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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

602ブック:2004/06/14(月) 01:38
     EVER BLUE
     第三十一話・MIGHT 〜超力招来〜


「『ネクロマンサー』!!」
 ニラ茶猫が、右腕に生やした刃を福男目掛けて薙ぐ。
「『テイクツー』!!」
 自身のスタンドで、その斬撃を苦も無く受け止める福男。
 そのまま、受けに使ったのとは別の腕でニラ茶猫に拳を突き出す。

「くッ!!」
 左腕で、ニラ茶猫がその一撃を受ける。
 しかし生身の体では近距離パワー型のスタンドの力に敵う筈も無く、
 ニラ茶猫の体は勢いよく後方に吹っ飛ぶ。

「がはッ…!!」
 壁に叩きつけられ、ニラ茶猫が苦悶の声を上げる。
 受けに使用した左腕の骨は無残に砕け、
 その皮膚はない出血でどす黒く変色していた。

「ちッ!
 この野郎が…!」
 打撃による損傷は、斬撃や銃撃のそれと比べて修復が難しい。
 『ネクロマンサー』を砕けた骨などに擬態させて治癒を行うも、
 その再生速度は遅かった。

「…!オオミミ!!」
 と、ニラ茶猫がヒッキーと闘っているであろうオオミミの方を心配そうに見やる。
 しかし、オオミミは既に闘いの場を移したらしく、
 既にさっきまで居た場所には居ない。

「…人の心配をしている余裕があるのかな?」
 福男が嘲笑を浮かべながら口を開いた。
「へっ、ほざいてろ。
 さっきのはラッキーパンチってやつだフォルァ。
 手前なんざ、あと一分で蹴散らして…」
 そこでニラ茶猫はようやく自分の左腕の異変に気がついた。
 左腕の『テイクツー』の拳を受けた部分が、締め付けられたように縮んでいる。
 普通骨折をした場合には、その箇所が腫れ上がるものなのだが、
 今回は逆にしぼんでいるのだ。
 これは、明らかに異常だった。

「なっ!?
 これは…!!」
 ニラ茶猫が驚くのとはお構い無しに、左腕はどんどん圧縮されていった。
「うあああああああああああああああ!!!」
 肉が、骨が、中心めがけて収縮していく。
 その圧力に耐え切れなくなり、皮膚が裂けて血がそこから噴出する。

 ―――グシャリ。

 音を立てて、ニラ茶猫の左腕がレモンの絞りかすのように潰れきった。

「ぎゃああああああああああああああ!!!」
 ニラ茶猫が発狂したかの如く叫んだ。
 打撃、斬撃、銃撃。
 彼も今までに幾つもの痛苦を味わってはきたものの、
 流石に今回のそれは初めて受ける痛みであった。
 当然といえば当然である。
 体の一部が圧縮されるなど、余程の拷問でもない限り味わう事は無い。

「『テイクツー』!」
 痛みに苦しむニラ茶猫に、福男が止めを刺すべく飛び掛かる。

「うあああああああああああ!!!」
 身を捩じらせ、ニラ茶猫が寸前で追撃を回避する。
 いや、それは最早『回避』というよりも『避難』といった方が近かった。

603ブック:2004/06/14(月) 01:39

「畜生がああぁぁぁ…!
 それが、手前の能力か…!!」
 息を切らしながら、ニラ茶猫が福男を睨む。
 その左腕から滴り落ちた血が、足元に赤い水溜りを作っていた。

「だとしたら?」
 構えを取る福男。
 ニラ茶猫との間の距離は凡そ十五メートル。
 互いに、一足飛びに攻撃できる距離ではない。

「…どうやら、そのスタンドのお手手には迂闊に触れられない方がよさそうだな。
 頭までこの左腕みたいになるのは勘弁だぜ…!」
 『ネクロマンサー』で、ズタズタになった骨や筋肉を復元しながらニラ茶猫が呟いた。
 痛みは、『ネクロマンサー』を脳内麻薬に擬態させる事で和らげる。

「…お前も吸血鬼か何かか?」
 ものの十秒程で復元されたニラ茶猫の左腕を見て、福男が尋ねる。

「へっ、さてなァ。」
 ニラ茶猫が懐からドリンク剤の瓶を何本か取り出し、一気に飲み干した。
「…?」
 その余りに突飛な行動に、首を傾げる福男。

「心配すんな。
 これは只の、何の変哲も無いドリンク剤さ…!」
 直後、ニラ茶猫が大きく跳躍する。
 闘うには問題無い位に復元した左腕からは『ネクロマンサー』の刃を生やし、
 右手にはドリンク剤の空き瓶を持っている。

「らあァ!!!」
 上段からの振り下ろし。
 福男が、それをスウェイバックでかわす。
「せいッ!!」
 そこから返す形での切り上げ。
 しかし、そのニラ茶猫の攻撃を虚しく空を切る。

「無駄だ!
 近距離パワー型に、その程度の体術が通用するかっ!!」
 福男が反撃に打って出ようとする。
 寸前、ニラ茶猫はそんな福男の眼前にドリンク剤の瓶を投げつけた。
 それと同時に、ニラ茶猫は後ろへと飛んで福男から距離を離す。

「小細工をっ!!」
 福男が腕でその瓶を薙ぎ払おうとする。
 彼のスタンド『テイクツー』の腕が、瓶に触れ―――

604ブック:2004/06/14(月) 01:39


「!!!!!!!!!」
 その瞬間、ドリンク剤の瓶が大爆発を起こした。
 ガラス片が飛び散り、血飛沫が周囲に舞う。

「…ニトログリセリン。
 大変危険な為、その扱いには充分注意を払いましょう。
 俺の切り札は、ドリンク剤の中身じゃなくて空き瓶の方だったんだよな。」
 そう、ニラ茶猫は空になった空き瓶の中に、
 『ネクロマンサー』をニトログリセリンに擬態させて入れておいたのだ。

「さて、オオミミの方に加勢しに行く…」
 そこで、ニラ茶猫は言葉を止めた。
 爆発時に生じた煙の中に、立ち上がる人影を発見したからだ。

「…やって……くれたな…」
 全身を黒こげにしながらも、福男がよろめきながら立ち上がる。
 火傷が、徐々にではあるが回復していった。

「…だからお前らって嫌いなんだよ。」
 呆れたように肩を竦めるニラ茶猫。
 だがそんな軽薄な態度とは裏腹、その首筋には冷や汗が伝う。

「『テイクツー』!」
 目を血走らせ、福男がニラ茶猫目掛けて突進する。
「ちっ!!」
 接近戦では分が悪いと判断したニラ茶猫が、後方へ飛びずさる。
 しかし急所には命中しなかったものの、
 『テイクツー』の拳はニラ茶猫の右足を捉えた。

「!!!!!!
 ぐああぁッ!!!!!!!」
 悲鳴と共に、ニラ茶猫の右足が音を立てて潰れていく。
 片足を失ったニラ茶猫は、バランスを崩して地面に倒れた。

「死ね…!」
 そこに襲い来る福男とそのスタンド。
「おわあア!!」
 床を転がりながら、ニラ茶猫が何とかその一撃をかわそうとする。
 しかし完全には避け切れず、修復したばかりの左腕が再び圧壊していった。
 それでもなおニラ茶猫は転がり続け、
 その勢いを利用して地面を跳び、片足で着地する。

「逃がすか!」
 福男がニラ茶猫を追いかけながら、スタンドの拳を繰り出す。
「!!!!!!!!」
 刹那、福男の眼前で閃光が迸り彼の目を灼いた。
 マグネシウム。
 火を点ける事で、激しく発光しながら燃え上がる金属。
 ニラ茶猫は着火剤としてリンを使う事で、
 マッチやライター不要のお手製閃光弾を作ったのだ。
 リンならば、指先で擦るだけでも充分に発火させられる。

「なッ…!
 糞…!!」
 視界を奪われ、一時的に前後不覚になる福男。
 ニラ茶猫は、その隙に福男から命辛々距離を取って再生を始める。
 このダメージは、かなり大きい。

605ブック:2004/06/14(月) 01:40

(ひいいいィィィィィィィィィ…
 ひいいいいいいいいいいイイイイイイイィィィィィ…!
 痛え。
 痛えエェ…
 ぅ痛うぇえええええええええええええええええええ!!!!!!!)
 位置を悟られる訳にはいかないので、
 絶叫を何とか喉の位置で外に出さぬよう押し込める。
 『ネクロマンサー』で痛みを消し去る事も出来ないでもないが、
 過度の麻酔の投与は戦闘に重大な悪影響を及ぼす。
 動くのに差し支えの無いギリギリの量で、ニラ茶猫は何とか我慢する事にした。

(で、どうするよ…
 恐らく奴の能力は、触れたものをその中心を基点に圧縮する事。
 あの拳で頭や胴体を触られたら、その時点でアウトだ。
 三月ウサギなら、触らせる間も無く解体出来るんだろうが…
 俺には無理だ。
 接近戦じゃ勝ち目はねぇ。
 かといって逃げる訳にもいかねぇし…)
 『ネクロマンサー』に擬態による回復を急がせながら、ニラ茶猫が思考を巡らせる。

(毒ガス攻撃…
 …駄目だ。
 この船の中じゃ、俺だけでなく他の奴らまで巻き添えだ。
 それに、あいつに通用するかも分からねぇ。
 糞。万事休すかよ…!)
 ニラ茶猫が小さく舌打ちする。

「…そこにいたのか。」
 視界を取り戻した福男が、ニラ茶猫に向き直った。
「お早いお目覚めで…」
 軽口を叩きながらも、内心大焦りのニラ茶猫。

(兎に角、もう少しで肉や骨への擬態が完了する。
 だけど、回復してるだけじゃ奴には勝てねぇ…
 …待てよ。
 『肉』と『骨』に擬態だって!?)
 ニラ茶猫が、はっと顔を見上げた。

「これで決める!!」
 そんなこんなしているうちに、福男が飛び掛ってくる。
「ちッ!!」
 横に跳び、ニラ茶猫が寸前で拳をかわす。
 『テイクツー』の腕が、深々と船内の通路の壁に突き立てられた。

「おおらあああああああああああ!!」
 がら空きになった胴に福男の、ニラ茶猫が『ネクロマンサー』の刃を突き出す。
「当たるかッ!」
 しかし、福男は後ろに跳躍してその刃を軽々と避けた。

(糞がッ!
 だけど、もう少しだ。
 もう少しで、何かが繋がる。
 『ネクロマンサー』の、新しい可能性が…!)

