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チラシの裏 3枚目

1むらま ◆vVmhS9Bdr2:2009/03/29(日) 19:47:59
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに

671俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 序盤:2009/09/30(水) 02:46:39 ID:vsQNnAsc0
戦いの炎の中で散り、流れ星として燃え尽きた一人の戦士。

…彼が流れ着いた場所は情報が駆け巡る、現実世界と常に平行して存在しているもうひとつの世界、サイバー空間。
死したレプリロイドやメカニロイドは皆、そこへ行き着くあの世。

「………む…」
岸辺のような場所で身を起こす。辺りを見回しても、誰も居ない…

…いや、何かが近づいてくる音がする。

程なくして声も聞こえた。
「随分と早く流れ着いたね」

それは友と異なる色をした同じ声。
2度にわたり戦いを繰り広げた…偽りの蒼き英雄だった。
「…お前が迎えか、何をしに来た」
「不満かな …まぁ、不満だろうね
 それと…僕は何も君を迎えに来たわけじゃない 追い返しに来たつもりだよ」


「…まずお前達のいるこの世界が今どうなっているか教えてもらおう」
「土産話程度にもならないだろうが…話しておこうか。
 妖精戦争から大分時が経って、また近年死亡者が大幅に増加し…この世界の治安は正直、乱れ続けている
 誰かがこの世界を統治する必要があると思わないか」
目が笑うのを見過ごしはしなかった。
「何度言われても解らないか」
コピーエックスの眼前にセイバーを突きつける。
だが相手は刃先を指で払いのけた。

「君に敗れて僕が諦めるとでも思ったかな
 偽者だと解って、君はオメガに抗うことを諦めたかな …違うだろう」
ゼロはセイバーを握り締めたまま。

「この世界には、膨大な知識が詰まっている。
 歴史が凝縮された…この世界に出来れば持ち帰りたいくらいの、世界の記憶さ
 …僕はその世界の中にいて、様々なことを学んだ。自分がしたことの愚かさもね」


「…これまでの自分は否定された。だが、これからの自分は否定させないよ
 僕は今度こそ、自分の力で登りつめこの世界に僕という存在を認めさせてやるつもりさ」


「不可能な訳はない。僕には…世界で最高の頭脳と体が備わっているのだから。」
完全なコピーだから、とは最早言わなかった。


「…随分と自信があるようだな。…試してみるか」
構える。

672俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 中盤:2009/09/30(水) 02:47:21 ID:vsQNnAsc0
無限に広がる電脳の世界の端には
気がつけば、二人の戦いの様子を見届けるたくさんのギャラリーが集まっていた。
「望む所さ。早くしようよ 時間ももうないようだしね」
「どういうことだ」


先手を打ったのはコピーエックスのチャージショットだった。
「誰かのことを忘れているんじゃないかな、君は」

セイバーで払いのけると今度はノヴァストライクが飛んでくる。
「…何」

飛び越えて背後からバスターショットを乱射。
エックスはノヴァストライクの激しいエネルギーを一瞬にして消し去り、背後のゼロの弾へ自分のショットをぶつける。
相殺…いや、突き抜けて弾はゼロめがけて飛んでいく。
「オメガをその剣で断ち切ったあの時…」

ゼロは弾を飛び越えてセイバーを振り下ろす。
エックスはそれを避ける…だけでなく、宙を蹴り勢いを増しゼロの背後へと飛び…
至近距離からチャージショット。

「君の名を呼んだのは3人いたはずだ」
明らかにコピーエックスの能力が前回、前々回とは大違いだった。

「ドクターシエル」
光の散弾銃レイスプラッシャーを放つエックス。
「オリジナルエックス」
ストームトルネードがゼロを貫くべく真っ直ぐに放たれる。

「そして…まだいるはずだよ、君を呼んでいた、
 いや…最早君の名を呼ぶことしか出来なくなった、一人の女性がね」
ソニックスライサーが上空からゼロに襲い掛かる。

ゼロはその全てを、飛び越える、潜り抜ける、間に潜ると続けざまに回避。
「……まさか!」




「…話はここまでだ」
ノヴァストライクでゼロの元へ飛び込んだエックスは、ゼロの手前で地上へ激突。
「…!」
そのまま地を蹴りゼロを上空へ突き上げる。


「君はもうじきこの世界から去ることになるだろう だから」
そして真紅のエネルギーを溜めて飛びあがる。

「せめて僕の手で送りだしてやろうとね!!」
スパイラルクラッシュショットと、
チャージセイバーのぶつかり合い。

…その瞬間、両者が加速した。
「存分に戦うがいいさ!この世界には物理法則は通用しない!!」

赤の光と青の光。天も地もなく、激しく衝突を繰り返しながら、
追いつつ、追われつつ、離れて、寄って…
勢いを増しながら縦横無尽に飛びまわり続けた光はやがて、
宙の一点で衝突の時を迎える。

「今度は外さない」
「やってみろ」

ゼロが刃先を。
エックスが銃口を。

673俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 終盤:2009/09/30(水) 02:49:56 ID:vsQNnAsc0
「シエルおねえちゃーん、こんな感じでどうかなー!」


エリアゼロを中心としたキャラバンは拡大、
ネオアルカディアの人々を中心に新たな街を作るべく、苦しい日々を生きていた。

最早、セキュリティの行き届いたビルも
無限に支給される食料もそこにはない。


彼らが当面の目標としているのは、ロストテクノロジーの復活。
途方も無いものを掲げたものだ。


…目先にあるのは、何をするにも必要となる作業用機械の調達。

部品を集め、それぞれを点検、整備し繋ぎ合わせて一つの機械にしていく。

その作業にも慣れ…今日やっと、
シエルたちの元で最初の機械が完成しようとしていた。



「ライドアーマー…もう少しで完成ね」

「僕たちでも簡単に乗りこなせるんだよね!」
「そうねぇ…じゃあ、試験運転が終わったら
 そのアーマーでの作業はあなた達に任せちゃおうかな」

「よーし!!」

…だが…
人間もレプリロイドも失敗をする。
間違えることもある。

「…!? …あれ、何かおかしいよ!?あ、アームが…!!」
「きゃあああああ!!」

「シエルお姉ちゃん!!」

「オイ、あれ大丈夫かよ…!ライドアーマーの握力は半端なものじゃないぞ…!?」
「かといって俺たちだけでアレを止められるかっていうと… おーーい、誰かーーー!!協力してくれ!!」
「た、たす…け…!」


「…下がっていろ」
…そのときだった。


「…きゃっ!!」
突如として鋭いエネルギー弾がライドアーマーの腕を攻撃、破壊。
腕からシエルが投げ出される。


…気がつけば、花畑の中だった。
彼は、世界を見守り続ける大いなる命によって助け出されたのだ。


「……!」
「………帰還した」


…助けを待つ者の前に……… 彼はまた、現れる。

674Aria:2009/10/03(土) 09:51:17 ID:a1UkFMNoO
七竜クリアー
メンバーは鬱姫、緑騎士、白魔、桃戦士
ちょっとLV上げすぎたせいかラスボスすら楽勝だった感(だいたい71)

あと(ラスボスといわず通常ボスも)ファングブレイドで麻痺るのやめてくださいwww

675乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/04(日) 20:50:30 ID:E6oVP0fI0
声優一覧(ただし声優なしのキャラは記述なし)

ロジーナ-富山あかり
あかぎ-富山あかり
アイラ・ブランネージュ・ガルディニアス-林原めぐみ(川澄綾子)
カリス・フィリアス-白石涼子
ディシャナ-小清水亜美
ポックル-白石涼子
ピピロ-今野宏美
イツ花-吉田古奈美
一条あかり-おみむらまゆこ

676メルヘンメイズ やよいの大冒険 第0節:2009/10/08(木) 23:36:27 ID:YLgnloBw0
メルヘンメイズ やよいの大冒険

「先生こんにちはー、今日も本を借りに来ましたー!」
「お、今日も元気ですね、でもここは図書館ですから、もう少し抑え目にしてくれたほうがいいですよ」
「…えへへー」

書架の先生と向かい合った女の子、高槻やよいはそう言って、ちょっと恥ずかしそうに俯きました。
いつも元気なのは良いのですが、図書館で大きな声を出してはいけません。
ツインテールの髪の毛がぴょこっと揺れて、やよいと一緒にお辞儀をしました。
「そうだ高槻さん、今日はこんな本があるんですよ」
言いながら先生は後ろの本棚から一冊の本を取り出します。
「『不思議の国のアリス』…ですか?」
「とあるお金持ちの人が寄贈してくれたんです。妹さんに読んであげるにはちょうど良いでしょう」
表紙にはちょうどやよいと同じような髪型に、エプロンドレスを着た女の子、そしてタキシードのウサギ。
手に取るとずっしりと重たくて、そして紙の匂いがふわりと漂います。
「あ、ありがとうございます」
早速やよいは貸し出しの手続きを。そして元気そうに帰っていきました。
「あ、高槻さん、廊下は走らないようにお願いしますよ」
先生の言葉はちゃんと聞こえていたでしょうか…。

「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんお帰りー」
やよいが帰ってくると、早速妹のカスミがお出迎えです。大きな家ではないので玄関を開けるとすぐに
分かるみたい、でもそんな我が家が、そして家族のみんながやよいは大好きでした。

そして今日もお布団でやよいはカスミに本を読んであげます、そのまま同じ布団で一緒に眠るのが、
ここ最近のやよいの日課になっていたのでした…。





「やよい」
「…」
「やよい」
どこからともなく声がします。
今までに聞いたことがあるような、無いような。誰が呼んでいるのかと思って、やよいは外に出てみます。
でも誰もいないみたい… そう思ってやよいが部屋に戻ろうとすると、
「やよい」
…私は寝ぼけているのかなと思って、やよいは目をこすってみました。目の前に、まさに今日借りてきた
本で見たようなタキシードを着たウサギの人形が立っていたのですから。
「…カスミのおもちゃ…?」
そう言いながらやよいがその人形を持ち上げると、
「助けてくださいー」
その人形はじたばたしながらやよいに助けを求めて来るではありませんか。
「…どうかしたの?」
とりあえず返事をします。
「私の国が悪い女王に侵略されてしまったのです」
…そうだ、これはきっと夢なんだ。それだったら納得もいきます。夜に読んでいた本の夢を私は見てる…
と言う事は、この後…
「お願いです、私達の国を救ってください」
と、こうなるのです。
やよいが素直に付いていくと、そこは居間の鏡の前。ウサギはその前に立つと、やよいの手を取って…
「行きますよ!」
そのまま鏡の中に飛び込んでいきます、当然、手を取られたやよいも一緒に鏡の中へ…
「きゃぁぁぁぁぁぁ…!」

…ここはどこでしょう?
やよいの目の前は部屋の中ではなく、とても広々とした場所。しかしタイルを張ったような床はそれほど
広くは無く、足を踏み外すとまっさかさまに落ちてしまいそうなところでした。
「気をつけてください、落とされると大変ですから」
さっきのウサギが目の前にいました。そしてやよいにストローを差し出します。
「これは?」
「このストローでシャボン玉を出して、女王の手先をやっつけるのです」
???
「うっうー、よく分かりませんー」
やよいはそう言って頭を抱えてしまいました。読んでいた本の中にもそんな話は無いのですから…。
それに女王の手先ってなんでしょう…。
混乱しているやよいがふと前を見ると、そこにはおいしそうなケーキがたくさん。ショートケーキに
チーズケーキ、やよいが見たこともないようなお菓子もたくさんあります。
ちょうどおなかが減ってたやよいは、早速その中の一つを取って食べてみます。
「いただきまーす!」
が。
ガキィィィィン…
「ううー、食べられません〜」
ケーキは石のように固くなっていて、やよいの歯がビリビリと痛くなってしまいました。
「女王の力によって、私達の世界はこのようなことになってしまったのです…」
ウサギはそう言いながら、悲しそうに前のほうを見ました。
「分かりました、女王さんをやっつけに行きましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうな顔のウサギは、そう言って飛び跳ねています。
「それに、食べ物を粗末にする人は許せません!」
「そ、そうですね…」
やよいとウサギは固く握手を。

こうしてやよいの冒険は始まったのです。

677メルヘンメイズ やよいの大冒険 第1節:2009/10/09(金) 23:20:22 ID:.t8phchE0
 第1話 おかしの国  〜やよいと不思議なシャボン玉〜

やよいが辺りを見回すと、そこはお菓子… の形をしたオブジェがいっぱいの空間でした。
床の遥か下にも同じような世界が広がっていて、自分のいる所がかなりの高さであることが分かります。
それに… やよいの服もいつものものではなくて、オレンジと白の上着にスカート、そして前にはフリルの
付いた小さなエプロンが。
とても可愛らしいものでした。
しばらくそれに見とれていたやよいですが、ハッと気が付いてウサギに尋ねました。
「…それで、さっき言ってた女王の手下って… どうやって戦うの?」
「その渡したストローでシャボン玉を出して…」
「こう?」
やよいがストローを吹くと、そこから虹色のシャボン玉が。
続けざまにいくつものシャボン玉が飛んで行っては、同じところで弾けて虹を描きます。
「これは悪い者たちが大嫌いなシャボン玉なんです、これを使えばきっと女王にも勝てるはずです。
残念なことに、これを使えるのは純粋な人間の女の子だけなんです…」
そういう理由で、やよいは呼ばれたのか。そう言われると悪い気はしません。
「それじゃぁ、これからよろしくね、…えっと」
「ウサギでいいですよ」
そう言って胸を張ってみせるウサギ。
「じゃぁ女王さんのところまで案内してくださーい」

やよいたちが先に進むと、目の前には足の生えたキノコやら爆弾やらが。
道は狭くなっているので、どいてもらわないと先には進めそうにありません。
「シャボン玉を当てて吹き飛ばすのです」
「こう?」
やよいのシャボン玉が当たると、キノコたちは床の外に飛んでいき、爆弾は破裂してしまいます。
「すごいですー」
「でも気をつけてください、床から落ちるときっと助かりませんから」
さっき落としたキノコがまだ落ちていくのが見えます。
「特に転がってくるボールに弾かれるとやっかいです、気を付けて下さい」
「分かりましたー」

678メルヘンメイズ やよいの大冒険 第2節:2009/10/09(金) 23:21:33 ID:.t8phchE0
途中、転がってくる大きなロールケーキを飛び越えたり、太った兵隊達をやっつけたりしながら、どんどん
歩いていきます。
そうして進んでいくと、やがて行き止まりに来ました。でもここから飛び移って向こうまで行けそうです。
「いち、にの、さーん!」
元気なやよいはウサギを抱えたまま向こうまでジャンプで飛び移りました。
そこは広くなっている床で、見渡す限り何もありませんでした。
「ここに次の世界へ続く鏡があるはずなのですが…」
「それは、これのことかい?」
突然、どこかからか声がしました。見回してみてもやよいたち以外には誰もいないようです…。
「こっちじゃよ、こっち」
声と共に目の前が暗くなったかと思うと、やよいの頭に何かがコツンと当たりました。
「いたっ… 上!?」
頭から床に転がってきたのはキャンディーでした。それと気付くまでに、上から何十個ものキャンディーが
ばらばらと降ってくるではありませんか。
「痛いです〜」
上を見上げると、そこにはほうきに乗ったおばあさんでしょうか、愉快そうに笑いながら腰に付けた袋から
キャンディーを放り投げてきます。片方の手にはきらきら光る鏡が見えます。
「せっかくのプレゼントなのに、もっと喜んでくれてもいいのにのぅ」
「何がプレゼントだミヤーシャ、中身はただの石ころのくせに」
ミヤーシャと呼ばれた、その魔法使いのおばあさんにウサギは首をもたげながら怒鳴りつけます。
しかし言っている間にも上からキャンディーが、このままではたまりません。
「やよい、シャボン玉を」
「わかった!」
やよいはキャンディーを避けながらシャボン玉を吹き付けます、しかし空を飛んでいるミヤーシャには
あと少しのところで届きません。
「人間なんぞ連れてきおって、どんなものかと思えば大した事ないのぉ」
得意そうにミヤーシャは高笑いをして見せます。
「もっとシャボン玉を大きくするのです!」
「大きく?」
「そうすればきっと届くはずです」
やよいは大きく息を吸い込んで、大きなシャボン玉を作ろうとします。でも大きくなりすぎて破裂して
しまいました。
「ふぇっふぇっふぇ」
「もう一回頑張ります!」
息を吸い込んで、シャボン玉を大きく、そして…
「そこです!」
ウサギの声と共に、大きなシャボン玉が飛んでいき、ミヤーシャの顔面に炸裂しました。
「お、おのれぇぇぇ」
ミヤーシャはキャンディーを地面に投げつけました。するとそれは小さな魔女の姿に変わり、
そしてやよいたちめがけて飛んできます。
「きゃぁっ!」
飛んできた魔女に当たったやよいはそのまま引きずられて、見る見るうちに床の端まで。
このままでは奈落の底にまっ逆さまです!
「ジャンプです!」
とっさにジャンプして床のあるほうへ。ぎりぎりのところで止まることが出来ました。
その間にも小さな魔女たちは次々と飛んできます。でも、まっすぐ飛んでくるだけの魔女たちは、
2,3回見ているうちに簡単に避けられるようになっていきました。
「すー…」
やよいはまたシャボン玉を膨らまし、ミヤーシャの方にどんどん飛ばします。
何回かシャボン玉が当たると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ミヤーシャの体が光に包まれ、次々と泡が弾けるようになりながら落ちてきました。
「お、おのれぇぇぇ!」
そして見ているうちに、ミヤーシャはぶくぶくと泡になって消えてしまいました。
後には乗っていたほうきと、そして鏡が残っていました。

「これで女王は倒せたの?」
「いえ、これはあくまで女王の手先… 本物の女王はもっと向こうの世界にいるはずです」
そう言ってウサギは鏡の中を見つめました。そこにはさっき通ってきたような通路が見えます。
「ウサギさん、行こう!他に助けてくれる人が誰かいるかも知れないし」
やよいは元気付けるかのように、そう言ってウサギの手を取りました。
そういうやよいだって、本当はちょっぴり怖いのです。でも勇気を出せば、きっと…。
ふたりは一緒に鏡の中に飛び込んでいきました。
次はどんな世界が待っているのでしょうか。

679メルヘンメイズ やよいの大冒険 解説:2009/10/09(金) 23:43:48 ID:.t8phchE0
本来これを最初に書くべきだったのですが;

これは’90年にPCエンジンでリリースされたゲーム『メルヘンメイズ』を元にしたSSです
主人公のアリスが9つの世界を廻っていき、最後に鏡の国を支配している女王を倒すことを目的とした
アクションゲームです
Wiiのバーチャルコンソールでも最近リリースされたようですので、興味のある方は遊んでみてはいかがでしょうか

このSSでは主人公のアリスを『アイドルマスター』のやよいに置き換え、各ステージで他のアイドル達と出合って
協力して戦うスタイルをメインにしています
『アイドルマスター』をご存知の方は、ここまでの段階で、ひょっとしたら最後のオチまで予想が付いてしまうかも
知れません…

しばらくお付き合いいただけたら幸いです

680メルヘンメイズ やよいの大冒険 第3節:2009/10/11(日) 02:00:39 ID:H6itFIAA0
 第2話 きかいの国  〜スーパーヒーロー真ちゃん?〜

「…っていう夢を見たんだよ、伊織ちゃん」
「変なの」
やよいと話をしているのは、長い髪を後ろに回した可愛らしい女の子、伊織ちゃん。
かわいくてやさしくてうたがうまくて、やよいも彼女のことが大好きでした。でも…
「まぁ、やよいにはお似合いかしらね、まだまだお子様って感じだし」
「うっうー…」
…ちょっと意地悪なところがあるのが、玉に傷でしょうか。

さてやよいは今日も鏡の国へ。
やよいとウサギが鏡を抜けると、そこは一面灰色の床で埋め尽くされた世界。
ところどころにロボットが歩き回っていました。
「ここは?」
「機械の国ですね… ここも女王の手によって作り変えられてるようです」
見ると、ただの床だと思っていた、ところどころにはベルトコンベアが流れています。上に乗ると
あっという間に流されて下に落ちてしまうことでしょう。
「とりあえず気をつけて進みましょう、ロボット達はそんなに反応も良くないはずですし」

しばらく進むと、いくつかの浮島が見えてきました。先のほうにはたくさんのロボット達が。
「ここからシャボン玉でロボットを追い払いましょう、床の切れ目を越えて攻撃はしてきませんから」
やよいが次々とロボット達を吹き飛ばしていきます。しかし向こうからは次から次へと…
キリがありません。
「うっうー、これじゃぁ先に進めません〜」
疲れてしまったやよいはその場にしゃがみこんでしまいました、すると…
「…その声は、やよい?」
聞き覚えのある声がしました。
「真さん?」
前を見ると、浮島の向こうにロボットとは違う姿が見えました。ちょうどロボット達の中に髪の短い
男の子が混ざっていて、戦っている様子でした。
「やよい、助けてあげましょう」
「うん!」
さっきのようにシャボン玉を大きくして、そしてジャンプと同時に発射!
シャボン玉はまっすぐに飛んでいき…
スパパパパーーン!
次から次へとロボット達を吹き飛ばしていきました。やよいはそれと同時に向こう側へ。
何体かロボットは残りましたが、それは真さんが、
「ぱーんち!」
かっこよくパンチで攻撃して壊してしまいました。

あらためて3人は集まって挨拶をします。
「でも私はやよいしか呼んでないはずなのに、どうして男の子が?」
「ボクは女の子だよっ!」
真さんはそういってウサギに不満をぶつけました。髪が短くてパンチでロボットを壊してしまう…
確かに男の子に見えても不思議は無いのでしょうが、ちょっと失礼ですよね。
「…コホン。それで、真、頼りになりそうですし、一緒に戦ってもらえたら、と…」

「つまり、この向こうに悪い奴がいて、それをやっつけないと帰れない、ってこと?」
「はい…」
やよいは真さんに事情を説明しました。
「うん、分かった。一緒に頑張ろう!」
「ありがとうございます」
こうして心強い仲間が来てくれました、やよいたちは無事に機械の国を抜け出せるでしょうか?

681メルヘンメイズ やよいの大冒険 第4節:2009/10/11(日) 02:01:53 ID:H6itFIAA0
「シャボン玉ー!」
やよいが大きなシャボン玉で次々とロボット達を吹き飛ばし、
「うりゃー!」
真さんは次々と他のロボット達を壊していきます。
「でも懐かしいなぁ、こういうロボットたち」
「懐かしい、ですか?」
やよいがそう真さんに尋ねました。
「うん、小さい頃人形が欲しくてさ、お父さんにおねだりしたんだ」
「でも買ってきてくれるのはこういうロボットとか戦隊ヒーローとかばっかりで、ううう…」
真さんはそう言って涙目になってしまいました…。
「はわっ、でも今の真さんはかっこいいですし、それにそれに…」
必死にやよいが慰めます。なんとか背中を押して、ようやく真さんも先に進んでくれました。
真さんってそういう育てられ方をしてたんですね…。

長いこと歩いて、ようやく次の世界への入り口があると思われる場所まで来ました。
「…!」
みんなの前にいたのは、今までの何十倍もあるかのような大きなロボット。
足が無いのに、ふわふわと地面から少し浮かんでこちらを見ています。
ウサギが歩いていって声をかけました。
「やぁ、アールメイコン。この辺に鏡があったはずなんだけど」
「…」
返事はありません。
代わりに両方の腕が上がったかと思うと、握った手のひらがくるくると動き、そして…
やよいたちに向かって飛んできました!
「危ない!」
真さんがやよいを抱えて横っ飛び。そのすぐ上を大きなげんこつが、ビュン!と通り過ぎていきました。
げんこつはそのまま飛んでいき、しばらくするとアールメイコンのもとに戻って来ます。
「…どうやらこれも女王の仕業…」
「やっつけるしかないの?」
「いえ、多分操られているのでしょう、何とかして止めることが出来れば…」
止める?
でも足はありません、だとすると…
「頭!」
真さんがそう言いました。
「それです! なんとかして頭にシャボン玉を…」
「うん!」
やよいは返事をしながら、アールメイコンの頭を見上げます。
ちょっと離れていないと体に邪魔されて頭には当てられそうもありません。
「ボクも手伝う!」
「真は離れていてください、なるべく壊さないで止めたいんです」
ウサギにそう言われて真さんは床の端のほうへ。
やよいとアールメイコンの一騎打ちです。
なるべく距離を取って、そして大きなシャボン玉を上のほうにある頭に。
「やよい、パンチが来る!」
真さんは走り回るやよいにアドバイスを。それを聞きながらやよいは飛んでくるパンチを避けます。
しばらくそうやっているうちに、だんだんやよいもタイミングが分かってきました。
1発目、2発目、そしてもう一回。
何回かシャボン玉を当てると、アールメイコンの動きがピタリと止まりました。と思うと…
そのまま前に倒れこむかのようにして、

バターーーーン!

…と突っ伏してしまいました。
地震かと思うような地響きがしばらく続いた後、周りはぴったりと静かになっていきました…。
「やっつけたの?」
「ええ、もう大丈夫でしょう、あとは何とか話を聞ければ…」
「しっかりして!」
「…ココハドコデショウカ?」
アールメイコンの声です、でももう襲ってくることは無いようです。
「ハッ、ワタシハイッタイナニヲ…」
ウサギが状況を説明すると、
「ソウデスカ、ワタシハアヤツラレテイタノデスネ」
そう言って申し訳無さそうにします。
「良かった…」
「ところでアールメイコン、鏡はこの辺に無かったかい?」
「ソレハコレノコトデショウカ」
胸からポロリと鏡が出てきました。ミヤージャが持っていたのと同じものです。
「ジョオウニモッテイルヨウニイワレテイマシタ」
「じゃぁこれでまた次の世界に行けるわけだね」
やよいが鏡を手に取ります。幸い割れたりひびが入ってるようなこともありません。
「あ、やよい、そういえば…」
「真さん?」
「ボクの他にも一緒にここに来た子達がいるみたいなんだ、何とか助けてあげよう」
「他にも…?」
多分みんなやよいの仲間達なのでしょう。真さんと一緒に来た、ということは…
「次の世界にも誰かいるってことですね!」
「そうですか… じゃぁ真はこの鏡から帰ってください。後は私たちに任せて」
「うん… ふたりとも頑張って!」
やよいと真さんはお互いこぶしを合わせて、そしてお別れをしました。

こうしてやよいはまた次の世界へ。
今度はどんなところ、そして誰がいるのでしょうか。

682メルヘンメイズ やよいの大冒険 第5節:2009/10/12(月) 00:48:56 ID:/buGS2jQ0
第3話 みどりの国  〜千早とやよいは名コンビ?〜

「真さん無事に帰れたかな…?」
「それは心配ありません。できれば一緒に戦ってもらいたかったのですが…」
「無理なの?」
「ええ、ストローは一つしかありませんし、それにそのドレス無しではこの世界の邪悪な瘴気によって
あっという間に体力を奪われてしまうことでしょう」
ウサギはそう言ってやよいのエプロンドレスを見ました。普通の服のように見えるのに、とってもすごい
ものだったのですね。

鏡の中は通路になっていて、そこを通ると向こうに光が見えてきました。
そして出てきたのは…

「きゃぁぁぁぁっ!」
やよいたちを出迎えてくれたのは、甲高い悲鳴でした。それもやよいには聞き覚えのあるものです。
「千早さん」
「あ、高槻さん…? いきなり何か出てきたかと思ったら…」
千早さんとやよいの出てきたところは、そうですね、30cmぐらい、すぐ近くです。
そんなところから人がいきなり出てきたら誰でも驚くでしょう。
「千早さんもここに連れてこられたんですか?」
「ええ… 私は確かにパジャマに着替えて、それでベッドに入ったはずなのに…」
千早さんはそう言って、目の前のやよいを珍しそうに眺めます。
いつもの服とは違って、オレンジと白のドレス、そしてエプロン。とても可愛らしいです。
「…」
千早さんは何も言いません。ただじっとやよいを見ているだけです。どうしてしまったのでしょうか?
「千早さん?」
「あ、ご、ごめんなさい…」
「きっとこの先に出口があるはずですから、一緒に行きましょう?」
やよいはそう言って、千早さんの手を取りました。さっきからぽーっとしてる感じの千早さんが心配に
なったのかも知れません。
千早さんはそのまま引っ張られてやよいと一緒に歩いていきます。なんだか仲が良さそうですね…。

見回すとそこは一面緑が広がっている世界。
いろんな昆虫やぷよぷよとした生き物、そして何故か銀色の四角い板がくるくると回りながら飛んできます。
「何だか嫌な風景ね…」
千早さんが銀色の板の方を見ながら、そうポツリと呟きました。よっぽど気に入らないみたいです。
「これもみんな女王に操られてるのかな…」
ちょっと寂しそうなやよい。生き物をいじめるみたいで何となく気が進まないのかもしれません。
なるべく落とさないようにして進むことにしましょう。

くるくる回りながら飛んでいるトンボや、たくさん足の生えた毛虫などを避けながら、やよいたちは
歩いていきます。
途中にボールを吐き出してくる穴みたいなものがありましたが、
「高槻さん、右に回りながら」
千早さんのアドバイスで上手くボールを避けながら穴をふさいでしまいました。
「そうよ、いい感じね」
「えへへー」
そんなことで褒めてもらって、やよいもなんだか嬉しそう。
そうしてどんどん進むと、また広い床が向こうに見えてきました。ここにも何かいるのでしょうか?

683メルヘンメイズ やよいの大冒険 第6節:2009/10/12(月) 00:50:56 ID:/buGS2jQ0
「やぁやぁ久しぶりだねぇ」
「待っていたよウサギくん」
そこにいたのは、まんまるい緑と赤のまだら模様をした二つの… 生き物でしょうか?
両方とも大きな目と口を持っていて、なんだかにこやかな感じです。そしてその周りにはいくつもの
顔の描かれたボールが…。
「これも女王の作った魔物でしょうか…」
ウサギの顔が緊張でゆがんだように見えました。
「魔物だなんて失礼な」
「このアラティーズに向かってそんなことを言うなんて」
目の前にはそっくりの顔が二つ。大きな口を横にめいっぱい広げて、けたけたと笑っています…。
「不気味…」
思わず千早さんがそう呟いた、次の瞬間。
「不気味ですって?」
「私たちの気にしていることを…」
「「…ゆ、ゆるせなーい!!」」
言ったかと思うと、アラティーズたちはぐるぐると床の端っこを回り始めました。
ちょうど床の真ん中にいたやよいたちは取り囲まれる形になってしまいます。
ギュウン… ギュウン…
それを見ていたやよいの目が段々不安定に、そしてふらふらと歩き始めてしまいます。
「目が回ります〜」
そして回転するアラティーズの横を抜けて、ついに床の切れ目まで…!
千早さんが我に帰ると、目の前には今にも床から落ちそうなやよいが。
「高槻さん!」
千早さんは叫びながら走っていき、そしてやよいの手をつかもうとします、が…
目の前でやよいの姿は、ふわっ、と消えてしまいました。
「!!!」
思わずそのまま体を宙に躍らせた千早さん、このまま二人とも…?

684メルヘンメイズ やよいの大冒険 第7節:2009/10/12(月) 00:51:28 ID:/buGS2jQ0
いいえ。
やよいの体は、ぎりぎりのところで千早さんが手を掴んで宙ぶらりんになっていました。
そのまま千早さんは力を込めてやよいを引っ張り上げます。
「高槻さん!」
「あ、千早さん…」
気が付いたやよいは千早さんの両手を掴んで、そのまま引き上げられるがままに。
必死に千早さんが頑張って、なんとかやよいを床まで持ち上げることが出来ました。
そして抱き上げるような格好で、一緒にごろんと床に転がり込みました。
「はぁっ、はぁっ…」
千早さんの息が荒くなってます。きっとやよいを持ち上げるのは大変だったからでしょう。
顔も赤くなっていて、とても疲れているみたいです。
「…そうだ!」
やよいは起き上がって床の真ん中を見ます。そこにはアラティーズたちが背中を向けて、何やら話を
してるようです。
「人間なんて大した事ないねぇ」
「私達が強すぎるんだよ」
…どうやらすっかり油断してるようです。そこにやよいはそーっと近づいていき、大きな大きな
シャボン玉を…

パチーーーーーーン!

「「うわぁぁぁぁぁぁ」」
不意打ち成功です。でもまだアラティーズは動けそうです。
「ふふふ、やってくれるわねぇ」
「さぁ戻ってらっしゃい、今度こそ叩き落してあげるわ」
しかしやよいはそのまま動きません。床の端に立ったまま、また大きなシャボン玉を作って、
待ち構えています。
「…なるほど、真ん中にいるのと違って、そこにいれば目が回ることはないわね」
「でも突き落とす手間が省けるじゃない、今度こそまっさかさまだわよ」
またアラティーズは回り始めます。今度は端っこのほうにいるやよいに集中して弾が飛んできます。
「高槻さん、縄跳びよ!」
離れたところにいる千早さんは、そうやよいに向かって大きな声で言いました。
縄跳び?
どういうことでしょう?
考えている間に、千早さんが両手をパンッ!と叩きます。
とっさにやよいはジャンプ。するとその下をアラティーズが通り過ぎていき、吐き出してきた玉は全部
やよいの下を通り過ぎていくではありませんか。
「縄跳びってこういうことですか〜〜」
「リズミカルに飛んでいれば当たりそうに無いわ、縄跳びと同じよ」
また手を打つ千早さんと、ジャンプするやよい。
それを何回か繰り返しながらシャボン玉をぶつけ、最後は大きなシャボン玉を。
すると、ついにアラティーズの動きが止まり、そして両方とも爆発して消えていきました。
「「うひゃぁぁぁぁ」」
爆発したところから何かが飛んできました。それは地面にぶつかってやよいたちの方へころころと。
…何でしょう、人形でしょうか。

「助かったわ〜」
「女王のせいでぐるぐると回り続ける呪いを掛けられていたのですよ〜」
人形に見えたのは、二人の小人でした。
「レプラコーンですね、普段は楽しく踊っているのが趣味なのですが」
ウサギさんが説明してくれました。いろいろありましたけど、助けることが出来てよかったですね。
「他のみんなも助けてあげてください」
そう言って小人たちはどこからともなく鏡を持ってきました。これでまた次の世界に行けそうです。

「迷惑をかけましたね、千早」
「いえ、結構楽しかったですよ、高槻さんとの冒険は、フフッ」
千早さんを先に元の世界に帰して、残る二人も鏡の中へと飛び込みます。
手を振りながら、やよいたちは小人さんたちとお別れしました。
先に進むと、何やらひんやりした空気が感じられます。今度は寒いところでしょうか…?

