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虐待・虐殺小説スレッドPART.4
1
:
管理団
:2007/04/12(木) 23:32:19 ID:???
AA ではない活字の並ぶ 虐待・虐殺系 の 新 し い ス タ イ ル 。
━━━━─────────────────────────────────━━━━
皮を剥がされたしぃが、首筋に大きなフックを刺されて吊され、みぞおちから股間までを
切り裂かれている。裂かれた腹からは、勝手にニュルニュルと腸が飛び出て、こぼれた。
吊された中には、ベビしぃも混じっている。
「ウゥゥゥ イタ イヨ、、、 モウ シナ セテ」
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 「イチャ ヨ ナコ チテ マチャ リ チタ」
|ミ| |ミ| ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
-、. |ミ|、 |ミ| |ミ| :
/;l |ミ|;l |ミ| ,,、 ,.,,.,.,,.,,.,..,, ,.,,. ,,.,,,.,, |ミ|i | ̄ ̄| ̄
/:;,.;ヽ,.,|ミ| | |ミ| /;,:l ミ,,,,,(★)ミ ミ(★),,,,,ミ |ミ| :| |
,:;´ ;::; ;: ; ;|ミ|.;`,、 、ー-- 、__、、ミ|_,,//,、| <ヽ`∀´> <`∀´* >、 i|ミ| :| |
l.,;:.ー、 ;;,:..;|ミ|;:..:.,;l ヽ;.:;r :;;.,;: ;:、_:;:;ヽ;l ⊂ミ 北 ) m 北 ミmヽ |ミ|i | |
 ̄ ̄|;:.;゚-,.ilヽ|/:|ミ|,; :; ;|  ̄ ̄`l>:;,. ;:( ゚,0.`o ;l: ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ i |ミ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽっ ;i|;/lヽ|ミ|;;:; ;/ |;,.: ;(´ ̄`)" ゚。;:l | 労働党 万歳 | . |ミ|, ー--、
>;:;: :;,. ;(O);:く ヽ;;.:` - ´:;: ;: ;;/ | ____ | . |ミ| ;: ;: ;:、´
/:: :; :,. ;:;l|iノ,.:;:.;;ヽ /;":;:);)(;:(;(;:;`;:, | || ★ || | i |ミ|:;: .:.,ー--、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー、,:.;;i | __ ̄ ̄__ | ,(O) ;;: ;:;: ;;:,´
::::::::::::::::::::::::::::::::::|/::::::::::::::::::::::::: \|:::::: /:;ヽi|l;;;: ;;: (゚ノ
「フォルフォルフォル、これが全自動畜産場ニカ?」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
突如、重く冷たい鉄の扉が開き、人が二人、中へ入ってきた。毛皮のコートに、これまた
毛皮の大きな帽子。その帽子に付けられた、大きな赤い星は、彼等が共産国家の兵士で
ある事を、何よりも雄弁に語っていた。
「はい、そのとおりでスミダ」
先に入ってきた男――物腰の低さや、言葉遣いからして、後から入ってきた男の案内役
であろう――は、上機嫌な上官に、この工場の概要を説明し始める。
「ちびギコを使った種付けから、しぃのニクコプンでの飼育、屠殺、解体、全て奴らの手で行われまスミダ」
鳴りやまない笑い声、絶えない悲鳴と怨嗟の声、、、
ここは彼女らの故郷より西に在る、
地 上 の 楽 園 。
15
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:10:22 ID:???
「チィィィィィ!!マァマァァァァァ!!タチュk」
グチャッ!!
「ナッゴォォォォ!!!ナ」
ブチュッ!
「アニ゙ャァァァァァァァァァァ!!!コンナノ マチャーリジャ ナ」
ビシャッ!!
叫ぶベビ、そして叫んだそばから潰されていくベビ。
完全に次の動向が予測できないラグビーボールは、まるで意思があるかのように次々とベビを潰していった。
何しろ、次はどの方向に、どれくらいの速度で、どこまで跳ぶのか。それらが全く予測できないのだ。
現実にそんな兵器があったとしたら、手練の兵士でも避ける事は困難を極めるだろう。
ましてや相手は単なるアフォしぃのベビ。運動神経は皆無に等しい。
それが最新鋭の兵器では無くてラグビーボールだったとしても、かわす事なんて出来やしなかった。
『ラグビーボールなんかで殺せるのか?』なんて疑問を抱いた方もいらっしゃるだろう。
だが、ラグビーボールの空気をしっかりと入れ、それなりの力で投げつけたなら、革張りのボールはかなりの威力を持つ。
前述したが、相手は単なるベビなのだ。体の脆いアフォしぃのベビの強度なんてたかが知れている。
ベビ達にとってそのラグビーボールは、まさに軽快に跳ね回る鋼鉄の塊のような物だった。
また、ボールが次々とベビを仕留める間も、フサは休んでいた訳では無かった。
彼はおもむろに駆け出すと、近くで恐怖に慄いて体が硬直していたベビを1匹、掴み上げた。
そしてそのベビを、片腕でしっかりと抱くようにして持つ。
「アニャ?ナッコデチュカ!?アニャーン・・・ヤット チィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ・・・ナッコ・・・」
腕に抱かれたベビはナッコと勘違い。瞬時にマターリモード。
(ちなみに、片腕で抱くようにしてボールを持つのはラグビーの基本)
フサはそんなベビも意に介さず、猛烈なダッシュをかける。
そして、これだけの惨劇が起こっているにも関わらず眠りこけている(ある意味大物な)1匹のベビを補足。
この時点で観客の半数はフサの目論見に気付いたらしく、wktkが止まらないご様子。
中にはまるでジョルジュ長岡の如く腕を振りまくって『うおぉぉぉぉ!!』なんて叫んでヒートする観客も居た。
縮まっていくフサと眠りベビの距離。
それが5m程度に達したとき、フサは抱えていたベビを片手持ちに持ち替えた。
「ハナーン・・・?」
マターリのあまりとろけそうになっているベビは、さして気にしていない様子だ。
そしてフサとベビの距離が3m程度になった時―――
―――跳躍。
空中でフサは、ベビを両手で持ち直して、その手を高々と振り上げた。
その様子は、つい先刻、ボールをベビに叩き付ける直前の瞬間と酷似していた。
「チィチィ!タカイタカイ デチュネ・・・。タカナッコ デチュ・・・」
―――いくらなんでも気付いても良さそうなのだが。
第一、今貴方は逆さまに掴まれているのですよ、ベビちゃん?
一瞬の静寂の時。そして。
ドグチャァッ!!
『ヂュビギョォォォォォォ!!!??』
この世の生き物が発したとは到底思えない奇声の二重奏(デュエット)。
互いに叩きつけられたベビの頭部は最早原型を留めない程に崩壊した。
特に叩き付けた方のベビ(掴まれてた方)は、頭部がグシャグシャに千切れて、さらに首から上が吹き飛んだ。
吹き飛んだ頭部は既に千切れていた事もあって見事に空中分解。
傍で目をひん剥いて事の顛末を見届けていた1匹のベビに、血肉のスコールが降り注いだ。
「チィィィィィィィィィ!!!!??イヤァァァァァァァァァァァ!!!!キモチワルイ デチュヨォォォォォォ!!!」
突如として文字通り降り掛かった災厄に、ベビは悲鳴を上げた。
全身を血液、肉片、脳漿で染め上げ、さらに耳の辺りを飛んで来た目玉でデコレーションしたベビ。
周りのベビも、遠巻きにしてそれを観察している。
次は自分が、あんな目に遭うのだろうか―――。
そんな言葉を脳裏に過ぎらせながら。
16
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:10:49 ID:???
「キモイ デチュヨォォォォォ!タチュケテェェェェェ!!ナッコォォォォ!!」
全身血肉塗れとなったベビが、半ば転げまわるような形で暴走を開始する。
他のベビに向かって突進する血塗れベビ。―――だが。
「チィィィィ!?コナイデェェェェェェ!!!」
「クチャーヨゥ!キモチワルイヨゥ!!マチャーリジャ ナイデチュヨゥ!!」
「アンタミタイナ キモイノハ ホコリアル カワイイ ベビシィトハ ミトメナイデチュ!!コノ キケイ!!」
口々に言いながら一目散に逃げてゆく。
血塗れベビを気遣う者は、誰一人としていない。『大丈夫か』の一言も無い。
それどころか、そのベビを罵倒し、蔑み、挙句『奇形』とまで言ってのけた。
運が悪ければ、自分がその『奇形』とやらになっていたかも知れないのに、そんな事は頭に無い。
奴らの頭は都合の悪い事は全て忘れるような構造をしているらしい。まさにアフォしぃの思想そのものだった。
蛙の子は蛙。アフォしぃの子はアフォしぃ。という事か。
「チィハ キケイナンカジャ ナイデチュヨゥ・・・ナッコ・・・ナコ、ナコ・・・」
周りのベビ全員から非難され、行き場を無くした血塗れベビが、その場に立ち止まって呟く。
だが次の瞬間、背後に誰かの気配を感じた。ベビの顔が明るくなる。
こんな自分でも、傍にいてくれる仲間がまだ居たのかと、ベビはゆっくり振り向く。
振り向きざま、ベビは両手を突き出しながら言った。
「ナッコ♪」
―――そこに居たのは、自らと同じベビしぃでは無かった。
目の前で数多のベビを屠ってきた、フサの姿があった。
「ヂ・・・」
ベビの顔が凍り付きかけた。―――何故、未完形なのかって?
凍り付く暇も無く、その頭は蹴り飛ばされてしまったから。
蹴られた頭部は、首から離れてかなりの速度で飛んでいく。鮮血の尾を引きながら。
そのまま、遠くにいたベビの、これまた頭部に直撃した。
ゴシャッ!
「ギヂュゥゥッ!!?」
命中の瞬間、生首の直撃を食らったベビの頭部は爆散した。
そしてさらに、その頭部の破片が近くに居た数匹のベビを襲った!
グシャシャッ!!ブチュッ!バキッ!
「ブギュッ!!」
頭蓋骨の大きな破片が側頭部に突き刺さり、脳を露出させたベビ。
「アギギギギィィィィ・・・」
顔面に大量の歯が突き刺さり、まるで蓮コラ画像のようになったベビ。
「ミ゙ギュゥゥゥゥゥ!!ウヴィィィィ!!」
顎の太くて丈夫な骨の直撃を受け、顔面を砕かれたベビ。
蹴り飛ばした首がベビを直撃し、さらにそのベビの砕けた頭部が周りのベビに命中する。それはまるでビリヤードのようだった。
「チィィィィィ!!ナッコスルカラ タチュケ」
グチョッ!
唯一フィールドで生き残っていたベビを、フサが踏み潰した。
と、その瞬間。
パァン!
再びピストルの音が、高らかに鳴り響いた。
それは、競技終了を知らせる合図だった。
「競技終了ォォォォォォォォ!!100匹屠殺完了っ!!」
「フサギコ選手、お疲れ様でした〜!」
すっかり興奮したモララーが叫び、ガナーはフサに労いの言葉をかける。
「タイムはぁっ・・・6分7秒!!これはいきなり好記録っっ!!」
モララーのコールに合わせて、スタンドの金網を吹き飛ばさんばかりの大歓声が轟いた。
17
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:17:20 ID:???
「ラグビーの動きを応用しての虐殺!いやぁ、お見事だったよ〜!」
モララーがすっかり上気しながらフサを褒め称える。
フサは「ありがとうございます!」と一礼。
「それではフサギコ選手、控え室、或いは観客席の方へお戻り下さい!ありがとうございました〜!」
ガナーのアナウンスを聞き届けてから、フサは司会、スタッフ、観客の順に礼をしてから、退場口へと消えていった。
―――一方、親しぃは。
「イヤァァァァァァァァァァァ!!ベビチャンガァァァァァァァ!!」
「ビェェェェェェェェェェェン!!ベビチャンガ シンジャッタヨォォォォォォォ!!」
「ハニャーン!ハニャーン!!ハニャァァァァァン!!!」
「アニャニャニャ・・・ベービチャァーン・・・」
愛する我が子とその仲間達が目の前で惨殺された親しぃ達は、完全に狂乱状態だった。
中にはショックから完全に思考回路が消し飛び、抜け殻のようになったしぃもいた。
やがて親しぃ達は、スタッフの手によって強制的に退場(泣き喚く奴・狂った奴は蹴り出して)させられた。
「う〜ん、すごいのじゃぁ・・・」
妹者が感心しきった様子で呟いた。
兄者がそれに同意する。
「うむ、まったくだ。だが妹者よ。感心するのはまだまだ早いぞ。これからまだ何人も競技を行うのだからな・・・」
「楽しみなのじゃ!」
兄者の言葉に、妹者は待ちきれないといった表情で笑った。
それから、何人もの挑戦者がバトルフィールドに現れ、ベビ達を虐殺していった。
(ちなみに、競技終了後のフィールドはスタッフが死骸を片した後、機械で土をまるまる入れ替える為、ほぼ元通りになる)
無難に虐殺した者もいたし、中にはかなり特異な方法をとった者もいた。
挑戦者NO.09である、有名料理店『モナ場料理店』の料理人モナーは、何とベビ達を100匹全員ベビフライにしてしまった。
油を高温に熱したり、ベビを捕まえて巨大鍋に放り込むのに時間が掛かった為に優勝は望めそうに無かったが、本人はとても満足した様子。
そのベビフライは司会の2人やスタッフ、抽選で決定した観客に配られた。
誰もが皆、百人百様の虐殺に魅了されていた。
―――控え室。
弟者と共にずっとモニターを見上げていたつーが、不意に立ち上がった。
モニターの中では、挑戦者NO.10の大工ギコが、ベビを鉋(かんな)でガリガリ削っている。『ギヂィィィィィィ!!!』という悲鳴が響いていた。
「ジャ、ソロソロ行ッテクルゼ」
「ん、もう出番なのか?」
つーの言葉に、弟者が反応する。
つーが答えた。
「アア、アタシハNO.12ナンデナ。1ツ前ノ挑戦者ノ競技中ニ、準備室ヘト移動スル事ニナッテルンダヨ」
なるほど、と弟者が頷いた。
「まあ、頑張って来い。前回優勝者だからって、気負う必要は無いさ。リラックスして、な」
「言ワレルマデモネェッテ。・・・アリガトヨ」
弟者の激励につーは微笑んでから、『出場者準備室』のプレートが掛かったドアを開け、その先に続く階段を下りていった。
その背中に確かな自信を感じ、弟者は少しだけ安堵してから、もう一度モニターを見上げ直す。
今度は別のベビが、エアーネイラー(電動釘打ち込み機)で釘を打ち込まれまくっていた。『アニ゙ャア゙ァァァァァァ!!!』というベビの悲鳴が聞こえて来た。
「さあさあ!いよいよ真打ちの登場です!」
モララーの一層大きな声が、スタンド中のAA達の耳を打った。
続いてガナーが、これまた普段より大きな声で告げた。
「挑戦者NO.12!!前回大会優勝者・・・つー選手の登場ですっ!!」
ドワァァァァァァァァ!!!!
その瞬間、爆弾が爆発したとも聞きまがう、凄まじい歓声が轟いた。
恐らくスタンド中どころでは無い。町内広場中に響き渡った事だろう。
歓声と共に登場した、小柄な少女。
「あ、つーちゃんなのじゃ」
妹者がつーに向かって手を振る。兄者も、少し驚きながら唸った。
「う〜む・・・前回優勝者はつー族の女の子とは聞いていたが・・・まさか弟者の友達だったとはな」
当の本人は、モララーからのインタビューに答えていた。
「今回も華麗なナイフ捌きを見せてくれると期待してるよ〜!ところで今回の目標は?」
その問いに、つーは即座に答えた。
「勿論、V2達成ニ決マッテルサ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」
「頼もしいお言葉!!是非頑張ってちょーだい!!」
「ではつー選手、準備をお願い致します!」
司会2人の声に押されて、つーは準備を始めた。
18
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:19:16 ID:???
『準備』とは言っても、つーは何やら硬い物がぎっしり詰まっている麻袋を2つ、腰にそれぞれ左右に括り付けただけだった。袋の口は背中の方を向いている。
そして、壁際のボタンを押し込む。ランプの点灯を確認してから、モララーがマイクを手に取る。
「おっと、準備が出来たようですね。ガナーちゃん、ベビの方はスタンバイ・オーケィ?」
「こっちも準備完了ですよ〜。それでは、間も無く競技開始です!」
ガナーの言葉通り、フィールドには既にベビしぃが100匹入場完了していた。
前述したが、フィールドは競技が終わる毎に綺麗に掃除される。ベビ達は100匹ずつ完全に隔離されて待機する為、誰一人として『ここで虐殺があった』という事実には気付かない。
それは親しぃも同じだった。
「ベビチャン、イイナァ。ナッコシテ モラエルナンテ・・・」
「デモ、ナンデ ギコクンジャ ナイノヨ!アンナ アヒャッタヤシニ ナッコサセタラ ベビチャンノ キョウイクニ ワルイジャナイノ!」
「マア、シィチャンハ ヤサシイカラ、ダッコサセテアゲテモ イインジャナイ?」
「カワイイシィチャンノ、カワイイベビチャンヲ ナッコデキルコトヲ ナイテ カンシャシナサイヨ!」
そんな喚きが聞こえてくる。バレる気配は全く無い。もっとも、バレた所で防ぎようも無い訳だが。
つーはというと、親しぃの言葉に軽くカチンと来たのか、親しぃの方を睨み付けながら、腰の袋に手を伸ばしたり、引っ込めたりしている。
どうやらあの中には武器が入っているようだ。
しかし間も無く競技が始まるというので、つーは視線を前に戻す。
視線の先には、ベビが100匹。ナッコを要求したり、つーが男に見えるのかコウピを要求するものもいたり、眠っていたり―――。
「では、よ〜い・・・」
ギコが空砲のピストルを構える。つーは軽く深呼吸しながら、体を少し屈める。
兄者、妹者を始めとする観客も息を飲む。スタンド中が静寂に包まれた。
―――否。ベビと親しぃだけは騒いでいたが。
そして―――。
パァン!
ピストルの咆哮と共に、流星の如き勢いでつーが飛び出した。
あちこちから聞こえてくる「ナッコーー!!」やら「チィヲ ナッコチナサイヨー!」とか言う声を完全に無視して。
その瞬発力は、確実に本日の出場者の中でも最速だろう。
フィールドの中央付近まで走り込んだつーは、右手を腰に回し、袋の中に突っ込む。
一瞬、風を切るような音がした。はた、と見た次の瞬間、つーの腕は顔の前を通り、右手は彼女の左側頭部の所にあった。
何が起こったのか、観客には全くわからない。
しかし、すぐに分かる事となる。
19
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:19:56 ID:???
「ヂィィィィィィ!!」
「ヂギャァァァァァァァァ!!!」
「ア゙ア゙ァァァァァァァァ!!」
という、3つの悲鳴が聞こえて来たからだ。
見やれば、つーの前方5、6m先に居る3匹のベビの顔面に、細めのナイフが突き刺さっていたのだ。
それぞれ眉間、こめかみ、右目。どれもベビの頭部を貫き、後頭部から切っ先が飛び出している。
「な、なにが起こったのじゃ・・・?」
目をくるくると回す妹者に、兄者が解説を開始する。
「妹者よ、説明しよう。袋の中にはあのナイフがぎっしり入ってたようだな。
で、袋に手を突っ込んだ時にナイフを3本掴んで、投げた」
「でも、投げたようには見えなかったのじゃ・・・」
「―――恐らく、目にも留まらない速さで腕を振って、投げたんだろうな。俺にも見えなかったよ。
俺達が見た時には既に顔の横に手をまわしていたが、あれはフォロースルーだろうな・・・」
「つーちゃん、凄いのじゃ・・・」
「ああ、全く・・・流石だな」
兄者が説明した通り、つーは目にも留まらぬ速さでナイフを投げた。
そしてそれは、正確にベビの顔を捉えたのだった。
その華奢な腕からは想像も出来ない程の剛速球、もとい剛速刃だ。
顔面に刃を受けた3匹が倒れ伏す間も無く、つーは走り出していた。
そして左手でナイフを1本取り出すと、体制を低くする。
怯えた表情のベビがすぐ傍に迫る。つーは軽く左手を振った、つもりだった。
ザシュッ!!
ベビの両耳、両手、両足が吹き飛んだ。噴出した鮮血の雫が、太陽の光を浴びてきらきらと輝く。
ベビがすかさず叫ぶ。
「チィィィィ!?チィノ オミミー!オテテー!アン」
「ウッサイ!」
聞き飽きたその叫びを皆まで言わせず、つーは達磨になったベビを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたベビ一直線に飛んで行き、親しぃの観戦席の窓ガラスの上方の壁に激突、そのままグチャリとトマトのように潰れた。
「シィィィィィィィィ!!?」という叫び声が聞こえたが、つーは全く気に留めない。
「チィィィィィィィィ!!ギャクサツチュー デチュヨォォォ!ナッコォォォォ!!」
そんな叫びが聞こえてきた。つーは視線を移す事もせず、その叫びの聞こえてきた方向へナイフを放る。
ザクッ、という音に一拍遅れて
「ギュヂィィィッ!!!?」
ベビの悲鳴が被さる。仕留めたかどうかを確認しようともせず、つーは再びナイフを1本抜く。
20
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:20:27 ID:???
その時、真正面からベビの声。
「カワイイ チィタチニ コンナンコトシテ ユルサレルト オモッテルンデチュカ!?イマナラ コウピデ カンベンチテヤルデチュ!コウピ コウピー!」
見ればそのベビは、尻をこっちに突き出しながら少しずつ接近して来る。常人なら確実に眼を背ける光景だろう。
つーは、ぎりっ、と歯軋り一つしてから、言葉と共にナイフを振りかぶる。
「アタシハ・・・」
そして、絶叫と共に腕を振りぬいた。
「―――女ダァァァァァァァ!!」
ブチュンッ!
「ギュッ・・・!?」
短い悲鳴。見れば、ナイフはなんとベビの体をぶち抜いて、貫通していた。
ナイフは肛門から突き刺さり、皮膚を破り、血管を絶ち、あばら骨を折り、心臓を貫いて、最後に口腔内を切り裂いてから口から体外へ出、失速して地面に突き刺さった。
その小さな体からは想像もつかないようなパワーだったが、つー自身はその力に酔う暇も無く、ナイフをまた取り出す。
今度は両手にそれぞれ5本ずつ。すると、つーはそのまま跳躍。高く高く上昇する。
彼女は空中で体制を直すと、ベビ7,8匹が身を寄せ合って固まっている箇所に狙いを定めた。
そして腕をクロスさせると、その両腕を広げるような形でナイフを投げつけた。
ベビの集まりに向けて、上空から風を切り裂いて10本のナイフが襲い掛かる!
ズドドドドドドドドドドッ!!!
「ハギュッ・・・!」
「ヂュィィィィィィ!!?」
「ナ゙ゴォォォォォ!!!」
「アギャァァァァ!」
雨霰(あめあられ)と降り注いだナイフは、余す事無くベビ達に突き刺さった。
顔面、後頭部、胸部、腹部、背中、首・・・被弾箇所は違えど、1匹残らずナイフの餌食。
つーがスタッ!と地面に着地した時には、既に8匹中5匹が絶命していた。
生き残っていたのはそれぞれ背中、腹部、脇腹にナイフを受けていた。致命傷にはなっていなかったが、出血はかなり激しい。溢れるなんてもんじゃない。噴出している。
放って置けば確実に死ぬ―――誰もがそう判断した。それはつーとて例外ではなく、未だにしぶとく「ナ・・・ナゴ・・・」と呟くベビをスルーし、ナイフを新しく抜きながら辺りを見渡した。
今度は両手に1本ずつ。それを構え、つーは突進した。
フィールドを縦横無尽に駆け回り、ベビの横を通り抜ける度に、つーは腕を動かす。
そしてその度に、ベビの体から鮮血が噴き出すのだった。体の一部も一緒に吹き飛ばし、時にはまるまる首や上半身を無くす者もいた。
ウオォォォォォォォォ!!
会場のボルテージは最高潮だった。
阿修羅の如き勢いでナイフを駆るつー。彼女が傍にいたベビの首を切断した瞬間、彼女は大きな声で笑った。
「アーーーーーーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」
その笑い声は、観客達に最大の興奮を、ベビ達に絶大な恐怖をもたらした。
21
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:21:48 ID:???
まるで真っ赤な絨毯を敷き詰めたかのようなフィールド。むせ返るような血の匂い。
その中央で、銀の刃を煌かせながら舞う少女。
彼女が動くたび、フィールドに真っ赤な花が咲く。
「チィィィィィ!モウ ヤァヨォォォォォォォ!!!」
ベビしぃの悲鳴。
しかし、耐え切れぬ恐怖から発したその叫びが、皮肉にもその『恐怖』の根源を呼び寄せる結果となる。
つーが、叫びを発したベビの方を向いた。思わずビクリと竦むベビ。
そして、右腕を軽く振る。放たれたナイフが、太陽光を反射して眩しく光った。
グシャッ!
「ジギュゥッ!!?」
哀れ、叫びを発したベビは、鋭いナイフにその小さな心臓を貫かれて逝ってしまった。
噴水のように噴き出す鮮血にも目もくれず、つーは足元に居たベビを蹴り上げた。
「アニャァァァァ!」
まるでサッカーボールのように高く舞い上がったベビ。
それと同時に、つーはベビと同じ高さまで跳躍する。
空中でくるりと体を捻って1回転してから、つーがナイフを水平に構えた。
「ナッコチュルカラ タチュケ・・・」
「ヤダネ!アッヒャッヒャ!」
短すぎる会話。
そして―――
ザンッ!
「アギュッ・・・」
横薙ぎに振るわれたナイフは、正確にベビを腹部の辺りで真っ二つに切り裂いた。
腸をぶら下げながら飛んでいく上半身と、糞尿になりかけの物体を撒き散らしながら落ちていく下半身。
つーは着地と同時に、少し離れた場所に居るベビ―――最後の一匹目掛けて走り出した。
爆風の如き勢いで迫る、小さな小さな『災厄』。
ベビは、つーに背を向けて逃げながら絶叫した。
「ナッコォォォォォォォォ!!ナコスルカラ ユルチテェェェェェェェェェェ!!」
だが、ベビしぃの渾身の叫びは、つーの心を1nmmですら動かす事は出来なかった。
「ソレシカ言エネェノカ・・・ヨッ!」
ドガッ!
「ヂィィィィィィィィィィ!!!」
あっという間にベビに追いついたつーは言い切ると同時に、ベビを思いっきり前方へ蹴飛ばした。
ベビは悲鳴を発しながら一直線に飛んで行き、そして。
ゴシャッ!!
「ビュギィッ!!??」
何と、親しぃ達の特別観戦席の窓ガラスに激突して張り付いた。
「イヤァァァァァァ!!」
「シィィィィィィ!!?」
親しぃ達の悲鳴が聞こえてくる。と、その時。
「ベビチャン!オカアサンハ ココヨ!!」
最前列に居た1匹のしぃが、ベビに向けて叫んだ。
何と皮肉な事か。顔面を骨折し、鼻血を垂れ流してガラスに張り付く何とも醜い有様のベビを、その母親が眼前で見る羽目になろうとは。
ベビも母親に気付いたのか、声を絞り出す。
「マ・・・マ、マ・・・」
「ベビチャン!ベビチャン!!シッカリシテェ!」
親しぃが、ガラスの向こうの我が子に向かって必死に手を伸ばす。
たった数cmのガラス窓に隔てられた親子。このガラスさえ無ければ、ベビちゃんを助けられるのに。
親しぃは無駄と頭では分かっていながらも、手を伸ばす。
ベビが今生の頼み、といった感じで、言葉を紡ぎだした。
「マ、マ・・・ナ、ナ、ナ゙」
ブシャッ!!!
22
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:22:13 ID:???
「ギュピィィィッ!!?」
刹那、窓ガラスが真っ赤に染まった。
たった今まで張り付いていた筈のベビは、頭部をざっくりと割られて一瞬で命の灯火を掻き消された。
噴き出した血が窓ガラスを紅く染め上げ、まるでステンドグラスのよう。
ベビの頭部は真っ二つに分かれて頭の中身をぶち撒けながら落下、窓ガラスには張り付いた首から下が残された。
血飛沫の向こう側に見えたつーの姿を、親しぃ達はきっと生涯忘れる事が出来ないだろう。
「ベビチャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!」
親しぃの大絶叫。
数cmのガラスを隔てた先で、その若すぎる命を散らした我が子。
「マァマ、ナッコチテ」その最後のお願いを言う事も許されなかった。
叫び終わった親しぃはただ呆然と、我が子の命の残光―――ガラスの血と、残された体を見つめていたが、
パァン!
突如として鳴り響いた、競技の終了を告げるピストルの音と共に、どやどやと入ってきたスタッフ達に押し出されるようにして、強制退場させられる羽目となった。
スタッフに腕を掴まれた瞬間、我に返ったように親しぃが叫んだ。
「ベビチャン!シィノ、シィノ、ベビチャンガァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
だが、スタッフの丸耳モナーが、軽い肘鉄と共に放った、
「五月蝿いモナ!あんな生ゴミ以下の命が無くなったくらいで、ガタガタ騒がないで欲しいモナ」
という、しぃ達にとってあまり冷徹過ぎる言葉によって、黙らざるを得なかった。
「終了ォォォォォォォ!!ブラボォォォォォォォ!!」
鳴り止まない拍手の中、モララーが叫んだ。
彼の顔はすっかり真っ赤、かなり興奮していた。
「つー選手、お疲れ様でした〜!いやぁ、本当に素晴らしかったですよ!」
ガナーも彼女を褒め称えた。
その言葉を聞いて、つーは血が飛び散って所々赤い顔でニッコリと笑った。虐殺の疲れを微塵も感じさせないその顔は、充実感と爽快感に満ち溢れていた。
「タイムは・・・おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!5分27秒!!早いっ!早すぎるぅ!!」
「アッヒャァァァァァァァァァァ!!!」
モララーが告げた自らのタイムを聞いたつーは、喜びを隠そうともせずに叫んだのだった。
両手を天に突き出し、全身で喜びを表すつー。
「これは凄い!大会史上、第2位のタイムです!!史上最速のタイム、5分21秒と僅か6秒差!!」
「これはもうV2ケテーイかぁっ!?素晴らしすぎる虐殺をありがとうっ!つー選手、戻ってチョーダイッ!!」
興奮の坩堝(るつぼ)と化したスタンドに、司会2人の声が響き渡る。
つーは司会、スタッフ、そして大観衆にまとめて手をぶんぶんと振ると、ガッツポーズをしながら退場口へと消えていった。
23
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:23:24 ID:???
つーが意気揚々とフィールドを去った後も、歓声が絶える事は無かった。
その後に出てきた挑戦者達が、これまた見事な虐殺を披露していったからである。
例えば、硫酸プールに次々とベビを放り込んで溶解させたNO.15の科学者じぃ。
プールがスケルトンになっていた為、観客達はベビが溶けゆく様子をじっくり観察する事が出来た。
他にはNO.18、食品工場勤務のニダー。
彼は特製超激辛キムチ用唐辛子ペーストなる物を次々とベビの肛門にぶち込み、まるでジェットの如く糞を爆裂させた。彼は100匹全員脱肛という、ある意味凄まじい記録を打ち立てた。
『我が国の誇り、思い知ったかニダ!ウェーハッハッハッハ!!』と、彼は笑っていた。
そして―――。
「さあいよいよ、最後の挑戦者です!」
マイクを通したガナーの声。
手元の資料を読みながら、モララーが言った。
「ん・・・おやぁ?どうやらこの選手は、飛び入り参加のようですね!これは期待!
では、ご登場願いましょう!挑戦者NO.20―――流石 弟者選手です!!」
コールを聞き届けた弟者が、入場口からフィールド内へと姿を現した―――その時。
『あーーーにーーーじゃぁーーーーーーーー!!!!頑張るのじゃーーーーーーーーーーー!!!』
スタンドに何百人と集まった観衆の大歓声にも劣らない大声が、スタンド中に響き渡った。
その何百という観衆、そしてスタッフに司会者の視線が、一斉に声の主―――妹者に注がれる。
「お、おい、妹者・・・恥ずかしいからやめてくれって・・・」
隣に座った兄者にとっては、殆ど晒し上げ状態だった。顔を真っ赤にして妹者に囁くと、彼女は
「ふぇ?」
とすっとぼけたような声を上げたが、スタンドに集まった全てのAAの視線が自分に注がれている事に気付くと、
「あ・・・は、恥ずかしいのじゃ・・・」
これまた顔を真っ赤にして、兄者の膝元に隠れてしまった。その様子を見て、スタンド中からどっと大爆笑。
笑いを必死にかみ殺しながら、モララーがマイクを構える。
「く、くく・・・失礼。どうやら、ご家族がいらっしゃるようですね・・・あれは妹さんですか?」
弟者は「・・・え、は、はい・・・」と呟いた。やはり顔が赤い。
それを聞いたモララーは、ニコリと笑って、
「可愛いお嬢さんですね。それに、あんなに大きな声で応援してくれるなんて・・・いい妹さんじゃないですか。羨ましいなぁ」
そう言った。
今度はスタンド中から拍手喝采。妹者はまだ頬を赤らめながらも、立ち上がってぺこぺことお辞儀を繰り返す。
拍手が止んだ辺りで、ガナーが苦笑する弟者に問いかける。
「今回は飛び入りでご参加のようですが、何故参加を?」
その質問に弟者は、
「いやあ、最初は観戦目的だったんですがね・・・兄と妹に薦められたんで、やってみようかなと」
つーに答えたのと同じように答える。
今度はモララーから質問が飛んできた。
「そういえば、弟者選手はあのつー選手と同級生だとか」
弟者が「ええ、結構つるんでます(w」と答えると、モララーは興味津々な顔つきになって、
「つー選手は、学校ではどのような感じなんですか?やっぱり虐殺を?」
と訊く。弟者はニヤリと笑って答えた。
24
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:23:49 ID:???
「ええ、そりゃあもう。以前校庭にアフォしぃが侵入した時なんかですね、授業中なのに真っ先に飛び出していって駆除してましたよ。
で、案の定先生からお説教。『アフォヲ駆除シタンダカラ、ソコマデ怒ル事ナイダロ!』って口答えしたら、デコピン喰らったらしいですよ。
それだけなら良かったんですが、つーの奴、その先生の授業だけ成績をガクンと下げられましてね。親に怒られるって、涙目になってましたww
武装したアフォしぃにも臆することなく立ち向かっていくのに、親には勝てないんですね・・・。
そういえば競技の時も何やら叫んでましたけど、やっぱりよく男に間違えられるそうですよ。そのくせ、男に間違うと怒る。
だったらもう少し女らしくしたらどうなんだと小一時間・・・」
つーの赤裸々な学校生活を次々と暴露する弟者。実に楽しそうだ。スタンドからは笑いが絶えない。
しかしその時、再び大声が。
「弟者・・・テメェェェェェ!!!ナニ勝手ニ喋ッテンダヨォ!ブッ殺スゾ!!」
見れば、兄者の横にいつの間にかつーが。恥ずかしさと怒りで顔が赤い。
「おおっとぉ、ご本人登場だ!弟者選手、明日の学校が怖いですねぇ・・・情報料として、治療費は半額くらいならお支払いしますよ?」
モララーのこの言葉に、会場がさらにどっと沸く。笑いすぎて椅子から転げ落ちる観客も居た。
弟者は肩を竦め、「おお怖・・・」と呟く。
つーは最後に、
「コレダケ言ッテオイテ、肝心ノ競技ガ全然ダメナラ、本気デ怒ルカラナ!
モシ全然ダメダッタラ・・・トリアエズ明日ノ学校デ、上履キニゴキブリ仕込ンデヤルカラナ!!シッカリヤレヨ!」
それだけ叫んで、頬を膨らませながら椅子にすとんと着席した。
モララーはニヤニヤと笑う。
「何だかんだ言って、応援してくれてますね・・・これは頑張らないとマズーですよ?」
今度はガナーがぽそりと呟いた。
「いやぁ、仲が良さそうで何よりですね」
思わず弟者は苦笑。
「まあ、せめて文句を言われない程度には頑張ります・・・」
「それでは弟者選手、準備をお願いしま〜す!」
ガナーのコールを聞いた弟者は、とりあえずレンタル武器が並べられたテーブルに向かって歩いていった。
25
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:06 ID:???
