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チラシの裏 3枚目

1むらま ◆vVmhS9Bdr2:2009/03/29(日) 19:47:59
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに

764サガフロンティア×アイマス 第十三話 1/3:2009/11/01(日) 02:32:46 ID:BWCFiJoc0
ウサちゃんから案内されて済王陵内部へ。
入口の通路から真っ直ぐ進むと3つの台座の部屋へ。
恐らくここに玉、剣、鏡を置くのでしょう。

そこから進むと…
「開けた場所に出ましたね…」
「この古墳、広くて面白いぞ!なーやよ…」
「はわ?!」
「おーい、二人とも!!わ!」

落とし穴トラップの部屋でした。


「…痛…たたたた」
「ちょっとどこか打っちゃったかもしれません…」
「大丈夫かー!」

下には亡霊モンスターが大量に。
古墳を護って死んだ者たちなのでしょう。


何とか階段を見つけ3人は復帰。
分かれ道もあったりしながら進むと『玉』、鎮魂の勾玉を発見。
「みつけましたぁー!!」

…と突然、勾玉の左右に朽ちていた骸骨が復活。
死してなお任務を続けるシュライク兵との戦闘になりました。


死の属性を手に入れたやよいが広間に戻ると、何と床の一部が光っていました。
「…落とし穴かな」

落とし穴がどれかわかれば簡単なもの。
「高槻さん、下の階の剣の位置を教えて」
「解りましたー!」

「えっと、この落とし穴の真下に剣があります!」
「それじゃ落ちましょうか」

『剣』、天叢雲剣でも骸骨のシュライク兵との戦闘に。
そして最後に、剣の力でトラップを解除し『盾』、水鏡の盾を入手。
シュライク兵との最後の戦いを終え…
いよいよ一行は3つの台座の間へ戻ってきました。


「…さて、いよいよですけど……… ……嫌な予感がするのよねー」
あずさは済王の部屋を前にして慎重になります。


「…済王時代のシュライクの戦士達が襲ってきたとなると
 済王自身が襲ってきても何もおかしくありませんからね。」

「戦闘の準備をしておきましょうか」
やよい、ピヨさん、美希、P765、千早。
このメンバーで向かうこととしました。

765サガフロンティア×アイマス 第十三話 2/3:2009/11/01(日) 02:33:36 ID:BWCFiJoc0
3種の神器を供えると重い扉が開かれ…
広い広い部屋の奥に、丸みを帯びた石の棺が姿を現しました。

幼くして死に至り、シュライクの発展と平和を未来永劫に願い続ける者…
済王その人が、ここに眠り続けているのです。



「……」
やよいは皆と顔をあわせ…頷くと棺を…ゆっくりと開けました。



「…指輪だ」
桃色のマントに鎧を身に着けた骸骨。指には赤き指輪…。やよいのものと同じもの。
後はこれを手に入れるだけ。…そのときでした。


「シュライクを脅かす悪しき者め 余の剣を受けよ!」


済王が起き上がりました。
「出ましたね!」
「この骨が…済王!」
5世紀のリージョン界に名を轟かせた天才剣士が…起き上がりました。

「!」
ふと、やよいの指輪が輝きます。

…輝き、済王の指輪と共鳴します。



その瞬間…
「!!」
やよいだけに…信じられないものが見えてきました。


「…女の…子…!?」
額の輝く、煌びやかな装飾を身に着けた…シュライクの民を一つにまとめたカリスマ性を持った、
『済王』その人の魂の姿…生前の姿が。

「口語翻訳システム起動。」


「骨だなんて失礼ね!! 私こそがシュライクの王、ミナセシタシラスイオリよ!」
「骨ではない!! 我こそがシュライクの王、ミナセシタシラスイオリなるぞ!」


「女の人…だったんだ」
「やよい、何言ってるの?」
「女?…成る程。骨盤の形から判断したのね 高槻さん、偉いわ!」


「ちょっとアンタどこ見てるのよ変態!!」
済王は剣を鞘から抜き出しました。
「済王・伊織、私たちはあなたに指輪を譲っていただくためにここに来ました」


「…指輪…アンタたち指輪を奪いに来たのね、泥棒じゃない!」
語調を荒げる済王…
会話の時間はそこまででした。

「ここから生きて帰れると思わないことね!
 来なさい、私の最強のしもべ…シュライク王朝騎士団の力、見せてやるわ!」


世界最強とも憶測される済王伊織の剣、『草薙の剣』が風を切りました。


「わわ!!」
やよい達は距離をとりますが…
その空いた距離は即座に、駆けつけたシュライク騎士団によって埋まります。

玄室の扉は閉じ…戦いが始まります。

「まずはこの騎士団を何とかしないと…!」
「一人で一人を相手にすれば問題ないですよ 私が済王伊織と戦います!
 皆さんはその骸骨の騎士団と戦ってください!」


ピヨさんは駆け、済王伊織と激突しました。

766サガフロンティア×アイマス 第十三話 3/3:2009/11/01(日) 02:35:17 ID:BWCFiJoc0
「わかる。シュライク最強は伊達じゃない…
 気迫、剣を振るう速度、眼力…どれをとっても強い。…私が勝てる相手かどうか…」

ピヨが全力を以って相対するべき相手のようです。
「『天地二段』!」

まずは定番のこの技を。頭蓋骨と骨盤に二度斬撃を加えます。

「く…」
済王伊織はそれに耐えると…

「『龍尾返し』!!」
凄まじい風圧で剣を二度にわたり払う技。

1発…
「かすみ…」
これを避け…2発。
「青眼!!」
返し技、かすみ青眼と龍尾返しの二段目が交差。
「はぁ!!」
そしてかすみ青眼の2撃目で済王伊織を斬ることに成功します。

「…硬い…!! …生半可な攻撃では勝てそうに無いわ…それなら」

技を返したピヨは更に技を放ちます。
「『燕返し』!!」
目にも止まらぬ高速抜刀術で済王の背骨を狙います。しかし…
「『パリィ』!!」
古剣術の流し技でいとも簡単に太刀筋を変えられてしまいます。

「ワカツ流剣術、流石のものね!」
「知っていたの…!?」

「けれど…これは避けられないでしょ!」
「!!」

ピヨさんは防御しますが…
済王伊織は目にも止まらぬステップで距離を縮めた後、
左後方、右、左前方、後ろ、右前方、左、右後方、前と目にも止まらぬ速度で斬撃を繰り出し…
「『多道剣…マルチウェイ』!」
技名を発すると同時に…
「…………!!」

ピヨさんに8つの傷をつけてしまいました。

「…う…!!」
ガクリと落ちるピヨさん。剣を杖代わりにやっと立てる状態…次に攻撃されては、敗北は必至。

…済王伊織を倒すにはダメージが浅すぎる。
ピヨさんは悟ります。
「…勝てない」
自分では済王伊織には絶対に敵わないことを。

…しかし、かといって勝負を捨てることはせず。

「ふふ…こんなことならあの子たちのいちゃいちゃを見て鼻血なんか出すんじゃなかった…
 う… っはあぁ…はぁ… く!!」
全身出血で青ざめながらも、二本の足で立ち上がります。
そして…覚悟を決め…克目しました。

「見逃してやろうかとも思ったけど…あくまで戦うつもりね その勝負に対する姿勢は…天晴れよ」

「でもこの技はかわせない!!剣もろともへし折れるわ!!」
済王・伊織は軽い体で跳躍…広い部屋の、天井付近にまで飛びあがります。
「…来なさい! ワカツ流剣術奥義之参…!!」
「行くわよ」

済王伊織はぐるりと剣を回すと…

「『三花仙』!!」
「『黄龍剣』!!」



宙を蹴りまっさかさまにピヨさんめがけて飛び込み、必殺の斬撃を。
ピヨさんはそれと交差するように走りぬけ、極限までの力を込めての跳躍…斬り上げ。


下からと上から。二つの剣が交わり…激しい大輪の花が玄室に咲きます。
そして勝負は…


「…………」
…ピヨさんの敗北。
激しく斬りつけられながらも上がりきった後、力なく重力に任せて落下…
そのまま言葉一つ発することなく打ち付けられました。

767サガフロンティア×アイマス 第十四話 1/2:2009/11/01(日) 02:35:49 ID:BWCFiJoc0
「…く!!」
しかし済王伊織の肩から手首を切りつけることに成功。

「これが…狙いってワケね」
これで、済王伊織は剣を持つのが精一杯の状態…技を封じることが出来たのです。


「ピヨさーーーん!!」
一方、残る4人は王宮騎士団を各個撃破することに成功。
後は…4人で済王伊織一人を倒すだけ。
「…無茶をする人ね」



「『レールガン』!」
まずはP765の破壊兵器。電磁力により加速された弾丸が済王伊織に撃ち込まれます。
「何なのその兵器は…!!」


「『ダーク』
 『スフィア』!!」

美希と千早の連携攻撃。
闇のエネルギーで相手を破壊する二人の『ダークスフィア』が済王伊織を覆います。

「あなた達4人の力が大したことなくてよかったわ…
 再び出てきなさい!我が軍勢! 『ミニオンストライク』!」


一時的に部下達を回復させる技。
これにより僅かな間だけ兵士が蘇り…
「おおおおおおおおおおおおおお!!」
「!?」

4人に一斉攻撃をしかけ、元の骨に戻ってゆきます。


「……強い」
無数の剣撃の嵐。全員、一気にピンチに陥ってしまいます。


「あなた達のような情の無い賊に…相応しい死を与えてやるわ
 私の歌…『聖歌』によって」


「歌が攻撃能力を持つって…音痴?」
「逆よ!魔法的な力を持った特殊な歌…! 聖歌とは名ばかり…死者はもちろん生者の命も奪う…
 恐ろしい歌!」


「いつまでもこのままで居たいね ずっとずっと傍にいられたらいいね」
済王伊織の歌が始まります。

「う!!!」
「ああああああああああ!!」
「く…!!」
「ボディ破損…」
「元気が戻ってきてよかった 二人で頑張ってきたよね でも」

聖歌は全員の体を蝕みます。
「それも終わり」

「そろそろ来るんだね 最後の週末が」
「もしもボクが 空に還るときが来たら どうするの」

全員の体力は限界。
次々に倒れてゆき
「凄く泣いて …手を掴んで」

「離れないのかな」
…最後にP765が残ったそのとき。



「…その歌は ウサ様との歌ですか」
「…!?」

768サガフロンティア×アイマス 第十四話 2/2:2009/11/01(日) 02:37:40 ID:BWCFiJoc0
P765からの突然の言葉。ウサといえば…P765を再生させた技術者であり
勿論この古墳にまで導いたうさぎのモンスターのこと。
「……どうしてアンタがその名前を」

「私はウサ様によって直されたからです。 その時にあなたのことも聞きました」


「…あなたのことを話すとき、ウサ様の精神波長の乱れを感じました」
「…………」

「被害は最小限に抑えるべきもの。 …被害を何らかの手で回避できるならば それを選ぶのは当然」

「そう。アンタを倒せばウサちゃんがまた悲しむと…
 …けどそんなことは言わせないわ アンタもまた人のもの奪おうとしてるんですもの」
「私は『任務遂行』の元動いています しかし…彼女には目的があります」


バックパックから取り出されたドロップをやよいの口に放り込むと…みるみるうちに回復。

「…あっ」
やよいが起き上がりました。

「…何、アンタの目的っていうのは」
「指輪を集めないと…指輪の力がないと、リージョンが壊れちゃうんです!!」

「…リージョンが、壊れる? …バカ言わないでよ!」
かつて多くの軍を率いてきた統率者の目が…やよいを見抜きます。
「そんなことがあるわけないじゃない!」
やよいも済王伊織の目をじっと見つめます。
「ウソじゃありません!!」

…その迫力に気圧された済王伊織は…
「!?」
草薙の剣を利き手と逆の手で突き出します。
「………証拠があるなら見せて見なさいよ 私を納得させたいなら」

「……これが、証拠です 済王伊織さん」
血だらけの腕を伸ばすやよい。…その腕の先、手の指には…護りの指輪が。


「う…!?」
指輪の共鳴は再び起こります。
…済王の脳裏に………やよいの思念が伝わってゆきました。


干からびた、ボロボロの土地…マーグメル。
水の代わりに溶岩が溢れ、土は痩せ…植物は枯れ。
食べるものも少なく…飲むものにも困る。

…それでも、大家族のように一丸となり懸命に生きるラモックスたちの姿。
「……私には大切なものがあるんです!
 マーグメルを救いたいんです!!」
その言葉が…最後の一撃となりました。

「……その言葉は… …本当なのね」
草薙の剣が…落ちた瞬間。

「指輪が語り合った。 …指輪がそれを望むなら、その指輪、アンタに貸してやってもいいわ」
「ほ、ホント!?」

「…ただし、眠るのにも飽きたし、…この時代にもまだ生きているんでしょう?ウサちゃんは。
 …会ってみたいわ アンタ達と一緒に私も行くわ」

P765は千早を回復…千早から皆を生命の雨で祝福。

「ほ、ほんと!?伊織ちゃん!」
「何でアンタにちゃん付けされなきゃいけないのよ!」

「え?だって私とあまり歳の違わない女の子だし…」
……ここに、第八の指輪…戦士の指輪が手に入りました。


「伊織ちゃーん、起きたんだって!?開けてー! 皆に怖いことしてないー!?」
入口から程近い、部屋の外から聞こえてきたのはウサギの声。
「! あら、来てたの!?」
ここに、再会は果たされたのでした。



「…ところであずささん、残り一つの指輪の情報っていうのは?」

「ええ。…それなんだけど…
 先ほど言った『妖魔の君』は何も歌田音だけじゃないのよ。

 『指輪の君』とされる…もう一人の最強の妖魔『四条貴音』  …その人の所へ行くわ」

その名を聞いて…伊織の表情は変わりました。

「…『四条貴音』 流石に有力な妖魔もまだ生きてるってわけね
 気をつけた方がいいわ あの辺りの奴らには私もうかつに手出しできなかったから」

769乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/11/01(日) 23:31:49 ID:KhoTCGDY0
FPSで体験してみたい実際にあった戦闘

旅順要塞攻略戦 日本軍対ロシア帝国軍
史実:大きな被害を出しながらも乃木希典率いる日本軍が勝利

スターリングラードの戦い ソ連軍対ドイツ軍
史実:史上最大の市街戦、ソ連軍の勝利

ウェーク島攻略戦 日本軍対アメリカ軍
史実:幾度にも渡る上陸作戦の末、日本軍がウェーク島を占領

沖縄戦 日本軍対アメリカ軍
史実:約一カ月に渡る激しい戦いの末、米軍の勝利

スターリングラードはCoD2でソ連編であるんだよねー…
バイパー「なら買いなよ…」
その前に買わねばならんゲームが他にたくさん(ry

770サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十五話 1/4:2009/11/02(月) 01:33:34 ID:UodpkQDk0
ピヨさんは双海による治療を受け、古墳から皆で帰る道の途中。
「なるほど…入口を知っていたのもシュライクに来たのも
 済王の墓参りに来たからだったのねー」

「そもそも伊織ちゃんの前までは何回も行ってたからね…
 伊織ちゃんが死んだ後も扉の開き方を教えてもらったりしてね」

そういう風にして済王の墓を開けた大倭赤目姫…
済王の奥さんと目された彼女の名前…赤目……赤い目…うさぎ……いや。まさか。

「…元の場所に戻すの、面倒だったけど。
 けど伊織ちゃんが起きてきたのは今回が初めてじゃあないかな」
ため息をつくウサちゃん。

「文句ならそんな設計にした私の部下に言ってちょーだい…
 …ところでウサちゃん。今の私は一体何なのかしら?」

「…骨?」
「『骨』じゃないわよ!」
「骨じゃないです!伊織ちゃんはシュライクの…」
「「王様です!(よ!)」」


声をそろえたところでウサちゃんからの回答。
「スケルトンタイプのモンスター、ということになるかな
 伊織ちゃんがモンスターを倒してそれを食べれば多分別のモンスターに変身しちゃうと思うよ。
 ボクややよいちゃんと同じような。
 猪でも、剣でも、スライムでも、巨人でも、鳥でも。」

人間が死んで骨に。骨がモンスターに。

「…モンスターって変な種族ね」
「あはは、変だよー。ボクもあれから色んなモンスターを食べて生きながらえてきて
 今ちょうど伊織ちゃんが死んだときの種族に戻ってるんだから」

ウサギモンスター、ルナティックハイ。
最強のモンスターの一人とされる、レアな存在。

「ともかく、ボクは伊織ちゃんのお世話を出来たことを誇らしく思っているし
 これからまたお世話できると思うと嬉しいよ」
「あんまり恥ずかしいこと言わないでよね!」


そして、やよい達は活動拠点であるクーロンへ戻ります。
すると………


「おやおやあずささん。あなた宛にお手紙が届いていますよ」
「………」
あずさ達がここに宿泊していることを知る人物?
…いえ、知っていたのではなく…調べ上げたようでした。

「……誰からでしたか?あずささんっ!」
雨が降りしきる中。やよいはあずさに近づくと…

「…指輪の君からね。『指輪の数は全部で9つ
 最後の指輪が欲しくば 力づくで奪って御覧なさい …四条貴音』

 ……そう。もうそんなに話が進んでいたのね」
律子は信じられず手紙を横から見…
「………四条貴音自らお出ましですか………怖いことになってきたわ」
声のトーンが一気に下がりました。


「そうね……それじゃ7日後に四条貴音との対決にしましょう
 相手は世界最強の力を持つ一人。
 準備するもよし、まさかの事態に備えて家族の顔を見るもよし、
 離脱するもよし……それでいいわね?やよいちゃん」
「はい!!」



こうして…7日後の四条貴音との対決を控え、
彼らはそれぞれの時間をすごすのでした。


「………律子さんに…響ちゃん、話があるんだけど」
「どうしたさ」
「何ですか?ピヨさん」

771サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十五話 2/4:2009/11/02(月) 01:35:07 ID:UodpkQDk0
ピヨさんは律子とを呼び出し…
「流石にこの対決、私だけじゃ厳しいと思うの
 だから、あなた達に技を伝授したいと思って」

「…なるほど。決め技かー」
「あるに越したことはないですね。習得できるかは別として
 …どんな技です」


「律子さんに授けたいのはワカツ流剣術奥義之弐『月影の太刀』
 響ちゃんには私の得意技、『天地二段』を極めて編み出した技…『神速三段突き』」

響は思わずゴクリと唾を飲み込みます。
「……やれるだけ、やってみるぞ」
「解りました。…教えて下さい その、奥義を」



…二人は寝ずに刀と剣を振るい続けました。
それぞれの技の完成へ向けて。

…そんな時でした。
「ようこそ、双海医院へ」
椅子から立ち上がり、患者に敬意を払う双海。
彼は7日の間、留守にしていた病院へと戻っていました。
しかし、その日そこに現れた患者は…
「……あなたは」




「…あ。はい あら双海さん。え?千早ちゃんに?…はい、少し待っててくださいね」


「ああー、あーー!いはい、いひゃいれすよちひゃやはーーん」
「ごめんなさい、妖魔はモンスターを吸う生き物だから……」
やよいを抱きかかえ、夢中で頬を吸っている千早へ。
「千早ちゃん、青い鼻血出てるわよ」
「あ。失礼…… はい、代わりました千早です」



双海医院で千早を待ち受けていたのは…

「千早ちゃん……」
ズブ濡れの春香でした。

「春香様…!?」
タオルで髪は乾いていました。
…しかし…その瞳は潤み、肩は震えていました。


…すぐ理由は想像がつきました。
……いないのです。彼女の傍らに…
「白百合姫様は……!? …まさか」
「…………いや、違う
 …けど、…取り返しに行かなきゃならない …雪歩を。
 誰か…人手が欲しくて」


「…相手が相手だね。難儀なものだ…
 妖魔の君から逃げ出してきたと思ったら
 それと対立する人間勢力の最大派閥…トリニティとも戦う羽目になるとは」
赤い剣を胸に掲げ……春香は戦いの準備をしていました。

「…ラムダ基地潜入!?随分なことを考えるわねアンタも」
「雪歩を助けるにはそれしかないんです
 …お願いします。私と千早ちゃんをラムダ基地に」


トリニティ・ラムダ基地。
トリニティ最大の基地にして、軍部の中枢。
軍のトップ、第三執政官『ヤルート』に雪歩は捕らえられていたのでした。

お茶を一服しながら、柱によりかかり話を聞く律子。
「…好き勝手にされるかもね……ヤルートか」
「そんなことさせない…!」

「…ジョーカーにね」
レストランでおにぎりをぱくついていた美希が振り返ります。
「ジョーカー!」

「…ジョーカーは軍と関係を持っている。
 というより、ヤルートとグルね。 美希、春香。…行ける?」
「はい!」
「はいなの!」


「…それと、ちょっといいかな。
 春香って言ったっけ。…もしかしてあなた…」
「……私のこと知ってるみたいですね
 …ええ。私は…シュライクに生まれシュライクで育った……天海春香です」
「やっぱりね」


春香はこれから戦う仲間に、事情を話すことを決めました。

772サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十五話 3/4:2009/11/02(月) 01:37:26 ID:UodpkQDk0
「私は10年前、シュライクで人間として生活を送っていました。
 けれど……ある日、自転車で菊地さんちにお使いに行く途中…

「…馬車に轢かれたんです。妖魔の王、歌田音の馬車に。」


「私は全身を打って、轢かれて…酷い死に方だったって言います。 
 でもその時、馬車が揺れて歌田音がケガを負ったとかで……」

「馬車から降りて私の死体を切り裂こうとした時に、血が私の死体に落ちたそうなんです。
 …私の血と歌田音の血…二つが混ざって、私は……
 妖魔と人間の混血でもあり得ない、世の中にたった一人の『半人半妖』になったって」



「私の死は大量の出血からのDNA鑑定で出されたって言います。
 歌田音は私を自分の城、ファシナトゥールの針の城に持ち帰り… 起きる日まで眠らせていたらしいです。」

「それで…起きるまでが10年、か …重いわね」



「起きた後も歌田音の部下、軽口に後ろから刺されて…死ねなくて。
 …その時に知ったんです。自分の血が紫になったこと。」


律子と千早はお互いを見つめます。
「…人間の血は赤いですね」
「…妖魔の血は青いわね…」


「歌田音は…世にも珍しい存在として、重宝するつもりだったみたいです」

「それから、歌田音の後継者になるべく様々な修行をさせられて
 時には、優しい…歌田音に捕まり妖魔にされ結婚させられた100人の女性の一人だった
 私と見た目の歳の変わらぬ雪歩に…優しくしてもらったりしながら  …私は、そんな日々を耐えていました」


「でも、…雪歩が……そんな優しい雪歩が可愛くて…可愛くて仕方なくて……
 …そしてファシナトゥールの日々が…嫌で嫌で……またシュライクで暮らしたくて!!
 …私、ファシナトゥールを…薔薇と、血と、闇と、怪しい光の支配するあの場所を
 逃げ出したんです…雪歩の手を引っ張って。」


「色んなところにいって、色んなものを一緒に食べました。
 …幸せだった。…けれど」


そうして、済王陵へ行ったあの日に繋がるのでした。
「シュライクに戻って知ってしまったんです…自分が10年前に死んだ人間だってこと。
 化け物だってこと。…私には雪歩しかいないってこと。

 …そんな所に軽口は部下を従えて3度私を連れ戻そうとしました。
 私はその全員を倒して。…それで、油断してました。
 …雪歩を護りきった気に、なっていた。」

「クーロンの裏通りの宿で雪歩を寝かせて、買い物をしてて…」


「戻ってきたらそのときには…。 …宿屋の主人に幻魔を突きつけたら、
 トリニティのお偉いさんに売りさばいたと」

773サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十五話 4/4:2009/11/02(月) 01:38:59 ID:UodpkQDk0
美希はその話を聞きながら、装備を整えたようです。
「春香……可哀想な話なの」
「…雪歩…雪歩…」

「でもまだ幸せだと思うな 助ける人がいることも、助けてくれる人がいることも。」

美希は少しエッチな服に身を包み…
「いこ、春香……二人の変態さんの所に」
剣を掲げました。

剣を一振り、二振り。
「………」
赤き刀身を手に、春香は答えました。
「…うん」

そこに律子が割って入ります。
「……春香」
「…何ですか」

「交換条件、ってワケじゃないけど。…雪歩を助け出したらあなた…ちょっと暇かしら。」
「……協力なら、しますよ」

「ありがと。… 春香も剣術使いか。ピヨさん、どうみます?」





翌日の新聞を飾ったのはトリニティ・ラムダ基地ヤルート執政官の失脚のニュース。
彼は自分の執務室をハーレムに改造、世界中から集めた美女たちに猥褻な行為を働き
また官僚たちにも売りさばいていたという。


「『謎の妖魔』の侵入だけじゃなく…内部告発も要因か。
 第七執政官モンド…ヨークランド出身の田舎者もやるわね」
律子は新聞を広げ…
「ったく見てらんないな」

抱擁する二人の少女を視界から消すのだった。
「雪歩…大丈夫だった?何もされなかった?」
「はい。…あのぅ、春香様…… どうして私なんかを…んっ!?」
「雪歩は黙ってて!!」

口を塞ぎ答えとしました。…何で塞いだのでしょうか。




ともあれ、律子の約束どおり春香と雪歩にも協力してもらえ……
決戦の日を迎えることとなりました。


「あずささん!行きましょう!貴音さんの所へ!」

「ええ。最後の戦いね…準備はいいですかー?」
クーロンの夜空の元、皆が声をそろえます。


ピヨさんと律子はその様子を後ろから見て、微笑ましげに話します。
「誰もメンバーが欠けないっていうのが不思議な話ねぇ…」
「やよいちゃんみたいな子の頑張る姿を見ていたらそりゃ力を貸したくなるわよ。」


みんなが今ひとつに。最後の戦いが幕を開けようとしていました。
「では行きましょう! 氷と炎のリージョン… 『ムスペルニブル』へ!」

774サガフロンティア×アイマス 第十六話 1/4:2009/11/02(月) 03:45:49 ID:UodpkQDk0
決戦の地はムスペルニブル。

「ファシナトゥールが見えたからどうしたかと思いましたよ…」
春香が言います。

「あながち間違いじゃないと思いますよー …この空、見てみてください」

極寒の大地とは裏腹に、空は真っ赤…このリージョンの空は、炎なのです。
「炎、ですか? ………まさか」

リージョン界に通じるあずさは答えます。
「その通り。ファシナトゥールの焼却炉の炎は、ムスペルニブルの空なんですよー
 上には歌田音、下には四条貴音。…怖いですねー」


「…私たちはその怖いうちの1人と今から戦うんですから
 半分信じられない話ですよね」



見えてきたのは、白い大きな館。
「お待ちしておりました…やよい様ですね」

大きな大きな…10mはあろうかという大扉が開くと…
煌びやかな、純金の内装。

「わ、わぁぁぁ……」
「……何て内装」

春香は、脇にある4つの黄金の扉の中から聞こえる呻き声を超聴覚で聞き取ると…
「…上級妖魔の趣味はどれも理解出来ないなぁ」
「…そう、ですね…」
「…変わり者な私なんかを好きになってくれた、雪歩も含めてね」
またいちゃつくのでした。


階段を登り、扉を開くと…長い長い、一本道の通路。
「…凄い………力ね」
「私でも解っちゃいます…… 何か全身が痛くって…」

世界最強の妖魔…四条貴音はこの先に。


階段になっている一本道を、ずっと登っていくと……また大扉。

ガカッ…
高い音を響かせて扉が開くと…


「…よくぞお越しくださいました」

そこには大きな主の間。
巨大な巨大な窓越しの、燃え盛る灼熱の業火を背に……

金色の、ムスペルニブルの主…
銀の髪をなびかせた、四条貴音が現れました。
「念のため。何か、私にお話したいことはありますか」

「……マーグメルのために私は戦っています。
 みんなのために私は、ここで負けるわけにはいかないんです!」



「存じています。高槻やよい …いえ、指輪の挑戦者やよい殿。
 …かかって来られよ」
貴音は椅子に構えたまま。戦いが、始まりました。

775サガフロンティア×アイマス 第十六話 2/4:2009/11/02(月) 03:46:20 ID:UodpkQDk0
「『フラッシュフラッド』!」
「くっ」
何となく千早の精神にダメージを与えながら、
あずさが先手をきりました。
陽術の一つ、フラッシュファイア以上とは違い、
光の洪水で敵を押しつぶす必殺の術に打って出ました。

「『神速三段突き』!!」
響は7日で、律子に教わった技を習得していました。
「はああああああああああああ!!」
貴音に向かって一直線に突き、
「行くさあああああああ!!!」
そのまま体勢を低くし下から貴音の腹を突き上げ…
「最後!!」
飛びあがり貴音の背を刺し貫きました。
「……うむ。」
しかしその傷はすぐさま塞がりました。
「!? …何て体してるさ…」


「ワカツ流剣術奥義之弐…『月影の太刀』!!」
ピヨさんは真っ直ぐに走り寄り…
体の軸をぶらさずに腕を振り上げ、三日月型に綺麗に斬りつけます。
「美しき技です…しかし」

貴音は椅子から降り、空中を舞うと
一直線に滑空、爪で思い切りピヨさんの腹を突き…
「!!!」

壁へと串刺しにしてしまいました。
「……う」

「…次」
ピヨさんから手を抜き、また元の位置へ。


ピヨさんが回復術を施される中、次はP765.
「『全段発射』!!」

ミサイルがP765の全身から発射され…
雨のように降り注ぐと貴音の周囲を、影すら見えなくなるほどの炎の海に変えてしまいました。


「金剛神拳!!」
黄金に輝く拳を…貴音の心臓に力の限りに叩きつけます。
「…柔らかい」
「まだまだ」
貴音の肋骨を粉砕。…しかし瞬時に再生。
「!」



「『シャドウサーバント』…!!」
美希の隣に、もう一人の美希が現れました。…真っ黒な、それは影。
「『集中連射』なの!」
貴音に向かい、二人分両手の銃弾の雨を見舞います。


「ひるまないこと!これでもダメージは蓄積されているはずよ!!
 『濁流剣』!」
分身した律子が高速で貴音の周りを囲い…
「はあぁあ!!」
一斉に斬り抜ける必殺の剣。

「シルフィード」
貴音の掌は突き刺さる冷気を発し…
「う…!!」
律子の体力を奪うだけでなく、素早い動きを封じ込めてしまいました。



「『タイタスウェイブ』!!」
双海が紫色に輝く足を振り下ろすとそこから激しい衝撃波が生じ…
貴音を貫通し背後の窓ガラスを破壊。
「双海、あなたがいましたか…なかなかですね しかし!!」
「!!」
腕を振り上げると巨大な雷が、剣のように双海に襲い掛かり貫き…
双海は一瞬にして、焼け焦げて倒れてしまいます。

776サガフロンティア×アイマス 第十六話 3/4:2009/11/02(月) 03:46:55 ID:UodpkQDk0
「『ブレード』ぉ!!」
いぬ美はその巨体で飛びあがり…
貴音めがけて手刀を振り下ろします。
「…」
貴音の服を切り裂いただけで…本人にはまるでダメージが無く…
「幻夢の一撃…『ジャッカル』」
貴音に召喚された黒き獣に噛まれ敗北。
「うがああああああああああ!!」


「『アイススマッシュ』!」
千早は拳で顔面に一撃を見舞うも…
「…」
貴音の顔は歪み一つなし。
「ダガージョウ!」
貴音の爪に刺され、振り払われてしまいました。


「『草薙の剣』!!」
伊織は必殺の一撃を叩き込み…
「!」
貴音の肩を切り落とすことに成功しますが……


「…技を使うべきでしたね、伊織。
 最強の技であなたには迎え撃ちましょう」

そう言うと貴音の手には…巨大な鎌が現れ
「『リーパー』」
「いやあああああああああああああああ!!」
真っ二つにされてしまいました。
…すでに死んでいる身でなければ、確実に死んでいたところです。



「…技を出していない残りは3人。覚悟はいいですか」
貴音は鎌を手にやよい、春香、雪歩に近づきます。

「………やよい、…指輪を…!! 指輪を使いなさい!」
「はい!!」


「キラメキラリ!!」
やよいは指輪を使うと…全員の姿を消し去り
「もー一回ですー!」

やよい一人が現れ、もう一度指輪を使用。
赤き光が部屋に満ち溢れ…
全員に、今までに無い力がわいてきました。
「いまですよ!!」

「…春香ちゃん!雪歩ちゃん!! …教えた技を…お願い!!」

「……はい!!」
「わかりましたぁ!」

ピヨとあわせた姿無き3人は技を重ねます。



「ワカツ流奥義之弐『月影の太刀』!!」
ピヨさんがまず真っ直ぐに走り寄り月の切り上げ。
「ワカツ流奥義之参『三花仙』!!」
春香は飛びあがり貴音を一閃。飛びあがり、大輪の花を。
「ワカツ流奥義之壱『風雪即意付け』!!」
静から動へ。一瞬にして移り貴音を凍りつかせ。
「伊織ちゃんに使うつもりだったけど!こんなこともあろうと私は技を残していました!!
 『十字砲火』!」

