から白い小さな玉が2つ、音を立てて体外へ飛び出し、弟ンネは何の生き物かわからない様なあられもない声をあげ、狭い囲いの中をゴロゴロとのたうち回る。

これは雄個体に訪れる試練、去勢である。
雑居房での乱交防止と食肉加工される際にオス臭さを出さない目的で、このタブ舎では生後1週間以内にこうしてパイプカットが行われる。

飼育員は作業を終えると事もなげに事務所へと戻って行ったが、弟ンネの勢いは衰えを知らなかった。

ママ「お兄ちゃん!イタかったミィね!辛かったミィね!でも落ち着いて!大人しくして!おマタにバイキン入っちゃったら死んじゃうんだミィ!お兄ちゃん!お兄ちゃん...!」

弟ンネはママの言葉掛けに応える余裕などあるはずもなく、ギャーギャー叫びながら転がり続ける。

3匹の女の子ベビ達は人間が去り、自分達に危害が加えられない事を察すると弟を心配がるが、あまりの勢いに手も足も出ず、結局ママンネを挟んで囲いの反対側に逃げ、ストール越しに弟ンネを眺め、心配そうにチィチィ泣いている。

——

チュヒィー...ヒィーッ...チッ...ヒッ......

約3分後。ようやく動きを止め、仰向けになって小刻みに腹を上下させながら横たわる弟ンネ。
口角にあぶくを浮かべ、目は下半分が白目を剥いて鼻がピクピク痙攣している。
精神的肉体的両ショックから気絶してしまったようだ。
弟ンネが暴れたせいで囲いの左側は辺り一面血飛沫が飛び散り、弟ンネの股間からはピチャピチャと生臭い血が滴り落ちている。

「チィッ。」「チィチィ...」「弟ンネ、だいじょぶチィ?」

弟が静かになると女の子3ベビはヨチヨチと歩み寄り、心配そうに兄弟を眺める。

ママンネはストールの中に座り、首を精一杯左に傾けて息子の姿を見やった。
ママにとってはこれまで何度も見てきた光景なのだが、いつまでもこれに慣れる事は無かった。
生後間も無くしてオスとしての機能を失うことになるのだ。人間は事もなげだが、母親が不憫に思わない筈がない。
しかし女の子ベビ達の慈愛に満ちた行動に少しだけ心が暖まり、目には複雑な涙が浮かんだ。

516タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:17:41 ID:HrzmMaMw0

4ベビ生後9日目

この日は4ベビ達に、このタブ舎の凄惨さを垣間見る事件が起こった。

4ベビ達は体高40cmくらいまで成長し、妹ンネは少し足取りが覚束ないものの、女の子3匹は自力で歩けるまでに成長していた。

しかし弟ンネだけは股の傷から全く内転筋に力が入らず、歩行はおろか立つことさえ出来なかった。

それでもママンネの指示により、毎日一定時間、姉2匹の肩を借りて歩行訓練を行っていた。

——

このタブ舎の雄ベビは去勢傷の影響で、離乳後もいつまでも自力で立てない個体が一定数存在する。
そうなると満足な生育が見込めない為、早めに出荷されるか、悪ければ殺処分される。

ママンネの過去の産卵個体にも2匹、離乳後すぐに出荷された男の子ベビが居て、ママは弟ンネには同じ運命を辿ってほしくなかった。

別に死期が早まるか遅まるかの問題に過ぎないのだが、ママはこの4姉弟には出来るだけ長く一緒に過ごさせてあげたい親心があった。
それに無駄とはわかっていても、“生きていれば何かが起こるかも”という希望を完全に捨てたくはなかった。

——

4ベビは皆タブンネの言葉を話し始め好奇心真っ盛り、ママの前面、囲いと雑居房を隔てる柵に手を掛け外を眺めては、あれこれママを質問攻めしていた。

長「ねえママ、ママはどうしていつもそんなせまい箱に居るチィの?」

ママ「ママもお外に出たいミィけどね、ニンゲンに閉じ込められて、ベビちゃん達の生まれるずうっと前からこの箱の中に居るミィの。長女ンネちゃんは女の子ミィから、いつかママみたくこの箱に入れられるかもしれないミィ」

妹「ニンゲンはどうちてそんなヒドイことするチィ?チィ、ママにだっこしてほちいチィ」

ママ「ママもはっきりとはわからミィけどね、ニンゲンはこうしてタブンネさん達を閉じ込めて、いつか食べちゃうらしいミィ」

弟「チチッ⁉︎ママもボクたちも、いつかたべられちゃうチィ?たべられちゃったらしんじゃうチィ?」

次「ねえママ。ママのゴハンはおいしいチィ?ママはオッパイのまないチィ?ママのママは居ないチィ?」

・・・

ママはベビ達の質問に、優しく、そして誠実に答え続ける。

——

ママンネはこのタブ舎の2世である。
今回が10回目の産卵のベテランママで、当然ここで生まれたタブンネ達の末路など折り込み済みだ。

1回目2回目の産卵で生まれたベビンネ達には「ミィんな幸せになれるミィ」とか「ずっとママと一緒ミィ」とかお花畑な言葉をかけていたが、3回目以後はやめた。

無駄に希望を持たせれば別れる時に子供達が苦しむだけだし、順調に育っていけばここの酷さなんてどうせわかると気付いたためである。

余談であるが、そうしたママの言葉掛けから3回目以後のタブンネ達は肉質としてやや落ちている。
ある程度の覚悟を持って屠殺されることから、ミィアドレナリンの分泌が弱いのである。

さらに余談であるが、高級タブ肉、ブランドタブ肉と呼ばれるようなタブンネを出荷する様な牧場や畜舎は、このタチワキタブ舎とは雲泥の、贅を尽くした環境でタブンネを飼育する場所が殆どだ。
“自分は特別な生き物だミィ”くらいに思わせたところから一気に食肉としての現実を叩きつけることで、一度に大量のミィアドレナリンが高まって、上質な味わいが生み出されるのである。

——

しばらくミィミィチィチィと盛り上がりを見せた3番授乳スペース。
やがてその前にどこからともなく、1匹の雑居チビがポテポテと歩みを進めてきた。

チィッ!チィチィ!チャァッ!

4ベビは近づいてくる足音に気づくと怖がる悲鳴を上げ、囲い内部に逃げ込んでママのストールに擦り寄ったが、かけられた声は予想と違うモノだった。

517タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:18:12 ID:HrzmMaMw0

他チビ「みなさん、はじめましてミチィ!ミィとオトモダチになりましょミィチィ」

成獣タブンネの半分にやや満たないくらいの体格をした、雌個体であった。
体躯や口調からおそらく離乳後間もないと思われ、耳の黄色のタグには8-5の番号が書かれていた。

4ベビ達は話しかけられたことに最初驚いたが、優しそうな見た目とその言葉から興味と嬉しさ一杯といった様子で、チィチィ鳴きながらまた囲い前面へ歩み寄った。
触覚でおよその感情を読み取る術も身につき出していたようだ。

ママもこの来訪者には少し驚きを見せる。
今まで囲いの外からベビ達を威嚇してくるような雑居ンネが来ることはあったが、こうしてベビ上がりくらいの個体が優しく語りかけてくるのは初めてであった。

ママ「お嬢ちゃん、こんにちミィ。お嬢ちゃんの兄弟は?一緒に居ないミィ?」

他チビ「おばさん、こんチわ!ミィのきょうだいわね、おねえちゃんはほとんどしゃべらないし、おにいちゃんたちはときどきミィのことたたいたりするミチィの。だからおミミをつかってね、たのしそうなこえがきこえてきたからここまであるいてきたのミィ!」

長「おねえさん、こんにちは!おねえさんはおソトでくらしてるチィ?」
妹「おねえさんはオッパイのまないチィ?ママとおなじゴハンたべるチィの?」
弟「おねえさんのママはいないチィ?」

他チビ「ミィもね、ミんなとおなじおウチにすんでたミィけど、おとといおソトにだされたミチィの。いまはオッパイのまないけどね、ゴハンたべてるミィ。ミんなにもわけたげるミィチィ!」

他チビは尻尾をモゾモゾと掻き分け出すと、飼料を取り出して柵の間から4ベビに向け差し出した。

4ベビは一層チィチィ嬉しそうに鳴き、飼料を受け取ると鼻へ近づけ、クンクン匂いを嗅いでいる。

子供達は嬉しそうだが、ママンネは少し複雑な表情を浮かべた。

——

このタブ舎の飼料とは、自家栽培したオボンやオレンを粗微塵したものに、ここで処分された、あるいはどこからか譲り受けてきた廃タブのタブ骨粉をまぶしたモノなのだ。
つまりは共喰いということになる。

同族を糧としている事実に気づかぬままその生涯を終える鈍感ンネも一定数居るが、ママンネはその限りではない。

ママンネはなるべく自分の子供達にこの世界、このタブ舎の現実を包み隠さず伝えるようにしていたが、飼料については言葉を濁していた。
“共食い”という行為がママンネにとって一番辛い事実であった為だ。

——

我が子への差し入れを遮ろうか逡巡したママだったが、結局黙って流れを見守った。
遠くない未来にどうせ子供達も口にする物だし、何よりも無垢な他チビちゃんの優しさを無碍にしたくなかった。

長•次「おいしいチィ!」

弟「そうかチィ?ボクはおっぱいのがすきだチィ。」

妹「チィもコレきらいチ。なんだかくちゃいチィ」

またしばらくミィチィ盛り上がった3番授乳スペース前。
するとその様子を嗅ぎつけたのか、また別のモブタブンネがドスドスと歩み寄ってきて。他チビに話しかけた。

モブ「おい。オマエ餌隠してたブミィか。ミィによこせブミィ。腹減ったブヒィ。」

体高90cmほどの雄で、鼻腔が一般のタブンネより大きく、かなり太っていて下腹部より下一帯が茶黒く汚れている個体だった。

チビ「ミィひとりじめなんてしてないもん!すこしオトモダチのブンとったげただけミィ!おじさんだれなのミチィ?」

518タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:18:43 ID:HrzmMaMw0

気分悪そうに、フンっ!と鼻を鳴らしたモブタブ。
しかし可愛らしくフリフリと左右に動く他チビの白い尾を見やるとニヤッといやらしい笑みを浮かべ、他チビの頭を掴み、押し倒してうつ伏せに組み敷くと、その尾にガブリと噛み付いた。

チビ「ミュビィーーーー!イダっ!イダミィいい゛っ!イヤっ!ヤメ!ヤメアァァぁ゛ぁ゛っ!」

他チビはバタバタと両手脚を動かすが、モブタブの力の方が強く、どうしようにもならない。

あまりの唐突な展開に4ベビは声も出せず、みんなガタガタと震えながら立ち竦み、目をまん丸くしてその光景を見つめる。

モブはガブガブと何度か尾の付け根を噛み直すと、やがてガチリと口を閉じ、思い切り顎を振り上げた。

するとブチィッ!と大きな音が鳴り、その小さな尾は完全にチビの身体を離れ、ピューピューと鮮血が噴き出した。

チビ「チガァーーップルルルッ!ゴハッ!アググググ...」

壮絶な激痛に他チビは涎とあぶくを口から吐き出し、舌を垂らして悶絶する。

「チッ...チィーーーっ!」「チィヤァーーッ!!」

凄惨な光景に4ベビ達は我に返ったように叫び出し、皆ママのストール横に固まって耳を押さえて踞り、フルフルと震え出した。
誰が漏らしたかもわからぬオシッコで足元がびしょびしょになっている。

ママ「他チビちゃんを放せミィ!こんなことやめるミィ!!誰かーーっ!誰か来てミィッ!ニンゲンでもいいミ!チビちゃんを助けて!早く!早く......」

ママはストール前面折にしがみつき、懸命に叫び声を上げる。止めに入ることが出来ず、もどかしさが込み上げるばかりだ。

周り雑居ンネ達は何匹かは一瞬其方を見やるが、申し訳なさそうにその目を伏せて、ただただその場に座り込む。
殆どの個体は見向きもしないという有り様だ。

ママと他チビの叫びも虚しく、事態は深刻さを増し続ける。

他チビは下半身が痙攣し始め、完全に脚に力が入らなくなっているようだ。
モブがその小さな体の片脇を持ち上げると、何の抵抗もできずにゴロンと仰向けに向き直される。

モブはポッコリと膨らむ他チビの下腹部に噛み付くと、そのか弱い皮膚がビリビリと破れ、露出した腸をジュルジュルと喰い始めた。

チビ「ギギィーッーーっ!ギィーーーいいい゛イッ!
......チフッ......ハッ....アッ....」

ママ「あああ゛あ゛っ....!他チビちゃん...!...ッッ...」

どんどん変わり果てていく他チビ。ビクンビクンと数度全身で跳ねながら、さっきまでの可愛い容姿からは想像できぬような最後の絶叫を上げ抵抗を示したが、やがて呼吸が怪しくなってきた。

そのけたたましい声に気づいてか、2名の飼育員と1匹のローブシンが事務所から小急ぎに出てきて、その現場までやって来た。

飼A「うわあ...。結構ひでえぞ、コレ。すまん!ブシン!頼む!」

飼育員の声を聞くとローブシンはモブの背後にまわり、両脇を抱えて持ち上げる。

モブ「放せブミィ!もっと食わせろブミィーーン!」

ジタバタと抵抗を見せるモブ。タブンネとは思えぬ力強さで、ブシンと言えど油断すれば逃げ出されそうな様相である。
ブシンは明らかにイラついた表情をしている。

飼A「いやダメだコレ。埒あかねえ。おい!すまんがオマエ事務所からガノン連れて来てくれ、頼む!」

先輩格らしい飼育員が指示すると、若い方は慌てて事務所へと駆け戻る。

飼A「テメエ!この子だって大事な商品なんだぞっ!エサなら沢山やってんだろうが!このっ!このっ!...」

飼育員がドカドカとモブの腹を蹴飛ばすが、モブの勢いは衰えない。

519タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:19:19 ID:HrzmMaMw0

このタブ舎のタブンネの中には、このモブのように凶悪な個体が一定数存在する。
劣悪な環境から後天的にそうなる個体もいるし、2世,3世と交配を繰り返すうち先天的にそうである個体もいる。このモブタブンネは後者である。

先天的凶悪ンネはみな普通のタブンネよりも手足の蹄が硬く、牙とまでは成らないが歯と顎が頑丈で、体重も重い。
戦闘狂的な言い方をすれば攻撃種族値が50くらい普通のタブンネよりも高く、素早さがほんの少し遅い。
野生に帰ったとしても結構生き残れそうなタブンネの改良種(改悪種)と言えるかもしれない。

言っても鍛え上げられたローブシンが本気を出せば瞬殺できるくらいには弱いのだが、タブンネを殺してしまえば後で人間に怒られるので、ローブシンは今必死に我慢している。
このローブシンはタブンネが大嫌いである。

飼B「お待たせです!出てこい!クワガノン!」

ガノン「クワァーッギャギャギャ!」

出戻り飼育員がモンスターボールを投げると、タブンネよりも大きな、いかにも強そうな虫ポケモンが繰り出された。

飼A「よし、クワガノン、ソイツに電磁波だ!頼む、頼むから今は殺さないでくれよ!あとブシンには当てないでやってくれよ!」

先輩飼育員の指示に対して少し食い気味にクワガノンは足元に電気を集め出し、ローブシンは慌てた様子で地面にモブタブを投げ下ろす。

モブ「ミ゛ァァァァッ!ヤメっ!ブガァアアアアアアッ!」

ローブシンが巻き添えを喰らう寸前のところで、強力な電撃がモブタブンネにヒットする。
“電磁波だ”って指示であったが、それは明らかに10万ボルトであった。
モブは背中一面が真っ黒く焦げて白煙を上げ、死んではいないようだが舌を垂らし、白眼を剥いて気絶している。

飼B「よしっ!もういいぞクワガノン!もどr...
ガノン「ギャーッギャギャギャギャッ!」

飼育員の声を聞かず、クワガノンは大きな羽を振って雑居房を旋回し、再びバチバチと電気を集め始めた。

ミィーー!ミギャー!ミ゛ミ゛ィーーッ!・・・

さっきまで無関心な様子だった雑居ンネ達はガノンの行動に気がつくと、一斉に悲鳴を上げだしバタバタと走り始めた。

——

このタブ舎では出荷前、もしくは普段から、暴れ出したタブンネを麻痺させる目的でかねてより電気タイプのポケモンを保有している。

嘗て電気枠としてシビビールが採用されていたが、より強力な電撃を求めてカミナリの石を使ったところ、商品であるタブンネを喰ってしまう問題が発生した。

タイミングよくアローラに観光で訪れていたこの企業の社長。アーカラ島のある牧場で飼育されていたクワガノンを発見して一目惚れし、聞くと電気タイプを有して肉食ではないとのことから即買いし、シビルドンに変わってこのタブ舎の配属となった。

最初こそイッシュでは見たことのないポケモンに飼育員達も喜んだし強さは申し分ないのだが、いかんせん強力な電撃でタブンネを痛めつけるのが気に入ってしまったらしく、これまで4,5匹出荷前チビンネをブチ殺した実績がある。

手に追えないから別のポケモン寄越してくれと飼育員一同何度も上に掛け合うのだが、社長の意向でクワガノンが使われ続けた。

520タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/18(木) 19:20:18 ID:HrzmMaMw0

雑居チビンネ達に危害が加わる直前のところで飼育員がクワガノンをボールに戻し、商品に傷がつくことはなく、事なきを得た。

2人と1匹はヤレヤレ顔で顔を見合わせ、雑居ンネ達も大きく息を吐き、みな尻餅をついている。

ほとぼりが覚めたことに気づき、4ベビも恐る恐る顔を上げだした

飼B「うわー...コレはダメっすね、もう肉になるとこ無いっすよ」

ベビンネ‘s「チギャーーーアアアッ!!」

飼育員が他チビの左脚を持ち上げると、腹一帯が破れ、グチャグチャになった臓器がそこからぶら下がり、ボタボタと血が滴っている。

飼A「8-5。こないだ離乳した5兄妹の末か。なんだってこんなトコいたんだろな。でコッチが6-2か。6番は多いなあ。まだ若えけど母親変えた方がいいんかなあ。」

飼B「せめてやっぱ抜歯できりゃ良いんすけどね、弱るし、鉄剤も高いから無理なんすかね〜。チビの方は“肥やし”でいいすか?」

飼A「うん。処刑機よこのオレンのとこ埋めといて。デカい方は明日の朝便で出しちまおう。全く余計なことしやがってコイツ...」

他チビは乱雑にビニール袋に入れられ、ローブシンと若飼育員はモブを担ぐと、スタスタその場を去っていった。

長女ンネ、次女ンネ、弟ンネはいつまでもさめざめ泣き続け、妹ンネに至っては他チビの姿を見た後失神してしまい、仰向けに倒れて口角からプクプクとあぶくを吐いている。

ママンネもストールの中でへたりこんで、泣いてはいないものの悲しい目で地べたを眺めていた。
何度も見たような光景であるとはいえ、優しいママは慣れっこになることなどなく、他チビの変わりざまに心を痛めていた。

521名無しさん:2021/03/18(木) 20:29:14 ID:p/mOp81Q0
新作乙です。
最近つべで見かけるブタ屋さん動画みたいなリアルな流れも感じられていて
ベビンネ達の反応がいちいち良いですね

522名無しさん:2021/03/20(土) 00:26:35 ID:hQs3q4Gc0
以前、クワガノン出してくださいとお願いしていたものです。登場させていただきありがとうございます!
クワガノンもタブ虐に参加していくのかな。

品種改良じゃなくて改悪とはタブらしいですね。
他チビの喋れない姉とは、そちらの一家の話も気になります。

523タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/21(日) 02:46:13 ID:PaZ4qZXE0

4ベビ生後12日目

この日は3番ママ母子の生活環境に、少しの変化が訪れた。

突然の来訪者、はじめての“おともだち”が亡き者となったショックからか、ここ3日間4ベビはほとんど喋ることがなくなっていた。

ママの指示で1日2回の弟ンネ歩行訓練が行われる他、ミルクを飲みたくなればみな黙ってストールに擦り寄り、ママもまた黙ってその要求に応えた。

それ以外の時間は4匹で囲いの1ヶ所で固まり、ボーっと座るか寝るかしているだけの時間を過ごしていた。

ママは4ベビに何か声をかけるでもなく、自身もストール内で静かに座って過ごし、ただただベビ達を見守った。

子タブンネらしい可愛らしさに溢れ、我が子をお友達と慕って来てくれたあの他チビちゃん。
彼女が死んでしまったことは勿論だが、その命を終わらせたのもまた同胞のタブンネであるという事実がママンネには一番辛かった。

他チビを殺めたのが他種族や、あるいは人間であったらまだベビ達に言葉のかけようもあったのだが、タブンネがタブンネを喰い殺すという現実はママも説明したくないし、しようがなかった。

しかしまた、ママは他チビに対し哀悼の意の一方、感謝の念も抱いていた。
いずれ伝えようと思っていたこの世界、このタブ舎で起こり得る現実、処世術。あの子はその身でもって、その一端を我が子達に教え知らせてくれたのだ。

どうか天国で、タブンネのお友達を作って穏やかに過ごしていてほしい。声には出さないが、ママはいつも心の中でそれを祈っていた。

——

お昼頃、4ベビは皆で纏ってママの乳首を吸い、やがて飲み終えてスヤスヤと眠りだした時、2人の人間が腹の大きな1匹の雌タブを引き連れて雑居房を縦断し、右隣の囲いまでやって来た。
雌タブの方耳には赤いタグがつけられ「4」の数字が書かれている。

雌タブ「ブヒィッ!苦しいミィ!苦しいミィ!
慎重に扱えブミィーッ!!」

飼「随分とデケエなコレ。5,6は入ってんじゃねえか?ほら頑張れ!何とか収まってくれ...!」

4番の囲い、ストール前面部の柵を解放すると、2人の飼育員が雌タブの腹肉を慎重に押し付けながら、何とかその身体をストール内部まで押し込み、やがて施錠して、その場を去っていった。

ママ「4ママちゃん、お久しミィ。苦しそうミィね。お加減いかがミィ?」

4ママ「ミフンッ!」

ママンネが首を精一杯向いて優しく声をかけるが、お隣さんは鼻を鳴らして不機嫌そうに返事をした。
4番ママの態度は織り込み済みのようで、不機嫌な返答を受けてもママンネはニコニコとした笑顔を崩さない。

——

ママンネはこの4番ママが生まれた時から知っている。
4番ママがまだベビの頃はママンネのことを慕ってくれていてタブンネらしい愛嬌に溢れていたが、やがて母タブに選ばれて2回くらい産卵した後、このように不躾タブへ変貌してしまった。

ママンネは4番ママのママ、4番ババンネが生きていた頃、4ババを姉のように慕っていた過去がある。
4ババは野生産で、よくお外の世界のことをママンネに教えてくれた優しい個体であった。

あの優しかった4ババの娘さん、ここの環境のせいで今はこんなんなってしまったが、彼女を見放すことなんてママンネにはできなかった。

悪いのはこの薄汚い舎屋と人間達だ。
いつか野生に帰って、元の優しい4番ママちゃんに戻ってくれたらいいな。
叶わぬ願いと知りつつ、ママンネは時々そんな妄想に耽っていた。

ママンネにとって、今でも4番ママは実妹に等しい存在であった。

524タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/21(日) 02:50:45 ID:PaZ4qZXE0

突如隣のストールに現れたタブンネさんとママの声に気がついて、4ベビは目を覚まして囲いの右側に集まり出し、チィチィ鳴きながら柵にしがみついた。

今まで両隣のスペースはずっと空いていて、初めてのお隣さんに興味津々のようだ。
赤児とは現金なもので、数日虚ろだった目にはすっかり生気が蘇っている。

長「おばちゃん、こんにチィわ。すごい大っきなお腹チィ!ゴハン沢山食べたのチィ?」
弟「おばちゃんママのおともだチィ?」
妹「はじめましてチィ!チィは妹ン...」

4ママ「ミガァアッ!!!」

ベビンネ‘s「チィヤァァァァッ!」

次々話しかけるチィチィ声を一喝され、4ベビは怖がって、ママンネのストールへ擦り寄った。

ママ「ミィんな、今は静かにしてあげて。お隣さんは、今タマゴを産む準備をしていて、お腹苦しいんだミィ。ホントはとっても優しいタブンネさんなんだミィよ。」

ママンネの言葉で少し落ち着いたが、4ベビはみな驚いて震えている。妹ンネに関しては脱糞してしまった。

4番ママは今一度フンっ!と鼻を鳴らすと、苦しそうに腹肉をつっかえさせながら、うつ伏せに横たわり眠りについた。

———

4ベビ生後13日目

その日の午前中、4番ママの陣痛が始まった。

4ママ「ミヴゥゥゥ...ぐるじっ...!ぐるじいミィィィッ...」

ママ「4ママちゃん!頑張っても少し下がってミィ!タマゴが柵に挟まっちゃうミ!おーいニンゲン!早く来るミィ!4ママちゃんを手伝えミィィイ!!」

4番ママはストールの前側に頭をつけて、うつ伏せに横たわっている。

ストール後面には少し柵が開けている箇所があって、成獣タブンネが中腰になればそこから排便したり、産んだタマゴが外に溜まるような構造になっているのだが、4番ママはお腹がかなり大きくストールに挟まっている状態だったため、自力でそこに尻を当てがうのは明らかに困難であった。

ママンネは真横を向く事ができない為、4番ママ後部の状況を確認してモノ言ってるわけでは無いが、頭の位置関係からそれは見なくてもわかる。
2年くらい住んでるのでストール内部の構造やサイズ感など嫌というほど把握している。

4ベビはママのブラインドにならぬよう二手に分かれ、柵にしがみついて固唾を飲んで隣のストールを見守っている。
産卵に興味もあったし、昨日一喝されたとはいえ、4番ママの苦しそうな様子を心配しているようだ。

——

やがて4番ママの股がメリメリと音を立て、一つ目のタマゴがスポンと出てきて、母体とストール後柵の狭い隙間にコロンと転がった。

ママが懸念していたのはタマゴが圧迫されてしまうこと。
叫びの甲斐無く人間が現れる気配が全く無いまま産卵が始まってしまった。
もう幸運を祈るしかない。

ママ「4ママちゃん!がんばってミィ!ほら、ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー!」

4ママ「オガッ...!ミガガガァッ!フッ...フゥーッ...」

4番ママは6つのタマゴを抱えていた。自然であれば一度の種付け、一度の産卵で6つも同時に宿ることはほぼない。
身長1.1m、体重31kgのポケモンにそんな懐妊は無理がある。
おそらく無理矢理発情させるホルモン注射の影響で、このタブ舎の母タブンネは最大で8つのタマゴを抱える場合があり、産卵の為死亡する母タブもしばしば現れる。

難産ながらも産卵は進んでいき、3つ目のタマゴが出てきたところで4番ママとストール鉄柵の間がパンパンになり、タマゴはメキメキ危険な音を立てて居る。

4つ目のタマゴが出てくる時、辛うじて4番ママが尻を持ち上げることができて、先3つの上に乗っかる形で何とか産み落とした。

ママの懸念が現実になってしまったのは5つ目。
半分以上が出てきた所で母体と先産の間で圧迫されてしまい。バリンと音を立ててタマゴが割れてしまった。

4ママ「ミ゛ィ゛ィ゛ヴァ゛ァァッ!イダイッ!痛いミ゛ィ゛ッ...ィッ....ァ゛ァ゛ッ....」

勢いを持って割れたタマゴ片の一部が4番ママの臀部一帯に突き刺さり、ボタボタと血が滴る。彼女には裂傷痛みと陣痛の2重苦である。

「チィッ!」「チビィン...」「チィ〜ッ...」

4ベビは思わず両眼に手を当て、短い悲鳴を上げながら視界を覆い隠した。
4番ママのお尻の傷も辛いが、4ベビにとってより衝撃的だったのは割れたタマゴから出てきた物体。

体長10cmくらい、毛も生えていない、赤ピンクの地肌が剥き出しの超未熟児ベビンネが外界に投げ出され、短い両手をピクピクと動かしながら、必死に口元へ持っていこうとしている。

「.....パァッ....プ...........ヴッ.......ヴグッ........」

孵化には程遠い状態で、ねばり気の極めて強い粘液が口と鼻腔にネットリと絡みつき、呼吸混乱を起こしているようだ。

10秒ほどするとビクンビクン全身が激しく蠕動し、やがて完全に動かなくなり、小さな息の根が絶えた。

享年20秒、短い生涯であった。

525タチワキ:2021/03/21(日) 04:33:43 ID:PaZ4qZXE0
>>522
ご意向に添えておりましたら何よりです!
ガノンは今後も登場させる予定でいます

526タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/24(水) 02:44:14 ID:JcWF88Z60

一瞬目を開け超未熟ベビの亡骸を見やると、4ベビはみなチィチィ泣きながら翻って、ママンネのストールに寄り固まった。

ママンネの目尻にも涙が浮かぶ。その現場を確認できたわけでは無くとも、我が子達のリアクションと触覚から伝わる音から何が起こったかは容易に想像できる。

自分が産卵を手伝いに行ければ小さな命は高い確率で助かったのだ。
生涯で何度目か、自身や妹分を閉じ込めるこの鉄檻に強い憎悪が込み上げる。

しかしいつまでも嘆いている場合ではない。ママはキッと顔を引き締めると、再び声を上げる。

ママ「4ママちゃん、頑張るミィ!あと少しミィ!少しだけお尻持ち上げてミィッ!ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー!」

4ママ「ミ゛ミィッ......わかっ......ミフゥ....
いだミィッ...くる゛ミィ......」

ママの励ましが効いたのか否か、4番ママは精一杯お尻を持ち上げ、やがて最後のタマゴが出てきて、コロンと下3つのタマゴの上に転がった。ちょっとしたタワーのようになっている。

4ママ「ハアッ....ミハァーーッ!おわっ....ミィッ...」

4番ママは産卵を終えると、舌を垂らして失神してしまった。
まだ若年の母タブンネとはいえ、かなり消耗する産卵であった。

ママ「4ママちゃん、お疲れミィ。よく、よく頑張ったミィ!」

ママンネは目に涙を溢れさせながら、お隣の妹分を賞賛する。
しかしまだ予断を許さない。ギチギチに挟まっているタマゴは何かの拍子に破損しても何らおかしくない状態だ。

——

4番ママが命懸けの産卵を終えて30分後、若い2人の飼育員が漸く4番産卵スペースに現れた。

飼A「やべえやべえ。もう終わってんじゃん。
やっちまった〜、1個死んでるよ...」

飼B「まだ大丈夫だと思ったんだけどな〜。やっぱ後ろでできなかったか...まぁあの腹じゃ無理だろうなぁ。」

隣の3番の囲いからミィミィチィチィと抗議の怒号が飛ぶが、飼育員達は気にも留めていない様子だ。

気絶する4番ママの頬をペチペチとはたいて起こすと、両脇を抱えてストール前面に座らせる。
あれだけ大きかったお腹もすっかり萎み、普通のタブンネのそれと変わらない状態になっていた。

後部に溜まるタマゴ、上2つは綺麗な状態であったが、ギチギチに挟まっていた下3つは所々ひび割れが入っていた。

飼A「うわ大丈夫かコレ?中の液体漏れ出して来ねえだろうな?」

飼B「3つもダメにしたら流石に怒られるぞ俺ら。何とか補強しよう!」

飼育員達はひびにガムテープを貼って応急処置すると、囲い後方のホルダーに5つのタマゴをはめ置いていき、未熟ベビの死骸はビニール袋に入れた。
なんともぞんざいな命の扱い方だが、タブンネだから仕方がない。
やがて2人ともスタスタと踵を返し、去っていった。

4番ママは中々体力が回復せず、餌にも水にも手をつけることなく、大の字に寝転んでその日1日を過ごした。

———

4ベビ生後14日目

その日の朝から4番ママは目を覚ましていて、1日3回与えられる給餌をブゴブゴ音を立てながら勢いよく平らげていた。

ママンネは別段話しかけたりはしなかったが、ニコニコと笑みを浮かべて嬉しそうだった。
新たな命の為ではなく、4番ママが産卵で死んでしまわなかった事が何より嬉しかった。

4ベビはいつものようにママンネミルクを飲み、ウンチをし、窮屈になり始めていた囲いの中をウロチョロ歩き回って過ごしたが、時々右側の柵にしがみついて5つのタマゴをまじまじと見つめた。

4ベビにとってタマゴは強い興味の対象であった。
その日の中でも、聞こえる鼓動は次第に大きくなった。

527タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/24(水) 02:44:46 ID:JcWF88Z60

4ベビ生後15日目

その日の昼過ぎ、4番囲い後方のホルダー上5つのタマゴがほぼ一斉ガタガタと音を立てて震え出した。
4ベビはその音に気がつくと、チィチィ鳴きながら柵にしがみつき、目をまん丸くしてその球体を見つめる。

鉄パイプのタマゴホルダーには電熱が通っている。
タブンネのタマゴはそもそも孵化が早いことも相まって、このタブ舎ではこうして丸2日前後で孵化が始まる。

...バリッ!バリバリッ...! ボトッ...ボトッ.....

チギャー!ミギャー!ヂギャー!チンギャー!......

5つのタマゴが順次孵っていき、ホルダーから床に落下していって五月蝿い産声を上げる。

次「チィー!生まれたチィ!」
妹「かわいいチィ!ミんなおメメとじてるチィ!」
弟「ちいさくてカワイイチィッ!ボクたちも生まれたときこんなだったチィ?」

ママ「シーッ。ミんな静かに。うるさくしたらお隣のベビちゃん達、ママを見つけられないミィから、静かにするミィ。」

ママの言葉で4ベビはみな口に手を当て押し黙ったが、視線はお隣ベビンネに釘付けになり、瞳をキラキラと輝かせている。

先日死んでしまった個体はまだ何の生き物かも判らぬような姿であったが、今正常に孵化した5匹ははっきりタブンネの赤子だとわかる容姿であった。
4ベビには弟妹が生まれたような感覚だったのだろう。

4ママ「ミミッ⁉︎もう出てきたミィか!ミフンッ!せっかく静かに過ごしてたのミ...!」

うつ伏せに横たわり、ミヒーミヒー寝息を立てていた4番ママ。
4ベビの感嘆声と実子の産声に気づくと目を覚まし、母として有るまじきセリフを吐きながら起き上がり、ストール後方に凭れるようにしてドスンと腰を下ろした。

生まれたてベビンネ達は大きなチィチィ声で喚きながら這い出し、実母の居るストールを目指してモゾモゾと動き出した。

......チ.........チ.........

しかしながら1匹だけ、落下先のホルダー下からいつまでも動かず、四つん這いに手を突いて、カクカクと頭部を上下するベビンネが居た。

長「チチッ?ママ、ひとりだけ動けないベビちゃんが居るチィ。カラダも少し他のベビちゃん達より小さいみたいだチィ。」

いち早くその存在に気づいた長女が小声でママに話しかける。
ベビンネの口から『ベビちゃん』という単語が出てくるのはこのタブ舎ならではの光景かも知れない。

ママ「ミミっ?少し心配ミィね。おててかあんよお怪我しちゃったミィかな。」

ママの位置からは視認できなかったが、不動ベビンネは身体が17cmくらいの未熟児で、ホルダーから落下した際、割れたタマゴ殻の小さな破片が右大腿部に刺さり、少し腫れ出していた。

先に動き出した4匹の内先頭のベビがストール内までたどり着き、おっぱいに吸い付かんとした時、先日の若い2名の飼育員がやって来て、その身体を摘み上げた。

ヂィッ!ヂィヂィッ!ヂギャギャヂィーッ!....

飼A「やっぱもう出てきてたか。よかった〜、割とみんな元気そうで。あれ⁉︎4匹しか居ねえぞ!」

飼B「あっホルダー下に1匹居るぞ!死産じゃねえだろうな。中の水漏れちまったのかな...」

....チュビッ........ピッ.........

1人の飼育員が小ベビンネを摘み上げると、弱々しいが声を上げた。

——

やがて2人がナンバリング作業を済ませて去って行くと、お隣ベビンネ達はママのおっぱいにたどり着き、コクコクとミルクを飲み始める。
4番ママが座り姿勢の為、2匹が股上2つの乳首に吸い付き、その上に乗っかる形でもう2匹が上の乳首を吸っている。

弟「かわいいチィ~。ミんなおいしそうだチィ!」
次「おめめ開いてないのにスゴいチィ!なんでおっぱいの場所わかるミチィかな。」

......チィ.......チィッ!........チッ.........チビッ.........

4番ママの乳首は半分しか使われてないのだが、実母の不親切な授乳姿勢の為、小ベビンネは乳飲みベビ達の周りをモゾモゾ這いずるだけで、いつまでもミルクに有り付けなかった。

ママ「ミィ.....」

ママンネは心配そうな表情を浮かべる。
未だハッキリと小ベビンネの姿が見えた訳ではないのだが、鳴き方からお腹が空いていることはよくわかった。
このタブ舎では母親の愛情不足の為、餓死するベビンネがたまに現れるのだ。

528タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/26(金) 03:29:41 ID:PvbMUWbg0

4ベビ生後16日目

ママンネの不安が的中、というよりもっと惨い形で、お隣の囲いに悲劇が訪れた。


.....チッ.....ヂ........チ..........ッ.....ッ......

孵化から一日足らず、4番授乳スペースの小ベビンネは目に見えて衰弱が進み、母体の居るストールの外で踞り、微かな鳴き声を上げて弱々しく震えていた。
ミルク獲得競争に負けてストール外に弾き出された形であった。

長「ミんな、小ベビンネちゃんにもおっぱいわけてあげチィ!」
弟「小ベビンネちゃんくるしんでるチィ!
おばさん、たすけたげてチィッ!」

4ベビは囲いにしがみついてチィチィお隣へ向けて野次を飛ばすが、4番ママは見向きもしないし、生まれたてベビ達にそんな分別はつかないようである。

乳飲みベビ達は最初の授乳終わりからお腹がポッコリと膨らみ、ベビながらもタブンネらしい体型になっていた。
一方小ベビンネはゲッソリとした腹をし、這いずるにも手足に力が入らず動けないといった様子であった。

自然淘汰なので仕方がないと言えばそれまでなのだが、まるで貧富の差を描く風刺画のような構図になっていた。

——

その日の昼下がり、3番、4番両授乳スペースではそれぞれベビンネ達が母タブンネの乳首に吸い付き、何とも平和な光景が見られた。
1匹蚊帳の外に居る小さな個体を除いては。

4ベビは昨日からずっと隣の囲いに釘づけ、弱々しい小ベビンネをずっと心配していたが、自分達の飲乳時は幸せ満面の表情であった。
タブンネらしい、優しい個体であったとはいえ彼らもまだ乳飲児、食欲私欲があくまで最優先事項であった。

4ママ「ミ゛ッ...ミ゛ィーーーッ!
ミガァーーッ!ミガァーーーーッ!」

ガシャン!ガシャン!ゴッ!グキッ!

「ヂッ」「..ッ...」「...ゥァ......」「ヂィ~..」

ストール後面に凭れ座り、4匹の健常ベビ達におっぱいを飲ませていた4ママが突如叫び出し、乳首に張りつく我が子を次々と引っ剥がしては猛烈な勢いで前方に投げ出した。

投げられベビンネ達は囲いやストールの鉄柵にぶつかり、1匹は頚椎が折れて死亡、1匹は右腕が捻じ曲がり、残り2匹は目立った外傷は無いものの脳が揺れてしまったようで、仰向けに横たわって両手で微かに宙を掻いている。

ママ「ミィィッ⁉︎どうしたミィ⁉︎4ママちゃん‼︎?」

投げられベビ達は横たわって授乳をしていたママンネの丁度視線の先に現れた。
4ベビは突如鳴り響いた衝撃音に振り返るがその光景に理解が追いつかず、飲み途中だったミルクを垂らしながらあんぐりと小さな口を開けている。
あまりに唐突な出来事にママンネも理解が追いつかない。

今回生まれた小ベビンネのように、数が多い時の半育児放棄は以前にもあったのだが、4ママは決して自分の子供に手を掛けたり、まして殺めたりすることはこれまで一度も無く、それはママンネも知っていた。

4ママ「イ゛イ゛イ゛ィッッッガハッ。
ミガァぁア゛ア゛ッ⁉︎ミハァア゛ア゛アッ...」

4ママは苦しそうに雄叫びをあげ続け、手をついて四つん這いになる。

ビリッ!バリバリブチャーッ!

手をつくや否や、4ママの股が音を立てて引き裂け、夥しい血液が噴出される。

長「ママッ!おばさんのおマタから赤いウンチみたいのが出てきてぶら下がってるチィ!おばさん病気になっちゃったんだチィッ!」

ママ「ミィッ⁉︎おマタから赤いウンチ⁉︎そんな...
どうして...!?」

ママンネの位置からは見えない4ママの下半身事情を、長女ンネが実況して伝えた。ナイスアシストである。

4ママは脱子宮を起こしていた。長女の言葉からママンネはそれを理解したが、混乱が深まるばかりであった。

529タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/26(金) 03:30:11 ID:PvbMUWbg0

このタブ舎で生まれ、長くここで生きてきた経験から、ママンネは子宮や腸、生き物の体内に存する臓器という物を理解している。

母体の股から出てくる場合があるのは子宮。
しかし脱子宮を起こすのは通常産卵時。
4ママは2日前にそれを終えている。

ママンネは思考を巡らせても理解し得なかったが、どうゆうわけかこのタイミングでそれが起きてしまった。

次「ママ!ひとり音が聞こえないチィ!ベビちゃんが死んじゃったチィッ!」
弟「他のベビちゃんたちもくるしそうだチィッ!
ママ、おばさんはどうしちゃったチィ?」

4ベビの注意は次第瀕死ベビ達に向いていき、ママに向けて必死になって問いかけるが、ママンネはそれには応えない。
ママは授乳時のまま、倒れかかった涅槃像のような姿勢で膠着しながら、両眼からボロボロと落涙する。

4ベビと違い、ママンネの心配は脱子宮を起こした妹分に100%向いていた。
脱子宮を起こした母タブの末路はママンネはよくわかっていた。


チュイ......⁉︎......チッ...!

オロオロと鳴き叫ぶ4ベビ、ピクピクと悶える投げ出されベビ達の喧騒の合間を縫って、弱々しく、モゾモゾと膠着を破ったのは1匹だけ蚊帳の外に居た小ベビンネであった。
優れた触覚から、母の胸に常にまとわりついていた兄弟が居なくなり、おっぱいが空いていることを察したようだ。
母の容態を考えれば何とも言えないタイミングであるが、生まれてからほぼ何も口にしていない小ベビンネにとっても真剣な行動であった。

全身をピクピクと震わせながら必死に這いずり、ストールの鉄柵を潜り、おっぱいを求めて4ママの身体下に潜り込んだところで、小さな背中が飛び出した子宮にブリュリと触れた。

4ママ「イ゛っダァーー!痛イ!イダミィィィッい゛い゛い゛っ!!な゛に゛ずるミィィッ!」

グチィッ!グチィッ!

小ベビ「グゥギィぃヤーー!!!
...ァ゛ァ゛ーッ....グァッ.....ァ゛ーー......」

4ママは白眼を剥き、激痛と体内異常から錯乱状態になっていた。
子宮に触れた我が子を外敵と判断してしまったのだろうか、小ベビンネの首元を掻き掴むと、その小さな右腕、顔の右上部分に噛み付くと、大きな音を立てて食いちぎっていった。

小ベビンネは精一杯の悲鳴をあげたがすぐに虫の息になり、腕からは大量の血、頭からは脳漿がグジュグジュと滴り、瞼に隠れていた片眼球がギョロリと剥き出しになっている。
実母に掴まれた首から下の胴体を前後にビクビクと動かし、まだフワフワとした尾はぶっ壊れたメトロノームのようにバタバタと左右に振り乱している。

長「ヂミィーーッ‼︎小ベビンネちゃんがっ!
おばさん!ヤメで!ヤメチィーーッ!」
妹「ヂィーーッ!チゴプルルル...ッ.....」

あまりのショッキングな映像に妹ンネはあぶくを浮かべバタリと倒れ失神してしまった。よく泡吹いて倒れる個体である。
残り3ベビは意識こそ保っているが、みなチョロチョロと糞尿を垂れ流してプルプル震えている。小ベビンネの状態は不慣れな人間が見ても嘔吐確実なほどグロテスクで、無理もないことであったかもしれない。

数秒後には小ベビンネは事切れて4番ママの腕から放り出され、4番ママはうつ伏せに倒れてビクビクと悶絶していた。

530タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/29(月) 13:40:36 ID:Ecl6fRec0

飼「うわっ!うわうわうわ!何だよコレ!4番?何で⁉︎やばいやばい......」

子殺しの惨劇から約20分後、雑居房を巡回しに来た1人の飼育員が4番授乳スペースの惨状に気がつき、慌てて事務所へと駆け出して行った。

長「何でもっと早く来なかったミチィーッ!」
弟「ベビちゃんたちをたすけろチィ!」
次「おまえらのせいだチガァーッ!」

妹「...チ?....チィーッ!ばかー!」

長女次女弟は人間の存在に気がつくや、強い口調で抗議の鳴き声を上げた。この時まで気絶していた妹ンネもその声で目を覚まし、がんばって兄姉につづく。

お隣のベビちゃんたちを痛めつけたのはお隣のママンネなので人間に抗議するのは少しお門違いなのだが、まあ遠因を作ったのは確実に人間なのだから彼らの言い分も間違いではない。

ママンネの教育が良い為か、みんな段々と人間に対して強気になってきていたようだ
そのママンネはいつの間にかストール内でへたり込み、胸の前で手を合わせてミィミィ震えていた。

——

程なくして現場まで戻ってきた飼育員達と1匹のローブシン。
飼育員は5人もやって来て、さっきまでの勢いはどこへやら、4ベビは怖くてチィチィ鳴き震えてストールに擦り寄った。
多勢で来られると流石に強気には出られないようだ。

飼A「脱子宮?脱腸?でも何で?産んだの2日前だろ?そっちの生きてっかな?生きてたら治療して。たぶん“げんきのかけら”じゃなきゃダメだと思う」

飼B「えーっと1匹アウト。3匹はセーフっすね。内1匹腕折れてますけど」

この中でリーダー格らしい1人が指示すると、若手らしい3人がそれぞれ投げ出されベビ達の息を確認し、げんきのかけらを適当にぶっ掛けていく。

...チィ... ...チ....チッ... ...アッ...ハッ...ヒッ..ィ...

親切な人間の治療の甲斐あって、ベビ達は息を吹き返した。骨折ベビは尚も苦しそうで、呼吸音がおかしく熱を出していたが。

リーダー格の人物がうつ伏せに横たわる4ママの脇腹に靴を引っ掛け蹴り上げ、ゴロンと仰向けに向き直させた。

4ママ「ア゛ッ...ミ゛ア゛ア゛ッ....ァ゛ァ゛ッ....」

4ママの下敷きになっていた小ベビンネの亡骸が現れ、無事だった片腕と両脚、胴体は押し潰れて、肛門と口から得体の知れぬ臓物がニュルリとはみ出していた。
4ママの腹には脳漿や血、サファイアブルーの片方がベットリこびりついている。

飼A「うわキモっ!1匹噛み殺したのか?爺さんどうだ?まあ処分確実だけど...」

飼C「うーんちょっと見てみるか。ローブシン、一応頭押さえといて。」

爺さんと呼ばれたやや老齢な飼育員。医師ではないのだが、経験深く多少のポケ医学(タブ医学)の知識がある人物であった。ちなみに弟ンネの去勢を行った男である。
その彼がポケットからカッターナイフを取り出すと、体外に飛び出した子宮を切り裂いていった。

4ママ「ミ゛ァ゛ガーッ!ギミギブィがガバァーッ
ゴバグボルルルッ......」

4ママは断末魔に等しいような奇声を発し、顔から足先までをグネグネと動かしながら渾身の力でのたうち暴れる。屈強なローブシンが押さえつけているので幸いお爺さんに被害は無い。

ママ「ミミィ〜ッ。。4ママちゃん......ッ..」

ハッキリとその全貌を見たわけでは無いが、ママンネは今一度滝のように落涙し静かな悲鳴をあげた。産声から聞いている妹分の悲惨な断末魔はとても聞くに耐えなかった。
4ベビもそれに同調するように、ボロボロ落涙しながらチィチィとママに擦り寄る。暖かな母体に顔をうずめられる訳ではなく、顔や胴体に触れる感触は冷たく残酷な鉄棒だが。

飼C「お、出てきたぞ。この子6つ産んだんだっけ?原因はコイツじゃな。」

「...パッ......プアッ.......」

子宮の中から、お爺さんが先の超未熟児ベビンネに等しい大きさの赤児を摘み上げた。
身体は卵殻に成りきらぬ皮膜に包まれ、両眼と両脚が無い奇形であったが、耳の形から辛うじてベビンネだとわかる生命体で、懸命に口をパクパクと動かし呼吸を試みていた。

4ママの産卵は6つであったが、受精卵自体は7つあった。
人工的に弄られる故のホルモン異常の為か、受精はしたものの卵殻の形成不備を引き起こし、それでも尚ゆっくり成長してこのタイミングで産卵(分娩)を迎えたが、球体を成していなかったことから子宮に引っ掛かり、今回の不幸を招いたようだ。

531タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/03/29(月) 13:42:11 ID:Ecl6fRec0

ベチャッ!   「ピ」

お爺さん飼育員は当たり前のように地面に奇形ベビを叩きつけ、その小さな命を終わらせた。
何ともぞんざいな扱い方だが、タブンネだから仕方がない。

飼B「この生き残り達“里子”っすよね?どこ出します?」
飼D「隣いるけど時期ズレてるしなー。おっぱい途絶えそう。てか何でみんな怖がってんだ?」

「ヂィッ!ヂィッ!」「ヂィギャギャーッ!」
「...ピッ...ピスン...」

2人の若手飼育員が回復ベビ3匹の首根っこを引き掴むと、無傷の2匹はパタパタと暴れながら抵抗を見せたが、骨折ベビはされるがまま人間の手にぶら下がり、弱々しく泣きだす。

飼A「3番はあり得んだろ。逆端の区画に昨日産んだの居たはずだから連れてってくれ。『32』だったかな?善良個体だから大丈夫だろきっと」

リーダー格飼育員が支持を出すと若手2人は片手を上げ了解の合図をし、ゾロゾロとタブ舎奥へ歩いていった。

それに気づいた長女ンネが囲い前面に歩み寄り、チィチィ声を上げながらピョンピョン跳ね出した。やがて下3ベビもそれに続く。
彼らにとって弟妹のつもりだったベビちゃん達を取り戻したかったのだろう。今後彼らが交わることはもう無い。

飼C「さて、母親の処分じゃな。どうする?午後便で出荷するか?」
飼A「いやあ“ミキサー”でいいだろ。移動中死にそうだし。次世代は実子まだ残ってるはずだからお前探しといて。」
飼E「了解。上の子7,8居ましたよね?“見せしめ”やります?」
飼A「いや、いいよ。4番は大体子供懐いてねえし、数多いと手間だし。よし、ブシン!持ってくぞ!」


リーダー格はそう言うとストールと囲いの檻を解放し、ローブシンと共に4ママの両脇を掴み抱え、ズルズルと運び出した。

子宮を裂かれて以後文字通り瀕死状態であった4ママであったがママンネの横に差し掛かった所でグルリと首を向き、大声で鳴き出した。

4ママ「3ママお姉ぢゃーーーん゛!ごわいミ゛ィィッ!じにだぐないミィーーッ!だすけてっ!助けてミィーーッッ!おでえぢゃーーーン!」

いつの間にか両眼にはサファイアブルーが蘇っていて、そこから大粒の涙が溢れている。

いつしか乱暴なタブンネさんへと変わり果ててしまった4番ママ。自身の最期を悟り化けの皮が剥がれたのだろうか。嘗ての面影と声色を取り戻し、姉貴分に向け必死に助けを求めた。

さっきから不細工なぬいぐるみのような佇まいであったママンネはその声にハッと立ち上がり、歯を精一杯剥き出して鬼の形相を浮かべると、狭いストールの中で限界まで助走をとって、それを壊さんとばかりに突進しだした。

半年以上ぶりに彼女の口から聞かれた『お姉ちゃん』という単語はママンネの生気、正義感、勇気、そして人間への怒りを焚きつけるのに絶大な効力を有した。


ママ「4ママちゃんを放せミギィーーーーーーッ!タブンネ達がっ!4ママちゃんがオマエらのために、どれほど苦労したと思ってるミ゛ィィィィッ!4ママちゃんを治せミィッ!オマエらがっ!オマエらが責任持って看病しろミ゛ィッ!4ママちゃんをがえせっ!!ミィの4ママちゃんを返せミィイイい゛い゛い゛っ!!」

言ってることは支離滅裂だったが、ママンネの怒りのベクトルは凄まじく、ガシャン!ガシャン!と大きな音を立てながら、何度もストール鉄檻にぶつかっていく。

普段の優しい姿からは信じられないママの形相と行動に一瞬怯んだ4ベビであったが、触覚からママの感情を読み取り、それに同調するようにチィチィと喚き出し、囲いの前面にしがみつき4匹で可愛く抗議の威嚇を見せる。

飼A「うわっ。何だ何だ?3と4って血縁じゃねえよな。んな訳ねえよな。お隣同士仲良しだったか?そんな風に見えなかったけど」

3番母子の必死の抗議も実らず、1人と2匹はズルズルと歩みを進めて行く。
飼育員はすぐに顔を向き直ったが、タブンネの言葉をおおよそ理解できるローブシンは何度も其方に振り返り、戯け顔やあっかんべーして親子を挑発した。

タブンネのこういった叶うはずのない懸命な抵抗や命乞いといったモノが、ローブシンは大好物である。
ちょっと意地悪だが、彼もずーっと人間を手伝い、汚いタブンネ達の相手をし続けているのだ。これくらいの娯楽は許されて然るべきだろう。

ママ「グミィ〜〜ッ!グミミィ〜ッ‼︎」

ローブシンの挑発はママンネには効果抜群であった。

彼らの姿はやがて3番スペースからは見えなくなり、4ベビは力無くぺたりと囲いに座り込んだが、ママンネの触覚はいつまでも妹分の体音を捉えて放さなかった。

532名無しさん:2021/03/30(火) 06:52:13 ID:Qm1gq4K.0
投稿乙ンネ
命がゴミのように扱われるタブンネさんが最高

533名無しさん:2021/03/31(水) 22:03:38 ID:vZg3yHmA0
目も開かぬ日齢のベビンネちゃん達が人間の手の中でされるがままになりながら
チィチィ抵抗する姿がかわいすぎていいぞもっとやれ

534タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/01(木) 21:47:29 ID:HoVFiUeg0

4ママ「イヤアーーっ!ミ゛ィャァ゛ーーあ゛っ」

4ママはされるがままに屋外スペースまで連れ出されて、中央部まで引き摺り歩かされると不気味な佇まいをした階段を登らされてゆく。
階段の先は回転刃が二重螺旋構造になった巨大なプロセッサーのような機械の投入部に続いている。
これは『業務用タブンネクラッシャー』というれっきとしたタブンネ殺害用(粉砕用)の製品である。

脱子宮を起こしそれを引き裂かれるという重大な内外傷にも関わらず、4ママの意識と瞳はハッキリと澄んでいた。
体調不良よりも“数秒後に確実に殺される”という恐怖のほうが勝ったようだ。

飼「よしっ、ローブシンそのまま押さえてろよ!スイッチ起動!」

ギュイいーーーーーーーーーーーーーン!!


・・ミ゛ィーーッ!ミヤァー!ミンミン!・・・

タブクラッシャーのスイッチが入れられると、けたたましい音を立てながら螺旋刃が動き出し、辺りの母タブンネ達や、中央部に居る雑居チビンネ達が一斉に騒ぎだす。

15番〜25番くらいの母タブ達の種付けスペースからは良く見える位置にクラッシャーが設置されており、幸運にも彼女達は生涯に何度も同胞の“処刑”を見ることができる。
お気に召さないのか大体の個体は目を背けるが。

——

長「ミチッ⁉︎ママ、とっても大きな音ミィ!コレ何の音ミ?」
弟「おばさんの声もきこえてくるチィ!」
妹「おばさんビョーキになったからたべられちゃうチィ?ママ⁉︎」

ママ「ミゥー..ミスン、ミスン...。」

姿は見えなくとも、ミキサー音と4ママの叫びは3番授乳スペースまでも十二分に届いている。というか周りの工場群が静かであればタチワキコンビナート全域に響き渡る程の騒音である。

4ベビは恐怖と興味が入り混じった様相で思い思いママを問いただすが、ママンネはそれどころではない。悲しみと絶望感で胸が一杯であった。

妹ンネの問いに敢えて答えるならば4ママをいつか食べちゃうのは人間ではなく自分達かもしれない。

——

4ママ「おでがいじま゛ずビィッ!お願い゛でずビィ!どうがっ!どうか殺ざないでミィぃぃ?ミガァーーッ!」

彼女を組み敷くローブシンが彼女の命乞いを聞く由ある訳もなく、代わりに耳のタグを引きちぎることで返答し、それを人間に手渡した。

飼「忘れてたわサンキュー、ブシン。もう落としていいぞ!好きなようにな!」

ローブシンは口元一杯にニヤリと笑みを浮かべると、4ママの両脇に手を掛けその身体を持ち上げ、足先からクラッシャーへとゆっくりと降ろした。

ブジューッ!ブチグチブチュッ....

4ママ「グミギヤァーーベベガガベギッ...!
グァミミミ゛ィィッ!ゴァブルルルル...」

4ママの足先とはみ出た子宮が螺旋刃に巻き込まれていき、残酷な遅さでゆっくりとその身体が刻まれていく。
タブンネ殺害、フーズ加工を目的とした製品であるため、最大限ミィアドレナリンが排出されるような親切設計、最初のダメージから死亡するまで平均で2分かかるような代物である。

グチュルル!グギッ!ブニュ〜......

一層目の刃がじわじわ4ママの胴体下から3分の2くらいまで到達する。一層目では即致命傷を与えられずかなり粗い刃で斬られるため、所々骨がそのままの形で残り、大腸小腸が無傷で回転に絡まり、巨大なミミズのように螺旋中央に巻きついている。

4ママ「ブァーばばばぷ......お、お゛でえぢゃ...!づめだぐじでゴメ...ミィ。べべべベビだぢ....ヂビだぢ.....バマばあいじで....ボんドば....ァァァッ..ミガガガガガ....」

4ママが訳のわからぬ遺言を残しかけた所で下半身がニ層目に達し、一層目にタブレバーやタブハツ、タブトロが巻き込まれ始めて呂律が失われていった。

535タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/01(木) 21:48:01 ID:HoVFiUeg0

4ママ「ァ゛ーーー。ァ゛ーーーーッ…マ....ママ......ミ....ッ.....」

首から下が無残な姿に成り果てた所で今生最後の言葉を紡ぎかけ、1匹のタブンネの尊い命の灯が完全に消え去った。

享年1年7ヶ月
産卵5周、生産タブ肉27匹分。
十分かは微妙だがまあまあ役目を果たした母タブンネと言えるだろう。
この先同胞達の“エサ”としての最後の役割が待っている。

——

彼女をここまで連れてきた飼育員は顔を顰め片手合掌のような素振りを見せるが、ローブシンは苦しそうに笑いを殺し腹を抑えている。

1人と1匹は機械下部の受け皿を開けるとタブ骨粉と化した4ママの身体を溢さぬよう慎重に抱え、ソロソロと事務所方向へ運んでいく。

出来たてでホカホカのタブ骨粉は一日強専用の部屋で陰干しされると収穫したオボンオレンと共に別場所の自社加工場へと運ばれ、程なくして飼料となり、またこのタブ舎へと舞い戻ってタブンネ達の糧となる。

“タブンネ捨てるとこ無し”がこの会社のモットーである。

——

弟「おっきなオトとまったチィ...」
次「おばさんは死んじゃったチ?」
長「きっとそうだミチィ。どうしてタブンネさんがこんな目に...こんなのおかしいミィ!」

4ベビはヒソヒソと井戸端会議で盛り上がったが、ママンネはプルプルと震えながら唇を噛み締め、血混じりの涎が締まりのない口角からタラタラと垂れ流れている。
散々望まぬ妊娠とそれに伴う育児を繰り返させられ、まさに命を削って毎日を生きてきたタブンネさんへの最期の仕打ちがコレでは到底受け入れられない。

先程の連続突進で鉄柵に擦れまくり、ママンネの横腹にはミミズ腫れが出来上がり、元々の劣化と相まってかなり痛々しい容姿に成り果てていた。

——

4ママの死亡は時刻にして午後1時半頃の出来事であったが、ママンネはストール内に座り込み、給餌にも手をつけず、4ベビを呼んで授乳をすることもなく、暗い目をして廃タブの如くその日1日を過ごした。

妹ンネは多少グズったが、4ベビはママの心情を慮ったのか空腹を我慢し乳をせがむことも無く、4匹で固まって静かに過ごした。

ママンネが授乳放棄したのは彼女の生涯でこの日が初めてのことであった。
子供達との別れにはある程度耐性がついているが、長い時を共に過ごし、同じ立場で生かされてきた妹分の死は彼女の心に想像以上にダメージを残したようだ。

536タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:23:55 ID:.35ECOTA0

4ベビ生後17日目

連日の悲劇から立ち直る間も無く、親子お別れへのカウントダウンは着実に進んでいる。

お隣のママさんが殺されて以降、何も口にしていなかった4ベビ。

ママンネは相変わらずブッ壊れたテディベア人形のようにストール内に座り込み、朝の給餌にも一切手をつけなかった。
絶望で満たされたママンネの感情は触覚を通して4ベビにもしかと伝わっており、それに呼応するように彼らもまた生気を失い、囲いの一箇所でおしくらまんじゅう、静かに過ごしていた。

しかし膠着を破ったのは最も幼さが残っている妹ンネ。朝の給餌から30分後、空腹に耐えかねて立ち上がった。

妹「ママ.....チスンチスン...。おなかすいたチィ。おっぱいちょーだい。ママ。おねがいおねがいチ。」

ストール越しに柵の隙間から短い腕を伸ばし、ママの肩をチョコチョコと掻いて可弱く呼びかけた。

ママ「......ミ?........ミィ......」

ママンネは一度立ち上がり、狭いストール内にうつ伏せに横になると、身体四半分を持ち上げて柵に腕をかけ、授乳姿勢を取る。完全に惰性のみで動いているような一連の動作であった。

ママの動きを見て上3ベビもストールに擦り寄り、仲良く乳首に吸い付いた。
妹ンネは本能的にチィチィ声を漏らしたが、他の4匹は無言、チュパチュパという音だけが響き渡る、何とも不思議な空間であった。

ものの1分も経たぬうち4ベビは口を離すと翻り、また囲いで身を寄せ合って静かに寝過ごした。誰も敢えて声に出したりはしなかったが、ミルクの出があまり良くなく、芳しくもなかったようだ。

ママ「.........ミッ.........ミッ......」

ママンネは柵から手を離し、ノソノソと動いてまたうつ伏せに寝そべり、子供達から見えぬ様に両腕に顔をうずめると、しくしくと泣き出した。
半ば自分の方から放棄していたとはいえ、満足に授乳も出来ない自分の無力さが本当に惨めでならなかった。

ママ(ごめんミィ...可愛いベビちゃん達....
...4ママちゃん....ミィもきっとあと少しで、おんなじトコロに行くミィから...待っててミィ...。)

——

昨日の強い精神的ショック、また2食抜いたことや睡眠不足も影響しているが、母体としてのママンネの身体はとうにピークを過ぎ去っている。本人もそれは感じていた。

今回の産卵に至っても、ママンネの乳腺が張っていたのはせいぜい4ベビ孵化から1〜2日くらい。
今ママンネが野生に帰って駆除や捕獲されたとしても、誰も子引きとは思わないだろう。
昨日からだけで考えても、ママンネの老け込みは一気に加速していた。

タブンネ種の寿命を考えればママンネはまだ血気盛んな齢と言えるのだが、ハイペースで何匹も孕み、産み落とし、育てを繰り返している為、身体にしても、おっぱいにしても、命分というものには限界があった。

——

ママンネは二の腕で目を擦って涙を拭うと、スクッと起き上がってストール前部まで歩き、モシャモシャと飼料を平らげ、不味い水をゴクゴクと飲み干した。
彼女の目には力が蘇っていた。

妊娠や産卵自体は決して望んでいるわけではない。
こんなゴミ溜めのような屋舎に生涯閉じ込められ、無理やり別れさせられる、可哀想な命。できれば生まれてこないで欲しい。

それでも傍らで過ごす4匹の我が子。彼等を無碍にする事なんてできない。
自分の命にはまだ意味がある。

無慈悲なジレンマを抱え続けながらも、懸命に使命を、生き甲斐を模索し、それを全うする強い母の姿がそこにはあった。

537タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:25:02 ID:.35ECOTA0

時刻にして正午を少し過ぎた頃、係の飼育員の1人が3番の囲いの前にやって来て、ママンネの餌箱に飼料を入れ、水箱にタブンネ用の汚い水を注いでいく。

これまではそれで終わりだったのだが、飼育員は竹製の餌入れと金盥を取り出しそれにも飼料と水を入れると、柵の下から囲いの中へそれを差し出した。

飼「よーしよし。4匹とも問題なく育ってるみたいだね。みんな今日から、おっぱいだけじゃなくて水を飲んでエサも食べるんだよ。もうすぐママと別れて、お外で暮らすんだよ。」

飼育員は囲いの中の4ベビに一声かけ、スタスタと奥へと足を進めていった。

「...チィ...?...」「チィ.....」・・・・

一度乳首を吸って以降、また黙って寝ていた4ベビは人間の声に振り向き、見慣れぬ2つの容器をちらっと見やったが、また興味無さそうに顔を伏せ、4匹仲良く身を寄せ寝そべった。

ママ(もうそんな時期だったミィか....)