685またしてもパクリネタ ◆Free525l1Y:2009/10/12(月) 10:03:21 ID:rDdKzF8s0
迷探偵栞
リョウ「ぬ…これは酷いな…」
ルカリオ「死因は後頭部を銃で撃たれた事による失血死です」
セリカ「誰がエリカを…許せないわ…」(涙目
たてじん「そういえば川澄さん、あなただけアリバイが無いんですよね…」
川澄「…それは…」
たてじん「まあ話は後でじっくり聞かせてもらいましょう」
栞(違います!犯人は川澄さんではありません!このままだと…
  よし!シャドウさんが作ってくれたこの麻酔銃で…
  建山さん…ごめんなさい!)
::::::::::::::::::::::::......   ........::::::::::::::::::::::::::: ;;;;;;;::::::::::::::::::
           γ ⌒ ⌒ `ヘ
          イ ""  ⌒  ヾ ヾ    ドガァァァァァァァァン
        / (   ⌒    ヽ  )ヽ
        (      、 ,     ヾ )
 ................... .......ゞ (.    .  ノ. .ノ .ノ........... ........
 :::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ、、ゝ.....|  |..., , ノソ::::::::::::::.......::::::
  _ _i=n_ ._ [l_ .._....,,. .-ー;''!  i;;;〜−ヽ_ii_i=n_ [l h__
  /==H=ロロ-.γ ,〜ー'''l ! |'''ーヾ  ヾ 「!=FH=ロロ
  ¶:::-幵-冂::( (    |l  |    )  )=HロΠ=_Π
  Π=_Π「Ⅱヾ、 ⌒〜"""''''''⌒〜'"´ ノ;;'':::日lTΠl:::....
 Д日lTl,,..:''''"   ""'''ー-┬ーr--〜''""   :::Д日lT::::
 FH=n.:::::'            |   |         :::FL日l」:::::
 ロΠ=:::::.:.        ノ 从 ゝ        .::田:/==Д::
 口=Π田:::.                   .::::Γ| ‡∩:::::
 Γ| ‡∩Π::....                ...:::Eヨ::日lTlロ::::
 Д日lTlロ_Π::::.......            ...::::::::田:凵Π_=H:::
 =Hロ凵Π=_Πロ=HロΠ:::.................:::::::::::口ロロH「l.FFl
栞「シャドウさん…これって…」             尾張

686メルヘンメイズ やよいの大冒険 第8節:2009/10/14(水) 23:32:36 ID:LeEgOVwM0
 第4話 氷の国  〜雪歩の大事なお友達〜

「段々寒くなってきたね…」
やよいがそうウサギに言いました。
「ええ、今度は氷の国なんです。やよいは大丈夫ですか?」
「うん、でも待ってる人はきっと寒くて大変だから、早く助けてあげないと」
やよいはやっぱり優しいですね。

出てきたのは一面氷の床、そしてとても冷たそうな水が流れているところ。
さすがに寒くてたまりません。こういうときは運動をして体を温めることにします。
やよいが走ろうとして構えを取ると…

べしょ。

そのままやよいは見事に転んでしまいました。
「うう〜」
うつぶせに倒れたやよいはなんとか起き上がろうと頑張って、何回かの後にようやく立ち上がれました。
でもこれでは到底先に進むことは出来ません…。
それを繰り返すうちにやよいは床の端っこまで。滑って落ちてしまいそうになって、やよいはとっさに
床の端を掴みました。すると…

その端っこだけは床が少し盛り上がっていて、やよいはそこにぶつかって止まることが出来ました。
盛り上がりを掴んで立ち上がると、なんと滑らずに立つことが。
「そうか、それなら端っこを歩けば!」
「普通に歩けますー!」
ちょっと危ないですけど、滑らずに歩けることを考えれば安いものです。気をつけて歩いていきましょう。

走ってくるピンクや水色のペンギンを横目に、ゆっくりとやよいたちは進んでいます。
普通にしていればそんなに危なくは無さそうですが、ここにも女王の手先はいるはずです。
何とかしないと… そう思っていると、氷の床に穴が開いているところを見つけました。
遠目に見て人が2、3人ぐらいは入れる大きさでしょうか、誰かが穴を開けたのに違いありません。
「こ、これは…」
ウサギが驚いています。とにかく行ってみましょう。

穴の側に行くと、そこだけは下の土が見えていて、結構深い穴が掘られていることが見て取れます。
やよいがその側まで行って、
「誰かいますかー?」
と、呼んでみました。すると下のほうで何かが動いて、そして見慣れた人影が姿を現しました。
「雪歩」
「雪歩さん」
二人が同時にそう言います。
「や… やよいちゃん?」
そこにはノースリーブの白い花柄の服、そして何故かスコップを背負った女の子が座っていました。
この子が氷を掘って、そしてこんなに大きな穴を開けたのでしょうか?
「あ… ここだけ大きなひびが入っていたの… ここにいると寒くてたまらないから、こうやって穴を
掘って誰か来るのを待ってたの…」
そういうことでしたか。やよいとウサギもちょっと納得です。
「でも雪歩、ここだけ大きなひびが入っていたということですか?」
ウサギが訊くと、
「うん、まるで何かが落ちてきたかのような感じで…」
そう雪歩さんは言いました…。 何が落ちてきたというのでしょう?
「とりあえず一緒に帰りましょう、ここだとおなかも空きますし!」
「そ、そうだね… やよいちゃんは元気でうらやましいな…」
なんだか落ち込んだ様子の雪歩さんを連れて、やよいたちは出口を探しに行くことにしました。

しばらくすると少しは氷の上を歩くのにも慣れてきました。
雪歩さんが時折バランスを崩したりしてちょっと驚いたり、やよいがジャンプした拍子に転んだり。
そんなことを繰り返しているうちに…
「やよいちゃん! あそこに誰か倒れてる!」
雪歩さんの声に、やよいたちもその方向を向きます。すると…
そこにライトグリーンの服を着た… 女の子でしょうか? 青い髪飾りを付けたその姿を良く見ると…
「真美ちゃん!」
やよいたちの大事なお友達の姿でした。雪歩さんが走って行って、隙間を飛び越え、あっという間に
真美ちゃんのところにたどり着きました。勢いが付いたまま滑っていきますが、それは背負っていた
スコップで上手く勢いを緩めて、落ちる手前のところで止まることが出来ました。
「しっかりして!」
服を着ているとはいえ、真美ちゃんの体は冷たく、顔はすっかり青ざめてしまっています。
このままでは大変なことに…。
「氷の上に倒れていたのでは体も冷え切っているでしょう… 何とかしないと」
でも雪歩さんに出来るのは、ひたすら呼びかけて、そして体を暖めてあげるだけ。
雪歩さんがきゅっと真美ちゃんの体を抱きしめてあげました。こうすれば少しは…
「真美ちゃん、真美ちゃん…!」
返事はありません。
それでも何回も雪歩さんは呼びかけ、体をさすり、抱きしめ…
いつのまにかぽろぽろと涙が流れて、真美ちゃんの顔にぽたり、ぽたり、と。でもそれを止めることもせず、
ずっとそのまま雪歩さんはそうして真美ちゃんを抱きしめていました…。

687メルヘンメイズ やよいの大冒険 第9節:2009/10/14(水) 23:34:29 ID:LeEgOVwM0
「…」
「…」
みんなが疲れて眠ってしまいそうになった、その時。
「ん…」
「…え?」
雪歩さんが驚いて声をあげます。ずっと動かなかった真美ちゃんがかすかに動いたような気がしたのです。
「真美!」
「しっかり!」
やよいたちも一緒に呼びかけます。すると真美ちゃんの冷たかった手が少し動いて、まぶたが開いて、
「…ここ、どこ…」
声を出してくれました!
みんな思わず声を出して喜びます。雪歩さんはまた涙を流しながら、
「真美ちゃん… よかった… よかった…」
と、真美ちゃんの手を取りながら…。
「…ゆ、ゆきぴょん!?」
ようやく我に帰った真美ちゃんも、自分がどうしているのかをようやく理解すると、
「わ、うわぁぁぁぁぁぁ!?」
顔を真っ赤にしながら立ち上がります。元気になったみたいで良かったですね。

「…それで、真美ちゃんはあそこに落ちてきて」
「うん、とりあえず歩いたんだけどさ、すっごく頭が痛くて」
「それで行き倒れになったというわけですか…」
「行き倒れなんてひどいよー」
みんなは集まって、お互いの情報を交換しました。
でも、氷に穴を開けるほどの勢いで落ちてきて無事だったなんて凄いですね…。それはさておき。
「そういえばやよいっち、亜美はいなかった?」
「ううん、ここまでにはいなかったよ」
「そっか… 途中までは一緒に落ちてきたのは覚えてるんだけど」
やよいたちはもう大分歩きました。それでも見つからないのなら、また別の世界にいるということで
間違いないでしょう。
「とりあえずこの先に出口があるはずから、そこに行けば何か分かるかも」
「…うん! あ、そういえば」
真美はなにやらポケットから黒いボールを取り出しました。
「これ持ってると氷の上で滑らないみたいなんだ、名付けて『スベラーズ』!」
「…」
「…と、とりあえず持ってて、たくさんあるから」
みんなが黒いボールを持つと、本当に氷の上でも滑らなくなったみたいです。ちゃんと立つこともできます。
これで女王の手下にも何とかなりそうです。

目の前には何やら大きな柱が立っていました。
よく見ると、それは横に縞模様が入っていて、そして一番上には顔が描かれています。
「これが… ここのボスでしょうか?」
ウサギはそう言って、遠巻きに眺めています。
「とりあえず真美ちゃんはそこで待ってて、まだ体も万全じゃないはずだし」
真美ちゃんにそう言って、雪歩さんがその柱のほうへと少しずつ近づいていきました。
「これだるま落としだよ、やよいちゃん」
「だるま落とし… ですか?」
「うん、こうやって下の土台を叩くと…」
雪歩さんは背負っていたスコップを両手に持って、一番下の赤い部分を叩いてみました。すると…。
その赤い部分が少し動いたような気がしました。そして、その上にある青や黄色の部分も…。
見ているうちに、柱はばらばらになってやよいと雪歩さんの方にぐるぐると廻りながら向かってきました!
「きゃぁぁぁぁぁ…」
「うわぁぁぁぁぁ…」
なんとか二人は走り回ってそれをかわします。雪歩さんはスコップを引きずったままで。
走ったところにスコップで線が描かれていきます。
ひとしきり回ると、それらの部品は一つのところに集まってきて、また元の柱に戻りました。
「おではタンブラーだど、だど、だど…」
「いたいじゃないかー、かー、かー…」
柱の上の方から声がします。どうやら一番上のだるまみたいなものがしゃべっているようです。
そうしている間にもまた柱がばらばらになって部品がぐるぐると。
「やよい、なんとかシャボン玉を」
「でもどうやって?」
「柱の形に戻ったところを狙うのです!」
やよいは大きくあちこちに逃げ回りながらチャンスを待ちます。回転が遅くなってきたところでシャボン玉を
大きくして、そして部品が集まってきたところにぶつけます。
何回かそれを繰り返して、ついにだるまの部分だけになりました… しかし。
今度はそのだるま… タンブラーが氷の上を自在に滑って、やよいたちを突き落とそうとしてくるでは
ありませんか。
必死に走り回りますが、タンブラーも大したもの。ますますスピードを上げて二人を追いかけます。
「ちょこまかと足の速いやつめー、めー」
「足の無いあなたに言われたくありませんー!」
そうしているうちに、とうとう疲れてやよいと雪歩さんはその場にへたり込んでしまいました。
「はぁっ、はぁっ…」
寒いところなのでいい運動にはなるかもしれませんが、このままでは…!

688メルヘンメイズ やよいの大冒険 第10節:2009/10/14(水) 23:35:31 ID:LeEgOVwM0
と、その時。
「ううっ… 私何の役にも立ってない…」
雪歩さんでした。
俯いているので表情は分かりませんが、何だかとても悲しそうです。背中までふるふると…
「…こ、こんなダメな私は… 穴掘って埋まってますー!」
「穴!?」
その場の全員が唖然として見ているうちに、雪歩さんはスコップを振り上げ、そして氷の上に思いっきり
突き立てました。
氷に金属が当たる、カキィィィン、という音が空しく響きます…。

その音と入れ替わりに、今度は低い音が響いてきます。まるで地響きのような…。
やよいがふと雪歩さんのほうを見ると、ちょうどそこにはさっき雪歩さんがスコップを引きずった跡が。
そこからかすかに聞こえた音、それは
「氷にひびが入った音…!?」
言っている間に、それはどんどん広がっていき、やよいやタンブラーの重みのせいであっという間に足場の
そこらじゅうを覆うほどに。
「ど、どういうこと!?」
「雪歩さんのパワーってすごいんですね!」
「そんなわけないよー!」
でもどうしましょう、このままではみんな海に沈んでしまいます。
「さっきゆきぴょんがスコップを引きずったせいだよー」
真美ちゃんでした。言いながら、大きなアクションで手招きを。
みんなが走って真美ちゃんのいるほうに何とか飛び移り、そして…
「ぬぉぉぉぉ、落ちるーーー!」
正に手も足も出ないタンブラーは、みんなの見ている前で氷と一緒に沈んでいってしまいました…。
「氷に傷を付けると、それに沿って割れやすくなるんだよ」
真美ちゃんがそう言って氷の割れる様を眺めています。
「そうなんだー、真美ちゃんは物知りだね」
「ふふーん、これは漫画に載ってたんだよ、真美は物知りだね〜」
ちょっと得意そうな真美ちゃんを横目に、
「でも… 鏡をどうやって探しましょうか」
ウサギがそう言ってると、割れた氷の間にキラリと光るものが…。
それはそのままやよいたちのほうに流れてきて、そして氷に混じって浮かんだままになっています。
「なんとかこれで次の世界に行けそうですね」
みんなほっと一息です。

「やだ!」
「真美ちゃんは疲れてるんだし、一緒に帰ろう?」
「亜美は真美が助けるの!!」
まだ鏡は浮かんだままでした。
さっきから、雪歩さんと真美ちゃんがこうして言い争いをしていた為でした。
喧嘩?
そうではありません。
雪歩さんは疲れ切った真美ちゃんをこれ以上ここにいさせたくないから。
真美ちゃんは双子の妹の亜美ちゃんを助けに行きたいから。
二人とも一歩も譲りませんでした。
「困りましたね…」
「ねぇ真美、亜美は私達で助けるから」
「真美が助けなくちゃいけないの!」
雪歩さんが真美ちゃんの手を取って引っ張ろうとしますが、真美ちゃんも足を踏ん張ってその場に残ろうと
します。これではキリがありません。
いつしか、その真美ちゃんの目から涙がこぼれて氷の上に…。

「…分かったよ… やよいちゃん、お願いできるかな…?」
ついに雪歩さんも真美ちゃんの熱意に負けて、その握っていた手を離してくれました。
「ゆきぴょん… ありがとう…」
真美ちゃんはそのまま雪歩さんに抱き付いて泣き出してしまいます。頭をそっと雪歩さんがなでてあげます。
「真美ちゃん…」

「さ、そろそろ行かないと」
ウサギの声に促されて、みんなは鏡のほうに向かいました。
「みんな頑張ってね…。私は手伝ってあげられないけど、応援はしてるから」
雪歩さんがそう言いながら鏡の中へ。
そしてやよいたちもその後、次の世界へ向かって進んでいきました。
「亜美… 待ってて、きっと真美が助けてあげるからね」

689メルヘンメイズ やよいの大冒険 第11節:2009/10/16(金) 01:52:43 ID:I5UL5k9s0
 第5話 じかんの国  〜双子パワーVSトリプルヘッズ〜

さて…。
鏡の国にも大分慣れてきたやよい。今日は時間の国にやってきました。
「ここはどんな所なの?」
「正直なところ、ここは私にも良く分からないところなんです」
ウサギの頼りなさそうな言葉。
「ただ言えるのは… ここは純粋に女王の魔力によって作り出された空間で、ここでは時間の流れが他とは
違うということ… それぐらいでしょうか…」
なんだかよく分かりません。
でも、ここは女王にとって大事な場所ではないのか… そうやよいたちは直感していました。
ひょっとしたらここに女王がいるのかも…。

歩くたびに周りの風景がくるくると変わっていく、そんな空間をしばらく進んできました。
やよいの後ろには真美ちゃんが。どうしても妹の亜美ちゃんを助けたくて、結局付いてきてしまいました。
辺りを見回して見ますが、いるのは口の大きなネコとか、玉を吐き出してくる怪物とかばかり。
ここにも亜美ちゃんはいないのでしょうか…。

やがて、みんなは大きな谷間のようなところにやってきました。
向こうのほうに渡りたいのですが、そのためには間にある小さな動く床を飛び移っていかなくてはいけません。
しかもそれはたくさんある上に、どちらに進んだら良いかも分からない有様です。
「私が先に行って調べてきましょう、そこで待っていて下さい」
ウサギがそう言って、軽やかなジャンプであっという間に向こうのほうへと飛び移って行きました。

それでもウサギが戻ってくるにはしばらく時間がかかりそうです。
やよいと真美ちゃんは手近にあった大きな箱の上に座って休むことにしました。
「ねぇ、やよいっち」
「何、真美?」
「真美、結局付いて来ちゃったけど、役に立ってないのかな…」
ポツリと真美ちゃんが言いました。
「そんなこと…」
何か言おうとして、そこでやよいも一緒に黙り込んでしまいます。

真美はものすごく落ち込んでいる…。
こんな時、あの事務員のお姉さんならどんなことを言うのかな…?
真さんなら、千早さんなら、そして雪歩さんなら…

考えても分かるわけがありません。
やよいはやよいでしか無いのですから。
こんなとき自分に出来ること、それは何でしょう?

「そうだ、こんなときは、あれやろう!」
「あれ?」
「そう、ハイ、ターッチ!」
やよいは大きく右手を上げるポーズを取ります。いつもやよいはいろんな人とこれをやって、みんなで元気に
なって来たのでした。
「ねぇ…、真美がそんな顔してたら、せっかく亜美を見つけても亜美ががっかりすると思うんだ」
やよいは真美ちゃんを見つめたまま。
「だから、ね?」
しばらくやよいの手を見ていた真美ちゃんでしたが、おもむろに立ち上がって、
「タッチ」
自分の右手のひらを勢い良くやよいの右手に合わせます。パチンッ、という音が辺りに響きました。
「どう、ちょっとは元気になった?」
「うん… ありがとう、やよいっち」
真美ちゃんに心なしか笑顔が戻ったように見えました。

それからしばらくして、ウサギが戻って来ました。どうやらどちらへ行くべきかは分かったようです。
「さ、それじゃ行きましょう… ん、真美、なんかさっきより元気になったような…?」
ウサギの言葉に、
「魔法のおまじないをかけてもらったんだー」
そう答える真美ちゃんでした。

床を飛び移って進んでいくと、今度は複雑な通路。それをふさいでいるネコの魔物たちを倒しながら
進んでいきます。あちこちから現れるので、倒すのにも時間がかかってしまいます…。
「もう少しですよ、ここを抜ければ出口があるはずです」
「そう、だね… ふぅ、ふぅ…」
さっきから真美ちゃんはとても疲れた様子です。氷の国と時間の国を長いこと歩いていましたし、それに…。

 『そのドレス無しではあっという間に体力を奪われてしまうことでしょう』

そうです。
やよいと違って、真美ちゃんは今もどんどん体力を失っていっているのです。早く亜美ちゃんを助けて、
一緒に元の世界に帰してあげないと…。
自然とみんなは駆け足に。真美ちゃんもやよいに手を引いてもらいながら、なんとか付いて行きます。
そうしてようやくいつものような広い床が見えてきた、その時。

690メルヘンメイズ やよいの大冒険 第12節:2009/10/16(金) 01:53:34 ID:I5UL5k9s0
…足音でしょうか。
とっ、とっ、とっ、という規則的な音が小さく聞こえます。
こんな音で歩く魔物はここには今までいませんでした。その音がするほうに目を向けると…

何か走ってくるものが見えることに、やよいは気が付きました。
ひょっとして女王の手先でしょうか。やよいはストローを構えて、その走ってくるものの方にシャボン玉を
膨らませ始めました…。
タイミングを計って、真美ちゃんたちの後ろに隠れて、そして…。

「えーい!」
シャボン玉は見事に走ってきたものに当たり、盛大に破裂して虹を描きました。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「え?」
真美ちゃんと同じような声を出して倒れこんだ、それは…。
「「「亜美!」」」
亜美ちゃんでした。
尻餅をついてしまったのか、その場にへたり込んでお尻をさすっています。
「ひどいよやよいっちー、いきなりシャボン玉をぶつけ… あれ、真美?」
「やっと見つけたよ〜」
真美ちゃんはそう言って亜美ちゃんの手を取って、そしてその場にいっしょに崩れ落ちてしまいます。
「ど、どうしたの真美!?」

事情を説明すると、
「そっか… ごめんね、真美」
「ううん、亜美が無事ならおっけーだよ…」
さっきやよいにシャボン玉をぶつけられたのは何とも無いようです。他に怪我をしてるところもありません。
「この先に出口があるはずだから、早く帰らないと…」
そういえば、さっきよりも心なしか真美ちゃんの顔色が悪くなっているように見えます。
「行こう!」
みんなは一緒に広い床のほうへと飛び移っていきました。

「よく来たな子供たちよ」
その声はどこからとも無く、しかしあらゆる方向から聞こえてきます。
「だがここまでだ。お前達も、このクイーンズヘッドの手下となるが良い」
目の前の空間が急速にゆがんだかと思うと、そこに何か黒いものが集まってくるように見えました。
それは段々ひとところに固まってきて、そして人の頭のような形を作っていきます。
吊り上った目に大きな口、髪を後ろに回した額には大きな宝石が光っています。
「やっかいな相手ですよ、これは… 女王の精神を象ったもの、とでも言いましょうか」
「真美は後ろで待ってて、ここは私達でなんとかするから」
真美ちゃんを気遣って、やよいはそう言いました。そして、亜美ちゃんと一緒に前に進み出ます。
「んっふっふー、亜美たちは負けないもんね、それに二人もいるんだし」
やよいと亜美ちゃんの二人で、クイーンズヘッドの両脇に回り込みます。そして…
「くらえー、ヤキニクマンキーック!」
亜美ちゃんがすかさす飛び蹴りを当てようとします。しかし、その体はそのままクイーンズヘッドを
ものの見事に通り過ぎて行きました。
「あ、あれ?」
「ふはははは、その程度か」
今度はやよいのシャボン玉攻撃。しかしこれも何も無いかのように…。
「ど、どうなってるの!?」
「お前達は二人いると言っておったな、しかしこれならどうだ?」
そう声がすると、クイーンズヘッドは消えてしまい、また別のところに現れました。
すかさずそちらを向いてやよいと亜美ちゃんが攻撃。でもやはりまったく手応えがありません。
そして今度は三体一度に現れて、それぞれが玉をばらまいて来ました。
「わー、三人なんてそんなの卑怯だよー!」
「卑怯だと?そのような言葉は聞こえんのぉ」
三体の頭はそれぞれが現れたり消えたりを繰り返しながら、やよいたちのほうに玉をばらまいてきます。
「これが三体の頭…、トリプルヘッズの恐ろしさなんです…」
端に押し出されそうになりながらも何とか攻撃を当てようとしますが、それも効果が無く、とうとう二人が
落とされようとした、そのとき…。

691メルヘンメイズ やよいの大冒険 第13節:2009/10/16(金) 01:55:16 ID:I5UL5k9s0
「分かったよ」
そう声がしたかと思うと、真美ちゃんが後ろから歩いてくるのに気が付きました。
「真美!」
「危ないから下がってて」
やよいと亜美ちゃんはそう言いますが、
「…真美だって、黙って見ていられないもん…」
半ばふらつきながらも、真美ちゃんはやよいたちのほうに歩いてきました。
「それって、本物はどれか一つで、あとは幻、って言うか、うそっぱちなんだよね、おばちゃん」
真美ちゃんの言葉に、一瞬トリプルヘッズの顔がゆがんだ気がしました。 …一体だけ。
「どうやら図星のようだねー、真ん中の人」
それを真美ちゃんが言い終わるや否や、亜美ちゃんとやよいは真ん中のトリプルヘッズにすかさず攻撃を。
トリプルヘッズは姿を消そうとしますが間に合わず、二人の攻撃をまともに受けてしまいます。
「くっ…」
再び別の場所に姿を現した三体。
「子供騙しな手に引っ掛かってしまったが、次はそうはいかんぞ」
自信たっぷりにトリプルヘッズは言いますが、

「今度は左だよ」
「ヤキニクマンチョーップ!」
「真ん中」
「シャボン玉ー!」
後ろから真美ちゃんの的確な指示が次から次へと。
亜美ちゃんとやよいの攻撃が見事に当たっていきます。

「な、なぜだ…」
すでに額の宝石が割れて無くなってしまったトリプルヘッズが、苦しそうな声でそう言います。
「幽霊とかって、写真に写らないんだよね…」
そう言って真美ちゃんがみんなに見せたのは…
「携帯電話!?」
「な、何だそれは?」
「これを使うと、本物だけが画面に写るってわけ。前にテレビでやってたんだ、シンデレラ写真だっけ?」
真美ちゃんは得意げにそう言いました。
「心霊写真ですね…」
ウサギがボソッと一言。
「そう、それ。幻とか幽霊とかは写真にも普通は写らないんだ、もちろん携帯の画面にも」
「ば、馬鹿な…」
すでに消えることも出来なくなったトリプルヘッズの、それが最後の一言でした。
「とどめは…」
「「これだー!!」」
やよいと亜美ちゃんと、そして真美ちゃんの三人の攻撃の前に、トリプルヘッズは泡となって消えて
いきました。
しかし… そのまま真美ちゃんは床にばったりと倒れ込んでしまいます。

「真美!」
「しっかり!」
やよいたちが真美ちゃんのところに駆け寄りました。
「んっふー、真美も役に立ったよね…」
息も絶え絶えの真美ちゃんは、それでもそんなことを言って笑顔を作って見せます。
「うん、だから…」
しゃべらないで、そう言おうとしたその時。
どこからとも無く光が差し込んで来るのに、みんなは気が付きました。
「これって…」
「女王の魔力が無くなったおかげでしょう…」
真っ暗な空から差し込んでくる光は見ているうちにその範囲を広げ、やがてこの世界全体を覆うほどに。
魔物たちが消えていき、代わりにここの世界にもともと住んでいた人たちの姿が次から次へと…。
そして真美ちゃんも…。
「ん… あ、あれ、なんかどんどんパワーが溜まっていく感じ…」
みるみるうちに顔色が良くなっていきます。
「すっごーい!」
「真美、もう大丈夫ですね」
「うん!」
立ち上がって大きくジャンプをして見せました。

「亜美、真美、本当にありがとうございました」
ウサギは改めてお礼を二人に言います。
「んっふっふー、どういたしましてだよ」
「スーパーヒロインには愛が無くちゃいけないんだよ、もちろんやよいっちもそうだけどね」
「てへっ… そうかな」
ちょっと恥ずかしそうなやよい。
手を振りながら、亜美ちゃんたちとやよいはお別れをしました。
そして、またウサギと一緒にやよいも鏡の中へ飛び込んでいきます。

「でもさぁ亜美、あのトリプルヘッズってどっかで見たような気がするよね」
「真美もそう思う? うん、誰かは思い出せないんだけどなー…」

692メルヘンメイズ やよいの大冒険 第14節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:23:42 ID:fHeuEg360
 第6話 みずの国  〜律子さんは水がお嫌い!?〜

「おはよー伊織ちゃん」
「あ、やよい… おはよう」
やよいが伊織ちゃんに今日も挨拶を。でも伊織ちゃんのほうはあんまり元気ではなさそうです。
「大丈夫…? 何か顔色が良くないみたいだけど」
「あ… ちょっと寝不足なだけよ… まぁあたしにだってこういう日ぐらいあるわ」
そう言って、伊織ちゃんはぬいぐるみを抱いたまま歩いて行ってしまいました。ぬいぐるみの長い耳を
ぴょこぴょこと揺らしながら…。
「伊織ちゃん、何だかいつもと違う…」
そう思ってみても、やよいにはただ見守ることしか出来ませんでした。

「次は水の国ですね」
「どんなところなの?」
「んー… まぁ見てもらったほうが早いでしょうか」
そんな会話をしながら鏡の中を進んできて、出てきたのは…

…一面水で埋め尽くされた世界でした。
正確に言うと、ポツリポツリと浮島がある他は、ほとんどが水、それも流れの早い水というところです。
「これは… 川?」
やよいがそう訊いてみます。
「ええ、以前はもっと穏やかな川だったのですが、ここも女王の魔力でこんなことになってしまいました」
ウサギが答えました。水の流れるほうを見てみると、そこは滝壷になっていました。
下の様子は分かりませんが、恐らく危険なことになっているのでしょう。
「でもこれじゃぁ前に進めません〜」
そうです。やよいたちが今いる所も浮島。
どこを見ても、橋も無ければ通路になるようなところもありません。戻ろうにも鏡の通路は跡形も無く、
ふたりが困り果てていた、その時…。

「誰かいるのかしら〜?」
向こう岸でしょうか、遠くのほうから声が聞こえます。
「はーい、誰かいますよー!」
とりあえず返事をしてみます。川の流れる音にかき消されない、やよいの大きな声(これはやよいの自慢
だったりします)が響き渡りました。
「誰かいるのは間違いないようですが」
「でもどうやって向こうに行こうかな…?」

川の向こうから何かが流れてくるのが見えました。
それはいくつも連なって、流れと同じ方向にどんどん進んできます。
「あれは…」
「いかだ!?」
上流からたくさんのいかだが流れてきます。これに飛び移っていけば…!
考える間もなく、やよいはそのいかだに飛び移って、次々と進んでいきました。

いくつかのいかだを飛び渡って、やよいたちは向こう岸らしきところに着きました、そこにいたのは、
ゆったりした薄緑の服を着た、軽くウェーブのかかった長い目の髪の女の子でした。
「こ、こんにちは」
やよいがとりあえず挨拶をします。
「え… やよい?」
「…? あの、私のこと知ってるんですか?」
そう言われた女の子は、軽く頭を抱えるポーズをした後、
「私よ、律子」
返事をします。
「えーーーーーーー!?」
今度は本格的に女の子が頭を抱えてしまいました。
「…そりゃ確かに、普段は眼鏡におさげの格好だけどさ」
「だからと言って、いつもいつもそんな格好をしてる訳無いでしょう?」
律子さんは不満そうに言いました。
「でもとてもそうは見えませんよ、そんなにお美しいのに」
「…あー、そのウサギのぬいぐるみといい、この状況を説明してくれないかしら、やよい?」

「なるほど、私は鏡の国にいつの間にか来てしまって、そこから帰るにはこの川を昇らないと、ってこと?」
「そうなりますね、出口はこの向こうです」
「…だんだんこの奇天烈な状況にも慣れてきたわね…」
律子さんはそう言って、目の前の川を眺めました。
「で、どうやって向こうまで行くの?」
「流れてくるいかだに飛び移っていくのです、ちょっと疲れますけれど」
ウサギが流れてくるいかだを指差しながら言います。
「…分かったわ、足を滑らせたらおしまいよね、うんそうだわ」
律子さんが言いました。顔が妙に引き締まった気がします。
「それじゃぁ行きましょー!」

岸は程なく途切れてしまい、やよいたちはまたいかだと浮島を飛び移って進んでいくことになりました。
途中、くるくる回りながら飛んでくるトンボ、そしてまっすぐ向かってくるトランプのカードの魔物を
吹き飛ばしつつ、慎重に慎重に…。

693メルヘンメイズ やよいの大冒険 第15節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:24:56 ID:fHeuEg360
そうして何とか進んでいくと、いつものような広い床が見えてきました。しかし…。
やよいたちは目の前の光景に呆然と立ちすくんでいました。

どう見ても3mぐらいはあろうかという隙間。
そしてその下は激しく水が流れて、大きな音をたてていました。
「さすがに上流まで来ると水の勢いも凄いわね…」
律子さんが表情を変えずに一言。
しかし、出口に向かうにはどうしてもここを飛び越えなくてはなりません。
「落ちたらひとたまりもありませんからね… 一気に助走をつけて飛び越えましょう」

まずはウサギから。
少し後ろに下がったかと思うと、猛ダッシュからのジャンプで見事隙間を飛び越えました。さすがですね。
「高槻やよい、いきまーす!」
やよいも同じように、こちらはぎりぎりまで後ろに下がった後、走りながら両手を揃えてのジャンプ。
ウサギほどではありませんが、見事に向こう岸に着地できました。
「次は律子さんですよー!」
…しかし律子さんはピクリとも動きません。ただじっと水の流れを見つめたまま…。
「どうしたんですかー?」
やよいの呼びかけも全く聞こえてない様子。

「…無理よ…」

「え?」
やよいの問いかけに、
「私やよいたちみたいに運動神経良くないし、それに…」
「…私、ここから落ちたら… 泳げないのよ…?」
消え入りそうな声で、そう律子さんは答えました。
「そんな!」
「律子さん!!」
やよいたちの呼びかけにも答えず、律子さんは体を震わせ、そしてその場にしゃがみこんでしまいました。
「どうしましょう…」
ウサギの言葉に、
「どうしましょうって、律子さんを助けに来たんだよ、私達!」
やよいはそう叫びながら、岸の端まで駆け寄ります。そして…

「届かないなら、私の手に捕まってください!」
律子さんのほうに両手を差し出しました。
「やよい…」
「さぁ!」
「でもそんなことして失敗したら、やよいまで一緒に…」
「私なら平気です、律子さんが勇気を出せば絶対大丈夫です!」
やよいのその目には一点の曇りもありません。ただじっと、律子さんが動いてくれるのを待っています。
「…分かった。やよいに私の命預けるわよ…」
「律子さん…!」
「さぁ、そうと決まったら」
律子さんはやよいたちと同じように後ろまで下がって、そうして目の前のやよいをじっと見ました。

(いつもと違って眼鏡が無いから、目測とかあてにならないわね…)
(…ううん、私は目の前のやよいの所に全力でジャンプすればいいのよ、がんばれ私)

走り始めました。
やよいたちに比べるとそれほど足は速くありませんが、それでも懸命に走り、そして…
少し手前のところからジャンプを!

片手をやよいのほうに伸ばしてのジャンプ。
やよいも律子さんの手を掴もうと必死に手を前に出します。
そしてその二つの手のひらが触れたかと思った瞬間…!

バシャーーーーーーン!
大きな水音がしました。

「律子さん!!」
どうにかやよいは律子さんの右手を掴みました。
しかし律子さんの体は半分以上が水の中に。何とかして引き上げないと、このまま沈んでしまいます。
自分も律子さんの重みで一緒に落ちてしまうのを懸命にこらえつつ、やよいは小さな体で必死に律子さんを
引っ張りました。
「やよ… い…」
「律子さん、しっかり!」
やよいのその言葉で元気が出たのか、律子さんも助かろうと残る左手を懸命に動かし、そして岸の端を
なんとか掴みました。
「んっ…!」
そのままやよいに引き上げられて律子さんは見事岸まで上がり、そしてその場に倒れこみます。
「や、やよい…」
「…やりました、やりましたよ律子さん!」
「うん… 良かった… あ、ありがとう、やよい…」
律子さんは見事に川を渡りきったのです!

