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虐待・虐殺小説スレッドPART.4

1管理団:2007/04/12(木) 23:32:19 ID:???

      AA ではない活字の並ぶ 虐待・虐殺系 の 新 し い ス タ イ ル 。
━━━━─────────────────────────────────━━━━
 皮を剥がされたしぃが、首筋に大きなフックを刺されて吊され、みぞおちから股間までを
切り裂かれている。裂かれた腹からは、勝手にニュルニュルと腸が飛び出て、こぼれた。
 吊された中には、ベビしぃも混じっている。

「ウゥゥゥ イタ イヨ、、、 モウ シナ セテ」  
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 「イチャ ヨ ナコ チテ マチャ リ チタ」
         |ミ|           |ミ|     ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
      -、.   |ミ|、          |ミ|                       |ミ| :
        /;l   |ミ|;l           |ミ|    ,,、  ,.,,.,.,,.,,.,..,,     ,.,,. ,,.,,,.,,      |ミ|i | ̄ ̄| ̄
     /:;,.;ヽ,.,|ミ| |              |ミ|   /;,:l  ミ,,,,,(★)ミ     ミ(★),,,,,ミ     |ミ| :|    |
    ,:;´ ;::; ;: ; ;|ミ|.;`,、   、ー-- 、__、、ミ|_,,//,、|  <ヽ`∀´>   <`∀´* >、    i|ミ| :|    |
   l.,;:.ー、 ;;,:..;|ミ|;:..:.,;l   ヽ;.:;r :;;.,;: ;:、_:;:;ヽ;l ⊂ミ  北 )  m 北  ミmヽ  |ミ|i |    |
 ̄ ̄|;:.;゚-,.ilヽ|/:|ミ|,; :; ;|  ̄ ̄`l>:;,. ;:( ゚,0.`o ;l: ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ i |ミ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ヽっ ;i|;/lヽ|ミ|;;:; ;/    |;,.: ;(´ ̄`)" ゚。;:l   | 労働党 万歳  | .       |ミ|, ー--、
     >;:;: :;,. ;(O);:く       ヽ;;.:` - ´:;: ;: ;;/     |    ____    | .       |ミ| ;: ;: ;:、´
    /:: :; :,. ;:;l|iノ,.:;:.;;ヽ    /;":;:);)(;:(;(;:;`;:,   |    || ★ ||    |       i |ミ|:;: .:.,ー--、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー、,:.;;i   | __ ̄ ̄__ |       ,(O) ;;: ;:;: ;;:,´
                    ::::::::::::::::::::::::::::::::::|/::::::::::::::::::::::::: \|::::::   /:;ヽi|l;;;: ;;: (゚ノ
「フォルフォルフォル、これが全自動畜産場ニカ?」     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 突如、重く冷たい鉄の扉が開き、人が二人、中へ入ってきた。毛皮のコートに、これまた
毛皮の大きな帽子。その帽子に付けられた、大きな赤い星は、彼等が共産国家の兵士で
ある事を、何よりも雄弁に語っていた。
「はい、そのとおりでスミダ」
 先に入ってきた男――物腰の低さや、言葉遣いからして、後から入ってきた男の案内役
であろう――は、上機嫌な上官に、この工場の概要を説明し始める。
「ちびギコを使った種付けから、しぃのニクコプンでの飼育、屠殺、解体、全て奴らの手で行われまスミダ」
 鳴りやまない笑い声、絶えない悲鳴と怨嗟の声、、、
                                    ここは彼女らの故郷より西に在る、

          地       上       の       楽       園       。

497cmeptb:2008/03/03(月) 18:07:52 ID:???



「……窒息死、特に絞殺の方に多いんだけど、首が絞まると生物ってのは無意識に
 首を掻きむしるんだよ。こう思いっきり爪を立てて、どっかの時報みたいにがりがりとね。
 こいつは喉の異物を取り除こうっていう本能的なものなんだけど、何分さっきも味わったろう
 首吊りの激痛の中じゃあまともな判断なんざ出来るわけがない。少しでも苦しみを取り除こうと
 際限なく掻きむしるのさ。引っ掻いて傷を作って痛みが増えることはあっても、消えるはずが
 ないのにね。だけど、たとえ今はそうだと理解できても、一度首吊りの体勢にはいると首を
 引っ掻き回すのをやめられないのさ。がりがりがりがり。いつもこの白い縄を使うんだけどさ 
 次第に赤黒く染まっていくんだよ。がりがりってねぇ〜!」
「…………!!」
「それにははは、いつだったかなぁ〜、苦しみのあまり錯乱を通り越して狂乱の域にまで達した
 奴がいてね。そいつがまた凄い勢いで喉を掻きむしりだしたんだ。はははは。首の血管閉塞に
 伴って頭への血流は停止してるから貧血状態にあるはずなのに、出るわ出るわどろどろと……。
 面白いからそのまま見てたんだけど、いや〜、最後には血が出尽くたんだろうねぇ〜。
 雪みたいに真っ白になってたんだ。文字通りの『白銀のような美白』 だったねありゃ!
 あ、ちょうど今その写真持ってたんだ。ご覧よ、ほら……」
ほくそ笑みながらモララーが懐から出した写真を見ると、リーダーしぃはそれを見るや否や
「!! うっ……!!」
「あれ? ちょっとちょっと。今はものまね大会の時間じゃないですよぉ〜?」
今でさえ青ざめていた顔が、より一層のものに。

そこには、しぃとおぼしき生物が写っていた。
ただしその顔、目玉は今にも飛び出さんばかりに飛び出、下は顎の先端まで届くぐらいに
だらしなく伸びきり、そして何より、これはモララーの仕業か、明らかに毛皮が剃ってあると
いうにも関わらず、通常は桃色のはずの顔色はモララーの言葉通り真っ白であった。
変わりに、首から下は赤黒一色で染まりきっていたが……。

「ひ……ぃ……!!」
リーダーしぃの顔が引きつると、モララーは
「おやおや、どうしたのかな? まさかこの程度でびびっちゃったとか、そんなわけないよね?
 それなりに軍事訓練とかも積んでるんだろ? そんな君がどこぞのアフォしぃみたいに
 ガクブルしてちゃあ部下の手前、立つ瀬がないぞぉ……?」
「わ、わわ、私は………!」
「さて、第二回目を始めましょうか。……なぁに、そんなに心配することはないよ。あくまでこれは
 可能性の一つに過ぎないんだから。君がこうなると決まったわけじゃないんだからさ……?」
「や、やめろ、やめてくれ…! やめてくれ……!!」
「やめてほしけりゃ7回耐えなよ。まぁこの状況が続けば無理だろうけどね。……それと皆さん。
 何か応援の声でもかけてあげたらどう? 何せ皆の運命は今このリーダーさんの首吊りに
 かかってんだから。特にさっき「2」を指名したあなたは、ね……?」
下卑た笑みを浮かべるモララーが指さすと、先のリーダーの苦しみぶりが脳内で蘇ったか
その「2」を指名したしぃはがくがく震えだし……

「だ、駄目!! 絶対撤回なんかしないで!! お願い!! 首なんか吊りたくない!!」
リーダーが根をあげたら次は自分、半狂乱になって「2」のしぃは叫んだ。だが
「…………………!!」
残りの三匹は、そんな2番とリーダーを違った目つきで見つめていた。

498cmeptb:2008/03/03(月) 18:08:02 ID:???



「……あ、あんた達、何よその目つきは……? まさか……?」
「お、お、お前……達! まさか……とは思うが、まさか……!?」
何事か言いかけた二人だったが、モララーはそれを制しながら口を開いた。

「はい、はい、はい……と。どしたのかなその目は? まさか誉れ高き真多利教の
 戦闘部隊である皆様方が、まさか……?
 ……とはいってもね、僕は別に否定しないよ。いや、寧ろ君らがそう言う心境に至るのは
 当然のことだと思ってる。だってそうだろう? 目の前であの勇猛なリーダーちゃんが
 あんなに恐ろしい目にあってさ、更にはあんな風に恐怖心を煽ってやったんだ。……それが
 いずれ自分の身に降りかかるかも知れないとなったら、誰だって今君たち三人が心の中で
 思い浮かべてる事を言いたくなるのは当たり前なんで……、恥ずべきことじゃない」

「………………!!」
「モララー! 貴様っ!!」
いきり立つリーダーしぃだったが、モララーは全くどこ吹く風と言った様子で続ける。
「自分の気持ちに嘘つくってのは、何とも言えない気持ち悪さがあるはずだ。それに……
 本能と理性はどっちが強い? ……ま、分かるにはそんなにはかからないだろうね。
 それじゃ、次行こうか。いつやめるかはせいぜい体と相談して決めてくれ。じゃあ……」
そして右手を挙げようとしたモララーだったが、そこにリーダーしぃが
「ま、待て!! 重要なことを聞いてないぞ!! ……私が前言撤回をして交代になった場合
 私はどうなるのだ!? 生かされるのか、それとも……」
「……ああ、それか。今言うと興ざめになるから言わなかったんだけどさ、言っちゃうか……
 大丈夫だよ、殺しはしない。特に君なら尚更にね……」
「………………!?」
「ま! 自分の命が惜しかったらさっさと前言撤回するこった。あんまり頑張りすぎると
 助かるものも助からなくなるからね。……クソ麗しき仲間への信頼と愛情も良いけれど
 ご自愛もどうかお忘れにならないように、ね……」
モララーはやれやれとため息をつくと、今度こそ右手を挙げた。
「ま、ま……!!」

本日二回目。リーダーしぃの別世界への旅が始まった。


「がぎゃああああ!! げべっ、ぐびぃぃぃぃ!!」
悲鳴にならない悲鳴を上げながら、リーダーしぃは首を吊る前はあれほどするまいと
決めていたのに、いつしか首に手を伸ばしていた。

がり ぎり ぎり がり

以前からある激痛に混じって、肉を爪でほじくっているようないやな感触が伝わってくる。
何とか欠片ほど残った自由意志で止めようと試みるが、今や彼女の手は彼女の命令を
拒むがごとく、勝手に喉を引っ掻き続けている。


ああああああ 出来るわけがない 出来るわけがない!! こんなのをあと5回もだと!?
悪い冗談だ! 悪夢だ! 今だって何度死神の姿が見えていることか!!
うわぁぁぁあああ!! 恐い!! 恐い恐い恐い!! あいつが余計なことを吹き込んで
くれたせいで、余計なものを見せてくれたおかげで、恐くて仕方がない!!
白銀のような美白!? 赤黒く染まった白縄!? それだけじゃない、何もかもが恐い!!
激痛と呼吸困難と恐怖と! これだけで気が狂う!! でもやめられない! やめたが
最後仲間が同じ目に遭わされるし、自分だってどうなるか分かったものじゃない!!
それに何より、お腹には子供だっているのに!! 死にたくなんかない!!
でももういやだ! こんな苦しいのはもう嫌だ!! 助けてぇぇぇ!!


「……ほら見たことか。まだ2回目だってのに死にそうな顔しちゃってねぇ……?
 これじゃ7回なんて夢のまた夢。下手すりゃここで決まっちゃうかもねぇ……?
 さて、10秒が来た。お楽しみの時間だぁ……!!」
モララーが左手を挙げ、リーダーしぃの体が地面に降ろされた。

499cmeptb:2008/03/03(月) 18:11:52 ID:???



「がはっ、げはっ、ぐほっ……!!」
もはや力一杯咳き込む気力も体力も失せたのか、体をびくびくと震わせながら
リーダーしぃはそれでも必死に呼吸しようと喘いでいた。そこに
「さぁてリーダーさん。今のご心境は? もうやめる!? それとも継続!?
 三匹にあやふやな希望を与えるか、一匹にくっきりとした希望を与えるか!? 
 三匹に限定付きの絶望を与えるか、一匹に間違い無しの絶望を与えるか!?
 僕はどちらでもかまわんぞ!? さぁどっち!?」
モララーがリーダーしぃを飲みこまんばかりの勢いではやし立てると、リーダーしぃは
恐怖で真っ白になった顔でモララーを見つめ
「やめてくれ……! お願いだ、殺さないでくれ……! お願いだ……!」
それは、どれだけこの首吊り遊戯が恐ろしいものかを如実に物語っていた。
恐怖という本能の前には、プライドという理性はいとも簡単に崩れ去る。
剛健なるリーダーしぃはいつしか追われる兎のように怯え、しかしモララーは
相変わらず恐怖を疫病のごとくまき散らし続ける。

「……よかったねぇ〜? 「2」番ちゃん! リーダーに感謝しなよ?」
モララーが話しかけてくるも、しかし先程の10秒余りで気力を使い果たしたか
「2」のしぃは今やリーダーに負けないくらい荒い呼吸をしていた。
そして当たり前というべきか? その2番しぃの横では

「あ………、う……!」
「うっふっふ……。言葉には出さねど目で語ってるね。大方こんなところかな?
『ああ、このくそったれのリーダーはまた駄目だった。さっさと降参してくれないと
 私たちが危ないのに、何考えてるんだ』……とか」
「モラ、ラー……!! やべ……ろ! これ以上……、くだら……ないこと……を
 吹いたら、容赦しない……ぞ!!」
しかしそんな必死のリーダーしぃとは裏腹に、部下しぃ達の目は泳ぎに泳いでいた。

「あっはー、まーだ間で宙ぶらりんか。でも大分揺れ動いてるみたいじゃあないか……。
 だけどね、言っておこうか。この状況下で主導権を握っているのは誰だ? ……それは
 もう、そこでぜーぜー言ってるリーダーちゃんじゃないんだ。僕なんだよ。そしてその僕は
 こういう見苦しい嘘をつく輩が大嫌いでね……。さて、ここまで言えばもういいだろ?
 主導権握ってる奴に反した行動ばかり取っても、損するだけでろくな事はないと思うけど?」
「……………!!」
「……で、2番ちゃん。どうよ? 今生きてるって実感があるだろう? ……ありゃ
 それどころじゃない、か? まぁいいさ。リーダーちゃん。あんたの方は……、あれ?」
モララーがおやおやといった顔をしたその先には、突如顔が真っ白にしてがたがた
震え始めた、いわゆるショック状態のリーダーしぃが。

「なんだなんだ。たった2回でこの様か? あんたはリーダーなんだろ……?
 ひひひっ。脆い脆い脆い。程度の差はあってもしぃ族の覚悟なんざ皆この程度。
 見た目はまさしく勇猛果敢であったとしても、ちょっと恐怖を与えてやればすぐに
 メッキがぼろぼろ剥がれ落ちる。なぁ? ひぃっひひひひぃぃ!! ……そして
 部下の君たち! ねー、見えるだろ? 勇ましい君らのリーダーでさえも、たった
 二回でこの様にしちゃうんだぜ? しかもこいつは将来的には他人事じゃなくなるんだ。
 ……恐ろしいとは思わないのかな? まだ嘘ついて虚勢を張るつもりなのかな?
 けけけっ。まーよく考えておいてくれ。そして……」
満足そうな笑みを浮かべたモララーは、次いでリーダーしぃの元へと歩を進める。
「……あーあー、アマチュアならまだしも、戦人のキミでもこの様か。恐いねー。 
 何にしても今のキミを吊せばショック死する可能性もあるということだ。従って…」
モララーが指を鳴らすと、部下が一人リーダーしぃの元へ駆け寄り注射を打つ。
すると先程まで真っ白だったリーダーしぃの顔色が、みるみるうちに回復していった。
「はーい。新型の抗ショック薬のお味は如何かなー!? お前の心を食いつぶそうと
           . . . .
 していた恐怖が一時的にとはいえ消え去ってくれるんだ。ありがたいだろう?
 ……おやぁ? ちょいとばかり効果がありすぎたか? けぇっけけけけけ?」
呆れた顔のモララーが言う通り、リーダーしぃは今は顔を真っ赤にして、先とは
別の意味で様子がおかしかった。

500cmeptb:2008/03/03(月) 18:12:10 ID:???

10

「ひひぃ! おまけとしてこれまた新型興奮剤混ぜ込んでおいたけど、そいつらが
 どうやら効きすぎたようだね! 血流も促進させまくるから、顔がいつしか茹で蛸か!
 ひゃははは! おいおい、僕の声聞こえてるか? おーい?」
「………ひっ! ふぅぅっ! ……はぁぁ……!!」
……モララーの問いかけもどこへやら。完全にモララーの言う「茹で蛸」状態の
リーダーしぃは、高熱でもあるかのようにふらふらとしていた。
「……あーあ。血流が促進されすぎて、完全に頭に血が上っちゃってらぁ……。
 そんな状態じゃあまともに頭を使うことも叶うまい。というわけで………」
「ふ、ふふぅ、ふぅぅ……、がっ!!?」
モララーが右手をぱっと挙げ、部下が急いでハンドルを巻き上げる。
    . . .
「頭を冷やす手助けをしてやらないといけないなぁ…? きりきりィきりィィ…!」 

再びつり上げられたリーダーしぃの顔色は、早くも青ざめてきていた。


「ひははは!! 美しい! 美しいぃぃ!! 世の中にこんな美しいものが他に!?

 心臓や肝臓に一発、生命の証が流れ落ちて青ざめながら殺せる刺殺もいい。
 以前は美の女神かと見まがうほどの美しきを、一瞬にしてぐしゃぐしゃの肉塊に
 変えてしまう、出来上がった造形を完膚無きまでに粉砕出来る撲殺もいい。
 自分が文字通りに料理される、白い柔肌を一瞬に黒炭に変えられる焼殺もいい。
 人差し指をひくという最小限の労力で、生体を人形に変えられる銃殺もいい。
 輝かしい命という華を、文字通りに花火のように散らせられる爆殺もいい……、が!

 窒息しかけてもがいている蛆虫ほどそそらせ、たぎらせ、湧き踊らせるものはない!!
 血反吐を、涎を、涙を、鼻水を! 汗を、小便を、糞を! 際限なく臆面もなくだらだら
 垂れ流し! それでいて必死にか細い生命の綱、文字通りの命綱にすがりつくんだ!
  . ... . . . . ...
 他のどの死に方よりも強く! ほしい玩具を手放さぬだだっ子のようにしっかりと!
 ……そしてそんな必死こいてる奴らを、縄から手を放させるでもなく登らせるでもなく
 ぎりぎりの狭間で宙ぶらりんにしてやるのが僕の務めさ。 ぎりぎりぃ、とね……
 さぁ、もがけもがけ。お前の死の寸前で足掻くその顔が、僕に生を実感させるんだぁ…。
 夢に出てきたら間違いなく夢精するくらい、僕をたぎらせるんだぁ……!!
 さぁて、10秒だ! 今度の彼女の返答や如何に?」
アヒャり気味とも言えるモララーが左手を降ろすと、リーダーしぃの体は乱暴に落とされた。

「さーて、大分縄も赤黒くなってきたねぇ。ついでに君の喉の線も大分増えてきた……。
 それとさっきからこいつらに君のポラロイド写真撮らせてたんだけど、いい出来だよ?
 見てみるかな? ほぉら………」
最初こそリーダーしぃは目を背けていたものの、モララー達によって押さえつけられ
目を開かされ、見たくもない自分の表情を見る羽目になった。

「う……わぁ……!!」
「ご覧よ。君も平常時なら凛々しく愛らしいお顔をしているんだがねぇ…? それが一旦
 たかだか10秒程度息が出来ない状況におかれた程度でこの様だ。醜いねぇ…?」
これが自分かと見まがうほどに醜い写真を見せられ、リーダーしぃが心から絶望すると
「な、なに……、!! けふっ……、ごぼっ!?」
突然、目の色を変えて咳き込み始めた。……勿論文字通りに真っ赤にして、である。
しかもそれだけではなく、顔をまた真っ赤にして、奇妙な音を立てて息を吸っている。
明らかに、吊されていないにも関わらず呼吸困難の状態に陥っていた。

501cmeptb:2008/03/03(月) 18:12:56 ID:???

11

「あーらら、結構お早いことで……。もう少しはもつかと思ってたんだがねー」
「な、なん……だ? これは……!? お前……、何か……!?」
「違う違う! 僕はそういうことは何もしちゃいないさ。強いていえば君の体が勝手に
 そうなった、というべきかな?」
「………!? どういう……ことだ…!?」
モララーの言葉にリーダーしぃは、喉を掌で押さえて咳き込み始める。
「いやねぇ、首吊りするとさ、気道がモロに圧迫受けるじゃない。そうすると気管支とか
 声帯に傷が出来るわけよ。それだけでも結構やばいんだけどさ、首吊りするやつって
 さっきの君みたいに、声にはならないけど縊り殺される鶏みたいなとんでもない悲鳴を
 上げるわけなんだよね。それはねー、唯でさえ壊れかけで煙吹いてる機械を無理矢理
 動かすようなもんでさ、声帯がオーバーヒート起こすわけよ。つまり炎症が起こる……。
 炎症が起これば組織は腫れ上がる。それが気道で起こった場合はどうなるか、説明の
 必要はあるかな? 過去の実験データによれば、君らしぃ族の場合なら大体2〜3回で
 気道が炎症を起こし始めて、4〜5割が塞がれる計算になる。それ以上進めると……
 さぁて、どうなるのでしょうか? ああ、ちなみに死ぬまではいかないよ。いかないけど…
 ……ま、どうなるのかな? さしずめ末期のゾナハ病みたいになるだろうけどね……?
  ..........
 何もしなくても白目をむいて、喉に手を当て必死にぜひぜひ呼吸するんだよなぁ〜!
 さぁ〜! それじゃさっさといこうか! きりきりきりきり、ぎぇあはははははぁぁ!!
 ……と、何だその目つきは? もしや前言撤回か? なら言うなら今のうちだぞ?」
尚も自分を見つめ続けるリーダーしぃに、モララーはニパァと阿鼻谷スマイルを浮かべる。

「個人的にはさっさと前言撤回しちまう方がいいと思うがね。……仲間を裏切るのが嫌か?
 別にいいじゃないか? だってあいつらを見てみなよ。現にさっきもそうだったように
 口には出しちゃいないけど、もう心の中じゃ自分だけが生き延びたいっていう欲望に目を
 ぎらつかせて、他の奴のことなんざなーんにも考えちゃいないぞ? それがわからんほど
 キミは部下を見る目がないわけじゃあるまい? そんな奴らのために苦痛を受ける理由が
 どこにある……? 仲間のために命を張るのは理解できるが、ゴミのために命を張る
 なんてのは……ね? 苦しいんだろ? いいじゃないか。誰も責めはしない! 自分の命が
 かかってるんだぞ? ここで君が前言撤回したところで、誰にも君を非難することなんて
 出来やしない! 誰一人として、ね……!!」

「……馬鹿を言え! お前には分からないだろうが、………!!」
「ハイハイ。奴らと一緒に暮らしてきた思い出が、あの美しき日々が忘れられないっての?
 …だけどね。多分そんなのをいまだに心に留めてるのは多分君だけだよ。…見なよ」
モララーが促したその先には、それが何であるか分かりきった “何か” を期待して
毒々しくぎらぎらと目を光らせている部下しぃたちがいた。
「…ありふれた台詞だけどね。こういう状況では過去をどう処理するかがポイントなのさ。
 その過去に囚われて朽ち果てるか、それとも……」
文字通りのモララーの悪魔の囁きに、リーダーしぃの心は滅茶苦茶にかき回されていた。

502cmeptb:2008/03/03(月) 18:13:38 ID:???

12

“……やめろ! やめろやめろ、そんなのは……!!
 確かに今のあいつらはややもすれば見苦しいさ! だけど私が同じ立場におかれたと
 したら、同じ事をしないなんて言えない! 同じように醜く足掻いていただろう……!
 あああ、どうしろというのだ!? このままあいつらのために7回を耐え抜くか?
 でもそれだとお腹のこの子は……、ショックで最悪の場合、流産なんてことも……!!”

頭を抱えて苦悩するリーダーしぃは、モララーの方をちらりと見た。
その視線に気づいたモララーも、相変わらず見た目は爽やか内側ドロドロのアヴィスマイルで

「く く く。なまじ良しぃの理性があるから苦悩する羽目になるんだ。こういうところはアフォしぃ
 みたいに、頭を使わなければいいんだよ……。
 ねぇ? 君にとって大切なものって何だい? いわゆる命がけで護りたいものって何だい?
 その迷った表情から鑑みるにおそらく複数あるんだろうけれど、それはあいつら? それとも
 別の何か? それが何かは知らないけど……、“虻蜂取らず”、“二兎を追うもの一兎も得ず”
 欲張りは身を滅ぼすってのが昔からの常。……分かり切ったことなのに、大概の輩は
 目が見えちゃいない。引き返せないところまで来て初めて気づき、そして破滅する……。
 ねぇ? 実に愚かだと思わないか? 端から見てればこれほど滑稽なものはないんだよ?」

「わ、私にとって、大切なもの……」
ようやく思考能力が回復してきたか、リーダーしぃは目つきが落ち着いてきた。

“……あいつが今気づいているかどうかは知らないが、確かに大切なものは複数ある……。
 それはあいつらと、この子との二つ。二つとも手放したくはないものだが……!”
リーダーしぃは息をごくりと呑むと、囚われの仲間の方を向く。……そしてそこの三匹が
そんな目をして自分を目を合わせてきたかは、言わずもがな……

“リーダー! 次! 次で撤回して! お願い、次よ!!”
“何言ってるの! 次だけは駄目! 次だけ耐えてくれたらそれでいいから!”
“というより、7回耐え抜け! リーダーなんだからそれくらいやって当然よ!!”

そこには心の中だけという縛りはあれど、良しぃの良識やどこへやら。完全に巷のアフォしぃと
何ら変わりのない、本性丸出しの “良しぃ” の仲間がいた。

“……認めたくはないが、私は今こいつらを醜いと思っている。生きる価値がないとも……!
 こんな欲望まみれの野獣共に比べれば、自分の子供はどれだけ大切か、とも……!!
 だが、それでも奴らを切ることなど出来ない。……このモララーの言うように、クズはクズ
 宝は宝と割り切ることが出来れば、どれだけ楽だろう……! でも……!!”

「くっく く く く。ここまで迷ってる様子を見ると、いい加減歯がゆくなってくるねぇ……!
 今のあいつらなんて、全角喋るだけのアフォしぃに過ぎないのに。僕なら自分の手で
 ぶち殺してるところだぞ……? …とは言っても、それがそんなに簡単に出来るしぃなんて
 まずいないか。……後押ししてやらないと決断は出来ないとは、面倒くさいことだ……。

 友人を切るならまだしも、ゴミを捨てるのに何故戸惑いが発生する? 使えないと
 いうならまだしも、あんな醜い本性を持った部下など癌にしかならんのに……」

にやにやとひとりごちるモララーの傍らでは、相変わらずの視線を交えての言い合い。

“お願いよリーダー! まさか部下を切って自分だけ助かろうなんて思ってないわよね?
 リーダー何ら自分の身を呈しても、部下の命を救ってくれるものでしょ?”
“リーダー! 頑張ってよ! アンタは似非のリーダーなんかじゃない、本物なんだから!”
“そうよ! あと4回! あとたった4回なのよ!!”
どこまで行けば終わりが来るのか。どんどん醜い欲望の本音は強くなっていく。

503cmeptb:2008/03/03(月) 18:13:54 ID:???

13

“こいつら……! これが本当に、あの鉄の結束を誇っていた真多利教の部隊の
 一員なのか!? つい先程まで、モララー達が来るまでのあの結束は所詮まやかし
 だったとでもいうのか……!?”
リーダーしぃが怒りで体を震わせると、そこでもやはりモララーが絶妙に絡んできた。
「……ねぇ、わかるだろう? あんなゲス共と違って、キミはいい子なんだ。いつまで意地
 張ってるんだい? 僕はキミを、キミだけを大切にしたいんだ。なるべくなら傷つけたくは
 ないんだよ……? だからね……」

「う、うるさい、うるさい! うるさい!!」
モララーの囁きが契機になったか、必死で振り払ったリーダーしぃは、とうとう
“言葉”を以て自分も心に秘めていた感情をぶちまけた。

「貴様らっ! 何を勝手なことをほざいているっ!! それではアフォしぃと何ら変わりが
 ないじゃないか! 今の自分の顔を鏡で見てみろっっ!!」
『本性を現して』 部下を一喝するリーダーしぃだったが、それに返ってくるのは……
「うるさいっ! そんな下らない誇りなんかよりッ、命の方が大切だっ!!」
「そうよ! それよりさっさと首吊りしなさいよ! そして7回耐えろ! 途中で
 撤回なんて許さないからね! 早くしろ!!」
「可愛い部下のために命を使えるなら本望でしょ!? さぁ、早く吊れっ!!」

「………!!」
予想していたとはいえ、思わず呆然となるリーダーしぃ。モララーは嬉しそうに手を叩く。
「ひゃっひゃっひゃ! 出ました! つーいに出ちゃいました! 本性暴露! 
 あー、最高! もうオシマイだ! 一回歯止めが利かなくなったら、もう止まるもんか!
“熱しやすく、冷めやすい”!! 所詮これが君らの現実さ!!」
「う……む……っ!!」
歯がみするリーダーしぃだったが、部下達の暴走はこれでは終わらない。
事もあろうに既に 『終わった』 1,2番の方を向くと、一斉にまたがなり始めたのだ。

504cmeptb:2008/03/03(月) 18:14:07 ID:???

14

「お前らもっ! すっかり自分たちは部外者みたいな面しやがって!! 覚えてろ!?
 もしあのクソが私を指名して吊られることになったら、真っ先にお前を指名してやるぞ!?」
「はははっ! そうだそうだ! 裏切り者! 裏切り者! 裏切り者がっ!!」
「覚悟しておけ!? たとえ私たちが死んだとしても、お前らを永遠に呪ってやるぞっ!!」
見るにも聞くにも堪えない怨嗟の声。当然二匹もただ黙って言われるままであるはずがなく

「だったら私らが指名されたら、今度はお前らの番!! 覚悟すんのはそっちの方だよ!!」
「そうよ!! 私が吊されることになったら、次にお前達を指名して……、そうだ! もっと
 より残酷な方法で吊すようにモララーに提案してやる!! ぎゃはは! いい気味だ!
 おい、モララー! この提案を受けるよな! 受けるよな!?」
「…………………………」
まさか被虐側からこんな提案が来るとは思っていなかったか、モララーすらもが
呆れ顔で両手を広げながらため息をつく。
「……僕も長いことしぃ族をぶち殺してきたけどさ、こんなのは前代未聞だよ……?
 いやー、ある意味では彼女らも欲しい逸材だ。ある意味ではね……」
「あ、ああ、あううぅ……!!」
目の前で部下が繰り広げる醜い争いに、リーダーしぃはがっくりうなだれた。
「…いい加減、分かったろ? 君らの言う “鉄の結束” なんてものはね、恐怖という
 圧倒的な濁流の前には為す術もないんだよ。君らの結束はどこまで行っても、所詮は
 理性に根付いたもの。対して恐怖は本能に根付いたもの。……理性の歴史がたかだか
 数万年なのに、本能の歴史は数十億年。この二つがかち合ったところで勝負は目に
 見えてるじゃないか。……恐怖、それも死の恐怖にぶつかって、どんな生物が理性を
 保てるっていうんだい? 僕だって無理だぞ?」
「……………!!」
「……うっふっふ。ちなみにね、次が “オールイン” だってことは覚えてるかな?
 他でもないやつら自身が決めた、皆殺しの数字のお出ましだ……」
相変わらずの冷えた微笑を浮かべるモララーだったが、しかし次の瞬間
「…安心しな。君の決断で連中が何をどう騒ぎ立てたところで、奴らにゃ太陽を
 二度と見せない。……たとえキミがオールインを選択しなかったとしても、ね……」
「…!?」
モララーは今までの底冷えとはまるで格が違う、挑発するような笑みも煽りも
一切含まれていない、本当に暗黒の凍るような表情を浮かべた。

505cmeptb:2008/03/03(月) 18:16:42 ID:???

