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『解析概論』輪読
1
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:02:10
立ててみました。
書名:『解析概論 改訂第3版』
著者:高木貞治
出版社:岩波書店
交代で解説を行い、他の人がそれに質問、間違いの指摘などを行うことにします。
適宜他の本を参照してもよいことにします。もちろんその場合は、その本を持っていない人でも分かるように書きます。
解析概論持っていない人でもおかしなところがあったらどんどん突っ込んでしまってください。
あ、ちなみに現在僕は所々飛ばして今P57の偏微分と全微分のあたりまでしか進んでないです。やばい(^^;
2
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:03:06
第1章 基本的な概念
1. 数の概念
まず数の概念と四則演算については分かっているものとします。また自然数、整数、有理数、無理数について深く考えないことにします。きちんと定義しません。本来ならば自然数を定義して、そこから整数→有理数(ここは問題ないはずですが)→実数と数の範囲を広げていくのでしょうが、この本ではそれは行われません。我々もこれらについてはとりあえず経験に従うことにします。
自然数 1, 2, 3, …
整数 …-2, -1, 0, 1, 2, …
有理数 整数p, q(p≠0)を用いてq/pと表される数
無理数 有理数でない実数
10進法について
有理数を10進法で表すと有限小数か循環する無限小数になります。逆に有限小数と循環する無限小数は有理数になります。したがって無理数は無限小数でも循環する無限小数でも表されません(なぜなら無理数とは有理数で無い実数のことだから)。
数の幾何学的表現
実数を直線上の点として表すことができます(数直線)。直線XX´上で0を表す点をOとし、これを原点とします。xを表す点Pはx>0のとき半直線OX上に、x<0のとき半直線OX´上にとることにします。xを表す点と原点の距離つまりOPをxの絶対値といい|x|で表します。
次の不等式が成り立ちます。
|x|+|x´|≧|x+x´|≧|x|-|x´|.
これは三角不等式といいます。証明は略します。実数の公理を出発点として証明しなくてはならないのだと大変かもしれませんが、我々は「a≧0かつb≧0のときa≧b⇒a^2≧b^2」さらにはこれを示すための「a, b, c, d≧0のとき(a≧bかつc≧d)⇒ac≧bd」などを使ってもよいので、簡単です。
3
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:04:06
二つの実数x, yの組(x, y)は平面上の点に対応させます。
同様に三つの実数x, y, zの組(x, y, z)は空間内の点に対応させます。
一般にnこの実数の組(x_1, x_2, …,x_n)をn次元空間上の1点といいそれをPで表します。
Pを(x_1, x_2, …,x_n), P´を(x_1´, x_2´, …,x_n´)をするとき
sqrt((x_1-x_1´)^2+(x_2-x_2´)^2+…+(x_n-x_n´)^2)(ただしsqrt(x)は√xを表す。)
をP, P´の距離といい、PP´で表します。
今Pを固定し、
PP´^2=(x_1-x_1´)^2+(x_2-x_2´)^2+…+(x_n-x_n´)^2<δ^2
を満たすならばP´はPを中心とする半径δのn次元の球の内部にあるといいます。
また
|x_1-x_1´|<δ, |x_2-x_2´|<δ,… ,|x_n-x_n´|<δ
ならばP´はPを中心として稜(空間図形の辺のことは正確には稜というらしいです)が座標軸に平行で、その長さが2δなるn次元の立方体の内部にあるといいます。
これらの定義は2次元、3次元の場合の拡張になっています。
2. 数の連続性
全ての実数を次の性質を満たす二つの集合A, Bに分けることを考えます。これらは本文中の表現と同じものです。
(鄯)R=A∪B(Rは実数全体の集合).
(鄱)A≠∅ฺ, B≠∅ฺ,
(鄴)a∈A, b∈B⇒a<b.
このような組み分け(A, B)をDedekindの切断といい、Aを下組、Bを上組といいます。
ここで組み合わせ的にはAの最大元と, Bの最小元の存在について次の4通りが考えられます。
1. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在する.
2. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
3. 下組Aに最大元max(A)が存在しせず、上組Bに最小限min(B)が存在する.
4. 下組Aに最大元max(A)が存在せず、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
ただし最大元、最小元を次のように定義します。
定義(最大元、最小元)
Sを実数の集合とする。
MがSの最大元である⇔(def) (M∈Sかつ(∀x∈S)(x≦M)).
mがSの最小元である⇔(def) (m∈Sかつ(∀x∈S)(x≧m)).
しかし1. が起こると矛盾します。なぜならM=max(A), m=min(B)とするとM<p<mなる実数、例えばp=(M+m)/2を持ち出すとp∈AとするとMがAの最大元であることに矛盾します。またp∈BとするとmがBの最小元であることに矛盾します。以上よりp∉ฺAかつp∉ฺBとなりますが、これはR=A∪Bに矛盾します。したがって1. は起こりえません。
では2. , 3. , 4.は起こりえるのでしょうか。
ここで次の公理が成り立つことを認めることにします。
4
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:05:39
公理(Dedekindの公理)
実数の切断(A, B)について次のいずれか一方のみが成り立つ。
1. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
2. 下組Aに最大元max(A)が存在せず、上組Bに最小限min(B)が存在する.
(本文中では定理 1.(Dedekindの定理))と書いてありますが、我々はこれを議論の出発点とするのでDedekindの公理と呼ぶことにします。また本文中の「実数の切断は、下組と上組の境界として、一つの数を確定する」という書き方はちょっとあいまいなので公理をこの形で述べることにします。)
これは直観的には数直線に途切れが無いことを意味しています。
3. 数の集合・上限・下限
定義(上界、下界、上に有界、下に有界)
Sを実数の集合とする。
(∀x∈S)(x≦M)なる実数Mが存在するときSは上に有界であるという。またこのようなMをSの一つの上界という。
(∀x∈S)(x≧M)なる実数Mが存在するときSは下に有界であるという。またこのようなMをSの一つの下界という。
Sが上に有界でかつ下に有界のときSは有界であるという。
ある数が上界ならばそれよりも大きい数はやはり上界です。下界についても同様です。
5
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:07:10
命題
Mが集合Sの上界であるときN>Mなる実数NはSの上界である。
Mが集合Sの下界であるときN<Mなる実数NはSの下界である。
証明
上界について示す。
MはSの上界であるから、(∀x∈S)(x≦M).
N>Mだから(∀x∈S)(x≦M<N), すなわち(∀x∈S)(x<N).
ゆえにNはSの上界である。
下界についても同様にして示せる。
このように上界、下界というのはたくさんあるわけですがその中でもぎりぎりのところ、つまりなるべく小さな上界、なるべく大きな下界というものに着目します。
定義(上限、下限)
上に有界に集合Sの上界全体の集合に最小元があればそれをSの上限という。
下に有界に集合Sの下界全体の集合に最大元があればそれをSの下限という。
上の上限について次がいえます。
命題
次の同値がいえる。
aはSの上限である
⇔(1) (∀x∈S)(x≦a),
(2) a´<a⇒(∃x∈S)(a´<x).
なお下限についても同様のことが成り立つ。
証明
(1)はaがSの上界であることを意味している。よってaがSの上界全体の集合の最小元であることと(2)が同値であることを示せばよい。
aがSの上界全体の集合の最小元であるということは、a´<aなるa´はSの上界全体の集合に属さないということと同じである(最小元の定義より)。したがってa´は¬(∀x∈S)(x≦a´)すなわち(∃x∈S)(x>a´)を満たす。以上よりaがSの上限であることと(1), (2)の同値が示せた。
さてSに最大元が存在するときそれはSの上限でしょうか。これは直観的には明らかかもしれませんが、上限というのはある種の集合の最小元として定義されていますから、字面だけ見るとそんなに明らかではないような気もしてきます。以下でこのことを証明します。
6
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:11:05
命題
集合Sに最大元M=max(A)が存在するならばMはAの上限である。
下限についても同様のことがいえる。
証明
先ほどの命題を利用する。最大元の定義からして、Mは(1)を満たす。またa´<MとするとM∈Sであるからa´<xを満たすSの元xが最低一つは存在することになる。よってMは(2)をも満たすのでSの上限である。
定理2. (Weierstrassの定理)
Sは空集合でないとする。
集合Sが上に有界ならばSには上限が存在する。
集合Sが下に有界ならばSには下限が存在する。
証明
Sが上に有界だとして、Sに上限が存在することを示す。
RをSの上界でない実数全体の集合AとSの上界全体の集合Bに分ける。
このとき(A, B)は実数の切断である。
7
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:11:49
∵全ての実数はSの上界であるかないかのどちらかであるからR=A∪B.
またSの元pをとりq<pなる実数qをとるとqはSの上界ではない(qより大きいSの元pが存在しているから)。
ゆえにq∈AであるからA≠∅ฺ.
そしてSは上に有界なので、当然Sの上界が存在するからB≠∅ฺ.
a∈A, b∈Bとする。
aはSの上界でないからあるSの元xが存在してa<x_0.
また上界の定義より(∀x∈S)(x≦b).
よってta<x_0≦b.
ゆえにa∈A, b∈B⇒a<b.
以上より(A, B)は実数の切断である。
するとDedekindの公理より
1. max(A)が存在し、min(B)が存在しない。
2. max(A)が存在せず、min(B)が存在する。
のうちどちらか一方のみが起こる。
そこで2. のみが起こることを示す。
1. が起こるとして矛盾を導く。
1. が起こると仮定する。
max(A)∈Aであるからmax(A)<xなるSの元xが存在する。
ここでmax(A)<b<xなる実数をとる。
するとmax(A)<bよりb∉ฺA.
またbより大きいSの元xがあるからb∉ฺB.
これはDedekindの切断の定義に反する(R=A∪Bに反する)。
したがって1. は起こりえない。
ゆえに2. が起こるからSの上界全体の集合の最小元すなわちSの上限が存在する。
8
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:15:52
とりあえず最初ということでやってみました。
どんどん突っ込みお願いします。
あと一部長すぎて省略されています。ごめんなさい。
訂正
>>1
したがって無理数は無限小数でも循環する無限小数でも表されません
のところは
したがって無理数は有限小数でも循環する無限小数でも表されません
の間違いです。
9
:
Je n'ai pas de nom!
:2005/07/26(火) 23:26:32
ハイラー/ワナーのスレと被るとこありそう。
10
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/07/27(水) 00:10:58
スレたて乙です。
つっこみではないですが、
>>3
>空間図形の辺のことは正確には稜というらしいです
昭和21年、日本数学会が物理学会から分離独立した際、
数学の用語を洗いなおそうとして、そのときに
稜→辺、函数→関数
などの言い換えが行われたという話を
一松信先生のエッセイで読んだような記憶が。
そのときに「極大値」とか「環」などというのも見直しておけばよかったのになーと
思ったり。
11
:
RSKTTM
:2005/07/27(水) 19:42:37
高校のときの数学の先生がちょっとこだわってまして(稜と辺)。
あとその先生いわく、よくドットコムとか言ってるドットはドットじゃなくて
ピリオドだとのことです。ドットはこれ→・ のことだと言っていました。
しかしこちらについては辞書などに「ドットとは中点のことである」という記述を
見つけることができなかったので、やや疑問です。
さて、もし他に何もないようなら次の担当の方を募集したいと思います。
12
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:33:36
いないようなので次も僕がやることにします。
4. 数列の極限
a_1, a_2, …, a_n, …と数を一列に並べた物を数列と呼びます。数列とは独立変数が自然数であるような関
数である(本文の言い方では項a_nが自然数の範囲内において変動する変数nの'関数'である)と、とらえる
こともできます。
数列は{a_n}と表します。
(余談ですが、{a_n}というのは数列全体を表すもので、第n項を表すときはa_nと書きます。僕は{a_n}というの
はたぶん{a_1, a_2, …, a_n, …}という集合の記法を省略したものなのではないか、と思っているのですがどう
なんでしょうか。)
nが限りなく大きくなるときa_nが一定の数αに限りなく近づくならば、数列{a_n}はαに収束(あるいは収斂(し
ゅうれん))するといい、αを{a_n}の極限といいます。これを
lim_[n→∞]a_n=α
または
n→∞のときa_n→α
と書きます。
(本文では「αをa_nの極限という」と書かれていましたが、"数列"の極限という言い方をするので{a_n}の極
限という言い方をしたほうがいいかな、と思いそう書きました。)
正確には任意の正数εが与えられたとき、それに対してうまくn_0をとると
n>n_0のとき|α-a_n|<ε
となるならば{a_n}はαに収束するといいます。これがいわゆるε-n_0論法です。
13
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:35:27
定義(数列の極限)
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε))
が成り立つとき{a_n}はαに収束するという。
(Nは自然数全体の集合)
数列{a_n}が収束するときその極限αは一意的に確定します。
命題
数列{a_n}が収束するならば、それは唯一つの極限を持つ。
証明
数列{a_n}がαに収束し、かつβに収束するとする(α<βと仮定する)。つまり極限の定義より、
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)),
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-β|<ε))
が成り立つとする。
これはどんな正数εが与えられてもうまく自然数n_1, n_2をとれば
n>n´=max{n_1, n_2}のとき|a_n-α|<εかつ|a_n-β|<εということである。
すると特にε<(β-α)/2としてもこれは成り立つ((β-α)/2>0に注意)。
このとき|a_n-α|<ε⇔α-ε<a_n<α+εなどに注意すれば、
β-ε<a_n<α+εとなるがこれは
ε>(β-α)/2を意味し、矛盾する。
β>αと仮定しても同様の矛盾が起こるからα=β.
