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Key Of The Twilight

192ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 13:34:15
【過去】

リトは外出を拒むも、アブセルが受け入れることはなく。
台車の中に隠れろと言うアブセルに、リトはしばし考える素振りを見せるも、しまいには言葉に従った。
少しだけ。あの人達は出掛けたから、帰ってくる前に戻ってくればいい。
まだ幼いリトは、アブセルと同じ。単純な考えしか出来ていなかった。
そして自分の体調も知らない。リトの世話をする使用人達がかかさず皆携帯している薬の存在も。


【飛行艇】

「男の友情…ねぇ」

アブセルは晴れやかな顔でそう口にしたが、リトに対する彼の態度には色々と思うところがあった。友情などと簡単な言葉では収集がつかない。しかし、アブセルが元気になったから今は良しとしよう。

「あんたも、早く起きなきゃ」

アブセルを見送ったナディアはリトに目をむけ声をかける。
リトは生きている。しかし、いつ目を覚ますのかは分からない。此方から手の施しようもない以上、ナディアだって不安もある。

「あんたが元気じゃなきゃ、いじめることも出来やしない」

193リマ他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 14:11:10
【飛行艇】

「あれ…セィちゃん?」

新しい食事を携えて席に戻ると、そこにセナの姿はなかった。
何処へ行ったのだろう、部屋に戻ったのだろうか。
リマはそのまま踵を返す。

「きゃっ」

前方不注意である。いや、振り返ったから後方か?
それはともかくとして、何の確認もなくいきなり振り返った為に後ろにいたらしい何者かにぶつかってしまった。
はずみでプレートの上の食事を倒してしまう。

「あ、アブくん!ごめん、ひっかからなかった?」

ぶつかった相手はアブセルだった。
セナを探さなくてはとの思いと、ぶつかってしまって申し訳ないとの思いとやらが色々と入り混じり、慌てた様子で言葉を発した。


-----

「そなたの言葉が信用出来るとでも?」

ノワールはジュノスを睨む。
昔も、そして今も黒十字は信用できない、それはジュノスとて同じ。その上、彼はセナの忠臣だ。彼を護る為ならいくらでも嘘をつけるだろう。

「まぁよい。あやつに罪がないと言うのであれば、そなたがあやつの分まで詫びを示せば良い話。じゃが忘れるな。わらわは気の長い方ではない。此度は空振りじゃったからの、我が子が戻らないとなれば、わらわは容赦せぬ。あやつに報いるぞ。」

194リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/09/30(火) 18:43:25
イスラ>>
【リマは…複雑な葛藤の末にセナのもとを離れるでしょう← でも決してセナを許せないからじゃないですよ?子供から親を奪いたくないからです。
なのでどうぞ心置き無く胃に穴を開けちゃってください!←
ユニは役立たずだからなぁ←

魔除けとかww自分にとっては大総統がもはや魔です←
いつでも何処でも一緒にいたいのでしょう、気持ちは分からなくもないです(笑)でもAKBオタが潜んでるのは怖いなぁ、自分、気付かぬところで恨み買ってそう←
ですです!と言うかそうであって欲しい←
ギャップかぁ、自分も「オタクに見えなかった!」って言われたい← いつも一緒にいる友人(フリフリ装備)の印象が強いのか、この前病院の実習で仲良くなった子に乙女ゲームの話ふられて全然分からないもんだから残念そうにされてしまいました。自分の場合「オタクと思ってたら違った」の方らしい(笑)

奇声はさすがに発しませんが騒がしいですね(笑)あと周りからボコボコに打ちのめされる点とか共通しています← でも最近オラフもイコールで結ばれて来ているようで、つまりはヘンテコな生き物がイメージキャラクターです←

いやぁ、うちの坊ちゃんウサギ達が「執事がいない!」「僕の執事は何処だ!」「入手していないだと?ならば金を積むなりなんなり、何としても手に入れてこい!!」って騒ぐものですからσ( ̄∇ ̄;)(幻聴)
因みに執事ウサギは現在無事委託した友人宅に到着しているそうです。
え、私の部屋ですか?こんな(imepic.jp/20140930/672650)感じですね。

でもまぁ何はともあれ、自分の愛しているシエルは今の坊ちゃんですから(´∀`人)♪ 回想に出る小さい頃のシエルってなんか胡散臭くて虫唾が走るなと思ってたんですが、私の本能が悟っていたみたいですね(-ω- )

あー、それも考えてたんですけどやめました。←

この話が出来た頃読んでた漫画なので(´∀`人)もろ受け継いでますよ〜

イスラって何か存在感ありますよー、お節介だからかな?
好きでしょうね、今凄く想像出来ましたw

そうですか、残念(・ω・)】

195ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/02(木) 00:51:42
【飛行艇】

ノワールの言に対し、ジュノスは言われなくとも解っている、と言葉を返す。

しかしその直後、突如として黄色い…いや、茶ばんだ声がどこからともなくと場に割って入ってきた。

「きゃーっ!!ノワちんお久〜!」

"それ"は背後からノワールの身を抱きすくめると、嬉々として彼女に頬ずりをする。

「話には聞いてたけど、ノワちんったら本当に小さくなっちゃってたのねぇ。
でもでも、今のアナタお人形さんみたいでとっても素敵よ。逢えて嬉しいわぁ」

もはやキスは挨拶と感謝を伝える常套手段である。
D.Dは嫌がるノワールの頬に唇を近づけるも…そこでふと目の前の、呆気に取られているジュノスの存在に気がついた。

「やだっ!他にも人がいたの!?アタシったら、全然気がつかなかったわ!」

はしたないところを見せてしまったかもしれない。いやいや、しかしちょっと待て。
先ほどからずっと感じているこの感覚…、いや、予感と言ってもいい。

D.Dは不意に勢いよく立ち上がると、フィアの両肩を掴んでガクガクと揺さぶりながら声を上げた。

「ちょっとぉ、何よこの船の中!?アタシのいいオトコセンサーがビンビン反応してるんだけど!?
一体どう言うことよフィアっ!紹介しなさいよぅ!!」

196アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/02(木) 00:53:20
【飛行艇】

正直なところ、恋愛というものがよく分からない。
以前どこかで聞いた恋の定義に… 

1、気がつけばその人のことばかり考えている。
2、相手のことを思うと何だか切なくて、胸が締め付けられる様な感じがする。
3、一緒にいると楽しくて、ずっと一緒にいたいとかイチャイチャしたいとかいう願望に取り付かれる。…とあったが。

それが本当なら自分はリトに恋をしていると言うことになる訳で…と言うかずっとそうだと思ってた訳で。
これが恋じゃなければ、じゃあ恋って一体何なんだ、っていう話な訳で。

ナディアやヨノに向ける"好き"が姉的な存在としての"好き"だと言うことは分かる。でもその他の女の子を好きになったことがないから、やっぱり何とも言えない。

じゃあ、じゃあそうだ。実際に恋をしている人に話を聞けば、恋愛の何たるかを知ることが出来るんじゃないだろうか。

そんなことを漠然と考えていると、不意に誰かにぶつかり、アブセルは急きょ現実に引き戻された。

――…

「あ、ごめっ…!」

どうやらリマとぶつかってしまったらしい。
予想外の彼女の慌て様に何故だかこちらまでも伝染してしまい、アブセルは慌てて大丈夫だと首を振る。
しかし改めて自身の服を見てみると、シャツやズボンにスープらしきものがかかっていることに気づく。

「…いや、でもっ。どうせシャワー行くつもりだったし、全然大丈夫っ!
て言うかそんなことより…!」

そう、そんなことより。リマには言いたいことがあった。今まではそれどころじゃなくてすっかり忘れてしまっていたが…。
アブセルは不意にリマに向けて頭を下げた。

「リトを助けてくれて、ありがとうございました」

あの深淵での一件、リマとセナがいなければ彼を助け出すことは叶わなかった。本当に彼女達にはいくら感謝してもし足りない位だ。

197アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/03(金) 00:36:23
【過去】

台車を使い、こっそりリトを館の中から庭園へ。
正門は見張りがいて使えない為、そこからは塀をよじ登って屋敷の敷地外へ出た。

リトはもやしな為…と言うか普段こういうことをしたことがないだろう為、塀を登らせるのは苦労したが、幸運にも誰にも見つかることはなかった。

「ほら、あれが街だよ」

そして抜ける様な青空の下。アブセルは眼下に広がる色とりどりの屋根の群を指差し言った。

「街まではそんなに離れてないから歩いてても直ぐに着くよ。…あ、そうだ」

かと思えば、ふと思い出したように持ってきていたキャスケット帽をリトの頭に目深に被らせる。

「それ被っとけ。お前の髪、目立つから」

198イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/03(金) 00:46:27
リマ》そんなことになったらリト達の存在が消えてしまう;何としても阻止せねば←
それもそれで酷いw
そんなことないです!ユニはもうそこにいるだけ良いんです!

大総統を魔とか言うんじゃない(笑) 
そんなもの持ち歩かなくても、いつも心の中に携えとけば問題ありません←
そんなおおっぴらにAKBディスってるんですか?(笑)

フリフリですか(笑)じゃあこれを機に乙女ゲームに手を出してみては?(笑)自分の知り合い(女子)の中では、うたプリが熱いみたいです。今度ライヴに行くというほどのハマり様ですw

ボコボコってマジで(笑)おラフww可愛いですよねwwまぁ要するに変な人ry←

坊ちゃん達うるせぇwwお、良かったですね^^
あらかわ、てか縫いぐるみがひしめいてる(笑)

虫唾が走るってw一般的な反応としてはそこで胸キュンするものでしょうにw

え〜なんで止めっちゃったんですか?
 
あぁ、そういうのってありますよね。じゃあリマセナが誕生したのはその漫画のおかげですね^^
 
今回イスラは引き立て役に徹しさせてる感じなんで自分の中では影の薄い存在です(笑)でもそう思って頂けているとは嬉しい限りです^^
ね?可愛いでしょう?←

ヴェントとかをイチオシにしたら面白そうかなと思ったけど、今後顔を合わせることなさそうだしな〜(笑)

199メイヤ/レックス ◆.q9WieYUok:2014/10/04(土) 23:23:45
【飛行艇】

耳にした話だと、イスラはバルクウェイに闇を齎した元凶と戦っていたらしい。

イスラ程の剣士が決して浅くは無い怪我を負うと言う事は、相手もかなりの強者だったのだろう。

決して完敗した訳では無いと思うが、戦いの行方は芳しくは無かったのかも知れない。

その結果、イスラは落ち着いた現状を前にしても、稽古に励んでいるのだろう。

「そうか……なら下手に声を掛けない方が良いな。」

サンディの言葉に頷き、メイヤは皆が居るであろう飛行艇内の食堂へと歩を進める。

「取り敢えず、アグルとレックス、ナディア達の顔を見に行こう。」

途中、サンディが何やら物申したそうな顔をしたが、メイヤは敢えて気付かない振りをした。

ーーーーー

「……確かに、初見ですらない僕らにこうもまで構ってくれるのは何か裏がある様な気もします。

だけど、言ってたじゃないですか、黄龍を倒す力を貸して欲しい、と。

色々と良くしてくれるのは、先行投資的な部分もあると僕は思いますよ。」

紙パックを手に椅子へ腰掛けるアグル。

彼の言葉に、レックスは少しばかりの間を置いて答えた。

「無条件に何もかもを信用するのは愚行ですが……それよりも。」

その声には、僅かだが彼にしては珍しい苛立ちの色が見てとれる。

「先程の言葉、どう言う事ですか?

君がお兄さんの仇討ちを考え、その為に力を着けて来た事は知っています。

だけど。

バルクウェイに開かれた深淵と、溢れ出した闇を、魔物を、犠牲となった人々を見て何も思わなかったのですか?」

そして、その口調は次第に熱を帯びて行きレックスはアグルへと詰め寄った。

「ナディアさんは弟さんの為に、サンディは亡き両者の為に、誰かを救う為に戦っています。

だけど君は違う。

君の戦いは誰も救わない、助からない。

復讐を遂げた先、君の魂は救われてもそこで終わりです。

強制はしません、けれど。

力を持たなかった為に何も守れず死んでしまった人々を、闇に包まれたバルクウェイの光景を見た上で、それでもこの世界がどうなっても良いと思うなら……僕は君を嫌いになります。」

丁度その時だった。

ドアが開き、メイヤとサンディが食堂へと現れたのは。

「……レックスにアグル、久し振りだな……って言いたい所だけど、どうした?

何か雰囲気が変だぞ……?」

200リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/05(日) 23:41:13
【飛行艇】

「ごめん!ごめんね!!」

食事をアブセルが被ってしまったのを知ると、リマは更に慌ててハンカチで服を拭う。
しかし、突如頭を下げられたことに驚き手を引っ込める。驚いた表情をアブセルへと向けた。

「ううん、リマは何もやってないし」

彼から受けたのは感謝の言葉。
リマはすかさず首を振り、困ったように笑顔を浮かべる。

「私なんか、むしろ足引っ張っちゃって…。リッちゃんを助けたのはセィちゃんだよ。お礼ならセィちゃんに…」

言いかけてリマはあることを思い出した。

「あ、そうだ。アブくん、あのね。リッちゃんのことであまり自分を責めないでね?」

アブセルがリトを屋敷に戻し、結果的にリトは害され今の状態となってしまった。
リマが見たところ、アブセルはそれを自分のせいだと思いこみ自身を責めているように思う。
しかしリマは知っているのだ。あの時屋敷でリトと話した時、彼が言っていた。アブセルの行動はリトの為を思ってのことだと話したら、リトは分かっていると呟いた。

「リッちゃんはアブくんの気持ち分かってた。アブくんのこと、怒ってないよ?だからね、リッちゃんが目覚ましたら、ちゃんと仲直りしてね。」

201リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/06(月) 13:20:27
イスラ>>

最近「あやかし百鬼夜行」ってアプリで美少年妖怪集めて遊んでるんですが、お気に入りの鬼太郎似な狸の妖怪進化させたら人型ぶっとんで化け狸になってしまってお仲間さんの所で泣いていたところ、優しい通りすがりの方々が進化前のカードを次々にプレゼントしてくれました(笑)本来は回復薬で取引されるカードなのに無償でくれるとは…とても優しい方々でした♪

頑張れジュノス!!(他人事)
酷くないですよー優しいですよー穴開けたままとかじゃないんだから!←
いいのかww

じゃあ悪夢←
成る程!!因みに自分はスマホの中に携えています←
最近はそうでもないですが、前田敦子がいた時は酷かったですねー。

普段がゴスロリ趣味な子なので、大学では一般人も好むブランドをと考え、中高生向けギャル系ブランド「リズリサ」を選びとったがために、顔が童顔なのでフリフリに見えてしまうと言うね。黒髪パッツンなので周りには余計にそっち系として見えてしまうみたいです。
うたプリですか、自分の友人にも好きな子います(笑)キャラソン聞かせて貰って爆笑した記憶が←

オラフ可愛いですwって変な人wwそうかもしれませんね( ̄∇ ̄)笑

坊ちゃんにおねだりされたらそりゃ意地でも手に入れるしかないでしょう←
結局一番くじで狙ってたものは全て手に入れました(笑)でもツイッターとか見てると皆くじ運いいなぁと思いますね、羨ましいです。
はい、自分の部屋はぬいぐるみの植民地ですゆえ。UFOキャッチャーで取ってきたり、取って貰ったり。母親に叱られるので最近はこっそり持って帰ってきてます← ぬいぐるみ大好きなので、UFOキャッチャー得意な男友達がいて、単純に遊ぼう言われても面倒だっていつも断ってましたが、ぬいぐるみ取ったから〜って言われるとホイホイ行ってましたね← その友達は進級出来ず大学止めてしまい今では音沙汰なしですが←

だって態度が胡散臭かったんですも〜ん。でも今の坊ちゃんの小さい頃は可愛すぎて悶えていたので、自分の本能怖いなって思います(笑)
本能と言えば急に白龍ちゃんが恋しくなって先週ネタバレ掲示板行ったら、ちょうど白龍ちゃん再登場の回だったらしくて「水曜にサンデー買わなきゃ!って今日水曜じゃん!!」ってすぐさま買いに走しました←

いくらなんでも歳が離れすぎかなぁって。ジルはリトとの歳が近いので弟に手出してるような感覚が←

ですねー。読んでなかったらどんな子達になってたんだろう(笑)

そうだったんですね(笑)まぁ、結果オーライです!←
んー、まぁ、可愛いですね(笑)

あぁ、ヴェントww彼はノワールのお気に入りだしマゼンダとも仲良いしなので…幼女とオカマとビッチに囲まれるってどんなww

202フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/07(火) 20:20:45
【飛行艇】

転移した先にジュノスも居るのは、彼の魂の波長も感じていた為わかっていた。

しかし、フィアは忘れていた。

彼、いや彼女……DDがかなりの男好きであることを。

「あ〜確かに何人か男は居てるわ〜ただ〜」

思いの外強い力で揺さぶられるがまま、フィアはDDの問いに答えた。

「DDが好むイケメンは居ても〜割と幼い〜〜私達からすればお子様ばっかりよ。」

しかし、いつまでも揺さぶられ続けるのは流石に辛い為、答え終えると同時に肩を掴むDDの腕に手を置き、揺らすのを止める。

そして、どうやら密談の間に入り込んでしまった事を感じ、ノワールとジュノスに短く詫びた。

「ごめんなさいね、間を割って。

でもまぁ、丁度良かったわ。

ノワールに話したい事もあったし、そこのイイオトコさんにも聞きたい事があるからね。

二人の話が終わったら、少し時間をちょうだい?」

203アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:49:58
「…どちらが死ぬ?」

兄は言った。

「どちらでも同じだよ」

弟は言った。

「チェスで決めよう」

――…

【飛行艇】

どうやら先程の発言、彼にとっては気に障るものだったらしい。
珍しくも語気を強くこちらへと言い寄ってくるレックスに対し、アグルは紙パックを口から離し、気怠そうな目を彼に向ける。
そして暫しの沈黙の後、何かを言わんとすべく口を開きかけるも…。

直後、場に上がった新たな声によって、それは阻まれることとなった。

「あー…、いや何でもない。そこの委員長(レックス)がまたお節介焼き始めただけ。気にしなくていーよ」

視界に映ったのはメイヤとサンディの二人だった。
アグルは彼等の登場によって、別段話の腰を折られ気分を害したと言う風でも、またこの空気を断ち切る願ってもない助けが来たと喜ぶでもなく、いつも通りの態度でそう言った。
しかしレックスとの会話を再び仕切り直す気もない。

「にしてもそっちは色々忙しかったみたいだな。一週間振りじゃん。
…で、何?今は暇してる訳?」

204アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:50:58
【飛行艇】

何もしていないなんてとんでもない。
確かに実際にリトを救出したのはセナだろうが、そう彼にお願いしてくれたのはリマなのだから。

依然深く頭を下げていたアブセルだったが、不意にリマが話を変えるとその顔を上げ、きょとんと彼女を見た。
そして呆然としたまま口を開く。

「そう…なんだ…」

リトはこんな自分のことを信じてくれていたんだ…。

直後、何かがぐっと込み上げてくるのを感じた。
そして胸が熱くなるのと同時に、少し気が楽になった。

「心配しなくてもちゃんと仲直りするよ…。友達だもん…」

言ってアブセルは小さくはにかむ。

しかし不思議なのは、どうしてリマはこうも自分たちのことを気にかけてくれるのかってこと。
彼女のそういった態度が慣れなくて、どうもこそばゆい。
アブセルはどこか照れくさそうに頬を指で掻きながら先を続けた。

「なんというか…ポセイドンの姉ちゃんにはいっぱい迷惑かけちゃったよね…」

屋敷に連れ込んだり、深淵に引っ張り込んだり、襲ったり、情けないところもたくさん見せてしまった。

「何かさ、お詫びって言うか…お礼、したいな。
何か欲しい物とかない?して欲しいこととか…。俺に出来ることなら何でもするから遠慮なく言ってよ」

205イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/08(水) 00:53:46
リマ》
皆さん優しいですねw自分そういうソーシャルゲームってやったことないんでよく分かんないんですよね
 
他人事すぎww
だってそれ生き地獄じゃないですか?過労死した方がまだ楽かもしれないww
ユニはマスコット的な存在なので(笑)

悪夢も似たようなものじゃないですかw
あぁ、なるほどスマホですか。でもスマホって落として、もし中を誰かに覗かれでもしたら最悪ですよね(笑)
そんなに酷かったんだw今のAKBメンバーはさっぱりですが、以前だったら板野友美が一番好きでしたが何か?←

それってお嬢様系ゆるふわファッションみたいな感じ?それなら可愛い←
自分はカラオケでキャラソン歌われて反応に困まりましたw

何かまたアナ雪が見たくなってきたw変な人認めちゃ駄目ですって(笑)

リマさんも充分凄いですけどね(笑)てか親に叱られる程ってどんだけですか(笑)
自分UFOキャッチャーで何かを取れた試しがないなぁ。だからやらない←しかしそんなに仲良かったのに音沙汰なしとか寂しいですね

人見知りの方が坊ちゃんですよね?
え?白龍?誰だっけそれ?(゚Д゚)←…まぁそれは冗談として、どうでした?白ナントカさん活躍してました?

離れてるって言っても5歳位じゃなかったっけ?全然OKですよ←

リマセナがいなかったら多分ジュノスというキャラも出来てなかっただろうな(笑)

ヴェントモテモテwwしかし周りにロクな奴がいないww

206メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/11(土) 00:01:54
【バルクウェイ】

普段とそう変わらない気怠げな瞳と、返って来ない言葉。

メイヤとサンディが食堂へ現れたのも有るだろうが、話をするつもりは無さそうなアグルの態度にレックス下唇を咬み、彼を眼鏡越に睨む。

しかしそれも数秒の事。

深呼吸を一つ、表情を戻したレックスはアグルへと言葉を投げる。

「僕は君を買い被り過ぎていた様です。」

そして、少し頭を冷やしてきます、とサンディとメイヤに声を掛け、食堂から姿を消した。

その姿を見送り、メイヤは近くにあった椅子に腰掛けた。

唯ならぬ雰囲気だったが、アグルがああ言い、レックスも食堂を出て行ったならば無理に聞き出さない方が良いだろう

「細々とした使いっ走りで忙殺されていた、のは冗談だけど、骨の折れる仕事で暫く動けなかったのは確かさ。

その分、今は暇を貰った。」

レックスとの事には触れず、メイヤはアグルに返事を返す。

「復興祭、折角だから皆で回らないかと思って来たんだ。

後は……皆はこれからどうするのかを聞きに。」

207ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/12(日) 21:44:37
【飛行艇】

「そんなの全然問題ないわっ!
ダンディーな年上の殿方にはリードされたい。まだ可愛さの上回る年下の彼はリードしたい。それがアタシのポリシー!
それが将来有望な子ならなおのこと!今からツバつけとかなきゃ!」

フィアの返答に対しDDはそう熱く声を上げる。
因みに目の前の彼は…と、ジュノスに目を向けた。

「ちぃッ…、子持ちか…!」

ジュノスの背中、抱っこ紐にておぶわれた赤子を見て、DDは悔しそうに爪を咬む。

流石の彼も他人のものに手を出すのは気が引けるらしい。
火遊びはよほどのことがない限りしない主義なのだ。

「こうしちゃいられないわ。次よ、次!
フィア!アタシ一足先に船の内見て回ってくるから!待っててねん、まだ見ぬ愛しいアタシの子羊ちゃん達!」

そう言い残してDDは嵐の様にその場から去っていった。

「…何なんだよアイツはよぉ…」

その一部始終を眺めていたシャムは、騒がしい奴だと呆れた様子で目をすがめる。
と、そこであることに気がついた。

クソガキ、もといルドラがいない。
まぁ大方ノワールと直接逢うのが恥ずかしいとかで、どこぞにでも隠れたのだろう。近くにいるのは分かるので、取り合えず放って置くことにする。

そしてその一方、事の成り行きが分からないといった様子のジュノスにフィアから声がかかる。

「話なら今終わったところですが…何でしょうか?」

若干の警戒の面持ちを見せながらジュノスは言った。

208アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/12(日) 21:45:39
【飛行艇】

立ち去っていくレックスの姿を横目で眺めながら、アグルは机に頬杖をつく。

「俺はいーや。気分じゃないし」

そして、復興祭を見て回らないかと言うメイヤの問いに対しては、ひらひらと手を振って難色を示し。
続けて言葉を返した。

「そう言えばあの縫いぐるみ…バロンの奴は帰省するとか何とかで暫く不在にするってさ。
レックスはその帰りを待つとか言ってた。んで俺らは…」

言って、アグルは机の上に広げられた書類の一枚を手に取り、メイヤに見せる。

「闘技大会の選手にエントリーされてるって訳。…知ってた?」

209リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 10:47:33
【飛行艇】

ちゃんと仲直りする。アブセルの言葉にリマは安心し笑顔を浮かべる。しかし次の時には彼女の顔からは困惑の色が映った。

(何でも言えと言われても…)

特にして欲しいことなどない。
しかしアブセルの性格上、お礼をしなければ気が済まないのかもしれない、ここは何か言わなければ。
…セナを一緒に探してもらうか?と言ってもここは船の中、行く場所など限られている。それに、自分を置いて何処かへ行ってしまう時は彼の体調がとても優れない時。弱った姿を見せたくないようでいつも何処かに消えてしまう。そんな時は無理に探さないのも優しさだとジュノスに教えられた。いつも体調が悪いわけではないし、よくなれば自ら戻って来てくれる。
部屋に戻ってくれていれば良いが、ひょっとしたら何処かで蹲ってるかも…でも、今はそっとしておこう。

「じゃあ…」

悩みに悩んだ末導き出した答えは。

「お友達になってくれる?」

アブセルには予想もつかない言葉であっただろう。

「私、あまり同じくらいの歳の子と接する機会とかなくて…お友達になってくれたら嬉しいな」

しかし、リマにとっては勇気のいる言葉だったのかもしれない。
顔を赤くして恥ずかしそうにしながら、遠慮がちに言葉を述べた。

210ノワール ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 11:42:05
【飛行艇】

「忙しない奴よ…」

嬉々として消えていくDDの後ろ姿を眺めながら、ノワールは呆れたように声を漏らす。
挨拶のキスは回避したものの、あの顔が至近距離にあったと思うだけで悪寒がする。と言うかまだ奴の息の感覚が肌に残っており、大変心地悪い。頬を抓り、感覚を無くすよう心みる。

「話とはなんじゃ。」

そして、拍子抜けはしたものの彼女の機嫌が直ることはなく、仏頂面でフィアに話を促した。

211メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/13(月) 16:14:35
【飛行艇】

帰省すると言う事は、記憶の図書館に戻るのだろうか。

バロンとレックスの動向を聞き、メイヤは考える。

(暫く戻らない、か。)

様子からして、アグルも直ぐには此処を発つ事もなさそうだ。

となると、四神の中で動く可能性があるのはナディアだけだろうか。

「いや、今初めて知った。」

アグルの手から書類を受け取り、メイヤは目を通す。

そこには自分の名前の他に、アグルやレックス、そしてイスラの名も記されてあった。

「まぁ……参加する事自体は構わないけれど。

それよりも初戦の相手がアグルなのに驚きだ。

レックスとイスラの組み合わせと良い、身内で合わせたのか?」

書類を見る限り、同じブロックに知り合い同士で組まれているようだ。

他の名前は、殆ど見た事は無いが……

「多分今晩にやるんだろう?それなら始まるまで祭りを回ってくるよ。

それと。」

書類をテーブルに置き、メイヤは続けた。

「イオリ……兄は暫くバルクウェイから動かないそうだ。

多分、この空挺師団にそのまま厄介になると思う。

四神護衛は終わったけれど、俺も暫くは此処に居るつもりだ。

打倒黄龍を掲げるなら、常に一緒とは
いかないが共闘する位にはなると思う。

まぁ、実際これから先の事はしっかり考えれてないんだけどな。」

212リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 21:39:05
【過去】

塀を登るなんて聞いてない。
やっとの思いで登り切ったリトはアブセルを見た。
しかしただ見ただけで不満の声は出さず。
すぐに促されるままアブセルの指の先を追った。

「……」

見たことのない景色だ。
あれが街。姉が「出掛ける」と言った際に向かう場所。

リトの表情に微かながら光が差した。

213フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/13(月) 21:42:09
【飛行艇】

嵐の様に去って行くDDと、どこか物影に姿を隠したルドラ。

二人の様子に溜め息を吐き、フィアはシャムへ視線を流し肩を竦めた。

「取り敢えず、闇の王子とそれに連なるアナタ達、そしてノワールはこれからどうするかを聞きたいわ。

私はレオの仇討ちと、ノワールのお守りも兼ねて人間界には来たけれど……」

しかしそれも僅かな事、フィアは真面目な面持ちで口を開いた。

「ここで一旦、別行動を取ろうと思うの。

仇討ちは正直今の私では力不足……諦めた訳では無いけれどね。

お守りの方はそう、案外必要なさそうな気がするわ。」

そう、レオの仇であるイオリの実力は十三人の長老に勝るとも劣らない所か、1対1なら自分達を圧倒する程だろう。

十字界で戦ったあの眼鏡の男とほぼ互角に渡り合った事から、イオリの実力は伺い知れる。

そして、ノワールの護衛も今暫くは必要なさそうだ。

闇の王子と、それに付き添うジュノス、そしてノワール自身の力は並みの強者程度ならば安易に退けれる筈だ。

勿論、万が一の場合は考えているが。

「それよりも今は、気になる事があるの。

私達吸血鬼に近く、しかし遠い異質な気配……強いて言うならノワールの気配に近い感じ。

私はシャムやDD、ルドラの四人でその反応を追う事にするわ。

それで良いかしら?」

214リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/13(月) 22:18:51
イスラ>>

自分もスマホのゲームと言えばミニゲームとかで、興味自体はあんまないのですが、カード系のゲームは絵の勉強になるのでチマチマやってます(pq´v`*)
今やってるのは妖怪のカードゲームで、同じ絵柄のカードを三枚集めて進化させるとかなりグレードアップした絵が見られます。対戦とかはやってないので、完全絵を見るためだけにやってますね(笑)

ぶっちゃけ結構他人事かも?w←
たしかにwでも死んだら何もかも終わりですよ!←
マスコットwそんなんで良いのかww

むー、なら何て言えば良いんだ!←
大丈夫、そのためのパスコードです(笑)
あー、美人ですもんね、彼女。でも自分、彼女を見るたびあの顔が天然物なのかどうか悩んでしまうので見るのが辛い←あと自分はサシコだけ昔からそれなりに好きです(´∀`)

んー、それともちょっと違いますねー。
成る程(笑)自分もマジLOVE何とか歌ってもらって、アニメのPV見て爆笑しました←

アナ雪は壮大な姉妹喧嘩でしたねぇ。アナ雪見てない子に内容聞かれて、町中巻き込んで散々やらかした挙句、結局は自分達で勝手に自己解決しちゃった話って言っておきました←
変な人ですよー。高校生の時なんて、チャーリーとチョコレート工場で出てきた変な小さいオッさん達のオーガスタス(?)のダンス覚えて来て友達の前で踊ってましたからね。←

えー、自分なんてマダマダです。
ぬいぐるみが増えすぎて、鬱陶しいと。そのため大分減らされました。また増えて来てるけど←
それが一番です。お金飛ばないもん。
いや、それが、全く寂しくないんで不思議ですよね(笑)

そうです、人見知りで蜂蜜入りホットミルク好きのとってもプリチーな子が今の坊ちゃんです。もう坊ちゃん可愛すぎて捻り潰したい。
酷いwもう活躍ってもんじゃないですよー。なんか薬やっちゃったんじゃないかってくらいの変貌ぶりで、ネットの方々にはヤクザと呼ばれています←そして先週は素っ裸をお披露目してくれました。幼少期の回想でですが。しかもご丁寧に正面から。まぁ何はともあれ、順調に悪の道に突き進んでいます←

えー、5歳は大きいですよー。

そうなんですかwでは生まれるべくして生まれた子たちなんですね←

可哀想なヴェント…誰かを取るならノワールでしょうか?一応、本来は幼女じゃないわけですし(笑)

215アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/13(月) 23:42:52
【飛行艇】

「とも…だち…?」

…になってくれないかと言ったのか、今?

その言葉を言ったことはあっても、誰かに言われたのは生まれて初めてだ。

顔を赤くして恥ずかしそうにしているリマの姿を見れば、途端アブセルの顔も熱を帯び赤くなる。

「い…良い、けど…。
でも…それって何か違くない?」

しかし、果たしてそれはお礼をしたと言えるのだろうか。

「あ…じゃあ、姉ちゃんさえ良ければだけど…、また屋敷に来てくれることって出来ないかな?あの…セィちゃん…さんも一緒に…」

眠ったままのリトをいつまでも此処に居させる訳にはいかないし、屋敷にはユニを置いてきている。
亡き旦那様に関しての話もあるし、やはり一度はあそこに帰らなければ。

「リトが目覚める間だけでも、二人が居てくれたらもしもの時も心強いし…。やっぱり改めてちゃんとお礼したいから…。
えっと…だから、その…」

言って、アブセルはぎくしゃくとした態度を見せる。
そして、おずおずと左手を差し出した。

「と…友達として…、これから、宜しくお願いします…」

216アグル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/13(月) 23:43:39
【飛行艇】

暫くは此処に居ると言うメイヤに、アグルは「そっか」と短く言葉を返す。

弥都で別れを告げてから、そう間を置かない内での再会だ。
これも縁というやつなのだろうか。

「何にせよ、これからもしばしば顔を合わせることにはなりそうだな。
ま、その時は程々に宜しくってことで」

そう言い、再びいちご牛乳を口にしたその時だ。

「やっだぁ〜ッ!アタシの勘、冴え渡りすぎ〜」

突如、部屋の扉が開き見知らぬオネェが現れた。
それは直ぐ様こちらへと駆け寄ってくれば、細く長い腕をメイヤの首に絡め、耳元に息を吹きかける。

「アナタのその黒い髪と黒い瞳、神秘的でイイわぁ〜。そっちの眠たげな彼も目元の泣きボクロがセクスィ〜。
あぁん、もっ二人共か〜わ〜い〜い〜。まとめて食べちゃいたいくらいだわぁ」

217メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/15(水) 20:10:49
【飛行艇】

短い返事は、アグルらしいしと言えばらしいか。

そう深く言葉を交わした事は無いが、彼の様子は普段と変わらない。

「取り敢えず今夜の闘技大会はよろしく、だな。」

飲み物に口を付けるアグルへ、メイヤは手をヒラヒラと振った。

それと同時に、勢い良く扉が開く。

(何、だ!?)

開かれた扉は蝶番を軋ませ、現れるのは長身痩躯。

全く隙の無い動き、言うなれば獲物に迫る毒蛇の如き速度で迫るその人物は、正に毒蛇の牙……細く、長い腕をメイヤの首筋に絡めて囁いた。

そして、耳元に吹きかけられる吐息はメイヤの背筋に氷柱を突っ込む以上の威力を発揮。

「は……あ……ぁ、アンタ、誰、だ……?」

反射的に立ち上がり、無意識に刀の柄へ手を伸ばした状態のまま、凍りついたかの様に動かないメイヤは目を見開き、すぐ側の緋色の瞳を凝視した。

218ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 00:51:19
【飛行艇】

これからどうするか…。そうフィアに問われたジュノスは、束の間考える仕草を取る。

取り合えず第一の目的であるセナとの合流を果たした今。次いで行動に当てるとすれば、ノワールの子の捜索を行うのが順当なところだろう。
しかし、ここでセナ達と別行動を取るのは返って不自然だ。セナに子の存在を訝られる可能性がある。
そして勿論のこと、それに併行してノワールが妙なことをしない様に監視をする必要もある。

…何にせよ、セナとノワールの意見ありきといったところか。

「…ちょっと待った」

と、その時。不意にこの場面では意外な人物、シャムが口を開いた。

「もし姫ちゃんが許可するようなら、あのクソガキをそっちに随伴させて良いか?
なに、あれはラディックや配下の奴らがいなけりゃ何も出来ないような腰抜けだ。流石に今になって変なことはしないだろ」

要するに往年の裏切り者、ルドラをノワールのお供にさせたいと言うこと。
ノワールがどう動くにしろ、やはり彼女一人を人間達の中に残すのはどうも不安なのだ。

「下僕としてこき使うもよし、もしもの際のスケープゴートにするもよし。
いつもは隠れてるかもしんねーが呼べば出てくるだろうよ」

ルドラはノワールに好意を抱いている。彼女が敵に襲われた時は身を挺してでも彼女を守ろうとするだろう。

219アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 00:52:13
【過去】

リトの表情が僅かに変化したのをアブセルは見た。

そして、どういう訳だかその時。アブセルは不覚にも胸の高鳴りを感じてしまったのだった。

(…なっ…なんだよ…今のドキッて…、ドキッてぇ…ッ!)

別に見蕩れてしまったとか、そんなんじゃ全然ない。
しかし時折、彼が本当に男なのかどうか疑いたくなる。

「ほ…ほらっ、行くぞ!」

何だか決まりが悪い。アブセルは照れ隠しにわざと強い口調で言い、リトの手を引く。
そして街までの道を下って行った――…

――リトを街まで連れて行き、適当なところで彼をその場に置いてけぼりにして、一人で屋敷に帰る。そして屋敷の者にリトが勝手に外に出てしまったと伝える。
その結果、リトは責められ叱られる。…というのが今回の作戦。
旦那さまに叱られれば、あのリトだって泣いてしまうに違いない。

内心しめしめとほくそ笑むアブセルだったが、街に着けばその顔に得意げな笑みを見せ、リトの顔を覗き込んだ。
 
「どう、どう?街って賑やかだろ?人いっぱいだろ?お前の部屋にはないものばかりで面白いだろ?」

そして言う。

「どこか行きたいとこある?お願いするなら俺が案内してやってもいーよ」

220イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/16(木) 01:26:23
リマ》なるほど、勉強ですか。確かにカードゲームのカードの絵って綺麗ですもんね^^自分もゲームはやらないけど、たまにそう言う系の公式HPとかでチラチラ見てます

薄情ものめw
いや何もかも終わりだから良いんです←
自分は全然OK←

もう何も言わなくていいです(笑)
そうですよね、パスつければ良い話ですよね…でもめんどくてしてない(笑)
て…天然物…だよ!(;^ω^)←まぁ別に天然物じゃなくても気にはしませんが。サシコってその愛称が何か好きじゃないんですよね〜

違うのか…
あー確かにあのPVは爆笑ものですが…しかしそれと同時に見てると何か恥ずかしくなってくると言うか…居たたまれない気持ちになってきません?←

ん〜…まぁ大体あってる(笑)アナ雪はオラフとトナカイにありのままに萌える映画ですよね
あ、それは間違いなく変な人ですね←

まだまだですかwいっぱいあると邪魔くさい様な気もしますが…(笑)
ゲーセンの景品って冷静になると別にいらない、そして普通に買ったほうが安かったってなることが屡々…
まぁ…そんなものですよね(笑)

なぜ捻り潰すww
白龍wwだいぶ狂ってきてる様ですね〜。しかしやっと白龍が好きになれるかもしれない

そうですかね〜?じゃあナディアはどこぞの金持ちの御曹司とでも結婚するのかな?(笑)

自分的にマゼンダの方がお似合いな感じはしますが…てかマゼンダと上手くやれるのってヴェントくらいしかいない気がするw

221ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/10/17(金) 00:42:37
【久々?に絵投下ー

imepic.jp/20141017/020770

二人に質問なんだけど、絵描いて色塗る時ってどうしてる?

紙に描いてからパソに取り込み、色付け?

もしくはペンタブでそのまま描いてる?

タブレットで描くの楽そうかなーとか思ったんだけど、どうなんだろ?】

222アグル他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/17(金) 21:53:19
【飛行艇】

「あらぁ、なあにぃ?もしかしてアタシのこと気になっちゃうカンジ?」

誰だと聞かれれば、DDはついその気になって艶っぽい声を出す。

「そうねぇ…、通りすがりの麗しき恋の狩人…と言ったところかしら。
あ、別に怪しい者じゃないのよ?そこのところ間違えちゃダメよぉ、可愛い坊や?」

そう言って、彼はメイヤの頬に唇を落とす。
それを側で見ていたアグルは、

「メイヤ…ご愁傷様。生きてたら夜また闘技大会で」

と、そそくさと逃げ。
その一方でサンディは、

「キ…キス…。男の人が…男の人に、キス…」

固まっていた。



【お、イケメンktkr!イラストはメイヤですかね?

あ、それ自分も気になってました
二人とも何のペイントソフト使ってるのかなぁ…とか

取り合えず自分は下書きから全行程ペンタブで描いてます
タブレットは機種によってはペンの動きがもっさりしてて描きにくい…とかあるみたいですね
液晶付きペンタブなんかはかなり描きやすい様ですよ。自分も欲しいです。しかし結構いいお値段です(^_^;)】

223リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/19(日) 03:41:07
【飛行艇】

アブセルの返事を聞き、リマの表情がパッと晴れた。
嬉しそうに差し出された手を握る。片手で事足りるのに両手で包み込むように握りながら、心が踊るかのごとく左右に揺らす。

「よろしくね!お友達!やったぁ」

が、すぐに自分の行動の異常さに気づき慌てて手を離した。やり過ぎたとばかりに照れ笑いを見せる。

「うん、リッちゃんの事は心配だからもともとナディアさんにお願いして目覚めるまで側にいさせてもらうことになってたの。お屋敷に戻るならリマたちもお邪魔させて貰うことになるかな。」



ヤツキ>>
【わぁい美絵キタ!色塗ろ色塗ろ!!

自分はアナログで絵描いて、PCで線画にして、最近はいちいち色の効果つけるの面倒臭くてiPadでテキトーに色塗ってる。
ペンタブなんて機械オンチな自分には使いこなせないから持ってない(笑)そしてシャーペンみたいなタッチペンは高いからタブレットに直描きも出来ないσ( ̄∇ ̄;)】

224メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/20(月) 22:46:46
【飛行艇】

全ッ然麗しく無い!

それどころか僅かな剃り残しであろう髭が肌に刺さって凄まじく痛い!

ほんの極々微かにだが感じる臭いも明らかに男のソレだ!

大体何者なんだ、麗しの恋の狩人って何さ!?

……と言う魂のツッコミは呻き声に変わり、メイヤは息を吐く。

助けを求めようともアグルはそそくさと撤退、サンディは凍りついたまま。

(あぁアグル、闘技大会で会えたら全力で、手加減無しでやらせてもらうからな……)

初対面からの不意打ちは意識が飛びそうになったものの、今なら何とか動けそうだ。

心の中でアグルを呪いながら、メイヤは身を捩る。

自称恋の狩人から離れなければ、恋どころか命すら刈り取られてしまうだろう、多分、いや、きっと。

明らかに不審者である謎の人物の腕から逃れたメイヤは、手の甲でキスをされたい頬をこすりながら再度問うた。

「で、ホントにアンタは一体誰なんだ?


船に居るって事は、誰かの知り合いなんだろうけど……吸血鬼の姫様の知り合いか?」

225リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/20(月) 22:54:16
【過去】

アブセルに手を引かれながら、リトは彼の言葉には答えず辺りを見回していた。
反応は薄くても彼なりに何か感じているようだ。
そして、リトはふと足を止めた。
アブセルの手を離れ、そちらへ向かう。

「……」

猫だった。
リトは初めて見るフワフワな生き物を、不思議なものを見るような目で見つめている。彼にとっては縫いぐるみが動いているように見えるようだ。

”にゃー”

猫が鳴いた。

「…」

リトは手を伸ばし、猫の体を撫でた。
そしてそっと、躊躇いがちに口を開く。

「…にゃあ…」

226ノワール ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/21(火) 13:34:56
【飛行艇】

「…勝手にせよ」

シャムの言葉にノワールは一瞬眉を潜めるも、拒否することはなかった。
今は娘の安否とリトに手一杯であり、行ってしまえばルドラの存在などどうでもいい。

「フィアの言う異質な気配とやらは気になるが、わらわはリトの側を離れることが出来ぬ。あの閻魔が妙な小細工をしよったからの。リトがおらんと本来の力を得られぬのじゃ。」

この分だと娘を探すより前にリトの目覚めを待つことになりそうだ。
ノワールはフィアとシャムに視線を向けた。

「何か分かった暁にはわらわにも知らせるのじゃ。良いな?」

227リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/10/21(火) 13:51:39
イスラ>>
よくあんなに豊富なポージングが描けるなと見る度に思っていますσ( ̄∇ ̄;)

えー、薄情なんかじゃありませんよー!←
それなんか虚しいww
良いんだww

じゃあそうします←
パス設定が面倒とか怠慢じゃないですかw
気にしないんですね(笑)愛称とかどうにもならんじゃないですかwwサシコは自分的に芸人枠なので嫌いではないのです。

なんか違いますね。取り敢えずなんか一般人が見ると「ん?」ってなん感じ。←
似合ってるから自分的には別にいいんですけどねー。
居た堪れなくwwたしかにwwでも彼らはアイドル←

あー、そうですね!自分もありのままに萌えました(笑)
断定されたww

自分、まだシエル好きを極められると思うんです!!←
たしかにwでもUFOキャッチャー自体好きなんですよね。家に一台あればお金も減らないんですが←

可愛すぎるからです。なりませんか?←
今月の黒執事ではシエルが幼女の頭に拳銃突き付けて「生きて今以上の苦しみを味わうか、今死んで楽になるか、どちらか選べ」とかかなりゲスやってましたがそれでも可愛さは際立ってましたよ!←
白龍はもう暴走してますねー。彼の心は救われるのか!てかかなりエグい能力身につけちゃってました〜。
何故今更w

ナディアって恋愛って感じしないんですよね、自宅で小姑やってそう(笑)

あー(笑)実際のところ、ヴェントは誰を想っているのか!取り敢えずノワールは妹的存在で、ノワールにとっても兄的存在ですねー。
てかDD見てふと、ヴェントのキャラ設定してる時に「男に好かれるタイプ」って考えたの思い出しました(笑)

228ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/10/21(火) 22:11:57
【二人ともありがとー!

電気屋街で絵描き専用ぽいタブレット見つけてさ、コレ使ってんのかなーとか思って。

ペンタブは性に合わなかったから、色塗りするならリマのやり方が良さげかなぁ?ワンチャン水彩色鉛筆に戻るまであるかも……

液晶ペンタブも気になるけど、お高いんでしょう?wwww

とりま俺はアナログで下絵描いて線入れの後線画っぽく出来るアプリで弄ってる感じやけん上手くいかねーわww】

229フィア ◆.q9WieYUok:2014/10/21(火) 22:29:13
【飛行艇】

ルドラをノワールに同行させたいと申し出たシャムと、それを了承したノワール。

二人共に合意するならば、それに意を唱える事も、理由も無い。

「わかったわ、ルドラは置いていくわ。

そっちも、何かあれば知らせるのよ?」

フィアもまた、ノワールの言葉に頷き、続いてジュノスへ声を掛けた。

「と言う訳で、私達は別行動を取るわ。

暫く会うことは無さそうだけど……ノワールをよろしくね?

それと……貴方と闇の王子の周囲の時空間がほんの僅かだけど歪んで来てる様にも見えるわ、気をつけて。」

そして、一言二言声を掛けた後、フィアはシャムと共に飛行艇の機関室を後にした。

230DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/21(火) 23:25:42
【飛行艇】

逃げたアグルと腕の中から抜け出たメイヤ。
その両者に対し、DDは残念そうに肩を竦め、声を上げる。

「人間のオトコの子ってホント照れ屋よね〜。まっ、そこが可愛いんだけど」

安定のポジティブ思考。
そんなDDだからこそ、二度に渡るメイヤの問いにはウインクと投げキッスのサービス付きで答えてあげた。

「ご名答〜。吸血鬼のDDよぉ。よろしくねン」

かと思えば、今度はその視線は別の方へ。
直ぐ傍らの机の上。闘技大会についての日程が記載された書類の方へと向けられた。

「なになに?闘技大会なんてあるの?」

いかにもシャムが好きそうなイベントだ。DDは再びメイヤへと視線を戻す。

「もしかして貴方も出るのかしら?アタシ強いコって大好きよぉ。応援に行ってあげましょうか?」

231アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/21(火) 23:27:42
【飛行艇】

どうしよう。
そんなに喜ばれると、こっちまで嬉しくなる。

「じゃあ…屋敷に着いたらまたゆっくり話しよう?姉ちゃんのこともっと知りたいし」

友達たるもの、相手のことを知りたいと思うのは当然だ。
人生で二人目の友達、リマの出現にアブセルは内心ウキウキである。

取り合えず、屋敷からの迎えが来らまた声をかけると続けたところでアブセルは不意に思い出した。

「そう言えば、食事途中だった?ごめん、引き止めちゃったみたいで…。
てか、セィちゃんさんは?」




【過去】

リトが喋った。
思えば、彼の声を聞いたのはこれが初めてかもしれない。
…こいつはこんな声をしていたのか。

「…何だ、やっぱり喋れたんじゃん。
俺のことはいつもムシするくせに」

言って、アブセルは猫に近寄り、リトの隣にしゃがみ込む。
人に慣れているのか猫は逃げようともせず、リトの手に額をすり寄せている。
一方で不思議そうにしているのは彼の方だ。

「…そんなに珍しい?」

アブセルは小首を傾げた。
もしかして猫を知らないのだろうか。

「猫だよ、ね、こ。…言ってみ?」

232メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/23(木) 12:22:45
【飛行艇】

投げキッスとウインクのコンボをさり気なく、しかし全身全霊を込めてメイヤは避ける。

「いや、俺は出ない。

さっきの赤毛、アグルは出るみたいだけれど……」

そして、DDの問い掛けに嘘を交えて答えながら固まったままのサンディの手を引き、部屋からの脱出を試みる。

「闘技大会は夜からだけど、アンタの好きな強いコも出るだろうし、先に闘技場で目を付けとけば良いんじゃないか?」

彼女……ではなく彼が誰なのかと言う問い掛けは予想通りだったが、今の所メイヤ自身に関わる事は無いだろう。

ならば、本当にとって喰われる前にこの場を立ち去らたい所だ。

(ナディアとも話したかったけど、仕方ないな……)

233イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/23(木) 21:10:52
リマ》思います、衣装とかもセンス良いですし(*´д`*) 

考え方によっては整形も化粧の一種かなと思って…
自分の心が汚れているのか、その愛称を初めて聞いたとき何かいやらしい響きに感じてしまいまして…←
芸人枠だからって理由もどうなんでしょう、アイドルなのに(笑)

人の迷惑にならない限り、服なんて自分の好きなものを着れば良いのですよ
まあねwでもあの黄色い歓声に何か笑ってしまうww

間違いなく変な人ですね!(二度目)

まだ上を目指すのですか!もう十分じゃないですかね?(笑)
確かにあれは面白いですけど…流石に家に置くのは…w

なりますん…いえ、なりません(笑)
幼女をいじめるとは不届きな…まぁシエルなら許そう←
マジか、それは楽しみ。今まで白龍は好きな要素が一つもなかったのですが、自分イカれたキャラを好きになる傾向があるので、もしかしたら彼も好きになれるかもしれない、と思ったしだいです

確かにナディアが人を好きになるところとか想像できない(笑)自宅で小姑やって飽きたら旅に出る的な?自由人だなww

ヴェントは一体誰を想っているんですか!?(笑)
男に好かれるタイプっても2種類あると思うんですが…、男から憧れられるって意味か、ホモォ…な意味か(笑)


ヤツキ》デジタルでストレスなく絵描こうと思うと何気に金かかりますよね;
むしろ間を取ってコピックとか使ってみるのはいかがでしょう?

234DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/24(金) 21:21:55
【飛行艇】

「あら、ザンネン」

出場しない。とのメイヤの応えにDDは言葉通りの素振りを見せる。
…と、そこへ。部屋の扉が開き、新たな人影が二つ現れた。

「っんだァ…?おいっ、邪魔だコラァッ!」

出入り口の手前、退出しようとするメイヤとサンディにぶつかりそうになり、シャムは大きな声を上げる。
どうやら二つの人影の正体はノワールとの話を終えたフィアとシャムだったらしい。

「見て見てぇ、こんなのやってるみたい。シャムこう言うの好きでしょぉ?」

そんな彼らに駆け寄り、DDは先程の闘技大会の資料を見せる。

「ねぇ、フィア?アタシ達の旅ってそんなに急ぐものかしら?
時間に余裕があるならちょっとだけ見ていかない?楽しそうだし」


【闘技大会ですが…、イスラの代わりにシャムを出場させて良いでしょうか?;】

235メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/10/26(日) 19:26:44
【飛行艇】

まるでタイミングを計ったかの様に、食堂の出入り口から現れた新たな二人組。

眼帯の男の怒声に、メイヤは眉を寄せて彼を睨むもそれも一瞬。

後に続く銀髪の女の横をすり抜け、メイヤは早足に食堂を後にする。

会話からして先程の二人組もどうやら吸血鬼の様だ。

だが、今は特に構う事も無いだろう。

「サンディ、取り敢えず街へ向かおう。」

ーーーーー

喧嘩っ早いのは何時もの事だが、シャムの怒声には驚かされる。

「ちょっとシャム、ぶつかりそうになったアンタが悪いのに大声上げるのはねぇ?」

足早に食堂から出て行って青年と少女を見送った後、フィアはボソリと小言を漏らす。

しかしそれ以上は続ける事もなく、DDが示した書類に目を通し、彼の言葉に答えた。

「……そうね、急がば回れでは無いけれど、今はそう急がなくても良いわ。

闘技大会、見に行きましょう。

ついでに、昔の知り合いの顔も見たいしね。」

【イスラoutシャムinで大丈夫ですよー。

そうそう、初期費用が割とバカに出来ない額に……うーん、コピックは肌に合わなかって。重ね塗りがイマイチわかりにくくて…】

236サンディ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/10/30(木) 21:09:35
【飛行艇】

「うっせ、人間なんかにナメられてたまるかよ」

呆れた風に小言を漏らすフィアに対しシャムは、
"俺様の進路に立った方が悪い"…と言わんばかりに言葉を吐き捨てる。

そしてその一方でDDは、

「昔の知り合い…?なになに?昔の男?
ちょっと〜、なによその話。詳しく聞かせなさいよぉ」

何故か、昔の知り合い=男、と捉え。その先の下世話な話を期待して、ニヤニヤとフィアの頬を指先で突っつくのだった。


―――…

「…あぁ、びっくりした」

食堂を抜け、艇内の通路を足早に行く二人。
先程の見知らぬ三人組の登場には驚いたが、サンディは胸を撫で下ろし一息つくと、メイヤの声に頷いた。
と、そんな時。

「あ、姉御だ」

とある部屋から出てきたナディアの姿を前方に見かけた。…あの部屋は確かナディアの弟の少年の為に割り当てられた部屋だったと思う。

「姉御〜!メイヤだよ〜、久しぶりにメイヤが遊びに来たよ〜」

サンディは手を振りながらそう声を上げ、彼女を呼び止めた。


【ヤツキ》じゃあ何か理由をつけてイスラのピンチヒッタ―的な感じでシャムを乱入させようと思います^^
ヤツキさん色々挑戦してますね(笑)そしてやっぱり重ね塗り難しいのか〜;
話を振っときながら自分はコピックに触れたことすらないっていう←】

237リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/02(日) 11:12:52
【飛行艇】

「ううん、大丈夫」

アブセルの言葉にリマは首を振り、続く疑問に困ったような笑みを浮かべた。

「セィちゃん、多分お部屋に戻ってるんだと思うんだけど…時々リマが知らないうちにいなくなっちゃうんだ」

子供の頃は何でも教えてくれたのに、今の彼には隠し事が増えたように思う。
自分を心配させまいとしていることは分かるのだが…
離れていた分、一緒にいたいのに。

「寂しいなぁ…」

思わず口に出してしまい、リマはハッとして口を塞ぐ。
そして取り繕うように苦笑いを浮かべれば、アブセルに話を振った。

「リマ、セィちゃんのお部屋に行ってくるね。アブくんはどうする?
あ、服汚しちゃったから先に着替えに行った方がいいかな…?」


-------
【過去】

ねこ?
初めて聞く言葉だ。
アブセルの発言に不思議そうな表情を浮かべると、リトは目の前の動物に目を向ける。
これが猫と言うのか。

「…ね…こ…」

とてもふわふわで、温かい。

238フィア/メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/03(月) 21:09:26
【飛行艇】

「あながち間違えでは無いわ、でも、二人共会った事が有ると思うけれど?」

頬をつつくDDとその隣で悪態をつくシャム。

彼らに紅の瞳を向けながら、フィアは過去を懐かしむかの様な口調で続ける。

「元、澪の派閥の参謀長。

第二世代の吸血鬼……彼がこの街に居るわ。」

……第二世代の吸血鬼。

それは、三人の長老直系の吸血鬼であり、実子とも、半身とも呼べる存在である。

長老の直系である為、その能力は長老に匹敵する程。

「気配を辿るに、街中に居るみたいだから行きましょう。」

ーーーーー

艦内を歩く二人の進行方向に現れた人影、長身の女性の姿にメイヤは足を止めた。

しかし、決して初見の人物では無い。

(ナディアか、街に出る前に会えて良かったな。)

金髪の美しい女性、ナディアに歩み寄りメイヤは声を掛けた。


「久し振りだな、ナディア。

……弟の具合はどうなんだ?」

239ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/04(火) 13:54:04
【飛行艇】

ちょうど部屋を出たところで聞き覚えのある声に呼び止められる。

「サ ンディ、どうしたの?」

何か用があるのかも思ったが、そうでもないようだ。
メイヤだよ!などと言われても、見れば分かる。
メイヤの存在が余程嬉しいのか、弾んだ声の彼女にナディアは苦笑いを浮かべた。

「んー、分かんない。変わらず、って感じ。」

挨拶もそこそこに、リトの具合を尋ねるメイヤにナディアは肩を竦めて見せた。

「意識がいつ戻るのか、そもそも戻るのか?神のみぞ知るってね。聞いたところ、リトをあんな風にしたのは閻魔?とか言うもんだから、神以上に質悪いけど。今頃裁判でもされてるんじゃない?」

しかし、どのような状況でも冗談を交えることが出来るのはナディアの良いところだ。彼女は物事を悲観的に見ない。

「ご先祖様が同じ時代にいちゃうくらいなんだから、何が起きてもおかしくないよね。閻魔とか胡散臭い存在、本当にいたんだな。今リトを起こしてくれないってことは、まだその時期じゃないのかも。」

240アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/05(水) 22:12:09
【飛行艇】

分かる。分かるともその気持ち。
自分だってリトに何か隠し事をされたり、のけ者にされる様な態度を取られるとたまらなく寂しい。

心の中でうんうんと頷くアブセルだったが、リマから問いをかけられると意識をそちらへと戻し口を開いた。

「セィちゃんさんにも一言お礼が言いたかったんだけどさ。一緒に屋敷に来てくれるんならどうせ直ぐまた会えるし。
挨拶はその時にでもゆっくりすることにするよ」

取り合えず今は先に身支度と帰省の準備を済ませときたい。
そう言ってアブセルは一旦リマに別れを告げると、机の上のトレイからジャムパンを一つ取り上げその場を後にする。

そして、そこでふと気がついた。

そう言えば…リマとセナ。あの二人は付き合っているのだろうか。
リト達の先祖だという時点で、二人がただならぬ仲であるという事実は確定している。
だとすれば先程は、リマに恋のなんたるかについて詳しく聞けるチャンスだったのかもしれない。

…まあ、それもまた今度でいいか。
話す機会はまだ幾らでもあるのだから。


【過去】

「そ、よくできました」

リトが言葉を返してくれてアブセルは何となく嬉しくなる。
自然と顔に笑みが浮かぶが、ふとそんな自分に気がついて、アブセルは気まずそうに顔を背けた。

そして、そうして顔を向けた先。偶然にも移動式のクレープ屋さんの露店が目に付いた。
先程から何かいい匂いがすると思ったらあれだったか。

「…なあ、お腹すかない?
前に一度だけジイちゃんに買ってもらって食べたことがあるんだけど、あそこのクレープ美味しいんだ。
せっかく街に来たんだしさ、食べてこうよ」

言ってアブセルはリトを連れてクレープ屋さんの前まで行く。
そこでフルーツとクリームの沢山のった甘いやつを二つ頼んだところで、アブセルはリトに目を向けた。

「お前…お金持ってる?」

241シャム ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/05(水) 22:12:53
【飛行艇】

「澪の参謀長…?」

誰だ、とシャムは疑問符を浮かべる。
己の派閥の面子さえ把握していないのに、他人の派閥…しかも第二世代の者の顔なんて覚えている訳が無い。

「あら、アタシは覚えてるわよ。
割と好みのタイプだったものぉ」

それとは対照的に、フィアの言う人物を特定したDDはどこか嬉しそうに口を開く。

…しかしである。何故その参謀長がこの様な処に居るのだろう。
続くフィアの言葉、彼の元に行くという申し出には特に断る理由もないため、二人は頷いた。

242メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/06(木) 18:22:13
【飛行艇】

ナディアの答えよると、彼女の弟は未だ意識を取り戻さないらしい。

だが、それを悲観的に捉えないのが彼女の強さだろう。

「地獄の閻魔か、案外仲良くなって戻って来るかもな?

それまで時間が掛かるから、まだ目覚めないのかも知れないし。」

ナディアの口調に合わせ、メイヤは軽目の答えを、しかし彼女の気を害さない程度の答えを返す。

そして、バロンやレックスの動向と、復興祭と闘技大会の旨を伝えた上で、再び問うた。

「ナディア達はこれからどうするんだ?」

243リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/07(金) 13:06:03
うぉーっ かなりの亀レスになってて申し訳ないです!
本当は現在のジルの心情とか、リトが目覚める為のある人との絡みとか、同時進行したいサブストーリー温めてるのに全く書けずにいる!!

ヤツキ>>
つい先日、PCがおかしくなって初期化しなきゃいけなくなりーの、使ってたお絵かきソフト消えーの、またダウンロードしなきゃいけないけど一番重要な透過フィルタ何処でダウンロードしたか覚えてなくて軽くピンチーの、解凍ソフトもダウンロードしなきゃいけないから面倒くさいーので、最悪。iPadで良い感じの透過アプリあれば良いのに。


イスラ>>
本当、衣装のデザイン性憧れますよね。よく思いつくなぁと。自分、まったく才能なしなので羨ましくて羨ましくて…> <

言われて見れば確かに…最近の女子は化粧で目が二倍になるし、変わりゃしませんね!←
え、何故ww
アイドルはアイドルでもアイドルぶってる奴ってなんか好きになれないんですよねー。なので芸人枠は褒め言葉です(笑)

正論…!でも街中で見かける甘ロリってるオバハンって実害はありませんが気持ち的になんか嫌だな←
何ででしょうね?不思議だ(笑)
そう言えば自分、乙女ゲームはやりませんがワンドオブフォーチュン?とか言うゲームのエストという子に一時期はまってました。恋愛感情ではないのでプレイはせず、友人のデータでフォト漁ってるだけでしたが。容姿がシエルにそっくりなのです。

そこまで言われるとなんか否定したくなってきました←

シエル好きの頂点に立ちたい←
しかし私にはそんな資格はない…今やってる映画を一人で観に行く勇気が持てず未だに観れていない大バカ野郎ですもの(グスン

まぁ邪魔ですけどね(笑)

自分の心に素直になりましょうよ←
シエルは何しても赦されるのです、可愛いから!←
てかこの幼女、シエルよりも年下だからか、一緒にいるとシエルが男の子として映えるんです。だからシエルのお嫁さんにしたい。←
因みに今の白龍こんな感じです
imepic.jp/20141107/463780


ナディアは死ぬまで自由に生きるんだろうな(笑)

一応いるんですけどねー。多分。
ホモォ…ww残念ながらこっちの方ですね(笑)
ヴェントは変なのに好かれやすいのです、きっと。←

PC死ぬ前に作った線画の色塗ったので貼り逃げ。
フェミルのつもりだったけどなんか違う…
まぁ折角なので。
imepic.jp/20141107/470030

244ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/09(日) 19:25:52
【イスラ》後、コピックも案外初期費用高かったりwwww

久々に水彩色鉛筆触ったけど、アナログの方が肌に合う気がしてヤヴァイww

リマ》弱り目に祟り目過ぎる……

リマの絵は絵柄的に色鉛筆とかでふんわり塗ってみるのも良いかも!

添付は三年振り位に水彩色鉛筆使った絵。

imepic.jp/20141109/694630

245ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/10(月) 15:06:21
【飛行艇】

「有り得る」

メイヤの返しにナディアは笑う。
うちの弟は愛想もくそもないから、相手と親しくなるためには相当時間がかかるだろう。
そう考えると待つのも仕方が無いなどと思える。

そして、続くメイヤの話をひとしきり聞いたあと、ナディアは唸る。

「これからどうするかって?んー…取り敢えず一度邸に帰るしかないかな。リトもあんなだし、親父のことも片付けなきゃだし…」

言ったところでナディアの視線は別の方へ。
メイヤやサンディよりも遠く、此方に向かってくる人影を捉える。

「セナ、何処行くの?」

人影はセナだった。
セナはナディアの問いに応えることなく、一同を横切り部屋の中へ入って行った。
あの部屋はリトの部屋だ。

「リトのお見舞いか…?珍しい」

会ってそれほど経ってはいないが、取り敢えずセナが他人に興味を持つ性格でないことは分かった。
そんな彼がリトに何の用があるのだろう。

ナディアは独り言のようにメイヤ達へ言った。

「ビックリだよね、うちの弟とあの子、似てるどころじゃないよ。同んなじ顔。リマって子は私と全然似てないのにさ。」


ヤツキ>>
【取り敢えず今はちょっと忙しいから来週以降暇になったらペイントソフトダウンロードし直そうと思ってる〜
iTunesもダウンロードし直さなきゃなんだけど、あれダウンロードすると色んなスパムファイルがもれなく付いてくるから削除するの面倒なんだよね…

ワタシカゲツケルノニガテダカラアナログムリナノヨー
PCだと誤魔化せる(笑)
水彩色鉛筆良いなーめっちゃ憧れるー!】

246リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/10(月) 15:07:14
【過去】

お金?
屋敷から出たことのないリトがそんなものを持っているわけもなく、そもそも金とは何なのかと言った具合に、リトはアブセルの言葉を理解出来ていない様子で彼の顔を見た。

「……」

そう言えば、以前姉のナディアが何か言っていた。

”いいか、リト。ここにいれば警備的にまず有り得ないとは思うけど、もし変な人に連れて行かれた時はそいつに金目の物を渡せば助かる。自分の身は自分で守らなきゃね。金は惜しいけど仕方ない。”

リトは自分の身の回りを探る。
金目の物、たしか光る物だとナディアは言っていた。
光る物…見つけた。

リトは腕に付けていた金のブレスレットを外し、アブセルに渡す。

247アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/10(月) 22:48:15
【過去】

「……は?」

お金を持っているかと尋ねたら、金のブレスレットを差し出された。
初めアブセルはその意図が分からずにポカンとリトを見るが、直ぐにハッと顔色を変えた。

そう、彼は知っていたのだ。
それが母や街の女たちが身につけているちんけなアクセサリーとは違う、本物の、価値のあるものだということを。

もちろん、どれほどの価値があって幾ら位の値がつくかなど正確なことは分からないが、とかくクレープ二つ分の料金よりも遥かに高価なものであることは明らかだろう。

不意に視線を感じ目を動かすと、クレープ屋の店員の怪訝な顔と出会った。
アブセルは急いで自分のポケットを探りなけなしのお小遣いを支払えば、クレープを両手に、リトを押してそそくさとその場を離れた。

そして…

「ばッッッかじゃねーの!?
こういうものを他人にホイホイ渡すんじゃねーよ!」

噴水広場まで来たところで、アブセルは足を止めリトに向けて声を張った。
しかし案の定と言うか…リトの顔を見るに彼は言葉の意味を理解していない様である。

何だか怒るのも馬鹿らしくなり、大きな溜め息と共に肩を落とす。
…猫もお金も知らないなんて世間知らずにも程がある。どこのお坊ちゃんもこういうものなのだろうか。

(なんかコイツを一人にするの心配になってきた…)

ともかく、とアブセルは先程のブレスレットをクレープと一緒にリトに返す。
そして自分は広場のベンチに腰掛け、リトに隣に座るよう促した。

「…今日は特別だからな。奢ってやる。
ありがたく食べろよ」

248イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/10(月) 22:49:11
リマ》大丈夫ですよ〜、ゆっくりで良いのでサブイベやってください!楽しみにしてるので!^^
本当羨ましい限りです…(>_<)

でしょう?化粧の魔力怖い(笑)
気にしないで下さいw
うーん、なるほど(笑)

分かります、何か微妙な気持ちになると言うか…(笑)それと三十路のボクっ娘って全然萌えませんね(経験談)←
それ結局のところシエルが好きなだけじゃ…いえ何でもないです(笑)

否定してももう遅いです。自分の中でリマさんは変な人でドジっ子で確定済みですから←
おぉ…すごい、けど…何か無駄にしか感じないその向上心(笑)
そんな…w友達でも無理やり誘って行けばいいじゃないですか(笑)

昔UFOキャッチャーの中に入って縫いぐるみ埋もれて寝たいと思ったことならあります←

可愛いは正義ですもんねw
その幼女って最新巻の表紙のあの女の子ですか?てかシエルって既に許嫁いるんじゃなかったっけ?w
え、どちら様?ww人格が180度変わってるんですが(笑)ん〜…これはちょっと好きになれないかなぁw何か腹立つww

ナディアらしいw

そうなんですか?今いるキャラの中ではない?
あ、そっちでしたか…(笑)まぁそんな感じはしますw

あの、この子どこでなら売ってます?家に持って帰りたいんですけど←
いやはやありがとうございます!目の保養になりました〜^^フェミルの誕生日がバレンタインならジルの誕生日はホワイトデーですね(予想)


ヤツキ》お、セクシーなお姉さん素晴らしい!誰か気なるけど…(笑)
もういっそアナログを極めちゃいましょうよ(笑)
でもヤツキさん以前デジタルで色塗ってましたよね?あれ止めちゃったんですか?

249メイヤ/フィア ◆.q9WieYUok:2014/11/11(火) 22:55:17
【飛行艇】

「生まれ変わりか、意図的に似せたのかもな。

イタズラな輪廻転生の神サンがさ。」

ナディアの声にも、自分達三人の誰にも反応せずに通り過ぎて行くセナ。

その姿が部屋に消えて行くのを見送りながら、メイヤは自身の内で蠢く闇を抑え付ける。

この世で最も上質で、高純度で、しかし混沌とした闇を孕む王子。

それを喰らえば悪神は……

「……そうか、わかった。

四神の護衛は終わったけれど、俺は暫く此処に留まると思う。

暫しの別れか今生の別れかどちらになるか分からないけど、気をつけてな。」

どうやらナディア達は一旦実家の方へ戻るらしい。

彼女達と会うのが最後になるかは分からないが、メイヤはアッサリとだが別れの言葉を口にした。

アグルもそうだが、四神達とは長い付き合いになりそうな気がする。

だから、別れの言葉はこれ位で良いだろう。

じゃあ、と短く会釈をした後、メイヤはサンディの手を引き歩き出した。

ーーーーー

確かに、他の派閥の面子を把握しているかと言われれば、フィア自身もそうでは無い。

それに、彼が参謀長をやって居たのは大分昔の話だった。

「まぁ、そこまで表立って動いてはいなかったし、覚えてなくてもおかしくは無いわ。」

全く逆の反応を見せるシャムとDDを見ながら、フィアは件の人物の事を思い出す。

しかしそれも僅かの事、了承を得たフィアは空間を跳躍。

飛行艇を、騒がしい街中を抜け、目的地へと向かった。

ーーーーー

第801空挺師団が有する飛行艇の基本型は、航海用の帆船に可動式の両翼と、特殊な鉱石を核としたエンジンを積んだ物である。

四神達に与えられた飛行艇が停泊する港とはまた別の、世界政府軍専用の巨港にその船、イオリ率いる者達の軍艦はあった。

漆黒の巨体と、禍々しくも艶やかな色合いを見せる紅と金の差し色。

船体から伸びる両翼には鳳凰を模した装飾が取り付けられ、メインマストに浮かび上がるは絡み合う大蛇と迦楼羅の姿。

「暴の派閥の頭が足りない頭と、長老屈指の色物サンを引き連れて何か用ですか?」

波に揺れる甲板の上、並ぶ三人の長老に決して気圧される事も無く、寧ろ煽りながらその男、クロッソは口を開く。

ーークロッソ・シーダ

澪の派閥の参謀長であり、第二世代、フィア直系の吸血鬼。

とある事件の後、派閥を破門されたクロッソは今、七つの大罪を名乗る傭兵団の一員として、イオリの下に就いていた。

「貴女自身の手で破門した私に今更用があるとは思えませんがねぇ?」

銀髪紅瞳、フィアに似通った面持ちでありながらも、口の端に人を見下した様な笑みを浮かべるクロッソ。

その問いに答えながら、フィアはクロッソの後方、樽に腰掛ける男二人を一瞥した。

「特に用も無く、近くに来たから会いに来ただけ。

……と、答えたかったけれどそうもいかなくなったわ。」

クロッソの後方、二人の男は物珍しそうにフィア達を見つめている。

そして、その二人はゆっくりと、しかし確実に此方へと歩み寄って来るも、それを無視しフィアは問うた。

「レオの仇である、あの男の下に貴方が居るなら、色々と聞きたい話が出来たわ。

オリジンが纏っていたとされる魔装、それと同質の物を何故、あの男が所持しているのか。

そして、貴方も感じている筈の異質な気配の正体を。」

250ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/14(金) 22:19:36
【飛行艇】

フィアの言う時空間の歪みとは、やはり過去からの時間移動というこの世界の概念を狂わせたことによるものの影響だろうか。
しかし気をつけろと言われても対処のしようがある様にも思えない。
何にせよ、この時代にいられる時間ももうあまり残されてはいないのかもしれない。

フィアやノワールと別れ一人甲板に出たジュノスは、外の風に当たりながら思案気に目を細める。
…と、そこへ。

「…もし、そこの方…」

不意に何者かに声を掛けられた。

見ればすぐ側の埠頭に礼服を装った老爺が立っていた。

―――…

ナディアにも色々とやるべきことがある様だ。
何か力になれればとは思うのだが…、彼女の抱える家の問題に自分ごときが役に立てるとは到底思えない。また、ナディア自身もそれを望んではいない筈だ。

「姉御、また逢えるよね?それまで元気でね!」

メイヤに手を引かれながら、サンディもまた手を振りナディアに別れを告げる。
彼女は強い。きっと直ぐに問題事を解決して、再びまた自分たちの前に顔を見せに来てくれることだろう。

そうして二人が立ち去ったちょうどその時、入れ違うようにして今度はジュノスがやってきた。
どうやらナディアを探していたらしい。

「ナディアさん…。外にお迎えの方々がお越しになっているのですが…」

どうするんだ…とでも尋ねる体でジュノスは言う。

先程の老爺はナディア達の屋敷に遣える者であり、またアブセルの祖父だと名乗った。
恐らくアブセルが事前に連絡を入れていたのだろう。

251シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/14(金) 22:20:17
【バルクウェイ】

長老三人を前にしても全く物怖じせず、事もなげな態度のクロッソと、それに相対するフィア。
そんな二人の傍ら、シャムは眉を潜め隣のDDに小さく疑問を投げる。

「おい…、今俺バカにされなかったか?」

「馬鹿ね、聞くまでもなくされてたわよ」

それを聞くや、「なに」と彼の顔が一層険しくなる。
一歩前に出たかと思えば、そこらのチンピラよろしく肩をいからせ、クロッソに向けて威圧的な眼光を飛ばした。

「おぅコラ、このすかし野郎っ、何でもいいから知ってること全部吐きやがれ!!」

252ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/15(土) 15:25:02
【リマ》ソノキモチワカルワー!影付けとか解らんから、デジタルで塗った方が綺麗に見えるのはあるよなww

イスラ》モデルは好きなゲームのキャラですな、前チラッと言ってたアケゲーの……

デジタルのはパソ死んだ臭いのと、レイヤーが全然理解出来ない+ソフト無いから断念ww

あれからちょろちょろっと描いたりしてるけど、アナログのが落ち着きそうだww

253ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/11/15(土) 15:27:50
【添付忘れたww取り敢えず塗ってみたイオリン、派手っつーかチャラいimepic.jp/20141115/550200

254イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/18(火) 23:02:39
ヤツキ》あぁ、lovですね。
なんとwデジタルの要のパソが死んだらもうどうしようもない(笑)
レイヤーは一度覚えちゃえば結構単純ですけどね^^

おぉう、安定の格好良さ!!やっぱいおりん好きだわー^^

255メイヤ/フィア ◆.q9WieYUok:2014/11/19(水) 00:30:33
【バルクウェイ】

以前よりも確実に人が増した街中を、メイヤはサンディの手を引き、歩く。

手を握り続ける理由も無いが、別段放す理由も無かった。

遅目の昼食を屋台の汁蕎麦で済ませ、賑わう露天を観て回る。

復興祭と言うだけあって、かなりの賑わい様だ。

時折、軍服を着込んだ者達の姿も見受けられるが、空挺師団の団員だろう。

「凄いな、街全体が活気づいてると言うか……暑い。」

一通り露天を回った後、比較的人気の少ない公園で休憩を取りながら、メイヤは口を開く。

つい一週間前、街は崩壊の危機に瀕していたのがまるで嘘だったかの様に、バルクウェイは騒がしい。

もとより世界政府のお膝元であった為に人口は多かった筈だが、小国家並みの人員を有する空挺師団を併せる事により、人口密度は元の倍以上となっていた。

「ここまで人が多いと、逆に動き辛いな。

あぁサンディ、アイスクリームが溶けて来てるぞ、服に零れないよう気をつけないと。」

ーーーーー

「威圧的に声を掛けるなんて、まるでチンピラですね。

あぁでも、暴の派閥のトップなのだから間違っては無いのでしょうか。」

煽れば面白い位に反応するシャムの様子に、クロッソは笑みを浮かべる。

どうやら彼は思った以上に単純らしい。

「人に物を乞う時は、それ相応の態度を取るべきだと思いますよ?

例えばそうですね、ドゲザにセップクとかはどうですか?」

肩を怒らせ声を上げるシャムをクロッソは更に煽るも、それ以上は続けない、否、続かなかった。

「貴方、あれから余計に性格が悪くなった様ね。」

何故なら、一連のやり取りの間無言だったフィアが、氷のナイフをクロッソへと投擲したからだ。

「……逆に貴女は人間臭くなりましたね、それはそれで面白いですが。」

眉間を狙って放たれた氷刃を二本の指で受け取り、クロッソは紅の瞳を細める。

「まぁ、現存する吸血鬼達にとっては神にも等しい長老方のお頼みですし、お答えしましょうか。

……ただし、条件付きで。」

そして、どこからともなく取り出した書類を眺めながら、続けた。

「今晩開かれる闘技大会、それに出場し、見事優勝出来たのなら、知りうる事全てを話しましょう。

既に参加者は決まっている様ですが、乱入でもして適当に入れ替わって下さい。

こう言うのは暴力が取り柄の長老サンに向いてると思いますし、簡単だと思いますよ?」

256アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/20(木) 10:56:29
【バルクウェイ】

「見事なものですね…。一週間でもうこんなに街が修繕されて…」

かつて深淵が開いたその広場にアリアはいた。
車椅子に腰掛け、そこから見える街の景色を眺め感嘆のため息をつく。

そしてそんな彼女の後ろにもう一人。
いつもとは対照的の白いワンピースを身に纏い、流した黒髪を風になびかせる少女…ゼツが車椅子を引きながら気遣わし気に口を開く。

「アリア…そろそろ行こう?風が身体に障るよ」

あの日、アリアはディンゴの治癒によって一命を取り止めた。
しかし彼の異能では損傷した部位を完全に癒すまでには至らなかったらしい。
アリアはもう二度と自分の足で立ち上がることも、子供を産むことさえも出来ぬ身体になってしまったのだった。
だが、これも今まで多くの者を殺めてきた罰だと、彼女はそれを甘んじて受け入れた。

アリアは柔らかい声でゼツに言葉を返す。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。
これでこの街も見納めかもしれないから、もう少しだけ…」

故郷よりも長い年月を此処で過ごしてきた。第二の故郷とも呼べるその街の風景を目に焼き付ける。
そうして満足したのか、暫くしてからアリアはつと視線を動かし言った。

「貴方にも…色々と難儀をかけましたね」

視線の先にはヴァイトの姿がある。アリアは続け口を開く。

「先程も言いましたが、私たちはバルクウェイを離れ様と思います。暫くはどこか静かな所で療養できればと思って…
貴方はどうするのですか?」

先の戦いで命を落とした同胞達の弔いも済んだ。
一件に関わっていた上層部の者達もどう言う訳だか皆一様に絶命し、指令を下す者もいなくなった。

本来ならば責任を問われる立場なのだろうが、空挺師団の団長と名乗る男は政府の汚職を公にするどころか、アリア達を拘束することもなかった。
今後どう生きていくかは自分で考えて決めろと言うことらしい。

257サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/20(木) 10:57:12
【バルクウェイ】

…どうして手を繋いでいるんだっけか。
何となく照れくさい様な気もするが、離すタイミングを完璧に見失ってしまったと言うか何と言うか。

いや、別段嫌というワケではないのだ。
ただ、一緒に食事して、露店を見てまわって…これではまるでアレではないか。

そうアレ。恋人的な。そんなニュアンスの。

一度そんなことを考えてしまえば更に意識してしまい。一体周りからはどんな風に見られているのだろう、とか気にしてしまう。

と、その時。不意にメイヤの声が耳に入った。

「え…?わわ…!」

見れば、今にも氷菓の雫が垂れ落ちそうだ。
サンディは急いでアイスクリームにかぶりついた。

しかし、それにしても…。

「なんだかこんなにのんびり過ごすの久しぶりな気がするよ。ずっとこうだったら良いのにね」

人は多いが、賑やかなのが今は逆に心地がいい。今までの戦いづくの日々に比べれば断然平和に思える。

258ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/11/23(日) 00:06:17
【バルクウェイ】

「どうするか、って言われてもやる事ねーんだよなぁ」

緩やかな風が喧騒を引き連れ、吹き抜ける広場。

上司の初めてみる穏やかな表情とその後ろ、ワンピースを着た同僚。

以前の二人を知る者からすれば、色々
ツッコミを入れたくなるだろうその姿に驚いたのも少し前の事。

一週間振りの再会を果たしたヴァイトは、アリアの問いにのんびりとした口調で応えた。

「所属してた組織所か政府も消え、科学者達を率いてたあの胡散臭いジジイも行方知れず。

空挺師団?から入隊の誘いは来てっけど、断っちまったしな。」

バルクウェイでの戦いから一週間。

崩壊した街と政府を空挺師団が取り纏め、ヴァイトはその師団から入隊勧誘と共に色々な情報を聞いた。

戦いの行方も、組織の人間の処遇も、空挺師団が掲げる目標も。

「世界を救う戦いとか言われてもピンと来ねーし、俺のキャラでも無いし。

何より、折角助かった命を無駄遣いしちゃあ、オッサンにどやされるからな。

今までなかった平和で普通の生活ってヤツを楽しませて貰う事にするさ。」

だが、聞いた所でヴァイトは戦いに身を投じる気にはならなかった。

ゼツと戦い、彼女と差し違い、彼女を救った後。

確かに聞いたディンゴの声と、彼が繋いでくれたこの命。

ヴァイトは決めたのだ。

精一杯、この命にしがみついて生きてやると。

「……アンタらと一緒にな。

女二人じゃ色々不便だろ?力仕事位しか出来ねーけど、着いて行くさ。

ついでに言うと、ゼツには宇治金時をご馳走にならないといけねーからなぁ?」

そして、自分と同じくディンゴが救った2つの命を、守り続けるのだと。

「つー訳で、これからよろしくお頼み申し上げます、ってな。」

259DD ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/23(日) 09:01:31
【バルクウェイ】

「あぁ?ザケんなッ、なんで俺らがンな訳分かんねーことしなきゃなんねーんだよッ!」

クロッソの提示した条件に、当然の如くシャムは異議を申し立てる。
力ずくで吐かせた方が手っ取り早いとばかりに、指の関節を鳴らしながら荒々しく彼へと近づいて行く。
が、しかし…。

「もういいでしょ?アタシ、ギスギスするのは嫌いよぉ」

その時、DDがシャムの肩を掴み彼を引き止めた。
そして、続けてクロッソへ目をやる。

「いいわ、そのお遊び付き合ってあげる。…もちろん、シャムがね。
その代わり、こっちも条件出していいかしら?」

かと思えばクロッソの後方に控える者達の存在にも構わず、DDは彼に近寄ると、背中からその首に両腕を絡ませ言った。

「もしシャムがその闘技大会に優勝した場合、アナタは知っていることの全てを話した上でアタシ達の露払い役として共に来ること…なんてどう?
…連れにイイ男がいないとテンション上がんないのよねぇ」

260メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/11/24(月) 21:25:12
【バルクウェイ】

「そうだな、少なくとも俺が四神の護衛に着いて以来じゃないか?

記憶の図書館と弥都でも少しは休めたけれど、結局は争い事が起きてしまったしな。」

氷菓に被りつくサンディの隣で、メイヤは彼女の声に応える。

確かにそうだ、自分が彼女に出会ってから今まで、戦いの日々が続いていた。

サンディ達がそうなる事を見越して、イオリは自分を派遣したのだろうが……

「多分きっと、黄龍とやらを倒すまでサンディや猫男爵の戦いは続くんだろう。

だけど、偶にはこんな穏やかな日があっても良いと思う。

それに、サンディ達四神が世界の命運を全て背負う事も無いさ。」

打倒黄龍を掲げる空挺師団、その勢力は小国家並だと言う。

そんな軍団と合流出来たなら、戦う負担は大幅に軽減されるだろう。

「聞く話によると、師団長はかなりのヤリ手らしい。

確かに30代手前で師団長を務める位だから相当だろうな。

だからさ、協力しあえれば、そう遠く無い内に平和な世界が来るんじゃないかな?」

人々の喧騒も平和の内か、人混みを見詰めながらメイヤは続け、立ち上がる。

「さて、次はどこを廻ろうか?

少し早いけど、闘技場に向かっても良さそうかな?向こうにも露店は出てるだろうしさ。」

261クロッソ ◆.q9WieYUok:2014/11/24(月) 22:40:38
【バルクウェイ軍用港】

艶やかな動きで背後に回り、首筋に両腕を絡めて来るDD。

彼は言った、条件は呑むが、此方の条件も呑めと。

「残念ながら、私の一存では首を縦に振る事は出来ませんねぇ。」

しかし、提示されたその条件を呑む事は出来ない。

「こう見えても今は雇われの身、雇い主を勝手に変える訳にはいきませんので。」

だが、クロッソは悪戯めいた笑みを浮かべて続けた。

「しかしながら、たまには冒険してみるのも良いでしょう。

アナタが提示したその条件、呑みましょう。」

シャムが闘技大会で優勝すれば、クロッソは知りうる限りの情報を開示し尚且つ、フィア達に着いて行く。

シャムが優勝すれば、彼等は現段階で望む全てを手に入れれる訳だ。

……しかしそれは優勝すれば、の話。

彼等はまだ知らないだろうし、公式にアナウンスはされていないが、闘技大会には空挺師団長自らも出場するのだ。

(空挺師団長、レオール・ランブリッシュ。

東方最強の暗殺者であるイオリが唯一、暗殺し損ねた男。)

四霊と並ぶイオリをも超える程の実力を持つ彼が出場するのだ、少なくともシャム一人ではレオールに打ち勝つ可能性は低いと見ても良いだろう。

つまり、レオールが出る以上闘技大会は出来レースな訳だ。

(自分達に分が有る事を前提に話をするアナタが、躓いた時に見せるであろう苦い表情を楽しみにしておきますよ……)

そして。

闘技大会が無事に終わる可能性も決して高くは無いのだ。

寧ろ、あの者達によって空挺師団は今夜、壊滅するだろう。

「さぁ、互いに条件は呑みましたし今日の所はお開きにしませんか?

あまり長居すると、血の気の多い野郎が絡み出しますからね?」

浮かべる笑みを深め、クロッソは話は終わりだとばかりに声を掛けた。

262リト、ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/11/24(月) 23:20:47
【過去】

何だかアブセルは腹を立てているようで。
そこまでは分かったものの、何に対して怒っているのか、アブセルの言葉の意味を理解出来ないリトは黙ったまま彼を見つめていた。
そんなリトの態度にアブセルの方が諦めたようで、買ってきたクレープを食べるよう促す。

「…」

リトは言われるままアブセルの横に腰を下ろし、小さな口でクレープを囓る。

ケーキなどデザートは沢山与えられるけれど、今まで食べたお菓子とは何か違う。
何と言うか…

食べにくい。

食べる際に強く握ったせいでクリームやら中身が外に漏れ出してしまい、手元がぐちゃぐちゃになってしまった。


【飛行艇】

「おー」

サンディの言葉を受け、ナディアは笑顔で手を振り返す。
と、そこへ入れ替わってジュノスが現れた。
しかし彼から出されたのは嬉しい報告ではなく。

「あー…」

アブセルめ、余計な事をしやがって。
屋敷に戻る決意はしたものの、このタイミングで屋敷のものに会いたくはない。
しかし、来てしまったものは仕方ないし…。

「仕方ない、案内して」

言いかけたところでナディアはふと思いつく。
彼女はなるべく面倒ごとを増やしたくない質だ。
ナディアの父親、ヨハンが死んだと言う知らせは屋敷の者達にとって打撃が強いだろう。その上リトまであんな状態になっていると知らせたら…

「あのさ、えーっと、ジュノス、だっけ?」

リトの事を恐れるくせに、リトの力に縋っている都合の良い奴ら。闇が蔓延し出した今、闇を従わせる者がいないと知れば、混乱を招きかねない。

「あのさ、似てるってのを利用して、セナをリトとして連れて帰りたいんだけど…駄目?」

263キール ◆.q9WieYUok:2014/11/25(火) 01:13:36
【虚空城】

現世と交わる事の無い、位相空間に浮かぶその城は、虚空の中にあれど圧倒的な存在感を示している。

世界を監理し、監視し、世界の中枢である存在、黄龍。

その居城は今、不気味に蠢いていた。

ーーーーー

「で、傷は全治したのかしら?」

イオリとシデンの戦いは、両者痛み分けの結果に終わった。

血塗れのシデンを虚空城へ連れ帰り、黄龍への報告を済ませてから一週間。

発令された新たなる指令を伝える為、一週間振りに顔を合わせる事となったのだが……

「その表情を見るに、かなり不満がある様だけど?」

虚空城の大広間に現れたシデンへ、キールは普段よりもやや、呆れた声色で声を掛ける。

「貴方の言いたい事は伺い知れるけれど、あの時の撤退はしょうがなかったのよ。

それとも何?あの男との決着を着けるまで動かない、何て言う訳じゃないでしょう?」

プライドの高い彼の事だ、四霊では無かったただの人間が、自分とほぼ互角の戦いを戦いを繰り広げ、更には決着が着かなかった事に苛立っているのだろう。

しかし、それに構っている暇は無い。

声を掛けながらもその返事を待たず、キールは指令内容の説明を始める。

「新たな指令は、バルクウェイへ駐留する空挺師団の壊滅及び、空挺師団旗艦の動力炉の奪取よ。

打倒黄龍様を掲げる空挺師団の戦力は、決して無視出来ない。

師団長はあの男、イオリをも超える実力者であり、その側近達は四神並。

今はまだ、虚空城へ攻め入る手段を持たないとしても明らかな驚異よ。

今回の作戦は敵陣の真っ只中に飛び込む事になるけれど、今までと違い多少の援護があるわ。」

崩壊する世界政府から逃げ出した科学者達と、彼等が有する技術と実験体。

新たなる人類の礎に、と調整されたそれらを基に、虚空城のデータを用いて生み出された兵士。

「急造な為に簡単な命令しか聞かないけれど、頑健かつ驚異的な再生治癒力が備わった人造人間が多数。

それと、内通者が一人。

後はイレギュラーだけど、四凶の面々。

彼等を囮にすれば、師団長やその側近と正面からぶつからずに済む筈よ。

不意打ちで良いわ、師団長を討ち、旗艦の動力炉を奪取する事。

それが、今回の作戦内容よ。」

264サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/27(木) 02:52:02
【バルクウェイ】

「そっか…、うん、そうだよね。そうだと良いな…」

メイヤの言葉を聞き、サンディは頷く。

世界の平穏の為に動いているのは決して自分たちだけではない。
一人だけでは微々たるこの力も、多くの者と合わせればきっと更に強大なものになる。
そう思うと胸に抱えるこの重責も大分と軽くなった。

サンディはぴょんとベンチから飛び降りると、メイヤの後をついて歩いた。

「あ、そう言えば闘技大会でるんだっけ?今の内に下見しとくのも悪くないかもね。
そんでガッツリ賞金ゲットだぜ!…て、あれ?賞金って出るんだっけ?」


――――…

「あら、話の解るイイ男。お姉さん胸キュンしちゃいそうだわぁ」

条件を呑んだクロッソに向け、DDはお返しとばかりにその頬に軽く唇を当てる。
そうしてそっと彼から身を離すと、今度は後ろを振り返りシャムに向けて言った。

「と言うわけで、頑張ってねシャム!アタシ期待してる!」

気のせいか、その目は炎が燃えたぎっているようにも見える。

「ちっ…、めんどクセぇ…」

対しシャムは付き合い切れないとばかりに、ダルそうに頭を掻く。
そうは言っても、ルドラを引き取った件といい案外彼は人が良いようで、なんだかんだ今回も割を食ってあげるのだろう。

話はすんだ。シャムは、もういい帰ろうとフィアに目を向けた。

265ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/27(木) 03:26:50
【バルクウェイ】

「え゛ッ!?」

思いもよらぬナディアの返事にジュノスは上擦った声をあげる。

それはつまりセナをリトの替え玉にすると言うことか。
確かに彼等の容姿は瓜二つ。こっそり入れ替わるのも可能だろうが…。

「セ…セナ様がご承諾なさるのなら…」

しかし内面は全く異なる二人。
分かる人には分かってしまいそうな気もするが、最終的にジュノスはナディアの願いを聞き入れた。

「しかしこう言ってはなんですが、セナ様にリッちゃんの振りが出来るのかどうか…。
それにその間リッちゃんはどうなさるのですか?」

続けて、ジュノスは迎えの者達の元にナディアを案内すべく歩きながら彼女に問うた。


【過去】

…なんてドンくさい奴…。

クリームまみれで悲惨な状態のリトの手元を目に、アブセルは呆れて言葉を失っていた。
もしかしてクレープも食べたことがないのか…?いや、だとしてもこれは酷い。

「あ〜も〜…何やってんだよ、グチャグチャじゃん」

アブセルはポケットからハンカチを取り出すと、それでリトの手を拭いてやる。
良かった、祖父にハンカチを持たされてて。

「ほんと、世話の焼ける奴…」

って、あれ…?なんかさっきからリトに振り回されてる気がするんだが、気のせいだろうか。
そんなことを思いながらも、アブセルは自分の持っているクレープをリトに差し伸べる。

「これは軟らかいから優しく持ってやんなきゃ駄目なの。
ほら、口開けろよ。食べさせてやるから」

しかし、だ。

クレープを人に食べさせるのって案外難しい。
口元に運ぶ筈が、勢い余って彼の顔面に押し付けてしまった。

「…あ」

態とじゃない。決して態とじゃないんだ。だけど…、

「ぷっ…くくッ…、へっ…変な顔…!」

べったりとクリームのついたリトの顔を見て、アブセルは思わず吹き出してしまう。
彼の顔を指差しケラケラと笑うのだった。

266アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/30(日) 02:43:49
【バルクウェイ】

宇治金時の話しを持ち出すヴェントに対し、ゼツは小さく舌を打つ。

「なんだ、覚えてたんだ。忘れてくれて構わなかったのに」

かと思えば、今度は彼に向けてズイッと人差し指を突きつけ、続けるように言った。

「あと、女扱いして欲しくないのが僕。この格好はアリアが勧めるから仕方なくやってるだけで…ゴニョゴニョ。
とにかく、君なんか来なくたって別に困らないんだから」

どうも彼女の着ているこのワンピース、もう戦う必要もないからとアリアが見繕ったものらしい。

以前よりもイキイキと憎まれ口を叩くゼツも、側で穏やかに笑うアリアも、見様によってはまるで憑き物が落ちたかのようである。

正直アリアにいたっては、最初の内は目も当てられぬほどだったと言う。
無理もない。心から信頼…いや、愛していた者には利用された挙句、裏切られ。今まで正義だと信じて行ってきたことが飛んだ過ちだったのだ。
彼女の失意は計り知れない。

しかし、そんな彼女も見舞いに来てくれた部下達からの励ましの声あってか、今は大分落ち着きを取り戻した様だ。
それに被害者面が許される立場でもないのだ。

アリアはゼツに宥める様に声をかけた後、ヴァイトに向けて言った。

「ありがとう、荷物を持って貰えると助かります」

そう、今まで奪ってきた命や殉職した部下達の為にも、必死に生きて罪を償わなければならない。それが人一倍責任感の強い彼女が出した答え。

「じゃあ…、そろそろ行きましょうか」

そう言ってアリアは二人に微笑みかけた。

267シデン ◆Hbcmdmj4dM:2014/11/30(日) 02:44:48
【虚空城】

淀みなく言葉を綴るキールの視線の先。
そこには革張りのソファに足を組んで座るシデンの姿があった。

「…全快していない、…と言えば(任務を)降りても良いのか?」

キールの方へは目もくれず、シデンはネイルファイルで爪を磨きながら憮然とした態度で言う。

負傷した傷は既に完治した様だが、どうも気分が乗らないらしい。
どこか気怠そうにしながら更に続ける。

「手の空いている者なら俺の他にもう一人いるだろう。
…応龍の奴が」

268メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/05(金) 21:35:52
【バルクウェイ】

「確か賞金も出るみたいだぞ、金額は見てないけれど……」

公園は闘技場へ歩を進めながらメイヤはサンディの問いに答える。

途中、何人かの知った顔……処刑人の剣の面々とすれ違うも、目を合わせるだけで特に声を掛ける事もなかった。

以前対峙した時とは全く違った雰囲気、柔らかな表情や様子を見るに、彼等も新たな人生を歩んで行くのだろう。

車椅子に乗る女性と、それを押す少女。

二人に付き添い荷物を持つ青年の姿を見送り、メイヤもまた、彼等とは別の方向へと歩いて行く。

ーーーーー

闘技大会自体は夕刻からなのだが、闘技場周辺は既に観客達の威勢の良い声……怒号に包まれていた。

彼等の声を聴くからに、どうやら運営公認のトトカルチョがある様だ。

誰が優勝するのか、誰が大穴か、などを話す男達の間をすり抜け、メイヤは大きく貼られたトーナメント表に目をやった。

(そう言えば、初戦はアグルとだったか。

あの時俺を置いて逃げたお礼をしないとな。)

丁度その時だった、隣に並び立つ男……空挺師団長の側近がメイヤとサンディに気付いたのは。

「……お前は確か……シンライジの弟か。

隣のちっこい赤毛はアレか、四神の天照だな。」

メイヤの黒髪とはまた違った色合いの黒髪と赤い瞳のその男、マルトは丁度良かったと前置きをし、挨拶もそこそこに話し始める。

「飛行艇でお前達の仲間に話しそびれたんだが、ここ数日異能を持った人間が何者かに襲撃されているのは知ってるか?

目撃情報はあまり無いんだが、どうやら襲撃者はかなりの実力者らしい。

二人一組で片方は変な訛り癖があるようで、もう片方は白髪のガキとも聞く。

空挺師団の方でも捜査してるんだが、お前達も気をつけろよ?

件の二人組は異能者を実際に喰う、らしいからな。

……まぁ、異能抜きにしても、若いカップルは変なヤツらに絡まれない様気をつけろよ。」

【鈍亀レス申し訳無い、新婚旅行行ってて板を全く見てなかった……】

269フィア ◆.q9WieYUok:2014/12/06(土) 18:40:26
【バルクウェイ】

敵地の真ん中とも言えるこの場所では強引に聞き出す訳にもいかず、しかし提示された条件を鵜呑みにするのも気が引ける。

だが、双方共に話が纏まりつつある今、フィアは無言で頷くしかなかった。

ーーーーー

暑苦しいまでの人混みと、喧騒に包まれる闘技場。

既に観客席は開放されており、多くの観客がひしめき合っている。

その最上階、ドーナツ型に建設された闘技場の最端部にフィア達は居た。

「で、問題はどうやって出場するかね。

今の所欠員は出てなさそうよ、出場者を適当に一人捕まえて入れ替わるのが無難かしら?」

配布してあるトーナメント表に目を通しながら、フィアはDDとシャムに声を掛ける。

「まさか乱入する訳にも行かないでしょう?」

270ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/07(日) 20:08:55
【飛行艇】

セナにリトのフリが出来るか。
間違いなく、無理だろう。

「まぁ顔があんだけ似てるんだし、双子じゃないのに同じ顔がこの世に二つあるわけないんだし、周りはリトが大人しくなった〜くらいにしか思わないんじゃない?」

多分、これが逆、感情が表に出やすいリトにセナのフリをしろと言えば難があるだろうと思う。セナがリトをやる分には問題ないだろう。

「リトは人目を避けて部屋に眠らせておく。ただ、セナも其処で過ごしてもらうことになるからちょっと不自由させるけど…」

それからナディアはふとジュノスを見る

「あんた、人を見る目とかある?」


--------

【過去】

顔に付いたクリームを拭いながら、リトはアブセルを見る。
アブセルはこちらをみて笑っていた。

「……」

その顔が何とも気に入らない。
リトは自分の握るクレープをアブセルの顔になすりつけた。

271リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/07(日) 22:03:00
ヤツキ>>
新婚旅行おかえりー!

イスラ>>
三十路のボクっ子って実在してるんですか(笑)

変な人でドジっ子って何キャラww
向上心はあってなんぼです!←
友達は大事な試験前だったもので…っと思ってたら抜け駆けして前編見終わってたので悔しいから後編だけ一緒に見てきました←

ぬいぐるみに埋れたいwwたしかに気持ち良さそうですね(笑)

そうそう正義!
はい、まさしくその幼女です。
あー許嫁ねー…エリザベスはもう未亡人でいいよ←
凄いですよねw巷では二重人格とか言われてます(笑)腹立つとか酷い!!w
因みに白龍さん、いますごく大変な事に…
→imepic.jp/20141207/793001
この二人親子ェ……


でも最近ナディアのキャラ見失ってきてます←

非売品ですww手に入れようものならもれなくジルが付いてきます←←
あぁ、ジルはホワイトデーか、成る程!←

272イスラ ◆jH0158NXZ6:2014/12/09(火) 20:23:01

【ヤツキ》おかえりなさい^^新婚旅行はどこに行ったんですか?

あと今更なんですがゼロってどういった存在なんでしょう?
自分的には…世界(惑星?)の意志=ゼロの人格を形成しているもの
つまりは世界自身が己の終焉と再生を望んでる…みたいな感じに勝手に認識してたんですけど(笑)
実際ところどうなんでしょう?


リマ》頃合いの良いところでポセイドン邸への場面転換お願いしてもいいですか?もしくはこっちがします

それが実在するんです(笑)

後編だけw友達のがガチでしたね(笑)

あの幼女かわいいと思ってました^^
どう言うことwエリザベス嫌いなんですかw
おい、ママン何してんすかww

あ、そうなんですか?
自分はサンディのキャラ最初からずっと見失ってますよ←

っち…非売品か…←てか、もれなくジルが付いてきても全然構いませんよ←】

273サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/09(火) 20:49:05
【闘技場】

会場は予想以上の賑わい様だ。
血気盛んな男達の姿や場の様子を目に、サンディは物珍しそうに視線を巡らす。

張り出されたトーナメント表を見るに、どうやら一回戦は仲間内での対決になるらしい。

(うーん…こう言う場合どっちを応援すれば良いんだろう…)

そう思案していたところ、横にいた空挺師団員マルトが二人に注意を呼び掛ける。

…怖い人達もいたものだ。
でもまさかこの近くにはいないだろう、とサンディは呑気に話を聞き流すも…。
彼の最後の一言だけは何故だかしっかりと耳に入ってきた。

「……へ…?」

カ…カップルって…。

「全っ然!そんなんじゃないからッ!」

真っ赤になりながらも、サンディは慌てた様にぶんぶんと頭を振った。

274ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/09(火) 21:08:39
【飛行挺】

まあリトの姉である彼女がそう言うのだ。心配することはないのかもしれない。
それに、その辺はナディアや自分でフォローをすれば大丈夫だろう。

…と、一応は納得しかけたジュノスの横で、今度は不意をついた問いが投げ掛けられる。

「さあ…どうでしょう?
ないことはない…かもしれません」

セナやリマのことを慕っている辺り、ある程度の眼識はあると自負している。
しかしその問いの意味するところが解らない、とジュノスは小首を傾げた。


【過去】

「ぶフッ…」

まさかやり返されるとは思ってもいなかった。
アブセルは初め驚いた風に目をぱちくりとさせていたが、直ぐに我に返りキッと眉をつり上げた。

「やったなっ!!」

お返しとばかりにクレープを振り上げ、リトに掴みかかる。
…が、またもや力加減を誤ったのか、それともリトがひ弱過ぎたのか。アブセルがリトを押し倒す形で、二人はベンチの上から転げ落ちてしまった。

「…ッて〜…」

…少しふざけすぎたか。
食べ物で遊ぶと祖父に叱られてしまうんだった。

せっかく買ったクレープも地面に落ちて食べられなくなってしまったし、服も顔もベタベタだ。

「ごめん、怪我しなかった?」

流石に悪いと思ったのか、アブセルは身体を起こしリトを気遣い見る。
先程の衝撃で僅かに捲れ上がったシャツの隙間から、リトの白い肌が覗いていた。

「あ…ここ、アザになってる」

そこでアブセルは彼の脇腹辺りに青黒い斑紋があるのに気がついた。
落っこちた際にぶつけてしまったのか?
いや…それにしては…。

「あれ?ここにも…こっちもだ」

アブセルは更にシャツを捲り上げる。
リトの身体の痣は一つどころか数ヶ所に及んでいた。肌の色が白い分、それは際立って痛々しく見える。
また、痣の色的にもついさっきついた様な感じではなかった。

275キール ◆.q9WieYUok:2014/12/13(土) 18:10:31
【虚空城】

「嫌いなのよ、あの子。

捨て犬だか捨て猫だか拾って来た挙げ句、その獣に牙を剥かれてたし。

……何より、応龍は黄龍様に忠誠を誓ってないのよ。」

普段ならば率先して任務に着くであろうシデンの、予想外の言動にキールは小さく溜め息を吐いた。

「乗り気じゃないならいいわ、今回は私がやる。

お子様の面倒見も、偏屈頭のフォローもしなくて良いのは気が楽だからね。」

裏切り者の鳳凰と、気分屋の応龍。

あの二人よりは、麒麟であるこの男の方が相方としては好ましい。

しかし、今回は動く気が無いようだ。

気怠げに爪を磨くシデンへと二度目の溜め息を吐き、キールは彼に背を向ける。

「もし私が帰らなければ、後は頼むわよ。」

そして、普段よりもトーンを落とした声で声を投げ掛け、次なる戦地へ……バルクウェイへと向かった。

【ただいまですわー、北海道で美味い物食べ過ぎて太ったwwww

イスラ》その認識で合ってるよー、世界中枢であるゼロを撃破=世界崩壊、的な。】

276ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:37:51
【ポセイドン邸】

薄暗い月明かりの中、ジルはその気配なくある一室に姿を見せる。
主不在の屋敷は警備が脆い。一般的な侵入者は防げても、彼のような能力者であれば警備を抜けるのは容易い。

「……」

部屋の主は眠っていた。
明朝受け入れがたい現実が訪れることなど露も知らず、安らかな寝息を立てて。

「ごめんね…」

その寝顔を見つめ、ジルは呟いた。
歳を重ねても色褪せない…今となっては朧げな記憶ではあるものの、想い出の彼女とほとんど相違ない。
ずっと会いたかった人。

「どうしても赦せなかったんだ」

大好きなミレリア。だけど、貴女の夫は憎かった。
自分から、何もかも奪って行ったあの男が。
あの男を…ヨハンを殺したのは黄龍の指示があったからだけじゃない。指示がなくてもいつか殺していただろう。その時期がただ早まっただけだ。

「もう会えない。僕はあなたの仇だから…」

ジルは呟き、ミレリアの髪を撫でる。

「誰?」

その声にジルはハッとして手を離した。
眠っていたはずのミレリアと目が合う。
起こしてしまった。

「おば…さま」

「…トーマ?」

どう取り繕えばいいのか。ジルは珍しく動揺を見せるが、その必要は無かったようだ。
ミレリアが別の名前を呼んだから。
自分の面影に父の姿を重ね、彼女は嬉しそうに微笑みかける。

「トーマ、やっと会いに来てくれた…ずっと待っていたのに。」

言ってミレリアはジルの頬に手を触れる。

「貴方は昔と変わらないのね。私はこんなにオバサンになってしまった。今では貴方より歳もずっと上よ、不思議ね。」

昔を懐かしむように目を細める。自分を子供扱いして、拗ねる自分を笑いながら優しく撫でる姿を今でも覚えてる。

「トーマ、貴方に謝らなきゃ…謝ることが沢山あるの。貴方を愛していたのに、私の手を離した貴方が赦せなかった。私を諦めておきながら、私を奪ったヨハン様と変わらず接している貴方が憎かった。でも貴方の子供は可愛くて…貴方に似たあの子を初めて見た時、貴方との縁が切れずにいたらなんて、考える自分がいたわ。そんな自分が赦せなくて、貴方の奥さんに申し訳なくて、余計に…貴方を恨んでしまった。」

でも…

「貴方をこんなに愛しているのに、貴方を諦められずにいながら、ヨハン様のことも愛していた。あの方は私を必要としてくれたもの。私の心が貴方のところにあると知っていても変わらず私を求めるあの人が不憫で…いつの間にかあの人のことも、愛していた。」

277ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:38:25
そして、それが始まりだった。

「私が悪いの。ヨハン様だけを愛する事が出来たなら、…いいえ、もっと早く、ヨハン様だけを愛する事が出来ていたなら…」

ヨハンは知っていた、結婚しても尚、ミレリアの心にトーマの姿が残っていることを。
ジルを可愛がるミレリアの心の内を、彼は気付いていた。
そしてミレリアも、そんな自分を見るヨハンの心情に気付いていた。申し訳なくて、でもどうしようもなくて…

「知ってる?私ね、ヨノの下にもう一人身籠ったの。また子供を生ませてくれるって聞いて、とても嬉しかったのよ。ヨハン様が私を赦してくれた。だからもあの子が生まれたら今度こそ貴方を忘れて、ヨハン様だけの為に生きようって決めたの。」

しかし、上手くいかなかった。

「私の希望の子は…無事に生まれて来てはくれなかった。神様が私を赦してくれなかったのかな。ヨハン様の気持ちに応えようとしたのに…あの子がいなければ私の気持ちを信じては貰えない…。結局、あの人は耐えられなかった…」

涙を浮かべるミレリアに、ジルはどうしようもない気持ちになる。
彼女が求めていたと言う子は、ちゃんと生まれてる。
彼女の言葉を借りるなら、ヨハンは初めから彼女を赦す気などなかったんだ。

「知っていたの?」

ジルは渦巻く感情を飲み込み、ただ一言、問いかける。
ミレリアは頷いて見せた。

「貴方を死なせたのは私。ヨハン様を傷つけたから…私が報いるべき業を、貴方が被ってしまったの。ごめんなさい…貴方の幸せを奪ってしまった。貴方の子供達も見つからないの…」

幼い子供達から両親を奪ってしまった。
せめて子供達に償いをしなければ…そう考え動いた時には、すでに彼の二人の子供の消息は掴めなくなっていた。

278ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 20:39:03
-----

「……」

先程までいた部屋を背にして、ジルは無言で佇む。
泣きながら何度も謝り続けるミレリアに、結局何も返せず出て来てしまった。

把握していない事実まで出て来たものだから、頭がついていけず混乱している。
整理するのも面倒だ。

「…あなた…」

そんな彼に、新たな声がふりかかる。
顔をあげればそこにはミレリアの娘、ヨノの姿があった。

「…」

本当、何もかもが面倒。
何か取り繕うこともせず、ヨノの声を無視してジルはその場を去ろうとする。

「ジル…?」

しかし続く彼女の言葉に、ジルはその足を止める。
今、何て…?

彼の動きを肯定ととったのか、ヨノは更に言葉を繋げた。

「ジル…ジルでしょ?あなた…」

何故こんな所にいるのかは別として、目の前にいる男の子を、ヨノは知っている。
成長した彼の姿に幼い頃の面影を見た。

「…」

観念して振り向いたジルへ、ヨノは駆け寄る。

「今まで何処にいたの?お母様が貴方をずっと探して…」

言いかけたところで、ヨノはハッとした。

「…泣いているの?」

彼の顔に滲むそれを、ヨノはそっと指で拭った。
何だこの娘は。いきなり現れた男に警戒することもせず、むしろ気にかけるなんて。

「…不思議だ…」

頬に触れる彼女の手を取り、ジルはその顔に笑みを浮かべた。

「ナディアお姉さんは覚えてなかったのに…」

本当、調子が狂う。
思えば彼女は昔からそうだった。いつも何処か抜けていて…
今ではもう遠い日。”遊びに行くんじゃないよ”と困り顔を浮かべる父親に無理を言って、仕事で行く先々にくっついて回っていた。その中でも頻繁に訪れていた大きなお屋敷に住んでいた、二人の可愛らしいお嬢様。奥様のミレリアはとても優しい人で、勝手に付いてきただけの自分を気遣い、退屈しないようにと、お嬢様と会わせてくれて、一緒に遊んでくれた。
自分は覚えてる。あの時が一番楽しかったから。
彼女が覚えてるとは思ってなかったけど。

「ヨノ、一つお願い聞いてもらえる?」

「何?」

抱きしめてもいい?
その言葉を言う前に、ジルは彼女の体を抱き寄せていた。
あの時は彼女の方が背が高くて、いつか追い抜いてやるんだって、むくれていたっけ。
今では頭一つ分くらい小さい彼女、一瞬硬直したものの、すぐに受け入れてくれた。

「会えて嬉しい。だけどもうサヨナラだ。」

「どうして?また以前のように皆で遊びましょう?」

「もう遊ぶ歳じゃないよ。」

「それもそうね、でも私は貴方に此れからも会いたいわ」

ジルはヨノの体を離す。
自分を見上げる彼女の顎に手を添え、そっと顔を近づける。
しかしその唇に触れることなく、ジルは顔を離した。

綺麗になった。記憶の中にいた彼女よりずっと…

「ヨノ」

自分は何を期待していたのだろう。
彼の呼びかけに何もなかったと悟ったヨノは、反射的に目を閉じてしまったのが恥ずかしくなって顔を赤らめる。
そんな彼女の仕草にジルはクスリと笑った。

「お願いを聞いてくれたから、調子に乗ってもう一つ。
僕の名前を呼んで。」

「ジル?」

「今じゃないよ。
もし仮にまた再会出来たなら、その時はもう一度、僕の名前を呼んで欲しい。僕が僕でいられるように、僕が僕でなくなってしまっていたなら、元の僕に戻れるように、君だけは、僕を忘れないで」

その時まで、さようなら。

279ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 22:30:46
【飛行艇】

「よし、じゃあ任せた」

ジュノスの返しに満足し、ナディアはニッと笑ってみせた。

「今回の首謀者がまさかの父親。あまりに近い人なもんだから、若干人間不信的な?まぁそれは半分冗談だけど、取り敢えずそろそろ屋敷の人間を敵か味方か振り分ける必要があるかなって思うんだよね。」

そしてポンっとジュノスの肩を叩く。

「手始めに今から会う爺さんを宜しく。」


------

【過去】

痣を見つけたアブセル。
途端、リトは彼の腹を思い切り蹴り飛ばして急いで身体を隠す。

「……ケホっ」

一瞬の動揺が引き金となったのか。
突如リトの口から咳が漏れる。

「ゲホっゴホっ」

それは次第に酷くなり、リトは苦しそうに踞った。

280リマ:2014/12/14(日) 22:54:45
ヤツキ>>
いいなーっ北海道!!
人生で一番楽しかった高校時代に修学旅行で行った思い出の場所!!また行きたいなー> <

イスラ>>
ようやく書きたかった奴の一つ、ジルとの絡みが書きあがりましたーっ
時間軸めちゃくちゃだけど( p_q)

了解です!もしかしたらお願いしちゃうかもしれません(。。;)

うわー…なんか恐怖を感じます←

前編は結局見れなかったのでDVDで我慢します(≡ω≡;)可愛いシエルは前編の方が多かったんだけどなー…まさか抜け駆けさせるとは(笑)
友達の方は「実習中で大変だと思って誘えなかった」だそうです(笑)お互いの思いやりがすれ違いを呼んだ(笑)
いえ、友達は一番くじの件で私には勝てないと認識してるようですw
てか別の友人に久しぶりに再会した時ラストワン手に入れたこと言ったら「あんたならやり兼ねないと思ってた」って言われた…あれ(**)?

可愛いですよーっシエルにお似合いですp(´∇`)q
嫌いではないけど、あんだけシエル好き好き言ってる割には気付かないんだなぁって思うとなんだかなぁって。

ビックリですよねw自分学校で読んじゃったもんだから「えぇ!?」って声出しちゃいましたよ←
因みに白龍ちゃんは次の週にママに噛みつきました。何この親子ww

最初からww
もっとサバサバしてる子にしたかったのに、意外に思い悩んでる感じになってしまってるんですよねー…

ジルが付いてくると面倒ですよ?(笑)

281メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/16(火) 00:30:00
【バルクウェイ闘技場】

異能者を狙う二人組みの話を聞き、メイヤは記憶を辿る。

(そう言えば、弥都でそんな奴と戦ったような……)

しかし、続く言葉とサンディの慌てふためく声が思案するのを妨げる。

「なっ……いや、俺達はそう言うのじゃない。

四神は護衛対象だったし、その。」

……確かにそうだ。

今は手を繋いでいないが、つい先程まではしかと手を繋いで街中を歩いていた。

マルトがそれを見ていた事は無いだろうが、連れ立って歩く自分達二人の姿は“そう”見えてもおかしくない。

見れば隣のサンディは顔を赤らめている。

しかし、マルトの言葉……その単語を否定的するのも何故か気が進まない。

「ハハ、お前達初々しくて面白いな。

団長が見たら酒の肴に一晩どころか3日は弄られるぞ?」

どう返すかを考える内にマルトは笑いだし、“そろそろ控え室が開くから集まっておけよ”と言い残してその場を立ち去って行く。

その背が人混みに消えたのを確認し、メイヤはサンディに声を掛けた。

「……その、悪い気はしないけど何だかもぞもぞするな、うん。」

【リマ》俺も高校の時以来だわww社会人なると、業種にもよるけど中々まとまった休みが取れんからねー。

学生の内に旅行するべきやね!】

282サンディ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:24:27
【闘技場】

言いたいことを言えば、マルトは笑いながらその場を去っていく。
どうやらただ単にからかわれただけの様だ。

(全く…いきなり変なこと言うからビックリしちゃうじゃん…)

サンディはむくれっ面でマルトの背を見送るが、そこで不意にメイヤの声が耳に入ってきた。

「そうそう、悪い気はしないけどー……って、…ぅええ…っ!?」

それって一体どういう意味だ。
驚きのあまり思わず変なポーズで仰け反ってしまうサンディであったが。直後、そんな二人の間を割る形で、突然一人の男が倒れ込んできた。

―――…

熱気と喧騒に包まれる闘技場。そこかしこから感じる剥き出しの闘志。
そんな会場の雰囲気に、シャムの血も徐々にたぎってきた様だ。

「恐喝か…それとも力ずくで行くべきか…、それが問題だ…」

どうやって出場するかを問うフィアの声を背に、シャムはキョロキョロと目ぼしい人物を探しながら屋内から外に出る。

と、丁度その時だ。

「ちょっと…!?どうしたの!?」

娘のものと思しき大きな声が飛び込んできた。
見れば先ほど飛行挺の中ですれ違った赤毛と黒髪。
その二人に挟まれる様に、地にくずおれた男が一人…。

「…アグルに大会のことを聞いたんで此所まで来てみたんだが…、何か途中で寒気がし出して…頭くらくらして…」

地に伏していた男の正体はイスラだった。
どうやら熱があるらしい。それもかなりの。
イスラの額に手を当てていたサンディは呆れた風に言う。

「病み上がりなのに無理な稽古続けるからだよ…。
この分じゃ出場は無理だね。医務室とかで休ませて貰った方が良いよ」

「え…、嫌だ。出る…」

「めっ、です!」

そんな目の前の光景を見据え、シャムはニヤリと口の端を歪めた。

「…どうやら面倒なことをする必要もねーみてぇだな」

283ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:29:03
【飛行挺】

なるほど、例えるのなら良い豆の中からそうじゃない豆を選別し取り除く。それと同じことをしろと言う訳か…。
結果いかんでは、彼女は屋敷の人間を一新させる気なのかもしれない。

……って。
どうしてそこでそんな重大な役目に自分を起用しようと考えた!?

彼女の家の事情に関しては全くの無知。
言うなれば余所者、部外者、第三者。

しかもさっきの爺さんと言えばアブセルの祖父で…同種の闇の気を感じたことから、恐らく自分との血の繋がりもあるのだろう。
向こうも何かを感じ取ったのか、先ほど顔を合わせた際、怪訝な顔をされた為、あまり会いたくはないのたが…。

…何だか断れる雰囲気ではない。て言うか断っても多分ムダっぽい。

「…………」

ジュノスは何も言わず、ただ彼女への返事の変わりに、顔に引きつった笑みを浮かべるだけだった。


――…

「ご当主様…!」

船から降りてくるナディアとジュノス。
その姿を見つけるや、老翁はハッとし、彼女に駆け寄った。

「今まで一体どちらに行っておられたのですか!?爺めは心配致しましたぞ!」

仕事の場面ではいつも物静かで寡黙な彼ではあるが、今日は珍しく声を荒げている。
しかしそんな自分に気がついたのか、老翁は直ぐに態度を改め、小さく頭を下げた。

「ああ…いえ…、誠に失礼いたしました。
ご当主様にはまず初めに御悔やみのお言葉を申し上げるべきでした」

言って、彼は哀悼の意を表す。

ナディアの父親に何が起きたのか…アブセルからの話しではまるで意味が解らなかった。
もっと詳しい説明を求めたいところではあるが、それは一先ず屋敷に戻ってからにした方が良いだろう。

「旦那様の御遺体は棺と共に既にお車の方へ移しております。戻ったら直ぐにご葬儀の準備に取り掛かって…」

そこまで言って、老翁はふと何かに気がついた。顔を上げ、辺りを見渡した。

「そう言えば…リトお坊ちゃんのお姿が見えませんね…?
此方にご一緒していらっしゃるとお聞きしたのですが…」

284アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:59:53
【過去】

「いった…!何すんだ馬鹿ッ!」

リトに蹴られ地面に尻餅をついたアブセルは、いきなり何をするんだと怒り、声を上げる。
しかし腹を立てるのもそこまで。
苦しそうに踞るリトの様子に気がつくと、不思議そうに目を瞬かせてその姿を見た。

「……どうしたの?」

しかし返事は返って来ず、リトの咳も一向に止まる気配がない。それどころか症状は酷くなる一方で…。

まさか病気だろうか?
そう言えば彼は身体が弱いらしいし、ナディアも出掛ける前に身体を動かす遊びを禁じていた。

「…お…おい…?もしかしてお前……、しっ…死なないよな…?」

アブセルは何だか怖くなる。おろおろと狼狽え、リトに、周囲に目を走らせた。

…どうしよう。
とにかく早く帰って皆に知らせないと。

胸の内に動揺を抱えたまま、アブセルはリトの側にしゃがみ、背中を向けて言った。

「乗れ!直ぐ邸に戻るぞっ!」

285イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 21:41:36
【ヤツキ》北海道ですか!いいですね!
まぁ冬だし、多少太ってもしょうがないってことにしときましょう(笑)
なるほど、そう言う仕組みですか。了解しました^^


リマ》ひゃ〜(/ω\*)、ジルとヨノのやり取りにドキドキ…!←
以前書いてたミレリアの過去話はあれで終わりですか?

了解です^^
てかアブセルの爺ちゃん、屋敷のあれこれにどこまで関わってることにしよう…
執事のくせにリト父の悪事とか全く知らない、じゃ何かアレだし…
ミレリアにリトのことを拒絶する暗示(闇の力で)とか掛けてた位した方が良いのかな…とか思うけど
そこまでいくとアブセルが爺ちゃんのこと超絶嫌いになっちゃうしなぁ(笑)どうしたらいいと思います?←

しかも私服はゴスパンク
年相応に振る舞うって大切なことなんだと改めて思いました(笑)

見事なすれ違いっぷり(笑)友達にそこまで言わしめるとは流石w

なるほど…、エリザベスって金髪ロリなのに何かときめけないんですよね…

怪しい人だ…(笑)
荒れた家庭ですねwてか白龍ちゃん相変わらずママ嫌いなんだw

何か自分が当初考えてたのとは大分違う感じになっちゃいましたw
まぁたまには良いんじゃないでしょうか?そっちのが好感度あがるし(笑)

確かに…兄妹に部屋占領されて自分隅っこに追いやられそう(笑)そして仕舞いには家から追い出されるんだ…←】

286メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/18(木) 22:58:14
【バルクウェイ闘技場】


自分は何か変な事を言ったのだろうか?

謎のポージングで仰け反るサンディの姿に、メイヤは口を開くも続く言葉は出なかった。

「なっ……」

何故なら、サンディとの間を割る様に、赤毛の男……イスラが倒れて来たからだ。

どうやら彼は無理して稽古に励んでいたらしい。

彼が何故、そうまでして剣を振り続けたのかは想像が着くが……

「取り敢えず、サンディの言う通り医務室へ行こう。

大会出場者と言えばすぐ案内してくれるだろうし、闘技場に必ずある筈だ。」

メイヤはイスラに肩を貸し、彼をおぶって立ち上がった。

そして、闘技場へと向かおうとしたその時。

「アンタ……飛行艇で会ったチンピ……客人じゃないか。」

此方を見つめ、ニヤリと笑う眼帯の男を見つけ、思わず声を掛けてしまった。

【イスラ》まぁ太った所で適性体重なんでそんなに気にならないのは、あるんだけどww

また何かあれば聞いてくだせぇー!】

287ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/20(土) 20:15:32
【飛行艇】

「え、リト?」

過剰に心配していた旨を告げてくる老人を軽くあしらっていたナディアであるが、彼からリトの名が出た途端上擦った声を上げる。
こんなに早く話が出てくるとは思っていなかった。

「あー、リトね!今は部屋で休んでるよ。後で合流する。…てゆーか、爺、あんた知らないの?」

今に至るまでの経緯を全てアブセルから聞いた。
リトは一時屋敷に戻り、父親の手によってこの場所へ連れ出された。
屋敷の重役であるこの老人が把握していないと言うのか。

「うちのバカ親父、リトを殺そうとしたんだ」


----------


【過去】

苦しい。
咳が止まらず息が出来ない。

「…っ」

向けられた背に手を伸ばすも、それ以上力が入らない。
症状も酷くなるばかりで、とうとう地に倒れこんだ。

288リマ:2014/12/21(日) 12:34:10
メイヤ>>

だよねー> <
遠出とかしなくて良いからディズニーランドとかシー行きたい!
大学の友達そうゆうの好きじゃないから全然遊びにいけない(T ^ T)
高校の友達は社会人だからディズニー行く余裕ないし!!


イスラ>>
ドキドキですか?(笑)
自分は書いてて「うわ〜…(蕁麻疹)」ってなりました← 真夜中の不法侵入で明らかに怪しい男に警戒心ゼロな女ってどうなの!←
ナディアとジルは歳離れてるけどヨノだったら2、3歳違うだけなのでまだ許容範囲かなぁ。この先恋愛に発展するか分からないけど!!
しかし手の早いジルがヨノにチューすらしなかったのは凄い!彼はきっと好きな子に対しては傷つけたくないから慎重になる派です(笑)ヨノは初恋の相手だったり?←

ミレリアの過去はまだまだ続く予定です!結末をすでに考えてあるせいか、そこに辿り着くまでどう持っていくか、ネタが思いつかず進んでません(;-ω-)ゞ
てかミレリアって何かどうしようもない子に見えて来ました…トーマが本命だけどヨハンも好き!って何やねん!!

聞かれたw
暗示のアイデア、自分的に凄く惹かれました(´∀`人)
でもアブセルに嫌われちゃうの可哀想だから、お爺ちゃんはお爺ちゃんなりにご主人達の幸せと自分の正義の為に動いてたって感じでしょうか(-ω- ?)どっちにしろその為にリトを犠牲にしたのは変わらないのですが…(笑)


うわぁ…恐ろしすぎる…あ、でも顔が若く見えるとか…!!←
自分も最近可愛い系の服が怖くて着れなくなってきました…。華の20代前半がもうすぐ半ばになってしまうのです。自分、30超える自信がない…オバサンになりたくないよー(泣)

全くもってビックリです(笑)

その友達は私がシエル命なのを知っていますからね〜(笑)

エリザベスってロリっぽくないですよねー
大人になろうと背伸びしてるシエルの為にワザと子供っぽく振舞ってるって知った時は見直しましたけど、でも何だかなぁ…
てか今月のシエルに思わず吹いた→imepic.jp/20141221/436180
こんなに可愛くない男の娘初めてみたかも…てか目的の為ならドレス着るの平気なのか(笑)多分今回、自分の意思で着てるんですよね、たしかその場にセバスいなかったし。駒鳥の時はあんなに恥ずかしがっていたのに…嗚呼ノリノリ……

だって、親子が…(笑)まさかこんなことになるとは予想もしなかったし(笑)…これからは誰もいないところで読もう(笑)
白龍は今後もママを赦すことはないでしょうねー
どんどん壊れていく彼がお姉さんとっても心配です。

あれ、自分は当初感じたサンディとなんら変わりありませんけど?←
どんな子にする予定だったんです??

自分のつくるキャラって何故か色々と思い悩む子になってしまう(笑)

何それ怖いww
ジルがいると家乗っ取られるのかww

289イスラ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:45:33
【闘技場】

「よぉ、ニィちゃん。つらそうだなァ?」

向こうから声を掛けられれば、シャムはその笑みを更に深めて言った。

「ものは相談なんだけどよ、アンタの名前を一つ貸しちゃァくれねーか?」

彼の視線は今、メイヤに支えられる様にして立つイスラの元に向けられていた。
シャムは相手の返事を待たずして更に言葉を続ける。

「実は訳あってこの大会に出場しなきゃなんねんだけどよォ、聞けば既にエントリーは締め切ってるって言うじゃねえか…。
どうしようかと途方に暮れてたところ、床にぶっ倒れてるアンタを見つけたって訳だ」

見知らぬ人物からの突然の要求にイスラは初めポカンとした表情をしていたが、直ぐに彼の言わんとしていることを察した。彼の目を見返し言葉を返す。

「…困っているのか?」

「あぁ、ちょー困ってる。困り過ぎて困ってる」

「そうか…」と、イスラは呟き暫し思案する。

正直、大会に出場したいと言う気持ちはある。しかし、今の状態では満足に闘えないのも確かだ。
そしてなにより、彼は困ってる人を放ってはおけない性分であった。

「…分かった。俺の選手ナンバーは19番だ。
この枠で良ければ貴方に譲ろう」

シャムはトーナメント表と言われた番号を照らし合わせる。

「19…、イスラ・フォードか…。了解、了解。恩に着るぜぇ、ニィちゃん」

290ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:48:55
【飛行挺】

「…旦那様が坊っちゃんを…?
…いえ…、まさかそんな…」

ナディアの発言に老翁は信じ難いと言った面持ちを見せる。
しかし、そうは言っても何か思うところがあるのは確かな様だ。

彼の表情や目の動き、声の調子の僅かな変化をジュノスは見逃さなかった。
別段惚けている風ではないが、何かを隠している。そんな感じだ。

老翁は言った。

「ともかく…この場ではゆっくりお話をすることも出来ません。
一度お屋敷に帰ってからに致しましょう」

そして――…

「セィちゃんさん…、もうすぐ出番だよ。
リトは可愛くて格好良くてクールでそれでいて優しくて思わずギュッとしちゃくなっちゃう様なツンデレが売りなキャラだから、よろしく頼んだよ」

送迎用のリムジン内部、アブセルはセナに小声で囁いた。

今、ナディアを筆頭にした一同は、棺を載せたものとはまた別の御料車で屋敷へと向かっている途中である。

ナディアからセナをリトの替え玉にすると聞いた時は驚いたが、それに対しアブセルは特に反対を示すことはなかった。

因みに、リトのことは今別で動いているジュノスが後でこっそり部屋に連れてくる手筈だ。

「あ」

不意にアブセルは目を移し声を上げる。
目的地が見えてきた様だ。

291アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:22:25
【過去】

「え……」

伸ばされた手は背に触れることはなかった。
目の前で、ふっと糸が切れた様にリトの身体が地に崩れた。

「…リト…?」

アブセルは彼の名を呼ぶ。
反応はなかった。
途端、頭の中が真っ白になった。

「え…そんな…、嘘だ……。
だって俺…そんなつもりじゃ…」

そうだ、ちょっと意地悪してやろうと思っただけだ。
こんなことは望んでいなかった。

「ねぇ…、さっきのこと怒ってんの?
なら謝るからさ…。起きてよ…。帰ろうよリト…、ねぇってば…」

喉から出た声は震えていた。
いくら身を揺すっても彼は起きなかった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。
自分のせいだ。

いつかの日のことが脳裏に甦る。
傷つき地に伏している少年達の姿を思い出す。消えてしまった友達のことを思い出す。

「…ぅ…くッ、…ひっく…ッ」

アブセルの口から嗚咽が洩れた。
大粒の涙が眼から零れ、地を濡らした。

「……俺…っ、リトを…死なせッ…、ちゃった…」

とんでもないことをしてしまったと思った。
また捨てられてしまう。また住み処を追い出されてしまう。
今度こそ本当に行く場所なんてない。

アブセルは声を上げて泣き出した。

292イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:27:51
【ヤツキ》はい、ありがとうございます^^

リマ》何か強引ですがナディア達の方、場面移しました;

それ分かります(笑)自分も日々「寒い!痒い!ハズい!((((;゜Д゜)))」…と戦いながら文章作ってますw
でも人の読むのは好きです!もっとやって下さい!
あれがジルじゃなかったらヨノ危なかったね(笑)
初恋かぁ…ジルったら案外ピュアピュアではないですか←

そうなんですか?ネタかぁ…何か力になれれば良いんですけどねー…
確かに…ミレリアが確りどちらか一人を選んでいたら今の悲劇は起きてなかったかも…←なんて言っては駄目ですよねw

あ、惹かれました?じゃあ暗示の方向でいきましょうか(笑)
そうですねー…、事実を歪曲して聞かされてて主人達のことを思ってやったか、
もしくは過去に何かやらかしてて(ミレリアの父を誤って殺っちまったとか←ミレリアの母と不倫してたとか←)をヨハンにバレて逆らえない状況になってたか…かなー、…爺ちゃんとんでもない奴だな←

顔が可愛くて若く見えるんなら自分はこの話題してなかったと思います(笑)
自分も最近誕生日を迎えるのが怖くなってきました…;でも気づいたら30越えてるんだろうなぁ…

でもエリザベスは大人になったら良い嫁になりそう
てかシエルww何があったしww

それがいいですw
どんどん壊れていっても白龍好きは変わらないんですか?(笑)

当初から上手いことキャラ動かせてませんでしたから(笑)
やりたかったのは京騒戯画ってアニメのコトみたいな感じです、簡単に言えば銀魂の神楽から毒を抜いた感じかな?(笑)

いいじゃないですか〜、自分なんて思い悩まそうとしても思い悩ませれないですからねw

「ちょっと邪魔だから出てってくれないかな」とか言われそう←
ジルに歯向かえる勇気ないですし(笑)】

293リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:17
【過去】

泣き叫ぶアブセルの声は気を失っているリトの耳には届かない。

そこへ、そんな二人の元へ小さな女の子が近づいて来た。

「…」

女の子は泣いているアブセルと倒れたまま動かないリトの姿を交互に見るかと思えば、また何処かへ駆けていく。

そして今度はアブセルと同じ年頃かと思われる男の子の手を引いて戻ってきた。

「フェミル、いくら子猫を見つけてもウチでは飼えないから探しちゃ駄目だよって何度も…」

その少年は少女の行動を何か勘違いしているようで、何やら呆れ気味に少女へ言い聞かせていたが、アブセルとリトの姿を見るや言葉を止める。

「フェミル、お父様を連れて来て。」


------


「もう大丈夫だよ」

そう言って男性は対面のソファに腰掛けたアブセルへ笑いかけた。
彼はまだ動揺しているようで震えている。
気を落ち着かせようと、男性はホットミルクを用意させ飲むように勧める。

「念のためウチの医者にも診せているから、安心して」

現在、アブセルがいるのはとある屋敷の応接間。
先程通りかかった少年と少女の家。

あの時、少年は少女に父親を呼びに行かせ、自分は近くの医院へと走った。
その咄嗟の判断が功を奏したか、リトは大事に至らず済んだ。

リトを医者に診せていたところ、少女に連れられ二人の父親と思しきこや男性が遅れてやってきた。そしてリトの保護者として必要や手続きをして彼を引き取り、「すこし休ませた方が良いだろう」と言って屋敷へ招いてくれたのだ。
これは勿論リトの身も案じての事だが、アブセルの方にも休息が必要だと思われたからでもある。

294リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:41

「喘息の発作が出たみたい。突然の事だったから驚いちゃったみたいだね」

医者の話によると、リトは喘息を患っているようだった。
これまでも発作は起きていた筈だが、アブセルは知らないのだろうか?
発作の際はすぐに薬を吸入させ抑えるため、その場面に遭遇したことがなかったのかもしれない。
本来なら携帯するべき薬も、子供には理解出来ていないだろう。

男性はアブセルを責めることはしなかった。アブセルも怖かったはずだ。事情を知らない人間が下手に口を出すべき事でもない。

「今日みたいな事があった時に使うお薬があるんだけど、お父さんやお母さんが持ってる筈だから聞いてごらん?今度から二人で出掛ける時は持たせてもらってね。」

代わりにアドバイスだけ伝える。
どうやら男性はアブセルとリトを兄弟だと思っているようだ。リトは同年代の子よりはるかに体の成長が遅れているため歳下にみえても致し方ないが。

「弟くん、目を覚ましたみたいだから行こっか?」

ホットミルクを飲んでいたアブセルが大分落ち着いたのを確認し、男性は立ち上がる。
そしてアブセルをリトのいる部屋へ案内した。

「あーんしてごらん?あーん」

部屋に入ると其処にはリトの他に先程の少年と少女がいた。
少年の方は食事の入った器を持っていて、それを掬ったスプーンをリトの口元に持っていっている。

「兄さま、フェミルもやりたい」

「駄目、オママゴトじゃないんだから」

横で真似をしたがる妹を制しながら、少年は慣れた手付きでリトに食事を摂らせていた。
不思議な事に、普段は食べるのを拒否するリトも少年の誘導を聞き入れている。

「そう、いい子だね。ほら、もう一口。」

その光景に男性は笑みを浮かべた。

「医者が胃の中が空っぽだって言っていたものだからね。何か食べさせた方がいいと思って勝手だけど食事を作らせてもらったよ。君も食べる?あの子の為に作ったものだから、食べ応えのあるものではないけど」

295メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/28(日) 19:59:58
【バルクウェイ闘技場】

突然の申し出に、僅かながら考える様子を見せるイスラ。

しかし、彼は特に拒む事も無く首を縦に振った。

正直な所、イスラと手合わせしたい所だったが……

「話は纏まった様だし、取り敢えず動こう。」

しょうがないと言えばしょうがない、如何せん動けないものは動けないのだ。

イスラを背負うメイヤはシャムに“じゃあ……”と会釈を投げ、足早に闘技場内へ、医務室を探し歩いて行く。

ーーーーー

どうやらシャムは無事に出場出来た様だ。

闘技場の真ん中、整列する選手達の中に見慣れたその姿を見つけたのは一時間程前。

「どんな手を使ったかは知らないけど、零回戦敗退にならなくて良かったわ。」

予想外に派手な開会式から続く一回戦も既に折り返し、そろそろシャムの出番だろうか。

観客席の最上段で、フィアは選手入場口から出て来る人影へと目を凝らす。

(まぁ、負ける事は無いと思うけど心配ね……)

ーーーーー

止むことの無い怒号の様な歓声を耳に、メイヤは登場口から闘技場へと歩み出す。

一回戦も残る所後二試合、観客達もヒートアップしている様だ。

「……飛行艇で俺を見捨てた怨み、晴らさせてもらうぞ。」

闘技場の丁度真ん中に立つ審判、マルトのルール説明を耳にしながら、メイヤは対戦相手……アグルへと恨めしそうな声を投げる。

そして、試合開始を告げる旗が振られると同時に、メイヤは飛び出す。

(ルールは簡単、相手を戦闘不能にするか降参と言わせるかの二つ。

得物は自由、それだけか!)

前方へと倒れ込む様な独特の踏み込みから続く急加速は、5メートルに設定されている相手との距離を一瞬で詰め。

地を這う蛇の如き動きから放たれるのは、下方からの逆袈裟斬り。

抜き放たれた真白の刃は、閃光の如き速度でアグルへと襲い掛かった。

「喰らえ!」

296アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/29(月) 00:15:58
【過去】

リトが倒れどうしようもなくなっていた時に出逢ったのが、二人の兄妹とその父親だった。

彼等がリトを助け様としてくれているのは分かったが、その間アブセルはずっとぐずぐずと啜り泣き続けていた。

親子の家に招かれた時には流石にもう涙は枯れていたが、彼は知らない家に連れて来られた猫の様に終始萎縮し、
男性の顔も見れずに、ただ彼の言葉にコクコクと首を動かすだけだった。

そして、やがてリトとの面会が許される。
通された部屋には先程の少年と少女、二人に囲まれ食事を摂るリトの姿があった。

「リト……」

収まった筈の涙がジワリと目元に浮かび上がった。
そして、それはとめどもなく流れ落ち、再び彼の頬を濡らした。

けれどもその涙は先程の不安と恐怖を募らせたものは違う、極度の緊張状態から解放された時に流す安堵の涙だった。

アブセルは男性の声も聞かず駆け出す。
腕を伸ばしリトに抱きついた。

「りどぉ…!ごべンなさ…ッ、ごべンなざぃ…!」

鼻の詰まった声で何度も何度も謝った。

そして―…
一頻り泣いた後、アブセルはやっと落ち着いた。

手の甲で目元を拭いながら改めて親子を見つめ、小さく頭を下げた。

「あの…、ありがとう…ございました」

297ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:24:59
【→ポセイドン邸】

「…」

小声だろうとアブセルが何を言っているのか予想はつく。
リトはどんな人物か。セナに難題を押し付けているのだろう。
セナは一応話を聞いてはいるようだが、その表情を見るに、何一つ理解していないだろう。

ナディアはその様子を眺め、溜息一つ。
セナはいいとして、地味にアブセルが面倒臭い。
リトをやるからには完全に成り切って貰おうと考えているのか。いや、アブセルの主観は最早リトではない。

「セィちゃん」

あと気になる点がもう一つ。リマだ。
リマは手を伸ばしてセナの髪に触れると残念そうな表情を浮かべる。

「髪、短くなっちゃったね。」

セナとリトは髪の長さが違う。
少しでも違和感を無くす為、セナの髪をリトの長さに揃えてもらったのだが…

「これだともう編めないな…」

セナは片方の髪のサイドを編み込んでいたが、どうやらリマがやっていたようだ。そんなに悲しそうな顔をされると申し訳なくなるじゃないか。

と言うか二人の距離が近すぎる。
屋敷に着いたらセナはリトとして暮らして貰うわけだが、その”リト”にベッタリなリマをどう理由付けようか。
ついでにリトとアブセルが連れていたらしい子供(ノワール)は先程からリマとセナを睨みながら不機嫌そうにしているし、何だか先が思いやられる。

そして、ナディアの考えは結局纏まらぬまま、屋敷に到着した。

車の到着と共に出迎えの者達がゾロゾロと出てくる。
時間の無駄に思える行動。何度経験しても慣れない。

「お姉様!」

屋敷の者達の挨拶を適当にあしらっているとヨノが現れた。

「おかえりなさいませ」

そして深々とナディアに頭を下げると、続いて車から出てくるセナの姿を見つけニコリと微笑む。

「リト。」

「私の妹でリトの姉。つまり今はあんたの姉」

横からナディアはセナへ耳打ちする。

「おかえりなさい。」

優しく出迎えるヨノの言葉を受け、リマはセナに何やら伝えた。
するとセナはヨノへ視線を向け、そして

「…ただいま、姉さま」

笑いかけた。
見たことのない弟の笑顔。
不意打ちをくらい、ヨノは顔を赤らめる。
そして満足気なリマの顔。

(終わった…)

そしてナディアは頭を抱えた。

298ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:25:17


「ビックリしちゃったぁ…」

所変わって大広間。
事の真相を全て聞き、ヨノは苦笑いを浮かべる。

「思わずドキっとしちゃったものだから…自分の弟に対してドキっだなんておかしいでしょ?」

身内に対して妙な感情を抱いたのかと焦った。
別人だった、良かった。

「まぁ…アレだ。あまり難しく考えないで協力してよ。リトと同じように接すればいいから。」

本当はヨノにも秘密にしておきたかったが、どう考えてもセナの態度は不自然だ。
いや、普通の姉弟の関係であればアレでいいのかもしれない。リマの考えは間違いじゃない。けど、リトはあんな態度はとらない。そもそも笑わない。
黙っていたとしてもすぐにバレていただろう。

「リトは…大丈夫なのよね?」

「うん」

ヨノはこの屋敷の内情を知らない。
父親がリトに何をしたのかも、説明したところで理解出来ないだろう。
また、知らずにいられるのならそれでいいとも思う。だから教えることもしない。
だから今回の件は父とリトが務めを果たしている際に事故にあったことにした。
リトの件以外は他の者達にも同じように伝えるつもりだ。母親にも。

「ヨノは母様をお願い。私はやることこなさないとな。まずは親父の葬儀。ちょっと爺と話してくる。」

言ってナディアは席を立つ。
向かうは自室。

アブセルの祖父に、屋敷に戻ったら部屋へ来るよう伝えておいたのだ。

「…」

彼は部屋の前に立ち待っていた。
ナディアは部屋の中へ入るよう促す。

そして椅子に腰掛け、話を切り出した。

「さっきの続きだ。親父がやろうとしてたこと、知らないとは言わせないよ?包み隠さず教えな。」

299リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 01:41:29
【過去】

頭を下げてくるアブセルに、男性は変わらず優しげな笑みを浮かべる。

「旦那様…」

が、其処へ、リトを診させていた医師が深刻そうな面持ちで男性に声をかけた。
何やら耳打ちすると、男性からも笑みが消える。

そして医師を連れて部屋を出て行った。

「後でお家に送ってあげる。暫くうちの子達とゆっくりしておいで。」

出て行き様に笑顔でそう言い残して行ったが、何かあった事は予想できる。

ジルは気づいたが、しかし敢えて触れる事はしなかった。

「ねぇ、君の名前は?」

そして再びリトヘ意識を向けた。
しかし対するリトは相変わらず問いかけに応じない。
言葉が話せないのかとアブセルを見るが、アブセルからはそんなことはないと首を振る素振りをされた。

「僕の名前はジル。君の名前を知りたいな」

「…」

「フェミル、このお兄ちゃんに挨拶して」

「私はフェミルってお名前。お兄ちゃんは?」

「……」

無反応。
今までと同じ種類の人物であったなら、此処で腹を立てるか呆れるか、反応は様々でもこの時点でリトの言葉を諦めただろう。
しかしジルは違った。

「話すのが怖い…?」

リトが話さない理由を考えた。
何だか上手く説明は出来ないけれど、何と無く、リトは言葉を封印することで、何かから自分を護ろうとしているように見えた。
先程もそう。出した食事も中々摂ってくれなかった。警戒し、誰も信用していない。ただ、怯えている。

「大丈夫だよ」

ジルは手を延ばし、リトの頭を撫でる。
不思議そうに此方へ目を向けるリトヘ、明るい笑顔を作ってみせた。

「僕は君を何と呼べばいい?仲良くなりたいだけなんだ。君より小さなフェミルだって自分の名前を言えるんだよ?君も勿論言えるよね。」

本当は名前なんてもう知ってる。さっきアブセルが泣きながら叫んでいたから。
しかしジルは、リトの声でちゃんと聞きたいのだ。

「君の声、聞きたいな」

リトの目を真っ直ぐに見る瞳はとても優しげで。
今まで関わってきた人は…実の姉でさえ、ここまでリトと向き合っては来なかった。

「…り…」

やがてリトは、躊躇いがちながらも口を開く。

「…リト…」

それは消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた。”リト”と。

「そう、リトって言うんだね。宜しくね。」

ジルは満足気に笑顔を浮かべれば、よく出来ましたとばかりにリトの頭をワシワシと撫でる。

「…で。」

リトのことは良し。
今度は…とジルは半ば蚊帳の外となっていたアブセルへ振り向く。

「君は何て名前なの?泣き虫さん」

おかしい。
彼の笑顔は変わらないはずなのに、何か、何と無くリトに向けられていた優しいものとは違う、意地悪なものと化している。

「君はこの子のお兄さん?お友達かな?”ごめ〜ん”って泣いてたけど、この子にちょっと意地悪しようとして大事になっちゃいましたって感じ?」

何かバレてるし。

300リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 13:10:23
イスラ>>

場面変更有難うございました>ω<

お仲間でしたか(笑)
自分も人様のつくったものを読むのは好きです!イスラさんもジャンジャンやってください←
世間一般の女子にとっては普通の不審者よりもジルの方がある意味危ない気もしますが、ヨノはジルにとって例外なようです(笑)
ジルはもともとは純粋で凄く優しい子なのです、環境が彼の性格を捻じ曲げた(笑)ってか勝手ながらアブセル達の過去話にジル達ねじ込んじゃいました(つω`*)テヘ
リトの父ちゃん嫉妬だけでジルパパ殺してるとかいくらなんでも「小せぇ男だな!!」って感じなので、今回の一件で父ちゃんの計画を知っちゃったことにします。つまりは口封じ、フフフ…

設定は出来てるんですけどねぇ。
ヨハンとトーマ→もともとは友人。(トーマが一方的に絡んでくるけどヨハンも満更でもない)
ミレリア→ずっとヨハンに憧れてきたけど、だんだんトーマに惹かれていく
ヨハン→ミレリアに想いを寄せているが上手く行動に移せない。いつの間にかトーマに先を越されてて激おこ!
ってな具合に。
ミレリアめ、なんとまぁ罪な女よ←

爺ちゃんとんでもねぇ奴だなww
不倫関係で言うとヨハンは実は爺ちゃんの秘蔵っ子だった!ってのが面白そーってふと思ったんですが、それだとアブセルとリトが従兄弟になっちゃいますね(笑)

ですよねー…(笑)
気づいたら30…怖すぎる(泣)
ついこの前、研究室の後輩に「どんどんババァになっていく。そろそろ可愛い服着るの怖くなってきた。でも私からミニスカートをとったら何が残るのか」って愚痴っちゃいました(笑)

夫をたてる良い妻になるとは思います。しかし何か好きになれない。何故だろー
最近シエルがよく分からない方向に突っ走っている(笑)初期の方で「笑い方などとうに忘れた」とか厨二発言してたくせに普通に笑ってるし。

はい、どっちかって言うと苦しむ白龍は大好物なので←
にしても白龍がどうも金色のガッシュのキャンチョメと被って見えてしまってですね…

成る程!毒を抜いた神楽!!(笑)
たしかに何かサンディとは違いますね(笑)
銀魂と言えば、銀魂のアニメ新シリーズの話がこの前出て、皆から「総悟好きそう」って言われたんです。まぁ好きですけどね?
そしたらその理由が「顔が良いの好きだろうから」ですって!だから言ってやったんです、神威も好きだと!そしたら「やっぱ顔じゃん」って返されてしまった!あれ??

