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チラシの裏 3枚目
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「さぁ、もうお別れです、お二人ともお元気で」
「待って、ウサギさん。最後に一つ訊きたいことがあるの」
やよいはそう言って、ウサギに視線を合わせるかのようにしゃがみこみました。
「…何でしょう?」
「ウサギさんはどうして私や伊織ちゃん、それに… みんなのことを知ってたの?」
そう、それはやよいも、そして伊織ちゃんも一番疑問に思ってたこと…
「…女王が伊織に乗り移ったのと同時に、私もあるものに乗り移ったのです、私はそれを最初ただの無機物
としか思ってなかったのです」
「でも… それには記憶らしきものが感じられたのです。そして、私の中にもその記憶が入ってきて…」
「最初に雪歩や亜美を、そしてやよいを見たときに、すぐに名前が出てきたのも、恐らくはその記憶に
よるものなんでしょう」
そこまで聞いて、伊織ちゃんはハッとした表情をしました。
「じゃ、じゃぁアンタまさか…」
「さぁ、それでは本当にお別れです。いつまでもお幸せに」
伊織ちゃんの言葉をさえぎるようにウサギはそう言い、天に向かって手を差し出しました。
ウサギの体がだんだん光に包まれていきます。
完全に色が分からなくなったところで、それはさらにまばゆい光を放ち、天高く昇って行きました。
そして、空に浮かぶ月の方へと光の筋を放ちながら飛んでいき、やがて見えなくなってしまいました。
それと入れ替わりに、今度はその月から何かがきらきら光りながら飛んできます。
「な、何?」
それは見ているうちに伊織ちゃんの方にぐんぐん近づいてきたかと思うと、ゆっくりと伊織ちゃんの手元に
降りてきました。そして、ふたりの良く知っている姿に…
「うさちゃん!」
伊織ちゃんの胸にゆっくりと納まった、それは伊織ちゃんの親友のうさちゃんでした。
「そうだったんだ…」
やよいもようやく納得が行った様子。
「…」
伊織ちゃんはうさちゃんを抱きしめながら、
「そっか… うさちゃんも私のこと助けてくれたのね… ありがと…」
その言葉と共に、伊織ちゃんは優しくうさちゃんを撫でてあげていたのでした…。
その様子をじっと眺めていたやよいに、
「…ちょ、そんなに見たって何も出ないわよ?」
照れくさそうに伊織ちゃんが声をかけました。
「ううん、もうそろそろ帰ろうかなって」
やよいは空を見上げながら言いました。
そして、また伊織ちゃんの手を取ります。まるでそれが当然であるかのように…
「ん…」
伊織ちゃんも、そっと手を握り返してくれました。そして、一緒に空を見上げます。
さようなら、ウサギさん。そして、鏡の国のみんな…
ふたりは心の中で、いつまでもその言葉を繰り返していました。
…
…
…
「おねーちゃーん、もう朝だよー」
「やよい、早く起きなさい」
「…ん」
やよいが目を覚ますと、そこはいつもの寝室でした。もうすっかり朝になっています。
すでに家族のみんなは目を覚まして、忙しそうに、楽しそうに動き回っていました。
「…あれ、私どうやって戻って来たのかな…」
見ると、服もいつものものに戻っていました。手に握っていたストローも、今はもうありません。
「全部、夢だったのかな…?」
やよいは誰もいない空間に、思わずそう問いかけていたのでした。
でも、ウサギと旅をした鏡の国、そして伊織ちゃんと楽しい思い出を作った夢の国。
その思い出を、やよいは決して忘れることはないでしょう。
今日は祝日、学校はお休みです。
でも、やよいは今日も着替えて元気に出かけていくのでした。
いつも大好きな友達、伊織ちゃんと出会える、あの場所へ…!
「おはよー伊織ちゃん!」
「はいはい、アンタはいつも元気ね」
「えへへ、あ、そうだ昨日こんな夢見たんだよー」
「またその話?でも私も昨日は変な夢見たのよね、なんか女王様みたいなカッコしてさ」
「え?それって私が出て来たりとか?」
伊織ちゃんの横には今日もうさちゃんが。
うさちゃんは何も語ってくれません。でも、やよいには何となくうさちゃんが今までとは違った、まるで
自分の友達でもあるかのように見えてくるのでした。
『ありがとう、やよい』
え?
そんな声が聞こえたような気がして、思わずやよいはうさちゃんの方を見ました。
でも、そこにはうさちゃんのいつもの姿があるだけでした。
「うん、ありがとう… とても楽しかったよ」
メルヘンメイズ やよいの大冒険 Fin.
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