15

「な、何? どういうことだ……!?」
「こればっかりはキミを騙してたみたいで悪いんだけど、最初からこのつもりだったのさ。
 僕はキミとは「生存の保証をする」と約束をしたけど、奴らとは何の約束もしてないだろ?
 ……奴らをここで縊り殺してやったところで、なーんの問題もないわけさ」
「ば、馬鹿な! 7回以上首吊りを耐え抜いたら全員解放すると……!」
「そんなの、どこに証拠がある? 奴らがピーチクパーチク騒いだところで所詮は水掛け論。
 まぁそれも、キミがどうしても奴らを助けたいというのであれば話は別さ。キミがそう願うなら
 従来通りのルールに戻してやってもいいんだけど……、さて、どうするね?
 キミは今でもこんな拷問を耐え抜いて、あいつらを救ってやりたいと思うのかな……? 
 …ま、あいつらを見限る覚悟が出来たらいつでも遠慮なくいえばいい。うぅっふっふ……。
 捨てるときは、切るときはひと思いにやるのがコツだからね……」

「……………………」
リーダーしぃは、静かに目をつぶった。目をつぶった自分の脳裏に浮かぶはかつての思い出…

“だめでちゅよぅ! こんなところでとまったら、おこられまちゅよぅ!”
“あい! ちぃのあげましゅ! これでげんきだしてくだちゃい!”

本当に小さな、文字通り物心つく頃から一緒にいた仲間達……。
数え切れないほどの月日を共に過ごし、研鑽しあっていた仲間達……。

“だ、大丈夫か!? すぐに救護所に連れて行ってやる!”
“何言ってるの! 私を助けてる暇なんてあったら、早く先に進んで!”
“し、しかし……”
“いいから! どっちが重要か考えなさいよ! こんなの、私はちっとも恐くないから!
 ここでたとえ……”

実際の任務でも、お互いに助け合いながら成功させてきた。……何度失敗を覚悟した
任務をそれのおかげで乗り越えてきただろうか……、だが……

「オラ! どうした! 早く吊れ! 早くしろ!!」
「あと4回! それが出来なきゃお前は単なる張り子の虎だ! さっさと吊れ!!」
「私たちはリーダーのこと信じてるのに、リーダーは裏切るつもりなの!?」

…これが大人になってから集められた部隊というなら、まだ分かる…。だが奴らは
ベビしぃの頃から集められて英才教育を施されてきた。それだけ分培われてきた
絆も、真多利教への忠誠心も強いはずなのに……、何だ、これは?
良しぃと銘打っても、幼き頃から教育をしたとしても、所詮しぃ族はしぃ族なのか…?
忌み嫌われ、軽蔑の対象となっているアフォしぃとやはり変わらぬということか…?
ということは、私のこの子供達も………、いや……!!

ど く ん

……愛するわが子を、こんな醜い姿にしてたまるものか……!! 
あれで何が良しぃだ! 何が真多利教本部直属の戦闘部隊だ! 
成る程、そうか……。そうなんだな……! しぃ族の中でも最高峰の組織と
されている、真多利教。その真多利教の最高の教育を幼少より受けてきた
こいつらでこうなのだから……。ならば!

「………。モララー……」
「ん……?」
目をつぶっていたリーダーしぃは、ゆっくりと目を開けモララーの方へ振り向く。
                                                .. .    
「……“オールイン”、だ。 今を以て私は真多利教本部直属部隊、リーダーしぃとして
 前言撤回……、死を選ぶ!」

次の瞬間にはモララーは歓喜の、部下しぃ達は絶望とでそれぞれ表情を激変させた。

506cmeptb:2008/03/03(月) 18:17:44 ID:???
16

「ほぅ。……ブラボゥといっておくかな……?」
「jioihaーwehnuhdsiuciuedcoipodcpw!!??」
この上なく嬉しそうに微笑むモララーと、もはや何を喋っているか分からない部下達と。

「よくぞ決断した……、ね。しかしどういった経緯だい? やっぱり……」
手を叩きながらリーダーに近づくモララー。リーダーは複雑な顔をしてため息をつく。
「皮肉なものだな。過去の奴らが美しすぎたが故に、今のあいつらの醜さが一層
 際立つとは……。所詮やはり過去は過去、現在もそうあるわけではないのだな……」
「“今もそうあれかし” 皆そう思うんだけど、そうはいかないのが現実というもの。
 過ぎ去った思い出は懐かしむだけに留めておくこと。それがコツさ……」
「……………………………」
「……さて、それじゃあ今後について、だ。キミには生存の保証はしたんだから……
 ああ、とは言っても実験動物としてとか、真多利教の情報を引きずり出すまでの
 生存とか、そういうんじゃないから。馬鹿なことしなけりゃ天寿は全うできると思うよ」
「フン。まぁ今はよろしくお願いしますとしか言えないがな……」
「うふふ。時に僕はこれからこいつらを吊すけど、キミどうする? 見ていく? それとも……」
「……いや。見たくはない。何だかんだと言っても奴らは私の部下だった。どれだけ本性が
 醜いとはいえ、奴らが苦しむ姿は見ていたくはないのでね……」
「分かった。それじゃあ先に行ってなよ。僕もそんなに時間はかからないと思うからね……」
部下の兵隊AAを促して、リーダーしぃを連行?しようとするモララー。しかしそこでリーダーが
「ちょっと待ってくれ。……モララー。急で悪いが条件を一つ付けさせてくれ」
「条件? 一体どういう?」
「ああ。実はだな………」

………………………………………………………………

「や、や、やめて! おながぁぁいい!!」
「さーて。お楽しみの時間でございまぁす。今回はオールインってことで、君らの生存確率は
 零でございます。それも一発で殺しはしません。さっきのリーダー見てたね? 君らには
 アレを死ぬまで繰り返します。即ち10秒首吊りと僕の言葉責め、とをね……。
 さぁ!! 楽しいゲェムの幕開けでぇす! せいぜいいい悲鳴を上げて楽しませてください!」
この時点でも悲鳴にならない悲鳴を上げるしぃ達。モララーは満足そうに右手を挙げた。

「うわぉ。さっきから中継で見てたが、実際醜いモンだなー」
「! その声は……」
モララーが振り返ったその先には、副所長・ギコの姿が。
「……おや、ギコじゃないか。来てたのか?」
「お前が面白そうなことやってるって聞いたもんで、ついさっきな。……ああ。あの
 リーダーちゃんだが、今俺んとこで検査してる。しかしお前から報告は受けてたが……」
「ああ。それが面白いんだ。連れて行く直前に条件としてね、こんな事言い出したわけよ。
“今私の妊娠している子供の教育について、私たち真多利のやり方ではああだったから
 お前達に一任したい。とはいえ完全にお前達だけに任せるわけではなく、私も母親として
 やらせてもらう”、とさ」
「ほー。そんなことを……」
「正直妊娠ってのは予想外だったが、だからこそ割合簡単に落ちたのかもな。
 お受験然り塾通い然り、女ってのは男じゃ分からないくらいに子供に愛情を注ぐからねー。
 奴の場合は特にあんなもん見ちまったせいか、教育にも熱が入るものさ。
 それよりギコ。妊娠してんだから投薬なんかは慎重に頼むよ。奴さんの子供も貴重な
 人材なんだからね……」
やや不安げな様子のモララーだったが、ギコは心配するなと胸を張る。
「そこんとこは心配すんな。ニダーと相談してなるたけ少なく済ませてみせるからよ。
 ……それにしてもモララー。工作員作るためだけにしちゃ随分とまどろっこしいこと
 してんだな。以前みたくかっさらって薬漬け、洗脳しちまえば早いんじゃね? 現に
 本部だってこの様なんだしよ……?」
     . . ...   
「ああ。本部までならそれでいいんだ。本部までならね……」
「? どういうこった?」
突然のモララーの意味ありげな発言。ギコも思わず首を傾げた。

507cmeptb:2008/03/03(月) 18:17:57 ID:???

17

「最近分かったことなんだけどね。実は………………」
「ほう……。なーる。そんなことが……」
モララーがひそひそ話しかけると、ギコは合点がいったような顔をした。
「この場合だとね。以前のような作り方じゃあ駄目なんだ。徹底的に、それこそ
 髪の毛ほども不自然さがあっちゃあいけないんだ。つまり無理矢理作り替える
 洗脳はどれだけ上手くやったとしても、その時点で完全にアウトなのさ」
「……だから寝返ってもらわないと駄目だ、ってか?」
「そ。だけどこれもただ恐怖とかを与えたり人質を取ったりで無理矢理寝返らせたんじゃ
 駄目。それじゃ結局洗脳と変わりないからね。……じゃあどうすればいいかってことで
 一番手っ取り早いのがこの方法さ。うっふっふっふ………!!」
悦に入ったか、モララーが酷く嬉しそうに、不気味な笑い声を出した。

「……確かにまー、そうだろーなー……」
「…心に何かしら支えのある奴は、それが存在している限りは籠絡は至難の業になるんだが
 だが裏を返せば、支えがなくなればこれほど脆いものもない。まぁ考えてみりゃ当然なんだけど
 教団内で地位が高い奴はおしなべて忠誠心も高いわけで、それだけ教団を信じてるのさ。
 ……強いんだけど、弱い。 そいつを僕はよーく知ってるからね……。より効果的にするために
 最初に恐怖で味付けして、最後に信じていたものを崩壊させるべく一押しする……。つまり
 自分同様、身も心も真多利教に捧げていたと信じていた部下の正体見たりアフォしぃ。
 さて、この場合彼女に選ぶことが出来る選択肢は?」
「ま、直接的ではないにしても信じていたものに裏切られたとあっちゃあ、もう一つしかないな。
 英語でDespair、スペイン語でDesesperacion、韓国語でジョルマン、そして大陸語でjue-wang…」
「そう、それ。そして目論見は成功しました。……というわけで、これから最後の……」
モララーがくるりと振り返ると、目の前には吊され、今は降ろされているしぃ達の姿が。
初っぱなからクライマックスといった風に、皆が皆今にも倒れんばかりにぜいぜい息をしていた。
「おいおい。まだ一回目だろ? さっきのリーダーより皆酷いことになってるじゃないか……。
 さて、言いかけた台詞……。その目論見に役立ってくれた貢献者、彼女の部下だった
 しぃちゃん達にも“それ”をあげないといけないからねー。ただし性質は全く別物になるけどなっ!!
 さー、二回目行くぞ! 何回目で君らは死ぬのかなー!?」

……………………………………………………

508cmeptb:2008/03/03(月) 18:18:22 ID:???

18

後日

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                            報告書

主題:新技術「トーチャー・バイ・ハンギング(苦痛の絞首)」に関して。

開発者:モララー(産軍複合研究所 『God And Livestock』 所長)
     ギコ(同研究所副所長 兼薬学・医学部部長)

内容に関しましては、添付してある動画及び解説書をご覧になればお分かりかと
思いますが、開発者直々に試行してみたところ、被験者の精神状態もしくは執行者の
力量次第という条件付きであるものの、かねてよりの『懐柔作戦』に絶大な効果を
発揮することが判明しました。 つきましては後日会議を開催したいと思いますので
『God And Livestock』本部までお越し頂くようお願い申し上げます。

※日程に関しては後日またメールをお送りいたします。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「そう……。そうなんだよ。自画自賛なんかじゃない、絶大なんだ……」
メールの送信ボタンをクリックして、モララーはぽつりと呟いた。
「……カリオストロ気取りか? 箱庭の中で大人しくしていればよかったものを
 少々おイタが過ぎたようだな。……とはいえ、この程度で収まってしまうのが
 あいつなんだよな。この程度の規模じゃあ、所詮子供のびっくり箱だ。大人を
 驚かせるにはまだまだ足りないね……」
そしてパソコンを閉じると、夜景の映る窓へとくるりと向きを変えて……一言。


「家畜は家畜らしく、いずれ食われる日まで神の掌の中で遊んでいればいいのさ……」

                      終焉

509:2008/04/04(金) 23:43:10 ID:???
『裏話 〜後遺症〜』
※この物語は、『天と地の差の裏話』の続編にあたります




今から少し前に、街を脅かす事件があった。
あるちびギコが猟奇的連続殺人を侵すという、未曾有の事件。

全てを知っている者は、一人だけしかいない。
関わった者は彼以外、皆死んでいったからだ。

AAの命が軽いこの街では、事件の意外性はあっても、関心はあまり向かなかった。
何も知らない者達は、何も知ろうとしないまま。
知ろうとした者達は、何もつかめないまま。

そして、その事件が遺した爪痕は忘れ去られていった。
全てを知る、一人のAAを除いて―――。






ポストにあった新聞を手に取り、部屋に戻る。
崩れ落ちるようにしてソファに座ると、それをテーブルに拡げた。

「・・・」

じっくりと、なめ回すように新聞を見る。
お目当てのニュースがなければ、項をめくって更に探す。

羅列された文字達が伝えるのは、政治と芸能の話ばかり。
どれもこれも、ちょっとしたお偉方の失言を叩いたもの。
やはり、これらを見ていつも思う事は、『他に報道すべきものが沢山あるだろう』。
新聞を読んでいる男、ウララーはそう心の中で歎いた。



あの凄まじい出来事から、一週間。
その間、片腕が黒い少年や化け物を扱ったニュースは、殆どなかった。
半ば国から忘れ去られた街とはいえ、大量の無差別殺人が起きたというのに。

公園にも、ギコと化け物という証拠を放置していた。
それなのに、メディアはおろかネットですら話題にならなかったのだ。
もし業者が処理したとしても、ギコはともかく化け物に対して何かを感じる筈だ。
あの刀のような爪を持っていた、VというAAに。

死体がそのまま放置されている、という理由は自分が否定した。
後日、しっかりと己の眼で確認したからだ。
勿論、Vはおろかギコの脚もしっかりと片付けられていた。
血も、あの大雨で全て洗い流されている。



証拠というものが殆どなくなってしまい、今に至る。
もう終わったことなのだから、気にしない方がいいのかもしれない。
しかしそれでも、自分以外の誰かが見つけた爪痕を探すことはやめない。

でないと、自分が自分でなくなってしまいそうな気がして。

「・・・無い、か」

自分以外誰もいない空間で、一人呟く。
余す所なく新聞を漁ったが、それらしいものは見当たらなかった。
それなりの時間が経っているので、当たり前ではあるが。

溜め息をつき、腹に巻かれた包帯に触れる。
あの出来事が夢ではないと教えてくれる、唯一の証拠。
残ったものは、その傷ともう一つ―――。

510:2008/04/04(金) 23:43:58 ID:???


愛用の銃を、弾倉と一緒に引き出しから取り出す。
弾倉に銃弾が入っているのを確認したら、それをグリップの中に入れる。

「・・・」

ふと、手の中でそれを翻してみる。
ひたすら黒く、それでいて鈍く光を反射する銃。

思えば、自分の身体に似た色という理由で、銃に惹かれたことがある。
扱ってみると、想像以上に容易にAAの命を奪う代物。
それを、その力を自分以外の者の為に使うという理由で、擬似警官になった。

殺伐としているが、この街にはヤクザはいない。
だから、銃という武器は虐殺に溺れた者に非常に有効だった。
それにでぃやびぃのような危険なAAにも、距離を離して対応できる。

鈍器や刃物しかない地で、銃は圧倒的な力を持つ。
その為、使い方を誤れば恐ろしい兵器と化す。

「・・・」

ウララーは少しの間銃を眺めた後、ホルスターにおさめる。
更に引き出しから小物とウエストポーチを取り出し、ゆっくりと静かに外に出た。

―――その心に、飢えと渇きを以って。






出掛けた先は、街の顔ともいえるあの公園。
今ではすっかり、賑わいを取り戻している。
被虐者も一般AAも、それぞれの楽しみの為に遊んでいた。

「・・・」

ウララーは、そんなAA達を軽く観察しながら公園を散策する。
ベンチに座り、肩を寄せ合うカップルもいれば、ボールを蹴りあう子供達もいる。
この遊具が多い区域だけは、地上の楽園と感じてしまうほど、平和だった。

ある程度そこを観察した後、踵を返す。
次は、雑木林の多い区域を目指し、足を動かした。




先程の区域と違い、この辺りは街らしさが垣間見える。
雑木林が間近にあることから、被虐者が身を潜める為によく利用している。
林の中に足を運べば、路地裏以上に被虐者が見つかることもよくある話。
だから、虐殺もよく行われる上、それが絡んだ事件も多発する。

擬似警官として、この区域は必ず見回らないといけない。
だが、今回だけは擬似警官ではなく、イチAAとしてもここに来た。
あの出来事で遺った、爪痕の埋め合わせの為に。

「ん・・・?」

ふと、足を止めてみる。
視界の隅で見つけたのは、不自然な形をしている植木。
垣根の役割をしている筈のそれは、AA一人が通れる位の隙間を作っていた。

形の崩れ方からして、人為的なもの。
誰かがここを、林への入り口にしてしまっている。
まさかとは思うのだが、念のためにとウララーは身を運び、中へと進んだ。

511:2008/04/04(金) 23:44:40 ID:???


雑草が自分の腰ほどまでに伸び、枝葉が進路を塞ぐ。
それが雑木林の本来の姿なのだが、手でそれらを掻き分けずとも難無く進めた。

被虐者が隠れ家として、ここを切り開いたのなら構わない。
が、擬似警官の持つ勧か、違和感はその答えを否定する。

「これは・・・」

視界に奇妙な色彩を持つ葉が飛び込み、目線を持っていく。
足を止めてそれをじっくり眺めると、血が付着しているということがわかった。
親指でこすってみると、僅かなぬめりを感じつつ、指にこびりつく。

まだ、新しいものだ。
匂いを嗅いでみると、被虐者のものではない。

「当たり、か」

ウララーは事実に溜め息をつき、林の奥へと進んでいく。




奥に進むにつれて、その血の跡は確実に増えていった。
雑ながらけもの道を作り、かつ痕跡を遺している。
犯人は、己の保身よりも虐殺が齎す快楽を優先して行動しているようだ。
虐殺厨ともなれば、そんな余裕などないのだろう。

暫く歩くと、血の匂いが強くなる。
加えて、眼の前には壁のように進行を阻む草木。
葉の隙間から見えるのは、ちょっとした広い空間。

その中に、一つの人影があった。
人影はその場に屈み、湿っぽく粘っこい音をたてている。
そこで、これ以上息を潜める必要はないとウララーは踏み、草木を掻き分けた。

「何やってンだ」

「!?」

ウララーが声を掛けると同時に、女は驚く。
女のその朱色の身体は、どこを見ても赤く汚れていた。

足元には赤黒い塊が、血だまりの中に横たわる。
恐らく、女が持つ包丁で挽き肉になるまでめった刺しにされたのだろう。

「何、ッテ・・・見テワカンネェノカ? 虐殺ダヨ」

と、女は罪悪感など全くないようなそぶりで応える。
どうやら、ここまで死体の形を奪えば、一般AAか否かを見分けられないと思っているようだ。

だが、ウララーは既にこれが被虐者ではないと理解している。
血の匂いがそれなのだが、己以外に通用しない証拠だ。
言い逃れを防ぐ為、ウララーはカマを掛ける事にした。

「虐殺、ね・・・わざわざこんな所まで運んでやるものか?」

「アンナ広イ場所デヤッテモ、無駄に目立ツダケダカラナ」

「・・・だろうな。そんな緑の体毛のAAを公の場で虐殺するのは、注目の的だろうな」

「ッ!」

女が、言葉を詰まらせる。
体毛の色なんて、既に真っ赤に染まってウララーには判別できない。
単なるでまかせだったのだが、運よく当たったのだろう。
もし外れたとしても、それが被虐者でないと理解していることを仄めかせばいいだけだ。

「何故・・・ワカッタ」

女の表情が強張る。
それは寧ろ、開き直るといった感じだった。
女はゆっくりと包丁を持ち上げると、切っ先をウララーの喉に向ける。

「半信半疑だったんだがな。いや、お前が正直者でよかったよ」

包丁の刃を向けられているのに、あえて煽るウララー。
同じように、ホルスターから銃を静かに引き抜く。

512:2008/04/04(金) 23:45:01 ID:???

得物の差は歴然としているのに、女は刃を向けてきている。
それは裁かれたくないというあがきなのか、或いは己の身体能力に余程の自信があるのか。

「・・・何故、刃を向ける?」

答は自分の中でかたまりつつあるが、あえて問うウララー。

「単純ナ理由サ。追ウ者ヲ殺セバ追ワレズニスム」

女は口角をつりあげ、目を細めて笑う。
直後、素早く屈んだかと思うと、地面を蹴ってウララー目掛け飛び込んだ。

「!」

虐殺厨を裁く時、擬似警官は逆に襲われることも珍しくはない。
人質をとる強盗と同じで、奴らはひたすら抗うのだ。

だから、こういったシチュエーションにウララーは馴れている為、冷静でいられた。
飛び掛かってきた女が振るった包丁を身体を反らして避け、擦れ違い様に一発。
包丁はウララーの肩の皮を裂き、鉛弾は女の腹部を貫いた。

「ガアァッ!?」

突然の激痛に女は対応できず、地面に滑るように倒れ込む。
ウララーはそれとは逆に、追い打ちを掛ける為にと女の方へ踵を返した。

「無駄な事をするから、無駄に苦痛が増えるんだよ」

「ッッ・・・テメ―――」

動きを止めたら、後は仕事を熟すのみ。
ウララーは女の言葉を無視して、その頭蓋を狙って炸裂音を響かせた。






「・・・ふぅ」

短く息を吐き、銃をホルスターにおさめる。
その場に残ったのは、女が虐殺していた肉塊と女の遺体。
あとは木々が風に揺られて、ざわめいた合唱が聞こえるだけ。

ここなら、都合が良い。
擬似警官としての行動は終えた。
次は、イチAAとして動くのみだ。

用があるのは、女の遺体。
先ずは作業しやすいようにと、仰向けに姿勢を整える。
確認するまでもない事だが、瞳孔はしっかりと開いている。

「・・・」

次に、ウララーは家を出る際に用意していたウエストポーチに手を掛ける。
片手で器用にそれを開け、取り出したのは刃渡り十数センチのナイフ。

この街では、虐殺の為ならナイフは非常に便利な道具。
反面、虐殺以外では殆ど用のないものである。
だから、擬似警官が持つ事は寧ろあまり好ましいものではない。

それなのに、ウララーはナイフを握る。
虐殺厨の遺体も、普段は裁いた後は触れずにおくもの。
何故ウララーは擬似警官でありながら、このようなことをするのだろうか。

答は前述の通り、自分自身の為。
それは、あの出来事がウララーに刻んだ傷。
爪痕を埋めるものが、虐殺厨の遺体にあるからなのだ。

513:2008/04/04(金) 23:46:17 ID:???

ナイフを逆手に持ち、女の胸に突き立てる。
景気よくそれは肉を裂き、肋骨をいくつか砕いた。
不快な音と感触が、それぞれ耳と手に残るが、気にしてはいられない。
ウララーは更に刃を走らせ、乱暴に解剖を続けた。

「・・・っ」

自分は医者でもないし、扱っているものはメスですらない。
だから、女の胸は獣が食い散らしたかのように切り開いてしまった。
ただでさえ内臓に不快感を覚えるのに、これでは自縄自縛を行っている。

うっすらと胸やけを感じるが、背に腹は変えられない。
爪痕を埋める為には、なんとしてでもそれにたどり着きたいのだから。

折った肋骨と剥いだ皮を一緒に切除し、肉塊の上に投げ捨てる。
べしゃと湿った音がして、少量の血が辺りを汚す。
次いで、肋骨に守られていたそれらを分け、取り出していく。
その先にあるものは、生命を支える赤いモノ。

「・・・あった」

動かない心臓を見つけ、ウララーは喜びと共に呟いた。






あの出来事以来、ウララーの精神を苛むものが芽吹く。
原因はおそらく、フーの亡きがらを抱いて帰路についた事。

視界を阻む程降りしきる雨の中でも、その臭いはした。
皮膚を失い、露になった肉から漏れる血の腥ささ。
それを、否応なしにウララーは身体の中に入れてしまったのだ。

虐殺を好む者にとって、被虐者の悲鳴は高揚感を煽る音楽。
さしずめ、はらわたや血の臭いは煙草の煙のようなもの。
科学的に証明されていないものの、それらには妙な中毒性があった。

それがウララーの心を蝕むようになるまでに、時間は掛からなかった。
喉を掻きむしりたくなるような渇きを潤すには、元である血が必要になる。
しかし、自分は擬似警官という立場である為、虐殺は行えない。

渇きを抑える為に自らの血を飲んだこともあるが、どうしてか効果は全くなかった。
半ば命懸けの折衷案も、身体はうんともすんとも言わなかった。

そして、ウララーが行き着いた答が、虐殺厨の血を貰うこと。
だが、それでは裁く事の意味がなくなってしまう。
死体を漁ることをしてしまえば、それは虐殺と変わりない。
擬似警官という肩書を殆ど踏み外したような結論だが、本人にはそれ以外に道がないのだ。



「・・・」

血管を切断し、女の身体から心臓を切り離していく。
中身を、血液をなるだけ零さぬように慎重に。

上手いこと切り離して、ウララーはそれを掲げる。
その血の詰まった肉の袋は、それなりの弾力をもっている。
取り出す際に漏れた赤い液が、艶かしく滴り落ちる。

奇妙な妖艶さをウララーは感じ、ついそれを眺めていた。
ふと我に返ると、やるべき事を思い出し行動に出る。
何度かやってきたことだが、多少ながら躊躇ってしまう。
それでも、方法はまだこれしかないのだから、やるしかない。

ウララーは心臓の穴の開いた所に口をつけ、一気に煽った。

514:2008/04/04(金) 23:46:58 ID:???

「っ!!」

最初は、鉄分の味。
直後、むせ返る程の腥ささが鼻をついた。
独特のぬめりが喉に絡み付き、それを身体が拒絶する。
内臓までも戻しそうな勢いで吐き気が込み上げてくる。

ウララーは中身がなくなった肉の袋を投げ捨て、両手で口を塞ぐ。
逆流してきた胃液と血を、必死で押し込めようとする。

「―――!」

身体は受け付けなくとも、精神がそれを欲しているのだ。
吐き出してしまっては、元も子もないわけで。

脂汗と涙が溢れ、全身が殆ど痙攣しているかのように震え出す。
それでも、ゆっくりと、確実に血を飲み込んでいく。

ほんの少量でも、喉を通過する度に酷い不快感を覚える。
胃はそれを押し出そうとしているのに、無理矢理詰め込もうとしているからだろうか。
気絶しそうな程の胸やけを感じながら、渇きは確実になくなっていった。

口の中のものを全て胃におさめても、両手はそのまま。
姿勢も足の指一本動かすことなく、状態を維持する。
下手に行動すると、また胃液が逆流しかねないからだ。
ウララーは石になったかのように、その場からぴくりとも動かなかった。






どれくらいの時間が経っただろうか。
無限とも感じ取れる時の中、気絶と覚醒の境目を覚束ない足取りで歩いていたような。
そんな奇妙な感覚も消え、胸やけも何もかもがおさまった。

「はあ、っ」

ウララーはとりあえず、緊張を解く為に息を大きく吐いた。
直後、自慰の後のような倦怠感が、全身を包み込む。
やっと冷静になることができた今、今後の事を考えなければ。

ほぼ殺人と同じ事をする為、人目のつかない所で虐殺する虐殺厨。
そいつらを追う事で、自分も人目のつかない所で血を啜る事ができる。
だが、そんなことばかりしていては、いずれ誰かにバレてしまうだろう。
虐殺厨が自分に見つかるように、恐らくは、同業者に。

いっそのこと、自殺してしまおうか。
そう考えはしたけれど、それではフーにあわせる顔がない。
家庭も何もなく、その上眼まで亡くしたフーでさえ、生を望んだからだ。

それに、あの少年だって被虐者という立場でありながら、彼なりの生を探していた。
片腕を焼かれる程の、凄まじい虐待を身に受けても、だ。
そんな彼等がいるというのに、くだらない精神の病に侵されているだけの自分が、自殺していいのだろうか。

「・・・いや」

自分だけが、逃げていい筈がない。
ヒトの命が軽いこの街で、自殺という選択肢を選んでいいわけがない。

たとえ狂ってしまいそうな程の苦痛を感じても、生き延びる。
皮を剥ぎ取られようが、全身の骨を砕かれようが、はらわたを焼かれようが。
自分は、フーの為にも自身の為にも、生き延びなければならない。

515:2008/04/04(金) 23:47:33 ID:???

渇きも失せ、精神も持ち直した。
自身が今するべきことは、特にない。
せいぜい、身体に付着した血糊を落として帰路につく位だ。

「・・・」

何と無く、辺りを見回してみる。
風に揺られ、優しく踊る木々達に囲まれた空間。
外からは見慣れていたこの雑木林も、中から見るとまた違った印象だ。

どうせ、家に帰ってもすることは何もない。
せっかくだから、この雑木林の中を歩き回ってみようか。
広大な公園とはいえ、迷うことは滅多にないだろう。
と、あいた時間を潰す為、ウララーは雑木林の更に奥へと足を運んだ。



自分の腰のあたりまで伸びた雑草。
所狭しと生えている電信柱ほどの太さの木々。
それにこれでもかという程絡み付く蔦。
奥に進む度に、段々と雑木林は濃さを増していく。
もはやそれは、樹海と勘違いしてしまいそうな勢いだ。

まるで異次元に入り込んだような感覚。
そこまで広くないと思っていたのに、これはとんだ誤算だった。

(・・・自殺しないって決意したばっかりなのにな)

万が一のことを想像して、鼻で自身を自嘲する。
だが、林の中は被虐者はおろか虫の気配すら全くしない。
先程から感じている異次元というそれも、あながち間違いではないのかも。
そんな無駄な妄想をしつつも、足を動かす事は止めない。

暫くして、視野が広がった。




「ここ・・・は?」

予想だにしないものが視界に飛び込んだので、思わず声に出す。
木と雑草しかない筈のこの雑木林の中に、建物があったからだ。

土色になり、ヒビと蔦にまみれたコンクリの壁。
ガラス窓は全て割れていて、カーテンが無惨な姿を露にしている。
何十年もの間放置されたようで、損傷は激しかった。
建物自体の大きさはあまりなく、周りの木々よりも背は低い。

存在する場所も兼ねて、その建物は不気味だった。
本当に、異次元に入り込んだような気にさえなってしまう程。
不用意に近付くのは危険だろう。

「・・・!」

そう警戒した矢先のことだ。
建物の入り口付近に、血の痕。
色合いからして、まだ新しいもの。

雑草を掻き分けてそれに近付き、血糊を調べる。
指で掬い臭いを嗅いでみるも、一般AAではなく被虐者のものだ。
自分が動く必要は、なさそうだ。

(だが・・・)

入り口に立つと、奇妙な感覚が更に強まる。
今度はこの建物自体が、自分を誘っているような。

しかし、こんな不気味な建物に易々と入ってはならない。
不確定要素が多過ぎる上、思考が警鐘を鳴らしている。

―――入れば、また自分は大きな事件に巻き込まれてしまう。と。

どうしてそう考えてしまっているのかは、わからない。
あの出来事でさえ、フーの悲鳴を耳にしただけの話。
いつどこで、何が起きるかなんてわかる筈がないのに。

516:2008/04/04(金) 23:47:55 ID:???