何それw
でも、ほら、イスラ辺りなら悩めるかも?←

言いそうww
いや、自分の家なんですから頑張って歯向かってください(笑)

301ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/12/31(水) 20:09:41
【もう年の瀬とか信じられねーww

今年もお世話になりやした、来年もよろしくお頼み申し上げます!

んだらばお二方も良いお年をー!】

302アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:07:07
【闘技場】

「さあ?何のことだか」

恨めしそうなメイヤの声に対し、アグルはそう嘯く。
そして見た。

(当然…、初手は"それ"だよな)

蛇の如く低い姿勢から放たれる迅速の白刃。
アグルはそれを無理に受け止める様なことはせず、槍の柄を斜めに刃を受け流す。
そして、その流れの勢いのままメイヤの左方へと身を滑らせた。

「シンライジ邸の稽古では嫌ってほど打ち負かされたからな…」

流石に目も慣れたものだ。

メイヤに対し最も注意したい点はその動きの敏捷性だろうか。
まずは機動力を削ぎたいところ。
よって…、

(足を狙う…!)

アグルは槍の柄を長く持ち、腕を回す。
振り回された槍は風切り音を放ちながらメイヤの足元目掛けて駆け抜けていった。

303老翁 ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:24:25
【ポセイドン邸】

問い詰める様なナディアの視線に老翁は短く応える。
等々この日が来たとばかりに。
観念とも覚悟とも取れる面持ちでナディアを見つめ、
「こちらを…」と、数冊の冊子を彼女の前に差し出した。

「旦那様の手記で御座います。
勝手とは思いましたが、書斎からお借りして参りました。
お目を通して下さいませ。あの方の大体においてのお考えが分かる筈です」

それから、と老翁は言う。一つ言っておくことがあると前置き、言葉を続けた。

「私は…、私と旦那様は、同じ血を分けた……そうですね…、有り体に言えば実の親子にあたる間柄と言うことになるのです」

【過去】

泣き虫…と、そして図星を言い当てられたアブセルはかぁっと顔を赤くさせる。

小馬鹿にされた様な気がして恥ずかしかった。
そんな表情を見られるのが嫌で顔を下に向けるが、その気持ちさえジルには見透かされていたかもしれない。

「……アブセル」

程無くして、アブセルは視線を足元に向けたまま小さな声で名を口にする。
それと、

「別に兄でも友達でもない…。
リトはお屋敷の子供で…。俺は、俺の爺ちゃんがそこで働いてるから、それで…」

せめてもの悪あがきに、それをぶっきらぼうな口調にして返すのが精一杯だった。

304イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:26:31
【二人ともあけおめです!
今年も宜しくお願いします(^^)

リマ》
やりたいのは山々なんですがー…なかなか思いつかず…(笑)
ジルの境遇を考えると、そりゃあ性格も変わっちゃいますよね;
もしかしたら出てくるかなと期待していました(笑)
なるほど…口封じとはいえ友人を始末しちゃうなんて…ヨハンの心境は一体…

おぉ!いい三角関係ですね!
でもこれ三人の心がすれ違い始め…トーマが没するまでやるとなるとかなりの長編になりそうですね(笑)

なんて素敵なアイディア!爺ちゃんがヨハンの肩を持ってるいい根拠にもなるし…ってことでいただきました!←ありがとうございます(笑)
ヨハンは忘れられない人との間に出来た子で〜(不倫ですが)とか色々着想が浮かびます^^
しかしその場合ナディア達も孫になる訳で…実の息子にも遣えてて…爺ちゃんどんな気持ちなんだろう(笑)

リマさんのアイデンティティーはミニスカなのか(笑)でもほら、森ガール的な長いスカートだって可愛いですよ←

理由もなく好きになれないとか一番可哀想な気がするw
そこは突っ込まないであげてw

やだ、このコ恐い←
ガッシュ懐かしい(笑)軽くアニメとか見てた気がするけど殆ど覚えてない…
キャンチョメってアヒルみたいなやつでしたっけ?どのへんが被ってるんですか?

自分もリマさんは顔がいいキャラが好きなんだと思ってました(笑)

イスラかー…彼の悩みって、どうやったら人を救えるかとか、どうやったら世界が平和になるか…みたいな答えのない漠然としたものばっかなんでやりづらい←

頑張って歯向かっても勝てる気がしません(笑)】

305メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/02(金) 21:37:42
【闘技場】

全身全霊の打ち込み、とまではいかないものの、速度、威力共に十二分の初撃だった。

しかしそれは難無く去なされ、反撃の一手、下段の薙払いが放たれる。

その一連の動きは、此方の初動を読んでいた……否、読んだものであり、その事に気付いたメイヤは僅かに苦い表情を浮かべる。

(そうか、弥都で再会するまでイオリに鍛えられていたんだったな……)

そう、闇の巣で行方不明になった二人を救出し、更には修行に付き合っていたのはシンライジ当主であるイオリなのだ。

ならば、此方の手の内は殆ど知られているだろう。

アグルの放つ足下を狙った斬撃は速く、得物は槍の為にリーチも長い。

更に、逆袈裟を放った状態で動きを止めた今、回避の為の踏み込む間も無い。

(退く暇も無い、なら!)

ならば、今この場で攻撃を防ぐしかない。

風切り音を耳に、メイヤは斬撃を放った勢いを使い、その場で180度水平回転。

同時に、逆袈裟に振り切った刃を回転の勢いそのまま振り降ろす。

捻りの動作を加えられた白刃は、初撃と変わらぬ速度で大きな円弧を描いて槍の穂先へと叩き付けられ、無理矢理だが槍の一撃を防いだ。

それと同時に、右手に握る白刃の柄を放してメイヤは跳躍。

未だ残る水平回転の動きと勢いを利用し、左の逆手で抜き放った短刀で、上方よりの斬撃を放った。

306ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/03(土) 03:28:57
【ポセイドン邸】

亡き父の手記。
これを読めば、彼がこの十数年やってきた事、その真相が分かるかもしれない。

ナディアは早速目を通そうと冊子へと手を伸ばす。
しかし、続いて耳に届いた言葉に、反射的にその手を止めた。

「…は?」

今何て言った?

「あの人と親子?あんたが?」

とうとうボケが始まったのか。
冗談にしては笑えなさすぎる。
父方の祖父母はちゃんと…

「ちょっと待って、頭整理する」

老翁の突拍子もない言葉に、混乱しながらもナディアは額に手を当て必死に記憶を辿る。
ヨハンの父が老翁と言うのなら、彼はナディアの祖父ということになる。なら記憶にある祖父は誰なのか。父方にも確かに祖父はいた筈だ。
しかし考えてみればその祖父は祖母より一回り以上年齢が離れていた。当時はどの家庭も自分の意思で伴侶を選ぶのが難しい時代であったとは言え、年頃の男子がいなかったわけではないし、たしかに不自然ではある。ポセイドンの家系とは言っても本家とは遠い筋の家で、血筋に拘る必要も無かったはずだ。
考えたくはないが、可能性としてはあり得ない話ではない。

「ごめん、ちょっと私の頭では収拾つかなかった。説明してもらえる?」


【お二人とも、昨年は大変お世話になりました!
今年も宜しくお願いします!!】

307リト ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 02:46:33
【過去】

ぶっきら棒に答えるアブセルを見て、ジルは面白そうにクスリと笑った。
どうやら自分は彼の図星をついてしまったようだ。

「リトってお屋敷の子だったんだね。アブセル、君のお祖父さんがこの子のお屋敷で仕えてるなら、君もお仕えの身分なんじゃない?お屋敷の子を勝手に連れ出して、助かったとは言え危険な目にも合わせちゃって、バレたら大変だと思うなぁ。」

上手く抜け出して来たのかもしれないが、今頃はリトがいなくなっていることも知られ騒ぎになっているのではないだろうか。

恐らくは父が話を通してくれるだろうが、アブセルの反応が面白そうなので敢えて言わない。

「今のうちに言い訳でも考えておきなよ。」


----

先程退室した屋敷の主人、トーマは難しい表情を浮かべて書斎にいた。
思い返すは助けた少年リトの顔。

(あの子は…)

リトと良く似た顔を彼は知っていた。
しかし「あの家」に男児が生まれたなどは聞いていない。

先程医師に伝え聞いた事がどうも気になる。
リトを診察した際に、身体に複数の痣や傷を見つけたそうだ。栄養状態も思わしくないと。あれは明かに……

「…」

トーマは呼び鈴を鳴らした。
音を聞きつけて執事が入室してくる。

「先程連れてきた子供について調べろ。」

嫌な予感がする。
出来れば自分の推測が間違いであってほしい。

308リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 13:04:18
イスラ>>
アブ祖父のラブストーリー←
ちょっと意地悪なのは変わりないですけど(笑)
にしても仲良くしてた子と敵対するってどんな気分なんだろー。ナディアは忘れてるからいいけどジルは最初から知ってましたし(笑)

ヨハンは完全気が狂っちゃってるので特に何も感じてなかったかと←
彼はポセイドンの家系とは言え分家中の分家で立ち位置的には苦しく、出世街道からズレてるトコの生まれなのです。その為現在の位置まで登りつめる為にガムシャラに生きて来ました〜
ですね(笑)飛ばし飛ばしやらねば…(笑)

採用されてビックリです(笑)此方こそありがとうございます!(笑)
ヨハンのお母さんは先天的に言葉の話せないお嬢様で、なんか知らんがアブ祖父と恋愛し、ヨハンを身籠ったが、お嬢様は父親が誰か言わない為、「このままでは未婚の母に!世間の目が!!」と慌てた両親によって独身なおじさん(両親何方かの血縁でもいい)のもとに無理矢理嫁がされた〜って設定にしちゃいました←
そんでヨハンは母親の為にガムシャラに生きてた事にします←←

そして息子を護る為に孫(リト)を一人犠牲にするお祖父ちゃんの心境はいかに←

長いスカートってほら、躓いて転んじゃうじゃない←経験済


きっと第一印象が悪かった。物凄く(笑)
これは突っ込まずにはいられないw

エー、コワクナイヨー
ですです。
自分もよく知らないのですが、キャンチョメって物凄く臆病で、最初の頃は戦いに逃げてばかりいたんですけど、実は潜在能力が凄くて最終的にメッチャ強くなったとの噂が。
泣き叫ぶ白龍を見てた時に「こいつ、いつかメチャクチャ強くなりそう」って思って、実際最近強くなって来たので、あーやっぱこいつキャンチョメだなって。←

そんな!誤解です!!
顔が良くて性格に難ある未成年が好きなんです!!←

うわぁー凄い主人公タイプ(笑)
そして悩みがなんか面倒くさい(笑)

もしかしたら運良く勝てるかも…!

309ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/05(月) 10:53:46
【リマさんリマさん、時間があればでいいんでリマセナから続く家系図お願いします!】

310アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:47:05
【闘技場】

流石シンライジの血族。機転、瞬発力ともに動きが人間のそれじゃない。

水平回転より降り下ろされた刃により槍は弾かれ、僅かにしなる。続く上方からの刃を防ぐには槍を使ったんじゃ間に合わない。
アグルは踏み込んだ足の爪先に体重を乗せ、斜めに飛び退く。左耳のスレスレのところを刃が通過していった。

(そう易々とはいかないか…)

取り合えず一旦相手との距離を取り、一呼吸つく。
先程から観客席の方から聞こえる、例のオネエらしき一際目立つ声援が耳障りだ。

「…熱狂的なファンがいるみたいだな、全くもって羨ましい限りだ」

そうメイヤに皮肉を投げかけつつ、アグルは再び槍を構える。
そして地を蹴り、相手との距離を一詰めれば連続の刺突を放った。

311アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:49:54
【過去】

…そうだった。そう言えばすっかり忘れていたが、屋敷を抜け出して来たんだった。
もしかしたら出かけて行ったナディア達だって、もう既に戻っている頃かもしれない。

「だ…だって…、本当にビョーキだなんて知らなかったし…」

赤く染まったアブセルの顔が今度はみるみるうちに蒼ざめていく。

初めはリトや屋敷の皆を困らせてやろうと考えてのただの悪戯の筈だった。しかし今はもうそれどころの話ではなくなってしまった。

怒られるどころか、最悪やっぱり屋敷を追い出されてしまうかも。もしくは悪い人達が入れられると言う牢獄に連れていかれるか…。

…と、そこでアブセルはハッと気づいた。
ジルが笑っている。楽しそうに。

先程から妙に不安を煽ってくると思ったら、こちらの反応を見て楽しんでいたのだ。
そんな彼にアブセルは何だかムカムカとしてくる。ジルを睨み付けて言ってやった。

「…って言うかお前には関係ないだろ!何なんだよさっきからっ」

312アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:53:35
【リマ》自分にラブストーリーが書けるわけないじゃないですかーww…って鼻で笑おうと思ったけど…、ヨハン母の設定を見てちょっと書いてみたくなりました。彼女の名前はなんていうんですか?
ね、意地悪ですね(笑)
まともな神経の持ち主ならやっぱり辛いもんなんじゃないですかねぇ…

ヨハン…(´;ω;`)彼も可哀想な人ですよね…
てか素晴らしい設定の数々にもう感動してしまいました!
色々アイディアを戴いてるに、こっちは何もお返しできないで申し訳ないです;

爺も心苦しかったと思いますよ。両親から拒絶されているリトを見るのは彼にとっても断腸の想いだったことでしょう。
幽閉されてた頃ならまだしも、リトが人並みの感情を持ってからは心痛も増したんじゃないでしょうか

え、転ぶもんなんですか!?何で!?(笑)

何があったww
まぁそこはシエルの成長どころだと思って素直に喜びましょうよ(笑)

でもキャンチョメは確かいい方向に強くなったけど、白龍は悪い方向に強くなってるから、一緒にしたらキャンチョメが可哀想ですよ!←

あぁ、なるほど。ただの美形好きではないと(笑)てかリマさんの趣味も大概変わってますよねw

主人公タイプですが自分がその系統のキャラを上手こと動かせないので日陰に追いやられています(笑)

え、ないない←】

313メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/07(水) 21:23:33
【闘技場】

槍を相手にするに当たって一番注意すべきなのは、間合いの長さである。

刀剣に比べて圧倒的なリーチを誇る槍を前にして、距離を取るのは悪手。

かと言って、考え無しの前進は無謀なだけだ。

だが、一度その間合いの中、刃圏の内側へ入り込む事が出来れば槍は意外な程に脆い。

だからこその初手だったのだが……

「……地獄からの呼び声だ。

悪夢の頬擦りの刑に叩き込んでやるから、大人しく棒立ちしてくれれば助かるんだけど。」

一連の攻防で、メイヤは改めてアグルの実力の高さを認識した。

(高い身長故のリーチの長さと相まって、槍の間合いは驚異的。

間合いを詰めても案外冷静に対処して来る上に、反撃も速い。

何より、手の内を知られているのが一番痛いな……)

正直な所、予想以上だ。

繰り出される刺突の連撃も速く、鋭い。

イオリならば刀で捌ききるだろうが、自分にそこまでの技量は無い。

ならば。

(強引に突破するのみ!)

繰り出される刺突に対し、メイヤは剣を逆手に握る。

そして、剣の腹を盾にし前進。

致命傷だけを受けぬ様に刀身で刺突を防ぎ、強引に距離を詰めて行く。

魔狼の牙から削り出されたとされる真白の刃は、幅広の二等辺三角形に近い形をしており、半身になれば身体の半分程は隠せるのだ。

たが、如何に幅広の刀身と言えど全て防ぎ切る事は出来ず、隠しきれない部分に次々と裂傷が生まれていく。

しかし、多少の傷は覚悟の上だ。

刺突の嵐を突き進んだ先、刃圏の内側。

アグルの正面よりやや左へと進んだメイヤは真白の剣を投げ捨て、上半身を捻りながら踏み込む。

そして、渾身の右ストレートを放った。

314ベルッチオ(老翁) ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:25:04
【ポセイドン邸】

「お嬢様のお耳に入れるのも浅ましい話では御座いますが…」

言って老翁は僅かに目を伏せる。
そして五十年ほど経った今でもありありと思い出せる、昔の、あの人との記憶を語りだした。

…歳は18の時だった。
当事、ポセイドン本家に仕えていた母の勧めで、とある傍系の家に勤めることになった。

そこで、出逢ったのだ。
可憐で、そしてどこか儚げで、声をなくした美しい女性に。

――…
老翁は話した。己の過去を。ヨハンの出生に至るまでの経緯を。

「結局、私達が結ばれることはありませんでした。
ですが、お互い違う家庭を築いた後になっても、私はあの方のことを忘れることが出来なかったのです」

先代の旦那様…ミレリアの父が、仕事のパートナーにヨハンを選び、屋敷に招いた時は本当に驚いた。

今までヨハンについては、社交の場でまだ少年だった彼の姿を、一、二度と目にしたり。家督を継いだとか、事業の業績を伸ばしたとかを風の噂で耳にする程度だった。
だがその彼が、今や立派な青年となって目の前にいる。
どんな形であれ、老翁はあの人との間にできた我が子に見えたことを歓喜し、そして申し訳ない気持ちになったのだった。

315アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:27:01
【闘技場】

メイヤの拳がアグルの頬を捉える。
その渾身の一撃を食らい、彼の身はグラリと傾いた。

予想外だ。
まさか武器を捨てて突っ込んで来るとは。

(いや…馬鹿だろ…!)

そう、先のメイヤの行動はアグルにとっては考えられぬものだった。

まず第一に、武器を捨てたことだ。
例え今この時一泡ふかせることに成功したとしても、今後の試合の展開を考えれば、それは大きなハンデとなるだろう。
そして二つ目、先程の一撃で勝負を決めれなかったこと。

メイヤはもっと堅実な戦法を取る人間だと思っていたが…。

(なに考えてんだ…よっ!)

アグルは足をふんばり、ぐんっと上体を持ち上げる。
もちろん、わざわざ武器を拾う間を与えることもない。
槍を手の中で回し、周囲一体を凪ぎ払うかの如く振り回した。

316メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/13(火) 23:33:16
【闘技場】

頬を打ち貫く渾身の右ストレートは、確実にアグルへとダメージを届けた筈だ。

拳に伝わる確かな感触とアグルの表情に、メイヤは心の中で頷く。

弥都での修行の成果だろう、今のアグルの実力は自分とそう変わらない程だ。

得物にしても、槍と剣では間合いを考えるに剣の方が不利。

強引に間合いを詰めた所でアグルは冷静に対処してくる。

ならば、取るべき手は一つ。

相手の虚を突く事。

それはシンライジ一族の対人技術に置いても基本的な事でもある。

(武器を捨てた捨て身の一撃に後は無い、そして、今の一撃で倒せなかった俺の負けだろう。

当然、アグルはそう思うし槍の一撃を手ぶらの俺が防げる訳も無い。)

そして、虚を突くからには確実に仕留めなければならない。

だが。

今の一撃でアグルは倒れなかった。

反れた上体を戻し、手で槍を回すアグルの瞳には、怒りが見て取れる。

きっと彼は、自分が馬鹿な手を取ったと憤っているのだろう。

その憤りの反面で、こちらが武器を持たない事を確認し、すかさず一撃を加えて来るだろう。

その一撃は次の手を考え無いトドメの一撃の筈だ。

何しろ相手は武器を投げ捨て、防ぐ事も攻める事も出来ないのだから。

しかし。

それこそがメイヤの狙い目。

右ストレートへの反撃、薙払いの一撃を放つアグルへ黒瞳を向け、メイヤは一歩踏み出す。

更に、既に振り切った右腕は左腰へ添えられていた。

(剣も短刀も投げ捨てた、拾う間も無い。

だけど。

刃が無ければ創れば良い!)

その構えは迅速の抜刀を可能にするもの。

風切り音を耳に、迫る槍を視界に映し。

メイヤは自身に宿る“闇”で形成した柄を握る。

「ーー……居合い、神斬り!」

そして、漆黒の闇刃が抜き放たれ、一拍遅れて怒号の様な歓声が二人へと降り注いだ。

【決着はどっちでもイケる様に振ったんで、後はイスラさんよろしくお頼み申し上げます!】

317アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/18(日) 23:18:07
【闘技場】

試合の決着を証明するかの様に、割れんばかりの歓声が場内に沸き上がる。
中央フィールドを見やれば、刃を構えたまま静止する二人の姿があった。

その中で先に体勢を崩したのはアグルの方だった。
あーあ、と気の抜けた声を吐き、軽く肩をすくめてみせる。

「あまり手の内を曝したくはなかったんだけどなー…。
てかこれもしかして反則になんの?なんないよな?異能を使うな、なんて一言も言われなかったし」

彼の言葉が示す通り、そこには異様な光景が広がっていた。

メイヤを取り巻く様に、彼の足元から地面を突き破って無数の刃が伸びていたのだ。その様は剣山を連想させる。
足の爪の先から耳の裏側にいたるまで、いたる所をすれすれで刃が突き抜け、メイヤの動作を抑止している。

所々刃がかすり血が滲んではいるものの、致命傷に及ぶような傷は一つもなく、むしろよく居合いの動きを途中で止められたものだと感心する。
あのまま振り切っていたら腕が飛んでいたことだろう。

「降参…してくれると嬉しいんだけど」

アグルは手に持つ槍の刃をメイヤの喉元に押し当てたまま、眉一つ動かさず淡々とした口調で言った。


【ありがとうございます^^ではこの勝負、アグルの勝利にさせて頂きます】

318メイヤ/レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/20(火) 21:58:55
【闘技場】

必殺の居合いは抜き放たれるも、勝ちを得るには届かず。

闇刃を振り切る手前で動きを停めたまま、メイヤはゆっくりと息を吐いた。

「いや、異能が禁止なら先に俺の方が失格になっている筈。」

そして、自分の周囲を囲む刃の群れに目をやりながら、素直に参ったの言葉を口にする。

しかし、それに続いて苦笑いを浮かべつつ、嫌がらせの声を掛ける事は忘れない。

「俺の負けだよ、流石だな。

これであのオネェ系もアグルを追い掛けるだろう、強いオトコが好みらしいしさ。」

どうやら今回はアグルの方が一枚上手だった様だ。

突如現れた刃が何か解らないが、アレはほぼ回避不可能の必殺だろう。

(雷を操るに、砂鉄の刃か……?)

審判の試合終了を告げる声と共に消える刃群を横目に、メイヤもまた、投げ捨てた白刃を拾う。

取り敢えず、自分の出番は終わった。

イスラも回復した頃だろうし、後は歓声を上げる客側になって試合を見よう。

闘技場に溢れんばかりの歓声を背に、メイヤはその場を後にする。

ーーーーー

メイヤとアグルの試合が終わった後。

闘技場の簡単な整備が終わり、再び辺りに歓声が沸き上がる。

しかしその中心、闘技場に立つ眼鏡を掛けた青年、レックスは歓声など聞こえないとばかりに目を閉じていた。

「……で、貴方はどこのどちら様でしょうか。

開幕セレモニーの時にも居ましたが、僕の対戦相手であるイスラではないですよね。」

試合開始の旗は既に振られているものの、レックスは未だ動かない。

よくよく聞けば、歓声はヤジに変わりつつある。

「しかし、ですね。

試合は既に始まっている、と言う事は。

全力でやらせて頂きますよ、僕は今大分苛立っていますので……」

怒号の様なヤジを背に、レックスは三叉鑓を握る。

眼前には眼帯の男。

知った顔では無い、ならば。

「すみませんが、手加減はしません。

八つ当たり、させて頂きます!」

手にする鑓は、風の刃。

一薙で烈風を、二薙で竜巻を。

レックスは烈迫の気合いを込めて三叉鑓を左右に薙払い、生み出した竜巻を眼帯の男……シャムへと容赦無く放つ。

319シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/22(木) 01:49:26
【闘技場】

何やら知らないが、闘う前から相手の青年は立腹しているようだ。
彼の態度からするに本物の方のイスラ・フォードとも面識があるのだろう。
しかし、そのどちらもシャムとっては関係のないこと。

「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと来いよ。
こっちは暴れたくて暴れたくてウズウズしてんだからよぉ」

最初は面倒臭がっていた彼も今ではすっかりスイッチが入ってしまったようだ。
クロッソとの取り引きの話も覚えているのか、いないのか。

持ち前の強面を更に凶悪なものにし、シャムはおもむろに前に左手を翳す。
左腕に寄生した大顎が口を開け、迫る竜巻を全て吸い込んだ。

「お返しだオラァッ!」

かと思えば、次にそれは重火器の砲身の如く細長い円筒に形を変え、砲口から次々と榴弾を吐き出した。

320レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/23(金) 16:28:45
【闘技場】

竜巻を喰らい、榴弾を吐き出す。

それは左手と言えばあまりに奇怪、だが、客受けはかなり良いらしい。

前の試合とはうって変わって、派手な攻防に観客はヤジを歓声に変える。

その事が更にレックスを苛立たせるも、冷静さは欠かさない。

吐き出される榴弾を後方へと下がって回避し、榴弾が爆裂し巻き起こる土煙を隠れ蓑に再び竜巻を放つ。

(攻防一体の左手、面倒ですが……)

それと同時に左手、シャムの右側へと回り込む様に疾走。

竜巻が土煙を吹き飛ばし、シャムの視界が開けたであろう瞬間を見計らい、更なる加速。

大気を操り、背面へと集めていた圧縮空気を解放。

加速に継ぐ急加速で一気に距離を詰め、三叉鑓による勢いに乗った刺突……刃先に乱気流を纏わせた一撃を放った。

「狙うならば、右側がセオリーでしょう!」

321ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:08
【過去】

「酷いなぁ、心配してあげてるのに。…あ、リト、食べてすぐ寝っ転がっちゃダメだよ。もう少し起きてようか。」

アブセルをからかいながらもリトの動きには敏感で、横になろうとしていたのを止める。そして代わりに腰の辺りにクッションを敷くなどしてなるべく楽な態勢を取らせてやった。
アブセルに放った「心配」は嘘っぽいが、実際面倒見はいいようだ。

「……」

何処かのお屋敷の子供。
人を雇う程なら裕福であるはずで、生活面においても問題はないはず。
しかし、そのわりにリトは痩せ細っているし、いくら病気だからと言って顔色が不自然に悪過ぎる。先程医者に様子を聞いたら貧血もあると言っていたけど…
それに、

「リト、寒くない?」

ジルの問いかけにリトは小さく頷く。

「ちゃんと口で教えて」

「…寒くない…」

この口数の少なさが気になる。
…他人のこと、加えて今日初めて会った人物の心配をしたところでどうにもならないが。

ジルは不意にリトの頭を撫でる。
一瞬彼の身体がビクリと動いた。とても緊張している。

「…アブセル。」

リトが怯えているのが分かるが、それでもジルは手を止めない。悪意のない接触に慣れた方が良いと思ったからだ。
そしてリトを撫でたまま意識はアブセルへ。

「リトに興味があるんでしょ?ならさ、虐めるんじゃなくて気遣ってあげなよ。そっちの方がリトにとっても、君にとっても良いと思うな。」

322ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:50
【ポセイドン邸】

父が嫌いだった。
本当はリトが生まれる前から、ずっと。
ポセイドンの血を引き、その力まで継いだ自分を、父は特別目にかけていた。
ポセイドンの当主としての英才教育、謂わば帝王学なるものを強要したが、自分は格式ばったものが大嫌い。自由奔放に振る舞い、父の言うことなど微塵も聞こうとしなかった。
父からは何処か野望めいたものを感じていたから、子供ながらに警戒していたのだろう。

「…そうか。」

老人の話を聞いて、今まで引っかかっていた謎が解けた気がした。
本家に婿入りし、ヨハンはポセイドンの家系を継ぐ者の父となった。だが彼はそれでは満足出来なかった。優位な肩書き、立場だけではなく、自身が一族の頂点に立ち、実権を握りたかったのだ。
自身の出生について彼が知っていたかは不明だが、それを抜きにしても自身の育った環境が決して恵まれたものではなかったから。最下層の身分を払拭しようともがくあまり、どこかで道を間違えてしまった。

彼は娘を利用して自分の力を確かなものにしようとしたものの、どれだけ試みてもナディアは彼の思い通りにはならなかった。
そしていつしかナディアへの干渉はなくなっていったが…それをただ”諦めた”と思っていたのが甘かった。
自分は救いようのない馬鹿だと思う。父の野望が、もっと恐ろしいものに変化していたことに気づかなかったなんて。
彼はただ方法を変えただけ。”その対象”を、自分からリトに変えただけだった。

(リトがあんな目にあったのは私も一因ってことか…)

嫌なことに気づいてしまった。
ナディアは自嘲気味な笑みを浮かべた。

それにしても、

「今までずっと黙ってた事を、何で今更話すの?」

50年以上も親子である事を隠し、20年以上実の息子、そして孫に仕えてきた。
これほど沈黙を貫いていたにも関わらず、何故今になって事実を打ち明けるのか。

「父さんは不遇な人生を歩んで来たから、同情して許してやれと?降って湧いた祖父に免じろとでも?悪いけど、打ち明けられたところであんたを祖父として接する気はないよ。」

あぁ、言われてみればヨハンと老人は似ているところがある。
血の繋がりをもろともしない冷酷な面がそっくりだ。

「要するにあんたにとって大事なのは”旦那様”だけだもんね?孫であるはずのリトが苦しめられても見て見ぬ振り…違うな、あんたは寧ろ助長してた。私やヨノのことは過保護にするくせに、リトには冷たかったもんね。」

323リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:40:30
長らく更新出来ずスミマセン> < 学会の準備でずっとバタバタしてました(;-ω-)ゞ

ヤツキ>>
【お待たせしました、家系図ですっ
imepic.jp/20150125/584890
だいたいこんな感じ?
見えづらいけど> <】

イスラ>>
【わーい←
ヨハン母の名前はレイシーって事にします(^0^
ジル、根本は変わらないのか…
ジルは多分、のび太に優しく、ジャイアンやスネ夫に意地悪するタイプだと思います←←
んー、まともな神経じゃないですからねぇ…(???)

可哀想ですかね?←
設定だけ思いついて膨らますことが出来ないんですよね(笑)
いえいえ、寧ろイスラさんが自分の思いつきを素晴らしく改良してくださるのでとっても嬉しいです(笑)

爺も可哀想に…( p_q)和解できると良いですね(;-ω-)

スカートの裾を踏んでしまったり、スカートに足が絡まったり、ロングスカートはとっても危険です←

シエルにもとうとう女装癖が…(違
シエルも大人になったのねー(棒読み)

キャンチョメが可哀想なんですかww
いやいや、白龍だってジュダルにとっては良い方向に成長してますよ!
「お前の為に俺頑張る!」って具合に白龍の尻に敷かれてる感じが可愛い可愛い← 白龍のお願い(と言う名の無茶振り)にとっても弱いし!

はい、奥が深いのですよ←
えーそんなことないですよー(棒読み)

いやいや、十分使いこなしてますって!!

ジルの弱みを握れば…←】

324シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:51:17
【闘技場】

土煙で何も見えない。…が、正確性よりも「数撃ちゃ当たる」戦法を好むシャムが、砲撃の手を休めることはない。

相手の戦意喪失を確認するのは、手当たり次第に乱射した後でいい。彼がその間に死亡してしまう可能性もあるが、そこはまあ仕方のない話だ。

そう考えていた矢先、不意に強い風が吹き荒び周囲の土煙をなぎ払った。
視界が開け、右目の端を何かが掠める。

「…あぁ?」

そして次の瞬間、シャムの身体は宙に吹き飛ばされた。
壁に激突し、地面に落下する。

右半身に違和感を覚え見てみれば、回転するスクリューに巻き込まれたかの如く右手はぐちゃぐちゃ。右胸の肉は抉れ肋が剥き出している有り様だ。

瞬く間に会場は騒然となった。この状況でもなお歓声を上げる血の気の多い者もいるが、みな血溜まりの中に沈み動かないシャムを凝視していた。

「…くッ…、くははははははッ!」

しかしそんな中、突如として大きな高笑いが場に響いた。
声の発信源は他でもないシャム自身だ。
恐らく彼のことを知らない観客の殆んどが、気が触れてしまったのでは…と思ったに違いない。

呆然とする会場の空気を置き去りに、彼は一頻り笑い続ける。そして一つ大きく息を吸い込み…

「いッてえなゴラァッ!!」

…急にキレた。
普通の人間なら痛いで済む話ではないが、しかし血痕こそ残れ彼の傷はもうそこに存在してはいなかった。

だがそれに反しシャムの怒りは収まらない。
憤然と立ち上がる彼の左腕が大きく蠢いた。
寄生生物の融合範囲が左腕から背中、右肩まで広がり、あるものに形を為していく。

そしてまるで翼を拡げるかの如く、シャムの背後から四挺の口径30mm機関砲、二機の多連装ロケット砲が展開。

それぞれの兵器が一斉に火を吹き、闘技フィールドまでならず、観客席にまで嵐の様な弾幕が蹂躙した。

325アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:53:45
【過去】

ジルの言葉に対し、アブセルは返事に窮した。

「別に興味なんて…」

ない、と含んだ言いかたをするものの…やはりそれは本心からのものではないらしい。

その証拠にアブセルはちらりとリトを見やる。
ふいに彼と目が合うと、目の下をほのかに赤らめ、ぷいっと直ぐに顔を背けてしまった。

「…気遣ってあげるって…どうやったらいいか分からない…」

いじわる…は、もうしないと思う。…多分。
今回のことで懲りたから。
だが人に優しくするという行為は、今のアブセルにとっては少々ハードルの高いものでもあった。

そもそも彼は、今まで子供同士の交流の場において、気遣いなるものの配慮をされた経験がない。
いや、そもそもそれを交流と呼んでいいのかどうかもいささか疑問ではあるが。

いずれにせよ彼の場合、他の子との接触といえば、謗られるか、石やボールを投げつけられるか、倉庫に閉じ込められるか…など。おおよそ笑い者にされ、嫌な思いをするものでしかなかった。

そんな中にいれば、当然アブセルの対人意識も捻くれてしまう訳で。

唯一の味方だった母に見捨てられたことも相成ってか、彼は自分の周囲に壁を作るようになってしまった。
他人に心を許すことを極端に恐れ、それどころか人を寄せ付けないため、自ら嫌われる様なことをする節さえあった。

拒絶されて傷つくのが怖かったのだ。
ずいぶん後ろ向きな考え方ではあるが、それが彼なりの身を護る術だったのだろう。

「本当は仲良くしたい」しかし「人と深く関わるのが怖い」そんな異なる感情が共存しているせいで、アブセルは他人とのコミュニケーションが上手く取れずにいたのだった。

326レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 15:15:34
【闘技場】

確かな手応えは、あった。
乱気流を纏った鑓の矛先はさながらスクリューの様なモノ。
直撃すれば唯では済まない。

しかし。

あまりの威力に外壁まで吹き飛び、血溜まりに沈む対戦相手は哄笑を上げる。
そして更に、一通り笑い終えると同時に怒号。

それを合図に対戦相手、シャムの左手から肩、背中に掛けてが蠢き、様々な重火器が姿を現した。

「……人外の方、ですか。」

そして、その砲口は一斉に火を噴いた。
その威力は凄まじく、闘技場のみならず観客席にまで弾幕が降り注いでいく。
流石の観客達も歓声を悲鳴に変えて逃げ回り、周囲は大惨事だ。

しかし、それでも尚審判のマルトは試合中止の声を掛けず、涼しい顔……何らかの異能を使い、弾幕を防ぎながら試合を見ていた。

それを視界の端に映しながら、レックスは疾走。
超高密度まで圧縮した大気分子の小盾を構え、弾幕の嵐を進んで行く。

(銃弾の軌道は基本的に直線のみ、ロケット砲にだけ気をつければ何とかなります!)

しかし、嵐の様な弾幕全てをかいくぐるのは不可能であり、進む事に銃創が増えて行く。
だが、近付かなければ勝気は無い。

(異能による遠距離攻撃は左手によって無効化されますが、近接攻撃なら通じます。

それに、あの“奥の手”を確実に当てるには近付くしか……!)

レックスは破壊の権化と言っても過言では無いシャムへ、鑓と盾を構え確実に、距離を詰めて行く。

ーーーーー

「凄い騒ぎだな……でもアレじゃあしょうがないか。」

逃げ惑う観客達が入り乱れる観客席で、メイヤは呆れた様な、苦笑いの様な声を漏らす。
アグルとの試合を終え、簡単な怪我の治療をした後に、待ち合わせていたサンディと観客席で試合を観戦していたのだが……

何でもアリとは言え、暴れ回るシャムは如何なモノか。
観客にも既に負傷者が出て居り、それがより一層観客達の恐怖症を煽っている様だ。

何より、そろそろ自分達も避難した方が良さそうだ。
比較的人の出が少ない出入り口を探し、メイヤは立ち上がる。

「サンディ、俺達も避難しよう。

流石に観戦してるだけで怪我するのはいただけない。」

そして、サンディの手を引き、歩き始めた瞬間。
不意に現れた人影……二人組の男、黒髪に面の男と白髪の少年がその進路を塞ぐ。

「行かせないよ、折角周りの目を気にしなくて良さそうなんだから。

喰わせて貰うよ、僕達“四凶”が。

ねぇオンクー、一番弱そうな天照大神から喰らって行けば、順当に“神格”を上げれるよねぇ?」

327ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 22:07:55
【おぉー!リマさんありがとうございやす!】

328ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:26:43
【ポセイドン邸】

なぜ今さら真実を打ち明ける気になったのか…。
正直な所それは老翁にも分からなかった。
ただそれがヨハンの死に起因することは確かだったが…しかし、それだけだった。

ナディアの言う通り、厚かましくも情けを請い、許してやって欲しいと考えてのことだったのか。
それとも、ヨハンの娘である彼女に、彼のことを知って貰いたかっただけなのか。

または、その事実を自分一人の胸に抱え続けることに疲れ、懺悔をしているつもりにでもなっていたのか。

いずれにしても自分本位なものに違いはないが。しかし、ともすれば、まだ懺悔は終わっていない。
重ねた罪は全て、最後まで告白しなければならないのだ…。

「…リト坊っちゃんに対しても、大変申し訳ないことをしてしまったと思っています…」

苦々しい口調で老翁は口を開いた。
そして少し間を置いて、次にこうも続けた。

「奥様の心のご病気…、お嬢様はどう思っていらっしゃいますか?」

繋がりを考えれば、何の脈絡もない様に思えるその言葉。いきなり話が飛び、ナディアからすれば訳が分からなかったことだろう。
しかし彼は気にしていなかった。

「不自然とはお思いになりませんでしたか?
奥様が坊っちゃんの誕生を特に心待ちにしていたのは周知の事実ですが…。
あの方はもともと気の強い方でいらっしゃいます。どんな理由があろうと、あそこまで豹変なさるのは少し考えにくいものではないでしょうか」

そして彼はナディアを見つめ、はっきりとこう告げた。

「あれは私の暗示によるものです」

329ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:28:33

ナディアは言った。あんたはリトに冷たかった、と。

確かにそうだったと思う。
リトに対しては、一線どころか二線も三線も引いて接していたから。

それは"情が移らないように"とか、"彼の行く末を知る者としてのけじめ"とか、そう自分自身に言い聞かせていたが。
正直な気持ちを言うと、自分は心のどこかで彼のことを恨んでいたのかもしれない。

もともとヨハン達家族の関係にはどこか危ういものがあった。
ヨハンとミレリアの間には少なからず蟠りがあったし、娘…主にナディアも父親に対して不満を抱いている様だった。

それがリトが産まれたことで、より顕著な形となって表面化しようとは誰が予想しただろう。
リトを巡って家族間の溝は深まり、修復不可能なまでに軋轢が生じた。

勿論それはリトのせいではないが。しかし結果として家庭内に新たな確執を生み、ヨハンを更に狂わせる原因となった彼を、たぶん自分は許せなかったのだと思う。

「坊っちゃんや奥様のことだけではありません。
私はトーマ様ご家族の事件を含め様々な汚行に関わり、旦那様に手をお貸ししてきました」

更に老翁は吐露し続けた。

ヨハンの権力志向は老翁も危惧しているところがあったが、その異常性は次第に目に余るようになった。
我欲の為には時に強引とも思える行為…賄賂や暴力に訴えることも屡々であった。

止める機会はいくらでもあった筈だった。
いや、実際に口を出すこともあったが、最終的に自分は彼の指示に従い続けた。
こんなことを続ければ、いずれ破滅するのは目に見えているのに…だ。

彼の望みを叶えることが、自分が彼にしてあげられる唯一の罪滅ぼしだとでも思ったのだろうか。どんな形であれ、彼に頼られることが嬉しかったのだろうか。

…本当に、自分という人間はどこまで愚かなのだろう。

「ご当主様…」

ふいに老翁は床に膝まずいた。
深く身を屈め、ナディアの足元に叩頭した。

「誠に申し訳ございませんでした。
弁解の余地もございません。ご当主様の判断の元、然るべき処分を所望いたします」

330イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:41:17
リマ》ありがとうございます^^いつ完成するか分かりませんが、頑張ってラブストーリーなるものを書いてみます

ああ、っぽい(笑)ちょっとしたドラえもんですね←
普通じゃないのか…(笑)

可哀想ですよ!ミレリア達の三角関係が今も続いていたなら、自分はトーマよりヨハンを応援してたでしょうね←
そうですかね?何か勝手に色々改良しちゃってすみません;

もう別に和解しなくてもいいかも(笑)爺だってもう引退の年齢だし、屋敷から追い出しても構いませんよ←

マジか、そんなリスクを抱えながらも皆さん頑張って履いてるんですねw

ジュダルが尻に引かれてるんだ…!
まさか彼がそんな萌えキャラになろうとは…(笑)

ジルの弱みは…妹ですかね?
じゃあ妹を人質にとって…ってそんな卑怯なこと出来ませんよ←

331シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/02(月) 19:45:26
【闘技場】

「死ッね、おるァアアァァアッ!!」

無数の砲弾にも臆さず、こちらへと疾走してくるレックスに対し、負けじとシャムも砲火で迎え撃つ。

しかし、その時である。何の前降れもなく、脳天に何かが直撃してきた。

不意の一撃にたまらず横転しそうになる。
その傍ら、彼の頭に蹴りを浴びせた張本人…DDは、宙返りをして華麗に地に着地してみせると、素早くシャムの頬を両手で挟み、その口に唇をあてがった。

「ぶッ…!?」

彼の口づけにはエナジードレイン的な効果でもあるのだろうか。
初めの内は大暴れしていたシャムも、終いには力が抜けたようになり、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。

「テッメ…ッ何しやがる、このクソカマ…!」

不快感を露に服の袖で口を拭い抗議の音を上げる彼に対し、DDは意にも介さない様子で言葉を返した。

「いくらなんでもやり過ぎよぉ。その熱くなると直ぐ周りが見えなくなるの、悪いクセよ。
あ、ごめんなさいね坊や。迷惑かけちゃって」

そうしてレックスに軽く声をかけた後、DDは審判に棄権の旨を告げる。
そして起き上がれないでいるシャムの襟首を無造作に掴んだ。

「あ〜あ…これで取引の話はパアね。
ま、貴方を人選したこっちのミスでもあるから、あまり強くは言えないけどー」

傍目からすればシャムを止めに来た様に見えるその行為だが…、捉え方を変えれば、レックスの"何か"から彼を庇った様にも見える。
まあ、そこは本人のみぞ知ると言ったところだろうが、当のDDはシャムを引き摺りながら、溜め息まじりにフィールド内を後にした。

そして――…

シャムが棄権し、危難が去ったかの様に思われた中、今度は耳をつんざくような咆哮が会場中にこだました。

六つの脚に六つの翼。
大犬に姿を変えたオンクーが、そこにいた。
大きく裂けた口からだらしなく舌と涎を垂らし、唸り声の様な不快な音を発する。

「…じゃあクロス、天照はお前にあげるよ。
ワタシは…」

言って、彼はちらりとメイヤを見た。
いや、正確には言えばこの場合、見るという表現は正しくなかったかもしれない。何しろそれには眼が存在しなかったのだから。

それでも彼はしっかりとメイヤを射竦め、殺意を孕んだ牙を剥き出しに、相手に飛びかかった。

「こっちの"狗"に借りがあるね!」


【クロスとオンクーは今回で(物語上から)リタイヤする流れですか?】

332レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 17:57:48
【闘技場】

突然の乱入者によって無力化される対戦相手。

二人は顔見知りの様で、審判へ棄権の旨を告げ、闘技場を後にした。

その姿を見送り、レックスもまた、歩きだそうとするが……

(なん、ですか?アレは……!?)

突如として響き渡る、雷鳴の様な咆哮に足を止めた。

音のする方を見れば、三対の翼と脚持つ異形の影が観客席で暴れているではないか。

更に、よくよく見れば暴れまわっているのは異形だけではない様だ。

仮面を付けた青髪の男達が観客へと襲い掛かっているのが見える。

それも、数十人と数も多い。

「これは、不味いですね……!!」

試合も中途半端に終わり、苛立ちは募る一方だ。

しかし、今は観客達を助けるべきだろう。

審判のマルトへと視線を投げ、共に頷くと同時にレックスは駆け出す。

しかし。

レックスが観客席へと辿り着く事は叶わず。

どこからともなく現れた人影が放った、絶対零度の吹雪が無慈悲なまでに吹き荒れ、闘技場を蹂躙していく。

ーーーーー

「全く、DDが止めに入らなければどうなっていた事やら……」

シャムを引きずり闘技場の出入り口へと歩いて来るDDへ、フィアは労いの声を掛けた。

シャムが負ける事はないが、あのまま戦えば周りだけでなく、本人も決して浅くは無い傷を追っていただろう。

そう思える程に、あの眼鏡の青年の実力は高い。

「まぁ、怪我しなかっただけ良しとしましょう。

クロッソとの取引はおじゃんだけどね……」

闘技場から続く選手用の通路を歩きながら、フィアはため息を吐いた。

それと同時に。

闘技場を揺るがす咆哮と、それに続いて凍える様な冷気が通路内を吹き抜けていく。

「……何、この強大な“氣”は。」

更に、膨れ上がる強大な二つの“氣”を感じ、フィアは思わず呻いた。

「この感じ、十字界で戦った者に似てるけれど……まさか!!」

ーーーーー

咆哮に続き吹き荒れる猛吹雪。

一瞬にして視界を埋め尽くす真白のそれは、レックスの身体を軽々と吹き飛ばし、闘技場の壁へと叩きつけた。

「か、は……」

突然の衝撃と、壁へ叩き付けられたダメージは重く、レックスは直ぐには動けない。

十数秒の間を置き、鑓を支えにゆっくりと立ち上る。

吹雪により視界はすこぶる悪いが、何者かがマルトと戦っている様だ。

「いったい何が起こっているのでしょうか……!?」

333メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 18:05:22
【闘技場】

そう言えば、闘技会の開幕セレモニーにてその姿を見た気はする。

更に思い出して見れば、弥都で刃を交えた事もあった。

「巷で噂されてるらしい異能者狙いの二人組は、お前達だったんだな。」

行く手を阻む二人組へ、メイヤは固い声を返す。

どうやら彼等の狙いは自分達だった様だ。

逃がすつもりは無いと言った様子の二人を視界に収めながら、メイヤは闘技場へと目を向ける。

(あっちは終わりか……)

何やら乱入者が現れたらしく、試合は終わった様だ。


これで避難する理由は無くなったが、今は戦うしかないらしい。

雷鳴の如き咆哮を上げながら、異形の大犬へと姿を変えたオンクーへ、メイヤは刃を抜き放つ。

そして、飛び掛かりの一撃を刃で斬り払い、後方へ跳躍。

着地と同時に闇の鎧を身に纏い、左手を前へ。

「犬に狗呼ばわりされるなんてな、大人しく犬小屋へ帰ってくれたら助かるんだが。

来いよ、躾てやる。」

指をクイクイっと動かし、メイヤはオンクーを煽った。

ーーーーー

あの姿になったオンクーはそう簡単には止まらない。

周囲を見渡せば、観客席では暴動が、闘技場では猛吹雪が。

どうやら色々と事が重なったらしい。

たが、今はそれもまた好機。

大犬へと姿を変えたオンクーから視線を変え、クロスは眼前の少女へと目を向ける。

「弥都とこの街でたらふく異能者を喰ったからね、“咎落ち”の心配も無い。

さぁ、喰わせてもらうよ……天照大神!」

変装用の面を投げ捨て、クロスは薙刀を振り上げる。

そして、小柄な身体からは想像もつかない程の速度と重量の乗った一撃を繰り出した。

更に、それと同時に大気中の水分子を操作し、作り出した二本の水の槍でサンディへと挟撃を放つ。

【そうですねー、四凶決着といきませう!】

334アグル他か:2015/02/09(月) 21:44:54
【闘技場】

突如として襲撃を謀る謎の男達と、会場中に吹き荒れる猛吹雪。
所所方方で大混乱が巻き起こる中、飛び掛かってきた男の一人を蹴り飛ばし、アグルは観客席からレックスの傍らに降り立った。

「大丈夫か、委員長」

この緊迫した雰囲気にも関わらず、彼の態度はいつもと差異がない。どこか気怠気なものだ。

「逃げるんなら肩貸すけど」

そして眼前で繰り広げられる戦いに目を向けたまま、レックスに言った。

――…

闇の鎧を纏った相手を見据え、オンクーは口の端を吊り上げる。堪える気もない笑いが息として洩れた。

「勘違いして貰っちゃ困るよ。
ワタシが用があるのは、お前じゃなくてその"中身"ね」

弥都で対峙した折、窮地に追いこまれた筈の彼の態度が、突如として豹変したのをオンクーは見ている。
それはまるで人格そのものが変わってしまったかの様な。
どんな仕掛けかは知らないが、あれは喰いがいがありそうだった。

「その化けの皮、さっさっと剥がしてみせるがよろしいよ」

オンクーは首をもたげ、大顎を開く。
呪を宿した黒々とした業火を吐き出し、周囲一体を火の海に化す。そしてその場から跳び上がり、己の巨躯をメイヤに叩きつけるべく襲いかかった。

――…

少年の放つ挟撃がサンディに襲い掛かる。

しかし、その瞬間。彼女を中心に目映いばかりの光が膨れ上がった。
二振りの水槍は一瞬のうちに蒸発し、薙刀の刃先はどこからか現れた勾玉によって止められる。

彼女の身代りとなり粉々に砕け散った硝子片が周囲の光を拾い、ちらちらと輝きを見せる中。
額に日輪の印を宿し、薄紅色の羽根を背に広げたサンディはその手を鞘へ。

「まったくもう…。私達に用があるんなら、なにも他の関係ない人達を巻き込むことないじゃない!」

立て続けに事が起こりすぎて何がなにやら分からないが、取り合えず今が危機的状況だということは分かる。
力の出し惜しみをする必要はない。最初から全力だ。

腰を落とした姿勢から刃を一気に引き抜く。炎を纏った抜き身が大気を焦がし、一直線にクロスへと迫っていった。


【了解です!】

335レックス+キール ◆.q9WieYUok:2015/02/09(月) 23:51:23
【闘技場】

「大丈夫です、一人で立てますから。」

三叉鑓を支えになんとか立ち上がるレックスの隣。

観客席から飛び出して来たアグルは何時もと変わらない。

肩を貸そうかとの声も聞き慣れた気怠げなモノだ。

その声と、この場から抜けようとする問い掛けにレックスは憤りを感じるも、深く息を吐き心身を落ち着かせる。

「助けに来てくれたのは嬉しいですが、逃げる訳には行きません。

誰が、何の為に襲撃を掛けたのかはわかりませんが……ここで止めないと街に被害が出ますから。」

そう、今はまだ闘技場内だけだが、このままでは必ず街へ戦火は広がるだろう。

見れば観客席でも戦闘が繰り広げられている。

如何に闘技場が巨大だとしても、激闘が続けば崩壊は免れない筈だ。

刺す様な冷気を吸い込み、吐き出し。

レックスは鑓を構え、眼前を見据える。

そして、飛び出そうとしたその時。

吹雪を突き破るかの勢いでマルトが吹き飛ばされ、数刻前のレックスと同じ様に闘技場の壁へと叩き付けられる。

レックスと違うのは、辛うじて受け身を取り、支えもなしにしかと立ち上がった所か。

だが、よく見ればその姿はボロボロで、額からは鮮血が溢れている。

「……お前達、避難してなかったのか。」

しかし、ダメージを感じさせない動作で剣を構え、マルトはレックスとアグルの二人へ声を掛けた。

「本当なら、逃げろと言いたい所だが、手伝ってくれ。

団長が来るまで奴を止める。

正直俺一人じゃあ無理だが、四神が二人居れば何とかなる筈だ。」

その問い掛けにレックスは無言で頷き、チラリとアグルへ黒瞳を向ける。

しかしすぐさま視線を前に戻し、来た。

圧倒的なプレッシャーを放ち、吹き荒れる猛吹雪の中を進む一人の女性。

視界を埋める真白の中、黒のスーツを着こなす四霊が一人。

「合い見えるのは初めてね、四神のフレイヤとトール。

私は四霊、霊亀のキール。

初対面で悪いけれど、アナタ達。」

吹雪に髪を靡かせ、キールは氷点下の声で囁く。

「ここで皆殺しよ。」

そして、その姿が互いに視認出来る距離まで近付いたと同時に。

キールは絶対零度の波濤をマルトを含む三人へと放った。

336メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/10(火) 15:15:36
【闘技場】

異形の大犬が洩らす笑い声に、メイヤは眉を細める。

しかし、続く言葉で彼が何を言っているかを理解し、応えた。

「……俺は俺だ。

それに、化けの皮を剥がされるのはそっちの方だろう!」

そして、吐き出される黒火に臆する事無くメイヤは駆け出し、疾走。

黒火の海を駆け抜けながら、巨大な闇刃を生成。

襲い来る巨躯へ狙いを定め、刃を横薙に一閃……するも、オンクーの一撃は予想以上に重く、振り切る事は叶わず刃は砕け散って行く。

更に、刃が砕けバランスを崩した所にオンクーの巨躯が飛来。

避ける事は叶わず、辛うじて左腕でそれを防ぐもメイヤは吹き飛ばされ、観客席へと叩き付けられた。

ーーー……

弥都で対峙した時は、此方の完敗だった。

首筋へと突き刺さる牙と、溢れ出す血の感触を最後に、自分は意識を失った。

そして、次に目覚めた時には屋敷の中で、傷も消えていた。

あの時は、誰かに助けて貰ったのだろうかと思っていたが……

ーーー……

燃え盛る黒火に囲まれながら、メイヤはゆっくり立ち上がる。

防御の為に構えた左腕は、肩口まで鎧が砕けているものの、折れてはいない。

(封じられし“悪神”……奴の狙いはソレか。

そして、以前戦った時に俺を助けた、いや、“器”としての俺を守る為に顕現したんだろう。)

弥都でオンクーを退けたのは自身に宿る力であり、自身を蝕む力。

それは強大な意思を持ち、常に自分へ囁き掛けている。

“闇を喰らい、身体を渡せと”

だが。

バルクウェイでの戦いの後始末として、深淵から溢れ出す闇を喰らい尽くした以降。

“悪神”は以前よりも成りを潜め、反比例して扱える闇の総量は増えた。

「闇を喰らい尽くす“悪神”。

俺がアンタを喰らってやるよ……!」

弥都では敗北を喫したが、今は負ける気がしない。

立ち上がり、メイヤは再び刃を生成。

右手に長刀、左逆手に短刀を。

破損した鎧も修復し、再度駆け出す。

その速度は先程よりも数段速く、漆黒の影は瞬く間に大犬との距離を詰め、刃を二閃、三閃、四閃、五閃。

勢いの乗った回転斬りは、増殖し続ける闇の小刃を纏い、竜巻の如く膨れ上がる。

そして、全てを切り刻む嵐と成り、オンクーの巨躯へと襲い掛かった。

337クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/12(木) 15:54:43
【闘技場】

水槍は蒸発し、薙刀の刃は勾玉により防がれ。


光舞う中現れしは、天照大神。

額に日輪、背には薄紅の羽を背負うその姿を見、クロスは驚きの表情を浮かべる。

「まさかその姿になる程、力を使いこなせているとはね……

正直見くびっていたよ、君の事を。」

しかし、その表情は直ぐ様歓喜の笑みへと変わる。

それと同時に、サンディが放つ炎の斬撃を水盾で防ぎ、爆発。

水蒸気爆発により巻き起こる烈風が吹き荒れ、それに乗って濃霧が周囲に広がっていく。

「でも。

今の君は四神の中で一番脂がのって美味そうだね。」

そして、濃霧を突き破ってクロスは飛び出す。

しかしその姿は、先程までの少年の形を成さず。

「この世は弱肉強食だよ、そして僕達四凶は全てを喰らう者。」

白髪頭からは二本の巻角が、小柄だった上半身は筋骨隆々に。

下半身は四つ脚、真白の綿毛に包まれた馬脚へ変化。

右手の薙刀は消え失せ、氷の突撃槍を。

逆の左には氷の大盾を持ち、蝙蝠の翼をはためかせ、現れしは異形のケンタウルスか。

異形の巨躯へ変化しつつも、表情だけは幼い少年のまま、クロスは力を解放させたサンディへ突撃。


「見せてあげよう、 饕餮の力を!」

勢いの乗った、鋭くも強烈な刺突を繰り出した。

338アグル、サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/15(日) 20:57:58
【闘技場】

飛行艇で初めてマルト達を見たとき、直感的に自分との力の優劣差を感じ取った。当然、劣っているのはこっち…という形でだ。

しかしその彼が今、自分とレックスに加勢を求めている。
彼の表情から察しても、どうらやら相手はよほどの化物らしい。

アグルは何も答えず、無言で視線を動かす。
見えるは圧倒的なプレッシャーを放つ黒スーツの女に、迫る絶対零度の波濤。

全てが凍りつく前に、地に槍を突き、アグルは強力な電磁波を周囲に発生させる。
あらゆる原子の運動を停止させる絶対零度の攻撃に対し、こちらは反対にそれらの振動を増幅させる。

彼方と此方で二分に分たれた空間。
しかしその境界線は徐々にだが、じりじりと押されている。

「……ッ」

このままでは長くは持たない。
アグルの瞳に僅かながら焦燥の色が滲んだ。

――…

濃霧を破って、異形の怪物が飛び出してくる。その姿を見るやサンディは大きく目を見開いた。

しかし驚いている暇などなかった。
突撃槍はもう目の前だ。

とっさに刀を構え障壁をはるも、それは薄氷の如く易々と破られ、サンディの身体は三階の特別席まで吹き飛ばされる。

「いたた…」

強く身体をぶつけた様だが、背中の羽の加護か怪我は大したことはない。
どうやら槍の先も上手く外れた様だ。

それらを一瞬で確認するとサンディは直ぐさま起き上がり、攻めに転じる。
手すり壁に立って手を翳すと、周囲に浮かぶ無数の勾玉が数珠のように一括りになった。

それを一振りすれば勾玉はひとりでにしなり、変則的な線を描いてクロスの身を縛り捕らえた。

「"紅蓮華"!」

それを好機と見て、サンディは更に巨大な火柱を掲げる。それは大きな渦となりクロスを呑み込まんと襲いかかった。

339ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/02/17(火) 22:20:00
【過去】

「分からないって…」

まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
しかしたしかに、”気遣うとはどうすることか”を具体的に言葉で表現するのは難しい。

「……」

アブセルに一本取られた?なんか悔しい。
こうなったら何としても言葉を見つけなければ。

などと考え出したジルより先に、フェミルが動いた。
フェミルは不意に立ち上がったかと思えばアブセルのもとへ。そしてその手を引きリトの側まで連れてきた。

「おともだち」

言ってフェミルはアブセルの手をリトの手に重ねる。

その様子にジルは笑みを浮かべる。

「うん、そうだね」

フェミルの頭を撫でながらジルは続けた。

「難しく考えなくていい。友達として、ただ側にいてあげればいいんじゃないかな?そうすれば、今は見えないことも自ずと見えてくると思うよ。」

そして、

「何と無く心配だけど…今日会ったばかりの僕には分からないし。勝手に抜け出して来たならあまり長居させられないよね。リトが動けるようになったら帰った方がいいかも。」

340オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/18(水) 00:57:56
【闘技場】

「…面白くない奴ね」

あくまでも自分は自分だと主張する相手に対し、オンクーは心底つまらなそうな顔をする。
そして竜巻の如く迫る刃の嵐を一瞥するや、地を蹴り、その中に自ら飛び込んでいった。

「チュンツァイ!引っ込んでろよっ!」

六つの脚を使い、文字通り嵐を爪で引き裂く。
そしてその勢いのままメイヤへと突っ込み、相手の胴に牙を突きたてた。

オンクーは彼を捉えたまま、そのまま前方の壁に激突する。
下顎を壁に押し付け、にやにやと喉から音を鳴らした。

「ほらほら、どうしたね?このまま引き千切っちゃうよ?」

今はまだじゃれついている程度だと言わんばかりだ。
オンクーは相手の苦しがる様を面白がるように、メイヤをくわえた顎にゆっくりと力を落としていく。

341メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/22(日) 21:56:56
【闘技場】

全てを切り裂く闇の刃嵐を前に、臆する事無いオンクー。

三対の強靭な脚と尖爪を使い、刃の嵐の中を文字通り引き裂き、進んで行く。

そして、嵐の中心であるメイヤを間合いに捉えた大犬は大口を開き突進。

鋭い牙でメイヤを串刺しにし、そのまま前方へ。

メイヤの身体を壁へ縫い付ける様に叩き付け、ニヤリと笑った。

「……グイズ、タマーダビー。」

しかし、腹部を貫かれたメイヤもまた、苦痛に顔を歪めながらも笑みを浮かべる。

「向こうののスラングなら、返してやるよ。」

それは口腔から溢れる朱に染まる、凄絶なる笑み。

大陸の悪態を返し、メイヤは空いた両手で大犬の顎を掴み、ゆっくりと引き剥がして行く。

更に、いつの間にか朱から黒へと色を変えた血が泡立ち、異常なまでの剛力により開かれた大犬の口腔内へと殺到。

「オマケ付きでな!」

黒血とも呼べるそれは、瞬く間にオンクーの体内へと侵入し、侵蝕、増殖。

秒刻みで増えるそれは、オンクーの生命力とも呼べるエネルギーを喰らい尽くさんとばかりに激しく蠕動。

そして、闇に蝕まれていくオンクーを引き剥がし、メイヤは大犬の巨躯を蹴り飛ばす。

更に、蹴り飛ばした相手へ闇の小刃の群れを放ち、自身に宿る闇の力を全解放。

溢れ出す闇を纏い、漆黒の獣……黒狗へと姿を変え、雄叫びを上げた。

「オォォォォォォッ!」


【スマホ修理出すのに全データ消去とか憤死ですわ……

遅レス申し訳ない。

そしてイスラさん根回し的な対応ありがとうございます!】

342イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/23(月) 05:04:41
事後報告になってしまいすみません;

今回のこととか他にも何かもう色々、お二人にはたくさんご迷惑をおかけてしまって本当に申し訳ないですorz

取り合えずはこのままこちらの掲示板で続けさせて頂こうと思いますが…レスをサゲるかどうかは個人のおまかせで。

ヤツキ》うわぁ…それはショックw

343クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 15:25:38
【闘技場】

突撃槍の一撃は、いとも容易く少女を吹き飛ばす。

しかし、吹き飛んだ先で立ち上がるサンディの動きはダメージを感じさせないモノだ。

彼女が翳す手から放たれる火渦は、勾玉の縛鎖により動きを封じられたクロスへ迫り、直撃。

動けないクロスを焼き尽くさんとばかり燃え盛るも、次第にその勢いは衰えていく。

「ふふ、この程度じゃあ生焼けにもならないよ?」

そして、見るからに下火となった火炎を文字通り喰らいながら、クロスは身を縛る勾玉の鎖を引きちぎった。

バラバラと観客席へ散る勾玉を踏み砕き、強靭な脚力で三階上の特等席まで軽々と跳躍、背から伸びる黒翼で更に飛翔。

盾を槍へと成型しなおし、二本の突撃槍をサンディへと投げつける。

更に、投槍にも追い付く程の速度で空を駆け、その重量を生かした突進を繰り出した。

「ミンチにして啜ってあげるよ!?」

344ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 18:34:59
【いやいや、直接文句言われた訳でもないし、イスラが謝る事無いよー!

むしろこっちが謝って感謝する側ですわ、移転から移転先でのアレとかアレとか……】

345アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/24(火) 23:45:45
【過去】

フェミルの手によって、リトの手の上にアブセルの手が重ねられる。

「……側に…?」

アブセルは戸惑いながらジルを見た。続いてフェミル、リト。そして最後にまた自分の手の上に視線を戻した。

…今は見えないことってなんだろう。
ジルの言うことはやっぱり難しくてよく分からないけど、彼らの顔を見ていると、何故だか胸の辺りがぎゅうってなる。

「あの…、あのさ…」

もう別れの時間が来たことを察すると、アブセルは躊躇いつつも口を開いた。

「また…ここに来てもいい?…リトと、一緒に…。
そ…そのっ、ホットミルク、おいしかったし…」

ついさっきまでつんけんしていた分、こんなことを言うのは恥ずかしいのか、あくまでホットミルクが目当てだとばかりに慌てて付け足す。

何となく、この家にはほっとするような温かいものを感じる。
またこの人達に会いたい。そう思った。


【そんな滅相もない…
元を辿れば自分のうっかりが原因ですので…(笑)】

346オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 20:35:12
【闘技場】

異質な液体が体内に流れ込んでくる。
途端、オンクーの身に言い様のない激痛が襲いかかった。

「ゲッ…ァ…ッ、アガァアァァッ…!!」

余裕の笑みは苦悶の表情へと変わり、オンクーは痛みに呻吟する。
もがくように小刃の群を避けたところで、喉奥から込み上げてきた黒い血反吐を大量に床に吐き出した。

熱い。まるで全身の血が煮えたぎっているかのようだ。
身体の内側を、黒い、おぞましい何かが
ぞわぞわと這いずり回っている。
夥しい数のそれが内部を圧迫し、ねぶり、侵していく。

オンクーは翼を羽ばたかせ、闘技場の天井を突き破り上空に飛翔した。
へどろの様にまとわりつく不快感から逃れようと闇雲に飛び回る。

「恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心…!」

狂ったように、喉元から腹部にかけてを爪で無茶苦茶に掻きむしった。己の腹を裂いて、そこから全てを引き摺り出したい衝動に駆られる。

「ギ…ッざまァ…、何を、した…」

不意に漆黒の獣…メイヤが追ってきているのが見えた。

その顔に怒りの炎をたぎらせ、オンクーは一度咆哮を上げる。
直後、凄まじい烈風が吹き荒れ、周囲一帯に不可視の飛刃が飛び交った。
同時に、背中の六翼がめりめりと音を立て、それぞれ上顎と下顎かの如く、整然と鋭い牙が立ち並ぶ凶悪な獣のそれに変形する。

それに加えた中央の顎、合わせて七つのあぎとがメイヤに向かって猛進した。

347サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 22:16:41
【闘技場】

これでもクロスを怯ませることすら出来ないのか。
その一瞬の動揺が命取りに。気がつけば距離を詰められ、迫る異形の影にサンディはハッと息を呑んだ。

その時。

「…そが目は赤かがちの如くにして、身一つに八つの頭、八つの尾あり。その身に蘿と檜椙生ひ」

不意に塵煙の影から、ぬっと八つの鎌首が飛び出し、うなりを上げた。
飛来する突撃槍を破壊し、その首をしならせ、クロスを横に弾き飛ばした。

「その長かるは、谿八谷、峡八尾を渡りて、腹を見れば、悉く常に血垂り爛れたり」

詩歌を吟ずるような声と共に、八首の炎の大蛇を引き連れたイスラが塵煙の向こう側から姿を見せる。

そして彼が手を払うような動作をすると、蛇の首がみるみる内に矛の様に鋭くなり。
それぞれが弓弦を離れた矢の如く、疾く空を駆け抜けクロスの身体を穿いた。

348レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/28(土) 23:03:54
【闘技場】

迫り来る絶対零度の波濤と、それを防ぐべく放たれた電磁力の波。

二種類の対極する波は拮抗するも、それも僅かな事。

アグルが放つ電磁波がジリジリと、確実に押されていくのが見て取れる。

しかし、それをただ見ているだけのレックスでは無い。

焦りの色が見えるアグルの表情を横目に、レックスは風を、空気を、大気を圧縮する。

圧縮された大気は高熱を帯び、プラズマとなる一歩手前まで加圧、熱せられたそれを絶対零度の波濤へとぶつけ、直撃すれば即死するであろう死の波濤を相殺。

それと同時にマルトが飛び出し、レックスも後を追う。

そして、左右からの挟撃、剣と三叉鑓による連撃を放つも……キールは決して押される事無く、全ての攻撃を防ぎ切った。

「まだまだね、その程度では私に傷一つ付けれないわよ。」

その表情は絶対零度の如く冷たく、全く感情が見えない。

まるで氷の仮面を被ったかの様な印象を与えるキールは、その背に三対の氷翼を生やし、羽ばたく。

氷翼が巻き起こす裂風は吹雪を更に加速させ、舞い上がる雪は氷の刃とその姿を変えた。

そして、氷刃の竜巻をレックスとマルトへ叩き付け、二人を吹き飛ばす。

更に、氷翼で羽ばたくキールは吹雪を斬り裂きながらアグルへと肉迫し、先と同じ様にその翼を彼へと叩き付けた。

ーーーーー

突如現れた強大な気配の持ち主と、勃発する戦い。

戦いは大きく分けて三つだが、自分達が関わる理由は無かった。

DDの介入があったとは言え、シャムの敗北によりクロッソとの取引きが流れてしまった今、フィア達が闘技場に留まる理由も無い。

だが。

勃発する戦闘をスルーし、観客を助ける事もせず、闘技場を後にする事は叶わず。

何故ならば、強大な気配の持ち主……キールが現れた時点で、闘技場には堅固な結界ぎ張られ、外界から切り離されて居たのだ。

ーーーーー

ならば、どうするか。

答えは簡単だ。

「……結界を張った本人を倒せば良いだけの事。

それに、キャラ、被ってるのよ……私と!」

キールの放つ氷翼の一撃。

その一撃が、アグルへ届くより僅かに速く。

絶対零度を纏いし吸血鬼、フィアがキールの前へと立ちふさがった。

そして、言葉通りキールと同じ氷翼を広げ、放たれた氷翼の一撃を防ぎながら、背後のアグルへ声を掛けた。

「正直気が進まない所はあるけれど、加勢するわ。

そこのクールビューティー気取りを倒さないと、ここから出れないみたいだからね!」

349メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/03/05(木) 00:24:26
【闘技場】

ありとあらゆるモノを喰らい、増殖する闇。

それは物質だけでは無く、魂すら蝕むのだ。

胎内に侵入した黒血を吐き出し、それでも尚苦しむオンクーへとメイヤは駆け出す。

苦鳴の声を漏らしたながら羽ばたき、空へ昇る大犬が咆哮と共に放つ不可視の刃に切り裂かれながらも、疾走。

「グゥゥゥゥ……ォォオオオオオ!!」

そして、闇の波動を咆哮と共に放ち、猛進する大犬を迎え撃つ。

七つの顎に対するは、鋭き爪牙と強靭なる尾。

観客席どころか逃げ遅れた観客をも引き潰しながら、二頭の獣……大犬と黒狗は激しくぶつかり合う。

黒狗の爪牙が顎を斬り裂き、大犬の顎が爪牙を咬み砕く。

戦いは激しさを増すばかりだが、次第に黒狗が手数の分だけ押されていく。

そして遂に。

大犬の七つの顎の内一つ、本体であろう中央の顎が、黒狗の喉元に喰らい着いた。

ーーーーー

突撃槍の一撃は、直撃すれば人間など簡単に粉砕させる威力を秘めていた。

勿論、その強度も十分以上だ。

しかし、二本の槍は破壊力され、続く突進も目標を破壊する前に阻まれた。

自らの巨体が横殴りの衝撃により吹き飛ばされ、更には灼熱の弩弓に貫かれたのを感じ、クロスは思わず呻く。

しかし、特等席へと這い上がって来たその顔には笑みが。

「ふふ、フフフ……良いねぇ、この痛み。

極上の獲物、それも天照大神が二人なんて……君達を喰えるなら、この痛みすら、調味料に成り得るよォォオオオオオ!!」

血染めの笑みを狂気に変え、クロスは咆哮を上げる。

貫かれた傷口からは鮮血が溢れ、鮮血が巨躯を染め、結晶と成り。

緋色の堅鎧を身に纏い、両手に血晶の大剣を握り締め、クロスは再びサンディへ、そしてイスラへ突進。

嵐の様な斬撃を繰り出しながら、二人へ襲い掛かった。

350イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/09(月) 23:12:37
すみません、暫くレス返すの遅くなります;

351ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/03/11(水) 18:32:46
了解すー!

352ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 09:27:51
【ポセイドン邸】


(何を言ってるんだ、コイツ…)

老人から告げられる言葉は、全て予想の範疇を超えていた。到底信じられるようなものではない。

でも…

(そうだ…母様は…)

一つだけ、合点のいくことがある。
母親はリトの誕生を誰よりも待ち望んでいた。
闇の子が生まれたから拒絶したのではない。彼女は始めから、生まれてくる子が闇の能力者であるのを知っていた。そして、”希望”とまで、言っていた。

「信じらんない…」

ナディアは拳を握りしめる。
殴りたい気持ちを必死で堪えた。

「私がアンタを処罰したら、アンタはそれで楽になる。そんなの絶対赦さない。今アンタがやるべきことは何か、自分で考えな。」

そして感情を押し殺し、その言葉だけを振り絞った。
そのまま頭を垂れる老翁には見向きもせず、部屋を出て行く。

「……」

自分なりに、よく耐えたと思う。
部屋を出た途端切り詰めた力がふっと抜けて、体が崩れる。
しかし、そのまま地に倒れることはなかった。
咄嗟に体を支えてくれたのだ。
リマが。

「ナディアさん、大丈夫ですか?」

「…うん、なんとか」

情けない。
ナディアは苦笑いを浮かべた。
体の小さなリマが自分を支えるのは大変だろうと、すぐに態勢を整える。

「無茶苦茶だろ、ここ…」

そしてナディアは何処か疲れた様子でリマに話しかけた。

「…うん」

リマはナディアに頼まれ、セナと一緒に部屋での会話を水鏡に映し見ていた。
ナディアの言葉に反論出来ない自分がいる。

同じ血筋なのに、この数百年間で随分と変わってしまった。
様々な人と出会い、結婚し…人の感覚は此処まで変わってしまうのだろうか。
こんな恐ろしい考えをもつ者が身内にいる現実は、とても受け入れ難い。
しかし、目を背けるわけにはいかないのだ。

「…セィちゃん」

リマは縋るような目でセナを見た。
闇の力で暗示がかかっているのなら、彼の力で解けるのではないか。
このままだと…

「リトが不憫じゃと?」

今の状況ではリトがあまりにも可哀想だ。どうにか解決してやりたい。
そんな彼女の心境を見透かした声が、不意に一同のもとへ降りかかってきた。

いつ来たのか、ノワールが其処にいた。
彼女は嫌悪感を隠しもせずリマを睨み、言葉を続ける。

「そなたはいつもそうじゃの。」

相手が不憫だこれは残酷だ、助けたいと言う。
しかし、それはただの優しさと履き違えた同情心だ。
そして同情とは、自分が相手よりも優位に立っていると無自覚な感情の現れ。
…今更追及する気にもならないが。

ノワールはリマを睨みつけるも、すぐにその視線を他へ移す。

「リトが部屋へ移った。」

そしてその視線は更にセナの方へ。

「そなたがどこまでやれるか、見ものじゃの。」

353リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 21:15:51
お久しぶりです。
スレ滅亡の危機に陥ってる時に何も知らず留守にしてました> <
何のお役にも立てず申し訳ございません(´;ω;`)
マジ根回し有難うございました(>人<)

てか時々やらかすんですが、今後sage失敗したらどうしよう…(;-ω-)ゞ

354アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 07:42:39
【闘技場】

誰だ。
…なんてことを問題にしている時でもないのだろう。

突如として加勢に加わった女性、フィアに向け「そりゃどーも」と適当に礼を返しつつ、アグルは氷翼の影から飛び出す。

死角からの不意をついての攻撃の筈だったが、急所を狙った雷槍の刺突はキールに易々と避けられてしまった。

「…つっても、三人がかりでもこの様なもんで。
一人増えたところで、あり合わせメンバーのにわか連携じゃ正直勝てる気がしないな」

本心を隠そうともせず、アグルはため息混じりに呟いた。

―――…

オンクーの交戦は激しいものだが、それはどこか消え行く直前の炎の揺らめきにも似た何かを思わせた。

牙を相手の喉元に、そして爪を肉に食い込ませ、オンクーは組み合った状態のまま強引に黒狗を抱え空高く舞い上がる。

かと思えば、今度は空中で方向転換。それはもう落下するかの如く勢いで真っ逆さまに地上に急降下する。

(このまま息の根を止めてやる…!)

二匹が降下する先、そこには先の戦闘でも崩れることなく残っていた街の教会と、そしてその屋根に掲げられた巨大な十字架が。
そこに黒狗を串刺しにしようとでもいうのか、オンクーはぐんぐんとスピードを上げ落ちていった。

355サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 08:07:03
【闘技場】

緋色の鎧を身に突進してくる相手の姿を見据え、イスラは神刀、火之迦具土を抜く。

「行くぞ、サンディ」

イスラの声に一つ頷き、サンディもまた腕を伸ばす。
二人が一本の刀に触れ合った刹那、そこから目映い輝きが溢れ出で爆発的な熱風が迸った。

見るや、熱を帯びた刀身は白く発光し、刀の形状はより神々しさを増したものへと変わる。
時代を越えた二つのアマテラスの力が、悪しきものを浄化する剣、天之尾羽張を生み出したのだ。

白く美しい刀身が大気を撫で、皓皓と二人を照らし出す。
湧き出る剣気が幾重もの凄まじい衝撃波を生じさせ、大剣による嵐の如く斬撃に迎え討った。


【リマ》お久しぶりです。そして気にしないでください^^
下げは別に義務でやってる訳でもないので、上げても問題はないと思います】

356アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/28(土) 19:20:52
【ポセイドン邸】

「おい、あまりセィちゃんさん達を困らせるなよ」

遅れて、場にそんな声が割り込む。
それと同時に、ノワールの背後から回されたアブセルの手が、余計なことが言えぬようにと、彼女の口をむぎゅりと塞いだ。

「取り合えずリトはベッドに横にさせといたよ。今はユニと変態のおっさん(ジュノス)が側についてる」

そう一同に言うや、彼は今度はナディアに視線を向ける。「お嬢」と切り出した。

「旦那様の葬儀のことなんだけどさ…。リト…って言うか、リトのふりをさせたセィちゃんさんはどうすんの?
親族の中には子息であるリトも出席させるべきだ、って意見もあるらしいんだ」

でも…、と続く声音に若干の深刻味が滲む。

「それって当然奥様も出席する訳だろ…?
式中に騒ぎになるようなことは、流石に不味いと思うんだけど…」

つまりアブセルは、ミレリアとリトが同じ場に居合わせることで、何かしらの問題が起こってしまうのではないか…と懸念しているようだ。

357クロス ◆.q9WieYUok:2015/03/30(月) 14:48:52
【闘技場】

灼熱を纏い、白光に輝く。

時を越え生まれ出るその剣は、より神々しい姿を現し。

白く美しい刀身から溢れ出す剣気は衝撃波となり、紅の嵐の如き連撃を迎え撃つ。

そして、 天之尾羽張から発せられた衝撃波が止んだ先。

半壊した闘技場特等席の際で、異形の魔物は立っていた。

……否、辛うじて立っていた。

二振りあった筈の大剣は跡形も無く消失し、緋色の堅鎧は元の形を残さず。

背から伸びる黒翼も、筋骨隆々な身体も大小様々な裂傷が刻み込まれ。

ひしゃげた曲角から続く幼顔を歪め、クロスは呻く様に言葉を発した。

「ふふ、ふふ……水と炎、相性で言えば僕に分がある筈なのにねぇ……

赤羊神躯、本気の僕を此処まで傷付けるなんて。」

その口調は先程と変わらないものの、その声からは疲弊の色が見て取れる。

しかし、疲弊が滲む声であっても、未だ闘志は消えず。

それを示すかの様に、クロスは左腕を横に薙いだ。

「流石だね、羨ましいよ……

安定して力を出せる君達は、僕等の様に暴走する危険性を考えなくても良い。

ましてや不安に怯える事なんてない。

だからこそ、僕等は……四凶は四神を狙うのさ。」

その様はまるで不安を、怯えを振り払うかの様に。

自らを鼓舞する様に。

そして、伸びきった左腕の先。

血に汚れた指先から零れる朱色が蠢き、陣を描く。

直径5m程の円となったそれは、拡大を止めると同時に、指先を中心としてクロスの全身を包み込み、脈動。

それは鮮やかな赤から黒へと色を変え、その身体を更に異質な……筋骨隆々とは真逆、漆黒の痩躯へと変質させる。

「赤い仔羊(REDRUM)から漆黒の殺戮者(MURDER)へ。

この姿になった以上、僕はもう負けれない……咎落ちしたその先は渇死しかないからね……」

双翼を三対の痩腕へ、半身半獣を悪鬼の痩身へ、そして操りし水を混濁した闇へと変え、そして。

紅瞳を揺らめかせ、クロスは笑った。

同時に、痩躯から闇の波動が溢れ出し、波濤となって二人の天照大神へと襲い掛かった。

「全てを喰らい尽くす無明の闇は、太陽の輝きすら歯牙に掛けるのさ!」

358フィア+etc. ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:55:24
【闘技場】

橙髪の青年、アグルの言う事はごもっともだ。
確かに、如何に個々の実力が高くても即席の連携などたかが知れている。
ましてや相手は自分と同格以上、分が悪い所の話では無い。

(でも、そうも言ってられないのよね!)

アグルが放つ死角からの強襲をいとも簡単に避けるキールの背後へと、フィアは空間跳躍。
姿を現すと同時に手刀の一撃を繰り出すも、気配を察知したのかキールは180度水平回転しつつ手刀を受け流し、カウンターを放つ。
分子結合を解かれた氷翼が弾幕となってフィアへ襲い掛かるが、フィアは再び空間を跳躍……するよりも速く、キールの右手がフィアの襟首を掴んだ。

「空間跳躍、便利だろうけれど発動前のほんの僅かな硬直が命取りよ。」

そして、襟首を掴まれた為に逃げれないフィアへと弾幕が殺到。
鋭い氷弾の群れがフィアの身体を貫き、削り、一瞬にして血飛沫が闘技場に舞い上がった。
しかし、フィアは血塗れになりながらもその顔に笑みを浮かべる。

「この程度、何とも無いわ……!」

そう、吸血鬼として最上位の存在である十三人の長老の再生力は伊達ではないのだ。
血染めの笑みを歪め、フィアもまた、キールの襟首を掴む。
高い再生能力と空間跳躍能力、そして固有の特殊能力。
澪の派閥の長であるフィアの固有能力は、その派閥名の通りだ。
その為、同系統の能力者であるキールの力は相殺とまではいかないが、ある程度ならば阻害出来る。

しかし。

能力を阻害されたからと言えども、そう簡単にキールを止める事は出来ない。
襟首を掴む右とは逆、空いた左手に凍気を纏い、キールはフィアの右腕を手刀により切断。
そして再び水平回転してフィアの身体を投げ飛ばし、飛び出して来たレックスへ叩き付けて二人を吹き飛ばす。
更にレックスの陰に隠れて繰り出されたマルトの斬撃をいなし、その腹部へと掌打を打ち込んだ。
大気が弾ける音と共に崩れ落ち膝を着くマルトへ、どこからともなく取り出した拳銃を容赦無く撃ち込む。
連続する銃声が鳴り止んだ後、弾が切れた拳銃を投げ捨てたキールはアグルへ次はお前だと言わんばかりの視線を向けた。
それを遮る様に、右肘から先を無くしたフィアが飛び出し、氷剣による刺突を放つも、キールは手刀で受け流し、彼女を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたフィアとすれ違いながら駆け出すレックスが放つ三叉鑓の矛先は空を切るも、レックスは諦めない。
空振った三叉鑓を投げ捨て、果敢にもキールへ挑んで行く。
武闘家の父を持ち、幼少期から武術を学んできたレックスの体捌きは一級品だ。
そこに異能の力が加われば、並大抵の実力者では相手に成らない程。
だが、キールはその上を行く徒手空拳の使い手だった。
掌打から続く廻し蹴りも、風を操った高速移動もキールには届かない。
レックスと同系統の能力者、暴風神の力を持つマルトとレックスの連携も、見た目に反するタフさを持つフィアの捨て身に近い吶喊も、何もかもがキールには届かない。
四神のレックスと同格であろうマルトの実力は決して低くは無い。
寧ろ経験差がある分レックスよりも数段強いのだ。
そこに吸血鬼最上位のフィアが加わり、波状攻撃を仕掛けるも……一撃が、入らない。
しかしレックス達は諦めない。
何故なら、レックス達は知っているのだ。
自分達の中に必殺の一手が、それを放てる者が居る事を。
風を操り行う高速移動よりも、瞬間移動に近い空間跳躍よりも速い、最速かつ防御不可の必殺技。
メイヤとの戦いで見せた、あの技を。

「アグル、君しか居ないんです!」

359ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:57:31
【長過ぎて弾かれるとか草不可避

読みにくくて申し訳ない!

そして遅くなって申し訳ない……】

360メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/03(金) 21:51:11
【闘技場〜】

一瞬の浮遊感と、それに続く風切り音。

それが何を意味するか理解するのに時間は掛からなかった。

しかし、考えている暇も無い。

反転して見える景色の中に教会が見え、急降下するその先に十字架を確認した同時に黒狗は激しく身を捩った。

如何に巨躯が頑強かつ強靭と言えど、アレに突き刺されたならば一巻の終わりだ。

(後五秒も無い、けれど!コイツっ!)

身を捩り、四肢を打ち付け、必死に首筋の拘束を解こうとするもーーー

ーーーどうやら串刺しは免れた様だ。

瓦礫を押しのけ、メイヤはゆっくりと立ち上がる。


直撃する寸前に、纏っていた闇を霧散させたのが幸を奏した様だ。

だが、高々度からの落下の衝撃は凄まじく、立ち上がるのがやっとの状態か。

半壊した教会の壇上で、メイヤは剣を支えに目を凝らす。

運良く敵だけが死んでしまう様な事は無いだろう、常に最悪の状況を想定しなければならない。

「……居るんだろ、出て来いよ……」

361ナディア、ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/04/05(日) 21:17:35
【過去】

素直でないながらもしっかりと自分の意思を伝えてきたアブセルへ、ジルは優しく目を細める。

「いいよ、いつでもおいで。ただし、今度はちゃんと許可を貰って来るんだよ。」

小指をアブセルへ向け、微笑んだ。

「約束。」

指切りと共に交わした約束。
もう叶うことはないと、この時は誰も想像などしなかった。

「ジル」

ノック音の後に彼の父が顔を出す。

「その子達が帰るようだね。僕が送って行こう。」

「え、お父様が…?」

「大事なご子息を足止めしてしまったからね、…あちらのお父上に挨拶も兼ねて。」

リトが何処の子なのか、調べがついたのだろう。
一瞬だけ、父の表情が固くなったのをジルは見逃さなかった。
ただ子供が詮索すべきことでないことも分かっていたから、ジルは頷き二人を父に託す。

「またね」

リトとアブセルの頭を撫でる。
ジルの笑顔はとても優しかった。

362ジル、ナディア他:2015/04/05(日) 21:19:02

------


「リト!!」

屋敷は予想通り、いや、予想以上に混乱していた。
召使の者達が彼方此方リトを探しているのが見えた。リトを見失ったお咎めを恐れているのだろう。皆顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうだ。
そんな中、窓からリトの姿を認めたらしいナディアとヨノが外へ飛び出して来た。
リトを連れてきたジルの父親には目もくれず、リトの手を取るや、すぐに彼を引っ張っていこうとする。

「ナディア」

余程慌てていたのか、ナディアは彼の存在に気付いていなかったようだ。
声を聞いて初めて其方に顔を向ける。

「おじさま…」

リトを連れ帰って来た人が知ってる人だから、ナディアは驚いた顔を見せる。
しかし今は構っている暇はない。

「ごめんおじさま、話はまた後で。コイツを…」

リトを早く部屋に戻さなきゃ、父親が気づく前に。

しかし手遅れだった。

「何をしている」

普段ヨハンやミレリアの近辺を担当する召使は残り、自由のきく召使がリトの捜索に当たっていた。
リトが行方不明と知られてしまったら大変なことになる。見失ってしまった召使は勿論、リトも。
屋敷に残った召使は気付かれぬよう普段通りの行動を装っていたものの、気付かれてしまった。

「父さま…」

ナディアはリトを自分の背に隠す。
しかし隠せる筈もなく、ヨハンはリトの腕を掴み引き摺り出した。

「こいつは何だ?何故外にいる?」

「それは…」

「勝手に抜け出したのか?」

「違…っ」

ヨハンの目の色が変わる。
リトが危ない。

「やめて…!」

ヨハンがリトを地面に叩きつけようとする。
その手を、傍にいたジルの父、トーマが止めた。

「…トーマ?」

「来客に気付かないで、随分と物騒なことをするじゃないか。…少し話そう、ヨハン。」

ヨハンは渋い顔をするも、トーマの言葉は聞き入れる。
そして二人は屋敷の中へ入って行った。

「リト…良かった」

ナディアはリトの無事を確かめ、ほっと胸を撫で下ろす。
いなくなったと聞いた時はどうしようかと思った。無事に帰って来て本当に良かった。

そしてナディアは漸く其処にアブセルが居ることに気付いた。

「アブセル…お前がリトを連れ出したのか?」

363アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:36:29
【闘技場】

「んなアテにされても困るんだけど…」

レックス達が怒涛の攻防を繰り広げる一方で、アグルはそう独り言つ。
しかしやる他ないだろう。

「しくっても文句言うなよっ!」

直後、彼の身体から電流が迸る。

言うが早いか地面が電閃し、そこから夥しい数の黒鉄の槍が突き出した。
自分やレックス達が佇立する場を除くフィールド上を余す事なく槍が埋め尽くし、相手の姿さえ見えなくなる。

「オマケだ、失明すんのが嫌なら目ぇ閉じてろ」

そしてダメ押しに、槍の一本一本が避雷針となって闘技場に滝の如く霹靂が降りしきった。


【バルクウェイ】

半壊し、静寂に包まれる教会内にメイヤの声が反響する。
それに応えるように、瓦礫の一角が崩れ落ち、そこからふらりと人影が立ち上がった。

「…本当に…忌々しい奴らね、お前ら一族は…」

獣化は解かれ、人の身に戻った彼が苦しげな呼吸音と共に発した第一声がそれだった。
メイヤのどこか特徴的な漆黒の髪と瞳…。そうオンクーは、過去に同じような佇まいをした剣士と相対している。

過去、自分を敗北へ追いこんだ奴ら…件の剣士と、そしてそいつが所属する黒十字を皆殺しにしてやろうと思った。
しかし、百年以上の封印のすえ眠りから覚めた時には、その剣士はおろか黒十字という組織さえもう存在してはいなかった。
ならばどうすればいい。いっそのこと、そいつらの子孫に報復でもしてやろうか。そんなことを考えていたのに…。

「……ッ」

不意にオンクーは口から血を吐き出し、膝から地に崩れ落ちる。
…身体が動かない。体内を蝕む闇がもうそこまで侵食してきているのだ。

また、同じ血の者に敗れるのか。彼は自嘲気味に苦笑する。
しかし、ただで死ぬつもりはない。

刹那オンクーはキッと前方を睨みつける。最後の力を振り絞って飛び出した。
メイヤの心臓部めがけて最短距離を爪の尖鋭がうなる。

「その首、地獄への手土産に置いてってもらうね!」

364アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:40:52
【過去】

気に入らないから、リトが怒られればいいと思った。
退屈だったから、屋敷の皆を困らせてやろうと思った。

ほんの軽い気持ちでおかしたイタズラが、まさかこんなにも深刻な事態を招いてしまうなんて初めは想像もしなかった。

ヨハン達が立ち去った後も呆然とその場に立ち尽くしていたアブセルは、不意に自分の名を呼ばれるとびくりと肩を震わせた。

恐る恐るナディアを見る。
やがて彼は、俯き気味に小さな声で頷いた。

「…リトは嫌がってたんだ。それを俺が無理やり…」

先ほど垣間見たヨハンの表情はいつも以上に怖かった。
それは自分に向けられたものではなかったが、傍にいたアブセルも身が竦む思いだった。

「ごめんなさい、リトのことは怒らないで…」

365メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:20:02
【バルクウェイ】

忌々しい一族か、それは言い当て妙だ。
静寂に包まれる教会内で、オンクーが吐き捨てた言葉にメイヤは静かに頷いた。

確かにそうだ、暗殺者の一族など忌々しいに決まっている。
その中でも自分は特に忌々しく、異端な存在だろう。

「俺の首じゃあ冥土の土産にもならないぞ……こんな忌々しい首なんて土産にすれは地獄に叩き落とされるだろうさ。」

弥都での戦い振りと、その言動からするに彼は一族の誰かと戦い、敗北した経験がある様だ。
それが誰かはわからないが、因縁はあったのだ。

だからこそとは言わないが、今、自分がその因縁を断つべきだろう。
例え、その結果が相討ちだったとしても。

「だけど、アンタを地獄に叩き落とせるなら安いモンだな!」

血を吐き、膝を着きながらも此方を睨み付けるオンクー。
その視線を真っ向から受け止め、メイヤは支えにしていた剣を構える。

口腔から溢れる血は黒から赤へ、闇は既にその活動を停止していた。
闘技場から続く激闘で、体力も限界に近い。

放てて一刀、いや、一刀で決めるのみ。
対するオンクーが放つは、死力振り絞った尖爪による一撃。

その一撃をメイヤが避ける事は叶わず、否、避ける事を選ばず。
鋭き一撃は寸分違わずメイヤの心の臓を貫き、傷口から、口腔から、鼻腔から夥しい程の血流が溢れ出す。

しかし、心臓を貫かれると同時にメイヤもまた、真白の刃を振り切っていた。

その一刀は、神速の一刀。

神をも斬り裂く必殺の刃。

居合い、神斬りーー

366メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:21:26
先々代は長として一族には何も残さず散った。
そして、宿敵に魂の炎を遺し散った。

俺も同じだろう。
一族には何も残さず、散る。

だがそれも一興、忌み嫌われる殺し屋の血筋など絶えれば良い。
長を、そしてその補佐や分家の頭が消えれば一族は自然と瓦解する。

同業者に消されるか、取り込まれるか。
先細りするしかない一族の未来に興味は無い。

だからこそ、俺は魂の炎を、生命の炎を遺す。
血塗れ両手と、屍の玉座で得た唯一の光。

知ってるか?

不死鳥は死して尚燃え上がり、羽ばたくんだぜ。
焔凰円環、産声を挙げるには丁度良いだろ、なァ?ーー

身体が、熱い。
血と共に溢れ出すその熱は、きっと生命そのものだろう。

胸を貫かれながらも振り切った刃を力無く手放し、メイヤは血塊と共に息を吐き出す。
真白の刃は赤に染まり、血溜まりに落ちて音を立てた。

その音も耳には届かず、メイヤはオンクーへと持たれ掛かった。
グズリ、と傷口が広がるがもう関係ない。

メイヤの命は数分も保たないだろう。
薄まっていく五感と意識の上、痛みは意味を成さず。

「これが、死、か……」

オンクーの肩口に顎を乗せ、メイヤは声を紡ぐ。
今まで幾度となく与えて来た死の瞬間が、遂に自分へと訪れるのか。

そう考えると、不意に怖くなった。
薄れゆく意識の中、それだけが浮かび上がっていく。

だが、それも僅かな事。
あれ程までに感じた血の熱さも消え、熱を失った身体は急激に冷えていく。

そして、生命の過多を失った身体から、その背中から、闇が溢れ出す。

「マダ、死ナヌ……悪神ハ、マダ滅ビヌ!」

爆発的に溢れ出すそれは触手の群れと成ってオンクーの身体へと殺到。
何の躊躇いも無く、寧ろ荒々しいまでの勢いで彼の身体に突き刺さり、生命を、彼の存在そのものを喰らい生き長らえようと蠢いた。

しかし、それも一瞬の事。
触手が生命エネルギーを吸い上げ様と蠕動した瞬間、不意にその動きが停まった。

そして一拍の間を置き、闇の触手が内側から爆発し、紅蓮の焔がその姿を顕した。
焔は闇を灼き尽くし、背から伸びる翼となってメイヤを、オンクーを包み込む。

「コノ、焔ハ!?

闇ガ、消エ……!?」

その焔は、真なる焔。
平安と平等を司る、鳳の焔。

焔は顕現しようとする悪神を灼き、同時に朽ちゆくメイヤの身体を再生させていく。

そして。

悪しきを灼き祓い、生命を生み出す焔はオンクーへと燃え移り、より一層その勢いを増して燃え上がった。

367レックス+etc. ◆.q9WieYUok:2015/05/02(土) 16:37:22
【闘技場】

アグルの放ったその技はレックスの予想を遥かに上回るモノだった。
地面から屹立する黒鉄槍はフィールドを余す所無く埋め尽くし、更にそれを避雷針として降り注ぐのは轟雷の瀑布。

(メイヤ相手に見せたのは、本気所か手を抜いていたのですか……ッ!!)

正に必殺、想像を遥か絶する技の威力に、レックスは言葉を失っていた。
圧倒的な破壊の前に、言葉を失ったレックスは無意識の内に唇を咬み、アグルへ黒瞳を向ける。

しかし、不意に上がる物音に驚き、音のした方向へ視線をやり、目を見開いた。

「……予想以上ね、威力だけなら四霊に匹敵するわ。

だけど……」

見開かれた黒瞳が映すのは、しかと闘技場に立つ黒髪の女性、キール。
その身体は無傷とは言わないものの、戦闘不能に至る様な傷は確認出来ない。

「私は吉兆を司る者。

そして、四霊の守を担う者。」

まるで不調は無いとばかりの口調でキールは声を発し、ゆっくりとした動作で右手を横に薙ぐ。

「絶対零度の前には光すらその動きを停める。

それはつまり、時間すら停止すると言う事。

そして、一切の不純物の無い氷の強度は本来鋼の三倍以上。

練度によるけれど、物理的に破壊出来ない硬度の氷壁を精製する事も可能。」
そう、如何に速く、破壊力がある攻撃でもキールには届かないのだ。

絶対零度により僅かながらも周囲の時を、敵の攻撃を停め、その間に圧倒的な強度を持つ氷壁を張る。
それは即ち二段構えの絶対防御。

同系統の能力者故に理解出来る圧倒的な実力差。
それを目の当たりにし、流石のフィアも諦めの表情を浮かべた。

(せめてこの場にシャムとDDが居れば……)

まだ何とかなったかもしれないが、二人には観客達の保護を任せた為に離れている。
最早万事休すか。

フィアの表情を察し、マルトもまた目を伏せた。

そして。

身動きを取らない一行へとキールは手を翳し、死の凍気が放たれたその瞬間。
一筋の雷光が閃き、圧倒的な熱量を持って凍気の波濤を対消滅させた。

「すまん、少し面倒な奴と出会って遅くなった。」

更に、響く声と共に放たれた剣閃がキールの胸元を袈裟懸けに切り裂く。
不意に上がる己の鮮血に、流石のキールも驚きの表情を浮かべた。

しかし、続く剣戟を氷刀で切り払うと同時に後方へ跳躍。
距離を取り、雷光と剣閃の主……レオールを見据えた。

「さてと、だな。

俺の部下をここまで痛めつけたお返しと、観客達に危害を加えた罪を清算してもらおう……消えたか。」

そして、剣を構え口上を上げるレオールに視線を向けたまま、キールは霧となってフェードアウトしていった。

368サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 22:08:16
【闘技場】

また更に変貌をとげたクロスの姿は悪鬼そのもの。
その痩躯から溢れ出す闇の波動を炎波で打ち消し、イスラは勢いよく前方へ飛び出した。

「待って、いー兄!」

その時、不意にサンディが声を上げる。
しかしそれも彼の耳には届かなかったようだ。
果敢にもクロスへと飛びかかって行くイスラの背中をどことなく複雑そうな表情で見つめながら、サンディはポツリと呟いた。

「…あの子なんだか…」

悲しそうだったよ…。

―――そしてそんな間にも、既にクロスとの距離を詰めたイスラは天之尾羽張を手に、赫灼たる刃を振るう。
一閃、二閃と燃ゆる炎の光を瞬かせながら怒涛の連撃を繰り出した。

369オンクー、アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 23:18:29
【バルクウェイ】

確かに殺したという感覚はあった。…のに、
紅蓮の焔がメイヤを包み込んだかと思えば、驚くべきことに今度は彼の身体がみるみる再生していくではないか。

「…はッ、気味の悪いやつね…」

殺したのに、死なない。

燃え盛る灼熱に身を灼かれながら、オンクーはメイヤを見据え毒づいた。

「…聴こえるよ、お前を取り巻く怨嗟の声が。
せいぜい死ぬまでその呪われた運命に苦しみ続けるがいいよ」

まさにそう最期の言葉を残し、オンクーは焔に灼かれ跡形もなく消滅した。



【闘技場】

駆けつけたレオールと、そして分が悪いと踏んだのか、その場から退散したキール。
一時はどうなることかと思ったが、取り合えず事態は収束したと見ていいのだろう。

アグルはやれやれと行った様子で、息をついた。

「…で、さっきのは何だった訳?」

来るのが遅いんだよ…とぼやきたいのを抑えつつ、先程の女、四霊の一人と名乗る者がなぜこの闘技会に乱入してきたのか。
もちろん知ってるんだよな?といわんばかりにアグルはレオールに目を向け問うた。

370クロス ◆.q9WieYUok:2015/05/08(金) 22:17:14
【闘技場】

火炎を纏う神剣により放たれる連撃は苛烈の一言に尽きる。

一撃一撃が必殺の威力を秘め、それが絶え間なく繰り出されるのだ。

烈火の如き剣撃は確実にクロスの纏う闇を灼き祓っていった。

しかし、先の言葉通り無明の闇は消え去る事無く、確実にその濃度を、総量を増加させていく。

「僕にくれよ、その光を、炎を!暗黒の闇を消し去る程のエネルギーをくれよぉぉぉぉ!」

闇を纏う悪鬼と成ったクロスは叫び、その咆哮は波動となって闘技場を破壊していく。

咎堕ちの先、それは全てを呑み込み無に帰す虚空の闇……ブラックホールだ。

闇を纏う痩躯は既に崩壊しかけており、人の形と闇の境目も曖昧だ。

そして。

幼顔の面影すら残らない悪鬼の牙口が絶叫を上げたと同時に。

クロスの理性と痩躯が遂に崩壊し、莫大な闇が爆発的に溢れ出した。

更に、溢れ出す闇は渦を巻き、大気を、光を、時間すら呑み込まんと奈落の大口を開けた。

今でこそ規模は小さいが、生まれ出でたそれ……ブラックホールは秒刻みで拡大して行くだろう。

そこにクロスの意識は無い。

身体も、意識も、魂すら失い闇黒の渦と化した四凶の成れの果ては、イスラを、サンディを、闘技場を、バルクウェイの街を呑み込まんと広がっていく。

【イスラさんイスラさん、次でトドメ刺しちゃって下さい】

371イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/07(日) 19:46:41
【闘技場】

まるで断末魔の叫びの如く、クロスの咆哮が耳をつんざく。それと同時に、何らかの爆発に見舞われた様な感覚に襲われた。
足が地面から浮き、後方の壁に叩きつけられる。
握る刀が手から溢れ、一瞬の衝撃に息が止まった。

一体なにが起こったのか。
それを理解するよりも先に,痛みに堪えながらも顔を上げたイスラの目に漆黒の塊が飛び込んできた。

周囲の瓦礫や観客用の椅子を呑み込みながらも、驚異的なスピードで肥大していくそれが、先程の彼の成れの果てだと言うことを理解するのにそう時間はかからなかった。
そして、直に自分やサンディ、いや、もっと大勢の人間があれの餌食になるだろうことも容易に想像がついた。
イスラは咄嗟にサンディの姿を目で探す。

「サンディ!逃げ…っ」

しかしその時、直ぐ脇を何かが駆け抜けて行った。

紺色の短いスカートをたなびかせながら身を翻したそれは、イスラが落とした刀を地面から拾い上げ、かつての少年だったものに向かって一直線に駆けていく。

「なっ…!?」

捜していた当の本人の無謀な行動。
しかし制止の声を発する間もなく、直後、強烈な光と音が迸った。

イスラは反射的に腕で顔を隠し、目を閉じた。

…やがて光も音も消え、彼はゆっくりと目を開ける。そして呆気に取られた。
そこには先程の狂騒も、奈落の口も、そしてサンディも、呆れるほど綺麗さっぱりと 消え去っていた。


【遅くなってすいません!早くレスできる時はしますが、暫くはこんな感じのペースになるかもしれません(^_^;)
そして曖昧な幕引きですが一応決着つけました。
サンディは身を呈してクロスを封印だか消滅させたけど、それと引き換えに暗黒に呑まれたか、どっか別の場所に転移したか〜
みたいな感じです。やっといてあまり深く考えてません(笑)】

372レオール ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:51:54
【闘技場】

「……そうだな、見た所戦いは終わった様だな。

負傷者の救護手配が終われば一度集まって話そうか。」

やれやれ、と言った様子で口を開くアグルの様子に、レオールは苦笑いを浮かべながら応える。

ざっと見渡す限り、闘技場での戦闘は全て終息した様だ。

闘技場の結界も解け、続々と乗り込んでくる空挺師団兵が負傷者の搬出、救護に就き出すのを確認し、レオールは密かに胸をなで下ろした。

ーーーーー

そして、一夜が明けた頃。

空挺師団旗艦の会議室に集まった四神組一行は、ホワイトボードに書き出された様々な情報と、それに関するレオールの説明を受けていた。

「要点だけを掻い摘まむとだな、四霊の襲撃目的はこの旗艦の動力源……希少な結晶鉱石の奪取だった訳だ。

四霊が囮となり、闘技場へ戦力を集中させ、別働隊が動力源の奪取に当たる。

まさかその別働隊がこの師団の構成員、幹部だったのは予想外だったがな……

結果として、四霊の目的は果たされ、この旗艦は当分の間は動けない。」

そう、闘技場で圧倒的な力を振るったキールはあくまでも囮だったのだ。

別働隊、裏切り者である幹部は相当な実力者であり、団長のレオールをもってしても討ち洩らす程。

マルトと対なす幹部……側近との戦闘があった為に、レオールの到着は遅れたのだった。

「痛手ではあるが、暫くはこの街に留まる予定だったからそう問題は無い。」

旗艦内部にある幾つかの会議室の中でも、今居る部屋が一番面積は小さい。

集まった面々に目をやり、レオールは続けた。

「師団幹部のマルトは重傷、死亡者は出なかったものの団員の負傷者多数。

四神の一人、天照大神が行方不明。

四霊の一人、霊亀を撃退。

四凶の二人を撃破。

箇条書きにすれば結果としては上々とも言えるが……」

集まった面々、アグル、レックス、イスラ、メイヤ達にとってはサンディの安否が一番気にかかるだろう。

特に、サンディが行方不明だと知った時のメイヤの表情は悲壮感に溢れていた。

イスラの話によればサンディは何の痕跡も残さず、消えたらしい。

ブラックホールを消滅させる為に自らの命を犠牲にしたのか、それとも……

楕円形のテーブルに沿って席に座る一同の顔を今一度見渡し、レオールは問い掛けた。

「皆は、これからどうする?

この空挺師団は対黄龍を目的として動いている。

目的が同じならば、入団して欲しい所ではあるが、無理強いはしない。

無論、入団しないからと言って援助の打ち切りはしない。

飛行船、食糧物資等の援助とサンディの捜索も続ける。」

幹部の中でも右腕であるマルトと、その片割れとも言える側近の離脱は大きい。

その二人の抜けた穴を埋めるに存在として、アグル達は丁度良い所か十二分以上なのだ。

「暗躍を続けてきた四霊、黄龍が表立って動き出した今、此方としても戦力を固めたい。

どうか、力を貸してくれないか?」

373ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:55:01
【久し振りすなー、月一連載みたいな感じでww

幕引きあざした!んだらばサンディは暫く行方不明と言う事すね了解!】

374イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:10:23
【旗艦】

「俺は構わない、むしろありがたい話だ」

会議室。
集まった面々を見渡し、こちらの返答を窺うレオール対し、真っ先に口を開いたのはイスラだった。

「俺達だけでは四霊の動向やサンディの行方を調べるにも限界がある。
よりそっち側の事情に精通した者と組めるのなら、こちらとしても都合がいいし。何より、戦力不足はこちらも同じ。
共通の目的を持つ者同士、互いの手を取り合うのに何ら不満なんてないさ」

そう好意的な意思を見せるイスラであったが、それに反し、やや間を置いてから今度はアグルが話し出す。

「…前にも言ったけど、俺は入団しない。
あんたらと違って俺の目的は四霊退治でも世界の救済でも何でもないし」

サンディが消えたと聞かされた時も意にも返さなかったアグル。
頬杖をつき、レオールではなく机の端に視線を外すその態度が、この件に対する彼の無関心さを語っている。
もしくは、ただそう見せようとしているのか。

「でも、別に協力しないとはいってない。ここにいる間なら出来る限り力を貸す。
いつまで居るかは分かんねーけど」

375イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:18:27
【と思ったけど、ちょっと落ち着いてきたかも(笑)

久しぶりに絵でも描こうかな…、何かリクエストとかあります?】

376ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/22(月) 00:53:39
【壁I・ω・)ノ

梅雨時なんで、水も滴る良い男達とかどうすか!】

377イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/23(火) 06:01:27
【おおう…また難しそうな…(笑)
でも頑張ってみます!梅雨時すぎるくらい遅くなるかもしれませんがw】

378レオール ◆.q9WieYUok:2015/07/03(金) 14:14:56
【旗艦】

此方の申し出に対し、真逆とは言わないがそれぞれ違った反応を見せる二人。
しかし、断られはしたものの、アグルの返事は決して悪いモノでは無い。

寧ろ彼なりに気を遣ってくれたのだろうか。
残るはレックスとメイヤだが……

「僕もイスラと同意見です。

四霊と対峙してわかりましたが、実力差は明白でした。
諸事情を踏まえた上で、僕入団しますよ。

どこかの誰かと違って、世界の危機を黙って見てる様な真似は出来ないので。」

レックスの方は、本人の言葉通りか。
真面目な性格の彼の返事は予想していたモノとそう変わらない。

「後はメイヤだな。

君にはイオリから言付けを預かっている。」

レックスの一言は気になるが、今は流すべきだろう。

イスラとレックス、そしてアグルがどうするかを決めた今、残るはメイヤだ。
本来ならば、彼は身内であるイオリと行動を共にしていてもおかしくは無い。

しかし、イオリの一団は今朝方に発って行ったのだ。
メイヤと、彼への言付けを残して。

「今まで通り、四神を護衛しろ。ただし、これは命令でもなんでも無い。

……だそうだ。

要は好きにしろと言う事らしいな。」

師団の協力者であるイオリの身内、その立ち位置は何とも微妙である。
だが、イオリのその言葉によってメイヤの立ち位置は大きく変わるのだ。

そして、続くメイヤの言葉に、レオールは満足そうに頷いた。

「今まで選択肢なんてモノは無かった。

イオリの言葉が、当主の言葉が全てだったから。

……好きにしろと言うなら、俺はサンディを捜しに行く。

けど、その前にイスラ達と共に動くさ。」

ーーーーー

各々が立ち位置を決め、全員が師団に協力すると言った今。
早速とばかりにレオールは話題を切り替え、話を始める。

空挺師団はバルクウェイを拠点化し、大々的に動き出す事。
旗艦の動力源が奪われた為に、その代用品の探索に動く事。

世界そのものである黄龍と対峙するに、充分な戦力を確保する事。
それと並行し、今までの主な活動内容である異貌の者の討伐をイスラ達に任せる事。

「と言う訳で、君達には遊撃隊になってもらいたい。

師団最大戦力と言っても過言ではない四神を、ただ単に手元に置くだけなのは勿体ない。

あくまでも協力者であるアグルやメイヤの存在を考えれば、ある程度自由に動ける立ち位置の方が良いと思ってな。

後は、サンディを捜すにも丁度良いだろう?」

そして、予め用意していた書類を渡したレオールは、小型飛行艇へ戻るように一行へ促す。

ーーーーー

「で、ですね。

遊撃隊として動く事になったのですが、僕は師団長の下に戻ります。

バロンや、ナディア達の帰りを待つ人が誰か居なければならないと思うので。」

飛行艇に戻るや否や、開口一番にレックスはそう告げた。

「私は構いませんよ、道理に叶っていますし。

問題はありません。」

そんな彼の言葉に、頷き何ら問題は無いと続けるのは補助員として派遣された巨漢の男、バッハだ。

「まぁ、僕が居なくても何とかなるでしょう、アグルが本気を出せさえすれば。」

そして、レックスは先刻と同じように……寧ろより攻撃的にアグルを煽りだす。
しかしそれ以上続ける事は無く、後は頼みます、と静かに言い残し、食堂兼広間を、飛行艇を後にした。

「……相当苛立ってるが、何かあったのか?」

その姿を見送り、メイヤはアグルへと声を掛けた。

379アグル♯か:2015/07/14(火) 21:56:41
【飛行挺】

「さあな、俺のことが気にいらないんじゃないねーの?」

メイヤの問いにアグルは、何と言うこともないと肩を竦めてみせる。

正直、レックスが苛立っている理由も分からない訳ではない。
しかしだからといって、それに対しどうすることも出来なければ、態度を改める気にもならない。

取り敢えず今はレックスのことは置いておく他ない。アグルは一同を見渡し言った。

「そんなことより、これからどうすんの?
今後の方針を決めるリーダーとか決めて置いた方がいーんじゃね?」


【遅くなりましたが…イラスト出来ました。画像サイズ大きい上に水も滴る感があまりなくて申し訳ない;
imepic.jp/20150714/779350

あとですね、今アグルの復讐の理由なんかを考えている訳ですが…なかなか上手いこと思い浮かばず…
それでユーリのことを知れば何かヒントが得られるのではないかなー、と

と言うわけで良ければユーリの過去的なものを教えてください!】

380メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/07/16(木) 22:18:00
【飛行艇】

世界を救うべく行動するレックスと、同行はするものの別の目的があるアグル。

元々几帳面な性格のレックスからすれば、同じ四神であれど同じ目的を持たないアグルには思う所があるのだろうか。

「まぁ、少し距離を置くのも悪くないか。」

はぐらかすかの様に話題を変えるアグルから、メイヤは視線を変える。

その黒瞳の先は、勿論イスラだ。

「俺とアグル、イスラの中から決めるなら……」

飛行艇に居るのは前述した三人と、補助員のバッハのみ。

手際良く資料を配るバッハを除くならば、適任者は一人だろう。

「私はあくまで補助員ですので。」

メイヤの言葉の意を汲み取ったのか、バッハは微笑みながら口を開いた。

「……やっぱりイスラだと思う。」

その一言を聞き、メイヤはイスラへ視線を向けたまま頷いた。

【おぉー!梅雨明けっぽい爽やかな絵が!

それぞれキャラが出てて良いなぁ、青春って感じがまた……!また一段と上手くなってるし、ありがとうございやす!

とと、アグルとユーリの因縁は確か、アグルの兄をユーリが殺害したとかだった様な……

取り敢えずユーリの過去話的なのは……

任務に失敗したユーリは瀕死になるも、時同じくして黄泉がえったステラによって助けられる。

助けられた恩義を返すべく、襲い来る夜盗やら諸々を撃退。

行動を共にする内にユーリはステラへ想いを向け……要は恩義の為に彼女を守るから、惚れた女を守り抜く、状態へ。

兄の仇=ユーリで行くなら、闇の復活をいち早く察したアグル兄がステラを倒そうとするも、彼女を守るユーリに……とかどうでしょう?】

381リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/07/18(土) 16:31:12
壁|・ω・`)
お、お久しぶりです。リマです(´・ω・`)

現在卒業試験やら就活やらでバタバタしており、消息を経ってしまっていました、すみません( ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )

まだ落ち着いてなくてなかなか更新出来そうにないのですが、許していただけるのなら時間が出来次第細々とやらせて頂ければなと思います(´×ω×`)

そこでなのですが、もし宜しければどなたか現在の進行状況を大雑把に説明していただけないでしょうか(´•ω•̥`)
いずれ読み返そうとは思っているのですが、今はその余裕がなくてですね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )わがままでごめんなさい・・・・・

あとイスラさんのイラスト!!相変わらず素敵すぎます(◍˃̶ᗜ˂̶◍)ノ"
何だこの美男子集団は!!
つか、リトがきゃわわわ!!!何か食べてるー!可愛いー!長袖ー!!暑そうー!!真夏でも肌見せないとかマジ鉄壁ー!!!そしてアブに傘持たせて楽してるー!この二人相変わらずすぎて笑えるー!!
てな感じに悶絶しちゃいました(笑)
最近精神が荒んでいたので、思いかけず素晴らしい癒しに出会して、心が清められちゃいました(*∩ω∩)

382イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/07/19(日) 20:04:28

【ヤツキ〉いえいえ〜、最近は落書きと練習ばっかりで、一枚仕上げようって気持ちが中々沸かなかったので、いいモチベアップになりました。
こちらこそありがとうです^^

ふぅむ…、なるほど…
兄の敵討ちと言えばそうなんですが、実際アグルってそんなことするような熱い性格じゃない気がして…
彼的には復讐"したい"じゃなくて、復讐"しなければならない"、の方がしっくりくるかなって思ったんです。
兄の死に関わるところで、アグルがユーリに復讐せざるを得なくなった何らかの理由が欲しいのですが…難しいな…;

てかこれからの展開って何か考えてます?

リマ〉おー、お久!
構いませんよー、こっちもポツポツ更新ですし

今の状況を凄く簡単に説明すると、闘技会中にオンクーとクロスらが乱入→二人を撃破するもその際にサンディが行方不明→現在「どうしよう?」
みたいな感じです(笑)リト組は動いてないです

ありがとうございます!
正直このイラスト、あまり気に入らなくて上げようかどうか迷ったんですが…
そんなに言ってもらえるなら描いて良かったです^^
そしてリトは日光に弱そうなので長袖ですw

383ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/07/19(日) 23:35:51
【リマ》おおおお久しぶりです!リマもとうとう就活生かー、大変だろうけど頑張って!

夏バテには気を付けろよ!

進行度はイスラの説明通りで、リマ組みは動いてないよー。

イスラ》確かにきっかけが無いと仕上げまでいかんよなぁww

うーん、難しいな……

兄殺害の場にアグルも居合わせたor共に戦ってた→

①アグルのミスで兄死亡

②実力差を前に、兄が囮となりアグルを逃がした

③呪術の類を掛けられ、期限内までにユーリを倒さないと術でアグルは死ぬ

とかしか浮かばなかった、申し訳ない……つーか酒入ると頭回んねー

とと、これからは取り敢えず吸血鬼組と絡ませようかな、とか。

イスラ達→吸血鬼討伐へ

フィア達→人間界へ住む長老の元へ

イスラ達が狙う吸血鬼=長老で、その長老を狙い謎の吸血鬼(オリジン)が、みたいな。】

384イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/07/25(土) 06:33:00
【飛行挺】

「え、俺?」

メイヤの視線、そしてその発言に対し、イスラは思いがけず意外そうな反応を見せる。

「いや、そう言って貰えるのは嬉しいが…俺はこっちの常識だとか地理だとかには詳しくないし…。
むしろメイヤが適任だとばかり…」

仮にも自分にとっては遠い未来であるこの時代。今の時を生きるメイヤやアグル達のリーダーとして、「任せとけ」と言える自信は流石にない。

「だってさ」

彼の言葉を聞き、アグルはメイヤに視線を変える。
それに続き、イスラも訴えかけるように言った。

「…リーダー、任せてもいいだろうか?」



【ヤツキ〉呑んでたのかw

う〜ん、やっぱりそこらが無難なところですよね

③はアグルなら「死んでも別にいいや」とか言いそうw
でも呪術をかけられた立場が兄なら、アグルは頑張ってユーリを倒そうとするでしょうね
死んだ人間の敵討ちはしないけど、生きてる人間を見捨てるほど冷たくもない、みたいな

でもその場合、兄はまだ生存してるってことになるわけで…、確か既に「兄は殺された」って皆に公言してたような気もするけど…w
まあそこは「兄は殺された(ようなものだ)」に変換しちゃえば良いか(笑)

それかもしくはアグル絶賛記憶喪失中、覚えているのはユーリへの強い憎しみと兄がいたらしいと言うこと。
その二つの記憶だけが今の彼の全てであり、生きていく上での支え。で、アグルは自身の記憶と真実を求め、ユーリを追う。みたいな感じ

他にも色々考えてたけど、取り敢えず上の二つに絞ろうかな。兄が死んだのはヤツキが言ってたように闇の復活を察して〜ユーリに返り討ちってことで

まぁまたこれからの展開によって色々変わってくかもしれませんが、アドバイスありがとうございました!

お、ついにオリジン登場ですか!楽しそう!了解です!
じゃあリーダーはメイヤに任した(笑)

385メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/07/26(日) 23:02:27
【飛行艇】

いや待ってくれその返しはおかしい。

予想外のイスラの返答に、メイヤは反射的に口を開く。

だが、口を開いたものの、続く言葉は内心とは逆の物だった。

「……わかった、イスラがそう言うなら任されるさ。」

経験、戦闘力、胆力、年功序列……その他諸々。

トータルで考えた上で、適任はイスラだろう。

しかし、その彼が断るのにはそれなりの理由が、考えがあるのだろう。

「任されたからにはやるしかないさ、取り敢えず……作戦会議か?」

腹を括ったと言えば聞こえは良いが、やると決めたからにはやるしかない。

メイヤは早速、配られた書類に目を通していく。

そして、イスラとアグル、メイヤが一通り読み終えただろうタイミングを見計ったバッハが口を開いた。

「今回の任務は討伐任務です、討伐対象は吸血鬼。

王や長と呼ばれるらしく、高位の存在だと予測されます。

バルクウェイから南西方向、群青の街中央の城に居を構え、毎月事に生贄を求めている模様ですね。」

「……吸血鬼か、一度戦った記憶はあるけど、厄介だったな。」

「空間転位術と優れた再生能力、文献によれば肉片一つから復活した等と、厄介過ぎる相手です。」

バッハの説明によれば、件の吸血鬼は世界政府ですら討伐に失敗した程の強者であるらしい。

彼の話を聞きながら、メイヤは考える。

「取り敢えず、今夜はここまでにましょう。

出発は明日明朝ですので、それまでに各々準備をして下さると助かります。

あ、装備品等は幾つか見繕って持ってきているのでお好きなのをどうぞ。」

だが、その考えが纏まらない内に、バッハは説明を終えてしまった。

「それでは、皆様また明日。

私はもう少し艇の整備をするので、何かあればお呼び下さいね。」

そして、書類を手早く片付けた彼は巨体を屈めて窮屈そうに部屋を後にした。

ーーーーー

思ったよりも海風はべたつかず、夜風は涼しい。

会議が一応は終わり、各々が部屋へと戻った後。

メイヤは一人、月明かりに照らされる甲板上へと出て来たのだが……

「……なんだ、居てたのか。」

どうやら先客が居たらしい。

甲板へ腰掛ける赤毛の青年、イスラの背中を見つけ、メイヤは声を掛けた。

「寝れない、訳じゃ無さそうだな。」

386イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/01(土) 05:33:29
【飛行挺】

不意に声をかけられ、イスラは背後を振り返る。
メイヤの姿を瞳に映すや、ああ。と、どこか力なくだが口の端を小さく持ち上げた。

「サンディの気を探してたんだ」

そしてその視線は再び水平線の向こう側へ。
彼の浮かない表情から察しても、結果は思わしくないようである。

「あの時…、目の前の危機的状況に対して、俺は咄嗟に反応できなかった…。
飛び出して行ったサンディを止めることもできなかった」

もしかしたら彼女はもう…。
そんな脳裏にちらつく恐ろしい考えを、振り払うことさえできない。

「女の子…しかも自分よりも年下の子に体を張らせて助けて貰うなんて…」

情けない。とイスラは言った。

387メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/03(月) 13:58:30
【飛行艇】

「情けない、か。」

水平線へと視線を向けるイスラの声は、どこか弱々しく感じる。

聞く所によると、サンディは身を呈して闇の渦を消し去ったらしいが……

「サンディはきっと生きてる。

死体は出てないんだろう、有名な猫と確率の話とは違うけど、死体も、死んだ瞬間も、見てないなら可能性は0じゃない。」

そう考えないと、心が保たない。

「だから……とは言わないけれど、そう、あんまり気を落とさないでくれ。」

ましてや真面目なイスラの事だ、落ちだしたら底が知れないかもしれない。

甲板に座るイスラの隣に立ち、メイヤもた、水平線へと黒瞳を向ける。

「そう言えば、イスラの仲間達……先代の四神はどんな人達だったんだ?」

【イスラ》毎日の様に飲んでてヤバいwwww←

おー、イスラの案は両方共に良いですな!

話は合わすんで、また何かあれば言ってくだせー!

いやホント予想外の返しで焦ったwwけど、やらせていただきます!ww吸血鬼組も良いネタ思い付いたんで任せろー!】

388イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/09(日) 11:57:17
【飛行挺】

どうやら今の自分の態度は想像以上に情けないものだったらしい。
メイヤに気を使わせてしまったことを悪いと感じながら、イスラは小さく笑みを見せる。

「ああ…、いや、すまない。
俺なら大丈夫だよ」

彼の言う通りだ。悲観的に考えていても仕方がない。
イスラは気を取り直すかの様に少し体勢を崩し、楽な姿勢で話し出した。

「そうだな…、リマ…ポセイドンは少し内気な感じの可愛らしい娘だ。
最年少で世間知らずなところもあってか、つい世話を焼きたくなると言うか、護ってあげたくなると言うか…。
あとたまに一人で突っ走って無茶やらかすんで色んな意味で目が離せなかったな。

トールはメンバー内のムードメーカーで、こいつのおかげで旅の途中も退屈しなかった。
いつも女の子を追いかけまわしてるような軟派な奴だったけど、やるときはしっかり決めてくれるとこなんか俺には絶対真似できないなぁって思う。

フレイヤは頼れる皆のお姉さんって感じだな。面倒見が良くて何でも器用にこなしてくれる。
でも気が強くて怒ると怖かった。
女の子には優しくて男には厳しいタイプなのか、アグルなんかはよく怒られてたし、俺もいいようにコキ使われてたよ」

何だか懐かしい。
自分の表情が柔らかくなっていくのが自分自身で分かる。
同時に、同じようにこの時代に飛ばされてきたリマと、あまり話す時間が取れなかったことが悔やまれる。

「今の四神の皆を見てると全然違うんでびっくりするよ。こっちはこっちで個性豊かで面白いけど」

389イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/12(水) 04:14:27
【↑はアグルじゃなくてレイヴンでした;

ヤツキ>呑まないとやってられないってやつですか?w
そちらも何かあれば言ってください、自分も合わせますので^^

自分は最初からそのつもりでしたよ(笑)
マジですか!じゃあよろしくお願いします!】

390リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/08/13(木) 19:16:09
【過去】

「アブセル、あんた・・・・・」

アブセルがリトの事を好いていないことには何となく気づいていた。
しかし、同い年だし、男の子というのは細かい事にこだわる性格ではないため一緒に過ごさせておけば時期に仲良くなると思っていた。
自分の考えが浅はかだったと、ナディアは頭を抱えた。

恐らく・・・・・事の重さの程度は理解していなかったとは言え、アブセルはリトを外に出せば問題が起きる事を知っていた。
完全に悪意のある行動。許せない。

「・・・・・」

苛立ちを顕にするナディアだったが、不意に服を引かれる感覚に気付き我に返った。
見ればリトが何か言いたげな表情でこちらを見上げている。

「リト、どうした?」

しかし、リトが何を伝えたいのかまでは分からない。

(ちゃんと言葉にしないと分からないよ)

沈黙の中から懸命にリトの心情を読み取ろうとするナディアの顔を見上げ、リトは先程出会った少年の言葉を思い返した。

(大丈夫、怖がらないで)

「・・・・・ねこ・・・・・」

「・・・・・ねこ?」

リトが口を開いた。それだけでも驚きではあるが、それ以上に、彼から発せられた言葉の意味が分からずナディアは疑問符を浮かべる。

「にゃーって・・・・・動いてた。ねこだって。甘いの、食べた・・・・・冷たいやつ・・・・・。」

しかし、すぐに謎は解けた。

「・・・・・楽しかった」

リトが外に出たのは今回が初めてで、見るもの全てが珍しかったのだろう。
動物だってヌイグルミでしか見たことがない。同じ姿の生き物がいるなんて知らなかったのかもしれない。

父親がリトに危害を加えないようにするのに必死で、リトの自由を奪っていたのは自分も一緒だった。リトを心配していたつもりで、やっている事は大人達と同じ。
今だってリトを外に連れ出したアブセルを窘めようとした。他の奴等と同じように・・・・・
アブセルは自分が父親の顔色を伺って出来なかったことをやってのけたのだ。リトに世界を見せてくれた。

「ごめん・・・・・」

ナディアはリトの頬に手を触れた。不思議だ。いつもは手を伸ばすと怯えて身を縮ませていたリトが、逃げることなく受け入れてくれた。短時間なのに、リトが変化を見せている。
ナディアはそのままリトを抱き上げる。折角の機会だから調子にのってみたけれど、やはりリトは逃げなかった。初めての抱っこ、彼の重みを感じられる事が嬉しい。リトはリトで自分が何をされているのか分からず不思議そうにナディアを見下ろしているが、構わずナディアは笑ってみせた。

「部屋に戻ろう。ごめんな、今は出来ないけど・・・・・いつか必ず、あの部屋から出してやるから。」

そしてそのままアブセルの方へ向き直る。

「怒鳴って悪かったな。動機はどうであれ、結果的にあんたは良い事をしてくれたよ。」

ついでに乱暴ながらも優しく頭を撫でてやる。

「リトに助けられたな。あんたに100倍返しするとこだったけど、リトに免じて許してやる。もう虐めるなよ。」

アブセルは子供だからリトの置かれている状況を理解出来ていない。今は知らなくていいとも思う。いずれ成長するにつれて気づいていくだろう、ポセイドン邸に潜む闇に。
それまでは何の見返りもない普通の友人として、リトと仲良くなって欲しい。リトを主としてでなく、友として守って欲しいから。

391リマ ◆wxoyo3TVQU:2015/08/13(木) 19:31:48
↑ナディアだった( •́д•̀ ;)

またまたお久しぶりです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

イスラ>>
説明ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)まだ無理そうなんですけど、時間出来たらちゃんと自分で読み返しますね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )


綺麗でクオリティ高いのに気に入らないとは何事ですか(╬•᷅д•᷄╬)←笑
確かにリトは肌弱いと思われます(笑)日光当たると火傷しちゃう←
でも暑いものは暑いんで、アブセルに団扇あおがせたりとかこき使ってそう(笑)

イスラさんの絵大好きなのでまた沢山見たいです(๑⃙⃘´ꇴ`๑⃙⃘)


ヤツキ>>
まだ就職決まらない( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )筆記試験はパス出来るのに面接で落ちる(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
性格を否定されてる気分( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

そして夏バテた…咳が止まらんでやばいっす(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

ありがとう!時間出来たら読み返します(`・ω・´)

392メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/14(金) 22:52:37
【飛行艇】

確かに、今の面子と比べると真逆だったりとその違いが良くわかる。

「だけど、芯の部分は似通ってたりするんだな。」

だが、直系の子孫だからか、性格上な部分はまったくの別物でもなさそうだ。

姉御肌のナディアは、激情に任せ突っ走りそうな節もある。

アグルは何時も飄々としているが、案外冗談が好きそうにも見える。

レックスは……聞く限り先代と変わらない性格のようだ、いつか自分も顎で使われる時が来るかもしれない。

「個性的、なのは全く持ってその通りだけどさ。」

少しは気が紛れただろうか、姿勢を崩して話すイスラの表情は先程よりも柔らかく見える。

「四神全員が上手い具合に纏まれば良いな……」

その為にも、まずはリーダーとして頑張らなければ。

「出発は明朝だったっけ?夜更かしして寝坊する訳にもいかないし、そろそろ戻ろう。」

ーーーーー

バルクウェイからの出立も、その道中も驚く程順調かつ迅速だった。

聞けば、バッハは師団の参謀かつ補給部隊の長らしい。

裏方仕事は得意分野です、と静かに笑う彼のおかげか、飛行艇は無事に目的地へと着いたのだが……

「何でこんな事になったんだ……!?」

目的地、群青の街へ到着したのは日も沈む頃。

先ずは情報収集を、との事で訪れた酒場は予想以上に騒がしく、話を聞くどころではなかった。

その様子は、吸血鬼に支配された街と言う先入観が吹き飛ぶ程。

そして、老若男女が騒ぐ酒場から抜け出せずに二時間。

巨漢からは想像の付かない酒の弱さを露呈したバッハが良い潰れ、その隣でメイヤは思わず天を仰いだ。

393ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2015/08/17(月) 02:11:03
【ポセイドン邸】
>>356

言葉を発せさせんと口を塞いできたアブセルの手にノワールはジタバタと抵抗し、反射的ながらもアブセルが少なからず怯んだ際に出来た隙間を利用しその皮膚へと噛み付いた。

「わらわに気安く触れるでない!」

そしていつものごとく、アブセルの脛へ足蹴をお見舞いする。

そんな騒ぎを耳に流しながら、ナディアは思い出したかのように小さく息を吐く。

「そうだ、母様・・・・・」

ミレリアは今どうしているだろう。
葬儀の準備は着々と進んでいるようだ。今頃、彼女もヨハンの死を既に聞いていることだろう。

ナディアは思案げな素振りを見せつつ、ふとセナを見る。

周りの意見を無視して"リト"を表に出さない手もある。しかし、そうすると後々面倒なことになるのは必至。
しかしアブセルの言う通り、葬儀の場で騒動が起きることは避けたい。
ならば、致し方ない。

(先に会わせてみるか・・・・・)

不安はある。別人とは言え、全く同じ顔をしているのだ。ミレリアは見分けを付けることが出来ないだろう。
となると、リトと同じ態度をセナにも取るはず。

「アブセル、あのさ」

ナディアはアブセルの腕を引き、彼に耳打ちする。

「セナを母様に会わせてくる。母様のこと、知っておいてもらった方がいいと思う。だけどリマはちょっと・・・・・あとあのチビ(ノワール)。あんた、適当に誤魔化して二人連れて何処かで時間潰しといてくれない?」

セナはきっと、母親の態度に動じることはないだろう。理不尽には思うかもしれないが、その点は後で詫びることにする。
しかし問題はリマだ。自分の想い人が謂れなく罵倒される姿は見るに耐えないだろう。セナに至ってもそう。自分に関することでリマが傷付くなど許さない。しばし共に過ごす以上リマも母親との確執をいずれ知ることになるかもしれないが、今敢えて垣間見せる必要はないとナディアは考えた。
ノワールは、何となく、本当に何となくだが面倒を起こす気がするため遠慮願うことにしておく。一体リトはこの娘を何処で拾ってきたのか、おそらくリトに懐いているのだろう分は微笑ましい限りだが、リトが関わる事柄になると形振り構わず辺りに喧嘩を売りまくるから困る。

「じゃ、頼んだから」

394アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/23(日) 01:07:37
【過去】

てっきり怒られると思った。
ナディアが手を伸ばした瞬間、殴られると身構えたがそれも違った。

頭に触れる優しい感触。アブセルは不意をつかれ目を丸くした。

「待って、おば…、お姉ちゃん…!」

恐らくリトは意図していなかっただろう。しかし結果として彼に助けて貰ったのは事実。
アブセルはリトを抱きかかえ屋敷の中へ戻ろうとするナディアと、そしてヨノに駆け寄った。

「どうしてリトは外に出ちゃいけないの?
リトの病気ってそんなに悪いの?
さっきのおじちゃんは、薬を持って行くようにとは言ったけど、外に出るなとは言わなかった」

先程リトは楽しかったと言った。彼にとっては倒れたりと散々だったはずなのに、だ。
でも…うん、そうだ。今思えば、自分も結構浮かれていたのだと思う。

友達同士で一緒に出かけたり、クレープを食べたり。多分ふつうの子供達にとって、それは何ら珍しいものでもないのだろう。

しかしアブセルにとっては、子供同士で同じ時間を共有したのは今日が初めてのこと。
そしていつもは、そんな遊んでいる子達の姿を見かけては、ただ羨ましいと遠目から眺めているだけだった。

またリトと一緒に遊びに行きたい。

言葉には出さずとも、分かりやすい程にアブセルの表情がそう物語っていた。

「俺…、旦那様に(リトが外に出れるように)お願いしてみる。
あと今日のこと、リトは悪くないってことちゃんと話す。そしたら旦那様だってリトのこと許してくれるよね?」

395アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/23(日) 01:09:28
【群青の街】

「情報収集がいつの間にか酒の呑み比べになったからだな」

酔い潰れ机に突っ伏したバッハと、困り果てたような様子のメイヤ。その横でアグルはそう気怠そうに、かつ冷静に今の状況を説明した。

どこにでも酒の強さを競いたい者はいる。
呑み勝負に勝てれば情報を提供すると提案した馬鹿な輩のせいで、事情聴取は進まないどころか足止めさえ食らっている始末だ。

因みにイスラも開始早々に轟沈した。どうやら彼も酒は苦手のようである。

「どうすんの、リーダー?
あ、もう帰っちゃう?面倒臭いし」

少なくともこの酒場の連中は吸血鬼の脅威に怯えているようには見えない。

特に協力する気もないアグルは、非協力的な態度丸出しで全てをメイヤに丸投げするのだった。

396メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/24(月) 13:59:17
【群青の街】

どうにもこうにも、ここは一度引くしか無いだろう。

話術にも長けているであろうバッハが酒に潰れ、見ればイスラも轟沈している。

空のグラスを前に平気な顔をしているアグルは飲むか飲まずか。

「取り敢えず船に戻ろう……

イスラは俺が抱えるから、アグルはバッハを頼む。」

こうなっては情報収集もくそも無い、バッハの懐から紙幣の束を引っ張り出し、メイヤは会計を済ます。

店員の言い値だが今は仕方がない。

受け取った釣銭をポケットにねじ込み、メイヤはイスラの肩を担ごうとし、気付いた。

(……紅、瞳……?)

笑顔でありがとうございましたと言う店員の少女も、騒ぎ続ける客達も。

その全員の瞳が、紅い。

動きを止めたメイヤへと笑顔を向ける店員の口元から覗く犬歯は鋭く、牙の様にも見える。

否、犬歯では無くソレは牙だ。

(まさか、この店……っ!?)

吸血鬼の支配に怯える街とは思えない程の活気さの理由。

それは……

「そうだ、この店に居る連中は、お前ら以外全員吸血鬼なんだよ。」

不意に止む喧騒と、それに続く男の声に、メイヤは動きを止める。

「この店の生物はヴァンピーア、確認せず入ったお前らはただの活き餌な訳だ。」

酒やけした声で話す男、酒場の入り口からゆっくりと歩み寄るその男を凝視し、メイヤは唇を噛んだ。

燃える様な赤髪を逆立て、紅瞳は燐光に揺れ。

過度なまでの装飾品が着いたレザージャケットを着こなし、ニタリ、と笑うその男はこう名乗った。

「俺はメルツェル、メルツェル・グランスール。

十三人の長老が一人、融の派閥の頭だ。

ついでに言うと、今はこの街の長だな。」

【長老追加でー。

メルツェル・グランスール
男性/吸血鬼
赤髪紅瞳/長身痩躯
パンクロッカー風の衣装を着こなす見た目チンピラな十三人の長老
融の派閥の長で、喧嘩っぱやい
弱い者イジメが好き、仲間意識は薄い、と立ち位置的には嫌われ者ポジション
あらゆる物を溶かす、融解させる能力を持つ

です!】

397メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/08/24(月) 19:42:46
【やらかした、誤字発見……

店の生物→店の名前で】

398アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:17:24
【ポセイドン邸】

「分かった。任せとけ、お嬢!」


(……って、何で言っちゃったかな…。)

…ところ変わって屋敷内の庭園。机の上に置かれた三人分のカップに紅茶を注ぎながらアブセルは秘かに溜め息を溢した。

あの後すぐ、「話がある」と声をかけ、リマとノワールをこの場所まで連れてきた。
それだけでは何となく手持ち無沙汰なので、紅茶と菓子も用意した。

しかし傍目から見れば緑に囲まれた優雅なお茶会といったこの光景も、実際はそんなに穏やかなものでもない。

そもそも先程はナディア達の役に立てるのが嬉しくてついつい弾みで任されてしまった訳だが、正直なところ自分もセナや奥様の方に立ち会いたかった。
よって、話がある。などと言うのは全くのでたらめである。

それに何故かは知らないが、最近のノワールは何だかやたらと機嫌が悪い気がする。とりわけリマやセナといる時なんかは一段と酷い。

今だって…、さっさと話せ、用がないなら妾はもう行くぞ。とばかりに今にも席を立ち上がるんじゃないかという雰囲気だし。

「え…えーと…、まぁその、話って言うのはあれなんだけど…」

とにかく何か話さなければ。
アブセルはリマとノワールに茶菓子を持て成しつつ頭を回転させる。

「ふ…二人はリトのこと、どう思ってる?」

399アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:20:47
【群青の街】

気づけば店の者達に取り囲まれている。
無数に光る彼らの紅瞳。それを見た瞬間、そう言うことか…と理解した。

(…もしかしてこれ、やばいんじゃねーの…?)

