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Key Of The Twilight
278
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/14(日) 20:39:03
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「……」
先程までいた部屋を背にして、ジルは無言で佇む。
泣きながら何度も謝り続けるミレリアに、結局何も返せず出て来てしまった。
把握していない事実まで出て来たものだから、頭がついていけず混乱している。
整理するのも面倒だ。
「…あなた…」
そんな彼に、新たな声がふりかかる。
顔をあげればそこにはミレリアの娘、ヨノの姿があった。
「…」
本当、何もかもが面倒。
何か取り繕うこともせず、ヨノの声を無視してジルはその場を去ろうとする。
「ジル…?」
しかし続く彼女の言葉に、ジルはその足を止める。
今、何て…?
彼の動きを肯定ととったのか、ヨノは更に言葉を繋げた。
「ジル…ジルでしょ?あなた…」
何故こんな所にいるのかは別として、目の前にいる男の子を、ヨノは知っている。
成長した彼の姿に幼い頃の面影を見た。
「…」
観念して振り向いたジルへ、ヨノは駆け寄る。
「今まで何処にいたの?お母様が貴方をずっと探して…」
言いかけたところで、ヨノはハッとした。
「…泣いているの?」
彼の顔に滲むそれを、ヨノはそっと指で拭った。
何だこの娘は。いきなり現れた男に警戒することもせず、むしろ気にかけるなんて。
「…不思議だ…」
頬に触れる彼女の手を取り、ジルはその顔に笑みを浮かべた。
「ナディアお姉さんは覚えてなかったのに…」
本当、調子が狂う。
思えば彼女は昔からそうだった。いつも何処か抜けていて…
今ではもう遠い日。”遊びに行くんじゃないよ”と困り顔を浮かべる父親に無理を言って、仕事で行く先々にくっついて回っていた。その中でも頻繁に訪れていた大きなお屋敷に住んでいた、二人の可愛らしいお嬢様。奥様のミレリアはとても優しい人で、勝手に付いてきただけの自分を気遣い、退屈しないようにと、お嬢様と会わせてくれて、一緒に遊んでくれた。
自分は覚えてる。あの時が一番楽しかったから。
彼女が覚えてるとは思ってなかったけど。
「ヨノ、一つお願い聞いてもらえる?」
「何?」
抱きしめてもいい?
その言葉を言う前に、ジルは彼女の体を抱き寄せていた。
あの時は彼女の方が背が高くて、いつか追い抜いてやるんだって、むくれていたっけ。
今では頭一つ分くらい小さい彼女、一瞬硬直したものの、すぐに受け入れてくれた。
「会えて嬉しい。だけどもうサヨナラだ。」
「どうして?また以前のように皆で遊びましょう?」
「もう遊ぶ歳じゃないよ。」
「それもそうね、でも私は貴方に此れからも会いたいわ」
ジルはヨノの体を離す。
自分を見上げる彼女の顎に手を添え、そっと顔を近づける。
しかしその唇に触れることなく、ジルは顔を離した。
綺麗になった。記憶の中にいた彼女よりずっと…
「ヨノ」
自分は何を期待していたのだろう。
彼の呼びかけに何もなかったと悟ったヨノは、反射的に目を閉じてしまったのが恥ずかしくなって顔を赤らめる。
そんな彼女の仕草にジルはクスリと笑った。
「お願いを聞いてくれたから、調子に乗ってもう一つ。
僕の名前を呼んで。」
「ジル?」
「今じゃないよ。
もし仮にまた再会出来たなら、その時はもう一度、僕の名前を呼んで欲しい。僕が僕でいられるように、僕が僕でなくなってしまっていたなら、元の僕に戻れるように、君だけは、僕を忘れないで」
その時まで、さようなら。
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