複雑な気持ちの中、建物に入る事にした。
血糊は、奥の方に点々と落ちている。
あたかも自分を誘っているかのように。

「・・・」

意を決して、血の痕を追って歩いていく。




驚くことに、建物の中には光があった。
天井の蛍光灯は全て沈黙していたが、足元の非常用照明は生きている。
内も外も棄てられたこの建物を、必要としている者がいるのだろう。

(だが、ここは・・・)

一体、何に使われているのだろうか。
パッと見た感じでは、病院のような構造。
所々にある部屋を覗くと、医療器具らしきものとベットがある。
どれも赤錆と埃にまみれていて、使い物にならないが。

他にも、奇妙な形をしたフラスコや蛍光色の液体が入ったビーカー。
何に使うのか全く想像できない大きな機械まである。
揚げ句の果てには、診療台の上で白骨化したAAまでもがいた。

そこまで見て、ウララーはある事を思い出す。
都市伝説として聞いた、Vという化け物の話。

Vが存在したというのなら、研究所も実在しているということ。
もしかしたら、ここはVが造られた研究所ではないだろうか。
そう考えるのは安直過ぎるが、他にまともな答が見つからない。
病院だとしても、不必要なものがあまりにも多過ぎる。

解きたい疑問と知りたくない答という、相反する気持ちを抱きながら、ウララーは更に血の痕を追う。
赤錆とヒビに塗れた建物の廊下を、ゆっくりと踏み締めながら。




外から見た時よりもずっと広く、入り組んだ空間。
ふと、前方の突き当たりを見ると、強い光が漏れているのがわかった。
非常用照明なんかよりもずっと明るい上、血の痕もそこに進んでいる。

「・・・」

その光から感じるのは、光の色とは正反対のどす黒さ。
認めたくはないが、それはVの放つ殺気と全く同じだった。

だが、ウララーは冷静だった。
先程から感じている違和感が、思考を麻痺させていたからだ。
殆ど導かれるがままに動いてきたウララーにとって、それは障害にすらならない。

何も考えず、突き当たりを曲がって光を見る。
そこには、割れたガラスで隔たれた巨大な空間があった。

例えるなら、水族館にある大きな水槽。
その中にあるものを全て取っ払ったようなもの。
天井にある円い蛍光灯が、その空間を激しく照らしている。

「・・・ッ」

その空間の中は、凄まじいものだった。
ほぼ全体が、血糊と思しきもので黒く塗り潰されている。
白骨化したAAも、半ば形を失いつつそこらじゅうに散らばっている。
研究員のものと思われる、血みどろの白衣も紛れ込んでいた。

517:2008/04/04(金) 23:48:57 ID:???

都市伝説として、聞いた通り。
あまりにも類似した点がありすぎて、不気味なことこの上ない。
うっすらと吐き気を催しながら、ガラスの壁の下部にあったパネルを見つける。

それは埃と乾いた血糊で酷く汚れていた。
よせばいいのに、気が付いた時にはその汚れを指で払いのけていた。

「・・・嘘、だろ」

もはや、感情なき笑いしか込み上げてこない。
そのパネルの真ん中に、小さくも凛々しく彫られた文字が一つ。

―――『V』

あの化け物は、ここで育てられた。
疑問が、確信となってしまった。

なにもかもは、遠い過去のこと。
だが、ウララーはやり場のない怒りを覚えていた。
あの出来事の片棒を担いだ者は、既にこの街で産声を上げていたのだった。

全ては終わってしまった話。
それなのに、子供が吐く負け惜しみのような気持ちが溢れ出す。
もっと早くここに気付き、Vが育つ前に殺していれば。と。

ウララーはその場に崩れ落ち、パネルに恨めしく爪をたてる。
がり、というそれを引っ掻く音は、燻り始めた復讐心の声のようだった。
同時に、フーと一緒に過ごした日々がフラッシュバックする。
更にそれに呼応して、あの出来事もコマ送りで再生されていく。

涙が溢れているということに気付くのには、少し時間が掛かってしまった。






不意に、物音がした。
咄嗟に涙を拭い、物音がした方を向く。
少しだけ開いた扉の奥で、すう、と影が動くのが見えた。
大きさからして、ちびギコかその位のAAのようだ。

こんな廃墟に用のある子供なんていないだろうに。
そう考えたが、もしかするとホームレスの類かもしれない。
雨風をしのぐだけなら、ここは都合の良い場所になるだろう。
被虐者という線もあるが、無駄に思考を張り巡らせても意味はない。

「・・・」

とりあえず自分の眼で確かめようと、ウララーは立ち上がる。
念のため、銃の中に弾が込められていることを確認してから、扉へと向かった。

きい、と不快な音をたてながら扉を開く。
用心に用心を重ねつつ、ゆっくりと中に入る。

中は先程見てきた部屋達と、なんら変わりないものだった。
節操なく並べられた怪しい道具や薬品、そして白骨。
ただ唯一、散らばっている血糊がまだぬめりを持っている所が違っていた。

「これは・・・」

被虐者という答は、間違いだと悟る。
赤い液体をばらまく者は、決まって加虐者しかいないからだ。
残る選択肢は、危険を孕むものばかり。
だが、それでも確認せざるを得ないわけで。

抜き足差し足と、部屋の奥へと進む。
ふと、妙な音がかすかに聞こえた。
ウララーは一端動くのを止め、音を拾う事に集中する。
その音はどこか湿った感じのもので、咀嚼に近いものだった。

518:2008/04/04(金) 23:49:50 ID:???

更に耳をすますと、それは部屋の角から聞こえてくる。
慎重に、ホルスターの中の銃に手を掛けつつ、近付く。

「・・・」

そこには、子供がいた。
部屋の隅っこで、肉塊をゆっくりと咀嚼していた。
こちらに背を向けているので、顔は見えない。

影の正体はわかったものの、肝心の答が出てこない。
何故なら、子供は見たことのない容姿をしていたからだ。
ギコ種よりも濃い青をした身体に、特徴的な丸耳。
ちびギコじゃないかと思ったが、こういった雑種は前例がない。

「・・・?」

と、不意に子供がこちらを振り向く。
その顔立ちは、黒目がちなちびギコといった様子。
マスコットのような感じなのだが、口元の血が物凄いギャップを与えている。
自分も身体を血糊で汚しているから、あまり言えたことではないが。

「あなたは、誰ですか?」

「えっ?」

問い掛けようとした矢先、質問をされてしまう。
出鼻をくじかれたような気分だが、質問を質問で返すわけにはいかない。
とりあえず、自分の名前と身分を軽く説明しておいた。




「ウララー、さん。ですか」

「ああ」

ここに来た経緯はぼかして説明したが、言及はされなかった。
馬鹿正直に話しても、通じはしないと判断しての事だ。
子供からの質問が途切れた所で、今度はこちらから問い掛ける。

「お前はここで何をしている?」

「え?・・・えっと、生活?」

「どういうことだ?」



曰く、彼はこの研究所で産まれ育ったとのこと。
両親は試験管か、或いは血の繋がっていない科学者か。
そんな事が思い浮かんだが、一端それは保留することにした。

更に聞いていくと、研究所がこんな姿になったのは数カ月前だとか。
自分と同じ境遇のAAが、ある日暴走し出して研究員を虐殺。
生き残ったのは自分と、他の自分と同じ者達のみ。
その者達は数日してここを出たが、自分だけはここに残った。



「―――そして、今に至ると」

「うん。お腹がすいたら、『しぃ』っていうAAを捕まえて食べてた」

意外な言葉。
被虐者とはいえ、こんな子供が体格差のでかいAAを補食できるのだろうか。
もしかすると、この子供も強暴な一面を持っているのかもしれない。
かのVを研究していた所でもあるし、白だとは言い難い。

が、あえて言及することは避けた。
何故なら、そんな強暴性があったとしたら、今自分は生きていないだろうから。
それに、Vのような力を持っていたら、少なからず殺気が漏れる筈。

(『しぃ』か・・・)

被虐者だが、AAの肉を漁っていると話す彼。
容姿もあってか、ふとあの少年の影が垣間見えた。

519:2008/04/04(金) 23:50:32 ID:???

子供が一人で、こんな廃墟で生活をしている。
その事実は、自分にとって少しばかり心が痛む。

昔から、周りのAAからは情に脆いと言われていた。
しまいには『お前のヒトの良さはいつか身を滅ぼすぞ』とまで忠告されたような。

だが、それが自分である。
たとえ偽善と罵られようが、無駄な行為と評価されようが。
目の前にいる不幸を背負った者を、助けずにいられようか。

「なあ、お前」

「はい?」

「出会った事も何かの縁だし、俺の家に来ないか」

「・・・?」

言ってる意味がわからないとでも言いたげに、子供は首を傾げる。
世間から隔離された世界で生きて来たのだから、当たり前か。

「ここで生活するのは何かと不便だろう。俺が飯と寝床を用意してやるよ」

「・・・いいの?」

「ああ」

と、子供の表情が一変する。
そこには喜びと、ほんの少しの戸惑いが見えた。
話がある程度進んだ所で、ふとある事を思い出す。

「そういえば、名前を聞いていなかったな」

「名前・・・」

会話が途切れる。
最初は何かわからなかったが、反応からしてどうやら名前を貰っていない様子。
どうしたものかと考え、先程のVのパネルを思い出す。

「あー、悪い。今のはなかったことにして、お前の部屋に案内してくれ」

「うん」






先程いた場所と、さほど離れていない所に彼の部屋はあった。
Vの部屋ほど荒れていないが、建物自体が傷んでいるのでやはり見てくれは悪い。

「ここです」

彼にそう促され、相槌をうった後パネルを探す。
案の定、それはガラスの壁の下部に同じようなものがあった。
指で擦り、こびりついた汚れを落とす。
そこにはアルファベットでこう彫られていた。

―――『 P O R O R O 』

意味はわからないが、恐らくこれが彼の名前。
ちゃんとここに名前があるというのに、彼自身が知らないというのは少しおかしいが。
研究員達は、付けるだけ付けておいて彼をその名で呼ばなかったのだろうか。
そうだとすると、少し惨いような気さえする。

とりあえず、深く考えるのは止めておき、そのままの読みで彼の名前にすることにした。

「一緒に暮らすようになったら、お前の事は『ぽろろ』と呼ぼう」

「ぽろろ?」

「ああ、お前の名前だ」

「名前・・・」

彼、いやぽろろは少し考えたそぶりを見せた後、小さく笑った。
つられて、自分も笑みで返す。

520:2008/04/04(金) 23:51:02 ID:???

名前も決まり、後は家へと帰るのみ。
研究所を出た二人は、林の中を真っ直ぐ歩いていく。
道中、互いの名前を呼び合いながら笑って話した。

行きは恐ろしく広く感じたこの林も、帰りとなるとそうでもなかった。
あっさりと舗装された道を見つけると、寄り道せずに帰路についた。
新しい生活を想像し、それに心踊らせながら。






研究所がなぜ雑木林の中にあったのか。
そこでVやぽろろが飼育されていた理由は。
あの研究所を扱っていた組織は。
語るには、謎が多過ぎる。

その謎に、ウララーはまた大きな事件に巻き込まれる羽目になる。
あの出来事が霞む程の、闇で生きる者に牙を剥かれて。

―――白昼夢は、悪夢へと姿を変える。



続く

521ロディウェイ:2008/04/26(土) 11:39:48 ID:SOOVd3uQ
小説書くの初めてです。よろしくお願いします。
 
 『残酷サイボーグ シーン』

 僕はシーン、だだし、普通のAAじゃない。
虐殺好きのモララー種が作った虐殺用のサイボーグだ。
 
力は60キロの物を持ち上げ、目にはズーム機能と暗視スコープ機能、
足には、ローラーダッシュと呼ばれる車輪があり最高時速70キロのスピードがでる。
これから僕は、ちびギコやアフォしぃが暮らすマターリシティに来た所からはじまる。

 ACT1「初めての虐殺」

 12時28分、僕はマターリシティに着いた。
黒いマントを身に付け、右手には重さ31,4キロあるM-TK0334ライフルを持ちながら町に入った。

公園では、ちびギコがべびギコと砂場で遊び、ビルが並ぶ道では、アフォしぃが
「キョウモゲンキニシィ〜シィ〜シィ〜、ミン(以下略)」
と歌いながら歩いている。

僕が道のすみを歩いていると、一人のしぃが来た。そして、
「ハニャ!!ダッコ!!」
と言ってきた。だが僕はそんなのに構わず無視しようとした。だが、
「シィヲムシスルナンテコノ、ギャクサツチュウ!!」

この言葉に反応し、僕はそのしぃの耳をつかんで至近距離からこう言った。
「虐殺厨・・・、人聞きが悪い。僕はそんなのに興味はない。」
そう言い放ち、しぃの両耳をもいだ。ブチッと鈍い音がした。
「シィィィィィ!!イタイヨーー---------ー!!カワイイシィチャンノオミミガーー---------!!」
アフォしぃは、手足をじたばたさせながら泣き騒いだ。

つまらない・・・そう考えた僕は、100mほど離れてから、ポケットから弾を2つ出し、ライフルに詰めて構えた。
標準をしぃの右胸に合わせて一発撃った。
しぃの右胸から綺麗な赤い血が花びらのように散った。それから間を開けずに頭を撃った。
そして、額に10円玉ほどの穴が空き、何も言い残す事なく死んだ。

そうか・・・これが、これが虐殺・・・。

僕は、心にそう感じながら後にして先に進んだ。


続く

522ロディウェイ:2008/04/26(土) 15:02:56 ID:SOOVd3uQ
>>521
続きいきます。

    『残酷サイボーグ シーン』

 ACT2「武器商人」

 アフォしぃを一人倒してから10分、僕は自動販売機で水を買い、近くにあったベンチに座って休んでいた。
そんな時。
「ワチョーーーjはふおdsfぴっす9あ0c・・・」
僕のセンサーからこの叫び声が聞えてきた。どうやら、1kmさきのスクラップ工場かららしい。

とりあえず、興味があるので警戒しつつスクラップ工場に向かった。そこには、
無残な姿で死んでいるオニーニが残っていた。体中にマシンガンでも食らった感じだった。
しかし、誰の仕業だろう・・・

そう考えていた時。
「ウワアアアアアアァァァン!オトウトーーーーーーーー!!」
正面から別のオニーニがきた。どうやらやつの弟らしい。
「シッカリシロオトウト!!オトウトー!!」
そう泣きさけんでいたが、やがて僕に気付いたようでこう言ってきた。
「オマエガオトウトヲコロチタンワチョ!?ゼッタイニ、ゼッタイニユルサナイデチーー!!」

勘違いされているようだ。だが説明してもわからないだろう。
そうしてる内に僕に仕掛けてきた。
「オトウトノカタキーーーーーー!!」
僕は足のローラーで後ろに下がった。オニーニは、なにかにつまずいて倒れた。
「ワヒョヒャーーーーン!イタイワチョー!!」
特に怪我はなさそうなのだが・・・とりあえずオニーニに近づき、海苔をはがした。
「アアアアーーー、ノリヲカエスワチョーー!!」

オニーニは、海苔がないと中の具(いわゆる脳の事)が出てしまうらしい。
それで僕は、足払いを掛けた。
「ワギャッ」
中の具が飛び出し、それっきり動かなくなった。だが、

「イマワチョ!!」
後ろのごみの山の上からまたオニーニが出てきた。しかも右手に包丁、左手にクローを装備している。
いくら僕でも防げない。初めての深くだった。
覚悟を決めて目を閉じたその時。

ドガガガガ!!
銃声が響いた。
「ジョーーーーーー」
それで3匹目のオニーニが撃たれた。

「やあ、危ない所だったね。君もなかなかやるじゃないか。」
「!?誰だ!!」
振り向くとそこには、ソ連製のマシンガンをもった男がいた。
年齢は40才ぐらいだ。

「いや失礼した、私は武器商人をやってるモラソール・エレダン。
このスクラップ工場の近くに住んでいるんだ。どうだい、ここじゃ難だから
私の家で話をしません?」
「ああ。」

やる事を決めてないのでとりあえず甘えてモラソールの家に行く事にした。

ここから大きな組織と戦う運命とも知らずに・・・

  続く

523ロディウェイ:2008/04/27(日) 10:37:46 ID:l3U/M5Mg
>>521
続きいきます。

   『残酷サイボーグ シーン』

ACT3「過去」

 僕はモラソールに案内されて彼の家に着いた。
隠れ家的な感じだが重火器を取り扱う店らしい。
そして家の中に入り、椅子に座って会話を始めた。

「いや〜、このスクラップ工場で普通の人が来たのは3年ぶりだよ。
あ、それより君、虐殺暦はどれくらいかな?私は10年だよ。」

「ここに来てしぃとオニーニ各一匹ずつ。」

「へえー、そうか。んでそのライフルはどこで買ったんだい。ぜひとも買いたいのだが。」

「これは売り物じゃない。」

「冗談だよ。」
と僕を興味深い感じで見ながら話していた。途中、座り直ったと思ったら
今度は真面目な顔をしてこう話かけた。

「君の過去に興味がわいてきた。良かったら聞かせてくれないかな。」

僕は一瞬戸惑ったが話しても大丈夫だと思い、話をした。
「それは一週間前・・・」


一週間前、僕は目覚めた。
周りにはよくわからない機械がおいてありライトがチカチカしていた。
その時声がした。

「開発成功だ!とうとう夢がかなった!!」
と大きい声で言っていた。僕は声のした方向に向いた。
そこには、ガラス越に白い服を着た男がいた。

「気がついたかね、君は今、虐殺サイボーグとしてこの世に生まれてきたのだよ。」

虐殺サイボーグ・・・いったい、いったい僕は何なんだ?
そう考えていた時、男が言った。

「いきなりですまないが、俺はもう行かなくてはならない。
そこに君の説明書とM-TK0334ライフルがある。これをを持ってマターリシティに行き、
アフォしぃ、オニーニ、ちびギコの虐殺を行なうのだ。」

そう行って立ち去った。

「待ってくれ!まだ聞きたい事が・・」
だが僕の声はこの部屋に響いただけだった。

しばらく立ち止まっていたが、このままでは始まらないので説明書を読み、
ドアを見つけて外に出た。
そこには草原が広がっており、遠くに町が見えた。おそらくマターリシティのようだ。

「虐殺、マターリシティ・・・何があるんだ。」

そして、僕はローラーダッシュで町に向かった。

  続く

524:2008/04/27(日) 17:31:55 ID:???
>>509〜より続き
『裏話 〜後遺症〜』




ひょんなことから、ウララーはぽろろというAAと一緒に暮らすことになった。
謎だらけの建物の中で出会った、謎だらけのぽろろ。
ウララーは、その謎については言及しなかった。
無駄なしがらみが増えるかもしれない、と考えてのことだ。

しかし、ウララーのその考えはいずれ自身を滅ぼしてしまう。
気がついた時には、既に手遅れになっているだろう。
忠告する者もなく、ウララーは悪夢に巻き込まれていくのだ。

―――その話は、少しばかり先の話。



新しい生活。
ぽろろは新たな家族に歓迎され、ウララーは新たな家族を招待する。
これから、賑やかな毎日が始まっていく。

そう想っていたのもつかの間。
家族が増え、愉しい未来が待っていようが、爪痕には是非もない。
ウララーに飢えと渇きが再び襲い掛かってきたのは、すぐのことだった。




朝。
久しぶりに、ラジオの音に更に声を重ねての朝食。
飛び交うのは自身とDJ、そしてぽろろの言葉。
賑やかとまではいかないが、一人とラジオのみよりは遥かに良い。

だが、それらを邪魔するかのように精神が疼く。
水分で補うことができない喉の渇きを、訴えていた。
まるで心の中に潜み、小さく暴れる悪魔のよう。
平然を装おうとするも、やはり顔にはうっすらと滲み出るようで。

「・・・ウララー?」

「ん? どうかしたか」

「いや・・・どこか、具合でも悪いのかなって」

「別に、何ともないが」

会話を重ねる度、心配される回数が少しずつ増えていく。
それは渇きが強まっていくのと、殆ど同じ早さだった。

ぽろろに余計な負担を掛けまいと、毎日虐殺厨を捜した。
だが、あの日出会った女の次は、未だにない。
路地裏も公園も、血塗れの廃屋にすら虐殺厨はいなかった。

もう既に少年の話は耳にしないし、新たな殺人鬼が生まれた事も聞いたことがない。
自分の知らない誰かに怯えているのか、或いは少年が遺した事件の名残か。
虐殺厨がいない理由を、様々な憶測を並べて考える。
だが、渇きのせいで思考も鈍り、ちょっとした推理すらままならない。
あがけばあがく程、渇きはゆっくりと精神を蝕んでいった。



ぽろろと出会ってから、何日目かの遅い朝。
もはや渇きを隠し通す事は出来ず、しっかりと顔に出てしまっている。
とりあえず疲労のせいにはしておいたが、家主がこれで良いわけがない。

擬似警官を取るか己を保つ事を考えるべきか。
迷った揚げ句の答を、今日実行することにした。
いつもと同じ物を持ち、いつもの時間に外に出る。

「それじゃ、出掛けてくるから」

「うん。いってらっしゃい」

ぽろろに見送られた後、ゆっくりと玄関の扉を閉めた。

525:2008/04/27(日) 17:32:34 ID:???


ふらふらと宛もなく歩き、街を散策する。
晴れと曇りがはっきりしない空模様は、まるで自分の心のよう。

辺りには、虐殺はおろか行き交うAAすらいない。
休日でもあるし、店にはシャッターが下りている。
聞こえるのは虫と鳥の声に、風でそよぐ草木の音のみ。
皆が皆寝静まっているような時間でもないし、その静寂は不気味だった。

「・・・」

だが、それはウララーにとって寧ろ好都合。
目的を、何の心配もなく熟せそうだからだ。






やってきたのは、商店街。
ただでさえ閑散としているここは、街全体の静けさもあって静寂が更に濃い。
虫の声も草木が踊る音も、ミュートを掛けたかのように全く聞こえなかった。

そんな半ゴーストシティの中を、ひたすら練り歩く。
路地裏から、補修不可能な位傷んだ廃屋まで。
どうにもできない渇きを潤す為に、ウララーはとことん足を動かした。

もう、精神的に余裕はないのだ。
前回の女のように、都合が良すぎる事を願う暇はない。

―――誰でもいい。

喉元を掻きむしり、頸動脈を引きちぎりたくなるような感覚の中。
頭の中を過ぎる、擬似警官としてあるまじき思考。
実行すると決意はしたが、やはり踏み止まってしまう。

擬似警官という立場を守りたいと想う心。
血が欲しいと叫び、喚き立てる精神。
どちらもあまりにも強い、折れないものとしてぶつかり合う。

「・・・クソ、っ」

芽吹くのは、やり場のない怒りと苛立ち。
滲み出る脂汗が頬を伝い、顎から雫となって地に落ちる。

どうにかしてこの渇きを抑えたい。
そう考える内に、段々と欲求の方が強くなってくる。
麻薬中毒者の気持ちが、何と無くわかったような気がする。
そんな自虐をする余裕も、やがて無くなっていく。
自我が崩壊する前に、早くこれを―――。

「!」

うっすらと目眩を感じる中、路地裏にあった段ボール。
その中に寝ているちびしぃを見つけ、思わず心臓が跳ねる。
出合い頭でもないのに、余程切羽詰まっているのだろうか。
己の情けなさを呪いたくなったが、事を成すのが先だ。

心臓の鼓動が、破裂しそうな程勢いを増す。
焦燥感が激しくなりつつも、ちびしぃを起こさないように静かに行動する。
ゆっくりと手を伸ばし、その華奢な首元をそっと掴んだ。

「・・・」

そのまま持ち上げ、じっくりと眺める。
寝顔は人形のように可愛いのだが、自分には血の詰まった風船にしか見えない。
今すぐにでも腹をかっ捌いて喉を潤したいが、こんな所では行えない。
万が一、通行人に見られでもしたら、後は泥沼に嵌まっていくシナリオしか見えないわけで。

どうしようかと迷っていると、背後から物音。
咄嗟に振り向くと、そこにはちびしぃの親と思わしきAAがいた。

526:2008/04/27(日) 17:33:10 ID:???

「チョット! ワタシノムスメニナニシテルノ!?」

出会って早々甲高い声で罵声を浴びせてくるアフォしぃ。
苛立ちもあり、種特有の不快感がそれを更に煽る。
慈悲の心もへったくれもない今、気が付けば手の中にはちびしぃでなくナイフがあった。

「・・・」

「シィィィッ!!?」

煩いこのアフォしぃを黙らせようと、身体が勝手に動いてしまう。
空いている手でアフォしぃの首を掴み、壁に押し付ける。
間髪入れず、身動きの取れなくなったアフォしぃの眉間目掛けナイフを突き立てた。

ナイフはアフォしぃの皮膚を裂き、頭蓋骨を砕いて脳を突く。
何とも言えない不快な音と感触が全身に伝わり、苛立ちが萎縮する。

「あ・・・ッ」

直後、罪悪感が押し寄せ心を一気に塗り潰す。
両手の力が抜けると同時に、二、三歩後退る。
支えのなくなったアフォしぃは、ややあってどうとその場に倒れ込んだ。

多少の痙攣と、ナイフと頭蓋の隙間から流れ出る赤い体液。
アフォしぃは既に肉塊となって事切れていた。

殺してしまった。
唯の一時的な、くだらない感情のせいで。
理性を失いかけていたとはいえ、相手が被虐者とはいえ。
擬似警官である自分が、銃で裁かずにナイフで殺害した。

体裁すら、保てなくなってきている。
白か黒かどっちつかずの位置をさ迷い続けてきたが、これではっきりした。
自分はもう、擬似警官ではいられない。
既に死肉を漁ってい時点で、本来は辞めるべきなのだが。

心が認めてはいないが、頭はしっかりと悟っている。
自分が銃を握ることは、もう赦されないのだと。




「っ・・・」

弱きを助け、強きをくじく。
それを身上としてきたのに、この様だ。
自身の不甲斐なさに、涙が滲んでくる。

この先どうすればいいのか。
目の前が真っ暗になり、立ちくらむ。
頭の中を無数の虫が暴れ回る中、ただ一人佇むような感覚。
悪が蔓延る世界で、己の正義を貫こうとしてきたのに。
虫達は、それを嘲笑うかのように蠢く。

絶望とはこういうことを言うのだろうか。
やはり、蝕まれる前に死んだ方が良かったかもしれない。
自暴自棄になりかけた時、ぽろろの事を思い出す。

(・・・そうだ)

自身の信念を貫き通すことは出来なくなったが、ぽろろがいる。
せめて、ぽろろ位は自分が護らなければ。
擬似警官としてやっていけなくとも、家族の為に頑張ればいい。
精神を蝕む病は自分の志を殺したが、ぽろろまでは殺せない筈。
そうと決めたら、早くこの渇きを抑えなければ。

目尻にうっすらと溜まった涙を拭い、こめかみを小突く。
それで軽く目を覚ましたら、足元の死体からナイフを引き抜いた。

「・・・」

柄も赤く汚れていたし、抜く時の感触もあった。
だが、不思議と刺した時よりも不快感はない。
開き直ったせいなのだろうか、どちらにせよ心への負担が少なくなった。

527:2008/04/27(日) 17:33:34 ID:???

「さて・・・」

残った課題は、ちびしぃだ。
今すぐここで解体し、赤いそれを飲み干したい。
が、やはり万が一の事を考え、家に持ち帰るべきだ。

辺りを見回すと、手頃な大きさの紙袋があった。
拾い上げ、穴が開いてないかどうかを確認する。
幸いにも触った感触からしてあまり古くなく、まだ使えそうだった。
とりあえずまだ寝ているちびしぃを抱え上げ、紙袋の中に入れる。

帰宅途中、今更かと言いたくなるように様々なAAが街を歩いていた。
紙袋があって本当によかったと、心底安心する。
同時にタイミングが良すぎた所に、少しだけ身震いした。



家に帰り着く頃には、また渇きが振り返していた。
アフォしぃを殺した時は、少しばかりおさまっていたのに。

ふと、嫌な想いが頭を過ぎったが、掘り下げないようにした。
これ以上悩みや何やらを増やしてしまっては、身体がもたない。
それに、何度も余計なことに振り回されては、事を成すことが出来なくなる。

「ただいま」

あえて小声で帰宅を告げる。
少し待ってみるが、返事を返す者はいない。

一応、家の中にぽろろの姿があるかを確認する。
と、居間のソファの上でタオルケットを被り、寝息をたてているぽろろがいた。
それを確認した後、作業を始める為台所へと向かう。

台所に入り、とりあえず紙袋をテーブルの上に置く。
次に袋の口をなるだけ音をたてないように開く。
そして、多少乱暴ではあるが、ちびしぃの首根っこを掴んで紙袋から取り出す。

「・・・」

まだ寝たままであるちびしぃ。
試しにゆさゆさと身体を軽く揺さ振ってみるが、何も反応がない。
まるで麻酔を打たれたかのように眠るちびしぃに、無駄な神経の図太さを感じる。

もしここがアフリカか何処かであれば、真っ先に餌になっていただろうに。
まあ、それだけよく眠っているということは、作業がよりしやすくなるだけなのだが。
そう思いながら、ウエストポーチに仕舞ったままのナイフを取り出す。
血を拭わずにそのまま仕舞っていたから、ナイフの鞘やポーチに血糊が少し付着している。

(ああ、後で洗わないと)

今はその場しのぎでナイフのみを洗う。
血糊が落ち、刃の上の雫が銀色に光る。
その刃で狙うのは、ちびしぃの頸動脈だ。



小柄なAAだと、臓器は勿論その容量も小さい。
わざわざ心臓を摘出していては、他の所から血が失われていく。
だから、ポンプである心臓を動かしたまま、別の所から血だけを抜き取る。
血の量は少ないが、一々解体する手間も省けて良い。

528:2008/04/27(日) 17:34:53 ID:???

「・・・」

だが、被虐者の血を呑むのは今回が始めてだ。
今までは虐殺厨の亡きがらを漁っていたから、生きたままというのも始めてである。

不安材料は多量にあるが、なりふり構っていられないのはとうの昔から。
それに、場合によってはこれを皮切りに新たな生活を始めても良い。
精神を苛まれながらの多少苦痛を伴う生活だが、付き合っていくしか他にないのだ。。

先ずは覚醒して暴れないようにする為、両手足をきつく縛る。
次にシンクの淵に、半身だけ乗り出させて寝かせる。
そして、首元にあわせて大きめのコップを置く。
簡易な下準備が出来、後はちびしぃから血を貰うだけ。

「〜〜〜ッ!」

途端、ナイフを持つ腕が震え出す。
ここに来て様々な感情が一気に爆発する。

躊躇い、戸惑い、外的刺激、体裁、理性、欲望。
もう後戻りなんて出来る筈がないのに、今更になって。
半ば暴走する腕に、頭で無理矢理命令する。
早く、このちびしぃから血を抜き取れと。




『ざくっ』

眼を強く閉じたまま、ナイフを動かしたらそんな音がした。
次いで、ぼたぼたと液体が撒かれる音。
恐る恐る眼を開けてみると、真っ先に赤が飛び込んだ。

ちびしぃの頸動脈は裂け、そこから溢れんばかりに血が流れ出ていく。
幾分か血がいろんな所に飛び散ったらしく、本人や自分の身体もそれなりに汚れていた。
その勢いの良さは非常にグロテスクであり、とてつもない不快感を覚える。

それから数秒位だろうか。
生臭さが鼻についた頃、ちびしぃに動きが。

「ハニャ・・・ッッ!?」

最初は虚ろだった眼を急に見開き、口を大きく開ける。
そこから悲鳴が漏れる前に、咄嗟にナイフをシンクに投げ捨ててちびしぃの口を塞ぐ。

流石に痛みを感じ取ったのだろうか、その覚醒は素早かった。
もし一手でも遅れていたら、凄まじい叫び声が辺りに響き渡るだろう。
一応押さえることはできたのだが、安堵するにはまだ早い。

「ムゥゥゥゥッ!」

両手足を縛られながらも、なお暴れようとするちびしぃ。
力は強くないものの、無駄な焦りのせいで上手く押さえ付けることができない。
少しばかりそれに苦戦するも、ふとある事に気付く。

眼を見開き、涙を流しながら身体で抗議している。
その潤んだエメラルドグリーンの瞳と、血が失われていき青ざめる顔。
様々な相反する要素が入り交じり、そういった意味でちびしぃはせわしない。
着実に死に向かいつつも、死に物狂いで抗う様。

少し前の自分なら、それに嫌悪を感じただろう。
弱者は、強者が守るべき者なのだから。
それなのに。

いや、それは間違いだ。
この街では、弱き者は強き者に弄ばれる。
汚染された精神が念うのは、吹っ切れかけた自分がちびしぃに感じるものは。

―――ほんの少しの、愉快さ。

529:2008/04/27(日) 17:35:46 ID:???