694メルヘンメイズ やよいの大冒険 第16節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:26:32 ID:fHeuEg360
「やぁやぁお見事」
突然前のほうから声がしました。
見ると、そこには耳のとがった小男が、やたら大きな魚のようなものと一緒にたたずんでいました。
「こんな時になんだけど、何か買っていかないかい? そっちのお姉さんには水着もあるよ」
「み、水着!?」
律子さんは露骨に嫌そうな顔をして見せます。
「こんなところまで来て商売かパップン? 盗品故買屋なんてやめろと何回言ったら…」
ウサギも不快そうな顔でそう言いました。
「何だか分からないけど、この人は悪い人なの?」
「ええ、盗んだものを人に売りさばくケチなコソドロですよ」
「コソドロとは失礼だなぁ、今日はこんなものを持って来てあげたのに」
パップンと呼ばれた、その小男が見せたものとは…
「「鏡!!」」
「ほう、やっぱりこれは凄い価値があるものなんだねぇ」
ケタケタ笑いながら、パップンはその手にした鏡をひらひらと見せびらかしています。
「その鏡渡してもらうぞ!」
「やだね、100万ゴールド出すなら考えてもいいけどな」
「どうせどれもこれも盗んだものだろう、渡さないなら殺してでも奪い取る!」
珍しく怒気を含んだウサギの言葉に、
「おーこわいこわい、だったらこっちも本気でいくからねー」
そばにあった魚のようなものにパップンが乗り込むと、それは大きな音を立てて振動し始め、やがて少し
浮き上がりました。
そして後ろに下がったかと思うと、そのままやよいたちの方に突撃して来るではありませんか。
「わぁぁぁぁっ!?」
「はっはっは、レイドックとか言ったっけ、コイツはいいぜー」
魚の頭の部分… ちょうど飛行機で言うとコクピットでしょうか、そこに乗り込んだパップンの高笑い。
一方のやよいたちは逃げ回るばかり…

…ではありませんでした。
「なんだ、けっこう単純な動きしかしないのね、それって」
律子さんが冷静に、パップンに向かってそう言いました。
「な、なんだと?」
「どうせそれも盗品なもんだから、自分では満足に操縦もできないと見た」
「う、うるさい!」
そう、それは見事なまでに正解でした。
律子の言葉に腹を立てたパップンはますますスピードを上げてやよいたちに向かってきます。
しかしすでに怒りで冷静さを失った操縦士のこと、その動きはますますワンパターンになるばかり。
ウサギにもやよいにも、そして律子にも楽々と避けることが出来ました。
「へっへー、こっちですよ〜」
「こ、このやろー!!」
「やよい、あの尾びれの部分とかどうにかできない?」
「しっぽですね、分かりました!」
やよいはレイドックの突撃を横にひょいとかわし、尾びれにシャボン玉をぶつけました。
数回繰り返すとあっさり尾びれは壊れて外れてしまい、レイドックの動きが段々遅くなって行きます。
「今度は背びれ」
バランスを崩してまっすぐ飛べなくなり、
「最後は頭ね」
前につんのめって、そのままひっくり返って大破してしまいました。

695メルヘンメイズ やよいの大冒険 第17節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:27:21 ID:fHeuEg360

 ちゅどーーーーーーん…

頭を中心として、盛大な爆発が起こると共に、
「ちくしょー!!」
コクピットから勢いでパップンが飛び出してきます。
「残念だったわね、コソドロさん」
その前に仁王立ちになる律子さん。
「さぁ覚悟するです」
「鏡を渡してもらいましょうか」
ボロボロになった上、三人に囲まれてしまってはどうしようもありません。
「お、覚えてろー!!」
持っていた荷物などをそのままに、パップンはジャンプしながら逃げていってしまいました。
「逃げられちゃいました…」
「でも鏡は無事なようですよ」
荷物からウサギが鏡を取り出しました。
「これで律子さんも帰れますね」
「ええ、一時はどうなるかと思っ… くしゅん!」
律子さんのくしゃみがあたりに響きます。それもそのはず、律子さんはさっきからずぶぬれになったまま
だったのですから。
「あ、水着もありますね… 濡れたままだと風邪引きますから、これに着替えてはどうです?」
しかし、ウサギの親切心(…だと思います)による提案にも、
「…結構です」
律子さんはあくまで冷静にそう言うのでした。

「やよい、ありがとう」
「えへへー」
律子さんも元の世界へ帰っていきます。
「こうやって帰れるのも、やよいに勇気をもらったおかげかしら。その勇気があればきっと何でもできるわ」
「ありがとうございますー」
両手を広げたままやよいは律子さんにお辞儀を。
それを満足げに見た後、律子さんは鏡の中へと入っていきました。
「さぁ、それじゃぁ私達も」
「そうだね、気合入れていきましょー」
「ええ、いよいよ手下達も本気を出してくるでしょう、でもやよいなら出来ると確信しましたよ」
そんな話をしたあと、やよいたちも鏡の中に。

「…でも、帰るまでに服乾くといいね、律子さん」
「ええ、目が覚めたときに体がべしょべしょなんて洒落になりませんし…」

696メルヘンメイズ やよいの大冒険 第18節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:26:25 ID:9MBHA9rQ0
 第7話 そらの国  〜あずささんと迷子のひよこ〜

「うぬぬ、ウサギの奴め…」
水晶玉を眺めながら、恐ろしい形相で何やら呟いている人影。厚いコートを身にまとったまま、いらいらと
歩き回っていました。
…これこそが、鏡の国を支配しようとしている女王でした。
その視線の先には、水晶玉に映ったウサギ、そしてやよいの姿が。
「ただでさえこのような体になって窮屈しておるのに、人間を連れてこの私に立ち向かうとは…」
女王のいらいらは、周りにいたトランプの兵隊達にもはっきりと伝わってきます。
「お前達、何としてもあの二人を捕らえて、首を刎ねてしまうのだ、よいな!」
「へ、へへー」


少し冷たい風が吹いています。
下を見ると、そこには図鑑でしか見たことのないような高い山がいくつも、そして雲すらも足元を悠然と
流れていました。
「ここは空の国… 鏡の国の中心部に向かう通路みたいなところですね」
「じゃぁ女王にも…」
「ええ、まだもう少し道はありますけどね」
見渡す限り青い空、まぶしい太陽、そしてどこまでも続く床。
普段だったら、こんなところでお弁当でも広げておしゃべりとかしたくなるようなところです。
でも、やよいは遊びに来たわけではありません。ここにも誰か助けを待っている人がいるはずです。
「誰かいれば、すぐに見つかるよね?」
「ええ、見通しもいいですし、間違ってもここで迷子になるようなことは無いでしょう」


その頃…。
「え〜と、ここはどこなんでしょう…」
「私は寝る前にコンビニに行って、お買い物をしてきたはずなのに…」
背の高い女の人が、なにやら言いながら歩いていました。
とは言っても、同じところを右往左往しているばかりで、気が付くとまた同じ所に戻ってきている始末。
「はぁ… 私にもやよいちゃんみたいに元気があったら…」
そう言いながら、近くにあった大きな箱に座って空を眺め始めました。
「どこまでも青い空ね〜、さっきまでは綺麗な星空だったのに」


さて、やよいたちのほうは、くるくる回って飛んでいるトンボやトランプの兵隊たちを吹き飛ばしつつ順調に
進んでいました。
シルクハットを頭にかぶった小人たちがたくさん道をふさぎつつ、やよいたちに向かってきました。
やよいはシャボン玉をぶつけてどいてもらおうとしますが、小人たちはその度にシルクハットをすっぽり
かぶって飛んできたシャボン玉を防いでしまいます。
「まったく、ハッタのやつもあいかわらずキチガイじみた物を作るものだ」
ウサギがシルクハットを見ながら言いました。
「こういう相手には普通に挑んでも意味がありませんから」
「どうするの?」
「一度向こうを向いてください」
やよいが言われたとおりにすると、小人はやよいの背中を突き飛ばしてやろうとして、シルクハットを…
「そこです」
振り向いてシャボン玉をぶつけると、小人たちはまとめてシャボン玉と一緒に飛んでいってしまいました。
「やったぁ!」
「こういうタイプはどこの世界でもこうやって倒すものですよ」


一方。
「三浦あずさの青空レポート〜」
さっきの背の高い女性… あずささんは、まだのんびりと歩いていました。
でも、さっきと違って同じところばかり歩いていたわけではありません。
「ぴよぴよ」
あずささんの足元にはひよこが歩いていました。
不思議なことに、そのひよこは黄色の毛の中に一房だけ緑色が混ざっていて、どこからともなくあずささんの
側にやってきたのでした。
そしてまるであずささんを案内するかのように先へ先へと歩いていきます。
「かわいいですね〜」
やがて大きな広間までやってくると、ひよこは懸命に羽をばたつかせて飛ぼうとしました。でも悲しいかな、
ひよこは空を飛べません。
「あらあら、この先に行きたいのかしら?」
あずささんはひよこを両手に持つと、そのままジャンプして向こう側に。
そしてひよこを降ろしてあげます。
「ピヨォ」
ひよこはそう鳴くと、嬉しそうにその先へと向かって走っていきました。
「ひよこさん、良かったわね〜」


「やよい、もうすぐですよ」
「うん、でもここには誰もいなかったね」
あちこちを歩いてきましたが、結局誰かがいる様子はありませんでした。
もうすぐ出口も見えてくるはずです。
「見通しのいいところですし、誰かいればすぐに見つかりそうなものなのに」

697メルヘンメイズ やよいの大冒険 第19節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:27:21 ID:9MBHA9rQ0
「ひよこさん、無事におうちに帰れたかしら?」
あずささんはひよこと別れた後も、その去っていったほうに向かって歩いていました。
「でも、どうやって私は帰ろうかしら〜」
いつの間にか、あずささんは広々とした床があるところまで来ていました。
見る限りここで行き止まりになっていて、これ以上行くところは無さそうです。
「ふぅ…」
ここまで歩いた疲れもあったのでしょう、いつしか、あずささんは暖かい日差しの中でうとうととお昼寝を
始めてしまいました。
「zzz…」


「さぁもうすぐ出口があるはずです」
「うん、それじゃぁジャンプして…」
やよいたちはいつもの広い床までやってきました、そこで見たもの、それは…

「あずささん!」
「こんなところに倒れているとは… きっと魔物に襲われたのでしょう」
二人が辺りを見回すと、ちょうど空中から大きな鳥が降りてきて、ギャァギャァと不快な鳴き声を上げて
いるところでした。
「デッドルースターか…」
「でっかい鳥…」
「いや、あれも機械仕掛けです、さっきのレイドックみたいなものですね」
近くで見ると、それはニワトリのような格好こそしていますが、アヒルのような大きな嘴に茶色い翼、
青や白の派手な体。そして首の下には鏡が…。
「これは女王の魔力で操られているだけ… 何とか止めなくては」
「うん!あずささんのかたき、覚悟ー!」
やよいがシャボン玉を用意してデッドルースターと向き合った、正にその時。

「ピピィ」
突然、1羽のひよこが二人の目の前に現れました。
それはシャボン玉を構えているやよいの方を見ると猛然と走って来て、そしてやよいの足をひっきりなしに
つついたりしています。
「痛いです〜」
「これは… ただのひよこのようですが…」
ウサギがひよこを抱き上げると、今度はウサギの顔をつついたり手の中で暴れたり。
緑色の毛が一房ある以外、どうみても普通のひよこのようですが…。


「あらあらまぁまぁ」
あずささんが目を覚ますと、大きな鳥とウサギのぬいぐるみ、そして見知った女の子が目の前にいます。
「…これは…」
そしてもう一度前を見てみると、さっき助けてあげた小さなひよこもいました。

「ひよこさん、無事に帰れたのね」

突然後ろから声が。
振り向くと、魔物に襲われたはずのあずささんが元気にこちらに向かって歩いてくるではありませんか。
「あずささん」
「無事だったんですか?」
「ええ、ここに来るまでにちょっと迷子になっちゃったけど、そこのひよこさんに連れてきてもらったのよ」
「それで歩き疲れたから、ここで休ませてもらってたの」
事も無げに、あずささんは言いました。
「え゛…」
やよいたちの額に汗が。
それにも気が付かずに、あずささんはひよこの方に言いました。
「そちらはお母さんかしら〜」
大きな鳥を見ながら、のんびりとした口調であずささんが。
「お母さん…?」
やよいはひよことデッドルースターを交互に見ますが、もちろん似ても似つきません。
この2羽が親子だなんて…。

「そうか、インプリンティング!」
突然ウサギがそう叫びました。
「それって、雛が最初に見たものを親だと思い込むという、あれかしら?」
これはあずささん。
「そっか、だからこのひよこさんはお母さんをいじめていると思って私に…」
「もともとここに置かれていたおもちゃを、偶然このひよこが見つけたのですね」
みんな納得した様子。でも、デッドルースターを止めないことには先に進めません。
どうしようかと、やよいが思っていると…。

「ひよこさん、いらっしゃい」
あずささんがひよこの前まで来て、手をひよこのほうに伸ばしました。
「みんな優しい人だから大丈夫よ、ね?」
「…」
「…」

言葉が通じたかどうかは分かりませんが、しばらくしてひよこはあずささんのほうに歩み寄ってきます。
そして、しゃがんでいるあずささんの胸のふくらみに、ぽふっ、と飛び込みました。
「もう大丈夫よ〜」
そう言いながら、あずささんはやよいたちから離れて、そしてやよいたちにうなずいて見せました。
これで安心して戦えそうです。

698メルヘンメイズ やよいの大冒険 第20節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:28:03 ID:9MBHA9rQ0
程なくデッドルースターはその動きを止め、やよいたちはその首にかかっていた鏡を手に入れました。
「これでまた次の世界に…」
と言いかけて、やよいはハッと気が付きました。
「あずささん、ひよこさんは…!」
「…気絶しちゃったわ…」
悲しそうにあずささんが首を横に振ります。目の前で自分のお母さん(と信じているもの)がこのような
ことになってしまっては…。
「ひよこさん… ごめんね…」
やよいの目からも涙がこぼれます。
「…連れて帰るのも無理ですし、残念ですがこのまま…」
とウサギが言いかけた、その時でした。

「…何かしら?」
向こうのほうの空から、何か飛んでくるのが見えました。
「鳥の群れ… ですね。恐らくはこの辺に住んでいたものでしょう」
「みんな帰ってきたですー」
その中から何羽かの鳥が出てきました。それらは全体をライトグリーンの羽に覆われた、やよいが見たことも
ないような美しい鳥でした。ところどころの羽が、太陽の光を反射してきらきらと輝いています。
「ひょっとして、このひよこのお母さんかも知れませんよ」
あずささんがひよこを地面に降ろすと、鳥達が近寄ってきます。
そして目の前の小さなひよこを羽で包んで、しばらくコロコロと揺らして…。

そうしているうちに、ひよこも目が覚めた様子。しばらくは目の前にいる大きな鳥におびえた様子でしたが、
「…ピピィ」
やがて、そっと鳥のほうに体を摺り寄せていきました。
「これで安心ですね」
「良かったね、ひよこさん」


「ひよこさん、さようなら〜」
あずささんは鳥達のほうに手を振りながら、鏡の中へと入っていきます。ちょうどひよこはさっきの鳥と
一緒に飛ぶ練習をしているところでした。
「ピィッ!」
ひよこも返事をして見せます。

「さぁ、では私達も。いよいよこれからが本番ですから」
ウサギの真剣な表情に、やよいも緊張の面持ち。でも、ここまで来たら後には引けません。
やよいは目の前の鏡をじっと見つめて、しばらくそのまま風に吹かれたままになっていました。

女王とはどんな人なのでしょう? そして、そこに待っているのは…。

699メルヘンメイズ やよいの大冒険 第21節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 23:57:34 ID:9MBHA9rQ0
 第8話 かがみの国  〜春香さんがいっぱい!?〜

「…これが、鏡の国?」
「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、『へいたいの国』と言う感じに
なってしまってますけど…」
やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆然と眺めていました。
そこは鏡の国というにはあまりにも暗くて、うにょんうにょんしていて、ついでに楽しそうな雰囲気の
欠片もないようなところでした。
鏡の国なんて生まれてこの方見たことも無かったやよいでしたが、これが鏡の国だといわれても絶対に納得
できない、そんな自信さえあります。
見てるだけで憂鬱になってきそう、でもここを進まなくては鏡の国に平和を取り戻せません。


ウサギの言葉どおり、ここでは少し歩くとすぐにいろんな魔物に出くわします。
特にこのトランプに足が生えたような魔物は頻繁に出てきては、やよいを追い掛け回してきます。

床を飛び移っていくと、二人は大きな広間にたどり着きました。
不思議なことに、そこには大きな鏡のようなものがいくつも並べられています。
やよいがその中の一つにそっと近づいていきます。しかし、その鏡にはやよいはおろか、何も映ってません。
「…?」
と、その時。
鏡の中の景色が動いたような気がしました。
それはゆらゆらと動きながら、やがて一つの形を作っていきます。
「春香さん…?」
それはやよいの良く見知った女の子でした。でも、いつもと違う点が一つ、それは服でした。
青と白のドレスに水色のエプロン、色だけ変えればやよいの着ているドレスにそっくりのものです。
「こんばんは、やよ… あ、わぁぁぁぁ!?」
見ているうちに、春香さんは鏡から出て来て挨拶を… しようとして転んでしまいます。
うつぶせに倒れてる春香さんを助け起こそうと、やよいが駆け寄りました。
「あいたた…」
「はわっ、大丈夫ですか… ?」
そこで、やよいは妙なことに気が付きました。

「あの… 痛くないんですか?」

その春香さんは転んで『痛い』とか言ってるはずなのに、顔の表情が全く変わることがありません。
まるでお面でもかぶっているかのような…。

その様に、やよいは思わずビクンッと肩を震わせます。本能的、とでも言うのでしょうか。
そうしている間にも、他の鏡からも次々と春香さんが出てきては、やよいの周りにわらわらと集まって…。

「やよいちゃんだいじょうぶ」
「おかしつくってきたんだよ」
「いっしょにれっすんいかない?」
いろいろなことを言っています、どれもこれも同じ顔の表情をしたまま。

「うう〜…」
恐怖のあまり、じりじりとやよいは後ずさりを。しかしすぐに床の切れ目まで追い詰められてしまいます。
それでもやよいの方に寄ってくるたくさんの春香さん。
「こ、こんなの春香さんじゃありません!」
叫びながら、やよいは向こうの動く床に素早く飛び移り、そしてシャボン玉を構えます。
めいっぱいシャボン玉を膨らませて、春香さんたちを吹き飛ばそうとした、その時。

「え…!?」
なんと春香さんたちもストローを取り出し、そこからシャボン玉を出してくるではありませんか!
そこかしこから飛んでくるグレーの小さなシャボン玉。
それぞれが逃げ場の無いやよいにぶつかって、嫌な痛みと共に体中で弾け、頭がくらくらと…。

「やよい、逃げるのです!」
そんな声がします、しかし、全てが遅すぎました。
やよいの体は、床が動いた拍子に崩れ落ち、そしてそのまま奈落のかなたへと消えていきました…。
「や…」

「やよいーーーーーーーー!!」
ウサギの声だけが、いつまでもその場に響いていました。

「…」
床から落ちて、くるくると回りながらやよいは空中をどんどん落ちていきます。
やよいにも、高いところから落ちて地面にぶつかったらどうなるかぐらい分かっていました。

遠くからはウサギが自分を呼ぶ声。
ぼんやりとした頭で、ウサギさんもあんなに大きな声で叫んだりするのか、とか考えてみます。
「ごめんね… 私、もう帰れそうに無い…」
妙にゆっくり流れている景色を眺めながら、やよいはそう言いました。家にいる家族たちはどう思うかな、
せっかく助けた雪歩さんや真美ちゃん、そしてまだ会えてない伊織ちゃんは…。

700メルヘンメイズ やよいの大冒険 第22節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:36:09 ID:JDkoToc20
やよいはまだ空中を落ち続けていました。

 派手で綺麗な色の洋服…
 おいしそうなお菓子…
 『100%オレンジジュース』と書かれた大きな瓶…
 テレビでしか見たことのない外国の風景…

流れていくそれらがはっきりと見えている、不思議な空間。
けれど下を見ても真っ暗で、これからどんなところに行くのかさえ分かりません。
「…」

どれぐらい経ったでしょうか、やがて下のほうにかすかな光が見えてきました。
それが何なのか分かる前に、

ぼふっ…

やよいは自分の体に衝撃が走るのを感じました。
しかし、不思議とそれはすぐに治まり、そしてもうそれ以上体が落ちることもありませんでした。
とりあえず無事に着地できたことは間違いありません、でもここはいったい…。

体の下には小枝と枯葉の山。
クッションになってくれたその上から飛び降りて見ます。しかし辺りを見ても何もありません。
空も見えず、辺りも真っ暗に近い空間…。
「ここも… 鏡の国?」
もう真っ暗とかそういうのには慣れたつもりなのに、こうも何も無いところだとさすがに寂しくなります。
それを振り払うかのように、やよいは元気良く歩き始めました。もちろん当てがあるわけではありませんが、
ここでじっとしているよりはよっぽど良いと思ったのでしょう。
「♪な〜やんでも、しっかたない、まそうさ、きっと明日は違うさ…」

そうしてしばらく歩いていると、
「その声… やよい?」
突然、暗闇から声がしました。
さっき沢山聞いた声、それは春香さんの声でした。
いつもならすぐに駆け寄って挨拶とかするのでしょうが、さっきひどい目にあったせいか、やよいは体を
震わせながら、
「こ、来ないで!」
と大きな声で叫びました。
「ど、どうしたのやよい?」
「春香さんは黒くありません、黒いのは中の人だけです!」
もはや何を言ってるのかさえ分かりません。それでも、
「やよい、私だよ」
「落ち着いて、ね?」
と、春香さんは呼びかけます。そこから春香さんが近付いてこないのは、やよいが余計パニックになると
見たからでしょうか。

「…ほんとに、春香さんですか?」
ようやく落ち着いたのか、やよいも春香さんの声に答えます。
「うん… やよいも何かひどい目にあったみたいね…」
ようやく姿を現した春香さんは、青と白のドレスではなくピンクと白の上着、水色のスカート、そして髪には
可愛らしいピンクのリボン…
「…はうぅぅぅ…」
それを見て、やっとやよいも安心できたようです。

しかし…
そこにいたのは春香さんだけではありませんでした。
ふと前を見ると、春香さんの向かいには、おばあさん… でしょうか…。
妙に大きな鼻に紫色の服、そして杖を持ったおばあさんがいつの間にか立っていました。
思わず身構えてしまうやよいたち。そんな二人におばあさんは優しく、しかし力のある声で言いました。
「お前たちは何者じゃ」
「わ、私たちは…」
そう言いかけたところに、さらに言葉が被さりました。

「こんなところに人間が来るとは、珍しいこともあるものだ」

おばあさんの言葉に、
「め… 珍しいんですか?」
と、やよいが尋ねます。
「ああ、珍しいともさ。最近は夢を持った子供なんてものはとんと見かけなくなったからの…
この鏡の国… いや、夢の国に来られるのは、夢を持った純粋な人間だけなんだよ」
「あ、じゃぁ私も…?」
「そうかも知れんの」
春香さんの言葉にも、おばあさんはあっさりと答えました。
「まぁゆっくりしていけ、どうせここは夢の国、時間などたっぷりとある。訊きたいこともあるし、うちで
休んでいかんか?」
どうやら悪い人ではなさそうです。
やよいたちはおばあさんの厚意に応えることにしました。

たどり着いたのは、ゆうに数百年は経っているかのような古めかしい家でした。
しかし中は綺麗に整った家具や調度品、部屋の隅には黒い子猫がのんびりと寝転がっています。
まるで、ここだけ時間の流れが止まっているかのようでした。
「すごく古いお家なんですね…」
やよいは正直な感想をおばあさんに言いました。
「さっきも言ったろう、ここは時間なぞたっぷりあるのだ、と。その辺の椅子に座って待っておれ」
言われたとおりに、二人は椅子に腰掛けます。不思議と、そこに座っていると自分たちまで時間の流れが
遅く感じられるようでした。

701メルヘンメイズ やよいの大冒険 第23節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:37:21 ID:JDkoToc20

「そうだ」
お茶を飲んでしばらく休んだ後、おもむろにやよいはおばあさんに言いました。
「あの… 私鏡の国の女王を倒しに行かないと…」

「女王だと…?」
「はい、鏡の国の女王を倒すために、ウサギさんと一緒にやってきたんです、私」
「そうか… それでこんなところに人間が…」
おばあさんはそう言って、しばらく黙り込みます。
「ふむ… ウサギというのは知らんが、そのドレスにストロー… もしかして…」
「知ってるんですか、これのこと?」
「ああ、そいつは女王、そして守護者と一緒に封じ込められていたものだ。もっとも、誰でも使いこなせる
ものでは無いから、実質意味の無いものとなっておったのだがな」
「私、これを使っていろんなところを廻ってきたんです、シャボン玉で敵を倒したりして…」
やよいはそう言って、ストローからシャボン玉を出して見せました。
「ほう… 見事だな」
おばあさんの顔が少し緩んだように見えました。
「お前さん… やよいとか言ったか… やよいが今まで通ってきたのは通路だな」
「通路… ですか?」
「昔守護者が女王を封印しに行くときに使った通路、そして敵をおびき寄せるための罠だよ」
おばあさんが説明してくれます。
「鏡の国にいる魔物をまとめて一網打尽にするためにわざわざああいう通路を作ったのだろう、女王への
最短距離、しかも守護者がそこを通るとあらば、そこを魔物で塞いでしまおうとするのは当然のこと」
「その通路が今でも残ってる…」
「左様」
「でも、封じ込められてたって、どういうことですか?」
そこに春香さんが口を挟みました。
「そいつはさっき言ってたウサギとやらに訊いてみるがいいじゃろ。わしの考えが合ってるなら、きっと
答えてくれる… っと、ウサギのところに帰れんことには訊くことも出来んか」
そんなことを言いながら、おばあさんはどこからともなく何やら持って来ます。
「…これを使ってみるがいい」
「これは… 風船?」
やよいたち二人に一つずつ手渡されたそれは、小さな赤い風船でした。
「それを膨らませて、捕まれば上の世界に戻れるはずだ、お前さんたちが本当に夢を持った人間ならな…」
それを聞いて、知らないうちに二人はうなずきあいました。
「「…やってみよう!」」


二人は早速外に出てみます。
もらった風船を膨らませると、何もしないのにふわふわと空中に浮かんで、ちょうど目の高さで止まり
ました。その下にはちょうど両手でつかめるぐらいの紐がぶらさがっています。
「これが…?」
不思議そうに、二人はその風船を眺めていました。
「紐を掴んで地面を蹴ってみぃ」
おばあさんの言うようにすると、風船がふわふわと昇って行きます、そしてやよいと春香さんも…。
「飛べた!」
「すごいですー!」
二人の体がどんどん空中を駆け上がっていきます。
「そのまま上まで戻ったら風船を離せばいい。もうこのような所に落ちて来るでないぞ」
おばあさんが声をかけてくれました。
既に小さく見えているおばあさんに、
「ありがとうございましたー!」
頭だけでお辞儀をするやよい、そして春香さん。
そして… やよいたちはまた、不思議な風景の中を戻っていきました。

 泡だらけで、良い匂いのする空間。
 たくさんの人に囲まれて、楽しそうに歌う女の子の姿。
 そして、やよいが可愛らしい服を着て楽しそうに歩いている姿…。

702メルヘンメイズ やよいの大冒険 第24節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:38:00 ID:JDkoToc20
「くっ…」
まだウサギは下を眺めています。
たくさんの春香さんからは逃げてきたものの、この姿のままで出来ることは知れています。
「もはや鏡の国は…」
そう言いかけ、ウサギが着ているタキシードの中に手を入れかけた、その時…!

「…!?」
目の錯覚でしょうか。
何も無いはずの奈落のかなたに赤い点が二つ。
それはウサギの見ている前で見る見る大きくなり、やがてウサギの頭上高くまで昇っていきました。
何事かと思って、ウサギは空を見上げます。そこにいた姿、それは…。
「やよい… それに、春香!」
二人の女の子たちは、ここに戻ってきました。
「もう同じ失敗はしません!」
やよいは声高らかに、ウサギにそう言うのでした。


たくさんの春香さんは鏡ごと大きなシャボン玉で吹き飛ばし、
「いえい♪」
「私の真似をするなんて、みんな私のことが大好きなんですね?」

途中の魔物たちは冷静に倒していき、
「もう怖くありません!」

そして、最後に待ち受けるボス、ビッグトータスも、
「相手が着地するときだけ注意して!」
「ジャンプしてれば、私だって転びませんね♪」

そうして、やよいたちは鏡の国の魔物をほとんど消し去ってしまうことに成功したのでした。
「やったぁ!」
「これで… 終わりなの?」
みんなの目の前にはいつもの鏡。
そうです、まだ終わりではありませんでした。
この先に待ち受ける女王、それを倒さない限り、本当に鏡の国に平和を取り戻したことにはならないのです。


「じゃぁ春香、気を付けて帰るのですよ」
ウサギたちに見送られて、春香は鏡の中に入っていきます。
「うん、ありがとう。 …あ、やよい、一つ訊いていいかな?」
「え、何ですか」
「やよいの夢って… 何?」
その質問に、思わずやよいの顔が真っ赤になってしまいました。
「はわっ… そ、そういう春香さんは…?」
「私? 私はもう少ししたら、ゆ… って、何を言わせるのよー!」
今度は春香さんが真っ赤に。
「ま、また今度話しようね、それじゃぁ!」
春香さんは慌てて鏡の中に入っていってしまいました。
「変な春香さん」
「そういうことはあえて訊かないほうがいいんですよ」
ウサギはそう言って、鏡のほうを見ました。

ここから先に進めば、さっきのおばあさんの言ってたことの意味が分かるのかな…?

でも、今のやよいには、それを訊く気は不思議と起こりませんでした。

「さぁ行きましょう。いよいよラストですよ」

703メルヘンメイズ やよいの大冒険 第25節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/23(金) 22:54:33 ID:x4lWW43E0
 第9話 女王の国  〜女王とウサギ、そして鏡の国〜

遠目に見える、広い岩肌の上に聳え立つ城。
もともとは立派な城だったのでしょうが、今ではところどころ壊れ、その姿に見るものはありません。
こんなところに… 女王がほんとにいるというのでしょうか?

「さぁ、行きましょう。あずさや律子たちも無事に帰れたでしょうし、これで最後です」
「…」
やよいはしばらく、その城のほうを見ていました。
これが、女王の住んでいる城…。

それを見て、やよいは少し悩んだような表情をしていました。
が、やがて意を決したようにウサギに尋ねます。
「ねぇ… 女王って… 誰なの?」

 誰なの。

「…どうして、そういう訊き方をするんですか?」
「私の知ってる人ばっかりが、こんなに鏡の国で見つかるなんておかしいです。だから、ひょっとして、
その女王というのも…」
やよいにも、何となくその答えが分かっていたのかも知れません。

「…分かりました。どうせ女王に会えばすぐに分かることですし、お話します」

長い沈黙の後、ウサギはようやっと口を開きました。
その一言がとても重いものである、と言わんばかりに…。

「あれは… 伊織なんです」

え?
伊織って、あのやよいのお友達で、かわいくてやさしくてうたがうまくて、そしてちょっと意地悪な…?

「そうです… やよいの友達の伊織です」
ウサギはポツリポツリと、しかし力のこもった声で話し始めます。まるで重い扉を開くかのように…。

「やよい、あの本のこと覚えていますか?『不思議の国のアリス』」
「うん、結構重たくて持って帰るのに苦労したかな…」
「あれはもともと伊織の家にあったもの、そしてあの女王を封じ込めてあった書物なのです…」
ウサギはそこで一度言葉を切って、
「考えてもみてください、子供向けの童話が、そんな重たい書物として作られると思いますか?」
「…」

ウサギの目は遠くを見つめながら、
「あれはその昔、女王と守護者、そしてその魔法のドレスやストローを封じ込めてあったものです。
そして、それは長らく開かれることはありませんでした。伊織の家に来るまでは…」
「伊織ちゃんか誰かがその本を開いたせいで…?」
「はい、もともと女王を解き放ったのは伊織です。女王はそのまま伊織を乗っ取って、鏡の国を支配
しようと動き始めたのです」
そこで、ウサギはやよいのほうに向き直って言葉を続けます。
「それがどう巡り巡ったのか、まさかやよいの学校の図書館に来るとは思いませんでした」
「それじゃぁ、私があの本を開いたときに…?」
「ええ、そのドレスとストロー、そして同時に鏡の国の守護者も解き放たれて、女王を止めるべく…」
「じゃぁ、今本物の伊織ちゃんは…?」
「女王と完全に一体化する手前、というところでしょう。女王をもし止めることが出来なければ、本物の
伊織もそのまま鏡の国… 夢の世界から永久に帰れなくなってしまいます」
「そんな…!」
やよいの顔が見る見る青ざめていきます。

「だから… お願いです、伊織を、鏡の国を何としてでも救ってください…!」
是も非もありません。
返事をすることも無く、やよいは城のあるほうへと駆け出していきました。
「…ウサギさん、お願い。最後まで私に力を貸して!」
振り返りながら、大きな声でやよいはウサギに向かって言いました。
「…ありがとうございます」
ウサギの目に、知らず知らずに涙がこぼれてきました。ウサギにとって、それは初めてのことでしたが、
不思議とそれを自分で訝しがることはありませんでした。そう、まるで普通のことであるかのように…。

704メルヘンメイズ やよいの大冒険 第26節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/23(金) 22:56:31 ID:x4lWW43E0
岩肌は近づいてみるとところどころ崩れていて、溶岩が剥き出しになっていました。
足場としては決して良くありませんでしたが、それを上手に飛び越え、やよいたちは進んでいきます。
鏡の国にもいたトランプの兵隊たち、空を飛んでくるトランプのカード。
さすがに魔物たちも必死です。
しかし、やよいもここで負けるわけには行きません。
地形を上手く利用し、兵隊たちが来られないようにしながら倒していき、少しずつ進んでいきます。

城の門までにはまだ結構な距離が。
進むごとに足場は悪く、そして敵の数は多くなっていきます。
床の向こう側からシャボン玉で敵を倒し、いなくなったところで飛び移り、また次の足場を目指す…。

途中、いくつか分かれ道みたいなところはありましたが、ウサギは迷うことなく一つの道を選んで進んで
行きました。
恐らく、ウサギは正しい道を完全に知っているのでしょう。あのおばあさんの思っていたことというのが、
あるいは本当なら…。

 このウサギというのは、一体何者なんでしょう?

坂道を登り、細い道を通り、入ってくるものを拒むかのようなトラップをくぐりぬけ…
ついにやよいたちは城門の前までやってきました。ここまで来るものはいないと見たのか、城の周りには
兵たちの姿も無く、あたりは無気味なまでに静かでした。
ただ聞こえるのは、天を覆う黒い雲から時折聞こえる雷鳴の音のみ…。

「さぁ」
ウサギの声に促されて、やよいは城門を押してみます。不思議なことに、高さ10mはあろうかという
城門は、小さなやよいの力でも簡単に音も無く開き、そして少し開いたところで止まりました。
そこから吹く風がやよいのツインテールを軽く押し流します。
「…」
やよいの緊張はまさに頂点に達していました。けれど、進まなくてはなりません。
ここで負けてしまったら、鏡の国は、そして伊織ちゃんは…!

中に進むと、すぐにやよいは見つけました。
とても高い天井、外の景色がそのまま続いているかのような岩肌と溶岩…
その奥にあるとても大きな椅子に座っている、やよいの大事なお友達の姿を。

「伊織ちゃん!!」

大きく、そして大人っぽい感じの体つきにはなっていたものの、その雰囲気はまさに伊織ちゃんそのもの。
髪を後ろに回したスタイル、広いおでこ、そして上品な顔立ち。
しかし、それを感じたのもつかの間のこと…。

「とうとうここまで来たか…」
その言葉と共に立ち上がった伊織ちゃん… いいえ、女王は、もはややよいの知る伊織ちゃんとは全く違う
ものに変わっていったのでした。
髪は逆立ち、目は釣り上がり、顔のところどころには傷跡らしきものも。
思わず目を背けたくなるような、その光景。

「…!」
「せっかく私のところまで来てくれたのだ、せめて私の目の前で殺してやろう、そこのウサギ共々な…」
「伊織ちゃんを返して!」
あまりのことに体をぷるぷると震わせながらも、やよいは女王に向かってそう叫びました。
「…なんだ、その『伊織』というのは?」
「私の… 大好きなお友達…!」
やよいの言葉に、
「…ふん、なるほど、お前はこの体の持ち主を助けるためにここまで来た、というわけか。それで、その
名前が『伊織』だと」
「そうです」
「そうしたところで、お前に何の得があるという?たかだか一人の人間を助けたところで」
事も無げに女王は言いました。
「…あ、あなたには、友達っていないんですか!?」
「おらんわ。生まれたときから私は一人だった。そして、それはこれからも変わることは無い。第一、この
私を上回る者なぞ存在せぬのに…」

「やめましょう、この女王には愛とか夢とか、そんな言葉は通用しません」
そう言いながら、ウサギが女王とやよいの間に立ちました。
「ウサギ… 貴様までこの私を…」
「人間はな、お前のように利益のためだけに動くものばかりではないんだ。まだ分からないのか」
「く… くだらんわ!」
ウサギの言葉に、今まで眉一つ動かなかった女王が、初めて怒りの表情を見せたのでした。

「やよい… シャボン玉を。女王を消し去らなければ…」
諭すようにウサギがやよいに言います。
「でも… そんなことをしたら伊織ちゃんは…!」
「大丈夫です。シャボン玉が消し去るのは悪の心を持ったもののみ。アールメイコンやレイドック、そして
やよいがシャボン玉を間違ってぶつけた亜美が消え去ったりしましたか?」

705メルヘンメイズ やよいの大冒険 第27節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/24(土) 03:03:43 ID:GgKEwm2Q0
「あ…!」
そうでした。ミヤーシャやトリプルヘッズが泡となって消えていったのも、持っていたのが悪の心そのもの
だったから…!

