したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

Key Of The Twilight

1イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:01:24
移動してきました。

現在、参加者の募集はしておりません。

2イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:03:06
登場人物

【四神】

アグル(トール)
レックス(フレイヤ)
ナディア(ポセイドン)
サンディ(アマテラス)

【四霊】

イオリ(鳳凰(仮)
シデン(麒麟)
ジル(応竜)
キール(霊亀)

ゼロ(黄龍)
フェミル(黄昏の花嫁)

【四凶】

クロス(饕餮)
オンクー(渾沌)
コニィ(窮奇)
フロン(檮)

【ポセイドン邸の住人】

リト(闇の管理者)
ヨノ(当主代理)
アブセル(使用人)

【シンライジ邸の住人】

メイヤ(イオリの弟)
ボルドー
シュリ(鳳凰)
七つの大罪

【処刑人の剣】

ワヅキ
アリア
ディンゴ
ヴァイト
ゼツ

【記憶の図書館の住人】

バロン
アーウィン
ユニ
メルフィ(セナとノワールの子)

【過去から来た人物】

セナ(闇の王子)
リマ(ポセイドン)
イスラ(アマテラス)
ヤツキ
ジュノス

【吸血鬼、十三人の長老】

ノワール(吸血鬼の姫)
ジーナ
フィア
レオ(故)
シャム
マゼンダ
ヴェント
ルドラ
ラディック

【その他】

ステラ(闇の残滓)
ユーリ

3アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:31:00
【バルクウェイ】

空を駆ける漆黒の巨狗。
雷光となって此方へと突っ込んでくるそれは、白騎士の張った黒蝶のシールドを易々と粉砕した。

そして、その巨躯をぶつけられた彼女は、大きく後方へ吹き飛ばされることとなった。

鎧の装甲が砕け散り、兜が飛んで長い髪の毛が風に巻き上げられる。
吹き飛ばされながらも天を仰ぐ彼女の瞳に、空を游ぐ鯨の影が映った。

『ド…お…シテ…』

喉奥から溢れる血反吐と共に、掠れた声が洩れる。

『……愛、シテ…いたノに…』

…あの人を愛していたのに。


直後、奇妙なことが起こった。彼女の腹部が盛り上がり、弾け飛んだ。

アリアは大きな悲鳴を上げて、身体を仰け反らせる。
血と臓物が腹から溢れ、そして、その胎内から何かが顔を覗かせた。

それは全身を血で真っ赤に染めた異形の赤子だった。
赤子は耳がおかしくなりそうな程の大音量で、狂った様に産声を上げた。


『ア…あぁ…私ノ…、私の赤ちゃ…』

震える腕を腹部へと伸ばし、アリアは赤子に触れる。

その瞬間、赤子は眼を見開き、自身の頭を撫でるその指に食らい付いた。
どう言う訳か、既に生え揃っていた歯でそのまま指を咬み千切り、咀嚼する。

そして、笑った。

不気味な笑い声を上げるそれは、アリアの腹から腸を引っ張り出すと、それを掴んで思いきり振り回す。

何て力なのだろう。
赤子を軸に、面白いようにアリアの身体が宙を回る。

そして、

ぶちり、という音がして。
アリアは慣性の力に誘われるがままに、赤黒いものを撒き散らしながら、黒狗のいる方に向かって飛んでいった。


【名前間違い、抜けてるキャラいたらごめんなさい;
ゼツのレスはまた後程返します】

4メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/01(火) 21:46:51
【バルクウェイ】

確かな手応えと、吹き飛んで行く敵影。

兜が脱げ、靡く髪の間から覗く顔は予想通りのモノ。

しかし、続く異常な光景に黒狗は動きを止める。

宙を舞うアリアの身体から産まれ出た異形の赤子は、空を裂く様な声で叫び、母胎を玩ぶかの如く振り回す。

そして、生々しい音を立てて千切れた腸を風に靡かせ、迫るアリアの身体を。

黒狗は、大顎を開き。

丸呑みにした。

それと同時に、黒狗は再び空を駆け抜ける。

そのスピードは先程よりも速く、その勢いそのままに黒狗は前転。

その巨大な漆黒の尾を笑う赤子へと叩きつけた。

5メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/01(火) 22:29:45
【移転スレ立てありがとーっす!

多分俺のキャラは抜けも無い筈。


とと、一発目が中々グロくて焦ったww】

6赤子 ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:50:21
【バルクウェイ】

尾が身体に叩きつけられる。

しかし、それに対し赤子は、その威力に押されて吹き飛ぶこともなければ、ピクリとも体勢を崩すこともなかった。

ただ笑い顔を泣き顔へと変え、嗚咽を洩らす。
そして泣き叫ぶのと同時に、街の闇を吸い上げ始めた。

赤子の身体は大量の闇を取り込むことで、今や全長30メートル程まで巨大化し。
そして、その大きな手で黒狗を叩き落とそうと、腕を滅茶苦茶に振り回した。


【いえいえ^^
初っぱなから申し訳ないw】

7ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:53:26
【過去】

当時は名をランダと云った。
四神様の側近の一人として、神殿の補佐役に腰を据えていた。
何と言うことはない、極平凡で平和な日常だった。


「全く…この忙しい時にあいつは何処で油を売っているんだ」

机上に積まれた大量の書類の山。
紙面と睨めっこしながら、ランダは短い前髪を掻き上げた。
その時、部屋の扉が音を立てる。

「すまんすまん、すっかり遅くなった」

銀の三つ網を揺らしながら、あいつが軽い足取りで入ってくる。
ランダはその姿を睨み付けた。

「どこに行っていた?」

「気分転換に茶を飲みに…」

「女の所だろ」

バロンの目が泳ぐ。
それみたことか。

「四神様は?」

「トール様は闘技会に向けて稽古を。ポセイドン様は従者と共に人の行う祭祀の場へ。
フレイヤ様とアマテラス様は人が増えてきた為、新たな大地をお造りになるそうで…その下見に」

「新たな大地を…?それは大事じゃな」

「だから人手の手配や事前調整に忙しいんだ。近い内に開かれる闘技会の下準備もあるしな」

書類の束をバロンに無理やり押し付ける。
さっさと自分の仕事に取り掛かれ、との合図のつもりだったが、どうやら彼には伝わらなかった様だ。

8ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:54:58


「闘技会…、そう言えばもうそんな時期か。
今年はどの御方が優勝なさるかのう?やはり武神と名高い武天帝殿か」

「いいや、トール様だ。あの御方よりお強い神はいらっしゃらない」

お前は本当に四神様が大好きだな。…とでも言いたげな、半場呆れた様な視線が返ってくる。
かと思えば、彼はニヤリと笑い、言った。

「…賭けるか?」

「何を?」

ランダは尋ねる。

「そうじゃな…。儂が勝ったらお主の嫁御を一夜貸して…」

「お前…それ以上その冗談を続けてみろ。お前の顎が弾け飛ぶぞ」

冗談とも取れぬ本気の目に多少怖じ気づいたのか、バロンは苦笑いを浮かべ言葉を濁した。

「う…うむ。まぁ闘技会までまだ日はあるし、あとでじっくり考えるかの。
…で、賭けの勝敗じゃが…、お主がトール様、儂がトール様以外の参加者が勝ったら…で良いのじゃろう?」

「ちょっと待て!お前それは公正じゃないだろ!」

平和だった。…本当に平和な日常だった。

9ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:56:31

災いは唐突にやってきた。

"闇"と謂うものが現れ、瞬く間に世界を侵食していった。

天地は穢れ、幾つもの深淵が開き、多くの魔物が出現した。
人々は神に助けを求め、神々は闇に立ち向かった。

「四神様…!お止めください!行けば死んでしまいます!」

崩れかけた廃屋の奥。
戦いに赴こうとする四神をランダは引き止めた。
対し、フレイヤが口を開く。

「闇を完全に消し去ることは出来ません。私達の力と引き替えにあれを封印します。…それしか方法はないのです」

既に多くの犠牲が出ていた。
深淵より現れた巨大な鯨が四神の神殿ごと都市一つを呑み込み、故郷をも失った。

「ランダ…、バロン。
貴殿方は生きて下さい。私達の分まで生きて…世を、人々を、見守り続けて下さい」

底知れぬ覚悟が伝わってくる。その言葉を受け、ランダは涙ぐみながらも力強く頷いた。

10リマ:2014/07/03(木) 18:27:33
【バルクウェイ】

あれからどれくらい時間が経っただろうか。
いくら走っても辺りは暗い闇。右も左も分からず、何も見えない。自分の姿すら見ること叶わず、アブセルと繋いだ手だけが唯一確かなことだった。

「……」

リマは胸苦しさを覚えていた。
ずっと走っていたことによる感じとは違う。全身から力が抜けていくような、そんな感じだ。

恐らくはこの闇のせいだろう。リマは闇に触れても問題ない。しかしそれは闇に対する耐性などではなく、彼女の力が相反するものだからだ。この場にとってリマは異物。闇はリマを排除しようと働いている。

(どうしよう…)

この場に長居はできない。しかし未だリトの気配は感じられず。
時間がないのに。焦りばかりが募る。そんな思いが反応してか、リマは無意識にアブセルと繋ぐ手に力が入った。

11リマ:2014/07/03(木) 18:33:36
【スレ立てありがとうございます!そして自分だけ皆と表記が何か違う…何故?

イスラ>>
ジルの絵ありがとうございます!もう素敵すぎてヨダレが!!たしかに構図は謎ですが(笑)大切にします!

はい、芋が御曹司です(笑)
そして現在リトママの性格が迷走してるでござい。可憐なイメージにしたかったのに、なんかお転婆←】

12メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/03(木) 19:58:15
【イスラ》私の赤ちゃん発言や巨大化からDOD1が頭を過ぎったww

リマ》トリップついて無いって事かな?

名前の後に#と半角英数字付けたらいいよー】

13ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:41:14
【バルクウェイ】

「…これは何なのじゃ?」

空飛ぶ鯨の内部。バロンは問うた。
ワヅキは顎に手を当て、軽く考えるような仕草を見せる。

「そうだね…。何から説明したものか…」

そしてバロンの後方。街の住人達を指差した。

「これは現存する異能者達から回収した嘗ての仲間達の力…謂わば魂の一部の様なものだ。
ただ…それ故に今はまだ自我も感情も持たない。この街に残った記憶の残滓を辿り、生前の行動を繰り返すだけの不完全な存在」

処刑人の剣を使い、異能者達の身体から解き放った魂の欠片。
なるほど。道理で触れられない訳だ。
そう納得するバロンの傍ら、不意にワヅキは話題を変えた。

「昔…なぜ闇が目覚めたか、君は知っているかい?」

それは遥か昔の闇と神々の戦争の話。
バロンの応えを待たずして、ワヅキは答えた。

「人間が、決して触れてはならない禁忌を冒してしまったからだ」

闇によって多くの神々が死んだ。
四神も闇を封印し、以後、四方に散って眠りについた。

14ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:42:39

ワヅキは戦いに赴かれる際に四神が残した言葉に従い、ずっと世界を見守り続けたてきた。
幾千紀、人間を見てきた。

…しかし、どうだろう?

「人々は過去の過ちと四神様の信仰を直ぐに忘れた。人間同士で勝手に争い、私達が護った星を平気で汚し…、あまつさえ闇の力を我が物とした彼等は、この世界を破壊しようとさえした」

最後のは百年前の…黒十字のしたことを指しているのだとバロンは察した。
そして、その出来事がワヅキの現在の行動を決定付けるものになったのだと。


四神と仲間を愛した彼は、自分からそれらを奪ったものが許せなかった。
彼の憎悪の矛先は闇ではなく、発端である人類に向けられたのだ。

「私は思うのだ…。本当にあれら人間に、四神様が命を懸けて護るだけの価値があったのか…」

答えは既に出尽くしている。
故に黄龍の意志に賛同し、この世界を人類諸とも綺麗さっぱり消し去ってしまおうという結論に至ったのだ。

そして闇も人間もいなくなったその後、自分は再び四神を復活させ、神々だけの国を造り直すのだ。
…この鯨、箱舟の内部で。

15イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:45:27
【一人芝居が無駄に長くてスクロールが大変ですね…申し訳ない;

リマ》いえいえ^^
見ていただけましたか、良かった!

御曹司なのに芋w
良いじゃないですか、お転婆(笑)


ヤツキ》若干DOD意識しました(笑)
あの赤さんはアリアの想像妊娠→闇の力で具現化…ってな仕組みなので、ただの怪物です。安心してボコってくれて構いませんよ(笑)】

16ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/04(金) 00:00:13
【バルクウェイ】

神々は死す直前、己の力をあらゆる物の中に託した。
或いは武器に、或いは人に…。
前者は火之迦具土の様な所謂"神器"となり、後者は異能者となる。

「黄龍が全てを無に帰してしまう前に、私にはそれらの回収と…、鯨…いや、この街に辿り着く必要があった…」

この街の神殿の内部に、"生命の大樹"と云われる巨大な樹が生えている。
それに祷りを捧げることによって、枝に果実が宿り、その実から神は誕生する。
よって神は生殖行動を必要とせずとも種を増やすことが出来るのだ。

「これら魂の欠片を種とし果実を育めば、きっと仲間達も四神様も、再び同じ形で、同じ意識を持って転生して下さる…!
以前の暮らしが元通りになるんだ!」

ワヅキは嬉々として両腕を広げる。

端から聞けば世迷い言を言っている様にしか聞こえない彼の発言に、バロンは言葉を失うしかなかった。

「神器も、異能者の魂も、満足する程度にはこの手に返してもらった…。
あとは…そう、あとは四神様の魂さえ手に入れれば…!」

バロンがこの場に"彼ら四人"を連れて来なかったのは予想外だったが、その者達がバルクウェイに居ることは知っている。
間違える筈もない。この場にいても、四神の氣が街の何処にあるかはっきりと解る。

放っといても闇と魔物に喰われ息絶えるのは目に見えているが、手ずから彼等の息の根を止めに行くのも良い。

…しかし、その前に。

ワヅキは視線をついと動かし、イスラを見る。
手に持つ刃を向けた。

「まずはアマテラス…君の魂を頂こうか…」

17アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/04(金) 00:05:54
【バルクウェイ】

焦りを感じていたのはリマだけではなかった。
だが、握る手に力を入れるリマとは反し、アブセルは逆に手の力を緩めた。

不意に前を行く足が止まる。

「…行って…」

苦し気な息づかいと共に口から低い声が洩れる。

「先に…行ってくれ…」

思ったよりも早く"それ"は来た。

アブセルの頭から下方に湾曲する二本の角が伸びる。手足も獣を彷彿とさせる鋭い爪が生えたものになり、その姿は人と魔を半分かけ合わせた様なものへと変わる。

「早く…俺から離れて…ッ。
…意識が乗っ取られて…、あんたを傷つけてしまう…」

本来、アブセル達サマナーが得意とする召喚には二つの種類があった。

ジュノスがいつも行っている様な召喚対象を呼び出し使役する請願召喚と、術者と召喚対象が融合し一体化する憑依召喚である。

今、アブセルの身には術者の真意なしに憑依召喚が行われていた。
周囲の濃い闇に影響され、正気を失った阿形と吽形の意識が暴走している。
彼等も所詮は魔物なのだ。

「は…早く…ッ!」

リマから凄くいい匂いがする。
彼女が美味しそうに見える。

アブセルは膨れ上がる欲望を必死に抑え込もうと、地に踞り頭を抱えた。

18メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/04(金) 21:27:08
【バルクウェイ】

手応えはあった。

しかし、赤子には傷一つ着いていない。

それどころか、刺激した事によって赤子は巨大化しながら暴れ出した。

その動きは決して鋭くは無いものの、速く、直撃すればただではすまないだろう。

何しろ闇を吸い取り巨大化した赤子に対し、巨大と言っても黒狗の全長は10メートル程しか無いのだ。

風を切り唸る豪腕を避け、黒狗は一時撤退。

周囲にある比較的高い建物の屋上……雛しているサンディの隣へと着地し、身に纏う闇を拡散させた。

そして、黒狗から人の姿に戻ったメイヤは、瀕死のアリアを横たわらせる。

腹を裂かれ、内蔵を引きちぎられた彼女が助かる見込まは殆ど無いだろう。

ピクリとも動かないアリアの胸元に犬の面を置き、メイヤは空に浮かぶ巨大な赤子を睨んだ。

「……サンディ、この人を頼む。

正直、助からないとは思うけど……逝くならせめて人の形を保ったまま逝かせてやりたい。」

アレと戦うなら、周囲に気を配る余裕は無い。

ましてや誰かを庇いながらなど持っての他だ。

どうやらサンディも負傷している様だ、彼女が無理に戦へ出ない理由にもなるだろう。

サンディへ兵糧の包みと鎮痛剤を渡し、メイヤは再び闇を纏う。

「サンディ、弥都では戻れなくてごめん。

この戦いが終わった後、戻って話たい事がある。

だから……」

そして、言葉の最後の部分を唸り声へと変え、黒狗と化したメイヤは再び空を駆け抜ける。

一歩進む毎に周囲の闇を吸い取り、疾風の如く疾る黒狗は瞬く間に空へ浮かぶ赤子との距離を詰め、一閃。

迅雷の如きスピードで、黒狗は赤子の胴を貫いた。

19サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/07(月) 13:19:50
【バルクウェイ】

血塗れのアリアの姿を見て、サンディは息を呑んだ。
取り合えず、今でき得るだけの処置はしなければ。

一度アリアから視線を外し、サンディは顔を上げる。

「…うん、約束だよ…!気を付けて!」

そして、再び戦場に赴くメイヤに向けて言い、彼の後ろ姿を見送った。

―――…

胴を貫かれ、赤子はバランスを崩した。
周囲の建物を押し潰しながら、後方へと派手に倒れ込む。

起き上がろうとするも、頭が重く上手く立ち上がれない。
この姿は手足も短く愚鈍だ。

それならば…と、赤子は更に闇を吸い上げる。
ぐんぐんと手足が伸び、今度は幼い少年ほどの背格好にまで成長した。

同時に、腹に開いた風穴からは肉の触手が無数に飛び出し、黒狗を射たんと鞭の様にしなり、または捉えようと猛追する。

そして異形の少年はと言えば、その場から勢いよく起き上がり、黒狗の真似事をするが如く四つん這いになる。
思いきり地を蹴り上げ、黒狗に向かって突進した。

20リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/08(火) 07:21:33
【バルクウェイ】

「アブくん、どうしたの…!?」

突如離された手。と同時にアブセルが苦しみ出す。
状況を把握出来ないリマはアブセルの側を離れようとしない。視界が悪いせいで彼の身に起きている変化にも気付いていないようだ。
単に苦しむ様子が心配で、不安げに彼を見る。

「苦しいの?待ってて…」

自分と同じ、闇に晒され息苦しいのだろうか。リマはあろうことか彼を癒そうと手を伸ばした。

21メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/09(水) 18:17:14
【バルクウェイ】

バランスを崩し、盛大に倒れ込む赤子。

その腹からは無数の触手が生まれ、縦横無尽に蠢き、黒狗へと襲いかかった。

その触手の群れを黒狗は喰い千切り、爪で斬り裂き、避け続ける。

しかし、それも長くは続かない。

数の暴力の前に黒狗は段々と疲弊していき、触手の一本が足を貫いたのをきっかけに、僅かに動きを止めた黒狗の身体へと触手が殺到。

殺到する触手の群れは巨躯を貫き通し、更に、身動きが取れなくなった黒狗へと赤子から少年へと姿を変えた巨体が突撃する。

勢いに乗った体当たりの直撃を喰らった黒狗は、あまりの威力の吹き飛ぶ前に爆砕霧散するも、その核であるメイヤは上空へと脱出していた。

そして、その背から生えた漆黒の大翼で大気を叩き、急降下。

「オオォォォォォォッ!!」

眼下に見える少年の延髄に狙いを定め、闇によって巨大化した刃を振り下ろした。

22アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:15:45
【バルクウェイ】

半魔になり目が利くようになっていたアブセルは、闇の中、リマの姿がはっきりと見えた。

伸ばされた手を掴み、彼女を力任せに押し倒す。
"ごちそう"の芳しい匂いが鼻を擽った。

「イイ…ニオイ……」

アブセルはリマの首筋に鼻を近づける。

この匂いが脳を痺れさす。
人としての思考を阻む。

もはや完全に抑制力を失っていた彼は、リマを押さえ付けると口を開き、鋭い牙を彼女の肩に食い込ませた。

23アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:18:17
【過去】

友達が欲しかった――。


「消えろ、バケモノ!」

「インバイの子!」

罵倒の言葉と共に石が飛んでくる。

子供の拳程もあるその一つが頭に当り、アブセルはよろけて地に膝をついてしまう。
痛む頭に手をやると、血がついた。

「お前らバケモノ親子と同じ所に住んでるってだけで気味悪いんだよ!
早く此処から出てけ!」

次々と石が飛んでくる。

目に涙が滲むが、アブセルはそれをぐっと呑み込んだ。
泣いてもいじめっ子達を喜ばすことにしかならないと分かっているのだ。


そんな中、リーダー格の最年長らしい少年が音を立てて近づいてきた。
アブセルの髪を掴み、顔を上げさせる。

「なあ、お前の父親の名前教えてくれよ。そしたらもう苛めないからよ」

態とらしい煽り文句だ。
しかし、それに対しアブセルは何も言えない。ただ視線を下げるばかりのその姿を見て、少年は勝ち誇った様に笑った。

「どうした?言えないのか?
そりゃあそうだよな。だって何処のどいつか分からないんだもんなぁ?
お前は母親のインバイのせいで間違えて出来てしまっただけだもんなぁ?」

24アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:19:55

恐らく少年自身も、己の言葉の意味するものを完全に理解してはいないだろう。ただ彼は大人達が陰で話していることを、自慢気にアブセルに聞かせてやっているのだ。
勿論、アブセルが傷つくのを知っていて、だ。

果たしてその読みは正しかった。
しかしアブセルはそれ以上に、何だか母が馬鹿にされた様な気がして、腹が立った。

地面についた両手を握り締め、少年を睨み付ける。
少年は不意打ちを食らった様に僅かに怯んだ。

「な…何だよ…。やるのか?」

「………」

"力を使ってはいけない"いつも口を酸っぱくさせて言う、母の言葉を思い出す。
アブセルは髪を掴む少年の腕を乱暴に払いのけると、踵を返し、彼等とは別の方へ駆け出した。

「逃げたぞー」、と嘲笑う声が後ろから聞こえたが、構わずに走り続けた。

25アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:21:41
―――…

忘れ去られた様な廃れた公園の一角、アブセルは走る足を止めた。
肩を上下させ、息を吐く。

…いつものことだ。

同じ集合住宅に住む住人達は、アブセル達のことをよく思っていない。
闇の力を持っていることと、それに母の仕事の内容も相まってか、穢れた血やら厄介者やらと侮蔑され毛嫌いされていた。
根も歯もない噂を立てられ、顔を合わせれば冷ややかな視線を浴びせられた。

そして大人達のそんな態度が知らず知らずの内に子供達にも伝わり、今ではアブセルはいじめっ子達の標的とされてしまっていた。


アブセルは敷石の上に腰を落とし、膝を抱える。大きな溜め息が口から洩れた。

と…その時、ふいに直ぐ脇で、小さな、何かの鳴き声の様なものが聞こることに気づく。
首を動かしてみれば、一匹の子犬の姿が目に映った。

「…お前もひとりぼっちなのか?」

そう尋ねると、子犬はよたよたと近寄り、指を舐めてくる。
アブセルはふっと笑った。

「僕もなんだ」

頭を撫でてやると、子犬は嬉しそうに尻尾を振る。
しかし、その姿はどこか元気がない様にも見えた。震えているし、鳴き声も弱々しい。

「お腹…空いてるの?」

何か持ってはいなかっただろうか。ポケットを探ってみるが…おおよそ食べられそうなものは入っていない。
アブセルは肩を落とした。

「ごめん、今は何も持ってない。明日、なにか食べられるもの持ってくるから…明日もここにいろよ?」

もうじき日が沈む。
アブセルは立ち上がると、若干後ろ髪を引かれる思いで子犬を残し、公園を後にした。

26アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:25:37

「ただいま…」

家に帰ると母が迎えてくれた。
アブセルの姿を見て目を丸くする。

「どうしたの?血が出てるじゃない」

「…転んだ」

「あらあら、可哀想に…」

膝に引き寄せ、母が濡れたタオルを頭に当ててくれる。冷たくて気持ちがいい。
アブセルは母の背中に腕を回し、彼女の着ている薄手のセーターに顔を埋めた。

「…ねえ、母さん。今日ね、公園で…」

しかし、続く言葉は来客を報せるチャイムの音に阻まれた。
母は、「ごめんね、お客様だわ」と言ってアブセルを膝から下ろし、立ち上がった。

「アブセル、いつもの場所に隠れてなさい。いい?絶対音立てちゃ駄目よ」

「…うん」

小さく頷き、アブセルは言われるがまま"いつもの場所"…クローゼットの中に身を潜めた。

母の仕事中はいつもここで"かくれんぼ"をする。
母が見つけてくれるまでは、ここで息を潜め絶対に出てはいけない。…そう言う決まりだ。

玄関まで行った母が、客を部屋に招き入れたのが分かった。
衣擦れの音と、密やかな笑い声が耳に届く。

母は好きだが、母の仕事は嫌いだった。

外で何が起こっているかアブセルには分からなかったが、当時の彼にはそれはただの恐怖でしかなかった。
クローゼットの外から聞こえる甘い声も、物音も、事が済んで客を帰した後、決まって自分を優しく抱き締めてくれる母のその湿った身体も、臭いも、全部嫌いだった。

アブセルは暗闇の中、両手で耳を塞ぎ、きつく目を閉じた。
ただ、ただ、目の前の扉が開くのをひたすら待った。

27アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:54:06

翌朝、パンとミルクを持って公園に行ってみると、子犬はまだそこにいた。
尻尾を振って出迎えてくれる。

アブセルは嬉しくなって子犬の元に駆け寄った。

「へへ…いっぱい食べて早く元気になれよ?」

凄い勢いでミルクの入った容器に口を押し付ける子犬の背中を撫でながら、ふと思いつく。

「そうだ、名前…」

子犬に名前をつけないと。
何がいいだろう?どうせなら強そうなのがいい。
アブセルは暫し考え、そして閃いた。

「…マオ…ってどうかな?僕の好きなヒーローの名前」

その問いかけに応えるように、子犬は白く濡れた口元を持ち上げ「わん!」と鳴く。
…決定だ。

「じゃあ、マオ。今日から僕とお前は友達だ。仲良くしよう」

子犬の小さな身体を抱き上げ、胸に寄せる。柔らかな毛並みと生き物の温もりが心地よかった。

それから毎日アブセルは子犬の元に通った。一方で子犬の方もすっかり元気になった様で、今ではアブセルが二歩、三歩と歩く度、その足の間を健気について回る。
その様がたまらなくいじらしかった。


…しかし、ある日のことだ。

「…マオ…?」

いつもの場所に子犬の姿はなかった。

「マオ…!マオ!」

どこに行ってしまったのだろう。
自分と共にいる時にだって、公園の外に出たことは一度もなかったのに。

アブセルはつんのめる様にして、公園を飛び出した。
脇目も降らず街中を駆け回り、必死に子犬の姿を探した。

28アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:55:39


その姿を橋の上で見つけた時には、既に足はくたくたになっていた。
子犬は数人の少年達の手にあった。
例のいじめっ子連中だ。

「やめろ!僕の友達に触るな!」

アブセルは声を上げ、彼等に駆け寄る。
その声に気づき、少年達はアブセルを見た。

「なんだ、この犬お前のなの?」

「犬が友達だってよ」

いじめっ子達は互いの顔を見合せ、一斉に吹き出し、笑う。
不意に少年の一人がアブセルを羽交い締めにした。

「小汚ないもの同士お似合いだな」

何をするのかと暴れるアブセルの目の前で、リーダー格の少年が子犬を蹴りとばす。
子犬は悲痛な鳴き声を上げて地面を転がった。

「マオ!」

いつもは生意気なアブセルの狼狽する様が面白かったのだろう。
少年は味を占めたように舌舐めずりをする。
動けないでいる子犬の首根を掴んだかと思うと、その腕を橋の欄干の向こう側に突き出した。

「ここから落としたらどうなるかな?」

下は河原。
明らかにただで済むような高さではない。

「嫌だっ、やめろっ!」

アブセルは叫んだ。
どの少年の瞳も、好奇心と言う名の残忍な色に染まっていた。

にやりと口元を歪め、ふいに少年が手を離す。
アブセルの目が、子犬の心細そうな瞳に釘付けになる。
その小さな身体が、下へ下へと落下していく様が妙にゆっくりになって見えた。

「うわああぁぁああッ!!」

瞬間、目の前が真っ暗になった。

29アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:57:46

…その後のことはよく覚えていない。

ただ気がつけば地面にいじめっ子達が倒れていて。
通り掛かった人が慌てた様子で病院に連絡をして。
駆けつけた母が少年達の親に何度も頭を下げていて。

そして、数日後には母と共に部屋を追い出されることになった。
マオを探したが見つからなかった。


「…ごめんなさい」

揺れる列車の中、隣に座る母に向けアブセルは小さな声で謝った。
よく分からないが、少年達が怪我を負ったのも、部屋を追い出されたのもきっと自分のせいなんだ。

母は少し間を置いて、言う。

「…少し離れた所に大きなお屋敷があってね、そこにお祖父ちゃんが住み込みで働いてるの。…話したらアブセルのこと引き取っても良いって…」

「…母さんは…?」

母は何も答えなかった。
だが、何となく察しはついた。

「向こうでは友達、できると良いわね」

「………」

今度はアブセルが黙る番だ。

出来る訳がない。
だって自分はバケモノだから。

窓の向こう側、流れる景色を虚ろな目で眺めながら、アブセルは思った。

この世界に、自分と同じバケモノが他にも居れば良いのに…。
そうしたら、きっと……。


【思うがまま過去話を考えてたら、もの凄く長くなってしまった…;本編にはあまり関係ないですw】

30ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/11(金) 01:37:19
【バルクウェイ】

何故、女の身体で生まれたのだろう。

殺し屋業を営む一族の社会は、完全に男のものだった。

女の扱いと言えば酷いもので、彼女等は僕も同じ、男達の性欲処理と子供を産む為の道具でしかなかった。

そんな中、ゼツは家長の世継ぎとして生まれた。
女である事実を隠し、男の格好をさせられ、男として育てられた。
別に抵抗はなかった。
しかし幾ら男の様に振る舞おうと、自分が女だという事実は変わらない。

そして、いつしか自分の身体に嫌悪感を抱く様になった頃、第二子に弟が生まれた。
…同時に世継ぎとしての立場を失った。

父は言った。
"女に戻れ"、と。

今更だった。

ずっと母や周りの女達を見てきたから知っている。
あんなのは嫌だ。あんな惨めな生き方をする位なら…

31ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/11(金) 01:38:43

―――…

『げほっ…ッ』

ごぼり、と生暖かいものが口から溢れた。

胸に違和感を覚え、手を辿らせれば、そこに剣が突き刺さっていることを知る。

『ドウせ…なら、頭ヲ狙ってくれよ…。イタイじゃ…ないカ…』

痛みで僅かながらに正気を取り戻したのか。ゼツはそう切れ切れと口から声を絞り出す。
頭の中にはうっすらと、昔の記憶が浮かび上がっていた。

…そうだ。あんな生き方をするくらいなら、死んだ方がましだと思ったんだ。


しかしそれに反し、闇に捕らわれた身体はしぶとく、中々ゼツを死なせてはくれない。

ゼツは更に刃に体重を乗せる。
ズブズブと身体が沈み、足元に血溜まりが広がった。

『…世話を焼かセテ…すまナかった…』

32ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/07/11(金) 16:37:49
【バルクウェイ】

「へへ……散々痛い思い、させられたからな……仕返し、だ。」

吐き出された血塊を浴び、血に染まる頬を歪めながら、ヴァイトは声を絞り出した。

「宇治金時、奢れよ……それで、チャラに、して……やる。」

既に右手は剣の柄から離れ、力無く地に落ちている。

生暖かい筈の血溜まりの温度すら感じない程に、身体の感覚も薄い。

しかし、まだ死ぬ訳にはいかない。

体重を掛け、刃に身を沈めるゼツの身体と、自身の身体が重なり合った瞬間。

ヴァイトは持てる力を振り絞り、起き上がった。

(貧乏クジ引くのもこれで最後だ、お前は死なせねぇ……)

起き上がり、片膝立ちの状態でヴァイトはまず、自身の胸に突き刺さっている十字手裏剣を抜き捨てる。

傷口から一気に血が溢れ出すが構わない。

続いて、仰向けに横たわらせたゼツに突き刺さる刃も抜き捨て、上着のポケットを漁る。

あった、奇跡的に割れていなかったアンプルが一本。

アンプルの蓋を指で弾き、中身を煽る。

しかし、飲み込む事は無い。

アンプルの中身、細胞活性剤はあまりにも強力だ。

常人が服用したとしても、その効果に身体が、細胞が耐えきれずに逆に崩壊してしまう。

言わばヴァイト専用の劇薬なのだ。

(なら、薄めて使えば良いんだろっ)

薬剤を嚥下する事無いまま、ヴァイトは横たわるゼツに覆い被さった。

そして、そのまま唇を重ね、口移しで薬剤をゼツの咥内へと流し込んだ。

33 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:24:57
【過去】

ダサくて、小汚くて、礼儀知らずな芋男。私にとってのあの人はそんな印象。
ただ自分を馬鹿にした態度が許せなくて、何としても謝らせたくて、結果的に私はあの人に付きまとった。

あの人の部屋にはいつも鍵がかかっていなかった。だから私は何の断りもなく部屋に入る。突然押しかけてもあの人は気に留めないし、ご丁寧に例の極薄なお茶も入れてくれた。

「どう?今度こそ完璧でしょう?」

言って私は芋男の前でクルリと回って見せた。
生地が高価だと指摘され、下町の洋服店で質素な服を手に入れた。
香りが気になると言われたから香水もつけていないし、化粧もやめた。
芋男は町娘になりきる事が出来たなら町を案内してくれると約束してくれた。私は目を輝かせて芋男を見た。

「んー…」

しかし、これでもかってくらいに地味に仕立ててきたのに、芋男は渋い顔をする。
そして、自分ではどうしようもないことをいってきたのだ。

「髪が…」

私はハッとして自身の髪に触れる。
私の髪は色素の薄い金色で、とても目立つのだ。何か問題があるのかも。
しかし落胆の色を見せる私に、芋男はケラケラ笑ってきた。

「冗談だよ。君みたいな見事な髪色をした子はそうそう町にはいないし、目立つのは事実だけど、町にはお貴族様のお手付きで生まれた子だっているし、問題ない。」

最後の方は意味が理解が出来なかったが、取り敢えずからかわれた事だけは分かった。
私は顔を真っ赤にする。
しかし芋男はそんな様子に更に笑いを深めていく。

「知らない!」

いつ会ってもからかって、本当に嫌な奴。
完全に気を悪くした私は「帰る!」と叫んで部屋を出ようとする。

「ごめんって」

しかし芋男はそんな私の手を掴んで引き止める。

「綺麗だから触れてみたかったんだ。君の髪、とても素敵だよ。美しい君によく似合う。」

耳に心地よい声で、私を見つめる優しい紫の瞳。
その笑顔に引き込まれそうになり、私は慌てて顔を逸らした。

「貴方、嫌い。いつも私に意地悪をするんですもの。」

「僕は君のこと好きだけど。」

「ほら、そうやって…」

からかわれて、大嫌いなのに、離れられない。
どんなに意地悪をされても結局は許してしまうのだ。彼には、そんな不思議な魅力があった。

34リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:25:53
【バルクウェイ】

(えっ…)

あまりに突然の事態にリマは思考が追いつかなかった。
食い込んだ肩からは痛みがあるはずなのに、それよりもリマはアブセルの行動が理解出来ず頭が真っ白になっていた。

何の抵抗と為されぬまま、リマはアブセルの餌食になろうとしていた。
そこへ、アブセルへと斬撃が襲いかかる。
何が起きたのか定かではないが、アブセルの呻き声と共に身体が軽くなった。と、同時に彼女は何者かの腕の中へ。

(誰…?)

此処には自分と、アブセルしかいないはず。
リト…のはずもない。
ならこの場に誰がいるのか、混乱するリマに一つの答えが浮かんだ。

「セィちゃん…?」

闇に紛れ見落としていたが、確かに、セナの氣を感じる。
自身を抱き寄せる感覚もセナのものだ。
途端リマは涙が溢れてきた。

「セィちゃん…セィちゃん…っ」

本当は怖かった。目も見えないし、何も感じない、怖くて仕方ない、でも、リトを助けたくて。
唯一の支えだったアブセルが豹変してしまい、絶望した。
我慢していた感情がせりあがり、リマは嗚咽を漏らしながらセナに抱きついた。

35リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:31:51
ヤツキ>>おぉ、同じになった!トリと言うのか!サンクス!!

イスラ>>
身だしなみより楽を選ぶ方なようです(笑)

お転婆なら精神病みそうにないけどなー、おかしいなー←
てかアブセルの過去話に涙(ホロリ
チビリト出てこないかなぁと期待してるのに出る気配がない(笑)
リトに会って友達になるトコはないんですか??(ワクワク

36サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 13:49:14
【バルクウェイ】

異形と戦うメイヤの姿を、サンディは屋上から見つめていた。
その眼下では、レックスやシンライジの者達が魔物と交戦している様が窺える。

…みんな戦っているのに、こんな時に自分は何をやっているのだろうか。
いつも護って貰ってばかり、人に頼りっぱなしの自分が嫌になる。
本当は自分だって…。

「行きたいんだろう?」

不意に後ろから声がかかった。
直後、肩を軽く叩かれる。煙草の臭いが鼻についた。

「行ってきなよ、こいつ(アリア)はおじさんが見とくから」

ディンゴだった。

ディンゴはいつもと同じへらりとした笑みを見せると、サンディの横に屈み込み、横たわるアリアの腹部に手を置いた。
するとどう言う訳か、損傷した臓器ごと、彼女の傷がみるみると回復していく。アリアの顔に生気が戻った。

「あなた…異能者だったの…?」

その一部始終を目の当たりにしたサンディは、驚きを隠せない様子で目を丸くする。
ディンゴは首を横に降った。

「いんや、これはおじさんの嫁さんだった人の力だ。ついでに、嬢ちゃんの傷もさっき治しておいた」

確かに、脇腹の痛みは引いていた。恐らく肩を叩いた際に、傷を治癒してくれていたのだろう。

「礼はいいよ。おじさんはおじさんのやりたいことをやったまでで…嬢ちゃんも嬢ちゃんでしたいことをすればいいんだから」

最早この状況では敵味方の肩書きは意味をなさないだろう。
にかりと笑うディンゴに向け、サンディは力強く頷くと、その場から駆け出し、屋上から宙に飛び出した。

37サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 14:01:23

さくり、と巨大な刃が少年の延髄に突き刺さった。
動きを止めた少年が大きな悲鳴を上げた次の瞬間、その頭部は勢いよく弾け飛ぶ。
それと同時に、その首元からは毒素を含んだ大量の闇が吹き出し、上方にいるメイヤを呑み込まんと襲い掛かる。

「メイヤ!」

けれどもそれは、一枚の障壁の存在によって阻まれた。
メイヤの眼前に飛び出したサンディが、二人を覆うようにして炎の膜を張っていたのだ。
そして、その背中には虹色に輝く半透明の薄い羽根が広がっていた。

サンディはメイヤと目が合えば、若干気まずそうにしながらも、照れ臭そうに舌を出した。

「えっとぉ〜……来ちゃった…」

38イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 14:05:19
【ヤツキ》と言うわけで、ディンゴの力は傷の肩代わりです。
今回でどのみちディンゴは死ぬ予定ですが、ゼツとアリアは生存させようと思います(と言っても今後、登場することはないでしょうが)
ヴァイトもディンゴの力で救おうと思えば救えますが…どうしましょう?


リマ》芋のくせに何と言うプレイボーイwwてか…あれ?もしかして芋男のお子さんってあの人達じゃ…?
本当お転婆wまぁ感情豊な分、傷つきやすい…のかも?

あれで彼がリトに執着する理由を何となく分かって頂ければ^^
それなんですけどねー、人様のキャラを含めた過去話を勝手に考えるのは、やっぱ厚かましいかなーって思って…】

39メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/14(月) 18:50:39
【バルクウェイ】

切り落とした首から噴き出す毒霧に、メイヤは咄嗟に腕で顔を隠すも、毒霧が掛かる事は無かった。


何故なら、眼前に飛び出して来た少女……サンディが障壁を張って防いだからだ。

「サンディ……何故?」

薄く輝く虹の羽を羽ばたかせ、照れた様に笑うサンディへメイヤは疑問の声を掛ける。

しかし、驚いている暇は無い。

チラリと視線を変えれば、煙草を吹かすディンゴの姿が見えた。

(あのオッサン、助けてくれたのか……)

障壁越しにディンゴへ会釈を投げ、メイヤは翼を大きく広げる。

漆黒の大翼と、虹色の羽。

決して交わる事は無いが、並び立つ事はあっても良いだろう。

「……来たなら帰れとは言わない。

その代わり、アレを倒すのを手伝ってもらうぞ?」

照れ笑いのサンディへ苦笑いを返し、メイヤは続ける。

「アレは俺と同じく闇を力の源としてる。

街が闇に染まる今、生半可な攻撃じゃあ倒し切れないだろう。

倒すなら、最大火力で押し切るしかない。

再生する暇を与えない程の連続攻撃、〆は任せた!」

そして、メイヤは再び翼で大気を叩き急降下。

それと同時に闇で鎧を形成し装着。

再度被った犬面の下、漆黒の瞳に燐光を宿し、首を無くした巨人へとすれ違い様に刃を一閃。

更に、闇色の巨刃を切り替えし二閃三閃し迅雷の如きスピードで敵を斬り刻んで行く。

そして更に、絶える事無い連撃を浴びせながら周囲の闇を操作し、生み出された漆黒に輝く螺旋の星々が、刀槍の暴雨を吐き出した。

イスラ》了解した!んだらばヴァイトもお願いして良いすかね?

ゼツに薬を譲って死ぬ寸前のヴァイトの前に……てな感じで。

40リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/14(月) 23:55:08
【バルクウェイ】

意味の分からない鯨に、見るからにヤバそうな闇の穴。
この中にリトが落ちたと言うし、助けにいこうとすればセナに邪魔者扱いされるし、セナは消えるし、その場にいた怪しげな黒マントの男には説得されるし、その隣のチビは何か偉そうに物言ってるし。

「あぁーッもう面倒くさい!!」

色々な事が一片に起きて収集がつかなくなったナディアはいきなり発狂したかのごとく叫んだ。彼女の額には青筋が浮かんでいる。

「もう知らん!!」

言ってナディアは手を宙に仰ぐ。
瞬間、ポツ、ポツと空から雫が落ちてきて、見る間に大降りの雨となった。
その範囲はバルクウェイ一帯を包むもの。

「要は闇が原因なんだろ?!まとめて成敗してくれる!!」

ナディアが降らせたものはポセイドンの力。闇を削ぎ落とし、その威力を奪うもの。
同じ神の力を持つ者達にとっては力を増幅する恵みの雨だが、闇は敵味方関係なく貶める。ナディアにはどうでも良かった。

「物騒なものを…」

ノワールは呟き、闇で具現化したパラソルを掲げる。力をパラソル一点に集中させたため、その部分のみナディアを力を相殺する結界となる。ただし、力は消耗されるためいつまで続くかは分からない。

「そなた、力尽きて朽ちるぞ」

彼女の雨は闇の勢力を奪うのにうってつけだろう。しかし、何分広範囲に力を及ぼすため、彼女自身無事では済まないだろう。

しかしナディアは聞く耳持たず、雨を更に強力なものへと変えた。

41リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/15(火) 00:02:26
↑ナディアの間違いだった…

イスラ>>
プレイボーイな芋(笑)でも彼は天然です(笑)
ん?何か言いました(・▽・)?
感情豊かな分傷つきやすい…のか?←
そしてリトママの性格が子供達誰一人として似ていない件←

アブセル、友達が欲しかっただけなのに何故リトを友達以上に思っちゃってるんだ←
えー!全然構わないので是非出してください!!今か今かと待っていたのに(笑)

42アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:20:34
【バルクウェイ】

『やだやだやだやだ、行かないでリト…!僕を一人にしないで!』

真っ暗な意識下の中で、誰かが泣いていた。
どうやらそれは幼い少年の様だ。

『リトがいないと駄目なんだ…、一人ぼっちはもう嫌だ…!』

そうだ…。あれは自分だ。
そしてこの情けないのが自分の本音だと言うことも、アブセルは知っている。

『リトは僕のものだ。僕だけのものだ!誰にも渡さない、どこにも行かせない!ずっとずっと一緒に―…』

――…


誰だ、邪魔をするのは…。

痛みに顔を歪めながらも、動かした視線の先。獣の如き眼光を煌めかせ、アブセルは新たに現れた人影を見た。

それが誰かを認識するよりも早く、身体は動いていた。アブセルは地を蹴り、その人影に飛び掛かる。

…が、

「……!」

直後、彼は目を見開いた。

闇と相反するポセイドンの血を口にし、邪気が薄れたせいかもしれない。
とにかく、振るった鉤爪は相手の鼻先で制止し、アブセルは前傾姿勢のまま、その動きを止めた。

「…リ…ト……」

よく目立つ金の髪に、人形の様に整った顔立ち。長い睫毛の下に見えるのは、冷たい印象が艶を思わせる目許。
アブセルはその顔をよく知っている。

43アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:22:25

自分の中に、どうしようもなく幼稚で、自分勝手で、愚かな感情があることは知っていた。

リトを誰かに取られるのが嫌だった。
旅をして、リトの周りに人が増える度に不安になった。いつか見捨てられてしまうんじゃないかと怖かった。

そして、そんな下らない独占欲の元、リトを屋敷に戻した結果が今のこの状況だ。

アブセルは視線を動かした。
彼に泣きすがり、その腕に抱かれるリマの姿を見た。

『…どうしてリトはその人に優しくするの?どうしてリトは皆に優しいの?
どうしてリトは大切なこと、僕に何一つ話してくれないの?』

頭の中で声が聞こえる。

『どうして?どうして?どうして?どうして?』

「う…」

不意に、アブセルは震える手で腰に下げる剣の柄を掴んだ。
その刃を一気に引き抜き、勢いよく両手で振り下ろす。

「うるっせえぇッ!黙ってろ、俺!!」

そして、その刃を己の太股に突き刺した。

それはジーナに貰った剣だった。以前は抜けなかった筈の鞘が、なぜ今抜けたのかは分からないが、とにかく今のアブセルにはそれを考える余裕はなかった。

足を傷つけて置けば、例え暴走しても上手く動けないだろうと、抑止の為に剣を突き刺したのだったが、アブセルは気力で自我を取り戻した様だった。

「…ごめん……リト…、ごめん、ポセイドンの姉ちゃん…」

口から荒い息を吐きながら、アブセルは力が抜けた様にその場にへたり込む。
何故だか涙が止まらなかった。

44サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:24:04
【バルクウェイ】

「任せて!」

メイヤの声に頷き、サンディは額に円を…日輪の印を描き、力を解放する。
光輝く無数の勾玉が彼女の周囲に浮かび上がり、その一つ一つが熱を帯び始める。

その一方で、メイヤの連撃によって、今や異形の少年はボロ布の如くズタズタに引き裂かれていた。
更にそこへ、不意にポツリと空から落ちてきた雫が異形に当たる。

恐らく、ナディアの力なのだろう。
次第に雨足を強くするそれを一身に浴び、異形は苦しそうに身を捩らせた。

今が絶好のチャンスだ。

「二人とも…ありがとう」

サンディは目を瞑り、腕を広げる。
途端、勾玉が一層強く輝きを放った。その中心にいるサンディは、まるで小さな太陽の如く、異形に光を降り注ぐ。

不意に、異形の身体に火が点った。かと思えば、それはあっと言う間に全身に広がり、そして激しく燃え上がる。

炎は闇を浄化し、かつて少年だったその闇は、ものの数秒で塵も残らず焼き祓われた。

45イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:28:49
【ヤツキ》了解です^^
イスラ&ワヅキの方ももう1レス一人芝居するので、イオリンもうちょっと待ってて下さい;

リマ》天然とかますます質が悪い(笑)
いや芋男がジルに似てるな〜→もしかして親父!?(;゜Д゜)…と思っただけです←
傷つきやすいんです!←
それは…気にしたら負けです(笑)

本当、なんでだろう?(笑)
マジで!?それは申し訳ない…。でもやっぱり難しいんですよ〜;例えばアブセルがリトに「友達になってくれ!」と言ったとして…で、それに対しリトがどんな反応を返すか…とか、自分じゃ全然分からない訳でして…】

46ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 22:08:45
【バルクウェイ】

「もう今はそんな格好をする必要もないんでしょう?
たまの休日くらい女の子らしい服でも着たらいいのに」

いつだったか、アリアは言った。
それは確かアリアの家のテラスで、二人
で紅茶を飲んでいた時だったと思う。

彼女は上品な白のワンピースを着て、ゆったりと席に腰を落としていた。
多分自分はいつもの、真っ黒な忍装束を着ていたのだろう。

「これが落ち着くんだ。それに…」

ゼツは言う。
そして彼女から視線を逸らした。

「似合わないし…」

僅かに頬を染めるゼツの姿を見て、アリアはおかしそうに静かに笑った。

――…

なぜ今、その時のことを思い出したのかは分からない。

だが、自分も死にかけているくせに、必死になって他人を助けようとしているヴァイトを見ていたら、何となく思い出した。
そして何となくおかしくなった。

音を立てて薬剤が喉を通り過ぎる。
意識が朦朧とするのを頭のどこかで感じながら、ゼツは唇を動かした。

「君は…」

面白いな。

最後の方は音にならなかった。
ゼツは微かに口許を持ち上げ、そして静かに目を閉じた。
その心臓は確かに鼓動を続けていた。

47ディンゴ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 22:10:43

「…口付けで女の子を助けるだなんて、メルヘンか少女漫画の世界だけかと思ってたよ」

そこへ、不意に男の声が届いた。

煙草を口に、大理石の床を踏み締めながら歩くディンゴの姿がそこにあった。
その腕には、どうやら気を失っているであろうアリアの姿もある。

「悪い、悪い。もうちょっと早く来られれば良かったんだがー…思いの外アリアが重くてな」

そう冗談めかして笑うディンゴの足元には、血が滴っていた。黒い上着の下に見える白いシャツには血も滲んでいる。

しかしディンゴはそんなこと全く気にしていない様子で、アリアを床の上に下ろし、ヴァイトの横に屈み込む。そして彼の腹に手を翳した。

「死ぬなよ、いいな?これは隊長命令だからな」

淡い光を灯しながら、ヴァイトの傷がみるみると回復していった。

48リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/16(水) 23:48:17
【バルクウェイ】

それが誰か、などどうでも良かった。
リマの氣を辿り行き着いた先には彼女に牙を剥く男の姿。
彼女を傷つける者は誰であろうと赦さない。排除する、それだけだ。

セナの翳した手から稲妻が迸る。
その光によって照らされた彼の表情に、リマは顔色を変えた。

「駄目!!」

リマは咄嗟に彼の腕を掴む。
彼女が目にしたもの、それはかつて黒十字であった彼が見せていた冷めきった、無慈悲な瞳。
彼はアブセルを殺める気だった。有無を言わさず、その息の根を止めようとしていたのだ。

リマはアブセルのもとに駆け寄る。

「アブくん!大丈夫!?」

彼は刀を自分へと刺した。酷い怪我だ。
リマは血の臭いと感覚を頼りに患部を探り当て、治癒を施す。
その姿から、彼女の頭には既に先ほどアブセルに襲われた事実など残っていない事が伺える。
彼女にとって目の前にあるものが重要なのだ。

「自分を傷付けるなんて…何てことするのよ……」

49リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/17(木) 00:03:15
イスラ>>
質が悪いとか(笑)でも確かに自覚がないと危険ですね←
おぉ!!はい、ジルは父親似です(´∀`人)

なるのかぁ(笑)
気にしたら負け、分かっているけど気になるところ←

やはり生まれ持った変態の血が…←
あぁ成る程…残念です(泣)
リトは多分、友達申請されても無言でしたでしょうね(笑)
完全無視で黙々とナディアから貰った積み木あたりを弄ってて、アブセルが撃沈した所で不意に積み木の一角を渡したと思います。一緒にやれば?的な意味で←
んで次会いに行った時はナディアから貰ったジグソーパズルあたりを組み立ててて、これまた無言でアブセルにピースを渡すのでしょう。手伝え的な意味で←←
口はきかないけど一応無下にはしない、と言った感じかと←
リトは暫くナディアに対してもそんな感じだったので其処はご愛嬌(笑)

50メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/17(木) 21:15:01
【バルクウェイ】

その姿、正に天を照らす大神。

日輪を額に宿し、勾玉を纏い闇を焼き祓うサンディを、メイヤは犬面越しに見つめていた。

しかし、それも僅かの事。

雨から身を守る様に建物の影へと移動し、メイヤは面を外す。

降り出した雨は闇と戦う者には援護となったが、闇を使役し力とするメイヤにとっては毒であった。

貪欲に蠢く、自身に宿る闇を抑え、静かに息を吐く。

この雨は恐らく、ナディアが降らせているのだろう。

(街全域に雨を降らすなんて……長くは保たないぞ……)

強気な彼女の事だ、力ずくでも止めさせないと限界が来るまで力を使い続けるだろう。

どこに居るかはわからないが、制止の声を掛けるべきだ。

闇を宿す者にとっては毒となるポセイドンの聖なる雨も、闇を顕現させなければそれ程のダメージにはならない。

雨粒が身を刺す僅かな痛みを感じながら、メイヤはサンディへ声を掛けた。

「この雨で魔物と闇の動きは大分制限されている筈だ。

後は兄の雇った傭兵と俺が何とかする、だからサンディはナディア達と合流してくれ。」


【イスラ》了解した!】

51アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:12:15
【バルクウェイ】

アブセルは未だセナとリトを同一視していた。
よって彼が向ける殺意の理由もどこか勘違いしたまま、迸る稲妻に照らされたその表情を見た。

(も…ものすごく怒ってらっしゃる…)

無理もない。
自分はリトにそれだけのことをした。
寧ろリトになら殺されても良いかなぁ…等と地味に死を覚悟した時、不意にリマの声が耳に届いた。

「え…?あ…」

彼女は自分を庇ってくれたばかりか、傷の治癒までしてくれた様で。
そこでアブセルはハッとする。

「て言うか、姉ちゃんこそ怪我が…、俺、思いっきり噛んじゃって…」

リマの肩には血が滲んでいた。衣服も牙によって穴が空いてしまったし。
アブセルは申し訳なさそうにしながら言った。

「ごめん…、痛かった…よな…?」

52ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:13:52
【バルクウェイ】

ポセイドンの力を持つこの女性、言動やスタイルはリマとは似ても似つかないが、我が身を顧みず無茶をするところは彼女にそっくりだ。

しかし、その清めの力は流石と云わざるを得ない。

降り頻る雨が身を濡らし、それに伴い刺すような痛みと力が抜けていくのを感じるが、ジュノスは構わず、不意にナディアの腕を掴んだ。

「お止め下さい」

そして言う。

「街の闇を除去するだけなら、もう充分な筈です。これ以上は貴女の身が持ちません」

街に滞留する闇はその殆どが雨で洗い流され、深淵から放出される闇も今は弱まりつつあった。
あとは魔物の残党を退治すればいい。

「貴女は一先ず休まれた方がいい。
あとは私達に任せて下さい」

こちらが話しをしている間、アグルやフィアは、ずっと周辺の魔物の相手をしてくれているらしかった。
セナ達のことも心配だが、自分は自分で今でき得ることしなければ。

53イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:17:31
【リマ》無意識で何人もの女性を落としてそう(笑)
やっぱり親子だったのか!リト家とジル家にはそう言う繋がりがあった訳ですね

それぞれ個性豊かで良いことじゃないですかw

血のせいか!納得←
むしろリマさん直々に過去話に付き合ってくれないかなぁ…←
なるほど、飴と鞭の使い方をよく心得ていらっしゃるwwそれに対しアブセルは…
鞭)しょぼーん(´;ω;`)リトぉ…

飴)パアァ…(*;∀;)リト…!
…な感じだったことでしょう(笑)】

54イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 20:58:49
【バルクウェイ】

戦況は思わしくなかった。

数々の神器の猛襲。
バロンの肉体ということで下手に攻撃を与えることも出来ず、何より異能を無効化するあの剣の存在が一番厄介だった。

「……ッ!」

打開策を見出だせぬまま体力だけが疲弊し、イスラはワヅキが放った衝撃波に圧され、建物の壁に叩き付けられてしまう。

そこへ、間髪入れずに飛んできた小刀が右前腕、左掌を貫き。更にもう一本、腹部を貫通し、壁に突き刺さった。

「がは…ッ」

イスラは思わず握っていた刀を落としてしまう。
何故だか力も使えない。
どうやら腹に突き刺さる剣は、あの異能を無効化するものらしい。

「虫の標本の様で素敵になったじゃないか」

壁に磔られた様な彼を見て、ワヅキは愉快そうに笑う。
そして、身動きがとれないであろう相手に向け、掌を翳した。

「なかなか頑張った様が…これで終わりだ」

幾数もの漆黒の槍がワヅキの周囲に浮かび上がる。

「止めろ、ランダっ!」

それはバロンの叫声を引き金に、イスラに向けて一斉に殺到して行った。

【ヤツキ》やっと一人芝居終わった…;お待たせしてすみませんでした。イオリん後戦闘にお付き合い下さいm(__)m】

55ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/07/19(土) 13:52:38
【バルクウェイ】

口移しした薬剤が確かに嚥下された事を感じ、ヴァイトは安堵した。

それと同時に体力の限界が訪れ、ヴァイトは力無くゼツの隣へと倒れ込む。

隣の彼女が何かを呟いたが、それすらも聞き取れ無い。

確かにわかるのは、ゼツの命は救われたと言う事だけであり、ヴァイトにとってはそれだけで良かった。

(あぁ……疲れた、な……)

そして、薄れゆく意識を手放し、多分きっと起きる事の無い眠りに身を委ねようとしたその時。

不意に聞こえた声に意識が反応し、痛みが薄れるのに反比例し意識が明確になって行く。

「なん、だ……?」

しかし、それが何故だか分からないが、ディンゴが側に居るのは不思議と分かった。

「オッサン、なんで……?」

だが、そこまでだ。

明確となった意識もすぐに沈んで行き、ヴァイトは意識を手放した。

56リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/20(日) 20:41:53
【バルクウェイ】

「へ?…うん、大丈夫だよ」

謝罪の言葉を述べるアブセルにリマは何のことかと瞬きするも、すぐに笑顔を浮かべる。
アブセルに噛まれたことによる傷口は意外に深かったものの、リマはまったく気にしていなかったらしい。

「私はポセイドンだから傷の治りが早いの」

彼女の言葉通り、傷口は既に塞がりかけていた。
それより、リマはムスッとした顔をアブセルに向ける。
本当に、表情がコロコロと変わる。

「もう、こんな事はしないで。アブくんが傷ついても、誰も喜ばないよ。リッちゃんだって悲しむ。」

そこまで言ったところでリマは後からやってきたセナによって腕を掴まれる。
そのまま無言で連れて行こうとする彼にリマは必死に抵抗する。

「待って!セィちゃん嫌だ!!」

「お前は…!!」

突然の強い声。普段声を荒げることのないセナの思いもよらぬ態度に、リマは反射的に身を竦める。
そして、彼の言動に戸惑いを見せたのはリマだけでなかった。
セナ自身もまた、リマに強くあたってしまった事に驚き、自分の感情が理解出来ず困惑の色を見せる。彼女から手を離し、一瞬の間が空いた。

「ごめんなさい…」

分かっている。自分が無鉄砲な行動をとったからセナは怒っているのだ。リマはポツリと謝った。
しかし彼は誤解している。それだけは分かって欲しい。

「セィちゃん、この子、アブくんって言うの。ジュノスさんの子孫だよ。私達の敵じゃない。」

アブセルはリマを襲った。しかし、それは闇に犯されたせいで、決して彼の意思ではないのだ。

「…知っている」

彼はジュノスと同じ氣を感じる。アブセルがジュノスの関係者であることは始めから分かっていた。
そうではないのだ。彼女を失うかもしれない。そう捉えた途端、意思よりも先に体が動いてしまっていた。
誰であろうと関係なかった。彼女は分かっていない。

セナは言葉を噤んだ。
彼の何か含んだ言葉が気になったが、リマはそれ以上何も言わずアブセルに向き直る。

「アブくん、立てる?」

そして彼に手を貸して起き上がらせた。

「アブくん、セィちゃんだよ。リッちゃんのご先祖さん。」

57リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/20(日) 20:58:09
イスラ>>
話かなり逸れますが、今やってる黒執事アニメのEDのシエルがセクシー過ぎて何とも形容しがたい感情に襲われているのですがどうしたらいいですか←
何の覚悟もないまま見たせいでいきなり視界に飛び込んできた無造作に脱ぎ捨てられている服がインパクトありすぎて心臓バックバクですよ←←

無意識に女落としてくとか何ちゅう危険人物(笑)落とされた女の子可哀想←
ふふふ、実はそうだったんですよ〜
リトママとジル父にするか、リト父とジル母にするか凄く悩んだんですが、前者になりました。両家がそんな関係性ってのはもともと考えていたのですが。運命とか縁とか大好きなんで←
ジルと父の性格は意識的に似せたのですが、気付いていただけて嬉しいです(´∀`)
そして父はジルと違って特に女好きとかではないです(笑)

個性豊か過ぎて(笑)
あ、でもヨノはママの性格辛うじてかすってるかも?←

やはりあの血か…もはや何かのウイルスなんじゃ……←
はいっ!!過去話付き合いますっっ(^0^ゞ つか付き合わせてください!

アブセル面白い(笑)
その様子が容易に思い浮かぶw

58イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/20(日) 21:00:52
【バルクウェイ】

「終わるのはテメェだよ、この老害野郎。」

黒槍の群れがイスラを貫くべく殺到したその時。

不意に響く声と共に紅炎が舞い上がり、迫り来る全ての槍を焼き払った。

「最強と謳われた先々代を倒したって割には弱いんじゃねェのか?アンタ。」

そして、その声の主……イオリは熱風に黒髪を靡かせながら、背後のイスラへ声を掛ける。

「ま、一族を捨てて逃げ出した情弱なんざ弱いに決まってる。」

その声色には明らかな侮蔑が混ざっているものの、それ以上続ける事は無かった。

だが、壁に磔となっているイスラを助ける事も無い。

「世界政府の総提督であり、四神を導く筈の者。

初見だろうが俺が誰だかわかるよな?」

磔のイスラを放置したまま、イオリは前方のワヅキへ中指を立てた。

「シンライジ家当主であり四霊の一角である俺が、今からテメェを成敗してやるよ。

そんでもって、集めに集めた神器とその身体、全部貰い受ける。

拒否権はねェし覚悟も必要ねェ。」

そして、居合いの型を構え、

「遠慮せずさっさと逝けや!!」

前方へと倒れ込むモーションからの踏み込みで急加速。

たったの一歩で距離的を詰め、イオリは神速の斬り上げから続く袈裟懸け斬りの二連撃を繰り出す。

更に、燃ゆる刀身が描く超高熱の軌跡は炎を生み出し、焼き尽くさんとばかりにワヅキへと襲いかかった。

59サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:36:35
【バルクウェイ】

どうやら異形の闇は倒すことが出来た様だ。

そのことに胸を撫で下ろすサンディであったが、メイヤに、ナディア達と合流しろ。と言われれば、途端なにか言いたそうな視線を彼に向けた。

"あたしも…"と言いたかったが、その言葉は喉奧で止まり。
サンディは若干立ち去り難い思いを残しながらも、こくりと首だけ動かし、羽根をはためかせて宙に飛び立った。

そして―…

「姉御ー!!」

大きな穴ぼこの側、彼女の姿を見つけたサンディは、急いで空から地に降り立った。

「姉御!大丈夫だった!?」

何やら知らない人達の姿もある様だが、彼女はいの一番にナディアに駆け寄り、そして声をかけた。

60アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:38:33
【バルクウェイ】

リマは此方を心配してくれているらしい。
普段、その様な言葉をかけて貰い慣れていないアブセルは、呆気にとられて何も言えなかった。

そしてその後、まさかそれ以上の思ってもみない衝撃の事実を、リマの口から耳にすることになろうとは。

「え……」

アブセルは彼女の言葉を頭の中で反芻する。

セィちゃん…?
リトのご先祖?

…と、言うことは…?

(…リトじゃない!?)

それを理解した途端、アブセルは表情を一変させた。

紛らわしい…、て言うか似すぎだろ!
なんか勝手に勘違いして、一人で騒いでた自分が物凄く恥ずかしい…!
むしろ何で言われるまで気づかなかった自分!馬鹿なのか!?

混乱と面映ゆい感情に苛まれるアブセルであったが、そこでふと我に返る。

そうだ、そんなことよりも…

「じゃあ…じゃあリトは!?
まだ此所に居るってことだよな!?どうしよう!俺のせいで無駄な時間使っちまった…!」

61ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:39:49
【バルクウェイ】

迫る刃と超高熱の炎の軌跡。
しかし、それらが身に降りかかる前に、ワヅキの姿はそこから忽然と消えていた。

「君は…」

そして彼が次に姿を移したのは、イオリの後方、ガス灯の上。
ワヅキはそこからイオリを見下ろし、その顔に笑みを携えた。

「嬉しいね、来てくれたのか」

直接相見えたことはないが、イオリは元ビジネス相手であり、今は黄龍から離反しているであろう四霊の一角。

丁度いい。四神と共に彼の異能も回収して置きたかったところだ。

ワヅキはイスラの腹部に突き刺さる剣を自身の手元に転移させ、その切っ先を天に突き付ける。
すると、名のある数々の神器が顕現し、宙に浮かび上がった。

「わざわざ出向く手間が省けたよ」

槍であったり剣であったり、様々な種類の武具が、ワヅキの号令の元、イオリへと一斉に襲い掛かって行った。


――…

その一方、バロンはイスラの腕から小刀を引っこ抜こうと、奮闘していた。

「イスラ、大丈夫か?」

やっとこさイスラの解放に成功する。イスラはそのまま壁に背を預けたまま、ずるずると地に腰を落とした。

「ああ…だけど、流石に戦えそうにない」

炎で傷口を焼いて出血は抑えたが、動き回るのは難がある。

それはバロンも分かっている様で、苦々しい表情を浮かべれば、つと視線を動かしイオリを見た。
決して味方と言う訳ではないが、まさか彼にこの戦いの命運を託すことになろうとは。

62イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:44:27
【リマ》取り合えず落ち着こう←
自分も見てますよアニメ黒執事^^確かにEDなんかエロいww
サーカス編は漫画で斜め読みしたんですが、あの眼鏡メイドの見せ場が今から楽しみで楽しみでw

女の敵ですね(笑)
瞳の色とか性格とか、あとジル兄妹の生い立ちと芋男の家の事故の関連性でなんとな〜く気づきました。
運命いいですね^^自分も気づいた時、ハッ(゜Д゜!)と電流が走りました(笑)上手いこと考えるなあ…と。
でも以前、芋男の子供は三人いるって言ってましたっけ?
てかジルって女好きだったんだ?(笑)

確かにあの中では一番雰囲気が似てる…かも?

どうもジュノスがウイルスを撒き散らしてる様で(笑)
良いんですか!?ありがとうございます!
一応ぼんやりと過去話の流れ考えてるっちゃ考えてるんですが…てかむしろリマさんがシナリオ?進行させても良いんですよ!自分ついて行きますので!(`・∀・)

単純だけが取り柄ですからw】

63 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 19:35:37
【過去】

「お嬢様!」

屋敷の親しい使用人達に協力してもらい、こっそり部屋を抜け出して、こっそり部屋に戻ってくる。
そんな日々を繰り返していたある日、一番親しい侍女が入室の許可を取るのも忘れて部屋にやってくる。

「どうかしたの?」

「いらっしゃいましたよ、あの方が!」

侍女はとても嬉しそうに声を弾ませる。
何故なら、彼女の持ってきた情報が間違いなく、私を喜ばせることを知っているから。
私はすかさず鏡の前に立つ。

「ねぇ、おかしくない?何処も乱れてないかしら?」

「えぇ、お嬢様。いつもと変わらず、とてもお綺麗ですよ」

彼女の言葉を受け、私は早速部屋を飛び出した。
目指すは応接間へ。

「あ、いけない…」

そして、目的地が近付いたところで私は立ち止まる。
駆け足を止め、淑女らしい振る舞いで歩く。
そして応接間のドアをノックする。

「お父様?いらっしゃる??」

「ミレリアか、入りなさい」

入室の許可を得て私は内心嬉しくて飛び跳ねていた。
しかし高鳴る胸を隠すようにコホンと咳払いし、一呼吸置いてドアを開ける。

彼は、いた。
私の入室の気配に顔をあげ、対する私は彼を見ていたせいで目が会ってしまった。心臓が跳ね上がり、私は咄嗟に顔を逸らす。顔が赤くなっていないか心配だ。
しかしそれは私の取り越し苦労。彼はすぐに私から目を放し意識を父の元へ返してしまった。

「……」

私は少し残念な気持ちになりながら父親の隣に腰掛ける。
二人は仕事の話をしているようで、内容はさっぱり分からない。
しかし何もしないで座っているのも気まずいので、分からないながらも資料を取り上げてさも理解しているように振る舞ってみる。その間、こっそりと彼を盗み見るのも忘れない。

彼---その客人は私の家とは昔からの付き合いで…というよりは、遠い親戚にあたる家柄の子息。身分はそれ程高くはないけれど、父が絶大な信頼を寄せて仕事のパートナーにしている。
無口で無愛想、冷たく、近づき難い印象。これが周りの評価。
しかし私は違った。確かに印象は皆と変わらないかもしれないけど、他がそれを批判的に見ているのとは逆で、私の方は何と無く魅力を感じていた。癖のない黒髪に、切れ長の瞳は翡翠色。凛々しくて、素敵な人。
彼を見ると胸が高鳴って、とても幸せな気分になるのだ。

「ヨハン様!」

父親との会合が終わり屋敷を出ようとする彼へ私は声をかけた。……心の中で。

「次はいついらっしゃるの?」
「お時間がよかったら、私とお話いただけるかしら?」

言いたいことは沢山あるのに、喉のあたりまできているのに、言葉が詰まって言い出せない。

「またのお越しを」

結局私は見送りに出た母親と共に極一般的な挨拶を述べることしか出来なかった。
対する彼は軽く頭を下げるだけで屋敷を後にしてしまう。

いつもそう。
彼の前に出ると緊張してしまい、親しくなることすら出来ぬまま、日々が虚しく過ぎて行くだけだった。

64ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 22:34:54
【バルクウェイ】

「うっさいオッサン!」

ジュノスからの制止の声、腕を掴む彼の手を振りほどきながらナディアは叫ぶ。

「勢いが収まったなら好都合だ。このまま魔物共々洗い流してやるっ」

そして未だ術を解こうとはせず。半ば自棄になっていた。

しかしそれも長くは続かない。
姿を見せたサンディに驚いた様子で声をかけた。

「サンディ、下はもう大丈夫なの?」

65リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 23:06:28
イスラ>>
【これが落ち着いていられましょうかッ(*`□)。°。
軌道を描くように脱ぎ捨てられた服!コートまでは良かった!!だがしかし!!シャツだと!?ズボンとな!?これはもしや…もしや!!シエルは素っ○じゃないかーっ(///>□<)
やばいよシエル!ヤバイヤバイヤバイヤバ(ry
なんと言うことだ!シエルったらまったくけしからんもっとやれ!!
セバスが羨ましすぎる!セバスよそこ変われ私がやる!いえ、やらせてくださいお願いします!!シエルをタオルで拭き拭きしたい!私もギュッとしたい!!シエルまじヤバイ!!
ってな感じで鼻息荒くTVに張り付いて見てしまいましたよ← なんと言うことでしょう。まったく眼福にございます!!
思わずテスト前で黒執事のアニメ見れてない友達に「EDがヤバイ、シエルがマジでヤバイ」と発言してしまいました←←

メイリンは銃持ってる時が一番生き生きしてますしね(´∀`人)カッコいいし。

まったく、何人の女性を泣かせてきたのか←
勘がいいですね!狙い通りで嬉しいです(笑)わぁい♪自分はちょっとクドいかなと思ってました(笑)
あれ?3人って言いましたっけ?芋男の子供はもともと2人ですよ??一人増やします??←死者増やすだけですが←
口が滑った(笑)でも女好きってのは性的な意味でなく、可愛いし柔らかいから物理的に好きって感じなんですけどね(笑)暇潰しにもなるらしいです←

良かった、似てるのがいて(笑)

ジュノスウイルス怖ぇ…←
わぁい、宜しくお願いします!
でも自分はシナリオとか無理なんでイスラさんがお願いします(笑)

アブセルくんナイス(笑)

66イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/22(火) 23:49:08
【バルクウェイ】

虚しくも空を斬る刃と、獲物を見失いただ燃えるだけの炎。

(空間転移か?面倒くせェ……)

背後から聞こえる声に振り向くと同時に、イオリは刃を横薙に。

「わざわざ出向いてやったんだ、サービスくらいしてもらわねェとなァ?」

刃の軌跡に沿って巻き起こる猛火と爆炎が、襲い来る武具の群れを吹き飛ばした。

更に、返す刃で一閃二閃。

刀身に宿る炎から生まれた二羽の火炎鳥が、ワヅキへ挟撃を仕掛ける。

それに紛れ、イオリは疾走し、跳躍。

自らも背から炎の翼を生やし、上空からの斬撃を繰り出した。

67リマ、セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/23(水) 20:29:27
【バルクウェイ】

驚きを見せるアブセルとは対称的に、セナは全くと言って良いほど反応を見せない。

”リトはどこだ”

そんな彼の疑問もセナにとっては意味を成さず、何の言葉も発さぬままリマを連れてその場を去ろうとする。

「待ってセィちゃん!」

しかし、それをまたしてもリマが止めた。

「リッちゃんを探さなきゃ!まだ…」

しかし、彼女は言葉を言い終えぬまま、突然糸が切れたかのようにその場に崩れ落ちた。
言い知れぬ目眩と吐き気。全身が重く、力が入らない。

ここは闇の深淵。闇と対極に生きるリマにとって、この中は毒でしかない。
先程から不調は感じていたものの、まだ平気だと思っていた。アブセルへと治癒を施した事により辛うじて保たれていた均衡が崩れ、一気に疲労が押し寄せたようだ。

そんな彼女をセナは黙って抱き上げる。
リマは察した。

「セィちゃん!嫌だってば!!」

「お前はこの場にいるべきじゃない」

「リマがやらなきゃ!!」

リマには分かっていた。
セナにリトを助ける気などない。
彼にとっての目的は、ただ自分を連れ帰ること。

「セィちゃん、お願いだから…」

悔しい。こんな重要な時に力尽きてしまった、こんな自分が恨めしい。
リマは涙を浮かべながらセナの胸を叩く。

「……」

こんなに小さくて、臆病で、弱いくせに。
彼女は一度言い出したら決して譲らない。こう言う面ではとても頑固だ。
このまま無理にでも連れて帰ることは容易い。しかし、そうすればきっと彼女は自身を責めるだろう。
セナは観念し、口を開いた。
出来れば彼女に知られずに済ませたかったけど…
ずっと言えずにいた事実を彼女に告げる。

「探しても無駄だ。もういない。」

68サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/23(水) 23:59:45
【バルクウェイ】

「オッ…」

かけた言葉は彼女に一蹴されてしまった。
ジュノスは振り払われた腕を、所在なさ気に凍りつかせている。

その一方で、サンディはナディアの問いに笑顔を浮かべて答えた。

「うん、もう心配はいらないよ。姉御のお蔭」

だから、と不意にサンディは両手を伸ばす。
無茶はしないで欲しい、とでも言うかの様に、ナディアの頬を両の掌でそっと包みこんだ。

「ありがとう」

69ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:36:29
【バルクウェイ】

二羽の火炎鳥を水の力を宿した二つの戦斧で掻き消し、頭上からの斬撃には退魔の楯で防ぎきる。
転送術と神器の数々を巧みに繰り、ワヅキはイオリのに撃に応酬していた。

そして。

「ご所望ならば手厚く歓迎しよう」

そう微笑と共に口を開いた直後、イオリの横合いから巨大な龍が押しかかった。

そこへ更にワヅキは技を畳み掛ける。
胡瓶で水を、金剛杵で雷を、錫杖で風を、宝鐸で炎を。
それぞれが渦を巻いて絡まり合い、一つの半物質となったそれは、迷うことなく標的に向かって放たれた。

70アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:37:55
【バルクウェイ】

初めこそリマを気遣わしそうに見ていたアブセルだったが、不意に発せられたセナの声が耳朶を突いた。

「……どう言うことだ」

ゆっくりと顔を上げ、セナを見る。
一瞬にして頭の中が真っ白になった様に思えた。
耳鳴りが脳内をガンガンと掻き鳴らす。多分、呼吸をすることさえ忘れていた。

「…リトは…、死んだのか…?」

何故そんなことが解るのか、適当なことを言うなと、怒鳴り、セナに詰め寄りたい衝動を必死に抑え、アブセルは彼に問うた。

71イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:43:00
【リマ》ちょと待ってww吹いたww
既に素っ〇なのに、これ以上なにをどうもっとやれと言うんだwwいえ…まぁリマさんが楽しそうで何よりです(笑)
てか友達ww可哀想に(笑)
格好良かったです!もうメイリンが主役で良いんじゃないかな←

死後は明らかに地獄行きですね←
いやいや、くどくなんかないですよ〜^^今後の展開を楽しみにしてます!
死者増やさなくて良いですwそっか、自分の勘違か(笑)
あ、そう言うことなら納得。ペット感覚的な?てか暇潰しってなんぞ(笑)

ジュノスウイルスは後に空気感染して世界中に広まる予定です←
あら、そうですか?じゃあ皆に内緒でこっそりリトを屋敷の外に連れ出すのって有りですか?(「リト怒られろ、ふひひww」って感じのアブセルの嫌がらせ的な)←】

72ディンゴ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 14:19:41
【バルクウェイ】

愚かだったと思う。
本来ならば病で死んでいたのは、彼女ではなく自分の方だったのに。

病を肩代わりしてくれた彼女は、
「貴方はお巡りさんで、街の人を護るのが仕事でしょう?だからそんな貴方を護るのが私の仕事なの」と言って、よく笑っていた。

言いたいことは解ったが、理解は出来なかった。だけど、もの凄く申し訳ない気持ちになったのは確かだった。

政府から通達があったのは、その直ぐ後のことだった。
そこには異能者である彼女を容認し、充実した医療環境を提供する代わりに、暗部に異動して欲しいと記されてあった。
直ぐに脅しだと解った。だが、ディンゴは二つ返事で承諾した。

だけど、そうじゃなかった筈だ。
彼女はそんなつもりで病を肩代わりしてくれた訳ではなかったろうに。

転属したことも、その条件も、彼女には言えなかった。見舞いに行く時間も次第に減っていった。
彼女が命を投げうってまで与えてくれた時間を、自分はふいにしてしまったのだ。

―――…

この力は謂わば、彼女が自分に与えてくれた、彼女の生命力そのもので。故にその恩恵に与り、ディンゴは異様に傷の治りが早かったり、身体が丈夫だったりしたのである。
そして、アリアやヴァイトにそれを注ぎ込むことで、彼等の傷を癒すことが出来たのだ。

ディンゴはヴァイトの無事を見届ければ、うっすらと笑い、壁に寄りかかってその場に腰を落とした。

最後の煙草に火を点け、自嘲気味に笑う。

「あいつは…怒っているだろうな…」

まあいい、あの世で彼女に怒られるのも、それはそれで悪くない。
……いや、違うか。多くの人の命を奪った自分が向かう先は、きっと彼女とは別の場所だ。

己の命の灯火が消えかけていくのを、どこか他人事の様に感じながら、ディンゴは流れていく煙草の煙をくすんだ瞳で見つめていた。

そこで、不意にディンゴはハッと目を見張り、息を飲む。
かと思えば直ぐにふっと力を抜き、ゆっくりと宙に左手を伸ばした。
薬指のリングがキラリと輝いた。

「なんだ…迎えに来てくれたのか…」

そこには誰もいなかった。けれども彼の目には何かが見えていたのだろう。
その瞳と口許に小さな笑みを携えたまま、ディンゴは脱力した様に伸ばした腕を静かに地に落とした。

73イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/24(木) 15:30:16
【バルクウェイ】

神器の扱いは流石と言うべきか。

此方の攻撃を全て防ぎ切るワヅキに、イオリは舌を打つ。

それと同時に、横合いから飛び出して来た龍がイオリを吹き飛ばした。

「チッ!中々やるじゃねェか!」

しかし、吹き飛ばされながらも笑みを浮かべるイオリは空中で体勢を整え、着地。

そこへ、半ば物質と化した莫大なエネルギーの渦流が着弾し、大爆発が起きる。

その威力は凄まじく、地面は大きく抉れ、クレーターが出来上がる程。

轟音が爆風を揺らし、土煙が周囲を包み込む。

そして。

ゆっくりと土煙が晴れ、イオリは姿を現した。

「わざわざ出向いた甲斐があったってモンだな。」

黒髪は煤で汚れ、一張羅の上着はレザーパンツと共にボロ布と化している。

しかし、その身体には傷一つ見えない。

「ヴァジュラを筆頭にした数々の神器、凄まじい。

だが。

この魔装……分子レベルで最高位の防御術式が刻まれている逸品の前には少々見劣りすんなァ?」


何故なら、イオリはとある鎧を衣服の下に着込んでいたからだ。

ソレは十字界を創世したオリジンと呼ばれる存在が纏っていた物であり、100年程前に十三人の長老であるレオからヤツキへ、そしてユーリへと継がれて行った物と同種の装備。

「アイツのは蜘蛛をモチーフにした攻撃特化型、俺の蛇がモチーフの防御特化型。

劣化コピーだらけのこの世界でも数少ない正規品だ、テメェにはやらねーぞ?」

鱗鎧とも呼べるその鎧はまるで生きて居るかの如く蠢き、黒緑の鈍い輝きを放っている。

「さて、と。

テメェの異能は俺に届かなかった。

俺の異能もテメェにゃ届かねェ。」

鎧が持つ予想以上の防御力に自分自身で驚きながら、イオリは刀の切っ先をワヅキへ向け、唐突にその姿が消失。

「だが、俺の刃はテメェに届く!」

音も無く、気配も無く。現れたのはガス灯に立つワヅキの背後、二階建の屋上。

縮地方によって距離を詰める所か背後に回ったイオリは、再び疾走し、跳躍の勢いそのままに、ワヅキの背中へ刺突を繰り出した。

「逃がしゃあしねェっ!!」

74リマ、セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/26(土) 23:13:49
【バルクウェイ】

感情を抑えるように発せられるアブセルの声。
しかしその声音からは明らかに動揺の色が伺えた。
勿論、セナの発言に驚いたのはアブセルだけではない。

「どういうこと…?話して」

そう口に出したリマの声は震えていた。
真実を知るのが怖い。しかし、聞かなければ。
感情を紛らわすようにセナの服を掴み、彼の返事を待つ。

セナは言った。

「一体に氣が分散している。
力を全て吸い取られたようだ。」

能力者にとって、その力は魂に等しい。
普通に使う分は問題ないが、一度に失えばそれは致命的になる。
状況から判断し、リトはまず生きていない、そう考えるのが妥当だろう。

「ただ…」

気になる点がある。
深淵に降りる前に感じ取った氣は3つ。
うち2つはリマとアブセルのもの。1つはリトのものと思われたが、それは既に彼を起源としたものではなかった。
しかし、彼の氣が否定されたと同時に、微かではあるが、別の”何か”を感じた。そして、それは今も消えずに残っている。

セナはこのことを伝えるべきか悩み言い淀んだが、暫しの沈黙の後、口を開いた。

「…何かある。お前達の求めているものではないが。」

75リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/27(日) 00:01:52
イスラ>>
【Σ(゚д゚;)イワレテミレバ
素っ○で歩き回るとか?←大問題
そうだ!けしからん行動をもっと増やせばいいんだ!!←
友人には申し訳ないが辺りに吐き出さなければ自分の頭がどうにかなってしまいそうだったので←あれは体内に溜めておいたら大変なことになる代物です←身が持ちません、呼吸困難になります←←
ダメです!あのメイリンが主役だったらサバイバルアニメになってしまう(笑)

えー!女の子が勝手に惚れちゃうだけなのに地獄行きなんて可哀想←
良かったです(><) あ、増やさなくていいんだ(笑)

そうそうペット(笑)暇を持て余してる時や人肌恋しい時はテキトーに女の子を誘って遊びます。(色んな意味で)

ジュノスウイルス怖ぇ!世界が変態だらけになる…!!(ガクブル
あ、たのしそう!是非お願いします(pq´v`*)

76ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:03:37
【バルクウェイ】

舞い上がる土煙の間から見えるは、異質な鎧を身に纏ったイオリの姿。
しかし次の瞬間、それはワヅキの視界から忽然と消えた。
危険を察知した彼は咄嗟に空間を移動するも…。

「………ッ」

遅かった様だ。
その刃からは逃れられず、白地の衣には真っ赤な血が滲んだ。

「ただの人間の分際で…」

彼の顔からはいつもの笑みは消えていた。ワヅキは憎々し気にイオリを睨み付け、そして口を開く。

「私の異能が君に届かない…か。
ならば、やり方を替えよう」

言うが早いか、不意にワヅキの姿はそこから消えた。

それと同時に周囲に広がっていた街並みも消え失せ、そこにはブヨブヨと蠢くピンク色の壁が広がるばかり。
忘れていたが此処は鯨の内部。差し詰めこの部屋は胃と言ったところか。

そう理解した直後、肉の壁が四方八方から迫ってきていることに気づく。どうやら体内に入った異物を排除しようとしているらしい。
イスラは炎で壁を焼いてみるが、それは直ぐに傷んだ箇所を修復し、再生を為した。

「不味いな、このままじゃ皆まとめてぺちゃんこだ」

77アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:05:46
【バルクウェイ】

嘘だ、信じない。
真実をこの目で確かめるまでは。

セナの発言に対し、アブセルは苛立ちを露に歯噛みするが。しかし、こんな時こそ落ち着かなければと、直ぐに平静を努め彼に向けて口を開いた。

「…連れて行ってくれないか?
そこに行けばリトのこと、何か分かるかも…」

そこで不意にアブセルは言いさした。

「あっ…でも、ポセイドンの姉ちゃんは……」

一目瞭然だが、彼女は明らかに体調が悪そうだった。
強引に連れてきた身で言うのもなんだが、彼女だけは地上に戻した方が良いのではないだろうか。と、そんな意味の言葉を匂わしながら、アブセルはおずおずとリマに視線を向けた。

78アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:16:04
【過去】

あの日を境に周囲の人間も、身を取り巻く環境も、全てが一変してしまった。

大き過ぎるお屋敷も、そこで生活する見知らぬ人達も、夜一人で寝るのも、孤独を感じるには充分過ぎるものだった。

不器用ながらも祖父は此方を気遣ってくれていた様だし、親切に接してくれる人も居たが、けれどもアブセルは言い様のない心細さをいつも感じていた。
それは今までに積み重なった苦い経験が、彼をなかなか他人に心を許すことが出来ない性格にしていたせいもあったと思う。

未だ屋敷での暮らしに馴染めぬまま、まだ幼いアブセルは、身の回りの極簡単な手伝いをして日々を過ごしていた。

そして、そんなある日。坊っちゃんの部屋に食事を持って行って欲しいと祖父に頼まれた。

気は乗らないが仕方がない。
食事を乗せたワゴンを押して、アブセルは目的の部屋へと足を運ぶ。
ドアノブに手をかけようとしたところで、ふと思い出したかの様に形ばかりのノックをして扉を開いた。

「…食事、持ってきた」

愛想もなければまたそれを隠そうともせず、そう素気なく言って、彼は部屋の中に足を踏み入れた。

79イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:17:29
【リマ》
画面がモザイクだらけになっちゃうww
てかこれ以上けしからん行動を増やした場合のリマさんの精神が心配(笑)
呼吸困難wwそれはやばい(笑)
サバイバルアニメでもそれはそれで面白そう(笑)

彼女たちの気持ちに気づかないのも罪かな〜っと思って←
ジル…w本当に地獄に落ちるべきはジルなんじゃなかろうか←

世界中が変態だらけになったら…きっと楽しいよ←
ありがとうございます!過去話のレス置いときますね^^因みにアブセルはリトが闇の力を持ってるって事、まだ知らない設定でいきます】

80イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/28(月) 23:37:13
【バルクウェイ】

刃の切っ先に確かに感じた刺突の感触と、白地に映える紅。

そして、笑みが消え失せたワヅキの顔。

「ハッ!人間様を舐めてるからそんな風になるんだよ。」

それを見たイオリは邪悪な笑みを浮かべて毒を吐いた。

それと同時に、握る刀を一閃。

迫る肉壁へ炎刃による斬撃を繰り出す。

その威力は絶大……だったが、肉壁、巨鯨の胃はすぐさま再生して行く。

「チッ、面倒くせぇな……」

先程までの街中から、見渡す一面桃色の肉壁となった辺りを見渡し、イオリは邪悪な笑みのまま刀を鞘へ。

「だが、所詮はただの肉壁だろ。

ブチ破れば良いだけだ。」

代わりに抜きしは二本の神刀。

「世界創造すら成す力を秘めた刀に斬れぬモノはない。

太陽と月、重なり産まれるソレ即ち世界なり。」

重なり産まれるは一振りの神刀。

刃が纏うは世界創造すら成す程のエネルギー。

光輝く刀を手にし、イオリはソレを腰溜めに構え、踏み込むと同時に一閃。

次元すら斬り裂く刃はいとも容易く肉壁を、そして巨鯨の胴を半ばまで斬り裂いた。

「天叢雲剣、天羽々斬 ノ型。

この剣に、斬れぬモノ無し!ってな。」

81ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/07/28(月) 23:52:31
【歳食ったせいか最近涙腺が緩くて困る、ディンゴの最期切ねぇなー!

とと、ワヅキとの戦闘はどんな感じで〆る予定すか?     

バロンの身体はあんまり傷つけない方が良いよね?


添付は大分前に描いたイオリ。

imepic.jp/20140728/853220

82ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/29(火) 20:27:45
【バルクウェイ】

「そっか…」

”お陰”と言われても自分は特に何もしていない。
何かしていなければ気持ちが駄目になってしまいそうで、ただ闇雲に雨を降らしただけ。しかしその雨は少なからず役に立ったらしい。

ナディアの気持ちの変化から大降りの雨は次第に威力を弱め、消えていく。
術を解いたナディアの視線は深淵へ。

「サンディ」

そしてポツリと口を開いた。

「私の弟がこん中に落ちたらしい。
いることは分かってるのに私は中に入れない。」

リトを屋敷に置いて出て行ってしまったのがいけなかったのだろうか。私がそばにいたらこんな事にはならなかったのかも。

ナディアは乾いた笑みを浮かべる。

「何かしなきゃって思ってるんだけど、思いつかないんだ。」

それはサンディ達と行動を共にして初めて漏れた弱音だった。
本当はもっとやるべきことはあるだろうに、弟がいると言う穴の前から離れる事が出来ない。

「あんたも大変だったでしょ?なんか…助太刀とかしなくてごめん」


【そうだ!自分もディンゴの最期で胸が熱くなったんだった!!言うの忘れてた!!
もう素敵すぎてもう…!自分も感動的な文章書きたい!!

そしてなんか久しぶりにヤツキの絵見た気がする!
相変わらずメリハリ効いた力強いタッチで惚れる(。>艸<。)】

83ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/29(火) 23:57:02
【バルクウェイ】

「私も行く…!!」

リマは食い気味にそう、答えた。
気遣わし気なアブセルの視線と目が合い彼の意図を察したのだ。

「ねぇセィちゃん、リマは大丈夫だから!リマも連れて行って!!」

セナが見つけた”何か”はきっと、意味のないものなんかじゃない。
何故なら此処は”無”の世界だから。
異物は否応無く排除しようとする。自分でさえ、中に入って間もないに関わらず此処まで体力が削がれている。”それ”は普通であれば”存在し得ない”ものなのだ。

「……」

対するセナは黙り、考える。
リマを地上に戻したい。それが正直な気持ちだ。
しかし無理に帰したところで彼女が大人しく結果を待つという保障もなく、再び深淵へ飛び込もうものなら今度こそ無事では済まされなくなる。

「…時間は取らない」

ならば、自分の手元に置いている方が賢明だ。
ただし、現在のリマの状態では長いは出来ない。

セナは一言そう口に出せば、そのまま前方へと歩き出した。


------

右も左も、上も下も全て深い闇。
その中をセナは黙って進む。
これは先程自分たちがいた地点より奥へ進んでいるのか、はたまた前に戻っているのか、それすらも判断出来ない。そもそもセナは目的の道を把握して進んでいるのか、それすらも不安になる。

リマはふとセナの顔を見上げるも、暗いせいで表情が伺えない。
彼の腕に抱かれ、彼は間違いなく其処にいる筈なのに姿が見えず、何だか不安だ。
そっと彼の胸に顔を埋め、彼の存在を確かめた。

あれからどれくらい経ったか分からない。やがてセナは足を止めた。

「此処だ」

見るも、今までと全く風景は変わらず。黒一色。

「この場所…?」

リマは誰に問いかける訳でもなく呟いた。
此処に何があるというのか。

セナはそれ以上何も答えない。
希望の場所には連れてきた。あとは勝手にしろとでも言うかのごとく。

「アブくんら何か見える…?」

リマの視力は闇の中で自由が効かない。
対して闇の中でもある程度の視力の維持ができているアブセルへ、不安げに尋ねた。

84ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/30(水) 01:19:22
【バルクウェイ】

その凄まじい一撃は鯨の肉をいとも簡単に引き裂いた。

上方に裂けた割れ目から、バルクウェイの空…曇天が見える。
イスラ達は肉壁が再生を果たす前に、その割れ目から外に抜け出した。

…しかし急いで脱出する必要もなかったらしい。
見れば、鯨はその大きな口からけたたましい咆哮を上げながら尾びれを振り回し、苦しそうにのたうち回っている。

ナディアが降らした雨の効果で、深淵から供給される動力源である闇が断たれ、傷の再生に回すだけの力が残っていない為であった。
また、天叢雲剣の莫大なエネルギーは、鯨の胴を切り裂くだけに留まらず。その身体を内側から消し炭に変えていく。

鯨の巨躯は瞬く間にボロボロと崩れ、灰になって街に降り落ちた。

…そして、その一方。

「なん…だと…」

空間転移で外に逃れていたワヅキは、眼前で起こるその出来事を、愕然とした面持ちで見つめていた。

有り得ない。やっとここまで辿り着いたのに。あともう少しのところで長年の悲願を叶える事が出来たのに。

鯨はその野望の要とも言える存在だった。それを失ってしまえば、もう…。

茫然自失と言った風に脱け殻の様に放心するワヅキであったが、しかしそこへ、突如。猛烈な吐き気と目眩が襲った。
頭の中がざわざわと騒がしい。脳内を揺さぶられる様な感覚に、ワヅキは堪らず身体を折り、頭を抱えた。

「なっ…んだ…、これは…ッ」

"鯨"と云う居場所を失った異能者の魂が、身体を求め、ワヅキの中に押し寄せていた。
元々が神のものだったそれら魂は、彼の…神の身体に一番に引き寄せられる様だ。

そして一つの肉体、一つの人格に、それら多くの意識の集合体を堪え得るだけの容量はない。

「くッ…ァ…、は…入って…来るな…ッ。あっちへ行け…ッ!」

漠然とした、意識の渦に呑み込まれる。
自分と言う存在が消えてしまう。

85イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/30(水) 01:21:17
【あんな拙いものにそんな嬉しいお言葉いただけるなんて…恐縮です(´;ω;`)
自分はどこかで聞いたことがある様な文章しか書けないんですけどねww

ヤツキ》…どうやって〆ましょうかね〜←取り合えず今が反撃のチャンスですが

いや、傷つけても構いませんよ。バロンはもうずっと縫いぐるみのままでも別に構わないので(笑)
てかイオリがバロンの身体欲しがってたけど… どうなるんでしょう?

あと深淵組の方はまだ戻ってきてないけど、ワヅキ倒した後、もうシデン出しても大丈夫ですかね?

イラストup久し振りですね!もっとしても良いのに←
てか何かめっちゃ強そう、いや実際強いんですけど(笑)イオリはやっぱり格好いいですねぇ^^】

86ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/07/30(水) 10:54:08
【絵自体は1月辺りに描き終えてたけど、上手く加工出来ないかで半年程放置してたぽい……結局色着いてないしねww

リマ》切なくなる文章書けんから普通に羨ましいわ、リマの書く恋物語もね。

イスラ》dingoさんタダのオッサンじゃなかった!←

うーん、身体自体は紆余曲折してバロンの下へ、とか考えてたんだけど……

力や魂、神器を制御仕切れなくなって暴走→臨界点超えたら街一つ消し飛ぶぞヤベェ→そうなる前に倒す

とかどうでしょ?

シデンさんは深淵組帰還前の登場でも大丈夫、かな?】

87イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/30(水) 21:11:09
【ヤツキ》上手く加工できない→放置>あるあるww
今度は着色したバージョンのをぜひ!

そう、dingoさんはやれば出来るオッサンなんです(笑)

じゃあ今回の戦闘終わったらイオリがバロンの身体かっさらってく、って感じですかね?
なるほど、じゃあそれでいきましょう^^

何やら返答が煮え切らない様な(笑)何かお考えでもあったのですか?】

88イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/30(水) 22:13:44
【バルクウェイ】

「えっと…」

リマに尋ねられたアブセルは、周囲をキョロキョロと見渡し、目を凝らしてみる。

しかし…

「…何も見えない」

辺りに広がるのは闇一色。
人影どころか、それ以外のものも何も見当たらない。

「本当に此処なのか?」

一体セナは何を感じたと言うのだろうか。
アブセルは怪訝な顔で彼に問いかけた。


【ヤツキさんに触発されて自分も←

imepic.jp/20140730/793810
imepic.jp/20140730/793800

サンディとアブセルののプロフを改めて書いてみました。前の板のはもう見れないし…】

89リト:2014/08/01(金) 20:37:02
【過去】

部屋のノックの音と共に入るぶっきら棒な声。
人の出入りには慣れているのか、アブセルが入室しても部屋の主は見向きしない。まるで興味がない、と言うように。

「……」

部屋の主、リトは床に座り、黙々と手を動かしていた。
何をやっているのかと思えば様々な形のものを積み重ねている。積み木のようだ。

それは少し異様な光景に見えた。
リトの年齢はアブセルと同じ。とうに積み木で遊ぶような歳ではない。
歳のわりに体は小さいが、何も話さないし、知能も遅れているのだろうか。

しかし、何の反応は見せなかったものの、アブセルの存在は認識していたらしい。
積み木遊びが一区切りついたのか、不意に立ち上がったかと思えばアブセルの元に歩み寄ってくる。
そして、彼の持つプレートからスープのみ取り上げたかと思えば、ベッドに腰掛け食べ始めた。

90リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/01(金) 20:50:41
トリ付け忘れた…

ヤツキ>>
【色つけようよー、勿体無い!

私は戦闘描写とか苦手だから二人が羨ましい…】


イスラ>>
モザイクww黒執事が急に危ないアニメにwww
いやいや、シエルに精神崩壊させられるなら本望です!さぁ!!どんとこい!!!
呼吸困難だって受けて立つ!!←
楽しそうだけど自分にはシエルが必要←

あぁ、なる程(笑)
芋男は鈍いからなぁ、女性の気持ちに気づく筈もなく(笑)そのわりに失言が多いからミレリアとか怒らせちゃうし。
ですね(笑)ジルはある意味真性の悪です←

そんなww楽しくてもそんな世界嫌だwww
了解しました!

そしてメルフィのことすっかり忘れてたんですがどうしましょう?←

そしてそしてまたまたの美絵!
サンディ可愛い!!
アブセルがイケメンで笑える!!←
そのプロフィール表記いいですね!自分もやってみたいけど絵が描けない!!
てかアブセルのリト大好き感が何とも…(笑)】

91イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/02(土) 11:04:07
【バルクウェイ】

断末魔の咆哮を轟かせ、灰となって散って行く巨鯨。

「案外脆かったか?

いや、この剣の威力が凄まじかったって事か。」

その様子を世界政府本部の屋上から眺めながら、イオリは天叢雲剣の切っ先を前方へ向ける。

「さぁて……後はテメェだけだぜ、ワヅキさんよォ?」

刃の指し示す先、同じく屋上で呻くワヅキへ、イオリは声を掛けた。

しかし、返事が返って来る事は無さそうだ。

様子を見る限り、精神に異常を来しているらしい。

(そういや、あの鯨には莫大な数の異能が収められていたんだっけか……)

依代とも言える巨鯨を失った為に、それらはワヅキへ……あの天使の様な身体へと殺到したのだろう。

だが、如何にあの身体が特別だったとしても、巨鯨が内包していた全ての異能を収める事は出来ない筈だ。

現に、呻くワヅキは正気を失いつつある。

もし、ワヅキの自我が消失し、あの身体に宿る数百、いや数千の異能が暴走したならば……

「不味いな、あんだけの数の異能を制御出来なくなって暴発なんかしてみろ……

このバルクウェイなんて簡単に消し飛んじまうぞ……」

笑みを僅かに苦いモノへと変え、イオリは目を細める。

ワヅキの状態からして、予想する最悪の自体になる可能性は高い。

既に制御仕切れなくなっている一部の異能が身体から溢れ、大気を歪めているのが見える。

(チッ……あの身体、手に入れたかったが諦めるしかねェか。)

「おい赤毛、アンタの力が必要だ。」

ソレから視線を外す事なく、イオリは後方のイスラへと声を掛けた。

「見てわかる通り、あの野郎は自我を失って暴走しつつある。

そうなれば数千の異能が溢れ、この街は消し飛んじまう。

だから、そうなる前に野郎を倒してェ。」

そして、話ながら腰に下げた鞘を一本外し、背後へ投げた。

「だが、あれ程莫大なエネルギーを内包した身体を一瞬で消失させるには一撃じゃ足りねェ。

かと言って、俺が二発喰らわす時間的余裕も無い。

一撃でやらねェと、傷口から溢れ出ちまうからな。」

それは、過去から飛んで来たイスラが所持し、メイヤへと渡して居た神刀、月読。

「受け取れ、元はアンタが持って来たモンだ。

そして天叢雲剣を創れ。

俺が持つ現代の天叢雲剣と、アンタが持つ過去の天叢雲剣。

二本の天叢雲剣で同時に奴を斬り、一撃であの身体を消滅させる。」

そう、今この場には過去と現代、それぞれ二本づつ、計四本の神刀があるのだ。

「先々代、あのヤツキを倒したアンタなら……やれんだろ?

やるぜ、合わせろ!」

イオリが早口で説明している間にも、ワヅキの内に宿る異能と魂は溢れ出さんと蠢いている。

最早一刻の猶予も無い。

イスラの返事を待たず、イオリは天叢雲剣を腰溜に構え、大きく一歩を踏み出す。

地を砕く程の踏み込みから一気に加速、距離を詰め、抜刀。

放たれしは神速の一閃、神斬り。

その一撃は次元を斬り裂き、世界創造すら成すエネルギーを持ってして、ワヅキの左半身を消滅させる。

(右半身は、任せるぞくそったれ!)

92ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/08/02(土) 11:17:38
【リマ》もうあれだ、着色だけ友達とかに頼むわww

やっぱ男女の違いがそこら辺出るんかねぇ、大した恋愛経験も無いから、甘い文章全く思い浮かばねーww

イスラ》後は下書きで満足あるあるwwww

でもディンゴさんらしい最期だった……っ涙

いや、特に問題は無いす!ごっちゃなるかと思ったけど、きっと大丈夫でしょ!wwww

申し訳ない、やっぱり肉体の方を完全消滅させる方向でレスしたので、後よろしくお願いします。

ゼロの身体のスペアをいずれ出すんで、良ければそっちに乗り換えてもらっても……!

とと、イスラ画伯キター!サンディ可愛いな、そんで持ってアブセルやっぱりデカイ(笑)


さぁ次はリマ画伯の降臨待ちですな!】

93サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/03(日) 08:33:06
【バルクウェイ】

初めて聞いたナディアの弱気な声。
サンディは一瞬驚いた様な表情を見せるも、直ぐにふっと口の端を持ち上げて笑った。

「姉御…らしくないね」

そして続ける。

「あたしの知ってる姉御は、いつも大胆不敵で、周りの都合になんて縛られなくて、やりたくないことは絶対にやらない…そんな勝手気儘な人だった」

そんな自由奔放な彼女に憧れていたし、羨ましいとも思った。

「姉御が今一番したいことは何?弟君の側にいて上げることでしょ?
あたしにも大切な家族がいたから、その気持ちはよく解るよ」

彼女なりに慰めて上げようとしているのだろう、サンディは微笑み、ナディアの頭を撫でた。

「大丈夫、姉御は間違ってなんかない」

94ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/03(日) 08:34:42
【バルクウェイ】

ぶっつけで合わせろと言うのか、無茶を言う。

イオリから月読を受け取ったイスラは、つとバロンへと視線を向ける。
対し、バロンは無言で頷いた。

「あれは儂の肉体。…これらの責任の一端は儂にもある。
もはや身体が惜しいなどとは言わぬよ」

それを受け、イスラは覚悟を決めた風に二つの刀の鞘を抜いた。
顕現した天叢雲剣を腰溜に、イオリと全く同じ構えを取り、力強く足を踏み出す。

勢いよく空を疾る一つの斬撃がワヅキの左半身を。もう一つが彼の右半身を斬り裂き。数多の魂を内包したその身体は、時を超えて実現した、二つの剣の力を以て跡形もなく消滅した。

―――…

ただただ白く、朦朧とした空間に二人の男が向かい合って立っていた。
ワヅキ…いや、ランダは、つい今しがた夢から覚めたかの様な、奇妙な感覚と共にはたと瞬き顔を上げた。

「…バロンか?」

「…ああ」

「何故、お前がここに居る?」

「知らぬ」

相変わらず適当だな、とランダは肩を竦める。
考えられるとしたら、先程の暴走の影響で、神と云う特殊な魂同士、一時的に意識の根が共有したからかもしれない。

「なぜ邪魔をした?」

不意に、ワヅキは尋ねる。

「もう少しで四神様も、仲間達も、故郷も、全てが元通りになる筈だったのに」

バロンは少しの間を置き、ゆっくりと言葉を返した。

「…いくら姿や意思を同じ様に復元させたとて、それはもう嘗ての四神様でも仲間達でもない。見てくれが同じだけの全くの別ものじゃ。
一度失くしたものは元には戻らぬ。
お主は己にとっての都合の良い箱庭を造り上げようとしていただけじゃ」

況してや、彼は多くの人間達を巻き込んだのだ。許されることではない。

ランダは言う。

「…私を倒したところで、どうせ世界の終焉は免れないぞ」

「どうだかのう…何せこっちにはお主の崇拝する、あの四神様より力を授かりし者達がおるでの。やってみぬと解らぬぞ」

ふてぶてしく返すバロンに対し、ランダは目をすがめた。

「……前々から言おうと思っていたが…、どうも私はお前の様な男は好きにはなれない様だ」

「奇遇じゃのう…、儂もお主の様なタイプは大嫌いじゃ」

言ってバロンはニヤリと片頬を持ち上げる。
つられてランダも、くくっと小さく喉をならした。

「……時間だ」

ランダの身体が周りの白に染み込んでいく。次第に希薄になっていく彼のその姿を目に、バロンは動じることなくポツリと口を開いた。

「…さらばじゃ、友よ」

…運命を受け入れられなかった哀しき魂。

95アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/03(日) 08:37:36
【過去】

無言でスープを取り上げるリト。
それに対し、アブセルはむっと顔をしかめた。

(……無視かよ)

言ってしまえば彼はいつもこうだ。
殆ど喋らないし、笑わないし、何を感えているのかさえ全然分からない。
そんな所がアブセルがリトを気に食わないと思う、理由の一つでもあった。

無論アブセルだって、まだ幼い一子供に過ぎない。
リトのこと、気にならなかったと言えば嘘になる。
もしかしたら仲良くなれるかもしれない。と、ちらっと考えたことだってあった。
しかし彼は、それを心の奥底に仕舞いこみ、決して表に出そうとはしなかった。…否、出せなかった。

「………」

リトが食事を取っている間、手持ち無沙汰になったアブセルは、ふらふらと部屋の中を見て回った。
使用人の中には、彼の食事に手を貸してやる者もいるみたいだが、アブセルはそんなことはしない。
かわりに玩具箱の中を繁々と覗き込む。

積み木にパズルに粘土に…中には一人では出来ないようなボードゲームなんかもあるが、こいつは誰かとやったことがあるのだろうか。

アブセルの家は決して豊かな方ではなかった。こういった玩具類は買って貰った例しがなく、また自分と彼との格差の違いに悔しくなる。

…家にあったのはこれぐらいだろうか。アブセルは一つのトランプの束を手に取った。

「おい、ちょっと付き合え」

そして、リトにそのトランプを突き付け、言い放った。

「ババ抜きだ。勝った方が王様だからな。今日一日、負けた方は王様の命令に絶対に従わなくちゃいけないんだ。
……俺の言ってること分かるよな?」

なんとか彼をぎゃふんと言わしてやりたい。
その澄ました無表情を崩してやりたかった。

96イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/03(日) 08:40:19
【リマ》
いやいやいや、ちょっと待ってください!落ち着いてください!ww
流石のシエル好きですね。パない(笑)

女心が分からないくせに無意識に女を落とすとか…どういうことだ(笑)
ジルは魔性ですよね(笑)だがそこがいい!←

赤信号理論と同じです。皆で変態になれば怖くない←

そう言えば…(笑)どうしましょう?
ノワール達で連れ戻しに行きます?

ありがとうございます!笑わないであげてww
お、見たい!リマさん絵お上手じゃないですか(*´ω`)
彼の世界はリトを中心に回ってますので(笑)

ヤツキ》
ありすぎて何かもうツラい…ww

ディンゴは割りと動かしやすいキャラでしたからね〜^^

分かりました。気が早いんですが、シデンとイオリの戦闘はどんな感じで決着つけましょう?