血の欲しさに闇雲に走ってきたさなか。
見出だしたくもなかった、新たな感覚。

力無く、それでいて必死に抵抗している様。
涙でどろどろに、痛みでくしゃくしゃになった愛くるしい顔。
ちびしぃの命を扱う権利を、今まさに己が所持しているということ。

征服感。

下半身が熱くなり、胸のあたりに何かが込み上げる。
未成年がタバコや酒の良さを知ってしまったような気分。
駄目だと頭では理解していても、身体や心が勝手に動く。

「ムグ・・・ゥ、ゥ」

ふと、気がつくとちびしぃは顔面蒼白となっていた。
シンクには夥しい量の血が流れていて、コップは真っ赤な塊のよう。

虐待の快楽に溺れるよりも、やはり渇きを癒す方が先。
ちびしぃももはや満身創痍だし、手を離しても問題ないだろう。
シンクに落ちない程度にちびしぃをずらし、両手足を縛ったまま、自由にさせてみる。
口を押さえていた掌にねっとりとした唾液がこびりついていたが、気にしないでおく。




「・・・っ」

ちびしぃの荒い呼吸を聞きながら、コップを持つ。
途端、先程の快楽は遥か彼方に吹き飛ぶ程の不快感。
特有の生臭さが飲まずとも鼻をつき、喉を塞ぐ。

飲まなければ、今だ残る問題を消化できないというのに。
どうしてか、虐殺厨のそれよりも酷い拒絶反応。
欲しかったのではないのか。と自分の身体に問いたくなる。

(クソッ!)

吐き気を催しながら、まどろみの世界に入り込む前に。
己に喝を入れ、一気にちびしぃの血を口の中に流し込んだ。

生臭さが体内を暴れ回り、中から外へ鼻を刺激する。
粘膜がやられてしまいそうな錯覚を覚える程の、強烈な臭い。
アンモニアのそれとは桁外れのような気さえしてしまう。
と、

「うっ!?」

遅れてやってきた、いつもどおりの凄まじい拒絶。
だが、今回は何故かその拒絶のレベルが異常だった。

口と鼻を掌で被っても、無理矢理外に出ようとする血液。
指と指の隙間から細く溢れていき、手を汚していく。
窒息しそうな位の力で必死に留めようとするが、上手くいかない。
まるで、胃そのものが存在しなかったように、逆流する。

堪え切れず、両手で口を塞ぐ。
持っていたコップは、一瞬宙に浮いてからすぐ床に叩き付けられ、音を立てて割れた。

(飲め! 飲み込めって!!)

頭の中ではそう叫んでいるが、身体が全くいうことを聞かない。
相反する思考がぶつかり合い、血の気が引いていく。
追い打ちで全身から嫌な汗が吹き出し、涙が滲んでくる。

苦しさに膝をつきながらも、顔は上を向ける。
少しでも、胃の中に入れてしまいたいからだ。
と、その体制が巧を奏したのか血が喉の奥に流れ込む。
チャンスを逃すわけにもいかず、そのまま躊躇せず一気に喉を鳴らした。

530:2008/04/27(日) 17:36:25 ID:???

「っ!! ぶは・・・」

血と涎でべとべとになった両手を顔から離し、息を大きく吐く。
前回よりも量は少ないが、なんとか渇きを癒すことができた。

だが、我に返って台所を見直すと、酷いものがある。
そこらじゅう血塗れだし、落としたコップが割れて破片が散乱している。
まるで殺人事件が起きたような惨状で、目を覆いたくなってしまう。

後始末が非常に面倒な事になり、溜め息をつく。
その時だった。

「うぶっ!?」

吐いた息に合わせるように、胃の中のものが逆流してくる。

迂闊だった。
何時もなら完全におさまるまで待っていたが、今回は自分のミスだ。
あまりにも酷い苦痛を感じ、それから抜け出した途端、つい気を緩めてしまった。

口を押さえようにも、もう遅い。
鉄砲水のように押し出される血と胃液は、鼻から口から物凄い勢いで流れ出る。
びしゃ、と汚い音を立て、汚れていた床を更に汚す。

「がっは!! ぅあ・・・!」

頭が割れそうな程の痛みを覚えつつ、何度も咳込んだ。
吐瀉物の上に胃液を撒き散らし、嘔吐はまだ止まらない。

苦痛は上塗りされ、今までとは比べものにならない程の渇きを覚える。
呻き声が喉から漏れ、首を絞めない程度に押さえ付ける。

(なぜ・・・!)

朦朧とする意識の中でも、死に物狂いで答を探してみる。
血を吐いたからなのか、或いは被虐者のものでは駄目なのか。
様々な謎が浮かび上がるも、答を告げる者はいない。
と、廊下の方で物音がした。




「・・・ウララーさん?」

ぽろろだった。
どうやら、コップの割れた音か何かに反応して起きたのだろう。

霞む視界の中にぽろろを見つけると、頭が揺れた。
渇きに苛まれていた身体が、すんなりと動く。
立ち上がり、シンクの中に落としたナイフを引っつかむ。

―――既に、目の前に居たぽろろはAAとして見えなかった。
自分専用の輸血パックか、または血の詰まった風船か。
ナイフを持ち、立ちくらみがした時にはぽろろの頸動脈は切れていた。

「ぎゃああっ!!?」

濁った悲鳴は、ぽろろの声。
間髪入れず頸動脈の裂け目にかじりつき、血を吸う。
桁外れの渇きを覚えているせいか、ぽろろの血は臭いと感じなかった。

「あああァ!! 痛い痛い痛い痛いぃっ!!」

何が起きたのか理解したらしく、ぽろろは抵抗し始める。
だが、子供に出来る事はせいぜい爪をたてて叫ぶだけ。
邪魔にはならないが欝陶しいので、片腕でぽろろの腕と身体を纏めて拘束する。
もう片方の腕はぽろろの頭を掴み、裂け目を拡げるよう傾けさせた。

喉を鳴らす度、癒されていく。
生臭い筈の血が胃におさまる程、気持ち良くなっていく。
ぽろろの叫び声が、なお抵抗する様が、面白くてたまらない。

脳味噌がとろけてしまいそうな程の快楽を感じる。
それをもっと感じたくて、ぽろろの頸動脈に歯を立て、拘束させている腕に力を込める。
ぽろろの腕から、バキバキと骨が砕ける音がした。

「あああああああああああああ!!!」

531:2008/04/27(日) 17:36:48 ID:???


ぽろろの一際大きな悲鳴を聞いた後、そこから意識はなかった。
気が付くと、血塗れになった台所と自分、そしてぽろろが形を崩して横たわっていた。

「あ・・・?」

首は裂け、腕は万力に押し潰されたかのようになっているぽろろを見て。
ようやっと、自分が何をしでかしたのかを理解する。

―――ぽろろを、殺してしまった。

まだ出合って間もない、幼いAAを自分の手で。
自我を失っていたとはいえ、信じたくない行為。
絶望感にうちひしかれながら、両手を床につける。

床の血溜まりには、赤く汚れた醜い自分の顔が写っていた。
青ざめながらも、眼は獣のように血走っている。
まるでVのような、化け物そのものの眼だった。

もはや、擬似警官だの何だのと悩む意味はない。
何の罪もないAAを殺し、いや、虐殺してしまったのだ。
こうなってしまうのなら、もう自殺するしかない。
渇きに翻弄され、己が新しい虐殺厨になる前に。

胸元を締め付けられるような不快感を堪え、上半身を持ち上げる。
次いで、血溜まりに落ちていたナイフを拾い上げ、自分の首に宛がう。

「ぽろろ・・・」

すまない。と謝りたかったのだが、言葉にならなかった。
ナイフを握る手に力を込め、歯を食いしばる。
その時だった。




「・・・どう、しました?」

ぽろろの亡きがらが、そう喋ったのだ。
いや、それどころか動いている。
ゾンビのようにぎこちなく、ぽろろはこちらを向いて立ち上がった。

「!?」

衝撃的な出来事に、思わず驚いて後退る。
ぽろろの首元はざっくりと切れていて、腕はぷらぷらと垂れ下がっている。
ほぼ全身真っ赤になり、誰がどう見ても死んだと思う筈なのに。

生きている。
こちらを見て、笑っている。

「あ・・・う・・・」

悍ましさに、言葉が出てこない。
呼吸が乱れ、思考が鈍る。
混乱する自分を無視し、ぽろろは首を傾げる。

「どうして、怯えてるんです?」

ぽろろがそう言ってくるのと同時、ぽろろの身体に異変が起きた。
首元の傷が真っ青な泡に包まれ、ぶくぶくと異様な音をたてる。
それが萎み、無くなった時には傷も一緒に消えていた。
続いて、腕にも青い泡が発生し、同じように元通りに。

それを見た時には、恐怖はどこかに吹き飛んでいた。
寧ろ、呆気に取られてしまっていた。

「ど、どうなっているんだ? その身体は・・・」

「え? ああ。そういえば、説明していませんでしたね」

532:2008/04/27(日) 17:37:50 ID:???


Vのいた、あの研究所出身ということを、やはり疑問に思うべきだった。
先に聞いておけば、無駄に驚く必要もなかっただろう。

ぽろろ曰く、自分は『究極の被虐者』を目指す為に生まれたとのこと。
ちびギコのような外見を持ち、脆さもそれに近い。
被虐者との明確な違いは、凄まじい自己再生能力を持っているとか。

たった一人の被虐者だけで、一生分の虐殺ができる。
子供の妄想じみた理論を、そのまま体言したのがぽろろ。
あまりにも現実離れしている話だが、疲弊した精神では否定する余裕はない。
まあ、Vという前例もあるし、受け入れない要素なんてないのだが。
しかし、

「虐待され続けるのは、流石にきついんじゃあ・・・」

虐待専用として生まれたAAとはいえ、誰しも傷つくのは嫌な筈。
身体は無事だとしても、心は堪えられるのだろうか。
そう心配したのだが、ぽろろの返答はこうだった。

「確かに虐待されるのは苦痛だけど、されないと僕が存在する理由が無くなるから」

自虐なんてものはなく、すっきりとした笑顔でそう言った。
そこに、ぽろろの強さをはっきりと感じた。
これ以上心配しては、余計なお世話になってしまうだろう。

とりあえず、ぽろろは死んではいない。
今はそのことに安堵しておこう。

「でも・・・」

「?」

「血を飲むって虐待は、ウララーさんが初めてしてくれましたよ」




不意をつかれた一言。
少しの間の後、互いに笑いあった。
同時に、恥ずかしさが込み上げてもきたが。

打ち明けるべきだろう。
ぽろろは自分の身体の秘密を教えてくれたのに、こちらも話さないと不公平だ。
だが、その秘密に良い情報なんてどこにもない。
長く息を吐いて、意を決する。
嫌われた時は、その時だ。

「実はな・・・」

全てを話した。
己を苛む渇き、血を飲むとおさまる事、飲まないと気狂いになる事。
何もかもを包み隠さず、正直に話した。

「・・・」

沈黙。
ぽろろは何かを考えてるようだが、静寂が耳に痛い。
やはり、精神におかしなものを抱えた者とは、一緒にいたくないのだろう。
諦めかけたその時、ぽろろが口を開いた。

「つまり、こういうことですよね」

「えっ?」

「ウララーさんが僕にご飯とふとんをくれるかわりに、僕がウララーさんに血をあげると」

「・・・」

無垢な表情をしながらの発言。
つい堪えきれず、吹き出してしまった。
笑う自分につられて、ぽろろもくすくすと笑う。

他人から見れば、頭のおかしい者同士の会話だと思うだろう。
しかし、自分にとってそれは、ぽろろなりの優しさが凄く身に染みた。
笑みと共に涙が溢れてきたが、掌で目元を被って適当にごまかした。

533:2008/04/27(日) 17:38:13 ID:???

ひとしきり笑いあった後、台所を見直す。

「さて、後片付けしないとな」

ちびしぃとぽろろの血、割れたコップの破片が辺り一面に散らばっている。
飛び散った血糊は、台所にあるものほぼ全てに付着していた。
芸術と例えて現実逃避したくなる程凄まじい惨状だったが、放置しておくわけにはいかない。
切羽詰まっていたとはいえ、面倒なことをしてしまったなと思った。

『ぐぅぅ』

不意に、ぽろろの腹から何かを訴える声。
顔を赤らめ腹をおさえるぽろろに、愛くるしさを覚える。

「・・・そういえば寝起きだったんだよな。何を食べたい?」

「え、えっと・・・」

辺りを見回して、ぽろろはある所を指差す。
指した方向を見てみると、そこにはちびしぃの死体。

初めて会った時にも、しぃを食べていたぽろろ。
やはり、食べ慣れたものがいいのだろうか。
立ち上がり、ちびしぃの形をした肉塊を渡すと、嬉しそうに食べ始めた。

「おいしいか?」

「うん」

ちびしぃを食べている、という事に不快感はなかった。
寧ろ、血で顔を汚しながらももくもくと食べる様が可愛くて。
台所を掃除する前に、先にぽろろの食事姿を眺めることにした。






一日を一言で現すなら、突然。
予想だにしない出来事が沢山、津波のように起こっていった。
悪い事だらけだったが、良い事も少なからずあった。
なにより、ぽろろとの関係が終わらなかった事が幸いだった。

失ったものは、多過ぎた。
だが、新たに得たものもある。
もう後戻りはできないが、前にはしっかりと道は続いている。
これから、その道をぽろろと一緒に歩んでいけばいい。

奇妙な関係だが、これから。
ずっと―――。



続く

534ロディウェイ:2008/05/03(土) 16:19:50 ID:fymts1Is
>>523
続きいきます。

  『残酷サイボーグ シーン』

 ローラーダッシュで町に行く間、説明書をもう一度見た。
僕の血液は特殊AA液で三ヶ月間、補給なしで活動でき、補給は水分なら何でも良いとのことだ
人口筋肉は凝縮機能で力加減が出来るとのことだった。
 そして、マターリシティを休まず目指した。

 
 「そうだったのか、なかなか面白い話だったよ。・・・そうだ!
良かったら私の家に住まないか?わからない事は、出来る限り教えるよ。」

モラソールは、そう誘ってきた。確かにまだわからない事が沢山あるからその言葉に甘えることにした。

「わかりました。お言葉に甘えてお世話になります。これからよろしくお願いします。」
そして僕とモラソールは握手を交わした。

ACT4「店番」

3日後、僕はモラソールの店で武器の整備などを手伝っていた。PA8:24
突然、電話(モラソールから教えてもらった)のベルが響き、モラソールが受話器を取った。
「あ、もしもし・・はい、はい、わかりました。すぐに行きます、では。」

と電話をきって出かける準備をした。僕は気になるので聞いてみた。
「モラソールさん、これからどこ行くんです?」
「ああ、急用が出来たからこれから出かけるよ。あ、
ついでに店の入り口の水撒きをしておいてくれ、じゃあ行ってくるよ。」

 そう言ってモラソールは出かけた。僕は言われた通りにホースで水撒きをした。
水撒きが終わったのでしばらく休んでいると、右の道からベビオニーニ3匹がきた。
「ワチーワチー」「ワチョ?」「ワチー!」
どうやら道に迷ってここに来たようだ。
 ベビオニは、僕を無視して店の入り口に向かおうとしていた。
店で糞尿をされては大変だ。僕はホースがある所にあったバケツをもってベビオニに近づいた。

「ワチワチ?」「ワッチョー」「ワチ?ワッチョー!」
と高い声で僕に近づいてきた。僕は一匹づつバケツに入れ、
ボースをバケツに向けた。
「ワチワチ?」「ワッチョー」「ワチョ?」
と状況を把握してなかった。そして僕は蛇口を全開にして水を流した。

535ロディウェイ:2008/05/03(土) 16:42:19 ID:fymts1Is
 ベビオニーニは、三匹そろって「ワチョー!!」と言い残しおかゆになった。
そこに今度はベビオニの親のオニーニが来た。
「ベビチャーーン!!ドコニイルワチョー!!」
そう叫んでいた。が、僕に気付いて接近し、質問してきた。

「ボ、ボクノベビチャンシラナイワチョ?!」
「いいえ、知りませんが?」
僕はそう答えた。だが、
「ワチョ?アノバケツニナニカハイッテルワチョ?!」
親オニーニはそういってバケツに近づこうとしたが、僕はそのオニーニを反対側に投げて、
ホースで手足を溶かした。
「ワチョーーーー!!イキナリナニスルウ、ン゛ブムムムムム」

僕は口を抑え、海苔を剥がした。
「クハ!、ワ、ワチョーー!!ノリカエシテーーーー!!」
そう叫んだが、僕は海苔を四枚に破った。
「アアーーーー!ノリガ、ノリガーーーー!!」
そう叫びながら涙と鼻水をたらしていた。

それから間入れずに肛門に手を入れて大腸を取り出した。
「アッガガイギュウーー!!オナカガヘンワチョーー!!」
親オニーニは苦しそうにもがいていた。

そして親オニーニをつかんでバケツの真上に上げた。
僕はこう言った。

「あなたの子供は地獄かバケツの中だと思います。」
そう言って親オニをバケツに落とした。

しばらくしてから、モラソールが戻ってきた。
「ただいまー、お仕事ご苦労さん。今日はもう休んでていいよ。
後は私がやっておくから。」
モラソールは机に向かい、カバンから何かのファイルを入れた。
 
 特に気になるようじゃないので僕は、ソファーに寝っころがった。

 続く

536へびぃ:2008/05/05(月) 02:23:51 ID:???
前編の際にコメントを下さった方々と、読んで下さった方々全てに感謝を込めて。


【流石兄妹の華麗なる休日〜百ベビ組手〜 後編】



「それにしても」

場所は、やはり競技場ゲート前。ひとしきり弟者の労を労った後、兄者が再び口を開いた。

「最後のグランドフィナーレは、凄まじかったよな・・・」

「ああ、全くだ」

「本当に凄かったのじゃ」

弟者と妹者も兄者に賛同する。

「最後に何かあるとは思っていたが、まさかあんな展開とはな・・・」

「うむ・・・」

そこで、3人はもう一度、閉会式を回想してみる事にした。



「―――特別審査賞は・・・挑戦者NO.09!料理人モナー選手です!!」

司会者の1人、ガナーが最後の入賞者を発表した。
いかにもコックといった姿のモナーが出てきて、もう1人の司会者、モララーから賞状を受け取る。
そして、そのまま4位入賞の弟者の横に並んだ。
表彰台の頂点にはトロフィーを掲げたつーが君臨している。その左隣、2位の席には銀色に輝くメダルを首から下げたおにぎりの姿が。彼は地元でも有名な虐殺者だ。
つーの右隣、3位の場所にいたのは、最初に虐殺を行ったラグビー少年のフサギコだった。やや緊張した面持ちで、ブロンズで出来たメダルを撫でている。
なお、5位に入ったのは自衛隊所属の丸耳ギコだった。彼の顔からは『何とか入れて良かった』という安堵感が滲み出ている。自衛隊の仲間と賭けでもしていたのだろうか。
全ての賞を発表し終えた司会者2人は、再びマイクを構え直した。

「以上で、結果発表を終わります!」

「入賞した方々と、惜しくも入賞を逃した選手の皆様にも、どうか暖かい拍手を!」

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

客席から大きな拍手が聞こえて来た。
拍手が大方止んだ所で、モララーが口を開く。

「それでは、このままグランドフィナーレへと移行させて頂きま〜す!」

その瞬間、観客席から凄まじいほどの大歓声が聞こえて来た。どうやら、相当楽しみにしていたようだ。
弟者が驚きながら周りを見渡すと、出場者達が全員、体をほぐしたり、武器を取り出したりと、何やら準備を行っている。
彼は慌てて、既に表彰台から降りているつーをせっついた。

「なあ、今から何をするんだ?何も聞いてないんだが・・・」

「アヒャ?アア、弟者ハ飛ビ入リダカラ知ラナイノカ。
 ・・・マア、見テロッテ。スグニワカルサ」

「・・・?」

弟者が変わらず首を傾げていた、まさにその時。
『あの』声が、スタンドに響き渡った。



「シィィィィィィィィ!ハナシナサイヨ、ギャクサツチュウ!」

537へびぃ:2008/05/05(月) 02:24:21 ID:???
骨髄まで到達しそうなほど不快感がびりびりと響く甲高い声。
スタンド中の視線が、フィールドへの入場口へと注がれる。
そこには、競技中に特別席で我が子の死に様をじっくりと観察させられた親しぃ達の姿があった。
その数、弟者から見えてるだけでも100匹以上。実際は倍以上いるだろう。それだけの数のアフォしぃが、

「ハニャーン!ハニャーン!ハナシテヨゥ!」

「シィノベビチャンヲ カエシテヨゥ!」

「シィチャンニ ナニカシタラ マターリノカミサ(ry」

「ダッコダッコォォォォォォ!!」

―――などと喚き散らしているのだから、五月蝿い事この上無い。
出場者達が、一様にニヤリと笑みを浮かべる。その瞬間、弟者は全てを理解した。

「・・・ナ?モウワカッタダロ?」

「ああ、よ〜くわかったよ」

弟者は言いながら、レンタルテーブルから先刻使用した小剣とハンドガンを引っ掴んだ。

「皆様、準備はよろしいでしょうか?」

ガナーの問いに、出場者達は『オーッ!』と一斉に返す。
ニヤニヤ顔のモララーが、一歩前に出た。

「それでは・・・グランドフィナーレ・開始っ!!
 思う存分殺りまくれェェェェェェェェェェェッ!!」

モララーの叫びと同時に、司会者2人がバックステップで司会席に戻る。
そして出場者達は、既にフィールド中央付近まで歩いて来ていた親しぃ達に、一斉に飛び掛った。

「ハニャッ!!?」

一番先頭に居た親しぃの短い叫び。それが、彼女の最期の言葉となった。

「アーッヒャッヒャッヒャ!!」

いの一番に飛び出したつーの放ったナイフが、その心臓を正確に抉ったからだ。

グシャッ!!

「ギャッ・・・」

そのまま親しぃはばったりと倒れ、もう動かなくなった。

「シィィィィィィ!?ギャクサツチュウダヨー!!」

「タスケテェェェェェェ!!」

「ベビチャンヲ カエシテェェェェ!」

「ハニャーン!ハニャーン!!」

「ハヤクシィチャンヲ ダッコシナサイヨ!」

怖がって逃げ出すしぃも居れば、今の一撃が見えなかったのか、横柄な態度を取るしぃも居る。
しかし、相手の事など関係なかった。どっちにしろ、殺すのだから。

「よし・・・つーに続くか・・・」

パァン!

弟者の狙い澄ました射撃が、ダッコを要求していた親しぃの眉間にぽっかりと風穴を穿たった。

「ダゴォォォ!?」

頭から血を噴きながら、しぃがその場に倒れ伏す。
それによって、その場に居た親しぃ達の殆どが状況を理解したようだ。

「ハニャァァァァァン!タスケテェェェ!!」

「ダッコスルカラ・・・ネ?マターリシヨ♪」

「コウビモシテアゲルカラ・・・」

「シィチャンヲ コロシタラ マタ(ry」

次々とお決まりの台詞を吐いていく―――全てが無駄だとも知らずに。
その瞬間、20人の選手達は、一斉に『虐殺者』の牙を剥いた。



「シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!?」

538へびぃ:2008/05/05(月) 02:24:43 ID:???
それはまさに地獄絵図だった。
際限なく飛び散る鮮血が、まるで雨のように大地を濡らす。
血だけじゃない。腕が。足が。耳が。上半身が。下半身が。首が。肉片が。
ありとあらゆる親しぃ達のパーツが、フィールドをデコレーションしていった。
出場者20人全員が全員、それぞれ違った方法で親しぃ達を次々と屠っていく。
例えば―――

グチャッ!グチャッ!!

「ハギィィィィィ!!ヤベテェェェェェ!!」

スパイクシューズを履いた足で、何度も何度も親しぃの腹を踏み潰すフサギコ。
しぃの腹部からは血が溢れ、見ても分かるくらいにブヨブヨと柔らかくなっている。内臓にも影響が出ているようだ。

ジュゥゥゥゥゥゥ!

「ア゙・・・ギャァァ・・・ギ・・・」

親しぃの腹部を切り裂いて腸を引きずり出し、その体と繋がったままの腸のみを油で揚げている料理人モナー。
体の内部にある筈の物をを高熱に晒す苦痛は想像し難い程だ。凄まじいという事はわかるが。

ブシュゥゥゥゥゥゥゥ・・・

「ジギャァァァァァァァァ!!イダイヨォォォォォ!!タスケテェェェェェ!!」

ドラム缶くらいの大きさの巨大ビーカーになみなみと濃硫酸を入れ、その中に親しぃを放り込んだ科学者じぃ。
もうもうと煙が立ち上り、水面には気泡を発する肉片がいくつも浮いている。親しぃ本体は、既に筋肉組織が露出して、それも半解している為かなりグロテスク。

ブリュリュリュリュ!!

「シィィィィィィ!!オシリガ イタイヨォォォォォォ!!」

ここでも自慢の唐辛子ペーストを使用して、親しぃをジェット機にして見せたニダー。
親しぃの脱肛した肛門からは津波の如く糞が噴出している。数秒後、その親しぃは猛スピードで壁に激突して潰れた。

ダッダッダッダッダッダ!!

「アギュゥゥゥゥゥ!!ハギャァァァァァ!!」

手にしたマシンガンで、しぃの体のパーツを1つずつ蜂の巣へと変えていく自衛隊丸耳ギコ。
両腕と片足は、すでにマトモな皮膚が弾痕に隠れて見えない。

ドグシャッ!

「ハギッ・・・」

両手持ちの大きなハンマーで、親しぃの頭部を一撃で砕いた銀メダリスト・おにぎり。
横薙ぎに振るわれた大槌は、しぃの頭をまるで力を入れすぎた西瓜割りのように粉々に吹き飛ばした。

「アーッヒャッヒャッヒャッヒャァァァァァ!!」

ザシュッ!グシャッ!!ブシャッ!!

「ギニャァァァァァァァァァ!!シィチャンノ カワイイ アンヨガァァァァァァァァァ!!」

若き覇者・つーは親しぃの足をつま先から千切りにしていく。
肉片が積み重なるたび、親しぃの悲鳴も増量していく。

スパァッ!ブッシャァァァァァァァ・・・

「ジィッ!・・・ア・・・シィィィィ・・・」

弟者は、持っていた剣で親しぃの頚動脈を見事に切り裂いた。鮮血が噴水の如く噴き出す。
さらに彼は、血を噴くしぃを抱えると、別の親しぃに向かってその大量の血を浴びせかけた。

「ハニャァァァァァァァァ!?ヤメテェェェェェェェェ!!キモチワルイヨォォォォォ!!」

悲鳴を上げるしぃ。あっという間に彼女の全身は真っ赤に染まった。
その他、選手達は多種多様な方法で親しぃ達を次々と我が子の元へと送ってゆく。
そう考えれば、それはある意味慈悲なのかもしれなかった―――送られる先が、多分地獄であるという事を除けば。

539へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:02 ID:???
数百匹居た筈の親しぃ達は、僅か5分程度で肉塊の山と化した。
フィールドは大量の肉片とおびただしい量の血液、そしてどぎつい異臭に覆われていた。
かなり劣悪な環境だったが、選手、観客共に大満足の表情だった。

「それでは、これで『百ベビ組手大会』を終了と致します!」

「選手の皆様も、観客の皆様も、本日はありがとうございました!
 また来年、このフィールドでお会いしましょう!!」

司会の2人が締めの言葉を発し、大会は閉幕となった。
閉会宣言の後も、暫くの間、盛大な拍手が絶えなかった。


―――以上、回想終わり。
暫くの間黙っていた3人だが、弟者が不意に口を開いた。

「・・・うん。やはり凄かったな」

「ああ」

兄者が答えた。とにかく凄かった―――それが3人の感想だった。まあ、的確といえば的確か。
ふぅ、と息をついてから、兄者が再び口を開く。

「・・・ま、なんだ。とりあえず何か食べに行くか」

言いながら、彼は時計を覗き込んだ。既に12時を回っている。
妹者が腹部を押さえながら呟いた。

「そういえばお腹空いたのじゃ・・・」

「そうだな・・・そうするか」

弟者も賛同した。実際、あれだけ運動すれば腹も減るというものだ。
兄者が先頭に立って歩き出そうとしたその時、後ろから声が掛かった。

「ヨウ!3人揃ッテナニシテンダヨ?」

振り返るまでもなく、3人にはその正体が分かった。この高い声、間違いない。

「おっ・・・チャンピオンのお出ましだな」

弟者が言いながら振り返ると、そこには顔を真っ赤にして恥らった様子のつーの姿が。

「ダ、ダカラソウヤッテ呼ブナヨ・・・恥ズカシイッテノ・・・」

「つーちゃん、おめでとうなのじゃ!」

妹者からの賞賛に、まだ顔を赤らめながらもつーが答える。

「アア、アリガトナ。弟者モ、初メテニシテハヤルジャネーカ。
 コレナラ、ゴキブリノ刑ハ勘弁シテヤルカ」

後半は弟者に向けられたものだ。
弟者は、頭を掻きながら苦笑。

「ははは・・・それは良かったよ。
 それより、つーはこれから何か用事でも?」

つーは即答した。

「イイヤ。暇デショウガナカッタトコロダゼ」

じゃあ、と兄者が言った。

「これから俺達は昼食なんだが、つーも一緒にどうだ。
 優勝記念だ、奢ってやるぞ?」

つーは、顔をぱっと輝かせた。

「ホントカ?ジャア、オ言葉ニ甘エヨウカナ」

「じゃ、行きますか、と」

返事を聞き届けた兄者が、踵を返して歩き出した。
弟者、妹者、つーの3人は、慌ててその後についていった。

540へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:20 ID:???
「・・・おい・・・」

兄者が苦悶の表情をしながら言った。弟者は呆れ顔、妹者は驚愕の表情を浮かべている。

「アヒャ。ナンダ?」

つーがご機嫌な様子で答える。

「・・・俺は、確かに昼食を奢ると言った」

「アア、言ッテタヨナ。アリガタク、ゴ好意ニ甘エテルゼ」

そこで兄者は、ふぅぅぅぅぅぅ、と長い長いため息をついた。

「だがな・・・」

一度言葉を切り、彼はそのまま続けた。

「―――食べ放題だなんて、一言も言ってないんだぞ・・・」

言い切ってから、彼は頭を抱えてしまった。
つーの目の前には、大量の空になった皿やら器が積み重ねられている。軽く二桁。
恐らく、これだけで状況を大体理解して頂けたと思う。
場所は、流石兄妹が来たときに休憩に使ったレストハウス。4人はここへ昼食を取りに来たというわけだ。
兄者、弟者、妹者は、それぞれ1品ずつ。弟者は少し多めに頼んでいたようだが、まあ普通だろう。
―――だが。つーの注文量は尋常では無かった。
何せ、注文を店員に伝える時の言葉が、

「メニューノ端カラ、全部1ツズツ!」

だったから。兄者だけでなく、弟者に妹者もこれにはぶったまげた。
自分たちよりも明らかに背格好の小さい(妹者は別だが)少女が、これだけの量を注文するなんて。
そして、彼女は店員が困惑の表情で運んできた料理の数々を全て平らげてしまった。
これだけの量だ、金額も相当なものになる筈だ。兄者は、己の軽率な発言を深く深く後悔した。
彼にとって不幸中の幸いと言えるのは、ここのメニューの数があまり多くなかった事か。
兄者が、げんなりした様子で財布を覗き込む。
足りるかどうか―――弟者も少し不安になった。いざとなれば、自分も資金援助をしなければならないかも知れない。
で、当の本人はというと―――ご満悦の表情で腹を撫でている。その顔に罪の意識は無く、兄者は怒る気にもなれなかった。彼女は天然だ。

―――5分後。外で待つ3人の元へ、何だか少しやつれた様子の兄者が戻ってきた。店員がついて来てない様子を見ると、資金はどうやら足りたようだ。

「アヒャ?兄者、ドウシタ。調子悪イノカ?」

兄者がげんなりしている様子を見たつーが、心配そうに声を掛ける。その声に悪意は感じられず、自分自身がその原因だという事にどうやら気付いていない。
彼女は、やはり天然だ。

