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チラシの裏 3枚目

1むらま ◆vVmhS9Bdr2:2009/03/29(日) 19:47:59
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに

897im@s fantasy9 第一章 第七話 1/2:2009/11/25(水) 03:08:09 ID:aT9CEP/c0
「………ん、ううー……こ、ここは…」
雪歩が目を覚ますと…
そこは魔の森の出口で張ったテントの前。


「姫様!お気づきになられましたね!」
真は喜びますが…

美希は浮かない顔。
「デコちゃん……。
 ………せめてみんなは脱出できたのかな…」

伊織から投げよこされた紙を開くと…
「…地図…… …そっか。デコちゃんはこれを渡すために…」

タンタラスを抜けた以上、歩くのは自分の足。
…地図がなくては、成り立たない。



「…美希さん、でしたね
 ビビ君も、ありがとうございました…」
「姫様、ビビ殿はともかくこやつなどに礼なんて要りませんよ
 こいつらのせいで姫様はこうした目に…」

「……いえ。私が望んで、美希ちゃんに浚って貰うように命令したのです
 …全部、私の責任です …私がモンスターに浚われたのも、
 ビビ君や美希ちゃんを危険に晒したのも…真ちゃんに迷惑をかけたことも」
「………」

責めるに責められない空気が辺りを包み込む。
そこに美希も加わる。

「…雪歩王女、とにかく無事でよかった。
 ……これからのことを話したいんだけど、いいかな」
「はい」
「うん!」

「これからのことなど決まっている
 アレクサンドリアへ帰るんだ。そしてお前達は裁きを受ける…
 覚悟を決めておくんだね」


「……なら、アレクサンドリアへ行くための道順を説明する
 というか、ここからどこへ行くにも一つの道しかないよ」


美希たちが暮らすは『霧の大陸』には大陸全土にまたがる巨大な山脈地形があり
モンスターを生み出し、生物の心身を狂わせる魔の大気『霧』から逃れるべく
その上に人々は国を形成している。

霧の大陸の三国。アレクサンドリア、リンドブルム、ブルメシア。
低地にあるのは、山を壁として使い霧を遮ったブルメシアのみ…

そして、この土地はブルメシアへは繋がっていない、霧に満たされた地。
町などは存在しない。

すぐそばにもモンスターが駆ける危険地域である。
美希たちに出来るのは、高地へ戻ることだけ。


…しかし、高地もまた山の上…アレクサンドリアへ続くとは限らず、
現にここからアレクサンドリアへ登る道は存在しない。
「…となると、だよ」

飛行する乗り物を使いアレクサンドリアへ向かわなければならない。
「カーゴシップが『ダリ』っていう町にあるの そのために『ここ』に行くことになる。
 …というより、何をするにも霧から逃れるためには『ここ』を通らなきゃいけないね」


夜が明けるのを待ち…次なる目的地へ。
「雪歩、ミキのことはさん付けなんて要らないよ 美希で大丈夫」
「じゃあ…宜しくお願い致しますね、美希ちゃん」

898im@s fantasy9 第一章 第七話 2/2:2009/11/25(水) 03:08:51 ID:aT9CEP/c0
可愛らしい陸上モンスター『ムー』、ゴブリンなどと数回戦闘になりながら
壁の如くそそり立つに山に差し掛かる。
これが目的地。
「さ。これを使って高地まで行くの」


きらきらと光が反射する…色とりどりの氷の塊が水晶のように顔を覗かせる美しい洞窟。
「『氷の洞窟』…聞いたことがあります」

「ボクも聞いたよ。ここを通ると霧の上に出られるっておじいちゃんから」
「おおー、ビビ殿のおじいちゃんは博識ですね」
「…もう、この世界にはいないんだけどね…」
「……申し訳ない」


「…何だか暗くなっちゃったね。せっかくキレイな場所だし、
 さ。一緒に行こうか雪歩王女♪」
さりげなく肩に手を回し、美希は雪歩と共に洞窟の中へ。
「こらああああ!!!」
真も、ビビを担いでそれを追う。



「真さん、確かそこから漏れ出してる煙に触れるのは危ないんだ。
 …『霧』だから。モンスターがかぎつけるんだ…」
「承知いたしました …お前、聞いていたか?」
「お前じゃないよミキなの。 …霧に触れるのはダメ、ね。わかったのー」


氷の洞窟には黄色いゼリー状モンスター『プリン』や
モンスターの盗賊『ケーブインプ』との対決。

それに加えビビの話によれば霧に触れると凶悪なモンスター、
『ワイアード』が現れるという。

所々、氷の柱や氷の壁をビビのファイアで溶かしたり倒したりしながら進むことに。
長い洞窟の道のりの末、氷漬けのモーグリを救出したりなどしながら…
いよいよ最深部が近づいてきた。

「…な、なんだか更に寒くなってきました…」
「ここに住んでいるモーグリが氷漬けになるくらいだからね…
 ……何か風も強いし…う……う…」
「あふぅ」


なんと真っ先に美希がダウン…倒れ、眠ってしまった。
「…何か美希ちゃんの髪の毛あったかそう…」
その傍らで雪歩もダウン。

「ひ、姫様…奴に…近づいては…」
真もダウン。


「…ボクもなんだか…」
ビビも。

全員が眠ってしまい…このまま、吹雪の餌食に…
そう思われた時。


チリン、チリン…
「…?」
ベルの音。
「…ん…う…あったかい… ……わ!?」

雪歩の隣で美希は目を覚ます。


「……みんな、起きて!……起きてーーー!!」
…しかし…皆目を覚ますことはなく。


「…体はまだ…あったかい…
 …ミキだけでも、先を見てこなきゃ」
前から吹く風も多少弱まった様子。

美希は氷の道を更に奥へ進むと…
「………わぁぁ…」
大きく開けた空間…そして、滝。
遥か上部からは光が漏れ出している…出口のようだ。


しかし滝は凍っている。…明らかに異常事態と見える。
…一体何が…そう思っていると。

「!」
『突然』上から大きな氷の塊が落下。
ぐるりと側転、回避…
もう一度滝に目をやるとそこには…


赤い魔道衣に身を包んだ…三角帽子の男。

不自然な氷の落下。これは恐らく…
「『ブリザド』… …黒魔法の使い手!」

899im@s fantasy9 第一章 第八話 1/2:2009/11/25(水) 03:54:08 ID:aT9CEP/c0
「クックク…黙っていれば眠ったまま死ねたものを…」
魔道衣の色は赤。
前屈みの体勢で、手に鐘を持っている。


「邪魔者は排除させてもらうぞ…ククク…」
けらけらと笑うと、美希の背にウォータの魔法を発動。
水の塊が弾け、一瞬にして氷結…氷の壁を作り出す。
「我が名は氷属性特化の『黒のワルツ1号』
 氷漬けにして殺してくれよう…」



「この洞窟に満たされた氷の力を我が魔力とあわせれば…こんなことも出来る
 氷の魔人『シリオン』を呼び出すことがな!
 『ブリザガ』!!」



そう言うと巨大な氷の柱が黒のワルツ1号の隣に出現。
辺り一面を絶対零度に氷漬かせ…

その内部から、巨大なモンスターが現れ、氷柱を粉砕し飛び出した。
「『シリオン』…!?」


見た目はウロコに覆われた氷の龍。
大きなヒレのような翼と、尾びれを持ち…コアが青色に輝いている。

「…」
味方はいない。美希一人でシリオンと黒のワルツを相手することとなる。



「…オオウ!」
シリオンは翼で大きく美希をはたき攻撃。
「うぁ…」

「ブリザド!」
1号は氷を落下させ追撃。

「……どうした?攻撃してこないのか」
「はぁぁ!!」

黒のワルツ1号を攻撃。
恐らく…大した体力ではない。


「力押しでなんとか出来ると踏んでいるか
 …まぁそれも間違いではない。…こんな場所で、なければな」
「コォォォォ」

シリオンもブリザドを詠唱。
「…ぁ…!!」


「………う」
「どうした、その程度か!?」
1号は詠唱へ。

ブリザドと踏み、美希は上を見上げ、素早く避けようとするが…
「バカめ!!」
地面から吹き上がる灼熱の炎。
「ウソ!?」
溶ける足元から、火がつきながら飛びあがり…身についた火を払うべく地面を転がる。


「無様じゃないか…
 私がどうやってこの氷の洞窟のモンスター達と渡り合ったと思っている?」
冷たい場所に住むモンスターには炎の魔法…当然の理屈。
というより、ここに来るまでに美希たちも行った戦法。


「はぁっ!!」
跳ね起き、シリオンに向かい一撃。
「コォオオオオオオオオ!」

シリオンのコアの色が青から黄へ。
「ははははは!!」
1号はシリオンがダメージを受けたにも関わらず、笑っている。
その意味は数秒後に解ることとなる。

900im@s fantasy9 第一章 第八話 2/2:2009/11/25(水) 03:55:17 ID:aT9CEP/c0
「バカめええええええ!!」
「コォッコココ!」

氷魔法、ブリザドの上級魔法…上位の魔道士のみが用いる『ブリザラ』。

「っきゃあああああああああ!!!」

美希の体の中心に現れた冷気の塊から、氷の結晶の形に、氷がグサリグサリと飛び出る。
「う…!!」
「…驚いたな、まさか……これを凌ぐとは!?」

「やぁぁあ!!」
シリオンにもう一度攻撃。今度はコアを狙い。


「コッコアァァァァア!!」
メイジマッシャーを刺すとコアの色は赤に…
「とうとうシリオンを怒らせたようだな!?
 こうなってはシリオンを止めることは出来ん!!」

魔道衣の背についた羽を広げ、空へ浮かび上がる1号。

氷の洞窟の気温が一気に上がる。
氷属性の力が失われているからだ。


その力はすべて…シリオンへ。
力が…満たされる。

「さぁ、すべて押し流してしまえシリオン!!」



「ゴオオオオオオオオオオオオオ!」
シリオンが体を大きく振るい、地面に翼を叩き付けると…



「!?」
どこからか現れた氷水の壁が、一気に押し寄せてきた。

「…間に合うかな…」
美希は壁を蹴り、登る。
「何!?」
「冬道はスパイクつけないとね!!」

壁を大きく蹴り、ぐるり回転…
黒のワルツの頭上へ。


「『スイフトアタック』!!」

黒のワルツに激しくメイジマッシャーでの打撃を連発…

「たぁぁあああああああああ!!!」
両手を交差させ、強烈な一撃。
ドスッという重い音と共に1号を弾き飛ばす。

「うおおおおお…!!??」
そのまま激しい水流の中にいるシリオンへと1号をぶつけ…

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「コオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
コアにヒビが…そして崩壊。


大爆発と共に、魔法により引き起こされていた水も収まる。
着地した瞬間には膝上の高さの水だけ…それもすぐに消え…


戦闘は終わりを告げたのだった。

901im@s fantasy9 第一章 第九話 1/2:2009/11/26(木) 02:04:12 ID:RkMiy76o0
凍てつく洞窟の戦いを終えた美希は、
開いた出口から雪歩らの下へ。
「…お前、一体今まで何処に行っていた!」


戻った時にはすでに、一同は起き上がっていた。
「ああ。ごめんごめん…
 ちょっと先の方を見てきただけなの」

「姫様に何か無礼は働かなかっただろうな!?」
「寒い中だからそれも一つだったかもしれないね」
「何だって!?」


「……」
雪歩はポーションでは治せなかった美希の肌についた傷が気にかかっていた。

「出口はすぐそこだよ、みんな行こう!」

さらさらと流れる滝のわき道を登り、氷の洞窟の外へ。




「…わ!!」
目の中に飛び込んでくる真っ白な光。
数秒して、光の中から青空が姿を現す。
「…霧の上だ!!」

くすんだ視界や、その視界のどこから現れるとも知れないモンスターとはおさらば。
突き抜けるような青空の素晴らしさを彼女達は知るのだった。



「……あ。美希姉ちゃん、あっちに村があるよ!」
「あれがダリですね」
「あそこに着いたらちょっと休もうよ」


「…お前、あれだけ寝ておいてまだ寝るつもりだというのか!」
「まぁまぁ真ちゃん… あんな場所じゃゆっくり眠れなかったでしょう
 宿でぐっすり休みましょう」


美希は雪歩の顔を見ると…
「…ねぇ、雪歩王女」
「はい」

「…この先、村に行くというなら身分を隠した方がいいと思うの」
「待て!何で雪歩様がそんなコソコソとした真似をしなければ」

「…そうですね 私の命を狙う者がいたりしたら、皆さんにご迷惑が」
「うっ…しかし…」

真は毎度毎度反対され半ば拗ねてしまいそうだった。
「……そのために、偽名があった方がいいと思うの
 …何か、いい考えはない?」

ビビに振って見る。
「ボクからは何もないよ…」
真に。
「一般的な名前ならいくらでもあるが…」
雪歩に。
「………何かそこら辺のものからつけてみましょうか」


そこらを見渡すと…
「花の名前とか可愛いと思うな」
しかし雪歩は花をスルー。
「…ソラちゃんとか?」
キーブレードを使うわけでもない。青空もスルー。
「…むー…… …あれ?」


洞窟の出口を覗くと、謎の小人のような少女がそろりそろりと、何故か慎重に歩いている。

「バレちゃまずい…まずいデスよ……」
ぼそぼそと言っている言葉は聞こえず。雪歩は小人に話しかける。

「あのぅ…」
「!」
言われた瞬間、2つリボンをつけた小人は全速力で走っていった。
「どこかで見たことがあるような…気のせいか。」
真には見覚えがある様子。

902im@s fantasy9 第一章 第九話 2/2:2009/11/26(木) 02:05:04 ID:RkMiy76o0
「あ、あの!わたしたちになにかごようですか?」
続いて出てきたのは謎の人形のような小人。

先ほどの少女にどこか似ていて、白いワンピースに黒くまん丸い2つの瞳と、三角の口、さらさらとした茶色の髪…
そして何より手に持ったらせん状の武器が目を引く。


「あの、お名前は…?」
「雪歩王女、硬い硬い…普通の女の子みたく」
「そうおっしゃられてもどうすれば…」
「もー…」
ここは美希が代わらずに、雪歩に練習がてら。
耳打ちで台詞を吹き込む。


「ねえ、君はなんていう名前なのかな?」
「いい感じいい感じ!」
雪歩はぎゅっとした。


「『ユキポちゃん』!
 この国のお姫様にあやかってつけられたの!」

「……」
通りで。
…この名前をつけるとなるとやはり名前として捻りがない。
「…じゃ、じゃあこの手に持っているのは何ていうの?」



「こ、これはね…『ドリル』!」
「『ドリル』…っていうんだ…」



そのらせん状の物体をまじまじと見つめる。
「ありがとうねユキポちゃんちゃん。
 引き止めてごめん」
「あっちにともだちがいるからわたしいくね!」
こうして小人の少女はとてとてと走っていった。


「全く!変装しないとすぐにバレるヨー!」
「だってまさか1号が敗れるとは思わなかったデスよー!」

遥か彼方で聞こえる黒幕たちの言葉が聞こえるはずもなく。


「決めました!! 私、これから『ドリル』と名乗ることにします!」
「!?」
決まった珍妙な名前と共に、美希、ドリル、真、ビビの4人はダリを目指すのだった。




たどり着いたダリは風車がシンボルマークの、のどかな農村。やや狭く過疎ではあるが。

「ああー、案外かかったね!」
「霧のない地域のモンスターも侮れないものだね」
「霧の大陸最強のモンスターは霧のない場所に生息していると聞きます
 …霧がないからと安心は出来ませんよ真ちゃん」

「…ドリル」
「あっ!! …えっと、それでは…それじゃあ…宿屋を、探しましょう、よ?」
「うんうん♪」
この町でドリルは普通の少女の言葉を練習することに。


まずは宿屋へ。

「…お。旅のご一行さんかい 当宿へ。 一泊40ギルになりますが…
 ……!?」
宿の主は一向をまじまじと見つめる。


「…ご主人、ミキの彼女が可愛いからって見つめられても困るなー」
「美希ちゃん!?」
「貴様!?」

「…あ、ああ…いや申し訳ない …ささ。こちらのお部屋へ 占いなんかもありますのでご都合がよければ」



「…雪歩のこと、バレたのかな」
「だ、だったらどうしよう…」
「まずないと思うんだけど…ミキ達でドリルを守ればいいよ、ビビ」
何も知らない彼女達は…宿のベッドにひとまずの休息を取るのだった。






「…おい、何だありゃ…何時の間に逃げ出したんだよ」
「ええ!?ウソだろう、そんな報告は…」

903im@s fantasy9 第一章 第十話 1/3:2009/11/26(木) 03:58:50 ID:RkMiy76o0
各自単独行動中。
「…みんな、どこにいるかな」

美希は目覚め、宿屋から出てみる。


「…ちょっと装備でも買ってみようかな」

雑貨、武具屋へ。
「あのね、この村はその…どういうものが名産品なの、かな?」
「そうねぇ、この村となると野菜くらいしかないのだけど…最近大人たちが何かやってるみたいなのよ
 この町今はおじいちゃんおばあちゃんと子供しかいないのよ…大人は宿屋のおじさん一人だけ…」

店番をしている少女と、対等に少女として話そうと頑張っているドリルの姿が。


「へぇー、がんばってるねドリル」
肩に顎を乗っけて至近距離で耳うち。
「ひゃああ!?」

「その調子その調子、頑張って!」
「あ…はい!…じゃなくって、うん!」

「あ。これとこれとこれ、買っといてね」
微笑ましいやり取りを後に、次の場所へ。



「えーっと…次は…あ!」
石垣に身を乗り出しているビビ。

「…どーしたの?ビビ。…好みの子は見つかった?」
「ええ!?美希姉ちゃん、ボクそういうつもりじゃ…」
「ビビくらいの子がここには沢山いるのになー。勿体無いよ」


「…ねえ美希姉ちゃん、何か声が聞こえない?」
「声って…? ……」
耳を済ましてみる。


…クェー、という鳴き声。

「…ビビ、知らないの?これはチョコボっていうんだよ」
「チョコボ?」
「ミキみたいな毛並みの鳥なの。けど……姿が全く見えないね どこにいるのかな」
「…うーん……」


謎のチョコボの声をかすかに聞きながら…今度は酒場に。


「何だい?うちは準備で忙しいんだよ」
「失礼致す、この町のカーゴシップのことについて…」

「カーゴシップのことなら見張り山の爺さんに聞いとくれ」
「………ご協力感謝する」
真が半ば邪魔にされながら、店から出て行くところだった。

「…カーゴシップについて聞くの?」
「どうやら今は運行してないみたいだ。ボクは見張り山へ向かうが…美希。お前は姫様に変な真似をするなよ」
「はいはい…」


真が畑から村の外へ出て行くのを見届けると…
…また何かが聞こえてきた。チョコボの声…いや、もっと美しい音色。
「…歌…?」


「らーーらららー らららららら ららららららー らーら ららら…♪」


宿屋の方へ戻ると……
「…雪……ドリル」


宿屋の前で涼やかな歌声を響かせるドリルの姿があった。

904im@s fantasy9 第一章 第十話 2/3:2009/11/26(木) 03:59:29 ID:RkMiy76o0
「……きれいな歌だね」
「そう、かな……」
「…! 結構普通の喋り方も板についてきてる!思った以上だね!」


「……二重に褒められちゃった…」
舌を出して恥ずかしがる雪歩に…
「雪歩ー!」
思わず美希は飛びかかるが…


「きゃ!?」
避けられて柵に激突。
「あいたたた…」
「も、申し訳ありません…。」


「…いや、いーよ …それで
 今まこっさんがカーゴシップの話をしに行ってるからもうすぐ出発だね
 ビビを呼びにいこ?」
「うん」


先ほどの場所にいるはず。
そう思い、チョコボの声が聞こえた場所へ向かうが…


「……いないね」
「さっきはここにいたんだけどなぁ…」
他の場所に当たろうかと思った時。


「美希お姉ちゃーん…ドリル姉ちゃーん…」
「ビビ!?」

どこからかビビの声。
きょろきょろと見回すと……


チョコボの声も。…そこで気づいた。
地面から突き出す、パイプの中からであると。

「ビビ!そこにいるの!?」
拳程度の狭さのパイプに向かって声を。

「うん…何か、男の人達に突然捕まっちゃって狭い場所に入れられて、運ばれて…ここがどこなのかもわからないんだ」
「そこは多分村の土の下…地下だよ!!
 ミキとドリルで行くから待ってて、ビビ!」
「ビビ君、今行くからねー!」


地面を掘る道具はない。
「風車小屋に、大人たちが入っていく地下通路を見たの!
 そこから地下にいけるかも知れない…」
ドリルと共に、美希は風車小屋の地下へ。

905im@s fantasy9 第一章 第十話 3/3:2009/11/26(木) 04:00:19 ID:RkMiy76o0
…するとそこは……
「……!?」
モンスターが警備する地下通路。村全体を覆っているかのよう。

暗い中をランプが一定距離ごとにかけられた、土壁の人工施設。
狭く、また長く続く通路を見つからないよう、誰もいないタイミングで通り抜けるとそこには…
巨大な沢山の箱。
「…何なの、これ…」
「美希ちゃん、多分ここ…何かを作ってるよ…何なのかな」


…すると箱の中の一つから声が。
「美希おねえちゃーん!ドリルおねえちゃーん…!」

ビビだ。
「えっと……てい!」
こんこんと箱を叩き、ビビの体が入っていない箇所を探るとそこをメイジマッシャーで切断。
箱からビビを出すことに成功。


「ありがとう…」
「…ビビ、心当たりある?」
「ううん…ないよ……何でこうなったんだろう」

「三角帽子で顔が見えないから怪しい人だとか思われたのかな…
 …考えてても仕方ない。いこ」

箱まみれの部屋を後にまた通路へ。
どんどん進んでいくと…そこには…
「…え…」

巨大なベルトコンベアの機械。
「これは、一体…?」

人が丸まれば入れそうな丸い卵のようなカプセルが次々と。
「美希姉ちゃん、これってチョコボの卵かな」
「これは人工物だよ…鳥の卵なんかじゃない…」


「…一体何が…」
ベルトコンベアをさかのぼっていくと…


そこにはモンスターを生み出し、飛空艇を飛ばし、人を狂わせる凶悪ガス。
「………霧…」


霧を、あの卵のようなカプセルにいれ、何かをしているのだろう。
…何が作られている?


今度はコンベアを辿る。
卵が機械の中に入るのをみる。



その先だ。その先に…何かこの施設の秘密が。




…知りたくなかった事実。
…だが、知らなくてはならなかったことだった。



「…人………」

三角帽子。
黒く見えない顔。
魔道衣。

…その特徴は、洞窟で戦った黒のワルツ1号にも合致する。…あれほど、特異なデザインではないが。

人が、人形のようなものが、アームに捕まれ装置の上をグイングインと運ばれている。
その光景は……見ていて気持ちいいものでは、到底なかった。



そして、箱詰め。
「ボクは、この人達と間違えられたのかな」

「人?違うよ、これは多分人形か何かで…」
「霧を使う人形って何なの…美希姉ちゃん…この…ボクに似た人形は……」
「………いや。ビビには…全然似てないよ? うん。ホント!」


のどかな田舎町の下に隠されていたのは…
機械により人工生物を生み出す工場だった。

906im@s fantasy9 第一章 第十一話 1/2:2009/11/27(金) 00:46:55 ID:7syrjvxY0
「……」
言葉が出ない。
チョコボ動力で動かした機械で
人形に命を吹き込み、大量にどこかへと運ばれるその光景には。



「それにしてもだなー」
「!!」


奥から話し声が近づいてくる。
この工場を動かすダリの大人達なのだろう。

「えっと何処かに…隠れることは… あ!」
ちょうど、空いた箱を発見…美希とドリルが中に入る。
「ボクは…えっと…えっと……」
小さな箱の中に入る。


「いつまでこんなことを続けていればいいんだろ?」
「国の命令だし止める訳にもいかないだろうよ
 それにほら、この仕事結構カネ貰えるし」
「……とはいっても…」
「見てて気持ちいいものじゃない、か?…まぁ、そういうもんだよな」


「…国の………そんな…」
ドリルは…王女雪歩は、アレクサンドリアの事実に喉が詰まる。


「……後で聞いたことはミキが教えるから」
「!!!! あ、当た…」
狭い箱の中でドリルの口を塞ぎ、体を密着させる美希。
ドリルの顔がどんどん熱くなって行くのが解る。


「さて。それじゃ運ぶぞー」
「おう…」

「!?」
箱が持ち上げられ…
「……!」
二人の男に担がれ、どこかへ運ばれていく。
ビビの箱も。







「あ。コーヒーおいしい…ってだから!!
 次にカーゴシップが来る時刻を教えてくれないか!
 さもなくばこの村を一時的に国が接収することになる!」
「ほほう…そしてどうする気じゃ」

遡ること10分。
真は、見張り山の爺さん相手に粘り強くカーゴシップの時間を聞いていた。
「それは… …次の時刻を言うように命令する!」


…ゆったりとした時間の中で暮らす彼と、命令、規則の中で生きてきた真。
両者の間には、確たる差があった。

…見ている世界が、違うほどの。
「そんな一本調子では、ままならぬことも多かろう」
「ままなろうとなかろうと、それが正しいことだろう!?」
「…ならば、お前さんは正しいかどうか、判断できるというのだね」

「正しいことかどうか位誰にだってわかる!」

「ふぉっふぉっふぉ…青臭く真っ直ぐ…全く少年そのものじゃな」
「いやボクは…ってだから!!そんなことより時刻を」


「…ああ。そうさの、もうとっくに来ておる
 積み込みも始まっておる時間じゃ」
「何故もっと早く言わないんだ!! …ってああ、有難うお爺さん!」
重い鎧は早いペースでガシャリガシャリと音を立てながら去っていった。

907im@s fantasy9 第一章 第十一話 2/2:2009/11/27(金) 00:47:36 ID:7syrjvxY0
「うわぁ!?剣を携えた鎧の男が近づいてくる!」
「逃げろーーー!!」

カーゴシップに積み込みを行う男達は真の剣幕に一目散に逃げ出してしまい…
「ぜぇ、ぜぇ…何とか間に合った…」
真が止まったのは箱の前。


その中には、雪歩と美希が入っている。
「…ん?今この箱が動いたような…」

「おーい!まこっさん!」

「何か声がするぞ…てやぁぁあ!!!」
「何でそうなるのーーーー!」

飛びあがり剣を振り下ろす真。
「真さん!それには美希姉ちゃんと雪歩姉ちゃんが!!」
「え…」
小さい箱から飛び出したビビの叫びはもう遅く。その一太刀で二人の箱は真っ二つ…
「………あっぶないの…」
靴のつま先すれすれに剣。
…危うく、二人は斬られるところだった。



「…申し訳ありません姫様!!」
「全くもうーーー!!」
その1分後には土下座し、雪歩に怒られる真の姿があった。



…そんな、油断しきっていたとき。

突然、大気が、揺らめいた。
「……! …何か、変な気配 …!!」
と美希が言い終わるより早く気配の主は美希を突き飛ばしていた。
「あっ…!!」
腕を交差し、防御するも5mほど吹き飛ばされる。



「…1号を倒したのはこの中の誰だ?
 まぁ、どうでもいい。姫様…お姉様がお待ちですよ?クックック…」

ゆっくりと上下する大きな翼、
腹の辺りまで止まり下は放たれ
脚の下まで大きく大きく裾の伸びたローブ
隠れた顔に光る目…
三角帽子。


「私は『黒のワルツ2号』 1号に代わり王女の奪還の命を受けたもの。
 さあ、姫様 私と共に来てもらおうか」
「2号…!?」
「…!!! …いや、です」

「お前のような者は知らないぞ! 姫様に何をするつもりだ!」
「お前には聞いていない、アレクサンドリアの裏切り者め」

「……ねえ、君は一体…」
「こんな小さなタイプもいたのか。面白い奴らだ…まとめて相手をしてやろう…!」

雪歩を連れ去りに来た第二の刺客。

美希、ドリル、ビビ、真…メンバーは揃っている。
今度は全力で相手が出来る。

「ふふふ…私を1号と同じと思わぬことだな」

908im@s fantasy9 第一章 第十二話 1/2:2009/11/27(金) 01:49:13 ID:7syrjvxY0
空中浮遊する黒のワルツ2号。
「くくくくく…」
カーゴシップ発着場での戦いが今始まる。


美希はシリオンを倒して見つけたミスリルダガーでスイフトアタック。
飛びあがりラッシュを発動しようとするが…
「活きのいいことだな…」

出現した時のように、一瞬の移動で回避…
「え!? ああああああ!!」
真を手から発した力で吹き飛ばす。
「う!!」
剣を地に刺し何とか止まった真も一撃を繰り出すが…
「フフ…」
真の背後に移動して波動を浴びせる。
「おおおお…!!」
「ちっ」
吹き飛ぶ間際に体を回転、何とか2号に一撃を与えることには成功する。


