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チラシの裏 3枚目

692メルヘンメイズ やよいの大冒険 第14節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:23:42 ID:fHeuEg360
 第6話 みずの国  〜律子さんは水がお嫌い!?〜

「おはよー伊織ちゃん」
「あ、やよい… おはよう」
やよいが伊織ちゃんに今日も挨拶を。でも伊織ちゃんのほうはあんまり元気ではなさそうです。
「大丈夫…? 何か顔色が良くないみたいだけど」
「あ… ちょっと寝不足なだけよ… まぁあたしにだってこういう日ぐらいあるわ」
そう言って、伊織ちゃんはぬいぐるみを抱いたまま歩いて行ってしまいました。ぬいぐるみの長い耳を
ぴょこぴょこと揺らしながら…。
「伊織ちゃん、何だかいつもと違う…」
そう思ってみても、やよいにはただ見守ることしか出来ませんでした。

「次は水の国ですね」
「どんなところなの?」
「んー… まぁ見てもらったほうが早いでしょうか」
そんな会話をしながら鏡の中を進んできて、出てきたのは…

…一面水で埋め尽くされた世界でした。
正確に言うと、ポツリポツリと浮島がある他は、ほとんどが水、それも流れの早い水というところです。
「これは… 川?」
やよいがそう訊いてみます。
「ええ、以前はもっと穏やかな川だったのですが、ここも女王の魔力でこんなことになってしまいました」
ウサギが答えました。水の流れるほうを見てみると、そこは滝壷になっていました。
下の様子は分かりませんが、恐らく危険なことになっているのでしょう。
「でもこれじゃぁ前に進めません〜」
そうです。やよいたちが今いる所も浮島。
どこを見ても、橋も無ければ通路になるようなところもありません。戻ろうにも鏡の通路は跡形も無く、
ふたりが困り果てていた、その時…。

「誰かいるのかしら〜?」
向こう岸でしょうか、遠くのほうから声が聞こえます。
「はーい、誰かいますよー!」
とりあえず返事をしてみます。川の流れる音にかき消されない、やよいの大きな声(これはやよいの自慢
だったりします)が響き渡りました。
「誰かいるのは間違いないようですが」
「でもどうやって向こうに行こうかな…?」

川の向こうから何かが流れてくるのが見えました。
それはいくつも連なって、流れと同じ方向にどんどん進んできます。
「あれは…」
「いかだ!?」
上流からたくさんのいかだが流れてきます。これに飛び移っていけば…!
考える間もなく、やよいはそのいかだに飛び移って、次々と進んでいきました。

いくつかのいかだを飛び渡って、やよいたちは向こう岸らしきところに着きました、そこにいたのは、
ゆったりした薄緑の服を着た、軽くウェーブのかかった長い目の髪の女の子でした。
「こ、こんにちは」
やよいがとりあえず挨拶をします。
「え… やよい?」
「…? あの、私のこと知ってるんですか?」
そう言われた女の子は、軽く頭を抱えるポーズをした後、
「私よ、律子」
返事をします。
「えーーーーーーー!?」
今度は本格的に女の子が頭を抱えてしまいました。
「…そりゃ確かに、普段は眼鏡におさげの格好だけどさ」
「だからと言って、いつもいつもそんな格好をしてる訳無いでしょう?」
律子さんは不満そうに言いました。
「でもとてもそうは見えませんよ、そんなにお美しいのに」
「…あー、そのウサギのぬいぐるみといい、この状況を説明してくれないかしら、やよい?」

「なるほど、私は鏡の国にいつの間にか来てしまって、そこから帰るにはこの川を昇らないと、ってこと?」
「そうなりますね、出口はこの向こうです」
「…だんだんこの奇天烈な状況にも慣れてきたわね…」
律子さんはそう言って、目の前の川を眺めました。
「で、どうやって向こうまで行くの?」
「流れてくるいかだに飛び移っていくのです、ちょっと疲れますけれど」
ウサギが流れてくるいかだを指差しながら言います。
「…分かったわ、足を滑らせたらおしまいよね、うんそうだわ」
律子さんが言いました。顔が妙に引き締まった気がします。
「それじゃぁ行きましょー!」

岸は程なく途切れてしまい、やよいたちはまたいかだと浮島を飛び移って進んでいくことになりました。
途中、くるくる回りながら飛んでくるトンボ、そしてまっすぐ向かってくるトランプのカードの魔物を
吹き飛ばしつつ、慎重に慎重に…。




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