「い・・・いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」

兄者が片手を上げて答えた。とても大丈夫には見えないが、とりあえずこの後も広場を見て回る元気は何とかありそうだった。
弟者はそう判断し、すたすたと歩き出した。その後を元気に妹者とつーが、よれよれと兄者がついてくる。

「さて・・・次はどこへ行くかな」

少し歩いた後、弟者がそう呟いて辺りを見渡した。その時、不意に妹者がある方向を指差した。

「ちっちゃい兄者。あれは何なのじゃ?」

3人が一斉に、妹者の指差した方向へ視線を持っていく。
その方向には、何やらでっかいガラス製の水槽のような物があり、中には透明な液体がたっぷりと入っている。
その手前には何やら大きな箱が置いてあり、傍らには白衣姿の女性が1人立っていた。
弟者は、その人物に見覚えがあった。

「あ。あれは・・・」

「『百ベビ組手』ニ出テタヨナ、アノ人」

つーも気付いたようだ。
そこに居たのは、『百ベビ組手』にも出場していた、科学者のじぃだった。

「何か店でもやってるのか・・・?」

何だか気になった4人は、彼女の元へと歩いていった。

541へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:38 ID:???
4人がその場所へ歩み寄ると、それに気付いたじぃが彼等の方を向いた。

「いらっしゃい・・・あら」

どうやら彼女も覚えていたらしい。まあ、片方は優勝者だから当たり前かも知れないが。

「さっきはどうも。2人とも、凄かったわよ」

ニコリと笑ってじぃが言った。弟者が一礼してから、口を開く。

「いやいや・・・貴方の方も、硫酸を使用しての『見せる』虐殺、見事でしたよ」

それを聞いたじぃは『ありがとう』と答える。
彼女は競技の時も白衣姿だった。歳は―――二十歳前後か。
その後聞いた話によれば、彼女は近くの研究所で働いているらしく、薬品の扱いにかなり長けているようだ。薬剤師の免許も持ってるとか。
暫く会話を楽しんだ後、弟者が訊いた。

「ところで、ここで何をしてらっしゃるのですか?」

質問を受けたじぃは、背後の巨大水槽を指差しながら答える。

「ちょっとした商売ね。簡単に言えば、景品つきくじ引きかしら。
 あの水槽も商売道具。ところで、あの中身・・・何が入ってるか、わかる?」

4人は少しの間シンキング・タイム。数秒の後、つーがおもむろに口を開いた。

「ヒョットシテ・・・アレモ硫酸?」

それを聞いたじぃは、パチンと指を鳴らして『ピンポーン!正解!』と言い放った。
そこで兄者が、ポンと手を打った。

「なるほど・・・大体読めたぞ」

「あら、お兄さんはわかっちゃったようね」

微笑を浮かべながら、じぃが言った。
ここで、じゃあ、と切り出したのはまたも弟者。

「その箱は一体・・・?」

弟者が言ったのは、水槽の傍らに置かれている大きなダンボール箱の事だ。蓋が閉じていて、中身は見えない。
そこで兄者が、ハイ、と手を上げた。

「弟者よ、俺が答えよう。間違ってたらスマン。
 その中身は恐らく―――」

兄者は一旦そこで言葉を切った。そして、そのまま続ける。

「―――ベビしぃ、ですね?」

「ご名答!!」

じぃが言いながら、ダンボールを開けた。それと同時に、箱からひょっこりと数匹のベビしぃが顔を出した。
そして、身をこっちに乗り出しながら、両手を突き出して、

「ナッコ♪」

お決まりの台詞。見れば、箱の中には数十匹のベビしぃが詰まっている。
口々にチィチィ、ナッコ、コウピ、と鳴いている。百ベビ組手を髣髴とさせる光景だった。
よく見ると、ベビしぃの背中にはそれぞれ番号が書かれている。

「ベビしぃに硫酸、そしてくじ引き・・・ああ、そういう事か!」

弟者もどうやら答えを見つけたようだ。

「ところで、幾ら?」

兄者が訊くと、じぃはピースサインを作りながら笑顔で言った。

「一回200円!・・・と言いたいところだけど。
 せっかくだから、半額におまけしちゃう。貴方達だけよ?」

ここまで言われては引くしかあるまい。4人は、彼女の好意に甘える事とした。

542へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:55 ID:???
4人で合わせて400円をじぃに手渡すと、彼女は小さめのホワイトボードを取り出した。
そこにはマス目が書かれており、端から順に番号が振られている。所々の番号の所に、マグネットが張られている。

「じゃあ、お好きな番号をどうぞ♪」

4人は少しだけ考えてから、それぞれ番号を決定した。

「う〜ん・・・16番」

「じゃあ、5番で」

「12番デ」

「25番なのじゃ!」

じぃは『了解!』と呟いてから、4人のコールした番号の所にマグネットを張り、それから箱を再び開ける。
中からチィチィと聞こえて来る箱に手を突っ込み、それを出した時には、彼女の手に1匹のベビしぃが。背中には『16』と書かれている。

「アニャーン ナッコチテ♪」

じぃの手に掴まれながら、ベビしぃが言った。
箱を閉じてから、彼女が再び何かを取り出す。今度はパネル。
そこには、簡単なイラストと一緒に賞の内容が書かれていた。
それによると、灰色の玉がハズレ、緑が5等、紫が4等、青が3等、黄色が2等、赤が1等。
景品が何なのかは書かれていない。当たってからのお楽しみ、という事だろう。

「でも、その玉とベビしぃと、一体何の関係があるのじゃ?」

妹者が首を傾げた。
兄者は、「見てればわかるよ」とだけ言い、じぃの次の行動を待つ。
彼女はその手にベビしぃを掴んだまま、硫酸入り巨大水槽の前に立った。
そして、ベビしぃを両手で持ち直す。

「ハナーン・・・ナッコデチュ・・・」

ベビしぃがうっとりと呟いた。まさに、嵐の前の静けさ。
じぃが、まるでバスケットボールをシュートするようにして、ベビしぃを掴んだ両手を顔の前へ持っていく。
そして彼女は、膝を軽く曲げ、十分反動を付けてから―――

ヒュッ!

―――ベビしぃを投げた。水槽の中へ向かって。

「アニャーン!」

投げられたベビしぃは弧を描き、ある程度上昇した後、一直線に水槽の中―――硫酸プールへ落ちていく。

ドボーーン!!

ベビしぃが強酸性の飛沫を上げながら、透明な液体の中へ飛び込んだ。次の瞬間。

ブッシャァァァァァァ!!

もうもうと上がる煙。そして、

「ヂュギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」

即座に聞こえて来る、ベビしぃのあまりに悲痛な叫び。

543へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:17 ID:???
「おお〜っ・・・」

弟者が感嘆とした様子で呟いた。
今まさに、水槽の中ではベビしぃが強力な酸によって溶かされている。
既に全身の毛皮は完全に溶解して消滅、もがいている為に酸に浸かったり浸からなかったり、の上半身はまだ見られるが、
ずっと浸かりっぱなしの下半身は表皮のみならず真皮まで溶解を始めている。筋肉組織がまる見え、ああグロテスク。

「マンマァァァァァァァァァ!!ダヂュケテェェェェェェェ!!!!ナゴナゴォォォォォォォ!!!」

ベビ自身から噴出した血液で少しだけ赤く染まった水槽内の硫酸。
バチャバチャともがくベビの周りには、既に体から離れてしまった肉片がプカプカと浮き、それすらも煙を上げて溶けている。
見れば、ベビしぃの足は既に肉が消滅して白い骨がまる見え、そして溶解を始めている。
ベビしぃは一刻も早くこの生き地獄から逃れようと、硫酸に塗れた手で水槽の壁面を引っかくが、半溶解した手でツルツルしたガラスを登る事など到底不可能。

「ナゴォォォォォ!!ナッゴォォォォォォォォォ!!!!ヂィィィィィィィィ!!!」

ベビしぃの足は既に消滅していた。付け根が辛うじて残っている程度だ。
やがて、ベビしぃの下半身から紐状の何かが出てきた。
よく見るとそれは、下半身が溶解したために体外へと零れ出てきた腸だった。
全身を強酸で焼かれるという激痛に、更に内臓を溶かされる苦痛が追加。さあ大変。

「ナ、ナ、ナ、ナッギュォォォ・・・アギィィィ・・・ヂ・・・」

あれほど五月蝿かったベビしぃがやけに静かになり始めた。命の灯火もそろそろ消える頃か。
はみ出していた腸も既に溶解し、腕の骨も露出し、顔に至っては口の形が完全に崩壊し、眼球は片方が潰れて目漿が流れ出している。
ベビしぃが再び叫びを発しようとして崩れた口を抉じ開けた瞬間、歯が何本もぼろぼろと落下した。歯茎が溶けているらしい。

「・・・うぅ〜・・・」

妹者が口元を押さえて、水槽から顔を背けた。11歳の少女にこの光景は流石にショッキング過ぎた様だ。
兄者はよしよし、と妹者の頭を撫でてやってから、水槽の中で確実に消え行くあまりに矮小な命を見つめた。

「ギャ・・・ヴィィィィ・・・ビャ・・・ヂ・・・」

どろどろに溶けた口では、まともに発音する事も出来やしない。
開いた口から硫酸が喉へ流れ込み、声帯までも潰されたらしいベビしぃは、

「・・・ガァ・・・」

と呟いたのを最後に、喋らなくなった。
それと同時に、パタパタと動いていた腕もその動きを停止し―――ベビしぃはついに、抗う事を止めた。
口がパクパクと動いている事からまだ生きているようだが、最早その体はただ溶かされるのを待つだけ。
ベビしぃの全身を気泡と煙が包み込み、『ジュワァァァァァ』という音が一層激しくなって、やがて―――

シュゥゥゥ・・・

ベビしぃは完全に『消滅』してしまった。骨の一欠片も残さずに。
―――否。ベビしぃのいなくなった水面に、何かが浮かんでいる。
それは、5等に当選した事を示す、緑色のガラス玉だった。

544へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:34 ID:???
兄者に『もう大丈夫だぞ』と声を掛けられた妹者を含めた4人は、暫くの間水槽を見つめていたが、

「は〜い、おめでとう。5等当選ね」

パチパチと手を叩きながらじぃが言ったので、そっちを振り向いた。

「5等の景品は―――はい。モナ・コーラ2リットル3本よ。
 あんまり揺らさないように持って帰ってね」

そう言って、彼女は兄者に大きなペットボトルが3本入った袋を渡した。
兄者は軽くお辞儀をしながらその袋を受け取る。そこでじぃは、再び箱に手を突っ込んだ。
そして彼女は、一度に3匹のベビしぃを掴み出した。それぞれ背中には「5」「12」「25」と書かれている。

「ナッコ!ナッコ!」

「チィヲハヤク ナッコシナチャイ!」

「ナッコチテ チィタチニ チュクシナチャイ!コノ カトウセイブチュドモ!」

口々に喚くベビしぃ達。つーはその言動に早速キレかかっているらしく、ナイフを取り出そうとして弟者に止められた。
「まぁまぁ」と苦笑しながらつーを宥めつつ、じぃがベビしぃを掴んだ手を軽く振った。

「どうせすぐにGo to hellなんだから、少しくらい言わせてあげたっていいじゃない」

そして、水槽に向き直った。
その横で、妹者が兄者に問いかける。

「兄者、あのガラス玉はどこから出てきたのじゃ?」

兄者が答えた。

「簡単な事だ、妹者。ベビしぃが溶けた後に、その場所にあの玉が現れたんだ。
となると、どこから来たかなんて訊くまでも無いだろう?」

妹者がハイ!と手を上げた。

「わかったのじゃ!あのベビしぃのお腹の中!」

「ピンポ〜ン!」

兄者の代わりにじぃが正解を告げ、それと同時にベビしぃ達を順番に水槽へ放っていった。

「チィィィィィィィ!」

「ナッコォォォォォ!!」

「ハナーン?」

宙を舞うベビしぃ3匹。迫る水面。それはベビしぃ達を確実に冥府へと誘う、地獄への入場門。
そして―――

ドボドボドボォォォォン!!

弟者が選んだ5番のベビしぃは水槽の中央よりやや右寄りに、つーが選んだ12番のベビしぃは水槽の中央付近に、
妹者の選んだ25番のベビしぃは水槽の左端に、それぞれ飛び込んだ。

ブッシュゥゥゥゥゥゥゥ!

その瞬間、同時に3箇所から煙が立ち上り、

『ヂギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!???』

三重奏(トリオ)の悲鳴が、5人の耳を打った。

545へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:56 ID:???
「( ゚д゚)トケター」

つーが呟いている間にも、ベビ達の肉体は溶解してゆく。
最初の犠牲者であるベビと同じように、表皮、そして皮膚がどろどろに溶けて内部組織がまる見えだ。

「ヂギィィィィィィィィィ!ナゴォォォォォォォ!」

濃硫酸で溺れるベビ達の悲痛な叫び。そんなに大口開けて、口から硫酸が流れ込んだらどうするのか。
―――まあ、どちらにせよ死ぬからそんなに変わりは無いか。
と、ここで珍事が起きた。

「ヂィガタスカルノ!アンタガ ヂニナヂャイヨォォォォォ!」

「ヂュィィィィィ!!ガブッ、モゴボゴゴゴゴ・・・」

12番のベビが、5番のベビの上に乗っかるような形になっている。つまりは、自分が溶かされる苦痛から逃れるための足場になれと言う事だ。
何と、この極限状態においても自らが助かる為の醜い争い。だから、どっちにせよ死ぬんだってば。
で、どうなったかと言うと―――

「ゴボォォォォォォ・・・モギィィィァァァ・・・」

「ヂィィィィィィ!ナンデ シズムデチュカァァ!?マターリ デキナイデヂュヨォォォォ!!」

乗っかられたベビは全身が硫酸の海に沈み、まともに身動きも出来ぬまま硫酸攻め。
殆ど無事だった顔面も酸に浸かり、溶解を始めた。口、目にも硫酸が流れ込んだ。恐らく、もう目は見えまい。
乗っかった方のベビも、引き続き濃硫酸に悶え苦しむ結果に。
当然である。いくら浮力があるとは言え、ほぼ同質量のベビが乗れば沈むのは必定だ。
耐え難い苦痛によって冷静な判断力を失ったベビに―――いや、そうでなくとも、ベビしぃ如きにそれを考える事など不可能だった。

「ヂュァァァァァァ!ダヂュゲデェェェェェ!!」

乗っかっていた12番のベビがついに5番のベビの上に乗っていられなくなり、再び硫酸プールに全身を放たれた。
5番のベビはようやく解放された訳だが、もう遅すぎた。
際限なく浮き沈みを繰り返し、何も見えず、声も出せず、ただ溶かされるだけの肉塊となっていた。
どろり、と目があった位置に空いている穴から、半熟卵を思わせる様子で半解状態の眼球が流れ落ちた。
全身から泡を発し、浮き沈みを繰り返す物体。それはまるで―――

「―――天ぷら揚げてるみたいだな」

弟者がぼそっと呟いた。その横で、じゅる、とヨダレを啜る音が聞こえたので見ればそれは妹者で、彼女は弟者の腕を引いて、

「ちっちゃい兄者、今日の晩御飯は天ぷらがいいのじゃー」

と言った。水槽内で繰り広げられる地獄絵図とはまるでそぐわないほのぼのした台詞で、皆の笑いを誘った。
先程はそのグロテスクな光景に顔を苦くした妹者だったが、もう平気らしい。
精神の足腰の強さも母者譲りだな・・・と、兄者と弟者はこっそり顔を見合わせ、小さく肩を竦めたのだった。

546へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:15 ID:???
「ギュガァァァァァァァ・・・」

12番のベビが、およそベビしぃらしからぬ奇声を上げる。
耳が溶けて無くなった丸い顔。内臓がはみ出した腹。黒目が無くなり、常に白目を剥いた目。
奇声を発する為に開けた口から多量の硫酸が流れ込んだ。最初のベビと同じパターンだ。これでもう奴は喋れない。
硫酸を飲み込んだベビしぃは、喉を焼かれるショックでついに最後の体力を使い果たしたらしく、

「・・・グゲェ・・・」

と発したのを最後に、うつ伏せ状態で沈んでいった。

「終わったな」

「ああ、後は結果待ちだな」

兄者と弟者の会話。ベビ達はもう全員息絶え、後は肉体が滅するのを待つだけだった。
―――あ、そうそう。25番のベビは、水槽の隅っこで誰からも注目される事無く孤独に生涯を終えてましたとさ。(w

シュゥゥゥゥゥゥ・・・

暫くは皆無言で、肉の溶ける音を黙って聴いていた。
やがて煙が晴れ、音も止んだ。それは、ベビしぃの肉体の完全消滅を表していた。
兄者以外の3人は、自分自身が選んだベビしぃが居た位置へ視線を走らせた。
弟者が選んだ5番のベビが居た所には、灰色のガラス玉。

「む、外れたか・・・」

ちょっと残念そうに、弟者が呟いた。

「残念だったわね。そうそう、ハズレの場合はポケットティッシュなんだけど・・・せっかくだし、多めにあげちゃおうかな」

そう言ってじぃは、ポケットティッシュを弟者に10個も渡した。おそらく通常は1個か2個だろう。

「ど、どうも・・・」

弟者は苦笑しながら、それを受け取った。手からこぼれて落ちそうになったティッシュを慌ててキャッチする。
一方、つーが選んだ12番のベビが居た場所。そこには、青色のガラス玉が浮いていた。

「アヒャ!当タッタミタイダナ!何等?」

嬉しそうにつーが訊いてくるのを聞き、弟者が先刻じぃが出したフリップに目を走らせる。

「えーと・・・青は3等だな。良かったな、つー」

「アッヒャッヒャッヒャ!今日ハツイテルナー」

笑うつーの元へじぃが駆け寄った。

「おめでとう!3等はこれよ」

そう言って彼女が差し出したのは、3000円分の食事券だった。
思わずビクンッ!と兄者が体を竦ませた。先刻の昼食時の悲劇を思い出したのだろう。

「・・・なんつーか、ベストチョイスだな。偶然ではあるけどさ」

弟者が兄者とつーを交互に見ながら苦笑した。

「アリガ㌧!コレデ、後デ何カ食ベテクルゼ」

まだ食べる気なのか、と兄者は、別に自分が奢る訳では無いのに肩を落とした。

547へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:31 ID:???
残るは妹者の選んだ25番のベビだ。水槽の端に投げられ、誰にも気付かれず死んだとあって、ここからではガラス玉を確認出来ない。

「こっちの方か?」

兄者が先頭で、水槽の右側に周った。

「お、あったあった・・・おおっ!」

兄者がガラス玉を確認すると同時に、驚きの声を上げた。
水槽の壁面に水飛沫がやたら跳んでいた。恐らくここが、ベビしぃが絶命した場所と見て間違い無いだろう。
そしてそこには―――

「―――赤い、ガラス玉・・・て事は、1等か!?」

そう、そこには赤いガラス玉があった。
つーが持ってきたフリップを見ると、確かに赤い玉の横には『1等』と書かれている。

「わーい、やったのじゃー!」

ピョンピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現する妹者。

「おめでとー!1等当選者は初めてよ」

じぃが、何時の間にか取り出したハンドベルをチリンチリンと鳴らした。
ひとしきり鳴らし終えると、彼女は水槽の反対側へ姿を消し、すぐに戻ってきた。その手には小包。

「1等景品は何と!最新ゲーム機のニソテソドーGS!はい、どうぞ」

「良かったな、妹者」

説明しながら、彼女は小包を妹者へ差し出した。

「ありがとうなのじゃ!」

喜色満面、という四字熟語がこれ以上似合う表情も無いだろう、というほどの笑顔で包みを受け取る妹者。

パチパチパチパチパチ!

何時の間にやら集まっていたギャラリーから暖かい拍手。
百ベビ組手会場に続き、再び拍手喝采を浴びた妹者は、またも顔を真っ赤にして兄者の影へ隠れてしまった。
観衆からどっ、と笑いが起こった。

548へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:57 ID:???
「それじゃ、色々どうも有難う御座いました」

「バイバイなのじゃ!」

「また会いましょうね。それと、薬を使う機会があったら、うちの薬をヨロシク!」

そんな会話を最後に科学者じぃと別れた4人。
少し歩いてから、兄者が3人を振り返って尋ねた。

「さて、これからどうする?」

「もう少し遊びたいのじゃ!」

妹者が即座に答えた。

「まあ、時間もまだあるし・・・もう1箇所くらいなら周れるんじゃないか?」

弟者が言いながら、腕時計を確認する。時刻は午後3時。

「ン、モウソンナ時間ナノカ・・・悪イ、モウ帰ラナイト」

つーの言葉に、妹者が残念そうに唇を尖らせた。

「えー、もう帰っちゃうのじゃ・・・?」

「引キ止メテクレルノハアリガタイケド、用事ガアルカラナ・・・マタ遊ンデヤルカラ、勘弁シテクレッテ」

つーが言いながら、妹者の頭を撫でる。

「・・・わかったのじゃ。また遊んで欲しいのじゃ!」

「ワカッタヨ、約束スル。ソレジャ、マタナ」

つーは今度は兄者と弟者の方を向く。

「ああ、また明日、学校でな」

「またな。・・・言っとくが、今度は奢らないぞ・・・」

笑顔で返した弟者と、ややげんなりした顔の兄者。

「アヒャヒャ!マタ会オウゼッ!」

対照的な2人の表情に思わず笑ってしまってから、つーは3人に背中を向けた。
彼女の小さな背中が人混みに紛れ、完全に見えなくなるまで見送ってから、弟者が切り出した。

549へびぃ:2008/05/05(月) 02:28:27 ID:???
「さて、俺達はどうしようか?」

「まだ遊びたいのじゃ!」

妹者が即座に返した。
だろうな、という表情を作ってから兄者は、

「そうだな・・・もうあまり時間も無い。短い時間で楽しめるような出し物でもあればいいが・・・」

そう呟きながら、パンフレットに載っている地図を人差し指でなぞる。
その指が、ある一点で止まった。

「ん?『妊娠しぃdeお御籤』てのがあるぞ。何やら気になるな・・・」

「どれどれ」

弟者が横合いから地図を覗き込んだ。

「お、ここからすぐ近くじゃないか。せっかくだ、行ってみるか?」

「さんせーなのじゃ!」

妹者も即決だった。
かくして3人は、地図を頼りに再び歩き出した。




「ここだな」

兄者が言った。
地図上の場所へ行くと、運動会なんかで使用される白テントが張ってあり、テーブルが1つ、2つ。
そこには受付兼案内役らしい1さんが座っている。『お御籤』の名を冠するに相応しく、袴姿だ。

「いらっしゃい。『妊娠しぃdeお御籤』へようこそ。やってくかい?」

3人に気付いた1さんがにこやかに笑いかけながら口を開いた。

「宜しくお願いします」

兄者が頭を下げ、弟者と妹者もそれに倣う。
しかし、兄者はここで妙な事に気付いた。
テントを見渡しても、その肝心のしぃの姿が1匹もいないのだ。
『妊娠しぃ』と言うからには当然しぃを使うのだろうが、姿が見えない。何故だろうか。
しかし、その疑問はすぐに解消される事となった。
すっく、と1さんが立ち上がりながら言った。

「それじゃ、ついてきてくれるかな」

そして彼はテントを出、その裏に回った。
3人は慌ててその後を追っていく。

550へびぃ:2008/05/05(月) 02:28:49 ID:???
テントの裏に回った3人が見たもの。それは―――

「ハニャーン!ハニャーン!ハナシナサイヨゥ!」

「シィチャンニ コンナコトシテ タダデスムト オモッテルノ!?」

「ハヤク コノナワヲ ホドイテ ダッコシナサイ!」

耳から入って直接脳を刺激するストレス。アフォしぃ特有の甲高い声だ。
それは、異様な光景だった。
そこら中に木が生い茂っている、ちょっとした林のようなエリア。
その木にはロープが括り付けられ、その先には何と、しぃが吊り下げられているのだ。
しかも、どのしぃも腹が大分膨らんでおり、一目で妊娠しているとわかった。膨らみ具合からして、もう数日もしない内に生まれるだろう。
ロープはしぃの両腕と両足に括られ、大の字をさせるような格好だ。

「・・・なるほどね。大体読めたぞ」

「お、お客さん、勘がいいね」

兄者の呟きを聞いた1さんが笑顔を見せる。兄者の勘の良さはここでも冴え渡っているようだ。

「ねーねー、どうするのじゃ?」

妹者が兄者の腕を引きながら尋ねると、

「今説明してくれるみたいだぞ」

代わりに弟者が答えた。

551へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:08 ID:???
「えと、じゃあ説明しますね。と言っても、そちらのお兄さんはもう解ってしまわれたようですが・・・」

1さんが苦笑しながら続ける。

「やり方は簡単です。あそこにぶら下がっているしぃの腹部を、思いっきりどついて下さい。
 どんな方法をとっても結構です」

「え?え?えっと、つまり・・・」

妹者が考えながら言った。

「あのしぃのお腹を、叩いたり蹴ったり、すればいいってことなのじゃ?」

「その通りですよ、お嬢さん」

1さんがまた笑顔を見せる。

「それが、どう『おみくじ』と関係があるのじゃ?」

妹者が首を傾げたが、弟者が言った。

「まあ、やってみればわかるさ。ほら妹者、お前が一番だ」

「わ、わかったのじゃ!」

妹者は一旦考えるのを止め、吊り下げられたしぃの内の一匹に向き直った。

552へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:31 ID:???
「ハニャ!ナンナノヨ!シィチャンニ ナニカシタラ ユルサナインダカラネ!」

「ダッコシナサイヨ!ダッコダッコダッコ!」

「コンナンジャ ベビチャンモ ウメナイジャナイノ!」

「ソウヨ!シィチャンタチハ カワイイ カワイイ ベビチャンヲ ウンデ マターリスル ギムガアルノヨ!」

「ハニャーン!ハニャーン!」

「う、うるさいのじゃ・・・」

妹者が耳を軽く塞ぐ。
弟者が「まあまあ」と言いながら、妹者の肩をポン、と叩いた。

「これから黙らせてやればいいじゃないか。思いっきりやってこい!」

「りょーかいなのじゃ!」

妹者は手を耳から離すと、気合の入った表情を作った。
そして未だハニャハニャと騒ぐ左端のしぃを向き、いきなり走り出した。
ちなみに妹者はかなり足が速い。50m走を7秒3で走る。クラスどころか学校一の俊足だった。
彼女の体育の成績は、1年生の1学期から常に『5』だ。

「ハ、ハニャ!ナンナノヨ!コッチ コナイデヨゥ!」

妹者の剣幕に、しぃが怯えの表情を見せた。

「ひぃぃぃぃぃっさつぅぅぅ・・・」

妹者が叫びながら、あっという間にしぃとの距離を詰めた。
そして、あと僅か2,3mの所で、妹者は跳躍した。

「妹者ドロップ、なのじゃぁぁぁぁっ!!」

妹者の気合の叫び。そして―――

553へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:48 ID:???
ドギュゥッ!!

思いっきり肉を打ったような、それでいて何かが圧迫され、軋むようなくぐもった音がした。
妹者の両足が、深々としぃの膨らんだ腹部にめり込んでいた。何とも華麗なドロップキック。

「グギュゥゥゥゥ!?」

しぃが眼球が零れ落ちそうなほど大きく目を見開き、これまたくぐもった悲鳴を上げる。
しかし、妹者の攻撃はこれで終わらなかった。
片膝をついて着地した妹者は素早く立ち上がると、左手を右手に被せるようにし、肘を広げた。
しぃに対して横を向くような形だ。
その瞬間だった。妹者が、動いた。

「ひじうちっ!!」

ドムッ!!

「ゴギョォオォォォ!!?」

叫びと共に放たれた肘打ちは、これまたしぃの腹部に深々と突き刺さった。
異様な悲鳴を上げるしぃ。
さらに妹者は、スカートの裾を翻しながらその場でくるりと一回転。

「うらけんっ!!」

ドグチュッ!!

「オギィィィィィ!!?」

回転しながら放たれた見事な裏拳。しぃの横腹に強烈な一撃。
この時から、打撃された際の効果音に、何やら柔らかいものが潰れたような音が混じりだした。
さらにさらに。妹者は裏拳ついでに、再びしぃを正面へと見据えた。
肘打ちの状態から270°回転した形だ。
間、髪入れず、妹者の右腕が唸りを上げた!

「せいけんっ!!」

ドブチョッ!

「アギィェェェェェェッッ!!!?」

妹者の正拳突きは、これまたしぃの妊娠っ腹にクリーンヒット。
聞くに堪えない悲鳴を上げ、身悶えするしぃ。のた打ち回ろうにも、ぶら下がっているのだから出来る筈も無い。
だが、まだ終わらない。
妹者は突き出した右手を戻すと、最後の攻撃を繰り出すべく、息を大きく吸った。

「ジィィ、モ、・・・モウ、ヤメ・・・」

しぃが微かに呻くような声を上げたが、その瞬間の妹者の叫びに掻き消された。

「とぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ、なのじゃっっ!!!!」

妹者の必殺の蹴りが、しぃの腹部に詰まった、小さ過ぎる命を完全に叩き潰した。



グブチャッッ!!!!

554へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:09 ID:???
「ギュァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!??」

しぃの醜い悲鳴が木霊する。そして、苦痛を既に通り越したような凄まじい表情を浮かべた。

「・・・た、たくましいお嬢さんですね・・・」

呆気に取られた1さんが、ははは、と笑いながら言った。兄者と弟者は顔を見合わせた。

「・・・弟者よ」

「・・・なんだ、兄者」

「俺達が思っていたより、妹者の中の母者の遺伝子は濃いようだな・・・」

「・・・ああ、俺もそう思う。末恐ろしいな、これは・・・」

ぼそぼそと会話を交わす2人の元へ、素晴らしく晴れやかな表情の妹者が駆け寄った。

「い、妹者・・・楽しかったか?」

兄者が訊くと、妹者は今現在のしぃとは対極的なとても爽やかな笑顔を浮かべて、

「うん!スッキリそーかい、なのじゃ!」

そう言いながら、頬を伝った汗を手の甲で軽く拭った。
ニコニコと笑う妹者はいつもの妹者で、先程までの武道家を思わせるような気迫は微塵も感じられない。
と、その時だった。

「イギィィィィィィ・・・ア・・・ウ、ウマレルゥゥゥ・・・」

妹者にフルボッコにされたしぃが、呻くような声を上げていた。凄まじい衝撃を腹部にあれだけ何発も叩き込まれれば、流石に産気づくというものだ。

「おや、お御籤の結果が出ますよ?」

それに気付いた1さんが3人に向かって言った。

555へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:25 ID:???
「ハニ゙ャァァァァ・・・ア゙ア゙ァァァァァ・・・ジィィィィィ!!」

先程までは丸く大きく膨れていたしぃの腹は、今やボコボコだった。
そこここに隆起や凹みが見られ、皮が剥けていたり、痣が出来てたり。
中に詰まっているのは、言うまでも無くベビしぃだ。無論、とても柔らかい。
あの腹の変形具合を見ずとも、中身がどうなっているかは容易に想像が付いてしまう。

「ハギャァァァァァン!!ウギャァァァァァァ!!」

しぃの悲鳴が段々と大きくなっていく。妹者は再び、耳を軽く塞いだ。
4人が固唾を飲んで見守る中、ついにしぃはその時を迎えた。

「アァァァァァ・・・ハニャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

その絶叫と共に、しぃの股間から何かが溢れ出した。
『それ』は見た目にはまるでヘドロのような流動性の物体。
そして―――

グチャッ!!

―――落下。吊り下げられたしぃの真下に、『それ』は落ちた。

「ギィィィィィ・・・ジギャァァァァァァ・・・」

不自由な手足を蠢かせ、尚も力むしぃ。股間からは、まだまだその物体が溢れ出てくる。

ビチャビチャビチャッ!!