14
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:37:15
もし、どんなに大きい正数Rをとってもそれに対して
n>n_0ならばa_n>R
となる自然数n_0が存在するならば{a_n}は+∞に発散するといい、
lim_[n→∞]a_n=+∞と書きます。-∞に発散も同様に定義します。
定義
(∀R>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒a_n>R))
が成り立つとき、{a_n}は+∞に発散するという。
(∀R<0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒a_n<R))
が成り立つとき、{a_n}は-∞に発散するという。
{a_n}が収束するとき、{a_n}から有限個の甲を取り去っても、取り去った後の数列はやはり収束し、同じ極限
値を持ちます。これは当然のことです。なぜなら上で使われてきたn_0より先には無限に多くの番号がある
のですから、少々項を取り除いたとしても影響はないからです。
15
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:38:32
定理3.
収束数列の部分数列は、元の極限値に収束する。
ここで部分数列というのをきちんと定義しておいたほうがよいでしょう。『解析入門』(杉浦光夫著)を参照します。
定義(部分数列)
自然数の値をとる数列{n(k)}(k∈N)が狭義単調増加であるとき、{a_n}から作られた数列{a_n(k)}を{a_n}の部分数列(あるいは部分列)という。
ただし狭義単調増加を次のように定義します。
定義(単調増加・単調減少)
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n<a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は狭義単調増加であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n>a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は狭義単調減少であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n≦a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は広義単調増加であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n≧a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は広義単調減少であるという。
上のようにして部分数列を定義すれば、「数列の若干項を取り去った」場合が含まれるだけでなく、例えば偶数番目の項だけを残したような場合も含まれることになります。
16
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:40:08
定理3.の証明
{a_n}はαに収束するとする。つまり
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
さて自然数値を取る狭義単調増加数列{n(k)}を用いてできる{a_n}の部分数列{a_n(k)}について考える。
n(k)は高々第n_0+1項目でn_0より大きくなり、その後もずっとn_0より大きい。すなわち
k>n_0⇒n(k)>n_0.
よって{a_n(k)}は
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(k>n_0⇒|a_n(k)-α|<ε))
を満たしているから、αに収束する。
さて本文には「数列の各項a_nが絶対値において一定の数を超えないとき、その数列は有界であるという」
と書かれていますが、ここでは今まで出てきた有界の定義を採用することにします(単に僕の好みです)。
これらの定義は同値です。
a_nが(すでに出てきた定義により)有界ならば全ての自然数nに対しN≦a_n≦MとなるN, Mが存在しますが
このとき-max{|N|, |M|}≦a_n≦max{|N|, |M|}が成り立ちますから、a_nは「絶対値において一定の数(max{|N|, |M|})を超えない」ことになります。
逆は自明です。a_n≦|M|⇔-M≦a_n≦Mだからです。
収束する数列は有界で、極限値もその限界を出ません。
17
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:42:11
定理4.
収束する数列は有界である。つまりa_n→αのとき|a_n|≦Mなる定数Mが存在し、|α|≦M.
証明
仮定より(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
番号n_0より先ではa_nは十分狭い範囲に閉じ込められているのである。
よって|a_n-α|<ε⇔α-ε<a_n<α+εであったから
Mを|a_1|, |a_2|, …, |a_(n_0)|, |α+ε|, |α-ε|をこれらのどれよりも大きい数とすると
全ての自然数に対して|a_n|<M.
(n≦n_0のときに成り立つのは当然であるが、n>n_0のときはa_nの絶対値は全て|α+ε|か|α-ε|よりも小
さいので成り立つのである。)
さて|α|>Mと仮定する。αにいくらでも近いところにたくさんのa_nが存在するはずであるが、
今はMによって|a_n|たちと|α|が分断されているから、そのようなa_nで問題が起きそうである。
|α|>M≧|a_n|であるから|α|-|a_n|≧|α|-M(>0).
ところが三角不等式より、|α-a_n|≧|α|-|a_n|であるから、|α-a_n|≧|α|-M.
これはa_n→αに矛盾する。
(どんなε>0をとってきてもn>n_0ならば|α-a_n|<εとなるはずであるがこのようにε=|α|-Mとすると成り立
たないのである。)
したがって|α|≦M.
18
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:43:27
命題
a_n→αのとき全ての自然数nに対してa_n≦MとなるMが存在するときα≦M.
証明
α>Mと仮定するとα-a_n≧α-M(>0)となるので先ほどと同様の矛盾が起こる。
ゆえにα<M.
数列の極限について次の性質が成り立ちます。
定理5.
{a_n}, {b_n}が収束し、lim_[n→∞]a_n=α, lim_[n→∞]b_n=βとする。
このとき次が成り立つ。
(1) lim_[n→∞](a_n+b_n)=α+β.
(2) lim_[n→∞](a_n-b_n)=α-β.
(3) lim_[n→∞]a_nb_n=αβ.
(4) b_n≠0かつβ≠0のときlim_[n→∞]a_n/b_n=α/β.
19
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:44:18
証明
(1)(2)の証明
仮定より
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)),
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
つまりいかなるε>0が与えられてもうまくn_1, n_2∈Nをとれば
n>max{n_1, n_2}のとき|a_n-α|<εかつ|a_n-α|<ε.
よってn>max{}n_1, n_2}のとき|(a_n±b_n)-(α±β)|=|(a_n-α)±(b_n-β)|≦|a_n-α|+|b_n-β|<ε+ε=2ε.
以上より成り立つ。
3)の証明
定理4. などにより|a_n|<Mかつ|β|<MなるMが存在する(当然M>0)。
するとある番号より先では
|(a_n)(b_n)-αβ|=|(a_n-α)β+a_n(b_n-β)|<M(|a_n-α|+|b_n-β|)<M(ε+ε)=2Mε.
よって成り立つ。
20
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:45:27
(4)の証明
まずlim_[n→∞]1/b_n=1/βを証明する。
任意のε>0に対してあるn_0があってn>n_0のとき|b_n-β|<ε.
これは特にε=|β|/2としても成り立つ(β≠0より|β|>0に注意)。
n>n_1のとき|b_n-β|<β|/2になるとすると
n>n_1のとき|β|/2>|b_n-β|≧|β|-|b_n|.
ゆえに|β|/2<|b_n|.
したがってn>max{n_0, n_1}のとき
|1/b_n-1/β|=|(β-b_n)/b_nβ|=|(β-b_n)|/|b_nβ|≦2|(β-b_n)|/|β|^2<2ε/|β|^2.
以上よりlim_[n→∞]1/b_n=1/β.
よってこれと(3)より(4)は証明された。
また単調数列については次の重要な定理があります。
定理
上に有界な単調増加数列は収束する。
下に有界な単調減少数列は収束する。
21
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:46:08
証明
上に有界な単調増加数列が収束することを証明する。
{a_n}は上に有界だから上限αが存在する。
lim[n→∞]a_n=αを示す。
α´<αなるα´をとるとa_n>α´を満たす自然数nが存在する。その一つをpとおく。
{a_n}は単調増加だから、n>pのときa_n>a_p>α´.
ここでα´は上限(よって上界)であるから全ての自然数nに対してα≧a_n.
よってn>pのときα-a_n<α-α´(>0).
ここでα´はα´<αを満たす任意の実数であるから、α-α´は任意の正数値をとる。
よっていかなる正数α-α´が与えられてもn>pとすれば|α-a_n|<α-α´ことになるからa_n→α.
下に有界な単調減少数列{b_n}についても同様でlim[n→∞]b_n=inf({b_n}).
(ただし集合Aに上限があるならばそれをsup(A)と書き、下限があるならばそれをinf(A)と)書く。)
22
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:54:12
ところで上の中に
{a_n}はαに収束するから
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
よってどんなε>0に対してもn>n_0とすれば|a_n-α|<ε.
これは特にε=1/2としても成り立つ・・・・・・
のような論法がありますが、これは厳密にはまずいと思います。
なぜなら先に「どんなε>0に対しても」があって、εを決めてからそれに対してうまくn_0をとるからです。
よって次のように書くべきでしょう。
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
よって特にε=1/2としてもうまくn_0をとれば
n>n_0⇒|a_n-α|<1/2.
23
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:57:52
さてこんな感じです。しかしこの分だとだいぶ時間がかかりそうですね。
なるべくあいまいさがないようにと思って、細かくやっているつもりなのですが、
これだと微分に入るのさえいつになることやら・・・
正直言ってメインに入らなきゃ面白くないですからねえ。
そういうことも含めてご意見をお待ちしています。
24
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/09(火) 19:23:24
>>23
この間は、
>>1
-
>>8
までの原稿だけを読んでコメントしたのですが、
テクストを読み返してみたところ、さらに気づいたこともあるので、少々。
有理数を二進法で表したときに循環二進数になることとか、
三角不等式についてはもう少し詳しく述べてもよかったのでは?
とくにn次元の三角不等式はちょっとしたトピックだと思うんですが。
というわけで、ここに書いてもいいんですけど、昔のように
「東大」「数学」「補完」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1081779039/
に問題として投下しておきます。
25
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/13(土) 06:45:47
えー。
「集合・位相入門」演習スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1097576246/34-37
に,問題を投下しました.
Zの切断が
>>3
の1.の型に限ることを示す問題と
Qの切断で
>>3
の4.の型のものの例を挙げさせる問題です.
RSKTTMさん、やってみてはいかが?
26
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/13(土) 06:59:22
>>3
ありゃ、いまみたら切断の定義に「A∩B=Φ」がぬけてますね。
27
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:07:03
では。つづきを担当しましょうかね。
例1.
a>0ならばlim[n→∞][n]√a=1.
証明
a>1のとき,[n]√a/[n+1]√a=a^{(1/n)-(1/(n+1))}=a^{1/n(n+1)}=[n(n+1)]√a>1
なので数列{[n]√a}は減少数列.すべての自然数nに対して[n]√a>1であるから
定理
>>20
より数列{[n]√a}は収束する.
lim[n→∞][n]√a=αとおけば定理4によりα≧1.
α>1であるとするとα-1>h>0なるhが存在し,
すべての自然数nに対して[n]√a>1+hが,したがってa>(1+h)^n>nhが成り立つ.
1+h≧[n_0]√aとなる自然数n_0があるとすれば{[n]√a}が減少であることより
n_0以上のnに対して,α>1+h≧[n]√aとなり{[n]√a}はαに収束しなくなってしまうからである.
さて,n>a/hなる自然数nに対してnh>aとなるのでこれは矛盾.したがって,α=1.
a=1のときは[n]√a=1となるのでlim[n→∞][n]√a=1.
0<a<1のときは1<1/aであるので定理5(4)より
lim[n→∞][n]√a=lim[n→∞][n]√{1/(1/a)}
=lim[n→∞]{1/[n]√(1/a)}=1/1=1■
28
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:07:38
例2.
a>1,k>0ならばlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
証明
k=1のとき
a^n=(1+(a-1))^n>nC2(a-1)^2=(a-1)^2n(n-1)/2より
a^n/n^k>{(a-1)^2(n-1)/2}.