了解です!ゼロのスペアの外見って…ジル?でもバロンの身体については一応考えがあるので大丈夫です!

ありがとうございます!そう、図体だけ無駄にデカイんです(笑)】

97イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/04(月) 01:12:36
【バルクウェイ】

二振りの天叢雲剣に依って放たれる、神速の一閃。

それは鏡映しかの様に、寸分違わず同じ軌道を描き、莫大な異能と魂を内包した身体を、塵一つ残さず消滅させた。

「やるじゃねェか、同じ技……神斬りを放つとはな。」

本来ならば奪い、自身の物にするはずだった身体を自らの手でふいにしてしまった。

だが、あのままワヅキの意識が途絶え、異能が臨界点を超えてしまった先を考えるとベターな選択だったのだろう。

跡形も無く消えた身体と、その身に宿った魂にイオリは少しだけ、思いを馳せた。

(どんだけ過去を再現しようと、それは紛い物だ。

終わっちまった可能性に先はないのさ……わかってる、がな。)

失った大切なモノにもう一度、その手で触れたかったワヅキ……いや、ランダ。


彼の心は痛い程わかる、いや、寧ろ自分も同じだ。

だからこそ、イオリもまた、自身が進む道の先には破滅しか無い事を知っている。

「さて、と。

この街を闇に落とそうとした元凶は消えた。

開かれたあの深淵も、吸血鬼の姫や闇の王子が何とかするだろ。」

ワヅキを撃破し、イオリは息を吐き胸をなで下ろす。

既に街に蔓延していた闇も殆どが消え、残るはあの深淵だけ。

「俺としてはさっさとおいとましてェんだが……」

バルクウェイに訪れた目的であるバロンの身体も、異能の武具も消え去った今、イオリがこの場に留まる理由は無い。

だが。

剣を収めぬまま、イオリはイスラへ……いやイスラの背後に立つ者へと声を掛けた。

「タダで帰らさせてはもらえねェか?吸血鬼の姉さんよォ?」

「……当たり前よ、十字界に混乱を齎し、同胞の命を奪ったアナタを私は許さない。」

イオリの視線の先、イスラの背後。

そこには空間跳躍によって現れた吸血鬼が一人……フィアが立っていた。

(魔物を迎撃している途中で感じた氣、間違いなかったわ……)

戦友であり好敵手であり、そして同じ十三人の長老であったレオ。

その敵を討つために、フィアはノワールやジュノスに着いて来たのだ。

魔物との戦いでそれなりに魔力を消費したが、この機会を逃す訳は無い。

成人男性としてはやや小柄なイスラの背後で、フィアは氷剣を握る。

そして、氷剣の切っ先に極冷の凍気を宿し、イオリへと飛び掛かろうとしたその時。

「仇討ちなら全部終わった後に受け
やる。

だが、今はアンタの相手をする暇は無さそうだ。」

一筋の雷光が灰色の空を裂き、イオリへと飛来した。

「出やがったな、デコメガネ!」

ソレを天叢雲剣で斬り裂き、イオリは苦々しくその名を呼ぶ。

「文句あるのかよ、シデンさんよォ!?」

98ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/08/04(月) 09:50:34
【イスラ》絵描きあるあるbot作るまであるwwww

キャラ的にどのポジションでもやれそうな万能感っ

どちらも痛み分けとかどうで?す

キールを間に立たして、深淵も閉じたし、今は黄龍への報告が先よ、みたいな感じの事を言わせて。

了解した!バロンの完全復活期待ー!

99シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/06(水) 09:33:52
【バルクウェイ】

「貴様に俺の名を気安く呼ばれる覚えはない」

雷光が煌めき、イオリが声を上げたその直後、屋上に一人の男が現れ出でた。
いつもの眼鏡に黒スーツの装い、…シデンだ。

「文句がなければ見たくもない貴様の面を態々拝みになど来ない」

言ってシデンは指先で眼鏡を持ち上げる。
レンズ越しに睨みを利かせた酷薄な視線が、イオリを刺した。

「貴様…鳳凰ではなかったそうだな」

それは虚空城を出る前に、黄龍から耳に触れたこと。
彼は冷やかな語調で先を続ける。

「弟を使っての四神の手引き、召集命令の黙殺、数々の勝手な振舞い。
…そして今回の謀の阻害…」

不意にシデンの身体から電流が迸る。

「黄龍様への謀反と受け取って構わないんだよなあッ!?」

刹那、現れた無数の雷撃が、大気と地面を焦がしながら蛇の如く蛇行し、イオリへと襲いかかった。

100イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/06(水) 09:37:02
【バルクウェイ】

…あれは麒麟。四霊の連中まで来ていたのかと、険しい表情をするバロンの傍らで、不意にイスラはがくりと地に膝をついた。

「イスラ?…大丈夫か?」

「なんとか…」

決して浅くはない怪我での、天叢雲剣のあの一撃。
切れ切れに呼吸をするイスラの様子を見るに、彼も限界であろうことを知る。

「…すまぬ、無茶をさせた。しかし一先ずはここを離れようぞ」

どうやらシデンの目当てはイオリである様だ。今回はこの騒ぎに紛れて撤退させて貰うことにしよう。


【ヤツキ》ねww

なるほど、いいですね^^ではキールさん、その時はお願いします

復活してもあまり役には立たないでしょうが(笑)】

101イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/06(水) 14:51:40
【バルクウェイ】

「悪ィな、俺は元より忠誠なんか誓っちゃいないんだよ!」

酷薄な笑みと、明らかな怒りと共に放たれる雷蛇の群れ。

それをイオリは天叢雲剣の一閃で消し去り、獰猛な笑みをシデンへと向ける。

「俺を鳳凰だと認識し、呼び寄せたのはあの欠陥プログラムだぜ?

ま、お前等も俺が鳳凰であって鳳凰じゃない事に気付かなかった時点で零点だ!」

表向きは冷静沈着、内に秘める激情は自分に勝るとも劣らない。

そして、黄龍への絶対なる忠誠心から来る強さは自分を超える。

イオリはシデンに対し、そう思っている。

そのシデンが今、自分を敵として認識し、牙を向いている。

(正直、分が悪ィが……いつかは刃を交える事になる相手なら……)

戦うしかないだろう。

「そのだっせぇデコメガネ、叩き割ってやるよォ!」

二振りに分かれた神刀を鞘に収め、イオリはシデンへと突進。

抜きはなった新たな刀、 鸞が宿す蒼炎を纏い、迅速の刺突を繰り出す。

更に、纏う炎が数羽の蒼き火炎鳥を生み出し、それら全てが様々な角度がらシデンへと殺到して行った。

102シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/09(土) 14:34:35
【バルクウェイ】

「初めから、貴様は気に入らなかった…」

その目つきも、飄々とした態度も振る舞いも。
いちいち神経を逆撫でられ、その度に不愉快な思いをさせられた。

尤も、シデンにとっては好感を持てる人間の方が、希有な存在であることは確かだろうが。
それでも彼は同じ四霊と云う手前、以前まではイオリに害ある手を出すような真似はしなかった。しかし…今は違う。

「これで心置きなく貴様を潰せると言うものだっ!」

瞬間、爆発的な規模の放電がシデンを中心に周囲に膨れ上がった。
飛来する火炎鳥は全て薙ぎ払われ、襲い来る刃の先と波涛はぶつかり合う。

一瞬の膠着。その僅かな隙がチャンスかとばかりに、イオリの元へ瀑布の如く雷の渦が押し寄せた。

103イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/09(土) 22:43:55
【バルクウェイ】

膠着は一瞬。

火炎鳥を一掃した雷の波濤から続く瀑布の如き雷渦を前に、イオリは目を見開く。

しかし、動きを止める事は決して有り得ない。

魔装を着込んでいたとしても、直撃すれば只では済まない威力を秘めたその雷光に対し、イオリは咄嗟に抜いた神刀月読に因る結晶の障壁を張った。

「コイツはッ」

だが、禍々しい程の輝きを放つ雷渦は障壁を易々と粉砕。

(不味い!!)

轟音と共に屋上に地割れの様な破壊の爪痕を刻み付ける。

それを横目に、イオリは縮地法でシデンの左手へ移動。

障壁のお陰で直撃は免れたものの、決して軽くは無いダメージを負っている。

しかし、それを感じさせない程の速度を持って、イオリは反撃に転じた。

まずは地を這う蛇の如き軌道で屋上を疾駆し、逆手に握った妖刀鸞の逆袈裟斬りを放つ。

更に、逆袈裟の軌道で振り切った刀を正手に握り握り直し、半歩前進。

捻りに因って充分なタメを作り、踏み込みからの袈裟懸けの斬撃と、左手に持つ月読に因る刺突を繰り出した。

ーーーーー

イオリは四霊の一角、鳳凰では無い。

神器となった妖刀鸞に因り、鳳凰と全く同質の力を使っているのだ。

元より、弥都の人間は多少なりとも異能の力を持っては居るが、その力には個人差がある。

勿論、イオリもその例には漏れずだ。

しかし、その力は呪符は印を媒介に術を発動させる程度で、四霊には遠く及ばない。

神刀や妖刀、魔装を纏いやっと、四霊と肩を並べる事が出来るのだ。

……異能力に関しては。

そう、それはあくまで異能に関しての事。

異能の力のみで戦うならば、神刀や魔装か必要となってくる。

しかし、イオリには古来より続く暗殺技術、技を超えた業がある。

研鑽を積み、鍛え上げられた身体は人間の範疇を超えた身体能力を宿し。

長きに渡り研ぎ澄まされ続けてきた業は、並みの異能者ならばいとも簡単に屠れるだろう。

ーーーーー

異能を持たずとも、イオリは強い。

シデンの襲来によって戦うタイミングを逃したフィアは、激戦の余波が撤退するイスラへ届かぬ様、氷で障壁を張りながらイオリとシデンの戦いを見詰めていた。

十字界で、シャムと自分を圧倒したシデンの強さは十二分以上に知っている。

助太刀が無ければ、自分は今この場に立てなかっただろう。

そして、そんな相手と互角の戦いを繰り広げるイオリ。

(だけど……)

両者の実力は拮抗している様に見えるが、あくまでも人間であるイオリの方が僅かに不利だろう。

イオリが人間である限り、四霊であるシデンとは決定的な差が開いたままなのだ。

104セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/11(月) 15:08:09
【バルクウェイ】

連れて行けと言うからそうしたにも関わらず、終いには疑いの目を向ける始末。
なら勝手にしろと言っても良いくらいだが、セナはアブセルの発言に腹を立てることはしなかった。

そして、腕に抱くリマを下ろし、前へと歩み出る。

辺りは一見して何もなく、場所を間違えたのか、感じた”何か”はもともと無かったのか。
疑いたくなるのも無理はないが、確かにこの場所に間違いはなく、その”何か”は”ここ”にある。

セナは足を止め、足元を見た。

(下…)

そして立て膝に屈むと同時に手を地に触れる。

”あった”

どうやら自分達が足を着くこの地は最終地点ではなかったようだ。

ならば。

セナは自身の闇を発する。
それは爆発的な量で、離れた場所にいたリマにまでその風がきた。

「セィちゃん…?」

彼が視えない。何かが起こっているのにそれさえ分からず、リマは不安気に声を漏らす。
しかし視えなくて幸いだったかもしれない。
彼女にはあまりにも衝撃的な事が起きていたから。

「…っ」

セナが闇を放出するに伴い、彼の周囲の”地が動いた”。
実際にはそんなもの見えないが、たしかにそう感じさせる何かがあった。
そして、それは間違いではなかった。
歪んだ地から無数の触手が飛び出し、セナの体を捕まえたのだ。
そんな中でもセナは開かれたその地へと手を伸ばし、何かを掴もうとする。
しかし力及ばず。
セナの身は一瞬のうちに地の中へ引き摺り込まれた。

105リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/11(月) 21:30:55
一週間以上レスしてなかった…亀レスすみません(;△;)

ヤツキ>>
どっちにしても色付きが見たい(」°ロ°)」
いや、でも男女以前に自分の頭が固いのも原因な気がする(;-ω-)ゞ
あんま戦闘物の漫画とか読まんからイメージ出来ないのかも…。私が見てるのフォークとナイフで戦う執事だし←

むむ…最近まったく絵描いてない(≡Д≡;)


イスラ>>
ずっと秘密にしてたのですが最近研究室で黒執事好きカミングアウトしまして、以降遠慮がなくなってしまったようで、今日は原作者のブログからシエルが小さい頃タナカと将棋崩しして遊んでたって情報を仕入れて可愛いとニヤけていた← GF関連の漫画買ったらシエルのしおり貰っちゃったとさりげなく自慢したら研究室の子に笑われた←←

天性の才能?フェロモン??←←
ジルの魔性、まさか好かれているとは(笑)

えー怖い←
連れ戻します?あ、まだ利用の価値あるならばジルが回収します(-ω- )/

笑っちゃう、あんな性格なのにイケメンww
神様、美しさ与える人間違えてるww
そんな滅相もない。それに最近まったく絵描いてないので全く描ける気がしません(;-ω-)ゞ
凄いなー、最初は嫌ってたくせに←

106シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/11(月) 22:36:25
【バルクウェイ】

確かに、イオリは人間の中ではトップクラスの実力の持ち主だろう。

先人より脈々と受け継がれし、その血と技。
彼の動きの一つ一つに、気が遠くなる程の歴史と、絶え間ない努力の軌跡を感じる。

だが、しかし…

「そんなもの、真の力を抱く者にとっては無価値に等しい!」

シデンはそれを一笑に付す。

半歩分身体を傾け、逆袈裟を紙一重でかわすと共に、両腕の組織を変化。
"麒麟"の体細胞に紫雷を纏わせ、硬質化させた腕で二振りの刃をいなし、受け止める。

そして、相手の空いた腹部に強烈な蹴りを打ち込んだ。

「どうした?こんなものか、人間?」

武具も史も修練も必要ない。
この差がその証明だ。

107イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/11(月) 22:45:04
【リマ》お、カミングアウトしたんですか。それは良かった^^タナカさんそんな昔からいたのかw
てかリマさんがどうやって黒執事と出会ったのかが気になる(笑)

フェロモンか…なるほど、あり得る…
魔性と言うか、平然と外道を働くキャラが好きでして…あ、別にジルが外道って訳じゃないですよ?←

んー、じゃあ回収でお願いします^^

いや、でもまぁ別にイケメンじゃないですよ。自分が同じ様な顔しか描けないってだけです(笑)
そんな、大丈夫ですよ。描ける描ける(`・∀・)←
まぁ…色々あったんでしょう、心境の変化が】

108アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/13(水) 03:00:29
【バルクウェイ】

「なっ…」

アブセルは困惑に目を丸くした。
セナが何かをした途端、地が歪み。そしてあろうことか、彼はそのまま中に引き摺り込まれてしまった。

そこに駆け寄る時間はなかった。
アブセルがそれらの状況を呑み込む前に、蠢く無数の触手が今度はこちらへと伸びてきたのだ。

「姉ちゃん!」

恐らくは何も見えていないであろうリマ。
アブセルは彼女を咄嗟に庇うも、しかし、それらは易々と二人の身を捉えた。

「ッこの…!なんだよこれっ!」

絡み付いてきた触手がセナ同様、二人を地に引き摺り込もうと蠢いた。

109リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/13(水) 12:13:20
【過去】

何やらトランプを掲げ物申すアブセルに目すら向けず、リトは黙々とスープを口に運ぶ。
途中何度か咳き込むがソレをアブセルが気に留めることもなく。
だんだんと苛立ちを見せる彼の前でリトは結局最後までスープを飲み終える。
そして漸く、アブセルのもとへ来た。

「…」

相変わらず何も口にはしないが、アブセルの申し出を受ける気ではあるようだ。

110イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/15(金) 21:07:28
【バルクウェイ】

人と神。

言葉にすればたったの一言だが、その差は天と地以上である。

人が神と対等に戦うにはまず、神と同じ土俵に登るか、神を人間の土俵へと引きずり下ろすしか無いのだ。

だからこそ、イオリは天使の様に見えた
あの身体を。

長らく封印されていたバロンの身体を欲したのだ。

神の肉体を得、同じ土俵へと登る為に。

ーーーーー

万全の状態から放つ最善の一撃。

ではなかったものの、先の連撃は今現在放てる最速最高の攻撃だった。

しかし、それをシデンは易々と防ぎ切った。

「ハッ、まぁそんな急かすなよ。

とっておきはまだ見せちゃいねぇんだぜ?」

更に、放たれる強烈な蹴りは魔装の防御力を持ってしてもその威力を殺し切れず。

後方に跳び、蹴りの威力を削ぐも内蔵に伝わる確かなダメージは朱となって口端から流れ出す。

それを手の甲で拭い、イオリは刃を鞘へ収め、居合いの型を取った。

その表情は決して明るい物ではないが、鋭い眼光は消えず。

(確かに、ここらが人間の限界かもな……

だが。)

ーーー居合いとは本来、刃を抜かずして相手の撃を抑える技であり、後手を取る待ちの剣術である。

それを迅速の踏み込みと、一切無駄の無い抜刀術により、攻めの技へと転化させ、生まれたのが神斬りなのだ。

その業を、更なる高みへと昇華させた者が居る。

奇しくもその人物は、その業を後世に残す事無く散ったのだが……

「魅せてやるよ、デコメガネ。

俺の業で、テメェを泣きっ面にしてやる。」

イオリは独学で、その高みへと辿り着いた。

鋭い眼光と獰猛な笑み、朱に彩られたその顔は鬼気迫り。

身体から発せられる闘気は大気を揺らす。

そして、一拍の間を置き、イオリは動いた。

半歩の踏み込みから爆発的な加速力で距離を詰め、抜刀し、一閃。

刃が抜かれると同時に、その身体は右へ左へ。

前後左右、上方下方。

更には袈裟、逆袈裟。

計八つの斬撃が、神速を持ってして。

タイムラグなく放たれた。

その業の名はーーー

111アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/16(土) 13:54:17
【過去】

「…お前ってほんっとトロくさいな」

スープぐらい三秒で飲めよ。とアブセルはリトにジト目を向ける。

彼があまりにも遅いから、ついババ札の裏側に小さなキズをつけてしまったじゃないか。
でもこれはズルじゃない。そう…戦略だ。

「ルール、分かるよな?」

…と、聞いてもリトが答える筈もなく。アブセルは適当にルールの説明をしながら、二人分のカードを配分する。
もちろん当然の様に、キズをつけておいたカードはリトの方にやった。

そして―…

「勝ったー!!」

彼がキズに気づいていたかどうかは定かではないが、とにかくババ抜き勝負はアブセルが勝利を収めた。

アブセルは立ち上がり、勝ち誇った様に顎をしゃくってリトを見下ろす。

「約束通り俺が王様だからな。お前は俺の家来だ。ちゃんと言うこと聞けよ?」

さあ、どうしてやろうか。
アブセルは底意地の悪い笑みを浮かべると、不意に

「お手」

と、相手に向けて掌を突き出した。
それはまるで犬か何かにでも芸を命じるかの如く。

【リトのつもりで描いてた筈が何か完全に魔女っ娘にw
imepic.jp/20140816/492500】

112シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/16(土) 20:34:03
【バルクウェイ】

振動する大気がビリビリと肌をなぶる。
なかなかに心地の良い闘気だが…。

「いくらやっても同じことだ!
貴様は俺には勝てない!!」

イオリが動いたその時、シデンもまた雷光を散らし、その場から飛び出した。
刹那、二つの影は交差する。

そして、場に訪れる束の間の静寂。
互いに背を見せ合う形となった状態の中で、不意に、シデンはガクリと片膝を地に落とした。

七対三にセットした前髪がハラリと顔にかかり、眼鏡のフレームが鼻筋で真っ二つに割れ、地に転がる。

「貴様…」

シデンは首を動かし、血走った眼で肩越しにイオリを睨み付けた。
肩や脇腹、裂かれた衣服の下から赤が滴り落ちた。

113イオリ ◆.q9WieYUok:2014/08/18(月) 22:00:09
【バルクウェイ】

交差する雷光と白刃は闘気に揺らめく大気を斬り裂き。

刹那の間に繰り広げられた強者同士の戦いは、互いの背に背を預ける形で終わりを迎える。

「デコメガネ、叩き割ってやったぜ……」

背後に聞こえる乾いた破砕音と、シデンが膝を着く気配を感じ、イオリはニヤリと笑みを浮かべた。

「届いただろ、俺の刃はよォ……」

しかし、その笑みを浮かべる口元は瞬く間に歪み、咳き込むと共に吐き出された大きな血塊が足下を濡らす。

よくよく見れば、その身体……魔装の継ぎ目からは鮮血が溢れ出している。

そして、広がる血溜まりに倒れ込もうとする身体を刀で支え、イオリもまた、肩越しにシデンを視た。

「テメェの雷光も、今までで一番効いたがな……」

互いに倒れる事は無かったものの、双方共に多大なるダメージを負った今。

次に放つ一手が決着の一手となるだろう。

だが。

それを望まず、許す事無い者達が二人の視界に姿を現した。

「……戦いは終わりよ。

神の使いは死に、方舟は消滅した。

開かれた深淵もいずれ閉じてしまう今、この場に残る必要は無いわ。」

イオリの視線の先、肩越しに見える視界に立つ女性。

四霊の一角、霊亀のキールは険しい表情で言葉を放つ。

「それに、今。

アナタを失う訳にもいかないのよ。

これ以上の戦闘は私が許さない。」

「いや、俺が居るから出来ない。

の間違いだろう?」

そして、キールの視線の先。

シデンの視界には赤毛の男、ボルドーが。

「アンタ達も感じてるだろうが、俺の力はアンタらと大差無い。

このまま互いに助っ人が入った状態で戦闘を続けても、双方共に全滅する可能性は高いからな。」

イオリの懐刀でありながらも、イオリを超える強さを持つその男は、苦笑いを浮かべながら続ける。

「どっちにしろ、今はお互い退いた方が身の為だろう?

今はもう命を懸けてまで戦う時ではなくなったしな?」

その言葉にキールは無言で目を伏せた。

しかし、それは肯定の意である。

ボルドーが手出しをしない事を信じ、キールは虚空城への転移術式を起動。

膝を着くシデンに肩を貸し、彼を半ば引き摺る様に歩きながら、そっと耳打ちをした。

「後処理はジルが行うから気にしなくて言いわ。

あの子、何だかやる気みたいだったからね……」

そして。

起動した転移術式の光が二人を包み、眩い光が瞬くと共にその姿はバルクウェイから消えて行った。

114セナ、リマ、:2014/08/18(月) 23:31:21
【バルクウェイ】

これは言ってしまえば荒療治。
自分が深淵の最下層への道を開けば魔の手はリマやアブセルにまで及ぶ。
それは分かっていたが、こうする他なかったのだ。

今自分に出来ることは闇が彼女らを引き摺り混む前に、”彼”を見つけ戻ること。

予想より深くに沈んでいたのは少し誤算だったが、まぁいい。

触手の流れに任せ、セナはその時を待つ。

そして、

見つけた。

漆黒の闇の中に佇む、小さな赤い光。

今まで感じていた”何か”は”これ”だった。

セナは触手に阻まれながらも手を伸ばし、赤くひかるソレを、否、その先の”彼”の腕を、掴み取った。
途端消え入りそうな小さな光だったものが輝きを増し、やがて深淵全てを包み込んだ。

ーーー

何があったのかは分からない。
何かが起きているのは分かったものの、リマには何も見えなかったから。
自分を呼ぶアブセルの声にリマはビクリと身を動かす。
続く彼の呻き声。怖い。
そして魔の手はリマの身にも及ぶ。
何かが体にまとわり付く感覚。リマは最早声さえも出なかった。

(セィちゃん…セィちゃん…)

リマは恐怖に怯えながらも必死にセナの名を唱えた。
先程自分を下ろした際にセナに言われたことがある。
これから先何が起ころうと動ずるなと。
自分で何かしようとせず、じっと耐え抜けと。
心が壊されたら終わりだ。決して自分を失うなと。

セナは何かを知っているようだった。
彼が感じ取っていた”何か”を何であるか分からないとしながらも、おそらく予想はついていたのだろう。
ただ、その場所に赴きたくはない、いや、違う。自分を近づけたくない、そんな様子だった。

(ごめんなさい…)

セナを危険な目に合わせてしまった。
アブセルを巻き込んでしまった。
今のリマに出来るのは、ただセナの言葉に従うこと。

(どうか、無事で…)

意識が飛びそうになる。それを必死に堪え、リマは願う。
赤い光が彼女らを呑み込んだのはそれから間も無くのことだった。

115リマ、ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/18(月) 23:32:43
-----

「そうかな…」

サンディの言葉に、少し気が紛れた。
実際のところはどうであるか分からないが、信じたい。
ナディアは照れ臭そうな表情を浮かべる。

「なんか、柄にもなく…って感じ。恥ずかしい」

自分より背の低い子に頭を撫でられる姿は何処と無く滑稽だ。
自分の姿を客観的に思い浮かべて何だか笑えてしまったナディアは先程までの沈んだ表情は打って変わって明るくなる。

さて、自分に出来ることをしようと気分を一新した矢先、何の因果か事は起こった。

深淵から突如として眩い赤の光が噴出したのだ。
予想だにしなかった自体に唖然とするナディア。
と、その光がやがて消え、そこには新たな事態が舞い込んでくる。

地面に転がる4つの影。
うち、1つの影が身を起こし声をあげたのとナディアがあるものを見つけ口に出したのはほぼ同時。

「セィちゃん!」
「リト…!」

二人はそれぞれ重なり倒れた二つの影へ駆け寄る。
それはセナがリトを庇うように抱く形となっていた。
二人とも意識がない。
リマはセナを抱き寄せ息を確認する…無事だ。

「セィちゃん…良かった…リッちゃんも……」

記憶が所々飛んでいて事の顛末は定かではないがリトを見つけ、地上にも戻れたようだ。
リマは浮かび上がる涙を拭い、後方の、最後の影へと声をかける。

「アブくん、セィちゃんがリッちゃんを見つけてくれた…」

良かった。何はともあれこれで解決である…はずだった。
ナディアの声を聞くまでは。

「ねぇ…」

ナディアはリトの頬に何度も手を触れながら、震える声で呟いた。

「コイツ…冷たい。息もしてない…」

116リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/19(火) 00:00:44
イスラ>>
本当は研究室では一般人として生きて行きたかったのですが、ある日実習施設で撮った集合写真がメールで送られてきて、保存したものを研究室の先生に見せていた時の事です。
研究室の友人が横から携帯を覗き込んでいたことに気づかず何気無くスクロールしてしまったところ、写メった黒執事(原作)がこんにちは。
すぐに別の写真に切り替えたのですが、その子が「今何か見えた(・▽・)」と← 幸いオタクではないけど漫画が好きな子だったのでまぁいいかとカミングアウトしましたσ( ̄∇ ̄;)
タナカさんはずっといますよ〜。シエルの両親殺した刺客に背中をナイフで思いっきり刺されたのに生きてるウルトラじーさんです←
黒執事と出会ったきっかけですか?それはですね、ある日の兄妹の会話から。
自分「最近めっちゃ暇。なんか面白い漫画がないかな(PC弄りながら)」
兄「黒執事」
自分「黒執事だぁ?あ、知ってる、絵だけガンガンで見た。あれやんな。カニみたいな顔した黒い男が紅茶淹れながらニタ〜って笑っとった。」
兄「何それ。」
自分「知らん。でもカニやん。なんかあれみたい、ジャンプの魔界探偵だかなんだかの」
兄「余計分からん。取り敢えず黒執事。」
自分「面白いん?」
兄「知らん。読んだことないし。」
自分「カニやん」
兄「面白いんじゃない?」
自分「でもカニやん」
兄「PC弄ってんなら調べてみりゃいいじゃん」
ってなわけで、調べてみたところ、丁度一話無料立ち読みが出来まして。
取り敢えず読んで見たら…
「何かめっちゃ可愛い子(シエル)おるー!!」
となりました←

恐ろしいフェロモンだ…
いや、それ外道って言ってるみたいなもんじゃないですか(笑)
ジルだってもともとは純粋なんだぞ!←

了解です(pq´v`*)

いや、イケメンですって!アブセルには勿体無い顔!!←
えー無理そう(-ω- )って思ってたら素敵素敵な美絵が!!
リト麗しい!!白い悪魔な下賤動物と契約した魔法少女みたい!!←
色々とあったんですね、ちっこい脳で←】

117リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/19(火) 16:54:05
【過去】

勝負に勝ち、嬉々として命令を下すアブセル。
しかし対するリトは差し出された手に何の反応も示さなかった。
それはアブセルに従いたくない為に拒否していると言うよりは、彼の言葉の意味が理解出来ていないように見えた。
目の前の手とアブセルの顔を見比べたかと思えば、何事もないかのごとく顔をそらしてしまう。

その時、ちょうど部屋に新たな来訪者がやってきた。

「ちゃおちゃお、お姉様がきてやったよ」

現れたのはナディアとヨノだった。
その姿を見るや、リトは持っていたトランプを投げ捨てて二人のもとへ行ってしまう。

「リト、またご飯を残して。ちゃんと食べなきゃ駄目。」

ヨノは部屋を入るとすぐに弟の食事を確認し、困ったように皿を持ってくる。
そしてスプーンで掬って彼に食べさせようとするが、それをナディアが止めた。

「ヨノはすぐ甘やかすんだから。ちゃんと一人で食べさせなきゃ。」

同じ姉妹でも性格も態度もまるで違う二人。
ナディアは呆れたように溜息を吐いたところで、ようやくアブセルの存在に気づいた。

「アブセルじゃない。何?リトと遊んでたの?」

118アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/20(水) 07:59:36
【バルクウェイ】

暫く、"戻ってきた"と言うことを理解するのに時間がかかった。

「セナ様!」

ジュノスを含めた数人の人影がこちらに駆け寄ってくる。
それをどこか呆然とした面持ちで眺めていたアブセルの目に、不意にナディアの姿が映った。

「お嬢…なんで…」

しかし、そんな疑問もそこまで。
続いて掛けられたリマの声を耳にし、アブセルは完全に我に返り、ハッと視線を動かした。
リトがいる。…良かった、無事だ。

けれども安心するのは早かった。

ナディアが震える声で口を開いた。
それを聞くや、アブセルは急いでリトの首筋に手を、脈を確認する。

そして、一瞬にして色を失った。

「…そんな……」

…彼の鼓動は途絶えていた。

「おじょっ…お嬢!どうしよう…!…ごめん、俺っ…どうしたら…」

アブセルは震える手でナディアの服を握る。
今や彼は完全に惑乱していた。

119シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/20(水) 20:16:53
【バルクウェイ】

不意に上がる制止の声。
シデンはそこに現れた女性…キールに向けて舌打ちをし、怒気を含んだ目で彼女を睨み付ける。

「ふざけるな、俺に指図をするな」

…と、いつものシデンならば、そう言い張っていたことだろう。

しかし、今回ばかりはさしもの彼も彼女の言葉に従わざるを得なかった。
それは、視界の先に見える男…ボルドーの存在が大きかった為だろう。

だが、苦汁を嘗めさせられたまま終わるシデンではない。

「……次は殺す」

そうイオリに向けて言葉を吐き捨てたのを最後に、彼はキールと共に眩い光の中へと消えた。

120アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/20(水) 20:18:20
【過去】

従うどころか何の反応も見せないリトに対し、アブセルは当然の如く腹を立てる。

(こいつ…ッ)

絶対ナメられてる。もしくは言葉が通じないのか。

しかしそんな時、この屋敷のお嬢様二人組が部屋に姿を現した。
それを目にするや、アブセルは途端"げっ"と苦い顔をし、
リトと遊んでいるのかとナディアに問われれば、慌てた様子で首を振った。

「ち…違ッ…、誰がこんな奴と…!
変なこと言うなっ、暴力ババア!」

暴力的でがさつなおばさん。略して"暴力ババア"と、アブセルは勝手にナディアのことを命名していた。もしくは"おっぱいおばけ"。
因みにヨノは"おっとりババア"である。

「俺は食器下げなきゃいけないから、そいつが食べ終わるの待ってただけだ!」

そう言いながら、アブセルは急いで散らばっているトランプを集め、片付け始める。

くそう…。
リトに屈辱を与える筈が、この二人が現れたせいでやり難くなってしまった。

121イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/20(水) 20:21:42
【リマ》あらら(笑)さすが友人…気配を消していたか…←まぁ結果オーライな感じで良かったじゃないですか^^
タナカさん刺されたのか;でも元気w
カニやんww
なんか…がっかりだよ!「絵柄が好きでついジャケ買いした」とかの方がまだロマンがあったよ!(笑)

いや、そう言う訳じゃ…。ただ心の内を顔に出さず、涼しい顔で悪行を行うとこが素敵だな、と←
ジルは妹の為に仕方なくやってるみたいなもんですもんね…

そうかぁ…じゃあ次描くときはもっと男らしい顔にします(笑)
え〜残念…「僕と契約して魔(ry」←自分もそれを連想したww
そうそう、ちっこい脳なりにねwまぁアブセルは恵まれてる(様に見えた)リトに嫉妬してるだけなので、リト自身の人格を嫌っている訳ではないのですよ多分。
因みにリトの姉二人に対しては何か照れ臭くてツンツンしてるだけです】

122ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/22(金) 17:33:25
【過去】

「ば…っ」

こいつ、張っ倒してやろうか。
いや、お子ちゃまの言葉にいちいち反応していてはダメだ。ここは歳上らしく、クールに接してやろうではないか。
ナディアは頭に青筋を立てるも、自分にそう言い聞かせ気を抑える。

この餓鬼は邸に来た時から変わらない。口は悪い、態度も悪い、本当イラつく。
ヨノは弟が増えた、なんて喜んでいるが、こんな弟なんてごめんだ。
リトと同い年の子供。弟にとっては良い影響になるかも、とは思っていたが。

「ちょうどいいや。アブセル、私らこれから出掛けなきゃいけないからリトの相手しておいて。」

いや、まだ分からない。ひょっとしたらと言うこともなくはない。
アブセル自身も口ではこう言ってもどうやらリトに興味があるようだし、少し一緒にいさせてみよう。
そう考え直したナディアはアブセルにそう持ち掛けた。

「チャンバラとか、体を動かすやつはダメ。大人しく遊びな。」

123リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/22(金) 18:38:04
イスラ>>
おかげで今回の新巻の付録、店舗で買うのとコンビニで買うのでは違ったので悩んでいたところ、私が買えなかった方のコンビニの付録をくれたんですo(*≧▽≦)o ワーイ♪
タナカさん最強説←
セバスの名前を知った時、カニでなくエビだったと思ったのは言うまでもない←
えー、黒執事はしばらくセバスが表紙だったのでそれはあり得ません(゚∇^d)

褒め言葉として受け取らせていただきます(笑)
いえ、”もともとは”純粋だったのです←

楽しみにしています(pq´v`*)笑
リトは何を願ったのだろうか…(笑)いや〜、いつもウチの子達を素敵に描いていただき有難うございます!
そして自分もその気になったので描いてみました!この前のイスラさんに倣ってナディアのプロフィールをば(*´∀`)
imepic.jp/20140822/668010

成る程成る程、子供らしいですね(笑)

124アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/23(土) 16:31:15
【過去】

なんだ、この二人は出掛けるのか。
それなら心置きなくリトに意地悪ができる。

…なんて、思うこともなく。

「はあっ?なにそれ!?やだよ!!」

ナディアの申し出に対し、アブセルはあからさまに嫌そうな顔をして声を上げた。

「俺もそっちが良い!出掛けたい!連れてって!!」

此所は窮屈でとても退屈だ。
自分だって久し振りに外出がしたい。

125イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/23(土) 16:32:47
【リマ》
それは嬉しい、友人に感謝ですね^^
もうタナカさんとセバスチャン交替しようぜ←
そう言えばエビにもいましたね、セバスチャンが(笑)
だとしてもカニやんは酷すぎますよww

ええ、誉めてます(笑)じゃあ今はもう邪悪に染まっちゃったんだろうか…

背が伸びます様に…?←
いえ、好きで描かせて頂いておりますので(´ω`)むしろ好き勝手にし過ぎと言うか…イメージ崩してそうで申し訳ない;

おおっ、描いて下さったんですか!?ありがとうございます!ナディア美人!!
おとめ座でB型とかイメージぴったり(笑)てか父親嫌いなんですねぇ…;
良ければ他のキャラのも見てみたいなぁ←

年齢の割りに性格スレてますけどね(笑)】

126ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/08/27(水) 20:48:50
【ALL》バルクウェイ編終わった後、どうするー?】

127イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/28(木) 16:25:26
【取り合えず一息ついて〜…どうしましょうかね?
てか四神組とリト達が合流しましたが、今後みんなで移動となるともの凄い大所帯になっちゃいますね(笑)
なんか理由をつけて何組かに分けた方が良いかなと思うんですが…どうでしょう?

例えばリトやナディアは父母の問題解決してないので、一旦お屋敷に戻るなりなんなり…

フィアは他の仲間を呼んで仇討ちに行くとか?(自分シャムとルドラを久し振りに出したい、あと新キャラでオネェ←)

あとノワールの子供の問題やアグルの兄の仇打ちなんかも解決してないですね。
それから黄昏の塔はいつ立つの?←とか
吸血鬼のオリジンって何?ずっと気になってた(笑)今後出てくるの?とか

…と、まぁ今のところ明確になっているであろう消化すべき問題を上げてみました(-ω-;)】

128ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/08/28(木) 22:16:39
【オリジン》名前だけ出して本編出さなくて良いかな?位の扱いで考えてたww

黄昏の塔》アグルの仇討ち&闇関係の決着時に闇の巣に建てようかな、とかとか

フィアの仇討ち》やるならこの辺りにオリジン絡めるか……

リトのナディアのお家事情》これは一旦分かれて解決?する方が良いかなと俺も思った

後、思いっきり忘れてたんだけど四凶組が……

最短で完結するならリトナディア達の闇関係組とその他組に分かれて、


闇関係組→お家事情解決→闇の巣へ

その他組→四凶組決着→闇の巣へ

→闇の巣で合流→黄昏の塔出現→アグルの仇討ち→黄龍の根城へ→最終決戦

で大体のフラグは回収出来るかなーと。

メルフィやジルの過去や血統も最終決戦時にフラグ回収出来るんじゃないかと。



129ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/08/28(木) 23:29:14
【個人的には暖めてるネタもあるしもう少し色々やりたいけれど……

とりあえず考えてるのを書いてみると、

バルクウェイへ対黄龍を掲げる勢力が出現→四神組も接収される→選抜試験決闘大会開始→四凶も大会に紛れ込む→異能者を喰い荒らして超強化→四神組と激突→四凶組決着後→キール襲来→キール無双で四神組以外全滅→対黄龍部隊の秘宝をキールが奪取→その秘宝を使って黄龍次なる作戦へ→地殻を捲り上げて外郭を成形→世界を外郭の内側に閉じ込めて闇に閉ざす→外郭上に新世界を創造→世界が暗闇に閉ざされた為に闇が溢れ出す→闇を吸収し闇の巣から黄昏の塔出現→実は黄昏の塔頂上は外郭を突き抜けており新世界を伝って虚空城に乗り込める事が判明→黄昏の塔で闇関連アグルの仇討ち決着→最終決戦へ……

こんな感じなんだけど、完全に俺の想像垂れ流しだったわww】

130イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/08/29(金) 00:14:00
【オリジンそんな軽い感覚で(笑)
まぁフィアの仇討ちの時じゃなくても、ノワール含め吸血鬼関連の話をまた大々的にやるのも有りですね。(オリジン復活するぞ〜みたいな?)

温めてるネタあるなら全部出しきっちゃえば良いですよ!

なるほど、塔からの展開いいですね!アツい!
自分は問題ないです^^
あと折角メルフィやフェミルってキャラがいるので、この二人をもっと有効活用←していきたいですね〜】

131?? ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/31(日) 01:34:46
【バルクウェイ】

化け物達め。

リトを贄として方舟を呼び出したまでは良いものの、”偉業”は成し遂げられず終わった。
欲に塗れた愚かな官僚共は方舟と共に生じた魔物の餌となり、ワヅキもまた、現れた異能によって滅ぼされたようだ。

まったく使えない。
事の顛末を思い返し、裏路地を行く首謀者の一人ヨハンは大きく歯噛みする。
最悪の事態だ。この場は逃れたものの、何か対策せねば。
…あの場所にナディアがいた。此方には気づいていないようだが、気付かれれば決まりが悪い。
今は一刻も早く屋敷へ…

「やあ、おじさん。こんにちは」

しかしポセイドン邸へと急ぐヨハンへ、その歩きを止める声がかかった。
反射的にそちらへ目を向けた彼は、途端息を呑んだ。
その顔が滑稽だったのだろう。
声を掛けた主はクスクスと笑みを零す。

「幽霊でも見たような顔だね」

「トー…」

違う、そんなはずはない。
あの男は死んだはずだ。
なのに何故…

ヨハンの頭にあらゆる思いが巡り、一度は混乱したものの、やがて一つの結論に至った。

「お前はトーマの…!!」

目の前にいる人物の顔は”あの男”そのものだった。
しかし奴は死んだ。何故生きている?
違う、生きているのではない。
たしか奴には息子がいたはずだ。
つまりこいつは---

しかしその答えをヨハンが口に出すことはなかった。
彼が言葉を言い終わらぬ間に突如視界が暗転し、そして、次の時には…

「正解。」

首根を切られ、彼の体は地面に転がっていた。
ピクピクと痙攣を起こすヨハンに近づき身を屈め、声の主、ジルは言葉を続ける。

「ごめんね、方舟の関係者は全て片付けるよう言われているんだ。」

口では謝罪の言葉を述べているものの、それに見合わず彼の目は何処までも冷めていた。

132?? ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/31(日) 01:36:12


「僕ね、知っているんだ」

トーマ、久しぶりに聞く父の名前。
父は10年以上前に母と共に事故で死んだ。
あれは商談を兼ねたパーティに行く為だった。
そのパーティを開いたのがこの男。
事故との因果関係は分からないけど。
その後自分と妹は叔父夫婦に引き取られたけど、叔父は同時に新事業を設け、自分が父から引き継いだ遺産を食い潰した。
もともと才能のない叔父、見事に事業に失敗した。
おまけに借金まで作って…幼い妹を売ろうとしたんだ。
その事業を持ち掛けたのも、妹を金にしようと唆したのも全てこの男。…違うな、叔父に自分達を引き取るよう言ったのもこの男だった。

「妹の件は失敗したけど、僕達がいなくなって安心した?幼い子供達が生きていけるわけないって思ってたでしょ?」

ジルは問いかける。しかし既に目の前の男に息はない。

「残念だったね。」

何処までも汚い男。結局最期は自分で首をしめる形となった。
黄龍の命令がなければ、別に手にかけるつもりはなかった。だって、死んでしまったらつまらないじゃない。あわせるのなら生き地獄に限る。

もうこの男に用はない。
ジルは身を起こすと、物影に隠しておいたものを抱える。
ワヅキの手に渡っていた少女、メルフィだ。ワヅキは使い物にならなかったが、この娘にはまだ価値がある。
今回ジルが黄龍から受けたのは言葉通りの”後始末”。方舟加担者の排除、娘の回収が終わり、後は深淵の処理か。

「面倒くさいな…別にいいけど。」

ジルは呟き、最後にもう一度だけ、ヨハンへと目を向ける。
燃やすとか…”跡形もなく”片付けた方がいいのだろうか。まぁいいや。

「バイバイ。」

餞別だ。
ジルは清々しいまでの満面の笑みを浮かべ、その場から消えた。

133リマ他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/31(日) 02:28:17
【バルクウェイ】

どうしよう、など尋ねられても、それは自分が聞きたい。
冷たくなったリトを見つめるナディアはほぼ放心状態だった。
事態を把握したリマも言葉を失っているようで、アブセル以外取り乱している者がいないだけまだマシと言ったところか。

おそらく皆絶望に近い気持ちでいたのだろう。
その中でただ一人、ノワールだけはリトを見据え、別の思いを巡らせていた。
不審げに彼を見るも答えは出ず、モヤモヤが募って行く。
埒があかず、ノワールはリトからセナへと視線を移す。続いて横目に先程の雨による水たまりを見た。

「……」

ノワールはおもむろに取り出したハンカチを水たまりに浸し、その状態でセナへと歩み寄る。
そして何を思ったか、それをセナの顔の上で絞った。

「!」

あまりに突然の奇行にセナを抱いていたリマはギョッとする。
突然すぎて止める間も無かった。
当然水はセナに掛かり、セナは咳き込んだ。
これが目的だったのか、セナは目を覚ましたようだ。

ノワールはリトに向けていた不審な目をセナにもそのままで、腕を組みながら問いかけた。

「どういう事じゃ、説明せよ」

リトは何かおかしいのだ。

「リトは息をしておらぬ。心の臓も沈黙しておる。じゃが、こやつに”死人”を感じぬ。」

呼吸も心臓も止まっているのならすでに生きていないと言うこと。
しかしリトからは上手くは言い表せないが、言わば生気のようなものを感じるのだ。

「リトは死んでいるのか?生きているのか?答えよ」

ノワールは一体何を言っているのか。
多くが彼女の発言に戸惑いを見せる中で、その言葉を受けたセナだけはその意味を理解しているようで、息が落ち着くと同時に答えを出した。

「どちらとも言えない。」

しかし、これもまた奇怪な発言だった。
が、セナはその言葉の後に行動に移す。
地上に戻ってきてからずっと握りしめていた片方の手を皆の前で開く。
彼が持っていたもの、それはルビーの耳飾りだった。これはリトが十字界に落ちた際、そこで出会った閻魔に託されたもの。

「こいつ(リト)は、この中にいる。」

セナの話を要約すると、理屈はわからないが、リトの魂はこの宝石の中に入っているらしい。
深淵に闇の氣力を全て吸い取られ、リトはたしかに死ぬはずだった。
しかし宝石の中に魂が移ったために、完全な消滅までとはいかなかったようだ。
そして彼の体もまた、この宝石による力で守られていた。
深淵で見た赤い光も、地上に戻った際に噴き出した眩い光も、全てこの宝石によるものだった。

「これ(耳飾り)からは別の氣を感じる…。こことは違う…別次元の力。こいつ(リト)はそいつ(力の持ち主)に護られた。」

しかし、ここからが問題だった。

「(リトの体に魂を)戻す方法が分からない…。いずれ戻るのか…それさえも。」

134ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/08/31(日) 22:29:06
【過去】

連れてって、と言われても…
何やら視線を感じ、そちらへ目を向ければ、ヨノが何とも言えぬ表情を浮かべていた。
ダメだ、完全にスイッチが入っている。これは「可哀想だから連れて行こう」などと言い出すに決まっている。
ナディアは溜息を吐いた。

「残念だけど、私たちは遊びに行くわけじゃないんだよ。父さま母さまの二人と知り合いのお屋敷に行くんだ。社交って奴。だからアンタは連れて行けない。」

本当は私だって面倒臭い、などと漏らしながらナディアは何の気なしにアブセルの額を小突く。

「アンタは留守番。そんでもって暇なんだからリトの相手しといて」

135リマ:2014/08/31(日) 22:47:23
素晴らしい流れ、アイデアが素敵…一方で自分は全く思いつかない(。。;)そして毎度の事ながら遅くなってごめんなさい…
リトはちょっと自身を見直す時間、と言うことでしばらく目覚めません。お話に上がっていた通りこのメンバーは一度ポセイドン邸に戻って、リトは寝かせとくことにします(つω`*)

イスラ>>
もう家宝です←
いや、タナカさんはたしかに不死身だけどシエルを護る事は出来ないので(笑)
以前はセバスチャンと言えばエビでした(笑) なんかセバスチャンがカニみたいにしか見えなかったんですよね←

どうでしょう、自分でもイマイチ←
邪悪ではないけど歪んではいますかね(笑)

しょぼいwwそんなのに命賭けたくないwwwしかもそんなことしたらリトの能力ってきっと巨大化w
いやいや全然崩れてないです!むしろピカイチすぎていつもビックリです!!どんどん描いてください!!!←

ピッタリなんだ(笑)ナディアはリトの立場も母親がおかしくなったのも皆父親のせいって見抜いてますからね〜
描きたいのは山々なのですが、次はリトにしようと思ったら上手く描けなくて撃沈しております(;-ω-)ゞ
次のプロフが出来上がるまでには暫くかかりそうですσ( ̄∇ ̄;)
代わりに先日の試験中に落書きしたフェミル置いた行きます←
imepic.jp/20140831/812540

いや、何だかんだ言って自分の気持ちに正直で好感持てますし(´∀`人)

136アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/01(月) 20:43:38
【バルクウェイ】

その耳飾りは確か、ルイとか云う男からリトが授かったもの。
赤く煌くその宝石を視界に、セナの話を耳にしたアブセルは不意に動き、その手から耳飾りを引ったくった。
そして次にそれをリトの手の中に握らせ、自身もまた両手で彼の手を握り締めた。

「リト…、リト…ッ!
頼む…、起きてくれ!目を開けてくれ!」

セナはリトの魂は宝石に護られていると言ったが、今のリトは人形も同じだ。そして、それに対し自分は何も出来ない。

…いつもそうだ。
リトを護りたいと思っていても、実際、邸の中でリトを擁護していたのはナディアとヨノだったし。
旅に出た後だって、マゼンダの洗脳を解いたのも、闇の巣で彼と共に居たのも、深淵からリトを救出したのだって、自分ではない。
自分は役立たずだ。それがどうしようもなく悔しくて、腹が立って、目が熱くなった。

「俺、まだお前に謝ってない…!まだ一度も笑わせて上げれてない!」

しかし、いくら呼びかけてみてもリトからは何の反応も返ってこない。 
アブセルは打ちひしがれた。
リトの手に額を押しあて、小さく肩を震わせた。

「まだ、何も…返せてない…」

137イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/01(月) 21:14:46
【そう言えば忘れてたけど、フロンはもう一回くらいジルに会う機会が欲しいなぁ。そしてそのままジルに葬って頂きたいかも。

リマ》どうぞお気になさらず、ゆっくりで大丈夫ですよ^^
了解です。リマ、セナ、ノワールも屋敷に行くのかな?てかユニは今バルクウェイに居るんですかね?(笑)
あ、あと深淵の封印任せてもいいですか?適当で良いので

家宝てww
そうか…タナカさんが黒執事だったら自分は漫画を買っていたかもしれなのに…←ショタとジジイのコンビってなんか素敵じゃないですか?←
てか何故か大抵の執事ってセバスチャンって名前ですよねwカニと言われれば何となくそう見えなくも…いや、やっぱり分からない(笑)

いい具合に黒いですよね(笑)まあジルが今後どうなるかも楽しみにしてます^^

巨大化wwそれは嫌だwリトなら自由って願いのほうがそれっぽいかな 
え?本当?そんなに褒めてもツバぐらいしか出てこないですよ←

ある意味いろんなことに気づいているナディアが一番辛いのかもしれませんね;
では楽しみにしながら気長に待ってます!
フェミルかわいいぃぃ!(*´ω`*)くまもかわわ←ペン入れ、色塗りはしないんですか?

まさか好感を持って頂けようとは…安心しました(笑)】

138ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/09/02(火) 09:52:30
【んだらば大まかな流れは上記の通りで、リト組は一旦屋敷に戻る感じで良いかな?

良ければ本編レスするお】

139アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/02(火) 20:38:13

【過去】
  
"シャコ−"とは何だろう?何故リトはそれに着れていかないのだろう。…といった疑問を頭の片隅に。
アブセルは小突かれた額に手をあて、どことなく決まりが悪そうに目元を赤らめながら、不貞腐れた様につと顔を背けた。 

「…ケチババア……」

しかしそれ以上駄々を続けることもなく。目線でリトを指し示しつつ、唇を尖らせて言った。

「もういいよ、こいつのこと見とけば良いんだろ。おばさん達はシャコ−でも何処でもさっさと行っちゃえば?」


【ヤツキ》場面変えるってことですかね?
自分は大丈夫ですよ^^】

140リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/02(火) 23:35:11
【自分も大丈夫です、お願いします(>人<;)】

141ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/09/04(木) 21:55:19
【了解した!んだらば近々レスするぜ!】

142レックス ◆.q9WieYUok:2014/09/07(日) 16:46:19
【バルクウェイ】

キールに連れられ、光に包まれるシデン。

転移術式と共にその姿が消えたのを確認し、イオリは血溜まりに腰を落とした。


布地越しに血溜まりの生温さが伝わるが、疲れ果てた身体には、そんな事など今は関係なかった。

「次は殺す、か……」

去り際の台詞を思い出しながら、イオリは顔をしかめる。

今回は双方の痛み分け、決着は着かなかった。

しかし。

(次に殺りあう時は……)

その時が来る事を心の何処かで望みながら、イオリはしかめ面で上を見た。

それと同時に。

曇天を割って、巨大な船が……方舟であった先の巨鯨に勝るとも劣らない程の飛行艇が姿を現す。

それは次々と数を増やし、バルクウェイの上空を埋め尽くして行く。

その光景を眺め、イオリの隣に立つボルドーは口を開いた。

「世界政府に唯一渡りあえる独立空挺師団。

兄貴がその団長だからと言って、気軽に呼び寄せれる訳じゃないが……まぁ、十字界から戻ってすぐ動いたのは正解だった様だな。」

ーーーーー

バルクウェイでの戦いから一週間が経った。

政府高官達とワヅキの野望は潰え、深淵もゆっくりとだが、しかし確実に閉じて行った。

深淵より這い出た魔物の群れは駆逐され、決して少なくはない生存者達は手厚い保護を受ける事となった。

……第801独立空挺師団によって。

巨大飛行艇アイラヴァターを旗艦とした一団の規模は小国家にも匹敵する程であり、崩壊した世界政府に代わりバルクウェイの復興及び政治介入を始めていた。

そして。

その空挺師団長レオール・ランブリッシュの実弟であるボルドーとイオリの口添えに拠って、四神達は居住用兼移動用の小型飛行艇を与えられる厚遇を受けたのだが……

「目を、覚ましませんね……」

中型飛行艇の内部で一番広い、食堂を兼ねた居間で椅子に腰掛けるレックスは一人呟いた。

イスラと同じく、時を越えて来たジュノスと、ナディア達の先祖であるセナとリマ。

付き人のアブセルと、吸血鬼であるノワールとフィアを迎えた一行は大所帯となったが、唯一人、目を覚まさない者が居た。


リトだ。

溢れ出した闇を治める為に深淵へと潜ったと聞いたのだが、事が収束を迎え、皆がそれなりに落ち着いた今もまだ、彼は一人眠ったままだった。

別室で眠り続ける彼の事を考えながら、レックスは先程手渡された書類に目を通す。

「……バルクウェイ復興祭、ですか。」

801空挺師団によって、バルクウェイの復興はかなりのスピードで進んでいる。

そして、その復興支援の一環として、復興祭が開かれようとしていた。

既に街中には簡素ながらもそれなりの数の露店が出ており、街は賑わいを取り戻しつつあった。

更に、世界政府敷地内の庭園には闘技場が建設されている。

復興祭の大目玉として企画された闘技大会は、既に誰が優勝するかを賭けた賭博が始まっており、集金の八割は復興へと充てられる事が決まっていた。

その闘技大会の出場者リストには、何故か知らぬ間に、自分やアグル、イスラやメイヤの名が記されている。

これからどうするのか、それが漠然とすら決まっていない今、大会に出るべきはどうかレックスは迷っていた。

(どうするべきでしょうか……)

143アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/08(月) 19:03:07
【飛行艇】

「うっわ、何これ。俺の名前も載ってるじゃん。…書いたの誰?」

大きな欠伸を洩らしながら食堂へと足を踏み入れるや、アグルはレックスの眺めているその書類を横から取り上げ、面倒臭そうな声を上げた。

「儂が申し込んでおいた」

それに対し、間髪入れずに言葉を返したのはバロンだった。
机の上に腰掛けホットケーキを賞味していた彼は、フォークの先をアグルやレックスに向け、ニヤニヤとしながら続けた。

「四霊の連中がまた戻ってくる…なんてことは無いとは思うが…念の為じゃ。
復興支援を兼ねた様子見として、バルクウェイにはもう暫く滞在しておいた方が良い。
闘技大会の出場はその間のボランティアだと思って、大いに祭を盛り上げてやるのじゃ」

ボランティアとは名ばかりの、何か面白そうじゃのう的なノリで申出したのだろうが、
当の本人は呑気にホットケーキの最後の一口を口に放り込み、「さて」と立ち上がった。
傍らにある風呂敷を引き寄せ、背中に背負う。

「すまぬが儂は暫くの間、図書館の方に戻らせて貰おうと思う。
もしかしたら"この身体"をどうにか出来るやもしれぬでの」

言って、バロンは風呂敷の中から一つの果実を取り出し、目を落とす。
それは"生命の大樹"に実る、神を出生させられる果実だ。
バロンはイオリがワヅキと戦っている間、鯨内部の街の神殿に入り込み、ちゃっかりその実を取ってきていた様だった。

「では…後のことはお主らに任せた。
他の者にも宜しく伝えといてくれ」

そしてバロンは再びその実を風呂敷に仕舞い二人に目配せすると、窓から外へ飛び立って行った。

144サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/08(月) 19:04:11
【飛行艇】

一方その頃、メイヤとサンディは飛行艇の上部、甲板の上にいた。

「街…ちょっとずつだけど賑やかになってるね」

今、飛行艇は街の船着き場、水上に停船しており。そこから見えるバルクウェイの様子を眺めながら、サンディはほっと胸を撫で下ろす。

しかし、まだ全ての心配事が消えてなくなった訳ではない。
今回のことで出た被害や犠牲、そしてナディアや彼女の弟のこと…それらを思うと、どうしても素直には喜べなかった。

そんな訳で胸のもやもやは未だ晴れぬままだが、活気を取り戻しつつある街の修繕を行う音、人々の声に気を紛らわせつつ、サンディはつと視線を動かした。

「…で、話したいことって?」

バルクウェイでの戦いの際、"戻ったら話したいことがある"との発言の元、サンディは隣にいるメイヤに目を向けた。


【ヤツキ》場面転換ありがとうございました!】

145ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/09(火) 13:58:34
【飛行艇】

「いつまで落ち込んでんの?」

飛行艇に設けられた一室。
食堂から食べ物を持ってきたナディアは、部屋に入るなり口を開く。
声を向けたのはアブセルだった。

深淵に落とされ、救い出した弟は息をしておらず。しかし彼は決して死んだわけではないのだと、セナは言った。
リトの魂が入っているとされるルビーからは未だ変化は起こらず、結果彼はずっとこうして眠り続けている。

しかし問題は他にもあった。
リトがそうなってからと言うもの、アブセルが彼の側を離れなくなってしまった。
もともとリトにはベッタリだったものの、今までのそれとは様子が違う。
眠り続けている彼の手を握りなが終始俯いていて動かない。食事だって尻を叩いて無理矢理食べさせている程だ。

ナディアは溜息を吐いた。

「あんたがそうしてたってリトは目覚まさないよ?てか男同士で手なんて握ってんな、気持ち悪い。」

なんと言うか、もし仮にリトが今目覚めたとして、まず始めに目に入るのが自分の手を握るアブセルと言うのは、多分、いや間違いなく嫌なシチュエーションだろう。ずっとその状態だったなんて言おうものならトラウマになるかもしれない。

「そんなんする暇あるなら飯食べてきな。あんたまで倒れたら堪ったもんじゃない。」

146リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/09(火) 14:11:35
ヤツキ>>
場面変換ありがとうございました(>▽<)


イスラ>>
ジルにフロン殺させるんですか(笑)

一応、リマセナはついて行こうかなと考えています^∇^
あ、ユニの存在忘れてました…今何処にいるんだろう?←
深淵埋めるのどう纏めようか思いつかなかったのですがヤツキがやってくれました(紃・ω・`)←

黒執事の類は宝物です←
ジジイとショタってシュールすぎるww
てかタナカさんが従者でやるなら白(年寄りだから)執事ではw
なんかカニって思ったんですよね、彼の顔を初めて見た時。

改心…しなさそう←
ジルには幸せになって欲しいです。

あぁ!自由ってのがそれっぽいですね!能力は何だろう?
ツバは出さないでくださいww

もともとナディアはお気楽なんでそれほどでも←
落書きなので、するつもりは無かったのですが…塗ってみました←
imepic.jp/20140909/509930

アブセルはなんか人間らしくて好きです(´∀`)

147アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/09(火) 19:36:19
【飛行艇】

ナディアに声をかけられても、アブセルはピクリとも反応を示さなかった。
リトの横たわるベッドの脇に踞り、動かない。

もはや起きているのかどうかさえ定かではないが、暫くして、顔を押し付けている布団の隙間からボソボソとした声が返ってきた。

「……なんで…お嬢はそんな平気でいられるんだよ…」

その口調からは全く覇気が感じられない。

「旦那様だって…死…」

死んでしまったのに。と続けようとして、彼は途中で口をつぐんだ。
ナディアに気を使ったのだろう。

あの日の翌日、街の路地裏の片隅でナディアの父親が発見された。
魔物にやられたのか、はたまた別の何かか原因は分からないが、遺体は無惨なものだった。

取り合えず遺体を綺麗にして貰い、やっと遺族に返される手筈が整った。
恐らく今日にでも屋敷の者がナディアの父親を引き取りに来ることだろう。

148イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/09(火) 19:39:05
リマ》嫌ですか?←
それならもしくは勝手に自滅します(笑)

そっか、じゃあジュノスも行こうかな…
ユニは…ポセイドン邸に待機させてた、とか…?
ですね^^流石はヤツキさんです

グッズとか集める派ですか?
白執事…かっこいいwてか黒執事の"黒"って何?←
セバスファンが怒りますよw
そうそう、アニメ動画のコメントで知ったのですが、シエル双子説とかあるんですね。確かに夜会の場面とか完全に二人いる…面白い

幸せになって欲しいですね〜…てかしてあげてよぉっ!←

なんですかね〜、自分的には鞭とか使ってビシバシ魔女やキュウベエを虐めるリトが見たい←
誉めてくれた相手に対してツバを吐きかけるのが最近の紳士のたしなみです…嘘です←

ナディアのメンタルが強すぎるw
おぉ!本当に塗ってくださるとは!ありがとうございます!!
フェミル可愛いよ!輝いてるよ!!←プロフも付け足して下されば更に自分は喜びますよ←

リマさんアブセルのこと嫌いかと思ってました(笑)

あ、ジュノスとイスラのプロフが出来たので、良ければ見てやって下さい^^
ジュノスと一緒にいる子は彼の娘ですが、都合により5歳verでお送りしております

imepic.jp/20140909/697630
imepic.jp/20140909/697640

149メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/09/10(水) 15:02:35
【飛行艇】

遠くに聞こえる街人の声と、波の音。

時刻は正午過ぎ。

照りつける日差しが水面に反射し、メイヤは眩しそうに目を細めた。

バルクウェイでの戦いから一週間。

深淵を閉じる作業にあたって居た為、サンディと会うのは一週間振りだ。

「小国家並みの軍隊がほぼ全員で復興作業にあたってるから、1ヶ月もあれば街並みも大分元に戻るだろうな……」

甲板の上で胡座をかき、犬の面を手で弄びながらメイヤは口を開く。

そして、サンデの問い掛けに応えようとしたその時。

「新雷時冥弥は闇の子供達計画の唯一の成功者。

闇の子供達計画とは、百年前に開かれた異界の扉から溢れ出た闇の一つ、悪神の力をどうにか使役出来ないかと立案された物。」

フードを被った青年……メイヤの隣に現れたクウラが、メイヤの声に被せる様に口火を切った。

「100年前、当時の当主を失った一族は、勢力の衰退を危惧していた。

そこに運良く権限した闇の悪神を取り込もうとしたのが事の始まり。

だけど、闇の悪神はそう簡単に扱い切れる訳も無く、代々伝わる刀に何とか封じ込めるので精一杯だった。」

その姿をメイヤは横目で睨むも、クウラは話を続ける。

「それから数十年。

一族は悪神の魂の一部を取り出し、人間に宿す術を発明した。

けれど、僅かな一部とあっても闇は人の身体を、精神を汚染して行く。

悪神の闇は人の身体を魔物に変え、元々あった精神を破壊し、狂わせる。」

ならば、闇を宿せる様に細胞を、身体を調整した赤子を用意し、ある程度成長させた後々、悪神の魂と共に偽りの記憶を植え付けよう。

「そして、数百件の適合実験で得られたノウハウを元に、急速培養人格形成技術に因って産まれたのがそこの彼。

シンライジ家現当主の弟ととして人格形成さるてるけど本当は違う。

本当は、母体が自害し、死産した赤子を基に調整された現当主……イオリの実の子。」

そして、話し終えたとばかりにクウラはフードを剥ぎ、海風にその黒髪を靡かせた。

「哀れだと思わない?産まれる事の無かった実の子を知らぬ間に玩具にされた上、その子が自分を兄として認識し慕ってくる。

急速培養と人格形成、更には悪神を宿したせいで寿命は極僅か。

そりゃあイオリは世界の全部を憎みたくなる訳だ。

ま、裏で何があったか知らないままだったイオリも、そこの彼も。

闇の王子も吸血鬼の姫も殺して闇も魔玉も奪って全部全部全部、俺が壊すけどね。」

風に靡く黒髪と凶気に染まる黒瞳は弥都生まれの証し。

どこかメイヤに似通った顔に凶笑を浮かべ、クウラは置き土産とばかりにクナイをメイヤの足下の甲板に投げ、歩き出した。

そのクナイを凝視したまま、メイヤは口を開く。

「……言いたい事はアイツが大体言って行った。

戦いが終わった後、俺とアイツとその兄で深淵を閉じたけど、イオリは何も言わなかった。

なぁサンディ、俺は、どうすれば良い?」

150サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/11(木) 17:12:27
【飛行艇】

クウラから聞かされた事実は思いもよらぬものだった。
サンディはあまりの衝撃に暫く口を利けず。
しかし、クウラが立ち去り、メイヤが言葉を発した後、彼女は言った。

「それって…本当はメイヤはあたしよりもずっと年下だったってこと…?」

話の中でそれが一番驚いた。とでも言う様に目を丸くする。

悪神を宿されたというメイヤの気持ちも、実の子を取り上げられたというイオリの気持ちも、まだ人生経験の浅い…いや、例え幾百の年を過ごしていたしてもサンディには分からない。
それは実際に体験した者でなければ。

どうしたら良いと問うメイヤに対し、サンディは困った風に宙を眺めながら言葉を探した。

「…メイヤ自身がしたいことをすれば良いんじゃないかな…?
例え悪神ってのに憑かれててその人格が作られたものだったとしても、あたしにとってメイヤはメイヤだし…。
それに生まれがどうあれ、今のメイヤはちゃんと自分の意思を持ってる。周りの都合になんか振り回されないで、自分の心に正直に生きて欲しい。
…お兄さん…あ、お父さん…?もきっとそれを望んでる」

そう言ってサンディは笑みを見せる。
しかしそれはどこか無理に表情を作っているかの様な、ぎこちないものだった。

「…って、何か生意気だったね。
知った風な口利けるほど、メイヤのこともシンライジのことも知ってる訳じゃないのに…」

もっと気の利いたことは言えないのだろうか。
その顔から笑みを消し、サンディは目線を下げた。

「でも、ごめん…今のあたしにはこんなこと位しか言えないや」



【そう言えば…吸血鬼達は結局どう動かしましょう?】

151ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/09/11(木) 19:51:40
【ノワールの様子見の為にシャム達が人間界へ→そのままノワールに同行、が無難と言えば無難な気も……

オリジン関係で動くなら、人間界で異質な反応(オリジン)が見られた為調査しに来た、とかとか。

取り敢えず、フィアはバルクウェイに滞在させときまふ、リトセナ組の中で完全に空気だったんでww】

152ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/11(木) 22:33:28
【飛行艇】

最後まで口に出さずとも、アブセルの言わんとしていることは分かった。
ナディアは再び大きく溜息をつけば、そのままの態度で言葉を続ける。

「この件はあの人(父)が絡んでるんでしょ?」

父はあの箱舟とか言うものを呼び出す為の深淵を開く贄としてリトを利用した。
その真意は分からないが、どうやらバロンが対峙した男に加担したようだ。
なら答えは決まってる。

「あの人がやったことで犠牲者も沢山出た。どの道、生きて帰ったとしても罰する必要があった。身内だからって容赦しない。」

それに、とナディアはふとリトを見る。

「この際だからアンタに話しておく。これからうちの家を継ぐのは私じゃない。この子だ。」

これはずっと考えていたこと。
代々ポセイドンの家系として受け継がれてきたが、もとはリマとセナによって繋がれた命。二人は決して、どちらが上で下かなど考えて接してはいなかっただろう。
神の力だろうと、闇の力だろうと、同じ血を引いているのであれば誰からでも生まれる。今回はたまたま同じ親から生まれただけであり、今後自分が闇の子を生むかもしれないし、リトがポセイドンの子を授かるかもしれない。本筋との血が近ければたしかに確率はあがるが、必ずその力のある子を得るとも限らないのだ。現に自分達の母は異能ではあるもののポセイドンでなければ闇の者でもない。
要は当主など誰がなっても同じ、その素質さえあれば。

「もともと私は当主なんて柄じゃないからね。リトがまだ幼いから私が預かってるだけ。」

つまり、

「次期当主を殺めようとした、それだけでも罪が重い。当主暗殺がどれほどの罪か、あんたも知ってるでしょ?」

ただ、気がかりなこともある。
母親の存在だ。
あんな父でも、母にとっては掛け替えのない人。母は、あの人の事をとても愛していたように思う。
父は母の愛を信じられていないようだったけど。二人の心はお互いを向いているのに、何故か一方通行で交わることがなかった。

「ま、どちらにしろだ。私はリトを待ってる。ちゃんと目覚めるって信じてる。落ち込んでいても時間の無駄。あんたもイジイジしないの。」

153ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/11(木) 22:34:25
【かこ

154ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/11(木) 22:40:24
【過去】

まったく可愛げがない。
ナディアは青筋をたてるも、時間がないのかそれ以上は何も言わず出て行った。

部屋は再びリトとアブセルだけとなり、会話も消える。

そしてリトはと言えば、姉が出て行ったところで全てをリセットしたかのように、アブセルと遊んでいたトランプには見向きもせず、先ほどアブセルが来た時と同じように積み木をいじり始めた。

155リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/12(金) 14:01:55
【飛行艇】

最後まで口に出さずとも、アブセルの言わんとしていることは分かった。
ナディアは再び大きく溜息をつけば、そのままの態度で言葉を続ける。

「この件はあの人(父)が絡んでるんでしょ?」

父はあの箱舟とか言うものを呼び出す為の深淵を開く贄としてリトを利用した。
その真意は分からないが、どうやらバロンが対峙した男に加担したようだ。
なら答えは決まってる。

「あの人がやったことで犠牲者も沢山出た。どの道、生きて帰ったとしても罰する必要があった。身内だからって容赦しない。」

それに、とナディアはふとリトを見る。

「この際だからアンタに話しておく。これからうちの家を継ぐのは私じゃない。この子だ。」

これはずっと考えていたこと。
代々ポセイドンの家系として受け継がれてきたが、もとはリマとセナによって繋がれた命。二人は決して、どちらが上で下かなど考えて接してはいなかっただろう。
神の力だろうと、闇の力だろうと、同じ血を引いているのであれば誰からでも生まれる。今回はたまたま同じ親から生まれただけであり、今後自分が闇の子を生むかもしれないし、リトがポセイドンの子を授かるかもしれない。本筋との血が近ければたしかに確率はあがるが、必ずその力のある子を得るとも限らないのだ。現に自分達の母は異能ではあるもののポセイドンでなければ闇の者でもない。
要は当主など誰がなっても同じ、その素質さえあれば。

「もともと私は当主なんて柄じゃないからね。リトがまだ幼いから私が預かってるだけ。」

つまり、

「次期当主を殺めようとした、それだけでも罪が重い。当主暗殺がどれほどの罪か、あんたも知ってるでしょ?」

ただ、気がかりなこともある。
母親の存在だ。
あんな父でも、母にとっては掛け替えのない人。母は、あの人の事をとても愛していたように思う。
父は母の愛を信じられていないようだったけど。二人の心はお互いを向いているのに、何故か一方通行で交わることがなかった。

「ま、どちらにしろだ。私はリトを待ってる。ちゃんと目覚めるって信じてる。落ち込んでいても時間の無駄。あんたもイジイジしないの。」

156リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/12(金) 14:03:59
【新しいのコピー出来てないの気付かなくて間違えて送信ボタン押してしまった…同じ文2つすみません(泣)そして前日の間違いも重ねてお詫びします(大泣)】

イスラ>>
【別に嫌ではないです(笑)
ジュノスはノワールの監視に着いてくるのはどうでしょう?
子供の存在をリマに話さないようにとか(笑)そして実のところ、セナも知らなかったりします。

成る程、そうしましょう(笑)
呑気にお客様としての待遇を満喫してそうですねw

黒執事はグッズ自体が結構お洒落なので黒執事関係なく素でデザインを気に入って買ったりしてますね(笑)
ガチャなどのマスコットとかはシエルだけGETして終わらせます。でも何故かセバスの辺りが良くてシエルよりも先に出てくるのでいつも何だかんだ言ってシエルとセバスの両方持ってます。←

仕方ないじゃないですか、見えたんだもの。←
黒はセバスを指していて、多分セバスが全体的に黒いことに由来してると思います。(中も外も)
あぁ、もうそんな所まで行っていたのですね。最近忙しくて4話以降全く観ていません←
双子説ですか…懐かしい(´∀`)

…ふっ←

キュウベェにもバシバシするんですかww
何と言う下劣紳士(笑)

ナディアはそう言う人です←
輝きの部分は恐らく自分がやった画像効果なので物理的に見えてますね(笑)
落書きにプロフ付けるのは忍びないので今度描き直します(-ω- )

え、何故wむしろ大好きですよww
自分が嫌いなのはどちらかと言えばリマです。

起こったことをありのまま話しますね。
ネットって広告サイトのリンクタグが出るじゃないですか?
イスラの絵が凄すぎて他のタグに紛れてスクロールする際何の違和感もなく通り過ぎてしまいました←
あれ、無いぞって探したらあった(笑)
そして意外に小さいですね←

ジュノス、良いパパや…(ホロリ
娘ちゃんが何の話してるのか気になるが(笑)足の生えた魚w

157アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/13(土) 03:13:51
【飛行艇】

"リトを当主に"。
それは彼にとっても驚くべきことだったのだろう。
アブセルはゆっくりと顔を持ち上げ、ナディアを見た。

「俺だって信じてない訳じゃないよ…、でも…」

しかしその顔は直ぐにまた下を向いてしまう。

「でも俺はいつか…旦那様がリトのこと理解して、二人が仲良くなってくれたらって…」

そう言うアブセルだって決してあの人に好意を抱いていた訳ではない。
リトのことを傷つけるし、怖いし、今回のことも許せない。
だけど、まだ幼くロクに仕事の出来なかった自分を祖父が引き取り、屋敷に置くことを許してくれていたのはあの人だ。感謝はしている。

アブセルは続ける。

「それに、リトを当主にして…お嬢はどうすんの…?
今度こそ本当に屋敷から出てっちゃうの?」

アブセルはまるで迷子の子供の様な、心細そうな目をナディアを向ける。

「お嬢が出て行ってから屋敷の中は本当に酷くなった…。それ程お嬢の影響力は大きいんだ」

旦那様が死に、奥様は、ヨノはどうなってしまうだろう。リトを当主にして、屋敷の者達はちゃんと彼に付いていくのだろうか。
その上ナディアまで出て行ってしまったら…。

「俺は嫌だよ…、お嬢達家族がこれ以上バラバラになるのやだよっ!」

158アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/13(土) 04:00:05
【過去】

こいつ(リト)は良いよな。あんな美人な姉ちゃんが二人もいて。

彼女達が出ていった先の扉をどこか恨めしそうに見つめるアブセルだったが、不意に背後からの物音を捉え、後ろを振り返った。
見れば、リトがまた何事もなかったかの様に積み木遊びに興じている。

「……変な奴」

ロボットみたいな奴だと内心呆れながら、アブセルは無造作に食事の乗ったプレートからデザートのタルトを取り上げ、そして、ふかふかのベッドに飛び乗りそれを食べ始める。

デザートもベッドもリトのだけど、気にしない。
だって俺、王様だし。

…しかし、リトの相手をする…とは言っても、これからどうしたものか。
彼をぎゃふんと言わすにしても、こいつは滅多なことじゃ動じないし…。

(何か面白いことないかなぁ…)

リトが一番嫌いなものや怖いものって何だろう。
アブセルは暫し思案しながら、タルトを口に運ぶ。
と、不意に頭の中に光明が降り注いだ。

「そうだ!」

ベッドから勢いよく立ち上がり、アブセルはリトに向けて人差し指を突き付けた。

「おいっ、今から街に行くぞ!勿論お前もっ!
直ぐに準備しろ!」

159イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/13(土) 04:01:29
【じゃあノワールの様子見&異質な反応の調査…と言う訳で、後でシャム達がバルクウェイに訪れた場面のレスします^^

リマ》どん☆まい(-∀-)

じゃあその時はお願いします(笑)
あ、そうですね。ノワールとは子供捜索の約束してたし。てかセナがその事実を知ったらどんな反応をするのか…(笑)

してそうwユニはぶれないなぁ(笑)

ガチャまでw欲しいの中々でないですよねw
しかし割と買ってるんですね。そういうグッズって買ったら使用します?それとも保管?

そうね、見えたんなら仕方ない(笑)
なるほど…まんまですねw
もう最終回目前ですよw漫画よりアニメのが双子演出が顕著みたいです。懐かしいってことは…今はもうそんなプッシュされてない話題なのか(笑)

なんですかその意味深な「…ふっ」、は(笑)

うん、知ってた(笑)
物理的+脳内覚醒で更に輝いて見えました←もう大天使が舞い降りて来たような←
マジか、ご丁寧にありがとうございます!

え、そうなの?(笑)嬉しい←
そんなwリマさんの記念すべき一号目のキャラなのに!?;

えwそれは…光栄です…?(笑)あれはもう勢いのまま描いただけです。正直ジュノスの絵のが時間かかってます(笑)
そうですね、初期からイスラは小さい設定でしたので(´ω`)

ジュノスが人魚姫を娘に読んであげてて、すると娘が「それ違う、人魚はこうだよー」…って話してる感じですかね(笑)】

160シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/14(日) 01:17:23
【バルクウェイ】

「おいこら下僕ッ!遅れてんぞ、ちゃきちゃき歩け!」

待ち合わせ場所への道すがら、十三人の長老が一人シャムは、後ろを振り返りある人物に向けて厳めしく声を上げた。

その視線の先には同じく長老の一人、大きな荷物を背中に担がされたルドラの姿が…。

「うぅ…くそ…、なぜ余がこんなことをしなければいけないんだ…」

ノワール誘拐騒動から以降。
ルドラはシャムの下僕として荷物持ち、使い走り、はたまたマッサージに至るまで。それはもう都合の良いようにアゴでコキ使われ続けていた。
今まで下位の者達によいしょされ、甘やかされてきた彼にとってはこれ以上とない屈辱だ。

(覚えてろよ…、あのチンピラ眼帯…)

ジーナの元に行ったラディックもこんな感じなのだろうか。いやあの男は謎に適応力があるし、案外今の状況を楽しんでいるのかもしれない。

…そんなことより、

「何でこんなに重いんだよこの荷物!一体何が入ってるんだ!?」

とっくに荷物の重圧に堪え兼ねていたルドラは、足をプルプルと震わし息を切らす。

その怒声に対し、シャムの隣を歩く女性…いや、女性のフリをした男性が艶かしく振り向いた。

「あら、重かったかしら?これでもお洋服とかいろいろ大分少なくさせて来たんだけど〜…って言うか、ルドちゃんったらプルプルしちゃってまるで産まれたての子馬ちゃんみたい、カ〜ワイ〜。お姉さんギュッとしちゃいたいわぁ」

「うるさい!何がお姉さんだ気色悪い!余に近づくなッ!」

全身に鳥肌が立ってしまった。この男…D.Dの発言にドン引きするルドラに向け、再びシャムが口を挟む。

「つーかその姫ちゃん意識した様な喋り方やめろっつったろーが!
向こうでは僕ちゃん、僕ちゃんって泣きベソかいてたくせによお」

「誰が泣くか!
それに"僕ちゃん"じゃない!"僕"だ!」

「二人ともケンカはダメよォ。それから汚い言葉もね。言葉遣いの悪さは顔にも表れるって言うでしょ?」

D.Dが宥めるのも聞かず、口汚く罵り合うシャムとルドラ。
そんな二人を余所に、ふと彼は何かに気がついた。喜色満面と飛び跳ね、手を振る。

「やっだぁ〜、フィアお久しぶり〜!元気してたあ?」

どうやら待ち合わせをしていた相手はフィアだった様だ。
D.Dはフィアに駆け寄り、彼女を抱き締める。そして有無を言わさずその唇に熱いキスをプレゼントした。

161イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/14(日) 01:18:37
【一応オネェのプロフを載せときます^^】

名前:ディーディー(D・D)

男性
十三人の長老の一人

黒髪、緋眼。
ライダースーツの様な身体のラインが出る服装を好んで着ている。
身長+ヒールで2m近い高さ。やせ形。

本人曰く心は乙女。
イケメンと可愛いものが大好き。そしてキス魔。

人間が好きで親交を交えるべく、人間界でバーを営んでいる変わり者。
故郷に帰ることはあまりなく、派閥も持たないが、十字界のことに無頓着という訳でもない。

162レックス ◆.q9WieYUok:2014/09/15(月) 16:06:48
【飛行艇】

「確かに……ナディアさんの弟君の事も気にかかりますし、一旦此処でこれからの方針を話し合うべきですね。」

その話し合いの中心に居るべきであろうバロンが暫くバルクウェイを離れるのならば、彼が戻るまで待つしかない。

なんだかんだ言いながらも、バロンは自分達四神の先導者なのだ。

窓から飛び立つバロンの姿を見送った後、レックスはアグルに声を掛けた。

「と言う訳で、バロンが戻るまで僕はバルクウェイに滞在します。

闘技大会とやらも、折角なので出ましょうか。

……アグルはどうしますか?」

取り上げられた書類を返して貰い、レックスは続ける。

「どうやらトーナメント表を見る限り、組み合わせも大体は決まってるみたいですよ?

一回戦は僕とイスラ、アグルとメイヤ……後は知らない名前ですが、きっと801師団の方々でしょう。

空き枠は当日参加枠でしょうか……」

見た所知り合い同士の組み合わせだが、幼い頃から武術を教え込まれて来たレックスとしては正直な所、嬉しい組み合わせだ。

剣士としては一流以上の腕を持つイスラや、弥都では共に修行したアグル、そして暗殺者であるメイヤ。

手合わせ出来るとすれば、武闘家としての血が騒ぐと言うもの。

ここはバロンの言葉に従い、多いに場を沸かせても良いだろう。

初戦のイスラは先の戦いで大きな怪我を負ったと聞いたが、大会には出れるのだろうか。

思考を大会の事に切り替えたレックスは、手にする書類にもう一度目を通していく。

そんな二人に、見知らぬ男が声を掛けた。

「どうも初めまして。

俺はこの師団の長、レオール・ランブリッシュ。

遅くなったが、挨拶しに来たのだけれど……君達は四神のレックスとアグルかな?」

……男、801師団長のレオールは気さくな笑みを浮かべながら、続けた。

「あぁ、隣に居るのは側近のマルト。

無愛想な奴だが、悪い奴じゃあないんだ。

ととと、イオリから四神の先導者が居ると聞いていたのだが……それらしいぬいぐるみは見当たらないな…?」

163ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/15(月) 21:36:03
【飛行艇】

アブセルは彼なりに、色々と不安を抱え、悩んでいたようだ。

「あんた、麗しき乙女に邸で朽ち果てろって言うの?私だって女なんだから誰かに嫁いで別の家庭を築きたいんだけど」

ナディアの母親は一人娘だった為婿を迎えただけであり、本来であれば娘は嫁ぎ家を出るもの。
一度はそんな事を言って見せるも、ナディアはその顔に笑みを浮かべると不意にアブセルの頭を鷲掴みすると、そのままグシャグシャと乱暴に撫でる。

「あんたは余計な事考えなくていいの。今の状態でリトに継がせるわけないでしょ、何の罰ゲームかっての。」

両親からの扱いやリト自身の気難しい性格もあり、その立場が最悪なことぐらいちゃんと分かっている。
リトが当主として、ちゃんと一族を率いていけるよう基盤をつくってやらなければならない。

ナディアは態とらしく溜息を吐いた。

「当主のくせに邸を放ってほっつき歩く無責任な奴、って思わせようとしてたのに失敗しちゃった。私から漂うカリスマオーラがいけないの。頼りない奴を演じようと思ってもやっぱり頼りにされちゃう。」

どちらにしろ、とナディアは続ける。

「面倒だけど、一回帰って色々片付けなきゃダメかなぁ。母さまのことも、そろそろどうにかしなきゃ。」

ところで、気になっていたことがある。
そう言えば、とナディアは話を変えた。

「あんた達(リトとアブセル)、喧嘩でもしてたの?」

164リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/15(月) 21:44:19
【過去】

街へ行く。
そのアブセルの言葉に、リトはふと顔を上げるも、その次は考えるでもなく、言われたとおり出掛ける用意するでもなく、ただ小さく首を振った。

リトは外に出ることを禁止されている。
外だけでない。この部屋から出ることすら赦されていないのだ。
リトはそれが理不尽であることは分かっていない。ただ、言い付け通りにしなければ後であの男(父親)に殴られることを知っているから、この場所から動かない。

リトはそれ以外何の反応も見せず、そのまま積み木を続けた。

165リマ、セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/15(月) 22:32:13
【飛行艇】

リマとセナは食堂にいた。
リマは食事をスプーンで掬い、それをセナの口元へ持っていく。

「セィちゃん、少しでいいから…」

リマはセナに食事を摂らせようとしているようだが、どうにも上手くいかない。体が受け付けないらしく、匂いで戻しそうになる。
セナには波がある。沢山食べてくれる時もあれば、こうして全く受け付けないことも。

(体力つけなきゃいけないのに…)

リマは困った様子で目を伏せた。
個室で眠り続けているリト。セナは彼に自分の力の一部を分けた。
いくら魂が護られてるとは言え、リトの体は力を全て吸い取られ生き長らえるものではなかった。少しでも残っていれば自然に力は再生されるが、全くないとなれば話は別である。そこでセナが源である力を分け与えただ。言うまでもなくリトとセナの力は同系統であるため、リトの体にすんなりと馴染んだ。彼に至っては後は自然に彼本来の持つべき量まで力の回復を待てばいい。
そしてセナも分けた分だけの力を回復する必要があるのだが…

「もっと、食べやすそうなもの貰ってくるね…」

リマは言って立ち上がり、セナの側を離れた。

「健気よの」

それを見計らったかのように、新たな声が一つ。
先程までリマが居たセナと対面となる席に、ノワールが登って腰掛ける。

「そなたに尽くし、まこと健気じゃ。そなたは弱々しくなったものじゃの、魔玉とやらの影響か?」

詳しくは知らないが、セナはその身になにやら滑稽なものを封じているらしい。
そしてノワールには其れが彼の体を着実に蝕んでいるのが視える。

「…何故、お前がいる…?」

興味深げに意地悪な笑みを浮かべるノワールに、セナは彼女の問いかけには触れず別の話を振った。

「王子殿はわらわに感心がお有りか?それはそれは光栄な事じゃの。」

身なりは当初の其れとはかけ離れているものの、目の前の少女は間違いなく、かつて黒十字が接触した吸血鬼の姫。
お互いの目的の為にしばしの間行動を共にしていたが、彼女を含めた吸血鬼達はいつしか黒十字から姿を消していた。

「会いたかったぞ、王子殿。そなたにはしかと、けじめをつけて貰わねばの」

黒十字は共に目的を果たすと言いながら、一方の目的を果たした途端手の平を返した。
ノワールの身を封じ、赤子を奪った。
赦さない。

「そなたと、わらわの…」

子供の話を言いかけたところでノワールの視界に嫌なものが入った。
ジュノスが此方を睨みながら近づいてくる。
ノワールは悔しげに歯を噛みしめる。

「邪魔が入りおった…」

166リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/15(月) 22:49:42
イスラ>>
【頑張ります(笑)
セナが知ったら…取り敢えずリマの前から姿を消しますね(笑)
ジュノス大変そうw

ユニは幸せだなぁ←

欲しいと思ってるものに限ってでないんですよねぇ…
断然保管します。アニメキャラのラバストとか首から提げる大学の学生証に付けてる子とかよく見かけるんですが、自分には出来ません…色んな意味で。
代わりにふなっしー付けてます←
てか今週の土曜に黒執事の一番くじが出るんです。ビターラビットメチャクチャ欲しくて…当たるまで引きそうな予感←

仕方ない仕方ない(笑)
目前どころかもう終わってしまったww高校生の時は全話リアルタイムで見てたのに…歳か?←
と言うか自分は真実を知っているので(**-ω-**)

どうしようかなぁと(笑)

何だそれww
いえいえ、つってもどんな絵描くか思いついてないんですけどね←

喜んでもらえて良かったw
リマって何か自分が嫌いな乙女ゲームのヒロイン寄りの性格なんですよね。
リマのモデルになってる子はそんな雰囲気なかったのに…不思議だ。

思いのままであのクオリティ…凄いっ
イスラは態度がデカイだけでしたか←

娘ちゃん…それは人魚じゃない、魚人だ←

てかオカマさんww
イケメンが好きなんだー、へぇーw
この話の何人がオカマの餌食になるのかww】

167メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/09/16(火) 23:36:28
【飛行艇】

「俺がやりたい事……」

やりたい事など、無かった。

自身の出生の秘密を知る以前から、人を殺める事しか自分にはなかった。

任を請け、刃を振るい。

人を殺め、眠り、朝が来ればまた新たな任務に就く。

休暇は身体を鍛え、技を研鑽するだけ。

欲しい物も無く、人と関わる事も無く。

考える事すら、無かった。

「……やりたい事、考えた事も無かったな。」

ぎこちない笑みを消し、俯くサンディを横目で見ながら、メイヤは口を開く。

そう、今までの自分には生きて行く上での希望が、楽しみが無かった。

それはシンライジ家の者ならば当たり前だと思っていたが、よくよく考えればそれは自分だけだった様だ。

(イオリは酒や煙草を収集していたし、ユーリは木彫りの彫刻をよく作っていたな……)

任務に就きながらも、他の者は各々何かの楽しみを持っていた様にも思える。

「謝る事はない、俺は今まで何も無かった。

四神を守れと言われたから、そう行動した。

疑問はあっても、何も考えて来なかった。

そのツケが今、来ただけなのかもしれない。」

時間はある筈だ。

深淵を閉じた後、イオリは言った。

用が出来れば呼ぶ、それまでは好きにしろ、と。

聞いた話では、イオリは先の戦いで決して浅くは無い怪我を負い、暫くは動かないらしい。

ならば、自身と向き合い、考える時間位はある筈だろう。

「悪いなサンディ、俺自身が自分の事を考えて無かったのに、どうすれば良いかなんて聞いて。

そんな質問に答えられる訳無いのにな。」

メイヤはゆっくりと立ち上がり、俯くサンディの頭を撫でる。

「正直な所、自分の心すらわからない節はある。

けれど、サンディが励ましてくれてるのはわかる。

サンディお姉さんの有り難いお言葉、大事にするよ。」

そして、彼女の肩を叩いて薄く笑った。

168アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/17(水) 01:45:13
【飛行艇】

どうするかと尋ねるレックスに対し、アグルは顎に手を当て"う〜ん"と小さく声を洩らす。

こういうことには余り興味はないが、実力をつける為には出てみるのも悪くはないのかもしれない。

そう思案する傍ら、そこで不意に見知らぬ男に声を掛けられ、アグルはつと視線を動かした。

そこにいたのは気さくな笑みを見せるレオールと言う師団長。
話に聞く限りでは確かボルドーの兄でこの飛行艇を自分達に譲ってくれた人、らしいが…。

「その縫いぐるみならついさっき出てったけど…、暫くは戻って来ないんじゃねーかな」

アグルは言う。

「…なんか用?」

169アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/17(水) 01:56:18
【飛行艇】

軽口と共にナディアが笑顔を見せる。アブセルはそれを眩しそうに見つめ、僅かに表情を緩めた。

「お嬢は…」

昔からちっとも変わらない。

いつだって太陽みたいに眩しくて、皆の中心に居て、彼女が大丈夫と言えば心配することなんか何もなくて。

居心地が良かった。ずっと子供のまま、ナディアやヨノやリト、皆と変わらずに一緒にいれたらどれだけ良いだろう。
…でも、それはきっと自分の我儘でしかないんだ。

現に情態は絶えず移ろい、リトも自分も大人になりつつある。そして、きっとリトは変化を望んでる。

アブセルはリトの手を強く握り締め、言った。

「喧嘩…っていうか、俺が一人で勝手に拗ねてただけだよ…」

そして目を伏せ続ける。

「お嬢がいなくなって…今度は俺がリトを支える番だって思った。でも俺、全然お嬢達みたく出来なくて…」

リトのこととなると、どうも自分は感情の制御が上手く出来なくなる。
善かれと思ってやることの殆どが裏目に出て、いつも彼の足を引っ張ってばかりだった。

「リトは俺に何も話してくれなかったよ…。"これは俺の問題だ"って言って全然頼ってくれないし、俺が愛してるって言ったら凄く怒るし…」

だから、

「きっとリトは俺のことなんか必要としてないんだって…、俺なんかより強い奴も頼れる奴も沢山いたし、そっちの方が良いんだって…っ」

リトの友達は…理解者は自分だけだと思ってた。
けど、当然だけどそんなことは全然なくて。愚かな自分は小さな子供みたいにユニやノワール達に嫉妬した。

「俺、本当はあいつに"俺達"の問題だって言って欲しかった…!もっと頼って欲しかった!
でもそれとは別にリトはどんどん離れて行っちゃう気がして…!怖くて…!
それなら捨てられる前に屋敷に戻してやろうって思って…」

駄目だ…また泣きそうになる。
アブセルは空いた一方の掌で目を覆った。

「…こんなことになるなんて、思わなくって…」

170アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/17(水) 01:57:39
【過去】

「なにお前、もしかしてビビってんの?」

何も言わず小さく首を振るリトに、アブセルは眉をひそめて言う。

リトの行動範囲に制限があることはアブセルも知っている。
ただ彼は、それが単にリトの身体が弱い為だからだと聞かされていた。

「そんなのバレなきゃ良いんだよ、バレなきゃ。
ちょろっと外に出て、旦那さま達が帰ってくるまでに戻ってくれば良いんだ」

言って、アブセルは部屋にある大きめの縫いぐるみをベッドに潜ませ、毛布に膨らみをつける。
…うん、我ながら天才。
使用人達も旦那さま達が出掛けたことで気が緩んでるだろうし、これできっとリトが寝ているものと思うに違いない。

「身体が弱いのか何だか知らないけど、こんなとこにずっと閉じこもってる方がよけい病気になっちゃうって」

アブセルはリトの腕を引き、無理やり立ち上がらせる。
そして先程食事を乗せて部屋に引いてきたワゴンのクロスを捲った。

上の段には食事が、下の段には洗濯物など、別の荷物が乗せられる様にスペースが空いている。
リトなら余裕で潜り込めるだろう。

「ほら、ここに隠れて。俺が外まで連れてってやるから。
もし見つかった時だって上手い具合に誤魔化してやるし」

171ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/18(木) 11:26:30
【飛行艇】

ノワールがセナに絡んでいる。それを目撃するや、ジュノスは二人に近づき口を開く。

「セナ様、余りこの方の仰ることを間に受けてはいけませんよ。
どうも彼女は冗談がお好きな様で、口を開けばたわいないことばかりお話されるのですから」

そう言う彼の顔は笑顔だったが、ノワールの方を振り向いた途端その表情は一変。彼女を睨みつけ、「ちょっと…」と耳打ち手招いた。

そして…

「あのことはセナ様達には黙っていてください」

人気のない場所、飛行艇の機関室までノワールを連れてきたジュノスは彼女に向けて言った。

「私にあたるのは別に構いませんが、なにもセナ様やリマさんにまで当て擦る必要はないでしょう。
貴女だって今更あの話を掘り返したところでどうにもならないことぐらい分かっている筈です」

そう、彼女とセナは今、別の時を生きているのだから。
ジュノスは一つ間を置くと、それでも…、と先を続けた。

「もしセナ様達が困る様を見て楽しみたいということであれば、私は貴女を軽蔑します」

172イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/18(木) 11:28:13
リマ》姿を消すwwそれは駄目だw
ジュノスのストレスが溜まっていく(笑)
ユニはもう癒し担当ですねw

それがガチャの法則←
自分も出来ないかも…(笑)ラバストぐらいならまだ許せるけどクリアファイルとか目立つもの使ってる人目撃したら「わあ」ってなる(笑)
てかふなっしー良いなぁw一番くじって結構するでしょうに…(笑)

終わっちゃいましたね〜、自分もリアルタイムは無理です、これが歳か…
え!?そうなんですか?一体どんな事実が…

考えてなかったのかw自分は勝手に予想ついてますよ←

え〜そんな可哀想…w因みにリマのモデルって?

態度がデカいwwそうか、イスラはそんな印象だったのかw
(;゚Д゚)!魚人だったか…←娘はロマンティックよりグロい系が好きな女子なんでしょうねw

取り合えず大体のキャラの唇は犠牲になるでしょう←彼にとってのイチオシが一名ぐらい欲しい所ですが…誰にするかは考え中です(笑)

173フィア ◆.q9WieYUok:2014/09/19(金) 15:10:08
【バルクウェイ】

「元気よ、アナタのキスから唇を守る位にはね。」

昼過ぎのバルクウェイ、市街地からやや離れた公園のベンチで、フィアは同胞の到着を待っていた。

そして、その同胞……自身と同じ、十三人の長老であるDDの熱い抱擁とキスにフィアは苦笑いを返す。

長老同士の交流は基本的にはしないものの、フィアはDDの事が嫌いでは無かった。

寧ろ、レオやシャムの様に好意すら持てる程だ。

……しかし流石に、唇へのキスは嫌だった為、薄氷で防いだのだが。

抱擁から解かれ、挨拶もそこそこに再びベンチに腰掛けたフィアは視線をDDからシャム、そしてルドラへと向ける。

「で、そこの坊ちゃんは何をしている訳?

私、足手まといは呼んだつもり無かったのだけど……もしかして荷物持ちの従者として来たの?

まぁ、世間知らずのお子ちゃまには良い社会経験になりそうねぇ」

蒼の瞳でルドラを眺め、大体の状況を察したフィアはルドラを煽る。

しかし、煽るのもすぐに止め、フィアは話を続けた。

「急に呼んでごめんなさいね、ジーナに連絡したら動けるのは二人だと聞いてね……

取り敢えず、単刀直入に言うとこの人間界で異質な反応があったわ。

十三人の長老に限りなく近く、されど誰の気配とも違う。

強いて言うなら、ノワールの気配をもっと濃くした感じ……」

そして、人間界に二人を呼んだ理由から始まり、十字界を出た後やレオの仇の事、四神やノワール、闇に属する者の事などを大ざっぱにだが、説明した。

「と言う訳で、私は件の反応を追うわ。


二人……三人はどうする?」

174サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/20(土) 01:39:31
【飛行艇】

「ん〜…どういたしまして?なのかな…?」

"お姉さん"と言われ、サンディは何やら照れ臭い様な、くすぐったい様な気分になる。

しかし、あんなのでも一応はメイヤの気分を変えることが出来たのだろうか。
サンディは再びメイヤに視線を向け、言った。

「そう言うのって考えて答えが出る様なものじゃないからさ、何かの切っ掛けでふっと気づくものだと思うんだ。
ほら、例えば今のあたしのやりたいことが…"メイヤのしたいことを一緒に探す"ってのになった様にね」

だからそんなに深刻に思う必要はない、とサンディは笑う。
そして、今度は砕けた様にちろりと舌を出した。

「まぁあたしとしては四神の護衛、続けてくれると嬉しいんだけどね。
…あ、あとメイヤのこと、知れて良かった」

175シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/20(土) 01:40:53
【バルクウェイ】

「そこの眼帯が来いと言ったから付いて来たまでだ。
それに余とて歴とした長老の一人ぞ。足手まといに等なるつもりはない」

フィアの発言に対し、ルドラはそう小憎たらしく言葉を返す。

しかし、彼女から件の反応やノワールの説明が入ると、ふざけていた一同も自然と静かになり。
そしてその話が終った後、シャムは「なるほどな…」と頭をガシガシと掻きながら口を開いた。

「俺らもお前に同行する。
元々それを確認する為に来た訳だしよお」

それにD.Dが頷き、続ける。

「ええ、でも出る前に姫の顔を一目見たいわ。あの子、近くに居るんでしょ?」

176レオール+etc ◆.q9WieYUok:2014/09/22(月) 01:48:28
【飛行艇】

「何だって!?モフモフ出来ないじゃないか!」

アグルの応え、バロン不在の言葉にレオールは思わず声を上げた。

それに反応した側近のマルトは、頭を抱えて悔しがるレオールの脇腹を剣の柄でつつく。

「ぐはっ!な、何を……」

「何してるじゃねーよ、モフモフとか
言うキャラじゃないだろアンタは。」

そして、呆れ顔でつっこみを入れながらも、先を促す。

「そ、そうだな。モフモフはまた戻って来た時にお願いしよう。

うむ、居ないならば仕方ないが話を進めよう。」

それに頷き、レオールは話を続けた。

「実はだな、君達四神には俺達……我が801師団に編入してもらいたいと思っているんだ。

元々この師団は、世界の危機に対抗する為に各国の勇士が集って出来た物。

少し前に弟の友人、イオリから話があってな。

黄龍やそれに従う四霊、この世界の秘密や闇の巣など全部聞いたよ。

勿論、それらに対抗する四神の事も。」

そこでレオールは一度言葉を切り、右手をアグルの前に翳し、閃光が瞬く。

光は爆ぜながら微細な紫電を撒き散らし、小鳥の型を成した後、消えた。

「雷神インドラの力を持つ者であり、第801師団長として。

俺は黄龍を倒し、世界を救いたい。

その為に、君達四神に協力するし、君達も俺達にその力を貸して欲しいんだ。」

そして、レオールはアグルの前に翳した掌を前に出し、返事を……握手を待った。

177ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/22(月) 14:11:42
【飛行艇】

リトに愛してると言ったのか。そりゃ嫌がるだろうな。いやいや待て、そもそもその話を今この真面目な場面で言うか?いや違う、アブセルの目は本気だ。彼にとっては重大事項だったのだろう。
アブセルは良くも悪くも、いつも自分の気持ちに正直だ。

ナディアはやれやれと肩を落とす。

「こいつ(リト)は甘え方を知らないんだ。あんたも知ってるでしょ?両親があぁなんだ、リトは一人で生きていくしかない。」

リトは不器用だから、人を頼ことを知らず、優しくされると戸惑ってしまう。
対して世話焼きな面がある。おそらく彼は自分が求めるのではなく、相手に求められることで人との関わりを作っていくタイプなのだろう。
だからアブセルの事も鬱陶しがりながらも嫌っていないことをナディアは知っていた。
ずっと一人遊びしかしなかったリトが、いつしかボードゲームなどの二人で遊ぶゲームを持ち出すようになっていた。
アブセルが来る時間帯になると態と目のつく場所に其れを置いて、それを見つけた彼が遊びに誘ってくるのを待っていた。
アブセルの存在は、たしかにリトを変えていたのに、彼は気付いていない。

「馬鹿だね、あんたは。」

リトは変わろうとしている。
しかし、その背中を押したのはアブセル自身なのだ。
変わることのなかったリトの生活に、ある日アブセルの存在と言う変化が起きた。
アブセルが、リトに”日常が変化すること”を教えた。
これはナディアすらなし得なかったこと。認めるのは悔しいけど。

「まぁ特別、大サービスで真面目に応えてやるけどさ。
リトにとって、あんたは居て当たり前の存在なんだ。あんたの言うとおりリトは外に出て変わっていったのかもしんないけど、それであんたが置いてかれることはない。なんか色々と可愛い仲間が増えてるみたいだけど、もとの二人が三人、三人が四人、って増えてるだけで、誰かが加わることで一人が消えて二人、三人になるわけじゃない。本質は変わらない。」

て言うか。
ナディアはアブセルの頭を叩いた。

「あんた、うちの弟が誰かをハブにしたり見捨てるような薄情ものだと思ってるわけ?」

それに、

「これは俺の問題。結構なことじゃない。リトが勝手にするならあんたも勝手に動きな。リトの言葉を聞き入れたフリして、「リトを助けるのが俺の問題」とでも言って勝手に手出しときゃいいのよ。もっと賢くなりな、バカちん」

きっとリトは拒まないだろう。嫌な顔はするかもしれないけど、放っておけばいい。

「ほら、いつまでもメソメソすんじゃないの。食堂でも行ってご飯食べて来たら?今ならセナとリマちゃんがいると思うよ、一人が嫌なら一緒に食べてくればいい。」

それにしても…まぁ、これはリトにも言える事だが。

「年頃男子がいつまでも仲良くくっついて…あんたもリトにばっかこだわらないで恋愛したら?まさかソッチの人だったりしないよね?弟はやらないよ。」

178ノワール ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/23(火) 11:47:49
【飛行艇】

「そなたは、わらわばかり責めるの」

ジュノスの言葉を受けたノワールは、怒るでも、悲しむでもなく、ただ静かに、淡として呟いた。

「あれ(メルフィ)は、あやつの子ぞ」

ジュノスがひた隠そうとしても、それは紛れもない事実。
否定しようとしても無駄なこと。

「我が子の行方が分からぬのに、何故あやつは平気でおられるのじゃ。あやつも加担を?」

黒十字の者達は信用ならない者ばかりだったが、セナは違った。自分の意志が無いと言えばそれまでだが、目的の為に態度を偽ることもなければ、虚言を述べることも無かった。
セナは母親から子供、それも乳飲み子を奪うような非情な男ではない。分かってる。しかし、ふと考えてしまう。

「それとも、心を寄せる女の子でないと興味も湧かぬか?」

奴に恋情などない。
ただ悔しいのだ。奴を信用していた自分が。

「あやつを赦せぬ。責任を問うておるのだ。そなたに軽蔑される言われはない。」

179リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/23(火) 14:32:50
イスラ>>
セナには耐え難い事実でしょう。どのツラ下げてリマといるのかって言う←
ジュノス、胃潰瘍になったらリマが助けてあげる←
てか癒しにすらならないならユニの存在意義がないですね(笑)

ガチャ怖ぇ…本当、良い金儲けですよね。
てか以前ハガレンのガチャか何かやって、シークレットが出たんですけど、大総統だったんです。酷くないですか?シークレットが大総統ですよ?誰が喜ぶんだって言うね。
凄いなぁって思いますよねσ( ̄∇ ̄;) ファイルは漫画のイラストだったら好きなんだなぁくらいにしか思いませんが、中学くらいの時クラスの男子が萌え系美少女アニメのファイル常用しててメチャクチャ引いた記憶があります。
てかラバストとかぶら下げてオタクオープンにしてても全然オタクな感じがしない子とかいるんです、あれ何なんでしょうね?生粋なオタクなのに天然の一般人オーラ、羨ましい。
首にはふなっしー、愛用の鞄はくまモンなもので、ふなっしーとくまモンが私の代名詞になっています。性格がふなっしーっぽいんで何方かと言えば皆ふなっしーを見て私を連想するみたいなのですが。ある日研究室にふなっしーのマスコットが飾ってあって、私のものじゃないのに皆私の私物だと思ってたみたいでビビりました(笑)結局本来の持ち主から譲渡されたので私物になりましたが←

一番くじね…発売が発表されたと同時にコツコツと黒執事募金始めて軍資金一万円用意してたんです。
まぁでもお金で引いたのは最初の3回で後は全部今まで10年以上貯めていたポイントでやったんですけど。発売日当日私の頭が弾けて通常のシエルラビットは勿論、ラストワンもちゃんと手に入れましたよσ( ̄∇ ̄;)
後先考えずやっちゃったんで持ち物増えちゃって、急遽100均で大きい袋購入するハメになったのでその日は友達と遊ぶ約束してたのに電車逃して10分遅刻。遊ぶ前から大きな荷物背負って現れた私に友達ビビる。事情を話して笑われる。最強伝説浮上← ってな感じに落ち着きました←
セバスラビットは残念ながら入手出来なかったので、オク慣れしてる別の友達に入札依頼出しています←

それはもう、涙無しには語れない事実が(嘘)

え、どんなww

Dearって漫画のチルハって子です。そして同じ漫画のキサラって子がセナのモデルです。

なんか存在感があるって言うか(笑)
気づいてなかったのかwwあぁ、ありそう(笑)


怖ww
オカマって男臭い人好きだったりしますよね。存命だったらディンゴが最適だったのにww

180メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2014/09/23(火) 19:13:50
【飛行艇】


「俺に付き合う前に、世界を救わないといけないだろう?