出てくる傍から、次々と落下していく物体。すぐに、辺りを異臭が漂い始める。

「ハギャァァァァァァァ!!」

まるで断末魔のような悲鳴を上げて、そのしぃは腹に残った物体を全てぶちまけた。

ベチョッ!

最後にそう音を立てて、『それ』の落下は止まった。

556へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:51 ID:???
「シヒィィィィィィィ・・・シヒィィィィィィィィィ・・・」

肩で息をするしぃ。激痛を伴った『出産』に、殆どの体力を奪われたようだ。
そのしぃの周りに、4人が駆け寄った。勿論、落下した『それ』を確かめるためだ。

「うえぇぇ・・・気持ち悪いのじゃ・・・」

妹者が口元を手で押さえた。当然のリアクションと言えるだろう。
そこに落ちていた物―――今そこで吊られているしぃの、腹の中にあったもの。
つまり、ベビしぃ―――いや、正確には、『ベビしぃになるはずだった物』―――。
―――ヘドロか、はたまた何かの肉のミンチか。
正直な話、何も知らなければ、それにしか見えない物体。
赤や茶色を中心とした色彩の、半固体、半液体の流動性の物体。
所々にアクセントを加えるように混ざる白色は、骨や歯だろう。また、非常に分かり難いが、耳の様な物も確認出来る。
そんな異形の物体の中に、兄者はベビしぃの出来かけの目玉を見つけた。それだけでは無く、その不気味な目玉とまっすぐ目が合ってしまい、思わず兄者は素早く目線を逸らした。
『百ベビ組手』や、先刻の『景品付きベビしぃくじ』を体験した3人が見ても、最早ベビしぃの原型は殆ど留めていない。また、これが何匹分のミンチなのかも。
しかし、こういった仕事に慣れているらしい1さんは、「ひい、ふう、みい・・・」と数えていく。
そして数え終わったらしい彼が、妹者に笑顔を向けた。

「お疲れ様でした。全部で6匹、腹の中にいたようですね」

「ろ、6匹も・・・なのじゃ?」

「おいおい、6匹だって?」

「いくらアフォしぃでも、6匹も一度に生むってのは、かなり珍しいんじゃないか・・・?」

驚きの表情を浮かべる3人。だが、それも頷ける。
いくらしぃの繁殖力が凄まじいとはいえ、一度に生む数は平均的に2〜3匹が多い。4,5ならまだしも、6匹も一度に生むというケースはかなり珍しいのだ。

「6匹もいたというのは、とても珍しいですからね・・・普通のお御籤で言えば、これは確実に大吉、でしょうな」

1さんがそう告げると、妹者はパッと顔を輝かせた。

「ホントなのじゃ!?」

「良かったな、妹者」

弟者がそう言うと、1さんはさらに続けた。

「徹底的に叩き潰されてますね。これは健康運が高まっている証拠なんですよ」

「うん!元気もりもり、なのじゃ!」

「まあ、あれだけ暴れられるならな・・・」

兄者の苦笑。

「しかも、目玉が潰れずにちゃんと残っている。これは金運が素晴らしいですね」

1さんの言葉を聞き、妹者が何かに気付いたような表情を浮かべる。

「そういえば、ゲームが当たったのじゃ!」

そして、先刻じぃから貰ったゲーム機を見せると、1さんは満足げに頷きながら言った。

「おお、それはそれは。あながち間違っていないでしょう?」

「それどころか、バッチリ当たってるよな・・・」

弟者が驚き半分、苦笑半分といった表情を浮かべた。
はははは、と笑いあう4人。その背後で、

「シィィィィィ・・・ハッ!ベビチャン!シィチャンノ カワイイ ベビチャンハ!?」

半ば放心状態だったしぃが、目を覚ました。

557へびぃ:2008/05/05(月) 02:31:16 ID:???
「あ〜あ。目を覚まさない方が幸せだったかもしれないのにな・・・」

兄者がぽそりと呟いた。
と、1さんが「ベビチャンベビチャン」と騒ぎ立てるしぃに歩み寄り、言った。

「ベビちゃんに会いたいですかな?」

「ハニャ!サテハ アンタガ シィチャンノ ベビチャンヲ カクシタノネ!?
ハヤク コノ カワイイ シィチャンノ カワイイ ベビチャンニ アワセナサイヨ!アトダッコ!」

憮然とした表情でしぃが捲し立てる。最後にきっちりダッコを要求するのがなんとも。

「・・・わかりました。そこまで仰るのなら・・・」

1さんがそう言いかけた時、弟者が1さんにステンレストング(要するに空き缶拾いに使うアレ)とスコップ、そしてバケツを渡した。テントから持って来たらしい。
これで、直接手で触れることなく、ベビしぃ―――しぃの真下に散乱する物体―――を集め、持ち上げる事が出来る。

「お、これはどうも。―――それじゃ、暫しお待ちください」

「ハヤクシナサイヨ!マッタク コレダカラ カトウAAハ テギワガワルクテ コマルワ!」

減らず口を叩くしぃをスルーし、1さんは吊るされたしぃの体の下に潜り込んだ。
そしてスコップを駆使し、素早くドロドロした残骸を集めていく。

「妹者も手伝うのじゃ!」

妹者がそう1さんに言うと、1さんは笑顔を投げかけながら、

「有難う御座います。しかし、お気持ちだけで十分ですよ。ここは私にお任せを。
 そのお可愛らしいお洋服が汚れてしまうかも知れませんし、ね?」

優しい口調で答えた。その手には、彼の口調にはまるで似合わないおぞましい物体。
最後に、ギリギリで形を保っているように見える、ベビしぃの頭蓋骨のような物をトングでバケツに放り込み、1さんの作業は完了した。
残骸があった場所には血や羊水等の体液によって作られた染みが生々しく残っており、まだ肉片も所々に残っていたが、殆どの残骸がバケツの中へと移植されていた。
ふぅ、と一息ついてから、1さんはしぃに声を掛けた。

「―――お待たせ致しました」

558へびぃ:2008/05/05(月) 02:31:37 ID:???
「ズイブント ジカンガ カカッタジャナイノ!」

文句を垂れるしぃに対して、1さんは笑顔を作る。

「申し訳御座いません。あなたのベビちゃんがあんまり可愛らしかったので、つい見とれてしまいまして」

「フン!コノ カワイイシィチャンノ ベビチャンナンダカラ トウゼンヨ!アンタミタイナ カトウAAニ ジロジロミラレタラ ベビチャンノ キョウイクニ ワルイワ!
・・・マア、イイワ。シィチャンハ ウチュウイチ ヤサシイカラ ユルシテアゲル。ハヤク ベビチャンヲ ミセナサイ!」

好き勝手に喚き散らすしぃに対し、妹者が怒りの表情を見せた。

「む〜。1さんにあんな事言うなんて、許せないのじゃ!もう一回、妹者ドロップを・・・」

そして、しぃに向かって行こうとする妹者を、弟者が止めた。

「ま、まあ待て妹者よ。ここは1さんに任せようじゃないか」

「・・・わかったのじゃ」

そう言って彼女は、素直に再び弟者と兄者の横へ戻った。
当の1さんはと言うと、好き勝手に言われながらも表情1つ変えず、しぃに見えないように、バケツを自分の傍へと寄せていた。

「それじゃ、今お見せしますからね」

1さんの言葉に、

「ハニャーン♪ベビチャン、イマ オカアサンガ ナッコシテ アゲルカラネ♪」

しぃの表情が緩む。先程から「チィ」や「ナッコ」の一言も聞こえないのに、まるで疑っていない。
1さんがバケツを持ち上げる直前、彼は3人の方を向き、ウインク1つ。

「は〜い、ごたいめ〜ん!」

「ハニャーン!ベビチャ・・・」





シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!???????

559へびぃ:2008/05/05(月) 02:32:21 ID:???
1さんがしぃに向かって差し出した、例の物体入りのバケツ。
その中身を直視したしぃは、『百ベビ組手』の観客達全員分の歓声並みの絶叫を上げた。

「ナ・・・ナッ、ナッ・・・ナニヨ、コレェェェェェェェェェ!!!?」

「何って・・・あなた、自分で言ってた事も忘れてしまわれたのですか?あなたのベビちゃんですよ」

1さんがしれっと答える。しぃはまだ信じられないといった表情で続けた。

「ウ、ウソヨ、ソンナノ!!シィノ ベビチャンガ コンナ グチャグチャノ モノナワケ ナイジャナイノ!!!!」

「そう言われましても、私達はちゃんと見てたんですよ。あなたが、これを産み落とす所を」

「ソ、ソンナ・・・ウソ・・・ウソヨ・・・・!ド、ドウシテ・・・」

絶望の色がありありと浮かぶ表情のしぃ。声が震えている。

「いやあ、もうすぐ生まれるって時に、あれだけお腹に攻撃されたら・・・必然的にこうなるでしょうねぇ」

「!!!!」

この時、ようやくしぃは妹者に攻撃された事を思い出したらしく、妹者をキッと睨み付けた。
対する妹者もむっとした表情を作り、握った右手を左手に打ちつけた。彼女も、先刻抱いた怒りを忘れてはいなかったようだ。

パンッ!!

小気味良い音が響くと、しぃはビクリと体を竦ませた。どうやら、その時の耐え難い苦痛も一緒に思い出したようである。

「ハ、ハニャ・・・」

すっかり意気消沈した感のあるしぃに向かって、1さんはさらに続ける。

「・・・というわけで、これがあなたのベビちゃんです。お気の毒でしたね」

すると、しぃが顔を上げた。

「ウ・・・ウソヨ!ソンナノ ゼッタイニ ウソヨ!!シィチャンノ ベビチャンガ アンナ ドロドロニ ナッタナンテ、シンジナイワヨッ!!」

認めたくないらしいしぃが、悪あがきにしか聞こえないような口調で1さんに迫った。

「はぁ・・・まだそんな事を。お気持ちはわかりますが、現実を受け入れて下さい」

1さんが呆れ顔で言うが、しぃは一歩も引き下がらない。

「ソンナコトイッテ、マダドコカニ シィチャンノ ベビチャンヲ カクシテルンデショ!?イクラ シィチャンノ ベビチャンガ カワイイカラッテ ソンナコトシテ ユルサレルト オモッテルノ!?
イマスグニ シィチャンニ カワイイベビチャンヲ カエシタラ ダッコ ジュウマンカイデ ユルシテアゲルワ!サア、ハヤク ベビチャンニ アワセナサイ!ベビチャンヲ ナッコサセナサイヨッ!」

しぃは未だに、自分のベビがちゃんとした姿形でまだ何処かにいて、「ミィミィ」等と鳴きながら寄って来てくれると思っている。
そんな現実を受け入れられないしぃの言葉に、1さんは「やれやれ」といった表情を作った。

「・・・そんなにベビちゃんをダッコしたいですか?」

「アタリマエジャナイ!ヴァカジャナイノ!?ハヤク コノ ウチュウイチ カワイイ シィチャンノ ウチュウイチ カワイイ ベ(ry」

先程から何度も言っているような事を怒鳴り散らすしぃに向かって1さんは、

「・・・わかりました。そこまで仰られるのなら・・・」

静かな口調で呟きながら、再び足元のバケツを掴み上げた。そして―――

「―――お好きなだけ、ダッコなさいっ!」



ドバッシャァァァァァァァン!!



バケツの中身を全て、しぃに向かってぶちまけた。

「シギィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!??」

これまた聞くに堪えないような悲鳴を上げるしぃ。
その縛られた手足からは、滴ると言うにはドロドロし過ぎているような血肉がボタボタと垂れている。

560へびぃ:2008/05/05(月) 02:32:48 ID:???
「ハニ゙ャァァァァァァァァァァァ!!!??ナニヨ コレェェェェェェェ!!!??」

大音量で叫ぶしぃに対し、1さんが冷静に言った。

「何って・・・あなたの望みを叶えて差し上げたんですよ。
 如何ですかな?6匹分のゲル状ベビちゃんとのダッコのお味は」

「コ・・・コンナノ、ダッコジャナ・・・イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!」

半狂乱となったしぃの叫び声に、妹者はまた耳を塞ぐ。本日3度目だ。

「アアアアアァァァァァァァ・・・ベビチャン・・・ベビチャン・・・ハニャァァァァ、ァァァァ・・・」

明らかに狂いかけているとわかるしぃの声。目は血走り、その全身は、自らの血を分けて作られた物に塗れている。

「いやあ、俺も長年しぃという生き物を見てきたが・・・こんなに血生臭いダッコは初めて見たな」

「ダッコというものは俺も元々不快な物だと思ってはいたが・・・これは凄い。不快ってレベルじゃないな」

「『気持ち悪い』って、こういう時のために作られた言葉なのじゃ、きっと」

兄妹の言葉に、しぃが反応した。

「ア゙ァァァァァァ・・・ダッコ・・・ダッゴォォォォォォ・・・ベビチャ・・・ジィィ・・・」

最早バイオハザード化したしぃの声。その顔は醜く歪み、強気でダッコをねだっていた時の面影は欠片も無い。
そしてしぃは、

「ウァァァアァ・・・ダッゴ・・・ダコダコダコダコダコダコダコダコダコ・・・ベビチャンベビチャンベビチャン」

まるで壊れたテープレコーダーのように同じ単語ばかりを繰り返した後―――

「ベビチャンベビチャンベビチャンベビベビベビダコダコダコ・・・ヴァァァァァァウjdンbyhベクィpwンwcンプbccクヌbybジガヒhjp;」

―――異常な叫び声を上げ、やがて静かになった。

561へびぃ:2008/05/05(月) 02:33:24 ID:???
「・・・どうやら、逝ってしまわれたようですね」

1さんが言った。
がっくりうなだれたしぃの顔には生気が全く感じられない。白目を剥き、顔中の穴と言う穴から液体を垂れ流している。

「ショック死、か―――まあ、しぃってのは元々精神の足腰も脆いらしいからな」

兄者の言葉に、弟者もうんうんと頷いた。

「―――というわけで、『妊娠しぃdeお御籤』は以上で御座います。お疲れ様で御座いました」

1さんがそう言って深々と頭を下げる。慌てて3人も頭を下げた。
互いが頭を上げてから、弟者が言う。

「後片付け、手伝いましょうか?」

しかし1さんは、それを丁重に断った。

「有難う御座います。ですが、私一人で大丈夫ですから・・・お客様にご迷惑をおかけする訳には」

笑顔で言う1さん。無理に食い下がる事も無いだろうと思い、3人は彼の好意に甘える事とした。

「どうも、有難う御座いました」

「バイバイなのじゃ〜」

「どうかお気をつけて・・・あ、私、この近くの『壱ノ宮神社』で働いておりますので、何か御用のときはいつでもお越し下さい」

挨拶を交わして、3人は1さんと別れた。
空を見上げると、もう微かにオレンジ色に染まり始めている。
今から家路に着くであろう人々の群れが、大移動。出店も閉まっている所が目立った。
やがて聞こえて来る、『間も無く終了時刻です。本日は『百ベビ組手』大会にお越し頂き、誠に有難う御座いました』のアナウンス。

「・・・んじゃ、帰るか」

「ああ、そうだな」

「そうするのじゃ。もう流石に疲れたのじゃ・・・」

そう会話を交わし、歩き出そうとしたその時。不意に兄者が言った。

「妹者、今日はもう疲れただろう。俺がおんぶして行ってやるよ」

「え、ホントなのじゃ!?」

「お、頭脳派の兄者が肉体労働とは・・・珍しいな。明日は雨か?」

喜ぶ妹者と、からかうような口調の弟者。それを聞いた兄者が憮然として答える。

「一言どころか全文余計だ、弟者。俺はただ、疲れきっているであろう妹をこれ以上歩かせたくないだけだ。お前は荷物もあるしな・・・」

それを聞いた弟者は、苦笑。

「冗談だ、兄者。時に落ち着け。―――妹者。兄者もああ言ってるし、おぶってもらうといい」

「わーい、ありがとうなのじゃ!」

嬉々として、妹者が兄者の背中に飛び乗る。

「それじゃ、帰るぞ。弟者、はぐれるなよ!」

「それはこっちの台詞だ、兄者・・・」

今朝の事を思い出した弟者が、また苦笑した。
そして3人は、人の波の奔流に巻き込まれぬよう、慎重に出口を目指した。

562へびぃ:2008/05/05(月) 02:33:56 ID:???
―――広場の外。
無事に脱出を果たした3人は、家路に着いた。
歩を進める内に、同じように近くを歩いていたAAの数もどんどん減っていき、やがて自分達だけとなった。

「それにしてもだ、兄者」

歩きながら、『百ベビ組手』で貰った賞状と盾、そして副賞のナイフを抱えた弟者が言った。

「何だ、弟者よ」

妹者を背負った兄者が答える。

「今日の妹者だがな・・・あんな技、どこで身につけたんだ?ドロップキックはともかく、その後のコンボ。何やら叫んでたし・・・」

それを聞いた兄者は、ばつが悪そうに言った。

「む・・・まあ、その、以前、妹者と共にとあるアニメを一緒に見てだな。それで・・・」

「まさか・・・おいおい、あれを妹者に見せたのか?」

その『アニメ』の正体が分かったらしい弟者が、怪訝な顔をする。

「い、いや・・・もうすぐ夏だし、熱くなれるアニメが見たくなってな・・・。
 俺がレンタルビデオ屋から借りてきて、いざ第1話を見ようとしたら、妹者がやってきて『暇だから一緒に見るのじゃ!』と」

「それで・・・影響された、と」

「影響どころか、俺よりハマってたみたいなんだこれが。その日一日、俺の事を『師匠』って呼んだり・・・なぁ、妹者」

兄者は不意に妹者に話を振った。だが、妹者からの返答は無い。

「・・・妹者?」

弟者が声を掛けた。が、その理由はすぐに分かった。

「―――すぅ・・・すぅ・・・むにゃむにゃ・・・」

「―――寝てしまったか。まあ、1日中遊びまわったんだ、無理もなかろう」

兄者がハハハ、と笑った。
と、その時。妹者が声を発した。

「うにゃ・・・ちっちゃいあにじゃが、ゆうしょうなのじゃ・・・むにゃむにゃ・・・」

それを聞いた兄者が、再び笑う。

「ははは、妹者の夢の中では、弟者は優勝しているらしいな」

「ぬぅ、4位で勘弁してくれ・・・」

ちょっと顔を赤くした弟者はそう呟いていたが、不意にポン、と手を打った(実際は荷物が邪魔で少し苦労していたが)。

「そうだ。妹者の希望を叶えてやらんとな・・・」

言いながら携帯電話を取り出し、電話をかける。通話先は―――自宅。

「もしもし、母者か?うん、俺だ。兄者と妹者も一緒だ。今から帰るよ」

電話には母者が出たようだ。弟者はこれから帰る旨を伝えた。しかし、そこで電話を切ろうとはせず、言葉を続けた。

「あ、スマンが母者、一つ要望があるんだ。聞いてくれるか?・・・うむ、サンクス。あのだな・・・」

弟者はそこで一旦言葉を切り、安らかに眠る妹者の顔をちらりと見る。そして、電話の向こうの母者に告げた。



「―――今日の夕飯は、天ぷらを頼む」






【完】

563ロディウェイ:2008/05/06(火) 13:02:31 ID:vE..VX8Q
>>535
続きいきます。

 『虐殺サイボーグシーン』

ACT5「ちびギコ」

 この町にきて一週間になる日、僕は、自分のライフルを磨いていた。
そこにモラソールがやってきた。

「やあ、いつもここにいると暇だろうから、たまには外で散歩でもしたらどうだい?」
「・・・はい、とりあえず近くを散歩してみます。」
僕はライフルを大型ケースに入れて外へでた。

 僕はここから右にある住宅街を歩いた。時々、それぞれの家から
「ハニャーン♪ダッコハイイ♪」
と聞えてくる。この日に天気は雲一つない晴れだった。
しばらく歩いてるうちに公園が見えた。プレートには、
     〔ハニャンマタール公園〕
と書かれていた。とりあえずここで一休みすることにしよう。

 公園には、様々な遊具があった。しかし、誰が作ったのだろうか・・・
(アフォしぃでは無理なんだが)
しばらくしてからちびギコ三匹がやってきた。

「キョウハナニシテアソブデチカ?」
「ボクガボールヲモッテキタデチ。」
「ジャア、ボールアソビヲスルデチ!」
とキャッチボールをし始めた。

 ふと僕の頭の中で思った。そういえば、ここに来てちびギコを虐殺していなっかたな。
せっかくの良い機会なのでやってみる事にした。

564ロディウェイ:2008/05/06(火) 13:37:18 ID:vE..VX8Q
 僕が動くまでもなかった。ちびどもが投げたボールが僕の足元に落ちた。
そして、一匹が近づいてきた。

「ソコノシラナイオッチャン、ボールヲトルデチ。」
これは明らかに命令してしる言葉だ。僕はボールを足で潰した。
ボールは ペシャッ と音がして平たくなった。当然、ちびが怒る。

「ナニボールヲペシャンコニスルンデチカ!ボクチンモウオコッタデチ!!
ボコボコニシテヤルデチ!!」

そういって右手で殴りかかってきた、たいした腕力はないので左足で防御した。
それから僕は動きが止まったちびを足裏のローラーで顔をミンチにした。

キュイイイイイイィィィィィーン

「ミミオアウウイアjf8オウジャソhjdfハウイアsjヅイhsジsジダs」
ちびの顔からは、皮膚、肉片、血などが火花のように飛び散った。
そして、足をあげると、もう原型はとどまっておらず、ひどい状態でもう、
虫の息だった。

 それから、ミンチされたちびの死体を残りの二匹に投げつけた。
ちびギコ二匹は、さきほどのちびを見て、完全に腰が抜けていた。
まず左のやつに近づいて(ローラーはさっきのミンチで滑りにくくなってる。)
右腕、左腕を雑巾のように絞った。

「アアアアアアアアア!!イタイデチーーーーー!!」

両腕の骨が砕けるなか、こいつの断絶間が響いた。

続いて両足をいっきに絞った。

「アアアアアアアアアアAAAAアアアアア!!アンヨガーーー!!」

また断絶間が響いた。となりのちびは、ただただ耳を塞いで震えていた。
そして首に手をかけた時、ちびが言った。

「ナンデ、ナンデ!・・・ボクタチガナニシッタッテユウンデチカ!?」
僕はこれに対するように言った。

「ボール遊びをしていた。」

 そして、首の骨を折ってもう一匹のやつに視線を向けた。
そいつは、恐怖の真っ只中にいるような顔をしていた。

565ロディウェイ:2008/05/06(火) 13:53:43 ID:vE..VX8Q
 僕は、残ったちびの足をもぎ取った。
ブチュッ と音がした。しぃの耳をもいだ時と結構違う。

「ウアアアアアアアアア!!ヤメテデチ!!コロサナイデ!!」

そう言って、なめくじのように逃げ始めた。

「ニゲルデチ、ニゲルデチ」

精神的にかなり疲労しているようだ。僕はベンチに置いておいたケースから
ライフルを手にとり、胸ポケットから弾丸を出して、ライフルに詰めた。
そして、ライフルのスコープと目のズーム機能で標準をセットし、撃った。

バンッ と銃声が鳴ったと同時にちびが動かなくなった。

 これでアフォしぃ、オニーニ、ちびギコの三種を倒しことになった。
ライフルをケースに戻し、公園を後にした。

 帰る途中、茶色の服を着た女性と肩がぶつかった。

「アッ、ス、スミマセン」
「いえ、こちらもすみませんでした。」

それで何事もなかったように歩いた。
 
 おかしい、あれはアフォしぃじゃない・・・。いったいなんだ?
アフォしぃではあの反応は絶対ないはずだ!この町には何かある、何かが・・・

 僕の心には、悪い予感が来ると感じた。


 続く

566:2008/05/14(水) 21:40:19 ID:???
>>524より続き
『裏話 〜後遺症〜』




吹っ切れてから後は、早いものだった。
ウララーは擬似警官を辞め、銃を持つ事を辞めた。
素直に虐殺に向き合い、実行し、楽しみもした。

堕ちた、と言ってしまえばそこでおしまい。
寧ろ、堕ちたというよりリバウンドと形容した方が正しいだろう。
いつも正義とは悪とは何かと考え悩んでいたウララーが、今や虐殺を素直に受け入れている。
その表情は見違える程清々しく、あるべき姿とさえ錯覚してしまう程。

街を受け入れ、街に歓迎されたウララーは自身の身体を血で汚す。
被虐者のものでも、ぽろろのものでも構わず浴びた。
ひたすら、虐殺を楽しんでいた。






「う、く・・・んっっ!!」

ソファの上に俯せになり、頭をこちらに向けて背中を見せるぽろろ。
ウララーはその小さな背中に、ひたすら画鋲を刺していた。

「まだ沢山あるからな」

掌の中のプラスチックの箱に、金に光る画鋲。
じゃらと音を立ててぽろろにそれを見せ、また一つ取り出して刺す。

画鋲をぽろろの背中に埋める度、ぽろろは身体を小さく跳ねさせる。
顔を赤らめ、涙を目尻に溜めながら堪える様は、そそるものがある。
時折堪えきれなくなるのか、ソファに強く爪を立てる事もあり、それもまた良い。

「あうッ!」

ぽろろの反応や、喘ぎ声のバリエーションは様々だ。
ウララーはそれに応えるようにと、画鋲を刺すという事に一工夫加える。
時間を掛けてゆっくりと刺していく時もあれば、一気に押し付けたり。
或いは捩込むように指でくるくると回しながら刺しもした。

(・・・)

ぽろろの性分は、虐待虐殺されること。
虐殺の楽しさを見出だせた自分にとっては、嬉しくも悲しくもある。
人目を気にしなくて良いのだが、一緒に暮らす者を虐待するなど。

最初はそう思ったのだが、一度虐殺に溺れた身。
後ろめたい事など、当の昔に失っている。
それに、

「ぐ・・・ううぅっ!」

呻き声をあげ苦しみつつも、垣間見るぽろろの表情。
歯を食いしばりながら、一瞬だけそれが恍惚にシフトする。
性行為をするよりも気持ち良さそうなぽろろを見て、安心を覚えてしまったのだ。

ここまでくると、もう感情論は必要ない。
互いの好きな事を、互いに息をあわせて行うのみ。
自分は坦々と画鋲を刺し、ぽろろはそれにひたすら喘ぐ。

「お前の背中、金色に光って綺麗だな」

「あう・・・ッ! うあああああんっ!!」

画鋲まみれの背中を撫でてやると、ぽろろは激しく悶えだす。
無数の突き刺さった針が、傷口の中を刺激しているのだろう。
辛子でも塗ってから刺してやれば、もっと喜んだだろうか。
そう思いながら、画鋲に覆われたぽろろの背中を沢山撫でてやった。

567:2008/05/14(水) 21:43:49 ID:???

隙間なく並んだ画鋲達は、豪華な衣装のようにも見える。
身体とそれの境目では血が少しながら流れていて、そのコントラストも美しかった。

「これで全部だ。頑張ったな」

「・・・」

ぽろろからの直接な返答はなかったが、小さく頷いてくれた。
地味な虐待とはいえ、感じる痛みは決して易しいものではない筈。
凄まじい苦痛、いや快楽に苛まれ、反応する事がやっとという所か。

そう考えると、今のぽろろはエクスタしぃとやらに似ている気がする。
だが、奴らは痛みを痛みとして認識していないと聞く。
それにぽろろ自身も、痛いと感じた時はしっかりと『痛い』と言っている。

「・・・う、ウララー、っ」

「ん?」

「もう・・・や、やめ・・・」

ふと、ぽろろの言葉で我に返る。
気を抜くとすぐに考察したがるのは、悪い癖か。

全て聞こえなかった所から、どちらを願っているのかわからない。
止めて欲しいのか、或いは遠回しに続きを欲しているのか。
どちらにせよ、自分の中には答は一つしかないのだが。

「いや、まだ続きがあるぞ」

ぽろろの耳元で囁き、テーブルに用意してあったものを取る。
何の変哲もない、唯のガムテープ。
それを見て何をされるのか理解したのか、ぽろろの顔が青ざめていく。

「さっきはチクチクするだけだったが、これだとどうなるか俺にも想像できない」

別に言葉で責めているつもりはないが、ぽろろはより怯えだす。
赤らんだ頬に小さな冷や汗が一筋伝い、顎から離れてソファに落ちる。

しかし、身体は震えていても、その眼だけは爛々と光っていた。
早くやってほしいという気持ちではなさそうだが、期待のようなものを感じる。
恐怖に怯える被虐者のようにありながら、やはり何か違うぽろろ。
よくわからないギャップのようなものは、己を駆り立てる。
―――酷く、興奮してしまう。

ガムテープの切れ端を摘み、景気よく引っ張る。
適度な長さの所でそれを破り、画鋲の衣装の上に貼付ける。
綺麗だった金の衣装は茶色の紙に隠され、みすぼらしく見えた。

「いくぞ」

短く呟き、ガムテープの端を摘む。
そして何も考えずに、腕を思いっきり振り上げた。

「っっぎゃあああああァァァァァ!!!」

ばりばり、と激しい音がしてガムテープは剥がれ、次いでぽろろの絶叫。
どちらも耳をつんざく勢いで、予想外のボリュームに心臓が跳ねた。

「うああああああああっっ!!!」

海老反りになり、ソファの上で転がり回ろうとするぽろろ。
流石に耐え切れなかったのか、その苦しみっぷりは気狂いのよう。
激痛を訴えるのが背中ということもあり、庇えないもどかしさもあるのだろう。

剥がしたガムテープを覗くと、こちらも凄い事になっている。
赤く汚れた画鋲がびっしりと敷き詰められ、所々肉のようなものもある。
一部画鋲が付いていない所があったが、恐らくまだぽろろの背中に刺さったまま。
ぽろろが落ち着いたら、抜いてやるとしよう。

568:2008/05/14(水) 21:44:27 ID:???


「うぐ・・・」

余程痛かったのか、ぽろろが大人しくなるまで大分時間が掛かった。
その間、悶える様を観て十二分に楽しめたのだが。

今のぽろろは、痛みが引いたというよりも満身創痍といった方が正しいようだ。
涙を溜めた目は虚ろだし、だらし無く開いた口からは涎が際限なく溢れている。
俯せでありながら、必死に身体全体で呼吸をしてもいた。
仰向けになればいくらか楽になる筈だが、穴だらけの背中をどこにも触れさせたくないのだろう。

(しかし・・・)

我ながら、なかなか悪意のある事をしてしまったなと、ぽろろの背中を見て思う。
蓮コラのそれよりは小さいが、穴という穴からは体液が沢山漏れている。
所々大きく肉が刔れていたりして、痛々しさは半端じゃない。

思わず、目を背けたくなる。
そうありながら、ずっと眺めていたいような気持ちにもなる。
ぽろろの可愛らしい背中にある無数の穴と流れる血液。
悍ましくもあり、また、僅かだが美しくあった。

「痛かったか?」

「・・・う、ん」

『痛い』。
その言葉は、そのまま『気持ち良い』にシフトはしないようだ。
歯を食いしばり、なお苦痛に悶えるぽろろ。

(・・・可愛い、な)

いい意味で、胸が締め付けられる。




ぽろろの両脇に手を突っ込み、そのまま持ち上げる。
そして、成すがままのぽろろを自分の腿の上に座らせた。

「・・・?」

赤らんだ頬に、涙と涎でくしゃくしゃになった顔。
嫌悪感など微塵とも感じるわけがない。
この表情が、己を酷く駆り立てる。

ぽろろも、喜んでいる。
自分がぽろろを虐待する度、虐殺する度。

「ぽろろ」

「えっ?・・・ッ痛! 痛い、痛いっっ!!」

気持ちが高ぶり、思わず抱きしめる。
傷だらけの筈のぽろろの背中に、爪を立てる。

弱々しく抵抗し、強く泣き叫ぶぽろろ。
耳元で聞こえるその悲鳴で、イッてしまいそう。
心が、精神が、おかしくなってしまいそうだ。

「ずっと、聞いていたいな・・・そう、お前の、声」

「うあっ! く、痛あっッ!!」

ねっとりとしたものが、両手に付着する。
このまま、共に快楽の海に溺れていきたい。
むせ返るような血の臭いに、ぽろろの悲鳴という音楽を聴きながら。

―――電子音。
インターホンが鳴り響き、快楽の海から引き上げられる。
同時に深い憤りと気だるさを覚えつつ、ぽろろを腿から下ろす。

「・・・悪い、ちょっと出てくる」

「・・・」

玄関に向かう途中、振り向き様に見たぽろろの表情。
どこか、不快感を静かに露にしているように見えた。

569:2008/05/14(水) 21:45:11 ID:???


