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タブンネ刑務所14
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「ミィィィ…」
シルフィと目が合ったその時、チビママンネはガクガクと震えだした
悪い人間たちの元からからやっとの思いで我が家に帰ってこれて、
最後に残ったベビちゃんと、仲良しのお隣さんと平和に暮らせると思ってたのに…
あっというまに仲良しのお隣さんは赤ダルマに、可愛かったその子供は赤い飛沫となって消えた
冒険の終わりに待っていたのは平穏などではなく、血に飢えた捕食者
いや、捕食者ですらない、あまりにも残虐極まる桃色の皮を着た悪魔である
そして今、その凶悪な眼差しはこの腕の中で震え泣く幼いわが子に向けられているのだ
「ウッ、ウミィ… ウミィィィィィィィィ!!!!!!」
チビママンネは恐慌して泣きながら走り出し、ただガムシャラに木々の隙間を逃げ続けた
足がが震えてもつれ、何度も転びそうになったがその足は止まらない
母親の恐怖の感情を感じ取って小ベビンネは大泣きし、
シルフィはそれを頼りに足に余力を残しながら悠々と追ってくる
それはまるで幼児と大人の鬼ごっこの如き圧倒的な差だ
命を掛けた追いかけっこの間、シルフィの頭に浮かんでいたのは
母親の前で赤ん坊をいたぶり、その反応を見て楽しむという邪悪極まりない遊戯である
「フミミン!フミミン!ンミーーーッ!!!」
「フィッフィッフィ〜〜♪」
どんなに頑張ろうとも両者の距離は詰まっていき、それが1メートル半にまで縮まった次の瞬間…
「ンミミッ?!」
「バチッ」と破裂したような音とともにチビママンネの両腕が突然軽くなり、
そこにあって然るべきはずの小ベビンネの姿が忽然と消えた
掌と腕にヒリヒリと痺れるような痛みだけを残して
チビママンネには知る由もないが、電光石火という技をシルフィが仕掛けたのだ
「ヂィィィィー!!! ヂィィィィー!!!」
「ン、ンミィィィィィィィィィーーーーッ!!」
悲鳴にハッと振り返ったチビママンネの目に映ったのは、
見ただけで気絶してしまいそうな有りうべからざる光景だった
一番の甘えっ子で、いつもチィチィとママに甘えてきたあの子が
どんなに情けない姿を見せても、最後までママだけを頼ってくれたあの子が
自分のベビも、友達のベビも、知らないべビもみんな奪われて、
優しい人間のお陰で最後にたった一匹だけ守りぬけたはずのあの子が
悪魔に足を銜えられ、ヂーヂーと泣き叫びながら逆さ吊りのままじたばたともがいているのだ
しかも噛まれた所からタラタラと血が流れ、お尻と尻尾の一部を赤く染めている
「ミミーッ!!ビィィーッ!!」
チビママンネは大慌てで取り返そうと両腕を掴んで引っ張るが、シルフィも口を離すことなく引っ張り返す
もちろんその引っ張り合いの負荷は小ベビンネの体に掛かることになり
足首の噛み傷はさらに広がり、両肘はコキリと脱臼してしまう
「ウゴバァァァァァァーーーーー!!!」
「ミッヒ?!」
小ベビンネはさらに増した激痛に泣き叫び、それにチビママンネはハッと気づいて手を放した
ここが南町奉行所のお白洲ならばチビママンネは子供を取り返せていた所だが
残念なことにこの小さな林に大岡越前はいない
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