任意のMに対して{2M/(a-1)^2}+1より大なる自然数nをとれば,
M<(a^n/n^k)となるのでlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
0<k<1のときはn^k≦nであるので(a^n/n^k)≧(a^n/n)>{(a-1)^2(n-1)/2}.
任意のMに対して{2M/(a-1)^2}+1より大なる自然数nをとれば,
M<(a^n/n^k)となるのでlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
1<kのとき,a^(1/k)>1.よって任意の1より大きいMに対して,ある一定以上の自然数nで
(a^n/n^k)=[{(a^(1/k))^n/n}]^k>M^k>Mだから
lim[n→∞](a^n/n^k)=∞.■
29
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:08:12
例3.
a>0ならばlim[n→∞](a^n/n!)=0.
証明
k>2aなる自然数kに対して C=a^k/k!とおくと,n>kなる自然数nに対して,
a^n/n!=C・{a^(n-k)/(k+1)(k+2)・n}<C・(a/k)^(n-k)<C/2^(n-k)=C・2^k/2^n≦C・2^k/n.
よって,任意の正の数εに対して
n>C・2^k/εなる自然数nに対して,0<a^n/n!<ε.■
30
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:08:46
例4.
lim[n→∞]a_n=αであるならば,lim[n→∞]{(a_1+…+a_n)/n}=α.
証明
b_n=a_n-αとおくと定理5(2)より
lim[n→∞]b_n=0.
{(a_1+…+a_n)/n}={(b_1+…+b_n)/n}+αより
lim[n→∞]{(b_1+…+b_n)/n}=0を示せばよい.
いまlim[n→∞]a_n=αであるから任意の正の数εに対して,
n_0以上の自然数nなら|a_n-α|=|b_n|<ε/2となる自然数n_0がとれる.
{|b_1|,…,|b_(n_0-1)|}の最大数をMとおくと,n_0以上の自然数nで
|{(b_1+…+b_n)/n}|≦{|b_1|+…+|b_(n_0-1)|+(n-n_0)(ε/2)}/n
<{(n_0-1)M+(n-n_0)(ε/2)}/n<(n_0M/n)+(ε/2).
よって
n>2n_0M/εとなる自然数nで|{b_1+…+b_n/ n}|<ε.■
31
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:09:17
例5.
数列{(1+(1/n))^n}は収束する.
lim[n→∞](1+(1/n))^n=eとすると2<e<3.
証明
a_n=(1+(1/n))^nとおくとすべての自然数nで
a_n=Σ[k=0,n](nCk/n^k)
=1+Σ[k=1,n]{n(n-1)…(n-k+1)/ n^k・ k!}
=1+Σ[k=1,n]1・(1-{1/ n})…(1-{k-1/ n})・{1/ k!}
≦1+Σ[k=1,n]1・(1-(1/(n+1)))…(1-((k-1)/(n+1)))・(1/k!)+(1/(n+1)^(n+1))
=1+Σ[k=1,n+1](n+1)Ck/(n+1)^k=a_(n+1)
であるから{a_n}は増加数列.
2=a_1≦a_n=Σ[k=0,n](nCk/n^k)=2+Σ[k=2,n](nCk/n^k)
=2+Σ[k=2,n]1・(1-(1/n))…(1-((k-1)/n))・(1/k!)
≦2+Σ[k=2,n](1/k!)=(5/2)+Σ[k=3,n](1/k!)
≦(5/2)+(1/2)Σ[k=3,n](1/3^(k-2))
=(5/2)+(1/2)・(1/3)・(1-(1/3^(n-1)))/(1-(1/3))<(11/4)<3
となるので{a_n}は有界で2,3はそれぞれ{a_n;n∈N}のひとつの下界と上界.
したがって定理
>>20
と定理4の証明の後段より 2≦e≦(11/4)<3.
実際には2=a_1<a_2<a_3<…だからe≠2.■
32
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:10:02
5. 区間縮小法
定理
各自然数nに対して閉区間I_n=[a_n,b_n]をI_(n+1)⊆I_nを満たすように定める.
このとき閉区間I_nの幅b_n-a_nがnの増大とともに限りなく小さくなるとすれば,
すべての閉区間I_nに共通して含まれるただ1つの点が存在する.
この定理によって1つの数を確定することを区間縮小法という.
33
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:10:35
証明
I_(n+1)⊆I_nが各自然数nに対して成り立つことより
a_1≦ a_2≦… a_n<b_n≦b_(n-1)≦…≦ b_1,
すなわち数列{a_n}は有界な単調増加数列,{b_n}は有界な単調減少数列である.
定理
>>20
より{a_n},{b_n}は極限値lim[n→∞]a_n=α,lim[n→∞]b_n=βを持つ.
m,nを自然数とするとn≦mならばa_n≦a_m<b_m≦b_n,
n>mならばa_m≦a_n<b_n≦b_m.いずれにしてもa_n≦b_m.
mを固定してn→∞とすればα≦b_m.
mは任意の自然数であるからm→∞としてα≦β.
lim[n→∞](b_n-a_n)=0なので,任意の正の数ε>0に対してある自然数n_0が存在し,
n>n_0のとき0≦ b_n-a_n<εが成り立つ.
ここでn→∞とすれば定理5(2)により0≦β-α<ε.
これはβ=αであることを示している.
m,nを任意の自然数としてa_n≦b_mであるが,mを固定してn→∞とすればα≦ b_m,
nを固定してm→∞とすればa_n≦α.
したがって任意の自然数m,nに対してa_n≦α≦b_m.
とくにm=nとすれば,任意の自然数nに対してα∈I_n.■
34
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:11:10
なおこの定理においてI_nが閉区間であることは重要である.
I_n=(-2^(-n),2^(-n))とすると-2^(-n)<-2^{-(n+1)}<2^{-(n+1)}<2^(-n)だから
I_(n+1)⊆I_nであり,lim[n→∞](2^{-n}-(-2^{-n}))=0-(-0)=0であり,
lim[n→∞]2^{-n}=lim[n→∞](-2^{-n})=0は,すべての自然数nに対して0∈I_nとなるが,
I_n=(0,2^{-n})であるとすると
0<2^{-(n+1)}<2^{-n}だからI_(n+1)⊆I_nでありlim[n→∞](2^{-n}-0)=0であり,
lim[n→∞]0=lim[n→∞]2^{-n}=0であるが0はどのI_nの元でもない.
これまでDedekindの公理
>>4
を仮定し,そこからWeierstrassの定理
>>6
を導き,
Weierstrassの定理
>>6
から定理
>>20
を導き,定理
>>20
から定理
>>32
を導いてきた.
いま定理>>からDedekindの公理
>>4
を導くことができればこれら4つの命題は
皆論理的に同値である.そこで定理>>を仮定し,Dedekindの公理
>>4
を導く.
35
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:11:57
A⊆R,B⊆R,A≠Φ,B≠Φ,A∪B=R,A∩B=Φとし,任意のx∈A,y∈Bに対してx<yが成り立つとする.
A≠Φ,B≠Φであるからa_1∈A,b_1∈Bなる実数a_1,b_1がとれる.
(a_1+b_1)/2がもしAの元であるなら(a_1+b_2)/2=a_2,b_1=b_2とし,Bの元であるなら
その点をa_1=a_2,(a_1+b_2)/2=b_2とする.
いずれにしてもa_1≦ a_2<b_2≦ b_1,a_1∈A,a_2∈A,b_1∈B,b_2∈Bである.
そこで(a_2+b_2)/2がAの元なら(a_2+b_2)/2=a_3,b_2=b_3,Bの元なら
a_3=a_2,(a_2+b_2)/2=b_3とする.いずれにしてもa_1≦ a_2≦ a_3<b_3≦ b_2≦ b_1,
a_1∈A,a_2∈A,a_3∈A,b_1∈B,b_2∈B,b_3∈B.
この操作を繰り返しI_n=[a_n,b_n]とおくと, I_{n+1}⊆ I_n,lim[n→∞](b_n-a_n)=0なる
閉区間の列が得られる.よって定理>>により,すべてのI_nに属する点αが存在する.
この点αがAの元であるとするとα<yであるならα≦ b_n<yなる自然数nが存在する.
y∈Aならb_n∈Bだからy<b_nとなってしまうのでy∈B.
したがってαはAの最大数である.このときBに最小数βが存在するとしたら,
α∈A,β∈Bだからα<βである.
lim[n→∞]b_n=αだからα≦b_m<βなる自然数mが存在するが,b_m∈Bであるので矛盾.
よってBに最小数はない.
αがBの元であるとするとx<αであるならx<a_n≦αなる自然数nが存在する.
x∈Bならa_n∈Aだからa_n<xとなってしまうのでx∈A.したがってαはBの最小数である.
このときAに最大数γが存在するとしたら,γ<αである.lim[n→∞]a_n=αだから
γ<a_n≦αなる自然数nが存在するが,a_n∈Aであるから矛盾である.
よってAに最大数はない.
以上によって定理
>>32
よりDedekindの公理が導かれた.
36
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:37:42
6. 収束の条件 Cauchyの判定法
定理
数列{a_n}が収束するための必要十分条件は,
任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,p>n_0かつq>n_0ならば|a_p-a_q|<ε
が成り立つことである.
証明
数列{a_n}がある数αに収束するなら,任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,
n>n_0であるなら|a_n-α|<ε/2が成り立つ.よってp>n_0かつq>n_0であるなら
|a_p-a_q|≦|a_p-α|+|a_q-α|<εが成り立つ.
数列{a_n}が,任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,p>n_0かつq>n_0ならば
|a_p-a_q|<εであるという条件を満たすならば,自然数Nが存在してp>Nのとき
a_N-1<a_p<a_N+1が成り立つ.
Mを{|a_1|,|a_2|,…,|a_N|,|a_N-1|,|a_N+1|}の最大数とすると,
すべての自然数nに対して|a_n|≦M.
自然数nに対してl_n,m_nを{a_k;k∈N,k≧n}のそれぞれ上限,下限とする.
m_(n+1)<m_nとするとm_(n+1)≦a_(n_1)<m_nを満たすn+1以上の自然数n_1が存在することになり,
m_nの定義に反するのでm_n≦m_(n+1).
同様の議論でl_(n+1)≦l_n.また,すべての自然数nに対して
m_n≦a_n≦l_nである.
37
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:38:30
よってI_n=[m_n,l_n]とおくとI_(n+1)⊂I_n.
任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在してp>n_0なら
|a_p-a_(n_0+1)|<ε/2がなりたつのでn_0以上の自然数pに対して
a_(n_0+1)-ε/2<a_p<a_(n_0+1)+ε/2.
これは{a_p;p∈N,k≧n_0+1}⊂(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)であることを示しており,
すべてのn_0+1以上の自然数pに対してl_(n_0+1)≦a_pであるのでl_(n_0+1)<a_(n_0+1)+ε/2.
また,l_(n_0+1)<a_(n_0+1)-ε/2とすればl_(n_0+1)≦a_q<a_(n_0+1)-ε/2なるn_0+1以上
の自然数qが存在することになってしまい,
{a_p;p∈N,k≧n_0+1}⊂(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)に反する.
よってl_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2).
同様の議論でm_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2).
したがって0≦l_(n_0+1)-m_(n_0+1)<ε.
n_0+1以上の自然数nに対してl_(n_0+1)≦l_n≦m_n≦m_(n_0+1)なので0≦l_n-m_n<ε.
定理
>>32
によりすべての自然数nに対してm_n≦λ≦l_nを満たす実数λが存在する.
lim[n→∞](l_n-m_n)=0より任意の正の数εに対して,
ある番号以上のnでλ-ε<m_n≦λ≦l_n<λ+ε,即ち,ある番号以上のnで
λ-ε<a_n<λ+εが成り立つ.
これはlim[n→∞]a_n=λであることを示している.■
38
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:39:02
有界な数列{a_n}に対して{a_k;k∈N,k≧n}の上限,下限をそれぞれl_n,m_nとおくと,
すべての自然数nでm_n≦l_nで,{l_n},{m_n}ともに有界な単調数列であることは,
定理
>>36
の証明中に述べた.よって定理
>>21
によってlim[n→∞]l_n=λ,
lim[n→∞]m_n=μが存在する.λ,μをそれぞれ{a_n}の上極限,下極限といい,
limsup[n→∞]a_n,liminf[n→∞]a_nと書く.
