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Key Of The Twilight

797リト他:2017/05/28(日) 20:59:04
【ポセイドン邸】

リトの傍らに控えていた黒猫がふと彼の傍を離れる。鈴の音を鳴らし向かう先にはリトを扮したセナに怯えながらも何とかその場に留まり耐えていたミレリアの姿があった。
彼女はずっと震えて目を閉じていたために本物のリトが現れたことも、セナとリトが入れ替わったことにも気づいていなかった。
ふと気配を感じ目を開けると、紫色の瞳に見据えられていた。

「猫ちゃん・・・?」

惹き込まれるような色。綺麗だなと思って見ていると、不意に猫が鳴く。途端、目眩を覚え視界が歪む。
倒れかけたところを慌てて支えてきた侍女がぼんやりとしている彼女に必死に呼びかけて来る。しかしミレリアの耳には、何故か違う者の声が聞こえてきた。

「ミレリア」

それは今はいない、もうこの先聞くことのない愛しい人の声。

(ヨハン様・・・?)

「まだ眠いのか?まったく・・・こいつも母親を見習えば良いものを、まったく寝付かんのだ」

(え?)

ぼんやりとした視界にヨハンが写る。そして彼が苦笑しながら、自らの手に抱く何かを見下ろしていた。お包みの中から小さな白い手が見える。

「その子は・・・?」

「なんだ、寝惚けているのか?」

言ってヨハンはお包みをミレリアに渡す。恐る恐る見ると、真ん丸とした赤子が笑いかけてきた。

「私の赤ちゃん・・・」

「・・・本当は、こうなるはずだった。私が道を踏み外さなければ。悪かった、ミレリア。この子をお前に返すよ。」

赤子を見つめ涙するミレリアの頭をヨハンが優しく撫でる。これは夢。分かってる、しかし何故こんなに鮮明なのか。

「俺は手遅れだが、お前は間に合う。
騙して悪かった、この子は死んでいない。立派に成長したよ。探してやってくれ。」

その言葉を残し、ヨハンは消えていく。
そして、ミレリアの意識は現実へ。

ぼんやりと色を失っていた瞳に輝きが戻る。
ミレリアは慌てて自分の手元を見る。
お包みも赤子もいない。
あれは夢・・・でも・・・

黒猫が素知らぬ顔で欠伸をしている。

ヨハンが伝えたかったこと、それは・・・

「私の赤ちゃん・・・」

必死で辺りを見渡す。ヨハンが今教えてくれた、死産だと聞かされたあの子が生きていると。闇に殺されたはずよあの子は生きている。

「どこ・・・私の・・・」

そして一つの答えに辿り着く。
我が子を奪った憎き闇、恨んで恨んで虐げてきた・・・

ミレリアは一つの人物を視界に捉え、涙を流す。
ヨハンが渡してきた赤子と同じ髪の色、自分と同じ瞳をした少年が棺の中に花を添え話りかけている。

あの子は我が子を殺した張本人、敵、・・・違った。


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