迷いがなくなったわけではありません。それでもやよいは一歩ずつ歩き始めます。
ウサギの横を通り、女王の前に立ちはだかりました。
そして、それが二人の間の宣戦布告となったのでした。


「出でよ、トランプ兵たちよ!」
女王の指先から光が放たれ、地面に当たってはじけます。そこからトランプの兵隊たちが出て来てやよいを
追い掛け回してきます。
やよいはそれをジャンプでかわし、シャボン玉を当てていきます。小さいトランプ兵たちにはシャボン玉を
ある程度は大きくしないと当てにくいので、その分倒すのに時間がかかってしまいます。
女王がいるのは広々とした部屋でした。
しかし、その周りを溶岩が取り囲んでいるので、トランプ兵たちにぶつかるわけには行きません。
「ええい、ちょこまかと動きおって」
女王の声がします。
その声のほうには当然女王が。しかし、これは伊織ちゃんでもあるのです。それに、まだ完全に女王に
乗っ取られたわけではないらしく、顔立ちにはまだ伊織ちゃんの面影が…。

「やよい!女王を狙うのです!」

やよいには出来ませんでした。伊織ちゃんの顔をしたものを攻撃するだなんて…。
しかしそれでもトランプ兵たちの攻撃は止まりません。
逃げ回っているうちに、いつの間にかやよいは女王のすぐ側まで来ていたのでした。

「…?」
その時、ウサギは女王の様子に、ある違和感を感じました。
すぐ横に来ているやよいに対して、女王は何の反応もしないのです。
いいえ、近づいては来るのですが、やよいの方を見ることが、向くことが、全く無いのです。

やよいもそのことに気が付いたのでしょうか。
知らず知らずのうちに女王の横に、そして後ろに回りこむような動きをしていたのでした。
おそらくは無意識に女王の、伊織ちゃんの顔を見ることを拒否していたせいでしょうか。
「後ろを取ったつもりなのだろうが、そんなものは振り向いてしまえば…」
と女王が言いかけた、その時。

「やよい!」
突然、やよいの脳裏に声が響きました。
「え… 伊織ちゃん!?」
間違えることも無い、それは伊織ちゃんの声でした。でも、どこに…?

『女王だかなんだか知らないけど、アンタみたいなのに私を好き勝手はさせないわよ!』
「き、貴様… 完全に体は乗っ取ったはずなのに…!」
『やよい、私はまだこの女王とやらの中にいるわ、こんな奴さっさとやっつけてしまいなさい』
「か、体が… 動かん…」
『やよい、何やってるのよ、こんな体勢で長くいられないんだから、早く!』

女王と伊織ちゃんの会話が、やよいにははっきりと聞き取れました。
そうです、伊織ちゃんは今まさに女王と一体化する手前だったのです。

やよいには分かりました。
伊織ちゃんも必死に戦っているんだな、と…!

後ろを振り向くことも出来ないまま、女王はそれでもトランプ兵を呼び出してきます。
しかし女王の体が邪魔になって、トランプ兵はやよいの前と後ろからしか襲ってこられません。
それらを吹き飛ばしつつ、やよいはシャボン玉を女王に当てていきます。
当たったところは少しずつ服が溶けていき、体からも煙が。
「や、やめろ…!」
女王の苦しげな声。しかしもう止まりませんでした。
背中を向けたままの女王に、最後は特大のシャボン玉を。
それは見事に女王の背中で弾け、大きく女王を吹き飛ばしました。
その体制のまま、女王はしばらく動きを止め、そして…。

女王を中心として、数条の光が放たれました。
やよいとウサギが思わず目をそむけるほどのまぶしい光の中、女王の体がだんだん小さくなっていきます。
その光がようやく無くなった頃…

706メルヘンメイズ やよいの大冒険 第28節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/24(土) 03:04:51 ID:GgKEwm2Q0
そこには、元に戻ったやよいの一番の友達、伊織ちゃんが倒れていました。

やよいが駆け寄って体をそっと揺さぶってみます、しかし返事はありません。
「伊織ちゃん、しっかり!」
そこにウサギもやってきました。
「…大丈夫、気絶しているだけです」
「そっか… 良かった…」
やよいは知らず知らずに、倒れている伊織ちゃんの体を抱き上げていました。
体はちゃんと暖かく、大きな怪我をしている様子もありません。
「とりあえず連れて帰りましょう、この城も女王の魔力が無くなっては長く持たないでしょうから」
「分かった… じゃぁ行こっか、伊織ちゃん…」
誰にとも無くそう言い、やよいは伊織ちゃんを背中に背負って、そのまま歩き始めました。
「よいしょ、っと」
「大丈夫ですか、やよい」
「うん、こういうのは弟とかで慣れてるから」
伊織ちゃんの足を地面に引きずったまま、やよいは城を出ます。
その後ろで、城が崩れていく大きな音が響き渡り始めました。もうこれで、女王はいなくなったのです。
やよいとウサギ、そして伊織ちゃんの大冒険は終わったのです…。


黒雲が覆っていた空も、今はすっかり晴れ渡り、小鳥たちもたくさん空を舞っていました。
城に入って行くときには全く感じられなかった、暖かい風。
野山にある、たくさんの木々や草花。
そして、何よりも背中には大好きな友達が。

やよいは今、初めて心から、鏡の国での幸せをいっぱいに味わうことが出来たのでした。

707メルヘンメイズ やよいの大冒険 第29節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/25(日) 03:16:48 ID:oEmU3Qrs0
 エンディング  〜たいせつなもの〜

やよいたちは女王の国を抜け、長いこと歩いて鏡の国まで戻ってきました。

あれから伊織ちゃんはすぐに目を覚まし、やよいの背中にいることが分かるとすぐに、
「早く降ろしなさいよ、恥ずかしいから」
「私だってもうこんな歳なんだし」
と言って、残念そうにしているやよいの背中から飛び降りてしまいました。
しかしやよいも、
「じゃぁ、疲れてるだろうから手を引っ張ってあげるね」
手を繋いだまま、なかなか離そうとはしませんでした。
「…ま、まぁ、アンタがそれでいいなら…」
「えへへー」

鏡の国の中心部まで戻ってくる頃には、すでに夜になっていました。
しかし前のように真っ暗ではありません。
すでに女王が滅びたことを知った鏡の国の人たちが、そのことを祝って盛大にお祝いのカーニバルを催して
いたのでした。
空には花火まで上がり、人々の賑わいもこれでもかと言わんばかり。
そして、やよいたちが町に一歩入るや否や、その盛り上がりは頂点に達したのでした。

「みんな喜びたまえ、たった今女王は死んだ! 鏡の国は元の平和な世界に戻った!
                     この小さな勇者達に、惜しみなき賛美と祝福を!!」

ウサギが高らかにそう宣言しました。
その声に応えるかのような、地をも揺るがすかのような歓声、そして押し寄せる人たち。
やよいは、そして伊織ちゃんは、自分達の成し遂げたことの意味をようやく実感できたのでした。


「みんな本当に嬉しそうです… これもやよいたちのおかげですね」
「そ、そうかな… なんか照れるなぁ」
「バカねやよい、そういうときはもっと堂々としているものよ」
「でもー」
カーニバルの中心には、すでにやよいたちが招かれていました。
やよいも、そして伊織ちゃんですら見たこともない食べ物や飲み物、そして様々な人たち。
鏡の国の人たちの楽しさが、そのまま伝わってくるかのようです。
「伊織ちゃん、ほんとに良かったね、さぁいっぱい食べて」
「何言ってるのよ、アンタが作ったわけでもないのに… でもおいしいわねこれ」
「まぁまぁ、楽しいのはいいことですよ」
そうして、鏡の国の夜はふけていきました…。


カーニバルも一段落し、鏡の国に静かな夜が戻って来ます。
その時を待っていたかのように、ウサギは改めて二人にお礼を言います。
「ありがとう、平和になったのもやよい、そして伊織のおかげです」
「えへっ」

「ところでやよい、どうして女王を倒せたのか、分かりますか?」
ふと、ウサギがそんなことを訊きました。
「えっ… シャボン玉でやっつけたから、でしょ?」
やよいが答えると、
「そうです、でも、シャボン玉の力だけでは、あの女王は倒せなかったのです」
「じゃぁ… どうして?」
「そこに、愛と、勇気と、夢が詰まっていたからなんです」

 愛と、勇気と、夢…。

そうです。
やよいの持っていた、その三つは、今までの冒険でみんなが教えてくれたことでもあるのです。

 真美ちゃん…
 律子さん…
 そして、春香さん…

「ふーん、なんだか分からないけど、アンタはすごいのね、やよい」
伊織ちゃんも素直にやよいのことを褒めてくれました。

「いいですかやよい、そして伊織。その三つは、お二人が元の世界に帰っても、そしてお二人が大人に
なっても、ずっと忘れないでいてください。どんなことがあっても、それさえあればきっと乗り越えられる
はずです」
ウサギはそう言って、やよいと伊織ちゃんの目をしっかりと見据えました。
しっかりと見開かれた、そしてとても優しい視線でした。
「うん、きっと忘れない。それに、ウサギさんのことも」
「そうよ、私にもそれがあるんだから、まさに無敵よね」
やよいと伊織ちゃんも、そう言ってウサギに微笑んで見せました。

708メルヘンメイズ やよいの大冒険 第30節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/25(日) 03:17:55 ID:oEmU3Qrs0
「さぁ、もうお別れです、お二人ともお元気で」
「待って、ウサギさん。最後に一つ訊きたいことがあるの」
やよいはそう言って、ウサギに視線を合わせるかのようにしゃがみこみました。
「…何でしょう?」
「ウサギさんはどうして私や伊織ちゃん、それに… みんなのことを知ってたの?」
そう、それはやよいも、そして伊織ちゃんも一番疑問に思ってたこと…

「…女王が伊織に乗り移ったのと同時に、私もあるものに乗り移ったのです、私はそれを最初ただの無機物
としか思ってなかったのです」
「でも… それには記憶らしきものが感じられたのです。そして、私の中にもその記憶が入ってきて…」
「最初に雪歩や亜美を、そしてやよいを見たときに、すぐに名前が出てきたのも、恐らくはその記憶に
よるものなんでしょう」
そこまで聞いて、伊織ちゃんはハッとした表情をしました。
「じゃ、じゃぁアンタまさか…」
「さぁ、それでは本当にお別れです。いつまでもお幸せに」
伊織ちゃんの言葉をさえぎるようにウサギはそう言い、天に向かって手を差し出しました。

ウサギの体がだんだん光に包まれていきます。
完全に色が分からなくなったところで、それはさらにまばゆい光を放ち、天高く昇って行きました。
そして、空に浮かぶ月の方へと光の筋を放ちながら飛んでいき、やがて見えなくなってしまいました。
それと入れ替わりに、今度はその月から何かがきらきら光りながら飛んできます。
「な、何?」
それは見ているうちに伊織ちゃんの方にぐんぐん近づいてきたかと思うと、ゆっくりと伊織ちゃんの手元に
降りてきました。そして、ふたりの良く知っている姿に…

「うさちゃん!」
伊織ちゃんの胸にゆっくりと納まった、それは伊織ちゃんの親友のうさちゃんでした。
「そうだったんだ…」
やよいもようやく納得が行った様子。
「…」
伊織ちゃんはうさちゃんを抱きしめながら、
「そっか… うさちゃんも私のこと助けてくれたのね… ありがと…」
その言葉と共に、伊織ちゃんは優しくうさちゃんを撫でてあげていたのでした…。


その様子をじっと眺めていたやよいに、
「…ちょ、そんなに見たって何も出ないわよ?」
照れくさそうに伊織ちゃんが声をかけました。
「ううん、もうそろそろ帰ろうかなって」
やよいは空を見上げながら言いました。
そして、また伊織ちゃんの手を取ります。まるでそれが当然であるかのように…
「ん…」
伊織ちゃんも、そっと手を握り返してくれました。そして、一緒に空を見上げます。

 さようなら、ウサギさん。そして、鏡の国のみんな…

ふたりは心の中で、いつまでもその言葉を繰り返していました。






「おねーちゃーん、もう朝だよー」
「やよい、早く起きなさい」

「…ん」
やよいが目を覚ますと、そこはいつもの寝室でした。もうすっかり朝になっています。
すでに家族のみんなは目を覚まして、忙しそうに、楽しそうに動き回っていました。
「…あれ、私どうやって戻って来たのかな…」
見ると、服もいつものものに戻っていました。手に握っていたストローも、今はもうありません。

「全部、夢だったのかな…?」

やよいは誰もいない空間に、思わずそう問いかけていたのでした。
でも、ウサギと旅をした鏡の国、そして伊織ちゃんと楽しい思い出を作った夢の国。
その思い出を、やよいは決して忘れることはないでしょう。


今日は祝日、学校はお休みです。
でも、やよいは今日も着替えて元気に出かけていくのでした。
いつも大好きな友達、伊織ちゃんと出会える、あの場所へ…!

「おはよー伊織ちゃん!」
「はいはい、アンタはいつも元気ね」
「えへへ、あ、そうだ昨日こんな夢見たんだよー」
「またその話?でも私も昨日は変な夢見たのよね、なんか女王様みたいなカッコしてさ」
「え?それって私が出て来たりとか?」

伊織ちゃんの横には今日もうさちゃんが。
うさちゃんは何も語ってくれません。でも、やよいには何となくうさちゃんが今までとは違った、まるで
自分の友達でもあるかのように見えてくるのでした。

 『ありがとう、やよい』

え?
そんな声が聞こえたような気がして、思わずやよいはうさちゃんの方を見ました。
でも、そこにはうさちゃんのいつもの姿があるだけでした。

 「うん、ありがとう… とても楽しかったよ」


 メルヘンメイズ やよいの大冒険 Fin.

709乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/26(月) 23:30:28 ID:aelehgD20
グラディウス軍の将校一覧(将官のみ) 第一版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将
ディアス・ユンカース中将
ハスキー・ハルバート中将
エドワード・オレステス少将
フリッツ・パーペン少将
クラウス・ケッセル少将

陸軍
ブラン・ホルテン元帥
トーマス・バーシティ中将
アルベルト・アダンティ中将
アルバート・シュライヒャー中将
チャールズ・トーチ少将


宙軍
クラナス・ランフォード大将
ナルヴィック・ルフラン大将
クロン・ベイル中将
ヤコブ・フルシチョフ少将

バイパー「少なすぎだけど第一版ってことは…」
うむ、これから増やしていくつもり、ではある
銀河帝国編でしか出せないのがネックだなぁ…
バイパー「まあ、オリジナル設定だしねー」

710サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第一話前半:2009/10/27(火) 00:12:49 ID:Dfa0qyWc0
世界はかつて、一つの塔だったと言われます。
塔を中心としてあらゆる世界が形成され、全ては一人の創造主の思うがままでした。

…長い長い歴史の末、悪しき者が創造主を封じ込め…世界を支配しようとしました。

しかし、人々の中にはそれに抗う者がいました。冒険者達です。
彼らは行く先々で悪魔達の企みを阻止し、世界に平和を与えていきました。

そして最後の悪魔の王をも打ち倒した冒険者達は英雄となり…
創造主からの褒美を受け、楽園へと旅立っていったのです

…いや。そんな筋書きには、冒険者達は乗りませんでした。
何故か?
…それは悪魔の出現も含めた全てが創造主の思うがままであったから。
自らの、自らの創造した命への行いを何とも思わぬ創造主の姿…

冒険者達は怒りました。怒りのままに、ただただ剣を振るいました。
悪魔により犠牲になった人々、運命に翻弄され続けた全ての人々を見てきたその心のままに。

そして…創造主、神は打ち倒されたのです。
冒険者は一介の冒険者のまま…元の世界へと、戻っていきました。



…しかし、それだけでは終わることはありませんでした。
神の死により、塔が崩れたのです。

柱を失いバラバラに世界は散り…長い長い、途方もなく長い時間が流れていきました。
ある数々の世界ではその冒険者の中の一人が旅の中で得た力により束ねられ
ある世界では、邪なる新しい神々と善き神々との戦いがあり
ある世界では、7人の英雄と人々との戦いの歴史が続き
ある世界では、死の星との命の定めに苦しみ
ある世界では、魔法を巡る長い長い血塗られた歴史が築かれていました。

だが、どの世界でも戦いは終わることはありません。
戦いを求める意思に、運命に抗おうとする意思。それが人のさがなのでしょう。


…そしてここに、散り散りになった多くの世界が独自の成長を遂げた…世界の集まりが。

そこではたくさんの世界一つ一つは『リージョン』と呼ばれ…
武器の扱いに長けた人間は『ヒューマン』と
魔法の扱いに長けたエスパーは『妖魔』と名を変え
肉を食らい姿を変える『モンスター』機械の種族、『メカ』の4種族とが混ざり合う世界が形成されていました。

文明が隆盛の末の戦争で滅んだ…それからずっとずっと後、そのことすらも忘れ去られた頃のこと。




干からびた大地に、干からびた植物。
淀んだ空を見渡す大きな高台に…
ふさふさとした、ある一匹の小さなモンスターが。

「はわっ!!!」
轟音を発する大きな揺れと共に投げ出された、
ラモックスという小さなモンスターの体は…
揺れが収まると同時に起きあがり、高台の先に立ちます。



 私はやよいです。
 ずっと、このマーグメルで暮らしています
 おばあちゃんが昔…マーグメルは美しい世界だった、っていっつも言ってました
 でも、私は生まれたときからずっとこのマーグメルしか見たことがありません。

 マーグメルは、死にかけているんです。

 『全ての物には終わりがある』 おばあちゃんは言っていました
 だから、悲しむことはないんだ、って。
 私はまだ小さかったから…おばあちゃんが何を言っているのか解りませんでした。
 それでも、おばあちゃんが死んじゃったときには、涙が止まりませんでした…

 マーグメルが死ぬとき…私は、やっぱり泣くのかなぁ…

711サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第一話後半:2009/10/27(火) 00:13:38 ID:Dfa0qyWc0
高台から降りたやよいは、みんなの所へ。

池は干からび、溶岩の池と化し…地面は乾き、ボロボロ。
そんな中でも…その世界に住む皆は、楽しく生きていました。

「おねえちゃーん、私たちとバトルしよーよ!」
「うっうー!後でね!」

「毎日元気だねー、ちょっとはじっとしていればいいのに。」
「体が勝手に動いちゃって!」

「おーいやよい、お爺さんが呼んでたぞー!」
「え、ほんと!?行かなくっちゃ!」


…そんな風に言葉をかわしながら、やよいは長老と呼ばれるお爺さんの部屋の前へ。
「長老ー!やよいですっ!」
「おお…入りたまえ」
「失礼しまーっす!」


とことこと入っていくと…

そこには真っ黒な体のラモックスが一匹。彼が、長老です。
(うわぁ…いつもどおり長老真っ黒だなー…いくつになったらあんなに真っ黒になるのかな…)

そんなことを思いながらも…
(あ!挨拶しなきゃ!)

やよいは挨拶を欠かしません。
「おはよございまーっす、長老!」
「あいさつはいいよ、やよい君」

ガルウィング式挨拶のまま、長老はそそくさと本題に入ります。
「時は尽きようとしているのだよ」




「君も知っての通り…マーグメルはもう長くは持たない。
 いや…本来ならすでに崩壊している所だろうね。
 この指輪を見てごらん」

長老の指には…白く眩い光が。…それに照らされても尚、長老は真っ黒なままです。
「強い魔力のこもった指輪でね…今はなき種族の遺産と言われているね。
 この指輪に念を込め、マーグメルを支えてきたんだが…もう限界なんだ。
 さぁ、こっちへ来なさい」
「は、はいっ!!」


ぽてぽてと長老の傍へ。
すると、長老は指輪を外し…やよいに手渡しました。

「……あれ?内側に何か彫ってあります!
 あつめれぅ…わたしのおとうと…つくる、あなたのねがい?」

たどたどしく、首を捻りながら指輪の文字を読むやよい。
「我が兄弟を集め願いを叶えよ」
見かねた長老は正しい訳を一言。

「この指輪に、兄弟があるならば…その力を集めてマーグメルを支えられるかと思ってね。
 この指輪を君に託すよ 兄弟を集めるのだ!」


そう言った瞬間……長老の足元にまん丸な穴が。リージョンとリージョンを繋ぐ穴のようです。
「幸い、リージョンの近くに来ている。ここから旅を始めなさい」

たった一人の子ラモックスから始まる、指輪を集めてマーグメルを救う旅が…今ここに、始まろうとしていました。
けれど…やよいにはよく解らないことが一つだけ。
「どうして私を選んだんですか?」

それに対し長老は一言で返します。
「ティンと来た! なぁに、それだけだよ。 …さぁ、行きたまえ!」


「はーーーい!」
白い光を放つ『護りの指輪』を指にはめたとたん…なんと。

やよいの姿は、見る見るうちに人間の女の子のような姿へと変わっていったではありませんか。
耳と尻尾はそのままだけど。


「いってきまーーす!」
「がんばってきたまえ!」

ぴょんと穴の中へ飛び込む、元気一杯のやよい。
マーグメルを救う、一筋の希望が今…旅立ちました。

「…しかし本当にやよい君で大丈夫かね…」
…不安は隠し切れません。

712サガフロンティア×アイマス T260GP編 第一話1/3:2009/10/27(火) 01:44:38 ID:Dfa0qyWc0
真っ赤なアラートが照らす艦内。
「機関部被弾、機関部被弾、戦闘続行不能。」

リージョン間を泳ぐ巨大戦艦に響くは他ならぬ戦艦の声。
「むぅ…リージョンには再突入できるかね!?」
「コントロールします、しかし着陸は不可能です」

「…わかった」

この戦艦の艦長として、彼は最後の指令を命じる時が来ました。
「再突入後、総員退艦。
 …お別れだな」
「お元気で、艦長」

アーマーのボタンを押すと、即座に艦長の背には翼が展開。


「総員退艦を確認…有機体保護機能解除。
 全エネルギーを推力に転換
 条件変更により任務続行可能 回頭120」

そして…全てが光に包まれていった。





「…ん?何だろー、これ!」

視界に入ってきたのは、幼い女の子の顔。
…けど、それだけだった。また意識が途切れる。


「えー!?カッコ悪いよー、せっかくコアを見つけてきたのにー!」

ごちゃごちゃと様々な部品や道具の数々が並べられた小さな家。
その中心にある作業台の上に、古ぼけたパーツを組み立てて作られたロボットが横たわっている。
女の子はクレーターの中で拾ったコアにロボットのボディをつけて蘇らせようとしたのだ。

彼女に頼まれて発見したコアの再生を行うのは、知識が豊富な近所のうさぎ。
「仕方ないよ、有り合わせで組み立てたんだから。」
古ぼけたパーツとは言え、その一つ一つはうさぎにより綺麗に磨かれていた。
磨くのは昔から得意だった、らしく。


…女の子は、もう一人いた。
「わ…!本当に生きてたんだ、そのコア!」
拾ってきた女の子と同じ姿ながら、やや大人びた雰囲気のその女の子は言う。

「まあ、やってみればわかるよ。…動かすよ!」
うさぎさんがスイッチをぽちっと押すと…

バチバチと電流が流れ、ロボットのボディへと注がれていく。
「だ、大丈夫かな…」
「…いや、死んじゃってたっぽいね。でもよかったよ
 生きているコアって妙な癖があるから売れないって聞くし…」
「真美!このロボちん売るつもりだったの!?」
「仕方ないでしょ亜美。コアだったらたくさんのお金が手に入るらしいし」

ああだこうだと言い合う二人。しかし、一瞬で二人の口は塞がった。
ロボットが…起き上がったのだ。


「やったぁ!生きてたーー!うさちゃんありがとー!」
「ふふ、あの伊織ちゃんの世話をしてたぼくだからね」

辺りを見回すロボット。状況確認だろうか。
メカといえど、ほとんど人間と変わらず会話したりするものが多いが…
その精密な動作は道具としての頃のメカの風というか。…生真面目な性格を思わせた。
「…何か、癖が強いっぽいね…」
真美の顔色は難色を示したまま。

亜美がわくわくして見つめる中、ロボットは立ち上がり…
動作確認。作業台の上を右に左に規則正しく歩く。

そして速度を変えてキュキュッと走り回った後にとうとう言葉を発する。

713サガフロンティア×アイマス T260GP編 第一話2/3:2009/10/27(火) 01:45:08 ID:Dfa0qyWc0
「性能情報:移動性能最悪、攻撃性能最悪、防御性能最悪、移動性能最悪、攻撃性能最悪、防御性能最悪、移動性能最悪…」
「最悪最悪ってひどいな…」
うさぎはその場でぺたんと耳を垂らしてしまう。

「任務確認:不能 任務確認:不能 任務確認:不能 任務確認:不能 任務確認:不能 任務確認:不能 任務確認:不能…」
思ったとおり。コンピュータに近い、メカという種族としては原始的な知能を持ったものだった。


「…移動、攻撃、防御、任務…もしかして戦ってたのかな?」
真美は腕を組んで考察。
「せんとーよーってヤツ!?すっごいじゃん!わー、カッコいいの見つけちゃったかも!」
亜美はぐるりと回って喜ぶ。
「動作不良、修理を要します」

修理されたばかりのロボットはそう言って作業台から飛び降りる。
そして、目の前にいる人々から情報を得ようとする。…会話だ。

「戦闘用っていうと…なんか怖いかも」
真美は冷静。

「亜美は亜美!姉(c)を掘り出したんだかんね!」
「『亜美…』 所属と階級は?」
「しょぞく?かいきゅー?…なに?それ」
「では、亜美様とお呼びします」

「んふふー…亜美様なんてなんか照れちゃうよー。」


その様子を見て、真美も観念しました。
「…はぁ。そんなこと言ってるより、亜美!そのロボットの姉(c)連れてガラクタ集めに行ってきて!」
「お嬢様。所属と階級は?」

くるりと首を回して丁寧に聞くロボット。
「んきゃー!おじょうさまだってー!」
「亜美ーー!!
 …私は双海真美。亜美のお姉ちゃんなんだ。真美でいいよ」

彼女には、姉妹という言葉のデータが登録されていないようだ。
「……では、真美様の方が上官なのですね?」
「あーーははっはっは!上官だって!そうかも!」
「うさちゃん笑わないでよー!」

「…この方は」
「この人?はうさちゃん。凄く機械技術に詳しくてね、
 姉(c)を直したのもうさちゃんなんだよ。解ると思うけど」

「技術仕官ですね、ウサちゃん様」
「ウサちゃん様だってー!」
「…何でも様つければいいものでもないんだけどなー…
 ウサで十分だよ」
「ウサ様ですね」

そして、自己紹介が終わった所で真美はロボットに聞く。
「…で、姉(c)は何ていうのさ。 …名前くらい覚えてるよね…?」
「制式形式番号765  認識ID9172−6253−2012」

…帰ってきた答えは無機質なもの。真美はため息をつく。
「…何て呼ぼうか」

「んっとね! …それじゃ、765!」
「あ、頭にPつけてみて、その方がカッコいい気がするから。ボクの意見も聞いてよ…」


…こうして、彼女はP765と呼ばれることになった。
ひとまず、そんなやり取りの後に、亜美とロボットは外へ。

「真美にあちこち行くな、って言われてるけど
 もう一人じゃないしねー よし!これからは亜美探検隊!亜美が隊長だよー!」
「解りました、亜美様」

「違う違うー!たいちょーだよ!」
「はい、亜美隊長」

714サガフロンティア×アイマス T260GP編 第一話3/3:2009/10/27(火) 01:45:39 ID:Dfa0qyWc0
古代の遺産を探して売ることを生業とする者の多い、
古代戦争の戦場跡地『ボロ』。

ここでは他とは一風変わった光景を目にすることが出来る。

「キーーー!俺に謝れ!!」
人間の商人に無理を言って断られるガラの悪いのロボットや…
「質問です、今のGST標準時間は?」
「あぁ!?何言ってんだお前!」


「こらー!近寄るでない、錆が移る…」
機械に対し神経質な老人
「あんた強そうだねえ。闘機に出てみない?」
P765に目をつける人々など。


「ここで姉(c)を拾ったんだよー!」
「そうなのですか」

クレーターの中を見回す。
「腐食具合から廃墟化千年単位と推定……」

あれでもない、これでもないと亜美とガラクタ拾いをした帰り…
「………姉(c)がいるから大丈夫だよね…」

亜美隊長はP765を連れてある建物へ。



雲の吹き抜ける青空とはうってかわって、こもり淀んだ空気。
タバコの匂いに、人々のガヤガヤとした話し声。焦げ付く何かの匂い。

「あんね、ここはとーきじょう、て言ってさ…
 ガラが悪いから一人で来るなーって真美に言われてんの。
 …時々来ちゃうけどね」

メカとメカがぶつかり合う賭博の場…闘機場だった。
「あ、これ真美には内緒ね!」


「ああ?何か弱っちそうなメカだなー」
「おう、お前出んの?ボコボコにされても知らねーぞー」
「あー、次はアンタにかけるわ、アタシ」


客に難解な質問をぶつけ、無視されかけられるは賭博の話ばかり。
P765は、一通り見終わった後で亜美に連れられ奥の部屋へ。…バーだ。


そこには…はちまき姿で飲んだくれる、やたらとシャツが胸のふくらみを強調する
酔っ払いの女性がいた。
「んー?あら。見かけないメカ!」
「ピヨちゃーん!」

どうやら、亜美の知り合いらしい。
「ピヨ? …亜美ちゃん!
 亜美ちゃんの連れてきたロボなの?」

「えへへー、そうだよー。組み立てたのはうさちゃんだけど、
 コアを掘り出したのは亜美だよー!」

「へぇー、なかなか強そうねえ」
「んっふっふー、何たってせんとーよーだもん!」


そういうなり、当然のようにピヨちゃんと呼ばれた女性は言う。
「へぇー、それじゃ闘機には出すの?」
「え…」


「戦闘用なら強いんでしょ?ふむふむ…
 よし、おねえちゃん賭けてあげちゃう♪」

…そして、あれよあれよという間に…

「ご命令を」
「…ど、どうしよっか…」


彼らはP765を出場させることとなった。

715乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/27(火) 12:36:33 ID:qwY5evEI0
グラディウス軍の将校一覧(将官のみ) 第二版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将
ヴィンセント・ルガース大将
ディアス・ユンカース中将
ハスキー・ハルバート中将
ジョニー・ガーランド少将
エドワード・オレステス少将
フリッツ・パーペン少将
クラウス・ケッセル少将

陸軍
ブラン・ホルテン元帥
ハロルド・ワイルディング大将
グリフィン・レインウォーター大将
フレデリック・レーガン大将
トーマス・バーシティ中将
アルベルト・アダンティ中将
アルバート・シュライヒャー中将
チャールズ・トーチ少将
ウォーラス・モス少将


宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将
クラナス・ランフォード大将
ナルヴィック・ルフラン大将
クロン・ベイル中将
オーラフ・ヴァーノン中将
ジャック・トンプソン中将
ヤコブ・フルシチョフ少将
ルーベン・イングラム少将
エメライン・ベンジャミン少将

バイパー「ちょっと増えたね」
ちょっとだけね!

716乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/27(火) 17:44:05 ID:qwY5evEI0
グラディウス軍の将校一覧(将官のみ) 第三版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将
ヴィンセント・ルガース大将
ディアス・ユンカース中将
アドリアナ・ベチン中将
ハスキー・ハルバート中将
ゴーチェ・ベルトラン中将
ジェルヴェ・ブラシェール中将
エヴラール・ダルコ少将
ジョニー・ガーランド少将
エドワード・オレステス少将
フリッツ・パーペン少将
クラウス・ケッセル少将
エマニュエル・コロー少将

陸軍
ブラン・ホルテン元帥
ハロルド・ワイルディング大将
グリフィン・レインウォーター大将
フレデリック・レーガン大将
トーマス・バーシティ中将
アルベルト・アダンティ中将
アルバート・シュライヒャー中将
アーチボルド・バルフ中将
ジェフ・バッセル少将
モーゼス・バートン特別少将
マーカス・キャビンディッシュ少将
チャールズ・トーチ少将
ウォーラス・モス少将


宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将
クラナス・ランフォード大将
ナルヴィック・ルフラン大将
クロン・ベイル中将
オーラフ・ヴァーノン中将
ライオネル・アッカースン中将
ジャック・トンプソン中将
ヤコブ・フルシチョフ少将
ルーベン・イングラム少将
エメライン・ベンジャミン少将
マンフレッド・ボールドウィン少将

717超兵器レポート Ver.1:2009/10/27(火) 20:07:24 ID:qwY5evEI0
超兵器について

超兵器を支える機関についてだが、
普通の戦艦の十倍の大きさの艦を普通に動かせることから、
出力は「半端ない」の一言で片づけられないほどの力を持っていると思われる。

超兵器出現時に超兵器を中心にして纏うように、
レーダーに不可解なノイズが広範囲で発生するが、
ノイズはこの推進装置から発せられているものと思われる。

超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター機関引き上げ時に判明したことだが、
この推進装置はきわめて特殊なものであり、いつまでもその運動をやめることはない。
また壊すことができないのも特徴である。

謎なのはこの推進装置だけで他の技術は既存の技術であるがゆえ、
もしかしたらウィルキア帝国軍にとってもこの機関は
ブラックボックスに等しいものではないのだろうか。

エルネスティーネ・ブラウン

718超兵器レポート Ver.2:2009/10/27(火) 21:24:19 ID:qwY5evEI0
ウィルキア解放軍がイギリス本土までの逃避行の間、確認した超兵器について
(撃破順)

超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント
超巨大潜水戦艦ドレッドノート
超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター
超巨大爆撃機アルケオプテリクス
超巨大双胴戦艦ハリマ
超巨大航空戦艦ムスペルヘイム
超巨大列車砲ドール・ドラヒ
超巨大レーザー戦艦グロースシュトラール
超巨大攻撃機フォーゲル・シュメーラ
超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァー
超兵器水上要塞ヘル・アーチェ
超巨大航空戦艦リヴァイアサン

これは確認できた超兵器のおよそ8割であると思われる。
全ての超兵器を確認するまで各兵器についてのレポートはしないでおく。

エルネスティーネ・ブラウン

719ウィルキア帝国レポート Ver.1:2009/10/27(火) 21:33:51 ID:qwY5evEI0
このウィルキア解放戦線に関わっている重要人物たちについて

ライナルト・シュルツ
男性・ウィルキア王国・28歳・ウィルキア近衛軍少佐-解放軍艦艇艦長

クラウス・ヴェルナー
男性・ウィルキア帝国・27歳・ウィルキア近衛軍中尉-シュルツ艦副長

ナギ
女性・ウィルキア王国・23歳・ウィルキア近衛軍少尉-シュルツ艦通信長

天城仁志
男性・日本・52歳・日本海軍大佐-帝国軍艦隊司令

フリードリヒ・ヴァイセンベルガー
男性・ウィルキア帝国・59歳
元ウィルキア国防軍大将兼元国防会議議長-ウィルキア帝国元首

アルベルト・ガルトナー
男性・ウィルキア王国・46歳
ウィルキア近衛軍大佐兼ウィルキア近衛軍艦隊副司令-ウィルキア解放軍司令

マンフレート・フォン・ヴィルク
男性・ウィルキア王国・71歳・ウィルキア王国国王

君塚章成
男性・日本・54歳・元日本海軍中将兼元横須賀第一艦隊司令-帝国日本方面軍総司令

その他、他に記載すべき人物がいれば記載していく。

エルネスティーネ・ブラウン

720サガフロンティア×アイマス T260GP編 第二話 1/2:2009/10/28(水) 00:48:19 ID:51SXWvP20
「所で、あまり他のリージョンには行かないと思うけど
 ウサちゃんって何か行きたいところとかある?」
「うーん…ボクは『シュライク』かな」

「あ、そっか。『伊織ちゃん』がいるんだっけ …いおりんって呼んじゃダメ?」
「怒るかな、どうかなー…
 …うん 随分顔見せてないから怒ってると思う 真美ちゃんは?」

「妖魔の国『ファシナトゥール』!きれいな妖魔の人たちに憧れてるんだー♪」
「真美ちゃんらしいね…」

「それにしても亜美達遅いねー…」

「たっだいまー!ウサちゃん、急いで急いで!!」



一回戦の相手はナイトファルコン号。
作業用メカを改造したもので、戦闘能力は比較的高い。

だがP765はパンチ一つでそれを粉砕して見せた。
掘り出した亜美も、闘機に誘ったピヨも唖然。

「…そだ!」
そして亜美は考え付いた。掘り出したガラクタをP765の材料にするべく、
亜美が休憩時間の合間にうさぎの所へと持って行きパーツに変えることを。



次なる相手はバスターマシン。宙に浮いた横に細長いボディからバルカンやミサイルを発射する警備マシン。
これに対してはうさぎのところでこしらえたバズーカを発射。これも一発で沈める。



そしてその次には物騒なマシンが現れた。
4輪車の下半分に、巨大なバルカンを取り付けた『ガンファイター』
だが…これも攻撃をうまく回避、バズーカで一撃。

P765は見た目からはうかがい知れぬ性能を見せ付けた。


今日最後の試合を終えたP765はピヨの元へ行くと…
「こういうことだったの亜美!!」

そこには、両手を合わせてごめんなさいしているピヨと
腕を組み怒る真美の姿があった。
「ゲッ、真美!」

「全く、まーたこんなところで遊んでるんだから!!
 …それに!P765が壊れたらどうすんの!」
剣幕に押されながら亜美は言い訳をする。
「だ、だいじょーぶだよー…姉(c)強いから…」

「亜美!コアが壊れたらP765はもー二度と直らないんだからね!
 そういうの無責任、って言うんだよ!」
「………ごめん」


その瞬間。
「きゃーーーーーーーー!!」
「わぁあああああ!!」
闘機のリングから叫び声。


亜美真美とP765が向かってみるとそこには…

「おらおらーーー!!悪徳様に楯突くやつは
 俺がバラバラにしちまうぞーーー!!」


名前の通りの悪徳商人、悪徳の雇ったガラの悪いメカ…ヴァルカンだ。
P765が時間を聞いた相手… 商談を断られてムシャクシャしていたのだろう。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャ!」
P765とは正反対に、こんなメカも存在するのだ。


そんなヴァルカンの横暴に真っ先に怒るのは…。
「いい加減にしてよ!悪徳が何だっての!」

真美だ。
「P765!やっちゃってよ!!」
恐るべき前言撤回。

「真美!無理だよー!姉(c)でもあんなの勝てないって!」
「…どう?倒せる?」

真美は質問した。だが……
「命令を復唱します 『敵メカを撃滅せよ』」
彼女は更に行動が早かった。


「んお!?」
闘機のステージへ飛び降りるP765.