{a_n}が有界なら,m_1≦m_2≦…m_n≦…l_n≦l_{n-1}≦…≦l_2≦l_1だから
すべての自然数p,qでm_p≦l_q.
p→∞としてμ≦l_q.
q→∞としてμ≦λ.
{a_n}が収束列であれば,任意の正の数εに対してある番号以上で
lim[n→∞]a_n-ε<a_n<lim[n→∞]a_n+εであるから,
ある番号以上でlim[n→∞]a_n-ε<m_n≦l_n<lim[n→∞]a_n+ε.
よってlim[n→∞]a_n=λ=μ.
逆にλ=μであれば,任意の正の数εに対して,ある番号以上でλ-ε<m_n≦l_n<λ+ε.
そのときλ-ε<a_n<λ+εであるのでlim[n→∞]a_n=λとなる.
即ち有界数列には,上極限とか極限が必ず存在するが,
両者が一致するとき,またそのときに限り,その有界数列は収束するのである.
39
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:39:36
有界数列における上極限について,もう少し詳しく見てみよう.
以下有界数列を{a_n},{a_k;k∈N,k≧n}の上限をl_n,
limsup[n→∞]a_n=lim[n→∞]l_n=λとおく.
任意の正の数εに対して,ある番号以上のnに対してλ≦l_n<λ+εであるので,
ある番号以上のnにたいしてa_n<λ+εが成り立つ.
またλ-ε<l_nがすべてのnで成り立つので,
各nに対し,λ-ε<a_{p_n}≦l_nなるn以上の番号p_nがとれる.
以上より上極限は次のような性質を持っている.
(I) 任意の正の数εに対して,
(1°) 有限個のnをのぞいてa_n<λ+ε.
(2°) 無数のnでλ-ε<a_n.
言い換えれば,
(II) λのどんなに近くにも無数のa_nがあるが,λ<λ'なるいかなるλ'についても,
それはいえない.
あるいは(II)の無数のa_nのみを考えれば,
(III) λに収束する部分列はとれるが,λ<λ'なるいかなるλ'についても
λ'に収束する部分列はない.
40
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:40:23
不等号を逆向きにすれば,これらはすべて下極限の性質になる.
有界でない数列に対しても上極限,下極限を定義する.
上に有界でない数列{a_n}に対しては,{a_k;k∈N,k≧n}はいかなるnに対しても
上に有界でない.即ち上限がない.このときはlimsup[n→∞]a_n=+∞と定義する.
下に有界でない数列{a_n}に対しては{a_k;k∈N,k≧n}はいかなるnに対しても
下に有界でない.このときはliminf[n→∞]a_n=-∞と定義する.
上に有界であり,下に有界でない数列{a_n}については{a_k;k∈N,k≧n}は上に有界であるから,
この集合の上限l_nは存在して,l_n≧l_(n+1)がすべての自然数nに対して成り立つ.
l_n<l_(n+1)なるnがあるならl_n<a_p≦l_(n+1)なるn+1以上の自然数pが存在してしまうが,
p≧nであるからl_n≧a_pとなるはずなので不合理だからである.
数列{l_n}は下に有界にも非有界にもなりうるが,
有界のときはlimsup[n→∞]a_n=lim[n→∞]l_n,
非有界のときはlimsup[n→∞]a_n=-∞と定義する.
41
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:40:57
同様に{a_n}が下に有界で上に有界でないときは,
{a_k;k∈N,k≧n}の下限をm_nとし,{m_n}が上に有界のときは,
liminf[n→∞]a_n=lim[n→∞]m_n,有界でないときはliminf[n→∞]a_n=+∞であると定義する.
±∞を許せば,どんな数列も上極限,下極限を持つ.
上に有界でない数列{a_n}の上極限,下極限がともに+∞であるとすると,
任意の正の数Mに対して,ある番号以上のnで{a_k;k∈N,k≧n}の下限はMより大きい.
よってある番号以上のnでM<a_nとなりlim[n→∞]a_n=∞となる.
逆にlim[n→∞]a_n=∞となる数列{a_n}は上に有界ではなく,下に有界である.
下にも有界でないなら-100より小さいa_nが無数にあるが,
これはlim[n→∞]a_n=∞に反するからである.
{a_k;k∈N,k≧n}の下限をm_nとおく.
lim[n→∞]a_n=∞なので任意の正の数Mに対してある番号n_0以上のnでM<a_n.
よってM≦m_n.
{m_n}は増加列だからliminf[n→∞]a_n=lim[n→∞]m_n=∞となる.
同様の議論で{a_n}がlim[n→∞]a_n=-∞となることと,
liminf[n→∞]a_n=limsup[n→∞]a_n=-∞となることは同値である.
以上より,任意の数列{a_n}は±∞を許せば上極限,下極限を持つが,
両者が一致するとき,またそのときに限りlim[n→∞]a_nは存在し,三者は一致する.
42
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:41:38
例 a_n={(-1)^n*n+1}/nのときlimsup[n→∞]a_n=1,liminf[n→∞]a_n=-1.
証明 A_n={a_k;k∈N,k≧n}とし,A_nの上限,下限をそれぞれl_n,m_nとする.
nが奇数のときは a_n=(1/n)-1,
nが偶数のときは a_n=(1/n)+1.
よってnが奇数のときは
A_n={-1+(1/k);k∈N,k≧n}∪{1+(1/k);k∈N,k≧n+1}よりl_n=1+(1/(n+1)),m_n=-1.
nが偶数のときは
A_n={-1+(1/k);k∈N,k≧n+1}∪{1+(1/k);k∈N,k≧n}より
l_n=1+(1/n),m_n=-1.よってlimsup[n→∞]a_n=1,liminf[n→∞]a_n=-1.■
43
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:42:12
例
a_(2n)=1+{(-1)^n/n},a_{2n-1}=(-1)^n/nのときlimsup[n→∞]a_n=1,liminf[n→∞]a_n=0,
{a_n}は1より大きな項も,0より小さい項も無数に含む.
証明 任意の正の数εに対して,1/ε<Nなる自然数NをとればN以上の自然数nに対して
|a_{2n}-1|=1/n≦1/N<ε.よってlim[n→∞]a_{2n}=1である.
α>1とすると,nが奇数や4で割って2余る自然数であるとするとa_n<1,
1/(2(α-1))<n<1/(α-1)のとき(1+α)/2<a_(4n)<αであるがこれを満たすnは有限個である.
よってlimsup[n→∞]a_n=1.正数εに対し,1/ε<Nなる自然数Nをとれば,
n>Nで|a_(2n-1)|<ε.よってlim[n→∞]a_(2n-1)=0.
β<0とすると,nが偶数や4で割って3余るときは
0<a_n,β<a_(4n-3)<β/2を満たす自然数nは有限個であるので
liminf[n→∞]a_n=0.任意の自然数nに対してa_(4n)は皆1を超え,
a_(4n-3)は皆0より小さい.■
44
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:42:45
例 a_n=(-1)^n*nのときlimsup[n→∞]a_n=+∞,liminf[n→∞]a_n=-∞.
証明 任意の正の数Mに対して2n>Mなる自然数nについてはa_{2n}>M,a_{2n+1}<-M.
よって{a_n}は上にも下にも有界でない.
よってlimsup[n→∞]a_n=+∞,liminf[n→∞]a_n=-∞.■
45
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:43:24
例 a_n=cos nα(ただしπ/αは無理数.)のときlimsup[n→∞]a_n=+1,liminf[n→∞]a_n=-1.
証明 αはπの無理数倍だから任意の自然数nに対してnαはπの無理数倍.
実数xに対して2πn≦x<2π(n+1)なる整数nがただ1つ存在するが,
このnをφ(x)とし,ψ(x)=x-2πφ(x)とおくと,
任意の実数xに対してcosψ(x)=cos x,0≦ψ(x)<2π.
またψ(nα)=ψ(nψ(α)).
nψ(α)=2πとなる自然数nは存在しない.
2π<nψ(α)となる最小のnをn_1とする.
このとき0<ψ(n_1α)<ψ(α),n_1α/πは無理数.
2π<nψ(n_1α)となる最小のnをn_2とすると0<ψ(n_2α)<ψ(n_1α),
n_2αは無理数.
このようにして下に有界な減少列{ψ(n_kα)}をつくる.定理
>>21
より
lim[k→∞]ψ(n_kα)は存在し,0≦lim[k→∞]ψ(n_kα).
46
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:43:57
0<lim[k→∞]ψ(n_kα)であるとすると,
(d-1)lim[k→∞]ψ(n_kα)≦2π<dlim[k→∞]ψ(n_kα)なる自然数dが存在する.
このとき0<ψ(dlim[k→∞]ψ(n_kα))<lim[k→∞]ψ(n_kα)であるが,
lim[k→∞]ψ(n_kα)≦ψ(n_lα)<lim[k→∞]ψ(n_kα)+{(lim[k→∞]ψ(n_kα)-ψ(d*lim[k→∞]ψ(n_kα)))/d}
なる自然数lがとれるので
2π<d*lim[k→∞]ψ(n_kα)≦dψ(n_lα)<(d+1)lim[k→∞]ψ(n_kα)-ψ(d*lim[k→∞]ψ(n_kα))
=lim[k→∞]ψ(n_kα)+2π,
即ちψ(n_{l+1}α)<lim[k→∞]ψ(n_kα).これは不合理.よってlim[k→∞]ψ(n_kα)=0.
したがってlim[k→∞]a_(n_k)=1.すべての自然数nでa_n≦1だから,
{a_n}は1より大きな値に収束する部分列を持たない.よってlimsup[n→∞]a_n=1.
数列{ψ(n_kα)}は0に収束する減少列であるから,任意の正の数εに対して
ある番号以上のkに対して0<ψ(n_kα)<ε.
(p-1)ε≦π<pεとなる自然数pが存在し,
(p-1)ε<qψ(n_kα)=ψ(qn_kα)<pεなる自然数qが存在する.
よってπ-ε<ψ(rα)<π+εを満たす自然数rが無数に存在する.
これは{a_n}が-1に収束する部分列を持つことを示している.
またすべての自然数nで-1≦a_nだから
{a_n}は-1より小さな値に収束する部分列を持たない.よってliminf[n→∞]a_n=-1.■
47
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:44:31
自然数nに対して,点P_n=(x_n,y_n)が定まるとき点列{P_n}を考えることができる.
点列{P_n}が点A=(a,b)に収束するとは,任意の正の数εに対して,
自然数Nが存在して,n≧NのときP_nA<εが成り立つことをいう.
P_nA=√{(x_n-a)^2+(y_n-b)^2}より|x_n-a|≦P_nA,|y_n-b|≦P_nAだから
任意の正の数εに対してP_nA<εであるなら,
|x_n-a|<ε,|y_n-b|<εであるし,
任意の正の数εに対して|x_n-a|<ε/2,|y_n-b|<ε/2であるなら,
P_nA<εであるから,P_n→Aとはlim[n→∞]x_n=a,lim[n→∞]y_n=bに他ならない.
定理
>>36
は,
点列{P_n}が点Aに収束するための必要十分条件は,
任意の正の数εに対して自然数Nが存在し,p>N,q>NであるならP_pP_q<ε
となる.
三次元以上についても同様の話ができる.
48
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:45:34
7. 集積点
点の集合Sが有界であるとは,正の数Mが存在して,
Sに属するすべての点の各座標の絶対値がMを超えないことである.
点Aが集合Sに関する集積点であるとは,Aにどんなに近いところにも
Sの点が無数に存在することである.
AがSに関する集積点であってもA∈Sであるとは限らない.
任意の正の数εに対して0<ε/2<εでε/2∈(0,1)だから
0は(0,1)に関する集積点であるが¬(0∈(0,1)).
例
S={(x,y);x∈Q,y∈Q}とすると,すべての点(a,b)はSに関する集積点である.
証明
aが有理数なら,lim[n→∞](a+(1/n))=aでa+(1/n)∈Q.
aが無理数なら,aを十進表記したとき,小数点以下第n+1桁以下を切り捨ててできる
有理数をa_nとすれば,a_n∈Qで,lim[n→∞]a_n=a.