それに、護衛を続けるとしてもいつまで経ってもおんぶにだっこじゃあ俺の身が保たないからな。」

子猫の様に舌を出して笑うサンディに笑みを返し、メイヤは歩き出す。

自身の口からでは無いが、胸中に蠢いていたモノをさらけ出せたのは精神的に良かったらしい。

「だけど、今暫くは時間もありそうだし、付き合ってもらおうかな。」

甲板を歩きながら、メイヤはバルクウェイの街中へと視線を向ける。

「あぁそうだ、サンディ。

さっきの話はアグルや猫男爵達には秘密にしておいて欲しい。

レックス辺りが変に気を遣いだしたらこっちが余計辛くなりそうだからな……」

ーーーーー

【バルクウェイ】

「助かるわ、私一人じゃ正直荷が重いと思っていたから……」

話を聞き、頷く三人にフィアは礼を言って軽く頭を下げた。

その様子に、自分自身丸くなったと薄く笑いながら、フィアはDDの問いに答える。

「姫は港の飛行艇の中よ、この位置からなら空間転移で一瞬よ。

なんなら私が皆を姫の元まで跳ばそうか?」

181アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 01:17:32
【飛行艇】

どうやらこのレオールと言う男は以外にもおちゃめな人だったらしい。

しかし、話題の人物であるバロンは己自身の身体をどうにかする為に出ていった訳だし、戻ってきてもモフモフは出来ないんじゃないだろうか。

…とは思ったものの、アグルはそれを口には出さず、代わりに差し出された掌とレオールの顔を見比べ、そして「悪いけど…」と口を開いた。

「別に俺はこいつら(四神)の一員って訳じゃないし、世界の問題なんてのも正直どうでもいい」

今ここに居るのだって個人的な目的があってのことでしかないし。
アグルは続ける。

「四神は今たまたま行動を共にはしてるけど、多分それぞれがそれぞれ別の思惑を持って動いてる。
純粋に世界を救いたいなんて思ってるの、多分このメガネとアマテラスぐらいだよ」

だから合意を求めるのならレックスにしてくれ、とアグルは言う。
しかし…でも、まぁ…

「俺も個人としてはある程度なら協力しても良いとは思ってるよ。勿論、自分自身の益となる範囲までなら、だけど。
それ以上のことは一切なにもしないし、時期が来たら此処の連中とも別れるつもりだから」

182アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 01:39:09
【飛行艇】

そうだ。リトの性格は知っていた筈だ。
だけど、頭ではそう理解していたつもりが、心がついていかなかった。

「薄情者なんて…そんなこと思ってない、けど…」

それでも少なからずリトを疑ったことは確かだ。
ナディアの言葉を聞くまではずっと不安だった。彼女の声を通して、改めてリトのことを再確認させてもらい、そして漸く安心した。

「じゃあ、俺…居ても良いのかな…?役立たずだけど、まだリトの側に居て良いかな…」

…いや、違う。役立たずだけど、じゃない。強くなろうとしなきゃ。
落ち込んで、泣いて、無力な自分を責めて…そんなのはもう終わりにしなくちゃいけない。

リトが変わるというのなら、自分だって変わりたい。ナディアは置いていかれることはないと言ったが、それでもやっぱり彼とは肩を並べていたいから。

「…お嬢」

不意にアブセルは言う。そして漸くリトの手から自身の手を離した。

「…俺、強くなるよ。
強くなって、当主になったリトや…リトにとっての大切なものを護って上げられる様な、そんな男になる」

だから…と、彼は真剣な目をナディアに向ける。

「弟さんを僕にくださ…」

……間違えた。
お嬢が恋愛しろとか変なことを言うから。
アブセルは空咳で誤魔化し、再び口を開いた。

「ありがとう」

そう、お礼が言いたかったんだ。赤い目を擦りながらアブセルはゆっくりと立ち上がり、部屋の入り口へと向かう。

かと思えば、不意に立ち止まって「それから…」と付け足す様にナディアを見た。

「お嬢は分かんないかもしんないけど、男の友情って恋愛なんかよりもっとずっと深いんだぜ」

そして、にっと歯を見せて笑って見せれば、彼はそのまま踵を返し、扉の向こう側へと姿を消した。

183イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 01:40:54
【リマ》それはまぁ…しょうがないですよ。事実を知ってもリマは許してくれますって。…くれますよね?←
リマ優しいw
これからユニの見せ場もっと増えると良いなぁ…(笑)

シークレットが大総統wwそれは酷い話だ(笑)でも自分はちょっと嬉しいかも、カギにつけてポケットにそっと忍ばしときたい←魔除けになりそう←
美少女アニメキャラファイルのあの破壊力よw自分的に好きなアイドルのファイルとか使用してる人もちょっと理解出来ないけど←
取り合えず外見に気を使ってる人はオタクオーラ出てないですよね?
一見お洒落さんなのに実はオタクって子とかむしろ何か良いです、ギャップ萌えです←

てか性格がふなっしーっぽいってどういうことですか?wwリマさん奇声とか発しちゃうキャラなんですか?(笑)
しかしそのふなっしーとリマさんに関しての周りの信頼度は何(笑)

軍資金一万円!?ポイント!?そしてオクまで!?(笑)すごい、想像以上に徹底してますね!
それはもう伝説も作っちゃいますよ(笑)てかリマさんの部屋、大変なことになってそうw

なにそれ気になる、てか嘘ってww

最終的にジルとナディアが引っ付く、そして幸せに暮らす。以上←

セナのモデルは以前聞いたことがありますが…なるほど、wikiで調べたらそのモデルのキャラとリマセナ、共通点が沢山ありますね^^

そうですかね?イスラは真面目で特徴がないのが特徴みたいな平凡キャラを心掛けてたんですけどねw
いや気づいてましたけど(笑)たぶん爬虫類とか虫とか大好きですよ

あー…ガチムチで髭とか大好きらしいですからねぇ(笑)でもどうせ直ぐフィア達以外とは別れちゃうんで、保留にしとこう】

184レックスetc+ ◆.q9WieYUok:2014/09/24(水) 22:11:35
【飛行艇】

差し出した手を、アグルは握る事が無かった。

そして、彼の返事を聞いたレオールは僅かに寂しそうな表情で、手を戻す。

「そうか、君には他にやる事があるようだな。

なら無理強いはしないさ、出会いがあれば別れもあると言う事だ。」

そう、自分も同じ様なものだ。

イオリやその部下、実弟のボルドーとは同じ目的を持つが、その志は違う。

(全員が全員、同じ道を歩める訳では無いのさ……)

レオールはアグルに笑みを向け、話題を変えて続けた。

「まぁ、暫くバルクウェイに居るのなら復興祭を楽しむと良い。

闘技大会も盛り上がる事間違いナシだ、何しろ師団の分隊長達が参加しているからな。

一般参加は二人程だが、軽く見た所中々の実力の様だ。

異能の水使いと仮面の青年だったか……そう言えば君も参加するんだったか?

四神の戦い振りを俺も楽しみにしてるよ。」

そして、それではまた、とレオールは踵を返し食堂を後にした。

その背をマルトも追うが、不意に振り返る。

「あぁ、そうだ。あの天然団長が言い忘れてたんだが……

この中型飛行艇は好きに使うと良い。

何か足りない物があれば遠慮無く言え、馬車でも車でも二台位なら貸し出し出来るからな。

ついでに、闘技大会の一回戦は今夜だから遅れるなよ?」

その言葉を聞き、頷くレックスはマルトの背を見送り、静かに息を吐いた。

「天然みたいですが、なんだかんだで良い人みたいですね……人を纏めるにはあれくらい緩く、いや、人当たりが良い方がいいのでしょうか。」

185サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 23:07:19
【飛行艇】

「でも、最近はあたしもちょっと強くなってきた気がするんだ。力の使い方が解ってきたって言うか…
まぁ剣の腕はまだまだなんだけど…」

そう小さく笑いながら、サンディは歩みを進めるメイヤの後をついていく。
しかし、続く彼の言葉を耳にすれば、少し複雑そうな表情を浮かべ言った。

「あ…うん、そうだね…。メイヤがそう言うなら黙っとく…」

メイヤとみんな。両者の気持ちを考えると、正直秘密にしておくことが良いことなのかどうかは分からない。
中には「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ」と思う人もいるかもしれないが…。
しかし、彼がそれを望むのならその通りにした方が良いだろう。

サンディは少し間を置いた後、"ねえ…"と再び口を開き、先の話の中で疑問に思っていたことをメイヤに投げた。

「さっきの人(クウラ)が悪神を宿された人は少ししか生きられないって言ってたよね…?それって本当?どうにか出来ないのかな…?」

それに、

「あの人は何?少しメイヤに似てた様な気もするけど…。何か、みんなを…色んなものを憎んでたみたいだった」

186シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 23:08:43
【バルクウェイ】

「やだ、気にしなくて良いのよ。久し振りに貴方達に逢えたし、旅行みたいで楽しいもの」

頭を下げるフィアに向け、D.Dはそう和やかに言う。
しかし、手元に旅行ガイドブックを広げ「あぁん、早くショッピングがしたいわぁ」と洩らしているのを見るところ、本当に旅行気分でいるらしい。

対しシャムは、"妙にしおらしくて気持ちが悪いフィアを見た"と言わんばかりに、思いっきり顔をしかめていた。

「お前…人間と一緒に暮らす内に奴等に毒されちまったんじゃねーの」

そしてその傍ら、空気を読まないルドラが生意気に口を開く。

「あのさ…どうでも良いから移動するならさっさとしてくんない?こっちは重いんだから」

187ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/24(水) 23:26:58
【飛行艇】

「セナ様は子の存在を知りません」

ジュノスは言った。
ノワールが身籠ったことも、彼女を封じた後、産まれた赤子を取り上げたことも、全てセナの与り知らぬところで起きたこと。

ジュノスはその事実をセナが知る必要もなければ、今後、報せる必要もないと思っている。

「私は、あの方が幸福に生きられる最善の道を選んで頂きたいだけ…。
その為には、貴女も…貴女の子も、今の彼の平穏を阻むただの障害にしかなり得ないと私は思っています」

よって、ジュノスにとってノワールの存在は気疎いものでしかない。
しかし、彼女に手を出せば、彼女を慕う他の吸血鬼達が黙ってはいないだろうことも知っている。姫を失い逆上した彼等が、セナやリマを手に掛けようとするのは火を見るよりも明らかだ。

しかし、ここでヘタに下手に出る様な態度をノワールに見せてしまえば、彼女に対しての負い目がある以上、ジュノスはノワールの意に屈伏せざるを得ない。…そう言う立場に追い込まれてしまうことも解っている。

ジュノスも身動きが取れないのだ。

「責任なら私が代わりに取ります。
セナ様と貴女との関係を結ばせたのも全ては黒十字の意思です。セナ様が責を負う謂れもありません」

188フィア ◆.q9WieYUok:2014/09/28(日) 00:34:21
【バルクウェイ】

下げた頭を上げた先、視界に映る三者三様の姿にフィアは苦笑いを浮かべた。

「こっちへ来てからろくに食事を……血を味わってないからね、水が無ければ麗しい花もしおれるのよ。」

顔をしかめるシャムには軽口を、ガイドブックを広げるDDにはバルクウェイにて見繕っていた店の場所を。

そして、不満気に口を挟むルドラにはゲンコツを喰らわせフィアは善意を連れて空間を転移。

バルクウェイ港、飛行艇内のノワールの元へと跳んだ。

189メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/09/28(日) 22:53:41
【飛行艇】

確かに、バルクウェイでの戦いでサンディは天照大神の力を十二分以上に引き出していた様にも見えた。

剣術の方も、しかるべき師の下で修行を積めば数年で一流の域に達するだろう。

小さく笑うサンディの横顔に頷きながら、続く問い掛けにメイヤは答える。

「詳しくは知らないけど、アイツも闇の子供達計画の被験者だと思う。

分家か本家かわからないが、多分分家の出だろうな……」

だが、その答えも明確な物では無い。

何しろクウラやその兄、計画の事を知ったのは弥都に戻ってからなのだ。

道中の客船で因縁めいた言動を受け、何か有るとは思っていたが……

「計画の被験者だとして、それが原因で何か大切なモノを失ったからかも知れない。

それに、幾ら適性があったとしても闇は確実に命を蝕む。

その事を知ったとしたら、心が憎しみに染まってもおかしくは無いと思う。」

クウラやその兄を含め、計画の被験者は数多く居た筈だ。

彼等はきっと、唯一の成功作である自分を、そしてこの世界を憎むだろう。

「ただの人間が、リスク無しに闇を使役する事は出来ない。

まぁ、悪神を宿されている以前に俺は急速成長措置やらで寿みたいが短いんだ。

悪神をどうにか出来た所でそう変わらないさ。」

結局の所、話の内容が暗い物になってしまった事に申し訳なさを感じ、メイヤは話題を変える事にした。

「そう言えばイスラの具合はどうなんだ?

復興祭、せっかくなんで皆で回れたら良いかと思ったんだが……」

190アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/29(月) 23:34:46
【飛行艇】

今夜って…。
そもそも闘技大会にエントリーされてたことに気づいたのがついさっきなのに…、今夜って…。

二人が立ち去った後、アグルは肩を竦め、溜め息混じりにレックスの発言に対して言葉を返した。

「さあ、どうだか。俺は逆にああいうのって何か胡散臭く感じるけど」

我ながら捻くれてると思う。
しかし、サービスが過剰と言うか…親切過ぎると逆に訝りたくなると言うか…。

あれで何の裏もないのだとしたら有り得ない位のお人好しだ。
ここに居るレックスや他の連中もそうだが…むしろどうやったらそういう人間に育つのかが知りたい。

まぁ…どうでも良いけど。

アグルは冷蔵庫を開き中からいちご牛乳のパックを取り出すと、傍らの椅子に腰掛け、更に付け足す様に続ける。

「…てかお前、自分自身も天然ってこと気づいてる?」

191サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/09/29(月) 23:46:07
【飛行艇】

メイヤ自身、こちらに気を使わせない為に敢えて軽く言ったのかもしれないが…

どうして自分の生き死に関する問題にそこまで無関心でいられるのかが理解できない。
普通もっと生きたいとかって考えない?そんなだからやりたいことがないとか言えちゃうんだよプンプン。
これなら明確な意志を持ってる分、まだあの人(クウラ)の方が生きてるって感じがするよ。…その内容は穏やかじゃないけど!

…と怒りたかったが、そんなことを言えば鬱陶しい女だと思われること間違いなし。
メイヤの方も意図として話題を変えた様だし、あまり出過ぎた真似はしない方が良いのかもしれない。

「…具合の方は問題ないみたいだよ。リマさんって言って、姉御のご先祖さまに怪我の治癒して貰ってたみたいだから」

だからこそサンディも"気にしてない"と言う素振りでメイヤの問いに答える。

「でも今はそっとしといた方が良いかも。バルクウェイでの一戦以来、何だか以前にも増して剣の稽古に根を詰める様になっちゃったって言うか…。
まぁ他の皆ならたぶん食堂の辺りに居ると思うけどー…、…行ってみる?」

192ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 13:34:15
【過去】

リトは外出を拒むも、アブセルが受け入れることはなく。
台車の中に隠れろと言うアブセルに、リトはしばし考える素振りを見せるも、しまいには言葉に従った。
少しだけ。あの人達は出掛けたから、帰ってくる前に戻ってくればいい。
まだ幼いリトは、アブセルと同じ。単純な考えしか出来ていなかった。
そして自分の体調も知らない。リトの世話をする使用人達がかかさず皆携帯している薬の存在も。


【飛行艇】

「男の友情…ねぇ」

アブセルは晴れやかな顔でそう口にしたが、リトに対する彼の態度には色々と思うところがあった。友情などと簡単な言葉では収集がつかない。しかし、アブセルが元気になったから今は良しとしよう。

「あんたも、早く起きなきゃ」

アブセルを見送ったナディアはリトに目をむけ声をかける。
リトは生きている。しかし、いつ目を覚ますのかは分からない。此方から手の施しようもない以上、ナディアだって不安もある。

「あんたが元気じゃなきゃ、いじめることも出来やしない」

193リマ他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 14:11:10
【飛行艇】

「あれ…セィちゃん?」

新しい食事を携えて席に戻ると、そこにセナの姿はなかった。
何処へ行ったのだろう、部屋に戻ったのだろうか。
リマはそのまま踵を返す。

「きゃっ」

前方不注意である。いや、振り返ったから後方か?
それはともかくとして、何の確認もなくいきなり振り返った為に後ろにいたらしい何者かにぶつかってしまった。
はずみでプレートの上の食事を倒してしまう。

「あ、アブくん!ごめん、ひっかからなかった?」

ぶつかった相手はアブセルだった。
セナを探さなくてはとの思いと、ぶつかってしまって申し訳ないとの思いとやらが色々と入り混じり、慌てた様子で言葉を発した。


-----

「そなたの言葉が信用出来るとでも?」

ノワールはジュノスを睨む。
昔も、そして今も黒十字は信用できない、それはジュノスとて同じ。その上、彼はセナの忠臣だ。彼を護る為ならいくらでも嘘をつけるだろう。

「まぁよい。あやつに罪がないと言うのであれば、そなたがあやつの分まで詫びを示せば良い話。じゃが忘れるな。わらわは気の長い方ではない。此度は空振りじゃったからの、我が子が戻らないとなれば、わらわは容赦せぬ。あやつに報いるぞ。」

194リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 18:43:25
イスラ>>
【リマは…複雑な葛藤の末にセナのもとを離れるでしょう← でも決してセナを許せないからじゃないですよ?子供から親を奪いたくないからです。
なのでどうぞ心置き無く胃に穴を開けちゃってください!←
ユニは役立たずだからなぁ←

魔除けとかww自分にとっては大総統がもはや魔です←
いつでも何処でも一緒にいたいのでしょう、気持ちは分からなくもないです(笑)でもAKBオタが潜んでるのは怖いなぁ、自分、気付かぬところで恨み買ってそう←
ですです!と言うかそうであって欲しい←
ギャップかぁ、自分も「オタクに見えなかった!」って言われたい← いつも一緒にいる友人(フリフリ装備)の印象が強いのか、この前病院の実習で仲良くなった子に乙女ゲームの話ふられて全然分からないもんだから残念そうにされてしまいました。自分の場合「オタクと思ってたら違った」の方らしい(笑)

奇声はさすがに発しませんが騒がしいですね(笑)あと周りからボコボコに打ちのめされる点とか共通しています← でも最近オラフもイコールで結ばれて来ているようで、つまりはヘンテコな生き物がイメージキャラクターです←

いやぁ、うちの坊ちゃんウサギ達が「執事がいない!」「僕の執事は何処だ!」「入手していないだと?ならば金を積むなりなんなり、何としても手に入れてこい!!」って騒ぐものですからσ( ̄∇ ̄;)(幻聴)
因みに執事ウサギは現在無事委託した友人宅に到着しているそうです。
え、私の部屋ですか?こんな(imepic.jp/20140930/672650)感じですね。

でもまぁ何はともあれ、自分の愛しているシエルは今の坊ちゃんですから(´∀`人)♪ 回想に出る小さい頃のシエルってなんか胡散臭くて虫唾が走るなと思ってたんですが、私の本能が悟っていたみたいですね(-ω- )

あー、それも考えてたんですけどやめました。←

この話が出来た頃読んでた漫画なので(´∀`人)もろ受け継いでますよ〜

イスラって何か存在感ありますよー、お節介だからかな?
好きでしょうね、今凄く想像出来ましたw

そうですか、残念(・ω・)】

195ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/02(木) 00:51:42
【飛行艇】

ノワールの言に対し、ジュノスは言われなくとも解っている、と言葉を返す。

しかしその直後、突如として黄色い…いや、茶ばんだ声がどこからともなくと場に割って入ってきた。

「きゃーっ!!ノワちんお久〜!」

"それ"は背後からノワールの身を抱きすくめると、嬉々として彼女に頬ずりをする。

「話には聞いてたけど、ノワちんったら本当に小さくなっちゃってたのねぇ。
でもでも、今のアナタお人形さんみたいでとっても素敵よ。逢えて嬉しいわぁ」

もはやキスは挨拶と感謝を伝える常套手段である。
D.Dは嫌がるノワールの頬に唇を近づけるも…そこでふと目の前の、呆気に取られているジュノスの存在に気がついた。

「やだっ!他にも人がいたの!?アタシったら、全然気がつかなかったわ!」

はしたないところを見せてしまったかもしれない。いやいや、しかしちょっと待て。
先ほどからずっと感じているこの感覚…、いや、予感と言ってもいい。

D.Dは不意に勢いよく立ち上がると、フィアの両肩を掴んでガクガクと揺さぶりながら声を上げた。

「ちょっとぉ、何よこの船の中!?アタシのいいオトコセンサーがビンビン反応してるんだけど!?
一体どう言うことよフィアっ!紹介しなさいよぅ!!」

196アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/02(木) 00:53:20
【飛行艇】

正直なところ、恋愛というものがよく分からない。
以前どこかで聞いた恋の定義に… 

1、気がつけばその人のことばかり考えている。
2、相手のことを思うと何だか切なくて、胸が締め付けられる様な感じがする。
3、一緒にいると楽しくて、ずっと一緒にいたいとかイチャイチャしたいとかいう願望に取り付かれる。…とあったが。

それが本当なら自分はリトに恋をしていると言うことになる訳で…と言うかずっとそうだと思ってた訳で。
これが恋じゃなければ、じゃあ恋って一体何なんだ、っていう話な訳で。

ナディアやヨノに向ける"好き"が姉的な存在としての"好き"だと言うことは分かる。でもその他の女の子を好きになったことがないから、やっぱり何とも言えない。

じゃあ、じゃあそうだ。実際に恋をしている人に話を聞けば、恋愛の何たるかを知ることが出来るんじゃないだろうか。

そんなことを漠然と考えていると、不意に誰かにぶつかり、アブセルは急きょ現実に引き戻された。

――…

「あ、ごめっ…!」

どうやらリマとぶつかってしまったらしい。
予想外の彼女の慌て様に何故だかこちらまでも伝染してしまい、アブセルは慌てて大丈夫だと首を振る。
しかし改めて自身の服を見てみると、シャツやズボンにスープらしきものがかかっていることに気づく。

「…いや、でもっ。どうせシャワー行くつもりだったし、全然大丈夫っ!
て言うかそんなことより…!」

そう、そんなことより。リマには言いたいことがあった。今まではそれどころじゃなくてすっかり忘れてしまっていたが…。
アブセルは不意にリマに向けて頭を下げた。

「リトを助けてくれて、ありがとうございました」

あの深淵での一件、リマとセナがいなければ彼を助け出すことは叶わなかった。本当に彼女達にはいくら感謝してもし足りない位だ。

197アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/03(金) 00:36:23
【過去】

台車を使い、こっそりリトを館の中から庭園へ。
正門は見張りがいて使えない為、そこからは塀をよじ登って屋敷の敷地外へ出た。

リトはもやしな為…と言うか普段こういうことをしたことがないだろう為、塀を登らせるのは苦労したが、幸運にも誰にも見つかることはなかった。

「ほら、あれが街だよ」

そして抜ける様な青空の下。アブセルは眼下に広がる色とりどりの屋根の群を指差し言った。

「街まではそんなに離れてないから歩いてても直ぐに着くよ。…あ、そうだ」

かと思えば、ふと思い出したように持ってきていたキャスケット帽をリトの頭に目深に被らせる。

「それ被っとけ。お前の髪、目立つから」

198イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/03(金) 00:46:27
リマ》そんなことになったらリト達の存在が消えてしまう;何としても阻止せねば←
それもそれで酷いw
そんなことないです!ユニはもうそこにいるだけ良いんです!

大総統を魔とか言うんじゃない(笑) 
そんなもの持ち歩かなくても、いつも心の中に携えとけば問題ありません←
そんなおおっぴらにAKBディスってるんですか?(笑)

フリフリですか(笑)じゃあこれを機に乙女ゲームに手を出してみては?(笑)自分の知り合い(女子)の中では、うたプリが熱いみたいです。今度ライヴに行くというほどのハマり様ですw

ボコボコってマジで(笑)おラフww可愛いですよねwwまぁ要するに変な人ry←

坊ちゃん達うるせぇwwお、良かったですね^^
あらかわ、てか縫いぐるみがひしめいてる(笑)

虫唾が走るってw一般的な反応としてはそこで胸キュンするものでしょうにw

え〜なんで止めっちゃったんですか?
 
あぁ、そういうのってありますよね。じゃあリマセナが誕生したのはその漫画のおかげですね^^
 
今回イスラは引き立て役に徹しさせてる感じなんで自分の中では影の薄い存在です(笑)でもそう思って頂けているとは嬉しい限りです^^
ね?可愛いでしょう?←

ヴェントとかをイチオシにしたら面白そうかなと思ったけど、今後顔を合わせることなさそうだしな〜(笑)

199メイヤ/レックス ◆.q9WieYUok:2014/10/04(土) 23:23:45
【飛行艇】

耳にした話だと、イスラはバルクウェイに闇を齎した元凶と戦っていたらしい。

イスラ程の剣士が決して浅くは無い怪我を負うと言う事は、相手もかなりの強者だったのだろう。

決して完敗した訳では無いと思うが、戦いの行方は芳しくは無かったのかも知れない。

その結果、イスラは落ち着いた現状を前にしても、稽古に励んでいるのだろう。

「そうか……なら下手に声を掛けない方が良いな。」

サンディの言葉に頷き、メイヤは皆が居るであろう飛行艇内の食堂へと歩を進める。

「取り敢えず、アグルとレックス、ナディア達の顔を見に行こう。」

途中、サンディが何やら物申したそうな顔をしたが、メイヤは敢えて気付かない振りをした。

ーーーーー

「……確かに、初見ですらない僕らにこうもまで構ってくれるのは何か裏がある様な気もします。

だけど、言ってたじゃないですか、黄龍を倒す力を貸して欲しい、と。

色々と良くしてくれるのは、先行投資的な部分もあると僕は思いますよ。」

紙パックを手に椅子へ腰掛けるアグル。

彼の言葉に、レックスは少しばかりの間を置いて答えた。

「無条件に何もかもを信用するのは愚行ですが……それよりも。」

その声には、僅かだが彼にしては珍しい苛立ちの色が見てとれる。

「先程の言葉、どう言う事ですか?

君がお兄さんの仇討ちを考え、その為に力を着けて来た事は知っています。

だけど。

バルクウェイに開かれた深淵と、溢れ出した闇を、魔物を、犠牲となった人々を見て何も思わなかったのですか?」

そして、その口調は次第に熱を帯びて行きレックスはアグルへと詰め寄った。

「ナディアさんは弟さんの為に、サンディは亡き両者の為に、誰かを救う為に戦っています。

だけど君は違う。

君の戦いは誰も救わない、助からない。

復讐を遂げた先、君の魂は救われてもそこで終わりです。

強制はしません、けれど。

力を持たなかった為に何も守れず死んでしまった人々を、闇に包まれたバルクウェイの光景を見た上で、それでもこの世界がどうなっても良いと思うなら……僕は君を嫌いになります。」

丁度その時だった。

ドアが開き、メイヤとサンディが食堂へと現れたのは。

「……レックスにアグル、久し振りだな……って言いたい所だけど、どうした?

何か雰囲気が変だぞ……?」

200リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/05(日) 23:41:13
【飛行艇】

「ごめん!ごめんね!!」

食事をアブセルが被ってしまったのを知ると、リマは更に慌ててハンカチで服を拭う。
しかし、突如頭を下げられたことに驚き手を引っ込める。驚いた表情をアブセルへと向けた。

「ううん、リマは何もやってないし」

彼から受けたのは感謝の言葉。
リマはすかさず首を振り、困ったように笑顔を浮かべる。

「私なんか、むしろ足引っ張っちゃって…。リッちゃんを助けたのはセィちゃんだよ。お礼ならセィちゃんに…」

言いかけてリマはあることを思い出した。

「あ、そうだ。アブくん、あのね。リッちゃんのことであまり自分を責めないでね?」

アブセルがリトを屋敷に戻し、結果的にリトは害され今の状態となってしまった。
リマが見たところ、アブセルはそれを自分のせいだと思いこみ自身を責めているように思う。
しかしリマは知っているのだ。あの時屋敷でリトと話した時、彼が言っていた。アブセルの行動はリトの為を思ってのことだと話したら、リトは分かっていると呟いた。

「リッちゃんはアブくんの気持ち分かってた。アブくんのこと、怒ってないよ?だからね、リッちゃんが目覚ましたら、ちゃんと仲直りしてね。」

201リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/06(月) 13:20:27
イスラ>>

最近「あやかし百鬼夜行」ってアプリで美少年妖怪集めて遊んでるんですが、お気に入りの鬼太郎似な狸の妖怪進化させたら人型ぶっとんで化け狸になってしまってお仲間さんの所で泣いていたところ、優しい通りすがりの方々が進化前のカードを次々にプレゼントしてくれました(笑)本来は回復薬で取引されるカードなのに無償でくれるとは…とても優しい方々でした♪

頑張れジュノス!!(他人事)
酷くないですよー優しいですよー穴開けたままとかじゃないんだから!←
いいのかww

じゃあ悪夢←
成る程!!因みに自分はスマホの中に携えています←
最近はそうでもないですが、前田敦子がいた時は酷かったですねー。

普段がゴスロリ趣味な子なので、大学では一般人も好むブランドをと考え、中高生向けギャル系ブランド「リズリサ」を選びとったがために、顔が童顔なのでフリフリに見えてしまうと言うね。黒髪パッツンなので周りには余計にそっち系として見えてしまうみたいです。
うたプリですか、自分の友人にも好きな子います(笑)キャラソン聞かせて貰って爆笑した記憶が←

オラフ可愛いですwって変な人wwそうかもしれませんね( ̄∇ ̄)笑

坊ちゃんにおねだりされたらそりゃ意地でも手に入れるしかないでしょう←
結局一番くじで狙ってたものは全て手に入れました(笑)でもツイッターとか見てると皆くじ運いいなぁと思いますね、羨ましいです。
はい、自分の部屋はぬいぐるみの植民地ですゆえ。UFOキャッチャーで取ってきたり、取って貰ったり。母親に叱られるので最近はこっそり持って帰ってきてます← ぬいぐるみ大好きなので、UFOキャッチャー得意な男友達がいて、単純に遊ぼう言われても面倒だっていつも断ってましたが、ぬいぐるみ取ったから〜って言われるとホイホイ行ってましたね← その友達は進級出来ず大学止めてしまい今では音沙汰なしですが←

だって態度が胡散臭かったんですも〜ん。でも今の坊ちゃんの小さい頃は可愛すぎて悶えていたので、自分の本能怖いなって思います(笑)
本能と言えば急に白龍ちゃんが恋しくなって先週ネタバレ掲示板行ったら、ちょうど白龍ちゃん再登場の回だったらしくて「水曜にサンデー買わなきゃ!って今日水曜じゃん!!」ってすぐさま買いに走しました←

いくらなんでも歳が離れすぎかなぁって。ジルはリトとの歳が近いので弟に手出してるような感覚が←

ですねー。読んでなかったらどんな子達になってたんだろう(笑)

そうだったんですね(笑)まぁ、結果オーライです!←
んー、まぁ、可愛いですね(笑)

あぁ、ヴェントww彼はノワールのお気に入りだしマゼンダとも仲良いしなので…幼女とオカマとビッチに囲まれるってどんなww

202フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/07(火) 20:20:45
【飛行艇】

転移した先にジュノスも居るのは、彼の魂の波長も感じていた為わかっていた。

しかし、フィアは忘れていた。

彼、いや彼女……DDがかなりの男好きであることを。

「あ〜確かに何人か男は居てるわ〜ただ〜」

思いの外強い力で揺さぶられるがまま、フィアはDDの問いに答えた。

「DDが好むイケメンは居ても〜割と幼い〜〜私達からすればお子様ばっかりよ。」

しかし、いつまでも揺さぶられ続けるのは流石に辛い為、答え終えると同時に肩を掴むDDの腕に手を置き、揺らすのを止める。

そして、どうやら密談の間に入り込んでしまった事を感じ、ノワールとジュノスに短く詫びた。

「ごめんなさいね、間を割って。

でもまぁ、丁度良かったわ。

ノワールに話したい事もあったし、そこのイイオトコさんにも聞きたい事があるからね。

二人の話が終わったら、少し時間をちょうだい?」

203アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:49:58
「…どちらが死ぬ?」

兄は言った。

「どちらでも同じだよ」

弟は言った。

「チェスで決めよう」

――…

【飛行艇】

どうやら先程の発言、彼にとっては気に障るものだったらしい。
珍しくも語気を強くこちらへと言い寄ってくるレックスに対し、アグルは紙パックを口から離し、気怠そうな目を彼に向ける。
そして暫しの沈黙の後、何かを言わんとすべく口を開きかけるも…。

直後、場に上がった新たな声によって、それは阻まれることとなった。

「あー…、いや何でもない。そこの委員長(レックス)がまたお節介焼き始めただけ。気にしなくていーよ」

視界に映ったのはメイヤとサンディの二人だった。
アグルは彼等の登場によって、別段話の腰を折られ気分を害したと言う風でも、またこの空気を断ち切る願ってもない助けが来たと喜ぶでもなく、いつも通りの態度でそう言った。
しかしレックスとの会話を再び仕切り直す気もない。

「にしてもそっちは色々忙しかったみたいだな。一週間振りじゃん。
…で、何?今は暇してる訳?」

204アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:50:58
【飛行艇】

何もしていないなんてとんでもない。
確かに実際にリトを救出したのはセナだろうが、そう彼にお願いしてくれたのはリマなのだから。

依然深く頭を下げていたアブセルだったが、不意にリマが話を変えるとその顔を上げ、きょとんと彼女を見た。
そして呆然としたまま口を開く。

「そう…なんだ…」

リトはこんな自分のことを信じてくれていたんだ…。

直後、何かがぐっと込み上げてくるのを感じた。
そして胸が熱くなるのと同時に、少し気が楽になった。

「心配しなくてもちゃんと仲直りするよ…。友達だもん…」

言ってアブセルは小さくはにかむ。

しかし不思議なのは、どうしてリマはこうも自分たちのことを気にかけてくれるのかってこと。
彼女のそういった態度が慣れなくて、どうもこそばゆい。
アブセルはどこか照れくさそうに頬を指で掻きながら先を続けた。

「なんというか…ポセイドンの姉ちゃんにはいっぱい迷惑かけちゃったよね…」

屋敷に連れ込んだり、深淵に引っ張り込んだり、襲ったり、情けないところもたくさん見せてしまった。

「何かさ、お詫びって言うか…お礼、したいな。
何か欲しい物とかない?して欲しいこととか…。俺に出来ることなら何でもするから遠慮なく言ってよ」

205イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:53:46
リマ》
皆さん優しいですねw自分そういうソーシャルゲームってやったことないんでよく分かんないんですよね
 
他人事すぎww
だってそれ生き地獄じゃないですか?過労死した方がまだ楽かもしれないww
ユニはマスコット的な存在なので(笑)

悪夢も似たようなものじゃないですかw
あぁ、なるほどスマホですか。でもスマホって落として、もし中を誰かに覗かれでもしたら最悪ですよね(笑)
そんなに酷かったんだw今のAKBメンバーはさっぱりですが、以前だったら板野友美が一番好きでしたが何か?←

それってお嬢様系ゆるふわファッションみたいな感じ?それなら可愛い←
自分はカラオケでキャラソン歌われて反応に困まりましたw

何かまたアナ雪が見たくなってきたw変な人認めちゃ駄目ですって(笑)

リマさんも充分凄いですけどね(笑)てか親に叱られる程ってどんだけですか(笑)
自分UFOキャッチャーで何かを取れた試しがないなぁ。だからやらない←しかしそんなに仲良かったのに音沙汰なしとか寂しいですね

人見知りの方が坊ちゃんですよね?
え?白龍?誰だっけそれ?(゚Д゚)←…まぁそれは冗談として、どうでした?白ナントカさん活躍してました?

離れてるって言っても5歳位じゃなかったっけ?全然OKですよ←

リマセナがいなかったら多分ジュノスというキャラも出来てなかっただろうな(笑)

ヴェントモテモテwwしかし周りにロクな奴がいないww

206メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/11(土) 00:01:54
【バルクウェイ】

普段とそう変わらない気怠げな瞳と、返って来ない言葉。

メイヤとサンディが食堂へ現れたのも有るだろうが、話をするつもりは無さそうなアグルの態度にレックス下唇を咬み、彼を眼鏡越に睨む。

しかしそれも数秒の事。

深呼吸を一つ、表情を戻したレックスはアグルへと言葉を投げる。

「僕は君を買い被り過ぎていた様です。」

そして、少し頭を冷やしてきます、とサンディとメイヤに声を掛け、食堂から姿を消した。

その姿を見送り、メイヤは近くにあった椅子に腰掛けた。

唯ならぬ雰囲気だったが、アグルがああ言い、レックスも食堂を出て行ったならば無理に聞き出さない方が良いだろう

「細々とした使いっ走りで忙殺されていた、のは冗談だけど、骨の折れる仕事で暫く動けなかったのは確かさ。

その分、今は暇を貰った。」

レックスとの事には触れず、メイヤはアグルに返事を返す。

「復興祭、折角だから皆で回らないかと思って来たんだ。

後は……皆はこれからどうするのかを聞きに。」

207ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/12(日) 21:44:37
【飛行艇】

「そんなの全然問題ないわっ!
ダンディーな年上の殿方にはリードされたい。まだ可愛さの上回る年下の彼はリードしたい。それがアタシのポリシー!
それが将来有望な子ならなおのこと!今からツバつけとかなきゃ!」

フィアの返答に対しDDはそう熱く声を上げる。
因みに目の前の彼は…と、ジュノスに目を向けた。

「ちぃッ…、子持ちか…!」

ジュノスの背中、抱っこ紐にておぶわれた赤子を見て、DDは悔しそうに爪を咬む。

流石の彼も他人のものに手を出すのは気が引けるらしい。
火遊びはよほどのことがない限りしない主義なのだ。

「こうしちゃいられないわ。次よ、次!
フィア!アタシ一足先に船の内見て回ってくるから!待っててねん、まだ見ぬ愛しいアタシの子羊ちゃん達!」

そう言い残してDDは嵐の様にその場から去っていった。

「…何なんだよアイツはよぉ…」

その一部始終を眺めていたシャムは、騒がしい奴だと呆れた様子で目をすがめる。
と、そこであることに気がついた。

クソガキ、もといルドラがいない。
まぁ大方ノワールと直接逢うのが恥ずかしいとかで、どこぞにでも隠れたのだろう。近くにいるのは分かるので、取り合えず放って置くことにする。

そしてその一方、事の成り行きが分からないといった様子のジュノスにフィアから声がかかる。

「話なら今終わったところですが…何でしょうか?」

若干の警戒の面持ちを見せながらジュノスは言った。

208アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/12(日) 21:45:39
【飛行艇】

立ち去っていくレックスの姿を横目で眺めながら、アグルは机に頬杖をつく。

「俺はいーや。気分じゃないし」

そして、復興祭を見て回らないかと言うメイヤの問いに対しては、ひらひらと手を振って難色を示し。
続けて言葉を返した。

「そう言えばあの縫いぐるみ…バロンの奴は帰省するとか何とかで暫く不在にするってさ。
レックスはその帰りを待つとか言ってた。んで俺らは…」

言って、アグルは机の上に広げられた書類の一枚を手に取り、メイヤに見せる。

「闘技大会の選手にエントリーされてるって訳。…知ってた?」

209リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 10:47:33
【飛行艇】

ちゃんと仲直りする。アブセルの言葉にリマは安心し笑顔を浮かべる。しかし次の時には彼女の顔からは困惑の色が映った。

(何でも言えと言われても…)

特にして欲しいことなどない。
しかしアブセルの性格上、お礼をしなければ気が済まないのかもしれない、ここは何か言わなければ。
…セナを一緒に探してもらうか?と言ってもここは船の中、行く場所など限られている。それに、自分を置いて何処かへ行ってしまう時は彼の体調がとても優れない時。弱った姿を見せたくないようでいつも何処かに消えてしまう。そんな時は無理に探さないのも優しさだとジュノスに教えられた。いつも体調が悪いわけではないし、よくなれば自ら戻って来てくれる。
部屋に戻ってくれていれば良いが、ひょっとしたら何処かで蹲ってるかも…でも、今はそっとしておこう。

「じゃあ…」

悩みに悩んだ末導き出した答えは。

「お友達になってくれる?」

アブセルには予想もつかない言葉であっただろう。

「私、あまり同じくらいの歳の子と接する機会とかなくて…お友達になってくれたら嬉しいな」

しかし、リマにとっては勇気のいる言葉だったのかもしれない。
顔を赤くして恥ずかしそうにしながら、遠慮がちに言葉を述べた。

210ノワール ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 11:42:05
【飛行艇】

「忙しない奴よ…」

嬉々として消えていくDDの後ろ姿を眺めながら、ノワールは呆れたように声を漏らす。
挨拶のキスは回避したものの、あの顔が至近距離にあったと思うだけで悪寒がする。と言うかまだ奴の息の感覚が肌に残っており、大変心地悪い。頬を抓り、感覚を無くすよう心みる。

「話とはなんじゃ。」

そして、拍子抜けはしたものの彼女の機嫌が直ることはなく、仏頂面でフィアに話を促した。

211メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/13(月) 16:14:35
【飛行艇】

帰省すると言う事は、記憶の図書館に戻るのだろうか。

バロンとレックスの動向を聞き、メイヤは考える。

(暫く戻らない、か。)

様子からして、アグルも直ぐには此処を発つ事もなさそうだ。

となると、四神の中で動く可能性があるのはナディアだけだろうか。

「いや、今初めて知った。」

アグルの手から書類を受け取り、メイヤは目を通す。

そこには自分の名前の他に、アグルやレックス、そしてイスラの名も記されてあった。

「まぁ……参加する事自体は構わないけれど。

それよりも初戦の相手がアグルなのに驚きだ。

レックスとイスラの組み合わせと良い、身内で合わせたのか?」

書類を見る限り、同じブロックに知り合い同士で組まれているようだ。

他の名前は、殆ど見た事は無いが……

「多分今晩にやるんだろう?それなら始まるまで祭りを回ってくるよ。

それと。」

書類をテーブルに置き、メイヤは続けた。

「イオリ……兄は暫くバルクウェイから動かないそうだ。

多分、この空挺師団にそのまま厄介になると思う。

四神護衛は終わったけれど、俺も暫くは此処に居るつもりだ。

打倒黄龍を掲げるなら、常に一緒とは
いかないが共闘する位にはなると思う。

まぁ、実際これから先の事はしっかり考えれてないんだけどな。」

212リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 21:39:05
【過去】

塀を登るなんて聞いてない。
やっとの思いで登り切ったリトはアブセルを見た。
しかしただ見ただけで不満の声は出さず。
すぐに促されるままアブセルの指の先を追った。

「……」

見たことのない景色だ。
あれが街。姉が「出掛ける」と言った際に向かう場所。

リトの表情に微かながら光が差した。

213フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/13(月) 21:42:09
【飛行艇】

嵐の様に去って行くDDと、どこか物影に姿を隠したルドラ。

二人の様子に溜め息を吐き、フィアはシャムへ視線を流し肩を竦めた。

「取り敢えず、闇の王子とそれに連なるアナタ達、そしてノワールはこれからどうするかを聞きたいわ。

私はレオの仇討ちと、ノワールのお守りも兼ねて人間界には来たけれど……」

しかしそれも僅かな事、フィアは真面目な面持ちで口を開いた。

「ここで一旦、別行動を取ろうと思うの。

仇討ちは正直今の私では力不足……諦めた訳では無いけれどね。

お守りの方はそう、案外必要なさそうな気がするわ。」

そう、レオの仇であるイオリの実力は十三人の長老に勝るとも劣らない所か、1対1なら自分達を圧倒する程だろう。

十字界で戦ったあの眼鏡の男とほぼ互角に渡り合った事から、イオリの実力は伺い知れる。

そして、ノワールの護衛も今暫くは必要なさそうだ。

闇の王子と、それに付き添うジュノス、そしてノワール自身の力は並みの強者程度ならば安易に退けれる筈だ。

勿論、万が一の場合は考えているが。

「それよりも今は、気になる事があるの。

私達吸血鬼に近く、しかし遠い異質な気配……強いて言うならノワールの気配に近い感じ。

私はシャムやDD、ルドラの四人でその反応を追う事にするわ。

それで良いかしら?」

214リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 22:18:51
イスラ>>

自分もスマホのゲームと言えばミニゲームとかで、興味自体はあんまないのですが、カード系のゲームは絵の勉強になるのでチマチマやってます(pq´v`*)
今やってるのは妖怪のカードゲームで、同じ絵柄のカードを三枚集めて進化させるとかなりグレードアップした絵が見られます。対戦とかはやってないので、完全絵を見るためだけにやってますね(笑)

ぶっちゃけ結構他人事かも?w←
たしかにwでも死んだら何もかも終わりですよ!←
マスコットwそんなんで良いのかww

むー、なら何て言えば良いんだ!←
大丈夫、そのためのパスコードです(笑)
あー、美人ですもんね、彼女。でも自分、彼女を見るたびあの顔が天然物なのかどうか悩んでしまうので見るのが辛い←あと自分はサシコだけ昔からそれなりに好きです(´∀`)

んー、それともちょっと違いますねー。
成る程(笑)自分もマジLOVE何とか歌ってもらって、アニメのPV見て爆笑しました←

アナ雪は壮大な姉妹喧嘩でしたねぇ。アナ雪見てない子に内容聞かれて、町中巻き込んで散々やらかした挙句、結局は自分達で勝手に自己解決しちゃった話って言っておきました←
変な人ですよー。高校生の時なんて、チャーリーとチョコレート工場で出てきた変な小さいオッさん達のオーガスタス(?)のダンス覚えて来て友達の前で踊ってましたからね。←

えー、自分なんてマダマダです。
ぬいぐるみが増えすぎて、鬱陶しいと。そのため大分減らされました。また増えて来てるけど←
それが一番です。お金飛ばないもん。
いや、それが、全く寂しくないんで不思議ですよね(笑)

そうです、人見知りで蜂蜜入りホットミルク好きのとってもプリチーな子が今の坊ちゃんです。もう坊ちゃん可愛すぎて捻り潰したい。
酷いwもう活躍ってもんじゃないですよー。なんか薬やっちゃったんじゃないかってくらいの変貌ぶりで、ネットの方々にはヤクザと呼ばれています←そして先週は素っ裸をお披露目してくれました。幼少期の回想でですが。しかもご丁寧に正面から。まぁ何はともあれ、順調に悪の道に突き進んでいます←

えー、5歳は大きいですよー。

そうなんですかwでは生まれるべくして生まれた子たちなんですね←

可哀想なヴェント…誰かを取るならノワールでしょうか?一応、本来は幼女じゃないわけですし(笑)

215アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/13(月) 23:42:52
【飛行艇】

「とも…だち…?」

…になってくれないかと言ったのか、今?

その言葉を言ったことはあっても、誰かに言われたのは生まれて初めてだ。

顔を赤くして恥ずかしそうにしているリマの姿を見れば、途端アブセルの顔も熱を帯び赤くなる。

「い…良い、けど…。
でも…それって何か違くない?」

しかし、果たしてそれはお礼をしたと言えるのだろうか。

「あ…じゃあ、姉ちゃんさえ良ければだけど…、また屋敷に来てくれることって出来ないかな?あの…セィちゃん…さんも一緒に…」

眠ったままのリトをいつまでも此処に居させる訳にはいかないし、屋敷にはユニを置いてきている。
亡き旦那様に関しての話もあるし、やはり一度はあそこに帰らなければ。

「リトが目覚める間だけでも、二人が居てくれたらもしもの時も心強いし…。やっぱり改めてちゃんとお礼したいから…。
えっと…だから、その…」

言って、アブセルはぎくしゃくとした態度を見せる。
そして、おずおずと左手を差し出した。

「と…友達として…、これから、宜しくお願いします…」

216アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/13(月) 23:43:39
【飛行艇】

暫くは此処に居ると言うメイヤに、アグルは「そっか」と短く言葉を返す。

弥都で別れを告げてから、そう間を置かない内での再会だ。
これも縁というやつなのだろうか。

「何にせよ、これからもしばしば顔を合わせることにはなりそうだな。
ま、その時は程々に宜しくってことで」

そう言い、再びいちご牛乳を口にしたその時だ。

「やっだぁ〜ッ!アタシの勘、冴え渡りすぎ〜」

突如、部屋の扉が開き見知らぬオネェが現れた。
それは直ぐ様こちらへと駆け寄ってくれば、細く長い腕をメイヤの首に絡め、耳元に息を吹きかける。

「アナタのその黒い髪と黒い瞳、神秘的でイイわぁ〜。そっちの眠たげな彼も目元の泣きボクロがセクスィ〜。
あぁん、もっ二人共か〜わ〜い〜い〜。まとめて食べちゃいたいくらいだわぁ」

217メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/15(水) 20:10:49
【飛行艇】

短い返事は、アグルらしいしと言えばらしいか。

そう深く言葉を交わした事は無いが、彼の様子は普段と変わらない。

「取り敢えず今夜の闘技大会はよろしく、だな。」

飲み物に口を付けるアグルへ、メイヤは手をヒラヒラと振った。

それと同時に、勢い良く扉が開く。

(何、だ!?)

開かれた扉は蝶番を軋ませ、現れるのは長身痩躯。

全く隙の無い動き、言うなれば獲物に迫る毒蛇の如き速度で迫るその人物は、正に毒蛇の牙……細く、長い腕をメイヤの首筋に絡めて囁いた。

そして、耳元に吹きかけられる吐息はメイヤの背筋に氷柱を突っ込む以上の威力を発揮。

「は……あ……ぁ、アンタ、誰、だ……?」

反射的に立ち上がり、無意識に刀の柄へ手を伸ばした状態のまま、凍りついたかの様に動かないメイヤは目を見開き、すぐ側の緋色の瞳を凝視した。

218ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 00:51:19
【飛行艇】

これからどうするか…。そうフィアに問われたジュノスは、束の間考える仕草を取る。

取り合えず第一の目的であるセナとの合流を果たした今。次いで行動に当てるとすれば、ノワールの子の捜索を行うのが順当なところだろう。
しかし、ここでセナ達と別行動を取るのは返って不自然だ。セナに子の存在を訝られる可能性がある。
そして勿論のこと、それに併行してノワールが妙なことをしない様に監視をする必要もある。

…何にせよ、セナとノワールの意見ありきといったところか。

「…ちょっと待った」

と、その時。不意にこの場面では意外な人物、シャムが口を開いた。

「もし姫ちゃんが許可するようなら、あのクソガキをそっちに随伴させて良いか?
なに、あれはラディックや配下の奴らがいなけりゃ何も出来ないような腰抜けだ。流石に今になって変なことはしないだろ」

要するに往年の裏切り者、ルドラをノワールのお供にさせたいと言うこと。
ノワールがどう動くにしろ、やはり彼女一人を人間達の中に残すのはどうも不安なのだ。

「下僕としてこき使うもよし、もしもの際のスケープゴートにするもよし。
いつもは隠れてるかもしんねーが呼べば出てくるだろうよ」

ルドラはノワールに好意を抱いている。彼女が敵に襲われた時は身を挺してでも彼女を守ろうとするだろう。

219アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 00:52:13
【過去】

リトの表情が僅かに変化したのをアブセルは見た。

そして、どういう訳だかその時。アブセルは不覚にも胸の高鳴りを感じてしまったのだった。

(…なっ…なんだよ…今のドキッて…、ドキッてぇ…ッ!)

別に見蕩れてしまったとか、そんなんじゃ全然ない。
しかし時折、彼が本当に男なのかどうか疑いたくなる。

「ほ…ほらっ、行くぞ!」

何だか決まりが悪い。アブセルは照れ隠しにわざと強い口調で言い、リトの手を引く。
そして街までの道を下って行った――…

――リトを街まで連れて行き、適当なところで彼をその場に置いてけぼりにして、一人で屋敷に帰る。そして屋敷の者にリトが勝手に外に出てしまったと伝える。
その結果、リトは責められ叱られる。…というのが今回の作戦。
旦那さまに叱られれば、あのリトだって泣いてしまうに違いない。

内心しめしめとほくそ笑むアブセルだったが、街に着けばその顔に得意げな笑みを見せ、リトの顔を覗き込んだ。
 
「どう、どう?街って賑やかだろ?人いっぱいだろ?お前の部屋にはないものばかりで面白いだろ?」

そして言う。

「どこか行きたいとこある?お願いするなら俺が案内してやってもいーよ」

220イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 01:26:23
リマ》なるほど、勉強ですか。確かにカードゲームのカードの絵って綺麗ですもんね^^自分もゲームはやらないけど、たまにそう言う系の公式HPとかでチラチラ見てます

薄情ものめw
いや何もかも終わりだから良いんです←
自分は全然OK←

もう何も言わなくていいです(笑)
そうですよね、パスつければ良い話ですよね…でもめんどくてしてない(笑)
て…天然物…だよ!(;^ω^)←まぁ別に天然物じゃなくても気にはしませんが。サシコってその愛称が何か好きじゃないんですよね〜

違うのか…
あー確かにあのPVは爆笑ものですが…しかしそれと同時に見てると何か恥ずかしくなってくると言うか…居たたまれない気持ちになってきません?←

ん〜…まぁ大体あってる(笑)アナ雪はオラフとトナカイにありのままに萌える映画ですよね
あ、それは間違いなく変な人ですね←

まだまだですかwいっぱいあると邪魔くさい様な気もしますが…(笑)
ゲーセンの景品って冷静になると別にいらない、そして普通に買ったほうが安かったってなることが屡々…
まぁ…そんなものですよね(笑)

なぜ捻り潰すww
白龍wwだいぶ狂ってきてる様ですね〜。しかしやっと白龍が好きになれるかもしれない

そうですかね〜?じゃあナディアはどこぞの金持ちの御曹司とでも結婚するのかな?(笑)

自分的にマゼンダの方がお似合いな感じはしますが…てかマゼンダと上手くやれるのってヴェントくらいしかいない気がするw

221ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/10/17(金) 00:42:37
【久々?に絵投下ー

imepic.jp/20141017/020770

二人に質問なんだけど、絵描いて色塗る時ってどうしてる?

紙に描いてからパソに取り込み、色付け?

もしくはペンタブでそのまま描いてる?

タブレットで描くの楽そうかなーとか思ったんだけど、どうなんだろ?】

222アグル他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/17(金) 21:53:19
【飛行艇】

「あらぁ、なあにぃ?もしかしてアタシのこと気になっちゃうカンジ?」

誰だと聞かれれば、DDはついその気になって艶っぽい声を出す。

「そうねぇ…、通りすがりの麗しき恋の狩人…と言ったところかしら。
あ、別に怪しい者じゃないのよ?そこのところ間違えちゃダメよぉ、可愛い坊や?」

そう言って、彼はメイヤの頬に唇を落とす。
それを側で見ていたアグルは、

「メイヤ…ご愁傷様。生きてたら夜また闘技大会で」

と、そそくさと逃げ。
その一方でサンディは、

「キ…キス…。男の人が…男の人に、キス…」

固まっていた。



【お、イケメンktkr!イラストはメイヤですかね?

あ、それ自分も気になってました
二人とも何のペイントソフト使ってるのかなぁ…とか

取り合えず自分は下書きから全行程ペンタブで描いてます
タブレットは機種によってはペンの動きがもっさりしてて描きにくい…とかあるみたいですね
液晶付きペンタブなんかはかなり描きやすい様ですよ。自分も欲しいです。しかし結構いいお値段です(^_^;)】

223リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/19(日) 03:41:07
【飛行艇】

アブセルの返事を聞き、リマの表情がパッと晴れた。
嬉しそうに差し出された手を握る。片手で事足りるのに両手で包み込むように握りながら、心が踊るかのごとく左右に揺らす。

「よろしくね!お友達!やったぁ」

が、すぐに自分の行動の異常さに気づき慌てて手を離した。やり過ぎたとばかりに照れ笑いを見せる。

「うん、リッちゃんの事は心配だからもともとナディアさんにお願いして目覚めるまで側にいさせてもらうことになってたの。お屋敷に戻るならリマたちもお邪魔させて貰うことになるかな。」



ヤツキ>>
【わぁい美絵キタ!色塗ろ色塗ろ!!

自分はアナログで絵描いて、PCで線画にして、最近はいちいち色の効果つけるの面倒臭くてiPadでテキトーに色塗ってる。
ペンタブなんて機械オンチな自分には使いこなせないから持ってない(笑)そしてシャーペンみたいなタッチペンは高いからタブレットに直描きも出来ないσ( ̄∇ ̄;)】

224メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/20(月) 22:46:46
【飛行艇】

全ッ然麗しく無い!

それどころか僅かな剃り残しであろう髭が肌に刺さって凄まじく痛い!

ほんの極々微かにだが感じる臭いも明らかに男のソレだ!

大体何者なんだ、麗しの恋の狩人って何さ!?

……と言う魂のツッコミは呻き声に変わり、メイヤは息を吐く。

助けを求めようともアグルはそそくさと撤退、サンディは凍りついたまま。

(あぁアグル、闘技大会で会えたら全力で、手加減無しでやらせてもらうからな……)

初対面からの不意打ちは意識が飛びそうになったものの、今なら何とか動けそうだ。

心の中でアグルを呪いながら、メイヤは身を捩る。

自称恋の狩人から離れなければ、恋どころか命すら刈り取られてしまうだろう、多分、いや、きっと。

明らかに不審者である謎の人物の腕から逃れたメイヤは、手の甲でキスをされたい頬をこすりながら再度問うた。

「で、ホントにアンタは一体誰なんだ?


船に居るって事は、誰かの知り合いなんだろうけど……吸血鬼の姫様の知り合いか?」

225リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/20(月) 22:54:16
【過去】

アブセルに手を引かれながら、リトは彼の言葉には答えず辺りを見回していた。
反応は薄くても彼なりに何か感じているようだ。
そして、リトはふと足を止めた。
アブセルの手を離れ、そちらへ向かう。

「……」

猫だった。
リトは初めて見るフワフワな生き物を、不思議なものを見るような目で見つめている。彼にとっては縫いぐるみが動いているように見えるようだ。

”にゃー”

猫が鳴いた。

「…」

リトは手を伸ばし、猫の体を撫でた。
そしてそっと、躊躇いがちに口を開く。

「…にゃあ…」

226ノワール ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/21(火) 13:34:56
【飛行艇】

「…勝手にせよ」

シャムの言葉にノワールは一瞬眉を潜めるも、拒否することはなかった。
今は娘の安否とリトに手一杯であり、行ってしまえばルドラの存在などどうでもいい。

「フィアの言う異質な気配とやらは気になるが、わらわはリトの側を離れることが出来ぬ。あの閻魔が妙な小細工をしよったからの。リトがおらんと本来の力を得られぬのじゃ。」

この分だと娘を探すより前にリトの目覚めを待つことになりそうだ。
ノワールはフィアとシャムに視線を向けた。

「何か分かった暁にはわらわにも知らせるのじゃ。良いな?」

227リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/21(火) 13:51:39
イスラ>>
よくあんなに豊富なポージングが描けるなと見る度に思っていますσ( ̄∇ ̄;)

えー、薄情なんかじゃありませんよー!←
それなんか虚しいww
良いんだww

じゃあそうします←
パス設定が面倒とか怠慢じゃないですかw
気にしないんですね(笑)愛称とかどうにもならんじゃないですかwwサシコは自分的に芸人枠なので嫌いではないのです。

なんか違いますね。取り敢えずなんか一般人が見ると「ん?」ってなん感じ。←
似合ってるから自分的には別にいいんですけどねー。
居た堪れなくwwたしかにwwでも彼らはアイドル←

あー、そうですね!自分もありのままに萌えました(笑)
断定されたww

自分、まだシエル好きを極められると思うんです!!←
たしかにwでもUFOキャッチャー自体好きなんですよね。家に一台あればお金も減らないんですが←

可愛すぎるからです。なりませんか?←
今月の黒執事ではシエルが幼女の頭に拳銃突き付けて「生きて今以上の苦しみを味わうか、今死んで楽になるか、どちらか選べ」とかかなりゲスやってましたがそれでも可愛さは際立ってましたよ!←
白龍はもう暴走してますねー。彼の心は救われるのか!てかかなりエグい能力身につけちゃってました〜。
何故今更w

ナディアって恋愛って感じしないんですよね、自宅で小姑やってそう(笑)

あー(笑)実際のところ、ヴェントは誰を想っているのか!取り敢えずノワールは妹的存在で、ノワールにとっても兄的存在ですねー。
てかDD見てふと、ヴェントのキャラ設定してる時に「男に好かれるタイプ」って考えたの思い出しました(笑)

228ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/10/21(火) 22:11:57
【二人ともありがとー!

電気屋街で絵描き専用ぽいタブレット見つけてさ、コレ使ってんのかなーとか思って。

ペンタブは性に合わなかったから、色塗りするならリマのやり方が良さげかなぁ?ワンチャン水彩色鉛筆に戻るまであるかも……

液晶ペンタブも気になるけど、お高いんでしょう?wwww

とりま俺はアナログで下絵描いて線入れの後線画っぽく出来るアプリで弄ってる感じやけん上手くいかねーわww】

229フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/21(火) 22:29:13
【飛行艇】

ルドラをノワールに同行させたいと申し出たシャムと、それを了承したノワール。

二人共に合意するならば、それに意を唱える事も、理由も無い。

「わかったわ、ルドラは置いていくわ。

そっちも、何かあれば知らせるのよ?」

フィアもまた、ノワールの言葉に頷き、続いてジュノスへ声を掛けた。

「と言う訳で、私達は別行動を取るわ。

暫く会うことは無さそうだけど……ノワールをよろしくね?

それと……貴方と闇の王子の周囲の時空間がほんの僅かだけど歪んで来てる様にも見えるわ、気をつけて。」

そして、一言二言声を掛けた後、フィアはシャムと共に飛行艇の機関室を後にした。

230DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/21(火) 23:25:42
【飛行艇】

逃げたアグルと腕の中から抜け出たメイヤ。
その両者に対し、DDは残念そうに肩を竦め、声を上げる。

「人間のオトコの子ってホント照れ屋よね〜。まっ、そこが可愛いんだけど」

安定のポジティブ思考。
そんなDDだからこそ、二度に渡るメイヤの問いにはウインクと投げキッスのサービス付きで答えてあげた。

「ご名答〜。吸血鬼のDDよぉ。よろしくねン」

かと思えば、今度はその視線は別の方へ。
直ぐ傍らの机の上。闘技大会についての日程が記載された書類の方へと向けられた。

「なになに?闘技大会なんてあるの?」

いかにもシャムが好きそうなイベントだ。DDは再びメイヤへと視線を戻す。

「もしかして貴方も出るのかしら?アタシ強いコって大好きよぉ。応援に行ってあげましょうか?」

231アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/21(火) 23:27:42
【飛行艇】

どうしよう。
そんなに喜ばれると、こっちまで嬉しくなる。

「じゃあ…屋敷に着いたらまたゆっくり話しよう?姉ちゃんのこともっと知りたいし」

友達たるもの、相手のことを知りたいと思うのは当然だ。
人生で二人目の友達、リマの出現にアブセルは内心ウキウキである。

取り合えず、屋敷からの迎えが来らまた声をかけると続けたところでアブセルは不意に思い出した。

「そう言えば、食事途中だった?ごめん、引き止めちゃったみたいで…。
てか、セィちゃんさんは?」




【過去】

リトが喋った。
思えば、彼の声を聞いたのはこれが初めてかもしれない。
…こいつはこんな声をしていたのか。

「…何だ、やっぱり喋れたんじゃん。
俺のことはいつもムシするくせに」

言って、アブセルは猫に近寄り、リトの隣にしゃがみ込む。
人に慣れているのか猫は逃げようともせず、リトの手に額をすり寄せている。
一方で不思議そうにしているのは彼の方だ。

「…そんなに珍しい?」

アブセルは小首を傾げた。
もしかして猫を知らないのだろうか。

「猫だよ、ね、こ。…言ってみ?」

232メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/23(木) 12:22:45
【飛行艇】

投げキッスとウインクのコンボをさり気なく、しかし全身全霊を込めてメイヤは避ける。

「いや、俺は出ない。

さっきの赤毛、アグルは出るみたいだけれど……」

そして、DDの問い掛けに嘘を交えて答えながら固まったままのサンディの手を引き、部屋からの脱出を試みる。

「闘技大会は夜からだけど、アンタの好きな強いコも出るだろうし、先に闘技場で目を付けとけば良いんじゃないか?」

彼女……ではなく彼が誰なのかと言う問い掛けは予想通りだったが、今の所メイヤ自身に関わる事は無いだろう。

ならば、本当にとって喰われる前にこの場を立ち去らたい所だ。

(ナディアとも話したかったけど、仕方ないな……)

233イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/23(木) 21:10:52
リマ》思います、衣装とかもセンス良いですし(*´д`*) 

考え方によっては整形も化粧の一種かなと思って…
自分の心が汚れているのか、その愛称を初めて聞いたとき何かいやらしい響きに感じてしまいまして…←
芸人枠だからって理由もどうなんでしょう、アイドルなのに(笑)

人の迷惑にならない限り、服なんて自分の好きなものを着れば良いのですよ
まあねwでもあの黄色い歓声に何か笑ってしまうww

間違いなく変な人ですね!(二度目)

まだ上を目指すのですか!もう十分じゃないですかね?(笑)
確かにあれは面白いですけど…流石に家に置くのは…w

なりますん…いえ、なりません(笑)
幼女をいじめるとは不届きな…まぁシエルなら許そう←
マジか、それは楽しみ。今まで白龍は好きな要素が一つもなかったのですが、自分イカれたキャラを好きになる傾向があるので、もしかしたら彼も好きになれるかもしれない、と思ったしだいです

確かにナディアが人を好きになるところとか想像できない(笑)自宅で小姑やって飽きたら旅に出る的な?自由人だなww

ヴェントは一体誰を想っているんですか!?(笑)
男に好かれるタイプっても2種類あると思うんですが…、男から憧れられるって意味か、ホモォ…な意味か(笑)


ヤツキ》デジタルでストレスなく絵描こうと思うと何気に金かかりますよね;
むしろ間を取ってコピックとか使ってみるのはいかがでしょう?

234DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/24(金) 21:21:55
【飛行艇】

「あら、ザンネン」

出場しない。とのメイヤの応えにDDは言葉通りの素振りを見せる。
…と、そこへ。部屋の扉が開き、新たな人影が二つ現れた。

「っんだァ…?おいっ、邪魔だコラァッ!」

出入り口の手前、退出しようとするメイヤとサンディにぶつかりそうになり、シャムは大きな声を上げる。
どうやら二つの人影の正体はノワールとの話を終えたフィアとシャムだったらしい。

「見て見てぇ、こんなのやってるみたい。シャムこう言うの好きでしょぉ?」

そんな彼らに駆け寄り、DDは先程の闘技大会の資料を見せる。

「ねぇ、フィア?アタシ達の旅ってそんなに急ぐものかしら?
時間に余裕があるならちょっとだけ見ていかない?楽しそうだし」


【闘技大会ですが…、イスラの代わりにシャムを出場させて良いでしょうか?;】

235メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/26(日) 19:26:44
【飛行艇】

まるでタイミングを計ったかの様に、食堂の出入り口から現れた新たな二人組。

眼帯の男の怒声に、メイヤは眉を寄せて彼を睨むもそれも一瞬。

後に続く銀髪の女の横をすり抜け、メイヤは早足に食堂を後にする。

会話からして先程の二人組もどうやら吸血鬼の様だ。

だが、今は特に構う事も無いだろう。

「サンディ、取り敢えず街へ向かおう。」

ーーーーー

喧嘩っ早いのは何時もの事だが、シャムの怒声には驚かされる。

「ちょっとシャム、ぶつかりそうになったアンタが悪いのに大声上げるのはねぇ?」

足早に食堂から出て行って青年と少女を見送った後、フィアはボソリと小言を漏らす。

しかしそれ以上は続ける事もなく、DDが示した書類に目を通し、彼の言葉に答えた。

「……そうね、急がば回れでは無いけれど、今はそう急がなくても良いわ。

闘技大会、見に行きましょう。

ついでに、昔の知り合いの顔も見たいしね。」

【イスラoutシャムinで大丈夫ですよー。

そうそう、初期費用が割とバカに出来ない額に……うーん、コピックは肌に合わなかって。重ね塗りがイマイチわかりにくくて…】

236サンディ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/30(木) 21:09:35
【飛行艇】

「うっせ、人間なんかにナメられてたまるかよ」

呆れた風に小言を漏らすフィアに対しシャムは、
"俺様の進路に立った方が悪い"…と言わんばかりに言葉を吐き捨てる。

そしてその一方でDDは、

「昔の知り合い…?なになに?昔の男?
ちょっと〜、なによその話。詳しく聞かせなさいよぉ」

何故か、昔の知り合い=男、と捉え。その先の下世話な話を期待して、ニヤニヤとフィアの頬を指先で突っつくのだった。


―――…

「…あぁ、びっくりした」

食堂を抜け、艇内の通路を足早に行く二人。
先程の見知らぬ三人組の登場には驚いたが、サンディは胸を撫で下ろし一息つくと、メイヤの声に頷いた。
と、そんな時。

「あ、姉御だ」

とある部屋から出てきたナディアの姿を前方に見かけた。…あの部屋は確かナディアの弟の少年の為に割り当てられた部屋だったと思う。

「姉御〜!メイヤだよ〜、久しぶりにメイヤが遊びに来たよ〜」

サンディは手を振りながらそう声を上げ、彼女を呼び止めた。


【ヤツキ》じゃあ何か理由をつけてイスラのピンチヒッタ―的な感じでシャムを乱入させようと思います^^
ヤツキさん色々挑戦してますね(笑)そしてやっぱり重ね塗り難しいのか〜;
話を振っときながら自分はコピックに触れたことすらないっていう←】

237リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/02(日) 11:12:52
【飛行艇】

「ううん、大丈夫」

アブセルの言葉にリマは首を振り、続く疑問に困ったような笑みを浮かべた。

「セィちゃん、多分お部屋に戻ってるんだと思うんだけど…時々リマが知らないうちにいなくなっちゃうんだ」

子供の頃は何でも教えてくれたのに、今の彼には隠し事が増えたように思う。
自分を心配させまいとしていることは分かるのだが…
離れていた分、一緒にいたいのに。

「寂しいなぁ…」

思わず口に出してしまい、リマはハッとして口を塞ぐ。
そして取り繕うように苦笑いを浮かべれば、アブセルに話を振った。

「リマ、セィちゃんのお部屋に行ってくるね。アブくんはどうする?
あ、服汚しちゃったから先に着替えに行った方がいいかな…?」


-------
【過去】

ねこ?
初めて聞く言葉だ。
アブセルの発言に不思議そうな表情を浮かべると、リトは目の前の動物に目を向ける。
これが猫と言うのか。

「…ね…こ…」

とてもふわふわで、温かい。

238フィア/メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/03(月) 21:09:26
【飛行艇】

「あながち間違えでは無いわ、でも、二人共会った事が有ると思うけれど?」

頬をつつくDDとその隣で悪態をつくシャム。

彼らに紅の瞳を向けながら、フィアは過去を懐かしむかの様な口調で続ける。

「元、澪の派閥の参謀長。

第二世代の吸血鬼……彼がこの街に居るわ。」

……第二世代の吸血鬼。

それは、三人の長老直系の吸血鬼であり、実子とも、半身とも呼べる存在である。

長老の直系である為、その能力は長老に匹敵する程。

「気配を辿るに、街中に居るみたいだから行きましょう。」

ーーーーー

艦内を歩く二人の進行方向に現れた人影、長身の女性の姿にメイヤは足を止めた。

しかし、決して初見の人物では無い。

(ナディアか、街に出る前に会えて良かったな。)

金髪の美しい女性、ナディアに歩み寄りメイヤは声を掛けた。


「久し振りだな、ナディア。

……弟の具合はどうなんだ?」

239ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/04(火) 13:54:04
【飛行艇】

ちょうど部屋を出たところで聞き覚えのある声に呼び止められる。

「サ ンディ、どうしたの?」

何か用があるのかも思ったが、そうでもないようだ。
メイヤだよ!などと言われても、見れば分かる。
メイヤの存在が余程嬉しいのか、弾んだ声の彼女にナディアは苦笑いを浮かべた。

「んー、分かんない。変わらず、って感じ。」

挨拶もそこそこに、リトの具合を尋ねるメイヤにナディアは肩を竦めて見せた。

「意識がいつ戻るのか、そもそも戻るのか?神のみぞ知るってね。聞いたところ、リトをあんな風にしたのは閻魔?とか言うもんだから、神以上に質悪いけど。今頃裁判でもされてるんじゃない?」

しかし、どのような状況でも冗談を交えることが出来るのはナディアの良いところだ。彼女は物事を悲観的に見ない。

「ご先祖様が同じ時代にいちゃうくらいなんだから、何が起きてもおかしくないよね。閻魔とか胡散臭い存在、本当にいたんだな。今リトを起こしてくれないってことは、まだその時期じゃないのかも。」

240アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/05(水) 22:12:09
【飛行艇】

分かる。分かるともその気持ち。
自分だってリトに何か隠し事をされたり、のけ者にされる様な態度を取られるとたまらなく寂しい。

心の中でうんうんと頷くアブセルだったが、リマから問いをかけられると意識をそちらへと戻し口を開いた。

「セィちゃんさんにも一言お礼が言いたかったんだけどさ。一緒に屋敷に来てくれるんならどうせ直ぐまた会えるし。
挨拶はその時にでもゆっくりすることにするよ」

取り合えず今は先に身支度と帰省の準備を済ませときたい。
そう言ってアブセルは一旦リマに別れを告げると、机の上のトレイからジャムパンを一つ取り上げその場を後にする。

そして、そこでふと気がついた。

そう言えば…リマとセナ。あの二人は付き合っているのだろうか。
リト達の先祖だという時点で、二人がただならぬ仲であるという事実は確定している。
だとすれば先程は、リマに恋のなんたるかについて詳しく聞けるチャンスだったのかもしれない。

…まあ、それもまた今度でいいか。
話す機会はまだ幾らでもあるのだから。


【過去】

「そ、よくできました」

リトが言葉を返してくれてアブセルは何となく嬉しくなる。
自然と顔に笑みが浮かぶが、ふとそんな自分に気がついて、アブセルは気まずそうに顔を背けた。

そして、そうして顔を向けた先。偶然にも移動式のクレープ屋さんの露店が目に付いた。
先程から何かいい匂いがすると思ったらあれだったか。

「…なあ、お腹すかない?
前に一度だけジイちゃんに買ってもらって食べたことがあるんだけど、あそこのクレープ美味しいんだ。
せっかく街に来たんだしさ、食べてこうよ」

言ってアブセルはリトを連れてクレープ屋さんの前まで行く。
そこでフルーツとクリームの沢山のった甘いやつを二つ頼んだところで、アブセルはリトに目を向けた。

「お前…お金持ってる?」

241シャム ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/05(水) 22:12:53
【飛行艇】

「澪の参謀長…?」

誰だ、とシャムは疑問符を浮かべる。
己の派閥の面子さえ把握していないのに、他人の派閥…しかも第二世代の者の顔なんて覚えている訳が無い。

「あら、アタシは覚えてるわよ。
割と好みのタイプだったものぉ」

それとは対照的に、フィアの言う人物を特定したDDはどこか嬉しそうに口を開く。

…しかしである。何故その参謀長がこの様な処に居るのだろう。
続くフィアの言葉、彼の元に行くという申し出には特に断る理由もないため、二人は頷いた。

242メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/06(木) 18:22:13
【飛行艇】

ナディアの答えよると、彼女の弟は未だ意識を取り戻さないらしい。

だが、それを悲観的に捉えないのが彼女の強さだろう。

「地獄の閻魔か、案外仲良くなって戻って来るかもな?

それまで時間が掛かるから、まだ目覚めないのかも知れないし。」

ナディアの口調に合わせ、メイヤは軽目の答えを、しかし彼女の気を害さない程度の答えを返す。

そして、バロンやレックスの動向と、復興祭と闘技大会の旨を伝えた上で、再び問うた。

「ナディア達はこれからどうするんだ?」

243リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/07(金) 13:06:03
うぉーっ かなりの亀レスになってて申し訳ないです!
本当は現在のジルの心情とか、リトが目覚める為のある人との絡みとか、同時進行したいサブストーリー温めてるのに全く書けずにいる!!

ヤツキ>>
つい先日、PCがおかしくなって初期化しなきゃいけなくなりーの、使ってたお絵かきソフト消えーの、またダウンロードしなきゃいけないけど一番重要な透過フィルタ何処でダウンロードしたか覚えてなくて軽くピンチーの、解凍ソフトもダウンロードしなきゃいけないから面倒くさいーので、最悪。iPadで良い感じの透過アプリあれば良いのに。


イスラ>>
本当、衣装のデザイン性憧れますよね。よく思いつくなぁと。自分、まったく才能なしなので羨ましくて羨ましくて…> <

言われて見れば確かに…最近の女子は化粧で目が二倍になるし、変わりゃしませんね!←
え、何故ww
アイドルはアイドルでもアイドルぶってる奴ってなんか好きになれないんですよねー。なので芸人枠は褒め言葉です(笑)

正論…!でも街中で見かける甘ロリってるオバハンって実害はありませんが気持ち的になんか嫌だな←
何ででしょうね?不思議だ(笑)
そう言えば自分、乙女ゲームはやりませんがワンドオブフォーチュン?とか言うゲームのエストという子に一時期はまってました。恋愛感情ではないのでプレイはせず、友人のデータでフォト漁ってるだけでしたが。容姿がシエルにそっくりなのです。

そこまで言われるとなんか否定したくなってきました←

シエル好きの頂点に立ちたい←
しかし私にはそんな資格はない…今やってる映画を一人で観に行く勇気が持てず未だに観れていない大バカ野郎ですもの(グスン

まぁ邪魔ですけどね(笑)

自分の心に素直になりましょうよ←
シエルは何しても赦されるのです、可愛いから!←
てかこの幼女、シエルよりも年下だからか、一緒にいるとシエルが男の子として映えるんです。だからシエルのお嫁さんにしたい。←
因みに今の白龍こんな感じです
imepic.jp/20141107/463780


ナディアは死ぬまで自由に生きるんだろうな(笑)

一応いるんですけどねー。多分。
ホモォ…ww残念ながらこっちの方ですね(笑)
ヴェントは変なのに好かれやすいのです、きっと。←

PC死ぬ前に作った線画の色塗ったので貼り逃げ。
フェミルのつもりだったけどなんか違う…
まぁ折角なので。
imepic.jp/20141107/470030

244ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/09(日) 19:25:52
【イスラ》後、コピックも案外初期費用高かったりwwww

久々に水彩色鉛筆触ったけど、アナログの方が肌に合う気がしてヤヴァイww

リマ》弱り目に祟り目過ぎる……

リマの絵は絵柄的に色鉛筆とかでふんわり塗ってみるのも良いかも!

添付は三年振り位に水彩色鉛筆使った絵。

imepic.jp/20141109/694630

245ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/10(月) 15:06:21
【飛行艇】

「有り得る」

メイヤの返しにナディアは笑う。
うちの弟は愛想もくそもないから、相手と親しくなるためには相当時間がかかるだろう。
そう考えると待つのも仕方が無いなどと思える。

そして、続くメイヤの話をひとしきり聞いたあと、ナディアは唸る。

「これからどうするかって?んー…取り敢えず一度邸に帰るしかないかな。リトもあんなだし、親父のことも片付けなきゃだし…」

言ったところでナディアの視線は別の方へ。
メイヤやサンディよりも遠く、此方に向かってくる人影を捉える。

「セナ、何処行くの?」

人影はセナだった。
セナはナディアの問いに応えることなく、一同を横切り部屋の中へ入って行った。
あの部屋はリトの部屋だ。

「リトのお見舞いか…?珍しい」

会ってそれほど経ってはいないが、取り敢えずセナが他人に興味を持つ性格でないことは分かった。
そんな彼がリトに何の用があるのだろう。

ナディアは独り言のようにメイヤ達へ言った。

「ビックリだよね、うちの弟とあの子、似てるどころじゃないよ。同んなじ顔。リマって子は私と全然似てないのにさ。」


ヤツキ>>
【取り敢えず今はちょっと忙しいから来週以降暇になったらペイントソフトダウンロードし直そうと思ってる〜
iTunesもダウンロードし直さなきゃなんだけど、あれダウンロードすると色んなスパムファイルがもれなく付いてくるから削除するの面倒なんだよね…

ワタシカゲツケルノニガテダカラアナログムリナノヨー
PCだと誤魔化せる(笑)
水彩色鉛筆良いなーめっちゃ憧れるー!】

246リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/10(月) 15:07:14
【過去】

お金?
屋敷から出たことのないリトがそんなものを持っているわけもなく、そもそも金とは何なのかと言った具合に、リトはアブセルの言葉を理解出来ていない様子で彼の顔を見た。

「……」

そう言えば、以前姉のナディアが何か言っていた。

”いいか、リト。ここにいれば警備的にまず有り得ないとは思うけど、もし変な人に連れて行かれた時はそいつに金目の物を渡せば助かる。自分の身は自分で守らなきゃね。金は惜しいけど仕方ない。”

リトは自分の身の回りを探る。
金目の物、たしか光る物だとナディアは言っていた。
光る物…見つけた。

リトは腕に付けていた金のブレスレットを外し、アブセルに渡す。

247アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/10(月) 22:48:15
【過去】

「……は?」

お金を持っているかと尋ねたら、金のブレスレットを差し出された。
初めアブセルはその意図が分からずにポカンとリトを見るが、直ぐにハッと顔色を変えた。

そう、彼は知っていたのだ。
それが母や街の女たちが身につけているちんけなアクセサリーとは違う、本物の、価値のあるものだということを。

もちろん、どれほどの価値があって幾ら位の値がつくかなど正確なことは分からないが、とかくクレープ二つ分の料金よりも遥かに高価なものであることは明らかだろう。

不意に視線を感じ目を動かすと、クレープ屋の店員の怪訝な顔と出会った。
アブセルは急いで自分のポケットを探りなけなしのお小遣いを支払えば、クレープを両手に、リトを押してそそくさとその場を離れた。

そして…

「ばッッッかじゃねーの!?
こういうものを他人にホイホイ渡すんじゃねーよ!」

噴水広場まで来たところで、アブセルは足を止めリトに向けて声を張った。
しかし案の定と言うか…リトの顔を見るに彼は言葉の意味を理解していない様である。

何だか怒るのも馬鹿らしくなり、大きな溜め息と共に肩を落とす。
…猫もお金も知らないなんて世間知らずにも程がある。どこのお坊ちゃんもこういうものなのだろうか。

(なんかコイツを一人にするの心配になってきた…)

ともかく、とアブセルは先程のブレスレットをクレープと一緒にリトに返す。
そして自分は広場のベンチに腰掛け、リトに隣に座るよう促した。

「…今日は特別だからな。奢ってやる。
ありがたく食べろよ」

248イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/10(月) 22:49:11
リマ》大丈夫ですよ〜、ゆっくりで良いのでサブイベやってください!楽しみにしてるので!^^
本当羨ましい限りです…(>_<)

でしょう?化粧の魔力怖い(笑)
気にしないで下さいw
うーん、なるほど(笑)

分かります、何か微妙な気持ちになると言うか…(笑)それと三十路のボクっ娘って全然萌えませんね(経験談)←
それ結局のところシエルが好きなだけじゃ…いえ何でもないです(笑)

否定してももう遅いです。自分の中でリマさんは変な人でドジっ子で確定済みですから←
おぉ…すごい、けど…何か無駄にしか感じないその向上心(笑)
そんな…w友達でも無理やり誘って行けばいいじゃないですか(笑)

昔UFOキャッチャーの中に入って縫いぐるみ埋もれて寝たいと思ったことならあります←

可愛いは正義ですもんねw
その幼女って最新巻の表紙のあの女の子ですか?てかシエルって既に許嫁いるんじゃなかったっけ?w
え、どちら様?ww人格が180度変わってるんですが(笑)ん〜…これはちょっと好きになれないかなぁw何か腹立つww

ナディアらしいw

そうなんですか?今いるキャラの中ではない?
あ、そっちでしたか…(笑)まぁそんな感じはしますw

あの、この子どこでなら売ってます?家に持って帰りたいんですけど←
いやはやありがとうございます!目の保養になりました〜^^フェミルの誕生日がバレンタインならジルの誕生日はホワイトデーですね(予想)


ヤツキ》お、セクシーなお姉さん素晴らしい!誰か気なるけど…(笑)
もういっそアナログを極めちゃいましょうよ(笑)
でもヤツキさん以前デジタルで色塗ってましたよね?あれ止めちゃったんですか?

249メイヤ/フィア ◆.q9WieYUok:2014/11/11(火) 22:55:17
【飛行艇】

「生まれ変わりか、意図的に似せたのかもな。

イタズラな輪廻転生の神サンがさ。」

ナディアの声にも、自分達三人の誰にも反応せずに通り過ぎて行くセナ。

その姿が部屋に消えて行くのを見送りながら、メイヤは自身の内で蠢く闇を抑え付ける。

この世で最も上質で、高純度で、しかし混沌とした闇を孕む王子。

それを喰らえば悪神は……

「……そうか、わかった。

四神の護衛は終わったけれど、俺は暫く此処に留まると思う。

暫しの別れか今生の別れかどちらになるか分からないけど、気をつけてな。」

どうやらナディア達は一旦実家の方へ戻るらしい。

彼女達と会うのが最後になるかは分からないが、メイヤはアッサリとだが別れの言葉を口にした。

アグルもそうだが、四神達とは長い付き合いになりそうな気がする。

だから、別れの言葉はこれ位で良いだろう。

じゃあ、と短く会釈をした後、メイヤはサンディの手を引き歩き出した。

ーーーーー

確かに、他の派閥の面子を把握しているかと言われれば、フィア自身もそうでは無い。

それに、彼が参謀長をやって居たのは大分昔の話だった。

「まぁ、そこまで表立って動いてはいなかったし、覚えてなくてもおかしくは無いわ。」

全く逆の反応を見せるシャムとDDを見ながら、フィアは件の人物の事を思い出す。

しかしそれも僅かの事、了承を得たフィアは空間を跳躍。

飛行艇を、騒がしい街中を抜け、目的地へと向かった。

ーーーーー

第801空挺師団が有する飛行艇の基本型は、航海用の帆船に可動式の両翼と、特殊な鉱石を核としたエンジンを積んだ物である。

四神達に与えられた飛行艇が停泊する港とはまた別の、世界政府軍専用の巨港にその船、イオリ率いる者達の軍艦はあった。

漆黒の巨体と、禍々しくも艶やかな色合いを見せる紅と金の差し色。

船体から伸びる両翼には鳳凰を模した装飾が取り付けられ、メインマストに浮かび上がるは絡み合う大蛇と迦楼羅の姿。

「暴の派閥の頭が足りない頭と、長老屈指の色物サンを引き連れて何か用ですか?」

波に揺れる甲板の上、並ぶ三人の長老に決して気圧される事も無く、寧ろ煽りながらその男、クロッソは口を開く。

ーークロッソ・シーダ

澪の派閥の参謀長であり、第二世代、フィア直系の吸血鬼。

とある事件の後、派閥を破門されたクロッソは今、七つの大罪を名乗る傭兵団の一員として、イオリの下に就いていた。

「貴女自身の手で破門した私に今更用があるとは思えませんがねぇ?」

銀髪紅瞳、フィアに似通った面持ちでありながらも、口の端に人を見下した様な笑みを浮かべるクロッソ。

その問いに答えながら、フィアはクロッソの後方、樽に腰掛ける男二人を一瞥した。

「特に用も無く、近くに来たから会いに来ただけ。

……と、答えたかったけれどそうもいかなくなったわ。」

クロッソの後方、二人の男は物珍しそうにフィア達を見つめている。

そして、その二人はゆっくりと、しかし確実に此方へと歩み寄って来るも、それを無視しフィアは問うた。

「レオの仇である、あの男の下に貴方が居るなら、色々と聞きたい話が出来たわ。

オリジンが纏っていたとされる魔装、それと同質の物を何故、あの男が所持しているのか。

そして、貴方も感じている筈の異質な気配の正体を。」

250ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/14(金) 22:19:36
【飛行艇】

フィアの言う時空間の歪みとは、やはり過去からの時間移動というこの世界の概念を狂わせたことによるものの影響だろうか。
しかし気をつけろと言われても対処のしようがある様にも思えない。
何にせよ、この時代にいられる時間ももうあまり残されてはいないのかもしれない。

フィアやノワールと別れ一人甲板に出たジュノスは、外の風に当たりながら思案気に目を細める。
…と、そこへ。

「…もし、そこの方…」

不意に何者かに声を掛けられた。

見ればすぐ側の埠頭に礼服を装った老爺が立っていた。

―――…

ナディアにも色々とやるべきことがある様だ。
何か力になれればとは思うのだが…、彼女の抱える家の問題に自分ごときが役に立てるとは到底思えない。また、ナディア自身もそれを望んではいない筈だ。

「姉御、また逢えるよね?それまで元気でね!」

メイヤに手を引かれながら、サンディもまた手を振りナディアに別れを告げる。
彼女は強い。きっと直ぐに問題事を解決して、再びまた自分たちの前に顔を見せに来てくれることだろう。

そうして二人が立ち去ったちょうどその時、入れ違うようにして今度はジュノスがやってきた。
どうやらナディアを探していたらしい。

「ナディアさん…。外にお迎えの方々がお越しになっているのですが…」

どうするんだ…とでも尋ねる体でジュノスは言う。

先程の老爺はナディア達の屋敷に遣える者であり、またアブセルの祖父だと名乗った。
恐らくアブセルが事前に連絡を入れていたのだろう。

251シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/14(金) 22:20:17
【バルクウェイ】

長老三人を前にしても全く物怖じせず、事もなげな態度のクロッソと、それに相対するフィア。
そんな二人の傍ら、シャムは眉を潜め隣のDDに小さく疑問を投げる。

「おい…、今俺バカにされなかったか?」

「馬鹿ね、聞くまでもなくされてたわよ」

それを聞くや、「なに」と彼の顔が一層険しくなる。
一歩前に出たかと思えば、そこらのチンピラよろしく肩をいからせ、クロッソに向けて威圧的な眼光を飛ばした。

「おぅコラ、このすかし野郎っ、何でもいいから知ってること全部吐きやがれ!!」

252ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/15(土) 15:25:02
【リマ》ソノキモチワカルワー!影付けとか解らんから、デジタルで塗った方が綺麗に見えるのはあるよなww

イスラ》モデルは好きなゲームのキャラですな、前チラッと言ってたアケゲーの……

デジタルのはパソ死んだ臭いのと、レイヤーが全然理解出来ない+ソフト無いから断念ww

あれからちょろちょろっと描いたりしてるけど、アナログのが落ち着きそうだww

253ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/15(土) 15:27:50
【添付忘れたww取り敢えず塗ってみたイオリン、派手っつーかチャラいimepic.jp/20141115/550200

254イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/18(火) 23:02:39
ヤツキ》あぁ、lovですね。
なんとwデジタルの要のパソが死んだらもうどうしようもない(笑)
レイヤーは一度覚えちゃえば結構単純ですけどね^^

おぉう、安定の格好良さ!!やっぱいおりん好きだわー^^

255メイヤ/フィア ◆.q9WieYUok:2014/11/19(水) 00:30:33
【バルクウェイ】

以前よりも確実に人が増した街中を、メイヤはサンディの手を引き、歩く。

手を握り続ける理由も無いが、別段放す理由も無かった。

遅目の昼食を屋台の汁蕎麦で済ませ、賑わう露天を観て回る。

復興祭と言うだけあって、かなりの賑わい様だ。

時折、軍服を着込んだ者達の姿も見受けられるが、空挺師団の団員だろう。

「凄いな、街全体が活気づいてると言うか……暑い。」

一通り露天を回った後、比較的人気の少ない公園で休憩を取りながら、メイヤは口を開く。

つい一週間前、街は崩壊の危機に瀕していたのがまるで嘘だったかの様に、バルクウェイは騒がしい。

もとより世界政府のお膝元であった為に人口は多かった筈だが、小国家並みの人員を有する空挺師団を併せる事により、人口密度は元の倍以上となっていた。

「ここまで人が多いと、逆に動き辛いな。

あぁサンディ、アイスクリームが溶けて来てるぞ、服に零れないよう気をつけないと。」

ーーーーー

「威圧的に声を掛けるなんて、まるでチンピラですね。

あぁでも、暴の派閥のトップなのだから間違っては無いのでしょうか。」

煽れば面白い位に反応するシャムの様子に、クロッソは笑みを浮かべる。

どうやら彼は思った以上に単純らしい。

「人に物を乞う時は、それ相応の態度を取るべきだと思いますよ?

例えばそうですね、ドゲザにセップクとかはどうですか?」

肩を怒らせ声を上げるシャムをクロッソは更に煽るも、それ以上は続けない、否、続かなかった。

「貴方、あれから余計に性格が悪くなった様ね。」

何故なら、一連のやり取りの間無言だったフィアが、氷のナイフをクロッソへと投擲したからだ。

「……逆に貴女は人間臭くなりましたね、それはそれで面白いですが。」

眉間を狙って放たれた氷刃を二本の指で受け取り、クロッソは紅の瞳を細める。

「まぁ、現存する吸血鬼達にとっては神にも等しい長老方のお頼みですし、お答えしましょうか。

……ただし、条件付きで。」

そして、どこからともなく取り出した書類を眺めながら、続けた。

「今晩開かれる闘技大会、それに出場し、見事優勝出来たのなら、知りうる事全てを話しましょう。

既に参加者は決まっている様ですが、乱入でもして適当に入れ替わって下さい。

こう言うのは暴力が取り柄の長老サンに向いてると思いますし、簡単だと思いますよ?」

256アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/20(木) 10:56:29
【バルクウェイ】

「見事なものですね…。一週間でもうこんなに街が修繕されて…」

かつて深淵が開いたその広場にアリアはいた。
車椅子に腰掛け、そこから見える街の景色を眺め感嘆のため息をつく。

そしてそんな彼女の後ろにもう一人。
いつもとは対照的の白いワンピースを身に纏い、流した黒髪を風になびかせる少女…ゼツが車椅子を引きながら気遣わし気に口を開く。

「アリア…そろそろ行こう?風が身体に障るよ」

あの日、アリアはディンゴの治癒によって一命を取り止めた。
しかし彼の異能では損傷した部位を完全に癒すまでには至らなかったらしい。
アリアはもう二度と自分の足で立ち上がることも、子供を産むことさえも出来ぬ身体になってしまったのだった。
だが、これも今まで多くの者を殺めてきた罰だと、彼女はそれを甘んじて受け入れた。

アリアは柔らかい声でゼツに言葉を返す。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。
これでこの街も見納めかもしれないから、もう少しだけ…」

故郷よりも長い年月を此処で過ごしてきた。第二の故郷とも呼べるその街の風景を目に焼き付ける。
そうして満足したのか、暫くしてからアリアはつと視線を動かし言った。

「貴方にも…色々と難儀をかけましたね」

視線の先にはヴァイトの姿がある。アリアは続け口を開く。

「先程も言いましたが、私たちはバルクウェイを離れ様と思います。暫くはどこか静かな所で療養できればと思って…
貴方はどうするのですか?」

先の戦いで命を落とした同胞達の弔いも済んだ。
一件に関わっていた上層部の者達もどう言う訳だか皆一様に絶命し、指令を下す者もいなくなった。

本来ならば責任を問われる立場なのだろうが、空挺師団の団長と名乗る男は政府の汚職を公にするどころか、アリア達を拘束することもなかった。
今後どう生きていくかは自分で考えて決めろと言うことらしい。

257サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/20(木) 10:57:12
【バルクウェイ】

…どうして手を繋いでいるんだっけか。
何となく照れくさい様な気もするが、離すタイミングを完璧に見失ってしまったと言うか何と言うか。

いや、別段嫌というワケではないのだ。
ただ、一緒に食事して、露店を見てまわって…これではまるでアレではないか。

そうアレ。恋人的な。そんなニュアンスの。

一度そんなことを考えてしまえば更に意識してしまい。一体周りからはどんな風に見られているのだろう、とか気にしてしまう。

と、その時。不意にメイヤの声が耳に入った。

「え…?わわ…!」

見れば、今にも氷菓の雫が垂れ落ちそうだ。
サンディは急いでアイスクリームにかぶりついた。

しかし、それにしても…。

「なんだかこんなにのんびり過ごすの久しぶりな気がするよ。ずっとこうだったら良いのにね」

人は多いが、賑やかなのが今は逆に心地がいい。今までの戦いづくの日々に比べれば断然平和に思える。

258ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/11/23(日) 00:06:17
【バルクウェイ】

「どうするか、って言われてもやる事ねーんだよなぁ」

緩やかな風が喧騒を引き連れ、吹き抜ける広場。

上司の初めてみる穏やかな表情とその後ろ、ワンピースを着た同僚。

以前の二人を知る者からすれば、色々
ツッコミを入れたくなるだろうその姿に驚いたのも少し前の事。

一週間振りの再会を果たしたヴァイトは、アリアの問いにのんびりとした口調で応えた。

「所属してた組織所か政府も消え、科学者達を率いてたあの胡散臭いジジイも行方知れず。

空挺師団?から入隊の誘いは来てっけど、断っちまったしな。」

バルクウェイでの戦いから一週間。

崩壊した街と政府を空挺師団が取り纏め、ヴァイトはその師団から入隊勧誘と共に色々な情報を聞いた。

戦いの行方も、組織の人間の処遇も、空挺師団が掲げる目標も。

「世界を救う戦いとか言われてもピンと来ねーし、俺のキャラでも無いし。

何より、折角助かった命を無駄遣いしちゃあ、オッサンにどやされるからな。

今までなかった平和で普通の生活ってヤツを楽しませて貰う事にするさ。」

だが、聞いた所でヴァイトは戦いに身を投じる気にはならなかった。

ゼツと戦い、彼女と差し違い、彼女を救った後。

確かに聞いたディンゴの声と、彼が繋いでくれたこの命。

ヴァイトは決めたのだ。

精一杯、この命にしがみついて生きてやると。

「……アンタらと一緒にな。

女二人じゃ色々不便だろ?力仕事位しか出来ねーけど、着いて行くさ。

ついでに言うと、ゼツには宇治金時をご馳走にならないといけねーからなぁ?」

そして、自分と同じくディンゴが救った2つの命を、守り続けるのだと。

「つー訳で、これからよろしくお頼み申し上げます、ってな。」

259DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/23(日) 09:01:31
【バルクウェイ】

「あぁ?ザケんなッ、なんで俺らがンな訳分かんねーことしなきゃなんねーんだよッ!」

クロッソの提示した条件に、当然の如くシャムは異議を申し立てる。
力ずくで吐かせた方が手っ取り早いとばかりに、指の関節を鳴らしながら荒々しく彼へと近づいて行く。
が、しかし…。

「もういいでしょ?アタシ、ギスギスするのは嫌いよぉ」

その時、DDがシャムの肩を掴み彼を引き止めた。
そして、続けてクロッソへ目をやる。

「いいわ、そのお遊び付き合ってあげる。…もちろん、シャムがね。
その代わり、こっちも条件出していいかしら?」

かと思えばクロッソの後方に控える者達の存在にも構わず、DDは彼に近寄ると、背中からその首に両腕を絡ませ言った。

「もしシャムがその闘技大会に優勝した場合、アナタは知っていることの全てを話した上でアタシ達の露払い役として共に来ること…なんてどう?
…連れにイイ男がいないとテンション上がんないのよねぇ」

260メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/24(月) 21:25:12
【バルクウェイ】

「そうだな、少なくとも俺が四神の護衛に着いて以来じゃないか?

記憶の図書館と弥都でも少しは休めたけれど、結局は争い事が起きてしまったしな。」

氷菓に被りつくサンディの隣で、メイヤは彼女の声に応える。

確かにそうだ、自分が彼女に出会ってから今まで、戦いの日々が続いていた。

サンディ達がそうなる事を見越して、イオリは自分を派遣したのだろうが……

「多分きっと、黄龍とやらを倒すまでサンディや猫男爵の戦いは続くんだろう。

だけど、偶にはこんな穏やかな日があっても良いと思う。

それに、サンディ達四神が世界の命運を全て背負う事も無いさ。」

打倒黄龍を掲げる空挺師団、その勢力は小国家並だと言う。

そんな軍団と合流出来たなら、戦う負担は大幅に軽減されるだろう。

「聞く話によると、師団長はかなりのヤリ手らしい。

確かに30代手前で師団長を務める位だから相当だろうな。

だからさ、協力しあえれば、そう遠く無い内に平和な世界が来るんじゃないかな?」

人々の喧騒も平和の内か、人混みを見詰めながらメイヤは続け、立ち上がる。

「さて、次はどこを廻ろうか?

少し早いけど、闘技場に向かっても良さそうかな?向こうにも露店は出てるだろうしさ。」

261クロッソ ◆.q9WieYUok:2014/11/24(月) 22:40:38
【バルクウェイ軍用港】

艶やかな動きで背後に回り、首筋に両腕を絡めて来るDD。

彼は言った、条件は呑むが、此方の条件も呑めと。

「残念ながら、私の一存では首を縦に振る事は出来ませんねぇ。」

しかし、提示されたその条件を呑む事は出来ない。

「こう見えても今は雇われの身、雇い主を勝手に変える訳にはいきませんので。」

だが、クロッソは悪戯めいた笑みを浮かべて続けた。

「しかしながら、たまには冒険してみるのも良いでしょう。

アナタが提示したその条件、呑みましょう。」

シャムが闘技大会で優勝すれば、クロッソは知りうる限りの情報を開示し尚且つ、フィア達に着いて行く。

シャムが優勝すれば、彼等は現段階で望む全てを手に入れれる訳だ。

……しかしそれは優勝すれば、の話。

彼等はまだ知らないだろうし、公式にアナウンスはされていないが、闘技大会には空挺師団長自らも出場するのだ。

(空挺師団長、レオール・ランブリッシュ。

東方最強の暗殺者であるイオリが唯一、暗殺し損ねた男。)

四霊と並ぶイオリをも超える程の実力を持つ彼が出場するのだ、少なくともシャム一人ではレオールに打ち勝つ可能性は低いと見ても良いだろう。

つまり、レオールが出る以上闘技大会は出来レースな訳だ。

(自分達に分が有る事を前提に話をするアナタが、躓いた時に見せるであろう苦い表情を楽しみにしておきますよ……)

そして。

闘技大会が無事に終わる可能性も決して高くは無いのだ。

寧ろ、あの者達によって空挺師団は今夜、壊滅するだろう。

「さぁ、互いに条件は呑みましたし今日の所はお開きにしませんか?

あまり長居すると、血の気の多い野郎が絡み出しますからね?」

浮かべる笑みを深め、クロッソは話は終わりだとばかりに声を掛けた。

262リト、ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/24(月) 23:20:47
【過去】

何だかアブセルは腹を立てているようで。
そこまでは分かったものの、何に対して怒っているのか、アブセルの言葉の意味を理解出来ないリトは黙ったまま彼を見つめていた。
そんなリトの態度にアブセルの方が諦めたようで、買ってきたクレープを食べるよう促す。

「…」

リトは言われるままアブセルの横に腰を下ろし、小さな口でクレープを囓る。

ケーキなどデザートは沢山与えられるけれど、今まで食べたお菓子とは何か違う。
何と言うか…

食べにくい。

食べる際に強く握ったせいでクリームやら中身が外に漏れ出してしまい、手元がぐちゃぐちゃになってしまった。


【飛行艇】

「おー」

サンディの言葉を受け、ナディアは笑顔で手を振り返す。
と、そこへ入れ替わってジュノスが現れた。
しかし彼から出されたのは嬉しい報告ではなく。

「あー…」

アブセルめ、余計な事をしやがって。
屋敷に戻る決意はしたものの、このタイミングで屋敷のものに会いたくはない。
しかし、来てしまったものは仕方ないし…。

「仕方ない、案内して」

言いかけたところでナディアはふと思いつく。
彼女はなるべく面倒ごとを増やしたくない質だ。
ナディアの父親、ヨハンが死んだと言う知らせは屋敷の者達にとって打撃が強いだろう。その上リトまであんな状態になっていると知らせたら…

「あのさ、えーっと、ジュノス、だっけ?」

リトの事を恐れるくせに、リトの力に縋っている都合の良い奴ら。闇が蔓延し出した今、闇を従わせる者がいないと知れば、混乱を招きかねない。

「あのさ、似てるってのを利用して、セナをリトとして連れて帰りたいんだけど…駄目?」

263キール ◆.q9WieYUok:2014/11/25(火) 01:13:36
【虚空城】

現世と交わる事の無い、位相空間に浮かぶその城は、虚空の中にあれど圧倒的な存在感を示している。

世界を監理し、監視し、世界の中枢である存在、黄龍。

その居城は今、不気味に蠢いていた。

ーーーーー

「で、傷は全治したのかしら?」

イオリとシデンの戦いは、両者痛み分けの結果に終わった。

血塗れのシデンを虚空城へ連れ帰り、黄龍への報告を済ませてから一週間。

発令された新たなる指令を伝える為、一週間振りに顔を合わせる事となったのだが……

「その表情を見るに、かなり不満がある様だけど?」

虚空城の大広間に現れたシデンへ、キールは普段よりもやや、呆れた声色で声を掛ける。

「貴方の言いたい事は伺い知れるけれど、あの時の撤退はしょうがなかったのよ。

それとも何?あの男との決着を着けるまで動かない、何て言う訳じゃないでしょう?」

プライドの高い彼の事だ、四霊では無かったただの人間が、自分とほぼ互角の戦いを戦いを繰り広げ、更には決着が着かなかった事に苛立っているのだろう。

しかし、それに構っている暇は無い。

声を掛けながらもその返事を待たず、キールは指令内容の説明を始める。

「新たな指令は、バルクウェイへ駐留する空挺師団の壊滅及び、空挺師団旗艦の動力炉の奪取よ。

打倒黄龍様を掲げる空挺師団の戦力は、決して無視出来ない。

師団長はあの男、イオリをも超える実力者であり、その側近達は四神並。

今はまだ、虚空城へ攻め入る手段を持たないとしても明らかな驚異よ。

今回の作戦は敵陣の真っ只中に飛び込む事になるけれど、今までと違い多少の援護があるわ。」

崩壊する世界政府から逃げ出した科学者達と、彼等が有する技術と実験体。

新たなる人類の礎に、と調整されたそれらを基に、虚空城のデータを用いて生み出された兵士。

「急造な為に簡単な命令しか聞かないけれど、頑健かつ驚異的な再生治癒力が備わった人造人間が多数。

それと、内通者が一人。

後はイレギュラーだけど、四凶の面々。

彼等を囮にすれば、師団長やその側近と正面からぶつからずに済む筈よ。

不意打ちで良いわ、師団長を討ち、旗艦の動力炉を奪取する事。

それが、今回の作戦内容よ。」

264サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/27(木) 02:52:02
【バルクウェイ】

「そっか…、うん、そうだよね。そうだと良いな…」

メイヤの言葉を聞き、サンディは頷く。

世界の平穏の為に動いているのは決して自分たちだけではない。
一人だけでは微々たるこの力も、多くの者と合わせればきっと更に強大なものになる。
そう思うと胸に抱えるこの重責も大分と軽くなった。

サンディはぴょんとベンチから飛び降りると、メイヤの後をついて歩いた。

「あ、そう言えば闘技大会でるんだっけ?今の内に下見しとくのも悪くないかもね。
そんでガッツリ賞金ゲットだぜ!…て、あれ?賞金って出るんだっけ?」


――――…

「あら、話の解るイイ男。お姉さん胸キュンしちゃいそうだわぁ」

条件を呑んだクロッソに向け、DDはお返しとばかりにその頬に軽く唇を当てる。
そうしてそっと彼から身を離すと、今度は後ろを振り返りシャムに向けて言った。

「と言うわけで、頑張ってねシャム!アタシ期待してる!」

気のせいか、その目は炎が燃えたぎっているようにも見える。

「ちっ…、めんどクセぇ…」

対しシャムは付き合い切れないとばかりに、ダルそうに頭を掻く。
そうは言っても、ルドラを引き取った件といい案外彼は人が良いようで、なんだかんだ今回も割を食ってあげるのだろう。

話はすんだ。シャムは、もういい帰ろうとフィアに目を向けた。

265ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/27(木) 03:26:50
【バルクウェイ】

「え゛ッ!?」

思いもよらぬナディアの返事にジュノスは上擦った声をあげる。

それはつまりセナをリトの替え玉にすると言うことか。
確かに彼等の容姿は瓜二つ。こっそり入れ替わるのも可能だろうが…。

「セ…セナ様がご承諾なさるのなら…」

しかし内面は全く異なる二人。
分かる人には分かってしまいそうな気もするが、最終的にジュノスはナディアの願いを聞き入れた。

「しかしこう言ってはなんですが、セナ様にリッちゃんの振りが出来るのかどうか…。
それにその間リッちゃんはどうなさるのですか?」

続けて、ジュノスは迎えの者達の元にナディアを案内すべく歩きながら彼女に問うた。


【過去】

…なんてドンくさい奴…。

クリームまみれで悲惨な状態のリトの手元を目に、アブセルは呆れて言葉を失っていた。
もしかしてクレープも食べたことがないのか…?いや、だとしてもこれは酷い。

「あ〜も〜…何やってんだよ、グチャグチャじゃん」

アブセルはポケットからハンカチを取り出すと、それでリトの手を拭いてやる。
良かった、祖父にハンカチを持たされてて。

「ほんと、世話の焼ける奴…」

って、あれ…?なんかさっきからリトに振り回されてる気がするんだが、気のせいだろうか。
そんなことを思いながらも、アブセルは自分の持っているクレープをリトに差し伸べる。

「これは軟らかいから優しく持ってやんなきゃ駄目なの。
ほら、口開けろよ。食べさせてやるから」

しかし、だ。

クレープを人に食べさせるのって案外難しい。
口元に運ぶ筈が、勢い余って彼の顔面に押し付けてしまった。

「…あ」

態とじゃない。決して態とじゃないんだ。だけど…、

「ぷっ…くくッ…、へっ…変な顔…!」

べったりとクリームのついたリトの顔を見て、アブセルは思わず吹き出してしまう。
彼の顔を指差しケラケラと笑うのだった。

266アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/30(日) 02:43:49
【バルクウェイ】

宇治金時の話しを持ち出すヴェントに対し、ゼツは小さく舌を打つ。

「なんだ、覚えてたんだ。忘れてくれて構わなかったのに」

かと思えば、今度は彼に向けてズイッと人差し指を突きつけ、続けるように言った。

「あと、女扱いして欲しくないのが僕。この格好はアリアが勧めるから仕方なくやってるだけで…ゴニョゴニョ。
とにかく、君なんか来なくたって別に困らないんだから」

どうも彼女の着ているこのワンピース、もう戦う必要もないからとアリアが見繕ったものらしい。

以前よりもイキイキと憎まれ口を叩くゼツも、側で穏やかに笑うアリアも、見様によってはまるで憑き物が落ちたかのようである。

正直アリアにいたっては、最初の内は目も当てられぬほどだったと言う。
無理もない。心から信頼…いや、愛していた者には利用された挙句、裏切られ。今まで正義だと信じて行ってきたことが飛んだ過ちだったのだ。
彼女の失意は計り知れない。

しかし、そんな彼女も見舞いに来てくれた部下達からの励ましの声あってか、今は大分落ち着きを取り戻した様だ。
それに被害者面が許される立場でもないのだ。

アリアはゼツに宥める様に声をかけた後、ヴァイトに向けて言った。

「ありがとう、荷物を持って貰えると助かります」

そう、今まで奪ってきた命や殉職した部下達の為にも、必死に生きて罪を償わなければならない。それが人一倍責任感の強い彼女が出した答え。

「じゃあ…、そろそろ行きましょうか」

そう言ってアリアは二人に微笑みかけた。

267シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/30(日) 02:44:48
【虚空城】

淀みなく言葉を綴るキールの視線の先。
そこには革張りのソファに足を組んで座るシデンの姿があった。

「…全快していない、…と言えば(任務を)降りても良いのか?」

キールの方へは目もくれず、シデンはネイルファイルで爪を磨きながら憮然とした態度で言う。

負傷した傷は既に完治した様だが、どうも気分が乗らないらしい。
どこか気怠そうにしながら更に続ける。

「手の空いている者なら俺の他にもう一人いるだろう。
…応龍の奴が」

268メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/05(金) 21:35:52
【バルクウェイ】

「確か賞金も出るみたいだぞ、金額は見てないけれど……」

公園は闘技場へ歩を進めながらメイヤはサンディの問いに答える。

途中、何人かの知った顔……処刑人の剣の面々とすれ違うも、目を合わせるだけで特に声を掛ける事もなかった。

以前対峙した時とは全く違った雰囲気、柔らかな表情や様子を見るに、彼等も新たな人生を歩んで行くのだろう。

車椅子に乗る女性と、それを押す少女。

二人に付き添い荷物を持つ青年の姿を見送り、メイヤもまた、彼等とは別の方向へと歩いて行く。

ーーーーー

闘技大会自体は夕刻からなのだが、闘技場周辺は既に観客達の威勢の良い声……怒号に包まれていた。

彼等の声を聴くからに、どうやら運営公認のトトカルチョがある様だ。

誰が優勝するのか、誰が大穴か、などを話す男達の間をすり抜け、メイヤは大きく貼られたトーナメント表に目をやった。

(そう言えば、初戦はアグルとだったか。

あの時俺を置いて逃げたお礼をしないとな。)

丁度その時だった、隣に並び立つ男……空挺師団長の側近がメイヤとサンディに気付いたのは。

「……お前は確か……シンライジの弟か。

隣のちっこい赤毛はアレか、四神の天照だな。」

メイヤの黒髪とはまた違った色合いの黒髪と赤い瞳のその男、マルトは丁度良かったと前置きをし、挨拶もそこそこに話し始める。

「飛行艇でお前達の仲間に話しそびれたんだが、ここ数日異能を持った人間が何者かに襲撃されているのは知ってるか?