あずささんは二丁のリーサルドラグーンで
貴音の首、腹、右肩、左肩、胸を二発ずつ、乱れなき動きで発砲。
自らの編み出した奥義を見せ付けました。

777サガフロンティア×アイマス 第十六話 4/4:2009/11/02(月) 03:47:34 ID:UodpkQDk0
「『月影の三花風雪砲火』…ですか」


…貴音の体が一瞬にして…再生。
「なかなかでしたが……そこまでですね!」

貴音が手を掲げると、大気が激しく振動…
「!!!!」

巨大な竜巻が発生。激しい気流の渦により皆の体が持ち上げられ…



「あああああああああああああああああああああああああ!!!!」

激しい気流はさらに激しさを増し、真空の刃となり全員の全身を切り刻む。
…全滅は確定。そう思われたとき。


長い長い廊下を一足飛びで超え
「秘技・『ムーンスクレイパー』!!」
目にも止まらぬ速度で貴音を三日月型の軌道で駆け抜け、両断した戦士が一人。


「…もう一度だけ、みんなにチャンスをあげてよ」
ウサちゃんでした。


「……不意を突かれるとは私も未熟ということですか。」

辺りには赤や青の血が散乱。
皆は倒れたまま、一人も起き上がれません。

「…良いでしょう。最後の連携は輝くものを感じました。
 …高槻やよい。…あなたたちにもう一度…チャンスを与えましょう」


「『ファイナルクルセイド』」
貴音の体が輝き…全員の傷を癒していきます。

「ただし、次は今回のように甘くはありません。…条件もつけましょう
 …心してかかるよう」


指をひょいと振ると全員をある場所へ転送。
…貴音はまた、椅子へと座るのでした。




第一部 終了

778サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十七話 1/3:2009/11/03(火) 01:12:22 ID:H69uI.ZM0
「あんた達、起きなさーーーーーーーーーーーい!!!」
先日まで1000年以上眠っていた伊織の声で大体皆目を覚ましました。


「…………春香さまぁ…まだ朝早いですよぅ……」
白百合姫こと雪歩は寝ぼけており…
「Zzz……あふぅ」
美希は昨日の格好で眠ったまま目を覚ましません。


「…まぁ二人が起きるのを待つがてら、今の状況確認でもしますかね」
律子は眼鏡をかけたまま、辺りを見回します。


真はその異様な光景に目を疑い
「わぁ…壁も天井も一面真っ青だね」
千早からも一言。
「声もよく響くみたいね」

…どうやらここは洞窟の中のようです。……どこのリージョンでしょうか。


「この神秘的な感じはー……ルミナスかしらねー」
いつもどおりのゆっくりとした口調であずささんは言いますが

「いえ……違うでしょうね」
双海はこの場所がどこか、すでに特定した様子。



「恐らくここはクーロン。 クーロン地下の『自然洞窟』でしょう」



「えー!?ここ、クーロンなんですか!?」
「それはないなぁ…だってクーロンの地下と言えば
 汚水と不法兵器とモンスターと浮浪者と死体の溜まり場じゃないですか」

「いえ…地上の町を含めて、それはクーロンの表層に過ぎない。
 下水道などよりずっとずっと地下にある層でしょう
 ですが…ここもクーロンの街と深く関係していることもまた事実でしょうね

 あれほど汚い街でも街として長く成立し、リージョン界の中心地としての役割を果たすまでの繁栄に至ったのには
 この洞窟の力が関係していますからね…いにしえよりの地脈の力…そしてルーンの力。
 タンザーがあそこまで巨大な生命体に成長したのも、シュライクがリージョン界一安定したリージョンであることも。
 …ルーンはそれぞれがそれぞれの役割を果たしているのです。」

「ディスペアのルーンはどういった効力を?」
「あれは外部が意図的にルーンの力を封じているものと思われますね」




ともかく、ここから出て、貴音への対策を講じなければなりません…が。
ここで律子がふと考え…
「あずささん。最近地震が頻発しているの、ご存知です?」
「ええ。そうみたいですねー…それが何か…」

「いえね、ここがクーロンの深層だっていうなら、地震の原因が何かあるんじゃないかなと思って。
 ここがクーロンにとって重要な場所であるなら尚更。
 …調査してみません?」


やよい達は全員で、自然洞窟を進み始めました。

779サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十七話 2/3:2009/11/03(火) 01:12:59 ID:H69uI.ZM0
「おーい、いぬ美が何か見つけたぞー!!」
「うがー、響さんのお役に立てればいいのですが」
飛天の鎧。
市販のものとは比べ物にならない硬度の鎧のようです。


「ところでいぬ美、やよい。何か匂いはするかー」
「…匂いというより、音がします
 ガサゴソっていう沢山の音が…」

嫌な予感。
ぴょいと崖をジャンプし、洞窟のその方向へと進んでみると……


「ギ、ギギギギギギギ…?」

「わぁぁ…」
洞窟の最深部の巨大空洞。
「これ全部…うわぁ」
そこには茶色の海が出来上がっていました。

その茶色の内訳は…その全部が、虫。
巨大虫モンスター、ワームブルードの大群でした。

「…ちょっ…流石のボクでもコレは相手したくないよ」


その茶色の海の中に一つの茶色の島。
……どうやらこの巨大な茶色が…
「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」

「そういうことか…ワームブルードが保護のルーンの力で
 巨大化、自分のテリトリーを作っていたんだ」


激しい揺れと共に茶色の海が一斉に動きを停止。
「…!」
皆がこちらを見ています。…戦闘開始。


「広範囲攻撃の出来るものが前に出て!」
律子が作戦指揮。

そして選ばれたのはやよい、ピヨさん、あずさ、伊織、春香。
「行きますよ皆さん!!」



「キラメキラリ!」
相手は毒の粘液を吐きかける虫。
被害を抑えるべく、やよいはバカラのねずみから手に入れた『勇気の指輪』を使用。
全員にあらゆる障害に耐える力をつけました。


「『烈風剣』!」
ピヨのおなじみとなったこの技。
飛びあがり剣撃をあらゆる方向に飛ばします。

「『フラッシュ…ファイア』!」
フラッシュフラッドの光の洪水でワームブルード達を吹き飛ばそうと思いましたが
それではこの広い空間では解決しない。
フラッシュファイアで虫全体を焼き殺す手段に出ました。

「やっちゃいなさい!『ミニオンストライク』!!」
伊織が剣を振り下ろすと
シュライクの古の兵達が大量に現れ、ワームブルード達と激しい戦を繰り広げて…
散っていきました。

780サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十七話 3/3:2009/11/03(火) 01:14:02 ID:H69uI.ZM0
これでワームブルードは親玉を守護する3匹のみに。
「『クリスタライザ』!」
春香は小手から輝く吹雪のようなものを噴出。
ワームブルード3匹を石に変えてしまいました。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
親玉は諦めません。
親玉は見た目からは想像できない脚力で飛び上がると…

「ゴオオ!」
「わあああああああ!?」
辺りに大震撃を巻き起こしました。

「地震の原因か……この突然変異のワームブルードは…別種。そうだな
 『クエイカーワーム』とでも名付けようか」
双海が独り言を言う中、
クエイカーワームと名付けられたこの虫との直接対決へと移行します。


「『ブレインクラッシュ』!」
くちばしが斧のようになった飛べない鳥、アクスビークになったやよいは
クエイカーワームの硬い甲殻に向かい激しい一撃。

「『十字砲火』!」
あずさはリーサルドラグーンでクエイカーワームの体の五箇所に2回ずつ銃弾を。

「ピアアアアアアアアアアアアア!!」
クエイカーワームから突如として甲高い声。
「わああああああああああ!!」
やよいは弾き飛ばされ、勢いよく壁に激突してしまいます。

「花!?」
クエイカーワームの本体は虫ではなく、虫に取り付いた巨大な花。
最早虫の側の意思はないと言ってもいいでしょう。
この花がモンスター化し、今こうして花びらの中心から超音波を発してきたのです。

「ゴゴゴゴゴゴ!」
クエイカーワームは跳躍し、その体重であずさを踏みつけ。
「あああっ!!」
流石のあずさもこれには大打撃。

「少しはやるわね…『神速三段突き』!」
響に伝授したこの技…勿論ピヨさんも使用できます。
剣を真っ直ぐに構え、クエイカーワームへ直突き、突き上げ、突き落としの三連突き。


「食らいなさーい!『草薙の剣』!」
あのときの戦い以降腕がまともに動かない伊織は草薙の剣を振り下ろすだけしかできません。
…しかしその一撃はクエイカーワームの硬い体を凹ませ、洞窟全体にバキッという激しい音を轟かせました。
草薙の剣は傷一つつかず。

最後に春香の攻撃。
「私の番!雪歩ー、見てて!『デッドエン…」
雪歩は後ろでぴょんぴょん跳ねて手を振っています。

…その時。


「ゴゲ…!?」
クエイカーワームの口から何かが飛び出してきました。
青白い何か…クエイカーワームの舌ではありません。

「……」
引き抜かれると激しく体液を噴出。
クエイカーワームの体にあいた大きな穴は広がり…
穴の向こうを映し出します。

「!!!!」
一人の女性の姿。

「保護のルーン発見。…帰るかな」
ルーンの力を入手、すぐさまその人物は真っ黒な闇に包まれ…
消えてゆきました。


「…………今のは」
やよいが目を丸くしています。
「…………
 何かの見間違いでしょ…ま、何はともあれ帰りましょ
 貴音にクエイカーワーム、2度も大きな戦いをしたわけだし。」

「…だから、似てただけですーって。
 …こんなところにいるわけないですよ、双海さん。帰りましょう」
「え、ええ…そうですね」


こうして彼らは、うるさく治安の悪い…クーロンに戻るのでした。
クエイカーワームにトドメを刺した何者かの姿が離れなくなりながら…



…それはP765も。
「データ照合……97%の確率で『双海真美様』と思われます」
「だーから!」

781サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十八話 1/3:2009/11/03(火) 03:24:08 ID:H69uI.ZM0
「…貴音について考えてみましょうか 戦ってみて、どうでした」
口を開いたのは律子。

「あらゆる傷を瞬時に回復する力を持っているね
 …どうやって勝てばいいのかな」
真は考えています。


「私は体が動かせなかったけど、
 『最後の連携は輝くものを感じた』って言っていたわね
 ……もしかしたら、短時間での連続した攻撃に弱いのかも」

ピヨさんはそれを聞いて、惜しんでいました。
「…あの連携が綺麗に決まっていれば、まだ善戦できていたかもしれませんね」

「あの連携?」


「ワカツ流剣術奥義は、壱、弐、参と繋ぐことで一つの最強の技になるんです。
 風『雪』即意付け
  『月』影の太刀
 三『花』仙
 3つ合わさって『乱れ雪月花』。けどあのときの順番は弐、参、壱。
 私がしゃしゃり出たのが敗因だったかも…」
「その順番ならピヨさんが変わっても成立しませんよ
 …そう落ち込まず。次はうまく行くようにしましょう」

「…連携奥義か。…ボクもちょっと考えてるよ。
 もしかしたら一人で貴音にダメージを与えられるようになるかも」

「とりあえず、連携が大切ってことですね!」
「そうなるかしら。連携といえば美希ちゃんの『ハイドビハインド』があるし
 次の戦いでは不可欠になるわ」


遥か先の、貴音との再戦の予定を立てたところで次の目的地の計画を。
「指輪はもう貴音さんの以外ありませんし…」

「陰陽術の資質を、なるべく多くの人が持っていた方がいいわ。
 これも貴音さん対策の一環。…『ルミナス』へ行ってみましょう」



光に包まれた神秘のリージョン、ルミナス。
時には鋭く、時には眩く、時には暖かく。
山は淡く輝き、地の中には輝く粒が混ざる。
あずさはこの神秘のリージョンを好み、陽術の資質を得ていたのでした。

「あのね、このリージョンはオーンブルにも近いから
 そこでミキみたく陰術の資質も取れるんだよ」
「へぇ…
 そういえばさ、陽術陰術と、妖術印術って紛らわしいよね」
「何が違うさ?」
「その4術、どれも存在するから困っちゃうわねー…」


発着場から出てすぐ。つり橋を渡った先に目から下を布で隠した女性の姿。
「あなたは…あずささん。」
「あらー、名前を覚えていらっしゃったんですかー?」

「…当然です。如何に光の迷宮とはいえ、
 あれほど迷われては次の方の迷惑になりますからね…。
 1週間ほどあの場で迷われていたとは。…今回はそちらの方々が挑戦者ですか」
「ええー…皆さん大丈夫かしら」


どうやら女性は、陽術の試練、光の迷宮の受付担当といったところのようです。
「…こほん。」

咳払いをすると、女性は手馴れた喋りで迷宮の参加資格を説明。
「モンスターやメカ、迷宮を突破し既に陽術の資質を持つもの、
 陰術を持つもの、陰術の資質を持つものはこの迷宮に挑戦できぬ。
 それ以外の者のみがこの迷宮に招かれる。…準備はよろしいかな」

対象は響、ピヨさん、真、律子、春香、雪歩。
「千早さんと双海さんも陰術の資質持ってたの?」
「ええ。あまり使いませんけどね」
「私は妖魔だから妖術か妖魔武具…そうね、でも『パワースナッチ』程度なら」

782サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十八話 2/3:2009/11/03(火) 03:24:57 ID:H69uI.ZM0
6人で光の迷宮へ挑戦することになりました。
次々と光の橋を渡り、巨大な光の山に作られた穴の中へ向かってゆきます。


「…信じて待ちなされ」
元より彼らは実力者揃い。
やよいはそこまで心配はしていませんでした。
「迷宮突破までは1時間ほどかかると思われる その間、ルミナス散策などされては如何か」
「そうですね、それでは行きましょうかー」


あずさに案内は任せられません。
陽術にも興味を持っていたという美希の案内でルミナスの陽術士の下へ。
「あらー、お久しぶりですー」
「む、君か。…上達の具合はどうかね」
若い女性があずさに話しかけます。


「そうですねー、基本4術までは自力で習得し使えるようになりましたが…
 残りの2術はなかなか…」

「自力でそこまで到達できただけでも大したものだ……
 基本術とは言うが、光の迷宮を突破した者の中でこれら全てを人づてで伝授して覚えられる者が5割
 それらを使いこなせる者がその中の3割、 自力で習得までに至れる者はその中の2割だからな
 …応用術はその中のさらに1割以下。あれを使える者はリージョン界に20人程ものだろうな」

「…言っておくがこれは大半の術に言えることであるぞ。
 陰術に、秘術に印術、心術に邪術、魔術に妖術。」

「…そうですか。少し、修行していってもよろしいでしょうか」
「構わん。二つの上位術、習得できると良いな。そなたには素質を感じる」

あずさの修行もまた終わるのを待ち…
「…あふぅ」
美希が眠たくなり始めたところで。

「美希さん、オーンブルはどんな場所だったんですかぁ?」
「あ。やよい …んっとね。オーンブルは……白黒な場所なの。
 物がみんな真っ白で、影が沢山あって、暗いの。
 自分の影が突然離れていって、襲ってきたりしてタイヘンだよー」

「…影がなくなっちゃうんですか!?」
長老がオーンブルに行ったらどうなってしまうのだろう。
やよいは、マーグメルに残してきた長老のことを思うのでした。




一方その頃。

光の迷宮は、透明なガラスで出来た宮殿。
白い光を反射板に導き、特殊な壁に当てることで壁を消し去り、通過していくというもの。


最深部では3色の光を導くもので、赤青緑の3色があり
赤と青の光を混ぜた紫の光で
「結界石ですね!」

青と緑の光を混ぜた水色の光で
「わぁ…きれいなお洋服ですぅ…月白のショール?」

赤と緑の光を混ぜた黄色の光で
「あー、黄色だけにお金。」

といった具合に、導いた光の色で出口の壁から色んなものを出していました。
しかし、導いた光の色によっては…
「緑…だけを導くことはどうしてもできませんね」


「青い光食らうさー!!」
「だから導くのは白って…響ーー!!モンスター出してどうするの!」
生きた剣、グリランドリーとの戦闘になり雪歩が取り付かれたりしてしまい。

「ああ…私やっぱりダメダメなんですぅ…」
「雪歩真っ白いし雪歩を出口にぶつけたら出られそうなものなんだけど…」
「春香様ぁ、そんなことできませんー」


などと言っているうちに
「あ、間違えた」

真が間違えて赤い光を導いてしまい…

783サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十八話 3/3:2009/11/03(火) 03:25:48 ID:H69uI.ZM0
「うおおおおおおおおおお!オレを起こしたのは誰だぁぁぁぁ!!」
巨大な羊モンスター、『ゴートギガース』との戦闘に突入しているのでした。



「…正直、ごめん」
ゴートギガースの体力は果てしなく高く…
「ダブルアクスっ!!」
響を除いた5人で激闘を繰り広げていたのでした。



「クエイカーワームに続きしぶといやつが相手だね…
 でも、力なら私も負けない!」
「春香様、援護いたしますぅ!」

勝利のルーンで春香の力を倍加。
「『ライジングノヴァ』!!」

春香は凄まじい力でゴートギガースを斬りあげると…
「あぁあああ!!」

串刺しにして剣に込めた最大の力をゴートギガース内部に放出…
その反動で着地。

ゴートギガースが凄まじいエネルギーにより大爆発を起こしたのでした。
「春香様、素敵…」
「いやぁ、照れるなぁ♪」



「………春香ちゃん、強いですね」
「…ピヨさんから見てもですか?」


「…技術も高いけど、それ以上に生物としての基礎能力がまず人間や妖魔とは桁が違いますからね……
 ………このまま鍛えれば、一人で貴音さん倒せますよ彼女…」
凄まじい春香の力に、一同は唖然とするばかりでした。




…こうして、光の迷宮を時間をかけて突破した6人はやよい達の元へ合流。
クーロンへ戻るべく発着場へ行きますが…


「………ドゥヴァン行きのシップ、お願いします」
「ドゥヴァンですね、どうぞ」


またも、謎の少女を見つけるのでした。
「亜美…? 亜美、一体何でこんなところにいるんだ…」
双海は声をかけようとしますが…
…その声は届かず。
亜美はリージョンシップに乗っていってしまうのでした。


「……亜美ちゃん、に似ていましたね今の」

「…ドゥヴァンに行くみたいだし、私たちも乗ってみます?
 どの道、新しい術を覚えるにはドゥヴァンしかないわけだし」

784サガフロンティア×アイマス 第十九話 1/2:2009/11/04(水) 00:37:46 ID:PB5eEFjk0
ドゥヴァンへたどり着いた一行は発着場から出て奇妙な景色に遭遇することに。
「はー…噂以上ね」

平原にグサリグサリと突き刺された大量の看板。
様々な言語で『○○占いこちら』『○○で占い!?気になる人はこの先』
などと書かれており…

この土地がいかなるものかを知るのでした。

「占いの聖地とされるリージョン『ドゥヴァン』
 私はここにもよく来るんですよー♪」
「あずささん占い好きだからねー… ボクも結構つき合わされちゃいますけど」


「当たる当たらないはともかく、占いはするだけで楽しいものですからね」
「印術や秘術の説明も聞くことが出来ますよー」

「? …そういえば雪歩。何で君は印術使えるさ?」
響は尋ねます。
「いえ…私のは、ここのルーンの誘いっていう、印術のお店で習得しただけなんです
 資質はありません。ですから、上級術は期待しないで下さい…ダメダメですみません。
 あ。そうだ…やよいちゃん、ルーンのお店に行ってみる?」

…資質を手に入れるとなれば…たどる道は。やよいはそれを断ります。
「でも、またタンザーに飲み込まれるのは嫌かもです…
 どうせなら、秘術の館に行ってみましょう!!」

そんなわけで、小さめの秘術の館・アルカナパレスへ。

「ようこそ、アルカナパレスへ」
そこには異様な雰囲気の部屋…
いえ、ドゥヴァンはどこもかしこも方向が違えどそんな雰囲気なのですが。


そして館の主と思しき女性のテーブルの前に、亜美に似た女性がいました。
「…秘術に関する説明をお受けになりますか?
 ちょうど、今からそちらの方にも説明を始めさせて頂くところですので」
「ええ、それじゃあお話を聞こうかしら」


裏になっている4枚のカードを慣れた手つきでひらひらと返します。
「秘術とは、タロットカードに秘められた力を用いる術。
 小アルカナの『剣』『盾』『杯』『金貨』の4枚を基本とし…
 資質があれば大アルカナを用いた上位術へと派生していくことが可能です。
 『剣』はそのまま…剣を呼び出し攻撃術として使用することが出来
 『盾』もそのまま…盾の力で守る力を得るもの
 『杯』は聖なる杯よりの注がれし水で身を清め
 『金貨』により呼び出された金貨は欲を持つ者を喰らう力を持ちます。
 上位術に関しては習得なされてから、ということになりますね」


「…金貨は如何なる者に対し有効なのですか」
亜美に似た女性は質問します。
「そうですね 隙を見せた者、力無き者、愚かな者…
 具体的にどうとは言えませんが、何かが欠けた者に強く作用するとされています。」

「…有難うございました」

続いてあずさの説明。
「資質の取得は可能なのでしょうか…」

785サガフロンティア×アイマス 第十九話 2/2:2009/11/04(水) 00:38:57 ID:PB5eEFjk0
アルカナパレスの女性は答えます。
「…挑戦なさるおつもりですね。
 リージョン界に存在する、4つのアルカナ・タローにこのカードをあわせ、
 このカードをアルカナ・タローに変えるのです。そうすれば…秘術の資質は、あなた方のものです」

何も書かれていない4枚のカードが
亜美のような女性とあずさに手渡されます。

「そのうちの一枚はバカラに、そのうちの一枚はヨークランドに
 そのうちの一枚はIRPOに、そのうちの一枚はワカツに…。
 過酷な旅となるでしょうが、お気をつけて。」



アルカナパレスから出ると…
「君、秘術集めの旅に出るみたいだね」
亜美に似た女性はやよい達に声を。

「私の名前は亜美。『マジックキングダム』の術士なんだ」

女性の名前もまた…亜美でした。
…雪歩と並んでみると…雪歩より背が高い。
よく見ると、体もやや双海の娘である亜美より成長している様子。


「…あの、亜美……さん、この人に見覚えは……」
双海を亜美に会わせると…

「……いや、覚えがないよ…。」
亜美は見覚えがないと。


「…そうそう。それで、私と一緒に秘術集めの旅に出てみないかな」
「………亜美さんとですか?」


「旅の目的は術修行だよ どうしても倒さなきゃいけない相手がいて、
 そのために私は術をなるべく多く集めなきゃならないんだ
 …協力してくれるかな」


断る理由は特にありません。
…ボロ出身の亜美に似た、謎の少女『亜美』が加わり…15人。
次なる目的地へ、向かうこととなりました。

「…覚えたい術が『真美』と被らなくてよかった…
 秘術を真美に覚えられていたらどうなっていたか」


リージョンシップの中。双海は亜美に声をかけます。
「実は私の娘にも亜美っていう子がいてね…何というか、その」

「ああー…私と娘さんで二人で、ちょっと紛らわしいか……
 私のことは…そうだなー、術士学校でのコードネーム『ルージュ』と」

786サガフロンティア×アイマス 第二十話 1/4:2009/11/04(水) 02:22:44 ID:PB5eEFjk0
赤き術衣に身を包んだルージュを加えた一行は
クーロンを経由してヨークランドへ。

「涼さんの時以来ですね!」
「相変わらず咽かな街ねー。
 この町のどこかにアルカナ・タローがあるわけね」


…というわけで、ヨークランド生まれに聞いてみます。
「有金太郎(あるかな・たろう)っていうのは、誰なんだ?」

どうやら、響はアルカナパレスでの話を全く聞いていなかった模様。
「はぁ…」
真の手刀が入ります。
「お!?」


…頭をさすりながら、何か思い出したようで顔を上げます。
「そうか、アルカナ・タローっていうのはカードなのか。
 それなら自分、聞いたことあるぞ 確か酒蔵の皆が噂してた!」


ヨークランドの酒蔵へ。
沢山のお酒が並んでいますが……

「あのー、盾のカードが欲しいのですがー」
「おおー、カードを求めて来た人だね!?
 よっしよし、ここではね、
 カードを求めてきた人にはお酒を飲ませる決まりなんだ。」
真の目の色が変わります。
「!?」

「もちろん、タダだよ さー飲んだ飲んだ!」
「あずささあああああああああああああああああああああああん!!」

真は止めようとしますが…
「うっうー、落ち着いてください真さん!」
やよいに止められて何も出来ず…
「は、離せ!離してくれやよい!あずささんがお酒を飲んだら…!!」

「あらー、そうなんですか?それじゃピヨさん、飲みましょうか♪」
「はい♪」
「このお酒はトリニティに出す高級品なんだよー、ささ、ぐいっとぐいっと!」

「やめろおおおおおおおおおお!
 飲ませるなあああああああ!あずささんに飲ませちゃダメだああああああああああああ!!」


…時すでに遅し。
「ささ、坊っちゃんも嬢ちゃんもぐいーっと!」
「はわ!?」
「んー!!」
ほろ酔い気分になったあずさとピヨさんは隣の酒蔵へ行ってしまい…
真とやよい、そして一行はお酒を飲まされてしまうのでした。

「う…気持ち、悪くなって…きた……」
「もう、あずささんとピヨさんに任せましょう……カードのことは…うっぷ…」



酒蔵に響き渡るは二人の女性のハイテンションな声。
「おーお、酔っ払っちまったかー。
 よし、カードなら沼地の奥だ 行っといで!」
酒蔵の主に背中を押され、二人はふらふらと沼地に行くのでした。

「…沼か………」
ルージュはここでピンと来ました。
「…そうか。…酔った平衡感覚で沼地を渡らせるのがカードの試練ってことか…」


ふらふら、ふらふら。
…一行は沼地へ向かいますが…そこにはモンスターの気配。
…いったん離れて、休むことにしました。

787サガフロンティア×アイマス 第二十話 2/4:2009/11/04(水) 02:24:12 ID:PB5eEFjk0
「ひゃっほーーーー!!」
「JPY!」

などと言って暴れるあずさとピヨさん。

ワイン、ウィスキー、ウォッカ、日本酒、テキーラなどなど。

…様々なお酒をたらいまわしに飲まされた二人は…
いよいよ沼地へ。
いい飲みっぷりだったと酒蔵の人たちも満足そうです。


…酒蔵を出て、人気のない田舎道に出たそのとき。

「待ってましたよ カードはもう手に入りました。
 もう帰りましょう さ、掴まって掴まって」

「何ーー!?私酔っ払ってませんよー!」
「何いってるんですかー肩を借りるチャンスですよぉ
 お姉さんたち酔っ払っちゃってー♪えへへ♪」





「…あずささんたち、遅いれすー!!」
「あああー!もう終わりだァ!あずささんがお酒を飲んだらどれだけ怖いか
 みんな知らないんだぁあ!!!」
思い思いに酔っ払っていた…そのときでした。


「はれ…?」

突然、直径3mほどの真っ黒なエネルギー球がやよい達めがけて飛び…
「うわあああああああああああ!!」
「きゃああああああああ!!」


皆がそのパワーに飛ばされてしまいました。
現れたのは…


青い術士服に身を包んだ女性。クエイカーワームのいた洞窟で見た、
真美のような女性でした。

「これで何人か死んだかな」
そう言うと、ボタボタと何かを吐いた形のあずさとピヨさんをどさっと地面に投げ捨てます。

「…!!」
…吐いていたのは胃の内容物ではなく、血。
「『ブルー』…真美!!」

ルージュは立ち上がります。


「多分命までは失っていないだろう。 殺すのはお前だけだよ 亜美」
ブルーと呼ばれた、真美は魔力を込めます。
「裏の学院で育った割りには温い仲間を持ったもんだね
 お前の振りをして騙すつもりだったけど、その必要もなかったみたいだ。隙だらけ」

真は言葉が出ません。
「…どうしてそんなことを。」
「殺していないと言っている。殺されたいの?」

ブルーはマジックキングダムの学士証を真の目の前に突きつけます。
「いいかい? 学院は術士としての完成を、第一に掲げているんだ。

 そのためには障害を排除することも認められている … 『殺し』も含めてね」

「うあああああああああああああああ!!」
ブルーの顔面に『爆砕鉄拳』。

しかし…

788サガフロンティア×アイマス 第二十話 3/4:2009/11/04(水) 02:24:42 ID:PB5eEFjk0
「!!」
それは影。陰術『シャドウサーバント』でした。

「う…!!」
そして背後から、クエイカーワームに使ったものと同じ青白いものが伸び…
一瞬にして真を締め上げます。
「うあああああああ!!」
「魔術『エナジーチェーン』
 殺すのは亜美一人。あなたは黙っていたほうがいい」

そこに亜美が攻撃を仕掛けます。
「『太陽光線』!!」
空からの熱線で敵を焼く、陽術の初歩。
「……目障りな」


真はやよい達に言います。
「こいつはボク達が倒す!やよい、今のうちに沼を渡ってカードを手に入れるんだ!」

「………」
「あずささんの仇くらい取らせてよ!」
「…は、はい!!」
凶悪に育ったモンスターの棲む沼を…彼らは走り出しました。


「…させない」
真美はエナジーチェーンを操り、木の鋭い枝に真を叩きつけ
「うぐ!!」
やよい達を追いますが…
「…」
真美の首筋にビームソード。

「真、ピヨさんのこと忘れちゃダメでしょ。」
「律子!」
「3対1か…いいだろう。私が亜美より優れていることが証明しやすい」

戦いが始まります。



「待て…久々の挑戦者だな」
沼で現れたのは玄武。
「四天王モンスターの一人と数えられている一種…こんなのが沼を守っていたのね」
「自分あまり知らなかったさ…!」
「…お酒に酔った状態で戦えるかな」


「キラメキラリ!!」
やよいが先制。
ディスペアで手に入れた『隠者の指輪』でした。
その力でお酒の効果を取り除くと…


「ありがとうやよいちゃん! 『幻夢の一撃』!」
雪歩はジャッカルを召喚。黒き獣の爪と牙が玄武を襲います。
「『ベアクラッシュ』!」
春香は体重を乗せた最大の一撃。
「『火炎』!!」
いぬ美は新たに手に入れた力で焼き尽くします。

しかしここまででした。
「ひれ伏すがよい!」

玄武は雷を落とします。
「きゃああああ!!」
雪歩に命中。
「雪歩っ!!」


そこに5人目が現れ、攻撃します。
「シャドウダガー!」
黒き刃で影からの攻撃。
「う…」
奇襲で何とか玄武を止めることに成功。

「今です…『剣』!!」
雪歩はタロットカードを掲げると、
そこから3本の剣が現れ…


玄武を取り囲み、3方から串刺しに。
「覚えていろ……!!」
玄武の撃破に成功しました。…四天王最弱、さすが。

789サガフロンティア×アイマス 第二十話 4/4:2009/11/04(水) 02:25:13 ID:PB5eEFjk0
「…はぁ、はぁ、ひあぁ、はぁ…」
息を切らしながら沼を渡り、沼地の祠へ到達。
そこには……
「ありましたぁ!!『杯』のカード!!」

4つのアルカナタローの一つを入手。
手元の白紙のカードがアルカナタローに変化しました。

「…よし、戻ろう!!」




「『金剛神掌』!!」
真が繰り出すは黄金に輝く一撃。

金の輪を出したその一撃で…ブルーは重症に。


「逃がさないわ!『雲身払車剣』!!」
律子が消えると…突然ブルーの前に出現。
激しい剣圧をのこぎりのようにした払車剣の強化型を放つのでした。

「う…!!」
ブルーは膝をつきます。
「…今のうちにトドメだ 『エナジー』… う!!」


まだ動けるブルーに一撃を見舞おうとした亜美は、突然魔力の檻に閉じ込められ
倒れてしまいます。


「……流石に3対1は無理があったか…
 …勝負は3つの術を互いに手に入れるときまで預ける。
 そのときがお前の死ぬときだよ 亜美」
ブルー、真美は魔術『ゲート』で姿を消しました。


「…真さーーーん!律子さーーーん!!」
「…やよい」

真と律子があずさとピヨさんの口に耳を近づけると呼吸の音。
…命に別状は無い様子。

ひとまずは危機を回避したのでした。
「……ごめん…!! こんなことに巻き込んで」
「…いや。いいよ…
 …とは、ボクの口からはいえないか …判断はあずささんとピヨさんに任せるよ
 ボクとしては…アイツを君が倒すのを見たいけどね」

心優しい娘と同じ姿をした女性の、非道な手口。
「…」

双海は、複雑な思いなのでした。

790サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十一話 1/2:2009/11/05(木) 01:00:16 ID:GSbwf8bk0
双海医院。
重傷だったあずさとピヨさんを寝かせると双海の奥さんが回復術を唱えます。

「ママ、ピヨちゃん達治るかな…」
真美は心配そうに見ています。
「……何でこんなにケガしてるんだろう」
亜美も心配で、背後にいる自分そっくりな女性に気がつきません。


「う、うう…… …あ…!」
「真美ちゃん、亜美ちゃん…」

「! 気がついたんだねピヨちゃん!」
真美がピヨさんに飛びつきます。
「こ、こら真美!まだピヨさんは安静にしていないと!」
「あ、ごめんなさい…」


ひとまず、今夜一杯は絶対安静。
二人を欠いて、やよい達は次なる地へ。


「あのブルーって奴が出ないにしても、この先どんな戦いが控えているか解らない。
 …秘術集めはあずささん達が回復してからにしましょう」
「それまでに何か出来ることはあるかな…」
「一緒に寝ているのがいいと思うの。」

