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Key Of The Twilight
329
:
ベルッチオ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/29(木) 22:28:33
ナディアは言った。あんたはリトに冷たかった、と。
確かにそうだったと思う。
リトに対しては、一線どころか二線も三線も引いて接していたから。
それは"情が移らないように"とか、"彼の行く末を知る者としてのけじめ"とか、そう自分自身に言い聞かせていたが。
正直な気持ちを言うと、自分は心のどこかで彼のことを恨んでいたのかもしれない。
もともとヨハン達家族の関係にはどこか危ういものがあった。
ヨハンとミレリアの間には少なからず蟠りがあったし、娘…主にナディアも父親に対して不満を抱いている様だった。
それがリトが産まれたことで、より顕著な形となって表面化しようとは誰が予想しただろう。
リトを巡って家族間の溝は深まり、修復不可能なまでに軋轢が生じた。
勿論それはリトのせいではないが。しかし結果として家庭内に新たな確執を生み、ヨハンを更に狂わせる原因となった彼を、たぶん自分は許せなかったのだと思う。
「坊っちゃんや奥様のことだけではありません。
私はトーマ様ご家族の事件を含め様々な汚行に関わり、旦那様に手をお貸ししてきました」
更に老翁は吐露し続けた。
ヨハンの権力志向は老翁も危惧しているところがあったが、その異常性は次第に目に余るようになった。
我欲の為には時に強引とも思える行為…賄賂や暴力に訴えることも屡々であった。
止める機会はいくらでもあった筈だった。
いや、実際に口を出すこともあったが、最終的に自分は彼の指示に従い続けた。
こんなことを続ければ、いずれ破滅するのは目に見えているのに…だ。
彼の望みを叶えることが、自分が彼にしてあげられる唯一の罪滅ぼしだとでも思ったのだろうか。どんな形であれ、彼に頼られることが嬉しかったのだろうか。
…本当に、自分という人間はどこまで愚かなのだろう。
「ご当主様…」
ふいに老翁は床に膝まずいた。
深く身を屈め、ナディアの足元に叩頭した。
「誠に申し訳ございませんでした。
弁解の余地もございません。ご当主様の判断の元、然るべき処分を所望いたします」
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