ゆえにaが有理数無理数の別にかかわらずaのいくらでも近くに無数の有理数がある.
bについても同様.よって点(a,b)のいくらでも近くに無数のSの点がある.■
49
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:46:07
例
S={(1/m,1/n);m∈N,n∈N}とすると(1/m,0),(0,1/n),(0,0)はSに関する集積点である.
証明
lim[n→∞](1/n)=0,lim[m→∞]1/m=0より
(1/m,0),(0,1/n), (0, 0)にいくらでも近いSの点が無数に存在する.■
命題
Sを点の集合とする.Sに関する集積点全体の集合をTとする.
AがTに関する集積点であるなら,AはまたSに関する集積点である.
証明
任意の正の数εに対してAP<εなるTの点Pがあり,PはSの集積点だから
PQ<ε-APなるSの点Qが無数にある.したがってAQ≦AP+PQ<εなるSの点Qが
無数にあることになる.■
50
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:46:46
数列{a_n}が同じ値aの項を無数に持つときaは{a_n;n∈N}の集積点になるとは限らない.
実際,すべてのnに対してa_n=1ならば{a_n;n∈N}はそもそも集積点を持たないし,
nが奇数のときa_n=0,nが偶数のときa_n=1/nとなるなら0は{a_n;n∈N}の集積点となる.
命題
数列{a_n}に対してS={a_n;n∈N}とする.{a_n}が同じ値の項を無数には持たないとき,
{a_n}が収束するならばlim[n→∞]a_nがSの唯一の集積点であり,
{a_n}が有界であり,aがSの唯一の集積点であるならばlim[n→∞]a_n=aである.
また{a_n}が有界ならばlimsup[n→∞]a_n,liminf[n→∞]a_nはそれぞれ,
Sの最大,最小の集積点である.
51
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:47:16
証明
{a_n}が同じ項を無数には持たず,lim[n→∞]a_n=aであるとする.
このときaのいくらでも近くに,ある番号以上のa_nがすべて入るのでaはSの集積点である.
いまbもSの集積点であるとすると,任意の正の数εに対して自然数Nがあって,
Nより大きな自然数nに対して|a_n-a|<ε/2であり,無数のmに対して|a_m-b|<ε/2である.
|a_m-b|<ε/2が成り立つNより大きなmは無数にあるが,これらのmに対して
|a-b|=|a-a_m+a_m-b|≦|a-a_m|+|a_m-b|<ε.εは任意であるのでa=bとなる.
{a_n}が有界でありaがSの唯一の集積点であるとする.
{a_n}が有界であるのでlimsup[n→∞]a_nとliminf[n→∞]a_nがともに有限であるが,
この2つの数はともにSの集積点であるので,
a=limsup[n→∞]a_n=liminf[n→∞]a_n.よってlim[n→∞]a_n=a.
{a_n}が有界であるとし,limsup[n→∞]a_nより大きなSの集積点aがあるとすると,
limsup[n→∞]a_n<b<aを満たす任意のbに対して,
b<a_n<aなる無数の自然数nがあることになる.
これは{a_n}がaに収束する部分列を持つことになり,
limsup[n→∞]a_n<aに反する.
即ちlimsup[n→∞]a_nはSの最大の集積点である.
{a_n}が有界であるとし,liminf[n→∞]a_nより小さなSの集積点aがあるとすると,
liminf[n→∞]a_n>b>aを満たす任意のbに対して,
b>a_n>aなる無数の自然数nがあることになる.
これは{a_n}がaに収束する部分列を持つことになり,
liminf[n→∞]a_n>aに反する.即ちliminf[n→∞]a_nはSの最小の集積点である.■
52
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:47:47
定理
有界な無数の点の集合に関する集積点は必ずある.
証明
二次元のときを証明する.有界な無数の点の集合をAとするとAはある正方形L_1に含まれる.
L_1={(x,y);a_1≦x≦b_1,c_1≦y≦d_1}とする.
L_1を4つの小正方形に分割すると,そのうち少なくとも1つはAの点を無数に含む.
その小正方形を
L_2={(x,y);a_2≦x≦b_2,c_2≦y≦d_2}とする.
L_2を4つの小正方形に分割すると,そのうち少なくとも1つはAの点を無数に含む.
その小正方形を
L_3={(x,y);a_3≦x≦b_3,c_3≦y≦d_3}とする.
この操作を繰り返すとa_1≦a_2≦…≦a_n≦…≦b_n≦b_{n-1}≦…≦b_1,
c_1≦c_2≦…≦c_n≦…≦d_n≦d_{n-1}≦…≦d_1なる数列{a_n},{b_n},{c_n},{d_n}が
得られる.
b_{n+1}-a_{n+1}=(b_n-a_n)/2,d_{n+1}-c_{n+1}=(d_n-c_n)/2だから定理
>>32
により,
すべての[a_n,b_n]に含まれるα,すべての[c_n,d_n]に含まれるβが存在する.
点(α,β)のいくらでも近くに無数のAの点があるので(α,β)はaに関する集積点である.
3以上のdに対してd次元のときは,有界な無数の点の集合を含むd次元立方体を考え,
それらを順次2^d個の小立方体に分割していき,上と同じ論法をとればよい.■
53
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:48:18
命題
AがSに関する集積点ならば,Aに収束するSの点列が取れる.
とくにSが数の集合でaがその上限や下限であるならであるならaに収束する数列{a_n}で,
すべてのnでa_n∈Sなるものがとれる.
証明
AP_n<1/nなるSの点P_nをとれば
P_n∈S,lim[n→∞]P_n=A.
aがSの上限ならa>bなる任意のbに対して,a≧x>bなるSの元xがいくらでも取れるので,
aはSに関する集積点である.下限についても同様.■
命題
有界な点列からは収束する部分列が取れる.
証明
{P_n}を有界な点列とし,S={P_n;n∈N}とする.
Sが有限集合なら,{P_n}は同じ項を無数に含むので,
その同じ項だけを集めた部分列{P_{n_k}}は収束する.
Sが無限集合なら定理
>>6
よりSは集積点Aを持つ.
よってAP_{n_k}<1/kなるSの点P_{n_k}が取れ,lim{k\to∈fty}P_{n_k}=A.■
54
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:48:50
定義
点の集合Sが閉集合であるとは,Sに関する集積点が皆Sの点であることをいう.
例
閉区間[0,1]は閉集合.
証明
x<0なら(x,x/2)内に[0,1]の点はひとつもなく,
1<xなら((1+x)/2,x)に[0,1]の点はひとつもない.
0<εなら,1/ε<nなる自然数nに対して1/n∈[0,1]であるので
0にいくらでも近い[0,1]の点が無数にあり,
1-ε<1なら1/ε<nなる自然数nに対して1-(1/n)∈[0,1]であるので,
1にいくらでも近い[0,1]の点が無数にある.
0<x<1であるとすると,1/ε<nなる自然数nに対して,
x-ε<x-(1/n)<x+εであるからxにいくらでも近い[0,1]の点が無数にある.
以上より[0,1]に関する集積点は[0,1].■
55
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:49:20
例
一点からなる集合は閉集合
証明
S={A}を一点からなる集合とする.
Aは例えばAの半径1以内のところにSの点を一点しか持たないので,
Sに関する集積点ではない.
A以外の任意の点をPとするとPに近いところに
Sの点は高々一点しかないので,PはSに関する集積点ではない.
即ちSに関する集積点は皆無である.
ゆえに命題「PがSに関する集積点であるならP∈S」は前提が偽であるから真である.■
56
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:49:51
命題
Sが閉集合でないとき,SにSに関する集積点を付け加えた集合[S]は閉集合である.
証明
Aを[S]に関する集積点であるとすると,
Aのいくらでも近くに無数の[S]の点があることになる.
Aのいくらでも近くに無数のSの点があるなら,
AはSに関する集積点だからA∈[S]だし,
Aのいくらでも近くに無数のSに関する集積点があるなら,
Aのいくらでも近いところに無数のSの点があることになり,
AはSに関する集積点,即ちA∈[S].
いずれにせよAが[S]に関する集積点なら[S]の点であることがいえたので[S]は閉集合.■
57
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:50:24
命題
2つの閉集合の共通集合はまた閉集合である.
証明
F_1,F_2を閉集合とし,AをF_1∩F_2に関する集積点であるとすると,
Aのいくらでも近いところにF_1∩F_2の点が無数にあることになる.
これはAがF_1に関する集積点であり,F_2に関する集積点でもあることを示しており,
F_1,F_2が閉集合であることからA∈F_1,A∈F_2であることを示している.
したがってF_1∩F_2に関する集積点はF_1∩F_2に属している.■
58
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:50:59
点の集合Sの径とは,{PQ;P∈S,Q∈S}の上限のことであるとする.
定理
有界な閉集合の列{S_n}が,すべての自然数nでS_{n+1}⊂S_nが成り立っており,
S_nの径をd_nとおけばlim[n→∞]d_n=0が成り立つとき,
すべてのS_nに共通して含まれる点がただひとつ存在する.
証明
各S_nから点P_nをとってつくった点列{P_n}はn≧mならS_m⊂S_nで
lim[n→∞]d_n=0だから,任意の正の数εに対し,ある番号N以上のnで
d_n<ε.よってあるn≧m>NならP_nP_m≦d_n<ε.定理
>>36
によって
lim[n→∞]P_n=Pなる点Pがある.
ある番号k以上ですべてP_n=Pであるとする.
あるnで¬(P∈S_n)とするとn以上のすべてのlで¬(P∈S_l).となってしまい,
kよりもnよりも大きなlでP=P_l∈S_lであることに反する.
よってすべてのnでP∈S_n.
{P_n;n∈N}が無数の点を含むとすると,Pは任意のnに対してS_nの集積点である.
S_nは閉集合であるから,P∈S_n.
QもすべてのnでQ∈S_nであるとすると,任意の正の数εに対して,ある番号以上のnに対して,
0<PQ<d_n<εであるのでP=Q.■
59
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:51:50
有界って条件は「最初の有限個を除いて{S_n}は有界」で十分ですね.
定理
無数の円の一組が有界な閉集合を覆うなら,その閉集合は無数の円のうちの有限個の円ですでに覆われている.
ここで円が集合を覆うとは,集合の各点が円の内部にあることをいう.
60
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/31(水) 02:52:21
証明
有界な閉集合Fを無数の円が覆っていて,
この無数のうちどのような有限個の円の組もFを覆い切れないとする.
Fを含む正方形Lを考え,Lを4つの小正方形に分ける.
4つに分けられた各小正方形とFの共通集合のどれもが,
有限個の円で覆われているとすれば,
Fも有限個の円で覆われていることになるので,
小正方形のうちどれかとFの共通集合は,有限個の円では覆い切れない.
この小正方形をL_1,L_1とFの共通集合をF_1とする.L_1を4つの小正方形に分ける.
4つに分けられた各小正方形とF_1の共通集合のどれもが,
有限個の円で覆われているとすれば,F_1も有限個の円で覆われていることになるので,
小正方形のうちどれかとF_1の共通集合は,有限個の円では覆い切れない.
この小正方形をL_2,L_2とF_1の共通集合をF_2とする.
このようにして小正方形の列{L_n}とFの部分集合の列{F_n}ができる.
すべてのnでF_n⊂L_n,L_{n+1}⊂L_nで,
nが限りなく大きくなるとL_nの径は限りなく0に近づくので,
定理
>>58
によりすべてのF_nに含まれる点が一意に存在する.
その点をAとする.AはFに関する集積点でありFは閉集合であるのでA∈Fである.
よってAはFを覆う無数の円のうちのどれか1つに含まれる.
n→∞のときF_nの径は0に近づくので,ある番号以上のF_nはAを含む円に含まれる.
これはFを覆う無数の円のうちのからどんな有限個の円の組を選んでも,
それらでF_nを覆えないことに反する.したがって定理は成り立つ.■
61
:
weapon
◆RRlBLdA0dk
:2005/08/31(水) 20:26:28
テラスゴス
62
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:07:30
8. 函数
文字xに任意の数を与え得るとき,xを変数という.ある数の集合における変数xの個々の数に対応して,それぞれ変数yの値を確定すべくひとつの規準が与えられているとき,yをxの函数という.特定の函数を表すときy=f(x),y=F(x)などと書く.yがxの函数ならyの値はxの値によって変動するので,xを独立変数,yを従属変数という.
独立変数の動きうる範囲を函数の定義域という.