「!!!!!!!!」
 その時、先程『テイクツー』の拳が突き刺さった周囲の壁が、奇妙に盛り上がった。
 ニラ茶猫がそれに気づくも、もう遅かった。
 通路の壁が次々と盛り上がり、ニラ茶猫を巻き込む形で中心目掛けて潰れる。
 ニラ茶猫の体は、たちまち潰れていく壁の中へと飲み込まれた。

606ブック:2004/06/14(月) 01:40


「…流石にこうなっては、自慢の再生も役には立たないだろう。
 おあつらえの棺桶といった所か。」
 ひしゃげた通路を眺めながら、福男が呟いた。
 通路は跡形も無く圧縮され、最早見る影も無い。
 当然、その中のニラ茶猫も―――

「!!?」
 その時、押し潰された通路から、一つの刃が突き出された。
 目を見開く福男。
 見間違える筈も無い。
 それは、ニラ茶猫の腕から生えていた―――

「!!!!!!!!」
 轟音と共に、潰れた通路の壁が吹き飛んだ。
「…礼を言うぜ。
 ここまで追い詰められて、ようやく『ネクロマンサー』の新しい応用を思いついたぜ。
 何で、こんな簡単な事に気がつかなかったんだろうなぁ…」
 その中から、一つの人影がゆっくりと姿を現す。
 特徴的な緑の頭髪。
 それは紛れも無く、ニラ茶猫のトレードマークであった。
 しかしその体躯は二周り以上にも肥大し、
 その表皮は亀甲の如く硬質な鎧で覆われている。
 刃を精製する応用で、全身を鎧に包み込む。
 この硬い皮膚こそが、先程の壁からニラ茶猫を守ったのだった。

「…!!」
 福男が絶句する。
 最早それは断じて人ではなく、怪物との呼び名こそが相応しかった。
「何を驚いてんだよ。
 ちょっとした、ドーピングみたいなもんさ。」
 怪物が、笑う―――

「!!!!!!!!!」
 直後、福男の体が紙切れのように吹き飛んだ。
 『ネクロマンサー』を筋肉に擬態。
 それにより引き出される驚異的な膂力と敏捷力。
 それらを余す事無く注ぎ込んだ、腕の一振りが福男に叩きつけられたのだ。

「……!!」
 悲鳴を上げる暇も無く、血と臓物を撒き散らしながら福男がすっ飛ばされる。
 そのまま福男は壁に叩きつけられ、
 赤黒い色の版画を壁に貼り付けて絶命した。

「…俺に触れる事は死を意味する、ってか。」
 ニラ茶猫は力なく笑うと、床に肩膝をついた。
 スタンドの酷使によって『ネクロマンサー』の擬態が強制的に解除され、
 彼の体が見る見る元の姿へと戻っていく。

「がはッ…!」
 口から血を吐き、その場に倒れるニラ茶猫。
「…やっぱ、スタンドパワーにも俺の体にも、
 相当の無茶だったみてぇだな……」
 力無く、ニラ茶猫が口を開く。
 それでも満身創痍の体に鞭を打ち、彼は何とか立ち上がった。

「…寝てる暇はねぇのが辛い所だよなぁ、ほんと。
 待ってろよオオミミ。
 すぐにいくぜぇ…」
 ニラ茶猫はそう呟きながら、体を前へと引きずるのであった。



     TO BE CONTINUED…

607ブック:2004/06/15(火) 03:10
     EVER BLUE
     第三十二話・SIDEWINDER 〜魔弾〜


 僕とオオミミは、暗い顔の小柄な男に向かって構えを取っていた。
 男の手には、木製グリップのやや古めかしい狙撃銃。
 あれが、男の得物という事か。

「…ボクノナマエハヒッキー。
 キミハナノラナクテイイヨ。
 ドウセ、ココデシヌンダカラ…」
 男が自己紹介しながら銃口をこちらに向けた。
 それに耳を傾けながら、オオミミがじりじりと距離を詰める。
 それでも、ヒッキーとの間合いはまだ二十メートル近くある。
 この距離では、こちらの攻撃は届かない。

「ぎゃああああああああああああああ!!!」
 後ろの方から、ニラ茶猫の悲鳴が聞こえてくる。
 まさか、彼の身に何かあったのか!?

「ヨソミヲスルナ…!」
 ヒッキーの狙撃銃から、激発音と共に銃弾が放たれた。
「『ゼルダ』!」
 オオミミが叫ぶ。
「応!」
 僕の右腕で、飛来する銃弾を弾き飛ばす。
 フルオートによる斉射なら兎も角として、
 この程度の銃撃ならば僕でも充分に防御は可能。

「…退くならば、俺は追わない。」
 オオミミが低く呟く。
 あの狙撃銃では、自分を倒せないと確信しての言葉だろう。

「ヨウスミノイチゲキヲカワシタクライデ、ナニヲイイキニ…」
 ヒッキーが再び銃を構えた。
 何のつもりだ?
 そんな銃など僕には通用しない事は、さっきので分かっているだろうに。
 だけど、彼からの殺気にハッタリの風は無い。
 気を抜く訳にはいかないようだ。

「レッドスネークカモンカモン…」
 ヒッキーが呟くと、半透明の赤い管のようなものが幾つか周囲に出現した。
 その管はまるで蛇のようにグネグネと蠢いている。
 これが、奴のスタンドか…!

608ブック:2004/06/15(火) 03:11

「コレガボクノ『ショパン』…
 キミハモウ、ニゲラレナイ。」
「!!!」
 半透明の赤い蛇が、オオミミに襲い掛かる。
 咄嗟に僕は腕でオオミミを庇おうとした。

「!?」
 だが、僕の腕には何ら手応えが感じられなかった。
 見ると赤い蛇は僕の体をすり抜け、オオミミまで伸びている。

「なっ!?」
 思わず声を漏らすオオミミ。
 どういう事だ?
 この蛇はみたいなスタンドには、お互いに干渉出来ないのか!?

「シンパイシナクテイイヨ。
 ソノヘビノカラダニオサマラナイサイズノモノニハ、マッタクエイキョウハオヨバナイ。
 ダケド…」
 ヒッキーが赤い蛇の胴体目掛けて照準を合わせる。
「コノジュウダンナラバ、ヘビノドウタイノナカニジュウブンオサマル…!」
 ヒッキーが狙撃銃の引き金を引いた。

「!!?」
 発射された弾丸が蛇の胴体へと収まった瞬間、銃弾が突如その軌道を変えた。
 いや、これは、赤い蛇の中を通って来ている!?

「くッ!!」
 弾丸が、蛇の胴体の中を進みながら僕達へと向かってくる。
 だけど、速度自体はさっきのと一緒だ。
 構わず弾き飛す。

「!!!」
 しかし、弾丸の弾かれた先には既に半透明の蛇が待ち構えていた。
 弾丸が蛇の胴体に取り込まれると、
 再びその中を通って僕達に襲い掛かる。

「ぐあッ!!」
 弾丸はそのまま蛇の体を通り、オオミミの肩口へと喰らいついた。
 オオミミが痛みに顔を歪める。

「!!!」
 しかし、それだけでは終わらなかった。
 ヒッキーがさらに銃弾を撃ち出してくる。
 蛇の胴体へと入り込み、その中を突き進んでくる弾丸。
 そして、蛇自体もその身に弾丸を宿したまま僕達に襲い掛かる。

(あの蛇から離れろ!オオミミ!!)
 僕は叫んだ。
 どうやらあの半透明な蛇の中に入った物体は、
 その体内に沿う形で移動するらしい。
 それは逆に言えば、弾丸は必ずそこを通るという事だ。

「!!!!!」
 オオミミが、必死に赤い蛇から逃れようとする。
 だが赤い蛇はそれを許さじと、僕達に向かって襲い掛かる。
 胴体をくねらせ、その姿を自在に変える蛇。
 しかも、そのスピードはかなり速い…!

(オオミミ!!)
 半透明の蛇の胴体が、オオミミの左腕と重なる。
 そこを高速で通過する弾丸。

「ぐぅッ!」
 咄嗟に僕が腕で弾丸を止めようとするも間に合わず、
 銃弾がオオミミの左腕を貫いた。
 そして、貫通した弾丸はまたもや半透明の蛇の胴へと潜り込み、
 僕達へと突き進んでくる。

「ムダダヨ。
 ボクノ『ショパン』カラハノガレラレナイ…」
 弾込めをしながらヒッキーが呟く。
 そうかい、なら…

「直接、本体であるお前を叩く!!」
 オオミミがヒッキー目掛けて突進した。
 これ以上、向こうお得意の間合いに付き合う必要などありはしない。

「サセナイ!」
 蛇の胴体がオオミミの眼前を遮る。
 そこを一瞬にして通過する銃弾。
「うわあ!」
 オオミミが、慌てて立ち止まった。
 その鼻先を銃弾が掠める。
 あと少し停止が遅れたら、頭を打ち抜かれていた所だ。

609ブック:2004/06/15(火) 03:11

「!!!!!!」
 だが、そこで動きを止めたのがまずかった。
 立ち止まったオオミミの足に、
 蛇の体の中をカーブしながら進んできた銃弾が喰い込む。
 しまった。
 いつの間にか足元にも蛇を配置されていたか…!

「……!!」
 足にダメージを負い、床に横転するオオミミ。
 しかし、このまま倒れていては鴨撃ちだ。
 僕の足をオオミミと重ね、そのまま後ろへ跳躍する。

「!!!!!」
 そこに襲い来る赤い半透明の蛇と、その中の銃弾。
(無敵ィ!!)
 僕はすぐさま拳を振るい、蛇の体内を駆ける銃弾を叩き落そうとする。

「!!!!!」
 しかし僕の拳が弾丸に触れる直前で、
 蛇の体が大きくよじれた。
 スカを食らう僕の右拳。
 だが銃弾は止まらない。
 オオミミが身をかわそうとするも、
 銃弾は蛇の体内を通りながら無慈悲にオオミミの脇腹へと突き刺さった。

(オオミミ!!)
 がっくりと膝をつくオオミミ。
 内臓を痛めたらしく、その口からは一筋の血が伝う。

「ククク…イイキミダ……」
 ヒッキーが嫌らしい笑みを浮かべる。
 糞。
 僕がついていながら何て様だ…!

「サテ、イツマデイキテイラレルノカナ…」
 ヒッキーが狙撃銃の引き金に指をかけた。

「…『ゼルダ』。」
 オオミミが、小声で僕に囁いた。
(…分かってる。)
 そう、オオミミの言いたい事は分かっていた。
 あのヒッキーのスタンドは、銃撃と組み合わせる事で威力を発揮するスタンド。
 ならば銃撃さえ封じてしまえば、そのスタンドは全くの無力と化す。
 そして、僕の能力による結界ならばそれが可能。
 問題は、能力が完全に発動するまで持ち堪えられるかどうかだ…!

