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Key Of The Twilight

833シデン:2018/05/11(金) 07:04:01

それもこれも、惑星を包み込むようにして形成される外郭によって、世界が閉じられようとしているのが原因であった。
もっとも、その事実を知っているのは、都市の中でも極小数の者に限られていたが。


…知らずに済むのなら、それもまた良いのかもしれない。

間もなく世界が終るなどという、受け入れがたい運命を突き付けられて、平常心でいられる人はきっといないだろうから。

少なくとも、この異変も一時的なのものだと、直ぐにいつもの日常が戻ってくると、先の展望を期待している間は、人々が妙な気を起こすこともない。
事実、大規模なパニックや暴動が起こったという報告はまだされていなかった。

だがそれも、危うい均衡の上に成り立っている仮初めの平穏に過ぎないことに違いはない。
何が引き金となって、その均衡を破ることになるかは誰にも分からないのだ。


「ママ…、何だか怖いよ…」

街の中心部。
いつもは溢れかえるほどの賑わいを見せる街の往来も、今は目で数えられるばかりしかいない。
その中に混じって、隣にいる母親の服の裾を握りしめ、不安げに訴える少女がいる。
それに対し困惑する母親は何も言えない。だが安心させるように怯える我が子の頭に優しく手をおいた。

その時であった。

「見ろ!」

同じく街路に佇んでいた男が何かに気づき、叫び声を上げる。
そこにいた決して多くはない数の人々の足が止まり、一斉に彼が指差す先、上空へと視線が向かう。

「空が…!」

そこには、暗い影を落としていた空が、血が広がっていくかのように赤黒く染まる光景があった。
同時に、未完成の外郭の隙間から僅かながらに差し込まれていた外界からの光も、まるで月が欠け落ちていくかのようにゆっくりと、だが確実に、人々の頭上からその姿を消していった。


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