袋の鼠もいいところ。
まんまと彼らの罠にはまってしまったと言うわけだ。

しかもこちらはイスラとバッハという二つのお荷物つき。
彼らを庇いながらでは、戦うのも逃げるのも至難のわざだろう。

「ちょっと待ってよ。俺達べつに喧嘩しに来た訳じゃねぇって」

メルツェルと名乗った男。どうも彼がここの吸血鬼達の頭らしい。
アグルは両手を頭ほどの高さまで上げ、無抵抗を装いつつ彼に言った。

「ただの興味本位なんだ。ここの街の人間を服従させて好き勝手してる吸血鬼の噂を聞いてさ、実際どんなものか見たくなっただけなんだ。
歯向かうつもりはないんだって。なんならそこの二人(イスラ、バッハ)はあんたらにやるから、俺達のことは見逃してくれよ」

400イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/08/30(日) 01:32:42
【リマ>だって全然思ったとおりに描けなくて…(´Д`)
火傷はやばいwアブセルは頼まれなくても自ら進んで扇いでそうですけどねw

マジですか!?まさかそう思って頂いていたなんて…(;_;)はい、また時間が出来たら描きたいと思います!
就活頑張ってください!

ヤツキ>新キャラ了解です^^】

401メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/09/04(金) 22:28:05
【群青の街】

「へ〜ぇ、興味本位で見にきたねぇ?」

両手を上げ弁明するアグルの言葉に、メルツェルは胡散臭さそうに目を細めた。
しかし、それも一瞬。

浮かべる表情を薄ら笑いへと戻しながら、メイヤへと歩み寄ると同時に、彼の腹部へ蹴りを叩き込んだ。
その威力は強く、重い。

メイヤは咄嗟に身を捩るも、衝撃を逃し切れずに吹き飛び、派手な音を立てて店内のカウンターへと激突。
肩を組み、抱えられていたイスラも床へ転がっていく。

吹き飛ぶメイヤと転がるイスラの様子を鼻で笑い、メルツェルは続ける。

「ここ数日、下僕の吸血鬼共が立て続けに狩られててな。

七世代辺りのなら気にはしねーんだがよ、三世代の吸血鬼が跡形も無く消されてるのは流石にヤベーんだわ。

テメーらが吸血鬼狩ってる奴かも知んねーからな、疑わしきは何とやらだ。」

そして、薄ら笑いを僅かに歪め、メルツェルはアグルの喉元目掛けて手刀を放つ。
何の予備動作もなく放たれたそれは、吸い込まれるかの様に伸びて行き、止まった。

否、止められた。

「……あぁん?何しやがるんだ?」

アグルの喉元の数ミリ手前で止められた手刀、その手首を誰かが掴んでいる。
寒色系のネイルアートが施されたその手の主へ、メルツェルは視線を移した。

「誰かれ構わず喧嘩吹きかけるのはよろしく無いわ、まるでどこかの誰かさんと同じね。

まぁ、アナタの場合は弱い者虐めだけど。」

メルツェルの紅瞳に映る人物、銀髪のその女性……フィアは、呆れた様に口を開いた。
その後ろには、同じく吸血鬼であり、長老であるシャムとDDの姿も見える。

「アナタが手を出そうとした一行は私の顔見知りよ。

だからと言うのも変だけど、今回は見逃してあげて。」

自分と同じ長老が3人、その中ではフィアに一番発言力があるらしい。
歪めた頬を戻し、メルツェルは再び鼻を鳴らした。

「けっ、仲良しこよしかえ?

まぁ良い、丁度話してー事もあるし見逃してやるよ。」

そして、フィアの手を振り払うと同時に、アグルとメイヤへ向かって手をヒラヒラと振った。

「ただし、赤毛とオッサンは置いてけぇ。

返して欲しけりゃ明日夜、城へ来い。

面白ぇゲームをクリア出来たら返してやるよ、ほれ、わかったならさっさと失せろ。」

402アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/09/14(月) 17:34:05
【群青の街】

仲間を置いていけと言うメルツェルの要求に、アグルは一瞬気を詰めたような様子を見せる。
しかしそれは本の一瞬のこと。直ぐにいつもの眠たそうな表情に戻ると、特に何を言うでもなくメルツェルから顔を背け、そのままメイヤの元へ歩み寄った。

「……立てるか?」

そうしてメイヤに肩を貸し、その場に居る誰一人に一瞥もくれることもなく店を出ていった。

「はっ、あんにゃろぉ、礼の一言も言わず出ていきやがった」

それを眺めていたシャムは、彼等が潜っていった店の扉を睨み付けながら悪態をつく。
少しばかり面識があるからとはいえ、フィアが何故あの連中を助ける気になったのか甚だ疑問だ。

しかし今はそんなことよりも、他に論点を向けるべきものが別にある。

「…よお、元気そうだな。その小者くせぇ性癖も相変わらずの様で安心したぜ」

シャムは見下す様に軽く顎を上げ、口元に嘲笑を浮かべながらメルツェルを見た。

「で、話っつーのは何だ」


……一方、店を出たアグルはその足で、メイヤと共に今晩泊まれる宿を探し街をさ迷い歩いていた。
そして何故かその横には…。

「…何であんたまでついてきてる訳?」

「ホテルまでのボディーガードよぉ。人間にこの街は物騒でしょ?」

アグルの視線の先にはどういう訳かDDがいた。
ピンヒールのカツカツというタイルを叩く音を引き連れながら、ぴったりと二人に合わせて並行している。

「それよりまさか、こんなところで逢えるなんて思わなかったわぁ。アタシってば久しぶりに運命感じちゃったー。
あ、さっきはメルメルがごめんなさいねぇ、彼、昔からああなの。許したげて」

彼は話を変えると、やや興奮気味にこちらに身を乗り出してきた。
それとは逆に、アグルは若干身を引きながら怠そうに言葉を返す。

「アンタどっちの味方なんだよ。
どうせならアイツ説得して、俺らの連れも持ってきてくれれば良かったのに」

「あらぁ?でも貴方、さっきはそのお友達売ろうとしてたじゃなぁい?」

「あれはただの冗談…」

つまらない冗談ね。と乗り出していた居住まいを正しDDは肩を竦めてみせた。

「メルメルのやり方は好きじゃないけどぉ、アタシも一応長老の一人だもの。そこまで表だって人間の肩は持てないわぁ。メンツだってあるしね」

そう言うや、彼は再び顔を寄せてくる。
気のせいだろうか。一際メイヤに熱い視線を送っている様に見える。

「でもぉ、お忍びなら話はべつー。
今日はアタシが付きっきりで看病してあげましょうかぁ?」

403メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/09/18(金) 21:37:10
【群青の街】

「……そうだな、付きっ切りで看病、もとい、ボディガードなら頼みたい所だ。」

見逃され、逃げる様に後にした酒場とは打って変わって街の雰囲気は暗い。
だが、これがこの街の本来の姿なのだろう。

蹴りを入れられた腹部をさすりながら、メイヤは周囲を伺う。
痛みは大分引いてきたが、痩身から繰り出されたとは思えない程の威力だった。

「単なる情報収集の筈が大変な事になったが……」

とんでもなさそう火に入る夏の虫か、大火傷を負ったと言っても過言ではない状況に、メイヤは溜め息を吐く。
そして、DDの熱い視線を受け流し、足を止めた。

「囲まれてるな。」

それと同時に、暗闇から次々と人影が現れ、三人を囲む様に陣を取った。
その様子を伺いながら、メイヤは腰に挿した剣の柄に手を掛ける。

黒瞳の先に映るのは、夜に紛れる様な黒外套を羽織った集団。
背丈はバラバラだが、外套からは白い鎧の様な物が所々に見える。

ーーーーー

「テメェは相変わらず頭悪そうなツラしてんな、チンピラ崩れの喧嘩屋みてぇだゾ?」

アグルとメイヤが酒場から逃げる様に去った後、メルツェルはフィアとシャムを連れて街の中心に位置する居城へと戻っていた。
城内の大広間へ二人を通し、メルツェルは口を開く。

「あのクソオカマはともかく、お前ら二人が人間界まで来るとはな。

まぁ、話っつーのはアレだ、ここ最近下僕共が狩られててよ。」

その口調からは、僅かながらも怯えが見て取れる。

「第三世代辺りがほぼ全滅してやがってな、それも相手は正体不明。

どうやら結構な頭数は揃えてるみてーだが……何か知ってっか?」

普段は十字界で各々の領地を守り、軽い小競り合いを続けている為に、長老達が顔を合わす事は中々無い。
ましてや人間界へ出ている長老など極々稀だ。

その為、意外にも長老間の情報のやり取りは少い。

「場合によっちゃぁ大事になるかも、しんねぇ」

ーーーーー

始まりは突然だった。
柄に手をやり、周囲を伺う。

辺りに自分達と謎の集団以外の人影は見えず、虫の音一つ聞こえない。

出来れば刃を抜きたく無い、そう考え始めたその時。
自分達を囲む一団が、刃を抜き音も無く襲い掛かって来たのだ。

外套を脱ぎ捨て、闇に紛れながら襲い来る一団は速い上に連携が取れている。
所々、その速さに着いて行けない者もいるようだが……

(上手い具合に穴を埋める!!)

長い黒髪の男がそれをフォローしており、そこを突くどころか防戦一方だ。

(クソ、このままじゃっ)

404アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/04(日) 20:46:04
【群青の街】

「ははッ、そりゃ面白ぇ。
尻尾を掴ませずに第三世代の連中をやるとか結構な手練れじゃねーか」

一連の話を聞いたシャムは、さも愉快そうに歯を剥き出し笑った。

メルツェルの派閥が被害を被っていることもいい気味だが、彼の言う正体不明の相手にちょっとばかり関心が沸いたのだ。

とはいっても、この一件に関わる気など更々なければ、それに対し何らかの情報を持っている筈もない訳で。

「ま、大方この街の人間が雇ったハンターだとか、過去にてめえに謀られた吸血鬼共の復讐だとかじゃねーの」

どちらにしても自業自得だ。と、シャムは高みの見物気分で素っ気なく返した。


……………

突如襲いかかってきた謎の集団。
メイヤと二人、何とか攻撃を凌いではいるものの、
数の点でも不利な上に相手の動きも素早く中々反撃に転じられない。

そして、その理由としてもうひとつ…


「キャーッ、やっだ〜、なになに〜、こわーい」

DDの存在が要因として上げられた。

胸の前で手を組み、内股で悲鳴を上げる彼は、か弱い乙女の演出に余念がないのか、その場から全く動こうとしない。
加勢しろとは言わないまでも、せめてこの場から逃げてくれたのなら、こちらとしても彼を庇う必要がない分いくらか楽なのだが…。

「ちょっとちっょとぉ!しっかりしてぇ!右から来てるってば、ほらっ!ちゃんと見てぇ!やんっ危ない!」

「……(うぜぇ…)」

鬱陶しくて目の前の戦いに集中できない。

そんなアグルの気持ちも露知らず。二人に野次という名の声援を送りつつ、しばらく現状を見守っていたDDも、現在の戦況が好転しないことを見て取ると、ようやくその重い腰を上げるのだった。

「…もう、しょうがないわね〜。加減できないと思うから貴方達二人も気を付けてね」

そして本当にどこから取り出したのか。忽然と現れた身の丈ほどもある巨大メイスを握り、思い切り足元に降り下ろした。

直後、大きな音と共に足元が砕け、陥没する。
メイヤやアグルならず、敵も、周囲に建ち並ぶ建物も全部巻き込んで、地面は大きく崩落した。

405メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/08(木) 23:26:51
【群青の街】

途絶える事無い波状攻撃は、派手さは無くとも堅実だ。
致命傷こそは避けているものの、ダメージは蓄積されていく。

オマケに、全く可愛く無いDDの悲鳴が集中力を削いでやまない。
加勢しろとは言わないが、せめて逃げてくれれば……

止まる事を知らない連続攻撃を凌ぎながら、メイヤは願った。
それが通じたのか、DDが事を起こした。

どこからともなく巨大なメイスを取り出しし、それを地面に叩き付ける。
その威力は凄まじく、広範囲に渡って亀裂が走ったかと思えば、次の瞬間には周囲一帯が轟音を立てて陥没し、崩れ落ちた。

勿論、メイヤもそれに巻き込まれて行く。

(なんて馬鹿力だっ……!)

土砂が降り注ぐ中、メイヤは咄嗟にアグルへと手を伸ばす。
そして、その手を掴んだと同時に背中から闇の黒翼を生やし……否、生えない。

「闇が……出ない!?」

出せると思った翼は出ず、メイヤは驚愕の表情を浮かべる。
しかし、驚いている暇は無い。

(このままじゃ……生き埋めに……っ)

その時だった。
一瞬の浮遊感が止まり、崩落する周囲一帯がコマ送りの様に巻き戻されて行ったのは。

強烈な耳鳴りと、うねる様な気色の悪い感覚にメイヤは思わず顔をしかめる。
そして、気がつけば周囲一帯は崩落する前、DDがメイスを叩き付ける寸前の状態に戻っていた。

「何が……起こった……!?」

ーーーーー

「アァン!?何だかテメェ楽しそうじゃねぇか!?」

歯を剥き、話を笑い飛ばすシャムの態度にメルツェルは眉間に皺を寄せ、彼へとガンを飛ばす。
しかし、それも僅かな事。

舌打ちをしながら、メルツェルは悪趣味かつ下品なまでに飾り立てられた椅子に座り直す。

「ケッ、これだから脳たりんの喧嘩屋はよぉ……」

どうやらシャムはこの件に関わっては無いらしい。
第三世代の吸血鬼を跡形も無く消滅させる程の力の持ち主……真っ先に浮かぶのは同じ長老達だったのだが。

「で、テメェらは何の用だっけか?つーかあのオカマはどこ言ったんだ?」

椅子に座り直し、ふんぞり返るメルツェルはシャムと、その隣のフィアへ何用かと声を掛ける。

その一拍後だった。
外から聞こえる轟音と共に城が揺れ、どこか懐かしい様な奇妙な感覚がメルツェル達三人の長老を包んだのは。

「何だ、こりゃあ……?」

「……ヤダ、この感じ……どこかで!?」

406メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/08(木) 23:28:22
ーーーーー

「そう驚く事は無い。

何、時間を僅かばかり戻しただけの事だ。」

戸惑いの表情を見せるメイヤの視線の先。
メイヤ、アグル、そしてDDを囲む集団の中央、黒髪の男は低い声でそう言った。

「流石は古の長老、メイス一つで街の人区画を崩落させるとは。

お付きの二人も中々の手練れ、単体ならば第二世代の吸血鬼以上か。」

黒髪の男は月光に輝く剣をDDへと向け、続ける。

「長老と合間見えるは初、名乗ろうか。

我等は吸血鬼を狩る者、聖十字騎士団である。」

男は三十代中頃か、その顔には幾つかの傷痕が見てとれる。
そしてその傍ら。

小柄な人影が、頭巾から覗く白とも灰にも見える髪を揺らし、その奥の双眸をDDへと向けている。

「長きに渡り、闇に紛れ吸血鬼を滅して来たが……今ここに。

我々は長老を含めた吸血鬼全てに宣戦を布告する。」

その言葉と共に、男を中心とした集団は一斉に外套を翻し、順々に夜の闇へと消えて行く。

「この街の主にも伝えるが良い、最期の晩餐を楽しめ、とな。」

そして、男は純銀の剣を投擲し、刃がDDの頬を掠めると同時に、消えた。

「…………一体、何だったんだ……?」

襲撃するだけ襲撃し、捨て台詞と共に消えた一団。
その気配が完全に消えたのを確認し、メイヤは大きく、長い溜め息を吐いた。

407メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/16(金) 18:51:54
【なーんか久し振りに絵描きたくなったから、何かリクエストあればオナシャス!】

408イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/17(土) 00:20:58
マジっすか!
じゃあ時期的にハロウィン風なイラストお願いします!(`・ω・)ノ

409メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/17(土) 12:48:13
おけー、首をながーくして待ってろ!←

410DD ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/18(日) 01:55:14
【群青の街】

男達が立ち去った後、深いため息をつくメイヤの横でDDは思案顔で頬に手を触れた。

「聖十字騎士団か…。何だか穏やかじゃないわねぇ…。
アナタ達も、巻き込んじゃったみたいでごめんなさいね」

男の言葉通りなら、連中の狙いは吸血鬼である自分だった筈。
たまたま共に居たために、巻き込むはめになってしまったメイヤとアグルに申し訳なく、謝罪の言葉を述べる。
と、そこへ…。

「おい、何があった」

空間跳躍でシャムら三人が到着した。
どうやら事の異変を察知し、疑わしいと思われる場所まで赴いたようだ。

シャムはそこにメイヤとアグルの姿を見咎めるや怪訝そうに顔をしかめるも、直ぐに現場に残された純銀の剣の存在に気がついた。

「待って、その剣には触らない方がいいわ」

「あぁ?」

しかし、剣を拾い上げる前にDDがそれを止めた。
そして自身の頬を示し、言った。

「傷が治らないの…」

確かにそこには小さな切り傷が一つ付いていた。
先程の男が投げた剣が、頬を掠めたさいに出来たものだ。
普段ならば、この程度の傷など一瞬もかからない内に回復するのだが…。

「まさか。人間共が創作した都合のいいおとぎ話でもあるまいし、俺らに銀やニンニクが効くかよ」

半信半疑にそう言ってのけるものの、シャムも警戒してか手を引っ込めたようだ。
そしてDDはその剣のことも踏まえ、先程の出来事を三人に話すのだった。


【楽しみに待ってます!】

411メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2015/10/19(月) 14:53:51
【群青の街】

遂に姿を現した、明確な敵。
今まで刃向かう者は多々居たが、今回は強さ、規模共に最大級だろうか。

「……ケッ、ビビってなんかねーぞ……、ゴミ共は皆殺しにしてやる。」

残された純銀の剣を睨み付け、メルツェルは毒を吐く。
しかし、その言葉の端々からは明らかな怯えが見てとれた。

その隣、DDの説明を聞いたフィアは気になる点を挙げる。

「組織名は初耳だけど、中々に厄介そうね。

統制が取れた戦闘集団と、限定的だけれど時間を巻き戻す能力者。

あの銀の剣を見るからに、対吸血鬼に特化した異能の装備品を所持しているのは明白よ。

……それに、あの異質な感覚。

先日闘技場で感じたモノと同じモノだわ。」

調査すべき対象と、敵対する者達が共に行動している。
これはかなりの面倒事になるだろう。

下手をすれば、十字界を巻き込む大きな火種に成りかねない。
そうなる前にどうにか対処しなければならないが……

自分達が十字界から人間界へ、そしてこの街へ来た理由をメルツェルへ説明し、フィアは視線を横へ。
そこで、気付いた。

「二人、消えたようね……」

メイヤとアグルの姿が消えた事に。

ーーーーー

全く、災難続きだ。
これ以上の厄介事は流石に簡便してくれとばかりに、メイヤはアグルと共に夜の街を駆け抜ける。

街の柄にも、宿屋は全く開いておらず、目指す場所は自ずと決まっていた。

街外れの小高い丘の影に、隠れる様に着陸した飛行艇へ戻り、メイヤはホッと一息着いた。

「早々から大変な事になったな……」

飛行艇内部の広間兼食堂のソファに倒れる様に座り込み、うなだれたまま続ける。

「状況をまとめ様にも、面倒が過ぎる……

取り敢えず、イスラとバッハが無事だと良いけど。」

412アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/10/26(月) 20:59:57
【群青の街】

「おいおい、しっかりしろよ。チキン野郎。
酒場でガキ共に見せてた威勢はどうしたんだよ」

いくら強がりを言おうが、メルツェルが怯えているのは明白だ。
シャムは激励のつもりか、彼の尻に蹴りを入れる。

「おら、頭下げてお願いすれば手ぇ貸してやらんこともねーぞ、んん?」

底意地の悪い笑みだ。
そんな様子を横目で見ていたDDは、呆れた風にため息をつき口を開く。

「もうアンタ達なに遊んでるのよぉ!いつまでもこんな寒いとこ居ないで一旦戻りましょうよ。アタシ疲れちゃったわァ」

どうにも顔に傷をつけられたことや、メイヤ達に逃げられたこともあってか、ご機嫌ななめな様だ。

「はあーぁ…、これちゃんと治るのかしら。こんなんじゃ恥ずかしくてデートも出来ないわ…。
あ、そうそう。その剣もちゃんと持って来てよね。帰って材質調査しなくちゃ」

…………


飛行挺に戻るや、アグルはメイヤの向かいのソファに寝転んだ。
足を投げ出したまま仰向けになり、相手の声を耳に、ぼんやりと天井の照明を見つめる。

もともと四人では少しもて余していたぐらいの挺が、今ではより広く感じる。

「…取り合えずさ、さっきの何とか騎士団達がここの吸血鬼を全部退治してくれるってんだから、それはそれで奴らに任せとこうぜ」

先程は理不尽にも戦闘に巻き込まれてしまったが、本来ならば自分達と彼らが敵対する必要はない筈なのだ。
何故なら彼らの狙いは吸血鬼であり、そしてこちらも吸血鬼討伐を目的としてこの街に赴いたのだから。

「奴らと吸血鬼達が争ってるそのど さくさに、なんとかイスラ達を助けられればいいんだけど」

上手くいけば、メルツェルの言う馬鹿げたゲームに付き合うことも、戦闘をすることもなく済むかもしれない。

413メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/10/29(木) 14:02:53
【群青の街】

「ってぇな!ビビってなんかねぇんだよ!それにチキン食うにはまだ早ぇ
、クリスマスはまだだ!」

シャムに蹴られた尻をさすり、メルツェルは牙を剥く。
しかし、意地の悪い笑みを浮かべるシャムの意を汲み取ったのか、それ以上を続ける事は無かった。

どうやら面倒臭いどころか、かなりの大事になりそうだ。
しかし、必要以上に怯える事はない。

(喧嘩屋のシャムもDDのオカマ野郎も、冷血女のフィアも居る今なら負ける気はしねぇ……)

そう、今この街には自分と同じ長老が三人も居るのだ。
それこそ吸血鬼に始祖たる存在、オリジンが来ない限り負ける考えられない。

不機嫌そうに寒さを訴えるDDを一瞥し、メルツェルは口を開いた。

「あの剣は下僕共に運ばせる、最悪人間共使ってな。

取り敢えず城へ戻って腹拵えだ、最後の晩餐何てクソ喰らえ、うめぇもん喰って雑魚共を返り討ちにしてやる……!!」

そして、踵を返すと同時に空間を跳躍。
シャム達長老と共に居城へと帰って行く。

ーーーーー

「……そうだな、狙うは漁夫の利だな。

あの騎士団が吸血鬼達と戦っている間に上手い具合にイスラ達を助けだそう。」

敵の敵は味方か、はたまた敵か。
どうなるか分からないが、戦闘を避けれるに越した事はないだろう。

「その為には、どちらにせよ明日の夜も街へ、吸血鬼の居城の近くに行かないとな。

ゲームとやらが何かわからないけれど……取り敢えず、今日はもう寝よう。」

メルツェルが言ったゲーム。
内容はまだわからないが、その結果がわかるまではイスラとバッハへ手出しはされないだろうか。

二人の安否が気になるが、今夜はこれ以上何か行動を起こす事も無い。
明日に備えて休むべきだろう。

イスラとバッハが不在の今、普段以上に艇内は広く、そして静かに感じる。
ソファに倒れる様に座ったまま、メイヤはゆっくりと目を閉じた。

ーーーーー

目覚めは案外すっきりとしていた。
汚れた衣服を籠へ入れ、シャワーで身体を流す。
以前ならば一晩もすれは治っていた筈の擦過傷や裂傷に冷水が滲みるが、逆にそれで目が冴えた。

艇内に備えつけられた簡易シャワー室から出、手早く新しい衣服に袖を通す。
続くアグルがシャワーを浴び終わるまでに簡単な食事を用意し、メイヤは一通の手紙を……いつの間にかテーブルに置かれていたソレを手に取った。

「……」

そして、シャワーを浴び終え、食堂へと入って来たアグルへとその手紙を渡す。

「楽しい楽しいゲームのお誘いだそうだ!参加費無!。

ルールは簡単!居城中の吸血鬼三百体相手に一晩生き残るだけの簡単単純明解馬鹿でもわかる!

あぁ、夕暮れまでに城へ来なければ人質は無惨な姿になるから逃げるなよ!

じゃあ待ってるぜ、楽しく面白い姿を見せてくれ!」

アグルが封を開いた手紙には幾何学模様が描かれており、仕組みはわからないが、模様が光ると同時に、録音されていたらしいメルツェルの音声が食堂内へと響き渡る。

「……だそうだ。」

その言葉を無言で聞き終え、一拍の間を置いた後。
メイヤはどうする?とばかりにアグルへ視線を向けた。

414ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/11/10(火) 23:21:24
壁I:)サーセン、ハロウィンイラスト、修正不可なレベルの失敗をやらかしたんでまだしばらく掛かりそうっす……
辛うじて撮ってた下絵はこんなだったけど…orz
imepic.jp/20151110/836560

415イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/11/12(木) 00:22:07
おおー!すごい大作な予感!
完成が楽しみです(´ω`)いくらでも待ちますので頑張ってください!

あとすみません;
こっちも本文のレスもう少し待ってください;

416ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/11/16(月) 19:29:03
【完全書き直しなんだけど構図浮かばねぇ……

了解、お待ちしますぜ!

とと、クリスマス辺りに神戸行くんだけどさ、シャレオツなレストランとかオススメありませんかね?】

417アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/11/20(金) 17:50:31
【群青の街】

「いや…、これは無理ゲーだろ…」

手紙の内容を聞き終えたアグルは、メイヤの視線に対し苦い表情を浮かべながら応えた。

いくら下っぱといえど、不死身に近い吸血鬼三百人と一晩やりあうなど有り得ない。
そもそも向こうは勝たせる気もないのだろう。いかに楽しく残酷に、相手をいたぶることができるか…だけを考えた様なゲーム内容だ。

頭の中で、何で俺がこんなことをしなければならないんだ…、とか、命をかけてまであの二人を助ける意味はあるだろうか…、とか様々な思考が沸き上がる。

そして巡り巡ったそれは結局、こんなところで死ぬ訳にはいかない。へと辿り着く。

時間にすれば僅か三秒ばかりの沈黙だったはずだ。
今度は真顔で、アグルは再びメイヤに視線を向けた。

「もし、俺が行かない…っつったら、…お前はどうする?一人ででも行くのか?」


【前と同じ構図でいいじゃないw

お、デートですか?(´ω`*)
うーん…今はもう神戸住んでないんですよ〜、シャレオツな店も全然行かないんで詳しくないですし、普通にネットで調べた方が確実だと思いますw】

418メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/11/24(火) 19:56:49
【群青の街】

「行くしか無いだろうな、夕刻までにあの城へ向かわないと二人はきっと処刑される。」

ほんの僅かな時間、三秒程の間だが、その間のアグルの表情からは思案と苦悩の色が見て取れた。
確かに、アグルの言う通りだ。

提示された内容は無理難題、端っから勝たせるつもりは無いルール。
しかし、挑まなければイスラとバッハは殺されてしまうだろう。

かと言って、救援を呼ぶも待とうも時間が圧倒的に足りない。
昨夜の襲撃者達、吸血鬼狩りの一団が城へ攻め込むのを待つのまで粘れるか問われれば、それも難しいだろう。

ならばどうするか、打つ手は一つだ。

ーーーーー

バルクウェイを出立し、群青の街へ到着する間は全くと言って良いほど穏やかだった。
その間、メイヤは何もしていなかった訳でも無い。

船の積み荷、処刑人の剣から押収したであろう数々の異能の品々を確認していた。

自身に宿っていた筈の闇の悪神、その力が使えない今。
それらの品々は大きな力になる筈だ。

ーーーーー

打つべき一手。
それは先手を取っての潜入だ。

示された時間は夕刻。
ならば真昼の内に城へと潜入し、イスラとバッハを救出する。

メイヤにとって、隠密行動は得意分野だ。
アグルを先導しながらでも、侵入するのは朝飯前だ。

「……そう思っていたんだけどな。」

場内へ侵入し、小一時間程。
吸血鬼と全く遭遇する事無く、順調に捜索を進めていたその時。

十数メートル程はある長い通路の真ん中で、メイヤは足を止めた。

進行方向の先、通路へと続く曲がり角から現れた男の姿に、メイヤは小さく舌を打つ。
遠目でもわかる銀髪と眼帯。

吸血鬼達の中でも最上位の存在であろうその男。
シャムと出くわすとは流石に驚きと焦りの色が顔に出てしまう。

どうするべきか。
……迷っている暇は無い。

「アグル、街の住人から手に入れた見取り図からすれば、この通路の先。

二股に分かれたその先、右側が牢屋らしい。」

メイヤは腰に差した剣の柄に手をやり、視線をシャムへ向け。

「俺があの男を引き付ける、その間に牢屋へ向かってくれ。」

そして、言い終わると同時にメイヤは疾走。
地を這う蛇の如く通路を駆け抜け、シャムを刃の射程圏内へ捉え、鋭い斬り上げを放った。

419シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/12/07(月) 00:24:28
【群青の街】

「…りょーかい」

暗がりの通路で鉢合わせた相手…シャムの姿を見据えながら、アグルはメイヤの言葉に短く応え、通路を駆け抜ける。

一方で、シャムは二人を前に怪訝そうに眉を潜めた。

「あぁ?なんだテメー等?」

つうか誰だ、と。

しかしよくよく見れば、その顔は昨夜何度も目にした覚えがある。

…ああ、そうだ。確か酒場でメルツェルに虐められてた奴等だ。
どうやらまだこの辺りをうろちょろしていたらしい。
そう言えばその時に、"ゲーム"がどうこうと話していたような気がする。

いま偶然通りがかっただけのシャムにとっては、彼らに個人的な因縁もなければ興味もない。
メルツェルの居城にねずみが入り込み、何をしでかしたところで正直マジでどうでもいい。
が、しかし…

出し抜けに放たれた刃の軌道。それを紙一重のところで躱し、シャムは不敵に笑った。

「喧嘩を売られたからには買うしかねーよなァ
!?」

言葉尻と同時に、二丁のデザートイーグルがメイヤの超至近距離で火を吹いた。
二発、三発、四発…バックステップで後退しながらも、銃口は相手を狙い次々とマグナムを吐き出していく。

420メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/12/12(土) 16:51:02
【群青の街/城】

「喧嘩の大安売りだ、安売りだけど買って損はさせないさ」

超至近距離で放たれる弾丸を、メイヤは剣の腹を盾にして防ぎ、そのまま前進。
バックステップで距離を取ろうとするシャムへ肉迫し、銃の間合いを強引に潰していく。

そして、距離を潰したと同時に攻勢一転。
真白の刃が半弧を描き、銃口を斬り落とす。

更に返す刃でもう一丁の銃身を斬り捨て、振りかざした刃で渾身の兜割を打ち込んだ。

ーーーーー

近くに聞こえる銃声に、バッハはのそり
と巨体を起こす。

(近いですね、誰かが戦っている……?)

酒場で酔い潰れたのは自らの酒臭さでわかるものの、何故牢屋に捕らわれられているのかはわからない。
目が醒めた時には冷たい石畳の上で、装備品は取り上げられていた。

状況が掴めないが、これは好機かもしれない。
鉄格子を両手で掴み、バッハは近付いてくる足音に耳を澄ませた。

「誰か、来ますね……?」

421ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/12/31(木) 23:41:28
結局イラスト出来ずで申し訳ない……

来年もよろしくお頼み申し上げます!

422シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/01/04(月) 00:26:05
【群青の街】

「…ッち」

斬り落とされた銃を放り投げ、シャムはすぐさま左腕を盾状に変化させる。
そしてそれで一刀を防ぐと、すかさずその場から飛び退き蝙蝠のように天井に逆さに張り付いた。

「うッぜぇなぁ、ちょろちょろ動くんじゃねーっつの!
弾が当たんねぇじゃねーか!」

分かっていたことだが、この様な狭い場所では飛び道具は不向きだ。
しかも相手は素早く、間合いを詰めてくる。

(クッソムカつくがナメてかかってる場合じゃねぇ…!)

シャムの腕が盾の様な形状から今度は鋭い剣状のものへと変わる。
足場を強く蹴り、天井から一気に降下。急所を狙った刺突が放たれた。

「そんなに近接がしたいなら付き合ってやるよォッ!」



…………


近くで聞こえる銃声と、そして足音。
バッハ同様、何事かと顔を上げたイスラの前に、ちょうど人の影が立ち止まった。

「…無事か?」

アグルだ。

「アグル…?これは…」

「説明はあと。取り合えず逃げるぞ」

説明を求めるイスラの声を遮り、アグルは牢屋の鍵を槍の刃で壊す。
そして外に出るように仕草で二人を促した。

「急げ、今メイヤが敵を引き付けてくれているんだ」

423シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/01/04(月) 00:27:23
明けましておめでとうございます(´ω`)
今年もよろしくお願いします!

424メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/01/08(金) 22:53:54
【群青の街/城】

変化する異形の左手、盾と剣を兼ねたソレを武器に、迫るシャムの一撃。
重量落下も合わさった、放たれる上方からの刺突は予想以上に速い。

「ーーッ!!」

急所を狙うソレを、捌けなければ死は免れない。
メイヤは目を細め、真白の刃を振るった。

そして。

ーーーーーー

すぐ隣で聞こえる話し声と、そう大きくは無い破砕音。
イスラに続き、牢から脱したバッハはアグルの説明に頷いた。

そして、自身の装備が取り上げられている事を伝える。

「私は軽装だったので、大して困りませんが……イスラさんはどうですか?

大事な刀、お持ちですか?」

昨夜は情報収集の為に街へ出た為、本格的な戦闘用の装備では無かった。
しかし、普段から帯刀しているイスラが刀を取り上げられているならば、取りに行かなければならない。

ーーーーーー

交錯する刃と、一拍遅れで舞う僅かな粉塵。
シャムの一撃は、メイヤの左胸部を縦に切り裂いた。

それに対する、急降下してくるシャムへとメイヤは剣を横薙に。
斬撃と言うよりは打撃に近いその一撃は、刃に引っ掛ける形でシャムを廊下へと叩きつけた。

「肉を切らせて骨を断つ。だけど、切らせる肉は鎧の下だ。」

相討ち上等のカウンターだが、きっとシャムは受け身を取って凌ぐだろう。
そんなシャムへとメイヤは剣の切っ先を向け、続ける。

「風魔装束、闇烏」

シャムに切り裂かれた左胸。
上着から覗くは血の赤では無く、鎧の黒。

剣を握る右とは逆。
左手で掴む薄い長方形の箱は、瞬く間にその姿を大きな手裏剣へと変える。

「風魔手裏剣、黒鷲」

それは、飛行艇に積まれて居た装備品。
世界政府の闇、処刑人の剣が収集していた異能の逸品であり、バッハが見繕い艇へと積んだ物。

「とことん、付き合ってくれるんだろう?


425シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/13(土) 00:11:14
【群青の街】

バッハの言葉を聞くまで、すっかり失念していた。
イスラは今更ながら己の身を確認してみるも、案の定、武器は取り上げられていた。

「すまない…、二人は先に行っててくれないか。俺は少しこの辺りを探してみる」

あれを置いて逃げる訳にはいかない。
そう言うイスラに対し、アグルは呆れ半分に言葉を返した。

「いやいや、丸腰の人間一人置いていけるわけないだろ。
仕方ないけど…手分けして探そう」

アンタもそれでいいよな?と言わんばかりに、アグルはバッハに同意を求めるような視線を向ける。


…………

「ハッ…、面白ぇッ!」

相手の様相はシャムにも少しばかり興味を唆らせたらしい。
向けられた刃に怯むことなく、シャムはそれを片手
で掴むや、力で強引に刀ごとメイヤを引き寄せた。

「俺様に剣を向けたこと、後悔させてやるよォッ!」

当然の如く多少の出血は気にしない。そして相手を手繰り寄せたのと同時に、今度は右腕の剣を勢いのままに突き立てる。

が、メイヤには紙一重で避けられてしまった。

しかし剣は空振ったものの、代わりに一撃を食らった壁面にはその威力でぽっかりと穴が。

「…今度はテメーの面に大穴開けてやらァッ!」

そうしてシャムは間髪入れずに剣による連撃を放った。


【最近レス遅くて申し訳ないです…(´`;)
リアルも落ち着いてきたので、暫くはもう少し早くレス出来る、はず…
この機に絵も描きたいなー…

426メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2016/02/20(土) 22:51:20
【群青の街/城】

思った通り、イスラの装備も取り上げられていた。
バルクウェイからの道中で聞いた話によれば、彼の所持する刀は神刀とも呼ばれる異能の逸品。

そんな刀を置いて城から脱出する訳にはいかない。
戦闘力の低下もあるが、何より刀に込められたら想いをおざなりになどは出来ない。

アグルの向ける視線の意図に頷き、バッハも周囲を探索する為に歩き出した。

「押収物の保管庫など、近くにありそうとは思いますが……」

直ぐ側で聞こえる激しい戦闘音が、余計に気を焦らせる。


ーーーーー

刃を引き寄せ、力任せに放たれる一撃の威力は壁に開いた大穴が物語っている。
身に纏う魔装の防御力を持ってしても、直撃は避けたい所だ。

刃を掴まれたままの剣から手を放したメイヤは、繰り出される連撃を避け続け、巨大な手裏剣を縦に一閃。

シャムが放つ刺突を手裏剣で上方へと逸らし、逆の手で短刀を抜き放つ。

「疾さには、自信がある!」

そして、大きく踏み込むと同時に、左手に握る短刀で刺突を繰り出した。

ーーーーー

長老の中でも、特に気配の探知に長けているだろうと自負するフィアは、真っ先にその異変に気付いた。

(ゴッソリ、消えたわね……!)

城内への侵入者は直ぐにアグルとメイヤだと判別出来、シャムと戦い始めた事は敢えて黙って居たが……
メルツェルの部下、彼の眷属の気配が一瞬で、それもかなりの数が消失したのだ。

昨夜、DDを襲った者達の仕業である事は間違いないだろう。
彼女……もとい、彼の頬を傷つけた銀の剣の調査結果を記した紙を手に、フィアはどう動くか思案する。

(メルツェルと合流するか、シャムと合流するか……)

しかし、ゆっくり考える暇はなさそうだ。
広間に居るであろうメルツェルとDDの元に、異質な気配が現れたのだ。

ーーーーー

フィアが異変を察知したのとほぼ同刻。
広間の玉座にふんぞり返るメルツェルもまた、自身の眷属が消えた事を感知した。

(おいおい……来やがったのかよ!?)

一瞬で消えた第三世代の眷属の気配と、空間を歪めて姿を現したフードをかぶった謎の存在。

「……ケッ、誰に喧嘩売ってるかわかってんだろうなァ?」

フードの人物を中心に陣を組む騎士達へメルツェルは啖呵を切り、立ち上がる。

「俺達長老様を舐めてんじゃねーぞ!」

そして、傍らに居るDDへ目配せすると同時に、空間を跳躍。
小柄な騎士の背後に現れ、その背中を手刀で貫いた。

「皆殺しだ、わかってんだろーなァ!?」

その声を皮切りに、対吸血鬼に特化した騎士達がメルツェルとDDの二人へ一斉に襲い掛かった。

427ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/02/20(土) 23:03:55
【レス返そう思ってたらいつの間にか一週間経ってた……
月一連載的な感じでも俺は気にしないんで、自分のペースでレスしてくだせぇ!

なんだかんだ皆忙しそうだし……リマの就活ははたして無事に終わったんだろうか。

とと、すっごい私事なんだけど、子供が出来ました。秋口出産予定なんで、春先以降顔出す暇が無くなる気がする……ので、ついったからいんか連絡先置いとこうかと思うけど、どうでしょう
?】

428シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/24(水) 18:50:19
【城】

素早い動作で抜き放たれた短刀が、シャムの胸部を刺し貫く。
傷口から滲み出た血が、刃を伝って地面に落ち、数滴染みをつくった。

「おい、小僧。ちょっと待て」

しかし、彼はそれを見ても微動だにしなかった。そもそも差し迫る刃を避けようともしなかったのだ。

何かがおかしい。
シャムは一旦の中断をメイヤに言うと、意識を目の前の戦闘とは別のところに向けた。

…間違いない。
城内の同胞達の気配が一瞬にして消失した。

一体何があった?
まさか、こいつらの仕業か?…とメイヤに疑いの目を向けるが、直ぐに違うだろうと結論する。
ただの勘だが、彼らは恐らく自分達の仲間を助けに来ただけだ。

だとすれば、心当たりは昨夜、DDを襲った何者か。
シャムは言った。

「昨日、てめぇらも騎士風の男共に襲われたらしいな。…まさか奴等とグルだっつー訳じゃあねぇだろうが…」

シャムは短刀の柄を握り、胸から引き抜く。それを手の内でクルリと回し、刃をメイヤに突きつけた。

「奴等のこと、何か情報とか持ってんじゃねーのか?」


…………………

昨夜の頬の傷は翌朝になれば回復していた。
どうやらあの剣、治癒に時間はかかるものの、吸血鬼の再生能力を完全に無効果するものでもないらしい。

その時は鏡の前で小躍りしたものだが、あれが吸血鬼達にとって十分な驚異であることは間違いない。

そして今…、眼前に現れた騎士達を見据え、DDはそっと眉を潜めた。

(まさか真っ向から攻めてくるなんて…)

同胞達を一瞬で葬り去ったのもそうだが、信じられないと言った心持ちだ。
DDはメルツェルの目配せに小さく頷き、彼に続く。

「メルちゃん!お城壊れちゃっても勘弁してよね!」

迫る相手に飛びかかり、勢いよく巨大メイスを振りかぶった。

429シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/02/24(水) 18:52:11
【おぉ、おめでとう!宴じゃー!とか祝いたいけどそう言う訳にもいかないので…w、元気な子が無事に産まれるのを草葉の陰から祈ってます…産まれたら教えてね!←
にしてもヤツキさんも等々パパさんか…(´ω`)しみじみ

リマさんの近況も気になるし、レス返とかいいから、たまには顔だしてくれたら嬉しいなぁ

じゃあツイッターで、(^^)dツイッターの使い方いまいち分からないけど←】

430ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/02(水) 09:42:16
【群青の街】

まるで吸い込まれるかの様に、短刀はいとも簡単にシャムの胸へ突き刺さった。
手に伝わる感触は、何の手応えも無いモノで、それはシャムが避けようとしなかった事を如実に表している。

「……グルだったなら、昨夜の時点でアンタ達と派手にやりあってるさ。

あの騎士達は、俺達も攻撃の対象にしていた。」

己の胸に突き刺さる短刀を抜き、それを脅す様に向けるシャム。
突き付けられた刃を手の甲でゆっくりとそらしながら、メイヤは答える。

「敵の敵は味方じゃなくて、敵の敵は敵だ。

ただ、今は仲間の救出を優先したいだけなんだが……そうも言ってられないみたいだな……」

言葉通り今はイスラとバッハの救出が優先であり、メイヤはその時間稼ぎの為にシャムへ刃を向けたのだ。
しかし、この膠着状態の原因を考えると、自体は面倒な事になりつつ……否、なったようだ。

小さく短い耳鳴りが止み、それと同時に聞こえる無数の足音。
音の聞こえる方へ顔を向け、メイヤは小さく舌を打つ。

視線の先には、昨夜襲撃を掛けて来た騎士の一団。
その先頭に立つ男は、疵痕が目立つ顔を歪め、剣の切っ先を此方へ向けた。

「長老クラスとの戦闘は初めてだが、如何なる犠牲を持ってしても滅しよう。」

そして、銀の剣を掲げたのを合図に、一斉に騎士達がメイヤとシャムへと殺到する。

「……敵の敵は敵、だけど。

今はそうも言ってられないみたいだ!」

ーーーーー

メイスをブン回し、騎士達を次々と肉塊……ミンチへ変えるDDは、流石と言った所か。
しかし彼女……もとい彼の本気はこの程度では無い。

別に壊しちまっても構わねーよォ!と、返しながらメルツェルも騎士達をその能力、全てを融解させる力で見るも無惨な姿へ変えていく。

高温による融解、特殊溶液による溶解、そして全力を出せば概念にすら感触するその力は、防ぐ術など無い。

ものの数秒、そして秒刻みで騎士達を惨殺しながら、メルツェルはフードを被った謎の人物を睨み付けた。

(この軍団は確かに強えェ……第四、下手こいた第三世代なら簡単に倒せるだろうが……)

彼ら、騎士達だけでは先程の様な、瞬間的に大規模かつ多数の吸血鬼を消滅させる様な真似は出来ない筈だ。
ならば、やはり注意すべきは……

「DD!あのフードの野郎を狙う!援護しろ!」

メルツェルは狙いを定め、空間跳躍。
現れた先、フードを被った謎の人物に防御不能の手刀を繰り出した。
しかし、メルツェルの予想に反し、フードの人物は外套から伸ばした白く細く、そして小さな手でその攻撃を受け止めた。

「なんっ……だと!?」

防御不能、必殺の一撃を防がれメルツェルは驚きの表情を浮かべる。
しかしそれも一瞬、掴まれた手を振り解こうと横に薙ぐも、それは叶わず。

まるで力を吸い取られたかの様な、いや実際に吸収され、急激な脱力感にたまらず膝を着いた。

(コイツぁ……やべぇ……!!)

431ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/02(水) 09:47:21
【名前間違えてたww

5月末に式やって、9月に出産とバタバタな予感……(笑)
そこはもう草葉の影から飛び出してもらっても良いんですよ?ww
ありがとー!籍入れて2年、今年で27だし丁度良い時期かなーとかとか。

リマさん半年位姿見てないから心配なんよなぁ、生存確認だけでも!

とと、んだらばTwitterのID置いときやすぜ!

@yatuki0509 す!】

432イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/02(水) 23:49:34
やっさん見つけた!
取り合えずフォローしとけば良いのかな?IDはpaのやつです。たぶん絵とか上げるぐらいしか使わないと思うけど…w

え、もう二年も経つんだ!?年が過ぎるの早いなぁ…;しかし本当バタバタなスケジュール(笑)身体には気をつけてください^^

433リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/07(月) 19:28:21
壁|ू・ω・` )
お久しぶりです、リマです
気付けば長らく消息不明な状態に・・・・
就活が延びに延びまくって気づいたら国試間近で勉強に明け暮れてました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

就職先は病院に決まり、国試も一応自己採点上は基準点越えてたんで、マークミスしてない限りは合格出来そうです。
ご心配おかけしました(╥ω╥`)ただね、私の場合マークミスは勿論なんだけど、受験番号書き間違えてたり、名前書き忘れてたりする可能性があるから怖いんだよ・・・・・

この1年は私に依存してた我侭な友達にブチ切れて他の友人に協力してもらって縁切りしたり(向こうはまだ諦めてないみたいだけど)、何となく「これだけは好きになりたくない」と敬遠してた「うたの〇〇さま」のアニメをひょんなことから見ちゃって、とあるキャラに一目惚れしたりと色々ありました|´-`)
一応、何だかんだ元気でした、心配かけちゃってごめんなさい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

そしてヤツキ!パパになるんだね!おめでとう!!
初めて会った(?)のは確かお互い高校生の時だったから・・・・・時の流れとは早いねぇ(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
私の友達も今年2組結婚するんだよ。私なんて彼氏もまだなのに、皆ずるい( ˘• ₃ • )笑

本編の方はぼちぼち書いてるので、近いうちに更新します。
お二人共リマを忘れずにいてくれてありがとう(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

434ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/08(火) 10:41:54
【イスラさんフォロバしましたぜ!フォローありがとうございやす!俺もゲームかプラモかの話しかしてないんで!ww

式から出産の間で車の免許取らないといけないから、ホント忙しそうだ……(苦笑)

ホント月日の流れって早い、イスラとも出会って四年程じゃないかな?

そしてリマきたー!音沙汰無くて心配だったけど、無事(?)で良かった!

試験も就活も、友達関係のいざこざもなんとか終わったみたいで良かった、お疲れ様やでー!試験もきっと大丈夫でしょ、記入漏れもきっと無いはず!

レスの方は急いてもないんで、時間に余裕がある時で良いよー!

とと、ありがとうございやす!まさか俺がパパになるなんてなぁ、って感じだったよ(笑)

確か18の時に出会ったから九年程?ネットの友達って括りには出来ない位の年月よな……!

リマもこれから良い出会いがきっとあるよ、焦らなくて大丈夫大丈夫!

試験受かってしたらお祝いせんとね、マジラブ1000%なら歌えるぜ!←】

435シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/09(水) 22:06:16
【城】

通路の暗がりから姿を見せた騎士の一団。そして剣を掲げる強面の男。
シャムはその銀の剣へ視線を移し、目を眇める。

(あれが例の剣か…)

DDの話し通りなら、一発でも致命傷を喰らえばアウト。
もし戦いになるようなら、今までのような適当な応戦ではなく、細心の注意を払えとのこと。

「めんどくせぇ…、要はやられる前に全部ブッ壊しちまえば良いってことだろ!」

言うが早いか、シャムは向かってきた騎士達を破壊力抜群の剣で横凪ぎに一掃する。
そしてそのままの勢いでリーダー格の男に飛びかかり、兜割りを叩き込む。

「くたばれやァッ!」

…………

(あれは…!?)

メルツェルがフードの男に飛びかかって行ったと思えば、どういう訳か、次に彼は全身の力が抜けたようにその場に項垂れてしまう。

援護に向かっていたDDは、フードの人物に向かってメイスを降り下ろし、与えた一瞬の隙にメルツェルを抱えて後方に退避。

「ちょっとメルちゃん!?しっかりしなさいよ!」

メルツェルを気遣いながらも、追撃に男の周囲の空間を圧縮する。
無数のバスケットボールほどの大きさの空気の膜がビー玉以下にも縮まり、限界まできたところで一気に弾けた。
男を中心に巻き起こる無数の爆発。手応えはしたが果たして通用したかどうか…。

436イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/09(水) 22:09:38
ヤツキ》なんと、車の免許まで(^^;)頑張ってください!

確か自分が二十歳の時にスレに参加したからもう4年所か6年ちかくの付き合いのようなw
知り合いのいない地での初めての一人暮らし、寂しさのあまり掲示板を覗いたのが皆さんに出会うきっかけでした(笑)あの頃が懐かしい…^^


リマ》リマさんおかえりなさい!もちろん忘れるわけないじゃないですか(^ω^)
就職決まったようで良かった!あと試験やら色々お疲れ様です!
そしてとうとう歌プリの餌食になったようで…(笑)誰に一目惚れたんですか?←

437 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:04:22
【過去】

「あ、いたいた」

そんな声が不意に掛かったと思えば、その声の主は何の断りもなく隣に座る。
声の主は誰か、顔を上げ確かめずとも分かる。
その男は気の抜けた伸びをし、これまた気の抜けた笑みを浮かべた。

「いい天気だね。絶好の・・・・・読書日和?」

何故そこで疑問を浮かべるのか。
自分が読書する姿は今となっては珍しくもないだろう。それとも場所が不満なのか。

「学舎の庭で読んではいけない決まりでも?」

決して本から目を離すことはしない、けれど無視するには些か納得のいかない疑問に、とうとう言葉を返してしまった。
俺はまたコイツの流れに乗ってしまったのだ。
返事を得たことに満足したのか、相手からは軽い笑い声が届く。

「いいや、僕も所かまわず読んじゃうから一緒だなぁって思って。」

一緒なものか。コイツと自分は身の上からしてまるで違う。
一流とも言える名門の御曹司と、一族としては名が通っているものの分家の出であり、さして秀でた特色もない家柄の息子。
そもそも、本来コイツ程の身分の者は自身の屋敷に教師を招き学ぶ場合が多いのだが、それをせずわざわざ学舎に通う意味が分からない。
・・・・・もっとも、コイツは端から変わり者だが。
長男でありながら、家系を継ぐ気はないと言う。弟がいるから良いのだと。俺が欲しくて堪らない物を持っているくせに、簡単に手放す。まるで興味がないのだ。

「・・・・・ヨハン?」

読み進めていたはずの手が止まった事を不審に思ったのか、相手から名を呼ばれた。意識が別のところへ飛んでいた。

「・・・・・用がないのなら消えろ。邪魔だ。」

「うわ、直球。酷いなぁ。」

遠回しに言ったところで分かりはしない。しかし、コイツは言葉で示す程傷ついた様子はなく。
ただヘラヘラしたまま座り続けるのだ。

「・・・・・。」

やがてこちらの方が居心地が悪くなる。これがコイツの策略だ。
溜息混じりに本を閉じると、コイツは嬉しそうに手を叩いて見せる。

「やった!遊ぼう、ヨハン」

「子供か、お前は・・・・・」

「今日は街に出たい気分なんだ」

「・・・・・午後の講義は?」

「そんなの、受ける必要なんてないよ。君も受けなくて大丈夫でしょ?」

無論。此処での学びの内容はレベルが低すぎる。こちらがそう感じるのだから、コイツにとっては尚更だろう。
問題はそこではないのだ。
俺は本家に認められる必要がある。
母を日陰に追いやり、俺の存在を消し去った一族を見返すために。
本家には跡取りが居らず、娘が一人。好都合だ。娘はまだ幼いが、成人するまでに親の目に留まれば婿の座に収まることも夢ではない。さすれば、一族の頂点に立つことも出来る。
その為には学を積み・・・・・素行の悪さなどもってのほかだ。

「断る。」

「気分転換だと思って!」

「必要ない。」

「そう言わずに!」

「消えろ。」

「まぁまぁ。」

438 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:04:58


埒があかない。その場を離れようとすると、相手は慌てた様子で止めてきた。

「うそうそ!サボリじゃないよ!許可は貰ってるから!」

「は?」

「先生から用事を預かってるんだ。まぁ別に済ますのは僕じゃなくてもいいんだけど、折角だから引き受けてきたんだ。君も一緒でいいって。」

「・・・・・。」

コイツは本当に・・・・・。
端的に事実のみを伝えれば良いものを、回りくどいやり方をする。
人を馬鹿にしたような態度が気に入らない。

「ついでに散策もしよう。街に移動サーカス団が来てるらしいんたけど、見に行く?」

「興味ない」

「OK、じゃあ古書店に行こう」

「サーカスからの繋がりが見えない」

「前にヨハンが話してた本、店のおじさんに聞いたら探してくれたんだ。絶版だから手に入らないって言ってたじゃない?あぁ言うのって街の方が入手しやすいんだよ。」

「サーカス発言は何処に・・・・・」

「寄り道出来れば何処でもいいんだ。さ、行こう?」

結局いつもの流れだ。多くの案を出すものの、最後は俺の返事も聞かずに連れ出そうとする。

「そんな怖い顔しないでよ。」

俺がどんな態度を取ろうとも動じない、余裕そうな笑顔がいけ好かない。
コイツには気に入らない事ばかりだ。

ただ、

「・・・・・その本が無くなっていたら承知しないぞ。」

「大丈夫、売らないでってお願いしてあるから。」

何もかも気に入らないのに、決して嫌いではないのだ。
俺はそんな自分自身の気持ちが、更に気に入らなかった。

439ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:05:45
【過去】>>394

アブセルはまだ幼く、純粋だ。
リトの置かれている状況など理解出来るわけはなく、自分の選択が正しいと疑わない。
とても特殊で、本来ならば有り得ない、あってはならない状況であるため尚更理解することは難しいだろう。

「ごめんな・・・・・」

結局、上手い言葉が見つからずナディアは謝罪の言葉を述べるしかなかった。
アブセルの頭を撫で、身をかがめて視線を合わせてやる。

「お前がどんなに頑張ってくれても、今はまだ、リトが外に出るのは難しいんだ。リトが自分から出たわけじゃなくても、あの人(父)はリトを叱るんだよ。お前の気持ちは分かるし、嬉しく思うけど、リトの為にも今は我慢して欲しい。」

自分でも理不尽な事を言っている自覚はある。
この状況に納得がいかないのは自分も同じだ。このまま終わらせる気は無い。しかし、事を起こすにはまだ早い。
ポセイドン邸での最高権力者は母であるが、彼女が心を病んでしまった今、実権を握っているのは父なのだ。いずれ一族の主導権は長子でる自分に引き継がれるが、それは「何の問題も起きなかった」場合。父に睨まれ、敵と見なされれば自分は後継者から外されるだろう。だから今のうちは逆らうことは出来ない。

「なぁ、アブセル」

ただ、そのせいでリトは孤独なのだ。
護ってやらなければいけないのに、根底では父に逆らうことが出来ないから。

「お前は、何があってもリトの味方でいて。リトを護ってやって。いつか、リトをこんなクソみたいな環境から開放する。そん時は、お前が率先してリトを助けるんだ。その為に、あんたには強くなって欲しい。爺の孫なんだろ?お前は知らないだろうけど、お前の祖父さんは凄い人だよ。一族や関係者含め闇の能力持ってる奴の中で今一番強いのはあんたの祖父さんなんだからね。お前はその才能を持ってる。」

きっと、味方であれば、リトにとって最強の剣になるだろう。

「お前が父さんに睨まれないよう、私がフォローしないとね。頼りにしてるよ、アブセル。」

440リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/10(木) 00:29:51
ヤツキ>>
【いやぁ、ほんと申し訳ない(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

うん、合格信じて3月中は羽伸ばすんだ!

ありがとう、ぼちぼち更新します(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

月日の流れを感じたよ(∩´ω`∩)
私の周りら今は結婚ラッシュだけど、次は出産ラッシュが来るんだろうなぁ・・・・・

9年!長いなぁ(笑)
ネットの友達がここまで長い付き合いになるのは凄い!

うん、焦らず頑張る(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
とりま就職先で出会い探すんだヽ(•̀ω•́ )ゝ
つか、大学内でも実は出会ってたっぽいんだけど、私が鈍すぎて気付かなかったって事がつい最近判明して戦慄(笑)
何年もやたら絡んできてた先輩がいたんだけど、友達いない可哀想な人だと思い込んでた(笑)残念(笑)

おー!歌えるんだ!凄い!!
是非とも歌ってもらいたい(笑)】


イスラ>>
【ただいまです!ご心配おかけしました(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
ありがとうございます(ˊᗜˋ*)

友人があの作品は沼だと言ってました(笑)
さぁ、問題です。誰だと思いますか?(笑)
まさかあんな刺客が用意されていたとは・・・・・←
アニメで言うと2000%からそれなりに登場してるかな??キャラクター分かりますかね?
第一印象は「性格がアイドルっぽくない、親の借金の肩代わりに売られたのかな?」でした←】

441アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/13(日) 22:44:08
【過去】

アブセルにとって母は"世界"だった。母だけが自分の味方であり、母だけが自分を愛してくれていた。
だがその母がいなくなった時、アブセルの世界は足元から崩れ落ちた。
それは虚無の中に一人放り出された気分であり、その感覚はこの屋敷に来てからも変わることはなかった。

しかし今、アブセルはその虚無の中に一つの光を見つけた様に思った。

自分を必要としてくれている人がここにいる。
母さえも忌み嫌った闇の力を、ナディアは肯定してくれた。
初めて、そのままの自分の存在を受け止めて貰った様な気がした。

凄く嬉しかった。
けれどアブセルはその感情をナディアに伝える術が分からず、ただ、「分かった」と頷いた。


その後はヨハンに謝りに行く前に、鬼の形相をした祖父に捕まった。早々に別館にあたる使用人用宿舎の自室に追いやられ、
もう二度と馬鹿な真似はするな、ともの凄く叱られた。
そうして、暫くここで頭を冷やせと部屋に鍵をかけられたかと思えば、祖父は忙しなく何処かへ行ってしまった。

何らかの罰を覚悟したが、驚くことに、結局その日アブセルはお咎めらしいお咎めを受けることはなかった。
それなら全ての責任をリトが被ってしまったのだろうか。ずっと部屋に閉じ込められていたアブセルには、その後の経過は分からなかった。
ただリトが心配で夜もまともに寝付けなかった。

………

翌日、謹慎を解かれたアブセルはリトの部屋を訪れた。祖父には暫くリトに会いに行くなと言われたが、そんなのきいちゃいられない。

今日は昨日のお詫びにと手土産も持ってきた。
四つ葉のクローバーだ。しかも一つや二つではない。
両手で掴めるぐらい沢山摘んできた。

以前、四つ葉のクローバーは幸せを運んでくるという話を聞き、朝早くから頑張って探してきたのだ。
これだけあると有り難みも半減してしまいそうだが、アブセルは気にしていない。

部屋の扉にそっと手をかけると、そろそろと部屋の中を覗き込んだ。

442アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/13(日) 22:45:43
リマ>沼wハマったら抜け出せない的な?w
聞いといてなんですが、キャラクターほぼほぼ分からないです(笑)

でも調べた限りでは黒崎蘭丸ってのが、それっぽいけど…勝手ながら外見は「あれ!?何かリマさんにしては意外な感じ!」って思いましたw
どうでしょう?あってます?

そしてヨハンとトーマの過去話し、待ってました!└(゜∀゜ )┘←

443メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/14(月) 21:44:52
【群青の街】

剣の一振りで騎士達を薙払い、強烈な兜割りを繰り出すシャム。
その一撃を疵面の男は銀の剣で受け止め、一瞬の停滞の後に剣を横薙に。

そう短く無い距離だが、シャムを弾き飛ばし、剣の間合いを確保したと同時に剣による連続突きを放った。
それはさながら驟雨の如く、シャムの視界を埋め尽くさんとばかりに打ち込まれていく。

その様子を横目に、メイヤは襲い来る騎士達を相手に巨大な手裏剣を、刃を振い続ける。
だが、如何せん数が多い。

昨夜に比べれば頭数は少ないものの、一人で捌くのは中々厳しい所だ。

(アグル達はまだなのか……!?)

ーーーーー

空間圧縮からの無数の爆発。
直撃すれば相手は文字通り木っ端微塵になる筈だが……

(そう簡単にはいかねぇか……)

DDに助けられたメルツェルは、離れた位置で爆発を眺める。
しかし、予想通り敵は無傷で現れ、その様子にメルツェルは舌打ちを一つ。

「クソが、本気の本気でやるしかねーじゃねぇか……!」

青白い顔で立ち上がり、自身に宿る力……呪いにも似た、長老だけが持つ力を解放させる。

「全てを融解させる赤熱と紫毒、魅せてやるよ。

冥途の土産になァ……」

解呪の言葉は僅か一瞬。
超高温の熱気と毒素を撒き散らしながら、黄金にも漆黒にも見える鎧に身を包み、メルツェルは咆哮を上げた。

そして、先程までの弱った姿からは想像も出来ないスピードで敵との距離を詰め、鋭く伸びた赤熱する爪を一閃、二閃。

赤色の残光に添って大気が燃え上がり、崩壊しつつある広間内を一気に猛火が包み込む。
謎の人物はメルツェルの攻撃を寸の所で避けたものの、熱波でフード諸共外套が燃え尽きた様だ。

炎の朱に照らされる銀髪の下、幼く見える相貌は中性的で、見る者が見れば息を呑むだろう。
しかし、今のメルツェルには関係無い。

臀部から伸びる尾の先、鋭い毒針と両肩に生えた巨大な螯鋏で周囲の騎士達を皆殺しにしつつ、謎の人物……吸血鬼の姫であるノワールと同じ顔をした敵へ烈火の如く攻撃を叩き込んでいく。

その姿は、まるで怒りに燃える蠍だろうか。

「死、に、さ、ら、せえぇぇぇえ!」

444リマ、ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/03/17(木) 01:44:26
【ポセイドン邸】
>>398

「とても、不思議な感じ。」

アブセルから話があると言われついてきたものの、何故かお茶会の席となった。
正直セナ達のことが気になってお茶を楽しむ余裕などないのだが、何処か落ち着かない気持ちでいたリマはアブセルからの問いに虚をつかれた表情を浮かべる。
大事な話があるのかと思っていたが、彼の口から出たのは申し訳ないがこちらからしてみればとても囁かな疑問だった。
が、隣で眉間の皺を深くするノワールから唯ならぬ気配を感じ、場を取りなそうとリマは言葉を返した。

「そっくりだから、セィちゃんの血を引いてるんだなぁって一目で分かるの。そんなリッちゃんは私にも関係してるんだなぁって思うと、とても不思議。」

そして、とても嬉しい。セナは自分を大切にしてくれるが、それでも二人の間にはたしかな溝がある、そう感じることがリマにはあった。セナの生い立ちを考えれば仕方の無いことだが、セナは幼い頃の印象とは違い、心を閉ざしてしまっている。リマにとってリトの存在は大きかった。いずれセナとの絆が完全に戻る日が来るのだと分かったから。・・・・・少し恥ずかしいけれど。

穏やかな笑みを浮かべるリマのそんな心情を察してか、対するノワールはその眉間の皺を更に深くする。

そんな中「お前は?」とアブセルに促され、ノワールはリマに向いて意識を無理やり引き戻される形で、何故自分も応える必要があるのかと不満そうな態度を示しながらも口を開いた。

「愚問よの。」

正直、初めてその存在を知った時には快さは感じなかった。自分に対して全くの感情を示さず、単なる務めとして扱っていた男が、望んで得た血筋があるのだと知ったから。自尊心が台無しである。
しかしリトは封印を解き自分を開放した云わば恩人であるし、自分を欺いた、かの組織との直接の繋がりもない。セナの血筋であることを除けば、リトに何ら不満はない。潜在的な闇の力も惹かれるところがあり、その力を秘めた血の味は上質で価値がある。

「不本意ではあるが、わらわの本来の力はリトに制されているからの。リトはわらわの主であるぞ、嫌う理由もない。して小僧、わらわと娘にリトへの情を問いかけることに何の意味がある?」

先程までの不機嫌さは何処へ行ったのか、ノワールは意地の悪い笑みを浮かべたかと思えばアブセルに疑問を返す。
ノワールはアブセルが自分達を連れ出した事に何ら意味は込められていないことに気づいていた。現ポセイドンがこちらを気にしてアブセルに何かを吹き込んでいたのを知っている。さしずめ、セナを連れ出すことに自分達の存在は不都合があったのだろう。
時間を稼ぎたいのなら、協力してやろうではないか。もっとも、自分が楽しめる方向でな。

「寧ろ問うべきは己の胸のうちではないか?リトは今や無機質な人形。あような姿にしたのは、そなたじゃ。そなたがあやつを裏切ったばかりに・・・・・無様よの。」

445リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/17(木) 02:05:42
イスラ>>

抜け出せない、プラスお金が際限なく剥ぎ取られる的な意味で(*゚∀゚)

ぶぶー(≧ε≦)
実は、第一印象はあくまでイメージなので、実際の設定は全く関係ありませんでした(笑)
たしかに、蘭丸って没落貴族だから設定上ではビンゴでしたね、気づきませんでした|ू・ω・` )

自分の一目惚れしたキャラは藍って子ですヾ(●´∇`●)ノ
顔はバリバリのアイドルですけど、性格素っ気ないですし、電波ですし、アイドルやりたくてやってる感まるでないから親に無理矢理業界入れられたのかなと思ったんですよね(笑)

この子、なんて言うかとんでもなく可愛いんです。同じグループにいる嶺二を鬱陶しそうに扱って「煩い」「邪魔」「黙って」とか言うくせに、そう言う割にはいつも一緒にいるし、何だかんだ嶺二の発言にちゃんと反応示すし、他のメンバーが嶺二の事無視してる中でも藍ちゃんだけは返答するしで、何だかんだ嶺二に懐いてる感じがたまらなくいじらしいと言いますか(*´﹃`*)「何だよ、嶺ちゃんの事大好きじゃん!」って(●´ω`●)
んで、この藍ちゃん。喋ってる時は普通に男の子なんですが、歌声が物凄く可愛いんです!そのギャップが更にいい!!
声優さん男性なんですけどね、女の子みたいな声で歌うんですよー(*/ω\*)

あれ、待っててくれたんですか(笑)
ヨハンとトーマの話なんて単なる自己満ですし、サイドストーリーも甚だしいのに(笑)

446シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 13:42:55
【城】

連続突きによる猛攻が視界を埋め尽くす。
シャムはその一つ一つを剣で捌いていくも、相手の勢いにじりじりと後ろに押されていく。

(クッソやりづれぇ…!いつもならブスッとやらせてドーンで終いなのによォ…!)

肉を斬らせて骨を断つ。それがいつものシャムのやり方。
しかし今回ばかりはどうしようもない。細かい裂傷はもはや目を瞑るしかないが、致命傷だけは何としても避けなければならないのだから。

最終的にじり貧も覚悟したそんな時、不意に敵側の後方から火の手が上がった。
それは数人の騎士達に燃え移り、火柱をつくる。

「悪い、遅くなった!」

イスラ達だ。
取り上げられていた武器を見つけ出し、今ようやく駆けつけたようだ。


…………

その相貌。フードの下から覗いたそれを見て、DDは目を見張った。

「メルちゃんっ!待ちなさい!」

そして…。
咄嗟にその場から空間跳躍をしたDDは、敵を庇う形で二人の間に割り込んだ。

メルツェルの尾が肩を掠め、螯が身体に食い込む。
肉が焦げ、傷口から流れ出た血は一瞬にして蒸発した。
恐らく吸血鬼にとってしても致命的なダメージであったろう。それでも彼は辛うじて立っていた。

「……誰、なの…?」

不意に血塗れの口から切れ切れと言葉が発せられる。
その問いは、例の謎の人物に向けて投げかけられていた。

「なぜ…姫と同じ顔をしているの?」

そこまで言って、DDは堪えきれずに地面に崩折れた。

447メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/20(日) 18:55:39
【群青の街】

臆病の殻を融解させ顔を覗かせるは、赤熱と紫毒に染まる狂気。
今のメルツェルには、視界に映るモノ全てが敵に見えるだろう。

「長老が長老と呼ばれる由縁、長老だけが持つ12の鍵……黄金の蠍。

その力、返しても「うるせぇよ、死ね」

それはノワールと同じ顔を持つ人物が現れても、その人物をDDが庇い、倒れたとしても変わらない。
崩れ落ちたDDを一瞥する事も無く、メルツェルは謎の人物へ再び攻撃を叩き込んで行く。

「もう止めるヤツぁ居ねぇ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

尾の一振りは紫毒を撒き散らし、螯鋏は赤熱の炎を燃え上がらせた。

ーーーーー

不意に上がる炎と響く仲間の声に、メイヤは小さく安堵の息を吐いた。
それと同時に、疵面の男へと手裏剣を投擲。

連打を防ぐべく飛来するソレは、メイヤの思惑通りに疵面の男とシャムの間に割って入った。
その間を逃さず、イスラと共に現れたバッハが疾走。

その巨体からは想像出来ない程の速度で廊下を駆け抜け、跳躍。
疵面の男へと拳を振りかざし、落下と同時にその拳を男へ叩き付けた。

その一撃はまるで隕石の落下の如く。
剣の腹で拳を受け止めた疵面の男の足元が大きく陥没する。

「……まさか吸血鬼と肩を並べる事になるとは思いませんでしたが、宿敵と言っても過言では無い相手が居ますので。」

疵面の男の薙払いをバック宙で回避し、シャムの隣に着地したバッハは、低い声でそう言った。

「私が壁になりましょう、後は分かりますね?」

そして、シャムの返事を待たずに再び跳躍からの叩き付けを放ち、無駄の無いコンパクトな動きで掌打を、肘鉄を、蹴りを繰り出して行く。

それを見、メイヤは声を挙げる。

「イスラ!アグル!雑魚を片そう!」

ーーーーー

腕の一振りは炎を、尾の一刺しは猛毒を。
狂気に染まるメルツェルの攻撃は破壊の渦を巻き起こし、城、眷属諸々を粉砕して行く。

その渦中、絶対零度の結界を張ったフィアはDDを介抱していた。
ノワールと同じ顔、そしてその口から出た言葉の意味。

それらを繋ぐ単語、それは……

「……DD、生きてる?」

448アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 21:13:01
【ポセイドン邸】

「それは分かってる。俺が馬鹿だったんだ」

二人にリトへの情を尋ねた理由はあった。
いや、正確にはたった今、"理由が出来た"。

アブセルはノワールの言葉に対し、僅かに表情を沈ませて言った。

「俺、お前らに嫉妬してた。
ちょっとだってリトが他の奴のこと気にかけるのが気に入らなかった。
リトのこと取られた気がして、それが悔しくて、だから他人に対していつも邪険な態度ばかり取ってた」

悪かったと思ってる。とアブセルは続けた。

「お嬢と話して気づいたよ。
いつもリトのこと"大好き"とか、"大切"とか言ってるくせに、俺って結局自分のことしか考えてなかったんだって。
一方的に自分の気持ちばかり押し付けて、リトの気持ちは全く分かってあげようとしなかった。
…それで友達面してんだもん。死にたいぐらい恥ずかしくなったよ」

ずっとリトの味方でいたつもりだった。
でもそうじゃなかった。結局自分も彼を虐げていた、大嫌いな屋敷の大人達と変わらなかった。
本当の友人なら、リトに屋敷の中以外での繋がりが出来た時、喜んであげるべきだったのだ。

「リトが目覚めてくれるなら、何だってやる。
そんで、もう二度とあいつのこと傷つけたりしない」

目覚めた彼が、まだ自分を側にいさせてくれるかは分からないけど。

そこで不意にアブセルは言葉を切った。リマとノワールを見つめ、そして頭を下げた。

「良かったら二人も力になって欲しい。俺の力が及ばない時は、二人がリトのこと支えてあげて欲しい」

今更になって調子の良いことを言っているのは分かっている。
でも彼女達なら、リトのことを親しんでくれている二人なら、彼を任せられる。

449アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/20(日) 21:28:31
リマ>お金まで絡んでくるとは恐ろしい…w

違ったか〜、でもその子なら納得です(笑)人気がありそうな容姿をしてらっしゃる
ちょっとキャラソン聞いてみましたが声優さん声高いですね、すごい!(>.<)
でも実はロボットって書いてあるんですが…w

サイドストーリー大好きですから(笑)
ヨハン達ってこういう性格でこういう関係性なのか…
、って楽しく読ませていただいています^^

自分もだいぶ前にヨハン母と爺やのラブストーリー書くとか言っといて全然書いてないなー…
ぼちぼち考えてはいるんてすが、どうもしっくりこなくて…(^-^;

450ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/03/20(日) 22:07:53
【イスラとは6年、リマとは9年の付き合いになるとか驚愕の表情を浮かべざるを得ない!ww

つかこのお話も前作?含めて6年経つのか……スゲェなぁ、しみじみ思うね!

てんでバラバラな所に住んでるけど、スレが無事完結したお祝い兼ねて会ってみたいな、マジラブ歌わねーといけないしさ!(笑)

きっとそんな日が来る頃にはリマもばっちし良い彼氏ゲットしてる筈!】

451リト、ヨノ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/25(金) 18:48:22
【ポセイドン邸/過去】

リトは部屋の中で床に膝をつきうつ伏せで何かをしていた。
その対面では彼の2番目の姉であるヨノが楽しそうにその手元を見ている。
リトの手元、ヨノの視線の先にはスケッチブックのような物が。どうやら絵を描いているらしい。

昨日はあれ程の騒ぎがあったにも拘らず、いつもなら罰と称してリトに暴力を奮うヨハンは何の行動も起こさなかった。リトを連れ帰ってきてくれたトーマがヨハンを伴って行くのを見たが、二人の間に何の会話が交わされたかは分からない。しかしきっと、トーマが何かしら動いてくれたのだろう。

(おじ様はお優しい方だから・・・・・)

トーマが来てくれて良かった。リトとアブセルが二人だけで帰ってきていたら、きっと二人とも無事で済まされなかった。

「リトくん、何を描いているの?」

ヨノは自分の中に浮かんだ「起きていたかもしれない恐ろしい事態」を頭から消し去ろうと、意識をリトに戻す。
問いかけても返事はくれない。いつもの事だ。
ヨノは苦笑いしながらリトの頭を撫で、そしてふとドアの方に気配を感じて顔を上げた。そこにいる人物、アブセルの姿を見つけるや優しく目を細める。

「アブセルちゃん、おいで。」

452シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/27(日) 00:48:06
【城】

助っ人に現れたイスラとアグルはメイヤの指示通りに下っ端の相手を。そしてバッハは疵面の男に拳を向ける。

「…けっ、わかんねーッつの」

シャムは余計なお世話とも言いたそうに顔をしかめるも、接近戦では不利な筈の、しかし扱い慣れた遠距離型の武装へと腕を変形させる。

見えるは巨大な砲身。
重々しい音と共に腕を構え、こちらに背を向けて戦うバッハの背中に照準を合わせる。

「…………」

そして、砲口から高出力のレーザー光線が照射される。
普段のシャムならバッハ諸とも敵を撃破しようとするだろう。しかし照射された光線は、バッハの脇を掠め敵のみに撃ち込まれた。

二人の動きを先読みしたシャムが、ご親切にもバッハが軌道から外れた際を狙ったのか、はたまたただの偶然か、気まぐれか。月並みだが、真実は本人のみぞ知る、である。


…………

「…ええ、なんとかね…」

短い失神から目覚めると、そこにはこちらの顔を覗き込むフィアの姿があった。
DDは彼女に礼を言って上半身だけを起こすと、再生する傷口に手を触れた。

(メルちゃんったら…、随分容赦なくやってくれたじゃない…)

今、彼の全身には金色のタトゥーが浮かび上がっていた。
これは今まで他者から吸い取ったエナジーを元に、己の身体能力と治癒力を極限まで底上げした証。正直、これがなければ危なかった。

「て言うか…、この状況はどういうことなの?訳が分からないわ…」

オリジン。
その単語が脳裏に浮かぶ。

「その人、てっきりアタシは死んだとばかり思っていたんだけど…」

453シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/03/27(日) 00:52:31
ヤツキ>ほんと、スレが賑わってたあの頃が懐かしい…^^
しかし完結した頃には一体何歳になっているんだろうか…(笑)
じゃあ自分もその時に備えてマジラブ歌えるように練習しとこうw

454ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 01:59:27
【ポセイドン邸】

母はやはりセナとリトの見分けを付けることが出来なかった。
ただでさえ父を亡くし錯乱している彼女の前に「リト」を突き出すべきでない事は分かっていたが、葬儀で鉢合わせることになる以上、仕方が無かった。

セナはふと自身の頬を指でなぞる。血が滲んでいた。「リト」に怯えた母が手当り次第物を投げつけたため、うち一つが掠ったようだ。

「・・・・・驚いただろう?」

ナディアは気遣わしげにセナを見る。
セナは特に気にしていないようだが、とても申し訳ない。
傷を治してやろうと手を伸ばすも、必要ないとばかりに逸らされてしまった。

「リマは?」

そして遮るようにリマの行方を聞かれる。

「ん?リマならアブセルが庭に連れていったみたいだけど。」

ナディアが庭の行き方を教えるとセナはすぐにそちらへ向かってしまった。何だろう、迷惑かけてる立場である以上こんな感覚を持つことは間違っていると思うが、こっちが折角心配してるのに無視されると何か腹立つ。

しかし彼のそんな態度にも慣れてきた。やれやれと言った具合に後を追うべく歩き出した所、自分の方は母の部屋から出てきたヨノに呼び止められた。

「お姉さま、あの・・・・・」

「ごめん、母さん落ち着いた?」

「えぇ、なんとか。あの、お姉さま・・・・・」

ヨノは何か言いたけだった。しかし言って良いものかと言い淀む仕草。どうやら、母親の件とは別に用があるらしい。

「言ってみ?」

「あの、昨晩・・・・・ジルが来たんです。」

ジル?誰だっけ?

「ほら、お父様のご友人のトーマおじ様がよく連れていらしたご子息の・・・・・」

言われてぼんやりと思い出した。たしかにそんな子がいた気がする。妙に口が達者で、自分も下手すりゃ言い負かされそうになるくらい頭の回転が早い小生意気な餓鬼が。
両親が事故にあい、一時は妹と共に父方の親戚に引き取られたが、その後その兄妹は行方不明になったと聞いた。当時何だか不可解に感じてはいたものの、こっちの事情で手一杯ですっかり忘れていた。

ところでジルと言う名前、最近何処かで聞いたことがある。気のせいだろうか。

455リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 02:00:05


----------------

「もちろん!」

アブセルの申し出にリマは快く頷いて見せた。

「私に出来ることなら何でもするよ。大丈夫、アブくんの気持ち、きっとリッちゃんも分かってる。リッちゃんが早く目覚めるよう、一緒に頑張ろうね?」

一体何を頑張るのかは不明だが、リマはそう言ってアブセルを励ます。アブセルの手を両手で包みながら「ね、ノワールちゃん」などと同意を求められても困るのだが、悪意のない笑顔に返す言葉もなく、ノワールは居心地の悪そうに目を逸らした。あからさまに拒否をしないと言うことは、ノワールも少なからず協力する気ではあるようだ。

「リマ。」

ちょうど良いタイミングで、別行動をとっていたセナがリマ達のもとへやって来る。アブセルの手を握っていたリマの手をセナが自身の手で絡め取ると、リマは嬉しそうに握り返した。

「セぃちゃんおかえり」

此処はリマの言えでもなければ、別行動に至った始点でもない。よってリマから発せられた言葉は些か不適切であるように思うのだが、セナは何の疑問も持たず「ただいま」などと言葉を返している。

「セぃちゃん、リッちゃんのお母さんはどうだった?」

言ったところで、リマはセナの頬にある傷に気付く。

「セぃちゃん、怪我してる・・・・・」

どうして?リマはそっとその傷に触れる。
リマはミレリアの状態を知らない。リトを忌むように術をかけられてしまっていることは先程知ったが、それがどのような事態を招いているかまでは理解出来ていないのだ。しかし、無理に知る必要もないと思う。セナはリマの問いに答える代わりに「心配するな」と笑みを返した。

「あの娘(リト母)・・・・・」

一方、1度ミレリアに会ったことのあるノワールは察した。
我が子を認識出来ないばかりか、危害を加えるほどとは・・・・・。

「あーいたいた!」

そこへ、ナディアが遅れてやって来る。
セナの傷を気にするリマにヒヤリとしたものの、その様子からは大事にはならなそうだと判断しそのままアブセルに声をかけた。

「おうアブセル、女の子に囲まれたお茶会は満喫出来たか?」

456リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/03/28(月) 17:01:51
結果発表、自分の受験番号見つけました(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

イスラ>>
本当、いい商売してますよね|ू・ω・` )イベントごとに限定イラスト出すもんだから沼にハマったら破産しますよwww

藍ちゃんは世のお姉さま達に人気があるイメージです(๑ÒωÓ๑)
実際人気ありまくりでヤフオクでグッズ競り落すの大変なんです( •́ .̫ •̀ )付録で付くようなブロマイドでさえ千円以上の値がつきますからね(´・×・`)
私は顔と歌声と性格にポロッと来ちゃいました(๑ÒωÓ๑)たまたまCD買った時に付いてきたカード財布の中に入れっぱで忘れていたところ、研究室の友人が私の財布弄って見つけてしまい、以来藍ちゃん好きとしてからかわれるように(´・×・`)国試前に貰ったキットカットには「受かって稼いで藍ちゃん買うんだ!」って落書きされてました( •́ .̫ •̀ )
藍ちゃんはソングロボットです(๑ÒωÓ๑)ボカロと似たようなもんですねwww
まぁロボットだろうが可愛ければ問題ないのです(๑ÒωÓ๑)

あー、自分もサイドストーリー好きです(笑)
なんかヨハンの若い頃書いてると、何だかんだ性格がリトに似てるなぁって思えてきます(笑)

ラブストーリー楽しみにしてます(*´﹃`*)構想は浮かんでるのにイマイチしっくり来ないってことありまふよね|ू・ω・` )


ヤツキ>>
ほんと長いね!物語もここまで続くとか本当感動!

マジラブひっぱるねwww

彼氏ゲットせな!取り敢えず同期に期待したんだけど皆女の子だった(笑)

457メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/03/28(月) 22:38:23
【群青の街】

その一撃は、言動共に粗暴に見えるシャムからは想像も出来ない程の精密さで、放たれた。
タイミングを合わせたのか、はたまた偶然なのかは分からない。

しかし、針の穴を通すかの様な光線は、確かに疵面の男の胸を貫いた。
白磁の鎧が砕け、仰向けに倒れる男。

「……呆気なかったな、最後は。」

アグル、イスラの二人との連携は思った以上に上手くいき、苦戦したのが嘘かの様に騎士達を倒したメイヤは、刃に付いた血糊を払いながら呟いた。
考えるのは、倒すべき吸血鬼との共闘を終え、本来の目的である吸血鬼討伐に取り掛かるかどうか。

……答えは、否だ。
騎士達とそれを率いる男は倒れ、戦うならば四対一と此方が圧倒的に有利だろう。

しかし、今日は此処に来た最重要目的はイスラとバッハの救出だ。
少なからず消耗している今、無理に戦う必要性は無い。

そう、自らの中で理由を付けてメイヤは武器を収納する。

「なん、だ……!?」

その時だった。
城が大きく揺れ、破壊音が轟き響いたのは。

音と共に揺れは増し、頑強な筈の石畳が、積層壁が割れ、廊下は崩落の兆しを見せた。

「拙いですね、急いで脱出しましょう!」

地下にあるこの廊下が崩れれば、全員生き埋めになるだろう。
バッハの声にメイヤは素早く駆け出そうとし……思わぬ不意打ち、空間歪曲を利用した衝撃波によって吹き飛んだ。

「……まだ、終わりではないぞ?」

床に叩きつけられ、痛みに顔をしかめるメイヤは、進行方向、出口へと繋がる方へ視線を向ける。

「吸血鬼の長と戦うには、人の身では力不足でな……

毒を持って毒を制す、吸血鬼の血肉を取り込んだこの身は既に人ではないのだ……」

そこには、シャムの砲撃により倒れた、疵面の男が立っていた。
貫かれた筈の胸元は血に濡れているものの、傷口は塞がり。

黒の瞳は爛々と赤く輝き、口元には牙が覗く。
更に、その背には蝙蝠の翼が二対。

「本気を、出させてもらおう……!」

滅するべき吸血鬼の力を宿し、疵面の男は一行へと再び立ちふさがった。

458フィア ◆.q9WieYUok:2016/03/28(月) 22:45:04

ーーーーー

「死んだんじゃない、生きてなかっただけ……」

呼び掛けに応じ、上半身を起こしたDD。
彼女、もとい彼の無事を確認し、フィアはホッと安堵の息を吐く。

身体に浮かぶ黄金の模様、彼の秘策と言っても過言では無さそうな術式を見るのは長らく振りだ。
しかし、それは紛れも無い回復の証し。

「何故ノワールと同じ顔をしているのか、それは至極簡単よ。」

結界内部から、外の激しい戦いを瞳で追いながら、フィアは続ける。

「思い出してみて、私達が生まれ落ちた時の事を……」

記憶の奥底、遥か昔の事。
自分が自分である事を認識した、あの時。

「私達はオリジンを見た事が無い。

何故なら、私達はオリジンと言う存在を12分割して生まれたから……」

そう、あの時。
朧気な記憶に浮かぶのは、幼き12人の姿。

「オリジンを12分割して生まれた私達が、それぞれ血と肉と魂を寄り合わせて生んだのが吸血鬼の姫、ノワール。」

考えてみれば簡単な事だ。
ノワールとオリジン、それは限り無く近い存在なのだ。

「私達と言う血肉を失った器がオリジン、そのオリジンが血肉である私達を取り込もうとしている……つまりはそう言う事。」

思い出せば、自分を含めた幼き12人の中にジーナの姿は無かった。
しかし、彼女の魂の波長は紛う事無く自分と同じ長老だけが持つ独特の波長だ。

だが、今はそれを問い出す時では無い。
元々在ったモノを取り戻す事は決して間違えではないが、はい、わかりましたと首を縦に振る自分達ではない。

「私の命は私のモノ、そう易々と渡しはしない。」

メルツェルが放つ極大の火球が城を飲み込み、猛火が燃え盛る中、フィアは立ち上がる。

「相性は最悪だし、鬱陶しい奴だけど……メルツェルを援護するわ。」

そして、結界の中にDDを残して空間を跳躍。
メルツェルと同じく黄金にも漆黒にも見える鎧、12の鍵の一つ、黄金の水瓶の力を権限させ、謎の人物……オリジンの背後に現れた。

それと同時に、メルツェルは再び極大の火球を。
それに合わせてフィアは絶対零度の凍気の嵐を巻き起こす。

相反する二人の力は互いに打ち消し合う事無く相乗し、オリジンを中心に凄まじい大爆発を起こした。

轟音と閃光は止まず、灼熱の熱風と極寒の吹雪が吹き荒れ、メルツェルの居城は秒刻みで破壊されていく。

そして。
一瞬にも永遠にも思える破壊の嵐が止んだ後。

メルツェルとフィアの視線の先に浮かぶのは……

「……ケッ、あれでまだ死んでねーとはな……」

身体の七割程を失いながらも、宙に浮かぶオリジンの姿だった。

「……流石、ね。」

459リト ◆wxoyo3TVQU:2016/03/31(木) 12:36:32
【???】

正直、自分の今の状況が未だ分からない。
リトは戸惑いながら自分の膝の上に視線を落とす。

「・・・・・・・・・・。」

何故、

「お花!」

自分へと差し出される一輪の花。
リトがそれを受け取ると、先程から断りもなくずっと人様の膝の上を陣取っている幼児が嬉しそうに笑う。

自分は何故、見ず知らずの子供のお守りをしているのか。

「ジタン。」

どうでも良いが、そろそろ膝が限界である。
そんな頃、漸く子供の保護者が姿を現した。

「おいで、お客さまに面倒をかけちゃ駄目。」

保護者は子供を抱き上げてそのままリトの隣に腰掛ける。そして保護者・・・・・リトと同じ年頃と思しき少年は、軽く謝罪の意を述べた。

「・・・・あんた、アンヘルだっけ?」

戸惑いはしていたものの、特に迷惑をかけられていたわけでもない。
謝罪を軽く流したリトは、手遊びを始めた幼児を横目に見ながら少年に問う。

「ここが特殊な所だってのは理解した。けど、あんた達は地上に自由に出られるんだろ?あんたとは前にも会ったはず。」

「そうですね。」

「じゃあさ、あんた達と同じようにすれば俺も戻れるんじゃないの?」

リトはヨハンに連れられ謎の穴に落とされた。そこまでの記憶はある。しかし、その後気づけば「この場所」にいた。
場所と言うよりは世界と言うべきか。ここは自分が当たり前に生きていた世界とは別物らしい。なんともキテレツな話ではあるが、長い時を経て眠らされていた吸血鬼がいたり、その吸血鬼の故郷である世界に飛ばされたり、しまいには先祖なる存在が現れたりなど、最近意味の分からない出来事が多すぎて感覚が麻痺してきているようだ。不思議と受け入れられる。
落とされた穴の中で、闇に飲まれた。そして、自分は死ぬのだと理解した。しかし、この心臓は止まることなく今ここにいる。目を覚ました先の光景は一変しており、城のような空間で立たされており、目の前には偉そうに椅子に座りこちらを見据える男がいた。自分はその男を知っている。吸血鬼の世界に現れた、ルイと名乗る男。
男は呆れたように溜息を吐き、「お前を買いかぶっていた」だの、「情けない」だの散々嫌味をぶつけてきたと思えば、「ここからは簡単に出ることが出来ない」などと言ってきた。「元の場所に戻れるかはお前次第だ」と。連れてきたのなら帰せと抗議したが、「知らん」と一蹴。まったくわけのわからない男である。帰さないのは向こうであると言うのに、「ここにずっと居られるのは迷惑」「早く出ていけ」とまで言われた。腹立たしい。

嫌な記憶を思い出しているのか、どんどん苦い顔になっていくリトにアンヘルは苦笑いを浮かべた。

460リト ◆wxoyo3TVQU:2016/03/31(木) 12:37:16

「それは難しいです。」

彼はきっとルイの発言に腹を立てているのだろう。無理もない。ルイ、我が父は兎に角言葉が少ない。理由を述べることを面倒がって結論のみを口にするため、言葉を向けられる側は意味を理解出来ず機嫌を損ねてしまうのだ。

「僕とあなたは、今こうして話も出来るし、触れようと思えば互いに触れることも出来ます。でも、今あなたは少し特殊な存在なんです。僕達とはまた違う存在。」

今のリトは簡単に言ってしまえば霊体である。身体は今でも元の世界にある。しかし魂と身体を長い間切り離してしまえば死んでしまうので、意識だけをこちらに連れ出した。地上のリトから言えば夢を見ている状態に近いだろう。
あの時、闇に飲まれたリトを救うには一時的にでも身体と魂を切り離す必要があった。闇の力の核となる魂を喰われれば、あの世界は終焉を迎えることになったかもしれない。魔玉をその身に封じたセナの魂を引き継いだリトには、それ程の災厄をもたらしかねない威力があるのだ。よって、何としても魂だけは護る必要があった。

しかし、その魂は生きる気を失っていた。身体と引き離し、魂をルイの魔力を込めた宝玉に封じ護っても、魂が消滅を望んでしまってはいずれ跡形もなく消え去ってしまう。どちらにせよ災厄は防げただろうが、リトは危険な存在であるのと同時に、世の闇を制するには必要存在であり、失うには惜しい価値があった。故に少々強引ではあるが、身体と魂を引き離した上で、魂から意識をも切り離すことにした。今のリトの意思はその魂にとって毒でしかない。

「あなたは帰りたいと言っていますが、自覚していないだけで、戻ることを拒否しているのはあなた自身なんです。あなたが心から生を望めば、きっと帰ることが出来ます。」

リトを護るには致し方のない処置だった。ルイは口が裂けても言わないだろうが。

「ここにはいくら居ても構いません。自分の心に問いかけて見てください。ここは、もとより自分を省みる為に存在する場所です。」

「もっとも、省みるのは自分じゃなくてパパなんだけどね。」

アンヘルの説明に突如割って入る声。いつ来たのか、背後から少女が仁王立ちで見下ろしていた。
この少女にも一度会ったことがある。たしか、アンヘルの姉で、名前はアネスだったか。

「自分じゃないって?」

「ここは魂を選別する場所。あんたも聞いたことあるでしょ?閻魔とか、天国とか地獄とか。あれ、迷信じゃないから。生涯を終えた魂がどちらに行くか、生前の記録を辿って決めるのがパパの仕事。」

「は?」

「あ、あんたは死んでないから安心していいよ。ここにいるのは死者だけじゃないから。私もアンも、末っ子のジタンもちゃんと生きてるし。」

なんだかとんでもない情報を押し付けられた気がする。
トンデモ状況が多すぎて感覚が麻痺してるとは言え、流石に衝撃的すぎるのではないか。自分は本来死んだ後にしか会うことのない存在を目の当たりにしているのか。

「姉様、何か用事?」

「あー、そうそう。ティータイムだって、ママが呼んでる。」

言ってアネスはある方向を指さす。
視線を向ければ、庭の奥の方で先に席についているのであろう女性が笑顔で手を振っている。

「あんたも参加ね。パパを呼んでも来なかったから、このままだとママが落ち込んじゃう。」

色々な情報が一気に押し寄せてきて処理が追いつかないところを勝手に欠員の穴埋めにされ、リトはわけもわからないまま促されるままに従うこととなった。

461ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/04/02(土) 01:22:48
【イスラ》板組も消滅したぽいしなぁ……

色々やりたいネタは沢山だけど、話まとめないと収拾着かなくなりそうだww三十路までにはきっと完結……してるハズ!

リマ》感動の涙は完結まで取っておこうぜ!
ww

同期の女子と合コンしたり、同期の友人の友人とかでこう捜して行けば出会いは沢山あるはず〜!

と言う訳でマジラブはイスラとデュエットするのでwwww←】

462アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:14:29
【過去】

不意に名前を呼ばれ、アブセルは飛び上がった。ヨノが居るとは思ってもみなかったのだ。
なぜ自分だと分かったんだ、とでも言いたげな面食らった表情で入室するや、直ぐに床に這うリトの姿が目についた。

「リト…、昨日は大丈夫だった?」

リトはやはり応えない。代わりにヨノが頷いてくれた。
彼はどうやらスケッチブックに向かって絵を描いているようだ。
傷だらけだったらどうしようと思ったが、見る限りは元気そうで、アブセルはほっと胸を撫で下ろす。

次いで、渡したいものがあったと後ろ手に隠したクローバーの存在を思い出す。
しかし、いざ渡すとなると何やら恥ずかしくて中々切り出せない。
アブセルは暫しモジモジと逡巡した後、ついに意を決した。

「あの…これ…、昨日のおわび…」

照れくさそうに言って、緑の束をリトの目の前に差し出す。

「これからはリトが外に出られるようになるまで、俺が代わりに外のものを持ってきてリトに見せてやるから」

463アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:16:05
【ポセイドン邸】

小さくて柔らかい女の子の手。リマの手はまさにそんな感じ。
彼女の手に触れるのはなにも今回が初めてではないが、不意に手を握られた時、アブセルは一瞬ドキリとした。

おかしい。普段なら何とも思わないのに。
何だか顔も火照ってきたような気がするし、風邪でもひいたのかもしれない。
そんな疑念を自分に抱いていると、丁度セナとそしてナディアが戻ってきた。

「うん、まあね。そっちはどうだった?
…てかセィちゃんさんのあの顔の傷ってもしかして奥さまが…?」

アブセルは二人の分の紅茶を淹れながら、ナディアに小声で問いかける。
しかし彼女の表情を見れば、返答など聞かずとも分かった。

どうしたものかと考えている内、ふと前々から思っていた疑問が口をついて出た。

「奥様のアレって本当に精神的な病気なのかな…。
リトに対する態度のこともあって、俺あの人のこと好きになれないけど、ほんとは凄い優しい人だってことは分かるよ」

あの人は身分に拘ったりしない。使用人に対しても変わらない態度で接してくれる。

だからこそリトに対してのみ、別人のような振る舞いを取る彼女に違和感を覚えていた。
まさかそれが実の祖父の洗脳によるものなど、アブセルは夢にも思っていない。
今回の騒ぎの一件で、ミレリアの件もヨハンの陰謀の一つではないかと疑い始めていた程だ。

464DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/02(土) 19:17:51
【城】

DDはメルツェルやフィアとは考えが違った。

「つまりは…って、そんなんじゃ納得できないわ…」

今から何百年前か…。
あの日、自我が芽生えた瞬間は奇妙なものだった。
そこがどこで、自分が何者なのかも分からなかった。
ただぼんやりとした意識の中、理解していたことがある。
自分がとある一つの存在から生まれ落ちたことと、周りの子供達も自身と同様の存在であるということだ。

そしてDDは、自分を含んだ12人を兄弟と、そして顔も名も知らないそれを親のようなものだと捉えていた。

メルツェルからオリジンを庇ったのは、DDにとってそれがノワール同様、貴い存在であったから。
自分達に力を与え、血と肉をくれた。
だからこそ、オリジンが自分達の存在を消すべく現れたと知った時、ショックを感じずにはいられなかった。

自分の命は自分のもの。確かにフィアの言う通りだ。
本来ならばフィア達に加勢するべきなのだろうが、しかしDDは動けなかった。

ただ知りたかった。何故、今更になって自分達の前に姿を見せたのか。そして自分達が生まれることになった経緯、元々ひとつだった存在が12個に分かれた利用を。

465イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/03(日) 22:42:55
リマ>おめでとうございます!受かって稼いで藍ちゃん買えますね!(笑)

マジかー…、うたプリ恐るべしww
確かライヴとかもあるんですよね?チケットとかも直ぐ売り切れそう…
ロボットでも問題ないんだw何でもロケットパンチとかも出来るらしいですね。強い(笑)

自分も思いましたwやはり親子ってことですかね

書く書くって言って、結局諦めて書かないってことも有り得ますので期待はしないでくださいw


ヤツキ>完結…できるといいなぁ…
自分はネタとか全く思いつかないのでヤツキさんについていきます!(*`・ω・)ゞ⬅

466メルツェル ◆.q9WieYUok:2016/04/10(日) 01:44:48
【群青の街】

二人で七割削れたならば、後一押しか。
頭部と僅かに残った上半身だけで宙に浮かぶオリジンの姿を見つめながら、フィアは声を挙げる。

「DD、貴方の援護が有ればオリジンを倒せるわ!」

しかし、援護を求める言葉に対する返事は無く、DDが動く気配も無い。
それはフィアに取って予想外の出来事であり、思わず視線をDDへと向けた。

その瞬間、オリジンは自分自身とその周囲に流れる時を巻き戻し、傷付いた身体を元通りに。
それはほんの一瞬の間だったが、オリジンに取っては充分過ぎる間だった。

元の小柄な身体からは想像出来ない速さで宙を駆け、腕の一薙で周囲の空間そのものを引き裂くと同時に、背後のメルツェルが放った熱波を振り向き様に発生させた重量波で相殺。

更に、そのまま高速で横回転しながらフィアへ突撃。
フィアが張る凍気の障壁を薄皮の如く破り捨て、黄金期にも漆黒にも見える鎧を砕き、彼女を吹き飛ばした。

そこでオリジンは一旦動きを止め、空間跳躍によって死角から現れたメルツェルの首筋を小さな手で鷲掴みにし、先程地に叩き付けられたフィアの隣へ投げ捨てる。

単純な物理的な攻撃に見えるも、その一撃一撃、一挙動毎にオリジンは自身のみぞ知る異界の術式を絡ませていた。
それは吸血鬼の最上位種、長老にすら決定的なダメージを与えれるモノだ。

その直撃を受けたフィアとメルツェルは何とか立ち上がるも、反撃の手が出ない。
動かない二人を見下ろし、オリジンは両の腕を大きく広げる。

小さな掌の先に超高密度の魔術紋が集積し、空間が、時空が歪む。
そして、二つの魔術紋が合わさり、雷光とも極光とも見える眩い光の雨が周辺一帯に降り注いだ。

ーーーーー

砕け散った模倣の世界を集め合わせ、生まれたこの世界は言わば紛い物。
その世界は、傷付いた身体を癒やす隠れ蓑にするには丁度良かった。

世界そのものと言っても過言ではない中枢システム、黄龍が動き出す前に十字界を世界の裏側に仕込み、血肉を分けた種を蒔き、育った長老と言う実を収穫する。

そして先ずは、歪な世界をリセットしようとしている黄龍を滅ぼし、遥か古に敗れた白焔の龍皇へ再び戦いを挑もうではないか。

467メルツェル ◆.q9WieYUok:2016/04/10(日) 01:47:20
ーーーーー
12に分かれた黄金と漆黒の力、その一片すら取り戻して居ないが、それでもオリジンの放つ攻撃は凄まじい。
一粒一粒が大爆発を巻き起こす圧倒的な破壊の雨は、城を、その周囲一帯を、群青の街を焦土に変える。

美しく輝く死の雨が降り止み、焦土と化した城の跡で、フィアは何とか立ち上がった。
全身全霊で張った絶対零度の結界は、あの四霊のキールの全力に勝るにも劣らない堅固さを持っていた。

しかし、その結界を持ってしても即死を免れる程度であった。
黄金にも漆黒にも見える鎧は見るも無惨に砕け散り、五体満足ながらも無傷な部位は見えない程に傷付いている。

その隣で、同じくボロボロの状態で膝を着くメルツェルは、血反吐を吐き捨てて立ち上がった。

「……くそったれが、これじゃァもう勝てる見込みは無ぇ……」

3人で畳みかければ勝機は合ったが、死んでないだけと言うのが正しいこの状態では撤退する事すらままならないだろう。

「冷血女、オカマ野郎を連れて退け。

ガラじゃねーが俺が囮になってやらァ……」

ならば、と立ち上がったメルツェルはオリジンを睨み付け、空間を跳躍。
宙を浮かぶオリジンの眼前へ姿を現す。

そして、その小さな身体を確と抱き締めた。
それは恋人同士の熱い抱擁では無く、真逆の死の抱擁か。

「ガキと心中なんて全く、何の楽しみも無ぇじゃねーか……クソが。」

諦めの声をぼやき、メルツェルは残る全ての力を、その魂を燃料にしーーーー

ーーーー起こるべき爆発は起きず、その存在全てを吸収され、消えた。

宙へ浮かぶオリジンの姿は無傷で、変わった所を挙げるならば、銀にも白にも見える髪が一房、赤に染まっただけだった。

「12に分かれた内の一つ、燃える毒蠍の力……回収した。」

靡く髪はそのままに、オリジンは無機質な声でそう呟いた。
そして、立ち尽くすフィアの姿を睥睨し、彼女へと手を伸ばす。

「極凍の水瓶よ、毒蠍に免じて今回は見逃そうか。」

伸ばした手の先、浮かぶ魔紋を握り潰し、オリジンは身を翻してその姿をゆっくりとフェードアウトさせた。

468リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/10(日) 18:45:07
【過去】

目の前に差し出された緑の束を、リトは不思議そうな顔で見つめる。
ついでヨノへと視線を移すと、それは幸せを運ぶものだと教えてくれた。
手を差し出すとアブセルが四つ葉を握らせてくる。

「リト、ありがとうは?」

ヨノが促すも、やはりリトは答えない。
しかし今回ばかりは少し違った。

リトはスケッチブックを手に取ると、描いていた絵を切り取る。そしてそれをアブセルに差し出した。

「・・・・・あげる」

それまでリトに隠れて見えなかったが、スケッチブックには猫や花、そしてクレープのような物を持った人間の絵などが描かれていた。
色々な物が乱雑に描かれていたが、それは昨日リトが初めて目にしたものだった。人間は色合い的にアブセルを描いているのだろう。

「それ、アブセルちゃんに渡すために描いていたの?」

リトが言葉を口にしたことにも驚きだが、それ以上にリトのとった行動には更に驚かされた。
ヨノの問いかけにリトは頷く。

「要らないならあげない。」

469シャム ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/10(日) 23:32:45
【城】

人の身でありながら、自ら吸血鬼の血肉を取り込んだというのか。

「そのイカれっぷり、逆に感心するぜ」

シャムは人外のモノに変貌した相手の姿を、まるでお面白いものでも見るような目で見据える。

直後、周囲の壁が本格的に崩壊を始めた。
ひび割れ、崩れ落ちる壁面や天井。このままでは生き埋めになる…。そう思った時、不意にそれらの決壊がピタリと止まった。まるで時間が止まったかの様に。

「早く…、何とかしてくれ…。長くは持たねー、から…」

誰の仕業かと見れば、珍しく険しい顔で汗だくになったアグルが、トールの力を発動させていた。
どうやら周囲一体に特殊な磁場を発生させ、城全域を浮かせているらしい。

「へぇ…意外とやるじゃねーか」

シャムは言う。
そして、要望通りに何とかしてやるとばかりに、その場にいる疵面の男を除いた全員を空間跳躍で移送した。

………、

「え」

目の前に広がるは黄昏の空色。全身を包む冷たい空気。
転移した先は何と上空だった。

「悪ぃ、悪ぃ。俺様、空間跳躍とか苦手なんだわ」

「ちょ…っ、ふざけんなし!」

バッハ、メイヤ、イスラはまた別の地点に飛ばしてしまったかもしれない。
眼下に見える群青の街に落下していくアグルを目の端で見送りながら、シャムは別の方へ意識を向ける。

「やっぱ無事だったか。来いよ。ここなら思いっきり、暴れられる」

シャムの右腕に寄生している蟲は、今や背面、そして左腕にも影響を及ぼしている。
両腕を剣に変え、背から奇怪な翼を生やし飛ぶ彼は、同じく地下から脱出し、対面する疵面の男に向かって不敵な笑みを送った。

470メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/11(月) 22:44:00
【群青の街】

「吸血鬼の長でありながら、異形の蟲を宿すキサマも中々のイカレ具合だ。」

崩壊どころか焦土と化した城跡から姿を現した疵面の男……バルドは、紅瞳を歪めて凶笑を浮かべた。
そして、宙へ浮かぶシャム目掛けて漆黒の翼を広げ、空を駆ける。

その速度は並みの吸血鬼とは比にならない程速く、ほんの数秒でシャムを射程圏に捉え、突撃。
大翼で身体を包み、高速で横回転するその様は黒い砲弾か。

頂点部品から銀剣の切っ先を突き出し迫るそれは、シャムの胴を掠めて更なる高みへ登り、翼を広げて急停止すると共に黒羽の弾丸を眼下へと撒き散らし、空間転移。

シャムの眼前へと姿を現したと同時に、鋭い刺突を繰り出した。
吸血鬼に致命傷を与えうるその刃はシャムの頬を掠め、鮮血を散らす。

「血沸き肉踊る戦い、嫌いではないが今はその時では無い。
見るが良い、周りを。
我が主は目的を達し、キサマの同胞……一人の長老はその存在を消した。」

シャムの返り血を一舐めし、バルドは続ける。

「騎士団はほぼ壊滅したが、さほど問題は無い。
主と我が居ればな……
もう一度言おう、この街へ来た目的は達した。」

そう、長老達の血肉と魂の器、オリジンとその部下である騎士団がこの地に来た目的、メルツェルの討伐、吸収は達成された。
ならば、もうこの場に留まる必要は無い。

刺突を繰り出した姿勢のまま、悪鬼にも見えるバルドの姿は、ゆっくりとフェードアウトしていく。

「次に会いまみえる時は、全力でキサマを滅してしんぜよう……!」

そして。
その姿が消えたのと、メイヤら三人が城跡へ辿り着いたのはほぼ同刻だった。

「……城どころか街のほぼ全域が焦土だ。

一体何があったんだ……!?」

シャムによってメイヤらが転移したのは街の外れ。
そこから中心部の城へと走って来たのだが……

471ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/12(火) 22:13:57
【ポセイドン邸】

(・・・・!!)

12人の長老の血肉によって生まれたノワールは、その根底で長老達と繋がっている。故にノワールの身に異変が起きれば長老達は察知することができ、ノワールもまた然り。
メルツェルが消えたその時、突如としてノワールの身に悪寒が走った。

誰の身に?何が起きた?最悪の事態でなければいいが・・・・・

自分が何百年もの眠りに就いている間、十字界は印象が変わった。
一見して変わりないように見えるが、皆がいくら平静を装っていてもその位分かる。しかし、それを隠されている以上自分には知る由もなく、自分はまず、皆が待ち望んでいる我が子、新世界の吸血鬼を見つけ出すことを優先するべきだと考えた。

「・・・・・」

ノワールは思案げな表情を浮かべた後、席を立つ。
そしてセナの腕を引いた。

「話がある」

------

「あんたの言う通りだよ」

アブセルの漏らした疑問に、ナディアは苦笑しつつ頷いてみせる。
嘘はつけない。だが、それがアブセルの祖父の仕業だとはとてもじゃないが言えない。アブセルをこれ以上傷つけたくはなかった。

「母さまは、術にかかってる。リトを恨むようにね。全く呆れた話だけど、あの人(ヨハン)はリトをもともと人柱として母さまに生ませたんだ。一応、母さまのことは愛してたから、我が子を奪って傷つけたくなかったんだろうね。」

そしてナディアは溜息をつく。

「長い間洗脳を受けてたから、もう術を解くことは出来ないらしい。今後リトに心を開いてくれるかは母さま次第だね。セナに対しても態度は変わらなかったよ。取り敢えず、顔合わせは済んだから葬式はまぁ何とかなると思う。」

472シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:20:06
【飛行挺】

熾烈を極めた戦いから数時間後が経過し、日もすっかり暮れた頃。
飛行挺内部は収拾がつかない状態に陥っていた。

「アタシがメルちゃんを殺したのよぉっ!
ごめんねぇメルちゃん!成仏してぇ!」

「るっせぇんだよックソカマ!
いつまで泣きゃあ気がすむんだボケッ」

掌で顔を覆い、おいおいと泣き叫ぶDDに。
オリジンの出現、それによる同じ長老であるメルツェルの死、敵を仕留め損なったことと、様々な要因が原因で荒れるシャム。
そして…

「……何でこの人達ここに居んの?」

アグルはアグルでそれに対し不満を洩らしていた。

イスラ達が崩壊した城跡にたどり着いた時、そこで発見したのが負傷したフィア達だった。
当初、彼女らの傷は深くとても立ち上がれるような状態ではなかった為、何となく放っておくのは忍びないという理由で、彼らを匿うことになった訳だか…。
上空から落とされ、何とか無事だったアグルはそんな話は聞いてないとばかりに、むすりとしていた。

「アタシもうどうしたら良いか分からないわ〜!」

もはや聞き苦しいと言うか、相手にするのも鬱陶しくなってきた。シャムはイライラしながら言った。

「どうもこうも別に悩むような話じゃねぇだろ。ヤツ(オリジン)をブッ殺す。それだけだ」

「それは駄目よぉ!」

しかしそれに対し、DDは間髪入れず言葉を返した。

「そんなことしたら、残った長老VSオリジンの戦いが幕を広げちゃうじゃない!
そんなの嫌よぉ!悲しすぎるわぁ!」

DD曰く、"親子"で争うのは、見るのも堪えられないらしい。
しかしだとしたらどうしたいと言うのか。

「ならテメェはヤツに大人しく喰われても良いっつーのかよ」

「そんなのわからないわ…、そうした方がいい気もするし…。
でもアタシまだやりたいこと沢山あるのよォ!
気になるオトコのコも山ほどいるし、まだ女の幸せ掴んでないし!」

オリジンの意思で生まれたのなら、オリジンの意思で消えるのもまた道理である、とDDは考える。
メイヤちゃんアタシを慰めて!と叫ぶ彼に、シャムはいい加減うんざりし匙を投げた。

473アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:21:44
【過去】

「い、いる…っ!ちょうだい!」

リトが自分の絵を描いているとは驚きだった。
それ以上に、彼が自分のことを想ってしてくれたであろう、その行為と気持ちが嬉しかった。

アブセルはリトから絵を受け取ると、それを改めて眺めてみた。

「ふふっ…ヘタクソ…」

そうは言うが、昨日はアブセルにとって特別な日になった。
そこに描かれた絵は確かに、昨日の出来事が夢でないことを語ってくれた。
本当は涙が出そうなくらい嬉しかったのだ。

しかし、その絵には一つ足りないものがあった。
何を思ったか、アブセルは黄色いクレヨンを手にすると、貰った絵に何かを描き足し始めた。

やがて出来上がったものを二人に見せる。
そこにはトウモロコシに手足が生えたような奇妙な物体が描かれていたが、アブセルはそれを指し"リト"と言った。

絵の中のアブセルとリトはクレープを手に、二人で笑っていた。

「………」

その絵を描いている間…、いや四つ葉を探していた間も、もしくは昨夜からずっと、彼の脳裏にはとある二人の言葉が反芻していた。

一つはジルの「リトの側にいてあげればいい」という言葉。
そしてもう一つは、ナディアの「リトを護ってあげて欲しい」という言葉だ。

アブセルはぽつりと口を開いた。

「俺…リトと仲良くなりたい…」

子供ながらにリトと自分は立場が違うことを何となく理解していた。
彼は名家の子息で、自分はその家の使用人。こんなこと、本当は言っちゃいけないのかもしれない。
でもずっと言いたかった。言いたくて、そのつど呑み込んでいた言葉。
アブセルは等々それを口にした。

「俺と友達になってほしい…」

474アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/15(金) 20:26:36
【ポセイドン邸】

「何だよそれっ!最悪じゃんか!」

半分は予期していたにも関わらず、やはりナディアの口から聞かされたものはアブセルにとって信じ難いものだった。
思わず大きな声を上げてしまう。

どれだけリトを卑しめれば気がすむんだ。
ミレリアを傷つけない為だとはいえ、彼女の気持ちは蔑ろにしてもいいというのか。
愛する人に精神干渉の術を施すなんて正気の沙汰とは思えない。

「ねえ、何とかなんねーの?
ここには今、最強の癒しの守護神ポセイドンが二人もいるんだよ。それにセイちゃんさんやノワールだっているし、あと一応俺も…。絶対イケるって!」

これだけの面子が揃えば、解けない術なんてもはや存在しないのではないだろうか。
アブセルは同意を求めるように「なっ」とセナ達の方へ視線を向けるも…

「って、いないし…」

いつ抜け出したのか、そこにセナとノワールの姿はなかった。

475リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/17(日) 20:11:23
薬剤師名簿登録通知来ました!これからは正真正銘の薬剤師です(๑ÒωÓ๑)

ヤツキ>>うん、完結するまで泣かずに耐えとくわ(笑)

病院が激務すぎて合コン言ってる余裕ないから、取り敢えず仕事慣れるまで出会いはなさそうだ(笑)

マジかwww個人的にアニメ2期から登場した主人公達の先輩グループの歌がセクシーで好きなので、そっちをマスターしてもらって聞きたいな|ω・`)チラッ笑

イスラ>>
稼ぐようになったら沼にハマるwwwでも初任給は5月らしいので、まだ藍ちゃん買うのは難しそうです(笑)
そう言えば自分もうすぐ誕生日でして、友人がプレゼント買うから欲しいの教えろって言ってくれたのですが、思いつかなすぎて、欲しかったけど引きに行く機会がなくて手に入らなかった一番くじの藍ちゃんのキュンきゃらなる物の画像をふざけて貼り付けてみたら、Amazonで見つけたとかでマジでプレゼントされそうな気配(笑)

ライブあります!チケットは抽選みたいですね|ू・ω・` )
藍ちゃんは中の人も美形なので見応えがありそう(笑)
ゲームやってる人で当初から人間だって疑わずに好きだった人にとっては衝撃かもですが、自分は藍ちゃん気になってwiki調べた時に知ったので特に何も思わなかったですね(笑)
へー本当はロボットなんだーふーん可愛い
みたいなwwwただ、親の借金のせいで事務所に売られたドリームが消え去ったのは残念でした(´・ω・`)笑
そして藍ちゃんは事務所社長が制作費を出してコーディネートした、理想のアイドル像を具現化した存在らしいので、つまりは藍ちゃんは社長の好みそのものなんだって思うとちょっとモヤモヤしますね(笑)
ロケットパンチ凄いですよね!怒ると攻撃してくるらしいですよwwwもー可愛い!

親子なんですねー、ちゃんと血がつながってた(笑)
ヨハンはミレリアのことが無ければトーマとの関係も崩れなかったと思いますし、育った環境が違ってたらあそこまで性格歪んだりしなかったでしょうから、少し可哀想な人なんですよね(´・ω・`)
本当はリトのこともちゃんと愛してたって感じに持っていきたかったのですが、ヨハンの行動にリトを愛する要素がなさすぎて諦めました(笑)まー始めから人柱にしようと思って生ませた子なので、情が分かないように虐めてたってことにしておきます(´・ω・`)

え、残念ですが私もそんな感じなので期待せず待ってます(笑)

そしてDDが面白すぎてツボです(笑)

476イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/17(日) 23:52:02

今、吸血鬼編がアツいので…オリジン描きたい!長老達の絵描きたい!と思って挑戦してみたのですが、見事に挫折しました…
とりあえず誰トクか不明ですがルドラ&ラディック、DDのイラスト描いたのであげときます
他の方々はまた今度リベンジしてみよう…!
imepic.jp/20160417/853730
imepic.jp/20160417/853740


リマ>いいなぁ、薬剤師って給料いいんでしょう?⬅
5月までの辛抱ですね(笑)ファイトです^^

いや良かったじゃないですか、優しいご友人で羨ましい。それより自分は欲しいものが思い付かない、ってとこに驚きを隠せません⬅

へー抽選なんだ
自分の同級生に歌プリファンがいますが、結構頻繁にイベントとかに行ってるみたいで(恐らく一人で)真面目だなぁ、と感心してます
もう何でも可愛いんですねww
何ですかそのドリームwまぁ気持ちは分かりますけども…、不幸設定って何かそそりますよね(笑)
モヤモヤしますね(笑)社長は男なのか女なのか…
それは可愛い…のか?いえ、可愛いんでしょうきっと(錯覚)

少しどころか相当可哀想です(T-T)
そもそも自分がリトを人柱に深淵を開けて方舟がどうたらとよく分からん設定を考えて、それをヨハンの目的にも直結させてしまったから、こんなことになってしまった訳でして…

ワヅキもヨハンを利用しただけで、ヨハンの野望とは一体…って感じであやふやなまま終わっちゃったし、色々勿体なかったですねー(--;)
それにあの話のくだり、ヨハンの野望からはちょっと外れた感じでしたし、ほんと終始訳わかんなかったですね!誠に申し訳ない…

あ、そうだ。ヨハンも世界政府に脅されてたとかどうですか?協力しないとポセイドンの一族潰すよ?的なことを言われてて、ヨハンは一族を護るため頑張ってたとか。まぁポセイドンの一族を政府が潰せるかは甚だ疑問ですがw


ちょっとラブストーリー閃いた…!かも
そこで相談なのですが…
ヨハン母は生まれつき声が出せない、とのことですが、魔物に声を取られたってことにしても良いでしょうか?

んー…DDなぁ…、こんな女々しいキャラにする筈じゃなかったんですけどねーw自分からしたら「やばい、面倒くさい人になっちゃったよあーあ…」って感じですが…面白いなら良かったです(笑)

477メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/19(火) 11:35:31
【飛行艇】

泣き叫ぶDDと、声を荒げるシャム。
そんな二人とは対称的に、沈黙したままなのはフィアだ。

三者三様、吸血鬼達の様子にメイヤはどうしても良いか分からず、無言のまま先の戦闘で負った傷の処置をしていたのだが……

「とりあえず、一旦落ち着いてくれ。

船内はそう広くないから声が響くし、苛々を物に……壁なんかにぶつけられても困る。」

そろそろ我慢の限界だろうか。
言葉通り船内、一同が集まる広間兼食堂は決して広くはない為、声は響き、正直な所騒がしいを通り越して煩い。

ましてや苛々を発散する為に壁に大穴でも開けられてしまえば大変だ。
これ以上続けられると、収集が着かず面倒になるだろう。

DDとシャムを宥める声を掛けながら、これらどうするべきかとメイヤは考える。
するとそこで、椅子に腰掛け俯いたままのフィアが顔を上げ、沈黙を破り口を開いた。

「私はシャムと同意見よ、黙って喰われるつもりなんて無い。

何より、私はまだ死ねない。

レオの敵を討つまでは絶対に死ねないの……」

そう、十字界での争乱、激闘の末に命を落としたレオの敵討ちの為に、フィアはこの人間界へ来たのだ。
ノワールの護衛や異質な存在の調査、そして人間との共闘で日和っていたが、先のオリジンとの戦いで一番の目的、復讐の炎は再び確と燃え上がったのだ。

だが、だからといってオリジンの存在を無視する訳にはいかない。
放っておけば他の長老が、眷族が、そして娘であり姫であるノワールにまで魔の手は伸びるだろう。

「ジーナに頼まれていた異質な存在の調査、一応は終わりね。

異質な存在はオリジンで、かの存在は私達長老に害を成す。

先ずは十字界に戻り、どうするか早急に話し合うべきだわ。」

DDとシャムの二人へ声を掛け、フィアは立ち上がる。
泣き続けるDDと匙を投げたシャム、声を掛けなければ二人はきっとこのままだろう。

「私達もバルクウェイへ、師団の元へ戻りましょうか。」

その様子に合わせ、バッハもまた、イスラとアグルへ声を掛ける
討伐対象であった吸血鬼の長、メルツェルはその命を落とし、奇しくも依頼された任務は達成された。

目的を果たした今、生存者0、廃墟と化したこの街に留まる理由も無い。
幸いにも自分を含めた四人全員無事であり、今すぐにでも出発出来る状態だ。

「吸血鬼の皆様方もこの街を発つようですし……まさか一緒に行動する訳もないでしょう?」

一応は確認の声を掛け、バッハは全員の顔を見回した。

478リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 16:51:57
イスラ>>

ルドラ美少年!ヤバイ!足!足!!!
てかまた画力あがってませんか!?ヤバイ!足!!!
そしてDD!なんかすごいwww思わず二度見三度見しちゃいましたwww
ラディックはどうゆうわけか自分の想像と全く同じな容姿をしていますwww


残念ながら自分は病院薬剤師なので給料は高くないんです( •́ .̫ •̀ )
稼ぐならドラッグストアですかね|ू・ω・` )

5月までお金ない・・・・・交通費も支給されてないから出費しかないです(笑)

本当にプレゼントは藍ちゃんになったみたいですwww
2人の友人が割り勘で買ってくれましたwww
実用性のあるものはもう持ってますし、ゲームとかもしないので遊具も必要ないし、もう学生じゃないんで可愛い洋服とかも持ってても使い道ないしって感じで今は欲しいもの見当たりません(´・ω・`)
ミイラの飼い方と言う漫画のヘンテコな生き物達が最近クレーンゲームでぬいぐるみ化して、聞かれた当初はその漫画のミイラのぬいぐるみが欲しかったのですが、普通に自分で仕事帰りにゲーセン行って取っちゃいました(笑)

たしか抽選だったと思うんですが・・・・・あれ?違ったかな??
真面目wwwそれだけ好きなんでしょうね(●´ω`●)なんか、ネット見てるとキャラクター宛に開店祝いに送るような花とか贈ってる人達が結構いて、凄いなぁと思ってます(笑)私なんて溺愛してやまないシエルにすらバレンタインとか誕生日とかお祝い送ってない←←
そそりますよね、何故か(笑)まー、藍ちゃんは別の方向で不幸を背負ってるのでゲームでは涙なしにはプレイ出来ないみたいですよ( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )

社長は変なオジサンです←
可愛いです!(確信) 怒って攻撃してくるなんて子供過ぎて鼻血出ます(*´﹃`*)いつもは冷静で周りの大人(25歳男児)を冷ややかな目で見つめ、毒を吐き、後輩達(皆年上)に振り回されてる子なのに、何だかんだで子供っぽいところが堪りませんね(/ω\*)そして馬鹿にしまくってる25歳のその人に「一生懸命憎まれ口を叩くアイアイが好き」とか何だかんだ包容されてて、自分の素になった子が25歳のその人の親友だったことを知って、「ボクにちょっかいをかけるのは、あの人とボクを重ねてるから」とか嫉妬しちゃうところとか、「レイジといるとろくな事がない」とか言いながらいつも一緒にいるところとか、肩に担がれながら「嫌だ嫌だ」と足をばたつかせながら連行されていくところとか、めちゃくちゃ子供で可愛いです!!(鼻息)

479リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 16:53:07
ごめんなさい、藍ちゃん語ってたら長くなっちゃいました( •́ .̫ •̀ )

え、相当ですか|ू・ω・` )?
いやいや、自分的にもヨハンはあくまで「母と自分を虐げてきた一族への復讐」が第一目標で野望とかよく考えてなかったのであやふやになってしまって申し訳なかったです(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)

お、そのネタいいですね!
多分政府如きに潰せはしないでしょうが、ポセイドンの長であるナディアとかはヨハンにとっては庇護すべき我が子ですし、護るために頑張ってもおかしくないと思います(๑ÒωÓ๑)
じゃあトーマを殺したのも本当はヨハンではなく、ヨハンがおかしくなった事を気にかけた彼が色々調べていくうちに政府の闇を知ってしまい、そのことで政府に消された設定にしてしまおうかな|ू・ω・` )
そんで人柱としてリトが生まれたけど、渡したくなくて隠してた(監禁してた)ことにしようかな|ू・ω・` )トーマが知ったことで協力を得て、存在が相手にバレる前にリトを彼に託そうとしたけどその前にトーマが殺されて、そんでもってリトが17になって外に出られるようになったのは存在がバレたリトを逃がすためだったとか。
あれ?ヨハンいい奴じゃん。不器用なだけでちゃんと皆を愛してるじゃん。めっちゃ可哀想な人じゃん(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)←

やったー!ヨハンの母の設定は好きに弄っちゃって大丈夫ですヾ(●´∇`●)ノ

大丈夫です、こうゆうキャラも必要だと思います(笑)
面白いのでこのまま突き進んじゃってください!(笑)

480リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/20(水) 23:35:37
【過去】

友達って何だろう?
リトが首を傾げると、横からヨノが笑顔で教えてくれた。

「お友達はね、手と手を取り合って、色々な事を一緒に頑張っていくんだよ。」

例えばこんな感じ、とリトの所持する絵本を広げて見せる。
そこには手を握りあって楽しそうに笑う動物がいた。

「りとはどうぶつじゃない・・・・・」

「例えば、だよ。動物にも人間にも、友達はいるんだよ。」

リトがこんなに言葉を口にするのは初めてだ。全く喋らないものだから、言葉を理解出来ていないのかと思っていた。良かった。
アブセルの存在は、確実にリトにとって良いものとなっている。

ヨノはアブセルの手を取りリトの手に重ねる。

「はい、友達!」

ナディアが以前、アブセルが来てくれて良かったと言っていた。本当だ。
この屋敷では皆がリトを遠ざける。けど、アブセルは違うのだ。
まだ幼いから理解出来ないのかもしれないけど・・・・・、いや、アブセルならきっと、これからもずっとリトの傍にいてくれるだろう。

「リトを宜しくね、アブセルちゃん。」

481DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 17:40:29
【飛行挺】

バッハの問いにイスラやアグルは"まさか"と言うように顔を見合わせる。
その一方で…

「うう…、ぐすっ、分かったわフィア…」

一先ず引き上げると言うフィアに従い、DDは悲しみを引きずりながらも素直に腰を上げる。
そして飛行挺の持ち主である四名に向けて、幾分か平静を取り戻した様子で別れの挨拶を述べた。

「取り乱しちゃってごめんなさいね。一時でも落ち着ける場所を提供して貰えて助かったわ。
それから…メルちゃんがあなた達に対して行ったイジワルはアタシの方から謝らせてちょうだい。

あのコ、昔は本当にイイ子だったのよ。臆病で小さな虫も触れないような子でね。皆が面白がってからかうからきっとグレちゃったのね…」

思い出したらまた涙が出てきた。
正直どうでもいいような思い出話を聞かされ微妙な表情をするアグル達を残し、DDは目元をハンカチで隠しながら飛行挺を後にした。

そして外に出たのち、じゃあ十字界に帰ろうかという時、出し抜けにシャムが口を開いた。

「とりま俺は姫ちゃんに今回のことの報告に行ってくるわ。
んで、そのまま姫ちゃんの近辺を警戒しつつ、オリジンの居場所やら情報やらを探る。
何か掴んだら知らせるからよ」

あわよくば闇討ちをしてでもオリジンを倒す気だったが、それを口に出すことはない。言えばDDが口煩く止めるのは目に見えているからだ。
シャムはじゃあな、と軽く腕を上げ二人の前から姿を消した。

482アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 17:41:42
【過去】

「うん!」

重ねられる二つの手。
アブセルはリトのその手をぎゅっと握り、ヨノの言葉に力強く頷いた。

そして、時が流れるのは早いものでー…


「たっだいまー‼」

数ヶ月後、アブセルは学校に通うようになっていた。
学校から帰宅するや、鞄を置きに自室に向かうこともなく、そのままリトの部屋へ直行する。

「リト帰ったよー!遊ぼー!」

そして、そこにリトの姿を見つければ、嬉しそうに彼に飛びついた。端から見れば飼い主に戯れつく犬のようにも見える。

初めはリトとの接し方もたどたどしかったアブセルも、今ではすっかり…、と言うか異常なほどに彼に慣ついているようだった。
朝は必ずリトにおはようと言ってから屋敷を出て、午前で終わる学校から戻れば、直ぐ様リトの部屋に行き、仕事の時間までそこで過ごす。
もちろん夜も彼が寝つくまで一緒にいる。

「今日は何する?オセロ?神経衰弱?レースゲーム?
お、いいもの見つけた」

おもちゃ箱を漁っていたアブセル。そう言って彼が取り出したのはジェンガだった。

「負けたらバツゲームな。負けた方がディア姉かヨノ姉のスカートをめくる」

うしし、と悪ガキがするような笑みを浮かべ、アブセルはリトの返事も待たず遊びの準備に取りかかった。

483イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/24(日) 20:01:31
リマ>足がどうしたww
たぶん画力は上がってないんじゃないかなー…(;´д`)なかなか上がりません…
DDはもっとカマカマしい方が良かったかな?⬅髪型IKKOさんみたいにしようかと迷ったけど止めといたw

ドラッグストアの方が高給なんだ!病院の仕事の方が大変そうな気がするけど…;

マジか…(・・;)
てかミイラの飼い方…!?どうしよう、可愛さが分からない…!⬅てか自分で取ったの凄い(笑)
自分は欲しいものいっぱいですよー;しかも値の張るものばかりだから誕プレに友人にねだると怒られますw

自分もキャラクター宛にプレゼントを送ったことはないですねー(笑)だってあれ…どうせ最終的には捨てられるんでしょう?⬅

社長オジサンなんだw
そして25歳児ww
いえいえ、どんどん語ってくれて構いませんよ^^面白い(笑)
てかリマさん、刀剣乱舞はやらないんですか?リマさんああいうの好きそうだけどな(適当)

なるほど、いいと思います!(^ω^)
まぁ政府はポセイドン一族の爵位や領地を取り上げられるぐらいの権力はあったんでしょう、きっと⬅
しかしヨハン気の毒ですね…、ジルに復讐の相手と勘違いされて亡くなってしまったことになる訳ですし…
リトに暴力ふるってたのも、恨まれてた方がリトと別れる時辛くないから…とかですかね?なんて不器用(--;)

ありがとうございます!
閃いた!と思ったけど、ヨハン母と爺が結婚できなかったのも政府のせいにしたくなったので、また設定考え直しです⬅一体いつ出来上がることやら…

面白いキャラで続けられるよう頑張りますw
何ぶん本体自身が面白くない性格なので…wちゃんとオネェキャラ出来てるか心配

484ナディア他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/25(月) 06:59:13
【ポセイドン邸】

母の病に気づいた時、自分の能力を知った時、ナディアは幾度も母への治癒を試みた。
しかしどう言うわけか全く改善の兆しなく、初めは自分の力不足と感じていたが、歳を重ねて力をフルに使いこなせるようになっても尚、事態を好転させる事は出来なかった。
何故か分からなかった。しかし、母の病が人為的なものと知った今、その理由に納得が言った。
自分の力はまだアブセルの祖父に敵わない。おそらくそう言うことだろう。
しかし、自分には無理でもリマならどうだろうか。純粋なポセイドンの力を持つリマなら・・・・・
アブセルの言葉にふと思い当たってリマを見るも、リマは申し訳なさそうな顔をして首を横に振った。彼女の力をもってしても母を救う事は出来ない。術を掛けた当人ですら解くことが出来ないのだ、致し方ないのだろう。

「母様のことはおいおい解決するとして、今はあの人の葬儀の事を考えないとな。正直あんま気は乗らないけど・・・・・つかセナは何処行ったよ?アブセル、セナ見つけてからリトとしての身支度を済ませてきて。」

ナディアがそう言うとリマがすかさず立ち上がり、アブセルの横に並ぶ。

「私も行く!アブくん、一緒に行こ?」

485ノワール他 ◆wxoyo3TVQU:2016/04/25(月) 07:00:11

ポセイドン邸は邸も大きければ庭もかなりの広さだ。
適当に数分歩けばすぐに人目のつかない場所に行くことが出来る。
ノワールはセナを伴い暫し庭の中を進み、手頃な場所を見つけるや、セナの方へ向き直る。
そして口を開いた。

「そなた、わらわを知っておるな?」

セナは答えない。ノワールはセナを睨んだ。

「忘れたとは言わさぬぞ。闇の王子よ。」

「・・・・・吸血鬼の住まう十字界、その種族の姫、名はノワール。」

言い逃れは許さない、ノワールのその視線を受け、セナは漸く答えた。
その言葉にノワールはふんと鼻を鳴らした。

「やはり、気づいておったか。よくも今までわらわを無視してくれたな。」

「お前は突如姿を消した。その後の行く末など興味無い。再び見えようと、私に関係のないことだ。」

「"姿を消した"と?"関係のないこと"?わらわにあの様な仕打ちをしておいて・・・・・」

セナの言葉にノワールは怒りを顕にするが、ふとジュノスの言葉を思い出す。
あぁそうだ、あの男は水面下のことをセナに何も知らせてないと言っていた。水面下・・・・・利用するだけしておいて、目的を果たした後には人知れず消した、コケにされたものだ。

「あぁ、そうじゃ。そなたは所詮黒十字宗主の人形・・・・・何の疑問も持たず言われるままに動き、多くは知らされぬ。その行動がどのような結果をもたらそうと、己の意思のないそなたが気に止める謂れはない。」

ノワールは最大限の嫌味を投げたつもりだったが、セナは顔色一つ変えなかった。あの時と同じ、幾ら挑発しても動じなかった過去のあの時と。自分は彼の感情を動かす価値もない、取るに足りない存在なのだと見せつけられているようでとても悔しかった。
最悪な気分だ。セナを苦しめてやりたい。いっそ生まれた子の存在を明かしてやろうか。しかし、それはジュノスとの取引で口止めされている。

「名をリマと言ったか。あの女子に影響を受けているかと思えば・・・・・そなたはあの頃と何ら変わらぬ。わらわとの関係も、宗主に命じられただけじゃと申すのじゃろうな。」

その言葉に、ノワールの言わんとしていることを察する。

「宗主の命に従ったのは事実だが、それを盾に言い逃れをする気はない。しかし、あれは黒十字と十字界の利が一致してのこと。一方に非を求める謂れもない。」

「そなたに誠意は求めておらぬ。そう、そなたの組織と我が種族、互いに利があったはずじゃ。じゃが、実際に利を受けたのがそちらだけだとしたら?」

ノワールはセナに歩み寄り、続けた。

「黒十字との契約は我が十字界には害でしかなかった。が、それを責めても最早意味の無いこと。ならば今ここで与えた分を返してもらうぞ。」

ノワールにとって有益なものと引き換えに。

「十字界について、そなた達黒十字の握る情報を全て教えろ。わらわも知り得ぬ事情が、なにか分かるかもしれぬ。」

486メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/04/26(火) 14:08:34
【飛行艇】

長老の幼き時の話など誰得だったが、それはDDにとっては必要な話、自身に一区切り着ける為のモノだったのだろう。
別れを名残惜しむ様にも見えたDDを含めた三人の長老を見送り、メイヤはホッと一息着いた。

「結局の所、俺達は大して何もしなかったな……

でも、全員無事で何よりだ。」

任務である吸血鬼討伐は成功したかと言えば何とも微妙だが、結果だけを見れば
完了だろうか。

「ここを発つのは明日にしよう、無事だけど多少の負傷と疲労もある。

一晩休むのが無難だと思う。」

時刻は夕暮れから夜に。
師団の元へ戻るのは夜が明けてからで良いだろう。

ーーーーー

数日振りに戻ったバルクウェイは不穏な空気が漂い、ざわついていた。
バッハと共に師団長のレオールへ任務の結果報告、事の顛末を話した後。

不穏な空気の原因を……自分達が吸血鬼討伐の任に着いていた間に世界で起こった事を聞き、メイヤは目を見開いた。

「今先程説明した通り、四霊を率いて黄龍が大々的に動き出した。

いよいよ世界が終わる時が見えて来たかもしれん。」

師団の母艦より奪った特殊鉱石を核とした、超大型光学破壊兵器により南部の大陸が消滅。
巻き上げられた地殻は成層圏まで上昇し、殻の様に世界を包み込もうとしている。

また、世界各地を巡る龍脈、レイラインと呼ばれる世界そのものの動かすエネルギーの流れが活性化しており、ソレをコントロールする龍穴なる遺跡も黄龍によって押さえられていた。

「偵察隊によれば、世界を覆う殻は加速度的ににその面積を広げている。

情報を照らし合わせた結果、龍穴の遺跡が一つ起動する事に比例し、殻……外郭もまたその面積を広げている様だ。」

そして、遺跡を奪還しようとするも敵部隊は強く、奪還作戦はほぼ失敗続きであった。

「敵戦力は個よりも数。

超再生能力を備えた兵を大量展開し、圧倒的な兵数で攻めて来ている。」

各自に配られた資料と、会議室中央に置かれた立体映像装置から浮かぶ映像を見ながら、レオールは説明を続ける。

「現在、師団が抑えている龍穴はマルトが抑えている一カ所のみ。

周辺国と情報を共有し、連携を取ろうとしてはいるが……中々な。」

そして、一通りの説明を終え、一息着くと再び口を開いた。

「そこでだ。

帰還したばかりで申し訳無いが再び出撃をお願いしたい。」

新たに配布した資料を横目に、そして皆の返事を待たずに続けた。

「メイヤとイスラ、レックスとアグルで二人一組を作ってくれ。

後は今の資料に書いてある通り、二カ所の龍穴を強襲する。

強襲、制圧後はどちらか片方が残り、後続の部隊と合流し龍穴の防衛を。

防衛に回らなかった二人は合流し別の
龍穴を強襲し……と、上手く行けば三カ所の龍穴遺跡をこちらが抑える事が出来る。

現状考えられる最善の一手、どうだろうか?」

487リト ◆wxoyo3TVQU:2016/04/27(水) 17:28:39
【過去/ポセイドン邸】

最近、五月蝿い訪問者が増えた。
もともといたのは姉のナディア。そして増えたのがアブセルと言う名のこの少年。

「・・・・・。」

リトは本を読みながら、楽しそうに木製のブロックを弄るアブセルを横目に見る。二人の関係はトモダチと言うらしい。まだその関係性を上手く理解出来ない。
一緒にいる時間は増えたと思う。この少年は暇さえあればこの部屋に来る。真似っこが好きなのか、食事が運ばれてくれば自分の分を持ってきて一緒に食べ、ナディアやヨノがリトに勉強を教えに来れば"宿題"と言うのをやり始め、リトが絵を描いていれば隣で同じように描き始めたりする。ただ、リトは本が好きだが、アブセルは好きではないらしくこれだけは真似してこない。代わりに邪魔をしてくる。夜になり就寝時間になるとベッドに入ってこようとするし、風呂にも付いてきて鬼の形相をした爺に引き攣られて行く。隙を見ては抱きついたり、頬に擦りついてきたり、とにかくベタベタしてくる。そして再び爺に引き摺られていくの繰り返し。
これがトモダチなのか、トモダチと言うのは暑苦しい存在なんだな。正直なところ、リトにとってアブセルは"よく分からない存在"だった。
実姉である二人を除き、リトと親しくすることは禁じられている。禁じているのは使用人の長であるアブセルの祖父本人であるため、アブセルはそれはもう大層こっ酷く扱かれているようだが、何ど連行されようと頭にたん瘤をつくってヘラヘラしながら戻ってくるアブセルを見て、馬鹿なんじゃないかと思う。

「どうせ・・・アブセルが負ける。」

準備が終わったらしい。
早く始めようと急かしてくるアブセルに、リトは本から目を離すことなす答えた。

488リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/04/27(水) 21:58:28
イスラ>>
生足素敵(*´﹃`*)
いやいや上がってますって!いいな|ू・ω・` )←
カマカマしいってwwwこれでIKKOヘアだったら完全ツボに入って笑い死ぬところだった・・・・・危ない危ないwww

ドラッグストアだと調剤以外に商品並べとか普通の仕事もしますからね、それもあるんじゃないでしょうか|ू・ω・` )
病院はどこも仕事量の割に・・・・・って感じです( •́ .̫ •̀ )ただ、薬剤師としてのスキルアップには1番適しているとは思います|ू・ω・` )

いやいや、名前で検索してみてくださいwww普通に可愛いですからwww多分今イスラさんの頭の中にはピラミッドに住まうミイラが浮かんでるwww
友達にねだっちゃうんですねwwwやはり友達からの誕プレだと値段考えちゃいますし、難しいですよね:(´◦ω◦`):

どうしよう、夢が無さ過ぎて笑えたwww
たしかに、食べ物だとスタッフが美味しく頂けると思いますが、物だとそうなっちゃいそうですよね( •́ .̫ •̀ )

しかも、かなりインパクトのあるオジサンですwww
25歳児です(笑)何だかんだ包容力のあるお兄さんなんですが、三枚目キャラ演じちゃってて周りからの扱いが酷いですね( •́ .̫ •̀ )そして何かこのキャラの性格や立ち位置って(リーダーポジと言うところを除いては)自分に似ていてどうも気になっちゃいますね|ू・ω・` )そして「頑張ルンバー♪♪」とか、「宜しくマッチョっちょ☆」とか、口調が昭和臭いのですが、この前自分も研究室に入る時「ただいマンボウ〜」って自然に口走っちゃって、物凄く悲しくなりました( •́ .̫ •̀ )

え、本当ですか(☆∀☆)そしたら遠慮なく語りまくっちゃいますよwww

あー、刀剣乱舞人気ですよね|ू・ω・` )自分はやってないんです(´・ω・`)友達に凄くハマってる子がいたので何となくは知ってるんですけど、キャラが多すぎてちょっとプレイする気にはなりませんでした(笑)

よし、そうしよう!
政府の設定雑www
設定ちょっと弄っただけでヨハンが物凄く可哀想な人になってしまいましたね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)と言うかジルも可哀想ですね( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )根は優しい子なので、勘違いで殺したなんて知ったら立ち直れないかも|ू・ω・` )まージルはヨハン以外にも色々殺っちゃってるんで今更感もしますけど←
不器用だ・・・・・リトが読んでる本とかも実はヨハンが用意していたりして。ナディア達も色々持ってくるけど、時々おもちゃ箱に見覚えのない新しいおもちゃが増えていたりするんだ。子供だからナディアもヨノも疑問に持たないだけで←
家族を守るために自ら恨まれにいくなんてヨハンめ(╥ω╥`)手記か何かが何処かに残っていて、いずれ誤解が解けるといいな|ू・ω・` )きっとヨハンの本性は爺だけが知っている←

マジかwww
気長に待ってます(●´∇`●)

まさかのwwwいやいや、充分オネェ出来てると思います(笑)てかイスラさん変な性格のキャラ作るの上手な気がします!←失礼

489イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 07:18:50
【バルクウェイ】

バルクウェイに戻って早々に聞かされた情報は、いよいよ世界の危機に不安を覚えるものばかりだった。

龍穴やレイラインなど聞きなれない単語もあったものの、レオールの説明を一通り聞き終えたイスラは、静かにそして誰に言うでもなく口を開いた。

「もはや異論を唱えている状況でもないのだろうが…、やはり戦力的には心許ないな…」

なんせ四神の内の二名が不在なのだ。
こんな時にも関わらず、未だバロンは戻ってこないし。

次に、こんな時にも危機感ゼロな男アグルが、手を上げて質疑を投げる。
南の大陸が消し飛んだと聞かされた時も、彼は顔色一つ変えなかった。

「敵、強いんだろ?俺らに制圧できる見込みなんてあんの?
つーか、そんな危険な遺跡なら防衛なんかせずに、さっさとぶっ壊した方が良いんじゃねーの?」

それから、と彼は続ける。

「メイヤの兄貴達は今何してる訳?
援軍とか待った方がまだ勝機はあると思うけど」

490ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 07:20:05
【ポセイドン邸】

アブセルとリマがセナを捜しに立ち去ったその直後、一人残ったナディアの元に一羽のムクドリが飛んできた。

「おい、そこの人間」

その小さなクチバシから人の言葉が飛び出してきたかと思えば、それは突如人の姿へと形を変えた。

軽やかな動作でテーブルの上に着地する元ムクドリ、改めルドラ。
ルドラは足元の菓子を踏んづけようが、ポットが倒れて紅茶が零れ落ちようが知らん顔で、偉そうに腕を組んでナディアを見下ろした。

「ここ暫くノワールの周囲の人間共を観察していた。
見たところお前がここのボスのようだ。よって、お前に姫へのメッセンジャーを頼むことにする。有り難く思え」

シャム達とは別行動を取っていたルドラは、姿を見せずともずっとノワールの護衛役として彼女のことを見守っていた。
そう、ただ見守っていたのだ。断じてストーカーなどではない。

そしてナディアに伝言を頼むのも、ノワールと直接顔を合わせるのが恥ずかしいだとか、昔の負い目があって気まずいだとか、そんな意味が含まれている、なんてことも決してない。

ルドラは一方的に、そしてぞんざいな態度で言葉を続けた。

「(ノワールの)娘の行方の手掛かりを手に入れた。
どうやら龍穴と言う遺跡を起動させる鍵として、黄龍だとか四霊だとかいう奴等に使われているらしい。
調べてみたところ龍穴は幾つか存在しているようで、その内のどこかに娘が匿われている可能性がある。

それから…メルツェルがやられた。
やったのはオリジンだ。奴は我々長老の命を狙っているんだそうだ。詳しいことは未だ不明だが、姫も十分注意されたし。

…以上だ。ちゃんと覚えたな?」

そう言うとピシリと腕を伸ばし、犬などに命令するかの如く、ノワールのいる方向を指し示した。

「さあ姫に伝えに行け、くれぐれも失礼のないようにな」

491アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/04/30(土) 18:56:30
【ポセイドン邸】

了解、とナディアの言葉に頷いたのが数分前。
アブセルとリマは庭を並んで歩き、セナを捜している最中だった。

「セイちゃんさん、どこ行ったんだろうな」

その疑問に答えられる人間は勿論ここにはいない。
尤も、セナと共にノワールの姿も消えていたことから
、大方ノワールが彼を連れ回しているのだろうとは思うが…。全く困った奴だ。

しかしそれはそれとして…。アブセルはちらりと隣のリマを盗み見る。

(忘れてたけどこの人、リトや姉ちゃん達のご先祖様なんだよな…。
そんでもって初代ポセイドンの後継者で、闇の王子と世界を救ったとか何とか…)

改めて思うと凄い人が目の前にいたものだと思う。
失礼な話、見た限りではとてもそんな英雄的な人物には見えない訳だが。

「そう言えばさ、ポセイドンの姉ちゃん…は長いから、これからは"リマ姉"でいいや」

リマ姉でいいよね?と半場強引に許可を貰い、アブセルは改めて本題に入る。

「リマ姉とセイちゃんさんって付き合ってんの?それとももう二人結婚してるとか?」

492イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/01(日) 18:31:05
リマ>そうなのかー…(--;)
まぁスキルアップは大切ですよね^^頑張ってれば昇給するかもしれないですし!