「………そんなに早く動いても全くブレーキをかける必要がないんだね」
「今頃気づいたか?」


「とてつもなく速く移動してるんじゃない…瞬間移動!!」
「解ったところでお前達に勝ち目などない!」

「ファイア!!」
ターゲットを2号に絞り、こちらも一瞬での攻撃…魔法を繰り出す。
「うぉ…」
2号の背が焼ける。しかし…

「…通常モデルより出来がいいようだな、
 だが…未熟だな!!ファイアとはこうやって使うものだ!!」


2号が魔法を唱えた。
それは…ファイア。


「うああああああああああ!!!」
「うっ…!」
「きゃああ!!」

辺り一面から炎の渦が吹き荒れる。
美希、ビビ、真が炎に飲まれて膝をついてしまう。


「…え!?」
ドリルはその中心。…にも関わらず、魔法の被害を受けていない。
ドリルの周囲だけが、穴の開いたように魔法の範囲外になっているのだ。


「みんな…!!」
ドリルはケアルを全体化し3人を回復。

「…ドリルも!? どうやったの、今」
「敵と同じだよ…『魔法の広範囲化』…威力は弱まるけどね。
 ビビ君が出来るかどうかは解らないけど一部の魔道士は出来るの。」

「全体攻撃に全体回復…これは勝負が長引くな!!」
そう言うと…


2号は瞬間移動、ドリルの眼前に。
「!! ひめさ」
「やめるのおおおおおおおおおおおおおおお!!」

美希は2号に向かってミスリルダガーを投げる技『テンペスト』
「な…!!」

そして2号の胴を斬り戻ってきたダガーを手に、
ぐるりと縦回転し上昇、連続で2号を斬りつける『ヴォルテックス』へ連携。
「おおお…!!」
2号を空中へ吹き飛ばした。

909im@s fantasy9 第一章 第十二話 2/2:2009/11/27(金) 01:49:51 ID:7syrjvxY0
「…おのれ…おの、れ…」


2号がいよいよ本気になった。
「貴様らをまとめて焼き殺してくれる!!炎属性特化のこの2号の火力でな!!」

魔力を両手の間に集めると…地上に投げる。

「『ファイラ』!!」
先ほどとは比にならない、煮え立つマグマのような灼熱が辺りを覆う。


「回復できまい!!さぁ攻撃してみろ、もう一度撃ってやるぞ!!」
ビビが倒れ、美希が重症。
真がピンチに陥った時…


「…私を誘拐したいんですよね!?」
ドリルが言い出した。


「諦める気になったか王女」
「まだ諦めません…降りてきて私と戦いなさい!」

「はっはっは…私と戦うつもりか!とんだ常識はずれなお姫様だ…
 抵抗すらできない己の無力さ、思い知るがいい!!」
ドリルは広場の中心で倒れている真の辺りに移動。
2号を真上にし眺める。


「やめ、ろ…」
「ドリルに、手を出すな…なの…」
「お姉ちゃん…」


「浅はかだなぁ!!」
瞬間移動もせず、急降下する2号。
その大きな、鷲の如き手がドリルの細い体を捕らえようとしたそのとき…

「はぁあああああああああ!!!」
ドリルは何と真の剣を引き抜き、飛びあがり2号の胴に突き刺した。

「!?」
手を激しくぐるりと捻り、螺旋の力を持ってねじ込む。ドリルのように。


「…おおおおおおおおおおおおお…!!!」
貫通。
「こうすれば非力な私でもピンチのあなたを倒せるほどの破壊力を出せる…!!」

そして剣を一振り、2号を串刺しにした剣から放ち地へ落とす。

「ばか…な………」



呻きながら、2号の体は霧になり消滅していった。
「…」
美希と真は口をあんぐりと開けていた。

910im@s fantasy9 第一章 第十三話 1/3:2009/11/27(金) 03:04:56 ID:7syrjvxY0
アレクサンドリアからの第二の刺客も退け
一行はカーゴシップに乗り込む。

…最も真は信じていないようだが。


「しかしあいつらは一体…」
「考えてても仕方ないよ…さ。カーゴシップに乗ろ?」


カーゴシップの入口へ続く梯子。
ビビが最初に船内に入り…続いて真。
「じゃあ次は私が乗りますね…」
ドリルが梯子を登った瞬間に…


「あ!!」
カーゴシップが走り出し、離陸。
「ああああ…あ!!」
美希は全速力で走り…梯子に飛びつく。


「ひゃあ!?」
「あっ♪」

と思いきや、手がついた先はドリルの胸。
「ふむふむ…」
「もう!!」
感触を確かめていると、ドリルは怒って登っていってしまった。




「…えっと、あの…ごめんねドリル」
「別に私怒ってなんかないけど…」

「…暫く話しかけないほうがいいかな」
膨れっ面のドリルはさておき、ひとまず船内へ。


「…ビビ、どうしたの?」
中で働いているのは、ダリで作られていたのと同じ三角帽子の人形達。
「……ボク、嫌われてるのかなぁ…」
「嫌われてる、って…」


無言で作業を続ける三角帽子たち。表情も余計な動作も感じられない。
「何を話しかけても、何回話しかけてみても、ダメなんだ…」


「……でも、ミキにはこの人達が心を持ってないようには見えない。
 …話しかけ続ければ解ってくれると思うよ」
「そう、かなぁ…」

「…うん。そうだよ
 …じゃ、これからまこっさんの様子を見てくるね
 このままだとミキ処刑だし」

そう。カーゴシップがゆく先は高台の王都アレクサンドリア。
…あんな方法を使ってきた国が、王女雪歩を戻してただで済ますとは考えづらい。



「長かった道のりだが、漸くアレクサンドリアに着けるな…
 外の世界に憧れていた姫様も、これで満足なされただろう。
 …それにしてもとんでもない奴だった、タンタラス一味め…
 美希の奴は、帰ったら必ず…!!」
甲板の上で、真は何やらぶつぶつ独り言を話していた。


「…いや、奴はこの旅の最中は協力的だった。
 奴がいなければアレクサンドリアには着けなかったかもしれない…
 ……元凶とはいえ、刑を軽くして頂くよう進言するのが騎士としての務めだな!」


その時。
「まこっさーん、どうー?空は気持ちいい?」
「美希!覚悟していろ、帰ったらお前は死刑だからね!」
得意気な顔で真は入れ替わるように船内に戻っていった。

911im@s fantasy9 第一章 第十三話 2/3:2009/11/27(金) 03:06:19 ID:7syrjvxY0
「……全く何も聞いてないんだから」
そう言うと美希は甲板後方の、操縦室へ入り…
「はいはい、ちょっとどいて欲しいな」
舵を取る三角帽子をどかせるのだった。





「…何か、動く方向がおかしい気がするな…
 美希、何か変な…ああああああああああああああああああ!!!」


「ふんふふんふーん、なの」
真が再び上がると、そこには舵輪を握る美希の姿が。
三角帽子の船員は無言で美希を見つめている。やっぱり航路が変わると困るのだろう。


「…お、お前!!み、美希!!何をしている!どこに向かってるーーー!!」
「気にしないで欲しいな」

「このっ!!」
真は美希を捕まえようとするが…
「ほい」
くるりと回転、操縦室の外へ。
「こら!!」
「よっと」
追いかけてきた真とクロスするように飛び、また操縦室へ。
「えい!!」
「ほっ」
尻尾を引っ掛け天井にぶら下がり
「こっのー!!」
「あふぅ」
突撃してきたところをささっと避けると真は激突、倒れてしまった。


「さてー、これより当飛空艇はー、『リンドブルム』へとー参りまーす」
「リンドブルム!?
 そういえばお前達、リンドブルムの劇団員だったな…
 ええい、姫様をお前達の母国に連れ帰る気かぁ!!」
そう言って真が起き上がった時。


「……カカカ」
甲板の先端に、何者かが出現。


「このままリンドブルムへは行かせぬぞ…」

長身の体に纏われた、全身が青き、鳥のような羽で覆われたローブ。
三日月形の頭をした杖。
2号より更に大きな、青黒い翼。
三角帽子。
「…あれは」
「…さっき倒した奴の仲間か!?」
真が言うと、
次々に、船員の三角帽子が甲板へ飛び出してくる。

「何があったの!?」
ドリルとビビも。


「…!?」
そして、三角帽子に囲まれた。まさかすべて罠だったというのか…?
「プログラミングが行き届いているようだな
 そうだ!姫をこちらへ連れて来い」

…しかし。
「…」
ドリルとビビを美希と真の元へ行かせると…
向き直り、船員達は全員、青黒羽の三角帽子の方を。

「…何」
全員が詠唱……

「まさか!!」
魔法を全員で一斉に唱える。
ファイア、サンダー、ブリザド。
魔法が次々に放たれ、大きな三角帽子を攻撃していく。

「…ほう。私に逆らうというのか 所詮、量産型に過ぎぬお前達が…」
そう言うと杖を振り上げ…


「この、雷属性特化の、黒のワルツ最強『3号』に!!」
魔法を唱えた。

912im@s fantasy9 第一章 第十三話 3/3:2009/11/27(金) 03:07:27 ID:7syrjvxY0
どこからともなく、突如として白き柱が落ちた。

それは巨大な雷『サンダラ』。

カーゴシップを貫き、這う電撃。
その衝撃で、集まった三角帽子たちは皆吹き飛ばされ…


…カーゴシップから落ちていく。
次々に。

カーゴシップに積まれた積荷も…また。
箱が空中で壊れ中身を…まだ体が出来たばかりで、生まれてもいない彼らが。


次々に、命がバラバラと空へ落ちていく。その先に待つものは…。


「………あ…」
ビビは操縦室の窓から、その様子を目にした。

同じ形の、話しかけたかった、動いている同じ三角帽子の人々が……
雨あられと、まるで…虫ケラのように。


「カカカカカ、カーカカカカカカ!!」

落ちていくのを見届けるしか出来ないビビの顔は…割れた硝子によりさえぎられた。



「………」
あまりの光景。
…もう、ビビはその場に崩れてしまう。
「……ビビ君」
「ビビ殿…」
「………ビビ」


高笑いを続ける3号。
そして……


彼の怒りは、頂点に達した。

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
感情のままに、駆け出していた。

「ビビ!!…ドリル、舵輪を頼んだの!!」
「えっ、でも…」
「ドリルなら出来るよ! さ、まこっさんも!…王女を守るのが仕事なんでしょ!!」
「…く、…ああ!!」

「…気をつけて!」

913名無しさん:2009/11/27(金) 03:08:26 ID:7syrjvxY0
>>303
そうそう。

ああ。そうかw

投下ー

914乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/11/27(金) 20:06:02 ID:X1L9.p1M0
個人的に好きな敵の組織や犯罪組織、犯罪集団
(原作がゲーム外のも含む ただしゲーム化した作品のみに限る
 また、やっていない作品も含まれている)

1 コルレオーネ・ファミリー ゴッドファーザー
ドン・ヴィト・コルレオーネ
分類:犯罪組織

2 カスタルディー・ファミリー Driver 潜入!!カーチェイス大作戦
ドン・カスタルディー&ジャン・ポール
分類:犯罪組織

3 サリエリ・ファミリー MAFIA:The City of Lost Heaven
ドン・サリエリ
分類:犯罪組織

4 タッタリア・ファミリー ゴッドファーザー
ドン・フィリップ・タッタリア&バジル・ソロッツォ
分類:犯罪組織

5 ベルセッティ・ファミリー Grand Theft Auto Vicecity
トミー・ベルセッティ&ケン・ローゼンバーグ
分類:犯罪集団

6 テュランヌス世界統一軍 鋼鉄の咆哮
テュランヌス(のちクルーガー)
分類:独裁国家(?)

7 ウィルキア帝国 ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮
フリードリヒ・ヴァイセンベルガー
分類:独裁国家

8 Qシュタイン帝国 コンバットチョロQ(PS版)
T-35
分類:独裁国家

9 レオーネ・ファミリー Grand Theft Auto3
ドン・サルヴァトーレ・レオーネ&ジョーイ・レオーネ
分類:犯罪組織

10 ロケット団 ポケットモンスターシリーズ
サカキ
分類:犯罪組織

11 ロシア超国家主義派テロ組織『The Four Horsemen』
イムラン=ザカエフ(&カレド=アル=アサド)&ウラジーミル・R・カマロフ
分類:テロ組織

915im@s fantasy9 第一章 第十四話 1/4:2009/11/28(土) 00:20:15 ID:UFuZ.9kw0
「どうして!!どうして仲間なのにこんな酷いことをするの!?」
「仲間だと!? カーッカッカ!!
 これだから何も解らぬ出来損ないは困るのだ!!
 私は奴ら1000体を作るコストを上回るコストで作られた…」

「そういうことを聞いてるんじゃないよ!!」
「うるさい小型タイプめ、私の力の前に絶望するがいい!!」


黒のワルツ3号との対決。

ビビは…戦闘が始まると同時に突然光に包まれ…
「何…?」
「まさか!!」

トランスは何も美希だけのものではなかった。
青白い光を発し、ぺたりと倒れた三角帽子は尖り、魔道衣は見たこともない造形へ変化。


「面白い、1号と2号を倒したお前達の力、見せてもらおう!!」
3号は初めにサンダラを発動。

先ほどと同じ、カーゴシップを破壊しかねない強力な雷がビビを襲うが…
「う…」
「…何!?」

効果が薄い。
「サンダー!」
雷の魔法で返す。

「う…!?」
炸裂するは、3号のサンダラと同格ほどにまで強くなった強力な電流。
そのダメージは通常時の比較にはならない。

「ブリザド!!」
巨大な氷の塊が3号に落下。3号の頭を直撃する。
「何だその詠唱速度は…!!」

「ボクも負けていられない!!」
真は突進、飛びあがり体重を乗せ3号に一撃。

「…邪魔をするな!!」
3号が飛びあがり、魔力を集中させ始める。


「味わえ!これが本当の『サンダラ』だ!!」

916im@s fantasy9 第一章 第十四話 2/4:2009/11/28(土) 00:21:03 ID:UFuZ.9kw0
より強力になったサンダラが全員を襲う。
雷が雨あられと降り注ぎ、高圧電流が網のようにカーゴシップを駆け巡る。

「うあああああああ!!」
「きゃああああ!!」
「う…」

何とか耐えることには成功するものの…
この戦いにドリルはいない。回復役が存在しないのだ。


「……あ…」
激しい痛みと、痺れ。
「さぁもう一度だ!!」
杖を空に掲げ、雷のエネルギーを凝縮させ始めた。


だが。
「はぁぁああああ!!」
ここで美希もトランス。

「…何!」
「『タイダルフレイム』!!」
またも、己の脳裏によぎった言葉を叫ぶ。



すると、美希の周囲を巨大な炎が回り始め……
「行けぇぇえええ!!」

ミスリルダガーを自分の向いている方向…3号のいる方向へ向けると、
炎は巨大化……一列に、巨大な炎の壁となって3号を襲った。

「…『ブリザド』!!」
しかし雷特化の彼ではこれを消すほどの冷気を発することは出来なかった…



「くぁぁああああ!!」
高く飛んだその高度まで炎に焼かれ、甲板に落下してしまう。


「『サンダー』!」
「『ブリザド』!!」
そこに再びビビの追撃。
二連族の魔法により、全身に電流が走り、氷の刃が食い込む。

「貴様ら…………!?」



3号が膝をつく。
これでもまだ倒すには早かったようだ。
「………私が…手加減していれば……いい気になりおって」
「…まだ戦うつもりなの」

3号のローブの各所から火花。
体勢を直すと…
「当然だ…
 我の存在価値は勝ち続けることのみ!!」

3号が強力なオーラに包まれ始めた。
「我の存在理由ハ勝ち続けルコトのミ!!
 我ノ存在理由ハ勝ち続けるコトノミ!!
 我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!!」
そしてカーゴシップから飛び立っていった。
「…?」

917im@s fantasy9 第一章 第十四話 3/4:2009/11/28(土) 00:21:33 ID:UFuZ.9kw0
その様子を遠くから眺めていたある二人。
「のの、3号の戦いはどうですカー」
1人乗りの小型艇に、小柄すぎる2人で乗っている。
「ワー、どうやら勝ったようデスよ こちらに戻っ…」


「我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!!」
恐ろしい形相で向かってくるではないか。


「…ののワーん…?」
「魔力を高めすぎたデス(です)よー(ヨー)!!!」


ののとワーの二人はそのままダイビング、撤退。
そんなことをして無事で済むのかはともかく…


「我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!」
3号は小型艇を奪い、ハンドルを握る。



「…何とか倒した、かな…」
「美希ちゃん!!リンドブルムの南ゲートが見えてきた!!」
「よっし、もう少し!」

「…」
ビビが見つめるは甲板の端にかかった三角帽子…。
もう、空へ投げ出されていった船員達は戻ってこない。


「待て!!後ろから何か来ているぞ…!!」
「…さっきの奴!?どうしよう…!」

前方にはリンドブルム領への門、
後方には猛スピードで追跡してくる3号の小型艇。
「よっし、いけーーーー!!」



「思イ知レ……『サンダー』『サンダー』『サンダー』『サンダー』!!」

雷の使い手である3号にとってサンダーの乱射など朝飯前。


カーゴシップの周囲を旋回し、魔法を乱射。
しかし精度は低く…
「きゃ!!」
「危ない!」
「何てしつこい…」
いずれもカーゴシップを沈める決定打にはならない。

「『サンダラ』!!」
カーゴシップの屋根を吹き飛ばす。
そして魔力は更に高まり…


カーゴシップの前方に回りこみ…目標を捕捉…

918im@s fantasy9 第一章 第十四話 4/4:2009/11/28(土) 00:22:05 ID:UFuZ.9kw0
「『サンダガ』!!!」
存在さえ一部の者しか知らない、この世に存在する最強の雷魔法。
しかし…

それと相対し、あわせた両手から…
「……『ファイア』!!!」
ビビの怒りの黒魔法。

凄まじい威力の炎が3号を焼き…
「ヒギュッ!?」

3号の小型艇は岩山にたたきつけられる。



ゲート寸前。

「我ノ存在理由ハ戦イ続ケルコトノミ!我ノ存在理由ハ戦イ続ケルコトノミ!!!」
3号はまだ諦めない。
危険を察知し、閉じられようとしているゲートに向かうカーゴシップを追う。


後はこのカーブを曲がるのみ。
「…間に合うかな!?」
「……ドリル、貸して…!!」
二人で全力で舵をきり…


曲がりきる。そして
「通れ……通って!!」
閉じようとしているゲートを…




一瞬の差で通過に成功。
「我ノ存在理由」

最早何も見えていない。3号はゲートへと突っ走り……
「ハ!!!!」
閉じきったゲートに激突。

南ゲートは大爆発したのだった。

919im@s fantasy9 第一章 第十五話 1/3:2009/11/28(土) 01:56:50 ID:UFuZ.9kw0
「…黒のワルツめ…アレクサンドリアの名を騙るとは何という…!!
 一体何人いるんだ…!!」
「今ので終わりだって思うな」
リンドブルム領に入ったカーゴシップの中で、美希は真に。
「…」
雪歩はあの言葉の真偽がわかっていた。


「何!? …何でそうと言い切れる!…さては美希、お前!」
「違うよ! ミキが氷の洞窟で倒したのが1号
 カーゴシップ発着場で一緒に戦ったのが2号
 今カーゴシップ上で戦ったのが3号…だよね
 3人倒したからおしまい。だって『ワルツ』だもん」
「…?」
「まこっさんダンス得意そうだと思ったんだけどなー…」



「………な、何だここは…」
そこは巨大な建造物の塊。
視界の下から上まで、びっしりと建物が一つのあまりにも巨大な塔のように連なっている。
そこを行き交うは大小様々な沢山の飛空艇。

真は呆然と口を開けていることしか出来ない。
ビビも初めてだが、それどころではない。


「…何って…リンドブルムだよ、来たことないの…?」
「美希ちゃん、リンドブルムの景観には一度来た人も絶対驚くと思う…」



飛空艇大国リンドブルム。
高い山の上に更に大きな町を、塔のように連ねた国。
国の中心リンドブルム城はそんな巨大な都市の、高い高い頂点から霧の下の海に面した最下層までをぎっちりと貫いていることになる。

「さてと…それじゃ城につけるよ」
「お前、自分の立場が…そうか、自首するつもりか!」




巨大なリンドブルム城内の整備用ドック。
橋につけ、カーゴシップを降りると兵士が取り囲んだ。
槍を手にし、三角の兜とダボっとした鎧に身を包んだリンドブルム兵達だ。

「お前達!何者だ!!無断でこの城に侵入する者は…」
「ぶ、無礼な!我々は…」
「待ってください」
言葉をさえぎったのは、ドリル…いや、アレクサンドリア王女雪歩だった。


「………私は、アレクサンドリア王女の雪歩と申します」
「な、何!?でたらめを言うな!こんな服装をした…」
「証拠ならここに。」

胸元の、アレクサンドリアの国宝『銀のペンダント』を見せる雪歩。
「!? …しっ、失礼致しました!! …少々お待ちください」


暫くして現れたのはリンドブルムの大臣オルベルタ。
「…おお、これはこれは…雪歩様…
 兵達のこのような振る舞い、申し訳ありませんでした」
「いえ…今のこの状況で私と気づけと言う方が無茶なものですから…」
「王への面会をお願いしたいのですが…」
「…畏まりました。こちらへ」

920im@s fantasy9 第一章 第十五話 2/3:2009/11/28(土) 01:57:47 ID:UFuZ.9kw0
飛空挺ドックから直進、噴水のある広間を更に真っ直ぐ…昇降機へ。
「……」
真はまたもきょろきょろ。
広い昇降機の、装飾の施された柵と扉が閉まると一気に上階へと登ってゆく。

中層から最上層へと登った昇降機は扉を開ける。
赤いカーペットの上層を進むと上と下に扉。上の扉を進むと…



大国リンドブルム最高権力者の部屋…王の間。
「…あれ?」
しかしそこには誰もいない。



「………陛下…?」
呼んでも帰ってこない。

「…」
その代わりに玉座の後ろから真っ黒い何かが現れた。

雪歩の反応。
「!?」
同じく美希。
「!!!!」
ビビ。
「わぁぁ…」
真。
「なっ…」
文臣オルベルタ。
「…」


「お、おお……!!」
ガサゴソと真っ黒い何かは蠢く。…『虫』だ。
『ブリ虫』だ。



「何といい面構えだ……」
何故か人語を話す黒き虫は…

玉座から降りると…
「『ブリ』っと来た!!!」

雪歩に向かい飛びかかってきた。
「でやああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
真は剣で斬り飛ばす。

「うぉおおお!?」
玉座背後の大きな窓に激突、ひび割れを生じさせる。

オルベルタは黒い虫に向かい叫ぶ。
「へ、陛下ーーーーーーーーーー!!」
「「「「!?」」」」

921im@s fantasy9 第一章 第十五話 3/3:2009/11/28(土) 01:58:48 ID:UFuZ.9kw0
「…申し訳ありませぬ!!ほんっとうに申し訳ありませぬ!!!」
「真ちゃん、これ」
「有難き幸せ」
雪歩にスコップを手渡され、穴を掘り出す真。
そう、黒きブリ虫こそがこの国の王… 高木その人なのだ。
「……いや、いいんだよ…もう慣れてる『ブリ』ものだからね…」


「以前お会いした時は人間だったような…」
「これには訳があってね『ブリ』…」
ぷりぷりと変な音を出しながら歩く黒き虫…王。
「まぁ、話したが最後、とても情けない理由なので後で雪歩君にだけ話しておくとする『ブリ』よ……」

「おお、そうだった…こんな辛い任務を押し付けてすまなかったね…
 依頼主がこんな姿ではさぞびっくりした『ブリ』ことだろう」
「いや、そこはいいんだけど…」
その会話に真は耳を疑う。
「何!?」

「あれ?言ってなかったっけ。ミキ達タンタラスの任務、『雪歩王女の誘拐』は
 あの高木王から頼まれたことだったんだよ」
「ははは…君達のボスである律子君には昔から世話になっているんだよ。」
「それで、私の方から高木王に文を送ってお願いしていたんです」

…全てはこちら側の計画通りだった。…魔の森に落ちるなどは勿論想定外だろうが。

「初めから合意の上かー…知らなかったのはミキ達タンタラスの下っ端だけだったんだね…」
「ボクはお前達のしたことがリンドブルム王からの依頼だってことすらも今知ったよ!!
 …しかし高木王、姫様…何故このような事を」

「……そのことについてですが…今回の旅の間で、高木王にお伝えしなくてはならないことが増えました」
「…うむ。聞こう
 ……おお、すまなかった。君達は客間で休んでいてくれたまえ」
「はーい!」
「………ではボクも」
「じゃあボクは…町を見てこようかな」


ひとまず全員解散。
雪歩は王の間に残り、高木王に話をすることとなる。



「…………さて。……春香君のこと『ブリ』ね」
「はい。 …私の姉・アレクサンドリア女王春香は……… 戦争を始めようとしています」
雪歩は、ストレートに切り出した。

「…うむ。私もそれには気づいていたんだ。 まさか春香君がとはな……『ブリ』」
「そして…見てしまったんです。カーゴシップを出してくれた、ダリという村の地下で…
 …霧により作られた、魔法を操るゴーレムが作られるのを。」

「…噂には聞いているよ 『黒魔道士』というそうだ『ブリ』…
 ちょうど、先ほど君の仲間にいたビビ君『ブリ』のような…」
「そのような言い方はお止し下さい。
 ……深く被った三角帽子に、魔道衣をつけたもので、私達もその特殊製と思われる者に3回ほど…
 …私達を庇い、その特別製の『黒魔道士』に殺された者も沢山いて…」


「……そうか。すまなかった『ブリ』ね
 まぁ、この国にいる間は安全だ…安心したまえ『ブリ』
 娘のいない我らにとっては娘のようなものだ『ブリ』…君も…  ……春香君もな」
「…私、姉様を止めるにはどうすればいいか……解らないんです」

「…今は、出方を見るしかないだろう。
 ………防衛の準備はしておかねばな『ブリ』 …春香君は…雪歩君を狙うだろうからな」
「もしリンドブルムを危機に晒すようなことになれば私はいつでも戻ります」

「…」
高木王は『戻る』という言葉に難色を示したが…
「…高木王?」
雪歩はそれに深い意味に取らなかった。
「ああ。何でもない『ブリ』よ。…まぁ、君も休んでいなさい 展望台に行ってみるなどどうだ
 ついでだし、後で愚痴話でも聞いてもらおうかと思ってる『ブリ』ハハハ… 休むなら今のうちだぞ?」
「ええ。それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」
こうして雪歩は、一礼し部屋から去っていった。



「………『妹を』取り返すだけだといいが…」

922im@s fantasy9 第一章 第十六話 1/3:2009/11/28(土) 03:10:02 ID:UFuZ.9kw0
ひとまず、『雪歩王女誘拐』の任務は完了。
美希は客間で休んでいた。


「…ん…
 ……ドリル、今何してるかな」
客間を離れ昇降機で上層へ。
「…あ」
歌が聞こえてくる。
階段を登り、更に登ると…金色の鐘が吊るされた真っ白な展望台。


「……」
何も言わずに近づくと…。
「…あ」
流石に気づかれてしまった。


「…ごめん。うるさかった、かな…」
「ううん。そんなことないの ドリルが歌うと可愛い感じに聞こえるね …ね、その歌…何の歌なの?」

「…え? うん……
 …実は、私自分でもこの歌をどこで知ったかよく解らなくて…」
「よく、解らない…?」

「…うん。物心ついたときには歌ってて…姉様によく歌ってたの」
「春香女王に…?」
ドリルの顔に花が咲く。
「うん。当時はまだ私と同じ王女だったけどね?
 お姉ちゃん、って呼んでたんだ
 この歌を歌うとね…笑ってくれたんだよー、お姉ちゃん」
「…ドリル」


「…………。」
その姉に自分が心配かけていること、
その姉が自分を取り戻すために残虐な手段に出ていること、
その姉が戦争を起こそうとしていること…。

ドリルの顔の花は…瞬く間に萎れた。
「……ごめんね、話してもどうしようもない話しちゃって…」
美希はとっさに、話をそらす。
「あ、いいよいいよ。それよりさドリル、ちょっと目の下にクマできてるよ?」
「ふぇ?」

ドリルの目についた、黒ずみを指先でちょんとして舐める。
「せっかくの可愛さが台無しなの。 そーだ…
 …よく眠れないなら…ミキが添い寝してあげよっか〜…?」
手をわきわきとし、ファイティングポーズに似たポーズで嬉々としてドリルに迫る。