(さて・・・どうするべきか)
弟者は思案していた。飛び入り参加の為、武器は持参していない。となればレンタルするのが吉だろう。素手にはそこまで自信が無い。
テーブルの上には剣、ナイフ等の刃物類や槍なんかの長柄武器、ハンドガン、手榴弾、棍棒にハンマーetc―――様々な武器が並んでいる。
他にも絞殺用のピアノ線に、ロケット花火、爆竹、画鋲等の言わば『虐待用』の道具もある。
弟者は暫く武器を眺めていたが、ぽん、と手を打つ。
(この方法で逝くか・・・ならば、まずは相手の数を減らさないとな―――よし!)
弟者はポケットにピアノ線と手榴弾を2,3個ねじ込み、小剣とハンドガンを手に取ると、すぐ傍の壁に設置されたボタンを押し込んだ。
ランプが灯り、司会2人がマイクを構える。
「おおぅ!準備が完了したようです!どうやらスタンダードな方法を採るようですね」
「では、本日最後の挑戦、間も無くスタートです!」
弟者は前を見据えた。フィールド中にベビが散らばっている。
あちこちから、「ナッコ」「コウピ」「ハナーン」「チィチィ」の声。
武器を握る手に思わず力が篭った。
「それでは、よ〜い・・・」
ギコの声が聞こえた。
「ちっちゃい兄者・・・」
ぎゅ、と祈るように両手を組んだ妹者が呟く。
兄者は腕を組んで、弟者に視線を注ぐ。
その隣で、つーも同様に彼を見つめている。
そして、
パァン!
ピストルが短い爆音を発した。
弟者は素早く飛び出すと、辺りを見渡す。
ベビが周りから、次々と這い寄ってくる。
「チィヲ ハヤク ナッコ シナチャイ!」
すぐ傍にいたベビが喚く。
よし、と弟者は心の中で呟くと、何の躊躇いも無く手にした剣を足元へ突き出した。
すかさず、
「アギュゥゥゥッ!!?」
ベビの悲鳴が聞こえ、足に何やら生暖かい感触が伝わる。
そして「チィィィィィィ!?」「ギャクサツチュー デチュカ!?」「チィノ ナッコハ ドウナルンデチュカー!」等の五月蝿い喚き声が聞こえてきた。
弟者は血に塗れた剣を振り上げ、そばでナッコナッコと騒いでいるベビの頭上に振り下ろす。
赤い液体がぱっと散り、「ウヂュゥッ!!?」という断末魔。止め処無く噴き出す血と共に、ベビの命も流れ出ていった。
「ハニャァァァァン!!ベビチャンガ シンジャウヨゥ!!」
「ギャクサツチュウ、ヤメナサイ!!」
親しぃの声が聞こえた。弟者は少し眉を顰め、足を振り上げた。
そのまま足元のベビに向かって足を振り下ろす。柔らかい物を潰す、気味の悪い感触が
グチュッ!
という音と共に伝わる。
「グブヂュゥ!?」
異様なベビの声を聞いた弟者は、その無残に潰れ、見るのも嫌気がする死骸を摘み上げる。
そして、そのベビだった肉塊を、未だギャーギャー喚く親しぃの席へ向かって投げ付けた。
ビチャッ!!
元から潰れていたベビ風肉塊はガラス窓にぶつかり、気持ち悪いSEと共にさらに醜く潰れて拡がった。
「シィィィィィィィィィィ!!!?」
という悲鳴が場内に響き渡る。その声は、まさに観客達にとっては興奮剤のようなもの。歓声が一層大きくなった。
26
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:30 ID:???
ビビらせるには十分だろう、と思った弟者は、今度はハンドガンを構える。
そして、少し離れた所で必死に
「タチュケテェェェェェェェ!!」
「ナッコモ コウピモ ナンデモチュルカラ ユルチテヨゥ!!」
「チィヲ コロチタラ マァマガ ダマッテナイデチュヨ!」
とか何とか言いながら這いずるベビ数匹を捉えた。
本人はかなり必死なんだろうが、動くペースはあまりにスロウ。弟者にとっては殆ど的。当ててくださいと言っているようにしか聞こえない。
「ベビしぃ、必死だな」
弟者はひとりごちると、トリガーを連続で引いた。
パン!パン!パァン!!
競技開始時にギコが鳴らしたピストルに酷似した音が響いた。
発射音とマズルフラッシュを伴って撃ち出された弾丸は、正確にベビの急所―――眉間、左胸、顔面etc―――に風穴を穿たう。
「アギャァァァァァ!!」
「ウジィィィ!?」
「ナ゙ゴォォォッ!?」
口々に断末魔の叫びを上げて、ベビ達は朽ちた。
弟者は特にリアクションする事も無く、再びトリガーを引いた。
パァン!パァン!パァン!
新たに撃ち出された弾丸は、やはり離れた所にいたベビ達を確実に黄泉の国へと誘うのであった。
「ビュゥゥッ!?」
「ナ゙ゴ、ナ、ナ、ア゙ア゙ァァァァァァァ!!」
「ピギャァァァァ!?」」
1匹目は首、2匹目はこめかみ、3匹目は左胸から鮮血を噴き出しながら、そのまま倒れ伏す。
弟者の射撃技術はかなりのものだった。ここまで1発も撃ち漏らす事無く、ベビを仕留めている。
観客席から聞こえて来た『いいぞ〜!』という歓声に片手を挙げて応えると、弟者はまた走り出す。
そして、逃げ惑うベビしぃ達を次々と葬っていった。
27
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:57 ID:???
「せいっ!」
「ナッゴォォォォォォ!!」
気合の掛け声と共に剣を振り抜く弟者。悲鳴を上げるベビ。
弟者の振るった刃は、ベビの意思を一切無視。ベビの腹部を切り裂いた。
「ナギュォォォォ・・・ォ・・・」
間延びした悲鳴と共に、切り裂かれた腹から臓物がこぼれた。蚯蚓の様な腸が、ベチャリと音を立てて地面に墜ちる。
止めを刺そうとはせずに、弟者は手にしたハンドガンのリロード作業を行っている。
グリップの底部から、空になったマガジンが落下。
落ちてきたマガジンは、しぶとく命を繋ぎ止めているベビの、腹部よりこぼれ出る臓物を直撃した。
グチッ
「ア゙ヴィッ・・・?」
何とも可笑しな呟きを残して、ベビが白目を剥いた。
どうやら、落ちてきたマガジンの衝撃が予想以上に強く、直撃を受けた内蔵が裂けたらしい。
弟者はというと、弾丸を詰め終えたハンドガンを前方へ突き出し、狙いを定める。
「ナッコォォォ!ナコスルカラ チィダケデモ タチュケテヨゥ!ナコナコナコナコナコナコ」
パァン!パァン!
「ナコナコナギャァァァァァァァ!!」
ナコナコ五月蝿く騒いで観客を見事にイラつかせていたベビは、弾丸を頭部に撃ち込まれて血液&脳漿を撒き散らした。
そこで弟者は、一旦虐殺の手を休めて辺りを見回してみた。
そこここに自らが仕留めたベビの死骸が横たわり―――バラバラになってて横たわる事も出来ないベビもいたが―――、
残ったベビはあちこちで逃げ惑ったり、怯えている。恐怖のあまり竦んで動けない者もいた。
素早く数を数えてみる。10,20,30―――40匹前後か。
「そろそろだな・・・」
弟者が呟いた。
すると彼は、何と持っていたハンドガンをしまい、剣をその場に放り出してしまった。
スタンド中からどよめきが起こる。それはそうだろう。
1分1秒を争う競技の真っ最中に、武器を放り出すなんて前代未聞だからだ。
しかし、弟者の妙な行動はこれだけでは無かった。
次の瞬間、弟者は何と実況席へと走って行ったのだった。
選手がいきなり実況席に向かってくるなんてこれまた前代未聞。
面食らった表情のモララーに、弟者が早口で言った。
「紙とペン、お貸し願えますか?」
「え、あ、ああ・・・紙とペンね、はい」
突然の要求にモララーは多少慌てながらも、B4サイズの画用紙とボールペンを渡してやる。
弟者は一礼すると、素早く取って返し、まず紙を2つに裂いた。
次に、片足を上げて自らの太ももを下敷き代わりにして、2つに裂いた紙の内、片方に素早く何かを書き込む。
そして、フィールド中に聞こえるように大声を張った。
「ベビちゃん達!よ〜く聞いておくれ!」
その言葉に、ベビ達が少しだけ反応する。勿論、かなり警戒はしているが。
しかし、弟者の次の言葉を聞いた瞬間、その目の色が変わった。
「今から俺がこの紙を放るから、それを取って俺の所へ持ってきてください!
持って来たベビちゃんを、好きなだけナッコしてあげます!」
言い切ると同時に、弟者は紙片を投げた。
そよ風に煽られた紙片は、少し飛ばされてから地面に落ちる。
ベビ達はというと―――
「ナッコ!?」
「チィヲ ナッコチテクレルノ!?」
「ヤット コノチィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ!」
「チィィィィ!アノカミサンハ モラッタデチュ!」
ついさっきまで自分の仲間達が惨たらしく殺されていた事などとうに忘れ、その小さな目をらんらんと輝かせ、一心不乱に紙片の元へ向かっていく。
フィールドに残された全てのベビが、紙を目指して這う。
ベビ達にとっては宝の地図の如き紙片には、ただ一言『ナッコ』と書かれているのみだった。
28
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:26:25 ID:???
ベビ達の内、紙片から近かった十数匹はあっという間に紙片の元へ到達した。
先頭のベビが、紙片をその小さな手に握り締めた。
「ハナーン!ナッコハ チィノモノデチュネ!」
勝ち誇った顔でベビが言った。だが―――
ドンッ!
すぐに追いついた別のベビが、紙片を握ったベビに向かって体当たりをしたのだ。
「アニャァァァ!?」
体当たりを食らったベビはバランスを崩し、地面に倒れた。その拍子にそのベビが握っていた紙片はその手を離れ、ひらひらと舞う。
「アンタミタイナ クチョベビニ ナッコハ モッタイナイデチュ!ナッコハ コノウチュウイチカワイイ チィニコソ フサワシインデチュ!」
そんな台詞を吐きながら、体当たりをしたベビが漂う紙片へ向かって手を伸ばす。
絶対自分本位という、アフォしぃ的思想はベビの頃から備わっているようだ。
しかし、それは他のベビも同じな訳で、
「マチナチャイ!アンタミタイナ ゲセンナベビハ ヒッコンデナチャイ!」
「ナッコハ チィノモノデチュヨゥ!」
「チィィィィィィ!!ナッコナッコナッコォォォォォォォ!!」
後から追いついたベビ達が、体当たりをしたベビを突き飛ばし、我先にと手を伸ばす。
そこからはあまりにも醜い争いだった。
40匹のベビしぃが、たった一切れの紙切れを求めて、押し合い、圧し合い、取っ組み合い。
口々に「ナッコ、ナッコ」と言いながら、紙をその手に掴まんと、他のベビを押しのけ押しのけ、地面を転がった。
そんな中―――
「イイカゲン アキラメナチャイ!ナッコハ チィノモノト キマッテルノ!」
ドガッ!
「ヂィィィィィ!?」
―――ついに、殴り合いの喧嘩に発展した。
ベビが放ったストレートパンチは、相手のベビの顔面に見事にクリーンヒット。
ベビしぃのパンチの威力などたかが知れているが、相手が同じベビしぃなら威力はかなりの物だ。
殴られたベビは顔中の穴から血を噴いて、地面に倒れた。
それを皮切りに、ベビ達の争いはさらにエスカレートした。
殴る、蹴る、頭突きなんて当たり前。中には、本物の虐殺者よろしく相手を『殺しに』かかっているベビまでいる始末。
「ナッコ!ナッコォォォォ!!」
ブチッ!
「ヂュィィィィィィィ!!ヤメテェェェェ!!」
傷だらけになったベビが、殴り合っていた相手のベビの耳を食い千切った。悲鳴を上げるベビ。
なんと、ついに虐殺の基本中の基本、『耳もぎ』まで登場した。
この時点で、観客の興奮度はピークに達した。
弟者自身は手を下さず、ベビ達が勝手に殺し合う。弟者の真意はそこにあったのだ。
未だかつて無かった新しい虐殺方法―――同士討ち。初めての感覚に、観客達のボルテージは上がりっぱなしだ。
その間も、ベビ達の数はどんどん減っていく。
「チィィィィ!ナッコハ チィノモノナノ!」
ブチィッ!
「チィィィィィ!イチャイヨゥゥゥゥ!!」
―――足もぎ。
「アンタニハ ナッコナンテ ヒツヨウナイノ!ナッコチナイ オテテハ イラナイデチュネ!」
ブシャァァ!
「アギィィィィィィ!!チィノ オテテガァァァァァァァ!!」
―――腕もぎ。
「ナッコナッコナッコォォォォォ!」
ドガッ!ドガッ!ドガッ!
「ナッゴォォォォ・・・ヂ、ヂィィィィ・・・ナ゙ッ・・・」
背中に馬乗りになって後頭部を連打したり、
「サッサト チニナチャイッ!」
ガブシュッ!!
「ヂュィィィィィィ!!?ナッコチュルカラ ユルチテェェェェェェ!!」
腹を食い破ったり。
ベビ達はその体を仲間だったはずの連中の血液と臓物の欠片に塗れさせ、目の前の相手を葬り去っていく。
敗北した哀れなベビは、「ナ・・・ナゴォ・・・」の呟きを残して、命の灯火を消してゆく。
因みに、『ナッコ』と書かれた紙片はすでに千切れてバラバラになり、風に吹かれてどこかへ舞い散っていってしまった。
しかし、そんな事を既に忘れたベビ達は、ただ自らの欲望の為、目の前の相手を叩き潰すだけ。
気付けば、この1分前後の間にベビの数は半分程度になっていた。
―――そこで、弟者が再び動いた。
29
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:26:56 ID:???
弟者は残ったもう1枚の紙片に再び『ナッコ』と書き込むと、ベビ達が醜く争う現場より少し離れた場所へ向かう。
そこで、ポケットからピアノ線と手榴弾を取り出すと、何やら細工。
次に弟者は、足で軽く地面を掘ると、細工の終わった2つの手榴弾をそこに置き、ぐいぐいと押し込んで固定してから土を被せた。
そして、土をかけた場所に紙片を置くと、小走りでその場所から離れ、再び大声を張った。
「ベビちゃん達!こっちにも紙があるよ〜!」
その声を聞いたベビ達が一斉に反応した。
「コンドコソ チィガ ナッコチテ モラウデチュ!」
「チィィィィ!チィコソガ ナッコデ マターリスルノ!アンタハ ドッカヘ イッテナチャイ!」
「ナッコナッコナッコナッコナッコォォォォ!!」
口々に己の欲望に染まった台詞を叫びながら、ベビ達が一斉に紙の置かれた地点へと向かっていく。
「ヂィィィ・・・ナ、ナッグォォォ・・・」
大怪我をして動けないベビをその場に置き去りにして。
弟者は何故か片手を握ったまま、離れた場所で傍観している。
やがて、動く事の出来る全てのベビが置かれた紙片を射程圏内に捉えた。
そして例の如く、紙片を求めて再び大乱闘を始めた。
骨肉の争いを繰り広げるベビ達を尻目に、弟者は先程までベビ達が争っていた場所へ行く。
体のあちこちを無くしたり、臓物を露出させたりしているベビ達の死体。同族にここまでこっぴどくやられるとは、と弟者は少しだけ戦慄した。
弟者が戻ってきたのは、数多くの死体の中にただ1匹、しぶとくも命の火を燻らせるベビがいたからだ。
「ヂュィィィ・・・ナ、ナ、ナッゴォォォォ・・・」
途切れ途切れの声で、虫の息のベビが言葉を紡ぎ出す。
死にかけのベビは、弟者の姿を捉えると、まだ残っていた左手を懸命に伸ばす。
「ナゴ・・・ナ、ゴ・・・」
まるで最後の願いだと言わんばかりに、ベビは「ナッコ」を繰り返す。
そんなベビを弟者は一瞥した後、足を振り上げて―――
グチッ!
「ナギュッ!」
何の躊躇いも無く踏み潰した。
弟者が足をどけてみると、潰れたベビの死体から、じわじわと鮮血が漏れ出して、周りの土に染み込んでいった。
弟者はその場を離れると、未だに乱闘を繰り広げるベビ達の方を向いた。
「ナッゴォォォォ!!」
グチャッ!!
「アヂュゥゥゥゥゥィィィィ!!?」」
片耳を失ったベビが、相手のベビを思いっきり地面に叩き付けた。
叩きつけられたベビは、頭部が破裂して脳みそを辺りにぶちまける。
「ナッコハ チィノモノナノヨゥ!アンタハ チニナチャイ!」
ブチュッ!
「ヂギィィィィィ!?チィノ オメメェェェェェェ!!」
こちらでは未だに無傷のベビが、両手を失って反撃の出来ないベビの目玉を抉り取っている。
それだけに留まらず、
「ハナーン!ヤッパリ カワイイチィイガイニ ナッコハ ヒツヨウナイデチュネ!サア サッサト チンデチョウダイネ!」
ブチャッ!
「チィィィィィィィィィ!?チィノオミミー!オメメー!!」
嬲るようにして、相手の目や耳を一つ一つ奪っていく。しかも、前述したが相手は反撃不可能。残虐にも程がある。
ベビ達は戦った。ただ、ナッコの為に。時に必死に、時に残虐に。アフォしぃという生き物は、ここまで自分の欲望に素直になれるのか。
しかし、ベビ達は知らない。自分達が戦っているフィールドの真下に、手榴弾が眠っている事を。
思わず顔を顰めた弟者は、一言
「―――これで締めだな・・・」
そう呟いた。
そして、不自然に握ったままの右手を、その場で思いっきりグイッ!と引っ張った。
キュポッ!
何かを引き抜くような音が微かに聞こえた。
しかし、口々に叫びを発しつつ殴り合い、蹴り合い、もぎ取り合いに興じるベビ達にはまったく聞こえなかった模様。
そして数秒の後―――
「チィ?」
「アニャッ?」
ドゴォォォォォォォォォン!!!!
30
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:28:09 ID:???
爆音を伴った衝撃波と共に、高々と舞い上がった土煙。そして、哀れなベビ達のバラバラ死体。
お分かりの事とは思うが、弟者がずっと握っていたのはピアノ線だ。そして、そのピアノ線は地中に埋めた手榴弾の安全装置に括り付けてあったのだ。
弟者はそれを引っ張って離れた所から安全装置を外し、見事な遠隔操作で手榴弾を爆発させた。
すぐ真下で2つもの爆弾が爆発したのだ。元より脆いベビしぃで無くとも、無事である筈が無い。
生き残っていた全てのベビが、手榴弾の直撃を受けていた。
両手両足は当たり前、その他首が千切れたり、腹部から四方に爆ぜていたり、中には完全にバラバラに千切れてただの肉片と化したベビも居た。
ボトボトボトッ!
ベビ達の死体が、地面に落下した。
見たところ、爆発から逃れたベビはいない。これで競技終了かと思われた―――が。
「ヂ・・・ヂィィィィ・・・」
落ちてきた死体の中から、声が微かに聞こえた。
見れば何と、下半身を失いながらも未だ生きているベビが、ただ1匹。
どんなに死に掛けであろうと、ただ1匹であろうと、生き残りが居れば競技は終了しない。その間も、時間は経過していく。
「―――なんてこった!」
弟者は素早く駆け出した。
そして、その異常な生命力を持つベビに肉薄すると、足を思いっきり後方へと振り上げ、ベビに叩き付けた。
グシャァッ!
「ニ゙ャッッ・・・」
「ナッコ」の一言も発する事が出来ないまま、ベビは顔面を蹴り潰され、再び高々と宙に舞った。
舞い上がったベビは、すぐに落下してきて、地面に叩きつけられる。そして、その瞬間―――
パァン!!
ギコの手に握られたピストルが、本日最後となる咆哮を放った。
ワァァァァァァァァ!!!
瞬間、観客達が沸きに沸いた。
さらに、大歓声の中から、
『あーーーにーーーじゃぁーーーー!』
の声を聞き取った。見やれば、妹者が両手を思いっきり振っている。兄者は頷き、つーは笑いかけてくれた。
やがて歓声が徐々に収まってきた頃、司会者の2人がマイクを掴んだ。
「いやぁ、素晴らしいっ!お見事っ!!名前通り、流石だぁぁぁぁぁぁ!!」
「弟者選手、お疲れ様でした〜!う〜ん、これは凄かったですよ!」
今にも脳溢血で倒れるんじゃないかと危惧させる程興奮したモララーと、そんな彼に苦笑しながらも、弟者に労いの言葉を投げかけるガナー。
弟者が一礼で返すと、さらにモララーが喋りまくる。
「それにしても、ベビ同士で殺し合いをさせるなんて、史上初だよ君ィ!
さらに、手榴弾の遠隔操作!飛び入りとは思えないねマッタク!!いや本当に凄い!!」
まるでガトリング砲の如く言葉を撃ち出しまくるモララーに、弟者とガナーが同時に苦笑。だが、弟者はまんざらでも無い様子だった。褒められれば悪い気はしない。
「忘れがちですけど、その前の小剣とハンドガンによる虐殺も見事でしたよ〜」
ガナーもしっかりと弟者を賞賛してくれる。
「最後の最後に凄い奴が居たァァァァァ!!弟者選手、アリガ㌧!!」
終始興奮しっぱなしのモララーのこの言葉を締めとして、弟者へのインタビューは終了した。
直後に沸き起こった大歓声が、再び弟者を包み込んだ。
31
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:28:37 ID:???
「結果ァッ!」
「発表ォォォォォォォォォォォ!!!」
司会者2人の気合篭りまくりな声が、マイクに拡張されてスタンド中のAA達の耳を打つ。
同時に湧き上がった大歓声も、司会者に負けず劣らず気合十分。
綺麗に掃除されたフィールドに、弟者やつーを含む全ての選手達が整列している。
「いよいよ、本日の競技の結果を発表します!皆様、お疲れ様でした〜!」
「ギコ君が先に説明してくれたけど、1〜3位までがメダル!4〜5位が入賞!!それから、特別賞が1人!!
さあさあ、誰になるのかな!!」
改めて説明があった後、用意された折り畳み式テーブルにトロフィーやメダル、賞状、そして景品と思われる小箱が並んだ。
どうやら目録授与役も兼任しているらしい司会者の2人が、司会席からフィールドに降り立つ。
そして、ギコからモララーが金色に輝くメダルを、ガナーがトロフィーを受け取る。
ギコが残りの賞状や小箱を持って、2人の横に立った。そこで再びモララーが口を開く。
「ではっ!ではではではっ!!いきなりですが、本日の優勝者を発表しちゃいます!!
・・・とは言っても、皆さん大体察しがついてるとは思いますが・・・」
苦笑しながらモララーが言い、今度はガナーが口を開く。
「では、発表します!
『第40回百ベビ組手大会』、優勝者は・・・」
ダラララララララララララララ・・・
スネアドラムのロール音が、静寂したスタンドに響き渡る。
誰もが、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
選手達も、一様に緊張した様子。そして―――
ダンッ!!
最後に一発、大きな音を立てて、スネアドラムの音が止んだ。ガナーの口が、ゆっくりと開く。
「―――タイム、5分27秒。挑戦者NO.06―――つー選手ですっ!!」
オオオオォォォォォォォォォ!!!
恐らく今、飛行機がこの場で飛び立ったとしても誰も気付かないだろう―――そう思わせるくらいの凄まじい大歓声。
続いて湧き上がる万雷の拍手の嵐をバックBGMに、つーが両手を天に突き出してガッツポーズ。
司会者2人とギコが、喜びを爆発させる彼女に近づいていき、それぞれ目録を手渡す。
モララーに黄金のメダルを首にかけて貰った瞬間の彼女の、金メダルにも負けない程の輝かんばかりの笑顔。皆の目に焼きついた事だろう。
トロフィーや小箱を小脇に抱えて嬉しそうなつーが、表彰台の頂上に駆け上った。
それから、モララーが口を開く。
「なお、優勝商品はメダルやトロフィー、賞状の他に、賞金30万円!
さらに、大会特製の虐殺用ナイフ10本!!よく切れるよぉぉ!!おめでと〜!!」
「ちなみに、2位以降の方にもナイフがプレゼントされますよ〜」
ガナーが付け足した。
そのままの勢いで、2人がさらに続けた。
「ではではっ!!続きまして、第2位の発表ですよ〜!
これでも十分誇れます!!では発表!!」
「はい!では、発表します!!第2位は―――」
―――スタンド入り口ゲート。
満足した顔の観客達が、ぞろぞろと吐き出されてくる。
中には未だ興奮冷めやらずといった感じで、身振り手振りを交えて友人同士、あの虐殺が良かった、いやこっちもなかなかだ、と熱く語り合う者もいる。
そんな人込みの中で、兄者と妹者は待っていた。選手として出場した、弟を。或いは、兄を。
そして、見つけた。
両手に何かを持った弟者が、ゲートをくぐって2人の前に現れた。
「ちっちゃい兄者!おかえりなのじゃ!」
妹者が真っ先に見つけ、彼に駆け寄る。
兄者が軽く拍手しながら、弟者の肩をポン、と叩いた。
「いやまったく、流石だったぞ。俺の弟としては、申し分無い結果だったな」
「そ、そうか?ははは・・・ほら」
弟者が少し照れた様子で、2人に持っていた大きな紙を差し出した。
妹者がそれを受け取り、ニコニコと笑いながら言った。
「おめでとうなのじゃ!」
弟者が差し出した紙―――賞状。
そこには、こう書かれていた。
『第40回 百ベビ組手大会 4位入賞 タイム 6分12秒』
【続く】
32
:
栄
:2007/04/19(木) 00:17:15 ID:???
初めまして・・・、栄と申します。まだまだ未熟ですが宜しくお願いします。
深夜2時、誰もいない台所の換気扇から、7つの小さな影がもぞもぞと這い出てきた。
「…誰もいないデチ…」
影の一つが辺りを見回す。
「ハニャーン♪コレデマターリデキルネ♪」
「マンマハケーンデチュ!!」
4つの影が冷蔵庫の中から手荒に食物を引っ張り出し、汚く食い散らかし始めた。
「ミュ〜」
一番小さな影も冷蔵庫の方に這っていく。
「コレデオナカノベビチャンモダイジョウブダネ♪」
冷蔵庫の中からソーセージを引きずり出し、影…ミニしぃが言った。ミニしぃは妊娠していて、中の新たな生命はもうすぐ産まれそうである。
「ベビたんを産んだらまたセクースするデチ!!」
チビギコが耳障りな声を上げる。
「チビチャンタチハモウスグオネェチャンニナルノヨ。」
「ワーイ♪タノシミデチュヨウ!」
4匹のそれぞれ異なるベビしぃ(ノーマル、フサ、みけ、ワッチィ)が声を揃えてはしゃぐ。
「ミュ〜♪」
一番小さなベビギコがもぞもぞと這ってくる。
「ハニャーン♪マターリ♪」
今、この一家は幸せだった。が、この幸せがこの一家の最後の幸せであることを誰一人知ることはなかった。
「ミュ?」
あちらこちらを這いずり回っていたベビギコがふと足を止めた。ベビギコの視線は5センチ先のチーズに釘付けだった。
「ミュミュ〜♪」
ベビギコはさっきから特に何も食べていなかった為、一目散にチーズに飛びついた。これが地獄の扉を開ける鍵だとは知らずに…。『ガチン!』金属がぶつかる音を立て、ベビギコの左腕に鉄の鋭い牙が食らいついた。牙はいとも簡単にベビギコの肉を裂き、骨に食い込んで止まった。突然のことに対応出来なかったベビギコの脳が遅れて激痛を感じ始めた。
「ミ゛ュギィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ッ!!?」
ベビギコの口から悲痛な叫び声が吐き出される。
「ベ、ベビチャン!?」
ミニしぃが持っていたソーセージを放り投げて、叫び声を上げるベビギコに走り寄った。その時、急に部屋の電気がついた。
「こらぁ!!どこのキモゴミだぁ!!」
ゴルフクラブを持ってモララーが部屋に入ってきた。
「アナタナノネ!!ヒドイ!ドウシテシィノベビチャンヲコンナメニアワセルノヨォ!」
ミニしぃがモララーを睨みつける。
「人ん家に勝手に上がりこんどいて、冷蔵庫を荒らす害虫が開き直ってんじゃねーYO!!」
モララーがゴルフクラブをスイングした。すると、2メートル程離れた所にいたみけベビの耳が弾け飛んだ。
「ミィィィィッ!?ミィノオミミガァァァッ!!?」
泣き声が更に増した。みけベビの耳は流し台の角の生ゴミ入れに入っていった。
「真夜中にうるさい!!」
モララーがまたスイングした。
「ミィィィィッ!!ミィィィィッ!!ミ…フブヂィッ!!」
モララーが打ったゴルフボールがみけベビの顔面にめり込む。顔面全体に広がる例えようのない痛みがみけベビの脳を直撃する。みけベビの鼻が潰れ、瞼は眼球が飛び出さんばかりに見開かれ、そこから涙と血が流れ落ちる。
「ミギャァァァァァッ!!」
みけベビは手足をばたつかせて吹き飛び、壁に頭を強く打ちつけて気絶した。
33
:
栄
:2007/04/19(木) 00:18:23 ID:???
「イ…ヤァ…」
ミニしぃは口をぱくぱくさせているが言葉にならない。モララーがミニしぃに歩み寄ってゴルフクラブを振り下ろそうとした。その時、
「ミンナヲイジメナイデヨゥ!!」
モララーが振り返るとそこには、ベビしぃが震えながら二本足で立っていた。ベビしぃはまだおぼつかない足取りでヨタヨタと歩きながら叫ぶ。
「チィタチハマターリチタイノ!ジャマシュルナラアポーンチマチュヨゥ!!」
「ベビたんが初めてたっちしたデチ!!」
チビギコが感嘆の声を上げる。ミニしぃも自分に振り下ろそうとされているゴルフクラブのことさえ忘れて、はしゃぎ回りだした。
「ハニャーン♪ベビチャンガタッタ♪ベビチャンガタッタ♪」
「………。」
モララーはしばらくポカンと口を開けていたが、我に帰り、ベビしぃに向かってゴルフクラブを引きずり、歩み寄った。
「テイコウシュルナラhttpレーザーデアポーンチマチュヨゥ!!」
「妄想癖もたいがいにしろ!!」
ゴルフクラブが唸りを上げてベビしぃの腹部に突き刺さる。
「httpレーザー!!アポ…クヒィイッ!?」
ベビしぃは呼吸困難に陥って、口をぱくぱくさせ、必死に酸素を求めている。
「ベビチャンガタッタ♪ベビチャ…イャァァァァァ!ベビチャァァァァァン!!」
「チビたんのベビたんがぁぁぁ!!」
2匹が腹を押さえてうずくまっているベビしぃに向かって走り出そうとすると、
「おっと、そうはいかんざき!!」
モララーは2匹に向かってスプレーを吹きかけた。
「シィィィィ!!?」
「アガガガガ…」
2匹は床にどうと倒れ、悶えはじめた。
「いゃぁ、やっぱりア〇スジェットはよく効くなぁ。キモゴミがあっと言う間に動けなくなる。」
「ジィィィ…ベビチャンニゲ…テ…」
ミニしぃが涎を垂らしながら呟く。が、ベビしぃは腹部を押さえて転がっている。
「ヂィィィッ!!チィノポンポンガァァァッ!!?」
「HAHAHA、所詮キモゴミなんてこの程度さ。」
モララーがベビしぃを蔑んだ目で見る。それでもまだ、ベビしぃは立ち上がってモララーに立ち向かおうとした。
「ヂィィィ…マダマダアキラメマチェンヨォ!!」
「よっぽど立つのが好きなんだね。」
そう言うとモララーはベビしぃの足を掴んだ。
「チ、チィハ2CHノアイドルデチュヨゥ!ワカッタラナッコチナチャイヨォ!!」
「さっきからマターリだのダッコだの鬱陶しいんだYO!!」
そう言うとモララーはミキサーを取り出し、スイッチを入れた。ミキサーは唸りながら中の刃を回転させている。
「足なんて飾りです。キモいゴミにはそれが判らんのです。」
そう言うとモララーはベビしぃの足をミキサーに入れた。
「チィヲハナチテヨゥ!!チィハタダマタ…ッピギィィィィッ!!?」
ベビしぃの小さな足はミキサーの中の刃で切り刻まれてあっという間に消し飛んだ。
「HAHAHA、もうたっち出来ないねぇ(笑)」
「チィノ、チィノアンヨガァァァァッ!!」
続きます・・・
34
:
hage野郎
:2007/05/04(金) 00:05:51 ID:???
初めて書きました。 「糞虫についての日記」
十月の肌寒い風の中、
「キョウモゲンキニシィシィシィ〜♪
ミンナナカヨクハニャニャニャーン♪♪」
肌寒さも吹き飛ぶような胸くそ悪い歌を歌ってしぃがこっちに来る。
俺が視界に入ったのか、こんな事を言い出してきた。
「アラ、クソモララー。セッカクアッタンダカラ
このカワイイシィチャンヲダッコシナサイ。
サモナイトギャクサツチュウトシテアボーンスルワヨ。」
俺は一瞬間を置き、あざ笑うかのように言った。
「誰がてめえみたいなノミ臭い奴をダッコするんだよ。
この糞虫。」
予想どうり、顔に怒りが満ちているようだった。
「ヤッパリアンタモギャクサツチュウネ・・・・。
コノカワイイシィチャンヲブジョクシタコトヲ
コウカイサセテヤルワヨ!コノギャクサツチュウ!!」
しぃはお馴染みの棒をどこからか取り出し、
それを掲げてやってきた。
「ハニャーン!ギャクサツチュウイッテヨシダヨ!!」
くだらない罵声が飛んできた。
「死ぬのは・・・。お前だ!!!」
「ヤレルモノナラヤッテミナサイヨ!クソモララー!!」
愚かな奴、と哀れんでやった。
ふうっと溜息をつき、コートの下に仕込んでおいた
ショットガンを取りだし、構えた。
しぃはそれを見て表情を歪めたが、向かってくる。
俺はしぃが射程距離に入るまでじっと構え続けた。
このショットガンは何百ものしぃの血を吸っているのだ。
お前もこのショットガンの餌食になるのだ。
慎重に狙いを定め、堅い引き金を絞った。
「シイイーー!!!シイノオミミー!!!!」
狙いが大きく逸れて殺せなかったが、満足した。
こいつを家に連れて帰って虐待すればいい、と思いついたからだ。
無力なしぃをロープで縛り、ついでに猿ぐつわもしておいた。
やかましいからだ。
「帰ったら、たっぷりと「お仕置き」しないとね」
俺はにんまりと笑顔で言った。
「ングー!!ンググーー!!!」
俺は遠足から帰る小学生の様な気分で家に帰る。
楽しみだ。
駄文スマソ。 後、これ以上続き書けません。だれか
続きを書いてください。
35
:
hage野郎
:2007/05/06(日) 20:40:12 ID:???
やべ・・・。変換し忘れたし・・・。逝ってこよう・・・・。
36
:
魔@お初です
:2007/05/07(月) 19:00:21 ID:???
天と地の差の裏話
※この話は被虐者の視点で書かれています
『弱き者は強き者に弄ばれる』
そんな虐殺があたりまえの世界で、僕は産まれた。
母親であるしぃがモララーに強姦され、そのまま身篭って産まれたらしい。
僕は母と見た目が全然違う。
左耳は真っ黒で、右側は頬まで茶色。
三毛猫とでも言うのだろうか
母はしぃ族だから、端から見たら僕は養子である。
僕は自分の毛並みのことを聞いてみたりはしたが、母は何も言わない。
それなのに母は僕の姿が気に入らないようだ。
この世界ではしぃ族は忌み嫌われている。
ダンボールの家で待っていると、今日も母が傷だらけで帰って来た。
「・・・・大丈夫?」
「アンタノセイナノニ ナンデワタシガ ギャクタイサレナキャイケナイノヨ!