いやいや検索した上での感想でしたよアレはww
何か…普通なんですよ、別段可愛いとも感じなければ嫌とも思わないような(笑)
これ、よく見るフォルムにただ包帯巻いただけじゃね?的な(笑)

ですよねー、だから誕プレは大体いつもご飯おごって貰うとかそんな程度で済ましてますね

人気キャラによってはバレンタインとかもスタッフだけじゃ食べきれないぐらい貰ってるだろうし、多分人によっては捨ててる所もあるんだろうなー、とか思うと何かね…⬅


口癖移ってる(笑)面白いじゃないですか、もうこの際とことんそう言うキャラでいっちゃいましょうよ(^ω^)⬅
はい、語り尽くしちゃってかまいませんよ。ただ自分の反応は薄いかもしれませんが(笑)何ぶん知識がないのでw

ああ言うのはキャラの多さが売りみたいなとこありますしw
まぁ自分もやってないんで有名どころのキャラぐらいしか知らないんですけどねw
でもやりたいなーとはずっと思ってるんですよ、艦これとかも。何か面倒くさくて手出さず仕舞いなだけで(笑)艦これの島風とかもう最高ですから、Tバック堪りませんから⬅


やー…ジルが心配ですね…、誰か支えて上げなければ…。
それにヨハンも健気で…(T_T)
結構前のレスなんで忘れてるかもしれませんが(笑)爺がヨハンの手記をナディアに渡してたし、それにヨハンの本当の気持ちなんかが書いてあることにしちゃえば良いんじゃないですかね?

いや自分なんて本当普通ですよ(--;)
なんせ車の免許とる際の適性診断?的なやつの結果に「あなたは特徴のない性格です」って書かれてましたから。何故かすごくショックでしたね(笑)
だから多分変な人に憧れてるんだと思いますw

あ、少し相談なのですが、今リトが不思議な空間にいますよね?そこにサンディも登場させたいのですが良いでしょうか?
サンディって今現在、爆発に巻き込まれて生死不明状態なんですよ。どうやって復帰させようか迷ってたので、リマさんさえ良ければ是非…!

493ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 21:30:45
【ポセイドン邸】

アブセル達がセナ達を連れて帰ってくるまで、取り敢えずお茶でも飲んで待っていよう。
ナディアは未使用のティーカップを手に取るが、中にお茶が注がれることは無かった。
何やら鳥が飛んできたかと思えば、それが人間の姿となって卓上のポットを倒したのだ。ポットだけではない。菓子から何までめちゃくちゃだ。

「・・・・・。」

クムドリ、もとい、少年は何やら偉そうに、声高々に用件を述べると、これまた偉そうに何やら命令してくる。

は?ノワール?誰それ?あ、もしかしてリトが連れてきたあの幼女?

疑問は色々あるが、今は"どうでもいい"。

ナディアはむくりと立ち上がれば言われた通りノワールの元へ、行くはずもなく、目の前の少年の襟首を掴んでそのまま地面に薙ぎ倒した。

「おいガキ。食べ物は粗末にしてはいけませんってママから教わらなかった?」

そして続けざまに頭を掴むと、グリグリと地面に押し付ける。

「あんたみたいに躾のなってないガキは初めてだよ。このテーブルの上の惨事どうしてくれんの?え?あんた弁償してくれるわけ?全部でいくらすると思ってんだ?答えてみな?つかあんた誰だよ?誰に向かって生意気な口きいてくれちゃってんの?この世からサヨナラしたいの?」

494リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 22:05:47
【ポセイドン邸】

「え、付き合うだなんてそんな・・・・・!け、けけけけ結婚・・・・・!?」

声が裏返る。
居なくなったセナとノワールを探していたはずなのに、何ということだろう。
アブセルの何気ない疑問にリマは瞬時に顔を赤らめた。

「セィちゃんは幼なじみで、一緒に育ったからお兄ちゃんみたいなもので、たしかに小さい頃は結婚しようねって約束したことこともあるけど・・・・・っ」

リマの反応からは明らかにセナを意識していることが伺えるが、何故か気持ちを否定しようとする。

「でもナディアさんやリッちゃんがいるってことはリマはセィちゃんのお嫁さんになったってことで・・・・・でもでもセィちゃんはリマを妹くらいにしか思ってないだろうし・・・・・!リマのこと子供扱いするし!!」

セナはよく頭や頬を撫でてくれる、嬉しい。ギュッとしてくれる、凄く幸せ。しかしリマは、セナのそのような行動はすべて年下の存在に向ける慈愛のようなものだと感じているらしい。
リマはセナの気持ちを知らない。リマへの想いを、自分の抱えた罪の重さから懸命に抑えていることを知らない。

リマの記憶の中にあるセナは10歳の純粋な少年のままだ。見た目は成長していても、そのような浮ついた感情とは縁遠いように感じていた。そしてリマ自身もまた、神の子として崇められ、清い存在として育てられたため、恋とは無縁に生きてきた。

アブセルの発言にあーだのうーだの声を漏らしながら悩む姿は恋に憧れる年頃の少女そのものだが、リマ本人が自分の気持ちに気づかず、処理出来ていないようだった。

「と、とにかく!そんな関係じゃないよ!残念だけど・・・・・」

ごにょごにょ。

495リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 22:39:21
イスラ>>
ありがとうございます、病院薬剤師は憧れでしたし、出来るところまで頑張ろうと思います(●´ω`●)

なんですとー(OдO`)
これはあれですね、実際に漫画を読んでみるべきだと思います(笑)
あの丸っこいフォルムがたまらないのに←

あー、なるほど!ご飯奢ってもらうのもありですね(●´ω`●)
昨日その友人二人とお世話になった大学院の先輩と一緒に焼肉食べ放題行ってきたんですが、まじで藍ちゃんをプレゼントとして貰いました(笑)
取り敢えずホコリかぶると嫌なのでシエルのフィギュア入れてるブースに居候させてみたのですが、シエルはガチの奴で藍ちゃんはちまキャラなものですから不釣り合いすぎてどう見ても異物混入にしか思えない(笑)藍ちゃん用のケースを探すことにします(笑)

あー・・・・・たしかに、そう考えると捨てられてる気がしてきました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
やっぱ自分は送るのやめとこう←

移っちゃいました(笑)まー、もともと自分も似たようなキャラってこともありますが← え、嫌ですよメッチャ変な人じゃないですか(笑)
てか、「新曲出たよ、このPV見て!この瞬間のレイジがめっちゃカッコイイ!」「ねぇこれ見て!このレイジめっちゃセクシー!」「ねぇこのレイジさ!」的な感じで、友人に話を振る時は藍ちゃん差し置いてやたらその25歳児を褒める発言が多いので「あんた藍ちゃんが好きなんだよね?え?こっちが本命なの?」って疑われたことがあります(笑)
反応薄くても大丈夫です!語りたいだけですから!←
自分漫画好きとか殆ど世間に公表してないので語る場が無くて困ってるんです←

数撃ちゃ当たる感がして何とも形容し難い気持ちになります|ू・ω・` )←
あ、自分もあのキャラなら知ってます。頭になんかぶら下げてる黒髪の←
自分はもしハマったら悔しいのでやめとこうかな(笑)
艦これも何か凄まじい人気ですよね(笑)TバックwwwTバックなんだwwwwww

一応ヨノの存在が支えになる予定だったのですが、加害者と被害者の娘の恋って許されるのだろうか|ू・ω・` )ヨノもジルと同じように恨むべき相手に恋情抱いた自分を許せなくなりそうですね|ू・ω・` )しかもヨノの場合相手は直接の加害者ですし。
ヨハンはリト以上のツンデレかもしれない←
あ!すみませんすっかり忘れてました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)そう言えば貰ってた!思い出した!
自分を罰してくれって言った爺に「罪の償い方は自分で決めな」って言ったのは覚えていたのですが←
じゃあそうしようかな|ू・ω・` )

特徴のない性格wwwたしかに地味にショックですねwww
じゃあその憧れを存分に発揮しちゃいましょう←

おー!どうぞどうぞ(●´ω`●)
あの空間は簡単に言っちゃえばスカイ・ハイみたいな所なんでウェルカムです←
城主のルイは面倒ごとが嫌いなので間違いなく迷惑がってるかと思いますが嫌味に耐え抜いてください←←

496リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/01(日) 23:40:12
【??】

魂を選別する場所、少女はそう言った。
しかし、この場所の訪問者は必ずしも生涯を終えた者ばかりではないらしい。

リトは先程までいた殺風景な城内とは打って変わった、何故だかとても温かみのある庭園内で、勧められるまま茶を口にする。
まだ処理が追いつかない。そんな彼を察してか、このお茶会を開催したらしい女性が色々と説明してくれた。

「死した者の生前の記録を見返し、極楽の場で転生を待つ天の国へ向かうか、自身の罪を悔い改める地の国へ向かうかを決めるのが主人の務めとなります。この場所は魂を選別する場所として、俗に裁きの間とも呼ばれますが、生死の狭間にいる方が迷い込むことも少なくありません。貴方のように生に迷いのある方も中にはいらっしゃいます。そのような方の魂を癒し、ご自身の人生を見つめ直す機会を差し上げるのが私の役目です。」

言って女性は柔らかに笑う。成程、たしかにこの女性には何処か気が安まる雰囲気がある。

「何かご不便がありましたら仰ってくださいね。うちの子達がご迷惑をお掛けしてはいませんか?」

「いや、大丈・・・・・」

ん?子供?

「うちのママだって言ったでしょ?」

女性の発言にリトが驚き顔を上げると、隣に座していた少女アネスが呆れたように言ってきた。
たしかに先程「ママが呼んでいる」的な事を言っていた気はする。しかし、

(若くないか・・・・・?)

目の前の女性は、とてもじゃないがこんなに大きな子供がいるように思えない容姿をしている。少女と形容する見た目ではないが、少なくともうちの長女と同じくらいには見える。
そう言えばルイと言う男も見た目は青年だ。どうなっているのだろう。

「私達は人間ではないので、人とは時の流れが違うんですよ」

奇怪な者を見る表情でもしてしまったのだろうか、女性は可笑しそうにクスリと笑った。
とても柔らかい、優しげな人だ。リトは自分の心が絆されるのを感じた。

「あんた、誰かに似てる・・・・・」

誰だろう、考えた末、一人思い当たる人物を見つけた。
自分の母親だ。人を慈しむ優しげな表情が、母のミレリアの雰囲気と合致する。自分には向けられたことの無い、優しい眼差し。それに気づいた途端、胸のあたりが痛くなった。隠すようにもう一口、茶を口に含む。
そんなリトの姿を見て、女性は目を細める。

「貴方の心が癒されますように・・・・・」

そして何か呟いたが、とても小さな声でよく聞こえなかった。
顔を上げると女性は先ほどと変わらぬ笑みを浮かべていた。

「そう言えば、ママ。」

「お母さまと呼びなさい、もう幼子ではないのですよ。」

「あー、はい、お母さま。カップが一つ多いみたいだけど、パ・・・・・お父さまが来るの?」

アネスの言葉にリトも視線をそちらに向けると、確かにティーカップが一つ余っている。
あの男が来るのか?とてつもなく居心地が悪くなりそうなのだが。

「いいえ、あの人はお忙しいようだからいらっしゃることが出来ないと。別のお客様をお呼びしたのですよ。」

「お客様?」

「えぇ、貴女と同じくらいの女の子ですよ。何があったかは存じませんが、色々と彷徨られた末にこちらへたどり着いたようで。ルイ様に託されました。仲良くなさいね?」

497レオール ◆.q9WieYUok:2016/05/02(月) 09:54:14
【バルクウェイ】

確かに、アグルとイスラの言葉通りだ。
後続の部隊が居るとは言え、会敵必至の遺跡に乗り込み、制圧からの防衛を任せれるのか。

戦略を練り、戦略を整えてから動くべきではないのか。
援軍は期待出来ないのか。

「すまない、イオリとの連携も、他の援軍の期待も出来ない。」

アグルの質問に、レオールは申し訳なさそうな表情で答え、説明する。

「遺跡の破壊、それは真っ先に考えたがそうする訳にはいかなかったんだ。」

まず、レオール率いる108空挺師団のスポンサーは、世界政府に反する多数の中小国家である。
宿敵とも言える世界政府が倒れて以降、その後釜を狙うべく我こそはと中小国家は動き出した。

世界そのものを動かすエネルギーライン、その重要地点である龍穴を抑えるべきだと声を揃える中小国家の意向に反すると言う事は、支援が打ち切られてしまう事を意味する。

「それに、破壊するとしても周囲の影響を予測し、下準備が必要になる。

残念ながら準備をしている暇もない、今は一刻を争う非常事態なのだ。」

遺跡は七つ、内一つは空挺師団が。
三つは黄龍の軍勢が抑えている。

残るは四つだが、手付かずなのは三つだ。
そ今回制圧しようとしているのはその三つだ。

「4/7、半数以上を制圧し、防衛出来れば何とか、世界が闇に閉ざされるのは防げるだろう。

余る一カ所は……闇の巣、ありとあらゆる闇が集まるあの場だ。

あそこならば黄龍もそうそう手を出せないだろう。」

498アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/03(火) 09:18:00
【過去】

「それはどうかなー、なんたって俺修行したからね!
いつもと同じだと思って甘く見ない方がいいよ」

ただの遊びごときで一体なんの修行をしたと言うのか、アブセルは得意気に鼻を鳴らす。
しかも彼のこの台詞、今回が初めてではない。いつも似たような口上と共に自信満々でゲームに臨み、敗北。「あれ、おかしいな?こんなつもりじゃなかったのに」がお決まりのパターンである。
それでもアブセルは何度負けても、今度は勝つ、としつこくリトに挑むのだった。

それは兎も角として、いくら急かしてもリトは読書をしていて中々乗ってきてくれない。
痺れを切らしたアブセルは、彼の背中に被さってのしかかり攻撃を始めるも…
不意に「あ」と言って動きを止めた。

「そう言えばさー、ずっと前に二人で街に出かけたことあったじゃん?
そん時助けてくれたオンジンのこと覚えてる?」

"恩人"。
以前、街でリトが倒れてしまった時、助けてくれたジル達家族のことを彼はそう呼んでいた。

「さっき学校の帰りにちょっと寄ってみたんだけど、あそこの家…何かなくなってた。
道間違えたのかと思って探してみたけど、やっぱり見つかんなかったし…もしかしたら引っ越したのかもしれない」

あそこの兄妹とは、また一緒に遊ぶ約束をしていた。ただその条件が"ちゃんと親に許可を貰ってから"と言うことで、自分は兎も角リトが外に出して貰えないため、結局今の今まで機会に恵まれずにいたのだが…。

裏切られた、と感じたのかもしれない。アブセルはむくれた様な表情を見せる。しかし次には少し不安気な顔になり、肩越しにリトに言った。

「…リトはいなくなったりしないよね」

アブセルは恐れているのだ。
昔の母や可愛がっていた子犬と同じように、大切な人が自分の前からいなくなることを。
リトの肩に触れた手に、知らずと力が入る。

「黙って勝手にいなくなったら怒るからな」

499アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/03(火) 09:19:14
【ポセイドン邸】

なんというか…予想外の反応だ。
普段の仲睦まじい様子を見ている側にとっては、二人が「付き合っていない」という事実の方が驚きだと言うのに。
真っ赤な顔をして慌てて否定するリマを見て、アブセルは思わず吹き出してしまった。
何かこの人すごく可愛いぞ。

「リマ姉、そんなんで良いの?そんなことじゃセイちゃんさん誰かに取られちゃうよ?」

二人は俗に言う、友達以上恋人未満な関係らしい。
リマは現状に満足していないようにも見えるが、それ以上の関係を望むのは贅沢なのではないかと、そう思っているようにアブセルは感じた。

「リマ姉はセイちゃんさんが好きなんだろ?で、好かれたい、とも思ってるんだろ?
ならもっとガンガンアピった方が良いって。
例えば意味もなく抱きついてみるとか…、1日一回は大好きって伝えるとか」

良いこと教えてあげようか?と、アブセルはニヤリとして言った。

「夜中、セイちゃんさんの部屋に夜這いに行くんだよ。そんで、「お願い、私をめちゃくちゃにして!」って言ってみな。トントン拍子に上手くいくから…って、雑誌に書いてあったから」

もっとも、自分がリトにやったときはベッドから蹴り落とされてしまったが。

500ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:01:06
【過去】

「ヨハン様、お客様がいらしております。」

学舎を卒業して数年後、ヨハンはその才能と努力の甲斐あって着々と権力をつけてきた。
最近では本家当主の目に留まり、仕事を任されるようにもなってきた。全て当初の計画通り。このまま上手く事が運べば、本家の跡継ぎである娘との婚姻も夢ではない。

「やぁ、ヨハン!」

全ては順調なのだ。ヨハンの人生の中で、この男の存在を覗いては。

「・・・・・」

「露骨に嫌な顔をするね君は。まぁ、感情を隠さなくなったのはいい事だと思うよ。」

学舎以来の付き合いであるこの男、トーマは卒業後もやたらとヨハンを訪問してくる。因みにトーマの住まいとヨハンの屋敷は決して近い距離ではない。にも関わらず、トーマはその距離を物ともせずに足しげく通ってくるのだ。わざわざヨハンに会うためだけに身支度を整えて。
トーマはやんごとなき家系の御曹司ではあるが、本人はその権力に全くと言って良いほど興味がない。そして財のある暮らしにも未練はないようで学舎を卒業して間もなく庶民街で一人暮らしを始めていた。以前ヨハンが用事で街に出た際に会ったことがあるが、庶民に紛れて暮らすトーマはそれはもうみすぼらしく、目も当てられない程だった。ボサボサの髪に、何処から調達してきたのか不明である品のない瓶底メガネ、ヨレヨレのシャツと言った具合に、庶民と言うよりスラムから抜け出して来たのかと勘違いするような見た目で、一瞬誰だか分からなかった。いや、認めたくなかったのかもしれない。こんな芋男と知り合いだと。あれは庶民に扮しているのではない、この男の素のだらしなさがもたらした結果だろう。
だが今はどうだろう。頭の天辺から爪先まで整い、どこからどう見ても育ちのいい好青年だ。もっとも、これが学舎時代から知っている彼の姿なのだが。屋敷に訪問するのだからと、トーマは芋男を脱してドレスコードを完璧にしてくるのだ。とても同一人物だとは思えない。

「この詐欺師め・・・・・」

「あはは、ヨハン、口が悪いのは相変わらずだね。」

ヨハンはトーマがここへ訪問した用件を聞くが、やはり理由など無かった。用がないのならとその場から立ち去ろうとするも止められる。結局世間話に付き合ってやるのがいつものパターンだ。

501ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:03:35
「あ、そう言えばさ。最近面白い子に会ったんだ。」

どうでもいい話を長々と聞かされいい加減嫌気が差し始めたところでトーマは思い出したように話を変える。クッキーを手に取りながらクスリと笑う。

「良いところのお嬢様なんだけどね、民街に興味があるみたいで頻繁にお屋敷から抜け出してくるんだ。でも見るからにお嬢様な子だから街に出たら浮いてしまってね、実際初めて会ったときはやっぱりお金目的の怖いおじさん達に絡まれてたよ。」

この男が女の話をするなんて珍しい。ヨハンは思わず耳を傾けてしまった。

「だからね、庶民っぽい格好をしておいでって言ってみたんだ。ちゃんと庶民っぽくなれたなら、街を案内してあげるよって。その子、結構頑張ってくるんだけど、やっぱり育ちの良さは抜けなくって・・・・・」

「お前が化け方でも伝授してやればいいだろ」

「化け方って失礼だな。んー、手伝ってあげてもいいけど、これは彼女と僕のゲームだからね。」

言ってトーマはイタズラな笑みを浮かべる。まったく悪趣味な奴だ。
しかしヨハンはこの話で一つ気づいたことがあった。

「気に入っているのか、その娘を。」

「気に入っている、かな。けど、これが恋愛感情と聞かれれば、答えは"ノー"だ。」

僕は誰かを愛するつもりはない、トーマはそう続けた。

「・・・・・」

その理由を、ヨハンは知っている。

「お前の父親は、随分と好色な方だな。以前社交の場で見かけたが、多くの女に囲まれていた。」

「君のその何事も包み隠さないところ、すごく好きだよ。うん、そうだね、もういい歳なのに、未だに"お遊び"をやめられないみたいだ。」

恵まれた環境にありながら、何故自分の立場を嫌うのか。以前のヨハンは理解が出来なかったが、社交界に出るようになった今では分かる。
トーマの父親は底抜けの女好きで、お抱えの女が数多くいることで有名だった。トーマは正妻の子だが、その下にいる弟は第二夫人の子であるらしい。二人は歳が近い為幼い頃から比べられ、意図せず権力争いの波に飲まれていたようだ。特に第二夫人は気性が荒くトーマ母子への対抗心が強い。争い事を好まない性格のトーマには辛い環境だったのだろう。

「僕にはあの人と同じ血が流れているから、女性を幸せにする自信がないんだ。それに、あの子は貴族だから、仮に妻に迎えるとしたら自分の身分を戻さなきゃいけない。幸い僕の母親は権力とかに興味がない人で僕を自由にさせてくれてるのに、愛の為に窮屈な暮らしに戻るなんてごめんだよ。」

「庶民に憧れる物好きな娘なら、庶民として嫁がせる事も可能だろう。」

「その子の親が赦すわけないよ。可哀想だけど、女の子は権力を維持する道具に使われやすいからね。」

「お前は社交の場にも出ないからな、どうせどの家系の娘なのかも知らないんだろう。」

「よく分かったね、その通りだよ。にしても・・・・・」

ヨハンがここまで話にのってきてくれるのは珍しいね、そう言ってトーマは笑みを浮かべた。

502ヨハン、トーマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/03(火) 23:04:32


無自覚だった。たしかに、自分は何故ここまでトーマの話を真剣に聞いてやっているのだろうとヨハンは気付き、顔が熱くなる。

「僕はいいんだ、あの子とこのまま遊べるだけで満足だよ。それよりさ、そっちはどうなの?本家筋のお嬢様。」

何だか気恥ずかしくなった気持ちを誤魔化すかのように咳払いしていたヨハンは、続くトーマの問いに眉をひそめる。またこいつの"聞きたがり"が始まった。

「何度か見かけた事はあるが、一度正式に挨拶したきり会ってはいない。俺が訪問する時は決まって部屋に閉じこもっている。」

「可愛いね、その子。何となく君が旦那様になるって気づいているんじゃない?それで恥ずかしがっていると見た。」

「婚約の話は1度たりとも出ていない。父親の信頼を得る為にはまだ時間がかかりそうだ。」

「君ならやってのけるよ。ここまで頑張ってきたんだからね。ただ、一つお願い。その子と結婚出来たら、ちゃんと大事にしてあげてね?政略
の末に不幸になった僕の母親と同じ目に合わせないであげて。」

まぁ、君は大丈夫だと思うけど。
応援しているよ、トーマは楽しそうに笑った。

二人は知らないのだ。
庶民に憧れるお嬢様と、ヨハンの狙う本家筋のお嬢様が、同じ人物であることを。


【長くなっちゃった・・・・・(´・ω・`)】

503フィア ◆.q9WieYUok:2016/05/04(水) 13:54:56
【十字界】

シャムと別れた後、フィアはDDと共に十字界へ、ジーナの元を訪れていた。

「と、言う訳よ。

私としては今すぐにでも他の長老を集め、オリジンを討伐するべきだと思うわ
。」

群青の街では後一歩の所まで追い詰めた。
メルツェルを吸収したオリジンが如何に強くなろうとも、五人……いや、六人居ればオリジンを滅する事が出来る筈だ。

ノワールに害を及ぼすであろう、と声を掛ければマゼンタとヴェントは釣れるだろうか。
だが、そうそう勝手に動く訳にはいかない。

「だけど、その前に。

ジーナ、貴女に聞きたい事があるの。」

この世に生まれ出た長老はジーナを含めず12人。
しかしながら、ジーナは自分達と同じく長老であり、同じ魂の波長を持っていた。

「貴女、何者?

オリジンについて何か知っているわよね?」

彼女は一体何者なのか、どう言う存在なのか。
ジーナに詰め寄るフィアは静かに、しかし力の籠もった声で、問う。

「答えによっては、オリジンより先に貴女と戦う事になるかもしれないわ。」

交錯する紅瞳、フィアの眼光を眼鏡の奥で受け止め、ジーナはゆっくりと、口を開いた。

「……話始めたら長くなるけど、良いかな?」

ーーーーー

元々、オリジンと呼ばれる存在は三人居た。
その内の一人が、とある者との戦いに敗れ、放浪の末辿り着いたのか再構築が始まったばかりの世界だった。

生まれたばかりの世界を隠れ蓑にし、十字世界を作り上げ、長老を創った。
オリジンの目的はただ一つ、育ち切った長老を吸収し、自らを破った者と再戦を果たす事。

メルツェルを吸収し力を付けた今、オリジンは容赦なく長老達を、そしてノワールを狙って来る筈だ。
特に、言うなればオリジンと同じ存在であるノワールは必ず消されるだろう。

選択肢は二つ。
決別し戦うか、素直に吸収されるか。

戦い、オリジンを打ち取れば存亡の危機は免れるだろう。
また、後る二人のオリジンはこの世界に干渉する事も無い。

ーーーーー

「それと、ボクは君達の従姉妹みたいなモノなんだ。

君達の元となったオリジンとは別個体の、オリジンから生まれたのがボク。

ついでに言うと、オリジンとの戦いで鍵になるのはノワールだよ。

あの娘はオリジンと同じ存在でありながら、オリジンには無いモノを……ボクの血肉を、七大魔王の因子を持っている。

もう一つ言えば、ノワールの近くに居るであろう闇の王子もボクとは別の七大魔王の加護を受けれる筈さ。

とまぁ、聞きたい事とそれに対する答えはこれ位かな?」

504ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:53:54
【ポセイドン邸】

「イタイイタイイタイっ!ちょっ、何すんだ!止めろ無礼者‼」

地面に頭を押し付けられるなんてあり得ない。しかも愚かで下賤な人間なんかに。
ルドラは屈辱に顔を歪ませ、怒りのままに吠えた。

「ラディック!誰か!もう何でもいいからコイツを今すぐ殺せ!」

そこでハッと思い出す。
そうだ。今、配下の者は誰もいないのだ。全く揃いも揃って役立たずばかり。

頼れる者がいないと分かるや、途端ルドラからは威厳のいの字もなくなった。
駄々をこねる子供のように手足をバタつかせる。

「くそっ、くそっ!人間のくせに!
離せよ肉だんご(胸の辺りが)!×××女!××××!×××××
ッ‼」

そして放送禁止級の罵声を口汚く浴びせるが……。

その数分後…

「すみませんでした…。」

そこにはボロボロの姿で土下座をしているルドラの姿があった。
ナディアに余程酷い目に合わされたのか、顔色が真っ青だ。

「僕は姫の臣下でルドラと言うものです。訳あって姫には会えないので、伝言を…お、お願いしたいのですが…」

その口調は若干棒読み気味だが、先ほどとは売って変わった弱腰な態度である。
屈服という文字が彼の背景に浮かんで見えてきそうな程だ。

505サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:55:19
【??】

どうも此処に来る以前の記憶が曖昧だ。
確か自分はバルクウェイの闘技場にいた筈だったと思う。
最後に覚えているのは、闘技会中に賊が侵入してきて大会が滅茶苦茶に荒らされたこと。
クロスと言う少年の力が暴発して、彼そのものが暗黒の虚に変貌してしまったこと。

そして自分はそれを封じるべく、あろうことか無策で虚の中に飛び込んだ。

そして…、気がついたら此処にいた。

初めはついに天国に来てしまったとばかり思ったものだが、聞いた話ではどうやら違うらしい。
ここは死者の魂を選別する場所だと、一番偉い人に教えてもらった。
では自分は死んだのだろうか。そう訊ねると男は首を横に振る。"正確にはまだ死んでいない"、と。

まだ、とはどう言うことだと疑問に思ったが、その時のサンディの感想は…「ふーん」だった。
自分でも驚くほど他人事で、不思議なことに危機的感情が全くわいてこなかった。まるで不安とか恐怖とか、負の情報を伝達する脳の回路が切断された感じ。

現に今だってお茶会に誘われたものだから、呑気にそこに足を運んでいる。しかも割りとルンルン気分で小さくスキップしながら。

「ごめんなさい、お待たせしましたー…」

お茶会の席には既に人が集っていた。席に腰かける面々を順に眺め、そこでふとサンディは目を見張った。

「あれ?あなた…セナさん…?
いや違うな………あ!もしかして姉御の弟くん!?えっと確か…そう!リト君!」

彼を見たのはバルクウェイで深淵から救い出された後の姿だけ。ずっと眠ったままだったから直接喋ったこともないが。
少しの間だけ行動を共にしていたセナと顔がそっくりだから、直ぐに分かった。

「良かった!目、覚めたんだね!」

サンディは嬉々とした様子でリトに駆け寄り笑顔を向けた。

506イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:56:47
【バルクウェイ】

(闇の巣…)

レオールの口からその言葉を聞くや、アグルは思案気な面持ちでそれきり黙りこんでしまった。

代わりにイスラが言葉を挟む。

「こんな時でも自国の利益か…。
失敗すれば世界そのものがなくなるってのに…」

何だかやるせない様な気持ちになる。

しかし、それも仕方がないことだと思う。
自分達のように前線に出て戦う役割の人間もいれば、それを指揮する人間、今の戦いよりももっとずっと先を見据えて動く役割の人間もいる。

適材適所と言うやつだ。
全ての戦いが終わった後、社会を立て直していくには、むしろ彼らのような人間の力こそが必要となるのだろう。

「…状況はキツいがやるしかないな。なんせ世界がかかってる」

ここにいる数名で背負うには余りにも重すぎる荷物だが。
そこまで言うとイスラは不意に一同を見渡し、重い空気を吹き飛ばすかの様に破顔した。

「皆、自分の力を信じて全力を尽くそう。そして必ず生きて帰ってこよう」

507リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/08(日) 22:30:17
【ポセイドン邸】

いきなり抱きつく・・・・・のは結構無意識にやっている。大好き!って言葉もよく発言している気がする。
しかしセナは動じていない。微笑み返してくれることもあれば、無反応な時すらある。

だがアブセルの言葉の中に一つ実践したことのない事柄があった。

「よばい・・・・・?」

リマは首をかしげる。
ヨバイとはなんだろう。めちゃくちゃ?

「それやると上手くいくの?夜中に?セィちゃんきっと寝ちゃってるよ??」

あ、添い寝的なものだろうか。

「小さい頃は、セィちゃんとよく一緒に寝てたなぁ。リマ、雷が怖くて夜眠れなくなっちゃうから、心配してセィちゃんがいつも来てくれるの。リマが寝るまで傍にいてくれるつもりで来てくれるんだけど、いつもいつの間にか二人で寝ちゃってるの。懐かしいなぁ・・・・・」

リマは昔を思い出して楽しそうに笑う。
そう言えば・・・・・

「今もやっぱり夜の雷は怖くて、どうしても怖い時はセィちゃんのお布団に入っちゃうの。セィちゃんは背中ポンポンしてくれるから安心するんだ・・・・・」

そこまで話してリマはハッとする。さすがに恥ずかしい事を口走ってしまったことを自覚したのだ。

「・・・・それで・・・・・朝起きていつもジュノスさんに怒られるの・・・・・」

しかしここまで言ってしまえば引くにも引けず、声は小さくなりながらも最後まで言い切った。

508イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:02:21
リマ>漫画かぁ…、機会があれば読んでみます⬅

おぉ、良かったですね^^
しかし異物混入ってwwちゃんと別のケース用意するのが偉いwあ、誕生日おめでとうございます!(^ω^)

いや、ただの自分のネガティブ妄想ですので、本当のところは分かりませんよ?(笑)ああ言うのは気持ちの問題なので、リアルの事情は気にしちゃ駄目なんだと思いますw

いやいや大丈夫大丈夫、変じゃない変じゃないw
てか本当に本命レイジなんじゃないの?(¬_¬)⬅
公表すればいいじゃない(笑)

頭になんかぶらさげてる黒髪……誰だ(笑)情報がアバウトすぎて分からんww
悔しいって(笑)まぁ秋ぐらいにアニメ化するみたいなので、見ましょうよ(^ω^)⬅
そう、あんなロリロリしいくせにTバックなんですよ。はー可愛い⬅

うーん…、自分的にはジルヨノで引っ付いて欲しいですけど。ただそれはそれで二人とも辛くなりそう…。その感情を乗り越えて幸せになってくれれば良いのですが…(--;)
このぉヨハンめ!可愛いじゃないか!( σ´∀`)σ⬅
そうしましょう!⬅

スカイハイw
ありがとうございます!頑張ります(笑)

509DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:03:41
【十字界】

十字界に着いた頃には、少なくともジーナの話に大人しく耳を傾けられる程度には、DDの精神状態も回復していた。
そして、オリジンについての一連の話を聞いたのち、彼は大きな溜め息を吐いた。

「何だか…正直がっかりだわ。
あの人は本当に自分のことしか考えてないのね…」

なんというか、愛がない。とDDは言う。

オリジンが長老達を造った理由も、そして己の消滅を逃れる為、長老達がオリジンに反旗を翻すのも愛がない。

「分かる?ラブが足りないのよラブが!
アタシ達の心に愛がないばっかりに、こんなことになってしまったの!」

また面倒くさい高説が始まりそうである。
しかし続くのは長いため息だけ。どうやらそれだけの元気もないようである。

「とにかく…ごめんなさい。アタシは話を聞いてもまだ踏ん切りがつかないの…。
少し時間をちょうだい。他の長老達の意見も参考にしたいの」

消滅か決別か。DDは未だ決断を決めかねていた。
とは言え、気持ちは傾きつつあるようで。
ノワールに害が及ぶのだけは何としても避けたいと考えていた。

510レオール ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:21:19
【バルクウェイ】

質問に対する答えに応えず、口を閉ざしたアグル。
そして、アグルとは対称的に声を挙げるイスラ。

彼の言葉に一同……アグル以外の面子、レオール、バッハ、そしてメイヤも頷く。

「すまないな……出来うる限りの援護、支援はさせてもらう。」

確か世界の命運を背負うには人数的にも重過ぎるかもしれない。
だが、一騎当千と言う言葉もある。

「出発は明日の朝にしよう。

皆の力を、無事を信じている。」

ーーーーー
「と、言う訳さー。

側近のマルトは戦争孤児、バッハはエクソシストの家系、どっちも異能者だ。

世界政府に追われる異能者や敗残兵やらを取り込み、師団は大きく成ったってこった。

まぁ、その中でも一番おっかなくてヤバい奴が裏切ったのは色々と不味いかもな。」

バルクウェイを発って二日、東南地域の大河を進む船の上、ウエスタンハットを被った男は調子外れな口笛を吹いた。
そろそろだな、と帽子の男……ビリーは船を泊め、前方を指差す。

「東南地域の龍穴遺跡はジャングルの奥に眠るピラミッドの中。

激しい戦いになる様なら退いた方が良さそうだ、側の大河から水が流れ込んで来たらお終いだからな。」

男の指差す方、そう遠くはなく見えるピラミッドに、レックスは目を凝らした。
大河のほとり、密林の先。

「手はず通り、僕とアグルの二人で遺跡へ侵入。

制圧の合図は無線機で、制圧後は後続の部隊と合流。

中継連絡は任せました。」

短く、最低限の作戦事項を口にし、レックスは歩き出す。
その歩調は速く、次第に早足、駆け足となり、レックスは一陣の風となって密林を駆け抜けた。

511レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:23:30
【東南地域/龍穴遺跡】

遺跡の中はカビ臭く、澱んだ空気が充満していた。
風を操る力で気流を生み出し、侵入口から絶えず新鮮な空気を送り込んでいるものの、如何せん臭いが鼻につく。

(澱んだ空気。

侵入痕も見受けられませんね……)

バルクウェイからの道中と同じく、アグルとの会話は必要最低限だ。

「アグル、そろそろ最深部の筈です。

今の所は僕達以外の侵入者は居ない様ですが、用心を。」

そして、自身もまた三叉鎗を構え、進んだ先。
淡く光る幾何学模様が張り巡らされた広い部屋、遺跡中枢へと辿り着いた。

燐光に満ちた部屋は、驚く程空気が澄んでおり、やや肌寒い。
広さは野球場程か、高さも有り、円柱形の様だ。

光る模様が走る床をゆっくりと踏み、レックスは最深部中央、台座の様な何かへと歩を進め……止めた。
眼鏡の奥、黒瞳が見据えるのは台座に腰掛ける小柄な女性。

「……先回り、されていた様ですね。」

くすんだ金髪と鮮やかな碧眼、身を包む鎧は重厚だ。
謎の人物、恐らくは敵であろう女性にレックスは鎗の矛先を向け、問い掛ける。

「貴女は、何の用で此処に?」

しかし、その問いの答えが来るのを待たず、疾走。

「私はラセツ。

黄龍の使いで、此処に来る者を皆殺しにしろと言われたの。」

女性が答えると同時に、勢いの乗った刺突を繰り出した。

「きっと、私は貴方達の敵。

貴方達も私の敵でしょう?」

風を纏ったその一撃は、台座から降り立った女性の片手、たった二本の指で止められてしまった。
その様にレックスは僅かに苦い表情を浮かべ、口を開く。

「そうですね、やはり敵の様です。

申し訳無いですが、容赦はしません!!」

そして、ラセツの名乗る女性が黄龍の軍勢、敵である事を確認出来たと同時にレックスは突き出した鎗を更に前方へと押し込む。
穂先でラセツの手を、腕を絡め取り、身を捩って反転。

中枢入口に居るであろうアグルへと投げ飛ばし、返しの穂先を横薙に一閃。
投げ飛ばしたラセツへと、巨大な風の刃を追い打ちにと放った。

「アグル!!任せましたよ!!」

512ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/05/11(水) 16:44:31
【ここにきて二人のレス速度が上がってて驚愕orz

レックスアグル組には新キャラあてがったんだけど、イスラメイヤ組にはどうしよう、既存の誰かを出すかはたまた……

一応出せる新顔は居てるんだけど、シデンさん出てきます?

とと、遅なりましたがリマさん資格試験合格おめおめ!社会人一年目ガンガレ!】

513イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/11(水) 17:37:08
大丈夫また遅くなるもよう(´∀`)b⬅
ゴールデンウィーク明けてから忙しくなっちゃったぃ
レスはポツポツ返していきますー

シデンさんはー…、ちょっとまだ待機で。すいません、新顔さんお願いしますm(_ _)m

514リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:46:41
【過去】

「・・・・・リトは此処から出られない。」

"リトはいなくならないか""勝手にいなくなったら許さない"……おそらくアブセルはリトから"自分はいなくならない"などの意思をもった返事を求めているのだろうが、リトはただ事実のみを口にする。
リトはこの部屋から、一族の監視の目から逃れることが出来ない。勝手にいなくなるなどの行為は、自由が赦される者にのみ出来ることなのだとリトは暗に示していた。

「いなくなるのは、アブセルの方。」

リトとアブセルが離れることがあるとすれば、それは自由の赦されるアブセルの方が自分の意志でこの屋敷から出ていく時だろう。今一緒にいるのだって、アブセルが勝手に近づいてくることによる結果なのだから。

それにしても、

「・・・・・。」

重い。
暫く大人しくアブセルによるのしかかりを受けていたリトだが、不意をついて後頭部を上げアブセルの鼻頭に頭突きを食らわす。

出会った当初は何をしても反応を示さなかったリトであるが、最近では極稀に、このような感情のある仕草を見せるようになっていた。
それだけアブセルによるスキンシップが鬱陶しいとも言える。

515リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:49:26
ヤツキ>>
ありがとう!
自分もイスラに同じく、頻度がまちまちだから早い時もあればめっちゃ遅い時もあって、分からないよ(笑)

516メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/14(土) 10:28:13
【東南地域/遺跡付近】

レックスとアグルが遺跡へ向かった後。
船の甲板で煙草を吹かすビリーは、無線機を、会敵の信号を受信したソレを握り締める。

空挺師団長のレオールを筆頭に、参謀、両翼共に異能力者だ。
非能力者の隊長分隊長も多々居るが、やはり戦力として上がるのは異能力者だろう。

(こんな時こそあの野郎、裏切り者のビカが居りゃあ良かったんだがなー…)

中でも、マルトと共に師団の両翼として武勇を馳せた男、ヴィカルトの強さは筆舌しがたい程だった。
強さをだけを追い求め、強者との闘いを楽しむ凶戦士ではあったが……

「まっさか黄龍側に着いてる訳無ぇよな、流石にビカ相手じゃ団長以外に勝ち目は……」

ーーーーー

【砂漠地帯/龍穴遺跡】

指定された遺跡は砂漠地帯にあり、夜の内に侵入を果たした遺跡内は静まり返っていた。
何者かの侵入痕はあるものの、数は一人分だけであり、予測していた大多数の敵勢力との戦闘は回避出来そうであった。

否、大多数の敵との戦闘は回避出来、呆気ない程簡単に遺跡の最深部へと到着したのまでは良かったのだが……

口腔内の血を吐き捨て、メイヤは再び剣を構える。
構えた剣の切っ先には長い銀髪の男。

(強い、強過ぎると言っても過言じゃない……)

イスラと共に到着した最深部には、一人の男が佇んで居た。
黄龍の使い、ヴィカルトと名乗る男は遺跡の装置を起動させるが、止めたければ剣を抜けと、イスラとメイヤに剣を抜かせた。

そして、十数分後。
圧倒的な強さを見せるヴィカルトに対し、メイヤは攻め倦ねていた。

イオリにも勝るとも劣らない、寧ろ上回っているであろう剣術、体術。
そして結晶……珪素を操る異能は絶対的な防御力を見せ、闇の力を失ったメイヤでは突破は不可能。

会敵し、剣を抜いたからには退く訳にも行かない。
しかし、この敵を倒せるかと言われれば……

「どうにか、攻撃を通せないか……

イスラ、イスラの炎ならあの結晶の鎧を破壊出来るだろうか?」

517ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 18:07:08
【ポセイドン邸】

「は?嫌だよ面倒臭い」

ルドラが大きく出ようと小さく出ようと、ナディアの答えは始めから決まっていた。
彼女は基本的に誰かの為に動いたりしない。その相手が知り合いでないのなら尚更。

ボロボロになりながら屈服するルドラを前にしてもナディアは全く動じず、全く興味無い様子で手をヒラヒラ振りあしらう。

「今こっちも立て込んでんの。自分で会えないんだったら諦めるか・・・そうね、あんた私たちのこと覗き見してたなら知ってるでしょ?今さっき目付きの悪い不良みたいな奴と女の子が席を外したの。あの二人があんたの姫?とやらと一緒に消えた男の子探しに行ってるから、追いかけて伝言頼んでみたら?」

518リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 22:03:24
【???】

「は?誰・・・・・?」

客がもう一人来る。女性の言葉通り、まもなくして1人の少女がやって来た。それはいい。
驚いたのは、その少女が自分を知っていると言うことだ。そして馴れ馴れしい。
いつか会ったことがあるのだろうか?記憶がない。リトは考えを巡らせた所で、少女の言葉からある単語を拾った。

「姉御?あんた、ナディアの知り合い?」

彼女はリトのことを姉御の弟と言った。姉は二人いるが、そう呼ばれる可能性があるのは長姉の方だろう。

それより、目覚める目覚めないとは一体・・・・・

「あんた、"あっち"では眠った状態なんじゃない?良かったね、体は無事みたいだよ。」

リトの疑問を察してか、アネスがクッキーを食べながら口を挟む。
なるほど、元の世界に実在する自分の現状を知っているということは、深淵に落とされた自分の体は救い出されているのだろう。

納得しつつ、リトは少女を見た。
それにしても・・・・・

「あんた、此処で会ってる時点で俺が無事じゃないって分かんないの?あんたも死にかけてるんだろ?馬鹿なの?」

この場所が普通の世界でないことは聞かされているはずだ。女性の話によればこの少女も死んではいないようだが、少なくとも生死の境くらいにはいるのだろう。

519アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/15(日) 22:51:45
【ポセイドン邸】

「………二人で一緒に寝て何にもないの…?本当に?朝まで?」

アブセルは信じられないと言った様子で目を丸くする。
と言うか同棲までしてるのに恋人同士でも何でもないなんて…。おまけに雷が怖いとか、リマ姉はお子ちゃまだな。などと、負けず劣らず恋愛偏差値の低いアブセルは苦笑する。でも背中ポンポンはちょっと羨ましい。

「あのさ、いい?夜這いってのはこうやって相手とー…」

言ってアブセルは何の気なしにリマの腕を取る。
彼女の腰に手を回しかけたところで、はたと動きを止めた。

…………。

(あ…あれ?)

何故だ…。なぜ自分はドキドキしているんだ。

もしこれがリトなら、ふざけて抱き締めたり押し倒したり、下ネタ発言だって何だって出来るのに…。
何故か相手がリマとなると、例え冗談でも抵抗を感じてしまう。

それ以上踏み込むべきか決め兼ねていたアブセルだったが、リマの純粋無垢な瞳に見つめられていることに気づき激しく動揺した。顔を赤くして反射的に彼女から身を離した。

「や、…やっぱり何でもない…!
てかこんなことして遊んでる場合じゃないし!早くセイちゃん見つけないと!」

自分から話を振っといてとんだ態度ではあるが、リマに背を向けると、一人のしのしと早足で先を歩き出した。

520リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/17(火) 19:11:45
イスラ>>
さては乗り気でないなwww

かわいいです(●´ω`●)
うた〇リと黒執事は同調出来ませんでしたねwww嵩張りますが、別のケースに入れた方がやっぱりしっくり来ましたwww
ありがとうございます(●´ω`●)でもそろそろ年取りたくないwww

完全自己満足ですもんね、あれ。自分もイスラさんと同じ意見です(笑)

いや、絶対変な人ですって(笑)
いえいえ、好きなのは藍ちゃんです(●´^`●)
たしかに暇すぎてテレビのチャンネル回してる時「あ、う〇プリやってる」ってなって、チャンネル飛ばそうとした自分の手を止めたのはレイジでしたけど!「あれ、うた〇リにイケメンいる」ってなったけど!レイジは見掛け倒しなんです、あんな残念な人だとは思いませんでした!はじめのトキメキ返して欲しい( ー̀ н ー́ )
でもすぐ様マイエンジェル(藍ちゃん)が画面に映り、「なんか電波な子いるwww」ってなり、「つかショタっ(♢ω♢)」となりまして、めでたく「可愛い!好き!!」に至りました(●´ω`●)

自分は一般人にしては漫画に精通ひすぎており、かと言ってオタクと言うにはまだまだ甘ちゃん過ぎて、凄く微妙な立場なんです(´・ω・`)

あれです、刀剣乱舞の表紙を飾ってる袴の人。
え、あれアニメ化するんですか(OдO`)
うたプリも秋からやるみたいなんですけど、どっちが金稼ぎますかねwwwwww
可愛いんだwww

まーきっと、そこんとこはナディアが何とかするでしょうwwwあんなんでも頼りになりますしwww
まさかヨハンが可愛いと言われる日が来ようとはwwwツンデレこじらせると大変ですね←
よし、そうしましょう!!

スカイハイが通じたwww
あ、あの場所は死者も通る道だからヨハンも裁き受けに来れるぞ?あれ?いや、私は何も気づいていない←
そう言えば今リトたちがいる場所、良い名前が思いつかないで【】の中何もかけなくて困ってるんです( •́ .̫ •̀ )←

521ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/05/18(水) 20:08:04
【十字界】

「ラブが足りない……確かにそうだね、この世界は殺伐とし過ぎてラブが足りない。」

DDの言葉にジーナは目を丸くし、しかしすぐさま彼の言葉に肯いた。

「でも、ラブで世界を救おうにも、オリジンに牙を剥こうにも準備は必要さ。
今すぐ決めろなんて言わないし、言えないよ。」

DDらしいと言えば彼女……彼らしい言葉にジーナは笑みを浮かべる。

「取り敢えず僕は行方知れずの他の長老を捜してみるよ、何かあればまた連絡くれると嬉しいかな。」

単独行動は避けて、なるべく二人一組で動くように、どうしても一人になるなら気をつけて。
と、ジーナは付け足し、開いたままの書物へと視線を落とした。

その様子が意味するのは会話の終わりだろうか。
フィアはどうする?とDDへ目を向ける。

「二人一組、丁度良いとは思うけど……」

522アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:11:10
【東南地域、龍穴遺跡】

カビ臭い遺跡の最深部に待ち構えていたのは、重厚な鎧を身に纏った一人の女性。

ただ引っかかる点は、ここに辿り着くまで遺跡内部に人が進入した形跡が見られなかったことだが…。
しかし今それを考えている暇はない。相手が一人ならこちらも好都合だ。

「あの眼鏡…、女相手に手加減なさすぎ…」

容赦のないレックスの畳み掛けを眺めつつ、アグルもまた武器を構える。

そして最速の踏み込みから、雷撃を纏った刺突の嵐を繰り出す。
織り成す槍撃の衝撃波が、吹き飛んでくる敵に向かって放たれた。

523サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:14:08
【?】

「あっ!た、確かに…!」

指摘されて思い出した。そう言えばここは通常とは異なる世界だった。

「じゃあリト君こんなところで何やってるの!?
早く帰らないと、姉御すっごい心配してるよ!」

浮かれている場合じゃないと分かるや、サンディの表情はそれまでとは一変。今度は膨れっ面でリトに詰め寄る。
今まさにお茶会を楽しみに来た彼女の言えた台詞ではないが、自分のことは眼中にはないようだ。

「あ、それから!あんたじゃなくて、あたしはサンディって言うの。これでも一応アマテラスの力を継いでるんだから!」

524レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/21(土) 20:00:05
【東南地域/龍穴遺跡】

雷を纏った槍撃と巨大な風刃による挟撃は、人一人を粉砕するには十分以上の威力を持っていた。
しかしながらラセツは挟撃の直撃に耐え、腕の一振りで粉塵を払い、その姿を現した。

(……一応は予想していましたが、無傷、ですか。)

悠然とした姿でアグルの前方へ立つラセツに、ダメージは見えない。
最重要地点に遣わされたのはたったの一人。

しかしそれは、その一人が単独で遺跡を制圧、防衛出来る実力を持つと言う事を表している。
決して手を抜いた訳でも無い刺突を、アグルとの挟撃を無傷で防いだその実力は、少なくとも自分達と同等かそれ以上と見るべきだ。

レックスは再び三叉鎗を構え、鎧を纏う女、ラセツを注視し……放たれた拳を、寸の所で受け止めた。
予備動作は全く無く、寧ろ受け止めれたのは単なる偶然、強いて言うならば本能的な直感のおかげか。

捻りを加えた拳の一撃から続くのは、逆の手による喉への一突。
それをレックスは手の甲で叩き落とすと同時に、三叉鎗を捨てて短剣を腰から引き抜く。

(予備動作も無く!まるで瞬間移動ッ!?)

逆手に握る短剣でラセツの脇腹を狙うも、肘鉄により刃は粉砕。

(アグルよりも、背後の僕を狙うのは確かに意表を突けますが……ッ)

砕けた刃の破片が地に落ちるよりも速く。
踏み込んだ足裏は地を砕き、肘鉄から繋がる掌打は、寸分の狂いもなく、レックスの胸部を打ち貫いた。

(何よりも、僕らの攻撃をどうやって防……!?)

何かが弾ける様な澄んだ音が最深部に響き渡り、続く破砕音……吹き飛んだレックスが、最深部中央の台座の様な物に激突し音を立てた。
二種の相反する音が止んだ後、レックスが立ち上がらないのを確認したラセツは、残るアグルへと身体を向ける。

「次は、貴男か?」

525リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/22(日) 20:23:36
【??】

好きで此処にいるわけじゃない。
早く帰れなどと偉そうに説教をたれ始めたサンディに、今度はリトがムッとする番だ。

「余計なお世話だ」

かと言って「戻りたいけど方法が分からない」などと素直に言うはずもなく、リトは途端に不機嫌になって、自棄糞気味に手元にあった紅茶を飲み干した。

「・・・・・」

紅茶は苦手だ。クセのある匂いと味がどうも体に合わない。ちょっとずつ口に含むなら飲めないこともないが、一気に飲むとやはり紅茶の味が強調されてキツイものがあった。

「あんた、アマテラスだって?」

口直しにクッキーを食べ、落ち着いたところで先程のサンディの名乗りを思い出す。

アマテラス・・・・・ポセイドンに並ぶ四神の一人だ。

「あんたはどっち?今の人間?それとも初代?」

自分でも奇天烈な質問をしていることは自覚しているが、ポセイドンの力を受け継いだ者の初代であるリマに会ってしまっている以上、仕方の無い疑問だった。

そして、彼女が初代であるのなら、聞きたいことがあるのだ。

「アマテラスも、トールも、フレイヤも、何故闇の王子を始末しなかった?」

ずっと疑問だった。世界を滅亡の危機に追いやった一因である闇の王子を、何故生かしたのか。仲間でありながら、敵であるはずの王子に惹かれていくポセイドンを何故止めなかったのか。王子が後に改心し世界を救った事実があるとしても、今現在英雄として語り継がれていることが気に入らない。ポセイドンとの関係を悲恋を語る美談とされているのも気に入らない。

王子の存在のせいで闇は滅びなかった。二人が子を繋いだせいで、こうして闇は受け継がれてしまった。

「ポセイドンには出来なくても、あんた達には出来たはず。王子は消えるべきだった。」

そう口にした途端、ズキリと胸が痛くなった。リマの泣く姿が脳裏に浮かんだのだ。王子を求めるリマの姿を知っている。離れ離れになってとても不安そうだった。凄く会いたがっていた。表では笑顔を見せていたが人目のないところで嗚咽を漏らしている姿を見かけたこともあった。別人だと分かっていながらも自分を王子と重ねて安心を得ようとしていることにも気づいていた。
王子が消えたら、彼女はどうなっていたのだろう。ちゃんと生きていけたのだろうか。
彼女の事を思うとこんなに辛くなるのは何故だろう・・・・・

「・・・・・」

自分は残酷なことを言っている。分かっている。でも、止まらない。

「闇の王子さえいなければ俺は生まれずに済んだのに・・・・・」

526イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 01:59:01
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

流石単身で遺跡に派遣されただけのことはある。
悔しいが相手の剣術や身のこなしは自分よりも数段は上手だ。
二人係りで苦戦を強いられているのが良い証拠である。

(次に備えて体力温存…なんてこと言ってられないな…、全力で行くしかない…)

どうも彼の鎧は耐熱性に優れているようで、小手先だけの技では通用しない。

「分からないがやってみる…、フォローは頼む…!」

イスラはそうメイヤに言うと、構えを取った。
イスラにとっては数年前…、この時代から見れば何百年も前の出来事である、"塔"での戦いで見せた白き焔が顕現し身を包む。
彼の髪は赤茶から白髪へと染まり、背からは白く燃え立つ翼が広がった。

「いざ…!」

目映く光る剣は大気を焦がしながら一気にヴィカルトの元を駆け抜けた。
一閃、二閃、三閃…。剣筋が光る度、白焔の業火が舞い上がった。

527アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 02:02:13
【過去】

「いった!」

不意に頭突きを食らい、後ろに倒れるアブセル。
だが彼はどんな仕打ちを受けようと、自分の行動にリトが何かしらの反応を返してくれることが嬉しいらしい。
にんまりと笑うや素早く起き上がり、懲りずにまた抱きついた。

「俺はいなくならないよ。ずっとリトと一緒にいる」

なんならポセイドンの神様に誓ってもいい。とアブセルは言う。

「リトは知らないだろうけど、俺リトと出会えて変われたんだよ。
何かさ…前まではずっと狭くて真っ暗なところに閉じ込められてる感じがしてた。すごく怖くて寂しくて…、抜け出したくても何か身動き取れなくて…。
…でも、それをリトが助けてくれたんだ。
リトが俺を明るいところに連れてってくれたって言うか、リトそのものがキラキラしてた…?って言うか…」

上手く言い表せないのが、もどかしい。
少ない語彙の中で暫く一生懸命言葉を探していたアブセルだったが、直ぐに諦めた。

「とにかく!俺はリトと一緒にいる時間が一番楽しいってこと!
だから、同じぐらいリトのことも楽しませてあげたい!リトに恩返しできるまではずっと側にいる!」

アブセルはアブセルなりにリトを喜ばせようと、あれやこれやと考えて行動していたらしい。
もっともその八割方は、彼自身の願望が前面に押し出されている為、周囲には伝わり難いが。

「いつかリトだって、ここから出られる日が来るから安心しろよ!
いまディア姉達がその為に色々準備してるんだってさ。だから"リトお衛り隊"の構成員である俺もそれに協力するんだ!」



【長々とアブセルの過去話に付き合って頂きありがとうございました!(^ω^)
何か止め時が分からなくなってきましたが…(笑)取り合えず自分の方はやりたいことも大体やったので、もしリマさんが良ければ切りの良いところで纏めて終わりにしようかなーと思いますが…如何でしょ?】

528メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/24(火) 11:09:55
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

燃え上がる白焔に、メイヤ同様ヴィカルトも目を細めた。
先程までとは違う、猛々しいその焔はイスラの全力だろうか。

「師団は理由が無いと剣を抜かない者ばかりだった。
貴様達もきっとそうなのだろうが……面白い、私を楽しませてみせろ!」

白焔を纏い、その背からは燃える白翼が。
大気を焦がし、迫るイスラの剣閃は業火を巻き起こす。

珪素結晶の鎧が白焔を受け輝き、瞬く間に燃え上がる。
耐熱性などまるでなかったかの様に火が上がる鎧を脱ぎ捨て、ヴィカルトはイスラの剣を水晶の剣で受け流し、捌く。

しかし一閃、二閃ごとに水晶の剣も融解し、三閃目を受け止める事は叶わず。
剣を投げ捨て、ヴィカルトは回避行動を取ろうとするも、そこで死角からの一撃……背後に回ったメイヤの一突きが迫る。

だが、それを見越していたかの様にヴィカルトは身を反らし、その場で横回転。
360度水平に回転する身体に続く様に、彼の足元からは大小様々、無数の結晶の剣が飛び出した。

渦を巻ながら広がるそれは、まるで花弁の如く。

「く、そ……っ」

間一髪、即死を免れたメイヤは呻き声を上げる。

(闘技場でアグルが同じ様な技を使っていたから、咄嗟に反応出来たけど……!!)

呻き声と共に込み上げる血反吐を吐き出し、文字通り、剣山に突き刺さり動きを止められたままヴィカルトを睨んだ。
風魔装束を着込んでいた為に即死は免れたものの、身体のあちこちが切り刻まれ、メイヤは動けない。

そんなメイヤに視線を向ける事無く、ヴィカルトは再び水晶の剣を生成。
イスラへその切っ先を向け、凶笑を浮かべた。

「白く輝くその焔、自らで受けてみるか!?」

その瞬間、白焔の輝きに照らされた剣山が、その輝きを乱反射させ光を増大させる。
周囲を塗り潰さんばかりに増した光はヴィカルトの持つ剣へ収束し、臨界点を突破。

水晶の剣を瞬時に蒸発させながらも、莫大な熱量を持った光線が、イスラへと放たれた。

529リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/26(木) 20:23:08
【ポセイドン邸】

「?」

リマは不思議そうに首を傾げるも、アブセルの心情など知るはずもなく、その行動を不審がることもなかった。
そして、

「あ、セィちゃん!」

庭の中を一通り歩いたところで、漸く目的の人物を見つけた。
リマはセナの姿を見るや、嬉しそうに駆けていく。

-----

「何じゃと・・・・・」

セナの口にした言葉に、ノワールは驚愕の声を漏らす・・・・・

「到底信じられぬ・・・・・」

十字界に、自分の知らない秘密が存在し、何かが暗躍している。
黒十字はその全貌にしろ一端にしろ何かしらの情報を入手し、巻き込まれぬように手を引いたのか。その時点で奇しくも自分は既に身篭っており、向こうの目的は果たしていたというわけか。

「甘く見られたものよ」

ノワールは自嘲気味に笑った。

「だぁれだ!」

その時、この場の空気に合わず緊張感の全くない声が入る。
リマが背後からセナの目を隠しじゃれついたのだ。
途端、セナの表情がふっと柔らかくなる。
先程までの冷たい雰囲気が嘘のように。憑き物が取れたように。

「セィちゃん見つけた!ナディアさんが呼んでるよ?行こう」

二人がどのような会話をしていたのか疑問にも思わない様子で、リマは無邪気にセナの手を引いていく。
セナ自身もまた、これ以上話す気はないようだ。

「そなた、何故あの娘を連れてきた」

言いようのない怒りが込み上げ、ノワールはアブセルを睨む。

「わらわはあやつと話をしておったのだ。邪魔をするでない。」

530サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:32:22
【?】

「え…、えっと……」

思ってもみない切り返しにサンディはすっかり困惑してしまった。
そもそも、なぜ闇の王子を始末しなかったのか、そんなこと疑問に思ったこともなかったのだ。

「残念だけど…、あたしはその時の当事者じゃないからその問いには答えられないよ…」

言ってサンディはしずしずと席に腰を下ろす。しかし身体はリトに向けたままだ。

「でも初代アマテラスのいー兄は、闇の王子のこと、敵だなんて見てなかったよ…?
むしろセナさんに対しては何だかいつも申し訳ないって顔して接してた」

この時代に来たイスラを見ていると、まるで久しぶりに再会した知人か何かのようにセナと接しているのが分かる。
だがその態度はいつもどこか遠慮がちで、変に気を使っていることをサンディは気がついていた。

「闇を封じる為、溢れ出た闇の全てをセナさんの身体に押し付けたんだよね?
いー兄言ってたよ。世界を救うためにセナさん一人に業を背負わせてしまったって。誰が犠牲になることもない最善の道が他にあったんじゃないか、って」

過去の話をイスラから少し聞いたことがある。
あの時は何が最善かを考える時間もなかったと言う。しかし彼は後悔しているようだった。

「リト君…、辛かったんだね…?」

話にきけば、リトは件の闇の王子の血を受け継いでいるらしい。
そのリトが今までどんな生涯を送ってきたのか、サンディには分からない。ただ彼の表情や言葉の節々から滲む痛みや苦しみといった感情は、悲しいぐらいに本物で、 また疑いようのない真実だった。

531サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:34:03
リマ>バレたかww←

個別ケースとは何て贅沢なw
同意です、永遠の十代でいたいww

トキメかされましたか、詐欺ですね(笑)しかしなんやかんやレイジに縁があるようでww
めでたく、ってwwリマさんが楽しそうで何よりですww

自分もそんな感じですよー(^ω^;)確実に一般人じゃないけど、オタクからしたらにわか、みたいな。
結構周りにそう言う人いっぱいいますww

あー、多分あれかな?皆におじいちゃんって言われてる人(笑)
難しいところですねー(笑)でも自分は刀剣乱舞を応援します⬅
可愛いですよー。自分あと一ヶ月くらいしたら誕生日ですので、友人に島風の何か可愛いグッズをプレゼントでお願いしときましたw

そうか、ナディアさんに任せれば間違いないな(笑)
ツンデレこじらせた結果が家庭崩壊ww

お、良いじゃないですか!あの世でリトとヨハン再会させて和解させましょうよ⬅

んー、それなら…冥界とか黄泉国とか彼岸とか裁きの間とか…?そんくらいしか思い付きません(^^;

532ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:36:37
【ポセイドン邸】

「立て込んでる…?」

…とてもそんな風には見えないが。
あんたさっき暇をもて余すかの様に茶を飲もうとしてたじゃないか。
…と言いかけて、ルドラは止めた。
またボコられでもしたら堪ったものではない。
しかし…。

(会えないと言うか…、多分姫の方が僕に会いたくないと思うんだけどね…)

それにしても、見事な人選ミスだった。
彼女が一番発言力がありそうだったから頼んだのに、すっかり当てが外れてしまった。
かと言ってまた他の人間に頭を下げるのも癪だし…。

「もういい」

ルドラは諦めた様にそう一言。その場を空間跳躍しナディアの前から姿を消した。

533DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:38:14
【十字界】

ジーナは相変わらず表立っては動かない気なのだろうか。
会話を区切って書物に目を移した彼女の傍ら、DDはフィアの言葉に頷いてみせた。

「フィア、アタシ思ったの…。今までアタシ達長老は独自の派閥を作って皆が皆、好き勝手に暮らしてきたわ。
中には派閥同士で争ったり、お互いを蹴落としあったり、それこそ他所のことなんて無関心だったり…。長老同士の接触も必要最低限で閉鎖的な状態が続いてきた…。
でもっ!そんなアタシ達だからこそ、今が力を合わせる時だと思うの!皆で協力してこの難題を解決させましょう!」

手始めに居場所が知れてるヴェントとマゼンダの所に行って、意見を聞いて来ようと話をまとめていた矢先、部屋の扉が音を立てて開いた。

「あれあれ〜?御二方もうお帰りですかぁ〜?
せっかくお紅茶淹れて来ましたのに〜」

間延びした声と共に入室してきたのは、トレイを手に抱えたラディックであった。
事件の後、彼はジーナの元で雑用をさせられていたらしい。

ラディックはニコニコしながら、二人に一礼した。

「フィアさんもDDさんもお久しぶりですぅ〜。
ルド坊っちゃんはお元気ですかぁ?」

「ええ、アタシ達とは途中で別行動になっちゃったけど、元気だったわよ。あと可愛かったわ〜」

そう応えたDDに対し、「そうですかぁ、良かったですよぉ〜」と言って、ラディックはジーナの方へ顔を向けた。
椅子に腰かけるジーナと目線を合わせる様に少し膝を屈め、掌を合わせて拝むような仕草を見せる。

「ジーナさん〜、そろそろ私も釈放させてくれませんかぁ〜?。坊っちゃんの元に行きたいんですよぉ。
あの方はは私がいないと何も出来ないダメダメな子なんですから〜。
ね?もう悪巧みもしませんからー、お願いしますぅ〜」

534リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/29(日) 17:57:29
【過去】

アブセルにとってリトの存在はとても大きいものらしい。
リトにとってもまた、言葉には表さずともアブセルによる影響は良い意味でとても大きいものだった。

言葉を発することの無かった彼が、話すようになった。
ずっと一人遊びばかりしていた彼が、トランプなどのゲームに興味を持つようになった。

リトの背に抱きつくアブセルには見えていないだろう。

"ずっと一緒"、そんな言葉を受けたリトが、照れくさそうに読んでいる本で顔を隠したのを。
"嬉しい""楽しい"、そんな感情をリトに教えたのは他でもない彼なのだ。

それは血のつながった姉達ですら成し遂げられなかった。友情とは、それだけ貴重なものなのだろう。

「・・・・・」

扉の隙間から、二人の様子を見つめる男が一人いた。
その眼光に傍にいた使用人達は皆萎縮する。
「すぐに追い出す」と平謝りするアブセルの祖父に、「放っておけ」と男は冷たく答えた。

「あの子供は相当なバカらしい。いくら罰を与えようと懲りずにあれ(リト)と関わろうとする。躾など意味を持たん、馬鹿らしくなった。」

そう吐き捨てて、男---ヨハンは部屋を後にする。

アブセルを連れてきた事は果たして正解なのか、未だに判断はつかない。
リトと同じ年頃の男子がいると知り、リトの退屈凌ぎにでもなればと思い迎え入れた。
正直、アブセルがリトを外に連れ出した時は自分の判断を悔やんだ。あの結果、リトの存在が世間に知れてしまったのだ。
隠し通せると思っていた。隠したかった。
存在が公になってしまった以上、この屋敷内も安全ではない。リトが成長し闇が成熟すれば"奴ら"はリトを奪いに来る。
しかし外に逃がす事も出来ない。判断を誤り続けた結果、トーマを巻き込み死なせてしまった。自分があがけば足掻くほど、犠牲が増える。

リトは生まれてはならなかった。しかし、生まれついた赤子の息を止めるほど自分は卑劣になることは出来なかった。リト1人の命で一族が助かるのなら容易いものだと、いくら自分に言い聞かせようとしても無理だった。

そして今もまた、リトがアブセルを気に入っているのを目の当たりにし、彼の存在を黙認してしまった自分がいる。

あの子に家族を教え、友を与え、果たしてこの行動は正しいのだろうか。

リトの進む道には死が待つのみ。それなのに、生への希望を持たせて良いのだろうか。

分からない。

何が最善の道なのだろうか。自分はこれからもずっと悩み続けるだろう。


【せっかくなのでヨハンの心情も絡めて締めさせてもらいました(ˊᗜˋ*)

こちらこそ、過去話にお付き合いいただきありがとうございました(●´ω`●)】

535アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:26:16
【東南地域、龍穴遺跡】

鈍い衝撃音を耳に、アグルは相手の視線を真っ向から受け止める。再び手に槍を構え直した。

「…そうみたいだな」

レックスのことも気がかりだが、今は他人のことに構っている余裕はない。

しかし不可解なのは先の挟撃の際や、レックスとの応戦で見せた、彼女の瞬間移動のような攻撃手段。
単純に周りからは視認できぬ程の速さで動いているのか、それとも何か秘密が隠されているのか…。
まずはそれを暴かなければ勝機はないだろう。

(見極めてやる…)

刹那、夥しい数の雷槍が出現し、遺跡内部の空間をびっしりと埋め尽くした。
妖しい輝きを放つ、何千、何万という槍の切っ先がラセツを標的に狙いを定める。
そしてそれらは、完全に彼女の退路を遮断する形で、アグルの号令の元、風切り音を置き去りにその場から一斉に射出された。

536アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:28:45
【ポセイドン邸】

話なんていつでも出来るだろ。と、いつもの調子で言い返しかけ、アブセルはふと思い直した。

「…悪かったよ」

そして何を思ったか、素っ気なくも謝罪の言葉を述べる。

「でもお前もどっか行くんなら一声くらいかけてから行けよな。無駄に探しちゃったじゃん」

どうもセナとノワールはお互い面識があるらしい。
そのことは今までのリトに対するノワールの言動や、彼女の故郷で意図せずして小耳に挟んだ話などから何となく分かっていた。
ただそれらを踏まえた限り、二人はあまり良い間柄とは言えないようだ。

二人がどんな会話をしていたか、気にならないと言えば嘘になる。だが聞いてもどうせ彼女は教えてくれないだろうし、本人にも事情があるだろう。
アブセルもそれ以上は何も言わず、リマやセナに続いて踵を返した。
と、その直後。

「姫」

背後から声がした。
見ればどこから入り込んだのか見知らぬ少年がノワールの足元に跪いていた。

「その…、報告したいことがある。
分を弁えぬ行為で申し訳ないが、今だけは御身の前に参じる無礼を許してほしい」

そうして彼はノワールに何やら耳打ちする。
内容はナディアに語ったものとほぼ同じものだ。

「見たところ、姫は今この場所を動けないご様子。
姫に代わって僕が子の捜索を行うことも可能だが…、如何しよう?」

全く気に入らないが、ノワールはリトと言う少年を主として置いているらしい。
そのリトが動けない現在、彼女自らが地に赴くのは難しいだろうと踏んでの発言だった。

537ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/06/08(水) 00:44:07
【十字界】

確かにそうだ。
今こそ、今のこの状況だからこそ、一致団結するべきなのだろう。

フィアもまたDDの言葉に頷き、ヴェントとマゼンダの下へと空間跳躍しようとしたその時。
ポットとカップを乗せたトレーを片手に、知った顔……ラディックが姿を現した。

此方に一礼するその姿にフィアは小さく舌を打つ。
先にあった十字界での争乱、レオが命を落としたあの戦いの一因は彼にあるとフィアは今も思っているのだ。

膝を着き、拝むラディックにジーナは苦笑いを浮かべる。

「うーん、君の淹れる紅茶が飲めなくなるのは少し寂しいかな。
午後の一時は君の淹れる紅茶が無いとね?」

だが、その苦笑いもすぐに意地悪めいたモノに変わった。

「でも、ルドラの坊ちゃんが心配なのはわかるよ。
だけど今は非常時だ、彼の隣には君が居ないとね。」

そして、立ち上がったジーナはその意地悪めいた表情を浮かべる顔をラディックへ近づけ、続けた。

「ーーーーー」

その声は小さく、近くに居たフィアですら聞き取れない程。
しかし、もとよりジーナはラディックだけに聞こえる様に話しており、それを感じ取ったフィアは聞き返す様な真似もせず、話が終わるの待った。

「ーーーーーーと、言う訳さ。
言わば司法取引、交換条件だ。
坊ちゃまと合流してからでも、する前でも良い。
今さっきの“お遣い”きいてくれたら君を無罪放免にしよう。
どうかな?」

【お遣いとして適当に後々使えそうな伏線張っときます、内容はイスラさん自由にしてもらって大丈夫っす!】

538ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/10(金) 16:54:18
【東南地域/龍穴遺跡】

アグルの号令の下、放たれるのは莫大な数の雷の槍。
遺跡を埋め尽くす程のソレからは、逃れる術は無いだろう。

ラセツは襲い来る雷槍の群れを一瞥し、フッ、と、笑った。

「眩しいな。」

それと同時に、雷槍が着弾。
轟音を撒き散らし、破壊の限りを尽くすその光は数刻の間止むことは無かった。

そして、遺跡内を破壊し尽くした後。
粉塵が止み、周囲の様子が見える用になった頃。

重厚な鎧の端々を焦がしながらも、ラセツがその姿を現した。
鎧は焦げ、身体の所々が黒ずんではいるものの、深刻なダメージを負っている様には見えない。

「今のは危なかった、選ぶべき未来が殆ど見えなかった。」

焦げた金髪を掻き上げ、ラセツはアグルへと視線を向ける。
アグルへと向けられた瞳は元の緑から虹色に変わっており、淡く輝いていた。

「不思議だろう?この、瞳は。」

その声はアグルの上空から。
落下と共に振り下ろした拳は僅かに目測を誤り、アグルの足元を砕いた。

砕け散り、舞い上がる破片に紛れるかの様に、ラセツはゆらりと立ち上がる。
その様子はひどくゆっくりにも見えた。

「黄龍が言っていた、私の眼はこの世の理から外れていると。

全てを見据える瞳は、ありとあらゆる可能性を、無限に分岐する未来を見据える。

私はその中から、一番良い道を進み続けてきた。」

そして、ゆっくりとした動きから反転。
破片が地に落ちるよりも速く、ラセツはアグルへと掌打を繰り出した。

「私には視える、貴方がどう動くのか。

私はどの未来を選べば良いのか。

貴方には見えるか?

私に打ち勝つ未来が!」

539DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/11(土) 20:16:04
【十字界】

ジーナから返ってきたのは了承の言葉だった。それに対しラディックはにまりと笑い頷いた。

「分かりました〜。お安いご用ですよぉ」

そうして居住いを正すと、まるで演目の終わりに見せる様な、恭しくそれでいて優雅な動作で礼を決める。

「ではでは〜、今までお世話になりました〜。
またお逢いできる日までご機嫌よう〜」

言い終わるや、彼の姿はその場から忽然と消え去った。
それを見届けたDDも「アタシ達もそろそろ行きましょう」とその場を後にする。

そして…、訪れたのは和風な概観をした立派な門扉の前。
マゼンダの屋敷だ。

使いの少年に、マゼンダに会わせてくれと伝える。
取り合えず客間に案内して貰い、暫し待つように言われた。

「それにしても…、ここは相変わらずね」

案内役の少年が部屋を出ていった後、DDは誰に言うでもなく口を開いた。

右を見ても、左を見ても、年少の男の子ばかり。
マゼンダの趣味が窺える。
可愛いものを愛でたい気持ちは解るが、流石に子どもに手を出そうとはDDだって考えない。



【ヤツキ>了解しました^^
お遣いの内容は本当に何でもいいんですか?
あ、それから戦闘レス遅くてすみません;
自分、戦闘描写苦手なので戦闘パートに突入すると途端に遅くなります(苦笑】

540フィア ◆.q9WieYUok:2016/06/14(火) 21:02:36
【十字界/マゼンダ邸】

一礼と共に消えるラディックと、彼が置いていった紅茶を味わうジーナ。
二人の間に交わされたやり取りも気になるが……

フィアはDDの言葉に頷き、彼と共にマゼンダ邸へと向かった。
そして、和風の門をくぐり抜けて客間へと歩を進め、屋敷の主を待つ。

「まぁ、人それぞれ好みがあるって事ね。」

DDの呟きに声を返し、フィアは続ける。

「DD、マゼンダとの話は任せて良いかしら?
私はちょっと馬が合わないと言うか、苦手なのよ……彼女が」

【何でも大丈夫ッス!それこそ希少
な紅茶を送ってくれとか些細なのでも良いですし、上手い具合に伏線としてどこか重要な局面で使ってくれても良いですしおすし!

了解すー、と俺も会話パート苦手ですのでww】

541リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 14:14:52
【冥界】

あの時代で何が最善だったかなんて知らない。興味もない。
セナと言う男が本当はどんな人間で、四神が彼に何をして、どんな罪悪感を抱いているかなんてどうでもいい。
業?犠牲?元はと言えばセナが属していた組織が起こした惨劇ではないか。

・・・・・違う。こんなことが言いたいのではない。
サンディがあの時の四神の一人だったとしても、自分の胸のうちを明かすつもりなどなかった。
自分はどうして・・・・・

「・・・・・申し訳ございません。少し、席を外しますね?」

二人のやりとりを見ていた女性が不意に声をかけてくる。
そして、彼女が動き出して初めて気づいた。椅子に座っているものと思っていたが、彼女が座していたものは車椅子だった。アンヘルが手伝おうとしたが、大丈夫だと伝えて場を離れていく。

「始末するとかしないとか、凄く物騒。と言うか五体満足で生まれたクセして生まれたくなかったとか贅沢じゃない?」

リトが去りゆく女性を目で追っていることに気付き、すかさずアネスが口を挟む。

「あの人・・・・・」

「あぁ、母さまが行ったのは別にあんたの言葉が癪に触ったとか、そんなんじゃないと思うから安心していいよ。」

「・・・・・姉さま」

「私空気重いの嫌いなんだもん。あー、はい分かった分かったったら!」

アネスは放っておいたら憎まれ口を叩きかねない。アンヘルは姉を促し席を立たせる。

「私達がいたら話し辛いでしょ?事情は知らないけど、早いとこ自分たちで解決しなね。」

そう言ってアネスはアンヘルに連れられる形で席を離れていった。

「・・・・・」

場の空気を悪くした自覚はある。
悪くしたくてしているわけではない。のだが、気づいたらいつも憎まれ口をたたいている。

リトはサンディへ目を向ける。ほら、やはり沈んでいる。
こんな時はどうするんだっけ・・・・・

「・・・・・悪かったよ」

そう、リトはぶっきらぼうながらも謝罪の意を唱えた。
短い間であるがリマと接していていつの間にか身につけていたことがある。謝罪だ。
自分に非が認め、謝る。当たり前の事だが、リトには今まで出来なかった。
アブセルはいくらリトが冷たくしても嬉しそうにしているし、ナディアは腹を立てことすれいつの間にかケロッとしている。ヨノも笑顔で受け入れてくれる。今まで誰もリトに謝罪の機会を与えてこなかったのだ。だからリトは相手も傷つくのだと、そんな当たり前の事をイマイチ理解出来ていなかった。
しかしリマはどうだろう。自分の発言に一喜一憂する彼女はとても新鮮だった。感情が顔に出やすいため傷ついている時もすぐ分かる。

「あんたに言ったって仕方ないことだ。今の話は忘れて。」

542マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 21:05:24
【マゼンダ邸】

「奇遇だね、私も同じだよ。」

時少なくして召使の少年に連れられたマゼンダが部屋に入って来た。彼女にしては早いお出ましだ。

「だけど私はあんたのこと苦手どころか、嫌いだね。」

フィアの言葉が耳に届いていたらしい。普段から来客を好まない彼女は、更に不機嫌そうな顔をしている。

「私は女が嫌いだ。特にノワールと、あの娘に肩入れするお硬い性格のあんたがね。」

マゼンダの趣味は相変わらずだが、最近"お遊び"の方は大人しくなったようだとヴェントが言っていた。あの時の失敗で懲りたのか、あの少年以上に気に入った容姿の者に会えないからか、理由は不明ながらも良い傾向ではある。

マゼンダは客人の向かいのソファに腰をおろすと、面倒くさそうに口を開いた。

「何の用だい。くだらない用件じゃないだろうね?話があるならさっさと語って帰んな。」

543アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:43:45
【龍穴遺跡】

彼女の放つプレッシャーに、肌が粟立つ。
体感時間が妙にゆっくり感じるのは相手に圧倒されているせい?

掌打がくると途端に現実に引き戻されたような気がした。アグルはハッとし、咄嗟に腕を上げてガードするも、それは腕をすり抜けてそのまま鳩尾をついた。

息が止まる。気がつけば後方の壁まで吹き飛ばされていた。

これが彼女の言う、力だろうか…。
先程の、手がガードの下をすり抜けて見えたのは、恐らく目の錯覚。彼女は攻撃が通る最も適した軌道とタイミングで掌打を放ったのだ。

喉奥から何かが込み上げかけたが、アグルはそれをぐっと堪えた。槍を支えにゆっくりと身体を起こす。

「未来が見える、か…。そいつは凄ぇな。
スゲー便利で…、スゲー退屈な代物だ…」

くく、と口から乾いた笑いが溢れる。

人生ってのは、何が起こるか分からないから面白いんだろう。初めから答えが解りきってるゲームなんて俺はまっぴらだね。

…きっと兄貴だったらこう言っただろう。

「あんたに打ち勝つ未来…?そんなん知らねーよ。…だけど、これだけは言える」

ふとアグルは口を閉じ、静かに呼吸を整える。
じゃりっと靴と地面が擦れたような音が聞こえたかと思えば、次の瞬間、彼の姿は忽然とその場から消えていた。

「俺はここで死ぬつもりはない」

そして現れたのはラセツの目の前。ぐっと彼女に肉薄し、それに合わせて槍を突き出す。

今のアグルは脊髄に直接信号を送り、反射だけで筋肉を動かしていた。
それは情報伝達に脳を介さない分、先程までよりもずっと速い行動を可能にした。

しかし無論、初撃は避けられてしまうだろう。
彼女の回避方向を予測して、更にそこに雷撃を放つ。
アグルはラセツの動きの何手先も先読みして具現化させた六つの槍と、そして雷撃を自在に操り、電光石化の如く怒濤の連続攻撃を繰り出した。


【ヤツキ>分かりました〜、簡単なのじゃ味気ないので、もし出来たらストーリーに関わる何かを考えてみます^^】

544サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:49:49
【冥界】

「わかった。忘れる」

リトからの謝罪の言葉を受けるや、サンディは俯けていた顔を上げ、パッと表情を明るくさせた。

「あたしの方こそごめんなさい。よく知りもしないのに偉そうなこと言って」

席を立たせた三人には悪いことをしてしまった。
サンディは気持ちを切り替える意味も含め、カップに手を伸ばし紅茶を一口。…おいしい。
霊体になっても味が分かるなんて不思議だ。

「何かびっくりだよね。死んだ後もこうやってお茶呑んだり、お喋りしたりできるなんてさ。
あ、でも正確にはまだ死んでないんだっけ?幽体離脱って言うか?これが噂の臨死体験…!?みたいな!
リト君もそうなんでしょ?」

こんな状況にも関わらずサンディの口調は極めて明るい。
それどころか現状を楽しんでさえいるように見える。そしてお喋りな彼女の口は、油を挿した後の車輪並みによく回る。

「あたしもね、元いた世界に帰らなきゃって思うんだけど、正直言うと、このまま死んでもいいかなーって気持ちもあるんだ」

言いながら彼女はカップの縁を指でなぞる。紅茶の表面が緩やかに乱れ、そこに映り込む少女の影も合わせて揺れた。

「あの世にはお父さんとお母さんがいるから。二人に逢えると思うと死ぬのは全然怖くないの」

ふふふ、と笑う仕草は冗談ではなく、本当に嬉しそうだ。
そうしているかと思えば、今度は「でも」と言って、不意に視線をリトに預けた。

「リト君にはあたしと違って、心配してくれてる人も帰りを待ってくれてる人もいるの知ってるから。
だからさっきはつい"早く帰れ"なんて言っちゃった。ごめんね」

ナディアは態度には出さないが、ずっとリトのことを気にかけていた様だ。
リトの側に引っ付いていた男の子なんて、まるで世界が滅亡したかのような顔をして落ち込んでいた。
きっとその二人の他にも、彼にはまだ彼の帰りを待ち望んでいる人がいるはずだ。


【リマ>感動的な文章で締めていただきありがとうございました。
ショタリト可愛いよ!(*≧з≦)ショタリト!

しかし過去話やって思ったけど
アブセルの本命、ナディアでもおかしくなかったな、とか思いました。屋敷に来てからは初めて、自分の存在を言葉にして肯定してくれた人ですから。

まぁ今はリマにホの字な感じなんで、もう遅いんだけどww】

545ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:51:17
【東南地域/龍穴遺跡】

人生とは、選択する事の連続だ。
無限に枝分かれする選択肢から何をどの様に選ぶのか。

それが果たして正解なのか、不正解なのか。
目には見えない選択肢、未来とは未だ来ないモノ。

もしそれが、目で見えたのなら。
多くの人が、自分にとって最善の未来を選ぼうとするのだろう。

しかし、数多ある選択肢から一つを、大海から一粒の砂を探す事は難しく。
選ぶ以前に、無限なる選択肢が持つ情報量を脳が識別処理出来いのだ。

ただの人間が、ラセツと同じ瞳を持とうとも、彼女と同じ様に振る舞う事は出来ない。

「つまらないか。
確かにそうかも知れない。」

超高速の刺突から続く怒濤の連続攻撃は、その一撃一撃が凄まじい威力を秘めていた。
六本の槍と迸る雷光は、先程の雷撃を遥かに上回っており、アグルの気迫が感じられる。

それら全てを、ラセツは捌いていく。
受け流し、回避し、時には防御し、身に纏っていた重厚な鎧が原型の殆どを失った頃。

「だけど、泥沼に足を踏み入れる事が最善の選択肢だったりするんだ。」

先代のトールから受け継がれた槍の一撃をラセツは左腕を犠牲にして防ぎ、言った。

「戦う相手が強ければ強い程、最善の一手は見えにくくなる。
久し振りだよ、こんな怪我をしたのは。」

槍の穂先に貫かれた左腕から流れる朱を一舐めし、ラセツは笑った。
気付けば足元は濡れており、辺りからは滾々と水が溢れ出している。

どうやら激しい攻撃の余波で遺跡最深部の壁や床に罅が入り、遺跡側を流れる河水と地下水が流れ込んでいる様だ。
刻々と水量は増し、水嵩もそれに比例している。

546 ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:52:51
唇を血の朱で染め、ラセツは辺りを見渡す。

「水没するまで余り時間は無さそうだ。
溺死したくなければ戻った方が良い。」

そして、再び虹瞳をアグルへ向け、槍に貫かれた左腕を一閃。
槍ごとアグルを弾き、浮かべる笑みを更に深くする。

「と言っても、戻らないのはわかってる……だから。
貴方の強さに敬意を表して、全力でいくわ。」

それと同時に、大気を歪める程の闘気が彼女を包み込む。
煌々と、そして猛々しく揺れる闘気を纏い、ラセツは再び掌打を、直撃すれば人間など木っ端微塵になる威力を持った一撃を繰り出した。

しかしその一撃がアグルを爆砕する事は叶わず。
掌打を受けた圧縮された空気の塊が弾け、突風が二人の……三人の周囲に吹き荒れた。

「初手でKOされてスミマセン……と、冗談を言う場合では無さそうですね。
アグル、僕が援護します。
全力でいきましょう!」

ラセツとアグルの間に割って入ったレックスは、吹き荒れる突風に髪を靡かせ、力強く、そう言った。

547ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 19:28:28
【ポセイドン邸】

「そなたが何故ここに?」

目の前に参じた少年に驚くも、彼からそれ以上に驚くべき事実を伝えられたノワールは目を見開く。

「あの子が・・・・・」

生きていた。愛しい我が子。
生まれて間もなく引き離された、抱くことも乳をやることも叶わなかったあの子が。
しかし、伝え聞いた事態はとても喜ばしいものではなく。

閻魔に施された術により、ノワールはリトの側を一定以上に離れることが出来ない。リトが目覚めない今、ノワールはこの場を離れられないのだ。そして、たとえ離れられたとしても力を封じられ唯の小娘に過ぎない自分一人で救い出せるとも思えなかった。

ノワールは歯噛みし、目の前の少年を見据えた。

「そなたを行かせ、運良く探し出せたとする。じゃが、その後はどうする?そなただけで救い出せるのか?申してみよ。」

548リト ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:10:46
【冥界】

少女は実に単純な作りをしているらしい。先程まで落ち込んでいたのが嘘のように、たった一言でコロッと表情を変えた。
自分で言った立場でなんだが、忘れろと言われて簡単に忘れられるものなのだろうか。

「嬉しそうだな」

楽しそうにつらつらと言葉を並べる彼女を、リトは面倒くさそうに頬杖を付きながら眺めた。
この感覚は懐かしい。お喋りな女・・・・・身近にもいた気がする。

(あぁ・・・・・)

リトの脳裏に二人の少女が浮かんだ。小さな体で態度のデカイ黒髪の少女と、そんな子供と同等に渡り合えてしまう知能レベルを持った銀色の髪の少女。二人は物珍しそうに世界を見て、その日あったことを嬉しそうに話してきた。二人同時に話すもんだから何を言ってるのか分からなくて、こっちは疲弊してるのにそんな状態に何故か嫉妬したアブセルが二人に張り合って割り込んでくる。騒がしい旅だった。

(けど・・・・・)

退屈はしなかった。
ノワールもユニも今はどうしてるだろう。アブセルに連れ戻された際、二人は邸についてきていないようだった。
リマと一緒だろうか?なら問題ないだろうが・・・・・二人は放っておくと何をするかわからないから。

「あんた、両親のこと好き?」

嬉しそうに両親の話をするサンディにリトはふと疑問を投げる。
彼女の口ぶりからは両親に愛されていたことが分かる。

「俺は好きかどうかも分からない。生きているのに、どっちも存在していないようなものだったから。」

母に拒絶され、父に冷遇されていた。両親と言う認識はあるものの、二人に対して何の感情もない。そう言えば、憎しみも恨みもないのは不思議だ。

「あんた、別に天涯孤独ってわけじゃないんだろ?人から嫌われるような性格でもないみたいだし。あんたこそ、誰かしら帰りを待ってるんじゃないの?変なこと言ってないでさっさと帰れば。」

549リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:21:42
イスラ>>
ショタリトは自分の好みを最大限に詰め込みました(笑)
一人称が自分の名前とか、今のリトが知ったら恥ずかしさのあまり死んでしまうかも(笑)

たしかに!まぁナディアは女として魅力ないから惚れるとか難しいでしょうね(笑)】

550ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/07/01(金) 23:49:10
【こっちに来て二周年か、おめっとさんです!】

551イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:07:26
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

目を眩ませんばかりの光に、イスラは思わず腕を上げ顔を庇う。

(これは…っ!?)

直後、ヴィカルトの剣から大量の光が噴出した。
莫大な熱量と殺傷力を秘めたそれが、一直線に襲いかかってくる。

イスラは咄嗟にアマテラスの神器の一つ、宝鏡を生成する。
鏡面に触れた光線は鏡を蒸発させると共に別の方向へ屈折し、着弾した遺跡の壁と地面を粉砕し、溶解させた。

だが、それを持ってしても全ての光を逸らすことは叶わなかった。屈折しきれなかったものがイスラの片翼を穿つ。
痛みはないが再び飛べる様になるには少し時間がかかりそうだ。
そして、いくら炎で結晶を溶かそうと、こう反射させられては堪らない。

イスラは神刀、月読に手を伸ばす。

「…剣技、桜花爛漫」

抜刀するや、桜の花弁にも似た結晶の粒が一面に舞い上がった。まるで吹雪の中に迷いこんだかの様に花弁が視界を埋め尽くす。
そして…。

「メイヤ、大丈夫か?」

その隙に、イスラはメイヤを救出した。

もしかすると、今がヴィカルトに不意を与えられる絶好の機会だったのかもしれない。しかし彼の性格上、仲間を後回しには出来なかったようだ。

552アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:10:09
【ポセイドン邸】

「正直なところ…必ず救い出す、と断言することは出来ない。
なにせ相手はそうとうヤバい奴等らしいから」

黄竜という連中達の戦力は未知数だが、少なくとも大陸一つを消し飛ばす程の力を持っていることは間違いない。
ルドラは言葉を続ける。

「でも出来得る限りの手は尽くすつもりだ。それこそ身命を賭す覚悟だってある。
そもそも元を辿ればこんなことになった原因の一部は僕にある。
こんなことで罪滅ぼしが出来るとは思わないが、過去、君に冒した罪の償いをさせて欲しい」

恐らくそれは本心からの言葉なのであろう。
そう語る彼の眼は真っ直ぐとしたもので、嘘偽りの匂いは感じられない。

ルドラはノワールの返事を待ったが、しかしそれよりも前に、別の何者かの声が場に割って入ってきた。

「私も参りましょう」

傍らの茂みがガサガサと揺れ、草かげから男が姿を現した。服に着いた葉っぱを払いながら、彼…ジュノスは微笑を浮かべる。

「話は聞かせて頂きました。
微力ながら、私もお力添え致します」

それを見たアブセルは、思わず半歩引き驚きの声を上げる。

「おっさん居たのかよ…。つかどっから出てきてんだ!もしかしてそこでずっと盗み聞きしてたのか!?」

「もちろん!そこの吸血鬼とセナ様を二人きりにさせるなど不安でしかありませんからね。
彼女が余計なことを口走らないように見張っておりました」

「…………。(完全に変質者じゃねえか…)」

それはさておき…と、ジュノスは視線を動かす。
ナディアの元に戻るのであろう、並んで歩くセナとリマはこちらの存在には気づいていないようだ。二人の後ろ姿を何か眩しいものでも見るかの眺め、ジュノスはノワールに言った。

「安心してください。保護したのち、子供をどうこうしようなど考えていませんから。
子の捜索を引き受けていた手前、そろそろそれらしい働きを見せておかなければと思っただけです。
それに…」

それに、今では一応自分も一児の親だ。
こう言ってはなんだが、ノワールの気持ちも分からなくもない。

しかし唯一の気がかりは、セナとリマ、そしてノワールを残して出かけることだが…。…そこはまあ、何かしらの手を打って置くことにしよう。

553サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:12:48
【冥界】

「うん!大好きだよ」

両親のことを聞かれれば、サンディは大きく頷いた。

「あたし一人っ子でね、家もお客さんなんて滅多に訪ねて来ないような山の中にあったから、小さい頃は両親以外の人と接する機会ってあまりなかったんだよね」

今思えば、あれはわざと人目を避けて暮らしていたように思う。両親は知っていたのだ。いつか自分達の身に危険が及ぶことを。

「それでもあたしはその生活を嫌だと思ったことなんてなかった。
お父さんはあたしに剣を教えてくれたし、お母さんは落ち着きのないあたしが怪我をしないようにずっと側で見守っていていてくれた。
夜祭りの日は皆で里に降りて、花火みたり出店で金魚すくいしたりするの。星がよく見える時期はもっと山の上の方に登って、三人で並んで空を見上げながら色んなお話をして…、他にもいっぱい、いっぱい…」

懐かしい。
二人とも子どもの立場から見ても親バカだった。優しくて温かくて…。出来ることならあの頃に戻りたい。

「もしあたしが死んだとして…、多分、悲しんでくれる人はいるとは思う…。
でも、どうせみんな直ぐに忘れちゃうよ」

今更ながら、自分には特別に親しくしてきた人などいなかったことに気づく。
両親が死んでからは親戚だという家庭に引き取られたが、そこはあまり居心地がいいと言える場所ではなかった。
暫く一緒に旅をしてきたナディア達にしたって、出会って数ヵ月と短い付き合いだ。

一時的に悲しんではくれても、きっと直ぐに各々の生活に追われ、自分のことなど思い返しもしなくなるだろう。

「皆が必要としてるのはアマテラスの力であって、きっとあたし個人じゃないんだよね。それに…」

言いかけてサンディは口を閉じた。
目の前の、見えない何かを振り払うかの様に、手をブンブンと振る。

「…って、やめやめ!暗くなっちゃうね。
ねぇ、リト君のことも聞かせてよ。さっきからあたしばっか喋ってる」

554サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:14:46
遅くなりすみませんでした;
二周年おめでとうございます!

555メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:46:03
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

発射点である剣を蒸発させながらも放たれるその光条は、天照の宝鏡をもってしても防ぎ切る事は叶わず。
イスラの片翼を吹き飛ばし、遺跡の壁面に大穴を開けた様子から見るに、直撃すれば影すら残らなかっただろう。

イスラの技、煌めく結晶の桜吹雪に紛れ救出されたメイヤは、彼の言葉に何とか頷いた。
風魔装束のおかげで即死と致命傷は免れたものの、裂傷は多い。

鎧に宿る治癒能力で多少は塞がってきているものの……

「死にはしなかった……けど」

直ぐには動けない、と続ける事は出来ない。
何しろ、ヴィカルトはまだ攻めに転じていないのだ。

先程までの戦いは全て、此方側から仕掛けたもの。
二人の連携を、そして白焔を凌いでの反撃だけでこれ程とは……

メイヤは無理矢理身体を動かし、剣を握る。
僅かに震える切っ先をヴィカルトへ。

(足手まといだな、これじゃあ……)

メイヤの戦闘力は、闇の力を失ってから数段下がっていた。
闇による攻撃力と再生力を武器にした、防御を省みない極端な攻め方はもう出来ない。

思えば今の一瞬も、イスラに取ってヴィカルトへ攻撃を仕掛ける最大のチャンスだった筈だ。
剣を向けながら、メイヤは唇を噛む。

闇の力があれば、いや、自分がもっと強ければ。
オンクーとの戦いは、相討ちであったが実質的には自分の負けであった。

(もっと力があれば、サンディを守れたかもしれないのに……もっと、もっと!)

今まで、力を渇望する事などなかった。
ましてやそれが誰かの為、誰かを想ってなどなかった。

だからこそ、今この胸に渦巻く感情が重く、辛い。
それは心身共に蝕んでいく毒の様にも感じられた。

556メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:48:22
「……俺が囮になる。」

唇を噛み、剣を掲げるメイヤは声を絞り出す。
隣のイスラからは角度的に見えないだろうが、その表情は硬く、悲壮感が浮かんでいた。

「決定打が打てるのはイスラだ、だから……後は頼む!」

その表情を変えないまま、メイヤはヴィカルトへと駆け出していく。
それは地を這う蛇の如く、ヴィカルトを刃の射程圏に捉え、メイヤは下方からの斬り上げを放つ。

更に、斬り上げを起点にメイヤは連続して斬撃を繰り出していく。
しかしながらその全てをヴィカルトは受け止め、流し、反撃の一閃がメイヤの胸元を大きく切り裂いた。

だが、メイヤは止まらない。
水晶の刃を振り切ったヴィカルトへ長方形の箱……折り畳まれた巨大手裏剣を押し付け、展開。

「う、ぉぉぉおおおお!」

四方に広がる刃がヴィカルトの首筋、腹部、両肩を切り裂く。
更に、押し付けた手裏剣を捻り、メイヤは傷口を抉っていく。

そして、ヴィカルトの身体を抉る手裏剣を横薙し、投げ捨てたと同時に真白の剣を前方へ。
予想外の反撃、攻撃にヴィカルトは驚きの色を目に宿すが、迫る真白の剣に笑みを浮かべた。

「死ぬ気か、中々やる!」

同時に、抉られた傷口から水晶が噴出。
傷口を炭素繊維で塞ぎながら、噴出する煌めきが文字通り、前方のメイヤを削っていく。

そして、噴出する死の輝きが剣の型を成し、メイヤの突き出した真白の剣へと衝突。
一瞬の拮抗の後、水晶の剣がメイヤの左胸を大きく穿つ。

しかし、メイヤ持つ真白の剣もヴィカルトの左肩を貫き、更に。
取り出した二本目の長方形の箱を展開、瞬時に広がる手裏剣で、自分とヴィカルトの足先を突き刺し、地面に縫い付けた。

「今だ、イスラ!!」

557その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:30:52
【冥界】

「ねぇ、いいの?」

先を歩く弟にアネスは心配そうに呼びかける。

「・・・何が?」

「あの二人、残してきて良かったの?」

どうやらアネスはリトとサンディを心配しているらしい。無理もない、お互い初対面に等しいにも関わらず、既に揉め事を生じさせてしまってるのだ。

「大丈夫じゃない?」

「アンにしては珍しく適当じゃない」

「適当じゃないよ、確信もある。」

リトは事を荒立てたいわけではない。
四神を責めたが、本当は彼らに非がないことも分かっているだろう。
おそらく、闇の王子が真の悪でないことも。

「彼はちゃんと分別つくよ。ただ、今まで傷付きすぎて、自分がこれ以上傷つかない様に先に攻撃する癖が付いちゃってるだけ。」

相手が敵でないと判断すれば自ずと警戒を解くだろう。

「でも彼は沢山の人に愛されてる。そのことに早く気づけるといいね。」

リトが殻に閉じこもっている原因は両親に存在を否定された事にあるだろう。両親からの愛を求めるあまり、周りから向けられた愛情に気づけていない。

「アンってばまた悟りを開いたお爺ちゃんみたいなことを・・・」

どうしてこの子はいつも年齢と言動がそぐわないのだろう。
アネスは呆れ顔で弟を見つめるも、とうの本人は優しい笑顔を返すだけだ。

「愛し方を間違えなければ良かったんだけどね、あの人も。」

558その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:31:38
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「失礼します。」

扉をノックし、中の様子を伺う。彼女の声が耳に届くと、それまで書類と対峙していた視線がすぐに彼女のもとへ向いた。

「ミシェルか。」

彼女の姿を見つけるや、部屋の主、ルイは傍に控えていた従者に指示し車椅子が入室しやすいように扉を開けてくれる。

「どうだ?」

「とても頑なで・・・」

「だろうな。」

ルイの問いにミシェルが苦笑いで返すと、ルイも予想していたとばかりに溜息を吐く。
"そちら"も、"こちら"も、先は長そうだ。

「例の方は・・・」

ミシェルも同じことを気にかけている様子。ルイは首を振って答えて見せた。

「無理だ。本人にその気がない。」

まったく困ったものである。死者ない迷い人が二人いるだけでも面倒なのに、死者であるにも関わらず"逝き先"が定まらない者が来るとは誰が想像出来ただろうか。

人が死した後、天の国へ逝くか地の国へ逝くかは生前の行いによる査定が多くを占めるが、悪人か、善人か、も判断基準になる。
大抵、人の本質は生前の行いと比例しているのだが・・・

「行いは非道極まりなく、地へ送るに値する罪状だが・・・」

今こうしてルイを悩ませている者の魂はとても清廉で、本来ならば天に逝く権利をもつことの出来るものであった。

「行いと本質がまったく合致しない。本人は地を望んでいるが、安易に即決するには問題のある清さだ」

せめて、この歪みを作った原因と対峙すれば何か掴めるかもしれない、しかしそれさえも本人が拒んでいる。
もっとも、ミシェルの様子から察するにその"原因"の方にも不安が残る。

「彼は今どちらへ?」

そう言えば当事者の姿が見当たらない。
ミシェルがあたりを見渡すと、傍らにいた従者が口を開いた。

「判決が出来ない以上この部屋に留まっていても仕方がないからな、ルイが追い出した。」

"追い出した"とはあまりに乱暴な言い分だが、実際そうした言葉がふさわしい行動に出たのだろう。
ルイのことだ。相手に向かって邪魔などと発言したに違いない。目障り、とまでは言っていないと良いが・・・

「自由にしていいと言っただけだ。」

失礼を働いたのではないかと危惧するミシェルの心を察したのだろう。
ルイはすかさず口を挟めば、面倒くさそうに息を吐いた。

「いずれにしろ、いつかは会う必要がある。互いが互いの鍵を握っているからな。」

559リト ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:32:14
【冥界】

「話すったって・・・」

一体何を?
リトの戸惑いをよそに、サンディの話を聞く体制は万全で、今か今かと待っている。

「見合いかよ・・・」

何故初対面の相手につらつらと身の上話をしなければならないのか。しかし、こちらが望んだことでは無いとは言えサンディの話を聞いてしまった。ここは自分も打ち明けるのが筋なのだろう。納得はいかないが。

「・・・あんたと違って俺は両親に対して楽しい思い出なんて何もない。姉達はどうか知らないけど、少なくとも俺はあの二人のもとで育ってはないから。姉達が親代わり。・・・そんくらい。他に聞きたいことあんの?大した記憶なんてないからアンタの期待するような楽しい話なんて出来ないんだけど。」

560DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:22:23
【マゼンダ邸】

「ちょっとちょっとぉ〜、久しぶりの再会なんだからギスギスするのは無しでいきましょうよ〜」

入室するや、マゼンダは不機嫌な態度を隠そうともせず毒を吐く。
そんなピリピリした空気を和ませようと、DDは努めて明るい口調で発言するも、頭の中はどうやって話しを切り出したものかと思案していた。

普段ならば「元気だった?」とか世間話から始めるところなのだが…、マゼンダが乗り気でないのは明らかなので、回りくどいやり取りはない方が良いだろう。

「じゃあ単刀直入に…」と、足を組み、真剣な面持ちでマゼンダを見つめた。

「同胞の気配が一つ消えたことはアナタも気がついているとは思うけど…。
メルちゃんがオリジンにやられたわ」

やはり口に出してしまえば、その事実に再び対面する形となり気が重くなる。しかし目を背けるのは、それこそメルツェルに申し訳が立たない。
DDは静かな声音で先を続けた。

「ずっと死んだものと思っていたオリジンが、なぜ今になって姿を見せたのかは分からない…。
ただ彼は嘗て分かれた12の力を再び一つにしようと考えている。
要はアタシ達長老を喰らい、己の中に吸収しようとしているってわけ。
直にアナタも狙われるわ」

オリジンの暴虐を許せば、十字界は崩壊する。
その前にフィアやシャムは彼らの軍勢を討とうとしていることをマゼンダに告げる。
そして、自分はまだその決心がつかないと言うことも。

「今日ここに来たのは、それについてアナタの意見を聞きたかったから。
そして出来ればこの事態を収束するため、アナタの知恵と力を貸して欲しいの」

561アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:23:36
【龍穴遺跡】

ラセツの一撃を防ぎ、吹き荒れる風と共に一人の青年が目の前に現れる。
アグルは一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、直ぐに何が起きたかを察し、目を細めた。

「…おせーよ」

それは咎めているような口調でもなければ、呆れ半分に言ったものでもなかった。
レックスが復帰してくれたのは心強いことだ。

しかし…、と次にはその視線は足元へ。
部屋に雪崩れ込む水は、今ではもう膝下ほどの高さまで上昇しており、そう悠長にしている時間もないことが窺える。

「レックス…、今から3秒数えたら目を瞑れ」

そう小さな声で囁くや、アグルは先程までと同様、己の筋肉組織を活性化させ、前方へ飛び出した。

「じゃあ援護は任せた!さっさとケリつけんぞ‼」

水飛沫を上げ僅か一跳びでラセツとの距離を詰めれば、その勢いのままに相手の顔面目掛けて右ストレートを放つ。
しかしそれは直接的な攻撃を狙って仕かけた訳ではない。
アグルの拳はラセツに触れる寸前のところで止まったかと思うと、次の瞬間、そこから痛いほどの目映い光が溢れだした。

目眩ましだ。
まともに見れば人間の網膜など一瞬にして焼ききれてしまうだろう。

そしてアグルは間髪入れずにラセツの左斜め後方へ跳ぶ、振り向き様に大きく槍を回し斬撃を放った。

562レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:36:36
【東南地域/龍穴遺跡】

瞼を固く閉じても分かる、強烈な閃光。
アグルの言葉通り、レックスはきっかり三秒間目を瞑る。

しかし、動き出すのは三秒後では無い。
瞼越しに光を感じながらもレックスは大きく跳躍。

空中で大きく三叉鑓を振りかざし、ラセツへ狙いを定める。
矛先に空気を集め、圧縮に次ぐ圧縮を。

高気圧下で圧縮された大気は熱を持ち、一気にその暈を増そうとするも、レックスはそれを許さない。
超高気圧下の元で高熱を放つ大気は臨界点を超え、眩い光を放った。

高電離気体、それは即ちプラズマ。
風を司る四神の一角、フレイヤの力と魂を宿るレックスがプラズマを作り出すとは誰も予想出来なかっただろう。

しかし、彼の持つ矛先には、紛う事無い光の塊が見える。
圧倒的な光量と熱量を持つそれを、レックスは落下と同時にラセツへと叩き付ける。

アグルによるフェイントからの閃光による目眩ましと、それに続く横薙を手甲で防いだラセツは、レックスの動きに反応出来ず、プラズマが着弾。
眩い光と轟音、そして衝撃波が周囲を物理的に揺らす。

更に、衝撃波の後に再び爆発。
超高熱のプラズマと、流れ込む冷水が触れ合う事によって水蒸気爆発が起きたのだ。

連続する爆発が止み、白靄越しにラセツの姿を確認したレックスは左手を伸ばす。
既に水嵩は腰程にまで増えており、いよいよ時間が無い。

「……アグル、後は頼みましたよ。」

白靄が晴れるより速く、レックスは伸ばした左手で前方はラセツの周囲の気圧を操作し、小さなプラズマを次々と生み出し、小規模ながらも複数回水蒸気爆発を起こし続けた。

水蒸気爆発はその威力もさる事ながら、瞬間的に多量の水分を気化させる為、周囲の気温を急激に下げていく。

初撃の大きな水蒸気爆発から続く小さな水蒸気爆発は、爆発のみならず周囲の気温を急激に、それこそ瞬間的に摂取零度以下に下げ続けた。
その結果は、ラセツを中心に生まれる巨大な氷塊だった。

「本来ならばこのまま押し切り、彼女を倒せる筈だったんですが……流石、単独で遺跡に遣わされただけありますね。」

水蒸気からの気化冷却を行い続けながら、レックスはアグルへ声を掛ける。
勿論、その視線は氷塊から離れない。

「試合は引き分け、勝負は負けと言った所でしょうか。」

そして、伸ばしたままの左手とは逆。
三叉鑓を握る筈の右腕は……無い。

563レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:37:42
「プラズマを叩き付けたと同時のカウンター、見えてなかったのが幸いか片腕が吹き飛んだだけで済みました……」

そう、レックスの一撃と同時に、ラセツもまた手刀を放っていたのだ。

「水嵩はもう胸元まで、時間はありません。
僕がこのまま抑えますので、君は脱出して下さい。」

吹き飛んだ右腕はもう見つからないだろう。
傷口から溢れる血も致死量に差し掛かり、遭遇時に受けた一撃で内臓も破裂している。

時間的にも、自分はもう助からない。
ならば、やるべき事は一つ。

「……アグル、もう一度言いますね。」

口腔内、鼻腔からも溢れる血塊を肩で拭い、レックスは薄く笑みを浮かべた。
その薄い笑みには、決意と、覚悟が見て取れる。

「“後”は、頼みましたよ?」

564イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:35:14
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

「メイヤ…ッ!」

メイヤの剣戟には鬼気迫るものがあった。
捨て身の特攻。そしてついに、彼はヴィカルトの動きを止めた。
暫し唖然としていたイスラも、メイヤの声を耳にすればハッと我に返り、弾かれるように前に飛び出した。

しかし…。

(二人の距離が近い…。このままではメイヤにも俺の攻撃が…)

あともう一歩のところで二人の射程距離内に入る。
退くか、攻めるか。一瞬にも充たない時の中、イスラの心は二択の間で揺れ動いた。

(いや…)

迷うな。彼が決死の覚悟で作ってくれた好機。無駄には出来ない。
イスラは最後の一歩、地を思い切り踏み込んだ。

直後、世界が無音で包まれた。
聴力や痛覚、時間の流れさえも、余計な感覚は全て後ろへ脱ぎ捨てて。
手の内で輝く神刀、火乃加具土と月読。二刃が交わり一つに成った刀でメイヤの背後から居合いを放つ。

「ハァアッ‼」

今まで一度として成功しなかった、障害物の向こう側に置かれた対象物"のみ"を斬る技。

「天叢雲剣、金翅鳥―…」

紅き剣閃はメイヤをすり抜け、その向こう、ヴィカルトの胸を貫いた。

565サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:36:31
【冥界】

「なるほど、お見合いかぁ。面白いこと言うね」

リトの言葉を耳ざとく拾ったサンディは、何が面白かったのか愉快気にケラケラと笑う。

しかし人の家庭環境には多種多様な形があるのだと、今更ながらに驚かされた。

両親から十二分な愛情を注がれて育ったサンディは、それが当たり前のことなんだとずっと思っていた。
親が子を愛すのは当然だし、また子が親を愛すのも当然だと思っていた。

その観念を抱くにあたった経緯は彼女が幸福であった証だが、それ故にサンディはリトの家庭環境が上手く想像できないでいた。

何故リトは両親と離れて暮らしていたのか。
それを訊ねることは簡単だが、同時に彼を不快な気持ちにさせてしまう可能性もある。
何か複雑な事情があるのかもしれないし、あまり詮索はしない方がいいのかもしれない。

だが、これだけは聞かずにはいられなかった。

「リト君…、ご両親と一緒に過ごしたいと思ったことはなかったの?」

サンディは小首を傾げ、リトに問いかけた。

566メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:37:51
【東南地域/龍穴遺跡】

イスラの抜き放つ渾身の一刀、紅き剣閃。
金翅鳥……ガルダの名を冠するその一閃は確かに、ヴィカルトの胸元を貫いた。

味方であるメイヤには傷一つ付けず、しかし敵であるヴィカルトだけを貫くその技は、正に奥義と呼ぶべきか。

「……見事、だ。」

予想外、そして予測外の一撃にヴィカルトは驚愕の表情を浮かべるも、それも一瞬。
胸元に開いた傷口から溢れる朱の滝に目を落とし、フッと笑った。

溢れ、噴き出す朱によって血に染まるメイヤと、その肩越に見えるイスラへ視線を投げる。
神経系を珪素系物質に置き換え、文字通り光速の反射神経を得ているヴィカルトですら反応出来なかった一撃は、強敵との戦いを望む彼にとって満足出来るモノだろう。

水晶剣を支えにしつつも膝を着くヴィカルトと自身の足先を縫い付ける手裏剣を抜き捨て、メイヤもまた、よろめく。
その姿を見上げ、ヴィカルトは剣の柄を握り締めた。

「私の敗北だ。
だが、与えられた役割だけは果たさせてもらう!」

567メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:38:44
その瞬間、地に突き立てられた水晶剣の切っ先から膨大な量の水晶の花……刃の如く鋭利な花弁と、鋭い棘を持った薔薇の群れが噴き出した。
それは瞬く間に広がり、遺跡全体を埋め尽くさんとばかりに花を咲かせ、蔦を伸ばしていく。

奇しくもそれは、崩壊しつつあった遺跡内部を支える役となったものの、最も重要である遺跡の起動装置周辺は誰一人近付けない程にまで薔薇が生い茂っている。

「くっ……これは流石にっ!!」

噴き出し、増殖し、咲き誇る刃の如き薔薇の花弁を、メイヤはよろめきながらも剣で防御し後退していく。
最深部を最も強固にし、周辺を埋め尽くす薔薇は言うなれば薔薇の結界か。

それを生み出すヴィカルトを攻める余力も、時間も無い。
見れば薔薇の結界が支えになってはいるものの、遺跡全体が揺れ、崩落の兆しを見せている。

「イスラ、脱出を!!」

迷う時間は無い。
メイヤは瀕死の身体に鞭を打ち、薄らぐ意識の中、イスラへ声を掛ける。

そしてーー……

「間一髪、ギリギリの所だったな。」

遺跡から数十km離れた地点にある空挺師団分隊の野営地で、髭面の男が安堵の息を吐いた。
彼は後詰め部隊として、イスラとメイヤと共に派遣された分隊長だ。

遺跡から脱出した二人を回収、保護したのも小一時間程前。
重傷であるメイヤを衛生兵に託し、部下に周辺の状況を探らせていたのだが……

「どうやら遺跡は崩落、周辺一帯を巻き込んで地下奥深くへ沈んだようだ。
……残念ながら、遺跡の起動も確認されたがな。」

報告を受け、分隊長は苦虫を潰した様な表情を浮かべた。

「まぁ、アンタら二人が何とか帰って来れただけでも良しとしよう。」

568アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/09(金) 04:29:44
【東南地域】

覚悟を決めたような、信念のこもったレックスの瞳を見て、アグルは察した。

「レックス…、お前…」

こんな時、どんな顔をすればいいのだろう。どんな言葉をかければいいのだろう。

分からなかった。
ただレックスの意志は強固としたもので、止めることすら憚られた。

そうこうしている内に水嵩はどんどん上がってくる。
時間がない。

アグルはほんの数瞬迷った末、レックスから視線を切った。
結局彼の言葉には返事を返さなかった。
舌打ちだけを残し、遺跡から脱出した。



【砂漠地帯】

「そうか…」

報告を受けたイスラは短く応え、重い息をついた。

「すまない、力が及ばなかった…」

遺跡は起動。加えメイヤにも深手を負わせてしまった。弱音を吐きたいところではあるが、悔やんでも結果は変わらない。

イスラは顔を上げ、分隊長の髭面に視線を向けた。

「メイヤの容態はどうだ?
それと…、アグルとレックスの方はどうなってる?」

569 ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:37:17
【砂漠地帯】

「いや、アンタらは良くやったさ。
ただ、相手が悪かっただけだ。」

イスラの視線を受け止め、分隊長は神妙な面持ちで続けた。

「通信用の無線機から聞こえた声から、相手は裏切り者のヴィカルトだとわかった。
師団でもアイツと互角に戦えるのは団長だけさ。
そんな相手と戦って、生きて帰って来れたのは僥倖……いや、アンタ達も相当な手練れってこった。」

そして、そう気を落とすなとイスラへ声を掛け、イヤホンから聞こえる報告に耳を澄ませーーー

570レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:38:20
ーーー

「……作戦は失敗、レックスは生死不明、メイヤは重傷で絶対安静、か。」

バルクウェイに駐屯する師団の母艦内、数ある会議室の一つでレオールは苦い声を絞り出した。

「すまない……俺の見通しが甘かったばかりに、君達の仲間を失ってしまう事になってしまった。」

同時進行していた二つの作戦は両方共に失敗。
先に報告を受けていた砂漠地帯での戦いからさほど時間を置かずに、東南地域の遺跡の稼働を確認したのも2日程前。

憔悴の色を浮かべながらもイスラとアグルの前に現れたレオールは、二人に頭を下げた。
しかし、酷だと思いながらもレオールは現状を二人に説明する。

「砂漠地帯、そして東南地域の遺跡稼働によりいよいよ世界の殆どが外郭に包まれてしまった。
各地では混乱による暴動も起きている。
幸いにもバルクウェイはまだ、陽の光が当たるがそれも時間の問題だろう……」

作戦の失敗、それは世界が闇に閉ざされる事を意味していた。
この2日間、レオールはスポンサーである中小国家と連絡を取り合いつつ、各地に散った偵察隊からの情報を受け、それらを纏めた上で次なる作戦を練っていた。

だが、それはアグルとイスラの前に顔を出せなかった言い訳には出来ない。
本来ならば、自分の立てた作戦により仲間を失った二人へ、真っ先に謝るべきだったのだが……

「今先程流した映像により、黄龍の居城が外郭上に現れた事が確認出来た。
表立って動く事から、向こう側は最終段階に入ったと予測出来る。
そこで、我々空挺師団は近隣諸国及びスポンサーである中小国家と共に軍を編成、外郭を突破し総力戦を仕掛ける事とした。」

それが何とか功を奏し、新たな作戦を決行出来る目処がついたのだった。

「だが、この作戦の頭数に君達二人は入っていない。
……これ以上、君達に戦いを強制する訳には、と思ってな。」

一応は作戦の詳細書類を配り、レオールは続ける。
その言葉が、それを続ける自分が如何に狡いかを知りながらも、それでも彼は続け、問い掛けた。

「だが、一つ伝えておきたい。
闇の巣から巨塔がそびえ立った。
外郭を突き破ったそれは、ほぼ唯一、地上から外郭上へ続く道となっている。

二人は、これからどうする?」

571リト ◆wxoyo3TVQU:2016/09/10(土) 13:16:29
【冥界】

「親という存在がどんなものか、そもそも俺は知らない。」

物心ついた頃から、いや、それよりずっと前から虐げられてきた。きっとこの少女には理解出来ないだろう。親に愛されることがどうゆうものか、自分に理解出来ないように。

「両親と離れて過ごすことが俺自身の身を守る為にも必要なことだった。一緒に過ごしたいなんて考えたことすらない。そう考えるのは、両親に対して少しでも情がある奴だけだ。」

リトの声はとても淡としていた。ただ事実のみを伝えるかのように。

「母は俺を生んで壊れてしまった。父は母を壊した俺を恨んだ。俺を敵視する二人と過ごしたいなんて思うはずもない。」

"寂しいの?"

そう口にした時、脳裏に少女の声が聞こえた。
思い返すと・・・以前同じように両親について聞かれた事がある。今と同じ答えを返した時、少女はリトの手を握り問いかけたのだ。

"どうしてそう思う?"

"そう言って自分を納得させてる、そんな感じ。仕方ないんだって。"

自分も同じだったから分かるのだと、少女は笑った。自分は神の子だと言われ両親と引き離された。両親は会いにこなかった。自分はどうしても会いたくて、社を抜け出して会いに行ったことがある。しかし久しぶりに会った両親は、自分を人間として見てくれなかった。村の人と同じように、神聖なものを見る目で、仰々しく接してきたのだと。

"境遇は少し違うけど、気持ちは同じだよ。リマね、凄く寂しかった。パパとママ、リマのこと見てくれなかった・・・"

そして少女は言ったのだ。

"リッちゃんも素直になっていいんだよ?寂しいって、ちゃんと言っていいんだよ?"

ずっと隠してきて、自分さえも騙してきた気持ち。
彼女に気付かされた。

「寂しくは、あった・・・かもしれない。」

暫しの沈黙のあと、リトはポツリと呟いた。
質問されなければ一生口にすることがなかったであろう両親への気持ち。

「でも、かと言って何が出来るわけでもない。そもそも、俺は闇の継承者が必要だったからつくられた。俺の気持ちなんて考慮されない。」



【いつも更新おそくて申し訳ないです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )
いきなりですが、以前イスラさんが描いてくれたリマセナの陰陽現したみたいなイラスト、LINEのプロフ画像にさせて貰っちゃいました|ू・ω・ )】

572マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/11(日) 13:06:38
【マゼンダ邸】

ギスギスはなし、そうDDは言うが、そもそも再会したところでマゼンダにとって利点はない。一生疎遠で良いくらいなのだからその申し出を受け入れる気など毛頭なかった。
ところでこの男、女?・・・性別が曖昧であるDDはマゼンダにとって奇妙な存在である。
女は嫌い、男は条件によって善し悪しが変わるが、DDはどちらにも属さないため良くわからない。少なくとも女ではない為たしかにこのメンバーでは1番マゼンダが話に耳を傾ける対象ではあるだろう。

そしてDDの話を聞き、不機嫌な表情を崩さぬままマゼンダはさらに眉をひそめる。

「ノワールはどうなんだい?」

オリジンは自分達を狙っている。では、ノワールは?自分達と違い、ノワールはオリジンの1部ではない。

いや、答えは聞かずとも明白だ。

「あの子が絡むとヴェントは面倒だからね・・・」

いつも冷静であるに関わらず、ノワールの事となると我を忘れ暴走する。それこそ自分の命など省みず。

「アンタが何を悩んでるのか知らないけど、聞く限りじゃオリジンは私らを生かすつもりなんて毛頭ない。どちらかが生きるにはどちらかが死ぬ。共存なんて無理。であるなら返り討ちにするしかないんじゃないかい?私はまだ死ぬ気なんてないよ。」

十字界に思い入れなんてないが、無くなるのも困る。

「本当はアンタ達と馴れ合うなんてごめんだけど、仕方ないね。今回は手を貸してやってもいいよ。・・・あいつの目もあるしね。」

マゼンダは溜息をついたかと思えば、嫌な事を思い出し苦い表情を作った。
いつぞやに会ったルイとかいう男。あれに睨まれると面倒なことになると直感した。
ジーナ。あの女が一目置く存在は侮れないと警鐘を鳴らす。
どうやらあの日自分が手を出した少年はあの男が目をかける者だったらしい。幸か不幸か、他のいざこざに紛れて大事は免れたが、あの時は運良く命拾いしただけ。次はないと警告も受けた。

「勘違いするんじゃないよ、今回だけだからね。」

573イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:14:48
【バルクウェイ】

以前バルクウェイで新旧含めた四神のメンバーが顔を揃えた時は壮観だったものだが、今ではそれも見る影がない。
ナディアやバロン、別行動を取っている連中は仕方がないにしても、まるで櫛の歯が抜けるように人がいなくなっていった。

アグルに至っては、一番やる気のなかった自分が今ここにいるのが不思議だとさえ思っていた。…いや言い換えれば、一番やる気がなかったからこそ残ってしまったのかもしれない。

その傍らで、戦いを強制しないと言うレオールの言葉を受け、イスラは今それを言うのか、と苦笑を浮かべた。

「もうここまで来たら最後まで突っ走るしかないだろう。ここでやきもきしてただ結果を待っているよりかは幾分かは気も楽だ」

そうして書類を受け取りながら、イスラはアグルに目を向ける。
こちらの返事を窺うかのようなその視線。アグルは沈黙の後に言った。

「行くよ。黄龍のとこに行くには闇の巣を通らないとなんだろ?
俺はそこに用がある」

574サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:30:33
【冥界】

「リト君ってさ、お父さんとお母さんが"そう"なっちゃったの…もしかして自分のせいだって思ってない?」

リトの口から両親の話を聞くにつれ、サンディの表情は何とも言えない怪訝なものに変わっていく。
彼女は控え目といった様子で尋ね、そして続けた。

「だからご両親の態度も仕打ちも、仕方がないことだって黙って受け入れてるんじゃないの?
たぶん…喧嘩だってしたことないんじゃないかな」

寂しい、と言えなかった彼が、面と向かって不満や反論を口に出来たとは考え難い。
もっともそんなことを言おうものなら、彼の立場は今よりももっと危ういものになっていたかもしれない。
子供は非力ゆえに大人の言いなりになるしかないのだ。

だがリトはもう幼い子供ではない。その気になれば理不尽な抑圧だってはね除けられる筈だ。

「さっき自分の気持ちなんて考慮されないって言ったよね。
でも言葉にしなきゃ、話し合いの場が生まれることもなければ、相手がリト君の気持ちに気づくことだってないんだよ。

今のリト君、色々溜め込み過ぎてて何か風船みたいなんだよね。いつか破裂しちゃうんじゃないか〜ってね」

つまり何が言いたいかというと…。
サンディは立ち上がり、リトに詰め寄った。

「大丈夫、リト君は悪くないよ!それに、もっと怒っていいと思う!
もっと我がまま言っていいし、我慢だってしなくていいんだよ!
リト君は闇の継承者である前に、一人の人間なんだから!自分の意見を言う権利だって何だってあるよ!」



【マジか… ( ´゜Д゜)・;'.、(吐血
そんなものよりもっと上手い方のイラストを画像にしなさいよぉ!←】

575DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:48:33
【マゼンダ邸】

「やっだぁ〜、マゼンダったら、それツンデレの常套句〜」

どうやらマゼンダは渋々ながらも要求を承諾してくれたようだ。
DDは茶々を入れながらも、彼女にキスを投げる。

「でもアナタならそう言ってくれると思ってたわ、アタシ達はもうソウルメイトよ!」

予想よりも早く話がまとまってくれて助かった。
これでマゼンダはよしとして、残るはヴェントのみ。
DDはフィアに目配せしつつ、ソファから腰を浮かせる。

「じゃあ次はダーリン(ヴェント)のところに行って事情を説明しないとね。
ねえマゼンダ、あなたダーリンが今どこに居るか知らない?」

576ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:12:12
【ポセイドン邸】

茂みより現れたジュノスを見るや、奇怪なものを見た時の嫌悪感に満ちた表情を浮かべたノワール。ルドラが目前へ姿を見せた時は一瞬眉を潜めるのみであった。ルドラの仕出かした件は彼が思っているほどノワールは重く見ていないらしい。

かと言ってどちらも信用出来ないことには変わりない。
だが、選り好みしている場合でないとも事実。

「・・・。」

命をかけると言ったルドラの瞳に嘘はなかった。
一方、ジュノスはセナの為であればどんな事でもやってのける男。娘の救出が結果的にセナの秘密を守ることに繋がるのなら、その身をなげうってでも成し遂げるだろう。

「分かった」

暫しの沈黙の末、ノワールは頷く。

「我が娘の命、そなたらに託そう。」

どちらにせよ自分は身動きが取れないのだ。今は一刻を争う事態。この2人にかけてみるしかない。

「じゃが、そなた・・・」

ノワールはまっすぐと、ジュノスを見据えた。

「娘の存在を、いつまであやつに隠しておくつもりじゃ?」

約束は守る。無事に娘が帰ってきたなら自らの口でセナに真実を告げることはしない。
しかし、秘密はいずれバレるものだ。このまま黙っていることは、果たしてセナにとって幸せなのだろうか。

「あやつならまだ良かろう。じゃが、娘の存在を知るのが、王子ではなく小娘の方だとしたら?」

心から信じているセナの不貞を、何かの拍子に知ったとする。リマの衝撃は計り知れないだろう。
せめてセナ自身の口から知らされた方が、まだ修繕の余地があると思うが・・・

「まぁ、あの2人の関係が崩れようとわらわに不利益はないからの。どうでも良い話ではあるが。・・・そうじゃ。」

ノワールは思いつき、悪戯な笑みをジュノスヘ向けた。

「その時は、我が子に父親を取り戻してやるとしよう。」

ノワールにとって必要なのは子供のみ。子供さえ取りかえせれば構わないと思っていることに嘘はない。
しかし、黒十字に恨みがあるのも事実。このまま見逃してやるのも惜しいのだ。

「答えは保留にしといてやろう。戻ってくるまでに考えておくのじゃ。」

子供を救い出しても、救い出さずとも、ジュノスにとって不安の種は消えぬのだと暗に示す。

「小僧、何をグズグズしておる。行くぞ。」

ノワールはそう意味深な言葉をその場に残し、アブセルを携え戻っていった。


【いえ、私にはイスラさんのイラストが最高の絵なので( • ̀ω•́ )✧
また描いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)←図々しい】

577マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:20:54
【マゼンダ邸】

ダーリン。その言葉にマゼンダの眉がピクリと動いた。

「・・・知らないねぇ。アンタのダーリンなんて。」

ダーリンが誰を指すのか、そしてその者の居場所も知っている。
しかし教える気はない。

「私の知る限りじゃ、そもそもアンタにダーリンなんてもんは存在していないね。いつ出来たんだい?アンタを相手にするなんてかなりのもの好きじゃないかい。」

578レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 13:53:22
【バルクウェイ】

狡いとわかっていた、彼等は何をどう選び進むのかもわかっていた。
だからこそ、二人の返事を聞いたレオールは頭を下げたまま、動かない。

否、動けない。
彼は頭を下げたまま声を出す。

「……本当に、すまない。
闇の巣にそびえ立つ塔……黄昏の塔での戦いは、世界の命運を握る鍵だ。
だからこそ、君達にしか頼めなかった。」

そう、それは言わば“黄昏の鍵”だ。
ソレを手にした者こそ、世界の命運を、征く末を決めると言っても過言ではない。

「人員、物資、援助出来る事は何でもする。
気軽に……その、声を掛けてくれ。
此方の準備、総力戦まではまだ暫く時間がある。
何かあれば呼んでくれ。」

レオールは傍らに立つバッハに顔を上げる様に促されたが、それを拒む。
それは、イスラとアグルが会議室を後にするまで続いた。

ーーーーー

街中はいつも以上に騒がしかった。
夕暮れ時から喧騒は大きくなり、露天や屋台に人集りが出来る。

空挺師団を核に編成される一大戦力、周辺諸国の軍隊がバルクウェイへ集結しているからだろうか。
見慣れない人種、聞き慣れない言葉が騒がしさをより一層加速させていた。

「この手には何もなかった、刃を振るい、血塗れの手じゃ何も掴めなかった。
ずっと、そう思ってた。

幼子を寄り代に異界の悪神を降ろす計画、自分がその為に産み出された存在……
それこそ、イオリの子、死産したその子を禁術で蘇生し、急速培養されたのが自分だと知った時は本当に、生きる意味は無いと思った。」

そんな様子を遠目にしながら、オープンテラスの席に座るメイヤは口を開く。
一時は危篤状態にまで落ちたが、師団の医療設備により持ち直し、今では何とか動ける程にまでなっていた。

「でも、手を伸ばせば届く、この手でも掴めるモノがある。
サンディとこの街の露店を回った時、そう思えた。

だから、俺も闇の巣へ向かう。
サンディは暗黒の渦に消えた、なら、ありとあらゆる闇が集まるあの場所に行けば……闇の巣へ飛び込めば、あの子を見付けれると思うんだ。」

そう、サンディはきっと生きていて、闇の中から抜け出せずにいる筈だ。
それに、闇の巣には兄弟子であるユーリと、自分と同じ忌み子……闇を狙うクウラも姿を現すだろう。

「因縁を断ち切り、世界の命運も未来も掴み取る。
本当に欲しかったモノ、俺はその為に戦う。」

先の戦いで負った傷、その後遺症は大きい。
伸ばした左手は震え、眼帯で隠された左目は光を捉えない。

メイヤは空を掴む左手を下げ、同席するイスラとアグルへ薄く笑みを向けた。

「ガラじゃなかったな、こんな風に話すのは。」

579イオリ ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 16:13:40
【虚空城】

黄龍の居城、虚空城。
闇に包まれつつある地上から遥か上空、外郭上に姿を現したその城は、数百もの多重結界により守護されている。

とある世界で、七大魔王と呼ばれた者の居城と全く同じその中には。
羅刹の王と水晶を操る凶剣士。

四凶と、不死身の兵団。
そして、四霊の二柱が陣を敷いていた。

「ま、十分準備はしたしな。
後はヤるだけだ。」

まさに要塞堅固、その城を眼前に、イオリは不敵に笑った。
そして、彼とその部下が乗る黒塗りの巨大な飛空挺は大空を切り裂き、多重結界を貫き、世界を統べる者の城へと乗り込んだ。

不時着どころか墜落と言っても過言ではなく、飛空挺は虚空城へ文字通り突き刺さった。
あまり衝撃に船の翼は居れ、船体は崩壊する一歩手前にまで大きく歪む。

そんな船を乗り捨て、イオリ達は虚空城へ侵入し、城内を駆け、進んでいく。
イオリを筆頭に、大罪の名を冠する傭兵達と、黒装束を着込む手練れの者達。

そして、彼等を迎撃する為に現れたのは不死身の軍団……処刑人の剣に所属していた科学者達から得たデータを基に、虚空城の設備により産み出された者達。
青い髪はデータの大元、ヴァイト由来のもの。

彼の持つ超再生能力を更に強化した巨躯に、数々の異能力を持つ彼らは、手強い。
更に、大量に複製培養された圧倒的な数の暴力は敵と認識した者を文字通り粉砕するだろう。

しかし、そんな軍団を前にしてもイオリ達が臆する事は決してない。
イオリの号令の下、傭兵達が、黒装束の強者達が勇猛果敢に進んでいく。

傭兵の頭、禿頭のグレゴリオがその姿を竜に変え、猛火を吐き出した。
その隣、狼男のヴァンはその爪牙で敵を切り裂く。

クウラの兄は狂笑を浮かべ、身に宿る闇を全開に。
溢れ出す闇百足の群れが敵軍団の脚を、腕を絡め取る。

更に、動きを止めた敵軍を、グレゴリオの双子の娘達が数多の刃で屠っていく。
勿論、黒装束達も負けず劣らず撃破を重ねる。

その上空を、イオリは蒼焔の翼をはためかせ、疾り抜けた。

ーーーーー

「さぁさぁ次に出て来るのはどちらさんかねェ!?
デコメガネよォ、俺はテメーを待ってるんだが!」

軍団の第一陣を抜けた先、鋼鉄の扉を斬り捨て、広がる暗闇へイオリは声を投げた。

580ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 15:16:29
【私信ですが、昨日、無事に子供が産まれました!】

581イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/22(木) 18:25:09

【産まれましたか!ヤツキさんおめでとうございます!(*^O^*)
男の子ですか?女の子ですか?


それから…ジュノスとかも遺跡遠征の方に回したかったけど、もう塔が建っちゃったのね(笑)
ストーリー的には佳境っぽいけど、どうやってナディア組とメイヤ組を合流させよう?
あと、吸血鬼オリジンは黄龍達とは別に接点なし?

あとここから下はちょっとした提案…というか、自分のちょっと思い付いたことを唐突に書いてみようシリーズなんですが…

ゼロがこの世界そのものみたいな感じなんですよね?
ユニもその世界を形成する一部分的な存在だった、ってことにしてみてはどうでしょう?
例えばユニは世界の愛やら母性なんかを司る意志みたいなもので、何か知らんがゼロから切り離されてしまう。
その際にユニと言う人格と肉体を持ったはいいが、記憶も失い人間界をさ迷っていたところをバロンに保護された。

って、したらユニが重要人物っぽくなって、ユニの登場回数が増えて自分的にハッピー!なだけです。はい(・∀・)←
最終的にユニは記憶を取り戻し、自分の使命に戻らないといけないけど、リトと離れたくない!と乙女心の中で揺れ動く!なんてことを勝手に妄想してただけです。すみません】

582ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 21:47:33
【陣痛本ちゃん来てから二時間半程のスピード出産ですた!
元気な男の子で、髪質、鼻と指先が俺そっくりだった(笑)
ありがとー!ここの二人には絶対報告しないとと思ってて!

っと、本編は取り敢えず進めれる所進めようかと思って、ちょっと急ぎ足だったけど……

これからの流れで考えてるのは、
闇の巣でのメイヤvsクウラ、アグルvsユーリ、イスラとヤツキの再開。
そこから塔頂上でステラvs先代組、終了後に頂上で一度全員合流。
その後は虚空城内にて決戦、この辺で残る四凶、四霊との決着、ラスボス戦へ〜

で、ナディア組は塔頂上で合流出来たらな、と。
vsステラ戦までに吸血鬼組の決着が着けば良いんやけど……
もしも決着つかなさそうなら、EXステージ、裏ボス的な感じで黄龍戦後にオリジン出しても良いかも?
その時はなんやかんや理由付け……世界ヤバいからオリジンより先にゼロ倒すわ、とかでも。
もしくはオリジンの足留めはジーナに任せろー!

とと、ユニの設定良いッスね!
それならば……世界の意志=ゼロ+ユニで、ゼロは陰、ユニは陽を司るとかどうでしょう?
分離してしまった原因は、100年前の戦いの影響とか。】

583リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/23(金) 06:54:55
ヤツキおめでとー!!!
凄い安産だね(笑)ヤツキに似た子ならイケメン確実だね!笑
温かい家庭を築いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)


ユニの設定ありがとうございます!
てかあの子の登場数増えたらイスラさんハッピーなんですか(笑)
イスラさんが思いついた内容、自分が前にハマってたアドベンチャーゲームのサイドストーリーに似てて凄くテンションあがってます(笑)おかげでユニリトの方は結末まで一気に見えたのでお任せ下さい(*º∀º*)そう言えばあのゲーム、アニメ化もして後で観ようと思って録画してた筈なんだけどどこいったんだろ・・・最終回を観た兄が、主人公が翼生やして飛んでいったとか意味わからんこと言ってたから観るのやめたんですよね(笑)

584ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/24(土) 00:22:51
【ポセイドン邸】

散々泣いて。泣いて。泣いて。
泣きつかれたのか、ミレリアは眠っていた。

様子を見に来たナディアはヨハンの葬儀が執り行われるまで寝かしておくと言った。

その場にいた者は部屋をあとにしたが、ユニのみがその場に残った。

何をするわけでもなく、ミレリアの寝顔をただじっと見つめている。

「・・・悲しい、ですか?」

悲しい。心が痛い。あの人はどこ?
ミレリアの心が叫んでいる。愛しい人を探している。

しかし、

「リト様はもっともっと、悲しいですよ。」

母親に否定される痛み。リトはずっと傷ついてきた。

「リト様は悲しくても、寂しくても、貴女みたいに泣けないですのに・・・」

ユニは呟き、ミレリアの眠るベッドに顔を埋める。

「どうしてリト様が分からないですか?リト様、ずっと迷子です。」

ユニは知っているのだ。

「リト様が生まれるのを、貴女は誰よりも心待ちにしていたです。」

大きくなるお腹を撫で、子守唄を口ずさむ。
元気に生まれておいでと優しく話しかけていた。

ユニは知っている。・・・何故、知っている?
リトと出会ったのはバロンを探すため地上に出た頃だ。それ以前の彼に会ったことなどない。それどころか、生まれる前の事なんて知るはずなどないのに・・・。

ユニはハッと起き上がる。

おかしい。

「リト様・・・」

最近なんだか違和感がある。変なのだ。
見えないものが見える。知らないはずなのに、初めて観る光景さえも既視感を覚えることがある。

ユニは部屋を飛び出し走り出す。
向かった先はリトが眠る部屋だ。

「リト様・・・リト様・・・!!」

ユニはリトに駆け寄り縋りつく。

「リト様・・・起きてくださいっ。いつまで寝てるですか!」

死人のように冷たい体。分かっている。簡単には目覚めないことは。

この異変を感じだしたのはそう、ちょうど、リトが贄として闇の巣に落とされた時からだ。

「ユニ怖いです・・・リト様助けて・・・」

いつもみたいに呆れ顔で、溜息を吐きながら「何を言ってるんだ」と、「お前の気のせいだ」と言って欲しい。
そうすれば、安心出来るのにーーー



【せっかくなので、闇の巣の一件で陰の方が力を強めたのと同時に、反動で対となるユニの記憶と本来の力も戻り始める感じにしました(*ˊૢᵕˋૢ*)】

585イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:30:07
【ヤツキ>奥さんすげえw
ヤツキさんはいいパパさんになりそうやでぇ^^
子育て大変でしょうが、末永くお幸せに!