「ええ!?…い、いいよ…私一人でも寝れるし…
 美希ちゃん、私そんなに子供じゃないよ!?」
手を頬にやり、ふるふると首を横に振るドリル。

「……子供じゃないから言ってるんだけどなー…」
「?」

923im@s fantasy9 第一章 第十六話 2/3:2009/11/28(土) 03:11:05 ID:UFuZ.9kw0
「いや、それはそれで可愛いからいいのいいの♪
 …そうだ。ドリル、あのね リンドブルムにはちょうど明日
 『狩猟祭』ってお祭りがあるんだよ」
「あ。うんっ、聞いたことある!」
「それでねードリル。
 明日の狩猟祭でもしミキが一位取ったら、ミキのデートしてくれないかな!」
「で、でででででででででデート!?」
「いい反応なの♪
 そうなの。リンドブルムの町には行ったこと多分ないでしょ?ドリルに教えてあげたいなーって。
 い・ろ・い・ろ・と♪」

「わ、私なんかでいいの…?
 何か…怖いけど……う、うんわかった…」
「それじゃ明日を首を洗って待ってて欲しいな!」
「何か言葉の使い方がおかしいよー、美希ちゃん」





一方その頃。
「ジョウキキカン?何ですか、それ」
「蒸気機関とは、有害な今までの霧を使った『霧』に代わり
 霧のない場所でも、安全に環境に優しく飛ぶことが出来るようになる新動力です
 高木陛下は飛空挺技師でもあられ、この蒸気機関を用いた飛空挺の開発に着手していたのです」
「して…いた?」
真は飛空艇の整備場に…

「あの、お姉さん…これ何ですか?」
「あら。知らないの?モーグリが喜ぶ『クポの実』っていうんだけど」
「へぇー…」
「よかったら一つあげるわ。坊や可愛いからサービスしちゃう」
「あ、ありがとう!」
ビビは町で買い物をしていた。




…美希は、リンドブルム城を出ると久々のホームタウン・リンドブルムを散策。
「…律子ボスは、まだ戻らないみたいだね…」
劇場街でタンタラスのアジトに立ち寄り

「武器合成…そういえばまだしたことなかったかも。やってみよっかな」
工業街で武器を強化。

「まこっさーん、何やってるの?」
「いい食いっぷりだねぇ坊っちゃん!」
「うわー、おいしい!!おばさん、おいしいよこのギサールの野菜ピクル…んぐ!?ごほ、ごほ、ごほっ…」
「あ…」
商業街でむせる真を発見したりしながら…


「んふふー…同性だから問題ないよね♪」
最後に行きつけの酒場で女の子にセクハラしていた。

924im@s fantasy9 第一章 第十六話 3/3:2009/11/28(土) 03:12:34 ID:UFuZ.9kw0
「ったく、あなたはまたそんなことをして…。だらしがないですねぇ」
赤い鎧に身を包んだ長身の女性が現れる。
アホ毛が見事に飛び出したこの女性は美希の知り合い。
「!! ……生きてたの…?」
「ええ。当然です。あの方を見つけるまでは、死ねませんから…」

「ネズ美ー!!自分が悪かった!!帰ってきてくれたかー!」
「美希ちゃん。誰の真似なの?それ」
「ミキでも解らないの。何となくだから…えっと」
「本気で忘れかけてたのね?」
「昔の女を忘れるほどミキはバカじゃないの、でも今ミキにはドリルっていう…」
「いつ私があなたの女になったと」
手馴れた様子でのツッコミ。アホ毛がグサリと音を立てて美希に刺さる。

「…うん。ごめんねあずさ」
「解ってくれればそれでいいですよ」
「……恋人の手がかり、見つかった?」
「…死んだとしか聞いていませんね……私はまだ、ブルメシアに戻れそうにはありません」
「そっかー…。 …あ。もしかしてここに来たのって、狩猟祭に出るため?」


「ええ…優勝した私の姿をあの方が見てくだされば、きっとあの方も私を見つけてくれるはずですから」
「………過去ばかり振り返るのはって言いたいけど…まぁ、頑張ってなの。
 …さて。それじゃ明日に備えてミキは寝ようかな… お互い優勝を争うことになりそうだし、ライバルは増えたし」
「ライバル?伊織ちゃんかしら」
「伊織は…今いないの。律子さんも。でも、ちょっと争ってみたい仲間がいるから声かけてみるの。ビビっていう黒魔法の使い手だよ」
「…そう。それじゃおやすみなさい、美希ちゃん」
「おやすみなのー」


「…まだお昼ですけど」





「…それでだな。私は昼田君の、彼女の心を射止めるためにこの飛空艇『ヒルダガルデ』を作った『ブリ』んだ
 私にとって彼女以外の女性はいなかったんだ『ブリ』 …まぁ、君もここまでは知ってるね『ブリ』」
「ええ。知ってます 結婚までしたのも知っていますが…どうして上の名前を使ったんですか?」
「それは聞かないでおくれ…
 それで『ブリ』だね、幸せだった生活だったんだがちょっと飛空艇の操縦士の女の子にうつつを抜かしていたのを見られてしまってね『ブリ』…
 私は妻に怒られて、離婚されてしまったのだよ…姿を、このブリ虫に変えられて『ブリ』ね」
「…よりによってブリ虫だなんて」
「頭脳の減退も著しかったよ 私は今ではロクに飛空艇を作れず、お詫びの『ヒルダガルデ2号』を完成させようとしてもこの通『ブリ』……」


その夜ドリルは、ただひたすら高木の絡み酒に付き合わされていた。
「あの、私そろそろ明日の狩猟祭に備えて…」
「待ってくれ雪歩君、こんな話律子君に話したら斬られてるし
 君んちの音無君に話したら多分ファイガ撃たれているところだよ、話せるのは君くらいなのだよ…!」

925ホイルス銀河を統括する高官達:2009/11/28(土) 16:34:12 ID:IroOlskc0
インペリアル=コア

グランド・モフ・ジャジャーロッド
ハイ・モフ・ジークルーネ.N.P(インペリアル優先セクター)、ハイ・モフ・リヴィエ.P(オルデラン優先セクター)
(統合参謀本部)
バスト大元帥、スローン大元帥
(地上軍)
ブラシン大将軍、カス大将軍、ヴィアーズ大将軍、エーシェン大将軍、オドスク大将軍
(宇宙軍)
グラント大提督、ペレオン大提督、オキンス大提督、ギエル大提督、キラヌー大提督
(空軍)
カーゲロック大空将、アルノシアン大空将、フェル大空将、V.アッシュ大空将、マク大空将
(ストーム・トルーパー軍)
フレジャ大将軍、ウェア大将軍、アルボー大将軍、バラデュール大将軍、コシュ大将軍

ディープ=コア

グランド・モフ・ギャン
ハイ・モフ・セアティ(ベシュケック優先セクター)
ズィアリング大将軍、オイカン大提督、モガーク大空将、デラボルド大将軍

スライス

グランド・モフ・シェーンフィルダー
ハイ・モフ・バンドール(ジョスプロ優先セクター)
ゲイフ大将軍、ニーダ大提督、アール大空将、エキューデ大将軍

コロニー界

グランド・モフ・ネリアス
ハイ・モフ・フォレット.P(タパニ優先セクター)、ハイ・モフ・ファーガン(バーマ優先セクター)
ベレガヴォーイ大将軍、レノックス大提督、フェニア大空将、グラシャン大将軍

インナー=リム

グランド・モフ・ニヴァース
ハイ・モフ・アドリール(ビルブリンギ優先セクター)
ロット大将軍、スクリード大提督、ラムナー大空将、ユンブロ大将軍

ミッド=リム

グランド・モフ・ディズラ
ハイ・モフ・スタヴェールド(シェルシャ優先セクター)、ハイ・モフ・パナカ(チョーメル優先セクター)
ハイ・モフ・カーベラク(ゴルディアン=リーチ優先セクター)
レーキス大将軍、サークリィ.P大提督、ローリアー大空将、イスマエル大将軍

エキスパンション=リージョン

グランド・モフ・サレティ
ハイ・モフ・トゥリエル(ブラク優先セクター)、ハイ・モフ・タスクル(フェールゥイ優先セクター)
ヒスティヴ大将軍、カーギー大提督、テルノー大空将、クシュネル大将軍

アウター=リム

グランド・モフ・ケイン
ハイ・モフ・ターキン(セスウェナ優先セクター)、ハイ・モフ・ブリンカン(ブライト=ジュエル優先セクター)
ハイ・モフ・ヴェンセール(エスートラン優先セクター)、ハイ・モフ・ジェルマン.P(キュートリック=ヘゲモニー優先セクター)
アイガー大将軍、ダーラ大提督、ロアット大空将、ラゴルス大将軍

リシ=メイズ

グランド・モフ・ノエリア
ハイ・モフ・グラシアーヌ.P(アブリオン優先セクター)、ハイ・モフ・ブリール(ティングル=アーム優先セクター)
コヴェル大将軍、クレヴ大提督、エアルドレッド大空将、プラージ大将軍

ワイルド・スペース

グランド・モフ・フェラウライテーロロ
ハイ・モフ・ケイン(ブラクサント優先セクター)、ハイ・モフ・カグリオ(至グラディウス優先セクター)
アルダックス大将軍、パーク大提督、バルフ大空将、ミュルヴィル大将軍

未知領域

ハイ・モフ・ジェラール.P(セカンド・バスティオン優先セクター)
セーリッド大将軍、翼.J.P大提督、エルスバーグ大空将、ジャー大将軍

926用語説明:2009/11/28(土) 16:35:09 ID:IroOlskc0
・優先セクター

皇帝が特に強い関心を抱いているセクターに与えられる称号。
ハイ・モフが配置され、通常のモフよりも多くの軍隊や資金が与えられる。
主に紛争が勃発していたり、反帝国感情が強かったり、軍事上重要だったり、外敵の侵入ルートだったり、
シスの古代遺跡が存在するセクターが指定されている。

・ハイ・モフ

グランド・モフと並んで皇帝が直接任命する優先セクター総督。問題があったり、重要な地域が
優先セクターに指定されている為、皇族や極めて有能なモフや軍人がこの地位に任命される。

・中央の元帥とその他の元帥の役割の共通点と違い

元帥達に共通する点として、宙界規模の軍司令官であることが挙げられる。但し、幕僚長と参謀総長に
関しては直属の軍を持たない。

中央の元帥達の役割は主に皇帝の軍事顧問である。経験豊富で老練な元帥達が皇帝の補佐にあたっている。
地方の元帥達の役割はその宙界に展開している帝国軍の総司令官である。
その意味で彼らの実質的な権限は中央の元帥達よりも大きく、比較的若くて野心的な元帥が配置される。
また、グランド・モフの軍事顧問も仕事の一つである。

927im@s fantasy9 第一章 第十七話 1/2:2009/11/29(日) 01:51:43 ID:RTV3zMEE0
こうしてやってきた狩猟祭当日。
門の上にスタンバイするはドリルと真。


「ここからだとよく見えますね、姫様!」
「そうだね…美希ちゃんはどこかな」
「アイツなんかより、ビビ殿を応援しましょうよ、ビビ殿を!」

「もう疑いは晴れたでしょ…?美希ちゃんにも優しくしてあげてね」
「いえ!それでも姫様を危険に晒したことも事実!ここはボクはビビ殿の応援に回らせていただきます!!」

飛びあがり、拳を振り上げ応援を始める真。
ドリルは美希の方を向き、声援を送る。
「美希ちゃーん、頑張って!!」




開始。
狩猟祭の間は街中にモンスターが一斉に駆け回っており…
それを倒すと、種族ごとに決められたポイントが加算される。
そのポイントを選手ごとに競うというのがルール。

モンスターが駆け回るのは、商業街、工業街、劇場街。
なるべく無駄なくすべてを回り、短時間でそれらを倒し点を稼ぐのだ。



「さて…行こっかな」
街中の公的移動手段、エアキャブを降り
美希は商業街からスタート。

「いた…ファング!」
魔の森でも戦った、狼のような茶色のモンスター。
脚の速さでは決して負けることはない。
追いかけっこをするまでもなく追いつき…

新武器『エクスプローダ』を両手で、ぐるりぐるりと頭上で回転させ…
一撃。
「やっぱり盗賊刀は違うねー!」

盗賊刀は持ち手部分を中心として前後に刃のついた、カヌーのオールのような形をした上下対称の剣。
その長さは美希の身長を軽々と超える。


「あ、トリックスパロー!!」
空を悠々と飛びまわるはこの辺ではよく見られる
青い鳥のモンスター、トリックスパロー。

回転を速め…
「はぁあ!!!」
ブーメランのように回し、トリックスパローを3体まとめて両断。
手元に戻ってきたそれを
「いやああああああああああ!!」
見物席のドリルが目を伏せ叫ぶ中、中心の持ち手部分をごく普通にキャッチ。
「心配させちゃったー?」
「もうっ、美希ちゃんたら何であんな危なっかしい武器…」


「あ…」
立ち上がれば小児ほどの大きさになる、リスのようでふさふさと可愛らしいモンスターのムーが3匹。
「『ランブルラッシュ』!!」

跳躍し、エクスプローダで次々に切り裂き、飛んでトリックスパローを一撃。
「ううう…!美希の奴!!」
「真ちゃんも見てるんじゃない」



「商業街はこれくらいかなー?」
エアキャブ発着場へ戻り、劇場街へ。

928im@s fantasy9 第一章 第十七話 2/2:2009/11/29(日) 01:52:19 ID:RTV3zMEE0
「いた!」
広場のファングに飛びかかりオーガニクスを突き刺す。
「でい!!」
そこから電灯の上のトリックスパローに投げて一撃。
「わぁ、強いね美希姉ちゃん…」

ファングに追われながらビビが現れた。
「ボクはこの通り、追われて、ばかりで…」
「助けないけどポイントは貰うよ」
こつんとエクスプローダで頭を小突きファングを撃破。


「さあーって、次次! …ん?」


ビビがいつの間にか、大量のモンスターに取り囲まれている。
20体はいるだろうか。
建物の壁に追い込まれ…


「…これは……」
「さ、サンダー!!」
「!!」

広範囲化した魔法を放ち、それらを全滅させてしまう。一挙大量得点。
「やっぱり強い…これはウカウカしちゃいられないの」

ドリルとのデートのためにも。
階段を下りてまたファングを撃破。
「今回はこの3種だけなのかな」
大きくジャンプ、エアキャブ発着場に戻り工業街へ。



「ムー」
走り回ってきたそれを撃破。
「トリックスパロー」
飛びあがり一閃。
「ファング」
空中からオーガニクスを投げ、突き刺し一撃。
「…正直、ちょっとつまんないなー」


そう思った時。
「う…!!!」

赤い何かが吹っ飛んできた。
「ドタプン撃破91ポイントやったぁ!!」
「こら!!」
槍の柄で頭を叩かれる。

「いいもん私どうせひんそーだし…」
おまけにドリルも拗ねてしまった。
「ああ、ドリちゃんポイントが…」



「…さて。冗談はいいとして、あずさ、そっちに何かいるの?」


壁が…崩れる。家と家の間にかけられた旗を目隠しにして突進してくる巨大なオレンジの物体。

「!」
「美希ちゃんは知らなかったかしらね…『スペシャルモンスター』」


体高4m、体長7mはあろうかという巨大なサイやウシのようなモンスター。
口から飛び出るは、2mはあろうかという黒く反った、巨大な牙。

「『ザグナル』!?」
「『ピナックルロックス』産のモンスターをリンドブルムの富豪が飼育したもの…野生のものより数倍強いわ
 …トドメを刺したものがポイントをもらえる。お互い頑張りましょう?トドメの一撃前のその時まで」


あずさは真っ直ぐに、天高く飛びあがる。
「…こういうとっさの回避が出来るから『龍騎士』はいいよねぇ…」

929im@s fantasy9 第一章 第十八話 1/2:2009/11/29(日) 01:52:55 ID:RTV3zMEE0
「はぁあああ!!」
槍を投げつけ、ザグナルの背に突き刺す。
自らも落下、槍を手にしてジャンプ、元の場所へくるりと回転、戻る。

「んもおおおおおおおお!!」
ザグナルは突進…
「う!!」
美希の服に牙を引っ掛け空へ放り上げてしまう。
「どんな力だっていうのーーー…!」

美希が宙に放り投げられている間、
あずさは槍でザグナルを真正面から突き刺す。

「…流石にこの鋼鉄の皮膚は貫けないみたいですね …きゃ!!」
反撃を受け、鎧の上から巨大な角の衝撃を受けてしまう。

「たぁぁぁあああああああああ!!!」
美希は着地、ザグナルの首に向かってエクスプローダの回転から強烈な一発を叩き込む。

「偶然にも私みたいな戦い方になりましたね」
「考えてみれば、敵を利用する必要もないの」
美希は壁にジャンプ、たたたと走り込み…

「は!!」
背後から『スイフトアタック』。

エクスプローダでの連続攻撃、そして弾き飛ばす強力な一打。

「…」
しかし相手が重く…弾き飛ばされるのはこちら側。

「やりますね…」
槍での連続攻撃をあずさも行う。

「ぶももも!!」
体を震わせ…
「もーーーーーー!!」
ザグナルは体に蓄えた電流を魔法として放った。『サンダー』だ。


「あうっ…」
美希にダメージ。

930im@s fantasy9 第一章 第十八話 2/2:2009/11/29(日) 01:54:02 ID:RTV3zMEE0
「…ザグナルはこちらから見ると弱っているように見えます
 この一撃で決まるかもしれませんよ!!」
あずさはもう一度飛び上がる。


「それじゃターゲット変更なの!!」
ザグナルの背を斬りながら乗り、美希は地上からあずさを迎え撃つ。


「選手同士の対決ですか…殺しさえしなければそれもいいかもしれませんね!
 今1位はあなた…2位は私!!ザグナルを倒せば点差をひっくり返すことは可能!」
「このまま逃げ切るもん!!」

上と下から、盗賊刀と槍とがぶつかりあう。


「う!!」
「く…」


激突。
あずさは弾き飛ばされ、民家の連歌壁に槍を突き刺し止まる。
美希はそのまま地上へ叩きつけられそうになったところを三回転し着地。
「…今なの!ザグナルにトド…」


「…あれ?」


「うっうー♪ごちそうさまでしたー!!」
そこには、ザグナルの頭蓋骨をばりぼりと食べる何者かが。

「…え?ポイントですかぁ? えっと、さっき3位でしたけどこれで…
 えっ!?私一位なんですか!?よく解らないけど嬉しいですー!!」

「…」
「…」
あずさと美希は顔を見合わせる。

「ビビ、殿……ダメだったかー」
「美希ちゃん……」
真とドリルも頭を抱えていた。

「終了ーーーーーー!! 選手の皆さん、お疲れ様でした!!
 優勝は『ク族の沼』からやってきたやよい選手! ザグナルをトドメを刺すどころか平らげてしまったぁ!!」

931im@s fantasy9 第一章 第十九話 1/3:2009/11/29(日) 03:05:52 ID:RTV3zMEE0
「…誰?」
「私も全選手を把握してるわけではないのよー」

城に戻り表彰式。
ク族の一族に育てられた少女やよいがハンターの称号と、トロフィー…
そして副賞として大量の食べ物を貰って帰っていった。


「うっうー!この大陸の皆さんって親切なんですね!
 ありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀し、カエルを財布にした少女は思わずおおはしゃぎ。

「…落ち込むことないよ美希ちゃんも、ビビ君も」
「じゃあデートはしてくれるんだね?」
「……」
ドリルは何か、浮かない表情のまま黙っていた。

「…ドリル?」
「あ…何…?」
「デートだけど…」
「ダメっ!!」



「…おお、そうだ。狩猟祭も終わったこと『ブリ』だし、
 これからパーティを行おうと思う『ブリ』。下の会議室で食べることにしようではないか『ブリ』」



下の会議室のテーブルには山盛りの料理。
「いっただっきまーすなの!」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす!!」
「それじゃ召し上がりましょうか」
「うっうー!」


肉に野菜、魚にパスタにデザートのフルーツにゼリーにプリンにイチゴババロアにキャラメルマキアート、
そしておにぎり。
沢山の食べ物を食べたり注文したりしながら、とにかく飲んで食べて騒いだ。


「皆さん、私からはお茶を振舞わせていただきます」
「おお、霧の大陸に轟く雪歩君のお茶か!!飲まない手はないな」

雪歩のお茶はおいしいと有名。おかげでアレクサンドリアは春香女王とあわせ
お菓子とお茶の国になってしまった。


「あふぅ…何か眠くなってきちゃった…」
よく眠る美希はいつもの通り一番手で眠る。
「大丈夫?美希ちゃん…」

「何か私も眠くなってきたよ…あふぅ『ブリ』」
「高木王が真似しても気持ち悪いの……Zzz…」
「私も眠くなってきてしまいましたー…」
「おやすみなさーい…」
「ボクも…何だか眠くなっちゃった…」

932im@s fantasy9 第一章 第十九話 2/3:2009/11/29(日) 03:06:49 ID:RTV3zMEE0
…後に残ったのは雪歩と真のみ。
「うわー、みんなだらしないなー…それでは、ボクも失礼して…」
「飲んだら寝ちゃうよ真ちゃん!!」
「!?」
緑茶を喉に詰まらせる真。

「まさか、姫様…」
「うん。皆には寝てもらったの」

「…一体何を…」
「…表彰式の前ね、高木王は黙っていたんだけど…
 兵士の人達が話しているの聞いてしまったの」

「…聞いたって…何をです」


「…姉様が、アレクサンドリア軍がブルメシアに侵攻したらしいの」
「…春香様が!?」

「千早ちゃんの軍隊だけじゃなく、あの黒魔道士たちも一緒にいるみたい
 私を狙うなら、リンドブルムに来るはず。
 …けど、狙ったのはブルメシア。……姉様は、霧の大陸を支配するつもりなのかもしれない」

「…まさか、春香様がそのようなことを…」
「ブルメシアの兵士が城の前で血まみれで倒れてた、って言ってたもの…もう、認めるしかないよ」
「では、姫様は…」

「姉様を止めるんです!私達で… アレクサンドリアに戻りましょう
 今まで、ありがとうビビ君  …美希ちゃん。」

「お、お待ちください姫様ーーーー!!」



全員が目を覚ましたとき…すでに二人の姿はなかった。



「…美希ちゃん、起きなさい…いつまで寝ているの…?」
「あふぅ…あ、あずさ…
 …!!! …ドリルは…まこっさんは?」

「…部下から、話を聞いている。…これから、君達に話そうと思う」
高木王の、重い虫の口から…言葉が発せられる。





「……アレクサンドリアとブルメシアの戦争…」
あずさは眉を寄せ、拳を握る。

「いずれ我がリンドブルムにも飛び火するだろう『ブリ』…
 …こちらからアレクサンドリアを攻撃するような真似は出来ない『ブリ』
 我らに出来ることはブルメシアの援護だけ『ブリ』。」



「…狩猟祭優勝者に行ってもらいたいと思っていたが
 やよい君はもう行ってしまったようだ『ブリ』」
「ならミキに頼めばいいの!ミキが今大会の事実上の優勝者だもん!!
 …ドリルを危険な目に遭わせたくないの!」


テーブルを叩く美希の目は真っ直ぐ。
…すると高木王はテーブルに、霧の大陸の地図を広げる。
「…うむ。そう言ってくれると思っていた『ブリ』よ
 君達には、危険だろうがブルメシアへ向かってもらいたい『ブリ』。
 アレクサンドリアの…春香君の暴走を止めてくれ『ブリ』」

リンドブルムから広がる大平原…その先に山。
「うんっ!絶対にドリルを取り返して、ドリルの悩みの種も解消して、誰も死なせないの!」
「簡単に言うわねー美希ちゃんも…」

そしてその山の向こうに広大な砂漠…そして、ブルメシア。
「ボクも止めたい。黒魔道士の人達は、喋れなくて大人しいのに戦争に利用されてるなんて、
 可哀想だよ!」



「…こんな姿でも私は国の主だ『ブリ』。国に残らなければならない
 君達、ブルメシアを頼むよ!」
「はいなの!!」


高木王から、美希本人への、国家レベルの大きな依頼。
美希はオーガニクスを振り回し…

颯爽と昇降機に乗るのだった。

933im@s fantasy9 第一章 第十九話 3/3:2009/11/29(日) 03:07:25 ID:RTV3zMEE0
「いいかね、この国の門は3箇所…カーゴシップで君達が潜ってきた『天竜の門』
 主に船が往来する『水龍の門』とあるが、君達が行くのはその水龍の門の反対側、
 『地龍の門』だ! 頑張って行って来てくれたまえよ!!」
「絶対、止めてきます!」
ビビの決意も固い。
「ブルメシアをアレクサンドリアの好きにはさせません」
あずさも闘志を燃やす。



昇降機で最下層へ。そこから、移動用トロッコで線路を進み地龍の門へ。
「…この先が……!」
大きな扉を開け放ち、ブルメシアへの道…広大な平野へ。


「…ドリル、待っててね!」
平原を進む。
「チョコボがあると便利なのだけど…」
「チョコボを使おうとするとちょっと遠回りになるよ それなら少しでも早く、ブルメシアへ!」


途中、やよいがいたというク族の沼を発見するがやよいの姿は見当たらず。
3人は平原を真っ直ぐに真っ直ぐに何日も進み……



「…お、大きな山だね……」
「洞窟の結界が、破られています…!」
「え?」

近づくと、血まみれで倒れているのは鎧を纏ったネズミ族…ブルメシア兵だ。

「…しっかり!」
「あずささんか…戻って、きてくれたんですね…」
「今手当てします、じっとしていて!」
「もう、遅いです… 三角帽子の一団が…この奥に…。
 ……これ、を………」
あずさは、倒れた兵からベルを渡される。
小さく、青い色をしたそのベルは…


「それ、何なの…」
「『ギザマルークのベル』 この洞窟の最深部にいらっしゃる
 ブルメシアの守り神『ギザマルーク』様のところへと導くベルよ
 …ギザマルーク様が危ない。…先へ進まないと」

934im@s fantasy9 第一章 第二十話 1/3:2009/11/30(月) 00:22:44 ID:3aOh9EfA0
ブルメシアの聖なる洞窟、『ギザマルークの洞窟』
青いギザマルークのベルを鳴らし、鐘つきの扉を共鳴させ開けた先には
アレクサンドリアの放った虫がすでにいた。

「その大きな羽虫は『スティンギー』
 羽音でモンスターを暴走させる力を持ってますから、気をつけなさい!」
あずさが槍を厚い皮膚に突き刺し、貫通。

「この骸骨はどっち側だ!?」
「『スケルトン』はギザマルーク様を守護するため、ブルメシアに仕えてくださったヒト族の僧兵…
 死して尚守護してくださっている方です。…恐らく、アレクサンドリアの黒魔道士が魔法で…」

「…ごめん、悩んでる暇ない!!」
美希はオーガニクスでスケルトンを岩壁へ叩き付ける。


「? どこかで見た顔デスねー」
「? そうですカー 気のせいだと思いますケド」
ある程度進んだ所で、複雑に立体交差した洞窟の、橋のようになった上階から見下ろす二人の小人が現れた。
黒魔道士を従えた二人は、黒のワルツを差し向けた、ののとワー。


「…アレクサンドリアの魔術士…!?」
「何か見たことある気がするの」


「まぁ、気にすることはないデス ヴァイ!!」
片手を振り上げたことを合図に、2人の黒魔道士が落下。
「わっほい!」
女王から刷り込まれたワードを掛け声に、戦闘態勢に入る。



「…黒魔道士が相手…戦える?ビビ」
「……」


黒魔道士は容赦なくファイアとブリザドを唱え始める。
ファイアは美希へ
「熱い…!」
ブリザドはあずさへ。
「冷たいわね」


「悪いけど、私には悩んでいる暇はないんです。殺させてもらいますよ!」
あずさは前進、槍を前へ突き出し黒魔道士の体を貫通。
そのまま横へなぎ払い、隣の黒魔道士を壁へぶつける。


「わっほい」
黒魔道士はサンダーを放つ。
「あ…!!」
ビビの頭に雷が落下。
「ごめん、ビビ!!」
美希は壁にめり込みながら次の魔法を撃とうとしている黒魔道士をオーガニクスで斬り、
2人の黒魔道士との戦闘を終わらせる。

「…」
ビビは、2人の死体を見て黙ったまま。

935im@s fantasy9 第一章 第二十話 2/3:2009/11/30(月) 00:23:30 ID:3aOh9EfA0
だが敵はどんどん現れる。
「…ビビちゃんにはここらに残ってもらうしかないわね」
現れたスケルトンの頭蓋を砕き
「それって、お荷物ってこと!?それ酷いよあずさ。」
スティンギーの羽をオーガニクスで斬り落とし
「ビビだって黒魔道士以外が相手なら戦えるもん!」
黒魔道士の胴をオーガニクスで真っ二つに。
「…それなら聞くわ。どうして黒魔道士なら戦えないの?」
スティンギーへ槍を投げ、落とし引き抜く。

「…それくらいわかってよ!自分と同じ形をしていて、操られてるんだよ!?ビビは戦うの辛いと思うよ!」
スティンギー3体へオーガニクスを投げ、散らす。

「ここにいるスケルトンも操られたモンスターだし、それならもし操られたブルメシア兵と戦うことになった時
 ビビちゃんはブルメシア兵は殺せるわけね?」
スケルトンへ向け、槍に刺さったスティンギーを振り払い、投げてぶつける。