ママンネは差し出された容器を一瞬見ると、ストールの最後部まで身体を移し腰を下ろして、精一杯首を横に向けて4ベビの姿を見つめた。

4ベビはこの時皆おそらく50cmを越えるほどの大きさだった。
ママンネの経験則から見ても十分な発育と言えるサイズである。
このタブ舎ではこうして、離乳の5日前からベビンネに飼料を与え始め、母乳とのハイブリッド給餌を始める。要は乳離れ訓練である。

ママンネは嬉しさに淋しさ、そして我が子の運命を想って悲しさの入り混じった表情を浮かべ数秒押し黙ったが、懸命に笑顔を作り、ベビ達に話しかけた。

ママ「みんな起きてミィ。元気をお出しミィ!
みんなのゴハンあるミィよ。食べてミて!」

4ベビはママの声に振り向き起き上がるとヨロヨロ歩き出し、餌箱の前で顔を見合わせ、手に取って食べ始め、水にも舌をつけた。

長「前におねえさんがくれたゴハンミィ。これママのと同じミィよね?」
次「このお水なんだか酸っぱいミチィ?」
弟「チィ...やっぱりこのゴハン嫌いチィ。くちゃいチィ」
妹「ペッペッ。チィもコレきらいチ。おけけみたいのがベロについたチィ。ママ?このゴハンなんでできてるチィ?」

——

ママンネミルクが不十分だった為お腹の空いていた4ベビは皆餌にがっついたが、弟妹はすぐに音を上げ、食べるのをやめてしまう。

飼料は汚いオボンオレン混じりのタブ骨粉である。

そして今出された水は雑居房に流れているもので、上水道ではない。ここをタブ舎として買い取った時からついていた蛇口から流れ出ている得体の知れない汚水である。
元々何の用途なのか、どこから引いているのかもわかっていない様な代物で、酷く濁り、かなり臭い。
水道代がかからないので雑居房では常に流されている。

チビンネ達が飲んでも殆どの個体は下痢も嘔吐も起こさないことから猛毒ではないであろうが、人間が数秒手をつければ皮膚炎を起こすほどには有害で、身体に良い水ではないことは明らかである。

このタブ舎では15匹に1匹くらいの割合で奇形ベビンネが生まれてくるのだが、その最たる要因はおそらくこの水である。

しかし重大な損害も起こらず、タブンネ達もみな慣れればガブガブ飲み出すので、いつまでもこの汚水がダブンネ達に与えられ続けている。
タブンネとはその程度の生き物なのだ。

538タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:25:40 ID:.35ECOTA0

妹「ママ、チィおっぱいのみたいチィ。おねがい、おっぱいちょーだい。」
弟「ボクもボクも!おっぱいのがおいしいチィ!」

ママ「わかったミィ、こっち来てミィ!でも約束ミィ、これから毎日、ほんの少しでもいいから、ゴハンも食べてお水も飲むこと。タブ切りげんまんミィ。もう少しでママ、みんなにおっぱいあげられなくなるミィのよ。でも一緒に居るうちは、好きなだけおっぱい飲んでいいミィからね!」

少量だけ飼料を口にし、ひと口だけ水に舌をつけた妹ンネがダダをコネだし、弟ンネもそれに便乗する。
ママンネはそれに優しく応えると、今一度授乳体勢を取った。

2匹が嬉しそうにチィチィ声を上げながら乳首に吸い付くと、チュパチュパとミルク飲みの音が響いた。
先程の食事が功を成してか、今回はしっかりミルクが出たようである。

やがてそれに気づいた長女次女もママに擦り寄り、4匹で仲良く乳首を分け合った。
発育が良いとはいえ、あくまで彼等はまだベビンネである。

——

長「ねえママ、もうすぐお別れするミィ?ママはどこに行くミィの?おばさんミたいに殺されちゃうミィ⁉︎」
次「ミィ達おソトで暮らすミチィ?」
弟「おソトに出たらああやって他のタブンネさん達とケンカするミィチィ?」
妹「チィおソトいきたくない!ずーっとママといっしょチィ!」

乳飲みを終えると、一斉にミィチィとママンネへの質問攻めが始まった

ママ「ミフフ、みんな落ち着いて。ママはね、ここの箱とは違う、別の箱にお引っ越ししなきゃいけないミィの..こうやってみんなをナデナデしたり、おっぱいはあげられなくなるミィけどね、ちゃあんとみんなの声を聞いて、いつも見守ってるミィからね。」

ママンネの講釈が始まる

「それからね、お兄ちゃん、お姉ちゃん達も、お外に出ても、決して他のタブンネさん達を叩いたり、悪く言ってはいけないミィ。これだけは覚えておいて。ああやって乱暴なタブンネさん達もね、ミィんなホントは心の優しいタブンネさんなんだミィ。こんな汚い場所に閉じ込められて、優しい心を忘れているだけなのミィ。悪いのはニンゲンや、ニンゲンに従うポケモン達だミィ!」

雑居房ではしばしばどこかで取っ組み合いのケンカが起こりだす。
ママンネの講釈は続く。語気が少し強くなった。

「みんな“とらっく”の話は前にもしたミィ?いつも連れ去られるタブンネさん達は見てるミィね?ニンゲンと一緒にタブンネ達を連れ去るポケモンは、オレンジの方はズルズキンっていって、青い方はダケキってポケモンだミィ。ズルズキンには特に気をつけるミィ。アイツはタブンネ達をイジめるのが大好きな奴ミィ。絶対近づかないようにするミィ」

・・・

ママンネは次々、タブンネ以外のポケモン達の名を挙げながら解説をしていく。

ここの従業ポケ達は誰かの飼いという訳ではなく、会社の共有ポケモンであり、それぞれに役割がある。

かなりざっくりとだが、ローブシンは主に凶悪ンネからの人間護衛要員で、クワガノンは暴れンネを麻痺らせる要員。
ダケキ、ズルズキンは出荷ンネ捕獲用、他に清掃要員のシャワーズ、フタチマル、マリルリが居る。

ここで詳述はしないが、ローブシン以外はタブンネ搬送先、屠殺時にも仕事がある。

539タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/06(火) 01:26:16 ID:.35ECOTA0

ローブシン、クワガノンの説明を終えたところで、未登場の水ポケモン達の解説が始まる。
4ベビは黙ってママの話をしっかり聞いているが、瞳が潤み出している。聞けば聞くほど暗くなる話であった。

「みんなたぶんまだ見たことないミィけど、お外で暮らすようになったら水の技を使うポケモンと会うことになるミィ。特に気をつけないといけないのは、マママリルリってやつででっ...ミィ...ミィーンミンミン!ブミィオオオオオオお゛お゛お゛んん゛!......」

長「ママ!大丈夫ミィ?」
次「ママ!」
弟「チ、チ、チビィ〜ン!」
妹「チビャーン!チスンチスン....」

話している最中でママンネが大声で泣き出してしまい、弟妹も連られて号泣してしまう。割と平静としていた長女次女ですら目からボロボロと落涙している。
何ともカオスで、滑稽を通り越して惨め極まりない光景であった。

——

ママンネはいつも、こうして飼料が与えられ始めたタイミングでこのタブ舎の処世術を我がベビ達に伝えている。
もう何週も産んで育てて出荷されを繰り返している為、落語家が持ちネタを噺すように今回同様の講釈を行なってきた。

しかしママンネにとっていつも辛くなるのが他のポケモンについて説明を行うくだりであった。

ママンネは『人間』『ポケモン』という生き物の大別はついている。朧げながら4ベビもそれは同様である。

同じポケモンなのに、どうして他の種族は人間に可愛がられ、どうしていつも自分達タブンネだけがこんな辛い目に遭わされ続け、何の自由も権利もなく、されるがままに殺されなければならないのか。

人間はともかく、タブンネの味方をしてくれるポケモンが1匹も居ないことも悲痛な事実

皆タブンネに全く興味がないか、苦しんでいる様を見て喜んでるかのいずれかだ。触覚を使わずとも表情や仕草から否応なしに伝わってくる。

それを我が子に伝え教えなければならないという屈辱。ママンネにとって到底受け入れられないこの世界の現実であった。

——

小一時間親子固まって悲痛なタブ泣きを続けたあと、冷静さを取り戻してママンネが最後の言葉を紡ぐ。

「みんなごめんミィ。ママがしっかりしなきゃいけないミィよね。沢山お話ししたけど、これだけは忘れミィで。みんなに、他のタブンネさん達全員に、優しくしてあげること、みんな仲良くすることが、ミィ達タブンネさんの、大切な誇りなんだミィ。ベビちゃん達がタブンネの誇りを忘れなければ、いつかきっと神様が、ミィ達を助けてくれるかも知れないミィ。最後まで、決して希望を捨ててはいけないミィ。タブンネさんは誇り高い生き物ミィ!みんなタブンネの誇りを忘れミィで!きっと約束ミィよ!」

ママンネは半ば自分に言い聞かせるように、食肉らしからぬ演説を結んだ。

4ベビは目に涙を浮かべながらも、真剣な表情でそれを聞き、コクコクと頷いて返事をした。

実に素晴らしい生き物達である。

540タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:06:38 ID:/Z9fMBhY0

4ベビ生後18日目

特に変わったことは無いが、昨日昼1回だったベビ用の飼料は午前と午後1回ずつ、計2回に増やされた

ママンネの命令によりみんな飼料にも水にも手をつけたが、妹ンネはそれぞれ舌につける程度のみ、弟ンネも飼料も水もひと口ずつ食べ飲みするだけに留まり、飼料は殆ど長女と次女が平らげ、2回とも水はかなり余った

ベビ達が起きてる時間、1匹ずつ代わりばんこにママのストール前に位置どり、柵越しに毛繕いや、尻尾を梳かしてもらい寵愛を受けた

親子共に過ごせる時間もあと数日
身を持ってそれを知り尽くすママンネは1秒でもベビ達との時間を無駄にしたくない心持ちだった
ストール前部はママンネ用の餌箱が設置されている為窮屈な座り姿勢であったが、それでもベビ達は嬉しそうで、小汚いながらもみな尻尾はフワフワになった

ママンネは平等に愛を注いだが、弟ンネに対しては特に入念に、“タブンネの誇り”とやらを説き聞かせた

——

ママンネはこれまでに何匹もベビ達を離乳させているベテランママで、その性格故か先天的に凶悪な個体を産み落としたことは一度もないが、それでも離乳後、雑居房で傷害沙汰を起こした子タブが過去に2匹居た。いずれも♂個体であった。

このママンネの様な善良個体の子タブであっても、後天的に凶悪化するタブンネは一定数存在する
♀個体にも現れるが、♂の方が圧倒的に多い。おそらく去勢が原因であると思われる。本来性欲として発散されるべき欲求が暴力に昇華されてしまう為だ

子タブ達とのお別れは否応なしにある程度の耐性がついていたものの、我が子が同胞を痛めつけるようなことはママンネとしては何としても避けたい想いがあった

同族への慈愛はタブンネ特有の傾向とも言え、ママンネにはその特徴が色濃く残っていた。より注意すべきは弟ンネではなかったことはこの時誰も知る由もなかった...

——

4ベビは睡眠を取る際、ストールを挟んで左右に分かれ、全員がママに触れる様な形で眠るようになった
残酷に冷たい鉄柵が常に彼女らの間を隔てたが、それでもママンネは我がベビ達の温もりをしかと感じ取り、嬉しさに切なさが入り混じった涙を流し続けた

なんだかんだ言っても、我が子と接することのできるこの僅かな期間が人生で一番幸せなひと時かもしれない
タブンネ以外の生き物なら当然の時間なのであるが、そんなセコセコしい哲学に耽るママンネであった

541タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:07:10 ID:/Z9fMBhY0

4ベビ生後19日目

与えられる飼料のペースも、4ベビの食いつきも昨日と変わらず
しかしここ2日間の食いが影響してか、ほぼ横一線だった4ベビの体躯に差がつき始めた。長女ンネ、次女ンネが少し大きく、ついで弟ンネ、妹ンネとタグ番通り降順に身長差が生まれた

飼料をしっかり喰っている為、長女次女の糞はもっさりとした粘りのある固形糞に変わり、匂いもかなり臭くなっていた
ママンネのストール後方にできていた糞だまりはいつの間にか山となって、囲いの後方は完全に行き来できぬ状態になっている

——

昼下がり、2名の飼育員が1匹の雌タブを引き連れて雑居房を縦断し、左隣の囲いまで運んできた。数日前に4ママが連れられて来た時と全く似た状況、今回連れられて来た雌タブの方耳には「2」の数字が書かれた赤いタグがつけられている

飼A「いやーお前ホントすげえな。うんともミィとも鳴かなくなったけど。今回も6は確実に入ってんぞコレ」

飼B「コイツはタマゴ自体もデカいっすからね..ホラ、しっかり歩いてくれ!ゆっくりでもいいから!」

...ヒュー...ビュー...ビューッ.........

2ママの腹は先の4ママよりもさらに大きく、パッと見ではタブンネではないくらい巨大化していて、心肥大に喘息が加わった様な呼吸をしていたが、目つきや態度は苦しそうな様子ではなく、生気を失ったような虚な瞳をしている

飼B「今回もこれストール入りは無理っすね..」

飼A「ああ。明らか物理的に不可能だろ。前みたく囲いでいいよ。どう考えても柵越えれねえだろ。50キロ以上あるぜ..コイツ...」

飼育員2人はほぼ担ぐように2ママを囲いの中に入れ座らせると、汗を垂らしながらその場を去って行った

ママ「2ママさん、お久しぶりですミィ。今回も大変そうですミィね。どうかお身体気をつけてミィ」

2ママ「・・・・・」

3日ぶりのお隣ンネ登場で4ベビは囲いに擦り寄ってその姿を眺めたが、4ママの時とは違い話しかけたりはしなかった

前回の惨劇で情を移すのを躊躇ったこと、ママンネの態度がよそよそしかったこともあるが、何より2ママに全く生気が感じられず、感情というものが全く読み取れないことに畏れを抱いたためであった。

2ママはママンネの問いにはうんともミィとも応えず、4ベビの存在も全く意に介さぬ様子で、虚ろな目をしたまま、やがてゆっくりと体勢を変え、仰向けにゴロンと寝転がった
うつ伏せ寝が不可能なほど大きな腹をしていた

542タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/08(木) 22:07:42 ID:/Z9fMBhY0

この2ママについて少し補足を述べておく

2ママはこのタブ舎の生まれではなく、ある牧場から買い取られて来た個体である
ママンネは敬語を使っているが、ママンネよりも、他界した4ママよりも若年であり、今回の懐妊が3回目であった。



このタブ舎の母タブンネの代継ぎは基本的に実子から選ばれる。父親との近親関係を簡潔化する目的もあるが、単に面倒臭いからそうされている

しかし母タブンネが凶悪ンネ量産器と化したり、もしくは母タブンネ自体が子殺しやネグレクトを行うようなことが2,3代続くと、“血の入れ替え”と称して2ママのように何処からか買ってきたり、もしくは従業員の誰かが適当に野生を捕まえたりしてここのストールにブチ込まれる
先代の2番ママはベビを次々喰い殺すなかなかファンキーなタブンネさんであった



現2ママがやって来た時、ママンネは親切にあれこれ話し掛けたが、お互い全く反りが合わなかった。人間観に大きな乖離があった為だ

2ママの詳しい生い立ちはママンネもよくわかっていないが、おそらくガラルタブンネ牧場さんのような場所で悠々と暮らして居た個体だと思われる。このタブ舎の2世であるママンネと話が合うわけがなかった

どこかお花畑過ぎたが2ママは性悪という訳ではないので、ママンネとは懇意ならずも仲悪くもないといった関係性であった

しかし2ママは次第にタブンネらしさというものを失っていく
一度目の産卵ベビ達と引き離された際に情緒不安定になり、さらにその子供達が出荷された際に発狂し、今の様な廃タブと化してしまう
深く信用していた人間に我が子を取り上げられ、現実を受け入れられなかったのだ

佇まいこそ廃タブだが与えられる飼料は食べ水も飲むし、生殖機能は失っていないどころかハイペースに量産し、1週目2週目で8個産み、今回も8個宿っている何とも気の毒なタブンネさんである。

ここに来た当初は不潔な環境に閉口したのだが、今はストール内で平気で糞尿を垂れ流す為、腹も尾も真っ黒く汚れて、タブ糞と体毛が癒着する強烈不潔ンネに成り果てている

543名無しさん:2021/04/10(土) 20:22:05 ID:gsn30QHM0
子殺ししといて"ファンキーなタブンネさん"ですますなよこの糞豚w

てかベビのうちから自分達だけタブンネ"さん"なんて
高尚ぶらせるとかホント腹立つわー

544名無しさん:2021/04/11(日) 16:36:36 ID:1BbRCPrI0
タブンネさんの誇りとはw
ママンネ演説でクワガノンのことをどう説明したか気になりますね。電気でいじめてくる意地悪なクワガタとかかな?

545タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:14:25 ID:IxTHbfYs0

4ベビ生後20日目

この日は朝の給餌のタイミングから、ベビンネ用の餌が与えられた。1日3食、いよいよ離乳の最終段階である

飼「ホラ、みんなちゃんと喰えよ。...あれ?3番ってこんなデコボコだったっけ?要観察だなコレ...」

朝の給餌を行った飼育員は3番囲いの中をちらっと観察し、ブツブツと独り言を言いながらその場を去って行った

4ベビの食いは相も変わらず、弟妹が少しだけ食い、長女次女が殆どを食う様相であった

昨日お隣にやって来た2ママの様子も相変わらずで、ママンネは朝1回だけ挨拶の声を掛けたが答えられず、4ベビはチラチラと左隣の囲いを見やって気にする素振りは見せたものの、話しかけたりはしなかった
見た目こそタブンネさんであっても、やはりその佇まいや心音が不気味で、恐怖がまさったようである

本当に生きているのか死んでいるのかも解らぬような2ママであったが、3番親子も気づかぬうち、いつの間にか餌箱は空になり、股の間の床は尿で濡れてタブ糞が転がっていた。4ベビにとってさながらマジックのようであった
よく耳を澄ますとヒューヒューと乾いた呼吸音が聞こえた。一応生きているようだ

4ベビは代わりばんこにママンネのストール前部に陣取り、蹄で毛繕いをしてもらい、限られた条件の中で精一杯の寵愛を受けた。毛繕いはハイブリッド給餌が始まって以降のルーティンになっていた

——

昼の給餌

給餌はいつも雑居房にまず飼料がばら撒かれてから授乳スペースをタグ番昇順に与えられていき、最後に種付けスペースの母タブンネ達に与えられていく順番であるのだが、この時3番授乳スペースが何故か飛ばされてしまった

ママ「おいニンゲン!ミィ達のゴハン忘れてるミィ!」

自分の餌がスルーされたことに気がつくと、ママンネはガシガシと前折にしがみつき、抗議の雄叫びを上げる
ママンネはとりわけ卑しい性格でもないし、別段腹が減っていたわけでもないが、この時は餌への執着を見せた。先日のミルク不精がそうさせた原因であった

長「ミィッ!ゴハンくらいちゃんとよこせミィ!」
弟「ちゃんとしごとしろミチィ!」
妹「チィーッ!ニンゲンのばかーっ!」

ひと段落遅れて4ベビもママに呼応するように、届かぬ怒りの声を飼育員に向けて浴びせかける
授乳スペース前部の柵に4匹が固まると横幅はギチギチになった。いつの間に随分と成長したものである
弟、妹はまともに餌なんか食べないクセに随分と偉そうな態度であった。誰に教わったわけでもなく、人間が自分達の言葉を理解出来ないことをわかってきたようだ
“言い得”であればとにかく叫んでみる、というのはこのタブ舎のタブンネ達によく見られる傾向である。きっとロクな死に方できないだろう

ママ「ミィ....」

いち早く勢いを失ったのはママンネであった。4ベビの後ろ姿を見ると、シュンと両耳が垂れ下がった
ママが4ベビの並んだ立ち姿を見るのは何気に久々のことであった。それだけストール内で生きる母タブンネは視野すら不自由なのである

4ベビの体躯は一番大きい長女ンネと小さい妹ンネを比べれば10cm違う程の差が生まれていた
ハイブリッド給餌が開始されたのはほんの3日前なのだが、ほぼ2匹分の飼料を口にしていた長女次女はみるみる成長し、タブバラ肉も詰まっているし、タブロースもガッチリとしていた。

ママンネの心配は大きい子にも小さい子にも注がれた

成長が早過ぎればそれだけ出荷も早くなるし、今の段階で餌の食いが悪ければ雑居房で淘汰される可能性がかなり高くなる。今は綺麗な状態で飼料を与えられているが、雑居房では床にばら撒かれる為、砂利や糞混じりのモノを口にしなければならないのだ

これまでだってずっとそうだったのだが、ママンネの望みは同時に生まれた兄姉弟妹にできるだけ長く一緒に居させて上げることである。気の毒にもこの時ママンネが抱いた不安はおよそ実現されることになる

力ないサファイアブルーで4ベビの後ろ姿を見つめるママンネ。この4匹はみな綺麗好き(?)で、決まった場所で排泄を行う子たちであったが、それでも所々にウンコ色が癒着し、元々そんな模様であるかの様なブチ柄が出来上がっていた

ショッキングな出来事が色々起こる度に脱糞していた為であろう、ママンネストールの両脇や、囲いの随所に軟便跡が付着している。授乳スペースの清掃は稼働中には行われないのだ

546タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:20:41 ID:IxTHbfYs0

係の者は一通りの給餌を終えると、一度事務所へ寄ってから3番授乳スペースへとまい戻って来た。

飼「なんだ?お前らエサ好きなのか?そこ居られたら箱入れれねえだろうが!」

ドサッ!ポヨンッ!ポテッ!ドカッ!

「ミ゛!」「いチィ!」「チギャッ」「ミゴッ」

若く、ガタイの良い飼育員は前面に張り付く4ベビの首根っこを引っ掴むと次々囲いの中へブン投げていった
ベビとはいえそこそこ重いタブンネ達を片手投げするとは相当なパワーである

余談だがここの従業員は常勤が全部で10名居て、今回の人物はこれまでどこかで登場している
おそらく一番力のある男で、作業時に格闘ポケモンの手を借ることが少なく、過去に雑居房で喧嘩ンネを仲裁し、一撃で蹴り殺した実績がある
タブンネに人間への恐怖心を植え付けるのにひと役買っている人物であった。今後も登場するかどうかはわからない

その飼育員はママンネの餌箱に飼料を入れ水を注ぐと、ベビ達の餌も少し多めに与える。

4ベビはぶつけた腹や尻をさすりながら餌箱に擦り寄るが、手をつけずに立ち竦んだ。いつもさっさと去っていくのだが、ガタイ飼育員が囲いの前にしゃがみ、柵越しにジーっとベビ達を見つめている
先程のパワーを見せられ本能的な恐怖を感じたのだろうか、弟妹はピチャピチャと放尿してしまう。妹ンネはウンチのおまけ付きであった

長「ミ...ミィッ!いつまでそこに居るの⁉︎コッチ見ないでよ!」
次「ミ、、そうだミィ!あっち行けミィ!」

恐る恐る長女ンネ次女ンネは人間を威嚇したが、飼育員はガン無視して視線を浴びせ続ける。弟ンネ妹ンネは抱き合ってプルプル震え、人間を見ないようにキョロキョロと顔を動かしている

547タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/12(月) 23:23:15 ID:IxTHbfYs0
しばらくして長女次女は泣く泣く餌箱に手を伸ばしたが、ちびちびと手につけて口に運ぶような細い食であった
弟妹は身体の震えが止まらず、餌箱に向かうことができずママに擦り寄った
4ベビ共囲い前の人間に相当な威圧感を受けたようだ

弟「ママ、おねがいミチィ。まだゴハンたべてないけど、おっぱいちょうだい」
妹「アイツこわいチィ。おねがい、ママ」

ママ「ミ..!?..ミィ。おいで...」

物思いに耽っていたママンネは呆けた返事をすると、いつものように授乳姿勢を取った
弟妹は嬉しそうなチィチィ声を漏らし、乳首に吸い付かんとした時、こわいニンゲンが動き出した

飼「やっぱそうか、チビ2匹喰ってねえんだな。オマエら!エサ食わなきゃデカくなれねえぞ!ちゃんと親離れしろ!」

「チィィーッ!」「ヒギィー⁉︎」

飼育員はピョンと囲いに飛び入ると、弟ンネ妹ンネの首根っこを引っ掴んで餌箱の前にドサリと投げ下ろした
2匹は飼育員の大声と突然の感覚に驚き、せっかく落ち着いた震えがまた復活し、抱き合いながら人間を見上げる
飼育員は別に怒鳴った訳ではないのだが、素の地声のデカい人物であった。また被捕食ポケモンにとって身体が宙に浮くという感覚は本能的にかなり恐怖を感じるようで、耳の良過ぎるタブンネには二重苦の効果があった

ママ「ミ...お兄ちゃん、妹ンネちゃん、落ち着いてミィ。ゴハン食べてミィ。ふたりともゴハン食べないと、ソイツ居なくならないミィ。もっと虐められるかも知れないミィ!」

人間の行動にハッと我に還ったママンネが2匹に説き聞かせる
飼育員は再び囲いを跨ぐと、外からジーッとベビ達へ視線を浴びせる

人間の意図はママンネにも何となく理解することができた。ベビ達の体格差を見て、小さい子に離乳を促しているのだ
口惜しいと言うのか虚しいと言うのか
ママンネの心配は飼育員の意図と合致していた。雑居房、というか生涯でここのタブンネが口にできるのはこの飼料だけなのだ

先程の衝撃の為か強そうな人間に見られている恐怖の為か、いつまでも抱き合い震えて立ち竦む弟妹を見かねてママンネはスクッと起き上がり、自分の餌箱の飼料をモシャモシャと食い始めた

ママ「ほら見てミィ!お兄ちゃん、妹ンネちゃん!ママもね、小さい頃はニガテだったミィけど、なれてきたらこのゴハンもけっこう美味しいミィのよ♪」

何とも大根演技だが、ママンネは精一杯の笑顔を浮かべ2匹を促す。その目尻は薄っすら光っていた。ママンネにしても決して共喰いを望んでいる訳ではない

妹「チ...ほんとチィ...?」
弟「妹ンネ、ボクたちもたべようミチィ...」

漸く2匹は長女次女に割り入るようにして飼料に手をつけ、ちびちびと飼料を食べ始める

見つめ飼育員は一瞬ピクッと眉間を動かしたが表情も視線も変えない

・・・
(長「ニンゲン居なくならないミィ。ふたりとも、顔つけて食べるミィ...!」)
(次「フリでもいいミィ。ミィとお姉ちゃんで食べるミィから!」)
(妹「ケホッケホッ...やっぱおいしくないミチィ...」)

ママンネのアシストもあって人間の意図を読み取ったのか、ヒソヒソとタブ知恵ベビ達の作戦会議が始まった。声を潜める意味あるのだろうか

——

飼「小せえのそれ本当に喰ってたか?まあいいや。やっぱ3番は良いママさんだな!何言ってたかオレには大体わかるぜ!」

4ベビ地獄の食い作務続けること約7分
飼料箱がほぼ空になった所でやっとこわいニンゲンが立ち上がり、スタスタその場を去っていった

弟ンネはだいぶマシな食いになったが、妹ンネにはまるで人間の幼児がお母さんに無理矢理ピーマン食べさせられる時みたいな拷問の時間であった

548タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/13(火) 19:59:09 ID:hxNrIOLE0

妹「チゲホチゲホッ!ママ、どうしてきらいなゴハン食べなきゃいけないチ?ずっとママといっしょに居れないチィ?」

食べるフリのつもりだったもののそれでも頑張って餌箱に顔を埋め続けた妹ンネがグズる。鼻から下が粉餌にまみれた間抜けヅラが可愛らしい

ママ「妹ンネちゃん、よく頑張ったミィ!これからずうっとゴハン食べなきゃいけないミィけど、きっと慣れるミィ」

ママは励ましのつもりで言ったのだが、妹ンネには絶望的な言葉で、目に涙が浮かんでいる

ママ「さあみんな、キレイキレイしたげるミィから、ひとりずつコッチ来てミ。長女ンネちゃんから...」

次「ミィ?」
弟「ボクたちママのおかげでしっぽふかふかミィよ⁉︎」

ママがベビをストール前へ呼ぶ。この給餌の直前までにみんな毛繕いが済んでいたのでベビ達は怪訝な顔を浮かべたが、ママの声色と顔つきが真剣だったので指名を受けた長女が身を屈めてストール前へ座り入る

ママ「ミィ...長女お姉ちゃんはホントに大きくなったミィね!あまり動かミィで...」

ママンネは膝を着き四つ這いになってストール柵から精一杯口元を突き出すと、ベロベロとその身体を舐め回した

フミィ〜、フミィ〜ン。こそばゆい感覚に長女ンネは気持ち良さそうに間の抜けた声を漏らす。一瞬?顔を浮かべた残り3ベビであったが、長女ンネの様子を羨ましがり、ミィチィ鳴きながら近くに陣取る

ママンネの意図はベビ達の体毛体皮に癒着するウンチ柄を舐め落とすことであった。今までこんなことはしたことないのだが、先程4ベビの汚れた後ろ姿を見た時に思い立ったのだ
このタブ舎の衛生環境上タブンネと糞尿は蜜月な関係性と言えるのだが、本来の状態にしてあげることでこの世界に抵抗したいし、何より子供達を不憫に想う気持ちがあった

ママンネの膝下は積年のストール生活で褥瘡ができ、両脚にかなりの負荷がかかったし、ベビ達の糞尿跡は頑固にこびりついているので相当難儀な作業であったが、ママンネは乾いたタブタンでの愛撫と不揃いな歯での甘噛みで必死にウンコと闘い続ける

長女ンネの嬌声も相まり、ママンネの体勢はまるで人間の女性がフェラチオを行っているような卑猥な光景に見える

ママ「お姉ちゃん、コッチ向いて。アンヨが一番汚れてるミィ...」

ママンネは短い腕を懸命に柵下から伸ばし長女ンネの体位を変える

長「ミヒィ〜ン。ミフンミフンッ。ママイヤァ!
くしゅぐったいミィ~」

ママンネは長女の足裏に口をつける。砂埃や癒着ウンチのせいで肉球が全く見えなかった

妹「チィーッ!長女お姉ちゃんばっかズルいチィ!」
弟「ママボクたちにもキレイキレイしてくれるミィ?」

待ち兼ねた3ベビがストール越しに手を伸ばしてママンネの背中をチョコチョコ掻きだした。いよいよマニアックな変態ビデオみたいな構図になってきたが、演者がやつれたタブンネと汚いベビンネなのでかなり気色悪い

——

次「ミィッ!お姉ちゃんがピカピカになったミィ!」
妹「ほんとチィッ!タブンネさんじゃないみたいチィ!ママしゅごい!チィもチィも!」

ママ「ハァッ..ハァッ...ミんな順番ミィ。次は次女ンネちゃん...」

ママンネが懸命にタブチオを続けることおよそ20分。漸く長女ンネのウンチが綺麗に落ち去った。ママンネは残しておいた水箱に口をつけ、渇き切ったタブタンを潤す。ママの口周りはウンコの泥棒髭が出来上がったようになっている

妹ンネの言葉が何気に残酷で、ママンネのサファイアブルーがウルウルと湿りだす
こんな所で生まれたが為に、ウンチ柄のついた姿が本当のタブンネさんだと思っているようだ
本当のタブンネさんは綺麗なピンクチョッキ柄なのに...

ミッ! カッと目を閉じ、溜まった涙を弾き飛ばすママンネ。何とか、今一瞬だけでも綺麗にしてあげようと今一度気合いを入れた

——

ママ「ハァッ..ハァッ!...ミフッ!ミガフッ!...待たせてごめんミィ!妹ンネちゃんの番だミ。コッチ来てミィ...」

妹「チミィ〜??チュイ〜〜...」

タブチオによるウンコ掃除を開始してから1時間強、やっと上3匹の分が終わり、ママンネは妹ンネを呼びつける

グズり続けていた妹はいつの間にか寝てしまったようで、目を擦りながら間の抜けた声を上げる
ママの愛撫を受け終えた3匹は嬉しさよりも、ママへの心配がまさっている様子であった。タンを酷使し続けたママンネは口元の締まりが完全に無くなり、弱った膝下が痙攣している
それでも1時間以上フェラチオを続けられるとは中々のスタミナである。どこかの監督の目に止まれば女優に転職できるかも知れない

549タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/13(火) 20:02:59 ID:hxNrIOLE0

ママの愛撫を受け始めた妹ンネ
最初こそは耳をパタパタ動かして喜んだが、向き合う形になると顔を顰めだし、遂には不快さを漏らし始める

妹「ママもーいいチィ!ママのおクチくさいんだもん!チィこのままでいいチィッ!」

ママンネにとって痛烈な一言であったが、妹の言うように3匹分の糞を舐めとった口内は激臭なんてものではなかった。ただでさえママは口内が荒れ果てていて獣臭を通り越した異臭を普段から放っている。上3匹が喚かなかったのは生まれた時からのママの匂いに慣れているからだろう
妹ンネはよく言えば天真爛漫で素直。悪い面では幼児特有の残酷さがあった

ママ「ミィ...ン。ミグッ...ミン...」

泣きそうになるママ。諸々の事情で自分の口内が腐敗し臭いことは十分知っている。それをハッキリ指摘されたことは彼女のプライドを大いに傷つけた
しかし幼い娘に泣き顔を見せぬよう必死に涙を堪え、懸命な愛撫を続けた。

——

長らく続けられたママのタブチオがやっと終わり、4匹のベビンネは生まれた日以来のピンクチョッキ模様を取り戻した

わがまま言っていた妹ンネもなんやかんや嬉しそうで、姉兄とお互いの身体を見せっこしている

達成感と子供達の様子にママンネの目にも嬉し涙が浮かぶ。言ってもベビ達の毛並みは綺麗なんて表現すればトレーナーやブリーダーに笑われるレベルだし畜生臭さは酷いものなのだが、それでも3番授乳スペースは幸せ一杯のひと時を過ごしていた

——

やがて夕夜分の給餌が行われた。
昼と違ってニンゲンの監視の無いことに弟妹は最初大喜びであったが、ママンネの指示により4匹で等分を食べさせられた

妹「ママなんでニンゲンのミカタするチィ?チィゴハンたべたくないのに...!」

なんやかんやで飼料を平らげたベビ達。昼の訓練が効いたのか弟ンネは割とすんなり食べ、妹ンネはだいぶ苦戦したがみんなの励ましで倍の時間をかけてなんとか流し込んだ
給餌の後は4匹仲良くママンネミルクを堪能した

——

夕食も済んで暫く、外はすっかり闇に沈み、3番親子は眠りに就こうとしていた
ストール内でママンネが寝て、左側に長女と妹、右側に次女と弟
4ベビは精一杯ストールに寄っているが鉄柵のため身を寄せ合っているとは言い難く、みな辛うじて身体の一部がママに触れているという状態だった

給餌の傾向からママンネは今日がこの子達と過ごせる最後の夜だとなんとなくわかっていて、瞳を閉じることなくベビ達の体温に全神経を集中していた

次「ママ。なんだか眠れないミィ...」
弟「ボクも...」
長「ねえママ。本当にもうすぐお別れするミィ?」

ママの感情が伝わってか否か。いつもならとっくに寝息を立てているベビ達が次々に話し出す

妹「チィもねむれない。ねえママ、“たぶんねムカシバナシ”して...」

ママ「ミフフ。妹ンネちゃんはホントに甘えんぼさんミィね。むかーしむかしのことだミィ。ある草むらに、ババアタブンネとジジイタブンネが住んで居ましたミィ。ジジイタブンネは山へオボンを採りに、ババアタブンネは川へコイキングをいじめに......

...チビィ~...チヒ~...ミヒュー....ミヒュー.....ミィャー....ミゥミゥ....

ママ(ミフフ、みんな寝ちゃったミィ。本当に可愛い寝息ミィ...!どうかみんな、ずっと仲良くネ!...ウトウト......ミィ。ミィもなんだかねむく....きょうは....つかれ....ミ...ィ...)

最後の夜はどんどん深くなっていく...

550名無しさん:2021/04/14(水) 07:25:50 ID:Rh91.kRA0
ブタ屋さん動画とかでも
持ち上げられた子ブタが特に痛くなくてもピーピー喚くのは
宙に浮くのが嫌なだけだって聞いたことあるな
4ベビもこれから離乳部屋か
幼稚園バスなんて呼ばれてる台車で優しく移動させて貰える訳はないと思えよw

551タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 07:54:07 ID:aGR0RnTI0

4ベビ生後21日目

孵化からたった3週間にして様々な場面に遭遇してきた4ベビ。この日はいよいよ離乳の最終章、母タブンネの移動が行われる

ママ「ブヒンブヒン......ごめんミィ。ごめんミィ。可愛いチビちゃん達...ナムアミタブツ...ナムアミタブツ...

長「ママどうしたミィ⁉︎しっかりして!」
次「ママ起きて!ミィ達もうゴハン食べ終わったミィよ!」

ママ「....ミグッ...ミミ⁉︎....ミハッ⁉︎..あ..ミォォン!ベビちゃん達!ミィーい゛ンミンミン...!」

朝の給餌が行われて暫く経ってもいつまでも寝たままで、変な寝言を垂れていたママンネ。ベビ達の声で間抜けな第一声と共に目覚め、辺りをキョロキョロ眺めると我に還り、みっともなくタブ泣きする

昨日酷使したせいかママの唇はメスのソーナンスさながらに腫れあがり、目尻には何故か涙跡がついている

弟「ミィ⁉︎ママ、だいじょぶミィ...?」
妹「ママねぼすけさんミチィ!ママ見て!ミィ、ママに言われなくてもちゃんとゴハン食べたミチィよ!ミッヘン!」

上3匹はママのおかしな挙動を心配したが、自発的に飼料を平らげた妹ンネは自慢を言い聞かせる
明るいこの娘がある意味一番タブンネらしいのかもしれない
昨日頑張って飼料を食べた為か、この一晩でひと回り大きくなったように見える。タブンネにとってもタブンネは高栄養食品なのだ。適食であるかどうかは別だが

寝起きの朧なサファイアブルーでぼんやりベビ達を眺めるママンネ
昨日の苦労も虚しく、各個体毛には真新しいウンチ柄が付着している。寝床自体が汚ければ当然の結果である

・・

ママ「...ミィッ!たいへんミィ!みんな来てミ!ママのおっぱい飲んでミィ!」

ママは空になったベビ達の餌入れ、盛られたままの自分の餌入れを一瞥すると、慌てた様子で授乳姿勢を取る
ママンネ視点、ベビ達の奥ではお隣の2番ママさんが涅槃像みたいな体勢でちびちびと水箱に舌を伸ばしていた。昨日より腹が大きくなっているように見えた

——

授乳を始めて30分後、飼育員2人がダゲキを引き連れて3番授乳スペースまでやって来た

この時4ベビはまだ乳首に張りついたまま
あと何回飲めるかわからぬミルクを味わいたい意思があったこと、その裏腹、出が悪くて中々満足できなかったことでいつもより長く吸い付いていた。妹ンネに至っては乳首を口に含んだまま寝てしまっている

ママ「ミミィ〜...!ダゲキ!待ってミィッ!せめてもう少しだけ!お願いミィ!お願いミィ...

飼A「おっ、最後のおっぱいタイムだったか?おつかれ!ママちゃん!今回はすぐ王子様とイチャイチャできっからな」

ママの懇願など認められる筈もなく、飼育員はストール、囲い両方の檻を開放していく

始めて自分達のおウチのトビラが開けられたこと、触覚から伝わるママの切実な感情と始めて間近まで来たダゲキ、あらゆる事象に上3匹はパニックと恐怖でオロオロと動き、割と落ち着いた性格だった長女ンネを含み皆ボトボトビチャビチャと脱糞尿してしまった
妹ンネは一足遅れて目を覚まし、ムニャムニャ口を鳴らしながら目を擦っている

飼B「あれ、朝飯食わんかったのか?まあもうお乳も出さなくていいし、3ママもダイエットかな?」

飼育員がママンネ用餌箱を掴むと、残った飼料を雑居房へぶち撒ける。気づいた雑居チビンネ達がミィミィ群がってきた

飼A「おい、てか3ってこんな汚かったか⁉︎なんか脇腹も破けてるし、唇まで腫れてない?」

飼B「3も次あたりで御免かな〜。でもチビ達いつになくデカくない?よくおっぱい出たなお前。偉いぞ〜」

飼育員は口調こそ穏やかだが動作は乱暴極まりなく、片方が脱臼せんほどママの両腕を引っ張り、もう片方はストール後部に入り込んで尻尾を掴み上げてドカドカとタブケツを蹴飛ばしている
ダゲキは囲いの外からベビ達に睨みを利かせて佇んでいる

ママ「ミィッ!お願いですミィお願いですミィ!どうかっ!どうか最後に一度だけっ!子供達を抱かせてくれませんかミィ⁉︎後生でございミィ〜!」

「ママ!」「ママ〜ッ!」「ミヤァ〜ン!」

ママは抵抗しているわけではないのだが、脚に力が入らず中々人間の思い通りに立ち上がらない。恐怖もあるし、昨日の疲れで体力的にかなりのキツさがあった。ベビに習いウンチも漏らしている

いつになく人間を怯え怖がっているママの様子は次々ベビ達に伝播し、上3匹は大きくプルプルと震え泣き叫んでいる。足元が凄く汚い
リアクションがワンテンポ遅れる妹ンネは目をまん丸くしてママとニンゲンを見つめて口をあんぐり開けている

552タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 07:58:46 ID:aGR0RnTI0

飼A「なんかいつになく反抗的だな。オラ立てよ!」
飼B「遅れてきた反抗期か?ホラ歩けっ!子供と離れたくないってか?オマエはもう慣れっこだろうが!」

ママ「ブギィーーッ!ミギャッ!ミヒンガァーッ!従いますミィ!従いますミィッ!だからおねがい蹴らミィで!引っ張らミィでっ!ブヒィ〜ン!コワイミィ〜!マ、ママァーッ!」

人間は別に怒っているという程ではないのだが、口調も動作も強さを増していく
引っ張られるママンネの腕はビリビリと毛皮が破れ落ち、インステップキックを喰らい続けるオシリは真っ赤な靴跡がついている
それはベビ達が悲しみと恐怖に支配されるに十二分な光景であった

ようやっとママンネが震える足腰を何とか立たせ、歩き出してストールから出ようとした時、意外にも勇み出したのは一番幼さの残る妹ンネであった

妹「ミ...ミギィーーッ!ミィのママに乱暴するなミチィーッ!ママをつれてかないでっ!ミィのママを放せミチィ!」

精一杯怖い顔をして怖い声を発すると、ポヨンポヨンと引っ張り飼育員の身体を目掛け体当たりを繰り返す
戯れてるようでとてもかわいい

次「ミ、ミィーッ!ママを放せミィ!ヤメろミィッ!」
長「どこまでタブンネさんをイジメるミィ!ママを放すミィッ!くたばれミィーッ!」

ワンフレーズ遅れて3ベビも妹ンネに追随しだし、長女は妹に加勢、次女弟は蹴りつけ飼育員をストール越しにペチペチ叩き出した

ダゲキ「セアァッ!」

ゴッ!ゴッ!ドサッ!ポヨッ!
「ミボッ!」「ミグッ」「ミガッ!」「ミベシ!」

4ベビの行動を見てここまで静かだったダゲキが動き出す。首根っこを引っ掴むと囲いの側柵に向けて次々投げ飛ばしていく
ベビ達がぶつかる度お隣の2ママはビクンビクン体を震わせ目を見開いた。恐怖や同情という訳では無かろうが、やはり耳は良いようで衝撃音には反応するようだ

飼育員はベビ達の攻撃なんて屁でもなかったので、ダゲキの行為は完全なる過剰防衛である
そもそもダゲキを連れてきたのは防衛用よりも、移動作業中にベビ達の雑居房への逃げ出しを阻止する目的である
ダゲキが動き出しても尚、2名の飼育員はそちらを気にも留めない

——

ここの従業ポケ達の“タブンネ観“には少し個ポケ差がある

ローブシン、シャワーズはタブンネが大嫌い
クワガノン、マリルリ、ズルズキンはタブンネが大好きで(愉快なオモチャとして)、嘗てはローブシンもこの括りであったが、いじめ過ぎて人間に何度も怒られた為心底嫌うようになった

そのいずれにも該当しないのがダゲキとフタチマルである。彼らは人間への忠誠の強い真面目な性格で、ただただ人間の意図通りに動き、おそらくタブンネをポケモンとしてすら認識していない。ただの“商品”だと思っている

特にダゲキは人間からの信頼が厚い。彼はタブンネの“耐久ライン”というものを人間以上に正確に見極めることができて、今回4ベビを叩きつけた際も骨や臓器を傷つけず、嘔吐すらさせない中で最大限ダメージを与えられる絶妙な威力で危害を加えている

553タチワキ養タブ舎・ベビンネ章:2021/04/17(土) 08:02:41 ID:aGR0RnTI0

妹「チグッ...ミヂィーッ!ママをがえせっ!ミィたちのママをっ!...ミギヤァッ!」ゴガッ!

弟「ブボッ..ママ!マ゛マ゛ッ!行かないで!
ヂギッ...」ドスッ   ・・・・・

傷む身体がフラつきながらも、何とかヒョコヒョコと人間に向かって行き、またダゲキに投げられ腹パンされを繰り返すベビンネ達

重症とまではいかないまでも、身体のあちこちには青赤痣ができ始める。昨日せっかく取り戻したピンクチョッキ模様は二重の意味で失われてしまった

ママ「ベビたちっ!もう立たないで!もうヤメでっ!ニンゲンには敵わないミィッ!いいミ゛ィ?ミィのベビたち!!“タブンネさんの誇り”を忘れミィでっ!みんなで助け合って生きるミィ!ママはお引っ越しするだけミィ!みんなを見守り....ミグハァッ!もう蹴らないで下さいミィ!おてて引っ張らミィで!ミィァァァンミィミィ...!」

ベビ達の殴られ音と悲鳴を聞いて少し冷静さを取り戻したママンネ。必死に子供達を諭したが、人間に引かれ蹴られをされると再びみっともなく泣き散らし、どんどんと雑居房を進まされていく。

母タブが一定の距離まで離れたところでダゲキが最後に足払いでベビ達をすっ転ばせると、囲いの錠をしてスタスタと飼育員の後を追っていく

次「ミグンミグン...ママ!ママァーーッ゛!」
弟「どうして!ママ〜ッ!ざみじぃミィーッ!」
・・・

囲いの前面にしがみつき、離れていくママの背中を目で追いながら喚き散らす4ベビ。やがて雑居チビがブラインドになってしまい、その姿は完全に見えなくなってしまった

ママ「ミギー⁉︎マリルリ....ミ゛ィーッ!強いミィ強いミィ!ミギャーーーッ⁉︎あづミィ!熱いミィ!ヤメっ!ミア゛ア゛ァァァッ....」

飼「おい、マリルリ熱湯打ってねえか?ただの水鉄砲でいいんだぞ!ババアなんだから優しく...

リルリルー♪   .........

姿が見えなくなって尚、ママンネの叫びは3番囲いまで響き渡ってきた。ママの叫声に混じった楽しそうな他ポケの声に気づく余裕はなかったろう
4ベビはメソメソミィミィと柵にしがみつき、やがて力なく膝から崩れた

ママンネのリアクションが大きいせいで雑居房にはタブ集りができている。嫌がっているように見えて実は目立ちたがり屋さんなのかも知れない

——

ミズン...ミィミン....ミスッ.....ミィ~ン...........

いつまでもヘタリ混む4ベビ
誰が何か声を発する訳でもなし、やがて与えられた昼の飼料にも全く手をつけなかった

——

ママが移動されて何時間後であろうか。今度膠着を破る口火を切ったのは一番良いサイズの長女ンネであった

長「ミ゛ィッ!グミミィ〜!このハコがっ!こんなハコがいけないんだミィッ!」

徐に立ち上がると、もぬけの殻となったママンネのストールに向けて歯茎を剥き出し、渾身の力でペシペシと鉄柵をはたきだした

妹「ミ...ミィッ!そうだミチィそうだミチィ!」
次「どこまでタブンネさんをバカにするミギィ!」
弟「ニンゲン嫌いミィ!いてミィいてミィ!」

呼応するように姉に続く下3ベビ。なぜストールを攻撃するのか謎だが、凶悪な理不尽を叩きつけられ何処かに怒りをぶつけずにはいられなかったようだ

30分強それが続けられた頃、次第にベビ達の各手が止まり、目に涙を溜めながらミフゥミフゥ肩で息をしている。何度も硬い檻を叩いたせいで両手両腕が腫れて、蹄に血が滲んでいる

妹「ミ...ミァアああああん!ママぁ〜っ!」
弟「ミ゛ーーッ!ミ゛ーーッ!」
次「ミビェーーーーン!」

今度は妹ンネを皮切りに、みな汚い床に顔をつけ、精一杯ストール下に鼻を擦り寄せている。ママンネの残り香を嗅いでるようだ
ストールがキライなんだか好きなんだか

——

夜の給餌

飼「おう何だ何だ!昼飯食ってねえじゃんか。ママが居なくなって拗ねたか?ちゃんと食えよ〜、さもねえと明日出荷しちまうぞ〜」

係の飼育員は残った餌箱を見ると、一声かけてスタスタ去っていく

長「ミグッ...ミグッ...みんな、ゴハン食べようミィ。妹ンネも...ちゃんとみんなで分けよう...」

人間の言葉の意味がわかった訳ではないが、長女ンネの号令で皆ちびちびと昼飯の残りを食べ始めた
4匹とも悲しみよりも、空腹の限界に気づいたのだ。所詮タブンネは獣である

舎屋内も暗くなり始めて人間も4ベビも気づかなかったが、お隣の2ママの股下にはコロリと大きなタマゴが1つ転がっていた
タブンネのそれとは思えない、ゴンベやチゴラスの入ってそうな大きさであった

夕飯が済むと4ベビはシクシクと眠りに就く
みんなで固まらず、何故か空のストールを挟む昨日までと同じ陣形であった

———

ベビンネ章終わり

雑居、チビンネ章へ続く

554タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/19(月) 22:33:51 ID:Wug.drIY0

はじめましてミィ

ミィはタブンネ。
沢山のタブンネさん達が暮らす、広いおウチでこの世に生を受けましたミィ

沢山タブンネさんが居ると聞くと、とっても楽しそうだと思うでしょ?とんでもミィ。

広いおウチと言っても、ミィは“すとおる”っていう狭い箱の中にいつしか閉じ込められて、2つのすとおるを行ったり来たりしてずうっと過ごしていますミィ

仲良くなったタブンネさん、ミィのお兄ちゃんや弟や妹は、ミィんな“しゅっか”って言って、”とらっく“って言うニンゲンの乗り物に乗せられて、どこかへ連れ去られて行きましたミィ

ミィ、いっぱいニンゲンの言葉知ってるでしょ?
ニンゲンどもが思ってる以上に、ミィ達タブンネさんはとっても賢いポケモンなんだミィ

他にも沢山言葉知ってるミィ。たとえば
『しょぶん』『たねつけ』『こやしたぶんね』
『にく』『みきさあ』『しね』『ころす』....
ニンゲンが使うのはコワイ言葉ばかりだミィ。もっと優しい言葉をかけてほしいものだミィ

・・・

モブタブンネさんA
「嫌だミィ!死にたくないミィ!」
モブさんB
「最後に、最後にもう一度だけママにあわせてミィ!お願いだミィーッ!」

今ミィの目の前では、何匹かのタブンネさんがニンゲンと手伝いポケどもに追われて捕まえられて、とらっくに詰め込まれていますミィ。
ここで生まれ育ったタブンネさんは、ある程度の大きさになるとああやってしゅっかされるのですミィ

何度も何度も見てきた光景ミィ
ミィはとらっくに乗ったことはありませんミィ。だからその後のことはわかりませんミが、どうやら殺されて、食べられてしまうらしいですミィ
ミィ達は殺される為に生まれてきたようなものですミィ

この世には釈迦もアルセウスもございまミィ...


....バリッ!.....ピキ.....ピキピキ!.......

ミミッ!たいへんミィ!ミィの後ろで、タマゴの割れる音がするミィ!
タマゴは高いトコロに置かれていて、そのまま孵ったらベビちゃん達がイタイイタイしちゃうんだミィ!

おーいニンゲン!早く来いミィッ!.....

555タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/19(月) 22:36:16 ID:Wug.drIY0

それからなんやかんやあって、ミィのベビちゃん達が無事タマゴから孵りましたミィ

ミィ達お母さんタブンネは自分でタマゴを温めることも、タマゴを見ることすらできませんミィ。それだけすとおるの中は不自由なのですミィ

しゅっかされたタブンネさん達は気の毒ミィけど、やっぱり自分のベビちゃん達は一番大切ミィ。

・・・

ミィは何度も何度も、ベビちゃん達を産んで、おっぱいをあげて沢山お話しを聞かせて育てて来ましたミィ

この子たちの前にタマゴを3つ産んだ時は、1つは産んですぐに割られて
ひとりはタマゴの中からトクントクンて聞こえていた音がどんどん小さくなって、やがて聞こえなくなって、やっぱりタマゴのまま割られてしまって
もうひとりは孵ってすぐにジメンに叩きつけられて殺されましたミィ

生まれてから殺された子は“きけい”とか言って、ミィは見ていないけどお顔からおててが生えている子だったそうですミィ。
少し不思議なカタチでもミィのベビちゃんはミィのベビちゃん、育ててあげることも、むくろを抱かせてもらうことすら叶いませんでしたミィ

チピィーーッ!ギギーー!グイッ....ピヒッ...チ....チィ~..ッ....
—イタイ!イタイよう!ママ!ママだっこ!
 イタイ!ママたしゅけて!どうし...て?.....ママ.....

きけいベビちゃんの悲痛な叫びを、ミィは今でもよく覚えていますミィ
せっかく頑張ってタマゴから出てきて、ママのおっぱいが欲しくて鳴いていたのに、突然現れたニンゲンの乱暴な手に掴まれて、何度も何度も硬い床に叩きつけられて....

・・・

かんしょうに浸って居る場合ではないミィよね

今生まれたベビちゃんは4匹。3匹がおんなのこで1匹がおとこのこ。
今みんなですとおるの中でミィのおっぱいを飲んで寝てしまいましたミィ

ミィ〜...。なんてカワイイお顔!なんてカワイイ寝息なのでしょミィ!
みなさん生まれたばかりの赤ちゃんタブンネを抱っこしたことありますミ?

タブンネの赤ちゃんはおけけが細くてピンク色のおはだが見えていて、ふんわりとあまい良い匂いがして....

ミフフ、この姿を見て、この匂いを嗅げるのはミィのようなお母さんタブンネ達の特権ミィ!
可愛いベビ耳に”たぐ“っていうニンゲンの悪趣味な耳飾りが付けられているのがタブに傷ミィけど。。

この子達もいつかはニンゲンに食べられて....

ミィッ!今からそんなこと考えちゃいけないミィよね。天使のようなミィのベビちゃん達。ずっと良い子にしていればきっと、いつかアルセウス様がこのおウチから連れ出してくれるはずミィ!

今まで生まれてきた子たちもミィんなミィんな可愛いタブンネさんだったミィけど....

556名無しさん:2021/04/19(月) 22:46:23 ID:Z03uXVq.0
>タブンネの赤ちゃんはおけけが細くてピンク色のおはだが見えていて、ふんわりとあまい良い匂いがして....

ほうほう美味そうですなあ
今すぐ小麦粉まぶして油の中にぶちこむか
夏なら身欠きタブンネに
冬なら凍みタブンネにしてやりたい

557名無しさん:2021/04/21(水) 12:10:52 ID:0NoiTfE.0
でもこの養豚場のタブンネは食べたくないなぁ
BIGやマックスバリューで売る用かな?
ママンネが愛情たっぷりに育てたチビンネちゃんがスライスされてグラム60円かそこらで叩き売られてしまう・・・
ああ〜無情だぜ

558タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/21(水) 16:17:18 ID:AOLr6E8c0

モブさん
「ブミヒヒィ〜〜。うまそうだブミィッ!目のあくまえが食べごろなんだブヒィ〜

ミィ
「ミガァアッ!こっち来るなミィ!ミィのベビちゃんに寄るなミィッ!」

ベビちゃんを見て、おソト(雑居房)に居たひとりのタブンネさんが涎を垂らしながらオゲレツな台詞を吐きましたミィ

彼はおそらくベビちゃんを食べる気だったミィ。この囲いの柵は大きいタブンネさんなら越えられるくらいの高さなのですミィ
彼のようなタブンネさんをニンゲンは”べびんねはんたあ“などと呼びますミィ

ミフゥッ。心優しいミィとしたことが、思わず大きい声を出してしまいミィ。
見ての通りミィは清く優しいタブンネさんミが、ベビちゃん達を守るためなら容赦しないんだミィ

今のモブさんのように、鼻の穴が大きくてちょっとオゲレツなタブンネさんが、このおウチには一定数居るんだミィ

ミィは決して、オゲレツなタブンネさんのことを忌み嫌ったりはしていませんミィ。
彼らは犠牲者なのですミィ。汚いお水、陽も差さない場所に閉じ込められ続ける毎日、いつか殺される恐怖、ウンチだらけのおウチ...

色んな要因を以ってして、あのようにオゲレツなタブンネさんへと進化してしまうのですミィ。
これはてきおうへんかと云いまして...

おっと、思わず生物学者のような説明を始めてしまいましたミィ。
ミィ達タブンネさんは、ニンゲンどもが思っている以上に賢いポケモンなんだミィ。前にも言ったミか?


はなしを現在に戻すミィ

ミィに触っついて寝息を立てるベビちゃん達。

ごめんミィ。ミィの可愛いベビちゃん達。すとおるの外側で寝てミィね。起こさないようにそおっとそおっと....

....フゥッ。何とかおソトに出せたミィ。
えっ?薄情な母親だと思いますミ?
これは仕方のないことなのですミィ。すとおるの中で過ごすクセがついてしまいミィと、あらゆる惨劇が常時起こり得るのですミィ

ミィの過去のベビちゃんには、すとおると床に挟まってしまった子、ミィの寝ている間にすとおるに入ってきて、ミィの寝返りによって踏み潰されてしまった子、ミィのウンチをダイレクトにお顔で受け止めた子、色々おりましたミィ。

このおウチの各囲いを隈なく見てみて欲しいミィ。きっとどこかに、挟まりベビちゃんやペシャンコベビちゃんが居ますミィ。大体2日に1匹くらいのわりあいですとおる事故が起こりますミィ

ミィはすとおるが嫌いミィ。せめてベビちゃん達にお乳をあげる間だけでも、すとおるから出して欲しいものだミィ。
ミィを閉じ込めなくても、ベビちゃん達を置いてミィだけお外に逃げ出したりしないのミ....

559名無しさん:2021/04/22(木) 00:04:30 ID:bvq9sqkw0
寝返りで子豚を潰してしまうのは中々リアルですねぇ
共食いモブンネは中々いいキャラしてるけどこの後あっけなく死んでしまうのがタブの哀れさですな

560タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/23(金) 19:38:23 ID:B3CCVcgE0

4匹のベビちゃんが生まれて丸一日が経ちましたミィ

生まれたてベビちゃんと過ごせて幸せ一杯だと思うでしょうミか?

そうでもありませんミィ

げんじつとは残酷なものですミィ

たったの一日で、昨日までの甘い匂いは消え、ベビちゃん達はこのおウチ特有の、糞尿臭や排ガス臭に染まってしまいましたミィ
もっと空気も床も綺麗な所で子育てさせて欲しいものだミィ...


ミィには今、2つの心配ごとがありますミィ

「ヂッ...ヂィッ..」「ヂィ...ヂビッ!...ヂー」
—クチャイ...クチャイよう...
—うるちゃい...コワイ...コワイ...

ミィの横で、仲良くおしくらまんじゅう眠るベビちゃん達。
お姉ちゃん2匹はスヤスヤ眠っておりますミが、下の子2匹は一晩中苦しそうに鳴いておりましたミィ

まだその鳴き声はタブンネさんのコトバになっていませんミが、下の子達の思っていることはミィにはよくわかりますミィ。
ミィ達タブンネさんのお耳はとっても高度なのですミィ

だから街中や草むらで、タブンネさんの触覚を引きちぎって遊んでいる悪ガキを見つけたら、皆さん是非注意するようにして下さいミィ。
まったくニンゲンの子供はとんでもミィ...


モブタブンネくんA
「ブミヒヒヒ!ウンコ合戦しようミィ!」
モブくんB
「ミィーッ!ミィのはホカホカウンコミィ!
 ミガッ⁉︎潰しちゃったミィ...」
モブちゃんC
「ミィーッ!きたないミチィきたないミチィ!
 ウンチ投げちゃイヤー!」
モブちゃんD
「ここはミィのなわばりミィ!あっちいくミィ!」
モブくんE
「なんだとミィ!土地の権利書でも持ってるミか⁉︎生意気ミィ!くらえ!乾燥ウンコミィ!」

・・・とんでもないのはニンゲンの子供だけではないかもしれないミィ
今ミィの目の前では、おソト(雑居房)で沢山の子タブンネちゃんが騒いでいますミィ
一度騒ぎが起きると中々鎮まらないのですミィ

それにしても作者はタブンネさんをウンコに結びつけるのがよっぽど好きだミィ...
昔、タブンネさんをボットン便所に突き落とすSSがあった気がするミィ。
個人的にあれはかなりの名作と言え....

—⁉︎ハッ⁉︎ ミィは一体何を⁉︎

ミィの心配ごとを話すところだったミィね

ミィの心配は下の子2匹の様子だミィ。
タブンネさんは静かな場所、清潔な環境を好むポケモンであることは有名なはなしだミィ

下の子2匹は、このおウチの臭さや五月蠅さが辛いみたいだミィ。上の子はそうでも無いようでお母さんとしては安心ミが、下の子のリアクションの方がタブンネとして正しい気もするミィ...

匂いはどうしようもないミが、五月蝿いのはタブンネさんにとって本当に辛いことなのですミィ
このおウチが一度五月蝿くなると、屋根で反響して地獄のようになるのだミィ

このおウチのお母さんタブンネの中には、自らの手で触覚をちぎってしまったタブンネさんがなんにんか居りますミィ
五月蠅さにも耐えられないし、外敵もあまり来ないし、要は触覚なんて無くてもよいのですミィ。なんなら触覚の無い状態で生まれてきた子がミィのベビちゃんにも居ましたミィ
これはある意味適応変化ですミィ

561タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/23(金) 19:41:08 ID:B3CCVcgE0

皆さん何故タブンネさんに触覚がついているか知ってますミ?

『脚がおっそいから、遠くの音聴けないと肉食ポケに喰われるからでしょーwww』

とか言って、馬鹿にしないで頂きたいミィ
その通りですミィ。

いや、それだけではないのですミィ。
タブンネさんの触覚は相手の感情や体調を汲み取ったり、タマゴがいつ孵るかわかったりするのは有名なはなしだミィ

だからタブンネさんはその優しさで、他のポケモンさんやニンゲンさんのお役に立てるポケモンなんだミィ
それを食べちゃうだなんて言語道断ミィ

このおウチに外敵があまり来ないのはさっきも言いましたミィか

ここでは読み取れる感情もロクでもミィ
『コワイミィ』『腹減ったミィ』『死にたくミィ』『退屈ミィ』『どうせいつか死ぬミィ』『うるミィ』『クサイミィ』『死にたいミィ』

ニンゲンは
『美味そうだな』『早くデカくなれよ』『沢山産めよ』『良いタブ肉になれよ』
従業ポケどもは
『たぶんねってクサイ』『タブンネってウザイ』『タブンネおもしれ〜。もっと殴りて〜』

....なんだか辛くなってきたミィ

一体何のはなしだったミィか?

そうミィ、ミィの心配ごとミィ。

下の子たち、自分でお耳をちぎったりしてしまわないか心配だミィ
抱きあやしてあげたいミが、ミィの位置から短い腕が届かないミィ
ホントに地獄のような環境ミィ。
アルセウス様、なぜタブンネさんがこんな目に...


ミィの心配はもう一つありますミィ。

ミィのおっぱいのことですミィ

タマゴを産んでから、昨日ミルクをあげた時までパンパンに張っていたミィのおっぱいは完全に萎んでしまいましたミィ

初めてタマゴを産んだ時は、ベビちゃんとお別れしてしばらくしても張っていたのミ

だんだんと元気がなくなってきたミィ

いちおうさっきつねってみたらミルクが出てきたミィけど、ちゃんとベビちゃん達をおなかいっぱいにしてあげられるだろうミか...

どうかせめて、ベビちゃん達とお別れするまで出て欲しいミィ。ミルクのために、好きじゃないゴハンも残さず食べてるのだけれど...


...ミィのカラダ、よく見ると随分ボロボロになったものだミィ...

ミィのおっぱい、最初の子育てをした時は8コあったミィけど、ひとつ無くなっちゃったミィ。気づいたらこうなってましたミィ

残りの7コ全部使えたらいいミが、2つは腐ってしまったようで、絞ってみてもガマン汁みたいな苦い水が出てくるだけですミィ

アンヨも赤黒くて、毛並みも尻尾もボサボサ...

...ミィもきっと、もう若くはないんだミィ。
そういえばミィは自分がなんさいなのかもわかりませんミィ。

ベビちゃん達は大人になる前にいつもお別れだし、ママもしゅっかされたし勿論おばあちゃんも居ません

このおウチのお母さんタブンネさんはみんな同じでしょうミが、月齢感覚なんてあるはずもございまミィ...

562タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/26(月) 18:12:24 ID:S/S0DDzU0

そう言えばミィのママのことをおはなししていなかったミィね

ミィのママは、“ばあすでえたぶんね”っていう、特別なタブンネさんだったそうですミィ

ママと一緒に居たのはミィが生まれてから大きくなる前のみじかい間のことでよく覚えていまミィが、美しくとっても優しいタブンネさんでございましたミィ

ママは本当に特別でしたミィ
ミィがベビだったころ足をおケガした時、タブンネさんの魔法(普通の癒しの波動)を使って、ミィのおケガを治してくれましたミィ

ママは今でもミィの憧れミィ。ミィもタブンネさんの魔法、使えるようになりたいな...