なるほどなるほど、流れ了解です。
オリジンはその時のストーリー進行によって臨機応変にやっていきましょうか^^それぞれの進行速度によってまた変わってくると思いますし

あと四凶のフロンはジルにぬっ殺してもらおうと思ってるので、勘定からは除外するものとしてください;


リマ>ユニ可愛いよ!癒されるよ!o(^o^)o⬅リトとのやり取りとかほっこりします(笑)
良かった…、大きなお世話なんじゃないかと心配しました;

確かにそれはとあるゲームのヒロインの設定をパクったものですが(⬅多分そのゲームではないかなぁ…?少なくとも主人公は翼生やして飛んでいかなかったしww
自分がパク…参考にしたのはアルトネリコ3ってゲームです。そのヒロインが挿入歌で「エグゼクフリップアルファージ」や「トキノスナ」って曲を歌うんですが
それはそれは良い曲なんですよー、よければ暇なときにでも聴いてみてください。和訳付き動画推奨です^^】

586アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:34:58
【ポセイドン邸】

ジュノス達と別れた後、アブセルはセナ達を引き連れてリトの部屋へ戻ってきた。

「じゃあセイちゃんさん、とっとと着替え済ませちゃおうか。俺も、脱がせるのとか、脱がせるのとか、脱ぐのとか、手伝ってあげるから」

それもナディアにセナの身仕度を済ませてこいと言われたからであるが、リトの衣服を取りにクロゼットに近づいたところ、ベッドに伏せるユニの存在に気がつき、アブセルは眉を潜めた。

「おいユニ、お前またリトに引っ付いて…」

口を開き、そこで言葉を飲み込んだ。
ユニが今まで見せたこともない、まさに悲痛そのものといった表情を浮かべていたから。
アブセル唖然とし、やがてきまりが悪そうに言った。

「お前なあ…何て顔してんだよ。いつも阿呆みたいに能天気な面ぶら下げてるくせに」

587アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:53:44
【バルクウェイ】

軒を並べる露店街の一角。イスラは夕映えに煌めく街の情景を瞳に映しながら、メイヤの声に耳をそばだてる。

「いや…俺も同じ気持ちだよ」

彼がこのように己の決意を口にするのは珍しい。それが何となく嬉しくもあり、励みにもなった。

「ただ身体の方はまだあまり良くないんだろう…?無理はしないでくれよ」

常人ならば剣を握ることさえ儘ならない状態であろう。本音を言えば、まだ医療施設で静養して貰いたい程であったが、メイヤにしてみてもそうは言っていられないのだろう。

「二人とも少し聞いてくれないか」

そんな折、今しがたまで沈黙を貫いていたアグルが不意に口を開いた。
彼は感情の読み取れない瞳を二人に向け、静かに先を続けた。

「闇の巣にはあいつ…ユーリがいる筈だ…。
自分勝手なことを言うようで悪いけど、あいつに関しては二人は手を出さないで欲しいんだ。
どうしても…あいつだけは俺の手で片をつけたいから」

――――――――


仲の良い兄弟がいた。
兄の名をレグナといい、弟の名をアグルといった。
二人は何をするのも一緒だった。
ご飯を食べるときも、夜眠るときも、遊びに行くときも、片時も離れたことがなかった。
それもそのはず。
二人はお互いの腰が繋がっていたのだ。

二人は今の状態に不満を感じたことは一度もなかったが、医者は一人を犠牲にしてでも分離手術をすべきだと両親に告げた。このままでは二人とも長くは生きられない、と。

両親は二人の手術を決意し、その選択を兄弟に託した。

「どちらが死ぬ?」

兄は言った。

「どっちでも同じだよ」

弟が言った。

「だって僕らは同じ存在だから。僕らはアグルでもありレグナでもあるから。身体が別れても、心は同じ場所にある」

そもそも二人の間には兄も弟もなかった。もっと言えば、お互いの名前すらどうでも良かったかもしれない。
ただ両親が決めたことだと、それに従っていた。

兄弟はチェスをして勝負をつけることにした。勝った方が生き続けると。

兄はわざと弟を勝たせた。
手を抜かれたことに弟は不服そうだったが、特に何を言う訳でもなかった。

「おやすみ、アグル」

「おやすみ、レグナ」

そうして二人は眠りについた。

次に目覚めた時、身体は驚く程軽く、違和感があった。
ただそれ以上に驚いたのは、何故目覚めたのが自分の方なのかと言うこと。
何の手違いか、今ここにいるのは兄のレグナであった。

588アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:55:37
―――…

「兄は一族の当主になった。だけどそれから数年後、兄も一族も全員があいつ…ユーリによって皆殺しにされた」

アグルは淡々と語った。
西日の逆光が彼の顔に影を差し、その表情はよく見えない。
一連の話を聞いたイスラは少し言い難そうにしながら、彼に言った。

「その話を疑う訳じゃないんだが…、だとしたら君は…」

誰なんだ。とでも言いた気にアグルを見る。
アグルは口元にうっすらと笑みを見せた。それは自嘲の微笑みだった。

「手術は成功していたんだ。兄弟は二人とも生きていた。ただ…兄は本家に残って当主になり、弟は乳母とともに余所にやられた」

その事実を知っているものは一族の中でも極少数に限られていた。恐らく兄さえも弟が生きていることは知らされなかった筈だ。また自分も兄の生存を知らなかった。

「過去、先祖達が無茶をしたせいで、当時の俺達一族には敵対する連中が沢山いた。…ま、その辺の内容を言えば長くなるし、あんた等に聞かせるようなものでもないんだけど…。

ともかくそいつらと長年争い続けた結果が、一族の勢力の衰退だった。
一族の前途を憂慮した者達は、跡取りの一人を手術の際に死んだものとし、以来ずっとその存在を公に隠してきた」

それもこれも自分達の血が途絶えないようにと考えて取った、彼らの苦肉の措置であった。

「兄貴達が殺された事実を乳母から聞かされた時、一族が取り決めた本当の当主は初めから俺だったんだと言うことを知った。
同時に兄貴はずっと俺の影として生きてきたんだってことも。それも本人自身すら知らぬままにだ」

次第にアグルの口調に熱が帯びてくる。彼は怒りを抑えるかのように自分の腕に爪を立てた。

「許せないんだ…。兄貴が…一族が、必死に戦っていた時に、何も知らずのうのうと生きていた自分自身が…!
何かを得ようとも、知ろうとする努力すらせずに見殺しにした…!
そんな俺が罪滅ぼしをするとしたら出来ることは一つだけ。皆を死に追いやった連中に、同じ苦しみを与えることだけ…」

何も知らなかった。一族が何をしているかも、何をしてきたかも。ただ自分は世話役らの庇護のもと、安穏と日々を過ごしてきた。全てを聞かされたのは、一人きりになった後だった。

「あとはユーリだけなんだ…。かつてユーリを差し向けた連中は皆始末した…。奴を殺せば俺の報復は完遂する。
世界が滅ぶ前にあいつだけは何としても俺の手で止めを刺す…」

その眼は暗く、復讐に取り憑かれた者の眼だった。

「復讐の為に何人も殺して、多くのものを犠牲にしてきた…。レックスだってそうだ…。もう止まれない。止まってはいけないんだ…絶対に…」

もう誰かに語りかけている体ではなくなっていた。その言葉は呪詛の様に口から溢れ落ちた。
目の焦点も定かではなく、腕に食い込んだ爪が皮膚を破り、血が流れた。

無気力で常に冷めたような態度を装っていた彼のその内側には、ドス黒い怨恨と狂気の感情で満ち満ちていた。

589ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:37:29
【ポセイドン邸】

アブセルの下心丸出しの発言の意味を理解出来なかったセナは疑問符を浮かべ、ただ一言「一人で出来る」とだけ呟いた。

「・・・アブセルさん」

リトに縋り突っ伏していたユニははじめ来訪者に気付いていなかったが、自身の名前を呼ばれピクリと体を震わせる。
そして恐る恐る顔をあげ、その者が見知った相手であるとわかるや、ホットしたような表情を浮かべた。
しかし今にも泣きそうな顔である事には変わらない。

共に部屋に入ってきたセナも一瞬ユニへ目を向けるが特に気にした風もなく、アブセルがクローゼットから取り出しかけた衣装を受け取った。

「アブセルさん・・・ユニ、変なんです。ユニはユニの筈ですのに、ユニじゃないみたいで・・・。怖いです。アブセルさん、ユニはどうしたらいいですか?」

この不安をどうすれば取り除けるだろうか。一つでも何か答えが欲しい。
いつも自分の疑問に答えてくれたリトは目覚めない。
ならば代わりに、アブセルからでも答えが欲しいと立ち上がる。

・・・と、

「・・・セナ、様・・・」

そこで漸く、セナの存在に気付いた。
リトと一番不快繋がりのある先祖であり、堕とされたリトを救い出してくれた人。
息をしていないリトを「生きている」と言い、「簡単には目覚めない」と応えた張本人。

この人なら、知っている・・・?

「セナ様!」

ユニは堰を切ったように今度はセナに詰め寄った。
自分は関係ないとばかりに着替えの為黙々と服を脱ぎ出していたセナは急に矛先が自分に向いた為少し驚いたような表情を浮かべるが、ユニは気にも止めずセナの腕を掴み言葉を投げかける。

「教えてください!リト様はどうすれば起きるですか!?いつ起きるですか!?」

予想以上に力が強い。掴んだ指がセナの肌に痕をつけていくが動転していてユニ本人は気づいていていないのだろう。

「セナ様はわかりますか!?ユニに何が起きているか!今回の事があってからなんですっ。闇の王子様なら分かるですよね!?」

590リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:38:40
【アブセルが脱がせることしか考えてなくて笑いました(笑)
そこまでユニのこと気に入ってくださっていたとは(笑)ありがとうございます(/ω\*)
ユニはこの作品のマスコットキャラクターですからね!←違う
むしろユニに重役与えてくれてありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ
現在セナに対して盛大に粗相起こしてますがアブセルが止めてあげてください(笑)そしてセナはセナで女の子いるのに平気で服を脱ぐとはけしからん←情操教育サボっちゃダメじゃないですかジュノスさん。←←

そのゲームは知らなかったです|ू・ω・` )
自分がハマっていたのはシャイニングハーツと言うゲームなんですが、似た設定ってあるんですね(`・ω・´)
シャイニングハーツの方では記憶と感情をなくした少女がいて、その子のために色んな感情の欠片を集めていくんです。感情の方は少女自身が封じてしまっているので、欠片を集めていくと喜怒哀楽の鍵が手に入って、その鍵で感情を開放していく感じになります。感情が戻るにつれて記憶も戻り、その子自身が世界の核であることが判明するんですが、その子は「この重すぎる使命が嫌で逃げてしまったけど、ここで出会った大好きな皆の為に、大好きな人皆の住む世界を無くしたくない」って感じで自分の使命を全うするべく主人公のもとを去ってしまうんです。この時主人公の好感度MAXだったらこの子とのEDが迎えられるんですけど、MAXじゃなかったらここでお話は終了です(笑)彼女が自分の使命を受け入れることが出来たって意味でのハッピーエンドですからね(笑)私は個人的にこのヒロインの事が大好きだったので当然好感度MAXにさせましたが。隠しEDなのである時期を境に好感度が上がらなくなったり、EDを迎える為に色んな条件を満たす必要があったりと地味に難しいんです。いやぁいい思い出だ←

イスラさんの方のゲームも調べてみますね(/ω\*)

つか、フロンはジルがぬっ殺すって何勝手に決めちゃってるんですか(笑)ジルは本当は純粋で優しい子なんですからあまり傷つけちゃダメですよ?まぁ残忍なヤンデレな子なのでちゃんと殺りますけどね!←
・・・純粋で優しい残忍なヤンデレって何だ←←

そしてアグルの過去に涙です(´;ω;`)】

591ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 01:19:47
【イスラ》母は強し、だったわwwありがとうございます〜!幸せになりますぜ!

っとフロンの件了解す!吸血鬼組は流れに合わせて、で(笑)

あー……アグルの過去話全くの予想外で涙。シャム双生児だったっけ?こんなタイプの。

リマ》新生児らしからぬしっかりした顔立ちしてて将来有望やでぇ!
ありがとね、パパさん頑張ります!

っと、四凶はもう一人、残ってるけどどうしよう?】

592メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 23:23:42
【バルクウェイ】

薄皮一枚隔てて蠢く激情。
その一端を垣間見、メイヤは口を閉ざした。

やる気の無さと無関心さ、それは内に秘めるどす黒い感情を表に出さない為の殻なのか。
暗い光を宿すその瞳を、メイヤは知っている。

復讐者の目、それは見慣れたモノだった。
殺しを生業にする一族の出の為に、自身も例に漏れず刃を振るって来た。

そして、時折出会う家族、知人、友人、恋人を奪われた者。
彼らはアグルと同じ目で襲いかかって来るのだ。

勿論、その者達の末路は言わずもがな。
東方最強の暗殺者集団と名高い一族の、更にその中でも屈指の実力者であるユーリに挑むのならば……

だが、アグルを止める事はしない、否、出来ない。
彼には彼の、戦う理由があるのだ。

「皆、各々に戦う理由がある。
今となっては、もうそれだけだな……」

単純な勝ち負けだけでは無い戦い。
世界の命運も、因縁も、そして、復讐も。

アグルへの返答は、雑音に流れて消えた。

ーーーーー

【闇の巣】

バルクウェイを発ち、数日。
必要最低限の物資を積んだ飛行艇で到着した決戦の地は、予想に反して静かだった。

艇から降り立ち、進んだ先。
そびえ立つ巨塔の麓、静寂に包まれる水辺。

塔へと続く橋の上に見える人影を前に、メイヤは足を止めた。
それと同時に、人影……クウラは被っていたフードを取った。

「アグル、イスラ。
アイツの相手は俺だ、タイミングを伺って、先に行ってくれ。」

現れたのはメイヤと同じ濡れ羽色の髪と、東方出身者特有の黒い瞳。
どことなく自身に似た顔立ちのクウラへと、メイヤはクナイを投げ、同時に疾走。

迫るクナイを避け、クウラは笑う。
そして、メイヤが放つ刺突を小刀で切り払い、両の腕を、小柄な背中から生える闇の大翼を一閃。

漆黒の羽が散弾となって辺り一面にばらまかれた。
ばらまかれた散弾は橋や水面に着弾すると同時に爆発し、周囲を轟音と爆裂に染める。

しかし、それはあくまでも戦いの合図だ。
クウラはメイヤへ凶笑を向け、メイヤはそれを受け止め、真白の刃を振るう。

「用があるのはこの死人だけさ、赤毛の二人は好きにしなよ?」

「だ、そうだ!二人共先に行け!」

593アブセル:2016/10/01(土) 01:51:29
【ポセイドン邸】

ユニが何を言っているのかが分からない。
アブセルは、お前はいつも変だろう。と顔をしかめるも。彼女の取り乱しようを見て、どうやら本気で思い詰めているらしいことを知る。

「こらユニ!セイちゃんさんが困ってるだろ!聞きたいことがあるならちゃんと分かるように説明しろ!
つかまず落ち着け!」

セナにすがるように詰め寄るユニを引剥がし、リトの寝るベッドの端に座らせる。
まだ何か言いたそうな彼女を一先ず黙らせると、再びセナに視線を向けた。

「セイちゃんさん。こいつはユニっていって、迷子になってたとこをリトが保護したんだ。
んーと…そんで絶望的に阿呆で無知で…」

今まで他の人にきちんとした形でユニを紹介したことがなかった為にした説明だったが、よくよく考えれば、自分は彼女について何も知らないことに気づく。紹介しようにも名前ぐらいしか言うべきことが見あたらず、アブセルは怪訝な表情をユニに向けた。

「…そもそもお前って何者なんだよ…?」

594シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 01:56:52
【虚空城】

幾重にも張られた結界は飛行挺の衝突によって破られ、城内にはイオリとその部下達が雪崩れ込む。

「下界のゴミムシ共がわらわらと小賢しいことだ…」

その実情を目に、シデンは嘆きため息を溢す。
闇に包まれた空間に雷光が迸り、それによって浮かび上がる男の姿に、彼は鋭い眼光を向けた。

「まさか勝てると思って来た訳ではあるまいな。なあ、イオリ?」

扉を破り入ってきた、イオリのその声に応えるように、シデンもまた口を開く。
直後、部屋全体に雷の結界が張られた。

「まあいい。貴様はこの俺が直々に始末してやろう。これで前みたいに途中で邪魔が入ることもない。じっくりサシで勝負を着けようじゃないか」

そうしてシデンは雷を刃に見立てたブレードを手にする。その切っ先をイオリに突き付け、不敵な笑みを浮かべた。

「時にイオリよ、貴様の女はどうした。あれは我らと同じく四霊の力を有する者…、本来ならばこちら側の人間の筈だろう」



【マゼンダ邸】

「もぉー!ダーリンって言ったらヴェンちゃんのことに決まってるじゃなぁーい」

マゼンダの皮肉にも気づかずに、DDはさも当然と言わんばかりに言葉を返す。

「なぁにぃ?ひょっとしてマゼンダってば、妬いてるのぉ?
ヴェンちゃんにぃ?あっ!やだ!もしかしてアタシに!?」

気持ちは嬉しいけど、生憎アタシにそういう趣味はないの。と一言断ってから、彼は続ける。

「まあアナタが知らないならしょうがないわぁ。ダーリンが住んでる館にでも行ってみましょ。思いがけないダーリンのプライベート姿が拝めるかもしれないし!寝起きドッキリとか!湯上がり姿とか!」

涎を垂らしながら嬉々として語るDDは、このままヴェントの住まいに不法侵入…いや、突撃でもしそうな勢いである。

595イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 02:02:15
【リマ》アブセルはセナに対しても欲情するようです⬅
マスコットキャラ同意ですが、あれ…?彼女は一応ヒロインじゃなかったっけ?(笑)
そこもジュノスが教育するのかww彼は自分の都合のいいことしか教えないからリマが見張ってないと⬅

シャイニングハーツ、動画ちょっとだけ見ました^^
面白そうですね、女の子のキャラが可愛いし!
そんな重い設定とはかけ離れた予想外のほのぼのっぷりに驚きました(笑)
てかパンゲーって言われてるんですねw何故にパンww

そろそろ本気でジルがやばそう;また一つジルに罪を背負わせてしまうのね、いやぁ申しわけ⬅
そんな積もりに積もった鬱憤をどうぞフロンで発散させちゃってくださいw



ヤツキ》そうそう、何となく双子設定にしたかったので、どうせなら…とシャム双生児にしました。
あとユーリはトール一族と敵対してた連中に雇われた設定にしてしまいました(^-^;

596イオリ ◆.q9WieYUok:2016/10/01(土) 16:10:08
【虚空城】

雷光と共に姿を現した男に、イオリは笑みを返す。
予想通り、いや、リクエスト通りか。

「俺は勝てる戦いしかしねェんだよ……
まぁ、テメェとは決着つけねーといけないのは同意だがな。」

こちらへ雷刃を向けるシデンへ、イオリもまた刀の切っ先を向ける。
蒼焔を灯す妖刀、鸞は四霊である鳳凰と同質の力を秘めている。

「この世界は初めっから歪に歪み、狂っていた。
百年前の戦いで、その歪みは決定的なモンになった。
その際に、目覚める筈の四霊の性質も変わった。
白焔と黒端、二つに分かれた世界の中枢。
鳳凰は白焔の側に成ったって訳さ。」

イオリは話をしながらも刀を一閃、二閃、三閃。
燃ゆる刀身から三羽の火炎鳥が姿を現した。

火炎鳥は高く嘶き、蒼焔を撒き散らしながら高速飛翔。
シデンへ向かって羽ばたき、爆発。

「さてさて、無駄話は終わりだ。
決着つけようぜ、デコメガネ!!」

暗闇を炎で染め、イオリは獰猛な笑みを浮かべた。
そして、目の前に広がる爆炎へ向かって自ら飛び込んでいく。

597リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/02(日) 21:48:57
【冥界】

図星だった。
そう思っていなければ自分を保てなかったのだ。

「・・・無理だ」

サンディの言う通り、権利はあるのだろう。しかし、どんなに主張したところであの二人には届かない。

・・・違う、本当は彼女の言う通り、気持ちは届くのかもしれない。
しかしその可能性は限りなく低いから・・・多分、怖いのだ。面と向かって否定されることが。

ここで目覚める前、最後に見た父の顔を、言葉を今も引きずっている。

「・・・」

このまま話をしていてもリトの気持ちも、サンディの考えも変わらないだろう。
リトは立ち上がる、そしてぶっきらぼうに言葉を切り出した。

「あの姉弟、探そう。今の俺達がすべきなのは茶会でも話し合いでもない。ここから出ること、元の場所に戻ることなんじゃない?」

的を得てはいるがこの話を続けたくない故の言い訳だった。
「知らない」と言ってはいたが、この世界の住人である姉弟なら本当は何か手掛かりを持っているかもしれない。そう言ってリトはサンディの返事も聞かず歩き出した。

---その姿を、一人の男が見つめていた。

「・・・リト・・・?」

あてもなく歩いていたその男は、たまたま視界に入った少年に驚き足を止めた。間違いない、あの少年はリトだ。
男は信じられないと言った表情を浮かべる。

「何故・・・」

あの子がここにいる?そう考えかけて男はハッとする。
自分は何を言っているんだ。「この手」で、あの子を死に追いやったではないか。
長い間探していても結局救う手立てなど見つからなくて、一族を、他の多くの命を救う為に犠牲にした。
最期まで優しい言葉をかけてやることも出来なかった。代わりに存在を否定して、「利用する為に作った」などと酷い言葉を投げた。自分の前では一切表情を変えないあの子が、その最期の言葉を聞いて絶望を表した顔を浮かべたのを知っている。

「よかった・・・」

死なせたのに、男は、ヨハンはそんな言葉を口にした。
不相応なのは分かっているが、最悪の事態を免れたのは嬉しい。そう、リトの魂が無事だったことに感謝したいのだ。
贄にされたものはその身だけでなく魂までも喰らわれると思っていた。だから素直に嬉しかった。

そして、自分にこんなことを思う資格がないことも分かっているが、心を抗う事は出来ない。
そしてもう嘘をつく必要もないだろう。

「・・・リト・・・」

罪を重ねてきた自分は天に行けるはずもない。地の国へ行く覚悟は出来ている。
地の国へ行けば、決して転生することはなく苦しみ抜いて魂の消滅を待つことになるだろう。
だから最期に、この身が消えゆく前に、お前の姿を見ることが出来て良かった。

598ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:16:21
【ポセイドン邸】

取り乱したユニを引き剥がし落ち着かせようとベッドに座らせる。
セナはふとユニに掴まれた腕に目を向ける。

「・・・」

触れられた部分に火傷したような赤い痕があった。掴まれた際の痛みの原因は力加減だけではなかったらしい。
セナはその傷をアブセルに気れぬよう、彼がユニに意識を向けているうちに服を纏った。

「・・・ユニ、ですか・・・?」

一方、少し落ち着きを取り戻したユニはアブセルの疑問に口篭る。言うべきかどうか悩んでいる表情だ。
そして不意にリトを見る。

「リト様には言っちゃダメですよ?」

やがて決心したようにそう口にしたかと思えば、立ち上がり皆と距離を取った。

「ユニの姿、見せるです。」

言ってユニは少し前屈みの姿勢を取る。途端、ユニの背から大きな白い羽が広がった。それはおとぎ話に出る天使の羽根のよう。そして、翼を広げ顔をあげたユニの額には架空の存在であるユニコーンの角に似た物も生えていた。

「ユニはバロン様の使役魔です。バロン様の力で生まれ、ユニと言う名前を貰いました。この姿が本来のユニですが、見ての通り・・・その・・・醜いですので、普段はいつものユニの姿になってます。ユニは人間と同じ姿が良いですので。リト様には秘密、約束ですよ?こんなユニ見たら、リト様はユニのこと嫌いになっちゃいます・・・」

599リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:17:16
イスラ>>
決めた、リトの声優はうた〇リの藍ちゃんの声にする!←いきなり何だ

ユニは記憶がないので、自分のことバロンに召喚された使役魔だと思ってることにしちゃいました←
世界の核と言うことでとても神秘的な姿(と言う設定)をしてますが、ユニは嫌みたいです←
因みに陽を司る世界の核→清い力の塊→闇を浄化する→セナにとって毒と言う謎設定作りました。リトにとっても毒ですが、リトはセナより闇の力は薄い&ユニ事態が本来の力を目覚めさせていなかったってことで今まで抱きついても平気だったという言い訳も作りました← リトが平気なのでアブセルにも害はないです← 今後ユニの力が強くなることでリトにも害なすようになりますが、ユニが力を制御出来るようになれば傷付けることもなくなります。


セナにも欲情とかwwwアブセルはリトの顔が好きなだけなんじゃ・・・(笑)
あれ?ユニってヒロインでしたっけ(笑)← ナディアは・・・ヒロインからかけ離れてますからやはりユニがヒロインか←
ジュノスはセナの教育係ですから(きりっ)
え、自分に都合の良いことって何を教えるのwww


シャイニングハーツがパンゲーと言われるのは、作中でパンを作って色んな人に配り、その際に喜怒哀楽の感情=ハートを集め、そのハートを材料にまたパンを作り〜って事をやるからです(笑)
もともとこのゲームは兄がジャケ買いしてきたものなんですが、パンを焼くのが嫌になった兄がプレイを放棄し、私に押し付けてきました(笑)話を進めるのにパン焼きは欠かせないんですよね〜
因みに私はパンを焼くのがむしろ楽しくて、色んな材料を集めてきてはどんなパンが出来るのかワクワクしながら焼き、嬉々として話を進めました←

申し訳なく思ってるように見えないwww
フロンで発散wwwフロンの存在意義がwww
ジルはヨノの愛に救われ、最終的にリトを溺愛するお兄ちゃんになると思うのできっと大丈夫です←何が


ヤツキ>>
すでに親バカ発揮してるwww

てか四凶って自分も誰かやってた気がするけど結構前過ぎて何のキャラだったか以前に名前すら思い出せない・・・困った(´;ω;`)

600ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/03(月) 07:42:12
>>599
四凶の余り=コニィ=リマの持ちキャラやで、空飛ぶ絨毯に乗ったお姉さんだった筈……かなーり昔に出て来てたよ!

601マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:46:03
【マゼンダ邸】

「あんた、今すぐその減らず口を閉じないとタダじゃ置かないよ」

涎を垂らし語るDDの目は本気だ。マゼンダは思わずDDに詰め寄りそうになるのを寸出のところで耐え、誤魔化すように咳払いを一つする。
ノワールが関わるとヴェントが我を忘れるように、ヴェントの事となるとどうも平静でいられなくなる。マゼンダとヴェントは同時期に生まれた為、兄弟のような情でもあるのだろうか。

「生憎、館に行ってもアレはいないよ。大抵、今の時間は森にいる。」

出来れば会わせたくもないが、放っておくと何をしでかすか分からない。マゼンダは観念しヴェントの居場所を吐いた。
ヴェントの日課は自己修練と若い吸血鬼達の教育及び鍛錬。自分達吸血鬼にはそれぞれ派閥があるが、派閥に属する前の吸血鬼達に基礎能力を仕込むのはヴェントの役目だった。
今の時間帯なら自己修練だろう。ヴェントは基本的に時間的行動パターンが決まっているため分かりやすい。

マゼンダは溜め息を吐き立ち上がる。

「勝手に動かれても面倒だ、行くよ。」


ーーーーー

案の定、ヴェントは森に居たようだ。
ある程度目星を付けた場所に向かうと、木の幹に刃で切り裂かれたような跡を見つけた。まだ新しい。
しかし当の本人がいない。まだ館に戻る時間ではないはずだが・・・。

「ヴェント!どこにいるんだい?アンタに客人だよ!」

マゼンダがそう声をあげると、まもなくして黒いコウモリが一同の元へ飛んできた。コウモリは一同の周りをぐるりと一周すると、付いて来いとでも言うように元きた森の奥へと飛んでいく。

「行くよ。」

マゼンダはコウモリの後に続いた。

コウモリが行き着いた場所は湖だった。
マゼンダは当たりを見渡すが、ヴェントの姿は何処にもない。

「ヴェント、何処だい?」

しかし此処にいるのは確かだ。マゼンダが再びその名を呼ぶと、途端、湖面から勢いよく人影が上がる。流石に予想していなかった場所から出てきた為、マゼンダは思わず声をあげた。

「驚いた!アンタ、なんて所から出てくるんだい!」

心臓に悪い。一体そんな所で何をしてるんだと非難をぶつける。
対するヴェントは顔に掛かった髪を払いながら、何を驚いているのか分からないとでも言うような表情を浮かべた。

「水浴びだ。・・・汗をかいたからな。」

602リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:47:23
ヤツキ>>

そうだ!コニィだ!
いつも目を瞑ってるお姉さん!ありがとう!

603アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:17:57
【闇の巣】

メイヤと相対する、もう一人の黒髪の青年。
本調子でない彼を一人残して良いものかと、イスラは考えあぐねるが…。自分達にはそう悠長にしている時間もないことを思い出す。

「メイヤ…気を付けろよ!」

気がかりながらも、結局はイスラもアグルに続いて前方へ飛び出した。


目指すは眼前に聳える禍々しい黒き塔。
再びこれと相見えることになろうとは…。イスラの心中は苦い想いでいっぱいだった。

(…ここから先は何があるか分からない。慎重にいかなくては)

しかしそんな考えも露知らず、アグルは一人でどんどん先へ進み、止める間もなく塔内部へ突入する。

「アグル、待て!」

続いてイスラも後を追うが…、一足遅かった。彼の姿は既にそこから消えた後だった。

――……

(どこだ…)

闇に蝕まれ暗澹とした空間。時折遭遇する魔物を鬼神のごとく気迫で切り捨て、アグルは複数に枝分かれした通路を直感だけで突き進む。

(アイツはどこだ…!)

頭にあるのはただ一つのことだけ。
彼は何かに取りつかれたように、それを求めてひた走る。

…そして、ついに広い空間に出た。それとほぼ同時に足を止め、アグルはとある一点を凝視する。
魔物の返り血で染まった顔が不気味に歪んだ。

「逢いたかったぜ…、ユーリ…」

604アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:19:54
【ポセイドン邸】

本当の姿を見せる。そう言って変身したユニの姿は、まるでどこかの教会で見た絵画の中の天使のようだった。
その神々しいばかりの姿にアブセルは思わず息を飲む。

自分が知る限りでは人はこれを醜いとは思わない、むしろ崇拝の対象として見るのではないだろうか。
しかし彼女自身はそうは思っていないらしい。

「別に俺からリトに何かを言う気はないけどさ…。
でもリトは見た目で人を嫌いになったりするような奴じゃないぞ」

もっとも…この地上でそんな姿で彷徨かれては目立って仕方がないので、普段は隠すに越したことはないが。
そして彼女が不自然に浮世離れしている理由も今ので何となく理解した。

「それでお前は何を悩んでるんだっけ?
自分が自分じゃないみたいなこと言ってたけど」

605アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/08(土) 06:34:02
リマ》確かにぴったりな声かも^^
自分はリトの声、斎賀みつきさんの青年ボイスを想像してました。(ドリフターズってアニメの那須与一とか)

なるほど、了解です!ユニが歩く危険人物に…(笑)

そんなことないですよ!もうあれは癖みたいなものだから、リトとそっくりなセナにも身体が勝手に反応しちゃうだけです⬅
ナ…ナディアはイケメン姉御枠だし…(;´`)⬅
都合のいいこと…、うーん何だろう?(笑)何か色々変なこと吹き込んでそうですけど⬅
あと都合の悪いことも教えないですね。ノワールのことしかり、多分他にも沢山

まさにパンゲーww
リマさんにはぴったりのゲームだったんですね(笑)

フロンは悪者だし⬅
溺愛wwジルそんなキャラになるのか(笑)
てかフロンをジルに絡ませたいんだけど、どうやって会わせよう?;

606ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/10/09(日) 19:42:38
【黄昏の塔】

眼前に現れた、血染めの顔を歪める青年。
その姿を見、ユーリは静かに言葉を吐いた。

「その顔、見た事があるな」

ユーリが立つフロアは、塔の中間地点だった。
塔には複数の入り口があり、その内部も無数のルートに分かれている。

しかし、その全てが一度収束する地点があり、それがこのフロアなのだ。
薄闇の中、塔の守護者としてユーリはアグルへ右手を……その手に握る槍の穂先を向ける。

その姿は以前闇の巣で対峙した時よりも禍々しく。
魔装の背面から伸びる副腕の数は増し、さながら蜘蛛の如く。

「何の怨みがあるか知らないが、侵入者は排除するのみ。」


兜の面頬を下ろし、ユーリは漆黒の瞳に燐光を灯す。
そして、槍で刺突の構えを取り、その姿が消える。

薄闇を照らす灯籠の火が揺れ、現れたのはアグルの眼前。
瞬間移動とも言える速度からの刺突はアグルの頬を掠め、槍のみがそのまま後方の壁へと激突。

破砕音を轟かせ、壁面を穿ち、大穴を開ける。
そして、槍を投げ捨てたユーリは副腕を使いアグルの四肢と、肩を掴んだ。

「強制排除だ。」

その声は後方に。
アグルを掴んだままユーリは突進し、大穴から外へと飛び出した。

一瞬の浮遊感から続く重力落下に身を任せ、急停止。
副腕から延びる糸によって塔の壁面へ着地し、反動と共に掴んでいたアグルを放り投げた。

「落ちろ、闇の底へ!!」

607ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/10(月) 21:39:05
【ポセイドン邸】

「ユニはおバカです。色々知らないですので、リト様がいつも分からないこと教えてくれてましたです。」

アブセルに促され、ユニはポツリポツリと話し始める。
初めて会ったとき、ユニは無知だった。世間知らずと言えばまだ聞こえが良い方で、本当に「何も」知らなかったのだ。それこそ、人間は服を着ると言った当たり前の常識すら理解していなかった。常軌を逸しすぎていて、会話出来るだけまだマシだと、リトに思わせるほどだ。

「ですのに、今のユニは、知らないはずのことも知ってるです。見たことないのに、見たことあるです。」

上手く説明出来ないが、ユニは懸命にアブセルに訴えた。

「たとえば・・・アブセルさんは7歳までおねしょしてました、ですとか。」

608リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/10(月) 22:40:36
イスラ>>
斎賀みつきさんの声めっちゃ好きです!でも最近聞いてないんで自分の記憶してる声と変わったのかな?とかおもってドリフターズ1話検索して見てきちゃいました(笑)記憶してた声だった(笑)リトの声あんなイケメンに早々してくださってありがとうございます!てかこうして聞くと藍ちゃんの声とそれなりに似てる?という事はリトの声イメージってまさにコレなんですね(笑)
むむ、斎賀みつきさんの声も捨てがたい・・・でも今は藍ちゃんの声が熱い!ので藍ちゃんの声にします(笑)斎賀みつきさんの声はセナにでも譲ろう←何様 セナの声ってちゃんと第二成長来た男の子の声がいいんですけど女顔のせいか思いつかないんですよねぇ(˘-ω-˘ ).。oஇ

歩く危険人物・・・(笑)でも一応、闇系統の人以外には無害なので(笑)

癖なんだwww迷惑すぎるwww
リトが目覚めてセナと並べたらアブセル幸せすぎて昇天しそうですね←
それは慰めなのか・・・(笑)?
ジュノス、変態なだけで比較的常識人だと思ってたのに・・・(笑)
ジュノスが教えること取捨選択するからセナはいつまで経っても世間知らずなままなんだ←責任転嫁

楽しかったです(笑)
あのゲームってそれぞれヒロインごとにEDが用意されていて、ヒロインは全員攻略したんですけど、男性キャラは攻略出来ませんでしたねぇ、なかなか好感度MAXにならないんですよ。

フロンがどうしても悪者に見えない罠←
まぁ溺愛言うてもリトに対してフェミル並に過保護になって、アブセルの魔の手から護るくらいなので、変態が増えるわけではないので大丈夫です(笑)
因みに知識人なのでリトと話が合って、リトもそれなりにさり気なく懐きます← 言うなればうた〇リの嶺二と藍ちゃんのような関係性に←←

ジルに是非絡ませてやってください!
そこなんですよー、今ジル何やってるんだろ?←
方舟の後始末して、ヨハンに復讐して、ヨノに会って、今フリーなんですよね←
何か任務させたいんですけど思いつかない・・・

609シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:10:33
【虚空城】

「くだらんな」

強烈な刃の一振りが爆炎を吹き飛ばす。火炎は四散し、火の粉が上がる。
シデンは巻き起こる熱風の中、一歩も動くことなくイオリの斬撃を刃で受け止めた。

「黄龍様はその歪みを正されるおつもりだ。世界は清められ、新たに生まれ変わる。
今の人類も、貴様も、もうここで終わりなんだよ」

鍔迫り合いの最中、冷たく鋭い視線を交わし彼は言う。
すると不意にシデンの姿がその場から忽然と消えた。
どうやら己の身を電子に換えて空中に散らしたようだ。

「貴様らがどう抗おうと意味はない。失敗作は失敗作らしく、せいぜい地べたにでも這いずって大人しくしていろ」

どこからともなくシデンの嘲笑う声が聞こえる。
その刹那、無数の雷撃が稲光を煌めかせてイオリに襲いかかった。

610サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:12:26
【冥界】

「あっ、ちょっと待ってよリト君!」

先程の姉弟を探すと言って席を立つリト。彼を追いかけようと、サンディも慌てて後に続く。

と、その際あるものに気がついた。

「あれ?」

リトのことを遠くでじっと見つめている男性がいる。
リトは気づいていないみたいだが、男性自身もただ見ているだけで、声をかけてくることもなければ、近寄ってくる気配もない。
サンディは首を傾げた。

(誰だろう…?)

そうこうしている間に、男は踵を返してどこかに去っていってしまった。

サンディは小走りでリトを追いかけ、隣に並んだ。

「ねーねー、リト君。さっき変なおじさんがリト君のこと、じーって見てたよ。知り合いか何かじゃない?」

611アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 19:53:09
【ポセイドン邸】

始めこそ半信半疑で話を聞いていたアブセルだったが、思いがけず自分の話題を上げられると突如その態度を変えた。

「わー‼わー‼おまっ…!セイちゃんさんの前で何言って…っじゃなくて!どうして知ってる…って言うか!
そんなこと今はどうだって良いだろ‼」

慌てたようにユニの前で腕を振り、大声を出す。

しかし今問題にすべきは暴露された内容よりも、ユニのことだ。
当然だがアブセルは、そのことを誰かに言った覚えはなかった。
知っているとすれば母親ぐらいのものだが、まさかその人に直接聞いたと言うこともあり得ないだろう。

にわかには信じられないことだが、知り得ないことも知っているというユニの話は、本当に真実なのかもしれない。
もっとましな例えはなかったのかとも思うが…。

アブセルは取り繕うように咳払いをし、セナを見た。

「ど…どーすか、先生(セナ)…?
(ユニのこと)どう思います?」

612アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/13(木) 20:02:28
リマ》斎賀さんの声いいですよね〜^^セナがあの声で喋ってくれたら個人的に凄いたぎる⬅

そうそう、この前初めてちゃんと歌プリを見てみたんですが…(新シリーズの1話)笑いすぎて腹が痛くなりました(笑)あれって毎回あんななんですか?
ツッコミ所が満載というか、完全に笑かしに来てて1話見ただけで疲労感が半端ない…ww

昇天するでしょうねぇ(笑)両脇にはべらせたりなんかしたら完全に召されるww
だってナディアってヒロインよりヒーローポジションの方がしっくりくるんですもの⬅
ジュノスは常識人装ってるだけですのでw
本当にね〜、誰か怒ってやって⬅

男性キャラにもEDが用意されてるのが凄い(笑)

本当?以前ジルのこと食べようとしたのに?(笑)
フェミル並みの溺愛って結構なデレテレだと思うんですがw
まあリトからしても数少ない頼れる人になりそうですね^^

ジルは虚空城でフェミルやノワールの娘の監視&身辺警護役とか?
もしくは世界を闇に閉ざすために各地の闇の封印解いてく役とか?

613メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:04:03
【闇の巣】

大翼による横薙の一撃と、それに付随する羽の散弾を避け切り、メイヤは短く息を吐く。
アグルとイスラが巣を抜けて塔へと向かってからの戦いは、熾烈を極めていた。

フードを外し、その背から闇の大翼を生やすクウラ。
彼は暗殺者の中でも呪術師、呪符士と呼ばれ、その戦闘スタイルは接近戦を得意とするメイヤとは真逆である。

しかし、今のクウラは得意ではない筈の接近戦でもメイヤを押していた。
距離を置き、息を整え再び攻撃を仕掛けるメイヤを翼の一薙で吹き飛ばし、クウラは声を上げる。

「闇の子供達……失敗作でも、失敗作と呼ばれる程度には能力がある。
そして、無尽蔵に闇が溢れるこの場所では、その能力は乗算的に増えるんだよ!!」

そして、青年にしては高めの声を咆哮へ変え、空へ羽ばたいた。
左手には呪符を右手には錫杖を。

両手を重ね、放たれるのは闇の光条。
メイヤは後方へと跳び、迫る光を避けるも、着弾地点が爆発を起こす。

更に、光条と共に舞い散った呪符から子鬼の群れが召喚され、メイヤへと殺到。
浅瀬へと着地したメイヤは、刃を鞘に収め、重心を低く取った。

そして、一歩踏み出すと同時に刃を抜き放ち、一閃。
銀弧が子鬼達を斬り裂き、どす黒い血と臓物を撒き散らすよりも速くメイヤは疾走。

対するクウラも急降下、錫杖に纏わりつく呪符が闇の炎を灯し、メイヤの持つ真白の刃と激突。
一瞬の交錯の後、闇の炎が散り、錫杖の先が斬り落とされる。

「左目、見えてないのに中々やるじゃないか!」

ただの棒切れとなった錫杖を捨て、クウラは反転し、後退。
今の一瞬で斬り落とされたのは錫杖だけではなく、メイヤの刃はクウラの胸元を大きく斬り裂いていた。

後退するクウラへと、メイヤもまた同じ様に反転。
振り切った刃の勢いのままに回転斬りを放つ。

横薙の斬撃は闇翼を半ばから斬り落とすも、それ以上は届かず。
クウラは追いすがるメイヤへと羽による散弾を放つが、メイヤは構わず前進。

羽の散弾が身を削り、幾つかが身体を貫通するもメイヤの疾走は止まらない。
踏み込みの速さ、初速ならばメイヤの方が圧倒的に速いのだ。

(距離が開く前に、捕らえるっ!!)

水面を泳ぐ蛇の様に、速度は落とさずに蛇行しながらメイヤは駆ける。
そして、強く、大きく踏み込むと同時にその姿が霞んだ。

「必殺ーーー……“神斬り”」

そして、刹那の空白の後。
真白の刃が鞘に収められると同時に。

翼を斬り落とされ、胸元を斬り裂かれ。
更に今の一閃で喉元を大きく裂かれたクウラは、水しぶきを上げ、水面へと落ちた。

広がる波紋と波がメイヤの膝元を揺らす。
そして、水面が穏やかになった頃。

メイヤは塔の方へ、ゆっくりと歩き出す。
その瞬間。

メイヤの背後、クウラが沈んでいった筈の水面が大きく揺れ、それに比例するかの様に水柱が上がる。

「第2、ラウンドだ!」

614メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:05:37
【闇の巣】

振り返り、剣の柄に手を伸ばすメイヤの視線の先。
水柱と共に姿を現したのは先程倒された筈のクウラだった。

「……もう一度、沈めてやる。」

その姿は端的に言えば異形、斬り裂かれた傷口から溢れる鮮血が闇色に変わり、クウラの身体を包む。
喉元から延びる闇は下顎を覆い、鳥の嘴の様にも見えた。

更に、胸元から溢れ出る闇は両肩、両脇へと流れ、その背には二対の翼が。
前腕の側面にも同じく翼が生え揃い、指先には鋭い鉤爪も見える。

異形の鳥人へ姿を変えたクウラへ、メイヤは視線を向け、後退。
動くのに支障が無い水嵩、足首程までの位置へと下がって行く。

それを追い掛け、クウラは空を駆ける。
そして、メイヤが足を止め、居合いの型を取ると同時に。

再度の激突と、交錯。
抜き放たれた真白の刃がクウラの胸元を、漆黒の刃翼はメイヤの左肩を斬り裂いた。

そして、メイヤは振り返ると同時に刺突からの斬り上げ、袈裟懸け斬りに続き回転斬りの連撃を放つ。
それをクウラは避け、弾き、受け流して一時後退。

後退と同時に羽の散弾を放つも、メイヤは身体を前方に倒して回避。
自然落下による運動エネルギーを踏み込みにより前面へ、爆発的な加速でクウラとの距離を詰める。

「紫電閃!!」

続いて放たれるのは閃光の如き斬り上げ、紫電閃。
半円を描く刃の軌道と、それを追う様に黒い血が宙に舞う。

それに続き、クウラの頬が返り血に濡れる。
胸元に続き左前腕を斬り落とされながらも、逆の手によるカウンター……鋭い鉤爪で貫手を放っていたのだ。

斬り上げの動作に合わして放たれた貫手はメイヤの左肩を貫き、メイヤは苦悶の表情を浮かべる。
しかし、振り切った刃を逆手に握り締め、クウラの左肩に突き刺した。

そして、剣を支えに前蹴りをクウラの腹部に叩き込み、反動と共に身を捩って貫手から逃れ、片手で剣を構える。
しかし、構えた剣はクウラの闇翼、円錐形へ変形したそれによって弾かれ、四つの円錐が右上腕、左脇腹、両の大腿部を貫いた。

615メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:06:59
【闇の巣】


「ーーっ!?」

先程とは比べ物にならない程の激痛に、メイヤは身を震わし、右手から剣が落ちる。
飛沫を上げて水辺へ落ちた剣を拾う事は叶わず、四カ所を貫かれたメイヤは動く事すら出来ない。

「手数、こっちの方が多いんだよ
ォ!」

元々動きの悪い左手は、左肩を貫かれた時点で完全に動かなくなり、他の四肢も動かせない。
そんなメイヤへ、クウラは凄絶な笑みを向けた。

「どうだ、痛いだろう?
バルクウェイで黒犬と戦ってから、闇の力を失ったのは知ってる。

以前なら、この程度の傷は闇が回復、治癒してた筈なのになぁ?
闇の力が無いお前は、そこそこ腕が立つ程度なんだよ!!」

そして、そのまま顔を近付け、空いた右手でメイヤの髪を掴み、引き上げる。
苦痛に歪み、うなだれる事すら出来ないその顔を見、クウラは話し続けた。

「お前と言う成功作を造る為に、何人死んだか知ってるか?
失敗作にすらなれず、闇に呑まれた奴らを知ってるか?

失敗作は精神、もしくは身体的に欠陥が出るんだ。
兄は精神を病み、俺は味覚と生殖機能を失った。

更には機械のリミッター無しじゃあ生きれない。
全く、クソみたいな人生だよ。」

斬り落とされた左腕は闇の力により再び手の形を無し、その手で胸元の機械の残骸……リミッターだったモノを剥がす。
それをメイヤの頭へ叩きつけ、クウラは笑う。

「お前は闇の力、異界の悪神の力を失ったと思ってる。
けど、それは違う。

この闇の巣では、異能の力……何らかの耐性がなければ息をする事すら出来ず、闇に蝕まれて死ぬ。
だけどどうだ?お前はここまで戦った、闇の力は出せずとも、ここまで動き回れたと言う事は……」

ドロリ、と頭部から流れる血を右手にこすりつけ、それを口元へ。
口元を鮮血に染め、そして。

「何らかの異能がお前にはある、そしてそれは悪神の他には考えられない。

死ねよ、その力を奪われて死ね!!」

鋭い鉤爪が伸びる左手でメイヤの胸元を、その心臓をえぐり出そうとした瞬間。

はらりと、メイヤの左目を覆う眼帯が落ちた。
そして、その左目……視力を失った筈の瞳から呪印が溢れ出し、クウラの身体を拘束して行く。

更に、その瞳を見たクウラは目を剥き、涙腺、耳鼻孔、口腔からどす黒い血を噴出させた。

「……死ぬのは、お前だ!!」

616メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:08:32
【闇の巣】

ーーー……サマエルの瞳。
それは所謂邪眼、呪眼と呼ばれる物であり、大きく厳しい制限と代償がある代わりに、瞳を見た者の命を必ず奪う致死の瞳である。
砂漠からバルクウェイへ戻り、闇の巣へ出発するまでの間。

メイヤはレオールやバッハに無理を言い、左目にソレを移植していたのだ。
処刑人の剣が集めに集めた異能の品々、その内の一つを視力を失った左目に移す事に躊躇いはなかった。

呪印に束縛され、即死の呪いを受けても尚、絶命しないクウラ。
もとより、呪術、呪符を扱う彼には耐性があるのだろう。

孔と言う孔から血を噴き出させ、絶叫を上げる彼の首筋へ、メイヤは動かない筈の左手を伸ばす。
そして、その左手……手甲に仕込まれた小型動力等々が起動。

補助動力により強化された握力で、その手に握るクウラの首を、頸椎を。
力任せに、へし折った。

鈍い破砕音と共にクウラの首が傾き、メイヤが手を放すと同時に身体を貫いていた漆黒の円錐が抜ける。

「俺の……勝ちだ。」

支えを失い、糸の切れた操り人形の様にクウラの身体は膝を着き、そのまま後ろへと倒れて行く。
その様子を見届け、メイヤは荒い息を吐いた。

動力仕込みの手甲は兎も角、左目の邪眼を使うつもりはなかった。
しかし、使わなければ死んでいたのは自分だっただろう。

荒い息は安堵のそれに変わり、メイヤもまた、座り込もうと腰を下ろそうとしたその時。
クウラが沈む水辺の周辺が泡立ち、水と混ざった赤黒い血が漆黒に染まる。

そして、一拍の間を起き、何度目かの水柱が上がった。
の余波でメイヤは腰から倒れ、仰ぐ様に前方へ視線を向ける。

(あれでも、死ななかったのか!?)

水柱が散り、黒い飛沫と共に姿を現すのは、漆黒の巨鳥。
闇色の大翼には所々真紅が混ざり、四対の瞳は黒焔を宿している。

三本の脚先には巨大な鎌の如き鉤爪が。
その鳥は、その名は。

「弥都の国鳥、大烏……
いや、八咫烏 、か!!」

617メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/16(日) 18:09:46
【闇の巣】

ありとあらゆる闇が集まるこの場所は、闇を操る者にとっては無尽蔵に力が沸いてくるパワースポットである。
加えて龍穴遺跡も兼ねており、その両方の力を取り込めば……人は、人を超える。

巨鳥へと姿を変えたクウラ……いや、 八咫烏へ視線を向けながら、メイヤは力を振り絞り、立ち上がる。
疲労困憊、出血多量、身体は既に限界を超えていた。

それでも尚、拾い上げた真白の刃を構え、 八咫烏を睨み付けた。
勝つしかない、だがどうやって?

そんな疑問は剣閃と共に消え、刃の一閃は巨大な鉤爪と打ち合わされる。
しかし、返しの刃は空を切り、無慈悲な一撃がメイヤを貫いた。

三本の鉤爪が右腋下、右背面肩甲骨、左背面左肺を容赦無く貫き、貫通。
心臓に掠らなかったのは狙ったのか、はたまた偶然か。

口腔、鼻孔から血塊を噴出させ、メイヤは声にならない声を上げる。
たったの一撃で戦闘不能にされ、後十数秒もすれば死んでしまうだろう。

走馬灯すら見えない、視界が黒に染まる。
溢れ出す命の熱も感じ無くなり、メイヤは自分の死を察した。

そして。
黒瞳から意志の光が消え、動かなくなったメイヤの身体を、 八咫烏は湖の真ん中、闇が渦巻く奈落の底へ、放り投げた。

ーーーーー

光も、音も、熱も感じ無い無明の闇。
落ちて行くのか、上がって行くのか。

前後左右もわからない、自分の生死すらわからない此処は地獄か天国か。

暗黒の中を、メイヤは彷徨う。
負けて死んだ、そう考えれれば意外と気が重くなる事はなかった。

未だに残るらしい悪神も、それを欲したクウラも。
どうでも良い。

ただ、イスラやアグル。
レオール達や久しく顔を見ないナディアとバロンと言った面々の事は気になる。

いや。
何より気になるのは、サンディか。
恋心かはたまた別の何かか。

(わからない、けど………いや、この場所なら会えるかもな……)

618イオリ ◆.q9WieYUok:2016/10/17(月) 10:28:06
【虚空城】

周囲を囲む無数の雷光はシデンそのものか。
自らを電子と化し、物理的攻撃を無効にした上での雷撃は攻防一体とも言える。

(“コレ”が出来るからこその四霊、四神よりも遥かに強い……)

しかし、迫り来るそれらをイオリは刃の一閃で、再び巻き起こす爆炎の熱波で相殺。
蒼焔の翼が羽ばたき、周囲一帯に火炎の礫を撒き散らす。

「失敗したら、やり直す。
それは別に間違っちゃいねェ……

ただ、そこには人の意志も希望も、絶望も。
愛も無く、ただ機械的にやり直す、俺はそれが気に喰わないんだよ!!」

そして、撒き散らされた炎の礫は壁や床へ着弾したと同時にその姿を炎の蛇へと変え、炎蛇の一群がフロア一面、壁一面を這いずり回った。

「地べたを這うのは慣れてんだよ……だががな、大人しくはしてねぇぞ!!」

619ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/17(月) 10:59:23
【リマ》イスラさんの案でジルはフェミル達の警護か、目覚めつつある(?)ユニの奪取とかどうだろう?フロンはそれにコッソリ着いて行くけど途中でバレて……とかとか

イスラ》サンディはどんな感じで冥界から戻られます?
予定決まってなければ、メイヤと絡ませて頂きたく……】

620リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/19(水) 22:25:57
【冥界】

「は?俺に死んだおっさんの知り合いなんていないけど。俺じゃなくてあんたのこと見てたんじゃないの?」

知り合いでなければ--自分の容姿が性別問わず好まれやすい自覚はあるが、まさかこんなところにそんな変態がいるとは考えたくない。女であるサンディを気にしていた、とかなら納得出来る。

と言うかどちらにしてもどうでもいい話だ。リトはサンディのさした方角を確認することもなく歩みを進めた。

「・・・いた」

何故か随分と歩いた。広すぎる。此処は本当に敷地内なのだろうか。
結局手当り次第探す事の無謀さに気付いて取り敢えず屋敷に戻ろうとしたところ、ちょうどその方角からアンヘルが歩いてくるのが見えた。アンヘルもこちらの存在に気付くと軽く頭を下げてくる。

「あれ、片割れは?」

「姉のことですか?貴方に逢っていただきたい方がいるので、王に言われ探しに行きました。」

なお、暇だからとルイの仕事場に乱入し、こっぴどく叱られた挙句部屋から追い出すために役目を与えた、という事は伏せられた。

「俺に?誰?」

「詳しく申し上げますと貴方に逃げられてしまう可能性がありますので・・・」

「何それ・・・それよりさ、その語っ苦しい喋り方どうにかならない?」

仰々しくされるのは嫌いだ。自分の顔色を伺いながら接してくる邸の奴らを思い出す。

「貴方は客人なので・・・」

「いいよ。失礼な奴には慣れてる。」

アンヘルは少し悩むような素振りを見せたが、相手が望むならと申し出を受け入れた。

「で、あんたに聞きたいことがあるんだけど・・・」

「僕が答えられることなら。だけど・・・今は僕にも用があって。後でもいい?」

また、誰か迷い人が来たようだ。
屋敷に連れてくるようルイに言われた。リトは仕方ないにしても、最近やけに多い気がする。

「次元の軸が歪んでいるのか・・・」

多少の綻びは修繕してきたが、もはや追いつかないところまで来ているようだ。

アンヘルはそう呟くが、あくまで独り言であったようでこちらに話を続けることはなかった。
代わりに別の話題を投げかける。

「君達もくる?」

時間を持て余しているように見えたのか。
人を迎えにいくだけで面白いことも何も無いが、それでも構わないならと2人を誘う。

621リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/19(水) 23:15:44
ヤツキ>>
サンディと絡ませるなら冥界来てる感じで宜し?

ジルの案もらった!

イスラ>>
自分が美形だと自覚している姉(ナディア)弟(リト)、末恐ろしや←

え、滾るってそんなに好きなんですかwww
じゃあセナの声は斎賀さんで←

うたプリはギャグアニメです( • ̀ω•́ )✧
立派に毎回あんな感じで楽しいアニメです←
自分、乙女ゲーム原作のアニメって好きじゃないんですけど、うたプリ初めて見た時「何だ、ただのギャグアニメか」って思いましたもんね←
普通に会話してたのにいきなり歌い出すし、空飛び始めるし、素敵なファンタジーですよ←
藍ちゃんだけは違うって思ってたのに、前作で天使の羽出して空飛んじゃったんで残念ながら立派にうたプリの住民でした( •́ .̫ •̀ )
後キャラ全員がヒロインに愛のベクトルびんびん向けてるのが爆笑ですね。皆ヒロインに恋してるのに仲良しなんですよ←
ただ藍ちゃんはヒロインに恋してるなんて認めません。前作は全くそんな気配無かったし、今作で「このトキメキを君と感じたい」とか囁いてたけどあれはただの演出です。そう、演出です。
てか1話見て頂けたということは、カルナイの歌をお聞きになったのですね( • ̀ω•́ )✧カッコイイでしょ?藍ちゃんのグループ!初めて先輩グループ見た時「なんだこの見た目に全く統一性のないグループは」って思いましたけど普通にプロくてカッコイイです。歌がカッコイイです。格が違いますね!

召されるwww召したところ見てみたいwww
あー、たしかにwww言うても実際ナディアはリトにとってのヒーローですよ〜。口が裂けても本人は言いませんが。←
あれ、逆だったwwwあれ?www
他人任せwww

そこはほら、平等に←

なんか根はいい子なんじゃないかって思っちゃうんですよね(笑)
マジすか(笑)気付かなかったwww
数少ないってのが悲しいwww

お2人の案が全て素敵なので、全部引っ括めて、闇を解いていく任務の合間にフェミル達の様子を見に一旦虚空城へ戻って、その際にユニ誘拐の任務を追加で受けることにします!←
フロンはユニんとこ行く前に1回絡んで、その後ジルを尾行して、ポセイドン邸でヨノに対するジルの気持ちに気付いて暴走するってのはどうでしょう?←

622ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/19(水) 23:35:23
【リマ》知った顔、と言うか血筋やら血縁者やら居た方が動きやすいかと思ってさ、個人的にアブセルvsジルも見てみたい←
イスラの返答次第だけど、絡めるならメイヤも冥界入りで!】

623ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/20(木) 00:24:52
【虚空城】

「兄さま・・・」

いくつかの任務を終え久しぶりに本拠地へ戻ると、目敏くジルを見つけたフェミルがいそいそと近づいてきた。
ジルがその姿に破顔し身を屈めると、広げた腕の中にすかさず収まってくる。

「ただいま、僕の可愛いお姫様。いい子にしてた?」

「フェミル、いい子。メルのこと、ちゃんと見てた。」

メルフィ。その名を聞いてジルはふと視線を奥へ向けた。
顔だけを覗かせこちらの様子を伺っている少女と目があった。闇の王子と吸血鬼の姫の血を引く少女は、あらゆるものを解く鍵として利用できるらしい。最近一つ目の封印を解くため連れ出されていたが、どうやら戻ってきていたらしい。

ジルは少女へ優しげな表情を向けた。

「メル、君もおいで。」

名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、メルフィはビクリと身を震わせる。

「大丈夫、怖くないから。抱きしめてあげる。」

言われ、メルフィもおずおずとしながらも近づいてきた。
遠慮がちに抱きついてきた少女を、ジルは笑顔で受け止めながら頭を撫でてやった。

「お仕事、ちゃんと出来たんだね。よく頑張ったね。偉いよ。」

「メル、偉いですか?」

「偉いよ。こんなに小さいのに、ちゃんと務めを果たしてる。」

ご褒美、と言っておでこに口付ける。するとフェミルもせがむので、彼女には頬にしてやった。
可愛い妹たち。出来ればこのままずっと一緒にいたいが、悲しきかな、またすぐに出なければならない。

最近任務を立て続けに申し付けられて溜まっているのだ。二人の警護もその一つだが、これだけを遂行していることは許されない。

「兄さま、またお出かけするの・・・?」

「妖精さんを迎えにいくんだ。今度は可愛いお姉さんが来るよ。」

「妹の次・・・姉さま。フェミル、家族がいっぱい。」

「うん、いっぱいだね。」

虚空城に常にいるのは今までゼロとフェミルのみだった。最近メルフィが増えて、フェミルにとっては家族が増えたようで嬉しいようだ。
立て続けに少女を攫う命を受けている自分には堪ったものではないが。

(フェミル、お前のためなら何だってする・・・)

妹に不自由をさせないため身を穢した。妹に安心出来る居場所を与えるために、ゼロに下った。妹が黄昏の花嫁に選ばれたことは誤算だったが、このまま渡すつもりもない。
ゼロがユニに興味を持った。ゼロの望む未来を手に入れるために必要な存在であるとしか聞いていないが、上手く行けばフェミルを解放できるかもしれない。花嫁を交代できれば、フェミルを助けることが出来る。

フェミルを救えるのなら、他の何が犠牲になってもいい。

胸の奥に感じる痛みはきっと気のせいだろう。
ジルは自分の中に潜む幽かな罪悪感に目を背け、気づかぬふりをした。

【因みにジルの声は柿原徹也です←】

ヤツキ>>
【うん、動きやすい(*ˊૢᵕˋૢ*)

アブセルvsジル、いいね!やろう!!←勝手に決める

おけ!GO出たら迎え行くわ(笑)】

624サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/20(木) 19:34:44
【冥界】

「ついてって良いの?」

リトと共に敷地内を散策した後、ようやくアンヘルという少年を発見した。
また客人が来るらしいとのことを少年の口から聞いたサンディは、少し考えて笑顔で答えた。

「ここがどういう仕組みになってるかちょっと興味あるし、お言葉に甘えようかな」



【ヤツキ>こっちもどうやってサンディを戻そうか迷ってたので、是非お願いします!

リマ>自分もアブセルvsジルやりたいです!

ナディアやリトほどの美形なら自覚もするでしょう(笑)

柿原さんかぁ…最初うーんって思ったけど、ジルの台詞で脳内再生してみたら、ぴったりだった!⬅

マジでギャグアニメだったのかww空とぶの見たいww
本当みんな何であんなにヒロイン好きなんでしょう?(笑)男達にされるがままでヒロイン可哀想w10曲作れとか完全に過労死させる気だしww
でもやっぱり歌は上手いしカッコいいですね、画面見ると何か笑ってしまうけどww
何気に二話も見ましたが、藍ちゃんのグループ仲悪すぎてびっくりしました(笑)そして嶺二がいい人過ぎて涙が…⬅


召したら二度と戻ってこれないから駄目です(笑)
リトは相変わらず素直じゃないw因みにナディアはアブセルにとってもヒーローで憧れらしいです⬅
ジュノスも幼少時代まともな教育受けてないから色々おかしいんですw

男女平等w素敵だww

いい子ではないんじゃないですかね(;´`)恋に恋してるだけですし、自分のことしか考えてないし。なので容赦なくやっちゃってください⬅
リトは…これからですよ(笑)これからそういう人を沢山つくってけば良いんですよ^^

了解です!それでいきましょう(´∇`)

625リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/20(木) 23:16:50
イスラ>>

【やりましょうやりましょう!

え、マジで?(笑)でもナディアはナルシストですけどリトはナルシストではないんですよ?ナルシストではないのに男にも好かれる顔って分かってるとか凄くね?←

台詞wwwじもジルの台詞打ってる時いつの間にか頭の中でカッキーの声で再生されてました(笑)

えっとですね、空飛ぶのは前作レボリューションの伯爵回です!←アバウト
何話かは忘れました←藍ちゃんの当番は3話なんですけどね、藍ちゃん以外興味無いので把握してません(´>؂∂`)←

あれをギャグアニメと言わずして何と言うか←
と言うかあのヒロインにそんな多くの男を虜にするような魅力を感じない←
社長は過労死させる気満々ですが、あの子ものの数分で曲作っちゃうんで頗る元気です←

笑わないでwww他のユニットはいいけどカルナイは笑っちゃダメ!!←
あのカルナイの映像見て「か・・・カッケェ・・・」ってなった私は既にうたプリ脳なのだろうか・・・←

カルナイめっちゃ仲悪いっすよwww蘭丸パイセンとカミュが敬遠の仲ですねwwwレイジと藍は心友だし、レイジと蘭丸は悪友な感じで何だかんだ仲良いし、蘭丸と藍は兄弟って感じの仲だし、藍とカミュも付かず離れずで良好な関係築いてますが、蘭丸とカミュがねぇ・・・(2度目)ただレイジを虐める時だけは息が合うんですよあの二人←
てか二話も見たんですねwww因みに私あの二話にずっと一言物申したくてウズウズしてたので折角なので言わせてください。
・・・藍ちゃん悪くなくね!?ただひたすらレイジに「何とかして」って訴えてただけじゃんwww何で藍ちゃんも怒られたのwww 寧ろ頑なにレイジに話しかけててめっちゃレイジ大好きっ子の構ってちゃんじゃん!あそこはレイジ、藍ちゃん置いてくんじゃなくて藍ちゃんの腕引っ張って一緒に逃亡するところでしょ?!一家のお母さんが末っ子だけ連れて実家に帰っちゃうみたいにさ!!←

何故泣くwwwレイジはもともとイイ人ですが、昔、自分のことを優先したことで大事な親友を亡くして(生きてるけど)しまったので(因みに本人がそう思ってるだけでレイジの責任じゃない)、それがトラウマで自分より相手を優先する癖がついちゃってるんです( •́ .̫ •̀ )
鬱で病んでたレイジに希望を与えたのが今のユニットなので、誰よりも大事に思ってるっぽいです。多分←
因みに親友の生き写しである藍ちゃんのことは誰よりも幸せになって欲しいし、幸せにしたい相手だそうです。ゲームしてないので詳しくは分かりませんが←


えー、面白そうだからやってみたい←
え、ナディア超ヒーローじゃないですかwwwヨノにとってもヒーローですよ←
いや、でも変態教育は受けてないはず←

素敵でしょ?でも好感度MAXにするのは難しくて無理でした( •́ .̫ •̀ )

マジか、了解しました←
恋に恋してるって、ジルじゃないんかいwww

いや、まともな人が周り殆どにいないんですよ( •́ .̫ •̀ )←

それでよろしくお願いします(*ˊૢᵕˋૢ*)】

626アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/21(金) 23:44:35
【黄昏の塔】

「………ッ」

落ちる。

支えを失った恐怖。重力に縛られた身体はまっ逆さまに下へ下へと落下していく。
だがアグルの闘志は衰えるばかりか、むしろ強くなる一方だ。

代々一族の当主は四神トールの神子の証、黄金の大翼を担い、空を自在に駆け抜けたと言う。

「ユーリ…」

不意にアグルの身体から電気が迸る。
それは闇を照らす一つの光となり、身を纏う輝きは彼に二対の翼を持たせ、握る槍は巨大な聖槍へと姿を変えた。

「俺を舐めるなッ‼」

アグルは勢いよく翼を打ち空中で身を翻す。
落ちた距離を一瞬で上り、ユーリのいる壁面目掛けて巨大な槍を突き立てた。

627DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/21(金) 23:47:00
【森】

「キャーッ!!!」

湖面から出てきたヴェントに、それに向けて非難の言葉を投げるマゼンダ。
突如その背後から黄色い声が上がる。

「やっだーっもう!ダーリンってば大胆すぎィー!
そんな格好を見せて一体アタシをどうしようって言うの!?」

フィアの背後に隠れて両手で顔を覆い、何やら一人で騒いでいるらしいDD。
しかし彼の方が身長が高いため隠れきれていない上に、指の隙間からもばっちり視界を確保している。

「早く服を着てダーリン‼じゃないとアタシの心臓がもう持たないわ!
ああ…!でも急がなくて良いのよ!?ゆっくり上がってきて、その格好のままアタシをぎゅっと力強く抱き締めてからでも遅くないのよ!?」

あまりの興奮についつい本音と建前が混合してしまう。
一体彼は服を着て欲しいのか欲しくないのか、どっちなのだろうか。

628フロン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/22(土) 00:26:03
【霊園】

虚空城を出て行ってから一体何日が経過しただろうか。
近頃、黄龍と一部の人間達が世界をかけて大々的に戦争を始めたとのことらしいが、フロンにとってはどうでも良い話だった。

ただあの人のことが心配だった。
あの人の元を飛び出してから、ずっと捜していた。

捜して捜して捜して…、そしてついに見つけた。愛しい人。

「ジルさん!」

そこは名も知らぬ町の霊園だった。彼の匂いを頼りにここまで辿り着き、そしてとある墓石の前で佇む彼の背中に向けフロンは呼び掛けた。

「あの…あの…、待ってくださいジルさん…。
私、貴方に謝りたくて、貴方のことをずっと捜していたんです…!」

言って深々と頭を下げる。

「あの…、以前は…すみませんでした…。私、たまに正気を保てなくなっちゃうんです…。
その…ジルさんはもう気づいていますよね…?私に変な力があるってこと…」

依然フロンは顔を伏せたままだ。
自ずと両手を胸の前に当てる。肩が小刻みに震えだした。

「私…定期的に能力者を食べ……食べないと頭がおかしくなっちゃうんです…っ。
こんなの気持ち悪いですよね…!?自分でも嫌なんです!でもどうすることも出来なくて…っ。
こんなこと知られたら絶対ジルさんに嫌われちゃうって思って…!
…だからずっと隠していました。ごめんなさい…」

629フロン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/22(土) 00:35:23
リマ》リトは旅中も男女問わず沢山声かけられてそうだし、「君かわぅいーねー」とかって言われれば何となく自覚もするでしょう。セナは言われても気づかなそうだけど⬅

何か柿原さんの飄々とした感じの声がジルの雰囲気と合ってるんですよね^^

アバウトww了解しました(笑)
え!?春ちゃん可愛いじゃないですか!「他の人が書くって考えるとやきもち妬いちゃいます」って!何てええ子なんやと思わずトゥンク…ってしちゃいましたよ⬅

いや普通に見ればカッコいいのかもしれませんが、ニコ○コで見てるからコメントのせいで笑ってまうんです(笑)彼らが歌い出すと必ず歌詞の空耳コメが流れるしww
でも歌的にはヘヴンズが一番好きかもしれない、「天国に行かないか」って出だしの歌が何か一番耳に残ってるw

へー、彼らよくグループ組んだなぁ(笑)
てかレイジが母ちゃんかww
藍ちゃんはレイジに任せっぱなしだったから怒られたんじゃないですかね?
ほら皆がお母さんに甘え過ぎてた感あるから、お母さんも疲れて育児放棄しちゃうんですよ(笑)

彼も色々苦労してるんですね(-_-;)何かそう言う話(レイジと藍ちゃんの関係)聞くとヒロインまじ空気だな…って思いますね(笑)

やめろww
みんなナディア大好き過ぎwwあの子らはナディアって支えがあったからこそ、今まで元気にやってこれたのかもしれませんね^^
えwいやまぁ…それはその通りですがww

何でそこで諦めるんだよぉっ!⬅

好みがない訳ではないですが、ぶっちゃけ好きになる相手は誰でも良いのかもしれません⬅恋してる自分に酔ってる的な
取り合えずジルが両親の墓参りしてるってシチュエーションで絡み文を投下させて貰いました(勝手に申しわけ;

630ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/10/22(土) 14:57:00
【黄昏の塔】

眩く輝く光の翼と、聖なる槍。
突き立てられたそれはいとも容易く壁面を穿ち、一拍の間を置いた後に壁面へ大穴を開けた。

しかし、そこにはユーリの姿は無い。
複腕と粘着性の糸により高速で上方へと昇るユーリは、ゆっくりと目を細めた。

「その翼、槍……いつかの一族の者か。」

アグルの背を照らす光翼とその手に握る聖槍に、ユーリは見覚えがあった。
暗殺稼業から足を洗う為、弥都を出、シンライジ一族から逃れる為に。

「俺にとっての最後の仕事、とある一族の抹殺……生き残りか、遠い血筋か、はたまた別か。
まぁ良い……その雷光、咬み砕いてやろう。」

細めた目でアグルを見据え、身に纏う魔装が蠕動。
全身の筋肉が膨張し、堅牢な甲殻鎧が内側から軋む。

そして、壁面の破砕音は置き去りに。
音速を遥かに超える速度で跳ぶユーリは、刃を握る数多の複腕をもって、アグルへと襲い掛かった。

631リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 14:27:08
【冥界】

「生を全うして正式に死した者であれば、ちゃんとしたルートを通って直接裁きの間に行けるんだけど・・・」

歩みを進めながらアンヘルは説明する。
あらゆる次元の現実世界とこの冥界を繋ぐ道があり、本来であればそこを通って途中いくつかの審判を受けながら最後にこの場に辿り着く仕組みとなっている。
たまにサンディのように不安定な魂が迷い込む事があると以前説明したが、サンディのように自力で辿り着いた者は更に珍しいと、彼は述べる。

「君は運が良かったんだ。大抵、そうした魂は出口の分からない暗闇で宛もなくさ迷ってる。今回のように。」

生界と死界の狭間に堕ちているのだと言う。その狭間は次元の歪みのようなものでとても不安定な場所だ。早く対処しないとそのまま魂ごも消滅してしまうとアンヘルは表情も変えずサラリと恐ろしい事を言った。

「良かったな、消えないで。」

リトがサンディに向けたその言葉で、サンディが危機的状態であった事を明確にした。

632リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 14:27:56
境が明確ではないがいつの間にか敷地内を出ていたらしい。一同は木々の茂る森の中を歩く。
そして辿り着いた場所は大きな泉の広がる静かな場所。
アンヘルはその泉を挟んだ向かい岸を指しながら言った。

「あっちは天界。天界と地界へ続くゲートは屋敷にあるんだけど、実を言うと直接行ける。行ってもいいよ?死ぬけど。」

無礼講を申し出て以降、アンヘルの言葉選びが極端になった気がする。たしかに間違いではないが、直接的過ぎる。
リトのそんな戸惑いも知らず、アンヘルは淡々とした表情で「この周囲に実ってる果物は食べない方がいい」と述べた。食べたら「戻れなくなる」らしい。

「道と道を繋げるにはいくつかの方法がある。誰にでも出来る有名な方法と言えば合わせ鏡かな。あと、道を繋げる媒体があっても行ける。今回はこの泉。」

此処は二つの次元が重なる場所であるため、迷い人のいる場の歪みとまでは行かないが、多少の歪みがあるのだそうだ。
そんな中、媒体となり得る泉を利用することで一時的に道を繋げる事が出来るのだと言った。

「で、あとは迷い人の魂を見つけて引き寄せる必要があるんだけど・・・」

アンヘルがそう言いかけたところで三人のもとへ新たな人影が現れた。
人影・・・たしかに人影なのだが、デカイ。
こちらに近づくにつれて影が規格外の大きさになってくる。

「はぁい!少年♪こんな所に来るなんて珍しいじゃない。」

規格外にでかい影の正体は異様な大きさの男であった。そして現れるまで気づかなかったが、その大男の肩に小柄な少女が腰掛けていた。

「叔母さま」

「お姉さまとお呼びなさい、糞ガキ。」

「イヴは自称ルイの妹だから、アンヘルの言葉は間違ってはいない。」

「お黙り」

少女は大男を小突き、ヒョイっと地に降り立った。

「道を繋げてほしい。」

用件を述べるアンヘルへ、少女は「どうせそんなことだろうと思った」と面白くなさそうに唇を尖らせる。

「私に会いたくなったから、とかさ。もっと可愛げのある用事がいいなー。」

「早くして。」

「可愛くなーい!」

用件のみをこなし、無駄話は許さない。実に父親にそっくりである。などと少女は頬を膨らませながらアンヘルへ不平を述べるが、申し出は聞き入れるようだ。
何やら不機嫌にブツブツいいながらも片手を泉に向けて無造作に凪ぐ。
途端、辺りに風が巻き起こり、泉が水柱となって立ち上がった。

「彼女は冥界への扉を守る番人。時空、空間、ありとあらゆる場所に道を繋げることが出来る。もっとも、この力を使う必要があるのは今回みたいなイレギュラーな時だけだけど。」

「見つけたよ。」

少女の声に促されそちらへ目を向ければ、水柱の中に人影が浮かび上がってきた。
アンヘルは"向こう側"の人物へ向かって声を上げる。

「この声が聞こえるか?閻魔の意のもと"こちら側"への訪問を許可する。その身を朽ちさせたくなければこの声に従いまっすぐ進め。」



ヤツキ>>
【てなわけで冥界へようこそー←】

633ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 21:36:35
【霊園】

人気の少ないとても静かで小さな町。
ここにはジルの大切な二つの魂が眠っている。

墓標に百合を1輪据えて、ジルはふと過去を思い返す。

(お父様・・・お母様・・・)

事故の後息つくまもなく父の弟に財産を取られ、二人の葬式すらあげてもらえなかった。それどころか遺体の身受けすらしてもらえなくて、まだ幼かったジルは成す術なく途方に暮れた。
役人に何とか頼み込んで暫く安置所へ置いてもらう約束を取り付け必死にお金を貯めて迎えに行ったが、其処には両親の姿はなかった。名も知らぬ誰かが、死後間もなくして両親をこの町に眠らせてくれたのだと後で聞いた。引き取りにきたその人も自分は頼まれただけだと言ったらしく、結局正体は分からぬままだ。ただその後も時折、両親に会いに行くと花が供えられているのを目にしていた。両親どちらかの知り合いであることは間違いない。その人にジルは感謝している。

「お父様、僕ね、二人の敵をとったんだ・・・」

「片付け」を命じられた件に奴が関わっていた為、それは偶然であったけど。憎しみの対象を殺めた。結果的に復讐を遂げたに違いない。

「けど、どうしてかな。すっきりしないんだ。」

このモヤは何か。1つ心当たりがあるのは、ヨハンの見せた最期の顔。見間違いかもしれないが・・・

「何で、ホッとしたような顔をしたんだろう」

それは一瞬であったけど確かにそう見えたのだ。
自分は何か大きな間違いないをしているのではないか、そんな疑念がジルのなかに生じてしまう。

しかしその疑問は解決することはなく、新たな来訪者により思考が途切れた。

「どうして僕に謝るの?」

それはいつぞやに姿を消したフロンだった。
ジルは彼女に振り返ることなく、ただその疑問だけを投げかける。

「君の事情なんてどうでもいいよ。そうだな、僕はこうして無事だったんだし"気にしなくていいよ"って言えば満足?此処は君の来ていい場所じゃない。さっさと消えてくれない?」

634リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 22:25:03
イスラ>>

DDwww

あー、旅で自覚しちゃった感じか(笑)男の場合、リトの辛辣さは更に相手を喜ばせただけだろうからきっとリトは苦労したでしょうね(笑)
ああ、セナは絶対気づきませんねwwwそれこそ抵抗もしないからジュノスが苦労してそうwww

違和感なくて良かった(*ˊૢᵕˋૢ*)
なんか、柿原さんの鼻から抜けるような声の感じが凄い好きなんですよね(/ω\*)
藍ちゃんの声もちょっと鼻詰まった感じだし、自分鼻声が好きなのかな?←

たしか放送の1週間後に販売される個人の楽曲がその人のお当番回の題名だから、伯爵の歌の題名調べればいいんじゃないですかね?←
たしかに、あのセリフはちょっと可愛いなとは思いましたが・・・やっぱそこまで魅力あるようには感じない←

ニコニコwwwどんなコメントなのか気になりますwww
ヘブンズの曲もなかなかカッコイイですよね(*ˊૢᵕˋૢ*)自分もカルナイの次くらいに好きです(笑)
カルナイ→藍ちゃんの歌→藍ちゃんがメンバーに入ってる歌→ヘブンズ→トキヤの歌って順番に好きですかね?てか3話見ました?トキヤとペア組んだヘブンズの人の歌が上手すぎて驚きを隠せないんです。マモの歌声に付いてこれるとか何者なのあの声優さん←

シャイニーの言葉は絶対、ですから(笑)
あと何だかんだカルナイのメンバー皆レイジお兄ちゃんのこと大好きですからね(笑)
あー、なるほど!自分で解決しないでレイジに頼ってばかりだったからいけないのかwww
ヒロイン?えぇ、空気です←
なんか、レイジの親友が自分と瓜二つってことを偶然知った藍ちゃんが、「レイジは僕じゃなくて僕を通してその人に構っていたんだ。僕をその人の代わりにしてたんだ。レイジの優しさも僕に向けたものじゃなかった」って、藍ちゃんが嫉妬しちゃうらしいんです。可愛い←
で、その言葉を完全には否定出来なかったレイジですが、「一生懸命憎まれ口をたたくアイアイが好きだ。素直になれないアイアイが好きだ。」って親友にはない藍ちゃん独自の内面が大好きって事に気付いて、ちゃんと藍ちゃんのことが好きで構ってるんだよって謝って、二人は無事に仲直りします。で、「見たことのないもの、沢山見せてあげたい。色んなこと沢山経験して、沢山思い出作ろう」的なこと言って藍ちゃんを肩に担いで連行します←藍ちゃんは「やだ!レイジと関わると禄なこと起きないんだ!バカレイジ!ばかばか!離して!!」って言いながら足をバタつかせて必死に抵抗するも、レイジお構い無しで結局藍ちゃんは誘拐されたらしいです←←あー可愛い←

(藍ちゃん語ってたら長くなって弾かれた← 分けます←←短くする気は無い)

635リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 22:25:52
この友情エンド、とっても生で拝見したいんですけど、レイジのルートか藍ちゃんのルートか分からない上にこれを見るためにヒロインとラブラブしなきゃいけないって思うと憂鬱で結局プレイ出来ず終いなんですよねー。
あとどっかでレイジが藍ちゃんに「もう、可愛いんだからー」って言うシーンがあるらしいんですが、ゲームのシーンなのかCDなのか分からずこっちも入手出来てません←
あとカルナイ結成が藍ちゃんが13歳の時らしくて、そのシーンがあるらしいんですがどのゲームなのか分からずやっぱり入手出来てません← 美風藍13歳・・・尊い・・・・・・

やりたい|ू・ω・` )笑
ナディアがここまで人気だとは(笑)皆にとってナディアは支えですけど、ナディア自身は支えがなくて、それでも動じず強くあり続けるナディアって凄いなー←でもそんなナディアが崩れたらドミノ式に大変なことになりそう←←
変態は本質的なものか・・・←

いや、やれどもやれども好感度がビクともせず途方もない戦いでしたよwww
主人公のこと「可愛い子猫ちゃん」って言う危ない王子がいたんですけど、コイツなら落とすの楽そうって思ったのに全くビクともしないんですwww

あーなるほど。そんなフロンに目をつけられたジルは可愛そうだ(笑)
外見しか見てなかったり、そんな奴ばっかだからジルは本当に人を好きになることがないんだな←責任転嫁
ヨノが頑張ってジルの心を揉みほぐさないと← ただ、どうやって年下の男の子好きにならせようか悩む(˘-ω-˘ ).。oஇ

了解しました(*ˊૢᵕˋૢ*)】

636マゼンダ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/10/23(日) 22:38:59
【森】

「あーあー、こんなにしちゃって・・・。手拭いは?持ってるのかい?」

「無い。」

「バカじゃないのかい!?」

拭くものも持たず川に飛び込んだヴェントに呆れ、更にすぐに乾くなどと発した言葉にも呆れつつ、マゼンダは取り出したハンカチでヴェントの顔を拭ってやる。

「これ絞りながら身体も少し拭きな。ほんと、手のかかる奴だね。」

顔を拭き終わったハンカチをヴェントに投げつけると、言われた通りにし出す。
そして濡れた髪を絞りながら、ようやくヴェントはマゼンダ以外の者達へと目を向ける。その視線は先程から何やら騒いでいるDDへ。

「・・・誰だ」

そして衝撃の発言を。思わずマゼンダは吹き出した。

「あんた、人の顔を覚えないのも大概にしなさいな。私らと同じ長老じゃないかい。忘れたのかい?」

「長老・・・お前と、そこにいるフィア。ピエロでなく子供・・・最近会った奴なら覚えている。」

637メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/24(月) 01:16:07
【冥界】

上下左右も前後もわからず、音も光も無い世界。
不意に聞こえる微かな声へ、メイヤは左手を伸ばす。

そして、伸ばした左手の先から急激に光が溢れ出しーーーーー

ーーーーー先程とはうって変わって確かな景色に、メイヤは目を細めた。

周囲には人影。
規格外の大男に目が行くが、その近くには知った顔を見える。

「リトと……サン、ディ?」

知った顔、二人の内の片方の姿に、メイヤは思わず目を見開いた。
発作的に、手を伸ばそうとするものの、それを堪える。

「……此処は何処だ?」

そして、一呼吸の後。
もっとも簡単で、もっともわかりやすい答えが来るであろう問を大男とその傍らの少女へと投げた。

638アンヘル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/24(月) 23:14:37
【冥界】

「これまた血の気の多そうな子が来たなぁ」

現れた人物を見るや、少女は唐突に思ったことを口に出す。
素直と言えば聞こえが良いが、単に無神経なのだろう。

「此処は冥界。一生を終えた魂が辿り着く場所。・・・で、君は死んでるの?」

死んだのかどうかなど、本人が1番知りたいだろう。
はじめこそ冗談かと思ったが、メイヤへと向ける視線は真剣そのものだった。
しかし当の本人が答えられる筈もなく、代わりにアンヘルが横から答えた。

「死んでいるのなら黄泉を抜けてくる。門番であるイヴが1番知ってることでしょ?"狭間"にいたのだから、"まだ"死んでない。」

だけど、とアンヘルはメイヤへ目を向ける。

「あなたは今とても不安定だ。どちらかと言えば"死の方に近い"。早く元の世界へ戻る方法を見つけた方がいい。」

639メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/25(火) 19:26:54
【冥界】

「死んではいないが、死に近い……か。」

イヴの答えとアンヘルの説明に、メイヤは頷く。
確かに、先の戦いで負った怪我は明らかに致命的なモノだった。

見れば身体には傷一つ無いが、定期的に傷と痛みが浮かび上がってくる感覚はある。
それも、段々と間隔は短くなっているようだ。

「脱出する方法、それを教えて貰えると助かる。
門番とその知り合いなら、知ってる筈だと思うんだが……」

此方を見詰めるアンヘルから、サンディとリトへ視線を向けて、メイヤは続ける。

「サンディもリトも、此処に居ると言う事は“まだ死んでない”んだろう?
二人も一緒に戻ろう、ナディアもイスラも心配している。

それに……説明は省くけど、世界の危機だ。
世界が闇に閉ざされ、滅ぶ前に黄龍を倒さないといけない。」

だから、とメイヤは更に続けた。

「四神と闇の王子、二人の存在はこれからの戦いに必ず必要となる。
……だから、戻ろう。

異界の闇を宿していた俺が、こうやって闇の王子と話すのも何かの縁かもしれない。
100年、塔で戦った二人の剣士……その血縁者がここに居るのも同じく縁だと思う。

でも、何より……因縁も、世界の存亡も。
それを乗り越えた先の世界を俺は生きていきたい。

勿論、そこにアグルやナディア、リトとサンディが居れば万々歳だ。」

640サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/25(火) 22:54:55
【冥界】

迎えに行った者が、まさか面識のある人物だとは誰が想像しただろうか。
始めこそ驚きを隠せずに目を丸くしていたサンディだったが、彼の「これからの戦いに必要になる」との言葉を耳にすれば、途端に表情を曇らせた。

「メイヤもあたしを四神としてしか見てないんだね…」

恐らくその小さな呟きは彼の耳には届かなかったことだろう。
アンヘルやイヴ達よりも後ろにいたサンディは、不意に前に歩み出ると、メイヤと向き合い、彼を睨み付けた。

「あなたがここに来たってことはまた戦いで無茶したんでしょ?
どうしてメイヤもいー兄も自分の身を顧みずに戦おうとするの?なんで自分のことをもっと大切にしないの?」

それは咎めるような口調だった。
どうしてこんなにもイライラするのか、サンディは自分でも分からなかった。

「元の世界に戻ったとしても、もう体動かせないかもしれないよ?今度こそ本当に死んじゃうかもしれないよ?メイヤは怖くないの?」

因縁も滅亡も乗り越えた先の世界…、それが叶えばどんなに素敵だろう。
だがそんな世界など本当に存在するのだろうか。そしてそれは命を懸けて護るほど価値のあるものなのだろうか。

「あたしは怖いよ…!戦うのも!痛いのも!
大切な人が目の前で傷つくのも!」

今になってこの世界に来た時、なぜ妙に気分がハイになったのかが分かった。
戦いばかりの現実から逃れることが出来て安心したのだ。

「あたしは戻らないから!また生き返らせて戦わせようとしても無駄だから!あんな怖いとこに戻るくらいなら死んだ方がマシだよ!」

そう言うと、サンディは踵を返してその場から駆け出した。

四神としての責務を放棄していることは分かってる。
でも、それならどうして自分にこの力が備わったのかと恨めしくも思う。
こんな血筋でさえなかったら、両親は死なずに済んだかもしれないのに。

641フロン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/25(火) 23:56:56
【霊園】

ジルの言葉にフロンは口籠った。視線を落とし、たじろむような仕草を見せる。
以前までの彼女なら、ここで身を引いたことだろう。だが、今回は違った。

「いいえ、消えません」

その口から発せられた答えは拒否だった。
それは先程までのおどおどとした口調とは一変した、凛とした響きを感じさせるものであった。

「貴方に一言謝りたかった…。それは嘘ではありません。でも、私がここに来た理由はそれだけではないんです」

表情や仕草こそ気弱な少女そのものといったフロンは、ジルの目からすると一体どんな風に見えているのだろう。
フロンは一歩前に進んでジルを真っ直ぐに見つめた。

「私は…本当の貴方が凄く心の優しい人だと言うことを知っています。そして他人を傷つけて喜ぶような人じゃないと言うことも…。
そんな人がどうして黄龍なんかに従っているのかと、最初は不思議に思いました」

彼女は小さく首を振り、その理由は直ぐに分かったけど、と続ける。

「ジルさん…、貴方は可哀想な人です。籠に囚われ、ただ朽ちていくのを待つばかりの鳥のようだとさえ思います。
思い出してみてください。貴方は今まで数えきれないほどの辛い思いをしてきた筈です。
お金を得る為に何度も体を売ったのでしょう?命令に従って沢山の罪を犯したのでしょう?
…心を偽ってまで自分の身を汚してきた。その原因を作ったのは誰ですか?」

何故フロンがジルと出会う以前の彼の過去まで知っているのかは不明だが、その原因こそ妹であるフェミルにあると、彼女は暗に語っていた。
ジル一人ならばどうとでも出来たはず、妹という存在が枷となり彼の身を縛っていたのだ。

「ジルさん、貴方は妹を護ろうとする限り幸せにはなれません。
でも…私ならジルさんを幸せに出来ます。幸せにすると約束します」

フロンは再び一歩進み、ジルとの距離を縮める。
感極まったように瞳を潤ませ、懇願する。

「私は貴方を救いたいんです。お願いです。私と一緒に来てください。四霊であることも、妹も、全部忘れて私だけを選んで下さい」

642メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/10/26(水) 17:48:31
【冥界】

全部聞こえていた。
サンディの小さな呟きも、続く言葉も。

だが、返す言葉は出ず。
逃げる様に駆け出したサンディを追い掛ける為の一歩も出ない。

「……俺とリトは似ている。
産まれながらに闇と共にある事を決められ、一族に縛られ。

だけど、俺は生きる理由を見つけた。
生きたいと思った、だから。」

しかし、追い掛けなければならない。
時間が無いのは自分だけではない。

この場所に居る以上、二人にも“その時が”来る。
メイヤはリトに言葉を投げた後、アンヘル達にすぐ戻る、と言い残しサンディを追い掛けるべく走り出した。

時間はもう殆ど無い。
足跡を、匂いを追い、メイヤは走る。

そして、サンディの姿を見つけた頃には既にメイヤの身体は血塗れ、現世で負った傷が顕現していた。

「サンディ!!話したい事がある、言いたい事が、だから!!

だから……その……」

左目は見えず、左手は動かず。
傷口からは血が溢れ、鼻腔からも朱が流れる。

「……俺は、今まで死ぬのが怖いなんて思った事は無かった。
暗殺を生業にする一族に生まれ、当主の命のまま刃を振るい。

闇を宿した出生の秘密を知り、自分には何も無いと思った。
血塗れの手と、偽りの記憶。

けど、サンディ達と出会ってからの記憶は、戦いは、流した血は全部、本物だった。
何も無かった俺が、手にしたモノ。」

一言一言、口を開く度に口腔から血が溢れる。
メイヤはそれを吐き捨て、鼻血を拭い、続ける。

「俺は明日が欲しい。
いつかの日、二人でバルクウェイの街を歩いたあの時。

もう一度、あんな風に街を歩きたいんだ。
勿論、サンディと一緒に。」

巨鳥の鉤爪による傷から溢れる血は既に黒く、メイヤの身体も微震動し、消え掛かっているのが分かる。
だからこそ、それでも。

「俺は俺の為に、欲しいモノの為に戦う。
四神としてのサンディよりも、俺の隣で笑ってくれるサンディが欲しい。

戦うのが嫌なら、怖いなら、戦わなくても良い。
……我が儘なのはわかってる、けど。」

上手く言葉に出来ないのがもどかしく、焦燥感が胸の内を揺らす。
しかし、もうこれ以上の余裕は無い。

「世界の為に、四神として、とはもう言わない。
俺の為に、俺と一緒に、戻らないか?」

辛うじて動く右手を、彼女へと伸ばす。
歩み寄ろうにも脚は動かない、感覚すらない。

気取った言葉も言えない。
手を伸ばす、それがメイヤの精一杯だった。

「俺は、隣で笑う君の姿が見たい、いや、欲しい。
だから、だから……俺と一緒に、来いっ!!」

643ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/10/28(金) 19:42:31
【霊園】

「・・・君に、僕の何がわかるの?」

必死に懇願するフロンへ、ジルは声色を変えることなく問いかける。とても単調で冷たい響きだ。

「僕の幸せって何?君なんかに何が出来るの?」

ジル1人であったなら何とでもなった。フェミルがいたからこそ、辛い道を歩むことになった。たしかに、それは事実だ。
しかし、フロンは勘違いしている。

「仕方ないから特別に教えてあげるよ。"フェミルの存在"こそが、僕の幸せだ。」

その辛い道を選んだのは、仕方なかったからではない。ジルがそうしたかったのだ。
あの時フェミルはまだ凄く小さくて、たとえば子無しの家庭の中で、あのくらいの年頃の子を望む夫婦は沢山居ただろう。
贅沢はさせてあげられなくても、ごく一般的な温かな場所で、新しい家族に囲まれて生きる。新たな居場所を与えてやることは容易かった。

しかし、それはジル自身が耐えられなかった。
残された唯一の家族を失いたくなかった。
まだとても幼かったフェミルはきっと新しい両親を本当の家族と思い込み、ジルの事なんて忘れてしまう。耐えられなかった。両親を亡くした悲しい記憶など忘れてしまった方がいい。それがフェミルにとっての最善な道であると分かっていたけど、どうしても出来なかった。

被害者はジルじゃない。フェミルの方だ。

「僕は自分の幸せの為にフェミルを縛った。」

そこでようやくジルはフロンへ振り返る。自嘲気味な表情を浮かべて。

「ゼロの所はいいよ。フェミルに寒い思いも、空腹も味合わせずに済む。あの子にとって安全な居場所。僕も変態に抱かれることも、好きでもない相手を抱くこともせずに済む。最高だ。最低限の命令にさえ従っていれば多少の悪ふざけも赦される。君に心配される必要なんてない。僕は今幸せだ。僕からフェミルを奪うなんて赦さない。フェミルを捨てて君を選べ?笑わせないでよ。」

644セナ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/10/28(金) 22:28:27
【ポセイドン邸】>>611

ユニが本来の姿を解放したと同時に、辺りの空気が精錬され、あらゆる物を浄化していくような風が流れる。
陽の氣を宿す者、それこそ四神にとっては力を増幅させる加護に成りうる存在だろう。しかし対して、闇を濃く宿すセナにとってこの空気は毒でしかなく、針で肌を刺されているかのようなピリピリとした痛みが走る。

見たところアブセルやリトに影響はないようだ。完全には力を目覚めさせていないからか。

タイミング的に、方舟の件と関係があることは間違いない。
推測に他ならないが、あの闇の解放と同時に目覚めたのだとしたら、ユニはそれに対成す存在であり、世界を救う重要な鍵を握っている。

そして、それは逆に言えば世界の破滅を目論む奴らにとって脅威であると同時に悪用の価値もあり、今後ユニに危険が及ぶ可能性は否めない。

「・・・」

アブセルに意見を求められ、セナはユニを見る。ユニも不安げに見つめこちらの答えを待っているが、しかしセナが口を開くことは無かった。
結局彼らの求める答えは得られず、セナは支度を終えるや部屋を出て行ってしまう。

セナにとっては浄化された空気が息苦しく逃れたに他ならないが、ユニ達の目には興味無い事柄に対し冷たくあしらったように見えた可能性がある。

「セナ様、冷たいです。リト様と大違いです。」

案の定、セナの事情はユニに伝わらなかった。
ユニはその場に座り込み、すんすんと泣き始める。

「アブセルさん、ユニはどうすればいいですか?ユニはユニがとっても怖いです・・・」

645サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/30(日) 01:15:20
【冥界】

…頭の中がぐちゃぐちゃで、なぜ逃げ出したのかさえ分からなかった。
一度は己自身で世界を救うと誓ったくせに、その恐怖に屈して、血からも責務からも逃げたいと思う自分が嫌だった。メイヤ達のように強くあろうと出来ない、心の弱い自分自身に腹が立った。

リトに戻れと言った。だが、それを自分が言う資格なんてなかった。

「ばかだ、あたし…。あんなの全部八つ当たりだ…」

息が切れ、サンディは途中で立ち止まる。
直後、背後で名を呼ばれた。振り返り息を飲む。

「メイヤ…、その傷…」

そこには全身を血で濡らした彼がいた。

「ずるいよ…、そんなの反則だよ…。
そんな傷だらけの人にそんなこと言われて…、放って置けるわけないじゃん…」

また逃げようかとも思ったが出来なかった。
彼の言葉に偽りはなく、また自分自身も彼の言葉に確かに喜びを感じていた。

「約束して…」

サンディは言った。目から溢れた涙が彼女の頬を濡らした。

「死ぬのは怖くないなんて言わないで…。世界やあたしの為に簡単に命を賭けようとはしないで…。
生きて…、あたしを一人にしないで…!」

その時気づいた。その恐怖の正体に。
自分は一人になるのが怖かったのだ。世界が平和になれば、もう四神は必要とされなくなる。イスラやナディア達も各々の帰るべき場所へ行ってしまう。
だが、自分には"それ"がない。未来に自分の居場所はどこにもないのだと、そんな風に思っていた。

「メイヤはあたしの明日の為に戦うって誓って…っ!あたしはメイヤの明日の為に戦うから!」

戦うのは怖い。でも戦わないければ、メイヤが人の分まで戦おうとする。人の分まで傷つこうとする。
それは嫌だ。
ならばどうする。自分が彼の隣で彼を護るしかない。

世界や人類の為ではなく、己の都合の為に戦う自分は四神失格かもしれない。
しかし今はそれが精一杯だ。世界なんてスケールの大きなもの支えきれない。身近の大切な誰かを護る。それだけの勇気しか今はない。

サンディはメイヤに駆け寄り、伸ばされた彼の手を取った。

646フロン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/30(日) 01:17:20
【霊園】

フェミルの存在こそがジルの幸せ…。

その言葉を聞くや、フロンの様子は一変した。表情も一切の感情も消え失せ、彼女はマネキンのように凍りついた顔でジルを見る。
涙で潤んだ瞳も、今や暗い陰を落とすばかりだ。

「そう…ですか…。
では、どうあっても私の元へは来てくださらない、と…」

打ちのめされた。
今ので己の敗北を悟ってしまった。
自分がどんなに感情的に訴えかけてみても、どんな言葉を使ったとしても、きっと彼の心を動かすには値しない。自分はその程度の存在なのだ、と…。

「私は…思い違いをしていたみたいです…」

それだけ力なく言うと、フロンは別れの言葉を告げることもなく、回れ右をして脱け殻の様にふらふらと何処かへ立ち去ってしまった。

647アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/30(日) 01:19:14
【ポセイドン邸】

セナは無言でどこかに行ってしまった。彼はユニの言う通り冷たい人なのだろうか。もしくはただ単に急に催しただけか。
ともかく残されたアブセルは泣きじゃくるユニを見て、どうしたものかとため息をつく。
こんなとき、リトならどうするのだろう。どんな言葉をかけてやるのだろう。
アブセルはユニの隣にしゃがみ目線を合わせてやった。

「ユニ、お前さぁ…、考える脳みそなんてないんだから変なことで悩むなよ。
ユニはユニ、だろ。お前がどんなバケモノだって、俺もリトも今さら気にしねーよ。つーか正直興味ねぇし」

言葉は乱暴だが、一応は励ましているつもりらしい。
ユニの頭に手を置き、くしゃくしゃと髪を撫でる。

「それでも納得できないんなら…もう怖いことなんか考えんな。楽しいことだけ考えてろ」

例えば…、と言って、彼は数秒思案する。

「ほら、前みんなで遊園地行ったじゃん?あれ楽しかったよな。いつもと違うリトが見れて最高だったし。
リトが目ぇ覚ましたら、また行きたいよな。あー、あと海!暑くなったら絶対海には行かないと。そんで夜は浜でバーベキューに花火だ」

その後アブセルは、街の祭りに皆で行こうだとか、あれがしたい、これがしたいといったことをつらつらと語った。

「てか!その前にまずリトの快気祝いのパーティーしないとだよな!今まで心配させた分、派手に祝ってやろうぜ。
あ、勿論その時はお前にも準備手伝って貰うから、逃げんなよ」

648イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/30(日) 01:28:46
リマ》DDが何かよく分からないキャラになってきた…(笑)

大丈夫、その為のボディーガード(アブセル)です⬅
セナwwジュノスはその辺からセナに教育するべきでしたね(笑)

鼻声…なんか分かる気がしますw

ありがとうございます、今度探してみますね^^
えー、自分は今のところ春ちゃんが一番好きですけどね⬅
気になるならニコニコ見てみたら良いと思います^^もう大爆笑ですから⬅
3話見ました、あれが噂の羽が生える現象か(笑)
ヘヴンズの方の声優さんは知らないけど、歌上手いですね。てか今になって漸く声優陣が凄い豪華なことに気づいた…!

そして何気にダムさんの回が楽しみです⬅前知識で知ってたうたプリキャラ、レイジと藍ちゃん(リマさんの影響)とダムくらいだから(なお本名はアニメ視聴してから知った)

友情エンドなんてあるんですね、ええ話や…( ;∀;)しかしヒロインの立場形無し…ww
てかリマさんが沼にはまりかけてる…(笑)
検索したらそのシーンの動画、どっかに上がってるかもしれませんね
てか藍ちゃんってロボなのに歳とるんですか?

そんなにアブセルを殺したいか!(笑)
うわー…それは恐ろしく鬱展開になりそう…、ナディアが折れないことを祈ってます;
はい、残念ながら⬅

マジかwwそれもうエンディング見せる気ないでしょ;
てかやりとげた人マジ勇者w

ヨノも小さい頃からジルのことが気になってた、とかは?実は二人とも両想いだった的な

649シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/04(金) 21:00:35
【虚空城】

「何故上位の存在である我らが、人ごときの都合を尊重せねばならない?
黄龍様のお考えは世界の総意だ。それに比べれば人の意思など如何ほどの価値があろうか」

フロア一体にシデンの冷たい声が響く。
直後、床や壁一面に這い回る炎蛇が、何かに捉えられたかの様に動かなくなった。
かと思えば、それらは一際大きく炎を燃え上がらせて霧散した。

「人の意思ほど移ろいやすく、信用できぬものはない。かつては神獣として人界に属し世を導いてきた俺も、愚かな人間共には幾度となく裏切られたものだ」

不意にイオリの体が鉛のように重くなった。
重力…いや、磁力だ。電子化したシデンの一部がイオリの体内に侵入し、磁力を発しイオリと地面とを引き寄せている。

「いい眺めだな」

気づけばシデンは実体を表していた。
足下に這うイオリを見下ろし、無造作に彼の喉元に剣先を突き付けた。

「どうした?命乞いでもしてみるか?」

650メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/11/05(土) 15:51:26
【冥界】

それは優しい約束でも、誇り高き誓いでも無い。
言うなれば相互依存、危うい繋がりだ。

だが、メイヤはそれを受け入れ、繋がった手を引き寄せる。
確かに感じる温もりを、引き寄せ、抱き締めた身体の熱をしっかりと確かめ合うように。

「誰かと約束するのも、何かを誓うのも。
こうやって抱き締めるのも、初めてだけど、悪い気はしないな。」

溢れる血は朱から漆黒へ。
左の眼窩から流れる闇が悪鬼の面となるも、それとは真逆の表情をメイヤは浮かべる。

「誓うよ。
俺は、俺と、サンディの明日の為に戦う。」

そして、メイヤはゆっくりとサンディへと顔を近づけ。
溢れる闇が二人を包み、黒い球体の形を成して、収縮。

黒曜に輝く宝玉となったソレは、微振動を続けた後に、消えた。

ーーーーー

闇の巣の中でも、最も闇が濃く、冥界へと続く大渦。
そこを見詰める大烏は、紅の瞳を細めた。

その様子からは嫌悪感が見て取れ、巨鳥が一鳴きすると同時に、大渦が揺らいだ。

重低音と共に渦から漆黒の光が溢れ、黒曜の宝玉が飛び出す。
そして、飛び出した宝玉は急速回転しながら徐々にその大きさを増し、停止と同時に爆散。

大渦を、闇の巣を揺らす程の衝撃波が巻き起こした余波に叩かれ、大烏は怒りを露わに咆哮を上げた。
咆哮を上げ、大きく羽ばたく巨鳥の視線の先。

半壊した橋桁の上、サンディを降ろしたメイヤが、悪鬼の面で大烏と姿を変えたクウラへ剣を向けていた。

「確かに、お前の言う通り俺の中に異能の力は在った。
けど、それは闇の力じゃない。」

切っ先を向け、メイヤは続ける。

「命を、心を蝕む悪神を宿して尚、俺が死なずに戦えた理由。
それは、この炎だ。」

話し続けるうちに、メイヤが纏う闇はその色を黒から白へ、そして、紅蓮へと変え。
漆黒の闇は紅蓮の炎へ、バルクウェイで悪神を内側から破ったその力が姿を現した。

「鳳凰は二羽一対の神なる鳥。
死して尚、その灰から産まれ出流る不死なる神焔鳥(かえんちょう)
受け継がれる四霊の力……これが、俺の新しい翼、そして、力だ!!」

それは、四霊の一角、鳳凰の力。
雌雄一対、雄鳥である鳳の力。

巨鳥へ向ける刃を鞘に収め、メイヤは居合いの型を取った。
その姿を見、大烏は闇の大翼に漆黒の雷を孕ませ、上昇。

「知ってるか、鳥は一対の翼を持ってして、初めて空を飛ぶんだ。
俺の片翼、それはもう此処に居る。」

天を貫く嘶きと共に、八咫烏は黒雷の群を引き連れ急降下。
メイヤへ向かい、突撃した。

そして、対するメイヤはその背から紅蓮の焔翼を燃やし、燃え盛る神焔がサンディを包み、鳳と天照が同調。
二人の背に燃える焔翼が大きく羽ばたき、同時に。

「……ーー神斬り、“迦楼羅焔”」

抜き放たれた真白の刃から神焔鳥が顕現し、神焔と共に大烏へと激突。
神焔が黒雷を灼き、 迦楼羅焔が闇の巨鳥を浄滅させていく。

一片の灰すら残さずに大烏は消滅し、神焔鳥もまた、その姿を華焔と変え闇の巣を照らし、消えた。

「俺の、勝ちだ。」

【て事でメイヤvsクウラはこれにて決着っす。】

651ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/11/06(日) 20:44:47
【霊園】

しつこく言い寄られるかと思ったがフロンは案外あっさりと引き下がった。

その姿が見えなくなるのを確認し、ジルは糸を切ったようにその場に座り込む。

「最悪・・・」

こみ上げる吐き気。フロンのせいでおぞましい過去の記憶がフラッシュバックしてしまった。
何故彼女が黄龍に下るまでのジルの行動を知っているのか。

「失望した?でも、後悔はしていないよ」

両親の墓の前でとんでもないことを暴露されてしまったものだ。
しかし、自分の行いに対し両親に言い訳する気もない。

「約束・・・か。」

それはフロンが口にした言葉。久しぶりに聞いた気がする。"約束"なんて言葉ほど信用のならないものはない。

「約束なんて大嫌いだ。」

あの日は自分の誕生日だった。母親は息子の誕生日に夫婦同伴の仕事が入ってしまったと申し訳なさそうにして、父親は目に見えて絶望する母親に苦笑を浮かべ、そしてジルには笑いながら頭を撫でて「すぐ帰るよ。」と言ってくれた。

"プレゼントは何がいい?"
"何でもいいよ、お父様とお母様がくれるものは何でも嬉しい。"
"欲のない子だね。たまには我儘を言いなさい。"
"そう、ジルはいい子すぎるのよ。"
"ジルはフェミルのお兄ちゃんだけど、僕達の子供であることを忘れてはいけないよ?たまには子供らしく甘えて欲しい。そうだね、せめて誕生日くらいは自分が兄であることを忘れなさい。フェミルに遠慮しないで。"
"・・・じゃあ、一つだけお願いがあるんだ。"
"何でも聞いてあげるよ。"
"今日はお父様とお母様と、一緒に寝てもいいかな?"

恥ずかしそうに口にしたその言葉を聞いて、両親は互いに顔を見合わせて、そして吹き出した。
ムッとして撤回しようとしたジルに謝りながら、両親はジルと指切りをした。

"分かった、一緒に寝よう。今日はジルが僕達を独占していいよ。"
"ほんと?"
"ジルが真ん中ね。手を繋いで寝ましょう?"
"うん!約束だからね?''
"約束するよ"

約束を交わして笑顔で送り出した両親は帰ってこなかった。
自分の我儘はおろか、早く帰ってくるとの約束すら守ってくれなかったんだ。

652ジル ◆wxoyo3TVQU:2016/11/06(日) 20:47:35

そういえば・・・と、ジルは記憶を思い返す。
自分も何か不履行のままの約束を交わしていた。何だっけ?あぁ、そうだ。

「金木犀・・・」

金木犀を見に行く約束をしたんだ、"あの子"と。
秋になると香ってくるあの匂いが好きだと言った彼女は金木犀のことを知らなかった。見たことがないのだと。あんなに広い屋敷で、大きな庭には沢山の花が咲いていたけど、彼女はその庭にはない素朴な金木犀の香りを好んでいた。
ジルも金木犀が何処にあるのかは知らなかったけど、図鑑でその姿は知っている。だから彼女に言ったんだ。金木犀を探しに行こうと。香りが来るなら近くにあるはず。探せば見つかると思った。
彼女は嬉しそうに笑っていた。秋になったら必ず探しに行こうね、そう二人で指切りした。

「またあそこに行くのか」

今回奪取予定の少女は現在ポセイドン邸にいる。あそこには、彼女もいるのだ。
ジルは抱えた膝に顔を埋める。

面倒だ。また会ってしまったらどうすればいい?

「ヨノ・・・」

"泣いているの?"

深海を思わせる澄んだ大きな瞳。あの目に見つめられると自分の心の奥深くまで見透かされそうで。優しい声は風のように自分の中にある黒いモヤを綺麗に掻き消してくれる。
あんな心地よさなど要らない。あの場所へ戻りたくなる。
そんな資格などないのに-----

653ユニ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/11/06(日) 23:54:03
【ポセイドン邸】

アブセルが提案する"楽しいこと"に、次第にユニの顔に笑顔が戻ってくる。

「ユニ、リト様起きたら沢山お祝いするです!リト様は果物が大好きですので、果物のケーキを準備するです!たくさん喜んでもらってギュッてしてもらうです!」

リトは自分の好きな物を他者に口にはしないため勿論ユニに好きな食べ物を話したことなどない。これもユニの言う"知らないはずなのに知っている"ことであるはずだが、リトに関する事項は気にならないらしい。
今のユニを笑顔にするのはリトの話をするのが一番であるようだ。何でも知っているユニであるが、自分の中に芽生えている感情には気付いていないようである。

と、ユニが泣き止んだのを見越したかのように部屋にノック音が響く。
リマがひょっこり顔を出した。

「セィちゃん準備出来た?あれ、いない?」

セナが着替え終わった頃だろうと思い来たようだ。
目的の相手はおらず、代わりにアブセルと共に居たのは目に涙を浮かべて笑う少女。アブセルは少女の頭を撫でている。
それを見てリマは勘違いしたようだ。

「・・・ごめん、お邪魔しちゃったかな?」

654ユニ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/11/06(日) 23:55:46
------------

「・・・」

葬儀用の衣装に着替え、その時間まで部屋で待機していたヨノは机に向かい思いを巡らせていた。
思い返すは数日前に再会した青年の姿。

何故母の部屋にいたのか、そもそも何故この邸内にいたのかなどは彼女にとってはどうでもよかった。

(ジル・・・)

彼は笑っていたけど、とても痛々しく見えた。泣いているように見えた。
きっと今まで、自分には想像出来ない過酷な暮らしをしていたのだろう。引き取られた先の親戚の元を抜け出し、まだ幼かった兄妹が大人の庇護を受けずに平穏に生きることが出来るはずもない。

ヨノはふと引き出しを開け、中から小箱を取り出す。小箱を開くと、小さな巾着が入っていた。巾着を手に取り鼻を近づける。

「流石にもう香らないか・・・」

これは十数年前に仲の良かった男の子から貰った物だ。
彼は器用な上にとても頭の良い子だった。金木犀の香りが好きだと何気なく言った自分に、その季節以外でも薫れるようにと、金木犀を袋の中に閉じ込めてくれたのだ。勿論、本物を入れたのではない。"企業秘密"と言って材料は教えてはくれなかったけど、金木犀に似た香りを作ってくれたのだ。
そう言えば姉が香水を作り出したのもこれがきっかけだったように感じる。男の子に作れるのなら自分にだって作れると、対抗意識を燃やしたようだった。

「忘れた事なんてないよ?」

自分を思い出してくれて嬉しいと、彼は言った。思い出すまでもない、彼のことはずっと覚えていた。
ある日一族の主であるナディアが旅に出ると言って消えてしまった。彼女はいつ帰ってくるのか、そもそも帰る気があるのか、このままではポセイドンの血筋が絶えてしまうかもしれないと一族は焦った。かと言って彼らは畏怖の対象であるリトに手を出すことは出来なかった。そこで白羽の矢が立ったのはヨノであった。
あらゆる縁談を持ち掛けられては拒否してきた。自分は結婚に、異性に興味が無いのだと思ってきた。でも違ったようだ。無自覚であったけれど、ヨノの心にはいつも、遠き日に香りをプレゼントしてくれた少年の姿があったのだ。

ヨノは自らの胸に手を当てる。鼓動が早い。

655ユニ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/11/06(日) 23:56:16


「酷い娘ね・・・」

父を亡くし、このあと葬儀も控えている。なのに、父を失った悲しみはあまり無いのだ。
リトを虐げていた恨みの方が強いのか、父に対して感情が湧かない。

父を偲ぶべき時に、自分はあろうことか、別の男のことを考えている。

再会し、抱きしめられて、鼓動が早くなるのを感じた。
彼の身をあんじていたから、安心した。違う、それだけではないのだと、気付いてしまった。

自分は彼を---

「ヨノ。」

呼びかけられてはっとする。いつ来たのか、ナディアが傍らに立っていた。

「お姉様・・・」

「どうしたんだ、ぼうっとして」

「お姉様、ジルを覚えていますか?」

「またその話か。よく此処に遊びに来てたガキだろ?年下のくせにお前に対して妙に生意気だった。」

「ジルに会ったんです。」

「外に出ないお前がどうやって会うんだよ。それいぜにあの兄妹はずっと行方不明だ。あの年齢で自力で生きていられる筈がない。」

「そんなこと・・・」

「葬儀の準備が出来た。始めるよ。」

言ってナディアは部屋を出て行く。
ジルは生きていたのに、ナディアは死んだものと認識しているらしい。
ヨノは歯痒さを覚えながら手の中の匂い袋を抱き締めた。

「ジルか・・・」

部屋を出たナディアは不意にその名を呟く。

「最近、何処かで聞いたような・・・」

何か引っかかる。ナディアはふとそう思うも、深くは気にせずその場を後にした。

656リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/11/07(月) 07:21:42
イスラ>>

DD面白いので好きです(笑)しかし何故ヴェントがダーリンなのか(笑)

そのボディガードが一番信用ならない気も・・・(笑)←
必要でしたね(笑)セナは自分の事には完全無頓着ですから(˘-▽-˘ )リマのことは敏感なんですけどね←

あれ、共感されちゃったwww

まさかのハルカwww
ニコニコ見てみますね( ・ㅂ・)و ̑̑
羽生えちゃいましたね(笑)もう藍ちゃん入れてミカエルラファエルガブリエルとでも呼びましょうか←
気付くの遅い(笑)小野Dいないなって思ってたらヘブンズの方で出てきたし、金かかってるなぁうたプリ←

逆に何故ダムは知っている(笑)てかダムと言い、うたプリファンってキャラに面白いあだ名つけますよね。レンはジャスコだし← チーム名にもセンスが溢れてて凄いなって思います。藍ちゃんとカミュの組み合わせはシンデレラなので、めちゃくちゃ可愛いなって思ってます←
自分なんてレイジの名前知る前ずっと唐揚げ先輩って呼んでました←

もうヒロインは蚊帳の外でいいです←
沼になんて絶対入らないもんね!って思ってるんですが、藍ちゃん限定ではまりかけてるのは否めない(˘-ω-˘ ).。oஇ
昨日2016冬ののAGFの藍ちゃんの画像見かけて「欲しい・・・!」ってなりましたもん。またオークションか・・・←
レイジに担がれてる藍ちゃんの画像は手に入ったんですが、動画はまだ見つかってないです(´;ω;`)
いえ、見た目は変わらないので設定上13歳です←見た目変わらないので13歳でも178cmです←あーでもフォルムチェンジすればあるいは・・・←

殺したい!(笑)←
ナディアは今のところ折れる要素ないので大丈夫だと思います(笑)
本当残念だよ(笑)

よっぽどの暇人か、かなりのファンか・・・←

イスラさんの案を貰って二人とももともと両思い設定にしました( ・ㅂ・)و ̑̑
まぁ幼い頃の綺麗な思い出の中の少年が超美形になって帰ってきたらいくら歳下でも惚れますよね← ヨノは弟で耐性ついてるので多少のイケメンには動じませんが←
昨日寝惚けながら打ってた文章読み返したら二人とも互いに激ラブじゃねぇかとこそばゆくなりました←←そして謎の金木犀プッシュ感←

657サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/09(水) 06:13:00
【闇の巣】

現実への帰還は唐突だった。
突如場面が切り替わり、サンディは崩れるようにその場に膝をついた。

(あれ?現実?戻ってきた?いつの間に?て言うかここどこ?)

己を包む焔や翼が消えた後もサンディはどこか夢現の気分でぽけーっと目を白黒させていた。

そこでふと傍らのメイヤの存在に気づく。
…少しずつ頭がしっかりしてきた。

(て言うかあたし…さっき…何か飛んでもないことを口走っちゃってたような…)

プロポーズに聞こえなくもない飛んでも発言。あれ夢だよね?そうだよね?そうだと言って誰か。
凄まじく穴があったら入りたい気分。

しかし抱き締められた温もりも感触も全てが本物で、それが現実であることを如実に語っていた。

「あわわわわわ、あのあのそのあの!やっぱさっきの無しで!あっいや!全部無し!でもないけど!
もう戦いから目を背けないってのも本当!メイヤだけに痛い思いをさせないってのも本当!
でもその他の細かい部分は全部保留で!」

火が出たように顔が熱い。恥ずかしくて彼の顔がまともに見れない。
サンディはメイヤの視線から逃れるように、両手をかざし顔を隠した。

「さっきは何か心が弱ってたって言うか!そのせいで変なこと言っちゃったって言うか!とにかく深い意味はないから!…いやっあるかもしれないけど!?
取り合えず今はないってことでっそれでお願いします!集中できないから!」

要約すると暫くは現状維持でいましょう。とのことらしい。

658イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/09(水) 06:30:41
リマ>面白いなら良かったですwDDは気に入った男性をダーリンって呼ぶ癖がありまして⬅

それは否定できない…(笑)
セナにも困ったもんですね┐(´д`)┌⬅

だって春ちゃんが一番まともな人に思えて…⬅
二番はセシルかな。始め何このカタコトの人…って思ったけど、5話見たらめっちゃいい人だった。あと鳥海さんの歌声が高くてびっくり…!
あの三人なら天使になっても違和感ないww
声優ファンとしても嬉しいでしょうし道理で人気ある訳ですねー

ダムはマジラブレボリューションズの空耳「ダムの大革命、マジ☆ダムレボリューション!」って言うのがあってそれで知りましたwその空耳が何か好きなのでダムも割かし好きです(単純

なんでジャスコにシンデレラ?(笑)そしてなんで唐揚げ?ww

はまりかけてるって言うか…、すっかりはまってるじゃないですか!(笑)
見た目変わらない13歳なんて…いいんですかそれ?そんなんでリマさんのショタ魂揺さぶられるんですか!?⬅

酷スww
良かった(笑)でもリトが死んだりしたらあのナディアも折れそうな気がする…

暇人にしても凄い根性てすよねw

ジルヨノの激ラブ感にニヤニヤが止まりませんww
そう言うロマンチックなバックボーンが作れて良いな(o>ω<o)
あ、フロンが暴走するのはアブセルVSジルの後で良いですか?途中でヨノが止めに来てくれたら、フロンが激おこで表れるから⬅

659DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/09(水) 18:43:00
【森】

「酷いわダーリン!アタシのこと忘れちゃったって言うの!?」

どうもヴェントはDDのことを記憶から抹消しているらしい。
長いこと人間界でバーを経営し、故郷に里帰りするのも久しぶりな為、無理もないと言えばそうなのかもしれないが…。

「うぅ…それでもアタシの頭の片隅にはいつもダーリンの微笑みが住んでたっていうのに…!
ハッ…、そうだわ…!」

たっぷりと愛情のこもった熱烈な口づけとハグをプレゼントすれば思い出してくれるかもしれない。
獲物に狙いを定める獣のごとく、じりじりとヴェントににじり寄るDDであったが、その行動の先読みをしていたであろうフィアに止められ、どうにかことなきを得た。

と言うより…、当初の目的をすっかり忘れていたのだった。

「…と言うわけでね、オリジンが現れて超大変なの!ダーリン!か弱いアタシを護ってちょうだい!」

…説明が雑になってきたが、取り合えずはかくかくしかじかと此所に訪ねてきた理由をヴェントに伝える。

660アブセル:2016/11/09(水) 20:08:24

取り合えずはユニを安心させることができたようだ。

「ぎゅっ、か…。いいなぁ…、俺もして貰いたいな…」

と、まだ見ぬ未来に想いを馳せていたその時。部屋に新たな来訪者が顔を覗かせた。
アブセルは始めリマの懸念に疑問符を浮かべるも、もしや有らぬ疑いをかけられているのでは…と慌てて立ち上がる。

「いやいやいや、違うから!ぜんっぜん邪魔なんかじゃないから!ほんとに!」

あたふたと説明を試みるも、何故こんなに必死なって釈明しているのかと自分でも疑問に思う。
ようやく冷静になった後、改めて彼女の問いに答えた。

「てか、セィちゃんさんならもう行ったけど…、途中で会わなかったんだ?」

腕時計を確認すれば、もう葬儀の始まる時間目前だ。

「うわ、うっかりしてた…。途中で迷子になってなきゃ良いけど…」

661イオリ ◆.q9WieYUok:2016/11/11(金) 21:28:56
【虚空城】

不意に重くなる身体が膝を着き、抗えない力により床に伏せられる。
無様に這いつくばったその喉元に突き付けられる刃の感触に、イオリは口元を歪めた。

「世界そのもの、そりゃあ黄龍サマからすれば人間なんてアリンコどころかミジンコかもしんねぇな。」

だが、その口元の歪みは笑みに変わり、磁力に捕らわれていた筈のイオリは無造作に立ち上がる。
片手で埃を払い、半歩、後ろへ。

「ところでシデン、キュリー温度ってのは知ってるか?
磁力はある一定の温度に達すると力を失うのさ。

熱消磁する温度、それがキュリー温度。
ざっくり言うとな、電磁力は炎に弱いんだよ。」

だが、それだけで四霊であるシデンの力を弱め、消失させる事は出来ない。
ならば何故、イオリはシデンの力を弱体化出来たのか。

その理由は、先程暴れまわった炎蛇の群にあった。
シデンの力により鎮火されたものの、蛇群はしっかりとフロア中に焦げ痕を残していた。

その焦げ痕は不規則に見えるものの、実際はとある術印となっており、鎮火された時点でそれは発動していたのだ。

「鳳凰が司るのは“平等”
それは互いを同調させ、力量を等しくする事を可能とする。

本来なら、心を許した者同士でしか使えないんだがな……炎蛇の群れによる術印式でそこは強引に通させてもらったぜ。」

半歩下がり、刀は鞘へ。
居合いの型を取るイオリの背から炎の翼は消えていた。

「で、だ。
俺とお前の力を“等しく”したんだが……俺にお前を合わせた、即ちお前の力量は俺レベルに“下方”された訳だ。

気分はどうだ?只の人間になった気分はそうだな、地面に這いつくばってる様なモンだろ?」

犬歯が覗く程の獰猛な笑みと、残虐さが見て取れる瞳を向け、イオリは刀の柄を握り込む。

「命乞い、しても良いんだぜ?
今から放つ業、今のテメェに見切れるとは思えねぇからなァ!?」

そして、シデンの返答を待たず、イオリは刀を抜き放った。
それは、彼の得意とする居合い斬り、神をも斬り捨てる神速の一刀。

ーーー神斬りーーー

「死にさらせ、デコメガネよぉ!!」

662リト ◆wxoyo3TVQU:2016/11/13(日) 21:07:05
【冥界】

「戻れたみたいだね。」

サンディが何処かへ駆け出し、その後をメイヤが追った数国後、不意にアンヘルが呟いた。

「元の彼らの居場所へ。次は君の番だよ。」

どうやらあの二人は冥界から出ることが出来たようだ。きっかけは全く分からないが、以前アンヘルが言っていた言葉を借りれば「現実世界への悩みが消えた。」「生きる希望が生まれた。」と言ったところか。
リトは興味なさそうにアンヘルの言葉を右から左に受け流しながら、手持ち無沙汰を紛らわせるかのように湖へ手をつけた。冷たい。

「綺麗な湖ってさ。ユニコーンとかペガサスが出るんだろ?此処にも出るの?」

「どうだろう?いるかもしれないけど、彼らは純潔な乙女を好むから。・・・架空の生き物とされるのに、信じているんだね。」

「別に。何となく思っただけ。」

ただ、ふと、そういうのを見たら大喜びしそうな少女が脳裏に浮かんだだけだ。

気力無さげに水の中で手を動かす。水の音は好きだ。耳に心地よく、聞いていると安心する。

「・・・リト。」

リトが現実世界に戻る方法は分かっている。彼の中にモヤを払うこと。自分の存在を受け入れること。
本当は"互い"に話し合って分かり合う方が良かったけれど。互いに素直ではなく胸のうちを明かせるのは間違いなく難しい。
このままでは解決しない。第3者が背中を押してやる必要がある。

「君に聞かせたい昔話があるんだ。自分の愛を上手く表現出来ないまま、悲しい最期を遂げた男の人の話。」


-----

アンヘルの話を聞いたからと言って、過去の記憶が美化される訳ではない。長い間積み重んできた嫌悪感が覆されることもないだろう。
ただ言いたいことがある。今までのことの何よりも、赦せなかった。

リトはアンヘルから聞いた場所へ走る。その一言を言うために。

そして、

「あ、来た。」

リトの姿を認めたアネスが呟く。しかし当のリトは彼女の存在など気に止めなかった。
リトが捉えているのは、その少女の傍に控える一人の男。
アネスの呟きを受け顔を上げた男と目が会った。

「何で・・・」

リトは拳を握り締める。

「何でアンタが此処にいる?どうして、」

死んでるんだ。
この事実がどうしても赦せない。憎い相手でも、死を望んだ事などない。

「バカじゃないの?カッコつけて悪者演じて、結局アンタは何も得てないじゃないか。意味分かんない・・・」

とても腹立たしかった。しかし怒りを抑えながら話すリトとは対照的に、男は何故かフッと口元に笑みを浮かべた。

「お前の声を初めて聞いた。」

「は?」

「お前とは会話したことが無かった。それどころか、お前は私が何をしても声を出さず口を閉ざしていたからな。」

そうか、そんな声だったんだな。男は何が可笑しいのか、ククと笑いだした。
この男のこんな姿を見るなんて初めてだ。と言うより、まるで別人だ。死んだ事で憑き物が落ちたかのよう。

そんなリトの戸惑いに気付いたのか、男は続けた。

「なに、いざ死んでみると不思議と気持ちが軽くなってな。それに、この娘から良いことも聞いたから気分がいい。」

「良いこと?」

「お前がまだ生きていると。」

その言葉を聞いてリトは言葉に詰まった。リトの生存を喜んでいる?リトをこんな目に合わせたのはこの男自身なのに?

「お前が戻れるかは私にかかっているらしい。だからいい機会だ、少し話に付き合ってほしい。」

663アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/19(土) 17:15:24
【黄昏の塔】

襲い来る数多の凶器。
アグルは瞬時に障壁を張り、それを防ごうとするも。一時の拮抗の後、障壁は粉々に破かれアグルは衝撃で後方に吹き飛ばされた。

「…っ!」

飛び散る血飛沫。翼で衝撃を殺し空中で体勢を直す。
傷は深いものではないが、額から頬へ流れ落ちる血を腕で拭った。

相手との実力差を考えれば、力負けするのも仕方がないだろう。
だが以前までのアグルなら、ユーリの動きを見極めることも、それに着いていくことも出来なかった。
一度の敗北を経験した後のシンライジ邸での稽古。そして数々の強敵との戦いで彼は確実に実力をつけてきていた。

「お前は絶対に俺が殺す…」

アグルは再び槍を構え、先端に力を溜める。翼を打ち電光石火の勢いでユーリに突進する様はまるで一つの雷のようだ。
目にも止まらぬ速さで突きを放ち、二つの影は交差する。そしてアグルは空中で身を反転させ、再び突進。
手応えがあってもなくても関係ない。
己自身を武器にし、何度も何度も閃光を煌めかせながらユーリに連続ラッシュを繰り返した。


【もう11月だけどハロウィンイラスト描いたので貼ります(笑)
一応リト組と四神組メンバーですが…アグルとレックスはスペースが足りなかったため不在です⬅ imepic.jp/20161119/618550 】

664 ◆.q9WieYUok:2016/11/19(土) 19:10:20
>>663
が、画像が無い模様!!

665イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/19(土) 21:41:49
マジかw
http : //を頭につけたら飛べませんか?

666 ◆.q9WieYUok:2016/11/19(土) 23:03:25
着けても一致する情報が見つからないとかなんとかorz俺だけなのかな?ww

667ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/11/19(土) 23:41:11
そういや1ヶ月前位に、自キャラのCV考えてみるか〜と思って頑張って調べてた。

イオリ/河西健吾
メイヤ/梶裕貴
ユーリ/三木眞一郎
レックス/下関紘
ヴァイト/島﨑信長
クウラ・クロス/花江夏樹
ヤツキ/小野大輔
キール/小林ゆう

ゲームで梶ボイス使ってるけどかっけーな(笑)

668リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/11/20(日) 13:37:08
私の方では一瞬画像載ってないように見えたけど、下の方にカーソルしたら出てきたよ!



自分梶さんオチャラケキャラしか知らないからイケボなのかどうか判断出来ない(笑)てか小野D!小野Dがいる!!
そしてキールの声優ピッタリ!!
ユーリの声優に爆笑した←やっぱ三木さん悪役のイメージ強すぎる

てか自分も他のキャラも声優考えた!

ナディア:坂本真綾
リト:蒼井翔太
ユニ:豊崎 愛生
ノワール:田村ゆかり
ジル:柿原徹也
フェミル:花澤香菜
リマ:沢城みゆき
セナ:斎賀みつき

取り敢えずこんな感じ!即席だから異論は認める←


てかイスラさんのイラスト素敵すぎる!次はクリスマスですよ(コソッ
みんな仮装がキャラに合いすぎてウキウキしちゃいました(*ˊૢᵕˋૢ*)
アブセル何で目玉焼きぶら下げてるんだろうと思ったらガチの目玉だったwww
そしてユニの乳がデカさが目の保養・・・谷間が見たかった(ボソ
我がキャラながらナディア美人だなぁ(´ω`)

669イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/20(日) 20:34:42

ありがとうございます(^∇^)
初めはクリスマスイラストを描こうと思ったんですが、イメージ湧かなかったからハロウィンにしたんです(笑)
目玉焼きww本当だ、見えるwwじゃあ谷間はまた今度(多分)ww
ヤツキさんは…、まぁ大したイラストじゃないんで見なくても全然大丈夫だと思います(笑)⬅

てか何かCV決めると面白いですね(*^^*)あー、なるほどなー、って想像してニヤニヤする(笑)
梶さんはまじめキャラの時はイケボですよ!ww

自分みゆきちはセクシーボイスのがイメージ強いから、そっちがナディアかと思ってた⬅
でも他は皆イメージぴったりで凄い!

と言うわけで自分も考えてみましたw

イスラ、保志総一郎
ジュノス、緑川光
アブセル、木村良平
サンディ、釘宮りえ
アグル、石川界人
フロン、悠木碧
シデン、森川智久
ディンゴ、平田広明

670メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/11/21(月) 12:33:52
【闇の巣】

思えば、極めて近く限り無く遠い存在だったのだろう。
成功したか失敗作したか、言うなればたったそれだけの差。

クウラが渇望したモノ、それはメイヤが渇望したモノと同じ。
薄闇を照らし、静かに消えた焔に思いを寄せ、メイヤは短く黙祷した。

「今は無事こうやって戻ってこれた、それだけで良いさ。」

そして、隣で慌てふためくサンディに優しく声を掛ける。
クウラとの激闘で追った傷は鳳の力が顕現した事により完治し、動かなかった左手も自然とサンディの頭を撫でていた。

冥界での言葉は嘘偽りない、自分自身の本心。
それが伝わり、二人でこうして現世に戻れただけで良かった。

だが、互いの明日の為に戦うと誓った以上、再び刃を握らなければならない。
闇の巣の先、そびえ立つ黄昏の塔の上部では閃光が瞬き、遠く轟音が聞こえる。

「サンディ。
俺は君誓いを守る為に、また、戦いに行く。
だけど、サンディは残ってもいい。

塔を背に暫く進んだ先に俺達が乗ってきた飛行艇がある。
そこならそれなりに安全だ、そこで待っててもらっても構わないけど……どうする?」

671ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/11/25(金) 17:46:34
【黄昏の塔】

閃光が煌めく度に瞬く攻撃は止まる事を知らず。
繰り出される一撃一撃は光の速度と雷の威力を持ってして、ユーリを文字通り削って行く。

受け流し、防ぎ、弾き返す度に、複腕が握る刃は零れ、砕けていく。
蜘蛛の型を成す魔装も明らかに傷を負っていき、所々に赤が滲んだ。

「……捕まえた、ぞ。」

しかし、防戦一方のユーリではない。
アグルの連続攻撃を受けながらも、同時に粘着性の糸をアグルへ付着させ続け、僅かな……しかし確実にその動きを、速さを低下させていく。

そして、槍の一突きを複腕の一つを犠牲にし受け止め、槍を握る手首をユーリは掴んだ。
更に、掴むと同時にその身体を塔の壁面に叩き付ける。

何度も、何度も、何度も。
剛力でアグルを叩き付ける度に、壁面はヒビが、亀裂が、そして、陥没。

それは外壁のみならず内壁にまで達し、遂には大穴が空き、そこへアグルを投げ入れた。

「力強さ、速さ、そして体捌き。
並みの強者程度は瞬殺出来るだろうな。」

アグルを投げ入れた先、数々の朽ちた武器が床一面に突き刺さるフロアへ足を踏み入れ、ユーリは静かに口を開いた。

「だが、まだ届かないな。
俺に敗れた後、修行を積み、場数を踏んだのだろうが……その動き、シンライジ家特有の体捌きは俺に通じない。

大方、イオリに稽古を着けてもらったのだろう?
独特のリズム、体捌きは初見ではまず見切れないが、同郷の俺には見慣れたモノだ。」

そして、使い物にならなくなった刃物を床に突き刺し、続ける。

「稽古でイオリから一本取れた事はあるか?
因みに俺は幼少時代から一度も、イオリに負けた事はない。

愛する妻と自身の子の為に里を捨て様としたアイツを半殺しにし、連れ帰った時は流石に俺も深手を負ったがな。
アレからイオリは更なる強さを手にしたが、それは俺も同じ。

貴様がイオリよりも強いのなら、勝機は見えるだろう。
だが、それ以下ならば……」

見立てでは、今のアグルの実力は少なくとも自分が知るメイヤ以上。
このまま爆発的な成長を続けたならば、イオリを超えるだろう。

しかし、復讐の刃は鋭いが、薄く、脆い。
刃を研げば研ぐ程に、鋭く脆くなるのだ。

「お喋りが過ぎたな。
……こい、その槍を貴様の墓標として、この地に突き刺してやろう。」

先の戦いで破損した頬面を剥ぎ取り、捨てると同時にユーリは居合いの型を取る。
そして、その黒瞳に燐光を宿し、アグルの一手を待ち構えた。

672サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/28(月) 19:47:03
【闇の巣】

メイヤの言葉を聞くや、サンディはふと表情を変える。
唇を尖らし、じとっとした視線を向ける。

「またメイヤはそういうこと言うし…。そんなにあたしって頼りないかなぁ?」

何やら不満そうな物言いだ。
かと思えば、今度は人差し指を相手の鼻先に突き付けた。

「て言うか、むしろそれはこっちの台詞!
メイヤの方こそ疲れてるんでしょ?休んでてもいーよ!」

護られてばかりはいられない。
今度は自分がメイヤを護る番だと、サンディは意気込みながら言った。

673アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/11/28(月) 19:48:57
【黄昏の塔】

「っ…ッ」

翼で身を庇うも、ダメージ全てを防ぐことは出来ない。アグルは血反吐を吐き出しながらも痛む身体を叱咤し、起き上がる。
創傷に内臓の損傷、骨も何本かいっている。
だが、今動ければそれでいい。後のことは初めから考えていない。

(あのイオリに一度も負けたことがないだって?…化け物か)

アグルは眼前の相手を睨み、槍を構える。手が小刻みに震えた。

…いつも思う。
なぜここに残されたのが兄ではなく、自分だったのかと。

幼い頃はよく幻聴が聞こえた。
何でお前なんだ、と。俺だってもっと生きたかったのに、と兄の苛む声が耳元で恨めしく囁いた。

その後、彼が生きていてユーリに殺されたという真実を知ってからも、幻聴は止まなかった。
"復讐しろ、復讐しろ、復讐しろ。"今度はその言葉だけが頭の中を支配した。

頭がおかしくなりそうだった。いや実際狂っているのだろう。
だって自分は今笑っている。憎しみの対象を前にして嬉しくて堪らない。

「やっとあの声から開放される…。やっとあいつに許して貰える…」

…やっと安心して死ねる…。

もはや予備動作もなく、アグルは驚異的なスピードでユーリに襲いかかった。

刺し違える気だろう。
聖槍ゲイ・ボルグ。この槍に関する逸話は多々あれど、当たれば一撃必殺を誇る巨大な槍を得物に、彼は真っ正面から勝負を仕掛けた。

674ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/11/28(月) 22:59:14
【やっと画像見れた……!!イスラさんまた画力上がってますやん……!!
絵柄も変えてるし!!