「『ゼルダ』…!!」
 オオミミが、精神を集中させる。
 場を支配していく圧迫感。
 結界を張る為の力場が、周囲に展開していく。

「ナニヲスルツモリダ…!?」
 勿論、その隙を逃す程敵も馬鹿ではない。
 オオミミ目掛けて、次々と銃弾を撃ち込んでくる。

「無敵ィ!!」
 僕はその弾丸を何とか防ごうとする。
 しかし、能力の発動の為に大半の力を注いでいる上に、
 変幻自在の軌道で襲い掛かる銃弾。
 僕に出来るのは、何とか急所だけは外す事ぐらいだった。

「…!!」
 オオミミの体に、次々と銃弾が突き刺さる。
 だが、それでもオオミミは集中を解かなかった。

610ブック:2004/06/15(火) 03:12

「宿し手は宿り手に問う。汝は何ぞ。」
 痛みと闘いながら、オオミミが結界展開の為の詠唱を開始する。
(我は業(チカラ)。道を進まんが為の、業なり。)
 それに答える形で、僕も言葉を紡ぐ。

(宿り手は宿し手に問う。汝は何ぞ。)
「我は意志(チカラ)。道を定めんが為の意志なり…!」
 脂汗を流しながら、オオミミが詠唱を続ける。

「ナニヲゴチャゴチャト…!」
 ヒッキーが更に銃弾を放つ。
 蛇の中を通って飛び掛かる銃弾。
「……!!」
 オオミミが、咄嗟に身をよじる。
 しかし弾丸は彼の背中へと着弾した。
 オオミミが大きく体を崩す。

(業だけでは存(モノ)足らず。)
「意志だけでは在(モノ)足らず。」
 徐々に展開されていく力場。
 あと少し。
 あと少しだ…!

「孤独な片羽は現世を彷徨う。」
 銃撃を受け、体勢を崩しながらも、オオミミは詠唱を止めない。

(ならば我等一つとなりて。)
「業と意志で存在(ヒトツ)となりて。」

「高き天原を駆け巡らん!」(高き天原を駆け巡らん!)

「クタバレ…!」
 撃ち出される弾丸。
 そして、それが次々とオオミミの体に穴を開ける。
 痛み痛み痛み痛み痛み痛み痛み痛み。
 それでもなお、オオミミは歯を喰いしばって耐える。

 あと少し。
 あと少し。
 あと少し―――!

「折れし翼に安息を。」
(傷つきし翼に祝福を。)

「翼失いし心に羽ばたきを!」(翼失いし心に羽ばたきを!)
 僕は、溜め込んでいた力を一気に解放した。

「!!!!!!!!!!!!!!!」
 空間に、
 いや、世界に亀裂が走った。
 そしてそのひび割れた部分がガラスのように崩れ落ち、
 別の空間を構築していく。

「ナッ…!?」
 狼狽するヒッキー。
 だが、もう遅い。
 僕の能力は、既にここに完成した…!

(我は最早人ではない。)
「空手に入れし、鳥(ツバサ)なり―――」


「…the world is mine.(かくて世界は我が手の中に)」

611ブック:2004/06/15(火) 03:12





 ――――――――空。

 辺りに広がる、一面の空。
 何処までも続く、永遠の青。
 これはオオミミの内的宇宙の具現。
 …『ゼルダ』である僕の力。

「ナッ、コレハナンダ…!」
 ヒッキーがオオミミを睨む。

「…これが俺の『ゼルダ』の力だよ。」
 血塗れになった体で、オオミミが一歩ヒッキーへと歩み寄る。

「クソ!コレシキノコトデ…!」
 ヒッキーがスタンドを発動させ、狙撃銃の引き金を絞った。

「!?」
 ヒッキーが驚愕する。
 いくら引き金を引いても、銃弾が発射されなかったからだ。

「…悪いけど、この空間では銃を使えないように『ルール』を決めさせて貰いました。」
 息を切らしながら、オオミミが告げる。

「『ルール』…!?」
 思わずヒッキーが聞き返す。

「そう。
 だから、ここでは俺も銃は使えない…』
 オオミミがさらにヒッキーに近づいた。
 このダメージ。
 オオミミの体はそろそろ限界だ。
 もうあまり長くは結界を持続させる事は出来ない為、早く決着をつける必要がある。

「…!
 ジュウヲフウジタクライデ、ソノカラダデボクニカテルトデモ…!」
 ヒッキーが銃を捨て、満身創痍のオオミミ目掛けて飛び掛かった。
 だが―――

(無敵ィ!!!)
 遅い。
 三月ウサギやタカラギコの速さに比べれば、
 止まっているようなものだ。
 いくら本体のオオミミが傷ついているとはいえ、それしきで僕が倒せるか…!

「無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵無敵ィィィィ!!!」
 続けざまにヒッキーに拳を打ち込んでいく。
 体に残された僅かな力を全て攻撃に注ぎこむ!

「ウボアマーーーーーーーーーーー!!!」
 全身を挽肉に変えながら、ヒッキーが吹っ飛ぶ。
 殴り飛ばされたヒッキーは地面に落ち、そのまま二度と動かなくなった。

612ブック:2004/06/15(火) 03:12



「……!」
 オオミミががっくりと膝をついた。
 それと同時に、スタンドパワーが底をついて張り巡らした結界が解除される。
 一面の空から、景色が見慣れた船内の通路へと戻っていった。

(大丈夫か!?オオミミ!!)
 僕はオオミミに声をかけた。
「…大丈夫。
 まだ、やれるよ。」
 力無く微笑みを返すオオミミ。
 馬鹿。
 嘘ばかり言いやがって…!

「…!
 ちょっとあんた、大丈夫なの!?」
 と、そこへあまり聞きたくない声が響いてきた。
 天の声だ。

「天、何でこんな所に!
 危ないから物置の中に隠れてろって…!」
 珍しくオオミミが語尾を荒げる。
 個人的には、この女には闘いに巻き込まれて死んでくれればスカッとするのだが。

「あんたの情けない悲鳴が聞こえてきたから、
 わざわざ助けに来てあげたってのに、何よその言い草。
 大体、今はあんたの方が危ないんじゃなくて!?」
 偉そうにのたまう天。
 うるさい余計な事言うなシバくぞ。

「オオミミ!」
 そこに、ニラ茶猫も駆けつけてきた。
 どうやら、向こうも片付いたらしい。

「ニラ茶猫…」
 オオミミがニラ茶猫へと顔を向ける。
 壁にもたれ掛かりながら、ひこずるように体を動かしながらやってくるニラ茶猫。
 『ネクロマンサー』での回復が出来なくなる程、
 力を使い果たしてしまったらしい。
 これでは、オオミミの怪我を治してもらうのは無理か。

「酷くやられたな、フォルァ。」
 ニラ茶猫が苦笑する。
「ニラ茶猫だって…」
 掠れた声で受け答えするオオミミ。

「…治癒してやりてぇのは山々だが、
 見ての通り自分の頭の蝿も追えねぇ有様でな…
 悪いが、ちょっと我慢しといてくれ。」
 ニラ茶猫がすまなそうに言う。
「大丈夫。
 これ位、なんて事無いよ…」
 明らかになんて事ある体で、オオミミが答える。
 全く、やせ我慢も程々に―――


     ドクン


(―――!!)
 僕の内側を、覚えのある鼓動が襲った。
 これは、三月ウサギとタカラギコとの稽古の後の―――
 だが、その時よりずっと大きくなっている…!

「……!」
 天も、体を震わせている。

 何だ、これは。
 何なんだこれは。
 来る。
 来ている。
 何かが来る…!!

「『ゼルダ』、天…?」
 オオミミが不思議そうに尋ねた。

(オオミミ…気をつけろ。
 何かがヤバい…!)
 何の根拠も無い、
 しかしコーラを飲んだらゲップが出る位に確実な予感が、僕の脳裏をよぎっていた。

「『ゼルダ』…?」
 オオミミが心配そうに僕に声をかける。
 しかし、その間にもなお、
 不吉な予感はさらに影を大きくするのであった。



     TO BE CONTINUED…

613N2:2004/06/15(火) 14:59

━━━━━━━━━━━━━━

 まもなく
 『ギコ兄教授の何でも講義 2時限目』が
 始まります

              ∩_∩
━━━━━━━━━ |___|F━━   ∧∧
              (・∀・ ;)        (゚Д゚;)
        ┌─┐   /⊂    ヽ    /⊂  ヽ
        |□|  √ ̄ (____ノ   √ ̄ (___ノ〜
      |   |  ||    ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | あのさ、あれって一発ネタじゃなかったっけ?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  ………だよなあ。
         \________________

614N2:2004/06/15(火) 15:01

 椎名先生の華麗なる教員生活 第3話 〜運命の出会い〜

暗い部屋に、一人。
視覚も、嗅覚も、聴覚も、触覚も絶たれて、
私は暗い部屋に一人。

ああ、これは夢だ、と私はすぐに気が付く。
今まで何度も苦しめられてきた、いつもと同じあの夢に決まっている。
しかし、それは『彼』の夢ではない。
それよりも、もっと陰湿で、果てしなく悲しい夢。

おぼろげな気配。
それは無邪気な子供たち。
しかし、その心中には果てしない程の邪気。

浮かび上がる子供たちの姿。
私には分かる。
この子らが私にどんな悪意を抱いているか。これから何をするか。
ああ、私に近寄るな。

「てめえッ、親が偉いからって図に乗るんじゃねえ!!」
私に近付くなり、私の顔を殴りつける一人の少年。
一人が動けば、皆が動く。
皆で動けば、怖くない。
良心の呵責が仲間外れの疎外感に負け、
一撃の痛みが更なる痛みを連鎖する。
響く邪気に満ちた声々。

「あんた、『おやのななひかり』ってやつで自分が目立ってるとか思ってるでしょ?
…そういう態度が気に入らないの!!」
「『こっかいぎいん』の娘だか何だか知らないけど、所詮はお前も『しぃ』だ!」
「『しぃ』はおとなしく殴られてればいいって、お父さんが言ってたぞ!」
「みんな、やっちゃえやっちゃえ!!」

殴られ、蹴られ、張り倒され、言葉の雨に打たれ続け…
痛い。辛い。悲しい。
もうやめて。



新しい気配。
それは大人たち。
傷付く私の姿を見る目は、しかし凍り付いていた。

「しぃってうざいよね〜」
「だよね〜、あの娘も誰か殺してくれないかな?」
「ったく、サルみてーな不細工な顔引っ下げて歩いてんじゃねーよゴルァ!!」

痛い。痛い。痛い。
もうやめて。

615N2:2004/06/15(火) 15:02

「えーマジしぃ族!?」
「キモーイ」
「しぃ族はどこまで行っても被虐キャラだよねー」
「キャハハハハハハ」

耐え切れない。私は…一体何なの?

私は…何で生きているの?

私は……


暗闇から浮かび上がるお父さんの姿。
私の唯一愛する、私の唯一信頼出来るお父さん。
助けて、と腹から叫んだ。
しかし、声は出ない。
口から出た途端、私の言葉は何か得体の知れないものにかき消された。

お父さんは私を見ている。
今まで見せたこともない、氷細工のように冷たい目で。
お父さんは、動かない。
傷付く私を見て、少しも救おうと動きはしない。

そして…嘲笑。
無言でお父さんは去って行く。
私の唯一愛するお父さんは、私を愛していない。
そして、遂に私はひとりになった。

私は…何の為に生きている?
私は…誰の為に生きている?