ママはもの静かなタブンネさんでして、あまり沢山おはなしをしなかったミが、信じられないことに昔ニンゲンのおウチで暮らしていたそうですミィ

ニンゲンとの暮らしをママは詳しく教えてくれませんでしたが、ニンゲンは酷い生き物だと言っていましたミィ
ママのお腹や太ももには、タブ毛もよだつほどの傷がありましたミィ。きっとニンゲンにやられたんだミィ

ママは“たぶんねほごだんたい”って所に引っ越したあと、なんやかんやあってこのおウチに連れられて来たんだとか...
ほごだんたいはタブンネさんで飽和状態になったとか何とか。世の中には酷い目に遭うタブンネさんが沢山居るってママは言ってたミィ
どうしていつもタブンネさんだけが...

ママのお話はやめますミィ

涙が出てきたミィ

・・・


4匹のベビちゃんが生まれて数日が経ちましたミィ

え?◯◯日ってちゃんと教えてほしいって?

それは無理なお話だミィ。ミィにはせいぜい、昨日と今日と明日くらいしかモノ考えられないのですミィ
タブ脳とかバカンネとか言って馬鹿にするのはヤメテ下さいミィ...

ミィのベビちゃん達、まだコトバは可愛いチィチィって声で、アンヨもヨチヨチとしておりますミィ。
ミィんなおめめはパッチリと開いて、綺麗なタブンネブルーが覗いておりますミィ

ミィ〜、実に可愛い姿だミィ!

タブンネを食べちゃう全てのニンゲンにこの姿を見てほしいものだミィ。きっと考えを改めてくれるはずミィ

ミィが教えるまでもなく、ベビちゃん達はちゃんとミィのうしろでオシッコやウンチをしますミィ
やはりタブンネさんは綺麗好きミィ!

563名無しさん:2021/04/26(月) 18:51:24 ID:oRuhoY2E0
生まれて数日か…
ミルクしか飲んでない日齢のベビならやっぱ
タブンネそうめんかからしタブンネかなあ
地獄砂糖漬けとか焼いたら皮がクニクニ動く餃子も捨てがたい
ってママンネちゃんたらレシピに迷うような事言わないでよ

564タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/04/29(木) 21:55:01 ID:BxFgqx9U0

スクスクと育つミィのベビちゃん達

お母さんとして、本当はベビちゃんの成長ほど嬉しいことは無いのですミが、ミィはふくざつな気持ちミィ

スクスク育つってことは、それだけしゅっかまでの時間が進んでることだミィ。ミィの子育てがニンゲンをよろこばせているようで歯痒いミィ...

・・・この日は悲しいことがありましたミィ

すとおる事故を防ぐために、ベビちゃん達を押し返したらベビちゃんに嫌われてしまったミィ。どうしてこんな箱があるんでしょうミか...
ミィがベビちゃんをだっこできるのは、本当に本当にわずかな時間ミィ...
ごめんネ...ミィのベビちゃん達....

...それだけではございまミィ
おとこのこのベビちゃんが、ニンゲンにオマタを傷つけられてしまったミィ。今までのおとこのこも、ミィんな同じ目に遭わされてきましたミィ

なんでおとこのこだけこんな目に遭うのか最初はわかりませんでしたミが、今ではなんとなくわかりますミィ。

皆さん、大人の♂タブンネさんの後ろ姿を見た事がありますミ?ゆうてミィもあまり見たことありませんミが...

♂タブンネさんは、オマタの間からチェリンボみたいのがぶら下がっているのですミィ
どうやらチェリンボがないと“たねつけ”ができないみたいですミィ

ニンゲンや他のポケモンさんもたねつけをするのでしょうか?
たねつけはミィも何度もさせられてますミが、それはそれは苦痛極まりない時間で...

話が逸れがちで申し訳ミィ。
ミィのおとこのこベビちゃんが傷つけられるのは、チェリンボを取られているみたいですミィ。今思えばおとこのこベビちゃんはみんな大きくなってもチェリンボがありませんでしたミィ

どうしてそんなヒドイことを...
チェリンボがなければおとこのこは何の為に生まれて来たのか...

・・・・


また少し日付が進みましたミィ。

おマタを傷つけられた弟ンネちゃん、アンヨがまったくできなくなってしまいミィ
せっかく可愛いヨチヨチ歩きができるようになったところだったのミ....

でもお姉ちゃんふたりの力を借りて、毎日アンヨの練習をしていますミィ
女の子3匹は、みんな精一杯弟ンネちゃんを励ましていますミィ
なんて優しいタブンネさんなのでしょ!
さすがはミィのベビちゃんミィ!
そもそもおマタを傷つけられなければこんな努力は要らないのですミが....


ミィのベビちゃん達、みんなタブンネさんのコトバをお話できるようになって、ちょっとずつタブ格もこせいがでてきましたミィ

長女ンネちゃんは面倒見のいいしっかり者のお姉さん
次女ンネちゃんは大人しくて、優しいタブンネさん
弟ンネちゃん、おとこのこはこの子だけミィけど、他の子たちとも仲良しミィ。チェリンボさんが無いからなのかな...
妹ンネちゃんは一番甘えんぼさんで、明るくて愛嬌たっぷりミィ

ミィんな綺麗好きで優しくて、じつにタブンネさんらしいタブンネさんミィ!

どうかこの子たちに、たくさん幸せが訪れますようミ...

565名無しさん:2021/04/30(金) 16:31:54 ID:iLfY5NEs0
たねつけは苦痛なのか〜
その話も見てみたいですミイ

566名無しさん:2021/05/01(土) 09:55:23 ID:KkMawWC20
newポケスナのタブンネって最初の研究所?にしか出てこないの?

エアプだから誰か教えてくれ..

567名無しさん:2021/05/02(日) 19:10:50 ID:YBl6D4320
>>566
調べてみたらタブンネちゃんは「ベースキャンプ」に出るってさ
エアプどころか未プレイなもんでその研究所? の名前がベースキャンプなのかどうかもわからないけどw

568名無しさん:2021/05/03(月) 19:17:49 ID:nxYutlv60
>>567
ありがとう!
捕食は無理にしても竜族に追われるくらいの描写は見たかったなぁ...

569名無しさん:2021/05/04(火) 00:07:03 ID:Yp1YliDg0
工場による汚染とか悪い環境で狂ってしまったタブンネとか何か日野日出志作品のような情景がありますな

570タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/04(火) 19:32:13 ID:.pUx01Ko0

...また少しの日付が進みましたミィ

ベビちゃん達の幸せを願うミィですが、中々思い通りにはいかないミィ

こないだ、ベビちゃん達の初めてのオトモダチが、オゲレツなタブンネさんに殺されてしまいましたミィ

オトモダチは肥やしとなり、オゲレツな方はしゅっかされたミィ。
何もかもが地獄ミィ...

あれからベビちゃん達、すっかり元気が無かったミが、さっきミィにとって嬉しいことがありましたミィ。
4ママちゃんていう、ミィのオトモダチがお隣のおウチにやって来たのですミィ!

ミィは4ママちゃんがまだベビちゃんだった頃から知っていて、4ママちゃんのママ、4ババさんってタブンネさんともタブ見知りでございましたミィ

4ババさん.....懐かしいミィ。
今や4ママちゃんも、ママそっくりのべっぴんさんミィ!
それにしても大きなおなか...
どうか無事にタマゴを産んで欲しいミィ

—————

(ここからはミィの回想シーンミィ。どうか心して聴いて頂きたいミィ)

...それはミィが初めて“たねつけ”をさせられて、囲いつきのすとおるへブチ込まれた時だミィ

若かりしミィ
「ミゴッ....ミハッ!ぐる...苦しいミィ....ミスン....ママ!ママ〜!ミィも....ミィも死にたいミィ〜ン!」

4ババさん
「3ママちゃん、そんな悲しいことを言わないでミィ。お腹の中のベビちゃんが悲しむミィ。きっと3ママちゃんそっくりの、可愛いタブンネさんが生まれてくるミィよ!」

ミィ「あなたはお隣のおばさん...。...ベビちゃんなんて関係ミィ!どうせしゅっかされてしまいますミィ!」

4ババさん
「ミィ...。それはそうかもしれないミィけど、でもネ、3ママちゃん。世の中にはベビちゃんのまま誰かに食べられたり、目の前で子供を食べられちゃうタブンネさんが沢山居るんだミィ。だからせめて、一緒に居る間だけでも、しっかりベビちゃんを可愛がってあげなきゃ!考えようによっては、ミィ達は幸せなタブンネさんかもしれないミィよ!」

・・・

4ババさんはミィのママにも負けないくらい優しいタブンネさんで、色んなことを知っている賢タブでしたミィ

他にも色々なおはなしをしたものだミィ

4ババさんは昔、“やぐるまのもり”っていう、綺麗な木が沢山生えてるおソトの世界で暮らしていたそうですミィ

優しい旦那さんとふたりのチビちゃんと暮らしていたそうですミィ。

ある日、産みたての新しいタマゴを守ろうとして、ペンドラアってポケモンに旦那さんはタマゴ諸共殺されてしまったそうですミィ

悲しみに暮れる間も無くその数日後、残ったふたりのチビちゃんと小川へお水を飲みに行った時、ひげもじゃ(タブ舎の飼育員の一人)が突然現れて、チビちゃん達は斧でタブ頭をぶった切られて、4ババさんはもんすたあぼおるってニンゲンの道具で捕まえられて、このおウチに連れて来られたそうですミィ

4ババさんは泣き言を言わないタブンネさんだったミが、なかなか凄惨な過去だミィ...

世の中にはただの1匹も、幸せなタブンネさんは居ないのでしょうミか...

571タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/04(火) 19:35:36 ID:.pUx01Ko0

ママや兄妹達はしゅっかされ、せまくて地獄極まりないすとおるに閉じ込められ、痛くて苦しいたねつけが行われ、おなかがパンパンになって、この世の苦痛全てを背負って絶望していたミィでしたが、やがてほんの少し元気を取り戻すことができましたミィ

4ババさんの励ましもありましたミが、ミィの初めてのベビちゃん達が生まれたのですミィ!ミィんなそれはそれは可愛いタブンネさんでしたミィ!

最初のベビちゃんは全部で7匹でしたミィ
1匹はすとおるに挟まってローブシンに殺され、1匹はおマタにバイ菌が入って病死、残りの5匹は例外なくしゅっかされましたミィ

すとおるに挟まった子は毛皮がズル向けて即死でしたミィ。剥き出しになったシンゾウやハイがトクントクン動いていた様は未だに頭に焼き付いてますミィ
ビョーキになった子はおマタからじゅんばんに身体中が紫色になって行きましたミィ。可愛いアンヨがドロリと溶け落ちた時は絶望的なキモチでしたミィ
しゅっかされた子達の叫びも忘れられませんミィ

回想シーンですら幸せから絶望までの顛末が早すぎるミィ。
どうしてタブンネさんはフツーの死に方ができないのでしょうミか...

・・・

ベビちゃんがしゅっかされたり死んじゃったりする度発狂ンネに成りかけたミィでしたが、4ババさんが一生懸命に励ましてくれて、何とかタブンネさんらしく生きることができましたミィ。
次々に生まれてくるベビちゃん達、どうせしゅっかされてしまうのだからミィもタマゴを産みたくないのですミが、生まれてきたら生まれてきたでそれはそれは可愛いくて仕方ないという、何とも言いがたい感情ミィ...


それから何週か2つのすとおるを移動するうち、現4ママちゃんが爆誕しましたミィ。

ベビ4ママちゃん
「チィチィ♪オトナリのおねえさん!おねえさんさんはママのオトモダチィ?おねえさんもおソトでくらしていたのチィ?」

若かりしミィ
「ベビ4ママちゃん。そうミィ!ミィは貴方のママのオトモダチミィよ!ミィはずーっとこのおウチに住んでるミィのよ。ベビ4ママちゃんは可愛いタブンネさんミィね〜♪ママそっくりミィ!」

過去のミィのベビちゃんA
「ベビ4ママちゃん!こんチわ!ねえねえ、チィ達としりとりして遊ぼうチィ!」

ベビ4ママちゃん
「チィチィ!じゃあチィのばんチィ!
 えーっとじゃあ...、“おぼんのミ”」

ベビちゃんB
「おぼんのミ?えーっとえーっと...
 “ミィあどれなりん”!......あれ?...」

.........

4ママちゃんは特に明るいタブンネさんで、ミィのベビちゃん達とも仲良しでしたミィ。

やがて4ママちゃんもおっぱいを卒業して、おソト(雑居房)へ出されましたミィ
おソトに出てからは、ずーっと4ババさんのたねつけすとおる近くに陣取って居たようですミィ

・・・

それからミィもたねつけすとおるに移されて、苦行を終えておなかが大きくなって、またタマゴを産む方のすとおるへ戻された時、4ババさんに最期の時が訪れましたミィ...

ミィは無事にタマゴを産み終わったのですが、ミィより先に移動していた4ババさんはいつまでもタマゴが産まれず、おなかが大きいままずうっと苦しんでいましたミィ...

572名無しさん:2021/05/05(水) 22:30:36 ID:UNWdmCMk0
やはりベビが呆気なく死ぬ所はたまりませんな
ところでこのSSに出てくるストールという物がうまく想像できないのですが
リアルの畜舎にある牛が頭だけ出して飼料を食べてる鉄柵みたいなやつですかね?

573名無しさん:2021/05/06(木) 16:47:01 ID:zO.NNIxo0
>>572
ストールの解釈はそれでいいと思うよ
自分はリアルにYouTubeのブタ飼育動画想像してたけど
大切に細やかにお世話されてるそこのブタさん達と違うのがタブンネならではなんだよな

574名無しさん:2021/05/06(木) 17:01:06 ID:ck3X2nsY0
劣悪な方の動画ももちろんあって元ネタの子ブタやヒヨコは心が痛むんだが
某国がベビンネを床に次々と叩きつけてる奴とか
ブロイラー子タブンネの50日間として出荷されていく子タブンネ達がまだベビ上がりの日齢なもんだから
怯えてチイチイ悲鳴を上げて泣き叫ぶ映像と共に
「タブンネ達はまだ赤ちゃんのうちに出荷されます」と解説されつつカゴに詰められていくのは凄くいいね

575タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/08(土) 22:40:17 ID:8K7FcR6I0

4ババさん
「ミグフンッ....!ミフン!ミフンッ...!お....おかミィ...
 もうとっくに産まれるハズ......ぐるしぃ...
 おマタが張り裂けそうだミィ....」

チビ4ママちゃん
「ママ!どうしちゃったミィ⁉︎だいじょーぶ⁉︎ママ!しっかりして...!」

若ミィ
「4ババさん、ラミィズこきゅうミィ!ほら、ミッ!ミッ!フゥー!ミッ!ミッ!フゥー.......」

4ババさん
「あ....ありがどミィッ。チビぢゃんだぢ...3ママぢゃん....ミ゛ッ!ミ゛ッ!ブミィガッ...?グギャミミ゛ィ〜⁉︎オゴがガガガが....!!」

ブジュッ!グニュニュニュニュ.....

声がおかしいのを感じて心配になるや否や、4ババさんが大声ををだして、変な音が聞こえてきましたミィ

チビ4ママちゃん
「ミ゛ミ゛ィーッ!!ママ!ママだいじょぶ!?ミ゛ーッ⁉︎ミ゛ャーッ!3ママお姉ちゃん!ママ゛が!ママのおマタからヘンなブヨブヨが出てきたミィ!」

ミィの位置からはなんとなくしか見えませんでしたミが、4ババさんはおマタが張り裂けて身体の中の大事なモノが飛び出したのですミィ

これは後から知ったことですが、飛び出してきたのはニンゲンのコトバで言う、“しきゅう”というモノですミィ。

?「....ビャッ....ブググッ....パ....ププッ.....」

チビ4ママちゃん
「ミミ゛ーッ!たいへん!ブヨブヨからベビちゃんのアタマが!まっかっかミィ!血だらけミ゛ィ!」

若ミィ
「ミィ⁉︎ベビちゃんが⁉︎でもどうして⁉︎タマゴも産まれてないのに....??」

4ババさんはいわゆるさんらんいじょうというヤツでしたミィ。
ミィも難しいことはよくわかりませんが、ポケモンの産道はツルツルしたタマゴは通れても、ベビちゃんのようなフクザツなカタチをしたものはツッかえてしまうのですミィ

——

やがてニンゲンがやって来ましたミィ

ニンゲンA
「うわー...なんかタブだかりできてると思ったら....やっぱり産めんかったか〜。よりによってこのクソ人手足りねえ時に...」

ニンゲンB
「おいおい。オマエ今処理しようとしてる?今無理だぞ。早く積まねえとトラック出ちまうぞ!ただでさえ今タブンネだらけなんだからこの畜舎。4はとりま放置!死んでからミキサーでいいよ!」

若ミィ
「ミィッ!ニンゲンさん!4ババさんが大変ですミィ!早く!早く治してあげて!」

チビ4ママちゃん
「ベビちゃんも!ベビちゃんも居るのですミィ!お願いします!早くしないとふたりとも死んじゃ.....ミ゛⁉︎ミギャーーッ...!」ドサッ

囲いの前に張りついていた4ママちゃんが突然吹っ飛びましたミィ。それはニンゲンに追随していたズルズキンというクソポケのしわざでしたミィ

クソズキン
「プギャーーwwwなんだコイツwwwマタからクソ垂れてやんの!タブンネマジサイコー‼︎」

若ミィ
「グミィ‼︎なんてこと言うミ゛ィ!いま4ババさんがどれだけ苦しんでると思ってるミィ!あやまれミィィィィッ!」

クソズキンは囲いの中を見て、ほーふくぜっとうしながら涙まで流してましたミィ。
コイツは本当にイジワルなのですミィ!
絶対ロクな死に方できないミィ!

ニンゲンA
「おーいズキン!構うなよそんなヤツ!早く手伝ってくれ!超急ぎなんだよ今!」

若い頃のミィにとって信じられないことでしたが、ニンゲンは何事もなかったように4ババさんをほったらかしにして、しゅっかタブンネさんを捕まえ始めましたミィ
クソズキンはミィにアッカンベーしたあと、ニンゲンについて行きましたミィ

......この時ミィはある程度このおウチの事をわかっていましたミから、ニンゲンが酷い生き物なのは知っていましたミィ。
しきゅうから出てきたベビちゃんを助けてもらえないのはなんとなくわかって居たミが、それでも4ババさんは絶対助けてくれると思っていましたミィ。

なぜならばミィや4ババさんのようなお母さんタブンネは、ワリと丁重に扱われるのですミィ。
しかし現在は非情でしたミィ。

ちなみに4ババさんはニンゲンにも恨み節を決して言わないタブンネさんでしたミィ。
その4ババさんを裏切るなんて...
この時からミィは絶対にニンゲンを信用しなくなったミィ......

576タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/08(土) 22:49:46 ID:8K7FcR6I0

チビ4ママちゃん
「ミグン...ッ。イ....イタイミィ...。ミミッ⁉︎ミィーッ!ニンゲンさん!どこ行くミィ⁉︎ママのこと見て!ママはビョーキなのですミィ!早く!早くママとベビちゃんを助けて!」

若ミィ
「チビ4ママちゃん!ニンゲンはアテにならないミィ!!早く戻ってきて!みんなでベビちゃんを助けてあげなきゃ....!」



※4ママは5兄妹であった。
長兄ンネ、次男ンネ、4ママ、三男ンネ、妹ンネの順。

この時次男ンネは両脚の障害から既に出荷済み、妹ンネは所謂未熟児個体で、他に比べ体躯が小さく、知恵も遅れていた。

兄妹は不仲なわけではなかったが常にベッタリというわけでもなく
長兄ンネ、三男ンネはそれぞれ雑居房をいつもトテトテ巡回し、他タブとも仲良し
4ママと妹ンネは常に一緒に居て、排泄、食事以外の時間はずっと4ババ囲いに張りついていた

飼育員が気づくのに先駆け、長兄三男も囲い前に合流していた
4ババの子タブ達は例外なく母によく懐いていた



長兄ンネくん
「ミッ!ミミィ〜!...ママ、待っててミィ!今すぐ助けに...」

ニンゲンが役立たずだと察するや、長兄ンネくんと三男ンネくんは必死に柵を越えようとピョンピョンしだしたミィ
しかし悲しいかな、ふたりともまだチビちゃんミィから、全然届かミィ。

若ミィ
「長兄ンネくん!キミのじゃんぷでは柵を越えられミィ!ふたりで肩車して、だれかひとりが中に入るミィ!!」

チビ4ママちゃん
「ミハァッ!ミハァッ...!ミィが行くっ!お兄ちゃん、三男ンネ!ミィを持ち上げて!」

4ママ妹ンネちゃん
「おねえちゃ!おにーちゃ!はあくはあく!ママちんじゃう!」

クソズキンに投げ飛ばされた4ママちゃんが猛スピード(おそい)で戻ってきて、囲いの中へ入り込みましたミィ
見事な兄妹の連携プレーでしたミが、褒めてる場合ではありませんでしたミィ。
一刻も予断を許さミィ

4ババさん
「...ミガッ...ミフッ....ァァッ..ググッ......
チビ4ママちゃん
「ママ!ママしっかり!ミィが見えるミィ⁉︎今たすけ....ミ...ミィ....そういえば助けると言っても何をどうすれば....」

4ババさん
「....ミハッ...?そこ....に居る...のチビ4ママちゃ....ミィ?
....ミィはもう....ダメ...ベビチャ...を...」

死にそうな状態になって尚、4ババさんはどこまでも賢タブでしたミィ

4ママちゃんはオロオロするばかり。

4ババさんの覚悟を察してミィも涙腺が崩壊しそうでしたミが、必死に4ママちゃんにはなしかけたミィ

若ミィ
「チビ4ママちゃん!ブヨブヨからベビちゃんを引っ張り出してあげて!まだちゃんと生きてるミィ!」

恩タブとそのベビちゃんが半死じょうたいだというのに、ミィはしゃべることしかできなくてそれは辛かったミィ....
それでも4ママちゃんは必死にミィの指示を聞いて、ベビちゃんをしきゅうから救出したミィ

チビ4ママちゃん
「3ママお姉ちゃん!ベビちゃんが出てきたミィ!でも血だらけで苦しそう...!」
若ミィ
「ベビちゃんはきっと息ができないんだミィ!チビ4ママちゃん!ちょっと大変ミが、お鼻の周り舐めたげて!」

.....

チビ4ママちゃん
「ミゲホッ!...ペッペッ...ミィ...ニガくて気持ちワルイ....さあベビちゃん!お鼻キレイになったミィ!頑張って息してミて......⁉︎ミィァァッ⁉︎3ママお姉ちゃん!この子お鼻が無いミィ!」

みんな決死の思いで救出したベビちゃんは、“きけい”のベビちゃんでしたミィ。

...その後なんやかんやあって、ベビちゃんは死んでしまいましたミィ....

ミィはお医者さんじゃないから詳しくわかりませんが、息をするためのカラダができていなかったみたいですミィ....

仕方のないことですミィ。そもそもポケモンはタマゴから産まれて来なくてはいけないのですミィから...

4ママちゃんや兄妹ンネちゃん達は大泣き、ミィも悲しさと虚しさで涙が止まりませんでしたミィ...

577名無しさん:2021/05/11(火) 00:45:28 ID:enrCFKqE0
奇形ベビちゃんでも頑張って助けようとする優しさとそれが無駄に終わる儚さ、たまりませんな
チビンネ章も楽しみにしてます
この健気なベビたちが出荷の所なんか特に

578タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/13(木) 17:42:45 ID:7wdwCcsY0

4ババさん
「ミグッ...ミハァミハァッ......そこにいるのチビ4ママちゃんね...?どうか...泣き止んでミィ....ママのおはなし....ッよく聞いてミィ....!」

ミィを含めシクシクミィミィというみんなのタブ泣きが響き渡る中、しゃべり始めたのはなんと瀕死の4ババさんでしたミィ

チビ4ママちゃん
「ミ゛ッ...ン??ミィ!ママだいじょぶなのミィ⁉︎そうミィ!ここに居るのはミィ!ちゃんと聞くミィ!おはなしして....!」

4ババさん
「..ッ...チビ4ママちゃん...。ママは...もうすぐお別れミィ...きっとママがい...居なくなったアト....貴方がこのストールに入ることに...なるミ゛。....なかなか.....ストールでの生活は地獄ミィ。...でも最後まで...希望を捨てミィで...アルセウス様が...グホッ!」

ハッキリとは見えなかったミが、4ママちゃんはババさんの手を握って、コクコク頷きながらシンケンにおはなしを聞いていたミィ。
シンケンに聞いていたのはミィも同じミィ。
4ババさんは時々吐血しながらも、必死にコトバを紡いでおりましたミィ...

4ババさん
「3ママちゃん...聞こえるミィ..?今までアリガトミィ....ハァ...ハァッ!あなたがおはなし相手になってくれて、とっても楽しかったミィ...!ミィのチビちゃんのコト....どうかヨロシク....ネ...」

若ミィ
「4ババさん!聞こえてますミィ聞いておりますミィ!!お礼をしなければいけないのはミィ!今まであじがどう゛ございビィ〜ッ!」

チビ4ママちゃん
「ミミィッ!オワカレって⁉︎ママ!ママしっかり!」

4ママ妹ンネちゃん
「チュミィ!ママおめめがまっしろ!ミィにもオハナシしてオハナシして!チュビャ〜〜ン!!」

...きっとこの時4ババさんは、もう目が見えていない状態だったのですミィ...
無垢な4ママ妹ンネちゃんの大泣きにつられて、またミィ達全員のカワイイ泣き声がコダマしましたミィ....

——

...4ババさんに異変が起きてからどれくらい経ってからでしょうミか...
シゴトがひと段落したらしく、さっきのふたりのニンゲンとクソズキン、それからダゲキってポケモンがやって来ましたミィ

この時4ババさんのイキがさっきより落ち着いていて、ひょっとして治してくれるのかと期待したミィでしたが、想像のキャパシティを超えるさんげきが待っていましたミィ。

チビ4ママちゃん
「ミィッ!やっと来てくれたミィ!早く!早くママを助け...

ニンゲンA
「なんだなんだ。なんでチビ1匹中入ってんだ?...うわマジ?4番まだ生きてますよ!?」

ニンゲンB
「バーカそりゃ生きてるだろ。脱腸くらいじゃ死なねえよ。タブンネってスゲえ生命力なんだから....」

ミギャア! ブヒッ! ミギュッ! ....

囲い前に集まっていた兄妹ンネちゃん達をらんぼうに投げ飛ばしながら、ニンゲンはズカズカと囲いの中へ入っていきましたミィ

ニンゲンB
「あーやっぱタマゴできなかったんだな。もう出てきてたわ」

チビ4ママちゃん
「ミィーッ!ベビちゃんに何するミィ⁉︎かえしてかえして...!」

4ママちゃんがずーっと大事に抱いていたきけいベビちゃんのムクロをニンゲンが取り上げて、らんぼうにゴミ袋の中へ突っ込みましたミィ

579タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/13(木) 17:43:54 ID:7wdwCcsY0

ニンゲンA
「へー、卵できてなくてもちゃんとタブンネの形になるんすねぇ。コレ肥やしっすか?」

ニンゲンB
「いや、アドレナリンなきゃ大した養分ねえだろうからなあ。後でその辺のマメパトにでもやっていいよ。それよりどうする4の処分?今やっちゃうか?昼休み削れるけど」

ニンゲンA
「午後便で出すんじゃないんすか?午後だけで3ピストン(トラック3往復の意)あるんすよ。どっかに混ぜれば..」

ニンゲンB
「いや、出しちゃダメだよコイツ。オレが獲ってきた完全野生だから4は」

ニンゲンA
「へー野生って出荷できないんすか?でも3の先代って出しませんでしたっけ?」

ニンゲンB
「アレは保護団の譲渡で、しかもポケセンの出生だったから。完全野生は衛生法でプロセスできねえんだよ。オマエもタブ産やるならもっと色々覚えろ」

....必死にベビちゃんを奪還しようと跳ね続ける4ママちゃんのことなど全くムシして、ニンゲンはよくわからん談義で盛り上がってましたミィ。

・・・

ニンゲンB
「...よし。じゃあ運ぶぞ。歩けるかオマエ?ありがとうな4ママちゃん!オマエのおかげで一儲けさせてもらったわ。最後の一仕事だ。頑張ってくれ!」

ニンゲンA
「ママってか完全ババアっすよねコレ。よく妊娠できたなあ...。何才なんだろ?」

チビ4ママちゃん
「ミ゛ィッ!ミ゛ー!!ママをどこ連れてくミィ⁉︎ビョーキなんだミィ!らんぼうしないで...

ニンゲンA
「うっせえなあ!邪魔!オマエ!」ポフッ!

ミギャーん!

ニンゲンB
「おーい腹蹴るな!たぶん実子だろソレ?次世代候補たしか1匹しか居ねえはずだから」

ニンゲンは囲いを開けると、4ババさんの両脇を抱えて引き摺るように連れ出しましたミィ

長兄ンネくん
「ミィッ!ママッ!ママをどうする気ですかミィ⁉︎」

4ママ妹ンネちゃん
「チミィチュミィ!ニンゲンさん!ママにイジワルしちゃヤンヤ!」

さっき投げ飛ばされた兄妹ンネちゃん‘sが再び集まってきたミィ

4ババさんは子供達の前でもニンゲンのことを悪く言わないタブンネさんでしたミが、この時チビちゃん達は危機を察していたようですミィ。
殺される時とか、死ぬ時というのは教わらなくてもわかるものなのですミィ。生き物の不思議ミィ

ニンゲンB
「1,2,3....中にいるヤツ含めて4。コイツらたぶん実子だな。ついでだから“見せしめ”やろう!おーいズキン、ダゲキ!コイツら捕まえて!」

クソズキン
「プギャーハハハ!やったなオマエら!めっちゃ良いモン見れるぜ!超ラッキー!!」
ダゲキ
「・・・・」

なぜそんなコトをするのかこの時わかりませんでしたが、兄妹ンネちゃんが次々捕らえられましたミィ。

...悍ましい出来事が待っていましたミィ...

ニンゲンの考えることは狂ってるミィ......

580名無しさん:2021/05/14(金) 22:32:22 ID:o7P7lAds0
4ババの娘は4ママだけじゃなくて妹もいるのに
なんで次世代候補が1匹だけなんだ?
長女ンネ以外の♀タブは一律出荷組ってことかな

581タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/16(日) 20:38:15 ID:e5LYManY0
 
ニンゲンA
「うーんやっぱ歩けんすね...。両脚痙攣してますわ...」
ニンゲンB
「てか随分重くねえかコイツ?子宮引き摺んのかわいそうだけどしゃーねえな。最後の苦労だ!我慢してくれ!」

若ミィ
「ミィッ!なんてらんぼうするミィ!優しく扱えミィッ!ちゃんと治療してミィよ!」

4ババさん
「...イダッ!いだミィ痛ミィッ!...ハァッ...ハッ....
...3ママちゃん....どうか取りミィださないで...ミッ...ミィは....先に天国に行くだけミ゛ィッ....バイバイミィ...。サヨナラ....3ママちゃん....ッ..!」

ミィや兄妹ンネちゃん達が返事やリアクションをする間も無く、更なるヒゲキが畳み掛けて来ましたミィ...

ズリュッ....ブポッ!...ズボッ!...ボトッ、ボトッ

「ヂビィッ!...ヂプァッ....」「...チ....ゴォッ...」

引き摺られて破れかかった4ババさんのしきゅうから、ふたりのベビちゃんが落ちて来たのですミィ!
やはり血まみれで、濁った苦しそうな泣き声をしていたミが、さっき死んじゃった子よりも大きく、たまにいる小さいベビちゃん(未熟児ベビンネ)くらいの大きさでしたミィ
さっきの子よりは元気で、手脚を必死にパタパタ動かしていましたミィ。

三男ンネくん
「ミ゛ミィーッ!ブヨブヨからまたベビちゃんが出てきたミィ!どうしよ...ママ!ベビちゃんが....!」

三男ンネくんがいち早くベビちゃんの存在に気づいて、長兄ンネくんと4ママちゃんもみんな必死に身体を捩ったミィけど、ダゲキとズルズキンに首根っこをガッシリと掴まれていて、まさに手も足もでミィ...


モブタブンネくんA
「なんだミィ!なんだミィ!あーっ!おソトにベビちゃんが落ちてるミィッ!」
モブタブンネちゃんB
「ホントだ!ベビちゃんだミィベビちゃんだミィ!でも血だらけミィ!なんかコワイミィ〜」

・・・

おソト(雑居房)にいた他の子達もベビちゃんに気づいて、ちょっとしたタブだかりができましたミィ
子供達は純粋ミィから、ちょっと珍しいことが起こるとミィんなキョーミが湧くんだミィ。おソトにベビちゃんが居ることはまず無いミィから....

若ミィ
「4ママちゃんたち!ベビちゃんはミィに任せて!今は4ババさんに付き添ってあげて!おーいだれかーッ!ベビちゃんをミィのところまで連れてきて!だれか!早く早く!」

このときミィが考えていたのは、ふたりの生まれたベビちゃんをミィが育ててあげることでしたミィ

このおウチ(タブ舎)には、“さとご”ってしすてむがあるのですミィ。
要は産卵でお母さんタブンネが死んでしまったり、おっぱいが満足に出なくなってしまったりした時に、他のお母さんタブンネが代わりにベビちゃんを育ててあげることですミィ。

タブンネさんは優しいポケモンミィからね。
ちなみにミィはこれまで3匹のさとごベビちゃんを育てたことがあるミィ。3匹ともしゅっかされてますミが...

必死に野次馬ンネちゃん達に呼びかけたミィでしたが、みんなタカってはいるものの、一定の距離を取って、中々誰も動いてくれまミィ

だれもベビちゃんを抱きあやしたりしたことなんてないし、勝手な行動をしてニンゲンに蹴られたりするのもコワイだろうし、何より血だらけで泣き声もヘンだから不気味だし...、様々な事情があったのでしょうミィ

今思えばですが、さっきメソメソ泣いていた時に、ミィがもっとしっかりしていればよかったのですミィ...。
耳を澄ませば心音に気づけたハズですミィ...
いじょうじたいでそんなココロのよゆうが無かったのですミィ...

582タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/16(日) 20:38:52 ID:e5LYManY0

そうこうしているウチに4ババさん一行はズルズルと遠ざかってゆき、ベビちゃん達は少し動きが鈍くなってきたミィ。きっと上手くイキができなかったんだミィ

ニンゲンA
「なんかウルセエな...、あーっ!軽くなったと思ったら!もう2匹産み落としてやがる!どうします?生きてるみたいっすよ?」
ニンゲンB
「コイツもう全く卵殻できねえ身体だったんだなきっと...。とりま放っとこう。時間もねえし、直産って95パーくらい自然淘汰だから。誰か喰っちまいそうで嫌だけどな...。クセになると面倒だけど、コッチも急ぎだし...」

早くしないとベビちゃんが呼吸不全で死んでしまうのを心配したミィでしたが、最期はもっと惨いものでしたミィ...。

モブタブンネくんC
「ブミィブミィ!ニクだブヒィ!ニクだブヒィ!」
モブタブンネくんD
「ぜっこーきブミィ!ニンゲンもみてないブミィ!でも血がネチョネチョしてるブミィね...」

野次馬を掻き分けて、ふたりのオゲレツタブンネさんがベビちゃんを掴んだのですミィ!

ミィ「オマエらッ!何する気ミィ!ベビちゃんをミィにわたし....」

グチィッ!ブチャッ!

「ギギィャーーーーーーーッッ!!」
「ア゛ア゛グヤァーーーーーーーーー゛ー゛」

......皆さんは赤ちゃんタブンネが食べられるトコロを見たことがあるでしょうか...
少なくともタブンネが食べてるトコロは見たことがないでしょう...。通常自然界では起こらないことだと思いますミィ...

「ミィーッ!キモチワルイミィ〜!」
「逃げろ!逃げろミィ〜〜!」..........

ァァ゛---ッ.......ギッ.......ッ.......

野次馬ンネちゃん達が一斉に逃げ出したので、ミィはハッキリとそれを見てしまいましたミィ...
ホントはまだ閉じてるハズのおめめがギョロギョロと動く様子。信じられない速さで動く尻尾。ボタボタ落ちてくるカラダの中のモノ。ブチュブチュというおにくが千切れる音...。ベビちゃんの最後の声.....

またたく間に、ベビちゃんだったモノは2つの血溜まりに変わりましたミィ

ミィからベビちゃんまでの距離はほんのわずかだったのミ...。こんな箱がなければ....

チビ4ママちゃん
「ミィーッ⁉︎今のコエはナニ⁉︎まさかベビちゃん⁉︎」
長兄ンネくん
「きっとそうだミィ!ダゲキさん!お願いミィ!ボクをはなして!大変なんだミィ!」

兄妹ンネちゃん達はベビちゃん達のだんまつまに気がついて、今一度バタバタ暴れ出しましたミが、ダゲキやズルズキンが彼らのお願いを聞くわけもなかったミィ。

ミィはただ涙が溢れて、なにも言うことが出来なくて、ただただ彼らの後ろ姿を見ていたミィ
この時4ババさんは泰然タブ若としていましたが、やがて背中がプルプルと震えてきましたミィ。
きっとベビちゃん達の悲鳴に心を痛めていたんだミィ。そのヒサンな残骸(ほとんど血だけ)を見なかったことが、4ババさんにとってせめてもの救いだったように思いミィ....

583タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/16(日) 20:39:22 ID:e5LYManY0

どんどん遠ざかってゆく4ババさん。
その道スジを見て強烈な悪寒が立ち込めてきましたミィ。向かっているのは“みきさあ”の方角でしたミから....
やがてミィの位置からは完全に姿が見えなくなってしまいミィ...

・・・・

ニンゲンB
「よーしじゃあやるか。オマエらちゃんとママの最後見とけよ。しっかり旨味溜めるんだぞ〜」

クソズキン
「わーいわーい♪お楽しみ!タブンネはコレがお似合いだぜ〜」

4ママ妹ンネちゃん
「チミィチミィ♪おたのしみってなんだミュチィ?このハコおもちゃなのミュミィ?」

モブママンネさん(22番)
「ギャミー‼︎みきさあが始まるミィ‼︎イヤーーッ!ミィャァーー!」
モブママンネさん(19番)
「あなた!これまでよく頑張ったミィ!決して悲観しないで!きっと天国に行けるミィから!南無阿弥タブツ。南無阿弥タブツ...」

周辺が騒がしくなってきましたミィ...
....ミィのイヤな予感は当たってしまいました...
...まさか4ババさんがみきさあにかけられるなんて...。しかもどうやら子供達の目の前で...。なんでそんなヒドイことを...。どうして4ババさんがこんな目に....許されミィ...!

ミィの生涯で、みきさあが起動されたことはこれまで2,3度ありましたミィ。
ミィは遠い位置に住んでますからそれを見たことはありませんが、みきさあとはタブンネさんを殺戮するニンゲンの兵器のことですミィ。それはそれはコワイ音で、いつももの凄い叫び声が聞こえますミィ

タブンネさんがなぜみきさあにかけられるのかよくわかっていませんでしたミが、てっきり悪さをしたオゲレツタブンネさんが殺されるのだと思っていましたミィ。
まさか優しい4ババさんが殺されるだなんて...

ビョーキだから治してもらえるなんて希望をチラッと持ってしまったミィが恥ずかミィ。4ババさんはきっと、しきゅうが飛び出した時にこの運命をわかっていたのでしょうミィ...


•••ギュいーーーーーーーーーーン..!!

ブチャッ!グジュルジュジュジュ....!!

4ババさん
「ア゛あ゛がーーーっ!!ギギギグぐっ..!!聞いでミィーーッ!ビィのごどもだちッ!しんあいなる同胞たちッッッ!4ババ死すともタブンネ死せずビィーッ!どうがっ!どうかみんなタブンネの誇りをっ!み゛んだで助けあって生ぎるミィーッ!タブンネは優しい生き物ミ゛ミ゛ィーーッ⁉︎オゴガガガガグガげべべベッ......」

「ミィーッ!マ゛マ゛ッ!マ゛マ゛ーーーーーーッッ!」
「ママ⁉︎チミャ〜ーーーーッ...チゴプルルルッ.......」
「イヤ゛ーーーッ!ヤベでっ!!ニンゲンざんっ!!ごのキカイを止めでぐだざいビィ〜〜〜ッ!!!」

・・・・・

姿は見えなくとも、4ババさんの最後のコトバを、ミィはしっかりと聞き届けましたミィ...
カラダが震えて涙とウンチとオシッコが止まりませんでしたミィ...

名えんぜつというのはどこの世界にもあるモノですミィ。4ババさんは最後まで強く優しい、偉タブでしたミィ...。

ミィにとってふたりめのママが殺されたも同然の出来事でしたミィ。

584タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/27(木) 21:10:43 ID:XOoSE20g0

悲劇から立ち直る間も無く、次のゲンジツがやってきましたミィ。その時のミィのタマゴが孵化したのですミィ

親愛なる4ババさん、同じお母さんタブンネの仲間が殺されちゃって何もかもイヤになっていたミィでしたが、身を奮い立たせてゴハンを食べ、ベビちゃんにおっぱいをあげて、おハナシを聞かせてあやして、一生懸命愛情を注ぎましたミィ

生まれてくるベビちゃんは何も悪くないミィからね。

....それでも気が気ではなかったミィ。4ママちゃん達が心配で心配で...。

しばらく経っても、4ママちゃん達はミィのトコロにはやって来ませんでしたミィ

よく考えたら4ママちゃんはきっとたねつけをする方のすとおるに閉じ込められたんだと気づきましたミィ。こんな狭苦しいすとおるの中で悲しんでると思うとフビンでならないミィ。

4ママ妹ンネちゃんも心配ミィ。カラダも小さな子でしたし、いつまでも幼くてとっても純粋な子でしたミから...。
きっと4ママちゃんのすとおるの近くに居て、ふたりで静かに過ごしているだろうと都合の良い想像をしていたミィでしたが、ゲンジツとはいつも辛いモノですミィ....。


4ババさんが死んじゃった次の日、いやそのさらに次の日、いやいやさらに次の日だったでしょうか。よく覚えていませんミが、見慣れないふたりのやつれたタブンネさんがミィの囲いの前までトボトボやって来ましたミィ。そのコエを聞いてギョッとしましたミィ

「3ママお姉さん、ママが....ママがニンゲンさんに殺されちゃったミィ...」

ミィ「ミィーッ!そのコエはっ!長兄ンネくんミィ‼︎?じゃあひょっとしてオトナリに居るのは...」

三男ンネくん
「そうミィ、ボクは三男ンネ。もうイヤミィ...ボクも死にたいミィ....

ミィ「ふたりとも!気を確かにするミィ!キミ達は4ババさんのブンまで生きなくちゃ...!ところで4ママ妹ンネちゃんは⁉︎4ママちゃんのトコロに居るのミィ⁉︎」

長兄ンネくん
「...ミスンミスン.....。3ママさん、妹ンネは死んじゃったミィ。みんなでママが死んじゃうトコ見せられて、その時アワ吹いて倒れちゃって...、そのままオタブツミィ....」

ミィ「...そんな....ッ......」

なんて言ったらいいのか、ミィには続くコトバが出てきませんでしたミィ

4ママ妹ンネちゃんの精神では、きっと刺激が強すぎてショック死してしまったんだミィ

仕方がないミィ。大好きなママが目の前で惨殺されたのですミィから...

585タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/05/31(月) 17:45:24 ID:8IjuGH1I0

数日前まで可愛くて元気いっぱいのタブンネさんだった長兄ンネくんと三男ンネくん

廃タブの如く生気を失ってミィの囲いの前で、いつまでもヘタり込んでいましたミィ

ミィの指示によって少しだけゴハンは食べましたが、それから一言も喋らず過ごしていましたミィ

・・・

彼らがやって来て次の日のことでしたミィ

ふたりはニンゲンに捕まえられ、朝のとらっくに乗せられてしゅっかされましたミィ

ニンゲン曰く“みぃあどれなりん”がおーばーふろうしただとか何とか

要は元気が無くなって、大きくなれなさそうだからしゅっかされたみたいですミィ。あんなヒドイことをしておいて、ニンゲンはなんて勝手な生き物ミィ!
みぃあどれなりんってなんなんだろミィ....

ふたりはたいした抵抗も見せず、ミィにひとことお別れを言って、トボトボととらっくに乗せられてゆきましたミィ
ミィの位置からとらっくはハッキリとは見えないのですミが、彼らの悲壮なうしろ姿と、一際小さなカラダ(出荷ンネの中で)が切なくてたまりませんでしたミィ....

•••ニンゲンは許せミィが、彼らにとってこれは幸せなことだったと思うことにしておりますミィ。きっと4ババさんと同じ天国に行けるでしょうミから...。

こんな死に方を幸せと言うのもヘンなおハナシな気もするミが....なんて狂った世界だミィ。

—————

昔のハナシはおしまいにするミィ
長くなって申し訳ミィ

今いったいなにを....

ミィ!そうだミィ!さっき4ママちゃんがおトナリに来たんだミィ!

連れられてくる時に見たケド...ホントに大きなお腹だったミィ....。なんだか4ババさんの最後の時に似て....

ミィッ!そんなフキツなことは言うもんじゃないミィよね。4ママちゃんはミィよりずっと若くてピチピチタブンネさんなんだミィ
きっと無事にタマゴが産めるハズだミィ!


ミィの4匹のベビちゃん達、さっき4ママちゃんに怒られて、今はミィのすとおるにしがみついています。
でもミィんなチラッチラッて4ママちゃんを気にしてるみたいミィ。とってもいじらしいミィ!オトナリは今まで誰も居なかったものね。気になるよね。

さっきは怒っていたけれど、4ママちゃんはホントはとっても優しいタブンネさんなんだミィよ。ベビちゃん達もそれがわかってくれたら嬉しいミィ。

586タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/02(水) 23:54:41 ID:EuC3QhSE0

4ママちゃんがオトナリにやって来た次の日のことですミィ

4ママちゃんの産卵がはじまりましたミィ

オトナリでお母さんタブンネの産卵が始まっても、もちろんミィはお手伝いすることができませんミィ。すとおるに閉じ込められていますから....

産卵がとても大変なコトだとゆうのは皆さん想像に易いと思いますミィ
4ババさんの例からもわかるように、まさしくいのちがけミィ!
(妊娠促進剤と多量排卵の所為。野生や育て屋はこのタブ舎に比べかなり低リスクでほぼ安産)

産卵しているお母さんタブンネの前をたまたまニンゲンが通りかかると手伝ってくれることもあるミが、今は全くその気配が感じられミィ。

まったくニンゲンは何してるミィ!
タブンネさんのタマゴをなんだと思ってるミィ!

——

産卵が終わってしばらくして、ようやくニンゲンがタマゴを取り上げて、ほるだあってゆうボウの上にタマゴを嵌めてゆきましたミィ

4ママちゃんのタマゴ...、1,2,3....全部で5つミか。大変だったでしょう....。どうか母子ともに無事であって欲しいミィ。今4ママちゃんはあおむけに横たわっています。

え?すとおるに居るのになぜタマゴの数がわかるかって?ミィ達タブンネさんのおミミはとっても高度なのですミィ。見えなくたって鼓動の数を数えることなどお茶の子みぃみぃミィ!


.....そんな自慢をしている場合ではミィ。

タマゴは5つって言いましたミが、実はひとつ、産んでる途中に割れてしまいミィ
すとおるの中でタマゴを産んだせいですミィ
あっぱくされてハレツしてしまったのですミィ

なんでこんな狭い場所でタマゴを産まなければならないのでしょうミか....
タマゴが割れちゃう音もそうだし、中から出てきたベビちゃんのコエもそれはそれは可哀想なモノでしたミィ

ふつうタマゴが孵るまでは2,3日かかるミィからね。きっとカラダも凄く小さいし、イキも上手くできなかったことが想像されますミィ

どうか広くて綺麗な草むらでタマゴを産みたいものだミィ。なぜいつもタブンネさんだけがこんな目に....


不満を言っていても仕方ないミィよね...。

今はとにかく4ママちゃんと、産まれたタマゴを心配しなくては!

4ママちゃんは死んでしまうことはなかったミが、ハァハァッってイキが苦しそうミィ
タマゴもニンゲンが来るまでミシミシってイヤな音が聞こえていたし、中のベビちゃん達が心配だミィ....

587タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/03(木) 22:53:14 ID:Jb.YrznM0

さらにその翌日のことですミィ

朝、ミィが起きたら4ママちゃんはすでに起きていて、ガツガツと餌箱を貪っていましたミィ

元気でよかったミィ〜!

あたりまえミィよね!4ママちゃんはまだまだ若タブさんなんだから!それにしても凄い勢いミィ...

ミィ「4ママちゃん!おはミィ!元気で良かったミィ!」

4ママちゃん
「ビフンッ!うっせえミ!」ムシャムシャ...

ミフフ、もう話しかけるのはやめるミィ。ホントに元気で良かったミィ!
聞こえるベビちゃんの鼓動も1,2,3,4,5。タマゴも無事みたいミィね。何もかもが順調ミィ!
まぁベビちゃんはどうせいつかしゅっかなのですミが...

ミ?4ママちゃんのキャラが回想シーンと全然違うって?

それは仕方のないことですミィ

4ママちゃん、今はちょっと乱暴なコトバづかいになっていますが、最初のベビちゃんを産んだ時はそれはそれは優しいお母さんでしたミィ

しかしその子達と引き離されて、挙句しゅっかされてしまってから、タブが変わってしまったのですミィ

これはお母さんタブンネなりの処世術なのですミィ。
まともな感覚でいたら狂ってしまいますミからね。なんせ精一杯の愛情を注いで育てたベビちゃんがしゅっかされるのですミから....。

ミィの知ってる他のお母さんタブンネにも、タブが変わってしまったタブンネさんがおりますミィ

4ママちゃんはまだマシな方なんですミィよ。

お母さんタブンネのタブが変わってしまうと、コトバづかいが悪くなったり無口になったりするだけでなく、聞こえる鼓動がポケモンではないみたいになったり、ベビちゃんをムチャムチャ食べちゃうタブンネさんになったり....

4ママちゃんはコトバづかいこそ少しオゲレツですミが、聞こえてくる鼓動は昔と変わらない、トクントクンって優しい音ですミィ。

上手く言えませんミィけど、ニンゲンのコトバでゆうところの“えんぎ”をしているようなモノだとミィは思っています

なんだかミィの触角、某ハンター漫画の某念能力者みたいになってるミィね...
まったく物語によっていろんな設定がつけられるものだミィ
どうか皆さんもっとタブンネさんをリスペクトしていただきたいミィ....


妹ンネちゃん
「チィチィ♪ねえママ?あのまんまるからベビちゃんが出てくるチィ?」
長女ンネちゃん
「きのうよりオトがおっきく聞こえるミチ?ねえママ、もうすぐ産まれるミチィ?」
弟ンネちゃん
「ねえママ、ボクたちもあのまんまるから出てきたの?」

ミィ「ミッミッ♪ベビちゃん達!その通りミィ!きっと明日にはカワイイベビちゃんが産まれてくるミィよ!あのまんまるは“タマゴ”ってゆうんだミィよ。」

ミフフ。ミィのベビちゃん達もタマゴが気になって仕方ないみたいだミィ。

それにしてもタマゴを初めて見るハズなのに、なんてものわかりが良いのでしょ!
さすがはミィのベビちゃん!
ミィのきょういくが良かったのかしら♪

(昨日破裂した卵から超未熟児ベビンネが出てきて死んだのを見ている)

588名無しさん:2021/06/07(月) 01:23:45 ID:yqoLaMdQ0
そうね
タブンネちゃんの事はちゃんとリスペクトしてるよ
ミィアドレナリンってすごいよね
しかも可愛いから愛情をもっていぢめちゃう
ベビちゃん達もこれからしっかり旨味を溜めていってほしいな

589名無しさん:2021/06/07(月) 01:34:47 ID:yqoLaMdQ0
ペットショップの裏側にいた
ママべったりのかわいいチビベビちゃんがここにいたなら
小さな体で無理矢理ストールにもぐり込んだりして事故にあったり
いつまでもおっぱいから離れず餌を食べないし(チビママが手ずから食べさせてやらなくちゃダメ)結局出荷どころか柵の外に出るまで生きてなさそうなイメージあるわ

590タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/07(月) 18:52:58 ID:OkM2RIO60

ミィには夢がありますミィ

綺麗な木がたくさんあって、綺麗な川が流れている静かなトコロで、広いおウチに住んで、沢山のベビちゃん達と平和に暮らすコトですミィ。
ここのゴハンとは違う、新鮮で美味しいきのみをいっぱい食べて、ふわふわのベットの上で眠って、すとおるにジャマされずにみんなで身を寄せ合って過ごして....

すぐ近くには、4ママちゃんと4ママベビちゃん達が住んでいるんだミィ。お互いのベビちゃん同士はとっても仲良しで、いつも広くて綺麗な草むらでかけっこして遊ぶんだミィ。

おとこのこベビちゃんのおマタにはちゃんとチェリンボさんがついていて、ミィんなもちろんカラダにウンチなんてついていなくて、シッポも毛並みもいつも綺麗で....


・・・ミィ、考えごとが多くて申し訳ミィ

ずうっとすとおるの中で過ごしていますと、たくさんたくさん考えるのですミィ

ミィ達タブンネさんは知能が高くて、本当はいろんなことができて、好奇心旺盛なポケモンなのですミィ。
刺激の無い窮屈な生活を強いられ続けていますと、考えごとするしかないのですミィ....

ちなみにおソト(野生)のコトを考えるようになったのは、4ババさんのおはなしを聞いてからですミィ。ミィは生まれてからずっとこのおウチの中に居ますミィから....

それは4ママちゃんも同じミィよね。
いつかおソトの世界に戻って、元の優しい4ママちゃんに戻ってくれたらいいな。

“もり”とか“かわ”とか“きのみ”とか...
いったいどんなモノなのでしょミィ。想像するとワクワクもしますミが、なんだかむなしくもなりますミィ....


—ピキッ...バリッ!バリバリバリ...!

ミミッ⁉︎この音は!

—チィチィ!ヂギャー!ヂィッ!ミギャー!...

次女ンネちゃん
「チィッ!生まれたチィッ!」
妹ンネちゃん
「かわいいチィ!みんなおめめとじてるチィッ!」

ミィッ!4ママちゃんのベビちゃん達が無事に産まれたようですミィ!

大体タマゴが出てきてから、2回おねんねしたくらいでこうしてベビちゃんが産まれますミィ。
“ほるだあ”はとても暖かいらしくて、タマゴが早く孵化するそうですミィ。誰も近くに居ないから産まれたてベビちゃんがイタイイタイしちゃいますミが...。

早くベビちゃんが産まれるのは嬉しいけど、ホントは自分でベビちゃんのタマゴを温めたいものですミィ。

お母さんタブンネがタマゴを温めると、寝ている時にすとおるに挟まって割ってしまうからほるだあが使われるそうです。
そもそもすとおるが無ければ、決してタマゴを割ったりしないのに....

591タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/07(月) 18:53:29 ID:OkM2RIO60

...チィ....チ.....チビュー......チィ.......

....ミィ。元気な産まれたてベビちゃんのウブゴエに混じって、ひとりだけ苦しそうな泣きゴエが聞こえてくるのをミィの耳は決して聞き漏らさなかったミィ。

なにせミィ達タブンネさんのお耳はとっても高度で....
しつこいミィね

長女ンネちゃん
「ママ、ひとりだけ動けないベビちゃんがいるミチィ。カラダも他のベビちゃんより小さいミィチィ」

.....ヂ.......チィ~........チィ~.....

動けないベビちゃんはミィの位置からはどうやっても見えないのですが、長女ンネちゃんが事情を教えてくれましたミィ

泣きゴエでわかるミィ。もちろんまだタブンネさんのコトバになっていませんが、ミィくらいの実力になると、ベビちゃんの気持ちくらいは理解できますミィ。

どうやらアンヨかおててをケガしちゃったみたい。これは痛がってる泣き方ミィ

ほるだあから落ちたベビちゃんがイタイイタイしちゃうのはさっきも言ったミか?
フツーの大きさのベビちゃんならば一時的なもので済むのですミが、小さいベビちゃんだと結構重傷になることがありまミィ。

みなさん自分が生まれた時のことを思い出してみてほしいミィ
タマゴから出てきた時、自分の背よりも何倍も高いトコロからいきなり落っこちたりしなかったでしょ?
カラダの小さなベビちゃんにとっては大変なことなのですミィ。
まったくなんて不親切なおウチなんだミィ!

...まあ今はそんなこと言っていてもしようがないミィよね。
カラダが小さい子が心配ミィ。

おケガもそうだし、ちゃんとおっぱいが飲めるだろうか....
4ママちゃんがちゃんとケアしてくれたらいいのだけど、かなり不安だミィ....

——

やがてニンゲンがやってきて、生まれたてベビちゃん達の“たぐづけ”が終わりましたミィ

ミィのベビちゃん達もそうですが、ニンゲンがタブンネさんに番号をつけることをたぐづけと言いますミィ
番号をつけるくらいなら、もっとタブンネさんを大切に思って欲しいものだミィ

チュピチュピチュピ......

チュイ~♪ チィチィチッ♪ チュヤ~!チュミィ♪......

弟ンネちゃん
「チィ〜!みんなおいしそうだチィ!」
次女ンネちゃん
「おめめ開いてないのに凄いミチィ!なんでおっぱいの場所わかるミチィかな⁉︎」

ニンゲンが去ってようやく、ベビちゃん達のおっぱいタイムが始まりましたミィ
まったく最初のおっぱいくらいたぐづけ前に飲ませろミィ!

....チヒッ.....チィッ....チビッ.....チビィ~ン....ヒッ.....

どうやら文句を言ってる場合じゃないミたい...
小ベビちゃん、やっぱりおっぱいを飲めてないミィ
おなかが空いていて、寒くて、そして寂しい、悲しいって泣き方だミィ

4ママちゃん、どうか小ベビちゃんのコエに気づいてあげて.....

592名無しさん:2021/06/08(火) 21:28:34 ID:vGRdc/8M0
このチビベビちゃんの泣き声聞いてると
ママだけ愛護団体に保護されちゃって
巣穴に取り残されたまま

「オナカスイタヨウ」「サムイヨウ」「サミシイヨウ」

ってママを呼びながらどんどん弱っていくベビちゃんの小ネタ思いだしちゃってたまんねぇ

593タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/10(木) 19:03:56 ID:hBzG40JE0

4ママちゃんが最初のベビちゃんを育てていた時は、それはそれは優しいお母さんだったことは前にも言ったミか?

2周目以降生まれたベビちゃんには、4ママちゃんすごく冷たいんだミィ。
今だっておソト(雑居房)のどこかには4ママちゃんのおチビちゃんがなんにんか居るはずなのですミが、誰も4ママちゃんを訪ねては来ていません。
ハッキリ言ってしまうと、あまり慕われてないのですミィ...

ちなみにミィのチビちゃんは今おソトにはひとりも居ません。このところタマゴ不精でしたミィから...
前にもたしか一度こういう時期があったミィ
....どうでもいいミィか?


今は4ママちゃんのはなしミィよね

4ママちゃんは他の一部のお母さんタブンネのようにベビちゃんをボコしたり、まして食べちゃったりすることは決してありません。いつまでもおっぱいに引っ付いてる子を引っ剥がしてブン投げることはありましたミが...

話しかけて、あやしたりすることもしません。
4ママちゃんの子達はコトバを覚えるのが遅いし、おっぱい離れしても口調の覚束ない子が多いようです。

だけどキョーミ無さそうに見えて、踏んづけたりしないように気をつけていることもミィにはわかります
ブー垂れることが多いですが、ベビちゃんが『おっぱいほしい』って泣き方をするとちゃんとミルクもあげています。まあ座り姿勢でちょっと不親切なのですミが...

でも4ママちゃん、小さいベビちゃんやビョーキになりかかったベビちゃんにも冷たいものですミから、前にふたり、おソトに出る前に死んじゃった子がいます

これはいわゆる“自然淘汰”と言えるかもしれまミィ。自然淘汰は4ババさんから教わったことです。

おソト(野生)の世界では、弱い子よりも強い子を優先して育てることがあるそうですミィ
手のかかるベビちゃんが沢山いるとたいへんだから、強い子だけでも生き残れるようにするそうですミィ
正直よくわからミィが、おソトはおソトで色々たいへんだとゆうことミィね...

お母さん(4ババ)に知識として教わりその娘さん(4ママ)に実演を見せてもらうという、何とも稀有なできごとだミィ....


昔死んじゃったふたりのベビちゃんをニンゲンに回収された時、ほんの一瞬ですミが、4ママちゃんの凄く悲しそうな横顔を、ミィはたまたま見ていました。
4ママちゃんがホントは心の優しいタブンネさんだってミィにはわかります

....4ママちゃん、この狂ったおウチで生き抜くためにワザとイジワルな態度をするのは仕方がないミィ

でもどうか、この囲いの中に居る間だけでも、自分のベビちゃんに対してだけでも、どうか素直なココロで接してあげて。

もし小ベビちゃんが死んじゃったりしたら、また悲しい思いをすることになるんだよ....

594名無しさん:2021/06/11(金) 20:58:12 ID:bzkw7D2w0
生きるためだけのお世話して全く愛情注いであげない赤ちゃんは長生きしないって
昔そんな人体実験があったんだけど
ベビンネちゃんなんて余計もろそうだな
と言うか赤ちゃんにとってのストレスを実母自ら与えて旨味出させるとは4ママちゃん本当にタブッてるよな

595タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/12(土) 19:38:42 ID:bqYSj.6M0

今は4ママベビちゃん‘sが生まれて最初の夜です

ミィのベビちゃん達も、4ママベビちゃんも4ママちゃんも、ミィんなスヤスヤミィミィと寝息を立てています。ただひとり、寂しそうに泣いている子を除いて....。

ミィの視界にはうつ伏せに横たわる4ママちゃんのカラダ上半分と、そこにピットリくっつくベビちゃんが2匹だけ見えています。

小ベビちゃんはおそらく4ママちゃんすとおるの外側、足元に居るミィのかな?
見えてるふたりのベビちゃんは健やかなお顔で、タブンネさんらしくお腹がポッコリとしています
もうふたり見えないベビちゃんが居るはずミが、きっと4ママちゃんの反対側に居るのでしょう、気持ち良さそうな寝息が聞こえてきます。

皆さん、タマゴから出てきたばかりの赤ちゃんタブンネを見たことありますミ?
出てきたばかりの時は、カラダにベチョベチョしたお水がついていて、そしてお腹がまだゲッソリとしています。
ポケモンとは不思議なもので、生まれてすぐにゴクゴクとミルクを飲むと、あっという間にタブンネさんらしいカラダに変わるのですミィ

.....ピィ.......ピヒィ......ヂ.......ヂグッ......

....小ベビちゃん、ベチョベチョはニンゲンに拭いてもらったでしょうミが、きっとカラダはゲッソリしたままでしょう
もう泣き方も弱りきっていて、何を訴えているのかミィでさえわかりません。

寒くないだろうミか?このおウチの夜は結構寒いのです。フツーはベビちゃん同士で固まったり、お母さんにふっついたりしてあったかいするのです
どうかせめてぬくもりを得ていればいいのですが....



....ミィには今、一つの思惑があって、どうしようかずうっと悩んでいます。前にも同じように悩んだことがあります
それは小ベビちゃんをミィのすとおるまで呼びこんで、おっぱいをあげることですミィ。このままでは死んでしまうかも知れないミィから
産まれたて、ましてカラダの小さな子ならばきっと柵の下を潜れます

”きょーどーいくじ“とか言ったミィかな?
おソト(野生)の世界でも、お母さんタブンネ同士で役割を分担して、他ベビちゃんを育てることがあるそうですミィ。例によってこれは4ババさんに教わったことです。
このおウチですらさとごがありますミィからね。まあニンゲンが勝手に決めるのですミが...

しかしミィの思惑は少し事情がちがいます
4ママちゃんはベビちゃんをじゅうぶんに育てられるわけですミィから...
寧ろミィよりも若くて、きっとミルクもたっぷり出て栄養もまんてんミィ

どうせ育児放棄しているのだから、さっさと小ベビちゃんを呼び込めばいいと思いますミ?

そう単純なものでもありません。

なんというか、お母さんタブンネには“お母さんのプライド”のようなものがあるのですミィ

もし小ベビちゃんをミィが育てて、ミィのおっぱいを飲んで、完全にミィに懐くようなことになったら、4ママちゃんきっとすごく傷付きます

ミィも、もし自分のベビちゃんをさとごに出すってなったら、とてもイヤです。
他のタブンネさんを信頼していないわけではないですミが、自分のベビちゃんはとっても大事なのです
上手く伝わるミィか....

昔4ババさんから、きょーどーいくじをしても、ベビちゃんは賢くて、決して自分のママを間違えたりしないと聞いたことがあります
....4ババさんには申し訳ないミが、それは嘘です。ミィが昔育てたさとごベビちゃんは、ミィんなミィのことを『ママ』って呼んでくれたミィから
もちろん嬉しかったミが、少し本当のお母さんに申し訳なくもありましたミィ。
....そういえば一体どこから来たさとごちゃんだったのかな?

昔4ママちゃんが育児放棄した時、
「ミルクを飲めてない子がいるミィ!」
ってミィがちょっと怒ったことがあるのですミが、その倍くらいの勢いでどなり返されましたミィ
それ以来ミィは口出しをしていません....

ある意味4ママちゃんはポケモンとしての本能が残っているのかも知れミィね....

どうか小ベビちゃんが無事に....

...ミィ....

なんだかミィもねむく....

596名無しさん:2021/06/13(日) 20:31:03 ID:SWnbOkDU0
小ベビ「....ピィ.......ピヒィ......ヂ.......ヂグッ......(…もう……ごーるしても…いいよね…)」

597名無しさん:2021/06/14(月) 11:39:13 ID:Kvwgsw1A0
生まれ落ちた瞬間から痛みと苦しみと悲しみと寒さにじわじわと満ちあふれていく小ベビちゃんだけど
そのまま弱って静かにこと切れる事も許されないとか
マジタブンネさん

598タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/16(水) 21:06:44 ID:lyDi5sgA0

その次の日のおはなしですミィ

この日はミィの人生で何度目かの、人生最悪の日となりましたミィ。

お昼過ぎのことですミィ

ミィはいつものように、ベビちゃん達におっぱいをあげていましたミィ
オトナリでは4ママちゃんも、昨日産まれたベビちゃん達におっぱいをあげています。

赤ちゃんタブンネがおっぱいをせがむ泣き声と、お母さんタブンネが授乳を促すあやし声には特徴がありますミから、一ヶ所でおっぱいタイムが始まると、こうして周りでもおっぱいタイムが始まることがよく起こります。まぁミィの方はもうベビちゃんがしゃべれますから今回のは偶然ミィけど

とにもかくにも、側から見るととても平和なように見えたでしょう....