「集合・位相入門」輪読会
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1078049875/258,
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1078049875/280
で定義された写像の終集合が数の集合のときを函数というのですが,
ずいぶんと定義の仕方が違いますね.
解析概論では,函数y=f(x)の定義域はyが実数の値となるような
xのとりうる最も広い範囲と解釈しているようです.
63
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:08:00
例 y=x^2とすればyは区間(-∞,∞)におけるxの函数.
例 y=sin xとすればyは区間(-∞,∞)におけるxの函数.ただしxの単位はラジアン.
例 y=√(1-x^2)とすればyは区間[-1,1]におけるxの函数.
実際,yが実数であるためには1-x^2≧0でなければならず,
このためには-1≦x≦1でなければならない.
また,逆に-1≦x≦1であれば,0≦x^2≦1だから√(1-x^2)は実数.
例 -1≦x<0でy=x+1,x=0でy=1,0<x≦1でy=-x+1とすればyは区間[-1,1]におけるxの函数.
例 x<0でy=-1,x=0でy=0,0<xでy=1とすればyは区間(-∞,∞)におけるxの関数.
この函数をy=sign xと書く.
例 x∈[0,1]∩Qでy=0,¬(x∈[0,1]∩Q)でy=1とすればyは[0,1]におけるxの函数.
例 0<x<1でxを二進法で表し,これを十進法で読んだものをy=f(x)とすると
yは区間(0,1)におけるxの函数である.
ただし2の冪が分母である有理数は有限二進数で書くことにする.
例えばf(1/2)=1/10,f(1/3)=f((1/4)/(1-(1/4)))=0.01010101…,f(1/4)=1/100.
64
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:08:33
函数y=f(x)に対してすべての定義域内のxについての点(x,f(x))の集まりを,
y=f(x)のグラフという.
ある数aに十分近いxのみに注目してy=f(x)を考察することがある.
b<a<cのとき(b,c)をaの近傍という.c-bの大きさは必要に応じて決める.
65
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:09:04
例 0<xでy=sin(1/x)とすればyは区間(0,∞)における函数.
0の近傍ではグラフは書ききれない.
例 x≠0でy=x sin(1/x),x=0でy=0とすればyは区間(-∞,∞)における関数.
0の近傍でグラフは書ききれない.
二次元以上のときにも函数は定義できる.
二次元のときは,一つの点P=(x,y)に対応して1つの数zが確定するべく
1つの規準が与えられればzを(x,y)の函数といい,z=f(x,y)などと書き表す.
例 z=ax+by+c,(a,b,cは定数)とすれば,zは(x,y)の函数.x,yの値は無制限.
例 z=√(r^2-x^2-y^2)とすれば,zは原点(0,0),半径rの円内における(x,y)の函数.
例 z=xyとすれば,zは(x,y)の函数.x,yの値は無制限.
例 (x,y)≠(0,0)でf(x,y)=2xy/(x^2+y^2),(x,y)=(0,0)でf(x,y)=0とすれば,
f(x,y)は(x,y)の函数.x,yの値は無制限.
例 点P=(x,y)がx^2+y^2<1をみたすとし,xもyも有理数ならf(x,y)=1,
その他の場合f(x,y)=0とすれば,f(x,y)はx^2+y^2<1における(x,y)の函数.
66
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:09:34
函数z=f(x,y)に対してすべての定義域内の(x,y)についての点(x,y,f(x,y))の集まりを,
z=f(x,y)のグラフという.
例z=ax+by+cのグラフは平面である.
例z=√(r^2-x^2-y^2)のグラフは半球面である.
例z=xyのグラフは双曲放物面である.
67
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/02(金) 03:10:04
z=f(x,y)のグラフにおいて,z=kとしたとき点(x,y)はk=f(x,y)を満たす図形の上にあるが,
この図形を,z=f(x,y)のz=kに対する等位線という.
例z=ax+by+cの各z=kに対する等位線たちは平行線である.
例z=√(r^2-x^2-y^2)の各z=kに対する等位線たちは原点を中心とする同心円である.
例z=xyの各z=kに対する等位線たちは等辺双曲線xy=kである.
例z=2xy/(x^2+y^2)については,k=2xy/(x^2+y^2)とおくと
k^2+((x^2-y^2)/(x^2+y^2))^2=1だからz=2xy/(x^2+y^2)とすれば,|z|≦1.
0≦θ≦πなるθに対してsin2θ=2xy/(x^2+y^2)とすると
sin2θ=2xy/(x^2+y^2)
⇔2cosθsinθ/(cos^2θ+sin^2θ)=2xy/(x^2+y^2)
⇔x^2cosθsinθ+y^2cosθsinθ=xycos^2θ+xysin^2θ
⇔(cosθsinθ)x^2-(ycos^2θ+ysin^2θ)x+y^2cosθsinθ=0
⇔xcosθ(xsinθ-ycosθ)-ysinθ(xsinθ-ycosθ)=0
⇔(xcosθ-ysinθ)(xsinθ-ycosθ)=0
であるので各z=sin2θに対する等位線は
2直線xcosθ-ysinθ=0とxsinθ-ycosθ=0から原点(0,0)を除いたもの.
68
:
RSKTTM
:2005/09/07(水) 03:06:03
試験は終わりましたが今日から運転免許取りにまた合宿に行かなくてはならないので・・・はぁ
とりあえず今までの部分のコメントを。
>>15
の定理3. の証明は、{n(k)}を自然数の値をとり+∞に発散する数列としても、
同様の議論が成り立つので、そうするとある意味で定理3. が拡張できたことになります。
>>26
たしかにそうですね。本文(P.3)によれば「どんな数も・・・一方"のみ"に属する」とありますから。
こんな風に考えるのはどうなんでしょうか。
x∈Aかつx∈Bなる実数xが存在したとする。このとき実数の切断の定義(
>>3
の(鄴))より
x<xでなければならないが、これは矛盾である。
ゆえにA∩B=∅ฺ.
よく言われることですが、
>>28
,
>>29
でnが十分大きいときの数列の"強さ"の比較ができます。
すなわちn^k<<a^n<<n!.
>>31
本文中には「古典数学では、それ({(1+1/n)^n})の極限値をもってeなる数の定義とした。」
とありますが、今ではΣ[n=0,∞](1/n!)をeの定義にしているのでしょうか。
>>33
10〜13行目で、ここが正しいのは分かるのですが、すでにlim[n→∞](a_n)=α, lim[n→∞](b_n)=β
の存在が分かっているので、定理5. を直接使って
0=lim[n→∞](b_n-a_n)=lim[n→∞](b_n)-lim[n→∞](a_n)=β-α.
∴α=β.
というのは駄目なんでしょうか。
{a_n}も{b_n}も収束するとき、もしその極限値が違ったら、定理5. より{b_n-a_n}の極限は
0になりません。
あと本文中に「α以外に各区間に共通なる数の存在しないことは仮定(2°)によって明白である。」
とありますが、僕にとってはそんなに明白ではありませんでした(なかなか直感が働かないので)。
これが「lim[n→∞](a_n)=lim[n→∞](b_n)=αによって明白である」と書いてあるのなら、かなり明白です。
例えばx<αなる実数xも全ての区間に共通だとすると、lim[n→∞](a_n)=αよりx<a_n<αなるa_nが
存在するはずなので矛盾します。
※仮定(2°)とはlim[n→∞](b_n-a_n)=0のこと。
>>36
この条件にある「任意のε>0に対応して番号n_0が定められて
p>n_0, q>n_0なるとき|a_p-a_q|<ε」を満たす数列{a_n}をCauchy列または基本列といいます。
>>37
5行目の「これは{a_p;p∈N,k≧n_0+1}⊂…」のところのkはpでよいのではないでしょうか。
あと6〜10行目のlはmだと思います(l_n=sup{a_n, a_(n+1), …}だから)。
69
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/07(水) 23:47:29
>>68
>こんな風に考えるのはどうなんでしょうか。
>x∈Aかつx∈Bなる実数xが存在したとする。このとき実数の切断の定義(
>>3
の(鄴))より
>x<xでなければならないが、これは矛盾である。
>ゆえにA∩B=Φ.
あ、そか。∀(a,b)∈A×B,a<bからA∩B=Φは導けますね。
>今ではΣ[n=0,∞](1/n!)をeの定義にしているのでしょうか。
比較的早期に考えられた定義、程度の意味でしょう。
{(1+1/n)^n}の極限でもlim[x→0](1+x)^(1/x)でもΣ[n=0,∞](1/n!)でも
lim[h→0]((a^h-1)/h)=1となるaでも、どの二つをとってもすべて
互いに同値ですからどれを定義にしてもかまわないはずです。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1098628177/70-84
に参考になることが書いてあると思われます。
70
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/08(木) 01:00:31
>10〜13行目で、ここが正しいのは分かるのですが、すでにlim[n→∞](a_n)=α, lim[n→∞](b_n)=β
>の存在が分かっているので、定理5. を直接使って
>0=lim[n→∞](b_n-a_n)=lim[n→∞](b_n)-lim[n→∞](a_n)=β-α.
>∴α=β.
>というのは駄目なんでしょうか。
それでもいいと思います。
71
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/08(木) 01:01:01
>あと本文中に「α以外に各区間に共通なる数の存在しないことは仮定(2°)によって明白である。」
>とありますが、僕にとってはそんなに明白ではありませんでした(なかなか直感が働かないので)。
>これが「lim[n→∞](a_n)=lim[n→∞](b_n)=αによって明白である」と書いてあるのなら、かなり明白です。
>例えばx<αなる実数xも全ての区間に共通だとすると、lim[n→∞](a_n)=αよりx<a_n<αなるa_nが
>存在するはずなので矛盾します。
>>33
では各区間に共通な数の一意性の証明を書き忘れてましたね。補足しましょう。
各区間に共通な数がαの他にもう1つあるとしてこれをγとする.
α<γだとするとある番号Nより大きなnについて
b_n-a_n<γ-αとなるが,これはa_n≦α<γ≦b_nに反する.
γ<αだとしても同様.■
明白っていう科白は文字通り受け取らなくてもいいと思いますよ。
明白とか自明とか明らかとかいう文字を見たら、教育的だから演習にしますよ
っていうメッセージだと思いましょう。
72
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/08(木) 01:23:10
>>26
まで読んだ。問題なしです。
>>5
うちの微積の授業を担当した教授は
aはSの上限である
⇔(1)∀x∈Sに対して、x≦a
(2)∀ε>0に対して、∃x∈S s.t. a-ε<x
ってやってました。
こっちの方がε-Nとの兼ね合いで使いやすいかなって気がします。
例えば、
>>21
とかで。
続き読み進めます。RSKTTM氏が帰ってくるまでに追いついとくつもりで。
73
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/08(木) 02:05:18
>>72
参加してくれますか!!
うれしいね。
よろしければ
>>24-25
であげた問題もドゾー。
74
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/08(木) 02:36:11
>>73
担当するのは時間かかるんで考え中なんですが、つっこみはやるつもりなんで遅れないように読んでいこうかなぁと。
75
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/08(木) 02:42:11
>>74
ええ。どうぞどうぞ。突っ込みだけでも大歓迎ですよ!!
76
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/09(金) 03:17:07
>>44
まで読んだ。なかなか追いつかないorz
>>30
ε-Nって凄いって初めて思ったのがこの証明見たときでした。
こうやったら無限個を有限個にして扱えるんだなぁって。
>>37
l_(n_0+1)∈[a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)
m_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2]
より0≦l_(n_0+1)-m_(n_0+1)<ε.
かな。
>>43
>|a_{2n}-1|=1/n≦1/N<ε.よってlim[n→∞]a_{2n}=1である.
>α>1とすると,nが奇数や4で割って2余る自然数であるとするとa_n<1,
>1/(2(α-1))<n<1/(α-1)のとき(1+α)/2<a_(4n)<αであるがこれを満たすnは有限個である.
>よってlimsup[n→∞]a_n=1.
-1<a_n<3/2より{a_n}は有界なので、limsup[n→∞]a_n=αとおけて
∀n∈N;a_{4n}>1なのでα≧1.