」
僕は毎日虐待を受けた。
何か嫌なことがあれば、すぐに手を出す。
「アンタナンカ イラナイノニ ナンデウマレテクルノヨ!」
そんな事を言っては、母は僕を殴る。
でも殺すまではしなかった。
何故かわからなかった。
僕は殴られようが蹴られようが母を心配していた。
何故かわからなかった。
そして、この日から僕の住む世界はがらりと変わった。
近くの公園を散歩するとのことで、僕も行く事にした。
どうやら、母は自分が何もされなかったら、僕には何もしないようだ。
話を聞いてくれない。
手すら繋いでくれない。
そんな意味も含めて『何もしない』
母は僕の前を歩く。
変な踊りを踊りながら。
変な歌を歌いながら。
僕は母の後ろを歩く。
何もせずに。
暫くすると、見知らぬモララーが目の前にいた。
「お、いいもん連れてんじゃねぇか」
「ナニカトオモエバ ギャクサツチュウ ジャナイノ! サンポノジャマy」
母が全てを言い終わる前に、モララーは母の頬を殴る。
おもいっきり殴ったのか、母はゴミ箱のある所まで吹っ飛んでいった。
大きな音がして、ゴミがばらまかれる。
37
:
魔
:2007/05/07(月) 19:01:57 ID:???
初日
モララーは母へ追い撃ちをかける。
僕はそれを眺めていた。
いや、見ることしか出来なかった。
モララーはこれでもかという位、しぃを殴り、蹴る。
鳴咽や呻きが母の身体の中から聞こえた。
休む暇なく、モララーはどこからか出したナイフで母の耳を添ぐ
「イヤアアアアアアア!!」
叫び声が響き渡る。
この世のモノとは思えないほどの悲鳴が僕の頭の中を掻き回す。
僕はそれを受け入れまいと、必死で目をとじ耳をふさぐ。
しばらくして、声がしなくなった。
恐る恐る目を開けると、モララーがこっちへ歩いて来た。
その黄色い体には血がべっとりとついている。
その奥に、血に塗れたしぃがいた。
次は僕なのだろうか。
あまりの恐怖で身体がいうことをきかない。
一刻も早く、この場から逃げ出したいのに。
「いいもん落ちてンじゃねぇか・・・」
モララーは僕の首を掴み、そのまま持ち上げる。
「・・・っ」
自分の体重が自分の首に負担をかけているのがわかる。
苦しい。
どうにかして離してもらおうともがくが、大人の力に子供が勝てる筈がない。
僕の行動は自分を更に苦しめるだけに留まった。
「お前は持って帰って遊ぼうかな・・・っと!」
刹那、視界が回る。
世界が逆さまになる。
物凄い勢いでモララーが奥へと飛んでいく。
何が起こったのか理解する前に、僕は背中を襲った激痛のせいで思考が止まった。
「ぎゃっ!」
地面にたたき付けられる身体。
何かと思えば、モララーは僕を木に投げ付けただけだった。
僕の方に近付き、再度持ち上げるモララー。
「・・・なかなか頑丈じゃねぇか、気に入ったぜ」
恐怖に震える僕に向かってきたのは、そんな言葉と。
モララーの、拳だった。
意識が戻ったのは、また身体に激痛が走ってから。
「っ・・・げほ・・・!」
壁にたたき付けられた衝撃で肺から空気が漏れる。
骨は折れてなさそうだが、身体を動かそうとすると再び激痛が走る。
「今日からお前はここで生活するんだからな」
そう言うと、モララーはシミだらけの縄を僕の首に巻く。
抗おうとはしたが、傷めつけられた身体は動かず、成すがままだった。
よくみると、安易な首輪とリードについていたシミは血糊。
「・・・さて、早速だがお前の悲鳴を聞かせてもらうよ」
38
:
魔
:2007/05/07(月) 19:03:08 ID:???
息がかかる距離で話し掛けるモララーに僕は嫌悪した。
それをモララーは気に入らなかったようだ。
大きな手が、僕の首をまた掴む。
「まずは・・・どこがいいか言ってみな」
嫌になるほど近づけられたモララーの顔が、目が大きく写る。
その奥にあるのは、悪魔だか死に神だか。
思い付く限りの畏怖の象徴全てがその目の中にあるように感じた。
それを見て僕は喉から声が漏れそうになる。
「・・・いい目だ」
心臓を掴まれたような感覚に陥る僕を見て、モララーは笑う。
口の端を吊り上げ、細く。
しかし、その目は『睨む』ということは止めていなかった。
「その目は最後にしてやろう」
そう言うと、モララーは空いた手で僕の左耳を摘む。
そして、力を込めて引っ張る。
「っ・・・痛い!痛いっ!」
必死で抵抗しようとするも、首を掴むと同時に身体の自由を奪うモララーの手の
せいで何もできない。
じわじわと込められていく力は僕にとって万力のような感覚。
目を強く閉じ、その端からは涙がとめどなく流れてくる。
止めて欲しいと叫び必死に訴えるが、モララーは僕の声を聞く度に薄く笑う。
「嫌っ!やあああああああ!!」
ぶちりと音をたてて耳がちぎれた。
僕は痛みと耳を失ったショックで声にならない叫び声をあげた。
「ああっ!!ああああああ!!!」
耳があった所から溢れ出す血が僕の顔を濡らす。
僕は必死で傷口を押さえ、頭を裂くような痛みにもんどりうつ。
モララーはそこに追い討ちをかけるように、僕の腹を蹴り飛ばした。
「ゲふっ!」
血とよくわからない液体が部屋に飛び散り、部屋を汚す。
とめどなく流れる血と止まらない激痛。
そしてゆっくりと命を奪われていくという未来を押し付けられ、
僕の身体はこれでもかというほど震えていた。
「あ・・・う・・・」
血とは違う冷たい何かが顔をつたう。
「こんなところまで頑丈とはな」
ちぎった耳を投げ捨て、頭にまだ残っている黒い突起を掴む。
「ぎっ!」
僕は歯を食いしばり、モララーの腕にしがみついて耳にくる負担を抑えようとす
る。
が、僕の手は空を掴むばかり
身体がゆっくりと宙に浮き、モララーと同じ目線まで持ちあがる。
「根元からちぎれねぇ耳は初めてだよ」
「うあ・・・あっ!・・・ああっ!」
足をばたつかせて降ろしてもらおうと必死に願っても、
それは痛みを増幅させるだけの動作に終わった。
疲弊しきった身体はいよいよ動かない。
モララーにゴミを捨てるかのように床に落とされる。
僕は受け身を取れずに人形のようにそこに崩れる。た
もう口からは変な液体しか出なかった。
「はっ・・・はあっ」
足りなくなった酸素を取り込もうと身体全体で息をする僕を見下ろして、モララ
ーが言った。
「どうせ、だ。お前に名前をやるよ」
と、どこからか出したナイフで首輪に刻みを入れる。
「っと・・・これでいいな」
「あ・・・?」
ぐわんぐわんする頭を必死で持ち上げ、焦点のあわない目でモララーを見る。
「そうか、首につけてたんじゃあ見えないよな」
「今日からお前の名前は”メイ”だ」
39
:
魔
:2007/05/07(月) 19:04:19 ID:???
二日目
目が覚めると小さな倉庫の中にいた。
あの時、モララーに名前を貰ってからまた気絶していたらしい。
辺りを見回すと、引き戸と窓しかなかった。
窓からは光が差し込んでいる。
日の傾きからして、朝なのだろうか。
ここは物をしまう倉庫というよりも、虐待専用の倉庫のようだ。
二畳半くらいの、この小さな倉庫にはメイとリードと血糊、それと水の入った器
しかない。
床には昨日メイが撒いた血と、メイのものでない血痕だらけ。
壁にも、嫌な装飾として血痕と黒い塊。
塊がなんなのかは、考えたくもなかった。
身体の節々がまだ痛むが、なんとか動けそうだ。
殆ど身体を引きずるようにして、器の中に顔をうずめる。
そして水を飲もうとしたが、ある事に気付いた。
「あ・・・」
器の中に、自分の顔が映る。
それは涙と血でくしゃくしゃになっていた。
水面にある己の顔を覗きながら、ゆっくりと頬を触る。
かさかさした感触がして、指に小さな黒い塊がこびりつく。
ふと、水面に映った顔が弾けた。
何かと思えば自分の目から零れたモノ。
昨日の一件で枯れ果てていたと思っていたそれは、決壊したダムのように溢れ出す。
メイは水を飲むことを忘れ、静かに泣いた。
泣き疲れ、また床につこうとした瞬間扉が勢いよく開く。
「ひっ!?」
突然のことに、メイは酷く驚く。
虫の声も全く聞こえない空間で、それは爆弾と同等の大きさのように感じた。
「なんだ、起きてたのか」
扉の奥から出て来たのはモララー。
街に出れば何処にでもいそうな程普通のモララーだが、メイにとっては畏怖の象徴。
モララーを見ればどんな状態であれ怯えなければならないような気がした。
「今日はこれで遊ぼうな・・・」
モララーの手には奇妙な手袋。
その中にあるのはまた奇妙な液体とライター。
メイはそれを見て背筋が凍るような感覚に陥る。
脱兎のごとくまだあいている扉へと走るが、途端に身体が動かなくなる。
「ぎっ!」
リードを踏まれ、首が絞まり声が漏れた
。
「待てよ・・・まだお前の綺麗な声を聞いてないんだぜ?」
40
:
魔
:2007/05/07(月) 19:04:55 ID:???
身体を床に強引にに押し付け、メイの自由を奪う。
メイは必死に足をばたつかせるも、モララーは全く動じない。
そして、手袋の中に仕込んでいた釘でメイの左手を打ち付けた。
「っ!! ああああああ!!!」
声にならない声がメイの喉から噴き出て、大粒の涙が空を舞った。
肉と、床を貫通する鈍い音。
刺さった所からして、手の平の骨は折れているかもしれない。
「お楽しみはこれからだ」
モララーはメイを見て嫌らしく笑うと、奇妙な液体をメイの左手にかけた。
つんと臭うそれに不快感を覚えるより傷口にしみることにメイは気が動転しかける。
そしてモララーはライターの火打ち石をそこに近づけ、擦った。
轟、という音と共に、突然左手で炎が暴れだした。
「ギャアアアアアアアアア!!!」
左手を隙間なく針でめった刺しにされるような感覚にメイは狂うように叫ぶ。
モララーは自分に引火しないようにと、その場から少し離れた。
「アッアアアアギャアアッ!!!」
ただひたすらに手足をばたつかせるが、打たれた釘のせいで動けない。
モララーはメイの不格好なダンスを唯笑いながら見詰める。
と、
「おっ」
ぶちりと音をたてて左手が床から離れた。
必死で暴れていたから予想はできてはいたが、これほど早く外れるとは。
メイは燃え盛る腕を投げ込むようにして器に向かう。
バランスを崩しながらの動作だったので、中にあった水は全部空中に舞ってしまう。
「あーあもったいない・・・まだ飲んでないんだろ?」
「うっ・・・うあっ・・・は・・・」
火が消えたのはいいが、腕自体が熱をもっているせいか蒸気がたちこめる。
低温ながらも蒸されていく腕を、いっそ切り落としたくなるメイ。
モララーは転がる器を拾い、手の中でくるんと回す。
「また水入れてやるから、その時はちゃんと飲んでくれよ?」
「あ・・・?」
不思議だった。
自分にこんなことをしておいて水だけは用意する。
折角あげたやった水をぶちまけられたってキレてボコボコにしたり。
これ以上与える物はないなんて言って更に精神を削いでいくのかと。
そう思っていたのに。
結局は食料を与えてくれていないのだから、そう深い意味はないかもしれないが。
だが、メイはその不思議を知りたくて扉の奥へと進むモララーを途絶えそうな意
識の中必死で目で追う。
扉を閉め、鍵をかけるまでモララーはこちらを見ていた。
自分の荒い息遣いしか聞こえなくなった倉庫。
気が『おかしくなりそう』な程の痛みを受け、『おかしくならない』ように耐える。
叫ぶことが、恐怖に怯えることがこれだけ疲れることだったとは。
メイは息を整えた後、いろんな事を考えながら床についた。
41
:
魔
:2007/05/07(月) 19:06:15 ID:???
三日目
夢を見た。
それはメイが産まれ育った街が舞台の夢。
被虐者と加虐者が紡ぐ色はどこにもなく、
代わりとして炎が己を自己主張し、街を支配していた。
辺り一面に踊り狂う炎の中一人立つメイ。
所々に写る黒と灰色の粒。
掴めないことからして、それはノイズのようなものだろうか。
何故自分がそう考えるのか、何故夢だと理解するのか。
明確な答えを見出ださずとも、メイはそれに納得していく。
何故炎が踊っているのか、何故視ることが妨害されているのか。
疑問を抱いては考えることを止め、メイは街の中を歩いた。
炎に包まれていながら、なお形を残す建造物達。
街路樹も枝でなく葉が作る形で松明のように燃えていた。
そんな物達を見ていても、やはりどこか落ち着いているメイ。
身体はボロボロのままだというのに、どこも患っていないような。
爛れることより先に、カサカサに焼け焦げた左手に目線を落とす。
夢の中だからだろうか。
指が全部綺麗に動く。
その動作の中には痛みはない。
健全なヒトから見れば当たり前のことにメイは少し驚いた。
釘を打たれていた箇所には穴はない。
そこを触ってみるが、骨も元通りになっているよう。
・・・どうせ夢の中のことだ。
起きればそこはまた痛む。
一つ軽く溜め息をつくと、黒い手首をぷらぷらさせながら再度街を歩く。
公園に出た。
あの時、モララーに見つかり捕まってしまった場所。
そこでメイはあるものを見つける。
「・・・」
「ねぇ、返事してよ!ねぇ!ねぇってば!」
自分の、綺麗な頃の自分の毛並みに似た子が泣き叫ぶ。
その子の腕の中には、真っ白な身体をしたちびギコが目を閉じていた。
必死に呼び掛け、叫んでも一向に起きる気配はない。
「お願いだから、起きてよぉ!!」
声は枯れ、目は涙で赤く腫れていく。
嘲笑うように燃え盛る炎。
叫べば叫ぶ程、呼び掛けている子は腐り、醜くなっていった。
メイはそれを見て、一つの感情が心の中に芽生える。
−−−情けないね−−−
42
:
魔
:2007/05/07(月) 19:07:00 ID:???
メイがそう思った瞬間、世界が暗転する。
「・・・」
瞼が降りていたということに気付くのには時間はかからなかった。
右手で目を擦り、ゆっくりと視界を広げていくと、また朝日が差し込む倉庫の中。
メイはふと何かを思い出したかのように左腕を見遣る。
そこには痛々しいとでは全て表現できそうにない程黒く焼け焦げた腕。
動かしてみると、何故か痛みはなかった。
というのも、神経が全て麻痺するほど焼かれたからだろうか。
中途半端な奇跡にメイは少し喜ぶ。
手の平の骨も、錯乱していたせいで折れたと勘違いしたんだと解釈した。
暫くして、モララーが器を持って入ってくる。
「起きてたか」
鍵をあけ、扉を開いた後倉庫の中へと姿を見せるまでメイはモララーに気付かなかった。
何故だろうか。
昨日まで畏怖の象徴であったモララーが、今ではなんとも思わなくなっていた。
「ほらよ、水だ」
モララーは目線をメイと同じ高さまで下げ、器をメイの前に置く。
メイはそれに近づき、口をつけた直後浴びるように飲んだ。
「それとな・・・今日は飯も持ってきたんだ」
その言葉と重なるのは薄く笑うモララーの顔。
メイはモララーを見上げてその表情を見ると、今やっと背筋が凍るような感覚を覚える。
「これだよ」
倉庫に入ってからずっと背中の後ろに回していた手を前に回す。
モララーが持っていたのはビニール袋。
それを軽く放り投げるようにその場に落とす。
撒かれた中身を見て、メイは一瞬思考が停止した。
そこにあったのは、ちびギコの腕と脚。
自分の四肢より少し細いそれは、まだ新しかった。
「昨日見つけたヤツのでね・・・達磨にして遊んでやったからお前と遊ぶ時間がなくてな」
クク、と嫌らしく笑うモララー。
「さあ、食べなよ」
・・・昨日水をまた用意すると言ったのはこれの為。
自分とほぼ同じ年齢のヤツの手足を飯として出されて、絶望しないヤツはいないだろう。
小さな希望を与えた後に大きな絶望を与えるのは定石・・・
「!」
モララーは一旦考えることを止める。
気付けば、メイがちびギコの腕にがっついているではないか。
噛り付く毎に見える八重歯に野性の本能のようなものを感じる。
血に濡れていくメイの口と手を見て、モララーはここで初めて嘲笑以外の笑みを浮かべた。
「はは・・・これは一本取られたねえ」
モララーは君の為にとタオルを持ってくると伝えた後、倉庫を後にした。
結果的に、メイは今日は虐待を免れる。
が、本人はそれに対し何も思わなかった。
43
:
魔
:2007/05/07(月) 19:08:02 ID:???
四日目
深夜。
月光りが眩しい位に差し込む窓を眺めるメイ。
メイの足元には血で濡れたタオルと、小さな骨が数個。
「・・・」
澄んだ明かりと瞬く星々。
それと真逆の、濁った真っ黒な感情を静かに燃やす。
昨日、モララーはちびギコの腕で精神を汚染させようとしたのだろうが、もう関係ない。
なりふり構っていられない。
己の腕でも食えと言われたらやってやる。
目をえぐれと言われたら綺麗に取出して献上してもいい。
絶対生きてここから脱出する。
命を、自分自身を奪いそうな程の虐待にも耐えてやる。
餓死も頓死も圧死も溺死も轢死も拒まれるまで耐え抜いてやる。
(チャンスがあれば、何だって−−−)
結局、メイは寝る事なく朝を迎える。
空がすっかり青くなった頃に、モララーはやってきた。
「や、おはよう」
メイがモララーに気付いたのは挨拶をされてから。
空を見るのを止め、モララーを見上げる。
「・・・おはようございます」
少し掠れた声で、言葉だけで挨拶をするメイ。
昨日に続くメイの読めない行動にモララーはまた面食らう。
(こいつ・・・まあいい)
「き、今日は天気がいいから散歩でもしようか」
モララーは一度考えていた事を捨て、壁に打ち付けているリードを外す。
メイはリードが伸びきらないようにと、モララーの足元に行く。
「・・・」
「・・・」
リードを掴んだまま、メイの方を見て固まるモララー。
足元にぴったりとついて、扉の外だけをしっかりと見るメイ。
沈黙は長い。
44
:
魔
:2007/05/07(月) 19:08:38 ID:???
街。
鼻唄を歌いながら陽気と歩くモララーと、その斜め後ろに無表情のメイ。
周りを見渡せば、自分と同じようなスタイルのちびギコは少なくはない。
もがれている箇所も様々で、両腕がなく必死でバランスを取るコもいれば。
片脚だけでぴょんぴょんと跳ねながらなんとか追い付こうとしているものも。
酷い時には芋虫がずりずりと引きずり回されている状態。
そこから見れば、まだ四肢がある僕は幸せなのだろうか。
少しして、モララーは足を止める。
そこはなんの変哲のない公園だった。
しかしそこは加虐者から見れば被虐者のオアシス。
路地裏の次にそいつらが集まりやすい所で、二人の加虐者がモララーを待っていた。
「遅いぞ」
「待ってたモナ」
青い身体の男、ギコ。
それと白い身体の男、モナーがモララーに呼び掛ける。
その二人の手の中にはリード。
リードの先には案の定ボロボロのちびギコとちびしぃがいた。
例に洩れず、二匹ともカタワだった。
「いや、待たせてすまなかったよ」
「何かあったのか・・・っつーかそいつは?」
ギコはリードを引っ張りながらメイに近付き、まじまじと見つめる。
リードの先のちびギコはそのせいで首が絞まり、声を漏らした。
目に大きく写るギコに、メイは微動だにしない。
「変わった毛並みだし、なんかちょっと大きいような・・・」
「この前アフォしぃを殺ってたらさ、そいつの子供らしく近くで震えててね」
「なんだか人形みたいモナね」
「・・・メイって言います」
被虐者の言葉に、加虐者三人の目が点になる。
「お前被虐者に名前とかつけてんのか?」
呆れたようにモララーに問い質すギコ。
「そういや・・・なんでだろ? なんか珍しかったからかなあ」
自分のした事に首を傾げるモララー。
「というか、挨拶するなんて馬鹿みたいモナ。自分の立場がわかってないようモ
ナよ」
「わかってます」
それぞれの反応を見せた後、その本人の言葉に再度固まる三人。
掠れていても、はっきりとしたそれは被虐者のモノでないような。
うっすらと感じた凜とした何か。
それは一人を困惑させ、一人を恐怖に陥れ、一人を苛立たせたり
「おい。さっさとやろうぜ」
待たされたのと、メイの不快な態度に眉間に皺をよせるギコ。
下手に刺激を与えたら殴り殺されかねないと、その場にいた被虐者二人は察する。
が、やはり残りの一匹は何も思わなかった。
「ば、場所はどこがいい?」
「此処でいい」
なんとかして宥めようとモララーが話し掛けるが、刺のある声色で返答される。
公園に、気まずい空気が流れた。
45
:
魔
:2007/05/07(月) 19:09:55 ID:???
四日目
昼
「ここでいい」と、ギコが皆にそう言った直後の事だった。
「ヒギャッ!?」
突然、ちびギコが身体をくの字にして吹き飛んだ。
ちびギコが立っていた位置には脚をめいいっぱい振り上げているギコの姿。
小さい身体はそのまま遊具へとたたき付けられるかと思いきや、首のリードがそれ
を阻んだ。
ギコは握っていたリードを引っ張り、被虐者を手元に持ってくる。
急な動作で首が絞まり、奇怪な声をあげた後その場に倒れ込むちびギコ。
首輪を引っ張り隙間をあけ、苦しそうに咳込む。
「えぅ・・・ひぎっ!?」
そこに追い打ちを掛けるように、ギコはちびギコの頭を掴みメイの方に向き直させる。
そしてちびギコにしか聞こえない程の声で、囁いた。
「お前は片腕しかないのに、あいつは両腕がある・・・不公平だと思わないか?
」
その言葉を聞いた途端、ちびギコの目に血が走る。
暫くの間唸った後、メイの方へと飛び掛かった。
「!?」
いきなり飛び付いて来たちびギコにメイは驚く。
反応するのが遅れ、そのまま肩を掴まれ取っ組み合いになった。
「フゥー・・・ガアアァァ!!」
被虐者とは思えない声を発し、ちびギコは牙を剥きメイを襲う。
砂埃をたてて暴れる二匹を見てけらけらと笑う加虐者と、傍観し怯える被虐者。
「相変わらず凄い変貌ぶりモナ」
「どうやったらあんな風に調教できるんだか・・・」
「なに、コツをつかめば誰にでも作れる」
怒りや憎しみに暴れ狂う弱い命。
命乞いや絶望にうちひしかれる者よりも、ギコはそういう奴の方が好きとのこと。
それがほんの少しも抗えずに死んでいく様、我に返った時の発狂していく姿がギコにとっての虐待虐殺のようだ。
「コツって何モナ?」
「とりあえず煽ればいいんだよ。そいつの・・・」
「ガアアアアアアアアアアアアッ!!」
ギコの言葉が獣の咆哮に断たれる。
何かと思い三人は揃って被虐者の方へと目線を持っていく。
そこにあったのは、身体をビクビクと激しく痙攣させて俯いているちびギコ。
その喉からはだらだらと血が流れ、自分と周りを赤く染めていった。
その後ろに、息を切らし手の中に肉片を握っているメイがいた。
「こいつ・・・」
自分の書いたシナリオ通りにいかず、憤慨するギコ。
「ギコ! 落ち着け!」
モララーは額と拳に青すじをたてメイへ迫ろうとしたギコの肩を掴み、宥める。
すると、ギコはその表情のまま振り向きモララーにこう告げた。
「俺は何事も思い通りにいかねぇと気が済まないんだがな・・・」
殺気。
虐殺の一線を越え殺人を犯してしまいそうな程の気迫。
そんなギコにモララーはたじろいだ。
「だ、だけどそんなすぐに殺しても何も楽しくないモナよ?」
険悪な雰囲気が漂う中、モナーが慌てて仲介に入る。
「・・・チッ」
モララーの腕を振りほどき、再度メイの方へ歩きだす。
46
:
魔
:2007/05/07(月) 19:10:33 ID:???
「ギコ!」
「とりあえず、だ」
メイが逃げようとする前に、ギコはメイの頭を乱暴に掴む。
そしてメイの左目に自分の指を無理矢理捩込んだ。
間髪入れず、ギコは右手を後ろへと引っ張る。
「ぎゃあああアアアアアアアア!!」
ぶちぶちと繊維が切れていく音とほぼ同時に、その悲鳴は聞こえた。
次にモララーとモナーが見たのは、左目を押さえ震えながらうずくまるメイと。
黒く綺麗に光る眼球を手に持つ加虐者だった。
「・・・このくらいならいいだろ」
「っあ・・・はあっ・・・はっ・・・」
張り裂けそうな痛みを堪え、出血している左目を押さえ、
フラッシュバックする虐待に狂いそうになる思考。
歯噛みし、精神を無理矢理に落ち着かせる。
そして、必死に状況を確認する。
口論をしている加虐者達と、こちらをみながら怯える被虐者。
何か、あと何かがあれば。
(この状況から逃げ出すチャンスが−−−!)
「何か珍しいモン見せてやるって聞いてきたのによ・・・とんだババひいちまっ
たな」
「お、俺だってこんな反抗するような奴とは思ってなかったんだよ!」
「何やっても怯えるよう本当にそう調教したのか?」
「・・・」
「まさかしてないモナ?」
「だ、だって最初からすげぇおとなしかったし・・・必要ないかと・・・」
「馬鹿モナ」
「何だと!?」
モナーがモララーを煽ったその時だった。
ギコの手が一瞬見えなくなるかと思うと、それはモララーの首に宛てがわれる。
どす黒い腹と、それの縁に沿うように銀色。
20センチ程の長さのあるナイフがギコの手の中にあった。
「な・・・っ!?」
絶句する二人。
「面白くねぇわ・・・死ねよ」
ギコの殺意がモララーを襲う。
全く動けない二人の加虐者。
今、加虐者が加虐者を殺さんと、ナイフを振りかぶる。
モララーを凶刃が貫く直前に、メイがギコに飛び付いた。
「があっ!?」
ギコの手の中に爪をたて、肉をえぐる。
痛みに耐え兼ねて手を押さえるギコから離れ、素早く地面に落ちたナイフを拾う。
「こ、こいつッ!」
自分の身体に不釣り合いな程長いナイフを使い、器用にリードを切る。
これで捕まえられることはない・・・そう確信したメイは次の行動へと移った
絶対に生き延びる−−−
47
:
魔
:2007/05/07(月) 19:11:58 ID:???
───この話はここで終わり
メイは死んだのか、それとも生き延びたのか
それは誰にもわからない
巷では、『片腕が黒い少年』が殺戮を繰り返しているという噂
謎は謎のまま、どこかで語り継がれていく
奇妙な話は、どこかで歯車を噛み合わせる
天と地の差の裏話
メイの物語は、ひとまずおしまい
48
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:10:55 ID:???
へびぃ氏作 【流石兄妹の華麗なる休日〜百ベビ組手〜】
便乗作品 フザケンナ! というのでしたら削除可で。
「挑戦者No.X! タカラギコさんです!」
モララーの声と共に、相変わらずのにこにこ笑顔を浮かべて
タカラギコが競技場に入場してきた。
「え〜と、自己紹介をお願いしま〜す!」
マイクを手に取ると、タカラギコは咳払いをし
「え、え〜と、某科学研究所に勤めている、タカラギコといいます。
お察しの方も多いかと思いますが、今回は仕事で培ってきた技術や知識を
虐殺に使ってみたいと思います!! 多分皆さんを落胆させるような
結果にはならないと思いますので、お、応援よろしくお願いします!!」
ワァァァァァァ………!!
大歓声と共に、「頑張れー!」と応援の声が。
ぺこぺこと頭を下げるタカラギコに、モララーが実況席から
「それで本日はどんなものを使うご予定で? ドクトル・タカラ?」
ドクトルと呼ばれたことに対してか、タカラギコが顔を赤くする。
「は、はい! ちょっと大きいですが、まずこれを!」
そういいながらタカラギコは右手を挙げる。すると競技場の中に
直径1m、長さ2mほどの鉄柱とおぼしきものが20本ほど
台車に積まれて入ってきた。その鉄柱を、助手であろう数人の
AAに手伝ってもらいながら、競技場のあちこちに立てていく。
「……あ、お待たせしました。これでセッティングは完了です!」
「この柱でドクトルが何をするつもりかさっぱり読めませんが、まぁ一応終了したと
いうことなので、サァクリファイスゥッ!! ベビしぃちゃんたちの入場でぇっす!」
モララーの合図と共に、ベビ入場口が開かれ……あとはお決まりの展開。
チィチィナッコナッココウピコウピ それが100匹。
「ベビチャーン! ガンバルノヨー!」
そして、何も知らない母しぃたちと。
「んじゃあドクトル・タカラ、準備はいいか!?」
競技開始のピストルを構えたギコが、タカラに尋ねる。
タカラは勿論、首を縦に振り
パ ァ ン!!
競技、開始。
49
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:11:25 ID:???
……観客席も、控え室も、皆が皆息を呑んで見守っていた。
科学の専門家が、この鉄柱を使ってどんな虐殺をするのか
興味に堪えないといったところか。
「……よし。それじゃあまずは、第一段階……」
だがそんな皆の期待をよそに、タカラギコはポケットから何やら丸いもの
黒く、光沢があり、短い紐がついた球体を取り出した。
「……あれは、爆弾でしょうか? 確かにあのレベルの爆弾ならば
持ち込みは許可されていますが、あれと鉄柱がどう結びつくのか……?」
モララーが皆の気持ちを代弁するような一言を呟くと、タカラは
その爆弾とおぼしき2,3個の球体の紐に火をつけ、宙に放り投げた。
バ ア ア ン ! !
「アニャッ!? ナンデチュカイッタイ!」
「ヂチッ!? ハナビシャンデチュカ!?」
「アニャニャニャニャニャァ!?」
……晴天の何とやら。各地で思い思いに過ごしていたベビしぃたちは
まず、皆が上空の破裂音に驚いた顔をした。
………まず………?
……その爆弾、中には液体でも詰められていたのだろうか? 上空で
破裂したかと思うと次の瞬間、それは戦時中の「黒い雨」を思わせるような
というよりまさしくそのもの、黒い雨が降り注いできた。
「チィッ!コ、コンドハイッタイナデチュカ!」
「ハナビシャンノチュギハ アメシャンデチュカ?」
「チィィィ! チュメタイ! アアッ! チィノキレイナケガワガマックロニ!」
……その黒い雨は競技場全域に降り注いだようで、ベビしぃは
百匹全てが真っ黒に染まったようだ。
それを確認すると、タカラはよし! とひとりごちた。
「おっきい兄者〜、あれは何なのじゃ〜?」
観客席の妹者が、隣の兄者に話しかける。
「う〜む。見たところガソリンか毒薬か、その類の何かだと思うが
しかしそれでは、あの柱の意味が分からないし……」
他のギャラリーも同じような疑問を抱き、観客席がざわつき始めると
タカラは次に、ベビしぃたちに向かって大声を出す。
「ベビちゃ〜ん!! 今降ってきたその雨さんはね、実はとっても
甘くておいしいんだよ! 試しになめてみなよ!!」
「アニャッ?」
「甘くて」「おいしい」の言葉に反応したか、ベビしぃが自分の体に
付着したその黒い液体をなめ始めた。
「アニャッ! オイチィ!! コェ、チュゴクオイチィ!!」
「エッ! ホントウ! チュゴクオイチィ! アマ〜イ!」
一斉に、ベビしぃたちは自分たちの体についた液体を嘗めだした。
いやそれでは済まず、地面に零れた液体や、果ては他のベビしぃの
体を舐めだすベビまで出現していた。
「何だあれは? あのタカラは一体何をしたいんだろう?」
「サーナ! デモアイツ、チョット曲者ッテニオイガスルゾ! コノママ
クソッタレマターリデ済マスハズガネーサ!! 黙ッテ見テヨーゼ!!」
控え室にいた弟者とつーが首を傾げあうと、実況席でも
「これは一体、どういうことでしょう……? 私にはドクトルの考えが
全く読めません! てっきりガソリンの類かと思いきや、そうではない!
毒物とも思いましたが、その雰囲気もない! 現状はただベビたちが食事をして
マターリとしているだけ! このマターリとした胸くそ悪くなる光景がどう虐殺に
変化するのか! 常人には理解できないということなのでしょうか!!」
疑問が頭を渦巻き、中には不満を漏らし始めるギャラリー。だがそんなギャラリーに
向かって、タカラギコは人差し指を立ててちっちっちっ、と左右に振る。
「“慌てる良い子はクソ掴む” 焦らないでください。そしてご安心ください、皆さん!
私がマタ厨だとか思っていらっしゃる人もいるかもですが、断じてあり得ません!!
この光景は、前座! これから奴らに地獄を見せてやるんです! マターリの極みに
いるクソ共を地獄へ落とす……。これが最高でしょう? ……おやおや、やはり
思った通り! あの馬鹿共、たらふく食ってくれたようです! ……では今から
その“地獄”をお見せします! ……スイッチ1、怨(オン)!」
タカラギコは懐からリモコンを取り出すと、「1」と書かれたスイッチを入れた。
50
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:12:28 ID:???
「アニャア…、オナカイッパイ。マターリデチュネェ……」
「ココハテンゴクデチュネェ……」
……満腹ということで思い思いに寝っ転がり、ノビーをするベビしぃたち。
お決まりだが、今の彼女たちは気づいていないだろう。自分にこれからどんな災厄が
降りかかるのか、あまつさえその“災厄”の一部を体に入れてしまっていることに…
そして、異変は突然起こった。柱を枕にして寝息を立てていたベビしぃたちが
「アニャ? ナンカアッタカイデチュネ…… ! ナ、ナンカドンドンアチュクナッテマチュヨ!」
突然悲鳴を上げて、もたれかかっていた鉄柱から離れ始めた。
見ると先ほどまでは何事もなかった鉄柱が、今やもうもうと熱気をあげているではないか。
付着した先の黒い液体が、早くもじゅうじゅう音を立てて蒸発している。
「おおっと! 何か分からなかった鉄柱の意味が、ようやく分かったようです。あれは
ホットプレートのように熱々になるわけですな! しかし、しか〜し!!
いくら熱くなっても、ベビ共が逃げてしまっては意味がない!!」
モララーの言葉通りで、競技場を見ると、鉄柱は確かに赤熱化するくらいに熱くなって
いるようだが、肝心のベビしぃは……、当然といえば当然だが、やはり逃げ出している。
鉄柱の熱気に顔をしかめながら、皆競技場の中央に集まっている。
「もしかしてこの鉄柱の熱気で、奴らをロォストビィフにするつもりか! しかしドクトル
そいつは時間がかかりすぎるぞっ! それにベビフライを食したから、満腹さ!」
モララーが興奮気味にしゃべると、タカラギコは首を横に振り
「“慌てる大人はブス娶る”!……ちゃぁんと仕掛けがありますから!
ではスゥィッチ2、怨!!」
51
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:12:59 ID:???
「ア、アニャッ!? ナ、ナンカヘンデチュヨウ!!」
「アルイテナイノニ、カッテニウゴイチャイマスヨゥ!!」
「アニャア!? ナ、ナァニィ、コエェ!?」
……タカラギコが“スイッチ2”を入れた途端、ベビしぃたちに異変が起こった。
見ると何故かベビしぃたちが、鉄柱に向かって動き出しているではないか!!
