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タブンネ刑務所14
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4ベビ生後15日目
その日の昼過ぎ、4番囲い後方のホルダー上5つのタマゴがほぼ一斉ガタガタと音を立てて震え出した。
4ベビはその音に気がつくと、チィチィ鳴きながら柵にしがみつき、目をまん丸くしてその球体を見つめる。
鉄パイプのタマゴホルダーには電熱が通っている。
タブンネのタマゴはそもそも孵化が早いことも相まって、このタブ舎ではこうして丸2日前後で孵化が始まる。
...バリッ!バリバリッ...! ボトッ...ボトッ.....
チギャー!ミギャー!ヂギャー!チンギャー!......
5つのタマゴが順次孵っていき、ホルダーから床に落下していって五月蝿い産声を上げる。
次「チィー!生まれたチィ!」
妹「かわいいチィ!ミんなおメメとじてるチィ!」
弟「ちいさくてカワイイチィッ!ボクたちも生まれたときこんなだったチィ?」
ママ「シーッ。ミんな静かに。うるさくしたらお隣のベビちゃん達、ママを見つけられないミィから、静かにするミィ。」
ママの言葉で4ベビはみな口に手を当て押し黙ったが、視線はお隣ベビンネに釘付けになり、瞳をキラキラと輝かせている。
先日死んでしまった個体はまだ何の生き物かも判らぬような姿であったが、今正常に孵化した5匹ははっきりタブンネの赤子だとわかる容姿であった。
4ベビには弟妹が生まれたような感覚だったのだろう。
4ママ「ミミッ⁉︎もう出てきたミィか!ミフンッ!せっかく静かに過ごしてたのミ...!」
うつ伏せに横たわり、ミヒーミヒー寝息を立てていた4番ママ。
4ベビの感嘆声と実子の産声に気づくと目を覚まし、母として有るまじきセリフを吐きながら起き上がり、ストール後方に凭れるようにしてドスンと腰を下ろした。
生まれたてベビンネ達は大きなチィチィ声で喚きながら這い出し、実母の居るストールを目指してモゾモゾと動き出した。
......チ.........チ.........
しかしながら1匹だけ、落下先のホルダー下からいつまでも動かず、四つん這いに手を突いて、カクカクと頭部を上下するベビンネが居た。
長「チチッ?ママ、ひとりだけ動けないベビちゃんが居るチィ。カラダも少し他のベビちゃん達より小さいみたいだチィ。」
いち早くその存在に気づいた長女が小声でママに話しかける。
ベビンネの口から『ベビちゃん』という単語が出てくるのはこのタブ舎ならではの光景かも知れない。
ママ「ミミっ?少し心配ミィね。おててかあんよお怪我しちゃったミィかな。」
ママの位置からは視認できなかったが、不動ベビンネは身体が17cmくらいの未熟児で、ホルダーから落下した際、割れたタマゴ殻の小さな破片が右大腿部に刺さり、少し腫れ出していた。
先に動き出した4匹の内先頭のベビがストール内までたどり着き、おっぱいに吸い付かんとした時、先日の若い2名の飼育員がやって来て、その身体を摘み上げた。
ヂィッ!ヂィヂィッ!ヂギャギャヂィーッ!....
飼A「やっぱもう出てきてたか。よかった〜、割とみんな元気そうで。あれ⁉︎4匹しか居ねえぞ!」
飼B「あっホルダー下に1匹居るぞ!死産じゃねえだろうな。中の水漏れちまったのかな...」
....チュビッ........ピッ.........
1人の飼育員が小ベビンネを摘み上げると、弱々しいが声を上げた。
——
やがて2人がナンバリング作業を済ませて去って行くと、お隣ベビンネ達はママのおっぱいにたどり着き、コクコクとミルクを飲み始める。
4番ママが座り姿勢の為、2匹が股上2つの乳首に吸い付き、その上に乗っかる形でもう2匹が上の乳首を吸っている。
弟「かわいいチィ~。ミんなおいしそうだチィ!」
次「おめめ開いてないのにスゴいチィ!なんでおっぱいの場所わかるミチィかな。」
......チィ.......チィッ!........チッ.........チビッ.........
4番ママの乳首は半分しか使われてないのだが、実母の不親切な授乳姿勢の為、小ベビンネは乳飲みベビ達の周りをモゾモゾ這いずるだけで、いつまでもミルクに有り付けなかった。
ママ「ミィ.....」
ママンネは心配そうな表情を浮かべる。
未だハッキリと小ベビンネの姿が見えた訳ではないのだが、鳴き方からお腹が空いていることはよくわかった。
このタブ舎では母親の愛情不足の為、餓死するベビンネがたまに現れるのだ。
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