もし訪ねてきたAAが勧誘か何かだったら、殴り殺してしまいそうだ。
そんな毒を心の中で吐きつつ、苛々を床に押し付ける。
どすどすとわざとらしい音を立て、玄関の前に立つと乱暴に扉を開けた。

「どちら様で・・・ッ!」

刺のある声で応対した者は、銃口だった。

咄嗟に屈み、同時にその銃が吠える。
頭上を殺意が通過したかと思うと、後方で何かが破裂する音がした。

「な・・・!?」

突然の事に驚愕し、次いで怒りが込み上げる。
が、銃口を向けていた者の顔を見てみると、また驚愕。
そこにいたのは、擬似警官だった。




「久しぶりだな。ウララー」

「エ・・・エゴ?」

男は紫の身体に、耳に青い線が走っている。
その特徴を持った擬似警官は、エゴという名。
自分とは同期の者だ。

「お前には失望したよ。銃を持つのを辞めたって聞いて、来てみたらコレかよ」

エゴの言葉を聞き、ふと己の両手を見遣る。
本来黒い筈の自分の腕は、血で真っ赤に染まっていた。

「あ・・・いや、これは」

「しらばっくれンな! 臭いも被虐者のそれじゃねェ。何考えてんだ!!」

鬼の形相で、エゴは責め立ててくる。
擬似警官だから、この反応は当たり前か。

エゴのような直情的な者に、全てを話そうとしても無駄かもしれない。
たとえ信じても、エゴは元々虐殺そのものを嫌っている。

予想だにしなかった、最悪の展開。
ぽろろを置いて、まだ死ぬわけにはいかないのに。
どうにかして、この場を切り抜けなければ。
場合によっては、最悪を最悪で返してやってもいい。

(殺すか・・・?)

AAの命が散る瞬間なんて、腐る程見て来た。
自らが殺める事も、既に堕ちた身。躊躇う必要はない。
問題なのは、エゴが持つ得物と丸腰の己との差をどう埋めるかだ。

「どうしたんだよ。何か言えよ!」

「・・・」

が、どうやらエゴは話し合いたいようだ。
意図はよく掴めないが、考える余裕はできそうだ。
爆発させない程度に、真実を述べてみるか。

「・・・悪いが、俺はまだ虐殺厨にはなっていない」

「両手濡らしといて、まだ言うのかよ」

「落ち着け。信じられねえかもしれないが、この血は被虐者のモノだ」

「・・・は?」

と、エゴの額に青すじがいくつも現れる。
このままいくと、本当に爆発させてしまいそうだ。
だが、真実を述べないで死ぬのも御免だ。
肚をくくるつもりで、続ける。

「アフォしぃでもちびギコでもない、新しい被虐者だ。殺しても死なない」

「・・・」

返事を待つが、エゴの口は開かない。
ただ、その表情が歪み、歯ぎしりの音が大きく聞こえたのと、
銃を握っている手の人差し指が動いたのは、確認できた。

570:2008/05/14(水) 21:46:44 ID:???

「!?」

炸裂音。
場の空気が、凍り付く。




(・・・?)

死が自分に襲い掛かると思って、咄嗟に目をつむった。
が、痛みはどこにも感じず、違和感も何もない。
恐る恐る目を開けると、奇妙な光景が飛び込んできた。

エゴの銃を、青い紐のようなものが縛り上げていたからだ。
銃口は天井を向き、弾痕も天井にできている。
紐は自分の後方から伸びているようで、目線でそれを追う。
振り向くと、背中のあたりからその紐を出しているぽろろがいた。

「な、何だ、こいつ・・・ッ!?」

エゴが驚愕の声を上げるや否や、更に二本の紐がエゴを襲う。
紐はするりと巻き付き、エゴの身体の自由を奪った。

よく観察してみると、紐というより触手と表現した方が正しいかもしれない。
エゴの両腕と胴体を纏めて縛りながらうねうねと動くそれは、気持ち悪い事この上ない。

「ぽろろ、一体これは・・・」

ぽろろの方に向き直り、問い掛ける。
が、届かなかったようで、俯き加減で何やら呟いている。

「邪魔した・・・ウララーさんを、殺そうと・・・」

呪詛のようにエゴへ怨みの言葉を吐き、触手を暴れさせるぽろろ。
虐待を中断させられたのが余程不快だったのか、非常に悍ましく感じる。
そのせいで、背中の触手はすんなりと受け入れる事ができた。
ぽろろやVに驚かされ続けてきたから、耐性がついただけなのかもしれないが。

「う、ウララー! なんなんだよコレ!?」

自分とは相反するように、エゴはひたすら焦り、怯えている。
それを無視し、ぽろろは器用に触手を動かしてエゴを宙に浮かせる。
次の瞬間には、天井、床の順にたたき付けた。

「ぶぐっっ!!」

鈍い音と湿っぽい音がして、エゴは俯せに寝かされる。
遅れて、どこかで宙を舞った銃が音を立てて落ちた。
ふと気が付くと、いつの間にか形勢逆転してしまっていた。

「邪魔・・・邪魔・・・」

「ぽろろ、一旦落ち着け」

とりあえずぽろろを宥め、次にすべき事を考える。
触手については、全てを終わらせてから聞こう。

「あ・・・っ、が」

エゴの顔を覗き込むと、床に顔から突っ込まされたようで、鼻血が出ていた。
痛むのか涙目にもなっていて、先程とのギャップに思わず笑いそうになる。

そこで、ある感情が芽吹いてしまう。
本来は犯罪である筈だが、心がしたいと叫んでいる。
堕ちた者は何処まで堕ちていくのか。
理性はそう遠回しに警告するが、本能は既に点火していた。

対峙した時にも、それに近いものを念っていた。
だから、戸惑う理由なんてどこにもない。
囁くように、ぽろろに伝える。

「ぽろろ」

「はい?」

「今から、こいつを虐殺しようか」

571:2008/05/14(水) 21:47:30 ID:???

「んな・・・!?」

エゴの顔を覗き見ながら言ったので、表情の変化がしっかりと確認できた。
一気に青ざめ、焦りを強くするエゴは滑稽で堪らない。
そんなエゴに追い打ちを掛ける為、少し言葉を交わす。

「ああ、こういう事は俺も初めてだから。ぽろろを怒らせた自分を呪えよ?」

「待っ・・・ふざけんな! やっぱり虐殺厨だったんじゃねぇか!!」

「一般AAを虐殺したことなんて無いんだが。まあ、殺した事はあるけどな」

「テメェっっ!!」

ひたすら怒号を浴びせ掛けてくるエゴ。
しかし、その必死さの奥には怯えが垣間見える。
怒りをぶちまけなければ、自我を保てないのだろうか。

「もう俺は堕ちたんだよ。手だって、文字通り血に染まってやがる」

「こんな・・・こんなことッ!」

嘆くエゴを無視し、耳を掴んでぐいと上に引っ張る。
鼻息が掛かるま位置まで顔を近付け、吐き捨てるように囁く。




「悪いが、俺はお前を虐殺して、初めて虐殺厨になる」






なかなか便利な身体だなあと、ぽろろを見てつくづく思う。
聞くところによると、触手は治癒能力の延長線上のものだとか。
自在に操ることが出来る上、蜥蜴の尻尾のように切り離す事も可能とのこと。
体格差のある被虐者を捕らえる事ができたのも、この触手のお陰なのだろう。

その触手はエゴをテーブルの上に大の字に縛り上げ、しっかりと固定されている。
溶けているかのようにテーブルにくっついており、スライムのようにも見えた。

「〜〜〜!!」

触手はご丁寧に口に詮までしていて、エゴは喋る事すらままならない。
怒りかはたまた恐怖感か、首を必死に動かして抵抗している。
正しくは、『抵抗しようとしている』と表現した方がいいかもしれない。

「さて、先ずは何をしてやろうかな・・・と、そうだ」

思考を張り巡らせる前に、視界の中に先程扱っていた画鋲まみれのガムテープがあった。
それを拾い上げ、エゴの腹の上にそっと置く。
と、エゴのくぐもった声と、無駄な抵抗がより激しくなった。

「ぽろろ、この上に乗ってみろ」

「!!?」

焦るエゴを無視し、ガムテープを指差してぽろろにそう伝える。
頷くぽろろと激しく拒むエゴの対比は、なかなかに面白い。

ゆっくりとテーブルの縁に立ち、ガムテープに視線を落とすぽろろ。
次に素早く屈み込み、エゴの腹部に力強く飛び乗った。

「ふんっ!」

「ぶぐふっッ!!!」

ぽろろの掛け声と、鈍い音が重く響くのは同時だった。
直後、肺を圧迫されたわけでもないのに肉の詮がエゴの口からすぽんと発射された。
あまりにも間抜けな展開に、思わず吹き出しそうになる。

肝心のエゴは腹の中の衝撃と、腹の上の無数の痛みに悶絶している様子。
何度も咳込み、その合間合間に叫喚を交えて苦しんでいた。

572:2008/05/14(水) 21:48:13 ID:???

「ック・・・ぽ、ぽろろ。エゴの口から何か飛んだぞ・・・くくっ」

必死に笑いを堪えながら、話し掛ける。
当の本人はしてやったり顔で、エゴを見下ろしていた。

「面白かったですか?」

「ああ、ああ・・・なかなか、だ。くっくく」

「じゃあ、もう一回」

そう言って、ぽろろは背中から触手を出して再度エゴの口に突っ込む。
突っ込む直前、エゴは何か言いたそうだったが、やはり肉の詮が邪魔をした。

顔色も悪く、唾や涎が自らの顎を汚している。
ぽろろが飛び上がる構えをすると、目を見開き首を起こすエゴ。
もごもごと篭った声は、罵倒か抑止かどうかわからなかった。

「せーのっ!」

ズン、と重い響きがテーブルを軋ませる。

「ぐぶああぁっ!!」

今度は先程のように肉の詮が飛び、加えて胃液らしきものが飛び散る。
びちゃびちゃと湿った不快な音と、エゴの濁った咳が耳に障る。

腹を踏むと、口から汚物を盛大に吐き出す。
なんとも醜い遊び道具を、ぽろろは気に入ったようだ。
喜々としてジャンプを繰り返し、何度も踏み付けた。

笑いも止まり、落ち着いた所で虐待を眺める。
もはや画鋲ガムテープは、それのおまけといった所だろうか。
腹の皮を無数の針が突き破るよりも、内臓をシェイクされている方が辛そうだ。

「よっ! とっ!」

「いいぞぽろろ。その調子だ」

リズミカルに跳ねるぽろろに合わせ、手拍子を入れてみる。
エゴの阿鼻叫喚と鈍い音の拍子が重なり、音楽になる。
殆ど不協和音のそれに近いが、苦痛に悶えるボーカルの声に聴き入ってしまう。




「んぎっ! ッぶ! あ、ぶぐぅぅ!!」

腹を踏み付けられて数十回目の事。
エゴの吐瀉物に、赤いものがが混じり始めた。
恐らく内臓が破裂したか、或いは喉を潰してしまったか。

これ以上続けると、このまま死んでしまうかもしれない。
一旦ぽろろにジャンプを止めさせ、様子を見る。

「げほげほっ! が、っぐ・・・」

呼吸は荒く、顔色も悪い。
試しに画鋲つきガムテープの両端を持ち、一気に剥がしてみる。
が、エゴは少し身体を跳ねさせるだけで、対した反応はしなかった。
そのかわり、小さな穴と血だらけになった腹の一部が不自然に盛り上がっている。
気になり、そこを指で強く圧してみる。

「うがああああああああっ!!」

すると、先程と打って変わり凄まじい叫び声。
どれかはわからないが、やはり内臓が破裂したのだろう。
ガムテープを剥がしても反応が薄かったのは、これが原因か。

身体の一部分が酷く痛めば、他の部分の小さな痛みは感じなくなる。
ということは、細かい虐待をしても面白みがないかもしれない。
しかも内臓が破れているとなると、そう長くは持たないだろう。

(次のメニューは、どうしたものか・・・)

そう考えるや否や、ぽろろの腹の虫が雄叫びをあげた。

573:2008/05/14(水) 21:48:35 ID:???

「あ」

ぽろろはハッとして腹を押さえる。
なかなか大きな音だったので、流石に恥ずかしかったようだ。

「お腹すいたのか?」

「う、うん」

「まあ、これだけはしゃいだらそうなるな」

ぽろろにそう言って、エゴの腹をまた突く。
と、必要以上の苦痛の声が聞こえ、思わず手を引っ込めた。

今から食事の準備、というのも何だか気が引けてしまう。
汚物や血に塗れた部屋で食べ物を眺めるといった、図太い神経は持ち合わせていない。
下手をすれば、変にトラウマになってしまいそうだ。

(・・・そうだ)

ふと、思い付く。

「ぽろろ」

「はい?」

「その・・・なんつーか、こいつ食べるか?」






「う、ウララー・・・っげ、てめぇ、ッ」

「いいの?」

人間性を問われそうな妙案に、意見が二つに別れた。
眼を輝かせ、こちらを見て喜ぶぽろろと、掠れた声で抗議しようとするエゴ。
勿論、これから死ぬ者の意見など聞く理由はない。
わざとらしくエゴを無視し、ぽろろに促す。

「どうせ死体になったら処理しないといけないし、ぽろろが嫌じゃないなら」

「・・・じゃあ、お言葉に甘えて」

謙遜気味だったが、後押しされたのかすぐに表情を変える。
ニコニコと嬉しそうなぽろろを見て、自分にもやる気が湧いてきた。

「よし。じゃあ早速解体に移るぞ」

席を外し、包丁を取りに台所へ。
途中エゴの雄叫びのような罵声が何度も聞こえたが、濁りすぎていて聞き取れなかった。




棚から包丁を取り出し、ふと気付く。
腕についていたぽろろの血を、まだそのままにしていた。
大分時間が経っているので、少しくすんでカサカサになっている。

「・・・」

臭いを嗅ぎ、舌で舐め取ってみる。
血は唾液に溶かされ、口の中へと入る。
少量だったせいか、いつものような生臭さは皆無。
そのかわり、血の表現でよく聞く鉄のような味が、舌の上で広がって消えた。
美味くはないが、吐く程不味いというわけでもない。

(そろそろ喉が渇く頃だろうな)

そう思いつつ、両腕の血を洗い流す。
腕から赤が落ちていき、見慣れた黒が顔を出した。
水を切ってハンドタオルで拭き取ると、包丁を持って部屋に戻る。

部屋に戻ってくると、エゴが口まわりを更に赤く汚していた。
大袈裟に上下動する腹と、ひゅうひゅうと鳴っている喉。
横では、ぽろろが背中から触手を一本出してこちらを見ている。

「どうかしたのか?」

「いや・・・こいつが、ウララーの悪口ばっかり言うから」

そう言って、ぽろろは触手で空をつつく。
どうやらエゴを黙らせる為に腹を押すか何かしたのだろう。

「・・・そうか」

574:2008/05/14(水) 21:49:35 ID:???

気持ちは嬉しいのだが、エゴの事が少し心配になる。
腹を突くだけで、こうも血を吐くものだろうか。
腹内部の出血がそこまで酷いとなると、文字通り長くは持たない。

ならば、なるだけテンポ良くエゴを弄って遊んでやらなければ。
ただ死なさせるだけでは味気無い。






エゴの二の腕の、肩に近い所に羽を入れる。

「っぐ・・・!」

多少身もだえするものの、その動きに力はない。
気にせず包丁を動かし、腕の肉に切り込みを入れていく。

包丁が血に塗れ、腕に大分深く潜るようになった時。
ゴリ、と固いものにぶつかった手応えがあった。
切るだけならば、包丁を振り下ろして叩き割るのが良い。
が、これは虐待も含めての解体だ。普通に切り離すのでは意味がない。
そこで、

「ふんっ!」

「が! っぎゃ、うがあああッ!!」

体重を乗せながら、ぐりぐりと包丁を鋸のように動かす。
と、骨に掛かる圧力が激痛となったのか、エゴは火がついたかのように叫び出す。

ミシ、と軋む音に小さく砕ける音が混ざって聞こえる。
更にそれに重ね、エゴの掠れた悲鳴が耳を刺激した。
なかなか良い手応えと悲痛の歌に、つい笑みが零れてしまう。

しかし、楽しみもつかの間。
破裂するような音と共に、手応えが一気に霧散する。
勢い余った力は、そのまま残りの肉を裂き、テーブルに包丁を突き刺した。
エゴの骨は、思ったより早く折れてしまった。

「ぐぎゃあああああああ!!」

一手遅れて、エゴがより激しく叫ぶ。
痛みの度合いが腹部のそれに勝ったのか、かなり煩い。
構わず切り離した腕を、エゴを縛っている触手から抜き取りぽろろに渡す。
ぽろろは腕を貰うと、喜々として切り口にかじりついた。

「美味いか?」

「うん。『しぃ』ってAAより、断然」

「ほう」

それを聞いて、ふとあの少年の事を思い出した。
AAを喰らう者から見れば、被虐者より加虐者の肉の方が質がいいのだろうか。
自分も少し、試してみたくなってきた。

途端、じわりと強くなる渇き。
身体が、血を欲している。

エゴの方に向き直り、腹を再度観察する。
一部分だけぷっくらと膨れた腹は不自然で、かつ醜くあった。

(・・・どれ)

包丁を持ち直し、瘤状に膨れたそれに十時に切れ目を入れる。
エゴの身体が少し跳ねるものの、刃は瘤の上を綺麗に通過。
切れ目から赤い線が浮かび上がると、再び刃を入れていく。

すると、切れ目からエゴの体液が勢いよく流れ出た。
結構な量の血はテーブルまで汚し、ばたばたと床にまで零れ落ちる。
それがおさまった時には、瘤も形を失っていた。

一旦包丁をテーブルの端に置き、切れ目に指を突っ込む。
エゴの悶絶ぶりは加速し、また生気が戻ってきたかのよう。

575:2008/05/14(水) 21:50:14 ID:???

切れ目から腹の皮をめくり、中身を覗く。
内臓を薄く浸す程だが、まだ血は残っていた。
それを腹の中に掌を捩込むようにして、掬い取る。

「〜〜〜!!!」

もはや言葉どころか、声にすらならないエゴの悲鳴。
詰まりかけた排水口のように、ごぼごぼと喉を鳴らしている。

掬いあげた血は少ないが濃く、特有の赤黒さがあった。
いつもはここで躊躇するが、どうしてか生臭い匂いはしない。
恐らく、虐待を続けていたお陰で鼻が麻痺したのだろう。
出来ればこの調子で、慣れていきたいものなのだが。

「・・・」

意を決し、エゴの血を煽る。
口の中でそれを堪能してみるが、やはり駄目だった。
吐き気が爆発的に込み上げ、咄嗟に口を押さえる。
幸い少量だったので、すぐに飲み込む事でしのぐことができた。

(駄目か・・・)

虐殺を受け入れたからといって、誰彼の血でも構わないという訳ではなさそうだ。
ぽろろが肉を食べながら、自分は喉を潤そうと思ったのだが。
それはまだ、ぽろろに頼るしかなさそうだ。

ふとぽろろを見遣ると、あげた腕はもう骨だけになりかけていた。
おかわりが来る前に、先に切り離してしまわなければ。

包丁を持ち、反対側に回り込む。
そして、虫の息のエゴを少し眺めてから、作業に移った。






エゴが死んだのは、三つ目の四肢、つまり脚に取り掛かった時だ。
肉を切ろうが骨を砕こうが全く反応がなかったので、面白みは皆無だった。
そのかわり、ぽろろの食事風景を眺める事ができたので、よしとしよう。

今現在、エゴの形が残っている部位は胸と頭のみ。
他は全て、ぽろろの胃袋の中におさまっている。
つまりかなりの量を食べたことになるのだが、ぽろろの腹はそこまで大きくなっていない。
色々と気になったが、とりあえずその疑問は飲み込んでおいた。

「・・・ウララーさん」

不意に、ぽろろが話し掛けてきた。

「うん?」

「まだ、血は飲まなくていいんですか?」

「・・・ああ。今の所は、大丈夫だ」

「そうですか」

そう言うと、ぽろろはまた食事に勤しむ。
細かく切ったはらわたを、ひょいひょいと口に運んでいく。



これから、こういった生活が続く事を考えると、期待と不安が混ざり合う。
擬似警官に追われる身にはなったが、ぽろろの秘めていた能力を発見する事ができた。
敵は虐殺厨から擬似警官へとシフトしたが、共に戦える者もいる。

とことん堕ち、この街に完全に染めあげられてしまった今。
渇きも虐殺厨の肩書も受け入れ、生きていくしか他にない。
―――街に弄ばれるのは、もう御免だ。





576古爪:2008/05/17(土) 04:24:15 ID:???
お久し振りです
最近忙しく、書く暇もなかなか無かったので全然来れませんでした
今回から、少し続き物を書こうと思うので、感想などよろしくお願いいたします
では                         

                『油断大敵』

背の高いフェンスとそれに絡みつくようにして張られた有刺鉄線で作られた『檻』の中に二人のAAがいる

一人は立っており、右手でもう一人の頭を掴んで地面にこすりつけているようだ
もう一人は成す術もなく顔面をアスファルトに削られながら懸命に手足をばたつかせて脱出を試みようとしている
…だが逃げられるはずもない

何故なら、逃げる方法など初めからないのだから…


・・・削る
白い生物を右手で掴み、それをそのままアスファルトの凹凸にこすりつける

「〜〜〜〜〜〜!!?」

しぃが痛いという意思表示か、体をくねらせ、手足をばたつかせながら、くぐもってよく聞こえない声で何かを叫ぶ

五月蝿い。黙れ。喋るな。

右手に力を込めてしぃの顔面をより強く、より痛むように右手で螺旋を描くようにしながら、大根おろしの要領でピストン運動のように繰り返し繰り返し削っていく

頭を上へ向けて空を眺める
もちろんその間も手は休めない

目のある生き物の大半は外部からの情報の80%を視覚情報から取り入れるという
それを思い出したのだ
視覚を覗いた場合、どのような気分で虐待出来るのか…
試してみないことに分からない
無論、その標的となるのは力のない被虐生物、チビギコや、しぃなどだ
今回は、運悪くその辺をふらついていたしぃを捕まえた

さて、視覚に頼らない状態で作業を繰り返していると、なるほど面白い
視覚に頼らない分、腕に伝わる感覚がダイレクトに伝わってくる
最初はまだ粘り強く肉が残っているため、ハンバーグの形を作ってるような感触だろうか
この時はこの時で爽快感とは違う、支配感に近い『肉』の感覚が楽しめるため別の満足感が得られる
その時といったら、自然と頬の表情筋が緩み、脊椎をなんともいえない、電流のようなものが流れるような感じ
相手を一方的に支配しているという悦び
これも虐待・虐殺ならではといえる喜悦の一つだろう

「ッ…!?」

右腕に伝わる感覚の質が変わった
今までのぐちゃりとした感触ではない
硬い、石をこすりつけているような

「ヒ…!?ア…ヒヒャ…!??」

どうやら鼻の肉が完全に削がれて骨に達したらしい
しぃはその事実が耐えがたいらしく、何度も何度も無い鼻を捜している
さぁ、ここからが本番である
少し腕の動きを緩める
力が抜かれて少し安心したのかしぃの体に入っている力が少し抜けたのが腕を通して解る
だが、そうはいかない

死ぬまで付き合ってもらわないと満足できないじゃないか…

口には出さず、それを右手で示すことにした
右手に力を込める
腕に血管が浮かび、筋肉が盛り上がる
瞬く間に腕の太さは丸太のようになってしまった
無論、見掛け倒しなどではなく力も跳ね上がっている
そして、こすりつけるスピードは緩めたままに、込める力を先の倍でアスファルトにしぃの顔をこすりつけた
刹那、『ゴリッ』という破砕音とともにしぃの絶叫が辺りに響いた

「ウジィィィィィィィィェェアァァ!!!??!」

その声を聞いて思わず身震いが出てしまった

やはり、楽 し い

無抵抗の相手を蹂躙して、その存在を侵す

最高だ…!

早く殺せという体の疼きを理性でなんとか押し込める
ここで殺してしまっては今の気分が台無しだ
だが、体の疼きは止まらない
まるで一度起こってしまった性欲の如く、それは体に浸透していった

殺さない程度に…痛めつければ、いい…
それこそ、目以外は無くても、構わない
だったら…決まってる…

バラ
解体すんだ…!


破壊衝動は理性という壁をあっさりと破り、自身もまたその衝動に身を委ねた…

577古爪:2008/05/17(土) 04:27:55 ID:???
しぃは顔を血で真っ赤にして泣いていた
もう自分の鼻はなく、そこには血で汚れた鼻の骨がひびの入った状態で覗いているだけである
翠の綺麗な眼も今は血が入って濁ってしまっている
状態的に言うならば、顔だけなら軽く「でぃ」や「びぃ」よりも酷い状態であるだろう
肉は削げ、骨は露になり、顔はホラー映画さながら、真っ赤っ赤だ
頭の中に逃げるという方向性が生まれる
だが、頭をがっちりと掴まれた状態では逃げるどころか、瑣末な反撃すらも出来ないのだ
更にまわりは、有刺鉄線つきの高いフェンス
しぃ程度の身体能力で逃げれる状態でも、場所でもなかった
ふ、と相手、モララーの腕が止まった
さっきはその後であまりの凄惨なことになった
思わず体が硬直する
だがいつまで経っても顔がアスファルトにつくことはなかった
腕に違和感
何かが差し込まれた

針…?オ注射かな…?

しぃにそんな考えが浮かんでい時、既にモララーの作戦は成功していた

        糸売

短くてすみません;

581なんてことっ:2008/11/23(日) 08:28:29 ID:Iw0NRrdA
 「グフゥッ・・・・ガハッ・・・・・」
いつも蹴り飛ばされていたときとは、明らかに違う音がした。体のどこかで何かが折れたような感じがする。
「・・・・・・?」
『やっちゃった』って親の顔。コレが僕の唯一つの父親の記憶。僕は幼いころから殴られ蹴られ生きてきた。
道端で肋骨を初め何本か骨折した状態で発見され、病院に運ばれてからは一度も父の姿を見ていない。
母はしぃ族であったので、とうにアフォシィと間違えられて殺されていた。
僕は知っている。父が僕を殴るのは、僕が母に似ていたから、父が僕を蹴るのは母と全く違うからだってこと。
友達もなく、自尊心もズタズタにされた僕が自身を取り戻すためには、弱い種族を虐待するしかなかった。
僕が毎日痛い思いをするのは、母を殺したアフォシィであることに変わりはない。
だから僕は暴力に屈するたびに日に2つずつアフォシィの命を奪った。
正確に言うと、初めは2日に1匹だったものが、3日に2匹になり、一日に1匹になって、確実に増えていた。
知っている。コレは依存というのだ。僕は依存している。生き物の命を奪うことに依存しているのだ。
 「おーい、もらー」
もなが呼んでいる。僕の罪の意識を共有してくれる、生まれて初めての友達。
「チビギコの巣くつ、見つけたモナ。早く来るモナ!」
僕が父の血でまみれているところを助けてくれた、唯一の友人。
「よっし漏れ頑張っちゃうぞw!」
僕は笑って見せて、わくわくしながらもなの後をついていった。アフォシィだけじゃ足りない。殺し足りない。
 草むらをのけたとき、ものの見事に肥大したチビギコの巣が見つかった。
一瞬の躊躇があったが、チビギコはもなの手に握られた金属バットで、ようやく自分の置かれた状況を把握できたらしい。
「殺るモナ!」
「おう!」
勢い良く飛び出し、僕の手はチビギコの汚らしい耳を鷲掴みにした。

続く


初めてでもう見てられないくらい駄文ですが頑張って書きました。
叩かないでくださると嬉しいです。

582cmeptb:2009/01/07(水) 13:08:56 ID:???
HDD飛んでから初投稿……。
やっぱりバックアップは取っておかないといけませんねぇ…。
まして完成間近で飛ばれると悲しさも一塩で。

というわけで(期待している人がいるなら)期待の代物はまだです。
今回のは奇跡的に別のパソに残ってたのを書き直した代物です。

「めんたるぶれいく 前編」




「はーっ。…なぁギコ。俺さ、身体的虐待はちーっとやめるわ」
「……ハァ?」
開口一番、ギコを目の前にしてモララーはとんでもないことを言ってのけた。

「ちょ、ちょっと待てよ! お前が虐待やめるって……」
モララーの言葉を聞いたギコは思わず驚きが隠せない風を見せたが、それも
そのはず。今自分の前にいるモララーは虐待虐殺の界隈ではかなりの名を
馳せている一人だからだ。…もちろん、名を馳せるというからにはただ単に
耳もぎ手もぎなどの単純な手法で殺しているのではない。それを全部書いて
いくとキリがないので割愛するが、時には被虐者のみならず加虐側も吐き気を
催すようなむごいやり方をするようなおぞましい方法をとってきたのである、が
そんな殺戮の申し子とも呼べるような彼の、突然の発言。あたふたとするギコ
だったが、そんな彼にモララーはちちちと指を振った。

「おいおい、早とちりすんなって。俺は引退するなんて言ってないぞ。ただ…
“身体的” 虐待はちっとやめるって言っただけだぜ? 虐待虐殺そのものは
 やめないさ。というかやめられないって」
「へ? あ、ああ、そうなのか。…でも、どういう意味だ…?」
とりあえずは一安心とほっと息を吐くギコだったが、しかしモララーの言うことの
意味が未だ分からずに首を傾げると、モララーはにやりとどこか底冷えのする
寒気を感じさせる笑みを浮かべて口を開いた。

「なにね。お前も俺が虐殺始めてから今に至るまでどれだけの数をぶち殺して
 きたかは知ってるだろ? 一日最低十匹をモットーにして、それを忠実に
 こなしてきたから、通算…2,3万匹はあの世に送ってきた計算になるかな?
 …だからね、どうしてもそれだけの数を屠ると飽きがくるんだよ。あらかた
 殺害と呼べる方法は強弱合わせてやり尽くしちゃったからね。というわけで
 新ジャンル開拓に迫られるわけだ。これで分かっただろ?」
「……ああ。そういうことか……」
モララーの説明を受けて、ようやく納得がいったような顔をしたギコ。確かに
百かそこらならともかく万を殺せばいい加減マンネリと言うべきか、食傷気味に
なるのも当然といえる。しかし、となると彼の言う “新ジャンル” に移行するわけ
だが、一体どんなものを…? ギコがそう言いたげな顔をしていると、それに
気づいたモララーはびっとギコに向かって指を指した。

「それじゃあギコ。それを見せてやるから一つ頼まれてくれないか? …なーに
 簡単なこった。チビギコでもアフォシィでも何でも構わん、なるべくクソ生意気な
 お前が一瞬で息の根を止めたくなるような奴を一匹、ここに連れてきてくれ」
「あ、ああ。分かった。ちょっと待っててくれ……」
モララーの真意は未だ掴めないままであったが、しかしその目がぎらぎらと怪しく
輝いているところから鑑みても相当なものが期待できそうだ。ギコはそう独りごちて
早速哀れな標的を捕獲するべく、だっと走り出した…。

583cmeptb:2009/01/07(水) 13:09:46 ID:???