いや、しかし爪を地面に立てたりして抗っているところを見ると、自分の意志で
動いているわけではなさそうだが……
「おおっと! 突如始まった謎の行進! これは一体どういうことか!!
これがドクトルの新兵器なのか!!」
モララーの言葉に、タカラギコは親指をびしっと立てる。
「その通り! 名付けて現代版“炮烙” 灼熱電磁石よ!!」
「あにじゃ〜!! 何なのじゃ、何なのじゃ〜! あのどくとるが
やっているのは、何なのじゃ〜!?」
「お、おお落ち着け妹者! これでは答えられん!!」
興奮した妹者に揺さぶられ、兄者がげほげほと咳き込む。
「……で、妹者、何が聞きたいんだ?」
ようやく解放され、呼吸を整える兄者に妹者が尚もはしゃいだ様子で
「“ほーらく”というのは何じゃ? ちっちゃい兄者が彼女に“こくはく”した
あとのちっちゃい兄者のことを姉者がそう呼んでいたが、それか?」
妹者の素っ頓狂な発言に兄者は吹き出し、周りのAAも苦笑いを浮かべる。
「ば、馬鹿! それは“崩落”だ! ……弟者には絶対に言うんじゃないぞ……!
で、“炮烙”だが……。あれは昔の中国の伝説の処刑方法でな、ああいう熱い
金属の柱に体を押しつけて焼き尽くす方法だ。想像できるだろうが、結構えぐい」
「うへ〜。お魚みたいになるんじゃ?」
「そう。なる。あのドクトルはおそらくそれをやろうとしているんだろう。
……次の電磁石というのが、ミソか……?」
「じじゃく? それは母者がどっかーんしても全然いつもと変わらない様子の父者のことか?」
「……妹者、それは多分“自若”のことだろうが、なぜに“磁石”を知らないのに、こんな
言葉を知っている? それに父者は単に怖くて動けないだけだろ……と。まぁいい。
学校の理科の時間に習っただろう? 鉄を近づけるとひっつく、あの不思議な物体だ」
「あ! 知ってるのじゃ! 変なものにひっついて面白かった石のことじゃ!!
先生のパソコンにひっつけたら、「俺の二次元これくしょんが〜!!」って先生が
泣いてたのじゃ!! どうしてなのじゃ?」
「……哀れな……。HDが飛んだか……! だが気持ちは分かるぞ……。ま、まぁそれだ。
それを磁石と言ってな。んで今回あのドクトルが使っているのは“電磁石”という
少し特殊な代物で、普段は何ともないのだが、電気を通すとたちまち磁石に変わる
不思議なものなんだ」
「ふえ〜、変なものがあるのじゃなぁ〜……。それで兄者、あのベビたちは
いったいどうして、あんなことになっているのじゃ〜?」
……兄者が説明しようとしたその時、競技場でタカラギコが話し始めた。
「はい! お察しの通り、この鉄柱は電磁石になっているのです! それでこの
キモベビ共が何故引き寄せられているかと言えば、……これもお察しの方もいらっしゃるか
そう! 先ほどベビに舐めさせたあの黒い液体。アレがミソでしてね。あれは砂糖水に
砂鉄をぶち込んだ、というより砂鉄に砂糖水をぶっかけた代物さッ! あ、あと観客席には
磁力が行かないように計算してありますので、皆さんの鉄製品、特に電子機器の心配を
する必要はないですので、ご安心を!!」
「なぁるほどぉ! やつらは卑しく砂鉄入りの砂糖水をたっぷり食ったわけだから
腹の中は今、砂鉄で満杯! おまけに最初に破裂したときも全身に浴びてるわけだから
尚更だね! ……おやぁ、もうそろそろ限界のベビがいるぞ!!」
52
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:13:37 ID:???
モララーの言葉にギャラリーが振り向くと、たしかにそろそろ鉄柱に接触するベビが。
「アニャアア!! イヤアァァ、タチュケテェェェ!!」
……無知なベビでは磁力の仕組みも分からない。さながら見えない手に引っ張られている
ような感覚を覚えているのか? 必死に抗っているようだが、ずるずるずるずる、どんどん
鉄柱との距離は近くなっていく。
……強くなっていく熱気、爪を地面に立てて抗っても、地面に残るのは爪痕のみ。
自分の体は決して残らず、無情にも距離を近づけるだけに他ならない。
「よぉし! そろそろだ! さぁべびちゃん、ゆっくり熱々のダッコを味わいな!!」
タカラギコが叫んだ、まさにその時。鉄柱まで30cm程に近づいたベビしぃの体が、浮き……
じ ゅ わ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ ! !
「ギニャァァァァァアアアアアアアアアアア!!!」
……遂に、最初の犠牲者が誕生した。鉄柱からもうもうと上がる白煙。暴れるベビしぃ。
「ギニャアアゲギャアアア!! ヤヤ、ヤデチュヨウ!!」
必死に自分の体を鉄柱から引き剥がそうとするベビしぃだったが、悲しいかな所詮ベビの腕力。
ベビのヤワな腕力では強烈な磁力にかなうはずもなく、むしろ掌足の裏を焦がすだけ。
「さー! 鉄柱とのダッコは如何かな!? 最高に“熱い”ダッコだろぉ!?
おうおう、皆もダッコしたいか! 慌てるな慌てるな! 鉄柱さんは逃げやしない!!」
最初のベビが必死に体を引き剥がそうとしていた、その時
「モーヤァヨゥ! ヤァヨゥ! ヤァ……ブブベッ!?」
その体に、同じく磁力に吸い寄せられた別のベビがぶつかってきた。
「ア゙ーーーーーーーーー!!!」
下は鉄柱、上から別のベビのサンドイッチ。最初のベビはまさに阿鼻叫喚。
顔面を鉄柱に押しつける形となり、くぐもった悲鳴を上げる。相変わらず立ち上る煙。
そしてしばらくもがいたうちに……、動かなくなった。
「ハァ…ダッコハヤッパリマターリデチュネェ……。ッテ、アレ!? ナンカアツクナッテキマチタヨゥ!!」
今までは鉄柱と自分との間にベビがいたが、それは今や熱で焼き焦がされ消し炭そのもの。
さぁ、次は上に乗っていたベビの番だ。
53
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:14:36 ID:???
そんな悲惨?な光景が、あっちこっちで繰り広げられていた中で
「フ、フン! チィハヘイキデチュヨ! アンタノヘンナマホウニハ、カカッテナイデチュヨーダ!!
チャア、ユルチテホチカッタラ、チィニコウピチナチャイ!!」
各々の鉄柱から離れた場所にいた、奇跡的に磁力の影響を受けていないベビしぃが
タカラギコに向かって挑発的な言葉を投げつける。
「そんなに交尾がしたいんなら……」
しかしタカラギコは相変わらずのタカラ・スマイルを崩すことなく、ベビしぃを持ち上げ
「あの鉄柱としてこいやぁぁ!!」
タカラがベビしぃをぶん投げたその先には、何と、棘突きの鉄柱が!!
その棘にベビしぃのマムコが、すっぽりと突き刺さり……
「ヤァァァァァ!! コンナノマターリノコウピジャナイデチュヨゥゥゥ!!」
ベビしぃがマムコを焼き焦がされていく様を、楽しそうに眺めていた……
「おおう! あんな離れたトゲトゲに、ベビのマムコを正確にクリーンヒットさせるとは!!
流石ドクトル! 勉強だけじゃなくてスポーツも万能ッてか!?」
「……学生時代から、野球は大の得意さぁぁ!!」
タカラは尚も傍にいたベビしぃをつまみ上げると、ぶんぶんと灼熱の鉄柱に投げ始めた。
「アギャアアァァァァアアア!!??」
掃除機で吸い込まれるように、ベビしぃは次から次へと灼熱の鉄柱に引き寄せられていった。
「アヂュウヨォォォォオオオオ!? ダヂゲデェェェェェェェエエエエ!!」
体を鉄柱から引き剥がそうと手足を踏ん張るベビ、体をねじってみるベビ。
だが、結果は言わずもがな。どのみち上から次々とベビしぃが吸い寄せられてくるのだから
脱出など、不可能。このベビしぃはまず腹に直撃を受け、それだけで内臓がはみ出てきた。
ジュワァアアアアア……
「チ、チィノコテッチャンガァァ!! イヤァァァ!!」
さながら焼き肉のようなもの。ベビしぃは焼かれる己が内臓を無駄な抵抗、必死で体内に
戻そうとするが、その内臓は出来の悪いフライパンで料理をした末路よろしく、鉄柱に
べったりとくっついてしまっている。傷口からの出血も煙を上げて蒸発していく傍ら
「ア、ア、ヤ、ヤデチュヨゥゥゥ……」
真っ白な毛皮がどんどん真っ黒に縮れて焼けこげていく傍ら、ベビしぃは腹に感じる
鈍痛と、全身を苛む文字通りの灼熱感に散々悲鳴を上げた後……、動かなくなった。
勿論、はらわただけではない。あるベビは頭に別のベビが衝突、頭蓋骨が解放され
「アババババババババ!! ナコナゴォウゲガギャアアアアアア!!」
脳味噌を直接焼かれるか、あるいは蒸し焼きにされ、いずれにせよろくな悲鳴を上げずに
じゅうじゅう音を立てて消えていった。
54
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:15:08 ID:???
「おおぅ! しかし実に科学者らしい効率的な殺し方!! 自分で手を下す以外にも
勝手にベビたちが死んでくれるんだから、これ以上の方法はなぁーい!!」
「まぁ本音を言えばこの手で百匹全てをぶち殺したいところでしたが、この大会では
時間が優先されるとのこと!! ちんたらやっていては入賞を逃しますのでね!
この屑共が卑しい馬鹿共で、助かりましたよ!」
「そりゃそーですよねぇ! いくら甘いってもあんな得体の知れない黒い液体、普通の
AAなら舐めやしませんって! 流石欲望一直線のアフォベビ!! 甘いと分かれば
後先考えずに体に入れる! いやー、天下無敵の大馬鹿種族だッッ!!」
「まぁ、このまま連中が勝手に死ぬのを待っていてもいいんですがね、それじゃあ
面白くない。つーわけでますますベビしぃには苦しんでもらおうと思います!!
さぁて、これでもくらえやぁぁ!!」
そう叫ぶとタカラギコはいつからそこにあったのか、傍らのずた袋の中に手をつっこむ。
中から出てきたのは……、釘や針、剃刀。タカラギコはそれらを次々に投げ始めた。
元からのタカラの投球力と、吸い寄せられる磁力。双方の力が相成って、飛翔物の速度は
倍加している。そして的とも言えるベビしぃたちは、逃げられない。
「イヂャアアアアアアアアアア!! チィノアンヨガァァァアアアア!!」
「ヂィノオメエエエエエエエエエエ!! グギャアアアアアアアアア!!」
オメメに釘が刺さるベビ。腹に大きな畳針が食い込むベビ。口の中に剃刀が突っ込むベビ…
吹き出た血がまたもうもうと煙を上げながら蒸発、辺りに妙な臭いが立ちこめた。
「気分は“ジャンピング・ジャック・フラッシュ”かな? まぁ原理は全く別物だけれどね。
……さ、どんどんいこうか。次はさながらイノシシ用のショットガンってとこかな?」
タカラギコはにんまり微笑んでまた袋に手を入れると、今度はビー玉大の鉄球を
じゃらじゃらと取り出し……投げつけ始めた。
「ほらっ!」
「アベェッ!?」
「うぉらっ!!」
「ギャバァッ!?」
「せぃやっ!!」
「ギーーーー!!」
先の釘や剃刀と違い、今度の鉄球は鋭さがない分、衝撃がすさまじい。
恐らく純粋な鉄ではなく、中に鉛でも仕込まれているのだろう。ベビしぃに着弾するたびに
どぼっ、どぶっ、と鈍い、肉にめり込む音が聞こえてくる。勿論打ち込まれたベビ共は
それ一発で既に致命傷。内臓破裂で済めばまだいい方なのが恐ろしい。
「べびしぃはぁ〜、歩いてこないっ♪ だ〜からぶつけにいくんだよ〜♪
一回三個♪ 二回で六個♪ 三回投〜げて死体の山♪ ……と、あれぇ?」
意気揚々と鉄球を投げまくっていたタカラが、ふと顔を横に向ける。
その視線の先には、まだ何故かベビしぃが残っていた。
55
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:16:56 ID:???
「……さっき磁力の影響を受けてない奴は皆放り込んだと思っていたが……まだいたか?」
タカラがずんずん近づくと、ベビしぃは涙目になってがたがた震え出す。
「ア…アニャニャ…! オ、オネガイオジタン、ユルチテ…!」
「オジタン、だと!?」
ベビしぃの言葉にカチンときたか、タカラスマイルに血管を浮かべながらベビしぃを持ち上げる。
「……計算すると、大体あの辺りか……。よし、行くか」
にやりと微笑むとタカラは、ベビしぃを投球フォームよろしく振りかぶった。
「オ、オジタン、ヤメテェェェェ!!」
「俺はまだおじさんなんて年じゃないんだよ! 逝ってこいやぁ!!」
すっかり顔を赤くしたタカラが投げるは、まさに剛速球!!
……と、思いきや、あれほどいきり立っていたタカラだったが、その投球は奇妙なものだった。
なぜならベビしぃが飛んでいく先には柱がなかったし、その速度も下投げ程度のスロー・ボール。
興奮しすぎてミスしたか? と思いきや、そんなことは全くなかったわけで
「ア、アニャッ!? チィノカラダガ、オソラデトマッチャッタ!」
見るとベビしぃの体が、空中で静止しているではないか! いや、それだけではない!
「ヂィィッ!? チ、チィノカラダガヒッパラレテマチュヨゥ!! イ、イタイヨウゥ! マァマァァァァ!!」
ギャラリーも、そのベビしぃの悲鳴で悟ったようだ。……そう。タカラはわざと柱に向かっては
投げず、見た目には何もない場所に投げつけたのだ。
すなわち、柱と柱の中間地点。ちょうど双方の柱の磁力の影響がある場所に。
「ギューーー!! ギィィィィィーーーー!!」
今のベビしぃの状況を説明するなら、江戸時代にあったという牛裂き刑のようなものか
要するに体の両側から引っ張られているようなものである。
「アアアアアアアアアアアァァァ!! イヤァァァァ!!」
激痛の中必死にもがくが、ベビしぃの貧弱な力では強力な磁力に抗えようはずもない。
全身から関節の外れる、嫌な音が聞こえ始める。
「おうおう! これは痛い! 見えない力の股裂きだ! 流石ドクトル! こんな
精密なことまでやってのけるとは! あんたは野球選手としても一流だよ!
「そいつはどうも!! さーて、まだ他にも悶えてるベビがいるから、そいつらが
焼き上がるまで、こいつをじっくり眺めるとしますか!」
「アアァァアアアアァァァアアア……!!」
今やベビしぃの関節からは、嫌な音がしなくなった。替わりに四肢が元の二倍に伸びていたが。
その張本人、すでにもう白目をむいて口からは泡をごぼごぼと吹きだしている。
そしてついには、肉の裂け始める「みちみち」と言う音が。
その音は、タカラにも聞こえていたようだが
「……と。他は皆消し炭にして、お前が最後か……。
このまま自然に八つ裂きになるまで放っておくのも手だが、時間がかかるな」
タカラはふぅとため息を一つつくと、ナイフを一本取り出し……ベビしぃに向かって、投げた。
56
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:17:37 ID:???
ばりばりばりっ!!
.
57
:
cmeptb
:2007/05/08(火) 23:18:20 ID:???
その投げられたナイフは、きれいにベビしぃの正中線、鳩尾に突き刺さった。
ゴムというものは、裂傷が入ると途端に脆くなる。それは筋肉も同じだったようで……
きれいに真っ二つに裂けたベビしぃは、そのまま各々の半身が各々の鉄柱に吸い寄せられ
他のベビしぃよろしく、じゅうじゅう音をあげて焼け始めた。
パ ァ ン!!
「終ーーー了ーーー!! 100匹全部丸焼きだー!!」
最後のベビしぃが真っ二つになり、柱に飛び込むとピストルが鳴った。
「さすがはドクトル!! 実に科学者らしいやり方でした!! いやぁ、お見事!!」
上気するモララーに、タカラギコも両手をあげて喜んだ姿を見せる。
「久々に実験以外でベビしぃを屠りましたが、いやぁ、やっぱり遊びで殺すのは爽快ですねぇ!」
「それではタカラ選手、控え室、或いは観客席の方へお戻り下さい!ありがとうございました〜!」
終焉
58
:
栄
:2007/05/12(土) 00:04:16 ID:???
続きです・・・
ベビしぃの両足があったところから血が噴き出す。しかし、それを止める事は出来ない。ただベビしぃは叫び、助けを求める事しか出来なかった。ベビしぃは無力だった。もう二度と立ち上がり、走り回る事も出来なくなったベビしぃは必死にもがいているしか出来ない。
「ヂィノアンヨォォォ!!アンヨォォォ!!」
ベビしぃは噴き出す自分の血を見ながら恐怖と絶望に飲み込まれた。
「鬱陶しい!!這いずり回るな糞虫が!!」
モララーがベビしぃを蹴り飛ばした。
「ッヂィャァァァァ!!」
ベビしぃは吹っ飛び、テーブルの脚に頭からぶつかった。歯が何本か折れ、そこから出血した。ベビしぃは気が遠くなるのを感じた。そのまま死んだ方が楽かもしれない。が、神はそれを許さなかった。ベビしぃが気絶して落ちる。が、床に着いた瞬間、ベビギコに噛み付いたのと同じ鉄の牙がベビしぃの両腕に食らいついた。その激痛でベビしぃは一気に正気に戻された。
「ア゛ニ゛ャァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!?チ、チィノオテテガァァァァッ!!」
ベビしぃは激痛のあまり、飛び跳ねるが鼠捕りは一層腕に食い込み、ベビしぃに激痛を提供する。
「HAHAHA、運の悪い奴め(笑)そろそろ逝くか?」
「チィノオテテ…、シアワセヲツカムチィノオテテガ…」
「ベビしぃ如きが幸せを語るなんて100年早いわ!じゃぁそろそろ止めを刺して…いや、その必要はないみたいだ。」
そう言うとモララーはニヤニヤしながらその場に腰を下ろした。
「イヂャーヨゥ!チィハタダマターリチタイダケ…」
『ゴゥー…』という機械的な音にベビしぃは喋るのを止めた。ベビしぃが上を仰ぎ見ると、テーブルの上のミキサーが唸りをあげ、ベビしぃの上へ今にも落ちそうである。テーブルの脚に激突した時、その衝撃でミキサーが作動したのだ。ミキサーはさっきベビしぃの脚を切り刻んだ血だらけの刃を回転させ、少しずつ進んでいる。
「チィィ!ア、アレヲトメナチャイ!!」
「どうしてだよ。ベビしぃちゃん。逃げればいいじゃん(笑)」
ベビしぃは必死に腕を引き抜こうとするが、しっかりと鼠捕りが噛み付いているので、全く動けない。
「ヌ、ヌケナイ…ヌケナイデチュヨォ!ハヤクアレヲトメテクダチャイヨォ!!」
「何で止めるんだよ。こんな楽しいこと(笑)」
モララーがニヤニヤ笑いながら、囁く。
「オカァタン!オトォタン!タチケテ!!」
「みんな向こうでオネンネしてるよ。」
「ベ…べヒ…チャン…」
ミニしぃが掠れた声で叫ぶ。他のベビしぃ達もスプレーを吸い込んで、あちこちで倒れている。
「ほらほら、そんなこと叫んでる場合かな?」
モララーの言葉にベビしぃが上を見ると、ミキサーが揺れながらベビしぃの上に落ちてきそうである。
「ビェェェン!!ビェェェン!!ヂィヲダヂゲデヨォ!!」
助けが来ない事を悟ると、ベビしぃは大粒の涙を流しながら泣き叫んだ。
「今行くデチ!!」
スプレーの効果が切れたらしく、チビギコが走ってベビしぃを助ける為、走り出した。
「オトータン!!」
ベビしぃが涙声で叫ぶ。チビギコが鼠捕りをを手早く外す。
「さぁ、早く行くデチ!」
チビギコがベビしぃを抱き上げた。
「チィ…オトータンノナッコ…アタタカイデチュ…」
ベビしぃが安堵の笑みを漏らす。
「…けど、遅かったね…」
59
:
栄
:2007/05/12(土) 00:05:14 ID:???
ベビしぃが安堵の笑みを漏らした次の瞬間、ベビしぃの頭にミキサーが覆い被さった。
「ハギィィィィィィッ!!?」
「べ、ベビタァァァン!!」
「ミキサーキター( ゜∀ ゜)ー!!」
ベビしぃの千切れかけた小さな手がチビギコの身体をギュッと掴む。ミキサーからはベビしぃの肉や骨などが細切れになって飛び散っていく。チビギコの顔に何かが付着した。それは、ベビしぃの舌であった。
「……!!ヒギィィ!!離れろ!離れるデチ!!」
チビギコは身体を揺すってベビしぃを振り落とそうとしたがベビしぃの手にしっかりと掴まれているのでなかなか離れられない。
「ヒギャァァァァ!!助けてデチィィィ!!」
チビギコがその場で回りはじめた。その時でも、ミキサーから血が迸っている。そして激しく回っていると遂に、『ブチン』と音を立てて、ベビしぃの身体がチビギコから離れた。チビギコの身体にはベビしぃの両腕がビクンビクンと奇妙な虫の様に痙攣しながら付いている。
「イャァァァァ!!シィノベビチャンガァァァァ!!!」
ミニしぃがその場で叫ぶ。ミキサーはまるで貪欲な怪物の様に、ベビしぃの死体を刃の中に巻き込んでベビしぃのジュースを作っている。が、しばらくして、肉などが詰まってしまい、動かなくなってしまった。辺りの惨状は酷いものだった。台所のあちこちに、肉や内臓の切れ端、脳みその灰色のゼリーが飛び散り、天井にまで達していた。
「ヒグゥ…チビたんのベビたんが…。」
チビギコがベビしぃの死体を見ながら涙した。その時、チビギコの目の前に何かがポトンと落ちてきた。それは、『ベチャ』と音を立ててチビギコの足下に落ちた。
「……!ヒギ…!!」
チビギコがそれを見て息をのんだ。それはベビしぃの顔の一部分だった。顔は耳が千切れ、顎から下が無かった。左目があったところは、ただ真っ暗な穴が開いているだけで、右目はチビギコを恨めしそうに睨んでいる。
「……ヒクゥゥ…」
チビギコは恐怖のあまり、気絶してしまった。
「ドウシテシィタチヲイジメルノヨォ!!」
ミニしぃが倒れながらモララーを睨み付ける。
「虐めてないさ。これは駆除だよ。」
モララーがミニしぃを一瞥して喋る。
「シィタチガイッタイナニシタッテイウノ!?」
「何をしたって!?人ん家に不法侵入して、さらに冷蔵庫の食い物を勝手に食い散らかしていて何をしただって!?」
モララーが側で泣き叫んでいるベビギコを掴む。
「ミュギィ!ミュギィ!!」
「シイチャンタチハ2chノアイドルナノヨ!!ダカラナニヲシテモカワイイカラユルサレルノ!!」
ミニしぃが怒りで声を荒げる。
「テメエがアイドルならゴキブリは神様だよ。自意識過剰もたいがいにしやがれ!!」
モララーが声を荒げると同時にベビギコを荒々しくベビギコを投げつけた。鼠捕りに噛み付かれていた左腕は『ズルルッ』と骨だけが抜け、神経や筋肉の切れ端が付いているだけとなった。
「ミ゛ィ゛ィ゛ー!ミ゛ィ゛ィ゛ー!!」
ベビギコは自分に起こった事を理解しきれなくて、ただ激痛に泣き叫んでいる。
60
:
栄
:2007/05/12(土) 00:05:43 ID:???
ベビギコの悲痛な泣き声が辺りに響く。左腕の露出した骨がカタカタと音を立てている。
「お前はどうして殺ろうかな…」
「そんなことはさせないデチ!!」
ベビギコの絶叫で目が覚めたチビギコがモララーに飛びかかる。が、この捨て身の攻撃は呆気なく避けられてしまった。
「そんなものでこの漏れを倒せると思っているのか?つくづくおめでたい奴だな。」
モララーが側にあった麻袋をチビギコに被せる。
「ヒギィ!?や、止めるデチ!!」
モララーはチビギコの入った麻袋をサンドバックのスタンドに掛け、思いっきり殴った。
「ブギィィ!!?」
殴った箇所から血が滲み出る。
「そんなに強く殴ってないのに、やっぱり糞虫は脆いねぇ。」
モララーは隣の部屋から釘が全体に打たれたモララー専用虐殺棒を持ってきた。
「昔は漏れもこの棒持って青春してたなぁ…それじゃぁいっちょ殺りますか!」
そう言うとモララーは虐殺棒で麻袋をスイングした。唸りを上げる虐殺棒、麻袋から滲み出る血の量が多くなった。それに比例して叫び声も大きく、激しくなった。
「ヒギッ!!や、止め…ゴブゥ!!許ひギャブゥ!!」
「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!やめらんねぇ!止まんねぇ!最高だぜぇ!!」
モララーのスイングが更に激化する。麻袋は完全に血に染まり、床にも血だまりができている。今度はチビギコの悲鳴は逆に小さくなっていった。
「ギッ!ウヂッ!ダッ!ズゲッ!!ヂブッ!デッ!!」
最早何を言っているのか分からないチビギコにモララーが容赦なく虐殺棒で殴打する。自分達の父親がなぶり殺されるのをベビしぃ達は震えて見てるしかなかった。
「アーヒャヒャヒャヒャヒャ…」
モララーが正気に戻ったのはそれから5分後だった。麻袋は血で滑っていて、ボタボタと音を立てて血が垂れている。大きな蓑虫のような麻袋はビクンビクンと激しく痙攣している。
「はー、はー、久しぶりにアヒャると流石に疲れるな。」
モララーが最後に力一杯殴る。すると、袋の下部が破れて中の物が溜まっていた血と共に落下した。それはチビギコではなかった。あちこちから複雑骨折した骨の破片が突き出ており、さながら針千本の様である。手足は本来、曲がるべきではない方向に折れ曲がっており、関節部分からは桃色の肉が血にまみれてはみでている。最も凄惨なのはそれの顔で殆ど原型を留めていない。あちらこちらが陥没して、口があった所には下顎がだらんと千切れかけていて、脳漿の一部が割れた後頭部からはみ出ている。それでもまだ生きているらしく、息の洩れる『ヒュー、ヒュー…』という音が口の辺りから聞こえる。
「…た…たひゅけて…」
潰れた目から涙を流し、チビギコが懇願する。
「ん〜?何だって?」
モララーがニヤニヤ笑いながら聞く。
「ご…ごめんなひゃ…い…もう…しましぇん…」
61
:
栄
:2007/05/12(土) 00:06:19 ID:???
「オナガイ!!モウヤメテ!!」
ミニしぃが必死に叫ぶ。
「モウヤメチェヨゥ!!」
ベビしぃ達も泣きながらモララーに頼む。
「やなこった!!」
モララーはチビギコの頭部に虐殺棒を打ち下ろした。
「…ごめんなひゃい…たひゅけ…ヘブゥッ!!…」
頭に虐殺棒がめり込む。チビギコの頭がそれと同時に身体の中にめり込んだ。チビギコの頭は自分の突き出た背骨に串刺しになった。
「…あがぁ…!あっ…!」
チビギコの目や口から多量の鮮血が噴き出し、モララーの顔に飛び散る。
「最後の一発!!」
モララーがチビギコの顔面めがけて、渾身の一撃を放つ。チビギコの眼球が飛び出し、顔面の皮膚は石榴の様に弾けた。チビギコの頭は背骨と共に千切れ、洗面台の壁に叩きつけられ、水風船みたいに破裂した。その威力は凄まじく、飛び散った灰色の脳漿がモララーの所まで飛んできた程である。チビギコの身体はニ、三度跳ねる様に大きく痙攣して、それきり二度と動かなくなった。
「イヤァァァァ!!ギコクゥゥゥン!!!」
ミニしぃが叫ぶと、他のベビしぃ達も騒ぎ出した。
「オトータン!オトータン!!ヘンジチテヨォ!ナッコチテヨゥ!!」
フサベビが泣きながら頭が無いチビギコの身体を揺すった。しかし、身体は動く事無く、首からただ血を垂れ流しているだけであった。モララーはフサベビの耳を掴み上げた。
「ヤーヨゥ!ハナチテヨゥ!!」
フサベビは激しく暴れているが、モララーは物ともせず、絨毯に擦りつけた。
「ヂィィィィ…ゴミガチュイチャウヨォ!!」
「お前自体がゴミじゃん。」
「チィハゴミヂャナイヨォ!!」
「フサゴミはよくゴミが取れるな。」
しばらくしてモララーはフサベビを掴んでる手を離した。フサベビのフサフサした体毛には、埃や塵が絡まり、汚れたモップみたいであった。
「チィノカワイイオケケガキタナクナッチャッタヨォ!!」
「これでゴミ虫に相応しい姿になったね(笑)」
モララーが冷やかす。
「カワイイチィヲゴミアチュカイシュルヤシハアポーンチマチュヨォ!!」
フサベビが怒って飛びかかる。その時、『パチッ』という微かな音がし、フサベビの身体に電気が走った。
「ヂッ!?」
フサベビは驚いて飛び跳ね、頭から落ちた。
「イヂャーヨゥ!!イヂャーヨゥ!クソモララーガイヂメルヨォ!!!」
「HAHAHA、帯電してやがる。」
フサベビが身体を動かす度に静電気が身体を流れる。その度に驚き跳ね回るフサベビは見ていて滑稽であった。
「ヂッ!ヒヂッ!コノバチバチ、ヤーヨゥ!!」
フサベビは跳ね回りながら壁の方へ寄っていく。そして壁に触れた瞬間、
「ハギェェェェッ!!?」
突然フサベビを耐え難い激痛が襲った。フサベビの毛は針の様に逆立ち、口から泡が噴き出す。初め、モララーにも何が起こったのかわからなかった。がフサベビの足元を見て、全てがわかった。フサベビの体毛がコンセントの中に入り込んでいたのだ。フサベビに強力な電流が流れ、フサベビを絶え間ない激痛が襲う。
「ハギェェェェッ!ハギッ!!ギィィィィッ!」
この世のものとは思えない叫び声にミニしぃ達は耳を押さえうずくまった。フサベビの身体が激しく痙攣している。が、コンセントから体毛が抜けることなかった。口から出ている泡が白色からだんだんと紅くなっていった。
62
:
栄
:2007/05/12(土) 00:06:54 ID:???
「ハギュゥゥゥゥ!!ヒビャァァァァァッ!!」
口から泡を飛ばしながら、フサベビは悶え苦しんでいる。『パチパチ』と電流の流れる音が激しくなっていく。そして遂に、『ヒュボッ!!』という音と共に、フサベビの身体は炎に包まれた。
「ヒギィィィィッ!!?アジィィィィ!!」
体毛が乾燥していた為、炎は一層激しく燃え盛った。フサベビはこの時、自分の体毛を呪った。
「イジィィィィ!!オカ…タン…タ…タチ…」
フサベビは炎に包まれた小さな腕をミニしぃの方に延ばした。が、ミニしぃは耳を押さえてうずくまっている。フサベビの目から涙がこぼれたが、すぐに熱で蒸発した。そして、そのつぶらな2つの目も次第に白濁し、遂には破裂した。
「オガ…ダン…フサフサ…イヤ…ヨゥ…」
そう言うとフサベビは前に倒れた。そして、二度と動く事はなかった。もうフサフサの体毛は無く、変わりにメラメラと燃える炎がフサベビの全身を包んでいる。
「…フサチャン…?」
ミニしぃが顔を上げ、燃えている我が子を見て呟く。
「…イ…イヤァァァァ!!フサチャァァァン!!!」
ミニしぃはその場に泣き崩れ、嗚咽を漏らした。
「オナガイ…オナガイシマス!!マターリノカミサマ!ミンナヲフッカツサセテクダサイ!!」
ミニしぃは必死に祈ったが、神はそれに応じなかった。
「HAHAHA、マターリの神様は汚いゴミなんか生き返させたくないみたいだね(笑)」
「ハニャーン!ゴミジャナイヨォ!!カワイイ2CHノアイドルダヨォ!」
「馬鹿は死ななきゃ治らないってか?」
モララーがミニしぃに虐殺棒を振り下ろそうとした時、モララーの腕にワッチィが飛びついた。
「オカータントベビチャンニハユビイッポンフレサセマチェン!!オカータン!!ハヤクニゲルデチュ!!!」
しかし、ミニしぃは動くことが出来なかった。
「ハニャーン!コシガヌケテウゴケナイヨォ!!」
「せっかくのチャンスを棒に振る気かい?」
そこで、ようやくモララーはミニしぃの腹部が膨らんでいるのに気が付いた。
「ほう、妊娠してるのか。」
モララーの顔がにやける。
モララーはワッチィの頭を掴み、引き剥がすと、ミニしぃに、
「なーんだ、妊娠してるのなら始めに言ってくれればいいじゃん。漏れも鬼じゃあ無い、ミニしぃちゃんの為に何か作ってあげるよ。」
とミニしぃの頭を撫でながら言った。
「フ、フン!ヨウヤクカワイイシィチャンノイダイサガワカッタミタイネ!!ジャアトットトツクッテキナサイヨ!!コノテイノウクソモララー!!」
ミニしぃが調子に乗って、モララーに罵声を浴びせる。
「じゃあ、ちょっと待っててね。すぐ作ってくるから。」
そう言うとモララーはワッチィを掴んで、隣の部屋に入っていった。
「フン!カワイイシィチャンハナニシタッテイイノヨ!!」
63
:
栄
:2007/05/12(土) 00:07:15 ID:???
ミニしぃはモララーに連れていかれたワッチィのことなど眼中になく、その場で耳障りな歌を歌い始めた。
「キョウモゲンキニシィシィシィ〜♪」
一方、隣の部屋ではモララーが手早く料理の準備をしていた。側にはワッチィがちょこんと座ってくだらないことを喚いている。
(…ったく、もの凄い音痴だな…)
心の中でそう思いつつ、にやけながら、包丁を研いでいる。
「モララーハチィタチニヒレフスノヨ!キョウカラモララーハチィタチノドレイデチュヨ!!」
「あー、はいはい。」
モララーが生返事をする。
「ナンデチュカ!ソノヘンジハ!!ワカッタラ『ワカリマチタ、セカイイチカワイクテカチコク(中略)ナワッチィサマ』トイイナチャイ!!」
「わかりました、世界一(中略)なワッチィ様。」
モララーは言い終わるのと同時に包丁を研ぐのを止めた。
「ソレデイイデチュ!!トコロデ、ナンデチィダケツレテコラレタノデチュカ?」
「それはねぇ…」
モララーがワッチィを抱き上げて小さい右手を摘んで答える。
「テメエをキモゴミの餌にする為だよ!!」
モララーはワッチィの右手を捻り切った。
「ワヂィィィィッ!!?」
突然、手の感覚が無くなると、ワッチィの右手があった所から熱い真っ赤な液体が迸った。
「ワヂッ、ワッヂィノオテテガァァァ!?」
ワッチィは激痛と恐怖でパニック状態に陥っている。モララーは暴れるワッチィの海苔の部分を掴んで、左手も千切り取りにかかった。
「すぐに千切り取るのは駄目です。ゆったりと千切り切る方が食材の脳に刺激を与え、より新鮮でマターリな味になります。」
モララーは『アブノーマル版アフォしぃでも分かる、レモナの虐殺クッキング』を音読しながら、ゆっくりとワッチィの左手を捻っていく。
「ヤ、ヤメテヨゥ!!チィガナニヲチタノヨォ!!」
ワッチィの叫び声を聞き流しながらモララーはゆっくりと左手を引っ張ってゆく。始めは伸びていた左手も伸びきってしまい、根元の皮膚が『ミチミチ』と音を立てて千切れだした。中から餅みたいな白身が見えている。
「ワ、ワカッタワ!!チィガワルカッタワ!!ダ、ダカラ、ヒッパラナイデヨォ!!!」
ワッチィが泣き叫ぶがモララーは決して力を緩めなかった。
「オ、オナガイシマス!オナガイシマス!!タチケテヨォ!!チ、チィヲタチケッ…ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ッ!!!?」
ワッチィの必死の懇願も虚しく、遂にワッチィの左手の肉が弾け、骨ごと左手が千切られた。両の切り口から血が勢いよく噴き出し、辺りを紅色に染める。
「え〜と…『次に、真っ赤に焼けた鉄棒を切り口から通し、醤油、砂糖、味醂で適当に作ったタレに漬けます』か…。」
音読をした途端、ワッチィは更に震え上がり、泣き喚いた。
「ヤーヨゥ!ヤーヨゥ!!ヂィハナッコガイイノォ!!ナッゴォォォォ!!!」
しかしモララーはそれらの要求をガン無視して、テキパキとテキストに書いてあることをこなしていく。ワッチィはその間、拷問の様な時間を過ごした。
「さぁ、ちょっぴり痛いからね〜(笑)」
やがて、耐熱手袋で真っ赤に焼けた鉄棒を持ってきて、モララーが猫なで声でワッチィに声をかける。放心していたワッチィは、恐怖のあまり、失禁してしまった。
「オ…オナガイデチュヨゥ…、ミノガチテクダチャイ…」
ワッチィは真っ赤に燃えている鉄棒を見て、糞尿を漏らしながら後退りする。
「可愛い可愛いベビちゃんの為だろ?」
「ィ、イヤァァァァ!!タチケテッ!!タチケテヨォォ!!!」
64
:
栄
:2007/05/12(土) 00:07:52 ID:???