美希が病院のベッドで寝だしたそのとき。
「ねえ真ちゃん」
「?」

あずささんは寝転がったまま、真に話しかけました。
「そう言えば、あなた心術の修行に行こうとしてタンザーに飲まれたのよね」
「そうだけど…」

「ここらで、心術の修行に行ってみてはどうかしら?」
「え?ボクはここで見てるよ」
「私もピヨさんが放っておけません」

「…そうね。それじゃ、私達だけで京に向かいましょうか
 休憩がてら。心術は個人レベルで覚えられるとも言うし…」
千早が提案。
「? いきなりどうしたさ千早 クーロンで休めばいいんじゃないのかー?」


あずさ、真、ピヨさん、律子を除いたメンバーで京へ旅立ちます。



「あの4人を欠いた場合、決定打に欠けると思われます」
P765が久々に発言。

「私だって結構やれるし、Pさんだって結構行けるんじゃないですかね。
 …そもそも、あんな場所で戦闘なんてありませんよ、もう麻薬組織も壊滅したらしいし」

「まやくそしき?」
美希は首を傾げます。
「何かニュースで見たことあるような…きっとそのうち思い出すさ!」
響は唸ったまま。
「私も世情には疎いものでしてね」
双海も。
「恥ずかしいけど、術を極めることしか頭にないから…」
ルージュも。
「うがー」
「ううー、私も解りませんー」
「現代の情報が不足しています」
「同じく1000年前から起きたばっかりなのよね私」
「ずっと海にいたし…」
「………」


「…何て言ったかな。あ、そうそう『くろがね』って言うらしいですよ
 クーロンの若者を蝕んでいた危険組織らしくて…何か、悪の組織の一部だったみたいです。
 ブラッククロスって言ったかな。IRPOと誰かが協力して潰しちゃったって書いてましたね」

…思わぬ知識を披露する春香に唖然。
「春香様、素敵ですー♪」
雪歩はぱちぱち拍手。

「あの、みんな …私10年間寝てたんだけど…」
4人が欠けることでこれほどまでに常識に欠けたパーティになるとは。

791サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十一話 2/2:2009/11/05(木) 01:00:46 ID:GSbwf8bk0
リージョンシップを降りるとそこは紅葉の美しい景観。
ひらひらと舞う常秋の地、『京』。風情漂うリージョンです。

「さて、今回のこの地では私中心で進むことになるのかな」
人差し指を顔に当て、よそ見をしながら。


「……まぁともかく。私修学旅行でこの場所に来たことあるんですよ
 シュライクじゃ修学旅行といえば京なんだけど、京の人たちは一体どこに修学旅行に行くのかな」

おもむろに選択肢を取り出す春香。どこから取り出したのでしょうか。
「京ではないでしょうか。」
P765が答えます。


「そうですよね!京に住む人たちもつい行きたくなってしまう、そんな京!
 今回はこのリージョンをお届けしたいと思います!」
マイクを持つマネをしてハイテンションな春香。

「…春香ってアイドル志望か何かだったの?」
「春香様、かわ……素敵…」

「そういう美希はどこに行きたいのかな」



おみやげ屋さんでアクセサリーをあれやこれやと悩む春香達。
「こんなのどうかな?」
「これもあれも全部買っちゃいましょう!どれも春香様にはお似合いです…」
「ミキ、これも欲しいな」
「自分こういうの結構似合うんだぞ!」


「…うっうー…皆さんお財布緩みすぎだなって思います」
「た、高槻さん、こ…こんなのどうかしら?とても似合うと思うのだけれど…」
どこから持ってきたのか、鈴のついた首輪を。
「やよいー、あんた私の生前の姿見えるのよね?私にこれ似合うと思う?」

「一つまでにしてくださーーーーい!!」
やよいの一喝。
…皆が静まりかえりました。




「おおきにー」

みやげ屋さんを後にし、心術の修行場に到着。
「心術の修行を希望されるか」

「…誰か修行してく?」


「…内容はどういったものになるのでしょうか」
「心術はヒューマンの肉体が持つ力を、肉体を精神が律することで引き出す術
 故に妖魔、メカ、モンスターの方々にはお断り頂いている。
 ……しかしいずれもなかなかの肉体と精神をお持ちと察する。挑戦なされるか」


「何ていうかなこれ…律子さん向きだったと思うな」
「美希。あなたは一度受けた方がいいと思うわ」
「覚えられるわけないのー」

済王伊織が聞きます。
「元人間もダメかしら。私以外にも2人ほどいるけど」
「肉体が違うとなると残念ながら。」

「…仕方ないわね あの4人と一緒にまた来ましょうか」
「またお土産屋さん行きたいですね!」

その時。
「自分、挑戦してみてもいいか」
何と響が申し出ました。
続いてルージュも。
「私も挑戦してみたい。なるべく多くの術を極めておきたいので」
…二人の顔をじっと見つめた修行場の術士は…
「…どちらも心根の真っ直ぐな方とお見受けする。…では、どうぞ修行場の方へ」
そう言って、左手で奥の扉を指すのでした。



「い…行っちゃいました……」
「…それじゃ響とルージュを待つ間、どこか行ってみる?」

「京って言えば庭園が綺麗なんだー。みんなで行ってみようよ」
「はい!」

792サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十二話 1/3:2009/11/05(木) 01:01:23 ID:GSbwf8bk0
鯉の棲む、紅葉の浮く池のほとり……美しき庭園。
「…穏やかに時間が流れていく感じがまた、いいよねー。
 ……私、ちょっと舞妓さんになってみようかな。」
「春香様がですか?お似合いになると思います♪」
「雪歩も色白だから似合うと思うよ」
「は、春香様とお揃いですか?…お恥ずかしいです…」
「フフ、可愛いよ雪歩…」

などと周囲の視線を気にせず春香が雪歩の肩を抱き寄せていたところに…



「見つけましたよ 春香様。」

落ち葉がくるくると舞い上がり……中から金髪の女性が。
肌は褐色、露出は極めて高い服装で、左手には盾…右手には剣。

「美希っぽい!?」
「私の子孫が根っこの町にいた恵ちゃんだったように、もしかしたら…
 ってそれどころじゃない! ……あなたはもしかして」

金髪の女性は頷きます。
「お初にお目にかかります 白百合姫。」

雪歩はその女性にお辞儀。
「金獅子姫様…確か本名は菜緒様ですね 
 姉姫様のお噂は耳にしております…最も勇敢な寵姫だったと」

「あなたこそ、寵姫一優しい方だと、あの方がおっしゃっていました」




「…その優しさで、私の剣が止められますかしら」

…雪歩は紫の剣を手に、息を呑みます。
「…戦うのは、私だ」

しかしそっと雪歩の肩に手をやると…春香は前に出るのでした。

「だ、駄目です!春香様、私に任せてお逃げください!」
「どちらでも結構。しかし、春香様…その心意気、しかと受け止めました
 白百合姫は手をお出しにならぬよう

 …私の剣に屈しなかったのは音様、ただ一人。」
その場にいる皆、手は出さずに固唾を呑んで見守る中…

長剣を取り出し、構え強く握り締め…
「参る!!」
「行くぞおおおおおおおおお!」
落ちた紅葉、木の上の紅葉が一気に空に巻き上がり…戦いが始まりました。

793サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十二話 2/3:2009/11/05(木) 01:01:53 ID:GSbwf8bk0
「あぁあ!」
金獅子は体を捻り『巻き打ち』。
「は!!」
春香はディフレクトで防御、
「『稲妻突き』!!」
そのまま剣を弾き、強烈な突き攻撃へ。
「うぐ…!!」


「『幻魔』!!」
剣の名前を叫ぶと春香は目にも止まらぬ勢いで金獅子に近づき
横に、縦にと斬撃を繰り出し…
「はぁぁぁ!!」
強大な魔力で巨大化した剣を…
「防ぎきれぬ…!!」
上から振りかぶり大きく一撃。


「…やりますね!」
しかし金獅子はさほどダメージを負っていません。
立ち上がり金獅子に向かい激しい一撃、『スマッシュ』を見舞います。


「う…」
春香は反撃。またも幻魔での攻撃を行いますが…

「剣撃の間に大きくなると言うなら」
ひらりと身をかわし
「最初の一撃で」
回転からの一撃、
「止めればいいこと!!」
反対の回転からの一撃。『かすみ青眼』でした。


「…う」
「春香様…!」
手出しできぬ雪歩の手は震えていました。

「『払車剣』!!」
金獅子は衝撃波をのこぎりのように当てる技を使おうとしますが…
「『柳枝の剣』!」
春香はそこに勢いよく踏み込み、下から斬り上げます。
「な…!?」
金獅子の体が軽々と浮かされ…技が止められてしまいます。
「う…」

「………」
春香は剣を構えます。


「何故攻めて来ないのです …手加減のおつもりですか!!」
再びスマッシュを放ちますが…

「な!?」
「かかった!!」
金獅子の剣が春香に振り下ろされた瞬間、剣に何かが激突…
激しく粉々に砕け散ります。


「『硝子の盾』…金獅子様には有効な戦術ですね!」
春香は剣を構える動作の最中に術を唱えていました。
目に見えぬ透明な盾で身を守り、相手の攻撃に反応し割れる術を。

そして、それは反応し受け止めるだけではなく
「『ブロークングラス』!」
粉々になった硝子が、槍のように一斉に金獅子に襲い掛かります。

「ぬ、くううううう…!!」
「行くぞ!!」
金獅子との距離を詰めて左へ、右へと払い
「『デッドエンド』!!」
最後に飛びあがり上から叩き斬る大技。

794サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十二話 3/3:2009/11/05(木) 01:02:26 ID:GSbwf8bk0
「…これほどとは しかし…!!」
金獅子は小手を間合いを詰め、剣を上へと払います。
「来るか!?」

払車剣の構えだと。…しかし距離が短い。
金獅子は剣を振り上げ、剣から妖魔能力を発動。
『落雷』を落としたのです。


「!」
天から降り注ぐ雷の槍。

「…う」
「私の能力は剣のみにあらず」
続いて小手から冷気。
「く…」

「勝ちに拘ることを怠らぬよう!!」
具足を踏み鳴らすと火炎が地を這います。


「………耐えた…」
何と春香はそれに耐えていました。
3つの連続攻撃、全てに。

「『克己』」
何かを叫ぶと春香は自分の胸に手を当て…
「あぁぁ!!」
心臓を掌で一突き。


すると春香の足元には曼荼羅模様。心臓を中心に、緑の光が溢れだし…

傷を全て癒してしまいました。
「春香様…まさか!!」
「修学旅行生をなめちゃいけません!!」

心術を人間の時代に習っていたのでした。
「『陰行』!」

姿を消すと…
「スマッシュ!!」
金獅子の攻撃を軽々と避け…
「『生命波動』!!」


現れたのは空中。気で槍を作り出し金獅子の脚を一刺し。
「な…」

「最後だよ、金獅子!!」
そのまま飛びあがり……

「『ベアクラッシュ』!」
最大の一撃で、金獅子の皮膚を大きく引き裂いたのでした。



「………く…」
よろける金獅子。
「春香様っ」
「雪歩」
走り寄ってきた雪歩を抱きます。


「…流石に、お強い…!
 白百合様。あなたのお気持ち、よく解りました
 …私もかつて、あなたと同じ気持ちを抱いていた頃がありました」
「金獅子お姉さま…」
金獅子はよろけながら立ち上がると…


「春香様。妹姫と…美希を宜しく頼みます」
「…うん」
雪歩の柔らかい髪を梳かしながら。


「お待ちください、それでは金獅子お姉さまが罰を…」
「あの方からの罰なら喜んで受けましょう。…それでは」

…そういいながら春香の元を去ろうとした金獅子でしたが…
「…そういえば春香様…本気ではなかったようですが、何故ですか」


「本気だからトドメはあの技にしたの
 最後まで気は抜けないから…未完成な大技なんて使えないよ
 …私はまだまだ強くなる。…私を追うのはやめるように …歌田音に言っておいて」

その言葉に僅かに微笑を浮かべ…
「…解りました」
…金獅子姫は去っていったのでした。

「行こうか。あずさ達も待っているし」





「あの…何でしょうか、この取り残された感じ………あの、千早さんそれ、春香さんの真似ですかぁ?」
「気にしないで高槻さん」

795サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十三話 1/2:2009/11/05(木) 02:28:57 ID:GSbwf8bk0
あずさ、真、律子、ピヨさんと合流。
京に再び訪れ4人に心術を覚えさせたところで
秘術集めを再開します。

「バカラ、IRPO、ワカツ…どうしましょうかー…」
いつもの調子に戻りました。

「そうですねー…バカラは前行ったし、ワカツは危険だから…
 IRPOにしましょうか。手っ取り早く済みそうですし」


リージョン界全ての犯罪を取り仕切る警察機構IRPO。

「お前、何で出てきた……」
「お前なんて言っていいのかな?
 おまわりさんがサイバンも無しにディスペアに放り込んだのミキ聞いたもん」
「うるっさい!お前がアイツを殺したんだろう!!アイツは俺の後輩でだな!」
「ハニーを殺したのはミキじゃないの!!」

入るなり現れたIRPOの職員と美希が数分間激しく罵り合い…

「お姉さん可愛いですねぇ♪スリーサイズいくつですか?」
「いえ、そのそういった質問はー…」
ピヨさんは受付のお姉さんにセクハラ。


そんなこんなでひとまずはIRPO隊員の話を聞くことに。
「俺はコードネーム『ヒューズ』だ。
 ひとまず盾のカードの話だっけ?それなんだけど…最近多いんだよねーカード目当てのひと。」
「タダで貰えるとは思っておりません、簡潔にお願いしますね」


「ボインなお姉さん話が早い。えっとね、上司命令なんだけど俺がこれから言う場所に行って
 ある花を取ってきて欲しいんだ。いいかい、その場所って言うのは……」





場所はムスペルニブルの山の尾根。
見晴らしのいいこの場所で…マイクを持つポーズを今度は雪歩が。
「あ。鐘の音が聞こえてきました…」

時刻を知らせるムスペルニブルの貴音の館。
「何だか眠くなっちゃいますね…」
「寝ちゃ駄目だよー、雪歩!」
どこからか取り出したお茶で目を冷まさせる春香。

「あ、有難うございます春香様! 
 それにしても…貴音さんの館、この山から見ると思ったより地味な建物なんですね…
 ……………くじけちゃダメですよ!」
何やら、山からは小さく見える貴音の館に共感しているようです。



「山の上の方になればなるほど雪が少ないって、変わってますよね…」
「この土地ならではですねー…この上には炎の空、そしてファシナトゥールがありますから…」


山を登りながらモンスターとの戦闘。
戦乙女と呼ばれるヴァルキリー、
骨が連なって出来たムカデのようなモンスターアンクヘッグ、
生きた液体金属リキッドメタルなど。


「洞窟で一度休みましょうか」
洞窟の中で一回休憩。
「言っておくが、ここに埋まっている宝の洞窟には手を出すなよ
 あそこは竜の棲家なんだ」
IRPO隊員ヒューズは念を押します。
が…
「…つまり龍を倒せる実力のある者なら問題ないと」
「…正気か!?」

「ミキ、こんな人と一緒にいたくないな 竜さん達と戦ってくるね!」
「じゃあ私も一緒に行こうかな」
「ちょっと危険よー二人ともー!」
美希、春香、ピヨさんが離脱してしまいます。それに続きいぬ美と双海と雪歩も。

…6人の無事を祈りつつさらに登り続けると…


「あ、暑くなってきました…」
雪歩がよろけはじめます。
「ゆきほさんもですかー…?わたしも、そろそろ……」
やよいも体力を暑さに奪われます。

真っ赤なムスペルニブルの空。辺りには草花…
いよいよ、山頂にやってきました。


「……あった!この花ですね」
花畑のきれいな花をいくつか摘み取ると…

796サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十三話 2/2:2009/11/05(木) 02:29:33 ID:GSbwf8bk0
「玄武を倒したそうだな!!」
炎の空から悠々と降りてきたのは、炎で形作られた一羽の鳥。

「この朱雀の山の主…『朱雀』だ!!
 四天王モンスターの長だ、気をつけろよ!」
一行は戦闘を始めます。


「『インプロ』」
「『多段斬り』!」
連携は最初から発動。
ルージュは魔力の塊の中に朱雀を閉じ込め、
P765はホバージェットで飛びあがりその朱雀へビームソードでの滅多斬りを仕掛けます。
「効いてる…!」


「虫ケラどもめ…!!」
朱雀は翼をはためかせ、上空に逃げたかと思うと一気に急降下。
『グランダースパイク』でやよいを突き飛ばします。
「はわ!?」

飛ばされてしまった、謎のモンスター・アンノウンの姿をしたやよいですが…
「やりましたねーーー!」

その眼で朱雀をにらみ…
「う!?な、なんだ…」
体を麻痺させることに成功します。

「まだだぁあ…」
朱雀はじたばたとしますがその間に…
「『無拍子』!」
一瞬にして素早く払い朱雀に大打撃。

…しかし優勢かと思われたのはその時まででした。
「…姑息な手段を…!!
 『ヒートウェイヴ』!」

朱雀は天高く舞い上がると……

炎を増強させ空の彼方からやよい達の上空までを全速力で滑空。
「わあああああああああああああ!!」
「ううううううううう…!!」
「あつい…!!」
やよい達に熱波を浴びせました。


朱雀は強敵。今ので、大分体力が削られてしまいました。
「き…キラメキラリ!」

涼から貰った指輪を赤い空に向かって掲げると…
皆の体力は全回復。
「高槻さん、見ていて…!これが、私の力!!」

海の中にいた千早が、高い高い山の暑い暑い山頂でその力を発揮します。
「『メイルシュトローム』!!」


デビルテンタクラーのそれと同じ技。
辺りに水の柱が二本並び立つと…その間を術により召喚した荒れ狂う津波が駆け抜けます。
「ここをどこだと思って…る……が、ガボ、ボゴ…!!」


津波は波というよりは、水の壁。巨大な壁に叩かれ、呑まれた朱雀は…
そのまま、体ごと消滅していきました。


「…千早さん、すごいですーーー!!」
やよいも思わず千早の手を取りうきうき。

「あ、た、高槻さん…」
至福の時でした。


千早が倒れた頃に…
「龍倒しちゃいましたよーー!」

こちらも戦いを終えた、ピヨさん達。
「龍が追ってきてるじゃないですか!?」
律子はその後ろから走ってくる龍に思わず腰を抜かしますが…
「響さあああああん!」
ドラゴンの口から発せられたその言葉でその正体を知るのでした。
「ふむ、なかなかいい能力が手に入ったよ」
双海も満足そう。


「…よし、これで完了。ご苦労さん!」
盾のカードを投げてよこすのでした。

797サガフロンティア×アイマス 第二十四話 1/3:2009/11/06(金) 00:46:07 ID:beqHHDNo0
IRPOから帰ったやよい達は
残り2枚のカードのうち、どちらを取りに行くかを決めることとなりますが…

「…ワカツか、バカラか…。」
ピヨさんと律子さんは二枚のカードとにらめっこ。

ですが……
「安全な方から行くんですよね」
「…ええ。」

「…じゃあ今回のバカラが終わったらピヨさんは待っててもらえます?」
「…いえ、私もワカツには行きます
 あの場所には残してきたものもあるし…」

「…それじゃ今回の戦いが終わるまで待っていてください
 無理はなさらないでくださいね」


迷いを抱えたままのピヨさんに顔を向けることが出来ず
律子はドアから出て行きます。
「……私達だって結構強くなったつもりです。
 たまには弱音吐いたっていいんですからね」


「…律子さん。」



ドアをぱたんと閉めると、律子の所に春香と雪歩が。
「……どんなデートの後だったらそんな顔になるのかしら」

雨で濡れた二人の頭にタオルをぽんと乗せる律子。


「…イルドゥンさんが来たんです」
「……歌田音の側近…あなたの戦闘での教育担当、だったかしら」
「ええ。」
「その分だと勝ったみたいだけど、師匠と戦うのはやっぱり辛かった?」
「いえ、戦いませんでした。ただ…」





雨の降りしきる裏通り…
長い階段の上に、緑髪の男が現れました。
「イルドゥンさん…!」
幻魔を構える春香。

「戦うつもりはない 俺は警告をしに来たんだ
 …金獅子様を倒したらしいな、春香」
その一言で、春香は剣を降ろします。
「…はい。私は…雪歩と一緒にどこまでも行くつもりですよ」


「………ならこう言ったらどうだ。 『次に来るのは軽口』だと」
「……あの方が」

「春香も知っているだろう 俺の友人のラスタバンを吸収した…
 今の奴は音様に次ぐ2位の実力者だ… そして お前を倒し、音様を殺す気でいる」

「…そうなったらあなたとしても止めなきゃならないんじゃないですか」
「そうだ、だから忠告しに来た。奴は暴走を始めている
 ………何だ、剣を取り出して」
「春香様!?」

「…いやその。もっと近くに来て欲しいなぁなんて」

春香は、イルドゥンを利用するつもりでした。
雪歩と共に生きるためならば手段は選ばない…。
「はっ!?」
一瞬で背後に回り、イルドゥンの喉元に剣。


「…それってヤバい意味じゃないだろうな」
「ヤバい意味です。あなたにも協力してもらうつもりですからね
 …さ、雪歩からも一声!」
「いえ…男の人は怖いです……」

その言い方に春香が萌えている間にイルドゥンは春香を振り切り…

「…暴走しているとは言え、奴は白百合様を連れ戻す名目の元で動いている
 逆らえる訳がないだろう!
 (春香のやつ、どうやら変な方向にたくましくなってしまったな。妙なことにならなければいいが…)」



…などと言いながら、結局忠告止まりでイルドゥンは帰っていったというのです。

「…なるほど、シュライクであなた達が倒した剣士の上司、
 それがさらに歌田音の側近の力を手に入れてパワーアップしている。
 …大変なことになりそうね」

798サガフロンティア×アイマス 第二十四話 2/3:2009/11/06(金) 00:46:39 ID:beqHHDNo0
そして翌日、バカラへ出発。
久しぶりのバカラはやはり前来たときと同じく大賑わい。
シャンデリアもすっかり直されているのでした。


「美希、情報収集!」
「はいなの」
いつぞやのバニーコスチュームに身を包み、再潜入。
美希の報告を待つことに。



…30分が経過。美希が戻ってきました。
「えっとね、んっと。このバカラのオーナーが金のカードを持ってるって話なの」
「バカラのオーナー!? …立ち入り禁止の最上階に行かなきゃならないわけ?
 ………困ったなー アルカナパレスったら無理難題を吹っかけるんだから…で、名前は?」

「『ノームさん』って言うらしいの」
「ノムさんですか?」
「伸ばし棒を忘れたら違う人になると思うな
 んっとね、すっごくもさもさとしたオヒゲを生やしてて、円錐型の帽子を被ってて、背のちっちゃいお爺ちゃんらしいんだけど…」


…などと言っていると、一行の横を悠々と通り過ぎていく謎の老人の姿が。
子供のような身長で、目はたれ目で細く、白いひげをふりふりさせて、コサックダンスのような足つきで歩くその姿。

「!」
ついて行きます。

…階段を上りました。さらについていきます。
…また登る。さらについてきます。

…そして最後に…
「あ!!」
「1F駐車場に参りまーす♪」
エレベーターに乗ってしました。

「追いましょう、やよいちゃん!」
「はいっ!」

急いで階段を下り、スロットフロアへ。
「すみません!1Fまでお願いします!」
「かしこまりました」



1F駐車場。
…どうやら、マンホールの下に向かったようです。
「って、この下は確か…」


そう。美希が仲間になり、ネズミを追って巨獣と戦ったあの場所。
「……………ノームにおびきよせられてるってこと、ないよね」

降りて、洞窟内を調べます。
剣を手に持った男性妖魔ベルサーク、ロケットランチャーの使い手メカドビー百式、
ユニコーンなどが溢れる中を進みます。
「…以前より明らかに敵が強くなってるの…」


隠し通路を発見。その中の左右に分かれた通路を、左では巨獣の居場所なので
右へと進んでみると…
「……うっ…わ」


そこには黄金の山。どれもこれも大量の黄金の山で、
ウン百億クレジット単位は確実にありそうでした。


「ほっほっほー、ほっほー!儲かった儲かったー」
「今日は一段と沢山の金(キン)が手に入ったのう!」


「……………」
見せびらかすよりはマシとは思えど、
金のプールに漬かって幸せそうにしている彼らの姿はちょっといい趣味には思えません。


「…な、何なんですか」
「おお、何じゃ何じゃ?何の用でここに来たのかの!」
ノームは飛び跳ねながら律子に話しかけます。

「…えっとですね。…あなたがバカラのオーナー、ノーム様ですか」
「オーナー…?」
「ワシらのことじゃって!」
「そうなのか! おう!そうじゃ、ワシらみーんなこのカジノのオーナーって奴じゃ!
 ほっほっほー!」

「……それで、あなたが『金貨』のカードを持っていると聞いて
 私達はここに来たわけですけど…」
ルージュも加わります。

799サガフロンティア×アイマス 第二十四話 3/3:2009/11/06(金) 00:47:13 ID:beqHHDNo0
…するとノームは帽子から、金貨のアルカナタローを取り出します。
「おお、何じゃ、お前らもこんな紙切れに用があったのか!
 なーんか知らんが最近多いのー!」
「多いのう!」
「よっし、じゃワシの言うこと聞いてみい!」

「律子さん、こういったタイプの金持ちのすることは何かわかったものじゃありませんよ…
 エッチなことかもしれませんし、黒い仕事をやらされるかもわかったものでは…」
「…ま、一応聞いておきましょう …その条件とは」
ノームはぴょんぴょんと飛びはねながら答えます。


「よっし、それなら沢山の金(キン)と交換じゃ!
 いいかー?たっくさんだぞ!たっくさんの金(キン)をワシらにくれ!」


「……どうする」
「とりあえず…有り金全部わたしてみます?」
「秘術ってそんな価値あるかなぁ…」
「あ、今の駄洒落ですか律子さん!?」
「ぷ、くすすっ…」
「千早!! …いや、駄洒落じゃないのよ。…えっと?今いくら程あるんですか」


「…涼さんの家から貰った謝礼のお金に、朱雀の山で手に入れたお金
 倒したモンスターから手に入れたお金、クエイカーワーム撃破のクーロンからの謝礼金、などなどしめて…」
律子は電卓を叩き…
「これくらい?」
具体的な現在の数字を出します。
「……うっわ…私達結構お金持ちだったんですね…」
「これだけあれば大丈夫でしょう」


ノームに、電卓の数値を見せます。
「大体これくらいの金額までなら用意できますが」

「キンガク?何じゃそれ」
「あー、アレじゃアレ、紙切れを用意してワシらを騙すつもりなんじゃよ」

「ふぉーふぉっふぉ!そんな手には乗らんぞ」
「いやいや!本当に用意できますって!大体いくつ0があるか数えてみてくださいよ
 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10……」

「ま、待った。訳のわからんことを言うでない
 いち、に、さん…えっと、その次は何じゃ…」
「よん!聞こえないんですかー?」

「よんってなんじゃ?」
「ワシ知らんよ」
「人間が使う言葉はわからないのう…」

「数えてみてください」
「いち、に、さん…たくさん。 いち、に…さん…たくさん。
 あー、頭が痛いわい」


「まさかこの人たちの沢山って…4つのことじゃないでしょうね…」


…やりとりは続きます。
「今用意できるだけでこれくらいありますが…」
ひとまずポケットマネーとして金100個分は買えそうな金額をノームに渡してみます。


「んー!?駄目じゃ、そんなもんワシら興味ない。
 金を用意してくれ、金を。ピカピカしてキレイじゃないか。そんな紙切れのどこがキレイかワシらには解らん!」



……この会話で、ノームの何たるかが大体見えたような気がします。
「………」

顔を見合わせます。
「…あずささん。」
「このお爺さんたち、もしかして凄く子供なのかしら」


「ひゃっほーーーい!」
金のプールにヘッドダイビングするノーム達を見て思うのでした。
「仕方ない…… ネルソンにでも行きましょ
 あそこは金が安く買えるって言うし…」


…そして彼らは、自分達の武器防具より安い値段で、「たくさんの金」を手に入れ、
ノーム達に渡し…金貨のカードを、大喜びで貰うのでした。

「例えばこれ売れば金(キン)いくつ手に入ると思います、ルージュさん」
「70個くらいは軽い…かな」
「…66個分得したのね」

800サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十五話 1/3:2009/11/06(金) 02:12:26 ID:beqHHDNo0
反トリニティ軍の港ネルソン。
兵士達が体を休める酒場でやよい達は待機していました。

「金銭感覚ちょっとおかしすぎるかなーって思います」
やよいが珍しく難しい言葉を使って、さっきからまん丸いテーブルにあごをのせています。

「……1,2,3,沢山…は流石にねー」

「そろそろ、バカラのノーム達にお金を渡しに行った律子達が戻る頃じゃないかしら
 …私達も出る準備しましょうか」

オウミで律子達と合流、クーロンに戻りピヨさんを迎えて次なる場所へ、という計画。


トリニティに対抗する、軍の最前線だけはあり揃えている装備が半端ではありません。
響と雪歩、P765はゼロソードを装備。
武神の鎧を皆で装備したのでした。


「我那覇大佐ぁーーー、生きておられたんですかぁーー!私感激でありますー!」
「な、何言ってるさ!?苗字まで同じだけど自分、軍になんて入ってないぞ!」

「ああ、ヨークランドに残してきた娘さんが心配で
 死んでも死に切れなかったんでしょうねぇ…心中お察しします」
「だからやめなって…」

「……………ヨークランド…?」
響の顔つきが、変わりました。


「今は壊滅したネルソン軍男兵部隊の人でしょ…私は知らないけど
 しかし大佐が庇って死んだあのモンドの奴が今じゃあ…大佐も浮かばれないわよね…」
「うう、うう…」

「…ちょっと、その話聞かせて欲しいさ」
「えーとね。モンドは確か…」

「…我那覇さん、何してるの?オウミに行かなきゃ」
「あ。待つさ千早ーー!」


肝心のことは聞けずじまい。
やよい達はネルソンを後にし、帆船でオウミへ戻るのでした。


「あ。着いたわねやよい。
 こっちは何とか話つけてきたわ …さて。ピヨさんを迎えに行きましょうか」
律子達と発着場で合流、そのままクーロンへ。


…発着場から出るとそこにはすでに…
「…律子さん」
ピヨさんがいました。

「…覚悟は決めました。行きましょう、ワカツへ」
「……いいんですね」

彼らは足を戻し、シップ発着場へ。
「ワカツですか… あそこには最低、ワカツ出身の方が一人はいらっしゃらないと許可が……」

「…私がワカツ出身の者です。 …皆の魂を鎮めに行きたいんです」
「……解りました …お気をつけて」



「…なあ。生きてるワカツ出身者って初めて見たな」
「大体来るのって骸骨モンスターだもんな…」

ヒソヒソと発着場スタッフが話すのを背中に聞きながら乗り込みます。

ピヨさんはリージョンシップの中で刀を手に心を落ち着け…
じっと、目を閉じているのでした。
「…ピヨさんの故郷、どんな場所なんでしょう……」

801サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十五話 2/3:2009/11/06(金) 02:12:57 ID:beqHHDNo0
「…船、出すかい」
桟橋には骸骨の船頭さんが待ち構えていました。
彼が小船で緑の堀池を漕いで行くと…


霞のかかった蒼き空の下。
冷え切った戦場跡…高い高い、崩れた城壁。
その上にさらに高くそびえる幾重もの瓦屋根、その頂点に二匹の魚。



「…これが、 …ワカツ」



「トリニティ軍の軍艦に屈するなー!城門前へ急げー!!」
「大砲の準備用意ーーー!」
「救護部隊足りません!いかが致しましょう!」
「モンドめ!総攻撃をしかけてきおったか!」
「ネルソン艦隊からの連絡はまだか!」


飛び交う無数の言葉、伝令。
忍者や侍が、どこからかやってきて、どこかへと消えてゆく。


「……戦争が…続いている?」

ピヨさんにはまるで記憶の中にいるようでした。
「…多くの霊がこの場所に留まっている
 …彼らはずっと、トリニティとの戦争を続けているんです………」


「曲者め!トリニティの間者か!」
斬りかかってきたワカツの亡霊を切り返しで対処。

「…いえ、戦争なんてものではありませんでした。
 侵略。トリニティは文明レベルの遅れたワカツを自らの統治下におくため、
 沢山の軍隊を率いてここにやってきました」


「きえあああああああああ!」
やってきた侍をディフレクト、そこから剣を一振り。

「何が起こったのか解らぬまま、ネルソン軍に助けられながらも
 ワカツはトリニティ軍に対抗。圧倒的戦力差の中での戦いとなり
 結局全滅しました。
 ワカツが頑固過ぎたんですよね…仕方ないこと。」