目撃情報はあまり無いんだが、どうやら襲撃者はかなりの実力者らしい。

二人一組で片方は変な訛り癖があるようで、もう片方は白髪のガキとも聞く。

空挺師団の方でも捜査してるんだが、お前達も気をつけろよ?

件の二人組は異能者を実際に喰う、らしいからな。

……まぁ、異能抜きにしても、若いカップルは変なヤツらに絡まれない様気をつけろよ。」

【鈍亀レス申し訳無い、新婚旅行行ってて板を全く見てなかった……】

269フィア ◆.q9WieYUok:2014/12/06(土) 18:40:26
【バルクウェイ】

敵地の真ん中とも言えるこの場所では強引に聞き出す訳にもいかず、しかし提示された条件を鵜呑みにするのも気が引ける。

だが、双方共に話が纏まりつつある今、フィアは無言で頷くしかなかった。

ーーーーー

暑苦しいまでの人混みと、喧騒に包まれる闘技場。

既に観客席は開放されており、多くの観客がひしめき合っている。

その最上階、ドーナツ型に建設された闘技場の最端部にフィア達は居た。

「で、問題はどうやって出場するかね。

今の所欠員は出てなさそうよ、出場者を適当に一人捕まえて入れ替わるのが無難かしら?」

配布してあるトーナメント表に目を通しながら、フィアはDDとシャムに声を掛ける。

「まさか乱入する訳にも行かないでしょう?」

270ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/07(日) 20:08:55
【飛行艇】

セナにリトのフリが出来るか。
間違いなく、無理だろう。

「まぁ顔があんだけ似てるんだし、双子じゃないのに同じ顔がこの世に二つあるわけないんだし、周りはリトが大人しくなった〜くらいにしか思わないんじゃない?」

多分、これが逆、感情が表に出やすいリトにセナのフリをしろと言えば難があるだろうと思う。セナがリトをやる分には問題ないだろう。

「リトは人目を避けて部屋に眠らせておく。ただ、セナも其処で過ごしてもらうことになるからちょっと不自由させるけど…」

それからナディアはふとジュノスを見る

「あんた、人を見る目とかある?」


--------

【過去】

顔に付いたクリームを拭いながら、リトはアブセルを見る。
アブセルはこちらをみて笑っていた。

「……」

その顔が何とも気に入らない。
リトは自分の握るクレープをアブセルの顔になすりつけた。

271リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/07(日) 22:03:00
ヤツキ>>
新婚旅行おかえりー!

イスラ>>
三十路のボクっ子って実在してるんですか(笑)

変な人でドジっ子って何キャラww
向上心はあってなんぼです!←
友達は大事な試験前だったもので…っと思ってたら抜け駆けして前編見終わってたので悔しいから後編だけ一緒に見てきました←

ぬいぐるみに埋れたいwwたしかに気持ち良さそうですね(笑)

そうそう正義!
はい、まさしくその幼女です。
あー許嫁ねー…エリザベスはもう未亡人でいいよ←
凄いですよねw巷では二重人格とか言われてます(笑)腹立つとか酷い!!w
因みに白龍さん、いますごく大変な事に…
→imepic.jp/20141207/793001
この二人親子ェ……


でも最近ナディアのキャラ見失ってきてます←

非売品ですww手に入れようものならもれなくジルが付いてきます←←
あぁ、ジルはホワイトデーか、成る程!←

272イスラ ◆jH0158NXZ6:2014/12/09(火) 20:23:01

【ヤツキ》おかえりなさい^^新婚旅行はどこに行ったんですか?

あと今更なんですがゼロってどういった存在なんでしょう?
自分的には…世界(惑星?)の意志=ゼロの人格を形成しているもの
つまりは世界自身が己の終焉と再生を望んでる…みたいな感じに勝手に認識してたんですけど(笑)
実際ところどうなんでしょう?


リマ》頃合いの良いところでポセイドン邸への場面転換お願いしてもいいですか?もしくはこっちがします

それが実在するんです(笑)

後編だけw友達のがガチでしたね(笑)

あの幼女かわいいと思ってました^^
どう言うことwエリザベス嫌いなんですかw
おい、ママン何してんすかww

あ、そうなんですか?
自分はサンディのキャラ最初からずっと見失ってますよ←

っち…非売品か…←てか、もれなくジルが付いてきても全然構いませんよ←】

273サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/09(火) 20:49:05
【闘技場】

会場は予想以上の賑わい様だ。
血気盛んな男達の姿や場の様子を目に、サンディは物珍しそうに視線を巡らす。

張り出されたトーナメント表を見るに、どうやら一回戦は仲間内での対決になるらしい。

(うーん…こう言う場合どっちを応援すれば良いんだろう…)

そう思案していたところ、横にいた空挺師団員マルトが二人に注意を呼び掛ける。

…怖い人達もいたものだ。
でもまさかこの近くにはいないだろう、とサンディは呑気に話を聞き流すも…。
彼の最後の一言だけは何故だかしっかりと耳に入ってきた。

「……へ…?」

カ…カップルって…。

「全っ然!そんなんじゃないからッ!」

真っ赤になりながらも、サンディは慌てた様にぶんぶんと頭を振った。

274ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/09(火) 21:08:39
【飛行挺】

まあリトの姉である彼女がそう言うのだ。心配することはないのかもしれない。
それに、その辺はナディアや自分でフォローをすれば大丈夫だろう。

…と、一応は納得しかけたジュノスの横で、今度は不意をついた問いが投げ掛けられる。

「さあ…どうでしょう?
ないことはない…かもしれません」

セナやリマのことを慕っている辺り、ある程度の眼識はあると自負している。
しかしその問いの意味するところが解らない、とジュノスは小首を傾げた。


【過去】

「ぶフッ…」

まさかやり返されるとは思ってもいなかった。
アブセルは初め驚いた風に目をぱちくりとさせていたが、直ぐに我に返りキッと眉をつり上げた。

「やったなっ!!」

お返しとばかりにクレープを振り上げ、リトに掴みかかる。
…が、またもや力加減を誤ったのか、それともリトがひ弱過ぎたのか。アブセルがリトを押し倒す形で、二人はベンチの上から転げ落ちてしまった。

「…ッて〜…」

…少しふざけすぎたか。
食べ物で遊ぶと祖父に叱られてしまうんだった。

せっかく買ったクレープも地面に落ちて食べられなくなってしまったし、服も顔もベタベタだ。

「ごめん、怪我しなかった?」

流石に悪いと思ったのか、アブセルは身体を起こしリトを気遣い見る。
先程の衝撃で僅かに捲れ上がったシャツの隙間から、リトの白い肌が覗いていた。

「あ…ここ、アザになってる」

そこでアブセルは彼の脇腹辺りに青黒い斑紋があるのに気がついた。
落っこちた際にぶつけてしまったのか?
いや…それにしては…。

「あれ?ここにも…こっちもだ」

アブセルは更にシャツを捲り上げる。
リトの身体の痣は一つどころか数ヶ所に及んでいた。肌の色が白い分、それは際立って痛々しく見える。
また、痣の色的にもついさっきついた様な感じではなかった。

275キール ◆.q9WieYUok:2014/12/13(土) 18:10:31
【虚空城】

「嫌いなのよ、あの子。

捨て犬だか捨て猫だか拾って来た挙げ句、その獣に牙を剥かれてたし。

……何より、応龍は黄龍様に忠誠を誓ってないのよ。」

普段ならば率先して任務に着くであろうシデンの、予想外の言動にキールは小さく溜め息を吐いた。

「乗り気じゃないならいいわ、今回は私がやる。

お子様の面倒見も、偏屈頭のフォローもしなくて良いのは気が楽だからね。」

裏切り者の鳳凰と、気分屋の応龍。

あの二人よりは、麒麟であるこの男の方が相方としては好ましい。

しかし、今回は動く気が無いようだ。

気怠げに爪を磨くシデンへと二度目の溜め息を吐き、キールは彼に背を向ける。

「もし私が帰らなければ、後は頼むわよ。」

そして、普段よりもトーンを落とした声で声を投げ掛け、次なる戦地へ……バルクウェイへと向かった。

【ただいまですわー、北海道で美味い物食べ過ぎて太ったwwww

イスラ》その認識で合ってるよー、世界中枢であるゼロを撃破=世界崩壊、的な。】

276ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:37:51
【ポセイドン邸】

薄暗い月明かりの中、ジルはその気配なくある一室に姿を見せる。
主不在の屋敷は警備が脆い。一般的な侵入者は防げても、彼のような能力者であれば警備を抜けるのは容易い。

「……」

部屋の主は眠っていた。
明朝受け入れがたい現実が訪れることなど露も知らず、安らかな寝息を立てて。

「ごめんね…」

その寝顔を見つめ、ジルは呟いた。
歳を重ねても色褪せない…今となっては朧げな記憶ではあるものの、想い出の彼女とほとんど相違ない。
ずっと会いたかった人。

「どうしても赦せなかったんだ」

大好きなミレリア。だけど、貴女の夫は憎かった。
自分から、何もかも奪って行ったあの男が。
あの男を…ヨハンを殺したのは黄龍の指示があったからだけじゃない。指示がなくてもいつか殺していただろう。その時期がただ早まっただけだ。

「もう会えない。僕はあなたの仇だから…」

ジルは呟き、ミレリアの髪を撫でる。

「誰?」

その声にジルはハッとして手を離した。
眠っていたはずのミレリアと目が合う。
起こしてしまった。

「おば…さま」

「…トーマ?」

どう取り繕えばいいのか。ジルは珍しく動揺を見せるが、その必要は無かったようだ。
ミレリアが別の名前を呼んだから。
自分の面影に父の姿を重ね、彼女は嬉しそうに微笑みかける。

「トーマ、やっと会いに来てくれた…ずっと待っていたのに。」

言ってミレリアはジルの頬に手を触れる。

「貴方は昔と変わらないのね。私はこんなにオバサンになってしまった。今では貴方より歳もずっと上よ、不思議ね。」

昔を懐かしむように目を細める。自分を子供扱いして、拗ねる自分を笑いながら優しく撫でる姿を今でも覚えてる。

「トーマ、貴方に謝らなきゃ…謝ることが沢山あるの。貴方を愛していたのに、私の手を離した貴方が赦せなかった。私を諦めておきながら、私を奪ったヨハン様と変わらず接している貴方が憎かった。でも貴方の子供は可愛くて…貴方に似たあの子を初めて見た時、貴方との縁が切れずにいたらなんて、考える自分がいたわ。そんな自分が赦せなくて、貴方の奥さんに申し訳なくて、余計に…貴方を恨んでしまった。」

でも…

「貴方をこんなに愛しているのに、貴方を諦められずにいながら、ヨハン様のことも愛していた。あの方は私を必要としてくれたもの。私の心が貴方のところにあると知っていても変わらず私を求めるあの人が不憫で…いつの間にかあの人のことも、愛していた。」

277ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:38:25
そして、それが始まりだった。

「私が悪いの。ヨハン様だけを愛する事が出来たなら、…いいえ、もっと早く、ヨハン様だけを愛する事が出来ていたなら…」

ヨハンは知っていた、結婚しても尚、ミレリアの心にトーマの姿が残っていることを。
ジルを可愛がるミレリアの心の内を、彼は気付いていた。
そしてミレリアも、そんな自分を見るヨハンの心情に気付いていた。申し訳なくて、でもどうしようもなくて…

「知ってる?私ね、ヨノの下にもう一人身籠ったの。また子供を生ませてくれるって聞いて、とても嬉しかったのよ。ヨハン様が私を赦してくれた。だからもあの子が生まれたら今度こそ貴方を忘れて、ヨハン様だけの為に生きようって決めたの。」

しかし、上手くいかなかった。

「私の希望の子は…無事に生まれて来てはくれなかった。神様が私を赦してくれなかったのかな。ヨハン様の気持ちに応えようとしたのに…あの子がいなければ私の気持ちを信じては貰えない…。結局、あの人は耐えられなかった…」

涙を浮かべるミレリアに、ジルはどうしようもない気持ちになる。
彼女が求めていたと言う子は、ちゃんと生まれてる。
彼女の言葉を借りるなら、ヨハンは初めから彼女を赦す気などなかったんだ。

「知っていたの?」

ジルは渦巻く感情を飲み込み、ただ一言、問いかける。
ミレリアは頷いて見せた。

「貴方を死なせたのは私。ヨハン様を傷つけたから…私が報いるべき業を、貴方が被ってしまったの。ごめんなさい…貴方の幸せを奪ってしまった。貴方の子供達も見つからないの…」

幼い子供達から両親を奪ってしまった。
せめて子供達に償いをしなければ…そう考え動いた時には、すでに彼の二人の子供の消息は掴めなくなっていた。

278ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:39:03
-----

「……」

先程までいた部屋を背にして、ジルは無言で佇む。
泣きながら何度も謝り続けるミレリアに、結局何も返せず出て来てしまった。

把握していない事実まで出て来たものだから、頭がついていけず混乱している。
整理するのも面倒だ。

「…あなた…」

そんな彼に、新たな声がふりかかる。
顔をあげればそこにはミレリアの娘、ヨノの姿があった。

「…」

本当、何もかもが面倒。
何か取り繕うこともせず、ヨノの声を無視してジルはその場を去ろうとする。

「ジル…?」

しかし続く彼女の言葉に、ジルはその足を止める。
今、何て…?

彼の動きを肯定ととったのか、ヨノは更に言葉を繋げた。

「ジル…ジルでしょ?あなた…」

何故こんな所にいるのかは別として、目の前にいる男の子を、ヨノは知っている。
成長した彼の姿に幼い頃の面影を見た。

「…」

観念して振り向いたジルへ、ヨノは駆け寄る。

「今まで何処にいたの?お母様が貴方をずっと探して…」

言いかけたところで、ヨノはハッとした。

「…泣いているの?」

彼の顔に滲むそれを、ヨノはそっと指で拭った。
何だこの娘は。いきなり現れた男に警戒することもせず、むしろ気にかけるなんて。

「…不思議だ…」

頬に触れる彼女の手を取り、ジルはその顔に笑みを浮かべた。

「ナディアお姉さんは覚えてなかったのに…」

本当、調子が狂う。
思えば彼女は昔からそうだった。いつも何処か抜けていて…
今ではもう遠い日。”遊びに行くんじゃないよ”と困り顔を浮かべる父親に無理を言って、仕事で行く先々にくっついて回っていた。その中でも頻繁に訪れていた大きなお屋敷に住んでいた、二人の可愛らしいお嬢様。奥様のミレリアはとても優しい人で、勝手に付いてきただけの自分を気遣い、退屈しないようにと、お嬢様と会わせてくれて、一緒に遊んでくれた。
自分は覚えてる。あの時が一番楽しかったから。
彼女が覚えてるとは思ってなかったけど。

「ヨノ、一つお願い聞いてもらえる?」

「何?」

抱きしめてもいい?
その言葉を言う前に、ジルは彼女の体を抱き寄せていた。
あの時は彼女の方が背が高くて、いつか追い抜いてやるんだって、むくれていたっけ。
今では頭一つ分くらい小さい彼女、一瞬硬直したものの、すぐに受け入れてくれた。

「会えて嬉しい。だけどもうサヨナラだ。」

「どうして?また以前のように皆で遊びましょう?」

「もう遊ぶ歳じゃないよ。」

「それもそうね、でも私は貴方に此れからも会いたいわ」

ジルはヨノの体を離す。
自分を見上げる彼女の顎に手を添え、そっと顔を近づける。
しかしその唇に触れることなく、ジルは顔を離した。

綺麗になった。記憶の中にいた彼女よりずっと…

「ヨノ」

自分は何を期待していたのだろう。
彼の呼びかけに何もなかったと悟ったヨノは、反射的に目を閉じてしまったのが恥ずかしくなって顔を赤らめる。
そんな彼女の仕草にジルはクスリと笑った。

「お願いを聞いてくれたから、調子に乗ってもう一つ。
僕の名前を呼んで。」

「ジル?」

「今じゃないよ。
もし仮にまた再会出来たなら、その時はもう一度、僕の名前を呼んで欲しい。僕が僕でいられるように、僕が僕でなくなってしまっていたなら、元の僕に戻れるように、君だけは、僕を忘れないで」

その時まで、さようなら。

279ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 22:30:46
【飛行艇】

「よし、じゃあ任せた」

ジュノスの返しに満足し、ナディアはニッと笑ってみせた。

「今回の首謀者がまさかの父親。あまりに近い人なもんだから、若干人間不信的な?まぁそれは半分冗談だけど、取り敢えずそろそろ屋敷の人間を敵か味方か振り分ける必要があるかなって思うんだよね。」

そしてポンっとジュノスの肩を叩く。

「手始めに今から会う爺さんを宜しく。」


------

【過去】

痣を見つけたアブセル。
途端、リトは彼の腹を思い切り蹴り飛ばして急いで身体を隠す。

「……ケホっ」

一瞬の動揺が引き金となったのか。
突如リトの口から咳が漏れる。

「ゲホっゴホっ」

それは次第に酷くなり、リトは苦しそうに踞った。

280リマ:2014/12/14(日) 22:54:45
ヤツキ>>
いいなーっ北海道!!
人生で一番楽しかった高校時代に修学旅行で行った思い出の場所!!また行きたいなー> <

イスラ>>
ようやく書きたかった奴の一つ、ジルとの絡みが書きあがりましたーっ
時間軸めちゃくちゃだけど( p_q)

了解です!もしかしたらお願いしちゃうかもしれません(。。;)

うわー…なんか恐怖を感じます←

前編は結局見れなかったのでDVDで我慢します(≡ω≡;)可愛いシエルは前編の方が多かったんだけどなー…まさか抜け駆けさせるとは(笑)
友達の方は「実習中で大変だと思って誘えなかった」だそうです(笑)お互いの思いやりがすれ違いを呼んだ(笑)
いえ、友達は一番くじの件で私には勝てないと認識してるようですw
てか別の友人に久しぶりに再会した時ラストワン手に入れたこと言ったら「あんたならやり兼ねないと思ってた」って言われた…あれ(**)?

可愛いですよーっシエルにお似合いですp(´∇`)q
嫌いではないけど、あんだけシエル好き好き言ってる割には気付かないんだなぁって思うとなんだかなぁって。

ビックリですよねw自分学校で読んじゃったもんだから「えぇ!?」って声出しちゃいましたよ←
因みに白龍ちゃんは次の週にママに噛みつきました。何この親子ww

最初からww
もっとサバサバしてる子にしたかったのに、意外に思い悩んでる感じになってしまってるんですよねー…

ジルが付いてくると面倒ですよ?(笑)

281メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/16(火) 00:30:00
【バルクウェイ闘技場】

異能者を狙う二人組みの話を聞き、メイヤは記憶を辿る。

(そう言えば、弥都でそんな奴と戦ったような……)

しかし、続く言葉とサンディの慌てふためく声が思案するのを妨げる。

「なっ……いや、俺達はそう言うのじゃない。

四神は護衛対象だったし、その。」

……確かにそうだ。

今は手を繋いでいないが、つい先程まではしかと手を繋いで街中を歩いていた。

マルトがそれを見ていた事は無いだろうが、連れ立って歩く自分達二人の姿は“そう”見えてもおかしくない。

見れば隣のサンディは顔を赤らめている。

しかし、マルトの言葉……その単語を否定的するのも何故か気が進まない。

「ハハ、お前達初々しくて面白いな。

団長が見たら酒の肴に一晩どころか3日は弄られるぞ?」

どう返すかを考える内にマルトは笑いだし、“そろそろ控え室が開くから集まっておけよ”と言い残してその場を立ち去って行く。

その背が人混みに消えたのを確認し、メイヤはサンディに声を掛けた。

「……その、悪い気はしないけど何だかもぞもぞするな、うん。」

【リマ》俺も高校の時以来だわww社会人なると、業種にもよるけど中々まとまった休みが取れんからねー。

学生の内に旅行するべきやね!】

282サンディ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:24:27
【闘技場】

言いたいことを言えば、マルトは笑いながらその場を去っていく。
どうやらただ単にからかわれただけの様だ。

(全く…いきなり変なこと言うからビックリしちゃうじゃん…)

サンディはむくれっ面でマルトの背を見送るが、そこで不意にメイヤの声が耳に入ってきた。

「そうそう、悪い気はしないけどー……って、…ぅええ…っ!?」

それって一体どういう意味だ。
驚きのあまり思わず変なポーズで仰け反ってしまうサンディであったが。直後、そんな二人の間を割る形で、突然一人の男が倒れ込んできた。

―――…

熱気と喧騒に包まれる闘技場。そこかしこから感じる剥き出しの闘志。
そんな会場の雰囲気に、シャムの血も徐々にたぎってきた様だ。

「恐喝か…それとも力ずくで行くべきか…、それが問題だ…」

どうやって出場するかを問うフィアの声を背に、シャムはキョロキョロと目ぼしい人物を探しながら屋内から外に出る。

と、丁度その時だ。

「ちょっと…!?どうしたの!?」

娘のものと思しき大きな声が飛び込んできた。
見れば先ほど飛行挺の中ですれ違った赤毛と黒髪。
その二人に挟まれる様に、地にくずおれた男が一人…。

「…アグルに大会のことを聞いたんで此所まで来てみたんだが…、何か途中で寒気がし出して…頭くらくらして…」

地に伏していた男の正体はイスラだった。
どうやら熱があるらしい。それもかなりの。
イスラの額に手を当てていたサンディは呆れた風に言う。

「病み上がりなのに無理な稽古続けるからだよ…。
この分じゃ出場は無理だね。医務室とかで休ませて貰った方が良いよ」

「え…、嫌だ。出る…」

「めっ、です!」

そんな目の前の光景を見据え、シャムはニヤリと口の端を歪めた。

「…どうやら面倒なことをする必要もねーみてぇだな」

283ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:29:03
【飛行挺】

なるほど、例えるのなら良い豆の中からそうじゃない豆を選別し取り除く。それと同じことをしろと言う訳か…。
結果いかんでは、彼女は屋敷の人間を一新させる気なのかもしれない。

……って。
どうしてそこでそんな重大な役目に自分を起用しようと考えた!?

彼女の家の事情に関しては全くの無知。
言うなれば余所者、部外者、第三者。

しかもさっきの爺さんと言えばアブセルの祖父で…同種の闇の気を感じたことから、恐らく自分との血の繋がりもあるのだろう。
向こうも何かを感じ取ったのか、先ほど顔を合わせた際、怪訝な顔をされた為、あまり会いたくはないのたが…。

…何だか断れる雰囲気ではない。て言うか断っても多分ムダっぽい。

「…………」

ジュノスは何も言わず、ただ彼女への返事の変わりに、顔に引きつった笑みを浮かべるだけだった。


――…

「ご当主様…!」

船から降りてくるナディアとジュノス。
その姿を見つけるや、老翁はハッとし、彼女に駆け寄った。

「今まで一体どちらに行っておられたのですか!?爺めは心配致しましたぞ!」

仕事の場面ではいつも物静かで寡黙な彼ではあるが、今日は珍しく声を荒げている。
しかしそんな自分に気がついたのか、老翁は直ぐに態度を改め、小さく頭を下げた。

「ああ…いえ…、誠に失礼いたしました。
ご当主様にはまず初めに御悔やみのお言葉を申し上げるべきでした」

言って、彼は哀悼の意を表す。

ナディアの父親に何が起きたのか…アブセルからの話しではまるで意味が解らなかった。
もっと詳しい説明を求めたいところではあるが、それは一先ず屋敷に戻ってからにした方が良いだろう。

「旦那様の御遺体は棺と共に既にお車の方へ移しております。戻ったら直ぐにご葬儀の準備に取り掛かって…」

そこまで言って、老翁はふと何かに気がついた。顔を上げ、辺りを見渡した。

「そう言えば…リトお坊ちゃんのお姿が見えませんね…?
此方にご一緒していらっしゃるとお聞きしたのですが…」

284アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:59:53
【過去】

「いった…!何すんだ馬鹿ッ!」

リトに蹴られ地面に尻餅をついたアブセルは、いきなり何をするんだと怒り、声を上げる。
しかし腹を立てるのもそこまで。
苦しそうに踞るリトの様子に気がつくと、不思議そうに目を瞬かせてその姿を見た。

「……どうしたの?」

しかし返事は返って来ず、リトの咳も一向に止まる気配がない。それどころか症状は酷くなる一方で…。

まさか病気だろうか?
そう言えば彼は身体が弱いらしいし、ナディアも出掛ける前に身体を動かす遊びを禁じていた。

「…お…おい…?もしかしてお前……、しっ…死なないよな…?」

アブセルは何だか怖くなる。おろおろと狼狽え、リトに、周囲に目を走らせた。

…どうしよう。
とにかく早く帰って皆に知らせないと。

胸の内に動揺を抱えたまま、アブセルはリトの側にしゃがみ、背中を向けて言った。

「乗れ!直ぐ邸に戻るぞっ!」

285イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 21:41:36
【ヤツキ》北海道ですか!いいですね!
まぁ冬だし、多少太ってもしょうがないってことにしときましょう(笑)
なるほど、そう言う仕組みですか。了解しました^^


リマ》ひゃ〜(/ω\*)、ジルとヨノのやり取りにドキドキ…!←
以前書いてたミレリアの過去話はあれで終わりですか?

了解です^^
てかアブセルの爺ちゃん、屋敷のあれこれにどこまで関わってることにしよう…
執事のくせにリト父の悪事とか全く知らない、じゃ何かアレだし…
ミレリアにリトのことを拒絶する暗示(闇の力で)とか掛けてた位した方が良いのかな…とか思うけど
そこまでいくとアブセルが爺ちゃんのこと超絶嫌いになっちゃうしなぁ(笑)どうしたらいいと思います?←

しかも私服はゴスパンク
年相応に振る舞うって大切なことなんだと改めて思いました(笑)

見事なすれ違いっぷり(笑)友達にそこまで言わしめるとは流石w

なるほど…、エリザベスって金髪ロリなのに何かときめけないんですよね…

怪しい人だ…(笑)
荒れた家庭ですねwてか白龍ちゃん相変わらずママ嫌いなんだw

何か自分が当初考えてたのとは大分違う感じになっちゃいましたw
まぁたまには良いんじゃないでしょうか?そっちのが好感度あがるし(笑)

確かに…兄妹に部屋占領されて自分隅っこに追いやられそう(笑)そして仕舞いには家から追い出されるんだ…←】

286メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/18(木) 22:58:14
【バルクウェイ闘技場】


自分は何か変な事を言ったのだろうか?

謎のポージングで仰け反るサンディの姿に、メイヤは口を開くも続く言葉は出なかった。

「なっ……」

何故なら、サンディとの間を割る様に、赤毛の男……イスラが倒れて来たからだ。

どうやら彼は無理して稽古に励んでいたらしい。

彼が何故、そうまでして剣を振り続けたのかは想像が着くが……

「取り敢えず、サンディの言う通り医務室へ行こう。

大会出場者と言えばすぐ案内してくれるだろうし、闘技場に必ずある筈だ。」

メイヤはイスラに肩を貸し、彼をおぶって立ち上がった。

そして、闘技場へと向かおうとしたその時。

「アンタ……飛行艇で会ったチンピ……客人じゃないか。」

此方を見つめ、ニヤリと笑う眼帯の男を見つけ、思わず声を掛けてしまった。

【イスラ》まぁ太った所で適性体重なんでそんなに気にならないのは、あるんだけどww

また何かあれば聞いてくだせぇー!】

287ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/20(土) 20:15:32
【飛行艇】

「え、リト?」

過剰に心配していた旨を告げてくる老人を軽くあしらっていたナディアであるが、彼からリトの名が出た途端上擦った声を上げる。
こんなに早く話が出てくるとは思っていなかった。

「あー、リトね!今は部屋で休んでるよ。後で合流する。…てゆーか、爺、あんた知らないの?」

今に至るまでの経緯を全てアブセルから聞いた。
リトは一時屋敷に戻り、父親の手によってこの場所へ連れ出された。
屋敷の重役であるこの老人が把握していないと言うのか。

「うちのバカ親父、リトを殺そうとしたんだ」


----------


【過去】

苦しい。
咳が止まらず息が出来ない。

「…っ」

向けられた背に手を伸ばすも、それ以上力が入らない。
症状も酷くなるばかりで、とうとう地に倒れこんだ。

288リマ:2014/12/21(日) 12:34:10
メイヤ>>

だよねー> <
遠出とかしなくて良いからディズニーランドとかシー行きたい!
大学の友達そうゆうの好きじゃないから全然遊びにいけない(T ^ T)
高校の友達は社会人だからディズニー行く余裕ないし!!


イスラ>>
ドキドキですか?(笑)
自分は書いてて「うわ〜…(蕁麻疹)」ってなりました← 真夜中の不法侵入で明らかに怪しい男に警戒心ゼロな女ってどうなの!←
ナディアとジルは歳離れてるけどヨノだったら2、3歳違うだけなのでまだ許容範囲かなぁ。この先恋愛に発展するか分からないけど!!
しかし手の早いジルがヨノにチューすらしなかったのは凄い!彼はきっと好きな子に対しては傷つけたくないから慎重になる派です(笑)ヨノは初恋の相手だったり?←

ミレリアの過去はまだまだ続く予定です!結末をすでに考えてあるせいか、そこに辿り着くまでどう持っていくか、ネタが思いつかず進んでません(;-ω-)ゞ
てかミレリアって何かどうしようもない子に見えて来ました…トーマが本命だけどヨハンも好き!って何やねん!!

聞かれたw
暗示のアイデア、自分的に凄く惹かれました(´∀`人)
でもアブセルに嫌われちゃうの可哀想だから、お爺ちゃんはお爺ちゃんなりにご主人達の幸せと自分の正義の為に動いてたって感じでしょうか(-ω- ?)どっちにしろその為にリトを犠牲にしたのは変わらないのですが…(笑)


うわぁ…恐ろしすぎる…あ、でも顔が若く見えるとか…!!←
自分も最近可愛い系の服が怖くて着れなくなってきました…。華の20代前半がもうすぐ半ばになってしまうのです。自分、30超える自信がない…オバサンになりたくないよー(泣)

全くもってビックリです(笑)

その友達は私がシエル命なのを知っていますからね〜(笑)

エリザベスってロリっぽくないですよねー
大人になろうと背伸びしてるシエルの為にワザと子供っぽく振舞ってるって知った時は見直しましたけど、でも何だかなぁ…
てか今月のシエルに思わず吹いた→imepic.jp/20141221/436180
こんなに可愛くない男の娘初めてみたかも…てか目的の為ならドレス着るの平気なのか(笑)多分今回、自分の意思で着てるんですよね、たしかその場にセバスいなかったし。駒鳥の時はあんなに恥ずかしがっていたのに…嗚呼ノリノリ……

だって、親子が…(笑)まさかこんなことになるとは予想もしなかったし(笑)…これからは誰もいないところで読もう(笑)
白龍は今後もママを赦すことはないでしょうねー
どんどん壊れていく彼がお姉さんとっても心配です。

あれ、自分は当初感じたサンディとなんら変わりありませんけど?←
どんな子にする予定だったんです??

自分のつくるキャラって何故か色々と思い悩む子になってしまう(笑)

何それ怖いww
ジルがいると家乗っ取られるのかww

289イスラ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:45:33
【闘技場】

「よぉ、ニィちゃん。つらそうだなァ?」

向こうから声を掛けられれば、シャムはその笑みを更に深めて言った。

「ものは相談なんだけどよ、アンタの名前を一つ貸しちゃァくれねーか?」

彼の視線は今、メイヤに支えられる様にして立つイスラの元に向けられていた。
シャムは相手の返事を待たずして更に言葉を続ける。

「実は訳あってこの大会に出場しなきゃなんねんだけどよォ、聞けば既にエントリーは締め切ってるって言うじゃねえか…。
どうしようかと途方に暮れてたところ、床にぶっ倒れてるアンタを見つけたって訳だ」

見知らぬ人物からの突然の要求にイスラは初めポカンとした表情をしていたが、直ぐに彼の言わんとしていることを察した。彼の目を見返し言葉を返す。

「…困っているのか?」

「あぁ、ちょー困ってる。困り過ぎて困ってる」

「そうか…」と、イスラは呟き暫し思案する。

正直、大会に出場したいと言う気持ちはある。しかし、今の状態では満足に闘えないのも確かだ。
そしてなにより、彼は困ってる人を放ってはおけない性分であった。

「…分かった。俺の選手ナンバーは19番だ。
この枠で良ければ貴方に譲ろう」

シャムはトーナメント表と言われた番号を照らし合わせる。

「19…、イスラ・フォードか…。了解、了解。恩に着るぜぇ、ニィちゃん」

290ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:48:55
【飛行挺】

「…旦那様が坊っちゃんを…?
…いえ…、まさかそんな…」

ナディアの発言に老翁は信じ難いと言った面持ちを見せる。
しかし、そうは言っても何か思うところがあるのは確かな様だ。

彼の表情や目の動き、声の調子の僅かな変化をジュノスは見逃さなかった。
別段惚けている風ではないが、何かを隠している。そんな感じだ。

老翁は言った。

「ともかく…この場ではゆっくりお話をすることも出来ません。
一度お屋敷に帰ってからに致しましょう」

そして――…

「セィちゃんさん…、もうすぐ出番だよ。
リトは可愛くて格好良くてクールでそれでいて優しくて思わずギュッとしちゃくなっちゃう様なツンデレが売りなキャラだから、よろしく頼んだよ」

送迎用のリムジン内部、アブセルはセナに小声で囁いた。

今、ナディアを筆頭にした一同は、棺を載せたものとはまた別の御料車で屋敷へと向かっている途中である。

ナディアからセナをリトの替え玉にすると聞いた時は驚いたが、それに対しアブセルは特に反対を示すことはなかった。

因みに、リトのことは今別で動いているジュノスが後でこっそり部屋に連れてくる手筈だ。

「あ」

不意にアブセルは目を移し声を上げる。
目的地が見えてきた様だ。

291アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:22:25
【過去】

「え……」

伸ばされた手は背に触れることはなかった。
目の前で、ふっと糸が切れた様にリトの身体が地に崩れた。

「…リト…?」

アブセルは彼の名を呼ぶ。
反応はなかった。
途端、頭の中が真っ白になった。

「え…そんな…、嘘だ……。
だって俺…そんなつもりじゃ…」

そうだ、ちょっと意地悪してやろうと思っただけだ。
こんなことは望んでいなかった。

「ねぇ…、さっきのこと怒ってんの?
なら謝るからさ…。起きてよ…。帰ろうよリト…、ねぇってば…」

喉から出た声は震えていた。
いくら身を揺すっても彼は起きなかった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。
自分のせいだ。

いつかの日のことが脳裏に甦る。
傷つき地に伏している少年達の姿を思い出す。消えてしまった友達のことを思い出す。

「…ぅ…くッ、…ひっく…ッ」

アブセルの口から嗚咽が洩れた。
大粒の涙が眼から零れ、地を濡らした。

「……俺…っ、リトを…死なせッ…、ちゃった…」

とんでもないことをしてしまったと思った。
また捨てられてしまう。また住み処を追い出されてしまう。
今度こそ本当に行く場所なんてない。

アブセルは声を上げて泣き出した。

292イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:27:51
【ヤツキ》はい、ありがとうございます^^

リマ》何か強引ですがナディア達の方、場面移しました;

それ分かります(笑)自分も日々「寒い!痒い!ハズい!((((;゜Д゜)))」…と戦いながら文章作ってますw
でも人の読むのは好きです!もっとやって下さい!
あれがジルじゃなかったらヨノ危なかったね(笑)
初恋かぁ…ジルったら案外ピュアピュアではないですか←

そうなんですか?ネタかぁ…何か力になれれば良いんですけどねー…
確かに…ミレリアが確りどちらか一人を選んでいたら今の悲劇は起きてなかったかも…←なんて言っては駄目ですよねw

あ、惹かれました?じゃあ暗示の方向でいきましょうか(笑)
そうですねー…、事実を歪曲して聞かされてて主人達のことを思ってやったか、
もしくは過去に何かやらかしてて(ミレリアの父を誤って殺っちまったとか←ミレリアの母と不倫してたとか←)をヨハンにバレて逆らえない状況になってたか…かなー、…爺ちゃんとんでもない奴だな←

顔が可愛くて若く見えるんなら自分はこの話題してなかったと思います(笑)
自分も最近誕生日を迎えるのが怖くなってきました…;でも気づいたら30越えてるんだろうなぁ…

でもエリザベスは大人になったら良い嫁になりそう
てかシエルww何があったしww

それがいいですw
どんどん壊れていっても白龍好きは変わらないんですか?(笑)

当初から上手いことキャラ動かせてませんでしたから(笑)
やりたかったのは京騒戯画ってアニメのコトみたいな感じです、簡単に言えば銀魂の神楽から毒を抜いた感じかな?(笑)

いいじゃないですか〜、自分なんて思い悩まそうとしても思い悩ませれないですからねw

「ちょっと邪魔だから出てってくれないかな」とか言われそう←
ジルに歯向かえる勇気ないですし(笑)】

293リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:17
【過去】

泣き叫ぶアブセルの声は気を失っているリトの耳には届かない。

そこへ、そんな二人の元へ小さな女の子が近づいて来た。

「…」

女の子は泣いているアブセルと倒れたまま動かないリトの姿を交互に見るかと思えば、また何処かへ駆けていく。

そして今度はアブセルと同じ年頃かと思われる男の子の手を引いて戻ってきた。

「フェミル、いくら子猫を見つけてもウチでは飼えないから探しちゃ駄目だよって何度も…」

その少年は少女の行動を何か勘違いしているようで、何やら呆れ気味に少女へ言い聞かせていたが、アブセルとリトの姿を見るや言葉を止める。

「フェミル、お父様を連れて来て。」


------


「もう大丈夫だよ」

そう言って男性は対面のソファに腰掛けたアブセルへ笑いかけた。
彼はまだ動揺しているようで震えている。
気を落ち着かせようと、男性はホットミルクを用意させ飲むように勧める。

「念のためウチの医者にも診せているから、安心して」

現在、アブセルがいるのはとある屋敷の応接間。
先程通りかかった少年と少女の家。

あの時、少年は少女に父親を呼びに行かせ、自分は近くの医院へと走った。
その咄嗟の判断が功を奏したか、リトは大事に至らず済んだ。

リトを医者に診せていたところ、少女に連れられ二人の父親と思しきこや男性が遅れてやってきた。そしてリトの保護者として必要や手続きをして彼を引き取り、「すこし休ませた方が良いだろう」と言って屋敷へ招いてくれたのだ。
これは勿論リトの身も案じての事だが、アブセルの方にも休息が必要だと思われたからでもある。

294リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:41

「喘息の発作が出たみたい。突然の事だったから驚いちゃったみたいだね」

医者の話によると、リトは喘息を患っているようだった。
これまでも発作は起きていた筈だが、アブセルは知らないのだろうか?
発作の際はすぐに薬を吸入させ抑えるため、その場面に遭遇したことがなかったのかもしれない。
本来なら携帯するべき薬も、子供には理解出来ていないだろう。

男性はアブセルを責めることはしなかった。アブセルも怖かったはずだ。事情を知らない人間が下手に口を出すべき事でもない。

「今日みたいな事があった時に使うお薬があるんだけど、お父さんやお母さんが持ってる筈だから聞いてごらん?今度から二人で出掛ける時は持たせてもらってね。」

代わりにアドバイスだけ伝える。
どうやら男性はアブセルとリトを兄弟だと思っているようだ。リトは同年代の子よりはるかに体の成長が遅れているため歳下にみえても致し方ないが。

「弟くん、目を覚ましたみたいだから行こっか?」

ホットミルクを飲んでいたアブセルが大分落ち着いたのを確認し、男性は立ち上がる。
そしてアブセルをリトのいる部屋へ案内した。

「あーんしてごらん?あーん」

部屋に入ると其処にはリトの他に先程の少年と少女がいた。
少年の方は食事の入った器を持っていて、それを掬ったスプーンをリトの口元に持っていっている。

「兄さま、フェミルもやりたい」

「駄目、オママゴトじゃないんだから」

横で真似をしたがる妹を制しながら、少年は慣れた手付きでリトに食事を摂らせていた。
不思議な事に、普段は食べるのを拒否するリトも少年の誘導を聞き入れている。

「そう、いい子だね。ほら、もう一口。」

その光景に男性は笑みを浮かべた。

「医者が胃の中が空っぽだって言っていたものだからね。何か食べさせた方がいいと思って勝手だけど食事を作らせてもらったよ。君も食べる?あの子の為に作ったものだから、食べ応えのあるものではないけど」

295メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/28(日) 19:59:58
【バルクウェイ闘技場】

突然の申し出に、僅かながら考える様子を見せるイスラ。

しかし、彼は特に拒む事も無く首を縦に振った。

正直な所、イスラと手合わせしたい所だったが……

「話は纏まった様だし、取り敢えず動こう。」

しょうがないと言えばしょうがない、如何せん動けないものは動けないのだ。

イスラを背負うメイヤはシャムに“じゃあ……”と会釈を投げ、足早に闘技場内へ、医務室を探し歩いて行く。

ーーーーー

どうやらシャムは無事に出場出来た様だ。

闘技場の真ん中、整列する選手達の中に見慣れたその姿を見つけたのは一時間程前。

「どんな手を使ったかは知らないけど、零回戦敗退にならなくて良かったわ。」

予想外に派手な開会式から続く一回戦も既に折り返し、そろそろシャムの出番だろうか。

観客席の最上段で、フィアは選手入場口から出て来る人影へと目を凝らす。

(まぁ、負ける事は無いと思うけど心配ね……)

ーーーーー

止むことの無い怒号の様な歓声を耳に、メイヤは登場口から闘技場へと歩み出す。

一回戦も残る所後二試合、観客達もヒートアップしている様だ。

「……飛行艇で俺を見捨てた怨み、晴らさせてもらうぞ。」

闘技場の丁度真ん中に立つ審判、マルトのルール説明を耳にしながら、メイヤは対戦相手……アグルへと恨めしそうな声を投げる。

そして、試合開始を告げる旗が振られると同時に、メイヤは飛び出す。

(ルールは簡単、相手を戦闘不能にするか降参と言わせるかの二つ。

得物は自由、それだけか!)

前方へと倒れ込む様な独特の踏み込みから続く急加速は、5メートルに設定されている相手との距離を一瞬で詰め。

地を這う蛇の如き動きから放たれるのは、下方からの逆袈裟斬り。

抜き放たれた真白の刃は、閃光の如き速度でアグルへと襲い掛かった。

「喰らえ!」

296アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/29(月) 00:15:58
【過去】

リトが倒れどうしようもなくなっていた時に出逢ったのが、二人の兄妹とその父親だった。

彼等がリトを助け様としてくれているのは分かったが、その間アブセルはずっとぐずぐずと啜り泣き続けていた。

親子の家に招かれた時には流石にもう涙は枯れていたが、彼は知らない家に連れて来られた猫の様に終始萎縮し、
男性の顔も見れずに、ただ彼の言葉にコクコクと首を動かすだけだった。

そして、やがてリトとの面会が許される。
通された部屋には先程の少年と少女、二人に囲まれ食事を摂るリトの姿があった。

「リト……」

収まった筈の涙がジワリと目元に浮かび上がった。
そして、それはとめどもなく流れ落ち、再び彼の頬を濡らした。

けれどもその涙は先程の不安と恐怖を募らせたものは違う、極度の緊張状態から解放された時に流す安堵の涙だった。

アブセルは男性の声も聞かず駆け出す。
腕を伸ばしリトに抱きついた。

「りどぉ…!ごべンなさ…ッ、ごべンなざぃ…!」

鼻の詰まった声で何度も何度も謝った。

そして―…
一頻り泣いた後、アブセルはやっと落ち着いた。

手の甲で目元を拭いながら改めて親子を見つめ、小さく頭を下げた。

「あの…、ありがとう…ございました」

297ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:24:59
【→ポセイドン邸】

「…」

小声だろうとアブセルが何を言っているのか予想はつく。
リトはどんな人物か。セナに難題を押し付けているのだろう。
セナは一応話を聞いてはいるようだが、その表情を見るに、何一つ理解していないだろう。

ナディアはその様子を眺め、溜息一つ。
セナはいいとして、地味にアブセルが面倒臭い。
リトをやるからには完全に成り切って貰おうと考えているのか。いや、アブセルの主観は最早リトではない。

「セィちゃん」

あと気になる点がもう一つ。リマだ。
リマは手を伸ばしてセナの髪に触れると残念そうな表情を浮かべる。

「髪、短くなっちゃったね。」

セナとリトは髪の長さが違う。
少しでも違和感を無くす為、セナの髪をリトの長さに揃えてもらったのだが…

「これだともう編めないな…」

セナは片方の髪のサイドを編み込んでいたが、どうやらリマがやっていたようだ。そんなに悲しそうな顔をされると申し訳なくなるじゃないか。

と言うか二人の距離が近すぎる。
屋敷に着いたらセナはリトとして暮らして貰うわけだが、その”リト”にベッタリなリマをどう理由付けようか。
ついでにリトとアブセルが連れていたらしい子供(ノワール)は先程からリマとセナを睨みながら不機嫌そうにしているし、何だか先が思いやられる。

そして、ナディアの考えは結局纏まらぬまま、屋敷に到着した。

車の到着と共に出迎えの者達がゾロゾロと出てくる。
時間の無駄に思える行動。何度経験しても慣れない。

「お姉様!」

屋敷の者達の挨拶を適当にあしらっているとヨノが現れた。

「おかえりなさいませ」

そして深々とナディアに頭を下げると、続いて車から出てくるセナの姿を見つけニコリと微笑む。

「リト。」

「私の妹でリトの姉。つまり今はあんたの姉」

横からナディアはセナへ耳打ちする。

「おかえりなさい。」

優しく出迎えるヨノの言葉を受け、リマはセナに何やら伝えた。
するとセナはヨノへ視線を向け、そして

「…ただいま、姉さま」

笑いかけた。
見たことのない弟の笑顔。
不意打ちをくらい、ヨノは顔を赤らめる。
そして満足気なリマの顔。

(終わった…)

そしてナディアは頭を抱えた。

298ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:25:17


「ビックリしちゃったぁ…」

所変わって大広間。
事の真相を全て聞き、ヨノは苦笑いを浮かべる。

「思わずドキっとしちゃったものだから…自分の弟に対してドキっだなんておかしいでしょ?」

身内に対して妙な感情を抱いたのかと焦った。
別人だった、良かった。

「まぁ…アレだ。あまり難しく考えないで協力してよ。リトと同じように接すればいいから。」

本当はヨノにも秘密にしておきたかったが、どう考えてもセナの態度は不自然だ。
いや、普通の姉弟の関係であればアレでいいのかもしれない。リマの考えは間違いじゃない。けど、リトはあんな態度はとらない。そもそも笑わない。
黙っていたとしてもすぐにバレていただろう。

「リトは…大丈夫なのよね?」

「うん」

ヨノはこの屋敷の内情を知らない。
父親がリトに何をしたのかも、説明したところで理解出来ないだろう。
また、知らずにいられるのならそれでいいとも思う。だから教えることもしない。
だから今回の件は父とリトが務めを果たしている際に事故にあったことにした。
リトの件以外は他の者達にも同じように伝えるつもりだ。母親にも。

「ヨノは母様をお願い。私はやることこなさないとな。まずは親父の葬儀。ちょっと爺と話してくる。」

言ってナディアは席を立つ。
向かうは自室。

アブセルの祖父に、屋敷に戻ったら部屋へ来るよう伝えておいたのだ。

「…」

彼は部屋の前に立ち待っていた。
ナディアは部屋の中へ入るよう促す。

そして椅子に腰掛け、話を切り出した。

「さっきの続きだ。親父がやろうとしてたこと、知らないとは言わせないよ?包み隠さず教えな。」

299リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 01:41:29
【過去】

頭を下げてくるアブセルに、男性は変わらず優しげな笑みを浮かべる。

「旦那様…」

が、其処へ、リトを診させていた医師が深刻そうな面持ちで男性に声をかけた。
何やら耳打ちすると、男性からも笑みが消える。

そして医師を連れて部屋を出て行った。

「後でお家に送ってあげる。暫くうちの子達とゆっくりしておいで。」

出て行き様に笑顔でそう言い残して行ったが、何かあった事は予想できる。

ジルは気づいたが、しかし敢えて触れる事はしなかった。

「ねぇ、君の名前は?」

そして再びリトヘ意識を向けた。
しかし対するリトは相変わらず問いかけに応じない。
言葉が話せないのかとアブセルを見るが、アブセルからはそんなことはないと首を振る素振りをされた。

「僕の名前はジル。君の名前を知りたいな」

「…」

「フェミル、このお兄ちゃんに挨拶して」

「私はフェミルってお名前。お兄ちゃんは?」

「……」

無反応。
今までと同じ種類の人物であったなら、此処で腹を立てるか呆れるか、反応は様々でもこの時点でリトの言葉を諦めただろう。
しかしジルは違った。

「話すのが怖い…?」

リトが話さない理由を考えた。
何だか上手く説明は出来ないけれど、何と無く、リトは言葉を封印することで、何かから自分を護ろうとしているように見えた。
先程もそう。出した食事も中々摂ってくれなかった。警戒し、誰も信用していない。ただ、怯えている。

「大丈夫だよ」

ジルは手を延ばし、リトの頭を撫でる。
不思議そうに此方へ目を向けるリトヘ、明るい笑顔を作ってみせた。

「僕は君を何と呼べばいい?仲良くなりたいだけなんだ。君より小さなフェミルだって自分の名前を言えるんだよ?君も勿論言えるよね。」

本当は名前なんてもう知ってる。さっきアブセルが泣きながら叫んでいたから。
しかしジルは、リトの声でちゃんと聞きたいのだ。

「君の声、聞きたいな」

リトの目を真っ直ぐに見る瞳はとても優しげで。
今まで関わってきた人は…実の姉でさえ、ここまでリトと向き合っては来なかった。

「…り…」

やがてリトは、躊躇いがちながらも口を開く。

「…リト…」

それは消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた。”リト”と。

「そう、リトって言うんだね。宜しくね。」

ジルは満足気に笑顔を浮かべれば、よく出来ましたとばかりにリトの頭をワシワシと撫でる。

「…で。」

リトのことは良し。
今度は…とジルは半ば蚊帳の外となっていたアブセルへ振り向く。

「君は何て名前なの?泣き虫さん」

おかしい。
彼の笑顔は変わらないはずなのに、何か、何と無くリトに向けられていた優しいものとは違う、意地悪なものと化している。

「君はこの子のお兄さん?お友達かな?”ごめ〜ん”って泣いてたけど、この子にちょっと意地悪しようとして大事になっちゃいましたって感じ?」

何かバレてるし。

300リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 13:10:23
イスラ>>

場面変更有難うございました>ω<

お仲間でしたか(笑)
自分も人様のつくったものを読むのは好きです!イスラさんもジャンジャンやってください←
世間一般の女子にとっては普通の不審者よりもジルの方がある意味危ない気もしますが、ヨノはジルにとって例外なようです(笑)
ジルはもともとは純粋で凄く優しい子なのです、環境が彼の性格を捻じ曲げた(笑)ってか勝手ながらアブセル達の過去話にジル達ねじ込んじゃいました(つω`*)テヘ
リトの父ちゃん嫉妬だけでジルパパ殺してるとかいくらなんでも「小せぇ男だな!!」って感じなので、今回の一件で父ちゃんの計画を知っちゃったことにします。つまりは口封じ、フフフ…

設定は出来てるんですけどねぇ。
ヨハンとトーマ→もともとは友人。(トーマが一方的に絡んでくるけどヨハンも満更でもない)
ミレリア→ずっとヨハンに憧れてきたけど、だんだんトーマに惹かれていく
ヨハン→ミレリアに想いを寄せているが上手く行動に移せない。いつの間にかトーマに先を越されてて激おこ!
ってな具合に。
ミレリアめ、なんとまぁ罪な女よ←

爺ちゃんとんでもねぇ奴だなww
不倫関係で言うとヨハンは実は爺ちゃんの秘蔵っ子だった!ってのが面白そーってふと思ったんですが、それだとアブセルとリトが従兄弟になっちゃいますね(笑)

ですよねー…(笑)
気づいたら30…怖すぎる(泣)
ついこの前、研究室の後輩に「どんどんババァになっていく。そろそろ可愛い服着るの怖くなってきた。でも私からミニスカートをとったら何が残るのか」って愚痴っちゃいました(笑)

夫をたてる良い妻になるとは思います。しかし何か好きになれない。何故だろー
最近シエルがよく分からない方向に突っ走っている(笑)初期の方で「笑い方などとうに忘れた」とか厨二発言してたくせに普通に笑ってるし。

はい、どっちかって言うと苦しむ白龍は大好物なので←
にしても白龍がどうも金色のガッシュのキャンチョメと被って見えてしまってですね…

成る程!毒を抜いた神楽!!(笑)
たしかに何かサンディとは違いますね(笑)
銀魂と言えば、銀魂のアニメ新シリーズの話がこの前出て、皆から「総悟好きそう」って言われたんです。まぁ好きですけどね?
そしたらその理由が「顔が良いの好きだろうから」ですって!だから言ってやったんです、神威も好きだと!そしたら「やっぱ顔じゃん」って返されてしまった!あれ??

何それw
でも、ほら、イスラ辺りなら悩めるかも?←

言いそうww
いや、自分の家なんですから頑張って歯向かってください(笑)

301ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/12/31(水) 20:09:41
【もう年の瀬とか信じられねーww

今年もお世話になりやした、来年もよろしくお頼み申し上げます!

んだらばお二方も良いお年をー!】

302アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:07:07
【闘技場】

「さあ?何のことだか」

恨めしそうなメイヤの声に対し、アグルはそう嘯く。
そして見た。

(当然…、初手は"それ"だよな)

蛇の如く低い姿勢から放たれる迅速の白刃。
アグルはそれを無理に受け止める様なことはせず、槍の柄を斜めに刃を受け流す。
そして、その流れの勢いのままメイヤの左方へと身を滑らせた。

「シンライジ邸の稽古では嫌ってほど打ち負かされたからな…」

流石に目も慣れたものだ。

メイヤに対し最も注意したい点はその動きの敏捷性だろうか。
まずは機動力を削ぎたいところ。
よって…、

(足を狙う…!)

アグルは槍の柄を長く持ち、腕を回す。
振り回された槍は風切り音を放ちながらメイヤの足元目掛けて駆け抜けていった。

303老翁 ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:24:25
【ポセイドン邸】

問い詰める様なナディアの視線に老翁は短く応える。
等々この日が来たとばかりに。
観念とも覚悟とも取れる面持ちでナディアを見つめ、
「こちらを…」と、数冊の冊子を彼女の前に差し出した。

「旦那様の手記で御座います。
勝手とは思いましたが、書斎からお借りして参りました。
お目を通して下さいませ。あの方の大体においてのお考えが分かる筈です」

それから、と老翁は言う。一つ言っておくことがあると前置き、言葉を続けた。

「私は…、私と旦那様は、同じ血を分けた……そうですね…、有り体に言えば実の親子にあたる間柄と言うことになるのです」

【過去】

泣き虫…と、そして図星を言い当てられたアブセルはかぁっと顔を赤くさせる。

小馬鹿にされた様な気がして恥ずかしかった。
そんな表情を見られるのが嫌で顔を下に向けるが、その気持ちさえジルには見透かされていたかもしれない。

「……アブセル」

程無くして、アブセルは視線を足元に向けたまま小さな声で名を口にする。
それと、

「別に兄でも友達でもない…。
リトはお屋敷の子供で…。俺は、俺の爺ちゃんがそこで働いてるから、それで…」

せめてもの悪あがきに、それをぶっきらぼうな口調にして返すのが精一杯だった。

304イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:26:31
【二人ともあけおめです!
今年も宜しくお願いします(^^)

リマ》
やりたいのは山々なんですがー…なかなか思いつかず…(笑)
ジルの境遇を考えると、そりゃあ性格も変わっちゃいますよね;
もしかしたら出てくるかなと期待していました(笑)
なるほど…口封じとはいえ友人を始末しちゃうなんて…ヨハンの心境は一体…

おぉ!いい三角関係ですね!
でもこれ三人の心がすれ違い始め…トーマが没するまでやるとなるとかなりの長編になりそうですね(笑)

なんて素敵なアイディア!爺ちゃんがヨハンの肩を持ってるいい根拠にもなるし…ってことでいただきました!←ありがとうございます(笑)
ヨハンは忘れられない人との間に出来た子で〜(不倫ですが)とか色々着想が浮かびます^^
しかしその場合ナディア達も孫になる訳で…実の息子にも遣えてて…爺ちゃんどんな気持ちなんだろう(笑)

リマさんのアイデンティティーはミニスカなのか(笑)でもほら、森ガール的な長いスカートだって可愛いですよ←

理由もなく好きになれないとか一番可哀想な気がするw
そこは突っ込まないであげてw

やだ、このコ恐い←
ガッシュ懐かしい(笑)軽くアニメとか見てた気がするけど殆ど覚えてない…
キャンチョメってアヒルみたいなやつでしたっけ?どのへんが被ってるんですか?

自分もリマさんは顔がいいキャラが好きなんだと思ってました(笑)

イスラかー…彼の悩みって、どうやったら人を救えるかとか、どうやったら世界が平和になるか…みたいな答えのない漠然としたものばっかなんでやりづらい←

頑張って歯向かっても勝てる気がしません(笑)】

305メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/02(金) 21:37:42
【闘技場】

全身全霊の打ち込み、とまではいかないものの、速度、威力共に十二分の初撃だった。

しかしそれは難無く去なされ、反撃の一手、下段の薙払いが放たれる。

その一連の動きは、此方の初動を読んでいた……否、読んだものであり、その事に気付いたメイヤは僅かに苦い表情を浮かべる。

(そうか、弥都で再会するまでイオリに鍛えられていたんだったな……)

そう、闇の巣で行方不明になった二人を救出し、更には修行に付き合っていたのはシンライジ当主であるイオリなのだ。

ならば、此方の手の内は殆ど知られているだろう。

アグルの放つ足下を狙った斬撃は速く、得物は槍の為にリーチも長い。

更に、逆袈裟を放った状態で動きを止めた今、回避の為の踏み込む間も無い。

(退く暇も無い、なら!)

ならば、今この場で攻撃を防ぐしかない。

風切り音を耳に、メイヤは斬撃を放った勢いを使い、その場で180度水平回転。

同時に、逆袈裟に振り切った刃を回転の勢いそのまま振り降ろす。

捻りの動作を加えられた白刃は、初撃と変わらぬ速度で大きな円弧を描いて槍の穂先へと叩き付けられ、無理矢理だが槍の一撃を防いだ。

それと同時に、右手に握る白刃の柄を放してメイヤは跳躍。

未だ残る水平回転の動きと勢いを利用し、左の逆手で抜き放った短刀で、上方よりの斬撃を放った。

306ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/03(土) 03:28:57
【ポセイドン邸】

亡き父の手記。
これを読めば、彼がこの十数年やってきた事、その真相が分かるかもしれない。

ナディアは早速目を通そうと冊子へと手を伸ばす。
しかし、続いて耳に届いた言葉に、反射的にその手を止めた。

「…は?」

今何て言った?

「あの人と親子?あんたが?」

とうとうボケが始まったのか。
冗談にしては笑えなさすぎる。
父方の祖父母はちゃんと…

「ちょっと待って、頭整理する」

老翁の突拍子もない言葉に、混乱しながらもナディアは額に手を当て必死に記憶を辿る。
ヨハンの父が老翁と言うのなら、彼はナディアの祖父ということになる。なら記憶にある祖父は誰なのか。父方にも確かに祖父はいた筈だ。
しかし考えてみればその祖父は祖母より一回り以上年齢が離れていた。当時はどの家庭も自分の意思で伴侶を選ぶのが難しい時代であったとは言え、年頃の男子がいなかったわけではないし、たしかに不自然ではある。ポセイドンの家系とは言っても本家とは遠い筋の家で、血筋に拘る必要も無かったはずだ。
考えたくはないが、可能性としてはあり得ない話ではない。

「ごめん、ちょっと私の頭では収拾つかなかった。説明してもらえる?」


【お二人とも、昨年は大変お世話になりました!
今年も宜しくお願いします!!】

307リト ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 02:46:33
【過去】

ぶっきら棒に答えるアブセルを見て、ジルは面白そうにクスリと笑った。
どうやら自分は彼の図星をついてしまったようだ。

「リトってお屋敷の子だったんだね。アブセル、君のお祖父さんがこの子のお屋敷で仕えてるなら、君もお仕えの身分なんじゃない?お屋敷の子を勝手に連れ出して、助かったとは言え危険な目にも合わせちゃって、バレたら大変だと思うなぁ。」

上手く抜け出して来たのかもしれないが、今頃はリトがいなくなっていることも知られ騒ぎになっているのではないだろうか。

恐らくは父が話を通してくれるだろうが、アブセルの反応が面白そうなので敢えて言わない。

「今のうちに言い訳でも考えておきなよ。」


----

先程退室した屋敷の主人、トーマは難しい表情を浮かべて書斎にいた。
思い返すは助けた少年リトの顔。

(あの子は…)

リトと良く似た顔を彼は知っていた。
しかし「あの家」に男児が生まれたなどは聞いていない。

先程医師に伝え聞いた事がどうも気になる。
リトを診察した際に、身体に複数の痣や傷を見つけたそうだ。栄養状態も思わしくないと。あれは明かに……

「…」

トーマは呼び鈴を鳴らした。
音を聞きつけて執事が入室してくる。

「先程連れてきた子供について調べろ。」

嫌な予感がする。
出来れば自分の推測が間違いであってほしい。

308リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 13:04:18
イスラ>>
アブ祖父のラブストーリー←
ちょっと意地悪なのは変わりないですけど(笑)
にしても仲良くしてた子と敵対するってどんな気分なんだろー。ナディアは忘れてるからいいけどジルは最初から知ってましたし(笑)

ヨハンは完全気が狂っちゃってるので特に何も感じてなかったかと←
彼はポセイドンの家系とは言え分家中の分家で立ち位置的には苦しく、出世街道からズレてるトコの生まれなのです。その為現在の位置まで登りつめる為にガムシャラに生きて来ました〜
ですね(笑)飛ばし飛ばしやらねば…(笑)

採用されてビックリです(笑)此方こそありがとうございます!(笑)
ヨハンのお母さんは先天的に言葉の話せないお嬢様で、なんか知らんがアブ祖父と恋愛し、ヨハンを身籠ったが、お嬢様は父親が誰か言わない為、「このままでは未婚の母に!世間の目が!!」と慌てた両親によって独身なおじさん(両親何方かの血縁でもいい)のもとに無理矢理嫁がされた〜って設定にしちゃいました←
そんでヨハンは母親の為にガムシャラに生きてた事にします←←

そして息子を護る為に孫(リト)を一人犠牲にするお祖父ちゃんの心境はいかに←

長いスカートってほら、躓いて転んじゃうじゃない←経験済


きっと第一印象が悪かった。物凄く(笑)
これは突っ込まずにはいられないw

エー、コワクナイヨー
ですです。
自分もよく知らないのですが、キャンチョメって物凄く臆病で、最初の頃は戦いに逃げてばかりいたんですけど、実は潜在能力が凄くて最終的にメッチャ強くなったとの噂が。
泣き叫ぶ白龍を見てた時に「こいつ、いつかメチャクチャ強くなりそう」って思って、実際最近強くなって来たので、あーやっぱこいつキャンチョメだなって。←

そんな!誤解です!!
顔が良くて性格に難ある未成年が好きなんです!!←

うわぁー凄い主人公タイプ(笑)
そして悩みがなんか面倒くさい(笑)

もしかしたら運良く勝てるかも…!

309ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/05(月) 10:53:46
【リマさんリマさん、時間があればでいいんでリマセナから続く家系図お願いします!】

310アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:47:05
【闘技場】

流石シンライジの血族。機転、瞬発力ともに動きが人間のそれじゃない。

水平回転より降り下ろされた刃により槍は弾かれ、僅かにしなる。続く上方からの刃を防ぐには槍を使ったんじゃ間に合わない。
アグルは踏み込んだ足の爪先に体重を乗せ、斜めに飛び退く。左耳のスレスレのところを刃が通過していった。

(そう易々とはいかないか…)

取り合えず一旦相手との距離を取り、一呼吸つく。
先程から観客席の方から聞こえる、例のオネエらしき一際目立つ声援が耳障りだ。

「…熱狂的なファンがいるみたいだな、全くもって羨ましい限りだ」

そうメイヤに皮肉を投げかけつつ、アグルは再び槍を構える。
そして地を蹴り、相手との距離を一詰めれば連続の刺突を放った。

311アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:49:54
【過去】

…そうだった。そう言えばすっかり忘れていたが、屋敷を抜け出して来たんだった。
もしかしたら出かけて行ったナディア達だって、もう既に戻っている頃かもしれない。

「だ…だって…、本当にビョーキだなんて知らなかったし…」

赤く染まったアブセルの顔が今度はみるみるうちに蒼ざめていく。

初めはリトや屋敷の皆を困らせてやろうと考えてのただの悪戯の筈だった。しかし今はもうそれどころの話ではなくなってしまった。

怒られるどころか、最悪やっぱり屋敷を追い出されてしまうかも。もしくは悪い人達が入れられると言う牢獄に連れていかれるか…。

…と、そこでアブセルはハッと気づいた。
ジルが笑っている。楽しそうに。

先程から妙に不安を煽ってくると思ったら、こちらの反応を見て楽しんでいたのだ。
そんな彼にアブセルは何だかムカムカとしてくる。ジルを睨み付けて言ってやった。

「…って言うかお前には関係ないだろ!何なんだよさっきからっ」

312アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:53:35
【リマ》自分にラブストーリーが書けるわけないじゃないですかーww…って鼻で笑おうと思ったけど…、ヨハン母の設定を見てちょっと書いてみたくなりました。彼女の名前はなんていうんですか?
ね、意地悪ですね(笑)
まともな神経の持ち主ならやっぱり辛いもんなんじゃないですかねぇ…

ヨハン…(´;ω;`)彼も可哀想な人ですよね…
てか素晴らしい設定の数々にもう感動してしまいました!
色々アイディアを戴いてるに、こっちは何もお返しできないで申し訳ないです;

爺も心苦しかったと思いますよ。両親から拒絶されているリトを見るのは彼にとっても断腸の想いだったことでしょう。
幽閉されてた頃ならまだしも、リトが人並みの感情を持ってからは心痛も増したんじゃないでしょうか

え、転ぶもんなんですか!?何で!?(笑)

何があったww
まぁそこはシエルの成長どころだと思って素直に喜びましょうよ(笑)

でもキャンチョメは確かいい方向に強くなったけど、白龍は悪い方向に強くなってるから、一緒にしたらキャンチョメが可哀想ですよ!←

あぁ、なるほど。ただの美形好きではないと(笑)てかリマさんの趣味も大概変わってますよねw

主人公タイプですが自分がその系統のキャラを上手こと動かせないので日陰に追いやられています(笑)

え、ないない←】

313メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/07(水) 21:23:33
【闘技場】

槍を相手にするに当たって一番注意すべきなのは、間合いの長さである。

刀剣に比べて圧倒的なリーチを誇る槍を前にして、距離を取るのは悪手。

かと言って、考え無しの前進は無謀なだけだ。

だが、一度その間合いの中、刃圏の内側へ入り込む事が出来れば槍は意外な程に脆い。

だからこその初手だったのだが……

「……地獄からの呼び声だ。

悪夢の頬擦りの刑に叩き込んでやるから、大人しく棒立ちしてくれれば助かるんだけど。」

一連の攻防で、メイヤは改めてアグルの実力の高さを認識した。

(高い身長故のリーチの長さと相まって、槍の間合いは驚異的。

間合いを詰めても案外冷静に対処して来る上に、反撃も速い。

何より、手の内を知られているのが一番痛いな……)

正直な所、予想以上だ。

繰り出される刺突の連撃も速く、鋭い。

イオリならば刀で捌ききるだろうが、自分にそこまでの技量は無い。

ならば。

(強引に突破するのみ!)

繰り出される刺突に対し、メイヤは剣を逆手に握る。

そして、剣の腹を盾にし前進。

致命傷だけを受けぬ様に刀身で刺突を防ぎ、強引に距離を詰めて行く。

魔狼の牙から削り出されたとされる真白の刃は、幅広の二等辺三角形に近い形をしており、半身になれば身体の半分程は隠せるのだ。

たが、如何に幅広の刀身と言えど全て防ぎ切る事は出来ず、隠しきれない部分に次々と裂傷が生まれていく。

しかし、多少の傷は覚悟の上だ。

刺突の嵐を突き進んだ先、刃圏の内側。

アグルの正面よりやや左へと進んだメイヤは真白の剣を投げ捨て、上半身を捻りながら踏み込む。

そして、渾身の右ストレートを放った。

314ベルッチオ(老翁) ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:25:04
【ポセイドン邸】

「お嬢様のお耳に入れるのも浅ましい話では御座いますが…」

言って老翁は僅かに目を伏せる。
そして五十年ほど経った今でもありありと思い出せる、昔の、あの人との記憶を語りだした。

…歳は18の時だった。
当事、ポセイドン本家に仕えていた母の勧めで、とある傍系の家に勤めることになった。

そこで、出逢ったのだ。
可憐で、そしてどこか儚げで、声をなくした美しい女性に。

――…
老翁は話した。己の過去を。ヨハンの出生に至るまでの経緯を。

「結局、私達が結ばれることはありませんでした。
ですが、お互い違う家庭を築いた後になっても、私はあの方のことを忘れることが出来なかったのです」

先代の旦那様…ミレリアの父が、仕事のパートナーにヨハンを選び、屋敷に招いた時は本当に驚いた。

今までヨハンについては、社交の場でまだ少年だった彼の姿を、一、二度と目にしたり。家督を継いだとか、事業の業績を伸ばしたとかを風の噂で耳にする程度だった。
だがその彼が、今や立派な青年となって目の前にいる。
どんな形であれ、老翁はあの人との間にできた我が子に見えたことを歓喜し、そして申し訳ない気持ちになったのだった。

315アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:27:01
【闘技場】

メイヤの拳がアグルの頬を捉える。
その渾身の一撃を食らい、彼の身はグラリと傾いた。

予想外だ。
まさか武器を捨てて突っ込んで来るとは。

(いや…馬鹿だろ…!)

そう、先のメイヤの行動はアグルにとっては考えられぬものだった。

まず第一に、武器を捨てたことだ。
例え今この時一泡ふかせることに成功したとしても、今後の試合の展開を考えれば、それは大きなハンデとなるだろう。
そして二つ目、先程の一撃で勝負を決めれなかったこと。

メイヤはもっと堅実な戦法を取る人間だと思っていたが…。

(なに考えてんだ…よっ!)

アグルは足をふんばり、ぐんっと上体を持ち上げる。
もちろん、わざわざ武器を拾う間を与えることもない。
槍を手の中で回し、周囲一体を凪ぎ払うかの如く振り回した。

316メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/13(火) 23:33:16
【闘技場】

頬を打ち貫く渾身の右ストレートは、確実にアグルへとダメージを届けた筈だ。

拳に伝わる確かな感触とアグルの表情に、メイヤは心の中で頷く。

弥都での修行の成果だろう、今のアグルの実力は自分とそう変わらない程だ。

得物にしても、槍と剣では間合いを考えるに剣の方が不利。

強引に間合いを詰めた所でアグルは冷静に対処してくる。

ならば、取るべき手は一つ。

相手の虚を突く事。

それはシンライジ一族の対人技術に置いても基本的な事でもある。

(武器を捨てた捨て身の一撃に後は無い、そして、今の一撃で倒せなかった俺の負けだろう。

当然、アグルはそう思うし槍の一撃を手ぶらの俺が防げる訳も無い。)

そして、虚を突くからには確実に仕留めなければならない。

だが。

今の一撃でアグルは倒れなかった。

反れた上体を戻し、手で槍を回すアグルの瞳には、怒りが見て取れる。

きっと彼は、自分が馬鹿な手を取ったと憤っているのだろう。

その憤りの反面で、こちらが武器を持たない事を確認し、すかさず一撃を加えて来るだろう。

その一撃は次の手を考え無いトドメの一撃の筈だ。

何しろ相手は武器を投げ捨て、防ぐ事も攻める事も出来ないのだから。

しかし。

それこそがメイヤの狙い目。

右ストレートへの反撃、薙払いの一撃を放つアグルへ黒瞳を向け、メイヤは一歩踏み出す。

更に、既に振り切った右腕は左腰へ添えられていた。

(剣も短刀も投げ捨てた、拾う間も無い。

だけど。

刃が無ければ創れば良い!)

その構えは迅速の抜刀を可能にするもの。

風切り音を耳に、迫る槍を視界に映し。

メイヤは自身に宿る“闇”で形成した柄を握る。

「ーー……居合い、神斬り!」

そして、漆黒の闇刃が抜き放たれ、一拍遅れて怒号の様な歓声が二人へと降り注いだ。

【決着はどっちでもイケる様に振ったんで、後はイスラさんよろしくお頼み申し上げます!】

317アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/18(日) 23:18:07
【闘技場】

試合の決着を証明するかの様に、割れんばかりの歓声が場内に沸き上がる。
中央フィールドを見やれば、刃を構えたまま静止する二人の姿があった。

その中で先に体勢を崩したのはアグルの方だった。
あーあ、と気の抜けた声を吐き、軽く肩をすくめてみせる。

「あまり手の内を曝したくはなかったんだけどなー…。
てかこれもしかして反則になんの?なんないよな?異能を使うな、なんて一言も言われなかったし」

彼の言葉が示す通り、そこには異様な光景が広がっていた。

メイヤを取り巻く様に、彼の足元から地面を突き破って無数の刃が伸びていたのだ。その様は剣山を連想させる。
足の爪の先から耳の裏側にいたるまで、いたる所をすれすれで刃が突き抜け、メイヤの動作を抑止している。

所々刃がかすり血が滲んではいるものの、致命傷に及ぶような傷は一つもなく、むしろよく居合いの動きを途中で止められたものだと感心する。
あのまま振り切っていたら腕が飛んでいたことだろう。

「降参…してくれると嬉しいんだけど」

アグルは手に持つ槍の刃をメイヤの喉元に押し当てたまま、眉一つ動かさず淡々とした口調で言った。


【ありがとうございます^^ではこの勝負、アグルの勝利にさせて頂きます】

318メイヤ/レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/20(火) 21:58:55
【闘技場】

必殺の居合いは抜き放たれるも、勝ちを得るには届かず。

闇刃を振り切る手前で動きを停めたまま、メイヤはゆっくりと息を吐いた。

「いや、異能が禁止なら先に俺の方が失格になっている筈。」

そして、自分の周囲を囲む刃の群れに目をやりながら、素直に参ったの言葉を口にする。

しかし、それに続いて苦笑いを浮かべつつ、嫌がらせの声を掛ける事は忘れない。

「俺の負けだよ、流石だな。

これであのオネェ系もアグルを追い掛けるだろう、強いオトコが好みらしいしさ。」

どうやら今回はアグルの方が一枚上手だった様だ。

突如現れた刃が何か解らないが、アレはほぼ回避不可能の必殺だろう。

(雷を操るに、砂鉄の刃か……?)

審判の試合終了を告げる声と共に消える刃群を横目に、メイヤもまた、投げ捨てた白刃を拾う。

取り敢えず、自分の出番は終わった。

イスラも回復した頃だろうし、後は歓声を上げる客側になって試合を見よう。

闘技場に溢れんばかりの歓声を背に、メイヤはその場を後にする。

ーーーーー

メイヤとアグルの試合が終わった後。

闘技場の簡単な整備が終わり、再び辺りに歓声が沸き上がる。

しかしその中心、闘技場に立つ眼鏡を掛けた青年、レックスは歓声など聞こえないとばかりに目を閉じていた。

「……で、貴方はどこのどちら様でしょうか。

開幕セレモニーの時にも居ましたが、僕の対戦相手であるイスラではないですよね。」

試合開始の旗は既に振られているものの、レックスは未だ動かない。

よくよく聞けば、歓声はヤジに変わりつつある。

「しかし、ですね。

試合は既に始まっている、と言う事は。

全力でやらせて頂きますよ、僕は今大分苛立っていますので……」

怒号の様なヤジを背に、レックスは三叉鑓を握る。

眼前には眼帯の男。

知った顔では無い、ならば。

「すみませんが、手加減はしません。

八つ当たり、させて頂きます!」

手にする鑓は、風の刃。

一薙で烈風を、二薙で竜巻を。

レックスは烈迫の気合いを込めて三叉鑓を左右に薙払い、生み出した竜巻を眼帯の男……シャムへと容赦無く放つ。

319シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/22(木) 01:49:26
【闘技場】

何やら知らないが、闘う前から相手の青年は立腹しているようだ。
彼の態度からするに本物の方のイスラ・フォードとも面識があるのだろう。
しかし、そのどちらもシャムとっては関係のないこと。

「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと来いよ。
こっちは暴れたくて暴れたくてウズウズしてんだからよぉ」

最初は面倒臭がっていた彼も今ではすっかりスイッチが入ってしまったようだ。
クロッソとの取り引きの話も覚えているのか、いないのか。

持ち前の強面を更に凶悪なものにし、シャムはおもむろに前に左手を翳す。
左腕に寄生した大顎が口を開け、迫る竜巻を全て吸い込んだ。

「お返しだオラァッ!」

かと思えば、次にそれは重火器の砲身の如く細長い円筒に形を変え、砲口から次々と榴弾を吐き出した。

320レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/23(金) 16:28:45
【闘技場】

竜巻を喰らい、榴弾を吐き出す。

それは左手と言えばあまりに奇怪、だが、客受けはかなり良いらしい。

前の試合とはうって変わって、派手な攻防に観客はヤジを歓声に変える。

その事が更にレックスを苛立たせるも、冷静さは欠かさない。

吐き出される榴弾を後方へと下がって回避し、榴弾が爆裂し巻き起こる土煙を隠れ蓑に再び竜巻を放つ。

(攻防一体の左手、面倒ですが……)

それと同時に左手、シャムの右側へと回り込む様に疾走。

竜巻が土煙を吹き飛ばし、シャムの視界が開けたであろう瞬間を見計らい、更なる加速。

大気を操り、背面へと集めていた圧縮空気を解放。

加速に継ぐ急加速で一気に距離を詰め、三叉鑓による勢いに乗った刺突……刃先に乱気流を纏わせた一撃を放った。

「狙うならば、右側がセオリーでしょう!」

321ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:08
【過去】

「酷いなぁ、心配してあげてるのに。…あ、リト、食べてすぐ寝っ転がっちゃダメだよ。もう少し起きてようか。」

アブセルをからかいながらもリトの動きには敏感で、横になろうとしていたのを止める。そして代わりに腰の辺りにクッションを敷くなどしてなるべく楽な態勢を取らせてやった。
アブセルに放った「心配」は嘘っぽいが、実際面倒見はいいようだ。

「……」

何処かのお屋敷の子供。
人を雇う程なら裕福であるはずで、生活面においても問題はないはず。
しかし、そのわりにリトは痩せ細っているし、いくら病気だからと言って顔色が不自然に悪過ぎる。先程医者に様子を聞いたら貧血もあると言っていたけど…
それに、

「リト、寒くない?」

ジルの問いかけにリトは小さく頷く。

「ちゃんと口で教えて」

「…寒くない…」

この口数の少なさが気になる。
…他人のこと、加えて今日初めて会った人物の心配をしたところでどうにもならないが。

ジルは不意にリトの頭を撫でる。
一瞬彼の身体がビクリと動いた。とても緊張している。

「…アブセル。」

リトが怯えているのが分かるが、それでもジルは手を止めない。悪意のない接触に慣れた方が良いと思ったからだ。
そしてリトを撫でたまま意識はアブセルへ。

「リトに興味があるんでしょ?ならさ、虐めるんじゃなくて気遣ってあげなよ。そっちの方がリトにとっても、君にとっても良いと思うな。」

322ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:50
【ポセイドン邸】

父が嫌いだった。
本当はリトが生まれる前から、ずっと。
ポセイドンの血を引き、その力まで継いだ自分を、父は特別目にかけていた。
ポセイドンの当主としての英才教育、謂わば帝王学なるものを強要したが、自分は格式ばったものが大嫌い。自由奔放に振る舞い、父の言うことなど微塵も聞こうとしなかった。
父からは何処か野望めいたものを感じていたから、子供ながらに警戒していたのだろう。

「…そうか。」

老人の話を聞いて、今まで引っかかっていた謎が解けた気がした。
本家に婿入りし、ヨハンはポセイドンの家系を継ぐ者の父となった。だが彼はそれでは満足出来なかった。優位な肩書き、立場だけではなく、自身が一族の頂点に立ち、実権を握りたかったのだ。
自身の出生について彼が知っていたかは不明だが、それを抜きにしても自身の育った環境が決して恵まれたものではなかったから。最下層の身分を払拭しようともがくあまり、どこかで道を間違えてしまった。

彼は娘を利用して自分の力を確かなものにしようとしたものの、どれだけ試みてもナディアは彼の思い通りにはならなかった。
そしていつしかナディアへの干渉はなくなっていったが…それをただ”諦めた”と思っていたのが甘かった。
自分は救いようのない馬鹿だと思う。父の野望が、もっと恐ろしいものに変化していたことに気づかなかったなんて。
彼はただ方法を変えただけ。”その対象”を、自分からリトに変えただけだった。

(リトがあんな目にあったのは私も一因ってことか…)

嫌なことに気づいてしまった。
ナディアは自嘲気味な笑みを浮かべた。

それにしても、

「今までずっと黙ってた事を、何で今更話すの?」

50年以上も親子である事を隠し、20年以上実の息子、そして孫に仕えてきた。
これほど沈黙を貫いていたにも関わらず、何故今になって事実を打ち明けるのか。

「父さんは不遇な人生を歩んで来たから、同情して許してやれと?降って湧いた祖父に免じろとでも?悪いけど、打ち明けられたところであんたを祖父として接する気はないよ。」

あぁ、言われてみればヨハンと老人は似ているところがある。
血の繋がりをもろともしない冷酷な面がそっくりだ。

「要するにあんたにとって大事なのは”旦那様”だけだもんね?孫であるはずのリトが苦しめられても見て見ぬ振り…違うな、あんたは寧ろ助長してた。私やヨノのことは過保護にするくせに、リトには冷たかったもんね。」

323リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:40:30
長らく更新出来ずスミマセン> < 学会の準備でずっとバタバタしてました(;-ω-)ゞ

ヤツキ>>
【お待たせしました、家系図ですっ
imepic.jp/20150125/584890
だいたいこんな感じ?
見えづらいけど> <】

イスラ>>
【わーい←
ヨハン母の名前はレイシーって事にします(^0^
ジル、根本は変わらないのか…
ジルは多分、のび太に優しく、ジャイアンやスネ夫に意地悪するタイプだと思います←←
んー、まともな神経じゃないですからねぇ…(???)

可哀想ですかね?←
設定だけ思いついて膨らますことが出来ないんですよね(笑)
いえいえ、寧ろイスラさんが自分の思いつきを素晴らしく改良してくださるのでとっても嬉しいです(笑)

爺も可哀想に…( p_q)和解できると良いですね(;-ω-)

スカートの裾を踏んでしまったり、スカートに足が絡まったり、ロングスカートはとっても危険です←

シエルにもとうとう女装癖が…(違
シエルも大人になったのねー(棒読み)

キャンチョメが可哀想なんですかww
いやいや、白龍だってジュダルにとっては良い方向に成長してますよ!
「お前の為に俺頑張る!」って具合に白龍の尻に敷かれてる感じが可愛い可愛い← 白龍のお願い(と言う名の無茶振り)にとっても弱いし!

はい、奥が深いのですよ←
えーそんなことないですよー(棒読み)

いやいや、十分使いこなしてますって!!

ジルの弱みを握れば…←】

324シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:51:17
【闘技場】

土煙で何も見えない。…が、正確性よりも「数撃ちゃ当たる」戦法を好むシャムが、砲撃の手を休めることはない。

相手の戦意喪失を確認するのは、手当たり次第に乱射した後でいい。彼がその間に死亡してしまう可能性もあるが、そこはまあ仕方のない話だ。

そう考えていた矢先、不意に強い風が吹き荒び周囲の土煙をなぎ払った。
視界が開け、右目の端を何かが掠める。

「…あぁ?」

そして次の瞬間、シャムの身体は宙に吹き飛ばされた。
壁に激突し、地面に落下する。

右半身に違和感を覚え見てみれば、回転するスクリューに巻き込まれたかの如く右手はぐちゃぐちゃ。右胸の肉は抉れ肋が剥き出している有り様だ。

瞬く間に会場は騒然となった。この状況でもなお歓声を上げる血の気の多い者もいるが、みな血溜まりの中に沈み動かないシャムを凝視していた。

「…くッ…、くははははははッ!」

しかしそんな中、突如として大きな高笑いが場に響いた。
声の発信源は他でもないシャム自身だ。
恐らく彼のことを知らない観客の殆んどが、気が触れてしまったのでは…と思ったに違いない。

呆然とする会場の空気を置き去りに、彼は一頻り笑い続ける。そして一つ大きく息を吸い込み…

「いッてえなゴラァッ!!」

…急にキレた。
普通の人間なら痛いで済む話ではないが、しかし血痕こそ残れ彼の傷はもうそこに存在してはいなかった。

だがそれに反しシャムの怒りは収まらない。
憤然と立ち上がる彼の左腕が大きく蠢いた。
寄生生物の融合範囲が左腕から背中、右肩まで広がり、あるものに形を為していく。

そしてまるで翼を拡げるかの如く、シャムの背後から四挺の口径30mm機関砲、二機の多連装ロケット砲が展開。

それぞれの兵器が一斉に火を吹き、闘技フィールドまでならず、観客席にまで嵐の様な弾幕が蹂躙した。

325アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:53:45
【過去】

ジルの言葉に対し、アブセルは返事に窮した。

「別に興味なんて…」

ない、と含んだ言いかたをするものの…やはりそれは本心からのものではないらしい。

その証拠にアブセルはちらりとリトを見やる。
ふいに彼と目が合うと、目の下をほのかに赤らめ、ぷいっと直ぐに顔を背けてしまった。

「…気遣ってあげるって…どうやったらいいか分からない…」

いじわる…は、もうしないと思う。…多分。
今回のことで懲りたから。
だが人に優しくするという行為は、今のアブセルにとっては少々ハードルの高いものでもあった。

そもそも彼は、今まで子供同士の交流の場において、気遣いなるものの配慮をされた経験がない。
いや、そもそもそれを交流と呼んでいいのかどうかもいささか疑問ではあるが。

いずれにせよ彼の場合、他の子との接触といえば、謗られるか、石やボールを投げつけられるか、倉庫に閉じ込められるか…など。おおよそ笑い者にされ、嫌な思いをするものでしかなかった。

そんな中にいれば、当然アブセルの対人意識も捻くれてしまう訳で。

唯一の味方だった母に見捨てられたことも相成ってか、彼は自分の周囲に壁を作るようになってしまった。
他人に心を許すことを極端に恐れ、それどころか人を寄せ付けないため、自ら嫌われる様なことをする節さえあった。

拒絶されて傷つくのが怖かったのだ。
ずいぶん後ろ向きな考え方ではあるが、それが彼なりの身を護る術だったのだろう。

「本当は仲良くしたい」しかし「人と深く関わるのが怖い」そんな異なる感情が共存しているせいで、アブセルは他人とのコミュニケーションが上手く取れずにいたのだった。

326レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 15:15:34
【闘技場】

確かな手応えは、あった。
乱気流を纏った鑓の矛先はさながらスクリューの様なモノ。
直撃すれば唯では済まない。

しかし。

あまりの威力に外壁まで吹き飛び、血溜まりに沈む対戦相手は哄笑を上げる。
そして更に、一通り笑い終えると同時に怒号。

それを合図に対戦相手、シャムの左手から肩、背中に掛けてが蠢き、様々な重火器が姿を現した。

「……人外の方、ですか。」

そして、その砲口は一斉に火を噴いた。
その威力は凄まじく、闘技場のみならず観客席にまで弾幕が降り注いでいく。
流石の観客達も歓声を悲鳴に変えて逃げ回り、周囲は大惨事だ。

しかし、それでも尚審判のマルトは試合中止の声を掛けず、涼しい顔……何らかの異能を使い、弾幕を防ぎながら試合を見ていた。

それを視界の端に映しながら、レックスは疾走。
超高密度まで圧縮した大気分子の小盾を構え、弾幕の嵐を進んで行く。

(銃弾の軌道は基本的に直線のみ、ロケット砲にだけ気をつければ何とかなります!)

しかし、嵐の様な弾幕全てをかいくぐるのは不可能であり、進む事に銃創が増えて行く。
だが、近付かなければ勝気は無い。

(異能による遠距離攻撃は左手によって無効化されますが、近接攻撃なら通じます。

それに、あの“奥の手”を確実に当てるには近付くしか……!)

レックスは破壊の権化と言っても過言では無いシャムへ、鑓と盾を構え確実に、距離を詰めて行く。

ーーーーー

「凄い騒ぎだな……でもアレじゃあしょうがないか。」

逃げ惑う観客達が入り乱れる観客席で、メイヤは呆れた様な、苦笑いの様な声を漏らす。
アグルとの試合を終え、簡単な怪我の治療をした後に、待ち合わせていたサンディと観客席で試合を観戦していたのだが……

何でもアリとは言え、暴れ回るシャムは如何なモノか。
観客にも既に負傷者が出て居り、それがより一層観客達の恐怖症を煽っている様だ。

何より、そろそろ自分達も避難した方が良さそうだ。
比較的人の出が少ない出入り口を探し、メイヤは立ち上がる。

「サンディ、俺達も避難しよう。

流石に観戦してるだけで怪我するのはいただけない。」

そして、サンディの手を引き、歩き始めた瞬間。
不意に現れた人影……二人組の男、黒髪に面の男と白髪の少年がその進路を塞ぐ。

「行かせないよ、折角周りの目を気にしなくて良さそうなんだから。

喰わせて貰うよ、僕達“四凶”が。

ねぇオンクー、一番弱そうな天照大神から喰らって行けば、順当に“神格”を上げれるよねぇ?」

327ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 22:07:55
【おぉー!リマさんありがとうございやす!】

328ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:26:43
【ポセイドン邸】

なぜ今さら真実を打ち明ける気になったのか…。
正直な所それは老翁にも分からなかった。
ただそれがヨハンの死に起因することは確かだったが…しかし、それだけだった。

ナディアの言う通り、厚かましくも情けを請い、許してやって欲しいと考えてのことだったのか。
それとも、ヨハンの娘である彼女に、彼のことを知って貰いたかっただけなのか。

または、その事実を自分一人の胸に抱え続けることに疲れ、懺悔をしているつもりにでもなっていたのか。

いずれにしても自分本位なものに違いはないが。しかし、ともすれば、まだ懺悔は終わっていない。
重ねた罪は全て、最後まで告白しなければならないのだ…。

「…リト坊っちゃんに対しても、大変申し訳ないことをしてしまったと思っています…」

苦々しい口調で老翁は口を開いた。
そして少し間を置いて、次にこうも続けた。

「奥様の心のご病気…、お嬢様はどう思っていらっしゃいますか?」

繋がりを考えれば、何の脈絡もない様に思えるその言葉。いきなり話が飛び、ナディアからすれば訳が分からなかったことだろう。
しかし彼は気にしていなかった。

「不自然とはお思いになりませんでしたか?
奥様が坊っちゃんの誕生を特に心待ちにしていたのは周知の事実ですが…。
あの方はもともと気の強い方でいらっしゃいます。どんな理由があろうと、あそこまで豹変なさるのは少し考えにくいものではないでしょうか」

そして彼はナディアを見つめ、はっきりとこう告げた。

「あれは私の暗示によるものです」

329ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:28:33

ナディアは言った。あんたはリトに冷たかった、と。

確かにそうだったと思う。
リトに対しては、一線どころか二線も三線も引いて接していたから。

それは"情が移らないように"とか、"彼の行く末を知る者としてのけじめ"とか、そう自分自身に言い聞かせていたが。
正直な気持ちを言うと、自分は心のどこかで彼のことを恨んでいたのかもしれない。

もともとヨハン達家族の関係にはどこか危ういものがあった。
ヨハンとミレリアの間には少なからず蟠りがあったし、娘…主にナディアも父親に対して不満を抱いている様だった。

それがリトが産まれたことで、より顕著な形となって表面化しようとは誰が予想しただろう。
リトを巡って家族間の溝は深まり、修復不可能なまでに軋轢が生じた。

勿論それはリトのせいではないが。しかし結果として家庭内に新たな確執を生み、ヨハンを更に狂わせる原因となった彼を、たぶん自分は許せなかったのだと思う。

「坊っちゃんや奥様のことだけではありません。
私はトーマ様ご家族の事件を含め様々な汚行に関わり、旦那様に手をお貸ししてきました」

更に老翁は吐露し続けた。

ヨハンの権力志向は老翁も危惧しているところがあったが、その異常性は次第に目に余るようになった。
我欲の為には時に強引とも思える行為…賄賂や暴力に訴えることも屡々であった。

止める機会はいくらでもあった筈だった。
いや、実際に口を出すこともあったが、最終的に自分は彼の指示に従い続けた。
こんなことを続ければ、いずれ破滅するのは目に見えているのに…だ。

彼の望みを叶えることが、自分が彼にしてあげられる唯一の罪滅ぼしだとでも思ったのだろうか。どんな形であれ、彼に頼られることが嬉しかったのだろうか。

…本当に、自分という人間はどこまで愚かなのだろう。

「ご当主様…」

ふいに老翁は床に膝まずいた。
深く身を屈め、ナディアの足元に叩頭した。

「誠に申し訳ございませんでした。
弁解の余地もございません。ご当主様の判断の元、然るべき処分を所望いたします」

330イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:41:17
リマ》ありがとうございます^^いつ完成するか分かりませんが、頑張ってラブストーリーなるものを書いてみます

ああ、っぽい(笑)ちょっとしたドラえもんですね←
普通じゃないのか…(笑)

可哀想ですよ!ミレリア達の三角関係が今も続いていたなら、自分はトーマよりヨハンを応援してたでしょうね←
そうですかね?何か勝手に色々改良しちゃってすみません;

もう別に和解しなくてもいいかも(笑)爺だってもう引退の年齢だし、屋敷から追い出しても構いませんよ←

マジか、そんなリスクを抱えながらも皆さん頑張って履いてるんですねw

ジュダルが尻に引かれてるんだ…!
まさか彼がそんな萌えキャラになろうとは…(笑)

ジルの弱みは…妹ですかね?
じゃあ妹を人質にとって…ってそんな卑怯なこと出来ませんよ←

331シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/02(月) 19:45:26
【闘技場】

「死ッね、おるァアアァァアッ!!」

無数の砲弾にも臆さず、こちらへと疾走してくるレックスに対し、負けじとシャムも砲火で迎え撃つ。

しかし、その時である。何の前降れもなく、脳天に何かが直撃してきた。

不意の一撃にたまらず横転しそうになる。
その傍ら、彼の頭に蹴りを浴びせた張本人…DDは、宙返りをして華麗に地に着地してみせると、素早くシャムの頬を両手で挟み、その口に唇をあてがった。

「ぶッ…!?」

彼の口づけにはエナジードレイン的な効果でもあるのだろうか。
初めの内は大暴れしていたシャムも、終いには力が抜けたようになり、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。

「テッメ…ッ何しやがる、このクソカマ…!」

不快感を露に服の袖で口を拭い抗議の音を上げる彼に対し、DDは意にも介さない様子で言葉を返した。

「いくらなんでもやり過ぎよぉ。その熱くなると直ぐ周りが見えなくなるの、悪いクセよ。
あ、ごめんなさいね坊や。迷惑かけちゃって」

そうしてレックスに軽く声をかけた後、DDは審判に棄権の旨を告げる。
そして起き上がれないでいるシャムの襟首を無造作に掴んだ。

「あ〜あ…これで取引の話はパアね。
ま、貴方を人選したこっちのミスでもあるから、あまり強くは言えないけどー」

傍目からすればシャムを止めに来た様に見えるその行為だが…、捉え方を変えれば、レックスの"何か"から彼を庇った様にも見える。
まあ、そこは本人のみぞ知ると言ったところだろうが、当のDDはシャムを引き摺りながら、溜め息まじりにフィールド内を後にした。

そして――…

シャムが棄権し、危難が去ったかの様に思われた中、今度は耳をつんざくような咆哮が会場中にこだました。

六つの脚に六つの翼。
大犬に姿を変えたオンクーが、そこにいた。
大きく裂けた口からだらしなく舌と涎を垂らし、唸り声の様な不快な音を発する。

「…じゃあクロス、天照はお前にあげるよ。
ワタシは…」

言って、彼はちらりとメイヤを見た。
いや、正確には言えばこの場合、見るという表現は正しくなかったかもしれない。何しろそれには眼が存在しなかったのだから。

それでも彼はしっかりとメイヤを射竦め、殺意を孕んだ牙を剥き出しに、相手に飛びかかった。

「こっちの"狗"に借りがあるね!」


【クロスとオンクーは今回で(物語上から)リタイヤする流れですか?】

332レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 17:57:48
【闘技場】

突然の乱入者によって無力化される対戦相手。

二人は顔見知りの様で、審判へ棄権の旨を告げ、闘技場を後にした。

その姿を見送り、レックスもまた、歩きだそうとするが……

(なん、ですか?アレは……!?)

突如として響き渡る、雷鳴の様な咆哮に足を止めた。

音のする方を見れば、三対の翼と脚持つ異形の影が観客席で暴れているではないか。

更に、よくよく見れば暴れまわっているのは異形だけではない様だ。

仮面を付けた青髪の男達が観客へと襲い掛かっているのが見える。

それも、数十人と数も多い。

「これは、不味いですね……!!」

試合も中途半端に終わり、苛立ちは募る一方だ。

しかし、今は観客達を助けるべきだろう。

審判のマルトへと視線を投げ、共に頷くと同時にレックスは駆け出す。

しかし。

レックスが観客席へと辿り着く事は叶わず。

どこからともなく現れた人影が放った、絶対零度の吹雪が無慈悲なまでに吹き荒れ、闘技場を蹂躙していく。

ーーーーー

「全く、DDが止めに入らなければどうなっていた事やら……」

シャムを引きずり闘技場の出入り口へと歩いて来るDDへ、フィアは労いの声を掛けた。

シャムが負ける事はないが、あのまま戦えば周りだけでなく、本人も決して浅くは無い傷を追っていただろう。

そう思える程に、あの眼鏡の青年の実力は高い。

「まぁ、怪我しなかっただけ良しとしましょう。

クロッソとの取引はおじゃんだけどね……」

闘技場から続く選手用の通路を歩きながら、フィアはため息を吐いた。

それと同時に。

闘技場を揺るがす咆哮と、それに続いて凍える様な冷気が通路内を吹き抜けていく。

「……何、この強大な“氣”は。」

更に、膨れ上がる強大な二つの“氣”を感じ、フィアは思わず呻いた。

「この感じ、十字界で戦った者に似てるけれど……まさか!!」

ーーーーー

咆哮に続き吹き荒れる猛吹雪。

一瞬にして視界を埋め尽くす真白のそれは、レックスの身体を軽々と吹き飛ばし、闘技場の壁へと叩きつけた。

「か、は……」

突然の衝撃と、壁へ叩き付けられたダメージは重く、レックスは直ぐには動けない。

十数秒の間を置き、鑓を支えにゆっくりと立ち上る。

吹雪により視界はすこぶる悪いが、何者かがマルトと戦っている様だ。

「いったい何が起こっているのでしょうか……!?」

333メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 18:05:22
【闘技場】

そう言えば、闘技会の開幕セレモニーにてその姿を見た気はする。

更に思い出して見れば、弥都で刃を交えた事もあった。

「巷で噂されてるらしい異能者狙いの二人組は、お前達だったんだな。」

行く手を阻む二人組へ、メイヤは固い声を返す。

どうやら彼等の狙いは自分達だった様だ。

逃がすつもりは無いと言った様子の二人を視界に収めながら、メイヤは闘技場へと目を向ける。

(あっちは終わりか……)

何やら乱入者が現れたらしく、試合は終わった様だ。


これで避難する理由は無くなったが、今は戦うしかないらしい。

雷鳴の如き咆哮を上げながら、異形の大犬へと姿を変えたオンクーへ、メイヤは刃を抜き放つ。

そして、飛び掛かりの一撃を刃で斬り払い、後方へ跳躍。

着地と同時に闇の鎧を身に纏い、左手を前へ。

「犬に狗呼ばわりされるなんてな、大人しく犬小屋へ帰ってくれたら助かるんだが。

来いよ、躾てやる。」

指をクイクイっと動かし、メイヤはオンクーを煽った。

ーーーーー

あの姿になったオンクーはそう簡単には止まらない。

周囲を見渡せば、観客席では暴動が、闘技場では猛吹雪が。

どうやら色々と事が重なったらしい。

たが、今はそれもまた好機。

大犬へと姿を変えたオンクーから視線を変え、クロスは眼前の少女へと目を向ける。

「弥都とこの街でたらふく異能者を喰ったからね、“咎落ち”の心配も無い。

さぁ、喰わせてもらうよ……天照大神!」

変装用の面を投げ捨て、クロスは薙刀を振り上げる。

そして、小柄な身体からは想像もつかない程の速度と重量の乗った一撃を繰り出した。

更に、それと同時に大気中の水分子を操作し、作り出した二本の水の槍でサンディへと挟撃を放つ。

【そうですねー、四凶決着といきませう!】

334アグル他か:2015/02/09(月) 21:44:54
【闘技場】

突如として襲撃を謀る謎の男達と、会場中に吹き荒れる猛吹雪。
所所方方で大混乱が巻き起こる中、飛び掛かってきた男の一人を蹴り飛ばし、アグルは観客席からレックスの傍らに降り立った。

「大丈夫か、委員長」

この緊迫した雰囲気にも関わらず、彼の態度はいつもと差異がない。どこか気怠気なものだ。

「逃げるんなら肩貸すけど」

そして眼前で繰り広げられる戦いに目を向けたまま、レックスに言った。

――…

闇の鎧を纏った相手を見据え、オンクーは口の端を吊り上げる。堪える気もない笑いが息として洩れた。

「勘違いして貰っちゃ困るよ。
ワタシが用があるのは、お前じゃなくてその"中身"ね」

弥都で対峙した折、窮地に追いこまれた筈の彼の態度が、突如として豹変したのをオンクーは見ている。
それはまるで人格そのものが変わってしまったかの様な。
どんな仕掛けかは知らないが、あれは喰いがいがありそうだった。

「その化けの皮、さっさっと剥がしてみせるがよろしいよ」

オンクーは首をもたげ、大顎を開く。
呪を宿した黒々とした業火を吐き出し、周囲一体を火の海に化す。そしてその場から跳び上がり、己の巨躯をメイヤに叩きつけるべく襲いかかった。

――…

少年の放つ挟撃がサンディに襲い掛かる。

しかし、その瞬間。彼女を中心に目映いばかりの光が膨れ上がった。
二振りの水槍は一瞬のうちに蒸発し、薙刀の刃先はどこからか現れた勾玉によって止められる。

彼女の身代りとなり粉々に砕け散った硝子片が周囲の光を拾い、ちらちらと輝きを見せる中。
額に日輪の印を宿し、薄紅色の羽根を背に広げたサンディはその手を鞘へ。

「まったくもう…。私達に用があるんなら、なにも他の関係ない人達を巻き込むことないじゃない!」

立て続けに事が起こりすぎて何がなにやら分からないが、取り合えず今が危機的状況だということは分かる。
力の出し惜しみをする必要はない。最初から全力だ。

腰を落とした姿勢から刃を一気に引き抜く。炎を纏った抜き身が大気を焦がし、一直線にクロスへと迫っていった。


【了解です!】

335レックス+キール ◆.q9WieYUok:2015/02/09(月) 23:51:23
【闘技場】

「大丈夫です、一人で立てますから。」

三叉鑓を支えになんとか立ち上がるレックスの隣。

観客席から飛び出して来たアグルは何時もと変わらない。

肩を貸そうかとの声も聞き慣れた気怠げなモノだ。

その声と、この場から抜けようとする問い掛けにレックスは憤りを感じるも、深く息を吐き心身を落ち着かせる。

「助けに来てくれたのは嬉しいですが、逃げる訳には行きません。

誰が、何の為に襲撃を掛けたのかはわかりませんが……ここで止めないと街に被害が出ますから。」

そう、今はまだ闘技場内だけだが、このままでは必ず街へ戦火は広がるだろう。

見れば観客席でも戦闘が繰り広げられている。

如何に闘技場が巨大だとしても、激闘が続けば崩壊は免れない筈だ。

刺す様な冷気を吸い込み、吐き出し。

レックスは鑓を構え、眼前を見据える。

そして、飛び出そうとしたその時。

吹雪を突き破るかの勢いでマルトが吹き飛ばされ、数刻前のレックスと同じ様に闘技場の壁へと叩き付けられる。

レックスと違うのは、辛うじて受け身を取り、支えもなしにしかと立ち上がった所か。

だが、よく見ればその姿はボロボロで、額からは鮮血が溢れている。

「……お前達、避難してなかったのか。」

しかし、ダメージを感じさせない動作で剣を構え、マルトはレックスとアグルの二人へ声を掛けた。

「本当なら、逃げろと言いたい所だが、手伝ってくれ。

団長が来るまで奴を止める。

正直俺一人じゃあ無理だが、四神が二人居れば何とかなる筈だ。」

その問い掛けにレックスは無言で頷き、チラリとアグルへ黒瞳を向ける。

しかしすぐさま視線を前に戻し、来た。

圧倒的なプレッシャーを放ち、吹き荒れる猛吹雪の中を進む一人の女性。

視界を埋める真白の中、黒のスーツを着こなす四霊が一人。

「合い見えるのは初めてね、四神のフレイヤとトール。

私は四霊、霊亀のキール。

初対面で悪いけれど、アナタ達。」

吹雪に髪を靡かせ、キールは氷点下の声で囁く。

「ここで皆殺しよ。」

そして、その姿が互いに視認出来る距離まで近付いたと同時に。

キールは絶対零度の波濤をマルトを含む三人へと放った。

336メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/10(火) 15:15:36
【闘技場】

異形の大犬が洩らす笑い声に、メイヤは眉を細める。

しかし、続く言葉で彼が何を言っているかを理解し、応えた。

「……俺は俺だ。

それに、化けの皮を剥がされるのはそっちの方だろう!」

そして、吐き出される黒火に臆する事無くメイヤは駆け出し、疾走。

黒火の海を駆け抜けながら、巨大な闇刃を生成。

襲い来る巨躯へ狙いを定め、刃を横薙に一閃……するも、オンクーの一撃は予想以上に重く、振り切る事は叶わず刃は砕け散って行く。

更に、刃が砕けバランスを崩した所にオンクーの巨躯が飛来。

避ける事は叶わず、辛うじて左腕でそれを防ぐもメイヤは吹き飛ばされ、観客席へと叩き付けられた。

ーーー……

弥都で対峙した時は、此方の完敗だった。

首筋へと突き刺さる牙と、溢れ出す血の感触を最後に、自分は意識を失った。

そして、次に目覚めた時には屋敷の中で、傷も消えていた。

あの時は、誰かに助けて貰ったのだろうかと思っていたが……

ーーー……

燃え盛る黒火に囲まれながら、メイヤはゆっくり立ち上がる。

防御の為に構えた左腕は、肩口まで鎧が砕けているものの、折れてはいない。

(封じられし“悪神”……奴の狙いはソレか。

そして、以前戦った時に俺を助けた、いや、“器”としての俺を守る為に顕現したんだろう。)

弥都でオンクーを退けたのは自身に宿る力であり、自身を蝕む力。

それは強大な意思を持ち、常に自分へ囁き掛けている。

“闇を喰らい、身体を渡せと”

だが。

バルクウェイでの戦いの後始末として、深淵から溢れ出す闇を喰らい尽くした以降。

“悪神”は以前よりも成りを潜め、反比例して扱える闇の総量は増えた。

「闇を喰らい尽くす“悪神”。

俺がアンタを喰らってやるよ……!」

弥都では敗北を喫したが、今は負ける気がしない。

立ち上がり、メイヤは再び刃を生成。

右手に長刀、左逆手に短刀を。

破損した鎧も修復し、再度駆け出す。

その速度は先程よりも数段速く、漆黒の影は瞬く間に大犬との距離を詰め、刃を二閃、三閃、四閃、五閃。

勢いの乗った回転斬りは、増殖し続ける闇の小刃を纏い、竜巻の如く膨れ上がる。

そして、全てを切り刻む嵐と成り、オンクーの巨躯へと襲い掛かった。

337クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/12(木) 15:54:43
【闘技場】

水槍は蒸発し、薙刀の刃は勾玉により防がれ。


光舞う中現れしは、天照大神。

額に日輪、背には薄紅の羽を背負うその姿を見、クロスは驚きの表情を浮かべる。

「まさかその姿になる程、力を使いこなせているとはね……

正直見くびっていたよ、君の事を。」

しかし、その表情は直ぐ様歓喜の笑みへと変わる。

それと同時に、サンディが放つ炎の斬撃を水盾で防ぎ、爆発。

水蒸気爆発により巻き起こる烈風が吹き荒れ、それに乗って濃霧が周囲に広がっていく。

「でも。

今の君は四神の中で一番脂がのって美味そうだね。」

そして、濃霧を突き破ってクロスは飛び出す。

しかしその姿は、先程までの少年の形を成さず。

「この世は弱肉強食だよ、そして僕達四凶は全てを喰らう者。」

白髪頭からは二本の巻角が、小柄だった上半身は筋骨隆々に。

下半身は四つ脚、真白の綿毛に包まれた馬脚へ変化。

右手の薙刀は消え失せ、氷の突撃槍を。

逆の左には氷の大盾を持ち、蝙蝠の翼をはためかせ、現れしは異形のケンタウルスか。

異形の巨躯へ変化しつつも、表情だけは幼い少年のまま、クロスは力を解放させたサンディへ突撃。


「見せてあげよう、 饕餮の力を!」

勢いの乗った、鋭くも強烈な刺突を繰り出した。

338アグル、サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/15(日) 20:57:58
【闘技場】

飛行艇で初めてマルト達を見たとき、直感的に自分との力の優劣差を感じ取った。当然、劣っているのはこっち…という形でだ。

しかしその彼が今、自分とレックスに加勢を求めている。
彼の表情から察しても、どうらやら相手はよほどの化物らしい。

アグルは何も答えず、無言で視線を動かす。
見えるは圧倒的なプレッシャーを放つ黒スーツの女に、迫る絶対零度の波濤。

全てが凍りつく前に、地に槍を突き、アグルは強力な電磁波を周囲に発生させる。
あらゆる原子の運動を停止させる絶対零度の攻撃に対し、こちらは反対にそれらの振動を増幅させる。

彼方と此方で二分に分たれた空間。
しかしその境界線は徐々にだが、じりじりと押されている。

「……ッ」

このままでは長くは持たない。
アグルの瞳に僅かながら焦燥の色が滲んだ。

――…

濃霧を破って、異形の怪物が飛び出してくる。その姿を見るやサンディは大きく目を見開いた。

しかし驚いている暇などなかった。
突撃槍はもう目の前だ。

とっさに刀を構え障壁をはるも、それは薄氷の如く易々と破られ、サンディの身体は三階の特別席まで吹き飛ばされる。

「いたた…」

強く身体をぶつけた様だが、背中の羽の加護か怪我は大したことはない。
どうやら槍の先も上手く外れた様だ。

それらを一瞬で確認するとサンディは直ぐさま起き上がり、攻めに転じる。
手すり壁に立って手を翳すと、周囲に浮かぶ無数の勾玉が数珠のように一括りになった。

それを一振りすれば勾玉はひとりでにしなり、変則的な線を描いてクロスの身を縛り捕らえた。

「"紅蓮華"!」

それを好機と見て、サンディは更に巨大な火柱を掲げる。それは大きな渦となりクロスを呑み込まんと襲いかかった。

339ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/02/17(火) 22:20:00
【過去】

「分からないって…」

まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
しかしたしかに、”気遣うとはどうすることか”を具体的に言葉で表現するのは難しい。

「……」

アブセルに一本取られた?なんか悔しい。
こうなったら何としても言葉を見つけなければ。

などと考え出したジルより先に、フェミルが動いた。
フェミルは不意に立ち上がったかと思えばアブセルのもとへ。そしてその手を引きリトの側まで連れてきた。

「おともだち」

言ってフェミルはアブセルの手をリトの手に重ねる。

その様子にジルは笑みを浮かべる。

「うん、そうだね」

フェミルの頭を撫でながらジルは続けた。

「難しく考えなくていい。友達として、ただ側にいてあげればいいんじゃないかな?そうすれば、今は見えないことも自ずと見えてくると思うよ。」

そして、

「何と無く心配だけど…今日会ったばかりの僕には分からないし。勝手に抜け出して来たならあまり長居させられないよね。リトが動けるようになったら帰った方がいいかも。」

340オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/18(水) 00:57:56
【闘技場】

「…面白くない奴ね」

あくまでも自分は自分だと主張する相手に対し、オンクーは心底つまらなそうな顔をする。
そして竜巻の如く迫る刃の嵐を一瞥するや、地を蹴り、その中に自ら飛び込んでいった。

「チュンツァイ!引っ込んでろよっ!」

六つの脚を使い、文字通り嵐を爪で引き裂く。
そしてその勢いのままメイヤへと突っ込み、相手の胴に牙を突きたてた。

オンクーは彼を捉えたまま、そのまま前方の壁に激突する。
下顎を壁に押し付け、にやにやと喉から音を鳴らした。

「ほらほら、どうしたね?このまま引き千切っちゃうよ?」

今はまだじゃれついている程度だと言わんばかりだ。
オンクーは相手の苦しがる様を面白がるように、メイヤをくわえた顎にゆっくりと力を落としていく。

341メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/22(日) 21:56:56
【闘技場】

全てを切り裂く闇の刃嵐を前に、臆する事無いオンクー。

三対の強靭な脚と尖爪を使い、刃の嵐の中を文字通り引き裂き、進んで行く。

そして、嵐の中心であるメイヤを間合いに捉えた大犬は大口を開き突進。

鋭い牙でメイヤを串刺しにし、そのまま前方へ。

メイヤの身体を壁へ縫い付ける様に叩き付け、ニヤリと笑った。

「……グイズ、タマーダビー。」

しかし、腹部を貫かれたメイヤもまた、苦痛に顔を歪めながらも笑みを浮かべる。

「向こうののスラングなら、返してやるよ。」

それは口腔から溢れる朱に染まる、凄絶なる笑み。

大陸の悪態を返し、メイヤは空いた両手で大犬の顎を掴み、ゆっくりと引き剥がして行く。

更に、いつの間にか朱から黒へと色を変えた血が泡立ち、異常なまでの剛力により開かれた大犬の口腔内へと殺到。

「オマケ付きでな!」

黒血とも呼べるそれは、瞬く間にオンクーの体内へと侵入し、侵蝕、増殖。

秒刻みで増えるそれは、オンクーの生命力とも呼べるエネルギーを喰らい尽くさんとばかりに激しく蠕動。

そして、闇に蝕まれていくオンクーを引き剥がし、メイヤは大犬の巨躯を蹴り飛ばす。

更に、蹴り飛ばした相手へ闇の小刃の群れを放ち、自身に宿る闇の力を全解放。

溢れ出す闇を纏い、漆黒の獣……黒狗へと姿を変え、雄叫びを上げた。

「オォォォォォォッ!」


【スマホ修理出すのに全データ消去とか憤死ですわ……

遅レス申し訳ない。

そしてイスラさん根回し的な対応ありがとうございます!】

342イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/23(月) 05:04:41
事後報告になってしまいすみません;

今回のこととか他にも何かもう色々、お二人にはたくさんご迷惑をおかけてしまって本当に申し訳ないですorz

取り合えずはこのままこちらの掲示板で続けさせて頂こうと思いますが…レスをサゲるかどうかは個人のおまかせで。

ヤツキ》うわぁ…それはショックw

343クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 15:25:38
【闘技場】

突撃槍の一撃は、いとも容易く少女を吹き飛ばす。

しかし、吹き飛んだ先で立ち上がるサンディの動きはダメージを感じさせないモノだ。

彼女が翳す手から放たれる火渦は、勾玉の縛鎖により動きを封じられたクロスへ迫り、直撃。

動けないクロスを焼き尽くさんとばかり燃え盛るも、次第にその勢いは衰えていく。

「ふふ、この程度じゃあ生焼けにもならないよ?」

そして、見るからに下火となった火炎を文字通り喰らいながら、クロスは身を縛る勾玉の鎖を引きちぎった。

バラバラと観客席へ散る勾玉を踏み砕き、強靭な脚力で三階上の特等席まで軽々と跳躍、背から伸びる黒翼で更に飛翔。

盾を槍へと成型しなおし、二本の突撃槍をサンディへと投げつける。

更に、投槍にも追い付く程の速度で空を駆け、その重量を生かした突進を繰り出した。

「ミンチにして啜ってあげるよ!?」

344ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 18:34:59
【いやいや、直接文句言われた訳でもないし、イスラが謝る事無いよー!