「…それは」
美希も黙る。
「命は命で…敵は敵です。操られていても、それがどんな形をしていても」
そんな美希の背後に飛んできたスティンギーを槍で串刺しに。


「……でも、ビビは子供だよ!?」
「そう、子供ね。戦場はそんな子供が来るところじゃないわ。引き返すこと
 あなたにそんな辛い戦いは無理でしょうからね…」
 
「次にモーグリがいたら結界でも張ってもらって、そこに避難させましょう」
黒魔道士3体に対し素早い動作で突く、引くを繰り返す。
「これでも大甘の措置だと思いますよ?戦場ではね」


だが4体目があずさの真上に降り、両拳を合わせあずさの頭に振り下ろしてきた。
「!」


ファイア。
「……ううん、ボクも…戦うよ。 …ごめんね、あずさ姉ちゃん」
黒魔道士のローブが焼け…苦しみ悶えながら最期を迎える。

「…ビビちゃん」
「一番今するべきことは、みんなを助けるためブルメシアへ向かうことだよね
 …ボクもやれるだけやってみるよ」
「やれるだけやる、ではなく…やることです。いいわね」
…あずさは先へと進む。

「…いこ…?ビビ」
「…うん!」

奥で通路を横切っていたのは、赤い髪をした蛇の下半身を持つ、扇子と剣を持った可愛らしい女性。
「…あれは『ラミア』 ギザマルーク様を守護する巫女!! …彼女達も操られていたようですね」

「なかなかキレイだけど……」
「そう言っていられるのは戦闘前だけよ美希ちゃん!!」

「!!」
顔が美希たちを向き、真っ赤な瞳が美希たちを見据えると…
「来ますよ!!」

936im@s fantasy9 第一章 第二十話 3/3:2009/11/30(月) 00:24:17 ID:3aOh9EfA0
魔法を唱える。
すると、ラミアの体がみるみる内に巨大化…

光と共に蛇のような形をした面と鎧をつけ…まさに全身蛇のモンスターのようになってしまった。
「わぁ!?お約束破り!!」
「そんなお約束は知りません、おばさんだったこともあるんだから若いだけまだマシ!!」
「期待していたのにいいいいいいいいいい!!」

ラミアを美希は怒りの一撃。
ラミアは攻撃魔法『フェイス』を発動。
「その魔法は…?」
「『フェイス』は攻撃力を上げる魔法!これを使われたから、剣を使われると危険だよ!!」
ビビがブリザドでラミアを攻撃。
「ギザマルーク様を汚す者に死を!!」
「うわぁあっ!!」
ラミアが突進…魔力の込められたナイフを美希に突き刺す。
「う…」
「こうして非力なラミアは巨大化して攻撃力を倍化し、フェイスで更に上げて敵を倒すのです。
 美希ちゃんが引いた動作をしなければ、無害な誘惑で済んでいたかもしれないわ」
ジャンプし、頭上から首へ向かい槍を突き刺し、ラミアを撃破。
「ああ。貴重なお色気モンスターが」
「もう…あなたこそ置いていきましょうか…」





「クポー…出れなくなっちゃったクポー」
「あなたー!!あなたーーー!!まぁ、どうすればいいのかしら」
……途中、鐘にはまっているモーグリの夫と、困り果てた妻がいたため、
ビビのクポの実を近づけて見ると…
「クポ!?…その匂いは、クポの実…?食べたい…食べたいクポーーー!!」
鐘を超パワーで跳ね除ける…自力で困難を突破。
自分達の住処に戻っていってしまった。

「…あ。さっきはありがとうございましたー
 ウチの主人ったらドジでー… …あ。この先に行かれるのですか?」
「そうなの」
「それなら、これをお持ちください」


渡されたのは白い鐘。
「これは『ホーリーベル』 ギザマルーク様の居場所を開くための鍵です、どうぞお持ちください」
「ありがとうなの!!」


真っ白な鐘を鳴らし、またも鐘のついた扉を開けると…そこは、一本道の脇の壁から池に向かい流れ出す滝。
「…何か、嫌な予感がするな……」

「…た、大変だ!!ギザマルーク様が…!!」
黒魔道士3人が3混乱魔法『コンフュ』を唱えると……


「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
巨大な翼を持った蛇のような…部屋を覆う巨大な巨大なモンスターが。
「まさか…これが『ギザマルーク』様!?」
「つ、強そう…」
「…おいたわしい」

戦闘が始まる。

937im@s fantasy9 第一章 第二十一話 1/4:2009/11/30(月) 02:01:00 ID:3aOh9EfA0
「この場所から想像できる通り、ギザマルーク様は
 水の力を用いることに長けているの 気をつけて、美希ちゃん、ビビちゃん!」
「うん!」
「はいなの」


あずさは最初に飛び上がる。
「行くの!!」
オーガニクスを投げ、ギザマルークの腹に一筋の傷を。

キャッチし、そのまま飛びあがりスイフトアタック。
「はぁぁぁ…」
次々に攻撃を浴びせるが…
「キシャォオオオオオ!!」
ギザマルークは尾を振り回し、美希を吹き飛ばす。
「きゃあ!!」
「『サンダー』!!」
ビビがサンダーを唱え、あずさの槍と同時に雷をギザマルークの頭に突き刺す。

「シュウウウウウ!」
ギザマルークは魔法を唱える。
「…『ウォータ』よ!!」

魔力を含んだ巨大な水の塊が落下…
薄い薄い、水の刃となって弾け、全員の体を切り裂く。
「うぁぁ…!!!」


「…………!!」
ギザマルークが口を開けると大気が振動し…
「!」
何も聞こえなくなる。

「…」
人間の耳では聞こえない超音波。
これにより、聴覚と喉を攻撃、聞かせた相手の口を封じ魔法を唱えさせることが出来なくなる。
「……」
ビビはこれで戦えなくなる。


「………!!」
ギザマルークの攻撃は続く。
ウォータが再び3人を襲う。

美希はそれに耐え、ビビにポーションを投げられながらギザマルークの尾に向かいオーガニクスを振り下ろす。
あずさは再び飛び上がり…槍を突き刺す。

「…もう少し!!」
ビビが沈黙を治すやまびこ草を使用。
ギザマルークに魔法を唱える。

「サンダー!!」
頭上に雷。
「!」
そしてあずさが槍をギザマルークの胸部に刺した時…

「キシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ブルメシアの守護神は泡となって消滅。
ブルメシア地域への扉は開かれたのだった。



「…やっと耳と喉が治ったね」
「ブルメシアは砂漠を横断した先。半日で着きます 行きますよ」



洞窟を抜けた先は霧のない砂漠地帯。盗賊と戦いながら歩み続けると…豪雨。
「…ブルメシアは今日は雨のようね」
大きな大きな門が見えてきた。

…曇り空の元、雨の降りしきる、ネズミ族の青の都ブルメシア。
「…みんな、死んでる……」
踏み荒らされた草花、崩れ落ちた家々。

「……アレクサンドリア…!!!」

938im@s fantasy9 第一章 第二十一話 2/4:2009/11/30(月) 02:01:32 ID:3aOh9EfA0
体を切断されたもの、体を焼かれたもの、氷の塊で頭を潰されたもの、
全身を雷で内部からボロボロにされたもの…
様々な死体が存在する。

「…女兵の姿が見えないね」
「不謹慎な言葉は慎みなさい、美希ちゃん。」
「そうじゃないよ。
 …見てきたけど、アレクサンドリアは大多数が女性兵で構成された珍しい国だよ
 一般兵が全くいないなんて、何かおかしいよ」

黒魔道士が彼女らを察知しそこかしこから現れる。
「わっほ」
「サンダー!!」
先手を打ち、広範囲化したサンダーで黒魔道士を倒すビビ。

「きへへへへへ…!!」
トカゲのような亜人盗賊・マジックヴァイスも現れる。

「…盗賊!?この事態の中、盗みを働こうというの」
「違うよあずさ…これはアレクサンドリアが雇ってるんだよ!
 ダリに似たようなモンスターがいたよ」
ポーションを盗もうとするマジックヴァイスをオーガニクスで一撃。

「ギュルルルル」
続いて現れるのは大きなトカゲのモンスター、『バジリスク』
「アレクサンドリアが放ったものね…」

敵を見据えたときには、すでにあずさの足元は変化していた。
「!?」
「石化だよ!! …早く倒さないと!」
バジリスク自体を倒さなければ術は解けない。
ビビがブリザドを唱え、バジリスクを倒す。


「…一通り倒したけど…まだまだいるよ」

「大人しくアイテムを置いていきな…」
民家の窓から。
「ブルメシア兵にも活きのいいのがいたもんだ」
路地裏から。
「アレクサンドリアの裏切り者がこんなところにいるとはね」
噴水の影から。

マジックヴァイスたちが現れ、黒魔道士を呼び寄せ美希たちの周囲を取り囲む。
「…ビビの魔法でも全員は倒せないね…」
「俺達は魔法を封じるために雇われたのさ やっちまえ!!」

マジックヴァイスが魔法を唱えると、ビビの頭上に巨大なハンマーが。
「逃げてビビちゃん!」
「わ…」
ハンマーから逃げるが…
もう一つ現れたハンマーがビビに当たる。
「……う…」
痛くはないが…魔力を吸い取られる。

「『マジックハンマー』! あれに当たると魔力を吸われるよ、『とんずら』するよ!!」
美希は爆薬を撒き散らし、強行突破。
民家の中へ進む。


「あ。宝箱!」
しかし…
「ケタケタケタケタ!!」
宝箱が突然、ガバッと口を開け襲ってきた。
「ミミック…アレクサンドリアは略奪した上にこんなものを!」
ミミックの口に槍を突き刺し、窓から投げ捨てて撃退。

939im@s fantasy9 第一章 第二十一話 3/4:2009/11/30(月) 02:02:02 ID:3aOh9EfA0
「細かいところまで随分ないやがらせね…」
窓から投げられたミミックを目にした黒魔道士が扉を焼き、中へ入ってきた。

「こっち行こう!!」
階段を登り…崩れ落ちた床を飛び階段を登り上の階へ。
寝室から窓へ向かい、バルコニーを渡って隣の窓へ。

別の家屋の寝室で…子供を匿う母親を発見。

「お、お願いです、この子だけは……」
「大丈夫ですよ、私はブルメシアを救うためにやってきた者です。」
「! あずささん…お帰りになられていたのですね」

「…敵将は一体どこへ」
「アレクサンドリア軍は王宮に到達しています。
 …この国はどうなってしまうのでしょうか…」
「みんなが死んだわけではないでしょう
 ここで私達が敵を追い返せば、まだ希望はあります」

「…これが夫から預かった王宮への鍵です。どうか…ブルメシアを…!」
淡い黄色のベル、『プロテガベル』を渡される。
そして、美希は女性に聞いて見る。
「…ねぇ。可愛い女の子とか、鎧をつけた男の子がここを通らなかった?
 ……じゃなかったら、捕まったっていう噂聞かなかった?ヒト族の!」

ドリルと真のことを。
「……いえ、アレクサンドリア以外に国外から出入りしたヒト族は
 恐らくあなた方だけではないかと…」
「…そう。 …ここにいないってことは…」
「迷子かしら」

「あずさじゃないんだから。 …何処に行ったんだろう、ドリルに真…」
「ねえ美希姉ちゃん。戦争を止めるために、戦地へ行くのも考えられるけど
 真さんなら、アレクサンドリアに戻ることも考えられるんじゃないかなぁ
 その方が多分安全でしょ?」
ビビが一言。

「……!!」
「悪いけどもう引き返せないわ。このまま、私達はブルメシアで戦争を止めることを考えましょう」

「…無事だよね。あの二人なら…」
プロテガベルを鳴らし、王宮敷地内へ。



「…今度は嫌味でも何でもなく。
 ビビちゃん、この先に行ったらあなた、命を落とすことになるかもしれないのよ
 …私達が死んで、辛いことになるかもしれない。…あなた、ついてこれる…?」


「…ボクは、見過ごすことは出来ないよ。…お願い、あずさ姉ちゃん、美希姉ちゃん」
「………あずさ。…行こう。この先に…」
「…そうね」
階段を登り、広場へ。

その中の建物の一つへ向かうと…
「…! 危ない!!」

避難していた兵士と、身重のその妻が、崩れ落ちる、建物の上から下までを覆う巨大石像の下敷きになろうとしていた。
「……はぁっ!!」

美希は両手で担ぎ、二人とも助けることに成功。
「大丈夫?二人とも」
「あ。あずささん…!ありがとうございます…」
「あなた達は何としてでも生き延びて。おなかの中の子供を殺しちゃダメ…
 おなかの中の子供のお父さんやお母さんがいなくなるのもダメ…」
「…はい…何とお礼を申し上げればいいか…」


反対側の建物は武器庫。
「これは使えるかしら」
強力な槍、『ミスリルスピア』を手に入れる。

「こんにちはー…って…何ですか、この惨状」
…謎のモーグリが現れる。
アホ毛が2本立っているリュックサックを背負ったモーグリ。

「あなたは…?」
「私は愛!!旅をしているモーグリです!何があったんだか私には解んないけど…
 アイテムのセット販売をしてるんです!何か買いませんか!」
金の針、ハイポーション、エーテルを購入。

「毎度っ!!」
謎のモーグリ、愛はご機嫌な様子でまたどこかへ旅立っていった。
モーグリはどこか、人間社会とは密接なようでいて、かけ離れたところにいるような気がする。


「……これで、戦闘の準備は整ったね」
「万全と言えるものがあるのか解らないけど…いよいよ王城内部よ。準備はいい…?」

「………うん!」
「うん!」

940im@s fantasy9 第一章 第二十一話 4/4:2009/11/30(月) 02:03:32 ID:3aOh9EfA0
広場から階段を登り王城入口へ。
…しかし、崩れた柱で入口がふさがれている。


「………王、無事でいてください!!」
あずさはジャンプ。2人を置いて先へ進んでしまう。

「…登れそうだね ビビは裏から回ってみて」
「えぇ!?…ボクじゃ無理だよ」
「やれば出来るって!」
美希は石像を登り、王城内部へ。



「…」
「……誰かいるよ」
柱の影に隠れる。
天井の崩れた王の間…その中で扇を仰ぐは赤いドレスを着たリボンの少女。

そしてその隣に青い髪の剣を携えた女性。

「あれは……………アレクサンドリア女王春香…!!」
「うん、見たことある…その隣の巨乳は誰?」
「…」



「…ブルメシアも、大したことはありませんでしたね春香様
 ブルメシアには大層な実力者がいると聞いていたのに…
 まぁ、何でも、いいですけど。」
「まさかここまでうまく行くとはね…」

奥からもう一人、長身の女性が現れる。
「………それにしても心地の良い雨ですね、春香様。
 まるで私達の勝利を祝福しているかのよう。」
「ふふ。あなたが提供してくれた黒魔道士のおかげで
 これほどまでに勝利できたんだよ。いやぁ、ありがとね  ……さん
 で?王達は一体どこに逃げたの」

「…どうやら、舞踊る砂の中の模様です…正に鼠そのもの。」
「舞い踊る砂…『クレイラ』?…厄介ねー」




「ダメなの、クレイラって町に王が行ったこと以外解らないよ…誰なの、あれ」
「あの青い髪の人は…確か。」


あずさは思い出していた。…過去のことを。

あずさと同じデザインの、色違い…薄黄色の鎧をつけた男性と、まだ10代の少女であった頃のあずさ。
「…どうしても、行ってしまわれるのですか」
「ああ。すまないあずささん。
 …俺は、この国を守る力としてはまだ不十分だ。強くなって帰って来るよ」
「では私もご一緒に…!」

「……あなたには、この国を守って欲しいんです
 …長い旅になるかもしれないけど」

「………あなたがいればこの国は必ず守れます!!ですから」

「いや。まだ無理ですよあずささん。
 ………世界には、まだ強い人が沢山いるんですよ。
 例えばそう  アレクサンドリアの女将軍『如月千早』」






「…聞いているわ。恐るべき力を持つ、アレクサンドリアの将軍…泣く子も黙る冷血女。
 『七千二百人斬りの如月千早』」
「………あれが…!?」


「忘れもしません。別れの時の言葉ですから。
 私に千早のことを教えてくれたのは…あの人。
 …もし、こんなときに…あの人がいてくれたら…」

「…フラットレイ様…」





その時だった。
「フラットとか言ったのは誰!?」
凄まじい衝撃波が美希たちめがけ飛び…大人が両腕を伸ばしたような太さの柱を木っ端微塵に、4本まとめて破壊した。

目を細め、春香は笑みを浮かべる。
「………へぇ、まだ生き残っていたの」

傍らに現れた3人目の女性も。
「鼠はやはり隅に隠れるもの…」

長い長い銀の髪、長身の体、露出の激しい派手なドレス。
「フフ…それは流石に酷いと思うよー?『貴音』ちゃん」

941im@s fantasy9 第一章 第二十二話 1/3:2009/11/30(月) 02:54:00 ID:3aOh9EfA0
ばれてしまっては仕方がない。
王の間へ、2人は駆けてゆく。
「このアレクサンドリアの将軍千早を前にあのような暴言を吐けた度胸は褒めてあげるわ。」
いつの間にか裏から回ったビビも合流。

千早は余裕の表情を崩さない。
「けど、あなた達程度の力では私を倒すことは出来ない」

「やってみなきゃわからないの!!」
「私はあなた達を許せません!!」


「やってみれば解ることです。さぁ、かかって来なさい」




降りしきる雨の中、世界有数の実力者…千早との戦闘が始まる。


「はぁぁああああ!!」
あずさはジャンプ。

「ファイア!!」
ビビは千早に向かい魔法を放つが…
「…」
全く効果をなさず。


「ふんっ!!」
素早い動きで背後に回り、千早に『ランブルラッシュ』。

しかし…
「全く」

剣を背に回し、微動だにせずに美希のオーガニクスを受け止め…
「これだから困るわ」
振り向き美希を突き刺し…
降って来たあずさの槍を払いのけ、続いて降って来たあずさを串刺しにした美希もろとも振り払う。

「う…」
千早は追撃。
倒れたあずさの喉を斬り
「……!!!」
倒す。


「美希姉ちゃん!!」
フェニックスの尾で美希を回復させるが
「…」
起き上がることすら出来ず美希の胸を一閃。
血しぶきをあげて美希は倒れた。


続いてフェニックスの尾であずさを起き上がらせ、
あずさもまたハイポーションで回復するが…

「『雷鳴剣』!」
千早があずさに近づき、斬ると
空から3号のサンダラに相当する巨大な…それも鋭い針のような雷が突き刺さり、
辺りは大爆発…あずさはそのまま倒れる。


「……あ、ああ…」
「そこまでよ…」
千早は続いて剣に力を込めると…

「えい…!!!」
「秘剣『ショック』」

剣から発した衝撃波で床に巨大な穴が開くほどの衝撃が発せられ、
ビビの体は王城の壁に激突…城の壁を完全に木っ端微塵に破壊してしまう。

942名無しさん:2009/11/30(月) 02:54:32 ID:3aOh9EfA0
「……はぁ、ああ……」
美希はビビが倒れ際に投げたフェニックスの尾で立ち上がる。


「……あずさ!!」
フェニックスの尾であずさを蘇らせるが…
「はっ!!!」
千早の剣がかすり腕から激しい出血。
それでも死には至らずに済む。


「………!!」
「わざと避けさせたけど…何もしないの?」
そのまま払い、美希の体を一刀両断。

「ビビちゃん…!!」
最早持ちこたえるしかない。リレーのように、またあずさも走り、ビビにフェニックスの尾を投げるが…
「追いつけないとでも思いましたか」

千早はまたも『ショック』を使用。
あずさをブルメシアの空高くへ打ち上げてしまう。



「………」
倒れてからまだほどない。フェニックスの尾で美希を回復…

「…」
千早が黙っている隙に倒すしかない。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


トランス。
「『フリーエナジー』!!」
謎の文字と共に千早の体を大きな爆発が襲う。

「『タイダルフレイム』!!」
対3号時より更に強化された技。
床が盛り上がり、炎の津波があたりを包み込み、襲う。


「『スクープアウト』!」
更なる力。
どこからか現れたビットが千早を取り囲み、レーザーを一斉照射。



「………」
…千早はそれでも、少しも表情も変えていない。

「………」
力を使い果たし、トランスが解除される。
「ま、まだ!!!」

オーガニクスで千早を斬るが…
「…」
全く効果はなし。



「…私に刃を向けたことを、後悔することね!!」
千早が飛び…必殺の一撃を見舞う。


『ストックブレイク』。
ブルメシアの王城が横から上から、一気に崩壊。
柱が崩れ、壁が吹き飛び街に飛散。

床は大きな穴を開け跡形もなく消滅。


全滅。

943im@s fantasy9 第一章 第二十二話 3/3:2009/11/30(月) 02:55:03 ID:3aOh9EfA0
「…うわー、いつ見ても千早ちゃんの剣は怖いよ」
春香は後ろで扇を仰いでいた。

「…でもちょっとやりすぎかな。
 千早ちゃん、話したいことがあるから『レイズ』かけてやって」
「はい」


美希にレイズをかけ…回復。
「はぁああああああ!!」
美希は千早に詰め寄る。



「ねえそこの子。ちょっと聞きたいんだけどさ」
もう戦いなど成り立っては居ない。
だが美希は何も言わずにオーガニクスを千早にぶつけ続ける。渾身の力で。
「…」
しかし1発、2発、3発と振るうが全く千早には当たらず。

「あなた、確か雪歩を誘拐した子達よね?リーダーは律子さんって言ったっけ」
オーガニクスを投げ、春香を狙うが千早に打ち落とされ、そこから流れるように千早の剣で脚を切られる。


「雪歩をどこにやったか教えてくれないかな?
 今言えば命だけは助けてあげるけど」
「知らない!!」

「きゃあああああああ!!」
千早は剣で美希の胴を一刀両断。
すぐさま斬られた足ともどもレイズで蘇らせる。

「…本当に知らない?」
「知らない!!ミキ達だって見てないもん!まこっさんと一緒にどこかに行ったんだよ
 この戦争を…春香を止めに!!」

また攻撃を繰り返すが千早に避けられる。
「………真も一緒のようですね」
「…それは本当?」
「…嘘をつくように見える?」


千早は美希の両手持ちのオーガニクスを片手で受け止め…
「いかがいたしましょう」

「その言葉に偽りはなさそうですよ、如月千早
 彼女の言葉が本当なら、ここで会っていないとなるとアレクサンドリアでしょう
 クレイラ侵略は千早将軍に任せ、春香陛下はアレクサンドリアであの娘をお待ちになられては」
「そうね…」



「それじゃあの子を待ちましょうか。千早ちゃん」
千早は美希の体を一刺し。その場に投げ捨てる。

薄れ行く意識の中で、美希は聞く。


「それじゃ、雪歩を待ちましょう
 …戻ったらののとワーに任せて、『銀のペンダント』を取り返して
 『召喚獣の取り出し』を行うのよ、あの子の体から。
 千早ちゃんはさっき言ったとおりクレイラに行き『宝珠』…4国の『クリスタル』の1つを手に入れること」

「…クリスタル…? …ドリルの体に、召喚獣?」
春香と千早はそのまま、どこかへ去っていった。





「…晴れましたね」
残ったのは貴音。

「……フフ…」
倒れる美希を見下ろすと…

ビビに目をやる。


指を鳴らすと、巨大な影がブルメシア城跡に現れ…地に降りる。
白銀の龍。


「………このお芝居の中での、誠に楽しい余興になりそうです」
そのまま、貴音は銀の龍にまたがると…

翼を大きくはためかせ、巻き起こる風。


跳ねた雨水があずさにかかる中…

貴音は悠々と、銀の龍にまたがり、雨上がりの夕空へ飛び去っていったのだった。

944im@s fantasy9 第二章 第二十三話 1/3:2009/12/01(火) 02:41:02 ID:ytoRB6A60
草木生い茂る山間に築かれた二つの門
一つは彼女達がカーゴシップで強行突破してきた、今尚煙をあげる空の門
もう一つは、これから彼女らが行く山道の門。


時間を少し遡り、ここは国境の南ゲート。

「待たれよ、その荷物の中身は何だ」
大きな布袋を背負った真は門番の前へ。
「…妙な匂いがするぞ」

「ああ。リンドブルム土産の、ギサールの野菜ピクルスですよ
 強烈な匂いだけどボクこれが大好きで。…本当ですよ?見てみます?」

「い、いや…いい…通っていいぞ 俺、これだけは食えないんだ…」
「おいしいのにー」

けらけらと笑い、門を通る真。
これより先はアレクサンドリア領。


人目につかぬ場所を探し…もぐりこむ。
「ここなら平気ですよー」
個室シャワールームの中に布袋を下ろすと…
袋に手をかける。

そう、袋の中身はピクルスだけではない。
見つかれば大事の、雪歩王女…ドリルも入っていたのだ。

「さて。それじゃ袋から今お出ししま」
「いや、自分で出られるから!扉閉めてね!」

「え、えええ…いやそんなボクは…はぁ、解りました」
服をシャワーの上にかけ、扉を閉める。

「…ねえ姫様、最近ボクの扱い悪くありません?」
袋から出てピクルスまみれの体を洗い流す雪歩。

「お着替えの時もいっつも千早が担当じゃないですかー
 信頼されてないのか男と思われてるのか…
 …いえ。言いすぎでしたね」


そんなこんな言っている間に、雪歩のシャワーが終了、服を着て扉から出てくる。
「ううん、ごめんね真ちゃん。
 えと、次は列車だっけ?」
「はい。列車を使って山を越えます。
 山頂駅で一度乗り換えることとなりますよ
 その後はダリと『トレノ』の分岐点に差し掛かるんでトレノ側に。」

「うん。解った」



列車に乗り、目指すは山頂駅。
「…………」
座席に座り、窓にもたれかかりすーすーと眠るドリル。

「そろそろ山頂駅に到着のようですよ?姫様ー…」
しかしドリルは眠ったまま。
「……春香様が戦争なんてするはずないのになぁ…」


「けどそうなるとブルメシア兵の話は……
 そういえば黒のワルツっていうヤツは我が国を騙ってたな…
 …アイツらみたいなのがブルメシアを攻撃してるとか、そんな所か。
 どの道…姫様がアレクサンドリアで春香様にお会いになれれば解ることだよね…」

真は思索を巡らせる。…結局、春香のことを全く疑いもせず。
「まもなくー山頂駅ー、山頂駅ー!」
一行は山頂駅へ到着するのだった。
「……ふぇ?」


きれいに整備されたお洒落な駅。
石作りの床の待合室で、ドリルが発見したのは…
「!?」
ウサギの亜人。そう、あの演劇でマーカスを主演したうさちゃんと…
涼だ。

「あ、お姫様」
「お久しぶりですね、うささんに……涼君でしたっけ」
「どうしてバレてるんだろう…」

「あーーーっ、お前達ー!!」

945im@s fantasy9 第二章 第二十三話 2/3:2009/12/01(火) 02:41:34 ID:ytoRB6A60
「お久しぶりです、実は僕達タンタラスはあの後、魔の森を抜けて…」

「性懲りもなく姫様を浚いにきたかああああ!!」

「真ちゃん!!やっと再会できた知人とくらい話させてよ…!」

真は引き下がらない。
「いやしかし、知人などとそのような!奴らは姫様を…」
「菊地真っ!!」
「ごめんなさい」
ドリル…いや、アレクサンドリア王女の一喝。真はしゅんとなってしまう。

「…ごめんなさい。
 もしかして、魔の森で石になってしまわれた方を助けに?」
「そう!伊織ちゃんを助けるためにここにいるってわけなんです」


「通常の金の針では治らなかったそうですけど…
 何か、方法が見つかったんですか?」

「アレクサンドリア行きー!アレクサンドリア行き列車がまもなく到着いたします!」
「…どうせだし。列車の中で話しませんか?」

列車のホームへ向かう。
「気をつけてねー!絶対トレノに行って伊織ちゃんを助けてあげてねー!」

涼と別れ、うさちゃんはドリル、真と共に列車へ。



「…うささんの目的もトレノなんですか?」
「ええ。伊織ちゃんを助けるために。
 『白金の針』を手に入れるためなんですよ それがあれば、通常の金の針では治せない
 伊織ちゃんの石化を治すことが出来る。
 …で、今度はこちらから聞きたいんですけど、美希ちゃんは一体どちらへ?」


