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Key Of The Twilight

838リト他:2018/05/20(日) 23:17:54
【ポセイドン邸】

世界が終わりの時を迎えようとしている。

「......」

光を飲み込み赤く色付く空をセナは黙って見上げていた。
魔玉が闇に反応している。身体のそこから疼くような感覚。放たれた闇と一つにならんと欲しているような...

「...セィちゃん」

背後からか細い声が聞こえ、振り向くとリマが覚束無い足取りで外に出てくる所だった。足がもつれ倒れそうになった所をセナが支える。

「なんか、気持ち悪い...」

「闇が放たれた...瘴気にあてられたのだろう。」

リマのように純粋な聖の力を持つ者にとって、今は空気さえ毒ガスのようなものだろう。そしてこの濃度が濃くなれば、異能を持たぬ者が生き続けることは困難・・・

セナは自身が身につけていた腕飾りをリマの手に通す。

リマには闇に対する免疫がない。
一時凌ぎではあるが、闇の者が長い間身につけていたものを所持させることで擬似的な闇との接触をつくり症状を緩和させる他ない。

「ありがとう」

少し楽になった。リマはセナの腕の中で力なく笑い、続いて空へ視線を移す。

「あの時と同じ...」

いや、それ以上かもしれない。
リマは黒十字との決戦の日を思い出し、無意識にセナの服を掴む手に力が入る。
あの時も世界が滅亡仕掛けたのだ。平穏を取り戻したはずなのに、封印した闇は再び目覚めてしまった。

あの時はセナを失わずに済んだが、また同じ状況になれば今度こそ彼を失ってしまうのではないか、不安が募る。

ラディックから話を聞いた日、セナも、そしてリトさえも驚く様子を見せなかった。まるでこの時を知っていたかのように、加え、その脱却方法さえも知っているような顔。それを見てリマは胸騒ぎがした。最悪の事態が起こりそうで。

「セィちゃん、あのね...」

「セナ、だっけ?あんた、分かってないかもしれないから一応言っておくけど、」

リマが言いかけた時、後から別の声が割って入る。
アネスがどこか不機嫌そうな顔を浮かべながら二人のもとへ歩み寄る。その隣にはリトもいた。

「あんたに何かあったらリト達が存在し得ないこと、忘れちゃダメだからね」

アネスの不機嫌さはどうやらこの状況にあるようで。空を見上げ、苛立ったように眉を潜める。

「ほんと、世界の終焉って感じ?こんな環境に娘を放り込むとか、うちの父親どうかしてるんじゃないの?」

呟きながら大鎌を顕現させる。

「範囲は?」

「限界まで。」

「人使い荒い・・・」

隣のリトへ何やら意見を求めるも、その答えに更に気を悪くする。かと言って断る気もないようで、手にした大鎌をくるりと回し、柄の部分を力強く地面に打ち付けた。
途端、波動が地を伝い勢いよく広がっていった。

「ポセイドンの管轄域は守ってあげる。私の魔力が続く限りこれ以上魔物が増えることはないわ。」

「かなり広範囲だな。リミットは?」

「私が死なない限り問題ない。」

「ふーん、流石。」

「思ってもないくせに、生意気。」

まぁどうでもいいけど、とアネスは続け、

「出来なくはないけど、なるべく魔力は温存しておいた方が良いでしょ?私は戦力外に。まぁこの邸内を守るくらいはしてあげる。」

「そこは問題ない。・・・ノワール。」

リトの呼びかけにノワールがふわりと姿を現す。

「既におる魔物の討伐は引き受けた。所詮は闇より生まれし赤子のようなもの・・・小物を滅するなど造作もないわ。」

「油断はするなよ」

「指図は無用じゃ」

ノワールは小生意気に鼻を鳴らし姿を消す。目的地へ向かったようだ。

この状況に困惑せず的確に指示を下していくリト。その冷静さは見事だった。


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