愛されたい。愛され尽くしたい。
愛したい。愛し尽くしたい。
誰か、私に愛を。

否、私に生の価値は存在しなかったのだ。
無価値なゴミに、愛は要らない。



 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



「ジリリリリリリリ!!!!」
枕元で騒がしく鳴るベルが、私を深い眠りから覚ました。
真っ先に私は、びしょ濡れになったパジャマに不快感を覚える。

「夢…か…」
恐怖の体験が真のものではなかったと知り、私はほっと溜め息を吐いた。
しかし、それは今確かに体験した現実ではなくとも、
私自身の心には過去の現実として刻み込まれている。

616N2:2004/06/15(火) 15:04



私の父は、国会議員だった。
地元民の圧倒的な支持を得て、父は『国』の一部になった。
私はそんな父が誇らしかった。

母は私が生まれてすぐ、病気で亡くなったと聞く。
だから私は、母を写真でしか知らない。
父と写る母は、とても幸せそうに、穏やかな笑みを浮かべている。
私は決して手に入れられない、母の優しさに飢えていた。

父は非常に生真面目な人間だった。
物事の道理に敵わないものは、頑として拒絶した。
例え相手が自分よりも年上であれ、目上であれ。

結果、父は敵を増やした。
地元民の利益よりも国益を優先し、露骨な活動を続けた結果、
期待を裏切られた支持者達はその怒りの矛先を私に選んだ。

学校で親の差し金としか思えぬいじめの数々。
謂れの無い誹謗・中傷など受けなかった日を思い出すことが出来ない。
暴力を受けずに過ごせた日など、あっただろうか。

父はそんな私をいつも励ましてくれた。
大丈夫だ、気にすることはないと。
そして大きな腕で、私を抱きしめてくれた。
でも、私は幼心に思っていた。
本当なのか、と。

父は私が大学在学中に死んだ。
まだ若すぎる死だった。
葬式では、一度も会ったことの無い親族が上辺だけのお悔やみを述べ、
遺産を全てかっさらっていった。
私はこの時初めて父の世間での評価を体感したと言っても良い。

その日からである。
あの悪夢を見るようになったのは。
私を殴り、蹴り、蔑み、そして見捨ててゆくものども。
そしてそんな私を無関心に置き去りにしてゆく父。
勿論、父は生前私にそのような仕打ちをしたことは一度として無かった。
それでも私の妄想は、実体験した現実の過去よりも真実であった。

『彼』に走ったのも、それが一番の原因だったのだろう。
私に優しく、父親のように暖かく接してくれた『彼』。
私は彼を本気で愛した。
それは、本気で愛されたかったから。
でも、私には完全な「Only One」であった『彼』にしてみれば、
私は「One of 数ある遊び相手」でしかなかったのだ。
『彼』は私を捨て、私はまた一人になった。

『愛が、欲しい』
今の私には、それしかなかった。
新しい恋人が欲しい、とかそんな事ではなく、
それが私の今生きる唯一の理由でもあった。

617N2:2004/06/15(火) 15:05



 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



いつも通り、何も変わらぬ日常がスタートした。
いつも通りの朝会、いつも通りのつまらない会議。
しかし、そんな中に唯一つ明確な変化があった。
熊野がまだ戻らない。
既に失踪から1週間近くが経っても、何の進展も無いと言う。
熊野は一体、どこへ消えてしまったのか?
真相は闇の中だ。

「熊野さん…まだ戻らないらしいわね。
昨日もご両親が学校までお出でになっていたわ」
隣からモネ姐がどことなく沈んだ声で話してきた。
何だかんだ言ってもモネ姐と熊野の付き合いは結構長いらしい。
憎たらしい相手ではあるが、そんな奴でも突然姿を消せばモネ姐でも心配になるようだ。

…二度と戻って来なくても良い。
私は、しかし残酷にも自然にそう思っていた。

「ええ、そうらしいですね」
私は本心を隠してそう返事をした。

「…こういう事言うのも何だけど、熊野さんやっぱり何かあったんじゃないかしら?
最近集団失踪事件がここまで大事になっているんだし、何か事件に巻き込まれたとしか…」
ちなみに、この時点で失踪者数は既に200人を超えていた。
連日町内では全国ネットのTV局クルーが最新情報を求めて町内を慌しく駆け回っている。

「かも…分かりませんね。
でもこればかりは気を付けようがありませんから、もし本当にそうだとしたらお気の毒としか…」
この時、失踪事件は新たなる段階へと突入していた。
外出中の人だけでなく、一家全員が丸ごと一晩の内に消えてしまうというケースが現れたのだ。
こうなると、最早集団登校とか休校とかでは対処出来なくなる。
当然国のお役人さんとか警視庁の公安当局だかが直々にお出でになって調査しているようだが、
進展という進展は全く見られていなかった。

618N2:2004/06/15(火) 15:06



「えー、皆さんお早う御座います。
今日も皆さんお元気なご様子で…と言いたいのですが、
今日も熊野先生はお休みのようですね…」
初ケ谷校長の話が始まった。
今日も話の始まりは熊野についてである。
しかし、今日の話はこれまでのものとは趣旨が違った。

「さて、熊野先生が失踪されてから今日で丸一週間が経ってしまいました…。
我々としては先生の一日も早い復帰を…まあ…願わなくてはならない訳ですが、
いつまで先生がすぐに戻って来るとの見込みをあてにしているだけでも色々と問題が御座いまして」
あれでも熊野は校内の様々な事務を受け持っていた為、
奴が消えたお陰でそのつけは我々に降りかかって来た。
正直なところ、人手がもう一人だけでも欲しいと皆が思っていただろう。

「それで、突然の話ですが今日から非常勤講師の方がいらっしゃることになりました。
まだお若いですがどうやら相当優秀な方だそうなので、
まあ皆さんとにかく仲良くして下さいね」
突然の校長の宣言には、我々全員が驚いた。
普通、そういう人が来るのであれば前以って連絡するのが普通であろう。
それが当日朝に発表されるなんて話、聞いたことがない。

「何とも無茶苦茶な話ですね…。
本当にそんな事で大丈夫なんですかね?」
私はちょっとニヤつきながらモネ姐にそう言った。
昨日の今日で決まったような話では、どこまでその非常勤講師も当てになるか分からない。

「あら、そう? それだけ急に決まる位優秀な先生かも知れないじゃない。
…それに、『まだ若い』って…!楽しみじゃない…!!」
モネ姐は私よりも更にほころんだ顔をしていた。
ああ、この人もこういう趣味があるのか、と私は始めて思い知らされたと同時に、何だかがっかりした。

「そんな、第一まだ男だとも言われてないのに期待してて…」
私は軽い軽蔑の意も込めた薄ら笑いをして、
机の上に乗せたカバンから荷物を取り出しながらそう言おうとした。
その時、校長が私の言葉を遮るように叫んだ。

「それじゃあ、入ってきて貰いましょう。
どうぞー!」
校長に呼ばれ、職員室の扉が開く。
私はその様子に興味を示すことなく、必要なものを机の上に置いてゆく。

「おお……!」
「カッコいい…!」
どこからともなく、そんな呟きが聞こえてくる。
しかしその時の私には、ノートの間に隠れた筆箱の行方の方が大事だった。

どよめきを掻い潜り、乾いた足音が少しずつ近付いて来る。
そしてそれは校長の辺りで止み、今度は若い男の声が届いた。

「本日からこちらで働かせて頂くことになりました、毛利と申します。
経験不足故に皆様にはご迷惑をお掛けすると思いますが、どうかよろしくお願いします!」
ハキハキして活き活きとした、力の有る男の声。
それに呼応して、職員室内には盛大な拍車が巻き起こった。
私もそろそろ何事かと思い、いい加減その男の姿を見ることにした。

619N2:2004/06/15(火) 15:08



驚愕、としか言いようがなかった。
長い美しい髪に、整った極めて美しい顔立ち。
そして全身から醸し出される知性的な空気。
そこには、完璧な美が存在した。

「えー、では親睦を深める為にこれから先生へいくつか質問してみることにしましょう。
どなたか質問のある方は?」
熱気が冷め止まぬ内に校長がそう言うと、早速神尾先生が手を上げた。

「あの、えっと、猫田先生はどちらの大学を出てらっしゃるんですか?」
いつもは強気な彼女が珍しくモジモジしている。
下心は丸見えだ。

「…東京ギコ大学です。
それと、私は猫田じゃありません。毛利です」
不機嫌そうに毛利先生は言う。
だか彼のそんな気も知らず、周囲からは、おお、という溜め息が漏れた。

「え…っと……、次は私から………」
神尾先生よりも更に恥ずかしそうに、静川先生が手を上げる。

「あの……犬飼先生は…今…おいくつなんですか……?」
静川先生と今一番年が近いのは私である。
この間の一件があったとは言え、年下の女とでは流石に友達にはなりにくい(無論、彼にとってはの話だが)。
彼も年の近い仕事仲間が欲しいのだろう。

「…今年で23になります。
それと、私の名前は犬飼でもありません。毛利です」
彼の言葉に私はかなり度肝を抜かれた。
まさか、私よりも年下だなんて。
若いとは言っても、まさかここまでだとは思わなかった。

「……凄い…! それじゃあ大卒で教務員試験を一発合格したんですか…!?
…凄いなぁ……。僕なんて3年も落っこちてようやく先生になれたから……。
あ…あの……、これから仲良く…して……下さい…」
静川先生は完全に赤くなってしまった。
でも、彼なりには精一杯やったのだろう。
私達の中には、そんな彼を馬鹿にする者はいなかった。

「…ええ……考えておきます…。
名前さえ覚えて下されば……」
そして毛利先生は再び名前を間違われたことでそろそろ頭に来ているようであった。
だが、そこに更なる一撃が加わった。
それをしたのは八木先生だった。

「えーと、海老沢先生…っしたっけ?
海老沢先生はどちらの出身なんっすか?」

そこに質問された訳でもない先の二人が反撃する。
「ちょっと、八木先生! この人は猫田先生ですが、なにか?」
「あ…あの…、この人は犬飼先生だから……」

そう言われて、八木先生も頭に来たのか二人を怒鳴りつけた。
「馬鹿言うんじゃねえ! この人は海老沢先生だッつーの!」


「…毛利です…毛利…」
大乱闘にまで発展した三人を恨めしそうに眺めながら、毛利先生はそう呟いていた。

620N2:2004/06/15(火) 15:09

「まあまあ、そう気を落とさないでくれよ。
俺だって名前のことでいつも苦労してるんだからさ」
そんな毛利先生に鳥井先生が優しく声を掛ける。
同じ悩みを持つ者を放っておけないのだろう。

「すみません、余計な心配をお掛けして。
これからもよろしくお願いします、鳥井先生」
…あ、言ってはいけないことを…。

予想通り、ペチューンという勢いのある音が辺りに響き渡った。
何をされたのか分からない毛利先生と、顔に青筋を立てている鳥井先生。

「なんだよ!人の痛みがわかるやつだと思ってたら期待を裏切りやがって!
苗字で呼ぶなコラァ!」
鳥井先生は結局そのままドンチャン騒ぎを続ける三人の横を素通りして、そのまま机に戻ってしまった。
そろそろいい加減にしないと毛利先生がマジ切れしそうだ。