「お命頂戴!」
忍者刀を手に城壁から飛び降りてきた忍者をなぎ払い。


「…そう、思っていました…先日ネルソンに行くまでは」
「思っていた…?」


ピヨさんは階段を登り、崩れた瓦を渡り……城の入口までやってきました。
「おかしいと思ったんです
 ネルソンをはじめとして、トリニティに従わないリージョンは沢山あったはずなんです」


律子はちょんちょんと小刻みに飛んでピヨさんに追いつきながら。
「…ワカツが先に手を出したことが原因じゃ」

「それが偽の情報だったんですよ…ワカツはトリニティに何もしなかった。
 けれど…でっちあげを行い、トリニティはワカツを滅ぼした。こうしてね」


城内に突入。

壊れた壁、破れた襖、倒れた扉、崩れた階段…悲惨な光景でした。
「な、何でですかぁ…?」
やよいは城内の真っ黒な染み…血飛沫の跡を見ながら聞きます。


「あるトリニティの官僚が、自分の基地のために土地を確保するために…
 誰にも見つからない事実上の私有地とするためにこれほどまでに酷く破壊したと。」
「…ワカツ出身者とかでなく、ネルソン軍の人たちが言うのならそうかもしれないわね…」


「…その名は『モンド』。雪歩ちゃんを浚った『ヤルート』を内部告発、失脚させた
 第七執政官の…ヨークランド出身の男です」

上へ登り、時には屋根に出て。
そうこう繰り返しているうちに……

最上階へ。


惨劇の場所…こびりついた血飛沫、刺さった刀、白骨化した死体。かさかさと動く虫の音。
…随分時間が経過しているようでした。

802サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二十五話 3/3:2009/11/06(金) 02:13:37 ID:beqHHDNo0
「……怖い場所ですねー」
「…カードを手に入れるには、剣の音に剣を合わせる必要があります
 ………剣が交わる音がした時に、剣を襖の奥に向かって剣撃を繰り出すんです。
 …静かにしていてくださいね
 そうじゃないと…亡霊たちに襲われますので」


ざわざわと亡霊が群がる音。逃げ場などはありません。


亡霊たちが影となり…様々なものに形を変えます。
その形が剣となったその瞬間に。…その瞬間に。


目を閉じ…精神を研ぎ澄まします。
「…目で見なくていいんですか?」
剣の形になったときに音が鳴る。

「…その必要はないわ。…むしろ、耳で聞いた方が、確実。」
柄に手をかけ…



「はっ!!」
見開き、『燕返し』を一太刀。


「…………!!!」
一直線に澄み渡る刃の音。

…物の怪に邪魔されることなく、剣は一直線に襖の奥の台へ届き…
台が刻まれ、カードがくるくると回転…


「…おっと」
ルージュの手元に収まるのでした。

「これで……4つ揃ったね」

剣、盾、杯、金貨。
…秘術の力が、その場にいる条件を満たす皆のものとなりました。
「よかった。」


しかしピヨさんは、城の奥へと進んでいきます。
「……皆は桟橋で待っていて?私は…用事があるから」

「…私らが踏み入っていい状況じゃないか。すみませんね、ピヨさん。
 ワカツの霊を鎮めるんでしょう?……待ってますよ」



ピヨさんをワカツ城に残し、城の外へ。
城門を出た…そのときでした。
「キタねぇ!」


「誰が汚いって?」
「そういう意味に取るなよ…」

野球帽を被った妖魔が現れました。
白衣を着用した双海同様、このような妖魔もいるということでしょうか。


春香は前に出ます。
「…軽口」

歌田音の側近の一人でした。
「怖い顔すんなよ。死に顔がそんなんじゃ評価もガタ落ちだぜ
 さ。俺にやられたくなかったら他の奴らは帰っていいよー、お疲れさんした」


ポケットに手を入れた軽口の言葉。しかし…その場の誰もが
その場から退こうとしません。

「コイツら…怖いもの知らずってのは怖いねー。
 それじゃ、遠慮なくやらせてもらおうか、半分人間のお前!」
びしりと指を指す軽口。

「春香です!!」
それに対し赤き剣で返す春香。
…戦いの始まりです。

803サガフロンティア×アイマス 第二十六話 1/3:2009/11/06(金) 03:09:55 ID:beqHHDNo0
「さーあ覚悟しろよ!」

軽口は四肢を伸ばし戦闘態勢に入ると同時に鎧が自動的に装着されます。
右手には弓矢、背中には翼。

「そういう戦いの方か!」
軽口はそう…猟騎士でした。


「ラスタバンの力も吸った俺の力を甘くみない方がいいぜ!
 今までになく力が湧いてきているからな!」

翼をはためかせると軽口は城壁へ後退…壁を蹴り猛突進。
「『グランダースパイク』か!」

盾で軽口の突進を防御。
「反応早いねぇ」

そして反動で動けないままの軽口に春香は飛びあがると…
「どんな角度からだよ!!」
「あなたの死角!」
壁を蹴り、蹴り攻撃。『三角蹴り』でした。


「私の攻撃が剣術ばかりと思っちゃ困りますね」
「俺気に入っちゃったよ…」

そう言うと高速接近。

「はぁぁ!!」
翼で強風を起こし春香を壁に叩きつけます。
「う!!」


「そこ!!」
そして春香めがけて矢を放ちますが…

「う…」
急所を外し、傷は浅く済んでしまいます。
「避けるねぇ。俺やる気なくしちゃうよ」

そう言うと必中の攻撃方法、術を唱えます。
「『ナイトメア』!!」

軽口は指を指すと春香めがけ漆黒の山羊のようなモンスターを召喚。
その角で春香を刺してしまいます。


「これで大分追い詰めたか…?」
…などと軽口が言っている時に。


「『タイガーランページ』!」
背後から雪歩が奇襲。

凄まじい力で拳打の嵐を叩き込み、軽口を叩き落してしまいます。
「白百合様は黙っ…て…」

「て!?」
そこに春香が『デッドエンド』で追撃。
左へ、右へと払い…最後に真上から叩き落す一撃。

「…な、何…」
「ガッチリ固めてある割りには金獅子と大差ない体力に思えるね
 …いや、ラスタバンを吸収してそれならそれ以下…」


「い、言ったなぁぁぁ…!」
軽口は激昂。
力の限りに矢を放ち…

「う」
それは真っ直ぐに春香の胸を貫きます。
「春香様!!!」

804サガフロンティア×アイマス 第二十六話 2/3:2009/11/06(金) 03:10:29 ID:beqHHDNo0
「…きたぞ、きたぞ!!」
どこかの太陽神のようなことを言って春香は胸に矢が刺さったまま走りだし…
「『幻魔相破』ァ!!!」


突然刃を最大出力で巨大化。
「ののわぁああ!?」

縦に横にぐっさりぐさりと巨大な魔力の刃で切り刻んだ後に
「はぁあああああ!!」

魔力の塊で軽口を包み込み
「うお熱ちいいいいいい!!」
「今冷ましてやるよ!!」


そこに最大出力のままの刃で魔力の塊ごと一刀両断。
大爆発を起こします。

「ぐああああああああ…あ…!!」
そして春香はそのまま飛びあがり…

最後の一撃を見舞います。


天高く飛びあがった春香は…
「う!!」
軽口の右手に一太刀入れ落下
「ぐふ」
軽口の左手に一太刀入れ落下
「おあ」
軽口の右足に一太刀入れ落下
「ぐあああ」
軽口の右足に一太刀入れ落下


4人の春香の分身が次々に落下し、釘のそれのように地面に張り付けられた後
「っはあああああああああああああ!!」


春香本体が落下、軽口の胴体そのものに剣を深く深く突き刺し地面へ叩き落し、最後のトドメ。
「ぐああああああああああああああああ!!!」

5つの春香を結ぶ線が十字型になり軽口を聖なる光で焼き…
5人の春香が剣を引き抜き一つに戻る。


それこそが、金獅子の時は完成していなかった春香最強の技でした。
「…『ロザリオインペール』」


「う、あ…う、う…う……う」
…軽口は何も言わず…何も言うことが出来ず、うめきながら最期を迎えました。


「…消滅…した…」
「これが上級妖魔の最期です…そして、軽口の力は春香様の中に…。
 …私の手助けも必要なかったようですね」

「何言ってるの。雪歩の存在に私はいつも助けられてるんだから。」

また一行を取り残し、戦いは決着を見るのでした。

805サガフロンティア×アイマス 第二十六話 3/3:2009/11/06(金) 03:11:01 ID:beqHHDNo0
「………解りました」

ワカツ城地下、『剣神の間』。
レーザーの糸で全身を絡め取られた一つの巨大な剣士の像の前で……
ピヨさんは決意するのでした。

「…モンドが何か動きを見せた時には… 私が、戦います。」


そして、その傍らに突き立てられた一本の刀を手に。
「…ワカツ最後の侍として!」

背後にさす光へと向けその美しさを損なわぬ刀身を掲げるピヨさん。



「………では、行きます」
カチン。
鞘を収めた瞬間………辺りから、霊の気配が消えてなくなりました。

「………!」
そしてその瞬間…脳裏に電光が走るが如く、何かが焼きつきました。


ワカツ流剣術最終奥義『乱れ雪月花』。かつてのように一人の剣士で行われる、三奥義を組み合わせた最強最大の剣技。

しかし…振り返るとそこには剣を無くした像だけ。


ピヨは最強の刀『流星刀』と『乱れ雪月花』を手に、
故郷を後にするのでした。



「…みんなの所に、戻らなくっちゃね」

そして、同時にワカツ流奥義に留まらぬ自らの最終奥義を編み出すことを考えはじめます。
今まで培ってきた剣技の集大成。最強最大の剣技が作り出せないかと。


…その答えは、直に出ることとなります。

806サガフロンティア×アイマス 第二十七話 1/3:2009/11/07(土) 00:46:21 ID:MwfAj4L60
ワカツからクーロンへ戻った一行は次の目的を決める前にひとまず食事を取ることに。
夜の街を歩いていると、ズルズルとラーメンを啜る音が。

ああ。ラーメンとか食べたいな、でもこの人数では…と思っていながらも屋台に目をやると
「親父。替え玉お願いいたします」
「かぁー…驚いた、何杯食べるんだい姉ちゃん…」


「!!!」
一行は目を疑いました。
クーロンの屋台でラーメンを豪快に食べていたのは、
これからやよい達が再戦を挑む相手四条貴音でした。

「し、四条貴音……どうしてここに」



「あなた方は。…いけませんよ、このような食事の場で奇襲を行おうなどと」

「いやいやいや…解っているでしょうあなた ここ私らの活動拠点の目と鼻の先ですから」
律子が思わずツッコミを。


「…そういえばそうでしたね。失礼。
 …そういえば私、あなた方にお話ししておかなければならぬことがございました
 …もう一杯」

次の替え玉をあっさり食べてまた次。
「決戦に関係したことでしょうかー」
「ええ。あなた方が私に挑む前の条件のことです。
 …それは二つあるのですが、その内の第一の条件となります
 おかわり。」

これで最後、今日はもう麺がないというと店主は最後の一杯を貴音へ。
「覚えておいででしょうか
 私の館には、私の世話役となる男が一人存在し 爺やと呼ばせております」
「……妖魔の男性ですね」

「はい。彼には私の別荘に待たせておいてあります
 あなた方には、私の別荘に向かって頂き、そこで爺やと戦って頂きます」

貴音は自分の側近との対決を命じたのでした。
「彼との対決を見事精した時に…私から次なる条件を出させて頂きます
 私の別荘は『マジックキングダム』にあります…それでは」

そう言うと代金を支払い、貴音は消えていってしまいました。



「指輪への道は思ったより険しそうねー…さて。いつ行きましょうか、やよいちゃん」
「それでは明日向かいましょう!」

「あの四条さん一番の側近…相当なものだと思いますぅ」
「けどそいつに勝てなきゃ絶対に貴音には勝てない。
 ……行くしかないわね、マジックキングダムに」

そこにルージュが割り込みます。
「…みんな、ごめん。
 …秘術も集まったことだし、それから皆がマジックキングダムへ行くなら
 私はそろそろ次なる術へ向けて動き出さなきゃいけない。
 あの場所には決着の時まで戻れないからね」
「…そ、そうなんですか…残念ですー」

亜美に似た姿をした彼女とは、術集めの目的の下での協力であったため。
「…3つの術を集めたらあのブルーちゃんと戦う約束でしたよねー…
 ……陽術、秘術、心術。3つの術は揃ったんじゃないかしら?」

「…いえ、心術は学院が指定した3系統の術の中には含まれていません。
 3術とは、3つの『系統の』術ですから」


「陰陽、秘印、…心邪を除けば後は妖と魔しかないように思えますが…
 …けどそれだと片方しかヒューマンは習得できないのよね…」

「いえ…時、空の術があります。
 詳しいことはまだ解りませんが、空術と時術なる究極の術が
 学院の指定した3対の術に数えられているのです」

その二つの術は如何なる物なのか。
ルージュはそのまま、シップ発着場へ向かっていってしまいました。

807サガフロンティア×アイマス 第二十七話 2/3:2009/11/07(土) 00:46:53 ID:MwfAj4L60
翌日、やよい達はリージョンシップでマジックキングダムへ。

マジックキングダム…魔法の王国。
魔術の資質を生まれながらに持つ者たちの住む、知的な雰囲気溢れるリージョン。
変わり者が多いともいわれており、ヒューマン以外の種族が占める人口は極めて少ない。


「……なんか、静かな町ですね」
やよいはワイワイと活気の有る町が好きな様子。

「平和でいいのですけどねー…魔術技術のおかげで天候も安定しているし、
 色々なことが学べますし」

並木道を歩いて広場へ。
沢山の規則正しく並んだ町並みを見渡しながら…

町行く人々はローブをまといながら、何やら物騒なニュースの話を。
「おい、まだ捕まってないのか?学院に侵入した不審者」
「だがもう結構経つからな……追うことは難しいのかもしれん。
 何かが盗まれて、沢山の職員がやられたらしいが、
 詳しいことは学院も公表していないから…何か、まずいことでもあったのかな」


「私が以前来た時にはそんな話なかったのだけど………何か、異変が起こりつつあるみたいね」
あずさはやよいにそっと耳打ち。


「じゃなくても最近の学院の慌てよう、ありゃ何だ…
 まるでよからぬことが起こるような…」
マジックキングダムの魔術学院はマジックキングダム最大の研究機関でもあり…
それはつまり、マジックキングダムの中枢にして、世界最大の術研究機関ともいえるのです。

「……俺はそんな気はしないけど…
 多分、何とかなるだろ あのブルーとルージュが帰って来ればすぐに」




辺りは再び並木道。進んでいった先に、ひっそりと佇む美しい建物。
「貴音さんの別荘ですね!」
「中で何が待ち構えているか、わかったものではないわ
 …気をつけてね、やよいちゃん」


石でできた重い重い扉を開けると…
きれいなきれいなチェック柄のタイルが続く通路…そしてその奥に柱の立てられたホール。

「………あまりおひさまが当たらない場所みたいですね…」
やよいは、その生気を感じないこの場所を気味悪がっています。
「窓がないわね…そして明かりも少ない。」


「…あずささん、やよい。…何かきれいな石像が立ち並んでますよ」
「…本当。貴音さんの趣味かしら…」


左右の通路にもずらりと石像。
「ここから先は手分けして行きましょう。私とあずささんとやよいと響といぬ美は右、
 真や春香や雪歩や双海さんとピヨさんは左。後の人は各自自由に!」

階段から二階へ登り、奥へ進むと最深部と思しき場所にも石像。
巨大な、竜の石像。
「……ここは劇場でしょうか」
「…上級妖魔の趣味ってわからない」

大きな、木のような柱がそびえ立つ、1Fまで続く中央ホールの吹き抜け。

そこには壁際に大量のサキュバスの像。
「サキュバスといえばかなりの実力を持つ妖魔の種ね…それにしてもよくできてる」

律子はそれらをじっと眺めると剣を持ちます。
「…いい加減気づきませんかあずささん」
「? なんのことですか?」
「やよいはまぁ仕方ないけど。 ……この石像、多分」


その時でした。
「真!これ何かな」
「柱に一箇所だけ隙間が空いてるね。よし、叩いちゃえ」

ちょん。
「こらああああああああああああああああああああ!!」

808サガフロンティア×アイマス 第二十七話 3/3:2009/11/07(土) 00:47:28 ID:MwfAj4L60
律子が叫ぶも遅く。

「当館へようこそ」
「当館へようこそ」
「当館へようこそ」
「当館へようこそ」
「当館へようこそ」
「当館へようこそ」


一斉に石になったサキュバスたちが実物になって空を覆いつくしました。
「ああ……やっぱり…」
「石像がほんものになりました!」

「サキュバスたちはこの館のメイド、モンスター達は皆貴音の部下。
 …コイツは大変なことになったわ、この館全体が敵だらけ。
 入口から入ってきたわけじゃなくこんな深部、窓もない中!
 …しかも劇場にはドラゴン…危険極まりないわ」


一度体制を立て直すべく逃げ出す真たちの前には石像。
「まだ実体化してない!今のうちに破壊すれば…」
「おもてなし致しましょう」

そこに中央ホールからサキュバスが飛来。
石像に触れると…実体化。
「そういう仕組みか…」

「あずささん達は!?」
「きっと一緒に入口に向かってるよ ボク達も入口で奴らを迎え撃たなきゃ」


…その読みは外れました。


「恐らく私が思うに、こうなることは想定していたこと
 …貴音さんはこうして館のモンスターやサキュバスたちと戦わせるつもりでもあったのね
 でも私達の目的はあくまで貴音のお付の方一人」

「あずささん結構考えてるんじゃないですか
 …そうなると、爺やと呼ばれたその人のいる場所は…きっと」

そしてやよいが。
「ありました!!サキュバスさんたちがふさいでいた壁の中の一つに扉が!!」
「よーし、よくやったわやよい!」


扉を開け、急いで閉めるとそこには。
「入口までお迎えすることができなく申し訳ございませんでした」


締まったボディの貴音の執事、爺やの姿がありました。
「…外の方達は手分けしたもう一方の仲間達が相手していますんで」
「私達と戦って下さい!」

「無論、そのつもりでございます。…では、失礼して」
スーツを脱いで真の姿を披露。
爺やとの対決が今スタートします。

809サガフロンティア×アイマス 第二十八話 1/2:2009/11/07(土) 01:46:01 ID:MwfAj4L60
「参りますよ!!」
爺やは戦いの始まりの合図として、紫色の剣を手に斬りかかってきました。

「やよい、危ない!!」
まず響がディフレクト。
倒されたモンスターを吸収する力を持つ妖魔武具。
それは双海や春香、雪歩や千早が行っていることのため、勿論知っていました。

「『グランドヒット』!!」
いぬ美得意の大打撃技で爺やに一撃を決めます。
「やりますな…『太陽光線』!」
手をかざすといぬ美に向かい陽術の基本術で攻撃。


「いきますよーー!!」
あずさの十字砲火。爺やの体の5箇所に次々に弾丸を打ち込みます。
「私も負けてられません!」
やよいは手をかざすと『落雷』攻撃。
「うおお…」

「『逆風の太刀』!」
律子の一直線に走り気流の激しい流れを起こす一撃。
「『神速三段突き』!」
響は初めから全力。突き倒す、突き上げる、突き落とすの三段撃。



「なかなかのお手前…しかし…
 渇!!!」
「ひゃわっ!!!」
爺やは一瞬にしてあり得ないほどの声量での気合の発声…『スクリーム』。
これにより大気が激しく振動、やよいを吹き飛ばしてしまいました。


「まだ終わりませんぞ!」
拳を地面に突き出すとそこから紫の炎の嵐が巻き起こります。
「『イルストーム』!!」
衝撃を巻き起こす紫の炎に当てられて全員に火傷。



「しかしそれでは我々は倒せません!!」
あずさは二丁拳銃をお手玉し『曲射』。
爺やの腹部に二発弾丸を見舞います。


「あずさに続くさ!」
大きく振りかぶり、春香から習った『ベアクラッシュ』を当てようとする響。しかし…

「ん?!」
爺やの体に斬り込みを入れる寸前…透明な何かが響の前で砕けました。

このパターンは。
「かかりましたな!!」
妖術『硝子の盾』。近づく武器攻撃に反応し砕け、破片をブロークングラスとして相手に刺す術。
「うわああああああああ!!」

「追撃!」
紫に輝く飛び膝蹴りで響に硝子をさらに押し込めると同時に蹴りで突き飛ばし。
戦い慣れている様子です。


「石になれぇぇぇえ!!」
ドラゴンになったいぬ美は石化ガスを放ちますが…
「この館の者を石にして出迎えさせたのは恥ずかしながら、私なのですよ」

同じく石化ガスで対抗され逆に石にされてしまいます。


「ワカツ流剣術奥義之二『月影の』」
刀を手にした律子は素早く駆け、三日月の太刀筋を描く一閃。
「く…!!」

大分爺やを追い詰めた様子。後1歩。
しかし全員が現在ピンチ。

その窮地を脱するべく、あずさは動きました。
「では、行きますよ!!
 特と見なさい陽術最強の術!!」


2つ存在する陽術の上級術の一つを…あずさはルミナスで習得していました。
「『超風』!!」


「…何…ですと…」
太陽光線が主体の爺やには遠く及ばない領域でしょう。


あずさが手をかざした先から、超高熱の光の塊が出現。
「う、…ぐ……まさ…か……まさか」


辺りが金色の光に包まれ…
大爆発。数万度に及ぶ強烈な熱の波動が辺り一体の、あずさに敵する者全てを焼き尽くします。
「お、おおおお、…おおおおおおおおおおおお!!!」

810サガフロンティア×アイマス 第二十八話 2/2:2009/11/07(土) 01:47:02 ID:MwfAj4L60
焼け焦げた貴音別荘最深部の壁に焼き付けられた爺や。
でも戦いは諦めません。
「やよい殿の力を確かめるまでは…!!」
どろりと体が焼けながらも爺やは立ち上がり詠唱を始めます。
「妖術『幻夢の一撃』」


すると…魔法陣から呼び出されたのは…貴音と同じ鎌を持った死神。
免れることのできぬ死の攻撃。…何か出てくるかは術士ですら解らぬ攻撃の、最強のパターンでした。
「さいりふれくたー!」


…そして、やよいの一言で…
「…な」
死神はくるりと反転。爺やへと向かってきました。

「くけけけけけけけけ」

そして貴音と同じ鎌を振り降ろすと…
「ぐあああああああああああああ!!!!」
爺やにトドメを刺して消えていくのでした。



部屋の窓から外を眺めるとそこには…
「ジャイアントスイーーーング!」

真らしき声と共にドラゴンがこちらへ飛んでくるではありませんか。

「こちらへ投げられても困りますよ」
リーサルドラグーンで打ち落とし、戦闘終了。


「なかなかのお手前ですこと」
「では私達のお相手を」
「お願いいたします」
…しかし、サキュバス達が残っていました。
皆一斉に、やよいを倒すべく向かってきます。

「き、キラメキラリ!!」
どれか取り出し、指輪を掲げます。

…すると……。


ピンクの光。
「………?」
悪徳から手に入れた指輪。
効果が見られませんが、突然サキュバス達の動きが停止。

「?」
怖がりふるふるしたやよいが首をかしげると…

「きゃああああ!!」
「ああああああ!!!」
「かわいいいい!!」


突然サキュバス達が一斉に鼻血を出して気絶。
ついでに千早も気絶。
「この指輪…誘惑効果ね 敵対する者を全て自分のとりこにしてしまう力。」
「えっ…千早さんって敵だったんですか!?」



こうして一行はマジックキングダムを出るのでした。



「……さて次だけど…」
「たまには私達の意見を聞いて頂きたいのですが」

P765の意見。
「ピヨ様、すっかり目的が摩り替わってはいませんか」
「…いやー、そのー…いつの間にか…」


「私の最終任務再記憶のため、『シンロウ』のリージョンシップ跡に
 向かっては頂けないでしょうか。私のコアと同時代のものと見られます」
伊織が驚愕します。
「そ、そんなに昔からいたのアンタ…私より年寄りね」

811サガフロンティア×アイマス 第二十九話 1/3:2009/11/07(土) 03:01:15 ID:MwfAj4L60
「……じゃあ、私からもたまにはわがまま言っていいかな…やよいちゃん」
その言葉は突然でした。
「雪歩さん、どうしたんですか?」

「次はP765さんの用事だよね。
 それなら…ちょっと…春香様と一緒にいていいかな?」

シンロウでは大して強いモンスターはいないとされる。
危険度は低いはず。


春香たちはドゥヴァンへ。
「…どうしたの」
「こうやって二人きりでリージョンシップに乗るのって、久しぶりだなって思いまして」

ゴウンゴウンと音を立てる安物のリージョンシップの中で。
目を細め、春香の肩に頭をもたげ、幸せに浸る雪歩。


「……あったかい」
「…雪歩は冷たいね」

「…やよいちゃん達と離れたことですか?」
「いや、体温のことなんだけどな…」


「…大好きですよ、春香様」
手と手を重ね、人目をはばからずいちゃつこうとする雪歩。
春香は気が気ではありませんでした。



「ドゥヴァンに着いたら、何しましょうか
 春香様はどんな占いがお好きですか… 骨占い?植物占い?手相占いですか…?」
「……雪歩。」

「……。」
「雪歩…何だか普通の女の子になってきたね」
「…幻滅、なさっちゃいましたか」

「嬉しい… …嬉しいよ …雪歩。 …でも」




ドゥヴァンへ到着。
雪歩は春香の手を引っ張り、まず占い屋へ急ぎました。

ドゥヴァンに溢れる色々な占いで二人のこれからを占います。
結果は様々。それぞれの結果ごとに一喜一憂。
肩を寄せ合いながら、ずっと二人は幸せそうにしていました。


いつかのように、紅葉舞い散る美しい場所へたどり着きました。
京ではありません。ドゥヴァン神社。

「…長い階段だねー」
「春香様、いつかのようにやってみせてくれませんか?その駒ラビの前で!
 レポーターの真似…あれ、凄くかわいかったんですよ…」
「かわいいって…!?雪歩、いつから私にそんなことを…」


春香をじっと眺める雪歩。
目の前の人が、いとしくていとしくてたまらない。
何回言葉を交わしても、何回頬を撫でても、何回手を繋いでも、何回唇を合わせても、
何回体を重ねても…足りない。全く満たされない気持ち。
もっともっと、無限に何かを求める気持ち。


どうして、自分はこの方を好きになったのか。
全てを魅了する歌田音の寵姫、白百合姫にかけられた黒き呪いの愛は
いつの間にか消え去っていたのでした。


或いは、歌田音の娘である春香を好きになった自分は
まだ呪いの愛の中にあるのではないか?

…目の前で恥ずかしげにレポーターの真似をする春香を見ると
そんなことはどうでもよくなってしまいました。

812サガフロンティア×アイマス 第二十九話 2/3:2009/11/07(土) 03:01:47 ID:MwfAj4L60
「………えへへ…」
「つ、次はやらないからね!次は!!」
「ごめんなさい… それじゃ春香様、神社に行きましょうか」
階段を登る春香と雪歩。
手を繋いで、転ばぬようにずっと肩を寄せ合い。
「…いや、却って転びやすいよこれ…」



階段を一段一段登り…神社へ。
ひらりひらりと木の葉舞い散る境内には誰一人いません。
「春香様、お守り買ってきて♪」
「雪歩ったらいつの間にそんな反則… じゃ、私買ってくるね! お守り一つお願いします」
鼻血を出しながら春香が神社へてててと走り、お賽銭を入れてお守りを購入。



鼻血を拭き、振り返った瞬間………



「…ゆき…ほ…?」
「……」


雪歩の足元には、真っ黒な扉が。
「雪歩っ!!」

扉が開かれ、雪歩がその中に。
春香もそれを追います。




…中は、真っ暗な闇。
「…闇の迷宮ですね」
「………ここは一体…まさか!!」

「歌田音さまが…自らお出ましになったんです
 …あの方が作り出したこの空間は無限の扉で構成されています
 あそこにもあっちにも、こっちにも扉だらけ……」

「…もしかして知ってて皆と別行動を…
 雪歩ったら…ばかなんだから…
 私が雪歩を守るからね!!どんな魔物がいようと、妖魔が出ようと関係ない!」

「…」
真っ暗な迷宮の中で、眩しく照らす雪歩の微笑み。
「……そんな太陽みたいな微笑向けられてもなぁ 呑気なんだから」
「太陽は春香様ですよ」
「夏にダイビングしてる場合じゃないの 出口探すよ雪歩」


扉の中へ。
その先もまた扉。

…ワープの扉のようです。

どこへ行っても、扉、扉、扉。闇の中。


もう二度と、出られないんじゃないか。

もう、1日が経過していました。
「…しかしずっと二人っきりになっちゃったねー雪歩」
「…早く出たいですね、春香様」



珍しく雪歩の方から愚痴。ふふ、と笑い…雪歩を撫でます。
「…こんな場所でも、真っ暗な場所でも。 雪歩がいれば私、幸せだよ」
「嘘ばっかり……」
「嘘なものか!」


そんなとき、光の漏れる扉が出現。
「…この扉、まさか!」

「……春香様、私…何か怖い。…手、離さないでくださいね」
「私が先に行くよ、魔物がいたら困るし!」
「…はい♪」

813サガフロンティア×アイマス 第二十九話 3/3:2009/11/07(土) 03:03:04 ID:MwfAj4L60
最後の扉を潜った…そのとき。
「わ!!」

…神社の風景。外に、出たのです。



「雪歩ー、出られたよ!」
入るときのように、手は離していません。離す訳等ない。
手にぬくもりを感じたまま後ろを振り返ったそのとき。


「……ゆき  …ほ」

雪歩の手が透けていました。半透明。
そして、色のない白く透明な扉が雪歩の腕の間に通っています。
…いや、雪歩の腕は迷宮側、現実側の…迷宮側にあるのでした。
「雪歩!?」
「先に出てくれてよかった…」


…全てを知っていたのでした。
「この迷宮はね… 出るには何か大切なものを犠牲にしないと出られないんですよ」
「……………先に行かせた理由って…それ?」

「私を大切に想ってくれてありがとう…
私はずっとずっと長く生きました …春香様はまだ…16歳じゃないですか」



「そんなことはどうだっていい! 雪歩がいないと…駄目なんだよ すぐそこから引っ張り出すから!」

「…嘘であって欲しかった。…私がいないと駄目だなんて、言っちゃ駄目ですよ、春香様」
「…雪歩!!」


「残りの人生…妖魔の血を継いだ分ずっとずっと長くなった人生…楽しんでくださいね
 もう私がいなくなれば… 歌田音はあなたを追いかける理由もなくなるんです。

 これで、全部解決するんです。私は…嬉しいな…… …うれしいな」
雪歩は目に涙を浮かべながら…扉にこつんと額をつけます。
春香も額を…そして繋いでないもう一方の手も、扉につけます。
「どうしてっ!!……わかった。迷宮に戻ろう。ずっとずっと、二人だけで…」


「…それも、……できません…ざんねんでしたー」
「おどけてる場合じゃない…!」

「……春香さま、あなたは自由です…。」
「雪歩…嫌だ、…そんなのって…!!」



「……それじゃもう一つだけ、私のわがまま聞いてくれますか?」
「ああ。いいよ!何でもいい、何としてでも迷宮から出してあげるから」
雪歩は首をふるふると振ります。
「………春香さまがこの後どんな人生を送るのも自由だけどね…」
「…」
「できれば…できれば」


自分の気持ちを口にするこの瞬間…
最後のその時やっと雪歩は自分が春香に惹かれた理由がわかったような気がしました。

その最後の時だけ…雪歩は呼びます。
心のうちで呼び続けてきた…呼びたくて呼びたくて、呼べなかった少女『天海春香』への本当の呼び名を。
「できれば…」


「ずっと、私が大好きだった……」



「優しくて、元気で、可愛い春香ちゃんのままで……居てね…、」




扉が音を立て、粉となり崩れ去る瞬間にもう一度。
「春香ちゃん………!」
「雪歩……」


そして彼女は……
「ゆきほおおおおおおおおおおおおおおおおお…………!!!」

その場に、泣き崩れたのでした。

814サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十話 1/3:2009/11/08(日) 01:39:44 ID:z1neeBuo0

雨の降りしきるクーロンの裏通り。
一人、ビルの谷間に座り込み死んだように黙るは一人の少女。
「ゆき…ほ… …ゆきほ………ゆきほ………ゆき…ほ…」

「んもう……見てらんなくなってきたわ」
春香の背中にかかったのはオカマの声。

「…もう、いい…放っておいて下さい」
ラムダ基地を襲撃した、歌田音に次ぐファシナトゥール第二の実力者にして
歌田音に反旗を翻した彼女の元部下…山崎すぎおでした。
「自由に…生きろだなんて…。 …自由……自由…」


「何が…自由だ …私には……もう、大事な人がいないんだよ
 ………ずっと、…ずっと闇の中にいるなら…雪歩と一緒がよかった」
ビルの壁に頭をこつり。…冷たい鉄筋の感触を肌に。

