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Key Of The Twilight

673アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/28(月) 19:48:57
【黄昏の塔】

「っ…ッ」

翼で身を庇うも、ダメージ全てを防ぐことは出来ない。アグルは血反吐を吐き出しながらも痛む身体を叱咤し、起き上がる。
創傷に内臓の損傷、骨も何本かいっている。
だが、今動ければそれでいい。後のことは初めから考えていない。

(あのイオリに一度も負けたことがないだって?…化け物か)

アグルは眼前の相手を睨み、槍を構える。手が小刻みに震えた。

…いつも思う。
なぜここに残されたのが兄ではなく、自分だったのかと。

幼い頃はよく幻聴が聞こえた。
何でお前なんだ、と。俺だってもっと生きたかったのに、と兄の苛む声が耳元で恨めしく囁いた。

その後、彼が生きていてユーリに殺されたという真実を知ってからも、幻聴は止まなかった。
"復讐しろ、復讐しろ、復讐しろ。"今度はその言葉だけが頭の中を支配した。

頭がおかしくなりそうだった。いや実際狂っているのだろう。
だって自分は今笑っている。憎しみの対象を前にして嬉しくて堪らない。

「やっとあの声から開放される…。やっとあいつに許して貰える…」

…やっと安心して死ねる…。

もはや予備動作もなく、アグルは驚異的なスピードでユーリに襲いかかった。

刺し違える気だろう。
聖槍ゲイ・ボルグ。この槍に関する逸話は多々あれど、当たれば一撃必殺を誇る巨大な槍を得物に、彼は真っ正面から勝負を仕掛けた。


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