ワッチィは自分の糞尿を掻き分け逃げようとしたが、すぐにバランスを崩し、倒れてしまった。起き上がろうとするが、両腕が無いため立ち上がることが出来ない。それでも這ってでもワッチィは逃げようとした。が、この地獄から逃げることは出来なかった。モララーが必死に逃げようとしているワッチィの右脚を踏みつける。『グキッ』という音と共に、折れた骨が踵の肉を突き破って飛び出てきた。
「ウヂィィィィィ!!?」
ワッチィの右脚の感覚がなくなった。そして、その代わりに熱い様な感覚がワッチィを襲った。
「ワッチィノ、ワッチィノアンヨガァァァアッ!!」
ワッチィはゴロゴロと右脚の残骸を押さえて転がった。ぐちゃぐちゃになった右脚の動脈からは心臓の鼓動に合わせて真っ赤な鮮血がリズミカルに噴き出している。モララーは血が噴き出している箇所に鉄棒を押し付けた。『ジュッ』と米と肉の焼ける音がし、辺りに香ばしい焼おにぎりの匂いが漂う。
「ジッ!?ッピギィィィィィッ!!!」
ワッチィはだらしなく口から涎を垂らして痙攣している。鉄棒にささくれ立った皮膚が張り付き、白煙を上げる。激しく出血していた所は、傷は塞がったが、その代わりに痛々しい水膨れが幾つも出来上がった。
「ヂィィィィ…、イヂャ…ヨゥ…コンナノ…マターリジャナイヨォ…」
ワッチィが大粒の涙を流しながら掠れ声で呟く。モララーはそんなものには耳を貸さず、鉄棒をワッチィの肛門に突っ込んだ。
「ヒッギィィィィィィッ!!?」
鉄棒はワッチィの腸や胃、そして呼吸器官を突き破って、口から飛び出した。ワッチィは文字通り、串刺しになったのである。
「アガァァァッ!アヂィーヨゥ!!!ナゴ、ナッゴォォォッ!!!!」
ワッチィはまだ生きていて、串刺しになりながらも必死にもがいている。が、貫通しているので、抜けることはなかった。熱さと痛みが同時にワッチィを襲う。ワッチィの肺が気圧の変化によって『ボフゥ』と音を立てて破裂した。
「ブプゥッ!!」
ワッチィが勢いよく吐血する。そして、口を大きく開け、必死に酸素を求めている。
「チ…チヒィィィィ…イキ…デキナヒヨォ…ッ!!?…ァァァアアアア…」
ワッチィの下腹部が徐々に膨らんでいった。腸内のメタンガスやその他の可燃性のガスに引火し始めたのである。そして、遂に下腹部はまるでエイリアンが出てきそうな程に膨らんでしまった。
「アァアア…モ、モララーヒャン…タシュ…ケ…ァ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ッ!!!」
遂に下腹部が破裂した。中から飛び出てきたのは、エイリアンなどではなく、ズルズルになった内臓であった。下半身は、辛うじて筋と皮で繋がっている。途中で途切れた背骨からは、赤黒い骨髄が飛び出しており、鉄棒に触れて一気に焦げあがった。
「ハギュゥゥゥゥ!!チィノポンポンガァァ!!ダ、ダヂッ!!!ワヂョォォォォ!!」
ワッチィの頭は混乱状態になり、様々な単語と叫び声を連発し始めた。
「ヒッ!!ヒギィッ!!マダーリッ!!マダーリィィイッ!!ヒアァア゛ァ゛ァ゛ア゛ッ!!ア゛ニ゛ャァ゛ア゛ァ゛ッ!!ナッゴォォォ!!」
最早ワッチィは自分でも何を言っているのか分からなかった。
「…五月蝿いなぁ…」
モララーは壊れた悪趣味な玩具の様に暴れるワッチィを鉄棒ごと特製醤油ダレに漬け込んだ。
「ワヂィィィィッ!!ワッヂィィィィ!!ナッゴォォォ!!ナッブクブク…」
ワッチィのの全身がタレの中に沈む。タレが傷にしみるのだろうか、泡が異常に出てくる。が、息が尽きたのだろうか、しばらくして、泡が止まった。モララーがタレから鉄棒を取り出した。ワッチィは鉄棒の熱と醤油ダレて焼おにぎり状態になっていた。
「ワヂィィィィ…チミルヨゥ…オカ…タン…ナ…コ…」
「よし、いい具合に仕上がったからな!」
65
:
栄
:2007/05/12(土) 00:08:12 ID:???
モララーはまず、千切り取った手を皿に盛り付けて隣の部屋に持っていった。
「オソイジャナイノ!!ハヤクシナサイヨ!!!マッタク、コレダカラカトウシュゾクハ…」
隣の部屋ではミニしぃが喚き散らしていた。これから起こる悲劇を想像しながらモララーはニヤニヤしていた。
「まずはこれでもドゾー。」
モララーがミニしぃの前に皿を置く。置くや否や、ミニしぃは我が子の手にかぶりつく。
「アラ、オイシイジャナイ。クソモララーニシテハジョウデキネ。」
モララーが次の皿を持ってきた。その皿にはいい具合に焼けた肉が輪切りにされて乗っていた。ミニしぃは何の疑いもなくその肉にかぶりつく。
「ミュミュ〜」
美味しそうな匂いに誘われて、ベビギコが寄ってきた。
「コノウマーナオニクハナンノオニクナノ?」
ミニしぃがこてっちゃんに食らいつきながらモララーに尋ねる。
「直にわかるさ。」
モララーが不敵な笑みを浮かべて答える。
「さぁ、メインディッシュだよ。」
モララーは隣の部屋から被せ物をした皿を持ってきた。中の物が激しく暴れているためか、皿は音を立てる程揺れている。
「イヂャァァアァアアァヨゥ!!オガァダァァン!!オガァダァァン!!」
「ハニャ♪イキガイイワネ♪」
「そうなんだよ。活きが良すぎて調理するのが大変だったよ。」
「オイシソウダワ、ハヤクアケナサイ。」
「ミュィ〜♪」
ミニしぃとベビギコが催促する。そしてモララーは被せ物を取った。
「ハニャーン♪イタダキマ…。」
ミニしぃがその場で硬直した。視線は皿の上の物に注がれている。
「アニャァ…オカ…タン…」
それは我が子の生首であった。血の様に見えているのは、モララー特製醤油ダレである。
「イ、イヤァアァアアアァァアアッ!!?ワッチィチャァァァン!!」
「ミュミュ〜!!?」
ミニしぃとベビギコが叫ぶ。
「モララー特製焼き生首ワッチィの踊り食いだよ。(多分)美味いよ。」
モララーがニヤリと笑う。
「コノオニ!アクマ!!ギャクサツチュゥ!!!シィノベビチャンノカラダヲドコニヤッタノヨ!!」
「こいつの身体?身体ならお前の腹の中だよ(笑)」
そこでようやくミニしぃは理解した。理解した途端に吐き気がこみ上げてきた。
「ハニャ!?ジャァサッキノオニクサンハ…ウッ、ウゲェェェェ!!」
ミニしぃは胃の中の物を全て吐き出した。辺りは一気に酸っぱい胃酸の匂いに包まれた。
「オカ…タン…チィノカラダ…ヒドイヨ…」
生首が胃酸でずるずるに溶けた自分の身体を見て、絶望の涙を流す。
66
:
栄
:2007/05/12(土) 00:08:57 ID:???
「ハニャーン!!コンナノマターリジャナイヨォ!!」
中の物を吐き終わってから、ミニしぃが叫ぶ。
「でもしぃちゃんだってがっついてたじゃん。」
モララーの言葉に言葉を詰まらせるミニしぃ。
「…ソ、ソレハ…」
「ま、いいや。そろそろメインディッシュにしようか。」
モララーがベビギコを掴む。
「イヤ…ヨゥ…チニタク…ナヒヨゥ…」
ワッチィが涙目でミニしぃを見上げる。
「せっかく作ったんだから、もし残したりしたらこのキモベビを嬲り殺しにするからな。」
ミニしぃが泣きながらワッチィの生首を掴む。
「ゴメンネ、ゴメンネ…ワッチィチャン…」
ミニしぃがワッチィの頭にかぶりついた。
「ヂィヨォォォォッ!!?」
ワッチィが悲鳴を上げる。ワッチィの頬肉が伸び、『ブツン』と音を立て、毟り取られた。血が噴き出し、ミニしぃの顔面に飛び散る。血まみれの頬骨が露出して、照明に照らされて青白く光る。ミニしぃは頬肉をガムの様に噛み、吐きそうになりながらも飲み込んだ。次にミニしぃはワッチィの眉間に歯を立てた。
「オ、オカ…タン…ヤメ…ヤメチェ…ッア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛!!」
ワッチィの目にミニしぃの歯が突き刺さり、半透明の液体と共に、血が流れていく。ミニしぃが勢いよく口を閉じた。それと同時に、ワッチィの顔の上半分がミニしぃの口の中に消えた。
「ハギャァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ッ!!」
ワッチィがまた叫ぶ。
「チ、チィノ、チィノオメメェェェ!!ナニモミエナイデチュヨゥ!!イタイヨゥ!!イ゛ダァ゛ァ゛ァ゛イ゛ヨ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ!!」
「ウゥ…、モウユルシテ…」
ミニしぃが涙声で訴える。
「踊り食いは嫌なのかい?全く、注文が多いなぁ。それじゃあ食べやすくしてあげるよ。」
そう言うとモララーは、泣き叫ぶワッチィの首を上から踏みつけた。
「ヤ、ヤメチェ…タチ…ケ…オカ…タン…」
モララーが体重を掛ける。するとワッチィの頭が紙で出来たはりぼての様に潰れていく。
「ユクーリ潰すからな。」
「オナガイ!!モウヤメテ!!」
ミニしぃの懇願も虚しく、ワッチィの頭は既に半分位潰れている。『ボキ…ボキ…』と頭蓋骨が折れていく音が響く。
「ワ…ヂィィィ…」
「オナガイ!!ナンデモシマスカラ!!」
ミニしぃが土下座して頼み込む。
「そうか、なら止めてやるよ。」
モララーが足を上げた。
「アリガトウゴザイマス!!ヨカッタ!!ベビチャン!!!」
ミニしぃがワッチィの頭に抱きつこうとしたその瞬間、
「な訳ねーじゃん。」
モララーがワッチィの頭を勢い良く踏み潰した。
「オ…オカ…ブヂュィッ!!?」
モララーの足元からワッチィの餅の様な残骸が飛び散った。ぐちゃぐちゃに潰れた頭から血まみれの焼きたらこがはみ出ている。モララーはこの残骸を集めてこねはじめた。やがて、ワッチィだった物は真っ赤な団子になった。
「ほら、お団子なら食べやすいだろ?」
モララーはこの汚物をミニしぃの口に捻り込んだ。
「イヤッ!!ヤメッ、ングゥッ!!ウ…ゲェェェ!!」
突然捻り込まれた我が子の血肉の味と激しい罪悪感がミニしぃの胃の内容物を全て吐き出させた。
67
:
栄
:2007/05/12(土) 00:09:52 ID:???
「何だよ、せっかく作ってやったのに、じゃあ、こいつは嬲り殺しケテーイだな。」
モララーはベビギコの抉られた左腕を掴み壁に叩きつけた。
「ミ゛ヂィ!!?」
左腕の骨が神経と共に身体から抜け、鮮血が噴き出す。
「ミギィィー!!ミギィィー!!」
血のラインを引きながらベビギコはもぞもぞと蠢く。
「嗚呼キモッ!!こんなゴミに生きる権利なんか無いね。」
「ベビチャンニナニスルノヨォ!!」
ミニしぃがベビギコを助けによたよたと走る。
「おっと、残念。」
モララーがミニしぃの顔にカビ取りを吹きかけた。ミニしぃの顔面を強烈な激痛が襲った。
「ハギャァアァアアァアアッ!!?」
あまりの痛みにミニしぃは顔を押さえた。
「アツイヨォ!!アツイヨォ!!シィノ、シィノオカオガァアァアアアァアッ!!!」
「よし、漏れを捕まえられたらこのキモゴミを返してやろう。」
「イヤァァァッ!!ナニモミエナイヨゥ!!!ベビチャン!ベビチャァァァン!!」
パニックに陥ったミニしぃの背後から『ゴキッ!!』という音が聴こえた。それに続いて、
「ミュギッ!!ミ゛ィィー!!」
と、我が子の叫び声。
「ベビチャン!ドコナノ!!」
ミニしぃは暗闇の中、右往左往している。
「ベビチャン!ワタシノベビチャン!!」
モララーは顔面を押さえ彷徨しているミニしぃを見て笑っている。手には右腕と左足があらぬ方向に向いているベビギコを掴んでいる。ベビギコは逃れようと必死に暴れているが、モララーが右腕を更に捻ると、呻いておとなしくなった。
「キモゴミこちら♪ベビ泣く方へ♪」
モララーが歌いながらベビギコの右足の関節を無理矢理前方に曲げた。
「ギュィー!ギュィー!!ギュ…ミ゛ギィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!」
『パキィ』と枝の折れる様な音がして、ベビギコの右足は変な方向に折れ曲がった。血まみれの大腿骨が折れて、肉を突き破って飛び出している。
「ハニャーン!モウヤメテェェェ!!」
ミニしぃがベビギコの叫び声を頼りにこちらに向かってくる。モララーはベビギコの折れ曲がった両脚を掴み、ミニしぃに叩きつけた。突然の衝撃にミニしぃは情けない声で吹っ飛んだ。
「シィィィィッ!!」
「ほらほら、早くしないと大切なベビチャンの骨が無くなっちゃうよ。」
モララーがあさっての方向を向いて我が子の名を叫んでるミニしぃを見ながらニヤついている。
「ハニャーン!!コンナノヤダヨゥ!シィハタダマターリシタイダケナノニー!!!」
その時、またミニしぃの背後から、『バキベキ』と骨の折れる音と、
「ミ゛ギィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ッ!!!!」
と、悶え苦しむ我が子の声。
「ベビチャン!!ベビチャン!!イッタイドコナノ!!?」
その時、少しずつ視力が回復していることをミニしぃは気付いた。そしてまだ痛む眼を酷使して、モララーの姿を捉えた。モララーはボロ雑巾の様なベビギコをロープで吊し上げていた。
「ミュ…ギッ…ギィィィ…」
ベビギコは涎を垂らしながらモゾモゾと折れた、未発達の手足を動かしている。
「ハニャァ!!シィチャンノベビチャンヲカエシテ!!」
ミニしぃが慌ててモララーに飛びかかる。
「じゃぁ、返してあげるよ。」
モララーがミニしぃの捨て身の攻撃をひょいとよける。ミニしぃは首にロープを食い込ませ悶え苦しんでいるベビギコに激突した。そしてその下には、ベビしぃを切り刻んだミキサーが口を開けている。
68
:
栄
:2007/05/12(土) 00:10:34 ID:???
「シィィィ!!」
ミニしぃは本能的に必死でベビギコの体を掴んだ。ミニしぃの重みでベビギコの首に食い込んでいるロープが更に締まる。
「ギュブププ…」
ベビギコの眼は大きく見開かれ、顔が真っ赤に染まっていく。ベビギコは必死にミニしぃを振り解こうと手足をばたつかせた。
「ミュギッ…!!…ギィィ…」
「イヤァァァァ!ヤメテェェエ!!」
ミニしぃの脳裏にバラバラの肉片になったベビしぃが浮かぶ。
「シィチャンハマダマダマターリシタイノ!アンタガオチナサイ!!」
ベビギコの体をよじ登るミニしぃ、苦しみから逃れようと体を捩るベビギコ、モララーはその光景をニヤニヤしながら見ている。すると突然、
「ヒクゥ!!」
「シィィィ!!?」
ベビギコの体が重みに耐えられず首と胴体に千切れた。背骨がズルリと胴体から抜け、ロープで吊されているのは、ベビギコの頭と真っ赤な背骨と、千切れた食道が少しだけだった。
「イヤァァァァ!!」
ミニしぃは必死に足をばたつかせてミキサーから逃れようとしたが、ミキサーはミニしぃの尾を只の肉片に変えた。
「アジィィィィッ!!?」
ミニしぃが激痛で飛び上がる。その拍子にベビギコの胴体がミキサーの刃に切り刻まれた。肉片や骨が辺りに飛び散る。自分の体が音を立てて切り刻まれているのを頭だけになったベビギコが何か言いたげに口をパクパクさせて見ていたが、やがて、口も動かなくなり、眼から一筋の血の涙を流して息絶えた。突然、『ギュガガガガ…』という音と共に、ミキサーは止まってしまった。おそらく、ベビしぃとベビギコの毛や筋が絡まってしまったのだろう。
「シィノ、シィノシッポガァァァァッ!!」
ミニしぃは飛び跳ねながら叫び声を上げている。
「うるせー!!たかが尻尾如きで泣き叫んでんじゃねーYO!!」
モララーが虐殺棒でミニしぃの腹部を強打した。
「ハグゥッ!!」
その拍子に勢い良くお腹にいたベビしぃが飛び出し、壁に激突して一瞬で汚い残骸となった。
「ウホッ、いい飛びっぷり。」
「シヒノヘヒチャンガハァァァ…」
口から涎をだらしなく垂らしながらミニしぃはよたよたと残骸となったベビしぃの方に寄った。
「あ〜あ、僅か一秒足らずの命だったね〜。」
モララーがペシャンコに潰れたベビしぃをひっぺがすと床に叩きつけた。最早ぼろ雑巾の様になったベビしぃは『ベチャッ』と湿った音を立てて床に張り付いた。壁にぶつかって平らになったベビしぃの眼窩から潰れた眼がはみ出している。
「そういや、しぃって一度に何匹もキモゴミを作るんだっけ?」
確かにミニしぃの腹部はまだ膨らんでいる。モララーはミニしぃの顔をニヤニヤしながら覗き込んだ。
69
:
栄
:2007/05/12(土) 00:11:21 ID:???
「イ…イヤ…オナガイダカラソレダケハ…」
ミニしぃはモララーが何を考えているのか察し、必死に懇願した。その時、気絶していたみけベビが目を覚ました。
「ンミィ…オカータン?ミンナハ?」
「ターゲット確認!!」
モララーはまだ状況を理解出来てないみけベビの方にミニしぃを向けた。
「ネ…ネェ…コンナコトヨリダッコシヨ…ホラ…マターリデハニャニャニン…」
「ウミィ!!オモチロチョウデチュ!チィモマゼテクダチャイヨォ!!」
みけベビがこちらにヨタヨタと歩み寄ってくる。
「発射!!」
かけ声と同時にモララーの虐殺棒がミニしぃの腹部にめり込む。
「ブフッ!!」
ミニしぃの目がこれ以上ない程開く。それと同時に勢い良くベビしぃが飛び出した。
「ピィィィィィィ……。」
産声を上げてベビしぃが物凄い勢いでみけベビの左手を吹き飛ばし、壁に叩きつけられた。
「ピィィィィィィ……ブヂィ!!」
壁に叩きつけられた途端にベビしぃは水風船の様に弾け飛んだ。
「アレ?ミィノオテテガナイヨ………?」
みけベビは何が起こったか理解出来ていないらしく、左手のあった所から血を噴き出しながら自分の左手を探し出した。が、それも長くは続かなかった。
「………ッミィィィィィ!!?ミィノ、ミィノオテテェェェェ!!」
漸く状況を理解したみけベビは激痛で血を噴き出しながらパニックに陥った。
「2発目…発射!!」
モララーは非情にも、必死に懇願しているミニしぃの腹部を虐殺棒で殴打した。
「フグゥッ!!」
ミニしぃの呻き声と共に、必死で生きる筈だったベビしぃがミニしぃに向かって特攻する。ベビしぃの弾丸は、みけベビの腹部を貫き、内臓の大部分を持っていった。
「ミ、ミィノポンポン…ヘンダヨォォ…。」
腹に砲弾で開けた様な大きな風穴を開け、口から真っ赤な泡を噴き出しながら、みけベビは呟く。
「オ…オ……オカ…」
何か言いたげに口をパクパクさせているみけベビの顔面に無情にもモララーが狙いを定める。
「モ、モウヤメテ!!シィノミケチャンガシンジャウヨォ!!!」
ミニしぃが大声で喚く。
「バーカ、どの道藻前も直ぐに逝くだろうが。」
モララーはミニしぃに冷酷な言葉を浴びせると、虐殺棒を振るった。
「カハァ!!」
掠れた声と共に、ベビしぃが発射される。
「チィィィィィィ……」
ベビしぃはみけベビの顔の右半分を吹き飛ばして、壁の一部となった。みけベビの頭はベビしぃが当たった瞬間に『バギャァ!!』と、骨が複雑骨折する激しい音と共に、360゜回転した。
「ギ…ギュギッ…ギュビビ…」
頭部の吹っ飛ばされた箇所から血と脳漿を激しく噴き出しながら、みけベビは白目で、壊れた機械の様な音を発している。複雑骨折した頸部からも、頸動脈を損傷したのか、血が噴水の様に噴き出している。
「HAHAHA、見てみろよ。こんなになってもまだ生きてやがる。」
モララーは嬉々としてミニしぃを抱え、瀕死のみけベビの目と鼻の先にミニしぃを押しつけた。ミニしぃは我が子の惨状を見て、失禁しながら気絶している。
「さぁ、そろそろこの死に損ないに止めを刺してやろうかな…。」
「ギュ…アガ…オガ…ダン…」
みけベビは焦点の定まらない左目から涙を流し、母親を呼んでいる。
「オガ…ダン…オガ…ダン…」
「キモイから死んでね。」
モララーは虐殺棒でミニしぃの腹部を連打した。内臓が潰れる感覚が、モララーの手に伝わってくる。そして、『グチュゥ』という陰湿な音と共に、中で潰れたベビしぃの残骸が散弾の様にみけベビの頭を貫いていく。
70
:
栄
:2007/05/12(土) 00:12:07 ID:???
「オガ…ダ…フブヂィィッ!!?」
ベビしぃの残骸に頭を貫かれ、みけベビは悲痛な叫び声を上げた。それにもかかわらず、モララーは虐殺棒でミニしぃの腹部を殴り続けた。モララーが虐殺棒で殴るのを止めた時には、ミニしぃの下腹部はスカトロレースに使われたみたいに、股が裂け、そこから腸やベビしぃの見るも無惨な残骸が飛び出していた。ミニしぃは激痛で気絶しているだけみたいで荒々しい息をしている。一方、みけベビは、まるで近距離で重火器でも打ち込まれたかの様に、無惨な姿を晒していた。頭のあった場所には、骨が突き出て血塗れの首と、半ば千切れかけている下顎しか残っていなかった。もう鮮やかな三色の毛はどこにもなく、それは、汚らしい赤黒い毛が付着した只の肉塊に成り下がっていた。その肉塊は何度かポンプの様に血の塊を噴き出しながら痙攣してから、二度と動く事は無かった。
「ふぃ〜、疲れた〜。」
モララーは虐殺棒を置いて、息を整えた。辺りに広がる血の匂いを感じながら自分のした事に満足感を感じた。
「…ピィピィ…」
不意にミニしぃの腹部からもぞもぞとベビしぃが這い出してきた。
「…何だ、まだいたのか。」
モララーは不敵な笑みを浮かべると、装置に繋がれたほ乳瓶を持ってきた。モララーはミルクを求めているベビしぃの口にほ乳瓶の先をねじ込むと、装置のスイッチをONにした。『ヴィーン…』と機械特有の音がすると、ほ乳瓶に沸騰したミルクが流れ込んできた。
「ヂィッ!!?ヂッ!ヂヂィ!!」
ベビしぃがミルクの余りの熱さに驚いてほ乳瓶から口を離そうとする。しかし、ほ乳瓶の先はベビしぃの口に吸い付いたままである。
「無駄だよ、ア〇ンアルファで接着してるから(笑)」
モララーが笑いながらベビしぃに話し掛ける。
「他のゴミはミルクも口にできずに死んじゃったんだ。だからみんなの分まで沢山ミルクを飲むんだよ(笑)」
モララーが猫なで声で囁く。やがて、悶えているベビしぃの鼻や肛門からミルクが噴き出し始めた。
「ブプッ!ボフッ!」
ベビしぃが呼吸をしようとしても、とめどなく流れ込んでくるミルクが邪魔をして、更に苦しくなった。やがて、ベビしぃの穴という穴からは、沸騰したミルクが湯気を出しながら流れ落ちてきた。
「……!………!!」
最早叫び声を上げることさえ出来なくなり、ベビしぃの体が風船の様に膨らんできた。ベビしぃの体がビクンビクンと痙攣する。そこで漸くミニしぃが目を覚ました。
「シィィィィ!?シィノベビチャンニナニシテンノヨォ!!」
「何ってキモゴミには勿体無い程高級なミルクを与えてやってますが何か?」
「シィノベビチャンガフウセンミタイニナッテルヨォ!!」
ミニしぃが泣き声を上げる。その時、『ベリベリ』と音がし、ベビしぃの口からほ乳瓶が外れた。しかし、ベビしぃの唇は肉ごとほ乳瓶に付着しており、ベビしぃの口は歯が剥き出しになっている。
「シィノベビチャンガァァァァ!!」
ミニしぃが泣きながらベビしぃの方に這いずっていく。
「よくそれで動けるねぇ、痛くないのかい?」
モララーのその台詞を聞いて初めてミニしぃは自分の体の状態に気付いた。
「ハギャァァァ!?シ、シィノポンポンガァァァァ!!?」
ミニしぃがパニックに陥っている間にモララーはパンパンに膨れ上がったベビしぃを放り投げて遊んでいる。
「いやぁ〜楽しいねぇ、しぃちゃんもどうだい?」
そう言うとモララーは、ベビしぃをミニしぃに放り投げた。
「シィィィィ!!ベビチャァァァァン!!」
71
:
栄
:2007/05/12(土) 00:12:30 ID:???
ミニしぃは痛みも忘れてベビしぃに向かって飛んだ。
「……!!…!!!」
ベビしぃも必死に母親に向かって手足をばたつかせている。ミニしぃがベビしぃを空中で掴んだ。ベビしぃは母親の腕の中で恐怖から解放されて涙した。しかし、本当の恐怖はこれからだった。
「はいはい、馬鹿みたいな人情劇はここまでね(笑)」
モララーが床に垂れていたミニしぃの腸を釘で床に打ち付けた。
「!!ヒギィィィィィッ!!?」
突然の激痛でミニしぃはベビしぃを落とした。ベビしぃはバウンドして床に落ちた。
「……!!…!」
ベビしぃは手足をばたつかせているが、膨れ上がった腹のせいで動く事は出来なかった。更に運命の成せる業か、ミニしぃの落下地点が丁度ベビしぃのいる場所だった。
「ハ、ハニャ!!ベビチャンノウエニオチチャウヨォ!!!」
ミニしぃは必死に落下の軌道を逸らそうとした。が、
「プジュビッ!!?」
ミニしぃがベビしぃの上に落ちた瞬間、『ボンッ!!』と小さな爆発音を響かせ、ベビしぃの小さな体が、ミルクや肉片を飛び散らせて破裂した。『ビチャッ』と湿った音と共に血とミルクが混ざったものが天井一帯にへばりついていく。辺りはむせかえる様な血とミルクの臭いが漂っている。
「シ、シ、シィノベビチャンガシンジャッタヨォォォ!!!」
ミニしぃが弾けたベビしぃの残骸の上で喚く。
「はいはい、良かったねぇ〜(笑)」
モララーがミニしぃの腸にもう一本釘を打ち付けた。
「ヒッギィィィィッ!!!」
激痛でミニしぃが悶え苦しむ。ミニしぃが激痛で転がっていたその時、
「…ピィ…ピィ…」
と蚊の鳴く様な声が聞こえた。よく見ると破裂したベビしぃが頭だけになっても這いずってきている。
「ベビチャン!!イキテタノネ!!」
ミニしぃが歓喜の声を上げる。
「うっわ〜頭だけで生きてるよ…キモッ…」
「ハニャーン、マターリノカミサマノオカゲネ!!」
ベビしぃの頭を抱きかかえてミニしぃは勝ち誇った様な顔でモララーを見ている。
「ピィ…ビ…ギィ…ギヂ…」
突然、ベビしぃの頭が震え始めた。それにつれて、段々と鳴き声も変化してきた。
「ド、ドウシタノ!?ベビチャン?」
「ウジィィ…キィィィ…」
モララーは悟った。そしてニヤリと笑った。
「ウビィィィィ!!!」
突然ベビしぃの頭が叫んだと思うと、ミニしぃの腹部の裂け目の中に入り込んだ。
「イヤァァァァァ!!チョ、ベビチャン!!ヤ、ヤメッ…ピギィィィィッ!!?」
ミニしぃは叫び声を上げたが、既に遅かった。腹部からの出血が更に酷くなった。中では何かを貪り喰う様な『グチ…ブチ…ブヂ…』といった、音がする。
「キタ―( ゜∀ ゜)―!!」
モララーが叫ぶ。モララーの予想は当たっていた。瀕死の重傷を負ったベビしぃは『びぃ』化していたのだった。
72
:
栄
:2007/05/12(土) 00:13:51 ID:???
これで最後です・・・。
「ハグゥ…オゲェェェ!!」
ミニしぃが血反吐を吐く。そして再びパニックに陥った。
「シ、シィィィ!!タ、タスケ…ジィヨォアァアア!!」
ミニしぃが大きく口を開けた。『ブチブチ』と上顎と下顎が裂ける音がする。
「ア…ア…アガァ……」
やがて完全に分離した上顎から上が体の中にゆっくりと沈んでいった。
「ヒギッ…へ…ヘヒチャ…ン…フグッ…」
肉片や脳漿がこれでもかと云わんばかりに飛び出してくる。それから暫くして、頭のあった部分からベビでぃが顔を出した。
「ウジュゥゥゥゥ…」
ベビでぃは剥き出しの口からミニしぃの眼球を吐き出すと、モララーに向かって飛びかかってきた。
「アジィィィィ!!」
ミニしぃの内臓をまとわりつかせて襲いかかってくるベビでぃを一瞥してモララーはフライパンを取った。
「ゴミが…ちゃんと分相応を弁えろやぁ!!」
『ゴッ!』と鈍い音がし、頭だけのベビでぃは脳漿を撒き散らしながら壁に叩きつけられた。
「ギ…ギヂュゥ…」
壁に紅と灰色のゼリーのラインを引きながら、今度こそ本当に絶命した。
「あ〜あ、楽しかったな。」
欠伸をしながらモララーは一人呟いた。
「さて…と…」
モララーは部屋の中を見た。あちこちに糞虫の死骸が転がっている。
「…ダスキソに頼むか…」
モララーは受話器を手に取り、電話を掛けた。
「あ、もしもし、雑巾虫1ダースお願いします…」
外はもう朝になっていた。
お目汚しすいませんでした・・・。感想・指摘などあればお願いします・・・。
74
:
魔
:2007/05/27(日) 01:09:19 ID:???
(関連作品
>>36
〜)
天と地の差の裏話
『弱き者は強き者に弄ばれる』
それは被虐者と加虐者の関係に限ったことではない。
加虐者でも、力を持たなければ殺されてしまう。
被虐者でも、力を持てば誰彼構わず虐殺できる。
全てを超越した強者だけが、この世界を支配する。
「んー、今日はイマイチなノーネ・・・」
緑色の身体をした浮浪者が、けだるそうに街を練り歩いていた。
身体的な特徴として、先の折れた耳と右目に走った大きな切り傷。
いつも不機嫌そうに尖らせている口元は、今の気分としっかりマッチしている。
男の名前はノーネと言った。
ノーネの日課はアフォしぃやちびギコの虐殺と、その肉の収穫。
治安の悪いこの街では小食は被虐者同然。
働けないのなら奴らの肉を口にすればいいだけのこと。
媚びらなければ狙われないし、質の良さなんて、贅沢を通り越して都市伝説モノだ。
「・・・?」
いつもは糞虫達で賑わう路地裏。
ここに来れば大概は捕獲することが出来るはずだが、
今日は街中と同じように違っていた。
そこには一人のAAが、俯せに倒れていた。
茶色の身体に、その長毛は泥と血糊で汚れ醜い姿を晒している。
足の方はもっと酷く、何時間歩けばこんなになるのかと思ってしまう程、皮がべろべろに剥がれていた。
(・・・一体なんなノーネ?)
ノーネはそのAAをまじまじと見詰める。
身体は大きめな所から、ちびフサとは違う可能性がある。
フサギコ種の、子供。
なんで子供がこんな姿で、こんな場所で行き倒れているのか。
保護するべきか、見てみぬふりをするか。
いろいろと考えていると、盛大に腹が鳴った。
ここ最近、アフォしぃをなかなか見掛けないことがあり、ノーネは満足に腹を膨らますことが出来ていない。
このAAを見逃し、他の場所に探しに行くという選択肢はあったのだが、
腹が鳴ったことで、切羽詰まった情況というのを思い出してしまう。
幸い、この辺りに他人の気配は全くないし、元より糞虫以外の肉にも興味があった。
ノーネは周囲を二、三度見回してから、足元のフサギコの首に手をのばした。
すると、
「ふがっ!?」
「うおっ!?」
急にフサギコが顔をあげ、跳びはねるように起き上がる。
ノーネはそれに驚き、勢いよく手を引っ込めた。
急な出来事に高鳴る心臓。
それと、殺めようとした事に気付いたことで、脂汗が一気に噴き出る。
対するフサギコはぼんやりとしていて、暫くしてからノーネを見遣った。
「・・・」
「な、何か・・・」
真剣な眼差しと、無言の圧力で更に焦る。
やはり一般AAを喰うことなど、間違っていたのだろうか。
恐らくバレてはいないのだが、どうしてか罪悪感が付き纏う。
聞かれてもないのに、心の中で必死に弁解。
無意味に神経を擦り減らすノーネに、それをじっくり見詰めるフサギコ。
奇妙な空気と沈黙は、そのフサギコの言葉と腹の音で壊された。
「腹減った」
「は?」
「オッサン、なんか食べられるもん持ってない?」
「・・・」
75
:
魔
:2007/05/27(日) 01:09:57 ID:???
