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チラシの裏 3枚目
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第8話 かがみの国 〜春香さんがいっぱい!?〜
「…これが、鏡の国?」
「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、『へいたいの国』と言う感じに
なってしまってますけど…」
やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆然と眺めていました。
そこは鏡の国というにはあまりにも暗くて、うにょんうにょんしていて、ついでに楽しそうな雰囲気の
欠片もないようなところでした。
鏡の国なんて生まれてこの方見たことも無かったやよいでしたが、これが鏡の国だといわれても絶対に納得
できない、そんな自信さえあります。
見てるだけで憂鬱になってきそう、でもここを進まなくては鏡の国に平和を取り戻せません。
ウサギの言葉どおり、ここでは少し歩くとすぐにいろんな魔物に出くわします。
特にこのトランプに足が生えたような魔物は頻繁に出てきては、やよいを追い掛け回してきます。
床を飛び移っていくと、二人は大きな広間にたどり着きました。
不思議なことに、そこには大きな鏡のようなものがいくつも並べられています。
やよいがその中の一つにそっと近づいていきます。しかし、その鏡にはやよいはおろか、何も映ってません。
「…?」
と、その時。
鏡の中の景色が動いたような気がしました。
それはゆらゆらと動きながら、やがて一つの形を作っていきます。
「春香さん…?」
それはやよいの良く見知った女の子でした。でも、いつもと違う点が一つ、それは服でした。
青と白のドレスに水色のエプロン、色だけ変えればやよいの着ているドレスにそっくりのものです。
「こんばんは、やよ… あ、わぁぁぁぁ!?」
見ているうちに、春香さんは鏡から出て来て挨拶を… しようとして転んでしまいます。
うつぶせに倒れてる春香さんを助け起こそうと、やよいが駆け寄りました。
「あいたた…」
「はわっ、大丈夫ですか… ?」
そこで、やよいは妙なことに気が付きました。
「あの… 痛くないんですか?」
その春香さんは転んで『痛い』とか言ってるはずなのに、顔の表情が全く変わることがありません。
まるでお面でもかぶっているかのような…。
その様に、やよいは思わずビクンッと肩を震わせます。本能的、とでも言うのでしょうか。
そうしている間にも、他の鏡からも次々と春香さんが出てきては、やよいの周りにわらわらと集まって…。
「やよいちゃんだいじょうぶ」
「おかしつくってきたんだよ」
「いっしょにれっすんいかない?」
いろいろなことを言っています、どれもこれも同じ顔の表情をしたまま。
「うう〜…」
恐怖のあまり、じりじりとやよいは後ずさりを。しかしすぐに床の切れ目まで追い詰められてしまいます。
それでもやよいの方に寄ってくるたくさんの春香さん。
「こ、こんなの春香さんじゃありません!」
叫びながら、やよいは向こうの動く床に素早く飛び移り、そしてシャボン玉を構えます。
めいっぱいシャボン玉を膨らませて、春香さんたちを吹き飛ばそうとした、その時。
「え…!?」
なんと春香さんたちもストローを取り出し、そこからシャボン玉を出してくるではありませんか!
そこかしこから飛んでくるグレーの小さなシャボン玉。
それぞれが逃げ場の無いやよいにぶつかって、嫌な痛みと共に体中で弾け、頭がくらくらと…。
「やよい、逃げるのです!」
そんな声がします、しかし、全てが遅すぎました。
やよいの体は、床が動いた拍子に崩れ落ち、そしてそのまま奈落のかなたへと消えていきました…。
「や…」
「やよいーーーーーーーー!!」
ウサギの声だけが、いつまでもその場に響いていました。
「…」
床から落ちて、くるくると回りながらやよいは空中をどんどん落ちていきます。
やよいにも、高いところから落ちて地面にぶつかったらどうなるかぐらい分かっていました。
遠くからはウサギが自分を呼ぶ声。
ぼんやりとした頭で、ウサギさんもあんなに大きな声で叫んだりするのか、とか考えてみます。
「ごめんね… 私、もう帰れそうに無い…」
妙にゆっくり流れている景色を眺めながら、やよいはそう言いました。家にいる家族たちはどう思うかな、
せっかく助けた雪歩さんや真美ちゃん、そしてまだ会えてない伊織ちゃんは…。
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