「はいよ、お望みの奴をつかま……もとい連れてきたぜ?」
「フン! わざわざこのチビタンをここまで歩かせるなんて、何考えてるデチか!?」
それから少し後、ギコは約束通り…、気の短い者ならこの時点でその首をねじ切って
いるだろう、それはそれは身の程知らずの口をきくチビギコを連れてきた。

「いやー、ありがとさん。実に “望み通り” のチビギコちゃんだよ……」
「望み通り…? クソ狸が何を言うデチか! お前たちがチビタンたちに望みを
 言うなんて、百億万年早いデチ! 身の程を知れデチ!!」
「……………………!!」
…知らぬが仏とはよく言ったもので、このチビギコに限ったことではないが、何故か
一概に被虐AAは自分の立場を分かっていない行動を打算とかそういうのを抜きに
してとる。まぁ言ってみれば馬鹿だと言うことで…、チビギコの後ろで早速ギコは
額に青筋を浮かべてぴくぴくと震えたが、モララーはすっと手で制した。

「…成る程。それじゃあちびちゃん、悪いんだけど、少し俺たちのお遊びにつきあって
 くれないかな? もちろん後でお菓子でもお肉でも、お礼は何でもするからさ……?」
「…フン。まぁチビタンは忙しいデチけど、馬鹿のお遊びにも付き合ってやるデチか…」
穏やかな微笑みを携えて話すモララーと、フンと鼻で笑うチビギコと。今すぐ自分が
血祭りに上げてやりたい衝動を何とか抑えつつ、しかし今日の主役はモララーだからと
血が飛び散ったときなどのためのビニールシートなどを準備するギコ。しかしそんな彼を
見ると、モララーはギコの肩に手を乗せて口を開いた。

「…ああ、ギコ。そんなのは準備しなくていいよ。さっきも言ったろ?今日これからやる
 やつは身体虐待じゃないって。つまり血はほとんど出ないんだよ…」
「え!? …あー、そうだったそうだった。でもそれじゃあ、何する気だ……?」
「何をぶつぶつ喋ってるデチか! 早くするデチ!!」
相変わらず分からない顔をするギコと、減らず口をたたくチビギコと。モララーは
ようやく開始と、ギコを脇にどけてチビギコにぬっと手を伸ばした。

「そいつはな……、こういうことっ!!」

………………………………………………

584cmeptb:2009/01/07(水) 13:10:27 ID:???


「な、何デチかこれはぁぁ!? 早く解放するデチぃぃぃっ!!」
数分後。かの命知らずでクソ生意気なチビギコちゃんは見事に椅子に縛り付けられ
加えて目隠しをされて蠢いていた。

「解放? お馬鹿さんだねぇ君は。これからこのモララーお兄さんが新しいお料理の
 フルコースを食わせてやろうってのに、前菜も食わないうちから帰るつもりかい?
 …しかしまぁ、かねてより不思議だったんだけど…、君たちってどうしてそんなに
 見分不相応に不遜な態度をとるんだい? そんな態度が一層虐殺者に火をつける
 ということも分かんないのかな? それともどうせ殺されるならせめてもの抵抗…
 って魂胆かな? まぁ何でもいいんだけどね。…それじゃ、始めるよ」
「フルコース、か…。どんな惨劇が起こるか、実に楽しみだと言わざるを得ないねぇ…」
先程まで散々いらつかされたチビギコにモララーがようやく執行の姿勢を見せてくれた
のでにやつくギコと、これからどれほどの虐待を繰り出そうとしているのか、嫌らしい
笑みを浮かべるモララーと、逆に焦り出すチビギコと。三者三様で色々な動きを見せる
中で、モララーはすっとチビギコの前に立った。

「は、早く放せェェェ! そしてチビタンに謝罪と賠償の印を……ヒギャッ!!」
「……DIE YOBBO(糞虫は死ね)」
目隠しをされて、目の前で恐ろしげな会話をされて一層大きな聞き苦しい叫び声を
上げるチビギコに次の瞬間、モララーは英語の1フレーズを呟きながら裁縫針…
しかもぐにゃぐにゃに歪んでいる、を取り出して、チビギコの頬に突き刺した。

「ひ、ひぐっ!? チビタンのほっぺにビンタ? な……ひぃっ!?」
「ふーっ、ふぅぅぅ……」
痛みは感じるだろうが所詮は針なので物理的な損傷は少ないものの、突然の攻撃に
思わず身じろぎするチビギコに更なる一手が。…それはどういう考えによるものだろうか
モララーはチビギコの耳に熱い食べ物を冷ますような感じで、ふぅふぅと息を吹きかけ
始めたのだ。ふーっ、ふぅぅ、と……

585cmeptb:2009/01/07(水) 13:12:06 ID:???
>>584 ビンタじゃないですわ。書き間違いです……



「おいおい、何だかんだで結構血ぃ出るんじゃねぇか? …それにしても嫌だねぇ。耳に
 息を吹きかけるなんて気持ち悪ィ…。それに 『DIE YOBBO』 って、お前どこの黒耳の
 悪魔だよ。ハハハ……」
ギコが呆れ顔で肩をすくめるその一方、モララーの “攻撃” はまだ続いていた。

「ふぅーっ、…DIE YOBBO. DIE YOBBO…!」
「へげっ!? や、やめ、ふぎっ……!?」
耳に息を吹きかけて、適当なところで耳や肩など致命傷にはならない部分に針を刺して
また息を吹きかけての延々のローテーション。…随分と生っちょろいことをやっているように
見えるかも知れないが、しかし当のチビギコを見てみると、到底そんな風には見えなかった。

「ヒギャ、ヒギッ……! も、もう嫌デチ! やめてくれデチィィ!!」
「ふふふ。痛いかな? ごめんねぇ? 針がまっすぐならもっと痛くないんだろうけどさ…。
 僕の奥さん、乱暴者でねぇ? ちょっとでも怒るとすぐに家財道具をめちゃくちゃに
 しちゃうのさ。その針も指で曲げたんだからねぇ……?」
“嘘付け、馬鹿! 年齢=彼女いない歴のくせしてよ……”

ただ単なる、針刺し。チビギコに与えられている攻撃はこれだけであるはずなのに
歪んでいるから肉をえぐり、確かに痛みを増加させることはさせるだろうが、他の虐待
虐殺に比べれば児戯のようなものなのに、何故かチビギコの絶叫はある意味それら
以上に酷いものになっていた。…おそらくおわかりだとは思うが、針刺しだけが決め手
なのではない。それが目隠しされた状態でされているのが決め手なのだ。
某格闘漫画のロシア人死刑囚の通り、いつどこから来るか分からない攻撃ほど相手に
恐怖を感じさせるものはなく、今のチビギコは目隠しをされているので、モララーが
針刺しを仕掛けてくるタイミングが分からない。加えて耳に息を連続して吹きかけ
られると、独特の気色悪さを感じるとともに平衡感覚まで失われる。今のチビギコは
言ってみれば右も左も上も下も分からない闇の中で、一方的に攻撃を加えられている
状態にあり、この時点でどれほどの恐怖とストレスを感じているかは言うまでもない。

「チビタンが悪かったデチ! これからは生意気なんて言わないデ…ビギャッ!?」
「ふーっ、…DIE YOBBO!! ふーっ……」
もはや涙のみならずよだれや鼻水までこぼしてチビギコは哀願したが、当然ながら
モララーは聞く耳を持たず。普通なら興奮して連続して攻撃したりあるいは拳で殴り
つけそうなものだが、彼はあくまで淡々とした表情で “それ” を続け、…なまじ威力が
さほどのものではない針の攻撃だからであろうか、時間が経つに連れてチビギコの
悲鳴はより一層のものへとなっていった。

「うぐ…。み、見てるこっちがおかしくなりそうだな……」
それから20分、30分。モララーが延々とチビギコをはたき続ける光景に、ギコは
自分もそれなりに虐殺慣れしているはずなのだが、おそらく肉体は殆ど壊れていない
のにまるで致命傷を負わされたように絶叫するチビギコに違和感を感じさせられたの
だろう、思わず吐き気を覚えずにはいられなかった。
「しかもこいつが、まだ前菜だぁ……? この後一体、何があるってんだ…?」

そしてその後、実に3時間が経過してようやく終わった……。

……………………………………………

586cmeptb:2009/01/07(水) 13:13:23 ID:???


「ふふふっ、お疲れだねぇチビギコちゃん? どうだったかなー?」
「ひ、ひ…! も、もう許してくだちゃい……!」
「…………………………」
モララーの話によればまだ前菜が終わったに過ぎないのだが、しかし今のチビギコは
とっくにデザートまで達しているような顔をしてしくしくと泣いていた。

「まぁまぁ、ちびちゃん。さっきはあんなにぷすぷす刺しちゃってゴメンねぇ? …ふふ。
 ちびちゃんも疲れたろ? だからね、ちょっとこれからは僕は何もしないことにするよ…」
「! ほ、本当デチか!? もう…刺さないんデチか!?」
モララーの言葉を聞いて、目隠しをされてはいたがチビギコの顔がぱっと明るくなった。
おそらく今チビギコの脳内は安堵でいっぱいなのだろうが、傍で見ていたギコはふっと
笑みを零した。これで終わるはずがないと…。…そして、そんな彼の考えをそのままに
モララーはチビギコの首に、何かを取り付けた。

「? い、今チビタンの首に何を着けたんデチか?」
「なーに、気にするこたぁない。…さて、ギコ。僕はちょっと隣の部屋で準備してくるから
 少しの間、このおちびちゃんを見ていてくれないか? ああ、もちろん手は出さないで…
 いや、僕が注意するまでもなく手を出さないと思うけどね。ちょっぴりおやつを用意して
 おいたからさ。ふふ……」
「? まぁいい。分かった。見張ってりゃいいんだな?」
「そ! …んじゃ、よろしくねぇ? すぐに戻るからさ……」
結局チビギコの疑問には答えず、任せたと言わんばかりにギコの肩をぽんと叩いて
モララーは部屋から出て行った……。


“…にしてもあいつ、何考えてやがる? おやつとか何とか言ってたが…、次の拷問の
 ための体力回復か? だとするとさっきチビギコの首につけてたのは、一体……?”
部屋に残って、数分。ギコは先程のモララーの行動にまた色々と考えを巡らせていると
先程のアレで疲れたのだろう、チビギコがうつらうつらと船を漕ぎ始めた。…思わず
ギコは水でもぶっかけてたたき起こそうとしたが、先ほどモララーに一切の手出しを
止められていたことを瞬間的に思い出し、どうにか手を引いたその時

「!! ヒギャアァッ!?」
「!? な、何だぁ?」
突然、電気でも走ったかのような勢いで眠りかけていたチビギコがびくりと飛び跳ねたのだ。
何か電気いすのような仕掛けでも施したのかと、驚いたギコはチビギコに近づいて辺りを
調べてみたが、椅子にコードもなければ何も妙な仕掛けは……、いや、あった。チビギコの
首に巻き付いているものが。

587cmeptb:2009/01/07(水) 13:13:50 ID:???


「あん? こりゃ…、太い…ミシン針が首輪に…? ! そういうことか……!」
ようやく合点がいったと、にんまりと微笑むギコ。そう。先程モララーがチビギコに施した
仕掛けとは、針付きの首輪だったのだ。首輪から突き出た針はチビギコの顎に先端が
向けられており、彼が眠気に負けて頭を垂らすと仕掛けられた針が顎に刺さるわけだ。
つまり、眠りたくても眠れない。それどころか頭を揺らすことすら出来ないのだ。
                      オーソドックス 
「シシシ…! この類の責めじゃあ “昔ながら” だから確かにおやつだわな。とは言っても
 まぁこいつで狂っちまったら元も子もねぇが、あいつのことだからその辺はきっちり計算
 してるに違いねぇ。俺は見張りがてら、じっくり見物でもさせてもらうとしましょうかね……」
やれやれとため息をつきながらギコは椅子に座ると、煙草を取り出して一服を始めた。
当然その間もチビギコの悲鳴は、絶え間なく響いていたが。

「ハァッ、ハァッ…! な、何でデチか…? チビタン、おねんねしたいのに……!?」
「………………………………」
普段だったら苦しむチビギコの恐怖をあおったり挑発したりと、とにかく言葉をかけていた
だろうが、ここではギコは沈黙に徹した。何せ会話をすればその分チビギコを覚醒させる
ことになり、今やっている “お楽しみ” の威力が半減してしまうことになる。なのでここでは
ただ黙って、戸惑いながら涙をこぼすチビギコをにやにやと見守り、針が刺さってヒギャアと
飛び跳ねればぱっと表情を明るくして声にならない笑い声を上げて。ギコも何だかんだで
モララーの考えに上手く乗っかって、アシスタント的な役割をきっちりと果たしていた。


「だ、誰か…いないんデチか!? チビタンのこの首輪……とってくだちゃい……!
 もうチビタン、へとへとなんデチ…! 頭もぐるぐるして、気持ち悪いんデチ……」
“誰が取るか、アホ! …しかし春眠、暁を何とやら…。でも今のあいつにゃ睡眠すらも
 出来そうにねぇな。カカカ……! 眠りたいのに眠れない、これ案外キッツイんだよなー…”

睡眠は、その本人に休息をもたらす。また疲労していればしているほどその導入も早く
そして強力なものになるのだが…、そこでもし眠ることが出来なかったら? 睡眠による
休息を何よりも望んでいるのに、何らかの要因で睡眠が妨げられたらどうなるのか?
…答えは、簡単。後は泥沼の無限地獄へ真っ逆さま……。

「ピギャッ! ヒギッ! ギギギ…! …も、もう許してくだちゃい!! チビタンにおねんね
 させてくだちゃあああああああいぃぃぃぃいい!!」
“はっはっは……! おやつと前菜でこの様か。まったく、“初志貫徹” しねぇ奴だな……”

まさに絶叫と叫びまくるチビギコと、声を出さずに笑うギコ。まだまだ宴はこれからである…。


続くよ

588名無し@耳もぎ大好き:2009/02/01(日) 20:57:10 ID:???
初張りです。






     『バイオミック・シィ』



カタカタカタカタカタカタ…………

暗闇の中でパソコンの、キーボードをたたく音が聞こえる…どうやらモララーのようだ。
パソコンと向き合い、必死にキーボードをたたいているモララーの元に電話がかかってきた。

「はい。もしもし、モララーですが…」

「あ、もしもしモララー君?私だ、ウララーだ。」

「ウララー博士。どうしたんですか?今※落胆型思考脳変異しぃについての論文を書いてる途中
だったんですけど…何か用ですか?」
※通称―アフォしぃ(一々言うの面倒なのでこれからはアフォしぃと変換させてもらいます)

「ほぅ…それは好都合…で、どこまで進んだかね?」

「はい。現在の所3分の2って所ですかね後はアフォしぃの総合的な、潜在能力の分析ぐらいなんですけど…」

「結構進んでるな……それはさておき、至急、私の研究所に来てくれないか、アフォしぃに関係することんだが…」

「分かりました…」

そういってモララーは電話を切り自分の研究室から出ていった…






この世界では、虐待・虐殺が頻発に起こっている。もちろん罪には問われない(例外はある)基本的にはしぃ、チビギコと言ったところだが、
たまにモララー達も虐殺されることがある。ウララー博士は、しぃ、チビギコなどの研究をしている。
私は、生物学についてだ…基本的にしぃを対象にしている。

今日もあちこちで虐殺が行われている。耳もぎ、足もぎ、顔を切り刻み、抵抗するしぃを殴り、蹴りを入れ、
動かなくなってもなお生き続けるしぃを虐待している光景を毎日見ている。
私は以前まで、吐き気がして、ものすごくイヤな気分になっていたが今では平気で生活をしている。
そうこうしているうちにウララー博士の研究所に着いたようだ…
ウララー博士の研究所は私の研究所の5倍くらいはある。
それもそのはずウララー博士は去年モナーベル発明賞をとった。
内容は、アフォしぃに飲ませるで、一時的に、通常のしぃと同じような状態にさせると言うアフォード、アボーンを開発した。
おっと…話が長くなりすぎた。

589名無し@耳もぎ大好き:2009/02/01(日) 20:58:11 ID:???
研究所の門を通り、入り口についた。ぎぃぃぃぃぃ…とイヤな音を立て扉を開けた

「ウララー博士〜。モララーです」

「おぉ、来てくれたか…いや、実はな…えぇっと、どこから話せばいい物か…単刀直入に言おう。
アフォしぃを永遠に知識を維持出来る薬が出来たんだ…」

「えぇぇ!??だってモナーベル賞を取ったアフォード、アボーンでも約一週間しか効き目がなかったのに、
一生なんて…ものすごい発明ですよ?」

「うむ…だがそこに問題があるんだが…」

「どうかしたんですか?」

「前のはは服用製だったのだがこれはバイオ液に浸して約一週間ほど放置しておく物なんだ。
そして一週間目にバイオ液を全て抜いて、5分ほどで目が覚めるんだが、目を覚まして始めてみた物を父親のように感じる。以前のことは全て忘れてな。」

「バイオ液ですか…それは少し厄介ですね、でもそれのどこが問題なんですか?」

「よく言ってくれたな…実は、知識を増幅させるだけではなく、戦闘能力も高めるためにポロロのDNAを使ったんだがそれがまずかった…
ストレスを感じ怒りのボルテージが満タンになった場合周りの物、全てを殺そうとする…まぁ3分ほどで収まるがな…」

「うーん…ぽろろのDNAを使ったとなればかなり戦闘能力は高くなるはずですが…どれぐらい強くなるかは分かっていますか?」

「いいや、まだ分かっていない、人体実験は行っていないんでね…そこで君の力を借りたいんだ…」

「分かりました…アフォしぃを捕まえて、実験をしてくれと言うのですね?」

「よく分かってるじゃないか。じゃあこれから薬を渡すこれをAF−GPXに約80〜100対1の日で割ってくれ。」

「そんなに薄くていいんですか?それじゃあまり効果が出ないんでは…あっ!!」

「そのとおり、ポロロのDNAを投与しているため、多すぎると、暴走してしまうからな…ではよろしく頼むよ。」

「はい。」

590ひよこ虐殺者:2009/02/01(日) 20:58:54 ID:???
僕は、研究所を抜けて、手頃なアフォしぃは居ないかと探したが、居るのはチビギコだけ…
来る時はうじゃうじゃ居たのに…と思ったが何故居ないのかその疑問は一発で吹き飛んだ
町の中心部にはアフォしぃの市街が無数にあった。おおかたモララーや、モナー達に虐殺されたのだろう…

「こりゃ絶望的だな…」と僕は落胆した…

研究所に戻ろうとして僕の研究所に着いたとたん、いた!二匹とベビが一匹。一匹は妊娠しているようだ…

「妊娠していない方を実験に使うか…」そう思った時アフォしぃが僕を見つけたらしく高くてキンキン響くアフォしぃ特有の声で僕に喋りかけてきた

「ソコノクソモララー! カワイイ2チャンノアイドル シィチャント、キュートデ、テンシノヨウニヤサシイベビチャンニ アマクテ(略」

お決まりの台詞が僕の耳に響く…

「そんな物持ってないよ…」と言ってジリジリとしぃに近づいていく…

「ナニヨ!クレナイナラギャクサツ(略」

「チィチィチィ ナッコナッ(略」

「モッテイナイナラセメテコノベビチャンヲ100マンカイダッコシ(略」

「うるさいよ…この糞野郎共が!!」と言って僕は思いっきりベビの頭を踏みつぶした。

「ギィギャァァァァァァ…………」といってベビは動かなくなった。そりゃあそうだ脳みそをつぶしたんだから一発であの世逝きだろう(藁

「シィィィィィィ!!!??シィノベビチャンガァァァァ!!」どうやら殺したベビは妊娠している方のだったらしい。それならなおさらだ!

「オォォォォオラァァァァァアア!」僕は思いっきり妊娠している方の腹を思いっきり殴り、それからも何発も殴り続けた。

「ハギィィィィィィィイイイ!!!!イギィィィィィ!!!!」と言ったところでとどめのキックを食らわした

「おらぁぁぁぁ!!!!」僕の足が思いっきりアフォしぃの腹にあたった

「ジィィィィィィィィィィ!!」と言って吹っ飛ぶアフォしぃ「シィミチャン!」どうやら妊娠しているアフォしぃはシィミとか言うらしい

「ア…グゥゥゥゥゥァァァァァァアアアアアアア」ビタチャチャチャビチャ…おや?どうやら出産したらしいが…アララ、どろどろにミンチ化しちゃってるよプッ(´<_,`)

「ハァハァシィノアカチャン!」コイツ、今の自分の状況理解してねえよ…御!どうやら我が子とのご対面みたいだな(藁

「シィィ!???ナヤノコノジュースハ!?? !マサカシィチャンノ アカチャン!??イヤァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

「うるさいよ!!」と言って僕は思いっきりしぃの頭を蹴った「ハギィィィィィ……………」と言って喋らなくなった。と思ったら首がボロッとおちた
アララ…蹴った衝撃で首が取れたみたい。こいつらホント脆いなHAHAHA♪♪

その時僕の頭に激痛が走った。「痛っ」

591名無し@:2009/02/01(日) 20:59:25 ID:???
「フフン シィチャンタチヲ ギャクサツスルカラ コウナルノヨ」くそ…実験に使うしぃを忘れてた。

僕はアフォしぃの後ろにまわり、思いっきり首を絞めた。

「アグゥゥ!??シィィィィィ………………………」動かなくなった…死んでるわけではない。気絶させただけだ。

「こんな物で(・∀・)イイかな?」

しぃを引きづりながら、僕は研究所に入って億の研究室に連れて行った。アフォしぃをそこら辺に置き、バイオ液の準備をした。が、サイズが足りないというピンチに陥った。
何か無いかと必死に探したがしぃがまるまる一匹はいるバイオ液はなさそうだ。

「しぃ位のサイズのバイオ液なんか無いよ…」どうしよう…何でこんな内容にしたんだ作者は…問いつめたい、小一(略
何か良い考えはないか…そう考えた僕にある提案が浮かんだ。

「そうだ…昔、親父がしぃ丸々一匹はいるバイオ液を持っていたはず!」

僕は研究所を抜け出した。気がつくと外がもう真っ暗になっている、研究所の裏の倉庫にたどり着いた。
ここには昔親父が使っていた道具や、もう使わない道具、古くなって使えなくなった物…色々な物が入っている。

「えぇっと確かここらに…あった!!」

見つけた…俺の1.5倍はあるバイオ液を…早速研究所に持っていk…「重っ!!!」僕は仕方なくローラーで運んだ…

早速機械に取り付け400:4の(AF−GPX:新薬)比で割ってその中にアフォしぃを入れたとたん気がついたようだ。必死で出ようとするが、バイオ液の中は
100%液体ですよHAHAHA♪♪あら?動かなくなった…後はこのまま一週間様子を見るだけだ…

      ゴーン、ゴーン!!

時計の鐘が鳴った。今日この音聞いたの初めてのような気がするwww

時計に目をそらすと時計は11時を指していた。時計の音を聞いて僕は軽い睡魔に襲われた。

「もう寝ようか………」

僕は、研究所の隣の寝室に行き、軽く日記をつけた後ベッドに潜ってそのまま眠った



モララーの日記○月△日

今日はウララー博士から新しい新薬の実験を頼まれた。

正直言って不安がいっぱいだが、うまくいくことを願う。

そうだ、新しく生まれてくるしぃの名前は何にしようか…

『バイオミック・シィ』……………………………………

ありきたりだな…普通にしぃと名付けておこう。

592Nacht:2009/02/08(日) 01:41:14 ID:???
                『zwilling』

―schwarz side.

―ごしゃり。
ソレは骨の砕ける感触で覚醒した。
手には真っ赤でぬらぬらとした血液がべったり。
頭蓋骨を顕にし、脳漿を曝け出した頭部は、およそ原型をとどめていないほどひしゃげている。
凶器は己が拳。
岩のような硬さを持つ、異常な左の拳。
それによって飛び散った脳漿はあたかも蛆虫のよう。
足は、ない。
残ったパーツはことごとく曲がり。
無貌の死体は奇妙なオブジェとなっている。
それを見下ろして。
ツマラナイ、と漏らして。

―ソレはニヤリと、不適に嗤った。

593Nacht:2009/02/08(日) 01:42:00 ID:???
―weiβ side.

―――寒い。
吐く息は白く、歯は根が合わず、絶えずカチカチと音を鳴らしている。
道を行く人々は皆暖かそうなコートなどに身をうずめ、それでもなお縮こまって通り過ぎていく。
別に、寒い格好をしているわけではない。

そう。
これは寒さなどではない。
暦は九月。もう夏の終わりが見え出している。

―――吐き気がする。
震える自分の肩をかき抱き。
手に残る生暖かさ、ぬるっとした粘着感が払拭できない。
両手を見れば、赤く染まっている。そんな錯覚。
馬鹿らしいと、かなり強引に、思考を覚醒するためにシフトさせる。

現在位置。不夜城めいた街の、ある一角。
薄汚れたゴミ溜めのような場所に彼、モララーは居た。

「うっ…ぐ…。目覚めは、最悪だね、こりゃ。」

呼吸が整ってから発した第一声はそんな事だった。
白い体は砂で薄汚れてしまっていた。

「うーん?なんでこんなところに…。」

近くに人は居ない。
娯楽だらけで明るい街とは対照的なここには、ほとんど人は寄り付かない。
治安が悪いのもあるだろうし、まず第一に何も無いからだ。
ここは、過去被虐対象だった者達が住まう一種の禁制区域。
かつて世界的に流行した虐待虐殺。しかし、それも所詮娯楽。理性を持った動物である限り必ず飽きはくる。
結果、虐待虐殺は10年間は世界を、輝きと血で満たしたが、その後はすぐ下火になった。
やがて、世界的大恐慌が発生。世界は経済社会の崩壊に直面し、各国の政府もそんな状態では立ち行かず。
多くの企業等と運命を共にするかのように崩壊した。
そして、国民達が自主的に新政府と名乗りを上げ、紛れも無い国民運営による迅速かつ国民視点による様々な政策が功を成し。
最初に立ち直ったその国を筆頭に、真似をする別の国や、そういった国から援助してもらうことで立ち直る国。
世界的な危機的状況に入って初めて、人々は【協力】という事を感覚で感じ取ったのかもしれない。
大恐慌からわずか半年。崩れ去った秩序は新たな秩序を以って再動した。
そして、その新政府からすべての国の、すべての国民に提示された一つの法案。
それは、「最低限度の完全なる平等」
その意味するところはつまり。

―虐待虐殺を世界が否定する。

594Nacht:2009/02/08(日) 01:42:45 ID:???
結果としては、賛成八、反対二で可決。
もしもこれを破ってしまった場合、最低十年以上の懲役、又は罰金五十万。
被虐対象となっていた者達は異様に体が脆かったため、強引に手を引っ張った際にすっぽ抜けて傷害罪。なんてこともあった。
新政府はこれに対して、彼ら専用の居住スペースを提供すると決定。
それがここ。
結局。世界が認識を変えても。徹底的な弱者は、徹底的なまでに環境がそこから這い上がることを辞さないらしい。
なんて、報われない。
だから、誰も寄り付かない。近くに居ても迷惑を被るのは自分たち。
そんなだから彼らが日陰に追いやられるのにそう時間はかからなかった…。

「…つっても昔と比べて考えりゃ破格の待遇だよなぁ。」

つーか、普通のやつの方が生活に困窮してる状況ってどうなのか。
彼らにはそれぞれ住居もあれば、職もある。人並みに生きることに関して言えば、一般AAよりもはるかに楽なのだ。
ちなみに俺は現在、仕事が無く、金も無いのでかれこれ三日間食い物を欠片でも口に放り込んだ記憶がない。
あるのは公園の水道水くらいか。我ながらなんとも情けない。

「いつまでも座ってるわけにはいかねぇし…。そろそろ起きて仕事探すかぁ。」

と、立とうとした瞬間。

「へぶぉっ!?」

顔面から勢いよくコンクリートの大地と熱ぅい接吻。

「つぅ〜〜〜…!」

倒れ伏したまま、鼻を押さえながら頭だけ動かす。
どうやら、三日間の断食はこの身には辛かったようである。
俺の足は栄養が足りないせいで自分の役目を忘れてしまったらしい。
あー。目まで霞んできた。ヤバイ。ヤバイです、神様。このままじゃ俺死にますよ?いいんですか哀れな子羊がこんな薄汚いところで野たれ死んでもっ!!
と、心で叫んだところで神様が助けてくれるわけではなく。こうして、また一人、人知れず一人のAAの人生は終わりを迎えるのだ―。
諦めて目を閉じる。その瞬間。
神が与えた一筋の光が見えた。

「どうして、そんなところで寝てるんですか?」

きょとん。と。
実に可愛らしい動作で、一人の少女が俺を見ていた。

595Nacht:2009/02/08(日) 01:44:04 ID:???
「どうして、そんなところで寝てるんですか?」

俺にとっての天使は無邪気に浮かんだ疑問をカタチにしてきた。
さて、我が天使。見た目、十代の中ごろ、思春期真っ盛りといった感じの少女。種族はしぃ。
ガラス細工を彷彿とさせる無邪気に輝く碧眼。
眩しいです。神様。
なんか本当に世の中変わったもんだ。

「えーとだね、お嬢さん。実は仕事が無くて三日間飯を食ってないわけさ。それで立とうとしたら、まぁ、その、情けない話、バタン、キュー…じゃない、グー。か。
ってわけ。」
「わぁ。大丈夫…?」
「見ての通りですが、何か?」

さて、どう動く?とりあえず懇願の目だけはデフォだな、うん。
少女は難しそうな顔でうーん、と顎に手を当てて考え込んでいる。
こちらとしてはこのまま野垂れ死ぬか、運良く生き残るかという死活問題である。
そして、結論が出たのか。こちらに近づいてきてすぐ傍でしゃがみ込む。そして、俺にそっと

「大変そうだけど頑張ってね。」

…天使からの死刑宣告。じゃあ、大人しく死のうか。ははは。
って、オイ!?

「いやいやいや!!待て!いや、待って!待ってください、お願いします!!」

三度目にしてようやく足を止めてくれた。
しかし、彼女はきょとんとするばかりである。

「いや、今の場面って『家に来ますか?』とか、どうぞこれでも食べて頑張ってください』とか言うところじゃないかい、THE・現代っ子!?」

テンション上がりすぎて空腹を忘れたのか、立ち上がって両手でゲッチュ!!(・∀・)少女に向けていた。
対して少女はなんか冷えた目でこちらを見ている。ように見えた。
しかし、それは俺の思い込みだったのか。少女は太陽のようににっこりと笑うと。

「なんだ。そんなことだったんですか。それなら最初から言ってくれれば良かったのに。あと、そのTHEなんたらはやめてくさい。」

なんとっ!?
この少女何気に凄いぞ!?警戒心が無いのか!?てゆーか年下に怒られてまったゼ☆
ま、とにかくだ。

596Nacht:2009/02/08(日) 01:44:49 ID:???
「えーっと。飯食わせてもらえるんですかね…?」
「えぇ、いいですよ。でも、そっちこそ大丈夫なんですか?」
「…?何が?」
「やっぱりなんでもないです。とにかく食べられるならいいんですよね?」
「オーイエス。」

交渉成功。
とりあえず今日一日は生き延びた。
でも、問題がある。

「俺、動けないんだけど…」
「みたいですね。」

当然でしょ。という感じの返し。

「え…っとどうしよう…?」
「這ったら大丈夫でしょ?」

前言撤回。こいつは天使じゃねぇ。

「大丈夫です。ここから五分とかかりませんから。」



…確かに五分とかからなかった。
必死に這うこと三十秒。

「着きましたよ。」
「は…?」

顔を上げれば、普通の一軒家。
愕然とした。
新政府…。ぬぁにが最低限度の完全なる平等か。これ、明らかに格差ですよ?
しかし、本当にすごい。新政府はなかなかやることが立派だ。だが、その分彼女らに娯楽はほとんど無いのだろう。
…偏ったバランスだなと思う。
ぼーっとしてる間によいしょと立たされ、服についた汚れを一通り落とされる。…あぁ、情けなきかな俺。
そのまま短い廊下を突っ切ってリビングに到着。そのまま真ん中にある食卓の椅子の一つに俺をおろすと、早足にどこかへ消えてしまった。
とりあえず水飲も。


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