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Key Of The Twilight

776ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/20(木) 01:12:12
【黄昏の塔】

停まることない恒久の破壊衝動。
闇とは本来、この世界の防衛プログラムである。

言わば闇の巣とはその中枢である。
かつての黒十字を背負う者達は世界の防衛プログラムに殉じたとも言えるだろう。

無尽蔵に溢れ出る闇を使役する恒星の女王と、それに従う黒き獅子。
今やその片割れは神刀により斬り伏せられ、闇を持ってしても蘇る事は無い。

恒星の女王……ステラは目を見開き、迫る光刃の軌跡がその瞳を照らす。
逆巻く疾風と火炎、鎌首をもたげ、姿を現す大蛇の数は八つ。

その全てが牙を向き、ステラの身体を斬り刻むのは僅か一瞬。
障壁も、闇の鎧もまるで無かったかの様に。

僅かに聞こえた風切り音と共に、四肢を、下半身を、首と胸元だけとなったステラは地に落ちた。
生々しい音を立て落ちた身体からは漆黒が溢れ、傷の断面からは触手が這いずり回る。

半開きとなった口腔からは呪詛が漏れだし、闇が呪印を象っていく。

「まだ、死ねない……約束を、あの時交わした約束を……」

しかし、その呪印は叢雲の剣とは別の神刀により切り捨てられ、闇霧となって霧散した。
霧散しても尚、再び形を成そうとする闇は結晶となりその動きを停め、黒水晶が月明かりに輝く。

もがき、呪いにも聞こえる言葉を紡ぐステラの眼前には、神刀を手にしたヤツキの姿。

「大丈夫だ、独りで逝かせはしない。
第二候補、スペアプラン……闇の王女。

流星の双子、スピカとレグルス。
二人の魂は我ら黒十字と共に。

恒星となって輝いた命の意味は、しっかりと此処にある。
だから、安心しろ。」

所謂達磨となったステラを片腕で抱き上げ、ヤツキは言葉を紡いだ。
その声は静かで、優しい。

「俺達が100年の時を越え、この世界に蘇った意味。
それは、今この時の為。」

見れば破壊衝動の塊と化していた周囲に満ちる闇はその動きを弱々しいものへと変え、段々と黒水晶へ姿を変えている。

「俺は彼女の魂を連れて行く。
だから、“お前達”はそれぞれの役目全うしろ。」


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