そしてやっと皆のCV聴けた!
ジルセナ、アグルシデンがめっちゃはまり役だと思った(笑)
イラストだけじゃなく声もあると場面想像するのがより一層楽しくなるなぁ……

っと、ユーリキール後メイヤは聞き慣れてたからすぐ決まったんだけど、リマに受けたようて良かったww】

675リト ◆wxoyo3TVQU:2016/11/28(月) 23:04:15
【冥界】

長年広げてきた溝は予想以上に深く、この短時間で埋められる筈もない。
ダメ元で話を持ちかけたところ、意外にもリトはそれを受け入れた。腰掛けたヨハンの横で大人しく彼の言葉を待っている。しかし膝を抱えながら座るその姿は完全にヨハンを警戒しているもので、何気なく彼の方へ手を伸ばしたらビクリと体を震わせた。

「・・・」

殴られると思ったのだろう。無理もない。ヨハンのその手は今までリトを傷つける事しかしてこなかった。撫でてやることも、抱きしめてやることもしてこなかった。彼にとって恐怖の対象でしかないのだ。

「弁解はしない」

言い訳などする資格などないことは分かっている。実は愛していたなどと言って、誰が信じるだろうか。彼に嫌われようと選択したのは、彼を痛めつける事だった。彼を傷つけてきたのは紛れもない事実なのだ。自分の甲斐性のなさを幼い我が子に押し付けた。

「此処の奴らから何を聞いたかは知らないが、俺がお前にとって悪であることに変わりない。一族の存続と比べたらお前一人の命で片が付くのであれば安いものだと、ずっと思っていた。」

ヨハンにとって一族は何よりも優先すべき大事なものであった。愛しい家族よりも。

676リト ◆wxoyo3TVQU:2016/11/28(月) 23:04:55
「一族を見返してやるのが夢だった。」

ヨハンは続ける。

「俺の母はまだ少女であった時に俺を身篭った。相手は知らない。教えようとしなかったらしい。祖父母は世間にバレることを恐れ、俺が生まれる前に母を無理矢理嫁がせた。秘密を口外しない条件で、かなり年の離れた男に娘をやった。同じポセイドンの血筋ではあるが、最下層の家系だった。」

姑にあたる女は傷物の娘を嫁に貰ったとヨハンの母を冷遇した。夫に当たる男は、母がいつまでたっても心を開かないことに腹立っていた。勿論血の繋がりのないヨハンには無関心だった。やはり自分の子は欲しいのか、母に無理矢理相手をさせていたが、不思議と子宝には恵まれなかった。

「出世など出来ようもない家系だ。加え、俺達母子を見る世間の目は冷たかった。いくら秘密にしても完全には防げない。何かあると、勘づかれていたのだろう。」

そして、幼心に対抗心が生まれた。自分達を嘲笑う奴らを見返してやりたかった。母が自分を生んだのは決して不運なことではない、自分が母の誇りになりたかった。

「無我夢中で生きた。誰よりも優秀であろうとした。そして手に入れた、今の地位を。」

嘲笑ってきた奴らが自分に平伏し機嫌をとろうとする。爽快だった。復讐を成し遂げた。しかし、同時に大切なものを見失ってしまったのだ。

「・・・あんたが奥様と結婚したのは、その名誉の為?」

自分の母親を"母"と呼ぶことが出来ないのは、間違いなく自分達がリトを拒絶してきた結果だろう。
それでもヨハンがミレリアを利用したのではないかと危惧するのは、どんなに拒絶されようと、虐げられようと、母親への情があるという証拠だ。安心した。自分とは無理でも、ミレリアとの仲はこれからでも修復できる余地がある。

「お前は優しい子に育った。」

自然とヨハンの口元に笑みが浮かぶ。

「俺もミレリアも、召使の者ですらお前を蔑ろにしてきた。しかしお前が歪むことなくまともに育ったのは・・・ナディアやヨノのお陰か。」

はじめはリトとの接触は一切禁じようとしていた。リトは生まれながらにして遅からず命を落とす運命であったから、彼に情を抱けば失った後に娘達が傷つく。しかし、今となっては二人が周りの目を盗んで弟に会いに行くのを見逃していて良かったと思える。両親が与えてやれてやれなかった分、娘達がリトに愛情を向けてくれた。あの子達が自分に似なくて良かったと思う。

「たしかに、地位を求めてミレリアに近付いた。しかし、いつしか俺は彼女に心奪われていた。」

ミレリアはとても眩しくて温かい太陽のようだった。彼女と居ると心が休まった。とても愛しかった。気付けば地位とは関係なく彼女を欲する自分がいた。

677リト ◆wxoyo3TVQU:2016/11/28(月) 23:12:27
「そう・・・」

素っ気なく答えるリトへ目を向け、ヨハンは続ける。

「リト・・・。俺にこんなことを言う資格がないことは分かっているが、言わせてほしい。お前は生きろ。お前は必要のない存在なんかではない。お前を否定し闇の器のみを欲したのは俺だけだ。お前の母は、"お前自身"を望んでいた。」

そしてナディアも、ヨノも、"リト"を求めている。アブセルは言わずもがな。ヨハンが示すことの出来なかった感情を、他の者達は際限なくリトに向けている。そのことに気付いてほしい。

「だが俺には一族を放棄しお前を選ぶ勇気が無かった。そしていずれ失う存在ならば、情を抱くだけ無駄だと思っていた。いずれ消える運命ならば、生の喜びを与えるのは酷だと勝手に思い込んでいた。」

それでも守りたかった。・・・守りきれなかったが。
そんなヨハンの言葉をリトは静かに聞いていた。そして不器用ながらも謝罪の言葉を受け、閉ざしたままであった重い口を開いた。

「俺は・・・あんたのことが大嫌いだ。」

その言葉はこの状況で発して良いものかいささか疑問ではあったが、それでも言うべきだと思った。
この場にいる理由・・・リトが生きる意味を見つけられないように、ヨハンもまた、死を受け入れる事を阻んでいる何かがあるのだろう。そして彼の行動から、それが自分なのだと察しがついた。しかし彼は、リトに赦しを乞うているわけでもない。

「きっとこれから先も、あんたを赦すことは出来ないよ。でも、あんたがそうするしかなかった事は、理解出来る気がする。もし今同じ状況で選択を迫られたら、多分俺は自らあの穴に飛び込んだとと思う。クソみたいな一族だけど、見捨てることは出来ない。それに、その一族の中には姉様達もいるから。」

一族を見捨てれば大切な人達までも巻き込まれてしまう。守りたかった気持ちは分かる。

678リト ◆wxoyo3TVQU:2016/11/28(月) 23:12:58



「だから・・・俺は大丈夫。ちゃんと帰るよ。俺を殺したあんたが俺を生かすために必死になってるとか意味分からなすぎて正直笑えるけど、気持ちは分かったから。」

アンヘルから聞いた。ヨハンの未練はリトを傷つけてきたこと、親としてリトと向き合ってこなかったこと、そして、

「と言うか俺が未練とか気持ち悪すぎるからさっさと逝ってくれない?」

愛しているのに、愛せなかったこと。

最後は些か投げやりになったが、そんなリトの言葉を受けたヨハンはフッと笑みを浮かべた。

「可愛げのないところは俺にそっくりだな。」

途端、突如として視界が揺らいだ。
それが何であるかを理解するよりも早く、二人のいた風景が変わる。
そして、新たに視界に入ったその場所には見覚えがあった。初めてこの世界に訪れた際に通された、裁きの間だ。
しかし先程とは様子が違う。あの時はなかった二つの大きな門が目の前に立っている。

そして、その門の前で佇む男・・・ルイは二人へ向かい声をかけた。

「時間だ。」

679リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/11/29(火) 00:17:53
イスラ>>658
ダーリンどんだけいるんだwww

否定してwww1番危険なのが1番近くにいるとかwww
ジュノスが甘やかすから←

うーん、でもやっぱ自分はハルカが好きになれない←
いや、騙されてはいけません!セシル、あの子はやばいですwww5話の天草がぶっ飛びすぎてまともに見えただけですwwwあ、でもカミュと並べてもまともに見えるから・・・実際はまともなのかも?← 因みに片言なのは彼が外国人だからです(笑)そしてガチの王子様です(笑) てかOPのセシルにキュンと来たからハルカはセシルの嫁にあげてもいいかなって思ってます←
セシルの声が鳥海さんだってこと、よく忘れるんですよねー←
藍ちゃんはラファエルかな←
声優さんたちでライブやっちゃってますしね←

マジダムレボリューションwwwダムは純粋で真っ直ぐすぎて視聴者にとってはイジリ甲斐のある子ですからね←

なんか、レンの歌のイントロでジャスコで流れる曲っぽいのがあるからだそうです←
で、カルナイの弟組がシンデレラなのは二人のデュエット曲のコンセプトがシンデレラの王子様だからです← 因みに自分はこの曲で藍ちゃんに堕ちました←←
そしてレイジが唐揚げなのは彼が弁当屋の息子だからです←寿弁当の自慢のメニューが唐揚げ弁当なんです←

え、ハマってませんよー( ̄▽ ̄;)セーフセーフ←
他のやつは許せませんが、藍ちゃんなら全てが許せます← しかも藍ちゃん髪下ろすと見た目幼くなるんですよー(*´﹃`*)
つかショタと言えば、シエルが最近よく分からない方向に行ってて大丈夫かなって思ってます(笑)

ナディアって何だかんだリトのこと可愛くて仕方ない感じですからね。多分リトが死んだら壊れると思います←

自分だったらいくら暇でも途中で飽きます(笑)きっとEDを見たのは筋金入りの腐女子さんでしょう←

話に関係なさすぎるくせに長いから申し訳ないのですが( ̄▽ ̄;)
フロンの登場タイミング了解です( ・ㅂ・)و ̑̑ 激おこwww

680リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/11/29(火) 00:23:35
>>669

イスラ>>
マジすか!クリスマスは・・・女の子キャラ達のサンタガールとか、トナカイに扮したアブセルがサンタなリトセナに踏み潰されて昇天してるイラストとか・・・!!←ただ自分のキャラ描いてほしいだけ

アブセルなら目玉焼きぶら下げててもおかしくないかもしれない←

梶さん真面目キャラだとイケメンなのかーまだ会ったことないです残念・・・

自分の中でナディアって普段はガサツで男前な子なので、セクシーボイスって言うよりは少年みたいな声のイメージなんですよね(´ω`)FFのライトニングみたいな。
それにきっと真綾さんはセクシーボイスも出せますよ!←

そしてうたプリを見てるせいか、沢城みゆきサンはおっとりした声のイメージが強くて( • ̀ω•́ )✧勿論ムチャクチャセクシーな声も知ってますが(笑)
あれ?となるとリトリマが会話したら間接的に藍ちゃんとハルカが会話してることになる?リトがリマ好きになったら藍ちゃんがハルカ好きみたいになる?うわ、それは赦せぬ( ・᷄ὢ・᷅ )

わーいイスラ達の声優だぁ!つか保志さんwww溢れる主人公感www似合いすぎるwww
そしてアブセルの声優さんがピッタリすぎてヤバイ(O▽O`)だよねーって思いましたwww

ヤツキ>>
わざわざ皆の探して聞いたのwww凄くねwww
好きな声優さんも多い( • ̀ω•́ )✧つか皆声優詳しいなー(*ˊૢᵕˋૢ*)自分最近アニメとか見ないから近頃有名になってきた声優とか全然分からない( ̄▽ ̄;)

681メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/12/01(木) 10:00:21
【闇の巣】

「いや、そう言う訳じゃないんだ……」

ただ、傷付くサンディを見たくない、君を死地に連れて行くわけには行かないんだ。
と、続ける事は叶わず。

唇を尖らせるサンディが此方へ突き付ける指を優しく手で包み、メイヤはその手を下ろす。

「寧ろ病み上がりどころか死に上がりのサンディの方が……ってね。」

そして、彼女へ向けていた笑みを戻し、続けた。

「バルクウェイでは交わる事のなかった俺の闇の翼と、サンディの虹の翼。
今の俺の翼は闇じゃない、なら。

一緒に行こう。
塔ではアグルとイスラも戦ってる筈だ。」

ーーーーー

【バルクウェイ】

物資の積み込み、戦力の統合、再配置。
その全ての総指揮を今、レオールは採っている。

イスラ達がバルクウェイを発ってからのバルクウェイは更なる喧騒に包まれていた。
そんな中、多忙を極めつつもレオールはイスラ達の身を案じていた。

「死地に兵を、友を、ましてや師団員以外の人間を向かわせるのは慣れないモノだな。」

一大戦力となった空挺師団の旗艦、その一室でレオールはふと、息を吐く。

「闇の巣……事前に向かった偵察隊からの情報によれば傭兵団、七つの大罪の内一人が潜伏中。
その先の塔には元シンライジ家の暗殺者と、その彼が守る女性。

私達師団の者を向かわせたとしても、攻略は難しい所です。」

その隣、参謀長のバッハが茶を入れながらレオールの心中を代弁した。

「あの傭兵団には俺達もさんざ苦汁を味あわされたな。
団長のグレゴリオは竜族の血を引き、その右腕のヴァンは狼男。

闇を操るシンライジ出の兄弟と、念能力者の姉妹。
そして強大な吸血鬼、全員がウチの幹部レベル。

イスラ達が負けるとは思わないが……問題は、ユーリの方だ。」

「シンライジ分家の出でありながらも当主の影武者、そして当主おも凌ぐ実力者、ですか。」

「あぁ、俺は対峙した事がないがあのヴィカルトと互角以上に渡り合ったと聴く。」

師団を裏切り、黄龍に着いたとされるヴィカルト。
彼はレオールを持ってしても制御が利きにくい凶戦士であり、マルトやバッハと同じ幹部だがその実力は頭2つ以上抜けていた。

「マルトが同系統の能力者であるレックスへ色々と教えこんだ様に、俺もアグルへ技の一つでも……それこそ奥義を伝授出来れば良かったんだがな。」

今頃、闇の巣と黄昏の塔では激戦が繰り広げられているだろう。
かの地で待ち受ける敵の存在を考えれば考える程に、自分達が向かえば……いや、せめて幹部の誰か一人でも同行させておけば、との考えが頭を過ぎる。

「電子制御による脳神経の活性化及び神経加速と、一時的なシナプス構成から繋がる、擬似的な未来予測。
その先の光子制御までとは言わないが……」

「神経系を珪素系物質に置き換え、文字通り光速の反射と思考、そして動きを会得したヴィカルトと同じソレは、一夜漬けでどうにかなるものではありませんよ。
才能が無い訳でなく、寧ろ強さに貪欲だったアグルならばいつかは体得出来るでしょう、貴方の奥義をも。」

ただ、そのいつかはユーリとの戦いの最中であるとは言えないですが。
と、バッハは続く言葉を飲み込んだ。

「それよりも、今は遺跡で遭遇したあの敵、ラセツと名乗る者や虚空城攻略の作戦を練らなければなりません。」

イスラ達を案ずるのはわかる、しかし今は自分達がやるべき事に向き合わなければならない。
バッハの声にレオールは頷き、手の中にある戦略図に目を向けた。

682ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/12/01(木) 14:11:01
【黄昏の塔】

居合いの型を取り、手にする柄の感触。
触れた途端に感情が、思考が黒く染まっていくのが解る。

ユーリが手にする刀、それはシンライジ家に代々伝わる儀礼用の刀。
次期当主が当主の成る為の儀式、最愛の者の命を奪う時に使われてきた一本の刀。

刀身も、柄も、鍔や鞘でさえも血と怨念と憎悪で漆黒に染まるそれは、手にする者のドス黒い感情を焚き付けるのだ。
そして、代々伝わる怨念を力とし、切れ味を増す。

(この刀を手にする度に、思い出す。
あの夜の事を、イオリが里を捨て様としたあの時を。)

ーーーーー

あまりにも静かな夜だった。
水面に映る月すら揺れる事の無い、夜だ。
だからこそユーリは気付いた。
そして、気付いた時には既に遅かった。

護衛全てが仕えていた次期当主に殺害され、彼等が守るべき次期当主……イオリとその妻、身重の朱莉の姿が無い事に。
その後すぐ、追っ手として自分はイオリと朱莉を追いかけ、多数の犠牲を出しながらも二人を極北の氷海へ追い詰めた。

イオリは言った、愛する者の命を奪い、得る当主の座など要らないと。
血塗れの手でも、掴みたい未来があると。
そして、最終的には増援として送られた一族の実力者の八割を叩き潰しながらも瀕死となったイオリを庇い、身重の妻は自ら極寒の海に身を投じた。

次期当主の最愛の者、自分が死ぬ事によってイオリが当主となる条件を強引に満たし、彼の命を守ったのだ。

ーーーーー

あの時もそれからも、イオリはこの刀を手にする事はなかった。
そして何の因果か、その刀は今ここにある。
任務中に偶然出会った、自らを闇の残滓と呼ぶ女性を守る為に。
かつてイオリが欲しがった、血塗れの手でも掴みたい未来の為に、里を抜けた自分が所持するとは。

世界中の闇を一点に集めた闇の巣に、天をも貫く巨塔を建て、その頂で彼女が何を想い、何を成すのか。
ステラ、恒星の名を授けた彼女は何も話さない。
だが、ユーリ自身が何を聞くこともなかった。
血溜まりに沈み動けなかった自分へ手を伸ばしてくれた、それだけで自分は救われたのだ。

愛する者の命を奪い続けてきた刀で、愛する者を守る。
血と怨念が繋ぐシンライジ家の歴史はもうすぐ閉幕するだろう。
妻、朱莉の死から続く、闇を使役する計画も。
それら全てを知り、抱え、それでも飛ぼうとするイオリ。

そのきっかけを、終わりの始まりを封切った自分の命ももうすぐ尽きよう。
だが、命尽きるまで。
自分はあの光を、誰もが望む暖かな光を守り続けよう。

ーーーーー

683ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/12/01(木) 14:15:25

ーーーーー

予備動作は遥か後方へ置き去りに。
自分の命を犠牲にする事に迷いも後悔も無い一手。
それは今までの攻撃のどれよりも速く、鋭い。
アグル放つ捨て身の一撃、聖槍が左胸を中心にユーリの身体を貫き通し、雷が全身の血液を沸騰させ、抜けていく。

それと同時にユーリもまた、一族に伝わる必殺の一刀、居合い、神斬りを放った。
交差は一瞬。
ユーリの抜き放つ刀は真っ二つに砕け、左半身が大きく吹き飛ぶ。
瞬間的に溢れる血も焼き焦げ、異臭と共に滲み落ちた。

だが、確かなる感触はあった。
後方へ抜けたアグルの様子は分からないが、手応えはあった。
崩れ落ちそうになる身体を復腕で支え、ユーリは背後を振り返る。

「捨て身の一撃、悪くはなかったぞ。
だが……復讐の刃は、過去を斬り捨てる事が出来ても……未来へ続く道を切り開く事は出来ない。」

振り返るユーリの身体、吹き飛んだ左半身の傷から焦げた血が、闇となって溢れ出す。
溢れ出す闇は蜘蛛の型をモチーフとした魔装ごとユーリを侵食し、その姿が大きく変わる。

闇の子供達計画。
その被験者は唯一の成功例となったメイヤ以外全て、シンライジ分家の者。
勿論と分家の出であるユーリも漏れなく計画の被験者であり、アグルの一撃げ吹き飛んだ左胸にはリミッターが設けられていた。

クウラとその兄は鴉と百足、メイヤは黒狗、そしてユーリが闇を纏い変えたその姿は。
ーーーーー漆黒の狼。

所々に魔装の名残である装甲を残しながらも、狼は悠然と、どこか優雅な立ち振る舞いで、黄金の瞳をアグルへ向けた。

684イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/03(土) 09:59:56
ヤツキ>お、見れましたか良かった(^∇^)!お手数かけて申し訳ない;
絵柄はその時の気分と、その時好きな絵師さんの影響と、試行錯誤の結果でコロコロ変わりますが気にしないでください(笑)

声の効果でユーリとレックスがより一層好きになった(笑)
石川さんはキャラによって声の雰囲気めっちゃ変わるけど、取り合えずアグルは残響のテロルってアニメのナイン辺りの声のイメージです^^

あとシデンのレスは考えてるんですが、取り合えずアグルとユーリの戦闘が終わってから書き込もうと思います。ちょっと同時に進行すると、ごちゃごちゃになっちゃうかもしれないので…


リマ>
ダーリンは多分結構いると思います(笑)

え、ヤバイの?w
王子様って…マジもんのプリンスじゃないですか(;´д`)でもやっぱセシルは見た目あんま好きじゃないから、二番はナギにしとこう←
てか嫁に上げてもいい発言は一体どういった意味が含まれているのか…(笑)名誉なことなのか、それともただの厄介払いかw
自分も初めセシルの声優さん誰だか分からなかったですw
最近の声優は歌も歌えなきゃだから大変ですよね

なるほど、納得ww
てかレイジが弁当屋の息子なのが平凡で何か意外でした

どこまでがセーフでどこからがアウトなのか(笑)
そして相変わらずの藍ちゃん贔屓ww
てかシエルどうかしたんですか?

マジか、じゃあ今のナディアは結構参ってる状態なんじゃ…

いやいや読むの楽しいのでどんどんやっちゃって下さい!(^∇^)

サンタガールは描けそうな気がする…!てか今更ですがユニの瞳の色って何色でしたっけ?
あとアブセルのアヘ顔は誰も喜ばないので描きません(笑)
そう言えばリマさんはイラスト描かないんですか…?⬅

いやおかしいでしょ!ww目玉焼き引っ付けてるとかどんだけうっかりさんなのww

梶さんはワンパンマンのソニックとか格好良かった気がする

確かにそう言われれば真綾さんもぴったりな感じがします!⬅単純
キャラによって声が全然違うから凄いですよね^^
あ!あとノワールCV田村ゆかりさんとか個人的に凄くおいしい⬅
てか何故そんな思考に…(笑)そんなに春ちゃん嫌いなのん?ww

イスラの声はパッと思いつかなかったんですよね;なので好きな声優の保志さんにしました(笑)自分的にはこれじゃない感が結構あったけど合ってるなら良かったです^^
アブセルはもう直ぐ決まりましたねw

685ヴェント ◆wxoyo3TVQU:2016/12/05(月) 00:03:34
>>659【森】

DDの言葉を耳にしながら、マゼンダは「こいつがいつ微笑んだと言うんだ」と呆れ顔を浮かべる。
ヴェントは色々な事に無関心と言うか、驚く程に己の表情を変えない。彼から感情が見受けられるのはそれこそノワールが絡んだ時くらいなのだ。DDが本当に笑顔を見たことがあるのなら相当貴重だ。プレミアものかもしれないなどと、マゼンダはその場にそぐわない事をふと考える。

一方、話の要約を把握したヴェントは勝手に盛り上がるDDは受け流しつつ、と言うより眼中にない様子でマゼンダへ視線を戻す。この場にいる者の中でマゼンダかフィアのどちらかと話を通すのが早いと見越したようだ。

「ノワールは・・・」

やはり、とマゼンダは思う。
ヴェントは十字界の存続よりも、自分達の身の安全よりも、優先し気にかけるのはノワールのことだ。

「あの子は大丈夫だろ。あの坊やもいるし、ルドラも近くにいるだろうさ。」

それに、相手もいきなり世界線の違うノワールを狙ったりはしないだろう。まずは同じ世界に固まっている長老を狙うと考えるのが妥当だ。

マゼンダの言葉を受けヴェントはふと考える仕草をした。そして、


・・・分かった。俺は何をすればいい?」

意外にも早くヴェントは協力の意思を見せた。

686リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/11(日) 23:53:51
【ポセイドン邸】

ユニとの仲を勘違いしたリマへ必死に弁明するアブセルを見て、ユニはある事に気づいた。

「アブセルさん、リマ様の事が大好きですね!?」

そしてまるでクイズの正解を思いついた時のように、嬉しそうにはしゃぎながら宣言する。

「ありがとう、リマもアブくんのこと大好きだよー」

アブセルにとってはとんでもない暴露であるが、当のリマは"好き"のベクトルを別のもので解釈したようだ。ニコニコと笑いながら言葉を返す。

「セィちゃんなら大丈夫じゃないかな?いつも行き倒れることはあっても迷子になったりはしないから。」

そして、さらりと穏やかでない発言をしながら「なんか男の子って方向感覚鋭いよね。不思議」などとのんびり考えを巡らせている。

「あ、そろそろお葬式始まるみたいだよ。二人も用意出来てるなら一緒に行こ?」

-------

一族の実権を担っていた者の葬儀は壮大ながらもしめやかに執り行われた。
飛散した分家の者達も集まっているため参列者はかなりの数であるが、喪主を務めるナディアはその数をものともせずにきびきびと仕切る。自分に長は務まらない、と言うのが彼女の口癖であるが、その様は流石としか言いようがなかった。
しかし、

「どうして奴がいる?」
「一応、アレもヨハン様の子供だ。参列しない方がおかしい。」
「忌み子の呪いは本当だったのね。こんなに早く亡くなられて・・・」
「誰だ、あの悪魔を野に放った奴は。結界の中で封じて置く決まりだったろ。」
「ご遺体は酷い姿だったそうなの。もしかして、あの子が殺したんじゃ・・・」

葬儀の最中であるにも関わらず、参列者の関心は全て"リト"に向いていた。
小声で口々に毒を吐きながら、リトに扮したセナを奇異の目で見る。

リトへの悪口に耐えきれず口出そうとユニは身を乗り出すが、それをリマが止める。しかし、そんなリマも必死に今の状況を耐えているようで、ユニの腕を掴んだ手が震えていた。

「本当、人間って単純で馬鹿で扱いやすいよね。」

木を隠すにな森の中、とはよく言ったものだ。
葬儀の参列者の中に上手いこと紛れながら、ジルは悪意に包まれた現状を傍観し楽しげに笑う。
人は過半数の意見に賛同する節がある。自分が他人と違う意見である事を恐れ思っていることを中々口に出さないが、同じ意見の者が多いと知れば途端に気が大きくなり発言し始める。
ジルはそれを利用した。
ポセイドンの一族が闇の末裔を快く思っていない事は知っていた。故に、其処を軽くつついたのだ。
「死者の血筋と言えど、一族に災いをもたらし得るリトを人の目に触れさせるべきではない」・・・手始めに近くにいた者を煽ったところ、皆口々にリトへと毒を吐き出した。ジルの思惑通りに事が進む。

今回ジルの受けた命はユニの捕獲。しかし、目的の少女は今敵の巣穴にいるため歩が悪い。特にポセイドン二人や闇の王子と対峙するのは面倒だ。何とかして彼女1人を誘き出したい。だから、ちょっと細工しておいた。

687リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/11(日) 23:54:29

(そろそろかな・・・)

そして葬儀が献花に差し掛かった時、事は起こった。

「何故お前が長に並ぶんだ!」

棺の元へナディアと共にセナが立った際、一人の男が怒鳴り出した。

「忌み子め!ポセイドンに飼われた畜生のくせに!何の資格があって其処に立つんだ!消えろ!」

力任せに投げつけた物がセナの額に当たる。

「お前ら、騙されるんじゃないぞ!ヨハン様を殺しただけじゃない!今世の中に闇が蔓延して物騒な事が起きてるのもコイツが発端だって話じゃないか!殺せ!コイツが生きてる限り災いが続くぞ!」

その言葉を引き金にして周りがざわつき始める。そして、とうとう全ての敵意がセナに向いた。

「お前のせいだ!」
「殺せ!」
「消えちまえ!」

「セィちゃん・・・!」

セナを守ろうとリマが駆け寄るが、襲い掛かった男の拳が彼女に当たりそうになったのをセナが庇う。そのせいで防御の態勢が取れぬまま各々から暴力を受ける形となった。
ナディアが止めようとしても収まらない。葬儀が一変して地獄絵図と化した。

「・・・!」

そしてジルの思い通りユニがその場から離れる。彼女が斎場を後にするのを見て、ジルは口元に笑みを浮かべる。

「ゲーム開始。」

688リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/12/12(月) 12:22:29
イスラ>>
蒼井翔太にendlesssongと言う歌が最近発売されたのですが、心にクリーンヒットしたのでリトのイメージソングにしました←いきなり何だ
歌詞とか全然リトに関係ないけど曲調がリトに合ってる気がするのです(∩´ω`∩)

ダーリン沢山とかwwwその中でもお気に入りとかあるんですか(笑)?

うたプリのキャラって基本ヤバイですからね←
マジモンのプリンスですよー(笑)でも実は日本のハーフで音也の弟と言う意味の分からない設定←たしかにセシルは見た目普通ですよね(´-ω-`)たしかに、ナギは意外と常識人でしたね(笑)まぁ世界一そして宇宙一ミラクル可愛いのはナギでなく藍ちゃんですが←

厄介払いも若干含まれていますが皆ハルカを欲しがっているので名誉な事だと思います。
最近の声優さんってアイドル紛いになっちゃって、ちょっと寂しい気もします( •́ .̫ •̀ )

レイジはうたプリの中で一番平凡な家庭の出だと思います(笑)
顔だけは良いので小さい頃に子役で大ヒット→挫折→アイドル目指す→才能なしの三流アイドルだけど頑張る→才能ありの親友の失踪。再び挫折→カルナイ抜擢→新しい仲間と一緒に頂点目指す
って感じで人生波乱万丈ではあるのですが←
てかカルナイって誰にも負けない王者気取ってるけど、実際蓋を開けると欠陥だらけのメンバーなんですよね。レイジなんて後輩に対しては余裕アリアリのカリスマ演じてるけど実際は自分に自信ない病みキャラだし。まぁだからこそカルナイは尊いのですが←

本人がセーフと言えばセーフなのです←
藍ちゃんとシエルは何処までも贔屓です( • ̀ω•́ )✧
シエルねぇ、今アイドルのプロデューサーしてるんです。俺様キャラとか弟キャラとかその人物の見た目にあったキャラ付けして爆発的な大ヒット←

ナディアはきっと、今ちょっと押したらへし折れると思います←

マジですか、そしたら頑張ります!

ユニの目は金色です|ू・ω・ )
えー面白いのに←
自分最近全然描いてないですねー、ネタが思いつかなくて。つか長い間描いてないからもはや描けるかも分からない←

アブセルならありえる。きっと朝食途中でリトの姿でも見つけたんですよ←

アンパンマンかと思ったwww探して見ます!

その体で行けば水樹奈々も合ってるかもですが、真綾さんが好きなので(笑)
美味しいんだwwwノワールはキャラ作った当初から田村ゆかり感あったんですよねー←何

嫌いですね(´-ω-`)

保志さんは主人公の代名詞ですからね←
アブセルはまり役過ぎますね(笑)なんかジュダルと白龍ちゃん思い出しちゃった(笑)

689アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/14(水) 19:56:26
【黄昏の塔】

手応えはあった。だが…。

「く…そ…」

やられた傷も相当なものだった。
アグルは堪らずその場に膝をつき血溜まりの上に崩折れる。

(まだ…だ…。まだ、終わってない…。動け…)

目の前の転がる槍を掴もうと懸命に腕を伸ばす。しかしそれを握る力も、起き上がる力ももう残ってはいなかった。

「…………」

小さくなる心音。次第に意識が遠のき、身体の感覚もなくなっていく。
暗く、濁りゆく瞳に映るは、圧倒的な存在感を放つ仇敵の姿。その冷たく光る金色の双眸を目に焼きつけ…アグルは事切れた。


…筈だった。
そう、彼の心臓は確かに止まった。しかしその僅か数十秒後、アグルは突如弾かれた様に飛び起き、出し抜けにユーリに不意の一撃を食らわせた。

「まったく…よくもまあ俺の可愛い弟をこんなに痛めつけてくれたもんだよね」

一時的な組織の活性化と急速に行われる細胞分裂によって傷を癒やし、止まった心臓を自らの雷の力で刺激して彼は再び息を吹き替えした。

「ま、今度はそう簡単には負けないよ。なんせ次は俺達兄弟二人が相手だから。…覚悟はいい?オジサン」

一旦距離を取るべく後方に飛び退き、彼は笑みを見せる。それは先程までの狂気じみたものとは違う、どこか清々しさを感じさせるものだった。



…………

(レグナ…!?どうして…!)

これも己自身が作り出した幻想だろうか。自己という意識の中にもう一つ別の存在…兄の姿があった。
同じ顔、けれど彼の持つ雰囲気は自分とは全然違う。レグナはあっけらかんとした口調で声を上げた。

「うっわぁ〜、久しぶりだなあアグル!
お前大きくなったなぁ!」

(いや、そう言うのいいから…。俺は何でお前が俺の中にいるのか聞いてるんだけど)

「は?いやいや、昔お前が言ったんじゃないか、俺達は同一の存在だって。俺はアグルでもあり、レグナでもある。だろ?」

(誤魔化すなよ!
こっちは真面目に聞いてるんだ!)

アグルの剣幕にレグナは、そんな怒んなくても良いじゃん…と、苦笑いを浮かべる。そしてふと腕を伸ばすと彼の持つ槍を指差した。

「その槍、死ぬ直前まで俺が使ってたんだ。で、いよいよ最期だって時に、俺の持つ力の全てをそこに流し込んでおいた。
つまり今はその槍を媒介にしてお前と俺の力が融合している状態…で良いのかな?多分。正直俺もよく分からない」

いくら四神の力を受け継いでいるとは言っても、そんな嘘みたいなことが可能なのだろうか。
別の疑問を投げかけようとした時、先読みでもしたかの様にレグナが先に口を開いた。

「俺がお前の為に残せるものなんて、これぐらいしかなかったからさ。
ま、だからってまたお前と話をすることが出来るなんて想像もしてなかったけど。本当…こういうのを奇跡って言うんだろうな」

690アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/14(水) 20:00:03

軽い口調で語るレグナとは違い、アグルは気に食わないことでもあるのか、ずっと眉間に皺を寄せている。

(知ってたのか…?)

「ん…?」

(俺が生きてたこと…)

「ああ…うん、知ってた」

…やっぱり。
アグルは拳を握りしめた。感情を必死に抑えているのだろう。握った手が白くなっていた。

(知ってたんなら…、会いに来てくれても良かったじゃないか…。それが無理なら手紙くらい…。せめて一言だけでも、生きてるって報せてくれたら…)

夢に兄の亡霊を見ることもなかっただろう。苛まれ続ける幻聴に悩まされることもなかっただろう。
そんな弟の姿をレグナは黙って見やる。やがてゆっくりと言葉を返した。

「お前には何のしがらみも背負わせたくなかったんだよ。一族の因縁なんかに囚われず、自由に生きて欲しいって親父もお袋も思ってた。
それが…お前をこんなにも苦しめることになるなんて思わなかったんだ。悪かったよ…」

(………)

何を考えているのか、黙りこんでこちらを睨む彼に対し、ため息をつく。

「…取り合えずその話は後。今は目の前の相手を退けることを考えないと。
身体は俺が動かすよ。アグルは支援を宜しくな」

納得はいかないが、その発言は最もだ。アグルは言った。

(…大丈夫?あんた、身体を動かすのも久しぶりなんだろ。それにそれ俺の身体なんだけど)

「そこは問題なし。自分の身体みたいにしっくりくるよ。流石は俺の半身」

…………


かつて兄弟が切り離された時、二人の持つ四神の力も半分に分かれた。
しかし十数年の時が経った今、それは兄の意識と共に一つの完全な形となって再び彼等の元に戻ってきた。

(1秒後、左から斬撃が来る。更にその0.1秒後右から追撃。まともに受けちゃ駄目。逸らして反撃して)

「了解」

アグルは攻撃の来る方向、タイミングなどを的確に伝えて指示を出す。
それに合わせて戦うレグナの動きも鋭く速く、彼の戦闘経験の厚みを感じさせた。

(一撃目はフェイント、二撃目に注意。雷撃を飛ばして相手のコースを誘導して)

冷静に周りを観察できるようになったからか、自分で戦っている時よりも"よく見える"ようになった。
遺跡で戦ったあの女ほどではないが、相手が次にどう動くのかが何となく分かる。

黄金の気を纏うレグナは、ユーリを相手に斬り結んでいった。

691アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/14(水) 20:10:10

リマ>歌聴きました、格好良かったです!リトの雰囲気にもぴったりだし。しかし本当声が高くて凄い…

お気に入り…、ヴェントじゃないですかね?⬅

マジでw
あの二人あまり兄弟感ないけどそうなんですね、片親が違う的な?
まあうたプリの中ではヴィジュアル的に藍ちゃんが一番可愛いってのは納得です(笑)

厄介払いも若干含まれてるんかいww
好きな声優のライブとか行かないんですか?

本当に波乱万丈だwそしてレイジが闇キャラとか予想外過ぎて。あの人が崩れたら瓦解しそうなグループなのに…

本人が言うなら仕方ないですねw
えぇ…、シエルさんその歳で敏腕プロデューサーとか流石ww

ナディアが折れたとこ見てみたいかも…⬅

楽しみにしてます!(^∇^)ヨハンとリトの会話ももう感動的で…!

ありがとうございますイラスト出来ました。ユニとロリじゃないノワールサンタです。
imepic.jp/20161214/721590
セナリトはギャグじゃなくてまた別の形で描きたいです(笑)
そうかー残念です(>_<)

目玉焼きを引っ付けながら慌ててリトを追っかけるアブセルとか怖いww

思いますよね(笑)まあ主人公もアンパンマンみたいな格好してますし、頭ツルツルだし

やっぱ好みで人選しますよねw
あー、なんか分かります

うわ、ばっさりww

個人的には主人公じゃない保志さんの方が好きですけどね(笑)
ジュダルと白龍で思い出しましたが、最近のマギめちゃくちゃ面白くてヤバくないですか?⬅

692アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/20(火) 18:21:07
【ポセイドン邸】

「は……?」

突然のユニの激白。
いきなり過ぎてリアクションも取れない。アブセルは間の抜けた表情でぽかんと口を開けていたが、それに対するリマの「大好きだよ」との言葉を聞くや、みるみる顔を赤くした。

少し前からだろうか、心の奥底に何か引っ掛かるものを感じていた。この気持ちの正体が掴めず、悶々とした気分が続いていたが、ユニの一言をきっかけにパズルのピースが嵌まったかの様な感覚に落ちる。
それはアブセルが自分の気持ちに気づいた瞬間であったが、彼にとっては決して喜ばしいものではなかった。むしろ気づかない方が良かったのかもしれない。

「うわあぁぁあ‼違うんだリト!俺が愛してるのは間違いなくリトだから!これは浮気とかじゃないからァ!」

彼は突如奇声を発し、リトの眠るベッドにすがりつく。
自分にとってリトは特別だ。リト以外にこんな感情を抱いてしまったことが許せない。

激しく気持ちの整理がしたい。しかし時は待ってはくれないようだ。アブセルはまるで歯医者に連れて行かれる前の子供のように、行きたくないと駄々をこねながらリマに引っ張られその場を後にした。


………

693アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/20(火) 18:22:31

葬儀の場は険悪な雰囲気に包まれていた。
参列者のリトに対する言い掛かりの数々は腹立たしいが、アブセルはそれを自制する。

自分の軽薄な行いがリトの立場を更に悪くさせることは、この十年程で嫌と言うほど身に染みていた。
何故そのような無作法者を雇っているのか、使用人の教育がなってないのではないのかと、その責任の全てが別のところに向けられる。
だが、それでもセナに害が及ぶ段階まで来ると、流石に怒りを抑えることが出来なくなった。

アブセルは我を忘れてその場から飛び出した。しかしそれよりも速く祖父が動き、セナに殴り掛かろうとする相手の拳を捉えた。

「申し訳ございません」

そしてそのまま一本背負いの要領で投げ飛ばす。
その後も彼は老体とは思えぬ動きで、あっと言う間に数人の男を地に伏せた。

老人はセナの盾となるかのように彼等との間に立つと、大変な御無礼を致しました。と深々と頭を下げて言った。

「皆様の一族と長を想う気持ちは重々承知しております。ですが、ここは亡きヨハン様をお偲びする席に御座います。
長きに渡り一族をまとめ上げてきた御方の眠りが、どうか安らかなものであるように、最後まで慎ましやかにお見送り頂けないでしょうか」

祖父がセナ…いやリトを庇う姿を初めて見た。しかも貴人達に手を出してまで。
アブセルは信じ難い気持ちでそれを眺めていたが、そんな折ふいに護衛獣の阿形に呼び掛けられた。

(御主人…。あの…少し宜しいでしょうか?)

阿形は童の姿を取るとアブセルの肩の上に乗り、何やら緊張したような硬い声でヒソヒソと話し出した。

(確証がないため報告するべきか迷ったのですが…、先程ほんの一瞬だけ見慣れぬ匂いを感じました)

「見慣れぬ匂い?今日は客が大勢いるからそのせいだろ?」

(いえ、そうではないのです…。場違いな匂いと言った方が正しいかもしれませぬ。何と言うか…人を殺めることを常としている者が持つ特有の…、血の匂いです)

まさか、と耳を疑った。この敷地内に誰にも悟られることなく、殺人鬼が侵入したとでも言うのか。

「今、匂いは?」

(いいえ…今は何も。しかしいつの間にかユニ殿の姿も消えております故…)

そう言えば…。そう思い、辺りを見渡せば本当にユニの姿が見えない。

「一応見て回ってこよう、リトのことも心配だし要心に越したことはない。何もないならそれだけの話だ」

取り合えずこの場は祖父やナディアに任せておけば良いだろう。
アブセルは踵を返し、そっと斎場を抜け出した。

694リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/21(水) 02:08:28
【冥界】

「行き先は決まったのか?」

扉の前に佇むルイへヨハンはまるで他人事のように問いかける。

「お前の望む場所へ。」

返すルイの言葉にヨハンは不敵な笑みを浮かべた。

「地獄だな。」

「お前の罪状は明確だからな。だが・・・」

言いながらルイはしばし腑に落ちないと言った表情を浮かべる。言葉を繋げあぐねているルイに代わり、傍らに控えていた女性が続けた。

「貴方の魂はとても清らかで、重ねてきた罪と相反しているのです。なので、天の王とも相談した結果、特例を設けました。」

それは地の国で幾度の苦痛や試練に耐え抜ぬことが出来たなら、天への帰還を許可すると言うもの。

「病に苦しむ伴侶を不憫に思い手にかけてしまうご老人がいるように、世の中には私欲とは異なる罪を作る者達がいます。貴方もその一人だと、私たちは考えました。」

「だが、罪は罪。犯してきた罪の分だけ償う必要はある。」

「その為の特例・・・と?」

己が犯してきた罪は到底赦されるものでない。行き場所は端から覚悟しており、特例なるものが設けられるなど夢にも思わなかった。

「罪を裁く者が・・・随分とお人好しなんだな。」

結局予想だにしていなかった判定にすぐには反応しきれず毒を吐いてしまった。この性格は死んでも治らないようだ。
しかし、対するルイは嫌味に全く動じない。

「俺の気が変わる前に早く行け。」

「言われなくても。」

行き場所が決まれば此処には用はない。ヨハンは迷いなく開かれた扉へ向かっていく。

695リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/21(水) 02:09:35
「あ・・・」

去っていくヨハン。この扉が閉ざされれば、もう一生彼と会うことはない。

「待って・・・」

このままでは駄目だと思った。まだ二人の蟠りは完全に拭えていない。
そしてリトは気付いた。きっと、ヨハンは転生の道を赦されていたとしても、選ぶことはないと。地獄で魂が燃え尽きるまで苦しむ事が己に科せられた報いだと思っている。

ヨハンが行ってしまう。このまま行かせては駄目だ。

「と・・・父さん!」

ヨハンの足がピタリと止まる。振り向いた顔が驚きの表情を浮かべている。

「今・・・何て?」

「父さん・・・待って、まだ行かないで」

リトが思わず扉の中へ足を踏み入れそうになるのをヨハンが慌てて引き返し止める。そんな彼の腕を縋るように掴み、リトはヨハンを見上げた。

「あんたにまだ言えてない。言わなきゃいけないのに・・・」

ヨハンに恨みがないと言えば嘘になる。許してやりたいと思うのに、どうしても許せない。だけど・・・

「・・・嬉しかったんだ・・・」

これだけは伝えてやりたい。

「あんたは無意識かもしれないけど、俺の名前を呼んでくれた。俺はあんたにとって疎ましい存在だから、名前なんて知らないと思ってた・・・」

けど、知っていてくれた。そして名前を呼んでくれた。それが凄く嬉しかった。名前を呼ぶことはその者の存在を認める事だから。

「あんたのことは許せないって言った。けど、許す機会を与えないのも卑怯だと思う。"俺"が無理でも、その・・・生まれ変わった後の俺にとか、ずっと、俺が許すまで謝り続けてほしい。」

生まれ変わりとか何言ってるんだ。自分でも意味が分からなくなってきたと言うリトに、ヨハンはフッと笑みを浮かべた。
そして顔を赤くするリトの頭にポンと手を乗せる。とても優しい感触がした。

696リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/21(水) 02:10:13

「ありがとう。お言葉に甘えて、お前が許すと言ってくれるまで何度でも謝り続けることにするよ。転生を駆使してでも、な。」

本当にこの子は優しい子に育った。顔だけでない。心まで、ミレリアにそっくりだ。

「リト、お前は私のようになるな。お前にはナディアやヨノ、そして何より母がいる。無理に大人になろうとしなくていい。お前はまだ子供なんだ。支えてくれる大人達に甘えなさい。」

その機会を奪ってきた悪い父親はもういない。

「お前はもう自由だ。・・・ありがとう、こんな俺を父と呼んでくれて。」

罪深い自分に、いずれ天へ召すことへの意味をくれて。

「・・・。」

リトはヨハンの腕を掴んでいた手を離す。ヨハンはそんなリトの頭を人撫でし、扉の中へと消えていった。
そしてリトの見守る中、あの世へと続く扉が重く閉ざされた。

-----

「知らないはずなかろう」

ただ際限なく続く道を歩きながら、ヨハンは呟く。
思い返すはリトのあの言葉。

「お前の名は、俺が考えたのだから」

生まれてくる子供は男の子だと、ミレリアは嬉しそうに言った。性別を知り、その子の行く末を知っている自分が絶望している中で、何も知らないミレリアが言った。子の名前を考えて欲しいと。
その時は何も言わなかった。すぐには思いつかないと嘘をついて。どうせ死ぬ命。名をつける必要などないと思った。しかし、自分は子の名前を考えてしまった。もしその子が死ぬ運命ではなく、自分達の子として生きていける子だったらと仮定して。書類の端に何気なく書いたその名を、いつ目にしたのかミレリアは知っていて、いつの間にか 腹の子にその名で呼びかけるようになった。そして、そのまま生まれた子に引き継がれた。

「私の尊敬する二人から取った名前・・・」

太陽のように明るく何処までも優しい妻と、自分よりも相手の幸せを優先する、強く真っ直ぐな心を持った親友。自分にはないものを持つ二人の名から、その子にもそうあって欲しいと願いを込めて。

697ユーリ ◆.q9WieYUok:2016/12/21(水) 15:06:56
【黄昏の塔】

起き際の不意打ちから続く清々しいまでの話し声と、それとは真逆の苛烈な連撃。
爪牙と尾、そして刃の如き鋭さを持つ装甲でアグルの攻撃をいなし、黒狼は距離を取った。

細められた金の双眸は敵影を見つめ、閉じた顎の隙間からは冷気が漏れる。
クウラが姿を変えた黒鴉は雷を、メイヤの黒狗は炎を、そしてユーリ、黒狼は闇と共に冷気を宿していた。

先程までとはまるで違う、倍以上どころか乗算的に上がった敵の戦闘力。
それがどこから来たかは分からないが、強敵と認めるには十分以上だろう。

此方の動きを読み、ニ手三手先を見越したアグルの動き。
それは未来予知か、否。

思考とは突き詰めれば電気信号のやり取りであり、それをアグルは感知したのか。
可能性は決して低くは無く、むしろ高い。

雷神トール、四神の一角ならば充分可能だろう。
実際にそれを行ったかは判らないが、戦いのレベルは各段に上がったのは確かだ。

冷気は狼の全身から勢いを増し、咆哮と共にフロア全体の空気が一瞬にして凍結。
黒狼を中心に大小様々な氷の剣山が広がり、フロアを埋め尽くしていく。

更に、凍結した水分子が巨大化し、次々と氷の華と姿を変える。

(リミッターを失った今、時間も余裕も無い。
この姿になった以上、早急に勝負を決めなければ……!!)

そう、時間は無い。
闇を制御するリミッターを失うと言う事は、闇に呑まれ、死ぬ事と同義。

「この身が朽ちる前に、せめてこの勝負に決着を着けよう!!」

フロア全体を極寒の地へ変え、黒狼は再び敵影を見据えた。
溢れ、満ちる凍気は絶対零度に達している。

摂氏零度-273℃、それは光すら動きを停め、時間おも停める“絶対”なる数値。
爪牙が纏う滅びを凍気に、魔装の名残を氷鎧へ変え、黒狼は渾身の一撃を放つ。

それは絶対零度の渦流、死の吐息。
蒼氷たる白銀の奔流が、敵を飲み込み粉砕せんと襲い掛かった。

698リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/21(水) 16:01:35
イスラ>>

行動が早いwwwあの歌いいですよね!あの声は本当素晴らしい(*ˊૢᵕˋૢ*)しょーたの歌をカラオケで歌おうとしたら声が出なかったのは秘密←

えぇ(OдO`)ヴェント逃げて超逃げて。

母親が同じです( • ̀ω•́ )✧で、セシルの父親がどっかの国王で音也の父親がシャイニング。

でしょー?藍ちゃんベリーベリーキュートでしょー?あの容姿は奇跡ですね←

つかカルナイの新曲アニメで見たけど歌自体カッコイイわ映像が本当のライブ見てるみたいでテンション上がるわでヤバかったです。藍ちゃん可愛い(*´﹃`*)

でも彼らにとっては名誉なことなので←
自分今までライブとか行ったことないです|ू・ω・` )なんつーか、ファンが怖いんですよね←

なのでレイジは自分の闇を隠して頑張ってるんですよー(笑)
本当それです。藍ちゃんが「楽屋では皆好き勝手なことしているのにレイジが時間だねって言ったら準備をし始める。バラバラなグループなのに、レイジの言葉で皆は同じ方向に動くんだ。」的な感じなことを言ったことがあって、自信のない彼に対してレイジがいなきゃダメなんだよって暗に示す藍ちゃんマジ天使。

えぇ間違いないです( • ̀ω•́ )✧
シエルは天才ですからね(笑)ただ、何か変な方向に突っ走ってる風がしてお姉さん心配です(笑)まぁ楽しそうで何よりですが(笑)

な、なんだってー(OдO`)!?
そしたら折ろうかな←

自分はリマがセナにビンタをぶっかます姿が見てみたい←

ヨハンとリトの話長くなっちゃったwwwしかもまだ終わってない←

イスラさん仕事早ぇ!!!つかイラストスゲェ!!!可愛い!めちゃヤバイ!!ありがとうございます!!
ユニの谷間が(*´﹃`*)あーイイッ(瑛一風)

そんな不気味なことをやらかすのがアブセルです←

え、うそwww

なんかハルカっていけ好かない( ・᷄ὢ・᷅ )薄桜鬼の千鶴の次に嫌いかもです←

マギやばいですよね!白龍ちゃんめちゃくちゃカッコイイし!!白龍ちゃん勇ましいし!白龍ちゃんの精神強くなったし!!!
と言うか前に友人宅でお泊まり会した時に友人のマギ読んでて(自分の読めよ)、その巻で炎兄死んじゃったかと思ってマジ泣きそうになりました←

699ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/12/23(金) 16:39:19
【イスラ》レックスも思いの外ハマり役かなと自分でも思うww
アグルの声はそのアニメので聴いたからホントぴったりだた!!そして本編まさかの展開……!!
了解す、とりま先のが黒狼最後の攻撃なんで、トドメを!

リマ》俺もアニメ全然見ないから聞き比べ大変だった、つべの履歴が見事に声優サンプルボイスで埋まったわ……wwww

とと、二人にちょっと相談難だけど、前言ってた吸血鬼組の話。
黄龍撃破した後、本編完結後のexステージ的なのでどうでしょう?
多分このまま平行して進めるにはキャラの絡みや伏線因縁諸々多過ぎて厳しいかと思って……


700イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/27(火) 18:57:41
リマ>マジかw自分も絶対声でないだろうなw

うふふ〜逃がさないわ〜ε≡≡ヘ(D ´∀`)ノ ⬅

なるほど、何か複雑な感じなんですね。てか国王とシャイニングを相手にするお母さん何者ww
藍ちゃんはベリーキュートですが、性格はナギの方が好きだなぁ

それ見逃したかも。カルナイのライブなら是非とも見ないと⬅
しかしどしどし新曲出すんですねw

ファンが怖いwその発想はなかったwwそう言えばテンション振り切れてる人いますよね。自分もRIP SLYMEのライブくらいしか行ったことないんですが、前列に行く勇気はないんでいつも後ろですww前の方は何か熱気が凄い気がする

藍ちゃん良いこと言いますね、それは間違いなく天使ですわ(笑)そしてレイジはぐう聖⬅
シエルさん当初の目的もう忘れてるんじゃ…、いやそもそも当初の目的とかあったのかさえも自信がない

折っちゃえ折っちゃえ!⬅

リマがセナをビンタするなんて…一体何があったらそんな事態に…(笑)

リト…、ヨハンと和解できて良かったね…(。´Д⊂)続きも待ってます(笑)

ありがとうございます^^忘れる前に谷間の約束守れて良かったwその人のイイッ!は笑うからww

そうか、それがアブセルか( ゚д゚)ハッ!

千鶴ってヒロインの人でしたっけ?何でそんなに嫌ってるの(笑)

白龍ばっかりww
炎兄死んでたら白龍絶許でしたよ、しかも早々に皇帝辞めて紅玉に丸投げとかちょっと酷くないですか?(笑)
まあ紅玉達とアリババが煌を立て直してく話がすごく楽しいから全然良いけども
てか何かアラジンがめっちゃ成長してるけど違和感しかないw


ヤツキ>凄い偶然ww
初めは二人を合体させようなんて全く考えてなかったんですけどねwご都合展開ですが許してください(笑)
って、あれ?ユーリとの戦闘もう終わっちゃうのん?笑)もう少し続けても良かったのよ?⬅

ああ、それ。自分も同じこと考えてました(笑)
今はちょっと完結に向けてのレスで手一杯で、吸血鬼組の方まで頭回らないと言うか;本編が一段落してから、ちゃんとやってきたいです(´ω`)

あ、それとヤツキングはいつ来るのかな?イスラと再開できるってことでワクワクして待ってるのにな(゜∀゜*)(*゜∀゜)⬅

701ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/12/27(火) 22:49:15
>>700
取りあえず一番上の見るかーボタンポチーでアニメだったんよww

予想外なんやけど熱い展開で鳥肌立った!!今までの実力が実は半分程度とかやべぇっす、めっちゃ強化されとる……
んー、これ以上はクドいかな?とか思ったんだけど、続けて良いならもう少しやりましょ!!
リマさんの返事次第だけど、吸血鬼組は先のレスの方向で……考えてるのは、ヴェントと会話中にオリジン強襲、何とか撃退で深手を負ったオリジンは暫くお休み、的な区切りで。
ヤツキングはイスラとバトルか会話させるかで迷ってて←
アグルvsユーリ終了後にでも良いでしょうか?

702リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/12/27(火) 23:48:32
ヤツキ>>
声優サンプルwww

exステージ賛成!折角なのにごちゃごちゃしちゃうと悲しいもんね|ू・ω・` )


イスラ>>
高い声出るって羨ましい←

怖いわwww
オカマに追いかけられるって相当怖いだろうなwww

母さん強者ですよねwwwてか何で子持ちの日本人がどっかの王国の嫁になったのよって思うけどそこはまぁうたプリだし考えるだけ無駄というか←
何ですと!?自分にとっては藍ちゃんは性格もどストライクなのにー←

見逃しちゃダメー!←
そうそう、必見ですよ!!あまり藍ちゃん目立ってないのが悲しかったけども( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )
今回の歌は何かレイジとランマルがメインって感じがしましたー。まぁ藍ちゃんはもともとダンス担当の子だから仕方ないのかな(˘-ω-˘ ).。oஇ

そうそう、熱気が凄いし勢いに押されちゃう(笑)


しかも別にレイジを元気づけようとしてるわけじゃなくて、無自覚にそう言っちゃうところがまた天使なんです←
そして何だかんだレイジの事大好きで無自覚ながらもレイジに甘えちゃう藍ちゃん超天使!!レイジの言う事素直に聞いちゃう藍ちゃんぐぅかわ!!MCやる時話題が見つからなかったら「最近どう?」って言えばいいんだよってレイジからアドバイス受けたら、収録中ずっとメンバーに最近どう?って聞きまくっちゃう藍ちゃん!超!天使!!
てかぐう聖www


でもどうやって折ろう?←

んー、ノワールとの関係がバレた時?子供の存在を知った時?
あの二人仲良すぎなんですよね←

リトは許さないらしいけどね←
ありがとうございます(♢ω♢)


谷間!きゃっほい!谷間!Fooo!!←
何か耳についてしまってwww

谷間のお礼に自分も谷間・・・じゃなかった、ナディアを久しぶりに描いてみました|ू・ω・` )
imepic.jp/20161227/838060
力尽きたので色塗りはしてません←
にしてもナディアは何故いつもピチピチした服着るんだろう?←
髪下ろしたバージョン描いたらナディアなのに誰だこいつって感じになってしまった(˘-ω-˘ ).。oஇ

そうそう、アブセルはリトに対してなら何処までもアホになれるし、狂気的になれるんです←

弱いくせにお節介で戦場に首突っ込んで、弱いからやっぱり死にかけて、結果的にその時に千鶴を庇った兵士が死んでくんです。迷惑がかかってるのに本人は気づいてないんです。千鶴がいなければ兵士さんは死なずに済むんです。
あ、因みに千鶴の双子の兄の薫は狂気的な子で天使です← 千鶴より強いのに潜在能力?的な差で千鶴だけが大事にされて虐げられてきた可哀想な子です。

白龍ちゃんも結局はツンデレなだけでしたね←
あんだけ皇帝にこだわってたのにあっさり退位しましたよねwww

アラジンすっかりソロモンに似ちゃって・・・(笑)自分店頭で成長したアラジンの表紙見て「アラジン、すっかりパパにそっくりになって・・・」って親戚のオバチャンみたいなこと思っちゃいましたwwwアラジンはちっこい方がアラジンらしいのになー

703イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/12/31(土) 00:54:30
ヤツキ>なるほどw
予知っていうチート能力もついたしwアグルはユーリ戦が最後の戦闘参加になるかも。
やりましょう!でもレスが思いつかないので来年まで待ってください(笑)

流れ了解です!
自分は会話を希望しますが…、ヤツキさんに任せます^^


リマ>良いですよね〜

怖いでしょうねwオカマじゃないてすが、ガチホモ(やらないか、の阿部さん)に追いかけられる無料のホラーゲームがあるんですが…いろんな意味で怖かったです(笑)

そこは掘り下げてくれないんですね(笑)
なんか藍ちゃんって何考えてるか分からないから(-_-;)

ありゃま残念(笑)また今度見てみます^^
最近どう?ww藍ちゃん素直ww

そこなんですよねー、折れる理由が何も思いつかないですww

それはやばい、凄い修羅場になりそう…(笑)ワクワク…⬅

許さない方がリトらしくて良いと思います^^

ヤッホイ!谷間!o(*゜∀゜*)o⬅
ナディア美人‼まさか描いていただけるとは…!ありがとうございます‼
自分の身体に自信がある人じゃないとピチピチな服って着れないですよねwてか髪下ろすとよりセクシーに…!

その通りだ(笑)

あー、そういうヒロインは嫌ですね…(-_-;)
お兄さんのキャラ設定はリマさんが好きそうな(笑)

結局白龍もシンドバッドさんに良いように利用されたような感じですしね(笑)
てか親戚のオバチャンwwアラジンは小さい方が良いですよねー
モルさんも何か顔つきがキリッとなっちゃったし…前の方が可愛かったのに…

704ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/12/31(土) 15:36:18
【んだらば吸血鬼組はexステージと言う事で!オリジン乱入させるんでちょっとだけお付き合いお願いしやす!

イスラ》え、アグルはまだラセツとのリベンジ戦が残ってますよ?←
未来予知合戦が←
了解す、アグルユーリ戦終わったらレスしまっす!

リマ》ボイスサンプルで埋まった履歴スクショすれば良かったww

っと、お二方今年も大変御世話になりました!!
来年も何卒よろしくお願いしますー!】

705フィア ◆.q9WieYUok:2017/01/05(木) 12:51:38
>>685
【森】

全く、DDとは別のベクトルで掴みにくい男だ。
だが、その実力は折り紙付き。
内に秘めた闘志は計り知れない。
ヴェントが力を貸してくれるとなれば、激化するであろうこれからの戦いも……

「そうね、まずは……」

力を貸すと意志を表したヴェントへ、フィアは不意に氷剣の刺突を放った。
凍気を纏う切っ先は吸い込まれるかの様に、そして速く、鋭く。
躊躇いの無いその一手は、防ごうと翳された手の平を貫き、瞬時にその腕を凍結させる。
更に、だめ押しとばかりに氷の刀身から絶対零度の凍気を放った。

「現れた敵、このオリジンを抑え込むわ!!」

フィアの放った刺突を受けた手、それはヴェントの背後に突如としてして現れたオリジンのもの。
灰の髪に一房の朱、ノワールと同じ相貌の吸血鬼の祖。
現れた理由は勿論分かっている。
そして、タイミングも。

感知に長けたフィアだからこその気付きと、それに対する一手。
光すらその速さを失う絶対零度の放射、有効打にはならずとも。
仲間達が戦闘体勢に入る時間は稼げるだろう。

「メルツェルの仇討ちよ……っ!!」

706ユニ ◆wxoyo3TVQU:2017/01/16(月) 20:25:15
【ポセイドン邸】

リトが邸に戻ることを頑なに拒んでいた理由は、彼を追いかけてここまで来たことで容易く理解出来た。
両親すらリトを邪険にするのだ。それが邸の者達の態度に反映されるのは無理もない。分かってる。わかってるけど・・・

「・・・っ」

その場にいるのが苦しくなり斎場をあとにしたユニは宛もなく廊下を歩いていた。しかし、耐えられなくなりその場に膝をつき泣き出す。リトは幼い頃からずっとあの敵意の渦の中にいたのだ。あの性格だ、きっと何でもない風を装って、独りで耐えてきた。

「リト様・・・っ」

その結果が今のあの姿。リトは我慢することに疲れて現世に戻ることを拒んでしまった。リトは帰ってきてくれるのだろうか。たとえ帰ってきてくれても現実が変わらないのであれば辛すぎる。

「大丈夫?」

顔を覆い蹲っていると、何処からか声をかけられた。顔をあげると、1人の青年が気遣わしげに自分を見つめている。視線が会うと彼は人懐こそうな笑顔を浮かべる。

「こんにちは、妖精さん。どうして泣いているの?」

「あの・・・」

優しい声に柔らかな表情。この人はとても優しい人。だけど何故だろう。彼の奥にどこか薄気味悪さを感じる。

「何でも・・・ないです。」

「あぁ急に声をかけてごめん、驚かすつもりはなかったんだ。そんなに怯えないで?泣いてる女の子を見ると放っておけなくて。」

嘘だ。

「・・・あなた、嘘つきの顔をしています。ユニが泣いていたからではないですね?」

ユニは青年を見据える。ぼんやりながらも彼の心が視えた。

「ユニに・・・ご用があるですか?」

その言葉を聞き、青年は一瞬虚を突かれた顔を浮かべる。しかし、それはすぐに興味深げな好奇心に満ちた表情へ変わった。

「へぇ、分かるんだ。うん、君の言う通りだよ。お願いがあってきたんだ。」

「お願い?」

「うん、君の力が必要なんだ。一緒に来て欲しい。」

来て欲しいと言われ易々とついていくわげない。ユニが警戒していることを察したのか、はたまた最初から予想していたのか、青年はクスリと笑い続ける。

「僕は君の願いを聞いてあげられる。・・・ちょっと違うな、僕達と一緒なら、君は自分の願いを叶えられる。」

たとえば・・・

「リト・・・とか。」

その名を聞いてユニの動きが一瞬止まる。そんなユニの反応に青年は笑みを浮かべた。"引っかかった"

「君が一緒に来てくれるなら、僕がリトに自由をあげる。悪い話じゃないと思うけど。」

ユニはジルの目をじっと見つめる。・・・嘘は言っていないようだ。

「本当に、リト様を解放してあげられる?」

「うん。君が一緒にいたいって言うんなら、あの子も連れていけばいい。僕達は君たちを束縛したりしないよ。ただちょっと、手伝って欲しいだけ。」

ユニは完全にこちらの話に興味を持っている。あと一押しで、落ちる。

「リトもきっと喜んでくれるよ。」

その一言でユニの顔がパッと晴れた。成功。

「リト様喜んでくれますか?ユニのこと褒めてくれるですか?」

「うん。だって君がリトの願いを叶えてあげるんだもの。誰も叶えてあげられなかった願いを。だから・・・」

ジルはユニへと手を伸ばした。こっちへおいで。

ユニはもはやジルの言葉に疑問など持っていない。嬉しそうに、ジルの手をとるべく自らも手を伸ばした。

707アグル ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/26(木) 11:31:53
【黄昏の塔】

今や極寒の地へと変貌した戦場で、レグナは退路を塞ぐ氷塊を砕きながらその凍気に身を震わす。

「うぅ〜…、さぶい…」

(呑気なこと言ってんな!来るぞ!)

警告通り、それは音もなく二人へと襲いくる。もはや防ぐ術も逃げる間もない。
絶対零度の奔流は在りとあらゆる物質を凍てつかせながら、時間と空間、そして二人を呑み込んだ。

………

「アグル、まだ寝てる?」

「ううん、今起きた」

まだ二人が幼かった頃。まだ二人が一つだった頃。隣に誰かがいるのが当たり前だった。

「アグルは最近眠り姫だな」

何だよそれ、と彼が顔をしかめる。
「繋がってるから、多分僕のやる気も全部レグナの方に行っちゃってるんだ」

「…ごめんな」

「いいよ、寝るの好きだし」

アグルここのところ、一日の大半を寝て過ごしていた。起きている間もいつもダルそうにしている。
恐らくホルモンの分泌であったり、脳の神経伝達であったり、身体に異常をきたし初めているのだと思う。

「また本読んでたの?」

「うん、トール様の神話」

「聞かせて」

弟に本の内容を話してやるのが日課になっていた。レグナはトール神が人々を護る為、悪い巨人を倒しに行くという冒険譚を語って聞かせた。

「格好いいね」アグルが言う。

「 そういえば」トール様の話で思い出した。「父様がそろそろどちらが当主をやるか決めなさいって」

これは暗喩だ。分離手術でどちらが死ぬかを決めろと言うことだ。だがアグルはそのことを知らない。

「二人じゃ駄目なの?」

「当主になれるものは一人って決まってるんだ」

「じゃあレグナがなると良いよ。レグナの方が勉強熱心だし」

「いや、僕は駄目だよ」

「なんで?」

「器じゃないから」

「器?」アグルが聞く。

「例えばここに沢山のスープがあったとする」レグナは両方の腕を大きく広げてスープの量を表した。
「でもそれに対して器の大きさは、ほんのこれくらい」今度は指先を使って器の大きさを示す。
「どんなに沢山のスープを持っていたって、器が小さいと注いだうちから溢れ落ちちゃうだろ?つまりはそう言うこと」

「…?よく分からない」

当主を選ぶ話から何故スープの話になるのかと、アグルは首を捻る。

「良いんだよ、分からなくて」言って頭を撫でてやる。初めは何やら不満そうな顔をしていたが、弟はやがてあくびを一つすると再び目を瞑った。

アグルにはトール様の加護が付いていると、当時から何となく感じていた。その力の片鱗は、きっとずっと側にいた自分にしか分からないものだ。

弟を守ろうと思った。アグルは自分達には兄も弟もないと言うけれど、やっぱり自分の方が兄に向いているのではないだろうかと思う。
だって世間一般的にいえば弟を守るのが兄の役割らしいから。

708アグル ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/26(木) 11:34:58

…………

光も音もない。完全なる死の世界。
しかしその中で唯一、止まることなく動き続けるものがあった。
心臓だ。心の奥底から熱く脈打つものが込み上げてくるのを感じる。
ぽつりと、レグナの胸に淡い光が宿る。やがてそれは全身に広がり、理屈では計り知れないエネルギーが彼の身体から発せられた。

「…我が想いに宿りし神よ、天命に従いて今すべてを解き放て」

それは原初の光。
天地創造の先駆けの一つ。
そして物質の性質を根本から書き替える力。その力の前では、絶対零度ですら本来の性質を失う。

「我は雷神トール、聖槍を以て邪を打ち砕く、戦と変革の神なり! 」

哀しみを歓びに。憎しみを希望に。罪を愛に。
絶対零度は万物の生命エネルギーである、マナへと変わる。

(…なんてね)

レグナは密かに舌を出す。

一瞬、自分がやったのかと思った。だが、違う。これはアグルの仕業だ。
アグルが兄を護ろうとして無意識に力を開放させたのだ。

(…やっぱりお前の方が当主の器だったな)

今は大きな力の反動で意識を失っているのだろうか。アグルの声は聞こえない。
彼は頑張ってくれた。消える前に自分も少しは兄らしい役割を果たさなければ。

レグナは決意を胸にユーリに向き合った。そして言った。

「あなたの言う通りだ…。復讐の刃では未来への道を切り開くことは出来ない。
だから…俺はアグルの為にも、あなたに止めを刺すことはしたくない」

アグルはユーリを討ち取った後、自分も死ぬつもりでいたし。と頭の中で付け足す。

「放っといてもあなたは直に死ぬんだろう?ならその前に教えてくれないかな」

彼の持つ魂が、徐々に禍々しいものに蝕まれているのが分かる。
かつて自分を殺した者の死が、目前に迫っているのを見るのは何とも奇妙な気分だ。不思議と彼に対する怨みはなかった。

「ずっと不思議だったんだ、あなたが何の為に戦っているのかが。
あなたはこの塔の番人?この塔は何の為にあるのかな?そしてここで何をしようとしているのか…答えてくれない?」

709アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/26(木) 12:10:42
【ポセイドン邸】

「ユニ!そいつから離れろ!」

ユニがジルの手を取ろうとした調度その時。後方から別の声が割って入る。
アブセルだ。

(ご主人!あれです!あの者から先程感じた血の匂いが致しまする!)

確かに嫌な感じがする。
しかしそれ以前に、彼の顔には見覚えがあった。いつだったか街の宿で襲撃にあったのだ。
その時はリトのペンダントを奪われただけで事なきを得たが…。

アブセルは剣を抜き、ジルを睨み付けた。

「そいつを誑かしてどうするつもりだよ。狙いはまたリトか?」

どうやって侵入したかは問うまい。悔しいが異能の力を持っているものならば、そう難しい話でもない。
それに…。

「もしかして、下の騒動もお前の仕業なんじゃないのか?一体なに考えてやがる」



【すみません、遅くなりましたが、あけおめです!
今年も宜しくお願いしますm(_ _)m

ヤツキ>未来予知合戦とかヤバ過ぎるww】

710ユーリ ◆.q9WieYUok:2017/01/27(金) 15:13:23
【黄昏の塔】

全てを凍結させる絶対なる死の吐息。
白銀の奔流は確かに、敵影を飲み込んだ。

時間すらその動きを停め、氷結した塔の一角。
その中を眩い光が照らし、停まった時間が動き出す。

それは創世の光、世界を構築する四大元素の一つ。
光は力となって、氷結し、凍てついた時間を溶かしいく。

そして、周囲に凍気ではなくマナが満ち溢れた頃。
黒狼から人の姿へ戻った後、左半身を失っていた為にバランスを崩したユーリは、膝を着いた状態でアグルを、レグナを見据えていた。

「ならば、大義の為に俺を貫け。」

魔装と闇の力を失った今、ユーリの命は後数刻しか保たないだろう。
先の言葉は強者として、悪役としての矜持か。

「俺は愛する女の為に戦った。
その女が世界を無意識の内に滅ぼそうとしているのを知りながらもな。

今思えば、俺はイオリが羨ましかったのだろう……
一族の掟と、この世界の有り方に絶望した俺とは逆。」

折れた刀を支えにし、ユーリは続ける。

「俺は翼を持たなかった、いや、切り捨てた。
全てを灼き尽くす蒼焔の翼、実にアイツらしい……」

それは独白か、一言一言続ける度にその声は覇気を無くしていく。

「この塔は時間の巻き戻しにより出現した。
その頂きに座するは闇の王女、この世界における冥府の女王。

100年前とは役者の数もその役割も違うが、目的は同じだ。
世界を闇に閉ざし、滅ぼす。

闇の残滓だった消えゆく星が恒星となった、その意味は俺には分からない。
だが、その輝く闇星は……いずれ黄龍すら呑み込む奈落の渦中となるだろう。

……行け、塔の番人を倒したお前達はこの先に進む権利がある。」

そして。

「地を這う犬に、狼にとって自由と言う名の大空は遠かった。
光輝くその翼で、世界を照らしてみせろ。」

ユーリの黒瞳から光がゆっくりと消え、それと同時にその心臓も動きを停めた。

ーーーーー

「終わったようだな。」

階下で行われていた激闘、その終わりを察し、ヤツキは口を開いた。

「ならば、次は俺達の番だ。」

轟音と破砕音から続く雷鳴と極寒の凍気。
それらが止んだフロアは、再び静寂に包まれていた。

ヤツキが声を掛けた先、その視線の先には宿敵とも好敵手とも呼べる一人の男の姿。
その名を呼び、ヤツキは腰の刀に手を置いた。

「イスラ、俺はお前を待って居た。
この世に蘇ったその意味を、全うする為にな。」

二人が居るのは最上階より一つ下、何もない伽藍の空洞。
視界に映る階段を昇れば、塔の頂きはすぐそこだ。

「だが、その前に問いたい。
100年前の俺達の戦いに意味はあったのか?

蘇ってから、しばらくの間世界を放浪した。
その間に見たのは、止まない戦争、環境汚染。

文化と技術が発展した所で、本質は変わらない様に見えた。
なぁイスラ、世界はやはり滅ぶべきだと思うか?」

最上階へと登る階段の前で、ヤツキはイスラへ問い掛けた。
その声は、低く、冷たい。

711ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/27(金) 20:21:21
【過去】

当時、私はポセイドン本家当主様の命により、とある事件を調査すべく派遣された使用人の一人に過ぎなかった。
その事件というのも闇絡みであることは間違いないが、あらゆる点が特殊だったため原因究明に至るには中々に時間が掛かりそうであった。
ここ数日間も、この屋敷の主であり闇の王子の継承者でもあるユリウス様と被害に遭った街や闇の封印地に足を運んだが、望ましいような成果は上げられなかった。

…………


「お疲れさま、大事はなかった?」

ユリウス様の指示で一足早く屋敷に戻った私を出迎えてくれたのは、彼女、レイシーであった。
レイシーは手ずから淹れた紅茶を、満面の笑みで私に差し出してくる。
その晴れやかな笑顔に一瞬言葉を失った。もちろん呆れているのだ。

「…おい、何故お前が使用人の俺に茶を出しているんだ。そういうことはするなと言っているだろう」

彼女はユリウス様の一人娘であり、生粋の神子。何でも歌を通して万物の声を聞くことが出来るのだとか。いわゆる信託者だ。本来は災害の預言や啓示の伝達をするのが役目だが、魔術に代わる科学技術が発達し、反異能者の風潮が強まっている現代ではあまり重要視はされていないらしい。

…話が脱線したが、私が言いたかったのはこの娘の振る舞いだ。
彼女はやんごとなき生まれにも関わらず、平気でこういったことをする。使用人が仕事をしている横で、何か手伝えることはないかと聞く。
主従関係を理解していないのか、お友達感覚も甚だしい。私はその都度「友達ごっこがしたいなら余所でやれ」と突っぱねるが、彼女にはあまり効果がないようだ。
しかも彼女の紅茶は私が淹れたものより薫りも良いし味も良い。それが余計に腹が立つ。

「だって以前はお手伝いさんが二人居ただけだったんだもの。手が足りない時は私もお母様も家事全般は何だってやったのよ。
それが今は貴方達に全部任せっぱなしでしょう?有り難いのだけれど…、ほら、着替えくらいは自分でできるし…。落ち着かないって言うのもあるけど…いろいろと悪いでしょう?」

いくら田舎育ちのお嬢様とはいえ、彼女は腐っても神子の端くれの筈だが…。昨今の神子事情には流石に同情せざるを得ない。

「慣れろ。ご当主様のご配慮だ。それに俺達にだって面子というものがある。お前が良かれと思ってやったことも、使用人にとっては仕事と生き甲斐を奪われたも同然だと感じる者もいる」

712ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/27(金) 20:23:21

事件解決に専念出来るようにと、当主様の計らいで、それなりの資金と共に本家の使用人を数人程まとめてこちらの屋敷に提供した。
大して広くもない邸宅と神殿は一日の内にピカピカになり、加えて毎食の豪華な食事と、使用人による申し分のないサービス。
彼女たち家族からしたら環境の変化に戸惑っても致し方ないが、生き甲斐という言葉を出すとレイシーはしゅんとしながらも「努力するわ」と頷いた。

「でもさすが本家の使用人さん達よね。皆優秀だわ」

「当然だ、そのように教育されている」

何が可笑しかったのか、彼女はそこで小さく笑った。

「何故笑う?」私は言った。

「ううん、ベルが面白いなあって思って。まだ若いのに凄く偉そうだし、主だ従者だって拘るくせに私には敬語も使わないし」

そこは面白がる所ではなく、腹を立てるべき所ではないのか?

「俺は出世の利益に関わる人間にしか媚びを売らないことにしているんだ」

「うん、そんな感じよね」

特に気分を害する訳でも、こちらを咎める訳でもなく、彼女はコロコロと笑う。
彼女の何が嫌かって、この独特の空気間だ。気づけばすっかり彼女のペースに乗せられてしまっている。
そしてそれが分かっているにも関わらず、毎回の如く罠に嵌まり、つい余計なことまで喋り過ぎてしまう自分の間抜けさに私は人知れず辟易する。

713ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/27(金) 22:40:02

「護衛とかちょっと大袈裟過ぎないかな…?」

「ユリウス様の留守中にご家族に何かあっては申し開きが出来ないからな」

「すぐ側の町に行くだけなのに…」

「どこに危険か潜んでいるか解らない。
俺のことは空気か置物とでも思って、気にしなければいい」

「はぁ…」

雪のように白い肌に白い髪。血を塗ったような真っ赤な瞳。そのアルビノ特有の容姿は神秘的だと神聖視もされるが、中には忌み子やら鬼の子やらと謗り、畏怖の対象として見る者もいる。
町に行くと言う彼女に同行を申し出たのは、彼女に対してのそういった評判を耳にしたからでもあった。

「ところで…このパンと林檎は何なんだ?」

会話が途切れたのを機に、私は先程から疑問に思っていたことを聞く。彼女と私の腕にはそれぞれ、紙袋一杯に詰められたパンと林檎が抱えられていた。

「ごめんね、持って貰っちゃって。これはお裾分けなの」

お裾分け?その言葉の意味は程なくして分かった。

町の外れに行くと彼女の管理する神殿が建っている。その周りに汚い身なりをした者達が集まっていた。

「おお…、神子様がいらっしゃった…!」

その内の一人がレイシーの姿に気づき、声を上げる。その声につられ、他の者も各々俯けていた顔を持ち上げた。
一体何事だろうか。そう思っていると、彼女はつい今しがた持ってきたばかりの食べ物を紙袋から取りだし、彼らに一つずつ手渡していった。
なるほど。どうやらこの者達の目当ては、神の慈悲などではなく、レイシーの持って来る施しにあるようだ。
端から見れば野良犬や野良猫に餌をやっているように見えなくもない。神聖な建物の前でなんとも浅ましい光景だ。

しかし眉を潜める私とは違い、当の彼女は嫌な顔一つしていない。それどころか物乞いに労いの言葉さえかけている。
ボロ切れのような服を着て、手も足も垢まみれ。きっと彼らにとっては、たった一切れのパンでさえご馳走なのだろう。
まるで聖母か天使にでも出会したかのように、手を合わせ涙を流す彼らの姿を見ると、とても口を挟むような気分にはなれなかった。

714ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/27(金) 22:41:54

「毎日こんなことをやっているのか?あんなのが居たら他の町民は神殿には寄り付かないだろうに」

物乞いが立ち去った後、私はそう口にした。
彼女は哀しげな微笑みを携え「私に出来ることはこれくらいしかないから…」と言った。そして、

「それに心配しないで、他にも神殿に来てくれる子達はいるから」とも。

「神子さまー‼」

その言葉通り、またどこからか親し気に彼女のことを呼ぶ声が飛んでくる。
見れば数人の少年少女達が、夏の陽のようなキラキラとした笑顔を振りまいて駆け寄ってくる。レイシーは彼らによって、あっという間に周りを取り囲まれてしまった。

「おはよう。どうしたの?」

「あのね、今から皆でコスモスの種を植えるの!神子さまも一緒にしよう!」

それらの会話からレイシーと子供達の関係性が何となく想像できる。彼女は「まあ」と顔を綻ばせた。

「それは素敵ね。でもごめんなさい、今から朝のお祈りをしなくちゃいけないの。終わるまで少し待っててくれる?
それまでベル…このお兄ちゃんと遊んでて」

何を勝手なことを。
しかし文句を言う前に、彼女はさっさと神殿の中に入っていってしまう。子供達にしても、明らかに見知らぬ私のことを警戒しているようだった。何か不審な者でも見るかのような視線が痛い。
レイシーが戻って来るまで、この空気の中にいるのは流石に居た堪れない。私は仕方なく彼らに目線を合わせ、出来る限りの柔らかい声音で話しかけることにする。

「神子様のこと、随分慕っているんだな」

子供は素直だ。こちらが無害を装うと、取り合えずは戸惑いながらもポツポツと言葉を返してくれる。

「…えっと…うん、大人達の中には神子様のこと悪く言う人もいるけど…私は大好き」
「神子さま、優しいから!」
「お歌うたってくれるし」

「ねー」と彼らは相槌を打ち合う。
…優しい、か。

「物乞いに施しをしているようだが」

「それだけじゃないよ。神子様はよく町の皆のお手伝いしてる」
「畑仕事とかー、荷運びとかー」

思わず「まさか」と聞き返しそうになった。再三と言うが彼女は神子だ。そこら辺の村娘とは訳が違うのだ。
それが何の酔狂で、土いじりや力仕事に精を出すというのか…。理解に苦しむ。

715ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/27(金) 22:44:24

…………

「今日は付き合ってくれてありがとう」

屋敷への帰り道、並んで歩いていると、ふと彼女が口を開いた。日はもう暮れ始め、西の空が橙色に染まっている。
子供達の言っていたことは、決して冗談なんかではなかった。
その日レイシーは彼らと共に花壇に花を植えた後、町の者達の労働に手を貸して回っていた。
重たい荷物を運び、収穫したばかりの野菜を冷たい水で洗う。
最後の方は見るに見兼ねて私も手伝う羽目になった。

「ベルは優しいのね」

そう言って微笑んだ彼女の顔は、私に向けられたものの中では一番輝いていたと思う。

「…辛くはないのか?」

つい、そう尋ねていた。
彼女は何が?というように首を傾げた。

「奉仕活動だよ。力仕事とか水仕事とか…普通のお嬢様はそんなことはしない」

直ぐに返事が返ってくる。彼女は笑っていた。

「辛くはないわ、好きでやっていることだから。むしろ町の皆の力になれることが嬉しいくらい」

奉仕活動中の彼女は生き生きとしていた。その言葉は心からのものなのだろう。

「私、あの町が好きよ。あの町で暮らす人達も。
小さくて素朴な町。決して豊かな暮らしではないけれど、皆気さくで親切なの。幼い頃からよくお世話になったわ」

確かに町には気さくで親切な者が多かったように思う。
しかし中には彼女のことを遠巻きに、冷ややかな視線を浴びせる者もいた。それに関しては何も思わないのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に彼女の歌声が耳に届いた。
穏やかな曲調の異国の言葉。

先程も子供達に聞かせていたが、やはり彼女の歌は耳に心地が良い。糸を紡ぐように繊細で、それでいて不思議な深みがあった。
目を細めると、音の一つ一つが浮かび上がってくるようにさえ感じられた。

私は黙って彼女の奏でる旋律に耳を傾けていた。
郷愁とも感傷ともつかない、どこか切ないような、懐かしいような、優しい気持ちが胸に広がっていく。
空には淡い白銀の月がうっすらと輝き、鮮やかな光に照らされた雲が遥か向こうの山々にまで棚引いているのが見えた。透き通った風に乗って、彼女の甘く澄んだ歌声がどこまでも飛んでいく。
はっと息を飲むほどに美しい時間がそこにはあった。
こんな気持ちも、こんなに美しい夕景にも、久方ぶりに出会った気分がした。

716ヨハン他 ◆wxoyo3TVQU:2017/01/29(日) 20:04:18
【冥界】
門を潜ると真っ暗な道が続いている。
行き先が行き先だ、この道に違和感は無いと歩いていると、予想に反して開けた空間に出た。そして、予想に反した事態はこれだけではない。

(何だこれは・・・)

目の前に広がる光景に目を疑う。
木々の茂った緑豊かな場所に、川までも流れている。
それは絵に書いたような美しい風景だった。

「嘘くさいな」

しかしひねくれた性格のヨハンである。感動よりも前に胡散臭さの方を感じてしまった。
眉を潜め思わず発してしまったその言葉に、クスリと吹き出すような笑い声が帰ってくる。

「は?」

自分以外の人間がいるとは思っていなかったため、ヨハンは驚きそちらへ目を向ける。そして彼は再び自分の目を疑うこととなった。

「と・・・」

目の前で笑みを浮かべるその男は、間違いなく自分が死なせた友人。

「久しぶり、ヨハン。性格は相変わらずだね。見た目は・・・歳をとってダンディになったかな?」

軽口をたたくその様もかの人物そのもので、彼がトーマであることは疑いようがなかった。

「どうしてお前が・・・」

「君を待っていたんだ、話をしたくて。」

いってトーマは川の傍らに見つけた岩石に腰掛ける。

「あぁ、因みに此処は君の考えてる場所じゃないから安心して?此処は境なんだ。分かりやすく言えばあっちが地の国で、こっちが天の国。あの人は面白いことをするね。本当は扉の行き先は同じなのに、わざと二つ用意した。」

まぁ、そうでもしないと君たち親子は本音で話をしなかっただろうけど。
トーマは優しく微笑んだ。

「今話をしないと、君は死んでも死にきれないと思ったんだ。僕の死は自分のせいだと思っているでしょ?」

図星だった。ヨハンは口篭る。
しかし、「思っている」のではない。「事実」なのだ。

「ほら、またそんな顔をする。僕が死んだのは君のせいじゃない。気を遣って言っているんじゃないよ?君を手伝おうとしたのは僕の意思だ。リトを引き取るって話を持ち掛けたのは他でもない、僕だよ。僕は嬉しかった。その提案を受け入れてくれて。君に頼ってもらえて。」

ただ、僕達が相手にした奴らが強敵だっただけ。

「ねぇ、そこに突っ立ってないでさ。座りなよ。僕と話そう。折角時間を貰えたんだから。」

717リマ ◆wxoyo3TVQU:2017/01/29(日) 22:09:25
あけましておめでとうございます|ू・ω・` )
暫く行方くらましてました、すみません(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
相変わらず亀亀しくやっていくと思われますが、今年も宜しくお願いします(>人<;)

ヤツキ>>吸血鬼の方は1回オリジン追い払う感じ|ू・ω・)??

イスラ>>703
阿部wwwやったことはないですが、何か知ってますwww色んな意味で怖いらしいですねwwホモな阿部さんがノーマルな子達を追いかけるというwwwてかあれってホラーゲームなんですかwww

裏設定っぽいですからね(笑)
藍ちゃんは結構単純なこと考えてますよ!ロボットなので難しいこと考えるのは苦手なんです(笑)子供みたいに目の前で起こってることを色々考えて、分からないことはすぐに解決したくて其処にいる人に聞くから、何の脈絡も無く変な質問してくる不思議ちゃんってイメージになっちゃうんだと思います(笑)ある時レイジに絵の書き方が分からないって言って、レイジはそれを受けて普通に説明してて、あの二人は見ていて和むんですよね(*ˊૢᵕˋૢ*)

何かカルナイの曲一般のオリコンのめり込んじゃってアニメイトじゃない普通の店でも当たり前のように流れてて笑えるんですけど(笑)アニメでは負けたけど事実上大勝利じゃないですかwww
藍ちゃん本当素直だから可愛くて可愛くて(*ˊૢᵕˋૢ*)大変認めたくありませんが藍ちゃんルートでハルカと恋人になったあと、料理男子は需要ある的な情報仕入れてきて「彼氏なんだから彼女に何でもしてあげたい」とか言ってどう考えても食べきれない規格外なサンドイッチタワー作っちゃって本当可愛い(笑)

ナディア強い子だからなー。小さい頃から妹と弟守るため気張ってきたからそれがデフォになっちゃってるんですよね(´・×・`)

やりたい(・∀・)けど別にノワールにはセナとリマ傷つける気なんてないんですよね(´◦ω◦`)

色も塗ってみました|ू・ω・` )
imepic.jp/20170129/789250
髪の色間違えて余計誰だよ的な姿にwww

なので千鶴は大嫌いです(´-ω-`)
薫くんの設定大好物だけどそもそも薄桜鬼あんま好きじゃないんですよね(笑)
大学の時乙女ゲーム大好きな友達と絶縁して、何かその子が好きだった乙女ゲーム見るとその子のこと思い出して虫唾が走ってしまう:(´◦ω◦`):
因みにうたプリはその子のお眼鏡にかからなかったし、自分の中で乙女ゲームではなくてギャグアニメなので普通に好きです(*ˊૢᵕˋૢ*)

シンドバッドマジうぜぇ←
今のアラジンが受け入れられない:(´◦ω◦`)
モルちゃん何か見た目が逞しくなりましたよねwww
あと個人的に白龍ちゃん成長しすぎてアリババより背が高いの受け入れられない:(´◦ω◦`):ジュダルとあまり背変わらなくなっちゃったからジュダルもう白龍ちゃんの頭撫で撫で出来ない:(´◦ω◦`):

そして爺の過去話待ってました!!やばい!めっちゃ楽しい!ヨハンママ可愛い(*º∀º*)そして爺が実はクールな人だった衝撃www今の落ち着いた爺様感は何だwww

718ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/01/29(日) 23:58:39
【リマ》そうそう、今回は追い払って一旦停戦的な。
4タイ1でバトル、途中でジーナ乱入オリジン封印(時間制限有り)封印解けるまで(本編終了)各自修行してね、的な感じで。】

719ジル ◆wxoyo3TVQU:2017/01/30(月) 00:13:13
【ポセイドン邸】

「一つ正解で、一つは不正解。」

現れたアブセルに「邪魔が入った」と漏らしながら、ジルはその笑顔をアブセルに向ける。
そして、アブセルの声に反射的に引っ込めようとしたユニの腕を掴み自分の方へ引き寄せた。

「生憎今日は王子様に用はないよ。まぁ、くれるって言うなら喜んで貰うけど。僕が今欲しいのはこの子。だから君の予想の一つは不正解。」

笑顔を崩さぬままジルは続ける。
そして、正解の方は。その口をユニの耳元へ寄せる。

「人って面白いよね。ちょっと突ついただけであんなに騒ぐんだから。そして、誰が1人でも同じ意見の人がいれば右に習えですぐ強気に出る。ねぇ、ユニ。」

ここの屋敷の人は皆意地悪だよね。相手がやり返さないのをいいことに、寄って集ってリトを虐めるんだから---

ジルはそう囁き、アブセルを指さした。

「彼も意地悪だ。此処に戻ればリトがどうなるか分かっていて、あの子を無理やり連れ帰った。ユニ、彼もリトの敵だよ。一緒に彼からリトを護ろう。」

「アブセルさんもユニ達の敵・・・」

ジルの言葉は麻酔のよう。頭に自然と浸透してきて、その言葉全てが正しく聞こえてくる。アブセルがリトの敵。違うと分かっているのに、そう思えてきてしまう。

「アブセルさん・・・酷いです。」

それがジルの能力の一つであるとも知らずに。ユニのように純粋であるほど、その術にかかりやすい。

「ユニがリト様守らなきゃ・・・この人の言う通りにすればリト様を助けられる・・・」

720ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/31(火) 00:32:45

「ベル、今忙しい?」

「忙しい」

「庭にお花を植えたいんだけど手伝ってくれない?」

話を聞け。と少しうんざりする。

朝の仕事を一通り終えた後の、午後の休憩時間のことだった。晴れた空にはうっすらと雲がかかり、雲の隙間から降り注ぐ柔らかい陽射しが、庭の緑を艶やかに縁取っていた。
レイシーと二人で町に赴いたあの日以降も、私は、調査の担当から外れた日などに何度か彼女の奉仕活動に付き合ってやることがあった。そのせいか、最近は何かとこういった具合に話しかけられることが増えたように思う。

「ベルは何をしているの?」

それでも知らん振りをしていると、またも彼女が声をかけてくる。私は言った。

「見て分かるだろう。剣の鍛錬だ」

どんなに忙しい日でも鍛錬を欠かしたことはない。とは言っても、今は相手がいないので、素振りや一人稽古くらいしか出来ないが。

「余所はどうだか知らないが、俺が勤めているのはポセイドンの本家大元のお屋敷だ。
教養の高さや家政のスキルは元より、いざという時には主君をお護りでき得るだけの能力も求められる。その中でも特に優秀な使用人が執事に選ばれるんだ」

彼女は大きな目を瞬かせて言った。

「ベルは当主様の執事になりたいんだ?」

「なりたい、じゃなくて、ならないといけないんだ。俺の家が本家御抱えの執事の家系だから。母もそれを望んでる」

「お家とお母様が…?でもそれってベルの意思はどこにも含まれていないように思うけれど?」

彼女の言い分に何となくムッとしたのは、それが本当のことだったからだろう。
私は剣を振る手を止め「じゃあお前どうなんだ?」とレイシーを見た。お前も血に縛られているじゃないか、と言外に滲ませて。

721ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/31(火) 00:34:37

しかしそれに対する彼女の答えは、私の想像の遥か斜め上を行くものであった。彼女はまだあどけない少女の顔でにっこりと笑った。

「私はね、旅人になりたい。世界中を旅しながら、吟遊詩人みたいに沢山の人に歌を聞かせて回るの。どう?素敵じゃない?」

…思わず返す言葉を失ってしまった。
彼女らしい、と言えば彼女らしいのかもしれないが…。いや、だが結局は世間知らずの、頭の中がお花畑のお嬢様の考えることだ。現実的ではない。

「つまりは浮浪者だろ。自らそんなものになりたがる人間の気がしれん」

「良いじゃない、そういう何が起こるか分からない生活ってわくわくしない?着の身着のままで色んな処に行って、色んな人に出逢って、色んな体験をするの。…そういうの凄く憧れる」

深窓の令嬢に有りがちの、外の世界への憧れというやつだろうか。ただ彼女の場合は本当に実行してしまいそうで怖い。
しかしその直後、何事か、彼女は「あ…」と表情を曇らせた。自身の白い頬に手を触れる。
「でも私の見た目って変だから、皆気味悪がって逃げちゃうかも…」

上がったり下がったり、面倒臭い娘だ。

「知るか、そんなものに拘るのは閉鎖的な田舎の年寄りくらいだ。大きな街に行けば気にする人間なんて誰もいない」

私は内心、しまった。と思う。また彼女を調子に乗らせるようなことを口走ってしまった。
案の上、彼女はパッと表情を明るくさせる。身を乗り出してきた。

「じゃあ、その時はベルも一緒に来てくれる?」

「何故?」

「一人より二人の方が楽しいもの。音楽も一緒。私が歌を歌うから、ベルは何か楽器をやって」

「俺に音楽の嗜みはない」

「タンバリンとか簡単なので良いのよ?」

「タンバリン…?」

「もしくはダンスなんてどう?とっても盛り上がりそう」

「……………」

私はレイシーの横で、歌に合わせてタンバリンを叩きダンスを踊る自分の姿を想像する。何というか…、凄くシュールな絵面だ。
冗談じゃない。と心の中で呟く。

722ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/31(火) 00:47:45

彼女は限りなく自由だった。何者にも囚われない風のようであった。それでいて妙に人懐っこく、気づけば心の中にするりと入り込んでくる。
花と歌が好きな彼女は、それと同じくらい故郷の町と町の人々を愛していた。
身分や貧富を問わず誰にでも優しく接し、慈愛に満ちた彼女の周りは、いつも自然と笑顔が溢れていた。
そんな彼女が羨ましかった。私にはないものを沢山持っていた。

正直に言えば、私は彼女に惹かれていた。しかもそれはここ最近、というものでもない。もっとずっと前から。そう、俗にいう所の一目惚れというやつだった。
まさかその様な不明確な現象が、我が身に訪れる日が来ようとは考えてみたこともなく、私自身驚いた。

ただ珍しくもない話ではあるが、このご時世、どこのお屋敷でも貴族と使用人の恋愛は御法度であるのが常だ。
それが本気であれ、一時のスリルを求めたものであれ、あるいはご子息ご息女の暇潰しのお相手であれ、責任を取るのはいつも決まって使用人の方だ。
今までにも危険な恋に入れ込んでしまった同僚が、屋敷から追い出されるのを実際に何度か目にしたことがある。

私の場合は自分だけの問題では済まない。母の名誉と家の名にも傷をつけてしまう。選択肢など初めからなかった。
故に私は自分の気持ちを押し殺した。その想いを気づかなかったことにした。レイシーに対する素っ気ない態度の理由がそれだった。

だが、そうしている間に徐々に辛くなってきた。
当時の私は、まだ18歳になったばかりの未熟な若造に過ぎなかった。一度抱いてしまった気持ちをなかったことにし、素知らぬ顔が出来るほど大人ではなかった。

気にしまいとするほど、彼女のことを意識してしまう自分がいた。彼女のことを知れば知るほどに、より一層その想いは膨らんでいった。
ふいに見せる彼女の、何気ない仕草に目を奪われた。目を伏せた時の長い睫毛に、恐ろしく澄んだ瞳に、陽に溶けてしまいそうなほど白くなめらかな肌に、堪らなく心をかき乱された。
彼女に触れたいと思った。抱き締めたいと思ってしまった。
まるで舵の効かない船だ。自分の心が、自分のものではないかのようにコントロール出来なかった。こんなことは初めてだった。
私はその時ほど、この身を焦がさんばかりの強い恋情に恐怖を覚えたことはない。

723ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/31(火) 01:20:16

そんなある日のことだったと思う。
私はずっと以前から疑問に思っていたことを彼女に聞いた。
万物の声が聞こえる感覚とは、一体どういったものなのか、と。
彼女は少し考え…言った。

「言葉にするのは難しいんだけど…。なんだろう…、声が聞こえるって言うよりかは、感じるとか視えるって言った方が正しいのかも。
共鳴って言うのかな?目の前を沢山の色や光がピカピカ飛び交って、温かかったり、冷たかったりして…」

「全く分からない」私は言った。

「だから難しいって言ったでしょ。私はとても大きな世界の、その一部分に触れているだけなんだもの。
でも例えるなら …、緑の芽吹く歓び。大地を潤す雨の温かさ。ささめく水と木々の優しい歌声。野を駆け舞う風の祈り。天に瞬く星々の願い。
そういったものの想い一つ一つが、胸の中にゆっくりと流れ込んでくるの。
まるでこの世界に息ずく生命の、深い息吹きに全身を包まれているかのよう。夢の中にいるみたいでとても気持ちが良いの」

「ほう」

全く分からない。二度目のその言葉は心の内に秘めておいた。
彼女の語る言葉を表面的に理解することは出来ても、その感覚自体を想像することは難しい。
神子である彼女は普段、一体何を感じ、何を視ているのであろう。彼女の抱く世界は広大過ぎて、私ごときでは触れることさえ出来ない。

「それにね、何もこれは自然に限った話じゃないの。人も同じ。歌を歌うと、側にいる人の心の在り方みたいなものも伝わってくるの」

明るい口調で彼女は続けた。直後、その瞳がふと遠のいたのを見た。ここではない、どこか別の処に想いを馳せているかのような目だった。

「町の子供達の場合は、夏の風に揺れる向日葵畑の情景が浮かぶわ。透き通った純粋無垢なエネルギー。
明るくって、キラキラしてて、皆明日に希望を持ってる。すごく元気になれる」

そこまで言うと、彼女はゆっくりと視線を戻した。今度は私の方を見つめて言う。

「貴方は雨上がりの朝顔みたい。雨に濡れた緑の瑞々しい匂い。静かで少し冷たい感じ。でも優しくて真っ直ぐで、何だか安心する」

よくもまあ恥ずかし気もなく、本人の前でそのような台詞をべらべらと喋れるものだと思った。聞いているこちらの方がむず痒くなる。
しかしそこで、はたと気づいた。

先ほど彼女は相手の心を感じることが出来る、と言ったが。つまりそれは、私がひたすらに隠し続けてきた、彼女への淡い恋情すらもとっくに見透かしていた、と言うことにはならないだろうか。

もし仮にそうだとして、全て分かった上で態と、親し気に話しかけてきたり、一緒に旅に着いてきて欲しいだなどと、こちらを当惑させるようなことを言っていたのだとしたら…どうだろう。

私は探るような目で彼女を見る。その視線に気づき、彼女がにこりと微笑む。まるで花が咲き誇るかのような見事な笑顔だった。
その笑顔が全てを物語っているような気がした。途端、火が出そうなほどに気恥ずかしい想いが込み上げてきた。顔を覆いたかった。

「…とんだ悪女だ」

私は呻くようにそう言った。

724DD ◆Hbcmdmj4dM:2017/01/31(火) 01:31:11
【森】

不意にフィアが動いた。その視線の先を辿れば、例の人物…オリジンの姿が。
流石の感知能力に感服する。

DDは直ぐ様どこからか取り出した巨大メイスを手にするが…、しかし、その後が動けない。まるで足に根が生えたように、その場に固まってしまう。

やらなければいけないとは分かっているのだ。
だが、こんな状況にも関わらず、まだ彼を傷つけることに抵抗を感じている自分がいる。もっと言えば、本能的な何かが邪魔をしているのかもしれない。

「悪い子ねぇ…、そんなに急がなくたって良いじゃない。こっちはまだ心の準備だってしてないんだから…」

軽口を叩いてみても状況は変わらない。
先程までの威勢の良さはどこへやら、DDは青褪めた顔を引き攣らせて、ただ力なく立ち尽くすばかりであった。

725アグル ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/02(木) 23:43:12
【黄昏の塔】

大義の為、か…。

「俺は四神の一人として、その本分を全うする為、あなたを討った。そしてその屍をも乗り越えて、前に進ませて貰う…。
…なんて、流石に都合が良すぎないかな。まあ、そう言うことにさせて貰いますよ。アグルが納得するかは分からないけど」

苦笑混じりに言って、レグナは静かに言葉を紡ぐ。

「愛する者の為に刃を握る…、その気持ち、俺にも分かりますよ」

彼は己が信じる正義の為に戦った。例えそれが破滅へ向かう道だと知っていても。それを言えば、自分もアグルも同じようなものだと思う。
誰が正しくて、誰が間違っているかなんて一概に決めつけることは出来ないのだ。ただ今回はこちらが勝利した。それだけの話。

レグナはユーリの亡骸に向けて、お疲れ様です。と小さく頭を下げた。そして…

「いててて…、やっぱ無茶し過ぎたよなぁ…」

崩れるようにその場に膝をつく。
限界などとっくに通り越していた。あの力は身体への負荷が大き過ぎたようだ。全身が悲鳴を上げている。

「アグルー‼」

その時、ふと何者かの声が聞こえた。誰だろうと目を向ければ、赤髪の少女と黒髪の青年がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
アグルの友人だろうか。それならば、それらしい対応をした方が良いだろう。レグナは笑顔を見せて言った。

「あー、えっと、心配かけたかな?ごめん、この通りピンピンしてるから安心して良いよ。今はもう一歩も動けないけど」

自分は何か変なことを言っただろうか。少女が驚いたような表情でこちらを見ている。

「どうしたの!?何か少し見ない間にさわやかキャラになっちゃってるけど!?さては好感度欲しさにキャラ変えを!?」

「………まあ、色々ありまして」

説明すると長くなるので、そこは一先ず置いておくことにする。

「そんなことよりさ、この塔のことなんだけど。今ここでは100年前の再現が起こってるみたいだ。
俺達はそれに選ばれた役者って訳。それらが意味するところは俺にはよく分からないんだけど、取り合えず頂上にボスがいるみたいだよ」

続けてレグナは苦笑を浮かべる。

「俺はちょっと暫く動けないと思うから、二人は先に行ってて欲しいんだ。出来れば後で合流すると思うから。無理そうだったら君らを信じて、街に帰って寝てることにする」


…………

魔物の蔓延る塔をひたすら登り、たどり着いた先は最上階の一つ手前。

未来への時間移動。黄昏の塔の再誕。
もう何が起きても驚かないつもりでいたが…、流石にこれには肝を潰した。

目の前には、もういない筈の彼の姿があった。

自分にとっては3年ほど前、この世界からすれば100年も昔…。かつてこの光景と同じものがそこにあった。

冷たく響く彼の声。
イスラは苦笑の混じった息を吐いた。

「そういうことを言うのか。久し振りの再会なんだから思い出話に花を咲かそうとか、気の利いたことは思わないのか?」

そこで彼の時間はあの時に止まったままなのだと気づく。思い出も何もないか。
そして言った。

「思うわけがない。あの戦いから少なくとも100年分の命がこの世に産まれた。その命の分だけそれぞれの人生があり、100年分の笑顔が生まれた。
もちろんそこには辛い歴史も醜い歴史もあったと思う。だがそれらを全部ひっくるめた上で今の人達がいる。
…きっと人の本質は永遠に変わることはないんだと思う。
綺麗な面もあれば、醜い面もある。強い面もあれば、弱い面もある。それが人だ。
迷い、苦しみ、時には過ち。そして笑い。皆懸命に今日を生きている。
それが生きるってことなんだと俺は思う」

726アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/02(木) 23:46:08
【ポセイドン邸】

「ユニ…?お前、なに言ってんだよ…」

ユニの様子がおかしい。どういう訳か彼女の敵意は今、自分自身に向けられていた。
しかし、その要因は直ぐに察しがついた。これが彼の能力なのだ。
先程も、ああやって参列者の不信感を煽り、不和の種を蒔いたのだろう。

「陰湿なやり方だな」

そうアブセルは毒づく。
だが、そうは言っても今のこの状況は厄介だ。ユニが邪魔で下手に手が出せない。

どうしたものかと考えていると、直後、ジルの背後から大きな影が飛び出した。そして彼に襲い掛かる。
その正体は、アブセルが吽形と呼ぶ、阿形の片割れの黒獅子だった。彼にはリトの護衛を命じ、葬儀中はずっとリトの部屋に待機させていたのだ。

(ナイスだ、クロ!)

その隙に、アブセルはユニに近寄る。

「ユニ!来い!」

彼女の腕を掴み、無理やりに引き寄せた。

727ベルッチオ(過去) ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/02(木) 23:55:49

私が闇の調査に関わってから既に半年が経過していた。その間、例の闇による被害は四件にも上った。

相変わらず調査は捗っていない。
分かっていることと言えば、私達が追っている闇はこれまでのものとは全く別種のものであるということだけ。故に我々は、そこから生み出される魔物を亜種と呼ぶことにした。

亜種が他の魔物と違うのは、人間や動植物、水や大地に至るまで、あらゆるものの生命活動の根元である、マナエネルギーを奪い取る所にある。
目撃者の言葉によれば、亜種が触れた所はたちまちにマナが消失し、朽ち果ててしまう。
そしてそれは皆が寝静まった夜深く、煙のようにそこに顕れたかと思えば、一晩その地で暴れ続けた後、朝日と共に姿を消したのだそうだ。

私も被害にあった街に実際に足を運んだが、それは酷いものだった。もはや調査するべきものが何も残されていなかった。
そこにあるのは、ただ一面に広がる荒野のみ。人が暮らしていた痕跡も、人の歩んだ歴史も、その一切が消え失せていた。
私達に出来ることは、ただその地に残った穢れを祓うことだけだった。

こういったことがあるから、また異能者に対する風当たりが強くなるのだとユリウス様は言った。
特に闇と、それを囲うポセイドンの一族の沽券に関わるとあっては、早々に解決したいのが本音だろう。ユリウス様も目に見えて、お疲れになっているのが分かる。

「何とか次の出現場所だけでも予測できれば良いのですが…」

「出現するポイントに偏りはあるが…周期はまちまちで、予測するのは難しいな…。各地の守衛に警戒を強めて貰うよう言っておこう」

こればかりはレイシーの信託も、専門外であるらしい。

本来であれば、闇の継承者がきちんとした形で闇を管理している現在、魔物が出現すること自体が考え難い。私達の知らないところで、何かが起ころうとしている気がしてならない。

728ベルッチオ(過去) ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/02(木) 23:58:15

その日は非番だった。私が神殿に赴くと、ちょうど彼女が夕方の祈りを捧げているところだった。彼女は祭壇の前に恭しく膝をつき、胸の前で手を結んでいる。美しい歌声が静謐な空間に満ちていた。
そこで私はふと、その頬に涙が伝っていることに気づいた。

「…何故泣いている?」

びくり、と細い肩が揺れ、歌が止んだ。私が来たことに気づいていなかったのだろうか?彼女は驚いたふうに顔を上げ、濡れた瞳を私に向けた。

「違うの、これは私の涙じゃなくて、この世界そのものが流している涙」

慌てて言う彼女に、私は、どういうことだ、と眉を潜める。

「今…私、この星の想いと繋がってたみたい…」

彼女は言った。

「胸が締め付けられるようだった…。
痛い、苦しいって…。すごく哀しい悲鳴が響いてた…。それを感じていたら独りでに涙が溢れてきて…」

私は彼女に歩み寄った。その涙を指で掬うようにして拭った。

「星の声が聞こえるのか?」

彼女は頷いた。

「なぜ星は苦しんでいるんだ」

更に私は聞いた。

「人間が星を穢すから、星のエネルギーを奪い続けているから。だから今、この惑星のマナ自体が枯れかけちゃってるの」

私が返事に窮していると、彼女は続けた。

「知ってる?闇ってね、本当は惑星の意志の力なんだよ。
多くの人が闇は穢れや呪いの力ってだって嫌がるけど…、本当は星の生きたいって想いの力なの。
魔物には人を襲う本能があるけど、あれは病気を直そうとして悪い菌を退治する抗体の働きと同じようなものなの。
でも今はその闇さえ人間の…今は私のお父様の管理下にあるから、星は自分の身を護ることさえ出来ない状態で…」

その話を聞いて驚いた。私の認識している闇の知識とは全く違うものだったから。

遥か昔、世界に顕れた闇を四神が封印した神話は有名だ。
人々を救った四神が英雄であることは間違いないが…。その話が本当なら、解釈の仕方が根本から変わってくる。
頭が混乱しそうだ。

「人間は悪なのか?」私は聞いた。

「星にとっては、そう…」

「このままでは星のエネルギーは枯渇し、いずれ死ぬ。そう言うことか?」

彼女は目を伏せ頷く。

「全ての人間を地上から排除すれば、星が滅びることはなくなるのか?」

「そうだと思う…。完全に元に戻るには時間がかかると思うけど」

「そのこと、ユリウス様には言ったのか?」

「うん…、でも他の人には言わない方が良いって…」

「そうだろうな…」

他の人間に言ったとしても、とても受け入れられるような話ではないだろう。なにせ近い内に世界は滅び、その責任が我々人間自身にあるともすれば、誰だって認めたくはない筈だ。私でさえまだ半信半疑なのだから。
それに不用意な発言は、彼女自身の身も危険に曝してしまう恐れがある。
頭のおかしい奴だと言われるだけならまだいい。しかし、やり場のない不安が怒りとなり、人々の非難の的にさせられ得ることも考えられるのだ。
その話を事実として証明する術がない内は、黙っているに越したことはない。

729イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/03(金) 00:48:55
リマ>
なぜ知ってるww一応ホラーゲーム(掘らアッー!ゲイム)らしいですww

そう言えば藍ちゃんロボットだったwそのロボット設定いるぅ?(笑)⬅確かにあの二人のエピソードを聞くと、仲良さげでほっこりしますね^^

マジか(笑)カルナイ凄いなww
てかサンドイッチタワーww誰が藍ちゃんに常識的なものを教えてあげて(笑)

そうですよねー…
あ、あれだ、ナディア過労で倒れる、とか⬅

ノワールはセナに対してちょっかい出してるように見えなくもないけど…?(笑)

色も塗って下さるとは!ありがたや…(人´∀`)一気に華やかになってふつくしいです!そしてナディアの目は翠だったのか

虫酸wwでもその気持ち何となく分かります
うたプリのアニメはギャグですよね(笑)ゲームもあんなノリなんですかね?w

シンドバッドは敵になっても全くブレないから大好きですよ!⬅
アラジンは同じくww白龍は…べつにどうでも…(笑)個人的に紅覇がめっちゃ成長してて、誰やお前ってなったw

Σ待ってたのかっ、遅くなってすみません(^-^;そして無駄に長くてすみませんwあと半分くらいは続きそう…、残りはもうひたすら堕ちてくだけですが⬅多分展開的にも何だこりゃ、みたいな感じになってくと思います;
若い時の爺の性格はヨハンに寄せたところがあります^^今はもうあんだけ歳食ってますからね、嫌でも落ち着くんでしょう(笑)

730メイヤ ◆.q9WieYUok:2017/02/05(日) 20:11:27
【黄昏の塔】

視界に広がる激戦の痕、ヒヤリと肌を刺す冷気。
息を切らし登り詰めた塔の一フロア、膝を着き話すアグルの姿にメイヤは安堵の息を吐いた。

シンライジ一族きっての実力者、当主のイオリをも超えると噂されるユーリとの戦いは、アグルの勝利に終わった様だ。
だが、アグルの勝利が意味するのはユーリの敗北であり、彼の死をも意味していた。

アグルの口調とソレに対するサンディの声掛けに、アグルの様子がおかしい事に気付くも、今はそれどころではないようだ。
どうやら事は予想以上に悪い方へ進んでいるらしい。

しかし、それでも。
アグルへの返事もそこそこに、メイヤは動かなくなったユーリの元へと早足で歩いて行く。

そして、膝を着きその顔へと手を出すも触れる事はせず、開かれた手は握り拳へ。
一度だけ、その拳を足下へ打ち付け、メイヤは目を伏せた。

思えばユーリも知っていたのだろう、自分の出自を。
イオリの弟ではなく、実の息子であった事を。

だが、記憶にあるユーリは自分をイオリの弟、弟弟子として見て居てくれていた。
それが植え付けられた偽りの記憶だったとしても、メイヤにとってユーリは頼りになる兄弟子であり、兄の様な存在だったのだ。

短い黙祷を捧げたメイヤは、目元を手の甲で拭い立ち上がる。
そして、振り返ってアグルへ声を掛けた。

「……アグル、くれぐれも無理はしないでくれ。
ただ、塔が崩壊する様な事になるなら、早めに動いて欲しい。
合流するにも、撤退するにも。」

その声は、硬い。

「サンディ、俺達は先に行こう。
今は感傷に浸る時間も惜しい。」

その声掛けと同時に、塔が再び大きく揺れた。
それは戦いの合図、急がなければ……

731ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/02/05(日) 20:13:36
「……全く、イスラらしい答えだな。」

問い掛けに対する答えからは、言葉通りイスラの性格を、本質を感じ取れる。
生真面目な正確はそのままに、多少年を取った彼の姿に、ヤツキはふと、笑った。

「語れる程の思い出話も無く、俺とイスラの間にあったのは戦いの記憶だけだ。
だが、いつかどこかで……酒を飲みながら語り合うのも良いだろうな。」

浮かべる笑みは柔らかく、100年前では見せなかった表情だ。
目に宿る光も暖かく、先程の冷たい声と視線とは真逆である。

「俺は世界に絶望し、希望をイスラへ託して死んだ。
預けた希望を、返して貰うぞ。」

刀に手を置いたまま、ヤツキはイスラへ歩み寄る。
そして、握り拳でイスラの胸元を力強く叩いた。

「俺達が100年の時を遡り、蘇った意味。
それは、今この時の為。

夜の闇を照らすのは月の光。
そして、月を照らすのは太陽だ。

俺とイスラ、月読と天照の力で再び闇に包まれつつある世界を、未来を。」

そして、柄にも無くお喋りが過ぎたと笑みを苦笑いへ、そして表情を真剣なモノに変える。

「行こう、俺達の命を全うする為に。」

ーーーーー

塔の麓、闇の巣とは真逆。
黄昏の塔の最上階の更に上、その頂上の空気は驚く程澄んでいた。

塔の最上部は地上を包み込みつつある外郭を突き抜けており、頂上部分は星明かりに照らされている。
冷たく澄み切った空気は高揚する気を引き締めた。

「あの時とは役者の数も役割も違う。
だが、やる事は同じだ。

世界を闇に閉ざそうとする者を倒し、世界に光を取り戻す。
その後の事はこの時代の者に任せれば良い。

100年前の残滓は、100年前の者が振り払う。
それが、俺達が今の時代に蘇った意味だろう?」

星明かりに照らされる頂上で、ヤツキは隣のイスラへ声を紡ぐ。
視線の先には闇の王女、恒星の名を頂く女性と巨大な黒獅子。

「闇の王子、セナ。
そのスペアプラン、第二候補として選ばれたスピカとレグルス。

二人は安定性に欠けていた、総合的に見ても、セナの方が器としての素質は遥かに高かった。
だが、可能性、適応性、伸び代はスピカとレグルスの方が上。

目の前のアレはその二人の完成系だ。
100年前の結末は知らないが、闇に纏わる誰かしらと戦っただろう?

ソレと同等かそれ以上。
だが、俺達ならばやれる、いや、やらなければならない。」

ヤツキは刀を抜き、構える。

「太陽と月、その光は決して交わらない。
だが、もし、交わる事があるならば。

奇跡だって起こせる筈だ!!」

そして、刃を一閃。
剣閃と共に結晶の華が咲き乱れ、流星となってステラとレグルスへ駆け抜けて行く。

「行くぞ、イスラ!!」

732ジル ◆wxoyo3TVQU:2017/02/12(日) 23:06:34
【ポセイドン邸】

(しま…っ)

迂闊だった。背後から襲いくる式神の気配に気付くのが遅れた。
付け焼き刃で発した突風で辛うじて式神を弾き飛ばす。しかし鈍い痛みが。目を向ければ、奴の爪が腕を微かに抉っていた。

「大事な商品に何してくれてんの・・・」

ジルは呟く。それが冗談なのか本気なのかは分からないが、その顔からは確かに苛立ちのようなものが伺えた。

「君って本当野蛮だよね。お姫様を奪還するにも、もう少し綺麗なやり方があるんじゃないの?ほら、その子嫌がってるよ?」

アブセルの元に戻ったとしてもユニは述に掛かったままだ。そのには必死でアブセルの手から逃れようとするユニの姿があった。

「これじゃあどっちが悪役か分からないね。」

軽口を叩きながら、しかしジルは思う。

(最悪・・・)

今のこの状況は自分が僅かに隙を見せたのが原因だ。本当はもっとスマートに行動出来たはずだ。
あの時、自分には迷いがあった。ユニを連れていくことに?・・・いや、もっと前。ヨハンを手にかけた時から、何かモヤのようなものが自分の中から消えずにいる。
しかし、今はモヤの原因を探している場合ではない。ジルは何とか本来のペースに立て直そうと、アブセルに笑みを向ける。

「ねぇ。今葬儀に出てる彼、君の王子(リト)じゃないでしょ?」

自分の不調を悟られぬように。

「可哀想に。折角抜け出せたのに、リトは君のせいで地獄に戻されて、そして今生死をさ迷っている。君がリトを不幸にしたんだ。」

態とアブセルの心を抉りつつ、そして甘い言葉も忘れずに。

「リトが奇跡的に目覚めても、もう君のことを赦してはくれないだろうね。でも、その子(ユニ)を渡してくれるなら、君が彼に嫌われないよう手助けをしてあげてもいいよ。彼だけじゃない。ナディアお姉さんも、ヨノも、本当は内心君に怒ってる。本物の闇の王子様やポセイドンのお姫様だって君に呆れてるかもね。僕は君が何を恐れているか知っている。皆に見捨てられないよう、僕が手伝ってあげるよ。」

それがどう転ぶかは分からないが、やらないよりはマシだろう。

733ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/02/15(水) 01:29:10
【めちゃんこ久し振りに気合い入れて絵描くぞい!とりま下書きー!

imepic.jp/20170215/051760】

734アグル、イスラ:2017/02/21(火) 01:22:20
【黄昏の塔】

亡骸の前で黙祷を捧げる彼は、ユーリの親族か何かだろうか。アグルと違って、その辺の事情は全く理解していないのだが、彼の所作を見ればそれが並の関係でないことぐらい推測することができる。
レグナは僅かな罪悪感に苛まれるが、謝るのも何か違う気がして、メイヤの声にただ頷くのみであった。

一方サンディも、そんな二人の様子に気がついたようで、
「ラジャー」と、おどけた調子で敬礼をしてみせるものの、それとは反して表情には隠しきれない緊張の色が滲んでいた。


…………

塔の頂。この地に立ち入るのは二回目だ。
吐く息は白く、冷たい空気に身を包まれながらイスラはヤツキの視線の先を辿る。

そこに存在するものを視界に捉え、僅かに息を呑む。無意識に「なるほどな」と小さく声に出していた。

いつかの光景が脳裏に甦る。幼い女の子の幕切れを決した生々しい感触が、まだ手に残っている。
あの勝利は決して喜ばしいものなんかではなかった。
胸に残るのは、ただただ後味の悪い気持ちと、遣るせなさ。
しかし…。

「やるしかないんだろうな…」

苦い表情を顔に宿し、イスラもまたヤツキに続き刀を構える。そして、

「お前が横にいると心強いよ」

渋面を苦笑いに変え、彼の掛け声に合わせるように一閃。
赤に彩られた炎の斬撃が、熱波と光の渦を生み出し大気を駆け抜けた。


【ヤツキさんのイラストめっちゃ久し振り!そしてめっちゃかっけぇ!完成を楽しみにしております!(^ω^)】

735アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/02/21(火) 01:31:30
【ポセイドン邸】

「こら!暴れんなユニっ!」

もがく彼女を羽交い締めにする様を見れば、確かにどちらが悪者か分からない。
しかし今はそんな些細なことを気にしている余裕はない。

なぜなら直後、ジルの発した言葉がアブセルの鼓膜を突いたからだ。ユニや他の者を容易く屈服させたその力を、身を持って体感することとなる。
耳どころか頭にまとわり付いて離れない甘言が、脳を痺れさせる。駄目だと分かっているのに、徐々に思考が霧がかり、抗う自由を奪われる。ついには、なぜ自分は目の前の彼を敵だと思ったのだろうと、疑問を持つまでに至り――

「いだッ!?」

…かけたところで、唐突に生じた顎への衝撃が全てを吹き飛ばした。
顔だけ天井を仰ぐ形で我に返り、アブセルは暫し目を瞬かせる。顎に残るジンジンとした痛みで全てを理解した。
どうやら暴れたユニの頭が、勢い余って顎に直撃したようだ。決して意図してやった訳ではないのだろうが、結果としてジルの催眠を解いてくれたのだから、今は彼女に感謝せざるを得ない。

そしてそんなユニに対し、直後、アブセルが取った行動はと言えば…。

「クロ、頼む!」

後方へ思いっきりぶん投げることだった。先程ジルに飛ばされ退いていた黒獅子が主の真意を察し、素早く移動してその柔らかい毛皮で彼女の身を受け止める。
そのままユニの服の襟首を器用に咥え、邪魔にならない程度の場所まで移動したのを横目で確認すると、アブセルは再びジルへと意識を向けた。

「…余計なお世話なんだよ…」

低く唸るような声が喉から洩れ、その頭部からは湾曲した二本の黒い角が伸び、手も獣じみた鋭い爪が生えたものへと変わる。

「多分…て言うか絶対、お嬢達は怒ってるだろうよ。リトだって俺の顔なんてもう見たくもないかもしれない。…そんなこと言われなくても分かってる。許されなくたって、嫌われたって、屋敷を追い出されたって文句なんて何も言えないってことも…」

でも、と彼は続ける。琥珀色の双眸がジルを睨みつけた。

「自分が仕出かしたことの責任すら自分自身で取れないなんて、それこそ最悪過ぎるだろ。俺はリトを裏切ったことに対する罰なら、何だって甘んじて受けるつもりだ。例えそれが鎖つきの首輪をつけられて、二足歩行も人語も禁じられて、『返事はワンだろう?』とか『靴を舐めろこの駄犬が』とか罵られて、一生リトの犬であることを強いられたとしても!」

て言うかそのプレイはもはやご褒美でしかない。
そう熱く語るアブセルは、ふいに膝を折ると低い姿勢を取り、

「つーか、リトやセイちゃんさん達のこともなんだけど…、お嬢やヨノ姉のことまで知ってるようなその口調は何な訳?
あんたのその何でも見透かしてますよー、みたいな態度が何かすっげー癪に障るんだけどっ!」

言葉尻を上げるのと同時に地面を蹴り上げ、勢いのままジルへと飛びかかる。凶爪が空気を裂き、彼を狙って禍々しい光を煌めかせた。

736ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/02/21(火) 21:12:27
【黄昏の塔】

冷え切った夜気を切り裂き、飛翔する結晶の流れ星。
その後ろを追うのは熱波の火渦だ。

迫るそれらを黒獅子は一瞥し、咆哮を上げる。
咆哮は黒き波動となって流星と火渦を飲み込み、更にはヤツキとイスラへ迫って行く。

しかし、既に二人の姿はそこには無い。
左右に分かれた二人、黒獅子の左側へとヤツキは疾走。

黒獅子がその姿を視認したと同時に、ヤツキは刀を一閃。
振り上げた黒獅子の左前脚を神刀が斬り裂いた。

一瞬の間で距離を詰め斬撃を放ったヤツキへ、黒獅子は横殴りの一撃を放つも、ヤツキは後方へ跳躍し回避。
着地と同時に刀を床に突き刺し、その切っ先から結晶の波濤が生まれ、黒獅子へと向かって行く。

迫り来る波濤へ、黒獅子は再び咆哮を上げる。
闇の波動となったそれは結晶の波濤と激突し、互いに相殺。

砕け散り、舞い散る破片と闇の残滓の間を縫う様にヤツキは再度黒獅子へと疾走。
しかし、黒獅子は距離を詰められるのを嫌ってか、眉間に皺を寄せて唸った。

逆立つ鬣が揺らぎ、その動きが止まると同時に針弾となって射出。
横殴りの雨の如く撃ち出されるそれらは舞い散る破片や闇の残滓に着弾すると起爆し、瞬く間に周囲を爆炎で染め上げた。

(流石にコレは近付けないが……イスラ、今だ!)

ヤツキは咄嗟に結晶の壁を張り、周囲を染め上げる爆炎から身を守る。
挟撃と見せかけた一方的なヤツキの攻勢は、黒獅子の気を引く為のモノ。

速度と手数の裏手、本命はイスラによる大火力の一撃だ。
不意打ちとして叩き込めば、少なからずのダメージを与える事が出来るだろう。

737マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2017/02/26(日) 15:46:14
【森】

「DD!何やってるんだい!」

その場を動けずにいるDDの横に並び、金属刃が幾重にもつらなった扇子を掲げたマゼンダが叱咤する。

「奴を殺らないと私らが死ぬんだよ!足で纏いになるくらいなら失せな!あんたのせいで犬死にするのはごめんだよ!・・・ヴェント!」

そしてその片手間に地に置かれた槍を拾い上げ力任せに宙へ投げる。ヴェントはそれを掴み取ると同時にオリジンへと切り込んだ。


ヤツキ>>
【おっけー(๑•̀ω•́ฅ)

ヤツキの絵相変わらず勢いあって好き(*ˊૢᵕˋૢ*)】

738ジル ◆wxoyo3TVQU:2017/02/26(日) 16:25:55
【ポセイドン邸】

「へぇ・・・」

ジルの言葉はアブセルを刺激するには充分だった。しかし同時に紡いだ催眠は効かず、むしろ逆効果になってしまった様子。
作戦は失敗。致し方ないか。
切りかかって来たアブセルの鋭い爪をダガーで受け止めながら、ジルは興味深げにその変貌を眺める。

「獣?面白い風格をしているね。」

片手でアブセルの動きを阻止ししながら、自由の効く方の手で新たに取り出したナイフでアブセルの体躯を切りつける。当然アブセルは避けたが、距離を取るのが 目的であったため問題ない。

「その姿をリトは知っているの?バケモノだって罵られてるあの子より、よっぽど君の方が化物だ。・・・変態だしね。」

リトに家畜扱いを受け罵られたいなどと謎の性癖を暴露され、ふざけているのか本気なのか全くもって分からない。ジルは呆れた表情を浮かべながらチラリとユニを一瞥する。
黒獅子がユニを遠くへ連れて行ってしまった。しかし、あの距離であれば"当たらない"だろう。

「オーケー、仕方ないから君と遊んであげるよ。」

懐から取り出す小箱。それを開けたかと思えば数え切れぬ程の針が宙へ浮かび上がった。

「僕のお手製ハズレ無しのクジさ。一つ一つに痺れ薬や睡眠薬やその他もろもろ・・・色んな効能をもった薬が入ってる。どれが当たるかお楽しみ。」

無邪気な顔でニッコリと笑う。

「逝っちゃえ」

その言葉と共に針が一度にあらゆる方向からアブセルへ向かい放たれた。

「この数、全部避けられるかな?」

739リマ ◆wxoyo3TVQU:2017/02/26(日) 17:56:24
イスラ>>729
カッコ内の字www
大学1年の時に友達だった子が腐女子気味の子で面白いゲームがあるって教えてくれたんです。実際やったことはないですが(笑)

藍ちゃんはシャイニング早乙女の投資で作られたロボットなので、シャイニングの莫大な財産を知らしめる為にその設定が必要だったとか?←適当
藍ちゃんルートは感情を知らない子が人の心を学ぶ事をコンセプトとしているので生身の人間で人の心が分からないとかただのクズでしかないからロボット設定にしたんじゃないでしょうか←
ところで藍ちゃんってシャイニングが求める理想のアイドル像を具現化した姿なんですよね。
レイジが良いお兄ちゃんっぷりを発揮してますからね(*ˊૢᵕˋૢ*)10も違うから藍ちゃんが可愛くて仕方ないのでしょう。実際何かのCDで藍ちゃんに「もぅ!可愛いんだからぁ!」って言ったらしいです←藍ちゃんは藍ちゃんで何だかんだレイジに甘えてるから可愛くて可愛くて←

まぁカルナイライブ抽選券が入ってたので大量買いした人らが数しれずいたのも原因ですがね←
てか聞いてください。今度カルナイが二手に分かれてデュエソン出すらしいんですが、そのジャケ?の藍ちゃんが堪らなく可愛いんです。蘭丸パイセンの肩に肘置いてる奴です、是非検索してみてください← 何この勝気な笑顔、生意気で可愛い。あ、見てたら鼻血が・・・←←

藍ちゃんに常識を教えるのはレイジの役目・・・と思ったんですが、レイジはふざけ始めるのでダメですね。常識を教えるのなら蘭丸兄貴の役目でしょう。

疲労かぁ・・・ナディアって疲れるのかな←

ノワールはあれです。自分の容姿と魅力に絶対的な自信を持っているので、その自分を前にして全く靡かなかったセナのことが気に入らなくてムキになってるんです。しかもそんなセナの心を動かしたのがリマみたいなチンチクリンなので余計に自尊心が傷つけられて腹が立って仕方が無いのです。
そして自分、リマとセナのどちらがより相手を好きかを考えてみたのですが、セナはリマのためとあらば殺しだろうが何だろうが顔色一つ変えずにするでしょうし、たとえ突然変異してリマが男になったとしても動じないでしょうから勝負にならないと気づきました←

ナディアは翠です。髪は赤茶です。何か希望の色ありました?変更可ですよ←

どうでしょうwwwただ、ゲームだと動きがないからあんなギャグを醸し出せないかもしれない(;・∀・)

シンドバッドは味方な時も好きになれなかったので・・・←
どうでも良いだと・・・!?個人的に白龍は前髪アシンメトリーの時の方がカッコよかったのに真ん中分けに戻っちゃって残念です。
マギのキャラって実際成長するから凄いですよね(笑)


続きも楽しみに待ってます(*ˊૢᵕˋૢ*)
なるほど!たしかに爺さんになってもあの性格だと嫌ですね(笑)

740フィア ◆.q9WieYUok:2017/03/02(木) 00:32:33
「いやー、間に合って良かったよ。」

741ジーナ ◆.q9WieYUok:2017/03/02(木) 00:34:09
「いやー、間に合って良かったよ。」

そして、焦りを見せない声と共に姿を現したのは、十三人の長老が一人。
異端の長老、ジーナだった。
爆砕し、焼失し、それでも尚、ごく当たり前かの様に蘇るオリジンの姿から目を離さずに、ジーナは長老達へ声を掛ける。

「ホントは出て来るつもりじゃなかったんだけど、状況が変わってね。
ここは僕が……いや、私がヤる。

皆は障壁を張って、防御姿勢を!」

そう言うや否や、ジーナは今まで見せなかった力を全開に。
オリジンが放つ蛇鎖の群れを空間ごと圧縮し、粉砕。
続いて放たれた重力波の渦を、手にする魔導書の背表紙で受け止め、その場で360度水平回転。
重力波をそっくりそのままオリジンへと返し、その姿がフェードアウト。

「……!!」

迫る重力波の渦へオリジンは手を翳し、術式が発動。
純白の翼がその背から伸び、羽ばたくと同時に舞い散る羽が龍となって渦を飲み込んだ。
そして、ジーナの姿を探すオリジンの背後。
姿を現したジーナは抜き手を放ち、オリジンの胸元を貫く。

口腔から溢れる赤に肌を染め、オリジンは目を見開いた。
だが、動きを止めたのは僅か一瞬。
背後から胸元を貫くジーナの腕を掴み、爪を食い込ませてジーナへの侵蝕を試みるが、ジーナの狙い目はソコだった。
抜き手とは逆、空いた左手が魔導書を……“原典”を開く。

開かれた“原典”はその殆どの項を術式符へ姿を変え、オリジンへと殺到。
少女の様な、少年の様な姿を埋め尽くさんとばかりに舞い、貼り付いていく。
そして、その小柄な身体が術式符で埋め尽くされたと同時に、術式が発動。
広がる術式印が極彩色に輝き、色鮮やかな蛇鎖がオリジンを縛り上げた。

更に、呼吸すら封じられたオリジンを、開かれた虚空が呑み込み、その姿は消える。

「……ふぅ、思ったより早く終わったね。
一応は私の術式で封じ込めたけど、力の大半を使っての封印だから、私は暫く動けない。」

殆ど背表紙だけになった魔導書を閉じ、ジーナは大きく息を吐く。
赫々と輝いていた瞳も今は暗く、その表情からは疲労が見て取れた。

「さ、後はちょろちょろっと説明と指示を。
今、この十字世界と表裏一体の表側、現世が黄龍とその他諸々によって滅びかけてるの。

表側が滅びれば、当然裏側も同じ。
そして、表側を救うにはノワールや闇の王子の力が必要。

なので、ノワールと闇の王子には表側を救う方に回って貰います。
その間、裏側の長老達は各自修練とオリジンを倒す策を。

勿論、オリジンを倒すかどうにかするにもノワールと闇の王子が必要なので、表側を救った後には裏側へ戻ってもらって……
その間、オリジンは私が封じ込めておくので。」

以上かな?と、ジーナは一度言葉を切り、長老達の返事を待った。

742フィア ◆.q9WieYUok:2017/03/02(木) 00:37:24
【森】

この期に及んで未だ迷うか。
躊躇いを見せ、動きを止めたDDへとフィアは思いっ切り舌を打つ。
戦闘態勢を取るマゼンダと斬り込むヴェント。
二人のコンビネーションは流石だが、時既に遅し。

僅かな一瞬、DDが見せた一瞬の迷いが致命的な“間”となって、長老達へ襲い掛かる。
フィアの絶対零度を圧倒的な熱量で相殺し、揺らめく大気を斬り裂くヴェントの一撃を指先で受け止め、オリジンは幼い顔を笑みを浮かべた。
無機質な笑みとその瞳は長老達を睥睨し、その足元からは夥しいまでの蛇群が這いずり、長老達を束縛していく。
それはこの世界には存在しない術式の一つであり、如何に長老達であっても破る事の出来ない縛鎖。

ギリギリとその身を縛り上げる蛇鎖から逃れる様にフィアは身を捩るも、抜け出せる気配は無い。
その身に宿す絶対零度も、吸血鬼としての剛力と空間転移能力も発現せず、フィアは顔を歪めた。
見慣れない所かこの世界に存在しないその術式は、長老達の力を封じ込め、吸収していく。
脈打つ蛇鎖がそれを如実に現しており、オリジンは笑みを深くする。

だが、不意にその笑みが物理的に割れ、オリジンの頭部が爆砕。
続く小柄な身体が燃え上がり、足元から伸びる蛇鎖も焼失していく。

743 ◆.q9WieYUok:2017/03/02(木) 00:39:14
くおお投稿ミスった、レス前後してます申し訳ねぇ

744イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/03/12(日) 22:29:41
【黄昏の塔】

熾烈を極める攻防戦を横目に、イスラは燃ゆる翼をはためかせ上空へ上がる。
不思議なことに、言葉を口にせずともお互いがお互いの役割を自然と心得ているようだった。

塔の最上階よりも更に上。下の様子が手に取るように分かる距離まで来ると、イスラは眼下を見下ろし、黒獅子と相対するヤツキの姿を瞳に映した。
久しぶりに見る彼の剣筋は嘗ての頃と一切の遜色なく輝きを放っている。いや、むしろそれ以上のものか。
状況が状況である為、ゆっくり観賞できないのが残念だ。…などと、こんな時にもそのような考えを巡らせていることが仲間達に知れたら「剣術バカ」と呆れられるかもしれない。

沸き上がる感慨も程ほどに、白い息と共に雑念の全てを吐き出し、イスラは一撃に集中する。
額に日輪の印が浮かび上がるのと同時に、刀に宿る力の全てを解放。神刀の目覚めに呼応するように大気が打ち震え、刀身は神々しいまでの輝きに包まれた。

直後、イスラは勢い良く翼を打つ。落下とも下降ともつかない体で一気に中空を疾走する様は隕石の如く。
巻き起こる爆炎ごと、空気も音も斬り裂いて、燃やし尽くして、黒獅子の首筋へ最大火力の一撃をお見舞いした。

「―その首、貰い受けるっ‼」

745アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/03/12(日) 22:31:08
【ポセイドン邸】

「変態は余計だっつぅんだよッ!」

ジルの挑発にアブセルは声を荒げて反論する。
その性格故か、相手の売り言葉に逐一黙っていることの出来ない彼にとって、ジルはある意味で最も相性の悪い相手だといえるだろう。
しかもそれが正鵠を射たものともなれば尚更だ。

しかし実のところ、ジルに化物だとか変態だとか言われても痛いところは何もないのだ。ただそれが"リト"になると話は変わる。
この姿のことを、もちろんリトは知らないだろう。アブセル自身、これはつい先日深淵に潜った際に会得したばかりの力なのだから。

半魔化…または憑依召喚は彼の血族に受け継がれる御家芸の様なものなのだが、アブセルはこれが好きではなかった。
理由ははっきりとしている。そう、化物みたいだから。魔獣を使役するのでさえ抵抗があるのに、あろうことかそれと融合し己自身を魔と変えるなんて化物以外の何者でもない。
よって、祖父が闇の扱い方を教えると言うその都度、アブセルはそれから逃げてきた。リトを苦しめる闇の力になんか頼りたくない、と言う其の実、こんな姿を見せれば彼や彼の姉達に嫌われてしまうかもしれないという怖れがあった。

だがそれも以前までの話だ。ここ最近の騒動でリトを今のような状態にしてしまったのは、そういったことを含めた自分の弱さが原因だったと後悔し、彼を護る為なら己が持ち得る力は何だって使うと、心に決めたばかりだったのだ。…が、不意打ち気味に指摘されるとやはり何かしら堪えるものがある。

心の乱れは動揺を生み、動揺は隙をつくる。
一瞬だが全方位から襲い来る飛来物に対応するのが遅れてしまった。そしてこのような状況下では、その一瞬が命取りになるのはざらである。

身につけているシャツと下穿きの隙間から化物の片鱗が新たに顔を覗かせる。白い毛皮に被われた長い尾が勢い良くしなり、風圧で周囲の針を一掃する。
尾で落としきれない分は身を低くして潜り抜けるように躱すが、始め躊躇したのが原因か、足や肩に数本針が刺さってしまった。
だが―…

「――こんなもんが俺に効くかよっ!」

アブセルはそんなものお構い無しとばかりに、ジルに肉薄し彼の脇腹に回し蹴りを放つ。
半魔化し毒物の類いが効く難くはなっているのは確かだ。だが完全ではない。

「………っ」

蹴りの直後、体勢を直すことも儘ならず、そのまま崩れるように床に膝を付いてしまった。

746ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/03/24(金) 18:53:55
【黄昏の塔】

好敵手として刃を交えたからこそわかる、その強さ。
口にせずとも伝わる意図に頷くヤツキは、自身の連撃から続くイスラの会心の一撃に拳を強く握った。

彗星の如く夜闇を、空を切り裂き。
連続する爆発ごと全てを吹き飛ばす一刀。

その威力は凄まじく、結晶障壁が砕け散る程。
拳を握った手を顔に翳し、ヤツキは噴煙が止むのを待つ。

そして、噴煙を吹き飛ばす咆哮に僅かに顔をしかめた。

(……あれ程の一撃でも倒せないだと!?)

翳した手を下ろし、構えた神刀の切っ先。
頭部損傷、右半身消失、瀕死どころか即死してもおかしくないダメージを受けながらもその動きを止めない黒獅子の姿があった。

咆哮を上げるその姿は、後方に浮かぶ恒星の女神から供給される闇の力によって、秒刻みで再生している。
そう、ここは闇の巣に聳え立つ黄昏の塔。

闇を操る者にとっては、無尽蔵に力を奮える場所なのだ。
女神から黒獅子へ、逆もまた然り。

「どうやらニ体同時に倒さないといけないらしいな……」

しかめたい顔を、目元を歪めてヤツキは黒獅子を睨んだ。
だが、睨むだけで動きはしない。

否、動けない。
イスラと同時に全力の一撃を放てば、どちらか片方は確実に倒せるだろう。

しかし、片方を倒した所でもう片方が再生、蘇生させるのは目に見えている。
ならばどうするか……考える暇は、ない。

足元に落ちる影、それは瞬く間に広がり、破砕音と共に瓦礫の飛礫が舞う。
一拍前まで自分が立っていた場所には、飛びかかって来た黒獅子の姿。

後方へ跳び、着地と同時にヤツキは疾走。
抜きはなった刃と、黒獅子の爪牙が幾度とぶつかり合い、闇と結晶が戦いを彩る。

考える暇は無い、しかし考えなければならない。
矛盾を刃に乗せ、閃光が瞬く。

ヤツキの背から伸びる結晶の翼が羽ばたき、黒獅子が巻き起こす闇の大渦を相殺。
彗星の如く舞い降りる剣士の一閃が黒獅子の半身を斬り捨て、同時に放たれた黒獅子の豪腕が剣士を捉えた。

747ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/03/24(金) 18:55:10
ーーーー

全く、当主が行方をくらましたおかげで一族は衰退、盛り返す為に上層部が手を出したのは制御しきれない“闇の悪神”
アンタ……いや、テメェのせいで一族は滅茶苦茶、俺の息子も弄くりまわされた。

まぁ、今となっちゃあ過去の事だがな。
あぁ?謝るのは許さねェ。

テメェは諦めたが、俺は諦めねェ。
一族最後の当主として、きっかり責任持って一族を滅ぼしてやんよ。

今更話す事もねぇしな、だが、これだけは渡しておく。
俺はもう会えねェが、アンタは“塔”で必ず出会う筈だ。

その時、渡してやってくれ。
そんで一族を捨てた事はチャラにしてやるよ。

頼むぜ、逃げ出したとは言え、アンタは未だ歴代最強の当主として謳われてるんだからよ。

ーーーー

振り抜かれた豪腕の一撃は、見に纏った結晶の鎧を薄氷の如く、薄紙の如く砕き、引き裂いた。
渾身の一刀に対するカウンター、互いに防御を省みないソレは致命傷をもたらす。

しかし、無尽蔵に闇が溢れるこの場所では、黒獅子への生半可な攻撃は意味を成さない。
すぐさま回復し、再生するその様に対して、ヤツキは無様に吹き飛び、転がっていた。

辛うじて受け身を取るものの、左脇腹は大きく抉れ、肋骨の数本は身体を内側から突き破ってその白さを露わにしていた。
刀を支えに立ち上がるも、足元には朱が広がる。

傷口を結晶が被い、塞いで行くもあくまでも応急処置。
たったの一撃、されど一撃は重い。

(啖呵を切ったが、これじゃあ様にならないな……)

血溜まりに目を落とし、ヤツキは小さく息を吐く。
思い出すのは弥都で会った男の言葉。

彼に託されたのは、“二本”の神刀。
手にする月読とは別、腰に刺さるもう一本のソレを、ヤツキは片手で抜き放った。

「神刀“火之迦具土神”
迦具とは輝くの意、即ち輝く火の神が封じられし神器。

あの男……今世の当主は言っていた。
二本の神刀が重なりし時、叢雲の剣が生まれると。
だが、本来ならば天照と月読が重なる事で生まれる剣。

ならば、 神刀火之迦具土神の存在意義は……神器となった月読と、神魂となった天照が重なり合う為の依代。

神器と神魂ではなく、神器と神器。
俺が今から生み出すのは、叢雲の剣ではない。」

小さな呼吸は心身を落ち着かせる為。
抜きはなった二本の神刀を、ヤツキはゆっくりと重なり合わせる。

「出でよ、神刀。
荒々しく雄々しき嵐の神刀、“凄王”!!」

748ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/03/24(金) 18:57:11

「出でよ、“凄王(スサノオ)”!!」

重なり合う二本の神刀は共鳴し、共振し、光が溢れ出す。
眩い光は夜の闇を、溢れ出る闇を切り裂き、その周囲を青白く染めた。

そして、光がその明るさを絞ると同時に。
新たに生まれた神刀を手に、ヤツキは猛々しく声を上げた。

その声は大気を震わせ、闇を相殺し、塔をも揺らす。
蒼を基調にしたトリコロールに蒼碧の宝玉が鍔元を飾る神刀は、絶え間なく振動し、それによって発生する結晶の波動がヤツキを包んでいる。

「仕切り直しだ……行くぞ!!」

言葉尻は後方へ置き去りに。
煌めく光の尾を引き、飛び出す姿は彗星の如く。

黒獅子が放つ闇の大渦へと真っ向から衝突し、蒼白の光が大渦を斬り裂いた。
裂け目からは結晶が噴出。

闇渦を抜けたヤツキは、これは危険とばかりに後退する黒獅子に肉薄し、勢いそのままに刺突を繰り出す。
神刀が宿す燐光が、身を捩って回避しようとする黒獅子の左半身を消し飛ばし、続く結晶の刃嵐が、残る半身を斬り刻んだ。

更に、すぐさま再生し回復する黒獅子へとヤツキは攻撃を畳み掛ける。
神刀が煌めく度に、生まれる結晶刃嵐と蒼白の奔流。

一撃一撃はイスラの全力に及ばないが、連撃となれば話は別。
再生し、回復するよりも迅く。

荒ぶる蒼白の神刀が、黒獅子を肉片一つ残さず、この世から消滅させた。

749DD ◆Hbcmdmj4dM:2017/03/30(木) 21:34:37
【森】

オリジンの脅威はジーナの手によって辛くも防がれた。
そのことに安堵の息を吐くも、しかし、彼の表情は晴れない。

「ありがとう、ジーナ。アナタが来てくれなかったらどうなっていたか…」

先程の自分は明らかに皆の足手まといだった。
オリジンに手を下すのを躊躇したばかりに、仲間達を危険に晒してしまった。
その事実に、DDは自分自身への嫌悪感と罪悪感で胸が一杯になる。

「ごめんなさい、皆。アタシ…次までには確り気持ちを固めてくるわ」

言って、DDは一同に背を向けると、ふらふらと頼りない足取りでその場を後にした。



リマ>
ああ、なるほど。心のない人形やロボットが徐々に成長していく話って何か良いですよね^^
てかレイジと十歳もはなれてるのか…!歳の離れた兄弟みたいですね

マジか…(゜ロ゜;自分にはとても真似できない(笑)金銭的にも情熱的にもw
鼻血ww検索してみました、確かに可愛い(笑)でもそれよりカミュ…だっけ?の色気にときめきました(笑)

疲れないとか、どんだけ超人なのナディアww

あー、ノワールっぽいですねぇ(笑)超かわいい⬅圧倒的かわいい⬅
てかセナの愛が深すぎて凄い(笑)性別変わったら流石に気にしようよw

いえ、そういう訳じゃないですwただイラストで髪色とか分からない場合、いつも適当に塗っちゃてるのでごめんなさい、的な(笑)

確かにwwリマさんゲームの方はしないんですか?

シンさんもシンさんで色々頑張ってるじゃないw
ああ…、何か白龍ダサくなったな、とか思ってたら、そうか髪型が変わってたのか⬅
子供ぽこぽこ産んでますしね(笑)

750イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/03/30(木) 22:20:04

【レイシーとじじいの過去話考えるに当たって、何かこの世界の設定的なものも自分なりに考えてみたので、ちょっと聞いてもらっても良いですか?⬅

なにぶん世界の意志(黄龍、ユニ)がお二人のキャラなので、勝手に考えるのは不味いかな〜とか思いつつ…止まらんかったよね!⬅
まぁただの一案なので、不都合があるようなら言ってください^^


まず、この世界を構成する核が二つあります(核の中に宿っている意志が黄龍とユニ)
ある時その内の一つが何者かによって破壊されるんですが…

【応龍さんの場合】

核の一つが破壊されたことで、惑星のセキュリティシステム的な役割の闇が世界に溢れ出す。

闇と神々の戦争が勃発。
まだ顕在の頃の四神が闇を封印する。

しかし闇の大元である核も一緒に封じられ、惑星のマナを作り出す機能が完全に停止する(マナはマギで言うところのルフみたいなものです。多分)

ただ惑星自体のシステム(エネルギー循環、生命の創造、各生態系の維持など)は起動したままなので、マナの供給を失った星は、一方的に生命力を削られることになる。

生命は星の意志とは外れたところを一人歩きすることになり、混沌の時代が訪れる。星はゆっくりとだが、確実に弱っていく。

セナ達の時代、黄昏の塔での一波瀾で、やっと黄龍さん封印から解放される。

結論「っべーわ、一度世界を壊して、システム組み直して作り直さないと、マジべーわ」⬅今ここ



【ユニさんの場合】破壊された方の核

依り代である核を破壊されたことで、そこに宿る星の意志も消滅の危機に瀕する。
その前に適正のある人間(黄昏の花嫁)の中に宿って、一先ずそれを依り代とする。

闇で荒んでしまった世界を正しい方向へ導くため人々に尽くす。が、裏切られて散々な目に合う。
器自体は人間なので寿命は短い。輪廻転生を繰り返す度に多くの悪意に触れ、人間に絶望する。

黄昏の花嫁であるレイシーに宿る。(ユニ、ふて寝中)なんやかんやあって中身だけバロンの手に渡る。

ユニ(絶賛、記憶喪失)今の肉体はバロンが造ったホムンクルスみたいなものだと思う。
現在の黄昏の花嫁、フェミル(ユニの核になる存在、ユニの辛い記憶は多分ここにある)



…みたいなことを勝手に考えてたんですが…どうですかね?(´ω`;)
頭の悪そうな説明ですみません;

レイシーの過去話でやりたいのは、ユニの過去やバロンの手に渡るまでの話です。
あ、初めの方で惑星の核破壊したのは多分、バロン…かなあ?

もちろん、「その設定はちょっと困るわ〜」とかあったら正直に言ってもらって構わないので!
もし二人が考えている今後のネタとかに支障をきたすようなら不味ですし…、独り善がりの考えなので、とりま意見交換お願いします^^】

751ジル:2017/04/02(日) 22:00:18
【ポセイドン邸】

「痛いなぁ・・・」

蹴りを受けた腹を抑え、ジルはアブセルを睨む。が、彼の目に入ったのは膝を付き動かなくなったアブセルの姿だった。
毒針を受けてもなお動くことに驚いたが、毒針は着実にアブセルの身を蝕んでいたようだ。

「よかった、バケモノでも人間と同じ毒にやられるんだね。」

言いながらふと視線を後方へ向ける。逃げ出さないようにか、未だアブセルの式神に加えられたままのユニは諦めたようにその場に留まっている。

「・・・」

式神はアブセルの氣で動いているはずで、つまりは主である彼の息の根を止めれば、自ずとユニも手に入る。

「早くカタを付けよう」

ジルの周りの空気が固まり、大きな刃の形を模す。
標的は暫く動けない。狙いを定めるのは簡単だ。

"意味を成さない妬みなんて持ってないでさ、君がこの子を護ってあげなよ。"

遠き日に一度きり出会っただけの少年の言葉など、アブセルは覚えてはいないだろう。
しかしその言葉はアブセルの心を少なからず動かしたようだ。くだらない嫉妬心から奉公先の子の身を危険に晒したあの時の少年は、今はその子を必死に護ろうとしている。

こんな形で再会などしたくなかった。

「ごめんね」

具現化した刃がアブセルへ勢いよく放たれた。

しかし、

「!!」

真っ直ぐに放たれた刃は寸での所でアブセルから狙いをはずしあらぬ方向で爆ぜた。
アブセルの方へ駆け寄る人物の姿が目に入り、驚いたジルが瞬時に方向を変えたのだ。

「何・・・してるの?」

ジルが気付かなければ刃は彼女諸共貫いていたはずで。
ジルは普段の彼から検討も付かぬ苛立ちをその顔に浮かべた。

「危ないじゃないか、ヨノ。」

アブセルとジルの間に立ったヨノは負けじとジルを睨みつける。
彼女は葬儀場にいたはず・・・騒ぎを聞きつけやって来たにしろ、この中に割って入るのは無謀過ぎる。

「死にたいの?」

「ジル・・・、貴方こそ何をやってるの?」

何をやっているのか、それは一目瞭然だろう。
両者は睨み合ったまま暫し時が止まった。

「アブセルちゃん」

先に動いたのはヨノのほうだった。あろう事かヨノはこの状況下でジルへ背を向けて、アブセルの身を案じたのだ。

「大丈夫?」

そこはポセイドンの血筋なのか。毒にやられてると察した彼女はアブセルへ治癒を施そうと手を伸ばす。
しかしそれは叶わなかった。

「!?」

ヨノの周りを風が舞い、ふわりと彼女の身を持ち上げたのだ。

「邪魔しないで」

ヨノはもがいて抵抗を謀るが、彼女が動くとより風は彼女を強く拘束する。風はそのまま彼女を攫い、近くの壁に縫い付けた。

「ジル!これ嫌・・・放して!」

ヨノは訴えるがジルは聞き入れない。
彼女が現れてからというもの、明らかにジルの様子がおかしい。
彼は明らかに苛立った様子で無理作った笑顔をアブセルへ向けた。

「命拾いして良かったね。」

752ヴェント、マゼンダ:2017/04/02(日) 23:05:14
【森】

ジーナが話を進めるにつれヴェントは人知れず眉を潜めていく。その気配を察したマゼンダは「ヤバイな」とふと思う。

「・・・ノワールは今、闇の王子と一緒なのか?」

やはり彼が気にしたのはそこか。

「落ち着きな、ヴェント。」

「そいつはノワールを孕ませた相手だろう?」

違う、と否定したかったが、ヴェントの言葉を受け悪戯な笑みを浮かべたジーナを見て、マゼンダはまさしくその相手であることを悟る。しかしヴェントに知られては面倒だ。

「何言ってるんだ馬鹿。ノワールがあっちの世界に行って一体何百年経ってると思ってるんだい?あの時の王子はとっくに逝っちまってるよ。ジーナが言ってるのは力を受け継いだ子孫の事だろう。」

「別に女を作ったと?」

「あーもう、ノワールの事になると面倒だね。ノワールとそいつはクールな関係なのさ。目的は二つの異種なる力を継ぐ子供を作ること。そこには何の感情もないんだよ。」

とにかく、今はジーナの言うと通り各々力を養うしかない。
余計なことは考えるなとヴェントを叱咤しながら、マゼンダは彼を引っ張るようにして部屋を出ていった。

753ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/03(月) 00:47:22
設定と過去話練ってくれてありがとっす!