721サガフロンティア×アイマス T260GP編 第二話 2/2:2009/10/28(水) 00:49:58 ID:51SXWvP20
「お、驚かせやがって」
目の前に急に飛び出され、ヴァルカンは思わず一歩退く。
そしてそのまま先手。

「ぐげ!?」
強化されたアームでのパンチ。
「野郎…!!」
バルカンを厚くなった装甲で防御…

「発射!」
バズーカをボディの真ん中に命中させ…リングの端へと吹き飛ばす。
「おおおおおおおおお…!!!」
だがヴァルカンは起き上がる。
「やりやがったなああああ!!」

バズーカになっている両手でそのまま殴りつける。
「姉(c)!!」
亜美も思わず叫ぶ。だが…


P765は腕をクロスさせてそれを受け止めていた。そしてそのまま…
「!」
上になっている右腕でヴァルカンを振り払い
「補足」
左アームに装着された銃、『ペンドラゴン』でヴァルカンの胸部を撃ち抜いた。

「…………が……!」
的確な射撃により、ヴァルカンは動力炉を撃ち抜かれ大破。

「つ、強い…!!!」
「はぁー…大したものね…」

「真美様 任務完了いたしました」
闘機場の喝采に見送られる中、亜美と真美とピヨの元へと戻っていったのだった。



「よし、これで大丈夫!あまり無理はしないようにね」
「有難うございます、ウサ様」
翌日。P765はうさぎの家で目を覚ました。
「だから様はいいって…」

作業台から降りたP765は
「やっぱりそんな格好でも戦闘用なんだぁ…」
真美に話しかける。
「ありがとうございます真美様。 亜美隊長はどちらへ」

「そ、そんな風に呼ばせてるんだ…全く子供だなぁ亜美は…
 亜美なら、姉(c)の部品になるものを探しにいったよ」
部品探しといえばあのクレーターだろう。

P765はすぐさまクレーターへ。しかし…
「…………」
辺りをサーチしてみるが…
「ヒューマンと思しき生体反応数…0」
亜美の姿は見られなかった。

なので今度は闘機場のピヨの元へ。
「いやぁ、凄かったわよー昨日の戦い。」
今日もやっぱりピヨはバーで飲んでいた。
「亜美隊長を捜索中なのですが…」

そこに…なんと慌てた様子の真美が駆け込んでくる。
「ピヨちゃーーーん!! P765!」

「悪徳に……悪徳に亜美がさらわれちゃったの!!
 何とかして!!」

「亜美ちゃんがさらわれた!?」
「亜美がさらわれた!?」
「亜美がさわられた!?それってピヨさんの方じゃなくて!?」
どよめく闘機場。

「『何とかする』とは具体的にどう言った…」
「亜美を助けるのっ!!」

「…どれ、私も力を貸しましょうか」
肩をならして席を立つ酔っ払いのピヨ。
「ほんと!?ピヨちゃん!」

「おいおいー、アンタなんかに何が出来んだ? この酔っ払いねーちゃん」
「まぁ…人数がいないよりはいいでしょうし」

こうして、P765とピヨは亜美の元へと急ぐことになった。だが…場所は?

「亜美は悪徳にクレーターに連れて行かれたみたい!」
「そこにはヒューマンと思しき生体反応は」
「違うの!あそこは地下が作業用通路になってて、入り口から見える範囲なんてごく浅い部分なんだから!」

「何にせよ、急がなきゃならないわね」
「まままま、待ってよピヨちゃん!!」

ピヨはかなり足が速い。相当に鍛えているのだろうか?
「………」
ホバー走行をしながら、ピヨの戦闘能力を計測してみる。

「………標準値を大幅に超えています」
「ん?何か言った?」

722サガフロンティア×アイマス T260GP編 第三話 1/3:2009/10/28(水) 02:13:54 ID:51SXWvP20
「よっ」
高い身体能力を持つ蛙、フェイトードを殴り飛ばし
「ほっ」
硬い殻と鋭利なハサミを持つシェルワームも蹴り飛ばし
「えい♪」
女性戦士アクスボンバーには頭から胸に突っ込みセクハラ気味に撃退。


一匹蹴散らすごとにお酒に舌鼓を打つ呑気なピヨだが、戦闘能力は至って高い。
だが…武術としては型が出来ておらず、単に殴ったり蹴ったりだけ。
…どうやら、鍛えられていたからといって体術使いという訳ではないらしい。

「武器がないとやりづらいわね…」
「お貸しします」
ペンドラゴンを渡すが…
「いいの。銃は好きじゃないから」
「そうですか」

狭い地下坑道を抜けて再びガラクタの散乱する地上へ。
「ほら穴が見えるわね…」
「生体反応確認…亜美隊長と思われます」
「…よし、行きましょうか」


「ねーカッコいい兄(c)、降ろしてー」
洞窟内部でロープで宙吊りに遭っている亜美。

その前には、骸骨剣士スパルトイとヒトデモンスターのゼノ。
そして長い前髪の右半分を垂らした黒髪のスマートな男の姿が。

「町の連中が大人しく悪徳さんの言うことを聞きゃいいんだ
 そしたら降ろしてやるさ」

…このボロで好き勝手を行う悪徳の名を聞いた途端、亜美はムっとし…
「へーんだ!悪徳なんかに頭は下げないよーだ!」
罵声を浴びせる。
「この短足!ハゲ、でぶ、ウンコたれー!」

「な、なにーーー!!!」

どれも彼に当てはまっているとは思えない。だが何故か男はムキになり
亜美に拳骨を食らわせる。
「あいたぁーーーー!!」


「亜美ちゃん!!」
「隊長!!」

「あなた達、亜美ちゃんに何したのよ!」
「あ、いやその別に………」
急にしゅんとなる男。だが…
「…いやなんで俺らが小さくなる必要がある…」

男は片足で地を踏み鳴らし、啖呵を切る。
「おらぁ!!てめぇら俺を何だと思ってやがる!?」
「悪徳の手下でしょう」

横にいた骸骨、スパルトイが口を挟む。
「ははぁ、テメェ知らねぇんだなー…この方が何者か」
続いてヒトデのゼノ。
「おうよ!この方こそがかの剣豪のリージョン、
『ワカツ』最強の剣鬼、ダエモン先生よ!!」

「ダエモンセンセイ…データベースにありません」

「まぁある程度腕のあるヤツじゃなきゃ知りもしねぇか…
 俺の名前は出すことすら憚られるもんさ…
 俺様はかつてワカツで最強の名を轟かせたがちょっとあそこじゃあつまんなくなってなぁ…
 更なる強者を求めてリージョン界をちょいと転々としてるのさ!」
腰に手を当てガハハと笑うダエモン。スパルトイとゼノも彼を称える。

「へぇ、そんなヤツがいたとは驚きね…
 …でもそれでついたのが悪徳の部下…?」
「あ…悪徳さんだからこそなんだよ!!」

「そんな強い人となら戦いたくなってきたなー…」
ピヨは足元に転がっていた鉄パイプを手に取る。

「鉄パイプで俺とやるつもりか!?
 舐めたヤツだ…いい度胸だ、
 さぁしかと見ろぃ、俺の本当の姿を!!」

723サガフロンティア×アイマス T260GP編 第三話 2/3:2009/10/28(水) 02:15:56 ID:51SXWvP20
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
ダエモンは腹の底から声を捻り出すと…
「ぬん!!」
体が急激に膨張。謎の筋肉だるまへと変身を遂げた。
「この姿は醜くて使いたくなかったんだがなぁ…」
「見せるって言ったのそっちのような…」

ともあれ、戦いは始まる。
「やっちまえぇ!」

まずは飛びかかってきたゼノをP765はバズーカで天井まで打ち上げ…
大爆発。
「せんせええええええ!!!」
「げ…」
ダエモンの動きが一瞬止まる。

「隙だらけですよ」
ダエモンに近づき、鉄パイプで振りかぶり一発…返しの二発。
二段構成の基本技、『切り返し』
「うごっ…」
「先生になんてことしやがる!!」

スパルトイが剣で切りかかるも…
「よっ!!」
スパルトイの胸骨を鉄パイプで真っ直ぐに一突き。
『諸手突き』だ。
「ぎょええええええええええ!!!」

洞窟に積まれた木箱の山へ吹っ飛んでいく。
基本技ながら凄まじい力…どうやらピヨの本領は剣術にあるらしい。
「……て、てめぇ何者だ…」
「…」
ピヨは何も言わずじりじりとダエモンに詰め寄る。

「…っわ、ワカツの剣豪舐めんなあああああ!!」
手に持った剣で突きを繰り出すダエモン。

だがピヨは飛び…
「あが!!!!」
頭を鉄パイプで一撃、
「………!!」
落下し、低くした体勢からもう一撃を捻り出す。

「『天地二段』……」
上級剣術使いが用いるという技だ。

「…まだまだぁあ!!!」
そういうとダエモンは口から毒ガスを噴出してきた。
「う…!!」
「大丈夫ですかピヨ様」

「く、くたばっちまええええええええい!」
ダエモンはよろよろになりながらピヨに切りかかり…剣は見事に振り下ろされる。
「…おああ!?」
…地面に。
「相手くらいしっかり見ててくださいよ剣豪さん」
ピヨは…ダエモンの遥か後ろにいた。

「鉄パイプじゃまともに闘えたものじゃないわね」
そう言い、ピヨは闘気を剣に集中させる。

「な、なんだァ!?」
洞窟内の気温が一気に下がる…

「!!」
恐怖する時間すら与えない。
ピヨは一瞬にして、静から動へ。ダエモンの懐に飛び込み必殺の一撃を見舞う。

冷気を帯びたパイプはダエモンに当たるなりダエモンの熱を奪い氷付けにする。

「ワカツ流剣術奥義之壱 『風雪即意付け』」
呟きとともに戦いは終わりを迎えた。


「わ、ワカツ流…!?」
厳しい目をしたままのピヨの背に亜美の驚嘆の声が。

その瞬間ピヨは我に返る。
「…ああいや。冗談で言ってみただけよ♪
 大体ほら、ワカツなんて今はあるわけないじゃない。ちょっと前に滅んじゃったんだし!
 …まぁその、あっちもただの酔っ払いのお姉さんにやられるくらいだし
 大したことなかったんじゃないかなー…って……あはは…」

はぁ、とため息をつくピヨだった。
「亜美隊長、お怪我は」
「頭ゲンコツされた以外は特になかったよー、ありがと!!」

724サガフロンティア×アイマス T260GP編 第三話 3/3:2009/10/28(水) 02:16:32 ID:51SXWvP20
その翌日…

話は急に切り出された。
「隊長、『A級優先任務:最終任務確認』の遂行を希望します」
「…さいしゅう…にんむ…?」

何のことやら、さっぱりだった。
それは目覚めた際の任務確認:不能の言葉の意味。

「はい。私には最優先すべきS級優先任務が存在しながら、
 その任務のメモリーが現在破損しているため、
 情報の再取得が求められます。別リージョンへの出発許可を願います」

要するに、重要任務を忘れたので思い出すための旅に出るというのだ。


「で、でも!姉(c)ずっとずっと昔のコアなんでしょ!?
 今更姉(c)が果たさなきゃならないような任務なんてきっとないよー!」
「任務確認を優先します」
「ここじゃあ情報も部員も限られるしねー…」
ウサちゃんはP765に同意するようだ。

「…亜美。P765は真美達やボロの人たちのために
 戦ってくれたんだよ。行かせてあげなよ。
 多分ピヨちゃんもついていってくれるし」


そっぽを向く亜美の背中に…P765は言葉を重ねる。
「…隊長の許可がなければ出発できません」
亜美の肩は震えていた。


「…そんなに行きたきゃどこへでも行けばいいじゃん!!」
そして走り去っていった。

「ありがとうございます、タイム隊長」
「…亜美…。」



それから数時間後のこと。

リージョン間を航行する発着場に、彼女らの姿があった。
ピヨに、亜美に、真美に、ウサちゃん。


「P765は?」
「荷物扱いでくず鉄と一緒に運ばれるそうよ
 それだとお金かからないからね…」

「ヒドいよピヨちゃん!」
「…言い出したのはP765ちゃんなんだけど…」
「亜美達のことを考えてくれてるんだよ」
「でも…」

そして別れの時。
「それじゃ元気でねー!」
P765はベルトコンベアで、ピヨはタラップからリージョンシップへ。



「すぐに帰って来てねーーーーーー!
 ぜえええええええええええええええええったい!!
 帰って来てねーーーーーーーーーーーーー!!!」

真美様直属・亜美探検隊への帰還。
その任務の内容を、P765はずっと記憶していた。
…ずっと。

725サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二話 1/3:2009/10/28(水) 03:08:57 ID:51SXWvP20
「わぁーーー…!!」

やよいが時空の穴に落ちた先は、古めかしいながらも賑やかな町並みでした。
やよいの正面には酒場。中からは賑やかな話し声や、華やかな音楽が聞こえます。
「何かな何かなー?」

入ってみるとそこにはお酒を楽しむ沢山の人々に、
ステージの上で派手なパフォーマンスと共に演奏する…
メカのドラムに、モンスターのサックスに、ヒューマンの指揮に、妖魔のギターの、
ヘンテコで、素敵な構成のバンド。


酒場の隅でお酒を飲んでいる一人の女の子をやよいは見つけます…いや。
よく見るとそれはお酒ではなくジュース。未成年のようです。
「お姉さん!どちらから来たんですかー?」

黒く長い、後ろでまとめられたポニーテールの髪に色黒の肌。
気づいた女の子は振り返る。
「んー、ちょっと田舎から出てきて、アイドルになるため就職活動中さー
 スクラップの酒場でー変な女の子に出会ったー♪」
「わぁーーお!すっごいですー!」
「だろー!自分は響!よろしくなー」

「あ…そうだ!指輪について何か知りませんか?」
「んー、指輪?ちょっと自分よく解らないぞー。どうしたんだ?」
やよいは覚えている範囲でちょっと響に説明しました。


「ピヨ様。どうしてロープを鉄パイプで断ち切れたのですか?
 物理的にそんなことは有り得ないはずです、理由としては…」
「ああー、もうそういうことはいいから!今は飲みましょ!」

反対側のテーブルには古めかしいデザインのメカと、酔っ払いのお姉さん。
「あ!」

やよいはとてとてと二人に駆け寄ります。
「あの!指輪について何か知りませんか!」
「指輪…主にヒューマンや妖魔用に対象として作られる装飾具の一つ。
 金属の輪に宝石類をはめ込み作られる。」
「わぁーー!物知りなんですね!」

「んー。飲みすぎたかな…酒場にいないはずのちっちゃい女の子に犬の耳と尻尾が見える…」
「すーいません!」
「うーー…頭痛くなってきた…」
「…大丈夫ですかピヨ様」
酔っ払いのお姉さんは酔いつぶれてしまいました。


「うぅ…」
「私は当時間の情報には乏しいので
 情報収集ならば他を当たられるとよろしいのでは」
「……? は、はい!そうしてみますー!」
酒場をまた、やよいは走り回る。


「……ちゃん、どうして死んじゃったのかしら」

酒場に溢れる音楽にかき消される小さな声で悲しげに
ちびちびと飲んでいるのは、そそり立つ頭の毛が目立つ、
チャイナドレスの似合う綺麗な女性。

「あのっ!すみません!」
「…あらー?」
「指輪について何か知りませんかー?」

やよいはその女性に話しかけます。
その出会いがこの旅における最も重要な出会いとなるとは
お互い知るはずもありませんでした。

726サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二話 2/3:2009/10/28(水) 03:09:45 ID:51SXWvP20
「んー…指輪ねえ。
 …ちょっと私には暫く関係がなくなりそうだけど…
 別の意味ではいつも関係しているのよー」
「…?どういうことですか?」

「あ。いえ何でもないの。指輪ね…実は私も少し興味があってね
 調べていたりもするのよ?」
「きれいですよね、指輪」
「ええ。あら…?あなたのそれは…」

やよいは指の『護りの指輪』をお姉さんに見せます。
「はい、こんな指輪なんですけど…知りませんか?」
「…んー…指輪が欲しいんじゃなくて、指輪を集めているの?」
「はいっ!そうしないと、私の故郷が大変なんです!マーグメルっていう場所なんですけど…」

「噂にだけは聞いたことがあるわー…本当にあったのね…
 ちょっとお話を聞かせてもらえるかしら?」
マーグメルのことを出来るだけやよいは説明してみました。

「…リージョンがなくなる!?…大変じゃない!!」
子供の話を、お姉さんは親身になって聞いてくれました。

「はい、大変なんですー!」
「…そうねぇ。大切なものを亡くすのは私も経験してることだし。
 あなたにちょっと協力しようと思うわ。
 …そういえばあなた、お名前は?」
「やよいっていいますー!」
「あずさよ。あのねやよいちゃん。…私だからよかったけれど、
 これからはこんな風にすぐに指輪を見せちゃだめよー?」

「えっ!…だ、ダメなんですかぁ?」

「…ええ。ちょっと世の中には悪い人もいるものだし…」
「あずささん!その、『悪い人』って、どんな人のことですか?」


「そうねー…これから私が会おうと思ってるのが『悪い人』よ。
 『悪徳』っていうんだけど。一緒に行きましょうか?」
「はいっ!」


こうして、やよいとあずさは共に指輪を探すことになりました。
「自分も暇だし、ついていくさー」
無職少女・響もつれて。

「こらー犬っ娘ちゃん、どこ行く!」
謎の酔っ払いお姉さんとその付き添いのメカがついてきた!?

727サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第二話 3/3:2009/10/28(水) 13:31:07 ID:51SXWvP20
「えっと、ピヨさん?でしたっけ。悪徳さんには何か用事があるんですか?」
「あー、そうそう。ここから別のリージョンに行きたいんだけど
 法外な値段を吹っかけてきて困ってるのよ…100万クレジットって…」

やよいにあずさに響、それに謎の酔っ払いのピヨさん、その付き添いのメカP765とを加え、
5人は悪徳の事務所に乗り込みます。

モンスターやら、銃を手に持ったガラの悪い男やらがひしめく中で
どっかりと椅子に座っている男性。彼こそが…このリージョン、スクラップを拠点に
戦争跡地のリージョン、ボロなどを仕切っているという極悪商人、悪徳。


先ほどとは打って変わって、強気の語調であずさは悪徳に詰め寄る。
「悪徳さん、考えは改めてくれましたか。」

悪徳はゲラゲラと下品に笑う。
「考えを改めるのはそちらの方ですぜ?
 あたしゃあただアンタと素敵な夜がすごしたいだけさぁ」
「げひゃひゃひゃひゃひゃ」
「ぐへへへへへへへ」


「…はぁ。やっぱりこうみたいね」
「こりゃ危ない奴らだー…何されるか解ったもんじゃないぞ!」

「…けどまぁ仕方ないわね やよいちゃん、指輪はあなたにとって必要なものなのでしょう?」
「え?…あ、はい!!」

事情をよく知らないやよいは力一杯に頷きます。

…すると、あずさはにっこりと笑ってやよいの頭を撫でた後…
悪徳に言いました。
「………悪徳さん。いいわ、あなたのところに行きます。だから指輪と、リージョンシップの値下げをお願いします」

「へへへへへ…まぁ悪いようにはしねぇさ…」
そして、あずささんは悪徳と一緒に事務所の奥へと消えてゆきました。
「ちょ、ヘンタイ待つさーー!!」
響の声は届かず。

…女性の危機。
「あ、あずささん何かされるんですか?」
「…やよいには解らないか。
 …ともあれ、何か策を講じないとやばいぞ!」

「…案外大丈夫そうにも思えますけどねー」
ピヨさんはあまり心配はしていない様子。

「…まぁけど、綺麗な女性の危機はひとまず救うのが筋ってものよね
 さ、みんなであずささんを救出する方法を考えましょうか

 私はここで装備を整えているから、響ちゃんとP765ちゃんは情報収集」
「やってやるさ!」
「了解しました」
「やよいちゃんは危ないからここで私と一緒」
「はいっ!」



「で、これからどうするんですか?」
「…あずささんを助けるのよ。あなた、戦いには自信ある?」

「はいっ!多分、マーグメルではいっちばん強いですよ!」
「ラモックス 戦闘能力はモンスターとしては最低ランクの、温厚なモンスター。
 危険度は低いため愛玩用としても評判が高い」
「評価が高いんですかー?えへへ♪」
「………」


そして暫くして、響とP765が戻ってきました。
「悪徳は裏の工場に行ったらしいぞ、十字路を北に行った所だ!北ってどっちだ!」
「………」

平和な世界で生きてきたモンスターの女の子に酔っ払いのお姉さん、職探しに出てきた女の子に、あまり強そうには見えないロボット。
妙な構成のこの4人の戦いが今始まります。

728サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三話 1/3:2009/10/28(水) 15:11:04 ID:51SXWvP20
「北は進行方向から見て右に当たります」
「うっうー!みんな、早くきてくださーい!」
「そう焦っちゃダメよー、やよいちゃん」
「腕が鳴るさ!」


悪徳ファクトリー。
敷地内には作業員の詰め所と倉庫が左右に、工場が正面に…その端の小さな小部屋が悪徳の私室のようです。

「まずは私とP765ちゃんで部下達をひきつけておくから、あなた達は裏から悪徳の部屋に!」
「了解しましたー!」
「悪徳のヤツをぶん殴ってやるさ!」


軽いフットワークで私室の天井裏から侵入すると…

「げへへ、観念しな…」
今正にあずさのピンチ。

「触らないでくださいっ!!」
と思われましたが。


なんと近寄ってきた悪徳の横っ面にビンタを二発、
もう片方の手で悪徳の腰の辺りを掴みその美脚で悪徳のみぞおちを思い切り蹴り飛ばし…

「ぐえっ!!!」
悪徳を吹っ飛ばしてしまい
「あらー残念でしたね♪」
腰元から奪い取ったハンドガンで倒れる悪徳に銃を突きつけていました。


勝利は確定。そう思われたとき…
「あずささーん!!」
「大丈夫か!!」

天井裏からやよいと響が襲来。

「!!」
思わず振り返るあずさ。
「…! ち、ちきしょおおお!」

その隙に悪徳は逃げてしまいました。
「…あっ」
「…助け要らなかったみたいだな」

「…あ、いやそんなことはないわよ?うふふふ…」
はしたないところを見せてしまったと気まずそうにするあずさ。
戦いは続くようです。

と、外に出たところで部下達をのしてしまったピヨさんとP765と合流。
「どうやら悪徳は工場裏に逃げたみたい。追いますよ!」

本格的な戦いの開始です。
「きやがったな!お前らでこの数を何とかできるとでも思うのか!?」
入り口で悪徳は待ち伏せていました。

「…へぇ…私とP765ちゃんが、あなたのところのヴァルカンとダエモン先生とか呼ばれてた人を
 倒しちゃったと言ってもですか?」

「…へ」

どうやら悪徳の部下と戦った経験がある様子。
それを聞いた途端、悪徳は青ざめ…

「な、ならー借りはきっちり返させてもらわんといけませんなぁ!か、覚悟しやがれ!!」
慌てた様子で工場の奥へ逃げてゆきました。
「あらあら。随分慌てた様子でしたねー」
「皆さん、行きますよー!」

工場内にはトラップも、悪徳の部下達も大勢。彼らの戦いは果たしてどうなるのでしょうか。

729サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三話 2/3:2009/10/28(水) 15:12:00 ID:51SXWvP20
「けひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

メカとの戦闘になった瞬間、高い炉の上で銃を構えた部下の男が
マシンガンを乱射し始めました。

「卑怯な手を使うわね…!」
戦闘が始まった途端降り注ぐ弾丸の雨。

だがその程度の攻撃では誰もびくともしない。
P765のバズーカで空飛ぶ剣メカ、ブレードアタッカーを破壊。

入り口そばのクレーンを操作し…
「お、わあああ!!!」
アームで炉の上の男を吊り上げ…
「痛てっ!!!」

炉の中へ突き落とす。どうやら炉は今は空のようで、頭を打つだけで済んだ様子。

「正面から行ったらわざわざ弾丸を食らうようなものねー…
 上に行きましょう」
あずさの提案で階段を登り二階へ。


「さあー、ここのクレーンでさくさくっと倒しちゃいましょうか♪」
「えい!」
戦えないところにいる敵はクレーンで片付けます。
妖魔型のモンスターはゴスッとクレーンで頭を強打。

「そーれ」
クレーンで掴んだまま、下ろすところもないのでそのままにしたり。

…けど後の一人はクレーンが届きません。どうすれば…
「そこ、何をやってるー!」

カバレロ部下の女斧使いアクスボンバーがやってきました。
「ごめんなさいっ!」

モンスター能力エルフショット。エネルギー弾でアクスボンバーを攻撃…
「とりゃ!!」
続いて響が剣を見舞うとすぐにやられました。

戦闘後にピヨは響の様子を見て言います。
「ちょっと剣術は慣れていない感じ?」
「いや、戦うのもこれが初めてだったさ!」


下へ降りて、普通に敵と戦闘。
「やっちまえええ」
命を持った斧モンスター、マッドアクス。
これは機械の原理で動いているわけではないため、メカではなく…れっきとしたモンスター。

「私の出番ですねー」
あずさは手持ちのアグニSSPをマッドアクスに向かって一発。
弾き飛ばし床に倒します。
「切り返し!」
そこにピヨさんの攻撃が決まりKO。
マッドアクスは体の一部が砕けました。


「うっうー♪」
そこにやよいが。
モンスターは遥かな昔から、倒したモンスターを食べて成長してきました。
マッドアクスの欠片をバリボリと食べ吸収すると…

「はわ!?」
「変身したことなかったのかやよい…」

やよいの姿が変身!!
新たな能力を吸収、マッドアクスになりました。
「これで私も戦えます!」


こうして進んでいくとハンドガン、アグニCP1を発見。
あずさが装備すると…

「あら。こんなところに荷物が」
何かの入った重そうな箱が。リフトで持ち上げます。
「それじゃまた二階に行きましょうか」

そして…クレーンでその箱を持ち上げると…
「ぐげ!!」
箱を落下、今までクレーンの届かなかった敵を箱の下敷きにすることが出来ました。
これで残る敵は悪徳一人。


「ち、ちきしょーーーー!!こっからが本番だぞ!!」
そう言って悪徳が奥に逃げると代わりに出てきたのは…
「さぁーやっちまえヴァルカン・改!」
P765がボロで戦ったという、ヴァルカンの改良型でした。
「闘機場での借りは返させてもらうぜ!!」

そして後ろからぞろぞろとメカが現れます。
鋼の傭兵団。ナイトファルコン号の強化版のようです。それが3体。

戦いが幕を開けます。

730サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第三話 3/3:2009/10/28(水) 15:12:42 ID:51SXWvP20
「こんな時のためにこれを取っておいたさー!!」

開幕と同時に響は袋を投げます。
袋からバラバラとこぼれ落ちるは宝石のような大粒の結晶。

「精霊石ね!」
それらはヴァルカン改達に降り注ぐと同時に砕け…
青白い爆発を生じます。

精霊石は強い魔力を込められた石で、投げ込むと魔法エネルギーを発する…
つまり、魔法爆弾といったところです。

「ひるむな!」
鋼の傭兵団は素早い動きで体当たりを仕掛けます。
「ボディ破損!」
P765の硬いボディも巨体の突進には弾き飛ばされてしまいますが…
バズーカを発射。ヴァルカンも巻き添えに焼いてしまいます。
「あちい!!」

「キラメキラリ!」
そう言ってやよいが指にはめた指輪を掲げると…
きらりと白く指輪が輝き、指輪の宝石の内部に封じられた模様が浮かび上がりました。
それは鎧。見えない光の鎧が、やよい達を囲いはじめました。
そして続けて残る二人の攻撃。
「集中連射ですよー」
あずさは手持ちのアグニCP1で射撃。
「なぎ払い!」
ピヨさんは走り寄り横に払う剣撃。

「…な、こいつら!!」
気がつくと3体の鋼の傭兵は全員倒されていました。


「まとめて蜂の巣にしてやるぜ!!」
ヴァルカン改は名前の通りのバルカンを左腕から乱射。
「く!!」
「はわっ!」
この攻撃は痛い…ですが。
「一気にけしかけますよ!」

誰一人倒れることなく、一斉攻撃をヴァルカンに向かって仕掛けます。
「切り返し!」
響の二連続斬り。
「発射!」
P765のペンドラゴン。それでも倒れません。

その時でした。
残りの3人のメンバーの息がぴったりと合いました。
「逆風の」
「太陽」
「アクス!」

最初にピヨさんが高速で一陣の風となりヴァルカンへと走り…
進行方向と反対の、前から後ろへと剣を引き、激しい気流の流れにより破壊力を増した一撃を繰り出します。
達人レベルの剣使いが繰り出す技、『逆風の太刀』。

続いてあずさが精神を統一させ、手を空にかざします。
するとヴァルカンの頭上に強烈な光線が集中、ヴァルカンを焼きます。
あずさはそう、術士でした。用いるのは攻撃と回復両方を兼ねる『陽術』の基本術『太陽光線』。

それと同じく、斧の姿になったやよいがヴァルカンに向かい二度斬撃を繰り出します。
マッドアクスになって手に入れた技、『ダブルアクス』。

その3つが繋げて繰り出され、ヴァルカンに攻撃の隙を与えず、
重ねることにより個別に出すより更に破壊力は上乗せされる。


狙って行うことも難しいとされる、戦いの中での高等戦術『連携』でした。

「や、やられたぁぁぁぁ」
三流悪役らしい台詞を吐き…ヴァルカンのボディは大破。
コアからP765がなにやら新たな力を手に入れるその後ろで…
「……あ、あああ…」
腰を抜かした悪徳の姿がありました。

「…あ、あたしが悪かった!指輪でも何でももらっていってくれええええ!!」
「悪徳さんってお優しいのねー♪
 ついでにそうね…リージョンシップの値段も引き下げてもらえないかしらー」

「わ、解った!!100クレジット!100クレジットで船を出しま」


その瞬間、あずさが手元の銃で悪徳の足元に一斉射撃。
「ひいいいい!!」
相手全体の動きを止める『地上掃射』でした。
ピヨが剣を抜きます。
「ちょっと0の数が多い気がしますよ」

「…わ、解った…10クレジット…何なら今回だけならただでいい!
 これだから女は怖いんだああああああ!!」



「よかったわね、やよいちゃん♪」
「あずささん、皆さん、ありがとうございますー!」
こうしてやよいは第二の指輪、『商人の指輪』を手に入れたのでした。

731サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四話 1/3:2009/10/29(木) 21:56:02 ID:Nf3jxo260
「それじゃ次のリージョンへ向かいましょうか」
「はーい!」
悪徳の支配する田舎のリージョン、スクラップから情報を求めて次なる地へ。


「あずささん。次はどこへ向かうんですか?」
「ああ。ピヨさん…あなた達には目的がおありなんでしょう?」

「けれど…放っておいてもいられないし、情報が要るのは私たちも同じですから」
「…そう?それならもう少しお願いしましょうか」


シップ発着場へと向かう道の途中。
「あずささん!ところで次はどこへ行くんですか?」
未知の土地にわくわくするやよいが尋ねると…

「そうねぇ…情報が世界で一番集まるところよ」
それを聞いたピヨさんが割り込みます。
「あれ?あずささん。指輪って所謂魔法アイテムですよね?
 それなら『マジックキングダム』へ向かうものとばかり…」

先天的に『魔術』と呼ばれる特殊な術の資質を持ち、術訓練のための学院があり
優秀な術士を輩出する、ヒューマンの術士ばかりが住むとされる魔法の王国。
最も古い指輪の伝説を持つリージョンと呼ばれています。

「あそこにはもう行ったのよ…けどあそこにはあまり情報が見つからなかったのよね…
 挙句指輪伝説にあやかった安物なんか掴まされちゃって…キレイだからいいですけど♪」
「そうなんですか…えっと、そうなると『マンハッタン』?」

リージョン界の政治は3つの有力なリージョン、『マンハッタン』『タルタロス』『ニルヴァーナ』
で構成されており、その3つのリージョンには軍事施設や政的施設が立ち並ぶとされています。
「マンハッタンではお洒落なアクセサリーは買えても情報は集まらないわ…
 デートスポットにはもってこいなのですけど」

やよいはさっきからぽかーんと口を空けてばかり。
「…そうなると……情報が集まる場所っていうと…まさか、あそこですか?
 …あそこはちょっとやよいちゃんには見せない方が」
あずささんの服装をじろじろ見ながらピヨさんは不安げに。

「あのー…あずささん、そろそろ教えてくれても…」
シップ発着場へ到着。
「ここよ」
あずささんはリージョンシップに書かれた、シップの行き先兼所属リージョンを指します。


「きゅ……九龍」
照れ照れしながら恐る恐る読むやよいのその姿に思わず悶えるピヨさん。

「アハハハハ!違うよ、これはクーロン、って読むんだよ嬢ちゃん」
シップ発着場の、きっぷのいいお姉さんはやよいに読み方を教えます。
そしてあずささんが説明。
「マンハッタンが世界の頂点なら、クーロンはそうね…世界の中心、っていったところかしら」

「ごちゃごちゃした世界にはごちゃごちゃした中心地がある、ってわけさ」
「どんなところなんですか?」


「んー……やよいちゃん、マーグメルはどんな場所だったかしら?」

「マーグメルは…はいっ!みんな元気に、日向ぼっこしたりみんなとお話しながら
 仲良く楽しく暮らしてまーす!!
 …あ、ちょっと食べ物とかには困っちゃいますけど…」

…やよいのような者が生まれるわけです。
淀んだこの世界の救いというべき聖地のようにあずささんには思えました。

「……じゃあ、その反対かしら」

732サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四話 2/3:2009/10/29(木) 21:56:44 ID:Nf3jxo260
「ええ!?みんな元気がないんですかぁ?
 …あっ、もしかして凄く土地が元気なんですか?」

やよいの中で逆マーグメル、クーロン像が膨らみます。
皆がだらーんとしながらも、土地が凄くきれいな、変な場所。


リージョンシップに乗りながら。ピヨさんはあずささんに耳打ちで話をします。

「あずささん…いいんですか?本当にあんなトコにやよいちゃん連れて行って…」
「そうだぞー、よく知らないけど母ちゃんがクーロンは怖いところって言ってたぞ」

「恐喝に麻薬に売春に詐欺に殺人に強姦…朝の来ない、魔都じゃないですか…。
 先日だって京から運ばれた麻薬事件が起こって…」

「でも情報を手に入れるにはああいう場所じゃないといけないし…
 やよいちゃんがこれから色んな世界を渡り生きていくには社会勉強も必要よ?」
「でもだからって…」

「そーれーに。頼れる人がいれば、ああいう町も結構住みやすいものですよ♪
 私一人だと迷っちゃって迷っちゃって…」

「あー、やだやだ…いいですよねー恋人がいる人って」
「…まぁすでにこの世にはいないんですけどね」
「………す、すみません…」



そして、一行は夜の都クーロンへ到着。

「…わー………」
町を行き交う派手な人々に、その頭上を照らすネオンの輝き。
町はスクラップとは違うお洒落な音楽で賑わいます。

「あー着いちゃった…」
「とりあえずそこら辺で宿を確保しましょうか。私は情報を集めていますから」
「あれ?いいんですか…」

「ええ。ピヨさんとP765ちゃんはショッピングなんてどうです?
 装備もファッションも整うと思いますよ」
「……んー。そうしましょうか。いい剣も見つかりそうだし、私たちなら
 ガラの悪いのが来てもすぐに勝てるし」