ミィは精一杯アゴを引いてオトナリを眺めると、4ママちゃんのお腹に4匹のベビちゃんが吸い付いているのが見えました。
4ママちゃんはすとおるの後ろに座るスタイルでおっぱいをあげますミィから、横たわるミィからもなんとかその光景が見えるのです。

案の定と言いますミか、やはり小ベビンネちゃんの姿は見えませんでしたミィ
4ママちゃんの授乳スタイル上、どうやっても最大4匹までしか同時におっぱいが飲めません。小ベビちゃんは撥ね出されてしまったのでしょう

ちなみにベビちゃんが大きくなってきてすとおるに完全に入れなくなると、4ママちゃんは立っておっぱいを与えるようになります。
なんて言うのか....ちょっとエッチな光景に見えますミィ

そういえばずっとコエは聞いていたけど、小ベビちゃんの姿はまだ一度も見ていないなとこの時思いましたミィ

不安で、悲しい気持ちになって、ミィが視線を戻した時ですミィ

大きな奇声が聞こえたと共に、ミィの視界に猛スピードで“なにか”が吹っ飛んで来ましたミィ

ガシャン!ゴスッ!ゴッ!グキッ!

「チィ~」「...ゥァ...」「...ッ...」「チ」

“なにか”が4ママベビちゃん‘sであると理解するのに、少し時間がかかりましたミィ
ベビちゃん’sのコエはとてもか細い、キケンなものでしたミ。
みなさん、赤ちゃんがイタイイタイすると大声で泣き叫ぶのは想像しやすいと思いますミィ。すごく痛いハズなのにほとんどコエも出ないってことは、命のキケンが想像されミィ

すとおるや囲いの柵にガッチャンして、ベビちゃん達は地面に落っこちました。
パタパタとおててを動かす子、腕がひん曲がってしまった子、ピクピクと震える子、この世のものとは思えぬ光景に少し唖然としたミィでしたが、すぐに冷静になりましたミィ

さっきの奇声も、この子達を投げ出したのも間違いなく4ママちゃん、こんなことは初めてでしたミィ。

ミィ「ミィッ!4ママちゃん!何があったミィ⁉︎」

599タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/16(水) 21:09:00 ID:lyDi5sgA0

4ママちゃん
「ミ゛ィィ゛ァぁぁ゛っっ!グミャアア゛っ」

ミィのベビちゃん達も驚いて振り向いたミが、みんな何が起きたのかわからず呆然としています。当然ミィ。ミィですら何が起きたかよくわかりません。

ブチュッ!ビリビリビチャーッ!...

少しの間4ママちゃんの呻き声だけが響き渡った中、ヘンな音が聞こえてきました。
ミィには聞き覚えのある音でした。なんと言うか、おニクがイビツに破れるような、それはそれはイヤな、とらうまになる音ですミィ....

長女ンネちゃん
「ママ!おばさんのおマタから赤いウンチみたいのが出てきたミチィ!おばさんビョーキになっちゃったんだミィ!」

視野が不自由なミィに、お姉ちゃんが4ママちゃんの状況を教えてくれました
もしかしてとは思ったけど、残念ながらそれは起きてしまいましたミィ。4ババさんと同じ状態です。

でもどうして⁉︎4ママちゃんはタマゴを産んでしばらく経っているし、さっきまで....、昨日だって元気一杯で、ゴハンだって食べていたんだミィよ⁉︎

しきゅうのビョーキ....。4ババさんと同じ...。みきさあ?殺されちゃうミィ⁉︎まさか...。そんなまさか...!?どうして。どうして...!?

....あたまがパニックになってしまって、それから先のことはミィも全部ハッキリとは覚えていません。ミィのベビちゃん達に何かを聞かれた気もするミが、4ババさんの時の事を思い出して、ココロが壊れそうだったのですミィ

チュイ?.....チィ....チィッ!

ミィがどんな姿勢で居たのか、なぜソッチを見ていたのかもわからミィが、どこからともなく産まれたてベビちゃんのチィチィ声が聞こえて、ミィの視界に、小さな小さなベビちゃんのアタマがモゾモゾと現れましたミィ
その時はミィも錯乱状態でしたミが、それは間違いなく小ベビンネちゃんでしたミィ

「ウビャーーーッ!チガァーーーッ!
ヴォォォぉぉぉぉっ.....」
—いたい!いたい!ママ、やめて!どうして、ママ!ボクもおっぱい....ボクはさびしくて....ママ......

................

ようやっと姿が見えた小ベビンネちゃんは、瞬く間に変わり果ててゆきましたミィ....
....ミィにとってはパニックが多すぎて...。気がつけば小ベビちゃんの小さくて可愛いおててが無くなって、ボタボタと血が落ちてきて、おなかから長い紐が出てきて、アタマからは黄色のグジュグジュが滴り落ちてきましたミィ。あんなに弱りきっていたとは信じられないくらいの、絶望的な大きな叫び声が聞こえてきましたミィ

死するタブは全タブ賢タブとはよく云ったものだミィ。生まれてからずうっと命の瀬戸際に居た小ベビちゃんの叫びには、たしかに意思が宿っていましたミィ。
....君も辛かったんだね。ママに甘えたかったんだね

小ベビちゃんをそんなんしたのは、目が真っ白になった4ママちゃん.....
もう、もう何も考えられミィ....。
どうして、どうしてこんなことに....

なぜいつもタブンネさんが、あの優しい4ママちゃんが、産まれたばかりのベビちゃんが......

——

「3ママお姉ちゃああ゛あん!怖いミィ!死にたくないミィ!助けて!だすげてっ!3ママ゛おでえぢゃあああんん゛!」

どれくらい経ってからでしょうミか...
聞き慣れたコエで、しかしながら絶望感に満ち満ちた大きなコエが聞こえて、ミィがハッとして顔を上げた時です。
オトナリの囲いの前、おソト(雑居房)に連れ出された4ママちゃんが精一杯コッチを向いて、精一杯の大声で叫んでいましたミィ

....そのコエは、可愛いお顔は、フキゲンな態度になる前の、昔の4ママちゃんそのものでしたミィ。
しきゅうのビョーキになったタブンネさんの末路は、ミィ以上に4ママちゃんはよくわかっているでしょう....。自分のママが殺されるのを、4ママちゃんは目の前で見せられているのですから......

600タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/19(土) 19:23:18 ID:D8nT.Xco0

.........気がつけば夜になりましたミィ

ミィの横ではベビちゃん達が身を寄せ合って寝ていますミ。お昼まで賑やかだったオトナリの囲いは、もう誰も居ません

4ママちゃんは、さっき4ババさんと同じトコロへと旅立ってゆきましたミィ
4ババさんと同じ方法で....
ヒドイ、ヒドイ方法で......

.....もう、もうミィにはなにも考えられミィ

生まれてこなければよかったんだミィ
ミィも、ミィのママも、4ママちゃんも、ミィのベビちゃん達も....みんなミィんな.....


—3ママお姉ちゃーーん!
—死にたくないミィーーッ!!
—おでえぢゃーーーン!
—だすげでビィ〜ーーーッ!
—こわいビィーーーー!!................

....4ママちゃんの最後の雄叫びが、頭の中でグルグルしています

4ママちゃんはミィよりも若いタブンネさんなんだミィ
この汚いおウチで生まれて、一度もおソトに出たこともないんだミィ
生まれて間もない時はカラダも綺麗なタブンネ模様で、チィチィ♪ってすごく可愛いコエで鳴いていたんだミィ
初めてのタマゴが孵化した時は、泣きながら喜んでいたんだミィ
ニンゲン達の為に、何個も何個もタマゴを産み続けたんだミィ
最後はビョーキになって、凄くイタイ方法でニンゲンに殺されて......

.........................

4ママちゃんが連れて行かれる時、ミィは必死に戦いました
このすとおるを壊して4ママちゃんを取り戻そうと、何度も何度もブツかりました

戦ったのは何度目ミィか....
ママとお別れした時、初めてのたねつけの時、最初のベビちゃんがしゅっかされた時、オゲレツモブさんが囲いに侵入してきた時....

すとおるに刷ってしまったせいで、ミィのお腹の横の毛も禿げ落ちてしまったミィ

ムダだとわかっていて、ニンゲンと戦うのは愚かだと思いますミ?そうかもしれません

だけど、だけど他にどうすればいいのでしょミィか?4ママちゃんは、ミィの、ミィの大切なオトモダチなのですミィよ?
その4ママちゃんが殺されちゃうのに、黙ってお祈りなんてできるわけありまミィ

ミィが戦ってる時、クソローブシンがケラケラ笑ってコッチを見ていたミィ

どうしてアイツは笑ってられるミか?
こんなの、どう考えても許されミィ
4ママちゃんも、どのタブンネさんも、尊い尊いポケモンなんだミィよ?
クソブシンも、ニンゲンも、おかしいと思わないのかミィ?アイツらにはココロがないのミィ?

ミィだって、タブンネだって、別にニンゲンを、従業ポケ達を嫌いたくて嫌ってるわけじゃないんだミィ!

どうしてこんな....

どうして.......

........

601タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/19(土) 19:23:48 ID:D8nT.Xco0

.......気づけば朝になりましたミィ

おウチの外が明るくなっても、ミィ達タブンネのトコロには、お日さまは届きません。

お日さまの下はポカポカあったかいって、昔ママや4ババさんがゆってたな....

遠くでマメパトの囀りが聞こえるミィ
空なんて飛べなくてもいいから、生まれてきたくなかったミィ

——

やがてベビ達もムニャムニャと起き出したミィ

ミィが何も言わなかったから、誰も何も言いません

——

やがてひとりのニンゲンがやって来て、ブツブツ言いながらミィのエサバコにほんの少しゴハンを入れて去って行きましたミィ
昨日食べなかったから、あまり好きじゃないゴハンが山になっています。食べようとも思いません

ニンゲンはなんで毎日毎日ミィのエサバコにゴハン入れるんでしょ?そんなことして楽しいミか?いいことなんかミィのに

——

「......チスンチスン。ママ、おっぱいちょーだい。
ママ。お願いチ。」

ミィ?....今のコエは、妹ンネちゃんミか?

.....もうミィにはそんな気もなかったミが、気がつけば横になっていて、ベビちゃん達がミィのおっぱいに吸い付いています

ベビちゃん達におっぱいをあげる時は、いつもとってもくすぐったくて、勢いが強い時はチョット痛い時すらあるのですミが、その痛さすらも嬉しさが溢れるものでした。タブンネさんの特徴なのかな。

しかし今は嬉しさなど感じられません
煩わしいだけです
....なんだか4ママちゃんが赤ちゃんに冷たくなった理由がわかった気がするミィ。きっと4ママちゃ..

チィ.... ミチッ... ....チビン.... ....ミッ

.....ミィ。いつもはずうっとおっぱいに吸い付いているベビちゃん達が、少しだけ吸って離れていきました

......思わず、触覚を使いました。
何度も言いますが、ミィ達タブンネさんの触覚は、感情を読み取ることができます

.....ベビ達、『寂しい』って思ってるミィ。
それだけではミィ。おなかがすいて、『ママどうして?』って気持ちミィ。今おっぱいを吸ったばかりなのミ....


.....どうゆうことかわかったミィ....

ミィ、ミルクが出なくなっちゃったんだミィ...

ベビ達は隅っこに固まっておしくらまんじゅうしています。昨日の朝よりもおなかがペッタンしているように見えます

もう、ミィにはママの資格もミィ
ごめんネ。ミィのベビちゃん達....
4ママちゃん、どうやらミィも、そのうちソッチへ行くようだミィ....。待ってて、また仲良くしてね....

602タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/21(月) 22:08:03 ID:Wiv7muPA0

ミィッ!

こうしてただメソメソしているわけにはいかミィ!

ミィはお母さんなんだミィ!優しい優しい、タブンネさんなんだミィ!
ベビちゃん達におっぱいをあげる為に、ゴハンも食べなきゃ!お水も飲まなきゃ!沢山おはなししてあげなきゃ!沢山愛してあげなきゃ!


4ババさんのおはなしを思い出すミィ。
世の中には、まだ目の開く前に食べられちゃうベビちゃん、目の前でタマゴを破られちゃうタブンネさん、気の毒なタブンネさんが沢山居るんだミィ

ミィは、ミィの目の前には、可愛い可愛い、大切な大切なベビちゃん達が居るんだミィ!
ミィは幸せなタブンネさんなんだミィ!

この子達ももうすぐおっぱいを卒業して、いずれはとらっくに乗せられて、短い命が終わってしまうんだミィ。今ミィがおっぱいをあげることは、キライなニンゲンを喜ばせるだけかもしれミィ。

でも、でもこの子達は、毎日真剣に生きているんだミィ!
こんな汚くてうるさくて毎日酷いことが起こるおウチに生まれたくて生まれてきたわけじゃないでしょうミが、それでもどの子もとっても優しくてココロの綺麗な、タブンネさんらしいタブンネなんだミィ!

ベビちゃんは何も悪くないんだミィ
お母さんが、ミィが、せめて少しだけでも、ほんの少しの間だけでも、幸せにしてあげなくちゃ!

ありがとミィ、妹ンネちゃん。
たいせつなことを思い出せたミィ。
ごめんネ、ベビちゃん達。おなかがすいていたよね。ママに甘えたかったよね。不安だったよね。

きっともう少し、一緒に居られるから。
ママは君達のおかげで、とっても幸せミィ!

603タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/21(月) 22:08:42 ID:Wiv7muPA0

ミィの思いは、なんだか振りのようになってしまったミィ

お昼のゴハンの時間のことミィ

ニンゲンはミィのゴハンだけではなく、ベビちゃん達のゴハンとお水も置いて行きましたミィ

ミィはこれまでなんにんものベビちゃんを育てていますから、ベビ用のゴハンが与えられる意味がわかるミィ
もうすぐきっと、この子達とお別れしなければなりません

———

ミィ達のゴハンのことをおはなししていなかったミィね

ミィ達のゴハンは、おソト(種付けストール前の屋外)になっているヤツ(黒ずんで小さくて歪な形状のオボンオレン)が主な原料だそうですミィ。ミィのママがそう言ってましたミ

.....ママはそこまでしか教えてくれませんでしたが、ずうっと食べているうち、ミィには気づいたことがあります。このゴハンにはなんと、タブンネさんが混じっています。

間違いではないと思っています。
だってゴハンを眺めてみると、所々ピンクのおけけが混じっていますミから。
そしてたまに入っているイモムシみたいなのは、きっとタブンネさんの触覚です。
気づいてからはミィはイモムシは食べていません。食べれるハズがありません。
仲間を食べていることに気づいてからしばらくは、ゴハンを食べられなくなってしまったものですミィ。
...まあおっぱいを出すためにまた食べ始めたのですミが。それでも進んで食べたいとは思わミィけど。これしか食べものはありません

ニンゲンはこのゴハンのことを“たぶこっぷん”と呼んでいます。改めてニンゲンの考えることは狂っていると思いますミィ。
どこまでタブンネさんをいじめたら気が済むんだミィ!仲間を食べさせるなんて...!

ミィはファンタジーがキライなタブンネさんですミから、なるべくこの世界のゲンジツを子供達に伝えていますミが、ゴハンのことは教えないようにしています
知らないままでいた方が幸せに決まっているミィ


ママも、4ババさんも言っていたミが、タブンネさんは、本当は“おぼんのみ”っていうのと“おれんのみ”っていうのを食べて生きていくそうです。いつか食べてみたいと思っていますミィ。きっとおいしいんだろうなぁ...

(屋外に成っているのはオボンオレンだが、あまりにも汚く歪な為4ババですらそれに気づかない。工場群排気と酸性雨の為か味はやや酸味と苦味があり、「肥やしタブンネ」の為か少し旨味もある。本来のそれとは全く別の代物である)

———

長女ンネちゃん
「ねえママ、もうすぐお別れするミィ?ママはどこに行くミィの?」
妹ンネちゃん
「チィおソト行きたくない!ずーっとママと一緒チィ!」

ミフフ、ベビちゃん達が少し元気を取り戻してくれてよかったミィ。それにしても、生まれた時はあんなに小ちゃかったのに、よく成長したものだミィ。

ベビちゃんが大きくなるのは本当はすごくすごく嬉しいことなのですミが、ミィはフクザツです。
スクスク育つってことは、それだけしゅっかまでの時間がなくなるってことですミィから....

604名無しさん:2021/06/24(木) 14:43:27 ID:jzs/LFCo0
ここから子タブンネ達がどういう風に処理、加工されて運び出されていくのか今から楽しみ

そしてポケモンユナイトにもまさかの殴られ役としてタブンネちゃん続投とは……
やっぱ殴られるの好きなんすねコイツ

605名無しさん:2021/06/24(木) 21:12:40 ID:AffyRklM0
>>604
一度離乳で引き離すのに
4ママちゃんが初子の出荷がトラウマだって言ってるとこから
ベビを甘やかすいけないママには目前でやるのかと想像できてエモいですね

606タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/25(金) 21:17:02 ID:WaIDFhn20

感慨に浸っているばかりではいられません

ベビゴハンが与えられたということは、今一度ベビちゃん達に伝えなければならないことがあります。
ミィ達タブンネさんの運命ですミィ

おソト(雑居房)では、毎日のようにタブンネさんがとらっくに乗せられて、しゅっかされてゆきます。

今ここにいるようにミィはとらっくに乗ったことはありませんミが、かぜのたよりというヤツで、しゅっかされるタブンネさんの行く先はなんとなくわかります。

殺されるのですミ

ほとんど感情の無さそうなおチビちゃんすら、とらっくに乗せられる時は凄く大声で暴れます。殺されることをみんなわかるのです。タブンネさんはとっても賢い生き物だってことを、どうか知っていただきたいミィ

ミィ達は、タブンネさんは、ベビちゃん達は、ニンゲンに殺される為に生まれてきて、殺される為に生きているようなものです。

....なんか我が子へ伝える教育としてイカれてる気もするミが、ゲンジツはゲンジツなのです


ミィのようなお母さんタブンネは、ベビ達を可愛いするだけではありません。色々なことをおはなしします。

もちろん4ババさんも色んなおはなしをしていました。

....いつも隣でミィもそれを聞いていました。

4ババさんはとっても優しくて、賢いタブンネさんでしたミが、ミィにはひとつだけ、どうしても賛成できないことがあります。
ニンゲンや従業ポケのことですミィ

4ババさんは、ニンゲンさんにも、他ポケさんにも、みんなに対して優しく接することが、“タブンネの誇り”だと言い聞かせていましたミィ。
しかしながら、いずれはニンゲンの手によってしゅっかされるのです。従業ポケどもはニンゲンに従って、タブンネさんをイジメるのです。そんなヤツらに優しくなんてする必要あるわけミィ!

4ババさんはちょっと優しすぎたのです!
ちょっと失礼ミが、4ババさんが『ニンゲンさんにも優しく』なんて言うもんだから、ベビちゃん達はみんなニンゲンを信頼していましたミ。
そのニンゲンさんに結果裏切られるから、4ママ妹ンネちゃんはショック死してしまい、4ママちゃんはイジワルな態度を取るようになってしまったのですミィ。



ミィはニンゲンは酷い生き物だとベビちゃんに教えています。そしてニンゲンのはなしの他に、従業ポケどもに対する接し方も、ベビ達に教えなければいけません....

このおウチにはミィ達タブンネさんの他にも、色々なポケモンが居ます

まずはタブンネさんを捕まえたりぶん殴ったりするヤツらミィ。ダゲキ、ローブシン、ズルズキンってのが居ますミィ

ズルズキンとローブシンは、タブンネを挑発したり、ニンゲンの目を盗んで触覚を引っ張って遊んだりする腐れゲドー野郎共ミィ。
ダゲキはちょっとマシですミが、アイツはアイツでココロのないヤツなんだミィ。ダゲキに殴られると凄く痛いんだミィ....

607タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/25(金) 21:22:03 ID:WaIDFhn20

他に、おウチの床を掃除する係の、水の技を使うポケモンが居るんだミィ。ウンコ掃除係のクセに、みんな生意気なんだミィ!

フタチマルってヤツは割と無害ミが、しかしながら別にタブンネの味方をしてくれるわけではありません。
タチの悪いヤツはマリルリってヤツです。コイツはタブンネよりも小さくて弱そうなクセに、熱い水を吹きかけたり、ニンゲンに隠れてタブンネをブン殴ったりするクソポケなのですミィ!
もうひとり、シャワーズってのが居ますミィ。皆さんシャワーズを見たことがありますミか?おとなしそうな顔してますミが、皆さん決して騙されてはいけないミィ!とんでもない性悪女ミィ!タブンネのことを『ゴミタブ』とか『ウンコポケ』とか呼ぶのですミィ!

....そしてもう一匹、クワガノンっていうポケモンがいます。ミィがお母さんになって間もない頃にやってきました。

ミィがまだチビちゃんだった頃、シビビールってヤツが居たんだミィ。クワガノンと同じ、すごく痛いビリビリを飛ばしてくるヤツだったミィ。
未だに夢に見るミが、ある日突然、ニンゲンの横でシビビールは口の大っきい化け物に変わったんだミィ。突然の出来事におソトのチビちゃん達が逃げ出す間も無く、化け物は次々とチビちゃんを食い散らかしていったミィ。ニンゲンが慌てて化け物を引っ込め、後には見るも無惨な残骸が残りましたミィ....

シビビール、化け物が居なくなって喜んでいた矢先、クワガノンはやって来たミィ。
....なんて言うのか、ブシンやマリルリとは違う恐ろしさがありますミィ。ただただタブンネさんを殺戮することを楽しむ、ポケモン兵器のようなヤツですミィ。
ミィは戦うことは嫌いミが、クワガノンが尋常じゃないくらい強いのはなんとなくわかります。クソブシンやダゲキですらガノンが出てきたら怖がっていますミから....

———

......ミィッ。...ミグフン....ッッ.......ミスンスン.....

なんか自分で話していて、とても辛いおはなしだミィ....

ポケモンは.....同じポケモンです。

どうして、どうしてタブンネさんだけが、いつも辛い目に遭わなければならないのでしょう。殺されなければならないのでしょう。
どうして他のポケモン達は、タブンネを助けようとしてくれないミィ?タブンネじゃなくてニンゲンの味方をするミィ?同じポケモンなんだミィよ?
どうしてニンゲンは、タブンネだけを殺すミィ?マリルリやローブシンのことは可愛がるのに...。タブンネはよしよししてくれないミィ?

ベビちゃん達におはなししてこの世界のことを教えるのは当然ミィ。でもその世界自体が狂っていたら、一体ミィ達はなんのために生まれたんだミィ?
ミィだって、本当は4ババさんのように、
『みんなと仲良くするミィ!』ってベビちゃんに教えたいミィのよ?タブンネさんは優しいんだミィ。どうしてどうして、誰もそのことをわかってくれないミィ.....?



ミィッ!

いけないミィ。お母さんとして強く生きるって決めたばかりだったミィ!
ベビちゃん達は泣きながらも、ミィのおはなしを真剣に聞いてくれましたミィ。ミィがしっかりしなきゃいけないミィよね。

今までのベビちゃん達も、ミィんな、ミィんな良い子だったミィけど、今回の4ベビちゃんも、本当に素直な良い子達だミィ!

暗いおはなしをしてしまったミが、みんなどうかそのままのいい子で....
いつかきっと、アルセウス様がタブンネを助けてくれるミィ!こんな優しいタブンネさんがいつも悲しんでいていいわけが無いミィ!

きっと、きっといつか.....

608名無しさん:2021/06/26(土) 09:31:58 ID:XNiTLIDA0
そろそろクワガノンの再登場かな?
シャワーズちゃん、タブンネさん嫌いなの分かるけど
そんな汚い言葉遣いしたらダメよww

609名無しさん:2021/06/29(火) 22:00:48 ID:MU9a9HLQ0
>いつかきっと、アルセウス様が

タブンネが創造神の名前を呼ぶとか凄い不敬ですねw
そして君達が食虐ポケモンなのは、神様も承認してると思うよ。

610タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/30(水) 16:15:46 ID:BvM5LS1E0

ベビちゃん達もすっかり元気を取り戻してくれて、ミィ達おやこは、これまで以上に仲良しするようになりましたミ。

すとおるのせいで抱っこもできないし、ギュッてしてあげることもできません

それでもひとりずつ、ミィのすとおるの前まで来て、尻尾をフカフカにしてあげたり、毛並みを整えてあげたりしています
....ちょっと窮屈なんだミィけどね。
ゴメンネ....ベビちゃん達。すとおるを壊す力がママにあったら、抱きしめてあげられるのに。ホントはみんなママにもっと甘えたいよね....

きっともうすぐお別れミィ

みんなどうか、タブンネさんの誇りを忘れちゃいけないミよ?
きっと大丈夫ネ。4ベビちゃん共とっても優しいもの。ママ、とっても嬉しいミィ。



その日はみんなで精一杯ふっついて眠りました。相変わらずすとおるが邪魔するミが、それでもベビちゃん達のぬくもりをミィはしっかり感じましたミィ
これまで何度も感じてきましたが、いつもとっても優しい気持ちになります

....昔4ババさんが言ってた通りだなぁと、今思っています。
なんやかんや悲しい出来事が起きて、許せミィと思うことも一杯ありますミが、やっぱり我が子達と居られるこの時間はとっても幸せです。
ミィの子どもに生まれてくれてありがとネ。
生きていればきっときっと、良いことが起こるミィから....ママはそう信じているミィ

———

次の日になりました

昨日と違って、ニンゲンは朝と夜、2回ベビゴハンを持って来ましたミ。
いよいよお別れが近づいてきたんだと改めて感じます

ミィは今日も、代わりばんこにベビちゃん達を呼んで、すとおるの前でヨシヨシしてあげました
ホントにみんな大きくなったもので、行き違うのも一苦労です

ミィがヨシヨシしてあげられない時、ベビちゃん達はおソト(雑居房)をよく眺めるようになりました。
ベビちゃん達もきっともうすぐお別れして、おソトに出ることがわかってきたんだミィね...
まあミィがしつこく言ってるからかもだけど...

ベビちゃん達は、もしかしたら早くおソトに出たいのかもしれないミィ。なぜならば、この囲いはとっても狭いのです。今のベビちゃん達が走り回ることなんてもちろんできません。あらゆる面でこのおウチは不自由です

ベビちゃん達、長女ンネちゃんと次女ンネちゃんは割とゴハンを食べてるミが、弟ンネちゃんと妹ンネちゃんはゴハンもお水もキライみたい。
わかるよ....ママもこのゴハンは好きじゃないから。仲間を食べちゃうなんてホントはしたくないミィ

611タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/30(水) 16:18:27 ID:BvM5LS1E0

ミィ達の暮らすこの囲いも、少し様子が変わってきました

ベビちゃん達がまんぞくに動き回れないのもそうですが、昨日一日でもの凄くクサイクサイになりました。
...敢えて口には出さミィけどね。

原因はハッキリしています
長女ンネちゃん達のウンチが、ミィのと同じ破壊力に成り上がったのです。自分で言うのもとっても恥ずかしいミが、“たぶこっぷん”を食べるとウンチがとってもクサイクサイになるのです。

この囲いは、たねつけのすとおるから戻って来た時はまあまあ綺麗にされてるのですミが、お母さんタブンネとベビちゃんが暮らしている間は一切掃除されません。
閉じ込められているわけですから囲いのどこかにウンチをしなければならず、ずっとクサイままです。ミィのかわいい肉球もきっとウンチまみれミィ。決して慣れることなどありません

今回のベビちゃん達はちゃんとトイレのできる子達ですが、それでも床はあちこちウンチ跡とオシッコ跡があります。怖いことが沢山あったから、ベビちゃん達その度にお漏らししちゃうからだミィ。綺麗好きな子でも、ビックリするとお漏らししちゃいます。


なんとなく、4ママちゃんの居た囲いの方を見てみました。
少ししか居なかったから割と綺麗ミが、よく見ると血の跡がついてるミィ
そういえば、小ベビちゃんは4ママちゃんに咬み殺されちゃったんだったミィね...
あの時はミィもパニックだったミが、他のベビちゃん達はどうなったんだミィ?どこかにさとごに行ったのミィかな?

今冷静に考えてみると、あの夜小ベビちゃんが寂しく泣いていた時、やっぱり無理矢理でもミィのところへ連れ込めばよかったミィ。あんなに小さいまま死んでしまうなんて可哀想ミィ
でもあの時は4ママちゃんに嫌われちゃうかもって怖かったんだミィ

....きっと今頃、天国で一杯ママに甘えているところだよね。キミのママはホントはとっても優しいミよ。沢山ミルクを飲んで、天国で大きくなってネ...

———

次の日、また朝からベビゴハンが与えられました。

ベビちゃん達、もう少し、もう少しだけきっと一緒に居られるミィ。ママが居なくなっても、ずっと仲良くね。どうかそのままの優しさで....

——

お昼過ぎのことですミィ

ニンゲンがひとりのお母さんタブンネを引き連れて、左の囲いまでやってきましたミィ。2ママさんってタブンネさんですミィ。たしか「2ママさん」じゃなくて別のおなまえがあるって昔言っていた気がするけど、忘れちゃったミィ。ごめんなさい...

2ママさんは、ミィや4ママちゃんのようにすとおるには入れられず、囲いにそのまま置かれました。
....無理もないことだミィ。2ママさんのお腹は、4ママちゃんよりももっと大きくて、とてもすとおるに入れるワケなんてミィことはミィにもわかるミィ

ミィもすとおるの外に出たいなってちょっと思ったミが、決して2ママさんを妬んだりはしませんミィ。ホントに大きなお腹だから心配ミィ

ミィ「2ママさん、こんにちミィ。おかげんいかがミィ?どうか無事にタマゴを産んでくだミィね」

「・・・・・・」

612タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/06/30(水) 16:21:54 ID:BvM5LS1E0

ミィが優しく話しかけても、2ママさんはうんともミィとも言いません。最初のベビちゃんがしゅっかされてしまった時からだったかな?あっと言う間に変わり果ててしまった、チョット気の毒なタブンネさんです

ミィのベビちゃん達も、久しぶりのオトナリさん登場で気になってるみたい。
だけど、みんな一度隣を見たミが誰も話しかけません。怖がってるみたいミィ

....無理もないことですミィ
こーゆう言い方は良くないかもしれませんが、2ママさんはとっても不気味です。ミィは挨拶するけど正直チョット怖いですミィ

みなさんは触覚がないからわからないかもしれミィが、フツーのタブンネさんのカラダの音は、「トクン、トクン...」て優しい音が聞こえます。オゲレツなタブンネさんだとそれがちょっと早くなるような感じです

それが2ママさんの場合、「ドッ...ドッ...ドッ...」って、なんかタブンネさんどころか、生き物ではない感じの音がします。
タブンネさんの触覚は相手の感情を読み取れるのは有名なはなしミが、2ママさんは一切の感情が読み取れません。ダゲキやクワガノンですら感情があるのミ....

さっきも言ったように、彼女はちょっと気の毒なタブンネさんなんだミィ...
このおウチへ来たばかりの時は、こんな感じではなかったのです....

—————

(また昔のおはなしですミィ。ちょっとお付き合いくださいミ)

初めて2ママさんと会ったのは、たしか種付けすとおるでしたミィ

ニンゲンA
「テメー!また入ってねえじゃねえか!そんなに交尾好きか⁉︎子宮でガキ殺してんじゃねえだろうな?オイ!」

昔のミィ
「ギャミーー!ごめんなさいミィごめんなさいミィ!!叩かないで下さいミィ!蹴らないで下さいミィ!もうたねつけは嫌ミィ!タマゴは産みたくミィ!ミィヤーーーン!」

そうだミィ。あれはミィが2回くらい連続でたねつけをやらされて、なぜかすとおるを移動させられず、かわりにニンゲンからブン殴られていた日だったミィ

お昼頃だったかな?ニンゲンがまんまるいヤツ(モンスターボール)を開けると、突然2ママさんは現れたのです。
まんまるに入れられるのは必ず別ポケだと思っていたから、あの時は驚いたミィ…

2ママさん
「ミッミィ?ここがミィの新しいおウチ...?ミィッ!タブンネさんがいっぱい!でもみんな凄く汚いミィ!それにとっても臭いミィ!どうして閉じ込められてるミィッ!?ミィこのおウチ怖い!イヤイヤ!牧場に帰るミィ!」

2ママさんは登場するや否や、何かが決壊したようにけたたましく叫んでいたミィ。
ニンゲンがぶっ叩いたり蹴り飛ばしたりしながらされるがまま、ミィのオトナリのすとおるに入れられました。
すとおるに入ってから狂ったように暴れていたので、ミィはちょっとおててとおなかを擦りむいてしまいミィ。たねつけすとおるは囲いの方と違って、お母さんタブンネ同士が密接しています。

613タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/01(木) 21:54:24 ID:705nSFdc0

2ママさん
「ミ゛ィッ!ミ゛ィッ!いやミィいやミィ!どうしてこんな狭い所に...!何かの間違いだミィ!飼育員さーん!助けに来て!ベッドもソファーも無いミィ!アンヨも痛いミィ!臭いミィ!こんなのイヤー!」

時々聞き慣れないコトバを言いながら、2ママさんはすとおるの前の方を必死に叩いていました。
よくわからミィが、無理矢理連れて来られたんだなってゆうのはなんとなくわかったミィ。
2ママさんが来たばかりの時は、嗅いだことのないとても良い匂いが漂ってきました。

昔のミィ
「2ママさん、落ち着いてミィ!おソトから来たのミィ?今は悲しいかもだけど、逆らってもミィ達の運命は変わらミィ!おててケガしちゃうミィ!だから落ち着いて....」

2ママさん
「...ミスンミスン。あなたは...?どうしてそんなに汚れているのミィ?ここはどこミィ?ミィは2ママさんじゃないミィ!◯◯(忘れちゃったミィ)っておなまえがちゃんとあるんだミィ!」

昔のミィ
「...ミィ。ごめんなさいミ。◯◯...さん?ミィ達は生まれた時にニンゲンにばんごうをつけられて、それで呼びあっていますから...」

2ママさんは4ババさんともミィのママとも違う、ちょっと変わったタブンネさんでしたミィ。決して嫌いってことはありませんが、なんていうか、ちょっと見てきたものがすごく違うっていうか...、ミィとはおはなしがなかなか噛み合わミィ。



2ママさん
「ミィ〜ン♪ミミィ〜ッ♪ニンゲンさん♪きのみをくれるミィ?それともポロックミィ?ミィ、ゴハンよりも先にここから出して欲しいミィ!それにミィ、どこかにリボン落としちゃったミィ!探してきて欲しいミィ♪」

ニンゲン
「おうおうおう新入りか。元気に媚びるね〜気色ワリィぜ、それ。明日は早速イチャイチャタイムだぞ〜。楽しみにしとけよ〜」

夜のゴハンの時、2ママさんはお耳をパタパタさせて尻尾をフリフリしながら、甘ったるいコエでニンゲンに話しかけました。
ご存知のようにタブンネさんは色々な可愛いコエを出すポケモンですミが、2ママさんのコエはミィも聞いたことのないようなコエでしたミィ
....チョット悪いけど、なんてゆうか、ニンゲンに向かってそんなコエを出すのはみっともないなってその時思いましたミ

2ママさんのお願いなど聞いてもらえるはずはなく、またしばらく大声で暴れたあと、しぶしぶ“たぶこっぷん”をチビチビと食べ始めました。

2ママさん
「ペッペッ!ミケホッ!....ミィ。このフーズ美味しくないミィ。お水もヘンなお味....。ねえ、3ママさん。他にはどんなメニューがあるのミィ?おやつはポロックミィ?ヒウンアイスミィ?」

昔ミィ
「めにゅ?ぽおっく?ミィ達が食べたり飲んだりできるのは、このゴハンとこのお水だけミィ。....お察ししますミィ。美味しくないミィよね。だけど我慢して食べミィと、死んでしまいますミィ」

2ママさんはギャグみたいな顔で驚きながら絶望していましたミィ



2ママさん
「ミフッ。ミグッ。...ミンミン。....こんなの絶対何かの間違いミィ。ニンゲンさんのおウチはフカフカのソファーがあって、美味しいオヤツも沢山食べれるって....。早く迎えに来ないかな。ミィ臭い所嫌いミィ...」

なんやかんや言いながら、2ママさんはゴハンを全部食べて、お水も全部飲んでました。

2ママさんがどんなトコロから来たのか、今でもあまり詳しくは知らないミが、なんとなく悪いタブンネさんではないんだなと思いました。最初はちょっぴりニガテだったけど。

元のおウチに帰るって言い張っていましたミが、次の日たねつけが行われミィ....

614名無しさん:2021/07/04(日) 12:59:24 ID:s66uVSPM0
2ママ元バースデータブンネちゃんかw
落ちぶれたバースデーちゃん主役の話はたくさん見るけど客観的に他タブさんの目から見てみるとこんなんなのか
究極のお花畑系なんだろうな

615名無しさん:2021/07/06(火) 16:41:07 ID:2Fw5FDuE0
タブ虐するのは発達障害、愛着障害、パーソナリティー障害のどれか
つまり人間的価値が低く、貧困家庭に生まれた生まれながらの棄民であるのは明白である

616名無しさん:2021/07/06(火) 16:45:51 ID:2Fw5FDuE0
虐.厨は脳に障害があって、自分の幸せを自覚できないから他者を虐げて留飲を下げようとする
チー牛キモメンなので女にもありつけないから女性的な印象が強いタブンネを凄惨な目に遭わせることで心の平衡を取ろうとする異常性欲者なのだ

617タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/07(水) 16:55:11 ID:ne.MMYCY0

2ママさん
「ミギィ〜ッ....ッァ...。ぐ、ぐる゛ミィッ。なんなのミィ?ごのネッグレスは...?ニンゲンざん!外して欲じいビィ〜....」

昔ミィ
「2ママさん!それは“くびわ”ミィ!もう諦めるしかミィ!”たねつけ“が終わるまでは外されミィ!歯を喰い縛って!気持ちを強く保つミィ!」

朝ごはんの少し後、それは唐突に始まりましたミィ
始まる前にたねつけのコトを教えてあげればよかったなと後悔したミが、仕方がなかった気もしますミィ。2ママさんがあまりにもゲンジツを受け入れていない様子だったものですから、アレコレ言うのも気が引けたのですミィ....

ニンゲンA
「新入り、暴れんじゃねえ!もうすぐママになれるぞ〜、嬉しいなあ、良かったなー!」
ボコッ!ゴスッ!

2ママさん
「ミキャキャァァあ゛ばばっ....!いだいっ!イヤ゛ッ!ごわいミィ!ごばいビィ〜ンン....!どぼじでっ!なんでだだぐのビィっ⁉︎だでがっ!だずげでっ!ヤメてミ゛ィーーッ!」

ニンゲンB
「いや〜スゲえ抵抗っすねコレ....。ペット用個体ってどんな教育受けて....てか、あーっ!やべえ!コレって注射打ちましたっけ?」

ニンゲンA
「あーやべえ!打ってねえわ!今からでもいい!お前持ってこい!バージンの9ヶ月だから生殖は問題ねえけど、数出なくなる!」



ミィや4ママちゃんも“初めての時”はかなり抵抗したものですが、2ママさんもその例に漏れませんでしたミィ。
2ママさんは“とざま”ですミィからこの後何が起こるかまだわかっていなかったでしょうミが、恐怖で泣き叫んでいました。涙の飛沫がミィにもたくさんかかりましたミィ。

たねつけの時はくびわとくさりで自由を奪われてから、すとおるの後ろが開けられます。
ニンゲンの言う通りにお尻をすとおるの外に出すまで、きんぞくばっとってヤツで何度も突かれるのです....



2ママさん
「グミブミミグミィブィャ〜〜ァ゛ァ゛ァ゛!?びっダ〜!イダイ!ビィのアンヨ゛がぁ!?ビィ〜ぶるるっ....」

やがてニンゲンによってタブモモに“くすり”を打ち込まれ、2ママさんの呂律が回らなくなってきましたミィ
ミィはこの時何度もたねつけを経験していましたミから慣れっこというか、当たり前のできごとのようになっていましたが、改めて狂った行為だなって思いましたミィ
他のポケモンさんやニンゲンも、こんなコトをしてタマゴを作るミィのかな?

ドスン、ドスン、ズズ...ズリュズリュ.....

そうこうしているウチに、”たねタブンネさん“の足音が聞こえてきましたミィ

たねタブンネさんがなんにん居るのかミィも知らないミィけど、トコトコっていう普通のタブンネさんの可愛い足音とは違い、重々しく、何かを引きずるような重厚な音がしますミィ....

ニンゲンA
「おうおう王子来ちまったぞ!ホラ2番、姿勢悪い。もっとケツ突き出せ!」

ゴッ!ゴキッ!

2ママさん
「...グッ!....ミゴッ.....

ニンゲンはすとおるの上によじ登ると2ママさんを踏みつけ、もうひとりがボウを嵌めて2ママさんのアゴと背中を固定します。ミィのところにボウははみ出してきますが、頑丈に固定されていて助けてあげられません
すとおるはタブンネさんを閉じ込めるだけでなく、時に拷問器具と化しますミィ...

618タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/07(水) 16:57:25 ID:ne.MMYCY0

たねタブンネさん
「グミヒヒィ〜ッ♪ブミビィ!ブミッ!ブヒッ!若い娘だミィ!いいニオイだブヒィ♪はやくっ!はやぐっ!」

ニンゲンC
「お待たせっす〜2番って新入りだっけ?準備良いっすか?種Aで記録お願いしまーす。放しますよ?」

ニンゲンB
「Aね、了解。いや〜今日も不気味なほど元気だねー。。俺何に生まれ変わっても畜タブ舎の母タブンネだけは絶対嫌だわ。そんなんツッ込まれたら死ぬだろ...マジで....」

2ママさん
「.....ミィ⁉︎.....次はナニ?男の子のタブンネさん...?....ミィ?....ハァ...ッ.....あなた....しゃべり方がお下品ミ。そんなんじゃレディに嫌われえ゛オオオオオがアガガガガがびぃぃぃやーーーああ゛!?痛い!イダァァァァァビィ!ヤベデッ!おでがいヤメでミィィィガァァァァァ....!!!

ブチュッ!ゴッ!ゴッ!.......

.....惨い悲鳴とおマタが破ける音が響いて、たねつけは始まりましたミィ
ミィは何度もやらされてるって言いましたが、実は何が行われているのかハッキリとは知りません。ただおマタにものすごく太くて長くて熱い“何か”が入ってきて、カラダの中から焼かれているようなカンジです。
.....言ってるだけで震え上がるミィ

たねタブンネさん
「ブミィバッフォン!ミバッフン!アア゛ア゛♪やめられないミ゛ィ♪アア゛ッ!アアア゛ア゛♪」

たねタブンネさんの姿をハッキリ見たことは無いミが、少なくともミィが知ってるだけで3にんは居ます。
寡黙に大きなイキリ声を上げるたねさんも居ますが、この時のたねさんはオゲレツに喚くタイプのたねタブさんでしたミィ....


モブチビちゃんA
「ミュィーッ!“たねつけ”ミィ!おねえさんが“たねつけ”やってるミィ!」
モブチビちゃんB
「違うミィ!あれは“なかよし”ってゆうんだミィよ!ミィのママがゆってたミィ!」
モブチビくんC
「おにいさんの方は喜んでるミィ?ボクもおとなになったらあんなコトするのかな?なんかイヤだミィ....おねえさんがかわいそう」

たねつけが行われる時は毎度のことなのですミが、チビちゃんスペースのおチビちゃん達が集まってきましたミィ
自分がやらされる時はイタくてコワくてそれどころじゃないミが、こうしておチビちゃんのコエを聞くと改めて狂っているなと思いますミィ
純粋な子供達の前でこんな乱暴を見せつけるなんて...



たねタブンネさん
「アア゛ア゛いイ゛イ゛ッ!オオオオ゛ッ
フィニッシュだブミィーーーーー!!!」

2ママさん
「イヤァ゛ーーーーア゛ーーーーッッ!!」

やがてたねさんが果てたようで、2ママさん最初の試練が終わりましたミィ
ニンゲンたちはたねさんをよしよししながら首輪を嵌めて引きずって行き、すとおるの中には泣きながら悶絶する2ママさんが残りましたミィ

ミィ「2ママさん、苦しかったミィね。痛かったミィね。ミィ達も何度もやらされてるんだミィ。どうか、どうか助け合っていきましょミィね...!」

2ママさん
「....ァァ....ど....どうじで.....ミィ.......」

.......2ママさんはやがてそのまま失神してしまいミィ
おマタからはものすごい血が出ていたようで、ミィの足もとまで流れてきましたミィ

619名無しさん:2021/07/07(水) 21:13:39 ID:NJNAjL8s0
頭お花畑のタブンネが現実を知って壊れていく様とかめっちゃ好き
もうすでに壊れかけだけどここからどうやって壊れていくか気になる

620名無しさん:2021/07/10(土) 17:51:40 ID:3lU/rjIs0
強制種付けの描写、丁寧で良かったです。
次は産卵、育児、離別、そして種付けのループですねw

621タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/12(月) 22:34:58 ID:QdcIi65Y0

たねつけが終わってから、2ママさんはシクシクミィミィと泣いているだけでミィの問いかけには答えてくれませんでしたミィ

だけどゴハンはちゃんと食べてお水も全部飲んでいました。背に腹はかえられミィ
ちなみにベビちゃんにおっぱいをあげる以外の時期は、ゴハンの量はとっても少ないです。太り過ぎて、すとおるに入れなくならないようにするためだそうですミィ
太るなって言うのなら、お母さんタブンネにちゃんと運動させて欲しいものだミィ。
ポッコリしたおなかが、タブンネさんの可愛いトコロなのミ....



次の日にはミィもたねつけをやらされて、その次の日には2ママさんはニンゲンに変なニョロニョロ(聴診器)をおなかに当てられて、囲いがついている方のすとおるへ移動させてゆきましたミ。無事にタマゴができたようですミィ
嬉しいと言うのか何と言うのか....

さらにその次の日にはミィも後を追うことになりましたミィ

——

ミィの方が後に移動したにもかかわらず、2ママさんは中々タマゴが生まれませんでしたミィ

ミィや4ママちゃんも最初の頃はそうでしたが、2ママさんのおなかはそれはそれは大きくなっていましたミィ

2ママさんはずっと苦しそうに呻いていて心配でしたミが、耳を澄ますとおなかからは確かに鼓動が聞こえてきました。

相変わらず、ミィの問いかけには答えてくれません
仕方のないことミィね、酷いことが起こる上に、産卵の苦しさもあるのですミィから....

2ママさんが一体どんなトコロから、なんで、どうやってここへ来たのかとか、前のおウチではどんな暮らしをしていたのか、色々と聞いてみたいことはありました。

ミィはこのおウチで生まれて、ずうっとこのおウチで過ごしているので、おソトのおはなしを聞くのが大好きです。
なんて言うか、「しあわせ」を想像するにも何を想像して良いのかわからないのですミィ....

だけどとてもそんなコト聞けるような様子ではありませんでした。
2ママさんはおそらくしあわせな暮らしをしていたと思いますミから、思い出したら辛い気持ちになるだけだミィ

とにかくココロが壊れてしまわないか心配だったミィ。どうやら悪いタブンネさんではなさそうでしたミから

622タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/12(月) 22:38:01 ID:QdcIi65Y0

ミィの心配は杞憂だったようで、やがて2ママさんは元気を取り戻すことになります

ベビちゃんが生まれたからです

前よりもよくしゃべるようになった気がしました



....2ママ1stベビちゃん‘sが生まれる前には、これまた一悶着あったんだミィ

ミィの方が先にタマゴが生まれたから凄く心配したんだミが、2ママさんはタマゴの数が多くて、ひとつひとつがとっても大きかったものですミから、時間がかかってしまっただけでした。
最初のタマゴが生まれてから最後のタマゴが生まれるまでたしか丸一日かかった気がするミィ

2ママさんのタマゴがふたつくらい出てきた後、通りかかったニンゲンにそれを回収されたんだミが、2ママさんものすごく抵抗しましたミィ

ニンゲン
「おうおう!ようやっと生まれたか2番!そりゃそうだよなー。安くねえカネ払ってんだぞおま....てか待て。これタブンネのタマゴか!?デカ過ぎじゃね?ホントにお前が産んだ?ドラゴンとか出てこねえだろうな...」

2ママさん
「ミ゛ィーッ!ミ゛ィミィ!!ニンゲンさん!ミィのタマゴ取っちゃダメ!どうしてそんなコトするのミィ!!?ミィがあっためるの!ミィのベビちゃん...!!」

2ママさんはこれまでの様子が嘘のように、物凄い勢いでニンゲンに歯向かいましたミィ
気持ちはわかるミィ。お母さんにとって、タマゴやベビちゃんというのはとっても大事なのです

ミィ「2ママさん!落ち着いて!横になるミィ!まだおなかの中にタマゴがあるんだミィから!ころんだら割れてしまうミィ!くやミィが、今はニンゲンに従うミィ!タマゴはすぐ近くにあるミィから!落ち着いてミ!」

2ママさんはしばらく取り乱していましたが、最後はミィの言うことを聞いてくれました。
丸一日かけて8個ものタマゴを産んだ後はちょっと苦しそうにしていたミがすぐ元気になって、精一杯首を動かしてタマゴを見ようとしていました。
首が真後ろを向けるわけミィから、ほるだあのタマゴは見えないんだけどね...

623タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/12(月) 22:42:49 ID:QdcIi65Y0

やがてミィのタマゴの方が先に孵ったのですミが、ミィのベビちゃんが2ママさんの方の囲いを気にして寄って行くと、2ママさんはとっても優しくアヤしてくれました

2ママさん
「こんにちミィ、オトナリのベビちゃん♪可愛いチィチィ声ミィねえ〜。もうすぐミィのベビちゃんも産まれるんだミィ!ミィんな仲良くしてネ!ほら、ベロベロミィ〜」

ミィのベビちゃん達もみんな嬉しそうで、それはとっても微笑ましい光景でしたミィ。
改めて、2ママさんは決して悪いタブンネさんではないんだなって思いましたミィ



結構時間はかかったミが、やがて2ママさんのベビちゃんも無事に孵っていって、2ママさんは涙を流しながら、ホントに喜んでいましたミィ

2ママさん
「オオ゛ッ!ミオオオン゛オン...!なんて...!なんでガワイイんだビィッ!ミィのベビちゃんだちっ!ミィがママだビィッ!ずーっと一緒だミ゛ィよっ!ミィ〜ンミンミン!」

2ママさんが元気になってから、いつかこのおウチのコト教えてあげたほうがいいかもって考えていたのですが、そんなコトはとても言えませんでした。

いずれは離されるミィ、とか
いつかはしゅっかミィ
なんて口が裂けても言えないほど、ホントに感動的な光景で、ミィももらい泣きするほど2ママさんは喜んでいました。

——

2ママさん
「ミッミッ♪いっぱいおっぱい飲んでミィ!スクスク育つミィよ〜、ミィのベビちゃんたち♪やっぱりニンゲンさんは優しいミィねぇ〜♪こんなにたくさんのベビちゃんと一緒に過ごせるなんて!」

2ママさんは本当にすっかり元気を取り戻して、来たばかりの頃と同じようなカンジになっていきました

2ママベビちゃん‘sは孵ったばかりの時から凄く大きかったです。ニンゲン曰く母親の“えーよーじょーたい”が良いからだとか何とか。
カラダは大きくて、コエも大きくてとっても健康そうなのですが、少しアンヨを覚えることや、しゃべり始めるのが遅くて不思議に思いました。

——

「ベビちゃん達♪ニンゲンさんがゴハン持ってきてくれたミィ!みんな挨拶するミィ!」



「さあベビちゃん達、もうお日様もおねんねだからタブンネさんもおねんねミィ♪むかーしむかしのことだミィ。山に住むタブンネが、リングマと相撲をとっていましたミィ。リングマがタブンネをぶん投げると、谷底へ真っ逆さまに...」



「ベビちゃん達、ママのゴハンもワケたげるミィ♪ほーらみんな押さないで、ミフフ、おいちいミ?」



「今日はママがおウタを歌ってあげるミィ!
♪た〜ぶん〜ね〜ご〜ろし〜の〜ゲッコウガ〜♪♪...」



「どうしたミィ?眠れないミィ?ママがおはなししたげるミィ♪むかーしむかしのことだミィ。ある砂浜で、エビワラーがプロトーガを虐めていましたミィ。そこへ通りかかったタブンネタロウ、エビワラーを注意しますが、きあいパンチを喰らうと一瞬で胴体が消し飛んで....」



「ニンゲンさんがお仕事してるミィ。ミィんなでおてて振りましょミ♪そのうちきっとお名前つけてくれるミィ!ベビたちニンゲンさんに良い子だってアピールするミィよ〜♪」



.......................................

624名無しさん:2021/07/13(火) 00:59:52 ID:W/T8fcKY0
2ママがタブ舎に来た理由が気になる。リボン無くしたとか言ってたから、おそらくバースデイタブンネ・・・
①子供が受け取り拒否したので処分
②バースデイが不評で、行き場が無くなり処分
③おつむが弱く、バースデイ基準から落選により処分

625名無しさん:2021/07/13(火) 07:29:45 ID:6YaLhGZI0
>>624
③に1票w
産まれたベビの歩行や言葉が遅いってのも気になるな

しかし子守唄やお話の内容ひどいわ
よく2ママも平気で子供達に歌えるもんだ
ゲッコウガに対する風評被害じゃん

626タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/15(木) 00:32:20 ID:x5VDvSfU0

2ママさん
「ねえ、3ママさん?あのポケモンさん達は?沢山のおチビちゃんはなぜあんなに騒いでいるのミィ?みんなどこに行くのミィ?」

ミィ
「アレはダゲキってのとズルズキンってヤツですミィ。....ちょっと言いにくいですミが、彼らはあまりタブンネさんに友好的なポケモンではありまミィ。おチビちゃんがどこに行くのかは、ミィもあまり詳しくはわからないミィ」

——

2ママさん
「ねえ3ママさん?ダーリンはいつになったらこのおウチに来るのかしら?まぁちょっとお下品だったから、少し心配ミィけど」

ミィ
「だーりん?たねタブさんのことミィ?彼らはここには来ませんミィ」

——

2ママさん
「ねえ3ママさん?ベビちゃん達のお風呂はいつ入らせてもらえるミィ?みんな所々汚れちゃって汚いミィ」

ミィ
「おふろ?ベビちゃん達の汚れは、かわいそうだけどずっとそのままミィ...。ミィ達の汚れはいずれ落として貰えるミが、ちょっと乱暴な方法ですミィから、少し覚悟が必要かもですミィ」

——

....2ママさんにこのおウチの残酷さを伝えられるタイミングは何度もあったのですが、いつも言いそびれてしまったミィ
ベビちゃんが生まれて数日間、2ママさんがあまりにものんびりしたことを言うので、なんとなく心配に思ったミィ。今思えば、ベビちゃんがしゃべれない内にハッキリ言っておくべきだったかも知れないミィ...

———

2ママベビちゃん‘sが生まれて何日経ってからでしょうミか、最初の悲劇が、立て続けに起こりましたミィ

2ママさん
「ミィ....。オシャレさせてくれるのは良いんだミィけど、ベビちゃんの耳飾りセンスが悪いミィね....。可愛いリボンに変えて欲しいミィ...」

2ママさんはひとりのベビちゃんを正面に立たせてすとおる越しに抱きながら、何やらブツブツ小言を言いはじめましたミィ
ミィはちょうどおっぱいをあげている最中でその様子がよく見えていました。



ベビちゃん’s誕生以降、2ママさんはタブが変わったように、このおウチに対する文句とゆうのを言わなくなりましたミ

あんなに嫌がっていた狭いすとおるの中で精一杯体勢を変えて、はみ出すことのできる腕や脚、おクチを使って巧みにベビちゃんをアヤしていましたし、教えるまでもなくミィと同じようにおっぱいもあげて、不味いと言っていたゴハンも美味しそうに食べるし、ベビちゃんに分け与えたりもしていました。
ベビちゃんの汚れを気にしながらも、いつの間にか2ママさん自身のアンヨはウンチで汚れていました。きっと妊娠していた頃うまく後ろで用を足せず、すとおるの中でしちゃって踏んづけちゃったんだと思うミィ。来たばかりの頃の良いニオイも完全にしなくなったミィ

まぁベビちゃんが生まれたらベビちゃんに夢中になってしまうので、自分のことがあまり気にならなくなるのはミィにもよくわかるケドね...

何よりもミィが不思議に思ったのは、来たばかりの頃にもましてニンゲンを信用してるってゆうか、よくあの甘ったるいコエでニンゲンに話しかけるようになりましたミ
すとおるに閉じ込められたり、あの苦痛なたねつけを促したのもニンゲンなのに、どうしてそんな親しみを持てるのか、まったく理解ができなかったミィ

627タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/15(木) 00:35:41 ID:x5VDvSfU0

おっぱいをあげながらボンヤリと2ママさん‘s囲いを眺めていたミィでしたが、よく考えたら2ママさんの姿をハッキリ見るのは今が初めてだなって気づきました
たねつけすとおるはお母さんタブンネ同士の距離が近すぎて、逆によく見えないのですミィ

だいぶこのおウチに馴染んできてウンチ汚れがある反面、毛並みや尻尾はミィや4ママちゃんよりもうんと綺麗だなって思いました

そして2ママさんの横腹に、見覚えのあるものを発見したのですミィ!ミィのママのおなかにあったのと同じ傷、たぶんこのおウチでできたものじゃない白い傷(刃物による刺し傷)ですミィ!

....ミィはそれを見てハッとしてから、ひとつ気づいたことがありましたミィ。2ママさんがここへ来てから度々口にしていた『りぼん』って言葉です。
このおウチで生きていく上で使わない言葉なので忘れていたのですが、ミィのママが大事に尻尾にしまっていた黒いカサカサ(汚れきって劣化したバースデーリボン)、ママのママから貰った大切なお守りだってママは言っていたミが、あのお守りもたしか「りぼん」ってママが呼んでいた気がしたのです!

ミィ「ねえ2ママさん!2ママさんひょっとしてニンゲンのおウチで暮らして....

2ママさん
「うん、やっぱり可愛くないミィ!待っててベビちゃん、ママが取ったげるミィ!今度もっと可愛い耳飾りを貰おうね!」

ミィの言葉を遮るようにして、2ママさんが徐にベビちゃんの“たぐ”を掴みました

ミィ(一体何を....?まさか....ね?....)

たぐがおミミにしっかりと打ち込んであるのはチビンネちゃんが見たって明らかなことなのでそんなはずないと思っていたのですが、それは起きてしまいました

掴まれ2ママベビちゃん
「.....ミュイ?........ミチュィ....?.......」

ベビちゃんは怪訝なお顔を浮かべて鳴いていました
大好きなお母さんがそばに居て安心している反面、おミミに危険なテンションを感じて怖がっているようなカンジでした
(掴まれベビちゃんはまだ目が開いてませんでした)

ミィ「ちょっと、2ママさん⁉︎何をするつもりミ..

ビリビリ....ブチィッ!


ベビちゃん
「チュミャ゛アア゛!!ギィヤ゛ーーーアあ゛あああアア゛ーーゥッッッ.....

か弱いベビ耳が音を立てて千切れ、血と透明なお水、黄色いニュルニュルしたお水がピューピュー飛び出してきてようやっと、2ママさんも自分の過ちに気づいたようでした

2ママさん
「.....ミ...?......ミ゛ィ!?ミィッ!ミ゛ーッ!ごめんミィ!ベビちゃんだいじょぶミ⁉︎ママはただダサい耳飾り取ってあげようと....ああ゛ッ....!どうして....」

2ママベビちゃんの絶叫と異変にミィの乳飲みベビちゃんもみんな驚いて、チィチィ喚きながらミィの背中側に逃げ出しました。

ミィは空いた口が塞がらず、何も言うことができなかったミィ

「....ウビィ~....ミヂィ~......ゥゥゥ゛....ミガァァ゛....」

ドピュッ!....ピュー!....ピュー......

「『ダサい耳飾り取ってあげようと....』
じゃねーよ!」ってツッコミが頭に浮かんだミが、千切れベビちゃんの状態は笑いごとじゃない程に深刻でした。

よかれと思った行為が事故を招くことはたまに起こることかもしれませんが、いくらなんでも限度というものがありますミィ!

それまでもうっすら思わなくはなかったのですが、2ママさんはちょっと抜けているってゆうか、ハッキリ言ってしまうとおバカなんだなって思いました。
失礼ながらもっと色々注意しておくべきだったミィ

628タチワキ養タブ舎・ブリッジ、ママンネside:2021/07/15(木) 00:42:00 ID:x5VDvSfU0

2ママさんを非難する気持ちもありましたミが、起きてしまったものは仕方がミィ
とにかく千切られベビちゃんを最優先に考えなくては!

ミィ「2ママさん!決して舐めたりしてはいけないミィ!おーいニンゲン!こっち見ろ!ケガしてる子が居るミィ!」

ミィの心配をよそに、2ママさんの行動はミィの想像とは違うものでしたミィ

2ママさん
「ごめんミィごめんミィ!ベビちゃんっ!ママが“タブンネのまほう”で治してあげるミィから...!」

ポウッ...

なんと2ママさんのおててから、優しい光の玉が出てきて、ベビちゃんのおミミに降り注いだのです!

ミィはまた別の意味で、空いた口が塞がらなくなりましたミィ
それはミィのママが使っていたのと同じ、ミィがどんなに練習しても使うことのできない、紛れもない“タブンネさんの魔法”でしたミィ!

2ママさんってホントは凄いんだか何なんだか...

——

2ママさんの魔法を以ってしてもベビ耳がふっついたりすることはなかったミが、血は止まったようでイキもだいぶ落ち着いてきた頃、ふたりのニンゲンが囲いの前までやって来ました

ニンゲンA
「なんだなんだ必死になって....あーっ!耳千切れてんじゃねえか!嘘だろ⁉︎コイツひょっとして虐待ママ?ざけんなよ?虐待ママの入れ替えで買ってきたんだぞ!」

ニンゲンB
「いや待て。今癒しの波動使ってなかったか?そういやコイツポケセン配布個体の可能性高いとか何とか...」

2ママさん
「ミィッ!ニンゲンさん!ベビちゃんがおケガしちゃったのですミィ!早く手術して!...ミィッ!治してくれるのミィ⁉︎ありがとうございミィ〜ン!」

ニンゲンは2ママさんから千切れベビちゃんを引ったくると、イキを確認しているようでした

ニンゲンB
「うーん...。どう思うコレ?生後6日だっけ?結構深いぞ?赤ん坊だし抗生剤は勿体ねえからあり得んけど、一応傷薬くらい塗っとくか?」

ニンゲンA
「まあ8匹も居るしね。駄目なら駄目で別にいいと思うけどね。てか母親責じゃねえとしたら誰がやったんだ?兄弟ゲンカ?ベビンネハンター?」

ニンゲンはケガしたおミミに適当にスプレーを吹っかけると、ポケットからギラギラ(カッター)を取り出しましたミィ
ミィもすっかり忘れていたミが、男の子ベビちゃんのおマタ傷つけの為にやって来たようですミィ

千切れベビちゃん
「.....ミヒィ....ミフッ....ハッ.........ミ!ミガァーーーーーッ!!ギャギャギャミゴブバァーーーーーっ!!」

千切られベビちゃんは不幸にも男の子だったようで、おミミを千切られて数十分後にチェリンボまで取られてしまったミィ

2ママさん
「ミ゛ィーッ!ミ゛ーーッ!何するのビィッ!?ベビちゃん痛がってるビィっ!やめでっ!ベビちゃんをがえじでミィ〜ッ!!」

2ママさんはタマゴを取られた時さながら、もの凄い勢いですとおるに突進を始めました

ニンゲンB
「おーやべえやべえ!2ママちゃ〜ん。これは赤ちゃんが美味しくなるための必要な治療なんだよ〜。だから静かにしてね〜。俺たちただでさえ去勢処理苦手なんだぞ〜」

2ママさん
「“治療”!?なーんだ♪それを先に言って欲しいミィ!ベビちゃん達!ニンゲンさんの言うこと聞くミィ!治療してくれるミィって♪」

ニンゲンが何か話すと2ママさんは一瞬で翻りましたミィ。まるでコントみたいでしたミィ

ミィはニンゲンの言うことの意味がハッキリとはわからないことが多いんだけど、2ママさんは細かい意味まで理解しているようでした。やっぱりニンゲンと暮らしていたんだミィ!
それにしても、なんか都合の良い解釈をしているようにも思えるケド....

629名無しさん:2021/07/16(金) 17:46:33 ID:tHOX3Kkg0
"ベビちゃんをおいしく "
のフレーズには誰も突っ込まんのか…
まあ主役ママちゃんも
出荷の先は知らんからなぁ

630名無しさん:2021/07/16(金) 21:39:26 ID:v.QoO57A0
言葉は理解できてもその背景や機微を理解できないんだろうなぁ
3ママもたいがい頭悪いけど2ママは輪をかけて頭悪いね
そういうタブンネさんが好きだよ

631名無しさん:2021/07/17(土) 22:09:37 ID:atBDlus60
3ママ、嘘は言わないけど本当の事も言わないのなw
まあその方が後々ダメージデカくなるからGJだけど。
はたして千切られベビは呆気なく逝くのか無事出荷されるのか・・・

632名無しさん:2021/07/21(水) 19:55:12 ID:gBijU6gQ0
タブンネさんWikiでショーケースの裏側読み返してたんだけどやっぱ面白い
望み薄かもしれんが続きこないかな

633名無しさん:2021/07/22(木) 06:24:26 ID:TMCyONXA0
>>632
ショーケースあれはあれで完結されてる大作だけれど
それこそ小ママサイドの話とか番外は作れそうではあるね

634名無しさん:2021/07/25(日) 01:30:13 ID:8SJBzALI0
ユナイトでも仲良くしようねタブンネちゃん!

