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Key Of The Twilight

732ジル ◆wxoyo3TVQU:2017/02/12(日) 23:06:34
【ポセイドン邸】

(しま…っ)

迂闊だった。背後から襲いくる式神の気配に気付くのが遅れた。
付け焼き刃で発した突風で辛うじて式神を弾き飛ばす。しかし鈍い痛みが。目を向ければ、奴の爪が腕を微かに抉っていた。

「大事な商品に何してくれてんの・・・」

ジルは呟く。それが冗談なのか本気なのかは分からないが、その顔からは確かに苛立ちのようなものが伺えた。

「君って本当野蛮だよね。お姫様を奪還するにも、もう少し綺麗なやり方があるんじゃないの?ほら、その子嫌がってるよ?」

アブセルの元に戻ったとしてもユニは述に掛かったままだ。そのには必死でアブセルの手から逃れようとするユニの姿があった。

「これじゃあどっちが悪役か分からないね。」

軽口を叩きながら、しかしジルは思う。

(最悪・・・)

今のこの状況は自分が僅かに隙を見せたのが原因だ。本当はもっとスマートに行動出来たはずだ。
あの時、自分には迷いがあった。ユニを連れていくことに?・・・いや、もっと前。ヨハンを手にかけた時から、何かモヤのようなものが自分の中から消えずにいる。
しかし、今はモヤの原因を探している場合ではない。ジルは何とか本来のペースに立て直そうと、アブセルに笑みを向ける。

「ねぇ。今葬儀に出てる彼、君の王子(リト)じゃないでしょ?」

自分の不調を悟られぬように。

「可哀想に。折角抜け出せたのに、リトは君のせいで地獄に戻されて、そして今生死をさ迷っている。君がリトを不幸にしたんだ。」

態とアブセルの心を抉りつつ、そして甘い言葉も忘れずに。

「リトが奇跡的に目覚めても、もう君のことを赦してはくれないだろうね。でも、その子(ユニ)を渡してくれるなら、君が彼に嫌われないよう手助けをしてあげてもいいよ。彼だけじゃない。ナディアお姉さんも、ヨノも、本当は内心君に怒ってる。本物の闇の王子様やポセイドンのお姫様だって君に呆れてるかもね。僕は君が何を恐れているか知っている。皆に見捨てられないよう、僕が手伝ってあげるよ。」

それがどう転ぶかは分からないが、やらないよりはマシだろう。


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