初日
あれから、ノーネは肉を探しにいろいろな所をまわった。
自分と、ひょんなことからついてくるようになった毛玉の空腹を癒す為だ。
肉を探す少し前、フサギコと会ってすぐの話。
出会ってからの第一声が『腹減った』という、ぶっきらぼうな台詞。
やんちゃなのか、それとも命知らずなのか。
ノーネは、何故子供のお前がこんな所でうろうろしているのかとフサギコに問い質す。
返ってきた答えは、大方予測できたものだった。
「親とか、家とか、そういうの俺にはないから」
捨て子か何か。
ノーネ自身も浮浪者であったし、こういうのは珍しくない。
治安が悪い事と重なり、街は浮浪者の存在を黙認している。
糞虫という食糧があるし、放っておけばそいつらを苦情してくれる。
だが、子供であるこいつが街を徘徊するのには多少危ういものがある。
産まれたてであれば、ギコ種は糞虫と見分けがつきにくい。
今だって、いくらか成長したとはいえノーネに喰われそうにもなった。
まあ、これは唯のノーネ本人の過ちなのだが。
「親はいなくとも、名前ぐらいはあるノーネ?」
「ああ、俺はフーっていうんだ。よろしくな、オッサン」
自慢げに己の名前を告げ、更にこちらをオッサン呼ばわり。
こちらの名前を教える前に、既にオッサンと命名されてしまっている。
「俺はノーネだ」とはっきり言っても、聞いてくれなさそうな雰囲気だ。
「フーというより、愚者(フール)なノーネ・・・」
「なんだそりゃ? 知的に見せようとしても俺には通用しねーぞ」
「・・・」
76
:
魔
:2007/05/27(日) 01:11:09 ID:???
初日
夕方
日が完全に落ちきる前に、ノーネは獲物を見つけることができた。
道路のど真ん中をふらふらと、かつ大胆に歩くアフォしぃ。
ノーネは気配を殺し、音をたてずにしぃに近付く。
「〜♪」
あの妙な歌は唄っていないものの、その動きは奇怪である。
奴らにとってそれは華麗にダンスを踊っているとのことだが、
どう見ても幼児が手足をばたつかせているだけ、もしくはそれ以下。
だが、その奇怪なダンスのせいで、捕まえることが幾らか難しくなっていた。
というのも、予測できない移動パターンにてこずる事。
油断すれば見つかってしまい、そのまま逃げられる可能性がある。
と、
「ハニャッ?」
バレリーナ宜しく一本足で回転し、ノーネと偶然にも目が合う。
ノーネは小さく舌打ちをすると、狩りへと移行。
アフォしぃが情況を把握する前に、素早く屈み後ろへ回り込む。
元々高いノーネの身体能力と、アフォしぃを反応速度の悪さが重なり、楽に後ろを取れた。
そして、片腕でアフォしぃの首を掴み力いっぱい握る。
「ガッ!?・・・グ、グェ・・・」
アフォしぃはすぐに泡を吹き、白目を剥いて気絶した。
首の骨を折れば、簡単に死んでそのまま肉が手に入るのだが、それだけではどうにもつまらない。
ノーネは生きたままの人形をひょいと担ぎ、フーの元へ戻る。
「遅ぇよオッサン!」
路地裏に戻れば、早速フーから罵声が飛んできた。
やはり、このやんちゃ坊主と一緒に狩りをしなくて正解だった。
本人いわくベビしぃや生ゴミを漁ることは出来るらしいが、
自分より大きい獲物は狙ったことがないようだ。
更にはこの狩りのルールをぶっちぎりで無視している性格。
そんな奴を横に置いておけば、アフォしぃやちびギコに逃げられるに決まってる。
「お前、いろいろと煩いノーネ。そんな態度でよく生き延びてきたノーネ」
「それ、どういうことだよ」
諦めを混ぜた溜め息をつき、悪態をつくとあっさりと反応するフー。
どんなことにもすぐ突っ掛かることと、今までの言動から、やはりこれでは身体のでかい糞虫のようだ。
接するAAの評価にもよるが、運が悪ければ虐殺厨に殺されていたかもしれない。
「なんでもないノーネ」
「んだよ、全く・・・ほら、早く肉くれよ!」
77
:
魔
:2007/05/27(日) 01:11:59 ID:???
「じゃあ、ご希望に供えて始めるノーネ」
ノーネは担いでいたしぃを下ろし、壁にもたれ掛かせる。
胸がわずかに、ゆっくりと上下動していたから、まだ生きていると確認できた。
そして、しぃの左側にまわると、腿と脛を掴み左右に一気に引っ張る。
「シギィィィィィィィ!!!?」
ぶちぶちと嫌な音に重なるのは、アフォしぃの甲高い悲鳴。
膝から先を無理矢理に契ったものだから、その痛みは気絶という効果の薄い麻酔から充分に目を覚ます程の威力。
寧ろ、覚ます事を通り越して狂乱させる程の方が正しいかもしれない。
「シィノ、シィノアンヨガァァァァァァ!!!」
「お前もお前で煩いノーネ」
「ギャブっ!?」
叫び、のたうちまわるしぃを俯せに押さえ付け、上に乗る。
ノーネは続けて右足を掴み、今度は付け根から腿を契る。
余分な肉がある個所のせいか、切り離すことに多少苦労した。
ぐりぐりと捩ったり、左右に振ったりとなかなか上手くいかない。
しぃは取れそうな足の動きに併せるように唯々悲鳴を上げるばかり。
それを見ていたフーは、しぃの叫び声が不快だというように耳を塞ぎしかめっつらをしていた。
「なぁ、なんで生きたまま持ってきたんだよ」
「新鮮さを考えるとこれが1番なノーネ。お前も見てないで手伝うノーネ」
「手伝うって?」
「このほっそい腕位は、フーでも契れるノーネ」
「シィィィィィィ!!! ヤメテェェェェェ!!!」
後ろ向きに馬乗りになっているノーネに促され、喧しいしぃを無視して手を掴む。
フーは、その生き方から今まで虐待をしたことがなかった。
公園などで子供や大人が揃ってこいつらに傷を負わせたりする事は見たことがあるのだが、
いつも自分が捕まえるのはベビばかりで、もいだりする部位といえば首暮らすしかない。
しかも一口二口で終わる大きさでもあり、あまり叫びもしないし遊ぼうにも微妙といった所。
初めての虐待。
最初は抵抗があったものの、しぃの涙でくしゃくしゃになった顔を見ると、どこかワクワクしてきた。
しぃの肩に手を添え、引っ張る為に力を込めると悲鳴のボリュームが上がる。
フーはそれを聞いたことで好奇心が興奮へと昇華。
目を光らせ、一気に腕をもいだ。
「ふがっ!」
「シギャアアアァァァァァ!!!」
気合いを入れた一発。
同時に泣き叫ぶアフォしぃ。
それは些細なことではあったが、フーは達成感で胸がいっぱいになり、満面の笑みを浮かべる。
「なんだこれ・・・妙に愉しいんだけど・・・」
「今時そういう反応する奴、珍しいノーネ。気に入ったなら反対側も、それでも足りないなら耳でもやればいいノーネ」
78
:
魔
:2007/05/27(日) 01:13:41 ID:???
「ハ、ハニャア・・・」
「ちゃんと契ったノーネ?」
「おうよ」
四肢をもぎ取った二人は、次の行動に出た。
桃色の毛に包まれた脚の皮を、バナナのように剥いでいく。
しぃの皮はいくらか頑丈であったため、べりべりと気持ち良く剥ぐことができた。
それを見ていたしぃは、自分の手足がぼろぼろにされていく事に絶望し、口をぱくぱくとさせている。
叫び疲れた上、ノーネの手早い動作に出会った時から思考がついていけず、もはやアヒャる寸前だ。
「すげぇ。ベビやちびの肉よりずっと重いや」
フーは皮を剥ぎ終えてから、その血で肉が嫌らしく光るしぃの腕を見つめる。
先程の虐待による興奮の目とは違い、ただ純粋にその肉に驚いていた。
「喰ってみるノーネ。生臭いけど、我慢すれば美味なノーネ」
気が付けば、既にノーネは食事に入っていた。
フーはノーネの言葉を聞き、ひと呼吸置いてから大きく口を開け、肉に噛み付いた。
ぐにぐにと咀嚼すると、まず先に血の臭い匂いが鼻をつく。
いろんな生肉を食べてきたので、この位問題はない。
ある程度血の匂いが消えると、しぃの肉の甘みが少しずつ現れてくる。
思ったより硬くもないし、量もある。
口の中のものを飲み込んで、フーはこう叫んだ
「うめぇ!」
「それはよかったノーネ」
美味とわかった途端、貪るように噛り付くフー。
ノーネはそれを見てほんの少しだけ笑った。
「シィノ、シィノオテテ・・・シィノアンヨ・・・カエシテ・・・」
ほのぼのとしたやりとりの横で、ぼそぼそと嘆く芋虫。
自分の手足が見るも無惨な姿にされ、食べられていく。
溢れる涙で視界がぼやけ、緑と茶色の悪魔が笑っているように見える。
何の罪もないのに、私はお前達に何もしていないというのに。
どうして、私が。
「ドウシテ・・・ドウシテ、コンナコトヲ スルノ・・・」
「俺達が生きる為に決まっているノーネ。それに・・・」
しぃへの返答と同時に、向き直り耳の方へと手を持っていくノーネ。
それを摘み、力を込めてぐいと引っ張る。
すると、複数の繊維の切れる音がしてしぃの耳が頭から離れた。
少量の血液が辺りに散らばる。
「シィィィィィィィ!!」
四肢のない現実を信じたくないと、虚ろだった意識が一気に覚醒する。
脳天を杭で穿たれたような鋭い痛みにしぃは悶え、腹と首だけでその場を転がった。
ノーネはそんなしぃを見て、摘んだ耳を自分の口の中にほうり込み、こう言った。
「お前の声と泣き顔は『おかず』なノーネ。簡単には殺さないノーネ」
79
:
魔
:2007/05/27(日) 01:14:19 ID:???
「シ、シィィ・・・アゥゥ」
痛みと恐ろしさで言葉が出てこない。
彼らから見た私は餌。それだと、私から見た彼らは『人喰い』。
自分と同じ体格のAA達に食べられていく身体。
嘆きや慟哭は彼らの心を潤し、惨めな私を嘲笑う。
舌を噛み切って死のうにも、顎に力が入らない。
更にそれがバレとすると、彼らは私の歯をむしり取るだろう。
そして、達磨になった身体でも、まだ左腿が残っている。
恐らく意図的に残したのだろう。ここに釘を無数に打ち込むとか、少しずつ削いでいくとか。
もういい。自分の身に何が起きるかなんて、考えたくない。
怖い。怖い。助けて。助けて。誰か。誰
「ハギャァァァァアアアアアア!!?」
またもや思考が停止。
今度は頭蓋骨を貫いたかのような激痛。
というよりも、右目にとてつもなく大きな異物が入り込んだ感覚の方が正しい。
あまりの痛さに目を見開き、肺の空気を全て吐き出す勢いで叫ぶ。
ぐちゅ、と湿った音がして、異物は目と共にしぃの頭蓋を離れた。
「おぉ、やっぱ綺麗だなこれ」
しぃの目をえぐったのはフーだった。
フーは虐待で醜く歪んだしぃの顔の、ぼろぼろと流れる涙のその先にあるもの。
エメラルド色に輝くその目に、興味を示していた。
無理矢理に取り出したそれは、血と神経でどろどろではあったが、
自分の顔が映り込む程透き通った鮮やかな緑に、フーは魅入っていた。
「しぃは肉以外はあまり美味しくないノーネ。それに達磨から目を取ったらいい声が聞けなくなるノーネ」
と、眼球を手の平で転がしているフーにノーネが忠告をする。
ノーネは身体の機能を崩し、哀れな被虐者を観察するというやり方には興味がないらしく、
自分の身体が壊されていく所を見せ、絶望させる方が好みだとか。
達磨状態が拘束具として、目潰しはアイマスク。
それらだけで被虐者の嘆き、叫び、喚きを聴くのには少し無理がある。
「わかったよ。んじゃこれだけにしとく」
不満げに言葉を返し、眼球をかじる。
固い歯ごたえと、ゼリーのようなものが舌に触れ、しょっぱい匂いが口の中を支配した。
「・・・まずっ」
80
:
魔
:2007/05/27(日) 01:15:36 ID:???
二日目
朝
厚い雲が街を覆い、日の光はしっかりと地に届かず、薄暗い夜明けとなった。
そんなどんよりとした灰色の空の街を、すっきりとした面持ちで散策するフー。
歩道を意気揚々と歩く彼の近くに、ノーネの姿はない。
会って間もないというのに、どうやらフー一人で次の獲物を捜すことになったようだ。
話は昨日の夜まで遡る。
「ふぅ、ごっそさん」
二人は肉を食べ終え、それぞれだらけていた。
おかずであるしぃは、骨となった四肢を元の場所にあったかのように突き刺しておいた。
アヒャ化直前から我に返す、というパターンを何度もしてしまったので、流石にしぃはショック死してしまったようだ。
少し勿体ないかもしれないが、それなりにいい声が聞けてノーネは満足。
初めて虐待に参加したフーにも充分な刺激となった。
「満足したノーネ? したのなら俺は消えるノーネ」
「待った!」
立ち去ろうとしたノーネを、声だけで引き留める。
元々でかい声に拍車が掛かったのもあり、ノーネは肩を跳ねさせて立ち止まった。
「煩いノーネ。お前の言う通り食べ物持ってきてやったのに、まだ何か欲しいノーネ?」
「その逆。助けてくれた恩を返したいんだよ」
フーが言うには、しぃの肉の美味さと虐待の愉しさを教えてもらった代わりとして、
ちびギコやベビギコの味を知ってもらおうというものだった。
そして、持ち前の明るさと強引さでノーネを丸め込み、ちびギコを捕ってくることの許可が下りた。
虐待を知っての狩りは、言わずもがな今回が初めて。
昨日感じた興奮をまた味わいたいと、想像するだけで心臓が高鳴る。
いつも暴言を吐かれるのがうざったいからと、毎回獲物の息の根はすぐに止めていた。
だが、それは過ちだったのだ。
見る角度を、やり方をほんの少し変えるだけであんなに愉しいものになるなんて。
フーの脳裏に醜く歪んだちびギコの顔が浮かび、思わず笑みが零れる。
「ああ、早く遊びてぇーっ」
公園。
フーがちびギコ等を狩る時に、公園はよく訪れることがあった。
生きることに対しての意識が薄い奴らは、たとえ天敵の集まりやすい場所でも娯楽を求めにやってくる。
とりあえずうろうろしていると、まず砂場に二匹。
ベビギコと、その兄と思われるちびギコが砂山を作っていた。
他の子供達の影はなく、無理矢理奪って遊んだわけではなさそうだ。
糞尿を撒き散らしてもないし、フーはそいつらを後回しにすることにした。
次に見つけたのは、動物をモチーフにした小さいトンネルの中のちびしぃとちびフサ。
コンクリでできた薄暗く狭いそんな場所でくんずほぐれつ、一体何をしているのかと問いたくなる。
どうやらこちらに気付いてないようで、フーはそいつらを狙うことに決めた。
81
:
魔
:2007/05/27(日) 01:16:33 ID:???
「よ、そこで何してんだ?」
淵から覗き込むようにし、挨拶。
ここでまともな返事が来ればいいのだが、やはり糞虫は糞虫。
「なんデチか? ボクは今忙しいんデチ。どっかいけデチ」
目を合わせることは疎か、こちらに顔すら向けない。
二匹はフーを挑発しているのか、或いは全く関心を示していないのか。
一心不乱に身体をすりあわせ、息遣いが荒い糞虫。
フーはそこで二匹が何をやっているのか理解し、次の行動に出た。
「ほうほう。朝っぱらからお盛んなことで」
ちびフサの首根っこを掴み、ちびしぃから引きはがすように遊具の外に出す。
すると、二匹の接合部から何かが糸を引き、ぷつりと切れると地に落ちて消えた。
「なにするんデチ!? 邪魔するなデチ!!」
手足をばたつかせ、必死に抵抗をするちびフサ。
身体の大きさに差がありすぎる為、フーから見れば滑稽な動きをしているだけ。
喚くちびフサの身体をよく観察すると、やはりといった所、股間の部分が汚くテカっていた。
糸が繋がっていた所にいる者、ちびしぃはどこかぐったりとしている。
どうやらヤりすぎで疲労しているようだ。
「うっへ、お前きったねーな」
「うるさい! お前だって泥だらけの毛玉じゃないデチか!!」
「毛玉に毛玉って言われたくないな。鏡見たことないの?」
「ボクはお前と違ってサラサラで清潔なんデチ。オマエこそ、水溜まりに映った自分でも見ておくといいデチ」
嫌らしい言い回しをするちびフサ。
確かにフーは浮浪者でもあり、昨日の食事でついた血糊も完全に落としてはいなかった。
だが、生きているだけでゴミ扱いされている奴に言われたくはない。
生意気を言うちびフサに怒りを覚えると共に、フーは一人でやる初めての虐待のメニューを思い付いた。
「へぇ・・・。だったら、その自慢の毛、俺にくれよ」
「ハァ? 誰がそん・・・ぶギャッ!?」
首根っこを掴んだまま、地面にたたき付ける。
顔面を思いっきり打ったちびフサは、急なことに驚き変な声をあげた。
「痛いデチ!! ふざけるなデチこの虐殺厨!!」
涙目になり鼻を赤くしながらも、尚ばたつき抵抗する。
ちびフサの手足は元気に土を叩き、その自慢の毛を自ら汚していく。
「暴れんなって、すぐに終わるから・・・よっ!」
フーは押さえ付けている手に力を入れ、空いている手で背中の毛を握る。
結構な量を握った所で、景気よくむしり取った。
「ヒギャアアアァァァァ!!!」
毛が抜ける爽快な音にちびフサの叫び声が重なる。
皮膚のことを全く心配しないでやったため、抜けた個所からぷつぷつと血が出てきた。
傷として見たらたいしたことないのだが、毛を抜く事自体が身体に大きな負担となっている。
82
:
魔
:2007/05/27(日) 01:17:07 ID:???
長毛な被虐者に最も有効で、かつありきたりな虐待。
余程の事がない限りは死なないし、自慢であるフサフサの毛がなくなることは、大切な物を壊されるのと同じである。
「まだ足りないからよ、もっと抜かないと・・・なっ!」
「痛いぃっ!! やめ、やめてぇッ!! やめアアアァァぁぁぁぁ!!」
背中の毛は見てわかるように減っていき、小さな赤い斑点だらけの皮膚が露になった。
一つ一つの毛根全てに針を刺されているような痛みに、ちびフサはただ叫ぶばかり。
目玉が転がり落ちそうな程見開いた眼からは、ぼろぼろと涙が溢れていた。
背中は前述の通り。腹は土でどろどろ。顔は涙と涎でぐしゃぐしゃである。
「ほら! ほら! ほら! ほら! ほら!!」
それとは裏腹に、毛を毟る度にエスカレートするフー。
血走った目と回を重ねる毎に吊り上がる口元が、どこか狂ってきているのではないかと見る者を心配させる。
しかし、その惨状を目の当たりにしているのはちびフサ本人のみ。
砂場のちびギコはどうしてか気付かないし、ちびしぃは全身で快楽の余韻を堪能していた。
既にフーを止める者などそこにはおらず、ついには
「ぃぎゃああああああぁぁぁぁぁァァァァ!!!」
勢い余ったフーの手はちびフサの皮を掴み、あろうことかそれごと毛を毟ってしまった。
唯ならぬ痛みにちびフサは聞く者すら発狂してしまいそうな程の声をあげる。
背中なので自分からは見えないが、きっとそれは凄まじい状態なのだろう。
背骨まで襲ってくる激痛に、正気を失いそうになりながらもちびフサはそう思った。
「さて、こんなもんかな・・・って俺より汚くなってんじゃねーか」
「あ、ああァ・・・痛いデチ、痛い、痛・・・」
汚物まみれの雑巾を扱うように、指でつまんで持ち上げる。
暴言を吐きまくっていた威勢の良い口からは鳴咽と嘆きばかり。
自慢の美しい毛はどこにも見当たらず、ちびフサが身に纏うのは血と泥と涎だけだった。
最も酷い有様なのはその背中。
赤黒い肉が露となり、脚の方には血が滴っている。
実は皮を剥いだ時、その威力が利いて尻の皮や尻尾までも被害にあっているのだが、それを行ったフーすら気付いていないようだ。
「流石にここまで汚いと食えないから、お前は帰してやるよ」
「え」
ちびフサの最期の言葉は何ともあっけないものだった。
「帰してやる」と告げた直後、おもいっきり振りかぶりちびしぃ目掛け投げ飛ばす。
語尾は空を切る音に掻き消され、断末魔は骨が砕ける音と肉が弾ける音に重なる。
恐らくちびしぃは状況を理解することは疎か、ヤった後の気持ち良さを死後の世界に持ち込めたかもしれない。
そう言いたくなる程遊具の中は凄まじく、沢山の生卵を投げ付けたかのようにぐちゃぐちゃである。
フーは暫くその惨状を眺めた後、砂場へと移動する。
鎮まらない興奮を必死で抑え、ニヤついた顔のままちびギコ達の方へ。
そして、二匹が頑張って作った砂山を踏み潰しこう言い放った。
「なあ、今から俺と楽しいことしようぜ!」
その後、フーは糞虫を素手で挽き肉にするまで暴れてしまう。
当初の目的などすっかり忘れてしまい、生きたちびギコを持ち帰らずに帰路につく。
そんなフーにノーネは鉄拳制裁を打ち噛ましたのは言うまでもない。
83
:
魔
:2007/05/27(日) 01:18:57 ID:???
フーとノーネが出会って数日が経った。
二人は毎日交代制で肉を捕ってきたり、時には一緒に虐待虐殺をしたりと、それなりに充実した生活を送っていた。
互いの過去には触れなくても、すっかり打ち解けているし不満はない。
このままずっと一緒に居られたらな、と柄にもないことを思うノーネ。
本人は満足しているのかどうかわからないが、いつも楽しそうにしているフー。
二人の関係は何時まで続くのか。
それを知る者は、その関係を壊す者だけだった。
某日
「じゃあ、行ってくるわ」
「期待はしないノーネ」
今日はフーが当番の日である。
最近は道具を使うことにも凝っているフーは、どこからか拾ってきた紐を持って狩りに出た。
刃物や鈍器、その他の小道具を使った虐殺を街で見掛け、それらに酷く興味を示していたのだ。
フーは自分にも出来る道具を使用した虐待を考え、辿り着いたのが紐だった。
四肢を壊さずとも相手の自由を奪えるし、首に巻けば逃げられる心配もない。
フーは新しい試みを早く実践したくてしょうがない状態だ。
獲物を捜す脚はいつもより速く、見つける為の目はより鋭い。
が、やはり本人の持ち味である笑顔は忘れていなかった。
空き地。
人の集まりやすい公園では、あまり派手なことはしない方がいいと考え、少し遠出してそこを選んだ。
鬼ごっこや奇妙な踊りをしたりと、遊具を使わずとも楽しむ奴らはいる。
(糞虫にバレねーように・・・)
フーは空き地に一番近い電柱に身を隠し、様子を伺うように覗き見る。
その手には、先を輪にした赤い紐が束ねて握られていた。
84
:
魔
:2007/05/27(日) 01:19:38 ID:???
空き地にはおにーにと、ちびギコの兄弟がそれぞれ遊んでいた。
おにーにはあの変な踊りを布教しようと、ちびギコにレクチャーしている所。
リズムのない、くねくねとしたその動きはアフォしぃのそれとは違う不快感を見るものに与える。
「その調子ワチョ。ちびタンは飲み込みが早くて素晴らしいワチョ!」
「ありがとうデチ! これでちびタンも人気者デチね!」
そんなやりとりをしていると、ちびギコの首に赤い紐がぱさりと落ちてきた。
「ん?なんデ・・・ぐぅえ!?」
ちびギコはそれが何かを確認する前に、その紐に身体を引っ張られる。
勢いが強すぎるおかげで、首が絞まり妙な声が漏れた。
「成功っ!」
ちびギコを捕まえた者、フーは事が上手くいったことに歓喜する。
余った紐を手繰り寄せ、獲物を無理矢理に足元へと運ぶ。
体重と力が重なり首が絞まっていくちびギコは、声は出なくとも手足をばたつかせて苦しみを身体で表現していた。
「ちびタン!?」
「ミュー!」
少し遅れて仲間が反応し、ちびギコの方へと駆け寄る。
そのすぐ側に、自分達の天敵である虐殺厨がいるというのに。
「さぁ、皆で一緒に踊ろうか!」
と、フーが気合いを入れてちびギコのついた紐を頭上で振り回し始める。
轟々と鈍く風を切る音がして、それは速度を増していく。
「な、何をするワチガふぁ!!?」
ある程度の速さを乗せた所で、おにーにの顔面へと投擲。
頭部が脆いおにーに種は、ちびギコがぶつかったことであっさりと砕けてしまった。
米塗れになったちびギコは、仲間の命を哀れむより酸素を取り込む事に必死だ。
声はなくとも、その苦痛に歪んだ表情は何かそそるものがある。
ちびギコは首の紐を緩め、何度か噎せた後フーの方を睨む。
「エぅ・・・な、ナんデ・・・ッ!?」
息を整え、抗議しようとした矢先のことだった。
再度身体が宙を舞い、視界が矢のように吹き飛んでいく。
やはり首に巻き付いた紐は絞まり、声もまたでなくなってしまった。
「うっひょー! こいつはすげぇや!」
フーは紐を扱った虐殺が気に入ったらしく、何時にも増して笑顔である。
おにーにの砕け方やその時の感触が、直接手でやるものより全然違うことがフーを興奮させていた。
「必殺! ちびギコハンマー! なんつって」
一心不乱に振り回し、ちびギコを地面にたたき付けたり引きずり回したりと、色々とせわしない。
脳内麻薬もたっぷり分泌し、ある意味で盲目と違わない状態なものだから、
「ミュー! ミュー! ミュギャヒッ!?」
ベビギコを巻き込み殺したことに気が付かなかった。
おにーにの頭程ではないが、その脆さにはいつも驚かされるものだ。
内部から爆発させたかのように、ベビギコは自分の中身を惜しみなく辺りにばらまく。
唯一形が残ったのは直撃を免れた下半身のみだった。
85
:
魔
:2007/05/27(日) 01:20:02 ID:???
フーは事に満足し、一旦腕を動かすことを止める。
それに合わせるように、ちびギコは地に乱暴に落とされた。
「っ!・・・げぇぇっ! ぐっふ!・・・」
子供のものとは思えない濁った咳をし、やはり必死に首の紐を緩めようとする。
が、それはとあることのせいでなかなか上手くいっていないようだ。
「ん?」
ちびギコの挙動がおかしいと、フーは近付いて覗き込む。
そこには肉と骨が露になり、血と土でどろどろになっているちびギコの腕があった。
恐らく、地面にたたき付けられる毎に受け身を取るように手を突き出して致命傷を防いでいたようだ。
理解不能なことが連続で起こり、ちびギコは仲間や状態把握より自分の命の保守を選んだ模様。
フーのやり方はあまりにも乱暴過ぎたし、こうなることは当然の結果か。
「なんだ、苦しいのか。だったら手伝ってやるよ」
と、フーはちびギコの首に手を掛け、紐の両端を握り強く引っ張る。
帛の擦れる音がして、紐は指三本程入る位まで緩くなった。
「っ・・・あ、あンタ、なニすんでチ・・・」
もう腕とは言えない腕をぷらぷらとさせながら、元気なくフーに抗議する。
恐怖と怒りと混乱が混じったその表情は、滑稽なものでもありほんの少しだけ罪悪感を覚える。
しかし、今フーが行っているのは虐待。狙ってやっていることだし、寧ろそれは快感に昇華していく。
「まあまあ、落ち着けって。ていうかその腕、もう使えないだろ?」
「そん、そんなの、おまえのせい・・・」
「俺が『いたいのいたいの飛んでいけ』してやるから安心しろよ」
「ちょ、何・・・っ痛いッ! 痛い痛い痛いぃぃ!!」
そう言うと、フーはおもむろにちびギコの腕をしっかりと握る。
痛覚神経はまだ機能していたし、握られた事で折れた骨がそれらを刺激していく。
フーは喚くちびギコを無視して、力を込めて手を素早く引いた。
すると、鈍く湿った不快な音をたてて、ボロボロの腕は見事にすっぽ抜ける。
「ぎゃあぁぁぁああぃぃぃぃあああぁ!!!」
白目を剥き、火が点いたかのように絶叫。
これだけ痛め付けられていても、叫ぶことだけは忘れない。
なんとも忙しい生き物である。
「・・・ありゃ?」
ちびギコは腕があった所からそれなりの量の血をばらまいた後、俯せに倒れ込んだ。
失神したのか、体力がなくなり気絶したのか。
どちらにせよこのままでは虐待を続けられない。
「んだよ、面白くねー・・・まいっか、戻って他の獲物捜そうかな」
フーは溜め息を軽くつくと、気を失ったちびギコを引きずり空き地を後にする。
やはり紐のせいで首が絞まるのだが、今回は本人は完全に何もできずにいた。
シュレディンガーの猫宜しく、ちびギコがいつ死んだのかは誰にもわからなかった。
86
:
魔
:2007/05/27(日) 01:21:17 ID:???
※
生き物というのは、自分を環境に適応させる為に常に進化していくものだ。
それはアフォしぃやちびギコにも言えたことである。
彼等はその繁殖能力で環境に適応した進化をせずとも生きていけるのだが、
ごく稀に、虐殺厨にこれ以上苦しめられないようにと願い、進化してしまう者もいた。
虐殺の味を全て覚え、それに耐え得る身体を持つ。
そして、その味を好きな相手に好きなように振り撒くこともできてしまう。
虐殺厨が彼等に与える苦痛は凄まじく、また彼等の想いにも恐ろしいものがあった。
「・・・遅いノーネ」
厚い雲が空を覆い、薄暗い路地裏がその黒さを増している。
ノーネはフーの帰りをただひたすらに待っていた。
近くにいるアフォしぃはあらかた片付けたし、全くすることがない。
仕方なしに、ノーネは壁にもたれ掛かり胡座をかいている。
何もせずにいると、どうしてか時間が経つのが遅く感じてしまう。
無音に等しい世界。
不快な色の空。
それらはノーネの退屈な時間に上塗りされていく。
外的刺激もなく、ストレスは更に溜まっていく中、とある音が聞こえた。
液体が撒かれるものと、何かを殴る音。
恐らく、見知らぬ者が近くで虐殺をしているのだろうと思われる。
「・・・」
ノーネはそれを黙って聞くことにした。
部外者であり、浮浪者である自分がお邪魔すればまずいことになるだろう、と考えてのことだ。
音だけでもいくらか楽しめるし、ノーネはそれに聴き入っていく。
が、途中何か妙な音が混じっていることに気がつく。
咀嚼する湿ったものに重なる、硬い物を砕く音。
そして、地を這うような低い唸り声。
(これは・・・もしかして、びぃなノーネ?)
凶暴な化け物として名高い『びぃ』。
乱暴さが垣間見えるその演奏と歌声から、ノーネは姿を見ずともそう確信した。
逃げなければ。
下手に手を出せば、返り討ちにあうのは目に見えている。
フーの事が心配ではあるが、呑気に待っていればこちらが餌になってしまう。
立ち上がり、駆け出そうとした矢先のことだった。
「ッ!?」
突然、目の前に何かが落ちて来た。
それは血に塗れ、苦痛の表情で満たされたしぃの生首。
飛んで来たのは、びぃと思わしき者の声が聞こえた方から。
ノーネはしぃの生首と、背後の化け物の威圧感のせいで竦み上がり、動けなくなっていた。
「・・・あら、あら。そんなに驚かなくてもいいじゃない」
化け物が話し掛けてくる。
その声からはあの汚いびぃを想像できない程、艶かしかった。
もしかして、唸り声は被虐者のものなのだろうか。
ノーネはそう思い、ゆっくりと後ろを見遣る。
そこには、びぃはいなかった。
びぃより酷い何者かが、そこに立っていたのだ。
全身の皮膚は焼け爛れたようにくすんでおり、所々水ぶくれをおこしている。
左目は白く濁り、右目は鮮やかなエメラルドをしていた。
耳は不気味に長く色々な方向に伸び、片側は惟の突起でしかないように見える。
「お、お前・・・誰なノーネ?」
見たことのない風貌。
それが、ノーネの感じている恐怖を増幅させていく。
「私? さて、誰なのかしらね」
クス、とだけ女は笑い、手をゆらゆらと動かす。
水ぶくれと擦り傷でいっぱいの腕と、その先の先にある鋭い爪。
それらはまだ新しい血に塗れていた。
女が一歩前に進むと、遅れてノーネは後ろに下がる。
「そんなに構えなくてもいいじゃない。私は唯貴方と遊びたいだけなのに」
87
:
魔
:2007/05/27(日) 01:21:56 ID:???
「・・・遊び?」
ノーネはその言葉に、一瞬だけ気を取られた。
瞬間、女の姿が掻き消える。
続いて腹部に焼けるような感覚と、辺りに散らばる液体の音。
「が!? ッぐあああぁぁぁぁ!!!」
想像を絶する痛みにノーネは悶え、その場に崩れ落ちる。
痛む個所を押さえてみると、肉があった場所に何も触れられないことから、刔られているのがわかった。
血を吐き、俯せの状態から顔を上げて女を捜す。
女はちょうど真後ろで、ノーネの物と思われる肉を手でこねて遊んでいた。
「いい声ね。さあ、さあ。遊びましょう」
濁ったエメラルドの目が、ノーネを見下ろす。
この殺伐とした世界で、『油断』をした為にこうなってしまった。
普段のノーネならば、落ち着いてこの運命を甘んじて受ける筈だった。
フーに出会ってしまったせいで、こんなになっても生きたいと願ってしまう。
まだあいつと一緒に暮らしたい。
だが、その願いはノーネの苦痛を増加させるだけに過ぎないわけで・・・。
「く・・・うぁ、っ」
傷口から中身が洩れる。
綺麗に刔られたのは皮だけのようで、臓は破裂しているかのようにぐちゃぐちゃだった。
「結構カタかったわ、貴方の身体・・・骨はどうかしらね」
そう言うと、女はノーネの方に近付き、左腕を踏む。
ノーネはそれに対し、小刻みに震え痛みを堪えるばかり。
女はそれが気に入らないようで、少し顔をしかめる。
「それ」
そして、脚に力を入れ一気に踏み砕いた。
バキンと壮大な音がして、ノーネの腕に新しい関節が出来上がる。
「───ッッ!!!!!」
目を見開き、声にならない声をあげる。
ありえない方向に曲がった腕はあっさりと感覚を失い、鋭く折れた骨は痛覚を強く刺激する。
腹の痛みなど吹き飛び、ぐちゃぐちゃの内臓が溢れようとも、ノーネはもんどりうつ。
が、腕を踏み付けられているせいか、唯手足を醜くばたつかせるだけだった。
女はその惨状を見て、妖しく笑う。
激痛と恐怖に歪むノーネの顔が気に入ったようである。
「その表情、いいわね。ねえ、ねえ、貴方の顔、私に頂戴?」
今度はノーネの背中に座り、頬を撫でる。
血に濡れた掌は生暖かく、生臭さと眼前でちらつく爪がノーネの気をおかしくさせていく。
「な・・・っぐ!? ああっ!! うああぁあァァァァァぁ!!」
喋ることも、弄ばれていてはままならない。
万力のような力で、首を上へと引っ張る女。
アフォしぃならば『脱骨』というモノがあるように、あっさりともぐことが可能だ。
しかし、ノーネは一般のAAと同じ、人並みに頑丈である。
必死で叫んでも、止めてくれる筈がない。
身体は気が触れそうな程の悲鳴をあげているが、精神は何故か落ち着きを取り戻していた。
どうせなら、最後にフーに会いたかった。
退屈だった毎日に刺激を与えてくれた、あの糞ガキに。
言葉にしがたい音がして、ノーネの首は身体から離れる。
それは先程のアフォしぃと同じ、苦痛の表情で満たされていた。
女はノーネが死に際に何を想っていたのかなんて、全く気にしない。
唯、その血に塗れたデスマスクを見て、笑うだけだった。
88
:
魔
:2007/05/27(日) 01:23:09 ID:???