しかし、仮にα>1であるとすると、
nが奇数や4で割って2余る自然数であるときa_n<1であること、及び
1/(2(α-1))<n<1/(α-1)のとき(1+α)/2<a_(4n)<αであるがこれを満たすnは有限個であることから、
αは
>>39
の(Ⅰ)の(1゚)の性質を満たさない。これはlisup[n→∞]=αであることに矛盾。
したがって、α=1
ってことですね。
ほんでもって、liminf[n→∞]a_n=βですね。
>>45
まだちゃんと読んでないですけど
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1110674207/272
とだいたい同じ方針ですね。
77
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/10(土) 01:41:06
>>45
と
>>46
の行間埋め。
α=ψ(α)+2πφ(α)
∴nα=nψ(α)+2πnφ(α)
ここで、x=nψ(α)とすれば、nψ(α)=ψ(nψ(α))+2πφ(nψ(α))
∴nα=ψ(nψ(α))+2π{nφ(α)+φ(nψ(α))}
0≦ψ(nψ(α))<2π,nφ(α)+φ(nψ(α))∈Nなので
ψ(nα)=ψ(nψ(α))
nψ(α)=2πとなる自然数nは存在しない。
もし、存在したとすると
nα-2πnφ(α)=2πより
nα=2π(nφ(α)+1)となり、任意の自然数nに対してnαがπの無理数倍であることに矛盾。
2π<nψ(α)となる最小のnをn_1とする.
nψ(α)=2πとなる自然数nは存在しないことより(n_1-1)ψ(α)<2π<n_1ψ(α)<4π.
∴ψ(α)=n_1ψ(α)-(n_1-1)ψ(α)>n_1ψ(α)-2π=ψ(n_1ψ(α))=ψ(n_1α)
∴ψ(n_1α)<ψ(α)
>2π<nψ(n_1α)となる最小のnをn_2とすると0<ψ(n_2α)<ψ(n_1α),
0<ψ(n_1n_2α)<ψ(n_1α)となるので、改めてn_1n_2をn_2と置きなおす。
じゃないですか?
>(d-1)lim[k→∞]ψ(n_kα)≦2π<dlim[k→∞]ψ(n_kα)なる自然数dが存在する
>このとき0<ψ(dlim[k→∞]ψ(n_kα))<lim[k→∞]ψ(n_kα)であるが,
lim[k→∞]ψ(n_kα)≦ψ(n_lα)<lim[k→∞]ψ(n_kα)+{(lim[k→∞]ψ(n_kα)-ψ(d*lim[k→∞]ψ(n_kα)))/d}
>なる自然数lがとれるので
ここはイコールがいりますね。
(d-1)lim[k→∞]ψ(n_kα)≦2π<dlim[k→∞]ψ(n_kα)なる自然数dが存在するから直ちにいえるのは
0<ψ(dlim[k→∞]ψ(n_kα))≦lim[k→∞]ψ(n_kα)です。
でも、このままだと次の論証がとちくるっちゃうんで、イコールをはずさないといけない。
もし、∃i∈Nに関してi*lim[k→∞]ψ(n_kα)=2πが成り立ったとすると、
lim[k→∞]ψ(n_kα)=2π/i
∀ε>0に対して、∃m_0∈Nをとれば、m_0<kなる任意のkにおいて0≦ψ(kα)-2π/i<ε
∴0≦i*ψ(α)-2π<i*ε
n_(k+1)の定め方より、
∴0≦ψ(n_(k+1))≦i*ψ(n_kα)-2π<i*ε
従って、m_0+1以上の任意のkに対して|ψ(n_k)|<i*ε
iはεによらない定数なので、lim[k→∞]ψ(n_k)=0となり矛盾.
ゆえに、任意の自然数nについてi*lim[k→∞]ψ(n_kα)≠2πが成り立つ。
よって、(d-1)lim[k→∞]ψ(n_kα)<2π<dlim[k→∞]ψ(n_kα)なる自然数dが存在する。
このとき0<ψ(dlim[k→∞]ψ(n_kα))<lim[k→∞]ψ(n_kα)であるが,
lim[k→∞]ψ(n_kα)≦ψ(n_lα)<lim[k→∞]ψ(n_kα)+{(lim[k→∞]ψ(n_kα)-ψ(d*lim[k→∞]ψ(n_kα)))/d}なる自然数lがとれるので
って感じですね。
78
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/10(土) 02:43:01
今日は
>>56
まで。
>>45
,
>>46
以降は特に問題なしです。
>>53
>AP_n<1/nなるSの点P_nをとれば
これが取れるのは選択公理によるものだってのが「選択公理と数学」って本にのってた気がします。
M_n={P|AP<1/n,P∈S}とすればM_n≠φであるので、
選択公理より、Π[n∈N]M_n≠φ
従って、(P_n)_(n∈N)∈Π[n∈N]M_nなる点列が取れるって感じで。
79
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/10(土) 13:19:14
>>60
>AはFを覆う無数の円のうちのどれか1つに含まれる
Fが閉なので、集積点がどれかの円に含まれないといけないってのが重要ですね。
>解析概論では,函数y=f(x)の定義域はyが実数の値となるような
>xのとりうる最も広い範囲と解釈しているようです.
そんな解釈してますか?
xの区間を定めて、そこで各xに対してyの数値が定まるとき、yはxの函数であり、先に定めた区間が定義域である。
って感じで書いてますよ。
例ではそう解釈してるようにも見えますが。
>>63
>例 x∈[0,1]∩Qでy=0,¬(x∈[0,1]∩Q)でy=1とすればyは[0,1]におけるxの函数.
x∈[0,1]∩Qでy=0,x∈[0,1]∩Q^cの間違いですね。
やっと追いつきました。大筋問題なしです。
解析概論は数式使わずに日本語で説明しようとして、定義があいまいになるきらいがありますね。
80
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:36:57
>>76
>
>>30
>ε-Nって凄いって初めて思ったのがこの証明見たときでした。
>こうやったら無限個を有限個にして扱えるんだなぁって。
「収束列は有界(
>>17
)」なんかもそうですね。
>
>>37
>l_(n_0+1)∈[a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)
>m_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2]
>より0≦l_(n_0+1)-m_(n_0+1)<ε.
>かな。
失礼。そのとおりです。
81
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:38:11
>
>>43
へのコメント
舌ったらず失礼。そのとおりです。
>>77
>一段目
はい。そのとおり。
>二段目
そのとおりです。
>三段目
そのとおりです。
>四段目
ああそうです。そうかいたてたつもりでした。スマソ。
82
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:38:41
>五段目
うー致命的ミスですね。ψ(n_kα)が全部2πの無理数倍でも
lim[k→∞]ψ(n_kα)は2πの整数倍かもしれないんですね。
>六段目の補足証明。
乙です。つーか、尻拭いさせてしまってすんません。
ψ(α)はψ(kα),ψ(n_(k+1))はψ(n_(k+1)α),ψ(n_k)はψ(n_kα)
ですよね。
83
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:39:11
>>78
「選択公理と数学」どこいったんかなー。ちょっとヤサガシしないと
でてこないなー。一つ一つのMnは空でなくても、点列{P_n}の存在は
選択公理による保障がいるってわけか。うーむ、P_nが帰納的に定義できたり
「一般項」を与える方法が分かってるわけじゃなく、各nに対するP_nの
存在が分かってるだけだから、厳密には(可算)選択公理が必要か。
84
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:39:43
>>79
>一段目
まさしく。
>二段目。
本文にはたしかにそう書いてある(ただし始集合は定義域じゃなくって「定義区間」)
んですが、例には「区間(-∞,∞)内のすべての点xに対してyの値をy=x^2によって
与えれば,yは区間(-∞,∞)で定義されたxの函数である」などという書き方ではなく
「y=x^2とすれば,yは区間(-∞,∞)におけるxの函数である」と、あたかもx→x^2なる
対応が与えられれば、その対応に応じて定義区間が定まるような書き方をしてるように
見えるから、
>>62
のように書きました。
>三段目
そうです。「∈の否定の記号、機種依存文字ちゃうか?どうしよ。まあ¬
使っとくか。」って考えて¬のかかる範囲への注意がどっかへ行ってしまったようです。
スマソ。
85
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/10(土) 21:42:17
精読訂正補足証明、本当にありがとうございます。
数々の間違い、読みにくい文章すんませんでした。
自分で読み返しても、わかり辛かった。
これに懲りずに今後ともよろしく。
なお、IEでみるとき(省略されました。云々)がでない
ようにするため、1レス25行までが一応推奨です。
九節はもう少しお待ちを。
86
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/10(土) 22:31:46
>>82
>乙です。つーか、尻拭いさせてしまってすんません。
いえいえ、
>>45
の証明は自分ではできるかどうかw
一年のとき、演習で出されて解けなかったし。
結局誰も発表しなくて、解答がわからずじまいになってたんで、すっきりしました。
>ψ(α)はψ(kα),ψ(n_(k+1))はψ(n_(k+1)α),ψ(n_k)はψ(n_kα)
>ですよね。
あう。そうです。
87
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/10(土) 23:03:02
>>83
この辺は選択公理が必要かどうか、気づきにくいところですよね。
だいたいの教科書では{P_n}が取れることなんて、サラッと流してるし。
しっかし、選択公理が必要か必要じゃないかってなんか明晰判明にわかった気がしないんだなー。
>>84
>「y=x^2とすれば,yは区間(-∞,∞)におけるxの函数である」と、あたかもx→x^2なる
>対応が与えられれば、その対応に応じて定義区間が定まるような書き方をしてるように
>見えるから、
>>62
のように書きました。
なるほど。確かにそんな書き方ですね。
>>85
>なお、IEでみるとき(省略されました。云々)がでない
>ようにするため、1レス25行までが一応推奨です。
了解!
88
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:41:27
9. 連続的変数に関する極限
ある範囲で定義された点Pの函数f(P)について,Pが定点Aに限りなく近づくとき,
函数の値f(P)が一定の値αに近づくなら,αをAにおけるf(P)の極限といい,
P→Aのときf(P)→αとか,lim{P→A}f(P)=αとかく.これは詳しく言えば,
任意の正数εに対して,ある正数δが存在して,AP<δなら|f(P)-α|<ε
ならしめることができるということである.
また,任意の正数Mに対して,ある正数δが存在して,AP<δならf(P)>Mとできるとき,
lim{P→A}f(P)=∞,
任意の正数Mに対して,ある正数δが存在して,AP<δならf(P)<-Mとできるとき,
lim{P→A}f(P)=-∞である.
なお二次元において,P=(x,y),A=(a,b)とおくと,
任意の正数εに対して,ある正数δが存在して,AP<δなら|f(P)-α|<ε
とできるなら,|x-a|<δ/√{2},|y-b|<δ/√2なら|f(P)-α|<εとできるし,
任意の正数εに対して,ある正数δが存在して,|x-a|<δ,|y-b|<δならば
|f(P)-α|<εとできるとすればAP<δなら|f(P)-a|<εとできる.
89
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:41:59
したがってlim{P→A}f(P)=αの定義を,
「任意の正数εに対して,正数δが存在して,|x-a|<δ,|y-b|<δならば
|f(P)-α|<εとできる」にしてもかまわない.
なお一次元におけるlim{x→∞}f(x)=αの定義は,
任意の正数εに対して,正数Mが存在し,x>Mであるなら|f(x)-α|<ε,
lim{x→-∞}f(x)=αの定義は,
任意の正数εに対して,整数Mが存在し,x<-Mであるなら|f(x)-α|<ε
である.
90
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:42:32
命題 点Pを含む範囲で定義された函数f(P),g(P)について,
P→Aのときf(P)→α,g(P)→βならば,
(1°) lim{P→A}(f(P)+g(P))=α+β.
(2°) lim{P→A}(f(P)-g(P))=α-β.
(3°) lim{P→A}(f(P)g(P))=αβ.
(4°) lim{P→A}{f(P)/g(P)}=α/β.
ただし(4°)においては,β≠0である.
証明 (1°) 任意の正数εに対して,ある正数δ_1が存在し,AP<δ_1ならば
|f(P)-α|<ε/2とでき,このε/2に対しある正数δ_2が存在し,AP<δ_2ならば
|g(P)-β|<ε/2とできるので,δ_1,δ_2の大きくない方をδとおくと
AP<δなるPに対して
|(f(P)+g(P))-(α+β)|≦|f(P)-α|+|g(P)-β|<ε.