「…リンドブルムで別れて、私達だけで来ました」

「あー…随分あっさりしたもんだね。
 誘拐の用が済んだらさよならって…」
「違う…!私は、美希ちゃん達に頼らずに自分達の力で…」

その時。

「!?」


列車が急ブレーキ…そして、停止。
「……何だ!?」
運転手の声が聞こえる。

「おーーーーい!そこにいたら危ないぞーーーー!!!」


「…どうしたんですか?」
「列車の前に、飛び出してきた人がいるんですよ、あぶないなぁ…」

「私、見てきます!」


ドリルが列車の外へ。
「お、お待ちを!」
「…」
真とうさちゃんも列車を降りる。


そして、線路の先で見たものは……
「…!!」


ボロボロになった、片方だけの青黒い羽。
引きずられた足。
折れた三角帽子。

「…黒のワルツ3号!?」
「…な、何ですかアレ」


ノイズ混じりの声で、三日月の杖をつきこちらへ向かってくる。
「ヒギュッ…にんム…おウじょ…ユウかイ」
…まだ彼は誘拐を諦めていなかった。


「……お、お前…!!」
「じゃマスルものワ……しょウキョ!」

946im@s fantasy9 第二章 第二十三話 3/3:2009/12/01(火) 02:42:53 ID:ytoRB6A60
黒のワルツ3号との2度目の戦闘。


「…哀れなヤツだ…!!」
走り、3号に向かい剣撃を見舞う真。

「ヒギュ…!!ふぁイあ!!」
まだ戦闘能力は残っているようだ。

3号はファイアで真に反撃。
「う…」
「ぶリザど!」
続いて杖の先から放つブリザドでうさちゃんを攻撃。
「うあぁあ…!!」


「……ぶ、ブ……『ぶレいズ』!!」
杖に魔力を集中させるとその杖を地に突き刺す。
すると…

「うわ…!!」
強烈な冷気が放たれ……
真を氷漬けにしてしまう。


「ヒぎゅ……!」
そしてそのまま杖で氷漬けになった真を攻撃。
「…!!」

氷を粉砕すると同時に、真はそのまま倒れてしまう。
「真ちゃん!!」
うさちゃんは次にブレイズが来る前にと攻撃。
「ギュオ…」

そして、3号の懐から赤い杖を盗む。
「…かエセ…!!」
杖で殴りかかってくるが、うさちゃんは防御。

「はぁぁああああ!!」
ドリルは手にしていたラケットで魔力を飛ばし、3号の動きを止める。
「グォオオオオオオオ!!!」


「今だ!!」
そこにうさちゃんは3号が持っていた杖を盗むことに成功。


「これを!!中にどんな魔法が込められているか解らないけど!」
修復しなければ十分な威力が出せそうにない杖でなく、
赤い杖を渡す。


「ううん!その杖のことは城の文献に載っていました!」
赤い杖を手にしたドリルは…

「『ファイラ』!!」
杖を3号へ向ける。


「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
3号の周囲に炎の嵐が吹き荒れ…
「オオオオオオオオ……オうジょ……だッかン…お…う…じョ…ニン…む……」
灼熱の火の中へと溶かしていったのだった。




「……どうして、そんなにまでして…」
「…ブルメシアを襲ったの、こんな感じの風貌の魔道士だったって聞くよ」

「一体どんなヤツがブルメシアを襲ったっていうんだ…!!」
「…本気で言ってるの!?」
「どういう意味だよ!」


「…やめて。…もう、解ってる。…解ってるから」



そして一行は列車の中へ。
うさちゃんは言葉を切り出す。
「……アレクサンドリアがブルメシアに侵攻していたこと、知ってたんだね」
「うん。…真ちゃんとは違うもん」


「…何だか、変わったね姫様」
「…それは私がかな?それとも…言葉遣い?」
「色々かなー」

「…そう。」
「変わったといえば、私少しは強くなったでしょ?
 もう戦いでも足手まといにはならないから…白金の針、私にも探させて?
 トレノに一緒に行こうよ!!」

「…仕方ないですね。」


そして3人は分岐でダリの反対側を選び…眠らない都、トレノへ。

947im@s fantasy9 第二章 第二十三話 1/2:2009/12/02(水) 02:47:42 ID:I3/Cbf5g0
「はいはい、何の御用でしょうセンパイ!」
魔の森で、モーグリ族との親交の証にと渡されていた笛を吹くと
地平線の彼方から走ってきたのは愛。

「これを美希ちゃんたちに届けてくれないかな」
3号から奪った、『炎の杖』と『雷の杖』を渡す。
「はーい!」

また地平線の彼方へ。全くもって謎のモーグリである。


彼女に届けてもらえばすぐにでもアレクサンドリアにいけるのでは?
…そんな疑問はともかく、一行は夜にトレノに到着する。
「ここが…トレノ」

ガシャリと重々しい扉が開かれた先は噴水の広場。
町の明かりが煌く、夜景の美しい町トレノ。

高級なスーツやドレスを身に纏った紳士淑女が
オークションやカードや買い物や食事を楽しむ華やかな貴族の町であるが…
一方では、貧しい人々が水際に追い込まれ、子供までもが盗みを働く貧民街が生まれる格差の街。

「ひとまず情報収集が必要だね お姫様も隊長さんも町を回ってみてください」
3人はそれぞれの場所に散っていく。


「……こ、この街は一体…」
「うぇっぷ、うぃっく…」
酔っ払いや…

「…あれ?お財布が…」
スリなどに会いながら…


「…この建物は何かな」
トレノで一際大きな建物…クイーン家の屋敷に入っていくと…


「50000ギル!」
「51000ギル!」
「52000ギル!」
「70000ギル!!」
「おお…70000ギル!どなたかおられませんか? ……おられませんね?
 では、この商品60000ギルで落札とさせて頂きます!」

巨大な建物の中は広い広い…オークション会場だった。
「……」

辺りを見回すと煌びやかな服を纏った親子や、主人に内緒でといった様子の夫人など、
様々なトレノ中の貴族が集まり目当ての品を手に入れようと躍起になっていた。

「…………ここでは、情報は見つかりそうにないかな…」
出ようとしたその時。

ピチョン。
「?」
何かが床に落ちる音がしたが、気にせずにオークション会場、クイーン邸を後にする。

「………これにて、本日のオークションは終了とさせて頂きます!
 ご来場の皆様、本日は誠に有難うございました!」

「…あら。何かしらこれ…血…!?」
「どなたかお怪我なされたのだろうかな」



客のいなくなったオークション会場で
クイーンと名乗る女性と、その執事と見られる男が会話していた。
「ブルメシアの方は…如何でしたかな」

「悪くないですよ、臭気を撒き散らすネズミどもと
 あの没個性な春香さえ視界に入らなければ、ですが。 …私の美意識を今にも破壊しそうですよ…彼らは」

その正体は…春香女王や千早将軍と共にいた女性、貴音だった。

「次は砂ネズミ狩り…もう少しこのトレノで彼女らの臭いを落としたいところですが …ところで」
「はい」
「今日はとても可愛らしいお客様がお越しになられていましたね」


「……キング様。お気に召したご婦人の方がおられましたか」
「ええ、とても気に入りました
 何せ追いかけていた小鳥が自分から飛び込んできたのですから」

うわまた始まったよ、という目で見られているとも知らず、貴音は自分の世界に入る。
「まさかこんなところであなたにお会いできるとは。
 …今日ばかりはこの私も運命と言うものを信じようという気になってしまいました……」

両手を上げると鼻血がぽたり。
「でも、まだ今はまだ羽を休める時ではありません
 あなたの帰るべき巣はここではない…あなたの母上がお待ちの家へお帰りなさい」



「そうしたら私も、優しく迎えてさしあげますよ…」

948im@s fantasy9 第二章 第二十四話 2/2:2009/12/02(水) 03:43:06 ID:I3/Cbf5g0
「!?」
何か物凄い百合の香りを感じた気がしながら、
ドリルがうさちゃん、真との待ち合わせ場所、酒場に戻ると情報収集を終えていた。
「お姫様ー、こっちこっち」
100000ギルの懸賞金をかけられた女の張り紙を見ていると背中に声。

「…トレノの店っていうのは相当なものみたいだよ  どうやら、カードショップ近くの雑貨屋が非売品として白金の針を置いているだとか」
「それで、どうするんだ」

「いや、自分達で行きますんで兵士やお姫様は関わらない方が」
「? どういう…」
「直接交渉すれば済む話じゃないの?」

「おーいうさちゃん!白金の針を盗む用意できたわよーーー!!」
「…ぼ、ボス……」
トレノに先回りしていた律子がそこにいた。
「あ、やば」
ドリルや真がいたとは知らず青ざめる律子。

「……じゃ、じゃあそういうことで!」
「待って、ついてきたからには私も行くよ!」
「ええええ!?いやお姫様が盗みとか」
「ちょっと待てお前らあああああああああ!!」

酒場の裏口から桟橋へと走る4人。
「…いいの、お姫様がこんなことしちゃって」
眼鏡を直しながら、カヌーの前に。

「…ええ。律子さんたちが余計なものまで盗まないように見張らなくっちゃ!」
「…ボクも同行しよう お前達が姫様を悪の道へ引きずり込まないように監視するのがボクの役目だ」

「あー…もう勝手にして」
「全くお勤めご苦労なものねー… けど。 あなた、一体自分が何をしたいか…考えたことある?」

「当然だ!ボクは姫様をアレクサンドリアにお連れして…」
「…はぁ。美希達と一緒に行動して少しは変わるかと思ったけど、そうでもないみたいね
 ボク、ボクと言いながら自分のないやつね」
「何!?」

「…まぁ、行こうよ……」
湖に面した雑貨屋裏口までの道のり。襲撃用カヌーの上で、真は考える。

「一体ボクは何やってんだ…盗賊に組するような真似して…」

「いや!耐えるんだ…姫様をアレクサンドリアにお連れすることがボクの任務だ
 春香様が非道な真似なんてする筈が…何か理由がある。」

「…浅はかな自分などでは解らない、女王陛下の…お考えが。
 そう、何も考えるな真。自分の任務は、姫様をお連れすること。女王陛下に従うことだ
 …もう、アイツに…美希に会うこともないんだ。」

949im@s fantasy9 第二章 第二十四話 3/2(容量オーバーにつき):2009/12/02(水) 03:44:05 ID:I3/Cbf5g0
そして反対側でも思いを巡らす者。
「…美希ちゃんが悪いんだよ。私のこと子ども扱いするから…
 …だから、今白金の針を探すなんてことを…」


「……何で、私こんなことしてるんだろ
 …うん。助けてくれた伊織ちゃんを助けるのは当たり前だよね。 でも…」


「…さ、3人とも… ついたわよ。」
律子は待機。裏口から侵入…在庫の棚の中を探し回って見る。

「こんなところに白金の針なんてあるのかな」
律子は待機。がさごそと辺りを探る3人。
だが…

こつん、こつん、こつ、こつ、こつ…
「…! 誰か来たよ」
上階から階段を下りる足音。うさちゃんは隠れる。真も、ドリルも隠れる。

「………バレたらただ事じゃすまないよ」
「…あああ…ボクは一体何やってんだああああ…」

…そして、寝ぼけ眼の一人の女性が現れる。
「さっきの妙な寒気は一体何だったのかしらねー…
 今日こそいい観測時だって言うのに。 えっと、インクインク…」

「!!!」
その女性の顔を見て、ドリルは飛び出した。
「!? な、何やってんのお姫様ーーー!」

「…ピヨ? あ!!   …あなた、は…!!」
思わずしりもちをつく。
「まさか…雪歩ちゃ…雪歩様!!」
「お久しぶりです、音無先生!」

「えっ……小鳥さん!?」
真も。
「…あら、真ちゃんじゃない」
「…誰?」
「小鳥さんは、以前春香様と雪歩様の家庭教師をなさっていた、 それはそれは高名な学者さんなんだ!」

「いやぁーそれほどでもー… あ。けど静かにしてくださいね、お店の人達が目を覚ましちゃいますから
 …けど、雪歩様、どうしてこんなところに?」

「話せば長くなるんですが…白金の針を探しているんです」
「白金の針…」

「…誰かいるのー!?」
今度はお店の人の声。
「…ここは一旦逃げて。この地図の塔が私の家になってます。
 鍵を開けておきますので後ほどお越しくださいね」

とてとてと小鳥は階段を登っていった。

950im@s fanasy9 第二章 第二十五話 1/3:2009/12/04(金) 03:27:00 ID:HC8SUv9o0
「で?うさちゃん。それで、その…カーカーって人が白金の針をくれるのね」
「ピヨちゃんです」

大急ぎで酒場に戻り、律子に報告。

「ピヨピヨだかチュンチュンだか知らないけど。
 このタンタラスがお情けをかけられるとはねぇ」

「ま、いいや…つまり、お姫様のお守りはまだ終わってないってことね」
「…うん、そうなるね」

「じゃ、とにかくお姫様。白金の針のためにそのカッコウのところまで頼むわよ」
「ピヨちゃんです」

「…はい」
「ひとまず一休みしてから行きなさい そのポッポって人もそうすぐには準備出来ないでしょうし」



休憩の後、トレノの門近くにある巨大な塔…ピヨちゃん先生こと小鳥の家へ。
喜び勇み猛スピードで駆け上がり、塔の最上階へいち早く到達したのはドリル。

「おお、雪歩様。
 すみませんね、こんなむさ苦しい所までご足労頂いて」

そこは、ごちゃごちゃと物が置かれた…
巨大な球体が支配する部屋。

「昔の喋り方でいいですよ、音無先生…
 こちらにお住まいなんですか?」

「いいんですか?…えっと。それじゃお言葉に甘えまして。
 ええ。アレクサンドリアを離れ、研究費用を出してくれる人を探して転々としてたのよ
 で、行き着いた先はやっぱりというか何というか、この富豪の町トレノってわけね。」


「けど、可愛く育ったわねー雪歩ちゃん。
 また会うことが出来て、先生嬉しいピヨ」
真も到着。
「小鳥さん!元気そうで何よりです!」
「あ。そういえばさっきは真ちゃんも一緒だったかしら」


「騎士としてあるまじき行為だったと、反省してます…」
「千早ちゃんもだけど、真面目な子よねー全く…止むに止まれぬ事情があったんでしょ?
 あ。それより。白金の針は用意しておいたから、持ってっていいわよ」
「それじゃ頂きますね」


「この無礼者!お礼くらいきちっと言うんだ!」
「まぁまぁ真ちゃん。そんなことはどうでもいいから…」

そして、ドリルは最上階の部屋一杯に広がる、巨大な球体について聞いてみる。
「小鳥先生、これは…ガイア儀ですか?」
「?」
真には言葉を言われても全く理解できない様子。


「そうよ。私達が暮らすこの星…『ガイア』を模して作ったものです」
「それを教えてもらったのは、小鳥先生にですから」
「え?いや、これが世界となるとボクら落っこちちゃいますよね…」


「覚えててくれたんですね。私の拙い話など…」

951im@s fanasy9 第二章 第二十五話 2/3:2009/12/04(金) 03:27:31 ID:HC8SUv9o0
遡ること10年前、アレクサンドリア城内の図書館で調べ物をしていた時のことだった。

「…古文書に度々現れる、宝珠と呼ばれるものは アレクサンドリアの国宝、銀のペンダントとするものが有力…
 しかし、あの形状を果たして珠と呼んでいいものかしらね…」


「ことりせんせーーー!」
「…! …あら、雪歩ちゃん」
ぴとぴとと、小さな子供が降りてくる。


「またむずかしいご本をよんでいたんですか?」
「ふふ…そうねぇ、ここにある本はもう全部読み尽くしちゃったわ」


「ただ、こうやって古い本に囲まれていると考えもまとまるのよね…」
「へぇ…わたし、むずかしいご本はにがてですぅ…」

腕を後ろに組み揺れる雪歩の頭にぽんぽんと手を置く。
「…雪歩ちゃん、…じゃなくて、雪歩様。
 自分のことは「わたくし」ですよ、お姫様なんですから♪」
「はーい… でもね、わたくし、あの本はきょうみぶかくよませていただきました。
 なんともうしましたかしら、えっと…」

「『君の小鳥になりたい』エイヴォン卿の作品ですね?」
「はい!それございますことよ!
 …あの、こんな感じでいいんですか?こうきなみぶんのしゃべりかたって…」

「…お姉様を見習われた方がいいかもしれませんねー」


そして、幼い雪歩は図書館のテーブルに置かれた、目を引く大きな玉を指す。
「ねーことりせんせい!これはなんですか?」
「これは、ガイア儀…私達の住む星の模型ですね」


「がいあ…ぎ… わたし…じゃなくて、わたくしたち、
 このまんまるいなかにすんでいるんですか?」
「いえ…その中じゃなく…外に住んでいるんですよ
 …星には力があり、星は生命である…という学説が『石』と『召喚』を結びつけるイメージの起源となり…
 …ピヨ?…あ、申し訳有りません。また悪い癖が出てしまって…」
「???」

妄想、もとい考えを巡らせながらぴよぴよと歩く小鳥。
「…ああ。申し訳ありません…どうも悪い癖が…」


「ねーねー!このまんまるいガイアぎのなかで、わたしのいえってどこにあるんですか?」
「それは…」
「じゃあこのおしろは?」
「えっと…」
「たかぎおじさんのおしろは?」
「あの、次々に言わなくても説明するから…」

952im@s fanasy9 第二章 第二十五話 3/3:2009/12/04(金) 03:28:05 ID:HC8SUv9o0
「…時間の流れって、早いわねぇ…
 まあ。私は相も変わらず、こんなものを集めたり研究したりしてるんですが」

「このガイア儀は…」
「古い品なのよね…。このように壊れてるんだけど、これもまた粋だなと思って
 改造して天体観測の施設として使っています
 ガイアの中から空を見る…なかなか悪くないものです♪」


そして、本題に入る。
「雪歩ちゃん、私は何があっても、ずっと雪歩ちゃんの味方でいるつもりですよ
 何があったか、お伺いはしませんが…」
「いえ、小鳥先生……少し、話されてください」




「…そうだったんですか。春香ちゃんは…春香様はすでに…。
 …解りました、雪歩ちゃん…いえ、雪歩様。
 私がアレクサンドリアまでお送りしましょう。こういう時に備えて、実は地下の旧時代の機関に繋がる道を確保していたんです」
「本当ですか!?」

「ただし、魔物が出るとされているから…気をつけてね、雪歩ちゃん」

小鳥が部屋の隅にあるフタを開けると穴が。
その穴に潜ると地下道へ。



「実はこういうことに備えて、この機関の上に塔を建ててもらったんです。
 いつでも逃げられるようにと」


「連結レバーを探してください。それを倒してもう片方の道へ行けば…
 でもどっちも道だったかなー」
入口から二つの道が伸びている。

「それじゃボクはこっちに行く、お前はもう片方を頼んだよ」
「うん!」
うさちゃんと真が二手に分かれ道の先へ。


「ボクの行った方がレバーだったよ!お姫様、隊長さんの行った方へ行こうよ」
「は、はい…」
もう片方の、真の行った方の道へ。

蔦のような緑の植物が、ワイヤーのようにどこからかどこかへまで宙に一本通っている。


「これを引けば、『ガルガント』がこの周囲を回り続けることになります。
 それに乗ってください。後はもう片方のレバーで行き先を変えますので後はアレクサンドリアへ…」

「ガルガントって…何ですか?」
「引けば解りますよ」

紐を引くと………何かがガシャリガシャリと音を立てて、ワイヤーのような植物を伝ってきた。
籠だ。…その籠を吊り下げられた本体は…
機械などではない。


「…虫ですか!?」
「ちょっと怖いけどご辛抱をお願いしますね…アハハ…」

つまりはこの蔦は遥かアレクサンドリアまで繋がっており、
レバーによりこの辺りを周回しているこの『ガルガント』という虫に吊り下げられた籠に乗っていくというのだ。


「…こ、怖いです…でも…!」
「お姉様…春香陛下にいち早くお会いしなければならないんですよね?」
「はい!!」


雪歩は迷わない。籠へと飛び乗り…真も、うさちゃんも。
「ところで何でお前までアレクサンドリアに?」
「魔の森へはアレクサンドリアが近いからね…さあ、行くよ!」


こうして一行を乗せたガルガントは一路、アレクサンドリアまで。
「ありがとうございました、先生!」

953im@s fantasy9 第二章 第二十六話 1/2:2009/12/05(土) 02:13:52 ID:EuULWONo0
そして、一方で美希達はクレイラの町を目指し…
今、巨大な木の幹を登っていた。
「…あんなに痛めつけられても体を真っ二つにされても
 フェニックスの尾ですぐに再生するなんて、ちょっと気味が悪いね」

「美希ちゃんは最後まで抵抗してた分随分こっぴどくやられてたわね…
 …心臓や頭を突かれてたら本当の死が来てた所よ。」


クレイラは砂漠に立つとても巨大な一本の木で、頂上に街が形成されている。
幹は止むことの無い砂嵐の封印で守られており、
クレイラの民やブルメシアの民のようなネズミ族の一族以外は
全くもって近づくことが出来ない。



「な、何なのアレ!」
砂を使った仕掛けやトラップを越え
町までは後もう少しと言った、幹内部でそれは現れた。


「マアアアアアアアア…」
全身が砂で出来た巨大な上半身。

「魔力で動いているゴーレムかな…」
それは、魔力の篭った球が砂を持ち上げ鎧とした、『サンドゴーレム』だった。

「それなら話は早いの!」

美希はオーガニクスを頭上で振り回し、飛び上がり赤い球に一撃を加えるが…
「ォオオオオオ」
直後に巨大な腕が美希を天井に突き上げてしまう。
「う!」

跳ね返り地上へ。
「わぁぁあ…!」
その下は流砂。砂に飲まれれば下階に落とされ、戦いに復帰することは出来ない。

「掴まって!」
あずさの槍に掴まり、振り上げられなんとか窮地を脱する。
「何のために砂の体があると思ってるの。
 あの赤い球は確かにコアだけど、攻撃されたら反撃くらいするわ」
「じゃあ…」

「倒すには一度体ごと攻撃して動きを止めるしかないの…ビビちゃん!」
「『ブリザラ』!」
幹の中で手に入れた『氷の杖』でビビが魔法を放つ。
コアを中心として放射状に氷の槍がが生成され、サンドゴーレムの体を隅々まで凍らせ、貫く。


「オオオオォォォ……」
サンドゴーレムが崩れ…赤い球だけが残る。

「ビ、ビビビ…」
魔力を周囲に発し、また体を作る気でいる。

「そうはさせないわ!」
あずさは槍を突き出し、コアを串刺しにし…
「さっきのお返しだよ!!」
あずさが放り投げたコアを美希が両断。


サンドゴーレムとの戦いは終了…
幹内部を抜け、太い太い枝を登っていく。

「…看板!」
「どうやらこれで到着ってことみたいですね。…ふう、みんなご苦労様」

954名無しさん:2009/12/05(土) 02:14:29 ID:EuULWONo0
ロープの梯子を上るとそこは…美しい町。



「これが…『クレイラ』!」
砂の流れる、緑溢れた段状の町クレイラ。
色とりどりの美しい建築物が視界に立ち並ぶ。


「!? …ど、どなたですか…?」
法衣を身に纏ったネズミ族の青年達が現れる。

「…ま、まさかアレクサンドリアじゃ…」


クレイラはその厚い砂の壁で守られているが故、
ブルメシアと分って以来100年以上、外界とは一切の連絡が途絶えた町。

そこには軍は必要ない。
ギザマルークの他にも沢山存在するブルメシアの守り神に感謝しながら生きる…
武力の一切を捨てた、平和都市なのだ。住人の気質としては全くの穏やかそのもの。
信心深い者たちが多い。

彼女らの前に現れたのはクレイラの神官だった。

「いえ…私が連れてきました」
それに対し、ネズミ族であるあずさが出る。


「あなたは…ブルメシアの方ですか…?」
「はい。ブルメシアの龍騎士あずさと申します。
 …残念ながら、アレクサンドリアを止めることは出来ませんでした。」

「アレクサンドリアは…この町を狙っています。私は彼らからこのクレイラの民と、
 この町に生き延びたブルメシアの民を守るため来ました」
深々と頭を下げるクレイラの神官。

「……非力な我々に代わり、申し訳ありません…。 …さあ。こちらへ」



町を見回りながら、沢山の階段を登り
木の頂上に位置するクレイラ最大の施設…聖堂へ。
「おお…あずさ!生きていたのか」
その深部では沢山の神官と巫女、そして少数のブルメシア兵とブルメシア王が。


「はい…お久しぶりです、ブルメシア王」
「いきなり聞くのも何だが…彼の…
 フラットレイの手がかり、見つかったかね」

「…いえ、全く。
 ……やはり、すでにこの世には…」

その時だった。
「大変です!!」
「?」


「…あ、『アントリオン』様が…『アントリオン』様が!」

955im@s fantasy9 第二章 第二十七話 1/4:2009/12/06(日) 03:12:00 ID:cOyRuir.0
町の脇にある大きな流砂では、
クレイラの守り神『アントリオン』がネズミ族の子供を捕らえていた。


「アントリオン様は温厚な方であられるのに…一体これは…」

アントリオンは流砂から顔を出し、
口から飛び出た二つの大きな顎で捕らえている。


アントリオンは巨大なアリジゴクのモンスター。
掴んだ相手を砂の中に引きずり込み捕食する。


「「…あれはっ!!」」
ビビとあずさはその少年を見て叫んだ。
「た、たすけてくれーーーー!」

「今お助け致します!」
あずさは飛んだ。


「はっ!」
一跳びでアントリオンの頭へ。それを踏みつけ、ハサミのような大顎に挟まれた少年を抱きかかえ
アントリオンの頭を蹴り跳躍、元の場所へ。

「お怪我はございませんか?『パック王子』」
「! あずさ…あずさ、生きてたんだな!」

「…パック…」
「あ!?ビビじゃないか!どうしてこんなところにいるんだよ!」
かつてビビと一緒にアレクサンドリアの劇場へ忍び込んだ少年。
彼こそが、ブルメシアの王子だったのだ。

「話は後にしようよ」
「まずはこのモンスターを沈めなくては!」
「あの…あずさ殿、アントリオン様をモンスターとお呼びするのは失礼かと…」


「ゴルルルルルル」
戦闘開始。


「サンドゴーレムと同じ要領でお願いね、ビビちゃん」
「『ブリザラ』だね」

「『ブリザラ』!」
砂の中にもぐるモンスターにはこれが効果的。
氷の槍で内部から、凍てつかせつつグサリグサリと刺す。

「私は頭上から攻撃します!」
あずさはジャンプ。

「ミキも負けてばかりいられないの」
オーガニクスで硬い硬いアントリオンの装甲に一撃。
「ふんっ…!!」

サンドゴーレム戦でも同じパターンだった。
アントリオンもまた、角と化した大顎でカウンターを図る。
これを美希はオーガニクスを回転させ、大顎にぶつけて反動で回避。

「危ない危ない…」

そこにあずさの攻撃…
「はっ!!」
ミスリルスピアがアントリオンの口に落下。
そのまま口の奥をぐさりと刺し…
あずさが落下、ミスリルスピアを引き抜き戻った。
「ゴロロロロロロロ…!!」

「大分効いているみたいですね」
「けど反撃が怖いの」


「ビビが魔法を放つのを待っているわけにはいかないし…ここはミキが!!」

トランス。
「シフトブレイク!!」

短い茶の髪になった美希は頭から流れこむ特殊な魔法をまたも発動。
雷の檻にアントリオンを閉じ込め…


「はぁあ!!」
その中で幹を揺るがす巨大な爆発を起こし、アントリオンに攻撃。

956im@s fantasy9 第二章 第二十七話 2/4:2009/12/06(日) 03:12:46 ID:cOyRuir.0
しかし…アントリオンはすでに手を打っていた。
発動と同時に、砂を荒ぶらせる『サンドストーム』を起こしていたのだ。

アントリオンの意識が途切れるその間際にすべての力を振り絞り、地面を揺るがす。
激しい地震と、砂嵐。
「うあぁああ…!!」
「んう…」
美希達は瀕死に陥る。

「美希姉…ちゃん!」
砂に埋もれながらもビビはトランス。
「ま、待ってビビ…!」
美希の言葉は届かず。
「『ブリザラ』!!」
2倍速の高速詠唱で連続魔法を唱え、
1度目でアントリオンを氷漬けにし、2度目で粉砕する。

だが。
「あ…………ごめん、つい。
 …アントリオンはもう、美希姉ちゃんの攻撃で死んでたんだよね」


…ビビはここで冷静になった。
トランス1回が無駄になってしまった。
「美希ちゃん、大丈夫?…けど………参ったわー」
「ごめん、美希姉ちゃん…」
「いや、いいよ…ビビがそれだけ必死になってくれたんだから」


しかし…この戦闘で2人がトランスを使いきったことは大きな問題。
トランスは感情次第でいつでもなれるものでもないからだ。

…トランスは奥の手。
3人中2人がそれを使えないとなると…もしもの時に底力が出ない。

だが終わったことは仕方ない。

ひとまずは脚を引きずり、宿へ。
「あずさ殿…」
「はい」

宿につくとなにやら神官があずさを呼び出し、外で話している。
美希は階段に寝そべりながらその様子を見ている。
「解りました」

「…美希ちゃん、ビビちゃん。私達は聖堂で儀式を行ってくるから
 ここで待っていなさい」

957im@s fantasy9 第二章 第二十七話 2/4:2009/12/06(日) 03:13:22 ID:cOyRuir.0
「儀式?」
あずさはベッドに美希を横たえる。
「クレイラを守る砂嵐を強めるための儀式よ。アレクサンドリアに入り込まれないようにね」