とと、実は一応イオリ辺りにちょろちょろ喋らせてた世界の根幹設定がありまして……
長くなりますが、イスラさんの案を取り込んで更に設定加えつつ説明しまっす!

前提として、元々この世界自体が欠陥品なんです。
とある世界AのコピーA”が破壊、再構築されたのがa”(この世界)

欠陥部分を埋めてa”をA”にする(出来る)因子を保有するのは、現世四神組+メイヤ+アブセル+リト+ノワール+ジル

理由としては、現世四神組+リト=100年前に開かれた“闇”(世界Aから来た闇を含んでいる)に触れた前四神組の血縁者であるから。
アブセル=その場にいたジュノスの血縁者
メイヤ+ノワール=Aに生きる人物の血縁者

世界Aに生きる(生きていた)人物、Aから来た人物=ルイ+ジーナ+Mr.K
A”を作った者=シン(雷使い)=新雷寺の始祖

因子が濃いのはリト(ルイの加護)ノワール(ジーナの血縁)メイヤ(新雷寺の者)

てな具合で、ジルもまたポセイドンと闇の王子の家系(やんね!?)なので因子持ちと。

二つの核=陰(ゼロ)陽(ユニ)は実は欠陥品の為に完全に機能しない、いつかはシステムエラーを起こす。
バロンが核を壊した=実はシステムエラーが発生しており、壊れた様に見えた。

核と同等の存在物質=魔玉
核に成り得る存在=ジル(核であるゼロが姿を模した故に、ゼロをジルと誤認識する)

とかどうでしょう?自分としては世界は欠陥品で、元々あった世界のコピーの……を前提条件として置いてくれれば因子云々後はお任せで良いかな、と思ってます。

754リマ:2017/04/03(月) 00:50:40
イスラ>>
【しかも藍ちゃんには出生の秘密があるもんだから、心が芽生えたが故に自分の運命に苦しむことになって、嶺二の優しさも信じられなくなって、兎に角涙無しにはプレイ出来ないそうです。
因みに自分、藍ちゃんの歌も中の人の歌も買い漁ってますがただ一つ、藍ちゃんの歌のwinterblossomだけはどうしても聞けないんです。藍ちゃんの遺言書みたいなものなので、聞いてるうちに悲しくなってマジで涙が込み上げて来て最後まで聞けてないんです。結末は知ってるんで藍ちゃんは無事ってことも分かってるんですけどどうしても聞けないんです。(大事なことなので3回も言いました)

まさにそんな感じですね、ダメダメな兄貴としっかり者の弟。弟はいつも兄貴の世話をやいちゃう苦労人だけど、それでも困った時には真っ先に頼っちゃう。可愛い←
ついでに他三人皆成人してる中で1人だけ15歳混ざってるの最高に可愛くないですか←成人に混ざって意味を理解してるのかしてないのかエロい歌詞歌ってるのめちゃくちゃ可愛くないですか←
15歳のいたいけな少年に「跪きなよ」とか歌わせる事務所最高に変態じゃないですか←

自分も同じもの何枚も要らないので買う気はしないです。しかし、この前久しぶりにあった友人にそのライブてっきり行ったかと思ったと言われて、え?ってなりましたwww
え、まさかのカミュwwwまぁあのジャケのカミュが何気にイケメンなのは認めますが・・・自分の中のカミュはお笑い担当なので← やっぱり藍ちゃんが可愛くて一等賞です←

きっとナディアは適当に手を抜いて生きてるから疲れないんです(笑)
てか話逸れますが、ナディアの初恋の相手はトーマと言うどうでもいい設定思いつきました←

圧倒的可愛いとかwwwイスラさんどんだけノワール好きなんですか(笑)
セナは色々無頓着なので←リマを女として好きというより、多分「リマ」が好きなんだと思います(笑)

ゲームはハルカと恋愛させなきゃいけないので・・・←

えーでもやっぱヤダ←
髪型って重要ですね←←
何処かでストックしてくれないとオッサンになっちゃう←


イスラさんの設定の説明が面白すぎて(笑)
自分は大賛成です!その設定のおかげでキャラ達に新たな設定が浮かびそうです(*´罒`*)
ただ、核を破壊したのがバロンとか、今自分の中でバロンが悪いヤツになってる・・・(笑)そしてユニの体がバロン作と知って、あの乳はバロンの趣味なのかと面白くなってます(笑)

何はともあれそんな大規模な設定思いつくイスラさんすごい←】

755リマ:2017/04/03(月) 02:38:04
おお・・・!ヤツキの案でさらに壮大な設定が・・・!!

うんとね、ジルは四神側の血縁ではないんだけど、黄昏の花嫁の血縁ではあるよー。
もともと黄昏の花嫁はレイシーだったってイスラさんの話聞いて思いついたんだけど、歴代の黄昏の花嫁をね、レイシー→ミレリア(リト母)→フェミルにしようかなって。
黄昏の花嫁は純潔な少女である。神の花嫁とされることから、人間の男と婚姻することは許されない→レイシーは爺と関係を持ったことで資格がなくなった→レイシーの血筋であるミレリアが次の器に。しかしミレリアに恋をしたトーマ(ジル父)が彼女を手に入れたいが為に何らかの方法でミレリアから花嫁の資格を奪った(方法は未定)。その際に黄昏の花嫁を生み出す血筋がトーマ側へ移る→フェミル誕生。素質申し分なく、黄昏の花嫁へ。

黄昏の花嫁も世界構築の因子だから、ジルも因子であることに代わりはないのかな?

取り敢えず二人の設定は大賛成です!自分全然思いつかないんで本当すごいなって尊敬しちゃいました(/ω\*)
またまたイメージが膨らみそうです(๑•̀ω•́ฅ)

756ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/03(月) 21:23:45
ジルさんリトナディアの異母(異父)兄弟かはとこ従兄弟辺りだと思ってた、申し訳ないorz
ジルも因子持ち(レミリアが持っていた花嫁の力と一緒に因子も移動した)で良いかな?
因子云々okでたらだけど……

後A”を作った人物=シンは間違いで←
A”を作った人物はa”にてシンライジと名乗った(由来は件の人物のライバル、雷使いのシンと言う人物から)

本編アブセルvsジルが熱かった、是非ともリト+アブセルコンビvsジルも見たいっす←

あ、取り敢えず前下書きした分一応完成したんで投下!
デジタルむずすぎぃ!
imepic.jp/uploaded/20170403/763520/8Frv

757イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/04(火) 01:25:43
二人ともありがとうございます!(^ω^)お二人のおかげでイメージが固まってきました!

なるなる、了解です。
どのみちシステムエラー発生するんなら、バロンが手を出す必要もないかなぁ

ちょっと仮定の話として聞くんですが…
もしバロンが悪役になった場合(この世界を自分の都合の良いように作り替えたいが為、邪魔な黄龍を始末しようと四神組を誘導)、何か不都合とかあります?

いや別段、悪役にしたい。って訳でもないんですが。こういう流れも有りかなーって思い付いたので確認程度に…。

あと黄龍自身は、この世界がコピーの欠陥品であることとか、欠陥部分を埋める為の因子のこととか…は知ってて動いてる感じですかね?


リマ>
そうなのん?そんなこと言われたら、その歌ちょっと聞きたくなるじゃないですか(笑)

まぁ他が成人してる中一人だけ若い子いたら、可愛がりたくなる気持ちも何となく分かりますね
最高に変態ww何を言っているんだ君はww

あれ?リマさんライブ行かなかったの?⬅
え、あの人お笑い担当なんだ?(笑)

(оωо;)マジか、自分の父親と同い年の人を好きになるなんて……、いい!ですね!歳の離れた恋愛好きですよ!⬅

だって、プライド高い子が残念な扱い受けてて、結果としてアホの子みたいに見えるんですよ?ノワール最高じゃないですか⬅
ああ、何か納得(笑)

あれ?そう捉えちゃうの?(笑)
ギャルゲとか乙女ゲーって普通、主人公を自分の分身として見て、疑似恋愛を楽しむものじゃないっけ?(笑)

良かった、賛成してもらえて安心しました^^
バロンは場合によっては悪い人になるかも…
乳に関しては妥協しない男、バロン⬅


ヤツキ>おおぉ!すごい!流石の勢いです、格好いい!
てか今回はデジタルなんですね、次回もお待ちしてますよ^^⬅

758ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/04(火) 13:58:29
イスラ》黄龍は気付いて無いパターンで、死に際とかに「そうか、元より壊れていたのだな…」と言った風な最後を考えてました。
が、闇落ち(?)バロンに真実を突き付けられて絶望とかも面白そうです←

今の所欠陥品云々を知るのはイオリのみで、シデンさんも戦闘中に会話して知るかも?(寧ろもう話した気もする)

悪役バロンの件は俺は良いと思います、終盤でのドンデン返しとか面白そうかと!

いやー、アナログ最強っすわ、タブレットじゃ絵描いてる感覚になれないorz

759ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/04(火) 14:07:53
あ、欠陥品云々因子云々はジーナとルイも知ってる(設定的に)ので、ルイ経由でリトやナディア辺りも知るかも……?で!
この辺はリマさんに任せます。

欠陥品云々の尤もたる所は、四神(本来ならば青龍朱雀白虎玄武)がトールフレイヤポセイドンアマテラス……となっている、で。
この辺も上手く話に使えたらなーとかとか!

760リマ:2017/04/04(火) 21:10:26
ヤツキ>>
いやいや、関係者が身近にいすぎてこんがらがるのも仕方ない(笑)むしろややこしくてごめん(;・∀・)


おお!やっぱヤツキの絵は勢いがあってカッコイイ(*゚∀゚)
デジタルデビューしたんですね!
自分最近書いてないなぁ(;´д`)

おお、ルイは知ってるんだね(*゚∀゚)
じゃあうまいことリトにチクっちゃお←


イスラ>>
凄く綺麗な歌ではありますよ。ただ、「僕は君の中で生き続ける」とかもう泣くしかない←

でしょでしょ?他のメンバーも何だかんだ藍ちゃんのこと可愛がってると信じてます←
いや、変態じゃないですか?いたいけな可愛い美少年に跪きなよって、罵られたい下心の現れじゃないですか?あわよくばそのまま踏まれたいとか←
しかもそれまで楽曲はネット配信のみで顔も公表していなかった謎の天使もとい純情派アイドルを公式の場に初お披露目していきなり跪きなよって←もう跪くしかないじゃないですかや←

行かなかったですよ!wwwチケット当てなきゃいかないし。
ただ、DVDは買おうかなぁって思ってます。

だってあの人初登場でステッキから氷出して地面凍らせたかと思ったらそのままそこをスケートしだしたんですよ←

いいんだ(笑)
なのでナディアは始めから実らない恋なので一生独身なんです←

あーなるほど、たしかにそう言われると可愛そうで可愛いかもしれない(笑)

納得しちゃうんだ(笑)
ただなんでそんなにリマが好かなのか生みの親である自分が分からないんですよね←

さすがバロン、エロ男の鑑←
自分バロンはあのぬいぐるみのイメージしかないんで、例え敵になっても一蹴りで勝てる気がしてならない(笑)←

てか核はユニの体にあってもとの記憶はフェミルにあると考えると、もとはその二人は一つってのことで、そうなると最終的にユニの意思はフェミルに還るの?ってふと思って、つーことはユニであったころのリトへの想いはフェミルに引き継がれるわけだけど、あくまで心はフェミルであってユニでないし、だけど人格はユニになってるからフェミルでもないし・・・って訳わからないこと考えて頭パンクさせました。←
あくまでフェミルとユニは別人という事にします。
ただ実際黄龍だかバロンだかがフェミルとユニを一つにしようとして一悶着あっても面白いかも←

761イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/05(水) 10:50:52
ヤツキ>
そのパティーンか…、了解です。黄龍さんめっちゃ可哀想ですね…

そういえば会話したような…、後で確認してきます(笑)あ、シデンのレスはヤツキ達の戦闘が終わった後にでもしますので、すみません;
あと、次のイスラのレスは恒星の女神をボコる感じのレスで良いんですかね?⬅

ありがとうございます^^バロンついてはまた考えてみます

そうかぁ(笑)まぁ人それぞれですよね、自分はもうデジタルじゃないとイラスト描ける気がしません(笑)


リマ>
自分も頭こんがらがってきた(笑)まぁ記憶云々の話はただ、こうしたら面白いかも。位のノリで考えただけなので、リマさんのお好きなようにしちゃって下さい^^

てかリマさんの「黄昏の花嫁は純潔を失えば力も失う」って話で思い付いたのですが…

爺はレイシーの花嫁の資格を無くす為に、レイシーの純潔を奪った、ってことにすれば良いんじゃね、とか思いました(笑)

取り合えず過去話の魔物騒ぎは、シデンが花嫁の資格ある者を探して起こした感じで。それに勘づいたポセイドンや政府やらも資格を持った人間を捜し始める。

このままじゃいつレイシーの素性がバレて、連れていかれるのも時間の問題と思ったレイシー父は、爺に彼女との共寝を頼む。

レイシーは爺と父親以外の誰に知られることもなく資格を喪失。
ただレイシーの歌の力は彼女が花嫁である所以の力だったので、資格を失うと同時に声も失うことに。

割とむりやり純潔を奪われた上に、大好きな歌も歌えなくなって傷心のレイシー。
この出来事の一切を口外しないという約束の元、爺は罪悪感を抱えたまま本家に戻って以前と同じ生活に戻る。
(多くの人を欺く為にも、爺とレイシーが親しい間柄であったことは隠したかった。
あとこの時代やっぱり身分の違う結婚は難しかったらしい。父親は二人の間に子供が出来ても下ろすつもりだった)

……みたいな。
今自分が考えてる別の案、長いし分かりずらいしで、こっちの方がよっぽど分かりやすいし、しっくりくるんですよね(笑)

762ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/05(水) 11:29:30
リマ》言うて中々絵描く暇ないんだけどね、俺も(笑)
それはもう盛大にチクって下さい、チクる所かネタバレしてやって下さいww←

イスラ》そして最後の最後に自我が芽生えるも死ぬパターン……一期のラスボスは迷いなくラスボスとして散ったから、二期は逆で行こうと思って。
シデンvsイオリ了解す、ステラはフルボッコでお願いします!

763リマ:2017/04/06(木) 22:49:06
ヤツキ>>
どんな感じにチクろうかなぁ(笑)ルイは色々話してくれるタイプじゃないからなぁ(;´д`)

だよねー、前は色々描いてたのになぁ(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)


イスラ>>
おぉ!イスラさんの案面白そう!是非そんな感じでお願いします(*゚∀゚)

最初の案も気になるけど(笑)

しかし爺、そんなことしておいて他の女と結婚したのか( ・᷄ὢ・᷅ )ドクシンツラヌケヨ
そしてヨハンは如何にして生き延びたのか←

トーマはどうやってミレリアから力奪ったことにしましょうかね(๑•́ω•̀๑)爺と同じ方法をとる性格でもないし:(´◦ω◦`):多分トーマとミレリアってリマセナの次に清い関係なんですよね(笑)めちゃくちゃ余談ですがリトユニの方が一線超えるの早いと思います(笑)あー悩む←

764イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/09(日) 01:16:41
【黄昏の塔】

月下に舞い散るは、闇の花と紅き剣閃。

相対するは暗夜を掻き抱く、恒星の女神…スピカ。

無尽に沸き上がる闇は脈打つかの如く。繰り広げられる破壊行為は息をするかの如く。
上下左右、間断なく放たれる闇の猛襲、その一つ一つが壮絶な破壊の奔流となってイスラの命を脅かす。

吹き荒ぶ闇の刃が。
炸裂する闇の砲弾が。
蹂躙する闇の波濤が。
死を孕む黒き魔手が。

殺意も敵愾心もない。ただただ純粋に目の前の命を壊すことだけを求めるそれに、イスラは灼熱を以て迎え討つ。
流し、受け、斬り返す度に、傷が増え、鮮血が飛ぶ。だがそれでも走る刃に迷いが生じることはない。

空気も、色も、重みも、全てが冷たく暗い漆黒に沈み、息苦しいほどの圧迫感が周囲を満たす中。イスラが刃に乗せるもの、それは剣士としての誇りと…願いだ。

………

剣を握る度に思う。今の自分の生き様はあの時の誓いに添えているのだろうか、と。

全てを救う。何と無謀で欲深い願いだと、聞く者は笑うだろう。だが、その想いを軽々しい気持ちで口にしたことなどなければ、ただ向こう見ずに刃を振るってきた訳でもない。
胸に刻んだ誓い、それこそがイスラの永遠の願いであり、永遠の理想なのだから。

例えその道が、どれほど険しく果てしないものだとしても、自分はそれを果たした先の、向こう側の景色が見たいのだ。

…だから、戦う。

「願わくば」

…だから、前へ進む。

「汝に安らかなる眠りが訪れんことを」

――……

ひとたび上空へ飛翔すれば、燃ゆる暁の出現を祝福せんばかりに、イスラの手の内の二振りが歓喜に打ち震える。

鮮やかな炎が爆ぜ、月明かりの下、天を割るように曇りなき白い刀身が真に顕現する。
天叢雲剣…、まさしくその姿だ。

そして同刻、イスラの背後に並び立つ八つの宝鏡が、ひとえにそれを映し出し…、

「出でよ―…、八岐の大蛇 」

鏡面に映る神刀に、宝鏡が姿を写せば、八つの天叢雲剣が圧倒的な存在感を放ってそこに佇む。
その姿、八つの首を持つ巨大な蛇の如し。

今も尚その勢いや激しく、大挙する闇の猛襲を斬り裂いて、八つの鎌首が女神に振り下ろされる。

そしてその数瞬後、イスラの持つオリジナルが一刀両断に振り抜かれ…、
炎と風が逆巻いて、無音の元に天叢雲剣が宵闇に軌跡を描いた。

765アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/09(日) 01:22:24
【ポセイドン邸】

苦しい。息が上手く出来ない。
頭は熱に浮かされたように働かず、視界は狭まり、聴覚は水の中に潜っているが如く濁っている。

だが、それでも目の前で何が起こっているのか位は理解できる。

二人の間に割り込んで自分を庇うヨノ。そんな彼女にアブセルは、こっちに来ては駄目だ、逃げてくれ、と回らない舌で必死に訴えようとする。

しかしそれを言葉とする前に、彼の思考は空白に染まった。
耳朶を突いたもの。ヨノが口にした名に、意識が奪われる。

ジル、と。

途端、怒りで燻っていた感情が、一瞬にして霧散した。頭から血の気が抜け、呆然と目を見開くアブセルの脳裏に懐かしい色の記憶の断片が集められる。

蘇るのは、もう顔も定かではない、しかし名前だけは忘れたことのない、記憶の中の少年の姿。
幼い頃に一度だけ出逢った、少し意地悪で優しい、そんな少年と交わした過去の出来事。

…誰が知るだろうか。幼き日、倒れたリトの傍らで恐怖と罪悪感に震えていたあの瞬間、手を差し伸べて腕を引いてくれた彼の存在にアブセルがどれだけ救われたか。その手がどれだけ心強ったか。

誰が知るだろうか。その少年の言葉が、誰かを信じることを恐れ、たたらを踏んでばかりいた小さな背中を押して、一歩前に歩ませてくれたことを。その言葉が今も心の根幹を支えていることを。

誰が知るだろうか。リトを助けてくれた少年に、そして友を作るきっかけを与えてくれた少年に、アブセルがどれだけ感謝しているか。どれほど感謝の想いを伝えたかったか。

不明瞭な視界に映る青年の姿が引き歪み、幼き日の少年の姿と重なる。その優し気な髪の色も、アメジストの瞳も、纏う雰囲気も、かつて感じたものと同じだ。

「嘘…だ……」

アブセルは混迷に瞳を揺らして、青年を見上げていた。震える唇が空虚な音を生む。

何故。何で。彼が目の前にいて、自分を殺そうとしているのか。ユニを、ヨノを、そしてリトを、大切な人を傷つけようとするのか。

信じられない想いと、信じたくない想い。
目の前の青年と、かつての記憶の中の少年との差違に、アブセルの心は千々に乱れ、

「恩人の兄ちゃ―…」

刹那、視界の外から放たれた光弾がアブセルの側頭部を打った。

その衝撃に、彼の身体が大きく傾く。
何か固いもの同士がぶつかるような音がして、根本から折れた角が血を飛ばしながら、カラカラと床を転がる。
アブセルは地面に崩れたまま、動かない。そして、

「…邪魔者は排除しましたよ」

直後、上がる声。
アブセルを倒した張本人…フロンが廊下に佇み、その顔にたおやかな笑顔を浮かべていた。

一度はジルの元を離れた彼女が、何故また戻ってきたのか。
答えは言わず、フロンは壁に縫い付けられた状態のヨノの側へゆっくりと歩み寄る。

「珍しいですね、ジルさんが任務に手こずるなんて。いつもはもっと無情に残酷に、上手にやってらっしゃるのに。…何か理由があるのでしょうか?」

何が言いたいのか、彼女は意味あり気な笑みをジルと、そしてヨノに見せる。かと思えば、その相好をくしゃりと砕けたものへと変えた。

「なんて、調子が悪い日もありますよね。私も手伝いますから早く済ませちゃいましょう?あまり時間をかけると人が集まって来てしまいますよ」

フロンはその言葉の通り、邪魔者であるヨノを始末しようとする。
手に握る短剣をヨノ胸元に這わせ、それを大きく振り上げた。

766アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/09(日) 01:56:29
ヤツキ>黄龍さんがラスボスなんです?自分的にはコピーの世界が破壊された理由が気になって…、てっきり別に黒幕がいるのかと想像してた⬅

てか黄龍さん死んだらバッドエンドくない?(世界再生できなくない?(笑)


リマ>
それなら良かった^^
でももう口頭で説明したから、文章化はしません(笑)何か生々しくなりそうだし⬅

本当にね(笑)まあ後継ぎやらの問題で、母親が決めた女性と強引に結婚させられた感じです。
因みに割りと早い段階で離婚してます⬅
一人娘もいて後継ぎにしようと躾てましたが、反発されて家出同然に出ていかれました⬅
そして娘はアブセルをつくって爺に押しつけました⬅

ヨハンは…レイシーが下ろすの拒否ったんじゃない?


それなー、自分も良いアイディアが思いつきません(--;)ちょっと考えてみます
リトは何だかんだで、ちゃんと男の子してますもんね(笑)


最初の案は、もう既にレイシーと爺はヤっちゃってるのが前提です⬅(だからもうレイシーは資格を失いかけてる状態)んで…、

そうとも知らず、レイシーの故郷に魔物+シデンが襲来する。

シデンはレイシーの中に眠っているユニを目覚めさせようとしますが、それをレイシー父が阻みます(ユニが目覚めたらレイシーの意識が消滅する為)
レイシーを爺に託して二人を町から逃がす。

爺は追いかけてきた魔物からレイシーを庇い奮闘するも、魔物に囲まれてボロボロになる。
レイシー、寄り代になる決意をし、力を解放する。

が、既に花嫁の資格を失ってるので、解放される力の負荷に堪えきれず、力が暴発する。
このままではレイシー自身を含め、周囲一帯が消し飛んでしまい兼ねない、と思った爺はレイシーの暴走を止める為、声帯に呪いを刻む(ユニとレイシーの意識を繋いでいるのが歌の力なので)

取り合えず沈静化。二人が気を失ってる間にバロンがレイシーの中からユニを回収。

後日談。
レイシーは無事でしたが、爺の呪いのせいで声を失う。しかもその呪い、徐々にレイシーの身体を蝕んでいくタイプです。術者が近くにいるほど進行速度も早くなるので爺はレイシーの元から離れざるをえない。
(因みに爺にもレイシー父にも呪いの解除は出来なかった。よくてレイシー父が進行を留めておくことができる程度)
二人はお別れします→【完】


…色々割愛しましたが、大体こんな感じです;
そしてこっちの方がまだ爺が綺麗です…よね?(笑)
どっちのパターンが良いですか?⬅

767ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/09(日) 10:55:56
リマ》現世に戻る際に土産話を聞かせてやろう、的なのはどうかな?
元々はパレワから続く世界、パレワのコピー世界を再構築した世界だし、パレワの最終戦が世界が産まれる大元となったと言えない事もないしね。

いやはや描こう描こう思っても中々手が動かんよね、仕事もあるし(笑)

イスラ》今の所黄龍がラスボスで、それ以上は考えてなくて、exでオリジン編もあるし……後単にネタがもう無いww

黄龍死亡で陰の核消滅しても、誰かが新しい陰の核に成れば……その為のゼロの姿はジルを模倣した設定です←
もしくは魔玉持ちのリトとか?リトユニで新たな陰陽の核とか?
もしくはジルフェミル?この辺は俺の一存で決めれる部分では無いんで、お二人と相談しつつ……

もしくは世界再生不可→一回消滅させて一から作り直す(ベースはゼロが目指した新世界)
因子が足りないから世界は不安定だったけど、四神組+αが因子持ってるので新しい世界は安定する(その代わり全員生まれ変わる感じで)
自分としてはこっちの終わりが良いかな〜とは思ってます。

コピー世界辺りの説明は……。

まず元々前の板組のオリナリスレでやってた話があって、その舞台が所謂世界A。
話の終盤で、ラスボスが世界を滅ぼす為に世界そのもののコピー(A”)を作って、AとA”をぶつけ合って対消滅させようとしたんです。

それを防ぐ為に主人公達は世界Aを救う為に世界A”を壊した。
壊した世界A”は流星群となってAに降り注いだけれど、大半は行方不明に。

その行方不明となった部分が集まって出来たのがこの世界aと言う訳で。
因みに件の主人公達は吸血鬼編頭で出たMr.Kと長老のジーナ、リトの居る冥界の主ルイで、彼等と戦った件のラスボスの直系の血筋がシンライジです。

……長くなるけどこんな感じです。

あ、そう言えばジーナがラディックにお願いした依頼の内容、もう決まってますか?

768ジル:2017/04/09(日) 23:15:30
【ポセイドン邸】

予想だにしない事態にジルは目を見開く。
それは一瞬の出来事だった。自分がヨノに気を取られているうちに、アブセルが吹き飛んだ。
正直、突然の事で何が起きたのかをすぐには理解出来なかった。アブセルを始末するつもりではあったものの、あまりの事に言葉を失う。

何故この女が此処にいるのか。それすらも考えることを許さずに事が進んでいく。

「・・・やめろ・・・」

フロンの標的がヨノヘ変わった。刃を向けられたヨノは恐怖で言葉が出ないよう。
彼女は関係ない。巻き込みたくない。

短剣がヨノヘ振り下ろされた。

「っ!」

ジルは鎌鼬をフロンに向かって放つ。彼女を貫くギリギリのところで、幸いにして命中したそれが刃を弾いた。

拘束していた風が解け、ヨノは地面へ膝ついた。

「早く行って。」

ジルが退避を促すがヨノはその場を動かない。驚きと恐怖で力が抜けてしまったようだ。

「アブセルちゃん・・・」

そしてアブセルの姿に震えだした。

「ヨノ!」

呼びかけても反応がない。もはや自力で逃げることは無理だろう。

ジルは柄にもなく舌打ち、再び風を起こしヨノを包む。
そして彼女の身を包みこむと、自分の背後へ運び、下ろす。

「ジル・・・アブセルちゃんが・・・」

「死んでないから黙っててくれない?君のせいで面倒なことになった。」

決して彼女に当たりたいわけではないが、彼女が邪魔さえしなければ任務は完結し、おそらくフロンが出てくることも無かったと思うと無性に腹が立つ。
何より、彼女に他人を平気で傷つける汚い自分の姿を見せたくはなかったのだ。

「お願いだからそこで大人しくしてて。・・・どうせ動けないと思うけど。」

自分の背後にいればヨノの安全は保証できるだろう。ジルはヨノにこれ以上邪魔をするなと釘をさし、その鋭い視線をフロンへ向けた。
そこにあるのは完全な嫌悪感。先日の一件からフロンには悪い感情しか浮かばない。
それでも気持ちを抑えながら、なるべく優しげな声色で彼女に語りかけた。

「僕には関係のない人を巻き込む趣味はないんだよ。僕のことを見てたなら分かるはずだけど?君のおかげでその子(アブセル)はもう動けない。任務完了。だから引いてくれない?」

769リマ:2017/04/10(月) 01:02:40
ヤツキ>>
なるほどなるほど。ありがとう、そんな感じにしてみるよ!

新しい核候補にうちのキャラ使ってもらうんは全然いいよ!
ユニがホムンクルスなら、また核持ちのホムンクルス作るのもいいかも?核は魔玉で代行出来る気がする!

みんな生れかわるのはちょっと悲しいなぁ・・・:(´◦ω◦`):二人がそっちが良いって言うなら構わないけども(*º∀º*)


だよねー、学生ん時は授業の時に描いたりしてたけど、さすがに仕事中は描けない(笑)


イスラ>>
生々しいwwwたしかにwww

あー、なるほど!爺も辛かったのね(;´д`)
娘wwwアブセルの母親の方が血筋だったんですね、てっきり父親の方かと思ってた(笑)
てかジュノスの家系ろくなモンいないな(笑)

半ば無理やりでも爺の事は好きだったからヨハンも大事なのか(笑)
そう言えばヨハンって爺が父親って知ってたっけ?

トーマには一体どんな力があったんだ←
でも仮に黄昏の花嫁を無効化させる能力があったとしたらジルにもその力があるはずだからまた物語が進んでいくような気がします(。 ー`ωー´) キラン☆

リトはほんと、何気男の子してますよね(笑)セナとは大違い←

あー!それも面白そうっっ
でも自分はゲス爺が好みなので、新しい案の方で←

770イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/10(月) 02:18:09
二人>そういえばすっかり忘れてた(笑)
セナとノワールの子供にメルフィって子がいたけど、その子も因子に含まれるんですかね?


ヤツキ>そういう話なら核キャラ持ちのリマさんの希望に添おうかな。まぁまだ先のことなので、ストーリー進めながらゆっくり決めてきましょう^^

皆生まれ変わるエンドは綺麗な終り方だけど、自分も何か寂しいです(´・д・`)笑

あー、なるほど。別のスレの話だったのか。二人の会話でちょいちょい、もしかして…って思うことはあったけど(笑)
それはもう完結してる感じなんですよね?

別の舞台の話から繋がるストーリーとか熱いですね!
とりま理解しました!
そして依頼の件はまだ全く考えてないです(笑)


リマ>なんか藍ちゃん消滅でもしそうな曲ですね⬅
踏まれたいとかww
うーん、藍ちゃんが女子だったらなぁ、膝まづいてたかもなのに⬅

ガチ勢はライブ行った上でDVDも購入するんでしょうね(笑)

スケートwwそれは笑うわww

マジか
ナディアって意外と一途なんですね…

そうでしょう?毒吐いてもセナリマには気づいて貰えてない感好き(笑)

えw何か壮大な理由があるのかと思った(笑)

バロンは次登場する時には多分、人形になってますから(笑)

爺も片親ですしね、ジュノスの一族は幸せな家庭を築く能力がないのかもしれない(笑)
ヨハンは爺が父親なの知らないんじゃないかな?
取り合えず爺の口からは教えてません

良いですねぇ、妄想が広がります^^

リトは女の子に抱きつかれたらちゃんと照れるしね(笑)

自分もゲス爺のが好みです(笑)じゃ、それでいきましょう


…余談ですが、ポセイドン家は何故リトを政府に引き渡さなければならなかったか、を考えてみました。

レイシー父が今回の件(魔物騒ぎや、私情でレイシーを花嫁として覚醒させなかったこと)に責任を感じて、何とか衰退する世界を救う方法がないものかと、政府直属の研究機関に相談、協力を要請する。

世界の核を正常に起動させる方法を研究したり、闇の王子の継承者として、自ら人体実験に志願したりする。(レイシー父は公では事故死として片付けられたが、実際は人体実験の末に命を落とした)

レイシー父の死後も研究は続けられる。
ただ途中でワヅキの介入などがあって、当初進めていた研究から、どんどん方向性が違うものになる。

当時レイシー父が政府と交わしていた「闇の管理者は政府の研究に全面協力する」という契約があった為、後任(リト)が産まれたら政府に引き渡すようにと、ポセイドン家に指示が入る。

一応は世界と人類を救うという大義名分の元、行われていた研究ですので、ヨハンも逆らえなかった…ってことで、どうですかね?(--;)

771ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/10(月) 16:08:12
メルフィすっかり抜けてた……リトノワの子だから因子持ちであるけどどうしよう、exオリジン編に回します?

とりま許可頂けたんで、代替もしくは新規の核が必要になった時はリマさんの持ちキャラ達でお願いしまっす!

言うてお話は終盤入った(よね?)位でまだまだ続くし、終わり方も含め案出しつつ進めて行きましょ〜

リマ》パレワで思い出しけど、そろそろ知り合って10年位じゃね…?ww

いやホントにね、次どうレスするか位しか考えられないし、仕事終わって帰っても大変よな(笑)
でも久々にリマのカラーイラスト見たい←

イスラ》正直根幹設定まで出張るつもりもなかったし、イスラだけが知らない話とか申し訳ないな……と思ってたけど、ここまでくればもうやり切るしかねぇ、と(笑)

件の物語は無事完結しとります、三年掛けて9スレ使っての大円満エンドっす!
過去ログ残せてないのがめちゃんこ辛いけど。

ラディックへのお願い、丁度良い具合の思い着いたんで、お願いして良いですか?
黄昏の塔頂上へどうやってナディアリト組に来てもらおうかと思ってたんだけど、空間跳躍出来る吸血鬼、特に長老やその側近なら大人数でも余裕やん!?と……

772フロン ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/16(日) 22:30:26
【ポセイドン邸】

ジルの行動に驚くでもなく、また弾かれた短剣を一瞥することもなければ、フロンはゆるりと首を動かし、真っ直ぐにジルを見据える。

「…ええ、もちろん分かってますよ。私、ジルさんのことずぅっと見てましたから…」

ジルの言う「分かる」とは、どこかニュアンスの違う響きを感じさせて、フロンはその顔に暗い笑みを浮かべている。そして…

「だから、その人(ヨノ)はジルさんには似合いません」

はっきりと言い放った。

ずっと彼のことを見ていたから分かる。
確かにジルは無関係の人間を巻き込むような人ではない。しかしだからといって、その人達を積極的に庇うかと言えば、それも違う。
彼が自身の労力を惜しみなく発揮する時、それは決まって妹のフェミルが関わる時だけだ。

なのに今、ジルはフロンの知らない一面を見せている。上部だけ取り繕ってはいても、焦って、苛立っているのは明らかで、本来ならばその感情の起伏を可能にする人物こそフェミルである筈なのだ。そうでなければおかしいのだ。

しかし今目の前にいるのは彼女ではない。ジルの背に庇われる、あの娘をおいて他にいない。
…あの女は一体なんなのだろう。

フロンは静かにその場から足を踏み出した。

「以前…ジルさんとお話しましたよね?その時に気がついたんです。…やっぱりジルさんは私にとって特別なんだって。今まで好きになった人の中でも一番だって」

一歩一歩、揺るぎない足取りでジルの側へと歩みよる彼女に、引く気など更々ないようで。
フロンは熱の籠った瞳でジルを見つめて、

「ねえ、ジルさん。フェミル様にもその人にも、ご自分のこと、何も話してないんでしょう?
私だけですよ。ジルさんの汚い部分を知っているのは。知った上でそれを含めたあなたの全てを愛しているのは」

息のかかる距離。そこまで来ると、何気なく手を伸ばす。何か繊細なものにでも触れるかのように、ジルの頬にそっと掌を添えた。

「だってそうでしょう?他の誰があなたの汚らわしい本性を愛せると言うんですか?まして自分の父親を殺した男のことなんて…」

そうして狂気染みた笑顔を見せる、それこそが彼女の本性か。フロンは小首を傾げると、二人の反応を楽しむかのように、態とらしい口調で追い討ちをかける。

「うふふ、そうですよねぇジルさん?その女の人のお父様、あなたが殺したんですものねぇ?」

773フロン ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/16(日) 23:08:28
ヤツキ>自分はオリジン編に回しても良いかと思います

今ジュノスとルドラが一応メルフィを捜索すべく動いてる感じなので、隙を見て虚空城からメルフィを救出。…するも何かごたごたがあって三人とも十字界に転移するはめに(不慮の事故的な)

世界に起こる異変のせいで、十字界と元の世界の行き来が不可能になる

そのため世界の問題が解決するまでジュノス、メルフィは十字界で待機〜…みたいな感じで、黄龍編とオリジン編、ごちゃごちゃにならないように線引きでもしときます?
ノワールとメルフィの再会もオリジン編でー、みたいな?

てかジュノスなんですが、今ヤツキとイスラがいる場に参上させようか、どうしようか迷ってるんですが、どうしましょう?三人で軽くお話しでもする?(笑)


9スレとかマジか(笑)そのスレ見たかったかも
過去ログはなぁ…(--;)残念ですよね;

おー、良いですね。了解です^^

774ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/17(月) 11:07:56
んだらば、ラディックルドラの力で一旦塔頂上に全員集合→
虚空城へ転移→
力場的な影響で虚空城の各地に皆散る→
各自フラグ回収なりバトル(ルドララディックジュノスはメルフィ救出の流れで)
後はイスラさんの言った具合に黄龍編とオリジン編の組で分ける、
で行きましょ!

先代組と今代組と全員顔合わせはしたかったんですよね、特に黒十字組とか。

イスラ》正直もうお話忘れてる部分合ったりで辛いっすorz
此処もどこかに過去ログとして置いときたい所……!!後欲言えば併設wikiも(笑)

775イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/18(火) 03:01:44
りょ(^ω^)
シデンの次のレスで世界中に魔物をバラまくつもりなので、手隙の人はそっちを抑えても良いですし


確かに世界観とか各キャラの設定まとめたものとか見たい(笑)
キャラも増えたし、ちょっと忘れてる部分もあるしw

776ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/20(木) 01:12:12
【黄昏の塔】

停まることない恒久の破壊衝動。
闇とは本来、この世界の防衛プログラムである。

言わば闇の巣とはその中枢である。
かつての黒十字を背負う者達は世界の防衛プログラムに殉じたとも言えるだろう。

無尽蔵に溢れ出る闇を使役する恒星の女王と、それに従う黒き獅子。
今やその片割れは神刀により斬り伏せられ、闇を持ってしても蘇る事は無い。

恒星の女王……ステラは目を見開き、迫る光刃の軌跡がその瞳を照らす。
逆巻く疾風と火炎、鎌首をもたげ、姿を現す大蛇の数は八つ。

その全てが牙を向き、ステラの身体を斬り刻むのは僅か一瞬。
障壁も、闇の鎧もまるで無かったかの様に。

僅かに聞こえた風切り音と共に、四肢を、下半身を、首と胸元だけとなったステラは地に落ちた。
生々しい音を立て落ちた身体からは漆黒が溢れ、傷の断面からは触手が這いずり回る。

半開きとなった口腔からは呪詛が漏れだし、闇が呪印を象っていく。

「まだ、死ねない……約束を、あの時交わした約束を……」

しかし、その呪印は叢雲の剣とは別の神刀により切り捨てられ、闇霧となって霧散した。
霧散しても尚、再び形を成そうとする闇は結晶となりその動きを停め、黒水晶が月明かりに輝く。

もがき、呪いにも聞こえる言葉を紡ぐステラの眼前には、神刀を手にしたヤツキの姿。

「大丈夫だ、独りで逝かせはしない。
第二候補、スペアプラン……闇の王女。

流星の双子、スピカとレグルス。
二人の魂は我ら黒十字と共に。

恒星となって輝いた命の意味は、しっかりと此処にある。
だから、安心しろ。」

所謂達磨となったステラを片腕で抱き上げ、ヤツキは言葉を紡いだ。
その声は静かで、優しい。

「俺達が100年の時を越え、この世界に蘇った意味。
それは、今この時の為。」

見れば破壊衝動の塊と化していた周囲に満ちる闇はその動きを弱々しいものへと変え、段々と黒水晶へ姿を変えている。

「俺は彼女の魂を連れて行く。
だから、“お前達”はそれぞれの役目全うしろ。」

777ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/20(木) 01:13:33
振り返った視線の先。
イスラの後方には、塔を昇ってきた二つの影。

赤髪の少女と、自分と同じ濡れ羽色の髪を持つ青年。
二人の持つ雰囲気は、イスラと自分と似通っている。

「話は聞いている、今代の天照と……シンライジ家の者。」

世代的に曾孫に当たるだろう二人が並び立つ様に、ヤツキはどこか満足そうな笑みを浮かべた。
決して交わる事なく、刃を交えるしかなかった自分達とは違い、共に並ぶその姿は感慨深い。

太陽と月。
天を照らすその光は闇を裂き、必ずや未来を指し示すだろう。

ヤツキは神刀凄王をメイヤへと投げ渡し、彼へと頷く。
言葉は要らない、刀に込められた想いが伝われば良いのだ。

頷き返すメイヤの視線を受けた後、ヤツキは自分の足元へ瞳を移した。
ステラを抱き抱え、立つその足元はゆっくりと、しかし確実に光の粒子となって消えていくのが見て取れた。

もう、時間は無い。
時を越え蘇った身体を動かしていた現世に存在しようとする力、ソレが枯渇したのだ。

視線を足元からイスラへ、イスラからサンディとメイヤへ。
そして、その更に後方へ。

空間を跳び越え、この黄昏の地へ降り立った一団の顔触れに、ヤツキは再び頷いた。
闇の王子と黒十字の幹部、ポセイドンと彼等の血縁者達。

懐かしい顔触れと、見知らぬ面々。
イスラと自分、サンディとメイヤの様に彼等も“そう”なのだろう。

778ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/20(木) 01:16:39
「久し振りだな。
だが、思い出話に花を咲かせる時間は無いらしい。」

既にヤツキの身体は膝下が光となって消え、肩先や末端部分も粒子となりつつあった。
言葉通り、時間はない。

「聴いていただろうが、俺は役目を全うした。」

100年前は敵対した者達が、今はこうやって同じ地を、仲間として踏み締めている。
時を越え、世代を越えた力と想いがあれば。

ーー必ずや、上手くいく。

「世界の免疫力とも言える闇が集まり、溢れるこの闇の巣と黄昏の塔。
闇を管理し、使役していたステラが逝くとならば、誰かがその任を継がなければならない。

今はまだ抑え込まれているが、ステラと言う制御系を失えば、この無尽蔵の闇は世界を食い尽くすだろう。
だが、適性を持った誰かが、闇を使役し、この塔諸共地中深くに沈めてしまえば……」

ーージュノス、後は任せる。

「一時的にだが闇は活動を停止する筈だ。
強度と高さは問題無い、沈み込めば地殻を超えて核へ届く。」


ーーセナよ、今こそその力を発揮する時だ。

「幸い、今この場に闇の素養を持つ者は数多く居るようだ。
話し合って、決めるといい。

……素養が無い俺は剣を振るうしか出来なかった。」

闇の素養を持つ者、闇の王子であるセナとリト。
二人に仕えて来たジュノスとアブセル。

吸血鬼であるノワールと、異界の闇を宿していたメイヤ。
人柱になれ、と言うしか無いのは辛いが、今はそうするしかないのだ。

「そろそろ、時間か。」

視界に映る面々を見、ヤツキは静かに目を閉じた。
そして、抱き抱えるステラと共に、その身体は光に包まれる。

その様は淡雪が舞い、溶ける様に夜空へ散り、月明かりがそれらを照らして輝いた。

ーーイスラ、悪いが先にいく。
ーーお前と共に戦えて……




ーーステラ、いや、スピカ。
お前は一人じゃない、大丈夫だ。
俺が居る、だから、安心して眠ろうーー

779ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/20(木) 01:22:32
てな訳で、リト達アブセル達一段落着いたら塔頂上に集合でお願いします、行き方はラディックルドラの空間転移で。

かなーり強引な集合の仕方かつ確定ロルになって申し訳ないorz

780イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/21(金) 02:32:23
ヤツキさん、レスありがとうございます^^

ちょっとこのスレのまとめWikiみたいなものを作ろうかと割りと本気で考えているんですが…、作ったら二人とも参加してくれます…?

取り合えずここの三人しか閲覧、編集できないようにしてー…
世界観とか用語とかキャラクター紹介とか、ストーリー上では説明しきれなかった部分も多分あると思うので(自分はあるw)
まぁそうゆうのも含めて、自由にまとめちゃってください的なページ(笑)…いかがです?

781ヤツキ ◆.q9WieYUok:2017/04/21(金) 11:31:07
>>780
自分は賛成っす、ログもそこに残せたら完璧じゃないすか!
勿論参加しますよー、裏話的な沢山あるし…(笑)

782ジル:2017/04/22(土) 00:19:49
【ポセイドン邸】

フロンはわざとヨノに聞こえるよう、彼女の父親を殺した事実を告げる。
それはヨノを傷つけようとしてるのか、はたまた、彼女を傷付けたくないと願うジルへの当て付けか。

背後で息を飲む気配がした。事実を知ったヨノが衝撃を受けているのだろう。
・・・あぁ、また失った。

「そうだよ。」

フロンはジルの、どんな表情を願っているのだろう。どのような反応を求めているのだろう。
相手の呼吸を感じとれる距離。ジルは取り乱した様子もなく、ニコリと微笑んだ。そして不意にフロンを抱き込んだ。

「君が初めてだよ。こんなにも僕の事を理解してくれているのは。君は僕がどんな人間か知っている。」

そしてその背に鋭い刃を這わせる。

「だから、分かるよね?」

かと思えば、そのままフロンへ押し付けた。鈍い感触がジルの手に伝わった。

「僕は簡単に人を殺せるって。いい加減目障りなんだ。」

愛してる?今まで何度もその言葉を聞いた。寒気がする。

「僕を怒らせないでよ、ほんと疲れるんだ。」

783ジル:2017/04/22(土) 00:20:20
はーい、参加します( • ̀ω•́ )✧

784イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/22(土) 18:53:03
二人ともありがとうございます^^

まだ基本操作とか把握していませんが、取り合えず作るだけ作ってみました
seesaawiki.jp/key-twilight/

このサイトのアカウントを作って、ページ右上の、メンバー募集ってとこをクリックすれば参加申請できるみたいですので
まぁ気の向いた時にでもぼちぼち編集してください^^

あ、多分PC版じゃないと編集できないと思います

785リト、ルイ:2017/04/24(月) 12:23:35
【冥界】

「いつまでそうしているつもりだ?」

痺れを切らし、ルイはリトへと声をかける。
ヨハンが扉の奥へ消えてからずっと、彼は閉ざされた扉の前に座り動かない。ただじっと扉を見つめていた。

「父親が消えて哀しいか?」

「・・・いや・・・」

正直よく分からない。ただポッカリと胸に穴が空いてしまった、そんな物足りなさはある。

「混乱はしてる・・・かも。散々痛めつけてきたくせに、本当は大事だったとか意味わかんない。」

「人間の考えなど予測出来るはずもない。この世の生き物で一番不可解な存在だ。」

ルイは頬杖をつき溜息を漏らす。自分にも思い当たる者がいた。愛するが故に苦しめたい、殺したいと言ってのけた者が。

「・・・なぁ。」

扉を見つめたまま、リトはふと気付きルイへ声をかけた。

「一応父親とは和解した・・・と思う。実際あの人は逝っちゃったし。だから、俺も帰れると思うんだけど・・・」

思い残すことがなくなればあるべき場所へ還るはずだ。何故自分はまだこの場所にいるのだろうか。

「戻りたいか?」

「勿論」

このまま黄泉へ行けとでも言うのか。ルイの問いに若干不審感を抱きながらリトは応える。

「アンヘルに俺はまだ生きてるって聞いた。」

「間違いない」

「なら、戻れるはずじゃないの?」

「お前を思い留める枷が父親の存在では無かったということだろう。」

「は?」

それはどうゆう・・・

訳が分からない、リトは眉を潜め、そして漸くルイへ向き直った。
ルイは再び溜息をつくと、今度は真剣な表情でリトを見据える。

「どちらにせよお前は思い違いをしている。お前の担う役目は世を滅ぼす為の道具でも、闇を管理することでもない。以前教えたはずだ、世界は元来複数存在し、今その均衡が乱れていると。」

言われてリトは思い返す。たしかに聞いた。ルイは手を出せない為、リトに役目を託すと。

「あんたが手を下すと歪みが酷くなるって言う・・・?」

「いい機会だ、特別に全て話してやる。・・・お前にとっては酷な話になるやもしれんが。」

言ってたルイは立ち上がる。

「お前には荷が重いと言うのであれば、このまま生を終わらせるとの選択もある。全て知った上で選べ。」

786フロン ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/25(火) 00:26:34
【ポセイドン邸】

ふいに身を抱き竦められ、フロンは息を呑んだ。
しかしその直後、背に突き刺さる鈍い痛みに彼の行動の意味する所を知る。

「くふッ…」

口から漏れるのは、苦悶とも愉悦とも取れる声。
フロンは唇の端から血の零れる顔を上げ、ジルの瞳をじっと見つめて言った。

「…あなたのこんな姿を、その女の人は見たかったでしょうか…?」

でも。

「私にとっては期待通りです」

あの日ジルと話して確信した。何をしても、どんなに言葉を尽くしても、自分が彼の心の中に入り込むことなど不可能なのだと。

そもそもフロンにとって恋とは、その相手を食べることで成就するものである。食べるとはまさに本当の意味で、肉を貪り、骨を舐り、血をすすって臓物まで自らの体内に取り入れること。
愛しい余りに手にかけるのではない。
愛する者の血肉を喰らい、彼らと一つになることで、彼らの存在はフロンの中で永遠に生き続けるのである。
そしてそれこそがフロンの究極の愛の体現であった。

もちろん、ジルにも同じことをするつもりだった。
しかし、彼は今まで好きになった男達とは違った。
フロンの正体を明かした時も驚かなかったし、彼を咀嚼しようとした時も、悲鳴も上げなければ命乞いをすることもなかった。
元より彼はフロンのことなど眼中になければ、関心を抱いてさえいなかったのだ。言ってしまえば、どうでも良かったのだ。

男の恐怖する反応を期待していた部分もあった為、彼女はその時ほど肩透かしを食ったこともない。
そしてどういう訳か、それがフロンの琴線に触れた。

次第にただ食べるだけでは満足できなくなった。
彼にも自分の存在を覚えていて欲しいと思うようになった。
彼の存在をフロンの中で永遠にするのではなく、彼の中でフロンの存在を永遠にして欲しかった。

だからフロンは彼の記憶に残る為にここにきた。

「…あなたは自分で思っているほど悪人になりきれている訳じゃありません。人を殺めれば少なからず罪の意識を覚えるし、大切な人を失えば傷つきもします」

言ってフロンはジルの胸に頭を、体重を預ける。

「あなたはこの刃の感触を忘れない。その胸の痛みを忘れない。
…私のことを忘れない。この先、あの女の人のことを思い返す度に、私への憎しみを思い出してください」

フロンの目的はジルの心に傷をつけること。そして彼の手で最期を迎え、その傷に自分の存在を刻み付けること。ヨノはその出しに利用したに過ぎない。
まるで呪いか何かのように…それしかジルの記憶に残る術を、フロンは思いつかなかった。

「ねえ、ジルさん…」

そしてフロンは新たな呪言をジルに与える。

「フェミル様を殺した…って言ったら、…どうします?」

嫌って欲しい。憎んで欲しい。愛して貰えなくたって、無関心でいられるよりは、そっちの方がずっとマシだと思える。
どんな形であれ、少しでも彼の心に残ることが出来たのなら、それ以上のことはない。

「ジルさん…、大好きです…」

そしてフロンは偏執的なまでの愛を囁いて、自らの血で赤く染まった唇を、ジルのそれと重ねた。



【リマ>フロンはもう殺してしまって構いませんよー。首とか落とせば流石に死ぬので(笑)
因みにフェミルを殺したってのは嘘です。最後の揺さぶりです。


二人>Wikiの方に相談用の掲示板つくりました!】

787ジル:2017/04/26(水) 14:17:00
【ポセイドン邸】

(・・・は?)

フロンの言葉にジルの思考が止まる。
何を言っているのかと、理解を拒んだ。

この女は今、何と言った?
聞き返す間も与えず、フロンはジルの同意もなく言葉を阻む。
鉄の味が口内に伝ってくるが、そんなものジルにはどうでもよかった。

そして、そんなフロンの行動を遮ったのはジルではなく。
彼の背後で終始を目の当たりにしていたヨノが、気付けば二人に割って入りフロンを突き飛ばしていた。

「あ・・・私・・・」

ジルの背が死界となりフロンがどんな状態であるのかまでは把握していなかったのだろう。
仰向けに倒れたフロンの体から絶え間なく滲み出る赤に思わず口を覆う。

「・・・殺してやる・・・」

思わず意識が遠のきそうになったが、耳についたジルの低い声に正気に戻る。
恐る恐る振り返ると、表情が「無」とかしたジルが血に染まったナイフを握りしめブツブツと呟いていた。
しかしその声はやがて大きくなっていき・・・

「殺してやる!!」

ナイフを振り翳しフロンに襲いかかろうとしたところを、ヨノは必死で押さえた。

「ジル!駄目!!」

「放せ!フェミルを殺した!殺してやる!」

「落ち着いて!お願いだから!!」

「フェミルが!フェミル!死・・・僕のフェミル・・・っ」

気が動転し、感情が昂り、このまま行けば最後には、

「フェミ・・・ゲボっ・・・うっ」

案の定、過呼吸を起こした。
ヨノは自分の服が汚れるのも構わずジルを抱き寄せる。

「落ち着いて、いい子だから」

自分の体にしがみつくジルの手の力が強く痛みを感じる。
彼の背を擦りながらヨノは胸を締め付けられるような気持ちになった。
この子は今までどんな暮らしをしてきたのだろう。きっと、想像を絶するに違いない。

「ジル、ごめんね」

貴方のことを早く見つけてやれなくて。

ジルの体は抑えの限界に来たようで、やがて糸が切れるかの如く意識を手放した。
その体をそっとその場に寝かせ、ヨノはフロンの元へ歩み寄る。
傍らに膝をつき、静かに口を開いた。

「傷が深い・・・ごめんなさい、私の癒しの力は姉より強くはないから、貴女を助けてあげることは出来ない。」

とても冷静で、聞きようによっては冷たく感じるかもしれない。
ヨノは咎めるような、しかしどこか哀れむような目で見据えてそう伝えた。

「最期に教えてくれないかな?フェミルを本当に殺したの?」

死を目の前にした人の前で何の手も施さず、また、その人の身を案じることもなく別の事を気にかける。
自分の知らない汚い面を見た気がした。自分は今、目の前にいる少女を見殺しにしようとしている。

・・・けど、彼の横に並ぶには、ここまで汚れた方が良いのかもしれない。

「ジルの事好き・・・よね?あんなことまでしたのだから。なら傷つけないで。このままだと貴女も楽になれないと思う。本当のことを教えて。」

788リマ:2017/04/26(水) 17:37:09
ヤツキ>>771

10年・・・もうそんなになるのか|ू・ω・` )
そう言えば初めて会ったとき自分はまだいたいけな高校生だった気が(遠い目)
あぁ懐かしき制服・・・てかあの頃勉強そっちのけで話の内容考えてたわwww

うーむ・・・カラーイラスト久しぶりに描きたい気もする。
でもネタが思いつかぬ(๑•́ω•̀๑)


イスラ>>770
実際藍ちゃん消滅仕掛けたんです(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)
なんか藍ちゃんと藍ちゃんの元になった人物は実は繋がっていて、藍ちゃんが観るもの感じるもの全てソイツに伝わるようにしてあったんです。ソイツ植物人間ナウで、藍ちゃん作った博士はソイツの叔父なのでソイツを目覚めさせたいがために藍ちゃんを利用してた的な。で、その頃藍ちゃんはレイジが自分とソイツを重ねて見てたことに気付いて傷心中だったので、「皆は本当は僕自身を見てくれてない」「僕は利用されてるだけ」「どいつもこいつも!」ってな感じでブチキレてソイツと繋がっていたプラグ的なのぶち抜いちゃって。そしたら藍ちゃんの命になるマザーコンピュータ的なのが壊れちゃって、一ヶ月後には機能停止するとのまさかの余命宣告。一ヶ月後はライブ?あり。僕死んじゃう。でもハルカの歌歌いたい。→藍ちゃん涙。
で、最期の力を振り絞って当日に歌ったのがその歌なんです。なので遺言書。
その歌、藍ちゃん主演映画「人魚の涙」(だっけ?)の主題歌で、人魚の王子様たる藍ちゃんはその日以来消息不明になりました。

藍ちゃんに踏まれるなら本望・・・いや、藍ちゃんロボットだから見た目に反して激重だった。踏まれたら死んじゃう。←
えー、女子を所望ですか。ではカマテットナイト・・・じゃなかった、是非とも藍ちゃんの女装を検索してみてください。公式で女装した事あるんで。生意気な女子高生姿でカワユイです(笑)

生意気といえば昨日読んだcomicoのマンガ「ロヂウラぐらし」でイスラさん好みのロリ娘ましろちゃんのおめかしした姿に、リマ好みの主人公"にーたん"が照れながら「似合ってますよお嬢様・・・なまいき。」って言ったのが最高にツボで心臓ぶち抜かれました。なまいきって何ぞ?なまいきって何ぞ!?

どこからそんな金が湧き出るのか・・・←

伯爵様はキャラ濃すぎです。コーヒーの中に角砂糖山盛り入れるし。

他にイイ男がいないのも理由の一つですけどね(笑)
幼いながらにトーマに「愛人でもいい」と言ってのけた恐ろしい子です←

ノワール不憫だ・・・(笑)

特に全く理由はないです←

良かった、ぬいぐるみのままだったらどうしようかと(笑)

ある意味呪われた一族ですね(笑)

喜怒哀楽の激しいアブセルが近くにいたお陰でリトはちゃんと情緒を身につけることが出来たんですね・・・(ホロり)
リトの誕生日にエロ本をプレゼントしてたナディアの苦労も報われます←

余談了解しました( • ̀ω•́ )✧
結局爺の業が最後まで響いてるんですね・・・(笑)


あ、フロンどうトドメ刺そうか悩んだんだ結果、上手く表現出来なくてあんな感じにしちゃいました(>人<;
何かフロンの思惑通りになるのも癪だったので← チューされたし←←そのせいでヨノさん激おこですよ←

789フロン ◆Hbcmdmj4dM:2017/04/29(土) 12:35:38
【ポセイドン邸】

血溜まりに沈むフロンは怒りに息を荒げ、傍らに膝をつくヨノに鋭い視線を向ける。

「どうして…邪魔をしたのですか…?あともう少しでジルさんの手で…ッ」

しかし言葉の途中で喀血し、大きく咳き込んでしまう。
どうやら思ったよりも傷が深いらしい。
血を失い過ぎたことで身体も動かせず、最後に憎き女を手にかけることも出来ない自分に情けない気分になる。

…彼女を侮っていた。
父親がジルに殺された事実を伝えれば、彼を拒絶するだろうと思っていた。
これはヨノのことを軽視していたフロン自身が招いた結果でもある。

だが、ジル自ら止めを刺して貰うことこそ叶わなかったものの、彼の憎しみは十分に植え付け、その思惑の半分は達成したと言える。

どうせ自分が死ぬことに変わりはなく、ジルが虚空城に帰還すれば分かることだと、フロンは天井を見上げたまま息も絶え絶えにヨノの望む答えを提示する。

「フェミル様は…生きています。殺そうかと思いましたが…今、あそこには入れない、から…」

フェミルが居る虚空城には強固な結界が張られ、フロンでも浸入することが不可能になっていた。

「でも…遅かれ早かれ、あの子の存在が消えることに変わりはありません…。そう言う…運命、ですから…」

彼女の言う運命とは、フェミルの黄昏の花嫁としての役目のことを指しているのだろう。
そうして兄妹の悲惨な末路を想像し嘲笑うフロンは、口元に笑みを携えたまま、静かに息を引き取った。

790ナディア他:2017/05/09(火) 00:02:39
【ポセイドン邸】

「爺・・・」

どんなに最低な相手で理不尽な態度を取られようと、従者として身分を弁え決して無礼な行動をとらない爺。その彼が、暴動を起こしそうになった一族を次々と力で押さえつけている。
彼らより位が上であるナディアやセナを優先しての行動か、それにしても・・・

「爺、大丈夫か・・・?」

父を静かに見送ってくれと頭を下げる爺の肩は震えていた。実の子ですら彼の死に対し感傷に浸ってやることは出来ないのに、爺は悲しんでいる。父親としては最低な人だったが、上に立つ者としては信頼における相手だったのだろう。貧しい家庭に生活の援助をしていたし、身分に関係なく能力のある相手を迎え入れ仕事を与えていた。リトへの態度ばかりに目がいってしまっていたが、思い返せば他の面では尊敬出来ることが沢山あった。

(ごめん、父さん・・・)

相手に目を向けていなかったのはナディアも同じだったのだ。

「・・・」

子を先に失くす気持ちとはどのようなものだろう。
棺桶にいる人物に僅かに残っていた氣の残滓と、自分を庇い目の前で頭を垂れる男の氣から同じものを感じ取り、セナはこの二人が親子であることを悟る。恐らく公にはされていない事柄だ。
自分も巷では死んだものとして扱われた。唯一の肉親であったらしい父は自分を亡くし、どのような思いでいたのだろうとふと考えを巡らす。リマはとても悲しんでいたと言っていたが、正直良く分からない。父は亡骸が息子の背丈と同じだからと我が子であると信じて疑わず、子の死を受け入れたのだ。本当は生きていたのに。簡単に自分を諦めた父に、果たして悲しむ資格はあったのだろうか。

「セィちゃん・・・?」

どこかぼんやりしているセナに気付き、リマは気遣わしげに声をかける。
リマの声を聞いて同じくその様子に気付いたナディア。具合が悪いのか。休息を促そうと彼の肩に手を伸ばす。

その時だった。

ベルッチオの行動に一時は静まりかけた斎場が再びどよめきだした。
皆入口の方へ顔を向けている。

「え・・・」

何事かとナディアも視線の先に目を向けた。そしてその目に驚愕の色を見せる。

「・・・リト?」

開け放たれた扉の前に立つ人物、それは現在眠り続けているはずの弟の姿で。

(目覚めたのか?いや、と言うか今来られたら・・・)

案の定、周りはセナとリトを交互に見て混乱の色を見せている。
斎場がどよめく中、しかしリトは真っ直ぐに奥へと足を進める。そして、その後ろを白百合を咥えた黒猫が続く。

その様子を見計らったかのようにセナは何も言わず、リトとは逆に出口へ。
すれ違い様にリトはセナを見るも、対するセナは何の反応も示すことなく斎場を出ていった。リマが慌ててその跡を追った。

「リト、あんた・・・」

爺の側を過ぎナディアの横に立つ。無言で棺桶の中を見つめるリトに、ナディアは何か言わなければと考えるも、言葉が思いつかない。

「ホントに死んでたんだな」

そんな中、リトが先に口を開いた。
彼は何処か嘲るように言葉を紡ぐと、連れた黒猫から白百合を受け取り、ヨハンの亡骸に沿える。

「間に合ってよかった。あんたにまだ言い忘れてたことがあったんだ。」

許すことは出来ないけど、理解は出来ると言った。
いつか必ず生まれ変わって、もう一度自分に謝罪し、許す機会を作るよう伝えた。

「約束、守ってよね」

ヨハンの亡骸はなぜだかとても穏やかだ。今まで彼が抱えていた闇から解放された安堵感が伺える。彼も苦しんでいたのだ。

「生まれたことは後悔してない。安心して逝って。さよなら、父さん」

791リマ他:2017/05/12(金) 07:47:31
【ポセイドン邸】

「セィちゃん待ってっ」

斎場を後にするセナを追い呼びかけるが、彼はリマの声に振り返ることなく歩みを進める。

「待っ・・・ひゃっ」

彼が足を止める気はないのだと悟り、ならばと駆け出すも自分の足に躓き転びそうになる。態勢を崩したリマの体をそれまで反応のなかったセナがすかさず受け止める。

「ありがとう」

笑いかけるリマにセナは困惑の色を浮かべた。

「・・・何故、お前はいつも追ってくる?」

「傍にいないと不安なの。セィちゃん、消えちゃいそうで・・・」

幼い頃、セナがいるのが当たり前の日常で、突然彼はいなくなってしまった。
今のセナは何となく、あの頃のセナよりもとても脆く儚く感じるのだ。目を離したら消えてしまう、そんな不安に駆られる。

何を言っているんだ、と思ったが、リマの表情を見ると本気なのだと分かる。
縋るように掴む彼女の手に自分の手を重ね、セナは彼女を見つめた。

「いかない、何処にも。お前が望む限り。ただ・・・」

言いかけ、止まる。

なんだ・・・?

それまで何もなかったはずが、突如、プツンと糸が切れるように、異様な空気が流れ込む。

血なまぐささと、死臭と、異能の気配・・・

(結界が張られていた・・・?)

なんと高度な。セナですら気付かなかった。
しかし驚いている場合ではない。
この異様な気配の渦の中に、見知った氣をいくつか感じるのだ。

「セィちゃん・・・?」

「・・・お前には・・・」

衝撃が強すぎるかも知れない。しかし彼女の力が必要な場合も・・・

セナは苦渋の決断とばかりにリマの手を取ると、そのまま気配の方へ向かった。

-----

予想通り・・・いや、予想以上か。

「・・・っ」

あたり一面に飛び散った血。そして血溜りの中に倒れる少女に、その傍らでドレスを赤く染め呆然と座り込むヨノの姿。
傍には見知らぬ青年が倒れており、その更に奥には・・・

「アブくん・・・!」

同じく血溜まりを作り倒れるアブセルと、嗚咽を漏らすユニの姿を見つけ、リマは駆け寄った。

「アブくんしっかり・・・!」

「ユニのせいです・・・っユニのせいでっアブセルさんがっ」

「大丈夫、まだ息がある」

虫の息だが、辛うじて感じる生命の灯火にリマは安堵する。
生きていれば、助けられる。

リマが手を翳すとあたり一面に光の粒子が現れ、アブセルの体を包み込む。
そしてその光が消えた其処には傷が見る影もなく消えているアブセルの姿があった。
そしてリマはアブセルの口を少しあけ、手で皿を作る。彼女の手皿の中に泉のごとく水が湧きあがり、それをアブセルの口に流し込んだ。ポセイドンの生み出す癒しの力、命の水だ。

「アブくん、起きて。私が分かる?」

792ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/05/12(金) 12:26:45
【ポセイドン邸】

出過ぎた真似をしてしまったばかりか、よもや当主にいらぬ気遣いまでかけさせてしまうとは。
ベルッチオは下げていた頭を上げると、申し訳が立たないとばかりにナディアに目礼で応じ、今だ震えの止まらぬ手を背後に回し、脇へ下がろうとする。
…丁度その時だ。
突如として広間の扉が押し開かれ、直後、斎場にどよめきが走る。

「…リト…坊っちゃん……?」

扉を潜って現れた人物に、ベルッチオは信じられない想いを抱いた。
他の参列者と同様に、リトとセナを交互に見比べては、その顔に動揺の色を浮かべている。
ただ平静を取り戻すのも早かった。それは彼がこの屋敷に長年仕え、そこに住まう人物の性分を少なからず把握していたからこそだろう。

屋敷に戻ってからというもの、アブセルが何やらこそこそとしていたことは気づいていた。
どのような術を用い、そこにどんな真意があるのかは定かではないが、恐らくはナディア達と一緒になって悪巧みでも企てたのだろう。
そしてこうして見比べてみれば、たった今現れた彼がリトだと、そう確信が持てる程には思うものもあり、
むしろなぜ気づけなかったのかと、恥じ入るばかりだ。

そんなベルッチオの脇をリトが通り過ぎる。

棺の中の父親と向き合うリトに、その口から発せられた言葉に意識を奪われる。
彼がヨハンを父と呼ぶのを初めて聞いた。いや、そもそもリトが一度だってヨハンと言葉を交わしたことがあっただろうか。
父親の死を静かに受け止めるリトの横顔は、湖の水を湛えているかのように澄みきっていて、何故だか全く知らない人のようで…。

不意にベルッチオはその顔を見ていて、思わず泣きそうになった。
今までに抱いたこともない感情が込み上げてきて、堪えきれず瞼の奥に熱いものが集まってくる。
何故そんな風に感じたのかは分からない。何故こんなにも胸が熱くなるのかも。
ただ強く目を閉じて、その波が過ぎるの必死に待った。

…この子はこんなにも堂々としていただろうか、こんなにも吹っ切れたような表情をしていただろうか。

ベルッチオの眼にはいつだって、部屋の片隅で一人、積み木を弄っていた幼子の姿が残っている。
死を待つばかりの儚い存在。もちろん可愛く思わない訳がない。
だがそんな子に下手に情でも抱いてしまえば、"その時"が来たとき、居ても立ってもいられなくなる。

故にずっと目を逸らし続けてきたのだ。
見ないようにして、見ないようして、真実からも現実からも背を向けて。
その間に彼はこんなにも美しく、立派に成長していたというのに。

その母親によく似た顔立ちの中に、確かに宿るヨハンの面影を垣間見て再び心が揺さぶられるのを感じた。

「…最期に、旦那様とお話されたのですね」

彼は努めて平静を装うと、静かな声でリトに語りかけた。
まさかそれが死後の世界でなど、想像にもしないが。

ただヨハンは最後に自身の想いをリトに伝えたのだろう。
だから、リトは今ここに、こうして立っているのだ。

「………」

何を思ったのか、ベルッチオはリトに向けて粛々と頭を垂れた。

言うべきことは沢山あったと思う。謝るべき言葉も、伝えるべき言葉も。
果たしてそれをする資格が自分にあるのかどうかも分からない。だがそうせずにはいられなかったのだ。

道具として生まれ、その存在を隠匿され続けた幼少期。そしてその存在が明るみになるや、今度は悪しきものとして害されることとなった彼の生を、17年という時を経て、ようやく表だって歓迎できることに…

「…お帰りなさいませ、坊っちゃん」

老人は溢れんばかりの感謝の想いを胸に、最大の敬意を込めてリトを迎え入れたのだ。

793アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/05/13(土) 06:49:41
【ポセイドン邸】

誰かに名前を呼ばれているのが分かった。
どこかで聞いた覚えはあるのだが、上手く思い出せない。
ただ、ひどく心地の良い響きのする、優しい声だった。

その声に呼応するように温かい光が差し込めて、そっと意識を掬い上げられる。
それが現実への帰還を意味することは本能で理解していた。

ふと少しだけ、名残惜しいような想いに駆られる。
このまま眠っていれば、ずっとその声を聞いていられるのに。…ずっと名前を呼んで貰えるのに――。


ぼんやりと瞼を開ければ、まず初めにこちらの顔を覗きこむ何者かの姿が目に映った。

(誰…?お嬢?ヨノ姉?)

ピントが乱れて曖昧なシルエットを探るように、その輪郭を捉えるべく目を凝らす。
ぼやけていた線は次第に明確な形となり、そして一つの姿を導きだした。

「………」

そこに居たのは亜麻色の髪を長く伸ばした少女であった。

「リマね…!?うぇっ…ッゴホ…‼」

それがリマだと分かるや、アブセルは咄嗟に上半身を持ち上げる。
距離を取るべく行動に移すが、動揺と喉の奥に残っていた水分とが相まって噎せかえってしまう。
しかも…。

「うわっ、何だこれ!?」

床に手を置いた途端、ぬめりとした異質な感触を拾い、反射的に手を引っ込める。
見れば両手が真っ赤に濡れていた。

これは一体…。
混乱する頭を必死に回し、アブセルは辺りに目を走らせる。

ユニに、ヨノに…その顔触れを見た途端、ぴしゃりと水をかけられたかのような感覚に陥る。一気に目が覚めた。

「ユニ!ヨノ姉!無事!?」

思わず身を乗り出して、声を荒げていた。
ヨノのドレスは真っ赤に染まってはいるものの、見た限り彼女に傷のようなものはなく、どうやらそれは別人の者の血であることが分かる。

アブセルは二人が無事であることに胸を撫で下ろすも、しかし次にはこの異様な状況に意識が移る。

廊下には血の水溜まりが出来上がっており、周囲は夥しいほどの濃い血の臭いで満ちている。
そして傍らに倒れる二人の人物…。

「これ、何…?どう…なってんの?」

心の内の困惑を隠すことなく、アブセルは疑問を口にした。

794アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/05/13(土) 06:52:51
リマ>ソイツって言い方に何か敵意を感じる…ww
てか想像以上に重い話でびっくりしました
消息不明イコール消滅したって訳ではないんですか?

重いんだ(笑)そんな藍ちゃんを抱えられるレイジは一体…w
カマテットナイトって何www
いや可愛いけど、そうじゃないんですよ!
女装した男の娘に膝まずくとか、それ何かに目覚めてるだけだから!←

ましろちゃん可愛い(´ω`*)←

角砂糖ww甘党なのか(笑)

ナディアってその頃中学生ぐらいですよね…?
すごい子だ…!
てかエロ本は絶対面白がってやってるだけでしょ(笑)

ヨノさん激おこでしたかwwスマソw←

795リマ他:2017/05/15(月) 13:09:49
【ポセイドン邸】

呆然と座り込みフロンの亡骸を見つめるヨノであったが、近づく者の気配を感じふと顔を上げる。
それがセナだと分かるや、途端張り詰めていたものが解けたかのように震えだした。

「セナくん、どうしよう・・・。お姉ちゃん、人を見殺しに・・・」

あの時点で手の施しようはなかった。しかし、ナディアであったなら助けられたかもしれなかったのだ。すぐに引き返し彼女を呼んでくることも出来た。しかし、自分はそれをしなかったのだ。

セナは彼女の言葉には答えずにフロンへ目を向け、そしてジルへ目を向けた。
先程の結界を張ったのはこの者か。そして、この惨劇を引き起こした張本人・・・

セナがジルを見ていることに気付いたヨノは、震えたままで慌ててセナを止める。

「ダメ!この子は悪い子じゃないの・・・。だから何もしないで、お願いっ」

この状況下で何を言っているんだと感じたが、彼女は必死だった。
ふとリマへ目を向ければ、彼女はヨノの言葉を聞いてやれと目で伝えてきた。

「アブくん、よかった・・・」

リマはセナから視線を戻すと、目覚めたアブセルへ安堵の表情を浮かべる。
その横ですかさずユニがアブセルに抱きつく。

「アブセルさん、ゴメンなさいですぅ!!」

生きててよかった、助かってよかった、ユニは泣きべそをかき続ける。

状況を読み込めない様子のアブセル。しかしそれ以上に今此処へきたリマも状況を把握できない。ユニに聞いても泣くばかりで・・・

「その血はアブくんのだよ。死に掛けてたの。大丈夫?何があったの?」

796アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/05/19(金) 00:37:35
【ポセイドン邸】

「ユニ。お前…、元に戻ったのか…」

泣きべそをかくユニの姿からは洗脳の形跡は見受けられない。
アブセルは彼女が正気に戻ったことと無事であったことに素直に喜ぶも…しかし謝るにしても何もそんなに泣くこともないだろうにと疑問符を浮かべるばかりだ。

その答えはリマの言葉で明らかとなる。
あっさりと死に瀕していたという事実を聞き、アブセルは驚愕の声を上げた。

そんなに危ない状況だったとは。不意をつかれた為によく覚えていないのだが。
どうやら助けてくれたのはリマであるようだ。以前のお礼もまだ返していないというのに、彼女には本当に迷惑をかけっぱなしだ。

「ありがとう。その…リマ姉には度々面倒をかけて申し訳ないと言うか何と言うか…」

そこでふとアブセルは夢の中で聞いた声がリマのものであったことに気づいた。
途端、その時に抱いた感情なんかも一緒に思い出してしまい…
込み上げてくる気恥ずかしい想いに、人知れず身悶えするアブセル。
しかしリマから状況の説明を求められるとその表情も一変。曇ったものへと変わる。

「あー…、えっと、それは…」

口から漏れるのは歯切れの悪い返事だ。
頭を強く打った為に記憶に支障をきたしている…という訳でもなさそうだ。
どうやらそれは問題を起こした人物を庇っているようでもあり…

ふとアブセルはジルを見る。

「ヨノ姉…、その人のこと知ってんの?」

この青年は本当に自分の知る彼なのだろうか。
未だに確信を持てないでいるアブセルは、ヨノに聞けば自身の求める何かが分かる気がして口を開いた。

797リト他:2017/05/28(日) 20:59:04
【ポセイドン邸】

リトの傍らに控えていた黒猫がふと彼の傍を離れる。鈴の音を鳴らし向かう先にはリトを扮したセナに怯えながらも何とかその場に留まり耐えていたミレリアの姿があった。
彼女はずっと震えて目を閉じていたために本物のリトが現れたことも、セナとリトが入れ替わったことにも気づいていなかった。
ふと気配を感じ目を開けると、紫色の瞳に見据えられていた。

「猫ちゃん・・・?」

惹き込まれるような色。綺麗だなと思って見ていると、不意に猫が鳴く。途端、目眩を覚え視界が歪む。
倒れかけたところを慌てて支えてきた侍女がぼんやりとしている彼女に必死に呼びかけて来る。しかしミレリアの耳には、何故か違う者の声が聞こえてきた。

「ミレリア」

それは今はいない、もうこの先聞くことのない愛しい人の声。

(ヨハン様・・・?)

「まだ眠いのか?まったく・・・こいつも母親を見習えば良いものを、まったく寝付かんのだ」

(え?)

ぼんやりとした視界にヨハンが写る。そして彼が苦笑しながら、自らの手に抱く何かを見下ろしていた。お包みの中から小さな白い手が見える。

「その子は・・・?」

「なんだ、寝惚けているのか?」

言ってヨハンはお包みをミレリアに渡す。恐る恐る見ると、真ん丸とした赤子が笑いかけてきた。

「私の赤ちゃん・・・」

「・・・本当は、こうなるはずだった。私が道を踏み外さなければ。悪かった、ミレリア。この子をお前に返すよ。」

赤子を見つめ涙するミレリアの頭をヨハンが優しく撫でる。これは夢。分かってる、しかし何故こんなに鮮明なのか。

「俺は手遅れだが、お前は間に合う。
騙して悪かった、この子は死んでいない。立派に成長したよ。探してやってくれ。」

その言葉を残し、ヨハンは消えていく。
そして、ミレリアの意識は現実へ。

ぼんやりと色を失っていた瞳に輝きが戻る。
ミレリアは慌てて自分の手元を見る。
お包みも赤子もいない。
あれは夢・・・でも・・・

黒猫が素知らぬ顔で欠伸をしている。

ヨハンが伝えたかったこと、それは・・・

「私の赤ちゃん・・・」

必死で辺りを見渡す。ヨハンが今教えてくれた、死産だと聞かされたあの子が生きていると。闇に殺されたはずよあの子は生きている。

「どこ・・・私の・・・」

そして一つの答えに辿り着く。
我が子を奪った憎き闇、恨んで恨んで虐げてきた・・・

ミレリアは一つの人物を視界に捉え、涙を流す。
ヨハンが渡してきた赤子と同じ髪の色、自分と同じ瞳をした少年が棺の中に花を添え話りかけている。

あの子は我が子を殺した張本人、敵、・・・違った。

798リト他:2017/05/28(日) 20:59:37
----

「・・・そうだな。」

何をもって父と会話したのか、おそらく爺は見当もつかないだろう。
しかし何故か確信めいて発せられたその言葉にリトは素っ気なくも肯定を示す。
顔を上げれば自分に恭しく頭を下げる爺の姿が目に入り、その奥で呆気に取られた様子のナディアを捉える。

柄にもなく派手な事をしてしまった。あの時はヨハンの死に目に会うことに頭がいっぱいで、今になって急に小っ恥ずかしさがこみ上げてきた。

「えっと・・・」

何か言わなければ、そう思ったのも束の間、急に何かがぶつかってきた。
そして、それがぶつかったのではなく抱き竦めらたのだと気づくのに時間がかかってしまった。

「は?何・・・」

何故ミレリアが自分を抱き締めているのか。

「ぼうや・・・私の、赤ちゃん・・・」

「え・・・」

困惑の中、次いだミレリアの言葉に耳を疑う。
今、何て・・・?

「奥様・・・今、」

「ごめんね、ごめんなさい・・・見つけてあげられなくて。ずっと目の前にいたのに・・・」

まさか。
そんなはずはないと思いながらも、少なからず期待してしまう自分がいた。

彼女は混乱しているだけ。期待した分、それが間違いであった場合の落胆は大きいだろう。
でも・・・思わず聞きたくなる。

「ねぇ、俺は・・・誰?」

ミレリアの体がピクリと動く。
あぁ、やはり違ったのか・・・聞かなければ良かった。
心の中が一気に重くなる。
突き放される前に離れよう。彼女の腕を離そうと肩に手を伸ばす。

「・・・顔を見せて?リト。」

しかし、その手を止めることになった。
ミレリアが名前を呼んできたから。
「リト」---彼女の子の名前。彼女がその名を口にして優しい笑顔を向けていたのは、自分ではなく古びた人形だった。古びた人形が赤子に見えて、彼女の息子で、自分はその息子を喰らおうとする悪魔。
しかし今、彼女は間違いなくその名を自分に向けていた。
彼女の体が離れたと思えば今度は頬に温もりを感じる。彼女が涙を溜めた目で自分を見つめている。

「母さんそっくりね・・・」

言って彼女は笑った。

「母、さ・・・」

再び彼女に抱きしめられた。胸が締め付けられた。なんとも言えぬ感情がこみ上げてくる。

「母・・・さん」

「うん。」

「俺の母さん・・・?」

「そうよ。」

夢じゃない。呼んでいいの?本当に?
恐る恐る彼女の背に手を伸ばす。彼女は逃げなかった。

「母様・・・っ」

やっと気づいてくれた。見つけてくれた。
リトはミレリアを強く抱き締め返した。

799ナディア:2017/05/28(日) 21:48:32
----

色んな事が1度に起こりすぎて若干混乱が拭えない。

突然のリトの行動にも、ミレリアが正気に戻ったのも驚いたが、何より驚いたのは今のリトの姿かもしれない。

「リト・・・」

先程までの凛とした態度とは打って変わって、柄にもなく母親にしがみついて泣いている。
しかしそこでナディアは思い出したのだ。

強く見えても、どんなに大人びていても、リトはまだ子供なのだ。
耐えて耐え抜いて、耐える事に疲れて自分の殻に閉じ篭ってしまうほどには。外界に嫌気が指して世を拒絶し眠り続けてしまうほどには。

リトを守ると言いながら、リトに子供であることを諦めさせてしまっていた。

「適わないな・・・」

結局自分は姉でしかなくて、彼を甘やかしてやれるのは母親なのだと思い知らされた。
ナディアは苦笑しながら不意に辺りを見る。
おそらく、いや間違いなく、リトはあとで我に返って今の自分の行動に頭を抱えるだろうが、ある意味この姿を公に晒すのは良かったのかもしれない。

リトはまだ庇護すべき子供なのだと言うことを思い出したのはナディアだけではなかったのだ。
リトを忌み子として痛め付けた一族達は動揺を隠せないようで、か弱い子供を大人げなく悠々と虐め抜いていた事に気付かされて気まずそうにしている。

リトはもう大丈夫。長年培ってきた溝を修繕するのは時間はかかるかもしれないが、これからは一族もリトを受け入れるだろう。
そして元は落ち着いた主人格のある性格だ。いずれリトを敬い、彼に付いていくようになるだろう。

ナディアは安堵の意味を込め息を吐いた。
そしてベルッチオの背を軽く叩く。

「良かったな。」

ミレリアをおかしくしたのは他ならぬこの老人で、今更術を解くことも出来ないと嘆いていた。
しかし何があったかミレリアは正気を取り戻し、自らの手でリトを取り返した。

「あんたを許すよ。あとでちゃんと、リトにも謝れよ?」

リトがどう決着をつけるかは分からないが、最後には同じ選択をするだろう。

「いいか?いつかはあの子がポセイドンを率いるんだ。あんたはアブセルがちゃんとリトのフォローが出来るように育てる必要がある。引退なんて野暮なことは考えるなよ?」

800ヨノ:2017/05/28(日) 22:59:51
【ポセイドン邸】

ジルを庇いセナを止めるがセナが警戒心を解く気配はなく、少しでも隙を見せれば彼に手を下しそうで油断が出来ない。

セナと冷戦を繰り広げていたところ、アブセルから声を掛けられた。

「アブセルちゃん、良かった、目が覚めたのね!」

そう笑みを零したのも束の間、続く彼の言葉に表情を曇らせる。

「えぇ、よく知っているわ・・・」

最悪な再会をしてしまったけど、ずっと会いたかった人。

「この子はジルって言うの。アブセルちゃんは会ったことはなかったわね。お父様のご友人のご子息で、私たちが小さい頃はよく一緒に遊んだのよ。」

どうしてこんな事態になってしまったのか・・・でも、きっと何か理由があるはず。

「あなたはどうしてこの子を知っているの?どうしてこんなことになっているの?」

こんなこと、とはおそらく何故敵対しているのか、という事だろう。

ヨノはジルが異能者であったことすら知らなくて、事態を飲み込めていないのは彼女も同じなのだ。

801リマ:2017/05/28(日) 23:19:15
イスラ>>
だってソイツ敵だから←
自分だけ傷ついてますぅって態度で結果的にレイジ苦しめて藍ちゃん苦しめて最悪なんですもん。藍ちゃんと同じ顔してても許せない←
一度は消滅したんですけど、博士がその後藍ちゃんのマザーコンピュータを頑張って復活させてくれて、藍ちゃんは再起動する事が出来ましたヽ(•̀ω•́ )ゝ
藍ちゃんの映画が大成功を収めて幕を閉じた日に、最後の公演で映画館をジャックして、「君はどこにいるの?」って映画の名セリフと共にスクリーンにハルカとの思い出の地の風景を映すんです。それで、藍ちゃんが生きてるって気づいたハルカが慌ててその思い出の地に行くと、藍ちゃんがそこで待っていてめでたく再会、って流れです。
相手がハルカでなければなぁ・・・( ˘•ω•˘ )

ロボットなのでwww
きっとレイジはマッチョッチョなんです。お腹はプヨプヨだけど←
良いネーミングでしょ?←
えー( ˘•ω•˘ )

てか藍ちゃん最近あざとさを増して、一週間前に発売した曲が可愛すぎて吐血して未だに瀕死状態なんですけどどうしたら良いですか←

あれ、ましろの方に目がいってるwww

かなりの甘党です(笑)
藍ちゃんに「それ砂糖入れたコーヒーじゃなくて、コーヒー漬けの砂糖だから。」って言われてますwww

ナディアはマセてますからねぇ(笑)
やべ、バレた←

ヨノはきっと恨んでますね(笑)

802ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2017/06/03(土) 13:03:02
まさかこの様なことが起こるなど誰が想像しただろう。
ミレリアに仕掛けた術は強いもので、例えナディアであっても解けぬようにと幾重ものプロテクトを複雑に組み合わせたものであった。
にも関わらず、ミレリアはそれを自力で解いてみせたのだ。

目の前の信じ難い状況に唖然とするベルッチオは、ふいに背中を小突かれ我に返る。
見ればナディアが薄い笑みを浮かべて立っていた。

「…お嬢様は相変わらずお優しい方でいらっしゃる」

罪深い自分に償いの機会をくれると言うのだから。
ベルッチオはナディアの言葉に胸のすく想いで居住まいを正すと、

「この老いぼれで宜しければ、喜んで微力を尽くさせて戴きます」

その恩情に感謝の意を述べる。
…その時にふと昔のことを思い出した。

"死んだ筈"のリトを、ナディアが別邸で見つけ出して騒ぎになった事があった。
死産したと告げられた子が、別の処で幽閉されていたのだ。当然それについて、ミレリアも説明を求めた。

対し、一族の幹部連…先のリトの処遇を決めたメンバーは、ミレリア達をどう納得させるか急ぎ議論の席を設けさせる。
もちろん一族の長であるヨハンも同席するが、その間彼は一度たりとも口を開くことはなかった。

失った筈の我が子を取り戻したミレリアは、もう何を聞かされてもリトを手放すことはないだろう。
記憶操作という案が提議されたのも、自然な成り行きと言えばそうなのかもしれない。
そうして議論の最後、長に決議が委ねられる。
一同の視線が集まる中、ヨハンは瞑目し、静かにただ一言。「そのようにしよう」と口にした。

あの時の彼は一体何を考えていたのだろう。
何にせよ、苦渋の決断だったことに違いはあるまい。
最終的に、ナディアやヨノに洗脳の手が及ぶことは取り下げているのだから。

(…旦那様、見ておいでですか…)

お互いを抱き締め合い涙を流す母と子を見て、ベルッチオは思う。
本当は誰よりもこの光景を見たいと願っていたのは、ヨハンなのではないだろうか、と。

今は亡き主…そしてその母親、レイシーに想いを馳せ、ベルッチオは目の前の光景を生涯忘れぬように、瞳の奥に焼き付けるのであった。

803アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/06/03(土) 13:05:08
【ポセイドン邸】

「そうなんだ…」

ヨノの話を聞き、アブセルの疑念はいよいよ確信に変わる。
やはり彼は昔、この街に住んでいたのだ。
そしてヨノの語る少年と、あの時に出会った少年はきっと同一人物であると結論する。

「俺がまだ此処に来て間もない頃、皆には内緒でリトを屋敷の外に連れ出したことがあっただろ?
そん時リト、途中で発作を起こして倒れちゃったんだけど…、この人とこの人の家族が助けてくれたんだ」

それが何故こんなことになったのか、正直自分でも分からない。
引っ越したとばかり思っていた少年。いつか再開できればと思ってはいたが…、それがよりによって敵としてだなんて。

彼はリトのことを覚えていないのだろうか。
それとも知った上で襲撃を重ねてきたのか…。

アブセルはジルが自身の命を刈り取ろうとした瞬間を思いだし、戦慄する。

が、その時…。
ふと風の流れを感じた。

見れば倒れ伏す少女の身体に開いた傷口…穿穴から風が吹き込んでいる。
…いや、違う。風なんかじゃない。

声を上げる間もなかった。
それは直ぐに少女の身体を呑み込む程に大きく脹れ上がったかと思えば、空間を歪ませ、強力な重力を発生させる。

「―ッ!」

引きずり込まれる――。

アブセルは剣をアンカー代わりに床に刺し、空いた方の腕で咄嗟に一番近くにいたユニを捕まえる。
同時に阿形と吽形もそれぞれヨノと意識のないジルを保護し、その場から跳び退いた。

だが…、

「リマ姉!!セイちゃんさんっ!!」

それ以上の人数を救出するには手が足りない。
アブセルは漆黒の虚空の中へと吸い込まれる二人を目に映し、己の無力さに慟哭を上げた。

804セナ他:2017/06/11(日) 21:15:15
【ポセイドン邸】

「リト。」

どこで控えていたのか、漆黒のパラソルを風に乗せてノワールがフワリとその場に降り立った。

「やっと戻ったか。感慨に耽っている余裕はないぞ。何やら不穏な空気を感じる。同時に、ポセイドンの娘と闇の王子の氣が消えた。」

「ポセイドンの娘・・・リマのことか?」

ノワールは頷く。彼女の表情から状況がかなり思わしくないと察する。
リトがナディアを見ると、彼女も状況を把握したようでミレリアをリトから離す。ミレリアが名残惜しそうにしているのを宥めた。

「ここは私が締めるよ。終わったら私も行く。申し訳ないけど、先に行っててくれる?」

「・・・分かった。」

黒猫がリトの肩に飛び乗る。リトはノワールを引き連れてその場を後にした。

----

フロンの遺体の周囲を纏う空気が変わる。
それは一瞬の出来事で、膨れ上がった空気が空間を歪ませ、近くにいたリマを捕まえた。

「リマ・・・!」

セナは咄嗟に手を伸ばすもリマを掴むことは叶わず。それどころか、生じた重力の塊は自身への対処も遅れたセナの身体をも飲み込んだ。

その光景を目の当たりにしたヨノが叫びに似た悲鳴を上げる。

「アブセルちゃん!二人が・・・どうしよう、早く助けてあげて!!」

805ジル他:2017/06/26(月) 11:53:55
【ポセイドン邸】

-----

父の書斎で何気なく開いた引き出しに小さな小箱を見つけ取り出した。
中には紫の宝石が付いた金の指輪が入っていた。
窓に向ければ宝石がキラリと光る。

「キレー・・・」

「こら」

指輪に見惚れていると背後から声がかかり、身体を抱き上げられる。

「また父さんの部屋に勝手に入って」

「おとーさま、これ何?おかーさまにあげるの?」

装飾は女性が身につけるもの、そんな認識をしていた幼い我が子はニコニコしながら問いかけてくる。
トーマは苦笑いして見せると、そのままジルを膝に乗せ腰掛けた。

「それは父さんのものだよ。恋人から貰ったんだ。」

「こいびと?」

「うん、お母さんに出会う前に好きだった人。父さんが初めて手に入れたいと願った女性。・・・結局、最後は怒らせてしまって別れたけどね。」

「おとーさま、その人に悪いことしたの?」

「んー・・・。父さんに勇気がなかった事が原因かな?」

ジルは良く分からないと言いたげに首を傾げながら、指輪を元の場所に戻そうとする。
しかしその手をトーマが止め、ジルにそのまま握らせた。

「お前にあげるよ。」

「おとーさまの大事なものでしょ?」

「だからこそあげるんだよ。父さんが恋した人は女神様なんだ。これには魔法がかかっているんだよ。お守りとして持っておいで。」

「おまもり・・・」

「きっとお前を守ってくれる。」

ジルの指にはまだ大きいからと、指輪に鎖をつけて首から掛けてやる。

「ありがとう!」

ジルは嬉しそうに笑った。

-----

「何・・・あれ。」

ヨノの悲鳴が耳につき目を覚ませば目の前にはあまりにも異常な光景が広がっていた。
重力を一点に合わせたような黒い塊にジルは目を見開く。
傍らでヨノが震えていた。

「ジル・・・どうしよう、セナくんとリマちゃんが・・・」

二人がどうしたのか、始めこそ疑問に思うがその答えはすぐに分かった。
彼女が口にした二人の姿はここにない。おそらく、あの塊に引き込まれたのだろう。

「どうしよう・・・死んじゃ・・・」

「僕の前で簡単に死ぬとか言わないでくれる?」

言ってジルは立ち上がる。

「普通に考えなよ。あの二人は御先祖でしょ?あの二人が死んだら君たち消えちゃうから。二人は生きてるよ。」

しかしあそこから自力で出るのは至難の技だろう。
外部からの刺激があればあるいは・・・

「ヨノ!」

そこへ騒ぎを聞きつけ駆けつけたリトが合流する。

「うそ、リトくん・・・?」

「ヨノ、何があった?これ・・・」

「混乱してる子にこれ以上聞いてあげないの。」

ヨノに詰め寄るリトへ、肩に乗っていた黒猫がふいに声を出す。
そしてふわりと肩から飛び降りたかと思えば、突如として少女の姿になった。冥界で出会った少女、アネスだ。

「あんたには分かるの?」

「まぁね。ま、何でこんな所に出ちゃってるのかは分かんないけど。」

「対処出来るか?」

「んー・・・」

806ジル他:2017/06/26(月) 11:54:26

「ちょっと。」

話を進めていく新参者へ、ジルが勝手に割り込むなとばかりに不機嫌な声を出す。

「まさか君たちが解決しようとか思ってないよね?不本意だけどこれは僕が原因だから片付けも僕がやる。放っておいて。」

仕方ないから飲み込まれた二人も助けてあげる。それで文句はないよねと言うジルへ、何かを察したヨノがその腕を掴む。

「まってジル。あなたも危ないわ。」

「僕の心配なんてしないで。あの二人を助けたいんでしょ?」

正直、この引力に逆らえるのは空気や風を操ることの出来る自分しかいないだろう。この中の誰よりも適任なのだ。
自分の身から出た錆にケリをつけたいのもあるが、たとえばこの場でリトに対処させて、仮に何かあればヨノが悲しむ。それは避けたかった。

「戻ってくるよね?貴方がいなくなるのは嫌よ。」

「・・・」

「返事をして。」

「・・・分かったよ」

フェミルがいない世界に未練などない。最悪2人を助けて自分は相打ちになっても良いと考えたが・・・ヨノの願いは頑だった。ジルは諦めたように頷く。

「ジル、フェミルは・・・」

フェミルが本当は生きている、フロンの戯言だったと言わなければ。
しかし口を開いたヨノに、ジルは何も言うなとばかりに悲しげな笑みを浮かべた。

「じゃあね」

そしてジルはヨノの手を解きそのまま塊の中へ飛び込んでいった。

807アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/06/30(金) 21:49:40
【ポセイドン邸】

為す術もなく、目の前でリマとセナが渦に呑み込まれてしまう。
二人を救うことが出来なかった…。あまりの出来事にアブセルは力が脱け、膝から崩れ落ちる。ヨノの声も耳に届いていないのか、脱け殻のように呆けているばかりであった。
しかし直後、新たな人物が場に駆けつける。
目を疑った。

「……リト…?」

そこにいたのは紛れもなく、あのリトであった。

「え、嘘だ…、ほん…もの…?」

驚きを隠せず目を見開くアブセルの瞳にみるみる光が宿っていく。
しかしそんな彼をよそに、話は意外な方向へ向かいつつあった。
ジルがあの渦を処理するというのだ。しかも飲み込まれた二人を救出するとも。
アブセルが諦めていたその時に、彼は解決の手段を講じていたのだ。

「……」

…呆けている場合なんかじゃなかった。リマとセナはまだ生きてる。何もしない内から望みを捨てるなんて馬鹿だった。

アブセルは立ち上がる。リトに歩み寄り、そして両手で彼の身体をしかと抱き締めた。

「リト…ごめん。…戻って来てくれてありがとう」

腕の中に感じる慣れ親しんだ感触。
アブセルはリトの温もりと匂いを思う存分堪能し、ここ最近ご無沙汰となっていたリト成分を充電。ようやく本調子を取り戻す。
リトを離すと、今度はアネスの方へ目を向けた。

「何でお前が居るのか知らないけど…、あの変なのをどうにかする方法があるなら教えてくれないか?
リマ姉とセイちゃんさんを助けたいのは勿論だけど、俺はあの人(ジル)にも聞きたいことが沢山あるんだ」

ジルは放っておいてくれと言ったが、そうはいかない。
彼がこの街から姿を消したのは十年も前。その時にした、リトと一緒に会いに行くという約束も果たしていない。
襲撃するだけしといて、何の説明もなしにまた勝手にいなくなるなんて許さない。

「頼む…」

ジルが漆黒の渦に飛び込んでから、その入り口は急速に縮まりつつあった。
穴が完全に閉じてしまえば、三人とも戻って来れなくなる。
アブセルは真剣な態度でアネスに頭を下げた。

808リト他:2017/07/03(月) 23:51:21
【ポセイドン邸】

いきなり抱き竦められ何かと驚くが、それがアブセルであると分かるや途端抵抗を試みる。
しかし普段なら軽く暴れればすぐ手を緩める彼が、なぜだか一向に放そうとしない。腕力はアブセルがはるかに上だ。結局リトは今回ばかりは抵抗虚しくアブセルの気の済むまで堪能される羽目になった。

「うわぁ・・・」

目の前で男二人の抱擁・・・までは許せたが、同性の少年の髪や首筋など余すことなく匂いを嗅ぎ至福の表情を浮かべるアブセルを目の当たりにしたアネスは顔を引き攣らせる。キモイ。
かと思えばその変態はリトを離すと同時に数秒前の自分が無かったとでも言うように真面目な表情をつくり、自分に話を振ってくる。何だコイツは。

「・・・あれは咎落ちした者の末路。本来死した者はどんな極悪非道な奴だろうと最後には転生の機会を与えられる。けど、世の理を乱した者・・・禁忌を犯した者に待つのは消滅のみ。魂ごと消えるのよ。自らの身から生じたあの渦に呑まれてね。」

で、厄介なのがここから、とアネスは眉を潜める。

「渦は放っておけば消滅するの。だから本来は何もしないのが特策・・・だけど、今回は関係無いのが巻き込まれてる。中はそうね、宇宙空間みたいに終わりのない闇が続いてて・・・餓死とかない限り死ぬことはないけど、自力で戻るのは難しい。」

アネスが話を続けている間にも渦は小さくなっていく。
急がなければ、渦が消えてしまえば救出は困難になる。
しかしアネスは更に難しい表情を浮かべた。

「あのね、多分・・・最初の二人は助けることが出来るの。咎落ちとは無関係だから。だけど・・・」

今入っていった青年は・・・

「ねぇ、あの子・・・何かしてない?人喰い、死者蘇生、神殺し・・・」

ジルに感じた違和感。正でありながら負を思わせるような・・・

「・・・闇堕ち?」

神に通じる存在でありながら闇に身を投じその半分以上を黒く染めている。いつか完全に闇に全てを喰わせ神の力を闇の養分にせんとする・・・

「やばいよあの子、一番のご法度犯してる・・・」

突如として渦の中から竜巻が飛び出してくる。竜巻が消えると、その場にセナとリマの姿が。そこにジルの姿はない。

ジルは戻れない。アネスは呟いた。

そして、その言葉を裏付けるかのように渦が消滅した。

809アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/07/07(金) 20:57:06
【ポセイドン邸】

アネスの告げた言葉は残酷なものであった。
事実、渦より帰還したのはリマとセナの二人だけ。そこにジルの姿はない。
アブセルは二人の無事を確認するも、渦のあった場所…今はもう何の変鉄もない廊下の一角を見つめ、握った拳を戦慄かせた。

「じゃあ…なんだよ。あの人は死ぬまでずっと一人、暗い闇の中をさ迷ってなきゃならないってのかよ…」

リマとセナが助かったことは手放しで喜ぶべきことだ。
しかしアブセルの心は今もなお晴れぬまま、分別もなく縋るようにアネスに詰め寄った。

「なあ、本当にどうにもならないのか?よく分かんねえけど、お前すごい偉い人の娘なんだろ」

アネスに当たるのはお門違いであるのは分かっている。…分かっているのに、この感情の昂りを抑えることが出来ない。
アブセルはやるせなさに強く唇を噛みしめた。

「あの人は宣言通りリマ姉達を救った。なのにその功労者の行く末がそれとか納得できねえよ…」

810リト他 ◆wxoyo3TVQU:2017/07/17(月) 22:45:51
【ポセイドン邸】

「そんなこと言ったって・・・」

無理なものは無理なのだ。たとえばここに、そう、ルイがいたとしても事態は変わらないだろう。

「禁忌を犯した者は管轄外。神様の領域には踏み入れられないの。」

しかし周りの落胆ようは予想以上のもので。
ヨノは泣き出すし、助け出されたリマも複雑な表情をしている。「彼は戻れないことを分かっていた気がする」と。

自分が非情な事を言っている自覚はある。しかし、今の自分には知識も経験も足りない。

「・・・たとえば、そうね。神様の導きがあれば戻れるかも・・・。」

苦し紛れにそんなことを言ってみる。神に頼むなど夢物語も良いところだ。

しかし、アナスの言葉にユニがふと反応する。

「神の・・・導き・・・」

耳の奥で何か聞こえる。これは・・・声?
ふわりと風が舞い、ユニの髪を凪ぐ。
ユニは目を閉じた。

「声が聞こえる・・・」

ユニの様子がおかしい。不審に思ったリトが声をかけるが、彼の声は届いていないようで。
ユニの周りをまとう風が強くなった。そう感じた途端、バサリと彼女の背から大きな翼が広がる。

「祈れ、祈りの先に道拓くだろう」

ユニの体が宙に浮かぶ。開いた瞳は黄金に光り、髪は銀色に輝いていた。
そこにいるのはユニであるはずなのに、普段と纏う雰囲気がまるで違う。

その姿を唖然として見ていたアネスは、ハッと気づいてヨノに詰め寄る。

「ちょっとそこの貴女!さっきの子を取り戻したいならもっと強く願って!早く!」

ヨノはアネスの突然の発言に戸惑いながらも言われたとおりにする。
と、ユニは手を翳す。
瞬間、翳した先に一つの空間が開いた。

「引き上げて!」

アネスが叫ぶ。開かれた空間に人の手が見えた。

一方ユニは糸の切れた人形のようにフッと体の力が抜け、髪も戻り翼も消える。
そのまま落ちてくる彼女をリトが走り受け止めた。

ユニが元の姿に戻ると同時に開かれた空間も閉じかけてくる。消滅は時間の問題だ。

何が起こったかよく分からないが、アネスの様子から一つだけ分かることはある。

「アブセル、その手を引き上げろ!」

おそらく、そこにいるのはジルだ。そして、これが彼を救い出す最後のチャンスなのだろう。

811アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/07/28(金) 22:07:43
【ポセイドン邸】

「!…ああ!」

リトの声に、これが最後に与えられたチャンスであることを察する。
アブセルは飛び付くように渦から伸びる手を掴むや、こちら側へ引きあげようと試みる。

しかし…

「重…っ」

まるでヘドロか何かにでも絡み付かれているみたいだ。
それは禁忌を侵した者を逃すまいとする、何らかの力の働きがけのようにも見える。

(くそっ、世のコトワリが何だっつうんだよ…!)

急がなければ折角開いた穴も塞がってしまうというのに。

思わぬ障害に見舞われたそんな折り、ふと別の者の手がジルの腕へと伸ばされた。
…リマとセナだ。

言葉を交わさずとも彼らの意図は明白であった。
三人は一瞬だけ視線を交わすと、一つの目的の為に力を合わせてジルの救出へと動いた。

「…っせーの!」

812ヨノ他:2017/08/18(金) 07:25:06
【ポセイドン邸】

一人の力ではどうにもならなかったものが新たな手が加わったことで次第にこちらへ引き出されてきた。辛うじて手が見えていただけだったのがその体が抄いだされ、ジルの姿がはっきりと目視出来た。
あと少し、もう一息だと言うのに。彼の体に絡みついた黒いもやのようなものが邪魔をして最後まで引き上げられない。
その間にも開かれた空間は徐々に狭まってきている。時間がない。

「・・・ねぇ。」

暫く考えるようにしながらその様子を見守っていたアナスが驚く程静かな口調で口を開いた。
そして体力を削がれたのか力なく三人へ身を委ねる状態となっていたジルを見据え、問う。

「一つだけ聞くわ。"生きたい"?仮に何かを失ってでも。」

咎落ちの後呑み込まれた者が再び現世に舞い戻るなど奇跡としか言いようがない。どういうわけか、その奇跡をユニが起こした。
そして、この状態になったことで彼を助ける方法が一つだけ見つけ出された。しかし、それは決して善策とは言えないこと。ここで生き延びたとしても更なる地獄が彼を襲うだろう。
それでも彼は命を選ぶか。

「・・・」

ジルは光の宿らぬ目でアネスを見る。そして小さく口を開いた。
彼の選んだ答えは-------

---------

813ヨノ他:2017/08/18(金) 07:25:46
あの目まぐるしく繰り広げられた一件から数時間後。ポセイドン邸は静けさを取り戻していた。
ナディアはヨハンの葬儀を済ませ、後処理があるとかで爺に促されるまま今は書斎に篭っている。
一方、気を失ったまま目覚めないユニを休ませたいと言ったリトはアブセル達を連れ自室へ向かった。あの後リトとアネスが口論となったが、
今は大丈夫だろうか。

「・・・。」

ヨノは器に水を汲みなおしながら思いを馳せる。今となってはあの喧騒が嘘のよう。しかし現実だ。清潔なタオルを持って自室へと向かう。
主は自分であるはずの部屋のドアをノックをするのは、中の人への配慮である。

「ジル、入るね。」

返事はない。ヨノは多少躊躇いを抱きつつも部屋の中へ顔を覗かせる。拒絶の態度は見えない。ヨノは中へ入った。

ジルはベッドから身を起こし窓の外を眺めていた。別に外に興味があるわけではない、気持ちのやり場が無いのだろう。
先程までは呻きを上げていたが今はやけに静かだ。ポセイドンのリマとナディアの尽力の賜物か。痛みが引いたようで良かった。

「他の人じゃ嫌だと思って・・・。私でも心許ないかもだけど、ごめんね。」

言ってヨノは布団を捲ろうと手を伸ばす。しかしその手をジルが掴んだ。

「やめて。」

「でも包帯代えないと・・・」

「放っておいて。」

「やるわ。私がしないで誰がするの?」

ヨノはジルの手を退け布団を引きはがす。そこにある筈の彼の足はない。

「血、止まったね。」

辛うじて残る付け根付近の腿に巻かれた血の滲んだ包帯を解きながらヨノは言う。ジルは黙ったままだった。

「私だったら痛くて卒倒しちゃってたよ。ジルは強いなぁ」

わざと明るく言ってみる。少しでも彼の気が晴れるように。気休めであることは分かっている。けど、そうしたかった。

「醜いでしょ。」

「そんなこと・・・」

「これ・・・」

ジルは自分の指に嵌められた金の指輪をヨノへ見せる。

「父がくれたお守りなんだ。女神様の加護が込められてるって。それで・・・願ってしまった。「生きたい」って。柄にもなく命乞いを・・・。そしたらこの宝石が光って、道が出来た。そこを辿ったら戻ってこれたんだ。」

「お父様が助けてくれたんだね。」

「君のせいだよ。」

「・・・私の?」

「君が戻ってきてなんて言うから・・・。生きなきゃって思ったんだ。君に・・・」

もう一度会いたくて。

「君は残酷だ。どうしてこんな気持ちにさせるの。」

「・・・貴方が楽になるのなら私を恨んでもいい。貴方がどんな姿になってしまっても、私は貴方に生きていてほしい。」

あんな暗い闇の中に独りにさせたくなんてなかった。貴方は本当は、とても寂しがり屋だから・・・

ヨノはジルの包帯を交換し、「休んで」とだけ告げ部屋を出る。

と、部屋の前で佇む人影と目があった。

「アブセル」

てっきり目覚めたリトに歓喜し一緒にいるものだと思っていた。リトの存在を後回しにするなんて珍しい。
アブセルはとても居心地悪そうに、中に入ることを躊躇っているようだった。

「ジルに話があるの?起きてるから入っても大丈夫よ。」

814アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/09/03(日) 00:41:07
【ポセイドン邸】

ジルと話しをする為にここに来たはずだったのに、いざ顔を合わせるとなると、やはりどこか躊躇してしまう自分がいた。
目の前の扉を開けるべきか否か。決めかねていた丁度その時、折りが良いのか悪いのかヨノがその扉を引いて中から出てきた。

「あ…、じゃあ…うん」

もはや退くに退けない状況になってしまった。
アブセルは曖昧な返事を返すと、半ば観念するように部屋の中に足を踏み入れるのだった。

落ちついた雰囲気と女性的な上品さが内包されたような空間の中、彼はいた。
ヨノのベッドに身を沈め、窓から外の景色を眺めている。こちらの存在に気づかない筈はないのだが、彼は現れた来訪者には関心がないのか、一瞥もくれることはなかった。

アブセルは扉の側を離れベッドから遠からず近からずといった一定の距離を置いた場所で立ち止まる。
その視線は自然と彼の足、膨らみの見えない布の上に引き寄せられ…気まずそうに眼を逸らした。

…あの時は無我夢中だった。
「消えて欲しくない」「消させない」その一心で彼に手を伸ばした。
だがジルに対する感情は今もなお複雑で、こうやって面と向かって対峙している間もどういった態度を取るべきなのか分からなかった。
二人の間にある距離は、そのまま心の距離を表しているのだろう。

重苦しい沈黙が無為に時を刻んでいく中、とうとうその空気に堪え兼ねたアブセルがようやくギクシャクと口を開いた。

「えっと……、具合は…大丈夫か?」

……無言。

どうやら出だしから盛大に挫いてしまったようだ。

先の騒ぎでうやむやになってしまったが、そもそも自分と彼は敵対する間柄にあったのだ。私的な感情がどうであれ、その関係は今も変わらない。
ジルにしてもアブセルに気遣われる覚えはないだろうし、捉え方によっては皮肉と受け取られてもおかしくはない。

「…あー…悪い、今のは忘れて。
本当はこんなこと言いに来た訳じゃないんだ」

アブセルは乱暴に髪の毛を掻きむしり溜息を溢す。そして意を決したように顔を上げた。

「あのさぁ、アンタ昔この街に住んでただろ。
…俺のこと、覚えてる?」

ここに来て初めてまともにジルの姿を真っ向から見据える。目を逸らすことなく、記憶の中のかつての少年の面影をなぞるように。

815ジル:2017/10/16(月) 12:33:39
【ポセイドン邸】

アブセルの気配を感じ取るも、ジルが彼の方へ顔を向けることは無い。
本音を言えば今は誰とも顔を合わせたくないのだ。しかしジルが動けない以上、話のある相手には都合が良いのだろう。

「・・・一度会っただけの子を覚えてるわけないでしょ。」

アブセルの問いにジルはそう答えた。
「覚えていない」とは言ったが、彼に「一度会ったことがある」と返したのは、結局のところ「彼を覚えている」と言うことに他ならない。その言葉の矛盾には当然ジルも気づいているだろうが特に取り繕うこともない。単にアブセルの言葉に素直に答えたくなかっただけなのだろう。

「どうして僕が君たちを攻撃するのか、気になる?」

そして、アブセルの胸のうちもお見通しだった。アブセルはジルの正体を知り、確認しに来たのだ。お気楽な彼のことだ、昔自分たちを助けた人物が今では敵対しているという現実が信じられないのだろう。

「僕が四霊の一人であり黄龍の部下だから。君達が僕の邪魔をするから。・・・と言ったところで君は納得しないだろうね。」

実のところ、本当にただそれだけの理由だった。
本音を言えば四神にも、ましてやリトになんて敵意などない。世界の公正など自分にはどうでもいい。
生きていくために黄龍の命に従っているだけ。フェミルの安全を確保しなければ。
更にいえば自分がこの任に就いておけば黄龍が別の刺客を寄越すこともない。あとは適当にやり過ごせば良い。

しかしそんなこと言えるはずもなく。癪だと言うのもあるが、何より自分は彼らの「敵」だから。「悪役」らしくいなければ。

「他に理由があるとすれば・・・・・・」

だから、アブセルが納得しそうな理由を考える。嘘は得意だ。
ジルは漸くアブセルの方へ目を向ける。何処か嘲るような目をして。

「単にリトが嫌いだから。」

リトはどんな絶望的な状況下においても決して光を見失わない。
持ち前の気高さを失うことなく、例えば自分と同じ立場に堕とされたとしても真っ当な道を選び生き延びたことだろう。
そして何より、彼の周りには彼を大切に想い護ろうとしてくれる誰かがいる。
自分にはないものを持っているリトが羨ましい。自分はどんなに望んでも手に入らないから。
自分はリトに八つ当たりをしているのだと、アブセルへ言った。

「興味があるんだ。あの子はどこまでも綺麗で尊い。君たちにとって大切で、宝石のような存在だよね。だから、そんな宝石を踏みにじって、汚して、壊したらどんな気分かなって。君は単なるおまけ。君が必死になってあの子を護るものだから、先に片付けてからじゃないと、リトには手を出せないからね。」

816アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2017/10/26(木) 02:02:19
【ポセイドン邸】

ジルの返答はアブセルの言葉を認めたものと受け取って良いだろう。
だがそれを告げた当の本人は、『だとすればそれが何だと言うのか』とでも吐き捨ててしまいそうな程に冷たい目の色をしていた。

…一体自分は何を期待していたのだろう。
ジルの口からどんな答えが欲しかったのだろう。

ジルの本意を知らぬアブセルは、次々と叩きつけられる心ない発言に奥歯を噛み締め拳を震わせる。
もはや話し合う余地もないと思わせるほどの一方的な拒絶。
それがアブセルの敵愾心を刺激する為のものなら、リトを卑しめるような発言はこれ以上もないほど効果的だろう。
…だがジルは一つだけ勘違いをしている。

「………じゃねーよ…」

彼はジルが思っている以上に"大馬鹿者"なのである。

「見え透いた嘘ついてんじゃねーよ!!
それが本当なら…何で俺を殺そうとした時"ごめん"って言ったんだよ…っ!
何でセイちゃんさんやリマ姉のこと命懸けで救ってくれたんだよ!」

怪我人であるジルに配慮し、一応は大人しい態度でいようとこの会談に臨んだはずたったのだが、今ではもうその考えも及ばぬほど、アブセルはタガが外れたように憤慨し声を荒げる。

「リトが羨ましくて八つ当たりしてたなんて、そんなのガキの頃の俺まんまじゃんか!
昔ガキだったアンタが俺に諭してたのと同じことを、大人になった今になってやってるなんて幼稚過ぎて笑えもしねーっつの!」

たった一度きり、それも幼い時に出会っただけだ。
ジルのことを語れる程、彼を知っている訳じゃない。
まして誰かを傷つけるような事を言う人でも、する人でもないと断言できるべくもない。

だがそれでも、ジルはアブセルの中で間違いなくヒーローだった。

それほどまで盲目的に彼を信じるのは、アブセルにとって"あの日"が何ものにも代え難い特別な意味を持っているから。
例えそれが時間と共に美化された思い出だったとしても。

認めたくないのだ。
彼を、軽蔑したくないのだ。
敵対行為に及んだのは止むない理由があったのだと言って欲しい。

だって、憧れの人はいつまでも、憧れの対象でいて欲しいから。

「それに…っ、アンタにだって大切に思ってくれる人ぐらいいるんじゃないのかよ!
両親とか妹とか…、ヨノ姉だってアンタのことめちゃくちゃ心配してたんだぞ!」

故にアブセルは否定する。今のジルは真実の彼ではないと、全力で否定する。

817ジル他:2017/12/28(木) 21:49:20
【ポセイドン邸】

アブセルを煽ったつもりが、彼からは予想外の反応が返ってきた。
ジルは一瞬呆気に取られた表情を浮かべるも、やがてクスリと笑い出す。

「ほんと、馬鹿なのか何なのか・・・面白い反応をするね。ここまでされて僕を拒絶しないとは。」

そしてふぅと溜息をつき、何処か、幼子を諭すかのような静かな笑みをアブセルへ向けた。

「僕には両親がいない。殺されたんだ、父が親友として信頼していたはずのここの主人(ヨハン)にね。そして僕はその彼に復讐した。だからヨノに気にかけられる資格がない。
僕達の関係は既に破綻しているんだ。君がどんなに否定しようと、今目にしているものが全てだよ。」

ただ・・・そうだな、とジルは続いてわざとらしく考える素振りを見せた。

「それでもまだ僕を信じるなんて馬鹿なことを言うなら、一つだけ教えてあげる。リトを今後も護り続けたいなら、ユニを引き離した方がいいよ。」

黄龍は今ユニを欲していて、ジルが彼女を連れていこうとしたところでアブセルと対峙したわけだが、その彼の口ぶりは今後ユニを奪いやすくするための常套句ではなさそうだった。
リトとユニが共にいてはならない理由があり、彼はそれが何か知っている。

しかし、その答えを聞き出すことは叶わなかった。断りもなくドアが勢いよく開かれたと同時に、ズカズカとアネスが入り込んでくる。
そして、有無を言わさずジルの襟首を掴んだ。

「ねぇ。」

ジルが怪我人であることなどお構い無し。アネスの声音は怒りの色だった。

「お前、何してくれてんの?」

突然の自体にも関わらずジルは驚く素振りも見せず、そして彼女の言わんとしていることが分かったのか、代わりに不遜な笑みを浮かべる。
先程までアナスは彼女のとった行動のことでリトと揉めていた。その延長なのだろう、一呼吸おいてリトがアネスを追ってくる。彼が制止するも、彼女はやめない。

「お前みたいなのがいるから世界軸が歪むんだ。自分の都合で理を破ったツケが何処に来るか、本当は分かってるんだろ?」

「・・・君、この世界の子じゃないね?これも歪みの原因になるんじゃないの?」

「この・・・!」

「やめな!!」

殴りかからんばかりのアネス。そこへ怒号が飛んだ。見れば扉の前で仁王立ちしたナディアがいた。

「怪我人前にして何してんの!騒がしくすんなら出ていきな!!」

つか出てけ!とナディアは一同を追い出しにかかる。ナディアと共に来たリマも退室を促すと、アネスも歯噛みしながら言葉に従う。

「ユニが起きた。何か話したいことがあるらしい。」

出て行き様にリトがアブセルへそう耳打ちする。
一緒に出ろとの意。アブセルはまだジルへ話がありそうな様子で落ち着かない表情を浮かべていたが、ジルはそれを分かった上でわざとらしい笑顔を浮かべ手を振って見せた。

818アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/01/05(金) 00:48:37
【ポセイドン邸】

ジルと話していた最中、アネス、続けてナディアが乱入とも言って良い形で割り込んでくる。

此方としては聞きたいことも言いたいこともまだ消化しきれておらず、正直言うと水を差された気分だったが、ジルについてはナディア達の方が上手くやってくれるだろうという思いもあった為、仕方がない…と指示に従うことにする。
去り際に手を振るジルを指差し、

「良いか!?話しはまだ終わってないからな!
勝手にいなくなったりしたら後が酷いからな!!」

そう息巻いて部屋を出ていく。

そして…

(…結局、詳しいことは何も分からず仕舞いか…)

リトやアネスと共にユニの待つ部屋へ向かう際も、アブセルは解決する所か新たに浮上した疑問に、密かに頭を悩ませていた。

まず、ジルの両親をヨハンが殺したということ。

そしてもう一つ。
リトを守り続けたいなら、ユニを引き離した方が良い。という意味深なあの台詞。

「……リト」

アブセルは不意に立ち止まり、先を行くリトの背中に声をかける。

先程ジルが言ったことを彼に伝えようか。
そう思い悩んだ末、少し間を置いて首を横に振った。

「…いや、やっぱり何でもない」

ジルのことだ。質の悪い冗談ということも考えられる。
確証のない情報を伝え、リトを悪戯に不安がらせる必要もないだろう。

今はいくら考えてみても答えは出ない。アブセルはそれらの疑問を一先ず頭から振り払うと、再び歩みを始める。そして、ふと思い出したようにリトに向けて疑問を口にした。

「…て言うかさ。さっきも思ったけど、何でこいつが此処に居んの?そしていつ帰んの?」

アブセルは屋敷の中に入り込んだ野良猫を眺めるが如く、ぞんざいな態度でアネスに視線を投げていた。
ジルの救出に手を貸してくれたことには感謝しているが、正直彼女に関してはあまり良い思い出がないのだ。

819リト:2018/02/11(日) 22:31:40
【ポセイドン邸】

「何こいつ、すっごい生意気なんだけど」

不満げにリトへ話しかけるアブセルへ、リトの前を歩いていたアネスがひょっこり顔をだし顔を顰める。

「私はこの子の補佐するように言われて来たの。あんたみたいな使えない従者しかいないみたいだし?『自分以外の子と仲良くしないで!』とか、女子か。知ってるんだからね、色々と。」

相手をあまり快く思っていないのはアネスも同じらしい。ベッと舌を出したかと思えばふんっと顔を背ける。
その姿にリトは肩をすくめる。

「補佐ね・・・今のところマイナスしかないんだけど。それとあんま目立つことするな。」

「あら、さっきの式のこと言ってる?私はただあんたに協力してもらう"見返り"として、あの人にかかってた複雑な呪縛を解いてあげただけ。あれは感極まったあんたが勝手に目立ったのよ。」

ニッコリと悪びれもなく笑う少女にリトはそれ以上何も言えなくなる。かまをかけてみたが、やはりあの時母親が正気に戻ったのは彼女が手を加えていたのか。
感謝はしている・・・が、もう少しタイミングを考えて欲しかったと思うのは贅沢だろうか。

リトは何とも言えぬ気持ちで咳払いを一つ、アブセルの問いへ軌道を戻す。

「端的に言うと、闇の扱い方をこいつから学ぶ為に連れてきた。俺は自分の力を持て余してるって指摘されたんだ。不安定で力みすぎて闇を無駄に放散してるって。考えてみればお前には爺がいるけど、俺にはそう言うの教えてくれるような奴はいなかったし。」

どこで、誰に言われたのか、そもそもリトは眠りの中で別の世界へ言っていたことすらアブセルには話していないが、アネスがいることで何となくでも伝わればいい。

闇の管理者などと豪語する以上、その名に恥じぬようもっと闇を上手く扱えるようになりたい。
ルイに説明された「この世界に訪れようとしてる災厄」に然るべき対処をすべく、リトは彼へ師事を申し出たが、それはもうあっさりと断られた。が、代わりにアネスを寄越したのだ。
小娘に何が・・・とも思うが、彼女の知識や技量はリトよりも上であることは認めざるを得ない。

「俺を人柱にしようとした奴らじゃないけど、このままだと俺の価値は本当にただ闇を秘めた器ってことになる。それじゃ気に食わないから。」

言いながら、ふと先程見かけたセナの姿を思い浮かぶ。あの容姿から疑いようはなく、恐らくあれがかの闇の王子なのだろう。
あれから学んだ方が話が早いのだろうが、未だセナに対する負の感情を拭いきれていないリトには素直に教えを請うことは出来そうにない。

「ともかく、だ。お前達、喧嘩はするなよ?俺を煩わせるようならアブセル、今度こそ絶交してやるから。」

舟庭の件は許してやる、充分後悔しているようだからな。だけど二度目はないと思え。
言わずとも、アブセルを見るリトの目はそう物語っていた。

そして一同はユニの待つ部屋へ。
リトは部屋の前で足を止めるとアブセルへ中へ入るよう促した。

「お前だけと話がしたいらしい。」

820アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/02/15(木) 03:04:28
【ポセイドン邸】

使えない従者だぁ…?気にしていることを本人の前でそんなにはっきり言うなよ、傷つくだろうが。
て言うか何人様のプライベートまでしっかり探り入れてやがんだ、このアマァ…。

…と、今にもアネスに食ってかからんばかりのアブセルであったが、絶交するとの言葉を耳にすれば、態度を急変。
かつてない程の素早い動きで、リトの足元に額づいた。

「も、もちろん喧嘩なんかしません!二度と煩わせません!浮気だってしません!一生リトについていきますうぅ‼」

涙目になりながら必死に訴えるアブセル。
アネスがまるでゴキブリでも見るような目でこちらを見てくるが、今は気にもしていられない。
そう、これは己のリトへの愛が問われている瞬間なのだ。それを証明する為ならばリトの足を舐めるのだって吝かではない。と言うか寧ろリトの足なら舐めたい。舐め回したい。

「つーか…、何か変わったなリト…」

跪いたままふとリトを見上げ、アブセルは言う。
これはリトとアネスのやり取りを始め、自分に対する応答や振る舞いなどを見ていて感じたことだった。

何が変わったのか、と聞かれれば返答に困るが。何となく角が取れたと言うか、雰囲気が柔らかくなったように思う。
自分の知らないところで何かがあったのは確実だろうが、その辺は追々聞かせて貰うことにしよう。
とにもかくにも、今焦点を向けるべき相手はユニなのだから。

そうして三人は目的の場所に到着する。
てっきり皆に話があるものと思っていたところ、お前だけ、とリトに告げられアブセルは首を傾げた。

そう言えば最近のユニは少し様子がおかしかった。
先程のジルの妙な忠告もあってか、何だか意味もなく緊張してしまう。

「ユニ?入るぞ」

それらの感情を胸の奥に追いやり、アブセルは扉を軽く叩いてドアノブを引く。ユニのいる部屋へと足を踏み入れた。

821ユニ:2018/03/05(月) 00:30:59
【ポセイドン邸】

「アブセルさん!」

目的の人物が来るまで落ち着かない様子で部屋の中を歩き回っていたユニは、アブセルの姿を見るやすかさず駆け寄ってくる。

「あの、さっきは本当にごめんなさいでした・・・」

相手の術にはまったとはいえ自分が彼を拒んだせいで危険な目に遭わせてしまった。ユニは改めて謝罪の意を述べるが、勿論この為だけに呼んだわけではない。

ユニは椅子を持って来るとそこにアブセルへ座るよう促し、自分も対面に腰掛けた。

「アブセルさん。前に、ユニは知らないことがわかる、見えるはずのないものが見えるって言ったですよね?その・・・あの人・・・今度はアブセルさんを攻撃したあの人のことが見えてしまって・・・」

あの人とはジルの事だろう。敵である人物の話をして良いものか、少し言いづらそうに両手の指を動かしながら話を進める。

「女の子がいるです、誰かは分かりませんが・・・あのお兄さんはその子をとても大事そうに抱きしめたりしてます。お兄さんはよく出掛けるですが、いつも女の子は置いてきぼりです。女の子はそこから出られないみたいです。」

とても抽象的だが、ユニは一生懸命自分が見えたものの意味を考えた。そして答えを導き出した。

「ユニは難しいこと分からないですが、お兄さんはその女の子を守ろうとしてるんだと思います。言うこと聞かないとその子を守れないです。」

ユニはジルが悪い人間であるように思えないのだ。自分を連れ出そうとしたが、決して害そうとしたわけではない。何となく、彼の本意ではないと感じた。

「お兄さんはいつも笑ってます。けど、女の子のいないところでは泣いてるです。小さい頃からずっと・・・。このままだとお兄さんの心が壊れちゃうです。どうすれば良いですか・・・?」

彼は敵なのに、苦しむ姿はとても胸が傷んだ。彼を救いたいとと思った。それに、彼の大事にしている女の子・・・彼女がとても気になるのだ。初めて見る姿なのに、自分は彼女を知っているような気がして。

「その、リト様はユニの力知らないですから・・・アブセルさんにお話をと思いまして・・・」

822アブセル:2018/03/17(土) 23:21:34
【ポセイドン邸】

初めは要領を得なかったそれも、言葉を重ねる内ユニの言わんとしていることが分かってくる。

誰のことを指しているのか、何を伝えようとしているのか。
理解して、アブセルは深い溜め息を吐いた。

「…つまりあの人は誰かを人質に取られてる。だから悪い奴の言いなりにならざるを得なかった…ってことか」

ユニの言う女の子は、おそらく彼の妹のことだろう。
幼い時に見たきりだが、仲睦まじいあの兄妹の姿はよく覚えている。

アブセルは髪の間に指を差して頭を乱暴に掻いた。

「だったら…、何で初めからそう言ってくれないんだよ。何でわざと憎まれるようなことばっかり言うんだよ…っ」

…いや、理由は分かってる。
他人に助けを求めた瞬間、人質の安否がどうなるかなんて馬鹿でも想像がつくことだ。
そしてそれは、今この時をおいても同様の筈で。

「……っ」

あの人は一体いつから、その辛い生活を強いられていたのだろう。
あの日、彼の住む屋敷に訪れた時は家族に囲まれてあんなに幸せそうにしていたじゃないか。

アブセルの中に苦々しい気持ちが募っていく。

ジルが苦しんでいる時、自分は何をしていた。

ジルに憧れだけを押し付けて、さながらヒーローのような完璧な想像に仕立て上げ、ジルの苦悩を知ろうとも分かろうともしなかった。
あの人は一人でずっと苦しんでいたのに。

「助けないと…」

ジルが自分から助けを求められないのなら、こちらが勝手に彼らを救えばいいだけの話だ。
アブセルは小さく息をつき、再びユニの方に意識を向けた。

「…ユニ、よく話してくれたな。
後は俺が何とかするから心配すんな。リトにも俺から上手いこと説明しとくし…」

ユニの肩を軽く叩き、安心させるように言う。
そして、

「で、その女の子は今どこにいるんだ?」

珍しく頼りがいになるところを見せたと思ったら、その数秒後にはこの他力本願である。
これがアブセルがいまいち人から信用されない原因の一つであろうことは、多分本人も知らない。

823ナディア他:2018/04/17(火) 00:15:26
【ポセイドン邸】

「で、君たちは出ていかないの?」

先程まで騒ぎ立てていた輩は出ていったものの、代わりにその場に残った人物にジルは面白く無さげに問いかける。

「当然、あんたに話があるからな。」

「怪我人がどうのって言ったのはお姉さんじゃない。」

「固いこと言わないの。」

不平を述べるジルの態度など気にすることなく、ナディアは鏡台の椅子を手繰り寄せベットの傍らに腰を下ろす。

「ジル。」

不意に発せられたその声に思わず体が反応する。ナディアから自分の名前が出るとは思っていなかったのだ。
応龍として彼女の前に立った時、彼女は自分のことを覚えていないようだった。だから自分も敢えて知らない風を装ったのに。

「・・・ヨノから聞いたの?僕の名前。」

「可愛げのないこと言うなよ。あんたはヨノだけの知り合いじゃないだろ。」

言ってナディアは目を細める。

「すぐに思い出せなくて悪かったよ。何年も経ってたから・・・なんて言い訳にはならないよな、今のあんた、おじ様にそっくりだし。」

「失恋した苦い思い出を記憶から消し去ったんじゃないの」

「ほんと可愛くない」

こいつ、一発殴ってやろうか。
いちいち皮肉ばかり述べるジルに物騒な考えが浮かぶも、怪我人だからと抑える。横道に逸れすぎて本題に入れなくなるのはまずい。

「・・・ありがとうな。」

唐突にナディアなら紡がれた言葉に、ジルは怪訝な表情を浮かべた。

「僕はお礼を言われるようなことはしてないけど」

「リトのことだよ。ずっと気にかけてくれてたんだよな。」

確信めいたナディアの言葉。何故そう思うのか。自分は傍目から見ればリトに嫌がらせをしているようにしか見えないはず。そう見えるように振舞ってきた。

「何で・・・て、理由を聞いても教えてくれないんだろうな。」

言ってナディアは笑う。
そんな彼女の様子に誤魔化しても無駄だろうと察し、ジルは小さく溜息をつく。
そして不貞腐れたように再び窓の外へ顔を向けた。

824ナディア他:2018/04/17(火) 00:15:51

(嬉しかったから・・・)

一つ。単純に、リトが生きてることが嬉しかった。父が命懸けで救い出そうとしたその子が無事で、父の死が無駄じゃなかったと思えた。

もう一つ。幼い心を閉ざしていた彼が自ら言葉を紡ぎ、感情を表に出すようになっていた。歳を重ねるにつれ次期にそうなっていたのかもしれないが、あの日自分が彼に伝えた言葉が少なからず影響しているような気がして、こんな自分でも誰かの役に立てたのだと思えて嬉しかった。

そして、

「・・・単なる気まぐれだよ。」

何よりも、リトが綺麗だったから。
苦行に立たされ、生きるために身も心も汚してきた自分とは違う。リトは苦行の中でも気高さを見失わず、真っ当な道を歩んできた。
アブセルにはそれが気に入らないと言った。しかし本当は違う。彼のそんなところが羨ましく、憧れた。おそらくリトを自分と重ねているのだろう。自分自身を護れなかった代わりに彼を護りたい。いつまでも綺麗でいてほしい。穢されたくない。

しかしこんな気持ちなど他人に漏らしたくはない。ジルは窓を見つめたまま、無愛想に適当な答えを紡いだ。

それが本心でないことは丸わかりで、ナディアは呆れたような笑みを浮かべた。

「私の周りは何でこう素直じゃない奴ばかりなのかね。」

なら勝手に解釈させてもらうよ。
ナディアはジルの頭をクシャりと撫で立ち上がる。

「悪いけど、あんたを帰すつもりはないんだ。四霊の一人を野放しにするのは厄介だし、取り返したあんたを手放す気もない。逃げようなんて考えるなよ?そん時は動けないよう縛り付けてやるから。」

言葉は乱暴だがナディアの顔は笑っていた。
そして部屋を出ていく。

825ナディア他:2018/04/17(火) 00:17:58
「・・・。」

ナディアに伴っていたセナは彼女の背を送り、そして続いてジルへ顔を向けた。
ジルは相変わらず窓を見つめこちらに目を向けようとしない。

「・・・痛いか?」

静寂の中、セナが口を開く。

「あるものがないんだから、当たり前。」

「違う。」

足のことではない。ここだ、と言わんばかりに、セナは自身の胸に手を当てた。

「私は、痛かった。いっそ抉り出したくなるほどに。」

この状況に、セナは覚えがあった。
リマを思い出した時、必死に自分を手放すまいと仲間に訴える彼女を突き放した。再び闇の世界へ舞い戻そうと伸ばされたジュノスの手を取った。
今の彼は、あの時の自分だ。

「しかし私には分からなかった。自分の置かれた立場がどのようなものか・・・気付いた時には遅かった。」

黒十字の存在が悪などと思ってはいなかった。否、あの時の自分には善悪の区別などつかなかった。宗主の言葉が全てで、宗主こそが世界。命令に従いあらゆることに手を染め、人を殺め・・・引き返すには罪が重すぎた。

「・・・お前には分かるのだろう?その痛みの意味も。自身の罪も。」

言ってセナはふとジルの手元に目を向ける。彼の指に光る宝石はポセイドンの力が込められたもの。持ち主を幸運に導く願いが秘められている。

「・・・ポセイドンは人を慈しむが、見境なく加護を施す神ではない。罪人には相応の罰を与える。」

その指輪はジルを救った。その意味を考えろとセナは暗に示していた。
ジルは自身の行いとそれがもたらす結果を認識している分、取り返しがつかなくなる一線を超えることはしていないのだろう。神にとって、ジルはまだ庇護すべき存在として認識されている。

「・・・何で・・・僕にそんなことを言うの?」

はじめこそ反論していたものの、次第にジルの言葉は少なくなってきていた。相変わらず視線を合わせようとしないが、セナはじっとジルを見る。
しばしの沈黙のあと、ジルから声が返ってきた。
か細い声だった。

ナディア達にとってすらジルは親身に対応される筋合いはない。所詮他人なのだから。それがセナとなっては尚更・・・知り合いですらない彼にはジルのことなどどうでも良いはず。なのに何故彼は諭そうとしてくるのか。

826ナディア他:2018/04/17(火) 00:18:38
「別に・・・」

ジルの疑問に、特に答えなどなかった。彼にとってはただの気まぐれなのかもしれない。

「何か・・・言葉が欲しい気がした」

本来なら聖であるはずの力を黒く染めた。神を冒涜する行為ではあるが、そうせざるを得なかった事情があるのだろう。神を恨むほど、傷付いている。
それでも神への情を捨てきれずにいる。
底なし沼の中でもがきながら、必死に手を伸ばしている、そんな印象を受けた。

「お人好しばっか・・・」

もう反論する気すら起きない。
せめてもの反抗としてもう聞きたくないと、ベッドに潜りこみ相手を拒否した。
子供地味だ行為だと分かってはいるが、セナの言葉は耳に痛い。これ以上踏み込んで欲しくなかった。

「セナ、何してんだ?行くよ。」

そこへ、先に部屋を出ていたナディアが再び顔を出す。特に居座る気もなかったらしく、セナはナディアの呼びかけにすぐ対応し踵を返した。

「・・・ねぇ。」

部屋を出ていこうとするセナに、今度はジルが声を掛け呼び止める。
布団から少し顔を覗かせた。

(君はどうやって抜け出したの?)