635名無しさん:2021/08/18(水) 23:36:55 ID:p.zNOjd60
レジェンズではまだタブンネさんの姿が見えず……
トレーナーがポケモンを直接攻撃できる仕様だったら絶対タブンネさん出してほしい
やっぱりさ、ポケモンバトルじゃなくてタブンネさんは直接殴りたいっしょ

636名無しさん:2021/08/19(木) 00:23:44 ID:ygWpoWQs0
タブンネ(ヒスイのすがた)

637名無しさん:2021/09/02(木) 20:00:35 ID:8n1swCLc0
養タブ舎のママンネsideの続きとチビンネの章マダー?

638名無しさん:2021/09/10(金) 02:46:03 ID:Qek3H.O20
ようつべの子猫動画とか見てたら
出荷じゃなくて普通に大事に飼われているのにチィチィピィピィ泣きながら必死にケージから抜け出そうとするベビンネちゃんが見たくなる
あと子供に尻尾掴まれてモフられながらか細くチーチー悲鳴あげてるの

639名無しさん:2021/09/12(日) 01:10:56 ID:GYlKYb.o0
ポケモン剣盾でタブンネ狩りしてて思うのはもっと被ダメージ描写が生々しかったらよかったなってこと
タブンネさんがきあいパンチとかコメパン喰らってグチャグチャになるところが見たい

640名無しさん:2021/09/16(木) 00:54:03 ID:CrsVDMqc0
タブ舎の更新2ヶ月止まってる…作者戻ってきて-!

641名無しさん:2021/11/15(月) 20:52:57 ID:S.zH4.2E0
今ここ見てる人います?
これまで投下された作品とトーンの違うネタがあるのですが、需要はありますか?

642名無しさん:2021/11/16(火) 22:46:12 ID:uEUWKj1Q0
ちょくちょく見てるよー
どんな作品か気になるし投下してくれたら嬉しい

643名無しさん:2021/11/17(水) 12:01:52 ID:2LwECj2M0
自分も見てます。
良かったら新作投稿お願いします。

644名無しさん:2021/11/17(水) 22:25:22 ID:HY6ExpZU0
ありがとうございます。では、投稿させて頂きます。
タイトルは「情はないけど掟はあった」です。

645情はないけど掟はあった:2021/11/17(水) 22:26:07 ID:HY6ExpZU0
TO:○○地方レンジャー協会事務所 担当者様
CC:○○地方ポケモンセンター本部 担当者様、カントーポケモン学研究所 主任研究員 オーキド・ユキナリ博士

メールにて失礼いたします。
いつもお世話になっております。1月ほど前に当○○地方の研究所分室に赴任した●●と申します。きのう確保した野生ポケモンについて通報させていただきます。
先週、地元自治体から頂きました依頼(山脈の尾根で一昨日通報があった、暴れまくるボーマンダの件です)に絡む件となります。

きのうの夕方、ボーマンダ確保後にレンジャー協会にて借り受けていたリザードンで山脈上空を飛行していたところ、リザードンが尾根の登山道上で衰弱したポケモン2体を発見、三度旋回した後で現地に降下しました。
エルレイドを繰り出し、テレパシー経由で「私の群れに来るか? もしかしたら死よりもひどい目に遭い続けるかもしれないけれど」と伝えたところ、1体は逃走、もう1体のみ同意してエルレイドに接触したため確保しております。

確保個体の調査結果は以下の通りです。

種族名:タブンネ(イッシュ地方原産)
個体情報:♀、Lv44
推定月齢:満3年6月〜4年
特性:さいせいりょく
技:なきごえ、いやしのはどう、てんしのキッス、チャームボイス
飼育歴:当個体についてはトレーナー管理個体データベース該当なし(個体管理チップ見当たらず)
近親交配の有無:あり(少なくとも直近の親世代は近親交配)

てんしのキッスは純野生では覚えない技であったため、DNA採取結果を元に再び関係各機関データベースに広汎に照会したところ、警察管轄の捜索者リスト及びイッシュ地方の管理個体データベースにて、血縁個体の該当がありました。
10年前に当○○地方で失踪した、イッシュ地方出身のA氏のタブンネです。

関係各機関においては既知かと思われますが、10年前に親族通報を受けた捜査が行われた際は、A氏が無届けでポケモン保護区から侵入して山脈の踏破を試みた説が浮上したものの、決め手を欠いていたために捜査が打ち切られていたとのことです。
またA氏が「コモルー・タブンネ・メタモンを無許可で同伴させて入国したことを遺族に密かに自慢していた」との情報について、当方は今朝になって初めて認識したのですが、この2体がつがいになって山脈で子孫を成していたとの推理が成立するところです。

ボーマンダは去勢済かつ個体管理チップ有りのため遺族に厳重注意の上で返還されるとのことですが、この確保したタブンネの扱いについては当分室の独断では決定しかねるところです。
近親交配した個体は当地もイッシュも輸送・生育共に不可ですし、借り受けたリザードンのしつけ方の問題もあります。
(また、当地では、無去勢個体の持ち込みに対する強硬論と評しますか、他地方の如き安楽死は絶対不可だと強く反対される方もおられるのは皆様御承知のところかと存じます。外来種は特にその世論が強硬であるのが現状でありますが)

当研究所本部を含めて各機関で対応を協議するにあたり、メールにて取り急ぎ情報共有させて頂きます。

646情はないけど掟はあった:2021/11/17(水) 22:35:39 ID:HY6ExpZU0
ミーちゃん達のねぐらは、岩と雪の山の中に隠れるようにあるほらあなでした。近くに崖がありました
ミーちゃんの実のおじいちゃまは、メタちゃまとタツおじいちゃまと仲がよくて、マスターの相棒でした。とおいとおい場所でヒトと一緒に住んでいて、マスターと一緒にこの場所にやって来たそうです。
他のヒトにはないしょだよってマスターに言われながら雪の季節の山に入って行った遠い昔、マスターはうっかり崖から滑り落ちてしまったそうです。
タツおじいちゃま達はたまたまマスターを下敷きにして落ちたから助かって、でも、マスターは頭の骨を折って死んでしまっていました。タツおじいちゃまは特に雪も氷も苦手だったから死にそうになって、そばで運よくほらあなを見つけて、マスターの亡骸を抱えてみんなで逃げ込んだそうです。

メタちゃまは他の生き物のこころを読むことができました。実のおじいちゃまはキスでねむらせることができて、タツおじいちゃまは戦うことができました。
ほらあなの生き物たちがどんな風に生きているのか読み取って、殺して、食べて、みんなで助け合って生きていました。ミーちゃんが生まれるずっと前からです。
実のおじいちゃまとメタちゃまは生き続ける中でつがいになって、ほらあなの中で子どもを生みました。一番初めに生まれた子がミーちゃんのおかあちゃまで、7回孵った卵の中で一番体力があって、それでいてしんちょうな性格だって言われてました。おかあちゃまの兄弟姉妹は他に3体生き延びて、ほらあなの群れから出ていきました。
このほらあなは、岩と雪の山の中では一番すごしやすい場所です。群れを続けさせることを考えて、おかあちゃまとおじいちゃまがつがいになりました。そのつがいから生まれた4回目の卵がミーちゃんです。一番上のおにいちゃまとつがいになって、卵を2回産みました。

ある日の朝、めっきり弱ったメタちゃまが年のせいで息を引き取りました。タツおじいちゃまはほらあなの中で激しく泣きわめいて、荒れ狂いながら急に大きくなりました。
灰色の素敵な身体だったおじいちゃまは突然光ると、翼を生やしながら色を変えてほらあなの天井を突き破って吠えたのです。
ここにいちゃいけないんだと思いました。このほらあなはもう住んじゃいけない。お別れもできないまま、みんな思い思いに地吹雪の吹き荒れる山を駆けまわったせいでしょう、おかあちゃま以外のみんなともはぐれて、いいねぐらも見つからない中でフラフラと雪の中をさ迷っていました。

5日くらい逃げた頃、気が付けばとても目立つ尾根の道の上にいました。何も考えたくありませんでした。
タツおじいちゃまとも違う翼の大きな生き物が目の前に降り立って、その翼から初めて見る生き物が降りました。ほらあなの中のねぐらにあったマスターの格好と同じような姿、「ヒト」だと直感しました。言い伝えのマスターとも違う、メスのヒトでしたが。
ミーちゃんは気の毒がられていました。へたり込むミーちゃん達の目の前に緑と白のお兄さんが出てきて、その考えを頭に直に教えてくれました。
私たちの群れに掟があるように、ヒトの群れにはヒトの掟があって、その掟でミーちゃんは助けられるか分からないけれど、ただ、今この瞬間死にそうな状況だけは救えるかもしれない。ただ、それから先はどうなるかこのヒトにも分からないって。この時死ねばよかったって悔やむかもしれないけれど、死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで、って。

このヒトは、優しくはないけれど正直だって思いました。おかあちゃまは弱った身でも怖がって、一目散に逃げていって雪の向こうに消えました。
迷って、迷って、ミーちゃんは緑と白のお兄さんの腕の中にうずもれたんです。「ほかのヒトには存在を知られちゃいけないよ」っていうのは、マスターが言い遺したっていう群れの掟だったけど、でも、今、とっても苦しいのは間違いなかったから……。

(続く)

647情はないけど掟はあった:2021/11/17(水) 22:50:52 ID:HY6ExpZU0
>>646
すいません、以下の箇所はミスです。
× 実のおじいちゃまはキスでねむらせることができて、
〇 実のおじいちゃまはキスでこんらんさせることができて、

てんしのキッスは眠り技じゃなくてこんらん技でした……。

648名無しさん:2021/11/18(木) 22:34:34 ID:gyVPNVSo0

確かにあんまり見たことない切り口の作品だね
これからタブンネさんがどんな一生を送るか楽しみにしてる

649情はないけど掟はあった:2021/11/18(木) 22:54:36 ID:gE2qrRp20
「最初は新種のポケモンではないかと思っていました。図鑑が『タブンネ』だと判定した時は、正直申し上げまして、とても驚きました。何故にイッシュのポケモンがここに住んでいるのかと」

パソコンの画面上で何人かがうなづいた。「でしょうね」なんてつぶやきも聞こえた気がする。

あの雪の登山道で見つけた子が完全な新種ならベストだった。新種でなくとも生息地域の新発見であればベターだった。この研究所分室で、研究名目で可愛がられるから。
真相はどちらでもなくて、それどころか想定の斜め上だった。無許可で持ち込まれていた外来種の子孫、それも近親関係で生まれた子で。この地域どころかカントーでさえ安楽死一直線の個体である。いや、カントーで起きた事象ならまだ精神的には負荷は軽かったかもしれない。即座に薬殺で処理完了だ。それでも精神的負荷はゼロだとは思わないけれど、まだマシだ。
……もっとも、そんなことは思うだけで口には出すまい。立場を自覚してない甘ちゃんだって非難されるのが分かってるからだ。

年の大半が吹雪いているか、そうでなければあられが降っているような岩と雪の山脈に囲まれた土地。その中で相対的にマシな小さな盆地にへばりつくように、ヒトは集落を作って古くから生きてきた。ちょっと昔までは交通の便も悲惨な場所で、何とかして生きてきたような場所だった。
ポケモンとヒトの関係はカントーやシンオウとは異なるもので、よく言えば独特で、悪く言えば排他的とも言えた。普段からあまりにも実りに乏しい土地なのだ。うっかりすればヒト共々飢えかねない環境は、当然の帰結としてひどく厳しい規則を生んだと思われる。

規則その1、ヒトは山脈の生態系を乱してはいけない。特定の種が増えすぎたり減ったりし過ぎると、結果的にヒトの暮らしに響くから。
規則その2、ヒトに飼われるポケモンは、その生死と繁殖の一切を飼い主たるヒトに委ねるものとする。繁殖のしすぎは飢餓に直結するから。
規則その3、山脈から降りてきてヒトの領分を犯したポケモンは、その生命を以ってヒトに償うものとする。そうでもしなければヒトが死ぬ。
規則その4、ヒトは山脈にむやみに入り込んではいけない。どうしても入山する場合は各山で整備された登山道を行くこと、そこを外れた者は自殺者とみなす。
規則その5、ヒトは山脈のポケモンをむやみに食べてはいけない。ただし、明らかに死にかけている個体は、発見者のポケモンの生き餌にしてもいい。繁殖も譲渡も不可。一冬一個体に限り、うっぷん晴らしの的にして虐めても構わない。

他の地方で議論の的になるのは特に5つ目の規則だろう。近年になって交通の便が発達し、ゆるやかにだが意識が変わりつつあった。もっとも、生き餌以外にも研究用途でポケモンを確保することが許されるようになったのはつい最近で、今から2ヶ月くらい前の話だ。先月この地に研究所の分室が開設されたのも、当然、この規則変更に基づく。

この地方の法制度が今の仕組みになった何十年も前から、あの雪の山脈は「ポケモンの保護区」だった。言うまでもなく他所からのポケモンの持ち込みは厳しく規制されている。
10年前に無許可で入り込んで勝手に遭難死したA氏に対して、この地の世論は滅茶苦茶に厳しい。亡くなった人だから本人には言えないが、「何で外来ポケモンを繁殖させてるんだバカ!」的な罵倒は、普通に世間話の愚痴で言われる。
新しい研究所の分室に勤める余所者の女は、愚痴の向け先としてちょうどいいらしかった。何しろその余所者がタブンネを最初に確保したのだから、地元の人は余計に愚痴りたくなるらしい。

「●●さん、そのタブンネは一通りの調査が完了次第うちに引き渡しをお願いします。スケジュール感が固まり次第、メールで構いませんので御一報下さいね」

レンジャー協会の会長は、画面越しにそう言った。言い分は正しい。
タブンネを見つけたのは正確に言えばレンジャー協会から借りたリザードンだった。あの雪の登山道でルール通りに3回旋回、逃げなかった個体は死にかけと判定して降下、事前のルール通りに念話でどうしたいかを聞いて、それでも来た個体を連れてきた。
新種ならばこの分室で研究用にする、さもなければ発見者(この場合はレンジャー協会)の所有物。レンジャー協会は地元の人達の集まりだ。当然にリザードンの生き餌にするだろう。

パソコンのディスプレイは何分割かされている。そのうちの1つは研究所の本所で、会議に参加しているオーキド・ユキナリ主任の顔は、あえて言えば若干引きつってる気がした。カメラの映り方の問題かもしれないが。
主任は知っているのだ。この分所で合法的に飼ってるエルレイドがこっそり教えてくれたこと。

――あの子は、ほんとうにリザードンにあげちゃうんですか? リザードンはあの子に欲情してますよ? 子どもができるような組み合わせでもないのに。

650情はないけど掟はあった:2021/11/18(木) 22:55:23 ID:gE2qrRp20
ヒトのねぐらは、あのほら穴とも山の中とも違って、屋根も壁も真っすぐで、聞いたことがない音と、嗅いだことがない匂いがしていました。
食べたこともない美味しい食べ物を食べて、温かい場所で静かに眠れて、あの尾根の道で出会ったヒトのお姉さんの下でとても安らかに過ごせたんです。2日間だけは。

エルレイドのお兄さんにふわふわ浮かせてもらいながら、広い広い世界のかたちを教えてもらいました。
北のあの辺りがマスターが落ちた崖とミーちゃんの昔のねぐら、タツおじいちゃまが飛び回ってヒトに捕まったのがあの辺り、ミーちゃんがお姉さんと会ったのはあの辺り。真反対の南の山脈を飛び越えて遠くに遠くに行ったらカントーという土地に出て、ずっと南に行ったらクチバという土地がある。マスターはクチバに上陸した後、山を越えてこの土地にやって来た。

――あなた達の存在そのものが掟破りだった。マスターは山に入るべきではなかったし、ほら穴の中でつがうべきでもなかった。

ヒトのお姉さんも、エルレイドのお兄さんも、静かに教えてくれました。

――山もヒトも生き物も、優しくはないけど掟はある。長く生き続けるための掟が。
  山の外から血筋が混ざってはいけなかったんだ。あの山でよそから来た者がつがうこと、増えること、生きるために殺すこと、どれも掟を破ることだった。だからあなた達の親も子もこれから殺される。よそ者の血がこれ以上増えないように。

――待って。ミーちゃんはそんな掟知らない!

――そうだね。でもマスターは知っていたはずなんだ。ヒトの世界では大切な掟だったから。あなた達にそうしたことを何も教えず、掟を破らせたマスターがいちばん悪い。
  ただ、私達にはあなたは救えない。ヒトだってここで生きる限り掟は破れないから。破ったら私達が食い詰める。

お姉さんも、エルレイドのお兄さんも、正直でした。優しくないけど正直でした。ミーちゃんを気の毒がりながら金縛りをかけて、浮かせて、ねぐらの外へ。
気の毒がっていたのは分かっていたから動けませんでした。こいつに逃げられたら俺達が困るなぁって、エルレイドのお兄さんが考えていたのも分かりました。それで頭の上にミーちゃんを浮かせながら、お姉さんの言葉を教えてくれました。

――違う場所で違うように生まれ育ったのなら、こことは違う幸せを感じられたかもしれないね。
  あなたはこれからあのリザードンのものだ。それがここの掟。冬の間のうっぷん晴らしに使うって。たぶん、あなたがここをこうして見るのは最初で最後だ。

嗅いだ事の無い香り、見たことのない街並み、変わらない雪の空、山々。地面に下ろしてはもらえなかったけれど、眼に焼き付けるように嗅いで、見て、感じて。
おじいちゃんが語っていたことを思い出しました。マスターが生きていた時はずっと良い暮らしだった、良いものも食べてた、ヒトの恵みのおこぼれだったけれど、ほら穴とは違うもの。ヒトの群れが長い間をかけて創り上げたもの。

――なあ、隣の俺の主には内緒ってことにしてくれ。あのリザードン、とんでもない性格してるぞ。
  こっそり心を壊してあげようか? 何もかもを忘れて、何も感じない心になるように。ここのヒト達はな、ただメシさえ食わせておけば何したって構わないってフツーに思ってるんだぜ?

迷いました。あの雪の道で質問された時はフラフラで夢中だったけれど、今は違います。考えて、考えて、決めたことをただ念じました。

――ありがとう。でも、ミーちゃんはミーちゃんのままでいさせて。死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないって教えてくれて、それでも良いってミーちゃんが考えたことだから。
  それに、生まれたことが掟破りだったっていうのなら、それで怒られるのも仕方ないって思うから。

――そうかい。「まじめ」で「かんがえごとがおおい」奴は、こういう時には損だな。

(続)

651情はないけど掟はあった:2021/11/19(金) 00:04:46 ID:BbzG.3020
>>648
乙ありです。
切り口が独特なのは自覚しています。
読んだ時にどう感じたか、折をみて教えて頂けましたら嬉しいです。

652情はないけど掟はあった:2021/11/19(金) 23:02:00 ID:BbzG.3020

――この先どうなるかは私にも分からない。後から振り返った時、今この山で死ねばよかったって悔やむかもしれないけれど、死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで。

そんなのはイヤ! 我に返った時、叫びながら尾根から逃げ出してしまっていました。
ミーちゃんはいません。横にいた大事な娘。雪の山の中で辛うじてはぐれずに一緒にいた、かけがえのない存在。さっきまで座り込んでいた尾根を見上げます。見えにくいけれど音ははっきり聞こえていました。抱えられて飛び立っていくらしい大きな翼を見上げるしかありませんでした。

何故わたしは逃げてしまったのでしょう。娘と離れたことなんて一度もないのに。ひどい目に合うのが怖くて逃げて、それで一匹ぽっちです。なおさら怖くなるのは当たり前なのに。
夕闇迫る中で、風も雪も強く吹き荒れます。山は温かみの全くない、冷たいだけの世界でした。5日間ねぐらがなく弱った身体には堪えます。

ズシャッ!

突然、ほっぺたに鋭い痛みがありました。視界の中で血が舞います。
斜め後ろにニューラさんが2匹いました。いつの間にか近づいてきたのでしょう。どちらも爪を振り回しながらニタニタ笑っていました。振りほどくわたしの腕に噛みつき、あっという間に引き倒されて、更にお腹に爪を振るわれるところまでは覚えています。


「コイツすげえ回復するねぇ。アンちゃんっ」「ほんとだぁ〜」

気が付いたとき、かつてのねぐらとも違う岩穴にいました。ニューラさん達が面白がりながら、横たわった私をつついて馬鹿にしていました。
腕と脚が猛烈に痛みます。どちらも一本ずつ無くなっていました。目の前でニヤニヤしたニューラさん達が美味しそうにかじり付いて見せびらかしてきました。
雪の山は一切気が抜けない世界ですから、弱った姿で気を抜いた方が悪いのです。食べられて生涯が終わるのだろうと思いました。いじめ倒されてここで生命が尽きるのだと。

下手に体力のある身体がアダになりました。岩場の中で、いたぶられながら少しずつ少しずつ食べられていったのです。

653情はないけど掟はあった:2021/11/19(金) 23:04:02 ID:BbzG.3020
レンジャー協会の事務所に、リザードンが降り立った。先日借りたのとは違う個体だ。背にレンジャーを載せ、爪にロープを握っていた。ロープの先端は薄赤い物体だ。目の前にどさりと下ろされる。

「さっそく1体確保しました。まだ息あるようですんで、そっちの分室で鑑定をお願いできます? こないだの協議通り、血縁鑑定と、できれば過去の動きを追跡できれば」

リザードンが運んでいたのは逆さ吊りのタブンネ。ひどく汚れていて、血だらけで打ちのめされているが意識はある。辛うじて息があるという程度だが。

――おかあちゃま!! おかあちゃま!!

エルレイドの上でタブンネが震えた。エルレイドは器用に片手のねんりきで浮かせながら封じ込み、もう片方の手で私の手を握る。

――ちょっと暴れないで黙ってて。ただ知りたいことを念じて。あなたが知りたいことを私が聞き出して、教えてあげるから。

――ごめんなさいっ!! えっと、何があったの? 死んじゃうのっ!?

「……血縁は大丈夫ですけど、記憶の方は1日で済むかどうかも含めてちょっと明言いたしかねますね」

右脚、左腕、右耳いずれも根元から欠損、ついでに言えば尾も無い。意識不明で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。おそらく小型のポケモンに食われたか千切られた辺りか。

――生きるかどうかは分からない、やるだけのことはやるけれど。でも命をつないだとしても最期は生き餌という掟だ。生きているうちにあなたと話せるどうかも分からない。それは分っておいて。

――あっ……。

「今の技術上、メンタルが壊れてると記憶の鑑定は無理ですので、それも御了解頂けますでしょうか? こういう状態ですと、生きてるかどうかも含めて一か八かになると思います。あと、事後で構いませんのでメールの方で申請書の提出もお願いします」

「そうですかぁ。よろしくお願いします。申請は出しますので」

「この傷はなかなかキツいですね。記憶の解析の都合でお伺いしたいのですが、どんな状況で見つかったんです?」

「最初の1体が見つかった尾根の割と近くですよ。複数のニューラに嬲られてました。うちのウィンディが見つけたんです」

――あなたとはぐれてから、割と近い場所で何体かのニューラにやられていたらしい。よく生きていたものだね。

「ところで、こいつも含めたタブンネ達の駆除後の扱いですけど、今回の騒動が一段落したら、生き餌にする以外にもここの事務所で食べちまおうという話が出てるの、知ってます? 外来種の繁殖って村が襲われるのと同じくらいキツいことですんでね。伝統に従って茹でて食っちまえって主張する奴がいるんですよ。うちの事務所に」

(続)

654情はないけど掟はあった:2021/11/19(金) 23:06:33 ID:BbzG.3020
>>653
誤字がありました。
× 意識不明で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。
〇 意識不明瞭で出血多数。ヒトがつけた傷ではないだろう。

655情はないけど掟はあった:2021/11/21(日) 21:57:09 ID:G6a1qewY0

「生態系を乱すことは禁忌」で、かつ「登山道を除いてはヒトがうろつくことが禁忌」である山脈で、「登山道以外の場所に外来ポケモンが繁殖していた」事が判明した場合、ヒトはどうするべきか。
生態系維持のために駆除が必要だが、さりとて登山道ではない奥深くに不用意に分け入るのはそれもマズい。解は、「熟練した地元のレンジャーが、細心の注意の上で山に入る」。
いつもは登山道の安全確保を主として動いているレンジャーの方々が、こういう処置を選ぶというのは特別なことだ。死と隣り合わせの世界に踏み入れる事だと表現する方もいる。世論として仕方ないとは許容されている。レンジャー協会が貸し出しているリザードンが普段は登山道の上しか飛行しないというのも、こうした考え方からすればもっともなことだった。

10年前に無許可で山に入ったA氏は、自らの意思で登山道を外れたらしい。生前、故郷の家族にだけは自慢していた。
そして登山道から見えない場所で崖から落ちて即死、連れていたコモルーとメタモンとタブンネだけが生き延びた。元々タツベイ時代に去勢されていたコモルーは繁殖しようがなかったが、メタモンとタブンネは繁殖可能な身体だった。
最初の3匹のポケモンのうちタブンネは昨年のうちに寿命で死亡、メタモンが次いで最近死亡、コモルーはメタモンの死と進化のタイミングが重なってボーマンダの身体で狂乱してしまい、理性がやられた状態で動き回って、登山道付近に出没した。こおりタイプが苦手なドラゴンポケモンが、10年間も雪山の中で食糧事情の劣悪な状況で過ごし続けたのだ。むしろ10年も正気だったのが不思議だった話だ。

レンジャーの方々は、3人がかりで天井がだいぶ崩落したほら穴に踏み込んだ。
無防備に入った訳ではない。ゲンガーとルージュラとユキノオーを繰り出し、中のポケモンを全て眠らせたという。「さいみんじゅつ」と「うたう」と「くさぶえ」を5分間重ねがけ続ければ大体のポケモンはまず眠る。レンジャーの経験則だった。
雪が吹き込まない最奥の場所に、ヒトの男性の全身の骨と、雪山登山の道具の残骸があった。A氏の遺体と遺品だ。他には、ひとつ残らず割れたタマゴの残骸と、タブンネの骨と、巣穴の跡。さらに生きたマニューラ1体とニューラ4体が眠っていた。
念入りに見分を終えて生きたタブンネがいないことを確認した後、レンジャーの方々は出せるポケモンを全てボールから出した上で、マニューラ達を叩き起こしたという。
マニューラを頂点とする野生の群れ5体vs(相性的に不利な個体を含むとしても)強大なポケモン10体以上。さらにほら穴の外ではリザードン3体が堂々と主を待っていた。表面上は笑顔でも半ば力の差で恫喝するようにやり取りを交わし、「A氏の身体と残った遺品、タブンネ達の残骸をほら穴から持ち出す」というヒトとポケモンの交渉は成立した。

なお、レンジャーの方々がマニューラを叩き起こす直前には、ほら穴の出入り口に集音機材を固定していた。
一見すると岩に見えるそれは、頑丈で、電源がなくとも1月ほど稼働するタイプだ。電波類は飛ばさないタイプなので1月後にはまた回収に赴かなければいけないが、回収後には研究所の分室でタブンネの鳴き声の有無を徹底的に分析することになっている。
ニューラ達が巣くってしまった上、仮にニューラ達が居なくなったとしても鳴き声をキャッチされたらヒトが来る。もはやほら穴は、タブンネという種の寝床としては成立しないようになっていた。

656情はないけど掟はあった:2021/11/21(日) 22:00:09 ID:G6a1qewY0
TO:○○地方レンジャー協会事務所 担当者様
CC:○○地方ポケモンセンター本部 担当者様、カントーポケモン学研究所 主任研究員 オーキド・ユキナリ博士

メールにて失礼いたします。
いつもお世話になっております。○○地方研究所分室の●●です。

現在各機関にて対応中のタブンネの件につきまして御報告致します。当分室宛に鑑定依頼ありましたタブンネ(生体2体目、遺体1〜5体目、タマゴ1〜3個目)の件です。

まず、生体2体目の調査結果は以下の通りです。

管理番号:№2
個体情報:♀、Lv53
推定月齢:満9年〜9年6月
特性:さいせいりょく
技:なかまづくり、いのちのしずく、てんしのキッス、チャームボイス
飼育歴:当個体についてはトレーナー管理個体データベース該当なし(個体管理チップ見当たらず)
血縁関係:(A氏のメタモンとタブンネを第1世代とする)第2世代目
特記事項:精神面の傷が大きく記憶探知不可、尾、右脚、左腕、右耳欠損。
№1の確保直前まで共に雪山にいた(エルレイドに打診された際に逃げ出した)個体と思われます。確保時には「複数のニューラになぶられていた」との確保者の証言有り。
身体の欠損はニューラに捕食されたものみて矛盾しません。「さいせいりょく」のとくせいにより体力が比較的維持されたため、長期にわたりニューラに害されたと推測されます。
レンジャー協会の強い要望により身体の最低限の治療後に引き渡し予定です。


また、遺体1〜5体目の調査結果は以下の通りです。

管理番号:№3
個体情報:♂
推定月齢:6年〜6年6月
血縁関係:第3世代目と推定。母:№2 父:第1世代のタブンネ
特記事項:A氏の遺体があったほら穴にて発見。発見時はほぼ骨のみ。研究所に持ち込まれた時点で死後3〜4日経過。ボーマンダの狂乱後に一旦ほら穴に戻ってきたものの、その後マニューラに襲われたものとみて矛盾しません。

管理番号:№4
個体情報:♀
推定月齢:3年〜3年6月
血縁関係:第3世代目と推定。母:№2 父:第1世代のタブンネ
特記事項:№3と同じ

管理番号:№5
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4世代目と推定。母:№1 父:№3
特記事項:№3と同じ

管理番号:№6
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4世代目と推定。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№3と同じ

管理番号:№7
個体情報:♀
推定月齢:1年〜1年6月
血縁関係:第4代目と推定。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№3と同じ

タマゴ1〜3個目の調査結果は以下の通りです。

管理番号:№8
個体情報:♂
血縁関係:第4世代目。母:№1 父:№3
特記事項:A氏の遺体があったほら穴にて発見。発見時は卵殻のみ。マニューラに捕食されたものとみて矛盾しません。

管理番号:№9
個体情報:♀
血縁関係:第4世代目。母:№1 父:№3
特記事項:№8と同じ。

管理番号:№10
個体情報:♀
血縁関係:第4世代目。母:№4 父:未発見個体(第3世代のタブンネ)
特記事項:№8と同じ。

以上、御報告致します。

なお、№1の記憶の分析情報に基づくと、ほかにタブンネの未発見個体が山で生存している可能性が十分あります。

・ボーマンダが狂乱状態になる前にひとり立ちした個体:第2世代が3体、第3世代が5体程度か。
・ボーマンダが狂乱状態になった際に逃げ出した個体:第3世代が最低2体、第4世代が最低5体。

現状、山の中でタブンネと繁殖可能な種は未発見ですが、近親交配の上で繁殖した個体が山の中で生きている可能性は否定できません。

(続)

657情はないけど掟はあった:2021/11/21(日) 22:10:51 ID:G6a1qewY0
なお、№1と№3の間の繁殖状況に関しては、№1により、「タマゴを計2回4個産み、うち初回の1個は無精卵だった」との情報がありました。
№5・№8・№9が所生の子とタマゴであると思われ、この組による子孫は駆除されたものと思われます。

イッシュ地方の文献と比してだいぶ繁殖・生育ペースが劣る状況です。栄養状況を鑑みハイペースでの繁殖は難しい状況であったと推測が成り立つところです。

(続)

658名無しさん:2021/11/22(月) 06:21:58 ID:y.X/A0BQ0
投稿乙
生き残ったミーちゃんのその後も楽しみなんだけど、
生態環境の話とか思いの他ガチな内容でお話としても続きが楽しみ

659情はないけど掟はあった:2021/11/23(火) 19:34:18 ID:DAJzSu1g0

山脈の生態系は独特だった。
氷タイプではムチュール系・ニューラ系・ウリムー系の繁殖が確認されており、その氷ポケモンを狙う炎タイプとしてヒトカゲ系・ガーディ系も繁殖している。
意外なことにヨーギラス系もいる。ジョウトやカントーでの主食は土だが、ここの地方では多少硬い岩でも何でもないように消化するらしい。水や氷に弱いのは他地方と変わらず、サナギラスの頃までは地中で生きている。運よくバンギラスに進化できた個体のみ地上に掘り出てくることがあり、掘り出た跡が穴になったり崖になったりして、雪に隠れて天然の落とし穴になったり、がけ崩れや雪崩の原因になったりする。
山の雪解け水は北の方から低地に流れを形成し、凍ったり解けたりを繰り返しながら盆地に流れ込み、一本の川になる。川は盆地を突っ切り、南の山脈の切れ目を通って、カントー方面に繋がる深く険しい渓谷を流れ抜けていく。
この川の中では、コイキング系やニョロモ系が(他地方の川と比べて多いわけではないが)いることにはいる。川の流域にはイーブイ系も繁殖している。イーブイの進化先はおおよそグレイシアで、たまにシャワーズだ。北の山脈の上の方では、地面を掘り出した時にたまに「こおりのいし」が出るし、川の底にはたまに「みずのいし」が転がっている。運のいいイーブイやニョロゾがこうしたものに触れるらしかった。
盆地を囲む山々でも、場所によっては地質と生態系の微妙な違いがある。南側の渓谷の両岸では質のイマイチな亜炭の層が露出しているが、その辺りでは炎ポケモンは出てこない。地元のヒトが焚き付けにするくらいの使い道しかないが、下手に炎を出すと出した個体ごとえらい事になりかねないと本能的に忌避されているらしい。

明確な食物連鎖の頂点となる種がこれだとは言えない山の環境で、それぞれ喰う喰われる関係性を持ちながら、微妙な食物連鎖が成立していた。
コイキング以外の全てポケモンが、タイプ上で不利な相手に対しても一度は攻撃できるような有効な技を遺伝したり、成長で身に着けたりしている。山の中の生存競争は熾烈で、たとえ二段階進化した個体であっても、極限まで食い詰めてしまえば駄目元で人里に降りてくる。
ヒトが畑で育てているのは、主に、きのみ・芋・雑穀。地質に恵まれない地域であっても何とか育てられるものを、懸命に育てて生きてきたのだ。畑に手を出せば怒り心頭のヒトに確保される。
水と焚き付けは取り合えず困らない土地柄ゆえ、そうしたポケモンは即座に生きたまま茹で上げられて生命が終わる。「食べられる部分は全て胃袋に入れる」という表現そのままに(ヨーギラスのわずかな筋肉でさえ)最大限栄養になり、食べきれない部分も余すところなく利用されるのがオチだった。

660情はないけど掟はあった:2021/11/23(火) 19:35:08 ID:DAJzSu1g0
「骨も提供してほしいという依頼は初めてでした。聞いてはいましたが、ここの方々は食糧にされるんですね」「そりゃあ食べられますからね」

レンジャー協会の事務所の庭先、大鍋がかまどの火の上で鎮座していた。まだ中身は水だけだが、煮えてきていて湯気が激しい。
セメントの床に敷いたブルーシートには、5体分のタブンネの骨が並んでいる。分室での鑑定後にここに引き渡され、綺麗に洗浄を終えていた。
骨は何もしなければ食用にはならないが、何時間も煮れば溶け切って出汁が取れるしスープになる。そこそこ美味しいらしい。近くのヒト達に振舞うことになっている。定期的にやっていることだという。

ブルーシートの上のひときわ大きな頭骨に棒が振り上げられる。かなり硬かったはずの♂の骨はいとも簡単に砕けた。ある程度粉々になってから鍋に突っ込むとかどうとか。

研究者に連れられたエルレイドは、黙ったまますぐそばの金網に視線を向ける。先日引き渡したあのタブンネは網にしがみ付いて骨を凝視していた。首輪を鎖でつながれて全身ボロボロだ。案の定、リザードンに手酷い目に遭っているらしい。そのリザードンは今は不在だ。つい先ほどタブンネの群れの捜索に大張り切りで飛んで出て行った。
つがいも子も、全員がねぐらでニャースにやられて死んでいた。どれほど抵抗したのかは知りようがなく、ヒトは骨しか手にしていない。そのことを主に独断で密かにテレパシーで告げた時、タブンネの心は波打った。波打ったが、筋道だった思考の発露は今のところ無い。
そういえば母親がどうなったのか話したこともなかった。あの母親の身体はともあれ心は壊れ切っていて、ここでただ喰われて終わるらしい。エサも水も摂れないのだから、早々にそうせざるを得ないだろう。主は見切りをつけている。明日辺りにはここに運ばれるはずだ。

棒は容赦なく次々と骨を打ち据えていく。「かんがえごとがおおい」あのタブンネは、何も言わず涙も流さずにヒトの作業をじっと見ていた。

(続)

661情はないけど掟はあった:2021/11/23(火) 19:38:59 ID:DAJzSu1g0
>>658
乙ありです。設定を考え始めたら止まらなくなりました。それらしく説得性があれば幸いです。
次回以降ミーちゃんサイドのお話(レンジャー協会であったこと)です。

662情はないけど掟はあった:2021/11/23(火) 21:26:06 ID:DAJzSu1g0
>>660 誤字がありました。たびたびすいません。

× つがいも子も、全員がねぐらでニャースにやられて死んでいた。
〇 つがいも子も、全員がねぐらでマニューラ達にやられて死んでいた。
雪山にはニャースは出ないです……

663名無しさん:2021/11/24(水) 12:12:05 ID:DeUQeMgE0
投稿ありがとうございます。
この先はブイズも登場するのでしょうか?
リザードンとタブンネの話も見てみたいです。

664情はないけど掟はあった:2021/11/24(水) 23:13:01 ID:Uv/Zr7NY0
――あなたとはぐれてから、割と近い場所で何体かのニューラにやられていたらしい。よく生きていたものだね。
  これから私の住まいに連れて帰る。運が良ければもう一度会えるかもしれないね、ここで。でも期待はしないで。身体が生きて治ったとしても、心が死ねば何もできない。ひどい目に遭い続ければ、生き物はたまにそうなる。

――おかあちゃま、体力は強いから。

――あなたの母だけでなく、あなたも同じだよ。身体が生きていても、心が死ねば何もできない。それはヒトも生き物も同じこと。あなたの身体や心でも同じことだ。そうではないかな。

ミーちゃんはゆっくりと下ろされて、代わりにおかあちゃまがエルレイドのお兄さんの上に浮き上がりました。
それを見る暇も無く、ヒトのお姉さんとも違う、ヒトの太い腕が荒っぽくミーちゃんの首に巻き付いてきて、感じたことのない重く冷たいモノが喉を締めました。
ミーちゃんの触覚がこのヒトの思いに触れました。おかあちゃまとは真反対の方向に連れて行きたいようです。隙あらば乱暴に蹴り飛ばしたいような心持ちのヒト。覚悟していたはずなのに、ミーちゃんは縮こまった心で従うしかありませんでした。

665情はないけど掟はあった:2021/11/24(水) 23:16:04 ID:Uv/Zr7NY0
「毎年のことだけどやっべえな、アイツ」

そのレンジャーは、半ば笑い半ば感嘆するようにガラス窓の外のリザードンを指した。1つ年下の後輩レンジャーが呆れながら同意する。

「アイツ、冬になるとああなりますもんねぇ」

肥えた個体が好みらしい奴だった。そういう体型の野生ポケモンと雪山で触れることはそうそうないが、まれに出会うと目の色を輝かせるし、飛び方もえらく生き生きするのでレンジャー協会でも有名だ。タブンネの丸々した体型はそういう好みのリザードンにはたまらないだろうと関係者の誰もに予想されていたし、実際予想通りだった。

この地の古くからの掟には、『雪山で明らかに死にかけている個体は、発見者のポケモンの生き餌にしてもいい。繁殖も譲渡も駄目だが、一冬一個体に限り、虐めの的にして構わない』というものがある。
冬の始まりのこの時季に雪山でこうした個体を見つけて、被虐対象としてこんな♀があてがわれたことは、リザードンにしては本当に喜びの極地だろう。
発見以来とんでもなくうずうずしていた思いは存分に発散されている。協会敷地の、とりあえず他所からは見えない(事務所の窓からは丸見えの)庭の奥で。

リザードンは図鑑に載っている背丈(1.7m)よりもやや大きい形で育っていたし、タブンネは栄養状態が悪かったためか、逆に図鑑に記載された背丈(1.1m)よりもやや小さい。
タブンネが鎖で金網に繋がれた時、倍ぐらいの身長差と、倍どころではない重量差で圧倒されながら震えていた。リザードンはお行儀よくレンジャーが庭から去るまで待っていて、去った瞬間に本性丸出しで襲い掛かったのだった。

まず「かわらわり」を繰り出した。ノーマルタイプのポケモンに格闘技はよく効くようで、タブンネは、あの真新しい分室で唯一の技として残された「なきごえ」を1発だけ上げて失神している。セメントの床の上にリザードンは座り込み、脱力したタブンネを自らの股の上に抱え上げたのだ。
タブンネが意識を取り戻した時の痛みはとんでもなかっただろう。種族が違いすぎ繁殖できない組み合わせで、本来は考えられない大きさのものを突っ込まれ続けているのだから。リザードンの腕の中でちょっとした悲鳴を上げるなり、リザードンは余計にヒートアップした。幾度目かの繰り返しで学習したのか体力が尽きたのか、もはやタブンネは声も上げない。
今は、あられのちらつく中で金網に押し付けられている。挿さったまま覆いかぶさられるのは、それはそれでしんどいだろうと思い、レンジャーは半笑いになる。

少し前まで、あてがわれたポケモンはまさしく見つけたポケモンのものだった。ヒトが干渉することはなく、冬を越せずにすぐ死んでいた。
エサだけは出すようになったのが、5年前だ。
他地方との交流による意識の変化もあるが、一因はこのリザードンにもある。あまりにも激しすぎて1日で潰してしまった例が3年連続したからだ。もっとも、許される時だけはとんでもなく気性が荒れるというだけで、ヒトの示した規範は厳守しているし、普段の働きぶりもレンジャー事務所では一番優れていると言って良い。そのためレンジャー協会の会長にいたく気に入れており、「さすがにもったいないから、もうちょっと生かすようにするかね? 他所の地方のフーズも普通に買える世の中だしな」の鶴の一声で、エサの配給が解禁された。

一応の外聞があるから表からは見えないが、レンジャーではなくても皆知っていた。このタブンネのように泣こうが血を出そうが絶望に苛まれようが、それは掟に従ったものだとヒトもポケモンも理解していたし、この地で生きるための当然かつ最小限の犠牲だと考えていた。
こんな生贄がなければ、あの山を飛んでヒトのために戦う過酷な日々は、間違いなく絶対に割に合わないのだ。

(続)

666情はないけど掟はあった:2021/11/24(水) 23:17:10 ID:Uv/Zr7NY0
>>663
リザードンとタブンネの関係を書いてみました。今はこんな感じです。今後も視線を変えてこの2匹を描写できればとは思っています。
ブイズはどうでしょう。話の筋次第では出せるかもしれませんし、アイディアはあるのですが、この掲示板の場所柄、タブンネの絡まない更新はできるだけ避けたいところです。

667名無しさん:2021/11/26(金) 12:33:27 ID:/0hWa88w0
お応えいただきありがとうございます。
冬の間のうっぷん晴らしってそういう意味でしたか(すみません。649の最後、三行見落としてました)
これはこれで楽しみです。

ブイズの方は山に棲む個体が登場したら嬉しいと思っただけですので、お気になさらないでくださいね。

668情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 00:10:18 ID:lR6N2o.g0
本当におたがいのことを思い合えない相手と一緒に過ごすことって、こんな風なことなんだって初めて分かりました。昼は昼でうっぷん晴らしの的にされること、夜は夜で的にしてくる相手に抱き寄せられたまま眠り続けるということ。

それでも、ミーちゃんのことを延々痛めつけるリザードンのおじさんに散々触れるから、心にも自然と触れてしまいます。
おじさんにとって、ヒトの群れのために生きている厳しい厳しいいつもの日々は、冬にミーちゃんみたいな子をいじめ倒して挙句に食べてしまう喜びと引き換えのようでした。ミーちゃんはヒトから食べ物を貰って、その代わりにいじめ尽くされることを望まれていて、むしろそれ「しか」望まれていませんでした。
ヒトから貰える食糧は、確かにあの山のほらあなの中では食べたことがない味がします。それだけは良いことです。良いことと言ったらそのことだけです。

リザードンのおじさんは、つがいになった1番上のお兄ちゃまとは真反対でした。あのほらあなの中ではタマゴを作って子どもを生み育てることだけを誰もが望んでいたけれど、今はタマゴも産めない相手の心と一緒にただ受け止めるだけです。
おじさんは、誰かとタマゴを作っても、ヒトの都合が付かないときは孵化したそばから子どもが茹で殺される掟です。ミーちゃんのようにどう頑張ってもタマゴが出来ない相手はかえって都合が良いそうでした。
2周り前の冬には、とっても未熟な身体の子を的に決めてミーちゃんのようにいじめ倒し、何度かタマゴを生ませたけれど、その都度おじさんは自分の足て踏みつぶして相手が黙って泣くのをお構いなしにまた盛り続けたとか。冬の終わりにはタマゴと一緒に殺して食べたそうです。好みの身体とはかけ離れてたけど、タマゴができる相手もまぁ楽しいと思ったそうで。……金網にしがみ付くミーちゃんの首を後ろから締めて、モノを抜き差ししながら笑って言う話じゃないと思いました。

おじさんは、腕の中で声を出されるのがとても嫌いです。暴れられるのも嫌いです。だからすぐにミーちゃんは黙って固まって涙だけ流すようになりました。

思えば、ヒトのお姉さんは正直でした。「死ぬよりひどい目に合い続けるかもしれないけれど、それでもよければヒトの群れにおいで」って。あの時、雪山の道でお姉さんと初めて会った時、お姉さんはミーちゃんに間違いなくそう言ったんですから。
エルレイドのお兄さんも、お兄さんなりにミーちゃんを心配していたんです。心が壊れれば、死んでしまえば、何もかも忘れて何も感じないようになれば、確かにそれはそれで楽なはずでした。

669情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 00:22:19 ID:lR6N2o.g0

ここに来て2晩眠った後の朝のことです。リザードンのおじさんはヒトの仕事で飛び立ちました。ホッとして冷たい床に座り込んでいたミーちゃんのところにヒトがやって来て、ミーちゃんを脅すように歩かせて別の金網に繋げたのでした。
向こう側に、エルレイドのお兄さんがいました。ヒトのお姉さんと、他のヒトと、並べられた誰かの骨。とても覚えのある形です。

――久しぶりだな、俺は分かるか? だいぶつらいようだが、心は死んでないかい?

親身になってはくれないけれど、気の毒がってはくれるお兄さんです。癒してはくれないし、支えてもくれないけれど、でも、心に触れても苦しくない相手に会えて少しだけホッとします。

――エルレイドのお兄さん。ミーちゃんの心はまだ生きてるよ。まだ。

お兄さんもまたほんの少しだけホッとしたようでした。でも、すぐにまじめな顔に切り替えて、真剣にたずねてきたのです。

――ヒトが持ってきたそこの骨のことだがな、山のアンタの仲間に関係する事らしい。余計につらくなるだけの話だが、知りたいか?

――え、教えて?

悪い予感しかしません。悪い予感しかないけれど教えてもらうしかありません。お兄さんの心の声は、以前のようにミーちゃんを気の毒がっていました。

――アンタらの昔のねぐらに、ヒトが大勢で踏み込んだらしい。ここのヒトは、山に入った余所者はできるだけ捕まえたいって考えるからな。
  でも、そこれはアンタの仲間は一匹も生きていなくて、代わりにマニューラとニューラの群れが巣食ってたんだと。
  ヒトが踏み込む前に、マニューラ達がアンタの仲間を襲って食い散らかしたっぽいな。アンタの母親とアンタは山の中で逃げ回って挙句に迷ったけれど、ねぐらに戻って来れた奴もいて、そういうのがマニューラ達にやられたんだろう。どんな戦い方をしたのかはヒトにも分からないが、ともかくアンタらの仲間は負けて食われた。
  ねぐらにあったアンタらのマスターの骨と、マニューラが食った後のアンタの仲間の骨だけを、ヒトは山からここに持って帰ってきた。ヒトの骨は他所でヒトが弔うが、アンタの同族はここでヒトが食らう。

――そんなっ。

金網の向こうで骨が並べられます。全部で5体分。覚えがあるのは当然です。ミーちゃんと一緒に過ごしていた群れの仲間の誰かなんですから。

――ヒトはな、生き物が骨になったとしても、生きていた頃の実の親と子の関係は見抜くんだ。アンタのつがいとつがいの間の子は、どっちもねぐらで骨になってた。アンタの妹と、妹の子2体も同じく骨になってたらしい。それと、ここには持ち込まれてないが、ねぐらにあったタマゴが3個くらい、完全に割られて喰われてたそうだ。
  これって、……アンタのつがいも子も、マニューラ達のせいで全滅したってことじゃないのか? アンタの子は小さいのが1体に、タマゴ2個だろ?

――うん。……その通り。

――で、こういう時に山から持ち出した骨っていう物はだな、ここのヒトは粉々にして茹で溶かして食うらしい。アンタのつがいも子も、今からそうなる。
  ここの食う食うわれる掟ってこういうものらしいぞ。俺は初めて知ったが。それと、ここのヒト達は、エサを食わせさえすればそういう物を見せつけても良いって思ってるんだ。

つらすぎると涙も出なくなるのでしょうか。そういうことはミーちゃんの心が死んでいく前触れなのでしょうか。
ミーちゃんの心がどうなろうとお構いなしに、お姉さん以外のヒト達は、金網の向こう側で、楽しそうに骨を砕いて、茹でて、美味しそうに飲んで騒ぎ続けるのです。

(続)

670情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 00:42:50 ID:lR6N2o.g0
>>667
どういたしまして。
今回読み返して頂いてお気づきになった通り、元々>>649を書いた時からリザードンにこういうことされる描写をいつか書くということは確定していました。今後もご期待に沿えば幸いです。

完全にプロットが固まり切っているわけではないのですが、今までの投稿分でも、伏線になるかもしれないことをさらっと書いてたり書いていなかったりします。
分からない事や疑問点などがもし有りましたらお気軽にお尋ねくださいませ。よろしくお願いします。

671情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 19:44:38 ID:lR6N2o.g0
「●●さんも、残酷なことだと思われてますか? 他所の地方の人達みたいに」

スープの入った椀を求めて三々五々関係者が集まる中、不意に振られた質問だった。レンジャー協会の会長からの。
値踏みされているのだと思う。尋ねてきた本人だけではなく、周囲の人々からもだ。馴染めない見識を持つ者を受け入れる余地なんて、ここでは持ち得ないのだから。

「あくまで個人的な見解ですが、残酷さというよりも、……生きるための努力と知恵が、他の地方と比べて段違いに必要な土地なのだと感じました。でも、皆さん方はそれを受け入れて生きておられる」

無難だが真実の一面を突いた言葉ではないか、と、我ながら思う。会長や周囲の何人かは納得したようで、強く首を縦に振った。一人のレンジャーだけが苦笑する。

「ここで色んな決まり事を守れそうにもない人はレンジャーを目指しませんもんね。そういうのが嫌な奴はそもそもレンジャーになりゃしない」

レンジャーの言葉には自嘲するようなニュアンスがあるが、周囲のリアクションを見るにそれもまた正しいのだ。こちらの立場では微妙な苦笑いでフォローするしかないけれど。

「今のところそれを受け入れて汗を流す方々がおられるから、ここの町での人が生活できている、という事もまた真実ではないでしょうか。……もちろん、決まりをどうするかはここの方々が決める事ですけれど。私どもだって、ルールを変えて頂いたからこそここに着任できたのですから」

「そうですねえ。でも、そういう決まりが嫌でたまらない子は、レンジャーになりたがらないどころか、若い頃にカントーに出て戻って来なかったりするんですよ。
 仕方ないことなのかもしれません。レンジャーになることも、ここに住むことも、無理矢理やらせる話じゃないですから。特にうちは熟練でも運が悪かったら死んだりする業界ですからね、うちの息子みたいに」

「えっ? ……息子さんが、ですか?」

驚いたこちらに向けて、会長は世間話のように言った。

「5年前でした。登山道のふもとに近い辺りで食い詰めたバンギラスが出たってんで、息子をリーダーにして3人がかりで倒してたら、その後でリザードンが5体ばかり飛んできましてね。えらい強い集団だったらしくて、うちの息子が生命を持ってかれた上、息子と組んでた若手2人も揃って大怪我したんです。おまけにリザードンは1体倒し損ねたんですよ。息子が連れてた♀のグレイシアを掴んで山の上の方に飛んで逃げたらしくて、今も見つかってないんです」

672情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 19:45:19 ID:lR6N2o.g0
ほらあなでチビちゃんが生まれた時のことを思い出していました。ミーちゃんの初めてのタマゴのうち、1個はタマゴの形をしただけで生命は宿りませんでした。残り1個をしがみつくように温めて過ごし、生まれた子を震えながら抱き寄せたのです。
チビちゃんは他の子と同じように愛されていました。タツおじいちゃまもメタちゃまも実のおじいちゃまも、おかあちゃまも、一番上のお兄ちゃまちゃまも。誰もが。
ほらあなの外で実のおじいちゃま達が貴重な食べ物を見つけたある日、タツおじいちゃまのかえんほうしゃであぶった肉をみんなで分けて齧りながら、おじいちゃま方の昔話を聞いたのです。

ヒトの世界のこと、マスターのこと、食べ物のこと、可愛がられたこと、技を教えたおじちゃまのこと、実のおじいちゃまのパンチのこと、タツおじいちゃまの炎のこと、メタちゃまのへんしんのこと、戦い方の知恵を受けてほらあなから独立した仲間のこと……。

ほらあなの中で生まれ育った子は、みんな、おじいちゃま方が編み出した戦い方や生き方の知恵を授かっていました。ミーちゃんがずっと生まれる前からそうでした。
大事な大事な思い出が粉々になっていくような気がします。ヒトのお姉さんだって思い出を粉にして溶かして食べています。

ミーちゃんは捕まるべきではなかったのでしょうか。あの時お兄さんの腕にうずもれるべきではなかったのでしょうか。
ミーちゃんが捕まらなければ、あそこでお姉さんたちに拾われなければ、ほらあなのことはヒトに知られることはなくて、仲間たちがこうして食べられることもなかったはずなのです。

(続)

673情はないけど掟はあった:2021/11/28(日) 15:30:14 ID:wC.hmU8A0
「オマエラは雪の上だと目立つ身体してるのに、群れは一体どこにいるんだろうなぁ? 山の中を散々飛び回ったのに今日は空振りだよコンチクショウ」

「……ミーちゃん、分からない。みんなバラバラに逃げたから……」

夕闇が降りつつある頃、リザードンの腕の中で、その♀は小さく応じた。気弱な答えは、いかにも登山道に死にかけで突っ立っていた馬鹿らしく、全く役に立たない。リザードンは舌打ちしながら♀の首を軽く締めた。

リザードンの飼い主達は、この馬鹿の同族を根こそぎ山から消し去りたいのだという。
こいつらは何日か前に山で大暴れしていたあのボーマンダのあおりを食らい、群れが散り散りに逃げていたらしい。この馬鹿と母だけが生け捕りされ、何体かの骨だけが元のねぐらで発見されている。他にも生きてたのがいるようだが、それらはまだ行方知れずだった。
元のねぐらの場所だけは分かっても、地吹雪が連日続いたため、そこを出てどこに行ったのやら匂いの追跡が全く効かなくなっている。馬鹿の種族らしく分かりやすい所に新たな寝床を作っていれば良かったのだが、案外そういう風ではないようで、どこにも手がかりが見あたらないのだった。
糞も毛皮も足跡も見つからないのだから、飼い主達の間では、とっくに野生のポケモンに喰われたか、見当違いの場所を探し回っているのではないかという声があった。あるいは夜中に密かに動いているのではないかという声もある。(リザードン達は日が沈んだら山には入らない。単純に「危険だから」だ)

ちまちました捜索は好みではなかった。何年か前の冬のような、不意打ちのようなバンギラス1体と怒り狂ったリザードン5体の連戦のような死闘はそれはそれでキツかったが(その時は飼い主のひとりとグレイシアが喪われた)、今回のようないつ終わるとも知れない捜査は別の意味で嫌いだった。飼い主達の命令だから従うが、個体毎の好みや苦手は全く無い訳ではない。

そうしたうっぷんを晴らすように、リザードンは腕の中の馬鹿に感情を丸ごとぶつける。好みの体格で、癪に障る声を出すこともなく、黙って受け入れる♀。馬鹿だが悪くはないと思う。何やってもいいという条件であてがわれた個体なのだからリザードンを制止する者はだれもいない。


夜になってしばらくした頃、後ろの方でやり取りがした。ヒトの声と、同じ飼い主達に飼われているウィンディの咀嚼音。生き餌を喰わせてもらっているようだ。
生き餌のものらしい甲高い鳴き声が上がる。腕の中の馬鹿がビクッとして鳴き返したものだから、リザードンはイラっとして「かわらわり」を繰り出す。今回は意識が飛ばずにグッタリするのみ。
咀嚼と鳴き声が続く。馬鹿は今度は耳を抑えてイヤイヤし始めたので、リザードンはその両手を引っぺがして引き続き欲情をぶつけた。

この山で掟を破ったお前らが悪い。勝手につがって増えた罰だ。親が喰われようが何されようが俺の相手に集中しろ。馬鹿が。

思いは通じたらしく、馬鹿はただ黙って涙だけを流していた。

(続)

674情はないけど掟はあった:2021/11/28(日) 15:30:46 ID:wC.hmU8A0

話はここで折り返しになります。次の投稿より時系列が動く予定です。

675情はないけど掟はあった:2021/11/28(日) 23:32:34 ID:wC.hmU8A0
なお、次の投稿まで1週間開く予定です。12月6日の週より続きの投稿を再開します。

現段階では今後のプロットは詳細を詰めている段階ですが、タブンネ以外のポケモンも、タブンネ同様にさらっとひどい目に遭う描写を普通に出す流れで考えています。
ここでの連載で許容されるものなのか、ご意見賜りたく存じます。

676名無しさん:2021/12/03(金) 18:55:14 ID:Yq3DHfNE0
迷うなら止めなよ…
ただでさえ異色の話なのにもっと続けるの?