※
「ほっほ。今日の収穫ちびギコ二匹っと」
達磨にしたちびギコを紐に括り、満足げに鼻を鳴らすフー。
やはりそれは死んでおり、頭に残ったまだ新しい痣が痛々しい。
一匹ずつ両端に括ると、ちょうど真ん中を持って歩き始めた。
どうせ皮は食べないし、担ぐと肩が痛くなるとのことで、引きずって持って帰るようだ。
理由は他にもある。
街を散策するとよく見掛ける、ちびギコを首輪で繋いだAA達。
フーはそれを酷く気に入っていて、今回は形だけでもと真似ていたのだ。
ずるずると死体を引きずり、楽しそうに帰路につくフー。
時折すれ違う同じスタイルのAAと自分を照らし合わせ、妄想ではあるが興奮してしまう。
自分は浮浪者だけど、お前らと同等のことだってできるんだ。
フーはそう主張するかのように、胸をはって力強く歩く。
すると、ある一匹のちびギコに目がいった。
(・・・あれ?)
初めて見たちびギコだった。
顔の左半分が茶色で、右耳はちぎれてはいたが黒だということが伺えた。
それと、黒陽石のように凜と輝く目。
フーには、それがとてつもなく恐ろしいものに見えた。
目の奥で静かに、それでいて激しく燃え盛る黒い感情。
無言で、無表情でいるそのちびギコに、寒気さえ感じる。
リードを引っ張っているモララーは気付いていないらしく、どうしてか笑みを零していた。
「・・・うえっ」
フーはそのアンバランスさに吐き気を催す。
早くこの場から離れたいと、駆け足でノーネの待つ路地裏を目指した。
「オッサン! 捕ってきたぞー!」
景気よく声を出し、ノーネを呼ぶ。
しかし、路地裏からは何か奇妙な音がするだけで、ノーネからの返事がない。
先程のちびギコから受けた恐怖を払いのけようとしたことが、裏目に出てしまった。
フーは恐る恐る、路地裏を覗く。
そこには信じがたい光景があった。
内臓をこれでもかという程ぶちまけられた、ノーネの姿。
普通は一目見ただけではわからないが、フーは足元に落ちていたノーネの生首で全てを理解する。
汚い色と赤に混じり、その中で遊ぶ影。
恐らく、そいつが犯人だろう。
「う、うわあああぁぁぁ!!!」
信じたくない出来事に、フーは叫ぶことしかできなかった。
すると、影はフーの存在に気付いたらしく、ゆっくりと近付く。
「今日はなんていい日なのかしら。今度はおもちゃが寄ってきたわ」
化け物は妖しく笑うと、その鋭い毒牙をフーに向けた。
89
:
魔
:2007/05/27(日) 01:23:51 ID:???
───結論から言うと、フーはこの後生き延びることができた
殺されそうになった所を、あるAAが助けたのだ
しかし、それは少し遅かったようで、フーは両目を失うことになる
化け物だってまだ生きているし、歯車も音をたてて回り始めた
天と地の差の裏話
フーの地獄は、これから始まる
90
:
耳もぎ名無しさん
:2007/05/29(火) 04:07:06 ID:???
タイトル 『砕けた絆』
ーーーーーーーーーーーー
買い物を済ませて家に帰ると、様子がおかしかった。
いつもなら長女のチィちゃんが
「ママお帰りなさい!」 と愛くるしい笑顔で迎えてくれるのに、その気配すらない。
部屋の奥にはベビちゃんがいるのに、笑い声も鳴き声も聞こえてこない。
チィちゃんが子守をしてくれているうちに、2人とも眠ってしまったの?
不審に思いながら奥へ進み、子ども部屋のドアを開くと、
誰かが部屋の中央でベビちゃんの身体を左手で押さえ込み、右手で口を塞いでいた。
「ベビチャン!!」
厚手の黒い布を頭から足先までスッポリと被っていて、それが誰なのかは分からなかった。
腕の部分は切り抜かれているけれど長袖と手袋で特徴はつかめない。
「ダレ、ナノ」
掠れた声で問いかけると、そいつがこちらを見た、気がする。
目がある位置の布は細かい網状で、あたしからはよく見えない。
「僕はあなたのよく知る男ですよ、しぃさん」
ボイスチェンジャーガスで変質させた耳障りな声で
優雅に一礼してみせてから、男はベビちゃんの口から手をどけた。
喘ぐように空気を貪ってから大声でベビちゃんが泣き出す。
今すぐ駆け寄りたいけど、男を刺激するのはマズイ気がして動けない。
「あなたの大切なものを壊しにきました」
言葉だけは静かで丁寧だけど、端々に嘲りが滲む話し方。
あたしは、こんな話し方をする男を1人だけ知っている。
声を変えても、姿を隠しても分かる。
「タカラクン? ベビチャンヲ ハナシテ」
ギコくんと結婚する前に付き合っていたタカラくんに違いない。
本当はギコくんが好きだったけど、ギコくんには妻子がいたから。
ギコくんの奥さんが事故で亡くなったとき、チャンスだと思ったの。
傷心のギコくんを慰め、プロポーズしたら受け入れてもらえた。
だから、あたしは邪魔になったタカラくんを捨てた。
「キイテ、タカラクン。ベビチャン、ホントウハ アナタノ コドモナノヨ」
逆算するとベビちゃんを体内に宿したのはタカラくんを捨てる直前で、
ギコくんに受け入れてもらった直後だった。
実を言うと、どちらが本当の父親なのか分からない。
だけど、あたしは必死だった。なんとかしてベビちゃんを助けたい。
「僕の子どもですか。それならなぜギコと結婚したんです。
ひどい女です。僕も、ギコも、ギコの連れ子も、自分の子さえも。
みんなを騙して、このまま暮らしていくつもりだったんですか」
連れ子も、という言葉のときタカラくんは僅かに顎をしゃくった。
その方向に視線をやると、部屋の隅に縛った状態で座らされて頭を垂れているチィちゃんの姿が見えた。
あたしの咽喉からヒッという短い悲鳴が漏れる。
「チィチャン!! タカラクンッ、マサカ、チィチャンヲ コロシタノッ!?」
「いいえ。気を失っているだけです。今はまだ、ね」
つまり、後はどうなるか分からないってことね。
冗談じゃないわ。チィちゃんは、あたしとギコくんを繋ぐ大事な娘よ。
ギコくんはチィちゃんを溺愛しているから、もしものことがあったら許してくれない。
「オナガイ、チィチャント ベビチャンニ ヒドイコト シナイデ」
「いいえ。それは無理な相談です。僕は壊すためにきたんですから。
それに、こんな糞ベビが僕の遺伝子を継いでいるなんて許せません」
タカラくんはホッチキスに似た器具をベビちゃんのお耳に挟み込んだ。
パチンと器具が上下に動くと同時に、お耳から血が飛沫く。
「ヂィィィィィィィィィ!!」
「シィィィィィィィィッ ヤメテッ ヤメテェッ」
ベビちゃんのお耳に小さな丸い穴が開き、絶叫と悲鳴が重なる。
ホッチキスだと思ったものは書類に穴を開けるための一穴パンチだった。
パチンッパチンッと、まるで見せびらかすように何度も器具が動き、
そのたびにベビちゃんは両手両脚をバタつかせて泣きじゃくった。
形のいいお耳が漫画チーズみたいに穴だらけになっていく。
「ん、ママ? ママ、ママァッ!!」
「ダ、ダメヨ、チィチャン ダマッテ」
あたしとベビちゃんの悲鳴でチィちゃんが眼を覚ました。
チィちゃんはギコくんに似たのか、しぃ族なのに全角で話せる。
それだけに珍しがられて虐殺厨の標的になりやすい。
91
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:12:57 ID:???
「おや、お姫様のお目覚めですか。義妹と同じ耳にしてあげましょう」
「イヤッイヤアッ、ヤメテ、オナガイ、ヤメテヨォ」
全角での話し方についてはスルーしながらも、タカラくんはチィちゃんに近づこうとする。
その歩みが、チィちゃんの前でピタリと止まった。
「そうだ。あなたに殺す子を選ばせてあげましょう。
チィちゃんか糞ベビ。どちらか1人だけ助けてあげます」
どうします? と、楽しげにタカラくんが信じられない提案をしてくる。
「怖いよママ、チィを助けて!」
男の言葉に怯え、縋りつくような視線でチィちゃんが救いを求めている。
「チィ、チィチィ、ナッコ、ナッコォ」
ベビちゃんは耳から血を流し、あたしのダッコを求めて泣いている。
「他人の子だけど無傷なチィちゃん。
実の子だけどお耳がボロボロで奇形になった糞ベビ。
さあ、選ぶのはどっち? 早く決めないと両方殺っちゃいますよ?」
ギコくんを怒らせ離縁されるのは覚悟でベビちゃんを守るか。
ベビちゃんを見殺しにしてギコくんとチィちゃんとの生活をとるか?
「ソンナ、ソンナノ エラベナイ。エラベナイヨォ。ハニャーン、ダレカ タスケテ」
そのとき、恐怖のためかベビちゃんが失禁した。
股から足先まで黄色い液体が白い毛皮を濡らしていく。
汚いっ! という怒りを含んだタカラくんの言葉を聞いて
「マッテ! ベビチャンハ アタシノ タッタヒトリノ、コドモダヨ!! コロサナイデ」
とっさにベビちゃんを選んでいた。チィちゃんの顔が悲しそうに曇る。
「ベビちゃんがママの、たったひとりの子どもなの?
ママに愛されたくってチィお勉強も、お手伝いも頑張ったのに。
良い子にしてたのにチィはママの子になれないの?」
大粒の涙が零れ落ちるのを見て胸が痛んだ。
でも、どちらか一人だけしか助けられないのなら……
「ママ、今ならまだ間に合うよ。お願いチィを助けて。
ベビちゃんよりチィを愛して。チィを選んでよっ」
今日の買い物はチィちゃんの好きな味噌汁の材料。
夜は家族そろって遊ぼうと思って花火セットも買ってきた。
学校で使うという色鉛筆セットも買ってきたんだよ。
素直で可愛いチィちゃん。あなたの母親になれたつもりでいたけど。
あなたのために、あたしのベビちゃんを犠牲にすることはできない。
「ゴメン、ゴメンネ チィチャン」
言い終わったとたん、その場の空気が変わった。
チィちゃんから表情が消える。沈黙の後に暗い呟きが紡がれる。
「へぇーえ。そう。チィよりベビのほうが大事なんだ」
頭の中で警鐘が鳴った。今すぐ逃げろと本能が叫んでいる。
だけど、あたしはチィちゃんの静かな怒りに呑まれて動けなかった。
「チィ絶対に許さない。ベビなんか苦しめて殺してやる」
「そうですか。いいでしょう。好きにしなさい」
チィちゃんを縛ったロープを、タカラくんがナイフで切って解放する。
そのままナイフをチィちゃんに握らせてベビちゃんを差し出した。
「チョ、チョット マッテ、ヤクソクガ チガウ!!」
「ええ。気が変わったんです。予定通り糞ベビを処分します」
そ、そんなっ。そんなことって。
慌てるあたしの目の前で、妙に手慣れた仕草でチィちゃんは
薄い刃のナイフをベビちゃんの顔へと振り動かし切り刻んでいく。
「ママに似た顔。だからチィよりママに愛されてるのかなぁ」
「シヂィィィィィィィィィィィ!!」
柔らかな肌が切り裂かれ、赤い肉が露出する。
飛び出しそうなほど目を瞠らせたベビちゃんが耳を覆いたくなるような悲鳴をあげた。
ナイフは眼球の上も頓着せずに滑っていき、切り割られた中から
ドロリと涙とは違う、粘った体液が血と入り混じって流れ出ている。
格子状に細かく切り刻まれた顔は血で真っ赤に染められて
いつしかベビちゃんは、ぴくぴくと痙攣するだけになり
体力も精神力も限界かと思ったところで、チィちゃんの動きは止まった。
「ほらね。もうベビはママと同じ顔じゃなくなったよ?」
92
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:14:17 ID:???
無邪気に笑いながらベビちゃんの血染め顔を誇示されて戸惑った。
あんなに素直で優しかったチィちゃんが、こんなことするなんて。
これはきっと悪い夢。信じられるわけがない。
タカラくんは興味深そうにチィちゃんを手伝っていた。
ベビちゃんの親指の付け根に糸を絡めて縛ったチィちゃんが
糸先をタカラくんに渡す様子を、
あたしはただ放心して眺めていることしかできなかった。
指だけで吊り上げられたベビちゃんが痛そうに口をあけているけれど
もう泣き声を出すだけの体力が残っていない。
チィちゃんは、あたしが以前プレゼントした赤いランドセルに
教科書や本をたくさん詰めて重くすると、それを紐で括った。
その紐をベビちゃんの足へと結びつけてから、手を離す。
落下の衝撃で、紫色に鬱血した指の根元から血が噴出した。
ベビちゃんは悲鳴を上げないけれど、腕の筋肉は軋んでいるはずだ。
耐え難い苦痛と負荷が指にかかっているのが容易に推察できる。
悲鳴もあげられないビちゃんの代わりに、あたしの絶叫が響き続けた。
助けに行きたいのに、恐怖とショックで身体は石のように強張り、
動くことも、目を逸らすことすら出来ないのが口惜しい。
楽しそうにチィちゃんが何度もランドセルを持ち上げては手を離し、
落とすうちに腫れあがったベビちゃんの親指は、ぶちりと千切れた。
「ヂッ」
息を吐きだすような短い悲鳴が出たけれど、それっきりだった。
床に叩きつけられたベビちゃんはヒクヒクしている。
タカラくんが握ったままの紐は、ベビちゃんの指だったものが
結ばれたまま鮮血を滴らせていた。
「タ、タスケテ。ビョウイン、ベヒチャンヲ、イマスグ、ビョウインヘ」
「あの女も痛めつけてやったらどうです。裏切者ですから」
タカラくんがチィちゃんを煽っているけど、
ベビちゃんのことが心配で自分のことを構っている余裕はなかった。
「オナガイ。マダ、イキテル。ビョウインニ ツレテイッテ」
「病院に連れて行きたいのならチィちゃんを説得することです。
ま、あなたはチィちゃんの心とプライドを傷つけたんですから、
それ相応の償いとして痛い思いをすることになるでしょうけれど」
馬鹿にするようなタカラくんの言葉に、あたしは泣き崩れた。
「ママ、泣かないで」
チィちゃんがあたしのところに歩いてくる。
まだ、あたしをママと呼んでくれている。まだ、あたしのことを。
助けて。チィちゃん。ママとベビちゃんを助けて。
望みをかけて、泣き伏していた顔をあげてチィちゃんを見上げると、
ヒタリと額に冷たいナイフが触れた。
全身から血の気が引いくあたしとは対照的に、チィちゃんは笑顔だった。
笑顔のまま、あたしの額に触れさせたナイフを滑らせる。
痛みとともに血が流れる感触が伝わってきた。
「動かないでねママ。チィに許してほしいなら黙って我慢するの」
逃げたり顔を背けたりしたらチィちゃんはベビちゃんを殺す。
そう言っているの?
あたしは悲鳴をあげることすら忘れて呆然とチィちゃんを見ていた。
「そのままでは危険です。
しぃさんが痛みで錯乱してチィちゃんに噛みつくかもしれません。
何か咥えさせたほうがいいでしょう。いくら噛んでもいいものを」
偽善者ぶって口を挟んでくるタカラくんの言葉を、チィちゃんは
真剣な表情をして聞いていた。
「たとえば、コレとか?」
そう言いながら、こともあろうにチィちゃんが選んだのは
さっきと同じ姿勢でヒクヒクしたままのベビちゃんだった。
「では、お望みのままに」
「ありがとう。ふふっ。ママ、噛みたくなったら思い切り噛んでいいよ」
「チィ、チャン!? ……ムグッ、グッグゥッ」
無理やりタカラくんに顎をつかまれて唇を開かされてしまう。
咽喉奥に、ベビちゃんが洩らした汚物で濡れている足が押し込まれた。
冷たく濡れた足。まだ生きているベビちゃんの足。
鼻先と口内にアンモニアの刺激臭が広がる。
93
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:15:34 ID:???
「暴れてはいけません。まだ終わってませんから」
ベビちゃんを吐き出させないよう調整しながら、タカラくんが器用に
あたしを転がして馬乗りになり、一切の抵抗を封じた。
チィちゃんは満足そうに頷くとナイフを持つ手に力を込めた。
額に突き刺さる痛みに、唇を閉じることはできない。
ベビちゃんの足を喰い千切ることなんて、できるわけない。
口を軽く開けた態勢のまま、あたしは耐えるしかなかった。
ナイフは顔の輪郭を縁取るように浅く滑っていく。
あたしの恐怖感をあおって楽しんでいるのかと思っていたら
そうじゃなかった。チィちゃんは一周させたあと、皮をめくりあげて
生きたまま顔の皮を剥ぎ取ろうとしていた。
「シィィィィィィィィィィィィィ、ギジイィィィィィィィィィィ!!」
皮下の肉を削ぐように刃先と爪で抉られ、引っ張られる激痛は
とても悲鳴をこらえきれるものではなかった。
それでも、歯を喰い絞めることは許されない。
口を半開きにしたまま悲鳴を上げる。
自分の意思とは関係なく、唇端から涎が垂れる。
だけど濡れそぼった毛皮から滴る尿で口内が乾燥することはない。
「ヒギィィィィィィィッシィィィィィィギィィィィィ」
ミチミチと筋肉が引き千切られていくのが感じられる。
生温かい血が、肉と皮の間から滴り、あたしの身体を汚していく。
途中でチィちゃんの作業の邪魔になったのか、
口からベビちゃんの足を抜いてもらえたけど
悲鳴が溢れて歯を食いしばるどころではなかった。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「アアッアアアアッウアァァァァァ」
助けて助けて助けて助けて助けて
「シィィィィッシィィィィィィィィィィィィ」
無理やり剥がされた顔の皮膚をチィちゃんが満足そうに眺めている。
自分の顔に重ねてみせると嬉しそうに言ってきた。
「ママ見て。これでチィはママと同じ顔。チィだけがママの子なの。
だからベビなんてもういらないよね?」
皮が顔から消えたせいか、ほんの少し風が触れるだけで
焼けつくような痛みが顔全体に広がっていく。
痛みに咽び泣きながら、あたしはチィちゃんに懇願した。
「ナニヲ、イッテルノッ ベビチャンヲ、ビョウインニ…、オナガイ、チィチャン。オナガイ」
「そっか。やっぱり駄目かぁ。まだチィだけ愛してくれないんだ」
「アイシテル。アイシテルヨ。チィチャンノ タメニ、オミソシル ツクル」
噛み合わない会話でも、あたしは必死だった。
つまらなそうに唇を尖らせていたチィちゃんが顔を輝かせている。
「わぁ。嬉しいな。チィね、ママのお味噌汁が大好き」
「ハナビモ、カッテキタノ。イッショニ アソボウネ。ダカラ イマハ、イマハ ベビチャンヲ」
「花火!?見てもいい?」
ショックで床に落としたままだった買い物袋を拾い上げて
チィちゃんが嬉しそうに中身を物色し始めた。
そんなの後でいいから、早くベビちゃんを助けて。
あんなに指からも顔からも血が流れてる。ベビちゃんが死んじゃうよ。
「お味噌と、増えるカワメと、醤油。色鉛筆セット。あった、花火!」
「ソウヨ、ミンナデ、ハナビ シマショウ。ダカラ、ベビチャンハ ビヨウインニ」
「うんっ。待っててねママ」
あたしはホッと息をついた。これでベビちゃんは助かる。助かるんだ。
嬉しそうに袋を握りしめたまま、チィちゃんがベビちゃんに近づく。
「お腹空いちゃった。ちょっと食べちゃおうかな」
増えるワカメを開封して、ひとつまみ取り出して食べている。
何をしているのチィちゃん。そんなのどうでもいいから早く!
「ベビにもあげる。最後のご飯、たっぷり食べなさい」
「チ、チィチャン?」
乾燥しているワカメを湯戻しもせずに、そのままベビちゃんの口を
無理やり大きくこじ開けて乱暴に突っ込んでいく。
口周りも咽喉奥もワカメで詰まって、苦しげにベビちゃんが身悶えた。
「ヤメテ、チィチャン。ベビチャンハ ママノ ミルクシカ ノメナイノヨ」
「ママのミルク?そんなの飲ませてやるもんですか。
だってママはチィだけのママなんだもん。ベビにはこれで充分よ」
一袋分まるまるベビちゃんにワカメを飲み込ませたら、
醤油のポリ容器がベビちゃんの口に差し込んで逆さにした。
ゴポゴポと真っ黒な醤油が泡立って減っていくのが見えた。
「ヤメテェ、チィチャン。ドウシテ、ドウシテッ!?」
94
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:16:52 ID:???
腹部が異様に膨れ、口端から醤油で膨れたワカメの残骸が零れて。
痙攣が一時的に激しくなり、ベビちゃんが動かなくなっていく。
あたしのベビちゃんが死ぬなんて、そんなの嘘。嘘だよね?
混乱するあたしの眼前に、チィちゃんは自慢そうに亡骸を掲げた。
見たくなかったのに、ベビちゃんの小さな亡骸が目と脳髄に刻まれる。
真っ赤でグチャグチャに切り刻まれ、激痛と恐怖で歪んだ顔が。
胃の中で醤油膨れしたワカメが際限なくボタボタと口から溢れている。
醤油で溺死したのか、ワカメで窒息死したのか、
それとも顔と指から流れ続ける血流が原因で死んだのか。
あたしには分からない。分かりたいとも思わない。
「コノ、アクマッ」
「ママ?」
なぜベビちゃんを殺したの。あたしの、たったひとりの赤ちゃんを!
「チィチャンガ シネバ ヨカッタノニ。ユルサナイ、ユルサナイカラッ」
「ママ。ひどい」
傷ついたといわんばかりに被害者づらをしてみせるのが気に入らない。
そうよ。あたしは最初からチィちゃんが嫌いだった。
自分自身すら騙して、チィちゃんを愛している振りをしていただけ。
ここでようやく、あたしは自分自身さえ気づかなかった本心を知る。
ギコくんに愛されてるチィちゃんに嫉妬してたこと。
チィちゃんに嫌われたら離婚されると思って畏れていたことも。
あたし本当はずっとチィちゃんが邪魔だったんだ。
「チィ。もう分かっただろう?この女も失格だぞゴルァ」
あたしに馬乗りになったままのタカラくんが、苦々しく言った。
その語調に、凍りつく。おそるおそる顔を背中にねじ向けると
タカラくんは誇示するように被っていた布を取り払った。
布の下から現れた顔は……タカラくんのものではなかった。
「そうねパパ。この女もチィのママに、なってくれなかった」
どうして。どうして、ここにギコくんがいるの?
「お前とタカラの関係を俺が知らないとでも思ってたのかゴルァ。
馬鹿な奴だ。裏切りの結果で生まれた糞ベビを諦めてさえいれば
俺はチィの母親役として認めてやるつもりだったのに」
ベビちゃんを殺して、あたしを試すための芝居だったの?
「ソンナノ、ヒドイヨ。ベビチャンハ、ギコクンノ アカチャンカモ シレナカッタンダヨ?」
「俺の娘はチィだけだ。
お前がチィを誰より慈しんで育てるって誓ったから
嫁にしてやったんだぞゴルァ。それを裏切りやがって!
妊娠したときも堕胎しろと言ったのに糞ベビを産みやがった。
チィが可哀想だと思わないのか?
実の母じゃないお前が、チィとベビを同等に愛せるか?
だから試してやったんだ。お前が実子よりチィを選ぶかどうかな」
ひどい。ひどすぎるよギコくん。
あんな芝居しなければ、あたしチィちゃんの母親を演じ続けたのに。
本心ではチィちゃんを疎んじていたことに気づくこともなかったんだよ?
ギコくんが愛している妻は、昔も今もたったひとり。最初の奥さんだけ。
必要なのは娘の母代わりになる女で、新しい妻じゃなかった。
そんなこと分かってた。でも、あたし、うまくやれるつもりだったのに。
チィちゃんを見ると、ふてくされたような表情をしていた。
ギコくんとあたしを繋ぐ唯一の娘。
だけど、あたしのベビちゃんを殺した憎い娘。
「ベビが産まれたときチィが喜んであげたの本気で信じてた?
ママに愛されたかったから良い娘を演じてあげただけなのに。
どうせパパがベビを処分する機会を作ってくれるの分かってたし」
反論しようと思っても唇が震えて、うまく動かない。
と、いうよりチィちゃんの不穏な雰囲気に呑まれて身動きが取れない。
これがチィちゃんの本性なの?
「そんなにベビが大事なら、お腹の中に捻じ込んであげようか?」
怖い。
怒鳴られたわけでもないのに体が竦んで脈拍が上昇した。
チィちゃんが怖い。
非力そうな小さな白い体。愛らしい顔。静かな声。
それでも充分すぎる凶暴性を含む空気を纏ったチィちゃんが怖い。
今までとは明らかに違う、虐殺厨側の者が持つ空気だ。
95
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:18:11 ID:???
「俺は気が進まないぞゴルァ。
何人か前の女を処分するとき腹部切開を失敗したじゃないか。
皮膚だけじゃなく大腸まで切っちまって後始末が悲惨だった」
ギコくんが言うと、チィちゃんは拗ねたように頬を膨らませる。
「だってあの女、すごく暴れたんだもん。チィ手元が狂っちゃって。
やだなぁ、思い出しちゃったじゃない。
お腹の中が臭くて汚い糞便と、内臓と、血で、グチャグチャ。
それなのにまだ生きてて、もぞもぞ虫みたいにもがくのよ。
いたいよー、ハニャーン、くるしいよー、たすけてー
ですって。あはははっ。馬鹿みたい。
声を出すたびにお腹の中が動いて悪臭も広がって最低。
面倒くさいからチィが咽喉を突き破って殺してあげたの」
どうしてそんな残酷なことができるの?
来ないでって叫びたかったけど、恐ろしくて声が出せない。
「やっぱりやーめた。チィまで臭くなっちゃうもん」
買い物袋の中をゴソゴソと探って、色鉛筆セットを取り出し
あたしの前まで来ると蓋を開く。中には色鉛筆と消しゴムと、
消しゴムサイズの手回し式の鉛筆削りが入っていた。
なぜかチィちゃんが鉛筆削りを取り出して、あたしの手を取る。
何をするのかと思っていたら、あたしの右小指を削り穴に……
「マ、マサカ。マサカ。ウソ、デショ?」
ガクガクと震えながら凝視する鉛筆削りは、ゆっくりと回転を始めた。
「シィィィィィィビャギャアァァァァ」
指の肉が削られてミチミチグチグチという音が聞こえた気がした。
薄切りされた指肉が血とともに、うねうねと練り出されていく。
あまりの痛みに気を失いかけても、爪を割り抉られる痛みで覚醒する。
硬いはずなのに、チィちゃんは力づくで鉛筆削り器を回し続けていた。
「イダイッイダイィィィィィィシィィィィィィィィィ」
普段の、非力で楚々としていたチィちゃんからは想像も出来ない怪力だ。
「ヒギィシィィィィィィィィ!!」
やがて、ガツッと骨に響く激痛が指先から脳天まで駆け抜けた。
苛立たしげに眉根を寄せて、ぐりぐりと鉛筆削りを回そうとしてるが
骨に当たった削り器は、動かない。それでも振動が伝わってくる。
気を失ったほうが楽なのに、痛みが激しすぎて、それもできない。
あきらめたチィちゃんは小指を解放して、
今度は左小指を削り器の中に差し入れた。
小指以外の指は太くて、削り器の中に入らないからだろう。
「ヒャメテェッヒャメデエェェ」
口から泡を飛ばしながら懇願したけれど、無駄だった。
両手の小指から血が流れ続けている。失血のせいか眩暈がしてきた。
まだ、死にたく、ない。でも止血して欲しいとは言えなかった。
そんなことを言ったらチィちゃんは指を根元から紐で縛るに違いない。
体重がベビちゃんと比べて重いから吊られることはなくても
縛ったまま放置されたら細胞が壊死して腐り落ちてしまうだろう。
生きたまま指が腐っていくなんて、考えただけでも怖気がはしる。
痛みに泣き続けているあたしに背を向け、チィちゃんは無言で
買い物袋の中を再び物色しはじめた。
「チィは優しいから血を止めてあげるね」
振り向いたチィちゃんは手に細い棒状のものを持っている。
近づいてきたことで、それが何かが判った。手持ち花火、だ。
納涼を兼ねて家族で楽しもうと思って買った花火。
あたしは、こんなものを買ってしまった自分を恨んだ。
「チィチャン、ママノ オハナシヲ キイテ。ソンナコトヲ シテハ ダメ」
「もう遅いよ。あなたなんかチィのママじゃない。
パパも言ったでしょう。あなたは失格!
今までのママ候補の中では気に入ってたから残念だけど」
ママ候補……ギコくんの、今までの再婚相手たち。
もしかして、みんなチィちゃんに認めてもらえなくて殺されたの?
96
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:20:07 ID:???
「大丈夫だぞゴルァ。俺はギコ族だから、しぃ族の女に不自由はしない。
チィの新しいママ候補もすぐに見つけてやる」
「今度は妹なんか産まないママがいいな。パパ」
カチッカチッと目の前で何度かライターを鳴らされて恐怖が高まる。
涙を流しながら懇願したけれど無情にも火は点けられた。
「ダメ、ヨ。ハナビハ、オソトデ、スルノ。オヘヤデ、シチャ、ダメヨ」
もうもうと煙が立ち昇り、勢いよく火花が噴出して
立ち込める煙で室内の空気が霧のように白く霞んでいく。
「イヤァ。オナガイ、ユルシテ、ユルシテヨオォォ」
白にも金にも見える美しい炎の流華が、あたしの指を包み込んだ。
削られ傷ついた指先が焼け焦げていく熱さと臭いに目を剥いた。
逃げたくてもチィちゃんは万力のような力で腕を掴んで離さない。
「お顔からも血が出てるよね?こっちも焼き潰してあげる」
助けて、お願い助けて!!
霞む視線で懸命にチィちゃんとギコくんに縋っても、
目の中にまで容赦なく火花が入り込んできて、視神経を
今まで感じたことのない熱と痛みが蹂躙していく。
瞼を閉じても、薄皮ごしに伝わる熱は防ぐことなど出来ない。
顔を無数の火花で炙られて絶叫する口内にも炎が入り込んだ。
「あははっ。お目目が白くなっちゃった。煮えたのかなぁ?」
花火の棒先で眼孔を抉られ、その棒先は鼻孔にも突き入れられた。
感触はあったけど、さほどの痛みがないのは神経が焼き潰されているから?
失明して嗅覚が失われ、煙と熱で咽喉もやられたらしく声が出せない。
「お顔の血は花火だけじゃ止まらないから、お味噌でパックしてあげる」
味噌をこすりつけるように塗られて、味噌に含まれる塩分が
皮膚を失い剥き出しになっている顔肉に激烈に沁みる。
抵抗しようとしても身体に力が入らなかった。
「そいつはもうすぐ死ぬ。そろそろ終わりにしてレストランに行こう」
「うんっパパ。チィ、ハンバーグがいい」
「家を留守にするついでに害虫駆除もしておこうか」
「あ。チィもやりたいことあったの」
コトッ
楽しそうに話し合い、何かが部屋の中に置かれるような物音がする。
ドアが閉まる音がして、ギコくんとチィちゃんが出かけたのを知る。
シュウシュウという奇怪な音とともに息苦しくなってきた。
げほっげほっ
たまらず咽せ、空気を求めて口を大きく開いたら苦しみが増した。
多分、バルサンか何かの殺虫煙が室内に充満してきてるんだろう。
こんなところで死ぬなんて。
でももういい。ママも、もうすぐベビちゃんのところに行くからね。
待っててベビちゃん。ベビ、ちゃん……
チィ… チィチィ… チィチィチィ……
!?
泣き声が聞こえた気がして、あたしは全神経を耳に集中させた。
チィチィチィチィ… ナッコ、ナッコー……
聞こえる!やっぱり聞こえる!
ベビちゃん!!あたしのベビちゃんが、まだ生きている!?
死んでいるとばかり思っていたのに。
あぁマターリの神様、感謝します。ありがとう。ありがとう。
97
:
若葉
◆t8a6oBJT5k
:2007/05/29(火) 04:21:01 ID:???
気力が蘇って、動かなかった体に力が入った。
視覚と嗅覚を封じられて方向感覚がつかめないから聴覚だけを頼りに這い進む。
焼け焦げた指が床に当たるたびに、耐え難い痛みがはしったけれど
あたしを呼ぶベビちゃんの声に励まされて、必死で這い続けた。
急がないと、せっかく助かったベビちゃんが殺虫煙で死んでしまう。
ベビちゃん!今、ママが助けてあげますからね。
少しずつベビちゃんの声が近づく。あと少し。あと少しだよ。
手を伸ばすと、堅い感触があった。
?
柔らかなベビちゃんの体とは似ても似つかない感触。
網目のようなザラザラした部分とスイッチみたいなものが並ぶ感触。
こ、これ、は。
正体を確かめるべく触っているうちに絶望が込み上げてきた。
この硬いものの中にベビちゃんが閉じ込められているのだと期待した。
だけど。スイッチのような部分を指で探って押すと
カチリと音がしてベビちゃんの鳴き声は止まった。
室内からはシュウシュウと殺虫煙の吹き出る音だけが聞こえる。
硬いものの正体。それはラジカセ、だった。
スピーカーから生前のベビちゃんの声が流されていただけだった。
やっぱりベビちゃんは、あのときに死んでいたんだ。
脳裏にチィちゃんの得意気な顔が浮かんで消える。
やりたいことがあるって言ってたけど、これのことなの?
こんな、ひどい。期待を持たせておいて絶望させるなんて。
希望が潰えて、今度こそあたしの全身から総べての力が抜けた。
さっきまでは必死で気づかなかったけれど、口に流れ込む空気は
とっくに殺虫煙に汚染されていて呼吸障害が起こっている。
息の出来ない苦しみに咳き込んでも吸い込まれるのは煙だけ。
咽喉が焼けるように痛み、耳鳴りがする。
いや、よ。まだシニタクナイ。どうしてあたしが死ななきゃいけないの。
苦しい。クルシイ。くるしぃ。くやしい。べび、ちゃん……どこなの?
せめてベビちゃんの亡骸を抱しめて逝きたい。
そう願っても、もう、あたしの体はピクとも動いてくれなかった。
そして。意識が死という闇に呑まれて消えるのを止めるすべも無かった。
ー終ー
98
:
ちびギコバトルロワイアル
:2007/06/02(土) 10:48:43 ID:???
今日は待ちに待った楽しい遠足。
北ギコ小学校、2−3組のちびギコ達は遠足の地へと進むバスの中で大はしゃぎしていた。
クラスでとりわけ仲の良い、フサ朗とちび太が顔をほころばせながら、仲良く話をしている。
「フサタンは、どんなお弁当を作ってもらったんデチか?」
「えっとね、えっとね、ウィンナーとね、玉子焼きと、それからハンバーグを作ってもらったデチ!」
そう、今日は楽しい遠足。
クラスの皆で山に登り、木々が生い茂り、そよ風吹く頂上でお弁当を仲の良いお友達と食べる。
それから、追いかけっこをしたり、かくれんぼをしたりして、思いっきり遊ぶ。
今日はとても楽しい一日となるだろうと、クラスの全員が信じて疑わなかった。
バスが出発してからしばらくのことだった。
喋りつかれたちび太は、窓の外をボーっと眺めていた。
ふと、フサ朗の方を見ると、スヤスヤと寝息を立てて眠っていた
「フサたん、疲れたんデチか?バスの中で寝るなんて珍しいデ……」
そう言いかけ、ちび太はハッとした。
バスの中の空気が明らかに変わっていたからだ。
さっきまで騒々しかったバスの中が嘘のように静まり返っている。
辺りを見回すと、通路の向こう側の席に座っていたびぶ朗、
その隣に座っている、ちび太の片思い相手のミケ代、
さらにはクラス一騒がしいと言われているキャッキャでさえスヤスヤと寝息を立てている。
「どうしたんデチか? 何で皆眠って……るんデチ……?」
そうこうしてる内にちび太も睡魔に襲われ、まどろみの中に意識が消えていった。
こうしてバスの中にいる者は全員、深い眠りについた。
一部の者を除いて。
99
:
ちびギコバトルロワイアル
:2007/06/02(土) 10:50:49 ID:???