「え…えっと…それじゃあとりあえず毛利先生には熊野先生の席を使って貰いましょう」
差し迫った事態に危機感を覚え、校長が強引に話を締め出した。
毛利先生もそれに静かに頷く。

(ほら、言わんこっちゃないわ、いい男じゃない!)
モネ姐が子供のように無邪気な笑みを浮かべて機嫌良さそうに言った。
…この人にも、こんな一面があったのか。
呆れた私は荷物を出し終えたカバンを机の下へと潜り込ませ、
1時間目の算数の仕度を始めようと立ち上がった。
と、そこへ、何も前触れも無しに毛利先生が歩み寄ってきた。

「始めまして。椎名先生ですよね?」
柔和な笑みを浮かべて毛利先生が挨拶してきた。

「…ええ、はい。そうです。
これから、よろしくお願いしますね」
過剰なまでに親しみの込められた言葉に、私は同じ様に親しみを込めて返すことが出来なかった。
馴れ馴れしさにどこか不気味さを感じていたのであろうか。
しかし、毛利先生はそんな私の気も知らず、何か考えているような面持ちで
私の顔をじっと見つめていた。

「あの…以前お会いしましたっけ?」
彼の表情は、まさにそういう経験をした人のそれである、と考えた私は
思い切って彼にそう尋ねてみた。

「いや、今日こうして会うのが初めてです」
彼はあっけらかんとした感じであっさり言い切った。

「…そうですか…」
では、彼は一体何を考えているのだろう。
逆に考え始めてしまった私の耳に、私だけに聞こえる声で、
思いも寄らぬ言葉が飛び込んできた。

(ただ、貴女はとても美しい、と思いまして)

思考が混乱し、立ち尽くす私をよそに、毛利先生はそのまま元熊野の席へと静かに歩き始めた。
ただその場に呆然と静止している私に、モネ姐が心配そうに尋ねてきた。
「ちょっと椎名先生どうしたの?
顔赤いみたいだけど、どっか具合でも悪いんじゃない?」

左耳から入る声はそのまま右から抜けていったが、私の意識は歩く彼の姿を完全に認識していた。
突然の、告白。
何故?どうして?
恥ずかしさと疑問と性的興奮がぐるぐると全身を巡り続ける。
私には暫くの間、この1分ちょっとのやり取りで交わされた彼との言葉を頭の中で渦巻かせることしか出来なかった。

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

621N2:2004/06/15(火) 15:10

何故前回こいつらだけ見落としていたのか…。

              、 l ,シャイタマシャイタマ !
             - (゚∀゚) -
                 ' l ` ∧∧
             ∧∧ ヽ(゚∀゚)/シャイタマ !
    シャイタマ〜 ! ヽ(゚∀゚)/  | |
                vv     W

NAME シャイタマー

擬古谷第一小学校に9月付けで転校してきた小学1年生。
クラスは3組(担任は椎名)。
理由は不明だが3人は血の繋がりもないのにいつも一緒に生活し、
本来別々のクラスに入るべきところを各々の親までもが強く希望したことにより
特例で同じクラスに入ることとなる。
3人は生まれついてのスタンド使いではないが、ずっと一緒に暮らしている内に
いつの間にか全く同じスタンドが発現してしまった。
それが種族的な理由なのか、はたまた前世の因縁なのかは誰にも分からない。

擬古谷町には夏休みの内から来ていたが、そこで『もう一人の矢の男』に
スタンド能力を見出され、亡霊に取り憑かれて洗脳される。
とは言え元々も子供だし取り憑いたのも子供の霊だったので
殺人などの凶行に及ぶことはなかったが、
主人の命によって標的であるギコ屋達に対しては一切容赦しなかった。

622N2:2004/06/15(火) 15:11
1/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  地獄の底から甦った、ギコ兄教授の何でも講義。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

      どんどんいくでー

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚,;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | だからさ、こりゃ一回ポッキリで終わりじゃなかったのかと小一時間(ry
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  ちゃんとそれなりの理由があるんだろうな?
         \________________

2/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  理由は簡単、絶賛の声が有ったからだ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 421 名前: 新手のスタンド使い 投稿日: 2004/05/23(日) 17:10

 ワロタ。N2氏乙!

 ※スタンド小説スレッド3ページより抜粋
                ∩_∩
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  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚#)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧======∧===
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄
    | 絶 対 こ れ 宛 じ ゃ な い ! !
    \__________________

623N2:2004/06/15(火) 15:12

3/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ま、雑談ばっかじゃ何の為の小説スレか分からんから
|  いい加減本題入るぞ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 考察・小説スレ各作品のサブタイトルについて

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚,;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | そもそも先代したらばスレで小説スレを立てた上に
    | 小説スレでの文とAAの比は1:1とか言い出したのは
    | どこのどいつかと小(ry
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  …で、こんな問題起こしそうな内容で何話すんだ?
         \________________

4/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ご存知の通り、小説スレ連載中のほとんどの作品には
|  サブタイトルが付いている。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 各作者のシリーズ物作品一覧

 「モナーの愉快な冒険」:さ氏
 「合言葉はWe'll kill them!」:アヒャ作者氏
 「丸耳達のビート」:丸餅氏
 「救い無き世界」「EVER BLUE」:ブック氏
 「―巨耳モナーの奇妙な事件簿―」:( (´∀` )  )氏
 「スロウテンポ・ウォー」:302氏

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  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚,,)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 一応言っとくけど、小説スレ参加順に並んでるよ!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  ま、これが一番妥当だろうな。
         \________________

624N2:2004/06/15(火) 15:12

5/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ところが………
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 N2の連載中作品
 「モナ本モ蔵編」「逝きのいいギコ屋編」

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |         ……………あ。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  すっかり気が付かなかったぞゴルァ…。
         \________________

6/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  では、どうしてこんな事になってしまったのか?
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

   ちゃんと理由は存在するッ!

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚,,)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |   あ、そうなの?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  是非ともお聞かせ願いたいもんだな。
         \________________

625N2:2004/06/15(火) 15:13

7/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  長引かせたくないから表でまとめたが、1つ目はこれだな。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

  N2「モナ本モ蔵編」連載開始
     ↓
  さ氏、連載開始
     ↓
  N2「逝きのいいギコ屋編」開始
     ↓
  アヒャ作者氏「合言葉はWe'll kill them!」開始
     ↓
  さ氏、「プロローグ・〜モナーの夏〜」完結
  作品名「モナーの愉快な冒険」と命名
     ↓
  自分の作品のタイトルなんてろくに考えないまま月日が経過
     ↓
  みんなサブタイトル付いてる
     ↓
  (+д+)マズー

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚,;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |   要するにN2のミス、と…。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |    言わずもがなでしょ…。
         \________________

8/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ところが、もう1つ理由がある。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 N2が本編のあらすじ製作中にサブタイトルが無い作品を
 「○○編」としたことにより、本編関連のモ蔵は元より
 本編との絡みを予定しているギコ屋も
 サブタイトルを付けようなんて思わなかった

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ ;)      (゚Д゚,;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | …でさ、結局何が言いたかったの?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  作者の意図が分からん…。
         \________________

626N2:2004/06/15(火) 15:14

9/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ま、言いたい事はこれだ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 サブタイトル無くても(゚ε゚)キニシナイ!!

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚#)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧======∧===
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄
    | 気 に し て い る の は お 前 だ け だ ! !
    \__________________

10/11

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  お、そろそろ時間のようだな。
|  んじゃ、宿題はこれだ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━

 近日、剣士系(刀)のキャラを登場させる予定があるが
 いまいちナイスで強そうなキャラが見つからないので
 良さげなキャラを知ってたら報告すること

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ ;)      (゚Д゚,;)
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |       …ちょっと待った。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  それ、俺達じゃなくて読者に言ってないか?
         \________________

11/11

━━━━━━━━━━━━━━━━

         ,. -─- 、   なんだ
       (⌒) ┃┃ ヽ-、   もんくあるか
    .rt-;ヘ! ゙:,'' ∇ '' !‐'
   .,rl. | ! !  _,ヽ_,.ノ‐、
   ヽ!_f_i_,」‐´ _ ̄)ー‐ '

                ∩_∩
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    |        待 て ッ ! !
    \__________________


  /└─────────┬┐
. <   To Be Continued...?  | |
  \┌─────────┴┘

627ブック:2004/06/15(火) 22:18
     EVER BLUE
     第三十三話・MADMAX 〜悪鬼再臨〜


「…福男、ヒッキー両名からの通信が途絶えました。」
 オペレーターが、暗い声で山崎渉に伝えた。

『ザザッ…
 こちら三号艇…只今、『ジャンヌ・ザ・ガンハルバード』と交戦中…!
 何とか食い止めてはいますが、防戦だけで精一杯です……!!』
 備え付けの無線機から、ノイズ交じりの連絡が入ってくる。
 忌々しそうに舌打ちする山崎渉。

「…仕方ありません。
 これ以上長引かせては、憲兵が来てしまいます。
 この一号艇と二号艇に連絡。
 砲撃開始。
 無力化させるだけが望ましいですが、
 万一の場合は撃墜も已むを得ずと伝えておきなさい。」
 山崎渉が溜息を吐きながら告げる。

「了解!」
 それを受けて、オペレーターが直ちに通信を繋げた。

628ブック:2004/06/15(火) 22:18



     ・     ・     ・



「皆、大丈夫…!?」
 傷ついた体をおしながら、僕とオオミミとニラ茶猫が甲板へと駆け上がった。
 何故か、天までついてきている。

「ああ。
 …!それより、お前らの方がヤバそうじゃねぇか!!」
 オオミミとニラ茶猫の有様を見て、サカーナの親方が怒鳴る。

「こちらは問題ありません。
 あなた達は中で休んでおいて下さい。」
 パニッシャーを担ぎながら、タカラギコが微笑みかけた。
 こんな時に、よくそんな余裕の笑みを作れるものだ。

「…!?
 あれは!?」
 と、オオミミが敵の船の一つを見やった。
 よく見ると、その戦艦の甲板上で誰かが闘っている。
 いや、待てよ。
 あの大袈裟な得物には見覚えがある。
 あれは、確か…

「あの人は…!」
「あいつは…!」
 オオミミとニラ茶猫が同時に驚きの声を上げた。
 あの人は、この前オオミミを誘拐した女の人だ!

「ニラ茶猫、あの人の事知ってるの?」
 オオミミがニラ茶猫に尋ねた。
 そういえば妙だ。
 ニラ茶猫は直接あの女に会った訳ではないのに。

「いや、ちょっとな…
 って、そんな事いってる場合じゃねぇだろう!」
 ニラ茶猫が一方的に会話を切る。
 まあ確かにその通りだ。
 今は、ここから何とか乗り切る事に専念しなければ…!


『!!!!!!
 敵船、こちらに砲門の照準を合わせています!!』
 スピーカーから、悲鳴のような高島美和の声が響き渡った。

 何だって!?
 砲門の照準を合わせた!?
 いよいよ、多少のリスクを犯してでもこの船を強引に制圧しにきたか…!