…そのときでした。
「…泣くことなら容易いけれど」

歌が聞こえてきました。…海に住まう水妖が、空をゆく鳥の歌を。
「…千早ちゃん」
「悲しみには 流されない」

その歌詞は、今の春香に合っているようで…
「…放っておいてくれないかな」
すれ違っているのでした。

「恋したこと この別れさえ 選んだのは自分だから」


「………そうかもしれない。
 …雪歩を連れ出した時から…私は…」


「…群れを離れた鳥のように 明日の行き先など知らない」


「だけど傷ついて血を流したって いつも心のまま ただ 羽ばたくよ」

「…やめて、くれないかな」
降りしきる雨の中の歌をとめる力すら、最早春香にはありません。


それならば聞かない振りをして、歌い続ける。…歌い続け、その力を春香にぶつけ、与えようとする。
「蒼い鳥 もし幸せ 近くにあっても」
…その歌は力強かったのです。…皆の元をはぐれ孤独であったのも、その中で会えた春香と離れたのも経験していたうえだから。

「あの空へ 私は飛ぶ 未来を信じて
 あなたを忘れない でも昨日には帰れない」


…その先は春香も聞いていました。
「自由と、孤独か」


「蒼い鳥 自由と孤独 二つの翼で  あの空へ 私は飛ぶ 遥かな夢へと」

「この翼?がれては 生きてゆけない私だから」


「……孤独も必要…っていうことかい」

千早は光を無くした春香の目を見下ろします。
「それを忘れないから人は優しくなれるのでしょう。愛する方の犠牲によって手に入れた自由と、孤独ならば尚更…。
 …それに亡くしてもいないじゃないですか、春香様は」

「…亡くすより、辛い。…これから雪歩はどうなるっていうんだ
 暗い暗い、誰もいない無限の孤独の中を一人で何もできないまま行くんだよ… …死ぬより、辛い」

「…そうでしょうね。妖魔に寿命はありません
 辛く、悲しく、何も感じなくなり精神が壊れるまでずっと、何年…何十年、何百年、何千年もあのまま」


「…歌田音が生きている限り。」
「……え」

すぎおが声をかけます。
「大切なものを永遠に失ったのはあのコも実は同じなのよね …ただ、自分が築き上げた不要なものに八つ当たりし
 不要なはずの地位とプライドを着飾り、捨てきれずに生きているだけ。悲しいコなのよ」

「……戦いましょう。歌田音と。あなたの血に流れる因縁に決着をつけ…そして、白百合様を助けに」
差し伸べられた手。

ひと呼吸置き、目を閉じます。 …浮かぶのは、雪歩の笑顔。
「… うん…!」

815サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十話 2/3:2009/11/08(日) 01:40:16 ID:z1neeBuo0
一方シンロウでは、古代シップの遺跡でP765に関する情報を得て帰還する途中で…
思わぬ魔物と戦っていました。


「ごめんってばーーー!!まさかあのモンスターを13匹倒したらこんなのが出るとか思わなかったんだよ!!」
巨大な翼を持った、一つ目のコウモリのような翼を持った異形の魔物『イクストル』。
真が修行相手にとソニックバット退治をした結果、現れたモンスターでした。


「ゲギャ、ッギャギャー!」
高速滑空『グランダースパイク』。
ピヨさんは何とか防御します。


「キェア!」
続いて律子に爪を刺し生気を吸収。『ライフスティール』でした。
「う…」
激しい激痛と、生命エネルギーの枯渇により倒れる律子。重症です。


「美希の印術は効きそうに無い! ボクがこの技を叩き込む!!」

真は地上へ降りてきたイクストルに向け最強の一発を。
「一!撃!必!殺!!」

真を中心とした凄まじい『気』のうねり。それを己の五体に集中させ、
全てを一撃に込め…拳を突き出す。
「『羅刹掌』!!」

「ゴボッ……!!!」
イクストルの全身を駆け巡る衝撃。イクストルの腹に戻らぬ跡が。
「それでもこの程度か…」


「ヴェアアアア!」
イクストルは目から巨大な雷撃の球『サンダーボール』を3つ同時に発射、あずさを痺れさせます。
「あ、あああ!!」


「が、ガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアア!」
体を大きく振動させたかと思うとイクストルは高速回転。
イクストルを中心に、強力な『磁気嵐』が発生。

「きゃああああああああああああ!!」
「うああああああああああああ!!」
「システムダウン」

P765が倒れ、残るは真とやよい。
「こんなに強い奴がシップにいたなんて…」
「と、とにかくみんなを治します!!キラメキラリ!!」
指輪の力を発動。命の指輪で全員が何とか回復するも…

「ゲァ!」
闇をまとった手で真の頭を鷲掴み。
「あ…」
やよいは一瞬で気を失ってしまいました。

「『デスタッチ』…!?やよいがやられちゃった…!!」
「残った私達で連携するわよ P765ちゃん、真ちゃん!!」


彼らは心を一つにし…
「行くぞ!!」

816サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十話 3/3:2009/11/08(日) 01:41:00 ID:z1neeBuo0
「『スカイ』」
「『神威』」
「『跳弾』!!」

真は壁を蹴って上空へ飛び、上空から激しく回転しイクストルに急落下。『スカイツイスター』です。
P765は最強の一撃。正常範囲を超える出力で光の塊となり突進。『神威クラッシュ』を。


そしてあずさは銃技の最終到達点。


二つのリーサルドラグーンを別々の敵と全く離れた位置に射撃。
壁へ次々と反射させ、反射するたびに何故か速度を増し……

イクストルの思いもよらぬ位置から二発同時に着弾、抉る最強の銃技『跳弾』を。
「ぎゃ、ギャギャギャギャ…」

イクストルは瀕死…しかしまだイクストル以外にも敵は残っています。

「やよい、大丈夫…?」
律子のスターライトヒールによりやよいが復活。
「ありがとうございます!もー一回!キラメキラリ!!」

別の指輪、オウミで手に入れた策士の指輪を掲げると今度は…


「ピキョ、キョ…キョオオオオオオオ!」
「キョオオオオオオオ!」

激しい電流が敵に向け流れ…敵する者を混乱状態に。


イクストルが部下として連れていたソニックバットを操ることに成功。
「ピキャアアアアアアアアア!」
「ギ、ギギギギギギ!!」
「ピキョオオオオオオオオ!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!」


敵味方を見分けられず暴走したソニックバットは次々と凄まじい勢いでイクストルを噛み…
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアウ!!」

激しい閃光と共にイクストルはそのまま、消滅していったのでした。

「後片付けは私にお任せっと。『二刀烈風剣』」
二つの刃で空中から衝撃波を降らせ、戦闘終了。





「…HQによって作られた、対RB3型用の戦艦が
 765型コアだって聞いたけど、どういうことかしら…」

あずささんは何もわからずピヨさんへ振りますが
「さぁ。私にも全く……」
機械技術に疎いワカツ人が解るわけもなく。


「RB3が何であるのか HQ、司令部に問い合わせる必要があります」
P765が戦っていた宿敵、RB3の名を心に刻みつつ、その場を後にするのでした。

817サガフロンティア×アイマス 第三十一話 1/3:2009/11/09(月) 00:12:28 ID:ZAjHQp/M0
「マンハッタンセントラルゲート研究所の『サイネリア』博士
 あの人に直接会ってみる必要があるんでしたっけ、P765ちゃん」
「はい。私はこれより、一人でマンハッタンへ向かおうと思います」
こうして、P765が離脱。

春香、雪歩、千早は姿を見せず、どこかへと消えていってしまい…


「みんな、今まですまなかったな
 …自分、これからネルソンに行かなきゃならないんさ。」
響も離脱。

一人、また一人とメンバーが少なくなってゆくのでした。


「…皆さん、どうしたんでしょう」
「それぞれの戦いがあるってことかしらね。
 ルージュはブルーとの対決があるし…
 P765は自分の目的を思い出す必要があるし、
 響はネルソンに行って艦長とコンタクトを取る。
 春香たちにも何か事情があったことでしょうし
 私が以前協力した真の幼なじみの啓介って子にも仇討ちの相手がいた。」

「啓介に律子が協力!?…聞いたことなかったな」
「ブラッククロス四天王シュウザーの基地まで案内して、ついでに一緒に戦ったのよ
 結局、手柄はアルカイザーっていう噂のヒーローに取られちゃったけど…あの子、いい顔してたわ」


「…っと。そして私にもこれからするべきことがある…
 やよい、あなたは少し待っていて。…行かなくちゃならない所があるから」
「…はい…。」

やよいは寂しげでした。
集まっていた仲間がどんどん離れていくのですから。…それも、それぞれが本当に仕方ない理由で。




「それで、これから美希どこ行くの?」
「ラムダ基地にジョーカーが来るっていう情報が入ったのよ
 だから…場所はトリニティ・ラムダ基地。どういう場所かはアンタが一番よく知ってるわね」
「はいなの!」

彼女らもまた、自分達の戦いへ向けて動き出していたのでした。


トリニティ・ラムダ基地。
前回のようにすぎおの協力はありません。
しなやかな動きで侵入、モンドの部屋を目指します。

浮遊する警備メカ、スカイラブの砲撃をかわして美希は粒子加速砲を発射。
それ以外にも敵は現れます。
トリニティお抱えの術士マクンベローナ、
石化能力を持つバジリスク、トラップモンスターのミミックなど。
「…あ、宝箱!!」
宝に化けた強化リビングアーマー、ワンダーランス、マッドアクスとの戦闘になったりもしつつ、
それらを乗り越えて行くと…

「……あの部屋かな」
大抵の部屋は調べつくした後。大きな一つの部屋の前に来た時に…
それは現れました。

「…な、何なの…?」
凶悪マシン、『R&R』。ガンファイターを極限まで強化したトリニティが誇る警備メカでした。
「『シャドウサーバント』!」
美希は影を呼び寄せ、二倍の攻撃力で一気にしとめる方法に出ます。…が。
「っきゃああああああ!!」
R&Rはヘビーレールガンを発射。確実に致死レベルの射撃でした。…影が身代わりになっていなければ。
しかしそれでシャドウサーバントは解除。これにより、美希の魔力が無駄になってしまいました。
「…術が防がれたなら、他にはこうするしかないの!!」

兵器を手に…
「『重粒子砲』!!」
イオンライフルのそれとは比べ物にならない威力のプラズマガンを放ち

「うううっ!!」
突進を食らいながらももう一発。

「ま、ぶしいの…」
催眠フラッシュの強力な睡眠効果にも負けず…それを振り払うかのように
美希は奥の手として用意していた、剣をも破壊する最強最大の一撃をR&Rへとぶつけます。
「確か雪歩も呪いの剣に取り付かれたときこうやってたの!」
それは見よう見まねの必殺技。

「はあああああああああああああああああああああ!!」
歪み、美希へと収束する光…落ちゆく稲光。全ての力を集結させた一発。

高く高く飛びあがり、宙を蹴り落下…自分と武器が持てる全エネルギーを込めた一撃でメカを己の武器ごと粉砕。
「『ファイナルストライク』!!」


…これにより道は開かれました。

818サガフロンティア×アイマス 第三十一話 2/3:2009/11/09(月) 00:13:01 ID:ZAjHQp/M0
「随分騒いでくれたようだね」

中で待っていたのはサングラスの男。
「おじさんとジョーカーの接触はバレてるの…ジョーカーはどこに行ったの」

トリニティの官僚と思しきその男に聞くと…
「…そうだな。バレているだろうね
 何せ、それは私が送ったものだからな」


「…!? …じゃ、じゃあこれはもしかして…罠!?」
「そう。罠だ
 ジョーカーの奴にはキューブのありかを示す暗号文を渡していてね
 キューブがヨークランドの奥地、『忘れられし礼拝堂』にあると言っておいたよ」

言っておいた。その言葉の意味を美希も瞬時に理解します。
「…罠って、まさか」
「そうだ。そんな場所にキューブなどあるはずがない。
 ジョーカーは我々としても排除したい敵の一つだからな …君達を利用させてもらうことにするよ
 悪い話ではあるまい」

「…」
美希は応じるつもりではあるようですが。
「聞きたいことがあるの。」
「何かね」


「…キューブって何?」
「トリニティの軍事機密だ、これには答えられんよ」

「…じゃあ、ジョーカーの正体」
「それは君の方がよく知っているはずだと思うがね」

「むー…じゃあ何でミキたちのこと知ってるの!」
「私はこのポストに就く前はトリニティの諜報部門の責任者だったからね
 『グラディウス』のことは前々から知っているさ」

男がワイングラスを手に立ち上がった…その時。

「…この音は… ふむ。君の仲間がどうやら到着したようだよ」


「何かの役に立つだろう。これを持って行きたまえ
 …何、発信機などつけとらんよ」
男は何かを美希に向けて投げ渡します。

「…ブローチ……これは…羽の生えた…人?」
「私の故郷にある伝説に登場するのだよ『天使』という。
 …かつて、私が憧れていた人に渡そうとしたものだ
 最も、同じ志を持つ私の仲間に先を越されてしまって渡せずじまいだったのだが」


「ま、何でもいいの。それじゃねおじさん。
 …ところでおじさん、何て名前なの?」


「    」
爆発の音に掻き消さされ何も聞こえずじまい。


「美希!!」
扉を出るとそこには律子。
「大丈夫だった…? …ジョーカーは!」
「ジョーカーはヨークランドの奥地に向かうみたい」

そして彼女達は走り出します。
「ヨークランドか……街中で決戦だけは避けたいところだったから都合がいいわ」

めがね型赤外線スコープで律子がセンサーをかいくぐりながら。
「あとね、この部屋にいたおじさんにこんなもの貰ったの」

「…天使? …天使といえばヨークランド。
 …ヨークランドといえば……えっと…あの部屋っていうと…
 ……!! あーーーー!!…もう戻れない…!」

「律子さん、どうしたの?」
「うっかりしてた…アイツがモンドよ!響の父親を殺して、ピヨさんの故郷のワカツを滅ぼした!
 ヤルートの元部下で、トリニティの情報・警察部門の実質的責任者!」
「ええー!? 撃っとけばよかったの!」

「はぁ…いいー?美希!
 指輪の君『四条貴音』に魅惑の君『歌田音』に時の君、
 生命科学研究所の『ナシーラ』にトリニティ第七執政官の『モンド』、
 ブラッククロスの『Drクライン』にマジックキングダム魔術学院学長…
 この辺りの顔覚えておくように!最重要危険人物だから!」
「貴音は勿論覚えてるの」
「忘れられたら困るわよ」

目の前の宿敵を背に、彼女達はひとまずジョーカーとの対決へ向け…逃げるのでした。
「律子さんはキューブのこと何か知ってるの?」

「解らない。多分やよい達の『指輪』と同じく超古代文明の遺産。
 …トリニティがそれを破壊できない理由には諸説あるけど…」

819サガフロンティア×アイマス 第三十一話 2/3:2009/11/09(月) 00:15:01 ID:ZAjHQp/M0
一方やよい達は…貴音との戦いに備えた休息の最中。
「やよいちゃん、まだかしら…」
あずさはやよいの修行を待ち続けています。

「バジリスクと戦ってるんだったっけ。
 ピンクパンチから魅了凝視、アンノウンからマヒ凝視
 それでバジリスクから石化凝視を今手に入れようとしてるのか。
 …何で凝視ばっかり集めさせてるんです?あずささん」
肉まんをハフハフしながら真が。

「後はデュラハンやミミックから死の凝視だけ。これで凝視はマスターできるわけね」
「うん。だからその理由」

シュウマイを箸でつまみながらあずさは答えます。
「やよいちゃんって可愛いじゃない?」
「雪歩や千早も認めるところだね」
「色んな色のまなざしを使えるって素敵じゃない?」

「やよいに似合うかなそういうの…
 ……………本当に遅いねやよい。」
「石にされてたら大変ね…何とか探し出さないと」


こうしてあずさと真は傘を差してクーロン裏通り、双海医院を通り下水道へ。


…するとそこには。
「…邪魔が入ったか」
白衣を着た科学者らしき集団。

「…やよいちゃん!!」
彼らが取り囲んでいるのはやよい。

「ラモックスがこれほどまでに能力を吸収し続ける例は見たことが無いわ…」
ぶつぶつと熱心にやよいの顔を見る女性科学者。
「やよいに何するつもりだ、お前達…!!」

「あなた達に用はない…やってしまえ」
現れたのは巨大な化石樹。

「…あぁ、あああ…ああああ」
ビクビクと震えながら向かってきます。

「待て、お前達!!」
研究員達は逃げてしまいます。
…立ちふさがる化石樹。
「まあああああああああああああああああああああああ!」

ギシギシと体を震わせ、それがどんどん速くなり…物質を破壊するまでの激しい『振動波』を巻き起こします。
「う!!」
「くうっ…」

「ぁああああああああああああああ!!」
叫びながら口を開けると大量の針。
「!!!」
「うわあああああああああ!!」
長さ3mほどの針の雨がぐさりぐさりと何本も真の体に。
「…う……あずささん、逃げて…」

「ああああああああああ…嗚呼ああああああああああああ!!」
化石樹は何か苦しんでいるようです。

続いて『烈風撃』。
「!!」
あずさの体を大きく切り裂きます。

「…あずささん、真さん 大丈夫ですか!?」
そこに騒ぎを聞きつけ現れたのは双海。
「…真くんは…駄目だな、この場では治せない」
白衣をはためかせるとあずさを回復。
「…双海さん…『超風』!」
超熱源体を発生させ、大爆発と共に熱風を注ぎ込み

「『タイガーランページ』!!」
拳打を続け、化石樹を撃破。
「まああああああああああ………」
「…はああっ!!」
そこに小手での打撃を一撃。撃破に成功します。


「………やよいちゃんが浚われてしまったんです
 謎の科学者達に…」
「科学者…ですか ……心当たりがありますが…証拠が」

…その時。化石樹の体が収縮していき……どろりどろりと変色。
………人間の女性の姿になったではありませんか。
「…!? …人間…」
「………………… シュライクへ行きましょう 真くんを治した後でね」

女性の顔は乱打により潰れ、ぐしゃぐしゃに。
…けれど、双海にはこの研究者がどこの研究者か…容易に解るのでした。
「『生命科学研究所』へ…気は、進みませんがね」

820サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十二話 1/4:2009/11/09(月) 02:05:45 ID:ZAjHQp/M0
「『生命科学研究所』で噂されている人体実験…
 それが本当に行われていた、っていうわけですか?」
シュライクの発着場を降り、復活した真と双海、伊織と共に生命科学研究所を目指します。

「見ての通りですよ
 下水道で戦った化石樹は、恐らく人体実験された女性研究員の成れの果てでしょうね
 …着きましたよ 恐らくはモンスター化させられた研究員が大量に存在するはず。戦闘の準備をお願いします」

ドアを潜るとそこには、巨大な植物が吹き抜けのずっと下から生える、
奇妙な植物が所狭しと並べられた、それでいて清潔感の漂う研究所。

「当研究所に、よくお越しくださいました」
とぼとぼと歩いてくるは研究員。

…そのとき、スピーカーから女性研究者からの声。
「研究員各位 厳戒態勢を取りなさい」

するとアナウンスの後に、奇妙な音を発します。
「?」

「………家に、帰りたい」
「人間に…戻りたい」
「死なせてくれ」
「どうしてこうなっちまったんだ…」
「母さん…」
「娘達が…待っているのに…」

次々に、白衣からモンスターの体が飛び出たり、小型のものはずるりと落ちたり。
顔の皮膚が剥がれたり、変色したりなど。

「マインドコントロールか…こうして日常の研究員としての姿と、
 モルモットとしての姿を使い分けさせているのか」

自我がすでに存在しない研究員達が襲い掛かってきます。


「ゼラチナスプランター、朱雀、ゼロディバイダー、クラーケン、キマイラ…
 全く総々たる顔ぶれだ …生命科学の終着点がそれか!!」

双海は激昂。メイルシュトロームでモンスターを一掃します。
…クラーケンを除いて。

「アレはボクが始末する!!」
真の羅刹掌、あずさの跳弾、伊織の草薙の剣で撃破。

「アイツに攻撃させてたらみんなアレに突き殺されてたかもしれないわね…」
「そうなの?」
「私の時代も大してモンスターは変わっていないもの。…あれは強すぎるから危険ね」


そして硝子張りの、実験室に。
「やよいちゃん!」
「やよい!!」

そこには、コントロールパネルにより操作され、あちこちに電極や針を埋め込まれようとしているやよいの姿が。
「所長が言っていた…侵入者……コロセ」

「変身する前に倒す!!『スライディング』!」
「『曲射』!」
「『クリスタライザ』!」
「『ミニオンストライク』!」

一瞬にして敵を撃退。
「コントロールパネルは下手に弄るとおかしなことになります
 …私に任せてください」

カタカタと操作…ボタンを押すとやよいの拘束が取れ、落下。
「やよい君、大丈夫か」
「やよいちゃん!!」

必死の呼びかけ。
…やよいは目を覚まします。
「…う」


「よかった…!」
「何か、へんな匂いがします…」

「確かにこの研究所、いいにおいがするわね…一体どういうことなのかしら…」
「…とにかく助かってよかった。今のうちに逃げよう!」

「…いや。そう簡単に『ナシーラ』が帰してくれるとは思えない
 それに…。 …私は彼女に話がある。…調べよう。この研究所を」

821サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十二話 2/4:2009/11/09(月) 02:06:21 ID:ZAjHQp/M0

モンスターたちと戦いつつ、
非常階段のダンボールをどかして地下へ向かおうとしますが…
道を塞ぐは研究員。

「ころしてくれ…ころしてくれよおおおおおおおおおおお!」
デュラハンへ変形した研究員をやよいが倒すと、死の凝視を入手。
「…………あ、頭が…ああ!!」

「やよい!?」
「やよいちゃん…」

「大丈夫です、奥に行きましょう! …もう、研究員さんもいないみたいだし」


「関係者以外立ち入り禁止か…関係者になったら最後だろうがね」
研究所地下は…うってかわって、悪臭に満ちていました。
…それもそのはず。


「…!?」

そこで見つけたのは、大量のカプセルに入った異形のモンスターたち。
「………。」

どれもこれも奇妙な形をしており、生物として整った形を成していません。
内臓が飛び出していたり、体の一部が異様に膨張していたり、どろどろに溶けていたり。
「…やよいちゃん」
具合を悪化させてはならない。目を覆います。



「…………人体実験、そして生命の創造…か」

そして…上階に美しい幹を見せていた植物の根元。
「うっ…」

土に埋まっているのは大量の死体。
人間、モンスター、特殊な状態で殺した妖魔など。

「植物の栄養源として…こうやって始末しているのか。
 …悪臭は死体から漂うものだったのか」
解剖済みの死体も含まれており…そこは、狂気の部屋と化していました。

ふと、置いてあった帳簿に目を通してみます。
「ブラッククロス、トリニティ、マジックキングダム魔術学院…
 随分なお得意様のリストだ …何の技術提供をしているやら」

「…………う、うう……」
「やよいちゃん」

「………絶対許しちゃ駄目ですよ …行きましょう、一番奥に」

扉の向こうが最深部のようです。
「…やよい… …!?」
ふと、やよいの足元に何かが。

「……………尻尾の…毛」
…やよいの体が…崩れ始めていました。




「…やはり限界だったようね」

最深部にいたのは桃色の髪をした女性。
「『ナシーラ』…… 私が止めておくべきだった!!
 君の暴走を!…何でこんなことをした!」
双海が突然ナシーラに食って掛かります。


「あなたから逃げ出したのでしょう 『ヌサカーン』博士。」
…詳しいはず。
彼は生命科学研究所の、研究員だったのです。

そして、呼ばれた名前『ヌサカーン』とは。
「そうだ、ついでに会って行きます?
 奥さんと違って、優秀な個体に成長したんですよ彼」



「がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

どしり、どしり。巨体が姿を現しました。
「この姿を『地龍』と私は呼んでいます。さぁ、ヌサカーンさん、どうします」



「………亜美と真美だけでも君のところから引き離してよかったと今思えた。一体その化け物は何だ
 死体処理を担当させているのか」

ヌサカーンと呼ばれた双海とナシーラで話は進みます。
「………亜美、真美…ああ。あの子たちですか。
 …バカな人ですねえ」

「…亜美ちゃんと真美ちゃんも何か関係してるの!?」
あずさはリーサルドラグーンをナシーラに向けます。

822サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十二話 3/4:2009/11/09(月) 02:07:57 ID:ZAjHQp/M0
「いやね、ここの養分になってもらう死体にはマジックキングダムからも提供をもらってるんですよ
 術の素養のある献体はいい植物を育ててくれますよ…… それでそのマジックキングダムなんですが。」

「……実はあそこにも人に言えない秘密がありましてねー
 あそこで生まれる赤ん坊の中で、特に素質のある子はある処理を施されるんです」

「…胎児を二つに分けるのだろう。…殺し合わせるために 君らの提供した魔術的装置で」
次々とナシーラの口から語られる、非人道的な行いの事実。

「…ええ。あそこで二つに分けられた子供はやがて成長し、術士として完全になるために殺しあわれます
 ………でも、あなたは勘違いしていた」

「…何をだ」
「あの双子にあの装置の手がかかっていないと思ったら大間違いだというんですよ」
「!!」

「亜美ちゃんと真美ちゃんに何をしたの…!」

「12年前…この研究所にはかつて、マジックキングダム出身の研究者がいました
 名を『双海』
 彼には妻がいて、身ごもった子供は双子…どちらも高い魔術的素養を持つ子供と判断されました
 しかし、夫妻はキングダムにそれを渡すのを拒みました。私としても目をつけていたのですが…」
「…」
「その夫妻はあまりにしつこかった…」

「しかし夫妻もこの研究所の職員。
 …外の世界に出られるわけもなく、当時から研究所の幹部だった私に逆らえることなどない。
 …そこで、彼らは私が仕切る以前にこの研究所をやめた科学者に娘だけを預けたようですね
 ……私のサンプルにされる直前に」
「…預けられた科学者が…私達が『双海』さんと呼んでいる方ですね」
「妖魔から人間が生まれるとでも思ったのですか?娘さん、血色がいいでしょう。人間ですからね」
「!!」
「でも二人は気づいていなかったようですね…
 二人はすでにキングダムの手に堕ちていたことに。
 『元から双子だから人為的に双子にして殺し合わせる必要はない』とでも思ったのか」

「…まさか!」

「私が聞いた情報によると二人の娘は魔術漬けのマジックキングダムの学院で
 規律の行き届いた表と法から隔離された裏の二つの学院で分けられて育ち
 速成剤の投与で通常の1.5倍のスピードで成長し現在外見だけ18歳…
 どこかで殺しあっているようですよ。

 この人が育てている分けられたニセモノの娘になど私も学院も興味などありませんしね
 偽の親に偽の娘…涙を誘います」

「……分けたのか………分けたのか、亜美と真美を!!
 …ブルー君とルージュ君が…双海君の本当の娘なのか」

「だからそうと言ってるんですって。
 …残念ながらついさっき、双海の妻は誰かさんに殺されて脳を破壊され殺されたという情報も入りました
 もう一回…涙のご対面がここで実現するわけです。さあ…双海君。君の代わりに娘を育ててくれた
 ヌサカーン博士にお礼を言いなさい」

…そうしてナシーラが言葉を向けた相手は……『地龍』。
それが…本物の双海のようです。

「…………どういうことか解りませんが……あなたは沢山の人々の人生を狂わせてきたようですね」
「また数人増えますよ そこのお嬢さんは使い物になりませんけどね」

「…わ、私が……」
「ナシーラの言葉に耳を傾けては駄目だ」

「………」
自分の手を見つめると…ひどく荒れています。
「やはり元の種族が弱小なラモックスでは細胞変異に限界がある。」
「…そ、そんな」

「もう次が限界で変身もできませんし」
「やめろ!!」

「大量の薬剤投与による人工的な変異を繰り返したせいで体もそう長くは…。」
「私が………」


「踏み潰しておしまいなさい」
「ごおおおおおおおおおお…!」
地龍はうなり声をあげると踏み潰しにかかります。

「間に合うか……!?」
真は飛び、地龍の足からやよいを救い出しますが…
「ぎゃああああおおおおおおおおおおおお!!」

地龍は体に巻きついた鉄球を振り回し、やよいと真をカプセルの並んだ壁に突き飛ばしてしまいます。
「うああああああああああああ!!」
「っきゃああああ…!!」

壁への激突、カプセルの破片が体に食い込みます。
「…!! やよい…!?」

やよいはぐったりと倒れたまま。
「やよいちゃん!!」
「やよい君」
「やよいーーー!!」

…やよいは目を開けたまま倒れていました。…息もせず。…全身が傷つきながら。

823サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十二話 4/4:2009/11/09(月) 02:09:26 ID:ZAjHQp/M0
「がううううう…!!」

そして…
「や、め…ろ………!!」

地龍はやよいを丸呑み、口の中で咀嚼…


飲み込んでしまいました。
「やよいいいいいいいいいいいいいいいい……!!」



「………何てことをするんだ、双海…!!」
ヌサカーンは剣を振るいますが…

「うぉおああ!!」
地龍は足を踏み鳴らし研究所全体に激しい地震を発生させ、ヌサカーンを吹き飛ばしてしまいます。

「…『三龍旋』!」

真は地龍の周りを巡り、三発の凄まじい速度の蹴りを発動。
地龍を気でかたどられた三匹の龍で締め付けます。
「あぉおおおおおおお!!」

「シュライクで随分好き勝手やってくれたわね……許さないわ!!」

「『跳弾』」
「『草薙の剣』!!」

あずさと伊織の連携。
あずさが銃弾を反射、地龍の体に衝突させ…
伊織が地龍の胴体に同時に斬撃を。


「………まだ倒れないか」
「…………双海も倒されることを望んでいるだろう。
 ……痛いかもしれんが我慢してくれ、双海! …ゆくぞ、『ヒートスマッシュ』!」
熱を帯びた剣撃を地龍に向かって一撃。

…その瞬間。
「が、ぎゃ、ぎゃ…ギャおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
地龍の体が光り始めました。


「……あの光は!」
「………あずささん、やよいちゃんが最後に手に入れた能力って」
「…『死の凝視』。 …私は信じていましたよー?」

「やよいちゃんはあの程度じゃ死なないって」
ビキビキと、地龍の内部で何かがひび割れるような音がすると…
「うっ……」
地龍の体内から声。


「うっうーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「!!!」
地龍の体を突き破り…真っ白な発光体が登場。
「アレは!!」

空中で静止するや否や…
「『ヒートウェイブ』!!」

激しい熱波を地龍に向かって浴びせ…数トンはあろうかという地龍を吹き飛ばし、壁へ激突。
「…やよい!!」
倒してしまいました。

「…………まさかその姿…」
「ふふ、このためにやよいちゃんには凝視能力を重点的に覚えさせていたの。今のやよいちゃんこそが、
 ヨークランドの伝承にある『天使』。超古代文明の人たちもモチーフにした伝説のモンスター
 『マリーチ』よ」

「細胞分裂の限界回数で、ちょうど最強のボディを手に入れたとはね…。
 …ふふ、まぁいいわ。…これだけ暴れればIRPOのメスも入る。…ここでは、ここまでにしておきましょう」
ナシーラは、魔術『ゲート』で姿を消しました。

「…………」
「双海さん…」

「…いや。私も双海も、どの道亜美と真美の父親だ… 誰かのせいで与えられた人生にしろ
 ブルー君やルージュ君もあの人生で満足しているようだった。 …これ以上犠牲が出なければ、それでいい」
人間の姿に収縮していく地龍を見ながら。
「………それでいい」
彼らは生命科学研究所を後にするのでした。



「…やよいちゃんも最終形態になったことだし、これで漸く貴音さんに挑めるわね」
「はい!!」

それぞれが戦いへ赴き、そして訪れた再戦の時。
貴音から出された、対決の前の第二の条件とは…



第二部 完

824サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 三十三話 1/2:2009/11/09(月) 03:57:40 ID:ZAjHQp/M0
ムスペルニブル・四条貴音の館。


「…お待ちしておりました、やよい様」

包帯と松葉杖で現れたのは爺や。
「…何だかごめんなさい…」
「ああ。いえいえ…期待しておりますぞ」


相変わらずの金色の内装。
「前ここに来たときは、春香さんと雪歩さんが加わったばかりでしたね…」
「大分仲間が減ってしまいましたね…10人くらい?」
「美希と律子はグラディウスの任務
 春香と雪歩はデート、千早はその時以来行方不明
 ルージュは術を極めに行ったし
 ピヨさんと響といぬ美はモンドを倒しに行ったし
 P765は任務を思い出しにマンハッタンへ…か」

「でも5人いれば十分戦えるわ。
 …行きましょう」



大きな扉を潜り、貴音の部屋へ。
「…お待ちしておりました。爺やがボロボロになっていたので今回は期待が持てそうですね
 私に挑むための第二の条件を此処で提示したいと思います」
貴音はそう言うと右手でやよいの指にはめられた8つの指輪を指し…

左手で胸の谷間から鍵を取り出しました。
「これは入口の鍵です。
 今からこの部屋には8重の鍵をかけさせていただきます。」
 あなたが持っている8つの指輪、それぞれに合った8つの部屋全てで出される試練を突破し
 全ての部屋でこれと同じ『四条の鍵』を手に入れ、私のところまでいらっしゃってください」

