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タブンネ刑務所14

669情はないけど掟はあった:2021/11/27(土) 00:22:19 ID:lR6N2o.g0

ここに来て2晩眠った後の朝のことです。リザードンのおじさんはヒトの仕事で飛び立ちました。ホッとして冷たい床に座り込んでいたミーちゃんのところにヒトがやって来て、ミーちゃんを脅すように歩かせて別の金網に繋げたのでした。
向こう側に、エルレイドのお兄さんがいました。ヒトのお姉さんと、他のヒトと、並べられた誰かの骨。とても覚えのある形です。

――久しぶりだな、俺は分かるか? だいぶつらいようだが、心は死んでないかい?

親身になってはくれないけれど、気の毒がってはくれるお兄さんです。癒してはくれないし、支えてもくれないけれど、でも、心に触れても苦しくない相手に会えて少しだけホッとします。

――エルレイドのお兄さん。ミーちゃんの心はまだ生きてるよ。まだ。

お兄さんもまたほんの少しだけホッとしたようでした。でも、すぐにまじめな顔に切り替えて、真剣にたずねてきたのです。

――ヒトが持ってきたそこの骨のことだがな、山のアンタの仲間に関係する事らしい。余計につらくなるだけの話だが、知りたいか?

――え、教えて?

悪い予感しかしません。悪い予感しかないけれど教えてもらうしかありません。お兄さんの心の声は、以前のようにミーちゃんを気の毒がっていました。

――アンタらの昔のねぐらに、ヒトが大勢で踏み込んだらしい。ここのヒトは、山に入った余所者はできるだけ捕まえたいって考えるからな。
  でも、そこれはアンタの仲間は一匹も生きていなくて、代わりにマニューラとニューラの群れが巣食ってたんだと。
  ヒトが踏み込む前に、マニューラ達がアンタの仲間を襲って食い散らかしたっぽいな。アンタの母親とアンタは山の中で逃げ回って挙句に迷ったけれど、ねぐらに戻って来れた奴もいて、そういうのがマニューラ達にやられたんだろう。どんな戦い方をしたのかはヒトにも分からないが、ともかくアンタらの仲間は負けて食われた。
  ねぐらにあったアンタらのマスターの骨と、マニューラが食った後のアンタの仲間の骨だけを、ヒトは山からここに持って帰ってきた。ヒトの骨は他所でヒトが弔うが、アンタの同族はここでヒトが食らう。

――そんなっ。

金網の向こうで骨が並べられます。全部で5体分。覚えがあるのは当然です。ミーちゃんと一緒に過ごしていた群れの仲間の誰かなんですから。

――ヒトはな、生き物が骨になったとしても、生きていた頃の実の親と子の関係は見抜くんだ。アンタのつがいとつがいの間の子は、どっちもねぐらで骨になってた。アンタの妹と、妹の子2体も同じく骨になってたらしい。それと、ここには持ち込まれてないが、ねぐらにあったタマゴが3個くらい、完全に割られて喰われてたそうだ。
  これって、……アンタのつがいも子も、マニューラ達のせいで全滅したってことじゃないのか? アンタの子は小さいのが1体に、タマゴ2個だろ?

――うん。……その通り。

――で、こういう時に山から持ち出した骨っていう物はだな、ここのヒトは粉々にして茹で溶かして食うらしい。アンタのつがいも子も、今からそうなる。
  ここの食う食うわれる掟ってこういうものらしいぞ。俺は初めて知ったが。それと、ここのヒト達は、エサを食わせさえすればそういう物を見せつけても良いって思ってるんだ。

つらすぎると涙も出なくなるのでしょうか。そういうことはミーちゃんの心が死んでいく前触れなのでしょうか。
ミーちゃんの心がどうなろうとお構いなしに、お姉さん以外のヒト達は、金網の向こう側で、楽しそうに骨を砕いて、茹でて、美味しそうに飲んで騒ぎ続けるのです。

(続)




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