「び……タン」
「ちびタン……!」
フサ朗の声に反応して、ちび太が目を覚ます。
辺りを見回すと、ちび太がいる所は、何年も使われて居ないような古びた教室の中だった。
教室の中は騒然としており、ちび太と同じように辺りをキョロキョロと見回す者や、
隣の席にいる友達と何でこんな所にいるのか話し合ってる者がいた。
「フサたん、ここはどこでデチか?」
「僕も分からないデチ。 目を覚ましたらここに居たデチ……」
騒然としている教室の中に2−3組の担任教師、モラ吉が入ってきた。
ちびギコ達は、教室に入ってきた自分たちの担任の姿に気づくと、
何で自分たちがこんな所に居るのかという疑問をぶつけた。
「ちぇんちぇい、どうして僕達こんな所にいるんデチ?」
「遠足するんじゃなかったんデチか?」
「ここは一体どこデチか?」
次々と問いかけられてくる質問を無視するかの如く、
モラ吉はパンパンと両手を叩き、ちびギコ達を制止させた。
「はいはい、皆さん、静かにしてください」
その言葉に反応するように、教室内は静まり返る。
静まり返った様子を見て、満足そうに頷いたモラ吉は言葉を続けた。
「なぜキミ達がここに連れてこられたのか、今から説明をするので、皆静かにしてねー♪」
そう言ってモラ吉は黒板に大きく、"せんとうじっけん ちびギコプログラム"と書いた。
「はい、これが何か分かる人ー?」
モラ吉は、挙手を促すようにクラスの全員に問いかける。
しかし、しばらく経っても手を上げる者はいない。
「おいおい、だめだなぁ〜。お父さんやお母さんに教えてもらわなかったのかい?」
ちび太やフサ朗は、何のことか分からないといった表情をしている。
他の者も、殆どがそんな表情をしていた。
しかし、クラス一のキレ者であるびぶ朗だけは違った。
ガタガタと体を震わせ、顔面蒼白になっている。
「まさか……そ……そんな……う、嘘だ……」
そんなびぶ朗の様子を無視するかの如く、モラ吉は話を続ける。
「しょうがないなぁ、それじゃあ簡単に説明するぞぉ〜」
ゴホンと、咳払いをして大きな声でモラ吉は言った。
「今からキミ達には殺し合いをしてもらいます」
100
:
ちびギコバトルロワイアル
:2007/06/02(土) 10:55:39 ID:???
殺し合い。
このフレーズを聞いてちびギコ達はポカーンとした表情をしていた。
――殺し合い?
先生は、一体何を言ってるのだろうか。
どのクラスにも負けない、仲良しな僕達が殺し合いなんてするわけない。
そんな空気がちびギコ達の間に流れている。
「あれ? なんだ皆、信じられないのか?」
しょうがないなぁ、と言った感じに頭をかくモラ吉。
「まぁ、確かにイキナリこんなところに連れてかれて、殺し合いをしろって言われても実感――」
モラ吉がそういい掛けた瞬間、さっき体をブルブルと震わせていたびぶ朗が突然叫び始めた。
「う、嘘だぁッ!!」
突然、席から立ち上がったびぶ朗にクラス全員の視線が注がれる。
「ぼ、ぼ、僕が……こんな……ゲームに参加させられるなんて……嘘だぁッ!!」
モラ吉はヤレヤレといった表情で、頭をかいている。
「落ち着きなさい、びぶ……」
「だ、だって……だって……僕の父さんはギコ製造の社長なんだッ!!」
涙を流しながら、必死に捲くし立てるびぶ朗。
これがどんなゲームか知っているだけに、その様子は尋常なものではない。
「いいかい、びぶ朗君……」
「ぼ、僕の家は凄くお金持ちだし……僕だっていっぱい習い事やお稽古をして……」
「びぶ朗君……」
「ぼ、僕には有望な将来があるんだッ! だから、こんなゲームに参加させられるわけ……」
「オイ」
涙を流しながら話していたびぶ朗に、鬼のような形相をしたモラ吉の視線が突き刺さる。
それを見たびぶ朗は、体が凍りついたかの如く体を硬直させた。
びぶ朗が静かになるのを見て、モラ吉は再びにこやかな表情をしながら話を続ける。
「いいかい、皆は生まれてから平等なんだ。 だから自は特別なんだっていうような勘違いを……」
クワッと目を見開くモラ吉。
「するんじゃない!」
その言葉が効いたのか、びぶ朗はそのまま魂が抜けたように椅子にへたり込んだ。
尋常じゃないびぶ朗の様子。
そして、冗談を言ってるようにはとても見えない先生の言葉。
この様子を見て、全ての生徒がようやく理解した。
これは夢でも幻でもドッキリでもなく、リアルで起きている出来事で、
自分たちはこれから本当に殺し合いをしなければならないのだと。
101
:
ちびギコバトルロワイアル
:2007/06/02(土) 11:00:04 ID:???
「い、い……イヤデチィィィイイイイ!!」
そして、そんな恐怖が全身を駆け巡ったのか。
恐怖に駆られたデチデチが席を立ち上がり、教室の外へ逃げ出そうとする。
「……やれやれ。しょうがない奴だな」
モラ吉は懐から拳銃を取り出すと、躊躇なくデチデチの後頭部めがけて発砲した。
「アブォブウェェェ……!」
頭を打ちぬかれたデチデチは、脳ミソを撒き散らしながら、地面に突っ伏した。
白目を剥きながらピクピクと痙攣し、やがて動かなくなる。
「イヤァァァアア!」
「デチデチターン!!」
「ウゲェェェェ!」
ある者は泣き叫び、ある者はデチデチの脳ミソを見て嗚咽をもらす。
再び騒然とする教室を静まらせるように、モラ吉は天井に銃口を向けて発砲した。
「はーい! 勝手な行動をした場合はデチデチ君のようになるから……くれぐれも注意してね」
モラ吉は、拳銃を懐にしまってコホンと咳払いする。
「それじゃあ、時間もないから簡単にルールを説明していくぞ〜」
モラ吉は黒板に次のようなルールを書いていった。
1.最後の一人になるまで皆で殺し合いをする。
2.殺し合いとなる場所は、この校舎が建てられている小さな孤島。
3.皆は、それぞれ支給品を渡され、支給された武器などで殺し合いをしていく。
4.孤島には禁止エリアがある。指定された時間を過ぎて禁止エリアに留まっていた場合は『失格』となる。
5.12時間ごとに、死亡した者と次の禁止エリアの結果発表がある。
6.12時間ごとの結果発表の前に、誰一人として死んでいなかった場合は全員『失格』となる。
一通り書き終えたモラ吉が、黒板を叩いて話を付け加える。
「えー、ルールはここに書いてある通りです。ちなみにここに書いてある『失格』となった場合……」
トントンと、首を指す。
「あらかじめキミタチの首輪に仕込んでおいた爆弾が爆発することになるから注意してね〜♪」
そう言われて、ちびギコ達は初めて、自分達の首に首輪が付けられていることに気づいた。
首輪が爆発すれば、自分たちの首など呆気なく吹っ飛ぶだろう。
それは、即ち死を意味する。
失格=死。
殺しあわなければ、とどのつまり自分たちは死ぬ。
死にたくない。
誰かを殺さなくては……自分が殺される。
そんな思いが、ちびギコ達の脳裏に過ぎる。
「それじゃあ時間も押してるから、呼ばれたら大きな声で返事をして、支給品を受け取ってね〜」
心待ちにしていた遠足。
お母さんに、何度も明日天気や、お弁当のことを聞いた昨日の夜。
夢にまで見た遠足の日が、最悪の殺し合いの日へと変わった瞬間であった。
――No7 デチデチ 死亡 ――
―残り 14匹―
102
:
ちびギコバトルロワイアル
:2007/06/02(土) 11:03:50 ID:???
今回は、以上になります。
ちびギコだけのバトルロワイアルネタを書きたいと思い書いてみました。
バトルロワイアルネタですが、短めにする予定です。
尚、参考までに生徒表を。
―生徒表―
No1 デル坊 No9 フサ朗
No2 レコ造 No10 テッチ
No3 びぶ朗 No11 ナブラ
No4 ちび太 No12 キャッキャ
No5 ミケ代 No13 ムー
No6 しぃ子 No14 クロスケ
No7 デチデチ(死亡) No15 フトマシ
No8 フサ美
103
:
魔
:2007/06/17(日) 00:15:17 ID:???
(関連作品
>>36
〜
>>74
〜)
※今回は、
>>36
からの話の続きになります
天と地の差の裏話
メイの目を奪った青い加虐者。
ギコもやはり、この話の歯車だった。
虐殺はいつも陰湿なやり方で、仲間からもあまりいい奴とは思われていない。
そのことは本人も自覚していた。
気に入らない事は己の暴力で片付けてきたし、
今の仲間だってその暴力を使って繋がっているだけにすぎない。
己が正義。それがギコの全てを表す言葉だった。
ギコからナイフを奪ったメイは、即座に後ろを向き駆け出した。
武器を手に入れたとはいえ、この体格差ではまず勝ち目はない。
反撃に移り、失敗して死んでしまうよりずっといい。
(絶対に生き延びる!)
メイは己にそう言い聞かせ、自身の持つポテンシャルを超えた速度を出し始める。
だが、子供の身体能力ではほんの少し限界を突破しただけでは大人には勝てない。
ナイフのこともあり、加速が遅れたメイはギコに追い付かれてしまう。
「糞ガキがああァ!!」
鬼の形相となり、獣の咆哮ともとれる声をあげメイに迫る。
突き出した右手は鮫の顎のように禍々しく、そのまま喰らいついてしまいそうな程。
メイはギコが放つ憎悪と殺気に気付いたのか、後ろを見るや否やナイフを振るった。
「う わあああぁぁっ!」
そのナイフは軍用の大きいものでなく、おもちゃに近いサイズであった。
それがギコにとって仇となり、メイにとって嬉しい事となる。
重いとはいえ、全く使い物にならない程ではない。
本人は闇雲に振ったつもりが、その刃はギコの人差し指を綺麗に切断したのだ。
「なっ・・・が、ああぁぁぁぁあああッ!!?」
自分の指が空を舞った事に戦慄し、遅れてきた痛みに絶叫。
ギコは倒れ込むように転倒、手を押さえてその場にうずくまった。
メイもナイフを振り切った時に転倒していたが、相手を怯ませたことを確認しすぐに立ち上がる。
そして、一目散に芝のあるところへと駆け、林の中に身を隠した。
雑木林を切り拓いてできたこの公園。
『自然を大切に』という謳い文句に違わず、それの規模は大きい。
子供が一人で入ってしまえば、ほぼ間違いなく迷子になってしまうだろう。
逆に言えば、追っ手から見つかる確率はかなり低くなるわけである。
メイは必死で雑木林の中を走った。
加虐者の叫びと、それに慌てる仲間の声が聞こえなくなるまで。
完全に逃げ切るまで、ひたすら脚を動かした。
「はあっ・・・はあっ・・・」
風に煽られる木々の音と、自分の息遣いしか耳に入らなくなった所で、メイは足を止めた。
手に持っていたナイフをその場に落とし、それに続いて土の上に倒れ込む。
虐待で疲弊していた身体に、流石に鞭を打ちすぎたようだ。
息を整えることを最優先とし、メイはこの後どうするかを考える。
家は勿論あるはずがなく、あてになるAAすらいない。
が、片目は失ったものの、四肢は守ることができた。
更には加虐者から奪ったナイフもある。
ならば、課題はもう一つしかない。
(・・・強く、ならないと)
ナイフという力。意志という力。
メイはそれらを使い、生きている限り続く地獄、
一日一日を、確実に生き延びる事を誓った。
104
:
魔
:2007/06/17(日) 00:16:22 ID:???
メイがそんな事を考えている時、公園では凄まじい事が起こっていた。
まだ生かされていた被虐者は既に挽き肉となり、肉片は辺りに撒き散らされている。
メイに喉笛をちぎられ死んだ者も、どうしてか原形を留めていない。
破裂したかのように砕けた頭蓋骨は、やはり同じように公園を汚していた。
犯人はギコだった。
指を切り落とされ、始めは痛みにのたうちまわったが、それを超える憎悪で持ち直した。
獲物は既に逃げているし、やり場のない怒りを誰にぶつけろというのか。
切り替えしが恐ろしく早いギコは、躊躇せず仲間を殴り飛ばす。
今もなお、モナーの胸倉を掴み執拗に拳を打ち込んでいた。
「っぎ、ギコ! もうやめてくれモナ! 落ち着・・・げぶっ!!」
抑止を請うモナーの顔は、血と涙でぐしゃぐしゃだった。
鼻の骨は折れ、奥歯は砕け口からは赤い液体を溢れさせている。
頬も血に塗れているが、これはギコのものだ。
止血もしないまま、指がそこにない事を忘れてモナーを殴る。
感情という麻酔で動いているものだから、自らが醒めないといつまでもこの状態である。
「煩ぇよ。他に怒りをぶつける奴がいねぇから、こうしてるまでだ」
「じ! じゃあなんでモララーを狙わないモナ?! こんなの・・・」
モナーは涙声でギコに反論し、モララーの方を指差す。
指した場所にいたのは、血を吐いて白目を剥いているモララーだった。
腹部には大きく、痛々しい痣ができている。
やはりそこにもギコの血が付着していて、傷痕を嫌らしく彩っていた。
「あいつは後でじっくり殺す・・・だから気絶させてんだよ」
「で、でも! モナは何もしてない! なのに・・・ぶぐぅ!」
喚くモナーの腹に一発、刔るように打ち込む。
内臓を揺さ振られて胃液と血が口から漏れ、びしゃという音と共に地面を汚す。
「今のお前は鎮静剤だよ。怒りで発狂しそうな俺のな」
「ひ・・・!」
表情こそ見えなかったものの、その声色は悍ましかった。
言葉だけで心臓を貫かれたような気分になり、モナーは痙攣と見て取れる程恐怖に震えた。
内股になり、後少しで成人になる歳だというのに失禁してしまう。
ギコはそれに嫌悪せず、嘲笑もしない。
心の奥底で怒りの業火を焚きながら、冷ややかな目でモナーを見ていた。
「お前は指が五本あるんだよな・・・」
「えっ?」
ギコはモナーの顔を掴み、眼前へと持っていく。
そして、もはや常識に等しい事を問う。
モナーは質問の意味がわからなかった。
というより、ギコの怒気のせいで何も考えられなかった方が正しいのかもしれない。
が、次に来た言葉を聞いて、それが何を示しているのかを理解してしまう。
「俺には四本しかないんだよ・・・不公平だと思わないか?」
指の切断面を見せびらかし、纏わり付くような声で続けてきた。
ゆらゆらと目の前で、骨の見えるギコの短い人差し指が踊る。
血は際限なく流れていて、その青い腕へと赤い色をつけていく。
モナーはそこで、二つ悟ってしまった。
一つはギコがいつも糞虫をああまで壊してしまえるのは、ギコが心を扱うのが得意なわけではなく、ギコ自身が壊れていたからだ。
そうであれば、自分色に染めあげるのは至極簡単である。
そしてもう一つは、今から壊れたギコに自分は壊されしまうのだと。
105
:
魔
:2007/06/17(日) 00:17:35 ID:???
信じたくはなかった。
虐殺に心残りがあるだけで、顔の形が変わるまで殴られたし、
友達をやめようとすれば、その日の記憶はそこで途切れもした。
だからといって殺したり、社会に出られない程になるまで暴力を振るうことはなかった。
ギコのそばにいるのは嫌だったけど、失敗さえしなければ凄くいい奴だ。
いつも素晴らしい方法で、虐殺を楽しくさせてくれる。
斬新なアイデアも、どこから湧いてくるのかという程沢山あって・・・。
そのギコに、自分は今から壊される。
身体か精神か、どちらかはわからない。
モナーは怯えることを忘れ、絶望と死の恐怖に硬直した。
だが、その硬直すらギコは許してはくれなかった。
ギコはおもむろにモナーの指を束ねるように持ち、握り締める。
瞬間、何かが潰れる音に固い物が割れる音が重なり、そこから血肉が溢れた。
「ぎゃああッッぁぁぁあああ!!!」
握り潰した、と表現した方が正しいのだろうか。
一般AAであるモナーの手を、いとも簡単に肉の塊にしてしまう。
ギコの力はどこぞの神様から授かったのかと問いたくなる程、凄まじかった。
実際、本人の手の平にはモナーの指の骨が刺さっている。
が、やはりギコは怒りで痛覚が麻痺していて、気がついてない様子。
痛みに悶え苦しむモナーに、追撃を加えにいく。
「て、手が!・・・モナの手があっ!?」
グロテスクな装飾と化した自分の手を見て、崩れ落ち泣き叫ぶモナー。
もはや一つ一つの判別は骨からすら不可能で、動く度に肉やら爪だったものやらがぽろぽろと落ちていく。
「・・・そういえば、お前ってやたらと目ェ細いよな」
二度目の質問。
モナーは次に自分が狙われる所を察知し、立ち上がり逃げようとする。
しかし、畏怖の象徴となったギコの言葉だ。
蛇に睨まれた蛙が易々と動ける筈がなかった。
今度は顎を掴まれ、嫌が応でもギコを向いてしまう。
モナーはいつも開いているかどうかわからない程細い目に、力を込めて強く閉じる。
暴君への、ささやかで尚且つ一番の抵抗。
「ばぁカ」
ギコはその抵抗を、無意味なものとして扱う。
狙ったのは、眼球でなく瞼。
爪を立て、自分にとって薄皮に等しいそれをむしり取った。
「ああぁぁがああアアァアァ!!!」
顎から響く、篭った叫び。
瞼を取り除いたそこには、血の涙を流し見開いたモナーの目があった。
比喩なんかではなく、文字どおりの血涙だ。
下の方はむしっていないものだから、どこかいびつな感じである。
ギコにはそれが妙に滑稽に見えた。
顎から手を離すと、目を押さえて倒れ込みうずくまるモナー。
がくがくと、今度は本当の痙攣を始めたようだ。
「どうした、もう終わりか?」
上から下から、様々な液体を垂れ流すモナーに問う。
それに対する返答はなく、寧ろ声すら発さない。
まあ、やる前から酷く怯えていたし、すぐに壊れるのは目に見えていたが。
つまらない。そう思ったギコは、モナーの首に手をかける。
そこで、自分がやっと落ち着いたことに気が付く。
ふう、と満足げに息を吐き、手に力を込めた。
モナーは首から不快な音をたて、奇妙な方向を向いたと同時に痙攣を止めた。
106
:
魔
:2007/06/17(日) 00:18:51 ID:???
※
暗闇。
モララーがいた場所は、黒い世界だった。
瞼もしっかりと開いていたのは自分でも理解している。
しかし、首を振っても仰ぎ見ても、身体すら見えない。
(なん・・・だ?)
手足を動かそうとすると、奇妙な感覚。
その場から全く動けず、それどころかあるはずのものがないような。
モララーはそこでギコに殴られ気絶させられたことを思い出す。
すると、一気に考えたくもない事が湯水の如く溢れ出した。
じわじわと上昇する心拍数。
冷や汗が頬を伝い、顎から一つ零れ落ちる。
心臓の鼓動が聞こえる程になった頃、目の前に明かりが灯った。
「お早う。ぐっすり眠れたか?」
そこにはギコの姿があった。
小さな照明ではそれ以外に何も確認できず、モララーは少し歯痒くなる。
「ギコ、ここは一体・・・」
「俺の部屋だよ。虐殺専用のな」
その言葉には、含みは何もなかった。
怒りをぶちまけるでなく、鋭く冷たい刺のあるものでもない。
まるで自分達が糞虫に当たり前のことを告げるかのような、
ただ純粋に、『虐殺』の二文字をモララーに投げ掛けていたのだ。
「ど、どういう、ことだ?」
加速度的に膨張する恐怖。
それからくる焦りに、変に吃ってしまう。
ギコはそれを聞いて、口の端だけで笑った。
そして、その青い暴君の化けの皮が剥がれていく。
明かりからギコが離れると、スイッチを押す音が空間に鳴り響いた。
一言で表すなら、『悪趣味』。
先程の明かりの正体は蝋燭で、天井からぶら下がっている裸電球がそれを照らしていた。
壁は汚く、一概に赤黒いだけでは言い表せない。
棚には奇怪な形をした瓶に、蛍光色の液体が入っているものが複数。
その端には、糞虫のものと思われる頭蓋骨が乱雑に置かれていた。
どうやら部屋の真ん中のテーブルに、自分はいるようだ。
何かに固定させられている感覚と共に。
そして、モララーは自分の身体を見てしまう。
本人としては、まだ拷問器具に縛り付けられていた方がまだ幸せだったかもしれない。
「う、嘘・・・嘘・・・だろ」
四肢が、無い。
肩には見慣れた黄色い手が置いてあり、それが自分を固定していたとすぐにわかった。
腕と脚がそれぞれあった所には、雑に縫合された跡があり、赤く染まっている。
出来の悪いクッションのような身体に、モララーは全身から脂汗が吹き出るのを感じた。
「お前が目覚めるまで半日かかった。麻酔せずに行ったが、痛みはないだろ?」
「ぉ、俺の・・・腕が・・・脚が・・・」
「お前、遠目から見たらなかなかいいオブジェになってるぞ。」
そう言いながら、ギコは棚にあるものを物色していた。
その背中は憎悪と、矛盾した嫉妬で塗りたくられているように見える。
モララーは達磨にされた事に憤慨するよりも、ギコを怒らせたことへの後悔の念で頭がいっぱいだ。
普通は、加虐者にここまですれば犯罪なのだが、
どうしてか、モララーはギコに謝罪したいと、許して貰いたいと願ってしまう。
そしてここで、一緒にいた仲間の事をやっと思い出す。
「モ、モナーは・・・どこに・・・」
「殺した」
107
:
魔
:2007/06/17(日) 00:19:58 ID:???
突き刺すような声で即答。
ギコは棚から探していた物を取り出すと、向き直り続けた。
「案外、一般AAって簡単に壊れるんだぜ? アイツは手と瞼潰しただけでイキやがった」
「・・・ぁ・・・う、ぅぁ」
聞かなければよかった。
モララーは、その言葉で心が埋め尽くされたような感覚になる。
一応様々な惨状を目の当たりにして生きてきたし、ちょっとやそっとの事では気が触れる筈がない。
それなのに、自分が被虐者と同じ扱いになるだけでこうも怯えるとは。
思考を張り巡らすモララーの傍で、ギコは手に持った物を弄る。
スイッチを入れ、暫くして次の行動に移った。
「これ、何かわかるよな?」
ギコが手にしていた物。
ペンのような形をしており、先端の丸い鉄の棒が先っぽについている。
尻からは何かコードのようなものが伸びていて、床の方に垂れていた。
大掛かりな道具ではないのだが、モララーにはそれが死神の鎌のように見えた。
震えるだけで、答えようとしないモララー。
ギコはそれに失望し、細い溜め息をつく。
「はんだごてっつーヤツでさ。はんだっていう金属を熔かしたりするモノだ」
手の中でそれを回し、テーブルの縁に押し付ける。
少し間を置いて、押し付けた所が黒くなった。
「いちいち火に鉄の棒焼べるのが面倒だったからな。コレは手間が省けていい」
「っ、ま、まさか・・・っああああああああァァッッ!!」
全てを言い切る前に、ギコははんだごてをモララーの腹に押し付ける。
じゅう、と小さく焼けた音がして、そこから細い煙が立ち上った。
切るよりも、刺すよりも長く続く激痛が全身を駆け巡る。
モララーは唯一動かせる首をこれでもかという程振り、その痛みを紛らわそうとする。
が、やはりそんな小さい事で和らぐモノではない。
「うああああああああああ!!!」
はんだごてを押し付けている限り、首を振り続けるモララーを見てギコは笑った。
被虐者の阿鼻叫喚を、しっかりと聞き取りたいが為に開けない口。
だが、その愉快さにおもわず裂けそうな程吊り上がってしまう。
狂気に満ち、それでいて満面の笑みをするギコ。
本気で虐殺を楽しむギコの悍ましさは、異常の二文字だけでは表せなかった。
108
:
魔
:2007/06/17(日) 00:21:03 ID:???
筆を持つように丁寧に。
雑に握って乱暴に。
様々な持ち方をしても、ギコが行うことは一つ。
『はんだごてを、モララーに押し付ける』事のみ。
黒く焦げ、少しだけ穴が開いたら箇所を変えて、休みなく虐待を続けた。
皮膚を焼き切り、じわじわと熱い鉄が入り込む感触にモララーは唯叫ぶばかり。
ある程度入り込んだら、神経がやられ痛みはなくなるのだが、また新しい所を狙われれば意味がない。
首を振る度に大粒の涙が空を舞い、大きく開いた口からは涎が糸を引いた。
はんだごてを押し付ける事数十回。
モララーの腹はパッと見、蜂の巣のような風貌になっていた。
穴という穴は全て炭化していて、一部はまだ細い煙が立ち上っている。
「が、っ・・・はぁ、あ、ああ・・・」
叫び続けたことにより、まともな言葉を発することができない。
眉間にしわをよせ、涙をぼろぼろと零しながら鳴咽を漏らす。
「蓮コラみてぇな身体になったな。ははッ」
ギコはモララーの汚くなった顔と、腹部を交互に見てそう笑った。
はんだごての電源を切り、湿らせたスポンジの上に置く。
じゅう、と心地よい音がしてスポンジの水分が飛んだ。
再度棚を物色し、更にモララーをいたぶる為の道具を探す。
当の本人はえづいてばかりで、虐待に怯える事すら忘れているようだ。
「記念によ、その皮貰っていいか?」
えげつない質問に返ってきたのは、言葉ではなく濁った呻きのみ。
もとより、壊れかけている者からの返事など、ギコは期待していなかった。
詰め寄りながら、棚から取り出した物をモララーに見せる。
それは裸電球に照らされ、銀色に光るメスだった。
「ッげ、ぇ・・・うぁ、ぁ」
潰れかけた喉からは、己の有様とこの先の地獄に嘆く声。
泣きじゃくる子供のような顔になっているモララーを見て、つい口元が緩む。
それは嘲笑などではなく、自分がその表情を見て興奮しているのだと、ギコはすぐに理解した。
モナーも、モララーも、種族として虐殺するのは今回が初めて。
指を無くし、被虐者を逃がした者への罰としての虐殺だったが、
こうやってしっかりと向き合ってヤってみると、普段とは違った愉快さがあった。
理解に苦しむ思考を持つ、ちびギコを調教するよりずっといい。
生物として自分と同じ立ち位置にいる命を、糞虫と同等のものとして扱う。
虐殺のやり方については殆ど出し尽くした感があったが、
対象を変えることで、新たな快楽を見つけだすことができた。
「・・・くくっ」
また新鮮な感覚で、今までで思い付いた数々の虐殺を楽しめる。
そして、糞虫達とは違う反応が返ってくることで更に拍車が掛かっていく。
こう見ると、モナーをあっさりと殺した事に少し後悔してしまう。
が、今はとりあえずモララーを使って遊ぶことに集中しようと、ギコは思った。
109
:
魔
:2007/06/17(日) 00:22:12 ID:???
利き腕の指は一つ既になくし、精密な作業をするのには向いていない。
だからといって、多少雑にした所で全てが台なしになるわけでもなかった。
寧ろ、乱暴に扱った方がより苦痛を与えられる事など、ギコはとうに知っていた。
メスを握り、モララーの腹に宛がう。
そして、ゆっくりと自分なりに丁寧に刃を走らせた。
「ッ! い・・・痛、ぅ・・・ああッ!」
メスのあまりにも鋭い刃は、普通は感じる痛みを最小限に抑える為にある。
だが、ゆっくりと皮を裂き、かつ左右に揺れながらでは意味を成さない。
何度も刃を入れ直し、納得のいくラインを通るまでギコは止めなかった。
「悪ィ、手元が狂いまくったな」
「ぅ・・・」
モララーの身体には、無数の火傷を囲う赤い線が描かれていた。
線は所々枝別れしていて、酷い有様である。
これがもし手術だとしたら、どうあがいても痕を消すのは出来そうにない。
更に、切り込みを入れる時にギコはほんのお茶目をし、外周にわざとメスを刺したりもした。
その時に見せる、モララーの表情がまた堪らない。
刃が皮膚を貫く時、一瞬だけ身体を跳ねさせ、小さく声を漏らす。
事に怯える加虐者だった者が滑稽で仕方なく、つい何度も繰り返した。
「さて、次にやる事は範囲も痛みも半端じゃねェ・・・覚悟はできてるか?」
皮を剥ぐというのに、何故かメスを棚に置くギコ。
モララーはそのことに疑問を抱くより先に、自分が何をされるのかをすぐに理解した。
ここまでされれば、次にくる虐待のメニューを安易に想像できる。
恐怖で妄想が加速し、自分なりのやり方をつい考えてしまうからだ。
しかし、たとえ想像と同じであっても、苦痛が和らいだり、それから逃れられるわけではない。
更に、違ったとしても糞虫のようにすぐ『開放してくれる』だの『今日の分は終わり』だのと思考が簡単に変わる筈がない。
もっとも、モララーは今喉が殆ど使えない状態だから、ギコにメニューを問うことすらできないのだが。
「ゃ・・・っ、め・・・やめ・・・」
それでも、モララーは必死に抑止を願った。
空気が通過する度に、壊れた笛のような音を出す喉。
必死の思いで出た二文字は、しっかりとギコに届いていた。
が、そこで止まるギコならば、モナーを殺すことはなかっただろう。
「止めて欲しいのか? じゃあ俺が受けた屈辱は、怒りは誰が鎮めてくれるんだ?」
「ぐ、っ・・・ぇ・・・げほ、ぅ」
「指を元通りにする事なんざどうでもいいんだよ。俺はお前等にムカついてんだ」
吐き捨て、モララーの胸元にある赤い線に指を入れる。
傷口を開かれ、更に拡大させていく事にモララーはまた悶え始める。
ポケットに手を突っ込む感覚で、ギコは皮を剥がしていく。
筋肉から皮膚が離れる、べりべりといった音が心地良い。
「っああ!! ああがあああぁぁぁァ!!!」
一般AAの頑丈な身体も、ギコの力の前では意味を成さなかった。
被虐者と何等変わりない勢いで、しかしゆっくりと剥がされていく皮膚。
血に濡れた肉が露になってくると、モララーの叫び声は一層大きくなる。
110
:
魔
:2007/06/17(日) 00:23:14 ID:???
半分ほど剥いだ所で、ギコは手を止めた。
どんなに握力があっても、血で濡れてしまっては意味がない。
上手く虐殺することができないのは、被虐者にとっては苦痛を加味させられる事と同じ。
しかし、くどいようだがギコはそれよりも、まず自分が満足できないと不満で仕方がないのだ。
できることなら一気にしたかったが、粘って失敗するよりはまだマシだ。
近くにあった、小汚い布で手を念入りに拭く。
ついでに軍手をはめてしまおうと思ったが、その位の理由で席を外すのはモララーに安心感をもたらしてしまいそうである。
なにより、右手の人差し指の部分が情けなく見えそうだったので、止めることにした。
「ぐ、うううぅぅぅ・・・っあァ、がああぁぁ!」
ギコがそんな事を考えている間も、モララーは激痛に悶えている。
胸から腹部にかけて、そこが空気に触れるだけで痛みが全身を駆け巡っているようだ。
モララーの首の振り方だけで、ギコはそう読み取った。
こうなってしまっては、いっそ楽にしてしまうか、或いは・・・。
とりあえず、やるべき事をやってしまおうと、ギコは行動に出る。
血糊が付いた布を捨て、モララーのめくれた皮膚を掴む。
「ぎゃあっっ!!」
完全に身体から離れていない為か、触れただけで悲鳴をあげるモララー。
もう少しこのまま弄ってやりたいが、他にも試したい事がある。
今の虐待に別れを惜しみ、新しい虐待に期待の念を込め、手に力を入れる。
そして、一気にその黄色い皮を剥ぎ取った。
「あああああああぁぁぁぁアアアアァ!!!」
天を仰ぎ、絶叫。
肉と皮が力強く離れる爽快な音。
その感触。
それらから来るとてつもない気持ち良さに、ギコは腹を抱えた。
が、やはり笑い声は絶対に出さない。
この空間に響き渡るのは、モララーの凄まじい叫びのみだった。
立ち直り、剥ぎ取った皮をまじまじと見詰める。
表側は血を吸い取り、ほぼ全体が赤みを帯びていた。
ギコが『蓮コラ』と称した、はんだごてで創った焼け跡もその不気味さを増幅させている。
裏返すと、自身の脂と血でぬらぬらと嫌らしく光っていた。
親指で押すように揉むと、そこそこの厚みと弾力があるのがわかる。
暫くギコは皮を揉みながら、モララーの狂気と苦痛に満ちた歌声を聴いていた。
その歌声が途切れ途切れになってきた所で、ギコは動いた。
モララーの様子を見れば、白目を剥き、口の端には泡がついていた。
それでも首を降り、激痛に悶える事は忘れていない。
(そろそろか・・・)
ギコは軽く溜め息をつくと、棚にある薬品のようなものを漁り始める。
沢山ある小さいガラス瓶の列の中から、一つだけ取り出す。
そして、注射機に瓶の中身を慎重に入れ、モララーの頸動脈に突き刺した。
111
:
魔
:2007/06/17(日) 00:25:02 ID:???
「ああ、ぁ・・・?」
まるで火が消えたかのように、おとなしくなるモララー。
というよりも、身体中から生気を奪われたと表現した方が正しいかもしれない。
疑問の表情を浮かべながらも、少しだがなおも悶え続ける。
ギコはそんなモララーに注射機を見せながら、答を説いた。
「鎮静剤だよ。発狂して死なれたらつまらないからな」
「っ、な・・・ぁ」
飽くまでも、モララーの声と絶望した顔が見たいというギコ。
人権もへったくれもない、容赦なきギコの虐待。
我を取り戻したモララーが最初に見たものは、この先延々と続く地獄だった。
自害は疎か、精神を破壊することも出来ず、唯々『痛み』と戯れる事だけが許されている。
死ねば楽になるという未来に、モララーは希望も何も持つことができなかった。
モララーが死んだのは、それからかなりの時間が経ってからだった。
時計も窓もない空間では、詳しい所はわからない。
かなり、とだけ表現できたのは、モララーの遺体が凄まじい事になっていたから。
自身の脚を背もたれに、太腿には両腕が打ち付けられ、それらが達磨のモララーを固定している。
身体は、剥がされた皮を始め、筋肉、性器、膀胱、大腸から小腸と、順を追って解剖されていった。
一つの臓器を取り出す度に、鎮静剤やら何やらを頸動脈に打たれ、首元には内出血の痕がある。
その何かの中に、出血を抑える効果のある薬品があったのか、臓器達はそこまで血に濡れていなかった。
あまりにも丁寧に行われたそれは、活け作りにでもするつもりなのかと思ってしまう程。
結局、モララーが死ねたのは、肋骨を砕いた先にある、肺を摘出してからのことだった。
見事なまでに空洞になったモララーの腹。
苦痛に満ちた首はうなだれ、自身の腹を覗き込むかのような状態になっていた。
「・・・フン」
暴力的でありながら、病的なまでに器用に事を熟すギコ。
モララーをこのような姿形にしたのには、理由があった。
新しい快感を見つけたとはいえ、指を奪われた屈辱は癒えたわけではない。
冷静さを取り戻したギコが、次に狙うのはそれを犯したAA。
生意気に、『メイ』と名乗った糞虫に、矛先は向いていた。
「絶対に見つけ出して、コイツの腹ン中に挽き肉にしてブチ込んでやる・・・」
自分のプライドを傷つけた事は、命だけでは償えない。
頭のてっぺんから爪先まで、細胞一つ一つまでも虐待してやる。
言葉にできない程、負の感情で心を埋め尽くしてやる。
全てにおいて絶望させて殺すと、ギコはそう決意した。
青い暴君は、復讐の為にと牙を研ぐ。
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