受け継がれたお伽噺の範囲ではあるが、セナの境遇は知っている。引き返せない場所までいたという彼は、どのようにして本来の居場所に戻ったのか。

「いや、やっぱりいい・・・」

苦しみから抜け出す答えがそこにある気が来た。しかし聞く勇気が持てず、その問いは音を持たず飲み込まれる。

ジルは再び顔を隠す。
その姿を一瞥し、セナは部屋から出ていった。

827ユニ:2018/04/17(火) 00:48:59
【ポセイドン邸】

「ありがとうございます!」

俺に任せろ、との頼もしいアブセルの言葉にユニが安堵の表情を浮かべたのもつかの間、続く彼の言葉にすぐにその表情を困惑の色に染める。

「どこに・・・ですか?」

女の子の居場所・・・正直なところ、正確な場所は特定出来ていない。

「えっと・・・ユニにもよく分からないんです。ただ、何となく此処とは少し違う空間なような・・・」

とても曖昧な答え。しかし、ユニにはそれが精一杯だった。

「ふぇえ、アブセルさん。どうしましょう・・・」

828アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/05/07(月) 06:53:08
【ポセイドン邸】

大して期待していた訳でもなかったが、およそ予想通りの返答にアブセルは軽く肩を竦める。

「…ま、そんなことじゃないかとは思ってたけどよ」

ユニもアブセル同様、詰めが甘いのだ。

とはいえ早々に出鼻を挫かれたことに違いはなく、どうしたものかと考える。
ユニが当てにならないのなら、あとはジルに直接聞くしかないが…。

「あの人が素直に話してくれるかどうか…」

想像しただけで骨の折れそうな難事業に、知らず吐息を溢すアブセル。と、そこへ…、

「呼ばれて飛び出てごきげんよう〜。悩み多き青少年の味方、ラディックです☆
お困りの貴方に朗報を持ってきましたよぉ」

「うおっ……え、誰…?」

今まで数々の修羅場を体験してきたこともあって、滅多なことでは驚かない自信のあったアブセルも、派手な煙の演出と共に、忽然と目の前に降って沸いた男の出現には流石に肝を潰した。
しかしラディックはそんな相手の困惑も余所に、にまりと笑うやアブセルに顔を近づけ…、

「ノワール姫の僕の一人…ルド坊っちゃんの一の家臣、ですよぉ」

道化風のフェイスペイントに、変人染みた口調と振る舞い。男の言葉に刺激され、アブセルの頭は無意識に過去の記憶を掘り起こす。

「あぁ…、確かノワールの故郷にいた…」

「思い出していただき光栄ですぅ。
ところでこちらにルド坊っちゃんがお邪魔していると聞いたんですけどぉ〜」

「ルド坊っちゃん…?
ちっこいガキならオッサンと一緒に出てったけど…」

「あちゃぁ〜、入れ違いでしたかぁ〜」

ラディックの主らしき少年はジュノスと共に、ノワールの求めるものを探しに何処かに出掛けていってしまった。
それを聞いたラディックは額に手を当てて天を仰ぎ、ややオーバー気味なリアクションを取る。
が、彼の本来の目的はそれとは別にあるのか、直ぐに「まぁ、それはそれで置いときまして〜」と二本の指で作ったVサインを、アブセルの鼻先にずいっと突きつけ…、

「二週間です〜」

「は?」

「あと二週間で世界は滅亡します〜」


――――…

829アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/05/07(月) 07:00:12

その後ラディックの希望で、リト達や、ナディアやセナ、リマといったお馴染みのメンバーが集められ話が為された。
初めは何が「朗報をお持ちしました」だ。…と思ったアブセルも、ラディックの言を一通り聞いた後では、なるほど、そう言うことかと納得できる部分もあった訳で…、

「…つまり、その龍穴遺跡…?っつーのが、全部起動すると、黄昏の塔ってのが地上に張り出してきて、更にその上空に黄龍の居城が出現する、と…」

「はい〜」

「んで、その黄龍の側に、ジル……さんの妹もいると」

「はい〜」

…確かに、ジルの妹の行方は判明した。したのだが…。

「いやいやいや、あんたの話し聞く限りじゃ、それもうアウトじゃん。黄龍っつー奴が出張ってきた時点で、もう世界滅亡一歩手前なんだろ?」

ラディックの話が真実なら、全ての龍穴遺跡が起動してしまうと、封印されている闇が解放されて世界の全てが闇に閉ざされてしまうらしい。
それなら遺跡の起動阻止に向かう方が、よほど優先すべき事柄なのでは、とアブセルは言う。
しかし、それに対するラディックの応えは…、

「今から遺跡の方に向かっても恐らく間に合わないかと〜。全くの無駄足になる位なら、貴方がたにはその間、修行なり戦いの準備なりをして貰っていた方が時間の有効活用になるだろう。…とジーナさんは仰っていましたけどぉ」

「…遺跡が起動するのは確定事項なのか?」

今度の問いには、ラディックは、う〜ん、と顎に指を宛てて思案する。

「遺跡の起動を阻止する為に頑張ってらっしゃる方々もいますけどぉ…、少ぉ〜し厳しいとは思いますぅ〜。
まぁそれに、ジーナさんは常に最悪のことを考えて行動する方ですので〜」

だからこそジーナは、遺跡が起動し塔が出現した後のことを考えて、黄龍との戦いに望むべく万全の準備をしろとリト達に先んじて警告するようラディックに命じたのだ。

「それに私も貴方がたを、黄龍の居城に連れていくように言われてはいますが、現段階では無理です〜。
いくら空間跳躍といえど、次元の狭間に介在している、プラス堅固な結界が張り巡らせてある場所へは流石に行けませんので〜」

詰まるところ、黄龍の目論見を阻止するのも、ジルの妹を助けに向かうのも、黄龍の居城がこの世界に出現、干渉する段階まで来ないと文字通り手も足も出せない、ということらしい。

何と言うか…、当初の、ジルの妹を助け出すという問題から、とんだ所にまで話が拡大してしまったものだ。
アブセルの低スペックの脳みそでは、もう許容オーバー寸前である。
…リトなんかは割りと訳知り顔でいるが。

830アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/05/07(月) 07:02:03


「…と、まぁここまで長ぁいことお話しましたが、別にこれは強制でも何でもありませんので〜。
貴方がたが世界の崩壊を止める鍵を握っているのは確かですが、ドロップアウトしたい方がいらっしゃれば自己判断でどうぞー、ともジーナさんは仰っていましたぁ。
この先はいつ命を落としてもおかしくはありませんし、過酷な決断を迫られることもあるやもしれません〜。
愛する者と共に世界が滅ぶのを見届ける、と言うのも一つの選択だと思います〜」

他人事のような態度と、のほほんとした口調のせいで、いまいち切迫感が沸かないが、かなりシビアな選択を迫られていることは確かなようだ。
更にラディックは言葉を継ぐ。

「運命を受け入れるのも、最後まで抗うのも、貴方がたの自由です〜。"その時"が来ればまた来ますので、よくよく考えて決断してくださいねぇ」

そしてそう言い残すと、彼は来たときと同じく、忽然とその場から消え失せる。

…世界滅亡まで推定二週間。かくして彼らの下した決断とは…。

831ヤツキ ◆ruQu1a.CGo:2018/05/07(月) 20:06:28
>>778の訂正項です。

「久し振りだが、思い出話に花を咲かせる暇は無いらしい。」

既にヤツキの身体は膝下が光となって消え、肩先や末端部分も粒子となりつつあった。
言葉通り、時間はない。

「聞いていただろうが、俺は役目を全うした。」

100年前は敵対した者達が、今はこうやって同じ地を、仲間として踏み締めている。
時を越え、世代を越えた力と想いがあれば。

ーー必ずや、上手くいく。

「世界の免疫力とも言える闇が集まり、溢れるこの闇の巣と黄昏の塔。
闇を管理し、使役していたステラが逝くとならば、誰かがその任を継がなければならない。

今はまだ抑え込まれているが、ステラと言う制御系を失えば、この無尽蔵の闇は世界を食い尽くすだろう。
だが、適性を持った誰かが、闇を使役し、この塔諸共地中深くに沈めてしまえば……一時的にだが闇は活動を停止する筈だ。
強度と高さは問題無い、沈み込めば地殻を超えて核へ届く。」


ーーセナよ、今こそその力を発揮する時だ。

「幸い、今この場に闇の素養を持つ者は数多く居るようだ。
話し合って、決めるといい。

……素養が無い俺は剣を振るうしか出来なかった。」

闇の素養を持つ者、闇の王子であるセナとリト。
それに仕えてきたアブセル。

吸血鬼であるノワールと、異界の闇を宿していたメイヤ。
人柱になれ、と言うしか無いのは辛いが、今はそうするしかないのだ。

「そろそろ、時間か。」

視界に映る面々を見、ヤツキは静かに目を閉じた。
そして、抱き抱えるステラと共に、その身体は光に包まれる。

その様は淡雪が夜空へ舞い散り、月明かりに融けるようだった。

ーーイスラ、悪いが先にいく。
ーーお前と共に戦えて……良かった。

832シデン:2018/05/11(金) 07:02:26
【虚空城】

恐らく今のイオリが持ち得るであろう、最大最速の刃が抜き放たれる。
鳳凰の"平等"によって、己の能力値をイオリと同等のものへ変じられている今のシデンでは、それに対抗し得る術もなければ時間もない。
反応は出来ても、身体がついていかないのだ。

「―――ッ」

それでも潔く負けを認めるなど以ての外、最後まで精一杯の抵抗の姿勢を見せるところは、流石と言うべきか、恐るべき執念と言うべきか。

だが不十分な重心と体勢、構えるどころか、ただ単に相手の斬撃の軌道上に滑り込ませただけの剣で受け止めるには、その一撃はあまりにも重い。

刹那、室内に快音が響く。

一瞬の停滞もなく、シデンの握る剣が激突する鋼の威力に負けて砕かれる。
もはや、神刀の剣撃を邪魔するものは何もない。

赤熱し、途上の大気すら斬り殺す刃が走り抜け、シデンの胴体を一太刀の元に引き裂いた。

――――…


バルクウェイの街は、不安と困惑の声に満ちていた。

月も星の輝きも存在しない、暗澹とした闇に染まる漆黒の空。いつまで経っても朝は訪れず、昏昏と夜の深みを刻み続ける街。
もはや日常風景の一部となっている鳥の囀ずりも耳にできず、それどころか虫や獣の姿さえ見つけることが出来ない。

…まるで嵐の前の静けさのようであった。
不可解な状況に、住民達は肌でその異常性を感じ取る。

ある者は戸口を締め切って、家屋の中で息を潜め。
ある者は何が起こっているのかを空挺師団の団員に問い質そうとする。

ピリピリとした緊張感を帯びた不穏な空気が、街を…、いや、世界全体を支配していた。

833シデン:2018/05/11(金) 07:04:01

それもこれも、惑星を包み込むようにして形成される外郭によって、世界が閉じられようとしているのが原因であった。
もっとも、その事実を知っているのは、都市の中でも極小数の者に限られていたが。


…知らずに済むのなら、それもまた良いのかもしれない。

間もなく世界が終るなどという、受け入れがたい運命を突き付けられて、平常心でいられる人はきっといないだろうから。

少なくとも、この異変も一時的なのものだと、直ぐにいつもの日常が戻ってくると、先の展望を期待している間は、人々が妙な気を起こすこともない。
事実、大規模なパニックや暴動が起こったという報告はまだされていなかった。

だがそれも、危うい均衡の上に成り立っている仮初めの平穏に過ぎないことに違いはない。
何が引き金となって、その均衡を破ることになるかは誰にも分からないのだ。


「ママ…、何だか怖いよ…」

街の中心部。
いつもは溢れかえるほどの賑わいを見せる街の往来も、今は目で数えられるばかりしかいない。
その中に混じって、隣にいる母親の服の裾を握りしめ、不安げに訴える少女がいる。
それに対し困惑する母親は何も言えない。だが安心させるように怯える我が子の頭に優しく手をおいた。

その時であった。

「見ろ!」

同じく街路に佇んでいた男が何かに気づき、叫び声を上げる。
そこにいた決して多くはない数の人々の足が止まり、一斉に彼が指差す先、上空へと視線が向かう。

「空が…!」

そこには、暗い影を落としていた空が、血が広がっていくかのように赤黒く染まる光景があった。
同時に、未完成の外郭の隙間から僅かながらに差し込まれていた外界からの光も、まるで月が欠け落ちていくかのようにゆっくりと、だが確実に、人々の頭上からその姿を消していった。

834シデン:2018/05/11(金) 07:09:53
【虚空城】

重々しい鐘の音が鳴り響いていた。
それは虚空城に付設する鐘楼、そこに吊るされた巨大な鐘から発せられている。

一つ、二つ、音を重ねるごとに、世界は闇の中へ沈んでいく――。

その鐘楼の下。
城の最上階、外に張り出されたテラスに何者かが佇んでいるのが見える。

白い肌に、丸く大きな紅玉の瞳。少女というよりは、童女といった方が相応しいような年齢の娘。
鐘の音をバックに、美しい金髪を風にたなびかせる彼女の名は、メルフィ。吸血鬼の姫…ノワールの実の娘だ。

メルフィはテラスの縁に立って、長い睫毛に縁取られた瞳で眼前の闇をじっと見つめている。
ふいに口から白い吐息が溢れ、その唇が言葉を紡ぐ。

「…――闇の中に響く時の声に、貴方は絶望を聞いた。
燃え盛る炎へと進み行く人々に、貴方は咎人の葬列をみた」

それは酷く空虚な声だった。
もともと感情表現の豊かな子ではなかったが、普段の彼女を鑑みても、それは異常なほどに無機的なものであった。

「穢れは瞬く間に世界を食らい尽くし、黒き災いの鉄槌は彼らの頭を悉く打ち砕くだろう」

無表情。無感情。
その虚ろな瞳の奥に存在している意思は、恐らく彼女のものではない。

「されど、恐れることはない。主は貴方と共にある。
されど、嘆くことはない。貴方は主と共にある」

まるで何者かに操られている人形のように、メルフィはただただ祝辞とも呪詩ともいえない言葉を綴る。

「眠れ、安らかに。全ての魂は星へと還る」

それを最後に、空気が軋むような悲鳴を上げた。
少女の顔を薄く浮かび出していた光が、徐々に消えてなくなっていく。

"蝕"

遥か昔、神界と人界を、そして多くの神々と人間を屠ったあの時と同じ現象が幾千年と時を重ねた今、再び起こる。

空は血を塗ったように赤黒く染まり、黒い雨が地表に降りしきる。

世界は今、闇に閉じられた。
もはや一片の光も地上には届かない。

――――――…

835シデン:2018/05/11(金) 07:19:39

重厚な鐘の音は、その部屋にも届いていた。

胴を斬り落とされ、上半身と下半身、それぞれ別の方向を向いて倒れるシデンの痩身が部屋の中央に転がっている。

その切断面から夥しい量の血を噴出し。
整えられた黒の頭髪も、上等なスーツも見る影もないほどに穢して。

血河の中に沈み、凄惨たる骸を晒すシデン。
ふとその耳に届く筈のない幼子の声が降りる。

――ピクリと、彼の指が動いた。


『……漸くか……』


直後、どこからか発せられた述懐と共に、凄まじい量の闇が溢れ出す。
息苦しいほどの圧迫間を伴って、もはや暴力的な勢いで室内を駆け巡るそれの発信源は、他でもない、床に倒れ伏せるシデンからのもので――。

…否、そうではなかった。
シデンではない。

そこにいたのは、巨大な獣だ。


『……この時を、ずっと待っていた……』

闇を纏い、底冷えするような声で、深淵から覗き込む二つの赤い瞳。

瞬間、巨大な質量がイオリを凪ぎ払い…、その勢いのまま振りきられたそれが壁面を容赦なく粉砕する。

『ゴミが』

そう吐き捨てたのは、馬と竜を掛け合わせたかのような、幻想的な姿をした獣だった。
鋼色のたてがみに、艶やかな毛皮に包まれた漆黒の体躯。
その堂々たる立ち姿を惜し気もなく披露する黒麒麟は、冷々とした瞳でイオリが飛ばされた先…崩れ落ちた瓦礫の山を睥睨する。

…正直、イオリがここまでやるとは思っていなかった。
少々驚かされたことは事実だが…、

『所詮は他のゴミ共(人間)より少しばかり優れていただけのこと。
愚物の価値に何ら変わりはない』

836シデン:2018/05/11(金) 07:22:11

今となっては窮屈な部屋を、麒麟は背中の両翼を広げて天井ごと周りの壁を破壊する。
降り注ぐ瓦礫をものともせず外に出るや、しなやかな首をめぐらせて辺りに目を向けた。

…外郭は完成。
中央棟の最上階には、闇の管理者とも並ぶ因子の持ち主であるメルフィの姿が。
階下では城の節々で闘いが繰り広げられているのか、噴煙が上がっているのが見てとれる。

麒麟は一度瞑目すると、顔を上げ、再び城の最上階に視線を戻す。
その目には、そこにいるであろう黄龍の姿を思い浮かべているようであり…、

『我が主…、ようやく嘗ての姿を取り戻しました。
これで貴方様の本懐に添うべく、十全に力を振るえそうです』

そう感慨深そうに呟いて、麒麟がその大きな身体を身震いさせれば、抜け落ちた羽根の一枚一枚が魔物と変じ、夥しい数のそれが塔を伝って下界へ殺到する。

それは過去、最大の災厄。
山野という山野を焼き払い、大海という大海を穢し、世界を蹂躙し尽くした破壊の権化。

全ての龍穴遺跡が機動し、塔を支配していたスピカが潰えたことで、最後の闇の封印が解かれ、麒麟と謂われる霊獣もまたその真の力を解放するにいたる。

地上では黒き雨によって濡れて変質した大地より魔物が沸き上がり、上空からは塔を伝って麒麟の分身でもある精鋭が下界へ押し寄せる。

惑星を取り巻くように巡り、人々に恩恵を与えていたレイラインのエネルギーもその全てが陰のもの…、つまり闇の性質に変わる。

それによって生じる世界の法則に乱れ。

風は死に、大地は濃密な瘴気に満ち溢れ。
世界は生気を根こそぎ失ってしまったかのような、闇に沈む。

同時に、闇の力を持つ者にとっては、己の力が最も高まる時であり、
しかし闇と相反する聖の力を持つ者にとっては、一番力の弱まる時…。



世界はうち震える。終わり、再び生まれ変わることを歓喜するように。
鳴り響く祝福の鐘の音が、世界の終焉を言祝いでいた――。

837イオリ ◆ruQu1a.CGo:2018/05/14(月) 17:43:16
【虚空城】
 
神と人、文字にすればたったの一文字の違いだが、その違いは天と地以上。
いくら着飾った所でその魂は神へ至る事は無い。
文字通り、痛い程わかっていた。
瓦礫を押しのけ、イオリは満身創痍の姿を現す。
 
全壊と言っても過言では無い程に破壊されたフロア。
満ち溢れる闇は常人なら息を吸う前に即死するであろう濃度で、イオリは咳き込むと同時に血塊を吐き捨てた。
 
「くそったれが……やってくれるじゃねェか……」
 
朱に染まる口元を拭い、見上げる先。
漆黒の闇に染め上げられた神獣の姿にイオリは毒を吐く。
鍛え、磨き上げられた技術と最上級品の武装を持ってしても、倒せたのは“人”の域を出ないシデンただ一人。
眼前の巨大な獣はまさしく“神”であり、今のイオリに神獣を討ち取る程の力は無かった。
 
先の一撃で蒼炎の火炎鳥を宿す妖刀は折れ、魔鎧もその機能の大半を失ってしまっている。
四霊の一角、鳳凰の違いも“今は”もう無い。
万事休す、人の身のままでは勝てないだろう。
それ以前に、神と戦う土俵にすら上がれないのだ。

そう、“人の身”のままでは。
魔装の残骸を剥ぎ取り、血に濡れたシャツを脱ぎ捨てる。
満身創痍を現す傷だらけの半裸を晒し、イオリは笑った。
信義を失わない限り滅される事のない神獣、黒麒麟。
 
麒麟とは鳳凰と同じく雌雄一対であるとも言われ、また、その身を染める色により強さも変わると言う。
黒端、闇に染まるその個体は取り分け強力だ。
身を震わせ、羽ばたき舞い落ちた羽は百鬼となって、闇に染まる地上に更なる悲叫を齎すだろう。

「よそ見してんじゃねーよ、デコメガネ。」

遥か空、虚空城の尖塔へ紅瞳を向ける黒麒麟へ、イオリは声を投げる。
浮かべた笑みが意味するのは、不屈の闘志。
惜しげもなく晒される、鍛え抜かれた身体に刻み込まれた呪印がその色を黒から赤へ、そして闇よりも深い漆黒へと変化し、輝き出した。

「まだ終わりじゃねーだろ、俺とお前の戦いは。
……知ってるか、シデンよ。」
 
闇色に輝く呪印は瞬く間にイオリの身体を包み込み、周囲の闇をも取り込んで爆発的に増加していく。
 
「限界ってのはな、超える為にあるんだ。」
 
新雷寺一族の最も深い闇、闇の子供達計画。
多くの被験者を犠牲に完成したその技術と計画の完成系、成功者はメイヤただ一人であった。
……今、この瞬間までは。
 
(遺伝子レベルで異界の悪神に適応させたなら、近い遺伝子情報を持つ者なら適応する可能性は高い。
血縁者、メイヤの父親であるなら特に期待は出来る……!!)
 
刻み込まれた呪印が示すのは、闇の悪神、チェルノボーグの封印式。
メイヤの内に封じ込められていたのはほんの一部であり、残りはイオリが回収していたのだ。
 
「穢れた翼でも、空は飛べる。」
 
闇を喰らい、闇に染まる。
爆発的に増幅する闇が鱗を、爪牙を。
大翼を、巨尾を形成していく。
鰐よりも凶悪な、凶暴ながらも猛々しく咆哮を上げるのは、天穿つ巨龍。
 
炎狗、氷狼、雷鴉。
その全てを超えし闇の悪神、封印を解かれイオリを媒体に顕現したのは、漆黒の天龍であった。
 
再度の咆哮が虚空城を揺らし、大翼が闇を打ち据える。
爪牙を煌めかせ、堅鱗をひしめき合わせ。
 
ーー心に翼を持つからこそ、飛ぶんだ。
神の高みまで昇ったからよ、今度こそ決着をつけようぜ!!ーー
 
天龍が、吼えた。

838リト他:2018/05/20(日) 23:17:54
【ポセイドン邸】

世界が終わりの時を迎えようとしている。

「......」

光を飲み込み赤く色付く空をセナは黙って見上げていた。
魔玉が闇に反応している。身体のそこから疼くような感覚。放たれた闇と一つにならんと欲しているような...

「...セィちゃん」

背後からか細い声が聞こえ、振り向くとリマが覚束無い足取りで外に出てくる所だった。足がもつれ倒れそうになった所をセナが支える。

「なんか、気持ち悪い...」

「闇が放たれた...瘴気にあてられたのだろう。」

リマのように純粋な聖の力を持つ者にとって、今は空気さえ毒ガスのようなものだろう。そしてこの濃度が濃くなれば、異能を持たぬ者が生き続けることは困難・・・

セナは自身が身につけていた腕飾りをリマの手に通す。

リマには闇に対する免疫がない。
一時凌ぎではあるが、闇の者が長い間身につけていたものを所持させることで擬似的な闇との接触をつくり症状を緩和させる他ない。

「ありがとう」

少し楽になった。リマはセナの腕の中で力なく笑い、続いて空へ視線を移す。

「あの時と同じ...」

いや、それ以上かもしれない。
リマは黒十字との決戦の日を思い出し、無意識にセナの服を掴む手に力が入る。
あの時も世界が滅亡仕掛けたのだ。平穏を取り戻したはずなのに、封印した闇は再び目覚めてしまった。

あの時はセナを失わずに済んだが、また同じ状況になれば今度こそ彼を失ってしまうのではないか、不安が募る。

ラディックから話を聞いた日、セナも、そしてリトさえも驚く様子を見せなかった。まるでこの時を知っていたかのように、加え、その脱却方法さえも知っているような顔。それを見てリマは胸騒ぎがした。最悪の事態が起こりそうで。

「セィちゃん、あのね...」

「セナ、だっけ?あんた、分かってないかもしれないから一応言っておくけど、」

リマが言いかけた時、後から別の声が割って入る。
アネスがどこか不機嫌そうな顔を浮かべながら二人のもとへ歩み寄る。その隣にはリトもいた。

「あんたに何かあったらリト達が存在し得ないこと、忘れちゃダメだからね」

アネスの不機嫌さはどうやらこの状況にあるようで。空を見上げ、苛立ったように眉を潜める。

「ほんと、世界の終焉って感じ?こんな環境に娘を放り込むとか、うちの父親どうかしてるんじゃないの?」

呟きながら大鎌を顕現させる。

「範囲は?」

「限界まで。」

「人使い荒い・・・」

隣のリトへ何やら意見を求めるも、その答えに更に気を悪くする。かと言って断る気もないようで、手にした大鎌をくるりと回し、柄の部分を力強く地面に打ち付けた。
途端、波動が地を伝い勢いよく広がっていった。

「ポセイドンの管轄域は守ってあげる。私の魔力が続く限りこれ以上魔物が増えることはないわ。」

「かなり広範囲だな。リミットは?」

「私が死なない限り問題ない。」

「ふーん、流石。」

「思ってもないくせに、生意気。」

まぁどうでもいいけど、とアネスは続け、

「出来なくはないけど、なるべく魔力は温存しておいた方が良いでしょ?私は戦力外に。まぁこの邸内を守るくらいはしてあげる。」

「そこは問題ない。・・・ノワール。」

リトの呼びかけにノワールがふわりと姿を現す。

「既におる魔物の討伐は引き受けた。所詮は闇より生まれし赤子のようなもの・・・小物を滅するなど造作もないわ。」

「油断はするなよ」

「指図は無用じゃ」

ノワールは小生意気に鼻を鳴らし姿を消す。目的地へ向かったようだ。

この状況に困惑せず的確に指示を下していくリト。その冷静さは見事だった。

839ナディア他:2018/05/20(日) 23:19:11

その様子を、窓の外から見つめるジル。

「流石だろ、うちの弟は。」

ジルのもとを訪れていたらしいナディアが隣で同じように外を見ながら笑う。

「・・・行くの?」

「まぁな。」

"その場所"へはあの変なピエロが案内してくれるらしい。
ジルはリトから目を逸らさずに、そう、とだけ言葉を紡いだ。

リトはこの事態を収束させる鍵を握っている。そして、その方法も知っているようだ。それは、あまりにも残酷な方法であるが。

「お姉さん、僕は世界を救うために犠牲になっていい命なんてないと思う。誰かの犠牲の上でしか成り立てない世界なら、いっそ無くなってしまえばいい。」

だから、止めて欲しい。あの子がその決断を下そうとした時は。

時折黄龍と意識が繋がることがある。これは彼が自分を模した姿をしていることにも関係しているのか、原因は分からないが、いつか自分の意識はなくなり黄龍に呑み込まれてしまうのではないかと恐怖があった。
しかし、そのおかげで知ることが出来たこともあった。

「あのユニって子。あの子さえ目覚めれば・・・」

「え、何?」

ジルの呟きはナディアには聞こえなかった。
聞き返すが、ジルは教える気はないらしい。

「君たちがこの世界に執着する意味は分からないけど、せいぜい頑張るといいよ。・・・死なない程度にね。」

840アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2018/05/25(金) 05:35:07
【ポセイドン邸】

当主の風格たり得る、堂々としたリトの勇姿を見ていたのはナディア達だけではなかった。

「…リトが格好よすぎて死ねる…。抱いて!いや、抱かせて!」

敬服と変態的な眼差しでリトを見守るアブセル。
不意にその頭に拳骨が落ちる。
…ベルッチオだ。

殴られた頭を抑えながら不満の音を上げるアブセルを無視し、ベルッチオはリトの傍らに歩み寄る。
そして、

「こちらは私共にお任せを。いかな悪鬼共が襲って来ようと、奥様やヨノお嬢様には指一本触れさせません。
坊っちゃんは何らご心配召されることなく、どうぞご自身のお役目にご専念くださいませ。
…貴方様の、皆様のご帰還を心よりお待ちしております」

主への恭順を示すが如く、恭しい仕草で頭を下げるポセイドン邸の老執事。
一方で、今度はラディックが打って変わって陽気な声を上げる。

「ではでは皆さん、此方に集まってくださ〜い。
そろそろ出発しますよ〜」

観光ガイドよろしく、手を上げて面々に呼び掛ける彼は、ふと何かを思い出したのか手を打ち合わせる。
ぽんっと、どこか気の抜ける音が場に上がった。

「そうそう。実はもう既にあちら側に乗り込んでいる方々がいるみたいで…、もしかしたら貴方達のお知り合いかもしれませんねぇ?」

自分達以外にも協力できる相手がいると報せることで、リト達の戦意向上を狙っているのだろうが…、それにしても白々しい。

いつものにやけ面で集った面々の顔を順に見回すラディックは、それについては深く言及することなく「では行きます〜」と出発の旨を告げて技を発動させた。


―――…

空白は一瞬。突然の浮遊感に見舞われた直後、先程まで見ていた光景が切り取られ、別の光景とさし変わる。

慣れない空間跳躍に思わずその場でたたらを踏むアブセルを含めた一行が飛ばされた先は、空中に浮かぶ虚空城をのぞけば、今この世界において間違いなく一番の高みに存在する場所だ。
視界一面に広がる赤黒い空。若干の息苦しさとそれなりの広さを有する塔の頂きには、先程ラディックが言った通り先客ともいうべき数人の者達の佇む姿があった。


「待ってくれ!それではあの時と…、セナの時と一緒じゃないか…!
それを俺達で決めると言うのはあまりにも…っ」

深刻な面持ちで声を上げているのはイスラだ。
しかし、切羽詰まったその声を聞き受ける相手の姿はもう既にそこにはなく、そしてイスラの方も、彼との別れを惜しむだけの余裕はないようであった。

今の時代から遡って百年も前。イスラ達は世界を闇の脅威から救う為、セナを魔玉の代わりにした。
それは決して望むべくして取った選択ではなかったが、今の状況はあの時と一緒だ。

闇諸とも塔を地中深くに沈める役割を負うということは、闇を封じる楔代わりになるということ。
そしてそれは死ぬことも許されず、牢獄のような場所に永遠に囚われ続けることと同義ではないのか。

「そんなこと…、出来る訳がない。他にも何か方法がある筈だ」

誰が犠牲になることもない別の対処方法が。

だがその思考は突如響いたけたたましい獣声によって遮られる。
何事かと仰ぎ見れば、夥しい数の魔物が上空から降ってくるのが見えた。

即座にイスラとサンディが動く。協同で展開させた多数の炎の槍を魔物に向けて飛ばすが…

「…!これは……」

「嘘っ、なんで…!?」

炎槍は魔物に届く前に、その火力を急速に萎め途中で掻き消えてしまった。

どうやら闇が世界に及ぼす影響は、聖の本性を持つ四神の力を弱体化させるまでに至っているようだ。

841シデン:2018/05/31(木) 05:43:56
【虚空城】

響き渡る咆哮を正面から浴びて、麒麟はもたげていた首を下ろした。

『…大人しく死んでいれば良いものを』

二つの紅い瞳が映すのは、天翔る巨大な天龍だ。

大気を震撼させる咆哮は、それ自体が重みを持っているかの如く圧迫感を伴い、硬質な鱗に覆われた漆黒の体躯は全身に鎧を纏っているに等しい。
獲物の命を毟り取ることのみに特化した爪牙も、広げられた大翼も、見る者を圧倒させて余りある存在感を放っている。

禍々しくも神々しい威光を放つそれを。
その変貌を遂げた巨龍の姿を眺め、麒麟は僅かに目を細めた。

『しかし、醜い…』

驚くでもなく、ただただ、その顔には不快感だけが刻まれている。

『人の欲には底がないと言うが…、俺は貴様ほど強欲で身の程を弁えぬ人間は見たことがない』

鼻を鳴らし、瓦礫の山を踏み締め、麒麟は相対する天龍を鋭い視線で睨み付ける。

『偽り、騙し、死者を蘇らせ、神を手にかけるだけでは飽きたらず、厚かましくもその神列に名を連ねようとは…、思い上がりも甚だしい』

神をも恐れぬ所業とはまさにこのこと。

素性を偽って黄龍の懐に潜り込み、まやかしの忠誠を誓うそれは、他者を嘲笑い、主の尊厳を踏みにじる信義に悖る行為だ。
愛する女を蘇らせたその手で、神であるワヅキの命を奪った蛮行は、天の原理にツバを吐く忌むべき冒涜だ。
あろうことか自ら人の身を捨て、神の領域に到達せんと求める精神は、傲慢で利己的な、シデンが最も嫌悪する人間の浅ましい本性だ。

誰よりも長く近く天意に侍り、忠を尽くしてきた彼だからこそ、イオリの冒した不徳の全てが我慢ならない。

『その汚穢にまみれた手で次は何をする。
黄龍様を殺め、世界を我が物にでもする気か』

ふいに麒麟は己の両翼を大きく広げた。

その翼にある発電器官が脈打ち。瞬間、白光が迸り、指向性を持ったそれが恐るべき速度で射出される。
中れば人の身など一瞬で蒸発させてしまうであろう白い光が、周りの闇を塗り潰しながら途切れることなく天龍に襲いかかった。

842リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2018/06/04(月) 23:40:02
【黄昏の塔】

「助けなきゃ・・・!」

ラディックの言う先客とは、確かに見知った顔だった。
しかし今は再会を喜んでいる場合ではない。
襲い来る魔物に放った技が無効化されたのを見るや、リマはすかさず助太刀しようと前へ出る。
しかし駆け出そうとしたリマの腕をすかさずセナが掴みそれを阻むと、彼女を胸に抱きながら自由のきく手を翳す。
途端、その手から放たれた闇がけたたましい音を立てながら渦となり、今まさにイスラ達に襲いかからんとした魔物達、及び周辺のそれらを一気に呑み込み爆ぜた。

その威力たるや。

「やば・・・」

ナディアは思わず声を漏らす。
正直なところ、セナと出会ってから今までどこかぼんやりとした彼の姿しか見ていなかった為完全にナメていた。忘れかけていたが、彼はかの時代の闇の王子なのだ。

「・・・って、こんなんしてる場合じゃねぇや!」

呆気にとられたがすぐに我に返り、ナディアは慌ててイスラ達のもとへ。

「おーい!サンディ!大丈夫か!?」

843メイヤ ◆ruQu1a.CGo:2018/06/11(月) 20:15:20
【黄昏の塔】
 
 炎を掻き消す闇と赤黒い空。
過去と現在、二人の天照大神が放った炎は萎む様に消えたと言う事は、恐らくポセイドンの力も……いや、聖なる属性、陰陽で言えば陽に属する者はその力を殆ど発揮出来ない状態なのだろう。
 
 (確かに、俺の白焔も出せないな……)
 
 対して、陰に属する闇の力は120パーセント以上増幅されているのがわかる。
 鳳の力により焼失した筈の異界の闇が、セナが巻き起こした闇渦に反応して蠢いたのだ。
完全とは言わすとも、ほぼ焼失した筈の闇が励起し、今この瞬間も増殖している事から、上記の事が考えられる。
 
 「セナ…さんだったか?今の一撃で魔物は一掃出来たけど、長くは保たない。
 第二波、第三波と来たらどうしようもなさそうだ。」
 
 魔物を一掃したセナの力に胸の内がざわめき、蠕動するがソレを無視してメイヤは続ける。
 
 「先々代……先の剣士の言葉通り、誰かがこの塔を沈めないとならないし、迷う時間もない。」
 
 吸血姫のノワールと二人の闇の王子。
素質はあれど開花に至らないアブセルと、闇の残滓がこびり付いた器の自分。
 
 メイヤは闇の素養を保つ者を指差し、その名前を呼ぶ。
そして最後に、自身の胸元を左手の親指で指した。
 
 「……だから、俺が行く。
 月は過去からの脱却、未来への好転を示すとも聞いた。
 この塔では一族の者が2人死んだ、いや、3人か。
墓標にするには丁度良い。」
 
 アグルに敗れたユーリと、メイヤ自身が破ったクウラ。
先々代であるヤツキの死地も、ここと言って間違いではないだろう。
 
 「吸血鬼の姫も、闇の王子もここで死んでいい存在じゃあない。
 
 逆に言えば元より俺は存在しなかった筈の人間だし、三回程死んでるから四度目があってもおかしくはないだろう?」
 
 取捨選択と消去法、主観ではあるが問題はないだろう。
 メイヤは頂上に立つ面々を見渡し、言い切った。
 
 「異界の闇を宿していた器であるこの身体は、魔玉に近い性質を持っている。
 他に適任者は居ても、覚悟は出来てないだろう?
 
 だから、皆は先に行け。」

844リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2018/06/12(火) 00:07:33
【黄昏の塔】

「駄目・・・」

今一番効率的で効果のある方法はまさに"それ"なのだろう。
しかしそんなメイヤの提案に皆が考える間も与えず、リマの異を唱える声が入る。

「簡単に言わないで。誰も死んで良いわけない。」

言いながら、リマはセナの腕をきゅっと掴み、セナが「その役」をかって出ぬよう無意識に予防線を張る。本当は彼女も得策が何かは分かっているのだ。かと言って認めるわけにはいかない。その方法を認めてしまえばセナも候補の一人となり、メイヤに対し「セナでなくて良かった」などと薄汚い思いを抱いてしまいそうで。そんな卑怯な考えなど持ちたくない。

「キリがなくてもその都度対応して行けば・・・。最終的に元凶を叩けば、必然的にこの闇の暴走も止めることが出来ませんか?」

845サンディ:2018/06/15(金) 04:08:17
【黄昏の塔】

「う、うん…。あたしは大丈夫だけど…」

気遣って駆け寄って来てくれたナディアに力なく応じて、サンディは真紅の瞳をさ迷わす。
その心細そうな視線はメイヤの上でピタリと止まり、そして…、

「どぉでしょうかぁ?
私はあまりオススメしませんけどぉ〜」

リマの提示した代案に、意外な人物からの異論が入る。
横から口を挟んだのはラディックだ。

「元凶を叩くと言いますが、誰がそれをするのですかぁ?現状、四神の皆さんは戦力外と言っていい状態ですよねぇ?
それ以外の残った方々で応戦するには、この先あまりにも負担が大きい…と言うか正直な話、無謀過ぎますよぉ」

小首を傾げ、彼は平常通りのおっとりとした口調でとうとうと言葉を続ける。

「一人の犠牲で四人の戦力が戻ってくるのなら、当然勝算の高い方を取るのが合理的です〜。
それに地上では闇の瘴気と魔物の来襲で、今まさに多くの方々の命が危機に瀕しているのですよぉ。
全人類の命と天秤にかけても、たった一名というのは安い代償ではないでしょうかぁ?」

今こうして話している間にも、そしてその話し合いに時間をかければかけるほど、地上にいる多くの人間の命が失われているのだと、ラディックは言外に語っている。

ポセイドン邸のように、戦える人員が残っている場合はまだ良い。だがその他の地が、それと同じとは決して言い切れないのだ。

ラディックのもっともな発言は、一同を押し黙らせるには十分過ぎるものだった。

誰しもが言葉を詰まらせ、場が沈鬱な静寂に沈む中。ふいにサンディが静かな声音で口を開く。

「……メイヤは、本当にそれで良いの…?」

小さく、どこか弱々しい。
その問いは他でもないメイヤ自身に向けられていて…、

「あの時…、メイヤは明日が欲しいって言ってたよね…?
あたしと、もう一度街を歩きたいって、だからそんな明日の為に戦うんだって…」

俯き、前髪の影に隠れた顔はよく表情が読み取れない。
だが彼女は、何らかの感情を必死に抑え込むように強く拳を握りしめていた。

「あたし、言ったでしょ…?
自分を大切にしてって。人の為に、世界の為に簡単に命を投げ出そうとしないでって。
そう…約束してくれたんじゃなかったの…?」

小さく掠れ、次第に涙声に震える声。
堪えきれず、瞳から溢れた熱いものがサンディの頰を伝った。

「…それが、メイヤの出した答え?」

846アブセル:2018/06/15(金) 04:11:07

「リト、馬鹿なこと考えるなよ」

その様子を眺めながら、アブセルは呟くような声で隣にいるリトに先んじて釘を刺した。

何やかんやと言いつつも、リトがお人好しであるのをアブセルは知っている。
目の前に泣いている者や悲しんでいる者がいれば、うんざりしながらも、いつも最後には手を差し出してしまう。
慰める言葉を持たぬかわりに、彼はいつだって自らの行動で誰かを救ってきた。

…呆れるほど不器用だと思う。不器用で、それと同じくらい優しい。
だから今回も、自分を犠牲にして場が丸く収まるのなら、リトはそれをしてしまい兼ねない。
だからこその予防策だ。

リトやセナが名乗り出るなら、まずその前は自分の番なのだと。

「俺らみてーなのの代わりは沢山いても、お前の代わりはいないんだから」

リトもセナも、この先きっと必要な存在となる。

ましてセナにいたっては、この時代の人間ですらないのだ。もし彼を闇の暴走を抑える贄に選んでしまえば、その子孫であるナディアやリトもどうなってしまうか分からない。
最悪、歴史が変わってしまう可能性だってある。

だから、彼らをここで失う訳にはいかない。

847イオリ ◆ruQu1a.CGo:2018/06/18(月) 00:45:07
【虚空城】
 
 漆黒の闇に染まる二頭の巨獣。
二つの巨影の容姿は意外にも似通っており、互いの両翼が同時に羽ばたいた。
 黒麒麟が放つのは、迸る白光の波濤。
止むことなく放たれ続けるその白き光は恐るべき威力を秘めており、文字通り光の速さで天龍へと迫っていく。
 対する天龍は再度の咆哮を上げる。
咆哮は闇色の波動となって白光と衝突し、互いにその威力を相殺して消滅。

 「俺はただ、壊すだけだ」
 
 その声は、最大出力を示す極太の光条と共に。
波動で波濤を相殺した後に放つは漆黒の光条。
黒麒麟の放つ光とは違い、天龍が放つソレは明確な指向性を持って迸り、黒麒麟へと迫っていくも……その頭部の真横を通り過ぎていく。
 
 「血塗れの手で掴んだ所で、滑り落ちていくだけだった
 時空をねじ曲げてまで嫁を蘇えらせたのも、全ては今この時の、これからの、そして全て壊し尽くす為だ!」
 
 黒麒麟の真横を通り過ぎた漆黒の光条、その向かう先は虚空城の最上部。
世に溢れ出んとする闇を操る吸血鬼の姫、そのモノが立つ尖塔のテラスへ光条が迫り、着弾。
 一拍の間を置いて尖塔は大爆発を起こし、瓦礫と破片が衝撃波と共に周囲に降り注いだ。
 
 その様子を横目にしながら、天龍はその長く巨大な身体をうねらせ、再び羽ばたく。
 両翼に孕む雷光が、頭部から伸びる二本の捻れ曲がった尖角からは業炎が、そして氷槍となった背毛を揺らし、天龍は黒麒麟へと突進していった。

848メイヤ ◆ruQu1a.CGo:2018/06/20(水) 00:47:17
【黄昏の塔】
 
 セナを庇う様に声を投げるリマと、同じくリトを制止するアブセル。
その様子を見、メイヤの決意は更に固まった。
 ラデイックの言葉通り、選ぶべきは最も勝算が高い方法なのだ。
寧ろ他の選択肢があるのだろうか、在るならば乗り換えたいが、そう上手く行く物事でもない。
 
 「犠牲になっていい人間など居ない、確かにそうだ。
 だけど俺は人間と呼ぶには怪しい存在だよ、自分で言うと悲しくなるけれど」
 
 隣に立つサンディの悲痛な声。
俯く彼女の表情は見えずとも、どんな顔をしているかは簡単に想像出来る。
だからこそ、メイヤは続けた。
 
 「俺は明日が欲しい、だからこそ戦うんだ。
 死にに行く訳じゃあない、明日を得る為に戦いに行くんだ」
 
 前髪の隙間から見える、伏せられた瞳と流れる涙。
メイヤは神刀を床に突き刺し、彼女を抱き締める。
 
 「大丈夫、勝算はある。
 無駄死にするつもりもない、信じてくれ」
 
 そして、彼女だけに聞こえる様に小さく小さく、耳打ちをした。
 
 「サンディ、俺は君の事が好きだ。
 だから、絶対に会いに行く。
 だから……先に行って欲しい」
 
 正直狡いだろうと自分でも思う、だが、この言葉だけは伝えなければならない。
頭一つ背が低い彼女を、一度強く抱き締め、メイヤはサンディから離れる。
 
 遠くに響く轟音、そう遠くない距離に見える虚空城に一筋の黒光が走る。

 「さぁ、皆早く行くんだ。
 塔から城へは外殻を伝って地続きだ、急げ!!」
 
 時間は無い。
ゆっくりだが確実に、闇は濃くなっている。
 一度は失った筈の闇の力。
神刀を手に、メイヤはその姿を闇に染まる巨狗へと変えた。
 
 続く咆哮は別れの言葉か、仲間達への号令か。
物言わぬ黒狗は一度だけ、ゆっくりと目を伏せた。
 
 仲間達の姿を忘れぬ様に、その瞳に焼き付ける様に。

849リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2018/06/24(日) 08:07:30
【黄昏の塔】

「リマ・・・」

リマの訴えはあえなくラディックに否定されてしまった。
それでも、とさらに畳み掛けようとした彼女に、セナが声を掛けた。
その声音にリマは息を呑む。
同じだったのだ。幼い頃、我儘を言って駄々をこねて、セナを困らせた時。彼がそれでもリマに言い聞かせる為、泣きじゃくる自分に掛けていた声と。

「駄目!駄目だからね!!」

リマはセナが言わんとしていることを察し、縋るように訴えかける。

「折角戻ってきてくれたのに!もうリマを一人にしないって約束してくれたでしょ!」

駄目だ、今言うべきことじゃないのに我慢出来なかった。リマは自責の念とセナを失いかねない恐怖に堪らなくなり、嗚咽をもらしその場に崩れる。

こんなにも脆い少女が何故四神の責務を負わねばならぬのか、セナは時々分からなくなる。死闘を乗り越え少しは強くなったかと思ったが、根本的には変わらないのだ。いっそ再会などしなければ、彼女は独り立ち出来たのだろうか。

ただでさえ聖の力を持つ者に取って害ある環境で無駄な体力を消耗させたくないのに、セナはリマを慰める言葉が思いつかなかった。彼女の希望を叶えるという言葉だけは言うべきではないのだ。

そこへ、時同じくしてアブセルより制止の言葉を受けていたリトがリマのもとへ歩み寄る。アブセルの言葉に対する返事はないままに。
セナですら差し出すことのなかった手を差し伸べ、リマを支え立たせてやる。

「大丈夫、あんたからこの人(セナ)を取り上げるつもりはないから。」

この時代でセナを失う事は自分たちの存続に関わってしまう。自分はどうでもいいが、姉たちは護りたい。

セナを護ろうとするリマの一方で、これまた大切な人を失いたくないと涙を流す少女が一人。とても残酷な状況だと思う。
少女の傍らに立つ姉と目が合った。何故だか睨まれる。恐らくはアブセルと同じことを言いたいのだろう。誰かが犠牲にならなければ成り立たない状況だと、皆分かっている筈なのに。

リトはふとアブセルへ目を向けた。この世の終わりのような顔をして・・・おそらく自分の言葉を無視して、リトが自ら犠牲になると言い出すと思っているのだろう。
場が丸く収まるのなら自分がやればいいといつも思ってきた。でも、自分の無事を願う者達もいるのだと、今では分かる。

リトはルイの言葉を思い出していた。「鍵を握る者の存在があるが、今はパズルのようにピースが散らかった状態である。ピースがこのまま揃うことのない時、自らを棄てる覚悟を持て」と。だが、「今は"その時"でない」ことも分かっていた。

「俺はまだ死ねない。けど、最後は・・・」

決断せねばならない時が来る。きっと・・・

850サンディ:2018/06/25(月) 03:21:37
【黄昏の塔】

何となく、こうなる気はしていたのだ。
ただの口約束なんかで彼を繋ぎとめて置くことなど出来ない、ということも。

だから、覚悟はしてた。…してたつもりだ。

「………分かった…、信じる」

メイヤに抱かれ、サンディはその腕の中で静かに目を閉じた。

仕方なく贄になるのだと言ったなら、彼女はメイヤを止めていただろう。
だがこれは彼が自ら決断し、己の欲する運命を掴み取る為に選んだ選択だ。
その意志を挫く権利はサンディにはない。

でも…、一つだけ言わせて欲しい。
サンディは顔を上げ、メイヤを見据える。
依然、瞳は濡れたままだが、その声には先ほどまでにはみられなかった力強い響きがあった。

「ただ待っているつもりはないよ。この戦いが終わったら直ぐにメイヤを迎えに行くから」

今の戦いに決着がつきさえすれば、メイヤを塔に縛り付ける理由も消滅し、何か彼を解放する方法も見つかるかもしれない。
…いや、見つからなくても必ず見つけ出してみせる。

「だから、あたしが迎えに行くまで死なないでね。約束破ったら今度こそぶん殴ってやるから!」

サンディはメイヤから離れると、軽く敬礼してみせる。
健闘を祈る、とわざと明るく言って、涙に濡れた顔に下手くそな笑顔を浮かべる。

前に自分の中で密かに誓ったことが二つある。
一つ目は、もう二度と弱音は吐かないこと。
二つ目は、好きな人の前で格好悪い姿は見せない、ということ。

それを最後にサンディは踵を返し、メイヤに背を向けた。
乱暴に涙を拭い、前を見る。

意外にも覚悟を決めた当人達以外の方が、困惑の色が強いようだった。
その胸に占める想いは各々違うのだろうが、どう声をかけるべきか迷っている面々に「大丈夫だよ」と微笑って声をかける。

何が、とは言わない。

自分達のエゴで仲間を見殺しにしたとは思わないで欲しい。
サンディは諦めて彼を送り出したのではないし、メイヤだって自己犠牲の精神で残った訳ではないのだろうから。

彼は此処にいるメンバーに希望を託したのだ。
だから自分達がやるべきことは、それに応えること。
各々の護るべきものの為に、戦うこと。

「行こう!」

自らを奮い立たせるように言って、彼女は階段の如く遥か上へ続く外郭に足を踏み出す。
後ろは振り返らない。
黒狗の咆哮がその背を押すように響いた。

851ナディア ◆wxoyo3TVQU:2018/07/01(日) 02:00:08
【黄昏の塔】

「誰も犠牲にしない」なんて綺麗事だ。
多くの犠牲より一人の犠牲、ごもっとも。不本意ではあるが今自分たちの行動はすべて世界の存続に関わってくる。ここで立ち止まっているわけには行かない。

けれど、

「残酷だな・・・」

ナディアは呟く。
犠牲にならざるを得ない者は限られていて、その誰もを失いたくないと嘆く者がいる。

牽制の意味をリトを睨めつけるも、彼はその視線を逸らす。こちらの意見など聞くつもりは無いようで、何か考えている様子だった。

ナディアは続いて彼の傍らにいる少女・・・ユニへと目を向けた。
大きな瞳が不安そうに動き、遠慮がちながらも確りとリトの衣服を掴んで離れようとしない。

(あの子・・・)

ユニはどう見ても戦力外。当然リトは置いていこうとしたが、それを無理矢理連れてきた。
ジルがユニについて何か仄めかしていたから。彼女がこの件に関係していることは間違いない。それが解決の鍵になるかもしれないと希望を込めて。

「絶対迎えに行こう」

この場はメイヤが引き受けることとなった。
ナディアは先を行くサンディの背を励ますように叩く。

優先すべきは世界の存続、自分も決断する時が来る。
聖の力が弱まっている今、リトの存在を無視することは出来ない。
状況を把握した上で嫌だ、駄目だと意地を張るのは子供の駄々に等しい。
闇の能力者の質としてリトが最後の砦となるのは明白。

ユニの謎が解けぬ限り、リトを手放す覚悟を決めねば。

もう、時間はないのだから。

852レオール ◆ruQu1a.CGo:2018/07/01(日) 07:25:47
【バルクウェイ】
 
一筋の光明さえ差さない、閉ざされた世界。
永遠に続く闇夜の始まり、終焉の幕は下りたままだろう。
元が着くとは言え、バルクウェイは世界政府のお膝元。
世界有数の大都市は生活水準も高く、それを成す程にも都市機能は高い。
 
外殻の完成により世界が闇に閉ざされたと言えども、街の灯りは消える事は無かった。
しかしそれも、永遠に続く事は叶わないだろう。
電力供給に必要な燃料、資源はいずれ底を着く。
日照りを失い、動植物もそう遠くない内にその姿を消し、飢えと渇きの日々と共に世界は終わりを迎えるのだ。
 
「緩やかに滅びを迎える、そう言う訳にもいかないものだな
元より、ソレを受け入れるつもりは更々ないが!」
 
天地の狭間、バルクウェイ上空に浮遊する飛行艇の甲板でレオールは苦い声を出した。
周囲には同じ様に空挺師団の船が舞い、幾千もの魔影と戦いを繰り広げている。 
外殻完成から程なくして降り始めた雨は次第にその勢いを増し、雲無き嵐となって荒れ狂っていた。
風雨と共に魔物の大群を迎撃する空挺師団員の表情は硬いが、悲壮ではない。

地上、街の守護はバッハとビリーの二人の幹部に任せ、レオールは側近のマルトと共に最前線にて指揮を執っていた。
轟雷神と嵐神の魂を持つ二人は今の空挺師団における最大戦力である。
その完成された強さは四神にも勝るだろう。
剣風と共に雷光が、双刃が竜巻を巻き起こす。
文字通り豪雨の様に降り注ぐ魔物の群れを薙払う二人を中心に、師団員達も奮戦していた。

「一匹たりとも地上へ下ろすな!!」

レオールの号令と共に戦士達が剣を掲げ、剣閃が煌めく。
増え続ける魔影を斬り捨てる刃は不屈の光を宿していた。
勿論、号令を飛ばすレオールもまた、剣を振るい続けている。
一閃、二閃、三閃。

剣戟と共に放たれる雷光が、数百の魔物を打ち据え、滅していく。
その背から伸びる雷翼は羽ばたくと同時に轟雷が闇夜を切り裂いた。
無明の闇夜に瞬く雷光は、希望の光か。
雷光を纏い、文字通り光の矢となってレオールは空を駆けた。

その背中を一瞥し、マルトもまた、双刃を握り締める。
派手さはないが堅実な戦いを得意とする彼は、地味と言われながらもその実力はレオールに次ぐ程。
嵐を巻き起こし魔影を一掃したと思えば、真空の刃で取りこぼしを確実に撃ち落としていく。

853 ◆ruQu1a.CGo:2018/07/01(日) 07:26:47
暗天に走る雷光に目を細め、バッハは
その手に握るメイスを振り下ろした。
手に伝わる衝撃と共に魔物の頭部が粉砕され、内容物が飛び散った。
その様子に僅かながらの嫌悪感を現すも、魔物の死骸に目を向ける。

「一段落だな。
第三波以降は殆ど降りてきちゃいない……と言うか降りてこれてない。」
 
しかし、背後から掛けられる声、声の主へバッハは視線を移した。
視線の先、カウボーイハットを被った痩身の男……自身と同じ師団幹部のビリーの言葉に返事を投げる。
 
「あの雷光を見ればわかりますよ、師団長と副団長が揃うあの場を抜けれる者はそうそう居ません。
それこそ、大国の軍勢か黄龍の守護者でなければ。」
 
“個”として最高峰の強さを持つ二人に打ち勝てる者はそうは居ない。
恵まれた異能を存分に振るえる程の技量、それは正に鍛練の賜物だ。

「でもよう、ハナから団長らが乗り込んだら良かったんじゃないのか?
ヴィカルトが裏切ったと言え、数が揃わない四神の連中よりか実力は段違いだと思うんだが。」
 
魔物の死骸に吸いきった煙草を投げ捨て、ビリーが問うた。
ヴィカルトと言う師団の片翼を失ったとは言え、師団の総戦力は小国家程はあるだろう。

「完成されていると言う事は、裏を返せば“それ以上先は望めない”と言う事。
四神の子らはまだまだ成長し、進化する。」
 
確かにレオールは強い。
側近のマルトも総合力で見れば四神に勝るだろう。
しかし、完成された二人に伸びしろはもう無いのだ。

「可能性に掛ける、いや、信じると団長は言っていました。
四神を超え、四霊を超える四聖に成りうる可能性を信じるとね。」
 
アグル達を黄昏の塔へ送り出した後、祈る様に呟いたレオールの言葉をバッハは思い出す。
未来への道を切り開くのは大人の役目だが、未来をつかむのは子供達、若者達なのだ。

「さぁ、休憩が済んだのなら前線に補給部隊を飛ばしましょうか。
戦力の割り振りは七対三ですが、空へと七割を持っていくと言う事はそれ程までの激戦地であると言う事。
補給部隊隊長、任せましたよ。」

再び煙草を吹かすビリーへバッハは声を掛け、自身もまた歩き出す。
戦いはまだ、始まったばかりなのだ。

854??? ◆ruQu1a.CGo:2018/07/05(木) 09:48:53
【黄昏の塔】
 
 「全く、君はこんな所で終わっていい人間ではない事を意識して欲しいですね」
 
 揺れ動く塔の高層階、倒れ長身の青年へ、ぼやく様な呆れる様な、しかし心配している声色で声が掛けられる。
声の主は真白の長外套を羽織り、頭からフードを被っていた。
 
 俯き気味で話すその表情は、梟の面によって見えない。
その声はやや高く、恐らく男性であろうか。
 
 しかし、この場にそれを判別する者は誰一人居なかった。
 
 「君の戦いは終わったとしても、君の役目はまだ終わって居ません。
 まだ暫く、付き合ってもらいますよ」
 
 梟面の人物は、意識の無いアグルへ話し掛け続ける。
返事は無くとも、聴いては居なくとも、ソレは止まらない。
 
 自身より頭一つは背が高いアグルを背負い、梟面の人物がゆっくりと歩き出した。
遠くに聞こえる遠吠えに、梟面が揺れる。
 
 まるで屋敷内にある様な大きな階段を登る途中で、大きな黒犬とすれ違った。
両者は僅かな間、ほんの数秒だが互いに見つめ合い、頷く。
 そこに言葉はなくとも、意思の疎通は可能であった。
 
 「君は、いや君も己の役割を、役目を全うするのですね……」
 
 闇へ消える黒犬へと言葉を投げ、梟面の人物は黄昏の党の最上部、頂上へと歩み出た。
赤黒い空はその濃さを更に増し、グロテスクだ。
 
 「塔が示すのは崩壊、災害、悲劇、悲惨、惨事、惨劇、凄惨、戦意喪失……
 そして、逆さの月が示すのは
失敗にならない過ち、過去からの脱却、未来への希望。」
 
 赤黒い空から視線を遠くに見える虚空の城へ移し、梟面の人物は風を纏った。
 
 「さぁ、行きましょうか。
 遅れた分を取り戻しにね。」
 
 そして、ゆっくりと沈み始めた黄昏の塔を後に、飛んだ。

855キール ◆ruQu1a.CGo:2018/07/05(木) 23:54:40
【虚空城】
 
 虚空に浮かんでいた筈の城が揺れる。
 相違空間の狭間から顕現し、外殻の中心となった虚空城は本来ならば難攻不落。
 
 しかし四霊の半分が居ない今、黄龍の居城はかつて無い程の戦場と化していた。
城の至る所に散らばるのは死体、遺体、死骸。
 
 強化人間である元・処刑人の剣のヴァイトのデータを基にし、“新世界の住人”のプロトタイプとして量産された戦闘兵がその造り出された命を散らしていた。
 それを成すのはイオリが雇った傭兵団員達。
 
 七つの大罪を名乗る彼らもまた、その命を散らしながらも戦いに殉じた。
彼等が欲しかったモノ、それが何かを知るモノは居ない。
イオリからの報酬は何だったのだろうか、それを知る術はどこにも無かった。
 
 「……プロトタイプと言えどもあの戦闘兵をほぼ全滅させ、更には四霊たる私に喰らい着くとは……」
 
 激戦地となった伽藍のエントランスで、四霊の一柱、キールは肩で息をしながら呟いた。
黒のオーダースーツは煤に汚れ、至る所に裂傷が走り、血が滲んでいる。
 
 氷蒼の瞳が映すのは激戦の跡。
禿頭の男、傭兵の頭が姿を変えた火竜が大きな血だまりに沈んでいた。
 
 その側には狼男の遺体と、氷漬けにされた双子と無数の刃物。
 唯一今も生き残っている長髪の男、イオリに似た東方の男は力無く立ち尽くしたまま。
 
 闇に染まる百足を生み出し戦っていたその男は“もう”動けないだろう。
血にまみれ、その身に宿る闇を吐き出し切り、乾いた笑みを浮かべ続けるだけだ。
 
 「ははは、終わりだ。
 俺達の戦いは、終わりだ。
 百足に羽はない、地を、血を這いずりまわるしかなかった、それだけだ。」
 
 立ち尽くす男……ジョッシュは血と共に声を絞り出す。
闇の子供達計画の被験者であり、失敗作ながらもリミッターを着けずに闇を操れる唯一の存在は、闇を出し切った事により、長らく病んでいた精神を正常に戻していた。
 
 血糊でベタつく長い髪が揺れる。
キールの視線の先、ジョッシュの後方。
 
 死屍累々の虚空城へ新たに足を踏み入れた一団の姿を見つけ、キールは溜め息を着く。
 
 「シデンはイオリと一騎打ち、晶騎士と羅刹の王は未だ動かない。
 私一人で四神4人と闇の王子二人にその他を相手どるのは中々骨が折れるのだけど。」
 
 黒から蒼へと色を変えた瞳で新たに現れた一団……サンディ達を見据え、キールは続ける。
 
 「まぁ良いわ、此処で纏めて滅ぼしてあげましょう。」

856シデン:2018/08/07(火) 01:51:35
【虚空城】

衝突し、互いに互いの肉体に爪と牙とを食い込ませ、中空でもつれ合う二頭の神獣。
旋回し、巨躯を踊らせ、空を縦横無尽に駆け巡る様はまるで曲技飛行のようだが、しかし実情はそれとは比べものにならない程の物々しさを帯びている。

雷光が、業炎が、氷槍が、麒麟の肉体を穿ち、溶かし、凍結させる。
羽毛が爆ぜ、肉が焼き潰される中、しかし不死の特性を持つ麒麟は、そのどれの攻撃も歯牙にかけない。
破壊される都度、泡立つ傷口は瞬時に欠損部を修復させ、ものの数秒で元あった形へと再形成される。

『……あくまでも破滅を望むか』

後方で瓦礫の崩れる音が聞こえるが、今となってはそれさえもどうでも良かった。
言うならば、あれ(メルフィ)は使い捨ての道具だ。闇の封印を解くべく鍵…、役目を終えた道具にもはや価値はない。

『つくづく、貴様という人間の思考が理解できん。
破壊を為した先に何がある。それをしたところで貴様に何の益がある』

畢竟、イオリの口にしたそれは四神連中とは違い、人類の為でもなければ、誰を救う為のものでもない。
破壊の先に新たな世界の創造を望む黄竜とも異なり、彼の目指す最終地点は完全なる世界の消失だ。
何も生み出さず、何も得ることのない、完全な虚無だけが存在する空間。

『あれだけの時間と手間暇をかけて手を尽くした割には、その終着点が世界と全人類とを巻き込んだ心中とは……かけた労力と釣り合わぬだろうに』

がっぷり四つに組み合った今の状態は、純粋な力の押し合いでしかなく、戦略も何もあったものではない。
そして単なる消耗戦であれば、不死である麒麟に負ける理由はない。

刹那、麒麟を起点に爆発的な規模の放電が巻き起こる。
しっかりと爪と牙を食い込ませ、麒麟は巨龍を逃がさない。
凄まじい熱量に幾つもの空気の弾ける音が天上に響き、膨れ上がる爆熱が暗黒の世界を蹂躙、周囲一帯を真白に染め上げた。

857イスラ他:2018/08/07(火) 01:59:03
【虚空城】

そこは夥しい数の死が横たわる場所だった。
あちらこちらにぞんざいに転がるのは、壮絶な死に様を晒す骸の数々。
圧倒的な破壊の暴威に晒されたエントランスは見るも無残に荒れ果て、むせ返るような異臭が辺り一面に立ち込めている。
その凄惨な光景に、そして強烈な血の臭いに、イスラは思わず息を呑む。

眼前、フロアの中央に辛うじてまだ息のある男が満身創痍の状態で立っている。
何とか彼を救出できないものかと考えるが…それは、男の正面に佇む女の存在が許してくれない。
明確な敵意を投げてくる相手にイスラもまた警戒心を固め、彼女の動向を窺いつつ慎重に刀の鞘に手を当てる。そして…

「待って」

その直後、横合いから唐突に声が上がった。

「こんな所で全員が足止め食ってたんじゃ、黄竜のところになんていつまで経っても辿り着けないよ。それに地上にいる人達のことを考えても、あたし達には余計なことに時間を裂いている余裕はない……でしょう?」

だから、とサンディは言葉を続ける。

「誰かがあの人の足を引き止めるの。その間に他の全員がこの場を突破して、黄竜の所に向かう……」

「要するに……囮を使うってことか?」

サンディの意図するところを汲み取り、イスラが眉を潜めて懐疑的な口調で確認をとる。
それを聞き、「ああ、なるほど」と遅れて理解に及んだアブセルが指を鳴らした。

「んじゃあ、俺がそれやるよ」

「え?」

その囮の役目を自身が引き受けるつもりで作戦を切り出した矢先、思いがけなく発せられた少年の言葉にサンディは虚をつかれて目を見開いた。
そんな彼女にアブセルは、なぜ意外そうな顔を向けられるのか分からないとでも言うように、片眉を上げる。

「アンタ(四神)達は本調子じゃない。んでもってリトや先生(セナ)はいざって時の切り札。
となれば切れるカードは自然と決まってくる……だろ?」

メイヤが闇を押さえ込んでくれた為、四神にかかっていた力の制限はじきに解除されるだろう。だが、万全に力を振るえる状態に戻るには今しばらく時間が掛かるはずだ。

鞘から剣を引き抜き、依然、敵から目を離さず警戒態勢を怠らないアブセル。
彼の主張は一見、理に適っているように思えるが…しかしイスラ達からすれば、彼の実力は未知数の上、この部屋の惨状を造るのに大いに貢献したであろう黒髪の女と単身つき合わせるのは不安が残るのも事実。

そんな彼らの心中を読み取ったのか、アブセルは不満そうに顔をしかめると、

「なに…?俺じゃ信用ないっての?
俺だってこの二週間ジジイにみっちり鍛えられたから、割りかし強くなった自覚あるんだけど…」

正直、最後までリトについていたかったのが本当のところだが、この状況では我儘を言っていられないのも確か。
それに彼にはナディアやリマも付いているし、リトが無茶をしそうになった時は彼女らが止めてくれるはずだ。その点は半端者の自分よりもよほど確信をもっていえる。

「まあ大丈夫だって。向こうも戦って疲れてるみたいだし、疲弊した相手の足止めくらい楽勝だって。つー訳だから、ほら、さっさっと行った行った」

あえて軽い口調で言うのは、仲間達を不用に心配させないためだ。
アブセルは一同の先行を急かすべく、手で追い払うような仕草をし、そしてリトに対しては信頼の証としてグッと親指を立ててみせた。

858イオリ:2018/08/21(火) 18:31:01
【虚空城】
 
揺れる、揺れる。
虚空が揺れる、世界が揺れる。
虚空に身を潜めてこその城がその姿を顕した時。
終着点もまた、その姿を顕すのだ。
 
雷光が、業炎が、氷槍が破壊の嵐と成って吹き荒れる。
その中心には絡み合い、組み合う神獣の姿。
黒麒麟が天龍に組み付き、天龍が黒麒麟に絡み付く。
 
両者の実力は拮抗しているように見えるが、それは絶妙なバランスの上で成り立つモノだ。
そして、そのバランスを崩すのは黒き麒麟が放つ雷光。

自らの身を滅ぼす程の威力を秘めた放電は文字通り、黒麒麟の身を焦がしていくが、不死の特性を持つ神獣にとっては問題ない。
しかし、組み絡み合う天龍はそうもいかず。
 
尖塔の崩落に巻き込まれたであろう吸血姫の力が弱まり、更に、闇の巣諸共地の底へ沈められた黄昏の塔がレイラインの力を一時的に隔絶させた。
 
それにより、世界に満ち溢れ、世界を閉ざす闇の力が弱まっていく。
即ち、闇によってその身を形成する天龍の巨体を、イオリは維持出来なくなるのだ。
 
闇を真白に染め上げる雷光が巨龍の身体を灼き、焦がし、削っていく。
麒麟も同じく消耗していくが、天龍と違いその身体が滅される事は無い。

主である黄龍が存命する間であれば、まさしく無敵なのだ。
……そう、ゼロが生きている間は。
 
「逆だよ、全部壊すと決めたからこそ、ここまで辿り着けた。」
 
翼が焼け落ち、角が、爪牙が砕け散る。
鎧の如き黒鱗が剥がれ、天龍は苦鳴の咆哮と共に血の滝を吐き出した。
 
だが、その獣瞳に宿る焔は未だに消えず。
邪悪な、しかしどこか悪戯めいた色が薪となって焔に焼べられる。
 
「さて問題だ。
 俺が連れてきた戦力の内、最も強いのは誰だ?
 傭兵団のヤツらを相手取ったのはキールのババアだ。
 羅刹王とキチガイ剣士は動かない、なら、誰がゼロを守っている?
 俺の相手をお前がしているなら、ゼロの側には誰も居ない。
 もう一度言うぜ、俺の手の内で最も強いカードは何だろうな!!」
 
組み合い、絡み合う天龍は再度咆哮し、千切れた翼を炎翼と変えて大きく羽ばたく。
黒麒麟に絡みつく身体を、逃がさないとばかり更に絞り込み、雷光に削られながらも闇へと飛んだ。
 
それと同時に、無敵であり不死身である筈の黒き神獣の身体の再構築が、無限の再生力を盾に自らの身を省みない放電を行っていた身体が崩れていく。
再生自体は止まっていないものの、そのスピードは見るからに、急速に落ちて行くのが分かった。
 
「三闘神、羅刹と夜叉に並ぶ者。
 非天、“生”を否定する者……闘神、阿修羅の存在を忘れてたのはお前の最大のミスだぜ、デコメガネ!!」
 
ーーーーー

859イオリ:2018/08/21(火) 18:32:05
阿修羅、非天とも称されるその語源はa(否)sura(生)であり、生命を否定すると言われる。
羅刹、夜叉、そして阿修羅。
 
彼等はあらゆる平行世界、様々な世界線に置いて唯一無二の存在であり、それを成すのは呪いとも言える魂と力の継承方法だ。
制限が強い反面、その神格、力は桁違い。
 
十字界で麒麟の力を解放したシデンと渡り合ったMr.K……コウガの正体は夜叉王であり、ありとあらゆる未来を見据える瞳を持つラセツもまた、三闘神の内一人、羅刹王である。
そして、彼等に並ぶ阿修羅こそがイオリの右腕、ボルドーだった。
 
「成るようにならあね、相棒が頑張ってるとなると俺もやるしかなかろうねぇ」
 
激戦地は虚空城全域であり、ゼロが座する玉座の間も例には漏れない。
傭兵団とイオリの部下がキールを相手取り、イオリがシデンと死闘を繰り広げているのと同刻。
 
虚空城内で最も堅牢であろう玉座の間を揺るがせながら、ボルドーは袖口で鼻血を拭う。
鮮やかな緑瞳が見据えるのは、砕けた玉座にもたれ掛かるゼロの姿。
 
纏っていた法衣はボロ布となり、流麗な顔にも大きな痣が浮かんでいた。
ボルドーと同じ様に鼻血を垂らし、ゼロはゆっくりと身体を起こす。
 
その動作は緩慢で、余裕と言うよりは単に動きが鈍いだけにも見える。
しかし、次の瞬間には目にも止まらぬスピードで飛び出し、様々な術式を平行起動し纏わせた両腕をボルドーへと叩き付けた。
 
それを受け止めたボルドーの籠手……神器が砕け散り、破片が舞い散る。
双眸が重なる停滞は極僅か。
 
一拍の間を置き、互いに繰り出すのは打撃の応酬だ。
一見乱打に見えるがその実は精緻な読み合いの末に放たれる殴打であり、掌打一つですら堅牢な城壁を粉砕する程の威力を秘めている。
 
掌打から続く指突はフェイント、踏み込んだ足を軸にし水平回転するボルドーが放つのは回し蹴り。
軍靴の踵が空を薙ぎ、真空波が巻き起こる。
 
吹き荒れる烈風の刃がゼロを切り刻まんと迫るが、瞬時に展開された障壁に阻まれ……そこに回し蹴りが着弾。
巨砲の一撃の様な、激烈な蹴りはゼロが張った障壁を砕き、左腕を掲げて防御態勢を取るその身体を大きく吹き飛ばした。
 
「クリーンヒットには遠いが、その身体には中々効くだろう?」

860イオリ:2018/08/21(火) 18:33:31
障壁を破り、掲げた左腕に突き刺さる一撃は着撃と同時にその威力を全解放。
吹き飛び、壁面に大きな陥没痕をつけたゼロの身体は今度こそ、力無く床面に倒れ付す。
 
起き上がろうにも左腕は肩口どころか胸元まで大きく抉れ、紅白にまみれた有機物と無機物の入り混じった内臓面を露わにしていた。

「……」
 
言葉は、声は出ない。
どうやら衝撃で声帯や肺も機能不全を起こしたようだ。

脳内にダメージアラートが響き渡り、秒刻みでエラーが吐き出されていく。
確かにボルドーの言葉通りだろう、このちゃちな義体は戦闘に向かないのだ。
 
向かないと言えども、四神を圧倒する程度の力は備わっている筈なのだが……阿修羅の魂と力を持つボルドーは、規格外に強い。
ドロリとした生温い感覚が左頬から首へと伝い、そこでやっと左の眼底がひしゃげて眼球が破裂している事にゼロは気付いた。
 
機能不全のアラートとエラーを一時的に遮断し、ゼロは身体をゆっくりと起き上がらせる。
左腕を失った事によりバランスも崩れているが、全体で見れば些細な事だ。

起き上がった時点でバランサーは作動しており、ゼロは右手をボルドーへと翳し……紅と金に彩られた漆黒の光が閃いた。
閃光は止むこと無く瞬き、その度に周囲の空間が削れ、砕けていく。

ゼロが放つのは超高密度に圧縮されたブラックホールで、拡張と収縮を瞬間的に行う死の光だ。
しかしそれら全てをボルドーは視えているかの様に……実際に閃光が放たれる地点を“先に”視ており、その虹色の眼光が幾何学的な軌道を描いて疾る。
 
黒輝と虹光が崩落し始めた玉座の間を彩り、散っていく。
その間僅か十と数秒程だが、戦闘時においての十数秒は長い。
 
「悪いな、その身体じゃあ俺は止まらない!」
 
そして、一際大きく光が瞬いた瞬間。
風よりも疾やく、相対距離を走破し間合いを詰めたボルドーの拳が、ゼロの胸郭を押しつぶし、その身体を貫いた。
 
ーーーーーエラー、エラー
ダメージリミットオーバーーーーーー
 リンク停止ーーーーーシステムエラーーーーーー
 復旧マデ100カウントーーーーー

861イオリ:2018/08/21(火) 18:34:36
その咆哮は赫怒か、慟哭か。
天龍の怒号が虚空城を揺らし、身を削る麒麟の雷光が一瞬、止まる。

その瞬間を天龍は見逃さない。
身に纏う闇の黒鱗を爆発させ、自らの身体を燃料に黒麒麟を灼き尽くさんと劫火を燃え上がらせた。
 
そして更に、炎翼を羽撃かせ無明の闇へと飛び立って行く。
勿論、組み合いもつれ合い、絡み合う黒麒麟を放さずに。
 
「悪ぃなデコメガネ、テメェにゃ最期まで付き合ってもらうぜ……」
 
互いの肩に顎を乗せ合うような体勢で、天龍が、イオリが口を開く。

「この世界の果てのその先、戻って来れねぇ様な場所まで飛んでってやるよ!!」
 
そう、初めからイオリの狙いはコレだったのだ。
ボルドーは義体のゼロを機能停止させる程の実力者である。
 
逆に、イオリの実力ではギリギリやれるかどうかだ。
ならば確実に、ゼロを機能停止させ、シデンとの不死のリンクを一時的に切るには……確実な一手を選ぶには。
 
「全部壊す、んなモン嘘に決まってんだろ……俺は今まで戦って来たのは全部、一人息子の為だ。
アイツは何度も死に、生き返った。
 
四神の護衛を命じ一族から遠ざけたのも、吸血鬼を贄に時間を巻き戻したのも全部そうだ。」
 
天龍から亢竜へ、姿を変えたイオリは更にその姿を変化させながら、無明の闇を切り裂いて飛ぶ。
 
「闇に喰われちまうのを防ぐ為に、鳳凰の力を……蘇った鳳凰の力を授けた。
今のアイツは闇を纏う犬なんかじゃない。

神焔(かえん)の翼で明日へと飛ぶ鳳凰なのさ。」
 
亢竜悔い無し。
突き進んだ先が滅びとしても、それはそれで良いだろう。

天の彼方、世界の境界を目前とし、竜はその姿を火の鳥へと変えた。
その中心、イオリの身体は既に光の粒子となって霧散していく。
 
炯々と輝いていた黒瞳は今や光を失い、何も映さない。
だがしかし、瞳は愛する者の姿を……朱莉の姿を捉えていた。

柔らかな感触が身を包み、愛しい囁きが耳を打つ。
そしてーーーーー
 
 光が、

ーーーーー悪かったな、大分待たせた。
許してくれるって?やっぱりお前は優しいなぁ……あぁ?

メイヤはもう大丈夫だ、冥の夜は明けた。
冥夜じゃなくて明夜さ、どんな夜も明けて朝が、明日が来るってもんだ。
 
かっこつけたって良いだろ?孫の姿が見れないのが残念だが、満足だ。
お前もそうだろ、朱莉ーーーーー
 
 爆ぜた。

862リト他:2018/08/23(木) 21:53:02
【虚空城】

いつもの軽い調子で親指を立ててくるアブセルを見て、リトは複雑な心境になる。

アブセルの実力に不安がある訳じゃない。彼なら十分渡り合えるだろう。
だが、万が一「もしも」がないとも言えないのだ。だからこの場で彼に贈る言葉は一つ、「生きて戻れ」なのだろう。
しかし、それが今のリトにはあまりにも無責任な言葉になってしまうことも分かっていた。

「・・・」

リトは身につけていた首飾りをはずし、アブセルの首に掛ける。自身の闇の制御が出来なかった幼き頃にナディアから贈られた瑪瑙の首飾り。今でこそ闇を抑える効力は無くなっているものの、ずっと肌身離さず身に付けておりそれがリトにとって大事なものであることをアブセルは知っているはず。

「・・・あとで返して。」

これがリトにとって精一杯のことだった。
生きろ、とは言えない。この先リト自身が生を選び抜ける保障がないのだ。けれどアブセルには生き抜いてほしい。いずれ自分が死を選んだとしても、形見くらいにはなるだろう。

リトの神妙な面持ちが気に入らずナディアはその空気を払拭するように弟の背を叩く。今生の別れみたいな態度、気に入らない。

「ねぇあの女偉そうでムカつく。アブセルあんた、負けたら許さないからね。戻ったら一つ、うちのリトを好きにしていい権利をやるよ。」

すかさずリトが睨むもナディアは何処吹く風。

「ほら、道草食ってる暇はない。行くよ。」

そしてアブセルを残し先へ進んだ。

863キール ◆ruQu1a.CGo:2018/08/24(金) 14:01:21
【虚空城】
 
本来ならば、この場で全員を相手取り、全力で殲滅するべきなのだ。
しかし、キールはあえてそうせず、走り去るアブセル以外の面々を追い掛ける事はしなかった。
 
足音が遠退き、エントランスホールに一瞬の静寂が訪れる。
だが次の瞬間には、遠くに聞こえる咆哮が、衝撃が周囲を揺らした。
 
「……今生の別れね。
 その首飾り、貴方の墓標に掛けてあげるわ。」
 
揺れるフロアでキールは静かに声を紡ぐ。
その表情はどこか遠く、薄く笑っている様にも……いや、笑っていた。
 
その笑みは絶対零度、氷の笑みだ。
静かに右手を上げ、指を鳴らす。
 
渇いた音が響くと同時に周囲一体が、エントランスホールに凍気の嵐が吹き荒れた。
その中央で、キールが真白の氷鎧に身を包んで佇んでいた。
 
「来なさい、初手は貴方に打ち込ませてあげる。」
 
掲げた右手には氷槍が握られ、その穂先が妖しく煌めいた。

864アブセル:2018/08/31(金) 01:59:10
【虚空城】

託された瑠璃の首飾り。そこに込められた想いをアブセルは理解していた。
故に彼は遠退いていく足音を耳に、鮮やかな青色の宝石を強く握り締める。

その拳の下、胸の奥から込み上げる激情を、何と呼べば良いのか分からない。分からない…が、アブセルは今この瞬間、この世界において、一番満たされている確信があった。

だからこそ、彼がキールに向けて返すのは、彼女の冷たい微笑みとは相反する、血の通った…熱のこもった不敵な笑みだ。
リトが、ナディアが、親愛する者達が信じてくれている。それだけで充分だった。それだけで、アブセルはいくらだって戦えた。

「……悪いな、なんか空気読んで貰ったみたいで。つーか、別に待ってて貰わなくても良かったのに」

殊勝にも相手はこちらの希望通り、一騎打ちの戦いを引き受けてくれた様子。
ならばここは礼儀として、古来よりお馴染みの決闘の作法に則ってやろうではないか。

アブセルは剣を持ち上げ、深く息を吸い込むと、

「俺の名はアブセル・ベルンシュタイン!
リトの一の従者!取り敢えず俺達の愛の前にはいかなる困難も通用しないんで、そこんとこ覚悟しとけっていう!」

刃の切っ先を真っ直ぐ相手に突きつけ、恥ずかしげもなく啖呵を切る。
その傍ら、そんな調子で名乗りを上げるアブセルの様子を両脇から見守る相棒達の姿があった。

『阿)こ…これは…!?ご主人の全身から嘗てないほどの闘気が迸っておりまする…!』

『吽)単なるスケベ心ともいう……』

意気軒昂とした主の姿に瞳を輝かせる白獅子に、そんな両者を眺めて冷静に所感を述べる黒獅子。
仮にも主と呼ぶべき人間に対する評価としてはあんまりな気もするが、その見解はアブセルの性格をよく心得ているといえた。なにしろ今の彼を突き動かしている原動力こそまさしく…

(リトを好きにしていい権利!リトを好きにしていい権利!!勝ったらリトを好きにしていい権利ぃィィ…ッ!!)

…俗っぽい欲望そのものなのだから。
それらの感情を真面目くさった顔で押し隠し…いや隠し切れず鼻息を荒げるアブセルは、声高に気勢を上げれば、

「いくぞ!シロ!クロ!」

『承知!』『はぁ〜い』

「憑依合体!モード・不知火!」

掛け声と同時に霊体化した二頭が、アブセルの身体の内側に潜り込む。

途端、琥珀色の瞳は紅く染まり、爪と牙は獣の如く鋭く、凶悪なものに変わる。
側頭部からは二本の湾曲した角が、そして腰の付け根からは白と黒の二本の長い尻尾が伸びる。
半魔と化したアブセルの周囲には白い炎が舞い踊り、灼熱の舌が荒れ狂う冷気を絡め取っていた。

アブセルは姿勢を低くし臨戦態勢を取ると、キールの厚意に甘える形で先制を仕掛ける。
地面を蹴った反動を推進力に一気に加速、一跳びで相手との距離を詰めた。

もちろん、馬鹿正直に敵の懐に突っ込んだ訳ではない。
その突貫と並行して、キールの影からどっと雪崩れるように無数の腕が湧き出てくる。
それら黒き魔手が、彼女の手足や身体に纏わりついたかと思えば――、捉われ身動きの取れないキールに、アブセルは容赦のない剣撃を叩きつけた。

865レグナ:2018/08/31(金) 02:14:25
【虚空城周辺】

どうやら気を失っていたらしい。

何者かに抱えられる感覚に薄っすらと意識を取り戻し、レグナはぼんやりと瞼を持ち上げた。
直後、目に入ったのは眩しい程のフードの白色だ。
すぐ眼前、頭をすっぽりとフードで覆い、梟の面で顔を隠した男の姿があった。

その自分と同年代であろう青年の声に、レグナは聞き覚えがない。
どことなく気安さを感じる口調から、恐らくアグルの知り合いか何かだろうと推測するも…。と、そこでレグナはようやく、双子の弟、アグルのことを思い出した。

彼は、どうしただろう。
ユーリとの戦闘から一続、身体の主導権は依然レグナが握ったままだ。

レグナは目を瞑り心の中でアグルの名を呼んでみる。しかし返事はなく、また彼の気配を掴むことも出来なかった。

まさか消えてしまったのだろうか。…いや、さすがにそれは考え難い。
もしかすると自分という異物が入り込んだせいで、アグルの意識はどこか表出できないほどの深みへ追いやられてしまったのではないだろうか。
あるいはこの肉体の宿主に取って代わるべく、自分の存在がアグルの意識を呑み込もうとしているか。
いずれにせよ、レグナの本意でないことに違いはない。

「お――」

その深刻な状況に冷静さを欠いたレグナは、降ろしてくれと、青年に訴えようとする。
しかし、そう声を上げようとした時、ふいに視界の端で閃光が瞬くのが見えた。

瞬間、全身に悪寒が駆け巡っていた。気づけばレグナは無意識に…いや、本能的に青年を突き飛ばす。
その一拍後、一筋の雷撃が轟音と共にレグナと青年の間を駆け抜けて行った。
空気を焦がし、大気をも貫く一撃。当たれば一溜まりもなかっただろうことは容易に想像がつく。

驚愕と焦燥感に息を詰めたのも束の間、レグナの身体は青年という支えを失ったことで、重力に導かれるまま闇の中を落下していく。

浮遊感に全身を包まれ、猛風を浴びながら、しかし彼はそんな中、ふと塔と城とを繋いでいた外郭の上に何者かが立っているのに気づいた。

……虎だ。

一瞬、その人影に獰猛な獣の姿を幻視した。

だがそれも直ぐに間違いだったと気づく。
獣だと思ったものの正体は、一人の長身の男だった。

表情はないに等しく、深く落ち窪んだ眼窩はその空っぽの瞼の裏側を閉じ込めるように、糸で縫いつけられている。
着崩した装束……着物の片袖を抜いて露わになった裸身の、首と上腕にも同様の縫合跡がある。
…遠目からでも、その男の威容と異貌は明らかだった。

橙と黒のまだらに染まった髪を風に靡かせて、身幅の広い長剣を肩に担いだ男が、悠然とそこに佇んでいた。

866キール ◆ruQu1a.CGo:2018/09/14(金) 11:27:08
【虚空城】
 
四霊が一角、霊亀が司るのは守護と吉凶。
絶対零度の凍気が生み出す氷鎧は固く、硬く、堅く。
 
「不純物が一切混じらない純度100%の氷、その強度は鋼鉄を遥かに超える。」
 
鬼を取り込み異形と化した青年の、渾身の一撃。
影縛りの類いを発動させ此方の動きを封じた上での、その一撃を受けきり、キールは静かに告げる。
 
「あえて先手を打たせた意味、それは貴方の実力を測る為。
捕縛すると言う事は、初手を必ず当てたい思惑の現れ。
 
必中させたいと言う事は、その一撃に全力を込めると暗に言っている様なモノよ」
 
アブセルの剣戟は身動きの取れないキールの胸元へと直撃していた。
氷鎧が派手に砕け散り、乾いた音を立てて破片が落ちるものの、ダメージは殆ど無い。

キールの身体を縛る影はいつの間にか真白に……凍結され、氷鎧の破片が落下するのと同時に、此方も砕け散っていく。
乾き、しかし澄んだ音の二重奏をBGMに、キールはその手に握る氷槍を無造作に横に薙いだ。
 
横一文字の軌道に沿って、視界を埋め尽くす程の氷の波濤が生まれ、アブセルを飲み込んで行く。
圧倒的、絶対的な質量の前には彼が纏う白炎はタバコの火種程だろう。
 
「最低限、四神の同程度の力が無ければ私と闘うに値しない」
 
吉凶を司るキールは、物事の本質を直感的に吉か凶で分別している。
アブセル自身は前者、吉であり、実力差から見れば言わば無害。

(だけど、あの剣……禍々しいあの刃は凶。
アレは恐らく魔玉と同質の力を持つ、厄介な一振りね……)
 
今の一撃で事が終われば良いのだが……そうは行かないだろう。
白き波濤の先、絶対零度の波濤の先を見据える様に、キールは目を細めた。

867アブセル:2018/09/18(火) 06:42:37
【虚空城】

キールの動きに合わせて、周囲を蹂躙する凍気は更に地獄の様相を見せる。
今や視界は完全に白一色に埋め尽くされ、敵影はおろか伸ばした自身の手の先さえ捉えるのが難しいほどだ。
息を吸えば尋常ならざる冷気に肺が悲鳴を上げ、身体の内側から凍りついてしまいそうな感覚に、しかしアブセルは…

「なに言ってんだ、こんなのまだまだ小手調べだっつの」

絶対零度の向こう側、白い帳を破って飛び出した巨大な拳が勢いもそのままに、真正面からキールを殴り飛ばした。

「頼むぜ、ヘカトンさん!」

それは祖父の指南の元、アブセルが新たに契約した魔物、ヘカトンケイル…の腕の一本だ。

本来なら百本の腕を持つと謂れる巨人も、残念ながら今のアブセルの力量では魔物の全体像を拝むことはおろか、腕八つ分しか召喚することができなかった。が、それでもかの者の持つ破壊力は申し分のないものといえるだろう。

不意打ち気味の巨人の一撃を受け、後方へと弾き飛ばされるキール。そのまま壁面に激突したところへ更に他の腕が猛追。
宙に浮かぶ八つの剛腕が唸りを上げ、壁面ごとキール目掛けて容赦のない乱打が繰り返される。
息をつく間もなく、間断なく襲いかかる巨大な質量の嵐に床と壁はとっくに原形を失い、荒れ狂う雪煙の中、轟音と粉塵が巻き上がる。

普通に考えれば一人の女性を寄ってたかってタコ殴りにしているような状況も、今は一切気が咎めることもなかった。
なにせ相手は普通の人間ではないのだから。
最初の一撃で彼女の鎧の異常なほどの硬度は十分理解した。
むしろこれでも攻撃が通用するかどうか怪しいところなのだ。

(頼むから通じてくれよ。さっさと終わらせねーと、こっちが凍りついちまう…)

相手の属性に対抗すべく取った火炎タイプの魔装ではあるが、四神アマテラスに比べればアブセルの纏う炎はお粗末なものだ。
本当の意味で今のアブセルは、極寒の中に燻る消えかけの種火のようなものなのだろう。

868キール ◆ruQu1a.CGo:2018/10/24(水) 12:15:24
【虚空城】
 
全てを染める、絶対零度の白き波濤。
それを突き破り、眼前を埋め尽くすのは巨大な腕だった。
 
(大きい……!!)
 
細められた黒瞳が見開かれ、視界一般に迫る巨拳。
回避は間に合わず、直撃を受けたキールの身体は大きく吹き飛び場内の壁面へと叩き付けられた。
 
そして更にアブセルは猛攻を、追撃の乱打が凍気を、白磁の大気を貫いてキールへ襲い掛かる。
巨大な質量による叩き付けは単純だがそれ故に強い。
 
破壊に特化した巨拳が唸り、一振り毎に凄まじい衝撃と破砕音が轟き渡った。
しかし……ソレはやがてその勢いを弱めていき、轟音もまた鳴り止んでいく。
 
そして、遂にその八本の巨腕全てが動きを止めた。
 
「……私が司るのは四大元素の“水”
氷はあくまで副産物と言った所ね。
 
分子結合を極限まで高めた氷鎧で受けるには、その巨人の豪腕は重た過ぎるけれど……結合を緩め、変化させ生み出した大量の水、分かり易く言えば水のクッションならほぼ全ての衝撃を、威力を受け切り殺す事が出来る。」
 
動きを停めた巨拳を、凍結したその腕を撫でながら、舞い散る白氷の煙から姿を現し、キールは続けた。
 
「湖程の水量を圧縮した障壁で攻撃を受けきり、その後、巨拳ごと凍結させる。
召喚術は使役しているモノが“こんな”状態でも自由自在に引っ込めたり出きるのかしら?」
 
氷煙を纏うその姿には鮮血の赤。
血染めのスーツを脱ぎ捨て、四霊の一角は薄く笑った。
 
それは自嘲か酷笑か。
血の滲むカッターシャツとシンプルなストレートパンツは無惨な姿になっており、裂け目から覗く肌は……黒。
 
「この姿はあまり見せたくないの。
……醜いから。」
 
四霊が四霊と呼ばれる由縁、その最もたるモノが神獣への形態変化。
麒麟、鳳凰、応龍、そして霊亀。
 
その身に宿す力全てを体現する姿こそが、巨大なる獣なのだ。
傷口から溢れる赤が黒へ、液体が結晶となり、六角形の鱗へと変わる。
 
重なり合う重鱗は堅固な鎧となり、真白の氷鎧ではなく、漆黒の鱗鎧を身に纏い、キールは続けた。
 
「半人半獣、ここからが私の全力よ。」
 
そして、その言葉尻を掻き消すように。
天へと伸ばしたその掌から、泥氷入り混じった瀑布がアブセルへと降り注いだ。

869アブセル:2018/12/14(金) 06:13:53
【虚空城】

巨人による猛打が止み周囲に立ち込めていた粉塵が晴れた時、そこにあったのはアブセルが期待していたような光景でもなければ、この戦いの勝敗を決定付けるようなものでもなかった。

八つの巨拳は白く凍りつき、対峙するキールは衣服こそ損傷しているものの、微塵もダメージを感じさせない佇まいで見たこともない悍ましい姿に変貌している。

それに一瞬でも気を取られてしまったのが不味かった。

突如頭上から強大な重量を孕んだ何かが降りかかってくる。
その衝撃と勢いに容赦なく身体をなぶられ、身を斬るような激痛と、肌の焼けるような灼熱に、アブセルは初め無数の刃の雨に穿たれたような感覚を得た。
だがそれが、唐突に、あまりにも冷たい水の中に沈んだが為に生じたものだと気づいた時にはもう遅かった。

何故ならキールの生み出した瀑布はフロアの空気に触れた瞬間、飛び散る飛沫ごとその総身を氷結させ巨大な氷の柱へと変じたからだ。

そうして極寒の地と化していたフロアの中心に、一瞬にして巨大な氷のオブジェが築かれる。
アブセルは身を守る炎もろ共その分厚い氷の内側に閉じ込められ、身動きが取れない。
もはやこの場に立っている者はキールのみとなり、侵入者達によって破壊され尽したエントランスにようやく元の静寂が訪れた。

見る者がいれば誰もが勝負は決したと確信するであろう状況。

しかしそんな中、全ての異物が排除され、音さえも消え去った絶対零度の世界に、起こり得るはずのない異変が起きたのはそれから間もなくのことだった。

先ほど構築されたばかりの氷柱の表面が小さく小刻みに震えていた。
微小な振動は次第に目に見えて分るようになり、氷の表面にいくつものヒビを生じさせる。
ヒビはやがて深い亀裂を作り、ついには…

冷たく澄んだ音を立てて粉々に砕け散った。

870アブセル:2018/12/14(金) 06:15:04

「ーーーーーーーーーッッ!!!」

飛び散る結晶と共に分厚い氷を破って現れたのは、絶叫とも怒号ともとれない声にならない声を、血の咆哮をあげるアブセルだ。

その音の衝撃波は氷を砕くばかりか、空気を爆ぜさせ、暴風の如き波がフロアの天井や壁に傷を刻み、床の石材を捲り上げる。

いまやアブセルの肌は血の気を失ったかのように蒼白になっていた。
両側頭部から伸びる角は更に禍々しさを増し、長く枝垂れる黒髪の間から、血を塗ったような紅い瞳だけが爛々と覗いている。

目尻から本人の意思とは無関係に黒い血涙を流し、身体の内側を闇が暴れ回っているかのような感覚に激痛を抱きながら、しかしアブセルは魔人のごとき威圧と狂気の光を放ってそこに立っていた。

『ご主人、狂化モードは人智を圧倒する強力なものですが、長い時間狂気に身を預けていると魂が闇に染まり二度と正気に戻れない可能性も…!』

「分かってる、速攻で終わらせる!」

返答と同時に、アブセルは持っていた剣を勢いよく投擲する。
あらん限りの力で投げられたそれは、キールに狙いをつけて猛進しーー紙一重の動きで避けられた。

だがその動作も彼女の気を引きつける為ものでしかない。
僅かほんの一瞬、キールの意識が逸れた間にアブセルは一跳びで彼女の頭上を飛び越え…そのまま近場の壁を蹴りつけ身を反転。その反動に威力を上乗せし、真上から踵を振り下ろす。
蹴り足はキールの肩先を掠めて地に落ち、寸前までキールが立っていた場所を轟音を響かせて陥没させた。

相手の防御に一分の隙がないのは、先の攻防で分かり切っていることだ。
だがそれでも尚、アブセルが馬鹿の一つ覚えのように肉弾を繰り返すのは、彼の取れる行動もまた一つしかないからである。

攻撃が通じないなら通じるまで攻め続けるだけのこと。勝利を捥ぎ取るその時まで決して攻撃の手を休めない。

ーー爆散し、飛び散る石片に舞う砂埃。それらを無視し、アブセルの視線は蹴りを避けて後ろに飛び退くキールの姿を追う。
その足が地面につく前に、しなる二本の長い尾が彼女を捉え、全力でその身を引き寄せた。そして、

それが…キールが、手に届く距離まで辿りつく僅かな時間すら待たずに、アブセルは自ら前に出て拳を握りしめると、

「るぁぁあああっ!!」

彼女の腹に渾身の一撃を叩きつけた。

871 ◆ruQu1a.CGo:2018/12/30(日) 20:07:04
年の瀬に申し訳ない、スマホのデータが飛んだのでwikiの方がわからなくなりました。
なので、お二方どちらかURL貼って頂けないでしょうか…orz

872イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2018/12/31(月) 03:34:11
どんまいw
seesaawiki.jp/key-twilight/d/

873キール ◆ruQu1a.CGo:2019/02/27(水) 22:58:02
【虚空城】

泥氷入り混じる瀑布は大気に触れると同時に氷結し、大気中の水分を喰らって爆発的にその質量を殖やしていく。
エントランスは瞬く間に絶対零度の氷獄へ姿を変え、ありとあらゆるモノの動きを、生命の灯を閉ざした……筈だった。

しかし、怒号か悲叫か咆哮か。
氷結した世界を揺るがす声、赫怒と共に姿を現したのは禍々しい異形の人影。

蒼白な顔と漆黒の血涙、穿つ黒角にキールは目を細めた。

「……醜いわ、実に醜い」

先程までのアブセルは、言わば自身と同じ半人半獣。
しかし、氷の棺を突き破って姿を現したのは魔人とも言える殆どに禍々しく変化したアブセルだった。

赫怒の咆哮を残し、激しく跳び回るその様子に一欠片の品性も無いとキールは顔をしかめるが、その表情は苦悶のソレに変わる。
打凸、打凸、打凸。

アブセルのしつこいまでの打撃はキールの黒鎧の装甲を破ることは出来ない筈、だった。
異形の力は四神と同等と言えども、黄龍とリンクしている今のキールには届かない筈、だった。

だがしかし、そのしなる尾で捕らえられ、腹腔に叩きつけられた拳は確かにキールの装甲を突き破ったのだった。
 

(これは……まさか!)

 
腹部に走る極大の痛みよりも、キールが想うのは君主の危機。
神獣化した四霊は黄、龍とリンクし絶大な力を、無限とも言える力を得る。

四霊の一角、守護を司るキールが得るのは“絶対防御”だが、それが破られたと言う事は……リンクが切れたと言う事は。
黄龍、ゼロの身に危機が迫っているいや、現在進行形で危篤状態なのではないか。

口腔から溢れ出る血塊を吐き捨て、女性とは思えない程の剛力とざらついた鱗鎧刃で我が身を捕らえる尾を引き千切り、キールはアブセルを睨み付けた。

(イオリはシデンと、先の連中がゼロ様の下へたどり着くには早過ぎるなら……失念していたわ、イオリの片腕、あの男を)

睨み付けながらキールは思考を走らせ、ほぼほぼ確かだろう予測を立てる。
そして、その予測が間違っていないならば“こんな所でじゃれ合う暇はない”とばかりに、乱雑にアブセルの顔面へと拳を叩き込み、彼を吹き飛ばした。

「はは、待てよ!俺の事忘れてるだろう!?」

更に、吹き飛ぶアブセルへと追撃の巨槍を投擲しようとキールは腕を振りかざし……その腕が止まる。
見れば腕には闇色の百足の群れが絡みついており、傭兵の生き残りが……イオリやメイヤに似た男、闇を植え付けられたら男が剣を持って立っていた。

暗獄の闇、最も邪悪な龍が封じられし刃はいつかアブセルへと託されたモノであり、それとは別、黒水晶の美しい剣を男は握っていた。
 
魔玉と同じ性質を持つとされるその剣は、闇の因子を持つモノならばその力を引き出せるだろう。

「小僧、お前なら使えるだろう!」

874キール ◆ruQu1a.CGo:2019/02/27(水) 23:00:38


「小僧、お前なら使えるだろう!」

男、ジョッシュは黒水晶の剣をアブセルへと投げ、キールへ向かって疾走していく。
既に限界を超えているであろう身体を動かすのは“闇”

百足を邪龍へと変化させ、ジョッシュは駆ける。
そして、大きく腕を横に薙ぐと共に邪龍の群れがキールへと襲い掛かり、対するキールはその全てを氷結させて爆砕。

氷塊が轟音と共に粉砕され、氷片の嵐が吹き荒れるその中央で、二振りの黒刃で鍔迫り合いを行うのはやはりキールとジョッシュだが、邪龍の力を引き出したジョッシュは意外にも食らいついている……が、それは命の灯火を燃やしているからこその強さ、焼け落ちる前の蝋燭が一際強く燃え上がるソレだ。

「構う暇はないのよ!」

苛立ちを露わにし、キールが手刀でジョッシュの左肩を貫き、その身体を内側から凍結させようと凍気を流し込もうとする瞬間。
ジョッシュは乾いた笑みを浮かべ、アブセルへ視線を投げた。

今だ、やれ、と。

875フェミル ◆wxoyo3TVQU:2019/03/01(金) 08:57:06
【虚空城】

最上階。崩壊が進む中で辛うじて形を保っているその場所で、フェミルは吹き抜けになった紅い空を見上げていた。

「・・・壊れる・・・」

破滅と再生は紙一重。ゼロは均衡を失った世界をリセットし、本来の姿へと創り直すべく手を尽くしていた。

「ゼロ・・・いない・・・」

しかし、突然ゼロの気配が消えた。

「・・・兄さま・・・」

フェミルは呟きぬいぐるみを抱きしめる。
もう一人、帰ってこない者がいる。
ゼロと同じ容貌の、しかしゼロとは違う温かなあの笑顔をずっと見ていないのだ。

「兄さま、幸せ・・・?」

いつも妹達のことを最優先に考えて、自分の幸せなど二の次で。ずっと、彼に幸せになって欲しかった。
だから"あの子"と引き会わせた。兄がとても可愛がっていた子。私にとっても愛しい子。

「・・・?」

今自分は何を考えていたのだろう。時々今のように記憶が混乱する。誰かの意識が自分に入ったかのように、自分の持つ記憶とは別の光景を映し出す。

フェミルは首を傾げた。

876アブセル:2019/04/02(火) 03:49:46
【虚空城】

口角を上げ笑う男の視線の先には、割れた額から流れ落ちる血で顔を黒く濡らした魔人の姿が。

キールに殴り飛ばされた後、直ぐさま身体を反転させたアブセルは、鍔迫り合いを行う二人……偏にキールに向かって突進していた。

空中を舞う氷片に紛れて彼女の背後へ肉薄するアブセルのその手には、ジョッシュに投げ渡された剣がしっかりと握られている。

彼がどこの誰なのか勿論アブセルは知らないし、今はそれを考える余裕もない。

時間の経過と共に侵食する闇は、アブセルの人としての思考力を着々と奪い、狂気の底へと引き摺り込もうと舌舐めずりをしていた。
アブセルは意識が飛びそうになるのを歯を食いしばって堪え、男の与えた好機を無駄にはしまいと更に踏み込むとーー

「うおおぉぉおおオッ!!」

掲げた剣をキールの首元から斜め下へ、全身全霊の力を込めて振り下ろした。

877イスラ:2019/04/02(火) 03:54:25
【虚空城】

「居た!多分あの子が例の子だ!」

崩壊した城の最上階に一人佇む少女の背後。
ふいに入り乱れる数人分の足音と共に、その声は半開きになった扉の向こう側から発せられた。

リマ、セナと共に部屋の中に駆け込んだイスラは、縫いぐるみを抱く少女…床の上に座り込むフェミルの姿を見て、ほっと安堵の息をつく。

「良かった…無事みたいだ」

エントランスでアブセルと別れた後、一行は過去組、現代組と二手に別れて広い城の中を探索していたのだった。
もちろん捜索対象はジルの妹だというこの少女と、そして黄竜である。

「君がフェミルちゃん……だよね?」

もう大丈夫だよ。と声をかけ、イスラは顔を上げて室内に目を巡らした。

この場には少女一人きりの姿しか見えず、黄竜と思しき者の姿はない。

878アグル:2019/04/18(木) 01:02:17
むかし、むかし。
とある北の王国に悪い王様がいました。

王様は来る日も来る日も他国との戦争に明け暮れ、自分の国にも、そこで暮らす民のことにも関心を向けませんでした。

嵩む軍費に民衆は重い税金と苦役を強いられ、働き手の若い男達は皆、次々と戦場に駆り出されてしまいます。
戦さによって多くの兵が死に、多くの民が苦しもうと、しかしそれでも王様は戦争を止めようとはしませんでした。

いよいよ見兼ねた家臣が王を止めますが、王様はそれすらも国家への反逆行為とみなします。
王の意に従わない者は次々と処刑され、国は恐怖と暴力によって支配されたのです。
もはや王様に逆らおうと考える者は誰もいません。

しかしそんな中、国王を討たんと一人の男が立ち上がったのです。

男は圧政に苦しむ民衆を率いて戦い、国内中の諸侯をも仲間に引き込み、ついに悪い王様を退治します。
以降、男は英雄として讃えられ、新たな国王として民衆に迎えられました。

めでたし、めでたし。


……とはなりませんでした。


玉座を手に入れた英雄はそうそうに政治に飽いて、国政を投げ出しました。

酒に溺れ女に溺れ、日がな一日賭け事に興じては自堕落な生活を送ります。

そうしている内にやがて、民衆の間で王政の廃止を望む声が高まってきます。

もちろん王がそれを受け入れる筈がありません。
しかし今度は彼らも引き下がらなかったのです。

変革の熱は次第に国中を覆い、初めは英雄の味方をしていた者も、一人また一人と彼の元を離れていきます。
ついに英雄は孤立し、革命派との戦いに敗れてしまいました。

捕らえられた英雄は目を潰され、自慢の両腕を斬り落とされ、刑場に引き摺り出されました。
かつて英雄を玉座に迎えた人々が、今度は処刑台に拍手で迎えます。
それを耳にした英雄は何を思ったのでしょう。
顔を上げ、声高々に叫びました。

「祖国に栄光あれ!」

憐れ、その言葉を最後に男は首を撥ねられてしまいます。
広場に喝采が湧き上がります。
もはやこの場には、男の言葉に耳を傾ける者など誰もいなかったのです。

おしまい。

879アグル:2019/04/18(木) 01:05:43
【黄昏の塔】

ーーむかし読んだ絵本の中に、そんな話がある。

雷の国がまだ王政だった時代、最後の国王をモデルに書かれた寓話だ。

何故その話を今この場面で思い出したのか、理由ははっきりとしている。

家に一枚だけ残されていた肖像画、目の前の男はそこに描かれた男と余りにも似通っていたからだ。

アルベルト・ニコロフ・レーヴェンガルド

確か死罪になったのは五十代の頃だったと記憶しているが、しかし目の前の男はどう見ても二十そこそこといった年齢だ。
即位式を上げた当時に描かれたという肖像画と同じ年回りのように見える。

長距離から放たれた雷撃を避け、中空を落下していたレグナは、背中から大翼を広げて大気を叩くと、塔と虚空城とを繋いでいた外核の一部と思しき足場に着地する。

(やはり、似てる……)

顔を上げた先、男との距離は僅か5メートルほど。
近くで見れば見るほど、その容姿の酷似に驚かされるが、しかしそれ以上に彼の異様に圧倒される。

全く生気の感じられない土気色の肌。
首、腕、瞼、身体の至る所に縫合の跡があり、縫い付けられた瞼の下は眼球がないのか深く落ち窪んでいる。

人、なのだろうか。
男の正体も目的も何も分からないが、表情もなく、ただただ圧迫感だけを放つその姿は不気味という他ない。

目の前の説明のつかない状況に困惑するレグナ。
しかしそんな彼の心情を、もちろん相手が汲み取る筈もなく、男は軽く顎を持ち上げるとーー刹那、彼の持つ長剣が音もなく振り落とされた。

「…………!!」

まるで豆腐でも切るかのように足元の固い地面
が両断される。
ガクリと膝が抜けるような感覚に、レグナは咄嗟に後方へ跳び退くも、男は大小様々に崩れた外核の残骸を足場に、更に距離を詰めてくる。

再び風を斬るように、無音の斬撃が真一文字に振るわれる。
レグナは間合いを見極め紙一重でそれを避けるも、見極めた筈の斬撃が何故かレグナに届き、肩、太腿、頰に裂傷が走る。

(どういうことだ……)

躱しても、受けても、いなしても、男の剣撃はレグナに傷を負わす。

届く筈のない間合いに刃が届き、あり得ない方向から斬撃が襲い来る。……男の剣筋は射程も手数も軌道もめちゃくちゃだ。

わずか一閃で幾数もの剣閃が飛び交い、まるで意思でもあるかのように、縦横無尽に不規則な軌道を描いて剣撃が飛ぶ。
しかもその軽い動作からは想像もつかない程に、一撃一撃が重く鋭い。

880アグル:2019/04/18(木) 01:06:51
男が剣を振る度に鮮血が飛び、生傷が増えていく。
今のところ致命傷は負っていないが、レグナは先程から身を守ることに精一杯で反撃に転じられない。

(まともに受けてちゃ駄目だ…!何とかして突破口を見つけないと!)

何度目かの打ち合いの後、男の斬撃の余波よって再び二人の足元が派手な音を立てて爆散、崩壊する。
下から吹きつける礫と土煙。
しかし男はそんなことに気を払うことなく、崩れた足場から跳躍して、その場を離脱ーーレグナの気配を見失って足を止めた。

その傍ら、レグナは翼を広げて中空に留まっていた。
跳ね上がる岩塊の影に紛れ、気配を消して男の背面を取る。
刹那、迸るは雷光のごとく刺突の一撃だ。

男の頭蓋めがけて放たれた槍の切っ先は、そこまでの最短距離を一直線に駆け抜けーー男に直撃する寸前で停止した。

(ーーーッ!?
目ぇ見えてないんじゃないのかよ…!)

剣で弾くでもなく、あろうことか男は素手の左手一本で強引に槍の軌道を止めてみせたのだ。
驚愕に喉を凍らせ、目を見開くレグナ。が、彼はそんなレグナに次の行動に移す間を与えることなく、そのまま掴んだ槍を引き寄せーー

「ごふッ……!?」

得物ごと身を引っ張られるレグナの胴に、蹴りを叩き込む。
内臓を抉る一撃の衝撃にレグナは堪らず身体をくの字に曲げ、それに止まらず後方へ勢いよく吹っ飛んだ。


【アグル(レグナ)のレス遅くなってすみませんでした…!レックスも乱入して貰って構いませんので!】

881リマ他:2019/04/20(土) 20:44:13
【虚空城】

突如名前を呼ばれ、フェミルは声のした方へ視線を向ける。

「・・・誰・・・?」

全くの知らない顔ぶれに、フェミルはおずおずと立ち上がり後ずさる。

「フェミルちゃん、大丈夫だよ。危ないからこっちへおいで?」

イスラに続いてリマも声を掛けるも、フェミルは首を振る。

「知らない人・・・駄目。兄さまか黄龍、迎えに来るまでフェミルお留守番。待ってるよう言われてる・・・」

「お兄さんってジルさんでしょ?お兄さんのところに一緒に行こう?」

リマが優しく宥めようとしてもフェミルはただ拒否するのみ。今にも崩れそうな場内に長時間いるのは危険だ。かと言って無理矢理連れ出すのも・・・

(でも、誰もいない今じゃないと・・・)

対策を考えている暇もないのが事実。ここは荒療治でも致し方ないか、そう結論を付けかけた横で、新たな問題が発生した。
ただ人見知りで警戒しているように見えていたフェミルが、セナの姿を見つけ明らかに顔を引きつらせたのだ。

「悪いやつ・・・やっつけなきゃ・・・」

882キール ◆ruQu1a.CGo:2019/04/23(火) 10:08:44
【虚空城】

嗚呼、終わりは思っていた程重くはないのか。
薄い笑みを浮かべる男に突き刺した手刀へと力を、全力の凍気を流し込むキールはどこか間の抜けた表情を浮かべる。

全力で流し込む凍気は瞬時に男を……ジョッシュを凍結させ、膨大な凍気は彼の身体を内側から突き破り、その凍てついた笑みを爆散させた。
爆発の衝撃がキールの頬を叩き、髪を揺らす。

この男が囮となっているのは知っていた。
背後から、“凶”と目した刃を握り締めて迫るアブセルの動きも感知していた。

しかし、感じ、知ってはいても身体が動かない。
否、動くが、動く事をキール自身が拒否していた。

「……見事ね、とは言わないわ」

その一言は、右の首筋から左脇腹へと抜ける凶刃と共に。
アブセルの振り下ろした刃を避けるでもなく、防ぐでもなく受け入れたキール。
 
黒剣がキールの身体を切断し、二つに分れた彼女の身体が氷結した世界に舞う。
切断面から零れるのは、神獣ではなく人である事を証明する血潮の赤色。

生命力とも言える赤色、鮮血と臓物を撒き散らし、舞い散る赤を凍気が瞬間的に凍り付かせながら、キールはアブセルへと振り返った。
その様子は酷くゆっくりで、スローモーションだ。

「アナタの勝ちではなく、私の負け。
そう言う事にしておきましょう……」

883キール ◆ruQu1a.CGo:2019/04/23(火) 10:09:35
ゆっくりと落ちるキールの身体。
下半身は膝から床に落ち、振り返る上半身も遂に白銀の地に落ちた。

落下の衝撃が黒髪を揺らし、纏う鱗鎧が硬質な音を響かせる。

即死しないのは半獣半人と言えども黄龍に次ぐ神格を持つ四霊であるから故。
しかし、キールはその神格を、四霊である事を自ら手放したのだった。

半獣半人ではなく、神獣となっていればまた違った結果……アブセルと立場は逆転していただろう。
しかし、キールは最後まで“人”である事を捨てようとはしなかったのだ。

黄龍に忠誠を誓えども、真の姿、真の力を解放しなかったと言う事は……彼女の忠誠心は同じ四霊であるシデンには劣ると言う事。
しかしそれはキールが“人”である事の証明でもあった。

後悔は無い、寧ろ今は安堵さえ感じている。
四霊である事は一種の呪縛とも言え、キールはそこから解放される事を、心の奥底では願っていたのだ。

「醜い姿、醜い心。
人であるが故の醜さを、私は捨てきれなかった。

だけど、捨てないからこそ私は“人”として終わる事を選べた。
……でも、なるべくは美しいままで」

既に身体の感覚は無く、視界すら白くぼやけている。
しかしそれでも、キールは左腕を届かぬ天へと伸ばした。

伸ばした掌から……一際輝く左指に嵌まる指輪から光が、氷の花が溢れ出す。
溢れ出す花は蔦を、そして葉を繁らせていき、キールの身体を覆い隠した。
 
そして、氷の花は更なる実りを、白葡萄とカシスの実を結び、氷獄となったエントランスホームランを樹氷の森へと変える。

静寂なる氷の森、自らを氷花に変えて、“守”と“吉凶”、そして“水”を司る四霊はその役目を終えたーーーー

ーーーーさよなら、醜くも美しい世界。

884イスラ:2019/05/21(火) 01:01:16
【虚空城】

セナの姿を見て顔引きつらせるフェミル。
どうしてか彼女はセナのことを敵視しているようで。

「セナ……彼女と逢ったことがあるのか?」

そうセナに尋ねるも、イスラ自身二人に接点があるとは思っていなかった。

一つ可能性を上げるなら、セナと瓜二つであるリトと何らかのいざこざがあったと見るべきだが、それでもリトがフェミルに危害を加えるような行いをしたとは考え難い。

「フェミルちゃん、大丈夫だ。彼は悪い人間じゃない。
それに俺達は君のお兄さんに頼まれて君を迎えに来たんだ」

言ってイスラはフェミルに手を差し出す。

「だから早くこっちに。ここは危険だから」

885アブセル:2019/05/21(火) 01:02:49
【虚空城】

終わったーーー

脱力し、手から滑り落ちた剣が地面に弾んで乾いた音を響かせた。

目の前にはキラキラと光を乱反射させる氷の花木が咲き乱れ、惨憺たる様相を見せていたフロアは、周囲に転がる屍と瓦礫の山をも呑み込んで美しい純白の森へと姿を変える。

その光景を呆けたように見上げていたアブセルは、突如全身に、例えようのない激痛と戦慄が駆け巡るのを感じた。

「ーーーーッぅ!?」

焼けつくような脳の痛み。身体の内側を、ナニかが暴れ回っているような悍ましい感覚に、堪らずその場に崩れ落ち、喉奥から迫り上がってくる熱いものを地面に吐き出す。
見れば大量の黒い血が冷たい地面の上に広がっていた。

「クロ!シロ……!憑依を解いてくれ!早くッ!」

半ば悲鳴のように絞り出した声に、しかし応えは返ってこない。二頭とも完全に自我を手放しているようだった。

そうしてアブセルは、立ち上がることさえままならない状態に至ってようやく、この戦慄の正体を理解した。

ーーこの震えは恐怖だ。
自分という存在が……人間としての意識が、この世から消失してしまうことに対しての恐怖と焦燥。

確かにキールの述べた通り、これはアブセルの勝利ではないのだろう。
キールは人であろうとしたが故に敗れ、自分は勝利を欲したが故に人を捨てた。
だから、これは。当然の報いなのだ。

「嫌だ………イヤ、ダ………」

だが、そうだと分かっていても、その事実を潔く受け入れられるような精神は持ち合わせていない。
心は恐怖に打ち震え、全身は目の前の事実から必死に逃れようと拒絶を叫び続けている。

目を剥き、荒い呼吸と共に口の端から血を垂らすアブセルは、爪を地面にたてて乱暴に床を掻き毟った。
しかしその細やかな抵抗も、アブセルの人間性の欠如を証明するだけに過ぎない。
地面には猛獣のものと見紛うばかりの爪痕が深々と刻まれ、瞳から流れ落ちる涙も、今は黒い血で頰を染めるばかり。

狂気と激痛に思考を蝕まれ、まるで深い闇の底へ落ちていくかのように、次第に暗く、黒くなっていく意識と視界。
その目に、ふと宝石の輝きが映り込んだ。

886アブセル:2019/05/21(火) 01:03:40

先程の戦いで紐が千切れたのだろうか。それは紛れもなくリトの……彼から託された瑪瑙の首飾りだった。

床に転がったそれを捉えて、アブセルははたと目を見開く。
脳裏によぎるのは、ある一つの懸念だ。

このまま自我を失って化け物に身を堕としてしまえば、その時、自分はどんな行動に出るのだろう。
リトを想う執念だけが残っていたばかりに、彼の姿を追い求め、後を追いかけたりはしないだろうか。
そしてそれだけに留まらず、もし訳も分からぬままリトを、ナディア達を傷つけてしまったらーー?

「……それは、駄目だ…。それだけはゼッタイニ……」

朦朧とする意識の中、這うように拾い上げた首飾りを掌の中に収め、アブセルは傍に転がっていた黒水晶の剣に手を伸ばす。
この剣であれば闇に染まったこの身も、きっと苦しむことなく十全に息の根を止めてくれる筈だ。

キールの血でべっとりと濡れたその刃を自身の首筋に当てがい、アブセルは小さく囁いた。

「ごめん、リト……」

本当に、自分は何だっていつもこう情けないのだろう。戻ってこい、とリトもナディアも暗に示してくれたのに。
約束一つ守ることすら出来ないなんて。

だがーー、これ以上迷惑はかけられないから。迷惑をかけないよう終わらせるから。

アブセルは剣を握る両腕に力を込める。
そしてーー

887??? ◆ruQu1a.CGo:2019/05/23(木) 21:03:32
【虚空城】

閃光と剣閃、光が瞬くと同時に巻き起こる斬撃。
斑髪を靡かせる長身の男、その姿を一言で表すならば“異形”

血の気のない土色の肌、縫い付けられ開く事のない双眸。
表情も無く、しかし猛攻を仕掛ける様は異形であり異質。

「気をつけて下さい、あの者の“先”は視えない……」

強烈な蹴りを受け、吹き飛ぶアグル……レグナを受け止め、梟面の青年は風を操り異形の男から距離を取った。
ふわりと着地したのは幾つかある城内の橋桁で、レグナの身体を隣に下ろしつつ背負っていた三叉鑓を引き抜き続ける。
 
「何者か分かりませんが……恐らくは君に、四神に近しい者でしょう。
明確な“敵”であるならば倒すしかありませんが……調子が悪いなら僕が先手を取りましょう!!」

閃光、それは眩い雷。
橙の混ざる髪と雷光から予測するに、先代か先々第のトール、もしくは近しい者だろう。

それが何故こう“敵”として現れたかは不明だが、やるしか無さそうだ。
梟面の青年はレグナの不調を……アグルとは違う動きを取るレグナを不調だと見なし、鑓を構えて高く飛翔する。

大気を叩き、高高度まで上昇してからの反転。
身を捩り、鑓の穂先に乱気流を纏わせながら斑の男へと突っ込んで行った。

乱気流、吹き荒れる鎌鼬を纏う刺突は疾く、鋭い。

888アネス:2019/05/25(土) 12:02:07
【虚空城】

「冥界の皇女アネス・オーガナイズが告ぐ。」

氷に彩られた白の世界。その静寂の中にチリンと鈴の音が響く。同時に、剣を喉元へ据えるアブセルの手を退け現れたアメジストの大きな瞳が、人間から完全な魔獣へと変わりつつある彼の姿を映す。

「血の盟約のもと、かの者を我が使役の魔と為さんことをーーー」

それはアブセルにとって、残酷な姿であっただろう。しかし彼が自らの姿を目の当たりにしたのはほんの一瞬で、すぐにその視界は塞がれる。吐血により染まった口内を舐め取られたかと思えば、左肩に焼けるような感覚が生じた。肩にそれまでになかった紋様が刻まれる。
クスリと軽い笑い声と共に"それ"は離れ、

「鎮まりなさい。」

耳元でそう囁かれれば、アブセルは見る見るうちに異形の姿から元の人間の姿へと変化した。

一連の所業に呆けた様子のアブセル。目の前に現れた少女が見知った人物であると理解するまでどのくらい掛かっただろうか。

「貴方の命は主の物よ、勝手に遂げる事は許されない。」

アブセルの掌から瑪瑙の首飾りを取り上げ、綺麗ね、と呟く。それを自らの首に結び直し、少女---アネスはイタズラ地味た笑みをアブセルへ向けた。

「貴方の主はリト?いいえ、今から私のものよ。醜い獣を使い魔にしてあげたの、感謝なさい。」

889アブセル:2019/06/02(日) 02:19:34
【虚空城】

"それ"は唐突に訪れた。
今まさに己の首を掻き斬らんとするアブセルの前に、澄んだ鈴の音と共に一人の少女が現れる。

まるで魅入られたように動きを止めるアブセルに、少女が近づいて手を触れたかと思えばーー…不思議と身体に巣食う痛みも震えもどこかへ消え去っていった。

何が起きたのか理解できず、アブセルは茫然としたまま顔を上げる。
彼女が何事かを述べているのを目にし、ようやっと口から出た言葉が……

「……はあ?」

ピシャリ、と間髪入れずに頰を引っ叩かれた。

確かにこれ以上ない程のアホ面を晒していただろうことは認めよう。だが例えそうだとしても、何の前置きもなく突然手を出すのは如何なものかと思う。
その理不尽さに溢れた行為につい反射的に物申したくなるも……アブセルは今の衝撃で完全に目を覚まし、自分が元の人間の姿に戻っていることにようやく気づいた。
それと同時に思考も正常に機能し始め、頭の中に数々の疑問点が湧き上がってくる。

何故ここにアネスが居るのか、とか。
その首飾りリトのなんだけど、なに勝手にパクってるんだよ、とか。
てかさっき口の中舐められた気がするんだが、気のせいーー…だよね?うん、きっと気のせい。…とか。

ただ一つ状況から見て確かだろうことは、異形へと成り代わろうとする自分を彼女が救ってくれた、ということ。

そのこと自体は本当に喜ばしいことだ。声を大にして大いに感謝したいところではあるのだが……

「あのぉ……仰っている意味がよく理解できなかったんですけど、使い魔ってどういうことでしょうか…?」

正確にいえば、「理解できない」というより、「理解したくない」といった方が正しい。
アブセルは平身平頭、なぜか敬語で恐る恐るアネスに尋ねるのだった。

890ゼロ ◆ruQu1a.CGo:2019/06/03(月) 07:29:11
【虚空城】

延々とシステムエラーを吐き出し続ける自律神経プログラム、聞こえないダメージアラート。
ダメージレベル240%の表示はその瞳に映らない。

世界を統べし唯一無二の存在である筈の自身が何故、これ程までに追い込まれているのか。
胸元を貫いた阿修羅の剛腕に手を添え、ゼロ……黄龍はうなだれた頭(こうべ)をゆっくりと上げた。

端整な顔は赤にまみれており、双眸も機能不全を起こしている。
しかし、それでも、世界の中心たる存在は停まらない。

「四霊である応龍を模した義体、適応率は高いが……やはり、惜しい」

唯一無二の存在、それは眼前のボルドーも同じ。
イオリの懐刀、切り札であり鬼札のこの男は最も危険であり、現時点で止める術はない。

“現時点”では。

システム復旧まで残り20カウントを無理矢理短縮し、ゼロは手を添えていたボルドーの腕を掴む。
細い手指が込められたら力に負け、音を立てて折れるも痛みなどない。

敵性存在の排除、義体を巡るナノマシンが硬質化し、ゼロの身体から、傷口から、ありとあらゆる“孔”から溢れ出した。
それはさながら致死率の高い悪性伝染病に羅漢した末期の姿の様だが、噴出するナノマシン……ナノメタルは有機無機問わずに触れたモノ全てに浸蝕し、増殖していく。

「コレは……拙いな!?」

右腕を、肘から下の前腕をナノメタルに“喰われ”、ボルドーは思わず声を上げた。
爆発的に増加していくナノメタルから距離を取り、その様子を注視するも、銀の奔流となったナノメタルがボルドーを貫かんとばかりに次々と襲い掛かる。

その間にもナノメタルは虚空城そのものに浸蝕していき、浸蝕しながらもゼロをコアとして巨大な影……銀に輝く巨龍、逞しい四肢と幾何学模様を描く大翼を持つ機械の龍を作り上げていった。

城そのものを“餌”に産まれ出る機械龍、黄龍が今、全てを揺るがす咆哮を挙げる。

ーーーーー

プラチナブロンドの美しい髪を持つ少女に、手を伸ばすのは燃える様な赤毛の青年。
轟く咆哮はBGMで、二人の“間”に入るのは一振りの晶剣だった。

「見つけたぞ」

少女、フェミルへと手を伸ばすイスラの指先を掠める刃。
床に突き立てられたソレを握るのは長い銀髪の男……龍穴遺跡にて、イスラとメイヤに敗れたヴィカルトだった。

男、ヴィカルトは青から銀に色を変えた瞳でイスラを見据える。
崩落する遺跡と共に地の奥に沈んだ筈の男は、身体の内の6割をナノメタルで修復され、再び姿を現した。

ゼロがヴィカルトに与えた役目はフェミルの守護であるも、彼は姫を守る騎士(ナイト)ではない。
強者との闘争を求める凶剣士なのだ。

凶剣士は銀の瞳をフェミルからイスラへと向ける。
そこにはもうフェミルやリトの姿は映ってはいない。

銀瞳に燃える様に鮮やかな赤を映し、ヴィカルトは告げた。

「剣を抜け、“あの時”の続きをやろうぞ」

そして、彼が望む闘争に不必要な存在であるフェミルの身体を無造作に掴み、セナの方へと投げ捨てる。
同時に振り抜かれる刃が、イスラの鼻先で止まった。

891アネス:2019/06/12(水) 18:36:48
【虚空城】

アブセルの反応にアネスは溜息を吐いた。

「馬鹿なのは知っていたけど、ここまで理解力がないなんて・・・」

やれやれ、と態とらしく頭を抱えてみせる。

「あんたはこのアネス様の下僕になったってこと。」

私としてはあんたがどうなろうと知ったことではないんだけど、と前置きした上で話を続ける。

「パパ・・・じゃなかった、我が王にくだされたミッションの一つ。"誰も死なせるな"---リトにとって"護りたいもの"をなくす訳にはいかないの。」

この世界の均衡を保つ為には今の核を安定化させるか、新たな核となる存在を差し出すか・・・そして核の代用と為り得る魔玉を宿す者が二人---セナはこの世のものでない以上、その役目はリトという事になる、が。

「リトは別に正義のヒーローじゃない。顔も知らない誰かのために自分の身を投げ捨てるような聖人の心なんて持ってないわ。大好きな人達がいるからこそ、護りたいと思ってる。あの子にとって世界がどうでもいいものにならないように、誰も欠けてはならない。」

つまり、今アブセルがしようとしていたことは大変迷惑なことであり、リトの足を引っ張ることなのだとアネスは言う。

「ま、死にたくなるほど酷い有様だったのは認めるわ。自分では元に戻れないみたいだったから助けてあげたの。私の弟なら普通に人間に戻すことも出来ただろうけど、私は無理だからあんたが魔獣であることを利用させてもらった。助かったんだから、私に感謝してひれ伏しなさい。」

892イスラ:2019/06/25(火) 01:53:38
【虚空城】

突如として城に轟いたのは、未だかつて聞いたことのない不気味な咆哮と巨大な地響き。
そして、それに驚く間もなく一人の男が目の前に現れる。

「お前はあの時の……」

生きていたのか、とは言外に。イスラは右手を鍔際へ、一息で刀を引き抜き、鼻先に突きつけられた剣を弾いて後方へ距離を取る。

「二人とも、その子を連れてどこか安全な場所へ。どうやらアイツの狙いは俺らしい」

はたして安全な場所など最早この城の中にあるのだろうか。
そうセナとリマを促す内にも、靴裏に感じる揺れは徐々に激しさを増してきている。
イスラは相手の視線から眼を逸らさぬまま、リマ達を背後に庇うように立ち、応戦の構えを取る。

「何故あの子(フェミル)を俺達に?お前は黄竜の仲間ではないのか?」

893アブセル:2019/06/25(火) 01:55:33
【虚空城】

「いや…もちろん感謝はしてるよ。してるけどさ……、お前らは一体リトに何をやらせようとしてるんだよ」

どうやらアネスにはアネスなりの事情があってしてくれたことらしい。
しかし世界の核云々の話を知らないアブセルからしたら、そこで何故リトの名前が出てくるのかと首を捻らずにはいられない。

「それに俺、リト以外の人間に仕える気とか更々ないし……お前の奴隷とかマジでこの先地獄の日々しか想像できないっていうか…。
まあその…あれだ。このお礼は後日必ず別の形でするってことで…」

そこまで言うと、アブセルはガバリと地に額を擦り付け、

「使い魔の契約解除して下さいッ!お願いしまーーって、おわぁっ!?」

直後、城全域を揺るがす咆哮と激震に言葉尻を掻き消された。

894ヴィカルト ◆ruQu1a.CGo:2019/07/10(水) 11:32:34
【虚空城】

激しく揺れる無機質な床、歪む大気と遠く聞こえる破砕音。
轟く咆哮をBGMに、凶剣士は銀の瞳を細める。

文字通り硬質的な、鋼色の視線は依然としてイスラに注いだままで、ヴィカルトは静かに答えた。

「俺が望むのは強者との闘争だけだ。
それ以外のモノは不必要、小娘如きにこの空虚は埋められぬ……」

銀瞳に宿る確かな意志、しかしそれは寂寥感を漂わせている。
剣士としての矜持ではなく、凶剣士としての渇望。

「血肉と骨、そして生死を隔てる刹那だけが俺の中の空虚を埋める。
闘争に次ぐ闘争、無価値な世界においてその一瞬だけが俺の生きる意味」

手に握る晶剣を、後ろに飛び退き距離を取ったイスラへと向けてヴィカルトは続ける。

「砂漠での一戦は実に良かった……これ以上の言葉は不要、いつぞやの続きを。
刃の舞踏を踊ろうぞ!!」

そして、話は終わりだとばかりに剣を一閃。
その背から水晶の翼を噴出させてヴィカルトが前進、相対距離を瞬時に詰めると勢い良く剣による刺突を繰り出し、同時にその切っ先から銀の奔流が……九つに分かれた穂先がイスラ目掛けて飛び出した。

ーーーーー

軋む空間、ひび割れる世界。
轟音と共に揺れる虚空城の一角で、彼女は虹色の瞳で鮮やかな赤毛を見詰めていた。

彼女……三闘神の一人、ラセツは尖塔の頂点から階下を見下ろす。
ゼロの下に集う戦力の両翼、左を担う彼女は待っていた。

覇王の眼。
全ての事象を読み込み、無限の選択肢である未来すら“視る”事が出来る瞳に、“視えない未来”を映し出させる事が出来る存在を待っていた。

「火と水の因子、風と雷じゃないのは残念だけど……」

尖塔の頂点、片膝を立てるラセツは現れた人影……サンディとナディア達に声を掛ける。
その声は無機質な、感情の籠もらない声。

「黄龍の遣いとして、私はアナタ達を足止め……滅さなければならないけど、どうする?」

895イスラ:2019/09/09(月) 01:24:44
【虚空城】

肌で感じる程の濃厚な闘争心とザラついた殺意を向け、立ち塞がる晶剣の剣士。

それと相対するイスラは、腹の底から湧き上がってくる憤りとやるせなさを抑えることが出来ない。

(なぜ……)

九つに別れた銀の奔流を、自身の周囲に張り巡らせた炎鏡の障壁で防ぎ、イスラは男の左側へ体を回転させて刺突をかわす。
それと連動して弧を描く刀が男の左こめかみを狙うもーー驚異的な速度で反応する相手の剣に阻まれ受け止められた。

「この戦いに一体何の意味がある…っ、こんなことをしてる間にも世界は刻一刻と崩壊への道を辿っているんだぞ…!」

鍔迫り合いの向こう側、男の銀色の瞳を真っ向から見据えイスラはそう言葉を放つ。

しかしそれと同時に、この問答がいかに無意味な行為であるか、それも理解していた。

異常な程の闘いへの執着。この男の中にはそれしかない。生死の狭間で互いの命のやり取りをすることでしか、この男は生を実感できないのだと。

本来このような決闘はイスラの望むところではないが、しかし、こちらにも為すべきことがある以上、ここで引き退る訳にもいかない。

そのジレンマに歯噛みするイスラの背後で、不意に鈍い輝きを放つ何かが浮かび上がった。
それーー先の攻防で割れた鏡の破片が無数の鋭い刃となり、一つの意思の元、男めがけて一斉に放たれた。

896リマ:2019/12/02(月) 08:04:37
お久しぶりです。
まとめwikiの方なのですが、突然入れなくなってしまいました・・・
変なところ押したのかな:(´◦ω◦):

897ヤツキ:2019/12/14(土) 18:36:27
んー俺も入れんね。ページロック掛かっとるんかなぁ?

898リマ:2019/12/21(土) 22:58:05
>>897
久しぶり!
マジかァ・・・無くなっちゃったのかな?
キャラ設定とか確認出来るから気に入ってたのに(´;ω;`)

899ヤツキ:2019/12/25(水) 23:52:01
規制される様な投稿してない筈だし、乗っ取りされるようなモノでもないしどうしたんやろうね。
管理はイスラに任せっきりだったから……

っとお久しぶりでー。
メリークリスマスやん、楽しく過ごせた?

900リマ:2019/12/31(火) 20:29:10
ねー・・・ほんとどうしたんだろ(´;ω;`)消えてないならいいんだけど、消えてたらショック・・・

お久しぶりー!今年ももう終わりやね(´•ω•`๑)
超高速で日が経っていく・・・もうじき30歳で絶望(´;ω;`)

901ヤツキ:2019/12/31(火) 23:51:18
本編も返せてない俺が言えた口でもないけどイスラの反応無いのも心配。

高速つかもう10分程で今年終わってまうしなー、でもリマって俺の二個下ちゃうっけ?一個違いか?
30なったらなったで実際そんな変わらんし気にする事ないよ。

今年は死なずに終えれたけど、来年死んでたらごめんな。メンヘラこじらせてやべー事ばっかしてるわ。

て事で来年もよろしくねー

902リマ:2020/01/01(水) 18:04:12
あけおめことよろー
同じく:( ;´꒳`;):イスラさんダイヤかなー・・・

1個ちがいだよー。2個はイスラさんのほうかな??女の30は重いのよ(´;ω;`)可愛い服とか着るのが好きなのに「あの人30超えてるのに・・・」とかなったら嫌じゃね!?さすがにゴスロリとかじゃないけどさ!年齢に見合った服装あるじゃん:(´◦ω◦):

やーめーてー息子ちゃんの為にも危ないことはしないでぇ(´;ω;`)
ストレスはここで発散していきなよ!
今年始まったばかりだけど、来年も同じように新年の挨拶出来るって信じてるからね!!

903ヤツキ:2020/01/02(木) 20:06:40
ことよろー、ここ以外で連絡着かないから音沙汰無いと心配なるよな。

そだったか、もうリマも30かー。知り合って干支一周じゃんww
30でもある程度は好きな服着れば良いんじゃない?どぎついギャルメイクとかゴスロリ甘ロリ以外ならいけるでしょ、寧ろお洒落しないと一気に歳食って見えるよ。

んー、チビさんはきっと大丈夫よ、俺が居なくてもちゃんと育つ環境があるし。
土地有り持ち家そこそこ金持ちの義実家でマスオさんやってるからね、マスオ死んでもタラちゃんは普通に大きくなりそうやん?そんな感じ。

904ヤツキ:2020/01/02(木) 20:27:31
ぶっちゃけストレスつか鬱再発に近い感じで子育てとか色々めっちゃ悩んでるんよ。
嫁さんにも言えない事、それこそ俺だけ家で異物感あるし血繋がってないし私生児だし諸々でしんどい。
母親って存在がとてつもなく苦手で母性向けられるとどうして良いかわからなくなるし、父親居てなかったから目指す父親像がわからん。
とかね、全部話して聞いてくれた人の事はずっと好きで叶わぬ恋だったのに向こうも実は好いててくれてて、期限決めたけどそれまで付き合ってる。
やべーどうしよう、って相談した子とも寝たし色々乱れ過ぎてる。

メンヘラこじらせて爆発させて孤独感ヤバい寒いって泣いた時にぬくめてくれる所に逃げてる、ずっと。
後は夜一人で酒片手に外出て、寝落ちして凍死しかけてる、もうしんどい。

全部吐いたわ、新年早々ごめん。

905リマ:2020/01/03(金) 00:10:18
そうねー・・・個人的な連絡先とか知らんし。せめてSNSだけでも繋がってたら元気の有無は確認出来るから安心なんだけど。
高校の時からの付き合いだからね!言われてみれば干支回っとるわ(笑)自分高校大学の友達とほぼ連絡取ってないからある意味一番付き合い長いかも(爆笑)
さすがにイタイ格好はしてないけどね( ;´꒳`;)ミニスカ履けなくなってきたのと体型崩れてきたのが泣ける・・・せめてシワが出来ないように食い止める!
そうよね!年齢に合わせて地味な格好したらそれこそおばさんになっちゃうよね!!取り敢えず35までは今のファッションでも大丈夫だと信じたい・・・!!

まぁ両親揃っててもウチみたいに母親の精神が子供から成長出来てなくて気に入らないことがあったらキーキー喚く、自分は被害者、悲劇のヒロイン可哀想なの〜な感じでその存在が私のストレスになりかねない人とか、父親が家庭に無関心でほぼ会話なし〜な、家族として機能してない所とかもあるからねぇ:( ;´꒳`;):自分とこの両親は多分他の人とは違うから、私自身人間として色々欠けてるんだろうなぁと思うところもしばしば。私の話は今関係ないのだけども(笑)多分私も俗に言う「普通の家族」って言う環境で育ってはないから、結婚した後に子供との接し方とかで色々悩むんだろうなぁ・・・
マスオさんはたしかに辛いね・・・嫁が義両親と同居するのでもストレス溜まるんだから逆パターンは尚更だよね。相手側がどう思ってるかは分からないけど、家族の中で自分だけ血が繋がってないっていう疎外感はたしかにあると思う。

906リマ:2020/01/03(金) 00:42:13
マスオさんがいなくてもタラちゃんは育つだろうけど、タラちゃんがマスオさんの事好きならいなくなって欲しくないと思うよ。たとえば、どうしようもない親でも情があったら死んで欲しくないよ。この情がなくなったら終わりなんだけども・・・。
まぁその人の人生なんだから「子供のために生きて!」とか無理強いは出来ないけども、生きたい気持ちはあるけど自信がないって感じなら「自分の為じゃなく誰かの為に」って理由付けるのもありだと思う。ここで例に挙げるのもアレだけどうちのセナはそんな感じ。
父親像が分からんくても、想像出来る範囲で父親出来ればいいとは思うよ。子供は案外見てるからね、自分に情はあるんだろうけどこの人はこれが精一杯なんだなって察して、完璧な父親の存在は求めずお互いに苦にならない距離感作ってくと思うよ。私みたいに(笑)現実と創作を一緒にしてゴメンけど、イオリは良い父親だと感じたよ、そんな父親を描けたヤツキは素敵な父親だと思うよ。

女性関係が乱れちゃってるのは取り敢えず置いといて(笑)色々溜め込む私が言えた立場じゃないんだけど、人間って我慢するのが一番危険だと思うんだよね。辛いなら辛いって吐ける場所があるんだったら、甘えちゃうのもアリなんじゃないかなぁと。勿論法に触れない範囲でね!我慢しすぎるといつか爆発して消えちゃうんじゃないかなぁ・・・私も時々糸が切れて「もういいかな」って思っちゃうこともあるから危険(笑)一応ある程度人並みに経験してからがいいので、死ぬ前に1回は結婚しときたいし、子供作ってみたいしって気持ちがあるから踏みとどまってるけど。ヤツキの抱える闇と比べたら私のなんてちっぽけなものなんだけど、私も自分の人生つまらないなぁと思ってる。

自分が何を言いたいのか分からなくなってきた:( ;´꒳`;):的外れなこと言ってごめんね・・・!
取り敢えずね、迷って悩んで落ち込んで、メンヘラ拗らせてるのは良いのよ。ただ溜め込むのだけは危険だからやめてね!
人並みの綺麗事しか言えんけど、ここで吐いてくれたら聞くし!
尾崎豊みたいなことしちゃダメよ!酒飲むなら暖かい室内で!!もしくは人の気配のあるコンビニか病院の前!!

907ヤツキ:2020/02/04(火) 22:38:43
もう1ヶ月経つのか、早いね。
とりま何とか生きてる、メンタル爆発して入院したりしたけど死んでないww

リマの言う「もういいかな」ってのが常あったんよね。
リマも境遇聴くと俺みたいに足りないモノがあるし、きっと近しいんだと思う。

無い物ねだりして、人並みに全部揃ったらソレが実はめっちゃ重たかったり、思い描いてたのと遠かったり、満足してもういいかなって思ったりするかもしれない。
俺がそうだった。

けど多分きっとリマは女性で、自分の中で一つの命を育てて〜とするから、それこそ子供の為に、で生きていけるんじゃないかなとも思う。

取りあえず今はチビさんの為に生きてるのと、9月9日に笑ってバイバイしようって約束したから死なないつもり。って表向きはしてるww
女の人居とるのもバレて怒られたし、緩い自殺ごっこしてたのも白状したから逆にもう逃げ場無いけど。

眠剤処方してもらったから次はガチでとここにだけ言っとこ、でもせめてリマやイスラと飯食いたいねww

めっちゃ自分語りなるからそろそろちゃんとレス返すわ!イスラさん待ってて!
リマも応えてくれてありがとうね、聞いてくれて救われたわ。

っと、インスタのIDを生存確認用に置いとくのでまた覗いてみて。
yatuki0509

908:2022/12/15(木) 21:45:55
二人共生きてる?

909イスラ:2023/08/14(月) 21:20:22

お久しぶりです。イスラです……
今更どの面下げってって感じですが、お二人に謝りたくて久しぶりに書き込みました。

数年前は何も言わず突然失踪してしまい本当に申し訳ありませんでした。
言い訳をさせて貰うと鬱病でした。何かをする気力がなくなり、以前まで楽しめていたものも楽しめなくなり、何もかもがどうでも良くなってwikiの方も消してしまいました…。

お二人が今もこのスレを見ているかどうかは分かりませんが、スレの途中放棄、お二人を裏切ってしまったことに対してただ一言謝りたかったのです。

あと途中放棄した身で言うのもおこがましいのですが、このスレに出会えたこと、そしてお二人に出会えたことは本当に感謝しています。ここでの時間は本当に楽しかったです。
ありがとうございました。そして申し訳ありませんでした。

なんか臨終の言葉みたいですがそのつもりはありませんw
鬱病の方は大分良くなりました。(^^)

910ヤツキ:2023/09/24(日) 22:59:44
>>909
俺はイスラがこうしてこの場所に来てくれただけで嬉しい、本当に。
裏切りだとも思わないし、楽しい時間って言い表してくれたの、物語続けてた意味があったなーって思える。
心が死んだらお終いなんだぜ、って思うし言うけど、ここに来てくれたのは生きてるし終わってないって事なんじゃねーかなってね。
俺も生きてるしイスラも死んじゃいない、後はリマの一言でもあれば万々歳だよ。

911イスラ:2023/10/02(月) 13:48:55
お、お、お久しぶりです…っ
まさか返信してくださるとは…!しかもそんなお優しい言葉を頂けるなんて…(/ _ ; )聖人かよぉ…
ヤツキさんも色々大変そうなのに気を使わせてしまってすみません…
ここ数年でいかに自分がガキでしょーもない人間なのか身に染みて分かりました
なんにせよヤツキさんも元気?そうで良かったです…

912ヤツキ:2023/10/04(水) 08:28:30
ちょこちょこ覗きに来てて良かったぜ……!!
レス増えててるの見た時はベッドから飛び上がったっすわw
名前も顔も知らない文章だけのやり取りの関係性でも、リマは勿論イスラも大事な人なのでホント嬉しいよー。
人生クソみたいな事ばっかでガキだったなって思う事もあるけど、生きてたらそれで良いんじゃないかなって思う。
かく言う自分も鬱で休職療養中ですわーwww

913イスラ:2023/10/09(月) 15:03:35
ありがとうございます…!人間ってちょっとしたことで傷ついたり救われたり面倒くさいけど、人の縁って大事なんだなぁ…と、この歳になってつくづく思い知らされます(ノ_<)
あとお前が言うな感ですが、欲を言えばこの物語を完結させたい気持ちもあります

てかマジかw鬱は無理するのが一番アカンっすから休んで正解ですよー
自分は回復したっぽいからとまた働きに出ましたが既に病み気味ですw

914ヤツキ:2023/10/10(火) 09:06:26
人の縁って中々実感しないけど、いざ感じる時はしみじみと感じる不思議なモノですわ……w
欲を言えば仕事辞めて半年位失業保険で生活したいけど、絶対足りないから年内には復帰せなあかんけど……取り敢えず今月中はゆっくりしやすww

この物語、リマさんも居ないと完結させられないけれど……取り敢えず書ける分の続き書いて行きましょうかね!?

915イスラ:2023/10/11(水) 21:14:11
しんどいっすね…
自分は独り身だからまだ自由がききますが、子供いると人生一気にハードモードになりますよね…

やっちゃいますかー!
つっても文章書くのめちゃ久しぶりだし、ちょっと読み返して思い出したりしたいのでレスは結構遅くなるかもしれません…w

916ヴィカルト:2023/10/20(金) 09:43:24
【虚空城】

 鍔迫り合いの先、交錯する刃の奥で輝く銀の双眸。鋼色の瞳には揺るがな光。

「言葉は要らぬ!」

 イスラの背後で浮かび上がり、此方へ迫る鏡片の群を一瞥し、ヴィカルトは鍔迫り合いのまま大きく踏み込んで右腕を横に一閃。驚くべき剛力からの斬撃でイスラを吹き飛ばす。
 それと同時に鏡片の群れが殺到するも、ヴィカルトは形成し、纏う晶鎧でソレらを防いだ。
 刃と刃の応酬、それだけが晶剣士の望むモノ。
 禍々しくも流麗な鎧と剣を携え、ヴィカルトは力強く踏み込んだ。踏み込む足裏が床面を砕き、舞い上がる破片をスリップストームが巻き込んでいく。相対距離を一瞬で詰めた晶剣士が放つのは、超高速の刺突の一撃。

917サンディ:2023/10/26(木) 01:51:50
【虚空城】

黄竜のもとを目指すサンディ達の前に立ち塞がったのは虹色の瞳を持つ謎の女性だった。

(まぁそう易々と行かせてはくれないよね…)

その異質な瞳の輝きにサンディは生唾を呑みこむ。
立ち姿だけで分かる。彼女は危険な相手だ。

「ここはあたしが…!姉御達は先に行って!」

サンディはナディアやリト達にそう呼びかけると間髪入れずに武器を構えた。

直後、炎を纏った拳サイズの勾玉が数百と顕現し、雨霰と尖塔目掛けて飛来する。

代々アマテラスの力の継承者は三種の神器と呼ばれる"剣、鏡、玉"のどれか一つの加護を授かるものとされている。
剣は破壊力、鏡は防御、玉はリーチや手数に長けているのだが、その中でもサンディに与えられたのは玉の加護。

次々と砲弾の如く襲いかかるそれらに蹂躙され、尖塔は一瞬の内に原形を失った。
しかしサンディはそこで手を休めることなく、炎刃を一閃。

疾る灼熱の斬撃が大気を巻き上げて炎の渦を生み、噴煙上がる尖塔一帯を呑み込んだ。

918ヤツキ:2023/11/22(水) 19:35:54
>>917
スマホ壊れてそこから此処を探すの時間かかってしまったorz
今月中にレス返します!

919イスラ:2023/11/26(日) 10:59:33
急がなくて大丈夫ですよー!
自分も今ちょっと忙しくてレス返遅くなりそうです…申し訳ない…

920リマ:2023/12/26(火) 00:43:39
え、スレ動いてる……感動

921リマ:2023/12/26(火) 00:49:17
皆さんお久しぶりです(´;ω;`)
なんか、「外部からの書き込みは禁止されてます」とか言われてずっと書き込めなくて、ヤツキの生存確認に反応出来なかったの……

かなり久しぶりに開いてみたらスレ動いとるやん!イスラさん帰ってきとるやん!しかも私も書き込めるやん!?

うわぁ……完全に出遅れた、ショック……皆の波に乗りたかった(´;ω;`)

922ヤツキ:2023/12/31(日) 03:18:57
大晦日ですなー、イスラさんレスも少しまって下さい……orz
からの、からの……リマ!!!!
生きてた!!!!
まさかの全員生存してた!
大晦日の奇跡や……

923ラセツ:2023/12/31(日) 13:51:37
>>917

 覇王の瞳。それは慧眼を遥か超越した、万物全ての事象を見定める双眸。ありとあらゆる平行線、並行する世界と未来を見定め、無限とも言える可能性を選択する事が出来るのだ。

 「天を照らす火炎。
 熱く、眩い……けど、それだけだ」

 サンディが放った雨霰の如き炎の勾玉、そして追撃の一閃が巻き起こす火炎の渦。
 焼け落ちた尖塔から遠く離れた位置で、ラセツは小さく呟いた。
 くすんだ金色の髪が熱波によって煽られ、翡翠から虹の宝玉へと色を変えた瞳がサンディを見つめる。
 そして、虹の双眸が二筋の残光を描いた。小柄な姿が纏うのは重厚な鎧だが、重さを感じさせない程の高速移動でラセツは赤髪の少女へと距離を詰め……勢いそのままに、籠手に包まれた拳を繰り出した。

 「私を一手に引き受けるには、か弱過ぎるよ」

924イスラ:2024/01/03(水) 17:49:30
ぉわーー‼︎リマさんお久しぶり!
その節は失踪してご迷惑おかけして誠に申し訳ありませんでしたm(__)m
でもまさか3人揃うとは…!

そして遅れましたが、明けましておめでとうございます!レスもまったり返していきたいと思います。
てか地震とかありましたがお二人とも大丈夫でしょうか…?

925アグル:2024/01/08(月) 21:52:49
>>887

【虚空城】

上方から襲い来る暴刃の嵐を前にしても男は微動だにしない。
ただゆるりと長剣を構え、真っ向から迎え打つ。

刹那、雷と見紛う一撃が放たれた。

大気が唸り、空間を断裂するかの如く疾る剣風が、迫る乱気流を文字通り"引き千切る"。

四方八方に散った風刃の余波が地面を抉り飛ばし、その威力の凄まじさを物語るが、しかし中央に立つ男は無傷同然に、続け様に振るった剛剣で無防備となった青年の刺突を叩き落とした。
そしてそのまま勢いを止めることなく、体勢の崩れた青年の横っ面に蹴りを入れる。


ーーヒビ割れる梟の面。

吹き飛ばされ、地面を跳ねる青年の身体をレグナがすかさず受け止めるも…

「ぁ……」

崩れた仮面の下。顕になったその顔を見て、息を呑んだ。

「お前は……」

見知った顔の、そしてもう二度と逢えないと思った者の顔を目にし、レグナの中で深い眠りの底に沈んでいたアグルの意識が浮上した。

926ヤツキ:2024/01/10(水) 09:01:21
おはようございますー、あけましておめでとうございます
こっちは関西、大阪だから無事っすよー

927案内人:2024/03/31(日) 01:45:17
来てみてガッカリした人へ
harmit.jp


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