「…その時に、貴音さんと対決ですね」
「そういうことです。…健闘を祈りますよ」



貴音の背後の屋台は見なかったことにして、エントランスへ戻ります。


「…」
1Fに2つ、2Fに2つの扉のうちの2Fの扉を開けると
そこには通路。そしてその先に2つの扉。
「4つの扉の先に2つずつ…これで8つの扉ってわけね」
「私、片っ端から挑戦してみますね!」


「あ、待ってやよいちゃん、慎重に行かないと…」
「でもどちらにしろ何が待ってるかはわからないんでしょ?
 それに全部の扉を突破しなきゃいけないわけだし…」


「…それもそうねー」
「って言ってる間にやよい行っちゃいましたよ」

825サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 三十三話 2/2:2009/11/09(月) 03:58:19 ID:ZAjHQp/M0
最初に反応したのは盗賊の指輪。

「久しぶりだね諸君」
扉の先で現れたのは元所持者…黒井。


盗賊の間…
この部屋は迷路になっていて、モンスターが徘徊しています。


黒井は天井近くからやよい達を見下ろしています。
「黒井、お前か! 指輪はもう諦めてくれないか」
「そんなことのためにここで待機してるんじゃない
 貴音ちゃんの依頼で私はここに来ているんだ ここでの私の役目は…これだ!」

そう言うと黒井はお金の入った袋6つを一斉に部屋に向かってバラ撒きました。

「盗賊の指輪の持ち主にはそれ相応の素早さと判断力が求められる
 君には私が投げる金袋を全て回収してもらおうではないか
 勿論、この徘徊しているモンスターの攻撃をかいくぐりながらな!」


「……あずささんは入口で待機してて」
「ええー?どうしてー?」
始まりました。

モンスターの中には以前倒したカモフックも。
カモフックがブーメランフックで攻撃。

「はわ!!」
これをマリーチになったやよいは飛んで回避。

「キシャアアアアア!!」
巨大蟷螂ゼロディバイダーが走る真に飛びかかりますが…
「『スライディング』!!」
真は足から矢のように滑り込み、そのまま袋を入手。


「すごいです真さん!」
やよいは別方向の袋を目指しますが化石樹と遭遇。
「『マヒ凝視』!」
化石樹の動きを止めて入手、次なる袋へ。



「こっちにも来たか…!?」
双海が走っていると真からターゲットを変えたゼロディバイダーが。
「ならば…!」
一瞬の間に詠唱。
『ハイドビハインド』でゼロディバイダーの背後に影を送り込み、蹴らせて隙を作りました。
「手に入れた…!」
双海も宝袋を入手します。


「食らいなさい魅力ビーム!」
伊織は両手を額に当てるとそこから『閃光』を発し、
化石樹の動きを止めることに成功。宝袋を手に逃げます。


「よっし!!これでどうだ!!」
敵を踏んづけ、飛びはねて真は宝袋を入手。

「これで最…はわっ!?」
宝袋の前にはモンスターが集結。
「ど、どーしよう…」


「やよいに気を取られすぎたわね!」
モンスターの背後から堂々と宝袋を入手。


「見事だ、もって行くがいい!」
全ての宝袋を入手したのを見届けた黒井は宝箱を落としますが…

「モンスターの動きが激しくなってるよ!?」
「捕まるわけには…!!」
真と双海は逃げ…
「げ、アンタたちもこっち来たの!?」
伊織と合流。
やよいも鍵の入った宝箱へ一目散に走り出しますが…

「捕まえたぜ!!」
ゼロディバイダーが三度邪魔を。

絶体絶命か…と思われた時。



「そうはさせませんよ!」
あずさの『地上掃射』が炸裂。

「うぉ!?」
ゼロディバイダーは足元の弾丸の雨を避けるので精一杯。

「てにいれましたーーー!!」
やよいはするりと宝箱から四条の鍵を手に入れ、この部屋の関門を突破するのでした。

826サガフロティア×アイマス 第三十四話 1/2:2009/11/09(月) 23:51:32 ID:ZAjHQp/M0
次なる部屋は隠者の間。
…中に入ってみるとそこは小さな洞窟のような空間で、樽があちらこちらに。


「!?」
ぴょーんと、樽から樽へ飛び移る何かの姿。


「リッチャンデスヨ-」
きらりと光る何かを抱えて。


「…律子人形か!!」
「律子さんのお人形………今鍵を持ってました!」

「なるほど、捕まえる必要があるな…で、何で律子なんだろうね」
「先ほどは黒井さんでしたし、私達が指輪を手に入れる際に関わった方が登場するんじゃないでしょうかー」

確かに現在律子は不在。それに、律子がいたとしてもこっちのパーティに属しているはずだ。

所長人形じゃなくてよかった、そう思いながら、律子人形の入った樽を開けようとしますが…

「この樽、どうやら鍵を開けなくちゃならないみたいだ」
「なるほど、貴音から貰った最初の鍵がキーになってる…つまり同時に2つ以上の樽は開けられない」

「…何かこの樽からガサゴソ音がするんだが」
「律子さん人形の入っていった樽はこっちです!こっちを開けますよ!」

開けると…
「かかったなぁ!!」
ラストモヒカンが登場。

「体術には体術だね…『羅刹掌』!」
反射的に真が技を放ち撃破。

すると双海が怪しんでいた樽から…
「リッチャンデスヨ-」
「双海の意見を信用するべきだったわね…」

この声は果たしてどうやって手に入れたのか。
決して、入った樽が居る樽とは限らない。…こうなれば、運にかかってきます。


「ここだ!!」
ゼロディバイダーが出現。
「『跳弾』ですよー」

「ここですっ!」
デュラハンが出現。
「『クリスタライザ』!」

「ここでしょうかー」
サイレンが出現。
「『グランドヒット』!!」

「ここかしら…」
R&Rが出現。
「『草薙の剣』!」

…何度も間違えたところで…

「…私はここが怪しいと睨む」
カチッ。鍵を開けて樽を覗くと…

「リッチャンデスヨー」
律子人形出現。…双海の勘が当たったようです。

「…ここの鍵はこれで入手か。…これで4分の1.先は長いですね」

外に出てエントランスに戻ると……
「あ、来た来た………」
待っていたのは本物の律子、そして謎のプロレスラー。

「…ただいまなの」
「……美希さん…ですか?」

謎のレスラーの正体は美希。
「うん。今ジョーカーにお仕置きしてきたの」
「明日には病室で目覚ますんじゃないかしらね。さてあの後あの人どうなるやら…」
「ミキもう知ーらない」
「?」
ともかく、無事に復帰した律子と美希が合流。

「それじゃメンバーチェンジだね」
「ちょっと私はクーロンに戻って娘の顔を見てきますよ」

真と双海が交代。次なる試練へと向かいます

827サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十四話 2/2:2009/11/10(火) 00:31:21 ID:HZ0riKMM0
2F右の扉を開いて、2つの扉の前へ。
「じゃあこの扉!」
やよいが扉に立つと策士の指輪が反応。

次なる試練は策士の間。

深い深い、底まで見える闇の上に立った柱を支えとして半透明の床。そこにはモンスターが徘徊しています。
ところどころ穴が開いており、そう自由に動き回れる場所ではありません。
部屋の隅に、何か筒のようなものがいくつも。何かを落とすのでしょうか。

「………ん?」
赤い髭のめがねの男が部屋の最深部の椅子に座っていました。
「ほっほっほ、仕返しをするべくやってきたよ」

「あー!オウミの偽領主…!」
律子は忘れもしません。

「詳しい話は知らないけれど、何か手元に不審な装置を持ってるわよ 妖魔の癖に機械が好きなのね、アンタ」
伊織が言います。以前は落とし穴…今回は?


「これだ!!」
そう言うとスイッチをポチリ。

「! 芋虫さんが落ちてきたの!!」
すると、ごろごろと丸まった巨大な虫がボールのように転がってくるではありませんか。

「ど、どうしましょう…!!」
「さぁ逃げ惑うがいいさ!」
このままでは床から突き落とされてしまいます。

前には敵、後ろからは虫。
「…えい!!」
やよいは横道へ逃げると虫はそのまま転がりモンスターに激突…
そのまま押し出し、床の端から落下していってしまいました。

「あ…お前達!」
偽領主は悔しそうです。
「なるほど。こうやって戦わずに敵を倒せってフロアね」
「反射神経が求められますねー」
次の虫がやってきたので回避しますが…

「敵には当てられませんでした…」
「まぁ落とされずに済んだだけでも」
すると背後から…
「ギュヒイイイイイ!!」
キマイラが追ってきました。

「この虫のせいで近くにいたモンスターは興奮するのだろうね
 うまーく避ければ避けることも敵を倒すこともでき一石二鳥だが 倒せないとこうなるわけだ!」
領主がほほほと笑う中、戦闘が始まります。


「『ローリングクレイドル』!」
プロレスラー美希はキマイラに飛びつきゴロゴロと転がります。
「『二刀十字斬』!」
律子はふらふらになったキマイラに向かい二つの刀で攻撃。
「『聖歌』!」
続いて伊織の歌でキマイラを攻撃。
「『死の凝視』!」
やよいは宙に浮いた沢山の目が一斉にキマイラに目線の射撃。キマイラを即死させてしまいました。


「ノーダメージか……くっ!!まぁいい、まだまだ虫はあるぞ!!」
「そう来ると思ってあらかじめポジション取りはしときました」

律子はモンスターに追いかけられ、転がる虫の軌道正面に誘導、一緒に始末。
「そ、それなら!」
「私でも避けちゃいますよー」
あずさはひょいと避け、虫をモンスターに激突。なんと2匹同時に。
「な、ならばーーーー!!」
続けて、伊織ややよいも回避。

「虫さんが余ったの」
転がってきた最後の虫を掴み…偽領主にポイ投げ。
「痛ぁあああ!!」
虫はゴツリとぶつかり跳ね返り穴の中へ。
偽領主は気絶、持っていた四条の鍵は吹き飛び…
やよいの手に落ちてきたのでした。

828サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十五話 1/3:2009/11/10(火) 00:55:50 ID:HZ0riKMM0
「血をくれよ… お前の血があれば…復活……」
半ば零体になりながら現れた軽口。
「…私だって負けられないんだ!!」


「やはり来ましたね  語り合うときは過ぎました。今は戦いのときです 歌田音様のため、全力であなたと戦う!」
本気で倒しにかかってきた金獅子姫、菜緒。

「ボク、春香さんの強さが大好きで応援してます!歌田音なんて倒して、あなたの王国を作り上げてください!」
「…悪いけどそういうのに興味はないんだ。」
「…残念です。それならボクがあなたを倒し、歌田音も倒しボク一人の王国を作るまで!」
イルドゥンの親友、ラスタバン。


「…何がお前を狂わせたんだ。」
「この先は私一人で行きますよイルドゥンさん。有難う」
「…歌田音様相手に一人で戦うつもりか、春香!!」


春香にも決戦のときはやってきたのでした。



「私にひれ伏すために、舞い戻ってきましたか…春香」
テラスで頬を風に当てていたのは妖魔の女王、歌田音。

「雪歩を取り返すためにも、私の中のあなたの血を浄化するにも貴方を倒すしかない」
「…所詮は人間ですか…くだらない。」

『くだらない』その一言でどれだけ多くの人間が片付けられてきたことか。

「あなたにとっては妖魔も人間もくだらないものでしょう
 でも…みんな生きてる。流れる血が赤くても青くても、みんな生きてる!」

「気迫だけは感じますが……ありふれた物言いですね
 …本番では期待しています」



歌田音は消え、部屋に戻ります。歌田音の部屋…それは針の色の本性たる巨大な薔薇そのもの。
決戦が始まります。

「この力を使うのも最後…行くぞ…」
「来なさい」

「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
春香の髪の毛が伸び、戦闘時のみの妖魔としての覚醒。


「私には、孤独も!!」
半妖の血で作られた赤紫の剣、『幻魔』で神速三段突き。

「自由もある…」
雪歩に最後に買ったお守りに託された力『光の剣』でのロザリオインペール。

「でもそんなことより私が欲しいのはただ一つ!!」
二つの剣を交え『二刀烈風剣』。

「雪歩だけ…!!」
最強の一撃『ベアクラッシュ』。
「アハハハハハハハハハ!!」
激しく血を撒き散らしながら歌田音はそれを防御一つせずに受け止めます。
まるで無限の命を持つがごとく。


戦いが、幕を開けました。
狂おしく咲く薔薇が吸うは、どちらの血か。





一方やよいは4つめの試練に足を踏み入れていました。
勇気の間。
「…………こ、怖いです…」

一面針の山。その中を静かに歩く傷一つない女性。
「…あの時倒したよね」
それはピンクパンチでした。頭の上にはネズミ。バカラで指輪を持って追い回したあのネズミ。
…どうやら、見えない足場が針の山の上にあるようです。

「んっふふ…私はこの見えない床全部見えてますから♪」
とはいえ、彼女は遠くにいるため、
今から針の山に下りて見えない足場をたどってピンクパンチのところまでいけるかというと…
「………飛んじゃいましょうか」

天使・マリーチになったやよいが羽を出すと…
「それは反則ですよやよい殿」
…遠くから貴音の声。どうやら全ては見られてる様子。
「…地味だけど行くしかないわね… はぁ…」
「…い、痛そうですー…」

829サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十五話 2/3:2009/11/10(火) 01:43:48 ID:HZ0riKMM0
地味ながら恐怖を煽る試練を突破して四条の鍵を入手。
これで2Fの試練は全て終了。エントランスへ戻ってきたところで…

「あはは…ごめん、戻ってきちゃった」
ルージュと
「次の任務はHQ潜入となり、シップ手配までの時間に協力いたします」
P765.

「二人とも!大丈夫だったんですね!!」

「……合意の上とはいえ時の君を殺しちゃったよ…
 ブルーとも戦ったんだけど、
 ブルーは心術を覚えていなかったみたいだ。
 持っていた力全てを使って戦ったけど決め手はやっぱり術の種類が1種多かったこと。
 何とか、決着はついたよ
 ブルーは…今は私の中にいる。…どういうことかは解らないけどここで漸く解ったんだ、私達は一人だったんだって」

「……あの、ルージュさん…私達もルージュさんに言わなきゃならないことが」
「…やよいちゃん …やめておきましょう   …何でもありませんよルージュさん」
2人を仲間に加え、ここで美希とあずさが交代。メンバーを加えて次なる試練へ。


戦士の指輪が反応。
戦士の間…そこには、1つの線から2つの線が分かれたような形が2つに続く床と
その末端である4つの線に繋がる4つの階段が。

「あ、伊織ちゃん!来てくれたね 実はここは」
「あらウサちゃん。あなたはここに来てたのね、何なのこの『トーナメント表』」
「…………」

ここは捻りも何も無くトーナメントのようです。
「何か趣向を凝らすべきでしたか…」
貴音は気まずそうにしています。

「それじゃここにしますね!」

一回戦の相手はエインヘリアルと、剣と槍のヴァルキリー2人。
「『神威クラッシュ』!」
P765がヴァルキリーを吹き飛ばし
「『時間蝕』!」
ルージュがエインヘリアルの時間を止め石化。
「『烈風撃』!」
やよいがヴァルキリーを攻撃。…この程度のモンスターなら問題なく倒してしまいます。


次なる相手にいたっては、以前普通に倒していたメカドビー百式が
黒井と戦っていた頃によく戦っていたメカドビーを引き連れただけ。
「『リバースグラビティ』!!」
ルージュがブルーから受け継いだ、低重力により浮かせ、無重力で叩き落す空術の奥義一撃で全滅してしまいました。

そしてトーナメント表の頂点へ。
「…いよいよウサちゃんとの対決ね… 気をつけて、この子の剣は侮れないんだから!」
「あの、ボクただ伊織ちゃん達が優勝したら鍵渡すように言われただけで…」
難なく鍵を入手。


しかし次は難関となりました。

「じゃあ次はこの部屋ですねっ!」
やよいはマーグメルで手に入れた『護りの扉』に反応した扉を開けると…
そこは護りの間。

「…お、お墓ばっかり…」
墓地でした。


「やよいおねえちゃーーーん!わたしたちきてみたよー!」
「このお墓のどれかに鍵が入ってるみたいだからがんばって探してね、やよい姉ちゃん!」


「コウジ、カスミ!?」
よく戦いのごっこ遊びの相手となってあげた、やよいの弟と妹がいました。姿はもちろんラモックス。
「…これはアレかな、お墓の中にモンスターが入っているパターンなのかな」
ルージュは考えますが…

「墓荒らしはあんた達お手の物でしょ? さっさと鍵を手に入れましょ」
伊織はがぱっ…と墓石をずらしますが… …そこには何もありません。人骨もありません。
「…じゃあここかなぁ」
ルージュは別の墓を探しますが、そこにも何も。
「じゃあここでしょうか…」
やよいが探したところも外れ。
「…ここかしら」
律子も外れ。
「ここにも確認できません」
P765も外れ。

…と、ここで。
ちょんちょん、と指がやよいを触ります。
「…コウジー、カスミー、今お姉ちゃんの邪魔しないで!」
もう一度ちょんちょん。
「あ。ルージュさんか律子さんですか?指輪が見つか……」

振り返ると顔のついた盾。
「!!!」
アンデッド最強のデュラハンでした。

830サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十五話 3/3:2009/11/10(火) 02:07:04 ID:HZ0riKMM0
「……これはどういうことかしら…」
律子の後ろにもデュラハン。

「やよいおねえちゃーーーーん!!」
「コウジ、カスミ!!」
コウジカスミもデュラハンに取り囲まれ。
気がつくと部屋全体がデュラハンだらけになっていました。


「お墓間違えるたび増える仕組みだったんだ…!
 は、はははは早く鍵を見つけないと!!」
ルージュは他の墓に移りますが

「ルージュ!そこはもうやよいが探した!!」
「ではここでしょうか」
「そこも私が探した!!あー、デュラハン増えてく増えてく!!」

「ここですか!?」
パニックになりながら墓を探すと…
「あ、ありました!鍵!!」

やっと鍵を入手。しかし…最早部屋はデュラハンまみれ。
「全部が最強ランクモンスター…みんな、戦える!?」
「コウジやカスミを護らなきゃ!!」
護りの間での激闘が始まります。


「はぁぁぁぁ!!『二刀烈風剣』!!」
律子は床に手をおき、風を巻き起こすと飛びあがり…

「そこ!そこ!!そこ!!」
周囲を取り囲むデュラハンを一斉攻撃。

「『グランドヒット』!」
やよいは地面を叩き、ある程度の範囲を一度に攻撃できるグランドヒットで攻撃。

「『ミニオンストライク』!」
アンデッドにはアンデッドを。伊織は部下達を呼び寄せると大量のデュラハンを一斉攻撃させます。

「『陽子ロケット弾』!」
P765は肩の巨大バズーカ『ハイペリオン』から
巨大ロケットランチャーを発射…大爆発。デュラハンを、墓ごと核の炎に巻き込みます。

「『超風』!」
あずさが得意としているものと同じ術。超高熱体の爆発による熱風で部屋中のデュラハンを焼き尽くします。

「…しかしこれではまだ決定打に欠ける…」

「かかれええええ!!」
デュラハンの反撃が始まりました。

「危ない…!!」
デュラハンのランスを何とか律子は『十字留め』で対処…しますが
「…!! …う」
『死の凝視』に5度6度と当てられ律子は倒れ

「危険…!!」
ランスの一斉攻撃にP765は耐え切るのは難しいよう。

「う…!!体が…動けないじゃないの!!」
死の凝視は効かないものの、マヒ凝視で動けず。

「全ての耐性を持っているのは私と君だけか…」
残ったのはルージュとやよいだけ。
…二人は残された手を使います。

「連携、できる?やよいちゃん」
「はい!!」
実はやよいの方が年上なのですが。

「『聖歌』」
「『サンズ』!!」

「おはよう朝ごはん!」
やよいが歌を歌うとその生のオーラはデュラハン達に大ダメージ…
そこにルージュが魔術の奥義を繰り出します。
部屋の中心に直径10mはあろうかというルビーの塊。


それが高速で……衝突。砕け…真紅の嵐となって吹き荒れます。


「ぐおおおおおおおおお!」
「あああああああああああ…!!!」
「さ、刺さるううううううう!!」
そのまま、デュラハンは全滅。…見事、やよいは弟と妹を護ることに成功するのでした。
「やよいお姉ちゃん!!」
「こわかったよーー!」

「二人とも、ここは怖いからマーグメルに戻ってて!すぐに帰るから!」


そして残る部屋は2つ。
「やよいー、自分何かできることあるかー」
「やよいちゃーん、モンド基地に討ち入る前に来てみたわ」

響、いぬ美、そしてピヨさん。心強い仲間が現れました。
「ピヨさん、響さん!いぬ美!」

伊織、P765、律子と交代。残り2つの試練へ向かいます。

831サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十六話 1/2:2009/11/10(火) 02:39:01 ID:HZ0riKMM0
1F左の試練が終わったため、最後に1F右の部屋へ。


扉を開けると、また2つの扉。そのうちの1つは…
生命の指輪が反応しました。扉を開けるとそこには。

生命の間…煮えたぎるマグマのプールの中心に、円形の床。
「暑いよーーー、律子姉ちゃん……」
鍵を手にした、胸を大きく露出した服装をした女の子が円形の床に。
病気から立ち直った、涼でした。
「涼ー!薄着になったらまずい!バレる!!」

マグマに飲まれては危険というやよい達を追い抜くスピードで律子が涼に駆け寄ります。バレるとは一体何のことでしょうか。
「双海さん、パス!」
「あ、はい」

律子は涼を投げ、何とか自分も部屋から脱出します。
円形の床の中心にたどり着いたやよい達ですが……

なんと周りのマグマがうにょうにょと蠢き、やよいを取り囲んでしまいました。
「……マグマスライムね!」
ピヨさんがマグマの正体を見抜きました。

「生命力を削るスライムか…やよいがここで倒れたらマーグメルの救いようがないぞ!!
 やよいの体は小さくてマグマに耐え切れない、何とか君だけはマグマから逃げるんだ!」
「え? …でも」
「何とか自分達でやる!」

「…はい、キラメキラリ!」
隠者の指輪で全員の姿を隠し、溢れるマグマスライムとの戦いがスタートします。

「『ヴァーミリオンサンズ』!」
最初に動いたのはルージュ。

真っ赤なマグマの中心で真っ赤なルビーの嵐を巻き起こし、マグマスライムに大打撃。
…しかし…マグマは復活してきます。

「ぶくくぶく…」
マグマスライムは次々にルージュに襲いかかってきます。
「う…く…!!」
体力を奪うマグマスライムの熱。

「私が相手よ!」
ピヨさんが姿を消したと思うと、マグマスライム達の前に分身して現れ、一斉に払車剣。
『雲身払車剣』でした。


「…それでもまだ沸くか…」
響は烈風剣で攻撃しますがマグマスライムを倒すほどの威力はなく。
「ぶくぶく」
「ぶくー」
「ぶっくく…」
マグマスライムの『マグマタッチ』の嵐が襲い掛かります。

「『ディフレクト』!」
「『かすみ蒼眼』!」

それを響やピヨさんが剣で防いだり斬り返したり。
しかしそれでも全てのマグマタッチを防ぐには程遠く。

「…う…熱い……暑いっていうより熱いですよ…」
全員の体力を奪ってゆくのでした。

その後も、リバースグラビティ、二刀烈風剣などでマグマスライムを倒していきますが…
「…これ倒したところでまた復活しますよね…全部倒したのに」
「何か方法があるのかな…」
一向に減りません。

「うがー!!」
いぬ美はグランドヒットを食らわせますが…一匹を倒すに止まります。

「…いくらやっても…湧き上がってきますよこれ」
諦めかけたその時。

「『神速三段突き』!!」
高速の三段攻撃を仕掛け…マグマスライムを倒すと。

「…マグマスライムが出てこなくなったぞ!!」
「!?」
一箇所、マグマスライムが復活しない箇所が。
「…マグマスライムも無限じゃない!」

そう言っている間にもマグマタッチ。体力の限界が近づいた中…一か八か。


「マグマといえど…朱雀のような完全な炎じゃないんだ…効くはず!『超風』!!」
灼熱の部屋の中に巻き起こる、超高熱の熱風。

ピヨも、いぬ美も…使ったルージュ自身も倒れ
……部屋に残ったのは暑さに強い響と、隠れていたやよいだけ。

…マグマスライムが、復活しません。 …焼け焦げた、固まったマグマがあるだけ。
「…………終わった」


マラソンマッチの末に、涼の手から鍵を手に入れるのでした。

832サガフロンティア×アイマス 第三十六話 2/3(2レスじゃ済まなく;):2009/11/10(火) 03:23:34 ID:HZ0riKMM0
体中の水分が抜けかけたと思った生命の間も何とかクリア。
残るは最後の試練…商人の間のみ。


悪徳から手に入れた指輪を輝かせると…扉が開きました。



「さて次なる挑戦者の方は!?」
スタジオに響きわたる女性の声。
沢山の観客の声援がやよいに向けられます。

商人の間…そこは人気番組『スーパーHIGH&LOW』の収録現場でした。
スポットライトがやよい達に集中します。
「こんな可愛らしいお嬢さんです!」
階段を下りて、スタジオへ。

司会を務めるのは人気アイドルグループのリーダー、へヴンダンサー。

「……あの、私オーディションとか受けてないんですけど…」
「この番組こそが貴音様に挑むためのオーディションですからね!
 さて。お名前は?」
「た、高槻やよいです!」

「やよいちゃん!可愛いですねー 当番組はご存知ですか?」
「あ……はい!毎週見てます!その後のアルカイザーも一緒に!」

「アルカイザーファンでしたか!今日この生放送の後最終回2時間スペシャルなんだけど…間に合うかなー…」
「え!?終わっちゃうんですかぁ!?」
「今週で5週続いたメタルアルカイザーとの決着らしいけど、一体どうなるのかな!?
 …っていう宣伝はさておき。それじゃ言ってみましょうか ハイアンドロー!」



貴音主催のこの番組のルールは簡単。
前に出されたものと後に出されたものの値段を比較し、高いか低いかを当て続けるクイズ。
失敗すると着ぐるみを着せられプロレス技を食らうという罰ゲームつきですが…


…やよいの金銭感覚を侮ってはいけませんでした。
「ではこれから始めましょう!『ツインソード』!!」
二つの大きなディスプレイの左側に、ブルーバックでツインソードが映し出され…

品の説明を長々と視聴者へ向けてVTRで説明。
「これ結構便利なんですよねー、うちのお母さんも使ってました」
「(800クレジット…)」


「ではそれと比べるのはこれです、『刀』!」

二つの大きなディスプレイの今度は右側に、レッドバックで刀が映し出されます。
「ハイ!」
「アンド!」
「ロー!」

でん、ででん、ででん、  だん!
音楽と共に暗転、カメラが回転、スポットライトが集中、スタジオが無音になりやよいに集中。

「(刀は…1390クレジット!)
 ………ハイ!」


…ピンポンピンポン。
正解の音が。


「正解でございます!!幸先いいねやよいちゃん!
 ではこの『刀』と比べるのはこれです! 『コンバットスーツ』!!」

「ハイ!」
「アンド!」
「ロー!」

そして同じ演出がなされ…
「…ロー!」

…ピンポンピンポン!
「正解!!
 ではこの『コンバットスーツ』と比べるのは…
 『サムライソード』!さあいってみましょう3問目!」




…といったやり取りを繰り返し続け…賞金は膨らみ50万クレジットにまで到達。


「…や、やよいちゃん本当に13歳なのかな…本当にお姉さん疑わしくなってきたんだけども。
 いやいや!ほんっと!やらせじゃありませんって!
 
 …あー、次の問題は……うーーーーん…これはね、難しいと思うんだー
 …じゃあやよいちゃん、最終問題に挑戦です!」

833サガフロンティア×アイマス 第三十六話 3/3:2009/11/10(火) 03:24:11 ID:HZ0riKMM0
「この『粒子加速砲』と比較するのは…!」

どどん…!!

どん、どん!!



…かっ!
「パワードスーツ!!」
赤いディスプレイに表示されたのはパワードスーツ。
「…やよいちゃん、ヒントを使いますか?…これを使うと、賞金は半分になってしまいますが……」

「……いえ、使いません!!」
「…そうですか。それでは…やよいちゃん、お答えは!!」



「ハイ!」
「アンド!」
「ロー!!」

最終問題、クライマックスに相応しい演出がなされます。
でん、ででん… でででん…

「いったんCM」
観客から笑い声。


…その3分後。
「さあ、私どもも正解知らされておりません…やよいちゃん、お答えを!」
「…『ハイ』!!」
……やよいを写す以外のライトが消え、静寂。 10秒間の間の後…

「おめでとーーーーーーーーーう!!」
ディスプレイに『○』の文字。
ぱっと明るくなるスタジオ、紙ふぶきとクラッカー。

「…おめでとう、四条の鍵をプレゼントです!やよいちゃん、凄いーー!がんばったね!
 副賞として、番組至上最高額の副賞『パワードスーツ』もプレゼント!おめでとうーーーーーーーーー!!」
「あ、ありがとうございますーーー!!!」

「おめでとうございます!」
何くわぬ顔で出てきたスタッフの悪徳から鍵を貰い、ピンクパンチの双子の妹ピンクショックに賞金を手渡されたのでした。


「やよいーーー!!凄い!パーフェクト!」
「やよいちゃん、おめでとうーーー!」
観客席から飛び出してくるは何故か春香と雪歩。

「!? !? !?!?!?!?!?」
同じく飛び出してきた千早に何故かお姫様抱っこされつつ
やよいは収録スタジオ、商人の間を出るのでした。

「…………あの、春香さん雪歩さん、今までどこに行ってたんですか…」



「…そ、それはその…」
「実はね高槻さん。白百合姫様…じゃなくて萩原さんは、」

「…言わなくていいよ、千早ちゃん。」
「そうそう… …ごめんね、やよい。デートしてたらちょっと道に迷っちゃって」


「…本当にそうなんですか…?何か、傷だらけですけど…」


春香と雪歩は見つめあい…
「…何もなかったよ…ね、雪歩……」
「…そうだね、…春香ちゃん。」
甘酸っぱい空気をかもし出すのでした。
別行動をする、その以前のように。
「………?」


「とにかく、これから四条さんに挑むんでしょ?やよいちゃん、メンバーを決めておこうよ!最後の戦いだもん!」
「は、はい!!」
雪歩は春香の手を取り、皆を集めに走っていってしまいました。


「…何だか、可愛いですね」
「萩原さんが? …春香様…じゃなくて春香と対決したら怖いわよ…」

「そうじゃないんですけど… 何というか、活き活きしてる気がします…雪歩さん」

834サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十七話 1/2:2009/11/10(火) 23:32:44 ID:HZ0riKMM0
こうして、15人が再び集結。最終決戦の時を迎えることとなりました。


「ううっ…、皆さん、私達のために戻ってきてくれたんですね…ありがとうございますっ!」
やよいはガルウィング式挨拶で心からのお礼。

「…でも、いいんですか?皆さんそれぞれ戦いがあったんじゃ……」

「私達はもう追われることもないから、思う存分やよい達に協力できるよ」
春香。
「いや、いいんだ。私はもう帰るだけだし」
ルージュ。
「私は手配したシップの日時までまだ3日ほどありますので」
P765。
「モンドと戦うにもそれなりの準備が要る。出来るならやれることを済まして戦いたいしな」
響。
「ミキはもうジョーカーの正体暴いてボコボコにしたから問題ないよ?」
美希。


あずさ、ピヨさん、真、律子、双海、いぬ美、千早、伊織、雪歩。


15人の心を一つに…彼らは一丸となって…扉の前に立ちます。


「皆さん!これが最後の戦いになります!
 準備は良いですかぁーー!?」


「おーーー!!」


8つの鍵をかざすと扉が開き、一直線に連なる階段に光を注ぎます。
長い旅の終着点。いろいろなことがありました…いろいろな場所へ行きました。
いろんな仲間、いろんな敵、いろんな文化。
それでもまだまだ、やよいが世間を知ったとは言えないのかもしれませんが。

段差と同時に上がっていく心拍数。
いよいよ…

指輪を求めるやよいの旅の、最後の戦いが始まります。




ガパッ…。




炎を背にトリケプスの玉座に座る指輪の君、四条貴音。



「とうとう来ましたね、『指輪の挑戦者』よ!!
 さぁ、私を楽しませてください!!」

話すことはもう、ありません。
以前の戦いからの成長も、戦いの様子も全て、彼女は見てきたのですから。
何より、異なった顔つきが全てを物語っています。

荘厳な雰囲気のムスペルニブルの金色の館の頂点にて、戦いは幕を開けます。
「いきます!!」





貴音を倒す方法は、連携のみ。

835サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十七話 2/2:2009/11/10(火) 23:33:39 ID:HZ0riKMM0
「「「乱れ雪月花!!」」」
開幕を告げるは前回不完全だった3連技から。


「いきますぅ!!」
雪歩が繰り出すはワカツ流剣術奥義之壱『風雪即意付け』。

乱れ雪月花の始まりを告げる『雪』の太刀。

周囲の熱を体に吸収…辺りを低温にした上で
一瞬にしてそのエネルギーを爆発させるが如く…
一足飛びに貴音の元へ踏み込み相手を凍りつかせる一太刀を繰り出す。

「次は私!!」
律子が繰り出すはワカツ流剣術奥義之弐『月影の太刀』。

乱れ雪月花の要、前と後ろを繋ぐ『月』の太刀。

体勢を低くして凄まじい勢いで駆けながら、
敵の目前にして反対へ足を踏み込みぴたりと動きを止め、
その勢い全てを太刀に託して下から上へと激しく切り上げる。

「そして最後ですよ!!」
春香が繰り出すはワカツ流剣術奥義之参『三花仙』。

乱れ雪月花・堂々たる最後の華、『花』の太刀。

刃を上へ向け、両手で力強く握り締め
走り寄り踏み込んだその力を地面へ向け解き放ち、
急激な上昇と共にただただ真っ直ぐに、それでいて全ての力を剣に込め飛びあがる最強の一撃。


「……これ…が…!!」
連携しないことはおろか、順序が異なっても発動しないワカツ最終奥義が今炸裂しました。
開幕から貴音に大きなダメージ。

「『グリフィス』」
「『神速三段』」
「『ハイドビ』」
「『草薙の剣』!!」
グリフォンの大きな爪撃を吸収して得たいぬ美の技。
大きな黒竜となったいぬ美がその力の限りに貴音の肩に爪を食い込ませ

響は爪により止まった貴音を一直線に突き飛ばし、腰から突き上げ…
背の上に立ち力いっぱいに突き落とし


連携の繋ぎとしてはこれ以上最適な技術はありません。
美希が分身を貴音の背後へ送り込み

伊織が向けられた貴音の背へ向かい伝説の剣での一太刀。


「……やります…ね しかし!!」
貴音が反撃に出ます。


「させはしない!!」


「『タイガー』」
「『シュトローム』!」


双海の得意技、猛虎の如き拳打の嵐タイガーランページ。

そこから千早のメイルシュトロームを連携させる…
つもりが。


貴音が空間を跳躍、千早の前へ。
「!!!」
「『リーパー』!!」
手に持った魔の鎌で千早の体を一息に斬り刻んでしましました。
「…う…」
妖魔でなければ死亡しているところでしょう。


…どの道、一瞬で千早が戦闘不能に陥ってしまいました。

836サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十八話 1/2:2009/11/11(水) 00:02:46 ID:GEeWF6uY0
「『シルフィード』!!」
鎌を手に持ったまま、左手でやよい達へ向けて凍てつく冷気。

「冷たいですーーー…!!」
「っきゃああああああ!!」
「これは堪えるわ…」


そこにピヨさんが割って入ります。
「『乱れ雪月花』!!」

3つの奥義を一人の体の中で体現した技。

「雪!」
周囲の熱エネルギーを奪い、凍てつく刃を振り下ろすと
「月!!」
それをそのまま三日月の形に振り上げ…
「花!!!」
その勢いを加速させ、回した刀を力強く踏み込み、高く高く空へ打ち上げる技。



「………これが、真のワカツ流最終奥義!!」

しかし…。
「素晴らしい…しかし、」


堰を切ったようにピヨさんの体からは鮮血の花が。
「…一度お見せ頂いた技…、二度は通用しませぬ」

ダガージョウでカウンター、さらには全てを防御していたのでした。


「…う………っ!!」
「まだ続きますよ!!」


竜巻で全員を巻き上げ、真空の刃の檻で切り刻むあの攻撃。
「食らいなさい!!」


これを避ける術は存在せず。
「っきゃあああああああああああ!!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」
「あああああああああああああ!!!」




叫び声と耳を劈く轟音が木霊する、風で出来た塔。
「……!!」

竜巻が収まり、赤や青の血が部屋に撒き散らされ、
14人全員の体も壁へ散り散りに叩きつけられます。

しかし。

「………う」
「…何とか耐え切りましたよー」
「私も大丈夫…」

全員がそれに耐え抜きました。
「…何たる生命力…!!」


大技を放ち貴音に生じた隙を見逃しません。
「私が一気に決めてみせる…」


ルージュは両手で魔力を集めると……
それを空に向かってかざします。
「『オーヴァドライブ!!』」



その瞬間、ルージュ以外の何もかもが凍りつき……
辺り一帯全てが歪み、消滅……ルージュと動かぬ貴音のみが時空の彼方へと移動。


異なる時空へと切り離されます。


激しい磁気嵐の吹き荒れる時空の彼方へ…

ピシャリ!!

837サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十八話 2/2:2009/11/11(水) 00:04:13 ID:GEeWF6uY0
…音がすると、そこは時空の果て。時の流れが雲のように流れる巨大な時計の中で、
ルージュと、固まった貴音だけがそこにいました。


そう。『オーヴァドライブ』は時間をとめ、対象に向かい一方的に魔力の続く限り攻撃を繰り返すことの出来る究極の時術。

「ふぅ…」
ひと呼吸の後……
「はあああああああああああああああ嗚呼アアアアアアアアアアア!!!」

ルージュは狂ったように術を繰り出します。



「『ヴェイパーブラスト』!」
「『生命波動』!」
「『超風』!」
「『剣』!」
「『ヴァーミリオンサンズ』!!」
「『ダークスフィア』!!」
「『ジャッカル』!」
「『リヴァイヴァ』!」
「『停滞のルーン』!」



まず、空術の基本術であるヴァイパーブラストを発動。
大気中に、空間的にあり得ない場所から物質を創造、金剛石の槍を四方八方に生み出し敵を貫き串刺しに。

生命波動は春香も得意としていたもの。
気を集めて金に輝く槍を生み出し、貴音に向かって投げつけ貫きます。

超風はあずさが苦闘の末習得したものと同じ。
膨大な熱量を持った小型太陽を発生させ、それを大爆発させ数万度の熱風を送り込みます。

剣は秘術の基本術でありながら中核を担う術。
カードから3本の剣を実体化させ、貴音を鋭く突き刺します。

ヴァーミリオンサンズは魔術の上級術。
直径5mはあろうかという巨大な魔力の塊でもあるルビー3つを衝突させ、粉々になったルビーによる真紅の嵐に貴音を巻き込みます。

ダークスフィアは美希も得意としていたもの。
高い重力を持つ暗黒のエネルギー弾を作り出し、貴音に向かって投げつけ包み込みます。

ジャッカルは妖魔にしか使えない幻夢の一撃の一部…これはアイテムによるもの。
黒き魔の獣を呼び出し、貴音に食らいつきます。


リヴァイヴァは再生術。自分が倒れた時に復活する保険…
そして停滞のルーンを唱えると…全ての魔力を使い果たし、ルージュと貴音は元の空間へと戻るのでした。


時が動き出します。二人は遠い遠い時空の果てから戻り…

ムスペルニブル、貴音の館へ。

「あれ!?………凍って…ますよ」
やよいが気づきます。

「ルージュさんも…貴音さんもですね これは…『停滞のルーン』!!」
「『停滞のルーン』…?」


相手と自分の両者に、物質として、そして精神すらも完全に停止させる術。
…暫くの間、両者は外部からどんな接触があっても動くことも、傷つくことも、何もありません。
完全に空間から切り離された状態といっていいでしょう。





「…い、一体何が……!!」
数分後、魔力を使い果たしたルージュと共に貴音が全身焼け焦げ、傷だらけの状態で硬直が解けた際には…
ルージュを除く全員が、傷を癒し、能力を増強した状態で待ち構えていたのでした。

「今だよやよい… さあ、決着をつけるんだ!!」

838サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十九話 1/2:2009/11/11(水) 00:43:59 ID:GEeWF6uY0
ルージュが全ての魔力を使い果たし…技を出せなくなった所で
やよい達は挑みかかります。
しかし…
貴音も死力を尽くし応戦します。


「『スクリーム』!」
手から超音波を発し律子を叩きつけ

「いかずちよ!!」
雷を槍のように春香の上に落とします。


そしてそのタイミングを待っていました。
「D・S・C!!」

真が聞きなれぬアルファベット三文字を叫ぶと


真は貴音に向かい、矢のように走る『スライディング』を。
「う!!」

スライディングから一瞬にして立ち上がり、逆に踏み込み戻ると貴音を持ち上げ、頭から床に叩きつける『スープレックス』を。
「あぁあ…!!」

そこから貴音を抱きかかえ、飛びあがり地上に打ちつける『バベルクランブル』。
「ぐふっ…」

そして貴音の足を持ちぐるぐると振り回し、投げ飛ばす『ジャイアントスイング』で空中へと放り出し…
「あああああ…」

その貴音に飛びつき捕まり、ぐるりと回転、貴音に二人分の体重を乗せて一気に頭から地上へ叩き付ける『スウィングDDT』。
「な………!!!」


「これがデンジャラス・スープレックス・コンボ!略してDSCだ!」
反則級の威力を持つ最強の体術をここに体現したのでした。
これもまた連携。貴音には堪えます。



「しかし私はこの状態からでもあなた方を倒すことが可能…
 食らいなさい…!!」
竜巻を二連続で放つようです。
手を思い切り振るうと全員が気流の檻に巻き込まれ全身を切り刻まれます。

「っきゃああああああ!!」
「ああああああ…!!」
「うううううううっ…!!」


そしてもう一発放とうとしたところに…
「うおおおおおおおおおおお!!!」


響が突進。
「連携もせず自ら倒されに来たのですか!!」
それに応えるように、貴音は後ろへと浮き上がり、助走をつけて響を突き飛ばすように滑空。
「『グランダースパイク』!!」


しかし…
「う…!!」
盾でそれを防御。こう来ることは計算のうち。
しかし…響はそれでもダメージがあまりに大きく…その場に倒れてしまいました。

「今ですよ!!」
「!!!」

839サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三十九話 2/2:2009/11/11(水) 00:44:37 ID:GEeWF6uY0
やよいの一声。


「『跳弾』
 『次元衛星』
 『ロザリオ』
 『無月』
 『ヒット』!!」



あずさがイクストルから手に入れたブリューナクとリーサルドラグーンを放つとそれは部屋中に反射し、
威力を大幅に増し……貴音の背に命中。

P765が衛星とリンクするサテライトリンカーシステムを起動、リージョンの外から膨大な熱量を注ぎ込む
巨大レーザー砲を貴音の部屋に向かい発射、貴音の体がエネルギーの筒に飲み込まれ

そこに春香の得意とする、4人の分身で地面に打ちつけた後本人が上から降り聖なる光と共に敵を張り付け焼き付ける最強技ロザリオインペール。

続けてピヨさんが編み出した我流究極奥義、4人に分身したピヨさんが力の限りに貴音を恐るべき速度で滅多斬りにし、
4人の分身で息を合わせ貴音を切り上げ空に放り出したところでピヨさん本人が空中から最強の一太刀で叩き落し、闘気の炎で包み込む『無月散水』


そして最後に、究極形態になったやよいの渾身の一打、『グランドヒット』を貴音に当てると……




「………う………!?
 ……く…あ………  ・・・あ」


貴音はそのまま動かずに…



「…う」
ガクリと椅子に倒れ込んだのでした。



「仲間と繰り出す、連携…これが私の見たかった闘い…
 …見事な闘いでありました…高槻やよい!」


爺やによって傷が癒されると、彼女の指から…指輪が取り外され、
やよいへ。


「…わあ、あああ…あああああ!」
9つの指輪が全て、揃ったときでした。

「貴音さん、ありがとうございますっ!!」


「……よい仲間を持ったのですね、やよい殿。
 …さあ、早く同朋の待つ故郷へ。私が送ってさしあげましょう」



…そして、やよいは………


マーグメルへ、帰ったのでした。

840サガフロンティア×アイマス 第四十話 1/3:2009/11/11(水) 01:18:46 ID:GEeWF6uY0
貴音との壮絶な戦いが終わり、
いよいよやよいはマーグメルへ戻ってきました。

「あ、やよいおねえちゃん!!」
「やよい姉ちゃん、おかえりー!」
一足早く帰ってきたコウジ、カスミの姿も。

「凄い姿になったんだなー、やよい…」
仲間達も出迎えてくれる中……



「…………おお。やよい君…帰ってきたのか!」
帰ってきてもやはり長老は真っ黒。

「はい、全部の指輪を集めました!」
やよいの周りに輝くのは9色の光。

…長老は、言葉すら出ないようでした。
「おお… …おお…」

「…ありがとう、…ありがとう…! 君はとうとうやり遂げたんだな、やよい君…」

「さぁ、マーグメルを救ってやってくれ…高台に立って!」
「え?長老がするべきなんじゃあ…」

「ははは、何を言っている。君がやるんだよ、やよい君
 さぁ、行きたまえ!」



…そして、やよいがいつか見上げたあの高台へ。
もう、地震で倒れることはありません。

こうして、マーグメルを救うのですから。
「……」

高台の崖の上に立ち、やよいは…指輪を指にはめ、手で空を切ります。


「…マーグメルよ、よみがえれ!」
ずっとずっと願い続けた言葉を、今ここに。

…多くの敵と戦い、多くの仲間と出会い、多くの悲しみと多くの喜びを分かち合い、
そしてとうとう…帰ってきたのです。旅人となって。

そのとき。


空が…真っ青に染まってゆきます。

溶岩が引いていき…土が活き活きとし、花が色づき、鳥の鳴き声が聞こえる。

草花で覆われた、美しい楽園が。



それは…マーグメル。昔の、マーグメルなのでした。
「おばあちゃん…」

「これが、おばあちゃんの知っているマーグメルなんだね……」





…その時です。




…タン。




銃声が、静かな楽園に轟きます。
「………」


やよいは自分の腹を見ると……銃弾の跡。…流れ出る血。
「…あ、」





そのままやよいは…バタリと倒れ、崖を転げ落ちていきました。

841サガフロンティア×アイマス 第四十話 2/3:2009/11/11(水) 01:20:35 ID:GEeWF6uY0
「…………案外あっさりしてしまいましたねぇ。…いえ、マーグメル復活のことですよ?」


火を吹く銃口。

「きゃああああああああああああ!」
「わあああああああああああ!?」
コウジやカスミが消滅していきます。

「ふふ、ふふふふ…」
真っ黒な影となって、次々に。

「……どうして」
「何でなの」


「………やよいちゃんの願いどおりですよ?
 『戻った』んです マーグメルは。  …願いのままに そう、『生まれたままに』」


「マーグメルが生まれたとき… あなた達は、生まれていなかったのねー」



「………指輪のこと、ずっと調べてたんです」


淡々と話していきます。
「………遥かなる古代にマジックキングダムで生まれた指輪。
 人々はあるリージョンを地下に生み出し、楽園を作ろうとしました」





「しかし、その大きな力が災いし、その場所は地獄へ一変。
 そのリージョンを封じるため、マジックキングダムは沢山の犠牲も厭わぬ場所となりました」



「全ては、人々の欲望が生み出した結果…こんなごちゃごちゃした世界ですもの
 欲望に満ちていて…その欲望が人々をここまで導いてきたといっても過言ではありません」



「そして、数千年か数万年か…途方もない時間の間世界の欲望を吸い続けていた指輪。
 その力は… 今、ここに!」


ルージュは…彼女を見据えます。
「…なるほど、あなたが来た時には学院を襲撃した人物の噂がなかったわけだね」
真は…信じられない様子でした。
「……あなたが、……あなたが全て…考え出したことだったっていうんですか」


指には、『マジックキングダムで買わされた安物の指輪』
苦しむやよいの腕を踏み、指から指輪9個を外し、奪い取るは……
…チャイナドレス。おっとりとした声。


「…あずささん」

842サガフロンティア×アイマス 第四十話 3/3:2009/11/11(水) 01:21:31 ID:GEeWF6uY0
あずさは笑みを絶やしません。
「今まで、ありがとう…やよいちゃん」



「みんなきえちゃうけど、マーグメルは元通りねー…
 これで、指輪の研究も最終段階です。…ありがとう。」


「……いや、です…」


土を握り締め、立ち上がるやよい。



「今気づきました…私、バカでした…
 私は、今まで…マーグメルのために戦ってきたんじゃないんだって…」



「マーグメルに住む、みんなのためにがんばってきたんです!」
「あら、そうだったのー?」


立ち上がったやよいに銃弾を二発、三発。
「…でも、今更やめるわけにはいかないのよ
 これさえあれば、何でもできる… 現に…真ちゃんの運命を改ざんし、タンザーで生きているように変えられたのですから」

「…あずささん……」


「指輪が消えても真ちゃんは死にません、もう…事実ですから。
 だから…もうじき…マーグメルのみんななんて、最初からいなかったことになっちゃうわね」


「…いやです!!」
「あら、元気ね?」

やよいの額をこずくと、凄まじい勢いで突き飛ばされ、マーグメルの高台へ一直線。
ドシャッ!!という音と共に、やよいをその場に倒してしまいます。



「……苦しくても、相手が誰でも、私…!!」

「私、戦います!みんなを助けます!!」



「例え、あずささんが相手でも!」




「高槻さん、しっかり…!」
千早はやよいに回復術を施し、回復。

「…あずささん、目を覚ましてくれ」
「あら…真ちゃん」

やよいだけではありません。
あずさを囲う全員が、武器を構え戦闘の構え。

「あらあら…♪」


「やってみましょうか?

 …指輪の力に、勝てるかしら………」




こうしてやよい達は、最後にして最強の敵… あずさとの最終決戦をはじめるのでした。

843サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十一話 1/2:2009/11/12(木) 00:47:05 ID:oejNbPa.0
9つの指輪が全てあずさの手元に。

黒き、真の力の指輪とあわせ10.
サイズを自在に変え、両手の指全てに収まると…


「世界で輝く光…『キラメキラリ』」

9つの光があずさを囲い、あずさの体が宙に浮きます。


すると、9つの光は全て生命体の形となり実体化。
リビングアーマー、タイタニア、グレムリン、ティディ、ユニコーン、ライダーゴースト、キマイラ、リッチ、マリーチ。

いずれも指輪が具現化した存在。
…つまり、実在する同種のモンスターとの戦闘力差は比較にはならず。



「14対10か…一人一体ずつ相手をしてくれ!
 やよいやボク達5人であずささんと戦う!メンバーはやよいが決めてくれ!」
「い、いきなり振られても困ります…
 じゃあ、私、真さん、春香さん、ピヨさん、ルージュさんで!」


指輪の力で空間が歪み…戦いの場へと変化。



指輪の作用によりあずさのチャイナドレスは黒に。
金の翼が生え……『マスターリング』指輪の化身へと変化します。



「ライダーゴースト…これは下級のモンスターじゃないのか?」
響と楽器の形をした亡霊、ライダーゴーストの対決。


「形で我らを判断するとは」
ライダーゴーストは一直線に響に向かい突進。

「…うぁ…」
響は足を取られて技を出せないでいます。

「こあぁぁぁ!!」
そのままライダーゴーストは超音波を発します。
「…う…」

しかしやられてばかりではなく。


「『デッドエンド』!」
走り寄り右へ、続けて左へ斬り…
最後に飛びあがり斬り伏せる。


「跪け!!」
『マヒ凝視』。強い眼光に当てられた響は動きを封じられてしまいます。


「……負けるわけには…いかないさ、やよいだって頑張ってるんだ!」

呪縛を振りきり、
響はライダーゴーストへ向かい『柳枝の剣』。
飛びあがり、ライダーゴーストの手前で切り上げて浮かせ…全体の動きを止める攻撃。



「それに…」
響は敵の頭の高さに飛びあがり、体重を乗せて最強の一撃『ベアクラッシュ』。


「吸われるがいい」
ライダーゴーストが『ゴーストタッチ』を繰り出そうとしますが…


「モンドと戦う前にやられられないさ!!」
『かすみ青眼』でカウンター。


「……あずさ、元に戻るといいな…」
神速三段突きを繰り出し、ライダーゴーストを撃破します。

844サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十一話 2/2:2009/11/12(木) 00:49:09 ID:oejNbPa.0
「う……強い…」
いぬ美はユニコーンを相手に苦戦していました。

ユニコーンがいぬ美に向かい角を繰り出そうとしたその時。
「いぬ美ーーー!」
ディフレクトで攻撃を防いで現れた一人の女性。
彼女の家族である…
「響さん!」

響でした。


「増えたか…」
ユニコーンはひずめを鳴らすと『エナジーチェーン』を詠唱。
いぬ美を魔力の鎖で刺してしまいます。

「離せ!」
響は『天地二段』でユニコーンを攻撃。


「守られてばかりじゃいられませんよ」
黒竜の声でいぬ美も『ファングクラッシュ』で追撃。


「指輪の力は絶対…」
自分の生命力をスターライトヒールで回復させてしまいます。


「指輪が絶対なら、今までこんなに苦戦することもなかった!」
響といぬ美は連携攻撃。
「『濁流』
 『ヒット』!」

響は5人に分身し荒々しい動きでユニコーンを囲み、交差し切り刻む。
そこにいぬ美が大地を叩く『グランドヒット』でユニコーンを追加攻撃。撃破に成功します。




「防御力が極めて高いと判断…『陽子ロケット弾』」
P765はハイペリオンから巨大ロケット弾を発射。リビングアーマーに命中、大爆発を起こします。

「無駄だ…」
術・サイコアーマーで防御力を高めるリビングアーマー。

「音波プログラム『無範奏ソナタ』!」
物理攻撃が聞かないと知るとP765は次の攻撃へ。
ボディから、物質を破壊する音波を発生させ相手を攻撃するというもの。

「龍虎プログラム『タイガーランページ』!」
続けて激しい拳打の嵐でサイコアーマーを攻撃。


「……無駄だ」
またもサイコアーマー。それでも硬い装甲には傷一つつけられません。


「…………ボディ耐久力計測……  ………実行」
自らのボディがどれだけ衝撃に耐えられるか。

それを見定めた上での攻撃。それには、それ相応の覚悟が伴っています。
「『神威クラッシュ』!」
光をまとって一直線に突進。飛び散る火花、ボディパーツ。


「『神威クラッシュ』!!」
また一発。ボディがどんどん剥がれていきます。

「『神威クラッシュ』!!」
「『神威クラッシュ』!!」
「神威クラッシュ」!!」

相手の攻撃も全て防御もせず食らい、そのまま突進の機会に変えます。
…防御すらしないのは何故か? …ダメージはボディだけではなく、コアを削るものだから。


相手の耐久力までは測定していません。
…賭けに等しい。しかし、早く勝利を得るには他に方法は無い。
「『神威クラッシュ』!」
「『神威クラッシュ』!!」

そして…コアが限界に近づき最後の一撃。これで壊れなければP765は限界。これで勝てなければ…
リビングアーマーはともかくとしてP765の死は確定。

「『神威…」
「見てられないな」
リビングアーマーに突如として紫の剣が降りかかります。

「はぁ!!」
その一撃で…リビングアーマーは剣へと吸収されました。…双海です。
「…まだ、医学者の目の方が正しかったか
 戦いは止めなさい…自分の体は大切にすることだ」


「…いえ、双海様、私も協力いたします」
「…いや、いい。私の戦いももうじき終わるところだ」

845サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十二話 1/3:2009/11/12(木) 02:08:14 ID:oejNbPa.0
双海の相手はグレムリン…妖魔。
「裁かれよ、裁かれよ、裁かれよ…」

敵は落雷を次々に落とし、双海を攻撃。

「……ふん」
双海は白衣を翻し、回復。


「その程度の能力では完治できまい」
グレムリンは続けて、毒の込められた爪を食い込ませます。


「……………『杯』!」
秘術の一つ、あらゆる病を完治させる杯のカードの力を用います。

「防戦一方だな」


闇の力を纏った手で触れます。
「…く……」


何せ、相手は姿を消していて…どこから現れるか解りません。

「…」
タイガーランページを放つのは容易。
しかし…外れるのです。…こちらの動きが読まれている。

一度硝子の盾でカウンターしたものの、相手には術を使うタイミングがバレ…
それ以降は効果を成しません。


「…仕方ない」
幸いにして、彼は職業から、アイテム係としてバックパックを任されていました。
あらゆる道具を取り出し、使用することができる。

「最後に頼るのがこんな道具とは思って居なかったな」


文句を言いながら取り出したのは…『精霊石』。
「は!!」

投げつけると術エネルギーの塊が地面と衝突、大爆発を起こします。
この爆発は大規模。
消えているだけでは回避することは以って不可能。

グレムリンが…青白い光の中から姿を現します。


「『マヒ針』」
そしてまた道具を。手からすぱっと針をダーツのように、グレムリンの心臓めがけ一撃。

「…う…」
動きを封じることが出来ました。



「『タイタスウェイブ』!」
具足で地を踏み鳴らすとグレムリンに向かい一直線に衝撃波が走り、上空へと弾き飛ばします。


「指輪が欲望を吸うというならこの攻撃も効くはずだ…
 『金貨』!」



カードを宙へ投げつけると、辺り一面に膨大な数の魔性の金貨があふれ出しました。
「…………!」

マヒしたまま落下した体は指輪の化身であるグレムリンはその上に落下。
「お、おおお…おおおおおおおおおおおお!!!!」

魔の輝きに眼を奪われ……貪り食われ………消えていったのでした。

846サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十二話 2/3:2009/11/12(木) 02:08:46 ID:oejNbPa.0
「君の仲間、IRPOで見たことあるの。
 なんか、髪型ミキに似てるよね」

「…」
言葉は返ってきません。普通のティディとは違い、
指輪の化身だったのですから。



「貫かれろ」
ティディは毛を逆立て、針のようにして投げつけてきました。

「わ…!?」
美希は特殊な盾、ワンダーバングルでそれを防御。

「何をするの!」
盾を構えたままティディへ走り、
『ロコモーションG』。

ティディの体を抱えたまま、後ろへ激しく叩きつけます。
「やぁあああ!!」
それだけでは済まさず、前へ。
「うりゃああああ!!」
また後ろへ。また前へ。


がつりがつりと次々にぶつけますが……
「う…!!」

鋼鉄の如き硬さの毛針が手にびっしり。
「おおお!!!」
ティディは体を広げ、全身を鼓舞。体を大幅に強化した上で


「はっ!!」
美希めがけ爪を振り回しますが…
「…あ!」

それはフェイント。
「うううう…!!」
ティディは体全体でそのまま突進してきました。


「………あ、…ううう…!!」
何をするにも邪魔になるは全身の、針のような毛。


「流石にミキでも、こんなに激しい髪はしてないの」
美希は手からどくどくと血を出したまま、攻撃方法を変えます。


「『集中連射』!!」
美希は本業は陰術ですが、剣術、体術、銃技どれもそこそこには使いこなすことが可能。
…しかしそれ故の、いわゆる器用貧乏。

銃を握るにも剣を握るにも相手を殴るにも『技』に必要な、手が封じられてしまいます。


「それなら…!」
宙へ飛びあがり、空気を蹴ってティディの頭へ向かい叩き付けるように蹴る『三角蹴り』。
「えい!!」
投げ技の基本、相手に触れずして相手を投げる『空気投げ』。


攻撃を封じることは出来た。後は…
「『ダークスフィア』!!」

闇のエネルギー弾をぶつけて攻撃するだけ。

しかし…
「『サイ・リフレクター』」
相手はダークスフィアを跳ね返し、美希へとぶつけてしまいます。

「っきゃあああああああああああ!!」
闇のエネルギーに取り込まれ、身動きが取れないまま四方八方からの高重力で押しつぶされそうになります。
「………サイ・リフレクターの機能は確か…」

術すらも防がれてしまいました。
美希には全体攻撃の術など持ち合わせていません。


………痛みを怖がってはいられないようです。
「腕、持つかな…」
ティディはこちらへ向かってきます。

…的は大きくなりました。
血のしたたる腕で銃を握り、正確に狙いを定め……

「『十字砲火』!!」

ティディの小さな体にはこういうときでなければ当てるのは困難。
頭、腹、左肩、右肩の順に発射…そして
「やあああああ!!」

最後に胸へ発射。
ティディを吹き飛ばすことに成功します。


「………いた、た……」
激痛でその場に、美希は倒れてしまいましたが。

847サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十二話 3/3:2009/11/12(木) 02:09:52 ID:oejNbPa.0
「は!!とう、ったぁぁあ!!」
先ほどから剣で、蛇頭と切り合いをしているのは律子。


「かなりしぶといわね…」


合成獣キマイラ。
熊の上半身をベースに、腕に2匹の蛇頭、足に蛙の足と牛鬼の上半身を備え付けた怪物。


「う…」
その跳躍力は恐ろしいもので、律子の遥か真上から攻撃し
「は!!」
正確に相手を捉え、牙で剣を受け止めます。



「ヴァオオ!」
「!!」

全身4箇所の口からの一斉咆哮『スクリーム』。
律子の体は吹き飛ばされ
「『ヴァアアアアアア!』」
左腕から発せられる高温ガスの餌食となってしまいます。


「…あっつ……い…!!
 …何なのこのモンスター…」

熊の腕力で激しく蛇頭での強打。

「…!!」
頭がくらくらする中、蛇頭での『ファングクラッシュ』が襲います。

しかし…
「まだまだぁ…!!」

相手の牙を受け止め、そのまま激しい勢いで切り刻みます。
「『喪神無想』!!」
反撃が始まります。

「『二刀烈風剣』!」
飛びあがり両手の剣で剣撃を飛ばす攻撃。


これによりキマイラの二つの蛇腕へと攻撃。
しかしキマイラはその脚力を活かし跳躍…

「!」
律子を押しつぶそうとします。

「『ライジングノヴァ』!!」

ここで春香から習った技。

押しつぶされる瞬間、空中戦のまま相手を切り刻み…
「はぁぁ!!」

最後に剣を突き刺し、離れる。
激しいエネルギーを纏った剣は相手の手の中でその力を爆発させ、敵を内部から焼き殺す。
「……ど、どう…」

まだ一発必要な様子。

「『十字留め』!!」
しかし後は必勝の型。

二つの剣で相手の『ファングクラッシュ』を防いだ後…
「『二刀十字斬』!!」

二つの剣で縦へ、横へ。


「わ、我が体を以っても敵わぬというのか…」
キマイラの体が四散しました。

848サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十三話 1/3:2009/11/12(木) 03:25:06 ID:oejNbPa.0
「くっ」


千早が相手していたのは、千早とは対照的なスタイルの持ち主、女性妖魔『タイタニア』。
鞭を巻きつけ、千早の動きを封じていました。


「そのまま斬り殺してやるわ!」
「そうはさせません…!」
シャドウダガーで鞭を破壊、タイタニアへ向かい『ヒートスマッシュ』を一撃。


「それならば…欲望に逆らえぬ妖魔として欲望の糧になるがいい」

翼を広げ、飛びあがり千早の肩を一噛み。
「う…!!」

「まだまだ…!」
「やめなさいっ…!!」

妖魔の小手での拳打、『タイガーランページ』で振りほどきます。
「…それが、あなたの最強の攻撃ね…」


「私の本分は妖魔武具ではありません…『ミラーシェイド』!!」

辺り一帯に自分の分身を発生させ、攻撃を読まれにくく…また、回避力を上昇させます。



「『幻夢の一撃』!」
ジャッカルを召喚、タイタニアに向かい牙での一撃を与えます。


「煩わしい…!!」
タイタニアは呪いの歌により千早を深い眠りに引きずり込もうとしますが…


「…効きません」
「…最初から片っ端から当たっていったほうがよかったようね」

鞭をしならせ、分身を一つずつ消していきます。
「『幻夢の一撃』!!」
合計で3度唱えます。ジャッカルに続いて出てきたのはコカトリスにリーパー。

呪いの瞳に、死神の鎌。

次々に繰り出していきますが…
「う…!!!」

分身を破られました。…千早の胸元に、激しい牙が。


「……でも、体力を消耗しすぎましたね…」
紫の剣を取り出すと……


「吸われるのはそちらです…!!!」

腕を掴んだまま、構え……左肩から右わき腹までをザクリと両断。


「あ、ああ…ああああああああ…!!!」

…本来あり得ない出来事。
妖魔タイタニアは…千早に吸収されてゆきました。
「………」
歌田音に立ち向かいに行った者の中で、特に妖魔武具に多く力を吸わせていた千早。
千早の持つ妖魔の剣は…他の者とは全く異なる力を手に入れていたのでした。

849サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十三話 2/3:2009/11/12(木) 03:26:31 ID:oejNbPa.0
「骸骨同士、仲良く戦いましょうか…」

伊織が対峙するは死せる高等術士、リッチの姿をした指輪。



「はぁぁぁ…」
死の化身とも言って過言ではないリッチ。

デスグリップに、デスタッチ。
…すでに死んでいる伊織には全く効果をなさず。


「草薙の剣!!」
「『ミニオンストライク』!」

世界最強とも言わしめた剣に、大勢のシュライク兵。
リッチを相手に、伊織は優勢を保っていたのでした。


しかし…
「…う…!?」

何かの音が聞こえてきました。『聖歌』。

己の使う技でもありながら、アンデッドである自分にこれほど有効なものもない。
……伊織の体が徐々に崩れ始めてきました。


「伊織ちゃん!!」
雪歩が戦っていた相手のものでした。

「…雪歩」
「私の相手はやよいちゃんと同じモンスターのマリーチ。
 それと、伊織ちゃんの戦ってたリッチに今私達は挟まれた形になってるの
 相手を交代させられたら伊織ちゃんは危険だよね……」