むしろこっちが謝って感謝する側ですわ、移転から移転先でのアレとかアレとか……】

345アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/24(火) 23:45:45
【過去】

フェミルの手によって、リトの手の上にアブセルの手が重ねられる。

「……側に…?」

アブセルは戸惑いながらジルを見た。続いてフェミル、リト。そして最後にまた自分の手の上に視線を戻した。

…今は見えないことってなんだろう。
ジルの言うことはやっぱり難しくてよく分からないけど、彼らの顔を見ていると、何故だか胸の辺りがぎゅうってなる。

「あの…、あのさ…」

もう別れの時間が来たことを察すると、アブセルは躊躇いつつも口を開いた。

「また…ここに来てもいい?…リトと、一緒に…。
そ…そのっ、ホットミルク、おいしかったし…」

ついさっきまでつんけんしていた分、こんなことを言うのは恥ずかしいのか、あくまでホットミルクが目当てだとばかりに慌てて付け足す。

何となく、この家にはほっとするような温かいものを感じる。
またこの人達に会いたい。そう思った。


【そんな滅相もない…
元を辿れば自分のうっかりが原因ですので…(笑)】

346オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 20:35:12
【闘技場】

異質な液体が体内に流れ込んでくる。
途端、オンクーの身に言い様のない激痛が襲いかかった。

「ゲッ…ァ…ッ、アガァアァァッ…!!」

余裕の笑みは苦悶の表情へと変わり、オンクーは痛みに呻吟する。
もがくように小刃の群を避けたところで、喉奥から込み上げてきた黒い血反吐を大量に床に吐き出した。

熱い。まるで全身の血が煮えたぎっているかのようだ。
身体の内側を、黒い、おぞましい何かが
ぞわぞわと這いずり回っている。
夥しい数のそれが内部を圧迫し、ねぶり、侵していく。

オンクーは翼を羽ばたかせ、闘技場の天井を突き破り上空に飛翔した。
へどろの様にまとわりつく不快感から逃れようと闇雲に飛び回る。

「恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心…!」

狂ったように、喉元から腹部にかけてを爪で無茶苦茶に掻きむしった。己の腹を裂いて、そこから全てを引き摺り出したい衝動に駆られる。

「ギ…ッざまァ…、何を、した…」

不意に漆黒の獣…メイヤが追ってきているのが見えた。

その顔に怒りの炎をたぎらせ、オンクーは一度咆哮を上げる。
直後、凄まじい烈風が吹き荒れ、周囲一帯に不可視の飛刃が飛び交った。
同時に、背中の六翼がめりめりと音を立て、それぞれ上顎と下顎かの如く、整然と鋭い牙が立ち並ぶ凶悪な獣のそれに変形する。

それに加えた中央の顎、合わせて七つのあぎとがメイヤに向かって猛進した。

347サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 22:16:41
【闘技場】

これでもクロスを怯ませることすら出来ないのか。
その一瞬の動揺が命取りに。気がつけば距離を詰められ、迫る異形の影にサンディはハッと息を呑んだ。

その時。

「…そが目は赤かがちの如くにして、身一つに八つの頭、八つの尾あり。その身に蘿と檜椙生ひ」

不意に塵煙の影から、ぬっと八つの鎌首が飛び出し、うなりを上げた。
飛来する突撃槍を破壊し、その首をしならせ、クロスを横に弾き飛ばした。

「その長かるは、谿八谷、峡八尾を渡りて、腹を見れば、悉く常に血垂り爛れたり」

詩歌を吟ずるような声と共に、八首の炎の大蛇を引き連れたイスラが塵煙の向こう側から姿を見せる。

そして彼が手を払うような動作をすると、蛇の首がみるみる内に矛の様に鋭くなり。
それぞれが弓弦を離れた矢の如く、疾く空を駆け抜けクロスの身体を穿いた。

348レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/28(土) 23:03:54
【闘技場】

迫り来る絶対零度の波濤と、それを防ぐべく放たれた電磁力の波。

二種類の対極する波は拮抗するも、それも僅かな事。

アグルが放つ電磁波がジリジリと、確実に押されていくのが見て取れる。

しかし、それをただ見ているだけのレックスでは無い。

焦りの色が見えるアグルの表情を横目に、レックスは風を、空気を、大気を圧縮する。

圧縮された大気は高熱を帯び、プラズマとなる一歩手前まで加圧、熱せられたそれを絶対零度の波濤へとぶつけ、直撃すれば即死するであろう死の波濤を相殺。

それと同時にマルトが飛び出し、レックスも後を追う。

そして、左右からの挟撃、剣と三叉鑓による連撃を放つも……キールは決して押される事無く、全ての攻撃を防ぎ切った。

「まだまだね、その程度では私に傷一つ付けれないわよ。」

その表情は絶対零度の如く冷たく、全く感情が見えない。

まるで氷の仮面を被ったかの様な印象を与えるキールは、その背に三対の氷翼を生やし、羽ばたく。

氷翼が巻き起こす裂風は吹雪を更に加速させ、舞い上がる雪は氷の刃とその姿を変えた。

そして、氷刃の竜巻をレックスとマルトへ叩き付け、二人を吹き飛ばす。

更に、氷翼で羽ばたくキールは吹雪を斬り裂きながらアグルへと肉迫し、先と同じ様にその翼を彼へと叩き付けた。

ーーーーー

突如現れた強大な気配の持ち主と、勃発する戦い。

戦いは大きく分けて三つだが、自分達が関わる理由は無かった。

DDの介入があったとは言え、シャムの敗北によりクロッソとの取引きが流れてしまった今、フィア達が闘技場に留まる理由も無い。

だが。

勃発する戦闘をスルーし、観客を助ける事もせず、闘技場を後にする事は叶わず。

何故ならば、強大な気配の持ち主……キールが現れた時点で、闘技場には堅固な結界ぎ張られ、外界から切り離されて居たのだ。

ーーーーー

ならば、どうするか。

答えは簡単だ。

「……結界を張った本人を倒せば良いだけの事。

それに、キャラ、被ってるのよ……私と!」

キールの放つ氷翼の一撃。

その一撃が、アグルへ届くより僅かに速く。

絶対零度を纏いし吸血鬼、フィアがキールの前へと立ちふさがった。

そして、言葉通りキールと同じ氷翼を広げ、放たれた氷翼の一撃を防ぎながら、背後のアグルへ声を掛けた。

「正直気が進まない所はあるけれど、加勢するわ。

そこのクールビューティー気取りを倒さないと、ここから出れないみたいだからね!」

349メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/03/05(木) 00:24:26
【闘技場】

ありとあらゆるモノを喰らい、増殖する闇。

それは物質だけでは無く、魂すら蝕むのだ。

胎内に侵入した黒血を吐き出し、それでも尚苦しむオンクーへとメイヤは駆け出す。

苦鳴の声を漏らしたながら羽ばたき、空へ昇る大犬が咆哮と共に放つ不可視の刃に切り裂かれながらも、疾走。

「グゥゥゥゥ……ォォオオオオオ!!」

そして、闇の波動を咆哮と共に放ち、猛進する大犬を迎え撃つ。

七つの顎に対するは、鋭き爪牙と強靭なる尾。

観客席どころか逃げ遅れた観客をも引き潰しながら、二頭の獣……大犬と黒狗は激しくぶつかり合う。

黒狗の爪牙が顎を斬り裂き、大犬の顎が爪牙を咬み砕く。

戦いは激しさを増すばかりだが、次第に黒狗が手数の分だけ押されていく。

そして遂に。

大犬の七つの顎の内一つ、本体であろう中央の顎が、黒狗の喉元に喰らい着いた。

ーーーーー

突撃槍の一撃は、直撃すれば人間など簡単に粉砕させる威力を秘めていた。

勿論、その強度も十分以上だ。

しかし、二本の槍は破壊力され、続く突進も目標を破壊する前に阻まれた。

自らの巨体が横殴りの衝撃により吹き飛ばされ、更には灼熱の弩弓に貫かれたのを感じ、クロスは思わず呻く。

しかし、特等席へと這い上がって来たその顔には笑みが。

「ふふ、フフフ……良いねぇ、この痛み。

極上の獲物、それも天照大神が二人なんて……君達を喰えるなら、この痛みすら、調味料に成り得るよォォオオオオオ!!」

血染めの笑みを狂気に変え、クロスは咆哮を上げる。

貫かれた傷口からは鮮血が溢れ、鮮血が巨躯を染め、結晶と成り。

緋色の堅鎧を身に纏い、両手に血晶の大剣を握り締め、クロスは再びサンディへ、そしてイスラへ突進。

嵐の様な斬撃を繰り出しながら、二人へ襲い掛かった。

350イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/09(月) 23:12:37
すみません、暫くレス返すの遅くなります;

351ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/03/11(水) 18:32:46
了解すー!

352ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 09:27:51
【ポセイドン邸】


(何を言ってるんだ、コイツ…)

老人から告げられる言葉は、全て予想の範疇を超えていた。到底信じられるようなものではない。

でも…

(そうだ…母様は…)

一つだけ、合点のいくことがある。
母親はリトの誕生を誰よりも待ち望んでいた。
闇の子が生まれたから拒絶したのではない。彼女は始めから、生まれてくる子が闇の能力者であるのを知っていた。そして、”希望”とまで、言っていた。

「信じらんない…」

ナディアは拳を握りしめる。
殴りたい気持ちを必死で堪えた。

「私がアンタを処罰したら、アンタはそれで楽になる。そんなの絶対赦さない。今アンタがやるべきことは何か、自分で考えな。」

そして感情を押し殺し、その言葉だけを振り絞った。
そのまま頭を垂れる老翁には見向きもせず、部屋を出て行く。

「……」

自分なりに、よく耐えたと思う。
部屋を出た途端切り詰めた力がふっと抜けて、体が崩れる。
しかし、そのまま地に倒れることはなかった。
咄嗟に体を支えてくれたのだ。
リマが。

「ナディアさん、大丈夫ですか?」

「…うん、なんとか」

情けない。
ナディアは苦笑いを浮かべた。
体の小さなリマが自分を支えるのは大変だろうと、すぐに態勢を整える。

「無茶苦茶だろ、ここ…」

そしてナディアは何処か疲れた様子でリマに話しかけた。

「…うん」

リマはナディアに頼まれ、セナと一緒に部屋での会話を水鏡に映し見ていた。
ナディアの言葉に反論出来ない自分がいる。

同じ血筋なのに、この数百年間で随分と変わってしまった。
様々な人と出会い、結婚し…人の感覚は此処まで変わってしまうのだろうか。
こんな恐ろしい考えをもつ者が身内にいる現実は、とても受け入れ難い。
しかし、目を背けるわけにはいかないのだ。

「…セィちゃん」

リマは縋るような目でセナを見た。
闇の力で暗示がかかっているのなら、彼の力で解けるのではないか。
このままだと…

「リトが不憫じゃと?」

今の状況ではリトがあまりにも可哀想だ。どうにか解決してやりたい。
そんな彼女の心境を見透かした声が、不意に一同のもとへ降りかかってきた。

いつ来たのか、ノワールが其処にいた。
彼女は嫌悪感を隠しもせずリマを睨み、言葉を続ける。

「そなたはいつもそうじゃの。」

相手が不憫だこれは残酷だ、助けたいと言う。
しかし、それはただの優しさと履き違えた同情心だ。
そして同情とは、自分が相手よりも優位に立っていると無自覚な感情の現れ。
…今更追及する気にもならないが。

ノワールはリマを睨みつけるも、すぐにその視線を他へ移す。

「リトが部屋へ移った。」

そしてその視線は更にセナの方へ。

「そなたがどこまでやれるか、見ものじゃの。」

353リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 21:15:51
お久しぶりです。
スレ滅亡の危機に陥ってる時に何も知らず留守にしてました> <
何のお役にも立てず申し訳ございません(´;ω;`)
マジ根回し有難うございました(>人<)

てか時々やらかすんですが、今後sage失敗したらどうしよう…(;-ω-)ゞ

354アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 07:42:39
【闘技場】

誰だ。
…なんてことを問題にしている時でもないのだろう。

突如として加勢に加わった女性、フィアに向け「そりゃどーも」と適当に礼を返しつつ、アグルは氷翼の影から飛び出す。

死角からの不意をついての攻撃の筈だったが、急所を狙った雷槍の刺突はキールに易々と避けられてしまった。

「…つっても、三人がかりでもこの様なもんで。
一人増えたところで、あり合わせメンバーのにわか連携じゃ正直勝てる気がしないな」

本心を隠そうともせず、アグルはため息混じりに呟いた。

―――…

オンクーの交戦は激しいものだが、それはどこか消え行く直前の炎の揺らめきにも似た何かを思わせた。

牙を相手の喉元に、そして爪を肉に食い込ませ、オンクーは組み合った状態のまま強引に黒狗を抱え空高く舞い上がる。

かと思えば、今度は空中で方向転換。それはもう落下するかの如く勢いで真っ逆さまに地上に急降下する。

(このまま息の根を止めてやる…!)

二匹が降下する先、そこには先の戦闘でも崩れることなく残っていた街の教会と、そしてその屋根に掲げられた巨大な十字架が。
そこに黒狗を串刺しにしようとでもいうのか、オンクーはぐんぐんとスピードを上げ落ちていった。

355サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 08:07:03
【闘技場】

緋色の鎧を身に突進してくる相手の姿を見据え、イスラは神刀、火之迦具土を抜く。

「行くぞ、サンディ」

イスラの声に一つ頷き、サンディもまた腕を伸ばす。
二人が一本の刀に触れ合った刹那、そこから目映い輝きが溢れ出で爆発的な熱風が迸った。

見るや、熱を帯びた刀身は白く発光し、刀の形状はより神々しさを増したものへと変わる。
時代を越えた二つのアマテラスの力が、悪しきものを浄化する剣、天之尾羽張を生み出したのだ。

白く美しい刀身が大気を撫で、皓皓と二人を照らし出す。
湧き出る剣気が幾重もの凄まじい衝撃波を生じさせ、大剣による嵐の如く斬撃に迎え討った。


【リマ》お久しぶりです。そして気にしないでください^^
下げは別に義務でやってる訳でもないので、上げても問題はないと思います】

356アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/28(土) 19:20:52
【ポセイドン邸】

「おい、あまりセィちゃんさん達を困らせるなよ」

遅れて、場にそんな声が割り込む。
それと同時に、ノワールの背後から回されたアブセルの手が、余計なことが言えぬようにと、彼女の口をむぎゅりと塞いだ。

「取り合えずリトはベッドに横にさせといたよ。今はユニと変態のおっさん(ジュノス)が側についてる」

そう一同に言うや、彼は今度はナディアに視線を向ける。「お嬢」と切り出した。

「旦那様の葬儀のことなんだけどさ…。リト…って言うか、リトのふりをさせたセィちゃんさんはどうすんの?
親族の中には子息であるリトも出席させるべきだ、って意見もあるらしいんだ」

でも…、と続く声音に若干の深刻味が滲む。

「それって当然奥様も出席する訳だろ…?
式中に騒ぎになるようなことは、流石に不味いと思うんだけど…」

つまりアブセルは、ミレリアとリトが同じ場に居合わせることで、何かしらの問題が起こってしまうのではないか…と懸念しているようだ。

357クロス ◆.q9WieYUok:2015/03/30(月) 14:48:52
【闘技場】

灼熱を纏い、白光に輝く。

時を越え生まれ出るその剣は、より神々しい姿を現し。

白く美しい刀身から溢れ出す剣気は衝撃波となり、紅の嵐の如き連撃を迎え撃つ。

そして、 天之尾羽張から発せられた衝撃波が止んだ先。

半壊した闘技場特等席の際で、異形の魔物は立っていた。

……否、辛うじて立っていた。

二振りあった筈の大剣は跡形も無く消失し、緋色の堅鎧は元の形を残さず。

背から伸びる黒翼も、筋骨隆々な身体も大小様々な裂傷が刻み込まれ。

ひしゃげた曲角から続く幼顔を歪め、クロスは呻く様に言葉を発した。

「ふふ、ふふ……水と炎、相性で言えば僕に分がある筈なのにねぇ……

赤羊神躯、本気の僕を此処まで傷付けるなんて。」

その口調は先程と変わらないものの、その声からは疲弊の色が見て取れる。

しかし、疲弊が滲む声であっても、未だ闘志は消えず。

それを示すかの様に、クロスは左腕を横に薙いだ。

「流石だね、羨ましいよ……

安定して力を出せる君達は、僕等の様に暴走する危険性を考えなくても良い。

ましてや不安に怯える事なんてない。

だからこそ、僕等は……四凶は四神を狙うのさ。」

その様はまるで不安を、怯えを振り払うかの様に。

自らを鼓舞する様に。

そして、伸びきった左腕の先。

血に汚れた指先から零れる朱色が蠢き、陣を描く。

直径5m程の円となったそれは、拡大を止めると同時に、指先を中心としてクロスの全身を包み込み、脈動。

それは鮮やかな赤から黒へと色を変え、その身体を更に異質な……筋骨隆々とは真逆、漆黒の痩躯へと変質させる。

「赤い仔羊(REDRUM)から漆黒の殺戮者(MURDER)へ。

この姿になった以上、僕はもう負けれない……咎落ちしたその先は渇死しかないからね……」

双翼を三対の痩腕へ、半身半獣を悪鬼の痩身へ、そして操りし水を混濁した闇へと変え、そして。

紅瞳を揺らめかせ、クロスは笑った。

同時に、痩躯から闇の波動が溢れ出し、波濤となって二人の天照大神へと襲い掛かった。

「全てを喰らい尽くす無明の闇は、太陽の輝きすら歯牙に掛けるのさ!」

358フィア+etc. ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:55:24
【闘技場】

橙髪の青年、アグルの言う事はごもっともだ。
確かに、如何に個々の実力が高くても即席の連携などたかが知れている。
ましてや相手は自分と同格以上、分が悪い所の話では無い。

(でも、そうも言ってられないのよね!)

アグルが放つ死角からの強襲をいとも簡単に避けるキールの背後へと、フィアは空間跳躍。
姿を現すと同時に手刀の一撃を繰り出すも、気配を察知したのかキールは180度水平回転しつつ手刀を受け流し、カウンターを放つ。
分子結合を解かれた氷翼が弾幕となってフィアへ襲い掛かるが、フィアは再び空間を跳躍……するよりも速く、キールの右手がフィアの襟首を掴んだ。

「空間跳躍、便利だろうけれど発動前のほんの僅かな硬直が命取りよ。」

そして、襟首を掴まれた為に逃げれないフィアへと弾幕が殺到。
鋭い氷弾の群れがフィアの身体を貫き、削り、一瞬にして血飛沫が闘技場に舞い上がった。
しかし、フィアは血塗れになりながらもその顔に笑みを浮かべる。

「この程度、何とも無いわ……!」

そう、吸血鬼として最上位の存在である十三人の長老の再生力は伊達ではないのだ。
血染めの笑みを歪め、フィアもまた、キールの襟首を掴む。
高い再生能力と空間跳躍能力、そして固有の特殊能力。
澪の派閥の長であるフィアの固有能力は、その派閥名の通りだ。
その為、同系統の能力者であるキールの力は相殺とまではいかないが、ある程度ならば阻害出来る。

しかし。

能力を阻害されたからと言えども、そう簡単にキールを止める事は出来ない。
襟首を掴む右とは逆、空いた左手に凍気を纏い、キールはフィアの右腕を手刀により切断。
そして再び水平回転してフィアの身体を投げ飛ばし、飛び出して来たレックスへ叩き付けて二人を吹き飛ばす。
更にレックスの陰に隠れて繰り出されたマルトの斬撃をいなし、その腹部へと掌打を打ち込んだ。
大気が弾ける音と共に崩れ落ち膝を着くマルトへ、どこからともなく取り出した拳銃を容赦無く撃ち込む。
連続する銃声が鳴り止んだ後、弾が切れた拳銃を投げ捨てたキールはアグルへ次はお前だと言わんばかりの視線を向けた。
それを遮る様に、右肘から先を無くしたフィアが飛び出し、氷剣による刺突を放つも、キールは手刀で受け流し、彼女を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたフィアとすれ違いながら駆け出すレックスが放つ三叉鑓の矛先は空を切るも、レックスは諦めない。
空振った三叉鑓を投げ捨て、果敢にもキールへ挑んで行く。
武闘家の父を持ち、幼少期から武術を学んできたレックスの体捌きは一級品だ。
そこに異能の力が加われば、並大抵の実力者では相手に成らない程。
だが、キールはその上を行く徒手空拳の使い手だった。
掌打から続く廻し蹴りも、風を操った高速移動もキールには届かない。
レックスと同系統の能力者、暴風神の力を持つマルトとレックスの連携も、見た目に反するタフさを持つフィアの捨て身に近い吶喊も、何もかもがキールには届かない。
四神のレックスと同格であろうマルトの実力は決して低くは無い。
寧ろ経験差がある分レックスよりも数段強いのだ。
そこに吸血鬼最上位のフィアが加わり、波状攻撃を仕掛けるも……一撃が、入らない。
しかしレックス達は諦めない。
何故なら、レックス達は知っているのだ。
自分達の中に必殺の一手が、それを放てる者が居る事を。
風を操り行う高速移動よりも、瞬間移動に近い空間跳躍よりも速い、最速かつ防御不可の必殺技。
メイヤとの戦いで見せた、あの技を。

「アグル、君しか居ないんです!」

359ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:57:31
【長過ぎて弾かれるとか草不可避

読みにくくて申し訳ない!

そして遅くなって申し訳ない……】

360メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/03(金) 21:51:11
【闘技場〜】

一瞬の浮遊感と、それに続く風切り音。

それが何を意味するか理解するのに時間は掛からなかった。

しかし、考えている暇も無い。

反転して見える景色の中に教会が見え、急降下するその先に十字架を確認した同時に黒狗は激しく身を捩った。

如何に巨躯が頑強かつ強靭と言えど、アレに突き刺されたならば一巻の終わりだ。

(後五秒も無い、けれど!コイツっ!)

身を捩り、四肢を打ち付け、必死に首筋の拘束を解こうとするもーーー

ーーーどうやら串刺しは免れた様だ。

瓦礫を押しのけ、メイヤはゆっくりと立ち上がる。


直撃する寸前に、纏っていた闇を霧散させたのが幸を奏した様だ。

だが、高々度からの落下の衝撃は凄まじく、立ち上がるのがやっとの状態か。

半壊した教会の壇上で、メイヤは剣を支えに目を凝らす。

運良く敵だけが死んでしまう様な事は無いだろう、常に最悪の状況を想定しなければならない。

「……居るんだろ、出て来いよ……」

361ナディア、ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/04/05(日) 21:17:35
【過去】

素直でないながらもしっかりと自分の意思を伝えてきたアブセルへ、ジルは優しく目を細める。

「いいよ、いつでもおいで。ただし、今度はちゃんと許可を貰って来るんだよ。」

小指をアブセルへ向け、微笑んだ。

「約束。」

指切りと共に交わした約束。
もう叶うことはないと、この時は誰も想像などしなかった。

「ジル」

ノック音の後に彼の父が顔を出す。

「その子達が帰るようだね。僕が送って行こう。」

「え、お父様が…?」

「大事なご子息を足止めしてしまったからね、…あちらのお父上に挨拶も兼ねて。」

リトが何処の子なのか、調べがついたのだろう。
一瞬だけ、父の表情が固くなったのをジルは見逃さなかった。
ただ子供が詮索すべきことでないことも分かっていたから、ジルは頷き二人を父に託す。

「またね」

リトとアブセルの頭を撫でる。
ジルの笑顔はとても優しかった。

362ジル、ナディア他:2015/04/05(日) 21:19:02

------


「リト!!」

屋敷は予想通り、いや、予想以上に混乱していた。
召使の者達が彼方此方リトを探しているのが見えた。リトを見失ったお咎めを恐れているのだろう。皆顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうだ。
そんな中、窓からリトの姿を認めたらしいナディアとヨノが外へ飛び出して来た。
リトを連れてきたジルの父親には目もくれず、リトの手を取るや、すぐに彼を引っ張っていこうとする。

「ナディア」

余程慌てていたのか、ナディアは彼の存在に気付いていなかったようだ。
声を聞いて初めて其方に顔を向ける。

「おじさま…」

リトを連れ帰って来た人が知ってる人だから、ナディアは驚いた顔を見せる。
しかし今は構っている暇はない。

「ごめんおじさま、話はまた後で。コイツを…」

リトを早く部屋に戻さなきゃ、父親が気づく前に。

しかし手遅れだった。

「何をしている」

普段ヨハンやミレリアの近辺を担当する召使は残り、自由のきく召使がリトの捜索に当たっていた。
リトが行方不明と知られてしまったら大変なことになる。見失ってしまった召使は勿論、リトも。
屋敷に残った召使は気付かれぬよう普段通りの行動を装っていたものの、気付かれてしまった。

「父さま…」

ナディアはリトを自分の背に隠す。
しかし隠せる筈もなく、ヨハンはリトの腕を掴み引き摺り出した。

「こいつは何だ?何故外にいる?」

「それは…」

「勝手に抜け出したのか?」

「違…っ」

ヨハンの目の色が変わる。
リトが危ない。

「やめて…!」

ヨハンがリトを地面に叩きつけようとする。
その手を、傍にいたジルの父、トーマが止めた。

「…トーマ?」

「来客に気付かないで、随分と物騒なことをするじゃないか。…少し話そう、ヨハン。」

ヨハンは渋い顔をするも、トーマの言葉は聞き入れる。
そして二人は屋敷の中へ入って行った。

「リト…良かった」

ナディアはリトの無事を確かめ、ほっと胸を撫で下ろす。
いなくなったと聞いた時はどうしようかと思った。無事に帰って来て本当に良かった。

そしてナディアは漸く其処にアブセルが居ることに気付いた。

「アブセル…お前がリトを連れ出したのか?」

363アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:36:29
【闘技場】

「んなアテにされても困るんだけど…」

レックス達が怒涛の攻防を繰り広げる一方で、アグルはそう独り言つ。
しかしやる他ないだろう。

「しくっても文句言うなよっ!」

直後、彼の身体から電流が迸る。

言うが早いか地面が電閃し、そこから夥しい数の黒鉄の槍が突き出した。
自分やレックス達が佇立する場を除くフィールド上を余す事なく槍が埋め尽くし、相手の姿さえ見えなくなる。

「オマケだ、失明すんのが嫌なら目ぇ閉じてろ」

そしてダメ押しに、槍の一本一本が避雷針となって闘技場に滝の如く霹靂が降りしきった。


【バルクウェイ】

半壊し、静寂に包まれる教会内にメイヤの声が反響する。
それに応えるように、瓦礫の一角が崩れ落ち、そこからふらりと人影が立ち上がった。

「…本当に…忌々しい奴らね、お前ら一族は…」

獣化は解かれ、人の身に戻った彼が苦しげな呼吸音と共に発した第一声がそれだった。
メイヤのどこか特徴的な漆黒の髪と瞳…。そうオンクーは、過去に同じような佇まいをした剣士と相対している。

過去、自分を敗北へ追いこんだ奴ら…件の剣士と、そしてそいつが所属する黒十字を皆殺しにしてやろうと思った。
しかし、百年以上の封印のすえ眠りから覚めた時には、その剣士はおろか黒十字という組織さえもう存在してはいなかった。
ならばどうすればいい。いっそのこと、そいつらの子孫に報復でもしてやろうか。そんなことを考えていたのに…。

「……ッ」

不意にオンクーは口から血を吐き出し、膝から地に崩れ落ちる。
…身体が動かない。体内を蝕む闇がもうそこまで侵食してきているのだ。

また、同じ血の者に敗れるのか。彼は自嘲気味に苦笑する。
しかし、ただで死ぬつもりはない。

刹那オンクーはキッと前方を睨みつける。最後の力を振り絞って飛び出した。
メイヤの心臓部めがけて最短距離を爪の尖鋭がうなる。

「その首、地獄への手土産に置いてってもらうね!」

364アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:40:52
【過去】

気に入らないから、リトが怒られればいいと思った。
退屈だったから、屋敷の皆を困らせてやろうと思った。

ほんの軽い気持ちでおかしたイタズラが、まさかこんなにも深刻な事態を招いてしまうなんて初めは想像もしなかった。

ヨハン達が立ち去った後も呆然とその場に立ち尽くしていたアブセルは、不意に自分の名を呼ばれるとびくりと肩を震わせた。

恐る恐るナディアを見る。
やがて彼は、俯き気味に小さな声で頷いた。

「…リトは嫌がってたんだ。それを俺が無理やり…」

先ほど垣間見たヨハンの表情はいつも以上に怖かった。
それは自分に向けられたものではなかったが、傍にいたアブセルも身が竦む思いだった。

「ごめんなさい、リトのことは怒らないで…」

365メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:20:02
【バルクウェイ】

忌々しい一族か、それは言い当て妙だ。
静寂に包まれる教会内で、オンクーが吐き捨てた言葉にメイヤは静かに頷いた。

確かにそうだ、暗殺者の一族など忌々しいに決まっている。
その中でも自分は特に忌々しく、異端な存在だろう。

「俺の首じゃあ冥土の土産にもならないぞ……こんな忌々しい首なんて土産にすれは地獄に叩き落とされるだろうさ。」

弥都での戦い振りと、その言動からするに彼は一族の誰かと戦い、敗北した経験がある様だ。
それが誰かはわからないが、因縁はあったのだ。

だからこそとは言わないが、今、自分がその因縁を断つべきだろう。
例え、その結果が相討ちだったとしても。

「だけど、アンタを地獄に叩き落とせるなら安いモンだな!」

血を吐き、膝を着きながらも此方を睨み付けるオンクー。
その視線を真っ向から受け止め、メイヤは支えにしていた剣を構える。

口腔から溢れる血は黒から赤へ、闇は既にその活動を停止していた。
闘技場から続く激闘で、体力も限界に近い。

放てて一刀、いや、一刀で決めるのみ。
対するオンクーが放つは、死力振り絞った尖爪による一撃。

その一撃をメイヤが避ける事は叶わず、否、避ける事を選ばず。
鋭き一撃は寸分違わずメイヤの心の臓を貫き、傷口から、口腔から、鼻腔から夥しい程の血流が溢れ出す。

しかし、心臓を貫かれると同時にメイヤもまた、真白の刃を振り切っていた。

その一刀は、神速の一刀。

神をも斬り裂く必殺の刃。

居合い、神斬りーー

366メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:21:26
先々代は長として一族には何も残さず散った。
そして、宿敵に魂の炎を遺し散った。

俺も同じだろう。
一族には何も残さず、散る。

だがそれも一興、忌み嫌われる殺し屋の血筋など絶えれば良い。
長を、そしてその補佐や分家の頭が消えれば一族は自然と瓦解する。

同業者に消されるか、取り込まれるか。
先細りするしかない一族の未来に興味は無い。

だからこそ、俺は魂の炎を、生命の炎を遺す。
血塗れ両手と、屍の玉座で得た唯一の光。

知ってるか?

不死鳥は死して尚燃え上がり、羽ばたくんだぜ。
焔凰円環、産声を挙げるには丁度良いだろ、なァ?ーー

身体が、熱い。
血と共に溢れ出すその熱は、きっと生命そのものだろう。

胸を貫かれながらも振り切った刃を力無く手放し、メイヤは血塊と共に息を吐き出す。
真白の刃は赤に染まり、血溜まりに落ちて音を立てた。

その音も耳には届かず、メイヤはオンクーへと持たれ掛かった。
グズリ、と傷口が広がるがもう関係ない。

メイヤの命は数分も保たないだろう。
薄まっていく五感と意識の上、痛みは意味を成さず。

「これが、死、か……」

オンクーの肩口に顎を乗せ、メイヤは声を紡ぐ。
今まで幾度となく与えて来た死の瞬間が、遂に自分へと訪れるのか。

そう考えると、不意に怖くなった。
薄れゆく意識の中、それだけが浮かび上がっていく。

だが、それも僅かな事。
あれ程までに感じた血の熱さも消え、熱を失った身体は急激に冷えていく。

そして、生命の過多を失った身体から、その背中から、闇が溢れ出す。

「マダ、死ナヌ……悪神ハ、マダ滅ビヌ!」

爆発的に溢れ出すそれは触手の群れと成ってオンクーの身体へと殺到。
何の躊躇いも無く、寧ろ荒々しいまでの勢いで彼の身体に突き刺さり、生命を、彼の存在そのものを喰らい生き長らえようと蠢いた。

しかし、それも一瞬の事。
触手が生命エネルギーを吸い上げ様と蠕動した瞬間、不意にその動きが停まった。

そして一拍の間を置き、闇の触手が内側から爆発し、紅蓮の焔がその姿を顕した。
焔は闇を灼き尽くし、背から伸びる翼となってメイヤを、オンクーを包み込む。

「コノ、焔ハ!?

闇ガ、消エ……!?」

その焔は、真なる焔。
平安と平等を司る、鳳の焔。

焔は顕現しようとする悪神を灼き、同時に朽ちゆくメイヤの身体を再生させていく。

そして。

悪しきを灼き祓い、生命を生み出す焔はオンクーへと燃え移り、より一層その勢いを増して燃え上がった。

367レックス+etc. ◆.q9WieYUok:2015/05/02(土) 16:37:22
【闘技場】

アグルの放ったその技はレックスの予想を遥かに上回るモノだった。
地面から屹立する黒鉄槍はフィールドを余す所無く埋め尽くし、更にそれを避雷針として降り注ぐのは轟雷の瀑布。

(メイヤ相手に見せたのは、本気所か手を抜いていたのですか……ッ!!)

正に必殺、想像を遥か絶する技の威力に、レックスは言葉を失っていた。
圧倒的な破壊の前に、言葉を失ったレックスは無意識の内に唇を咬み、アグルへ黒瞳を向ける。

しかし、不意に上がる物音に驚き、音のした方向へ視線をやり、目を見開いた。

「……予想以上ね、威力だけなら四霊に匹敵するわ。

だけど……」

見開かれた黒瞳が映すのは、しかと闘技場に立つ黒髪の女性、キール。
その身体は無傷とは言わないものの、戦闘不能に至る様な傷は確認出来ない。

「私は吉兆を司る者。

そして、四霊の守を担う者。」

まるで不調は無いとばかりの口調でキールは声を発し、ゆっくりとした動作で右手を横に薙ぐ。

「絶対零度の前には光すらその動きを停める。

それはつまり、時間すら停止すると言う事。

そして、一切の不純物の無い氷の強度は本来鋼の三倍以上。

練度によるけれど、物理的に破壊出来ない硬度の氷壁を精製する事も可能。」
そう、如何に速く、破壊力がある攻撃でもキールには届かないのだ。

絶対零度により僅かながらも周囲の時を、敵の攻撃を停め、その間に圧倒的な強度を持つ氷壁を張る。
それは即ち二段構えの絶対防御。

同系統の能力者故に理解出来る圧倒的な実力差。
それを目の当たりにし、流石のフィアも諦めの表情を浮かべた。

(せめてこの場にシャムとDDが居れば……)

まだ何とかなったかもしれないが、二人には観客達の保護を任せた為に離れている。
最早万事休すか。

フィアの表情を察し、マルトもまた目を伏せた。

そして。

身動きを取らない一行へとキールは手を翳し、死の凍気が放たれたその瞬間。
一筋の雷光が閃き、圧倒的な熱量を持って凍気の波濤を対消滅させた。

「すまん、少し面倒な奴と出会って遅くなった。」

更に、響く声と共に放たれた剣閃がキールの胸元を袈裟懸けに切り裂く。
不意に上がる己の鮮血に、流石のキールも驚きの表情を浮かべた。

しかし、続く剣戟を氷刀で切り払うと同時に後方へ跳躍。
距離を取り、雷光と剣閃の主……レオールを見据えた。

「さてと、だな。

俺の部下をここまで痛めつけたお返しと、観客達に危害を加えた罪を清算してもらおう……消えたか。」

そして、剣を構え口上を上げるレオールに視線を向けたまま、キールは霧となってフェードアウトしていった。

368サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 22:08:16
【闘技場】

また更に変貌をとげたクロスの姿は悪鬼そのもの。
その痩躯から溢れ出す闇の波動を炎波で打ち消し、イスラは勢いよく前方へ飛び出した。

「待って、いー兄!」

その時、不意にサンディが声を上げる。
しかしそれも彼の耳には届かなかったようだ。
果敢にもクロスへと飛びかかって行くイスラの背中をどことなく複雑そうな表情で見つめながら、サンディはポツリと呟いた。

「…あの子なんだか…」

悲しそうだったよ…。

―――そしてそんな間にも、既にクロスとの距離を詰めたイスラは天之尾羽張を手に、赫灼たる刃を振るう。
一閃、二閃と燃ゆる炎の光を瞬かせながら怒涛の連撃を繰り出した。

369オンクー、アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 23:18:29
【バルクウェイ】

確かに殺したという感覚はあった。…のに、
紅蓮の焔がメイヤを包み込んだかと思えば、驚くべきことに今度は彼の身体がみるみる再生していくではないか。

「…はッ、気味の悪いやつね…」

殺したのに、死なない。

燃え盛る灼熱に身を灼かれながら、オンクーはメイヤを見据え毒づいた。

「…聴こえるよ、お前を取り巻く怨嗟の声が。
せいぜい死ぬまでその呪われた運命に苦しみ続けるがいいよ」

まさにそう最期の言葉を残し、オンクーは焔に灼かれ跡形もなく消滅した。



【闘技場】

駆けつけたレオールと、そして分が悪いと踏んだのか、その場から退散したキール。
一時はどうなることかと思ったが、取り合えず事態は収束したと見ていいのだろう。

アグルはやれやれと行った様子で、息をついた。

「…で、さっきのは何だった訳?」

来るのが遅いんだよ…とぼやきたいのを抑えつつ、先程の女、四霊の一人と名乗る者がなぜこの闘技会に乱入してきたのか。
もちろん知ってるんだよな?といわんばかりにアグルはレオールに目を向け問うた。

370クロス ◆.q9WieYUok:2015/05/08(金) 22:17:14
【闘技場】

火炎を纏う神剣により放たれる連撃は苛烈の一言に尽きる。

一撃一撃が必殺の威力を秘め、それが絶え間なく繰り出されるのだ。

烈火の如き剣撃は確実にクロスの纏う闇を灼き祓っていった。

しかし、先の言葉通り無明の闇は消え去る事無く、確実にその濃度を、総量を増加させていく。

「僕にくれよ、その光を、炎を!暗黒の闇を消し去る程のエネルギーをくれよぉぉぉぉ!」

闇を纏う悪鬼と成ったクロスは叫び、その咆哮は波動となって闘技場を破壊していく。

咎堕ちの先、それは全てを呑み込み無に帰す虚空の闇……ブラックホールだ。

闇を纏う痩躯は既に崩壊しかけており、人の形と闇の境目も曖昧だ。

そして。

幼顔の面影すら残らない悪鬼の牙口が絶叫を上げたと同時に。

クロスの理性と痩躯が遂に崩壊し、莫大な闇が爆発的に溢れ出した。

更に、溢れ出す闇は渦を巻き、大気を、光を、時間すら呑み込まんと奈落の大口を開けた。

今でこそ規模は小さいが、生まれ出でたそれ……ブラックホールは秒刻みで拡大して行くだろう。

そこにクロスの意識は無い。

身体も、意識も、魂すら失い闇黒の渦と化した四凶の成れの果ては、イスラを、サンディを、闘技場を、バルクウェイの街を呑み込まんと広がっていく。

【イスラさんイスラさん、次でトドメ刺しちゃって下さい】

371イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/07(日) 19:46:41
【闘技場】

まるで断末魔の叫びの如く、クロスの咆哮が耳をつんざく。それと同時に、何らかの爆発に見舞われた様な感覚に襲われた。
足が地面から浮き、後方の壁に叩きつけられる。
握る刀が手から溢れ、一瞬の衝撃に息が止まった。

一体なにが起こったのか。
それを理解するよりも先に,痛みに堪えながらも顔を上げたイスラの目に漆黒の塊が飛び込んできた。

周囲の瓦礫や観客用の椅子を呑み込みながらも、驚異的なスピードで肥大していくそれが、先程の彼の成れの果てだと言うことを理解するのにそう時間はかからなかった。
そして、直に自分やサンディ、いや、もっと大勢の人間があれの餌食になるだろうことも容易に想像がついた。
イスラは咄嗟にサンディの姿を目で探す。

「サンディ!逃げ…っ」

しかしその時、直ぐ脇を何かが駆け抜けて行った。

紺色の短いスカートをたなびかせながら身を翻したそれは、イスラが落とした刀を地面から拾い上げ、かつての少年だったものに向かって一直線に駆けていく。

「なっ…!?」

捜していた当の本人の無謀な行動。
しかし制止の声を発する間もなく、直後、強烈な光と音が迸った。

イスラは反射的に腕で顔を隠し、目を閉じた。

…やがて光も音も消え、彼はゆっくりと目を開ける。そして呆気に取られた。
そこには先程の狂騒も、奈落の口も、そしてサンディも、呆れるほど綺麗さっぱりと 消え去っていた。


【遅くなってすいません!早くレスできる時はしますが、暫くはこんな感じのペースになるかもしれません(^_^;)
そして曖昧な幕引きですが一応決着つけました。
サンディは身を呈してクロスを封印だか消滅させたけど、それと引き換えに暗黒に呑まれたか、どっか別の場所に転移したか〜
みたいな感じです。やっといてあまり深く考えてません(笑)】

372レオール ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:51:54
【闘技場】

「……そうだな、見た所戦いは終わった様だな。

負傷者の救護手配が終われば一度集まって話そうか。」

やれやれ、と言った様子で口を開くアグルの様子に、レオールは苦笑いを浮かべながら応える。

ざっと見渡す限り、闘技場での戦闘は全て終息した様だ。

闘技場の結界も解け、続々と乗り込んでくる空挺師団兵が負傷者の搬出、救護に就き出すのを確認し、レオールは密かに胸をなで下ろした。

ーーーーー

そして、一夜が明けた頃。

空挺師団旗艦の会議室に集まった四神組一行は、ホワイトボードに書き出された様々な情報と、それに関するレオールの説明を受けていた。

「要点だけを掻い摘まむとだな、四霊の襲撃目的はこの旗艦の動力源……希少な結晶鉱石の奪取だった訳だ。

四霊が囮となり、闘技場へ戦力を集中させ、別働隊が動力源の奪取に当たる。

まさかその別働隊がこの師団の構成員、幹部だったのは予想外だったがな……

結果として、四霊の目的は果たされ、この旗艦は当分の間は動けない。」

そう、闘技場で圧倒的な力を振るったキールはあくまでも囮だったのだ。

別働隊、裏切り者である幹部は相当な実力者であり、団長のレオールをもってしても討ち洩らす程。

マルトと対なす幹部……側近との戦闘があった為に、レオールの到着は遅れたのだった。

「痛手ではあるが、暫くはこの街に留まる予定だったからそう問題は無い。」

旗艦内部にある幾つかの会議室の中でも、今居る部屋が一番面積は小さい。

集まった面々に目をやり、レオールは続けた。

「師団幹部のマルトは重傷、死亡者は出なかったものの団員の負傷者多数。

四神の一人、天照大神が行方不明。

四霊の一人、霊亀を撃退。

四凶の二人を撃破。

箇条書きにすれば結果としては上々とも言えるが……」

集まった面々、アグル、レックス、イスラ、メイヤ達にとってはサンディの安否が一番気にかかるだろう。

特に、サンディが行方不明だと知った時のメイヤの表情は悲壮感に溢れていた。

イスラの話によればサンディは何の痕跡も残さず、消えたらしい。

ブラックホールを消滅させる為に自らの命を犠牲にしたのか、それとも……

楕円形のテーブルに沿って席に座る一同の顔を今一度見渡し、レオールは問い掛けた。

「皆は、これからどうする?

この空挺師団は対黄龍を目的として動いている。

目的が同じならば、入団して欲しい所ではあるが、無理強いはしない。

無論、入団しないからと言って援助の打ち切りはしない。

飛行船、食糧物資等の援助とサンディの捜索も続ける。」

幹部の中でも右腕であるマルトと、その片割れとも言える側近の離脱は大きい。

その二人の抜けた穴を埋めるに存在として、アグル達は丁度良い所か十二分以上なのだ。

「暗躍を続けてきた四霊、黄龍が表立って動き出した今、此方としても戦力を固めたい。

どうか、力を貸してくれないか?」

373ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:55:01
【久し振りすなー、月一連載みたいな感じでww

幕引きあざした!んだらばサンディは暫く行方不明と言う事すね了解!】

374イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:10:23
【旗艦】

「俺は構わない、むしろありがたい話だ」

会議室。
集まった面々を見渡し、こちらの返答を窺うレオール対し、真っ先に口を開いたのはイスラだった。

「俺達だけでは四霊の動向やサンディの行方を調べるにも限界がある。
よりそっち側の事情に精通した者と組めるのなら、こちらとしても都合がいいし。何より、戦力不足はこちらも同じ。
共通の目的を持つ者同士、互いの手を取り合うのに何ら不満なんてないさ」

そう好意的な意思を見せるイスラであったが、それに反し、やや間を置いてから今度はアグルが話し出す。

「…前にも言ったけど、俺は入団しない。
あんたらと違って俺の目的は四霊退治でも世界の救済でも何でもないし」

サンディが消えたと聞かされた時も意にも返さなかったアグル。
頬杖をつき、レオールではなく机の端に視線を外すその態度が、この件に対する彼の無関心さを語っている。
もしくは、ただそう見せようとしているのか。

「でも、別に協力しないとはいってない。ここにいる間なら出来る限り力を貸す。
いつまで居るかは分かんねーけど」

375イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:18:27
【と思ったけど、ちょっと落ち着いてきたかも(笑)

久しぶりに絵でも描こうかな…、何かリクエストとかあります?】

376ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/22(月) 00:53:39
【壁I・ω・)ノ

梅雨時なんで、水も滴る良い男達とかどうすか!】

377イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/23(火) 06:01:27
【おおう…また難しそうな…(笑)
でも頑張ってみます!梅雨時すぎるくらい遅くなるかもしれませんがw】

378レオール ◆.q9WieYUok:2015/07/03(金) 14:14:56
【旗艦】

此方の申し出に対し、真逆とは言わないがそれぞれ違った反応を見せる二人。
しかし、断られはしたものの、アグルの返事は決して悪いモノでは無い。

寧ろ彼なりに気を遣ってくれたのだろうか。
残るはレックスとメイヤだが……

「僕もイスラと同意見です。

四霊と対峙してわかりましたが、実力差は明白でした。
諸事情を踏まえた上で、僕入団しますよ。

どこかの誰かと違って、世界の危機を黙って見てる様な真似は出来ないので。」

レックスの方は、本人の言葉通りか。
真面目な性格の彼の返事は予想していたモノとそう変わらない。

「後はメイヤだな。

君にはイオリから言付けを預かっている。」

レックスの一言は気になるが、今は流すべきだろう。

イスラとレックス、そしてアグルがどうするかを決めた今、残るはメイヤだ。
本来ならば、彼は身内であるイオリと行動を共にしていてもおかしくは無い。

しかし、イオリの一団は今朝方に発って行ったのだ。
メイヤと、彼への言付けを残して。

「今まで通り、四神を護衛しろ。ただし、これは命令でもなんでも無い。

……だそうだ。

要は好きにしろと言う事らしいな。」

師団の協力者であるイオリの身内、その立ち位置は何とも微妙である。
だが、イオリのその言葉によってメイヤの立ち位置は大きく変わるのだ。

そして、続くメイヤの言葉に、レオールは満足そうに頷いた。

「今まで選択肢なんてモノは無かった。

イオリの言葉が、当主の言葉が全てだったから。

……好きにしろと言うなら、俺はサンディを捜しに行く。

けど、その前にイスラ達と共に動くさ。」

ーーーーー

各々が立ち位置を決め、全員が師団に協力すると言った今。
早速とばかりにレオールは話題を切り替え、話を始める。

空挺師団はバルクウェイを拠点化し、大々的に動き出す事。
旗艦の動力源が奪われた為に、その代用品の探索に動く事。

世界そのものである黄龍と対峙するに、充分な戦力を確保する事。
それと並行し、今までの主な活動内容である異貌の者の討伐をイスラ達に任せる事。

「と言う訳で、君達には遊撃隊になってもらいたい。

師団最大戦力と言っても過言ではない四神を、ただ単に手元に置くだけなのは勿体ない。

あくまでも協力者であるアグルやメイヤの存在を考えれば、ある程度自由に動ける立ち位置の方が良いと思ってな。

後は、サンディを捜すにも丁度良いだろう?」

そして、予め用意していた書類を渡したレオールは、小型飛行艇へ戻るように一行へ促す。

ーーーーー

「で、ですね。

遊撃隊として動く事になったのですが、僕は師団長の下に戻ります。

バロンや、ナディア達の帰りを待つ人が誰か居なければならないと思うので。」

飛行艇に戻るや否や、開口一番にレックスはそう告げた。

「私は構いませんよ、道理に叶っていますし。

問題はありません。」

そんな彼の言葉に、頷き何ら問題は無いと続けるのは補助員として派遣された巨漢の男、バッハだ。

「まぁ、僕が居なくても何とかなるでしょう、アグルが本気を出せさえすれば。」

そして、レックスは先刻と同じように……寧ろより攻撃的にアグルを煽りだす。
しかしそれ以上続ける事は無く、後は頼みます、と静かに言い残し、食堂兼広間を、飛行艇を後にした。

「……相当苛立ってるが、何かあったのか?」

その姿を見送り、メイヤはアグルへと声を掛けた。

379アグル♯か:2015/07/14(火) 21:56:41
【飛行挺】

「さあな、俺のことが気にいらないんじゃないねーの?」

メイヤの問いにアグルは、何と言うこともないと肩を竦めてみせる。

正直、レックスが苛立っている理由も分からない訳ではない。
しかしだからといって、それに対しどうすることも出来なければ、態度を改める気にもならない。

取り敢えず今はレックスのことは置いておく他ない。アグルは一同を見渡し言った。

「そんなことより、これからどうすんの?
今後の方針を決めるリーダーとか決めて置いた方がいーんじゃね?」


【遅くなりましたが…イラスト出来ました。画像サイズ大きい上に水も滴る感があまりなくて申し訳ない;
imepic.jp/20150714/779350

あとですね、今アグルの復讐の理由なんかを考えている訳ですが…なかなか上手いこと思い浮かばず…
それでユーリのことを知れば何かヒントが得られるのではないかなー、と

と言うわけで良ければユーリの過去的なものを教えてください!】

380メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/07/16(木) 22:18:00
【飛行艇】

世界を救うべく行動するレックスと、同行はするものの別の目的があるアグル。

元々几帳面な性格のレックスからすれば、同じ四神であれど同じ目的を持たないアグルには思う所があるのだろうか。

「まぁ、少し距離を置くのも悪くないか。」

はぐらかすかの様に話題を変えるアグルから、メイヤは視線を変える。

その黒瞳の先は、勿論イスラだ。

「俺とアグル、イスラの中から決めるなら……」

飛行艇に居るのは前述した三人と、補助員のバッハのみ。

手際良く資料を配るバッハを除くならば、適任者は一人だろう。

「私はあくまで補助員ですので。」

メイヤの言葉の意を汲み取ったのか、バッハは微笑みながら口を開いた。

「……やっぱりイスラだと思う。」

その一言を聞き、メイヤはイスラへ視線を向けたまま頷いた。

【おぉー!梅雨明けっぽい爽やかな絵が!

それぞれキャラが出てて良いなぁ、青春って感じがまた……!また一段と上手くなってるし、ありがとうございやす!

とと、アグルとユーリの因縁は確か、アグルの兄をユーリが殺害したとかだった様な……

取り敢えずユーリの過去話的なのは……

任務に失敗したユーリは瀕死になるも、時同じくして黄泉がえったステラによって助けられる。

助けられた恩義を返すべく、襲い来る夜盗やら諸々を撃退。

行動を共にする内にユーリはステラへ想いを向け……要は恩義の為に彼女を守るから、惚れた女を守り抜く、状態へ。

兄の仇=ユーリで行くなら、闇の復活をいち早く察したアグル兄がステラを倒そうとするも、彼女を守るユーリに……とかどうでしょう?】

381リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/07/18(土) 16:31:12
壁|・ω・`)
お、お久しぶりです。リマです(´・ω・`)

現在卒業試験やら就活やらでバタバタしており、消息を経ってしまっていました、すみません( ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )

まだ落ち着いてなくてなかなか更新出来そうにないのですが、許していただけるのなら時間が出来次第細々とやらせて頂ければなと思います(´×ω×`)

そこでなのですが、もし宜しければどなたか現在の進行状況を大雑把に説明していただけないでしょうか(´•ω•̥`)
いずれ読み返そうとは思っているのですが、今はその余裕がなくてですね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )わがままでごめんなさい・・・・・

あとイスラさんのイラスト!!相変わらず素敵すぎます(◍˃̶ᗜ˂̶◍)ノ"
何だこの美男子集団は!!
つか、リトがきゃわわわ!!!何か食べてるー!可愛いー!長袖ー!!暑そうー!!真夏でも肌見せないとかマジ鉄壁ー!!!そしてアブに傘持たせて楽してるー!この二人相変わらずすぎて笑えるー!!
てな感じに悶絶しちゃいました(笑)
最近精神が荒んでいたので、思いかけず素晴らしい癒しに出会して、心が清められちゃいました(*∩ω∩)

382イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/07/19(日) 20:04:28

【ヤツキ〉いえいえ〜、最近は落書きと練習ばっかりで、一枚仕上げようって気持ちが中々沸かなかったので、いいモチベアップになりました。
こちらこそありがとうです^^

ふぅむ…、なるほど…
兄の敵討ちと言えばそうなんですが、実際アグルってそんなことするような熱い性格じゃない気がして…
彼的には復讐"したい"じゃなくて、復讐"しなければならない"、の方がしっくりくるかなって思ったんです。
兄の死に関わるところで、アグルがユーリに復讐せざるを得なくなった何らかの理由が欲しいのですが…難しいな…;

てかこれからの展開って何か考えてます?

リマ〉おー、お久!
構いませんよー、こっちもポツポツ更新ですし

今の状況を凄く簡単に説明すると、闘技会中にオンクーとクロスらが乱入→二人を撃破するもその際にサンディが行方不明→現在「どうしよう?」
みたいな感じです(笑)リト組は動いてないです

ありがとうございます!
正直このイラスト、あまり気に入らなくて上げようかどうか迷ったんですが…
そんなに言ってもらえるなら描いて良かったです^^
そしてリトは日光に弱そうなので長袖ですw

383ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/07/19(日) 23:35:51
【リマ》おおおお久しぶりです!リマもとうとう就活生かー、大変だろうけど頑張って!

夏バテには気を付けろよ!

進行度はイスラの説明通りで、リマ組みは動いてないよー。

イスラ》確かにきっかけが無いと仕上げまでいかんよなぁww

うーん、難しいな……

兄殺害の場にアグルも居合わせたor共に戦ってた→

①アグルのミスで兄死亡

②実力差を前に、兄が囮となりアグルを逃がした

③呪術の類を掛けられ、期限内までにユーリを倒さないと術でアグルは死ぬ

とかしか浮かばなかった、申し訳ない……つーか酒入ると頭回んねー

とと、これからは取り敢えず吸血鬼組と絡ませようかな、とか。

イスラ達→吸血鬼討伐へ

フィア達→人間界へ住む長老の元へ

イスラ達が狙う吸血鬼=長老で、その長老を狙い謎の吸血鬼(オリジン)が、みたいな。】

384イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/07/25(土) 06:33:00
【飛行挺】

「え、俺?」

メイヤの視線、そしてその発言に対し、イスラは思いがけず意外そうな反応を見せる。

「いや、そう言って貰えるのは嬉しいが…俺はこっちの常識だとか地理だとかには詳しくないし…。
むしろメイヤが適任だとばかり…」

仮にも自分にとっては遠い未来であるこの時代。今の時を生きるメイヤやアグル達のリーダーとして、「任せとけ」と言える自信は流石にない。

「だってさ」

彼の言葉を聞き、アグルはメイヤに視線を変える。
それに続き、イスラも訴えかけるように言った。

「…リーダー、任せてもいいだろうか?」



【ヤツキ〉呑んでたのかw

う〜ん、やっぱりそこらが無難なところですよね

③はアグルなら「死んでも別にいいや」とか言いそうw
でも呪術をかけられた立場が兄なら、アグルは頑張ってユーリを倒そうとするでしょうね
死んだ人間の敵討ちはしないけど、生きてる人間を見捨てるほど冷たくもない、みたいな

でもその場合、兄はまだ生存してるってことになるわけで…、確か既に「兄は殺された」って皆に公言してたような気もするけど…w
まあそこは「兄は殺された(ようなものだ)」に変換しちゃえば良いか(笑)

それかもしくはアグル絶賛記憶喪失中、覚えているのはユーリへの強い憎しみと兄がいたらしいと言うこと。
その二つの記憶だけが今の彼の全てであり、生きていく上での支え。で、アグルは自身の記憶と真実を求め、ユーリを追う。みたいな感じ

他にも色々考えてたけど、取り敢えず上の二つに絞ろうかな。兄が死んだのはヤツキが言ってたように闇の復活を察して〜ユーリに返り討ちってことで

まぁまたこれからの展開によって色々変わってくかもしれませんが、アドバイスありがとうございました!

お、ついにオリジン登場ですか!楽しそう!了解です!
じゃあリーダーはメイヤに任した(笑)

385メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/07/26(日) 23:02:27
【飛行艇】

いや待ってくれその返しはおかしい。

予想外のイスラの返答に、メイヤは反射的に口を開く。

だが、口を開いたものの、続く言葉は内心とは逆の物だった。

「……わかった、イスラがそう言うなら任されるさ。」

経験、戦闘力、胆力、年功序列……その他諸々。

トータルで考えた上で、適任はイスラだろう。

しかし、その彼が断るのにはそれなりの理由が、考えがあるのだろう。

「任されたからにはやるしかないさ、取り敢えず……作戦会議か?」

腹を括ったと言えば聞こえは良いが、やると決めたからにはやるしかない。

メイヤは早速、配られた書類に目を通していく。

そして、イスラとアグル、メイヤが一通り読み終えただろうタイミングを見計ったバッハが口を開いた。

「今回の任務は討伐任務です、討伐対象は吸血鬼。

王や長と呼ばれるらしく、高位の存在だと予測されます。

バルクウェイから南西方向、群青の街中央の城に居を構え、毎月事に生贄を求めている模様ですね。」

「……吸血鬼か、一度戦った記憶はあるけど、厄介だったな。」

「空間転位術と優れた再生能力、文献によれば肉片一つから復活した等と、厄介過ぎる相手です。」

バッハの説明によれば、件の吸血鬼は世界政府ですら討伐に失敗した程の強者であるらしい。

彼の話を聞きながら、メイヤは考える。

「取り敢えず、今夜はここまでにましょう。

出発は明日明朝ですので、それまでに各々準備をして下さると助かります。

あ、装備品等は幾つか見繕って持ってきているのでお好きなのをどうぞ。」

だが、その考えが纏まらない内に、バッハは説明を終えてしまった。

「それでは、皆様また明日。

私はもう少し艇の整備をするので、何かあればお呼び下さいね。」

そして、書類を手早く片付けた彼は巨体を屈めて窮屈そうに部屋を後にした。

ーーーーー

思ったよりも海風はべたつかず、夜風は涼しい。

会議が一応は終わり、各々が部屋へと戻った後。

メイヤは一人、月明かりに照らされる甲板上へと出て来たのだが……

「……なんだ、居てたのか。」

どうやら先客が居たらしい。

甲板へ腰掛ける赤毛の青年、イスラの背中を見つけ、メイヤは声を掛けた。

「寝れない、訳じゃ無さそうだな。」

386イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/01(土) 05:33:29
【飛行挺】

不意に声をかけられ、イスラは背後を振り返る。
メイヤの姿を瞳に映すや、ああ。と、どこか力なくだが口の端を小さく持ち上げた。

「サンディの気を探してたんだ」

そしてその視線は再び水平線の向こう側へ。
彼の浮かない表情から察しても、結果は思わしくないようである。

「あの時…、目の前の危機的状況に対して、俺は咄嗟に反応できなかった…。
飛び出して行ったサンディを止めることもできなかった」

もしかしたら彼女はもう…。
そんな脳裏にちらつく恐ろしい考えを、振り払うことさえできない。

「女の子…しかも自分よりも年下の子に体を張らせて助けて貰うなんて…」

情けない。とイスラは言った。

387メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/03(月) 13:58:30
【飛行艇】

「情けない、か。」

水平線へと視線を向けるイスラの声は、どこか弱々しく感じる。

聞く所によると、サンディは身を呈して闇の渦を消し去ったらしいが……

「サンディはきっと生きてる。

死体は出てないんだろう、有名な猫と確率の話とは違うけど、死体も、死んだ瞬間も、見てないなら可能性は0じゃない。」

そう考えないと、心が保たない。

「だから……とは言わないけれど、そう、あんまり気を落とさないでくれ。」

ましてや真面目なイスラの事だ、落ちだしたら底が知れないかもしれない。

甲板に座るイスラの隣に立ち、メイヤもた、水平線へと黒瞳を向ける。

「そう言えば、イスラの仲間達……先代の四神はどんな人達だったんだ?」

【イスラ》毎日の様に飲んでてヤバいwwww←

おー、イスラの案は両方共に良いですな!

話は合わすんで、また何かあれば言ってくだせー!

いやホント予想外の返しで焦ったwwけど、やらせていただきます!ww吸血鬼組も良いネタ思い付いたんで任せろー!】

388イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/09(日) 11:57:17
【飛行挺】

どうやら今の自分の態度は想像以上に情けないものだったらしい。
メイヤに気を使わせてしまったことを悪いと感じながら、イスラは小さく笑みを見せる。

「ああ…、いや、すまない。
俺なら大丈夫だよ」

彼の言う通りだ。悲観的に考えていても仕方がない。
イスラは気を取り直すかの様に少し体勢を崩し、楽な姿勢で話し出した。

「そうだな…、リマ…ポセイドンは少し内気な感じの可愛らしい娘だ。
最年少で世間知らずなところもあってか、つい世話を焼きたくなると言うか、護ってあげたくなると言うか…。
あとたまに一人で突っ走って無茶やらかすんで色んな意味で目が離せなかったな。

トールはメンバー内のムードメーカーで、こいつのおかげで旅の途中も退屈しなかった。
いつも女の子を追いかけまわしてるような軟派な奴だったけど、やるときはしっかり決めてくれるとこなんか俺には絶対真似できないなぁって思う。

フレイヤは頼れる皆のお姉さんって感じだな。面倒見が良くて何でも器用にこなしてくれる。
でも気が強くて怒ると怖かった。
女の子には優しくて男には厳しいタイプなのか、アグルなんかはよく怒られてたし、俺もいいようにコキ使われてたよ」

何だか懐かしい。
自分の表情が柔らかくなっていくのが自分自身で分かる。
同時に、同じようにこの時代に飛ばされてきたリマと、あまり話す時間が取れなかったことが悔やまれる。

「今の四神の皆を見てると全然違うんでびっくりするよ。こっちはこっちで個性豊かで面白いけど」

389イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/12(水) 04:14:27
【↑はアグルじゃなくてレイヴンでした;

ヤツキ>呑まないとやってられないってやつですか?w
そちらも何かあれば言ってください、自分も合わせますので^^

自分は最初からそのつもりでしたよ(笑)
マジですか!じゃあよろしくお願いします!】

390リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/08/13(木) 19:16:09
【過去】

「アブセル、あんた・・・・・」

アブセルがリトの事を好いていないことには何となく気づいていた。
しかし、同い年だし、男の子というのは細かい事にこだわる性格ではないため一緒に過ごさせておけば時期に仲良くなると思っていた。
自分の考えが浅はかだったと、ナディアは頭を抱えた。

恐らく・・・・・事の重さの程度は理解していなかったとは言え、アブセルはリトを外に出せば問題が起きる事を知っていた。
完全に悪意のある行動。許せない。

「・・・・・」

苛立ちを顕にするナディアだったが、不意に服を引かれる感覚に気付き我に返った。
見ればリトが何か言いたげな表情でこちらを見上げている。

「リト、どうした?」

しかし、リトが何を伝えたいのかまでは分からない。

(ちゃんと言葉にしないと分からないよ)

沈黙の中から懸命にリトの心情を読み取ろうとするナディアの顔を見上げ、リトは先程出会った少年の言葉を思い返した。

(大丈夫、怖がらないで)

「・・・・・ねこ・・・・・」

「・・・・・ねこ?」

リトが口を開いた。それだけでも驚きではあるが、それ以上に、彼から発せられた言葉の意味が分からずナディアは疑問符を浮かべる。

「にゃーって・・・・・動いてた。ねこだって。甘いの、食べた・・・・・冷たいやつ・・・・・。」

しかし、すぐに謎は解けた。

「・・・・・楽しかった」

リトが外に出たのは今回が初めてで、見るもの全てが珍しかったのだろう。
動物だってヌイグルミでしか見たことがない。同じ姿の生き物がいるなんて知らなかったのかもしれない。

父親がリトに危害を加えないようにするのに必死で、リトの自由を奪っていたのは自分も一緒だった。リトを心配していたつもりで、やっている事は大人達と同じ。
今だってリトを外に連れ出したアブセルを窘めようとした。他の奴等と同じように・・・・・
アブセルは自分が父親の顔色を伺って出来なかったことをやってのけたのだ。リトに世界を見せてくれた。

「ごめん・・・・・」

ナディアはリトの頬に手を触れた。不思議だ。いつもは手を伸ばすと怯えて身を縮ませていたリトが、逃げることなく受け入れてくれた。短時間なのに、リトが変化を見せている。
ナディアはそのままリトを抱き上げる。折角の機会だから調子にのってみたけれど、やはりリトは逃げなかった。初めての抱っこ、彼の重みを感じられる事が嬉しい。リトはリトで自分が何をされているのか分からず不思議そうにナディアを見下ろしているが、構わずナディアは笑ってみせた。

「部屋に戻ろう。ごめんな、今は出来ないけど・・・・・いつか必ず、あの部屋から出してやるから。」

そしてそのままアブセルの方へ向き直る。

「怒鳴って悪かったな。動機はどうであれ、結果的にあんたは良い事をしてくれたよ。」

ついでに乱暴ながらも優しく頭を撫でてやる。

「リトに助けられたな。あんたに100倍返しするとこだったけど、リトに免じて許してやる。もう虐めるなよ。」

アブセルは子供だからリトの置かれている状況を理解出来ていない。今は知らなくていいとも思う。いずれ成長するにつれて気づいていくだろう、ポセイドン邸に潜む闇に。
それまでは何の見返りもない普通の友人として、リトと仲良くなって欲しい。リトを主としてでなく、友として守って欲しいから。

391リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/08/13(木) 19:31:48
↑ナディアだった( •́д•̀ ;)

またまたお久しぶりです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

イスラ>>
説明ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)まだ無理そうなんですけど、時間出来たらちゃんと自分で読み返しますね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )


綺麗でクオリティ高いのに気に入らないとは何事ですか(╬•᷅д•᷄╬)←笑
確かにリトは肌弱いと思われます(笑)日光当たると火傷しちゃう←
でも暑いものは暑いんで、アブセルに団扇あおがせたりとかこき使ってそう(笑)

イスラさんの絵大好きなのでまた沢山見たいです(๑⃙⃘´ꇴ`๑⃙⃘)


ヤツキ>>
まだ就職決まらない( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )筆記試験はパス出来るのに面接で落ちる(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
性格を否定されてる気分( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

そして夏バテた…咳が止まらんでやばいっす(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

ありがとう!時間出来たら読み返します(`・ω・´)

392メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/14(金) 22:52:37
【飛行艇】

確かに、今の面子と比べると真逆だったりとその違いが良くわかる。

「だけど、芯の部分は似通ってたりするんだな。」

だが、直系の子孫だからか、性格上な部分はまったくの別物でもなさそうだ。

姉御肌のナディアは、激情に任せ突っ走りそうな節もある。

アグルは何時も飄々としているが、案外冗談が好きそうにも見える。

レックスは……聞く限り先代と変わらない性格のようだ、いつか自分も顎で使われる時が来るかもしれない。

「個性的、なのは全く持ってその通りだけどさ。」

少しは気が紛れただろうか、姿勢を崩して話すイスラの表情は先程よりも柔らかく見える。

「四神全員が上手い具合に纏まれば良いな……」

その為にも、まずはリーダーとして頑張らなければ。

「出発は明朝だったっけ?夜更かしして寝坊する訳にもいかないし、そろそろ戻ろう。」

ーーーーー

バルクウェイからの出立も、その道中も驚く程順調かつ迅速だった。

聞けば、バッハは師団の参謀かつ補給部隊の長らしい。

裏方仕事は得意分野です、と静かに笑う彼のおかげか、飛行艇は無事に目的地へと着いたのだが……

「何でこんな事になったんだ……!?」

目的地、群青の街へ到着したのは日も沈む頃。

先ずは情報収集を、との事で訪れた酒場は予想以上に騒がしく、話を聞くどころではなかった。

その様子は、吸血鬼に支配された街と言う先入観が吹き飛ぶ程。

そして、老若男女が騒ぐ酒場から抜け出せずに二時間。

巨漢からは想像の付かない酒の弱さを露呈したバッハが良い潰れ、その隣でメイヤは思わず天を仰いだ。

393ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2015/08/17(月) 02:11:03
【ポセイドン邸】
>>356

言葉を発せさせんと口を塞いできたアブセルの手にノワールはジタバタと抵抗し、反射的ながらもアブセルが少なからず怯んだ際に出来た隙間を利用しその皮膚へと噛み付いた。

「わらわに気安く触れるでない!」

そしていつものごとく、アブセルの脛へ足蹴をお見舞いする。

そんな騒ぎを耳に流しながら、ナディアは思い出したかのように小さく息を吐く。

「そうだ、母様・・・・・」

ミレリアは今どうしているだろう。
葬儀の準備は着々と進んでいるようだ。今頃、彼女もヨハンの死を既に聞いていることだろう。

ナディアは思案げな素振りを見せつつ、ふとセナを見る。

周りの意見を無視して"リト"を表に出さない手もある。しかし、そうすると後々面倒なことになるのは必至。
しかしアブセルの言う通り、葬儀の場で騒動が起きることは避けたい。
ならば、致し方ない。

(先に会わせてみるか・・・・・)

不安はある。別人とは言え、全く同じ顔をしているのだ。ミレリアは見分けを付けることが出来ないだろう。
となると、リトと同じ態度をセナにも取るはず。

「アブセル、あのさ」

ナディアはアブセルの腕を引き、彼に耳打ちする。

「セナを母様に会わせてくる。母様のこと、知っておいてもらった方がいいと思う。だけどリマはちょっと・・・・・あとあのチビ(ノワール)。あんた、適当に誤魔化して二人連れて何処かで時間潰しといてくれない?」

セナはきっと、母親の態度に動じることはないだろう。理不尽には思うかもしれないが、その点は後で詫びることにする。
しかし問題はリマだ。自分の想い人が謂れなく罵倒される姿は見るに耐えないだろう。セナに至ってもそう。自分に関することでリマが傷付くなど許さない。しばし共に過ごす以上リマも母親との確執をいずれ知ることになるかもしれないが、今敢えて垣間見せる必要はないとナディアは考えた。
ノワールは、何となく、本当に何となくだが面倒を起こす気がするため遠慮願うことにしておく。一体リトはこの娘を何処で拾ってきたのか、おそらくリトに懐いているのだろう分は微笑ましい限りだが、リトが関わる事柄になると形振り構わず辺りに喧嘩を売りまくるから困る。

「じゃ、頼んだから」

394アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/23(日) 01:07:37
【過去】

てっきり怒られると思った。
ナディアが手を伸ばした瞬間、殴られると身構えたがそれも違った。

頭に触れる優しい感触。アブセルは不意をつかれ目を丸くした。

「待って、おば…、お姉ちゃん…!」

恐らくリトは意図していなかっただろう。しかし結果として彼に助けて貰ったのは事実。
アブセルはリトを抱きかかえ屋敷の中へ戻ろうとするナディアと、そしてヨノに駆け寄った。

「どうしてリトは外に出ちゃいけないの?
リトの病気ってそんなに悪いの?
さっきのおじちゃんは、薬を持って行くようにとは言ったけど、外に出るなとは言わなかった」

先程リトは楽しかったと言った。彼にとっては倒れたりと散々だったはずなのに、だ。
でも…うん、そうだ。今思えば、自分も結構浮かれていたのだと思う。

友達同士で一緒に出かけたり、クレープを食べたり。多分ふつうの子供達にとって、それは何ら珍しいものでもないのだろう。

しかしアブセルにとっては、子供同士で同じ時間を共有したのは今日が初めてのこと。
そしていつもは、そんな遊んでいる子達の姿を見かけては、ただ羨ましいと遠目から眺めているだけだった。

またリトと一緒に遊びに行きたい。

言葉には出さずとも、分かりやすい程にアブセルの表情がそう物語っていた。

「俺…、旦那様に(リトが外に出れるように)お願いしてみる。
あと今日のこと、リトは悪くないってことちゃんと話す。そしたら旦那様だってリトのこと許してくれるよね?」

395アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/23(日) 01:09:28
【群青の街】

「情報収集がいつの間にか酒の呑み比べになったからだな」

酔い潰れ机に突っ伏したバッハと、困り果てたような様子のメイヤ。その横でアグルはそう気怠そうに、かつ冷静に今の状況を説明した。

どこにでも酒の強さを競いたい者はいる。
呑み勝負に勝てれば情報を提供すると提案した馬鹿な輩のせいで、事情聴取は進まないどころか足止めさえ食らっている始末だ。

因みにイスラも開始早々に轟沈した。どうやら彼も酒は苦手のようである。

「どうすんの、リーダー?
あ、もう帰っちゃう?面倒臭いし」

少なくともこの酒場の連中は吸血鬼の脅威に怯えているようには見えない。

特に協力する気もないアグルは、非協力的な態度丸出しで全てをメイヤに丸投げするのだった。

396メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/24(月) 13:59:17
【群青の街】

どうにもこうにも、ここは一度引くしか無いだろう。

話術にも長けているであろうバッハが酒に潰れ、見ればイスラも轟沈している。

空のグラスを前に平気な顔をしているアグルは飲むか飲まずか。

「取り敢えず船に戻ろう……

イスラは俺が抱えるから、アグルはバッハを頼む。」

こうなっては情報収集もくそも無い、バッハの懐から紙幣の束を引っ張り出し、メイヤは会計を済ます。

店員の言い値だが今は仕方がない。

受け取った釣銭をポケットにねじ込み、メイヤはイスラの肩を担ごうとし、気付いた。

(……紅、瞳……?)

笑顔でありがとうございましたと言う店員の少女も、騒ぎ続ける客達も。

その全員の瞳が、紅い。

動きを止めたメイヤへと笑顔を向ける店員の口元から覗く犬歯は鋭く、牙の様にも見える。

否、犬歯では無くソレは牙だ。

(まさか、この店……っ!?)

吸血鬼の支配に怯える街とは思えない程の活気さの理由。

それは……

「そうだ、この店に居る連中は、お前ら以外全員吸血鬼なんだよ。」

不意に止む喧騒と、それに続く男の声に、メイヤは動きを止める。

「この店の生物はヴァンピーア、確認せず入ったお前らはただの活き餌な訳だ。」

酒やけした声で話す男、酒場の入り口からゆっくりと歩み寄るその男を凝視し、メイヤは唇を噛んだ。

燃える様な赤髪を逆立て、紅瞳は燐光に揺れ。

過度なまでの装飾品が着いたレザージャケットを着こなし、ニタリ、と笑うその男はこう名乗った。

「俺はメルツェル、メルツェル・グランスール。

十三人の長老が一人、融の派閥の頭だ。

ついでに言うと、今はこの街の長だな。」

【長老追加でー。

メルツェル・グランスール
男性/吸血鬼
赤髪紅瞳/長身痩躯
パンクロッカー風の衣装を着こなす見た目チンピラな十三人の長老
融の派閥の長で、喧嘩っぱやい
弱い者イジメが好き、仲間意識は薄い、と立ち位置的には嫌われ者ポジション
あらゆる物を溶かす、融解させる能力を持つ

です!】

397メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/24(月) 19:42:46
【やらかした、誤字発見……

店の生物→店の名前で】

398アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:17:24
【ポセイドン邸】

「分かった。任せとけ、お嬢!」


(……って、何で言っちゃったかな…。)

…ところ変わって屋敷内の庭園。机の上に置かれた三人分のカップに紅茶を注ぎながらアブセルは秘かに溜め息を溢した。

あの後すぐ、「話がある」と声をかけ、リマとノワールをこの場所まで連れてきた。
それだけでは何となく手持ち無沙汰なので、紅茶と菓子も用意した。

しかし傍目から見れば緑に囲まれた優雅なお茶会といったこの光景も、実際はそんなに穏やかなものでもない。

そもそも先程はナディア達の役に立てるのが嬉しくてついつい弾みで任されてしまった訳だが、正直なところ自分もセナや奥様の方に立ち会いたかった。
よって、話がある。などと言うのは全くのでたらめである。

それに何故かは知らないが、最近のノワールは何だかやたらと機嫌が悪い気がする。とりわけリマやセナといる時なんかは一段と酷い。

今だって…、さっさと話せ、用がないなら妾はもう行くぞ。とばかりに今にも席を立ち上がるんじゃないかという雰囲気だし。

「え…えーと…、まぁその、話って言うのはあれなんだけど…」

とにかく何か話さなければ。
アブセルはリマとノワールに茶菓子を持て成しつつ頭を回転させる。

「ふ…二人はリトのこと、どう思ってる?」

399アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:20:47
【群青の街】

気づけば店の者達に取り囲まれている。
無数に光る彼らの紅瞳。それを見た瞬間、そう言うことか…と理解した。

(…もしかしてこれ、やばいんじゃねーの…?)

袋の鼠もいいところ。
まんまと彼らの罠にはまってしまったと言うわけだ。

しかもこちらはイスラとバッハという二つのお荷物つき。
彼らを庇いながらでは、戦うのも逃げるのも至難のわざだろう。

「ちょっと待ってよ。俺達べつに喧嘩しに来た訳じゃねぇって」

メルツェルと名乗った男。どうも彼がここの吸血鬼達の頭らしい。
アグルは両手を頭ほどの高さまで上げ、無抵抗を装いつつ彼に言った。

「ただの興味本位なんだ。ここの街の人間を服従させて好き勝手してる吸血鬼の噂を聞いてさ、実際どんなものか見たくなっただけなんだ。
歯向かうつもりはないんだって。なんならそこの二人(イスラ、バッハ)はあんたらにやるから、俺達のことは見逃してくれよ」

400イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:32:42
【リマ>だって全然思ったとおりに描けなくて…(´Д`)
火傷はやばいwアブセルは頼まれなくても自ら進んで扇いでそうですけどねw

マジですか!?まさかそう思って頂いていたなんて…(;_;)はい、また時間が出来たら描きたいと思います!
就活頑張ってください!

ヤツキ>新キャラ了解です^^】

401メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/09/04(金) 22:28:05
【群青の街】

「へ〜ぇ、興味本位で見にきたねぇ?」

両手を上げ弁明するアグルの言葉に、メルツェルは胡散臭さそうに目を細めた。
しかし、それも一瞬。

浮かべる表情を薄ら笑いへと戻しながら、メイヤへと歩み寄ると同時に、彼の腹部へ蹴りを叩き込んだ。
その威力は強く、重い。

メイヤは咄嗟に身を捩るも、衝撃を逃し切れずに吹き飛び、派手な音を立てて店内のカウンターへと激突。
肩を組み、抱えられていたイスラも床へ転がっていく。

吹き飛ぶメイヤと転がるイスラの様子を鼻で笑い、メルツェルは続ける。

「ここ数日、下僕の吸血鬼共が立て続けに狩られててな。

七世代辺りのなら気にはしねーんだがよ、三世代の吸血鬼が跡形も無く消されてるのは流石にヤベーんだわ。

テメーらが吸血鬼狩ってる奴かも知んねーからな、疑わしきは何とやらだ。」

そして、薄ら笑いを僅かに歪め、メルツェルはアグルの喉元目掛けて手刀を放つ。
何の予備動作もなく放たれたそれは、吸い込まれるかの様に伸びて行き、止まった。

否、止められた。

「……あぁん?何しやがるんだ?」

アグルの喉元の数ミリ手前で止められた手刀、その手首を誰かが掴んでいる。
寒色系のネイルアートが施されたその手の主へ、メルツェルは視線を移した。

「誰かれ構わず喧嘩吹きかけるのはよろしく無いわ、まるでどこかの誰かさんと同じね。

まぁ、アナタの場合は弱い者虐めだけど。」

メルツェルの紅瞳に映る人物、銀髪のその女性……フィアは、呆れた様に口を開いた。
その後ろには、同じく吸血鬼であり、長老であるシャムとDDの姿も見える。

「アナタが手を出そうとした一行は私の顔見知りよ。

だからと言うのも変だけど、今回は見逃してあげて。」

自分と同じ長老が3人、その中ではフィアに一番発言力があるらしい。
歪めた頬を戻し、メルツェルは再び鼻を鳴らした。

「けっ、仲良しこよしかえ?

まぁ良い、丁度話してー事もあるし見逃してやるよ。」

そして、フィアの手を振り払うと同時に、アグルとメイヤへ向かって手をヒラヒラと振った。

「ただし、赤毛とオッサンは置いてけぇ。

返して欲しけりゃ明日夜、城へ来い。

面白ぇゲームをクリア出来たら返してやるよ、ほれ、わかったならさっさと失せろ。」

402アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/09/14(月) 17:34:05
【群青の街】

仲間を置いていけと言うメルツェルの要求に、アグルは一瞬気を詰めたような様子を見せる。
しかしそれは本の一瞬のこと。直ぐにいつもの眠たそうな表情に戻ると、特に何を言うでもなくメルツェルから顔を背け、そのままメイヤの元へ歩み寄った。

「……立てるか?」

そうしてメイヤに肩を貸し、その場に居る誰一人に一瞥もくれることもなく店を出ていった。

「はっ、あんにゃろぉ、礼の一言も言わず出ていきやがった」

それを眺めていたシャムは、彼等が潜っていった店の扉を睨み付けながら悪態をつく。
少しばかり面識があるからとはいえ、フィアが何故あの連中を助ける気になったのか甚だ疑問だ。

しかし今はそんなことよりも、他に論点を向けるべきものが別にある。

「…よお、元気そうだな。その小者くせぇ性癖も相変わらずの様で安心したぜ」

シャムは見下す様に軽く顎を上げ、口元に嘲笑を浮かべながらメルツェルを見た。

「で、話っつーのは何だ」


……一方、店を出たアグルはその足で、メイヤと共に今晩泊まれる宿を探し街をさ迷い歩いていた。
そして何故かその横には…。

「…何であんたまでついてきてる訳?」

「ホテルまでのボディーガードよぉ。人間にこの街は物騒でしょ?」

アグルの視線の先にはどういう訳かDDがいた。
ピンヒールのカツカツというタイルを叩く音を引き連れながら、ぴったりと二人に合わせて並行している。

「それよりまさか、こんなところで逢えるなんて思わなかったわぁ。アタシってば久しぶりに運命感じちゃったー。
あ、さっきはメルメルがごめんなさいねぇ、彼、昔からああなの。許したげて」

彼は話を変えると、やや興奮気味にこちらに身を乗り出してきた。
それとは逆に、アグルは若干身を引きながら怠そうに言葉を返す。

「アンタどっちの味方なんだよ。
どうせならアイツ説得して、俺らの連れも持ってきてくれれば良かったのに」

「あらぁ?でも貴方、さっきはそのお友達売ろうとしてたじゃなぁい?」

「あれはただの冗談…」

つまらない冗談ね。と乗り出していた居住まいを正しDDは肩を竦めてみせた。

「メルメルのやり方は好きじゃないけどぉ、アタシも一応長老の一人だもの。そこまで表だって人間の肩は持てないわぁ。メンツだってあるしね」

そう言うや、彼は再び顔を寄せてくる。
気のせいだろうか。一際メイヤに熱い視線を送っている様に見える。

「でもぉ、お忍びなら話はべつー。
今日はアタシが付きっきりで看病してあげましょうかぁ?」

403メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/09/18(金) 21:37:10
【群青の街】

「……そうだな、付きっ切りで看病、もとい、ボディガードなら頼みたい所だ。」

見逃され、逃げる様に後にした酒場とは打って変わって街の雰囲気は暗い。
だが、これがこの街の本来の姿なのだろう。

蹴りを入れられた腹部をさすりながら、メイヤは周囲を伺う。
痛みは大分引いてきたが、痩身から繰り出されたとは思えない程の威力だった。

「単なる情報収集の筈が大変な事になったが……」

とんでもなさそう火に入る夏の虫か、大火傷を負ったと言っても過言ではない状況に、メイヤは溜め息を吐く。
そして、DDの熱い視線を受け流し、足を止めた。

「囲まれてるな。」

それと同時に、暗闇から次々と人影が現れ、三人を囲む様に陣を取った。
その様子を伺いながら、メイヤは腰に挿した剣の柄に手を掛ける。

黒瞳の先に映るのは、夜に紛れる様な黒外套を羽織った集団。
背丈はバラバラだが、外套からは白い鎧の様な物が所々に見える。

ーーーーー

「テメェは相変わらず頭悪そうなツラしてんな、チンピラ崩れの喧嘩屋みてぇだゾ?」

アグルとメイヤが酒場から逃げる様に去った後、メルツェルはフィアとシャムを連れて街の中心に位置する居城へと戻っていた。
城内の大広間へ二人を通し、メルツェルは口を開く。

「あのクソオカマはともかく、お前ら二人が人間界まで来るとはな。

まぁ、話っつーのはアレだ、ここ最近下僕共が狩られててよ。」

その口調からは、僅かながらも怯えが見て取れる。

「第三世代辺りがほぼ全滅してやがってな、それも相手は正体不明。

どうやら結構な頭数は揃えてるみてーだが……何か知ってっか?」

普段は十字界で各々の領地を守り、軽い小競り合いを続けている為に、長老達が顔を合わす事は中々無い。
ましてや人間界へ出ている長老など極々稀だ。

その為、意外にも長老間の情報のやり取りは少い。

「場合によっちゃぁ大事になるかも、しんねぇ」

ーーーーー

始まりは突然だった。
柄に手をやり、周囲を伺う。

辺りに自分達と謎の集団以外の人影は見えず、虫の音一つ聞こえない。

出来れば刃を抜きたく無い、そう考え始めたその時。
自分達を囲む一団が、刃を抜き音も無く襲い掛かって来たのだ。

外套を脱ぎ捨て、闇に紛れながら襲い来る一団は速い上に連携が取れている。
所々、その速さに着いて行けない者もいるようだが……

(上手い具合に穴を埋める!!)

長い黒髪の男がそれをフォローしており、そこを突くどころか防戦一方だ。

(クソ、このままじゃっ)

404アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/04(日) 20:46:04
【群青の街】

「ははッ、そりゃ面白ぇ。
尻尾を掴ませずに第三世代の連中をやるとか結構な手練れじゃねーか」

一連の話を聞いたシャムは、さも愉快そうに歯を剥き出し笑った。

メルツェルの派閥が被害を被っていることもいい気味だが、彼の言う正体不明の相手にちょっとばかり関心が沸いたのだ。

とはいっても、この一件に関わる気など更々なければ、それに対し何らかの情報を持っている筈もない訳で。

「ま、大方この街の人間が雇ったハンターだとか、過去にてめえに謀られた吸血鬼共の復讐だとかじゃねーの」

どちらにしても自業自得だ。と、シャムは高みの見物気分で素っ気なく返した。


……………

突如襲いかかってきた謎の集団。
メイヤと二人、何とか攻撃を凌いではいるものの、
数の点でも不利な上に相手の動きも素早く中々反撃に転じられない。

そして、その理由としてもうひとつ…


「キャーッ、やっだ〜、なになに〜、こわーい」

DDの存在が要因として上げられた。

胸の前で手を組み、内股で悲鳴を上げる彼は、か弱い乙女の演出に余念がないのか、その場から全く動こうとしない。
加勢しろとは言わないまでも、せめてこの場から逃げてくれたのなら、こちらとしても彼を庇う必要がない分いくらか楽なのだが…。

「ちょっとちっょとぉ!しっかりしてぇ!右から来てるってば、ほらっ!ちゃんと見てぇ!やんっ危ない!」

「……(うぜぇ…)」

鬱陶しくて目の前の戦いに集中できない。

そんなアグルの気持ちも露知らず。二人に野次という名の声援を送りつつ、しばらく現状を見守っていたDDも、現在の戦況が好転しないことを見て取ると、ようやくその重い腰を上げるのだった。

「…もう、しょうがないわね〜。加減できないと思うから貴方達二人も気を付けてね」

そして本当にどこから取り出したのか。忽然と現れた身の丈ほどもある巨大メイスを握り、思い切り足元に降り下ろした。

直後、大きな音と共に足元が砕け、陥没する。
メイヤやアグルならず、敵も、周囲に建ち並ぶ建物も全部巻き込んで、地面は大きく崩落した。

405メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/08(木) 23:26:51
【群青の街】

途絶える事無い波状攻撃は、派手さは無くとも堅実だ。
致命傷こそは避けているものの、ダメージは蓄積されていく。

オマケに、全く可愛く無いDDの悲鳴が集中力を削いでやまない。
加勢しろとは言わないが、せめて逃げてくれれば……

止まる事を知らない連続攻撃を凌ぎながら、メイヤは願った。
それが通じたのか、DDが事を起こした。

どこからともなく巨大なメイスを取り出しし、それを地面に叩き付ける。
その威力は凄まじく、広範囲に渡って亀裂が走ったかと思えば、次の瞬間には周囲一帯が轟音を立てて陥没し、崩れ落ちた。

勿論、メイヤもそれに巻き込まれて行く。

(なんて馬鹿力だっ……!)

土砂が降り注ぐ中、メイヤは咄嗟にアグルへと手を伸ばす。
そして、その手を掴んだと同時に背中から闇の黒翼を生やし……否、生えない。

「闇が……出ない!?」

出せると思った翼は出ず、メイヤは驚愕の表情を浮かべる。
しかし、驚いている暇は無い。

(このままじゃ……生き埋めに……っ)

その時だった。
一瞬の浮遊感が止まり、崩落する周囲一帯がコマ送りの様に巻き戻されて行ったのは。

強烈な耳鳴りと、うねる様な気色の悪い感覚にメイヤは思わず顔をしかめる。
そして、気がつけば周囲一帯は崩落する前、DDがメイスを叩き付ける寸前の状態に戻っていた。

「何が……起こった……!?」

ーーーーー

「アァン!?何だかテメェ楽しそうじゃねぇか!?」

歯を剥き、話を笑い飛ばすシャムの態度にメルツェルは眉間に皺を寄せ、彼へとガンを飛ばす。
しかし、それも僅かな事。

舌打ちをしながら、メルツェルは悪趣味かつ下品なまでに飾り立てられた椅子に座り直す。

「ケッ、これだから脳たりんの喧嘩屋はよぉ……」

どうやらシャムはこの件に関わっては無いらしい。
第三世代の吸血鬼を跡形も無く消滅させる程の力の持ち主……真っ先に浮かぶのは同じ長老達だったのだが。

「で、テメェらは何の用だっけか?つーかあのオカマはどこ言ったんだ?」

椅子に座り直し、ふんぞり返るメルツェルはシャムと、その隣のフィアへ何用かと声を掛ける。

その一拍後だった。
外から聞こえる轟音と共に城が揺れ、どこか懐かしい様な奇妙な感覚がメルツェル達三人の長老を包んだのは。

「何だ、こりゃあ……?」

「……ヤダ、この感じ……どこかで!?」

406メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/08(木) 23:28:22
ーーーーー

「そう驚く事は無い。

何、時間を僅かばかり戻しただけの事だ。」

戸惑いの表情を見せるメイヤの視線の先。
メイヤ、アグル、そしてDDを囲む集団の中央、黒髪の男は低い声でそう言った。

「流石は古の長老、メイス一つで街の人区画を崩落させるとは。

お付きの二人も中々の手練れ、単体ならば第二世代の吸血鬼以上か。」

黒髪の男は月光に輝く剣をDDへと向け、続ける。

「長老と合間見えるは初、名乗ろうか。

我等は吸血鬼を狩る者、聖十字騎士団である。」

男は三十代中頃か、その顔には幾つかの傷痕が見てとれる。
そしてその傍ら。

小柄な人影が、頭巾から覗く白とも灰にも見える髪を揺らし、その奥の双眸をDDへと向けている。

「長きに渡り、闇に紛れ吸血鬼を滅して来たが……今ここに。

我々は長老を含めた吸血鬼全てに宣戦を布告する。」

その言葉と共に、男を中心とした集団は一斉に外套を翻し、順々に夜の闇へと消えて行く。

「この街の主にも伝えるが良い、最期の晩餐を楽しめ、とな。」

そして、男は純銀の剣を投擲し、刃がDDの頬を掠めると同時に、消えた。

「…………一体、何だったんだ……?」

襲撃するだけ襲撃し、捨て台詞と共に消えた一団。
その気配が完全に消えたのを確認し、メイヤは大きく、長い溜め息を吐いた。

407メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/16(金) 18:51:54
【なーんか久し振りに絵描きたくなったから、何かリクエストあればオナシャス!】

408イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/17(土) 00:20:58
マジっすか!
じゃあ時期的にハロウィン風なイラストお願いします!(`・ω・)ノ

409メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/17(土) 12:48:13
おけー、首をながーくして待ってろ!←

410DD ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/18(日) 01:55:14
【群青の街】

男達が立ち去った後、深いため息をつくメイヤの横でDDは思案顔で頬に手を触れた。

「聖十字騎士団か…。何だか穏やかじゃないわねぇ…。
アナタ達も、巻き込んじゃったみたいでごめんなさいね」

男の言葉通りなら、連中の狙いは吸血鬼である自分だった筈。
たまたま共に居たために、巻き込むはめになってしまったメイヤとアグルに申し訳なく、謝罪の言葉を述べる。
と、そこへ…。

「おい、何があった」

空間跳躍でシャムら三人が到着した。
どうやら事の異変を察知し、疑わしいと思われる場所まで赴いたようだ。

シャムはそこにメイヤとアグルの姿を見咎めるや怪訝そうに顔をしかめるも、直ぐに現場に残された純銀の剣の存在に気がついた。

「待って、その剣には触らない方がいいわ」

「あぁ?」

しかし、剣を拾い上げる前にDDがそれを止めた。
そして自身の頬を示し、言った。

「傷が治らないの…」

確かにそこには小さな切り傷が一つ付いていた。
先程の男が投げた剣が、頬を掠めたさいに出来たものだ。
普段ならば、この程度の傷など一瞬もかからない内に回復するのだが…。

「まさか。人間共が創作した都合のいいおとぎ話でもあるまいし、俺らに銀やニンニクが効くかよ」

半信半疑にそう言ってのけるものの、シャムも警戒してか手を引っ込めたようだ。
そしてDDはその剣のことも踏まえ、先程の出来事を三人に話すのだった。


【楽しみに待ってます!】

411メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2015/10/19(月) 14:53:51
【群青の街】

遂に姿を現した、明確な敵。
今まで刃向かう者は多々居たが、今回は強さ、規模共に最大級だろうか。

「……ケッ、ビビってなんかねーぞ……、ゴミ共は皆殺しにしてやる。」

残された純銀の剣を睨み付け、メルツェルは毒を吐く。
しかし、その言葉の端々からは明らかな怯えが見てとれた。

その隣、DDの説明を聞いたフィアは気になる点を挙げる。

「組織名は初耳だけど、中々に厄介そうね。

統制が取れた戦闘集団と、限定的だけれど時間を巻き戻す能力者。

あの銀の剣を見るからに、対吸血鬼に特化した異能の装備品を所持しているのは明白よ。

……それに、あの異質な感覚。

先日闘技場で感じたモノと同じモノだわ。」

調査すべき対象と、敵対する者達が共に行動している。
これはかなりの面倒事になるだろう。

下手をすれば、十字界を巻き込む大きな火種に成りかねない。
そうなる前にどうにか対処しなければならないが……

自分達が十字界から人間界へ、そしてこの街へ来た理由をメルツェルへ説明し、フィアは視線を横へ。
そこで、気付いた。

「二人、消えたようね……」

メイヤとアグルの姿が消えた事に。

ーーーーー

全く、災難続きだ。
これ以上の厄介事は流石に簡便してくれとばかりに、メイヤはアグルと共に夜の街を駆け抜ける。

街の柄にも、宿屋は全く開いておらず、目指す場所は自ずと決まっていた。

街外れの小高い丘の影に、隠れる様に着陸した飛行艇へ戻り、メイヤはホッと一息着いた。

「早々から大変な事になったな……」

飛行艇内部の広間兼食堂のソファに倒れる様に座り込み、うなだれたまま続ける。

「状況をまとめ様にも、面倒が過ぎる……

取り敢えず、イスラとバッハが無事だと良いけど。」

412アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/26(月) 20:59:57
【群青の街】

「おいおい、しっかりしろよ。チキン野郎。
酒場でガキ共に見せてた威勢はどうしたんだよ」

いくら強がりを言おうが、メルツェルが怯えているのは明白だ。
シャムは激励のつもりか、彼の尻に蹴りを入れる。

「おら、頭下げてお願いすれば手ぇ貸してやらんこともねーぞ、んん?」

底意地の悪い笑みだ。
そんな様子を横目で見ていたDDは、呆れた風にため息をつき口を開く。

「もうアンタ達なに遊んでるのよぉ!いつまでもこんな寒いとこ居ないで一旦戻りましょうよ。アタシ疲れちゃったわァ」

どうにも顔に傷をつけられたことや、メイヤ達に逃げられたこともあってか、ご機嫌ななめな様だ。

「はあーぁ…、これちゃんと治るのかしら。こんなんじゃ恥ずかしくてデートも出来ないわ…。
あ、そうそう。その剣もちゃんと持って来てよね。帰って材質調査しなくちゃ」

…………


飛行挺に戻るや、アグルはメイヤの向かいのソファに寝転んだ。
足を投げ出したまま仰向けになり、相手の声を耳に、ぼんやりと天井の照明を見つめる。

もともと四人では少しもて余していたぐらいの挺が、今ではより広く感じる。

「…取り合えずさ、さっきの何とか騎士団達がここの吸血鬼を全部退治してくれるってんだから、それはそれで奴らに任せとこうぜ」

先程は理不尽にも戦闘に巻き込まれてしまったが、本来ならば自分達と彼らが敵対する必要はない筈なのだ。
何故なら彼らの狙いは吸血鬼であり、そしてこちらも吸血鬼討伐を目的としてこの街に赴いたのだから。

「奴らと吸血鬼達が争ってるそのど さくさに、なんとかイスラ達を助けられればいいんだけど」

上手くいけば、メルツェルの言う馬鹿げたゲームに付き合うことも、戦闘をすることもなく済むかもしれない。

413メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/29(木) 14:02:53
【群青の街】

「ってぇな!ビビってなんかねぇんだよ!それにチキン食うにはまだ早ぇ
、クリスマスはまだだ!」

シャムに蹴られた尻をさすり、メルツェルは牙を剥く。
しかし、意地の悪い笑みを浮かべるシャムの意を汲み取ったのか、それ以上を続ける事は無かった。

どうやら面倒臭いどころか、かなりの大事になりそうだ。
しかし、必要以上に怯える事はない。

(喧嘩屋のシャムもDDのオカマ野郎も、冷血女のフィアも居る今なら負ける気はしねぇ……)

そう、今この街には自分と同じ長老が三人も居るのだ。
それこそ吸血鬼に始祖たる存在、オリジンが来ない限り負ける考えられない。

不機嫌そうに寒さを訴えるDDを一瞥し、メルツェルは口を開いた。

「あの剣は下僕共に運ばせる、最悪人間共使ってな。

取り敢えず城へ戻って腹拵えだ、最後の晩餐何てクソ喰らえ、うめぇもん喰って雑魚共を返り討ちにしてやる……!!」

そして、踵を返すと同時に空間を跳躍。
シャム達長老と共に居城へと帰って行く。

ーーーーー

「……そうだな、狙うは漁夫の利だな。

あの騎士団が吸血鬼達と戦っている間に上手い具合にイスラ達を助けだそう。」

敵の敵は味方か、はたまた敵か。
どうなるか分からないが、戦闘を避けれるに越した事はないだろう。

「その為には、どちらにせよ明日の夜も街へ、吸血鬼の居城の近くに行かないとな。

ゲームとやらが何かわからないけれど……取り敢えず、今日はもう寝よう。」

メルツェルが言ったゲーム。
内容はまだわからないが、その結果がわかるまではイスラとバッハへ手出しはされないだろうか。

二人の安否が気になるが、今夜はこれ以上何か行動を起こす事も無い。
明日に備えて休むべきだろう。

イスラとバッハが不在の今、普段以上に艇内は広く、そして静かに感じる。
ソファに倒れる様に座ったまま、メイヤはゆっくりと目を閉じた。

ーーーーー

目覚めは案外すっきりとしていた。
汚れた衣服を籠へ入れ、シャワーで身体を流す。
以前ならば一晩もすれは治っていた筈の擦過傷や裂傷に冷水が滲みるが、逆にそれで目が冴えた。

艇内に備えつけられた簡易シャワー室から出、手早く新しい衣服に袖を通す。
続くアグルがシャワーを浴び終わるまでに簡単な食事を用意し、メイヤは一通の手紙を……いつの間にかテーブルに置かれていたソレを手に取った。

「……」

そして、シャワーを浴び終え、食堂へと入って来たアグルへとその手紙を渡す。

「楽しい楽しいゲームのお誘いだそうだ!参加費無!。

ルールは簡単!居城中の吸血鬼三百体相手に一晩生き残るだけの簡単単純明解馬鹿でもわかる!

