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Key Of The Twilight

823ナディア他:2018/04/17(火) 00:15:26
【ポセイドン邸】

「で、君たちは出ていかないの?」

先程まで騒ぎ立てていた輩は出ていったものの、代わりにその場に残った人物にジルは面白く無さげに問いかける。

「当然、あんたに話があるからな。」

「怪我人がどうのって言ったのはお姉さんじゃない。」

「固いこと言わないの。」

不平を述べるジルの態度など気にすることなく、ナディアは鏡台の椅子を手繰り寄せベットの傍らに腰を下ろす。

「ジル。」

不意に発せられたその声に思わず体が反応する。ナディアから自分の名前が出るとは思っていなかったのだ。
応龍として彼女の前に立った時、彼女は自分のことを覚えていないようだった。だから自分も敢えて知らない風を装ったのに。

「・・・ヨノから聞いたの?僕の名前。」

「可愛げのないこと言うなよ。あんたはヨノだけの知り合いじゃないだろ。」

言ってナディアは目を細める。

「すぐに思い出せなくて悪かったよ。何年も経ってたから・・・なんて言い訳にはならないよな、今のあんた、おじ様にそっくりだし。」

「失恋した苦い思い出を記憶から消し去ったんじゃないの」

「ほんと可愛くない」

こいつ、一発殴ってやろうか。
いちいち皮肉ばかり述べるジルに物騒な考えが浮かぶも、怪我人だからと抑える。横道に逸れすぎて本題に入れなくなるのはまずい。

「・・・ありがとうな。」

唐突にナディアなら紡がれた言葉に、ジルは怪訝な表情を浮かべた。

「僕はお礼を言われるようなことはしてないけど」

「リトのことだよ。ずっと気にかけてくれてたんだよな。」

確信めいたナディアの言葉。何故そう思うのか。自分は傍目から見ればリトに嫌がらせをしているようにしか見えないはず。そう見えるように振舞ってきた。

「何で・・・て、理由を聞いても教えてくれないんだろうな。」

言ってナディアは笑う。
そんな彼女の様子に誤魔化しても無駄だろうと察し、ジルは小さく溜息をつく。
そして不貞腐れたように再び窓の外へ顔を向けた。


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