(2°) 任意の正数εに対して,ある正数δ_1が存在し,AP<δ_1ならば
|f(P)-α|<ε/2,とでき,このε/2に対しある正数δ_2が存在し,AP<δ_2ならば
|g(P)-β|<ε/2とできるので,δ_1,δ_2の大きくない方をδとおくと
AP<δなるPに対して
|(f(P)-g(P))-(α-β)|≦|f(P)-α|+|g(P)-β|<ε.
91
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:43:02
(3°) 任意の正数εに対して,ある正数δ_1が存在し,AP<δ_1ならば
|f(P)-α|<ε/2|β|とできる.このとき|f(P)|<|α|+ε/2|β|.
このε/2|β|と|α|+ε/2|β|に対してある正数δ_2が存在し,AP<δ_2ならば
|g(P)-β|<ε/2(|α|+ε/2|β|)とできるので,δ_1とδ_2の大きくない方をδとおくと
|(f(P)g(P))-(αβ)|=|f(P)g(P)-f(P)β+f(P)β-αβ|
≦|f(P)||g(P)-β|+|f(P)-a||β|<ε.
(4°) 任意の正数εに対して,ある正数δ_1が存在してAP<δ_1ならば
|g(P)-β|<ε/2|β|^2とできる.
また正数|β|に対して正数δ_2が存在してAP<δ_2ならば,
|g(P)|>|β|/2とできる.よってδ_1とδ_2の大きくない方をδとおくと,
AP<δなるPに対しては
|(1/g(P))-(1/β)|=|g(P)-β|/|g(P)||β|<ε.■
92
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:43:39
例 連続的変数xに対してlim{x→∞}(1+1/x)^x=e.
証明 n≦x<n+1なる自然数nに対して,
{(1+1/(n+1))^{n+1}/(1+1/(n+1))}=(1+1/(n+1))^n
<(1+1/x)^n<(1+1/x)^x<(1+1/x)^{n+1}<(1+1/n)^{n+1}
=(1+1/n)^n*(1+1/n).
>>31
の例5より
lim{n→∞}(1+1/n)^n=e,また
>>18
の定理5(4)より
lim{n→∞}{(1+1/(n+1))^{n+1}/(1+1/(n+1))}=e.
よって任意の正数εに対してある自然数Nが存在してn≧Nなら
e-ε<{(1+1/(n+1))^{n+1}\over(1+1/(n+1))}<(1+1/x)^x<(1+1/n)^n<e+ε.
したがってlim{x→∞}(1+1/x)^x=e.■
93
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:44:42
例 lim{x→0}(sin x/x)=1.
証明 もしx>0の範囲でlim{n→∞}(sin x/x)=1が示されていれば,
任意の正数εに対して正数δがあってx<δなるxに対して|sin x/x-1|<εとできる.
sin(-x)/(-x)=sin x/xであるので,|x|<δなるxに対しても|sin x/x-1|<εとできる.
よってx>0のときlim{x→0}(sin x/x)=1であることを示せばよい.
0<x<π/2として,平面上に中心をO,半径を1とする中心角2xの円弧を描く.
円弧の両端点をA,Bとし扇型OABを考える.∠AOBの二等分線と線分ABの交点をH,
直線OHと円弧ABの交点をK,点A,Bにおける円弧の2接線の交点をCとする.
このとき三角比の定義よりAM=sin x,AC=tan x,弧AK=xである.
弧ABの長さは第三章四十節で後述するように,弧AB上にいくつかの点をとって
それらを結んでできる折れ線の長さたちの上限であるので
線分ABの長さは弧ABの長さより大きくはない.
弧AD上の二点を結ぶいかなる線分も線分ACと鋭角をなす.
したがって弧AB上のいかなる折れ線の長さよりも折れ線ACBの長さのほうが大きい.
よって弧ABの長さは折れ線ACBの長さより小さくはない.
即ち0<x<π/2のとき0<sin x<x<tan x.これよりcos x<sin x/x<1.
0<sin x<xよりlim{x→0}sin x=0,
>>90
の命題(2°),(3°)よりlim{x→0}cos x=lim{x→0}(1-2sin^2(x/2))=1.
したがって任意の正数εに対してある正数δが存在し0<x<δなるxに対して,
1-cos x<εならしめることができる.よって1-sin x/x<εならしめることもできる.■
94
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:45:20
命題 点Pの函数f(P)に対して,lim{P→A}f(P)=lであるなら,
Aに近づく任意の点列{P_n}に対してlim{n→∞}f(P_n)=l.
証明 lim{P→A}f(P)=lなら,任意の正数εに対して正数δがあって,
AP<δを満たすPに対して|f(P)-l|<εとできる.lim{n→∞}P_n=Aなら,
ある自然数Nがあってn≧NであればAP_n<δなので,このとき|f(P_n)-l|<ε.■
95
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:45:51
命題 任意の点Aに近づく点列{P_n}に対して数列{f(P_n)}が収束するなら,
これらの数列は皆同じ値に収束する.またこの極限値をlとおくと,lim{P→A}f(P)=l.
証明 lim{n→∞}P'_n=A,lim{n→∞}f(P_n)=l,lim{n→∞}f(P'_n)=l'であるとする.
点列{P''_n}をP''_{2n-1}=P_n,P''_{2n}=P'_nと定義するとlim{n→∞}P''_n=A.
したがって{f(P''_n)}は収束する.lim{n→∞}f(P''_n)=l''とおくと,
{f(P_n)}も{f(P'_n)}も{f(P''_n)}の部分列であるので,
>>15
の定理3よりl''=l=l'.
lim{P→A}f(P)=lでないとすると,ある正数εがあって,
任意の正数δに対してAP<δであるが|f(P)-l|≧εなるPが存在することになる.
したがって任意の自然数nに対してAQ_n<1/nであるが|f(Q_n)-l|≧εなるQ_nがとれる.
したがって選択公理によりAに近づく点列{Q_n}でlim{n→∞}f(Q_n)=lとならないものが
あることになる.不合理.■
96
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/09/11(日) 05:47:21
>>94
の命題と
>>95
の命題によりlim{P→A}f(P)=lであることと,
任意のAに収束する点列{P_n}に対してlim{n→∞}f(P_n)=lであることが,
同値であることが示された.
要するに連続的変数に関する極限を,数列の極限に帰着する術を得たわけである.
よって連続的変数に関してもCauchyの判定法は考えることができるし上極限,
下極限も定義できる.即ち
>>36
の定理によって函数f(P)に対して
lim{P→A}f(P)が存在するための必要十分条件は,任意の正数εに対して,
ある正数δが存在して,AP<δ,AQ<δならば|f(P)-f(Q)|<εである.
またlimsup_{P→A}f(P)=lim{t→0}\sup_{0<AP<t}f(P),
liminf_{P→A}f(P)=lim{t→0}\inf_{0<AP<t}f(P)と定義すればよい.
limsup_{P→A}f(P)=liminf_{P→A}f(P)=lであるならlim{P→A}f(P)=lである.
97
:
たま
◆U4RT2HgTis
:2005/09/24(土) 04:08:00
>>91
(3゜)
β=0のとき
ある正数δ_1がとれて、AP<δ_1ならば|f(P)-α|<1.このとき、|f(P)|<|α|+1
ε/(|α|+1)に対して、ある正数δ_2がとれて、AP<δ_2ならば|g(P)|<ε/(|α|+1)
δ_1とδ_2の大きくない方をδとおくとAP<δのとき
|(f(P)g(P))-(αβ)|=|f(P)||g(P)|<ε
>>93
>このとき三角比の定義よりAM=sin x,AC=tan x,弧AK=xである.
AH=sin xですね。
>弧AD上の二点を結ぶいかなる線分も線分ACと鋭角をなす.
>したがって弧AB上のいかなる折れ線の長さよりも折れ線ACBの長さのほうが大きい.
ここ表現が分かりにくい気がする。
弧AB上の点P_1・・・P_nを結ぶ折れ線をとったとき、各P_iからそれぞれOCと
平行な直線を引いて、そのそれぞれの直線とACとの交点をP'_1・・・P'_nとすると
P_iP_(i+1)<P'_iP'_(i+1)となるから
(∵OCをx軸としたときのACの傾きとP_iP_(i+1)の傾きを比較して)
AC=Σ[1,n-1]P'_iP'(i+1)>Σ[1,n]P_iP(i+1)=(折れ線の長さ)
よって、弧ACの長さよりも線分ACの長さの方が大きい。って感じかなぁ。
あとは問題なしです。
98
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/10/10(月) 22:33:37
>>97
ありゃ、また補完させてしまった。すんません。
10. 連続函数
ある範囲で定義された点Pの函数f(P)について,Pが定点Aに限りなく近づくとき,
函数の値f(P)が一定の値f(A)に近づくなら,即ちlim_{P→A}f(P)=f(A)であるとき,
f(P)はAにおいて連続であるという.
ε-δ式にいえば,
任意の正数εに対して,ある正数δが存在して,AP<δなるPに対し|f(P)-f(A)|<εならしめるとき,
f(P)はAで連続なのである.
ある範囲でのすべての点で連続な函数を,その範囲において連続であるという.
命題
>>90
により,ある範囲で連続な2つの函数の和,差,積,商はその範囲で連続である.
商については分母が0でない点においてのみ連続である.
定数函数や恒等函数は連続であるから,それらの和,差,積,商で表される多項式で表される函数,
有理関数は連続である.
99
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/10/10(月) 22:38:43
|sin(x+h)-sin x|=|sin((x+h/2)+(h/2))-sin((x+h/2)-(h/2))|
=|2cos(x+h/2)sin(h/2)|≦2cdot1cdot|h/2|=|h|なので
sin xは(-∞,∞)で連続,
|cos(x+h)-cos x|=|cos((x+h/2)+(h/2))-cos((x+h/2)-(h/2))|
=|-2sin(x+h/2)sin(h/2)|≦2cdot1cdot|h/2|=|h|なので
cos xは(-∞,∞)で連続,
tan xは命題
>>90
によりnを整数として,すべてのnに対するx≠((2n-1)π)/2で連続である.
独立変数が実数である函数においては,
正数εに対してある正数δが存在して,a<x<a+δなるxに対して
|f(x)-α|<εが成り立つときをlim_{x→a+0}f(x)=αとかf(a+0)=αと書く習慣である.
xが減少しながらaに近づくときf(x)がαに近づくとき,このように書くのである.
正数εに対してある正数δが存在して,a-δ<x<aなるxに対して
|f(x)-α|<εが成り立つときをlim_{x→a-0}f(x)=αとかf(a-0)=αと書く習慣である.
xが増加しながらaに近づくときf(x)がαに近づくとき,このように書くのである.
100
:
Мечислав(☆11)
◆QRDTxrDxh6
:2005/10/10(月) 22:46:12
f(a-0),f(a+0)の定義より直ちに f(a-0)=f(a+0)=α⇔lim_{x→a}f(x)=αである.
f(a-0)=f(a)のときf(x)はx=aで左連続,f(a+0)=f(a)のときf(x)はx=aで右連続であるという.
左連続と右連続の定義から直ちに,f(x)がx=aで連続であるためには,
f(x)がx=aで左連続かつ右連続であることであることが必要かつ十分であることが分かる.
函数f(x)が閉区間[a,b]で連続であるとは,f(x)が開区間(a,b)で連続,
x=aで右連続,x=bで左連続であることを指す.
>>63
の4つ目の例の函数をf(x)とすればf(x)は[-1,1]で連続である.
実際,f(-1)=0,f(0)=1,f(1)=0,hが0<h<1を満たす実数なら
f(-1+h)-f(-1)=f(0)-f(-h)=f(0)-f(h)=f(1-h)-f(1)=hだから
f(-1+0)=f(-1),f(0-0)=f(0+0)=f(0),f(1-0)=f(1)である.
例
>>65
の2つ目例の函数をf(x)とすればf(x)は(-∞,∞)で連続,
実際,x≠0だと
|sin{1/(x+h)}-sin{1/x}|
=|sin({{1/(x+h)}+{1/x}/2}+{{1/(x+h)}-{1/x}/2})
-sin({{1/(x+h)}+{1/x}/2}-{{1/(x+h)}-{1/x}/2})|
=|2cos{{1/x+h}+{1/x}/2}sin{{1/x+h}-{1/x}/2}|
≦|{1/x+h}-{1/x}|.
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