階段を下りたところの一泊10クレジットの安宿にやよいと響を預け、
あずさはサングラスをかけ町を散策します。

「ここ…ね 端末、少しお借りしますよ」
お金を外の老人の掌に置き、部屋の中へ。
そこにはうじゃうじゃとした機械が沢山。その中心に一つのディスプレイ。

「んー…」
ネットに接続、情報を引き出す作業に移る。
「【ブラッククロス関連事件】バカラ駐車場での騒動に謎のヒーローアルカイザー現る
 【バイオ肉関連】生命科学研究所で人体実験疑惑、ナシーラ所長余裕の否定
 【技術ニュース】シュライク中島製作所・最新戦闘マシン『零式』開発難航
 【今日は何の日】未解決事件・シュライクの女子高生天海春香さん死亡事故から今日で10年
 【告知】シンロウ王宮仮面舞闘会 出場者募集
 【謎の部屋】美女ばかりが次々消えていく…一体何のために? ラムダ基地目撃証言
 【占い】ドゥヴァン占い各種取り揃え 植物占いはもう古い!今の人気一位は骨占い!?
 【オススメスポット】 店員も美人店長もイケメンのクーロンイタリアンレストラン『ラディ』
 …3つ目のニュースは一応P765ちゃんに知らせておくべきかしら」


「…指輪の方は…」

「【ブラッククロス関連事件?】リージョン強盗団首領黒井 撤退の末死亡
 【告知】ムスペルニブル・指輪の君主催スーパーHIGH&LOW出場者募集
 【ドキュメンタリー】どうしても生きたい 病魔と闘う少女 指輪の奇跡」

「ニュース欄だけでも結構集まるものね…って…え?」

733サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第四話 3/3:2009/10/29(木) 21:57:43 ID:Nf3jxo260
ニュースに目を疑ったあずさは信じられず、開いてみます。

「【ブラッククロス関連事件?】リージョン強盗団首領黒井 撤退の末死亡

 先日26日、豪華客船『キグナス』をジャックした、指輪がトレードマークの
 黒井率いるリージョンシップ強盗団が同客船勤務の啓介さん含む乗員乗客と
 駆けつけたIRPO隊員の功績により撃退され、シップで逃亡を図るも途中で爆発、乗員である強盗団全員が死亡した。

 尚このキグナス乗員の啓介さんやIRPO隊員からは真っ黒なシップが黒井の逃げるシップに砲撃、
 破壊したという目的談が寄せられている。しかし映像は残っておらず、キグナスのレーダーにも感知されないため証拠は不十分であるが
 都市伝説として囁かれている地下組織ブラッククロス所有戦闘艦『ブラックレイ』に特徴が一致していることから
 隊員はこれをブラッククロスの追跡の手がかりとしたいところではあるが…と言葉を濁している。」


…黒井はリージョン強盗団としては有名で、
不思議な力を持つ彼の指輪はあずさも注目していたのだ。
「…キグナス乗員の啓介君って確か真ちゃんの幼なじみよね…ちょっと聞いてみようかしら
 …いえ…けどどの道黒井はもう…」

…有力な指輪情報の一つが断たれてしまいました。
これにより、指輪が揃わないなんてことにでもなれば…。
落ち込みながらも、あずさは次なる情報を得るため一般のページを開きます。

「………シュライクの指輪伝説…刑期百万年の男…
 マンハッタンショッピングモール歴代3位の額の最高級指輪…
 ……あら?」

あずさの豊かな胸元が突然揺れる。着信のようです。
胸元から携帯電話を取り出し、ボタンを押して電話に出ると…

「あ、はい…ええ。…あら、どうもこちらこそ…ええ。…ええ。
 ほ、本当ですか!?…いえ、ありがとうございます!そうですか…
 はい、では明日そちらにお伺いいたしますので…はい、それでは。どうもありがとうございますー」





「やよいちゃん!」
「ううー…味噌汁のりたまごトーストサラダにオムレツミルク…」

寝ぼけているようです。あずさはやよいを揺さぶり、起こします。
「やーよーいーちゃん!」

「…はわっ…あ。あずささん…おはようございますー…」

「やよいちゃん!いいニュースよ!不思議な魔力を持った指輪を持ってた人と
 以前から交渉していたんだけど、譲ってくれるって電話が来たのよー♪」
「えええええ!本当ですかぁ!?」
「ええ♪ 結構高かったけど、これでまた一歩前進よ
 それじゃ、リージョンシップに乗りましょうか」
「はいっ!」
「ささ、皆さん朝ですよー暗いままですけど…」


「行き先はどこなんですか?」
「ここより煌びやかな場所…バカラよ」

乗り込むはリージョン界広しといえど珍しいタイプ、
『スクイード型』リージョンシップ。
「バニーガールが拝めますねぇ…♪」
「ピヨさんったら…」

次なる指輪を求めて向かいます。

734サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第五話 1/3:2009/10/29(木) 22:11:56 ID:Nf3jxo260
「あずささん、これから行くバカラって場所はどういう場所なんですか?」
「凄く賑やかな場所よ?あれほどの娯楽施設もないわ。何せリージョン全体がカジノですもの」


「…ごらくしせつ?かじの?」
「とにかく、遊ぶためのものがたーくさんある場所なの。
 おいしいものも沢山あるしね」
「わー、凄いです!いつかみんなを連れて行きたいなぁー…」

「…でもその分闇の側面っていうのも多いですよね……」
「…そうねぇ… …大体バカラまでの半分の道筋にはなったかしら。
 やよいちゃん、食べたいものとかは…」

その時でした。


「な、何!?」
リージョンシップに大きな揺れ。

「じょ、乗客の皆様!ただいま混沌の乱れの中を航行しております
 航行に問題はありませんが、安全のため席にお着きになりシートベルトの着用……を!!!」

また大きな揺れ。
「おいおい、本当に大丈夫なのか!?」
「落ちたりしないでしょうね…」
「うぇえええええええええええええん!!」
「大勝負の前から運に見放されてたまるかよ…」
「何だか揺れているだけじゃなく加速しているぞ!!」
「どこが安全なのよ!」

乗客は慌て出す。
一方…一行の中には覚悟を決めた者が一人。
「あなただけでも助かって欲しかったけれど…
 そんなこと無理なのかしらね、やよいちゃん………

 ………こうやってあの人も死んでいったのね…」


「真ちゃん…」

一方、ブリッジでは…
「むう……引き寄せられている………何だ、これは…」

「極端に強い重力を持つリージョンか…いや、そうとは思えない…
 ………………これは」



前方が揺らめき………巨大な物体が、現れる。
横幅だけでリージョンシップの50倍はあろうかという……巨大な…巨大な…

「生き物…だと」
「『タンザー』…!? まさか、そんな」
「まずい、飲まれるぞ!!」

スクイードシップ全体が……悲鳴の檻に変わった。

「……………う、うう…」

リージョンシップは何とか着陸に成功。
「小刻みに…上下してる?」
真っ先に気づいたのはピヨさんでした。
「何か変なにおいがします…」
続いてやよい。

「……シップを取り巻くこのリージョン全体に、異様な高温を感じます」
「…体温…鼓動…まさか」
「自分、父ちゃんから噂で聞いたことがある…生きたリージョン…
 混沌の中をさ迷う超巨大生物…」

「………『タンザー』!」

735サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第五話 2/3:2009/10/29(木) 22:13:56 ID:Nf3jxo260
ドクリ、ドクリと蠢くタンザーの中に彼らは降り立ちます。
「…………壁も、天井も、床も…みんな肉…いぬ美もびっくりのサイズだ…」
「食べたらおいしいでしょうか!?」
「タンザーの中でタンザーに変身されちゃ困っちゃうわー…」
「そしたらやよいちゃんの中に入っちゃおうかな♪」


などと言っていると…左の壁に開いた穴から声が。
「ヒヒヒヒヒヒ、久々のお客さんか」

現れたのはフードを被った男。
「よっと」
それに骸骨スパルトイ。

「オラオラ、荷物をそこに置けぇ!!」
いきなり乗客の足元めがけマシンガンを乱射。
「やめてください!!」
「うぉ!?」

やよいは突進。戦闘開始です。
「ダブルアクス!」
「ぐえ」
スパルトイを早々に撃退。
「もう、もっとタイミングを見計らわないと…」
そう言いつつ
「稲妻突き!」
剣を真っ直ぐに構えて突進。
「ぎぇえああああああああ!!」
フードの男…と思われた、実体無き敵『ゴースト』を彼方へ弾き飛ばしました。

「こ、こいつ…」
バラバラになったスパルトイは自らを組み直し、
ゴーストも体に穴を開けたまま瞬間移動で戻りますが…
「止したまえ」

渋い声が、ゴーストたちの出てきた穴から聞こえてきました。
「…ふん!」
飛び降りるとゴーストとスパルトイを一蹴。
「…あなたは」
あずさがその男を見て目を丸くしました。

「私の部下がすまなかったね 些か部下を自由にさせすぎたようだ…  非礼を詫びよう スクイード乗客諸君」
「あ、いえ…こちらこそちょっとやりすぎちゃったかなーって…」

「活きのいい者たちは私としては歓迎したい。  どうだね君。私の元へ来てみては…」
そう言った瞬間。
「やめろ!!」

ぐるぐると回転し奥の穴から何かが現れると…すたっと着地、立ち上がります。
「そいつはリージョン強盗団、指輪の黒井だ!信用しちゃダメだよ!」
黒いショートヘアから細いおさげの目立つ…道着を着た少年でした。

「強盗!?」
「あの黒井!?」
「死んだと思っていたら!」
「怖い男だ…」
「いい男だ…」

様々な反応が飛び交う中…
「指輪!?」
やよいは驚いて黒井の指を見…
「!」
黒井もまたやよいを見ました。

そして、更にあずさの表情が変化します。
「!!!」

黒井は奥歯を噛み締めながら現れた少年に言います。
「…真ちゃん、君か。君はいつも私の邪魔をする   …ああ、その通りだ。私は世間では色々悪行も働いてきた…
 だが、こんな場所だ。いがみ合っている暇などはないと思うのだがね   彼はどうしても私と対立したいらしい…残念だ」

「この男についていくもよし、私についていくもよし。それは君らの自由だ。アディオス!」
「ボクは男じゃないっ!!」
…どうやら女性だったようです。ともあれ、黒井は姿を消しました。

「…全く、黒井のヤツめ…あんなことを言って…!」
「あのー」

やよいが真に近づこうとしたその時です。
「真ちゃん!!」

後ろから怒号。…誰のものか?やよいには解りませんでした。
…彼女が声を荒げることなどなかったのですから。


…あずさでした。
「うわぁ!?あ…あず……あずささん!?」

736サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第五話 3/3:2009/10/29(木) 22:14:30 ID:Nf3jxo260
どうやら、あずさと真は知り合いだった模様です。
「ど、どうして…どうしてあなたがここに……」

汗をかき、思わず仰け反る真。
あずさはカンカンです。

「京に心術の修行に行くと行って出て行って、そのままシップは沈没!!
 あなたの死亡のニュースを私は色んな場所で何度も見ました!!
 新聞!テレビ!インターネット!携帯電話のニュース速報!
 何度も何度も見ても信じられなかった!でも信じるしかなかった!!」

リージョン強盗団頭領の黒井、あずさの恋人の真。
世間的には死亡とされていた二人は、こんな所で対立して生活していたのでした。


「…と思ったらこんな所で… 髪型まで変えちゃって!一体どれだけ私が心配したと…!」
「お、落ち着いてあずささん、それよりその、まずは一緒に乗ってきた乗客さん達を一緒に…」

「…!!」
「あ」

あずさはそのまま、奥へと泣きながら走り去っていってしまいました。
「……あずささんを泣かしましたねー!」
「え?いや、だから…」

やよいはあずさを追います。



「……あ、あずささん…?」
「…あ、やよいちゃん…? …ごめんなさいね、みっともない所見せてしまって。」

「あ…気にしないでくださいー。こんなことなんて滅多に無いと思いますし…
 それでそのー…」


「…そうね。ひとまず何にせよどこかへ行かないと。
 …あのおさげちゃんの所に行きましょう」

内心、先ほどのあずささんに恐れを抱きながら、
やよいは再びあずさと共に戻るのでした。
「…えっと、こっちだよ。モンスターもいるけど、気をつけて」

真の案内で入り組んだタンザー深部へと降りていくやよい達。
モンスターを倒し、やよいは能力を吸収、
あずさは銃の腕を磨き、響は剣術を学びながら。

「わぁー、どっくんどっくん動いてれぅー…」
「一戸建て1件分くらいは丸々入りそうな心臓ね…」
「タンザーには再生可能な心臓がいくつもあるんだ。だから丈夫なはずなんだけど、
 一つでも失われると大変なことになるらしいんだ」
タンザーの説明を受けながら、梯子を降り続けると…
「ついたよ」


タンザー内に2つある人々の集落。一つは黒井のものですが…
ここがもう一つ。真がリーダーを勤める集落です。


緑色の筋をそろりそろりと歩く女の子に質問されます。
「ねーねー!この太いの何だと思うー?」
「これ、タンザーの血管なんだぜ!」

「凄いなー、ビクビク行ってるぞ!」
同調する響はさておき、奥にある真の部屋へ。


「………というわけで、こうしてボクはここで皆の生活を守っているってわけ。
 …いい加減機嫌直してくれないかなーあずささん……」
「…ふーんだ」

「あの、真さん…それより、黒井って人の…」
その瞬間…あずさが我に返りました。
「! …そうだったわ、指輪。」
「指輪…?」


「…やよいちゃん、この男の人に見せてあげて、その指輪を」
「男の人!?」
「いいんですか?」
「…ええ。」

指にはめられた護りと商人二つの指輪を見せると…
「…うーん。なるほど…
 確かに、黒井がしていたものはこれと似ていると思う。」


「…どうする?黒井に交渉してみる?」
「はい。どうせなら!」
「黒井も死んだものと思って半ば諦めかけていたの。
 どうせなら指輪を貰っておきたいわー」
「…”も”?」
「………。」

「…あー、うん。ひとまずボクが案内するから。危なくなったら言ってよ?駆けつけるから。」

「いえー、大丈夫ですよ?ピヨさんもやよいちゃんもP765さんも響ちゃんもいるし、私も強くなったつもりだから」
微妙に険悪な空気漂う中、
やよい達は再びモンスターの行き交う中へ。

737サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第六話 1/3:2009/10/29(木) 22:59:54 ID:Nf3jxo260
「敵が少し強くなった気がしませんかー…」
あずさは戦いながら言う。
「…まー私が闘う分には問題ないんですが…一撃とは行かなくなっているようですね」
剣の達人、ピヨにはまだまだ手ごたえが足りない様子。



「こっちだよ」
弁のようなものをこじ開けて通ったり…
「これを通るんだ」
栄養分を取り込むものと思われる狭い穴にぐじゅりぐじゅりと吸い込まれ吐き出されしながら…


「あのロープの先に木の扉があるの解るかい、あれが黒井のアジトだ」

「随分高いところにあるなー。P765は大丈夫かー」
「問題ありません」



梯子を上り、ロープをよじ登って扉を叩いた先。

「おお、やっぱり来たね真ちゃん達」
そこには大勢の黒井の手下と…階段の上から見下ろす黒井の姿が。

「ボクは今日は用は無いんだ。単なる案内役さ
 …用があるのはこの子達だ。…指輪を彼女らに渡してはもらえないだろうか」


「ふふ、やっぱりか…」
口元を歪ませる黒井。

「実は…私も同じ用件でね」
やよいが黒井の指輪を見たとき、黒井もやよいを見ていた気がした。…それは、気のせいではありませんでした。
「そちらこそ持っているのだろう。私に譲るのだ、指輪を」
「何!?」

「…これには不思議な魔力が宿っているんだ。手放すわけにはいかないな
 …無理だというのなら、力づくでも…ということになる」
「…やってみるかい」
真は戦闘態勢に。一触即発の空気が流れます。


「…私もそれほどバカではない… 真ちゃん、君は強いからな
 だが…君のところにいる老人や子供達はどうだろうな」

「…まさか!!」
「ちょうど入れ違いか。私の部下と戦ったなら先ほどのような言葉は出なかったはずだからな
 そろそろそっちに着いている頃合い…さぁ、どうするかね」

「…くうう……」

真が拳を握り締めるしかなかった…その時です。

738サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第六話 2/3:2009/10/29(木) 23:00:33 ID:Nf3jxo260
「酷いですよ!?そんなことをするなんて!!」
やよいが黒井に頬を膨らませて抗議を始めました。

「そんなことをするなんて…おじさん、やっぱり悪い人なんですね」


「…お」
黒井の真っ黒な体でも解るほど、こめかみが震えだしました。
「お…おじさんだと!?」

「ムキーーーーーーー!やってしまえ!!」
足で激しく地面を踏み鳴らすと

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アジト中に張り上げられる部下達の気合。

周囲360度を囲まれての大戦闘の開始です。


「さぁー撃ちますよー」
あずさはアグニCP1を二丁構えて『全体射撃』。
くるくると回りながら、次々に敵に向かい弾丸を乱射していきます。

「『針』!」
近づいてきた敵には、戦闘形態になったやよいが現在の姿…サボテンのモンスター、
プリクタスの針を一斉に槍のように乱射して敵に突き刺していきます。

「『論理爆弾』発動」
P765は相手メカを破壊するプログラムを送信。

「角っ!」
敵の巨大甲虫アームウォーカーが突進してくるも……
「『ディフレクト』!」
響が剣で敵を弾き返し防御。

「おおー、やりますねぇ」
ピヨさんはこの、自身も重宝している基本ながら剣士には欠かせぬ動作『ディフレクト』を
戦闘初心者の響が習得したことを喜ばしく思い…

「それでは私も一つ…」
技を見せ付けるのだった。

「はぁぁぁぁぁ!!」
しゃがみこみ床に手を置くピヨさん。
「な、何だァ!?」
すると一陣の風が巻き起こり…
「はっ!」
飛びあがりました。
「『烈風剣』!」

剣の先から衝撃波を飛ばして敵一人一人に飛ばし切り刻み
剣撃の反動で更に空を飛び続ける空中剣技。
「すっげーなぁピヨ…」
「すぐに響ちゃんも出来るようになりますよ♪」

床にすたっと足をつき、剣を収めたときには、辺りには敵は一人もいなかったのでした。



「それではー、後は黒井さんを追い詰めるだけですね」
「アイツは何をしてくるかわからない…あずささん!…頑張って!」
手を貸す、と言いたいのが本音でも、今は言えないのでしょう。


部下達の部屋で手に入れたミサイルポッドをP765が装着。
最深部の黒井の部屋に行くと…


「むっ!もう来たというのか、頼りのない部下達だ…
 …まぁいい。相手をしてやりなさい、カモフックちゃん!」
「おやびん、任せるカモー!」


黒井が裏口から逃げると、のっそりのっそりと現れたのは可愛らしいモンスター。
「ソルジャービル…の巨大版!?」
「ごく稀に成長するとは言われているけど……」

体長2mほどの、巨大な直立したカモの頭に海賊帽と手には銃。
つぶらな瞳の…カモフックでした。

739サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第六話 3/3:2009/10/29(木) 23:01:10 ID:Nf3jxo260
「可愛いけど倒すしかないわ!行くわよやよいちゃん!」
「はい!」
遅れて猪モンスター・バーゲストも現れ、戦闘が始まります。


「ぶひいい!!」
バーゲストは一目散にやよいめがけて突進。
「あう!?」
やよいは弾き飛ばされてしまいます。

「『巻き打ち』!!」
響はカモフックに近づき、体を時計周りに回転させて一撃を繰り出します。


「目が回るカモー……」
よろけたカモフックは…


「当たれっ!!」
照準をきっちり合わせて射撃。
「う…!!」
撃った相手はあずさでした。…けれど、何故かそれほどは痛くない。銃弾も食い込みません。
…チャイナドレスは濡れてしまいましたが。
「…水!?」
「圧縮した水を撃ち出す水鉄砲ってわけね!」

続いてピヨの攻撃。
「天地二段!」

どうやらピヨさんの得意技のようです。
飛びあがり帽子に向かい一撃、着地して胴にまた一撃。
「ぶもおおおお!」

バーゲストは今度はピヨに向かって突進します…が。
「おっと…」
ピヨさんの体が触れた瞬間、くるくると回転…

「かすみ」
一発
「青眼!!」
二発。

「ぶひいいいい!」
達人級の剣士が用いる返し技、『かすみ青眼』によりバーゲストは返り討ちに。


「参ったカモ…でも負けられないカモ!!」
腕の銃から水撃を響めがけ発射。
「う!!」
その水圧に押され仰け反ってしまいます。
「はぁ…疲れたぁ」

その時でした。
「ミサイル」
「集中」
「針!!」


P765がミサイルを背中から発射。
やや縦長の弧を描きカモフックに命中。

そこにあずさが二丁のアグニCP1で『集中連射』。

最後にやよいが針を一斉に発射します。


「い、痛いカモーーーーーーーーー!!」
「あ、待ってくださーーーい!!」

逃げ出したカモフックに飛びかかるやよい。
「あう!!」

ガブリと一噛み。
しかしそのまま穴へ全力疾走。
「あ!!」
やよいはそのまま壁に激突。

…逃げられてしまいました。
でも一部噛むことには成功。モンスター能力を新たに入手しました。


「…だ、大丈夫?」
「は、はい!!」
あずさがやよいの頭を撫でていると…
「黒井を追うつもりかい」
真が現れました。恐らく、自分の集落へ向かった黒井の部下を全滅させたのでしょう。

「…はい!」
「それならボクも行こう。この先は多分タンザーの深部。…危険だからね」

740サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第七話 1/4:2009/10/30(金) 00:26:26 ID:x7rBSlnw0
一行は黒井の部屋の地下からタンザーの深部へ。
近づく、黒井との決戦。…と思われましたが。

「のわああああああああああああああ!!!」


いきなり黒井の叫び声。
「どうしたのかしら…」
「深部は危険…なのにそんな深部と黒井の部屋が繋がってる。どういうことだと思う」


そういえばそうです。
モンスターが密集しているなら、そんな場所に黒井がわざわざ部屋を作るわけはないのです。
…むしろ、モンスターは今までより数が少ない。
「まさか…!」


嫌な予感は的中しました。

「ぐきょ、ぐきょ、ぐきょ、ぐっきょ…」
「たーーーーすけてくれえええええええええええええ!!!」

そこにあったのは、先ほど見たより大きなタンザーの心臓。

「心臓に口が開いている…!?これって…」
「うん。タンザーの…体内の吸収器官…『本体』だ!!」



「た、頼む!! 助けてくれたら指輪でも何でもあげるから…お願いだ…!」

「……どの道そんな状態の人を放っておけはしませんよ
 指輪は頂きますからね…」
「行きますよー!!」


メンバーはP765を除いたやよい、あずさ、真、ピヨさん、響。
タンザー本体との戦闘がスタートします。


本体は巨大な心臓、その周りには謎の植物らしきものやモンスターらしきもの。

「周囲にあるウネウネしたものも当然タンザーの一部…
 吸収を助けたり、本体に手出しできないように活動するんだ!」


まず動いたのは早撃ちを手に入れたあずささん。
「『太陽光線』!!」
熱線でタンザーを焼きます。

「『払車剣』!」
続いてピヨさんが剣に力を溜めてタンザーに向かって下から上へ払い攻撃。
同時に剣から発した衝撃波がそれに沿って、歯車のようにガリガリとタンザーを削ります。

「『諸手突き』!」
「『ダブルアクス』!」

響とやよいの攻撃が続いた時でした。


「!! 危ない!」
「えっ!」

タンザー周囲の器官が触手を伸ばし、あずさの皮膚を刺しました。
「う!!」
「ぐきょ、ぐきょ、ぐきょ…」
『生気吸収』。体力を吸い取り自分のものとする技です。


「…何てヤツだ」

真が急遽、傷薬をあずさに使ったそのときでした。
「ヴェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


タンザーの器官が内部を震わせて奇怪な音をあげました。
「ぐああああ…!!」
「っきゃああ!!」
『振動波』はピヨさん、真の二者の体にダメージが伝わります。


「『精密射撃』!」
黒井に当たらぬよう、注意しながらタンザーの弱点めがけ二発の弾丸を撃ち込みます。

「『天地二段』!!」
ピヨさんはまたもタンザーの上と下の二箇所に斬撃を入れるこの技を。


「!! 今ならピヨに教えられた技が使える気がするぞ…『飛燕剣』!」
響が新たな技を習得。

剣を高速で二度振ることで斬撃を上から下から、弧を描くように飛ばす技。
「飲み込みがやっぱり早い… この分だといつかは…」

741サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第七話 2/4:2009/10/30(金) 00:28:27 ID:x7rBSlnw0
ピヨさんの期待をよそに…タンザーは次なる攻撃を。
「ビジュウウウウウウウウ!」
「わぁぁあああああ!!」

やよいの体から煙が。…タンザーが『強酸』を浴びせにかかったのです。

しかしやよいはひるむことなく技を。
「『ブーメランフック』!」
カモフックから得た技。切れ味の鋭いブーメランを投げつけて攻撃するものです。
「ブウェッ!!」

タンザーはその勢いからか、今度は『水撃』を発射。響を押し出し…

「うああああああ!!」
壁に叩きつけました。
「…う」

「「響ちゃん!」」
「響さん!!」
まず一人が戦闘不能に。しかし戦闘は続けなくてはなりません。
「『裏拳』!」
タンザーに捻りを入れた手の甲からの一撃。

…大分ダメージを与えたつもりでもまだ…まだタンザーは倒れません。
「ううー…強いですね、流石に…」
「確かにダメージは与えていると思うんだけど…」

「シュウウウ!」
今度は器官からの攻撃。やよいも使っていた、『針』を飛ばす攻撃です。
「きゃあああああああああああ!!!」

思わぬところでピヨさんにダメージ。
「ぴ、ピヨさーーーん!!」

そんなやよいの足元には何故か…蜘蛛の巣。
「あ…!!!」

身動きが取れない。そればかりではなく…突然蜘蛛の巣のようなものが異常に硬質化、細くなり…
「バシュウ!!」

やよいの体を包み込み…その体を切り刻みました。
「『ブレードネット』…!?」
ピヨは覚えがあります。妖魔も使うとされる戦術。

「ぽぽぽぽぽぽぽぽ」
続けて周囲の器官はふわふわしたものを発射。空から落下させます。

「強い毒性の……胞子!?」
バサバサと音を立てて全員を襲撃。

「…う…」
やよいが力尽きました。
「…これで後3人だけか…!!」
「手ごわいですよ…でももう少し!頑張って!!」
「いきますよっ!!」

「『集中連射』!」
再びあずさは銃をタンザーに乱射。

「『無拍子』!!」
達人クラスの技をまたも。バックステップを踏み距離をとったと思いきや一瞬の抜刀。

「ぎょおおおおお…!!!ぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
タンザーの心臓に一筋の線。

タンザーが…怒りに震えました。
「…ギョ、ギョギョゴゲエエエエエエエエエエエエエ!」
「!?」
タンザーの周囲に魔力の塊が浮き上がりました。
「…『術』…ですって!?」

モンスターは術を扱えません。しかし、モンスターのみがそれを扱えるとされる『邪術』がこの世にはあるといいます。

色は…黒。間違いありません。
タンザーが…まさかこんなものを習得しているとは。
「きゃあああああああああああああ…!!」
それ自体は大したダメージではありません。しかし。
「…何か、全身の感覚が研ぎ澄まされている気がする」
ある程度のダメージを受け、ピヨが目覚めようとしているのでしょうか。

「…今なら!!」
ピヨが精神を統一しはじめました。
「今なら、まだ成功したことのない『あの技』を成功させられるかもしれない
 …あずささん、真ちゃん…もう少し、待ってて!」
「わかった!『短勁』!!」

真はタンザーに力を込めた一撃をねじ込みます。
タンザーに伝わる衝撃は…内部に激しい衝撃を生みます。
「ぎょぎょごよぎょおぎょ」

…大分弱っている様子。
「…弾切れね」
あずさは銃をリロード。撃つのは後になりそうです。
「さぁ、その技をお願いしますね ピヨさん!!」

742サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第七話 3/4:2009/10/30(金) 00:29:17 ID:x7rBSlnw0
眼を閉じて精神を集中。
「はい! ワカツ流剣術奥義之参……!」
見開く。



「『三花
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「!!!」
「きゃあああああああああああああああああ!!!!!!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああ」


突如、タンザーが周囲に紫色の炎を噴出しました。
死の炎の嵐…上級妖魔が用いるそれは『イルストーム』


全員が倒れました。
「…あずさ…さん…!!!」
真はかろうじて起き上がろうとします。

「…わ、私も何とか」
あずさも立ち上がることに成功。しかし…銃が遠くに行ってしまい…術でしか攻撃が出来ません。

「アレをもう一度やられたらひとたまりもないよ…」
「あなたの力借りなくても大丈夫よ、その前にピヨさんが奥義をもう一度…」


「…もう一度……あれ?」


……ぐったりと倒れるピヨさんの姿がそこにはありました。
先ほどの攻撃で一番悲鳴をあげたのは…ほかならぬピヨさん。剣術の達人であろう彼女がどうして?


…答えは先ほどの邪術にありました。
「…思い出したぞ…あれは」

あれは『痛覚倍増』。それ自体にダメージは少なくとも
一度食らった場合、全身の痛覚が異常なまでに増し……
次に何か攻撃を食らったときには、激しいショックで倒れてしまうという呪いの術。
ピヨさんはイルストームで全身を二重に焼かれ、ショックで倒れてしまったのです。



「……ボクたちしかいないよ」
「………………そんな」

「あずささん。…お願いだ。力をあわせないと皆も黒井も…」
「…解りました」


決着のときは迫っています。
「次の一撃までに倒せなければボクらの負けだ。
 それには、多分ボクの攻撃やあずささんの攻撃だけじゃ勝てない」

「…重ねるのよね」
「流石あずささん。…うん。『連携』。 …できる?」
「…銃さえあればね…」

「…よし、それじゃボクが攻撃してる間にあずささんは走って銃を取って…
 ボクの攻撃に重ねるんだ!」
「……はい!」


「うあああああああああああああああ!!!」

地を蹴り、タンザーへ飛びかかる真。
振り下ろした拳には全身の力が込められています。

一方走り出したあずさは…ヘッドスライディングで銃を手に取り

「『爆砕』!!」
全身の力を込めた一撃、『爆砕鉄拳』のタイミングで

銃を向け…
「『射撃』!!」
発砲。


タンザーが悲鳴をあげるより早く…
拳が叩き込まれ凹んだその場所に弾丸が命中。



…静寂。
「…ダメだったか…!?」


いや。
数秒後に…辺りが激しく発光。
一発

二発
三発。

「ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

タンザーが………崩れました。

743サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第七話 4/4:2009/10/30(金) 00:42:01 ID:x7rBSlnw0
「…………まさか、君らに助けられるとは…」
悔しそうな表情で、タンザーから取り出された黒井は言います。


「全員やられるかと思いましたよ…全く。 …黒井さん、お願いしますね」
「くー…仕方あるまい。…大事に使うんだな」

確かに、その指輪はクーンの集めているものと同じ。
第三の指輪、『盗賊の指輪』を手に入れました。


「…さらばだ!!」
黒井は走り出しました。


「『スターライトヒール』!」
陽術の回復術。

暖かな光と共に大きな星が降り注ぎ、やよいの体にしみこみます。
「…あ」

みるみるうちに傷はふさがり、すぐにやよいは立ち上がりました。
「…あずささん!」

「黒井は助かったし指輪は手に入ったよ、やよい。大変だったねー…」
「真さんもありがとうございます!」


「…それで、大丈夫かしらー?あの人…」
「ああいうタイプは昔から図太いと決まってるんだよ。きっと大丈夫だって」
「ふふ…そうかもしれないですね♪」
「あはははは…」


「あ!!あずささん笑いました!」
「…あ。」

恥ずかしげにそっぽを向いてしまうあずさ。
ひとまず…これで一件落着です。ここから出られないこと以外は。


…そのときです。
「あおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!」

辺り全体が揺れだします。
「何だ…」
「まさか………」


「タンザーが暴れだしているんだ!!」
「だ、大丈夫でしょうか!?」

「…これはチャンスだよ!今のうちにスクイードに乗れば、帰れるかもしれない!
「皆は黒井の集落からスクイードに戻って!ボクはボクの集落のみんなを誘導する!」
「……解ったわ。気をつけてね、真ちゃん!!」


手を振り上げ答え、真は走り戻ってゆきました。
「私たちも急ぎましょう」
辺りが激しく揺れる中、皆を避難させます。
老若男女、モンスターにメカに妖魔。色んな人々をスクイードに乗せます。

「…………まだかしら」
後は恐らく自分達だけ。

「………真ちゃんを待ってあげてね、やよいちゃん」
時間は迫っています。これを逃したら次に口が開くのはいつのことか。

5分。
「……もう少し」
10分。
「………もう少し」

20分。
「……………もう …行きましょう」
あずさが、名残惜しくゆっくりとスクイードに歩き出したそのときです。

「ごめーーーーーーん!!遅くなった!!」
…真が、現れました。集落に最後に残った子供達を抱えて。
「!!」

「…本当にごめん」
真の胸を叩くあずさ。

「…本当よ、どれだけ待ったと思ってるんですか」
真はそっと…あずさを抱き寄せました。

「…じゃ、じゃあ行こうか」
「ええ」




「あのっ!あずささんと真さんに、子供達がでりかしーないなって言ってましたけどどういう意味ですか?」

744サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第八話 1/3:2009/10/30(金) 02:04:11 ID:x7rBSlnw0
「わー…ここがバカラですか?」
「ええ。賑やかでしょう?」
カジノのリージョン…もとい、リージョンがカジノになったバカラにたどり着きました。
スロットマシンにルーレット、ポーカーにバニーガール。
やよいには全く理解できませんが、何やら楽しそうなことは伝わってきます。


「…やっぱりニュースになってる…」
新聞のニュースの事故欄に、スクイード沈没犠牲者の名前が。やよい、響、あずさ、P765、小鳥と。

「ボクの時もこうだったんだろうなー…」
「明日になればニュースも変わるわよ …メディアには関わりたくないけれど」


ひとまず指輪を譲ってくれる男の部屋へ。
バカラはカジノでありバーでありホテル。

ホテルとしての最上階、カジノフロアから一つ下った一室で…彼と出会いました。
「う、うああああああ…!!」

ロープを天井につるし、輪を作って…台の上に乗っている男。

「…な、何をしているんですか!!」
「死なせてくれええええ」

あずさが止めようと近づいた…時でした。
「あ」
台を蹴飛ばしてしまい…
「う、うげええええええええ」

輪が男にかかってしまいました。
「は、ははは早く何とかしなきゃ!!」




ピヨにロープを切ってもらってひとまず自殺を止め、男の話を聞きます。

「実は、全財産を賭けてスロットをやっていたんですけど、さっき全部スッてしまって…」
「…それでお金がないから指輪を売る気になったんですね」
「はい…」


「…いーい、やよいちゃん。これがカジノの闇よ」
「?」
などと話していますが…
「あれ。そしたらどうして自殺なんか…」
「それが…」


指輪の保管してあった金庫を見ると…
「………あれ?」

空っぽ。
「えーーー、ウソー!?」
まるでどこかの世界の冒険者のようにピヨさんが驚愕します。

「…………ああ、ドコに行ってしまったんだ…指輪…」
男が絶望に暮れていた…その時でした。


「ちゅー…」
「あれ?」
ネズミの鳴き声。…金庫に目をやると…

「…あ!!!!」
きらりと光る指輪を首輪にした小さなネズミが。


ネズミが走り出しました。
「ま、待ってぇぇえええ」
「こら待てーーー!!」
「待ってくださーい!」
「わ、私の指輪ああああああ」



ネズミは階段を登っていきました。

745サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第八話 2/3:2009/10/30(金) 02:05:30 ID:x7rBSlnw0
「あ!!」
ネズミは何とバニーガールの女の子ガバッと空いた胸の谷間に入り込んでしまいました。
「ななななな何なの!?」
「ちゅ…ちゅう…う… ちゅ!!」

息苦しいそんな場所からはおさらばし、息をきらしてまた走り出すネズミ。
バニーガールさんも怒って追いかけはじめました。

「あれ、お客さんの持ち物なんです!一緒に追いかけてくださーーい!」
「え、そうなの…じゃなかった。そうなんですか!?私も追いかけます!」

階段を登って上へ。
「巨大スロットの中…!?」


巨大スロットにネズミが入り込むと…
リール回転!!