「…何が起こるか解らない、ミキも行くよ…」
「何が起こるか解らないからじっとしていて欲しいの。
 いざという時は呼ぶから…今は眠っておくことよ?」

じゃあね、と一言残しあずさは宿を去り、聖堂へ。


「…それでは、始めましょうか」
「クレイラの、平和を願って。」



聖堂の中には、6人の巫女。
あずさが混じり7人で、
取り付けられた宝珠の力を引き出すハープの演奏とともに舞うもの。

「では。『永遠の豊穣』」





「…」
美希とビビはベッドに横になりながら、窓から外を眺めている。
「………」

ドリルはアレクサンドリアに行って無事なのだろうか。
真はあの国からどういった扱いを受けているのか。
「…美希ちゃん!!」

暫くして、あずさが慌てた様子で入ってきた。
「戦闘の準備は出来る!?」
「…え」


「…切れたの、儀式に使うハープの弦が…
 …もうじき砂嵐が、止んでしまうの!!」

958im@s fantasy9 第二章 第二十七話 4/4:2009/12/06(日) 03:14:13 ID:cOyRuir.0
「自分から帰って来るとは、いい心がけね 雪歩」
アレクサンドリア城、女王の私室にて雪歩王女は春香女王、ののとワーの取り囲む中に一人いた。
「可愛いあなたの言うことなら何でも聞いてあげる…
 何か聞きたいことがあるんでしょう?」


雪歩は一歩前へ。
「姉様。…ブルメシアを滅ぼしたのはどうしてですか」

「姫様といえど、女王陛下に向かって無礼デスよ」
「無礼ですヨ!」

春香は口元を吊り上げるだけ。
「…いいのよ。 …そうね、それは誤解よ…雪歩。
 ブルメシアのネズミ達がアレクサンドリアを滅ぼそうと画策していたの。
 だから私達から先手を打った…私だってあんなことはしたくなかったのよ?」


…ネズミども。雪歩にはその言葉で十分だった。
「…。 その言葉、信じてよいのでしょうか」
「あらあら…悲しいわ…姉である私を信じてくれないの」



「陛下…私も混ぜて頂いて構いませんか?このお芝居に」
銀髪、長身、切れ長の赤き目。
…そこに現れたのは、貴音だった。

「お芝居?」
「左様です、とても美しいお芝居
 白馬に乗った貴族の男と…見目麗しき王女の悲恋の物語。」


「王女はその美しき肌に悲しみの色を湛えたまま、
 百年の眠りに落ちるのです」
段を登り、雪歩に詰め寄る貴音。

「…!?」
雪歩は後ずさる。

「…あなたは…どこかで!!」
「私と貴方様が出会うことは、運命付けられていたようですね
 さ、私の可愛い小鳥…私の元へおいでなさい」


貴音は右手に魔力を込め…
「そして私が…」
左手を背中に回し、顔を耳元に近づける。
「夢幻の世界へいざないましょう…」


そして魔力のこもった手で頬から首、胸をなでると…
「う……」

…雪歩はそのまま、意識を失い…全ての力を失い、眠りにつくのだった。



「思った通り…寝顔がとても素敵ですよ」
お忍びの服の、開いた胸の谷間に鼻血が滴る。


「フン…手をかけさせてくれたわね、小娘め…」
貴音がにやけている中、春香は声のトーンを落とし…

「のの!ワー!召喚獣抽出の儀式に取り掛かりなさい!」

妹を置き去りにし、どこかへ去るのだった。

959乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/06(日) 22:47:02 ID:4kpXZp0I0
ビックバイパー型番表及びメタリオン星系惑星一覧

型番と作品対応表

BP-456Y 初代
BP-8332 沙羅曼蛇
BP-827Z Ⅱ
BP-5963 Ⅲ
公式で不明 Ⅳ
BP-827Z 外伝
BP-592A ソーラーアサルト
T-301 B/R Ⅴ
BP-456Y ネメシス
BP-456Y ネメシスⅡ
Advanced LEV(地球制) アヌビス
型番不明(地球制) スカイガールズ

メタリオン星系惑星表

恒星:メタリオン
惑星:
グラディウス:グラディウス帝国
ラティス:ラティス王国
ラーズ:無国籍
アイネアス:無国籍
キルケ:無国籍
ラウィニア:無国籍
オデュッセウス:無国籍
サード:グラディウス帝国
シン:新バクテリアン帝国
ラミレス:新バクテリアン帝国
ニューアース:グラディウス帝国

960im@s fantasy9 第二十八話 1/2:2009/12/10(木) 02:55:09 ID:cCRjE8eI0
「ほんと…砂嵐が収まったの!」
「大変なことになったわ…この町を守るものが何もない!」

「ボクたちで守ろうよ、クレイラを!」
「……そうね…」



クレイラの町を出て、はしごを下りクレイラの幹へ。
内部の流砂を抜け、下ると橋…そこで待ち受けていたのは


「…あなたが来たのね、やっぱり」
蒼い長髪、鋭い眼光、携えた長剣。
「如月千早!」


ブルメシアで大敗を喫した相手…アレクサンドリアの女将軍だった。
「…なるほど。ブルメシアの者がいたから砂嵐に入れたというわけね」

「何をしに来たの…?もしクレイラを滅ぼすつもりなら、そうはさせないの!」


「春香様はブルメシアの宝珠をご所望なさっているのであり…
 クレイラの民の命をお求めではないのよ。
 …解ったら退くことですね。ここには残存する戦力が存在しないから…」


千早が後ろを振り返ると高い声が聞こえる。
「彼女たちでなく、私一人でこの先に向かうことにしたのです」


背後を見せた千早にあずさは突きにかかるが…
「千早さまっ!」
「…」
深紅の装飾を煌かせ、赤銅の剣はあずさの槍を勢いよく吹き飛ばした。
「あ…!!」


「抵抗戦力がないから私は一人で行くことにしたのですよ
 人命と宝珠、どちらが大事かよく考えなさい」



「…」
答えなど知れたことだった。
一同が黙っていた…… その時だった。

「タイヘンだーー!!ビビ!」
「パック!?」

背後から現れたのは聖堂に保護されたパック王子。
「……ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ… …急いで!!急いで町に戻ってくれよ!」
「どうしたの?」
「アレクサンドリア軍なら目の前よ、あなたこそ…」

「違うんだ!! アレクサンドリア軍は地上からじゃない!!
 『空からやってきたんだ』!今…みんなを襲ってる!」

「えええ!?」
「そんな…!」

美希もビビも言葉が出ず。
…しかし……次の瞬間にはからだが動いていた。

「それが狙いでしたか…
 人命か宝珠か…?ええ、そういうお答えでしたか ………最低の将軍ですね!」
「…!?」
目を丸くする千早にはき捨て、あずさも来た道を戻り始めた。
「………」
「千早様…一体これは」
「…………春香様…」




「あああああああああああああああ!!」
「いやあああああああああああ!!」
「助けてぇぇえええええええ!!」
「ママああああああああああああああ!!」

様子を見に離れた町はすでに惨劇の様相だった。

961im@s fantasy9 第二十八話 2/4(変更):2009/12/10(木) 02:56:36 ID:cCRjE8eI0
「わっほい」「わっほい」「わっほい」
「わっほい」「わっほい」「わっほい」


空から降り注ぐは光の玉。
その玉ひとつひとつが地につくと同時に姿を変え、黒魔道士となる。
「この前のと形態が違う!」



黒魔道士の魔道衣が異なる…金の装飾のついたものに変わっている。
「みんなを殺させはしない!」


美希はオーガニクスを投げ、黒魔道士を一度に一気に倒そうとするが…
「え!?」


一人も倒せていない。
頑丈に出来ているようだ。

「そんなぁ…!」
「『サンダラ』」
「『ファイラ』」


巨大な雷と、炎の渦が上から下から襲う。
「やぁぁあ!!」

「何なの…この魔法の強さ…」
あずさは槍で黒魔道士を一突き。
「は!!」
貫通させ、もう一人の黒魔道士をその先端で一突き。
なぎ払って壁に叩きつける。

「聖堂の方へ急ごう!」
「うん…!」

「危ないわ、ビビちゃん!」
「覚悟おおお!!」

斬りかかってきたのはアレクサンドリア兵。
「ぎぇええええええええ!!」
喉を串刺しにすると女性特有の高い声が極限まで高まり、それとともに首が取れる。

「ああああ、ああああああああああああああ!!」
錯乱状態に陥った女兵が斬りかかる。

美希はオーガニクスの峰で兜を叩き気絶させる。


「死ねえええええええ!!」
「やあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

階段の上で叫び声。
見ると女兵がクレイラの女性を斬り殺していた。
「この…!!」
美希が走るより先にビビがブリザラで女兵を粉砕する。


「あああ…逃げる場所がなくなってしまいました!どうすれば…」
民間人が階段から降りてくる。
「…上へ行くの!!」

美希は手をとり誘導。しかし…
「覚悟しろ!!」

女兵が繋いだ女性の手を切断。
「あああああああああ」

962im@s fantasy9 第二十八話 3/4:2009/12/10(木) 02:57:13 ID:cCRjE8eI0
激痛とともにバランスを崩し階段から転げ落ちたところを黒魔道士が焼き払う。
「ああ、ああああああああ………ああああああああああ!!!!」

のた打ち回り炭になる女性。

「……!!」
オーガニクスを振り回し二人を吹き飛ばす。

「おかーーさ…!!」
親を戦火の中探しに来た子供のあどけない顔を刃が貫通…目を伏せる。


「あなたたち…!!」
あずさは槍を投げて女兵の心臓を刺す。


「………わ、私たちは一体どうすれば…!」
上っていくとまた民間人の女性二人。
「わっほい」
「わっほい」
下からは黒魔道士。

「いたぞ!!」
上からはアレクサンドリア兵。
「右へ行って!!」
「はい!!」
つり橋を渡り向こうへ走っていく。


「……危ない!!」
「わっほい」

黒魔道士のファイラが橋を焼き切る。
「きゃああああああああああ!!」

一人は対岸に掴まったものの、もう一人は転落…



「ぎぇあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
落ちた先は…血まみれの兵士たちの群れ。
ぐしゃり、ずしゃり、ざくりという背後の音…
意識が途切れることすら許されずばらばらにされていったのだった。


「…あ、あああ…」
「楽になるがいい!」
女兵が剣を取り出し、女性の手の甲に刺す。
「やあああああああああああああああああああああああああ!!!」


「やめて!!」
美希は飛び出し、尻尾をぶら下がる橋の跡に引っ掛け、もう片方の手で女性の手をつかむ。
「よいしょっと…!」
持ち上げ、壁を連続で蹴り女兵を攻撃。
「上へ…上へ!!行かなくちゃ…!!」


こうして、逃げる人々を保護しながら敵を倒し、安全場所である聖堂へと向かったが…
助けられたのは結局女性一人と子供達だけ。ひとまずは聖堂へ連れて行く。
「さぁ、早く!!走って!」



入り口までは来た。だが
「わっほい」
「わっほい」
「わっほい」
聖堂を取り囲むように空から飛来してきたのは黒魔道士達。
「きゃあ!!」


前からも、右からも、下からの階段も黒魔道士。
魔法を放つと…

「わああああん!!!」
子供の体が一瞬にして焼かれ
「いやぁぁぁあ!!」
女性の体を氷がグサリと貫通
「ああああああああああああ…!!」
子供は放り投げられ、クレイラの空へとまっさかさま。



「………」
残った子供は一人。
このまま、誰も救えないのか…?
そう思われたとき。

963im@s fantasy9 第二章 第二十八話 4/4:2009/12/10(木) 02:57:43 ID:cCRjE8eI0
「はぁあ!」
黒魔道士の首がボロリ。
「ふんっ!!」
腹に一刺し。
「てあああ!!」
肩からわき腹までを両断。


「ここは私が守る!早く行ってくれ!」
現れたのは、巨大な斧を振り回す薄黄色の鎧を纏った男。


「あなたは…!」
その鎧、その技、その顔。
…あずさが忘れるはずはなかった。彼こそ、長きに渡りあずさが探し続けた…
フラットレイその人だった。

「あずさ…!早く中に!」
「……私はここに残ります、美希ちゃんたちは中へ!」



敵を警戒しながら、鎧越しに背中を合わせる。
「…ずっと探していたんですよ、フラットレイさんのこと」
「……」
「10の山を越え、10の川を渡り…。最後に聞いたのは…あなたが死んだという噂。
 あれから、どこへ行っていたのですか…?」

「………旅の途中パック王子に導かれ、ようやくこの場所までたどり着くことができました」
「…そうだったのですか」


「あなたが見つかって本当によかった…これから、クレイラを護りきったら二人でブルメシアを守って頂けますね…?」
幾年にも及ぶあずさの中の気持ちが、氷解していく。

しかし。
「…すまない。俺は…あなたを思い出せないんだ」





「……え?」
あずさは笑顔のまま。
「…覚えていないんです。…何も。…フラットレイという名前も、パック王子に言われて名乗っているだけ」

顔が…張り付く。
「……冗談ですよね?もう、フラットレイさんったら…」
「それ以外、何も思い出せないんです。…すみません」

表情が一瞬にして洗い流されたあずさは強く肩をつかむ。
「冗談はおよしください!私を覚えていないというのですか!?
 ブルメシアのあずさです!龍騎士をしていた、あなたの…!!」
「すみません…俺、もう……何も」

「嘘だって言ってください…お願いです、…フラットレイさん…」


その目をまっすぐに視線が射る。……その目は悲しみしか帯びていない。

「……」
肩をつかむ力が抜ける。
その場にあずさは…崩れ落ちた。


そんな時だった。
「あずさ!!」
聖堂から青い髪の女性が現れる。
…如月千早。
そして声がしたのはその後ろ……美希とビビのものだった。


「千早将軍が……後ろから回ってて!!今宝珠を盗まれたの!
 立ってよ!!止めなきゃ!!」

964im@s fantasy9 第二章 第二十九話 1/2:2009/12/11(金) 01:57:00 ID:NDy/TuCA0
千早は立ち止まった。

「逃がさないよ!」
あずさを起こした美希はすぐに戦闘態勢を取る。
「逃がさない…? ブルメシアで私に敗れたことを忘れたの」

あずさも漸く立ち上がる。
「忘れる忘れないではないわ…
 ブルメシアに続きクレイラまでもこんなにしておいて」

「ただで済むとは思わないでください!!」
あずさが光に包まれる。
「…そこの金髪の子だけでなくあなたもトランス能力を…!」
紫がかった光の柱があずさを包み込み…


鎧を深くかぶった、伝説の龍騎士の姿へと変化させる。

ブルメシアから、クレイラまでの道のりを経て再び千早との戦闘は…
こうして再び幕を開ける。
しかし…それはまたもむなしい結果に終わるのだった。

「は…!!」
ジャンプ攻撃を仕掛けに、いつも以上の高度に飛び上がったあずさは…

「一発!!」
槍を千早に突き刺し、気の力で戻し…

「もう一発!!」
もう一回放ち

「最後!!」
落下して千早に突き刺す。


「……どうです」
少しはダメージを稼ぐことは出来た。しかし…

「あなたの周りを見てみることですね」
…見ると、あずさが戻った地上には千早以外誰も立っていなかった。


折れた木の根元に叩きつけられたビビ、
折れた斧の刃を手にしたままうつぶせに倒れたフラットレイ、
千早の足元で血を流し倒れる美希。


「……!」
美希から奪った道具袋をあずさの足元に投げ捨てる。
「手持ちの道具も立て続けの戦闘で切らしていたらしく… もう、あなただけですよ」
敗色が濃厚…いや、確定的。

「そんな…」
「フラットレイという龍騎士は非常に残念でした。
 あんな脆い斧でなかったなら、私と対等に戦えたかもしれなかったというのに」

赤銅色の剣をあずさの眼前に掲げる。
「この私の鍛え上げられた肉体と、剣術と、『聖魔法』
 そしてこの『宝剣・セイブザクイーン』がある限り私に敗北は存在しません」
千早の体が揺らめき…
「!!」
千早の眼前に一瞬にして跳躍、ミスリルスピアが粉々に砕け散る。

そしてもう一振り。
「…あ……!!」
片脚に激痛と出血…あずさはがくりと膝をつく。
「これであなたも戦闘不能。」

それでもあずさは渾身の力で千早の服の裾を握る。
「…終わりですよ」

振り払うと、ここ聖堂を除いた町の殲滅を終了した黒魔道士が集まってくる。
「もう私を追うなど考えないこと」
黒魔道士が光の玉になる。
その光の玉に千早は吸収され、空へと立ち上っていく。


「……う」
美希が起きる。


「……あずさ」
「…追わなきゃ… 千早将軍を…」

黒魔道士たちが光になって撤収していく。
あずさは脚を引きずり……その光に飛び込む。

「…ミキも行くよ」
ビビを連れ、光の中へ。

965im@s fantasy9 第二章 第二十九話 2/2:2009/12/11(金) 01:59:52 ID:NDy/TuCA0
一方…クレイラの上空では黒魔道士を放った張本人が扇子を扇いでいた。

王宮所有の飛空艇レッドローズの先端から大樹を見下ろすリボンの少女。
「光の玉が戻ってくる… どうやら目的は果たしたようね」

そして彼女は青黒い宝玉を手に持つと…
「では、始めましょうか
 この道具に込めた…あの子の体から取り出したばかりの『この力』を使って」
それを空に掲げるのだった。
「さぁ、私にその力を見せておくれ…召喚獣『オーディン』」


青黒い宝玉が眩い光を放ち……
「おお…!」
空に一直線に光を放った。


遥かなる雲海へとその光が吸い込まれていくと……

僅かな間をおいて、雲海から黄金色の筋が地に下りる。
雲海が分かたれたのだ。



『召喚獣』。

人々が願い、伝え、
そしていつしか忘れていった強大なる伝説。



契約主の声に呼応し幾百年の遥かなる忘却の闇から
8本脚の馬に跨った深き黒の甲冑がここに帰ってきた。


空を、悠々と垂直に駆け下りていく騎士の手には……

それは長い…長い、神槍『グングニル』。



彼は腕を引き、力を込めるとそれは妖しい紫の光に包まれ…幾重もの雲めがけてそれを放つ。


雲を一直線につらぬき、出来た穴の下には緑…クレイラ。


グングニルの槍は巨木クレイラを刺し貫く。



音もしない。まっすぐに、大樹は槍を受け入れ…
一瞬にして真っ赤に染まる。

…爆ぜる。


ひとつの都市を支える巨大な木が…焼かれた。…いや、弾けた。
無数の、細かな火花となって。


地上の一面を、巨大な穴へ変えて。


それを見届けるとオーディンは帰っていく。雲の中へ。遥かなる、人々の伝承の中へ。



「ふ、ふふふ…あはは、ははははははははははははは…!!!」
何もなくなった空には、春香の声がこだまする…それだけだった。

966im@s fantasy9 第二章 第三十話 1/2:2009/12/11(金) 03:30:36 ID:NDy/TuCA0
「み、美希姉ちゃん…」
「……クレイラが……!」
「…そんな…… そんな」

黒魔道士が光の玉になって詰められたポッドから飛び出た美希たちは、空から眺めた惨状に愕然とした。
「…あれが……『召喚魔法』」

立て続けのショックにあずさは最早動くことすら出来ない。
…美希とビビだけで動くことに。
だが、この場所からなら千早にばれずに春香の元へ行き倒すことが出来るかもしれない。


「……ん?」
しかし動こうとして早々、美希は気配を感じる。
階段の上の扉を叩く音…女兵だ。
影に隠れる。
「千早様、陛下がお待ちです」

現れたのは千早だった。
「ええ。今すぐに…」
「では、お伝えしてきますね」

扉から出て、手すりに手をかけ空を眺める千早。
「……」

見下ろすと、黒魔道士たちがポッドから戻り整列している。
「私達は、所詮あのような人形達と同じなのね…」


「?」
美希はプロペラの回る音から注意深く千早の声を捉える。
「召喚魔法…あれを使って春香様は霧の大陸を掌握するつもりなのね。
 恐ろしいものを手にしてしまった…
 …クレイラを消滅させる意味まであったのかしら…
 一体どうなされたっていうの、春香様は。」

「……道具である私が考えても仕方のないことね。」
千早は通路を渡り、春香の待つブリッジへ。



美希はそれを確認すると素早く、足音を立てぬようにその後ろを走る。
そして…扉に耳をつけ、ブリッジの様子に耳を澄ます。
「春香様、只今戻りました」
「遅いわよ千早ちゃん 例のものは。」
「こちらに。」

「おお…これよ、これ! これこそがブルメシアを倒した証、
 4つの宝珠『クリスタル』のひとつ…!ふふふ、あはは、はははははは…!!」

「…労いの言葉もなし…か」


「…ところで、春香様」
「何?早く出て行ってくれないかしら」
「…ひとつだけお聞かせいただきたいのですが」

「…雪歩様がお城に戻られたそうですね。抽出の儀式も終わりになったようですが…
 雪歩様は一体今…」

「眠ってるわよ、地下でね。
 儀式も終わったことだし、あの子はもう用済み」
「…といいますと」

「城に戻ったらあの子を始末する。
 表向きには盗賊どもに浚われたまま殺されたことにしておきましょう
 バレたならリンドブルムへのスパイとしての処分に変更。
 全く世話の焼ける子だったわ…」

「………? ご冗談としては笑えませんよ、春香様」
「何?私がこの場で冗談を言うとでも…?さ、早く自室に戻って
 黒魔道士は先に城に戻すように」



「…!!!」
美希は全速力で走り、あずさの元へ。
「…あずさ!あずさ!」
「………何」

「春香女王が…春香女王が、ドリルを始末するつもりなの!」
「ドリル…?」
ビビが答え
「雪…」
美希が遮る。
「ミキの仲間だよ!!」
ブルメシアの民のアレクサンドリアへの感情を考慮した結果であり…本心でもある。

大切な仲間を、好きになった子を。
殺させるわけにはいかない。


「黒魔道士は城に戻るんだよね、それなら…!」
3人はもう一度、ポッドの中へ。

光の玉となり、空へと飛んでいく…行き先は。

967im@s fantasy9 第二章 第三十話 2/2:2009/12/11(金) 03:33:39 ID:NDy/TuCA0
「うぉおおおおおおおお!!何でボク達が
 アレクサンドリア兵に追われなきゃならないんだあああ!!」
「それはこっちの台詞!
 伊織ちゃん助けるつもりが何で協力した隊長さんのせいで捕まることに…」
「リンドブルム公の命令とは言えお前達はれっきとしたアレクサンドリアの犯罪者なんだよ!
 ボクは何もしてないいいいい!!」

女兵達から追われ、塔を駆け登るは脱走者・真。
アレクサンドリアに着いたものの、ののとワーに捕まり空中独房に閉じ込められていたのだ。

「…わ!?」
抜け出したところで光の玉が飛来。
「ひゃ…?」
「きゃ!」
「うわあ!」
美希、あずさ、ビビの3人が現れる。

「美希ちゃん!」
「美希!?」

「まこっさん!」

「…お前達、どうしてここにいる!さては…」
「言ってる場合じゃないの!! ここはアレクサンドリア城だよね!?」
「え?ああ…そうだけど」
「早くしないと…!急がないとならないの!」

「美希ちゃん、一体何があったの?」
「どうしてうさちゃんがいるのか解らないけど…とにかく!この城中をくまなく探さなきゃ…
 ドリルが殺されちゃうんだよ!」


「!? 雪歩様が…? ば、バカな…そんなことが」
掴み掛かる。
「この目を見ても嘘だって思う!?
 早くして!!『雪歩王女』が死んじゃってもいいの!」
「でも……誰にだよ」
「時間がないの!早く!」


真の手を取り、美希は走り出す。
「いたぞ!!脱走者の真隊長だ!」
十字通路。うさちゃんは通路を走ってくる兵士達を鉄格子で塞ぐ。

「それじゃ!美希ちゃん、
 ボクは伊織ちゃんを助けに行って来るから!」
「え?えー…うん!ありがとう!」
走り出す。
「一体あれから何があったんだ…?」
「脱走者ってことは捕まってたんだよね 何か解らない?」
「何が…」

城内を探索しながらあれこれと探す。
「ドリルの言ってたことはホントだったってこと。…千早将軍とも二度戦ったよ」
「千早と!?生きて帰れるわけが…」
「でも倒してもいないよ 見逃したんだと思う…今の所2回も負けてるの。何か方法ない?」

城の上層部に潜入。
「千早を倒す方法?」
「うん」

「それなら任せろよ!ボク千早を倒したことがあるんだから!…昔」
「!? …でも昔だよね」


「けど千早のことは大体解ってる。倒す方法もおおよそ見当がつくよ …道具を使うんだ」
「この中にある道具で何とかなる?」
戦闘用にはおおよそ使えないものばかりが入った道具を見せる。

「……これだな!これがあれば倒せるはずだ」
取り出したものは。




それから10分後。地下室にて、眠り続けるドリルの体の左右でへたりこむののとワー。

「ふう、召喚獣取り出しは疲れたデスよ」
「長い長い…どれだけ召喚獣を持ってたですカ」
「でもこれで、全部終了。 陛下の喜ぶ顔が待ち遠しいデスよー」
「…ののー、誰か来たですヨ?」
「デス?」


「ドリルーーーーーーーーーー!」
「雪歩さまああああ!」
「雪歩お姉ちゃん!」

地下の螺旋階段の下…秘密の部屋に、彼らは到達した。
「誰デス(です)かー(カー)!?」

9682012 ◆Free525l1Y:2009/12/12(土) 22:52:08 ID:fDRRDZ520
俺は朝早く目覚めた。休日だと言うのに
とりあえずテレビを付けてみた。すると…
キャスター「皆さん…今までお世話になりました…グスッ」
何だ、どう言う事だ
エリカ「ちょっとたてじん!大変よ!」
陣「え?何が?」
栞「ニュース見ていないんですか?」
陣「だから何?」
エリカ「それがさ…」
(地球が滅びると言う事を話す)
陣「なーにー!?嘘だ!!」
栞「本当ですよ…NA○Aもそう言っていますから…」
陣「ぬー…分かった!これは夢だ。ちょっとみんなを呼んできてくれ」
(5分後)
陣「と言う訳だ、みんな精一杯殴ってくれ」
5、4、3、2、1、すたと
一同「それそれそれ!」
陣「…まだ覚めない。もっと殴ってくれ」
シャドウ「カオスッ、ブラストォ!」
ドガーン!
陣「ぎゃー」
リョウ「覇王翔吼拳!!」
ドガーン!
陣「ぐぽぉ」
ざんねん!じんのぼうけんはこれでおわってしまった!
栞「建山さん…先に死んでしまったんですか…」


  こ  れ  は  S  S  な  の  か  …

       2    0    1    2

969im@s fantasy9 第二章 第三十一話 1/4:2009/12/15(火) 01:14:27 ID:x6Dj6vYg0
「う、うう… どうせもう召喚獣は全部取り出した後だからもう手遅れデスよー!」
「ざまーみろですヨー!」

この二人は魔力を片方に集中させて放つ『二人がけ』の使い手…
集中させられた方を攻撃すれば難なく魔法を防ぐことが可能。

全裸の、赤リボンと青リボンの小人は脱兎のごとく逃げ出していった。
「そんなの要らない!ミキが欲しいのは…!!」



そして、広い儀式の間の石の祭壇へ。
「ドリル……! ドリル!」
抱き起こす。
…声をかけるが…全く反応がない。
「姫様ああああああ…うわぁぁ…どうしてこんなことに…」


白いその胸に手を当てると…脈動と僅かに上下しているのを感じる。
「…暖かいし呼吸もしてる…
 けど目が覚める保障はないから…安全な場所まで運ばなきゃ!
 …戦闘は3人に任せていい!?」
「…仕方ないな」
「うん!」
「解ったわ!」

3人が先を行き、美希がその後になって扉を出る。



行く時にも通ってきた、薄暗い螺旋階段を登っていく。
降りるのと登るのとでは段違い。
ドリルを抱きかかえながら、一段一段確実に、急ぎながら登っていく。


「間に合って…!ドリル…ドリル!」
頭の中がそれ以外にない。


階段を登りきり、紐を引くと暖炉から女王の間へと出る。

「…ここに寝かせよう」
ソファーにドリルを寝かせる。


「……………」
美希から表情が消えた。

「…さっきから、静かだな 美希らしくもない。」
「………うん」



「今…わかったの
 感情の…怒りや悲しみが極限を超えると…何も湧かなくなるってこと
 涙すら、出ない……」

体が震え、首を振るばかりで…彼女は何もしない。

「ミキがついていれば…
 ミキがついていればこんなことには……
 こんな…こんなことには!!」



…美希の叫びがむなしく響いたかと思うと、
今度は靴音が聞こえてきた。
靴音は6つ…3人。
「ここデスよー」
「さっさとやっつけるですヨ」

ののとワー。そして…


「まさかあなた達がここまで侵入していたとは」
長い髪、鋭い目つき、豊かな胸元、鞘に納まった宝剣。



「千早…!」
「真。盗賊ふぜいとつるんだ挙句に、春香様の御部屋にまで…?
 あなたは一体何を考えているの」


「千早!!お前こそ、一体自分が何をしているかわかっているのか!?
 アレクサンドリアに居たんだろう!」
「真の言っていることって、時々よく解らなくなるわ…」
千早は顔を背け、息をつき手をひらひらと動かすだけ。