あぁ、夕暮れまでに城へ来なければ人質は無惨な姿になるから逃げるなよ!

じゃあ待ってるぜ、楽しく面白い姿を見せてくれ!」

アグルが封を開いた手紙には幾何学模様が描かれており、仕組みはわからないが、模様が光ると同時に、録音されていたらしいメルツェルの音声が食堂内へと響き渡る。

「……だそうだ。」

その言葉を無言で聞き終え、一拍の間を置いた後。
メイヤはどうする?とばかりにアグルへ視線を向けた。

414ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/11/10(火) 23:21:24
壁I:)サーセン、ハロウィンイラスト、修正不可なレベルの失敗をやらかしたんでまだしばらく掛かりそうっす……
辛うじて撮ってた下絵はこんなだったけど…orz
imepic.jp/20151110/836560

415イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/11/12(木) 00:22:07
おおー!すごい大作な予感!
完成が楽しみです(´ω`)いくらでも待ちますので頑張ってください!

あとすみません;
こっちも本文のレスもう少し待ってください;

416ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/11/16(月) 19:29:03
【完全書き直しなんだけど構図浮かばねぇ……

了解、お待ちしますぜ!

とと、クリスマス辺りに神戸行くんだけどさ、シャレオツなレストランとかオススメありませんかね?】

417アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/11/20(金) 17:50:31
【群青の街】

「いや…、これは無理ゲーだろ…」

手紙の内容を聞き終えたアグルは、メイヤの視線に対し苦い表情を浮かべながら応えた。

いくら下っぱといえど、不死身に近い吸血鬼三百人と一晩やりあうなど有り得ない。
そもそも向こうは勝たせる気もないのだろう。いかに楽しく残酷に、相手をいたぶることができるか…だけを考えた様なゲーム内容だ。

頭の中で、何で俺がこんなことをしなければならないんだ…、とか、命をかけてまであの二人を助ける意味はあるだろうか…、とか様々な思考が沸き上がる。

そして巡り巡ったそれは結局、こんなところで死ぬ訳にはいかない。へと辿り着く。

時間にすれば僅か三秒ばかりの沈黙だったはずだ。
今度は真顔で、アグルは再びメイヤに視線を向けた。

「もし、俺が行かない…っつったら、…お前はどうする?一人ででも行くのか?」


【前と同じ構図でいいじゃないw

お、デートですか?(´ω`*)
うーん…今はもう神戸住んでないんですよ〜、シャレオツな店も全然行かないんで詳しくないですし、普通にネットで調べた方が確実だと思いますw】

418メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/11/24(火) 19:56:49
【群青の街】

「行くしか無いだろうな、夕刻までにあの城へ向かわないと二人はきっと処刑される。」

ほんの僅かな時間、三秒程の間だが、その間のアグルの表情からは思案と苦悩の色が見て取れた。
確かに、アグルの言う通りだ。

提示された内容は無理難題、端っから勝たせるつもりは無いルール。
しかし、挑まなければイスラとバッハは殺されてしまうだろう。

かと言って、救援を呼ぶも待とうも時間が圧倒的に足りない。
昨夜の襲撃者達、吸血鬼狩りの一団が城へ攻め込むのを待つのまで粘れるか問われれば、それも難しいだろう。

ならばどうするか、打つ手は一つだ。

ーーーーー

バルクウェイを出立し、群青の街へ到着する間は全くと言って良いほど穏やかだった。
その間、メイヤは何もしていなかった訳でも無い。

船の積み荷、処刑人の剣から押収したであろう数々の異能の品々を確認していた。

自身に宿っていた筈の闇の悪神、その力が使えない今。
それらの品々は大きな力になる筈だ。

ーーーーー

打つべき一手。
それは先手を取っての潜入だ。

示された時間は夕刻。
ならば真昼の内に城へと潜入し、イスラとバッハを救出する。

メイヤにとって、隠密行動は得意分野だ。
アグルを先導しながらでも、侵入するのは朝飯前だ。

「……そう思っていたんだけどな。」

場内へ侵入し、小一時間程。
吸血鬼と全く遭遇する事無く、順調に捜索を進めていたその時。

十数メートル程はある長い通路の真ん中で、メイヤは足を止めた。

進行方向の先、通路へと続く曲がり角から現れた男の姿に、メイヤは小さく舌を打つ。
遠目でもわかる銀髪と眼帯。

吸血鬼達の中でも最上位の存在であろうその男。
シャムと出くわすとは流石に驚きと焦りの色が顔に出てしまう。

どうするべきか。
……迷っている暇は無い。

「アグル、街の住人から手に入れた見取り図からすれば、この通路の先。

二股に分かれたその先、右側が牢屋らしい。」

メイヤは腰に差した剣の柄に手をやり、視線をシャムへ向け。

「俺があの男を引き付ける、その間に牢屋へ向かってくれ。」

そして、言い終わると同時にメイヤは疾走。
地を這う蛇の如く通路を駆け抜け、シャムを刃の射程圏内へ捉え、鋭い斬り上げを放った。

419シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/12/07(月) 00:24:28
【群青の街】

「…りょーかい」

暗がりの通路で鉢合わせた相手…シャムの姿を見据えながら、アグルはメイヤの言葉に短く応え、通路を駆け抜ける。

一方で、シャムは二人を前に怪訝そうに眉を潜めた。

「あぁ?なんだテメー等?」

つうか誰だ、と。

しかしよくよく見れば、その顔は昨夜何度も目にした覚えがある。

…ああ、そうだ。確か酒場でメルツェルに虐められてた奴等だ。
どうやらまだこの辺りをうろちょろしていたらしい。
そう言えばその時に、"ゲーム"がどうこうと話していたような気がする。

いま偶然通りがかっただけのシャムにとっては、彼らに個人的な因縁もなければ興味もない。
メルツェルの居城にねずみが入り込み、何をしでかしたところで正直マジでどうでもいい。
が、しかし…

出し抜けに放たれた刃の軌道。それを紙一重のところで躱し、シャムは不敵に笑った。

「喧嘩を売られたからには買うしかねーよなァ
!?」

言葉尻と同時に、二丁のデザートイーグルがメイヤの超至近距離で火を吹いた。
二発、三発、四発…バックステップで後退しながらも、銃口は相手を狙い次々とマグナムを吐き出していく。

420メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/12/12(土) 16:51:02
【群青の街/城】

「喧嘩の大安売りだ、安売りだけど買って損はさせないさ」

超至近距離で放たれる弾丸を、メイヤは剣の腹を盾にして防ぎ、そのまま前進。
バックステップで距離を取ろうとするシャムへ肉迫し、銃の間合いを強引に潰していく。

そして、距離を潰したと同時に攻勢一転。
真白の刃が半弧を描き、銃口を斬り落とす。

更に返す刃でもう一丁の銃身を斬り捨て、振りかざした刃で渾身の兜割を打ち込んだ。

ーーーーー

近くに聞こえる銃声に、バッハはのそり
と巨体を起こす。

(近いですね、誰かが戦っている……?)

酒場で酔い潰れたのは自らの酒臭さでわかるものの、何故牢屋に捕らわれられているのかはわからない。
目が醒めた時には冷たい石畳の上で、装備品は取り上げられていた。

状況が掴めないが、これは好機かもしれない。
鉄格子を両手で掴み、バッハは近付いてくる足音に耳を澄ませた。

「誰か、来ますね……?」

421ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/12/31(木) 23:41:28
結局イラスト出来ずで申し訳ない……

来年もよろしくお頼み申し上げます!

422シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/01/04(月) 00:26:05
【群青の街】

「…ッち」

斬り落とされた銃を放り投げ、シャムはすぐさま左腕を盾状に変化させる。
そしてそれで一刀を防ぐと、すかさずその場から飛び退き蝙蝠のように天井に逆さに張り付いた。

「うッぜぇなぁ、ちょろちょろ動くんじゃねーっつの!
弾が当たんねぇじゃねーか!」

分かっていたことだが、この様な狭い場所では飛び道具は不向きだ。
しかも相手は素早く、間合いを詰めてくる。

(クッソムカつくがナメてかかってる場合じゃねぇ…!)

シャムの腕が盾の様な形状から今度は鋭い剣状のものへと変わる。
足場を強く蹴り、天井から一気に降下。急所を狙った刺突が放たれた。

「そんなに近接がしたいなら付き合ってやるよォッ!」



…………


近くで聞こえる銃声と、そして足音。
バッハ同様、何事かと顔を上げたイスラの前に、ちょうど人の影が立ち止まった。

「…無事か?」

アグルだ。

「アグル…?これは…」

「説明はあと。取り合えず逃げるぞ」

説明を求めるイスラの声を遮り、アグルは牢屋の鍵を槍の刃で壊す。
そして外に出るように仕草で二人を促した。

「急げ、今メイヤが敵を引き付けてくれているんだ」

423シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/01/04(月) 00:27:23
明けましておめでとうございます(´ω`)
今年もよろしくお願いします!

424メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/01/08(金) 22:53:54
【群青の街/城】

変化する異形の左手、盾と剣を兼ねたソレを武器に、迫るシャムの一撃。
重量落下も合わさった、放たれる上方からの刺突は予想以上に速い。

「ーーッ!!」

急所を狙うソレを、捌けなければ死は免れない。
メイヤは目を細め、真白の刃を振るった。

そして。

ーーーーーー

すぐ隣で聞こえる話し声と、そう大きくは無い破砕音。
イスラに続き、牢から脱したバッハはアグルの説明に頷いた。

そして、自身の装備が取り上げられている事を伝える。

「私は軽装だったので、大して困りませんが……イスラさんはどうですか?

大事な刀、お持ちですか?」

昨夜は情報収集の為に街へ出た為、本格的な戦闘用の装備では無かった。
しかし、普段から帯刀しているイスラが刀を取り上げられているならば、取りに行かなければならない。

ーーーーーー

交錯する刃と、一拍遅れで舞う僅かな粉塵。
シャムの一撃は、メイヤの左胸部を縦に切り裂いた。

それに対する、急降下してくるシャムへとメイヤは剣を横薙に。
斬撃と言うよりは打撃に近いその一撃は、刃に引っ掛ける形でシャムを廊下へと叩きつけた。

「肉を切らせて骨を断つ。だけど、切らせる肉は鎧の下だ。」

相討ち上等のカウンターだが、きっとシャムは受け身を取って凌ぐだろう。
そんなシャムへとメイヤは剣の切っ先を向け、続ける。

「風魔装束、闇烏」

シャムに切り裂かれた左胸。
上着から覗くは血の赤では無く、鎧の黒。

剣を握る右とは逆。
左手で掴む薄い長方形の箱は、瞬く間にその姿を大きな手裏剣へと変える。

「風魔手裏剣、黒鷲」

それは、飛行艇に積まれて居た装備品。
世界政府の闇、処刑人の剣が収集していた異能の逸品であり、バッハが見繕い艇へと積んだ物。

「とことん、付き合ってくれるんだろう?


425シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/13(土) 00:11:14
【群青の街】

バッハの言葉を聞くまで、すっかり失念していた。
イスラは今更ながら己の身を確認してみるも、案の定、武器は取り上げられていた。

「すまない…、二人は先に行っててくれないか。俺は少しこの辺りを探してみる」

あれを置いて逃げる訳にはいかない。
そう言うイスラに対し、アグルは呆れ半分に言葉を返した。

「いやいや、丸腰の人間一人置いていけるわけないだろ。
仕方ないけど…手分けして探そう」

アンタもそれでいいよな?と言わんばかりに、アグルはバッハに同意を求めるような視線を向ける。


…………

「ハッ…、面白ぇッ!」

相手の様相はシャムにも少しばかり興味を唆らせたらしい。
向けられた刃に怯むことなく、シャムはそれを片手
で掴むや、力で強引に刀ごとメイヤを引き寄せた。

「俺様に剣を向けたこと、後悔させてやるよォッ!」

当然の如く多少の出血は気にしない。そして相手を手繰り寄せたのと同時に、今度は右腕の剣を勢いのままに突き立てる。

が、メイヤには紙一重で避けられてしまった。

しかし剣は空振ったものの、代わりに一撃を食らった壁面にはその威力でぽっかりと穴が。

「…今度はテメーの面に大穴開けてやらァッ!」

そうしてシャムは間髪入れずに剣による連撃を放った。


【最近レス遅くて申し訳ないです…(´`;)
リアルも落ち着いてきたので、暫くはもう少し早くレス出来る、はず…
この機に絵も描きたいなー…

426メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2016/02/20(土) 22:51:20
【群青の街/城】

思った通り、イスラの装備も取り上げられていた。
バルクウェイからの道中で聞いた話によれば、彼の所持する刀は神刀とも呼ばれる異能の逸品。

そんな刀を置いて城から脱出する訳にはいかない。
戦闘力の低下もあるが、何より刀に込められたら想いをおざなりになどは出来ない。

アグルの向ける視線の意図に頷き、バッハも周囲を探索する為に歩き出した。

「押収物の保管庫など、近くにありそうとは思いますが……」

直ぐ側で聞こえる激しい戦闘音が、余計に気を焦らせる。


ーーーーー

刃を引き寄せ、力任せに放たれる一撃の威力は壁に開いた大穴が物語っている。
身に纏う魔装の防御力を持ってしても、直撃は避けたい所だ。

刃を掴まれたままの剣から手を放したメイヤは、繰り出される連撃を避け続け、巨大な手裏剣を縦に一閃。

シャムが放つ刺突を手裏剣で上方へと逸らし、逆の手で短刀を抜き放つ。

「疾さには、自信がある!」

そして、大きく踏み込むと同時に、左手に握る短刀で刺突を繰り出した。

ーーーーー

長老の中でも、特に気配の探知に長けているだろうと自負するフィアは、真っ先にその異変に気付いた。

(ゴッソリ、消えたわね……!)

城内への侵入者は直ぐにアグルとメイヤだと判別出来、シャムと戦い始めた事は敢えて黙って居たが……
メルツェルの部下、彼の眷属の気配が一瞬で、それもかなりの数が消失したのだ。

昨夜、DDを襲った者達の仕業である事は間違いないだろう。
彼女……もとい、彼の頬を傷つけた銀の剣の調査結果を記した紙を手に、フィアはどう動くか思案する。

(メルツェルと合流するか、シャムと合流するか……)

しかし、ゆっくり考える暇はなさそうだ。
広間に居るであろうメルツェルとDDの元に、異質な気配が現れたのだ。

ーーーーー

フィアが異変を察知したのとほぼ同刻。
広間の玉座にふんぞり返るメルツェルもまた、自身の眷属が消えた事を感知した。

(おいおい……来やがったのかよ!?)

一瞬で消えた第三世代の眷属の気配と、空間を歪めて姿を現したフードをかぶった謎の存在。

「……ケッ、誰に喧嘩売ってるかわかってんだろうなァ?」

フードの人物を中心に陣を組む騎士達へメルツェルは啖呵を切り、立ち上がる。

「俺達長老様を舐めてんじゃねーぞ!」

そして、傍らに居るDDへ目配せすると同時に、空間を跳躍。
小柄な騎士の背後に現れ、その背中を手刀で貫いた。

「皆殺しだ、わかってんだろーなァ!?」

その声を皮切りに、対吸血鬼に特化した騎士達がメルツェルとDDの二人へ一斉に襲い掛かった。

427ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/02/20(土) 23:03:55
【レス返そう思ってたらいつの間にか一週間経ってた……
月一連載的な感じでも俺は気にしないんで、自分のペースでレスしてくだせぇ!

なんだかんだ皆忙しそうだし……リマの就活ははたして無事に終わったんだろうか。

とと、すっごい私事なんだけど、子供が出来ました。秋口出産予定なんで、春先以降顔出す暇が無くなる気がする……ので、ついったからいんか連絡先置いとこうかと思うけど、どうでしょう
?】

428シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/24(水) 18:50:19
【城】

素早い動作で抜き放たれた短刀が、シャムの胸部を刺し貫く。
傷口から滲み出た血が、刃を伝って地面に落ち、数滴染みをつくった。

「おい、小僧。ちょっと待て」

しかし、彼はそれを見ても微動だにしなかった。そもそも差し迫る刃を避けようともしなかったのだ。

何かがおかしい。
シャムは一旦の中断をメイヤに言うと、意識を目の前の戦闘とは別のところに向けた。

…間違いない。
城内の同胞達の気配が一瞬にして消失した。

一体何があった?
まさか、こいつらの仕業か?…とメイヤに疑いの目を向けるが、直ぐに違うだろうと結論する。
ただの勘だが、彼らは恐らく自分達の仲間を助けに来ただけだ。

だとすれば、心当たりは昨夜、DDを襲った何者か。
シャムは言った。

「昨日、てめぇらも騎士風の男共に襲われたらしいな。…まさか奴等とグルだっつー訳じゃあねぇだろうが…」

シャムは短刀の柄を握り、胸から引き抜く。それを手の内でクルリと回し、刃をメイヤに突きつけた。

「奴等のこと、何か情報とか持ってんじゃねーのか?」


…………………

昨夜の頬の傷は翌朝になれば回復していた。
どうやらあの剣、治癒に時間はかかるものの、吸血鬼の再生能力を完全に無効果するものでもないらしい。

その時は鏡の前で小躍りしたものだが、あれが吸血鬼達にとって十分な驚異であることは間違いない。

そして今…、眼前に現れた騎士達を見据え、DDはそっと眉を潜めた。

(まさか真っ向から攻めてくるなんて…)

同胞達を一瞬で葬り去ったのもそうだが、信じられないと言った心持ちだ。
DDはメルツェルの目配せに小さく頷き、彼に続く。

「メルちゃん!お城壊れちゃっても勘弁してよね!」

迫る相手に飛びかかり、勢いよく巨大メイスを振りかぶった。

429シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/24(水) 18:52:11
【おぉ、おめでとう!宴じゃー!とか祝いたいけどそう言う訳にもいかないので…w、元気な子が無事に産まれるのを草葉の陰から祈ってます…産まれたら教えてね!←
にしてもヤツキさんも等々パパさんか…(´ω`)しみじみ

リマさんの近況も気になるし、レス返とかいいから、たまには顔だしてくれたら嬉しいなぁ

じゃあツイッターで、(^^)dツイッターの使い方いまいち分からないけど←】

430ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/02(水) 09:42:16
【群青の街】

まるで吸い込まれるかの様に、短刀はいとも簡単にシャムの胸へ突き刺さった。
手に伝わる感触は、何の手応えも無いモノで、それはシャムが避けようとしなかった事を如実に表している。

「……グルだったなら、昨夜の時点でアンタ達と派手にやりあってるさ。

あの騎士達は、俺達も攻撃の対象にしていた。」

己の胸に突き刺さる短刀を抜き、それを脅す様に向けるシャム。
突き付けられた刃を手の甲でゆっくりとそらしながら、メイヤは答える。

「敵の敵は味方じゃなくて、敵の敵は敵だ。

ただ、今は仲間の救出を優先したいだけなんだが……そうも言ってられないみたいだな……」

言葉通り今はイスラとバッハの救出が優先であり、メイヤはその時間稼ぎの為にシャムへ刃を向けたのだ。
しかし、この膠着状態の原因を考えると、自体は面倒な事になりつつ……否、なったようだ。

小さく短い耳鳴りが止み、それと同時に聞こえる無数の足音。
音の聞こえる方へ顔を向け、メイヤは小さく舌を打つ。

視線の先には、昨夜襲撃を掛けて来た騎士の一団。
その先頭に立つ男は、疵痕が目立つ顔を歪め、剣の切っ先を此方へ向けた。

「長老クラスとの戦闘は初めてだが、如何なる犠牲を持ってしても滅しよう。」

そして、銀の剣を掲げたのを合図に、一斉に騎士達がメイヤとシャムへと殺到する。

「……敵の敵は敵、だけど。

今はそうも言ってられないみたいだ!」

ーーーーー

メイスをブン回し、騎士達を次々と肉塊……ミンチへ変えるDDは、流石と言った所か。
しかし彼女……もとい彼の本気はこの程度では無い。

別に壊しちまっても構わねーよォ!と、返しながらメルツェルも騎士達をその能力、全てを融解させる力で見るも無惨な姿へ変えていく。

高温による融解、特殊溶液による溶解、そして全力を出せば概念にすら感触するその力は、防ぐ術など無い。

ものの数秒、そして秒刻みで騎士達を惨殺しながら、メルツェルはフードを被った謎の人物を睨み付けた。

(この軍団は確かに強えェ……第四、下手こいた第三世代なら簡単に倒せるだろうが……)

彼ら、騎士達だけでは先程の様な、瞬間的に大規模かつ多数の吸血鬼を消滅させる様な真似は出来ない筈だ。
ならば、やはり注意すべきは……

「DD!あのフードの野郎を狙う!援護しろ!」

メルツェルは狙いを定め、空間跳躍。
現れた先、フードを被った謎の人物に防御不能の手刀を繰り出した。
しかし、メルツェルの予想に反し、フードの人物は外套から伸ばした白く細く、そして小さな手でその攻撃を受け止めた。

「なんっ……だと!?」

防御不能、必殺の一撃を防がれメルツェルは驚きの表情を浮かべる。
しかしそれも一瞬、掴まれた手を振り解こうと横に薙ぐも、それは叶わず。

まるで力を吸い取られたかの様な、いや実際に吸収され、急激な脱力感にたまらず膝を着いた。

(コイツぁ……やべぇ……!!)

431ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/02(水) 09:47:21
【名前間違えてたww

5月末に式やって、9月に出産とバタバタな予感……(笑)
そこはもう草葉の影から飛び出してもらっても良いんですよ?ww
ありがとー!籍入れて2年、今年で27だし丁度良い時期かなーとかとか。

リマさん半年位姿見てないから心配なんよなぁ、生存確認だけでも!

とと、んだらばTwitterのID置いときやすぜ!

@yatuki0509 す!】

432イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/02(水) 23:49:34
やっさん見つけた!
取り合えずフォローしとけば良いのかな?IDはpaのやつです。たぶん絵とか上げるぐらいしか使わないと思うけど…w

え、もう二年も経つんだ!?年が過ぎるの早いなぁ…;しかし本当バタバタなスケジュール(笑)身体には気をつけてください^^

433リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/07(月) 19:28:21
壁|ू・ω・` )
お久しぶりです、リマです
気付けば長らく消息不明な状態に・・・・
就活が延びに延びまくって気づいたら国試間近で勉強に明け暮れてました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

就職先は病院に決まり、国試も一応自己採点上は基準点越えてたんで、マークミスしてない限りは合格出来そうです。
ご心配おかけしました(╥ω╥`)ただね、私の場合マークミスは勿論なんだけど、受験番号書き間違えてたり、名前書き忘れてたりする可能性があるから怖いんだよ・・・・・

この1年は私に依存してた我侭な友達にブチ切れて他の友人に協力してもらって縁切りしたり(向こうはまだ諦めてないみたいだけど)、何となく「これだけは好きになりたくない」と敬遠してた「うたの〇〇さま」のアニメをひょんなことから見ちゃって、とあるキャラに一目惚れしたりと色々ありました|´-`)
一応、何だかんだ元気でした、心配かけちゃってごめんなさい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

そしてヤツキ!パパになるんだね!おめでとう!!
初めて会った(?)のは確かお互い高校生の時だったから・・・・・時の流れとは早いねぇ(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
私の友達も今年2組結婚するんだよ。私なんて彼氏もまだなのに、皆ずるい( ˘• ₃ • )笑

本編の方はぼちぼち書いてるので、近いうちに更新します。
お二人共リマを忘れずにいてくれてありがとう(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

434ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/08(火) 10:41:54
【イスラさんフォロバしましたぜ!フォローありがとうございやす!俺もゲームかプラモかの話しかしてないんで!ww

式から出産の間で車の免許取らないといけないから、ホント忙しそうだ……(苦笑)

ホント月日の流れって早い、イスラとも出会って四年程じゃないかな?

そしてリマきたー!音沙汰無くて心配だったけど、無事(?)で良かった!

試験も就活も、友達関係のいざこざもなんとか終わったみたいで良かった、お疲れ様やでー!試験もきっと大丈夫でしょ、記入漏れもきっと無いはず!

レスの方は急いてもないんで、時間に余裕がある時で良いよー!

とと、ありがとうございやす!まさか俺がパパになるなんてなぁ、って感じだったよ(笑)

確か18の時に出会ったから九年程?ネットの友達って括りには出来ない位の年月よな……!

リマもこれから良い出会いがきっとあるよ、焦らなくて大丈夫大丈夫!

試験受かってしたらお祝いせんとね、マジラブ1000%なら歌えるぜ!←】

435シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/09(水) 22:06:16
【城】

通路の暗がりから姿を見せた騎士の一団。そして剣を掲げる強面の男。
シャムはその銀の剣へ視線を移し、目を眇める。

(あれが例の剣か…)

DDの話し通りなら、一発でも致命傷を喰らえばアウト。
もし戦いになるようなら、今までのような適当な応戦ではなく、細心の注意を払えとのこと。

「めんどくせぇ…、要はやられる前に全部ブッ壊しちまえば良いってことだろ!」

言うが早いか、シャムは向かってきた騎士達を破壊力抜群の剣で横凪ぎに一掃する。
そしてそのままの勢いでリーダー格の男に飛びかかり、兜割りを叩き込む。

「くたばれやァッ!」

…………

(あれは…!?)

メルツェルがフードの男に飛びかかって行ったと思えば、どういう訳か、次に彼は全身の力が抜けたようにその場に項垂れてしまう。

援護に向かっていたDDは、フードの人物に向かってメイスを降り下ろし、与えた一瞬の隙にメルツェルを抱えて後方に退避。

「ちょっとメルちゃん!?しっかりしなさいよ!」

メルツェルを気遣いながらも、追撃に男の周囲の空間を圧縮する。
無数のバスケットボールほどの大きさの空気の膜がビー玉以下にも縮まり、限界まできたところで一気に弾けた。
男を中心に巻き起こる無数の爆発。手応えはしたが果たして通用したかどうか…。

436イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/09(水) 22:09:38
ヤツキ》なんと、車の免許まで(^^;)頑張ってください!

確か自分が二十歳の時にスレに参加したからもう4年所か6年ちかくの付き合いのようなw
知り合いのいない地での初めての一人暮らし、寂しさのあまり掲示板を覗いたのが皆さんに出会うきっかけでした(笑)あの頃が懐かしい…^^


リマ》リマさんおかえりなさい!もちろん忘れるわけないじゃないですか(^ω^)
就職決まったようで良かった!あと試験やら色々お疲れ様です!
そしてとうとう歌プリの餌食になったようで…(笑)誰に一目惚れたんですか?←

437 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:04:22
【過去】

「あ、いたいた」

そんな声が不意に掛かったと思えば、その声の主は何の断りもなく隣に座る。
声の主は誰か、顔を上げ確かめずとも分かる。
その男は気の抜けた伸びをし、これまた気の抜けた笑みを浮かべた。

「いい天気だね。絶好の・・・・・読書日和?」

何故そこで疑問を浮かべるのか。
自分が読書する姿は今となっては珍しくもないだろう。それとも場所が不満なのか。

「学舎の庭で読んではいけない決まりでも?」

決して本から目を離すことはしない、けれど無視するには些か納得のいかない疑問に、とうとう言葉を返してしまった。
俺はまたコイツの流れに乗ってしまったのだ。
返事を得たことに満足したのか、相手からは軽い笑い声が届く。

「いいや、僕も所かまわず読んじゃうから一緒だなぁって思って。」

一緒なものか。コイツと自分は身の上からしてまるで違う。
一流とも言える名門の御曹司と、一族としては名が通っているものの分家の出であり、さして秀でた特色もない家柄の息子。
そもそも、本来コイツ程の身分の者は自身の屋敷に教師を招き学ぶ場合が多いのだが、それをせずわざわざ学舎に通う意味が分からない。
・・・・・もっとも、コイツは端から変わり者だが。
長男でありながら、家系を継ぐ気はないと言う。弟がいるから良いのだと。俺が欲しくて堪らない物を持っているくせに、簡単に手放す。まるで興味がないのだ。

「・・・・・ヨハン?」

読み進めていたはずの手が止まった事を不審に思ったのか、相手から名を呼ばれた。意識が別のところへ飛んでいた。

「・・・・・用がないのなら消えろ。邪魔だ。」

「うわ、直球。酷いなぁ。」

遠回しに言ったところで分かりはしない。しかし、コイツは言葉で示す程傷ついた様子はなく。
ただヘラヘラしたまま座り続けるのだ。

「・・・・・。」

やがてこちらの方が居心地が悪くなる。これがコイツの策略だ。
溜息混じりに本を閉じると、コイツは嬉しそうに手を叩いて見せる。

「やった!遊ぼう、ヨハン」

「子供か、お前は・・・・・」

「今日は街に出たい気分なんだ」

「・・・・・午後の講義は?」

「そんなの、受ける必要なんてないよ。君も受けなくて大丈夫でしょ?」

無論。此処での学びの内容はレベルが低すぎる。こちらがそう感じるのだから、コイツにとっては尚更だろう。
問題はそこではないのだ。
俺は本家に認められる必要がある。
母を日陰に追いやり、俺の存在を消し去った一族を見返すために。
本家には跡取りが居らず、娘が一人。好都合だ。娘はまだ幼いが、成人するまでに親の目に留まれば婿の座に収まることも夢ではない。さすれば、一族の頂点に立つことも出来る。
その為には学を積み・・・・・素行の悪さなどもってのほかだ。

「断る。」

「気分転換だと思って!」

「必要ない。」

「そう言わずに!」

「消えろ。」

「まぁまぁ。」

438 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:04:58


埒があかない。その場を離れようとすると、相手は慌てた様子で止めてきた。

「うそうそ!サボリじゃないよ!許可は貰ってるから!」

「は?」

「先生から用事を預かってるんだ。まぁ別に済ますのは僕じゃなくてもいいんだけど、折角だから引き受けてきたんだ。君も一緒でいいって。」

「・・・・・。」

コイツは本当に・・・・・。
端的に事実のみを伝えれば良いものを、回りくどいやり方をする。
人を馬鹿にしたような態度が気に入らない。

「ついでに散策もしよう。街に移動サーカス団が来てるらしいんたけど、見に行く?」

「興味ない」

「OK、じゃあ古書店に行こう」

「サーカスからの繋がりが見えない」

「前にヨハンが話してた本、店のおじさんに聞いたら探してくれたんだ。絶版だから手に入らないって言ってたじゃない?あぁ言うのって街の方が入手しやすいんだよ。」

「サーカス発言は何処に・・・・・」

「寄り道出来れば何処でもいいんだ。さ、行こう?」

結局いつもの流れだ。多くの案を出すものの、最後は俺の返事も聞かずに連れ出そうとする。

「そんな怖い顔しないでよ。」

俺がどんな態度を取ろうとも動じない、余裕そうな笑顔がいけ好かない。
コイツには気に入らない事ばかりだ。

ただ、

「・・・・・その本が無くなっていたら承知しないぞ。」

「大丈夫、売らないでってお願いしてあるから。」

何もかも気に入らないのに、決して嫌いではないのだ。
俺はそんな自分自身の気持ちが、更に気に入らなかった。

439ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:05:45
【過去】>>394

アブセルはまだ幼く、純粋だ。
リトの置かれている状況など理解出来るわけはなく、自分の選択が正しいと疑わない。
とても特殊で、本来ならば有り得ない、あってはならない状況であるため尚更理解することは難しいだろう。

「ごめんな・・・・・」

結局、上手い言葉が見つからずナディアは謝罪の言葉を述べるしかなかった。
アブセルの頭を撫で、身をかがめて視線を合わせてやる。

「お前がどんなに頑張ってくれても、今はまだ、リトが外に出るのは難しいんだ。リトが自分から出たわけじゃなくても、あの人(父)はリトを叱るんだよ。お前の気持ちは分かるし、嬉しく思うけど、リトの為にも今は我慢して欲しい。」

自分でも理不尽な事を言っている自覚はある。
この状況に納得がいかないのは自分も同じだ。このまま終わらせる気は無い。しかし、事を起こすにはまだ早い。
ポセイドン邸での最高権力者は母であるが、彼女が心を病んでしまった今、実権を握っているのは父なのだ。いずれ一族の主導権は長子でる自分に引き継がれるが、それは「何の問題も起きなかった」場合。父に睨まれ、敵と見なされれば自分は後継者から外されるだろう。だから今のうちは逆らうことは出来ない。

「なぁ、アブセル」

ただ、そのせいでリトは孤独なのだ。
護ってやらなければいけないのに、根底では父に逆らうことが出来ないから。

「お前は、何があってもリトの味方でいて。リトを護ってやって。いつか、リトをこんなクソみたいな環境から開放する。そん時は、お前が率先してリトを助けるんだ。その為に、あんたには強くなって欲しい。爺の孫なんだろ?お前は知らないだろうけど、お前の祖父さんは凄い人だよ。一族や関係者含め闇の能力持ってる奴の中で今一番強いのはあんたの祖父さんなんだからね。お前はその才能を持ってる。」

きっと、味方であれば、リトにとって最強の剣になるだろう。

「お前が父さんに睨まれないよう、私がフォローしないとね。頼りにしてるよ、アブセル。」

440リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:29:51
ヤツキ>>
【いやぁ、ほんと申し訳ない(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

うん、合格信じて3月中は羽伸ばすんだ!

ありがとう、ぼちぼち更新します(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

月日の流れを感じたよ(∩´ω`∩)
私の周りら今は結婚ラッシュだけど、次は出産ラッシュが来るんだろうなぁ・・・・・

9年!長いなぁ(笑)
ネットの友達がここまで長い付き合いになるのは凄い!

うん、焦らず頑張る(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
とりま就職先で出会い探すんだヽ(•̀ω•́ )ゝ
つか、大学内でも実は出会ってたっぽいんだけど、私が鈍すぎて気付かなかったって事がつい最近判明して戦慄(笑)
何年もやたら絡んできてた先輩がいたんだけど、友達いない可哀想な人だと思い込んでた(笑)残念(笑)

おー!歌えるんだ!凄い!!
是非とも歌ってもらいたい(笑)】


イスラ>>
【ただいまです!ご心配おかけしました(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
ありがとうございます(ˊᗜˋ*)

友人があの作品は沼だと言ってました(笑)
さぁ、問題です。誰だと思いますか?(笑)
まさかあんな刺客が用意されていたとは・・・・・←
アニメで言うと2000%からそれなりに登場してるかな??キャラクター分かりますかね?
第一印象は「性格がアイドルっぽくない、親の借金の肩代わりに売られたのかな?」でした←】

441アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/13(日) 22:44:08
【過去】

アブセルにとって母は"世界"だった。母だけが自分の味方であり、母だけが自分を愛してくれていた。
だがその母がいなくなった時、アブセルの世界は足元から崩れ落ちた。
それは虚無の中に一人放り出された気分であり、その感覚はこの屋敷に来てからも変わることはなかった。

しかし今、アブセルはその虚無の中に一つの光を見つけた様に思った。

自分を必要としてくれている人がここにいる。
母さえも忌み嫌った闇の力を、ナディアは肯定してくれた。
初めて、そのままの自分の存在を受け止めて貰った様な気がした。

凄く嬉しかった。
けれどアブセルはその感情をナディアに伝える術が分からず、ただ、「分かった」と頷いた。


その後はヨハンに謝りに行く前に、鬼の形相をした祖父に捕まった。早々に別館にあたる使用人用宿舎の自室に追いやられ、
もう二度と馬鹿な真似はするな、ともの凄く叱られた。
そうして、暫くここで頭を冷やせと部屋に鍵をかけられたかと思えば、祖父は忙しなく何処かへ行ってしまった。

何らかの罰を覚悟したが、驚くことに、結局その日アブセルはお咎めらしいお咎めを受けることはなかった。
それなら全ての責任をリトが被ってしまったのだろうか。ずっと部屋に閉じ込められていたアブセルには、その後の経過は分からなかった。
ただリトが心配で夜もまともに寝付けなかった。

………

翌日、謹慎を解かれたアブセルはリトの部屋を訪れた。祖父には暫くリトに会いに行くなと言われたが、そんなのきいちゃいられない。

今日は昨日のお詫びにと手土産も持ってきた。
四つ葉のクローバーだ。しかも一つや二つではない。
両手で掴めるぐらい沢山摘んできた。

以前、四つ葉のクローバーは幸せを運んでくるという話を聞き、朝早くから頑張って探してきたのだ。
これだけあると有り難みも半減してしまいそうだが、アブセルは気にしていない。

部屋の扉にそっと手をかけると、そろそろと部屋の中を覗き込んだ。

442アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/13(日) 22:45:43
リマ>沼wハマったら抜け出せない的な?w
聞いといてなんですが、キャラクターほぼほぼ分からないです(笑)

でも調べた限りでは黒崎蘭丸ってのが、それっぽいけど…勝手ながら外見は「あれ!?何かリマさんにしては意外な感じ!」って思いましたw
どうでしょう?あってます?

そしてヨハンとトーマの過去話し、待ってました!└(゜∀゜ )┘←

443メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/14(月) 21:44:52
【群青の街】

剣の一振りで騎士達を薙払い、強烈な兜割りを繰り出すシャム。
その一撃を疵面の男は銀の剣で受け止め、一瞬の停滞の後に剣を横薙に。

そう短く無い距離だが、シャムを弾き飛ばし、剣の間合いを確保したと同時に剣による連続突きを放った。
それはさながら驟雨の如く、シャムの視界を埋め尽くさんとばかりに打ち込まれていく。

その様子を横目に、メイヤは襲い来る騎士達を相手に巨大な手裏剣を、刃を振い続ける。
だが、如何せん数が多い。

昨夜に比べれば頭数は少ないものの、一人で捌くのは中々厳しい所だ。

(アグル達はまだなのか……!?)

ーーーーー

空間圧縮からの無数の爆発。
直撃すれば相手は文字通り木っ端微塵になる筈だが……

(そう簡単にはいかねぇか……)

DDに助けられたメルツェルは、離れた位置で爆発を眺める。
しかし、予想通り敵は無傷で現れ、その様子にメルツェルは舌打ちを一つ。

「クソが、本気の本気でやるしかねーじゃねぇか……!」

青白い顔で立ち上がり、自身に宿る力……呪いにも似た、長老だけが持つ力を解放させる。

「全てを融解させる赤熱と紫毒、魅せてやるよ。

冥途の土産になァ……」

解呪の言葉は僅か一瞬。
超高温の熱気と毒素を撒き散らしながら、黄金にも漆黒にも見える鎧に身を包み、メルツェルは咆哮を上げた。

そして、先程までの弱った姿からは想像も出来ないスピードで敵との距離を詰め、鋭く伸びた赤熱する爪を一閃、二閃。

赤色の残光に添って大気が燃え上がり、崩壊しつつある広間内を一気に猛火が包み込む。
謎の人物はメルツェルの攻撃を寸の所で避けたものの、熱波でフード諸共外套が燃え尽きた様だ。

炎の朱に照らされる銀髪の下、幼く見える相貌は中性的で、見る者が見れば息を呑むだろう。
しかし、今のメルツェルには関係無い。

臀部から伸びる尾の先、鋭い毒針と両肩に生えた巨大な螯鋏で周囲の騎士達を皆殺しにしつつ、謎の人物……吸血鬼の姫であるノワールと同じ顔をした敵へ烈火の如く攻撃を叩き込んでいく。

その姿は、まるで怒りに燃える蠍だろうか。

「死、に、さ、ら、せえぇぇぇえ!」

444リマ、ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/03/17(木) 01:44:26
【ポセイドン邸】
>>398

「とても、不思議な感じ。」

アブセルから話があると言われついてきたものの、何故かお茶会の席となった。
正直セナ達のことが気になってお茶を楽しむ余裕などないのだが、何処か落ち着かない気持ちでいたリマはアブセルからの問いに虚をつかれた表情を浮かべる。
大事な話があるのかと思っていたが、彼の口から出たのは申し訳ないがこちらからしてみればとても囁かな疑問だった。
が、隣で眉間の皺を深くするノワールから唯ならぬ気配を感じ、場を取りなそうとリマは言葉を返した。

「そっくりだから、セィちゃんの血を引いてるんだなぁって一目で分かるの。そんなリッちゃんは私にも関係してるんだなぁって思うと、とても不思議。」

そして、とても嬉しい。セナは自分を大切にしてくれるが、それでも二人の間にはたしかな溝がある、そう感じることがリマにはあった。セナの生い立ちを考えれば仕方の無いことだが、セナは幼い頃の印象とは違い、心を閉ざしてしまっている。リマにとってリトの存在は大きかった。いずれセナとの絆が完全に戻る日が来るのだと分かったから。・・・・・少し恥ずかしいけれど。

穏やかな笑みを浮かべるリマのそんな心情を察してか、対するノワールはその眉間の皺を更に深くする。

そんな中「お前は?」とアブセルに促され、ノワールはリマに向いて意識を無理やり引き戻される形で、何故自分も応える必要があるのかと不満そうな態度を示しながらも口を開いた。

「愚問よの。」

正直、初めてその存在を知った時には快さは感じなかった。自分に対して全くの感情を示さず、単なる務めとして扱っていた男が、望んで得た血筋があるのだと知ったから。自尊心が台無しである。
しかしリトは封印を解き自分を開放した云わば恩人であるし、自分を欺いた、かの組織との直接の繋がりもない。セナの血筋であることを除けば、リトに何ら不満はない。潜在的な闇の力も惹かれるところがあり、その力を秘めた血の味は上質で価値がある。

「不本意ではあるが、わらわの本来の力はリトに制されているからの。リトはわらわの主であるぞ、嫌う理由もない。して小僧、わらわと娘にリトへの情を問いかけることに何の意味がある?」

先程までの不機嫌さは何処へ行ったのか、ノワールは意地の悪い笑みを浮かべたかと思えばアブセルに疑問を返す。
ノワールはアブセルが自分達を連れ出した事に何ら意味は込められていないことに気づいていた。現ポセイドンがこちらを気にしてアブセルに何かを吹き込んでいたのを知っている。さしずめ、セナを連れ出すことに自分達の存在は不都合があったのだろう。
時間を稼ぎたいのなら、協力してやろうではないか。もっとも、自分が楽しめる方向でな。

「寧ろ問うべきは己の胸のうちではないか?リトは今や無機質な人形。あような姿にしたのは、そなたじゃ。そなたがあやつを裏切ったばかりに・・・・・無様よの。」

445リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/17(木) 02:05:42
イスラ>>

抜け出せない、プラスお金が際限なく剥ぎ取られる的な意味で(*゚∀゚)

ぶぶー(≧ε≦)
実は、第一印象はあくまでイメージなので、実際の設定は全く関係ありませんでした(笑)
たしかに、蘭丸って没落貴族だから設定上ではビンゴでしたね、気づきませんでした|ू・ω・` )

自分の一目惚れしたキャラは藍って子ですヾ(●´∇`●)ノ
顔はバリバリのアイドルですけど、性格素っ気ないですし、電波ですし、アイドルやりたくてやってる感まるでないから親に無理矢理業界入れられたのかなと思ったんですよね(笑)

この子、なんて言うかとんでもなく可愛いんです。同じグループにいる嶺二を鬱陶しそうに扱って「煩い」「邪魔」「黙って」とか言うくせに、そう言う割にはいつも一緒にいるし、何だかんだ嶺二の発言にちゃんと反応示すし、他のメンバーが嶺二の事無視してる中でも藍ちゃんだけは返答するしで、何だかんだ嶺二に懐いてる感じがたまらなくいじらしいと言いますか(*´﹃`*)「何だよ、嶺ちゃんの事大好きじゃん!」って(●´ω`●)
んで、この藍ちゃん。喋ってる時は普通に男の子なんですが、歌声が物凄く可愛いんです!そのギャップが更にいい!!
声優さん男性なんですけどね、女の子みたいな声で歌うんですよー(*/ω\*)

あれ、待っててくれたんですか(笑)
ヨハンとトーマの話なんて単なる自己満ですし、サイドストーリーも甚だしいのに(笑)

446シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 13:42:55
【城】

連続突きによる猛攻が視界を埋め尽くす。
シャムはその一つ一つを剣で捌いていくも、相手の勢いにじりじりと後ろに押されていく。

(クッソやりづれぇ…!いつもならブスッとやらせてドーンで終いなのによォ…!)

肉を斬らせて骨を断つ。それがいつものシャムのやり方。
しかし今回ばかりはどうしようもない。細かい裂傷はもはや目を瞑るしかないが、致命傷だけは何としても避けなければならないのだから。

最終的にじり貧も覚悟したそんな時、不意に敵側の後方から火の手が上がった。
それは数人の騎士達に燃え移り、火柱をつくる。

「悪い、遅くなった!」

イスラ達だ。
取り上げられていた武器を見つけ出し、今ようやく駆けつけたようだ。


…………

その相貌。フードの下から覗いたそれを見て、DDは目を見張った。

「メルちゃんっ!待ちなさい!」

そして…。
咄嗟にその場から空間跳躍をしたDDは、敵を庇う形で二人の間に割り込んだ。

メルツェルの尾が肩を掠め、螯が身体に食い込む。
肉が焦げ、傷口から流れ出た血は一瞬にして蒸発した。
恐らく吸血鬼にとってしても致命的なダメージであったろう。それでも彼は辛うじて立っていた。

「……誰、なの…?」

不意に血塗れの口から切れ切れと言葉が発せられる。
その問いは、例の謎の人物に向けて投げかけられていた。

「なぜ…姫と同じ顔をしているの?」

そこまで言って、DDは堪えきれずに地面に崩折れた。

447メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/20(日) 18:55:39
【群青の街】

臆病の殻を融解させ顔を覗かせるは、赤熱と紫毒に染まる狂気。
今のメルツェルには、視界に映るモノ全てが敵に見えるだろう。

「長老が長老と呼ばれる由縁、長老だけが持つ12の鍵……黄金の蠍。

その力、返しても「うるせぇよ、死ね」

それはノワールと同じ顔を持つ人物が現れても、その人物をDDが庇い、倒れたとしても変わらない。
崩れ落ちたDDを一瞥する事も無く、メルツェルは謎の人物へ再び攻撃を叩き込んで行く。

「もう止めるヤツぁ居ねぇ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

尾の一振りは紫毒を撒き散らし、螯鋏は赤熱の炎を燃え上がらせた。

ーーーーー

不意に上がる炎と響く仲間の声に、メイヤは小さく安堵の息を吐いた。
それと同時に、疵面の男へと手裏剣を投擲。

連打を防ぐべく飛来するソレは、メイヤの思惑通りに疵面の男とシャムの間に割って入った。
その間を逃さず、イスラと共に現れたバッハが疾走。

その巨体からは想像出来ない程の速度で廊下を駆け抜け、跳躍。
疵面の男へと拳を振りかざし、落下と同時にその拳を男へ叩き付けた。

その一撃はまるで隕石の落下の如く。
剣の腹で拳を受け止めた疵面の男の足元が大きく陥没する。

「……まさか吸血鬼と肩を並べる事になるとは思いませんでしたが、宿敵と言っても過言では無い相手が居ますので。」

疵面の男の薙払いをバック宙で回避し、シャムの隣に着地したバッハは、低い声でそう言った。

「私が壁になりましょう、後は分かりますね?」

そして、シャムの返事を待たずに再び跳躍からの叩き付けを放ち、無駄の無いコンパクトな動きで掌打を、肘鉄を、蹴りを繰り出して行く。

それを見、メイヤは声を挙げる。

「イスラ!アグル!雑魚を片そう!」

ーーーーー

腕の一振りは炎を、尾の一刺しは猛毒を。
狂気に染まるメルツェルの攻撃は破壊の渦を巻き起こし、城、眷属諸々を粉砕して行く。

その渦中、絶対零度の結界を張ったフィアはDDを介抱していた。
ノワールと同じ顔、そしてその口から出た言葉の意味。

それらを繋ぐ単語、それは……

「……DD、生きてる?」

448アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 21:13:01
【ポセイドン邸】

「それは分かってる。俺が馬鹿だったんだ」

二人にリトへの情を尋ねた理由はあった。
いや、正確にはたった今、"理由が出来た"。

アブセルはノワールの言葉に対し、僅かに表情を沈ませて言った。

「俺、お前らに嫉妬してた。
ちょっとだってリトが他の奴のこと気にかけるのが気に入らなかった。
リトのこと取られた気がして、それが悔しくて、だから他人に対していつも邪険な態度ばかり取ってた」

悪かったと思ってる。とアブセルは続けた。

「お嬢と話して気づいたよ。
いつもリトのこと"大好き"とか、"大切"とか言ってるくせに、俺って結局自分のことしか考えてなかったんだって。
一方的に自分の気持ちばかり押し付けて、リトの気持ちは全く分かってあげようとしなかった。
…それで友達面してんだもん。死にたいぐらい恥ずかしくなったよ」

ずっとリトの味方でいたつもりだった。
でもそうじゃなかった。結局自分も彼を虐げていた、大嫌いな屋敷の大人達と変わらなかった。
本当の友人なら、リトに屋敷の中以外での繋がりが出来た時、喜んであげるべきだったのだ。

「リトが目覚めてくれるなら、何だってやる。
そんで、もう二度とあいつのこと傷つけたりしない」

目覚めた彼が、まだ自分を側にいさせてくれるかは分からないけど。

そこで不意にアブセルは言葉を切った。リマとノワールを見つめ、そして頭を下げた。

「良かったら二人も力になって欲しい。俺の力が及ばない時は、二人がリトのこと支えてあげて欲しい」

今更になって調子の良いことを言っているのは分かっている。
でも彼女達なら、リトのことを親しんでくれている二人なら、彼を任せられる。

449アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 21:28:31
リマ>お金まで絡んでくるとは恐ろしい…w

違ったか〜、でもその子なら納得です(笑)人気がありそうな容姿をしてらっしゃる
ちょっとキャラソン聞いてみましたが声優さん声高いですね、すごい!(>.<)
でも実はロボットって書いてあるんですが…w

サイドストーリー大好きですから(笑)
ヨハン達ってこういう性格でこういう関係性なのか…
、って楽しく読ませていただいています^^

自分もだいぶ前にヨハン母と爺やのラブストーリー書くとか言っといて全然書いてないなー…
ぼちぼち考えてはいるんてすが、どうもしっくりこなくて…(^-^;

450ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/20(日) 22:07:53
【イスラとは6年、リマとは9年の付き合いになるとか驚愕の表情を浮かべざるを得ない!ww

つかこのお話も前作?含めて6年経つのか……スゲェなぁ、しみじみ思うね!

てんでバラバラな所に住んでるけど、スレが無事完結したお祝い兼ねて会ってみたいな、マジラブ歌わねーといけないしさ!(笑)

きっとそんな日が来る頃にはリマもばっちし良い彼氏ゲットしてる筈!】

451リト、ヨノ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/25(金) 18:48:22
【ポセイドン邸/過去】

リトは部屋の中で床に膝をつきうつ伏せで何かをしていた。
その対面では彼の2番目の姉であるヨノが楽しそうにその手元を見ている。
リトの手元、ヨノの視線の先にはスケッチブックのような物が。どうやら絵を描いているらしい。

昨日はあれ程の騒ぎがあったにも拘らず、いつもなら罰と称してリトに暴力を奮うヨハンは何の行動も起こさなかった。リトを連れ帰ってきてくれたトーマがヨハンを伴って行くのを見たが、二人の間に何の会話が交わされたかは分からない。しかしきっと、トーマが何かしら動いてくれたのだろう。

(おじ様はお優しい方だから・・・・・)

トーマが来てくれて良かった。リトとアブセルが二人だけで帰ってきていたら、きっと二人とも無事で済まされなかった。

「リトくん、何を描いているの?」

ヨノは自分の中に浮かんだ「起きていたかもしれない恐ろしい事態」を頭から消し去ろうと、意識をリトに戻す。
問いかけても返事はくれない。いつもの事だ。
ヨノは苦笑いしながらリトの頭を撫で、そしてふとドアの方に気配を感じて顔を上げた。そこにいる人物、アブセルの姿を見つけるや優しく目を細める。

「アブセルちゃん、おいで。」

452シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/27(日) 00:48:06
【城】

助っ人に現れたイスラとアグルはメイヤの指示通りに下っ端の相手を。そしてバッハは疵面の男に拳を向ける。

「…けっ、わかんねーッつの」

シャムは余計なお世話とも言いたそうに顔をしかめるも、接近戦では不利な筈の、しかし扱い慣れた遠距離型の武装へと腕を変形させる。

見えるは巨大な砲身。
重々しい音と共に腕を構え、こちらに背を向けて戦うバッハの背中に照準を合わせる。

「…………」

そして、砲口から高出力のレーザー光線が照射される。
普段のシャムならバッハ諸とも敵を撃破しようとするだろう。しかし照射された光線は、バッハの脇を掠め敵のみに撃ち込まれた。

二人の動きを先読みしたシャムが、ご親切にもバッハが軌道から外れた際を狙ったのか、はたまたただの偶然か、気まぐれか。月並みだが、真実は本人のみぞ知る、である。


…………

「…ええ、なんとかね…」

短い失神から目覚めると、そこにはこちらの顔を覗き込むフィアの姿があった。
DDは彼女に礼を言って上半身だけを起こすと、再生する傷口に手を触れた。

(メルちゃんったら…、随分容赦なくやってくれたじゃない…)

今、彼の全身には金色のタトゥーが浮かび上がっていた。
これは今まで他者から吸い取ったエナジーを元に、己の身体能力と治癒力を極限まで底上げした証。正直、これがなければ危なかった。

「て言うか…、この状況はどういうことなの?訳が分からないわ…」

オリジン。
その単語が脳裏に浮かぶ。

「その人、てっきりアタシは死んだとばかり思っていたんだけど…」

453シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/27(日) 00:52:31
ヤツキ>ほんと、スレが賑わってたあの頃が懐かしい…^^
しかし完結した頃には一体何歳になっているんだろうか…(笑)
じゃあ自分もその時に備えてマジラブ歌えるように練習しとこうw

454ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 01:59:27
【ポセイドン邸】

母はやはりセナとリトの見分けを付けることが出来なかった。
ただでさえ父を亡くし錯乱している彼女の前に「リト」を突き出すべきでない事は分かっていたが、葬儀で鉢合わせることになる以上、仕方が無かった。

セナはふと自身の頬を指でなぞる。血が滲んでいた。「リト」に怯えた母が手当り次第物を投げつけたため、うち一つが掠ったようだ。

「・・・・・驚いただろう?」

ナディアは気遣わしげにセナを見る。
セナは特に気にしていないようだが、とても申し訳ない。
傷を治してやろうと手を伸ばすも、必要ないとばかりに逸らされてしまった。

「リマは?」

そして遮るようにリマの行方を聞かれる。

「ん?リマならアブセルが庭に連れていったみたいだけど。」

ナディアが庭の行き方を教えるとセナはすぐにそちらへ向かってしまった。何だろう、迷惑かけてる立場である以上こんな感覚を持つことは間違っていると思うが、こっちが折角心配してるのに無視されると何か腹立つ。

しかし彼のそんな態度にも慣れてきた。やれやれと言った具合に後を追うべく歩き出した所、自分の方は母の部屋から出てきたヨノに呼び止められた。

「お姉さま、あの・・・・・」

「ごめん、母さん落ち着いた?」

「えぇ、なんとか。あの、お姉さま・・・・・」

ヨノは何か言いたけだった。しかし言って良いものかと言い淀む仕草。どうやら、母親の件とは別に用があるらしい。

「言ってみ?」

「あの、昨晩・・・・・ジルが来たんです。」

ジル?誰だっけ?

「ほら、お父様のご友人のトーマおじ様がよく連れていらしたご子息の・・・・・」

言われてぼんやりと思い出した。たしかにそんな子がいた気がする。妙に口が達者で、自分も下手すりゃ言い負かされそうになるくらい頭の回転が早い小生意気な餓鬼が。
両親が事故にあい、一時は妹と共に父方の親戚に引き取られたが、その後その兄妹は行方不明になったと聞いた。当時何だか不可解に感じてはいたものの、こっちの事情で手一杯ですっかり忘れていた。

ところでジルと言う名前、最近何処かで聞いたことがある。気のせいだろうか。

455リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 02:00:05


----------------

「もちろん!」

アブセルの申し出にリマは快く頷いて見せた。

「私に出来ることなら何でもするよ。大丈夫、アブくんの気持ち、きっとリッちゃんも分かってる。リッちゃんが早く目覚めるよう、一緒に頑張ろうね?」

一体何を頑張るのかは不明だが、リマはそう言ってアブセルを励ます。アブセルの手を両手で包みながら「ね、ノワールちゃん」などと同意を求められても困るのだが、悪意のない笑顔に返す言葉もなく、ノワールは居心地の悪そうに目を逸らした。あからさまに拒否をしないと言うことは、ノワールも少なからず協力する気ではあるようだ。

「リマ。」

ちょうど良いタイミングで、別行動をとっていたセナがリマ達のもとへやって来る。アブセルの手を握っていたリマの手をセナが自身の手で絡め取ると、リマは嬉しそうに握り返した。

「セぃちゃんおかえり」

此処はリマの言えでもなければ、別行動に至った始点でもない。よってリマから発せられた言葉は些か不適切であるように思うのだが、セナは何の疑問も持たず「ただいま」などと言葉を返している。

「セぃちゃん、リッちゃんのお母さんはどうだった?」

言ったところで、リマはセナの頬にある傷に気付く。

「セぃちゃん、怪我してる・・・・・」

どうして?リマはそっとその傷に触れる。
リマはミレリアの状態を知らない。リトを忌むように術をかけられてしまっていることは先程知ったが、それがどのような事態を招いているかまでは理解出来ていないのだ。しかし、無理に知る必要もないと思う。セナはリマの問いに答える代わりに「心配するな」と笑みを返した。

「あの娘(リト母)・・・・・」

一方、1度ミレリアに会ったことのあるノワールは察した。
我が子を認識出来ないばかりか、危害を加えるほどとは・・・・・。

「あーいたいた!」

そこへ、ナディアが遅れてやって来る。
セナの傷を気にするリマにヒヤリとしたものの、その様子からは大事にはならなそうだと判断しそのままアブセルに声をかけた。

「おうアブセル、女の子に囲まれたお茶会は満喫出来たか?」

456リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 17:01:51
結果発表、自分の受験番号見つけました(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

イスラ>>
本当、いい商売してますよね|ू・ω・` )イベントごとに限定イラスト出すもんだから沼にハマったら破産しますよwww

藍ちゃんは世のお姉さま達に人気があるイメージです(๑ÒωÓ๑)
実際人気ありまくりでヤフオクでグッズ競り落すの大変なんです( •́ .̫ •̀ )付録で付くようなブロマイドでさえ千円以上の値がつきますからね(´・×・`)
私は顔と歌声と性格にポロッと来ちゃいました(๑ÒωÓ๑)たまたまCD買った時に付いてきたカード財布の中に入れっぱで忘れていたところ、研究室の友人が私の財布弄って見つけてしまい、以来藍ちゃん好きとしてからかわれるように(´・×・`)国試前に貰ったキットカットには「受かって稼いで藍ちゃん買うんだ!」って落書きされてました( •́ .̫ •̀ )
藍ちゃんはソングロボットです(๑ÒωÓ๑)ボカロと似たようなもんですねwww
まぁロボットだろうが可愛ければ問題ないのです(๑ÒωÓ๑)

あー、自分もサイドストーリー好きです(笑)
なんかヨハンの若い頃書いてると、何だかんだ性格がリトに似てるなぁって思えてきます(笑)

ラブストーリー楽しみにしてます(*´﹃`*)構想は浮かんでるのにイマイチしっくり来ないってことありまふよね|ू・ω・` )


ヤツキ>>
ほんと長いね!物語もここまで続くとか本当感動!

マジラブひっぱるねwww

彼氏ゲットせな!取り敢えず同期に期待したんだけど皆女の子だった(笑)

457メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/28(月) 22:38:23
【群青の街】

その一撃は、言動共に粗暴に見えるシャムからは想像も出来ない程の精密さで、放たれた。
タイミングを合わせたのか、はたまた偶然なのかは分からない。

しかし、針の穴を通すかの様な光線は、確かに疵面の男の胸を貫いた。
白磁の鎧が砕け、仰向けに倒れる男。

「……呆気なかったな、最後は。」

アグル、イスラの二人との連携は思った以上に上手くいき、苦戦したのが嘘かの様に騎士達を倒したメイヤは、刃に付いた血糊を払いながら呟いた。
考えるのは、倒すべき吸血鬼との共闘を終え、本来の目的である吸血鬼討伐に取り掛かるかどうか。

……答えは、否だ。
騎士達とそれを率いる男は倒れ、戦うならば四対一と此方が圧倒的に有利だろう。

しかし、今日は此処に来た最重要目的はイスラとバッハの救出だ。
少なからず消耗している今、無理に戦う必要性は無い。

そう、自らの中で理由を付けてメイヤは武器を収納する。

「なん、だ……!?」

その時だった。
城が大きく揺れ、破壊音が轟き響いたのは。

音と共に揺れは増し、頑強な筈の石畳が、積層壁が割れ、廊下は崩落の兆しを見せた。

「拙いですね、急いで脱出しましょう!」

地下にあるこの廊下が崩れれば、全員生き埋めになるだろう。
バッハの声にメイヤは素早く駆け出そうとし……思わぬ不意打ち、空間歪曲を利用した衝撃波によって吹き飛んだ。

「……まだ、終わりではないぞ?」

床に叩きつけられ、痛みに顔をしかめるメイヤは、進行方向、出口へと繋がる方へ視線を向ける。

「吸血鬼の長と戦うには、人の身では力不足でな……

毒を持って毒を制す、吸血鬼の血肉を取り込んだこの身は既に人ではないのだ……」

そこには、シャムの砲撃により倒れた、疵面の男が立っていた。
貫かれた筈の胸元は血に濡れているものの、傷口は塞がり。

黒の瞳は爛々と赤く輝き、口元には牙が覗く。
更に、その背には蝙蝠の翼が二対。

「本気を、出させてもらおう……!」

滅するべき吸血鬼の力を宿し、疵面の男は一行へと再び立ちふさがった。

458フィア ◆.q9WieYUok:2016/03/28(月) 22:45:04

ーーーーー

「死んだんじゃない、生きてなかっただけ……」

呼び掛けに応じ、上半身を起こしたDD。
彼女、もとい彼の無事を確認し、フィアはホッと安堵の息を吐く。

身体に浮かぶ黄金の模様、彼の秘策と言っても過言では無さそうな術式を見るのは長らく振りだ。
しかし、それは紛れも無い回復の証し。

「何故ノワールと同じ顔をしているのか、それは至極簡単よ。」

結界内部から、外の激しい戦いを瞳で追いながら、フィアは続ける。

「思い出してみて、私達が生まれ落ちた時の事を……」

記憶の奥底、遥か昔の事。
自分が自分である事を認識した、あの時。

「私達はオリジンを見た事が無い。

何故なら、私達はオリジンと言う存在を12分割して生まれたから……」

そう、あの時。
朧気な記憶に浮かぶのは、幼き12人の姿。

「オリジンを12分割して生まれた私達が、それぞれ血と肉と魂を寄り合わせて生んだのが吸血鬼の姫、ノワール。」

考えてみれば簡単な事だ。
ノワールとオリジン、それは限り無く近い存在なのだ。

「私達と言う血肉を失った器がオリジン、そのオリジンが血肉である私達を取り込もうとしている……つまりはそう言う事。」

思い出せば、自分を含めた幼き12人の中にジーナの姿は無かった。
しかし、彼女の魂の波長は紛う事無く自分と同じ長老だけが持つ独特の波長だ。

だが、今はそれを問い出す時では無い。
元々在ったモノを取り戻す事は決して間違えではないが、はい、わかりましたと首を縦に振る自分達ではない。

「私の命は私のモノ、そう易々と渡しはしない。」

メルツェルが放つ極大の火球が城を飲み込み、猛火が燃え盛る中、フィアは立ち上がる。

「相性は最悪だし、鬱陶しい奴だけど……メルツェルを援護するわ。」

そして、結界の中にDDを残して空間を跳躍。
メルツェルと同じく黄金にも漆黒にも見える鎧、12の鍵の一つ、黄金の水瓶の力を権限させ、謎の人物……オリジンの背後に現れた。

それと同時に、メルツェルは再び極大の火球を。
それに合わせてフィアは絶対零度の凍気の嵐を巻き起こす。

相反する二人の力は互いに打ち消し合う事無く相乗し、オリジンを中心に凄まじい大爆発を起こした。

轟音と閃光は止まず、灼熱の熱風と極寒の吹雪が吹き荒れ、メルツェルの居城は秒刻みで破壊されていく。

そして。
一瞬にも永遠にも思える破壊の嵐が止んだ後。

メルツェルとフィアの視線の先に浮かぶのは……

「……ケッ、あれでまだ死んでねーとはな……」

身体の七割程を失いながらも、宙に浮かぶオリジンの姿だった。

「……流石、ね。」

459リト ◆wxoyo3TVQU:2016/03/31(木) 12:36:32
【???】

正直、自分の今の状況が未だ分からない。
リトは戸惑いながら自分の膝の上に視線を落とす。

「・・・・・・・・・・。」

何故、

「お花!」

自分へと差し出される一輪の花。
リトがそれを受け取ると、先程から断りもなくずっと人様の膝の上を陣取っている幼児が嬉しそうに笑う。

自分は何故、見ず知らずの子供のお守りをしているのか。

「ジタン。」

どうでも良いが、そろそろ膝が限界である。
そんな頃、漸く子供の保護者が姿を現した。

「おいで、お客さまに面倒をかけちゃ駄目。」

保護者は子供を抱き上げてそのままリトの隣に腰掛ける。そして保護者・・・・・リトと同じ年頃と思しき少年は、軽く謝罪の意を述べた。

「・・・・あんた、アンヘルだっけ?」

戸惑いはしていたものの、特に迷惑をかけられていたわけでもない。
謝罪を軽く流したリトは、手遊びを始めた幼児を横目に見ながら少年に問う。

「ここが特殊な所だってのは理解した。けど、あんた達は地上に自由に出られるんだろ?あんたとは前にも会ったはず。」

「そうですね。」

「じゃあさ、あんた達と同じようにすれば俺も戻れるんじゃないの?」

リトはヨハンに連れられ謎の穴に落とされた。そこまでの記憶はある。しかし、その後気づけば「この場所」にいた。
場所と言うよりは世界と言うべきか。ここは自分が当たり前に生きていた世界とは別物らしい。なんともキテレツな話ではあるが、長い時を経て眠らされていた吸血鬼がいたり、その吸血鬼の故郷である世界に飛ばされたり、しまいには先祖なる存在が現れたりなど、最近意味の分からない出来事が多すぎて感覚が麻痺してきているようだ。不思議と受け入れられる。
落とされた穴の中で、闇に飲まれた。そして、自分は死ぬのだと理解した。しかし、この心臓は止まることなく今ここにいる。目を覚ました先の光景は一変しており、城のような空間で立たされており、目の前には偉そうに椅子に座りこちらを見据える男がいた。自分はその男を知っている。吸血鬼の世界に現れた、ルイと名乗る男。
男は呆れたように溜息を吐き、「お前を買いかぶっていた」だの、「情けない」だの散々嫌味をぶつけてきたと思えば、「ここからは簡単に出ることが出来ない」などと言ってきた。「元の場所に戻れるかはお前次第だ」と。連れてきたのなら帰せと抗議したが、「知らん」と一蹴。まったくわけのわからない男である。帰さないのは向こうであると言うのに、「ここにずっと居られるのは迷惑」「早く出ていけ」とまで言われた。腹立たしい。

嫌な記憶を思い出しているのか、どんどん苦い顔になっていくリトにアンヘルは苦笑いを浮かべた。

460リト ◆wxoyo3TVQU:2016/03/31(木) 12:37:16

「それは難しいです。」

彼はきっとルイの発言に腹を立てているのだろう。無理もない。ルイ、我が父は兎に角言葉が少ない。理由を述べることを面倒がって結論のみを口にするため、言葉を向けられる側は意味を理解出来ず機嫌を損ねてしまうのだ。

「僕とあなたは、今こうして話も出来るし、触れようと思えば互いに触れることも出来ます。でも、今あなたは少し特殊な存在なんです。僕達とはまた違う存在。」

今のリトは簡単に言ってしまえば霊体である。身体は今でも元の世界にある。しかし魂と身体を長い間切り離してしまえば死んでしまうので、意識だけをこちらに連れ出した。地上のリトから言えば夢を見ている状態に近いだろう。
あの時、闇に飲まれたリトを救うには一時的にでも身体と魂を切り離す必要があった。闇の力の核となる魂を喰われれば、あの世界は終焉を迎えることになったかもしれない。魔玉をその身に封じたセナの魂を引き継いだリトには、それ程の災厄をもたらしかねない威力があるのだ。よって、何としても魂だけは護る必要があった。

しかし、その魂は生きる気を失っていた。身体と引き離し、魂をルイの魔力を込めた宝玉に封じ護っても、魂が消滅を望んでしまってはいずれ跡形もなく消え去ってしまう。どちらにせよ災厄は防げただろうが、リトは危険な存在であるのと同時に、世の闇を制するには必要存在であり、失うには惜しい価値があった。故に少々強引ではあるが、身体と魂を引き離した上で、魂から意識をも切り離すことにした。今のリトの意思はその魂にとって毒でしかない。

「あなたは帰りたいと言っていますが、自覚していないだけで、戻ることを拒否しているのはあなた自身なんです。あなたが心から生を望めば、きっと帰ることが出来ます。」

リトを護るには致し方のない処置だった。ルイは口が裂けても言わないだろうが。

「ここにはいくら居ても構いません。自分の心に問いかけて見てください。ここは、もとより自分を省みる為に存在する場所です。」

「もっとも、省みるのは自分じゃなくてパパなんだけどね。」

アンヘルの説明に突如割って入る声。いつ来たのか、背後から少女が仁王立ちで見下ろしていた。
この少女にも一度会ったことがある。たしか、アンヘルの姉で、名前はアネスだったか。

「自分じゃないって?」

「ここは魂を選別する場所。あんたも聞いたことあるでしょ?閻魔とか、天国とか地獄とか。あれ、迷信じゃないから。生涯を終えた魂がどちらに行くか、生前の記録を辿って決めるのがパパの仕事。」

「は?」

「あ、あんたは死んでないから安心していいよ。ここにいるのは死者だけじゃないから。私もアンも、末っ子のジタンもちゃんと生きてるし。」

なんだかとんでもない情報を押し付けられた気がする。
トンデモ状況が多すぎて感覚が麻痺してるとは言え、流石に衝撃的すぎるのではないか。自分は本来死んだ後にしか会うことのない存在を目の当たりにしているのか。

「姉様、何か用事?」

「あー、そうそう。ティータイムだって、ママが呼んでる。」

言ってアネスはある方向を指さす。
視線を向ければ、庭の奥の方で先に席についているのであろう女性が笑顔で手を振っている。

「あんたも参加ね。パパを呼んでも来なかったから、このままだとママが落ち込んじゃう。」

色々な情報が一気に押し寄せてきて処理が追いつかないところを勝手に欠員の穴埋めにされ、リトはわけもわからないまま促されるままに従うこととなった。

461ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/04/02(土) 01:22:48
【イスラ》板組も消滅したぽいしなぁ……

色々やりたいネタは沢山だけど、話まとめないと収拾着かなくなりそうだww三十路までにはきっと完結……してるハズ!

リマ》感動の涙は完結まで取っておこうぜ!
ww

同期の女子と合コンしたり、同期の友人の友人とかでこう捜して行けば出会いは沢山あるはず〜!

と言う訳でマジラブはイスラとデュエットするのでwwww←】

462アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:14:29
【過去】

不意に名前を呼ばれ、アブセルは飛び上がった。ヨノが居るとは思ってもみなかったのだ。
なぜ自分だと分かったんだ、とでも言いたげな面食らった表情で入室するや、直ぐに床に這うリトの姿が目についた。

「リト…、昨日は大丈夫だった?」

リトはやはり応えない。代わりにヨノが頷いてくれた。
彼はどうやらスケッチブックに向かって絵を描いているようだ。
傷だらけだったらどうしようと思ったが、見る限りは元気そうで、アブセルはほっと胸を撫で下ろす。

次いで、渡したいものがあったと後ろ手に隠したクローバーの存在を思い出す。
しかし、いざ渡すとなると何やら恥ずかしくて中々切り出せない。
アブセルは暫しモジモジと逡巡した後、ついに意を決した。

「あの…これ…、昨日のおわび…」

照れくさそうに言って、緑の束をリトの目の前に差し出す。

「これからはリトが外に出られるようになるまで、俺が代わりに外のものを持ってきてリトに見せてやるから」

463アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:16:05
【ポセイドン邸】

小さくて柔らかい女の子の手。リマの手はまさにそんな感じ。
彼女の手に触れるのはなにも今回が初めてではないが、不意に手を握られた時、アブセルは一瞬ドキリとした。

おかしい。普段なら何とも思わないのに。
何だか顔も火照ってきたような気がするし、風邪でもひいたのかもしれない。
そんな疑念を自分に抱いていると、丁度セナとそしてナディアが戻ってきた。

「うん、まあね。そっちはどうだった?
…てかセィちゃんさんのあの顔の傷ってもしかして奥さまが…?」

アブセルは二人の分の紅茶を淹れながら、ナディアに小声で問いかける。
しかし彼女の表情を見れば、返答など聞かずとも分かった。

どうしたものかと考えている内、ふと前々から思っていた疑問が口をついて出た。

「奥様のアレって本当に精神的な病気なのかな…。
リトに対する態度のこともあって、俺あの人のこと好きになれないけど、ほんとは凄い優しい人だってことは分かるよ」

あの人は身分に拘ったりしない。使用人に対しても変わらない態度で接してくれる。

だからこそリトに対してのみ、別人のような振る舞いを取る彼女に違和感を覚えていた。
まさかそれが実の祖父の洗脳によるものなど、アブセルは夢にも思っていない。
今回の騒ぎの一件で、ミレリアの件もヨハンの陰謀の一つではないかと疑い始めていた程だ。

464DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:17:51
【城】

DDはメルツェルやフィアとは考えが違った。

「つまりは…って、そんなんじゃ納得できないわ…」

今から何百年前か…。
あの日、自我が芽生えた瞬間は奇妙なものだった。
そこがどこで、自分が何者なのかも分からなかった。
ただぼんやりとした意識の中、理解していたことがある。
自分がとある一つの存在から生まれ落ちたことと、周りの子供達も自身と同様の存在であるということだ。

そしてDDは、自分を含んだ12人を兄弟と、そして顔も名も知らないそれを親のようなものだと捉えていた。

メルツェルからオリジンを庇ったのは、DDにとってそれがノワール同様、貴い存在であったから。
自分達に力を与え、血と肉をくれた。
だからこそ、オリジンが自分達の存在を消すべく現れたと知った時、ショックを感じずにはいられなかった。

自分の命は自分のもの。確かにフィアの言う通りだ。
本来ならばフィア達に加勢するべきなのだろうが、しかしDDは動けなかった。

ただ知りたかった。何故、今更になって自分達の前に姿を見せたのか。そして自分達が生まれることになった経緯、元々ひとつだった存在が12個に分かれた利用を。

465イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/03(日) 22:42:55
リマ>おめでとうございます!受かって稼いで藍ちゃん買えますね!(笑)

マジかー…、うたプリ恐るべしww
確かライヴとかもあるんですよね?チケットとかも直ぐ売り切れそう…
ロボットでも問題ないんだw何でもロケットパンチとかも出来るらしいですね。強い(笑)

自分も思いましたwやはり親子ってことですかね

書く書くって言って、結局諦めて書かないってことも有り得ますので期待はしないでくださいw


ヤツキ>完結…できるといいなぁ…
自分はネタとか全く思いつかないのでヤツキさんについていきます!(*`・ω・)ゞ⬅

466メルツェル ◆.q9WieYUok:2016/04/10(日) 01:44:48
【群青の街】

二人で七割削れたならば、後一押しか。
頭部と僅かに残った上半身だけで宙に浮かぶオリジンの姿を見つめながら、フィアは声を挙げる。

「DD、貴方の援護が有ればオリジンを倒せるわ!」

しかし、援護を求める言葉に対する返事は無く、DDが動く気配も無い。
それはフィアに取って予想外の出来事であり、思わず視線をDDへと向けた。

その瞬間、オリジンは自分自身とその周囲に流れる時を巻き戻し、傷付いた身体を元通りに。
それはほんの一瞬の間だったが、オリジンに取っては充分過ぎる間だった。

元の小柄な身体からは想像出来ない速さで宙を駆け、腕の一薙で周囲の空間そのものを引き裂くと同時に、背後のメルツェルが放った熱波を振り向き様に発生させた重量波で相殺。

更に、そのまま高速で横回転しながらフィアへ突撃。
フィアが張る凍気の障壁を薄皮の如く破り捨て、黄金期にも漆黒にも見える鎧を砕き、彼女を吹き飛ばした。

そこでオリジンは一旦動きを止め、空間跳躍によって死角から現れたメルツェルの首筋を小さな手で鷲掴みにし、先程地に叩き付けられたフィアの隣へ投げ捨てる。

単純な物理的な攻撃に見えるも、その一撃一撃、一挙動毎にオリジンは自身のみぞ知る異界の術式を絡ませていた。
それは吸血鬼の最上位種、長老にすら決定的なダメージを与えれるモノだ。

その直撃を受けたフィアとメルツェルは何とか立ち上がるも、反撃の手が出ない。
動かない二人を見下ろし、オリジンは両の腕を大きく広げる。

小さな掌の先に超高密度の魔術紋が集積し、空間が、時空が歪む。
そして、二つの魔術紋が合わさり、雷光とも極光とも見える眩い光の雨が周辺一帯に降り注いだ。

ーーーーー

砕け散った模倣の世界を集め合わせ、生まれたこの世界は言わば紛い物。
その世界は、傷付いた身体を癒やす隠れ蓑にするには丁度良かった。

世界そのものと言っても過言ではない中枢システム、黄龍が動き出す前に十字界を世界の裏側に仕込み、血肉を分けた種を蒔き、育った長老と言う実を収穫する。

そして先ずは、歪な世界をリセットしようとしている黄龍を滅ぼし、遥か古に敗れた白焔の龍皇へ再び戦いを挑もうではないか。

467メルツェル ◆.q9WieYUok:2016/04/10(日) 01:47:20
ーーーーー
12に分かれた黄金と漆黒の力、その一片すら取り戻して居ないが、それでもオリジンの放つ攻撃は凄まじい。
一粒一粒が大爆発を巻き起こす圧倒的な破壊の雨は、城を、その周囲一帯を、群青の街を焦土に変える。

美しく輝く死の雨が降り止み、焦土と化した城の跡で、フィアは何とか立ち上がった。
全身全霊で張った絶対零度の結界は、あの四霊のキールの全力に勝るにも劣らない堅固さを持っていた。

しかし、その結界を持ってしても即死を免れる程度であった。
黄金にも漆黒にも見える鎧は見るも無惨に砕け散り、五体満足ながらも無傷な部位は見えない程に傷付いている。

その隣で、同じくボロボロの状態で膝を着くメルツェルは、血反吐を吐き捨てて立ち上がった。

「……くそったれが、これじゃァもう勝てる見込みは無ぇ……」

3人で畳みかければ勝機は合ったが、死んでないだけと言うのが正しいこの状態では撤退する事すらままならないだろう。

「冷血女、オカマ野郎を連れて退け。

ガラじゃねーが俺が囮になってやらァ……」

ならば、と立ち上がったメルツェルはオリジンを睨み付け、空間を跳躍。
宙を浮かぶオリジンの眼前へ姿を現す。

そして、その小さな身体を確と抱き締めた。
それは恋人同士の熱い抱擁では無く、真逆の死の抱擁か。

「ガキと心中なんて全く、何の楽しみも無ぇじゃねーか……クソが。」

諦めの声をぼやき、メルツェルは残る全ての力を、その魂を燃料にしーーーー

ーーーー起こるべき爆発は起きず、その存在全てを吸収され、消えた。

宙へ浮かぶオリジンの姿は無傷で、変わった所を挙げるならば、銀にも白にも見える髪が一房、赤に染まっただけだった。

「12に分かれた内の一つ、燃える毒蠍の力……回収した。」

靡く髪はそのままに、オリジンは無機質な声でそう呟いた。
そして、立ち尽くすフィアの姿を睥睨し、彼女へと手を伸ばす。

「極凍の水瓶よ、毒蠍に免じて今回は見逃そうか。」

伸ばした手の先、浮かぶ魔紋を握り潰し、オリジンは身を翻してその姿をゆっくりとフェードアウトさせた。

468リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/10(日) 18:45:07
【過去】

目の前に差し出された緑の束を、リトは不思議そうな顔で見つめる。
ついでヨノへと視線を移すと、それは幸せを運ぶものだと教えてくれた。
手を差し出すとアブセルが四つ葉を握らせてくる。

「リト、ありがとうは?」

ヨノが促すも、やはりリトは答えない。
しかし今回ばかりは少し違った。

リトはスケッチブックを手に取ると、描いていた絵を切り取る。そしてそれをアブセルに差し出した。

「・・・・・あげる」

それまでリトに隠れて見えなかったが、スケッチブックには猫や花、そしてクレープのような物を持った人間の絵などが描かれていた。
色々な物が乱雑に描かれていたが、それは昨日リトが初めて目にしたものだった。人間は色合い的にアブセルを描いているのだろう。

「それ、アブセルちゃんに渡すために描いていたの?」

リトが言葉を口にしたことにも驚きだが、それ以上にリトのとった行動には更に驚かされた。
ヨノの問いかけにリトは頷く。

「要らないならあげない。」

469シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/10(日) 23:32:45
【城】

人の身でありながら、自ら吸血鬼の血肉を取り込んだというのか。

「そのイカれっぷり、逆に感心するぜ」

シャムは人外のモノに変貌した相手の姿を、まるでお面白いものでも見るような目で見据える。

直後、周囲の壁が本格的に崩壊を始めた。
ひび割れ、崩れ落ちる壁面や天井。このままでは生き埋めになる…。そう思った時、不意にそれらの決壊がピタリと止まった。まるで時間が止まったかの様に。

「早く…、何とかしてくれ…。長くは持たねー、から…」

誰の仕業かと見れば、珍しく険しい顔で汗だくになったアグルが、トールの力を発動させていた。
どうやら周囲一体に特殊な磁場を発生させ、城全域を浮かせているらしい。

「へぇ…意外とやるじゃねーか」

シャムは言う。
そして、要望通りに何とかしてやるとばかりに、その場にいる疵面の男を除いた全員を空間跳躍で移送した。

………、

「え」

目の前に広がるは黄昏の空色。全身を包む冷たい空気。
転移した先は何と上空だった。

「悪ぃ、悪ぃ。俺様、空間跳躍とか苦手なんだわ」

「ちょ…っ、ふざけんなし!」

バッハ、メイヤ、イスラはまた別の地点に飛ばしてしまったかもしれない。
眼下に見える群青の街に落下していくアグルを目の端で見送りながら、シャムは別の方へ意識を向ける。

「やっぱ無事だったか。来いよ。ここなら思いっきり、暴れられる」

シャムの右腕に寄生している蟲は、今や背面、そして左腕にも影響を及ぼしている。
両腕を剣に変え、背から奇怪な翼を生やし飛ぶ彼は、同じく地下から脱出し、対面する疵面の男に向かって不敵な笑みを送った。

470メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/11(月) 22:44:00
【群青の街】

「吸血鬼の長でありながら、異形の蟲を宿すキサマも中々のイカレ具合だ。」

崩壊どころか焦土と化した城跡から姿を現した疵面の男……バルドは、紅瞳を歪めて凶笑を浮かべた。
そして、宙へ浮かぶシャム目掛けて漆黒の翼を広げ、空を駆ける。

その速度は並みの吸血鬼とは比にならない程速く、ほんの数秒でシャムを射程圏に捉え、突撃。
大翼で身体を包み、高速で横回転するその様は黒い砲弾か。

頂点部品から銀剣の切っ先を突き出し迫るそれは、シャムの胴を掠めて更なる高みへ登り、翼を広げて急停止すると共に黒羽の弾丸を眼下へと撒き散らし、空間転移。

シャムの眼前へと姿を現したと同時に、鋭い刺突を繰り出した。
吸血鬼に致命傷を与えうるその刃はシャムの頬を掠め、鮮血を散らす。

「血沸き肉踊る戦い、嫌いではないが今はその時では無い。
見るが良い、周りを。
我が主は目的を達し、キサマの同胞……一人の長老はその存在を消した。」

シャムの返り血を一舐めし、バルドは続ける。

「騎士団はほぼ壊滅したが、さほど問題は無い。
主と我が居ればな……
もう一度言おう、この街へ来た目的は達した。」

そう、長老達の血肉と魂の器、オリジンとその部下である騎士団がこの地に来た目的、メルツェルの討伐、吸収は達成された。
ならば、もうこの場に留まる必要は無い。

刺突を繰り出した姿勢のまま、悪鬼にも見えるバルドの姿は、ゆっくりとフェードアウトしていく。

「次に会いまみえる時は、全力でキサマを滅してしんぜよう……!」

そして。
その姿が消えたのと、メイヤら三人が城跡へ辿り着いたのはほぼ同刻だった。

「……城どころか街のほぼ全域が焦土だ。

一体何があったんだ……!?」

シャムによってメイヤらが転移したのは街の外れ。
そこから中心部の城へと走って来たのだが……

471ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/12(火) 22:13:57
【ポセイドン邸】

(・・・・!!)

12人の長老の血肉によって生まれたノワールは、その根底で長老達と繋がっている。故にノワールの身に異変が起きれば長老達は察知することができ、ノワールもまた然り。
メルツェルが消えたその時、突如としてノワールの身に悪寒が走った。

誰の身に?何が起きた?最悪の事態でなければいいが・・・・・

自分が何百年もの眠りに就いている間、十字界は印象が変わった。
一見して変わりないように見えるが、皆がいくら平静を装っていてもその位分かる。しかし、それを隠されている以上自分には知る由もなく、自分はまず、皆が待ち望んでいる我が子、新世界の吸血鬼を見つけ出すことを優先するべきだと考えた。

「・・・・・」

ノワールは思案げな表情を浮かべた後、席を立つ。
そしてセナの腕を引いた。

「話がある」

------

「あんたの言う通りだよ」

アブセルの漏らした疑問に、ナディアは苦笑しつつ頷いてみせる。
嘘はつけない。だが、それがアブセルの祖父の仕業だとはとてもじゃないが言えない。アブセルをこれ以上傷つけたくはなかった。

「母さまは、術にかかってる。リトを恨むようにね。全く呆れた話だけど、あの人(ヨハン)はリトをもともと人柱として母さまに生ませたんだ。一応、母さまのことは愛してたから、我が子を奪って傷つけたくなかったんだろうね。」

そしてナディアは溜息をつく。

「長い間洗脳を受けてたから、もう術を解くことは出来ないらしい。今後リトに心を開いてくれるかは母さま次第だね。セナに対しても態度は変わらなかったよ。取り敢えず、顔合わせは済んだから葬式はまぁ何とかなると思う。」

472シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:20:06
【飛行挺】

熾烈を極めた戦いから数時間後が経過し、日もすっかり暮れた頃。
飛行挺内部は収拾がつかない状態に陥っていた。

「アタシがメルちゃんを殺したのよぉっ!
ごめんねぇメルちゃん!成仏してぇ!」

「るっせぇんだよックソカマ!
いつまで泣きゃあ気がすむんだボケッ」

掌で顔を覆い、おいおいと泣き叫ぶDDに。
オリジンの出現、それによる同じ長老であるメルツェルの死、敵を仕留め損なったことと、様々な要因が原因で荒れるシャム。
そして…

「……何でこの人達ここに居んの?」

アグルはアグルでそれに対し不満を洩らしていた。

イスラ達が崩壊した城跡にたどり着いた時、そこで発見したのが負傷したフィア達だった。
当初、彼女らの傷は深くとても立ち上がれるような状態ではなかった為、何となく放っておくのは忍びないという理由で、彼らを匿うことになった訳だか…。
上空から落とされ、何とか無事だったアグルはそんな話は聞いてないとばかりに、むすりとしていた。

「アタシもうどうしたら良いか分からないわ〜!」

もはや聞き苦しいと言うか、相手にするのも鬱陶しくなってきた。シャムはイライラしながら言った。

「どうもこうも別に悩むような話じゃねぇだろ。ヤツ(オリジン)をブッ殺す。それだけだ」

「それは駄目よぉ!」

しかしそれに対し、DDは間髪入れず言葉を返した。

「そんなことしたら、残った長老VSオリジンの戦いが幕を広げちゃうじゃない!
そんなの嫌よぉ!悲しすぎるわぁ!」

DD曰く、"親子"で争うのは、見るのも堪えられないらしい。
しかしだとしたらどうしたいと言うのか。

「ならテメェはヤツに大人しく喰われても良いっつーのかよ」

「そんなのわからないわ…、そうした方がいい気もするし…。
でもアタシまだやりたいこと沢山あるのよォ!
気になるオトコのコも山ほどいるし、まだ女の幸せ掴んでないし!」

オリジンの意思で生まれたのなら、オリジンの意思で消えるのもまた道理である、とDDは考える。
メイヤちゃんアタシを慰めて!と叫ぶ彼に、シャムはいい加減うんざりし匙を投げた。

473アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:21:44
【過去】

「い、いる…っ!ちょうだい!」

リトが自分の絵を描いているとは驚きだった。
それ以上に、彼が自分のことを想ってしてくれたであろう、その行為と気持ちが嬉しかった。

アブセルはリトから絵を受け取ると、それを改めて眺めてみた。

「ふふっ…ヘタクソ…」

そうは言うが、昨日はアブセルにとって特別な日になった。
そこに描かれた絵は確かに、昨日の出来事が夢でないことを語ってくれた。
本当は涙が出そうなくらい嬉しかったのだ。

しかし、その絵には一つ足りないものがあった。
何を思ったか、アブセルは黄色いクレヨンを手にすると、貰った絵に何かを描き足し始めた。

やがて出来上がったものを二人に見せる。
そこにはトウモロコシに手足が生えたような奇妙な物体が描かれていたが、アブセルはそれを指し"リト"と言った。

絵の中のアブセルとリトはクレープを手に、二人で笑っていた。

「………」

その絵を描いている間…、いや四つ葉を探していた間も、もしくは昨夜からずっと、彼の脳裏にはとある二人の言葉が反芻していた。

一つはジルの「リトの側にいてあげればいい」という言葉。
そしてもう一つは、ナディアの「リトを護ってあげて欲しい」という言葉だ。

アブセルはぽつりと口を開いた。

「俺…リトと仲良くなりたい…」

子供ながらにリトと自分は立場が違うことを何となく理解していた。
彼は名家の子息で、自分はその家の使用人。こんなこと、本当は言っちゃいけないのかもしれない。
でもずっと言いたかった。言いたくて、そのつど呑み込んでいた言葉。
アブセルは等々それを口にした。

「俺と友達になってほしい…」

474アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:26:36
【ポセイドン邸】

「何だよそれっ!最悪じゃんか!」

半分は予期していたにも関わらず、やはりナディアの口から聞かされたものはアブセルにとって信じ難いものだった。
思わず大きな声を上げてしまう。

どれだけリトを卑しめれば気がすむんだ。
ミレリアを傷つけない為だとはいえ、彼女の気持ちは蔑ろにしてもいいというのか。
愛する人に精神干渉の術を施すなんて正気の沙汰とは思えない。

「ねえ、何とかなんねーの?
ここには今、最強の癒しの守護神ポセイドンが二人もいるんだよ。それにセイちゃんさんやノワールだっているし、あと一応俺も…。絶対イケるって!」

これだけの面子が揃えば、解けない術なんてもはや存在しないのではないだろうか。
アブセルは同意を求めるように「なっ」とセナ達の方へ視線を向けるも…

「って、いないし…」

いつ抜け出したのか、そこにセナとノワールの姿はなかった。

475リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/17(日) 20:11:23
薬剤師名簿登録通知来ました!これからは正真正銘の薬剤師です(๑ÒωÓ๑)

ヤツキ>>うん、完結するまで泣かずに耐えとくわ(笑)

病院が激務すぎて合コン言ってる余裕ないから、取り敢えず仕事慣れるまで出会いはなさそうだ(笑)

マジかwww個人的にアニメ2期から登場した主人公達の先輩グループの歌がセクシーで好きなので、そっちをマスターしてもらって聞きたいな|ω・`)チラッ笑

イスラ>>
稼ぐようになったら沼にハマるwwwでも初任給は5月らしいので、まだ藍ちゃん買うのは難しそうです(笑)
そう言えば自分もうすぐ誕生日でして、友人がプレゼント買うから欲しいの教えろって言ってくれたのですが、思いつかなすぎて、欲しかったけど引きに行く機会がなくて手に入らなかった一番くじの藍ちゃんのキュンきゃらなる物の画像をふざけて貼り付けてみたら、Amazonで見つけたとかでマジでプレゼントされそうな気配(笑)

ライブあります!チケットは抽選みたいですね|ू・ω・` )
藍ちゃんは中の人も美形なので見応えがありそう(笑)
ゲームやってる人で当初から人間だって疑わずに好きだった人にとっては衝撃かもですが、自分は藍ちゃん気になってwiki調べた時に知ったので特に何も思わなかったですね(笑)
へー本当はロボットなんだーふーん可愛い
みたいなwwwただ、親の借金のせいで事務所に売られたドリームが消え去ったのは残念でした(´・ω・`)笑
そして藍ちゃんは事務所社長が制作費を出してコーディネートした、理想のアイドル像を具現化した存在らしいので、つまりは藍ちゃんは社長の好みそのものなんだって思うとちょっとモヤモヤしますね(笑)
ロケットパンチ凄いですよね!怒ると攻撃してくるらしいですよwwwもー可愛い!

親子なんですねー、ちゃんと血がつながってた(笑)
ヨハンはミレリアのことが無ければトーマとの関係も崩れなかったと思いますし、育った環境が違ってたらあそこまで性格歪んだりしなかったでしょうから、少し可哀想な人なんですよね(´・ω・`)
本当はリトのこともちゃんと愛してたって感じに持っていきたかったのですが、ヨハンの行動にリトを愛する要素がなさすぎて諦めました(笑)まー始めから人柱にしようと思って生ませた子なので、情が分かないように虐めてたってことにしておきます(´・ω・`)

え、残念ですが私もそんな感じなので期待せず待ってます(笑)

そしてDDが面白すぎてツボです(笑)

476イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/17(日) 23:52:02

今、吸血鬼編がアツいので…オリジン描きたい!長老達の絵描きたい!と思って挑戦してみたのですが、見事に挫折しました…
とりあえず誰トクか不明ですがルドラ&ラディック、DDのイラスト描いたのであげときます
他の方々はまた今度リベンジしてみよう…!
imepic.jp/20160417/853730
imepic.jp/20160417/853740


リマ>いいなぁ、薬剤師って給料いいんでしょう?⬅
5月までの辛抱ですね(笑)ファイトです^^

いや良かったじゃないですか、優しいご友人で羨ましい。それより自分は欲しいものが思い付かない、ってとこに驚きを隠せません⬅

へー抽選なんだ
自分の同級生に歌プリファンがいますが、結構頻繁にイベントとかに行ってるみたいで(恐らく一人で)真面目だなぁ、と感心してます
もう何でも可愛いんですねww
何ですかそのドリームwまぁ気持ちは分かりますけども…、不幸設定って何かそそりますよね(笑)
モヤモヤしますね(笑)社長は男なのか女なのか…
それは可愛い…のか?いえ、可愛いんでしょうきっと(錯覚)

少しどころか相当可哀想です(T-T)
そもそも自分がリトを人柱に深淵を開けて方舟がどうたらとよく分からん設定を考えて、それをヨハンの目的にも直結させてしまったから、こんなことになってしまった訳でして…

ワヅキもヨハンを利用しただけで、ヨハンの野望とは一体…って感じであやふやなまま終わっちゃったし、色々勿体なかったですねー(--;)
それにあの話のくだり、ヨハンの野望からはちょっと外れた感じでしたし、ほんと終始訳わかんなかったですね!誠に申し訳ない…

あ、そうだ。ヨハンも世界政府に脅されてたとかどうですか?協力しないとポセイドンの一族潰すよ?的なことを言われてて、ヨハンは一族を護るため頑張ってたとか。まぁポセイドンの一族を政府が潰せるかは甚だ疑問ですがw


ちょっとラブストーリー閃いた…!かも
そこで相談なのですが…
ヨハン母は生まれつき声が出せない、とのことですが、魔物に声を取られたってことにしても良いでしょうか?