7…7…… 7!


おめでとうスリーセブン!
「きゃあああああああああああああああ!!!」
何とネズミフィーバー。

大量に湧き出すネズミの中…
「光った!!」
指輪を持ったネズミを発見。バニーさんと共に追います。

更に上。
ルーレットフロアでは…

「ちゅー…」
巨大ルーレットの上でひとやすみ。そのままころころと回り…
「ただいまの結果は00となりましたー」
「やったあああああああああああああ!」
お客さんに幸運を運びながら上のフロアへ。
「バーフロア…これ以上だったら私やお客さんでは無理だと思う…の」

ネズミは素早く、追いかけて追いかけて…とうとう天井、シャンデリアへ。
ここは200階以上あるカジノ全てを通す吹き抜け…この吹き抜けを中心に輪のようにカジノが出来ているのです。

「お客様ー、それは危険です!」
金髪のバニーガールがやよいを止めようとしますが…
「あ…はい。…え、あ、…うん。解ったの」
バニーガールは通信が入り、やよいをうっかり見落としてしまいます。

「いっきますよーーーーーーーー!」
シャンデリアにぴょんと飛び乗るやよい。
その瞬間…

シャンデリアが落下。
「あ!!」
200階もの落下の間、ネズミと格闘することになりました。
「何か大変なことになっちゃいましたぁ!」
果たしてやよいとネズミは無事降りられるのか!?


ネズミとやよいは…降りられませんでした。
ガシャリと大きな音を立て、1F駐車場に落下するシャンデリア。
「ちゅちゅー!!」
特にネズミもやよいもケガ一つしなかった模様。
ネズミは穴の中へ落ちていきました。


「この下ですね!」
「だ、大丈夫だったの?やよいちゃん…」
「無茶するなー…」
皆が心配してついてきてくれました。

皆が揃ったところでマンホールの下へ…と思ったそのときでした。
「待って欲しいの!」

金髪のバニーガールが、いつの間にやら着替えてやってきました。
「この先にはミキの探してる人がいるの。どうせなら仲間は多いほうがいいし、 一緒に戦って欲しいの」

ミキと自分を呼ぶバニーガールの言葉がよく解りません。
「あのね、ミキはバニーガールに扮して、ハニーを殺した相手を探してたの」
「ハニー…恋人さんですかぁ?」
「そうなの。アイアールピーオーっていうけーさつの仕事やってたんだけど、悪い人に殺されちゃったの…
 今は律子…さんって人にお世話になってるんだけど…ちょっと今回はお客さんにも協力して欲しいなって思って」

複雑な事情を持ちそうな女の子、美希が加わりました。
「美希さんってさ。もしかしてアイドルの美希!?」
「さん付けは堅いから美希でいいよ?」

「あらー、聞いたことがあるわ。先日確か…… 何だったかしら。」
「自分は聞いたことないさー」
「本当にアイドル志望なの響ちゃん…」

…有名人を使って潜入などやってよかったのだろうか。そんなことを思いつつ、マンホールに入ると……
「マンホールの中って凄く汚いと思うな…どうせならマスクとか欲しかったの」
「私たちはさっきまで凄く汚い場所にいましたから、平気かもしれませんねー…」

746サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第八話 3/3:2009/10/30(金) 02:07:45 ID:x7rBSlnw0
そこは下水道ではなく、洞窟でした。
「わ…!!凄くキレイ…」
「でもモンスターも棲んでるみたい。気をつけて」

「ぴーー、ぴーーー!!」
「ドラゴンパピー!」
世にも恐ろしいモンスター、ドラゴンの小型種。
「ヴヴヴヴヴーーーーーーン」
巨大な蜂、キラービーなど多くの敵がいましたが…

「『全体射撃』!」「『烈風剣』!」「『払車剣』!」
仲間達は数が増えても対応できるようになっており、
簡単に片付けることが出来ました。

「…それよりネズミはどこでしょうか…」
「足音は聞こえてる。奥に行けば多分…」

奥へ、また奥へ。モンスターを蹴散らしながら進むと…
「いた!!」

ネズミが盛り上がった土の上に。
「つーかまえた!!」
やよいが思い切りダイブを仕掛けたそのとき。
「がうーーーーー………」

「れぅ?」
足元から声がします。…よく見ると…地面がふさふさしています。いや…これは地面ではなく…
「やよいーーー!危ないの!!」
「巨獣よーーーーーー!!」

むくりと起き上がったのは、愛くるしい顔の巨大なモンスターでした。
「ちゅ、ちゅうううううううう!!」
ネズミは肩の上で、降りられなくどうしたらいいか戸惑っています。
「倒すのはかわいそうだ…と、とにかく鎮めないと!!」
戦闘を始めます。
「『ブレードネット』!」
タンザーが使ってきたものと同じ技をやよいも吸収していました。
巨獣の足元に巨大な糸を張り巡らし、それを硬質化させ…
「えい!!」
巨獣を包む。ぐさりぐさりと刺さる糸。
「ぎゃおおおおおおおおお!」

「『スープレックス』!!」
真は巨獣に駆け寄り…巨獣を持ち上げ飛びあがり、地面に叩きつけました。
「わぁ!!」
凄まじい力に驚いてばかりですが……巨獣が動き出しました。
「いきなり何するうううううううう!」
「喋れたんですか!?」

洞窟を削り、大きな岩として持ち上げ叩き落してきました。
「ぐああああああああああ!!!」
標的は真。ぺったんこになってしまいました。

「早く決着をつけなきゃまずいわね…」
「…あずさ、いい考えがあるの。ちょっと…」
「…………うん。それなら相手も比較的苦しまずに済むわ」


「起こさないでくれえええええ!!」
体長10mはあろうかという巨体からクローを繰り出そうと巨獣が美希に襲い掛かった…
その時。
「えい!!」
「!」

背後から巨獣にキック。
「ん!?」
振り返るとそこには誰もいない。
「『ハイド』」
「『曲射!!』」

あずさが洞窟の天井を撃ちぬくと…
「ん?」
天井が崩れ、岩が落下…巨獣の頭をゴツン。
「あ、…あああああ…」
そのまま気を失って眠ってしまいました。

「結構役に立つでしょ?ミキの『ハイドビハインド』」
「連携に組みやすいのねー…でももう少し使いやすい術も覚えてみたらどうかしら」

美希の得意とするのは、あずさと真逆の『陰術』
影や闇を自在に操る術で、『ハイドビハインド』は、自分の影を相手の背後に送り相手を背後から脅かす奇襲用の術でした。


「…あ…!!」
「どうしたんですか、あずささん」
ネズミから指輪を手に入れ、男にお金をあげようと戻っていた所であずさは声をあげました。
「美希ちゃん…あなた確か…… ディスペアに投獄されていたのよね」
「…ムカついちゃうよね。ハニーを殺したのがミキだって言うんだもん。」


どうやら彼女には更に色々あったようです。
「…どうやって出てきたの?『あの』『ディスペア』から…入ったが最後の、リージョン界一厳しい監獄と聞いたけど」
「前例はミキの前には一人しかいない、って言ってたかな」

「それじゃー、ディスペアの入り方と道順、教えてもらえないかしら…」
「ミキは道覚えてないの。多分…律子さんなら覚えてると思うな」

747サガフロンティア×アイマス 第九話 1/4:2009/10/30(金) 20:04:22 ID:x7rBSlnw0
クーロンイタリアンレストラン『ラディ』。
その店先に、美人の店員さんがいました。

眼鏡とおさげの似合う彼女に美希は声をかけます。
「律子、さーーん!」

「美希。おかえりなさい。そちらが協力してくれた方たちですね。
 ご協力感謝します。 …ちょっと我々のしてることは内緒にしといて欲しいんですけど、出来ます?」

「………あのー、ディスペアのことなんですが…」
「…悪い人を閉じ込めて反省させる場所なんですよね?何であずささんそんな所に行くんですかー?
 もしかして…巨獣さんを起こしちゃったことですか?」
「ああ、違うのよやよいちゃん。 …ディスペアには刑期100万年の男っていうのがいて…その男が指輪を持ってるらしいのよ」

話を進めるやよいとあずさ。
そこに律子が割って入ります。
「え、えーと……つまり、私にディスペアにもう一度行けと…そういうことですか」
「…ええ。…ディスペアに入ることになったのもそれなりの事情がおありなんですか?」

…仕方ないな、といった具合に律子はため息をつきます。
「…いきなりの前言撤回になっちゃいますけど。
 このお店『ラディ』は実は本当は…『グラディウス』の意味なんですよね」
「『グラディウス』って!!」
ピヨさんがいち早く反応します。

「ご存知ですよね…ええ、そうです。トリニティへの反政府組織『グラディウス』のアジト。
 私が店長兼リーダーの律子です。…政府と絡んでるらしいんですよね。美希の恋人を殺した犯人っていうのが」
「…」
ピヨは声を殺して聞いています。何かの恨みがあるのでしょうか。

「おっと。喋りすぎちゃったかな …ひとまず、あずささん、でしたっけ。それじゃ、準備をしてますね
 ウチの料理食べていきます?」

律子は店の奥に入っていきます。

「そうね、それならそれがいいんだけど…
 準備をしてくるって…!?まさか律子さんもディスペアに入るおつもりですか?」
「…ええ。そうですけど…」
「そんなこと出来ませんよ!見つかったら逆戻りですよ …脱獄犯なんでしょう」

あ。という顔をした後に律子は頭を掻きます。
「あー、言ってませんでしたっけ 私たちのは『釈放』なんですよ。ディスペアに取り決められた方法でのね
 だからあなた達と同じですよ、例え見つかっても」

「…見つかったら大変ですね…」
「所であずささん。これ、持っといてくださいね一応」

謎の石ころを4つ。
「………石?こんなものが何の役に立つんさ?」
響は疑問そうです。


「ルーンの石、かしら。あまり詳しくは知りませんけど」
「ご明察。もしかしてあずささん術士さんだったりします?
 私たちが釈放されたのは年1度開催の『開放の日』にディスペア最深部の『開放のルーン』に触れたから。
 ルーンがある以上はこのディスペアは印術を極めんとする者は絶対行かなくてはならない場所…
 その印術を極めるための修行に、ルーンに触れることでルーンに変わるこの小石は欠かせない。そうじゃないと資質が手に入りませんから。」

「だからもし私たちが見つかっても、そのときはルーン目当てです、って言えばそれで済むんですよ
 もう触れた私達の場合はそのガイド、ってことで。」

748サガフロンティア×アイマス 第九話 2/4:2009/10/30(金) 20:04:58 ID:x7rBSlnw0
「所で美希。ジョーカーのヤツには会えた?」
「ううん、いなかったの…でも巨獣さんの所からこれが見つかって…。
 …これ、ハニーのものなの。…ジョーカーが盗んでいったんだよ!」

美希は頬を膨らませて真剣に怒ります。
「………… そう」
律子の表情は…悲しそうでした。
「ジョーカーって服装以外にどんな特徴があったか、あんた覚えてる?」
「忘れもしないの!緑色の髪でツンツンしてて、背丈が大体ミキよりちょっと低いくらいかな。
 体は細身な感じ。」

…律子の表情が暗くなります。
「……美希、これから辛くなるわよ…やっていける?」
「辛くなるって…任務のこと? やっと手がかりを見つけたんだもん!何としてでも追い詰めるから問題ないの」
「………よし、解った。…地下で射撃訓練やってて頂戴
 …っと。お待ちどうさまー」

律子が料理を運んできました。
「…死んだ恋人、か」
「「え?」」
あずさと真は同時に反応します。
「え?」


「…印術ねー…今回を契機に私も集めてみようかしら」
印術はきれいな石を使った変わった術。あずさは暇つぶしにと律子から渡された印術入門書を見てうっとりとしています。

「難しいんじゃないですかねー…リージョン界にある4つのルーンの巨石全部に触れないとダメだし。
 成功させた人なんているんですかねー」
「ハハハ、流石にここ近年はいないと思うな だってその内の1つ、タンザーにあるんだから!」
食事が…止まりました。

「こんにちはー、清掃のものですが」

まずは潜入。皆で清掃員を装うことになりました。
「あ、はいご苦労さん。今日は美人が来たね」

「あらやだー、お世辞なんかおっしゃられても何も出ませんよ♪」
「いやいや、お世辞なんかじゃあ… !」

奥から男が歩いてきました。
「………私のいない間は頼むよ」

ポケットに手を入れた、サングラスにタバコの男。
「は、はい!お任せください所長!」

「…あれが、ディスペアの…」
かつんかつんと革靴を響かせながらあずさ達に近づいた所長は…
「…ふむ」


「その犬のようなガキは必要なのかね」
「うっうー…私犬じゃありませんー…」
「いえね、そのー、この子、結構鼻が利くんですよ。仕事には欠かせないものですから」


「…そうか。しっかり頼むぞ」
どうやらごまかせた様子。…彼は、歩いてゆきました。

そして潜入。

「よっし、何とかごまかせたみたいねー…
 それじゃ、私が道案内しますからしっかりついてきてくださいね」

服を着替えいざ行動開始。
「囚人達に見られたら即バレますんで、牢屋は避けて通りますよ」
まずは通路から通気ダクトの中へ。


「モンスターがしみ込んだり出たりしてるから気をつけてね」
「染み込むモンスターって…」
確かにうにょうにょとダクトの中を出現したり消えたりしている柔らかいモンスターが。

「…ウィップジェリー…クラゲなの。」
「食べたらおいしいんでしょうか?」
キラービーの姿になったやよいが走り出し…ランスで一突き、撃破。
触手を入手し…植物モンスター、トラップバインになり更に奥へ。



今度はエレベーターホール。
しかしここで…

「ちょっとあなた達、何をしているの!」
またも戦闘。
ショートのの髪に、細身の体に豊かな胸、肩にはふさふさの長い毛、
全体がピンク色の体毛、ガバッと胸元の空いた水着のようなものを着用した妖魔。
巨乳猫少女、『ピンクパンチ』です。

749サガフロンティア×アイマス 第九話 3/4:2009/10/30(金) 20:05:30 ID:x7rBSlnw0
「うわっ………」
ピヨさんは嬉しそうに鼻血を垂らしています。

「何かかわいいですよ!?」
「やよいちゃん、見た目で判断しちゃだめ。…こういうのに限って案外強いのよ」
「確か美希の同業者…3人組の一人。何でこんなところに…」


ピンクパンチは突然ピヨさんに猛アタック。
「……えへ♪」

熱っぽく見つめる『魅了凝視』。いくらスケベといえど剣豪にそんな技が効くはずが…

「あぅ…」
効いてしまいました。
ピヨさんはそれでよろよろとよろけてしまい、
「『天地二段』!!」
「いやっ、ああああああ!!」

事もあろうに、あずさに向かって十八番、天地二段を食らわせてしまいました。
「……ど、どうしましょう!?」
「ピヨさんがみんなを全滅させる前にピンクパンチを倒すしかない!」

思わぬところで、関節的とはいえ思わぬ相手との勝負になりました。
「ランス!」

やよいはピンクパンチの腹に向かい攻撃しますが…
「『ディフレクト』!!」

ピヨさんは剣できっちりとそれを防御、ピンクパンチを庇ってしまいました。
ディフレクトは仲間の身を護るためにも使えるのです。


「『空気投げ』!」
「うわ!?」

ピンクパンチは律子を軽々持ち上げ、地面に叩き落します。
これにより暫くは動けなくなってしまいます。

「『飛燕剣』!」
響はタンザー戦でも使ったこの技を使用。
ピヨさんにディフレクトされることなくピンクパンチにダメージを与えます。


「『烈風剣』!」

低くした体勢から飛びあがり、衝撃波を全員に降り注がせるこの技…
「うわああああああああああああ!!!」
「何するさあああああ!!」
「ちょっとピヨさあああん!!」
タンザーのイルストーム以上の破壊力で味方を殲滅してしまいました。


「…う」
律子は何とか立ち上がり……
「…どうすれば…!」
律子以外には最早敵として行動しているピヨのみ。

「伊達にIRPO一日所長を経験したわけじゃない!」
ピンクパンチが飛びかかり爪で攻撃。

「う…」
律子がピンチ。
そしてまたピヨが律子を攻撃しようとした…その時です。

750サガフロンティア×アイマス 第九話 4/4:2009/10/30(金) 20:06:13 ID:x7rBSlnw0
「『諸手突き』…」
珍しく技の名前を発動前に宣言。
…しかもそれは初級技。これなら…!


「はああああああああ!!」
突き攻撃を繰り出してきたピヨの剣を、二つの剣で挟みこみ…
「『十字留め』!」

防御。
「は!!」
そのまま、ピヨを剣で押し返しました。
「……ふふ、さっすがぁ…♪」
思うままに動かせず、よろよろとしながら親指を立てるピヨさん。
「…全くだらしないですね」

そしてピンクパンチに律子は最後の一撃を繰り出します。
「『二刀十字斬』!!」

律子の得意分野は二刀流攻撃。
「うっひゃあああああああ!!!」
服が派手に破れ、ピンクパンチは逃げてゆきました。


「…………ピヨさん、正座」
「いやー、けど律子さんのカッコよさがピンクパンチちゃんの魅了に勝ったからこうやって…」
「いいですから正座!」
「はいー…」


とか何とかしながら、進むとロッカーに。
「真ちゃん、見つかっちゃうわ!」
「うわ、あずささん狭っ…」
警備員をロッカーの中に隠れてやり過ごしたり…


「ここはどこかしらー…」
「あずささん、敵もいないようだし一気に駆け抜けま」
「こらーーーー!!そこは強力な警備メカが来る赤外線センサー部屋!
 …って遅かった」
道を踏み外した挙句トラップにかかったりして

…現れたのは政府御用達の警備メカ、『アルバトロス』と戦ったりしながら…

「刑期100万年の男ならここですね。…準備はいいですか」
とうとうたどり着いたのでした。

扉を潜った部屋の中にいたのは……



「来たか。ご苦労だったね、諸君。」
所長でした。

「……どうして…バレたんですか…」
全ては筒抜けだった。

…只者ならぬ世界一の監獄の主に、呆然としながらも聞くあずささん。
すると。


「いや何。…コレに似たものが彼女の指に見えたものでね」
その指には……指輪。


「…指輪!! …っていうことは!」
「所長さん、あなたが…刑期100万年の男」

「そうも呼ばれているようだな。
 理由を知りたいか? …だが今はそんなことを聞いている場合ではないのではないかね。
 …欲しいなら、くれてやろう」
刑務所の床をころころと転がる指輪。


「あ、ありがとうございます!所長さん!」


「…刑期100万年の男…か。一体、何をしたんでしょうねあの男」


全ては謎のまま。
ともあれ、律子はこれからも協力してくれるようで、指輪の5つ目も手に入ったのでした。

751サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十話 1/4:2009/10/31(土) 01:08:41 ID:C6UQhllI0
クーロンへ無事戻ってきたやよいは、ひとまず次の行き先をあずさから聞くことに。
「あずささんっ、次はどうするんですか?」
「そうねー……残る指輪の情報は4つ。
 早急に行かなくちゃならないものから優先して行きたいと思うの。」
「うんうん。」
「それで、次に向かうリージョンっていうのは…」




「わー、のどかな田園地域ですね」
「ええ。ここ『ヨークランド』は危険の少ない、いいリージョンなのよ
 天使の伝説とかもある、ロマンチックな場所だったりもするのよね」

田舎町『ヨークランド』
森に、沼に、湖に、山。
鬱蒼とした大ジャングル『シンロウ』とは別の意味で自然には事欠かない場所です。
「まぁロマンチックといえば『ルミナス』もなかなかですけど…って響ちゃん、どうしたの?」

来るなり、響が何やらそわそわしています。


「な、なーあずさ。自分、帰っていいか…?」
「おうちに?ええ。いいんじゃないかしら…」

「解っててここに自分連れてきたのか!?  …まだ自分何もしてないし
 クーロンみたいな場所と違ってここは知り合いばっかしだからすぐ見つかるさ…
 母ちゃんに怒鳴られちゃうさ…」

そう。ここヨークランドは響の故郷。


「……それでも、挨拶くらいはしといた方がいいと思うわ
 これからの戦い、結構厳しくなるし…。
 …勿論、旅をやめるならそれでもいいし」

…響は沈黙の後…決めました。
「いや、半端で終わるなんて出来ない。
 今回は挨拶止まりにして、これからも一緒について行く!決めたからな!」

「…響さん、ごめんなさい…」
「謝る必要も何もないぞ?自分が行きたいから行くって言ってるだけさー」
「そうですかぁー…?」


そして、まだこの町に来た理由をあずさから聞いていませんでした。
「あのー、あずささん、ヨークランドの指輪っていうのは一体どういうものなんですか?」

「ヨークランドの富豪の家の娘さんが重い重い病気にかかっているんだけど…
 本来ならずっと前に死んでいる所なのだけど、生きているの。
 …それが…娘さんの持ってる指輪の力らしいのよね」



田舎町の、高く大きめの…きれいな建物に入ります。

「おお、あなた方は…」
「お電話を致しました、あずさと申します」

「うちの娘の病気を治してくださる方ですね…どうぞ。娘は二階で寝ております」
「……その前に、電話でお話しした前提条件のことですが」
「ええ、解っておりますとも… 病気が完治しましたら、指輪はあなた方にお譲り致します。…ささ、こちらへ」
外を見渡す大きな窓をバックに階段を登り、二階のドアを開けると…


そこには、ベッドの上で熊のぬいぐるみを抱いて眠る女の子。
「……ぐっすり寝てますね…」

「………異常な生命力を感知」
「この指輪の力か…これを持っていくことはボクたちには出来ないよ」


そのとき……女の子の部屋がどっと重くなりました。
「!!」
「強力な魔力を感じる……!」


「その娘の命は私のものだ……誰にも、邪魔は…させぬ」

752サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十話 2/4:2009/10/31(土) 01:10:07 ID:C6UQhllI0
現れたのは奇怪な姿をしたモンスター。いや…
「モンスター…じゃないわね …これは… 妖魔!」

上級妖魔は皆美形。となるとこれは下級妖魔なのでしょう。
しかし下級妖魔がこれほどまでの力を持つものなのか…

「我が名は、『モール』……」
そこに現れただけでその場の皆の心臓の鼓動が早まります。


「血をよこせ!!」
妖魔は高速で移動しあずさに向かいグサリと一撃。

「…う…」
「大丈夫ですか、あずささんっ!」
やよいは特殊能力マジカルヒールであずさを回復。

「でも大した威力じゃない…! ヨークランドで好き勝手はさせないさ!」
響はモールに一直線に向かいながら、その刃を進行方向と逆に走らせる『逆風の太刀』で一撃。
「ぬぐ…」

「私もやられてばかりではいられませんっ」
新たな術を唱えるあずさ。するとあずさの周りに光が集まり…
「『フラッシュファイア』!」
激しい光の波動がモールを焼きます。
「ぎああああああ…!!」

「『燕返し』!」
ピヨさんの抜刀術でモールを一閃。

「その子はあなたの好きにはさせませんよ!!」
律子の得意技、『二刀十字斬』が発動。縦へ横へと切り刻まれます。

「…う、う……このままで済むと思うな!!」
「あっ、にげました!」
モールは尻尾を巻いてそそくさと逃げ出してしまいました。

「…娘さんの表情はどう?」
律子は剣を仕舞い、やよいに言います。
「…苦しそうです。やっぱりモールって人がまだ取り付いているみたいです…」
「………どうすればいいのかしらね」
律子が呟いたとき…
「律子さん。」

声をかけたのはピヨでした。
「凄腕の医者に心当たりがあるんだけど…行ってみません?」
続いてあずさも。
「…私もクーロンに腕のいい医者がいるって聞いたことがありますー…」
「あら。あずささんもですか? …ちなみに、何ていうお医者さんで…」


所変わってクーロン。賑やかな町とは打って変わってここは特に深い、裏通り。
人気が少なく、暴力の横行する…死の匂いのする町です。

「P765ちゃんがちょっと交渉したい相手がいるそうなので、行って来ていいですかね?」
「…いいですけど。…大丈夫ですか」
ピヨさん達が行った後、一行は病院の前に。
「………」
降りしきる雨とカラスの鳴き声の中、看板のちかちかとした病院の中へ…足を、踏み入れます。

「……」
「しずかな場所ですー」
かち、かち、かち、かち、かち…
時計の音だけがする、古ぼけた…真っ暗な病院。
「…………」
何も物を言わぬ男性一人だけが長椅子に座っています。
「…あのっ、診察待ちの方、ですか?」
その瞬間。


ゴトリ。
「!!!!!!」

患者の首が落ち、床にごろごろと転がり…
「ファファファファファファファファ…」

口を開けてカタカタ笑い……すーっと消えてゆきました。

ボーン…ボーン……
振り子時計が時刻を示し…
「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
悲鳴。

「…帰りましょうか」
1分足らずで流石のあずささんも精神の限界。最早表情すら動かず…帰ろうとしたその時。
「…次の方、どうぞ」

「………」
あずさと響は顔を見合わせます。…意を決するときが、来たようです

753サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十話 3/4:2009/10/31(土) 01:10:54 ID:C6UQhllI0
「あなた…暇だからってこんなところお客さんに見られたら…痛、きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「肝臓が悪いようだな…ほら、立って」
どうやら夫婦で足ツボマッサージの途中だったようです。

「ようこそ 私が当医院の院長 双海です」
「…妻です。…やっぱりこんなところ、立地条件としては悪いですよね…お客さんもあまり来ませんし…」
当然でしょう。ここに来るまでに死者も出かねないのですから。

現れたのは、長い黒髪を前に垂らした…眼鏡をかけた細身で長身の、20歳くらいの美形の男性。
看護士でもある奥さんはツインテールで、背中に翼の生えた20歳くらいの美人の女性。

「…あなたが患者さんですかね」
「あ、いえー…違うんですよ……(ヤブ医者かしら…)」

「では…キミかな」
「あ、わたしも違うんです!あの、見てもらいたい人はヨークランドにいて…」


「往診、ですか。私がいないと病院が成り立ちませんしね…しないことにしているんですよ。
 …例外は、ありますが」
「…今すぐ、あなたの手でないと助けられない子なんです。…来てくれます」
律子は真剣そうでした。
女の子の症状を書き記したメモを渡すと…
「…そこまでおっしゃるなら。」
怪しい医者、双海はついて来てくれることになりました。



「あ。話はついたみたいですね」
「そちらこそ!」

病院から出ると、戻ってきていました。
「ちゃんとP765ちゃんのバージョンアップ終わりましたよー
 …あ。お久しぶりですー、双海さん」
「おお、あなたは確か…ピヨさん。クーロンに来られていたのですか。
 …亜美と真美は、元気にしておりますかね」

「…ええ、元気すぎて困っちゃうくらいです♪」
「亜美隊長と真美様をご存知なのですか」
どうやらピヨさんとP765は双海の娘と知り合いのようです。


「亜美ちゃんと真美ちゃんっていう子、どれくらいの歳なんですか?」
「やよいちゃんの見た目より下かなー。12歳なの」

「え!?ピヨさん…双海さんて12歳の娘さんを持っててあんなにお若いの!?」
あずささんは驚愕しますが…
「いやですねえ。妖魔ですよ。20歳以降は数十年数百年、数千年生きようと歳を取らない種族ですから…」

「あの、所で入り口の骸骨ギミックは一体何のために置かれて…どうやって消えるんですかアレ」
律子は双海に聞きます。
「? …入り口にはそういったものは何もありませんが…」




そして富豪の家の、女の子の元へと戻ります。
双海からの『手術』の説明が行われます。

「…いいですね モールに不信感を与えないように戦闘は行いますが、決して過度のダメージは与えぬよう。
 モールを女の子に取り付かせるのです。
 …取り付けばもう逃げられません。後はモールを皆で倒すのみです」


「…しかしご注意を 取り付いた後は女の子の命を吸い続けます …10分もすれば女の子は死んでしまうでしょう。
 それまでに何としても…モールを倒すのです」


「…何度来ようと無駄だ」
激しい重圧。…モールが、現れました。


「来ましたねー!!」


「『雑霊撃』!!」
己の精神を飛ばし相手を呪い殺す攻撃をモールは行ってきました。
「効かぬよ」
双海にそれは大して効いていない模様。

「『切り返し』!!」
響の初級技。

「『ハサミ』!」
サソリ型モンスター、デスポーカーになったやよいはモールを切れ味鋭い腕で挟み攻撃。

「はっ!!」
律子は二刀流の剣で一発。

「『太陽光線』!」
陽術の基本術であずさは攻撃。

「私の腕に収まるがいい」
双海は紫に輝くパンチを繰り出します。『妖魔の小手』と呼ばれる、妖魔独特の特殊装備である様子。

754サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十話 4/4:2009/10/31(土) 01:11:27 ID:C6UQhllI0
「……ふふ、お前はどうやら私がモンスターだと勘違いしているようだな…
 この姿でだ。これだから!!!」


「これだから!!これだから上級妖魔は嫌いなんだ!!」
醜い姿をしたモールは怒りのあまり、行動を早めたようです。


モールはベッドへと潜り…
「はあああああああああああああああああああああ!!!」


女の子の体に取り付き、パワーアップを計りました。
「さぁこれで私の力は先ほどまでの倍!!
 今の私に上級妖魔ごときが敵うと思うなああああ!
 『邪霊憑依』!『激痛』!!」

更に強力になった特殊攻撃。
「わぁぁあああ…!!」
精神への攻撃で…響はたちまち倒れてしまいます。

その時でした。


「響さあああああああああああああああああああああああん」
窓ガラスを割って巨大なモンスターが。


「がおおおおおおおおおおお!!」
突然響を奥へと避難させ、
モールに向かって怒りの鉄拳。『グランドヒット』でした。
「ぎあああああああああああああああああ!!!」


「い、いぬ美!どうしたさ!」
「あ、あの……この子、響さんの…ペットですかぁ…?」

突如乱入した響のペットが響に代わり登場。戦闘は激しさを増します。

「キラメキラリ!」
やよいが使ったのは黒井から貰った盗賊の指輪。

その不思議な力により…全員の姿が消えてしまいました。
「何…お、お前ら一体どこに…」


「『曲射』!」
あずさは銃をお手玉しての一発。


そして…
「『幻夢の』」
「『濁流剣』!!」
双海と律子の連携が炸裂。


双海が術を唱えると、床に魔法陣が現れ…そこからは巨大な鶏が姿を現し、モールめがけ目から光線を放ちます。
「うぎゃあああ!!」
それは『コカトリス』。モールの体はたちまち石になり…


その石になったモールの周りに律子が…
何と5人現れ、モールの周りを素早く回転し、取り囲んだではありませんか。
そして…一斉に交差し剣で両断。
石になったモールを粉々に粉砕してしまいました。


「……………その子は。」

律子は背を向けたまま。
「……!」


みるみるうちに…顔色がよくなってゆき…
「治りました!!」
「…そう」
ほっと一息つき…律子は何故か、窓へ。

「…え!?律子さん、あの、どうして…妙に必死だったみたいだし」
「……何でもない。…この子を見てると何だか知り合いを思い出すし…
 …それに何だか頭痛くなっちゃって。先に待ってますよー、ピヨさん」

そのまま、窓から飛び降りていきました。


「……! …あなた達が私を助けてくれたんですか?」
女の子は目を覚ましました。
「おお、おお…!ありがとう、ありがとう…ありがとう!!」



そういえば、律子には養子に行った家族が2人いると話していましたが…
「指輪ですね、ありがとうございます!」
「いえいえー! …ところであの、何ていうお名前なんですか?」
やよいは覚えておくことにしました。その女の子の名を。




「涼!」

755サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十一話 1/4:2009/10/31(土) 03:29:08 ID:C6UQhllI0
広い、広い部屋に跪き声を響かせる二人の男。


「へい!犬みたいな耳をした娘を中心に
 チャイナドレスのボインのいい女に、黒髪のポニーテールの娘に
 ポンコツみたいなデザインのメカに、スタイルのいい酔っ払いの姉ちゃんでさぁ」
「チャイナドレスの女はどうやら、私と張り合っていた真の女だったようです
 それ以降の足取りは掴めませんが、どうやら指輪を集めている最中のようですよ」


「…成る程 悪徳殿、黒井殿…ご足労感謝いたします。
 爺や、シップの手配とお礼の品を彼らに。」
「はっ」
燃え盛る炎を背に…モンスターの剥製で作られた椅子に座る一人の女性。
整った、美しい顔に長身の体の…その風貌は、気品と、威圧感を備えています。

「高槻やよい、ですか……。
 指輪の6つが集まったとなれば…もうじきここへ来ることになるのでしょうね
 お会いする日が楽しみになってきましたよ…高槻やよい。
 ……それにしても…面妖な一団ですね」

「指輪の数は全部で8…私のを含めれば…9つ、ということになりますか。
 お待ちしておりますよ…小さな、挑戦者殿」




「うがー…仲間が多くてよかったですよ響さーん」
いぬ美は結局ついてきてしまいました。
どう見ても、3m超の獣人…オーガと呼ばれるモンスターなのですが。
変身を繰り返したのでしょう。

「次の目的地ってどこなんですか?」
やよいはまたあずさに聞きます。

「次はそうねー…真ちゃんと私を二人っきりにさせてくれると嬉しいかしら♪」
どうやらデートスポットのようです。

「あ!マンハッタンですか?」
真はぽんと手を叩きながら。
「マンハッタンはミキもハニーとよく行ったの!」

「そう、マンハッタン。お金もすごーくたまったし、そろそろ売りに出されている指輪を買ってみようと思うのよね」
リージョン界のトップ、トリニティの長。
大富豪から貧乏学生まで皆が愛する都会の町…マンハッタンです。



「早いなー、もう着いたのか」
「は、速かったですね…!」
マンハッタン行きのリージョンシップは最先端技術の結晶。
超高速航行ですぐにたどり着いてしまいました。


「…わぁー………」
海の中に無数の柱。高い高い…とても高い場所にあるのがマンハッタン。
パステルカラーのショッピングモールに行くとそこにはナンパする相手を探している男性?や
アクセサリーで着飾った女の子、流行のカラーを輝かせるメカに…
ファストフード店でハンバーガーをパクつくサラリーマンの姿などを見ることが出来ます。


「さて。それじゃ私たちは買い物してきますねー♪」
真の手を引っ張りショッピングモールに消えてゆくあずさ。

皆は二人のデートを待っていることにしました。
「…世の中色んなカップルがいるもんだなー見てらんないなー」
「私も妻とこういうところに来てみたいものだよ」
響はいぬ美の肩の上で愚痴をこぼし、双海はハンバーガーを食べています。



「やよいー」
「やよいちゃん!!」
真に手を引かれ、あずさが帰ってきました。
「…ど、どうしたんですか?」


「…売り切れてたんだ…あの指輪」
「……」

数秒間の硬直の後…
「えええええええええーーーーー!!」
やよいは頭を抱えました。

「……えっと、それでどうしましょう」
「誰が買ったか何とか聞くことが出来たのだけど… どうやらオウミの領主さんらしいのよ…」
「おや。デートが海水浴に変更ですね」


次の場所は『オウミ』。
漢字で書くと近江と呼ばれ、軍港『ネルソン』と唯一便が出ている場所です。

756サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十一話 2/4:2009/10/31(土) 03:29:44 ID:C6UQhllI0
「…今回は戦闘の危険はありませんよね、それじゃ私はお酒飲んできます♪」
ピヨさんが今度は単独行動。ネルソンに行ってしまいました。
「たららららー たらたーたーたったー たらーたった たーらら たーらら たららららー♪」


「今の何のメロディですか?」
「ネルソン艦隊のマーチよ ネルソンは確かリージョンを挙げてトリニティ政府に反旗を翻しててね
 私らなんかも武器をそろえたりするのよ。かの有名だった反トリニティ軍の我那覇大佐なんかも結構好きだったメロディと聞いてるかな
 って…やよいに言っても解らないか」
「呼んだかー?」
「アンタの苗字とは同じだけど関係ないって」
「うちの父ちゃんもよくあんなメロディ歌ってたけどなー」
「まっさかー」