真の怒りが頂点に達する。
「千早ァ!!表へ出ろォォォォォォォ!!」

970im@s fantasy9 第二章 第三十一話 2/4:2009/12/15(火) 01:15:04 ID:x6Dj6vYg0
「表へ出るのは貴方でしょう…?
 それに…こんな場所で戦えるわけがないじゃない。
 私の剣はブルメシア城を破壊する威力を持っているのよ
 のの、ワー!」


「ワカリマシター!」
「直ちに!」



部屋の隅に移動すると二人は魔法を唱え…
5人を特殊な空間へと連れ去る。





そこは風雨の吹きすさぶ荒野。
枯れ草以外生えぬ、崖を臨むヒビ割れた乾いた大地と
灰に染まった空からは氷雨と雷鳴。

そこはまさに地の果てだった。
「最早一片の情もかけるに値しない…あなた達をここで殺す!」

千早との決着の時がやってきた。




「『雷鳴剣』!!」
まずは近づき、猛り狂う雷の龍でビビを焼く。
「わぁぁあ…!!」


「負けませんよ!!」
あずさは空高くジャンプ。

「千早!!目を覚ませ!」
飛び上がり、体重をかけて一撃を見舞う。


「目を覚ますのはそっちよ!」
腕を狙い剣を振るう。
「う、ああああ…!?」

腕から突然力が抜けていく。…腕が、重い。


「これが『パワーブレイク』よ
 私はブレイク系の剣術4種をマスターしている…真、あなたはどうだったかしら!」

剣を下から上へ払い、真を上空へ払い上げる。


「覚悟っ!」
あずさの槍がそのタイミングで千早の肩に命中。
「く…」

引き抜き元の位置へ戻ったところへ…



「ブルメシアの民よ、あなたには特別にこの魔法で葬って差し上げましょう」
大気が振動し、風が巻き起こる。



手をかざす。
「!?」
蒼く白い光が突如として地から湧き上がり、
「ふあぁぁあああ…!!!」


あずさを天高く突き上げていく。


するとどうだ。同じような大きさの、青白いすさまじい勢いの光が四方八方から集まってゆくではないか。
あずさの体に向かって。



真っ青な光の集合体が…あずさを包んでいた。
「『ホーリー』!!」

971im@s fantasy9 第二章 第三十一話 3/4:2009/12/15(火) 01:15:50 ID:x6Dj6vYg0
巨大な球を成した光が結合…大爆発。

視界全てが真っ白に染まる。
曇天を一気に吹き飛ばす。


声の一つも発することが出来ず。
そこに…あずさの体はなかった。
「…」

真っ白になった視界のまま、美希はオーガニクスを振り回し千早を斬るが…
「『ショック』!!」
青白い光を纏った剣からの衝撃で美希は吹き飛ばされ、そのまま崖へと。




「まだ…ボクは戦える!」
「ボクもだぞ!!」

ビビと真は立ち上がる。
しかし…

「諦めが悪いことね」
『ケアルラ』で回復…
千早の余裕は揺らぐことがない。

「…はぁ、は…」
美希が崖から登ってくる。



「やっぱりボク達だけじゃ辛いな…」
「秘策!! 秘策を使おうよ、まこっさん!」

千早はセイブザクイーンに力を込める。
「何をするつもりかは解らないけど…その前にこの剣で皆斬り伏せるわ」


真も横に剣を構える。
「長い間使っていなかった技だが… 千早、君に勝つためにまた使う!!」

美希が真とビビに合流。
「やってみなさい!!」

千早が飛び上がった。



「嗚呼ああああああああああああああ!!」
気合を込め


「はああああああああああ…!」
剣を下に構え

「ああああああああああああ…!!!」
徐々に持ち上げ真横へ。


「……!!」
真上まで持ち上げた時。

972im@s fantasy9 第二章 第三十一話 4/4:2009/12/15(火) 01:17:26 ID:x6Dj6vYg0
「は!!」
「てやああああああああああああ!!」
飛び降りてきた千早と、真の剣が激突。


「!!」
千早は剣を受け止められ…


「……!」
剣撃の勢いが心臓に直に伝わり…



「!?」
千早の豊かな胸から、二つの丸い何かがこぼれ出る。



ゴトン。
真ん丸い物体は胸から飛び出…乾いた大地を叩く。


「…!?」
美希は唖然とする。
「……」

真は千早を見つめる。…地平線より真っ直ぐになった、千早の体を。



「…くっ………」
ビビは丸い物体を指差す。
「あれは…魔石だよ!」

巨大な青い宝石二つ。


身に着けた道具の特殊能力を体に定着させるには使い込むことが必要。
だが…その定着した能力を発動させるには、魔石力という力が必要なのだ。


何故魔石力というかといえば…その力が、魔石の装備により高めることが可能であるからだ。

あらゆる能力低下や病が通用しない、ダメージが少ない、魔力も体力も高い、攻撃力も高い。
それほどまでに強力な特殊能力の数々を、一人の人間の内に秘めることは困難。
それでも不可能とされていなかったのは、それが彼女が恐ろしく強い剣士であるから。


…だがこうして、魔石の力で千早はその持ち前のトップクラスの能力を更に磐石のものとしていたわけなのだ。
「………こ、……こんなものがなくたって」


千早の声が震える。
「私は!!」

その姿勢に真は涙を堪えられなかった。

自分は何も疑わずにこれまで生きてきた。ただただ、二人の王女…時代が変わってからは
女王陛下とその妹をお守りすることだけを考え、剣の腕を鍛えてきた。

何も、疑うことなく。
何も、知ることなく。


だから、何も知らなくとも幸せだった。苦しむこともなかった。
だが…千早は違う。自分よりも女王春香の近くにいて、女王の変貌を恐らく間近で知ってしまったのだろう。
それでも彼女は…彼女は全く忠義を止めなかった。宝剣セイブザクイーンを任された者であるから。
自分がアレクサンドリアの将軍であるから。女王陛下に仕える剣士であるから。

けれどこれは間違いだ。ただ一言、胸から魔石を無くしてなお戦う千早に言葉をかける。
「千早…」







「…自分を偽るのは、やめるんだ。」

誤解が… 生じた。


「真ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

973im@s fantasy9 第2章 第三十二話 1/2:2009/12/15(火) 02:59:23 ID:x6Dj6vYg0
「うわ、千早将軍ちっぱいなの!」
美希が畳み掛ける。

「ボクは見てない、見てない…」
魔石を最初に指摘した人物は知らないフリ。


「あああああああああ…!!!」
千早は飛び上がり、最強最大の剣技を放つ。


「美希!!今だ…アレを使え!」
美希の体を上空へ放り投げる。
「『クライムハザード』!!」


ビビと真に向かい、剣から激しい深紅の衝撃波が発生。
辺り一面を切り刻み、地を散り散りにして吹き飛ばし…


辺りには、どこまでも続く暗闇に、土の柱が数本立つのみとなった。



「はああああああああああああああ!!」
空に、真っ赤なひらひらとしたものが舞い散る中……



美希は落下。一瞬にして巨大な四角推の何かを持ったまま、
千早に覆いかぶさる。
「んんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーー!!!」


大きな四角推の中でじたばたする千早に被せたもの。それは…
「『テント』!!」



テントだった。
自分でもこの作戦がうまく行ったことが不思議だった。

こんな、空中にいる一瞬で一叩きしただけでテントセットが一瞬にして…
「建った!?」

「建たないわ!?建つわけないし…」
涼のようなことを言いながら千早は…
「…!!!」

千早はテントの中で倒れた。
そう。ただのテントではなかった。

護衛用なのか何かわからないが、テントの中によく入っている…
特殊な蛇、『毒沈黙暗闇へび』が入っていたのだ。


「……!!」
口から息が出来ない、毒が回る、目が見えない。何故こんなものがテントに付属されているのか?
本当にそんなことがあるから世の中は不思議である。



「………」
魔石を失い、多くの特殊能力を失った千早にこの攻撃はクリーンヒット。
見事に3つの症状に苛まれることとなった。


「ふんっ!」
テントの中でもがく千早から万能薬を盗む。

「…!!」
テントを切り刻み、千早が姿を現す。


喋れない、目が見えない、感覚が鈍る。この状態なら…
倒せる。


飛び降りざまに、撒き散らしたフェニックスの尾で復活した仲間達と共に。
「…やったか…」
「す、すごい…どうやって」

「……私だって、まだ…!!」
ホーリーに吹き飛ばされ倒れたもののフェニックスの尾の力で蘇り
遠くから槍を引きずりやってきたあずさも加わり…

4対1.

974im@s fantasy9 第2章 第三十二話 2/2:2009/12/15(火) 02:59:55 ID:x6Dj6vYg0
「…!」
黙っていても頭がクラクラする。


「行くの…!!」
美希はトランス。

「ボクも負けてられないな!」
真もトランス。



二重攻撃でトドメを計る。
「『シフトブレイク』!!」
電撃の檻で包み込み大爆発。


「はぁぁぁぁ…『アーマーブレイク』!」
相手の防御を突き崩す強力な一撃で斬り上げる。


「…!!」
上空へ飛んだ千早を…追撃。


「はぁぁあ!!」
スイフトアタック。何発も何発も攻撃…
「いけぇ!!」
交差させた一撃で地面にたたきつける。
だが
「…!」
目が見えなくてもどこにいるかははっきりと解る。
その瞬間、千早のとっさの剣を食らい突き飛ばされる。


「『サンダラ』!!」
着地した千早をビビが雷の攻撃で追撃。

「最後ですよ…!!」
飛び上がったあずさが、倒れる千早に最後の一撃。
「…くっ!!」


地面は崩壊。
千早が闇の底に落ちたところで…




「何が起こったデス!?」
「解らないですヨー!?」
空間が元に。

そこには、女王の間のカーペットに倒れる千早の姿があるだけだった。



「まさか、私が……こんな、戦法で…」
「…。」



膝をつき立ち上がろうとする千早に真は近づく。
「ボクと千早が最初に戦った時も屋外だった。

 正面きったら勝てるわけがないボクはチャンスを求めて逃げていたんだけど…
 その最中、千早が蛇を踏んで、噛まれたんだっけね…
 春香様が駆けつけたけど、そこにはすでに倒れた千早と
 立っているボクがいて、蛇がいたんだと言っても信じてもらえなくて。
 …うやむやのまま、それでボクは千早に勝った功績でプルート隊長になった」

「…今回のはそれとは比べ物にならないほど強い蛇だったのに、
 よくあれだけ耐えたね」
「…同情されているのかしら、私」



「そんな言い方しなくたっていいじゃないか。
 ………それより。」
真は目を向ける。背後のソファーに。

「あそこで倒れてるのが誰か、わからないわけじゃないでしょ!!」
美希は肩を掴む。

「…まさか」



千早は駆け寄る。
「………雪歩様!?」
そこには、意識を無くし魔法で眠り続けるドリル…雪歩王女の姿が。

975im@s fantasy9 第2章 第三十三話 1/2:2009/12/15(火) 03:00:46 ID:x6Dj6vYg0
「…真。どうやら、私達には道は一つしかないみたいね」
「…」



振り向く。
「春香様は、雪歩様を殺すおつもりだったのよ」
「………誰かの陰謀じゃ…!?」
「いえ…あの人自ら。
 ……自分の妹様を手にかけるなんて。」


「ブルメシアの民よ
 私は…取り返しのつかない過ちを行ってしまった」
「…当たり前です
 私は、あなたをそう簡単には許せませんから…」


あずさは背を向ける。
「…けれど。
 …その、アレクサンドリアの犠牲になろうとしている
 雪歩王女…この子だけは助けることは出来ない?
 ブルメシア侵攻を止めようとしたって聞いたの…。」


「…はい。そのつもりですよ
 …雪歩様、私が……今、お助け致します」


膝をつき、同じ高さになると
眠る雪歩に額をつけ……千早は魔法を唱えはじめる。
「そう簡単にわたののワーさんの魔法は解けないデスよー!」

もう一回。
「そっと瞳を閉じたって無駄ですヨー!」

魔力が尽きかけている。
最後に念を押し……もう一回。


「……だから、無駄だと…」





その瞬間。
「…ん、…ぅう…ん…………」

「ドリル!!」
「雪歩姉ちゃん!」
「雪歩様!!」

目をこすると…ぱちりとまばたき。
ドリルが……目を覚ました。

976im@s fantasy9 第2章 第三十三話 2/2:2009/12/15(火) 03:01:24 ID:x6Dj6vYg0
「……ドリル…」
「美希…ちゃん!?…真ちゃん、狩猟祭のあずささん……
 ……これは、一体」

辺りを見回していると…


「………何を騒がしい…」

奥から、真っ赤なドレスの少女が姿を現した。

「は、春香女王!こいつらがデスね…」
「こいつらが逆らって、雪歩王女を目覚めさせたですヨー!」




「…姉様!」
ドリルは立ち上がる。

「起きちゃったのね…残念。
 …眠ったままなら、まだ何も知らずにいれたのに。
 のの、ワー。処刑部屋へ雪歩を連れて行きなさい
 この子を一刻も早く処刑するの」

千早は拳を握る。
「春香様!!」




「…千早ちゃん。どうしたの」
「そのご命令、どうかお取り下げ下さい
 何ゆえご自分の妹様を、こうして手にかけなければならないのです!!」


「…私に指図するの?」
「私は弟を事故で亡くした身…
 ご姉妹をこうして事故で手にかけるなど、あってはならないこと!!」


「……ボクも、その命令には従えません」
真も春香の前へ。


「…ついさっきまで敵味方だった者たちが手を組むっていうの…?
 面白い。…噛み千切ってあげなさい、『バンダースナッチ』」
強力な獣の魔物が女王の間に押しかける。

「待ちなさい…春香様… 春香!!」



「…お姉様…!」
「…」

春香はそのまま、振り向かずに立ち去っていった。




「…」
千早は剣を、あずさは槍を構える。
「ここは私に任せ、その暖炉の裏口から脱出しなさい!
 旧時代の遺跡に繋がっているはず!」

「私達は死にません、さあ、早く!」



「…」
真は千早の背中を見て躊躇したまま。

「行こうよまこっさん…!
 千早…さんの言うことを聞くのはシャクだけど、
 こうなったからには危ないよ!」

スイッチを押し、暖炉の裏に逃げる。
「…あ、ああ…!」

977im@sfantasy 9 第二章 第三十四話 1/3:2009/12/18(金) 02:11:22 ID:6u32GRZg0
「さぁ、来なさい!私達が相手になるわ…!」
「さて。どれくらいの敵を倒すことになるんでしょうね…」
「長期戦は覚悟した方がいいかと」


現れた巨大な魔のプードル『バンダースナッチ』。
蛇につけられた一時的な病の回復した千早は大技でバンダースナッチをまず処理に回る。
「『ショック』!!」

衝撃を与える位置を変化…敵の体内へ送り込む。
バンダースナッチを内部から爆発させ、一撃の内に撃破。


「次は黒魔道士ね…」
「これも任せてください」

踏み込み衝撃を発する『ストックブレイク』で一瞬で撃破。
これでも城を破壊せぬように手加減している。

…二人の、マラソンマッチは始まったばかり。






「ドリル!行こ!」
「え…う、うん…!」

手を引っ張り、暖炉から続く地下への螺旋階段を下りていく4人。

「降りるのはいいんだけど、ここから城外に出られるの?」
「うん!その下は旧時代の遺跡、ガルガン・ルーに繋がっているの」
「それじゃ急がないとね!」


ぐるりぐるりと冷たい石の階段を降り続け…
ドリルの寝ていた部屋の扉…最下層はすぐそこまで来ていた。

その時。
「…」
真が立ち止まった。


「真…ちゃん?」
「まこっさん!何してるの!?早くしないと…!」
「果たして、ボクはここにいていいんだろうか…」
いや、答えはもう出ていた。


「自らの故郷を滅ぼされても尚、姫様を助けるべく力を貸してくれたあずささん」


「自らが忠誠を誓った陛下に剣を向け、ボク達を逃がしてくれた千早…」



「…そうだ。ボクがいるべきは、ここじゃないんだ!」
「…まこっさん?」
「ボクがここで一緒に逃げては、騎士の名が廃る」


今、雪歩王女の手をとっているのは誰か。
今、雪歩王女のためにもっとも真剣になっているのは誰か。

…雪歩王女の言葉すらも信じられず、自分で考えずに結果姫を危険に遭わせたのは誰か。

真は、長い金髪の少女の瞳を見つめる。
「美希!君に頼みがある!」

978im@sfantasy 9 第二章 第三十四話 2/3:2009/12/18(金) 02:12:29 ID:6u32GRZg0
拳を握り、話すは決意。
「この先のガルガント機関を使いトレノへ行き、
 小鳥先生に事の次第を話して欲しい!
 先生ならきっと、これからのことについていい案をくれるはずだと思う!」

その言葉は、すぐさま美希の心に届いた。
「…うん!」

…嬉しかった。
「まこっさん!その心意気、しかと受け取ったの!…お姫様は、ミキに任せて!」
「ボ…ボクも、やれるだけやってみる!」


そして真もまた嬉しかった。
「ああ…! 頼み申したぞ、美希殿!ビビ殿!」



それを最後に二人は目を合わせることなく。
互いに背を向け、走り出した。



「行こう!」
「美希ちゃん…私…」
「黙ってる暇はないの!」
「私、みんなをこんなに…」

「そうだよ!みんな、美希のために戦ってくれてる!
 ブルメシアを滅ぼされたあずさも、小さいのに頑張ってくれてるビビも、
 さっきまで敵だったのにこうやって体を張ってくれてる千早さんも!
 …みんな、ドリルのために必死になってるの!」

「…美希ちゃんも…?」
「…」
どん、と自分の胸を叩く。


「…うん!」
手を握る。





「あずささーーーん!!」
「!」
「千早ーーーーーー!!」
「…!」
階段を登る真。階段の上段では、バンダースナッチの大群と戦うあずさと千早が。

「アレクサンドリア軍プルート隊隊長・菊地真!
 誉れ高き御両名に助太刀したく、只今はせ参じました!」

背中を合わせた二人は微笑む。
「真、挨拶はあと…行くわよ!」

979im@sfantasy 9 第二章 第三十四話 3/3:2009/12/18(金) 02:13:01 ID:6u32GRZg0
「…新型の黒魔道士!」
壁側面の扉からは杖を携えた新型黒魔道士が大挙して現れる。

「『サンダラ』!」
全体化した強力な魔法で一網打尽。
階段を崩し、道を塞ぐ。



「この先だね…」

ドリルが眠っていたのとは逆方向の扉を潜ると階段。
それを降りると、霧が立ち込める層に出た。
「これが旧時代の交通手段!?」
「うん!これでトレノにまで…あっ!」


進むと突如として、前方の床がせり上がり壁になる。
「!」
振り向くと後ろも。
「!」
檻の完成。



「「わたのの(ワー)さんは可愛い!」」
「わたののさんは罠がうまい!」
「わたワーさんは出来る子!」

ぴょんぴょんと跳ねながら現れたのは宮廷魔術士ののとワー。
「あなた達は…!」


「同じ罠に引っかかるなんてお姫様も案外ドジデスねー」
「陛下も結構ドジなところありますけどネー」


「言っておきますけど、この壁は魔法も吸収する超硬質素材デス」
「軍隊が押し寄せてもただじゃ壊れませんヨー」

「「Do-Dai」」
スッ、と腰に手を当ててやや得意げな二人。


…もう、なす術もないのか。
そんなとき。
「すってーん!」
「わぁぁ!」


パシンという音でくるりと回転、転ぶののに
何かの輝きに目が眩み、転ぶワー。

背後から現れたのは…


「全くアンタったらバカなんだから!」
「やっと追いついたよー!」

長い耳と、オデコの持ち主。伊織&うさちゃん。
「! 間に合ったんだ!」
「アンタの仲間と、お姫様も協力してくれたそうじゃない。
 ひとまずお姫様、お礼言っておくわ
 あと頭の硬いあの男隊長にも言っとくべきかしら?」


「デコちゃーーーん!」
「何ぼさっとしてんのよ!早く行きなさい!
 追っ手が来たらこの罠で食い止めとくから」
「うん!さ、ドリル、捕まってー!」
「あ。うん…!」
ドリルは背中にしがみつき、美希は猛ダッシュで階段を駆け下りる。
ガルガントまではもう少し。


「…何よ美希ったらデレーっとしちゃって ま、いいけどね…」

980im@s fantasy9 第二章 第三十五話 1/4:2009/12/20(日) 03:22:35 ID:Hc7ZncXA0
「……あの3人は捕まった?全く、余計なことをしてくれちゃって…」
春香は扇子を仰ぐ。


「……けどあの子がペンダントを持ってまた逃げたとなると大変ね…
 何とかして取り返さなければ」

「どうするんデスか?」
「一石二鳥のいい手があるの…さあ。次に向かいましょうか」

本を置き、女王の間をあとにする。



本には何かのリスト。赤い丸で、ある二人が囲われた…謎のリスト。
「もっと早く目をつけとけばよかった…」








「うんしょ、よいしょ…てい!」
岩壁を破壊…光が差し込む。



「…ここ、どこ?」
美希達は、今の今まで土の中をさまよっていたのだ。


彼女らが移動手段として用いた巨虫ガルガントが
天敵たる、ミミズのような魔物のラルヴァに追われ…
暴走しトレノを通り過ぎてしまったのだ。

ラルヴァとの戦いは2回。
ドリル達がアレクサンドリア城へ向かうときは大人しい形態
『ラルヴァ・ラーヴァ』だった。
だが、そこでドリル達に倒されたことにより
ラルヴァは変異…『ラルヴァ・イマーゴ』となり一行に襲い掛かってきたのだ。



ガルガントに放り出された一行は土の中をさまよった末、
ドリルがどこからか取り出したスコップにより漸く、地上へとたどり着いたのだ。


「…」
野草の生い茂る、そこは崖…。
そこは大きな滝が虹をかける、リンドブルム付近の渓谷。


「…文献で見たことがあるよ 『ピナックルロックス』…だと、思う…」
「ピナックル…どこかで聞いたことがあるかも」

記憶の糸を手繰り寄せてみる。



「…もしかして」


「ブモオオオオオオオオオオオオ!」
鳴き声。
「狩猟祭の時あずさと一緒に戦った『ザグナル』の生息地!?」


世界で有数の、凶暴なモンスターが棲む場所としても有名。
もっとも、人々の中での世界は、霧の大陸のみなのだが。


「…大変なところに来ちゃったね」
「でも、千早を倒した今のミキ達なら大丈夫だよ」



などと言っていると。
「美希姉ちゃん、ドリル姉ちゃん!見て、あれ…!」

981im@s fantasy9 第二章 第三十五話 2/4:2009/12/20(日) 03:23:24 ID:Hc7ZncXA0
目の前に…崖の先の、空中に突然何者かが現れた。



エプロン姿にフライパンを持った、
髪を後ろで纏めた茶髪の女性。


「……何なの、このオバサン…」
ドリルを庇うように前に立つ。これまでに何度か強者とは戦っている。
例え地に脚をつけていたとしても、只者でないことは一目瞭然。
纏う空気が違う。
「いやどう見ても私16歳だから。」



「ねぇゆっきー。
 あなた、自分に力がないと悲観してない?
 強くなりたいと、力が欲しいと…」

ドリルへの言葉だった。
「…はい
 ひとつ、お尋ね致します」
「…」



「…あなたは、人間ではありませんね
 世に名高き召喚獣…『雷帝マイ』では…?」

そう言うと…
強烈な光と共に、マイは姿を変えた。
ひらひらとした衣装を身に纏った、雷帝の姿に。
「いかにも」

「…力が欲しいなら、私のレッスンを勝ち抜いてみせることね」
「如何なる内容ですか」


その目に迷いはない。

「今から、ピナックルロックスの各地に私の分身を置いておくわ
 5人それぞれに会うと物語を聞くことが出来ている。
 ただし1つはニセモノ
 正しい4つを選び、繋げて私に聞かせなさい」

そう言うと、雷帝マイは姿を消した。
「いい? 1つは偽りだからね」






ピナックルロックスを駆ける。
ザグナルなどのモンスターと戦いながら、あちこちを探し回る。


…つもりだったが。
「センパーーーーーイ!」
「ゆきほセンパーーーーイ!」
「こっちでーーーーーす!」
「はやくーーーーー!!」

マイの分身は声が大きい。
自分から存在を主張してきた。
というより…ドリルがよく笛で呼びつけているあのモーグリだった。


ドリルは気絶寸前。
だが召喚魔法を手に入れるため…
必死で、分身したモーグリのアイ達の話を聞く。
「それじゃー話しますね!」

982im@s fantasy9 第二章 第三十五話 3/4:2009/12/20(日) 03:24:01 ID:Hc7ZncXA0
大声で話されたそれを、ドリルは残された体力でまとめあげた。
「さぁ、来たわね …話してごらんなさい」


「まず…『発端』」
「うん」
「『協力』」
「うん」
「…『沈黙』」
「ええ…最後は?」

ここまでの流れは一つである。

帝国と戦う反乱軍の男、フリオニールらが
ヨーゼフという、娘を持つ男と共に雪原の洞窟へ向かい
目的の物、女神のベルを入手するが
裏切り者ボーゲンの罠でヨーゼフが帰らぬ人になるが
フリオニールはそれを娘に告げることなく町を去っていったというもの。

残されたのは二つ。
何も言わず去ったのは後ろめたい気持ちからである『人間』
何も言わず去ったのは帝国と戦う姿勢をして娘に報いる『英雄』


「…『英雄』です」
彼女は選んだ。
「へぇ…?」



「私ならばそうします
 …私がもし大きな責を負うことになった時
 私は…行動で、責任を果たしたい それが…王女の務めです」

雷帝は見下ろしてその話を聞いていた。



「…うん。いいでしょ、『正解』。
 …それより、私は聞きたいことがあるの。
 召喚魔法の危険性を知った上で…使いたいかどうかを」
「…文献でそのことは」

「本じゃないのよ
 もう『現代で』『実際に』『大惨事を引き起こした』のよ。
 …『あなたの召喚獣によって』ね…」


美希はそのことを告げていなかった。
「…!?」


「ブルメシアの国民が逃げ込んだ、幻の砂の都クレイラ。
 あれね…滅んだのよ オーディンのグングニルでね。」
「そんな…」

「行ってみりゃ解るわよ あそこには何にもありゃしない
 沢山の命が失われたわ…あなたがアレクサンドリアに戻ったせいでね」
「ふざけないで!ドリルが悪いわけじゃない!
 ドリルは春香を止めるために!」

「そんな言葉でクレイラの人たちが浮かばれると思ってるワケ?
 甘すぎんのよ。
 行かなかったら犠牲は抑えられたのは事実なんだから。
 何ならナイフでも持ってって、会うなり春香を刺した方がよかったんじゃない?」
「………」


「…さ、その時が来たわよ 『行動で報いること』
 召喚魔法を手にしてしまったわよ?……あとはアンタで考えること。」


稲光と共に雷帝は宝石になり消えていき…
「…はい」
ピナックルロックスの出口が開かれた。
「…」


美希たちも後を追おうとするが…
「………ねえ美希姉ちゃん」
「ん?」
ビビが声をかけてきた。

「あれって本当に正解だったのかなぁ」
「『人間』と『英雄』?ビビならもう少し迷ってるの?」
「うん」


「…ミキはどっちでもないと思うな」
「え?」

「人間だとか英雄だとか、そんなの後の時代の人たちが言ってるだけでしょ?
 そんなことなんて、その当人にしかわからないことだと思うよ」
「…うん」

983im@s fantasy9 第二章 第三十五話 4/4:2009/12/20(日) 03:24:32 ID:Hc7ZncXA0
「アンタ意外に冴えてるのね」
空から声。

「…やっぱり」
「大事なのは物語を集め、作ろうと努力したその姿よ
 その結果、あの子は召喚魔法を使いこなせるようになったんだから。
 あの子を支えることね …人一人の心で強大すぎる力を使う…召喚士を」


「…ミキは一人の女の子を守るだけだよ」




そしてピナックルロックスを出…リンドブルムへ。
「…?」


赤い飛空艇がちょうど、リンドブルムに入港しようとしていた。

…赤?


