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Key Of The Twilight
676
:
リト
◆wxoyo3TVQU
:2016/11/28(月) 23:04:55
「一族を見返してやるのが夢だった。」
ヨハンは続ける。
「俺の母はまだ少女であった時に俺を身篭った。相手は知らない。教えようとしなかったらしい。祖父母は世間にバレることを恐れ、俺が生まれる前に母を無理矢理嫁がせた。秘密を口外しない条件で、かなり年の離れた男に娘をやった。同じポセイドンの血筋ではあるが、最下層の家系だった。」
姑にあたる女は傷物の娘を嫁に貰ったとヨハンの母を冷遇した。夫に当たる男は、母がいつまでたっても心を開かないことに腹立っていた。勿論血の繋がりのないヨハンには無関心だった。やはり自分の子は欲しいのか、母に無理矢理相手をさせていたが、不思議と子宝には恵まれなかった。
「出世など出来ようもない家系だ。加え、俺達母子を見る世間の目は冷たかった。いくら秘密にしても完全には防げない。何かあると、勘づかれていたのだろう。」
そして、幼心に対抗心が生まれた。自分達を嘲笑う奴らを見返してやりたかった。母が自分を生んだのは決して不運なことではない、自分が母の誇りになりたかった。
「無我夢中で生きた。誰よりも優秀であろうとした。そして手に入れた、今の地位を。」
嘲笑ってきた奴らが自分に平伏し機嫌をとろうとする。爽快だった。復讐を成し遂げた。しかし、同時に大切なものを見失ってしまったのだ。
「・・・あんたが奥様と結婚したのは、その名誉の為?」
自分の母親を"母"と呼ぶことが出来ないのは、間違いなく自分達がリトを拒絶してきた結果だろう。
それでもヨハンがミレリアを利用したのではないかと危惧するのは、どんなに拒絶されようと、虐げられようと、母親への情があるという証拠だ。安心した。自分とは無理でも、ミレリアとの仲はこれからでも修復できる余地がある。
「お前は優しい子に育った。」
自然とヨハンの口元に笑みが浮かぶ。
「俺もミレリアも、召使の者ですらお前を蔑ろにしてきた。しかしお前が歪むことなくまともに育ったのは・・・ナディアやヨノのお陰か。」
はじめはリトとの接触は一切禁じようとしていた。リトは生まれながらにして遅からず命を落とす運命であったから、彼に情を抱けば失った後に娘達が傷つく。しかし、今となっては二人が周りの目を盗んで弟に会いに行くのを見逃していて良かったと思える。両親が与えてやれてやれなかった分、娘達がリトに愛情を向けてくれた。あの子達が自分に似なくて良かったと思う。
「たしかに、地位を求めてミレリアに近付いた。しかし、いつしか俺は彼女に心奪われていた。」
ミレリアはとても眩しくて温かい太陽のようだった。彼女と居ると心が休まった。とても愛しかった。気付けば地位とは関係なく彼女を欲する自分がいた。
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