んー…DDなぁ…、こんな女々しいキャラにする筈じゃなかったんですけどねーw自分からしたら「やばい、面倒くさい人になっちゃったよあーあ…」って感じですが…面白いなら良かったです(笑)

477メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/19(火) 11:35:31
【飛行艇】

泣き叫ぶDDと、声を荒げるシャム。
そんな二人とは対称的に、沈黙したままなのはフィアだ。

三者三様、吸血鬼達の様子にメイヤはどうしても良いか分からず、無言のまま先の戦闘で負った傷の処置をしていたのだが……

「とりあえず、一旦落ち着いてくれ。

船内はそう広くないから声が響くし、苛々を物に……壁なんかにぶつけられても困る。」

そろそろ我慢の限界だろうか。
言葉通り船内、一同が集まる広間兼食堂は決して広くはない為、声は響き、正直な所騒がしいを通り越して煩い。

ましてや苛々を発散する為に壁に大穴でも開けられてしまえば大変だ。
これ以上続けられると、収集が着かず面倒になるだろう。

DDとシャムを宥める声を掛けながら、これらどうするべきかとメイヤは考える。
するとそこで、椅子に腰掛け俯いたままのフィアが顔を上げ、沈黙を破り口を開いた。

「私はシャムと同意見よ、黙って喰われるつもりなんて無い。

何より、私はまだ死ねない。

レオの敵を討つまでは絶対に死ねないの……」

そう、十字界での争乱、激闘の末に命を落としたレオの敵討ちの為に、フィアはこの人間界へ来たのだ。
ノワールの護衛や異質な存在の調査、そして人間との共闘で日和っていたが、先のオリジンとの戦いで一番の目的、復讐の炎は再び確と燃え上がったのだ。

だが、だからといってオリジンの存在を無視する訳にはいかない。
放っておけば他の長老が、眷族が、そして娘であり姫であるノワールにまで魔の手は伸びるだろう。

「ジーナに頼まれていた異質な存在の調査、一応は終わりね。

異質な存在はオリジンで、かの存在は私達長老に害を成す。

先ずは十字界に戻り、どうするか早急に話し合うべきだわ。」

DDとシャムの二人へ声を掛け、フィアは立ち上がる。
泣き続けるDDと匙を投げたシャム、声を掛けなければ二人はきっとこのままだろう。

「私達もバルクウェイへ、師団の元へ戻りましょうか。」

その様子に合わせ、バッハもまた、イスラとアグルへ声を掛ける
討伐対象であった吸血鬼の長、メルツェルはその命を落とし、奇しくも依頼された任務は達成された。

目的を果たした今、生存者0、廃墟と化したこの街に留まる理由も無い。
幸いにも自分を含めた四人全員無事であり、今すぐにでも出発出来る状態だ。

「吸血鬼の皆様方もこの街を発つようですし……まさか一緒に行動する訳もないでしょう?」

一応は確認の声を掛け、バッハは全員の顔を見回した。

478リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 16:51:57
イスラ>>

ルドラ美少年!ヤバイ!足!足!!!
てかまた画力あがってませんか!?ヤバイ!足!!!
そしてDD!なんかすごいwww思わず二度見三度見しちゃいましたwww
ラディックはどうゆうわけか自分の想像と全く同じな容姿をしていますwww


残念ながら自分は病院薬剤師なので給料は高くないんです( •́ .̫ •̀ )
稼ぐならドラッグストアですかね|ू・ω・` )

5月までお金ない・・・・・交通費も支給されてないから出費しかないです(笑)

本当にプレゼントは藍ちゃんになったみたいですwww
2人の友人が割り勘で買ってくれましたwww
実用性のあるものはもう持ってますし、ゲームとかもしないので遊具も必要ないし、もう学生じゃないんで可愛い洋服とかも持ってても使い道ないしって感じで今は欲しいもの見当たりません(´・ω・`)
ミイラの飼い方と言う漫画のヘンテコな生き物達が最近クレーンゲームでぬいぐるみ化して、聞かれた当初はその漫画のミイラのぬいぐるみが欲しかったのですが、普通に自分で仕事帰りにゲーセン行って取っちゃいました(笑)

たしか抽選だったと思うんですが・・・・・あれ?違ったかな??
真面目wwwそれだけ好きなんでしょうね(●´ω`●)なんか、ネット見てるとキャラクター宛に開店祝いに送るような花とか贈ってる人達が結構いて、凄いなぁと思ってます(笑)私なんて溺愛してやまないシエルにすらバレンタインとか誕生日とかお祝い送ってない←←
そそりますよね、何故か(笑)まー、藍ちゃんは別の方向で不幸を背負ってるのでゲームでは涙なしにはプレイ出来ないみたいですよ( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

社長は変なオジサンです←
可愛いです!(確信) 怒って攻撃してくるなんて子供過ぎて鼻血出ます(*´﹃`*)いつもは冷静で周りの大人(25歳男児)を冷ややかな目で見つめ、毒を吐き、後輩達(皆年上)に振り回されてる子なのに、何だかんだで子供っぽいところが堪りませんね(/ω\*)そして馬鹿にしまくってる25歳のその人に「一生懸命憎まれ口を叩くアイアイが好き」とか何だかんだ包容されてて、自分の素になった子が25歳のその人の親友だったことを知って、「ボクにちょっかいをかけるのは、あの人とボクを重ねてるから」とか嫉妬しちゃうところとか、「レイジといるとろくな事がない」とか言いながらいつも一緒にいるところとか、肩に担がれながら「嫌だ嫌だ」と足をばたつかせながら連行されていくところとか、めちゃくちゃ子供で可愛いです!!(鼻息)

479リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 16:53:07
ごめんなさい、藍ちゃん語ってたら長くなっちゃいました( •́ .̫ •̀ )

え、相当ですか|ू・ω・` )?
いやいや、自分的にもヨハンはあくまで「母と自分を虐げてきた一族への復讐」が第一目標で野望とかよく考えてなかったのであやふやになってしまって申し訳なかったです(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

お、そのネタいいですね!
多分政府如きに潰せはしないでしょうが、ポセイドンの長であるナディアとかはヨハンにとっては庇護すべき我が子ですし、護るために頑張ってもおかしくないと思います(๑ÒωÓ๑)
じゃあトーマを殺したのも本当はヨハンではなく、ヨハンがおかしくなった事を気にかけた彼が色々調べていくうちに政府の闇を知ってしまい、そのことで政府に消された設定にしてしまおうかな|ू・ω・` )
そんで人柱としてリトが生まれたけど、渡したくなくて隠してた(監禁してた)ことにしようかな|ू・ω・` )トーマが知ったことで協力を得て、存在が相手にバレる前にリトを彼に託そうとしたけどその前にトーマが殺されて、そんでもってリトが17になって外に出られるようになったのは存在がバレたリトを逃がすためだったとか。
あれ?ヨハンいい奴じゃん。不器用なだけでちゃんと皆を愛してるじゃん。めっちゃ可哀想な人じゃん(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)←

やったー!ヨハンの母の設定は好きに弄っちゃって大丈夫ですヾ(●´∇`●)ノ

大丈夫です、こうゆうキャラも必要だと思います(笑)
面白いのでこのまま突き進んじゃってください!(笑)

480リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 23:35:37
【過去】

友達って何だろう?
リトが首を傾げると、横からヨノが笑顔で教えてくれた。

「お友達はね、手と手を取り合って、色々な事を一緒に頑張っていくんだよ。」

例えばこんな感じ、とリトの所持する絵本を広げて見せる。
そこには手を握りあって楽しそうに笑う動物がいた。

「りとはどうぶつじゃない・・・・・」

「例えば、だよ。動物にも人間にも、友達はいるんだよ。」

リトがこんなに言葉を口にするのは初めてだ。全く喋らないものだから、言葉を理解出来ていないのかと思っていた。良かった。
アブセルの存在は、確実にリトにとって良いものとなっている。

ヨノはアブセルの手を取りリトの手に重ねる。

「はい、友達!」

ナディアが以前、アブセルが来てくれて良かったと言っていた。本当だ。
この屋敷では皆がリトを遠ざける。けど、アブセルは違うのだ。
まだ幼いから理解出来ないのかもしれないけど・・・・・、いや、アブセルならきっと、これからもずっとリトの傍にいてくれるだろう。

「リトを宜しくね、アブセルちゃん。」

481DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 17:40:29
【飛行挺】

バッハの問いにイスラやアグルは"まさか"と言うように顔を見合わせる。
その一方で…

「うう…、ぐすっ、分かったわフィア…」

一先ず引き上げると言うフィアに従い、DDは悲しみを引きずりながらも素直に腰を上げる。
そして飛行挺の持ち主である四名に向けて、幾分か平静を取り戻した様子で別れの挨拶を述べた。

「取り乱しちゃってごめんなさいね。一時でも落ち着ける場所を提供して貰えて助かったわ。
それから…メルちゃんがあなた達に対して行ったイジワルはアタシの方から謝らせてちょうだい。

あのコ、昔は本当にイイ子だったのよ。臆病で小さな虫も触れないような子でね。皆が面白がってからかうからきっとグレちゃったのね…」

思い出したらまた涙が出てきた。
正直どうでもいいような思い出話を聞かされ微妙な表情をするアグル達を残し、DDは目元をハンカチで隠しながら飛行挺を後にした。

そして外に出たのち、じゃあ十字界に帰ろうかという時、出し抜けにシャムが口を開いた。

「とりま俺は姫ちゃんに今回のことの報告に行ってくるわ。
んで、そのまま姫ちゃんの近辺を警戒しつつ、オリジンの居場所やら情報やらを探る。
何か掴んだら知らせるからよ」

あわよくば闇討ちをしてでもオリジンを倒す気だったが、それを口に出すことはない。言えばDDが口煩く止めるのは目に見えているからだ。
シャムはじゃあな、と軽く腕を上げ二人の前から姿を消した。

482アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 17:41:42
【過去】

「うん!」

重ねられる二つの手。
アブセルはリトのその手をぎゅっと握り、ヨノの言葉に力強く頷いた。

そして、時が流れるのは早いものでー…


「たっだいまー‼」

数ヶ月後、アブセルは学校に通うようになっていた。
学校から帰宅するや、鞄を置きに自室に向かうこともなく、そのままリトの部屋へ直行する。

「リト帰ったよー!遊ぼー!」

そして、そこにリトの姿を見つければ、嬉しそうに彼に飛びついた。端から見れば飼い主に戯れつく犬のようにも見える。

初めはリトとの接し方もたどたどしかったアブセルも、今ではすっかり…、と言うか異常なほどに彼に慣ついているようだった。
朝は必ずリトにおはようと言ってから屋敷を出て、午前で終わる学校から戻れば、直ぐ様リトの部屋に行き、仕事の時間までそこで過ごす。
もちろん夜も彼が寝つくまで一緒にいる。

「今日は何する?オセロ?神経衰弱?レースゲーム?
お、いいもの見つけた」

おもちゃ箱を漁っていたアブセル。そう言って彼が取り出したのはジェンガだった。

「負けたらバツゲームな。負けた方がディア姉かヨノ姉のスカートをめくる」

うしし、と悪ガキがするような笑みを浮かべ、アブセルはリトの返事も待たず遊びの準備に取りかかった。

483イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 20:01:31
リマ>足がどうしたww
たぶん画力は上がってないんじゃないかなー…(;´д`)なかなか上がりません…
DDはもっとカマカマしい方が良かったかな?⬅髪型IKKOさんみたいにしようかと迷ったけど止めといたw

ドラッグストアの方が高給なんだ!病院の仕事の方が大変そうな気がするけど…;

マジか…(・・;)
てかミイラの飼い方…!?どうしよう、可愛さが分からない…!⬅てか自分で取ったの凄い(笑)
自分は欲しいものいっぱいですよー;しかも値の張るものばかりだから誕プレに友人にねだると怒られますw

自分もキャラクター宛にプレゼントを送ったことはないですねー(笑)だってあれ…どうせ最終的には捨てられるんでしょう?⬅

社長オジサンなんだw
そして25歳児ww
いえいえ、どんどん語ってくれて構いませんよ^^面白い(笑)
てかリマさん、刀剣乱舞はやらないんですか?リマさんああいうの好きそうだけどな(適当)

なるほど、いいと思います!(^ω^)
まぁ政府はポセイドン一族の爵位や領地を取り上げられるぐらいの権力はあったんでしょう、きっと⬅
しかしヨハン気の毒ですね…、ジルに復讐の相手と勘違いされて亡くなってしまったことになる訳ですし…
リトに暴力ふるってたのも、恨まれてた方がリトと別れる時辛くないから…とかですかね?なんて不器用(--;)

ありがとうございます!
閃いた!と思ったけど、ヨハン母と爺が結婚できなかったのも政府のせいにしたくなったので、また設定考え直しです⬅一体いつ出来上がることやら…

面白いキャラで続けられるよう頑張りますw
何ぶん本体自身が面白くない性格なので…wちゃんとオネェキャラ出来てるか心配

484ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/25(月) 06:59:13
【ポセイドン邸】

母の病に気づいた時、自分の能力を知った時、ナディアは幾度も母への治癒を試みた。
しかしどう言うわけか全く改善の兆しなく、初めは自分の力不足と感じていたが、歳を重ねて力をフルに使いこなせるようになっても尚、事態を好転させる事は出来なかった。
何故か分からなかった。しかし、母の病が人為的なものと知った今、その理由に納得が言った。
自分の力はまだアブセルの祖父に敵わない。おそらくそう言うことだろう。
しかし、自分には無理でもリマならどうだろうか。純粋なポセイドンの力を持つリマなら・・・・・
アブセルの言葉にふと思い当たってリマを見るも、リマは申し訳なさそうな顔をして首を横に振った。彼女の力をもってしても母を救う事は出来ない。術を掛けた当人ですら解くことが出来ないのだ、致し方ないのだろう。

「母様のことはおいおい解決するとして、今はあの人の葬儀の事を考えないとな。正直あんま気は乗らないけど・・・・・つかセナは何処行ったよ?アブセル、セナ見つけてからリトとしての身支度を済ませてきて。」

ナディアがそう言うとリマがすかさず立ち上がり、アブセルの横に並ぶ。

「私も行く!アブくん、一緒に行こ?」

485ノワール他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/25(月) 07:00:11

ポセイドン邸は邸も大きければ庭もかなりの広さだ。
適当に数分歩けばすぐに人目のつかない場所に行くことが出来る。
ノワールはセナを伴い暫し庭の中を進み、手頃な場所を見つけるや、セナの方へ向き直る。
そして口を開いた。

「そなた、わらわを知っておるな?」

セナは答えない。ノワールはセナを睨んだ。

「忘れたとは言わさぬぞ。闇の王子よ。」

「・・・・・吸血鬼の住まう十字界、その種族の姫、名はノワール。」

言い逃れは許さない、ノワールのその視線を受け、セナは漸く答えた。
その言葉にノワールはふんと鼻を鳴らした。

「やはり、気づいておったか。よくも今までわらわを無視してくれたな。」

「お前は突如姿を消した。その後の行く末など興味無い。再び見えようと、私に関係のないことだ。」

「"姿を消した"と?"関係のないこと"?わらわにあの様な仕打ちをしておいて・・・・・」

セナの言葉にノワールは怒りを顕にするが、ふとジュノスの言葉を思い出す。
あぁそうだ、あの男は水面下のことをセナに何も知らせてないと言っていた。水面下・・・・・利用するだけしておいて、目的を果たした後には人知れず消した、コケにされたものだ。

「あぁ、そうじゃ。そなたは所詮黒十字宗主の人形・・・・・何の疑問も持たず言われるままに動き、多くは知らされぬ。その行動がどのような結果をもたらそうと、己の意思のないそなたが気に止める謂れはない。」

ノワールは最大限の嫌味を投げたつもりだったが、セナは顔色一つ変えなかった。あの時と同じ、幾ら挑発しても動じなかった過去のあの時と。自分は彼の感情を動かす価値もない、取るに足りない存在なのだと見せつけられているようでとても悔しかった。
最悪な気分だ。セナを苦しめてやりたい。いっそ生まれた子の存在を明かしてやろうか。しかし、それはジュノスとの取引で口止めされている。

「名をリマと言ったか。あの女子に影響を受けているかと思えば・・・・・そなたはあの頃と何ら変わらぬ。わらわとの関係も、宗主に命じられただけじゃと申すのじゃろうな。」

その言葉に、ノワールの言わんとしていることを察する。

「宗主の命に従ったのは事実だが、それを盾に言い逃れをする気はない。しかし、あれは黒十字と十字界の利が一致してのこと。一方に非を求める謂れもない。」

「そなたに誠意は求めておらぬ。そう、そなたの組織と我が種族、互いに利があったはずじゃ。じゃが、実際に利を受けたのがそちらだけだとしたら?」

ノワールはセナに歩み寄り、続けた。

「黒十字との契約は我が十字界には害でしかなかった。が、それを責めても最早意味の無いこと。ならば今ここで与えた分を返してもらうぞ。」

ノワールにとって有益なものと引き換えに。

「十字界について、そなた達黒十字の握る情報を全て教えろ。わらわも知り得ぬ事情が、なにか分かるかもしれぬ。」

486メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/26(火) 14:08:34
【飛行艇】

長老の幼き時の話など誰得だったが、それはDDにとっては必要な話、自身に一区切り着ける為のモノだったのだろう。
別れを名残惜しむ様にも見えたDDを含めた三人の長老を見送り、メイヤはホッと一息着いた。

「結局の所、俺達は大して何もしなかったな……

でも、全員無事で何よりだ。」

任務である吸血鬼討伐は成功したかと言えば何とも微妙だが、結果だけを見れば
完了だろうか。

「ここを発つのは明日にしよう、無事だけど多少の負傷と疲労もある。

一晩休むのが無難だと思う。」

時刻は夕暮れから夜に。
師団の元へ戻るのは夜が明けてからで良いだろう。

ーーーーー

数日振りに戻ったバルクウェイは不穏な空気が漂い、ざわついていた。
バッハと共に師団長のレオールへ任務の結果報告、事の顛末を話した後。

不穏な空気の原因を……自分達が吸血鬼討伐の任に着いていた間に世界で起こった事を聞き、メイヤは目を見開いた。

「今先程説明した通り、四霊を率いて黄龍が大々的に動き出した。

いよいよ世界が終わる時が見えて来たかもしれん。」

師団の母艦より奪った特殊鉱石を核とした、超大型光学破壊兵器により南部の大陸が消滅。
巻き上げられた地殻は成層圏まで上昇し、殻の様に世界を包み込もうとしている。

また、世界各地を巡る龍脈、レイラインと呼ばれる世界そのものの動かすエネルギーの流れが活性化しており、ソレをコントロールする龍穴なる遺跡も黄龍によって押さえられていた。

「偵察隊によれば、世界を覆う殻は加速度的ににその面積を広げている。

情報を照らし合わせた結果、龍穴の遺跡が一つ起動する事に比例し、殻……外郭もまたその面積を広げている様だ。」

そして、遺跡を奪還しようとするも敵部隊は強く、奪還作戦はほぼ失敗続きであった。

「敵戦力は個よりも数。

超再生能力を備えた兵を大量展開し、圧倒的な兵数で攻めて来ている。」

各自に配られた資料と、会議室中央に置かれた立体映像装置から浮かぶ映像を見ながら、レオールは説明を続ける。

「現在、師団が抑えている龍穴はマルトが抑えている一カ所のみ。

周辺国と情報を共有し、連携を取ろうとしてはいるが……中々な。」

そして、一通りの説明を終え、一息着くと再び口を開いた。

「そこでだ。

帰還したばかりで申し訳無いが再び出撃をお願いしたい。」

新たに配布した資料を横目に、そして皆の返事を待たずに続けた。

「メイヤとイスラ、レックスとアグルで二人一組を作ってくれ。

後は今の資料に書いてある通り、二カ所の龍穴を強襲する。

強襲、制圧後はどちらか片方が残り、後続の部隊と合流し龍穴の防衛を。

防衛に回らなかった二人は合流し別の
龍穴を強襲し……と、上手く行けば三カ所の龍穴遺跡をこちらが抑える事が出来る。

現状考えられる最善の一手、どうだろうか?」

487リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/27(水) 17:28:39
【過去/ポセイドン邸】

最近、五月蝿い訪問者が増えた。
もともといたのは姉のナディア。そして増えたのがアブセルと言う名のこの少年。

「・・・・・。」

リトは本を読みながら、楽しそうに木製のブロックを弄るアブセルを横目に見る。二人の関係はトモダチと言うらしい。まだその関係性を上手く理解出来ない。
一緒にいる時間は増えたと思う。この少年は暇さえあればこの部屋に来る。真似っこが好きなのか、食事が運ばれてくれば自分の分を持ってきて一緒に食べ、ナディアやヨノがリトに勉強を教えに来れば"宿題"と言うのをやり始め、リトが絵を描いていれば隣で同じように描き始めたりする。ただ、リトは本が好きだが、アブセルは好きではないらしくこれだけは真似してこない。代わりに邪魔をしてくる。夜になり就寝時間になるとベッドに入ってこようとするし、風呂にも付いてきて鬼の形相をした爺に引き攣られて行く。隙を見ては抱きついたり、頬に擦りついてきたり、とにかくベタベタしてくる。そして再び爺に引き摺られていくの繰り返し。
これがトモダチなのか、トモダチと言うのは暑苦しい存在なんだな。正直なところ、リトにとってアブセルは"よく分からない存在"だった。
実姉である二人を除き、リトと親しくすることは禁じられている。禁じているのは使用人の長であるアブセルの祖父本人であるため、アブセルはそれはもう大層こっ酷く扱かれているようだが、何ど連行されようと頭にたん瘤をつくってヘラヘラしながら戻ってくるアブセルを見て、馬鹿なんじゃないかと思う。

「どうせ・・・アブセルが負ける。」

準備が終わったらしい。
早く始めようと急かしてくるアブセルに、リトは本から目を離すことなす答えた。

488リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/27(水) 21:58:28
イスラ>>
生足素敵(*´﹃`*)
いやいや上がってますって!いいな|ू・ω・` )←
カマカマしいってwwwこれでIKKOヘアだったら完全ツボに入って笑い死ぬところだった・・・・・危ない危ないwww

ドラッグストアだと調剤以外に商品並べとか普通の仕事もしますからね、それもあるんじゃないでしょうか|ू・ω・` )
病院はどこも仕事量の割に・・・・・って感じです( •́ .̫ •̀ )ただ、薬剤師としてのスキルアップには1番適しているとは思います|ू・ω・` )

いやいや、名前で検索してみてくださいwww普通に可愛いですからwww多分今イスラさんの頭の中にはピラミッドに住まうミイラが浮かんでるwww
友達にねだっちゃうんですねwwwやはり友達からの誕プレだと値段考えちゃいますし、難しいですよね:(´◦ω◦`):

どうしよう、夢が無さ過ぎて笑えたwww
たしかに、食べ物だとスタッフが美味しく頂けると思いますが、物だとそうなっちゃいそうですよね( •́ .̫ •̀ )

しかも、かなりインパクトのあるオジサンですwww
25歳児です(笑)何だかんだ包容力のあるお兄さんなんですが、三枚目キャラ演じちゃってて周りからの扱いが酷いですね( •́ .̫ •̀ )そして何かこのキャラの性格や立ち位置って(リーダーポジと言うところを除いては)自分に似ていてどうも気になっちゃいますね|ू・ω・` )そして「頑張ルンバー♪♪」とか、「宜しくマッチョっちょ☆」とか、口調が昭和臭いのですが、この前自分も研究室に入る時「ただいマンボウ〜」って自然に口走っちゃって、物凄く悲しくなりました( •́ .̫ •̀ )

え、本当ですか(☆∀☆)そしたら遠慮なく語りまくっちゃいますよwww

あー、刀剣乱舞人気ですよね|ू・ω・` )自分はやってないんです(´・ω・`)友達に凄くハマってる子がいたので何となくは知ってるんですけど、キャラが多すぎてちょっとプレイする気にはなりませんでした(笑)

よし、そうしよう!
政府の設定雑www
設定ちょっと弄っただけでヨハンが物凄く可哀想な人になってしまいましたね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)と言うかジルも可哀想ですね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )根は優しい子なので、勘違いで殺したなんて知ったら立ち直れないかも|ू・ω・` )まージルはヨハン以外にも色々殺っちゃってるんで今更感もしますけど←
不器用だ・・・・・リトが読んでる本とかも実はヨハンが用意していたりして。ナディア達も色々持ってくるけど、時々おもちゃ箱に見覚えのない新しいおもちゃが増えていたりするんだ。子供だからナディアもヨノも疑問に持たないだけで←
家族を守るために自ら恨まれにいくなんてヨハンめ(╥ω╥`)手記か何かが何処かに残っていて、いずれ誤解が解けるといいな|ू・ω・` )きっとヨハンの本性は爺だけが知っている←

マジかwww
気長に待ってます(●´∇`●)

まさかのwwwいやいや、充分オネェ出来てると思います(笑)てかイスラさん変な性格のキャラ作るの上手な気がします!←失礼

489イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 07:18:50
【バルクウェイ】

バルクウェイに戻って早々に聞かされた情報は、いよいよ世界の危機に不安を覚えるものばかりだった。

龍穴やレイラインなど聞きなれない単語もあったものの、レオールの説明を一通り聞き終えたイスラは、静かにそして誰に言うでもなく口を開いた。

「もはや異論を唱えている状況でもないのだろうが…、やはり戦力的には心許ないな…」

なんせ四神の内の二名が不在なのだ。
こんな時にも関わらず、未だバロンは戻ってこないし。

次に、こんな時にも危機感ゼロな男アグルが、手を上げて質疑を投げる。
南の大陸が消し飛んだと聞かされた時も、彼は顔色一つ変えなかった。

「敵、強いんだろ?俺らに制圧できる見込みなんてあんの?
つーか、そんな危険な遺跡なら防衛なんかせずに、さっさとぶっ壊した方が良いんじゃねーの?」

それから、と彼は続ける。

「メイヤの兄貴達は今何してる訳?
援軍とか待った方がまだ勝機はあると思うけど」

490ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 07:20:05
【ポセイドン邸】

アブセルとリマがセナを捜しに立ち去ったその直後、一人残ったナディアの元に一羽のムクドリが飛んできた。

「おい、そこの人間」

その小さなクチバシから人の言葉が飛び出してきたかと思えば、それは突如人の姿へと形を変えた。

軽やかな動作でテーブルの上に着地する元ムクドリ、改めルドラ。
ルドラは足元の菓子を踏んづけようが、ポットが倒れて紅茶が零れ落ちようが知らん顔で、偉そうに腕を組んでナディアを見下ろした。

「ここ暫くノワールの周囲の人間共を観察していた。
見たところお前がここのボスのようだ。よって、お前に姫へのメッセンジャーを頼むことにする。有り難く思え」

シャム達とは別行動を取っていたルドラは、姿を見せずともずっとノワールの護衛役として彼女のことを見守っていた。
そう、ただ見守っていたのだ。断じてストーカーなどではない。

そしてナディアに伝言を頼むのも、ノワールと直接顔を合わせるのが恥ずかしいだとか、昔の負い目があって気まずいだとか、そんな意味が含まれている、なんてことも決してない。

ルドラは一方的に、そしてぞんざいな態度で言葉を続けた。

「(ノワールの)娘の行方の手掛かりを手に入れた。
どうやら龍穴と言う遺跡を起動させる鍵として、黄龍だとか四霊だとかいう奴等に使われているらしい。
調べてみたところ龍穴は幾つか存在しているようで、その内のどこかに娘が匿われている可能性がある。

それから…メルツェルがやられた。
やったのはオリジンだ。奴は我々長老の命を狙っているんだそうだ。詳しいことは未だ不明だが、姫も十分注意されたし。

…以上だ。ちゃんと覚えたな?」

そう言うとピシリと腕を伸ばし、犬などに命令するかの如く、ノワールのいる方向を指し示した。

「さあ姫に伝えに行け、くれぐれも失礼のないようにな」

491アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 18:56:30
【ポセイドン邸】

了解、とナディアの言葉に頷いたのが数分前。
アブセルとリマは庭を並んで歩き、セナを捜している最中だった。

「セイちゃんさん、どこ行ったんだろうな」

その疑問に答えられる人間は勿論ここにはいない。
尤も、セナと共にノワールの姿も消えていたことから
、大方ノワールが彼を連れ回しているのだろうとは思うが…。全く困った奴だ。

しかしそれはそれとして…。アブセルはちらりと隣のリマを盗み見る。

(忘れてたけどこの人、リトや姉ちゃん達のご先祖様なんだよな…。
そんでもって初代ポセイドンの後継者で、闇の王子と世界を救ったとか何とか…)

改めて思うと凄い人が目の前にいたものだと思う。
失礼な話、見た限りではとてもそんな英雄的な人物には見えない訳だが。

「そう言えばさ、ポセイドンの姉ちゃん…は長いから、これからは"リマ姉"でいいや」

リマ姉でいいよね?と半場強引に許可を貰い、アブセルは改めて本題に入る。

「リマ姉とセイちゃんさんって付き合ってんの?それとももう二人結婚してるとか?」

492イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/01(日) 18:31:05
リマ>そうなのかー…(--;)
まぁスキルアップは大切ですよね^^頑張ってれば昇給するかもしれないですし!

いやいや検索した上での感想でしたよアレはww
何か…普通なんですよ、別段可愛いとも感じなければ嫌とも思わないような(笑)
これ、よく見るフォルムにただ包帯巻いただけじゃね?的な(笑)

ですよねー、だから誕プレは大体いつもご飯おごって貰うとかそんな程度で済ましてますね

人気キャラによってはバレンタインとかもスタッフだけじゃ食べきれないぐらい貰ってるだろうし、多分人によっては捨ててる所もあるんだろうなー、とか思うと何かね…⬅


口癖移ってる(笑)面白いじゃないですか、もうこの際とことんそう言うキャラでいっちゃいましょうよ(^ω^)⬅
はい、語り尽くしちゃってかまいませんよ。ただ自分の反応は薄いかもしれませんが(笑)何ぶん知識がないのでw

ああ言うのはキャラの多さが売りみたいなとこありますしw
まぁ自分もやってないんで有名どころのキャラぐらいしか知らないんですけどねw
でもやりたいなーとはずっと思ってるんですよ、艦これとかも。何か面倒くさくて手出さず仕舞いなだけで(笑)艦これの島風とかもう最高ですから、Tバック堪りませんから⬅


やー…ジルが心配ですね…、誰か支えて上げなければ…。
それにヨハンも健気で…(T_T)
結構前のレスなんで忘れてるかもしれませんが(笑)爺がヨハンの手記をナディアに渡してたし、それにヨハンの本当の気持ちなんかが書いてあることにしちゃえば良いんじゃないですかね?

いや自分なんて本当普通ですよ(--;)
なんせ車の免許とる際の適性診断?的なやつの結果に「あなたは特徴のない性格です」って書かれてましたから。何故かすごくショックでしたね(笑)
だから多分変な人に憧れてるんだと思いますw

あ、少し相談なのですが、今リトが不思議な空間にいますよね?そこにサンディも登場させたいのですが良いでしょうか?
サンディって今現在、爆発に巻き込まれて生死不明状態なんですよ。どうやって復帰させようか迷ってたので、リマさんさえ良ければ是非…!

493ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 21:30:45
【ポセイドン邸】

アブセル達がセナ達を連れて帰ってくるまで、取り敢えずお茶でも飲んで待っていよう。
ナディアは未使用のティーカップを手に取るが、中にお茶が注がれることは無かった。
何やら鳥が飛んできたかと思えば、それが人間の姿となって卓上のポットを倒したのだ。ポットだけではない。菓子から何までめちゃくちゃだ。

「・・・・・。」

クムドリ、もとい、少年は何やら偉そうに、声高々に用件を述べると、これまた偉そうに何やら命令してくる。

は?ノワール?誰それ?あ、もしかしてリトが連れてきたあの幼女?

疑問は色々あるが、今は"どうでもいい"。

ナディアはむくりと立ち上がれば言われた通りノワールの元へ、行くはずもなく、目の前の少年の襟首を掴んでそのまま地面に薙ぎ倒した。

「おいガキ。食べ物は粗末にしてはいけませんってママから教わらなかった?」

そして続けざまに頭を掴むと、グリグリと地面に押し付ける。

「あんたみたいに躾のなってないガキは初めてだよ。このテーブルの上の惨事どうしてくれんの?え?あんた弁償してくれるわけ?全部でいくらすると思ってんだ?答えてみな?つかあんた誰だよ?誰に向かって生意気な口きいてくれちゃってんの?この世からサヨナラしたいの?」

494リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 22:05:47
【ポセイドン邸】

「え、付き合うだなんてそんな・・・・・!け、けけけけ結婚・・・・・!?」

声が裏返る。
居なくなったセナとノワールを探していたはずなのに、何ということだろう。
アブセルの何気ない疑問にリマは瞬時に顔を赤らめた。

「セィちゃんは幼なじみで、一緒に育ったからお兄ちゃんみたいなもので、たしかに小さい頃は結婚しようねって約束したことこともあるけど・・・・・っ」

リマの反応からは明らかにセナを意識していることが伺えるが、何故か気持ちを否定しようとする。

「でもナディアさんやリッちゃんがいるってことはリマはセィちゃんのお嫁さんになったってことで・・・・・でもでもセィちゃんはリマを妹くらいにしか思ってないだろうし・・・・・!リマのこと子供扱いするし!!」

セナはよく頭や頬を撫でてくれる、嬉しい。ギュッとしてくれる、凄く幸せ。しかしリマは、セナのそのような行動はすべて年下の存在に向ける慈愛のようなものだと感じているらしい。
リマはセナの気持ちを知らない。リマへの想いを、自分の抱えた罪の重さから懸命に抑えていることを知らない。

リマの記憶の中にあるセナは10歳の純粋な少年のままだ。見た目は成長していても、そのような浮ついた感情とは縁遠いように感じていた。そしてリマ自身もまた、神の子として崇められ、清い存在として育てられたため、恋とは無縁に生きてきた。

アブセルの発言にあーだのうーだの声を漏らしながら悩む姿は恋に憧れる年頃の少女そのものだが、リマ本人が自分の気持ちに気づかず、処理出来ていないようだった。

「と、とにかく!そんな関係じゃないよ!残念だけど・・・・・」

ごにょごにょ。

495リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 22:39:21
イスラ>>
ありがとうございます、病院薬剤師は憧れでしたし、出来るところまで頑張ろうと思います(●´ω`●)

なんですとー(OдO`)
これはあれですね、実際に漫画を読んでみるべきだと思います(笑)
あの丸っこいフォルムがたまらないのに←

あー、なるほど!ご飯奢ってもらうのもありですね(●´ω`●)
昨日その友人二人とお世話になった大学院の先輩と一緒に焼肉食べ放題行ってきたんですが、まじで藍ちゃんをプレゼントとして貰いました(笑)
取り敢えずホコリかぶると嫌なのでシエルのフィギュア入れてるブースに居候させてみたのですが、シエルはガチの奴で藍ちゃんはちまキャラなものですから不釣り合いすぎてどう見ても異物混入にしか思えない(笑)藍ちゃん用のケースを探すことにします(笑)

あー・・・・・たしかに、そう考えると捨てられてる気がしてきました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
やっぱ自分は送るのやめとこう←

移っちゃいました(笑)まー、もともと自分も似たようなキャラってこともありますが← え、嫌ですよメッチャ変な人じゃないですか(笑)
てか、「新曲出たよ、このPV見て!この瞬間のレイジがめっちゃカッコイイ!」「ねぇこれ見て!このレイジめっちゃセクシー!」「ねぇこのレイジさ!」的な感じで、友人に話を振る時は藍ちゃん差し置いてやたらその25歳児を褒める発言が多いので「あんた藍ちゃんが好きなんだよね?え?こっちが本命なの?」って疑われたことがあります(笑)
反応薄くても大丈夫です!語りたいだけですから!←
自分漫画好きとか殆ど世間に公表してないので語る場が無くて困ってるんです←

数撃ちゃ当たる感がして何とも形容し難い気持ちになります|ू・ω・` )←
あ、自分もあのキャラなら知ってます。頭になんかぶら下げてる黒髪の←
自分はもしハマったら悔しいのでやめとこうかな(笑)
艦これも何か凄まじい人気ですよね(笑)TバックwwwTバックなんだwwwwww

一応ヨノの存在が支えになる予定だったのですが、加害者と被害者の娘の恋って許されるのだろうか|ू・ω・` )ヨノもジルと同じように恨むべき相手に恋情抱いた自分を許せなくなりそうですね|ू・ω・` )しかもヨノの場合相手は直接の加害者ですし。
ヨハンはリト以上のツンデレかもしれない←
あ!すみませんすっかり忘れてました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)そう言えば貰ってた!思い出した!
自分を罰してくれって言った爺に「罪の償い方は自分で決めな」って言ったのは覚えていたのですが←
じゃあそうしようかな|ू・ω・` )

特徴のない性格wwwたしかに地味にショックですねwww
じゃあその憧れを存分に発揮しちゃいましょう←

おー!どうぞどうぞ(●´ω`●)
あの空間は簡単に言っちゃえばスカイ・ハイみたいな所なんでウェルカムです←
城主のルイは面倒ごとが嫌いなので間違いなく迷惑がってるかと思いますが嫌味に耐え抜いてください←←

496リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 23:40:12
【??】

魂を選別する場所、少女はそう言った。
しかし、この場所の訪問者は必ずしも生涯を終えた者ばかりではないらしい。

リトは先程までいた殺風景な城内とは打って変わった、何故だかとても温かみのある庭園内で、勧められるまま茶を口にする。
まだ処理が追いつかない。そんな彼を察してか、このお茶会を開催したらしい女性が色々と説明してくれた。

「死した者の生前の記録を見返し、極楽の場で転生を待つ天の国へ向かうか、自身の罪を悔い改める地の国へ向かうかを決めるのが主人の務めとなります。この場所は魂を選別する場所として、俗に裁きの間とも呼ばれますが、生死の狭間にいる方が迷い込むことも少なくありません。貴方のように生に迷いのある方も中にはいらっしゃいます。そのような方の魂を癒し、ご自身の人生を見つめ直す機会を差し上げるのが私の役目です。」

言って女性は柔らかに笑う。成程、たしかにこの女性には何処か気が安まる雰囲気がある。

「何かご不便がありましたら仰ってくださいね。うちの子達がご迷惑をお掛けしてはいませんか?」

「いや、大丈・・・・・」

ん?子供?

「うちのママだって言ったでしょ?」

女性の発言にリトが驚き顔を上げると、隣に座していた少女アネスが呆れたように言ってきた。
たしかに先程「ママが呼んでいる」的な事を言っていた気はする。しかし、

(若くないか・・・・・?)

目の前の女性は、とてもじゃないがこんなに大きな子供がいるように思えない容姿をしている。少女と形容する見た目ではないが、少なくともうちの長女と同じくらいには見える。
そう言えばルイと言う男も見た目は青年だ。どうなっているのだろう。

「私達は人間ではないので、人とは時の流れが違うんですよ」

奇怪な者を見る表情でもしてしまったのだろうか、女性は可笑しそうにクスリと笑った。
とても柔らかい、優しげな人だ。リトは自分の心が絆されるのを感じた。

「あんた、誰かに似てる・・・・・」

誰だろう、考えた末、一人思い当たる人物を見つけた。
自分の母親だ。人を慈しむ優しげな表情が、母のミレリアの雰囲気と合致する。自分には向けられたことの無い、優しい眼差し。それに気づいた途端、胸のあたりが痛くなった。隠すようにもう一口、茶を口に含む。
そんなリトの姿を見て、女性は目を細める。

「貴方の心が癒されますように・・・・・」

そして何か呟いたが、とても小さな声でよく聞こえなかった。
顔を上げると女性は先ほどと変わらぬ笑みを浮かべていた。

「そう言えば、ママ。」

「お母さまと呼びなさい、もう幼子ではないのですよ。」

「あー、はい、お母さま。カップが一つ多いみたいだけど、パ・・・・・お父さまが来るの?」

アネスの言葉にリトも視線をそちらに向けると、確かにティーカップが一つ余っている。
あの男が来るのか?とてつもなく居心地が悪くなりそうなのだが。

「いいえ、あの人はお忙しいようだからいらっしゃることが出来ないと。別のお客様をお呼びしたのですよ。」

「お客様?」

「えぇ、貴女と同じくらいの女の子ですよ。何があったかは存じませんが、色々と彷徨られた末にこちらへたどり着いたようで。ルイ様に託されました。仲良くなさいね?」

497レオール ◆.q9WieYUok:2016/05/02(月) 09:54:14
【バルクウェイ】

確かに、アグルとイスラの言葉通りだ。
後続の部隊が居るとは言え、会敵必至の遺跡に乗り込み、制圧からの防衛を任せれるのか。

戦略を練り、戦略を整えてから動くべきではないのか。
援軍は期待出来ないのか。

「すまない、イオリとの連携も、他の援軍の期待も出来ない。」

アグルの質問に、レオールは申し訳なさそうな表情で答え、説明する。

「遺跡の破壊、それは真っ先に考えたがそうする訳にはいかなかったんだ。」

まず、レオール率いる108空挺師団のスポンサーは、世界政府に反する多数の中小国家である。
宿敵とも言える世界政府が倒れて以降、その後釜を狙うべく我こそはと中小国家は動き出した。

世界そのものを動かすエネルギーライン、その重要地点である龍穴を抑えるべきだと声を揃える中小国家の意向に反すると言う事は、支援が打ち切られてしまう事を意味する。

「それに、破壊するとしても周囲の影響を予測し、下準備が必要になる。

残念ながら準備をしている暇もない、今は一刻を争う非常事態なのだ。」

遺跡は七つ、内一つは空挺師団が。
三つは黄龍の軍勢が抑えている。

残るは四つだが、手付かずなのは三つだ。
そ今回制圧しようとしているのはその三つだ。

「4/7、半数以上を制圧し、防衛出来れば何とか、世界が闇に閉ざされるのは防げるだろう。

余る一カ所は……闇の巣、ありとあらゆる闇が集まるあの場だ。

あそこならば黄龍もそうそう手を出せないだろう。」

498アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/03(火) 09:18:00
【過去】

「それはどうかなー、なんたって俺修行したからね!
いつもと同じだと思って甘く見ない方がいいよ」

ただの遊びごときで一体なんの修行をしたと言うのか、アブセルは得意気に鼻を鳴らす。
しかも彼のこの台詞、今回が初めてではない。いつも似たような口上と共に自信満々でゲームに臨み、敗北。「あれ、おかしいな?こんなつもりじゃなかったのに」がお決まりのパターンである。
それでもアブセルは何度負けても、今度は勝つ、としつこくリトに挑むのだった。

それは兎も角として、いくら急かしてもリトは読書をしていて中々乗ってきてくれない。
痺れを切らしたアブセルは、彼の背中に被さってのしかかり攻撃を始めるも…
不意に「あ」と言って動きを止めた。

「そう言えばさー、ずっと前に二人で街に出かけたことあったじゃん?
そん時助けてくれたオンジンのこと覚えてる?」

"恩人"。
以前、街でリトが倒れてしまった時、助けてくれたジル達家族のことを彼はそう呼んでいた。

「さっき学校の帰りにちょっと寄ってみたんだけど、あそこの家…何かなくなってた。
道間違えたのかと思って探してみたけど、やっぱり見つかんなかったし…もしかしたら引っ越したのかもしれない」

あそこの兄妹とは、また一緒に遊ぶ約束をしていた。ただその条件が"ちゃんと親に許可を貰ってから"と言うことで、自分は兎も角リトが外に出して貰えないため、結局今の今まで機会に恵まれずにいたのだが…。

裏切られた、と感じたのかもしれない。アブセルはむくれた様な表情を見せる。しかし次には少し不安気な顔になり、肩越しにリトに言った。

「…リトはいなくなったりしないよね」

アブセルは恐れているのだ。
昔の母や可愛がっていた子犬と同じように、大切な人が自分の前からいなくなることを。
リトの肩に触れた手に、知らずと力が入る。

「黙って勝手にいなくなったら怒るからな」

499アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/03(火) 09:19:14
【ポセイドン邸】

なんというか…予想外の反応だ。
普段の仲睦まじい様子を見ている側にとっては、二人が「付き合っていない」という事実の方が驚きだと言うのに。
真っ赤な顔をして慌てて否定するリマを見て、アブセルは思わず吹き出してしまった。
何かこの人すごく可愛いぞ。

「リマ姉、そんなんで良いの?そんなことじゃセイちゃんさん誰かに取られちゃうよ?」

二人は俗に言う、友達以上恋人未満な関係らしい。
リマは現状に満足していないようにも見えるが、それ以上の関係を望むのは贅沢なのではないかと、そう思っているようにアブセルは感じた。

「リマ姉はセイちゃんさんが好きなんだろ?で、好かれたい、とも思ってるんだろ?
ならもっとガンガンアピった方が良いって。
例えば意味もなく抱きついてみるとか…、1日一回は大好きって伝えるとか」

良いこと教えてあげようか?と、アブセルはニヤリとして言った。

「夜中、セイちゃんさんの部屋に夜這いに行くんだよ。そんで、「お願い、私をめちゃくちゃにして!」って言ってみな。トントン拍子に上手くいくから…って、雑誌に書いてあったから」

もっとも、自分がリトにやったときはベッドから蹴り落とされてしまったが。

500ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:01:06
【過去】

「ヨハン様、お客様がいらしております。」

学舎を卒業して数年後、ヨハンはその才能と努力の甲斐あって着々と権力をつけてきた。
最近では本家当主の目に留まり、仕事を任されるようにもなってきた。全て当初の計画通り。このまま上手く事が運べば、本家の跡継ぎである娘との婚姻も夢ではない。

「やぁ、ヨハン!」

全ては順調なのだ。ヨハンの人生の中で、この男の存在を覗いては。

「・・・・・」

「露骨に嫌な顔をするね君は。まぁ、感情を隠さなくなったのはいい事だと思うよ。」

学舎以来の付き合いであるこの男、トーマは卒業後もやたらとヨハンを訪問してくる。因みにトーマの住まいとヨハンの屋敷は決して近い距離ではない。にも関わらず、トーマはその距離を物ともせずに足しげく通ってくるのだ。わざわざヨハンに会うためだけに身支度を整えて。
トーマはやんごとなき家系の御曹司ではあるが、本人はその権力に全くと言って良いほど興味がない。そして財のある暮らしにも未練はないようで学舎を卒業して間もなく庶民街で一人暮らしを始めていた。以前ヨハンが用事で街に出た際に会ったことがあるが、庶民に紛れて暮らすトーマはそれはもうみすぼらしく、目も当てられない程だった。ボサボサの髪に、何処から調達してきたのか不明である品のない瓶底メガネ、ヨレヨレのシャツと言った具合に、庶民と言うよりスラムから抜け出して来たのかと勘違いするような見た目で、一瞬誰だか分からなかった。いや、認めたくなかったのかもしれない。こんな芋男と知り合いだと。あれは庶民に扮しているのではない、この男の素のだらしなさがもたらした結果だろう。
だが今はどうだろう。頭の天辺から爪先まで整い、どこからどう見ても育ちのいい好青年だ。もっとも、これが学舎時代から知っている彼の姿なのだが。屋敷に訪問するのだからと、トーマは芋男を脱してドレスコードを完璧にしてくるのだ。とても同一人物だとは思えない。

「この詐欺師め・・・・・」

「あはは、ヨハン、口が悪いのは相変わらずだね。」

ヨハンはトーマがここへ訪問した用件を聞くが、やはり理由など無かった。用がないのならとその場から立ち去ろうとするも止められる。結局世間話に付き合ってやるのがいつものパターンだ。

501ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:03:35
「あ、そう言えばさ。最近面白い子に会ったんだ。」

どうでもいい話を長々と聞かされいい加減嫌気が差し始めたところでトーマは思い出したように話を変える。クッキーを手に取りながらクスリと笑う。

「良いところのお嬢様なんだけどね、民街に興味があるみたいで頻繁にお屋敷から抜け出してくるんだ。でも見るからにお嬢様な子だから街に出たら浮いてしまってね、実際初めて会ったときはやっぱりお金目的の怖いおじさん達に絡まれてたよ。」

この男が女の話をするなんて珍しい。ヨハンは思わず耳を傾けてしまった。

「だからね、庶民っぽい格好をしておいでって言ってみたんだ。ちゃんと庶民っぽくなれたなら、街を案内してあげるよって。その子、結構頑張ってくるんだけど、やっぱり育ちの良さは抜けなくって・・・・・」

「お前が化け方でも伝授してやればいいだろ」

「化け方って失礼だな。んー、手伝ってあげてもいいけど、これは彼女と僕のゲームだからね。」

言ってトーマはイタズラな笑みを浮かべる。まったく悪趣味な奴だ。
しかしヨハンはこの話で一つ気づいたことがあった。

「気に入っているのか、その娘を。」

「気に入っている、かな。けど、これが恋愛感情と聞かれれば、答えは"ノー"だ。」

僕は誰かを愛するつもりはない、トーマはそう続けた。

「・・・・・」

その理由を、ヨハンは知っている。

「お前の父親は、随分と好色な方だな。以前社交の場で見かけたが、多くの女に囲まれていた。」

「君のその何事も包み隠さないところ、すごく好きだよ。うん、そうだね、もういい歳なのに、未だに"お遊び"をやめられないみたいだ。」

恵まれた環境にありながら、何故自分の立場を嫌うのか。以前のヨハンは理解が出来なかったが、社交界に出るようになった今では分かる。
トーマの父親は底抜けの女好きで、お抱えの女が数多くいることで有名だった。トーマは正妻の子だが、その下にいる弟は第二夫人の子であるらしい。二人は歳が近い為幼い頃から比べられ、意図せず権力争いの波に飲まれていたようだ。特に第二夫人は気性が荒くトーマ母子への対抗心が強い。争い事を好まない性格のトーマには辛い環境だったのだろう。

「僕にはあの人と同じ血が流れているから、女性を幸せにする自信がないんだ。それに、あの子は貴族だから、仮に妻に迎えるとしたら自分の身分を戻さなきゃいけない。幸い僕の母親は権力とかに興味がない人で僕を自由にさせてくれてるのに、愛の為に窮屈な暮らしに戻るなんてごめんだよ。」

「庶民に憧れる物好きな娘なら、庶民として嫁がせる事も可能だろう。」

「その子の親が赦すわけないよ。可哀想だけど、女の子は権力を維持する道具に使われやすいからね。」

「お前は社交の場にも出ないからな、どうせどの家系の娘なのかも知らないんだろう。」

「よく分かったね、その通りだよ。にしても・・・・・」

ヨハンがここまで話にのってきてくれるのは珍しいね、そう言ってトーマは笑みを浮かべた。

502ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:04:32


無自覚だった。たしかに、自分は何故ここまでトーマの話を真剣に聞いてやっているのだろうとヨハンは気付き、顔が熱くなる。

「僕はいいんだ、あの子とこのまま遊べるだけで満足だよ。それよりさ、そっちはどうなの?本家筋のお嬢様。」

何だか気恥ずかしくなった気持ちを誤魔化すかのように咳払いしていたヨハンは、続くトーマの問いに眉をひそめる。またこいつの"聞きたがり"が始まった。

「何度か見かけた事はあるが、一度正式に挨拶したきり会ってはいない。俺が訪問する時は決まって部屋に閉じこもっている。」

「可愛いね、その子。何となく君が旦那様になるって気づいているんじゃない?それで恥ずかしがっていると見た。」

「婚約の話は1度たりとも出ていない。父親の信頼を得る為にはまだ時間がかかりそうだ。」

「君ならやってのけるよ。ここまで頑張ってきたんだからね。ただ、一つお願い。その子と結婚出来たら、ちゃんと大事にしてあげてね?政略
の末に不幸になった僕の母親と同じ目に合わせないであげて。」

まぁ、君は大丈夫だと思うけど。
応援しているよ、トーマは楽しそうに笑った。

二人は知らないのだ。
庶民に憧れるお嬢様と、ヨハンの狙う本家筋のお嬢様が、同じ人物であることを。


【長くなっちゃった・・・・・(´・ω・`)】

503フィア ◆.q9WieYUok:2016/05/04(水) 13:54:56
【十字界】

シャムと別れた後、フィアはDDと共に十字界へ、ジーナの元を訪れていた。

「と、言う訳よ。

私としては今すぐにでも他の長老を集め、オリジンを討伐するべきだと思うわ
。」

群青の街では後一歩の所まで追い詰めた。
メルツェルを吸収したオリジンが如何に強くなろうとも、五人……いや、六人居ればオリジンを滅する事が出来る筈だ。

ノワールに害を及ぼすであろう、と声を掛ければマゼンタとヴェントは釣れるだろうか。
だが、そうそう勝手に動く訳にはいかない。

「だけど、その前に。

ジーナ、貴女に聞きたい事があるの。」

この世に生まれ出た長老はジーナを含めず12人。
しかしながら、ジーナは自分達と同じく長老であり、同じ魂の波長を持っていた。

「貴女、何者?

オリジンについて何か知っているわよね?」

彼女は一体何者なのか、どう言う存在なのか。
ジーナに詰め寄るフィアは静かに、しかし力の籠もった声で、問う。

「答えによっては、オリジンより先に貴女と戦う事になるかもしれないわ。」

交錯する紅瞳、フィアの眼光を眼鏡の奥で受け止め、ジーナはゆっくりと、口を開いた。

「……話始めたら長くなるけど、良いかな?」

ーーーーー

元々、オリジンと呼ばれる存在は三人居た。
その内の一人が、とある者との戦いに敗れ、放浪の末辿り着いたのか再構築が始まったばかりの世界だった。

生まれたばかりの世界を隠れ蓑にし、十字世界を作り上げ、長老を創った。
オリジンの目的はただ一つ、育ち切った長老を吸収し、自らを破った者と再戦を果たす事。

メルツェルを吸収し力を付けた今、オリジンは容赦なく長老達を、そしてノワールを狙って来る筈だ。
特に、言うなればオリジンと同じ存在であるノワールは必ず消されるだろう。

選択肢は二つ。
決別し戦うか、素直に吸収されるか。

戦い、オリジンを打ち取れば存亡の危機は免れるだろう。
また、後る二人のオリジンはこの世界に干渉する事も無い。

ーーーーー

「それと、ボクは君達の従姉妹みたいなモノなんだ。

君達の元となったオリジンとは別個体の、オリジンから生まれたのがボク。

ついでに言うと、オリジンとの戦いで鍵になるのはノワールだよ。

あの娘はオリジンと同じ存在でありながら、オリジンには無いモノを……ボクの血肉を、七大魔王の因子を持っている。

もう一つ言えば、ノワールの近くに居るであろう闇の王子もボクとは別の七大魔王の加護を受けれる筈さ。

とまぁ、聞きたい事とそれに対する答えはこれ位かな?」

504ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:53:54
【ポセイドン邸】

「イタイイタイイタイっ!ちょっ、何すんだ!止めろ無礼者‼」

地面に頭を押し付けられるなんてあり得ない。しかも愚かで下賤な人間なんかに。
ルドラは屈辱に顔を歪ませ、怒りのままに吠えた。

「ラディック!誰か!もう何でもいいからコイツを今すぐ殺せ!」

そこでハッと思い出す。
そうだ。今、配下の者は誰もいないのだ。全く揃いも揃って役立たずばかり。

頼れる者がいないと分かるや、途端ルドラからは威厳のいの字もなくなった。
駄々をこねる子供のように手足をバタつかせる。

「くそっ、くそっ!人間のくせに!
離せよ肉だんご(胸の辺りが)!×××女!××××!×××××
ッ‼」

そして放送禁止級の罵声を口汚く浴びせるが……。

その数分後…

「すみませんでした…。」

そこにはボロボロの姿で土下座をしているルドラの姿があった。
ナディアに余程酷い目に合わされたのか、顔色が真っ青だ。

「僕は姫の臣下でルドラと言うものです。訳あって姫には会えないので、伝言を…お、お願いしたいのですが…」

その口調は若干棒読み気味だが、先ほどとは売って変わった弱腰な態度である。
屈服という文字が彼の背景に浮かんで見えてきそうな程だ。

505サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:55:19
【??】

どうも此処に来る以前の記憶が曖昧だ。
確か自分はバルクウェイの闘技場にいた筈だったと思う。
最後に覚えているのは、闘技会中に賊が侵入してきて大会が滅茶苦茶に荒らされたこと。
クロスと言う少年の力が暴発して、彼そのものが暗黒の虚に変貌してしまったこと。

そして自分はそれを封じるべく、あろうことか無策で虚の中に飛び込んだ。

そして…、気がついたら此処にいた。

初めはついに天国に来てしまったとばかり思ったものだが、聞いた話ではどうやら違うらしい。
ここは死者の魂を選別する場所だと、一番偉い人に教えてもらった。
では自分は死んだのだろうか。そう訊ねると男は首を横に振る。"正確にはまだ死んでいない"、と。

まだ、とはどう言うことだと疑問に思ったが、その時のサンディの感想は…「ふーん」だった。
自分でも驚くほど他人事で、不思議なことに危機的感情が全くわいてこなかった。まるで不安とか恐怖とか、負の情報を伝達する脳の回路が切断された感じ。

現に今だってお茶会に誘われたものだから、呑気にそこに足を運んでいる。しかも割りとルンルン気分で小さくスキップしながら。

「ごめんなさい、お待たせしましたー…」

お茶会の席には既に人が集っていた。席に腰かける面々を順に眺め、そこでふとサンディは目を見張った。

「あれ?あなた…セナさん…?
いや違うな………あ!もしかして姉御の弟くん!?えっと確か…そう!リト君!」

彼を見たのはバルクウェイで深淵から救い出された後の姿だけ。ずっと眠ったままだったから直接喋ったこともないが。
少しの間だけ行動を共にしていたセナと顔がそっくりだから、直ぐに分かった。

「良かった!目、覚めたんだね!」

サンディは嬉々とした様子でリトに駆け寄り笑顔を向けた。

506イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:56:47
【バルクウェイ】

(闇の巣…)

レオールの口からその言葉を聞くや、アグルは思案気な面持ちでそれきり黙りこんでしまった。

代わりにイスラが言葉を挟む。

「こんな時でも自国の利益か…。
失敗すれば世界そのものがなくなるってのに…」

何だかやるせない様な気持ちになる。

しかし、それも仕方がないことだと思う。
自分達のように前線に出て戦う役割の人間もいれば、それを指揮する人間、今の戦いよりももっとずっと先を見据えて動く役割の人間もいる。

適材適所と言うやつだ。
全ての戦いが終わった後、社会を立て直していくには、むしろ彼らのような人間の力こそが必要となるのだろう。

「…状況はキツいがやるしかないな。なんせ世界がかかってる」

ここにいる数名で背負うには余りにも重すぎる荷物だが。
そこまで言うとイスラは不意に一同を見渡し、重い空気を吹き飛ばすかの様に破顔した。

「皆、自分の力を信じて全力を尽くそう。そして必ず生きて帰ってこよう」

507リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/08(日) 22:30:17
【ポセイドン邸】

いきなり抱きつく・・・・・のは結構無意識にやっている。大好き!って言葉もよく発言している気がする。
しかしセナは動じていない。微笑み返してくれることもあれば、無反応な時すらある。

だがアブセルの言葉の中に一つ実践したことのない事柄があった。

「よばい・・・・・?」

リマは首をかしげる。
ヨバイとはなんだろう。めちゃくちゃ?

「それやると上手くいくの?夜中に?セィちゃんきっと寝ちゃってるよ??」

あ、添い寝的なものだろうか。

「小さい頃は、セィちゃんとよく一緒に寝てたなぁ。リマ、雷が怖くて夜眠れなくなっちゃうから、心配してセィちゃんがいつも来てくれるの。リマが寝るまで傍にいてくれるつもりで来てくれるんだけど、いつもいつの間にか二人で寝ちゃってるの。懐かしいなぁ・・・・・」

リマは昔を思い出して楽しそうに笑う。
そう言えば・・・・・

「今もやっぱり夜の雷は怖くて、どうしても怖い時はセィちゃんのお布団に入っちゃうの。セィちゃんは背中ポンポンしてくれるから安心するんだ・・・・・」

そこまで話してリマはハッとする。さすがに恥ずかしい事を口走ってしまったことを自覚したのだ。

「・・・・それで・・・・・朝起きていつもジュノスさんに怒られるの・・・・・」

しかしここまで言ってしまえば引くにも引けず、声は小さくなりながらも最後まで言い切った。

508イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:02:21
リマ>漫画かぁ…、機会があれば読んでみます⬅

おぉ、良かったですね^^
しかし異物混入ってwwちゃんと別のケース用意するのが偉いwあ、誕生日おめでとうございます!(^ω^)

いや、ただの自分のネガティブ妄想ですので、本当のところは分かりませんよ?(笑)ああ言うのは気持ちの問題なので、リアルの事情は気にしちゃ駄目なんだと思いますw

いやいや大丈夫大丈夫、変じゃない変じゃないw
てか本当に本命レイジなんじゃないの?(¬_¬)⬅
公表すればいいじゃない(笑)

頭になんかぶらさげてる黒髪……誰だ(笑)情報がアバウトすぎて分からんww
悔しいって(笑)まぁ秋ぐらいにアニメ化するみたいなので、見ましょうよ(^ω^)⬅
そう、あんなロリロリしいくせにTバックなんですよ。はー可愛い⬅

うーん…、自分的にはジルヨノで引っ付いて欲しいですけど。ただそれはそれで二人とも辛くなりそう…。その感情を乗り越えて幸せになってくれれば良いのですが…(--;)
このぉヨハンめ!可愛いじゃないか!( σ´∀`)σ⬅
そうしましょう!⬅

スカイハイw
ありがとうございます!頑張ります(笑)

509DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:03:41
【十字界】

十字界に着いた頃には、少なくともジーナの話に大人しく耳を傾けられる程度には、DDの精神状態も回復していた。
そして、オリジンについての一連の話を聞いたのち、彼は大きな溜め息を吐いた。

「何だか…正直がっかりだわ。
あの人は本当に自分のことしか考えてないのね…」

なんというか、愛がない。とDDは言う。

オリジンが長老達を造った理由も、そして己の消滅を逃れる為、長老達がオリジンに反旗を翻すのも愛がない。

「分かる?ラブが足りないのよラブが!
アタシ達の心に愛がないばっかりに、こんなことになってしまったの!」

また面倒くさい高説が始まりそうである。
しかし続くのは長いため息だけ。どうやらそれだけの元気もないようである。

「とにかく…ごめんなさい。アタシは話を聞いてもまだ踏ん切りがつかないの…。
少し時間をちょうだい。他の長老達の意見も参考にしたいの」

消滅か決別か。DDは未だ決断を決めかねていた。
とは言え、気持ちは傾きつつあるようで。
ノワールに害が及ぶのだけは何としても避けたいと考えていた。

510レオール ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:21:19
【バルクウェイ】

質問に対する答えに応えず、口を閉ざしたアグル。
そして、アグルとは対称的に声を挙げるイスラ。

彼の言葉に一同……アグル以外の面子、レオール、バッハ、そしてメイヤも頷く。

「すまないな……出来うる限りの援護、支援はさせてもらう。」

確か世界の命運を背負うには人数的にも重過ぎるかもしれない。
だが、一騎当千と言う言葉もある。

「出発は明日の朝にしよう。

皆の力を、無事を信じている。」

ーーーーー
「と、言う訳さー。

側近のマルトは戦争孤児、バッハはエクソシストの家系、どっちも異能者だ。

世界政府に追われる異能者や敗残兵やらを取り込み、師団は大きく成ったってこった。

まぁ、その中でも一番おっかなくてヤバい奴が裏切ったのは色々と不味いかもな。」

バルクウェイを発って二日、東南地域の大河を進む船の上、ウエスタンハットを被った男は調子外れな口笛を吹いた。
そろそろだな、と帽子の男……ビリーは船を泊め、前方を指差す。

「東南地域の龍穴遺跡はジャングルの奥に眠るピラミッドの中。

激しい戦いになる様なら退いた方が良さそうだ、側の大河から水が流れ込んで来たらお終いだからな。」

男の指差す方、そう遠くはなく見えるピラミッドに、レックスは目を凝らした。
大河のほとり、密林の先。

「手はず通り、僕とアグルの二人で遺跡へ侵入。

制圧の合図は無線機で、制圧後は後続の部隊と合流。

中継連絡は任せました。」

短く、最低限の作戦事項を口にし、レックスは歩き出す。
その歩調は速く、次第に早足、駆け足となり、レックスは一陣の風となって密林を駆け抜けた。

511レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:23:30
【東南地域/龍穴遺跡】

遺跡の中はカビ臭く、澱んだ空気が充満していた。
風を操る力で気流を生み出し、侵入口から絶えず新鮮な空気を送り込んでいるものの、如何せん臭いが鼻につく。

(澱んだ空気。

侵入痕も見受けられませんね……)

バルクウェイからの道中と同じく、アグルとの会話は必要最低限だ。

「アグル、そろそろ最深部の筈です。

今の所は僕達以外の侵入者は居ない様ですが、用心を。」

そして、自身もまた三叉鎗を構え、進んだ先。
淡く光る幾何学模様が張り巡らされた広い部屋、遺跡中枢へと辿り着いた。

燐光に満ちた部屋は、驚く程空気が澄んでおり、やや肌寒い。
広さは野球場程か、高さも有り、円柱形の様だ。

光る模様が走る床をゆっくりと踏み、レックスは最深部中央、台座の様な何かへと歩を進め……止めた。
眼鏡の奥、黒瞳が見据えるのは台座に腰掛ける小柄な女性。

「……先回り、されていた様ですね。」

くすんだ金髪と鮮やかな碧眼、身を包む鎧は重厚だ。
謎の人物、恐らくは敵であろう女性にレックスは鎗の矛先を向け、問い掛ける。

「貴女は、何の用で此処に?」

しかし、その問いの答えが来るのを待たず、疾走。

「私はラセツ。

黄龍の使いで、此処に来る者を皆殺しにしろと言われたの。」

女性が答えると同時に、勢いの乗った刺突を繰り出した。

「きっと、私は貴方達の敵。

貴方達も私の敵でしょう?」

風を纏ったその一撃は、台座から降り立った女性の片手、たった二本の指で止められてしまった。
その様にレックスは僅かに苦い表情を浮かべ、口を開く。

「そうですね、やはり敵の様です。

申し訳無いですが、容赦はしません!!」

そして、ラセツの名乗る女性が黄龍の軍勢、敵である事を確認出来たと同時にレックスは突き出した鎗を更に前方へと押し込む。
穂先でラセツの手を、腕を絡め取り、身を捩って反転。

中枢入口に居るであろうアグルへと投げ飛ばし、返しの穂先を横薙に一閃。
投げ飛ばしたラセツへと、巨大な風の刃を追い打ちにと放った。

「アグル!!任せましたよ!!」

512ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/05/11(水) 16:44:31
【ここにきて二人のレス速度が上がってて驚愕orz

レックスアグル組には新キャラあてがったんだけど、イスラメイヤ組にはどうしよう、既存の誰かを出すかはたまた……

一応出せる新顔は居てるんだけど、シデンさん出てきます?

とと、遅なりましたがリマさん資格試験合格おめおめ!社会人一年目ガンガレ!】

513イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/11(水) 17:37:08
大丈夫また遅くなるもよう(´∀`)b⬅
ゴールデンウィーク明けてから忙しくなっちゃったぃ
レスはポツポツ返していきますー

シデンさんはー…、ちょっとまだ待機で。すいません、新顔さんお願いしますm(_ _)m

514リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:46:41
【過去】

「・・・・・リトは此処から出られない。」

"リトはいなくならないか""勝手にいなくなったら許さない"……おそらくアブセルはリトから"自分はいなくならない"などの意思をもった返事を求めているのだろうが、リトはただ事実のみを口にする。
リトはこの部屋から、一族の監視の目から逃れることが出来ない。勝手にいなくなるなどの行為は、自由が赦される者にのみ出来ることなのだとリトは暗に示していた。

「いなくなるのは、アブセルの方。」

リトとアブセルが離れることがあるとすれば、それは自由の赦されるアブセルの方が自分の意志でこの屋敷から出ていく時だろう。今一緒にいるのだって、アブセルが勝手に近づいてくることによる結果なのだから。

それにしても、

「・・・・・。」

重い。
暫く大人しくアブセルによるのしかかりを受けていたリトだが、不意をついて後頭部を上げアブセルの鼻頭に頭突きを食らわす。

出会った当初は何をしても反応を示さなかったリトであるが、最近では極稀に、このような感情のある仕草を見せるようになっていた。
それだけアブセルによるスキンシップが鬱陶しいとも言える。

515リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:49:26
ヤツキ>>
ありがとう!
自分もイスラに同じく、頻度がまちまちだから早い時もあればめっちゃ遅い時もあって、分からないよ(笑)

516メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/14(土) 10:28:13
【東南地域/遺跡付近】

レックスとアグルが遺跡へ向かった後。
船の甲板で煙草を吹かすビリーは、無線機を、会敵の信号を受信したソレを握り締める。

空挺師団長のレオールを筆頭に、参謀、両翼共に異能力者だ。
非能力者の隊長分隊長も多々居るが、やはり戦力として上がるのは異能力者だろう。

(こんな時こそあの野郎、裏切り者のビカが居りゃあ良かったんだがなー…)

中でも、マルトと共に師団の両翼として武勇を馳せた男、ヴィカルトの強さは筆舌しがたい程だった。
強さをだけを追い求め、強者との闘いを楽しむ凶戦士ではあったが……

「まっさか黄龍側に着いてる訳無ぇよな、流石にビカ相手じゃ団長以外に勝ち目は……」

ーーーーー

【砂漠地帯/龍穴遺跡】

指定された遺跡は砂漠地帯にあり、夜の内に侵入を果たした遺跡内は静まり返っていた。
何者かの侵入痕はあるものの、数は一人分だけであり、予測していた大多数の敵勢力との戦闘は回避出来そうであった。

否、大多数の敵との戦闘は回避出来、呆気ない程簡単に遺跡の最深部へと到着したのまでは良かったのだが……

口腔内の血を吐き捨て、メイヤは再び剣を構える。
構えた剣の切っ先には長い銀髪の男。

(強い、強過ぎると言っても過言じゃない……)

イスラと共に到着した最深部には、一人の男が佇んで居た。
黄龍の使い、ヴィカルトと名乗る男は遺跡の装置を起動させるが、止めたければ剣を抜けと、イスラとメイヤに剣を抜かせた。

そして、十数分後。
圧倒的な強さを見せるヴィカルトに対し、メイヤは攻め倦ねていた。

イオリにも勝るとも劣らない、寧ろ上回っているであろう剣術、体術。
そして結晶……珪素を操る異能は絶対的な防御力を見せ、闇の力を失ったメイヤでは突破は不可能。

会敵し、剣を抜いたからには退く訳にも行かない。
しかし、この敵を倒せるかと言われれば……

「どうにか、攻撃を通せないか……

イスラ、イスラの炎ならあの結晶の鎧を破壊出来るだろうか?」

517ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 18:07:08
【ポセイドン邸】

「は?嫌だよ面倒臭い」

ルドラが大きく出ようと小さく出ようと、ナディアの答えは始めから決まっていた。
彼女は基本的に誰かの為に動いたりしない。その相手が知り合いでないのなら尚更。

ボロボロになりながら屈服するルドラを前にしてもナディアは全く動じず、全く興味無い様子で手をヒラヒラ振りあしらう。

「今こっちも立て込んでんの。自分で会えないんだったら諦めるか・・・そうね、あんた私たちのこと覗き見してたなら知ってるでしょ?今さっき目付きの悪い不良みたいな奴と女の子が席を外したの。あの二人があんたの姫?とやらと一緒に消えた男の子探しに行ってるから、追いかけて伝言頼んでみたら?」

518リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 22:03:24
【???】

「は?誰・・・・・?」

客がもう一人来る。女性の言葉通り、まもなくして1人の少女がやって来た。それはいい。
驚いたのは、その少女が自分を知っていると言うことだ。そして馴れ馴れしい。
いつか会ったことがあるのだろうか?記憶がない。リトは考えを巡らせた所で、少女の言葉からある単語を拾った。

「姉御?あんた、ナディアの知り合い?」

彼女はリトのことを姉御の弟と言った。姉は二人いるが、そう呼ばれる可能性があるのは長姉の方だろう。

それより、目覚める目覚めないとは一体・・・・・

「あんた、"あっち"では眠った状態なんじゃない?良かったね、体は無事みたいだよ。」

リトの疑問を察してか、アネスがクッキーを食べながら口を挟む。
なるほど、元の世界に実在する自分の現状を知っているということは、深淵に落とされた自分の体は救い出されているのだろう。

納得しつつ、リトは少女を見た。
それにしても・・・・・

「あんた、此処で会ってる時点で俺が無事じゃないって分かんないの?あんたも死にかけてるんだろ?馬鹿なの?」

この場所が普通の世界でないことは聞かされているはずだ。女性の話によればこの少女も死んではいないようだが、少なくとも生死の境くらいにはいるのだろう。

519アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/15(日) 22:51:45
【ポセイドン邸】

「………二人で一緒に寝て何にもないの…?本当に?朝まで?」

アブセルは信じられないと言った様子で目を丸くする。
と言うか同棲までしてるのに恋人同士でも何でもないなんて…。おまけに雷が怖いとか、リマ姉はお子ちゃまだな。などと、負けず劣らず恋愛偏差値の低いアブセルは苦笑する。でも背中ポンポンはちょっと羨ましい。

「あのさ、いい?夜這いってのはこうやって相手とー…」

言ってアブセルは何の気なしにリマの腕を取る。
彼女の腰に手を回しかけたところで、はたと動きを止めた。

…………。

(あ…あれ?)

何故だ…。なぜ自分はドキドキしているんだ。

もしこれがリトなら、ふざけて抱き締めたり押し倒したり、下ネタ発言だって何だって出来るのに…。
何故か相手がリマとなると、例え冗談でも抵抗を感じてしまう。

それ以上踏み込むべきか決め兼ねていたアブセルだったが、リマの純粋無垢な瞳に見つめられていることに気づき激しく動揺した。顔を赤くして反射的に彼女から身を離した。

「や、…やっぱり何でもない…!
てかこんなことして遊んでる場合じゃないし!早くセイちゃん見つけないと!」

自分から話を振っといてとんだ態度ではあるが、リマに背を向けると、一人のしのしと早足で先を歩き出した。

520リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/17(火) 19:11:45
イスラ>>
さては乗り気でないなwww

かわいいです(●´ω`●)
うた〇リと黒執事は同調出来ませんでしたねwww嵩張りますが、別のケースに入れた方がやっぱりしっくり来ましたwww
ありがとうございます(●´ω`●)でもそろそろ年取りたくないwww

完全自己満足ですもんね、あれ。自分もイスラさんと同じ意見です(笑)

いや、絶対変な人ですって(笑)
いえいえ、好きなのは藍ちゃんです(●´^`●)
たしかに暇すぎてテレビのチャンネル回してる時「あ、う〇プリやってる」ってなって、チャンネル飛ばそうとした自分の手を止めたのはレイジでしたけど!「あれ、うた〇リにイケメンいる」ってなったけど!レイジは見掛け倒しなんです、あんな残念な人だとは思いませんでした!はじめのトキメキ返して欲しい( ー̀ н ー́ )
でもすぐ様マイエンジェル(藍ちゃん)が画面に映り、「なんか電波な子いるwww」ってなり、「つかショタっ(♢ω♢)」となりまして、めでたく「可愛い!好き!!」に至りました(●´ω`●)

自分は一般人にしては漫画に精通ひすぎており、かと言ってオタクと言うにはまだまだ甘ちゃん過ぎて、凄く微妙な立場なんです(´・ω・`)

あれです、刀剣乱舞の表紙を飾ってる袴の人。
え、あれアニメ化するんですか(OдO`)
うたプリも秋からやるみたいなんですけど、どっちが金稼ぎますかねwwwwww
可愛いんだwww

まーきっと、そこんとこはナディアが何とかするでしょうwwwあんなんでも頼りになりますしwww
まさかヨハンが可愛いと言われる日が来ようとはwwwツンデレこじらせると大変ですね←
よし、そうしましょう!!

スカイハイが通じたwww
あ、あの場所は死者も通る道だからヨハンも裁き受けに来れるぞ?あれ?いや、私は何も気づいていない←
そう言えば今リトたちがいる場所、良い名前が思いつかないで【】の中何もかけなくて困ってるんです( •́ .̫ •̀ )←

521ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/05/18(水) 20:08:04
【十字界】

「ラブが足りない……確かにそうだね、この世界は殺伐とし過ぎてラブが足りない。」

DDの言葉にジーナは目を丸くし、しかしすぐさま彼の言葉に肯いた。

「でも、ラブで世界を救おうにも、オリジンに牙を剥こうにも準備は必要さ。
今すぐ決めろなんて言わないし、言えないよ。」

DDらしいと言えば彼女……彼らしい言葉にジーナは笑みを浮かべる。

「取り敢えず僕は行方知れずの他の長老を捜してみるよ、何かあればまた連絡くれると嬉しいかな。」

単独行動は避けて、なるべく二人一組で動くように、どうしても一人になるなら気をつけて。
と、ジーナは付け足し、開いたままの書物へと視線を落とした。

その様子が意味するのは会話の終わりだろうか。
フィアはどうする?とDDへ目を向ける。

「二人一組、丁度良いとは思うけど……」

522アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:11:10
【東南地域、龍穴遺跡】

カビ臭い遺跡の最深部に待ち構えていたのは、重厚な鎧を身に纏った一人の女性。

ただ引っかかる点は、ここに辿り着くまで遺跡内部に人が進入した形跡が見られなかったことだが…。
しかし今それを考えている暇はない。相手が一人ならこちらも好都合だ。

「あの眼鏡…、女相手に手加減なさすぎ…」

容赦のないレックスの畳み掛けを眺めつつ、アグルもまた武器を構える。

そして最速の踏み込みから、雷撃を纏った刺突の嵐を繰り出す。
織り成す槍撃の衝撃波が、吹き飛んでくる敵に向かって放たれた。

523サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:14:08
【?】

「あっ!た、確かに…!」

指摘されて思い出した。そう言えばここは通常とは異なる世界だった。

「じゃあリト君こんなところで何やってるの!?
早く帰らないと、姉御すっごい心配してるよ!」

浮かれている場合じゃないと分かるや、サンディの表情はそれまでとは一変。今度は膨れっ面でリトに詰め寄る。
今まさにお茶会を楽しみに来た彼女の言えた台詞ではないが、自分のことは眼中にはないようだ。

「あ、それから!あんたじゃなくて、あたしはサンディって言うの。これでも一応アマテラスの力を継いでるんだから!」

524レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/21(土) 20:00:05
【東南地域/龍穴遺跡】

雷を纏った槍撃と巨大な風刃による挟撃は、人一人を粉砕するには十分以上の威力を持っていた。
しかしながらラセツは挟撃の直撃に耐え、腕の一振りで粉塵を払い、その姿を現した。

(……一応は予想していましたが、無傷、ですか。)

悠然とした姿でアグルの前方へ立つラセツに、ダメージは見えない。
最重要地点に遣わされたのはたったの一人。

しかしそれは、その一人が単独で遺跡を制圧、防衛出来る実力を持つと言う事を表している。
決して手を抜いた訳でも無い刺突を、アグルとの挟撃を無傷で防いだその実力は、少なくとも自分達と同等かそれ以上と見るべきだ。

レックスは再び三叉鎗を構え、鎧を纏う女、ラセツを注視し……放たれた拳を、寸の所で受け止めた。
予備動作は全く無く、寧ろ受け止めれたのは単なる偶然、強いて言うならば本能的な直感のおかげか。

捻りを加えた拳の一撃から続くのは、逆の手による喉への一突。
それをレックスは手の甲で叩き落とすと同時に、三叉鎗を捨てて短剣を腰から引き抜く。

(予備動作も無く!まるで瞬間移動ッ!?)

逆手に握る短剣でラセツの脇腹を狙うも、肘鉄により刃は粉砕。

(アグルよりも、背後の僕を狙うのは確かに意表を突けますが……ッ)

砕けた刃の破片が地に落ちるよりも速く。
踏み込んだ足裏は地を砕き、肘鉄から繋がる掌打は、寸分の狂いもなく、レックスの胸部を打ち貫いた。

(何よりも、僕らの攻撃をどうやって防……!?)

何かが弾ける様な澄んだ音が最深部に響き渡り、続く破砕音……吹き飛んだレックスが、最深部中央の台座の様な物に激突し音を立てた。
二種の相反する音が止んだ後、レックスが立ち上がらないのを確認したラセツは、残るアグルへと身体を向ける。

「次は、貴男か?」

525リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/22(日) 20:23:36
【??】

好きで此処にいるわけじゃない。
早く帰れなどと偉そうに説教をたれ始めたサンディに、今度はリトがムッとする番だ。

「余計なお世話だ」

かと言って「戻りたいけど方法が分からない」などと素直に言うはずもなく、リトは途端に不機嫌になって、自棄糞気味に手元にあった紅茶を飲み干した。

「・・・・・」

紅茶は苦手だ。クセのある匂いと味がどうも体に合わない。ちょっとずつ口に含むなら飲めないこともないが、一気に飲むとやはり紅茶の味が強調されてキツイものがあった。

「あんた、アマテラスだって?」

口直しにクッキーを食べ、落ち着いたところで先程のサンディの名乗りを思い出す。

アマテラス・・・・・ポセイドンに並ぶ四神の一人だ。

「あんたはどっち?今の人間?それとも初代?」

自分でも奇天烈な質問をしていることは自覚しているが、ポセイドンの力を受け継いだ者の初代であるリマに会ってしまっている以上、仕方の無い疑問だった。

そして、彼女が初代であるのなら、聞きたいことがあるのだ。

「アマテラスも、トールも、フレイヤも、何故闇の王子を始末しなかった?」

ずっと疑問だった。世界を滅亡の危機に追いやった一因である闇の王子を、何故生かしたのか。仲間でありながら、敵であるはずの王子に惹かれていくポセイドンを何故止めなかったのか。王子が後に改心し世界を救った事実があるとしても、今現在英雄として語り継がれていることが気に入らない。ポセイドンとの関係を悲恋を語る美談とされているのも気に入らない。

王子の存在のせいで闇は滅びなかった。二人が子を繋いだせいで、こうして闇は受け継がれてしまった。

「ポセイドンには出来なくても、あんた達には出来たはず。王子は消えるべきだった。」

そう口にした途端、ズキリと胸が痛くなった。リマの泣く姿が脳裏に浮かんだのだ。王子を求めるリマの姿を知っている。離れ離れになってとても不安そうだった。凄く会いたがっていた。表では笑顔を見せていたが人目のないところで嗚咽を漏らしている姿を見かけたこともあった。別人だと分かっていながらも自分を王子と重ねて安心を得ようとしていることにも気づいていた。
王子が消えたら、彼女はどうなっていたのだろう。ちゃんと生きていけたのだろうか。
彼女の事を思うとこんなに辛くなるのは何故だろう・・・・・

「・・・・・」

自分は残酷なことを言っている。分かっている。でも、止まらない。

「闇の王子さえいなければ俺は生まれずに済んだのに・・・・・」

526イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 01:59:01
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

流石単身で遺跡に派遣されただけのことはある。
悔しいが相手の剣術や身のこなしは自分よりも数段は上手だ。
二人係りで苦戦を強いられているのが良い証拠である。

(次に備えて体力温存…なんてこと言ってられないな…、全力で行くしかない…)

どうも彼の鎧は耐熱性に優れているようで、小手先だけの技では通用しない。

「分からないがやってみる…、フォローは頼む…!」

イスラはそうメイヤに言うと、構えを取った。
イスラにとっては数年前…、この時代から見れば何百年も前の出来事である、"塔"での戦いで見せた白き焔が顕現し身を包む。
彼の髪は赤茶から白髪へと染まり、背からは白く燃え立つ翼が広がった。

「いざ…!」

目映く光る剣は大気を焦がしながら一気にヴィカルトの元を駆け抜けた。
一閃、二閃、三閃…。剣筋が光る度、白焔の業火が舞い上がった。

527アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 02:02:13
【過去】

「いった!」

不意に頭突きを食らい、後ろに倒れるアブセル。
だが彼はどんな仕打ちを受けようと、自分の行動にリトが何かしらの反応を返してくれることが嬉しいらしい。
にんまりと笑うや素早く起き上がり、懲りずにまた抱きついた。

「俺はいなくならないよ。ずっとリトと一緒にいる」

なんならポセイドンの神様に誓ってもいい。とアブセルは言う。

「リトは知らないだろうけど、俺リトと出会えて変われたんだよ。
何かさ…前まではずっと狭くて真っ暗なところに閉じ込められてる感じがしてた。すごく怖くて寂しくて…、抜け出したくても何か身動き取れなくて…。
…でも、それをリトが助けてくれたんだ。
リトが俺を明るいところに連れてってくれたって言うか、リトそのものがキラキラしてた…?って言うか…」

上手く言い表せないのが、もどかしい。
少ない語彙の中で暫く一生懸命言葉を探していたアブセルだったが、直ぐに諦めた。

「とにかく!俺はリトと一緒にいる時間が一番楽しいってこと!
だから、同じぐらいリトのことも楽しませてあげたい!リトに恩返しできるまではずっと側にいる!」

アブセルはアブセルなりにリトを喜ばせようと、あれやこれやと考えて行動していたらしい。
もっともその八割方は、彼自身の願望が前面に押し出されている為、周囲には伝わり難いが。

「いつかリトだって、ここから出られる日が来るから安心しろよ!
いまディア姉達がその為に色々準備してるんだってさ。だから"リトお衛り隊"の構成員である俺もそれに協力するんだ!」



【長々とアブセルの過去話に付き合って頂きありがとうございました!(^ω^)
何か止め時が分からなくなってきましたが…(笑)取り合えず自分の方はやりたいことも大体やったので、もしリマさんが良ければ切りの良いところで纏めて終わりにしようかなーと思いますが…如何でしょ?】

528メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/24(火) 11:09:55
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

燃え上がる白焔に、メイヤ同様ヴィカルトも目を細めた。
先程までとは違う、猛々しいその焔はイスラの全力だろうか。

「師団は理由が無いと剣を抜かない者ばかりだった。
貴様達もきっとそうなのだろうが……面白い、私を楽しませてみせろ!」

白焔を纏い、その背からは燃える白翼が。
大気を焦がし、迫るイスラの剣閃は業火を巻き起こす。

珪素結晶の鎧が白焔を受け輝き、瞬く間に燃え上がる。
耐熱性などまるでなかったかの様に火が上がる鎧を脱ぎ捨て、ヴィカルトはイスラの剣を水晶の剣で受け流し、捌く。

しかし一閃、二閃ごとに水晶の剣も融解し、三閃目を受け止める事は叶わず。
剣を投げ捨て、ヴィカルトは回避行動を取ろうとするも、そこで死角からの一撃……背後に回ったメイヤの一突きが迫る。

だが、それを見越していたかの様にヴィカルトは身を反らし、その場で横回転。
360度水平に回転する身体に続く様に、彼の足元からは大小様々、無数の結晶の剣が飛び出した。

渦を巻ながら広がるそれは、まるで花弁の如く。

「く、そ……っ」

間一髪、即死を免れたメイヤは呻き声を上げる。

(闘技場でアグルが同じ様な技を使っていたから、咄嗟に反応出来たけど……!!)

呻き声と共に込み上げる血反吐を吐き出し、文字通り、剣山に突き刺さり動きを止められたままヴィカルトを睨んだ。
風魔装束を着込んでいた為に即死は免れたものの、身体のあちこちが切り刻まれ、メイヤは動けない。

そんなメイヤに視線を向ける事無く、ヴィカルトは再び水晶の剣を生成。
イスラへその切っ先を向け、凶笑を浮かべた。

「白く輝くその焔、自らで受けてみるか!?」

その瞬間、白焔の輝きに照らされた剣山が、その輝きを乱反射させ光を増大させる。
周囲を塗り潰さんばかりに増した光はヴィカルトの持つ剣へ収束し、臨界点を突破。

水晶の剣を瞬時に蒸発させながらも、莫大な熱量を持った光線が、イスラへと放たれた。

529リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/26(木) 20:23:08
【ポセイドン邸】

「?」

リマは不思議そうに首を傾げるも、アブセルの心情など知るはずもなく、その行動を不審がることもなかった。
そして、

「あ、セィちゃん!」

庭の中を一通り歩いたところで、漸く目的の人物を見つけた。
リマはセナの姿を見るや、嬉しそうに駆けていく。

-----

「何じゃと・・・・・」

セナの口にした言葉に、ノワールは驚愕の声を漏らす・・・・・

「到底信じられぬ・・・・・」

十字界に、自分の知らない秘密が存在し、何かが暗躍している。
黒十字はその全貌にしろ一端にしろ何かしらの情報を入手し、巻き込まれぬように手を引いたのか。その時点で奇しくも自分は既に身篭っており、向こうの目的は果たしていたというわけか。

「甘く見られたものよ」

ノワールは自嘲気味に笑った。

「だぁれだ!」

その時、この場の空気に合わず緊張感の全くない声が入る。
リマが背後からセナの目を隠しじゃれついたのだ。
途端、セナの表情がふっと柔らかくなる。
先程までの冷たい雰囲気が嘘のように。憑き物が取れたように。

「セィちゃん見つけた!ナディアさんが呼んでるよ?行こう」

二人がどのような会話をしていたのか疑問にも思わない様子で、リマは無邪気にセナの手を引いていく。
セナ自身もまた、これ以上話す気はないようだ。

「そなた、何故あの娘を連れてきた」

言いようのない怒りが込み上げ、ノワールはアブセルを睨む。

「わらわはあやつと話をしておったのだ。邪魔をするでない。」

530サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:32:22
【?】

「え…、えっと……」

思ってもみない切り返しにサンディはすっかり困惑してしまった。
そもそも、なぜ闇の王子を始末しなかったのか、そんなこと疑問に思ったこともなかったのだ。

「残念だけど…、あたしはその時の当事者じゃないからその問いには答えられないよ…」

言ってサンディはしずしずと席に腰を下ろす。しかし身体はリトに向けたままだ。

「でも初代アマテラスのいー兄は、闇の王子のこと、敵だなんて見てなかったよ…?
むしろセナさんに対しては何だかいつも申し訳ないって顔して接してた」

この時代に来たイスラを見ていると、まるで久しぶりに再会した知人か何かのようにセナと接しているのが分かる。
だがその態度はいつもどこか遠慮がちで、変に気を使っていることをサンディは気がついていた。

「闇を封じる為、溢れ出た闇の全てをセナさんの身体に押し付けたんだよね?
いー兄言ってたよ。世界を救うためにセナさん一人に業を背負わせてしまったって。誰が犠牲になることもない最善の道が他にあったんじゃないか、って」

過去の話をイスラから少し聞いたことがある。
あの時は何が最善かを考える時間もなかったと言う。しかし彼は後悔しているようだった。

「リト君…、辛かったんだね…?」

話にきけば、リトは件の闇の王子の血を受け継いでいるらしい。
そのリトが今までどんな生涯を送ってきたのか、サンディには分からない。ただ彼の表情や言葉の節々から滲む痛みや苦しみといった感情は、悲しいぐらいに本物で、 また疑いようのない真実だった。

531サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:34:03
リマ>バレたかww←

個別ケースとは何て贅沢なw
同意です、永遠の十代でいたいww

トキメかされましたか、詐欺ですね(笑)しかしなんやかんやレイジに縁があるようでww
めでたく、ってwwリマさんが楽しそうで何よりですww

自分もそんな感じですよー(^ω^;)確実に一般人じゃないけど、オタクからしたらにわか、みたいな。
結構周りにそう言う人いっぱいいますww

あー、多分あれかな?皆におじいちゃんって言われてる人(笑)
難しいところですねー(笑)でも自分は刀剣乱舞を応援します⬅
可愛いですよー。自分あと一ヶ月くらいしたら誕生日ですので、友人に島風の何か可愛いグッズをプレゼントでお願いしときましたw

そうか、ナディアさんに任せれば間違いないな(笑)
ツンデレこじらせた結果が家庭崩壊ww

お、良いじゃないですか!あの世でリトとヨハン再会させて和解させましょうよ⬅

んー、それなら…冥界とか黄泉国とか彼岸とか裁きの間とか…?そんくらいしか思い付きません(^^;

532ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:36:37
【ポセイドン邸】

「立て込んでる…?」

…とてもそんな風には見えないが。
あんたさっき暇をもて余すかの様に茶を飲もうとしてたじゃないか。
…と言いかけて、ルドラは止めた。
またボコられでもしたら堪ったものではない。
しかし…。

(会えないと言うか…、多分姫の方が僕に会いたくないと思うんだけどね…)

それにしても、見事な人選ミスだった。
彼女が一番発言力がありそうだったから頼んだのに、すっかり当てが外れてしまった。
かと言ってまた他の人間に頭を下げるのも癪だし…。

「もういい」

ルドラは諦めた様にそう一言。その場を空間跳躍しナディアの前から姿を消した。

533DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:38:14
【十字界】

ジーナは相変わらず表立っては動かない気なのだろうか。
会話を区切って書物に目を移した彼女の傍ら、DDはフィアの言葉に頷いてみせた。

「フィア、アタシ思ったの…。今までアタシ達長老は独自の派閥を作って皆が皆、好き勝手に暮らしてきたわ。
中には派閥同士で争ったり、お互いを蹴落としあったり、それこそ他所のことなんて無関心だったり…。長老同士の接触も必要最低限で閉鎖的な状態が続いてきた…。
でもっ!そんなアタシ達だからこそ、今が力を合わせる時だと思うの!皆で協力してこの難題を解決させましょう!」

手始めに居場所が知れてるヴェントとマゼンダの所に行って、意見を聞いて来ようと話をまとめていた矢先、部屋の扉が音を立てて開いた。

「あれあれ〜?御二方もうお帰りですかぁ〜?
せっかくお紅茶淹れて来ましたのに〜」

間延びした声と共に入室してきたのは、トレイを手に抱えたラディックであった。
事件の後、彼はジーナの元で雑用をさせられていたらしい。

ラディックはニコニコしながら、二人に一礼した。

「フィアさんもDDさんもお久しぶりですぅ〜。
ルド坊っちゃんはお元気ですかぁ?」

「ええ、アタシ達とは途中で別行動になっちゃったけど、元気だったわよ。あと可愛かったわ〜」

そう応えたDDに対し、「そうですかぁ、良かったですよぉ〜」と言って、ラディックはジーナの方へ顔を向けた。
椅子に腰かけるジーナと目線を合わせる様に少し膝を屈め、掌を合わせて拝むような仕草を見せる。

「ジーナさん〜、そろそろ私も釈放させてくれませんかぁ〜?。坊っちゃんの元に行きたいんですよぉ。
あの方はは私がいないと何も出来ないダメダメな子なんですから〜。
ね?もう悪巧みもしませんからー、お願いしますぅ〜」

534リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/29(日) 17:57:29
【過去】

アブセルにとってリトの存在はとても大きいものらしい。
リトにとってもまた、言葉には表さずともアブセルによる影響は良い意味でとても大きいものだった。

言葉を発することの無かった彼が、話すようになった。
ずっと一人遊びばかりしていた彼が、トランプなどのゲームに興味を持つようになった。

リトの背に抱きつくアブセルには見えていないだろう。

"ずっと一緒"、そんな言葉を受けたリトが、照れくさそうに読んでいる本で顔を隠したのを。
"嬉しい""楽しい"、そんな感情をリトに教えたのは他でもない彼なのだ。

それは血のつながった姉達ですら成し遂げられなかった。友情とは、それだけ貴重なものなのだろう。

「・・・・・」

扉の隙間から、二人の様子を見つめる男が一人いた。
その眼光に傍にいた使用人達は皆萎縮する。
「すぐに追い出す」と平謝りするアブセルの祖父に、「放っておけ」と男は冷たく答えた。

「あの子供は相当なバカらしい。いくら罰を与えようと懲りずにあれ(リト)と関わろうとする。躾など意味を持たん、馬鹿らしくなった。」

そう吐き捨てて、男---ヨハンは部屋を後にする。

アブセルを連れてきた事は果たして正解なのか、未だに判断はつかない。
リトと同じ年頃の男子がいると知り、リトの退屈凌ぎにでもなればと思い迎え入れた。
正直、アブセルがリトを外に連れ出した時は自分の判断を悔やんだ。あの結果、リトの存在が世間に知れてしまったのだ。
隠し通せると思っていた。隠したかった。
存在が公になってしまった以上、この屋敷内も安全ではない。リトが成長し闇が成熟すれば"奴ら"はリトを奪いに来る。
しかし外に逃がす事も出来ない。判断を誤り続けた結果、トーマを巻き込み死なせてしまった。自分があがけば足掻くほど、犠牲が増える。

リトは生まれてはならなかった。しかし、生まれついた赤子の息を止めるほど自分は卑劣になることは出来なかった。リト1人の命で一族が助かるのなら容易いものだと、いくら自分に言い聞かせようとしても無理だった。

そして今もまた、リトがアブセルを気に入っているのを目の当たりにし、彼の存在を黙認してしまった自分がいる。

あの子に家族を教え、友を与え、果たしてこの行動は正しいのだろうか。

リトの進む道には死が待つのみ。それなのに、生への希望を持たせて良いのだろうか。

分からない。

何が最善の道なのだろうか。自分はこれからもずっと悩み続けるだろう。


【せっかくなのでヨハンの心情も絡めて締めさせてもらいました(ˊᗜˋ*)

こちらこそ、過去話にお付き合いいただきありがとうございました(●´ω`●)】

535アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:26:16
【東南地域、龍穴遺跡】

鈍い衝撃音を耳に、アグルは相手の視線を真っ向から受け止める。再び手に槍を構え直した。

「…そうみたいだな」

レックスのことも気がかりだが、今は他人のことに構っている余裕はない。

しかし不可解なのは先の挟撃の際や、レックスとの応戦で見せた、彼女の瞬間移動のような攻撃手段。
単純に周りからは視認できぬ程の速さで動いているのか、それとも何か秘密が隠されているのか…。
まずはそれを暴かなければ勝機はないだろう。

(見極めてやる…)

刹那、夥しい数の雷槍が出現し、遺跡内部の空間をびっしりと埋め尽くした。
妖しい輝きを放つ、何千、何万という槍の切っ先がラセツを標的に狙いを定める。
そしてそれらは、完全に彼女の退路を遮断する形で、アグルの号令の元、風切り音を置き去りにその場から一斉に射出された。

536アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:28:45
【ポセイドン邸】

話なんていつでも出来るだろ。と、いつもの調子で言い返しかけ、アブセルはふと思い直した。

「…悪かったよ」

そして何を思ったか、素っ気なくも謝罪の言葉を述べる。

「でもお前もどっか行くんなら一声くらいかけてから行けよな。無駄に探しちゃったじゃん」

どうもセナとノワールはお互い面識があるらしい。
そのことは今までのリトに対するノワールの言動や、彼女の故郷で意図せずして小耳に挟んだ話などから何となく分かっていた。
ただそれらを踏まえた限り、二人はあまり良い間柄とは言えないようだ。

二人がどんな会話をしていたか、気にならないと言えば嘘になる。だが聞いてもどうせ彼女は教えてくれないだろうし、本人にも事情があるだろう。
アブセルもそれ以上は何も言わず、リマやセナに続いて踵を返した。
と、その直後。

「姫」

背後から声がした。
見ればどこから入り込んだのか見知らぬ少年がノワールの足元に跪いていた。

「その…、報告したいことがある。
分を弁えぬ行為で申し訳ないが、今だけは御身の前に参じる無礼を許してほしい」

そうして彼はノワールに何やら耳打ちする。
内容はナディアに語ったものとほぼ同じものだ。

「見たところ、姫は今この場所を動けないご様子。
姫に代わって僕が子の捜索を行うことも可能だが…、如何しよう?」

全く気に入らないが、ノワールはリトと言う少年を主として置いているらしい。
そのリトが動けない現在、彼女自らが地に赴くのは難しいだろうと踏んでの発言だった。

537ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/06/08(水) 00:44:07
【十字界】

確かにそうだ。
今こそ、今のこの状況だからこそ、一致団結するべきなのだろう。

フィアもまたDDの言葉に頷き、ヴェントとマゼンダの下へと空間跳躍しようとしたその時。
ポットとカップを乗せたトレーを片手に、知った顔……ラディックが姿を現した。

此方に一礼するその姿にフィアは小さく舌を打つ。
先にあった十字界での争乱、レオが命を落としたあの戦いの一因は彼にあるとフィアは今も思っているのだ。

膝を着き、拝むラディックにジーナは苦笑いを浮かべる。

「うーん、君の淹れる紅茶が飲めなくなるのは少し寂しいかな。
午後の一時は君の淹れる紅茶が無いとね?」

だが、その苦笑いもすぐに意地悪めいたモノに変わった。

「でも、ルドラの坊ちゃんが心配なのはわかるよ。
だけど今は非常時だ、彼の隣には君が居ないとね。」

そして、立ち上がったジーナはその意地悪めいた表情を浮かべる顔をラディックへ近づけ、続けた。

「ーーーーー」

その声は小さく、近くに居たフィアですら聞き取れない程。
しかし、もとよりジーナはラディックだけに聞こえる様に話しており、それを感じ取ったフィアは聞き返す様な真似もせず、話が終わるの待った。

「ーーーーーーと、言う訳さ。
言わば司法取引、交換条件だ。
坊ちゃまと合流してからでも、する前でも良い。
今さっきの“お遣い”きいてくれたら君を無罪放免にしよう。
どうかな?」

【お遣いとして適当に後々使えそうな伏線張っときます、内容はイスラさん自由にしてもらって大丈夫っす!】

538ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/10(金) 16:54:18
【東南地域/龍穴遺跡】

アグルの号令の下、放たれるのは莫大な数の雷の槍。
遺跡を埋め尽くす程のソレからは、逃れる術は無いだろう。

ラセツは襲い来る雷槍の群れを一瞥し、フッ、と、笑った。

「眩しいな。」

それと同時に、雷槍が着弾。
轟音を撒き散らし、破壊の限りを尽くすその光は数刻の間止むことは無かった。

そして、遺跡内を破壊し尽くした後。
粉塵が止み、周囲の様子が見える用になった頃。

重厚な鎧の端々を焦がしながらも、ラセツがその姿を現した。
鎧は焦げ、身体の所々が黒ずんではいるものの、深刻なダメージを負っている様には見えない。

「今のは危なかった、選ぶべき未来が殆ど見えなかった。」

焦げた金髪を掻き上げ、ラセツはアグルへと視線を向ける。
アグルへと向けられた瞳は元の緑から虹色に変わっており、淡く輝いていた。

「不思議だろう?この、瞳は。」

その声はアグルの上空から。
落下と共に振り下ろした拳は僅かに目測を誤り、アグルの足元を砕いた。

砕け散り、舞い上がる破片に紛れるかの様に、ラセツはゆらりと立ち上がる。
その様子はひどくゆっくりにも見えた。

「黄龍が言っていた、私の眼はこの世の理から外れていると。

全てを見据える瞳は、ありとあらゆる可能性を、無限に分岐する未来を見据える。

私はその中から、一番良い道を進み続けてきた。」

そして、ゆっくりとした動きから反転。
破片が地に落ちるよりも速く、ラセツはアグルへと掌打を繰り出した。

「私には視える、貴方がどう動くのか。

私はどの未来を選べば良いのか。

貴方には見えるか?

私に打ち勝つ未来が!」

539DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/11(土) 20:16:04
【十字界】

ジーナから返ってきたのは了承の言葉だった。それに対しラディックはにまりと笑い頷いた。

「分かりました〜。お安いご用ですよぉ」

そうして居住いを正すと、まるで演目の終わりに見せる様な、恭しくそれでいて優雅な動作で礼を決める。

「ではでは〜、今までお世話になりました〜。
またお逢いできる日までご機嫌よう〜」

言い終わるや、彼の姿はその場から忽然と消え去った。
それを見届けたDDも「アタシ達もそろそろ行きましょう」とその場を後にする。

そして…、訪れたのは和風な概観をした立派な門扉の前。
マゼンダの屋敷だ。

使いの少年に、マゼンダに会わせてくれと伝える。
取り合えず客間に案内して貰い、暫し待つように言われた。

「それにしても…、ここは相変わらずね」

案内役の少年が部屋を出ていった後、DDは誰に言うでもなく口を開いた。

右を見ても、左を見ても、年少の男の子ばかり。
マゼンダの趣味が窺える。
可愛いものを愛でたい気持ちは解るが、流石に子どもに手を出そうとはDDだって考えない。



【ヤツキ>了解しました^^
お遣いの内容は本当に何でもいいんですか?
あ、それから戦闘レス遅くてすみません;
自分、戦闘描写苦手なので戦闘パートに突入すると途端に遅くなります(苦笑】

540フィア ◆.q9WieYUok:2016/06/14(火) 21:02:36
【十字界/マゼンダ邸】

一礼と共に消えるラディックと、彼が置いていった紅茶を味わうジーナ。
二人の間に交わされたやり取りも気になるが……

フィアはDDの言葉に頷き、彼と共にマゼンダ邸へと向かった。
そして、和風の門をくぐり抜けて客間へと歩を進め、屋敷の主を待つ。

「まぁ、人それぞれ好みがあるって事ね。」

DDの呟きに声を返し、フィアは続ける。

「DD、マゼンダとの話は任せて良いかしら?
私はちょっと馬が合わないと言うか、苦手なのよ……彼女が」

【何でも大丈夫ッス!それこそ希少
な紅茶を送ってくれとか些細なのでも良いですし、上手い具合に伏線としてどこか重要な局面で使ってくれても良いですしおすし!

了解すー、と俺も会話パート苦手ですのでww】

541リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 14:14:52
【冥界】

あの時代で何が最善だったかなんて知らない。興味もない。
セナと言う男が本当はどんな人間で、四神が彼に何をして、どんな罪悪感を抱いているかなんてどうでもいい。
業?犠牲?元はと言えばセナが属していた組織が起こした惨劇ではないか。

・・・・・違う。こんなことが言いたいのではない。
サンディがあの時の四神の一人だったとしても、自分の胸のうちを明かすつもりなどなかった。
自分はどうして・・・・・

「・・・・・申し訳ございません。少し、席を外しますね?」

二人のやりとりを見ていた女性が不意に声をかけてくる。
そして、彼女が動き出して初めて気づいた。椅子に座っているものと思っていたが、彼女が座していたものは車椅子だった。アンヘルが手伝おうとしたが、大丈夫だと伝えて場を離れていく。

「始末するとかしないとか、凄く物騒。と言うか五体満足で生まれたクセして生まれたくなかったとか贅沢じゃない?」

リトが去りゆく女性を目で追っていることに気付き、すかさずアネスが口を挟む。

「あの人・・・・・」

「あぁ、母さまが行ったのは別にあんたの言葉が癪に触ったとか、そんなんじゃないと思うから安心していいよ。」

「・・・・・姉さま」

「私空気重いの嫌いなんだもん。あー、はい分かった分かったったら!」

アネスは放っておいたら憎まれ口を叩きかねない。アンヘルは姉を促し席を立たせる。

「私達がいたら話し辛いでしょ?事情は知らないけど、早いとこ自分たちで解決しなね。」

そう言ってアネスはアンヘルに連れられる形で席を離れていった。

「・・・・・」

場の空気を悪くした自覚はある。
悪くしたくてしているわけではない。のだが、気づいたらいつも憎まれ口をたたいている。

リトはサンディへ目を向ける。ほら、やはり沈んでいる。
こんな時はどうするんだっけ・・・・・

「・・・・・悪かったよ」

そう、リトはぶっきらぼうながらも謝罪の意を唱えた。
短い間であるがリマと接していていつの間にか身につけていたことがある。謝罪だ。
自分に非が認め、謝る。当たり前の事だが、リトには今まで出来なかった。
アブセルはいくらリトが冷たくしても嬉しそうにしているし、ナディアは腹を立てことすれいつの間にかケロッとしている。ヨノも笑顔で受け入れてくれる。今まで誰もリトに謝罪の機会を与えてこなかったのだ。だからリトは相手も傷つくのだと、そんな当たり前の事をイマイチ理解出来ていなかった。
しかしリマはどうだろう。自分の発言に一喜一憂する彼女はとても新鮮だった。感情が顔に出やすいため傷ついている時もすぐ分かる。

「あんたに言ったって仕方ないことだ。今の話は忘れて。」

542マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 21:05:24
【マゼンダ邸】

「奇遇だね、私も同じだよ。」

時少なくして召使の少年に連れられたマゼンダが部屋に入って来た。彼女にしては早いお出ましだ。

「だけど私はあんたのこと苦手どころか、嫌いだね。」

フィアの言葉が耳に届いていたらしい。普段から来客を好まない彼女は、更に不機嫌そうな顔をしている。

「私は女が嫌いだ。特にノワールと、あの娘に肩入れするお硬い性格のあんたがね。」

マゼンダの趣味は相変わらずだが、最近"お遊び"の方は大人しくなったようだとヴェントが言っていた。あの時の失敗で懲りたのか、あの少年以上に気に入った容姿の者に会えないからか、理由は不明ながらも良い傾向ではある。

マゼンダは客人の向かいのソファに腰をおろすと、面倒くさそうに口を開いた。

「何の用だい。くだらない用件じゃないだろうね?話があるならさっさと語って帰んな。」

543アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:43:45
【龍穴遺跡】

彼女の放つプレッシャーに、肌が粟立つ。
体感時間が妙にゆっくり感じるのは相手に圧倒されているせい?

掌打がくると途端に現実に引き戻されたような気がした。アグルはハッとし、咄嗟に腕を上げてガードするも、それは腕をすり抜けてそのまま鳩尾をついた。

息が止まる。気がつけば後方の壁まで吹き飛ばされていた。

これが彼女の言う、力だろうか…。
先程の、手がガードの下をすり抜けて見えたのは、恐らく目の錯覚。彼女は攻撃が通る最も適した軌道とタイミングで掌打を放ったのだ。

喉奥から何かが込み上げかけたが、アグルはそれをぐっと堪えた。槍を支えにゆっくりと身体を起こす。

「未来が見える、か…。そいつは凄ぇな。
スゲー便利で…、スゲー退屈な代物だ…」

くく、と口から乾いた笑いが溢れる。

人生ってのは、何が起こるか分からないから面白いんだろう。初めから答えが解りきってるゲームなんて俺はまっぴらだね。

…きっと兄貴だったらこう言っただろう。

「あんたに打ち勝つ未来…?そんなん知らねーよ。…だけど、これだけは言える」

ふとアグルは口を閉じ、静かに呼吸を整える。
じゃりっと靴と地面が擦れたような音が聞こえたかと思えば、次の瞬間、彼の姿は忽然とその場から消えていた。

「俺はここで死ぬつもりはない」

そして現れたのはラセツの目の前。ぐっと彼女に肉薄し、それに合わせて槍を突き出す。

今のアグルは脊髄に直接信号を送り、反射だけで筋肉を動かしていた。
それは情報伝達に脳を介さない分、先程までよりもずっと速い行動を可能にした。

しかし無論、初撃は避けられてしまうだろう。
彼女の回避方向を予測して、更にそこに雷撃を放つ。
アグルはラセツの動きの何手先も先読みして具現化させた六つの槍と、そして雷撃を自在に操り、電光石化の如く怒濤の連続攻撃を繰り出した。


【ヤツキ>分かりました〜、簡単なのじゃ味気ないので、もし出来たらストーリーに関わる何かを考えてみます^^】

544サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:49:49
【冥界】

「わかった。忘れる」

リトからの謝罪の言葉を受けるや、サンディは俯けていた顔を上げ、パッと表情を明るくさせた。

「あたしの方こそごめんなさい。よく知りもしないのに偉そうなこと言って」

席を立たせた三人には悪いことをしてしまった。
サンディは気持ちを切り替える意味も含め、カップに手を伸ばし紅茶を一口。…おいしい。
霊体になっても味が分かるなんて不思議だ。

「何かびっくりだよね。死んだ後もこうやってお茶呑んだり、お喋りしたりできるなんてさ。
あ、でも正確にはまだ死んでないんだっけ?幽体離脱って言うか?これが噂の臨死体験…!?みたいな!
リト君もそうなんでしょ?」

こんな状況にも関わらずサンディの口調は極めて明るい。
それどころか現状を楽しんでさえいるように見える。そしてお喋りな彼女の口は、油を挿した後の車輪並みによく回る。

「あたしもね、元いた世界に帰らなきゃって思うんだけど、正直言うと、このまま死んでもいいかなーって気持ちもあるんだ」

言いながら彼女はカップの縁を指でなぞる。紅茶の表面が緩やかに乱れ、そこに映り込む少女の影も合わせて揺れた。

「あの世にはお父さんとお母さんがいるから。二人に逢えると思うと死ぬのは全然怖くないの」

ふふふ、と笑う仕草は冗談ではなく、本当に嬉しそうだ。
そうしているかと思えば、今度は「でも」と言って、不意に視線をリトに預けた。

「リト君にはあたしと違って、心配してくれてる人も帰りを待ってくれてる人もいるの知ってるから。
だからさっきはつい"早く帰れ"なんて言っちゃった。ごめんね」

ナディアは態度には出さないが、ずっとリトのことを気にかけていた様だ。
リトの側に引っ付いていた男の子なんて、まるで世界が滅亡したかのような顔をして落ち込んでいた。
きっとその二人の他にも、彼にはまだ彼の帰りを待ち望んでいる人がいるはずだ。


【リマ>感動的な文章で締めていただきありがとうございました。
ショタリト可愛いよ!(*≧з≦)ショタリト!

しかし過去話やって思ったけど
アブセルの本命、ナディアでもおかしくなかったな、とか思いました。屋敷に来てからは初めて、自分の存在を言葉にして肯定してくれた人ですから。

まぁ今はリマにホの字な感じなんで、もう遅いんだけどww】

545ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:51:17
【東南地域/龍穴遺跡】

人生とは、選択する事の連続だ。
無限に枝分かれする選択肢から何をどの様に選ぶのか。

それが果たして正解なのか、不正解なのか。
目には見えない選択肢、未来とは未だ来ないモノ。

もしそれが、目で見えたのなら。
多くの人が、自分にとって最善の未来を選ぼうとするのだろう。

しかし、数多ある選択肢から一つを、大海から一粒の砂を探す事は難しく。
選ぶ以前に、無限なる選択肢が持つ情報量を脳が識別処理出来いのだ。

ただの人間が、ラセツと同じ瞳を持とうとも、彼女と同じ様に振る舞う事は出来ない。

「つまらないか。
確かにそうかも知れない。」

超高速の刺突から続く怒濤の連続攻撃は、その一撃一撃が凄まじい威力を秘めていた。
六本の槍と迸る雷光は、先程の雷撃を遥かに上回っており、アグルの気迫が感じられる。

それら全てを、ラセツは捌いていく。
受け流し、回避し、時には防御し、身に纏っていた重厚な鎧が原型の殆どを失った頃。

「だけど、泥沼に足を踏み入れる事が最善の選択肢だったりするんだ。」

先代のトールから受け継がれた槍の一撃をラセツは左腕を犠牲にして防ぎ、言った。

「戦う相手が強ければ強い程、最善の一手は見えにくくなる。
久し振りだよ、こんな怪我をしたのは。」

槍の穂先に貫かれた左腕から流れる朱を一舐めし、ラセツは笑った。
気付けば足元は濡れており、辺りからは滾々と水が溢れ出している。

どうやら激しい攻撃の余波で遺跡最深部の壁や床に罅が入り、遺跡側を流れる河水と地下水が流れ込んでいる様だ。
刻々と水量は増し、水嵩もそれに比例している。

546 ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:52:51
唇を血の朱で染め、ラセツは辺りを見渡す。

「水没するまで余り時間は無さそうだ。
溺死したくなければ戻った方が良い。」

そして、再び虹瞳をアグルへ向け、槍に貫かれた左腕を一閃。
槍ごとアグルを弾き、浮かべる笑みを更に深くする。

「と言っても、戻らないのはわかってる……だから。
貴方の強さに敬意を表して、全力でいくわ。」

それと同時に、大気を歪める程の闘気が彼女を包み込む。
煌々と、そして猛々しく揺れる闘気を纏い、ラセツは再び掌打を、直撃すれば人間など木っ端微塵になる威力を持った一撃を繰り出した。

しかしその一撃がアグルを爆砕する事は叶わず。
掌打を受けた圧縮された空気の塊が弾け、突風が二人の……三人の周囲に吹き荒れた。

「初手でKOされてスミマセン……と、冗談を言う場合では無さそうですね。
アグル、僕が援護します。
全力でいきましょう!」

ラセツとアグルの間に割って入ったレックスは、吹き荒れる突風に髪を靡かせ、力強く、そう言った。

547ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 19:28:28
【ポセイドン邸】

「そなたが何故ここに?」

目の前に参じた少年に驚くも、彼からそれ以上に驚くべき事実を伝えられたノワールは目を見開く。

「あの子が・・・・・」

生きていた。愛しい我が子。
生まれて間もなく引き離された、抱くことも乳をやることも叶わなかったあの子が。
しかし、伝え聞いた事態はとても喜ばしいものではなく。

閻魔に施された術により、ノワールはリトの側を一定以上に離れることが出来ない。リトが目覚めない今、ノワールはこの場を離れられないのだ。そして、たとえ離れられたとしても力を封じられ唯の小娘に過ぎない自分一人で救い出せるとも思えなかった。

ノワールは歯噛みし、目の前の少年を見据えた。

「そなたを行かせ、運良く探し出せたとする。じゃが、その後はどうする?そなただけで救い出せるのか?申してみよ。」

548リト ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:10:46
【冥界】

少女は実に単純な作りをしているらしい。先程まで落ち込んでいたのが嘘のように、たった一言でコロッと表情を変えた。
自分で言った立場でなんだが、忘れろと言われて簡単に忘れられるものなのだろうか。

「嬉しそうだな」

楽しそうにつらつらと言葉を並べる彼女を、リトは面倒くさそうに頬杖を付きながら眺めた。
この感覚は懐かしい。お喋りな女・・・・・身近にもいた気がする。

(あぁ・・・・・)

リトの脳裏に二人の少女が浮かんだ。小さな体で態度のデカイ黒髪の少女と、そんな子供と同等に渡り合えてしまう知能レベルを持った銀色の髪の少女。二人は物珍しそうに世界を見て、その日あったことを嬉しそうに話してきた。二人同時に話すもんだから何を言ってるのか分からなくて、こっちは疲弊してるのにそんな状態に何故か嫉妬したアブセルが二人に張り合って割り込んでくる。騒がしい旅だった。

(けど・・・・・)

退屈はしなかった。
ノワールもユニも今はどうしてるだろう。アブセルに連れ戻された際、二人は邸についてきていないようだった。
リマと一緒だろうか?なら問題ないだろうが・・・・・二人は放っておくと何をするかわからないから。

「あんた、両親のこと好き?」

嬉しそうに両親の話をするサンディにリトはふと疑問を投げる。
彼女の口ぶりからは両親に愛されていたことが分かる。

「俺は好きかどうかも分からない。生きているのに、どっちも存在していないようなものだったから。」

母に拒絶され、父に冷遇されていた。両親と言う認識はあるものの、二人に対して何の感情もない。そう言えば、憎しみも恨みもないのは不思議だ。

「あんた、別に天涯孤独ってわけじゃないんだろ?人から嫌われるような性格でもないみたいだし。あんたこそ、誰かしら帰りを待ってるんじゃないの?変なこと言ってないでさっさと帰れば。」

549リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:21:42
イスラ>>
ショタリトは自分の好みを最大限に詰め込みました(笑)
一人称が自分の名前とか、今のリトが知ったら恥ずかしさのあまり死んでしまうかも(笑)

たしかに!まぁナディアは女として魅力ないから惚れるとか難しいでしょうね(笑)】

550ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/07/01(金) 23:49:10
【こっちに来て二周年か、おめっとさんです!】

551イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:07:26
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

目を眩ませんばかりの光に、イスラは思わず腕を上げ顔を庇う。

(これは…っ!?)

直後、ヴィカルトの剣から大量の光が噴出した。
莫大な熱量と殺傷力を秘めたそれが、一直線に襲いかかってくる。

イスラは咄嗟にアマテラスの神器の一つ、宝鏡を生成する。
鏡面に触れた光線は鏡を蒸発させると共に別の方向へ屈折し、着弾した遺跡の壁と地面を粉砕し、溶解させた。

だが、それを持ってしても全ての光を逸らすことは叶わなかった。屈折しきれなかったものがイスラの片翼を穿つ。
痛みはないが再び飛べる様になるには少し時間がかかりそうだ。
そして、いくら炎で結晶を溶かそうと、こう反射させられては堪らない。

イスラは神刀、月読に手を伸ばす。

「…剣技、桜花爛漫」

抜刀するや、桜の花弁にも似た結晶の粒が一面に舞い上がった。まるで吹雪の中に迷いこんだかの様に花弁が視界を埋め尽くす。
そして…。

「メイヤ、大丈夫か?」

その隙に、イスラはメイヤを救出した。

もしかすると、今がヴィカルトに不意を与えられる絶好の機会だったのかもしれない。しかし彼の性格上、仲間を後回しには出来なかったようだ。

552アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:10:09
【ポセイドン邸】

「正直なところ…必ず救い出す、と断言することは出来ない。
なにせ相手はそうとうヤバい奴等らしいから」

黄竜という連中達の戦力は未知数だが、少なくとも大陸一つを消し飛ばす程の力を持っていることは間違いない。
ルドラは言葉を続ける。

「でも出来得る限りの手は尽くすつもりだ。それこそ身命を賭す覚悟だってある。
そもそも元を辿ればこんなことになった原因の一部は僕にある。
こんなことで罪滅ぼしが出来るとは思わないが、過去、君に冒した罪の償いをさせて欲しい」

恐らくそれは本心からの言葉なのであろう。
そう語る彼の眼は真っ直ぐとしたもので、嘘偽りの匂いは感じられない。

ルドラはノワールの返事を待ったが、しかしそれよりも前に、別の何者かの声が場に割って入ってきた。

「私も参りましょう」

傍らの茂みがガサガサと揺れ、草かげから男が姿を現した。服に着いた葉っぱを払いながら、彼…ジュノスは微笑を浮かべる。

「話は聞かせて頂きました。
微力ながら、私もお力添え致します」

それを見たアブセルは、思わず半歩引き驚きの声を上げる。

「おっさん居たのかよ…。つかどっから出てきてんだ!もしかしてそこでずっと盗み聞きしてたのか!?」

「もちろん!そこの吸血鬼とセナ様を二人きりにさせるなど不安でしかありませんからね。
彼女が余計なことを口走らないように見張っておりました」

「…………。(完全に変質者じゃねえか…)」

それはさておき…と、ジュノスは視線を動かす。
ナディアの元に戻るのであろう、並んで歩くセナとリマはこちらの存在には気づいていないようだ。二人の後ろ姿を何か眩しいものでも見るかの眺め、ジュノスはノワールに言った。

「安心してください。保護したのち、子供をどうこうしようなど考えていませんから。
子の捜索を引き受けていた手前、そろそろそれらしい働きを見せておかなければと思っただけです。
それに…」

それに、今では一応自分も一児の親だ。
こう言ってはなんだが、ノワールの気持ちも分からなくもない。

しかし唯一の気がかりは、セナとリマ、そしてノワールを残して出かけることだが…。…そこはまあ、何かしらの手を打って置くことにしよう。

553サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:12:48
【冥界】

「うん!大好きだよ」

両親のことを聞かれれば、サンディは大きく頷いた。

「あたし一人っ子でね、家もお客さんなんて滅多に訪ねて来ないような山の中にあったから、小さい頃は両親以外の人と接する機会ってあまりなかったんだよね」

今思えば、あれはわざと人目を避けて暮らしていたように思う。両親は知っていたのだ。いつか自分達の身に危険が及ぶことを。

「それでもあたしはその生活を嫌だと思ったことなんてなかった。
お父さんはあたしに剣を教えてくれたし、お母さんは落ち着きのないあたしが怪我をしないようにずっと側で見守っていていてくれた。
夜祭りの日は皆で里に降りて、花火みたり出店で金魚すくいしたりするの。星がよく見える時期はもっと山の上の方に登って、三人で並んで空を見上げながら色んなお話をして…、他にもいっぱい、いっぱい…」

懐かしい。
二人とも子どもの立場から見ても親バカだった。優しくて温かくて…。出来ることならあの頃に戻りたい。

「もしあたしが死んだとして…、多分、悲しんでくれる人はいるとは思う…。
でも、どうせみんな直ぐに忘れちゃうよ」

今更ながら、自分には特別に親しくしてきた人などいなかったことに気づく。
両親が死んでからは親戚だという家庭に引き取られたが、そこはあまり居心地がいいと言える場所ではなかった。
暫く一緒に旅をしてきたナディア達にしたって、出会って数ヵ月と短い付き合いだ。

一時的に悲しんではくれても、きっと直ぐに各々の生活に追われ、自分のことなど思い返しもしなくなるだろう。

「皆が必要としてるのはアマテラスの力であって、きっとあたし個人じゃないんだよね。それに…」

言いかけてサンディは口を閉じた。
目の前の、見えない何かを振り払うかの様に、手をブンブンと振る。

「…って、やめやめ!暗くなっちゃうね。
ねぇ、リト君のことも聞かせてよ。さっきからあたしばっか喋ってる」

554サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:14:46
遅くなりすみませんでした;
二周年おめでとうございます!

555メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:46:03
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

発射点である剣を蒸発させながらも放たれるその光条は、天照の宝鏡をもってしても防ぎ切る事は叶わず。
イスラの片翼を吹き飛ばし、遺跡の壁面に大穴を開けた様子から見るに、直撃すれば影すら残らなかっただろう。

イスラの技、煌めく結晶の桜吹雪に紛れ救出されたメイヤは、彼の言葉に何とか頷いた。
風魔装束のおかげで即死と致命傷は免れたものの、裂傷は多い。

鎧に宿る治癒能力で多少は塞がってきているものの……

「死にはしなかった……けど」

直ぐには動けない、と続ける事は出来ない。
何しろ、ヴィカルトはまだ攻めに転じていないのだ。

先程までの戦いは全て、此方側から仕掛けたもの。
二人の連携を、そして白焔を凌いでの反撃だけでこれ程とは……

メイヤは無理矢理身体を動かし、剣を握る。
僅かに震える切っ先をヴィカルトへ。

(足手まといだな、これじゃあ……)

メイヤの戦闘力は、闇の力を失ってから数段下がっていた。
闇による攻撃力と再生力を武器にした、防御を省みない極端な攻め方はもう出来ない。

思えば今の一瞬も、イスラに取ってヴィカルトへ攻撃を仕掛ける最大のチャンスだった筈だ。
剣を向けながら、メイヤは唇を噛む。

闇の力があれば、いや、自分がもっと強ければ。
オンクーとの戦いは、相討ちであったが実質的には自分の負けであった。

(もっと力があれば、サンディを守れたかもしれないのに……もっと、もっと!)

今まで、力を渇望する事などなかった。
ましてやそれが誰かの為、誰かを想ってなどなかった。

だからこそ、今この胸に渦巻く感情が重く、辛い。
それは心身共に蝕んでいく毒の様にも感じられた。

556メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:48:22
「……俺が囮になる。」

唇を噛み、剣を掲げるメイヤは声を絞り出す。
隣のイスラからは角度的に見えないだろうが、その表情は硬く、悲壮感が浮かんでいた。

「決定打が打てるのはイスラだ、だから……後は頼む!」

その表情を変えないまま、メイヤはヴィカルトへと駆け出していく。
それは地を這う蛇の如く、ヴィカルトを刃の射程圏に捉え、メイヤは下方からの斬り上げを放つ。

更に、斬り上げを起点にメイヤは連続して斬撃を繰り出していく。
しかしながらその全てをヴィカルトは受け止め、流し、反撃の一閃がメイヤの胸元を大きく切り裂いた。

だが、メイヤは止まらない。
水晶の刃を振り切ったヴィカルトへ長方形の箱……折り畳まれた巨大手裏剣を押し付け、展開。

「う、ぉぉぉおおおお!」

四方に広がる刃がヴィカルトの首筋、腹部、両肩を切り裂く。
更に、押し付けた手裏剣を捻り、メイヤは傷口を抉っていく。

そして、ヴィカルトの身体を抉る手裏剣を横薙し、投げ捨てたと同時に真白の剣を前方へ。
予想外の反撃、攻撃にヴィカルトは驚きの色を目に宿すが、迫る真白の剣に笑みを浮かべた。

「死ぬ気か、中々やる!」

同時に、抉られた傷口から水晶が噴出。
傷口を炭素繊維で塞ぎながら、噴出する煌めきが文字通り、前方のメイヤを削っていく。

そして、噴出する死の輝きが剣の型を成し、メイヤの突き出した真白の剣へと衝突。
一瞬の拮抗の後、水晶の剣がメイヤの左胸を大きく穿つ。

しかし、メイヤ持つ真白の剣もヴィカルトの左肩を貫き、更に。
取り出した二本目の長方形の箱を展開、瞬時に広がる手裏剣で、自分とヴィカルトの足先を突き刺し、地面に縫い付けた。

「今だ、イスラ!!」

557その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:30:52
【冥界】

「ねぇ、いいの?」

先を歩く弟にアネスは心配そうに呼びかける。

「・・・何が?」

「あの二人、残してきて良かったの?」

どうやらアネスはリトとサンディを心配しているらしい。無理もない、お互い初対面に等しいにも関わらず、既に揉め事を生じさせてしまってるのだ。

「大丈夫じゃない?」

「アンにしては珍しく適当じゃない」

「適当じゃないよ、確信もある。」

リトは事を荒立てたいわけではない。
四神を責めたが、本当は彼らに非がないことも分かっているだろう。
おそらく、闇の王子が真の悪でないことも。

「彼はちゃんと分別つくよ。ただ、今まで傷付きすぎて、自分がこれ以上傷つかない様に先に攻撃する癖が付いちゃってるだけ。」

相手が敵でないと判断すれば自ずと警戒を解くだろう。

「でも彼は沢山の人に愛されてる。そのことに早く気づけるといいね。」

リトが殻に閉じこもっている原因は両親に存在を否定された事にあるだろう。両親からの愛を求めるあまり、周りから向けられた愛情に気づけていない。

「アンってばまた悟りを開いたお爺ちゃんみたいなことを・・・」

どうしてこの子はいつも年齢と言動がそぐわないのだろう。
アネスは呆れ顔で弟を見つめるも、とうの本人は優しい笑顔を返すだけだ。

「愛し方を間違えなければ良かったんだけどね、あの人も。」

558その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:31:38
-----

「失礼します。」

扉をノックし、中の様子を伺う。彼女の声が耳に届くと、それまで書類と対峙していた視線がすぐに彼女のもとへ向いた。

「ミシェルか。」

彼女の姿を見つけるや、部屋の主、ルイは傍に控えていた従者に指示し車椅子が入室しやすいように扉を開けてくれる。

「どうだ?」

「とても頑なで・・・」

「だろうな。」

ルイの問いにミシェルが苦笑いで返すと、ルイも予想していたとばかりに溜息を吐く。
"そちら"も、"こちら"も、先は長そうだ。

「例の方は・・・」

ミシェルも同じことを気にかけている様子。ルイは首を振って答えて見せた。

「無理だ。本人にその気がない。」

まったく困ったものである。死者ない迷い人が二人いるだけでも面倒なのに、死者であるにも関わらず"逝き先"が定まらない者が来るとは誰が想像出来ただろうか。

人が死した後、天の国へ逝くか地の国へ逝くかは生前の行いによる査定が多くを占めるが、悪人か、善人か、も判断基準になる。
大抵、人の本質は生前の行いと比例しているのだが・・・

「行いは非道極まりなく、地へ送るに値する罪状だが・・・」

今こうしてルイを悩ませている者の魂はとても清廉で、本来ならば天に逝く権利をもつことの出来るものであった。

「行いと本質がまったく合致しない。本人は地を望んでいるが、安易に即決するには問題のある清さだ」

せめて、この歪みを作った原因と対峙すれば何か掴めるかもしれない、しかしそれさえも本人が拒んでいる。
もっとも、ミシェルの様子から察するにその"原因"の方にも不安が残る。

「彼は今どちらへ?」

そう言えば当事者の姿が見当たらない。
ミシェルがあたりを見渡すと、傍らにいた従者が口を開いた。

「判決が出来ない以上この部屋に留まっていても仕方がないからな、ルイが追い出した。」

"追い出した"とはあまりに乱暴な言い分だが、実際そうした言葉がふさわしい行動に出たのだろう。
ルイのことだ。相手に向かって邪魔などと発言したに違いない。目障り、とまでは言っていないと良いが・・・

「自由にしていいと言っただけだ。」

失礼を働いたのではないかと危惧するミシェルの心を察したのだろう。
ルイはすかさず口を挟めば、面倒くさそうに息を吐いた。

「いずれにしろ、いつかは会う必要がある。互いが互いの鍵を握っているからな。」

559リト ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:32:14
【冥界】

「話すったって・・・」

一体何を?
リトの戸惑いをよそに、サンディの話を聞く体制は万全で、今か今かと待っている。

「見合いかよ・・・」

何故初対面の相手につらつらと身の上話をしなければならないのか。しかし、こちらが望んだことでは無いとは言えサンディの話を聞いてしまった。ここは自分も打ち明けるのが筋なのだろう。納得はいかないが。

「・・・あんたと違って俺は両親に対して楽しい思い出なんて何もない。姉達はどうか知らないけど、少なくとも俺はあの二人のもとで育ってはないから。姉達が親代わり。・・・そんくらい。他に聞きたいことあんの?大した記憶なんてないからアンタの期待するような楽しい話なんて出来ないんだけど。」

560DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:22:23
【マゼンダ邸】

「ちょっとちょっとぉ〜、久しぶりの再会なんだからギスギスするのは無しでいきましょうよ〜」

入室するや、マゼンダは不機嫌な態度を隠そうともせず毒を吐く。
そんなピリピリした空気を和ませようと、DDは努めて明るい口調で発言するも、頭の中はどうやって話しを切り出したものかと思案していた。

普段ならば「元気だった?」とか世間話から始めるところなのだが…、マゼンダが乗り気でないのは明らかなので、回りくどいやり取りはない方が良いだろう。

「じゃあ単刀直入に…」と、足を組み、真剣な面持ちでマゼンダを見つめた。

「同胞の気配が一つ消えたことはアナタも気がついているとは思うけど…。
メルちゃんがオリジンにやられたわ」

やはり口に出してしまえば、その事実に再び対面する形となり気が重くなる。しかし目を背けるのは、それこそメルツェルに申し訳が立たない。
DDは静かな声音で先を続けた。

「ずっと死んだものと思っていたオリジンが、なぜ今になって姿を見せたのかは分からない…。
ただ彼は嘗て分かれた12の力を再び一つにしようと考えている。
要はアタシ達長老を喰らい、己の中に吸収しようとしているってわけ。
直にアナタも狙われるわ」

オリジンの暴虐を許せば、十字界は崩壊する。
その前にフィアやシャムは彼らの軍勢を討とうとしていることをマゼンダに告げる。
そして、自分はまだその決心がつかないと言うことも。

「今日ここに来たのは、それについてアナタの意見を聞きたかったから。
そして出来ればこの事態を収束するため、アナタの知恵と力を貸して欲しいの」

561アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:23:36
【龍穴遺跡】

ラセツの一撃を防ぎ、吹き荒れる風と共に一人の青年が目の前に現れる。
アグルは一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、直ぐに何が起きたかを察し、目を細めた。

「…おせーよ」

それは咎めているような口調でもなければ、呆れ半分に言ったものでもなかった。
レックスが復帰してくれたのは心強いことだ。

しかし…、と次にはその視線は足元へ。
部屋に雪崩れ込む水は、今ではもう膝下ほどの高さまで上昇しており、そう悠長にしている時間もないことが窺える。

「レックス…、今から3秒数えたら目を瞑れ」

そう小さな声で囁くや、アグルは先程までと同様、己の筋肉組織を活性化させ、前方へ飛び出した。

「じゃあ援護は任せた!さっさとケリつけんぞ‼」

水飛沫を上げ僅か一跳びでラセツとの距離を詰めれば、その勢いのままに相手の顔面目掛けて右ストレートを放つ。
しかしそれは直接的な攻撃を狙って仕かけた訳ではない。
アグルの拳はラセツに触れる寸前のところで止まったかと思うと、次の瞬間、そこから痛いほどの目映い光が溢れだした。

目眩ましだ。
まともに見れば人間の網膜など一瞬にして焼ききれてしまうだろう。

そしてアグルは間髪入れずにラセツの左斜め後方へ跳ぶ、振り向き様に大きく槍を回し斬撃を放った。

562レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:36:36
【東南地域/龍穴遺跡】

瞼を固く閉じても分かる、強烈な閃光。
アグルの言葉通り、レックスはきっかり三秒間目を瞑る。

しかし、動き出すのは三秒後では無い。
瞼越しに光を感じながらもレックスは大きく跳躍。

空中で大きく三叉鑓を振りかざし、ラセツへ狙いを定める。
矛先に空気を集め、圧縮に次ぐ圧縮を。

高気圧下で圧縮された大気は熱を持ち、一気にその暈を増そうとするも、レックスはそれを許さない。
超高気圧下の元で高熱を放つ大気は臨界点を超え、眩い光を放った。

高電離気体、それは即ちプラズマ。
風を司る四神の一角、フレイヤの力と魂を宿るレックスがプラズマを作り出すとは誰も予想出来なかっただろう。

しかし、彼の持つ矛先には、紛う事無い光の塊が見える。
圧倒的な光量と熱量を持つそれを、レックスは落下と同時にラセツへと叩き付ける。

アグルによるフェイントからの閃光による目眩ましと、それに続く横薙を手甲で防いだラセツは、レックスの動きに反応出来ず、プラズマが着弾。
眩い光と轟音、そして衝撃波が周囲を物理的に揺らす。

更に、衝撃波の後に再び爆発。
超高熱のプラズマと、流れ込む冷水が触れ合う事によって水蒸気爆発が起きたのだ。

連続する爆発が止み、白靄越しにラセツの姿を確認したレックスは左手を伸ばす。
既に水嵩は腰程にまで増えており、いよいよ時間が無い。

「……アグル、後は頼みましたよ。」

白靄が晴れるより速く、レックスは伸ばした左手で前方はラセツの周囲の気圧を操作し、小さなプラズマを次々と生み出し、小規模ながらも複数回水蒸気爆発を起こし続けた。

水蒸気爆発はその威力もさる事ながら、瞬間的に多量の水分を気化させる為、周囲の気温を急激に下げていく。

初撃の大きな水蒸気爆発から続く小さな水蒸気爆発は、爆発のみならず周囲の気温を急激に、それこそ瞬間的に摂取零度以下に下げ続けた。
その結果は、ラセツを中心に生まれる巨大な氷塊だった。

「本来ならばこのまま押し切り、彼女を倒せる筈だったんですが……流石、単独で遺跡に遣わされただけありますね。」

水蒸気からの気化冷却を行い続けながら、レックスはアグルへ声を掛ける。
勿論、その視線は氷塊から離れない。

「試合は引き分け、勝負は負けと言った所でしょうか。」

そして、伸ばしたままの左手とは逆。
三叉鑓を握る筈の右腕は……無い。

563レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:37:42
「プラズマを叩き付けたと同時のカウンター、見えてなかったのが幸いか片腕が吹き飛んだだけで済みました……」

そう、レックスの一撃と同時に、ラセツもまた手刀を放っていたのだ。

「水嵩はもう胸元まで、時間はありません。
僕がこのまま抑えますので、君は脱出して下さい。」

吹き飛んだ右腕はもう見つからないだろう。
傷口から溢れる血も致死量に差し掛かり、遭遇時に受けた一撃で内臓も破裂している。

時間的にも、自分はもう助からない。
ならば、やるべき事は一つ。

「……アグル、もう一度言いますね。」

口腔内、鼻腔からも溢れる血塊を肩で拭い、レックスは薄く笑みを浮かべた。
その薄い笑みには、決意と、覚悟が見て取れる。

「“後”は、頼みましたよ?」

564イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:35:14
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

「メイヤ…ッ!」

メイヤの剣戟には鬼気迫るものがあった。
捨て身の特攻。そしてついに、彼はヴィカルトの動きを止めた。
暫し唖然としていたイスラも、メイヤの声を耳にすればハッと我に返り、弾かれるように前に飛び出した。

しかし…。

(二人の距離が近い…。このままではメイヤにも俺の攻撃が…)

あともう一歩のところで二人の射程距離内に入る。
退くか、攻めるか。一瞬にも充たない時の中、イスラの心は二択の間で揺れ動いた。

(いや…)

迷うな。彼が決死の覚悟で作ってくれた好機。無駄には出来ない。
イスラは最後の一歩、地を思い切り踏み込んだ。

直後、世界が無音で包まれた。
聴力や痛覚、時間の流れさえも、余計な感覚は全て後ろへ脱ぎ捨てて。
手の内で輝く神刀、火乃加具土と月読。二刃が交わり一つに成った刀でメイヤの背後から居合いを放つ。

「ハァアッ‼」

今まで一度として成功しなかった、障害物の向こう側に置かれた対象物"のみ"を斬る技。

「天叢雲剣、金翅鳥―…」

紅き剣閃はメイヤをすり抜け、その向こう、ヴィカルトの胸を貫いた。

565サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:36:31
【冥界】

「なるほど、お見合いかぁ。面白いこと言うね」

リトの言葉を耳ざとく拾ったサンディは、何が面白かったのか愉快気にケラケラと笑う。

しかし人の家庭環境には多種多様な形があるのだと、今更ながらに驚かされた。

両親から十二分な愛情を注がれて育ったサンディは、それが当たり前のことなんだとずっと思っていた。
親が子を愛すのは当然だし、また子が親を愛すのも当然だと思っていた。

その観念を抱くにあたった経緯は彼女が幸福であった証だが、それ故にサンディはリトの家庭環境が上手く想像できないでいた。

何故リトは両親と離れて暮らしていたのか。
それを訊ねることは簡単だが、同時に彼を不快な気持ちにさせてしまう可能性もある。
何か複雑な事情があるのかもしれないし、あまり詮索はしない方がいいのかもしれない。

だが、これだけは聞かずにはいられなかった。

「リト君…、ご両親と一緒に過ごしたいと思ったことはなかったの?」

サンディは小首を傾げ、リトに問いかけた。

566メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:37:51
【東南地域/龍穴遺跡】

イスラの抜き放つ渾身の一刀、紅き剣閃。
金翅鳥……ガルダの名を冠するその一閃は確かに、ヴィカルトの胸元を貫いた。

味方であるメイヤには傷一つ付けず、しかし敵であるヴィカルトだけを貫くその技は、正に奥義と呼ぶべきか。

「……見事、だ。」

予想外、そして予測外の一撃にヴィカルトは驚愕の表情を浮かべるも、それも一瞬。
胸元に開いた傷口から溢れる朱の滝に目を落とし、フッと笑った。

溢れ、噴き出す朱によって血に染まるメイヤと、その肩越に見えるイスラへ視線を投げる。
神経系を珪素系物質に置き換え、文字通り光速の反射神経を得ているヴィカルトですら反応出来なかった一撃は、強敵との戦いを望む彼にとって満足出来るモノだろう。

水晶剣を支えにしつつも膝を着くヴィカルトと自身の足先を縫い付ける手裏剣を抜き捨て、メイヤもまた、よろめく。
その姿を見上げ、ヴィカルトは剣の柄を握り締めた。

「私の敗北だ。
だが、与えられた役割だけは果たさせてもらう!」

567メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:38:44
その瞬間、地に突き立てられた水晶剣の切っ先から膨大な量の水晶の花……刃の如く鋭利な花弁と、鋭い棘を持った薔薇の群れが噴き出した。
それは瞬く間に広がり、遺跡全体を埋め尽くさんとばかりに花を咲かせ、蔦を伸ばしていく。

奇しくもそれは、崩壊しつつあった遺跡内部を支える役となったものの、最も重要である遺跡の起動装置周辺は誰一人近付けない程にまで薔薇が生い茂っている。

「くっ……これは流石にっ!!」

噴き出し、増殖し、咲き誇る刃の如き薔薇の花弁を、メイヤはよろめきながらも剣で防御し後退していく。
最深部を最も強固にし、周辺を埋め尽くす薔薇は言うなれば薔薇の結界か。

それを生み出すヴィカルトを攻める余力も、時間も無い。
見れば薔薇の結界が支えになってはいるものの、遺跡全体が揺れ、崩落の兆しを見せている。

「イスラ、脱出を!!」

迷う時間は無い。
メイヤは瀕死の身体に鞭を打ち、薄らぐ意識の中、イスラへ声を掛ける。

そしてーー……

「間一髪、ギリギリの所だったな。」

遺跡から数十km離れた地点にある空挺師団分隊の野営地で、髭面の男が安堵の息を吐いた。
彼は後詰め部隊として、イスラとメイヤと共に派遣された分隊長だ。

遺跡から脱出した二人を回収、保護したのも小一時間程前。
重傷であるメイヤを衛生兵に託し、部下に周辺の状況を探らせていたのだが……

「どうやら遺跡は崩落、周辺一帯を巻き込んで地下奥深くへ沈んだようだ。
……残念ながら、遺跡の起動も確認されたがな。」

報告を受け、分隊長は苦虫を潰した様な表情を浮かべた。

「まぁ、アンタら二人が何とか帰って来れただけでも良しとしよう。」

568アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/09(金) 04:29:44
【東南地域】

覚悟を決めたような、信念のこもったレックスの瞳を見て、アグルは察した。

「レックス…、お前…」

こんな時、どんな顔をすればいいのだろう。どんな言葉をかければいいのだろう。

分からなかった。
ただレックスの意志は強固としたもので、止めることすら憚られた。

そうこうしている内に水嵩はどんどん上がってくる。
時間がない。

アグルはほんの数瞬迷った末、レックスから視線を切った。
結局彼の言葉には返事を返さなかった。
舌打ちだけを残し、遺跡から脱出した。



【砂漠地帯】

「そうか…」

報告を受けたイスラは短く応え、重い息をついた。

「すまない、力が及ばなかった…」

遺跡は起動。加えメイヤにも深手を負わせてしまった。弱音を吐きたいところではあるが、悔やんでも結果は変わらない。

イスラは顔を上げ、分隊長の髭面に視線を向けた。

「メイヤの容態はどうだ?
それと…、アグルとレックスの方はどうなってる?」

569 ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:37:17
【砂漠地帯】

「いや、アンタらは良くやったさ。
ただ、相手が悪かっただけだ。」

イスラの視線を受け止め、分隊長は神妙な面持ちで続けた。

「通信用の無線機から聞こえた声から、相手は裏切り者のヴィカルトだとわかった。
師団でもアイツと互角に戦えるのは団長だけさ。
そんな相手と戦って、生きて帰って来れたのは僥倖……いや、アンタ達も相当な手練れってこった。」

そして、そう気を落とすなとイスラへ声を掛け、イヤホンから聞こえる報告に耳を澄ませーーー

570レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:38:20
ーーー

「……作戦は失敗、レックスは生死不明、メイヤは重傷で絶対安静、か。」

バルクウェイに駐屯する師団の母艦内、数ある会議室の一つでレオールは苦い声を絞り出した。

「すまない……俺の見通しが甘かったばかりに、君達の仲間を失ってしまう事になってしまった。」

同時進行していた二つの作戦は両方共に失敗。
先に報告を受けていた砂漠地帯での戦いからさほど時間を置かずに、東南地域の遺跡の稼働を確認したのも2日程前。

憔悴の色を浮かべながらもイスラとアグルの前に現れたレオールは、二人に頭を下げた。
しかし、酷だと思いながらもレオールは現状を二人に説明する。

「砂漠地帯、そして東南地域の遺跡稼働によりいよいよ世界の殆どが外郭に包まれてしまった。
各地では混乱による暴動も起きている。
幸いにもバルクウェイはまだ、陽の光が当たるがそれも時間の問題だろう……」

作戦の失敗、それは世界が闇に閉ざされる事を意味していた。
この2日間、レオールはスポンサーである中小国家と連絡を取り合いつつ、各地に散った偵察隊からの情報を受け、それらを纏めた上で次なる作戦を練っていた。

だが、それはアグルとイスラの前に顔を出せなかった言い訳には出来ない。
本来ならば、自分の立てた作戦により仲間を失った二人へ、真っ先に謝るべきだったのだが……

「今先程流した映像により、黄龍の居城が外郭上に現れた事が確認出来た。
表立って動く事から、向こう側は最終段階に入ったと予測出来る。
そこで、我々空挺師団は近隣諸国及びスポンサーである中小国家と共に軍を編成、外郭を突破し総力戦を仕掛ける事とした。」

それが何とか功を奏し、新たな作戦を決行出来る目処がついたのだった。

「だが、この作戦の頭数に君達二人は入っていない。
……これ以上、君達に戦いを強制する訳には、と思ってな。」

一応は作戦の詳細書類を配り、レオールは続ける。
その言葉が、それを続ける自分が如何に狡いかを知りながらも、それでも彼は続け、問い掛けた。

「だが、一つ伝えておきたい。
闇の巣から巨塔がそびえ立った。
外郭を突き破ったそれは、ほぼ唯一、地上から外郭上へ続く道となっている。

二人は、これからどうする?」

571リト ◆wxoyo3TVQU:2016/09/10(土) 13:16:29
【冥界】

「親という存在がどんなものか、そもそも俺は知らない。」

物心ついた頃から、いや、それよりずっと前から虐げられてきた。きっとこの少女には理解出来ないだろう。親に愛されることがどうゆうものか、自分に理解出来ないように。

「両親と離れて過ごすことが俺自身の身を守る為にも必要なことだった。一緒に過ごしたいなんて考えたことすらない。そう考えるのは、両親に対して少しでも情がある奴だけだ。」

リトの声はとても淡としていた。ただ事実のみを伝えるかのように。

「母は俺を生んで壊れてしまった。父は母を壊した俺を恨んだ。俺を敵視する二人と過ごしたいなんて思うはずもない。」

"寂しいの?"

そう口にした時、脳裏に少女の声が聞こえた。
思い返すと・・・以前同じように両親について聞かれた事がある。今と同じ答えを返した時、少女はリトの手を握り問いかけたのだ。

"どうしてそう思う?"

"そう言って自分を納得させてる、そんな感じ。仕方ないんだって。"

自分も同じだったから分かるのだと、少女は笑った。自分は神の子だと言われ両親と引き離された。両親は会いにこなかった。自分はどうしても会いたくて、社を抜け出して会いに行ったことがある。しかし久しぶりに会った両親は、自分を人間として見てくれなかった。村の人と同じように、神聖なものを見る目で、仰々しく接してきたのだと。

"境遇は少し違うけど、気持ちは同じだよ。リマね、凄く寂しかった。パパとママ、リマのこと見てくれなかった・・・"

そして少女は言ったのだ。

"リッちゃんも素直になっていいんだよ?寂しいって、ちゃんと言っていいんだよ?"

ずっと隠してきて、自分さえも騙してきた気持ち。
彼女に気付かされた。

「寂しくは、あった・・・かもしれない。」

暫しの沈黙のあと、リトはポツリと呟いた。
質問されなければ一生口にすることがなかったであろう両親への気持ち。

「でも、かと言って何が出来るわけでもない。そもそも、俺は闇の継承者が必要だったからつくられた。俺の気持ちなんて考慮されない。」



【いつも更新おそくて申し訳ないです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )
いきなりですが、以前イスラさんが描いてくれたリマセナの陰陽現したみたいなイラスト、LINEのプロフ画像にさせて貰っちゃいました|ू・ω・ )】

572マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/11(日) 13:06:38
【マゼンダ邸】

ギスギスはなし、そうDDは言うが、そもそも再会したところでマゼンダにとって利点はない。一生疎遠で良いくらいなのだからその申し出を受け入れる気など毛頭なかった。
ところでこの男、女?・・・性別が曖昧であるDDはマゼンダにとって奇妙な存在である。
女は嫌い、男は条件によって善し悪しが変わるが、DDはどちらにも属さないため良くわからない。少なくとも女ではない為たしかにこのメンバーでは1番マゼンダが話に耳を傾ける対象ではあるだろう。

そしてDDの話を聞き、不機嫌な表情を崩さぬままマゼンダはさらに眉をひそめる。

「ノワールはどうなんだい?」

オリジンは自分達を狙っている。では、ノワールは?自分達と違い、ノワールはオリジンの1部ではない。

いや、答えは聞かずとも明白だ。

「あの子が絡むとヴェントは面倒だからね・・・」

いつも冷静であるに関わらず、ノワールの事となると我を忘れ暴走する。それこそ自分の命など省みず。

「アンタが何を悩んでるのか知らないけど、聞く限りじゃオリジンは私らを生かすつもりなんて毛頭ない。どちらかが生きるにはどちらかが死ぬ。共存なんて無理。であるなら返り討ちにするしかないんじゃないかい?私はまだ死ぬ気なんてないよ。」

十字界に思い入れなんてないが、無くなるのも困る。

「本当はアンタ達と馴れ合うなんてごめんだけど、仕方ないね。今回は手を貸してやってもいいよ。・・・あいつの目もあるしね。」

マゼンダは溜息をついたかと思えば、嫌な事を思い出し苦い表情を作った。
いつぞやに会ったルイとかいう男。あれに睨まれると面倒なことになると直感した。
ジーナ。あの女が一目置く存在は侮れないと警鐘を鳴らす。
どうやらあの日自分が手を出した少年はあの男が目をかける者だったらしい。幸か不幸か、他のいざこざに紛れて大事は免れたが、あの時は運良く命拾いしただけ。次はないと警告も受けた。

「勘違いするんじゃないよ、今回だけだからね。」

573イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:14:48
【バルクウェイ】

以前バルクウェイで新旧含めた四神のメンバーが顔を揃えた時は壮観だったものだが、今ではそれも見る影がない。
ナディアやバロン、別行動を取っている連中は仕方がないにしても、まるで櫛の歯が抜けるように人がいなくなっていった。

アグルに至っては、一番やる気のなかった自分が今ここにいるのが不思議だとさえ思っていた。…いや言い換えれば、一番やる気がなかったからこそ残ってしまったのかもしれない。

その傍らで、戦いを強制しないと言うレオールの言葉を受け、イスラは今それを言うのか、と苦笑を浮かべた。

「もうここまで来たら最後まで突っ走るしかないだろう。ここでやきもきしてただ結果を待っているよりかは幾分かは気も楽だ」

そうして書類を受け取りながら、イスラはアグルに目を向ける。
こちらの返事を窺うかのようなその視線。アグルは沈黙の後に言った。

「行くよ。黄龍のとこに行くには闇の巣を通らないとなんだろ?
俺はそこに用がある」

574サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:30:33
【冥界】

「リト君ってさ、お父さんとお母さんが"そう"なっちゃったの…もしかして自分のせいだって思ってない?」

リトの口から両親の話を聞くにつれ、サンディの表情は何とも言えない怪訝なものに変わっていく。
彼女は控え目といった様子で尋ね、そして続けた。

「だからご両親の態度も仕打ちも、仕方がないことだって黙って受け入れてるんじゃないの?
たぶん…喧嘩だってしたことないんじゃないかな」

寂しい、と言えなかった彼が、面と向かって不満や反論を口に出来たとは考え難い。
もっともそんなことを言おうものなら、彼の立場は今よりももっと危ういものになっていたかもしれない。
子供は非力ゆえに大人の言いなりになるしかないのだ。

だがリトはもう幼い子供ではない。その気になれば理不尽な抑圧だってはね除けられる筈だ。

「さっき自分の気持ちなんて考慮されないって言ったよね。
でも言葉にしなきゃ、話し合いの場が生まれることもなければ、相手がリト君の気持ちに気づくことだってないんだよ。

今のリト君、色々溜め込み過ぎてて何か風船みたいなんだよね。いつか破裂しちゃうんじゃないか〜ってね」

つまり何が言いたいかというと…。
サンディは立ち上がり、リトに詰め寄った。

「大丈夫、リト君は悪くないよ!それに、もっと怒っていいと思う!
もっと我がまま言っていいし、我慢だってしなくていいんだよ!
リト君は闇の継承者である前に、一人の人間なんだから!自分の意見を言う権利だって何だってあるよ!」



【マジか… ( ´゜Д゜)・;'.、(吐血
そんなものよりもっと上手い方のイラストを画像にしなさいよぉ!←】

575DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:48:33
【マゼンダ邸】

「やっだぁ〜、マゼンダったら、それツンデレの常套句〜」

どうやらマゼンダは渋々ながらも要求を承諾してくれたようだ。
DDは茶々を入れながらも、彼女にキスを投げる。

「でもアナタならそう言ってくれると思ってたわ、アタシ達はもうソウルメイトよ!」

予想よりも早く話がまとまってくれて助かった。
これでマゼンダはよしとして、残るはヴェントのみ。
DDはフィアに目配せしつつ、ソファから腰を浮かせる。

「じゃあ次はダーリン(ヴェント)のところに行って事情を説明しないとね。
ねえマゼンダ、あなたダーリンが今どこに居るか知らない?」

576ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:12:12
【ポセイドン邸】

茂みより現れたジュノスを見るや、奇怪なものを見た時の嫌悪感に満ちた表情を浮かべたノワール。ルドラが目前へ姿を見せた時は一瞬眉を潜めるのみであった。ルドラの仕出かした件は彼が思っているほどノワールは重く見ていないらしい。

かと言ってどちらも信用出来ないことには変わりない。
だが、選り好みしている場合でないとも事実。

「・・・。」

命をかけると言ったルドラの瞳に嘘はなかった。
一方、ジュノスはセナの為であればどんな事でもやってのける男。娘の救出が結果的にセナの秘密を守ることに繋がるのなら、その身をなげうってでも成し遂げるだろう。

「分かった」

暫しの沈黙の末、ノワールは頷く。

「我が娘の命、そなたらに託そう。」

どちらにせよ自分は身動きが取れないのだ。今は一刻を争う事態。この2人にかけてみるしかない。

「じゃが、そなた・・・」

ノワールはまっすぐと、ジュノスを見据えた。

「娘の存在を、いつまであやつに隠しておくつもりじゃ?」

約束は守る。無事に娘が帰ってきたなら自らの口でセナに真実を告げることはしない。
しかし、秘密はいずれバレるものだ。このまま黙っていることは、果たしてセナにとって幸せなのだろうか。

「あやつならまだ良かろう。じゃが、娘の存在を知るのが、王子ではなく小娘の方だとしたら?」

心から信じているセナの不貞を、何かの拍子に知ったとする。リマの衝撃は計り知れないだろう。
せめてセナ自身の口から知らされた方が、まだ修繕の余地があると思うが・・・

「まぁ、あの2人の関係が崩れようとわらわに不利益はないからの。どうでも良い話ではあるが。・・・そうじゃ。」

ノワールは思いつき、悪戯な笑みをジュノスヘ向けた。

「その時は、我が子に父親を取り戻してやるとしよう。」

ノワールにとって必要なのは子供のみ。子供さえ取りかえせれば構わないと思っていることに嘘はない。
しかし、黒十字に恨みがあるのも事実。このまま見逃してやるのも惜しいのだ。

「答えは保留にしといてやろう。戻ってくるまでに考えておくのじゃ。」

子供を救い出しても、救い出さずとも、ジュノスにとって不安の種は消えぬのだと暗に示す。

「小僧、何をグズグズしておる。行くぞ。」

ノワールはそう意味深な言葉をその場に残し、アブセルを携え戻っていった。


【いえ、私にはイスラさんのイラストが最高の絵なので( • ̀ω•́ )✧
また描いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)←図々しい】

577マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:20:54
【マゼンダ邸】

ダーリン。その言葉にマゼンダの眉がピクリと動いた。

「・・・知らないねぇ。アンタのダーリンなんて。」

ダーリンが誰を指すのか、そしてその者の居場所も知っている。
しかし教える気はない。

「私の知る限りじゃ、そもそもアンタにダーリンなんてもんは存在していないね。いつ出来たんだい?アンタを相手にするなんてかなりのもの好きじゃないかい。」

578レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 13:53:22
【バルクウェイ】

狡いとわかっていた、彼等は何をどう選び進むのかもわかっていた。
だからこそ、二人の返事を聞いたレオールは頭を下げたまま、動かない。

否、動けない。
彼は頭を下げたまま声を出す。

「……本当に、すまない。
闇の巣にそびえ立つ塔……黄昏の塔での戦いは、世界の命運を握る鍵だ。
だからこそ、君達にしか頼めなかった。」

そう、それは言わば“黄昏の鍵”だ。
ソレを手にした者こそ、世界の命運を、征く末を決めると言っても過言ではない。

「人員、物資、援助出来る事は何でもする。
気軽に……その、声を掛けてくれ。
此方の準備、総力戦まではまだ暫く時間がある。
何かあれば呼んでくれ。」

レオールは傍らに立つバッハに顔を上げる様に促されたが、それを拒む。
それは、イスラとアグルが会議室を後にするまで続いた。

ーーーーー

街中はいつも以上に騒がしかった。
夕暮れ時から喧騒は大きくなり、露天や屋台に人集りが出来る。

空挺師団を核に編成される一大戦力、周辺諸国の軍隊がバルクウェイへ集結しているからだろうか。
見慣れない人種、聞き慣れない言葉が騒がしさをより一層加速させていた。

「この手には何もなかった、刃を振るい、血塗れの手じゃ何も掴めなかった。
ずっと、そう思ってた。

幼子を寄り代に異界の悪神を降ろす計画、自分がその為に産み出された存在……
それこそ、イオリの子、死産したその子を禁術で蘇生し、急速培養されたのが自分だと知った時は本当に、生きる意味は無いと思った。」

そんな様子を遠目にしながら、オープンテラスの席に座るメイヤは口を開く。
一時は危篤状態にまで落ちたが、師団の医療設備により持ち直し、今では何とか動ける程にまでなっていた。

「でも、手を伸ばせば届く、この手でも掴めるモノがある。
サンディとこの街の露店を回った時、そう思えた。

だから、俺も闇の巣へ向かう。
サンディは暗黒の渦に消えた、なら、ありとあらゆる闇が集まるあの場所に行けば……闇の巣へ飛び込めば、あの子を見付けれると思うんだ。」

そう、サンディはきっと生きていて、闇の中から抜け出せずにいる筈だ。
それに、闇の巣には兄弟子であるユーリと、自分と同じ忌み子……闇を狙うクウラも姿を現すだろう。

「因縁を断ち切り、世界の命運も未来も掴み取る。
本当に欲しかったモノ、俺はその為に戦う。」

先の戦いで負った傷、その後遺症は大きい。
伸ばした左手は震え、眼帯で隠された左目は光を捉えない。

メイヤは空を掴む左手を下げ、同席するイスラとアグルへ薄く笑みを向けた。

「ガラじゃなかったな、こんな風に話すのは。」

579イオリ ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 16:13:40
【虚空城】

黄龍の居城、虚空城。
闇に包まれつつある地上から遥か上空、外郭上に姿を現したその城は、数百もの多重結界により守護されている。

とある世界で、七大魔王と呼ばれた者の居城と全く同じその中には。
羅刹の王と水晶を操る凶剣士。

四凶と、不死身の兵団。
そして、四霊の二柱が陣を敷いていた。

「ま、十分準備はしたしな。
後はヤるだけだ。」

まさに要塞堅固、その城を眼前に、イオリは不敵に笑った。
そして、彼とその部下が乗る黒塗りの巨大な飛空挺は大空を切り裂き、多重結界を貫き、世界を統べる者の城へと乗り込んだ。

不時着どころか墜落と言っても過言ではなく、飛空挺は虚空城へ文字通り突き刺さった。
あまり衝撃に船の翼は居れ、船体は崩壊する一歩手前にまで大きく歪む。

そんな船を乗り捨て、イオリ達は虚空城へ侵入し、城内を駆け、進んでいく。
イオリを筆頭に、大罪の名を冠する傭兵達と、黒装束を着込む手練れの者達。

そして、彼等を迎撃する為に現れたのは不死身の軍団……処刑人の剣に所属していた科学者達から得たデータを基に、虚空城の設備により産み出された者達。
青い髪はデータの大元、ヴァイト由来のもの。

彼の持つ超再生能力を更に強化した巨躯に、数々の異能力を持つ彼らは、手強い。
更に、大量に複製培養された圧倒的な数の暴力は敵と認識した者を文字通り粉砕するだろう。

しかし、そんな軍団を前にしてもイオリ達が臆する事は決してない。
イオリの号令の下、傭兵達が、黒装束の強者達が勇猛果敢に進んでいく。

傭兵の頭、禿頭のグレゴリオがその姿を竜に変え、猛火を吐き出した。
その隣、狼男のヴァンはその爪牙で敵を切り裂く。

クウラの兄は狂笑を浮かべ、身に宿る闇を全開に。
溢れ出す闇百足の群れが敵軍団の脚を、腕を絡め取る。

更に、動きを止めた敵軍を、グレゴリオの双子の娘達が数多の刃で屠っていく。
勿論、黒装束達も負けず劣らず撃破を重ねる。

その上空を、イオリは蒼焔の翼をはためかせ、疾り抜けた。

ーーーーー

「さぁさぁ次に出て来るのはどちらさんかねェ!?
デコメガネよォ、俺はテメーを待ってるんだが!」

軍団の第一陣を抜けた先、鋼鉄の扉を斬り捨て、広がる暗闇へイオリは声を投げた。

580ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 15:16:29
【私信ですが、昨日、無事に子供が産まれました!】

581イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/22(木) 18:25:09

【産まれましたか!ヤツキさんおめでとうございます!(*^O^*)
男の子ですか?女の子ですか?


それから…ジュノスとかも遺跡遠征の方に回したかったけど、もう塔が建っちゃったのね(笑)
ストーリー的には佳境っぽいけど、どうやってナディア組とメイヤ組を合流させよう?
あと、吸血鬼オリジンは黄龍達とは別に接点なし?

あとここから下はちょっとした提案…というか、自分のちょっと思い付いたことを唐突に書いてみようシリーズなんですが…

ゼロがこの世界そのものみたいな感じなんですよね?
ユニもその世界を形成する一部分的な存在だった、ってことにしてみてはどうでしょう?
例えばユニは世界の愛やら母性なんかを司る意志みたいなもので、何か知らんがゼロから切り離されてしまう。
その際にユニと言う人格と肉体を持ったはいいが、記憶も失い人間界をさ迷っていたところをバロンに保護された。

って、したらユニが重要人物っぽくなって、ユニの登場回数が増えて自分的にハッピー!なだけです。はい(・∀・)←
最終的にユニは記憶を取り戻し、自分の使命に戻らないといけないけど、リトと離れたくない!と乙女心の中で揺れ動く!なんてことを勝手に妄想してただけです。すみません】

582ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 21:47:33
【陣痛本ちゃん来てから二時間半程のスピード出産ですた!
元気な男の子で、髪質、鼻と指先が俺そっくりだった(笑)
ありがとー!ここの二人には絶対報告しないとと思ってて!

っと、本編は取り敢えず進めれる所進めようかと思って、ちょっと急ぎ足だったけど……

これからの流れで考えてるのは、
闇の巣でのメイヤvsクウラ、アグルvsユーリ、イスラとヤツキの再開。
そこから塔頂上でステラvs先代組、終了後に頂上で一度全員合流。
その後は虚空城内にて決戦、この辺で残る四凶、四霊との決着、ラスボス戦へ〜

で、ナディア組は塔頂上で合流出来たらな、と。
vsステラ戦までに吸血鬼組の決着が着けば良いんやけど……
もしも決着つかなさそうなら、EXステージ、裏ボス的な感じで黄龍戦後にオリジン出しても良いかも?
その時はなんやかんや理由付け……世界ヤバいからオリジンより先にゼロ倒すわ、とかでも。
もしくはオリジンの足留めはジーナに任せろー!

とと、ユニの設定良いッスね!
それならば……世界の意志=ゼロ+ユニで、ゼロは陰、ユニは陽を司るとかどうでしょう?
分離してしまった原因は、100年前の戦いの影響とか。】

583リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/23(金) 06:54:55
ヤツキおめでとー!!!
凄い安産だね(笑)ヤツキに似た子ならイケメン確実だね!笑
温かい家庭を築いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)


ユニの設定ありがとうございます!
てかあの子の登場数増えたらイスラさんハッピーなんですか(笑)
イスラさんが思いついた内容、自分が前にハマってたアドベンチャーゲームのサイドストーリーに似てて凄くテンションあがってます(笑)おかげでユニリトの方は結末まで一気に見えたのでお任せ下さい(*º∀º*)そう言えばあのゲーム、アニメ化もして後で観ようと思って録画してた筈なんだけどどこいったんだろ・・・最終回を観た兄が、主人公が翼生やして飛んでいったとか意味わからんこと言ってたから観るのやめたんですよね(笑)

584ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/24(土) 00:22:51
【ポセイドン邸】

散々泣いて。泣いて。泣いて。
泣きつかれたのか、ミレリアは眠っていた。

様子を見に来たナディアはヨハンの葬儀が執り行われるまで寝かしておくと言った。

その場にいた者は部屋をあとにしたが、ユニのみがその場に残った。

何をするわけでもなく、ミレリアの寝顔をただじっと見つめている。

「・・・悲しい、ですか?」

悲しい。心が痛い。あの人はどこ?
ミレリアの心が叫んでいる。愛しい人を探している。

しかし、

「リト様はもっともっと、悲しいですよ。」

母親に否定される痛み。リトはずっと傷ついてきた。

「リト様は悲しくても、寂しくても、貴女みたいに泣けないですのに・・・」

ユニは呟き、ミレリアの眠るベッドに顔を埋める。

「どうしてリト様が分からないですか?リト様、ずっと迷子です。」

ユニは知っているのだ。

「リト様が生まれるのを、貴女は誰よりも心待ちにしていたです。」

大きくなるお腹を撫で、子守唄を口ずさむ。
元気に生まれておいでと優しく話しかけていた。

ユニは知っている。・・・何故、知っている?
リトと出会ったのはバロンを探すため地上に出た頃だ。それ以前の彼に会ったことなどない。それどころか、生まれる前の事なんて知るはずなどないのに・・・。

ユニはハッと起き上がる。

おかしい。

「リト様・・・」

最近なんだか違和感がある。変なのだ。
見えないものが見える。知らないはずなのに、初めて観る光景さえも既視感を覚えることがある。

ユニは部屋を飛び出し走り出す。
向かった先はリトが眠る部屋だ。

「リト様・・・リト様・・・!!」

ユニはリトに駆け寄り縋りつく。

「リト様・・・起きてくださいっ。いつまで寝てるですか!」

死人のように冷たい体。分かっている。簡単には目覚めないことは。

この異変を感じだしたのはそう、ちょうど、リトが贄として闇の巣に落とされた時からだ。

「ユニ怖いです・・・リト様助けて・・・」

いつもみたいに呆れ顔で、溜息を吐きながら「何を言ってるんだ」と、「お前の気のせいだ」と言って欲しい。
そうすれば、安心出来るのにーーー



【せっかくなので、闇の巣の一件で陰の方が力を強めたのと同時に、反動で対となるユニの記憶と本来の力も戻り始める感じにしました(*ˊૢᵕˋૢ*)】

585イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:30:07
【ヤツキ>奥さんすげえw
ヤツキさんはいいパパさんになりそうやでぇ^^
子育て大変でしょうが、末永くお幸せに!

なるほどなるほど、流れ了解です。
オリジンはその時のストーリー進行によって臨機応変にやっていきましょうか^^それぞれの進行速度によってまた変わってくると思いますし

あと四凶のフロンはジルにぬっ殺してもらおうと思ってるので、勘定からは除外するものとしてください;


リマ>ユニ可愛いよ!癒されるよ!o(^o^)o⬅リトとのやり取りとかほっこりします(笑)
良かった…、大きなお世話なんじゃないかと心配しました;

確かにそれはとあるゲームのヒロインの設定をパクったものですが(⬅多分そのゲームではないかなぁ…?少なくとも主人公は翼生やして飛んでいかなかったしww
自分がパク…参考にしたのはアルトネリコ3ってゲームです。そのヒロインが挿入歌で「エグゼクフリップアルファージ」や「トキノスナ」って曲を歌うんですが
それはそれは良い曲なんですよー、よければ暇なときにでも聴いてみてください。和訳付き動画推奨です^^】

586アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:34:58
【ポセイドン邸】

ジュノス達と別れた後、アブセルはセナ達を引き連れてリトの部屋へ戻ってきた。

「じゃあセイちゃんさん、とっとと着替え済ませちゃおうか。俺も、脱がせるのとか、脱がせるのとか、脱ぐのとか、手伝ってあげるから」

それもナディアにセナの身仕度を済ませてこいと言われたからであるが、リトの衣服を取りにクロゼットに近づいたところ、ベッドに伏せるユニの存在に気がつき、アブセルは眉を潜めた。

「おいユニ、お前またリトに引っ付いて…」

口を開き、そこで言葉を飲み込んだ。
ユニが今まで見せたこともない、まさに悲痛そのものといった表情を浮かべていたから。
アブセル唖然とし、やがてきまりが悪そうに言った。

「お前なあ…何て顔してんだよ。いつも阿呆みたいに能天気な面ぶら下げてるくせに」

587アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:53:44
【バルクウェイ】

軒を並べる露店街の一角。イスラは夕映えに煌めく街の情景を瞳に映しながら、メイヤの声に耳をそばだてる。

「いや…俺も同じ気持ちだよ」

彼がこのように己の決意を口にするのは珍しい。それが何となく嬉しくもあり、励みにもなった。

「ただ身体の方はまだあまり良くないんだろう…?無理はしないでくれよ」

常人ならば剣を握ることさえ儘ならない状態であろう。本音を言えば、まだ医療施設で静養して貰いたい程であったが、メイヤにしてみてもそうは言っていられないのだろう。

「二人とも少し聞いてくれないか」

そんな折、今しがたまで沈黙を貫いていたアグルが不意に口を開いた。
彼は感情の読み取れない瞳を二人に向け、静かに先を続けた。

「闇の巣にはあいつ…ユーリがいる筈だ…。
自分勝手なことを言うようで悪いけど、あいつに関しては二人は手を出さないで欲しいんだ。
どうしても…あいつだけは俺の手で片をつけたいから」

――――――――


仲の良い兄弟がいた。
兄の名をレグナといい、弟の名をアグルといった。
二人は何をするのも一緒だった。
ご飯を食べるときも、夜眠るときも、遊びに行くときも、片時も離れたことがなかった。
それもそのはず。
二人はお互いの腰が繋がっていたのだ。

二人は今の状態に不満を感じたことは一度もなかったが、医者は一人を犠牲にしてでも分離手術をすべきだと両親に告げた。このままでは二人とも長くは生きられない、と。

両親は二人の手術を決意し、その選択を兄弟に託した。

「どちらが死ぬ?」

兄は言った。

「どっちでも同じだよ」

弟が言った。

「だって僕らは同じ存在だから。僕らはアグルでもありレグナでもあるから。身体が別れても、心は同じ場所にある」

そもそも二人の間には兄も弟もなかった。もっと言えば、お互いの名前すらどうでも良かったかもしれない。
ただ両親が決めたことだと、それに従っていた。

兄弟はチェスをして勝負をつけることにした。勝った方が生き続けると。

兄はわざと弟を勝たせた。
手を抜かれたことに弟は不服そうだったが、特に何を言う訳でもなかった。

「おやすみ、アグル」

「おやすみ、レグナ」

そうして二人は眠りについた。

次に目覚めた時、身体は驚く程軽く、違和感があった。
ただそれ以上に驚いたのは、何故目覚めたのが自分の方なのかと言うこと。
何の手違いか、今ここにいるのは兄のレグナであった。

588アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:55:37
―――…

「兄は一族の当主になった。だけどそれから数年後、兄も一族も全員があいつ…ユーリによって皆殺しにされた」

アグルは淡々と語った。
西日の逆光が彼の顔に影を差し、その表情はよく見えない。
一連の話を聞いたイスラは少し言い難そうにしながら、彼に言った。

「その話を疑う訳じゃないんだが…、だとしたら君は…」

誰なんだ。とでも言いた気にアグルを見る。
アグルは口元にうっすらと笑みを見せた。それは自嘲の微笑みだった。

「手術は成功していたんだ。兄弟は二人とも生きていた。ただ…兄は本家に残って当主になり、弟は乳母とともに余所にやられた」

その事実を知っているものは一族の中でも極少数に限られていた。恐らく兄さえも弟が生きていることは知らされなかった筈だ。また自分も兄の生存を知らなかった。

「過去、先祖達が無茶をしたせいで、当時の俺達一族には敵対する連中が沢山いた。…ま、その辺の内容を言えば長くなるし、あんた等に聞かせるようなものでもないんだけど…。

ともかくそいつらと長年争い続けた結果が、一族の勢力の衰退だった。
一族の前途を憂慮した者達は、跡取りの一人を手術の際に死んだものとし、以来ずっとその存在を公に隠してきた」

それもこれも自分達の血が途絶えないようにと考えて取った、彼らの苦肉の措置であった。

「兄貴達が殺された事実を乳母から聞かされた時、一族が取り決めた本当の当主は初めから俺だったんだと言うことを知った。
同時に兄貴はずっと俺の影として生きてきたんだってことも。それも本人自身すら知らぬままにだ」

次第にアグルの口調に熱が帯びてくる。彼は怒りを抑えるかのように自分の腕に爪を立てた。

「許せないんだ…。兄貴が…一族が、必死に戦っていた時に、何も知らずのうのうと生きていた自分自身が…!
何かを得ようとも、知ろうとする努力すらせずに見殺しにした…!
そんな俺が罪滅ぼしをするとしたら出来ることは一つだけ。皆を死に追いやった連中に、同じ苦しみを与えることだけ…」

何も知らなかった。一族が何をしているかも、何をしてきたかも。ただ自分は世話役らの庇護のもと、安穏と日々を過ごしてきた。全てを聞かされたのは、一人きりになった後だった。

「あとはユーリだけなんだ…。かつてユーリを差し向けた連中は皆始末した…。奴を殺せば俺の報復は完遂する。
世界が滅ぶ前にあいつだけは何としても俺の手で止めを刺す…」

その眼は暗く、復讐に取り憑かれた者の眼だった。

「復讐の為に何人も殺して、多くのものを犠牲にしてきた…。レックスだってそうだ…。もう止まれない。止まってはいけないんだ…絶対に…」

もう誰かに語りかけている体ではなくなっていた。その言葉は呪詛の様に口から溢れ落ちた。
目の焦点も定かではなく、腕に食い込んだ爪が皮膚を破り、血が流れた。

無気力で常に冷めたような態度を装っていた彼のその内側には、ドス黒い怨恨と狂気の感情で満ち満ちていた。

589ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:37:29
【ポセイドン邸】

アブセルの下心丸出しの発言の意味を理解出来なかったセナは疑問符を浮かべ、ただ一言「一人で出来る」とだけ呟いた。

「・・・アブセルさん」

リトに縋り突っ伏していたユニははじめ来訪者に気付いていなかったが、自身の名前を呼ばれピクリと体を震わせる。
そして恐る恐る顔をあげ、その者が見知った相手であるとわかるや、ホットしたような表情を浮かべた。
しかし今にも泣きそうな顔である事には変わらない。

共に部屋に入ってきたセナも一瞬ユニへ目を向けるが特に気にした風もなく、アブセルがクローゼットから取り出しかけた衣装を受け取った。

「アブセルさん・・・ユニ、変なんです。ユニはユニの筈ですのに、ユニじゃないみたいで・・・。怖いです。アブセルさん、ユニはどうしたらいいですか?」

この不安をどうすれば取り除けるだろうか。一つでも何か答えが欲しい。
いつも自分の疑問に答えてくれたリトは目覚めない。
ならば代わりに、アブセルからでも答えが欲しいと立ち上がる。

・・・と、

「・・・セナ、様・・・」

そこで漸く、セナの存在に気付いた。
リトと一番不快繋がりのある先祖であり、堕とされたリトを救い出してくれた人。
息をしていないリトを「生きている」と言い、「簡単には目覚めない」と応えた張本人。

この人なら、知っている・・・?

「セナ様!」

ユニは堰を切ったように今度はセナに詰め寄った。
自分は関係ないとばかりに着替えの為黙々と服を脱ぎ出していたセナは急に矛先が自分に向いた為少し驚いたような表情を浮かべるが、ユニは気にも止めずセナの腕を掴み言葉を投げかける。

「教えてください!リト様はどうすれば起きるですか!?いつ起きるですか!?」

予想以上に力が強い。掴んだ指がセナの肌に痕をつけていくが動転していてユニ本人は気づいていていないのだろう。

「セナ様はわかりますか!?ユニに何が起きているか!今回の事があってからなんですっ。闇の王子様なら分かるですよね!?」

590リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:38:40
【アブセルが脱がせることしか考えてなくて笑いました(笑)
そこまでユニのこと気に入ってくださっていたとは(笑)ありがとうございます(/ω\*)
ユニはこの作品のマスコットキャラクターですからね!←違う
むしろユニに重役与えてくれてありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ
現在セナに対して盛大に粗相起こしてますがアブセルが止めてあげてください(笑)そしてセナはセナで女の子いるのに平気で服を脱ぐとはけしからん←情操教育サボっちゃダメじゃないですかジュノスさん。←←

そのゲームは知らなかったです|ू・ω・` )
自分がハマっていたのはシャイニングハーツと言うゲームなんですが、似た設定ってあるんですね(`・ω・´)
シャイニングハーツの方では記憶と感情をなくした少女がいて、その子のために色んな感情の欠片を集めていくんです。感情の方は少女自身が封じてしまっているので、欠片を集めていくと喜怒哀楽の鍵が手に入って、その鍵で感情を開放していく感じになります。感情が戻るにつれて記憶も戻り、その子自身が世界の核であることが判明するんですが、その子は「この重すぎる使命が嫌で逃げてしまったけど、ここで出会った大好きな皆の為に、大好きな人皆の住む世界を無くしたくない」って感じで自分の使命を全うするべく主人公のもとを去ってしまうんです。この時主人公の好感度MAXだったらこの子とのEDが迎えられるんですけど、MAXじゃなかったらここでお話は終了です(笑)彼女が自分の使命を受け入れることが出来たって意味でのハッピーエンドですからね(笑)私は個人的にこのヒロインの事が大好きだったので当然好感度MAXにさせましたが。隠しEDなのである時期を境に好感度が上がらなくなったり、EDを迎える為に色んな条件を満たす必要があったりと地味に難しいんです。いやぁいい思い出だ←

イスラさんの方のゲームも調べてみますね(/ω\*)

つか、フロンはジルがぬっ殺すって何勝手に決めちゃってるんですか(笑)ジルは本当は純粋で優しい子なんですからあまり傷つけちゃダメですよ?まぁ残忍なヤンデレな子なのでちゃんと殺りますけどね!←
・・・純粋で優しい残忍なヤンデレって何だ←←

そしてアグルの過去に涙です(´;ω;`)】

591ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 01:19:47
【イスラ》母は強し、だったわwwありがとうございます〜!幸せになりますぜ!

っとフロンの件了解す!吸血鬼組は流れに合わせて、で(笑)

あー……アグルの過去話全くの予想外で涙。シャム双生児だったっけ?こんなタイプの。

リマ》新生児らしからぬしっかりした顔立ちしてて将来有望やでぇ!
ありがとね、パパさん頑張ります!

っと、四凶はもう一人、残ってるけどどうしよう?】

592メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 23:23:42
【バルクウェイ】

薄皮一枚隔てて蠢く激情。
その一端を垣間見、メイヤは口を閉ざした。

やる気の無さと無関心さ、それは内に秘めるどす黒い感情を表に出さない為の殻なのか。
暗い光を宿すその瞳を、メイヤは知っている。

復讐者の目、それは見慣れたモノだった。
殺しを生業にする一族の出の為に、自身も例に漏れず刃を振るって来た。

そして、時折出会う家族、知人、友人、恋人を奪われた者。
彼らはアグルと同じ目で襲いかかって来るのだ。

勿論、その者達の末路は言わずもがな。
東方最強の暗殺者集団と名高い一族の、更にその中でも屈指の実力者であるユーリに挑むのならば……

だが、アグルを止める事はしない、否、出来ない。
彼には彼の、戦う理由があるのだ。

「皆、各々に戦う理由がある。
今となっては、もうそれだけだな……」

単純な勝ち負けだけでは無い戦い。
世界の命運も、因縁も、そして、復讐も。

アグルへの返答は、雑音に流れて消えた。

ーーーーー

【闇の巣】

バルクウェイを発ち、数日。
必要最低限の物資を積んだ飛行艇で到着した決戦の地は、予想に反して静かだった。

艇から降り立ち、進んだ先。
そびえ立つ巨塔の麓、静寂に包まれる水辺。

塔へと続く橋の上に見える人影を前に、メイヤは足を止めた。
それと同時に、人影……クウラは被っていたフードを取った。

「アグル、イスラ。
アイツの相手は俺だ、タイミングを伺って、先に行ってくれ。」

現れたのはメイヤと同じ濡れ羽色の髪と、東方出身者特有の黒い瞳。
どことなく自身に似た顔立ちのクウラへと、メイヤはクナイを投げ、同時に疾走。

迫るクナイを避け、クウラは笑う。
そして、メイヤが放つ刺突を小刀で切り払い、両の腕を、小柄な背中から生える闇の大翼を一閃。

漆黒の羽が散弾となって辺り一面にばらまかれた。
ばらまかれた散弾は橋や水面に着弾すると同時に爆発し、周囲を轟音と爆裂に染める。

しかし、それはあくまでも戦いの合図だ。
クウラはメイヤへ凶笑を向け、メイヤはそれを受け止め、真白の刃を振るう。

「用があるのはこの死人だけさ、赤毛の二人は好きにしなよ?」

「だ、そうだ!二人共先に行け!」

593アブセル:2016/10/01(土) 01:51:29
【ポセイドン邸】

ユニが何を言っているのかが分からない。
アブセルは、お前はいつも変だろう。と顔をしかめるも。彼女の取り乱しようを見て、どうやら本気で思い詰めているらしいことを知る。

「こらユニ!セイちゃんさんが困ってるだろ!聞きたいことがあるならちゃんと分かるように説明しろ!
つかまず落ち着け!」

セナにすがるように詰め寄るユニを引剥がし、リトの寝るベッドの端に座らせる。
まだ何か言いたそうな彼女を一先ず黙らせると、再びセナに視線を向けた。

「セイちゃんさん。こいつはユニっていって、迷子になってたとこをリトが保護したんだ。
んーと…そんで絶望的に阿呆で無知で…」

今まで他の人にきちんとした形でユニを紹介したことがなかった為にした説明だったが、よくよく考えれば、自分は彼女について何も知らないことに気づく。紹介しようにも名前ぐらいしか言うべきことが見あたらず、アブセルは怪訝な表情をユニに向けた。

「…そもそもお前って何者なんだよ…?」

594シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 01:56:52
【虚空城】

幾重にも張られた結界は飛行挺の衝突によって破られ、城内にはイオリとその部下達が雪崩れ込む。

「下界のゴミムシ共がわらわらと小賢しいことだ…」

その実情を目に、シデンは嘆きため息を溢す。
闇に包まれた空間に雷光が迸り、それによって浮かび上がる男の姿に、彼は鋭い眼光を向けた。

「まさか勝てると思って来た訳ではあるまいな。なあ、イオリ?」

扉を破り入ってきた、イオリのその声に応えるように、シデンもまた口を開く。
直後、部屋全体に雷の結界が張られた。

「まあいい。貴様はこの俺が直々に始末してやろう。これで前みたいに途中で邪魔が入ることもない。じっくりサシで勝負を着けようじゃないか」

そうしてシデンは雷を刃に見立てたブレードを手にする。その切っ先をイオリに突き付け、不敵な笑みを浮かべた。

「時にイオリよ、貴様の女はどうした。あれは我らと同じく四霊の力を有する者…、本来ならばこちら側の人間の筈だろう」



【マゼンダ邸】

「もぉー!ダーリンって言ったらヴェンちゃんのことに決まってるじゃなぁーい」

マゼンダの皮肉にも気づかずに、DDはさも当然と言わんばかりに言葉を返す。

「なぁにぃ?ひょっとしてマゼンダってば、妬いてるのぉ?
ヴェンちゃんにぃ?あっ!やだ!もしかしてアタシに!?」

気持ちは嬉しいけど、生憎アタシにそういう趣味はないの。と一言断ってから、彼は続ける。

「まあアナタが知らないならしょうがないわぁ。ダーリンが住んでる館にでも行ってみましょ。思いがけないダーリンのプライベート姿が拝めるかもしれないし!寝起きドッキリとか!湯上がり姿とか!」

涎を垂らしながら嬉々として語るDDは、このままヴェントの住まいに不法侵入…いや、突撃でもしそうな勢いである。

595イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 02:02:15
【リマ》アブセルはセナに対しても欲情するようです⬅
マスコットキャラ同意ですが、あれ…?彼女は一応ヒロインじゃなかったっけ?(笑)
そこもジュノスが教育するのかww彼は自分の都合のいいことしか教えないからリマが見張ってないと⬅

シャイニングハーツ、動画ちょっとだけ見ました^^
面白そうですね、女の子のキャラが可愛いし!
そんな重い設定とはかけ離れた予想外のほのぼのっぷりに驚きました(笑)
てかパンゲーって言われてるんですねw何故にパンww

そろそろ本気でジルがやばそう;また一つジルに罪を背負わせてしまうのね、いやぁ申しわけ⬅
そんな積もりに積もった鬱憤をどうぞフロンで発散させちゃってくださいw



ヤツキ》そうそう、何となく双子設定にしたかったので、どうせなら…とシャム双生児にしました。
あとユーリはトール一族と敵対してた連中に雇われた設定にしてしまいました(^-^;

596イオリ ◆.q9WieYUok:2016/10/01(土) 16:10:08
【虚空城】

雷光と共に姿を現した男に、イオリは笑みを返す。
予想通り、いや、リクエスト通りか。

「俺は勝てる戦いしかしねェんだよ……
まぁ、テメェとは決着つけねーといけないのは同意だがな。」

こちらへ雷刃を向けるシデンへ、イオリもまた刀の切っ先を向ける。
蒼焔を灯す妖刀、鸞は四霊である鳳凰と同質の力を秘めている。

「この世界は初めっから歪に歪み、狂っていた。
百年前の戦いで、その歪みは決定的なモンになった。
その際に、目覚める筈の四霊の性質も変わった。
白焔と黒端、二つに分かれた世界の中枢。
鳳凰は白焔の側に成ったって訳さ。」

イオリは話をしながらも刀を一閃、二閃、三閃。
燃ゆる刀身から三羽の火炎鳥が姿を現した。

火炎鳥は高く嘶き、蒼焔を撒き散らしながら高速飛翔。
シデンへ向かって羽ばたき、爆発。

「さてさて、無駄話は終わりだ。
決着つけようぜ、デコメガネ!!」

暗闇を炎で染め、イオリは獰猛な笑みを浮かべた。
そして、目の前に広がる爆炎へ向かって自ら飛び込んでいく。

597リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/02(日) 21:48:57
【冥界】

図星だった。
そう思っていなければ自分を保てなかったのだ。

「・・・無理だ」

サンディの言う通り、権利はあるのだろう。しかし、どんなに主張したところであの二人には届かない。

・・・違う、本当は彼女の言う通り、気持ちは届くのかもしれない。
しかしその可能性は限りなく低いから・・・多分、怖いのだ。面と向かって否定されることが。

ここで目覚める前、最後に見た父の顔を、言葉を今も引きずっている。

「・・・」

このまま話をしていてもリトの気持ちも、サンディの考えも変わらないだろう。
リトは立ち上がる、そしてぶっきらぼうに言葉を切り出した。

「あの姉弟、探そう。今の俺達がすべきなのは茶会でも話し合いでもない。ここから出ること、元の場所に戻ることなんじゃない?」

的を得てはいるがこの話を続けたくない故の言い訳だった。
「知らない」と言ってはいたが、この世界の住人である姉弟なら本当は何か手掛かりを持っているかもしれない。そう言ってリトはサンディの返事も聞かず歩き出した。

---その姿を、一人の男が見つめていた。

「・・・リト・・・?」

あてもなく歩いていたその男は、たまたま視界に入った少年に驚き足を止めた。間違いない、あの少年はリトだ。
男は信じられないと言った表情を浮かべる。

「何故・・・」

あの子がここにいる?そう考えかけて男はハッとする。
自分は何を言っているんだ。「この手」で、あの子を死に追いやったではないか。
長い間探していても結局救う手立てなど見つからなくて、一族を、他の多くの命を救う為に犠牲にした。
最期まで優しい言葉をかけてやることも出来なかった。代わりに存在を否定して、「利用する為に作った」などと酷い言葉を投げた。自分の前では一切表情を変えないあの子が、その最期の言葉を聞いて絶望を表した顔を浮かべたのを知っている。

「よかった・・・」

死なせたのに、男は、ヨハンはそんな言葉を口にした。
不相応なのは分かっているが、最悪の事態を免れたのは嬉しい。そう、リトの魂が無事だったことに感謝したいのだ。
贄にされたものはその身だけでなく魂までも喰らわれると思っていた。だから素直に嬉しかった。

そして、自分にこんなことを思う資格がないことも分かっているが、心を抗う事は出来ない。
そしてもう嘘をつく必要もないだろう。

「・・・リト・・・」

罪を重ねてきた自分は天に行けるはずもない。地の国へ行く覚悟は出来ている。
地の国へ行けば、決して転生することはなく苦しみ抜いて魂の消滅を待つことになるだろう。
だから最期に、この身が消えゆく前に、お前の姿を見ることが出来て良かった。

598ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:16:21
【ポセイドン邸】

取り乱したユニを引き剥がし落ち着かせようとベッドに座らせる。
セナはふとユニに掴まれた腕に目を向ける。

「・・・」

触れられた部分に火傷したような赤い痕があった。掴まれた際の痛みの原因は力加減だけではなかったらしい。
セナはその傷をアブセルに気れぬよう、彼がユニに意識を向けているうちに服を纏った。

「・・・ユニ、ですか・・・?」

一方、少し落ち着きを取り戻したユニはアブセルの疑問に口篭る。言うべきかどうか悩んでいる表情だ。
そして不意にリトを見る。

「リト様には言っちゃダメですよ?」

やがて決心したようにそう口にしたかと思えば、立ち上がり皆と距離を取った。

「ユニの姿、見せるです。」

言ってユニは少し前屈みの姿勢を取る。途端、ユニの背から大きな白い羽が広がった。それはおとぎ話に出る天使の羽根のよう。そして、翼を広げ顔をあげたユニの額には架空の存在であるユニコーンの角に似た物も生えていた。

「ユニはバロン様の使役魔です。バロン様の力で生まれ、ユニと言う名前を貰いました。この姿が本来のユニですが、見ての通り・・・その・・・醜いですので、普段はいつものユニの姿になってます。ユニは人間と同じ姿が良いですので。リト様には秘密、約束ですよ?こんなユニ見たら、リト様はユニのこと嫌いになっちゃいます・・・」

599リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:17:16
イスラ>>
決めた、リトの声優はうた〇リの藍ちゃんの声にする!←いきなり何だ

ユニは記憶がないので、自分のことバロンに召喚された使役魔だと思ってることにしちゃいました←
世界の核と言うことでとても神秘的な姿(と言う設定)をしてますが、ユニは嫌みたいです←
因みに陽を司る世界の核→清い力の塊→闇を浄化する→セナにとって毒と言う謎設定作りました。リトにとっても毒ですが、リトはセナより闇の力は薄い&ユニ事態が本来の力を目覚めさせていなかったってことで今まで抱きついても平気だったという言い訳も作りました← リトが平気なのでアブセルにも害はないです← 今後ユニの力が強くなることでリトにも害なすようになりますが、ユニが力を制御出来るようになれば傷付けることもなくなります。


セナにも欲情とかwwwアブセルはリトの顔が好きなだけなんじゃ・・・(笑)
あれ?ユニってヒロインでしたっけ(笑)← ナディアは・・・ヒロインからかけ離れてますからやはりユニがヒロインか←
ジュノスはセナの教育係ですから(きりっ)
え、自分に都合の良いことって何を教えるのwww


シャイニングハーツがパンゲーと言われるのは、作中でパンを作って色んな人に配り、その際に喜怒哀楽の感情=ハートを集め、そのハートを材料にまたパンを作り〜って事をやるからです(笑)
もともとこのゲームは兄がジャケ買いしてきたものなんですが、パンを焼くのが嫌になった兄がプレイを放棄し、私に押し付けてきました(笑)話を進めるのにパン焼きは欠かせないんですよね〜
因みに私はパンを焼くのがむしろ楽しくて、色んな材料を集めてきてはどんなパンが出来るのかワクワクしながら焼き、嬉々として話を進めました←

申し訳なく思ってるように見えないwww
フロンで発散wwwフロンの存在意義がwww
ジルはヨノの愛に救われ、最終的にリトを溺愛するお兄ちゃんになると思うのできっと大丈夫です←何が


ヤツキ>>
すでに親バカ発揮してるwww

てか四凶って自分も誰かやってた気がするけど結構前過ぎて何のキャラだったか以前に名前すら思い出せない・・・困った(´;ω;`)

600ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/03(月) 07:42:12
>>599
四凶の余り=コニィ=リマの持ちキャラやで、空飛ぶ絨毯に乗ったお姉さんだった筈……かなーり昔に出て来てたよ!

601マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:46:03
【マゼンダ邸】

「あんた、今すぐその減らず口を閉じないとタダじゃ置かないよ」

涎を垂らし語るDDの目は本気だ。マゼンダは思わずDDに詰め寄りそうになるのを寸出のところで耐え、誤魔化すように咳払いを一つする。
ノワールが関わるとヴェントが我を忘れるように、ヴェントの事となるとどうも平静でいられなくなる。マゼンダとヴェントは同時期に生まれた為、兄弟のような情でもあるのだろうか。

「生憎、館に行ってもアレはいないよ。大抵、今の時間は森にいる。」

出来れば会わせたくもないが、放っておくと何をしでかすか分からない。マゼンダは観念しヴェントの居場所を吐いた。
ヴェントの日課は自己修練と若い吸血鬼達の教育及び鍛錬。自分達吸血鬼にはそれぞれ派閥があるが、派閥に属する前の吸血鬼達に基礎能力を仕込むのはヴェントの役目だった。
今の時間帯なら自己修練だろう。ヴェントは基本的に時間的行動パターンが決まっているため分かりやすい。

マゼンダは溜め息を吐き立ち上がる。

「勝手に動かれても面倒だ、行くよ。」


ーーーーー

案の定、ヴェントは森に居たようだ。
ある程度目星を付けた場所に向かうと、木の幹に刃で切り裂かれたような跡を見つけた。まだ新しい。
しかし当の本人がいない。まだ館に戻る時間ではないはずだが・・・。

「ヴェント!どこにいるんだい?アンタに客人だよ!」

マゼンダがそう声をあげると、まもなくして黒いコウモリが一同の元へ飛んできた。コウモリは一同の周りをぐるりと一周すると、付いて来いとでも言うように元きた森の奥へと飛んでいく。

「行くよ。」

マゼンダはコウモリの後に続いた。

コウモリが行き着いた場所は湖だった。
マゼンダは当たりを見渡すが、ヴェントの姿は何処にもない。

「ヴェント、何処だい?」

しかし此処にいるのは確かだ。マゼンダが再びその名を呼ぶと、途端、湖面から勢いよく人影が上がる。流石に予想していなかった場所から出てきた為、マゼンダは思わず声をあげた。

「驚いた!アンタ、なんて所から出てくるんだい!」

心臓に悪い。一体そんな所で何をしてるんだと非難をぶつける。
対するヴェントは顔に掛かった髪を払いながら、何を驚いているのか分からないとでも言うような表情を浮かべた。

「水浴びだ。・・・汗をかいたからな。」

602リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:47:23
ヤツキ>>

そうだ!コニィだ!
いつも目を瞑ってるお姉さん!ありがとう!

603アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:17:57
【闇の巣】

メイヤと相対する、もう一人の黒髪の青年。
本調子でない彼を一人残して良いものかと、イスラは考えあぐねるが…。自分達にはそう悠長にしている時間もないことを思い出す。

「メイヤ…気を付けろよ!」

気がかりながらも、結局はイスラもアグルに続いて前方へ飛び出した。


目指すは眼前に聳える禍々しい黒き塔。
再びこれと相見えることになろうとは…。イスラの心中は苦い想いでいっぱいだった。

(…ここから先は何があるか分からない。慎重にいかなくては)

しかしそんな考えも露知らず、アグルは一人でどんどん先へ進み、止める間もなく塔内部へ突入する。

「アグル、待て!」

続いてイスラも後を追うが…、一足遅かった。彼の姿は既にそこから消えた後だった。

――……

(どこだ…)

闇に蝕まれ暗澹とした空間。時折遭遇する魔物を鬼神のごとく気迫で切り捨て、アグルは複数に枝分かれした通路を直感だけで突き進む。

(アイツはどこだ…!)

頭にあるのはただ一つのことだけ。
彼は何かに取りつかれたように、それを求めてひた走る。

…そして、ついに広い空間に出た。それとほぼ同時に足を止め、アグルはとある一点を凝視する。
魔物の返り血で染まった顔が不気味に歪んだ。

「逢いたかったぜ…、ユーリ…」

604アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:19:54
【ポセイドン邸】

本当の姿を見せる。そう言って変身したユニの姿は、まるでどこかの教会で見た絵画の中の天使のようだった。
その神々しいばかりの姿にアブセルは思わず息を飲む。

自分が知る限りでは人はこれを醜いとは思わない、むしろ崇拝の対象として見るのではないだろうか。
しかし彼女自身はそうは思っていないらしい。

「別に俺からリトに何かを言う気はないけどさ…。
でもリトは見た目で人を嫌いになったりするような奴じゃないぞ」

もっとも…この地上でそんな姿で彷徨かれては目立って仕方がないので、普段は隠すに越したことはないが。
そして彼女が不自然に浮世離れしている理由も今ので何となく理解した。

「それでお前は何を悩んでるんだっけ?
自分が自分じゃないみたいなこと言ってたけど」

605アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:34:02
リマ》確かにぴったりな声かも^^
自分はリトの声、斎賀みつきさんの青年ボイスを想像してました。(ドリフターズってアニメの那須与一とか)

なるほど、了解です!ユニが歩く危険人物に…(笑)

そんなことないですよ!もうあれは癖みたいなものだから、リトとそっくりなセナにも身体が勝手に反応しちゃうだけです⬅
ナ…ナディアはイケメン姉御枠だし…(;´`)⬅
都合のいいこと…、うーん何だろう?(笑)何か色々変なこと吹き込んでそうですけど⬅
あと都合の悪いことも教えないですね。ノワールのことしかり、多分他にも沢山

まさにパンゲーww
リマさんにはぴったりのゲームだったんですね(笑)

フロンは悪者だし⬅
溺愛wwジルそんなキャラになるのか(笑)
てかフロンをジルに絡ませたいんだけど、どうやって会わせよう?;

606ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/10/09(日) 19:42:38
【黄昏の塔】

眼前に現れた、血染めの顔を歪める青年。
その姿を見、ユーリは静かに言葉を吐いた。

「その顔、見た事があるな」

ユーリが立つフロアは、塔の中間地点だった。
塔には複数の入り口があり、その内部も無数のルートに分かれている。

しかし、その全てが一度収束する地点があり、それがこのフロアなのだ。
薄闇の中、塔の守護者としてユーリはアグルへ右手を……その手に握る槍の穂先を向ける。

その姿は以前闇の巣で対峙した時よりも禍々しく。
魔装の背面から伸びる副腕の数は増し、さながら蜘蛛の如く。

「何の怨みがあるか知らないが、侵入者は排除するのみ。」


兜の面頬を下ろし、ユーリは漆黒の瞳に燐光を灯す。
そして、槍で刺突の構えを取り、その姿が消える。

薄闇を照らす灯籠の火が揺れ、現れたのはアグルの眼前。
瞬間移動とも言える速度からの刺突はアグルの頬を掠め、槍のみがそのまま後方の壁へと激突。

破砕音を轟かせ、壁面を穿ち、大穴を開ける。
そして、槍を投げ捨てたユーリは副腕を使いアグルの四肢と、肩を掴んだ。

「強制排除だ。」

その声は後方に。
アグルを掴んだままユーリは突進し、大穴から外へと飛び出した。

一瞬の浮遊感から続く重力落下に身を任せ、急停止。
副腕から延びる糸によって塔の壁面へ着地し、反動と共に掴んでいたアグルを放り投げた。

「落ちろ、闇の底へ!!」

607ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/10(月) 21:39:05
【ポセイドン邸】

「ユニはおバカです。色々知らないですので、リト様がいつも分からないこと教えてくれてましたです。」

アブセルに促され、ユニはポツリポツリと話し始める。
初めて会ったとき、ユニは無知だった。世間知らずと言えばまだ聞こえが良い方で、本当に「何も」知らなかったのだ。それこそ、人間は服を着ると言った当たり前の常識すら理解していなかった。常軌を逸しすぎていて、会話出来るだけまだマシだと、リトに思わせるほどだ。

「ですのに、今のユニは、知らないはずのことも知ってるです。見たことないのに、見たことあるです。」

上手く説明出来ないが、ユニは懸命にアブセルに訴えた。

「たとえば・・・アブセルさんは7歳までおねしょしてました、ですとか。」

608リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/10(月) 22:40:36
イスラ>>
斎賀みつきさんの声めっちゃ好きです!でも最近聞いてないんで自分の記憶してる声と変わったのかな?とかおもってドリフターズ1話検索して見てきちゃいました(笑)記憶してた声だった(笑)リトの声あんなイケメンに早々してくださってありがとうございます!てかこうして聞くと藍ちゃんの声とそれなりに似てる?という事はリトの声イメージってまさにコレなんですね(笑)
むむ、斎賀みつきさんの声も捨てがたい・・・でも今は藍ちゃんの声が熱い!ので藍ちゃんの声にします(笑)斎賀みつきさんの声はセナにでも譲ろう←何様 セナの声ってちゃんと第二成長来た男の子の声がいいんですけど女顔のせいか思いつかないんですよねぇ(˘-ω-˘ ).。oஇ

歩く危険人物・・・(笑)でも一応、闇系統の人以外には無害なので(笑)

癖なんだwww迷惑すぎるwww
リトが目覚めてセナと並べたらアブセル幸せすぎて昇天しそうですね←
それは慰めなのか・・・(笑)?
ジュノス、変態なだけで比較的常識人だと思ってたのに・・・(笑)
ジュノスが教えること取捨選択するからセナはいつまで経っても世間知らずなままなんだ←責任転嫁

楽しかったです(笑)
あのゲームってそれぞれヒロインごとにEDが用意されていて、ヒロインは全員攻略したんですけど、男性キャラは攻略出来ませんでしたねぇ、なかなか好感度MAXにならないんですよ。

フロンがどうしても悪者に見えない罠←
まぁ溺愛言うてもリトに対してフェミル並に過保護になって、アブセルの魔の手から護るくらいなので、変態が増えるわけではないので大丈夫です(笑)
因みに知識人なのでリトと話が合って、リトもそれなりにさり気なく懐きます← 言うなればうた〇リの嶺二と藍ちゃんのような関係性に←←

ジルに是非絡ませてやってください!
そこなんですよー、今ジル何やってるんだろ?←
方舟の後始末して、ヨハンに復讐して、ヨノに会って、今フリーなんですよね←
何か任務させたいんですけど思いつかない・・・

609シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:10:33
【虚空城】

「くだらんな」

強烈な刃の一振りが爆炎を吹き飛ばす。火炎は四散し、火の粉が上がる。
シデンは巻き起こる熱風の中、一歩も動くことなくイオリの斬撃を刃で受け止めた。

「黄龍様はその歪みを正されるおつもりだ。世界は清められ、新たに生まれ変わる。
今の人類も、貴様も、もうここで終わりなんだよ」

鍔迫り合いの最中、冷たく鋭い視線を交わし彼は言う。
すると不意にシデンの姿がその場から忽然と消えた。
どうやら己の身を電子に換えて空中に散らしたようだ。

「貴様らがどう抗おうと意味はない。失敗作は失敗作らしく、せいぜい地べたにでも這いずって大人しくしていろ」

どこからともなくシデンの嘲笑う声が聞こえる。
その刹那、無数の雷撃が稲光を煌めかせてイオリに襲いかかった。

610サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:12:26
【冥界】

「あっ、ちょっと待ってよリト君!」

先程の姉弟を探すと言って席を立つリト。彼を追いかけようと、サンディも慌てて後に続く。

と、その際あるものに気がついた。

「あれ?」

リトのことを遠くでじっと見つめている男性がいる。
リトは気づいていないみたいだが、男性自身もただ見ているだけで、声をかけてくることもなければ、近寄ってくる気配もない。
サンディは首を傾げた。

(誰だろう…?)

そうこうしている間に、男は踵を返してどこかに去っていってしまった。

サンディは小走りでリトを追いかけ、隣に並んだ。

「ねーねー、リト君。さっき変なおじさんがリト君のこと、じーって見てたよ。知り合いか何かじゃない?」

611アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:53:09
【ポセイドン邸】

始めこそ半信半疑で話を聞いていたアブセルだったが、思いがけず自分の話題を上げられると突如その態度を変えた。

「わー‼わー‼おまっ…!セイちゃんさんの前で何言って…っじゃなくて!どうして知ってる…って言うか!
そんなこと今はどうだって良いだろ‼」

慌てたようにユニの前で腕を振り、大声を出す。

しかし今問題にすべきは暴露された内容よりも、ユニのことだ。
当然だがアブセルは、そのことを誰かに言った覚えはなかった。
知っているとすれば母親ぐらいのものだが、まさかその人に直接聞いたと言うこともあり得ないだろう。

にわかには信じられないことだが、知り得ないことも知っているというユニの話は、本当に真実なのかもしれない。
もっとましな例えはなかったのかとも思うが…。

アブセルは取り繕うように咳払いをし、セナを見た。

「ど…どーすか、先生(セナ)…?
(ユニのこと)どう思います?」

612アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 20:02:28
リマ》斎賀さんの声いいですよね〜^^セナがあの声で喋ってくれたら個人的に凄いたぎる⬅

そうそう、この前初めてちゃんと歌プリを見てみたんですが…(新シリーズの1話)笑いすぎて腹が痛くなりました(笑)あれって毎回あんななんですか?
ツッコミ所が満載というか、完全に笑かしに来てて1話見ただけで疲労感が半端ない…ww

昇天するでしょうねぇ(笑)両脇にはべらせたりなんかしたら完全に召されるww
だってナディアってヒロインよりヒーローポジションの方がしっくりくるんですもの⬅
ジュノスは常識人装ってるだけですのでw
本当にね〜、誰か怒ってやって⬅

男性キャラにもEDが用意されてるのが凄い(笑)

本当?以前ジルのこと食べようとしたのに?(笑)
フェミル並みの溺愛って結構なデレテレだと思うんですがw
まあリトからしても数少ない頼れる人になりそうですね^^

ジルは虚空城でフェミルやノワールの娘の監視&身辺警護役とか?
もしくは世界を闇に閉ざすために各地の闇の封印解いてく役とか?

613メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:04:03
【闇の巣】

大翼による横薙の一撃と、それに付随する羽の散弾を避け切り、メイヤは短く息を吐く。
アグルとイスラが巣を抜けて塔へと向かってからの戦いは、熾烈を極めていた。

フードを外し、その背から闇の大翼を生やすクウラ。
彼は暗殺者の中でも呪術師、呪符士と呼ばれ、その戦闘スタイルは接近戦を得意とするメイヤとは真逆である。

しかし、今のクウラは得意ではない筈の接近戦でもメイヤを押していた。
距離を置き、息を整え再び攻撃を仕掛けるメイヤを翼の一薙で吹き飛ばし、クウラは声を上げる。

「闇の子供達……失敗作でも、失敗作と呼ばれる程度には能力がある。
そして、無尽蔵に闇が溢れるこの場所では、その能力は乗算的に増えるんだよ!!」

そして、青年にしては高めの声を咆哮へ変え、空へ羽ばたいた。
左手には呪符を右手には錫杖を。

両手を重ね、放たれるのは闇の光条。
メイヤは後方へと跳び、迫る光を避けるも、着弾地点が爆発を起こす。

更に、光条と共に舞い散った呪符から子鬼の群れが召喚され、メイヤへと殺到。
浅瀬へと着地したメイヤは、刃を鞘に収め、重心を低く取った。

そして、一歩踏み出すと同時に刃を抜き放ち、一閃。
銀弧が子鬼達を斬り裂き、どす黒い血と臓物を撒き散らすよりも速くメイヤは疾走。

対するクウラも急降下、錫杖に纏わりつく呪符が闇の炎を灯し、メイヤの持つ真白の刃と激突。
一瞬の交錯の後、闇の炎が散り、錫杖の先が斬り落とされる。

「左目、見えてないのに中々やるじゃないか!」

ただの棒切れとなった錫杖を捨て、クウラは反転し、後退。
今の一瞬で斬り落とされたのは錫杖だけではなく、メイヤの刃はクウラの胸元を大きく斬り裂いていた。

後退するクウラへと、メイヤもまた同じ様に反転。
振り切った刃の勢いのままに回転斬りを放つ。

横薙の斬撃は闇翼を半ばから斬り落とすも、それ以上は届かず。
クウラは追いすがるメイヤへと羽による散弾を放つが、メイヤは構わず前進。

羽の散弾が身を削り、幾つかが身体を貫通するもメイヤの疾走は止まらない。
踏み込みの速さ、初速ならばメイヤの方が圧倒的に速いのだ。

(距離が開く前に、捕らえるっ!!)

水面を泳ぐ蛇の様に、速度は落とさずに蛇行しながらメイヤは駆ける。
そして、強く、大きく踏み込むと同時にその姿が霞んだ。

「必殺ーーー……“神斬り”」

そして、刹那の空白の後。
真白の刃が鞘に収められると同時に。

翼を斬り落とされ、胸元を斬り裂かれ。
更に今の一閃で喉元を大きく裂かれたクウラは、水しぶきを上げ、水面へと落ちた。

広がる波紋と波がメイヤの膝元を揺らす。
そして、水面が穏やかになった頃。

メイヤは塔の方へ、ゆっくりと歩き出す。
その瞬間。

メイヤの背後、クウラが沈んでいった筈の水面が大きく揺れ、それに比例するかの様に水柱が上がる。

「第2、ラウンドだ!」

614メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:05:37
【闇の巣】

振り返り、剣の柄に手を伸ばすメイヤの視線の先。
水柱と共に姿を現したのは先程倒された筈のクウラだった。

「……もう一度、沈めてやる。」

その姿は端的に言えば異形、斬り裂かれた傷口から溢れる鮮血が闇色に変わり、クウラの身体を包む。
喉元から延びる闇は下顎を覆い、鳥の嘴の様にも見えた。

更に、胸元から溢れ出る闇は両肩、両脇へと流れ、その背には二対の翼が。
前腕の側面にも同じく翼が生え揃い、指先には鋭い鉤爪も見える。

異形の鳥人へ姿を変えたクウラへ、メイヤは視線を向け、後退。
動くのに支障が無い水嵩、足首程までの位置へと下がって行く。

それを追い掛け、クウラは空を駆ける。
そして、メイヤが足を止め、居合いの型を取ると同時に。

再度の激突と、交錯。
抜き放たれた真白の刃がクウラの胸元を、漆黒の刃翼はメイヤの左肩を斬り裂いた。

そして、メイヤは振り返ると同時に刺突からの斬り上げ、袈裟懸け斬りに続き回転斬りの連撃を放つ。
それをクウラは避け、弾き、受け流して一時後退。

後退と同時に羽の散弾を放つも、メイヤは身体を前方に倒して回避。
自然落下による運動エネルギーを踏み込みにより前面へ、爆発的な加速でクウラとの距離を詰める。

「紫電閃!!」

続いて放たれるのは閃光の如き斬り上げ、紫電閃。
半円を描く刃の軌道と、それを追う様に黒い血が宙に舞う。

それに続き、クウラの頬が返り血に濡れる。
胸元に続き左前腕を斬り落とされながらも、逆の手によるカウンター……鋭い鉤爪で貫手を放っていたのだ。

斬り上げの動作に合わして放たれた貫手はメイヤの左肩を貫き、メイヤは苦悶の表情を浮かべる。
しかし、振り切った刃を逆手に握り締め、クウラの左肩に突き刺した。

そして、剣を支えに前蹴りをクウラの腹部に叩き込み、反動と共に身を捩って貫手から逃れ、片手で剣を構える。
しかし、構えた剣はクウラの闇翼、円錐形へ変形したそれによって弾かれ、四つの円錐が右上腕、左脇腹、両の大腿部を貫いた。

615メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:06:59
【闇の巣】


「ーーっ!?」

先程とは比べ物にならない程の激痛に、メイヤは身を震わし、右手から剣が落ちる。
飛沫を上げて水辺へ落ちた剣を拾う事は叶わず、四カ所を貫かれたメイヤは動く事すら出来ない。

「手数、こっちの方が多いんだよ
ォ!」

元々動きの悪い左手は、左肩を貫かれた時点で完全に動かなくなり、他の四肢も動かせない。
そんなメイヤへ、クウラは凄絶な笑みを向けた。

「どうだ、痛いだろう?
バルクウェイで黒犬と戦ってから、闇の力を失ったのは知ってる。

以前なら、この程度の傷は闇が回復、治癒してた筈なのになぁ?
闇の力が無いお前は、そこそこ腕が立つ程度なんだよ!!」

そして、そのまま顔を近付け、空いた右手でメイヤの髪を掴み、引き上げる。
苦痛に歪み、うなだれる事すら出来ないその顔を見、クウラは話し続けた。

「お前と言う成功作を造る為に、何人死んだか知ってるか?
失敗作にすらなれず、闇に呑まれた奴らを知ってるか?

失敗作は精神、もしくは身体的に欠陥が出るんだ。
兄は精神を病み、俺は味覚と生殖機能を失った。

更には機械のリミッター無しじゃあ生きれない。
全く、クソみたいな人生だよ。」

斬り落とされた左腕は闇の力により再び手の形を無し、その手で胸元の機械の残骸……リミッターだったモノを剥がす。
それをメイヤの頭へ叩きつけ、クウラは笑う。

「お前は闇の力、異界の悪神の力を失ったと思ってる。
けど、それは違う。

この闇の巣では、異能の力……何らかの耐性がなければ息をする事すら出来ず、闇に蝕まれて死ぬ。
だけどどうだ?お前はここまで戦った、闇の力は出せずとも、ここまで動き回れたと言う事は……」

ドロリ、と頭部から流れる血を右手にこすりつけ、それを口元へ。
口元を鮮血に染め、そして。

「何らかの異能がお前にはある、そしてそれは悪神の他には考えられない。

死ねよ、その力を奪われて死ね!!」

鋭い鉤爪が伸びる左手でメイヤの胸元を、その心臓をえぐり出そうとした瞬間。

はらりと、メイヤの左目を覆う眼帯が落ちた。
そして、その左目……視力を失った筈の瞳から呪印が溢れ出し、クウラの身体を拘束して行く。

更に、その瞳を見たクウラは目を剥き、涙腺、耳鼻孔、口腔からどす黒い血を噴出させた。

「……死ぬのは、お前だ!!」

616メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:08:32
【闇の巣】

ーーー……サマエルの瞳。
それは所謂邪眼、呪眼と呼ばれる物であり、大きく厳しい制限と代償がある代わりに、瞳を見た者の命を必ず奪う致死の瞳である。
砂漠からバルクウェイへ戻り、闇の巣へ出発するまでの間。

メイヤはレオールやバッハに無理を言い、左目にソレを移植していたのだ。
処刑人の剣が集めに集めた異能の品々、その内の一つを視力を失った左目に移す事に躊躇いはなかった。

呪印に束縛され、即死の呪いを受けても尚、絶命しないクウラ。
もとより、呪術、呪符を扱う彼には耐性があるのだろう。

孔と言う孔から血を噴き出させ、絶叫を上げる彼の首筋へ、メイヤは動かない筈の左手を伸ばす。
そして、その左手……手甲に仕込まれた小型動力等々が起動。

補助動力により強化された握力で、その手に握るクウラの首を、頸椎を。
力任せに、へし折った。

鈍い破砕音と共にクウラの首が傾き、メイヤが手を放すと同時に身体を貫いていた漆黒の円錐が抜ける。

「俺の……勝ちだ。」

支えを失い、糸の切れた操り人形の様にクウラの身体は膝を着き、そのまま後ろへと倒れて行く。
その様子を見届け、メイヤは荒い息を吐いた。

動力仕込みの手甲は兎も角、左目の邪眼を使うつもりはなかった。
しかし、使わなければ死んでいたのは自分だっただろう。

荒い息は安堵のそれに変わり、メイヤもまた、座り込もうと腰を下ろそうとしたその時。
クウラが沈む水辺の周辺が泡立ち、水と混ざった赤黒い血が漆黒に染まる。

そして、一拍の間を起き、何度目かの水柱が上がった。
の余波でメイヤは腰から倒れ、仰ぐ様に前方へ視線を向ける。

(あれでも、死ななかったのか!?)

水柱が散り、黒い飛沫と共に姿を現すのは、漆黒の巨鳥。
闇色の大翼には所々真紅が混ざり、四対の瞳は黒焔を宿している。

三本の脚先には巨大な鎌の如き鉤爪が。
その鳥は、その名は。

「弥都の国鳥、大烏……
いや、八咫烏 、か!!」

617メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:09:46
【闇の巣】

ありとあらゆる闇が集まるこの場所は、闇を操る者にとっては無尽蔵に力が沸いてくるパワースポットである。
加えて龍穴遺跡も兼ねており、その両方の力を取り込めば……人は、人を超える。

巨鳥へと姿を変えたクウラ……いや、 八咫烏へ視線を向けながら、メイヤは力を振り絞り、立ち上がる。
疲労困憊、出血多量、身体は既に限界を超えていた。

それでも尚、拾い上げた真白の刃を構え、 八咫烏を睨み付けた。
勝つしかない、だがどうやって?

そんな疑問は剣閃と共に消え、刃の一閃は巨大な鉤爪と打ち合わされる。
しかし、返しの刃は空を切り、無慈悲な一撃がメイヤを貫いた。

三本の鉤爪が右腋下、右背面肩甲骨、左背面左肺を容赦無く貫き、貫通。
心臓に掠らなかったのは狙ったのか、はたまた偶然か。

口腔、鼻孔から血塊を噴出させ、メイヤは声にならない声を上げる。
たったの一撃で戦闘不能にされ、後十数秒もすれば死んでしまうだろう。

走馬灯すら見えない、視界が黒に染まる。
溢れ出す命の熱も感じ無くなり、メイヤは自分の死を察した。

そして。
黒瞳から意志の光が消え、動かなくなったメイヤの身体を、 八咫烏は湖の真ん中、闇が渦巻く奈落の底へ、放り投げた。

ーーーーー

光も、音も、熱も感じ無い無明の闇。
落ちて行くのか、上がって行くのか。

前後左右もわからない、自分の生死すらわからない此処は地獄か天国か。

暗黒の中を、メイヤは彷徨う。
負けて死んだ、そう考えれれば意外と気が重くなる事はなかった。

未だに残るらしい悪神も、それを欲したクウラも。
どうでも良い。

ただ、イスラやアグル。
レオール達や久しく顔を見ないナディアとバロンと言った面々の事は気になる。

いや。
何より気になるのは、サンディか。
恋心かはたまた別の何かか。

(わからない、けど………いや、この場所なら会えるかもな……)

618イオリ ◆.q9WieYUok:2016/10/17(月) 10:28:06
【虚空城】

周囲を囲む無数の雷光はシデンそのものか。
自らを電子と化し、物理的攻撃を無効にした上での雷撃は攻防一体とも言える。

(“コレ”が出来るからこその四霊、四神よりも遥かに強い……)

しかし、迫り来るそれらをイオリは刃の一閃で、再び巻き起こす爆炎の熱波で相殺。
蒼焔の翼が羽ばたき、周囲一帯に火炎の礫を撒き散らす。

「失敗したら、やり直す。
それは別に間違っちゃいねェ……

ただ、そこには人の意志も希望も、絶望も。
愛も無く、ただ機械的にやり直す、俺はそれが気に喰わないんだよ!!」

そして、撒き散らされた炎の礫は壁や床へ着弾したと同時にその姿を炎の蛇へと変え、炎蛇の一群がフロア一面、壁一面を這いずり回った。

「地べたを這うのは慣れてんだよ……だががな、大人しくはしてねぇぞ!!」

619ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/17(月) 10:59:23
【リマ》イスラさんの案でジルはフェミル達の警護か、目覚めつつある(?)ユニの奪取とかどうだろう?フロンはそれにコッソリ着いて行くけど途中でバレて……とかとか

イスラ》サンディはどんな感じで冥界から戻られます?
予定決まってなければ、メイヤと絡ませて頂きたく……】

620リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/19(水) 22:25:57
【冥界】

「は?俺に死んだおっさんの知り合いなんていないけど。俺じゃなくてあんたのこと見てたんじゃないの?」

知り合いでなければ--自分の容姿が性別問わず好まれやすい自覚はあるが、まさかこんなところにそんな変態がいるとは考えたくない。女であるサンディを気にしていた、とかなら納得出来る。

と言うかどちらにしてもどうでもいい話だ。リトはサンディのさした方角を確認することもなく歩みを進めた。

「・・・いた」

何故か随分と歩いた。広すぎる。此処は本当に敷地内なのだろうか。
結局手当り次第探す事の無謀さに気付いて取り敢えず屋敷に戻ろうとしたところ、ちょうどその方角からアンヘルが歩いてくるのが見えた。アンヘルもこちらの存在に気付くと軽く頭を下げてくる。

「あれ、片割れは?」

「姉のことですか?貴方に逢っていただきたい方がいるので、王に言われ探しに行きました。」

なお、暇だからとルイの仕事場に乱入し、こっぴどく叱られた挙句部屋から追い出すために役目を与えた、という事は伏せられた。

「俺に?誰?」

「詳しく申し上げますと貴方に逃げられてしまう可能性がありますので・・・」

「何それ・・・それよりさ、その語っ苦しい喋り方どうにかならない?」

仰々しくされるのは嫌いだ。自分の顔色を伺いながら接してくる邸の奴らを思い出す。

「貴方は客人なので・・・」

「いいよ。失礼な奴には慣れてる。」

アンヘルは少し悩むような素振りを見せたが、相手が望むならと申し出を受け入れた。

「で、あんたに聞きたいことがあるんだけど・・・」

「僕が答えられることなら。だけど・・・今は僕にも用があって。後でもいい?」

また、誰か迷い人が来たようだ。
屋敷に連れてくるようルイに言われた。リトは仕方ないにしても、最近やけに多い気がする。

「次元の軸が歪んでいるのか・・・」

多少の綻びは修繕してきたが、もはや追いつかないところまで来ているようだ。

アンヘルはそう呟くが、あくまで独り言であったようでこちらに話を続けることはなかった。
代わりに別の話題を投げかける。

「君達もくる?」

時間を持て余しているように見えたのか。
人を迎えにいくだけで面白いことも何も無いが、それでも構わないならと2人を誘う。

621リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/19(水) 23:15:44
ヤツキ>>
サンディと絡ませるなら冥界来てる感じで宜し?

ジルの案もらった!

イスラ>>
自分が美形だと自覚している姉(ナディア)弟(リト)、末恐ろしや←

え、滾るってそんなに好きなんですかwww
じゃあセナの声は斎賀さんで←

うたプリはギャグアニメです( • ̀ω•́ )✧
立派に毎回あんな感じで楽しいアニメです←
自分、乙女ゲーム原作のアニメって好きじゃないんですけど、うたプリ初めて見た時「何だ、ただのギャグアニメか」って思いましたもんね←
普通に会話してたのにいきなり歌い出すし、空飛び始めるし、素敵なファンタジーですよ←
藍ちゃんだけは違うって思ってたのに、前作で天使の羽出して空飛んじゃったんで残念ながら立派にうたプリの住民でした( •́ .̫ •̀ )
後キャラ全員がヒロインに愛のベクトルびんびん向けてるのが爆笑ですね。皆ヒロインに恋してるのに仲良しなんですよ←
ただ藍ちゃんはヒロインに恋してるなんて認めません。前作は全くそんな気配無かったし、今作で「このトキメキを君と感じたい」とか囁いてたけどあれはただの演出です。そう、演出です。
てか1話見て頂けたということは、カルナイの歌をお聞きになったのですね( • ̀ω•́ )✧カッコイイでしょ?藍ちゃんのグループ!初めて先輩グループ見た時「なんだこの見た目に全く統一性のないグループは」って思いましたけど普通にプロくてカッコイイです。歌がカッコイイです。格が違いますね!

召されるwww召したところ見てみたいwww
あー、たしかにwww言うても実際ナディアはリトにとってのヒーローですよ〜。口が裂けても本人は言いませんが。←
あれ、逆だったwwwあれ?www
他人任せwww

そこはほら、平等に←

なんか根はいい子なんじゃないかって思っちゃうんですよね(笑)
マジすか(笑)気付かなかったwww
数少ないってのが悲しいwww

お2人の案が全て素敵なので、全部引っ括めて、闇を解いていく任務の合間にフェミル達の様子を見に一旦虚空城へ戻って、その際にユニ誘拐の任務を追加で受けることにします!←
フロンはユニんとこ行く前に1回絡んで、その後ジルを尾行して、ポセイドン邸でヨノに対するジルの気持ちに気付いて暴走するってのはどうでしょう?←

622ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/19(水) 23:35:23
【リマ》知った顔、と言うか血筋やら血縁者やら居た方が動きやすいかと思ってさ、個人的にアブセルvsジルも見てみたい←
イスラの返答次第だけど、絡めるならメイヤも冥界入りで!】

623ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/20(木) 00:24:52
【虚空城】

「兄さま・・・」

いくつかの任務を終え久しぶりに本拠地へ戻ると、目敏くジルを見つけたフェミルがいそいそと近づいてきた。
ジルがその姿に破顔し身を屈めると、広げた腕の中にすかさず収まってくる。

「ただいま、僕の可愛いお姫様。いい子にしてた?」

「フェミル、いい子。メルのこと、ちゃんと見てた。」

メルフィ。その名を聞いてジルはふと視線を奥へ向けた。
顔だけを覗かせこちらの様子を伺っている少女と目があった。闇の王子と吸血鬼の姫の血を引く少女は、あらゆるものを解く鍵として利用できるらしい。最近一つ目の封印を解くため連れ出されていたが、どうやら戻ってきていたらしい。

ジルは少女へ優しげな表情を向けた。

「メル、君もおいで。」

名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、メルフィはビクリと身を震わせる。

「大丈夫、怖くないから。抱きしめてあげる。」

言われ、メルフィもおずおずとしながらも近づいてきた。
遠慮がちに抱きついてきた少女を、ジルは笑顔で受け止めながら頭を撫でてやった。

「お仕事、ちゃんと出来たんだね。よく頑張ったね。偉いよ。」

「メル、偉いですか?」

「偉いよ。こんなに小さいのに、ちゃんと務めを果たしてる。」

ご褒美、と言っておでこに口付ける。するとフェミルもせがむので、彼女には頬にしてやった。
可愛い妹たち。出来ればこのままずっと一緒にいたいが、悲しきかな、またすぐに出なければならない。

最近任務を立て続けに申し付けられて溜まっているのだ。二人の警護もその一つだが、これだけを遂行していることは許されない。

「兄さま、またお出かけするの・・・?」

「妖精さんを迎えにいくんだ。今度は可愛いお姉さんが来るよ。」

「妹の次・・・姉さま。フェミル、家族がいっぱい。」

「うん、いっぱいだね。」

虚空城に常にいるのは今までゼロとフェミルのみだった。最近メルフィが増えて、フェミルにとっては家族が増えたようで嬉しいようだ。
立て続けに少女を攫う命を受けている自分には堪ったものではないが。

(フェミル、お前のためなら何だってする・・・)

妹に不自由をさせないため身を穢した。妹に安心出来る居場所を与えるために、ゼロに下った。妹が黄昏の花嫁に選ばれたことは誤算だったが、このまま渡すつもりもない。
ゼロがユニに興味を持った。ゼロの望む未来を手に入れるために必要な存在であるとしか聞いていないが、上手く行けばフェミルを解放できるかもしれない。花嫁を交代できれば、フェミルを助けることが出来る。

フェミルを救えるのなら、他の何が犠牲になってもいい。

胸の奥に感じる痛みはきっと気のせいだろう。
ジルは自分の中に潜む幽かな罪悪感に目を背け、気づかぬふりをした。

【因みにジルの声は柿原徹也です←】

ヤツキ>>
【うん、動きやすい(*ˊૢᵕˋૢ*)

アブセルvsジル、いいね!やろう!!←勝手に決める

おけ!GO出たら迎え行くわ(笑)】

624サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/20(木) 19:34:44
【冥界】

「ついてって良いの?」

リトと共に敷地内を散策した後、ようやくアンヘルという少年を発見した。
また客人が来るらしいとのことを少年の口から聞いたサンディは、少し考えて笑顔で答えた。

「ここがどういう仕組みになってるかちょっと興味あるし、お言葉に甘えようかな」



【ヤツキ>こっちもどうやってサンディを戻そうか迷ってたので、是非お願いします!

リマ>自分もアブセルvsジルやりたいです!

ナディアやリトほどの美形なら自覚もするでしょう(笑)

柿原さんかぁ…最初うーんって思ったけど、ジルの台詞で脳内再生してみたら、ぴったりだった!⬅

マジでギャグアニメだったのかww空とぶの見たいww
本当みんな何であんなにヒロイン好きなんでしょう?(笑)男達にされるがままでヒロイン可哀想w10曲作れとか完全に過労死させる気だしww
でもやっぱり歌は上手いしカッコいいですね、画面見ると何か笑ってしまうけどww
何気に二話も見ましたが、藍ちゃんのグループ仲悪すぎてびっくりしました(笑)そして嶺二がいい人過ぎて涙が…⬅


召したら二度と戻ってこれないから駄目です(笑)
リトは相変わらず素直じゃないw因みにナディアはアブセルにとってもヒーローで憧れらしいです⬅
ジュノスも幼少時代まともな教育受けてないから色々おかしいんですw

男女平等w素敵だww

いい子ではないんじゃないですかね(;´`)恋に恋してるだけですし、自分のことしか考えてないし。なので容赦なくやっちゃってください⬅
リトは…これからですよ(笑)これからそういう人を沢山つくってけば良いんですよ^^

了解です!それでいきましょう(´∇`)

625リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/20(木) 23:16:50
イス