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Key Of The Twilight

643ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/28(金) 19:42:31
【霊園】

「・・・君に、僕の何がわかるの?」

必死に懇願するフロンへ、ジルは声色を変えることなく問いかける。とても単調で冷たい響きだ。

「僕の幸せって何?君なんかに何が出来るの?」

ジル1人であったなら何とでもなった。フェミルがいたからこそ、辛い道を歩むことになった。たしかに、それは事実だ。
しかし、フロンは勘違いしている。

「仕方ないから特別に教えてあげるよ。"フェミルの存在"こそが、僕の幸せだ。」

その辛い道を選んだのは、仕方なかったからではない。ジルがそうしたかったのだ。
あの時フェミルはまだ凄く小さくて、たとえば子無しの家庭の中で、あのくらいの年頃の子を望む夫婦は沢山居ただろう。
贅沢はさせてあげられなくても、ごく一般的な温かな場所で、新しい家族に囲まれて生きる。新たな居場所を与えてやることは容易かった。

しかし、それはジル自身が耐えられなかった。
残された唯一の家族を失いたくなかった。
まだとても幼かったフェミルはきっと新しい両親を本当の家族と思い込み、ジルの事なんて忘れてしまう。耐えられなかった。両親を亡くした悲しい記憶など忘れてしまった方がいい。それがフェミルにとっての最善な道であると分かっていたけど、どうしても出来なかった。

被害者はジルじゃない。フェミルの方だ。

「僕は自分の幸せの為にフェミルを縛った。」

そこでようやくジルはフロンへ振り返る。自嘲気味な表情を浮かべて。

「ゼロの所はいいよ。フェミルに寒い思いも、空腹も味合わせずに済む。あの子にとって安全な居場所。僕も変態に抱かれることも、好きでもない相手を抱くこともせずに済む。最高だ。最低限の命令にさえ従っていれば多少の悪ふざけも赦される。君に心配される必要なんてない。僕は今幸せだ。僕からフェミルを奪うなんて赦さない。フェミルを捨てて君を選べ?笑わせないでよ。」


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