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Key Of The Twilight
706
:
ユニ
◆wxoyo3TVQU
:2017/01/16(月) 20:25:15
【ポセイドン邸】
リトが邸に戻ることを頑なに拒んでいた理由は、彼を追いかけてここまで来たことで容易く理解出来た。
両親すらリトを邪険にするのだ。それが邸の者達の態度に反映されるのは無理もない。分かってる。わかってるけど・・・
「・・・っ」
その場にいるのが苦しくなり斎場をあとにしたユニは宛もなく廊下を歩いていた。しかし、耐えられなくなりその場に膝をつき泣き出す。リトは幼い頃からずっとあの敵意の渦の中にいたのだ。あの性格だ、きっと何でもない風を装って、独りで耐えてきた。
「リト様・・・っ」
その結果が今のあの姿。リトは我慢することに疲れて現世に戻ることを拒んでしまった。リトは帰ってきてくれるのだろうか。たとえ帰ってきてくれても現実が変わらないのであれば辛すぎる。
「大丈夫?」
顔を覆い蹲っていると、何処からか声をかけられた。顔をあげると、1人の青年が気遣わしげに自分を見つめている。視線が会うと彼は人懐こそうな笑顔を浮かべる。
「こんにちは、妖精さん。どうして泣いているの?」
「あの・・・」
優しい声に柔らかな表情。この人はとても優しい人。だけど何故だろう。彼の奥にどこか薄気味悪さを感じる。
「何でも・・・ないです。」
「あぁ急に声をかけてごめん、驚かすつもりはなかったんだ。そんなに怯えないで?泣いてる女の子を見ると放っておけなくて。」
嘘だ。
「・・・あなた、嘘つきの顔をしています。ユニが泣いていたからではないですね?」
ユニは青年を見据える。ぼんやりながらも彼の心が視えた。
「ユニに・・・ご用があるですか?」
その言葉を聞き、青年は一瞬虚を突かれた顔を浮かべる。しかし、それはすぐに興味深げな好奇心に満ちた表情へ変わった。
「へぇ、分かるんだ。うん、君の言う通りだよ。お願いがあってきたんだ。」
「お願い?」
「うん、君の力が必要なんだ。一緒に来て欲しい。」
来て欲しいと言われ易々とついていくわげない。ユニが警戒していることを察したのか、はたまた最初から予想していたのか、青年はクスリと笑い続ける。
「僕は君の願いを聞いてあげられる。・・・ちょっと違うな、僕達と一緒なら、君は自分の願いを叶えられる。」
たとえば・・・
「リト・・・とか。」
その名を聞いてユニの動きが一瞬止まる。そんなユニの反応に青年は笑みを浮かべた。"引っかかった"
「君が一緒に来てくれるなら、僕がリトに自由をあげる。悪い話じゃないと思うけど。」
ユニはジルの目をじっと見つめる。・・・嘘は言っていないようだ。
「本当に、リト様を解放してあげられる?」
「うん。君が一緒にいたいって言うんなら、あの子も連れていけばいい。僕達は君たちを束縛したりしないよ。ただちょっと、手伝って欲しいだけ。」
ユニは完全にこちらの話に興味を持っている。あと一押しで、落ちる。
「リトもきっと喜んでくれるよ。」
その一言でユニの顔がパッと晴れた。成功。
「リト様喜んでくれますか?ユニのこと褒めてくれるですか?」
「うん。だって君がリトの願いを叶えてあげるんだもの。誰も叶えてあげられなかった願いを。だから・・・」
ジルはユニへと手を伸ばした。こっちへおいで。
ユニはもはやジルの言葉に疑問など持っていない。嬉しそうに、ジルの手をとるべく自らも手を伸ばした。
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