『船の中に逃げて下さい!
 敵船が攻撃を開始し―――』

 !!!!!!!!!!

 その高島美和の声と、砲撃の音が重なった。
 爆音と共に、無数の砲弾が僕達の船に襲い掛かる。

「うおおおおおおおおおおおおおお!!
 『モータルコンバット』!!!」
 サカーナの親方が叫んだ。
 刹那、『フリーバード』が一瞬にしてその向きを変える。
 それと共に、砲弾は全て『フリーバード』が向きを変えた方向へと逸れていった。
 無茶だ。
 まさか、サカーナの親方はこの船全体を包むほどの空間に能力を使用したのか!?

「……!!」
 スタンド能力の過度の使用の所為で、
 サカーナの親方が目鼻耳口あらゆる穴から血を流して横転する。

「親方!!」
 オオミミがサカーナの親方に駆け寄る。
「へッ…
 流石に…これだけの範囲の空間の向きを変えるのは…
 無茶だったみたいだな…」
 息も絶え絶えに、サカーナの親方が呻くように呟く。
 スタンドパワーの使い過ぎだ。
 死にはしないだろうが、暫くは戦闘不能だろう。
 いや、このままだと、どっちみち皆死んでしまう。

「後にしろ、オオミミ!
 二撃目が来るぞ!!」
 三月ウサギが怒鳴った。
 だけど、最早僕達に何が出来るっていうんだよ…!



「!!!!!!!!!!!!!!!」

 その時、全身を氷柱で貫かれたような、
 ゾッとするものが僕の全身を駆け巡った。
 これは、さっき感じたのと一緒の気配だ。
 禍々しく、気味の悪い、この世のものとは思えないような威圧感。
 何だ。
 さっきから、一体何が来ている―――

「!!!!!!!」
 その場の全員の目が、一つ所に集中した。
 突如やってきた、黒い小型戦艦。

『あれは、『帝國』最新の小型快速艇『黒飛魚』…!
 『帝國』の船がたった一艘で、
 こんな『ヌールポイント公国』の国境ギリギリまで!?』
 高島美和の驚きの声がスピーカー越しに伝わる。
 馬鹿な。
 こんな所に戦艦なんか持ち込んだら、両国の関係に軋轢が生まれるのは明白だ。
 それなのに、何故そんな危険を冒してまで『帝國』の船が!?

「……!!」
 オオミミが、拳を硬く握って『黒飛魚』を見据えた。

629ブック:2004/06/15(火) 22:19



     ・     ・     ・



 『黒飛魚』の甲板に、奇形モララーと全身を拘束具で縛られた人物が佇んでいた。
「くははははは。
 来たぜ来たぜ来たぜえええェェ…!」
 身体を震わせながら、奇形モララーが笑う。
 そして、懐から携帯電話大の大きさの四角い箱を取り出す。

「しっかり働けよ、『カドモン』…」
 四角い箱から太い針のような物が飛び出る。
 奇形モララーは、それを『カドモン』と呼ばれた人物の首筋へと突き刺した。

「ヴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
 顔をすっぽりと包んだ頑堅な仮面から、苦悶の声が漏れる。
 痛みの為か、『カドモン』は身体を数回ビクンビクンと痙攣させた。

「これで良し、と…」
 奇形モララーはそれを見て満足そうに微笑む。

「さて、それじゃあお呼びするとしようかねぇ…!」
 奇形モララーはそう呟くと、精神を集中させる。
「『ディアブロ』…!!」
 『カドモン』の頭上に、どす黒い穴が開いた。
 そこから、それよりもなお昏きオーラが『カドモン』の中へと侵入していく。

「ヴヴルルルオオオオオオオオオアアアアアアアアア!!!!!!」
 身を捩じらせながら、『カドモン』が悶え狂う。
 しかし、昏きオーラはさらに『カドモン』へと潜り込んでいった。

「…!!」
 穴が閉じ、奇形モララーが膝をつく。
 その顔には、脂汗がびっしりと流れていた。

「…はァ、はぁ……
 たった一回でこれか…
 相変わらず、何てぇ『化け物』だよ…!」
 肩で息をしながら奇形モララーが呟く。

「ウルロオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
 刹那、『カドモン』の腕と脚の拘束具が弾け飛んだ。
 そこから、およそこの世のものとは思えない異形の手足が現れる。

「オオオオオオオアアアアアアアアアアア!!!」
 さらに背中の部分の拘束具が破れ、悪魔のような翼が突き出る。
 それは、まさに『化け物』以外に呼び名が思いつかない程の存在だった。

「…うまくいったみたいだな。」
 奇形モララーが、『化け物』を満足気に見据える。
「いいか、あのチンケな船は攻撃するな。
 壊していいのは周りの戦艦だけだ。」
 奇形モララーがスイッチのようなものを弄ると、
 先程『カドモン』に取り付けておいた機械から電流のようなものが流れる。
 『化け物』に姿を変えた『カドモン』が、それを受けてゆっくりと頷いた。

「よし…
 行けぇ!!!」
 奇形モララーが山崎渉率いる『紅血の悪賊』の戦艦を指差した。

「ルアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
 『化け物』は翼をはためかせると、
 凄まじい速度で『黒飛魚』の甲板から飛び去っていった。

630ブック:2004/06/15(火) 22:19



     ・     ・     ・



「山崎渉様!!
 『帝國』の『黒飛魚』より、何かが飛び立ちました!!
 こちらに向かって、驚異的な速度で飛来してきています!!!」
 オペレーターが甲高い声をあげた。

「糞…!
 ここにきて、何故『帝國』が!?」
 歯軋りをする山崎渉。
「構いません、撃ち落とすのです!」
 声を荒げて山崎渉が指令を飛ばした。
「はッ!」
 返答するオペレーター。
 すぐさま、向かってくる『化け物』目掛けて何発もの砲弾が発射される。

「……!!!」
 しかし『化け物』はその砲撃の悉くをかわしながら、
 『紅ちの悪賊』の艦隊目指して突進した。

「!!!!!!!!!」
 『化け物』が、ジャンヌが闘っていた戦艦に突貫する。
 轟音と共に、『化け物』のぶちあたった船体に大穴が穿たれた。

「なッ!?」
 激しく揺れる船上。
 ジャンヌが、バランスを崩しながら驚愕の声を漏らした。

「ロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
 『化け物』が、吼える。
 大気を震わす叫び声。
 それに平行する形で、『化け物』が飛び込んだ戦艦の中で暴れまわる。

「AAAAAAHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!」
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
 その戦艦の中にいた吸血鬼達が、あっという間に屠り去られていった。
 最早これは殺し合いですらない。
 唯々一方的な虐殺である。

「!!!!!!!!!!!!」
 次々と戦艦の内側から爆発が起こり、
 船のあらゆる場所から火の手が上がる。
 瞬く間に一艘の戦艦は寿命を迎え、黒煙を上げながら墜落していった。

「ちッ!」
 ジャンヌは舌打ちをすると、落ちていく船の甲板から飛び降りた。
 その体の周りに無数の蝙蝠が集まり、大きな蝙蝠へと姿を変えてジャンヌを背に乗せる。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
 それとほぼ同時に、『化け物』も戦艦の中から飛び出した。
 そして残った二艘の戦艦のうち、山崎渉の乗っていない方の船へと目標を移す。

「リュオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
 砲撃を掻い潜りながら戦艦まで接近し、『化け物』がその異形の腕を船体へと突き立てる。
 そのまま腕を船体に突っ込んだままで飛行し、
 戦艦をまるで紙風船のように引き裂いていく。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 穴だらけになり、爆破炎上する戦艦。
 一通り破壊を終えた『化け物』が、落ちゆく戦艦の船首へと足を下ろした。

「何だ…
 何なんだあれはああああああああああああああああ!!!?」
 山崎渉が狂ったように叫んだ。

「落ち着いて下さい、山崎渉様!
 退避命令を!
 このままでは我々まで巻き込まれてしまいます!!」
 オペレーターが必死な形相で山崎渉にそう言った。

「…分かりました!
 総員退避!
 早くあの『化け物』から…!」
 その時、山崎渉の乗る戦艦のブリッジに、
 壁をぶち破りながら『化け物』が突っ込んできた。

「アアアアアアアアアアアアアアアア…」
 首を回しながら、『化け物』が大きく息を吐く。
 異形の腕が、異形の脚が、異形の翼が、
 仮面に包まれた顔が、
 山崎渉達に絶望という言葉を刻み込む。

「この、化け物めええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 それが、山崎渉の最後の言葉だった。

631ブック:2004/06/15(火) 22:20





「よーし、よしよしよしよしよし。
 上出来だ。
 戻れ『カドモン』。」
 奇形モララーが、墜落していく『紅血の悪賊』の三艘の戦艦を見据えながら
 手元のスイッチを操作した。

「…!?」
 しかし、『化け物』には一向に反応が見られない。

「おい、どうした!?
 もうお終いだ、『カドモン』!!」
 叫びながら、奇形モララーはスイッチを何度も操作する。

「ルルルルルルウウウウウウ…」
 『化け物』の首筋の機械から電流が流れる。
「ウウウウウウウアアアアアアアアアアア!!!!!」
 だが、『化け物』はお構い無しに機械を首筋から強引に引き剥がした。
 そして、豆腐のようにその機械を握り潰す。

「なッ…!」
 絶句する奇形モララー。
 『化け物』が首を動かし、そんな奇形モララーを見据える。
「やべえ、暴走だ!!
 逃げろおおおおおおおおおおおお!!!」
 その奇形モララーの叫びと共に、
 『黒飛魚』は全速力でその場を離脱していった。



     ・     ・     ・



「な……あ…あ…!」
 開いた口が塞がらないといった様子で、オオミミがポカンと『化け物』を見つめる。
 他の人達も同様だ。

 無理も無い。
 この短時間で、あの『化け物』は『紅血の悪賊』の戦艦を三隻とも沈めてしまったのだ。
 絶対的な威圧感。
 心臓が破裂する程の圧迫感。
 格が違うとか、そんなレベルの問題じゃない。
 あれは…
 あの『化け物』は、同じ次元の存在ですら無い。

「何なんだよありゃああああああああ!?」
 ニラ茶猫が狂乱する。
「…まあ、どう控えめに見ましても、
 デートのお誘いに来た訳ではないでしょうねぇ…」
 相変わらずの軽口を叩くタカラギコ。
 だが、その表情にはいつもの笑みは微塵も残っていなかった。
「……!」
 三月ウサギまでが、冷や汗を流している。
 何だ。
 何なんだ、あの『化け物』は…!

「…!!」
 『化け物』と、目があった。
 オオミミとではない。
 今、間違いなくあの『化け物』は僕の事を見ていた…!

(!!!!!!!!!!)
 その時、僕の頭に幾つもの映像が流れ込んできた。
 変な矢。
        それを持った男。
    醜い姿の少年。
                    あの『化け物』の姿

 これは何だ!?
 いや、知っている…
 僕はこれを知っている…!?