677名無しさん:2021/12/12(日) 23:14:58 ID:gUUNhtNQ0
ここはタブンネさんがひどい目に合うことを楽しむ場所だから
ある程度は許容されるかもだけど本筋から外れるならやめといたほうがいいかもね

678名無しさん:2021/12/14(火) 00:48:04 ID:YV8wr3yI0
タブ舎と掟の続き待ってます

679檻の夫婦(前):2021/12/19(日) 13:12:09 ID:zWWFhj3Y0
こんにちは。「情はないけど掟はあった」を書いている者です。
未だ今後の筋に迷っていて続きを書けていない状況で恐縮ですが、別のネタを思いついたので投稿します。前後編の予定で、今日はとりあえず前編のみの投稿になります。
「情はないけど掟はあった」とはシチュエーションは似てますが、別の地方の別の出来事としてお読みください。

680檻の夫婦(前):2021/12/19(日) 13:12:42 ID:zWWFhj3Y0
とある森のタブンネの群れにとって、滅びの危機は、突然に始まった。

ある日、森のずっと遠くに見える山々が前触れなく轟音と共に煙を吹いて、灰色の石と砂の雨を長いこと降らせたこと。それが全ての始まりだった。
森の木々が急速に枯れだし、本来あったはずの実りが全く期待できなくなった。森の中で暮らすタブンネ達はもちろん、その他の種族も徹底的に飢えた。あらゆる種族が殺気立ち食糧競争が激化して、挙句の果てに格闘ポケモンが徒党を組んでタブンネ達のねぐらを襲撃した。そこでタマゴと同胞が何体か殺されるに及んで、とうとうタブンネ達は森を捨てたのだった。
ねぐらにも食糧にも全く見込みがない逃避行だった。森は当然のことながら、森の外でも周囲のあらゆる植物が枯れていた。灰の雨は水脈さえも毒に代えてしまった上に、フラフラと彷徨うタブンネ達は他の肉食ポケモンにも恰好の獲物として狙われる。異変が起きる前には20体ほどだった群れは、森を捨てて2日目にはわずか4体にまで減っていた。

そして2日目の昼、生き残っていた4体のうち2体が、かつて草地だった場所のど真ん中でほぼ同時に倒れ、共に動けなくなった。
辛うじて立てる2体だって、倒れていないというだけでそこから動き出せるというわけではなかった。
皆がつられるようにへたり込んで絶望のままに空を見上げる。バサバサというバルジーナの翼の音が恐ろしい。戦う体力があるはずもなく、群れの滅びも明白に見えていた。

だが、その時、意外にもバルジーナは離れていったのだ。追い払われるような慌て方で一目散に飛び去って行く。
タブンネ達にも原因は分かった。遠くからこちらの方へ、大きな何者かが大地を蹴るように駆け寄って来ていた。森では見たことがない種族だが、明らかに強そうに見えた。タブンネ達に体力さえあれば、それこそバルジーナのように逃げ出していたところだろう。どう見たって力で敵いそうにもない相手だ。
より強い悲しみと絶望がタブンネ達を支配する。無意識に4体が抱擁し合って覚悟を決めて――

またしても意外なことに、そのポケモンは、そこではタブンネ達を食べることはしなかった。
目の前で立ち止まって息も絶え絶えの彼等を見下ろす。ポケモンの背に乗っている誰かが降りてきた、――ヒトだった。横に、ふわふわと別の見知らぬポケモンを浮かせている。
そのヒトはヒトの言葉で語りかけ、浮いている方のポケモンが、タブンネ達にも分かる言葉で語り直した。

「アンタら、飢えて死にかけているんだロう? 主についてくるのなら、きのみだけは食べられるようにはしてあげられるロト!
 主は、飼っているポケモンに生き餌を与えたがっているんだロト! アンタらがつがいになって、生まれてくる子を一匹残らず生き餌にずっと差し出し続けるなら、その間はアンタらにオボンを毎日食べさせてあげる事だけはできるロト。それでもよければ主に飼われるロト」

弱ったタブンネ達の中で、重い戸惑いと迷いの視線が交錯する。♂と♀が共に2体ずつの集団だったから、なるほどつがいはちょうど2組ずつ成立するはずだ。
みな山の異変があってから今に至るまで、全く何も食べていないに等しい。メシに困らないという点はそれだけで猛烈に魅力的には違いなかった。例え、取り返しのつかない強烈な代償があったとしても。

「この辺りには、きのみの生えてそうな場所はもう全く無いロト! 主について来なければここで飢え死ぬしか無いロト!
 でも、ついてくれば、きのみには困らない代わりに、生き餌にするためだけにタマゴを生んで育てる日々になるロト。主についてくるかどうか、アンタらがそれぞれ今すぐここで決めロ」

1体の♀が怯えてはっきりと首を横に振った。1体の♂が、つられる様にその♀に抱き着いて同調する。しかし残りの2体は違った。残るもう1体の♀が逡巡の末に顔を上げてもう1体の♂の手を取り、覚悟を決めて頷き合ったのだ。
4体の視線が再びぶつかり合う。責め合いではなく労り合いの目線。互いの判断を認め合って惜しむ一瞬の眼差しだけで、それぞれの別れは終わった。

681檻の夫婦(前):2021/12/19(日) 13:14:15 ID:zWWFhj3Y0
うちのバンバドロとハブネークのための生き餌製造機は、いまのところとても従順で大人しい。
生き餌製造機の正体は、リビングのど真ん中に置いた、大きな金網のケージの中で巣食っている一組のタブンネの夫婦。元々、火山噴火の影響で食い詰めていた奴らだった。
奴らを飼い始めた時、ロトムを通して俺は言った。

「お前ら夫婦はもうこのケージからは出れないと思え。子どもがどんなに恨もうが喚こうが、責任を持って子どもを差し出すこと。苦しい状況でメシを食わせてやってるんだ。生き餌を差し出す条件を守れないのなら、お前らを飼っておく意味なんてない」

しょっちゅうハブネークが這い回っているリビングで、この夫婦は牢獄の囚人のように監視されながら暮らしている。
俺は、最初っから、産んだタマゴの数はごまかしようがない環境にこだわっていた。最初の約束を違える事だけはないように。巣作り用の新聞紙と餌のオボンをケージの天井から投げ与え、ゴミバケツの処理だけしておけば、定期的にタマゴを生んで孵化させ、やがて乳離れした子を差し出してくれるように。
ケージの中と外で発生する揉め事は、案の定、タブンネの子を隠したり見つけ出したりするような方向には向かわなかった。予想通り、食べられるために生まれてきた子が両親に反抗するような事ばかり。夫婦の方は覚悟を決めてうちに飼われているけれど、ケージの中で生まれてくる子の方はそんなこと知ったこっちゃないという話らしい。当たり前といえば当たり前のことだ。

奴らを飼い始めて2ヶ月後、1回目の子の引き渡しの時だった。その時に差し出されるはずの子は4体だった。
最初の1体は反抗心に燃えて大暴れする性質だったらしく、最後の最後までケージにしがみ付いて大泣きしながら抵抗していた。あまりにも大暴れするのでウザさにロトムがキレて夫婦に一喝、慌てた夫婦の♂の方が子どもをケージの柵から叩き落として殴りつけ、しまいには子を無理矢理に持ち上げてケージに首を突っ込んだハブネークに直に食わせた。
食われる時にも絶叫が上がった。断末魔は甲高い鳴き声で、俺の耳にえらく響く。耳の良いタブンネ達にはなおさら聴覚のダメージになっただろう。子を持ち上げていた♂は苦渋の顔で、♀の方も真っ青な顔で立ち尽くす。残った3体の子は両親とも距離を取り、ケージの片隅で互いに抱き合って震えていた。
やがて子どもたちの内、真ん中の子が涙を流しながら俺を見る。意を決したように何かを言った。ロトムが通訳した。

「食べられて死んじゃうのは分かってるけれロ、どうしてもきょうだいで一緒に死なせてほしい、って言ってるロト。誰かが最後に生き残ることだけは怖いらしいロト」
「……なるほどねぇ。どうするバンバドロ?」

3体を食べるはずのバンバドロに尋ねてみる。ヤツはうちの土間に繋げていて、興味津々でこちらを見ていたのだ。訊かれた方はちょっと考えて頷いたから、俺も頷いた。

「ハブネーク。そいつらは順番に噛みついて弱らせてから、バンバドロの方に咥えて渡してくれ」

その指示もロトムが通訳しているから、タブンネ達にも通じる。子ども達はもう反抗しなかった。泣いてたけれど。なされるがままに毒の牙を受けて土間にドサドサと放り出される。
バンバドロは滅茶苦茶に張り切っていた。希望通り、ぐったりと横たわる子ども達をまとめて積み上げてから一思いに踏み潰す。
一瞬で土間の上に3体分の圧縮ミンチができあがり、バンバドロが食らいつく。リビングのゲージの中からもその有様ははっきり分かったはずだった。

682檻の夫婦(前):2021/12/19(日) 13:15:52 ID:zWWFhj3Y0

俺はタブンネの性分を舐めていたのかもしれない。
嘘ついて騙くらかした訳でもなく、最初から生き餌として子どもを差し出すのが条件だと言っていたのに、条件通りに子どもを食わせたらケージの中で夫婦で揃って憔悴しだしたのだ。
……あの時決めた覚悟はどうしたんだ、一体。

それでも夫婦の間でヤることはヤれたらしい。タマゴができない5日間のエサはずっと俺のわずかな激マズ残飯だった、そのせいかもしれないが。
1回目と同じく4個のタマゴができた朝になって、元通りにケージの天井を開けてオボンと新聞紙を投げ入れる。ロトムを通して俺は言った。

「お前ら、案外精神的に脆かったんだな。死ぬのが嫌なら子どもを育てて差し出せよ。それができないならここを出ていくか、お前らが生き餌になっちまえ。そうすれば俺はうちの外でまた生き餌に産んでくれそうなつがいを探す。今はどこでも餌不足で飢えてるから、子どもを差し出してでも生き延びたい奴は大勢いるはずだ」

断続的に噴火を続ける火山の影響は酷いものだ。うちの辺りでは石が飛んでくることはまず無いが、窓から見える世界は未だにどこもかしこも灰だらけだった。きのみも雑草も生えようがない世界なのはリビングの真ん中からでも分かっただろう。
俺はバンバドロ使いの配送屋兼土建屋。(昔はトレーナーをやっていたが)今の本業で火山災害支援に関われているから多少マシな方というだけだ。ヒトの社会では農業で食べていた人達の離農がローカルニュースの大問題になっている。野生のポケモンだってどれほどが飢えたのか知れたものじゃなかった。

「俺はな、タブンネを愛でる余裕も、タブンネを繁殖させてその子孫の分まで食わせる余裕も、どっちも無えんだ。バンバドロの生き餌を産んでくれるつがいを、外の世界よりほんの少しマシな環境で飼うくらいが精々なんだぞ。それを分かっててくれ。お前らがここにいる限り、お前らが育てるのはお前らの子じゃない。俺達の生き餌だ」

情を振り切って生き餌製造業をやっているんだと割り切ってもらえるならそれで良かった。俺としては。
ケージの中での作業といえば、子どもを育てるか、汚れた新聞紙を千切ってケージの隙間から外のバケツに出す(それ以外へのゴミ捨ては元々キツく禁じていた)くらいだろう。今は外の世界が異様に厳しいのだから、飢えずに生きていける環境というものは、子への情を無くしても釣り合うくらいの貴重な価値がある。後はこいつら夫婦が割り切れるかどうか次第だった。

(続)

683名無しさん:2021/12/20(月) 13:25:16 ID:zT0VeAfo0
新作、ありがとうございます。
これもまた面白そうな話ですね。最初の子は潔かったようですが、聞き分けのない子と生き延びたい親の喧嘩なども見てみたいです。
バンバドロって馬なのに肉食なんですか。

684名無しさん:2021/12/20(月) 21:29:18 ID:sMqMdmD60
>>683
レスありがとうございます。今週中には後編を書き上げるつもりです。前編と同じくらいの長さになると思います。

リアルの野生の馬でも、死んだ馬の肉を食べたことが記事になったり、ヒヨコを食べた動画が複数ネット上に上がったりしています。執筆当初からそういう情報を念頭に置いてました。
完全に作者の個人的な見解ですが、バンバドロは草食寄りの雑食のつもりで捉えています。たまには肉を食べることもあるような(食べなくても生きていける感じの)種族のつもりです。

685檻の夫婦(中):2021/12/26(日) 01:31:02 ID:TDsWrnEE0


もしも火山の噴火が発生せず、俺の懐具合にまだ余裕があれば、(バンバドロ・ハブネーク・ロトム以外にも)他にポケモンを飼うことや繁殖させることに関心を持ったかもしれない、逆に、野生よりもほんの少しマシな環境で生き餌用のポケモンを囲うという発想には至らなかったかもしれない。
空想に逃避してしまえば、頭の中だけでは無限に救いが生まれる。しかし実際は、余裕も救いも無い現実の方が常に正しい。現状で余裕のないなりに考えた結果がこの夫婦のこんな扱いで、俺の懐具合でできることが精々がこの程度だった。徹頭徹尾、ただそれだけの話だ。
たとえ本心を覗かれても構わなかった。俺は、一貫して本音丸出しで接していたのだから。

人生初の試みだったから、俺は油断していたのだと思う。
その日、立て続けの噴火が落ち着いて降灰も無いので、家の窓を全開にしていた。2回目のタマゴは4個とも前々日に孵っていて、タブンネの赤ん坊は母の乳を含みつつよく鳴いていた。そこに俺がオボンと新聞紙を入れたので、両親はオボンを食べていた。
うちの周辺はガチの灰だらけで、植生は壊滅的に悲惨だった。この辺りは元々はタブンネが普通に住んでいる地域で、タブンネという種族は一般的に非常に耳が良い。
さて、飢えたタブンネの群れが、健康的なタブンネの子の鳴き声と、瑞々しいオボンを両親がかじる音を聴き付けたら、一体どうなることだろう。

ロトムに呼ばれた俺がトイレの長い用事を切り上げてリビングに戻ってみると、めっちゃ分かりやすい構図が出来上がっていた。
ケージの中でバツの悪そうな顔をする夫婦、よく理解してるかは分からないが一応黙り込んでいる4体の子、土間から窓の方を威嚇するバンバドロと、本気で牙をむき出しにしたハブネーク。
最後に、うちの庭からリビングをガン見しているタブンネの群れ。赤ん坊2体を含めて、……ちょうど10体か。全員餓死寸前らしく、特に赤ん坊は両個体とも死んでるんだか生きているんだかがよく分からん。ハブネークが制止しなかったら、今頃は家に上がり込んで食糧強奪してたかもしれないな、コイツら。

「ロトム。こいつらの言い分を聞いてくれ。先に『全員一斉に話されても分からないから、群れの長だけ喋れ』と言った上でだ。まあ、こんな状況で言いたい事なんて分かり切ってるが」

ポケモン同士のやり取りが始まる。指名された長の声は切羽詰まっているのが分かった。この状況でのんびりしているはずもないが、懇願の声色は極度に強い。

「あー、群れがみんな飢えそうで、どうか赤ん坊の親の分だけでもきのみを分けてくれないかと言ってる、ロト」

「ロトム、俺の言う事そのまま伝えてくれ。
 ……俺は、飼っているポケモンの生き餌が欲しいんだ。ここのタブンネ夫婦は、あの檻の中からは一生出れない。そしてここで生んだ子を残らず俺達の生き餌に差し出していて、代わりに俺からきのみをもらう。そういう約束で住まわせてるんだ。それ以外のタブンネにきのみを渡す余裕は、俺には無い」

ゆっくりと話す言葉が訳される。庭から弱々しい悲鳴が上がった。ケージの中への夫婦の同情と、哀しみと、羨望と、この群れの中で死が定まった子と我が身への悲嘆。
ケージの中でも夫婦が多少しょげていた。特に♀の方、こりゃあ死にかけてる赤ん坊に同情しているな。俺が声を掛けなければ、この夫婦だって衰弱死一直線だったはずだし。
まぁ良い、多少マシな選択肢を言うだけ言うのもありだろう。俺が損する話でもない。

「死にかけてるそこの赤ん坊達に、乳を飲ませたいのか? そこの夫婦が余計に子どもを育てられそうなら、その赤ん坊達だけは引き取るぞ。ただし、引き取った子どもは将来のうちの生き餌にしかなれないが。今すぐ餓死する元々の運命が、ほんの少し違う運命になるだけ、それだけだな。ただ、少なくとも生きている間は乳は飲めるだろう。肥えた子どもは理想の生き餌だからだ。
 その他のタブンネは、俺達は要らん。アンタら痩せすぎてて餌にもならねぇよ。子どもの運命を決めたら、ここからとっとと出てってくれ」

ケージの夫婦と庭の群れ両方に向けた言葉を、ロトムがまた通訳した。ケージの柵と窓越しに鳴き声が飛び交う。俺、長だけ喋れと言ったはずなんだがなあ。

ただ、喋らせた分だけ意見は出まくったようだ。覚悟も方向性が固まり、別れの挨拶も交わされたらしい。
1体の赤ん坊は死にかけたまま母親らしき成体に強くしがみ付いていた。もう1体は、死にかけてるなりに肝の据わった顔でこちらに差し出されたのだ。

こうして引き取った個体は、ケージの中で♀の乳房に無我夢中で吸い付いた。元々の子が4体とも若干引くくらいの勢いで。

686檻の夫婦(中):2021/12/26(日) 01:31:50 ID:TDsWrnEE0
ケージの中で引かれつつ同情されつつ♀の乳を独占すること丸3日。元々の子4体よりも小さかった背丈は追い越す形で大きくなり、体型もだいぶマシになって、何より歯も生えた。タブンネの成長力ってすげー。

「どっからどう見ても乳離れする時期だな。あっという間に生き餌にはぴったりに育った、自覚はあるか?」

ロトム経由で尋ねてみる。その子は、ケージの中で覚悟した顔で頷いた。何とも潔さに振り切った個体だ。
ケージの天井部は他の面と同じく全面金網だが、ロックを外せば、蝶つがいを起点にしてフタのように開口できるよう作ってある。俺が前に子を食わせた時のように天井を全開にすると、ハブネークは舌なめずりをしながら中に首を突っ込んだ。
全く叫ばなかったし、泣きさえもしなかった。牙の一突きと丸呑みだけで静かに終わった。


人間もポケモンも、どんな生き物も、自分が見知った経験に基づいた価値判断しかできない。
野生の環境で飢餓に苦しんだ経験のある夫婦や、1体だけ引き取られた子にとっては、俺はまさしく救世主だし、従うべき相手だった。俺が提示した条件は取り返しのつかないものだったが、苦渋の末にでも納得して身の振り方を決めている。俺に逆らうはずがない。
タブンネは本質的に他者を気づかう善良な生き物でもある。自分自身が単に食われるだけの元野生の子にとっては、身内を踏み台にする自責は生まれない。腹一杯になる歓喜と、差し迫った己の死の覚悟。それしか求められない立場だったのだ。

他方、ケージの中で生まれた子達は、火山灰だらけの大地で飢え死にかけるという経験をしておらず、俺の条件に納得した訳でもない。生まれた時からいずれ生き餌として食べられる運命しかなかった。
野生の子を引き取ってわずか3日間でも一緒に育てさせたのは、家の外側の世界で、タブンネの野生の群れがどんな経験をしていたのかを4体の子に知らしめるため。ケージの中で母体の乳が飲めるという環境は、それだけで絶対的にマシなんだと理解してもらいたかった。ごく短い生涯が確定しても、なお釣り合う程度には、貴重な環境なのだと。

生き続けたい親と、食べられる運命を勝手に決められた子のケンカは、発生するよりは、発生しない方がいい。俺は住まいの静寂性を何が何でも重視しているという方ではないが、リビングが静かであるならそれに越したことはなかった。
それで元野生の子を引き取って食わせた結果だが、予想外の方向に向かった。親子ケンカは起きなくなったが、子の方が授乳を拒否するようになったのだ。覚悟を決めて食欲を満たし成長して乳離れした子がすぐ食べられたのだから、何も乳を摂らずに成長しなければいいと思ったらしい。そういう教訓になったのかよ、クソ。

「常々言ってるが、俺はタブンネを愛でる余裕も、タブンネを繁殖させてその子孫の分まで食わせる余裕も、どっちも無え。お前らは生き餌製造機としてここにいる。
 ここのガキ共に無理矢理にでも乳を飲ませろ。乳離れした子は生き餌に最適な時期だが、それ以外のタブンネだって生き餌に出来ない訳じゃないんだぞ。子どもを乳離れさせられないなら、お前らが一家揃って生き餌になるか、ここを出てってくれ」

ロトムを通した通告の結果、痩せた子どものうち3体は母の♀の乳を飲むようになった。1体はロトム経由で思いがけないことを言ったのだ。

「その子だけ、許されるなら、乳離れが終わった時、生き餌にするんじゃなくて外の世界に追い出してほしい、と言ってるロト」
「へ?」
「厳しくてすぐ死ぬ場所なのは知ってるロト。ただ、このケージじゃないトコで死にたいらしいロト」

覚悟を決めて外からケージに入る奴がいるんなら、覚悟を決めてケージから外に出たい奴もいる、ということか。俺は夫婦を保護する時、子は生き餌として全部差し出すという条件を突き付けている。この希望は条件に反するものだが……。

「今回は良いだろう。外側から引き取った子が1体居たから、元々の子が1体少なくなっても帳尻は合う」

告げられた子は安堵の顔で控え目に喜び、夫婦もホッとした顔をした。

687名無しさん:2021/12/26(日) 01:32:31 ID:TDsWrnEE0
すいません。書き上がらず中編になりました。
後編は1週間以内に書き上げて投稿する予定です。

688檻の夫婦(後):2021/12/29(水) 17:51:53 ID:iBgVtpKc0
その夜。
月のない真っ暗闇の中で、うちの窓ガラスを叩く音がした。カーテンを閉め切っているから庭の様子は伺えないが、高めの鳴き声も聞こえる。ケージのタブンネ達も全員反応していた。

「野生のタブンネか? この間みたいな」「そうらしいロト」

ハブネークを呼び寄せて傍に待機させてから、カーテンを全開にして窓を開ける。
予想通りタブンネがいた。今回は成体と赤ん坊が1体ずつのペア。成体の方は思わず俺が飛び退くほどインパクトのある顔をしていた。何があったのか知らないが、全身ガリガリで傷だらけ血だらけ、おまけに右目の眼球が瞼から完全に外れてぶら下がっていやがる。どう見てもこっちの目は完全失明状態だろう。左目の方はちゃんと見えているっぽいが。

「えっらい見た目だなアンタ。……ロトム、うちに何の用事か聞いてくれ」

ロトムが聞き出す前に、成体の方が喋りはじめていた。痩せこけて覚悟の決まった子をこちらに突き出しながら。

「アー、……嫁さんと赤ちゃんを連れて困っていたら、他のポケモンにおそわれて、嫁さんが死んじゃったらしいロト。ここでタブンネの子どもを生き餌にしてるのは知ってるロト。この子は一度も満腹になった思い出が無いらしいロト。この子を差し出すので、一度でも腹一杯に乳を飲ませてもらえないか、って言ってるロト」

なるほど、じゃあこいつは父親か。親子共倒れで飢え死にするよりも、子どもにせめて思い出を作らせてやりたいという思考の。
気持ちは分からんでもない。乳しか飲めない時期の子が母親を喪えば、ほとんどの場合は餓死するしかない。元々つがいと子だけだった家族の中に、他に乳を出せる♀がいるわけでもなく、乳の代替になるような果汁が入手できるわけでもなく。
ケージの中の夫婦に目を向けた。先日のように育てられそうなら引き取るかと尋ねようとして……

どん! と、大地が揺れた。

グラグラと強い揺れが続く、リビングの壁のTVが倒れ、窓のガラスが割れ、電気が消える、どこかで物が落ちたり倒れたりする音がした。
ロトムから大きくサイレンが鳴る、暗闇の中でスマホ型の画面が浮かび上がり、こちらに向けて叫んだ。

「火山噴火の情報! 揺れと噴石に注意! ここでも岩が降ってくるかもしれないロト!」

マジかよ。
慌てて壁に掛けていた懐中電灯を外してオンにして、横に掛けていたヘルメットを被る。土間のバンバドロをボールに入れてテーブルの下へ。ハブネークも黙ってテーブルの下に潜り込み、バンバドロのボールを守るようにとぐろを巻いた。
電池式のカンテラを点けてタブンネ達のケージの上に、タブンネ達は、……ケージの中だからこのままで良いはずだ、岩に屋根を突き破られたとしても、ケージの天井はかなり硬めの金網だし。
そこまで考え終えた頃には、揺れはだいぶ落ち着いていた。
ケージのタブンネ達は一匹残らず柵にかぶりつき、窓の方を指差して必死の形相で鳴いている。

「窓枠が外れたらしいロト。さっきの親子が逃げ損なって下敷きになってるって言ってるロト!」

689檻の夫婦(後):2021/12/29(水) 17:52:26 ID:iBgVtpKc0

慌てて窓を見る。窓のサッシは確かに丸ごと外れていた。家から懐中電灯の光を当てると、言われた通り、庭に転がるサッシの下で親子は共に頭から大流血していた。息はあるようだが……。

視界の上の方が光った。
平野のずっと先にある山脈の奥の方で、空が赤く燃えている。山の向こうで、花火の打ち上げよりも大きな光の柱が天に向かって跳ね、その光の手前では巻き上げられた石や岩らしいものがチラつくように飛び交っていた。轟音と小刻みな揺れが、また来た。……いや、音と揺れだけで済んでいる内はまだマシか。

「ロトム、こいつらの救出は諦めるように伝えてくれ。どんな岩が降ってくるか分からないのに、ここで外には出られない」

自分の飼っているポケモンなら、この状況でもきずぐすりを投げてぶっ掛けるくらいはやっただろう。しかしこの親子は野生だ。そこまでの救命はできない。

「分かったロト」

ロトムが通訳しなくても俺の判断が分かったのだろう。ケージの中のタブンネ達は皆気落ちした顔でうつむいている。そこにロトムの通訳が駄目押しのように伝えられ、全員が暗い顔をする。何だかんだで優しいんだな、こいつらは。

「ロトム、今の時刻は?」「21時ちょうどだロト」「そうか。とりあえず朝までうちで待機だな。夜が明けたら避難するぞ」

問題の火山は山脈の奥にあるし、最高峰でもない。溶岩も、ガスも、ここに届く前にもっと高い他の山に遮られるはずだ。だから火山性の揺れや、山を飛び越えてくるかもしれない噴石だけが脅威になるはず。
ここにもいずれ避難勧告が出るのだろうが、夜中に不用意に屋外に出るのも危ない。こういう時は夜明けまで待機してもらうのだと、確か役所も言っていた。

懐中電灯とロトムの光を頼りに、テーブルの下に押し込んであった、組み立て式の非常用のパイプベッドのパーツを引きずり出す。それなりに大きいベッドを完成させてから、これまた非常用の寝袋を広げて、俺はパイプベッドの「下」に潜り込んだ。
これまで黙っていたハブネークが俺に寄り添った。閉じた口から舌だけを出し、舌の上に器用にバンバドロのボールを載せている。俺はハブネークの頭を撫でてからボールを受け取り、ベッドの脚のボール置きに置いた。家の屋根を破って岩が降って来るとしても、とりあえずベッドがブロックしてくれればいいのだが、……これもまた気休め程度だろうか。
火山灰が降り始めた時点で、非常用の備えは色々と考えていたのだ。備えが実際に役立ってほしくはなかったが。

そういえば、他にも決めていたことがあった。

「ロトム、タブンネ達に通訳してくれ。
 ここでも火山の被害がこんなに出た以上、俺も、夜が明けたらこの家を捨てることになるだろう。
 お前らが故郷を捨てたときみたいに、俺の先行きは分からないままだ。これからの俺はもっと余裕がなくなるし、夜が明けたら、ありったけの食糧を持ってここを出るつもりでいる。
 生き餌製造機としても、もうお前らを養えない。夜が明けるまでに、これからどうしたいかをお前らが話し合って決めておいてくれ。ここで食われるのがいいのか、何もないまま、この家から外へ放り出されたいのか。
 ……もし親と子で分かれるなら、夜のうちに、腹を壊さない限界まで乳を飲ませた方がいいだろう。外は食糧のある場所じゃないし、こんなんで一度別れたら二度と口にできねぇぞ」

無情な指示だとは思う。だが俺は嘘は吐いてない。ケージの中で酷い葛藤が生まれたようだが、俺自身への抗議はなかった。

690檻の夫婦(後):2021/12/29(水) 17:54:11 ID:iBgVtpKc0
断続的な揺れと衝撃と時折の悲鳴が長々と続き、目を閉じていても一睡もできない夜になった。

それでも少しずつ夜は明けて、火山とは正反対の方向から空は明るんでくる。
日の出の時刻の少し前に、パイプベッドの下から這い出して改めてリビングを見た。案の定室内はロクでもない荒れようだった。物が外れたり割れたり倒れたり、無事なものが何一つ無いような気がした。
サッシが外れた窓から庭を見る。うちを訪れていた親子は、サッシに加えて新たな岩にも潰されていた。父親のタブンネの頭の倍くらいありそうな岩が、文字通り父親の上半身を圧し潰しているのだ。

「子どもはその岩の下らしいロト。2時頃の噴石が屋根に跳ね返ってそこに落ちて、それで完全に潰されたのをタブンネ達が聞き取ってるロト。それまでは親子とも弱ってたけど鳴いてたって言ってるロト」

「……こんなのがあの山から降ったのかよ。夜中の2時に」

うちの庭だけでも大小さまざまな石やら岩やらゴロゴロしていた。俺や、飼っていたポケモン達だけでも無傷で済んでいることが、かなりの幸運に思えるくらいに。
どう考えても今はここには住めない。いつか噴火が落ち着きさえすれば、ひょっとしたらここに戻ってくる日もあるかもしれないが、とても今は無理だ。
俺はケージのタブンネ達に向き合った。

「ロトム。タブンネ達にこれからどうするか聞いてくれ。夜に言った通り俺はここを出るしかない、タブンネ達までは養えない」

ケージの中の夫婦は、子ども達を抱き締めつつ互いに寄り添っていた。ロトムの短い指示を受けて♂が話す。
タブンネ達の親子の絆がこれまでと微妙に違う気がする。
1度目の出産で食われた子どもたちとは喧嘩だらけだった。2度目の出産のこの子らは、険悪さはだいぶマシだが親子の間でまだ隔意はあった。その隔意はおそらくもう全員から消えている。

「元々外に出たがってた子が1体いたけど、ちょうど歯が生え始めたらしいロト。今から家を出た先で、適当な場所で解放してもらえないか、と言ってるロト。ただその子を連れて行くだけで、面倒を見てもらえなくても構わないらしいロト。
 その子以外は全員ここで生き餌にしてほしいと言ってるロト。食べられる覚悟はできてるらしいロト」

ここで解放してほしい、ではなく、避難先まで連れってってほしいか。なんかちょっと図々しい要求とも言えなくはないな。……まあ、この子らの内1体なら許容範囲か。2体以上だったら流石に却下してたが。

「良いだろう。外に出たい奴だけをこちらへ」

ケージの天井を開けて、差し出された1体をテーブルの上に置く。そして俺は気合い十分で待機していたハブネークの頭を撫で、無言でケージの方へ合図した。
俺が避難の準備をする内に生き餌を食い尽くすよう、ハブネークには言い含めていた。

……このケージの中で犠牲を払ってでも生きていくと決めた夫婦の生命は、この時、こういう経緯で終わったのだった。

(終)

691名無しさん:2021/12/29(水) 17:57:07 ID:iBgVtpKc0
お待たせしました。
この話にはおまけがあります。9割方書き上げてますので遠からず投稿予定です。

692ぼくと世界(檻の夫婦・おまけ):2021/12/29(水) 23:56:41 ID:iBgVtpKc0
生前、とーちゃんが檻の中で話していたっけ。

――本当はタブンネ達は、地面に流れる川の水を飲んで、木に実ったきのみや、地面に生えた草を食べていたんだよ。
  あの火山が灰を噴き出して、水もきのみも草も全部枯れてダメになった。タブンネだけじゃない他のポケモンも、みんなギリギリまで飢えて死んでいったり、殺し合ったりしたんだ。
  この辺りは灰色しかない世界になってしまった。もしも叶うなら、灰が届いていない遠い場所に行って、灰色じゃない世界を見てほしいんだ。

早足で進むバンバドロのおじさんの背中の上で、ニンゲンが着ている服の首元から顔を出して、初めての世界を見てみる。生まれた檻の中とは真逆の、広い広い灰色の平野。ぼくじゃ困るんだろうと一目で分かる位に、岩や石がゴロゴロと転がっていた。

――とーちゃんも、かーちゃんも、みんなも、おそとにでたいとはおもわないの?

――もう、僕達は外に出ちゃいけないんだよ。僕達は、子ども達を生き餌に差し出した。お前たちのお兄さんやお姉さんだ。
  殺してしまった子やここで死にたい子を放っておいてまで生きることなんて、僕も母ちゃんも望んではいけないんだ。もう十分生きた。これでいい。

同じ時に生まれたきょうだいは、外の世界の恐ろしさも、とーちゃんかーちゃんがあの檻の中に入った理由も、いずれ食べられるはずの運命も、それこそタマゴの頃からずっと教わって生きてきた。
狭い檻の中で、お互いの考え方や個性の違いを隠し合えるはずがない。みんなは外が怖くてあの家で死にたがってた、逆にぼくだけが外に出たがってた。お互いがお互いの心を知っていた。

外の世界の音を聞いたことはあっても、まじまじと見たことはなかった。とにかく広くて生き辛い場所だという事だけは教わっていた。
未熟な目で見ても、食べられるものがあるとは思えない場所。すぐ死ぬかもしれない場所。それでも、檻の中では死にたくなかった。あの場所は生まれた場所に違いないけれど、死に場所ではないと願った。きょうだいの中でぼくだけは。

ぼくらが生まれる前に死んでいったお兄ちゃんやお姉ちゃんは、ただ最後に生き残って孤独に死ぬことだけを恐れていたのだという。その考えは分かる。分かるけど、ぼくだけはそれがしっくり来なかった。
檻の中で生き続けたがった子は前にもいたけれど、孤独でも構わないから外に出たいと希望した子は、ぼくが初めてだったらしい。あの家にいた頃、ロトムのお兄さんはそう言って檻の外側で珍しがっていた。

――許しておくれ。僕達は親らしいことは何もできない。

――ごめんなさい。本当は群れの中で、外の世界での生き方を教えてもらいながら成長するものなのに。

――いいや、とーちゃん。かーちゃん。ぼくはしあわせだったよ。ここまでそだててもらえたんだから。

そんな言葉の後にぼくだけは檻から出されて、違う場所に載せられて、その下で、両親も弟妹もみんなハブネークのおっちゃんに食われた。このニンゲンは約束を違えない。約束の通りの運命だった。
親や弟妹とのお別れが幸せな事だなんて絶対に思わない。けれど、食べる物が無くなって飢えたり、全くの不意打ちで誰かを亡くしたりするよりは、ずっとずっと幸せだったと思う。
とーちゃんもかーちゃんも、ぼくらのこういう育ちを不憫だとも思ってたらしい。でも、そもそもとーちゃんやかーちゃんがニンゲンとの約束を結ばなければ、ぼくは生まれていない。だから、ぼくは誰も恨んではいなかった。

693ぼくと世界(檻の夫婦・おまけ):2021/12/29(水) 23:58:10 ID:iBgVtpKc0
ぼくの耳はニンゲンよりも良い。時折どこか遠くの生き物の呻き声や悲嘆を聴き分ける。その音の中で聞こえた声に、気づいたことがあった。

「!! ロトムのおにいさん! まえからこえがきこえたときだけは、おしえなきゃいけないんだよね?
 しってるタブンネの、おこったこえがきこえるよ! このあいだこどもをさしだした、おばさんのこえだ! つよいあいてとむかいあってるみたい!」

ぼくは思わず全力で叫んだ。外に出てから一番大きな声が出た。
おばさんよりも強くて、バンバドロのおじさんよりも弱い何かが、おばさんの所にいる。

「え! ……あの時の群れのタブンネ、まだ生きてたロト!?」

あっちも危うい中でこちらの声と足音を聴き分けたのだろう、おばさんは驚いて短く鳴いたようだった。

ロトムのお兄さん経由で話がニンゲンに伝わった。バンバドロのおじさんの足が少しだけ早くなった。少しあってから、ドスンドスンという大きな足音が、悔しそうにおばさんの所を去っていく。バンバドロのおじさんが駆けてくるのを感じ取ったらしい、より強いかもしれない相手との闘いを避けたのか。
あの時ニンゲンの家に来た群れの全員が、1体残らず今も生きてるわけじゃない。たぶんあれからは死んだ方が多いはずだ。今生きてるのは精々3体か4体くらい、それ以上の数の息づかいは聞こえない。

「あいてはにげたみたいだよ。おばさんたちはすわりこんでるけど」

「逃げていく姿は主も確認しているロト。タブンネの群れも見えてきたから、まずそっちに向かうロト」

「うん」

そうしてしばらくバンバドロのおじさんが駆けた先。
おばさんのちょうど背の高さくらいの岩にもたれ掛かるようにして、おばさん達はへたり込んでいた。群れは合わせて3体で、全員がタブンネよりも大きな女だけど、みんな前に会った時のようにガリガリだった。揃いも揃ってニンゲンに驚き、その懐にいるぼくに驚き、そしてバンバドロのおじさんに怯えていた。あんなに怒った声が聞こえてきたのが不思議なくらいだ。

「アンタら、よく生きてたロト。他の仲間は息絶えたロト?」

「お久しぶりです。ええ。私達以外はみんな死にました」

「ちょっと主がアンタらに話があるらしいロト。聞いてほしいロト。
 ……火山の被害がシャレにならないので、主も家を捨てることになったロト。今の主が連れてるのは生き餌になるはずだった子で、この子だけは生き餌にせずにつれてきたロト。他に飼ってたこの子の家族は、主が家を捨てる前に生き餌にしたロト。
 主は、アンタらに、この子を引き取ってくれないかと言ってるロト。今この子を引き取ってくれたら、オボンの実を3個とオレンの実を3個、アンタらに上げると言ってるロト。……じりじりと共食いを繰り返して頑張るよりは、この子を引き取る方がずっとマシだと思うロト?」

おばさん達はかなりびっくりして顔を見合わせて、さらにぼくの顔を見て、もう一度顔を見合わせてから思いっきりうなずいた。
良かった、って、ぼくも思った。1体で生きて死んでいくつもりだったけれど、知っている相手がいるならそれはそれで良い。


取引はちょっと乱暴だった。
ニンゲンは分かりやすい身振りできのみを全部袋に入れてから、先にぼくの方を懐から出しておばさん達に放り投げ、間を置かず袋そのものも投げつけてきたから。
泡を食ったなりにおばさん達も必死で、どうにかぼくも袋も潰さずに受け取れた。ホッとしたのもつかの間、気づいた時にはバンバドロのおじさん達は遠くに走り去っていた。

「……坊や、あの檻の中でも大変だったんでしょう? あの中では逃げたくても逃げられないものね」

「ぼくたちよりも、おばさんたちのほうがたいへんだったんじゃないの? たべるものがなかったんだよね?」

オレンとオボンをおばさん達の間で平等に分配して、代わる代わる歩き食べしながら(全員が一度には食べないらしい。誰かが本気で警戒しないと危ないから)のひととき。きっとお互いがどんなに苦労したのかはこれから分かり合えるはずだ。
地面は相変わらず灰色で、実りは何一つ見つかりはしない。火山から遠くの方へ離れていけば、降ってきた灰が地面から完全に無くなるらしいというのは教わっている。一番近い場所はバンバドロのおじさんの足でゆっくり進んで半日の距離だというけれど、ぼくらの足でどれくらい掛かるのかは分からない。

――とーちゃん、かーちゃん、みんな。
  厳しい世界には違いないけれど、今のところは、ぼく達の生命は繋がっていそうです。とりあえず、今のところは。

(終)

694ぼくと世界(檻の夫婦・おまけ):2021/12/30(木) 00:03:04 ID:4X7q0t3c0
誤字がありました。3人称で一度書いた文章を全部1人称に直した時の変換漏れです。

>>692
× ぼくじゃ困るんだろうと一目で分かる位に、岩や石がゴロゴロと転がっていた。
〇 ぼくの足じゃ進むのに困るんだろうと一目で分かる位に、岩や石がゴロゴロと転がっていた。

>>693
× 群れは合わせて3体で、全員がタブンネよりも大きな女だけど、みんな前に会った時のようにガリガリだった。
〇 群れは合わせて3体で、全員がぼくよりも大きな女だけど、みんな前に会った時のようにガリガリだった。

695名無しさん:2021/12/30(木) 00:12:34 ID:4X7q0t3c0
御要望とはズレるSSになった感がありますが、とりあえずこちらのSSは完結です。

自分自身の作風として「ヒトを含めて余裕のない環境で、タブンネ達が割を食う」という内容が書きやすい気がします。
タブンネ達の性分が善良であればあるほど、周りは単に余裕が無いだけで邪悪ではないのを感じ取ってしまうから、タブンネ達の内心にも葛藤が生まれやすい、……という感じでしょうか。
こういうのは「檻の夫婦」でも「情はないけど掟はあった」でも共通の構図ですね。

696名無しさん:2022/03/01(火) 10:48:48 ID:DRfuokYI0
ポケモン新作発表されたけど新しい地方にタブンネさんが出てくるか、それが凄く気になる

697名無しさん:2022/08/03(水) 23:41:48 ID:nJ0dSXeg0
タブンネさんの胴体をロープで縛ってミライドンに括り付けて広大なフィールドを走り回りたい
タブンネさん引きずり回してズタボロにしたい

698タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/12(金) 05:42:51 ID:wm0rIitY0

千切られベビちゃんの他にも何人かチェリンボを取られて(この時の2ママベビンネは雄4雌4)、また2日ほどが経ちましたミィ

2ママさんは男の子達のおマタに代わるがわるタブンネさんの魔法をかけたり、あやしたり、おっぱいをあげて自分もご飯を食べてとこれまで以上にせっせと動いている様子でしたミィ

ミィは2ママさんにこのおウチに来る前のことや“りぼん“のこと、そして何よりタブンネさんの魔法のこと、聞いてみたいことが山ほどあったミが、またしてもなかなか聞けないまま時間を過ごしましたミィ

ミィの方はミィの方で男の子達がチェリンボを切られ、アンヨの練習をさせたりとなかなか忙しくなってきたので、ちょっとタイミングがなかったのですミィ...

2ママさんのタブンネさんの魔法を見るたびにミィは感心していましたミィ
男の子のおマタに当てると効果があるのかなと興味がありつつ、ミィも自分のおててに力をこめたりしてミましたが、あの優しい光が出てくることはありませんでした

ミィのママ、お兄ちゃん達のおマタに魔法を使っていたっけな...?

ミィも小さい時、何度かママに魔法を使ってもらったことがありましたミィ
おててやアンヨをケガしてしまった時、なんてゆうか...とっても気持ちよくって、いつの間にか痛みが消えて、いつの間にかおケガも治ってしまうんだミィ!

オトナのタブンネさんになれば使えるようになるってママに言われたようなそうでもないような気がするミが、ミィは未だに使えないミィ...
憧れるミィ....

699タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/12(金) 05:47:51 ID:wm0rIitY0
ミィの興味の結論は、その後すぐに結論を突きつけられたミィ...

タブンネさんの魔法は、おマタのビョーキまでは治せないみたいですミィ...

2ママさんのベビちゃん達は、男の子と女の子でハッキリとアンヨの上手さに違いが出てきました

女の子達はトテトテと動き回っていましたが、男の子はみんな立ち上がるとプルプル脚が震えて、すとおるに掴まっても歩くことができないようでした
タブンネさんの魔法がとても偉大なモノだと信じたかったミィにはショックだったのと、特に深刻だったのは片耳千切られンネちゃんでした

他の男の子同様アンヨができないだけでなく、おマタの周りがむらさき色に変わってきましたミィ
嫌な予感がしたタイミングで、ニンゲンがやってきましたミィ...

ニンゲンA
「わかりやすく脚弱だな2番の子供...、1周目でしょコレ?不良債権摑まされた可能性大じゃねえか?」

ニンゲンB
「コイツんトコの謎にガタイはいいんすけどね〜。まぁ脚にくるのなおさらか... これ野生じゃないんでしょ?てか3と比較してみてくださいよ、随分ストール内クソまみれじゃねえっすか⁉︎」

ニンゲンA
「ああ野生じゃねえ。あとコイツ要観察指定入ったから。見てみ?あの片耳。虐ママの可能性アリだとさ...」

ワンテンポ遅れてニンゲンの来襲に気づいた2ママさん、キョロキョロと周りを見回すと千切られンネちゃんを見つけ、すとおる越しにおててを掴まえ、ニンゲンに見せつけるように前に連れ出して歩き出しましたミィ
ちょっと慌てていたから、千切られンネちゃんドテッと転んで ヂィッ!と悲鳴上げたミが、お構いなしに2ママさんしゃべりはじめました

2ママさん
「ニンゲンさん!!この子見てミィ!アンヨが弱ってるみたいなの!一度しっかりちりょうし....あっ!!?」

ニンゲンこれまたお構いなしに、2ママさんのハナシを遮る様に千切られンネちゃんを乱暴に抱き上げました

ニンゲンB
「うーん。。コレは完全アウトじゃねえすか?壊死始まってそうだし、そのクセ発育いいから起立不全目に見えてますよ?」

ニンゲンA
「そうだなー、まあ残りも7匹もいるしね... ソイツは肥やし確で。てか残りの雄もなかなかヤバそうだぜ。。生まれたてのメリープみたいになってんぞ。残りも要観察な」

ニンゲンは何やらゴニョゴニョ話し込んだあと、千切られンネちゃんの首根っこを掴んだまま前の方に歩き出しました

2ママさんは何が起こったのか理解が追いつかない様子でしばしポカンと口を開けていましたが

ヂィーーッ‼︎ヴミ゛ィィィ゛ッ!!
うギャギャーー!!ギャーーーーン!!

本能的に強い恐怖を感じたのか、おミミをケガした時以上の千切られンネちゃんの叫び声が響くとハッとワレに還り、コレまたいつ以来かの激しい形相で取り乱しました

2ママさん
「ニンゲンさん!ミィの長男ンネちゃんを゛どごに連れで行く゛ミ゛ィ゛!?ナニずる気ミ゛ィッ!!?ミ゛ィッ‼︎ニンゲンざん!!ぎいでっ‼︎ビィのはなしぎいでるビィっ??ミ゛ィオオっ゛!?ミィおおオオオオ゛ーンん゛!!」

ドッ!ガシャーン!!ガシャーン!!・・・


....経験豊富なミィでさえも本気で怯んで脚がすくむ程の慟哭と形相で、2ママさんは何度もすとおる前面にすてみタックルをかましましたミィ。

ミィも怯んだと言いましたが、決してコレはオーバーなことではありません
それだけお母さんタブンネにとってベビちゃんひとりひとりが大事な存在なのですミィ....

700名無しさん:2023/05/13(土) 01:53:40 ID:88IQ.EPs0
久しぶりに見に来たら更新再開してた!
続き楽しみ

701タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/19(金) 22:30:42 ID:9wk7/DCM0

ガッ!ガッ!........!!........

ヂィーーッ!ヂギャーーッッ.........!!

...........

相変わらずの千切られンネちゃんの叫び声にまじって、地面を掘る時のあの残酷な音が聞こえてきましたミィ
たくさん居る雑居チビちゃん達で隠れてミィの位置からは前(種付けストール前の実のなる木が立ち並ぶ広場)まではその時見えなかったミが、あの残酷な音はハッキリわかったし、この後何が起こるかは想像に易かったミィ...

「こやしタブンネさん」のことは前にも言ったミか?
弱ったベビちゃんやチビちゃんを土の中に埋めてしまうという、ニンゲンが行う鬼の所業のひとつですミィ

この時は不幸中の大不幸とでもいうのか...
2ママさんの位置からは何となく前が見えてしまったらしいミィ

2ママさん
「ミ゛ィー!ミ゛ーーッ!!ニンゲンさ..!何をっ!?.....ミミ!?アレはナニ!?ひょっとして長男ンネちゃんを治療して....」

ゴォーーーーーッ!.....

ミィ
「2ママさん!見てはいけないミィッ!!お願い2ママさん!ミィの言うこと聞いてっ!前を見ないでっ!おミミを塞いでっ!おねg...」

ゴォーーーッ!バチバチバチバチッ.......!...ジューー

チギャーーーーッ!!グゴゴギグァァァ...!!
ギギィーーーーッッッァァァ.........

2ママさん
「ミあ゛あ゛あ゛ーーーーっ!長男ンネぢゃ.........ッッッ......................ッ.........

ストールにしがみついて顛末を見守っていた2ママさん、やがて全身の力が抜けた様にずるりと倒れ込み、声も出なくなってしまったようでしたミィ...

2ママさんの声にならない叫びと願いも虚しく、鬼のニンゲンは千切られンネちゃんを地面に埋めて行きます

ア゛ィィ゛ーッ.....ア゛ア゛ーーッ....
ミゴプッ⁉︎ヴィーーッ.....

2ママさん
「あ゛っ.....ヴォエーーーッ.....っ........」

ブリブリビチャーーーッ!


2ママさんまともに声も出せず、口の中のモノを盛大に吐いてしまい信じられない量のウンチとオシッコが垂れ流しでしたミィ...

ンン゛ーーッ.....ン゛ーッ.....ン....ン゛......ッ.....

そのうち千切られンネちゃん完全に地面に埋められてしまったようで、苦しそうな呻き声が聞こえてきました
タブンネさんはとってもおミミが良いですミからね...
集中していれば、囲いの方のすとおるに居てもそのコエは聞くことができます。

...ミィも何度か聞いたことがあるミが、もちろん決して慣れることなどありません

どうして当たり前のようにこんなことができるミか...

・・・・・・


2ママさん
「オ゛エ゛ーッ。....グミッ....ハアッ....ハアッ....グッ....
.......騙したミィ....?許さ.....ゼッダイ許ざミィ.....」

.......2ママさんはストールの中で4つん這いになると、唇からヨダレと血を垂らしながら何やら喋っていましたミィ...

今まで見たことないくらい恐ろしい顔つきで、とても声なんて掛けることができず、ミィのベビちゃん達は震えながらミィのすとおるに擦り寄っていました。
そんな状況でも2ママベビちゃんズは2箇所くらいでそれぞれ固まって、スヤスヤ寝ていたようでちょっと不思議に思ったのを覚えていますミィ

702タチワキ養タブ舎•ブリッジ:2023/05/19(金) 22:34:25 ID:9wk7/DCM0



このタブ舎の肥やしタブンネはおおよそ他所と同じ方法であるが、埋める前に行われるのが焼却処理である(存命の個体であれば無論焼き殺しはしない)
工業コンビナートの一画という立地柄か、地面が硬く深く掘ることが難儀である為、そのまま埋めまくると激臭が立ち込めるのだ。

入念に燃やすがなるべく死まで時間が掛かるようにと繊細な匙加減が求められるので、ポケモンではなく人間により、専用の火炎放射器で焼却される。
ポケセン出生の2ママが一瞬希望を抱いたのはそれを酸素ボンベや点滴の類と勘違いしたからであろう。

また深掘りできない事に紐付き、生存自体に問題ないが可食部に重大な欠損が出て肥やしになったチビベビは焼いてから埋めても這い出てくるケースが何件かあった為、検査機で四肢を粉々に潰してから埋められるおまけ付きとなった。

3ママは幸いにも実子が“生きたまま”埋められたことは無いが、生産機ママンネはほぼ例外なく種付けストール在住の際、眼前で肥やしタブンネの行程を見せつけられることとなる。
だからこそ肥やしの効果が増すのだが、何らか欠損し皮膚を入念に焼かれ四肢を潰され埋められて尚殆どのチビベビは死まで残酷な時間がかかり、種付けママンネ達はいつまでも呻き声や少しずつ小さくなる心音を聴き続けなければならない。
善良個体には永遠のように長い地獄の時間である。



このタブ舎で出荷不可能と決められたタブンネの処理方法は主に3つ

①ミキサー
主に褥瘡や皮膚炎の目立つ生殖不能ママンネと、同じく生殖不能となった種タブンネがミキサー処理される。
また機械が稼働不精になった時やタブ骨粉不足になった時等、問題を起こした雑居チビンネ(そこそこサイズの良い個体)がこの方法で処される場合がある。

②肥やしタブンネ
生後一定の時間を経て、起立不全や病気、もしくは虐ママに瀕死にされたベビンネが主に肥やしになる。

またいつかのモブチビのように、ベビ上がり期くらいのチビが雑居房の喧嘩等で著しい欠損が出ると肥やしとなる事が多く、いずれも絶命していても死後間もなければ肥やしになる場合がある。

③その他(主にゴミとして捨てられる)
生まれてすぐの奇形ベビや余りにも生育が見込めない未熟児ベビが主に該当する。

業務用(というかベビンネ用)のポリバケツに文字通りゴミのように捨てられ、月に2回のペースでタブンネ専用死体処理業者が回収にくる。

余りにも捨て過ぎて回収日までにバケツがパンパンになるとそのまま海に放り投げるか、近隣の野生ポケにやったりする事もあり、またここでは詳述しないが他の処理方法もある。



処理方法が100%決まっているのはミキサー行きの種タブンネくらいで、他は飽和量に応じて①〜③いずれかの方法で処理される。

種タブンネが出荷も肥やしもされないのは何度も打ち込まれる精力活性剤による強烈な雄臭さの為だ。

どの処理法にしてもタブンネ以外のポケモンで行えば重罪である。



余談だが3ママの先代(実母)はミキサー処理ではなく出荷されている。先代は現3ママ含め実子達に簡単に別れを告げるとあっさり人間に従い、半ば自分からトラックへ乗り込んで行った。その悲哀に満ちた後ろ姿は3ママの脳裏に未だ鮮明に焼き付いている。
3ママが他の生産機ママンネはミキサー行きになることは無いと思っていたのはその記憶からで、実際は3ママの認識よりも頻繁にミキサーが稼働している。

無論できる限り出荷した方が産業としての採算は良いのだが、一定以上機能したママンネで出荷されるのは全体の5%程である。
ストール内でタブ生の大半を過ごす為褥瘡が余りにも酷くなったり、種タブと同じく何度も打ち込まれる妊娠促進剤により分娩異常を起こしたりと中々出荷基準に満たないのだ。ちなみに出荷ママンネは野生産では無いことが前提条件である。



703タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/23(火) 16:25:25 ID:cgf.DvGk0

やがてお空もおウチも暗くなってきました

ミィのベビちゃん達もいつの間にか眠りにつき、2ママさんの小さな嗚咽と雑居おチビちゃん達の喧騒の不気味なコントラストのもと時間が過ぎ去りましたミィ

ミィは2ママさんになんてコトバをかけていいのか...
2ママさんのベビちゃん達が生まれた時...、2ママさん泣きながら喜んで、ひとりひとり残す事なくストールの中でペロペロと毛繕いをして、抱きしめて、優しい笑顔で声をかけてしていた時のことを思い出しました

ニンゲンは8匹も居ればひとりくらい死んだって別にいいだろと思うのでしょうミか

とんでもミィ

ミィだってこれまで沢山の子達に恵まれてきましたが、今だってひとりひとりをとてもよく覚えていますし、愛おしく思っていますミィよ。
生まれてすぐに殺されてしまった子、すとおるに挟まってしまった子、オッパイ離れしてからすぐに出荷されてしまった子、みんな、ミィんなです...

2ママさんだってきっと同じミィ

千切られンネちゃんこそ傷つけてしまって、そのせいで弱るのが早くなってしまったと予想されますミが、あの時はミィもひいてしまったけれど、そもそもニンゲンがタブンネさんの大事なおミミに“たぐ”なんてつけなければ、あんな事故は起こっていないのです

2ママさん千切られンネちゃんを取り返す為に必死に闘っていたのをミィはちゃんと見ていました
こんな狭苦しいすとおるの中から愛しのベビちゃんが殺されるのをただ見ていなければならなかったのはどれだけ悔しかったでしょう、悲しかったでしょう...

なんども言いましたが、ミィは2ママさんが優しいタブンネさんだってゆうことちゃんと知っています

....ミグッ........ミンミン....

ミィもとっても悲しいミィ......

704タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/23(火) 16:30:00 ID:cgf.DvGk0

チィ~....ムニャムニャ....ママ....オッパイ.....

やがてミィのベビちゃんのウチのひとりが目を覚ましたようで、かわいいおねぼけ声でミィのお腹をチョコチョコと引っ掻いてきました。

ハッとして前を見ると、ミィのエサバコにはこんもりとたぶこっぷん盛られたままでした
(そういえばベビちゃん達にお昼のおっぱいあげたミか?他のみんなもきっとすぐに起きるミィ。その前にミィもゴハンを食べてお水も飲みたいケド...)

チラッと横を見ました。
2ママさんもやはりとゆうのか、たぶこっぷんには手をつけていませんでした
(ちゃんとゴハン食べなきゃおっぱい出なくなっちゃうミィ。ベビちゃんの為にもそれはダメミィ。でもなんだか2ママさんに申しワケ...)


•••••

2ママさん「ミィッ!!」

ミィ「!?」

2ママさん突然勇ましく立ち上がると、今まで見たことないキリッとしたお顔で、サッサッって後ろ脚キックですとおるに溜まっていたウンチをおソトに掻き出し、ガツガツムシャムシャ、ゴクゴクと一気にゴハンを平らげお水も飲み干し、ドスンと横たわるとあっと言うまに身体を持ち上げ、「ミィミッ‼︎」とハツラツとした声で寝ていたベビちゃん達を起こしておっぱいへ呼び込みました。それはそれは恐ろしさを感じるほどの機敏さでしたミィ。

ミィはしばらく、一体何がなんだかわからずにボウゼンと口を開けていましたが、ミィのベビちゃん達も半分くらい目が覚めておチチをせがんで鳴き出したのでハッと我に還り、慌ててお水を飲んでエサを食べ、2ママさんに倣うようにおっぱいをあげ始めました

しばらくチュパチュパチィチィと平和な音の響くミィ達の囲いでした。

ミィは不思議な気持ちで2ママさんの背中を眺めて居ましたが、やがて2ママさんはひとりずつ、優しくベビちゃん達をおっぱいから引っぱがすと一度ポテンとすとおるの中に座り、首を曲げてコチラを向き、ミィに話かけてきました。

2ママさん
「3ママさん。お願いミィ!ミィにこのおウチのこと、もっとたくさん教えて欲しいミィ。ミィ、なんとしてもベビちゃん達を自分で守りたいのミィ!どうかお願いミィ!」

突然話しかけられて ミヒッ!? と間の抜けたお返事をしてしまったミィでしたが、触覚から2ママさんの強い意志を感じたのと、まるで今までと別タブの様な2ママさんの顔つきを見て、慌ててカラダを少し持ち上げました。

ミィもおっぱいに吸い付いていたベビちゃんを優しく剥がしていき、みんなが固まるようにそっと囲いに押し出しました。
いつのまにか殆どの子がチヒィチヒィかわいい寝息をたてていましたミィ。きっとこの時かなり時間が遅かったんだミィ

ミィも2ママさんに倣って一度すとおるの中に座ると、首を2ママさんの方へ精一杯向きました。
座り姿勢同士でも、お互いが精一杯向けばお母さんタブンネ同士顔を合わせておはなしすることができます

705タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/23(火) 16:34:38 ID:cgf.DvGk0

ミィ「2ママさん、お加減はだいじょぶミ?ミィにできる限りお話ししますミィ。とらっくに乗せられるおチビちゃんはいつも見ていますミね?ミィのベビちゃんも、2ママさんのベビちゃん達も、おっぱいを飲まなくなったらおソトに出されて、おソトで過ごしてオトナのタブンネさんくらい大きくなったら、とらっくに乗せられて、どこかへ連れて行かれます。それがこのおウチで生まれたタブンネさんのおーそどっくすな運命ですミィ」

サラッと残酷なことを言ってしまったと思ったミィでしたが、2ママさんは予想に反してキリッとしたお顔を崩さず、コクコクと真剣に頷いてくれました。

2ママさん
「ミィや3ママさんはどうなるミ?ベビちゃんがおっぱいを卒業したら、トラックに乗せられるミィ?」

ミィ「いいえ。ミィが今ここに居るように、おそらくまた前のすとおるに戻されて、またたねタブさんの相手をさせられますミィ。そしてまたタマゴができると、こっちのおウチに戻されます。ミィ達お母さんタブンネは、その繰り返しでずうっと過ごしますミ」

だんだんミィも熱くなってきたミィ

どこからかやって来て、おそらく今まではしあわせな暮らしをしていただろうと予想される2ママさん。
しかしながら今はこうしてミィのオトナリで過ごす大切なお仲間さんミィ!この地獄の生活をきちんと説明する使命がミィにはあるんだミィ!

2ママさんは一瞬ギュッとお口を噛み締めると、コトバを続けます

2ママさん
「ミィ達はずーっとその繰り返し...。3ママさん。移動させられる時、逃げ出すことはできないミィ?ミィはこの子達を!自分の手で守ってあげたいミィ!離れたくないんだミィ!」

ミィ「ミィ......。移動中に逃げる...。それはミィも考えたコト......。......あまりゲンジツ的な作戦では無い気がしますミィ。ここから前に戻される時はいつもニンゲンと従業ポケモンの監視付きですし、前からここに来る時は、覚えていますミ?タマゴを何個も抱えたカラダで逃げるなんてとんでもミィ」

さらにミィ
「ミィの考えだけど、まずは自分の子達が生き残れるように優先して考えるべきだと思うミィ!とらっくがどこへ行くかはミィにもわからミィことは前にも言いましたミ?だけどどこかへ連れ去られるってことは、いつかは降ろされるはずですミィ!そこにもしかしてチャンスがあるかもミィ!」

...........かくかくミィミィしかじかミィミィ.............

.........................

それからどれくらいでしょうか。ミィ達の高度なだんぎは続きましたミィ

従業ポケどものことやニンゲンのこと、男の子ベビちゃんにはアンヨの練習をさせなければならないこと。
2ママさんはどのハナシも真剣にコクコクと頷いて聞いてくれたミィ

706タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/26(金) 05:31:21 ID:PVe/hq3Y0

気づけば朝になってましたミィ

その朝、いつものようにニンゲンがお母さんタブンネのエサとお水を運んできた時のことです

2ママさん
「ミグゥ〜...!ミフゥーッ!ミフゥーッ.......」

2ママさんこれまでの態度がウソのように、ギリギリと歯を慣らして、恐ろしい迫力でニンゲンをいかくしていましたミィ
これにはミィもびっくりしました

ニンゲン
「うおーなんだなんだ?2番?おまえそんなキャラだったか?そんな怒っても体力使うだけだぜ〜。どーでもいいけどちゃんとベビーちゃんにお乳やれよ〜」

ニンゲンもビビっていたようで、いい気味だったミィ
それにしても2ママさん、ころころとタブの変わるタブンネさんだミィね....。

ニンゲンが去った後は2ママさん昨日のようにガツガツとエサを食べ、残された7にんのベビちゃん達におっぱいをあげてゆきます

おっぱいをあげ終わると、ひとりのベビちゃんを(ストールの)前につかみ立たせて、昨日ミィが話した内容をオウムがえしのように説き聞かせていきましたミィ

2ママさん
「いいミィ?長女ンネちゃん、長女ンネちゃんがおっぱいを卒業したら、おソトに出されるミィ。おソトで大きくなったらやがてトラックにのせられて..............」

その後もひとりひとり前に呼び込んでいき、同じおはなしが7回繰り返されることになります
......みんなに座ってもらって自分はうしろに下がれば、1回おはなしするだけで済むのになと思ったし、たぶんベビちゃんも少しおはなしできるようになってから聞かせてあげなきゃ意味無いような気もしましたミィ。。

その後ミィの方で男の子ベビちゃんのアンヨ練習を始めると

2ママさん
「次男ンネちゃん、三男ンネちゃん、四男ンネちゃん、ミんなもアンヨの練習するミィ!お姉ちゃん達は男の子達のお手伝いしてあげて
....」

この時も今でもずっと、ミィのベビちゃん達がアンヨの練習をする時は女の子達が肩をかしてあげて男の子をてつだってあげてます。
男の子の方が多い時はすとおるに掴まってもらって、ミィが応援してあげるかんじミィ

だけど2ママ女の子ベビちゃんズ、2ママさんの呼びかけには応えず、みんなおててを舐めて毛繕いしたり、おひるねしたりと奔放なカンジでしたミィ
やがて見兼ねた2ママさん、男の子ベビちゃんの手を取ってすとおるを掴ませ練習を始めさせました。
この時はまだベビちゃん達も生まれて間もないし、ママの言うことうまく理解できないのかなと思っていたミが...

707タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/26(金) 05:32:44 ID:PVe/hq3Y0
「タブンネさん怖がってるミィッ!やめろミィーッ!ローブシン!ズルズキン!どうしてニンゲンの味方するミィ⁉︎タブンネさんの味方して!....」
「おチビちゃんたち!ケンカはやめるミィ!ミィんなタブンネさん同士なんだミィ!なかよくするミ!ミんなできょうりょくするミィ!...」


2ママさんはこれまでに比べておソトの様子もよく見るようになりましたミィ。ちょっときょくたんな気もしたミが、ミィは嬉しかったミィ
お母さんタブンネ同士、助け合う仲間が多い方がいいに決まってますミィからね。しかしながら気になったのが

2ママさん
「ミミィ〜ン♪マリルリちゃん。シャワーズちゃん♪こっち来てミ♪ミィとおはなししましょ♪ホラ、ベビ達もあいさつするミィ!」

クソシャワーズ
「なにアイツ?きっしょ」
クソルリ
「きっとイカレてるリル。いいからさっさと終わらそ。」

ミィは従業ポケにタブンネさんの味方は居ないって教えたんだケド...、2ママさんマリルリとシャワーズには、いつかの甘ったるいこえで話しかけてましたミィ。ローブシンやズルズキンが近くに来た時は、臆せずにニンゲン同様いかくしていたミが...


その後日々が続くうち、ちょっと様子がおかしいと思い始めました。
2ママさんのベビちゃん達のことですミィ

2ママさん
「いいミィ?次男ンネちゃん、次男ンネちゃんがおっぱいを卒業したら、おソトで過ごすことになるミィ。それから大きくなると......」

2ママさんはあれから毎日、朝のおっぱいタイムが終わるとまるで朝礼かなにかのように、おんなじおはなしをベビちゃん達ひとりひとりに言い聞かせていましたミィ

2ママベビちゃんズ日に日に大きくなってゆきましたミが、みんな誰も2ママさんのおはなしを聞いている様子じゃなく、おててを舐めたり、フニャフニャとあくびをしたり、あるいは早く離して、と言わんばかりにカラダをよじったりとしていました

2ママさんは決してベビちゃんをほったらかしするようなお母さんタブンネではありませんし、なんならミィも知らないようなコトバもいっぱい知っているようだったし、ベビちゃん達にもよくおはなししています

だけど2ママベビちゃんズいつまでも
「マァマ」とか「オッパイ」とか言うだけで、タブンネさんのコトバを自在に話すようではありません

この時ミィのベビちゃん達の方がたしか先に生まれたはずミが、カラダは2ママベビちゃんズの方がひとまわり大きくなって居ましたミィ
だけどミィのベビちゃん達は、もうとっくにチィチィ声で会話を始めていても、2ママベビちゃんズはさっき言った通りの様子です

なんてゆうかちょっと心配に思ったミィ
2ママさんは気づいているんだかどうなんだか...

まさか

「2ママさんのベビちゃん達、なかなかおはなしできないミィね」

なんてミィから言うのも絶対失礼だろうし...

708タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/26(金) 05:34:25 ID:PVe/hq3Y0

そんな事を思いながらボンヤリと囲いを眺めていると

ミィの男の子ベビちゃんA
「チィッ!オトナリのおねえさんすごいチィ!おててからヒカリがでてるチィ!ヒカリにあたるとどーなるチ?」

2ママさん
「ミフフ。3ママベビちゃん♪これはタブンネさんの魔法なのミィよ。ちょっとそのままそこで立ってて....」

ポウッ...

ベビちゃんA
「チチィッ⁉︎すごいチィ!おマタがヒンヤリしてきもチィッ!おねえさんもっともっと...」
ベビちゃんB
「チィッ!ズルいズルい!おねいさん!ボクにもタブンネさんのまほうやって!」

2ママさん
「ミフフ♪順番にチョットずつミ。タブンネさんの魔法は、沢山使うと少し休憩しないと出なくなっちゃうミィのよ。」

2ママさんはすとおるの横から精一杯手を出すと、ミィの男の子ベビちゃん達にもタブンネさんの魔法をかけてくれましたミィ!
タブンネさんの魔法って遠くにも飛ばせるんだってこの時ミィもはじめて知りましたミィ。(授乳ストールから隣の囲い柵までは丁度1メートル)

2ママさんに感謝と尊敬の気持ちが湧きつつ、そのまま眺めていると

チチィ~ッ♪チャッチャッ!
チュイ~。チィチィチッ♪

2ママベビちゃん達、楽しそうに鳴きながらみんなでワイワイ押し相撲を始めました。
いつの間にか男の子のアンヨもだいぶ上手になっていたみたいミィ!

相変わらずタブンネさんのコトバにはなっていないミが、そんな事を気にしていたミィが恥ずかしくなってきましたミィ。
おはなしなんかそのうちできるようになるミィよね。それよりもミィのベビちゃん達も2ママさんのベビちゃん達もとってもしあわせそうで、ミィもとってもしあわせな気持ちになったミィ!

709タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/29(月) 12:17:04 ID:HmYQU0yw0

そんなささやかなしあわせですら長続きしないのが、ミィ達タブンネさんの常ですミィ...

ニンゲンがふたりミィ達の囲いの前までやってきて

ニンゲンA
「うーん3番が孵化後16日、2番がジャスト2週間...。全然ちげえよな。お前どう思う?2週間で離すってたぶん前例ねーけど、もうこれチビ達動くのもやっとだぜ?」

ニンゲンB
「確か産まれた段階でデカかったんすよね〜。2番のガキ。コイツ牧場から買ってきて、しかも1週目でしょ?よっぽどいいモン喰って育ってきたんじゃないすか?もう今晩エサやってみて、喰うようなら明日離しちゃいましょうよ。」

ニンゲンA
「そうだなこのサイズなら大丈夫だろ。それで引き継ぎしとくわ。ありがとう2ママちゃん!おまえ効率よさそうだな〜、次も頼むよ!」

2ママさん
「ミ゛フーッ!ビフフーッ゛!!そこでナニ話してるミ゛ィィ⁉︎もうミィのベビちゃん達に指一本触れさせミィんだから...っ...!」

2ママさん相変わらずの形相でニンゲンをいかくしていましたミが、ニンゲン気にもとめていません

ミィは決してニンゲンのコトバが詳しくわかるワケではミィけど、この時はオトナリの囲いの様子から、なんとなくわかったミィ....
2ママさんのベビちゃん達ホントにスクスクと大きくなって、7にんで過ごすのは窮屈そうでしたから...



このタブ舎における離乳は原則生後ジャスト3週間とマニュアル化されている。

かなり発育良好な場合や出荷ンネ頭数確保などの理由で稀に2,3日前倒しするケースはあったが、この時は異例の早さであった。

ちなみに発育不足でも後ろ倒しになることはない。

離乳はまず母タブンネだけストールを移動させ、ベビンネはそこから24時間授乳スペースで過ごし、大まかな発育観察をされて雑居スペースへ移される。
この時に極端に餌の食いが悪かったり衰弱が見られるとそのまま出荷されるか、諸々の条件が悪ければ処分される。



—次の日—

朝のおっぱいタイムが終わった頃でしょうか
いつもの2ママさんお説法をしているとニンゲンがひとり、ローブシンを引き連れて2ママさん囲いの前までやって来て

ニンゲン
「おーやっぱりエサも水も二つとも空か。かなりの量入れといたって聞いてたけど...。おっぱいお疲れ2ママちゃん!じゃあブシン、チビ達逃げねえように頼むな。」

2ママさん
「ビフゥービフゥーッ!ナニしに来たミィおまえらっ‼︎ミィのベビちゃん達に指一本触れてミろミィ!タダじゃおかな....ミギャッ⁉︎」

ニンゲン素早く囲いに侵入するとあっという間に2ママさんの後ろに回り込み、ガッチリとくびわを嵌めました。
2ママベビちゃん達怖がってチィチィ鳴きながら精一杯囲いの端に擦りよって、しゃがんで震えています。

ローブシン囲いの扉を開けると、ニンゲンこれまた素早く前に回り込んで、ジャラジャラ(首環に括られた鎖)を乱暴に引っ張って2ママさん連行されてゆきました

2ママさん
「だにずるビィ〜ッ!はなぜっ!はなずミ゛ィ!ミィはベビぎゃん達を..ミガッ⁉︎...やめろ゛ローブシ...ミデブッ....ミガァ....ミァ....ミィの歯が...いだミィ....痛いミィ....」

2ママさん道中何度もニンゲンに渾身のタックルお見舞いしようとこころミていましたが、その都度ローブシンに脚を引っ掛けられて、何度もブッころんでいましたミィ

ミィはもしかしてって思っていたんだけれど...、ニンゲンが来てから連行されるまでがあまりにあっというまだったので、2ママさんに声をかけるヒマもなかったミィ....

710タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/29(月) 12:19:53 ID:HmYQU0yw0

チュイ~...? チィ.... マンマ?..... チュビ...?
ミゥク..,ママ...? オチチ... ドコ...?ママ

2ママさん連行されてしばらく、怖いローブシンとニンゲン居なくなったことにやっとこさ気づいた様子の2ママベビちゃんズ、みんなママがいたハズのすとおるが空っぽになってる事に驚いてとまどってるようで、柵越しにすとおるの中に手を伸ばしてチョコチョコと空を掻いたり、鉄棒や床に残ったママの残り香をクンクンと嗅いだりと、各々鳴き始めましたミィ

ミィ
「2ママベビちゃん達。キミ達のママはお引っ越ししただけミィ。キミ達もきっともうすぐこのおウチとバイバイミィ。ママは前の方に居るミィから、ミんなで会いに行ってあげて...。」

...チィ? チュビャーン!... マァマ.. ....ミルク.. ゴハン...ママ....

2ママさんに声をかけそびれてしまった分、残されたベビちゃんだけでもしっかり励ましてあげなきゃ!ってなるべく優しく話しかけたミィでしたが、2ママベビちゃん達反応が芳しくないか、怖がってしまった子もいたミたいでした

相変わらず2ママベビちゃん達はコトバが不自由なようでしたが、みんなママが居なくなってホントに寂しがっているのはよくわかりましたミィ
何度も何度も言いましたが、ミィ達タブンネさんは触覚を使ってベビちゃんの感情を読みとることができますミィから



ニンゲンA
「よーしOK。案の定っていうか餌の喰いは問題ねえな。広いおうちに引っ越せるぜ。やったな!おまえら!」

.............

ニンゲンB
「雄も今んとこ起立障害無さそうっすね。体躯ほぼ同じで70(cm)。...70ってすげえな。1週前倒しでしょコイツら?」

ニンゲンA
「でもなんか全体的に反応鈍くねえか?体格の割に声も甲高い気ぃするし、どことなくアホづらに見えるぜ?....まあいいか」



次の朝、2ママベビちゃん達はニンゲンによっておソトに出されました
おソトに出されてからもしばらく、ベビちゃん達は呆然タブ失といった様子でモヌケのカラとなった自分達のおウチを眺めては一生懸命おててを伸ばしたり、クンクン匂いを嗅いだり、ママ!ママ!って鳴いたりしていましたミ。


(2ママさん「大丈夫ミィーッ⁉︎ミィのベビちゃん達ーッっ゛⁉︎一緒に居てあげられなくてゴベンビィーッ!ミ゛ォォーーンオンオン゛...」)

遠く前の方から、2ママさんの雄叫びがミィの耳には届いて来ましたミィ。だけど2ママベビちゃん達はシクシクチィチィとなかなかその場を離れません

ベビちゃんといえどもタブンネさんは賢い生き物ですミィから、決してお母さんの声を忘れてしまったわけではないと思います。それに2ママベビちゃんズは触覚もちゃんとしていました
しかしながら、ベビちゃんズはおそらくママの声に気づいていませんでした
アホだと思うかもしれませんが、このおウチはただでさえとってもうるさいのですミィ。ミィでさえ、意識をそこに集中していなければ2ママさんの叫びには気づけません。うまく伝わるミか?

ミィは何度も「よくおミミを澄ますミィ」「キミ達のママは前の方にちゃんと居るミィ。勇気出してみんなで探してみて!」って声をかけたミが、やっぱり2ママベビちゃん達反応が芳しくありません

仕方の無いことだった気もするミィ
2ママベビちゃんズ大きさこそ立派でしたが、まだまだ声にも性格にも幼さが残っていましたから、他の雑居チビちゃん達が怖くて、おウチの前からなかなか動けなかったのでしょう

711タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/05/29(月) 12:23:50 ID:HmYQU0yw0

さらにその次の朝、寝て起きて見てみると、囲いの前に7にん居た2ママベビちゃんもといチビちゃんは3にんになっていました。

ハッとしておソトをキョロキョロ見てみると、トテトテとふたりずつ固まって歩いている姿が確認できて安心しましたミィ

おっぱい卒業する時は囲いの中がだいぶ狭くなってきますミから、おソトに出されると多くの子は、解放感で走り回ったり遊んだりするのがこのおウチの日常ですミィ

それでも心配は尽きなかったミィ
おソトはおソトで、オゲレツなタブンネさんも居ますミィから...
2ママさんのチビちゃんカラダこそ小さく無いミが、まだまだ幼いカンジでしたので...

ミィは3にんの居残りチビちゃんに「おはミィ」とか「おやすミ」とか、「ゴハンちゃんと食べるミィ」「お水も飲みに行くミィ」とか声をかけましたミが、「ママを探しておいで」とは言わなくなりました。

ママを探しに行くってゆっても少し離れた位置から後ろ姿を見ることができるだけですミィからね。この子たちにとっては、ほんの少しだけでしょうがママの残り香があって、自分達の育ったおウチのそばで過ごすのがしあわせなのかもと思いました。
チビちゃん達相変わらずチィチィ声のままでしたが、ミィのコトバにもちょっとずつ反応してくれるようになりましたミィ

出歩きチビちゃん達はミィの視界に入ったり入らなかったりでしたが、じゃれあったりもしてたし一緒に寝たりもしていました。兄弟仲は決して悪いワケではないようでよかったミィ
あとは上手く2ママさんを発見できていればいいのだけど......



そんなカンジで日々を過ごすうち、やがてミィもベビちゃんとお別れの時が来て、前のすとおるに移されました
その時丁度2ママさんのところにニンゲンが来ていて、おなかにニョロニョロ(聴診器)を当てられていました。

ニンゲンA
「爺さんどうだ?もう2回キメて2回ヤラしてんだが...」

ニンゲンB
「うーんどうやら今回も入ってないなあ。この子次が2週目じゃろ?しかも前倒ししたんじゃろ?いくら若母でもインターは取らんきゃいけんかったんじゃないか?」

ニンゲンA
「まあしゃーねーか。次もう少し空けてみよう。今そんなに急ぐこともねえし...」



生産機ママンネは離乳で種付けストールに移された後、原則14日間のレストを経て、妊娠促進剤と発情用ホルモンの合成薬を注射され、順次種付けが行われる。

離乳(21日間)に比べてその原則はかなり緩く、出荷ンネ頭数確保、または種タブンネのコンディション等の理由で前後する。

『ベビンネの離乳が済み、次の産卵準備(交配)をする』という流れ自体は野生タブンネのそれと比べても自然なのだが、いかんせん薬がかなり強力で多産であることや離乳までの期間が通常よりもだいぶ短い為か、ママンネが上手く受精しないことが多々ある。
これは原因がはっきりしないが、特に初産〜2週目の間に多い。

生産機ママンネは普通のタブンネのそれよりもかなりの頭数を産むしペースも早いし、薬も身体に良いことでは決して無いので寿命の消耗はとても早い。



712タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/06/01(木) 20:32:15 ID:ExeykVn60

2ママさん
「グミミィィ〜。3マラさんミィ...?ビィのチビちゃんだちはどうしちゃったビィ?ごろざれぢゃったビィ?」

ミィ「2ママさん!しっかりするミィ!おチビちゃん達はちゃんと元気に過ごしていたミィよ!今は自分のカラダを気づかうミィ!チビちゃん達にはきっとまた会えるミィから...」

2ママさんはおクスリが“きまって”いたようで、ロレツが怪しくなっていたミィ
ここに連れて来られる時チラッとしか見えなかったケド、2ママさん右脚がパンパンに腫れ上がっていましたミィ



その次の日ですミィ

ミィのベビちゃんもといチビちゃんA
「あっ!いたミィ!いたミィ!やっぱりママだミィ!」
チビちゃんB
「ホントだミィ!ママ!ママ!さびしかったミビャ〜ン!」
チビちゃんC
「ママ!そのおウチせまくないのミィ?ミィ達がたすけてあげるミィ!」

..............

ミィ「チビちゃんたち!ママは大丈夫ミィ!ここに来ればいつでも会えるミィから、ちょっと広いおウチたんけんしておいでミ......」

ミィのチビちゃん達もおソトに出されたようで、たねつけすとおるの後ろまでやって来てくれましたミィ
(種付けストールから雑居房までの間は幅1メートルの通路があり、触れ合うことはできない)

ミィは何度も子供を育てていますが、お別れのあとは多少時間がかかっても、かならずこうしてママを探し当てて、チビちゃん達ミィのもとにやって来てくれますミ

おソトからはたねつけすとおるの後ろのほうしか見えないんだミィけどね。だけどタブンネさんはおミミがとっても良いですミから
後ろ姿しか見えなくとも、声や、カラダの音を聴き分けて、どんなに遠くても(授乳スペースから前面の柵まではものの10メートル強)こうして自分のお母さんを探し当てることができますミィ

こうして自分の子たちが来てくれるのはお母さんタブンネにとって、すごくすごく励みになるのですミィ
だってたねつけすとおるはとっても狭いし、かわりばえのしない景色をずうっと眺めるくらいしかやることがなくて、ゴハンも少ないし、いつか痛いハリをフトモモにブッさされて、たねタブさんがやってくる恐怖にも怯えて暮らさなきゃいけないワケですミィから


(※種付けストールは授乳ストールと同一サイズだが、鉄柵の間隔が狭い。授乳の必要が無いことと、種付け•受精確認でママンネの位置調整する為のセパレート(頑丈な木棒)を嵌めやすくする目的である。
またママンネ同士が密接していることもあり、体感では授乳ストールよりかなり窮屈である。
種付けストール前はオボンオレンのなる木が植った広場があり、その前面は別会社の無機質な工場壁で埋め尽くされていて、生産器ママンネ達は文字通り投獄された様な閉塞感の下過ごさなければならない。)

しかしながらこの時は嬉しいばかりではありませんでしたミィ...
案の定といいますミか、2ママさんのチビちゃん達は近くには来ていないようでしたから...

いっつもはミィのチビちゃん達に沢山おはなしするのですミが、ちょっと気が引けましたミィ
2ママさんは特に何も言わなかったミが、ミィのこと羨ましがってるんじゃないだろうミか...
2ママさんのチビちゃんがだれかひとりでも来てくれればいいなって思っていたんだけど...

713タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/06/01(木) 20:32:46 ID:ExeykVn60

2ママさん
「グジぃ〜〜ッ。ウミミィ〜〜ッ....!グジュルルルル....」

ガリガリガリ....

ミィ「2ママさん!お気をたしかにするミィ!おクチが傷ついちゃうミィ!バイキン入っちゃうミィ!2ママさん!2ママさん...!」

ミィのチビちゃん達合流してさらにその次の日、2ママさんときどき会話が成り立たなくなってきて、さらにはすとおる前の鉄柵をガジガジと噛み始めましたミィ
きっとおクスリのえいきょうなんだミィ。この行動はミィにも見覚えがありました
昔4ママちゃんも、クスリを打たれた後すとおるを一心に噛み続けていたことがありましたミィから...



ストール噛みはこのタブ舎の生産機ママンネに非常にしばしば見られる現象で、特に老齢化した個体により顕著に顕れる。

長期に渡る拘束飼育と実子との強制隔離によるストレスの鬱積が最たる原因で、ホルモンバランスが崩れ自律神経が乱れた時に起こりやすく、注射後が一番そうだが産卵後にも同様の行為が見られることがある。
より酷くなるとストール殴り等が起こり、更に酷くなり惰性化すると子噛みや子喰いにまで発展する。

子供への虐待にまで発展しないケースでは大体が一過性で済む為、飼育員もとりわけ注意したりはしない。

3ママは自覚が無いが、自身も種付けストールで同様の行動を幾度か起こしている。

この時2ママは比較的かなり若い個体であったがストール噛みが酷かった。ここで詳述しないが以前の生活に比べ非常に条件が悪かったこと、また3ママの考察通り、お隣さんのチビ達がママを尋ねて来ている事への強い羨望と嫉妬、さらには実子の姿や安否が確認できない事への過大な不満と不安とストレスがあったと思われる。



2ママさん
「うミ゛ガァッ!ミァア゛ッ!許せミ゛ィィッ!ミ゛ィの子だちをがえせミィ〜ッ...!」

ガッ!ガシャーン!ガシャーン!.......

ミィ
「ミィッ!痛いミィ!痛いミィ!2ママさん!ホントに落ち着いてミィ!おててケガしちゃうミィ!おケガヒドくなったらベビちゃんを抱っこしてあげられないミィのよ!?2ママさん!2ママさん!...」

2ママさんの様子は日増しにひどくなっていって、おねんねの時間とかでも関係なく、突然大声をだしてすとおるの中で暴れたりもするようになりましたミィ

爪がはみ出してきたりしてミィも大変だったミが、ミィは決して恨んだり、怒ったりはしてません...

仕方がないことミィよね。
ミィはこのおウチで生まれたしだんだん慣れっこになっていたミが、せっかくカワイイ盛りのチビちゃんまで育てた我が子をヨシヨシすることも、なんなら姿を見ることだってできないのですミィから
こんなの絶対おかしいミィ...

714タチワキ養タブ舎•ブリッジ、ママンネside:2023/06/01(木) 20:33:19 ID:ExeykVn60

やがてミィも2ママさんも同じようなタイミングでハリをブッ刺されて、それぞれ別のたねタブさんの相手をさせられたんだミが、ミィはあっさりすとおるから出されたんだけど、2ママさんはそのままでしたミィ

ミィも何度か経験してますミが、きっとなかなかタマゴができなかったんだミィ

2ママさんはどう思っているかわかりませんが、これは良いことなのかもってその時は思うことにしましたミィ
せっかく生まれてきたってどうせ悲しい運命なのだから、ミィはできることならタマゴを生みたいワケではありません...。(まあどうせいつかはタマゴができちゃうんだミィけどね...)
実際にベビちゃんの姿を見た時はしあわせな気持ちになるし、かわいくてかわいくて仕方がミィんだけどね。なかなか難かミィ...

ミィ「2ママさん。お先にお引っ越ししますミィ。どうかお大事に...。いったんバイバイですミィ...」

2ママさん
「グミミィィ...!ベビぎゃっ!ビィのベビだちっ!うミィ~ン...グビぃ〜...」

お別れの時には2ママさん、もうハッキリと会話ができなくなってましたミィ
今思えばですが、2ママさんと最後におはなししたのはいつだったか、どんなはなしだったか、もうミィも覚えていませんミィ

タマゴをたくさんお腹に抱えながら歩くのはけっこうたいへんです。何にんかの雑居おチビちゃん達にぶつかってしまいながら、何とか囲いつきの方のすとおるに辿り着きましたミィ

そこでふと横を見ると、なんと3にんの居残りチビちゃんがまだトナリの囲いの前に居たのです!

ミィ「2ママさんのチビちゃんたち!ずいぶん大きくなったミィね!みんな元気ミィ?」

居残りチビちゃんA
「チュミィ?オトナリのおねさんかえってきたミチ?こんチわ」
チビちゃんB
「ミィチィ?だれだっけ?」
チビちゃんC
「ミミィ....ママじゃない.....」

ミィ「みんなの兄弟は?元気にしてるミィ?みんなよろこぶミィ!みんなのママも、きっともうすぐコッチに戻ってくるミィよ!」

チビちゃんA
「次男ンネも四男ンネもたまにここくるミチィ。三女ンネと四女ンネわわかんない」

チビちゃんB
「ミチィッ♪ほんとにママくるチ?」

...

やがてミィのチビちゃん達も、息をきらしながらミィの囲いの前までやって来てくれましたミィ


居残りチビちゃん達は最後に見たときよりもひとまわり大きくなっていましたミィ
いまだに声はちょっとベビちゃんみたいにチィチィ混ざりで、会話もスムーズではありませんでしたが、みんな目立ったキズも無いようで安心しましたし、ミィは嬉しかったです。
なぜならば2ママさんももうすぐコッチのすとおるにやって来ると思っていたから、2ママさんも、居残りチビちゃん達も、きっと大喜びだと思ったのです。

......本当に、本当に今思えばですが、余計なコトを言わなければよかったなって今は後悔していますミィ

715名無しさん:2023/06/07(水) 13:26:43 ID:J4qy5yNE0
相手に如何なる非や落ち度や欠陥や問題があっても、苛め以外の対処をすれば苛めは発生しない。何を口実にいつどう虐めるか決めるのは虐める側
即ち、虐めの原因は常に100%虐める側にある。「イジメられる側にも原因が」は自己表現力・適応力・問題解決力の乏しい未熟者の自己正当化
「何度転校しても苛められるのは苛められる側に問題があるから」も論理飛躍。問題があるのは「各転校先にいる虐めを我慢できない未熟な子供」
「ムカつくからいじめたい」「いじめられてムカつく悔しい辛い怖い死にたい」と感じる原因は其々そう感じる各人の固定観念。不快感を互いのせいにするのは御門違い
虐めを苦にした自殺の加害者は自殺者(虐めの被害者)自身。実際、適切十分な教育を受けた者は如何に劣悪な状況にも適応し自己否定感すら抱かない
体罰・虐待・殺人などあらゆる人権侵害の原因は、その加害行為者の精神的未熟。未熟者ほど己の行為の口実となった他者の言動や環境に責任転嫁する

感情自己責任論(解釈の自由と責任)〜学校では教えない合理主義哲学〜

716名無しさん:2023/07/04(火) 16:31:27 ID:aZsdzjO20
タブンネ?殺すわ

717名無しさん:2023/07/04(火) 19:02:35 ID:mWYq6F7U0
タブンネを燃やしゅでしゅ

シェイミ「まずはタブンネを探しゅでしゅ」
タブンネ「ミィ…ミスゥ…」
シェイミ「いたでしゅ。しかも卵を持ってるでしゅ」

シェイミ「これはチャンスでしゅ。卵を奪うでしゅ」
パシッ!
シェイミ「思ったより簡単に手に入ったでしゅ。家に帰って孵化させてから燃やしゅでしゅ」

ーシェイミの家ー
シェイミ「まずは孵化させるでしゅ。カイロを貼れば多分孵化するでしゅ」カイロペター

(1日後)パキッ!パカパカ!
赤ちゃんタブンネ「チィチィ♪」
シェイミ「お、孵化したでしゅ。早速焼くでしゅ」
<ガスバーナーカチッ!
赤ちゃんタブンネ「チィ…?」
シェイミ「バイバイでしゅ」ボッ!

赤ちゃんタブンネ「チィ!?チィ!チィ!チィギャァァァ!!!」ジタバタ

シェイミ「うーん…産まれたばかりのベビンネが味わうのは母親の優しい温もりではなく、地獄のような業火を味わっているでしゅ」

シェイミ「美しいでしゅ。これ以上の芸術作品は存在し得ないでしゅ」

赤ちゃんタブンネ「チィ〜…チイッ…」バタッ

シェイミ「あ〜あ。壊れちゃったでしゅ。…次はあの母親を燃やしてみるでしゅ。」

718名無しさん:2023/07/04(火) 19:06:45 ID:mWYq6F7U0
↑書き直します。上のは無視してください。

タブンネを燃やしゅでしゅ

シェイミ「まずはタブンネを探しゅでしゅ」
タブンネ「ミィ…ミスゥ…」
シェイミ「いたでしゅ。しかも卵を持ってるでしゅ」

シェイミ「これはチャンスでしゅ。卵を奪うでしゅ」
パシッ!
シェイミ「思ったより簡単に手に入ったでしゅ。やっぱりタブンネはバカでしゅ〜。」

タブンネ「ミィ…ミスゥ…」

シェイミ「早速家に帰って孵化させてから燃やしゅでしゅ」

ーシェイミの家ー
シェイミ「まずは孵化させるでしゅ。カイロを貼れば多分孵化するでしゅ」カイロペター

(1日後)パキッ!パカパカ!
赤ちゃんタブンネ「チィチィ♪」
シェイミ「お、孵化したでしゅ。早速焼くでしゅ」
<ガスバーナーカチッ!
赤ちゃんタブンネ「チィ…?」
シェイミ「バイバイでしゅ」ボッ!

赤ちゃんタブンネ「チィ!?チィ!チィ!チィギャァァァ!!!」ジタバタ

シェイミ「うーん…産まれたばかりのベビンネが最初に感じるのは…母親の温もりではなく地獄のような業火…」

ベビンネ「チィギィィィィ!!!ヂイ!ヂイ!」 ジタバタジタバタ

シェイミ「美しいでしゅ。これ以上の芸術作品は存在し得ないでしゅ」

赤ちゃんタブンネ「チィ〜…チイッ…」バタッ

シェイミ「あ〜あ。壊れちゃったでしゅ。…次はあの母親を燃やしてみるでしゅ。」

719名無しさん:2023/07/05(水) 00:37:59 ID:0A5fW1rE0

「ふぁ〜……ん?」

「ミィ〜♪」「タブネ〜♡」「ピィィ…ピィ!ピイ!」

朝起きたら…俺の家の庭にタブンネの親子がいた。しかも巣を作ってやがる。

「…は?」

まず初めに口から出た言葉はそれだった。何をしてやがるクソ豚ども。その庭はお前らのものじゃねぇ。

「………クソがっ!無駄な仕事増やすんじゃねぇ!ブタンネが!」

そう言うと俺はタブンネ達の方に向かってズカズカと近づいていった。

「ミィミィ♪」シャクシャク…「タブネ〜」ガツガツ…

どうやらタブンネ達は飯の時間だったようだ。タブンネ達は木の実をシャクシャクと咀嚼音を立てながら食べている。やめろ。それ以上俺の庭を汚すんじゃねぇ。

「おい」

「ミィヒィ!?」「タブゥッ!?」「チィピッ!?」

俺の声を聞いた瞬間、まるで化け物を見たかのような声を出して驚くタブンネ達。てゆーか、タブンネってポケモンは耳が良い事で有名じゃなかったのか?なんで俺が近づいても気づかないんだ?

「この庭からさっさと出ていけ。じゃないとお前らをミンチにしてパフュートンの餌にする」

大体のタブンネはこれを言ったらすぐに俺の庭からトンズラする。こいつらもすぐに血相を変えて逃げていくだろう…そう思っていた。

「ミィィィ!ミフガー!!!」

なんとこいつは俺に威嚇してきたのだ。…まさかコイツ俺に勝てるとでも思っているのか?身の程知らなすぎだろ。

「ミィィィ!!!」「チィィィ!!!」
…マジかよ。威嚇ンネの後ろにいる♀タブンネやチビンネ達が威嚇ンネを応援し始めた。…一家揃いも揃って馬鹿しかいねぇな。

「ミィィィ!!!」 ドスドスドスドス!

威嚇ンネが雄叫びを上げながら俺に向かって突進してきた。…が、その突進のなんとトロい事この上ない。サッと横に20センチ位ズレただけで避けれてしまった。

『ドッシィィィィン!!!』「ミィギぃぃぃ!?!?!?」

しかもそいつはバランスを崩し、顔から地面にぶっ倒れてしまった。その姿のなんと滑稽なことか。奥にいるお前の家族を見てみろ。お前の醜態に口を開けてびっくりしてるぞ。

「お前みたいなトロい奴がなんで厳しい自然を生き抜けられたんだろうな?…まぁそれもここでおしまいだけど。」

俺はそう言うとタブンネの首らへんのタプタプな脂肪を掴み、そいつの家族に向かってポーンと投げた。

『グシャァァーーー!!!』「タァブゥウウ!?!?!?」

物凄い勢いで家族と衝突する威嚇ンネ。これでこいつらも逃げるだろう…ん?

「ミィィィィ!!!」「タァァブゥゥゥ!!!」

なんか騒いでるな?どうしたんだ?…うわっ!ベビンネがぺしゃんこになってる!…きっと俺がさっき投げた時に威嚇ンネの下敷きになったのであろう。運がないな〜コイツ。

「ンミィ……ミッ!ミィフゥゥゥ!!!ミガー!!!」

…?威嚇ンネがまた威嚇してきたぞ?なんでだ?……もしかしてコイツ…「お前がベビちゃんを殺したんだミィ!」って言いたいのか?…そうだとしたらコイツらアホすぎるだろ。俺はちゃんと警告したんだぜ?

「ミィガァァァ!!!」 ドスドスドスドスドス

そしたら急に威嚇ンネが俺に向かって突進してきた。…全く…力の差はさっき教えてやったばかりなんだが…。さっきの戦いから全く学んでないなコイツは。

「オッラァ!!!」「グビィィィ!!??」

俺は突進してくるタブンネに向かってラリアットをかましてやった!そうするとタブンネは汚い叫び声を上げながら地面に倒れた。しかし俺は今がチャンスとばかりに何回もタブンネの頭を踏みつけた。

『ベキッ!ガスっ!ドゴッ!』「ビィッ!ギィッ!ジィッ!」

頭を踏むたびに汚い声を上げる威嚇ンネ。チラっと奥の方を見たらヤツのつがいは状況を理解できてないらしくポカンとした顔でこちらを見ていた。

「ゥ……オッッッッラァ!!!」「ビグギッ!?!?」

俺はトドメと言わんばかりに思いっきり力を込めて威嚇ンネの頭を踏むと威嚇ンネは体をピーン!とさせた後に動かなくなってしまった。…死んだか…。

「さてと…」 チラッ  「ミヒッ!?」

俺と目があった威嚇ンネのつがいは俺に背を向けてすぐさま逃げようとしたが…背中を蹴ると地面に倒れてしまった。

「ミィ…ミィーン…」

メスンネは俺の方を見るやいなや両手両足を大の字に開いて俺に見せる。これはタブンネ特有の「降参」「許して」のポーズだ。やわらかい毛の生えたポヨポヨのおなかがやたらに腹立たしい。俺はこのポーズを見た瞬間コイツに果てしない怒りが湧いた。

「この豚にもなれねぇゴミ野郎が…お前のことを殺すのはやめた…」

そう言うとメスンネは「ミィッ!」と言い俺に甘ったるい声で媚びてきた。…バーカ。お前はこれから死ぬよりもつらい思いを何回もすることになるんだよ

720名無しさん:2023/07/05(水) 00:39:02 ID:0A5fW1rE0
それからしばらくして…

俺の庭にはたくさんの野生ポケモンがいる。というのも、俺は巣を作られることが嫌なだけで、ちょっと来て遊ぶくらいなら全然気にしていないのだ。

「イブゥ♪」「ヌメ〜」「ピッカァ!」「ウララ!」「ブピィ♪」「マシマシ」「ババリバリッシュ!!」

今日も色んなポケモンが俺の庭を訪れている。幸いなことに俺の周りには民家がないのでいくら騒いでも大丈夫なのだ。

「キリキリ〜♡」「ヌチャ!ナァァァ!!!」

特に俺のお気に入りはこのキリキザンとナカヌチャンのカップルだ。こいつらの種族は本来、敵対関係にあるのだがこの二匹にはそんな物が微塵も感じられない。ラブラブカップルだ。羨ましいぜ。

「ヌ〜!ヌ〜!」「キリッ!」 ボキッ

たまにこうやってキリキザンが自分の刃を割ってナカヌチャンに渡している。おいおい、それは大事なものじゃないのか?

「カヌ〜♡♡♡」

…でも受け取った時のナカヌチャンの笑顔はまるで天使のようだ。そういうところにアイツも惹かれたんだろうな。

「おーい!お前ら〜?オヤツでも食っていくか〜?」

俺は大声でそう言うと庭にいるポケモン達は目をキラキラさせながらこっちを向いてきた。待ってろよ。いま用意してやるから。

そして俺は「ある物」が入ったカゴを台車に乗せてあいつらの前に運んで行った。中にいるのは…あのメスンネが産んだベビンネだ。

「ミイヒィィィィ!!!」リビングの方からメスンネの大声が聞こえてくる。「子供を返して」とでも言っているのだろうが、俺に付いてきたお前が悪い。そう思いながらカゴの中からベビンネを一匹取り出した。

「チィ?」と間の抜けた声を出すベビンネ。カゴの中に入っている他のベビンネ達も「チィチィチィチィ」と大合唱だ。これから何をされるのか分かっていないのだろう。

「おーいキリキザン!コイツ切ってくれ!」

俺がそう言うとキリキザンは「キリッ!」と言い、俺の方へ向かう。キリキザンが俺の前までやって来たら俺は「そうれ!」と言って、キリキザンに向かってベビンネを投げた。

「……キザッ!」 スパッ!

キリキザンが腕を振るとベビンネは何事もなかったかのように床に落ちた。…が、地面に落ちたベビンネは鳴き声一つあげなかった。周りのポケモンがその様子を見守っている。その沈黙はすぐに破られる事になる。

「……」パカッ!

なんとベビンネが真っ二つに割れたのである!これには観客のポケモン達も大盛り上がり!そしてそれに遅れるようにしてカゴの中のベビンネ達も「ヂィィィ!?!?!?」と喚き散らし始めた。

「さぁさぁどんどん次行くよ!」俺はそう言うと真っ二つにされたベビンネをキリキザンに渡した。そいつはベビンネを受け取るとすぐにその血を飲み始めた。鉄分が欲しいのだろう。

「チィィィ!! ヒィィィ!!! ミィピィィィ!!!」自分たちが何をされるのか分かったのか、カゴの中のベビンネ達はバタバタと暴れ始めてしまった。俺が一匹ずつ掴むたびに「チィィィ!!!」と暴れて抵抗するが、最終的には美味しいお肉になってしまうベビンネ。

その悲痛な叫び声を聞いて、調理されたベビンネを食べながら爆笑する庭のポケモン達とベビンネ達に負けず劣らずの悲痛な声で叫ぶママンネ。

こんな光景を見るたびに俺は「庭がある家を買って良かったな」と思う。そして何よりも…

「キリ〜♡」「カヌチャ〜!」そこいらのテレビ番組よりも面白い恋愛ドラマを目の当たりにできるからだ。

721落し物:2023/07/18(火) 23:49:16 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

722落し物:2023/07/18(火) 23:49:53 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

723落し物:2023/07/18(火) 23:50:57 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

724落し物:2023/07/18(火) 23:50:58 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

725落し物:2023/07/18(火) 23:50:58 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

726名無しさん:2023/07/18(火) 23:50:59 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

727落し物:2023/07/18(火) 23:50:59 ID:SgYbCNP60

日課のジョギングをしようと家から出た時、庭の物干し場にベビンネがいた
まだ目も開いていないような未熟なベビンネが1匹腹ばいでモゾモゾしている

「なんでこんな未熟児が?」と思い、周りを見渡していたら、上から「ミィビャアアア!!!」と絶叫が響く。

なんだ?と思って上を向くとバルジーナたちがベビンネ、タブンネを各々足でがっちりと掴んで飛んでいる。
なるほど。こいつはドジなバルジーナの落とし物ってわけか。多分ね。

ってか こいつ糞してやがる
丸く茶色い小さな塊が3つほどこいつのホイップクリームのようだと呼ばれる尻尾の付け根から
コロコロと排出されている

家の庭を汚されたことに腹が立ったので
俺は無言でベビンネをトングで掴み尻尾を箒のように使って自らの糞を掃除させてやった
勢い余って背中に糞が触れて地面にこすれた瞬間
ベビンネは「チィィー」とか細い声で一声鳴いた
それを聞いた瞬間、俺の加虐心に火が付いた。

子供の頃は従兄弟と一緒によくタブンネを虐待していた。
チイチイ悲鳴をあげるのを木の枝の先にぶら下げてみたり
そのまま高い崖っぷちから落とし「チィイイイイイ!!」と声が小さくなっていくのを楽しんだり
流れの速い川の中に放り投げて「チブチブッッ…チボッ!」と必死に口をパクパクさせながら流されてやがて沈んでいくのを眺めたり
とにかくベビンネの虐待、虐殺を毎日行っていた子供時代だった

俺が田舎にIターンして来る以前からベビンネも随分減ってきて
たまに見掛けても本当に小さくひ弱そうな個体ばかりになってしまった。
今の子供達はベビンネで遊ぶなんて経験できないんだろうなあと少し淋しく思う。
だからこのベビンネは昔の思い出に浸りながら有効活用させてもらおう。

グッタリしているベビンネをつかんだまま栗の木の側まで移動してベビンネを地面に向かって投げると
マメパトの呑気な鳴き声をBGMにベビンネをトングでげしげし叩いたり
落ちていた栗のイガを白いポヨポヨのお腹に押し付けて「チギギ」と苦し気な声を出させたり
木の幹にガリガリとこすりつけて「チィビィィィ!!!」と悲痛な声を出させたり
ベビンネを死なない程度でおもちゃのように扱った。

しかし、同じおもちゃでずっと遊んでいたら、いつかは飽きる。
俺もそれと同じでこのベビンネで遊ぶのに少し飽きていた。
そこら辺にいる野生ポケモンにあげようかなと思い、ベビンネを掴んだら
突然バッサバッサと羽ばたく音が聞こえてきた

何かと思って上を見ると、普通のサイズよりも少し小さめのバルジーナが俺の方を睨みつけ、
「ギャアギャア」と威嚇していた。
その様子を見るに、このベビンネを元々捕らえていたバルジーナだろう。多分ね。

俺とバルジーナの間で数十秒間、膠着状態が続いていたが俺が「いるか?」と言いベビンネを投げると
バルジーナはくちばしでそれを器用に掴み、空へと飛んで行った。
「次は落とすんじゃねーぞお!」と言うとバルジーナの「ギャア!」という鳴き声と
ベビンネの「ヂィィィィ!!!」という叫び声が返ってきた。

728名無しさん:2023/07/19(水) 12:23:19 ID:Iu.pjQjg0
いいで

729名無しさん:2023/07/19(水) 21:33:17 ID:9ubk811E0
最近pixivの方でもタブンネ虐待ssやイラストが投稿されていて嬉しい。

730名無しさん:2023/07/20(木) 01:06:10 ID:NBpvr9360
タブンネを一匹残らずぶっ殺すしてーなー
毎日タブンネをぶっ殺し続けるだけの人生だったらなんて幸せなんだと思う

731名無しさん:2023/07/20(木) 01:06:12 ID:NBpvr9360
タブンネを一匹残らずぶっ殺すしてーなー
毎日タブンネをぶっ殺し続けるだけの人生だったらなんて幸せなんだと思う

732名無しさん:2023/07/22(土) 21:22:23 ID:FetBnJEM0
月刊マガジンくらいの分厚さのタブンネを虐殺するだけの漫画があったら本気で100万円は出す

733名無しさん:2023/07/23(日) 21:34:35 ID:kzca/AZE0
タブンネげしげし

734名無しさん:2023/07/25(火) 00:30:35 ID:LITW92ik0
エプロン着けたり浴衣を着たりして自分が愛されるべき可愛いポケモンと勘違いしてるタブンネをボロ雑巾のようボコボコにして
短足、鈍足、デブ、所詮豚の亜種、ケツも拭けない構造、体臭と口臭のエグさ触覚キモイなどの真実を永遠と教え込み自分がいかにクソポケモンか細胞レベルまで刻ませてやりたい
てめぇはキモがられるジャンルのポケモンなんだよ勘違いすんなと小一時間ほど説教したい

735名無しさん:2023/07/25(火) 21:28:15 ID:q/wPgROg0
タブンネの赤ちゃんを虐待したい。親タブンネの目の前でライターでハートの肉球がついたあんよをチリチリとあぶって
「あついよう!あついよう!たすけて!」って言わせたい。
でも親タブンネはベビちゃん助けられないよ。だって手足を切断されてるからねw

736名無しさん:2023/07/31(月) 00:20:38 ID:yAAaET.o0
ベビンネが自分の指をチュパチュパしながら横向きで寝てるところを、起こさないようにゆっくりと体勢を変えずにプレス機まで移動させて10tの圧力で圧死させたい
ゆっくりと圧をかけていって指をチュパチュパしたまま頭蓋骨が楕円になって、独特の悲鳴をあげるベビンネを見ていたい
腹も潰されて失禁した後、脱糞、そして臓器の一部がケツから発射したあたりでプレス機を一旦止めて鏡でベビンネに潰されて死にかけてる自分の姿を見せてあげたい
「自分の事可愛いと思ってたんでしょ?指までチュパって寝るなんてあざとすぎるね!でもこれがお前の本当の姿だよ」って言って

その後、「ベビンネは生きるか価値がないゴミにも劣る有害ポケモンです!」って言ったら潰さないであげるって条件を出して
それを承諾したベビンネが口を開こうとした瞬間、最速モードで潰し殺してあげたい!
全く本当に気持ち悪いポケモンだね!

737タブンネのトイレ:2023/07/31(月) 00:39:26 ID:eCMPOcNM0
「タブンネのトイレ」が虐待愛好家の間で流行っているので、興味が湧いた私はそれを一目みることにした。
それを使っているという友達の家へと行き、それを見ると・・・
「チィィィ… ヒィィィ…」なんと、便器の隣あるかごの中にベビンネが何匹も入っていた。
…もしかして…このベビンネをペーパー代わりに使うのがタブンネのトイレ?
てっきりタブンネの体を改造して便器にするのでは…と期待していた私は少しがっかりした。

が…せっかくなので使わせてもらうことにする。
「じゃあ…早速………ふう…」
出すものを出し切った俺は籠の中にいるベビンネを一匹掴む。
「たしか…コイツでけつを拭くんだよな…」
うう…糞豚とはいえ誰かに自分のケツの穴を舐められるのは、少し抵抗がある。
「くっ…えい!」
「チボッ!…」

…?お?おおっ!?
や…優しい!肌触りが!ふわふわなピンクの毛が俺のけつなあなに当たって…気持ちいい!
「チィ…?チィチィ…」ペロペロ
え?俺の糞を舐めてる?…まさか…餌と勘違いしてんのか?ウケるw

ケツをキレイにし終わった後、ベビンネの顔を手で掴んだままチラッと見てみると、
口と顔の周りが糞でべたべたになってた。
「きもっ!さすが糞豚」
俺はそう言うと糞ベビを便器のそこへと投げ込む。すると、数秒したあたりで、「べちゃっ!」という音と
ベビンネの「チィッ!」という声が返ってきた。
タブンネトイレも結構良いものだなと思いながら、俺は手を洗い始めた。

738タブンネのトイレ:2023/07/31(月) 01:11:22 ID:eCMPOcNM0
トイレを使い終わった後、友人の家でのんびりしていると、友人が
「面白いもんを見してやるから来い」とい言ったので、言われるままついていくことにした。
着いたのは一つのモニターがテーブルの上に置いてあるだけの簡素な部屋。ここで何をするのだろうか?
「へへ…見てろよ…」友人はそう言うとモニターを見せる。そこに映っていたのはたくさんのタブンネだった

「これに映ってるのは便器の底だ。ほら見てみろ。お前がさっき落としたベビンネがいるぞ」
友人がそう言ってモニターを指すが…そこにあったのはただの肉片と骨だけだった。
「ちょっと巻き戻すね。」友人はそう言うと映像を10分巻き戻す。

「…チィッ! …チィッ!」便器の底でベビンネが声を出している。これは…母を呼ぶ声だろうか?
「……ミイ…」一匹のタブンネがベビンネの方へと歩きだした。…しかし…なんと汚いタブンネなのだろうか。
ソイツは全身が糞まみれておりピンクの毛が茶色で染められている。口の周りは特にそれが酷い。
「ピィィ…ピィ!ピイ!」ベビンネが弱弱しくだが、そのタブンネの方を向き、鳴いた。
なるほど。こいつが糞ベビの親か。

「チィチィ♪」糞ベビが嬉しそうに鳴くと、親ンネ?はベビンネを掴み…糞ベビの腹にガブリと嚙みついた。
「チイっ!?!?チヒィィーーーーッ!!!」
ベビンネは大きい声で騒ぐが親ンネはベビンネの体にガブリガブリと噛みつく。
その目はまるで薬を欲しがる薬中の目であり、とても正常な状態ではなかった。
「こいつらはいつも糞ばかり食ってるからね。久しぶりの肉でテンションが上がってるんでしょ。」
友人が説明を終える頃にはベビンネはすっかり肉片と骨だけになっていた。

今日はいいものを見させてもらった。友人の家を後にし、自分の家へと歩きながら、そう考えていると
ふわふわの尻尾が草むらから飛び出しているのを見つけた。
「…俺もやってみようかな」そう言うと俺はポケットからボールを取り出した。

739名無しさん:2023/08/01(火) 01:18:06 ID:8PfE0Gb.0
タブンネをゲットした。素直そうないい子だ。
初日から懐いてくれたので一緒に遊んだり晩御飯を食べたり、テレビを見たりして仲を深めた。
そろそろ眠くなってきたのでタブンネにお願い事をする。

「明日の朝7時に俺を起こしてくれないか?」

タブンネは役に立てるのが嬉しいらしい。

「ミィミィミイ♪」

と、笑顔で承諾してくれた。

そして朝。

「ブーネ!ブーネ!ンネ!」ユスユス

タブンネは俺を揺すって起こす。
俺は寝ぼけながら目を開け、ベッドと壁の隙間に手を入れる。

「ターーーブネ!」ユサユサ

タブンネは俺を完全に起こそうと一生懸命任務を全うする。揺りが大きく、声も大きくなった瞬間。

「うるせえええええ!!!」ザシュッ!!

ベッドと壁の隙間に隠して置いた斧をタブンネの頭におもいっきり打ち下ろす。

「ミィギャアアアアアアアアアア!!!」ブッシャーー

頭に斧が刺さりっぱになり流血しながら叫ぶタブンネ。

「うるせえって言ってんだろ短足生物!!」ドゴッ

さらに腹に前蹴りで追撃。
「ミグッ!!」と声を上げ吹っ飛んだタブンネ。
昨日とは別人な俺と頭に刺さった斧で完全に怯えて混乱している。

「ミィ...ミィ...」シクシク

泣き出しやがった。

「キモっ」

そう言って仰向けのタブンネの腹を踏みつけ動けなくする。
そして、大ハンマーを振り上げタブンネの頭に刺さってる斧の峰を目掛けてハンマーを振り下ろした。
ガチン!!っという鉄を打つ音、スパッ!!っとタブンネの頭はカチ割れ、タブンネは死んだ。

「あーーーー!!今日も寝覚めが良いぜ!!さーーて準備して仕事行くか!」

俺は寝起きが悪く、いつもベッドから出られず仕事に遅刻していた。しかも朝は機嫌が最高に悪いタイプ。
考えに考えた俺はタブンネをゲットし、手懐けて朝、起こしてもらいぶっ殺すというタブンネ目覚ましを思いついた。
寝起きのイライラを発散できるだけではなく、アドレナリンとドーパミンも出るので即、覚醒できる。
もうこの手法を3ヶ月も続けている。
おかげで遅刻もしなくなった。
さーて今日も仕事終わりにタブンネをゲットして帰るか。

740名無しさん:2023/08/06(日) 09:44:53 ID:6fjeZ0E20
あータブンネをぶっ殺してーなー
デカヌチャン並みのハンマーであのムカつく顔面ぶん殴りてーなー
そのあと全身隈なくハンマーで殴ってギャグ漫画みたいにペラペラになるか試してーなー

741名無しさん:2023/09/01(金) 00:56:13 ID:ATkWhOAE0
タブンネ殺したいタブンネをぶっ殺したい雄も雌も子供もベビンネも卵もメガタブンネも全部殺してやりたい
肉体と精神を蹂躙と拷問でボロボロにしたあと
ありとあらゆる殺し方を試す
こいつらをぶっ殺す為なら時間も金も惜しまない
様々な凶器、様々な設備で無限ともいえる数のタブンネを殺し続けてやる
もう何もいらない、地位も名誉も金も女も子供も健康も寿命も睡眠時間も
只々こいつらを痛めつけて殺す人生でいい悲鳴を聞きたい
こいつらがあの世に行ってもあの世でもい一回殺してやる
来世でもタブンネはタブンネに生まれ変われ
俺はどんなモノのに生まれ変わっても必ずまたタブンネを殺し続ける
ずっとずっと朝起きてから夢の中まで、クソしてても風呂に入っても誰かと会話してても女抱いててもタブンネをぶっ殺すことだけ考えてる
野生を殺し尽くしたら飼いタブンネもぶっ殺してやる
この勘違いしている生物は一匹残らずぶっ殺す全世界を周ってな
ただし絶滅するなよ!また希望を持って一族を増やせ永遠このマラソンゲームを続けるぞ
恨みがあるなら夢の中に出てこい
夢の中でもぶっ殺してやる
貴様らの尊厳ごと殺してやる
悲鳴を聴かせろ!!!叫びを止めるな!!!無様に惨めにバラバラにして殺してやる
アイドルや癒し系、可愛い系と勘違いしているゴミクズどもに地獄すら生温い地獄を見せてやる
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!

742名無しさん:2023/09/07(木) 20:14:35 ID:50aUUHhk0
タブンネをチタタプ

爺ちゃんは狩人だ。タブンネを狩って毛皮と肉を売り、生計を立てている。
「ヒィィィ!!!ピィィィ!!!」
そして目の前にいるのは一匹の赤ちゃんタブンネことベビンネ。爺ちゃんが持ってきたやつだ。殺したタブンネの腹にしがみついていたから、おそらく家族だろうとのこと。

こんなに活きの良いベビンネを見たのは久しぶりだ。せっかくだから生きたままチタタプして、新鮮なうちに食べてしまおう。
ベビンネを掴むとそいつは「ピィヒィィィ!!!」と大きな声を出して暴れ始めた。これではチタタプが出来ない…そうだ!縛ってボンレスハムみたいにしよう!

「ピィギィィ…クィィィ…」
縛られたベビンネは苦しそうな声を出す。そして俺はボンレスハムをまな板の上に置いた。

チタタプというのはシンオウ地方で有名な調理方法。包丁を使い、ミンチにするだけのシンプルな物となっている。しかし、タブンネはミアドレナリンという旨味成分を苦痛を感じた際に出すので、チタタプとタブンネ肉料理はとても相性が良い。ではさっそくチタタプだ。

「ビィギィィィィ!!!!グビィ!!!ビヂィィィィィ!!!」
トントントン♪包丁で刻むたびにベビンネは絶叫をあげる。ところでタブンネはほとんどの田舎町で害獣とされているポケモンだ。何しろ、農作物を盗むわ、力仕事の役に立たないわ、飯をたくさん食うわで田舎にいる人達は皆タブンネを嫌っている。

「ダビョオォォォォ!!!ビィ!ビィ!ビイィィィイィ!!!」
うるさいなぁ…もう首を切って落とそう。そう思い、俺はタブンネの首を包丁でスパッ!と切った。

「グビィッッ…!」
タブンネは生命力が高い生き物だ。こうして首をちょん切って頭だけになってもすぐに死なない。外敵から生き延びるための進化だろうが、それでは苦しむ時間が長引くだけではないのかといつも思う。

こうして肉になったベビンネを食卓へと持っていき、爺ちゃんと一緒に酒を飲みながらくだらない世間話をする。どうやら爺ちゃんは明日、友人達とタブンネの集落へと向かうそうだ。日頃の鬱憤を晴らしたくなったので明日はそれの手伝いをしよう。

743名無しさん:2023/09/16(土) 09:17:08 ID:P5hq7qQM0
名探偵ピカチュウ新作のパッケージにタブンネちゃんがいるね
ガチャポンやプライズなどグッズも全然出なくて公式から虐待されてる立場だったのに良いゴミ分だね
君等は虐待される姿がお似合いだよ

744名無しさん:2023/10/02(月) 23:48:39 ID:YFKOTy4s0
タブンネの両腕両足をハンマーで殴り続けてオシャカにする!
ミィギャアアアアアアアアアア!!!!
ブンンネエエエエエエエエ!!!!!
と不快な悲鳴を上げても俺のハンマースピード止まらない。
両腕と両足がもんじゃみたいになったらタブンネを椅子に縛りつける。そして目の前にはバッチングセンターにあるピッチングマシーン!!!
速度は160キロ!!玉は鉄球だ!狙いはタブンネの顔面!!俺は小銭で1万円分をマシーンに投入!!
某ヤクザ映画のワンシーンの様に一定のタイミングで鉄球がタブンネんの顔面を捉える。
ぐちゃぐちゃの顔面になりながらも顔は腫れ上がり不気味な生物へと変貌を遂げていく。
クソとしょんべんを垂れ流しだした。しかしとんでもない生命力でかろうじて命を繋いでいる。
俺は更に1万円を投入。顔面が消滅するまで見届けるつもりだ。

745名無しさん:2023/10/23(月) 18:48:13 ID:LQ8jLOWo0
タブンネさんがパルデアに来たら絶対さいきのいのり覚えると思うんだよな
だからタブンネさんの目の前で子タブンネ二匹を瀕死になるまで痛め付けてどっちにさいきのいのりを使うか選ばせてあげたい
どっちも選べないっていやいやするタブンネさんに死んでいく二匹を見せつけてタイムリミットが迫ってることを教えてあげたい
どちらも選べずに二匹とも見殺しにしてしまうタブンネさんは可愛いし片方にさいきのいのりを使ってもう片方の子に死ぬまでごめんなさいって謝り続けるタブンネさんも可愛い

746名無しさん:2024/01/07(日) 23:06:01 ID:Xz8ownTw0
新作投稿まだかな

747名無しさん:2024/01/09(火) 23:55:27 ID:1FCpWYf.0
>>745さんのネタが読みたいですね。

748名無しさん:2024/02/27(火) 10:12:39 ID:1s4GvLc.0
ここに書き込んでる虐待して喜ぶバカがみんなゲーフリに開示請求されますように

749名無しさん:2024/02/27(火) 17:39:04 ID:RO5k435s0
ふたばちゃんねるでの荒らし行為の方がよっぽど開示請求を恐れるべきだと思うぜ

750名無しさん:2024/03/01(金) 12:22:40 ID:CwuzR4V60
イーブイ虐待日誌

私の家の前にダンボールが入ってあった。
ダンボールの中を見ると、イーブイが入ってた。恐らく、人気のない山奥に捨てる途中、ここを見つけ、置いた。
多分これだろう。そんな身勝手な飼い主もいるのかと驚く。
とりあえず家に入れると、イーブイはぴょんとダンボールから飛び出した。新しい景色に少し驚いているが、私が近寄ると『ブイブイ〜♪』と泣きながら私の足を頬でスリスリする。
警戒心がないのは助かる。
とりあえず地下室に入れてやる。
地下室は辺り一面カラフルである。
これは、ポケモンの警戒心を無くすために特別注文したものである。
隣の部屋も作ってもらったのだが、そこは虐待道具の倉庫である。

751名無しさん:2024/03/01(金) 12:23:11 ID:CwuzR4V60
私は『ここで待っててね♪』そういい牛乳を取りに行く、
君の最後の幸せをあげよう…
イーブイに牛乳を渡すとチロチロ舐めている。
その隙に後ろから、隠し持ってたドライバーで耳をグサッ!と刺す。
『ブイッ!!』悲鳴を出すが構わず壁に刺す。落ちないように壁に深く刺す。イーブイの耳は赤色に染まっている。
『ちょっと待てよ…。』
最初に出した虐待道具はバリカンである。
『まずはこれから虐待される証として毛を刈り取ってあげるね』ニコ
ブゥゥンと音が鳴らし、イーブイの毛を刈り取る
『ブイ!!ブイ!イブイブ!』
その悲鳴が快感になってる私はマジキチかも知れない。
『いいねぇ…。』
もっと悲鳴を聞きたくなり両手でむしりとる
『ブ!!!!!!!????イブー!ブイー!』
気づけば毛はほとんど無くなっていた。
『お疲れー。ゆっくり休めよ…。』
そういい、毛の無い部分をドライバーで刺した。イーブイは気絶した

752名無しさん:2024/03/01(金) 12:23:44 ID:CwuzR4V60
『ブイ・・・?』
今、イーブイは鳥かごの中。無理矢理押しこんだので苦しそうだ
私が近づくと『ブイブイ!』と威嚇している。
うるさいので檻を蹴ると『ブイ!』と震えながら吠えている。目潰しをくらわせると『キュン』と泣き静まった。
イーブイが黙ると私は肉をとり出し焼いた。いい臭いが部屋中ただよう。イーブイは食べたそうである。
一回無視して見ると、ブイブイ泣いて、アピールしている。もう一回目潰しをくらわせたが収まる気配は無い。
一応、臭いだけ嗅がせる作戦だったが、あまりにもうるさいので、口にりんごをいれると『が・・・が・・・』と言い喉につまらせた。
『助けて欲しいかい?』と言うとイーブイはうなずいた。
『りょうかーい!』
そういい、私は更にりんごを奥にやる。
イーブイは白目になりながら『ブイイ!!??』と叫びゲロを吐く。

『うわ・・・きったねぇ。何すんだよコラ』
そう言い、私はイーブイの耳を持ち、
数発殴りつける。そしてゲロのついた手をイーブイでふく。すると噛みついてきた。ペットは仕付けなければ・・・

753名無しさん:2024/03/01(金) 12:24:15 ID:CwuzR4V60
『よく聞けクズ。お前の新しいご主人はこの私だ。指示に従わなかったり、私に危害を加えたら・・・殺す!』
イーブイは涙目で『ブイブイブイ!』とうなずいた。
とりあえずイーブイでゲロをふいた。

もうこんな時間だ。飯を調達しなければ…。
家を出て行き、少し歩くといい物を見つけた。
ドアを開けると鳥かごが割れていた。イーブイはどこにいるかと言うと、ドアの後ろだった。『ぶい…』と泣き声が聞こえた。
イーブイは脱出しようとして、ドアをガリガリ引っかいてたところ、運悪く私が帰ってきてしまった…ということか。
一応、家から出るなとは言ってないが…。
イーブイはまだ見つかって無いと思ってるらしい。
『ふむ、どこにいるのかな?』そういいドアを押してイーブイをドアと壁にはさむ。『ブイ・・・ブイブイ』と泣いている。『うーん?どこだ?あれ!?こんなとこに尻尾が!』そういいドアを開くためにいる隙間、というべきか。とにかくその間から尻尾を引っ張りギチギチ引っ張る『ブイ!?ブイブイー!ビィイ!!!』とびっくりしてる。ドアを閉めると更に『ブイァア!!!!』と叫んだ。
『あ、そこにいたのか。メンゴメンゴ!気づかなくてごめんね…。』そういい、首輪をつける。
最初は『ブイブイブイ』と嫌がったが『黙れ』と言うと落ち着いた(?)

754名無しさん:2024/03/01(金) 12:24:56 ID:CwuzR4V60
イーブイをとある場所に行かせるそこはスピアーの巣だ。
『よし。イーブイ。あれを奪うんだ。但し逃げたら・・・』
イーブイはあれがスピアーの巣だと言うことを知らない。
『それいけ!』と言わせると、イーブイは巣に近づく、チキチキと言う音がなってたがイーブイは気にしてない。
巣は上にあるが体当たりをすれば簡単にとれる。巣は簡単に落ち、『ブイブイ〜♪』と余裕の笑みを浮かべている。
がその瞬間、イーブイの笑顔は消えた。スピアーに取り囲まれたのだ。
考える間もなくスピアーは襲いかかってくる。もうダメだ!その時『こっちに来るんだ!』と言う声が聞こえた。私だ。イーブイはこっちに走る。が安置なんて存在しない
『ブイ…?』
私はこっちに来るイーブイを蹴飛ばした。無論、立てる気力も無く、刺されていく。私はすかさずゴールドスプレーをかけてやり、スピアーを追い払ったイーブイを見ると毒で弱ってたのでどくなおしをかけた。これで毒による危機は無くなった。

755名無しさん:2024/03/01(金) 12:25:28 ID:CwuzR4V60
イーブイは傷だらけである。毛のなくなった血まみれのイーブイ。しかしすごい傷薬なら簡単に処置可能だ。
すぐ、元の体を取り戻した。

捨てポケイーブイにも愛情を教えてあげよう。そう思った。


早速檻に入りイーブイを殴る。
『ブイッ!』『可愛いね。イーブイ』
もう一発蹴る『ブイッ!』『もっと声を出しなよ。』
そういい、胸の毛を切る。『ブ・・・』『チッ』
舌打ちをしながら、イーブイの毛を踏みつける。すると『ブイ・・?ブイブイ!ブイイ!ブイ!』
『いい声でるじゃん。いい子だね。』そういいナデナデする。
異常な愛情にイーブイは怯えている
さて、そろそろイーブイを殺したい。

そう思いながらイーブイの尻尾を火で焼く。
『ビュイィイイイ!!!!』
イーブイをは叫び暴れてる。
『イーブイ!こっちだ!』
そういい、おけを置くと、『ブイー!』とケツから突っ込む。が、中に入れてた無数の針に『ブギャアア!!!』と叫ぶ。

756名無しさん:2024/03/01(金) 12:26:01 ID:CwuzR4V60
私はイーブイを耳と手足を拘束した。
足がM字開脚みたいなので、イーブイはやや赤らめてる。もっとも、私はそんなので興奮しないが。
殴ったりけりをくらわしたりしてイーブイは『ブゲフ・・!』『ブゴファ・・・!』と泣いてたが、すぐ飽きた。
包丁をとりだし、少し刺して見る。すると『ブイ゙ィ゙!』と泣いた。これなら面白そうだ。

耳を切ると、『ビュイ!!』と高いトーンの声を出し
胸の肉を切り取ると、『ブギュリュギュイ!!???』と訳の分からないことを唱え、
足の骨を出来るとこまで切り、骨を力ずくで取ると『ブ・・ブィ・・』と力が抜けたと思ったら
腹に三本の傷をつけると『ブィイイ・・・!グスッ、ブィイイイ〜〜〜!』とまるで家宝に傷がつけられたかのように全力で泣く。
さて、もうコイツはいらない。首をつかみ、スピアーの巣に投げる。

757名無しさん:2024/03/01(金) 12:26:32 ID:CwuzR4V60
スピアーは投げた私よりも巣に当たったイーブイにキレている。そして、イーブイに総攻撃を仕掛ける。
イーブイもこっちに逃げたがスピアーの速さには敵わない。
イーブイは『ブイブイブイブイブイブイブイブイブイ!!!!!!!!!!!!』と誰かに助けを求めてたが誰も助けてくれる訳がない。

『ブィギャァナブイギャア
ブィァァ』
イーブイはスピアーの総攻撃を受けた。私は用事があるのでこの場を去る

戻って見ると、イーブイの肉は無かった。ポチエナか何かが食ったのだろう。
おしまい

758名無しさん:2024/03/01(金) 12:27:42 ID:CwuzR4V60
産まれたてのイーブイを母親の目の前で処刑したい。
すすり泣き懇願する母イーブイマジ可愛い。

その日、人気のない草むらで一匹の牝のイーブイを見つけた。
オレンの実を沢山与えてよくなついたところでモンスターボールを使い、捕まえた。

牝のイーブイが用意出来たので様々な陸上ポケモン牡10匹の入った檻の中に牝イーブイを放り込む。

牡達には一ヶ月タウリンを投与して準備しておいたので性欲がかなり溜まっていることだろう。

すぐに牡に犯されていき、行為が終わった後も尚、別の牡にどんどん射精されていった。

うん、種付けは問題なさそうだな。

んで、6ヶ月が経過したところで檻の中を見てみると産まれて間もないイーブイが5匹、レイプされて身体的にも精神的にもボロボロの母イーブイに寄り添っていた。

この産まれたイーブイを檻から見える位置に連れ出し五匹まとめてミキサーにかける。

ミキサーがなにか解らない子イーブイは窓を叩いたりして楽しそうにしている。
子供が閉じ込められて焦っている母イーブイにミキサーのスイッチを渡し、「このボタンを押せば子供を助けられる。」とボタンを押すように促す。


レイプされて産まれた子供とはいえやはり自分の子供が可愛いのだろう。

母イーブイは何も疑いもせずにボタンを押す。

その瞬間、ミキサーの中身は五秒で野菜じゅーちゅになった(多分)。

グロいのは苦手なので直ぐに退出したが、何が起きたのか理解した母イーブイの叫び声は聞こえた。

さて、次はどう苛めてやろうか。

とりあえず今日のところは母イーブイに片付けをさせて就寝。

そうだ、この6ヶ月の間に陸上ポケモン(牡)を沢山捕まえたんだったな。

明日にでも檻に追加投入しよう。

あれからまた6ヶ月、ちょうどこの虐待を初めて1年が経過した。

檻の様子はちょくちょくみに来てたが改めて見るとすごいな。

マジでザーメンくさいんですけど…

子供の数は…えっと、20匹か…

牡たちも張り切ってるな。
エサは毎日やってるからな、絶食するほど俺は鬼じゃない。

まぁ飢え死が一番つまんないってのが本当の理由だったり。

今日は子イーブイ20匹まとめてやっちまおうか。

子イーブイを水をいれた水槽の中に閉じ込める。

するとがしゃがしゃと檻がうるさい音を出し始めたんで振り向くと、母イーブイが牡にペニスを突っ込まれたままなにかを訴えるように涙目でこっちを見てキューキュと鳴いている。

時すでに遅し、熱湯に変わった水に浸かったイーブイは全滅し、蒸し焼き状態になっていた。

おわり

759名無しさん:2024/03/01(金) 17:26:41 ID:8hIgyu4k0
「マイ〜ママイ〜♪マイ〜ママイ〜♪」
母親マイナンの子守唄が無邪気にじゃれあう子プラマイ達を優しく包み込む。
「プラッ!マイ!プラァ!」
落ち着き無くはしゃぐ子プラマイ達も母親に抱き締められ、その暖かい温もりを感じながら夢の中に誘われていく。
「ぷりゃあ〜。まいい〜。」

可愛らしい寝息をたてながら楽しい夢を見ているのか顔を綻ばせる子や
寝ながら母親の乳房を求めて指をチュパチュパしゃぶる子達を母マイナンは目を細めて優しく見つめている。

微笑ましい光景だ。
誰もがそう思うだろう。
こんな可愛い天使達を虐待するなどあり得ない。
…そう思っていた。

最近屋根裏からガタガタ物音がするようになり「プラマイ」と甘ったるい鳴き声が聞こえてくるようになった。

僕は今木造の古いアパートに住んでいる。
古い故にある程度は想定していたが、まさか冒頭述べた光景がうちの屋根裏で展開していようとは。

先程は母親マイナンと称したが声が少し甲高い。
恐らく子マイナンが幼いベビプラマイ達の世話をしているのだろう。
親を失い野生の世界では生きていけず放浪の果てに辿り着いた安息地がうちの屋根裏だった訳か。

760名無しさん:2024/03/01(金) 17:27:14 ID:8hIgyu4k0
その証拠にプラマイ達の楽しそうなはしゃぎ声が毎日僕の耳まで届き
毎日楽しく遊び回っているのが屋根裏からの振動で用意に想像がつく。
そう、毎日だ。
毎日、毎日「プラマイプラマイプラマイプラマイ。」

屋根裏からの歌声や踊りは騒音となり僕のストレスを膨れ上がらせる元凶となった。

奴等は無駄に知能が高い為に冷蔵庫を漁る事を覚えたり
躾などされていない為に部屋の至る場所に糞尿を撒き散らし床一面を汚いドットで染め上げる。
部屋は散らかり広範囲に散らばって落ちている、クリーム色と赤青の抜け毛がプラマイ達が蹂躙していった事実を物語っていた。

当然僕の怒りは限界だった。
しかし正確に奴等の棲みかを把握しておらずプラマイ達も僕を警戒しているのか、なかなか尻尾を掴めない。

そう、尻尾だ。
あの人を小馬鹿にしたようなふざけた形をした尻尾。

時々物陰からフリフリと動く尻尾がチラリと覗くがいつもあと一歩のところで逃げられてしまう。

確かに奴等は憎いが僕も鬼ではない。
捕まえたら逃がして二度と屋根裏に住み着かないようにすればいいだけだ。
平穏な暮らしが戻るなら許してやろう。

…実際にプラマイ達に遭遇するまではそう思っていた。

761名無しさん:2024/03/01(金) 17:27:56 ID:8hIgyu4k0
小雨が降る中、僕は帰路に着く足取りを速める。
今日は残業もない。 こんな早い時間に帰れるのはいつ以来だろうか?