「…軍にはカップルなんかいないだろうしねー…そういう雰囲気が好きでピヨさんは
 ネルソンに行ったんだと思うんだけど……… 止めておくべきだったかな」
「…?」
「ヒントはワカツ流。…これで解らないなら知らないでよし。…さ、領主さんとこ行きましょ」

水着に着替えてはしゃぐあずさと真、昼間からレストランの外でスパゲティの食べさせあいをしているカップルをよそに、

「……」
やよいがふと立ち止まります。
「? やよいー。行くわよ」

「…今、女性の声が聞こえませんでしたか?」
石橋の上で、水面に浮かぶ花びらを見ながら。

「…………確かに私も聞こえるわね …水妖かな」
「水妖?」
「水の中に住む妖魔のこと。人間に近い、一般的な妖魔の上半身に、魚みたいな下半身を持っている。
 結構皆スタイルいいって聞いてるわよ」


「お前の歌声はリージョン界に響き渡るべきだと思ったのに……」
ぽつりと橋に佇む男を横目に、今度こそ領主の館へ。


「ひ、広いです……」
広く、手入れの行き届いた広大な庭。その中の一本道を通り抜けると……
館の入り口。潜ると…

「…おやーおやー…何の御用ですかなぁ?」
きれいなエントランス。階段の上から赤いヒゲの男性が現れます。


「マンハッタンで、指輪を購入なされたそうですね。」
律子はその男性…領主に問いかけます。

「ええ、それが何か…あ、どうぞそちらへ」
羅針盤を模した模様の床へと。

「実は、この子が指輪を集めておりまして。
 指輪を譲って頂けないかとお伺いいたしました」
「お願いします!」


そう言うと…男がにやつきました。
「指輪を差し出すのはそちらですよ」
「!?」


「こうやって指輪を買ったことをショッピングモールに行っておけば
 ほらこうして、指輪を集めるバカどもがこうやってそちらからやって来てくれる」
「…何、ですってぇ」

クククと腹に手を当て笑った領主は一言。
「ええ。 そうです これは、罠  …おーい」
パチンと指を鳴らし、奥へ声をかけます。
…戦闘体勢に律子とやよいが入ったそのとき。

「そしてこれは、落とし穴。」
満面の笑みを浮かべました。
カパッ… 足元の羅針盤模様が開き…2人はまっさかさまに落下していってしまいました。
「……さて。指輪は後で回収するとしようか」

757サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十一話 3/4:2009/10/31(土) 03:31:08 ID:C6UQhllI0
「…あれ?やよい!?やよいーーー!!」

たどり着いたのは、薄暗く、崩れた古い…屋敷の地下。
「ドキドキ、しちゃいましたぁ…」
上からぴょんと飛び降りてやよいが登場。

「地上に上がれる道を探しましょうか。あんの領主、絶対に痛い目見せてやるんだから!」
モンスターの群がる地下をゆきます。


モンスターは更に強力なものが揃っていました。

「流石に二人じゃキツいか…」
「そうですね…」

バンシー、リビングアーマー、トラップバインなどのモンスターを撃破しながら進んでいくと…


「結構宝も見つかるものねー」
「装備も整いそうですか?」
「ええ。ここによほどの敵が居ない限りは多分行けるでしょ」

階段を登り…大分上まで来たかと思われた時。

「な、何アレ」
「…でっかいですー…」
巨大なイカが階段を塞いでいました。

「『デビルテンタクラー』…水棲系モンスターの最強種・クラーケンの更に上位種ね…
 …あっちの部屋には水しかないし…ここを通るしかなさそうね」


「何だ?俺様とやろうってのか!」
デビルテンタクラーは突然津波を発生させ…
「わあああああああ!?」

激しい水流の渦は二人を飲み込んでしまいました。

「わあああああああああああああ!!!」
激しく壁に叩きつけられるやよいと律子。


デビルテンタクラーの得意技、『メイルシュトローム』
一瞬にして…二人は瀕死の重傷を負ってしまいました。


「う……う…」
「さて、ここからどう来る…」
デビルテンタクラーは足を槍のように尖らせ律子を攻撃しようとしてきました。
「十字留め!!」

何とか縦横に剣を交差させて防ぎますが…防御は出来ても攻撃が出来ない。これでは…勝てない。
…逃げるしかないか。そう思われた時でした。


「はぁぁああああああ!!!」
突然、リボンをつけた女の子がデビルテンタクラーの背後から斬りかかりました。
「春香様!!私も続きますぅ!」
もう一人女の子がやってきて紫に光るキックを一撃。


「復活してまた悪さしているんだねこのイカのモンスター…」
「一度倒した私たちなら大丈夫ですよ 倒してしまいましょう!」

「貴様ら!挟み撃ちとは卑怯だぞ!!」
「挟み撃ち…? あ。本当だ 雪歩、よく見るとあっちにも人がいる!」
「本当ですね… 大丈夫ですかぁー?」


春香と雪歩と名乗った二人組の女の子は… レストランでいちゃついていたカップルでした。
律子は二人を分析します。
「あの色白さ…紫の装備…あの子、妖魔ね
 もう一人の春香って子は… 人間、かな」


ひとまずデビルテンタクラーとの戦闘を再開。
「春香様!これを!『勝利のルーン』!」
「ありがと、雪歩!『ベアクラッシュ』!!」
雪歩という女の子はルーンの力で春香と呼ばれた女の子のパワーを強化し…
春香という女の子は、その力を乗せて手に持った真紅の剣を、轟音を響かせて振るいます。


「おあああああ…!ぐぬぬ、前より強くなってるじゃないかこの小娘…!
 だがヤツがいない限りはこの技を防げはしない…メイルシュトローム!」


もう一度津波攻撃。
「春香様…大丈夫ですか!?」
「雪歩は大丈夫? …ならよかった…」
「よくないですよ…!」

「よく解らないけどこっちも行くわよ! 『稲妻突き』!」
「はい!『シルフィード』!」

氷のブレスに、稲妻突き…大分デビルテンタクラーの体力を削ったようですが…
まだ決め手には欠ける。

そんなとき。

758サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十一話 4/4:2009/10/31(土) 03:32:10 ID:C6UQhllI0
「何やらかわいらしい雰囲気に誘われて出てきました。」
 …って春香様…!?」
更に、横の通路から女の子が現れました。
下半身は人魚…その声。…歌っていた、水妖と思われます。

「千早ちゃんか… 生命の雨、お願いできる?」
「はい!!」

「降り注げ、『生命の雨』!」
ついていけなくなりつつも、何やら助けてくれた様子。二人は一命を取り留めます。

「一気に決めるよ、雪歩」
「はい!」

そして…
「『デッド』」
「『ランページ』!」

激しく切り刻み、剣の摩擦熱で焼き殺す剣技と…
妖魔がモンスターの力を得て使う特殊体術。


二つが合わさり…デビルテンタクラーは倒れました。
「ふう…」
よろよろとよろけたデビルテンタクラーは…

「今度こそこれで終了だね」
春香の紫色に輝くパンチにより、春香の腕の中に吸い込まれ、
デビルテンタクラーは最期を迎えました。





「春香様。わざわざ私にお会いに?」
千早と名乗る、水妖にしては珍しい胸の平らな妖魔は言います。
「ついでに人助けもしちゃったけど。 …どうかな、私と一緒に来るのは……
 …正直、こんな戦いに巻き込みたくは無いんだけど」


何やら偉いらしい春香は、千早と呼ばれた水妖にそういいますが…
当の千早はというと…


「………」
生命の雨を受け、命に別状はなくともぐったりと倒れているやよいに興味深々でした。
「千早ちゃん?」
「あ。いや…モンスターというのも可愛らしいものだなと思って…」

その言葉を聞いて、春香と雪歩は顔を見合わせ…
「やっぱりそっとしておこうか」

「…そうですね。 千早ちゃん、その人たちについていくのもいいかもしれないよ?
 私たちの旅じゃちょっとキツすぎると思うし…」
「えっ …いや、別にそんなわけでは」

回復した律子が話に入ります。

「この子なら仲間が増えるのはありがたいと思うだろうけど…?
 あなたの歌が気に入ってたみたいだしね」

「…ここにいるのが暇なら、来る?」
「………そうね。外界を知ってみたいというのもありますし
 私は千早。あなたは…?」



水妖、千早が仲間になりました。

…千早の言葉によると、彼女は領主により捕らえられていた所を
あの二人の少女に助けられ、海に帰してもらったのだとか。

しかし、帰るところも最早なく… 領主の館の近辺で歌っていたところを、
やよいに惹かれて出てきたら先ほどの光景があったというのです。



「さて。領主さーーーん…!?」
「! 違うわ この人……領主じゃない!」

「くっそーーーー…あのイカをぶっ倒すとは!!」
領主が正体を現しました。 …何てことはない、ふとっちょの下級妖魔だったのです。


「全く、指輪を狙ってる奴らは怖いヤツばっかだぜ!あばよ!!」
「あなたの方がよほど怖いと思いますけどね」


あの妖魔とヒューマンと思しき二人組は一体何者なのか。
…彼女達との再会は意外に早くに訪れることとなります。

759乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/31(土) 22:08:33 ID:ut.0tTBg0
自分…女湯に堂々と入りたいから垢すり師になるんだ…!
エリ「阿呆か」
あかり「体ぐらい自分で洗えるわドアホ!」
ロジーナ「入ってきたら蜂の巣にしてあげるわ?」
シャーリィ「動機の時点でアウトだろ」
アルファ「同館と言わざるを得ません」
天城「無駄な抵抗はやめろ、青年」

760乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/31(土) 22:58:04 ID:ut.0tTBg0
さて、暇なので戦記ものの将軍たちの設定をば

ローデリヒ・ハイトマン空軍少将
55歳 男性 ウィルキア帝国軍
超兵器アルケオプテリクス機長

アルフォンス・バルツァー海軍大佐
51歳 男性 ウィルキア帝国軍
オセアニア東方面海軍副司令官

天城仁志海軍大佐
52歳 男性 日本軍
東日本方面海軍副司令官

アルフレート・ダンツィ陸軍大尉
31歳 男性 ウィルキア帝国軍
ウィルキア帝国陸軍選抜部隊隊長

761サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十二話 1/3:2009/10/31(土) 23:57:04 ID:C6UQhllI0
クーロンへ戻ったやよい達は、あずさに次なる目的地を聞きます。
「指輪の手がかりは後二つ。 次に向かうのはシュライク。
 決してヨークランドのような田舎ではないけどマンハッタンほどの都会じゃない…
 最先端技術が生まれる平凡な町よ」
「シュライクの指輪といえば…もしかして」


シュライクには有名な指輪の伝説があるのです。
シュライク王朝を最盛期に導いた一人の王の指輪。
「シュライク最強の王『済王』の玄室に今尚保管されているという、指輪を手に入れに行きましょう」

「済王の先王、『武王』の古墳は一般公開もされているくらいですが
 済王の古墳はその入口すら知られていませんし…どうなることやら」



リージョンシップでシュライクに到着すると…
「わー……平和そうな街ですー」
電車の通る音が出迎えてくれました。


青空の下、立ち並ぶ町並みは今までのどこよりも平和そのもの。
北に向かい住宅街が立ち並び、北東と北西にはそれぞれ二つの大きな丘が。

「あの丘が昔の王様のお墓っていうわけなの。」
「おっきいお墓なんですねー…」
「自分の権力を誇示したかったようね。
 でも済王は若くして病死したから彼に集った部下達が作ったんだったかしら。
 西が私もよくオフの日に修行に行く『武王』の古墳。
 東がこれから私達が向かう『済王』の古墳。」

「それじゃあ東の丘にしゅっぱつですね!」
やよいはわくわくを抑えられません…が。

「流石に何の準備もなしに入口も解らない古墳に行くのは危険だって思うな。」
美希が意外に冷静なツッコミを。

「…あ。それもそうですね…」
「図書館で調べてみましょうか。
 …まぁ最も、それくらいで入口が見つかるならとっくに見つかっていると思うけど」
今回の指輪捜索は困難を極めそうです。


「…待って下さい」
ピヨさんは真剣な口調で呼び止めます。

「どうしたんですか?」
「…この付近で戦闘が行われているようです。
 それも、かなり高レベルの。…気の高まりを感じて、さっきから全身が少しぴりぴりとするんです」
「達人ならではってヤツか…ピヨさんはやっぱり違う世界の人なんだなって思います」

「んー……避けた方がいいってことかしら」
「主に…あっちの方から」
街の方を指差します。

「…何があったのかしらー」
「一方が強くなった! ………あ。静まりましたね…行ってみましょうか」
達人でも危うきには特に近づかない気は無い模様です。

762サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十二話 2/3:2009/10/31(土) 23:57:37 ID:C6UQhllI0
…追っていくと、そこには桃色の屋根の家。
一見平和な普通の家でしたが…

庭には敗れた者のものでしょうか。剣が突き立てられていました。
「剣だけか…姿が無い…」
「恐らく相手は妖魔だったのでしょうな」
真と双海は言います。


そして、やよい、律子、千早は勿論気づきました。
「春香様に…白百合姫様?」
「オウミでお会いしました!」
戦いに勝った側と思しき二人の少女に。
…何故か抱き合っていました。

「…そんな…10年も………10年も経っていただなんて…
 私は、ただ…ただ!」
「…辛いですよね、苦しいですよね…… 解ります、春香様
 …私ももう帰る場所が無いから…」
赤い衣装に身を包んだリボンの少女は泣き…
悲しそうな表情で白い衣装の少女は抱きとめています。


「…白百合も?」
「ですから…雪歩とお呼び下さいませ……
 …音様の寵姫は妖魔でなかった者が多数…春香様のような場合は極めて稀…
 前例もありませんでしたが …けれど、私も元は人間ですから」

「…もう誰にも雪歩に触れさせはしない。
 どこにも行かないで雪歩。私のことを解ってくれるのは…」

春香は目を閉じました。
「…あなただけなんだから」
雪歩は…強く抱きしめるほかありませんでした。
「…………はい」



「みなぎってきたわ」
「はいはい、助太刀することもなかったようだし行きますよー」
「あー、ちょっと律子さーん…」

ひとまず、見ていられない状況になりそうなので
真はやよいの目を隠し、律子はピヨさんをずるずると引きずりながら…
街へ向かいます。


少しは事情を知る千早からの説明。
「私が聞いた話では、春香様は何でもあの『妖魔の君』の一人
 『歌田音』様の娘だとか」
「ようまのきみ?」
「ええ。妖魔の聖地、『ファシナトゥール』の『針の城』におわす
 全ての妖魔の頂点たるお方…」
「妖魔の王様ですか!」

「そういうことね…。その方の血を持つ春香様は
 『音様の寵姫』であり、『春香様の教育係』でもあられる
 『白百合姫』様…雪歩様と共に…駆け落ちをなされたという」

「…かけおち?」
「体術の技か何かかー?」
妖魔以外で妖魔界の事情を知る者は多くないため
双海を除き、単語を含め完全に納得できた者はいませんでしたが…

「あー、はいはい…そういう…」
「あらー…まぁ…そんな…」
「ああ。通りで……そーいう…」


真、あずさ、律子などは何となく理解し、微妙な表情を浮かべていました。
「あずささん、ティッシュお願いします ピヨさんが鼻血吹き出したんで」

763サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十二話 3/3:2009/10/31(土) 23:58:10 ID:C6UQhllI0
そんなこんなで街中へ。

十字路の角に面するは子供達の遊ぶ小さな公園、ホテル、喫茶店…
そして本屋。
「図書館らしきものは特に見当たらないし…ここで一応調べてみましょうか」


「あずささん、この人たちって暑いんですか?」
裸の女性の写真が掲載された本を発見。
「……ええ……そうなんじゃないかしら」
あずさはひとまず写真集からやよいを遠ざけました。



律子はシュライク史を書いた歴史書を購入、読んでみます。
「えっと。済王に関する記述だけを取り出して読んでみますね
 『王朝の勢力は5世紀後半には絶頂を迎え、済王は近隣リージョンへも進出しましたが、彼の死により王朝は分裂崩壊し…』
 『注1)済王の外征は”指輪の説話”として多く語られる。
 「千日録」にも指輪にまつわる多くの詩があることから、指輪の実在を指摘する説もある。』」


続いてあずさは王達の伝説の本を購入。
「『済王はまず勾玉(まがたま)を手に取りました。
  勾玉の力で天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)はなんなく手に入れました。
  そして最後に鏡の前に立ったのです。』
 …順番が関係してるのかしらねー」

「『済王が葬られた後も、大倭御紅目姫(おおやまとこうもくひめ)は泣き続けました。
 三年の間泣き続けた姫は、とうとう王に会いに行く決心をしました。
 苦労して玉と剣と鏡を手に入れると三つの台座の上に供えました。
 すると、明かりが灯り、壁に大きな道が開いたのです。』
 ……済王の奥さんの話みたいねー」


「要約すると、済王は指輪をやっぱり持っている、
 済王の玄室への入口の鍵は玉、剣、鏡…そういうことでしょうか。」
千早は聞いただけで大体のことを把握した模様。


「後はボクらが入るべき入口を探すだけだけど……」
「レーダーサーチ機能を活用いたしますか」
P765は機能の準備をしていた…そのときでした。


「あーーーーーーー!!」
「姉(c)…ピヨちゃん!」
ホテルから出てきた二人の女の子。
一人はP765とピヨさんを指差し
もう一人は双海を指差していました。
「おお… おお!」



「あ!もしかしてお知り合いですかー?」
「知り合いも何も……」

「亜美、真美!!大きくなったな!」
「パパーーー!!ピヨちゃんたちと一緒にいたの!?」



久方ぶりの親子の再会だったようです。
「済王って人のお墓を探してんの?」
「セイオー…あまり知らない名前だねー」

そして彼女達の後ろから、一人のモンスターが姿を現します。
「ピヨさん! …こんなところでお会いするとは奇遇ですね」
それはウサギの形をしたモンスター。


「おお、ウサさん。娘がお世話になっております」
「亜美達いい子にしてるよー」
「真美はあまりウサちゃんに迷惑かけてない自覚ないなー…亜美はもっとだよ」

「ははは…元気でとてもいい子たちですよ」

ウサちゃんと呼ばれた彼は、歴史書に目が止まりました。
「…お。済王の古墳の入口ですか?」
「そうなんですー。入口がわからなくって……」

「あー!そうでしたか。観光の方ですね ちょうどさっき自分達も行ってきた所なんですよ。」

「「「「「ええええええ!?」」」」」
思わぬところに突破口。皆、口を揃えて言いました。


「入口だけならご案内出来ますよ…あそこは危険ですから注意してくださいね
 ちょっと亜美ちゃん真美ちゃん、ホテルでまた待っててね。」

764サガフロンティア×アイマス 第十三話 1/3:2009/11/01(日) 02:32:46 ID:BWCFiJoc0
ウサちゃんから案内されて済王陵内部へ。
入口の通路から真っ直ぐ進むと3つの台座の部屋へ。
恐らくここに玉、剣、鏡を置くのでしょう。

そこから進むと…
「開けた場所に出ましたね…」
「この古墳、広くて面白いぞ!なーやよ…」
「はわ?!」
「おーい、二人とも!!わ!」

落とし穴トラップの部屋でした。


「…痛…たたたた」
「ちょっとどこか打っちゃったかもしれません…」
「大丈夫かー!」

下には亡霊モンスターが大量に。
古墳を護って死んだ者たちなのでしょう。


何とか階段を見つけ3人は復帰。
分かれ道もあったりしながら進むと『玉』、鎮魂の勾玉を発見。
「みつけましたぁー!!」

…と突然、勾玉の左右に朽ちていた骸骨が復活。
死してなお任務を続けるシュライク兵との戦闘になりました。


死の属性を手に入れたやよいが広間に戻ると、何と床の一部が光っていました。
「…落とし穴かな」

落とし穴がどれかわかれば簡単なもの。
「高槻さん、下の階の剣の位置を教えて」
「解りましたー!」

「えっと、この落とし穴の真下に剣があります!」
「それじゃ落ちましょうか」

『剣』、天叢雲剣でも骸骨のシュライク兵との戦闘に。
そして最後に、剣の力でトラップを解除し『盾』、水鏡の盾を入手。
シュライク兵との最後の戦いを終え…
いよいよ一行は3つの台座の間へ戻ってきました。


「…さて、いよいよですけど……… ……嫌な予感がするのよねー」
あずさは済王の部屋を前にして慎重になります。


「…済王時代のシュライクの戦士達が襲ってきたとなると
 済王自身が襲ってきても何もおかしくありませんからね。」

「戦闘の準備をしておきましょうか」
やよい、ピヨさん、美希、P765、千早。
このメンバーで向かうこととしました。

765サガフロンティア×アイマス 第十三話 2/3:2009/11/01(日) 02:33:36 ID:BWCFiJoc0
3種の神器を供えると重い扉が開かれ…
広い広い部屋の奥に、丸みを帯びた石の棺が姿を現しました。

幼くして死に至り、シュライクの発展と平和を未来永劫に願い続ける者…
済王その人が、ここに眠り続けているのです。



「……」
やよいは皆と顔をあわせ…頷くと棺を…ゆっくりと開けました。



「…指輪だ」
桃色のマントに鎧を身に着けた骸骨。指には赤き指輪…。やよいのものと同じもの。
後はこれを手に入れるだけ。…そのときでした。


「シュライクを脅かす悪しき者め 余の剣を受けよ!」


済王が起き上がりました。
「出ましたね!」
「この骨が…済王!」
5世紀のリージョン界に名を轟かせた天才剣士が…起き上がりました。

「!」
ふと、やよいの指輪が輝きます。

…輝き、済王の指輪と共鳴します。



その瞬間…
「!!」
やよいだけに…信じられないものが見えてきました。


「…女の…子…!?」
額の輝く、煌びやかな装飾を身に着けた…シュライクの民を一つにまとめたカリスマ性を持った、
『済王』その人の魂の姿…生前の姿が。

「口語翻訳システム起動。」


「骨だなんて失礼ね!! 私こそがシュライクの王、ミナセシタシラスイオリよ!」
「骨ではない!! 我こそがシュライクの王、ミナセシタシラスイオリなるぞ!」


「女の人…だったんだ」
「やよい、何言ってるの?」
「女?…成る程。骨盤の形から判断したのね 高槻さん、偉いわ!」


「ちょっとアンタどこ見てるのよ変態!!」
済王は剣を鞘から抜き出しました。
「済王・伊織、私たちはあなたに指輪を譲っていただくためにここに来ました」


「…指輪…アンタたち指輪を奪いに来たのね、泥棒じゃない!」
語調を荒げる済王…
会話の時間はそこまででした。

「ここから生きて帰れると思わないことね!
 来なさい、私の最強のしもべ…シュライク王朝騎士団の力、見せてやるわ!」


世界最強とも憶測される済王伊織の剣、『草薙の剣』が風を切りました。


「わわ!!」
やよい達は距離をとりますが…
その空いた距離は即座に、駆けつけたシュライク騎士団によって埋まります。

玄室の扉は閉じ…戦いが始まります。

「まずはこの騎士団を何とかしないと…!」
「一人で一人を相手にすれば問題ないですよ 私が済王伊織と戦います!
 皆さんはその骸骨の騎士団と戦ってください!」


ピヨさんは駆け、済王伊織と激突しました。

766サガフロンティア×アイマス 第十三話 3/3:2009/11/01(日) 02:35:17 ID:BWCFiJoc0
「わかる。シュライク最強は伊達じゃない…
 気迫、剣を振るう速度、眼力…どれをとっても強い。…私が勝てる相手かどうか…」

ピヨが全力を以って相対するべき相手のようです。
「『天地二段』!」

まずは定番のこの技を。頭蓋骨と骨盤に二度斬撃を加えます。

「く…」
済王伊織はそれに耐えると…

「『龍尾返し』!!」
凄まじい風圧で剣を二度にわたり払う技。

1発…
「かすみ…」
これを避け…2発。
「青眼!!」
返し技、かすみ青眼と龍尾返しの二段目が交差。
「はぁ!!」
そしてかすみ青眼の2撃目で済王伊織を斬ることに成功します。

「…硬い…!! …生半可な攻撃では勝てそうに無いわ…それなら」

技を返したピヨは更に技を放ちます。
「『燕返し』!!」
目にも止まらぬ高速抜刀術で済王の背骨を狙います。しかし…
「『パリィ』!!」
古剣術の流し技でいとも簡単に太刀筋を変えられてしまいます。

「ワカツ流剣術、流石のものね!」
「知っていたの…!?」

「けれど…これは避けられないでしょ!」
「!!」

ピヨさんは防御しますが…
済王伊織は目にも止まらぬステップで距離を縮めた後、
左後方、右、左前方、後ろ、右前方、左、右後方、前と目にも止まらぬ速度で斬撃を繰り出し…
「『多道剣…マルチウェイ』!」
技名を発すると同時に…
「…………!!」

ピヨさんに8つの傷をつけてしまいました。

「…う…!!」
ガクリと落ちるピヨさん。剣を杖代わりにやっと立てる状態…次に攻撃されては、敗北は必至。

…済王伊織を倒すにはダメージが浅すぎる。
ピヨさんは悟ります。
「…勝てない」
自分では済王伊織には絶対に敵わないことを。

…しかし、かといって勝負を捨てることはせず。

「ふふ…こんなことならあの子たちのいちゃいちゃを見て鼻血なんか出すんじゃなかった…
 う… っはあぁ…はぁ… く!!」
全身出血で青ざめながらも、二本の足で立ち上がります。
そして…覚悟を決め…克目しました。

「見逃してやろうかとも思ったけど…あくまで戦うつもりね その勝負に対する姿勢は…天晴れよ」

「でもこの技はかわせない!!剣もろともへし折れるわ!!」
済王・伊織は軽い体で跳躍…広い部屋の、天井付近にまで飛びあがります。
「…来なさい! ワカツ流剣術奥義之参…!!」
「行くわよ」

済王伊織はぐるりと剣を回すと…

「『三花仙』!!」
「『黄龍剣』!!」



宙を蹴りまっさかさまにピヨさんめがけて飛び込み、必殺の斬撃を。
ピヨさんはそれと交差するように走りぬけ、極限までの力を込めての跳躍…斬り上げ。


下からと上から。二つの剣が交わり…激しい大輪の花が玄室に咲きます。
そして勝負は…


「…………」
…ピヨさんの敗北。
激しく斬りつけられながらも上がりきった後、力なく重力に任せて落下…
そのまま言葉一つ発することなく打ち付けられました。

767サガフロンティア×アイマス 第十四話 1/2:2009/11/01(日) 02:35:49 ID:BWCFiJoc0
「…く!!」
しかし済王伊織の肩から手首を切りつけることに成功。

「これが…狙いってワケね」
これで、済王伊織は剣を持つのが精一杯の状態…技を封じることが出来たのです。


「ピヨさーーーん!!」
一方、残る4人は王宮騎士団を各個撃破することに成功。
後は…4人で済王伊織一人を倒すだけ。
「…無茶をする人ね」



「『レールガン』!」
まずはP765の破壊兵器。電磁力により加速された弾丸が済王伊織に撃ち込まれます。
「何なのその兵器は…!!」


「『ダーク』
 『スフィア』!!」

美希と千早の連携攻撃。
闇のエネルギーで相手を破壊する二人の『ダークスフィア』が済王伊織を覆います。

「あなた達4人の力が大したことなくてよかったわ…
 再び出てきなさい!我が軍勢! 『ミニオンストライク』!」


一時的に部下達を回復させる技。
これにより僅かな間だけ兵士が蘇り…
「おおおおおおおおおおおおおお!!」
「!?」

4人に一斉攻撃をしかけ、元の骨に戻ってゆきます。


「……強い」
無数の剣撃の嵐。全員、一気にピンチに陥ってしまいます。


「あなた達のような情の無い賊に…相応しい死を与えてやるわ
 私の歌…『聖歌』によって」


「歌が攻撃能力を持つって…音痴?」
「逆よ!魔法的な力を持った特殊な歌…! 聖歌とは名ばかり…死者はもちろん生者の命も奪う…
 恐ろしい歌!」


「いつまでもこのままで居たいね ずっとずっと傍にいられたらいいね」
済王伊織の歌が始まります。

「う!!!」
「ああああああああああ!!」
「く…!!」
「ボディ破損…」
「元気が戻ってきてよかった 二人で頑張ってきたよね でも」

聖歌は全員の体を蝕みます。
「それも終わり」

「そろそろ来るんだね 最後の週末が」
「もしもボクが 空に還るときが来たら どうするの」

全員の体力は限界。
次々に倒れてゆき
「凄く泣いて …手を掴んで」

「離れないのかな」
…最後にP765が残ったそのとき。



「…その歌は ウサ様との歌ですか」
「…!?」

768サガフロンティア×アイマス 第十四話 2/2:2009/11/01(日) 02:37:40 ID:BWCFiJoc0
P765からの突然の言葉。ウサといえば…P765を再生させた技術者であり
勿論この古墳にまで導いたうさぎのモンスターのこと。
「……どうしてアンタがその名前を」

「私はウサ様によって直されたからです。 その時にあなたのことも聞きました」


「…あなたのことを話すとき、ウサ様の精神波長の乱れを感じました」
「…………」

「被害は最小限に抑えるべきもの。 …被害を何らかの手で回避できるならば それを選ぶのは当然」

「そう。アンタを倒せばウサちゃんがまた悲しむと…
 …けどそんなことは言わせないわ アンタもまた人のもの奪おうとしてるんですもの」
「私は『任務遂行』の元動いています しかし…彼女には目的があります」


バックパックから取り出されたドロップをやよいの口に放り込むと…みるみるうちに回復。

「…あっ」
やよいが起き上がりました。

「…何、アンタの目的っていうのは」
「指輪を集めないと…指輪の力がないと、リージョンが壊れちゃうんです!!」

「…リージョンが、壊れる? …バカ言わないでよ!」
かつて多くの軍を率いてきた統率者の目が…やよいを見抜きます。
「そんなことがあるわけないじゃない!」
やよいも済王伊織の目をじっと見つめます。
「ウソじゃありません!!」

…その迫力に気圧された済王伊織は…
「!?」
草薙の剣を利き手と逆の手で突き出します。
「………証拠があるなら見せて見なさいよ 私を納得させたいなら」

「……これが、証拠です 済王伊織さん」
血だらけの腕を伸ばすやよい。…その腕の先、手の指には…護りの指輪が。


「う…!?」
指輪の共鳴は再び起こります。
…済王の脳裏に………やよいの思念が伝わってゆきました。


干からびた、ボロボロの土地…マーグメル。
水の代わりに溶岩が溢れ、土は痩せ…植物は枯れ。
食べるものも少なく…飲むものにも困る。

…それでも、大家族のように一丸となり懸命に生きるラモックスたちの姿。
「……私には大切なものがあるんです!
 マーグメルを救いたいんです!!」
その言葉が…最後の一撃となりました。

「……その言葉は… …本当なのね」
草薙の剣が…落ちた瞬間。

「指輪が語り合った。 …指輪がそれを望むなら、その指輪、アンタに貸してやってもいいわ」
「ほ、ホント!?」

「…ただし、眠るのにも飽きたし、…この時代にもまだ生きているんでしょう?ウサちゃんは。
 …会ってみたいわ アンタ達と一緒に私も行くわ」

P765は千早を回復…千早から皆を生命の雨で祝福。

「ほ、ほんと!?伊織ちゃん!」
「何でアンタにちゃん付けされなきゃいけないのよ!」

「え?だって私とあまり歳の違わない女の子だし…」
……ここに、第八の指輪…戦士の指輪が手に入りました。


「伊織ちゃーん、起きたんだって!?開けてー! 皆に怖いことしてないー!?」
入口から程近い、部屋の外から聞こえてきたのはウサギの声。
「! あら、来てたの!?」
ここに、再会は果たされたのでした。



「…ところであずささん、残り一つの指輪の情報っていうのは?」

「ええ。…それなんだけど…
 先ほど言った『妖魔の君』は何も歌田音だけじゃないのよ。

 『指輪の君』とされる…もう一人の最強の妖魔『四条貴音』  …その人の所へ行くわ」

その名を聞いて…伊織の表情は変わりました。

「…『四条貴音』 流石に有力な妖魔もまだ生きてるってわけね
 気をつけた方がいいわ あの辺りの奴らには私もうかつに手出しできなかったから」

769乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/11/01(日) 23:31:49 ID:KhoTCGDY0
FPSで体験してみたい実際にあった戦闘

旅順要塞攻略戦 日本軍対ロシア帝国軍
史実:大きな被害を出しながらも乃木希典率いる日本軍が勝利

スターリングラードの戦い ソ連軍対ドイツ軍
史実:史上最大の市街戦、ソ連軍の勝利

ウェーク島攻略戦 日本軍対アメリカ軍
史実:幾度にも渡る上陸作戦の末、日本軍がウェーク島を占領

沖縄戦 日本軍対アメリカ軍
史実:約一カ月に渡る激しい戦いの末、米軍の勝利

スターリングラードはCoD2でソ連編であるんだよねー…
バイパー「なら買いなよ…」
その前に買わねばならんゲームが他にたくさん(ry

770サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第十五話 1/4:2009/11/02(月) 01:33:34 ID:UodpkQDk0
ピヨさんは双海による治療を受け、古墳から皆で帰る道の途中。
「なるほど…入口を知っていたのもシュライクに来たのも
 済王の墓参りに来たからだったのねー」

「そもそも伊織ちゃんの前までは何回も行ってたからね…
 伊織ちゃんが死んだ後も扉の開き方を教えてもらったりしてね」

そういう風にして済王の墓を開けた大倭赤目姫…
済王の奥さんと目された彼女の名前…赤目……赤い目…うさぎ……いや。まさか。

「…元の場所に戻すの、面倒だったけど。
 けど伊織ちゃんが起きてきたのは今回が初めてじゃあないかな」
ため息をつくウサちゃん。

「文句ならそんな設計にした私の部下に言ってちょーだい…
 …ところでウサちゃん。今の私は一体何なのかしら?」

「…骨?」
「『骨』じゃないわよ!」
「骨じゃないです!伊織ちゃんはシュライクの…」
「「王様です!(よ!)」」


声をそろえたところでウサちゃんからの回答。
「スケルトンタイプのモンスター、ということになるかな
 伊織ちゃんがモンスターを倒してそれを食べれば多分別のモンスターに変身しちゃうと思うよ。
 ボクややよいちゃんと同じような。
 猪でも、剣でも、スライムでも、巨人でも、鳥でも。」

人間が死んで骨に。骨がモンスターに。

「…モンスターって変な種族ね」
「あはは、変だよー。ボクもあれから色んなモンスターを食べて生きながらえてきて
 今ちょうど伊織ちゃんが死んだときの種族に戻ってるんだから」

ウサギモンスター、ルナティックハイ。
最強のモンスターの一人とされる、レアな存在。

「ともかく、ボクは伊織ちゃんのお世話を出来たことを誇らしく思っているし
 これからまたお世話できると思うと嬉しいよ」
「あんまり恥ずかしいこと言わないでよね!」


そして、やよい達は活動拠点であるクーロンへ戻ります。
すると………


「おやおやあずささん。あなた宛にお手紙が届いていますよ」
「………」
あずさ達がここに宿泊していることを知る人物?
…いえ、知っていたのではなく…調べ上げたようでした。

「……誰からでしたか?あずささんっ!」
雨が降りしきる中。やよいはあずさに近づくと…

「…指輪の君からね。『指輪の数は全部で9つ
 最後の指輪が欲しくば 力づくで奪って御覧なさい …四条貴音』

 ……そう。もうそんなに話が進んでいたのね」
律子は信じられず手紙を横から見…
「………四条貴音自らお出ましですか………怖いことになってきたわ」
声のトーンが一気に下がりました。


「そうね……それじゃ7日後に四条貴音との対決にしましょう
 相手は世界最強の力を持つ一人。
 準備するもよし、まさかの事態に備えて家族の顔を見るもよし、
 離脱するもよし……それでいいわね?やよいちゃん」
「はい!!」



こうして…7日後の四条貴音との対決を控え、
彼らはそれぞれの時間をすごすのでした。


「………律子さんに…響ちゃん、話があるんだけど」
「どうしたさ」
「何ですか?ピヨさん」




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