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Key Of The Twilight

731ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/02/05(日) 20:13:36
「……全く、イスラらしい答えだな。」

問い掛けに対する答えからは、言葉通りイスラの性格を、本質を感じ取れる。
生真面目な正確はそのままに、多少年を取った彼の姿に、ヤツキはふと、笑った。

「語れる程の思い出話も無く、俺とイスラの間にあったのは戦いの記憶だけだ。
だが、いつかどこかで……酒を飲みながら語り合うのも良いだろうな。」

浮かべる笑みは柔らかく、100年前では見せなかった表情だ。
目に宿る光も暖かく、先程の冷たい声と視線とは真逆である。

「俺は世界に絶望し、希望をイスラへ託して死んだ。
預けた希望を、返して貰うぞ。」

刀に手を置いたまま、ヤツキはイスラへ歩み寄る。
そして、握り拳でイスラの胸元を力強く叩いた。

「俺達が100年の時を遡り、蘇った意味。
それは、今この時の為。

夜の闇を照らすのは月の光。
そして、月を照らすのは太陽だ。

俺とイスラ、月読と天照の力で再び闇に包まれつつある世界を、未来を。」

そして、柄にも無くお喋りが過ぎたと笑みを苦笑いへ、そして表情を真剣なモノに変える。

「行こう、俺達の命を全うする為に。」

ーーーーー

塔の麓、闇の巣とは真逆。
黄昏の塔の最上階の更に上、その頂上の空気は驚く程澄んでいた。

塔の最上部は地上を包み込みつつある外郭を突き抜けており、頂上部分は星明かりに照らされている。
冷たく澄み切った空気は高揚する気を引き締めた。

「あの時とは役者の数も役割も違う。
だが、やる事は同じだ。

世界を闇に閉ざそうとする者を倒し、世界に光を取り戻す。
その後の事はこの時代の者に任せれば良い。

100年前の残滓は、100年前の者が振り払う。
それが、俺達が今の時代に蘇った意味だろう?」

星明かりに照らされる頂上で、ヤツキは隣のイスラへ声を紡ぐ。
視線の先には闇の王女、恒星の名を頂く女性と巨大な黒獅子。

「闇の王子、セナ。
そのスペアプラン、第二候補として選ばれたスピカとレグルス。

二人は安定性に欠けていた、総合的に見ても、セナの方が器としての素質は遥かに高かった。
だが、可能性、適応性、伸び代はスピカとレグルスの方が上。

目の前のアレはその二人の完成系だ。
100年前の結末は知らないが、闇に纏わる誰かしらと戦っただろう?

ソレと同等かそれ以上。
だが、俺達ならばやれる、いや、やらなければならない。」

ヤツキは刀を抜き、構える。

「太陽と月、その光は決して交わらない。
だが、もし、交わる事があるならば。

奇跡だって起こせる筈だ!!」

そして、刃を一閃。
剣閃と共に結晶の華が咲き乱れ、流星となってステラとレグルスへ駆け抜けて行く。

「行くぞ、イスラ!!」


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