…思い出した。
プラマイ達が住み着く前だ。
あのネズミウサギの事を思い出し少し気が滅入ったが僕の帰る場所はあの古いアパートだ。
決してプラマイの巣なんかではない。

うちのドアの前に立ち僕は気を引き締め逸る気持ちに反するように静かにゆっくりとドアノブに手をかけた。

忍び込むように玄関に潜入した僕は微かに、だが確実に何者かの気配を感じ取った。 そして確信した。

間違いないプラマイだ!
集中して耳を澄ますとガサガサと物音が、それとまだ幼いプラマイの鳴き声が「ぷらぁまいぃ」と聞こえてくる。
毎日のように聞かされた甘ったるい耳障りな鳴き声だ。

僕はプラマイ達とは逆に物音をたてず慎重に台所へと足を進めた。

だんだんと鳴き声のボリュームが大きくなりクチャクチャと咀嚼する音が真っ暗な台所に響く。
「クチャクチャ、ンマァイ。ング。ププゥ!」
プラマイ達は食べる事に夢中のようで僕に全く気付いていない。
僕はプラマイ達の位置を把握した。
そして逃げられないように間合いを詰めた。

僕は台所の照明を点灯した。
「ぷりゃあ!」「まいまいまい!」

762名無しさん:2024/03/01(金) 17:28:44 ID:8hIgyu4k0
突然の事態に驚く四匹の子プラマイ達。
予想通り大人はいないみたいだ。

くわえていたハムを口から溢し口をパクパクさせるベビプラ。
眩しさにまだ目が慣れず顔を抑えているベビマイ。

その二匹の手を取り一目散に逃げようとした母親代わりの子マイナン。
(便宜上このタブンネを以後ママイナンと呼ぶ事にする。)

僕は逃げ遅れたシュークリームに顔を突っ込んでいるベビプラの首根っこを掴んだ。
顔中クリームまみれのベビプラは状況を理解していなかったが直ぐに危険を察知しプキャア、プキャアと喚き始めた。

「マイ!マイマイ!」
ママイナンが何かを訴えている。
大方察しはつく。
だがその要求を呑む気は全くおきない。
それどころか僕は不思議な感情に包まれた。
こいつらをメチャクチャにしてやりたいと。

プラマイ達が知性の欠片も感じさせない獣であれば僕は何も感じなかっただろう。

しかしプラマイは人の言葉を理解出来、そして何より人間の様に感情表現が豊かだ。
恐怖に震えるプラマイの顔が僕に未知の興奮を与えた。

もっと、もっと!こいつらの顔を絶望に染め上げたい!
その想いが増すとともに自然と笑みが込み上げてきた。

だがその笑みはプラマイ達の表情から察するにさぞかし悪意のある笑みだったのだろう。
反比例の関係の様に僕とプラマイの表情は変化していく。

「この子を返して欲しかったらお前らの棲みかへ案内しろ。」
ママイナンは恐怖にプルプル震えながらも小さくコクッと頭を下げた。
両脇のベビプラマイ達はママイナンの手を力一杯握り締めて瞳に涙を溜めていた。
二匹ともママイナン同様恐怖で震え歯をガチガチ鳴らしていた。

763名無しさん:2024/03/01(金) 17:29:37 ID:8hIgyu4k0
僕に掴まれているベビプラは興奮して暴れていたので一先ずバッグの中に閉じ込めた。
必死に出ようとモゴモゴ動いているが無視しておく。
ママイナンは棲みかを案内した。 押入れの奥に屋根裏に繋がる小さな穴があった。
あまり掃除をしてなかったので全然気付かなかった。今後は気を付けねば。

懐中電灯で屋根裏を照らすと無くしたと思っていた複数のタオルが見つかった。
毛布代わりに使っていたと見える。
他にも沢山の食べかすが散乱していた。

さらに奥に、ふと青い物が見えるとママイナンが咄嗟に隠そうとした。
余程大事な物らしい。
「今隠そうとした物を見せろ。さっきの子が死ぬことになるぞ?」
その言葉にママイナンはマイ・・・と涙声をあげながら青い物を僕に差し出した。
それは尻尾だった。
大きさからして大人のマイナンのもの。 親の形見という訳か。
「これは少し預かる。なに、すぐに返すよ。」
ママイナンが両手を伸ばし「返して!」とアピールするが無視。

僕は散らかったままの台所に戻った。
マイナン達の食べかすの他に糞尿が撒き散らされている。

「綺麗に掃除したら子供を返してやるよ。雑巾はこれを使いな。」
僕はそう言って尻尾をママイナンに渡した。

「マイ・・マイマイ!」
ママイナンは首を横にブンブン振った後、僕のズボンをキュッと掴み僕を見上げながら媚びるようにマイマイ鳴き出した。

「・・・まあ大事な形見だしな。悪かったな。」
僕の言葉を聞いたママイナンは安堵の表情を浮かべ形見の尻尾をギュッと抱き締めながら目を瞑っている。
「良かった。ずっと一緒だよ、お母さん。」とか思っているのだろうか。

形見の残り香を嗅ぎながらうっとりしているママイナンの目の前にミキサーを置いた。
丁度ベビプラマイ一匹の体がすっぽり入る。
僕は先程バッグに閉じ込めた一匹をミキサーの中に入れる。

764名無しさん:2024/03/01(金) 17:30:32 ID:8hIgyu4k0
「プラッ!プララァ!」
ベビプラがどれだけ足掻こうが脱出する事は不可能だ。
必死な姿とは裏腹に尻尾をフリフリさせ全く緊張感を感じさせないベビプラを見て僕は思わず吹き出してしまう。

そして開けっ放しのミキサーの上からベビプラ目掛けて用意しておいたポットのお湯を一滴かけた。
「プピャア!」
もう一滴。
「プヒィィ〜!」

熱湯がかかる度に目をカッと見開きピョンピョン跳ねるベビプラ。

青ざめるママイナンにボソッと「尻尾で掃除すればこんな事にならなかったのにね。」
と耳打ちすると、暫くして涙をボロボロ溢しながらママイナンは形見の尻尾を使い糞尿を掃除し始めた。

一通り掃除が終わる頃には尻尾は変色し毛並みはボサボサになり悪臭で残り香どころではなくなった。
それでも大事な物なのか手放そうとしない。

いつまでも汚物まみれの形見を見つめるネズミ達の姿にも見飽きたので形見にライターで火をつけた。
目の前で大事な物が燃えている。
しかし熱くて近寄れず泣く事しか出来ないプラマイ達の絶望的な顔はなかなか見物だったので、思わず写メに撮ってしまった。

その後、親との思い出に浸るプラマイ達を現実に引き戻す為にミキサーの中からベビプラを取りだしママイナンに見せ付けた。
尻尾を掴まれ宙吊りのベビプラは恐怖と痛みから激しく暴れている。

僕はベビプラの足に鎖を巻き付け床にそっと置いた。
自由になったベビプラはママイナンの元に一直線に向かうが
急に足が引っ張られ先に進む事が出来ない。

バッと後ろを振り返るベビプラの視界には黒い鉄球が。
そして自分の足に巻かれた鎖が目の前の鉄球と繋がっている事を理解したネズミは涙で顔をクシャクシャにした。

「掃除ご苦労様。もう帰っていいよ。」
僕は悪意のこもった一言をプラマイ達に言い放った。

765名無しさん:2024/03/01(金) 17:31:41 ID:8hIgyu4k0
ママイナンは何とか鎖に繋がれたベビプラを助け出そうと試みるが鉄球が重すぎて動かせず、鎖を噛み千切ろうにも歯が立たない。
困り果てたママイナンはソファーで寛いでいる僕の所まで、とてとてと駆け寄り「ンマァイィ・・・」と弱々しく鳴いた。

「どうした?もう帰っていいんだぞ?」
僕の言葉に反してママイナンは居座り続け囚われのベビプラを指差しマイマイ媚続けている。
両脇の二匹もママイナンの手助けをするようにピョンピョン跳ね回る。

「そうか。お前達も繋いで欲しいんだな。」
ママイナン達は必死に「違うよ!」とアピールしているが
僕はママイナンの脇にいた一匹のベビマイを仰向けに寝かせ股を開かせ片足に鎖を巻いた。
ジタバタ暴れるベビマイの股から妙な熱を感じる。
失禁していた。
僕はイラッとしてベビマイの顔をつねった。
「マイィ!マアアアア!」
泣きじゃくるベビマイのヨダレが手についた。

少しお仕置きが必要だな。

すでに逃げ出せないベビマイの口を無理矢理こじ開けチューブ式のワサビを思い切り絞った。
「マイッ!マガッ!ンガァ〜!」
ベビマイの口の周りは大量のワサビにヨダレ。
鼻水まで流して体液のナイアガラやぁ〜!

……興奮して少し調子に乗ってしまった。

目を見開き舌を出したままベビマイはケホケホと咳き込んでいる。
まだチューブの中にワサビが少し残っていたのでベビマイの尻の穴に注入した。
「ママッ!マキャア!」
手足をばたつかせて苦しむ姿は殺虫剤を撒かれた害虫のようだ。

歯を剥き出しにして力むベビマイの尻から「プップッ」という音とともにワサビが出てくる。

「残したら勿体無いよ。」
僕はベビマイの顔を排泄したワサビに擦り付けた。 鼻の辺りを重点的にだ。
ベビマイの鼻と口にワサビが入ったのでガムテープで栓をした。
鳴き声が楽しめないがまあいいだろう。

766名無しさん:2024/03/01(金) 17:32:24 ID:8hIgyu4k0
僕がワサビマイで遊んでいると、もう一匹のベビプラが僕の足をペチペチ叩いている。
兄弟を助けようとしているのか。
生意気なネズミだ。
僕はターゲットを切り替える事にした。
紐を使い生意気なベビプラの足をハンガーに縛り付けた。
逆さで宙吊りの状態だ。
そして鍋に熱湯の準備をする。
僕はハンガーを持ちベビプラをじわじわ熱湯に近付ける。
恐怖で小刻みに震える姿は素直に可愛いと思える。
そしてあえてギリギリの所で留める。 ベビプラが体を丸めれば湯に触れる事はない。
しかし実際には足が縛られているのでベビプラは腹筋を使って体を支えなければならない。
プルプル震える姿が限界が近い事を知らせてくれる。
それから1分もしないうちにベビプラは力尽きモロに熱湯に浸かった。

「プリャア!プリャァァァ!」
部屋中に甲高い声が響く。
その悲鳴に反応してか僕の腹が鳴った。
そういえば帰ってからまだ何も食べていない。
腹が減ったのでベビプラが入った鍋を使いおでんを作ってみた。
グツグツと煮えたぎる大根、ちくわ、こんにゃく、はんぺん、それらに紛れバシャバシャもがくベビプラ。
視覚的にも楽しめ箸が進む。

食後、茹であがりぐったりしているオデンプラを取り出した。
ピクピクして意識が混濁している

「尻尾を噛み千切れ」
そう言ってママイナンの前に差し出す。
当然「出来ない」という態度を示すがそんな事は許さない。

「出来ないなら子供達はみんな死んじゃうよ?」
ママイナンはどちらの選択も否定するようにひたすら首を横に振り続けた。
仕方ないので見せしめにまだ無傷の最初に鎖で繋いだ一匹をナイフで少し切りつけた。
浅く、だがしっかりと血が流れ、その悲鳴は目を瞑り現実を逃避するママイナンに1つの選択を決断させる。

「プラギャアアア!プギャ〜!」
ママイナンはオデンプラの尻尾に噛みつきがむしゃらに引き千切ろうとしている。
ブチブチと赤い毛が抜け落ち尻尾はみすぼらしくなり尻尾に顔を突っ込んでいたママイナンの顔はオデンプラの糞尿で汚れていた。

767名無しさん:2024/03/01(金) 17:33:35 ID:8hIgyu4k0
「ンギィィィィ〜!」
オデンプラは歯を食い縛り激痛に耐えようとするが直ぐに絶叫に変わる。
すかさず僕はオデンプラの顔を写メで撮影した。
タイトルは「捕食されるベビプラ。」ってとこかな。
「マーッ!マイーッ!」
千切った尻尾をくわえながら酷く興奮状態のママイナンは「可愛いポケモン」からはかけ離れた獣そのものだった。
まあ、それでも元はマイナンなので迫力などない間抜け面なのだが。

「約束通り子供達を返してやるよ。」
僕はベビプラマイ達を自由の身にした。
早速駆け寄ろうとしたママイナンだが何やらベビプラマイ達の様子がおかしい。
さっきの姿を見てママイナンを怖がっているようだ。
「マ?・・マイ!マイマイ!」
ベビプラマイ達に拒絶されショックを受けるママイナン。
何度も「もう大丈夫よ。こっちにいらっしゃい」と催促しても
口の周りに尻尾や血が付いたままではベビプラマイ達を更に震え上がらせるだけだ。

数分後、ママイナンは一匹だけで屋根裏に帰っていった。
屋根裏からママイナンの啜り泣きが聞こえる。
残されたベビプラマイ三匹は体を寄せ合って部屋の隅で固まっている。

暫く寄り添っていた三匹だがワサビマイの匂いがキツイのか他二匹が鼻を抑えている。
涙目のワサビマイを不憫に思った僕は風呂場に連れていく事にした。
他二匹がプラマイ騒いでうるさいので蹴り飛ばすと直ぐにおとなしくなった。

ワサビマイは恐怖に震えていたが僕は程好い温度のシャワーで丁寧に洗ってあげた。
ワサビマイはシャワーの心地好さとシャンプーの香りに包まれ恍惚の表情を浮かべる。
風呂あがりもタオルで全身を優しく拭きドライヤーでしっかり乾かし毛並みも綺麗に整えてあげた。

すっかり見違えたワサビマイは他二匹に自慢するように整った毛並みやツヤツヤの尻尾を見せ付けた。
羨ましそうにワサビマイを見つめワサビンネから香るシャンプーに匂いに鼻をクンクンひくつかせる二匹。
ワサビマイは二匹も風呂に入れてあげて欲しいとアピールしてきた。
「いいよ。綺麗にしてあげるね。」
二匹はその言葉に顔をパアッと明るくしてみせた。

ちなみに二匹の傷は再生力により回復しているので風呂にいれても問題ない。

「プラ!プラ!プラプラ〜♪」
僕の手の中の二匹は早く綺麗になりたいとはしゃいでいる。

風呂場に入ると僕は二匹を浴槽に叩きつけた。

768名無しさん:2024/03/01(金) 17:34:11 ID:8hIgyu4k0
「プラァッ!!」
と呻きながら突然の僕の変貌に驚く二匹。
僕はシャワーの温度を目一杯あげて二匹に浴びせた。
「プリャアアア!プリリァァァァ!」
二匹は狂ったように浴槽の中を走り回る。
そのうち一匹が石鹸を踏み派手に転倒した。
頭を強打して悶絶するベビプラに追い打ちをかけるように容赦なく熱湯を浴びせ続けた。
「アアアアア!」
ビクンビクンと壊れた人形のように痙攣するベビプラ。
目の焦点が合っておらず流石に可愛らしさは身を潜めた。
シャワーを一旦止めた後、息も絶え絶えの二匹の全身をナイフで切りつけた。
そして傷口にしみわたるようにシャンプーまみれにして最後は再び熱湯で雑に洗い流した。

散々悲鳴をあげ、すっかり声も枯らしてしまった二匹は力無く
「プ………」
と呟きピクピクしている。

シャワーの後、三匹を再会させる。
二匹の惨状に驚くワサビマイと、ぐったりしながらも目はしっかりとワサビマイを睨み続ける二匹の姿があった。

ベビプラマイ達の仲に亀裂が生じ始め一晩があけた。
二匹は体を寄せ合い体を暖め合いながら、すやすやと寝息をたてている。
「スゥスゥ、プラァ〜。」
一匹は時節寝言のようにプラプラ呟くと体をブルブル震わせた。

直後床に熱を帯びた液体がじわじわと広がった。
隣の一匹は夢の中でご馳走を食べる夢でも見ているのかヨダレを垂らしながら眠っている。
そして寝惚けながら床に広がる液体をペロペロ舐めていた。

一方一晩ハブられたワサビマイは冷えきってしまったらしく鼻水を垂らしながらガタガタ震えて時々「マシュン!」とくしゃみを繰り返した。

769名無しさん:2024/03/01(金) 17:35:14 ID:8hIgyu4k0
起床した僕は朝食の準備を始めた。
こんがり焼けたトーストの香ばしい香りで目を覚ました三匹は直ぐ様香りの元に駆けつけた。
ママイナンも釣られて屋根裏から降りてきた。

再会した家族。
だがどこかぎこちなさを感じる。
ギスギスした関係と言ってもいい。

僕はトーストにマーガリンをたっぷり塗り付けプラマイ達に差し出した。
熱々のトーストにがっつくネズミ達。
ベビプラマイ達は慌てて食べるので時々「プラッ!」と熱さに口をハフハフさせている。
それを見たママイナンは口でフーフー冷ましたり千切って食べやすい大きさにしてベビプラマイ達に分け与えた。
いつも冷たい食パンを盗み食いしていたので、 ふっくらしてモチモチした食感に感動を覚えているプラマイ達。
僕はプラマイ達が喉をつまらせないようにミルクも添えてあげた。
ピチャピチャと舐め喉の渇きを癒すプラマイ達。
オデンプラが顔を上げると鼻にミルクやマーガリンがべったり付いていた。
それを見て笑い出すプラマイ達。
どうやらプラマイ達の関係も修復されつつあるようだ。

今日は休みだ。
プラマイ達でたっぷり遊ぶとするかな。
満足そうに満腹のお腹をさすったりゲップをするプラマイ達を見ながら僕はニヤ付いていた。
10時過ぎになり家族で堂々と居間で寛ぐプラマイ達に僕は声をかけた。
「食後の運動をしようか。」
プラマイ達は元気よく返事をした。
こうも早く僕に懐くとは。単純なネズミだ。いや、ウサギか?
僕はママイナンに目隠しをして壁際に縛りつけた。
ベビプラマイ達が「プラ!マイー!」
と慌て始めたが
「大丈夫、これはゲームだよ。誰が最初に捕らわれのママイナンを助けられるか競争だよ。」
話を理解した三匹は鼻息を荒げ張り切っている。

770名無しさん:2024/03/01(金) 17:36:19 ID:8hIgyu4k0
しかしいくらベビプラマイ達が小さいとはいえ、そのまま走られたら直ぐにママイナンの所に辿り着いてしまう。
そこでベビプラマイ達の手足を紐で縛り玄関からハイハイしながらママイナンを目指して貰う事にした。

僕を信じきった三匹は僕に縛られても全く恐怖を感じていない。
それどころか早く始めて欲しくてウズウズしている。

ああ、そんなに逸らなくても時間をかけてたっぷり楽しませてあげるから大丈夫だよ。 僕が再び悪意のある笑みを浮かべていたのに気付くものは誰もいなかった。

「プラ!マイ!プラ!マイ!プラ!マイ!プラ!マイ!」
スタート地点にうつ伏せの状態でスタンバイするベビプラマイ達。
「僕が一番にママを助けるんだ!」
と息巻いている。
僕は空き缶を叩いた。
スタートの合図だ。

一斉に床を勢いよく這い出す三匹。
縛られ手足の自由がきかずなかなか先に進めず芋虫のようにクネクネ這っている。

オデンプラがトップだ。
昨夜ママイナンに食い千切られ怪我こそ治ったものの、みすぼらしいままの尻尾をフリフリさせながら前進する。
僕はオデンプラを手で押さえ付けた。
「プラ?プラ!プラプラ!」
身動き出来ないオデンプラは「邪魔しないで!」と唯一自由に動かせる頭を振りながら憤慨している。

僕はオデンプラの耳に釘を刺した。
「プギャアアアア!」
釘が耳を貫通し床にも刺さっているため移動する事が出来ず、暴れるものなら激痛が増すだけなので
「プラ・・・!プラ・・・・!」
と涙を流し痛みに耐えながらじっとしているしかない。

771名無しさん:2024/03/01(金) 17:37:15 ID:8hIgyu4k0
「お〜っと!オデンプラはここで一回休みか!」

僕の実況を聞いた二匹がトップに躍り出るチャンスとばかりに張り切りだした。
兄弟の危機に気付いていないのか?
二番手はワサビマイだ。
毛並みが良くオデンプラとは対称的に可愛らしい尻尾を振りながらママイナンを目指している。
僕は同じくワサビマイを押さえ付けガムテープを全身に貼り付けた。
「ンマァイ?マイ〜!マイマイ!」
不快そうにガムテープを睨むワサビマイ。
「ごめん、ごめん。直ぐに剥がすよ。」
僕は乱暴にガムテープを剥がすとワサビマイの整った毛並みは一気に乱れ、毛は抜け落ちていった。

「マビャビャビャァ〜!」
僕はのたうち回るワサビマイを大きめのビンに突っ込んだ。
キムチが入ったビンだ。
キムチから頭だけ出したワサビマイはヒリヒリ痛む体をキムチに浸けられ悲鳴をあげた。
いや、訂正しよう。キムチナンだ。
キムチナンから昨夜のシャンプーの香りは消え失せ周りにキムチ臭を漂わせた。

釘で刺されたオデンネ。
キムチ漬けにされたワサビマイもといキムチナン。

最後の一匹は今朝おねしょをしていたベビプラだ。
他二匹の惨状を目の当たりにして、すっかり怯んでしまった。
しかし体は紐で縛りつけられているので逃げるに逃げられない。
「プラ、プリャア・・・」

772名無しさん:2024/03/01(金) 17:38:14 ID:8hIgyu4k0
涙目でプルプル震えるベビプラ。
僕が近寄ると歯をガチガチ鳴らし始めた。
ブッ!ブバババ!
ベビプラは派手に放屁したかと思うと勢い良く糞尿を撒き散らした。
僕は呆れながら見下ろすとベビプラは悪びれる様子も無く鼻水まで垂らして泣きじゃくっている。
「床を掃除しないとな」
僕はベビプラを掴みあげ顔を床に擦り付けた。

「ンギュ!プミギィ〜。」
嫌がるベビプラを雑巾の様に何度も何度も使用し続けた結果、全身の毛はビチャビチャになり歯の隙間には糞がびっしりこびりつ いた。
「マイ!マイマイ!」
目隠しをされたママイナンがベビプラマイ達の悲鳴を聞き何やら喚いている。
僕はママイナンの目隠しを解いた。 「マヒャア!マアア!」
ベビプラマイ達を見てすぐにでも駆け寄りたいが手足を縛られ身動きがとれないママイナン。

僕はママイナンの前足・・・じゃなかった、手を自由にしてやり自作のでかいサイコロを渡した。

サイコロの面にはベビプラマイ達の名前が書いてある。
「このサイコロを振って出た面に書かれたベビプラマイの所に行っていいよ。」
「マッ!マイ!」
ママイナンは躊躇無くサイコロを振った。

出た目は「オデンプラ」
「マイィィィ!マイィィィ!」

773名無しさん:2024/03/01(金) 17:39:03 ID:8hIgyu4k0
「早く足の紐を解いて!」と暴れるママイナン。
「まあ落ち着いて、もう一個のサイコロも振ってよ。」
僕が渡したサイコロをよく見もせず振るママイナン

出た目は「・・・の尻尾を噛み千切る」
「マ?マイィィ〜?」
不可解そうな顔をするママイナン。
「このサイコロに出た通りの事をしないとベビプラマイはみんな死んじゃうよ?」
「マイィィ・・・!」
ママイナンの顔はわかりやすい程の絶望の色に染まっていた。
っていうかオデンプラは2日連続でママイナンに尻尾を噛み千切られちゃうのか。

「プラギャアアアア!プギャギャア〜!」
昨日と同じ光景で同じ絶叫が部屋一杯に響く。
昨日と違うのはオデンプラの耳に釘が刺さっている事か。
治りかけの尻尾から青い毛がブチブチと抜け落ちていく。

ママイナンも噛み千切る姿が様になってきたな。
犬歯を剥き出しにして食らい付く所なんか肉食動物そのものだ。
でも鳴き声は「マイマイ」なんだよな。
ギャップが面白いな。

事が終わり失神寸前のオデンプラや他の二匹を自由にしてあげた。
ママイナンは「マイィ」と笑いながらどこかに行ってしまった。

774名無しさん:2024/03/22(金) 23:28:08 ID:ikOetjAs0
マホイップ虐待やイエッサン虐待を解禁します!

775名無しさん:2024/04/01(月) 02:22:35 ID:TP5xQSXY0
タブンネの虐待適正は世代が下っても首位を譲らないな

776名無しさん:2024/04/04(木) 22:21:47 ID:dKRuE.Wc0
いやいやw虐待No1はイーブイさ
ここがゲーフリに訴えられて管理人が警察のご厄介になるのも近いかもねえ

777名無しさん:2024/04/05(金) 05:48:38 ID:nfJ4/vl20
>>776 タブンネアイゴー涙拭けよw

778名無しさん:2024/04/06(土) 21:42:24 ID:2DjYSeKk0
>>777
おやおや、犯罪者が一匹

779名無しさん:2024/04/06(土) 21:43:11 ID:Z4wChRv.0
タブンネは人気ポケモン、タブ虐はオワコン
人気コンテンツはブイ虐だからね

780名無しさん:2024/04/09(火) 20:31:24 ID:Y1C6BQVU0
タブでもブイでも可愛い系のポケ虐は良いな。
上のプラマイも良かったし、マホイップも見てみたいな。

781名無しさん:2024/04/10(水) 04:02:56 ID:SDeaTdAs0
最近ピクシブでカヌ虐というジャンルを見たかなかなか良かった

782名無しさん:2024/04/16(火) 03:53:36 ID:Zbfz06VY0
なんだか香ばしい愛護さん達がいっぱいてほっこりしてる
勘違いしちゃいけないよ
タブンネちゃんが可愛いから皆虐待するんだよ^^
犯罪者とか書いてる必死ちゃんも実はタブ虐好きだろ?

783名無しさん:2024/04/16(火) 17:15:50 ID:crHDqTCA0
>>782
タブンネなんて普通に可愛いし賢そうだから虐待しようとも思わないね
虐待は頭が悪い獣でしかないイーブイやブイズだけでいい

タブンネ虐待のヘイト創作してるやつって女性的な印象のタブンネに現実の女に相手されない恨みをぶつけてる境界知能や愛着障害のチー牛ってイメージ

784名無しさん:2024/04/16(火) 18:39:17 ID:tx2vj7YM0
ブイ虐もタブ虐も俺は大好き♡
てゆーかヘイト創作してる時点でどっちもヤバい奴だよ♧ だろ?ゴン♡

785名無しさん:2024/04/17(水) 00:09:22 ID:u0Q9cXnA0
ジャバランガ
www.pixiv.net/users/88746189
でと
www.pixiv.net/users/88636023

pixivで普通の可愛らしいタブンネのイラストへ執拗に虐待コメントを付ける犯罪者。皆迷惑がっているよ?嫌われ者であることに気がついてないのかな?
文章力も低く低質で読む価値もないタブンネ虐待SSを投稿し周囲に迷惑をかけている
皆でこいつ等をネット社会から追い出そう!

786名無しさん:2024/04/17(水) 01:23:12 ID:oQ2NB8tQ0
皆わかってないな^^
ここに来ている時点でタブ虐好きなんだよ^^
そもそも関係ない絵師さんのリンク貼ってる時点で棲み分けが出来てない証拠
悔しかったら任天堂に言って消してもらえば良いんじゃない?w

787名無しさん:2024/04/17(水) 10:50:43 ID:a.HgIWEk0
>>786
>>785が挙げてるヤツら見てきたけどタブ虐関係ない普通の絵にタブ虐コメント付けてるよ
これは明らかにルール違反の迷惑行為だよな

788名無しさん:2024/04/17(水) 21:46:47 ID:oQ2NB8tQ0
>>787
確かにそれは棲み分けのできていない人間のすることだね。
だからといってここに貼り付けたらどうなるのかわからないのかい?虐待コメ書いてくれって自ら晒してるようなもんだよ。
pixivの絵師も嫌がってるなら通報するなり削除するなりすると思うけどね

789名無しさん:2024/04/17(水) 22:34:24 ID:u0Q9cXnA0
>>788
ほら出た、嫌がってるなら消すとかいうウエメセの遠回し勝利宣言
そういうとこだぞ

790名無しさん:2024/04/17(水) 23:09:06 ID:oQ2NB8tQ0
>>789
効いてる効いてるw

791名無しさん:2024/04/18(木) 00:36:08 ID:zm3NzjHk0
>>790
そうやって後出しの勝利宣言や揚げ足取りが好きなんだね
愛着障害の典型的症状だね

792名無しさん:2024/04/18(木) 10:41:02 ID:qTy/oBfo0
タブンネ狩りは公式推奨だわ

793名無しさん:2024/04/18(木) 10:53:43 ID:qTy/oBfo0
あ、書き忘れ
愛誤さん小説投下したいのでもっとネタを頂けると嬉しいです。
①今まで愛誤さんが投下したスレセリフを用いた物語
②愛誤さんの眼の前でママンネちゃんとベビンネちゃんを虐待する物語どっちが良いですか?
お返事お待ちしてます!

794名無しさん:2024/04/18(木) 14:19:01 ID:QMl6jmts0
公式で推奨されるのはブイ虐やプラマイ虐であってタブンネ虐待は『全く』推奨されていないんだけどねw

795名無しさん:2024/04/18(木) 14:25:14 ID:QMl6jmts0
虐待厨とは

・人間に似た姿をしている生命体のようなもの
・そのため人間社会に溶け込んでいるが、犯罪を犯す確率・再犯率が半端ではない
・人間の言語を理解するが、会話が成立するとは限らない
・独自の思考をしており、一般人には理解は不可能
・基本♂、♀に飢えている、きもい
・餌は何でも食べる、だが他人の食事をわざわざ奪う事が多い
・良心は皆無、群れの代表者が「きょーてー」を結んでも反故にすることがほとんど
・「アイゴー」と叫びながら人を襲う、「アイゴだから」と犯罪を自己正当化して平気で行う
・余所から作物を盗んでくることがほとんどで自己生産性は皆無
・餌が無くなると共食いをする事がある
・相手を理解する知能の高い個体がたまにいるが、分かり合えるとは限らない
・むしろ、悪い意味で理解して悪用したり、相手が嫌がる事を積極的にやってくる
・一匹でも屋内に侵入を許すと、あっという間に増えて家を乗っ取る
・他人が好きなキャラクターや動物を好んで襲う
・ただし虐待厨の力が強いとは限らない
・それでも群れるとゾンビさながらの脅威と化す

796名無しさん:2024/04/18(木) 14:31:52 ID:xpM.Ka9o0
初めまして愛誤さん
愛誤さんはご新規さんですか?過去の公式タブ虐推奨イベントだったらググればわかりまっせb

797名無しさん:2024/04/18(木) 15:03:41 ID:EtTMv/SY0
昔はキュートアグレッションからタブンネ虐待も少し書いたけど、今はほぼブイズ虐待やマホイップ虐待しか書いてないな
自分みたいに愛から書く人間が居なくてつまらないし、界隈そのものが気持ち悪い

798名無しさん:2024/04/18(木) 15:04:04 ID:x/u8mWZU0
「わーお、なんでこんなところに穴があるんだ」
俺は地面にぽっかり空いた穴を見つけて、手持ちのブラッキーと一緒にため息をついた。結構深いぞ、これ。
俺? ただの職員だよ、市役所の。ハクタイシティのな。
ここはハクタイの森の一角、不思議な岩の近くの茂みの中だ。
こけむした岩が見える。あの岩は、触ってみると、なんだか気持ちがいい。
俺は何でここにいるのか? よくぞ聞いてくれました。ポケモンの駆除のためです。
心無いトレーナーがこの付近にイーブイを大量に逃がしたらしく、リーフィアが大量発生してしまい、町の住民が困っているのだ。
いっそ、キッサキ付近にでも逃がしてくれたらよかったのに……。
あそこなら野生のレベルが高いから、逃がされたイーブイの大多数は姿を消し、選ばれた小数のみがグレイシアになれるはずだ。
おっと、話がそれたかな。本題に戻ろう。
リーフィアはその容姿からも想像できる通り、"ネコ"らしい。
そのせいで、ハクタイ魚屋は商売上がったり。なんせヤツらはすばしこいもんで、風のように現れては、魚を盗んで逃げていく。
町はずれの池で釣りをする人たちからも苦情が来ているのだ。いつの間にか現れては、釣った魚を盗んで逃げていく、と。
さらには、ちょっと戸締りを怠った民家にまで侵入してくる始末。
買い物から帰ってきてみれば、冷蔵庫が空っぽになっていた……なんてこともしばしばあるのだ。
大体、3〜4匹のグループで固まって犯行をするらしい。だが、市の確認によると、おそらく総数20匹以上はいるだろう、とのこと。
何度か保護も考えたのだが、ヤツらはとても好戦的だ。捨てられたからか、心がすさんでいるのかもしれない。
しかも普通のイーブイ・リーフィアなら覚えないような技まで覚えている上、数も多いから、舐めてかかると返り討ちにあうのだ。
そんなこんなで市は、有効な対策が見つからず頭を抱えていた、ってわけだ。
しかし、住民からのクレームが最高潮に達したとき、ついに市は決断したのだ。
リーフィアの"駆除"を行う、と。

799名無しさん:2024/04/18(木) 15:04:36 ID:x/u8mWZU0
あのリーフィアたちは、みんな同じトレーナーから捨てられたものだろう。
最初は状況を飲み込めずオロオロしていたイーブイたちも、仲間が何匹か野生ポケモンにやられていくうちに、現実を悟ったのだ。
おそらく、皆で結束して生きていくことを誓ったはずだ。ならば、巣はおそらく一箇所だろう。そこを叩けばよい。
それが市長の考えだ。というわけで、俺が巣探しに乗り出した、ってわけだ。
ちなみに、いつもの魚屋や池にも、市の警備員が配属されている。目立たないけどな。私服警官みたいなもんだ。
警備員の腕は確かなものだ。ただの釣り人や店員を装って、やってきたリーフィアを捕らえてしまえ、というわけだ。
ここで捕らえたリーフィアは、"石を投げてください"って書いた看板を立てて、そこにくくりつけておけばいいだろう、との考えだ。
ま、さすがにそこまでやったら虐待だのなんだのうるさいだろうし、見せしめとして市役所の前に縛り付けとくぐらいが限界か。
俺はそんなことを考えながら、穴を見下ろした。俺は、ちょっと入れそうにないな。だが、ブラッキーなら入れそうだ。
そういえば、住民の証言の中に、『捕まえようとしたら、地面に穴を掘って逃げていった』ってのがあったな。
"あなをほる"が使えるやつがいるんだろう。バトル用のリーフィアに、"あなをほる"が採用されることは、少なくはないだろう。
「どれ、ちょっと調べてみますか。よし行け潜入調査員」
俺が言うと、ブラッキーが穴の中にもぐりこんでいった。ブラッキーの目は、穴の中の暗闇でも、よく見える。
俺はベルトのモンスターボールからもう一匹の手持ち、エーフィを呼び出した。
と同時に、エーフィの額の宝石が光り出した。ブラッキーからの信号だ。
兄弟のように育ったこの2匹は、何故かこんな芸当が出来てしまう。ブラッキーはエスパーでもなんでもないんだが。
「じゃ、頼むよエーフィ」
俺が言うと、エーフィは空中に"ひかりのかべ"を作り出した。さらに、そこへ向けて"サイケこうせん"を発射する。
壁の表面に波が立つ。しばらくすると、"ひかりのかべ"に、薄暗い、地下の光景が映し出されるようになった。
ブラッキーとリンクしているエーフィには、ブラッキーが見ているもの全てが見えている。

800名無しさん:2024/04/18(木) 15:05:11 ID:x/u8mWZU0
それを、自身のエスパー能力を生かして、テレビみたいに念写してるってわけだ。
「へーえ、結構広いじゃんか」
分かれ道のようなものはない、一本道だ。幅は大体、縦横ともに、ブラッキー3匹分くらいの広さといったところか。これじゃ、俺は通れないな。
しばらくすると、前方に、大きな広場が見えた。ブラッキーは、さっと身を隠す。
「うわーぁ……かなりいるなぁ、おい」
広場はわりと広い。野球は出来ないだろうが、ガスやら水やら電気やらを引いてきたら、普通に生活できそうな部屋だ。
そこに、大量のリーフィアがいた。10匹くらいか? たぶん、何匹かは食料調達に出かけているんだろう。捕まるといいな。
のんきに昼寝してるやつから、食い物をむさぼるやつ、仲間とじゃれあってるやつまで、いろいろだ。うん、ムカツク。
広場の片隅には、コイキングのものらしき骨や、食べカスが散らばっている。こんなにだらしないのかこいつら……。
そして、その近くには、結構な量の食料が積み上げられている。中には、ビチビチと力なく跳ねているコイキングもいた。かわいそうに。

その近くには人間から盗んだ洗濯物の山の上にタマゴが幾つも置かれている。

なんだか、裏切られたような気分だ。だって、リーフィアといったら、あのイーブイの進化形だぜ、イーブイの。
男女問わず、そのかわいい・かっこいい見た目が大人気の、あのイーブイの進化だぜ。
正直、俺もリーフィアはかわいいと思うんだ。うん、大好きだよ、リーフィア。清楚な感じがして。
それが、人様の魚を盗んだり、釣り上げた魚を奪い取ったりして、こんなだらしない生活を送ってるんだぜ?
決めた、俺は今日からグレイシア派になろう。こいつら、始末。何の容赦もしない。
タマゴも孵ったらイーブイだが、親がこれだ。全部壊してやるのが人情ってもんだろう。
「ブラッキーに、もどってくるよう言ってくれないか」
俺はエーフィに命じた。エーフィは何も言わず、目を閉じ、"めいそう"を始めた。メッセージは、すぐに届くだろう。

801名無しさん:2024/04/18(木) 15:05:42 ID:x/u8mWZU0
さて、時刻ももう夜の10時。
俺は火を焚きながら、パンを食っている。ここはどこかって? 茂みの中だよ、ちょっとした細工をしてあるな。

市長が渡してくれたバタフリーの"ひみつのちから"で、茂みの中にちょっとした秘密基地を作った。わりと快適だぜ、ここ。
ブラッキーは焚き火の横で丸まっている。エーフィには、ちょっと外に出てもらっているんだ。
エーフィは、巣穴の近くでリーフィアを見張っている。あ、もちろん、茂みに隠れて、な。
あいつら、警戒心も強いんだ。完璧グレてやがる。うん、こんなポケモン、保護して子供達に寄付?なんてするわけにはいかない。駆除だ、駆除。
俺はパンを食べながら、スクリーンがわりの"ひかりのかべ"を見つめている。壁には、エーフィの見ている光景が映し出されている。
「お、来た来た。ん? ケガしてるやつがいるぞ」
リーフィアが3匹ほど、歩いてきた。その内の一匹は、体中に傷を負っている。そうか、警備員と交戦したんだな。ざまぁ。
足を引きずりながら歩くリーフィアに、もう2匹のリーフィアが寄り添っていく。すばらしき友情だ。もうすぐ永遠のものになるぜ、感謝しな。
さて、今入っていったリーフィア、さっき来たリーフィア、巣にいるリーフィアを合わせると……23匹か。だいたいこんなもんか? 
捨てられたばっかりの野良リーフィアが、午前様なんてことになるわけないよな。よし、もうちょっと待ってから、作戦開始。
「12時に、作戦開始だ。それまで、休んでおけよ、ブラッキー。あ、エーフィにもうちょっと見張りを続けてくれって言っといて」
俺の言葉を聞いて、さっと起きるブラッキー。エーフィもそうだが、こいつらの忠誠心には、頭が下がるよ、ほんとに。
俺は仮眠を取ることにした。さて、12時からはお楽しみ。
ブラッキーに顔を舐められて、俺は目を覚ました。うー、くすぐったい。
さて、いっちょやりますか。俺は茂みを出た。ブラッキーもついてくる。
リーフィアの巣穴まで歩いていく……っと、あれはもしかして、リーフィア?
巣穴の側に、一匹のリーフィアが立っている。穴の周りをうろうろしているリーフィア……そうか、見張りのつもりだな。結構知恵が回るじゃないか。
さーて、どうしたもんかね。
あたりを見回す。ふと、茂みの影に、薄い紫色の肌が見えた。オッケー、オッケー。

802名無しさん:2024/04/18(木) 15:06:14 ID:x/u8mWZU0
「エーフィ、かなしばり!」
茂みがガサガサと音をたてる。リーフィアがビクっとして振り向くと、そこからエーフィが飛び出してきた。今さら気付いても、もう遅い。
エーフィはエスパーの力で、リーフィアを拘束した。リーフィアは、凍りついたように動かなくなってしまった。
「よーし、ナイスだ、エーフィ。後でポフィンあげるからなー」
エーフィは俺の足元に擦り寄ってきた。うむ、かわいいやつだ。
「いつもお前には苦労かけるよ。さて、こいつはこのままほっとくとして」
恐怖に怯えた表情のまま固まっているリーフィアを放置して、俺は続ける。
「エーフィ、あれから他に巣に戻ってきたやつはいたか?」
俺の問いかけに、エーフィはふるふると首を振る。おっけー、23匹ね。あ、今のやつ引いて22匹か。ぶっちゃけ数はあんまり関係ないけど。
「よーし、潜入調査員。レッツゴー……おっと、特殊部隊も一緒に行くか」
俺はモンスターボールからブースターを呼び出した。そして、カバンからスーパーボールを取り出す。
投げると、中からバタフリーが出てきた。残りの5個を全部取り出して、まとめて投げる。
バタフリーが6匹。これは市長が渡してくれた"特殊部隊"だ。
「ブラッキーが先頭だ。よーし、レッツゴー」
ブラッキーは穴の中にもぐりこむ。続いて、バタフリー隊が、少しはなれて、最後尾をブースターが歩く。
「さて、"かなしばり"を維持したまま、ブラッキーと同調して欲しいんだけど……できる?」
俺が聞くと、フンと鼻を鳴らすエーフィ。はいはい、朝飯前ですか、そうですか。
俺が命令する前に、エーフィはサイコスクリーン(勝手に命名)を作り出した。
ブラッキーの見ている光景が、映し出され??たその瞬間、地震でも起きたかのように、スクリーンの表面が揺らいだ。
テレビの砂嵐みたいだ。スクリーンの映像はめちゃめちゃ。ふむ、ブラッキーが戦闘中らしい。
まだ見張りがいたのか? エーフィが痛そうなそぶりを見せないから、たいした相手じゃないんだろうけど。

803名無しさん:2024/04/18(木) 15:06:47 ID:x/u8mWZU0
あ、エーフィはブラッキーと完全にシンクロしてるから、痛みから何から何まで、ブラッキーと同じになるんだ。便利なのか、そうでないのか。
しばらくすると、スクリーンが元に戻った。気絶している2匹のリーフィア。ブラッキーは通路にいるらしい。
なるほど、外に1匹、通路に2匹の見張りか。なかなかやるじゃないの。意味ないけど。
それから少しして、1匹の首をくわえ、もう1匹を背負って、ブラッキーが穴から出てきた。
ブラッキーは出てくるなりリーフィアをポイと投げ捨てると、また穴に戻っていった。仕事熱心で何より。
このリーフィアは……完璧にのびてるから、"かなしばり"しなくていいや。
さて、そんなこんなで、ちょっとしたハプニング(全然影響なかったが)がありつつも、ブラッキーは広場にたどり着いたようだ。
「うわぁ……昼よりいっぱいいる……」
23-3だから、20匹か。とにかくたくさんのリーフィアたちが眠っている。ああ、今すぐ全員ぶっ飛ばしたい。
よく見ると、昼は気付かなかったが、広場には大量の葉や草が充満している。というか、敷き詰められている……なんなんだ、こいつら……。
部屋の片隅には、天井まで届くほど、大量の草が置かれている。面積もわりに広い。で、その上には、何匹ものリーフィアが眠っている。…ベッドのつもりか?
何匹かはタマゴの置かれた洗濯物の山の近くで眠っている。アレが母親なのか?

というか、1匹ぐらい起きとくとかそういうの無いのか?あの程度の見張りで安心するとは……やっぱ見損なった。
ブイズの中でも知能低いっていうしな、リーフィア。
「エーフィ、ブラッキーに伝えてくれ。全てのリーフィアを、広場の中央に集めるんだ、って」
エーフィは何も言わずに集中、集中。ブラッキーが動き始めたのが、スクリーンを見ているとわかる。
ブラッキーが首筋をくわえても、バタフリーが前足で掴んで飛び立っても、ブースターが背中に乗せようと、リーフィアはまったく起きない
……もうだめだよ、こいつら野生失格だ。ま、経験不足ってこともあるのかもしれないけどな。
そんなこんなで、部屋の中央に、大量のリーフィアが積み上げられる形となった。うむ、満足満足。
「ブラッキーに命令。ブースターに、リーフィアたちを取り囲むよう、"ほのおのうず"を使うように指示してくれ」
エーフィは何も言わずに、ブラッキーに俺の命令を伝える。スクリーンに、ブースターが映った。

804名無しさん:2024/04/18(木) 15:07:46 ID:x/u8mWZU0
ゴオオオオオオオオオ……
音声も完備しているらしい、このスクリーンは。うむ、さすがは、俺のブースターだ。すさまじい勢い……
下に敷かれた葉や草が、"ほのおのうず"が燃えるのを助けている。
"ほのおのうず"がちょっとした大きさになってきたとき、やっと1匹のリーフィアが目を覚ましたようだ。
「りぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーっ!」
ぐへっ! 耳が腐る!
リーフィアが耳をつんざく叫び声を上げたせいで、寝ていた他のリーフィアが全員起きてしまった。広場の中は大騒ぎ。響くから、叫ぶのはやめろや!
「特殊部隊、出動!」
俺は耳を塞ぎながら叫んだ。ブラッキーに伝えろとは言わなかったが、エーフィは意味を察してくれた。
6匹のバタフリーが、空高く舞い上がる。熱いだろうが、ガマンしてくれ。
バタフリーたちは、リーフィアの上まで来ると、6匹同時に、一斉に、黄色い粉を振りまいた。"しびれごな"だ。
花粉症の人がこの場にいたら発狂しそうな量の"しびれごな"が、リーフィア・タワー(勝手に命名)へ降り注ぐ。
目の前の炎にパニックを起こしているリーフィアたち。気付いていないが、すぐに効果が現れるだろう。
さて、リーフィア・タワーは悲惨なことになっている。下のやつがパニックを起こして暴れるので、上にやつはずり落ちて、炎の中へダイブする。
負けじと上のやつも暴れるが、そのせいで余計にずり落ちる。で、"ほのおのうず"の勢いを助けてくれる、と。
で、下のやつは必死に炎から逃れようとしているのに、上に大量の同胞が乗っかっているため、逃げようにも動けない。それでもあまりの恐怖に、甲高い叫び声を上げながらじたばたする、と。

「りぃ……りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
何で、何で私たちがこんな目にあわなくちゃいけないの! と言っているらしい。証拠はない。
1匹のリーフィアが、泣き叫びながら、炎の壁を突き破った。そこら中を火傷している。
そのまま走って出口に向かおうとする。やれやれ、助け合って生きていくことを誓ったんじゃないのか?

だが、逃げることは出来ない。数歩走ったところで、体の異変に気付く。体が痺れて、動けないのだ
信じられないといった顔で、リーフィアはその場にうずくまった。足が痺れるんだろう。その顔は恐怖に引きつっている
ん……おっと、ヤバイ!
リーフィアのベッド(笑)に、"ほのおのうず"が燃え移った。床の草も、かなりの面積が燃えている
洗濯物の山にもバッチリ引火し、タマゴの中のイーブイは生まれることなく蒸し焼きになってその命を終えていく。
パキリと割れたタマゴにこびりついた、干からびた茶色いものはイーブイの胎児だろうか。

805名無しさん:2024/04/18(木) 15:08:19 ID:x/u8mWZU0
「そろそろ撤収だ! ブラッキー、ブースター、バタフリーに出てくるよう言ってくれ」
エーフィはきっちりとブラッキーに伝えてくれた。どうでもいいが、さり気に、こいつさっきからずっと"かなしばり"を維持してるんだよな
ブラッキーは走り出した。リーフィアたちの叫び声を背中で聞きながら。
リーフィアの巣穴はたいして広くはない。潜入隊は、すぐ帰ってきた。
「よーし、ご苦労さま。おまえらの仕事はもう終わりだぞ。さて、エーフィ、もう一仕事してくれるか?」
俺はエーフィに言う。エーフィはもちろんだというようにうなずいた。
「"リフレクター"と、"ひかりのかべ"を、何重にもして張るんだ。この穴の入り口をふさぐ」
言うが早いが、エーフィはもう作業に取り掛かっていた。空中に、大量の小さな壁が現れる。"リフレクター"と、"ひかりのかべ"だ。
そのうち一枚が穴をふさぐようにして地面に置かれると、他の数枚、いや数十枚も、続いて穴をふさぎにかかった。分厚い光の壁が、巣穴をふさいだ。
と、そのとき、1匹のリーフィアが、尻に火がついたような勢いで走ってきた。いや、実際に火がついていた。尻尾の葉が燃えている。
ふむ、麻痺してるのにがんばるねぇ……って、"でんこうせっか"か、なるほどなるほど。この技で、何匹もの魚を手に入れてきたんだろう。
リーフィアは巣穴を飛び出そうとして、壁に激突した。俺はこらえきれずに吹き出した。
リーフィアは頭をさすっていたが、目の前の壁と、爆笑する俺を見て、全てを悟ったようだ。今にも泣き出しそうな顔で、ドンドンと壁を叩く。
「助けてほしいのか?い?」
俺は壁に顔を近づけて言った。うん! うん!といった感じで、勢いよくうなずくリーフィア
「ダメに決まってんじゃん」
俺はプイっとそっぽを向いた。チラリと横目で見てみると、リーフィアはそれこそ世界が終わったかのような顔をしていた

806名無しさん:2024/04/18(木) 15:08:50 ID:x/u8mWZU0
「ダメなもんはダメなんだよーん」
俺がかるーい調子で言うと、リーフィアは大声で泣き出した……"うそなき"だ。リーフィアは基本的に物理型なのに、覚えさせるやつがいるのか。
白々しい様子で泣いているリーフィアを見て、俺の顔から笑顔が消えていく。その後、何を勘違いしたのか、舌をちろっと出したのを見て、俺はぶちきれた。
「……エーフィ、"サイコキネシス"」
俺は冷たい声音で命令した。エーフィの念動力は、壁をすり抜けて、リーフィアを捕らえる。
リーフィアの体が宙に浮かべられた。突然の出来事に、戸惑うリーフィア。
「"ほのおのうず"に、投げ込むんだ」
「りっ!? りっ……りっ……りぃぃぃぃぃぃぃ!」
「黙りやがれこの低脳糞レタス犬がぁ!」
再び泣き出したリーフィアを見て、俺はぶちきれた(2回目)。エーフィに一時的に壁を外すように命じ、中に浮かんでいるリーフィアをひっつかんで、外に出した。すぐに壁を張りなおさせる。
「りっ……りぃ?りぃ!りぃ♪」
こいつは、何を勘違いしているのだろう。助けてもらったと思っているリーフィアは、喜んで、俺にウインクしてきた。すぐに、俺にほおずりする。
このリーフィアに続いて、何匹か、他のリーフィアも、"ほのおのうず"を突破して壁まで来た。そいつらは、俺に抱き寄せられているリーフィアを見て、驚愕の表情を浮かべた。裏切られたと、思ったのだろうか。そこまではいい。

あろうことか、このリーフィアは、閉じ込められたリーフィアたちを一瞥すると、フンと鼻を鳴らして笑ったのだ。

俺は完全に理性を失い、全力でリーフィアを地面に叩きつけた。
「りぃ! りぃっ、りぃっ!」
痛いだろうが! そんな表情を浮かべつつ、リーフィアは俺に向かって叫ぶ。だが、直後に俺の表情を見て、黙り込んでしまった。
俺はリーフィアの腹を思いっきり踏みつけた。内臓をすりつぶすつもりで、皮膚を突き破るつもりで、全力で、足をリーフィアにたたきつけた。

807名無しさん:2024/04/18(木) 15:09:21 ID:x/u8mWZU0
「りっ……りぃ…ガハッ!ゴホッ!ガハッ、ガハッ……り……りぃ……」
何度目だろうか。俺が足を振り上げた瞬間、リーフィアは逃亡を図った。血まみれになった腹を引きずって、何とか、俺の脚の下から脱出する。
俺はそんなリーフィアの首根っこを掴んで、思いっきり巣穴へ投げつけた。
バァン!
すさまじい音をたてて、リーフィアが壁に激突する。リーフィアは意識を失っていた。俺は、昂ぶる感情を抑えられなかった。
「エーフィ、壁を解除しろ!」
俺は鬼気迫る表情でエーフィに言った。エーフィはビクっと震えると、すぐに巣穴から壁を取り外した。
俺は穴の中にリーフィアを投げつけた。入り口付近にいたリーフィアははっとしたが、もう遅い。
俺が投げたリーフィアは、入り口にいた数匹のリーフィアにあたると、そいつらもろとも飛んでいった。そして、"ほのおのうず"の中に、再び舞い戻っていった。死んでしまえ、糞リーフィアが。
俺は再びエーフィに壁を張りなおさせる。その後すぐ、また数匹のリーフィアがやってきた。
リーフィアは1匹目の糞レタス犬と全く同じ反応をした。ドンドンと壁を叩いた後……急に、希望に満ちた表情を浮かべて、壁から離れた。
何をするつもりなんだ?
そう思っていると、急にリーフィアが横の壁を掘り始めた。なるほど、こいつだったのか、"あなをほる"が使えるやつは。
俺はリーフィアが穴を掘る様を観察する。ちょっとぶちきれちまったからな、冷静にならないと。しっかし、ディグダみたいなやつだな……
またリーフィアが増えた。目の前の壁を見てお約束のリアクションをとった後……隣で穴を掘っている仲間を見て、歓喜の声を上げた。
ふむ、中々うまいじゃないか。もう結構な深さの穴が出来ている。残ったリーフィアたちは、我先に、と、穴の中にもぐりこんだ。
ついに、穴を掘っているリーフィアの頭が、穴の少し横の地面から出てきた。喜びに満ちた顔で、上半身を外に出すリーフィア。
「はい、おめでとう! "くろいまなざし"!」
俺は心からの祝福の言葉を述べてから、ブラッキーに"くろいまなざし"を命じた。途端に、外に出ようとしていたリーフィアの動きが止まる。

808名無しさん:2024/04/18(木) 15:09:52 ID:x/u8mWZU0
「りっ……りっ、りぃ? りぃ? りぃ! りぃっ!」
逃げたい。一刻も早く、ここから出て、逃げ出したい。なのに、何でこの穴から出られないの?
そんな感じの表情だ。うん、ここまで"くろいまなざし"が効くとは思わなかった。すげーな、ブラッキー。
「りっ! りぃ、りぃっ! りぃっ!」
突然先頭のリーフィアが止まってしまったので、後続のリーフィアたちが不満の声を上げた。おお、よく見ると、もう通路のあたりまで火の手が回ってきてる。広場は、完璧に炎に飲まれたな。
「りっ……りぃ……りぃ……」
先頭のリーフィアは、上半身だけを地上に出したまま、青い顔で震えている。
さて、いいものを見せてやろうか。俺はエーフィに"かなしばり"を解除させた。
俺はすっかり空気だった、さっきエーフィが"かなしばり"をかけておいたリーフィアを拾うと、抱き上げる。リーフィアは少し暴れたが、この体格差でかなうとでも思ってんのかね?
俺はそのリーフィアを大切に、大切に抱きしめて、巣穴に向かった。何匹ものリーフィアのうめき声が聞こえる。
俺は壁の前にリーフィアを持っていくと、言った。
「ほーら、このリーフィアはお前達を裏切ったんだぞ?♪ 自分だけ助かろうとして、俺にお前達を売ったんだ」
俺に抱かれているリーフィアは、その言葉を聞くと、必死で首を振った。だが、中のリーフィアたちは信じなかった。
途端に、声が大きくなる。このリーフィアを糾弾する声だ。ま、中には悲鳴や泣き声も混じってるがな。
壁をドンドンと叩いていたリーフィアが、後ろを振り返って、悲痛な叫び声を上げた。尻尾に火が燃え移ったらしい。
もう、火は壁のすぐ近くまで来ていた。うん、これ以上、観察する必要も無いかな。
ふと見ると、地面から上半身だけを出したリーフィアが、痛々しい叫び声を上げていた。
突然、1匹のリーフィアが穴から飛び出してきた。全身が燃えている。ギャロップ顔負けだな、あれは。やっと巣穴から脱出したリーフィアは、自由を謳歌する暇もなく、その場に倒れこんだ。死んだな、あれは。

ふと穴を掘っていたリーフィアを見てみると、体を食いちぎられていた。なるほど、足やら腕やらを食いちぎってスペースを作り、そこから逃げ出したわけね。どうやら、間に合わなかったみたいだが。全く、死が近くなると、恐ろしくなるもんなんだな。

809名無しさん:2024/04/18(木) 15:10:23 ID:x/u8mWZU0
「さて、おまえら3匹は……適当に始末しちゃおっか」
俺は、見張りだったリーフィア3匹を順番に見回して、言った。全員、リーフィアに"かなしばり"をかけられている。
「さて、まず、そこのお前」
こいつは、巣穴の外で見張りをしてたやつだ。俺の言葉に反応して、顔をこわばらせる。
俺はバッグから"あなぬけのヒモ"を取り出して、こいつの前足と後ろ足を縛り付けた。そして、"かなしばり"を解除させる。
ついでに、ポケットからハンカチを取り出して、リーフィアの口に詰め込む。その後、カバンからガムテープを取り出すと、口に貼り付けた。
「さーて、取り出しましたるは1個のライター」
シュボッと音をたてて、ライターの火がつく。リーフィアは怯えた顔でじたばたしているが、足は全部縛られている。逃げようがない。
俺はリーフィアの尻尾に火をつけた。リーフィアは痛みに目を見開くが、声を出すことは出来ない。
「大丈夫大丈夫、腹の辺りまで火が来れば、後ろ足のロープは切れる。で、胸の辺りまで来れば、前足のロープも切れる。逃げられるよ」
さて、こいつは適当に転がしとくとして。
「次、君たち」
こいつらは、洞窟の中で見張りをしていたやつらだ。そのうちの一匹の"かなしばり"を解除し、首根っこを掴む。
リーフィアはフーッと声を荒げてこちらを威嚇してくる。無駄だけどな。
「お前は……そうだな、エーフィ」
俺はエーフィの近くにかがみこんだ。リーフィアは俺の腕の中から抜け出そうともがいているが、無駄だ。
「"どくどく"だ」

俺が短く言うと、エーフィは二又に分かれた長い尻尾を揺らした。かと思うと、尻尾はまっすぐに飛んでいき、リーフィアに突き刺さった。

810名無しさん:2024/04/18(木) 15:10:54 ID:x/u8mWZU0
「ガ……グッ」
途端に、リーフィアは苦しそうな顔でうめいた。毒が体に入ったのだろう。これでおっけー、おっけー。
「ブースター、おいで。こいつに、"おにび"だ」
ブースターはテクテクとこちらに歩み寄ってきた。俺はそっとリーフィアを地面に置く。
と同時に、ブースターは真っ青な炎をリーフィアに放った。リーフィアの体が、青い炎につつまれる。
これで、よしと。俺はバッグからモンスターボールを取り出すと、リーフィアに投げた。リーフィアは抵抗もせず、ボールに収まる。
「これで、後はほっときゃいいや。しっかし、モンスターボールほど強固な牢屋もないよな。えげつないもん作るよ、協会も」
俺は、ボールを適当な茂みの中に転がしておいた。これで、誰かに見つかる心配はなし。
「さて、君は……ブラッキー、穴掘ってくれない?」
エーフィに"かなしばり"を解除させ、首根っこを掴む。リーフィアはすっかり怯えきった顔をしている。
ブラッキーは茂みの中に入っていくと、地面を掘った。意外と早く、穴は出来上がる。こいつは犬タイプなのか……?
「エーフィ、もっかい"かなしばり"頼むよ」
言った途端に、リーフィアが固まった。仕事が速くて助かるよ、ほんとに。
「じゃ、バイバイ」
俺は穴にリーフィアを入れる。そして、掘った土を周りからかき集めてくると、穴を埋め始めた。

あれからリーフィアはどうなったのかって? 知らないよ、いちいち確認に行くほど暇じゃないんだ。
なんせ、これからキッサキに行かなきゃならないんだ。
え、なんでかって? それは……
心無いトレーナーが、キッサキの凍った岩付近に大量のイーブイを逃がしたらしいんだ。
で、これがまたたちの悪いことに、しばらくはそこでイーブイを育てていたらしい。
おかげでキッサキシティ付近にはグレイシアが大量発生、住民が困っていると。
そこで同じようなことが最近あったハクタイシティから、俺が呼ばれたってわけさ。じゃ、そういうことで、俺はキッサキにいくよ。

811名無しさん:2024/04/18(木) 15:20:24 ID:QMl6jmts0
いいねえ、ブイズ虐待は中々乙なものだ

>>796
そんなもの一度も行われていないね
逆にメガシンカで暴力=格闘半減のフェアリー複合となることやシールドの図鑑説明で優しいと明言されたこと、
ポケパークの看護師やポケダンの教師と云ったインテリ傾向の役回りが多いことを都合よく無視しているようだなあ
公式に盾突くのはどっちだい?

812名無しさん:2024/04/18(木) 15:36:27 ID:R4zSKOjQ0
タブ虐さんも愛護さんも見てね♪
素敵なタブンネちゃんがお迎えするよ(*´ω`*)
ttp://www.imslow.kr/ghost/

813名無しさん:2024/04/18(木) 15:41:11 ID:R4zSKOjQ0
タブ虐さんも愛護さんも見てね♪
素敵なタブンネちゃんがお迎えするよ(*´ω`*)
愛でるのも良し虐待も良しだよ
ttp://www.imslow.kr/ghost/

814名無しさん:2024/04/18(木) 15:45:43 ID:R4zSKOjQ0
タブ虐さんも愛護さんも見てね♪
素敵なタブンネちゃんがお迎えするよ(*´ω`*)
愛でるのも良し虐待も良しだよ
ttp://www.imslow.kr/ghost/

815名無しさん:2024/04/18(木) 15:47:55 ID:R4zSKOjQ0
タブ虐さんもアイゴーさんも見てね♪
素敵なタブンネちゃんがお迎えするよ(*´ω`*)
愛でるのも良し虐待も良しだよ
ttp://www.imslow.kr/ghost/

816名無しさん:2024/04/18(木) 15:57:24 ID:QMl6jmts0
使い古された稚拙でチープなブラクラを繰り返し貼るなんて、余程ナニカが図星だったようだねえ

817名無しさん:2024/04/18(木) 16:03:51 ID:xpM.Ka9o0
ブラクラww
愛誤さんわざわざそんなの調べちゃったんですか(´;ω;`)
皆スルー了承してるのにお優しいw

818名無しさん:2024/04/18(木) 16:31:03 ID:qTy/oBfo0
イマイチ盛り上がりがかけていたこのスレも少しずつ活気を取り戻しつつあるのは嬉しい
SVにタブンネが出なくて平和だったのにね(ほっこり)

819名無しさん:2024/04/18(木) 16:44:42 ID:qTy/oBfo0
>>817
ちなみにローカルルールにあるとおり
「○○でタブンネ虐 厨が荒らして〜」とか他人のSSを転載してる感じはいつも通りのタブンネちゃん大好きっ子ちゃんのテンプレですのでスルー推奨で。

820名無しさん:2024/04/18(木) 17:04:55 ID:nvIn6QmM0
そうやって僕たちわるくないもん!を繰り返すのがタブ虐バカの幼稚性の現れなのであるなぁ
早く捕まればいいのにね

821名無しさん:2024/04/18(木) 17:05:48 ID:qEZhHcYo0
知的障害の管理人が勝手に決めたローカルルールなんて無効だよ(笑)

822名無しさん:2024/04/18(木) 17:06:31 ID:UfCRmxm20
今日はゴミ捨て場にいたイーブイの仔を殺して唐揚げにするから

823名無しさん:2024/04/18(木) 17:09:28 ID:3Z/xell60
>>819
すみません(;´Д`)ルール忘れてました
了解ですw
是非ベビンネちゃんの活造りを差し上げたいです
(*´σー`)エヘヘ

824名無しさん:2024/04/18(木) 17:28:08 ID:UfCRmxm20
>>823
その赤ちゃんベビンネはもうこちらで保護してお前は警察に連行されるよ
パトカー来るまでは俺が作ったベビイーブイの唐揚げ食っとけ

825名無しさん:2024/04/18(木) 17:31:15 ID:3Z/xell60
>>824
イーブイたんちゅっちゅっ
ベビンネの活造りどうぞ(*´﹃`*)つドゾー

826名無しさん:2024/04/18(木) 17:32:55 ID:UfCRmxm20
>>825
こんがり揚がった唐揚げを食わずにキスしてどうすんだよ(笑)
虐待されてたタブンネは皆保護したんでな?

827名無しさん:2024/04/18(木) 17:37:27 ID:3Z/xell60
>>826
え、ブイちゃんは何になっても可愛くね?
お前ブイ虐舐め過ぎだろ
だから活造りのベビンネちゃんって愛せるだろ?(迫真)

828名無しさん:2024/04/18(木) 17:43:16 ID:NWPqN.C20
もしかしてブイ虐とタブ虐を合体させたSSをみんなで書いたらみんなハッピーになるんじゃないんスカ?

829名無しさん:2024/04/18(木) 17:44:33 ID:s16.aDFE0
マホ虐も入れろ

830名無しさん:2024/04/18(木) 17:44:50 ID:p5mpT/y.0
カヌ虐は?

831名無しさん:2024/04/18(木) 17:45:08 ID:HXZS.Mc.0
プラスルマイナンも忘れずに虐待しろ

832名無しさん:2024/04/18(木) 17:45:52 ID:B1tN4h/w0
僕はニャオハ虐!

833名無しさん:2024/04/18(木) 17:51:37 ID:NWPqN.C20
ポケモン虐待は麻薬ですね もうはまっちゃって…ここんとこ毎日SSやイラストを漁ってます

834名無しさん:2024/04/18(木) 17:52:16 ID:3Z/xell60
マ虐とニャオハ虐とカヌ虐は精神DV入れてる小説書いてる人沢山いるから好きだよ
タブ虐とブイ虐も昔は結構読み応えがある人がいんだけどねー

835名無しさん:2024/04/18(木) 18:02:58 ID:B1tN4h/w0
タブ虐は少数の「あっこの人マジでタブンネ大好きでキュートアグレッションで書いてるんだな」って人は本当に読み応えがあった
そういう人ほど声のでかい読者様に愛でだ愛誤だってケチつけられて消えてって悲しいよね

836名無しさん:2024/04/18(木) 18:04:51 ID:qTy/oBfo0
カヌ虐って確かツイとピクシブに漫画をあげてた人が始まりでしたっけ?
あれもの凄い叩かれて最後は自滅漫画を書いて終わらせたんですよね。結構好きなのにw

837名無しさん:2024/04/18(木) 18:17:30 ID:jyC0FdFc0
>>835 
そうそうw別にそういう虐待もあっていいだけで全部殺ささなきゃ虐待じゃないとかいうのが当時ポケリョナ本スレで言い合ってたのあったわ
それがヘイトだのつまらないだのどうのこうのとかまた言い始めてタブ虐以外の良作家さんも離れちゃったからね。あれはないわ。

838名無しさん:2024/04/23(火) 23:12:45 ID:.lvcNcTY0
ぶっちゃけ元々タブンネの虐待も書いたことあるしイーブイやブイズやピカチュウもロコンも書いたことあるけど
タブンネだけ読者の感想や言動が酷くてタブ虐アンチになったわ二度と書かん

839名無しさん:2024/04/24(水) 08:06:19 ID:sc.7vS.w0
粗悪なタブ虐量産してリアル女への憎悪を女性的な印象のタブンネに投影してたチギュって
SVでオモダカさんのことを黒人!!ポリコレー!フェミー!って貶してた奴らとほぼ層や面子被ってるだろうな。

840名無しさん:2024/04/24(水) 15:55:12 ID:K/oD.4o60
SS見てもタブ虐の厨どもってメスのタブンネへミソジニーぶつけてるタイプが多いよね

人間の女性モブの描写でも香水はともかく化粧水が臭いだの匂うだの(化粧水は香りがあってもごく微量ですぐに飛んでしまうものがほとんど)
和服を洗濯機に入れるだの(普通の絹や綿の着物は洗濯機で洗っちゃダメ)だのトンチンカンな描写ばかりだし
現実での知識もないし、ついでに言えば俺でさえリアル中坊の時からやってる一般的なエチケットとしてのメンズのスキンケアもしてない(=なので化粧水が臭いとか書いてしまうw)奴が多いんだなーってニヤニヤしながら観察してたよ


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