「……あれは!!」
「…レッド…ローズ………!!」



アレクサンドリア…春香だった。


走り出す。
暗雲が立ち込める中…
次々に火の手があがっていくリンドブルム。

あちらから爆発、こちらから爆発。


黒魔道士が内部で暴れているのだろう。
「…クレイラの時のパターンだよ…!?
 この後にすることは…!!」


レッドローズが城との距離を開けると…
辺り一面が揺らぎはじめる。

光の渦に包まれて、それは現れた。

伝説のモンスター…バリアの塔で戦士達を飲み込もうとした巨大な口。


大国リンドブルムの上から下までを覆う…『アトモス』



バランスの悪く、口だけが異様に肥大化したモンスターの顔。
ガバリと口を開けると…中は異空間。



「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」


リンドブルムを吸い込みはじめる。

人々の叫び声さえ、それの前にはかき消される。


重力物体199.

城壁を次々に剥ぎ取り、中の兵士もろとも中の空間へ連れ去る。
遠く遠く、時空の果てに。



「…待って、今召喚する!!」
「この距離じゃ私も何ともしようがないわ…今回はあきらめることね」


一つの都市が、まるごと召喚獣により崩壊させられてゆく様。
「…そんな…!!」

最早どうすることもできない。


戦力の大半を失った、哀れな都市を残し……
アトモスは、光の渦となって消えていった。


「…そん…な」

984乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/21(月) 20:43:22 ID:MzGbRe9w0
グラディウスの企業紹介

ガイカニクス・ファイアー・アームズ
グラディウスにおける軍事産業の老舗でおそらく最古参。
最大手でありグラディウス政府とは強いつながりを持っている。
ビックバイパーの主砲であるエネルギーカノン『ウィザーク』の開発も担当。

ウォーバーズ・ハイパーソン
グラディウスでは複葉機時代から飛行機、戦闘機を作っていた老舗。
現在は宇宙船を開発、生産している。

トムソン・アタック・マスターズ
ウォーバーズ・ハイパーソンの砲弾部門が独立した部品メーカー。
現在もインテリジェント砲弾の開発、生産を行っている。

ブッタラフ・アーカイブス
グラディウスにおける老舗の宇宙船のエンジン開発メーカー。
ビックバイパーが登場するまでグラディウス空軍は同社の戦闘機を使っていた。

ドグ・アンド・ライズセン・ロボッツ
最先端のロボットロニクス会社。
工業用のロボットを中心に開発、生産している。

デメトリクソン・カノーネ
グラディウスで武器の開発、生産を主に行っている会社。
艦船用の大出力レーザーカノンは同社の専売特許でもある。

クーディック・ランサー・アンド・シールズ
ラティスとのポスウェル防衛戦争後に設立された新しい軍需企業。
同社ではインテリジェント砲弾、亜光速ミサイルの開発
宇宙戦闘機の部品を開発、生産および現在グラディウス空軍の
主力戦闘機となっているビックバイパーの生産を行っている。
ちなみに開発者全員が戦争未経験者。

ドミニク・レア・ウォートーイズ
宇宙戦闘機のレーザー測距儀のシェア100%を誇る電子機器メーカー。
画期的な演算処理能力を持った射撃管制装置を作れる技術を持つ。

シムズ・ストライク・デリバリー
クーディック・ランサー・アンド・シールズの下請けで
ビックバイパーをライセンス生産をしていたミサイル兵装メーカー。
ビックバイパーの後継機となるメタリオンを制作することになる。

985im@s fantasy9 第二章 第三十六話 1/3:2009/12/24(木) 04:04:21 ID:KmlzUA/s0
「姉様…どうしてこんな……」


訪れたリンドブルム都市部は壊滅状態だった。
あちらこちらから火の手と煙。
通りには機能を停止した黒魔道士達が民衆に殴られている。
兵士が剣を持ちリンドブルムの民を威圧している。

「……これが召喚獣の威力か
 我々は、手にしてはいけない力を手にしてしまったのか…?」

かつて千早に指揮されていた女兵達も、それに気づかざるを得ないようだった。


リンドブルム城にまずは行く必要がある。
高木王が現在どうなっているのか、確かめなければ。


「ビビ、もしかしたら今の状況で城に行くと怪しまれるかもしれないよ
 ここに、残ってて欲しいの」
ビビの低い肩をぽんと叩く。

「ええ!?でも、ボク…」
「ビビっちゃ駄目だよ、ビビ。ここで待っていれば大丈夫だから!」
「ビビ君、少しの間だから…我慢しててね?」


そして二人はリンドブルム巨大城へ。




「……おお、美希君に萩原君か『ブリ』」

真っ黒なブリ虫…高木王はテラスから外を眺めていた。


「…見た『ブリ』かね、リンドブルムの惨状を」
「はい。…召喚獣は、私の体から取り出されたものです
 …申し訳、ありません」


「…いや。それは前々から解っていた『ブリ』よ…君に美希君を浚わせたのは、
 君を戦争利用しようとする春香君から君を逃がすためでもあったしな『ブリ』
 君が気にすることではない。」

城の隅々までを、アレクサンドリア兵が闊歩している。


「………君達に話したいことは、他でもない
 この戦いのこれからについてだ『ブリ』」

美希は真剣な目つきになる。
「…これから。」
「うむ」


「黒魔法を自在に操る…アレクサンドリアの主力兵器『黒魔道士』
 彼らが一体どこからやってきたのか、君らは知っている『ブリ』かね」

「ダリ?」
「いやいや、そういうことではない『ブリ』。誰が黒魔道士を発明したかだよ」
三角帽子、ローブ、厚手の手袋。
心を持たないかのような彼らはどこからやってきたのか。



「実は極秘の調査で明らかになった事実『ブリ』だが、
 アレクサンドリア女王である春香君の元に『ブリ』、ある時期から一人の
 武器商人を名乗る女性が現れた『ブリ』らしくてね」
「…ある時期…」


「今から2年前のことなのだが」
「…………2年…前…」

「…ドリル?」
「2年前…確か……(…千早ちゃんの弟君が…)」



「そう。その女性は春香君の前に連れて来た『ブリ』のだよ、
 物言わぬ、生まれたばかりの魔法人形を。それが…」
「…黒魔道士……」


「現在より小さな形をしていたとされている『ブリ』がね。
 その技術を伝えられた頃から春香君は変わり始めたとも言われている『ブリ』
 そしてその黒魔道士を伝えた女性は…」




「四条貴音という」

986im@s fantasy9 第二章 第三十六話 2/3:2009/12/24(木) 04:04:57 ID:KmlzUA/s0
その名をすぐに刻んだ。…いや、否が応にも刻まれた。
「…どんな人なの」


「長身で、透き通る雪のような白い肌を持つ。すみれ色の眼をして…
 腰まで届く白銀の髪をなびかせた女性だという『ブリ』」
「それってまさか…」
「まさか…!」

美希はブルメシアで会っていた。
ドリルも…アレクサンドリアで会っていた。


顔を見合わせた…その時だった。


「こら美希ーーーーーーーー!!」
怒号。


振り向くとそこには、ビビを抱きかかえた律子の姿。

「この子置いてっちゃ駄目でしょ!?
 リンドブルム兵にいじめられてたわよ、黒魔道士と勘違いされて」
「あ!律子ボス…ごめんなの」


「美希姉ちゃん…酷いよ…」
「ごめんね、ビビ」
「大丈夫だった…?」


「ったくもう。…何か、大事な話?」


律子も加わる。

「…続ける『ブリ』よ
 君達も知っているようだが、どうやら貴音というその女性は
 トレノを別荘としているようだが、本拠地は不明らしい『ブリ』のだ」
「…トレノに張ればいいってこと?」


「そろそろ我々が勘付くとは読んでいるだろうね
 おめおめと姿を現すはずもないだろう『ブリ』。
 そして、彼女はどうやら…『北の空』へ飛んでいく『ブリ』らしいのだよ。」
「銀の龍に乗って?」


「…見たのかね!?」
「うん。あの方角は間違いないの」


「…まぁその通り『ブリ』だ。銀の龍に跨り北の空へと飛んでいっている
 だが、北の方角には町などないはずなのだよ。…海しか、ないはず『ブリ』」


「…ということは!」

「うむ。『外側の大陸』だろう『ブリ』
 彼女は春香君に現在も協力を続け、多大な物資の提供を行っているようだ『ブリ』
 召喚獣の扱い方もその一つといわれているね…つまり」


「「…つまり、その四条さん(貴音)を倒せば!」」

外側の大陸、銀の龍…貴音。
目的が、はっきりした。

「…うむ。そういうことだ『ブリ』。
 …あいにく、外側の大陸への入り口は見つかっていない…。
 だが、世界を旅する者に出会うことが出来れば、きっと見つかるはず『ブリ』だよ」

「世界を…?」

「食を求めて世界を旅する者が、我々の知る中に一人いたはず『ブリ』だ。」



二人は宙を見上げ、記憶を手繰り寄せる。
「狩猟祭の…!」


「『やよい君』と言ったね。
 世界を旅する彼女ならきっと、外側の大陸への行き方を知っているはず『ブリ』。
 探してみてくれたまえ」

新たなる大陸。
一連の流れが一つの区切りを見せ、
世界をまたにかけた戦いが、ここに始まろうとしていた。

987im@s fantasy9 第二章 第三十六話 3/3:2009/12/24(木) 04:07:55 ID:KmlzUA/s0
「…行って、くれるね」
「はいなの」

「積もる話もあるだろう。律子君との話が終わったら、私の元に来てくれ『ブリ』
 地龍の門から、君達を外へ導こう」

そう言うと高木王は昇降機から出て行った。




「…いや、私から特に話したいことっていうのもないんだけど…」
律子は頭を掻く。

「あんた達はあるの?」
「最近どんな感じ?」


ひとさし指をこめかみに当てる。
「そーねぇ。
 …他劇団が大変な騒ぎになってる」
「他?」


「劇場街にアトリエがあるの知ってる?」
「確か…『FOUNTAIN OF ELLIE』?」
「そ、そこの『絵理』。トレノとリンドブルム、二つの街で活躍する876劇団の花形…
 あんたと伊織に次ぐ、リンドブルムのアイドルね。」
「確かトレノでステラツィオってコインを集めてる『石川』って人がやってるんだよね」


「ええ。そこの絵理が…トレノで誘拐された。」
「!?」

ブルメシアへ行ったが最後消息不明扱いであろう美希、
それ以前に魔の森で石になって最期を迎えたとされる伊織、
それだけでなく、絵理さえも消えてしまった。

「アレクサンドリア兵によるものじゃないか、って噂は立ってるけど
 よく解らないわ。アンタたちも気をつけることね… さ、昇降機に乗りましょうか」

長い長い、リンドブルム地下への昇降機に乗る。



「私はちょっと一休み…」
壁によりかかり、律子は眠る。

「…」
ちらりと律子の方を見て、寝ているのを確認し…
ドリルは美希に言葉を。


「…ね…ね、美希ちゃん」
「ん?」

「外側の大陸って…あの、外側の大陸だよね」
「うん。霧の大陸の北にある、世界の4大陸の一つだよ
 凄く少ないけど、その大陸のモンスターも霧の大陸にやってきているみたいなの」

「…凄く強いモンスターがいるって聞いたよ…?」
「噂だけどね。あっちの大陸には人が住んでいない分、モンスターが進化し放題だって聞いたよ」
「そう、なんだ…」

覗き込む。
「怖いの?」

目を閉じる。
「ううん。そうじゃないよ?けど…
 けど、もし美希ちゃんがそこで危険な目にあったら私…」
手を後ろに組む。
「…その…」

美希はその様子を見て口を歪ませた。
「ああー…ドリル、もしかしてミキのこと心配してくれてるの?」

その瞬間、顔を真っ赤にする。
「ふぇ!?」
「ありがと、ドリル♪」

口を尖らせる。
「ち、違うよ!? その、だって美希ちゃんがいなかったらその…
 お、お姫様にはガードが必要じゃない!?だ、だからその…」
性格上、言うはずもない言葉を発してしまう始末。


「いいのいいの♪しっかり守っちゃうからね」
抱き寄せる。
「………うん…お願い…」
真がいたら絶対止めていたであろう。


ビビが呆然と見ていることも気づかず。
「(そっちの近況はよく解りましたよ、っと)」
律子が心の内でにやにやしていることも気づかず。

二人は到着まで、見つめ合うのだった。

988im@s fantasy9 第二章 第三十七話 1/4:2009/12/26(土) 03:30:59 ID:SteitgaI0
するべきことは決まった。

貴音を倒すこと。
貴音を倒すために、貴音に会うこと。
貴音に会うために、外側の大陸へ向かうこと。
外側の大陸へ向かうために…やよいに会うこと。



しかしやよいは一体どこにいるのか?
見当もつかないまま…
「さぁ、私が食い止めている間にトロッコに乗り、地龍の門まで行くのだ『ブリ』!」
高木王にリンドブルムを任せ、地龍の門へ向かうのだった。

「さて。皆が心配するだろうし、私もここで戻らせてもらおうかしらね」
「律子ボス、ミキ達のことは心配じゃないの?」

「心配するような心許ないあんたならそもそも魔の森で
 行かせたりしなかったわよ さ。行った行った」



「…ね、律子ボス」
「何?」

「やよいに会える場所、何か見当はつくの?」
「それくらい自分で考えなさいよ…
 って言いたいけど。…まぁ…私だったら多分『ク族の沼』を当たるかな」
「そっか…やよいってク族の一員みたいだったもんね」


ク族はモンスターを食して青魔法を習得する特殊な種族。
同族に会えばきっと行方がわかるはず。



リンドブルムからブルメシアのギザマルークの洞窟までの道のりまでの途中に存在する
ク族の沼。


虫の鳴き声と、げろげろというカエルの鳴き声がこだまする場所だ。

湿気で軋む木の橋を渡ると、高く高く生い茂る草むら。
「な、何かでそうで怖いよ…」
ドリルの頭をぽんと撫で、美希が先頭となって草の中を分け入る。


前へと進んでいくと…開けた場所に出る。
浅い水溜りだ。

カエル達の住処。

そこに飛び込み、カエルをダイビングキャッチする少女の姿があった。
「うっうーーー!!」

ほかでもない。
狩猟祭にて圧倒的強さを見せ付けた…やよいだった。



「ゲォーロ、ゲォーロ!」
巨大なカエル、『ギガントード』が飛び上がり、やよいを踏み潰しにかかる。
だがやよいは片手のフォークでそれを串刺しにし…

ぱくりと口に運びたいらげた。
「!!!」
軟体モンスター『アイロネート』も当然のように平らげる。



「えへへ、ごちそうさまでした!」
いくつかのカエルを残して満腹に。
ドリルはとてとてと歩くやよいに声をかけてみる。


「や…やよいちゃん?」

くるりと振り向く。
「? はい!」



「私達のこと、覚えてないかな…
 リンドブルムの狩猟祭で会ったことあるんだけど…」

やよいはぐいっと上半身を下げ、伸ばした腕を反らすガルウィング式挨拶で応える。
「はい!もちろん覚えてますよ!
 えっと!美希さんに、雪歩さんに、ビビさんですよね!」
意外や意外。


「覚えてたの…」
「あんなに大勢の人の前にいくことってあまりなかったんです…
 その、何か恥ずかしいことでもしちゃってたかなーって…」


「ううん。そんなことはなくて…
 あのね、やよいちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

989im@s fantasy9 第二章 第三十七話 2/4:2009/12/26(土) 03:32:15 ID:SteitgaI0
「外側の大陸の入り口、ですか?」
「…知らない?」

やよいは辺りをきょろきょろと見回すと…
「…私、知ってますよ! ちょっとこっちについて来てくださいね!」

ドリルの手を取り、やよいはさくさくと歩いていってしまう。
美希とビビもそれについていき…草むらをずっとずっと先へ。


「こんなところに、道があったなんて…」
ずんずんと、力強く進んでいくと……




開けた場所に出た。
「!」


黒い石造りの、地下へ続く階段。
「これ…本物じゃないよね……」
囲いの上には、ガーゴイルを模した石像が2体。

人の住まぬ未知なる世界…異大陸への入口と言われても…
信じられる気はする。

ひとまず入ってみないことには。
「…」


しかし足元を見る。
泥が凹み……真新しい足跡を形作っている。
それは、泥の跡となって石の床の上へ…階段へ。



「………ドリル。ビビ。戦いの準備しとくようにね」
二人は頷く。

「多分この先に行けば外側の大陸なんだよね? 案内ありがとね」
しかしやよいはついて行く。

「いえ!私もご一緒させてもらいます!
 皆さんが心配なんです。……多分、誰かいると思いますし…」


「…ごめんね、やよい…」
フォークを構えたやよいも加わり、階段を下りていく。


「ここ、一体何があるの?モンスターとか?」
「モンスターはもちろんですけど… ちょっと複雑かもです…」


カンテラで照らしながら階段を下りていくと…そこは暗い暗い、洞窟…。

地の底まで続く広大な闇に、石の橋がかけられどこまでも続いていた。
「手、離さないようにしてくださいね!」
やよいを先頭に、ドリル、美希、ビビの順。


「!」
そして早くもカンテラが役目を終える。
火が消えた? いや、違う…
洞窟内のたいまつが一斉に火をともし始めたのだ。


美希の手に握られた手に、力がこもる。ドリルの側ではない…

「美希姉ちゃん… さっきから、辺りが全然何があるかボクにも解らないんだよ」
「…どういうこと?」


「…強い魔力がこの辺りにあって……全然、ボクの感覚が利かなくなっちゃったんだ…」
「…強……!?」
言い終われなかった。


バレては仕方ない、とばかりに。

遥か上から、何かが落下してきた。
「!!」
ガゴッ。


ガタガタガタガタガタガタガタ。
細い細い…機械のような、骨のような馬車だ。
或いは、馬車化した骨なのか。
巨大なモンスターの骨と思しき物が、脚の代わりに車輪をつけ…
その手についた指でがっしりと橋を掴み、前へと走りだしてくる。

それに乗るは、人二人分はあろうかというサイズの鎧…
手には顔を模した盾と…巨大な槍。


「ひゃああああああああああああああ!?」
謎のモンスター兵器『アーモデュラハン』。

990im@s fantasy9 第二章 第三十七話 3/4:2009/12/26(土) 03:33:36 ID:SteitgaI0
「美希さん……あの…いきなり見たことのないモンスターが出ちゃいました…」
「逃げるしかないの!!」
気を失ったドリルをおぶり、美希は逃げる。
「あ、あわわわ…」
全速力でビビも逃げる。



「……う、あ… はっ!?」

ドリルが目を覚ます。
「ご、ごめん…!」
美希の腕から飛び降り、4人で走り出す。



激しく…脆く。橋が…崩れていく。
後戻りが利かなくなってしまった。
「確かこの前方は…」


駆け下りていくと…
「と、とまってください!!」


止まらざるを得ない。
…そこには、ぐるんぐるんと左右に揺れる錆び付いた鎌があったのだから。

だが、立ち止まったせいで…
「!!」

「ビビ!!」
アーモデュラハンに追いつかれた。
ビビを串刺しにしようと槍を振るうが…


美希は握ったビビの腕を振り上げ、後方に放り投げる。
ビビは着地。

戦闘が始まる。


アーモデュラハンはまず手始めに『サンダラ』を唱えた。

美希たちめがけ貫くような雷が降り注ぎ、辺りを雷撃の海に変える。
「う…!!」
高い魔力の生み出す威力は大きい。



「このっ…!」
美希は怯まず、縦に回転しアーモデュラハンの馬車を斬りあげる『ヴォルテックス』で攻撃。

「この魔力に対抗しないと…!」
ビビは魔力を『溜める』。


「こんな所で負けてられません!!」
やよいはフォークでアーモデュラハンの馬車を一突き。


しかしアーモデュラハンも黙ってはいない。
「…え!?」

盾を掲げたと思ったら、何と4人の足元に闇が出現…


「クカカカカカカカカ」
鎌を振り下ろした。

美希に…すり抜ける。
ビビに…すり抜ける。
やよいに…すり抜ける。

ドリルは…
「………!!」
すり抜ける。しかし…
何かを取られた。ぐわりと喉元から心臓部までをすり抜けながら刈り取られ…
突如として倒れる。


「……!!!」
全体に対し、ある種の生物的条件により死を与える『デス』の特殊版のようだ。
専門的には『レベル5デス』と区別される。

991im@s fantasy9 第二章 第三十七話 4/4:2009/12/26(土) 03:35:43 ID:SteitgaI0
「フェニックスの尾!!」
美希の処置により、何とかドリルは一命を取り留める。
「ご、ごめんね…」


「せっかく王女を殺せたと思ったのに!!」

突然、声が空間にこだまする。
…アーモデュラハンからだ。

「!?」
まるでモンスターのものではない。


「消えてしまいなさい!」
再び闇の穴が足元に開く。

「今度は『本物』よ!!」
美希に向かい鎌。
「あ…」
魂の動きを止められる。…美希がバタリと倒れる。


「美希ちゃんっ!!!」
嘆いている暇はない。処置を施すなら倒してからが正しい。

「『ファイラ』!」
溜めた魔力で強化された炎の魔法をアーモデュラハンに。
「熱…い…!!」
鋼鉄の鎧であるアーモデュラハンには堪えるらしい。


「『べろちょろ』!!」
やよいが首に下げているカエルを洞窟の闇に高く高く放り上げると……
「けろろん♪」

べろちょろと呼ばれたカエルは巨大化してアーモデュラハンを押しつぶした。
「げふっ…!!」

やはり本体を狙うのが一番のよう。
「よくも美希ちゃんを…!!」
そしてドリルの追撃。

「…はぁぁぁ!!!」
紫の光に包まれ……


突然ドリルが金髪になり…レオタードのような、肢体にぴったりと張り付いた、胸元のセクシーな衣装に変身。
…トランスだった。

「これが私の…」

据え付けられた鎌を蹴り、飛び上がり…洞窟を照らす太陽となる。
「初めての召喚魔法!」


腕を上へ向かいかざすと、アーモデュラハンのそれとは比べものにならない魔力が集中……
手に雷帝マイのそれのような、杖が出現する。

召喚するのではなく、召喚主と一体化して放つ。
これにより、威力を自在にコントロールすることが可能となったのだ。


「『裁きの雷』!!」
杖を勢いよく放り投げる。

一直線に青白い稲光で線を描き杖はアーモデュラハンに吸い寄せられ…


「はぁああああああああああ……!!!!」
巨大な雷エネルギーを辺りに撒き散らし崩壊。
橋が…完全に崩れる。


「掴まって…!」
「は、はい!!」
「うわぁぁ…」
宙に浮いたドリルはそのまま、美希を抱えたやよいと、ビビを掴み暗闇の宙を疾走…

橋の先まで移動したのだった。
「…」

トランス解除。
そしてフェニックスの尾を美希に与える。
「ん…うーん………」

惜しくもトランス姿を見ることは叶わず。美希は息を吹き返した。

「美希ちゃん!」
「ドリル…… あの、鎧のモンスターは…?」

ひとまずは、安全と言える場所まで到達したらしい。

強力なモンスターはこの先いない…しかし、洞窟としてはここからが本番…
彼女達は、海底の地中深くまで来たに過ぎないのだ。

992乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/28(月) 22:52:25 ID:jhFjCXjk0
よく戦争モノって矢印でどう侵攻したかを示すよね
エリ「まあそれ以外に示せる便利なものがないからな」
あれ大好きなんだよねwなんていうか、大戦略って感じでw
アルド「俺はそう思わないぜ」
はぁ…信長の野望の内政システムと大戦略の兵器数、BGMと
提督の決断のようないつどこに攻め込むかが自分で決められるゲームがあればなあ…
あかぎ「好きねぇ…」
大好きw

993乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/29(火) 18:08:02 ID:ixIV4vzM0
うちの酒豪、酒飲みキャラ(擬人化除く)

アルド・トラバニ(普通)
エリ・カサモト(酒豪)
ロジーナ(酒豪)
シャーリィ(酒豪)
イツ花(普通〜酒豪?)

994乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/29(火) 19:43:24 ID:ixIV4vzM0
グラディウス軍人第五版陸宙軍佐官追加版
バイパー「年末にこれかい」

陸軍
ブラン・ホルテン元帥 23歳
ハロルド・ワイルディング大将 49歳
グリフィン・レインウォーター大将 50歳
フレデリック・レーガン大将 47歳
トーマス・バーシティ中将 51歳
アルベルト・アダンティ中将 50歳
アルバート・シュライヒャー中将 33歳
アーチボルド・バルフ中将 39歳
ジェフ・バッセル少将 38歳
モーゼス・バートン特別少将 22歳
マーカス・キャビンディッシュ少将 26歳
チャールズ・トーチ少将 30歳
ウォーラス・モス少将 48歳
バジリウス・デーニッツ大佐 40歳
アーデルベルト・ヘルモルト大佐 33歳
エーミル・クンツ大佐 37歳
ゴットリープ・トレッチェル中佐 33歳
エリク・ケーニンガー中佐 29歳
ニクラス・アイスラー中佐 31歳
ウルリッヒ・ブフナー少佐 29歳
ダーフィト・ロスラー少佐 25歳
レオポルト・カント少佐 22歳
クルト・ゲーラー少佐 27歳
エメリナ・レインウォーター大尉 21歳
エレノエーレ・ベレスフォード少佐 24歳
アンネローズ・ビッグコア=ニーベルング上等兵 17歳
ベルナルド・パオローニ一等兵 18歳
ルゼロ・アゴロッティ一等兵 18歳
テオドロ・トッティ一等兵 21歳
サンティノ・カッポネッラ曹長 32歳
シモーネ・ガンベリニ伍長 28歳
アルフォンス・ベリーニ一等兵 20歳
ルチアーノ・チッコリーニ上等兵 27歳
ステファノ・ボナッツェーリ伍長 28歳
テオドリコ・カッポネッラ上等兵 30歳
ミケーレ・カッポネッラ軍曹 27歳
ヴァレンティーナ・カッポネッラ二等兵 22歳

宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将 59歳
クラナス・ランフォード大将 23歳
ナルヴィック・ルフラン大将 25歳
クロン・ベイル中将 61歳
オーラフ・ヴァーノン中将 41歳
ライオネル・アッカースン中将 52歳
ジャック・トンプソン中将 55歳
ヤコブ・フルシチョフ少将 67歳
ルーベン・イングラム少将 38歳
エメライン・ベンジャミン少将 47歳
マンフレッド・ボールドウィン少将 46歳
カルロ・ダリエンツォ大佐 32歳
ヴャチェフェラフ・ラブダノフ大佐 39歳
キリル・ザハロフ大佐 38歳
スタニスラフ・マシコフ大佐 37歳
アレッシオ・スコット中佐 32歳
ヴィンチェンツォ・スキアーヴィ中佐 33歳
シグーネ・ハットネン中佐 21歳
シルパ・クーセラ中佐 22歳
シヴィ・ニスカヴァラ中佐 25歳
エレーヌ・ロード少佐 22歳
ドナティアン・ルクレール少佐 28歳
ニコラス・ヴェルジュ少佐 27歳
シャルル・ドゥムジョ少佐 24歳
アリセ・ベンジャミン大尉 21歳
ヴィットーリオ・レッティエーリ中佐 32歳
アドリアノ・カンパーノ少佐 30歳
ニノ・インフォミュラ少佐 35歳
トンマーゾ・ガットー大尉 27歳
アルステーデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
クーニグンデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
マルグリート・ビッグコア=ニーベルング特務少尉 17歳

995乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/12/29(火) 19:46:04 ID:ixIV4vzM0
グラディウス軍人大六版空軍佐官追加版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将 23歳
ヴィンチェンツォ・ルガース大将 55歳
ディアス・ユンカース中将 21歳
アドリアナ・ベチン中将 51歳
ハスキー・ハルバート中将 50歳
ゴーチェ・ベルトラン中将 49歳
ジェルヴェ・ブラシェール中将 57歳
エヴラール・ダルコ少将 51歳
ジョニー・ガーランド少将 45歳
エドワード・オレステス少将 59歳
フリッツ・パーペン少将 56歳
クラウス・ケッセル少将 41歳
エマニュエル・コロー少将 38歳
ソール・オルティス大佐 40歳
ローデリヒ・ゲッヴェルス大佐 37歳
リューディ・ヴィルケンシュトゥーク中佐 33歳
ディーター・アルブレヒト中佐 33歳
アマデウス・フォルト中佐 32歳
ライムント・タンホイザー中佐 31歳
ジョゼッフォ・マネンテ少佐 30歳
エリコ・ロベッキ少佐 30歳
ワディム・シテイン少佐 29歳
アンドレイ・スネシコフ少佐 29歳
ボリス・ドルゴフ少佐 28歳
ノーナ・ラフマニナ大尉 25歳
リューシャ・ブチェンコワ大尉 24歳
セバスティアン・ハルバーゲン中尉 27歳
スタファン・ヘンネル中尉 28歳
ラミ・ニュメリン少尉 21歳

996Pakuri de Emocion ◆Free525l1Y:2009/12/31(木) 12:57:07 ID:csu0soVw0
〜この作品を見る前に〜
・パクリネタ満載です
・理解できないネタもあるかも知れません
・転載はなるべくやめてください。恥ずかしいので

以上の事を理解した上での閲覧をおねがいしまー↑




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