己の目を閉じ、周りに沢山浮かんだ目玉で物を見る天使マリーチ。


「けどマリーチは死者も生者も同時に攻撃することができるの、死の凝視があるから」
「…まずいわね」

「二人で同時に、一人ずつ戦うことにしよう …その方がきっと効率いいよ」
「リッチからの方が余計なことされずに済むわね!」


雪歩は、ファシナトゥールでの戦いで得た『金獅子の剣』、
伊織は昔から持ち続けている『草薙の剣』を構えます。


人間界最強の物質剣と、妖魔界最強の物質剣。
つの最強の剣がそろい、リッチへと向かいます。

850サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十三話 3/3:2009/11/12(木) 03:27:01 ID:oejNbPa.0
「いくよ!!」
雪歩が剣で動きを止めたところで
「『草薙の剣』!」
頭に振り下ろしリッチを撃破。


「…背中が開いていますよ」
マリーチが槍を取り出し、伊織に突きにかかってきました。


「危ない!!」
しかし雪歩は『ディフレクト』で伊織を庇い、攻撃を防ぎます。

「…悪いわね」
「こういうときはお互い様だよー」


ディフレクトをしたのは『光の剣』。
金獅子の剣すらも超える、究極の破壊力を持つ魔法剣。

「『超風』
 『ブレード』!」


超高熱の熱波と、草薙の剣での剣撃の連携。


「………黙りなさい」
舞い散る羽の中で、マリーチの目は真っ直ぐに雪歩を睨みます。
「…雪歩」

片足が痺れ、動けなくなります。
「…凄い迫力だ…さすが指輪が具現化した天使様 …でも…!!」

棒のようになり動かなくなった足で地面を蹴り上げ、飛びかかります。
「はぁぁあああああ!!!」

『光の剣』での一撃。
「愚か!」
「…う」
死の凝視によって雪歩はそのまま、倒れてしまいましたが。

「……愚かなのは…そっちよ!」
草薙の剣で、雪歩が斬った跡にもう一度斬撃。


深くなった傷にまた一撃……マリーチが、バラバラになり…白い羽が辺り一面に舞い散ります。
「……気絶で済んだみたいね。  ……よかった」

851サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十四話 1/2:2009/11/12(木) 03:27:56 ID:oejNbPa.0
「『DSC』が……!?」
「あなたの動きは私は手に取るようにわかりますよ、真ちゃん」




金の翼をはためかせ、マスターリングとなったあずさは微笑します。
「『超風』」

あずさが手をかざした真上に小型の太陽…超高熱の熱源。

それがあずさの手の一振りで投げつけられ、大爆発。
「うあああああああああああああああああああああああ!!!」


「『剣』」
他の術士とは比べ物にならない速度で、巨大な剣3本がやよいを貫きます。
「あ、あああああ…!!」


「やよい!」
「やよいちゃん… 傷は浅いわね」


「………その程度ですか?もっと全力を出せるではないですか」


長期戦になるのは目に見えている。現に随分戦っている。
……消耗の少ない技だけを集めて攻撃していても、あずさの前には手も足も出ない。



ルージュが言います。
「…もう、このまま抑えて戦っていては勝ち目はない…全力でいく…!」
「…やってごらんなさい」


この一発であずさを倒す。全員で連携を繰り出します。
「『グリフィス』
 『ロザリオ』
 『無月』
 『羅刹』
 『塔』!!」



現在考えられる、最強の連携攻撃をあずさに繰り出します。

852サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十四話 2/2:2009/11/12(木) 03:32:16 ID:oejNbPa.0
まずはやよいの『グリフィススクラッチ』。
モンスターの最強の攻撃の一つである、巨大な爪での攻撃。
魔力で刃を形作り、やよいは大きくあずさに切りかかり

次に春香の『ロザリオインペール』
あずさの体の四肢それぞれに剣を持った分身を降らせ打ちつけ、最
後に本体が頭上から剣を振り下ろし

次にピヨさんの『無月散水』 
4人の分身で激しく滅多切りを続け闘気を相手に打ち込み続け
最後に頭上に集まり一撃を見舞い

次に真の『羅刹掌』
一撃必殺の気合の元に、精神を極限まで集中させて放つ一打。

そして…ルージュの『塔』。
ルージュが全魔力全てを投げうった、最強最大の術。
あずさの頭上に、リージョンすら軽く破壊するほどの威力の雷を注ぎ込みます。


秘術の、いや…全・術中最強の術。



考えうる最強の攻撃。
封じていた力全てを放ったこの連携。

全員…全ての力を使い果たしました。
「………はぁ、はぁ………」



…しかしそこには…


あずさの姿がありました。


あずさは…不敵な笑みを浮かべています。


「全力を出すに値するようです。」




「…これで、漸く本気が出せます …ちょうど、皆指輪の化身を倒したようね………ふふ、ふふふ…」



9つの光があずさに集まります。
「まさか…!!」


そう

9人のモンスターと同時に戦わせたのは失策でした。
…全ての力はあずさの力。

倒されたことで形を失った9つの指輪の力が……あずさに注がれます。
「ふふ、ふふふふ うふふ……!!」



真っ黒な闇の中から…………巨大な指輪の幻影が一つ。
それは彼女にもたらされた究極の力。


…完全体となったあずさがここに現れました。


「さぁ、ガツーンといきましょう♪」

853サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十五話 1/2:2009/11/12(木) 23:35:32 ID:oejNbPa.0
…とうとうあずさが、完全な指輪の力を手にしてしまいました。

「あらあら…皆さんまさか、これで全ての力を出し尽くしたわけではありませんよねー…」

…返す言葉が、ありません。



「…まだ!!」
全ての魔力を使い果たしたルージュは持っていたリーサルドラグーンを発砲。

「私だって、負けてはいられません…」
ピヨさんはあずさに向かって二連斬り『切り返し』。

「……わ、わたしも!」
やよいに出来ることはもうありません…『パンチ』。

「ボクだって戦える…!!」
真は『スライディング』であずさの足元を狙います。

「う……!!」
春香は片腕を片腕で支えながら『スマッシュ』。


最早、技を出す気力すら残されていません。
…今のあずさには大したダメージになるはずもなく。
「…………」


「…悪徳さんの工場で戦っていた頃ではないんですから」



あずさの反撃が始まります。
「その程度ですか」
やよいに『強打』。
基本技とはいえ、その威力は桁違い。
辺りに轟音が轟き、やよいは声なき叫びと共に、血をはきぐったりと倒れ

「あなた達はもう力を使い切ったというのですか」
振動波がピヨさん、春香、真、ルージュを吹き飛ばします。


「面白くないですね…」
ピヨさんに向けて追撃。翼から『衝撃波』を発し、切り刻みます。
「ああぁあああ…!!」
ピヨさんの腕が…だらりと落ちました。


「…それなら…こうしてしまいましょうか」
9人の魔物を再び召喚。


「行きますよ」

ティディの『針』の嵐が春香を貫通
「っきゃああああ…!!」
リッチの『デスグリップ』が真の心臓を停止させ
「……う…!!」
マリーチの『石化凝視』がピヨさんを石にし
「あああ…!?」
ユニコーンの角がそれを砕き破壊。



「……連携の力というのは素晴らしいもの…
 それは、妖魔の君すら倒してしまうほどに。
 …さあ、あなたには連携攻撃で最期を迎えていただきますよ」



「…!」
ルージュが手からフタを外した傷薬のビンをやよいに投げつけた瞬間……

一斉に攻撃が始まりました。


リビングアーマーの重厚なボディでの、見ることすら適わぬ勢いでの突進。
「う!!」
体が激しく叩きつけられ、グシャリと。この時点で既に致死ダメージ…

その上にタイタニアが激しく噛み付き『吸血』
「……!!」
薄れゆく意識の中でキマイラの『高温ガス』に焼かれ
「……。」
完全に意識が毟り取られた後でグレムリンの『落雷』に体を貫かれ

最後にティディの『針』で全身を串刺しに。


…ルージュの体は見るも無残な形に。
「…仕方がありません。真ちゃんを除き全員完全に塵も残さず消してしまいましょうか
 最も…もうあの子も意識すらありませんが」

854サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十五話 2/2:2009/11/12(木) 23:50:37 ID:oejNbPa.0
あずさが、全員を消し炭にする最強の陽術『超風』を唱え始めたその時でした。

「ああああああああああああああ!!」

羽の抜けたやよいが猛スピードであずさに突進、パンチを仕掛けます。
「…」
激しい音と共に命中。

………ですが最早その程度の攻撃は少しのダメージも与えはしません。



「…目障りです」
あずさの手がやよいの小さな体を貫きます。

…しかし。
それと同時に、もう片方の手であずさの手を掴むことに成功しました。



「……『キラメキラリ』!!」

力むことすら出来る体でのありったけの声。…指輪の力が……発動しました。



それは緑の指輪…生命の指輪。
「……!!」
緑の光に包まれ、全員の傷がみるみるうちに回復。

「やよいちゃん…!?」
「やよい……」
「危険だ…下がって!!」
「もう、打つ手はないんだ…!」


あずさの誤算。しかし、表情は変わりません。
「流した血は元には戻りませんよ」
やよいに零距離で『超風』。

超高熱源から発せられる炎で、復活した全員が焼かれます。
「ああああああああああああああ!!」

4人とも吹き飛ばされます。
「…………!!!」


やよいだけは手を掴み…吹き飛ばされる直前に何か叫んでいました。

「………もう一つ指輪を使ったようね」
貴音から手に入れた『神秘の指輪』


金色の光が全員を覆うと……


「魔力が……満ちてくる!?」
「…戦える…力が湧いてくるわ」
「……………最後の指輪の力…なの?」
「…でも、やよいはもう……!」


「高槻さん!!」
そこに千早が駆けつけます。

…超風から逃れることは出来ず、皆瀕死のようですが。



「『生命の雨』…!」
命を削っての最大の回復術。


やよいが、真が、春香が、ピヨさんが、ルージュが…皆一瞬にして傷が塞がり、立ち上がります。

乳飲み子に栄養を与える母乳の原料が血であるが如く…
生命の雨は…血を、涙を、汗を…生命の源たる命をすり減らせ他者に与える美しい雨を降らせるもの。


…千早は一人、枯れ糸が切れた人形のように尽きてしまいました。
「…………みん…な…」
立ち上がったやよいは皆を見回します。
息すらせぬ千早を除き13人。
再び戦う準備が整いました。


「生命力の回復を二度…仲間も揃い、技や術もまた放てるようになった…。
 いい流れですね…一瞬でその望み、崩して差し上げます」

…真っ黒な指輪の力が……9つの指輪の力を一つにまとめ、
あずさの体に9色の力を蓄え始めました。



「…この術は、最強の術です。」
あずさの内部に…膨大な力は集まり続けます。


「防ぐことはおろか、凌ぐことさえも不可能な術。」

855サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十六話 1/3:2009/11/13(金) 02:21:38 ID:U95ykrvA0
集められた力が放たれるまでに何としてでも倒さなければなりません。


「『無月散水』!!」
攻撃はピヨさんから。

体が一瞬にして消えると、あずさを囲うように4人に分身。


「はぁぁぁああああ!!」
狂おしいまでの剣幕を以って剣撃の嵐を四方から叩き込みます。
その傷の数は数秒で100をゆうに超えるとも。
「…たっ!!」
そして上へ向けあずさを四方から一斉に斬りあげ…

「最後!!」
一つになった体で一閃、叩き落します。


…凄まじい熱を生じるこの攻撃は斬るだけでなく、体全てを焼く攻撃。
……本来、これに耐えられる者はいないはずなのです。


「……ふふ…」
あずさはこの技を何度食らっても倒れる気配を見せません。…ダメージとなっているのは確かなのですが。


「DSC!」
真の攻撃。

一直線に滑り込み、あずさの足元を掬う『スライディング』
浮き上がったあずさを掴み、頭から叩き付ける『スープレックス』
そこからもう一度飛び上がり、勢いよく叩き付ける『バベルクランブル』

足を掴み高速回転、空中へ放り出す『ジャイアントスイング』
そこへ掴みかかり、地面へと激しく叩き付ける『スウィングDDT』


これら5つの技を一人で連携する『デンジャラス・スープレックス・コンボ』をあずさに決めます。
「…ど、どうだ…」


…まだまだ倒れる気配すらも見せません。
「『ロザリオインペール』!」
春香が飛びあがります。

そして前後左右から落下、あずさを斬りつけ…最後に本人があずさの脳天に向かい剣撃。


「…残念ながら…時間切れのようです」

……あずさの術合成が完了したようです。



指輪の力を極限まで使った最強最悪の術が…ここに発動されます。
「全て…消し飛んでしまいなさい」




「『レヴォリューション9』」
黒き指輪の元に集められた指輪の力が暴走…爆発。



「……あ……」

口を開けたまま……目を閉じることすら適わず。


全てを巻き込み破壊する魔力の渦に巻き込まれ…全てが破壊され…飲み込まれてゆきます。
やよいも、春香も、ピヨさんも、ルージュも、真も……それ以外の全員が。





「………………う」
圧倒的な力の前に倒れたやよいが…起き上がります。


「…耐えた…」
「…超風以上にキツいけど…何とかなりましたね」
「次にこの術が来るまでに…あずささんを止めるんだ!!」
「まだ…負けたわけじゃない!!」


「………おかしい。この程度の威力なはずが……完全に9つの指輪の連携が取れていれば…」
不発。

ガスを充満させた巨大風船による爆発が……それを起こすためのライターの炎程度で終わったかのような。


「……」
力を発生させるための因子が足りない。

「……やよいちゃん…やってくれたわね」

856サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十六話 2/3:2009/11/13(金) 02:22:15 ID:U95ykrvA0

指輪の力を発動したために、一時的に指輪の力に均衡が保たれなかった。
…先ほどの例で言うならば……そう、巨大風船に穴が開いていた。



…しかしそのライターの炎に過ぎぬものもあまりに強力。
二度食らえば、その時は……




「ならばもう一度放つまでですよ」
9つの力を集めるあずさ。


今度こそ…あずさを倒さなければ。
「『塔』!!」
全ての魔力を叩き付ける究極の秘術。

あずさを中心として、巨大な塔の幻影が現れ……巨大な雷によって粉々に粉砕されます。


「………う…」
その威力はピヨさんの最強剣技『無月散水』の10倍以上。
あずさには流石に大きなダメージだったようです。


「連携で畳み掛けるぞみんな!!」
残りの4人が息を揃えます。


「『三龍』
 『乱れ』
 『スクラッチ』!!」


真から。あずさの側面を、正三角形を描くように3度に渡り蹴り…
それに沿うように闘気で形作った3頭の龍が天へ駆け巡りあずさの体を締め付けます。

そしてピヨさんの乱れ雪月花。

周りの大気の熱を体に集中させ…凍えるような空気の中で一瞬の跳躍であずさの懐に踏み込み振り下ろす。
そこから一糸乱れぬ凄まじい勢いで斬りあげ三日月をかたどり
最後に、血で花を咲かせるような渾身の一撃を高く高く上昇しながら繰り出す。


最後にやよいのグリフィススクラッチ。激しい勢いで斬りつけます。



「……………!!」
あずさの表情が歪みます。…指輪による守りをダメージが超えてきたようです。
しかしまだ…。


「『覚醒』!!」
そんな中、春香は心術により己の力を倍化。

…次はないというのに。
「…そんなことをしていても、次の攻撃で私達負けるのよ…!?」


いえ…春香には秘策がありました。
「…大丈夫ですよ。
 だってルージュさん」

857サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十六話 3/3:2009/11/13(金) 02:35:21 ID:U95ykrvA0
「…?」
「レヴォリューション9は…『術』ですよね!」
雪歩が後ろで口に指を当てて考えると…
「……あ、そうだね!」

ルージュがはっとしています。
「…私としたことが、これじゃ術士失格だな」


「双海さん、雪歩、美希!! お願い!!」
「うん!」
「頼まれた」
「解ったの!!」

「『ダークスフィア』!!」

闇には闇を…というわけではないのですが。
暗黒のエネルギー弾を三方向からあずさに向かって撃ち込みます。
「…!!……ま、まさか」


雪歩が説明。
「その術合成が『術効果』なら…私達打ち消すことが出来るんです  ましてやそれが不完全なものなら。
 ルージュさんの覚えてる魔術最終奥義『サイキックプリズン』や『ヴォーテクス』
 そしてあずささんが今装備してる指輪の一つ『隠者の指輪』の効果は『効果の打ち消し』
 でもそれももう出来ない。けれど、同じ力を付加する術がもう一つだけあるんです!!」


「『ダークスフィア』…!! 陰術の中でも使い道の少ないその術を………」

3発の重ねがけ。
レヴォリューション9が…完全に闇の中に消えてゆきます。

「愛してるよ雪歩ー!!」
美希や双海の協力もあったのですが何故雪歩なのでしょう。春香は精神を集中させ…

「……『無月散水』!!」
最後の技を放ちます。

「…そ、それ私の!?」
「見てるうちに覚えちゃいました!!ロザリオインペールと近い技ですから!!」
「……ショックなくらいの才能ね…」

ピヨさんの後継者は決まったようです。攻撃力を倍化した春香による最強の剣術…
「そしてダークスフィアを使うメリットはもう一つ!!」
4つに分身した春香が、手にした剣は…

「『光の剣』…!!」
雪歩から託された陽術の最強術、『光の剣』。この剣自体がまたレヴォリューション9と同じ、魔法効果。
ヴォーテクスや隠者の指輪では、この術の効果すらかき消されてしまいます。
ダークスフィアなら…あずさの効果だけを打ち消すことが可能。

「行きますよ!!」
激しい勢いで、光の加減で輝く剣を振りかざし、狂ったように斬りつけます。

闇に染まった10色の指輪から、色を奪い取るが如く。
彼女の愛する色でもある光の色…白から始まり…黄色、青…黄色、緑、明るい緑、桃、橙。
そして1人になり、あずさの頭上から振り上げるとあずさの髪を映し出し紫。
「はぁあああああああああ!!!!」

最後の一打が振り下ろされます。


「…!!!」
あずさはそれを手でガード。

…光の剣が…………指輪の力で『黒』に染まります。
そして………



「わあああああああああああああああああ!!」
「……!!!」
春香の悲鳴。
あずさの手から指輪がはじけ飛びます。

その瞬間、何もかもが真っ白に。春香がそのまま吹き飛び……
全員が弾け飛んだ指輪のエネルギーにより…………倒れてしまいました。


やよいを除いて。

「……う、……あずささん…  …あずささん…!!」

何も知らぬ自分をここまで導いてくれた最初の仲間。
…一番、彼女に協力してくれた人の名を呼びながら。

真っ白な光の中…やよいは走り出します。


そして、指輪を持たない手を握るのでした。
「……」

858サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十七話 1/2:2009/11/13(金) 03:20:43 ID:U95ykrvA0
そして光が収まるとやよいの頭にはあずさの手……






「………!!」
…に握られた拳銃。指には…たった一つ残された、黒き指輪。
「あなたはどうやら… この世界の仕組みがまだ、わかっていないようね」


拳銃『ブリューナク』。意味は『貫くもの』


対してやよいの体は瀕死の状態…
戦うことすらまともに出来ぬ最初の形態、『ラモックス』に戻っていました。

「…………私を殺すには…まだ足りない」
やよいは…否定します。

「…違います…私はあずささんが心配で」
「嘘のつき方もまだまだ下手ねえ……」



マーグメルは再び滅びた元の状態に。

…指輪の魔力は解かれていました。
「………」
あずさの精神を除いて。

「あなたも見てきたはずよ
 この世界がどんなものかを…力により統制された…歪んだこの世界」


もう、他の誰も戦う力すら残っていません。…手足一つ動かすことも出来ず。
「……私が生まれた場所は、このマーグメルとは正反対の場所でした…

 土地は確かに、豊かだったのかもしれないわね……ルーンの力で栄えていました
 しかしそこに住む人たちは決してそうとは言えない。
 荒み、犯罪の絶えないクーロンの街。…正直、あなたを見たときは羨ましかったわ」


「売られることも、殺されることも、盗まれることも日常茶飯事なそんな町の中でした。
 …けど、私は信じていたんです …いつか幸せになれると。」


「…うんめい、ですか?」
「…そう。運命
 …長い月日を経て私は力をつけ、何とか表の社会に出ることが出来たわ
 ……頼りになる人が一緒に居たおかげで。」
力なく倒れる真をちらりと見ます。


「けどあの日…京へ行く最中のリージョンシップがブラッククロスの『ブラックレイ』により破壊された…
 一撃目でシップが破壊。シップの欠片にしがみついていた乗客全員が二撃目で焼かれ死亡。
 私は棺の中を見て…それを確認しました」

859サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四十七話 2/2:2009/11/13(金) 03:30:19 ID:U95ykrvA0
「………私は、そこで思ったんです 幸せになるべき人なんてこの世には存在しない
 幸せになる運命の人と、幸せになれない運命の人がいるんだって。
 …町の坂道を登るたびに、あの人が傍にいる錯覚を何度覚えたことでしょう。」


目をきつく細め、シリンダーを回転させます。
「それが運命なんです。創造神話の話を聞いたのはその後だったわ。回転する斧で切られた神様の話。
 …神様は、もうずっとずっと前からいなかったのね」


「………私は 強くなりました。
 利用できるものは利用する それが例え何であっても。
 その行いが常識から見た善でも…悪でも。いえ、常識なんて誰かが決めたこと。
 …強いて言えば、この世界を形作ってきた『行動すること』が善。『行動しないこと』こそが…悪。
 この世界で最後に頼れるのは自分。…行動することで、人は進化し、世界を形作ってきたのですから」


「…私は行動しました。運命を変える術があることを知って。
 …マジックキングダムの情報を聞きつけ、学院に侵入し、暗部の秘密と指輪を握り。
 それが世間は悪いことだとも言うでしょう …自らの運命から逃げたと言うでしょう」



「…いいえ…逃げは何もしないこと。…或いは何かを行っても、それが絶対に何にもならないこと。
 ………私は、行動し…その結果、運命を勝ち取りました
 真ちゃんの運命を書き換え、やよいちゃんを利用し…全ての指輪を手に入れました」


「………人は誰かの力じゃなく、自分で幸せになれる。 その幸せになるのを、…非難することは出来ません」


「やよいちゃん…あなたは行動した者。けれど他の者たちはマーグメルに残っていたわね… 
 全て、それが…証明しているんじゃないかしら」



銃を突きつけます。
「……さようなら」

…しかし。


「…………」
一向に引き金を引きません。
「……躊躇っているわね、私としたら情けない」


…それはあずさの内部での、葛藤だったのかもしれません。
「…でも」


異なる環境で育ったやよいは…見上げます。
「でも…私は旅をしました。こうやって、ずっと戦ってきました。みんなといて、凄く楽しかったです」

…真っ白な環境で生まれ育った彼女が…最期の言葉として、あずさに投げかけられます。
「…みんなに幸せになってもらいたいんです!!」
「…そんな言葉は聞き飽きました!!」


その瞬間…あずさの背後に気配。

「!!」
あずさは振り向き発砲。
ブリューナクはその人影を、真っ直ぐに貫通していきました。 …まるで、間に何もないかのように。



「……高槻さん…」
千早のハイドビハインド。陰術の…ダークスフィア以上に価値の無い術でした。


「…!!」
ブリューナクの装弾数は1発。
あずさは腰元のリーサルドラグーンを片手で引き抜きやよいに向けようとしますが……

「あずささん!!」
やよいの最弱の攻撃手段『尾撃』。

やよいの尻尾は、あずさの手を直撃…


「……!!」
リーサルドラグーンの弾丸はやよいの頬をかすめ外れ…
あずさの手からは、ブリューナクが吹き飛びました。



…指輪と、共に。


「…………」

指輪を失ったあずさは、瞳孔が開いたまま倒れます。


「……あずささん」

そして、ゆっくりと瞼が閉じられました。
…その顔は……どこか、何かに疲れきったように見えました。

860サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 最終話 1/5:2009/11/13(金) 05:20:25 ID:U95ykrvA0
辺りに流れる静寂。
…10秒ほどしてから、あずさが目を覚ましました。

「…やよいちゃん、ごめんなさい
 …あなたを騙してたわ」

全ての指輪が手元を離れ…漸くあずさは自分を取り戻しました。
「……全部、黒い指輪のせいです。
 …あずささんは悪くないですよ」


しかし…吐露されたのはあずさ自身の根底にある心そのものであったことも
彼女が黒い指輪に助けられたのも事実。


「…あずささん。ごめん
 ボクが傍にいたら、あんな指輪に手を出すことは…」
真も漸く立ち上がれるようになったようです。

双海も自分の白衣の能力で傷を塞ぎ立ち上がります。
「…肉体的には問題ありませんね …会ったときから感じていたあの感じも
 もう見られません」



…けれど。
「……しかし、マーグメルはおしまいだね」
長老の表情は暗く。


そこに、モモちゃんというラモックスが。
「…長老、元気出してください!私達、どこででも生きていけます!」
続いてカスミ。
「そうそう。わたしたちあかるいのがとりえだもん!」


あずさの言葉にも、一理あります。
…長老は、やよいが旅に出たことの理由を皆に黙っていました。

…きっと、知れば皆動いていたことでしょう。やよいでなくとも、みんな。

そして…今、皆が行動する時がやってきました。
「…いい仲間を持ったね、やよい」
「はい!!」


マーグメルではなく…外の世界へ。

861サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 最終話 2/5:2009/11/13(金) 05:21:22 ID:U95ykrvA0
「名残惜しいが…いくとするかね」
長老は重い腰をあげます。

「……長老、ちょっと私もう少し旅していいですか?
 …指輪を、誰にも手の届かないところに捨てて行きたいんです」

長老は……頷きます。
「うん。いいねぇ…どんどんやってくれたまえ!」



…その時、異論を唱える者が。
「ちょっと!!黒い指輪はまだしも、戦士の指輪は私から預かったものでしょ!?
 勝手に捨てられたら困っちゃうわ!」

…続けて千早。
「私も指輪が少し欲しいわ高槻さん…私のいた海に似た、青の」
そしてあずさ。
「やよいちゃん、一応黒井の所に指輪返した方がいいかもしれないわねー」

まだ続きます。律子が。
「後、あの変態なディスペア所長の所にも返した方がいいかもね」
「あ、私律子さんとの婚約指輪に欲しいです」
「ピヨ、ハニーはミキのものだよ!?」
「いつの間にか私新ハニーなの!?」
「ダーリンって呼んでもいいよ律子さんハニー」
響。
「いぬ美もああ見えて女の子だから、指輪を渡して少しは女の子らしくしてあげて欲しいさ」
春香が。
「あとやよい、返すと言えば貴音さん…は怖いから…
 ムスペルニブルの山の中に捨てておけば貰ってくれるんじゃない?」
「あのぅ、私と春香ちゃんが使えば…」
双海が。
「私達夫婦にもくれないかな」
そして真。
「……じゃ、じゃあボクとあずささんにも…いや、ボクは男じゃないけど」


「で、やよいちゃん。後残った指輪はどれがあるのかしら?」
「黒い指輪だけです。これは……」


「………」
ルージュが見つめています。
「…この黒い指輪を使って、マジックキングダムの地下を封じていたんだよね」
「…は、はい…」
「………この指輪を戻せば、マジックキングダムも安泰かな」
やよいはぽんと手を叩きます。
「あ!」
「…けど、こんな指輪によって平和が守られていたと思うと…怖くなってきちゃった。
 平和は、私達で守らなきゃ。 …マジックキングダムの様子を見てくるよ」
「はい!それがいいと思います!!」

そして、指輪は次々に返されてゆきました。





マーグメルにおける、指輪の騒動。
この出来事を前後して、様々な事件が世に起こることとなります。

862乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/11/13(金) 19:45:58 ID:ns5SoGZg0
グラディウス軍の主な士官や将校等第四版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将 23歳
ヴィンチェンツォ・ルガース大将 55歳
ディアス・ユンカース中将 21歳
アドリアナ・ベチン中将 51歳
ハスキー・ハルバート中将 50歳
ゴーチェ・ベルトラン中将 49歳
ジェルヴェ・ブラシェール中将 57歳
エヴラール・ダルコ少将 51歳
ジョニー・ガーランド少将 45歳
エドワード・オレステス少将 59歳
フリッツ・パーペン少将 56歳
クラウス・ケッセル少将 41歳
エマニュエル・コロー少将 38歳
ノーナ・ラフマニナ大尉 25歳
リューシャ・ブチェンコワ大尉 24歳
セバスティアン・ハルバーゲン中尉 27歳
スタファン・ヘンネル中尉 28歳
ラミ・ニュメリン少尉 21歳

陸軍
ブラン・ホルテン元帥 23歳
ハロルド・ワイルディング大将 49歳
グリフィン・レインウォーター大将 50歳
フレデリック・レーガン大将 47歳
トーマス・バーシティ中将 51歳
アルベルト・アダンティ中将 50歳
アルバート・シュライヒャー中将 33歳
アーチボルド・バルフ中将 39歳
ジェフ・バッセル少将 38歳
モーゼス・バートン特別少将 22歳
マーカス・キャビンディッシュ少将 26歳
チャールズ・トーチ少将 30歳
ウォーラス・モス少将 48歳
エメリナ・レインウォーター大尉 21歳
エレノエーレ・ベレスフォード少佐 24歳
アンネローズ・ビッグコア=ニーベルング上等兵 17歳

宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将 59歳
クラナス・ランフォード大将 23歳
ナルヴィック・ルフラン大将 25歳
クロン・ベイル中将 61歳
オーラフ・ヴァーノン中将 41歳
ライオネル・アッカースン中将 52歳
ジャック・トンプソン中将 55歳
ヤコブ・フルシチョフ少将 67歳
ルーベン・イングラム少将 38歳
エメライン・ベンジャミン少将 47歳
マンフレッド・ボールドウィン少将 46歳
アリセ・ベンジャミン大尉 21歳
ヴィットーリオ・レッティエーリ中佐 32歳
アドリアノ・カンパーノ少佐 30歳
ニノ・インフォミュラ少佐 35歳
トンマーゾ・ガットー大尉 27歳
アルステーデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
クーニグンデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
マルグリート・ビッグコア=ニーベルング特務少尉 17歳

863サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 最終話 3/5:2009/11/13(金) 23:51:37 ID:U95ykrvA0
「待ってくれ、美希。…俺だ、…信じてくれ」
「……ハニー………そんな」
「ああ。そうだよ ごめんよ美希。…また、一緒に暮らそう…おいで、」

謎の男『ジョーカー』が、忘れられし聖堂で確保されました。
燃え盛る教会を背に、美しい草花が生い茂る中で。

それは…美希の恋人では、ありません。
…美希の恋人なる者は、とっくとのとうにいなかったのですから。

倒れていた男は…他ならぬ、『ジョーカー』でした。


「…ミキ、一体何をしていたんだろう。
 何も知らずにいれば、ただの不幸な女で済んだのにな。」

見渡すは山麓。彼女の悲しい背中を…空に舞う花びらが隠していました。
「…私には、美希にかける言葉なんてない。…未来を予測できる者なんて、いないんだから。」


「…泣いてジョーカーの仮面を銃で割って、プロレス技かけたら、何だかスッキリしちゃった。
 ね、律子さん。次のお仕事いこ!」
「私はあんたのプロデューサーかっていうの…
 …その顔で、まだ戦うつもり? メイクも取れて、せっかくの顔が台無しよ
 …もうあんたは何も背負う必要なんてないの」


「……そう。…ミキ、律子さんのこと、絶対忘れないの!」

「忘れていいわよ?
 …ううん、忘れなさい… 全部。 星井美希は、アイドルの仕事だけをしていた。
 グラディウスなんて組織に属していたこともないし…これからは、自由。」

「自由、なの?それじゃあ…」

「美希?一体何を………ナイフ?え、あんた何を……
 あ、あー…髪を短く………いや、だから一体それは何で… …え?」

「次の仕事ならまだあるって思うな やよい達のこと、忘れてるわけじゃないでしょ?
 こんな泣き崩れた顔は、アイドルの方こそ向いてないの。暫く他のことしてたいな」
「…あーいや……アンタも行くの…?ピヨさんに怒られちゃうところだった」
「律子さん、ピヨさんのこと随分気にかけてるね…何か変な感じー…」

「なワケないでしょ!! …まぁともかく。んじゃムスペルニブル行ってみる? はいおにぎり」
「ありがとうなの!」
「…でその後は」
「やよいの手助けしながら考えればいいかなって思うな♪」




「…春香……よくぞ私を倒しました …やはりあなたも私の血を分けた…娘」
「………どこから声を出しているんですか …歌田音!」
「あなたには権利がある。永遠に世界を支配する力を手に入れる権利が。
 孤独でしょう、悲しいでしょう …その身の不幸を、地の果てまで振りまきなさい」

「そして、全ての者をその力で支配しなさい 魅力でも、魔力でも。
 同性も異性も全てあなたの元にひれ伏すのですから」

「……」
「残り70年の命と、永遠なる幸福。…選択の余地など」

「…いやです。私はあなたのコピーじゃない
 私は… …私は、雪歩が愛してくれた私でい続ける!!」


ファシナトゥールを支配する妖魔の君、歌田音が春香により倒されました。
一方的に与え、奪い続ける永遠の時間の愛より、
愛した者が愛してくれた者で居続ける有限の時間の愛を…彼女は選んだのです。




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