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Key Of The Twilight
772
:
フロン
◆Hbcmdmj4dM
:2017/04/16(日) 22:30:26
【ポセイドン邸】
ジルの行動に驚くでもなく、また弾かれた短剣を一瞥することもなければ、フロンはゆるりと首を動かし、真っ直ぐにジルを見据える。
「…ええ、もちろん分かってますよ。私、ジルさんのことずぅっと見てましたから…」
ジルの言う「分かる」とは、どこかニュアンスの違う響きを感じさせて、フロンはその顔に暗い笑みを浮かべている。そして…
「だから、その人(ヨノ)はジルさんには似合いません」
はっきりと言い放った。
ずっと彼のことを見ていたから分かる。
確かにジルは無関係の人間を巻き込むような人ではない。しかしだからといって、その人達を積極的に庇うかと言えば、それも違う。
彼が自身の労力を惜しみなく発揮する時、それは決まって妹のフェミルが関わる時だけだ。
なのに今、ジルはフロンの知らない一面を見せている。上部だけ取り繕ってはいても、焦って、苛立っているのは明らかで、本来ならばその感情の起伏を可能にする人物こそフェミルである筈なのだ。そうでなければおかしいのだ。
しかし今目の前にいるのは彼女ではない。ジルの背に庇われる、あの娘をおいて他にいない。
…あの女は一体なんなのだろう。
フロンは静かにその場から足を踏み出した。
「以前…ジルさんとお話しましたよね?その時に気がついたんです。…やっぱりジルさんは私にとって特別なんだって。今まで好きになった人の中でも一番だって」
一歩一歩、揺るぎない足取りでジルの側へと歩みよる彼女に、引く気など更々ないようで。
フロンは熱の籠った瞳でジルを見つめて、
「ねえ、ジルさん。フェミル様にもその人にも、ご自分のこと、何も話してないんでしょう?
私だけですよ。ジルさんの汚い部分を知っているのは。知った上でそれを含めたあなたの全てを愛しているのは」
息のかかる距離。そこまで来ると、何気なく手を伸ばす。何か繊細なものにでも触れるかのように、ジルの頬にそっと掌を添えた。
「だってそうでしょう?他の誰があなたの汚らわしい本性を愛せると言うんですか?まして自分の父親を殺した男のことなんて…」
そうして狂気染みた笑顔を見せる、それこそが彼女の本性か。フロンは小首を傾げると、二人の反応を楽しむかのように、態とらしい口調で追い討ちをかける。
「うふふ、そうですよねぇジルさん?その女の人のお父様、あなたが殺したんですものねぇ?」
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