632ブック:2004/06/15(火) 22:21


「!!!!!!!!!」
 直後、『化け物』が僕達の船に向かって飛び掛ってきた。

「あれを船の上に上げてはなりません!!」
 タカラギコが、叫びながらパニッシャーを乱射した。
 三月ウサギも、『化け物』に向けて何本もの剣を投げつける。

「!?」
 だが、銃弾も剣も、
 全て『化け物』の目の前で動きを止めた。
 そのまま止まった銃弾や剣は、雲の下へと落ちていく。

「何…!?」
 驚きに顔を歪める三月ウサギ。
 馬鹿な。
 一体今、何が起こったのだ。
 あれが『化け物』の能力なのか!?

「手を止めてはいけません!
 兎に角攻撃を続けて下さい!!」
 タカラギコがさらにパニッシャーを撃ち込んでいく。
 しかし、矢張り銃弾は全て『化け物』に到達する事なく動きを終える。

「!!!!!!!!」
 そうこうしている間に、
 『化け物』は僕達の船に…
 いいや、『僕』目掛けて突っ込んできていた。

 駄目だ!
 このままじゃ、あの『化け物』がこの船の上に―――

「『モータルコンバット』…!」
 その時、いつの間にか立ち上がっていたサカーナの親方がスタンドを発動させた。
 僕達の目の前で百八十度角度を変えて、
 『化け物』が来たのとは真逆の方向に向かって飛んでいく。
 『モータルコンバット』で、
 『化け物』が進んで来るのとは逆方向に空間の向きを変えてくれたのか。
 もう殆ど、スタンドパワーなんて残っていなかった筈だのに…!

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 しかし、それも一時凌ぎに過ぎなかった。
 僕達から離れていった『化け物』が、再び向きを変えて僕達の船に襲い掛かる。

「させません!!」
 タカラギコのパニッシャーが火を吹いた。
 だけど、今度もまた…

「!!!!!!」
 だが、今回は違った。
 『化け物』の身体に、次々と銃痕が穿たれる。

「どうやら、能力はもう打ち止めみたいですねぇ!!」
 タカラギコがさらに弾をばら撒く。
 そう言えば、心なしか『化け物』の動きが鈍くなっている。
 もしかして、あの化け物持続力が低いのか?

「冥府に堕ちろ…!」
 三月ウサギも負けじと剣を投げつける。
 刀剣が、剣山のように『化け物』の身体に突き刺さった。
 倒せるのか!?
 あの『化け物』を…!

「貰いましたよ!」
 タカラギコがパニッシャーを担ぎ上げた。
 それと同時に、マシンガンが内臓されているのとは反対側の十字架の胴体が開き、
 そのからロケットランチャーが姿を見せる。
「吹き飛びなさい!」
 タカラギコが、髑髏型のトリガーを引いた。
 銃口から放たれるロケット弾。
 それが、生き物のように『化け物』へと突き進んだ。


 !!!!!!!!!!!!!!!

 爆発。
 『化け物』の身体が、ロケット弾の爆炎の中に包まれた。
 やったか…!?

633ブック:2004/06/15(火) 22:21


「……!!」
 その場の全員の顔が凍りついた。

 生きていた。
 銃弾を受け、剣で貫かれ、爆発の中に巻き込まれながらもなお、
 あの『化け物』は生きていた…!
 何だ。
 あいつは一体何なんだ!!!

「オオオオオオオオアアアアアアア…」
 しかし流石の『化け物』も全くの無傷という訳ではなく、
 身体のあちこちが崩れかかっている。
 『化け物』は苦しそうに呻いており、僕達に襲い掛かってくる様子は無い。
 よし、この隙に逃げる…

「!?」
 オオミミの目が大きく見開かれた。
 『化け物』の顔につけられていた趣味の悪い仮面が、
 爆発のショックで壊れている。
 そして、その中から覗いた顔は―――

「!!!!!!!!」
 その瞬間、電撃のようなショックが僕を襲った。
 全身が、全力で僕に危険を伝えてくる。
 ヤバい。
 何かがヤバい!

「…!!
 今すぐ、ここから離れて下さい!!!」
 タカラギコも同様に危険を察知したのか、大声で避難勧告をする。

「分かりました!
 全速前進、離脱しま〜す!」
 カウガールの無闇に明るい声と共に、船が一気に加速する。
 早く。
 一秒でも早く、この場所から…!


「ルウウウウウオオオオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!!!!」
 『化け物』が断末魔のような叫び声を上げた。
 刹那―――――

634ブック:2004/06/15(火) 22:22





 ――――――消えた。
 『化け物』の半径数十メートルの空間の中にあったものが、
 雲も、『紅血の悪賊』の戦艦の破片も、綺麗サッパリと。
 まるで、始めからそこには何も無かったかのように。
 もしかしたら、空間自体も無くなっていたのかもしれない。
 光も無かった。
 音も無かった。
 そこでは、何もかもが消え去っていた。

「……」
 オオミミ達が、呆然と何もかもが消え去った空間を見詰めていた。
 そこに『化け物』の姿はもう無い。
 一緒に、消え去ってしまったのだろうか…

「……」
 と、三月ウサギが天へと顔を向けた。
「……」
 三月ウサギだけでない。
 サカーナの親方も、ニラ茶猫も、タカラギコも、オオミミも、
 その場にいた全員が天を見る。
 恐らくブリッジの高島美和もカウガールも、
 動揺に天を見ているだろう。

「ち…違う。
 アタシは違う……」
 天がよろよろと後ろずさった。

 …あの『化け物』の仮面の中から現れた顔。
 それは、紛れも無く天と全く同じ―――

「アタシはあんな『化け物』なんかじゃない…!!」
 天の悲痛な叫びが、甲板に響き渡っていった。



     EVER BLUE・序章
          〜完〜

635ブック:2004/06/15(火) 22:23

    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\    今日、おやつにバナナミルキーを食べたんですが、
  . |(●),   、(●)、.:|   下品だけどその…
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|   勃起してしまいましてね。
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|   だって、『バナナ』で『ミルキー』なんですよ?
   \  `ニニ´  .:::::/    これはもう狙っているとしか思えない…
   /`ー‐--‐‐―´\


という訳で、ようやく大きな区切りがつく所まで物語を進める事が出来ました。
それもこれも全て皆様のお陰です。
展開が遅く、設定とかキャラとか出しっぱなしの気もしますが、
これからいよいよ様々なキャラクターや伏線同士を絡めていきますので、
どうかその点につきましてはお許し下さい。
それと申し訳ないのですが、さすがに疲れてきたので暫く休憩をさせて頂きます。
勿論何もしない訳ではなく、
キャラクター紹介や何故か異様に反響のあった番外編、
『ときめきEVER BLUE 〜交際編〜』をゆっくりながら書いていくつもりです。
最後に、皆様の暖かいご声援誠にありがとうございます。
無闇に長くなりそうな『EVER BLUE』ですが、
もう暫くお付き合い頂ければ幸いです。
これからも、どうぞこの不肖ブックをよろしくお願いいたします。

・追記・
正直、今の『EVER BLUE』には猫耳成分が足りないと思うのです。
はにゃーん。

636丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:18





  むかーし昔十六世紀、イタリアはベネツィアのお話。

 ベネツィアの貿易商アントーニオは、親友バッサーニオの為に金貸しのシャイロックから結婚資金を借りてやる。
しかしバッサーニオの船が難破し、借りた金を返せなくなってしまった。

 その上彼は、金貸しシャイロックから金を借りるときの証文にこう書いている。

  『期限までに全額を返せなければ胸の肉一ポンドを差し出す』―――と。

 裁判の場で胸にナイフを突き立てようとするシャイロックだが、裁判長はこう言った。

「待つがよいシャイロック。確かに胸の肉一ポンドはお前の物だ。しかし、皮や肉、骨はその限りではない。
 一筋でもその皮に傷をつければ、一滴でも血をこぼしたなら、私達はお前を捕らえ、牢へ入れる―――」

 シャイロックはどうすることもできず、アントーニオは金も返さずにめでたしめでたしどっとはらい。

637丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:19






「―――『ベニスの商人』って…なんで『ベネツィアの商人』って言わないのかねぇ。
 昔ずっと『ぺ』だと思ってて仲間内から大笑いされて…あーいや、ンな事ぁともかく」

 ぷらぷらと六本指の手首を揺らしながら、ッパがマルミミへと近づいてくる。

「あれに出てくる金貸しのシャイロックって、さも悪徳商人みたいに書かれてやすよね?
 …けど、彼はなーんも悪いことなんてしておりやせん。…実は彼、ユダヤの人種だったそうなんです。
 そう考えると酷い話でしょ?胸の肉一ポンド…要するに、『命張って返せよゴルァ』って証文まであったのに、
 裁判官の贔屓で踏み倒されちまった。…あっしみたいなッパ族もね。結構そんな感じですよ」

 よっこらしょ、と気を失ったマルミミを担ぎ上げる。
先程スリ取った心臓をスタンドの掌で転がしながら、マルミミに向けて語りかけた。

「ふぐりだの何だのと結構迫害受けてましてね…その上あっしはこんな六本指でしょ?
 底辺の更に底辺扱いされて…気が付きゃいつの間にか橋の下。
 けど、あっしの『プライベイト・ヘル』ならね。血も流さず、皮も切らずに、胸の肉をえぐり出せる…ん?」

 ぷにぷに、とマルミミの心臓を『プライベイト・ヘル』で軽くつつくが、スタンドの気配がない。
辺りを見回すと、少女の乗っていた車椅子がどこかに消えていた。
「…ッチ。油断しちまったねぇ…あのスタンド…女のカラダに入って逃げたかい」

 前と後ろは舗装されていない、平坦な田舎道。右手には田んぼが広がっている。
どれも、隠れられる所はない。

「っつーと…こっちの竹林か」
 一人呟き、ガサガサと音を立てて左手の竹林へ足を踏み入れた。


  ―――何なんだ、あの男は。

 しぃの鼓動を借りながら、B・T・Bが冷や汗を流した。
掌を広げて、鼓動を感知する。探るのはリズムではなく、『生命のビート』の正確な位置。
 通常なら胸の真ん中よりも少し左寄りにある、鼓動の中心部…
              ・ ・ ・ ・ ・
それがどういう訳か、尻にあった。
「―――ヤハリ…!」

638丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:21

 肌に一筋の傷さえも付けずにマルミミの心臓を抜き取った所を見れば、
おそらく能力は『対象の中身を抜き取る』事。
それで本体の心臓を抜き取って、静寂のビートをやり過ごした。
 心臓を抜き取られる瞬間にしぃの体へと潜り込まなければ、自分も一緒に捕獲されていただろう。


「シカシ…取リ出シタ 心臓ヲ ドコニ シマッテル カト 思エバ ヨリニヨッテ 尻ノ ポケット……」

 …いや、確かに理にはかなっている。
 B ・ T ・ C
静寂のビートは、心臓に衝撃を与えないと効果はない。

 心臓など大抵は左胸にあるのでいちいち何処にあるかなど調べはしないし、
よもや尻に心臓があるなど逆立ちしても思いつくまい。

「ダカラト イッテ 尻…」

 鼓動を扱うスタンドとして、敵の物とはいえあんまりな扱いをされている心臓に同情しかけてハッと我に返る。
いやいやいやいや、考えるべき事は尻がどうこうではない。

                 B ・ T ・ C
自分の心臓を取り出して、静寂のビートを無効化。
しぃの鼓動をエネルギー源にしているのを判っていたかのような言動。
私が本体から離れて活動できるスタンドだと一瞬で見抜き、追ってきている。

 これらから考えられる結論はただ一つ。
あの男は静寂のビートの特性を…B・T・Bの能力を知っていた。つまり…


(能力ガ…バレテイル !?)

639丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:22

 B・T・Bの白塗りメイクが青ざめる。
心拍を停止させるには、その特性上何回かに分けて衝撃を与えなくてはならない。
             マイクロセカント
 単純なスピードなら一万分の一秒単位で動ける自信があるが、問題は本体。
車椅子で気を失っている病み上がりのしぃと、パッチリ起きている健康体のあの男。
 油断させての不意打ちならともかく、一から十まで見抜かれてる今では―――

(圧倒的不利…ト、言ウワケカ…)

 ッパが尻ポケットから、アクリルケースに入った自分の心臓を取り出した。
フタを開けると心臓がふわりと舞い上がり、ッパの胸へと吸い込まれる。
 代わりにスタンド…『プライベイト・ヘル』と言ったか…の持っているマルミミの心臓を中に放り込み、フタを閉めた。
ケースの中でびくびくと脈動しているが、血は血管の断面から一滴も流れていない。

「さーて…もう気付いてやすね?ビート・トゥ・ビート君。アンタの主人の心臓は預からせて貰ってやす。
 辛うじて生きてるくらいに血流は通してやっておりやすが…大人しく出てきて捕まるなら、コレは返してあげやすよ?」

 余裕たっぷりのッパの声に、B・T・Bが小さく舌を打った。

  ―――大人しく出てくれば捕まれば心臓を返す?
そんな約束を守るほど紳士的な物腰では無かったろうに、何を言っているやら。
 ここで出て行こうものなら、ほぼ間違いなく御主人様ごと縛られて拉致される。
そうなってしまえば銃を向けられても平然としていた奴らのこと、何をされるか判らない。

 …と言うかそもそも、あいつらは何者だろう。先程は、『うちらの御大の命令』と言った。
『御大』というのが<インコグニート>の事だとしても、御主人様を殺さないのはおかしい。
あそこまでプッツン切れた奴が、わざわざ生け捕りにするものだろうか…?

  がさっ。

 笹の葉を踏みしめる音で我に返る。
後ろを見ると、ッパはもう数メートル程に迫っていた。
「見つけやしたよ。遮蔽物の多いトコなら…逃げ切れるとでも思いやしたか?」
「Oh Shit―――Son・of・a・Biiiiitcccch…!」

640丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:23







「さーて…もう気付いてやすね?ビート・トゥ・ビート君。アンタの主人の心臓は預からせて貰ってやす。
 辛うじて生きてるくらいに血流は通してやっておりやすが…大人しく出てきて捕まるなら、コレは返してあげやすよ?」

 竹林から、男の声が聞こえてくる。
かひ、かひ、と、途切れ途切れの呼吸音。
 口元を流れる涎と鼻水が気持ち悪い。

「く…そぉ…っ!」
 銃の一丁も扱えなかった。
吸血鬼化できずに、肉弾戦でも役に立たなかった。
挙句の果てに心臓を奪われて、棺桶に片足を突っ込んだ状態でB・T・Bの足を引っ張っている。
  B ・ T ・ H
 情熱のビートを使っていたときでさえ、自分の弱さに嫌気がさしたのに。
何にも助けて貰えない僕だけの僕は、それよりも更ににちっぽけな存在だった。
酸欠と涙で、視界が滲む。


  また、九年前と同じ。

  誰かを守るなんて、軽々しい覚悟でできる事じゃ無いんだ。

  そう、生きていくだけで精一杯の弱い僕は。

  自分以外は何も守ることなど出来ないから。

641丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:24

―――だから僕は。

―――――弱い、僕が。

――――――――何かを守ろうと、思ったのなら。


(…命を捨てる覚悟で…守らなくちゃいけなかったんだ…!)


 キヒィ―――ッ…と自分でも心配になるような音と共に息を吸い、肺から血液へと酸素を溶かし込む。

(確かに…僕は弱い)
                     ゼンドウ
 体内に意識を集中する。血管壁を蠕動させて、滞っていた血流を僅かずつだが巡らせていった。

(…だけど、それでも、だからこそ―――――)

 靄のかかった思考が、だんだんと晴れてくる。
それでも呼吸はキヒィ―――ッ、キヒィ―――ッ、と半死人。
 不随意筋を動かすのは神経を使う。
激しい運動の中では、この処置も出来なくなるだろう。

(僕は……)

 だが、その目に宿るのは強靱な意志。
チャンスは一回。少しでも酸素を巡らせておいて、一気に仕留めなくてはならない。
 ジャケットの裏に吊った、格闘用ナイフに手を伸ばす。
メリケンサックの端から刃が伸びているような感じの品で、力が入らなくても取り落とすことはない。
涙と鼻水と涎を乱暴に拭い、ぎゅっ、と目を瞑り、開き―――気合いと共に、体を起こした。


(強く、なりたい…!)




  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

642丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:25

  (丸)
 ( ´∀`)<今回のスペシャルサンクスー!

               / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               | 提供してくれた新手のスタンド使いさんミテルカナ?
               | 『プライベイト・ヘル』、アイデア提供ありがとうございます!
               \      ___________________
                  ̄ ̄ ̄|/
                    ∩_∩ オ茶ドゾー
                   ( ´∀` )つ旦~
                  m9 =============
                  (丶 ※※※※※ゞノ,)

643丸耳達のビート:2004/06/16(水) 01:26

武器いろいろ。


╋━━━

『三段式警棒』
いつもマルミミのジャケット裏に吊ってある特殊警棒。
振ると小気味よい音を立てて伸びる。
特に仕掛けがあるわけでもないが、SPM財団の最先端技術を使っているため強度は高い。


∞∞二フ

『格闘用ナイフ』                                  ∩_∩
今回初登場、マルミミのサブウエポン。                    ( ´∀`)<コンナカンジデス。
メリケンサックの端から刃が出ているような感じで、逆手に持って使う。(    つ
                     (丸)                        リ
…AAがショボい?聞こえなーい。( ;´3`)〜♪


『セラフィム』

スピードモナゴン謹製の拳銃。
454カスール弾使用、装弾数六発のリボルバー。
象狩りに使われるような銃弾で、パワー型のスタンドでも撃ち抜ける。
『銃の一丁も扱えなかった』と言われてるけど、
初心者が打てば狙いより肩が外れる。
興味ない人は、『デカくて重い凄い銃』と思って下さい。


『ケルビム』
スピードモナゴン謹製の拳銃その二。
38SP弾使用、装弾数十八発のオートマチック。
人は充分殺せるが、スタンドにはあまり効かない。
反動が少なく軽いため、B・T・Bでも撃てる。
興味ない人は『扱いやすい豆鉄砲』と思って下さい。

 (丸)
(;´д`) 拳銃のAAは勘弁して〜。

644丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:52

  ―――――例えば。

 千メートルを無呼吸で走れる人間はいないが、百メートルを無呼吸で走るのならば何とか可能。
時間が長いから当然だとも思うが、これは使う筋肉の違いもある。
百メートルのような短距離走では酸素無しで動ける白筋という筋肉を使っているからだそうだ。
この『白筋』の持久力はせいぜい七十メートルから八十メートルと言われる。

 そして、ッパへの距離は目算三十メートル。
普通に考えれば余裕かもしれないが、距離を詰めた後で殴り倒さねば話にならない。

 ほぼ心臓停止状態の今では、全力を振り絞っても五十メートル走ればぶっ倒れるだろう。
その上、足音を殺して走る余裕もない。


  彼の元へたどり着き、殴るか蹴るか刺すかして気絶させれば、僕の勝ち。

  たどり着いても、頭でもぶん殴られれば僕の負け。

  スタミナ切れで力尽きてしまっても僕の負け。

  一発で気絶させられなくても僕の負け。


(―――けど…やるしか、無いんだっ!)

 左手のナイフを竹に突き刺して、体を引き上げる。
「――――ッ !! !! !! !!」

 途端に襲ってくる、酸欠の苦しみ。
息が出来ないとかそんなモノは比較にならない。なにせ、心臓がまるまる引っこ抜かれているのだ。
ぐっ、とヘソの下に力を入れて、がくがく震える膝に力をいれる。

(…足が震えるのを『膝が笑う』って言うから…これはさしずめ大爆笑かな)
 意味のないことを考えるも、そんな余裕はない。

  ―――無駄な思考は切り捨てろ…脳を動かすと酸素が足りなくなるぞ…。

 全ての神経が、両足と左手に集中させた。
僅かな下り坂になった竹林。ナイフを目の高さで構えたまま、背中を丸めた前傾姿勢でひた走る。
綺麗に手入れを受けているため、竹の密度は走るのに邪魔なほどではない。

645丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:53

 ざざざざざっ、と笹の葉を散らす音に、ッパとB・T・Bの二人が振り向いた。
「なっ…!?」
「ゴ…御主人様!?」
 B・T・Bとッパ、二人の声が重なる。
もっとも、マルミミには聴覚に神経をまわしている暇も無いためにその言葉を聞くことはない。

「ちぃっ…!何てぇ坊やだ!」
 このままでは二対一と判断し、ざっ、とB・T・Bから距離を取った。

「―――ッ!」
 同時にマルミミの繰り出す格闘用ナイフの一撃を、大きく飛び退いてかわす。

―――丸耳の坊やはくたばりかけ、スタンドの方も病み上がりの嬢ちゃんにすがりついてる。
     しぶとさは認めるけど…御大のためだ。負けてやるわけにゃいかないよ。

 更に、マルミミから間合いをあけた。距離さえ取れば、マルミミもB・T・Bも大した驚異ではない。
一人一人確実に気絶させれば任務は完了。

「…ッ!」
 ナイフを振り切ってしまったためか、マルミミが大きく躓いた。
両足が地面から離れ、空中でつんのめる体勢になる。

(今ッ!)
 ぎり、と『プライベイト・ヘル』が拳を握り締め―――


「―――――――――ッッッッッッッッッッ!! !! !! !! !!」
 空中で体を捻りながら、マルミミが何かを投げつけてきた。
黒く細い、十五センチ程度の棒のようなモノ。
マルミミの右手から放たれた複数本のそれは、狙い違わずッパの肩口へと突き刺さる。

(…五寸…釘…ッ !?)

 茂名家の武術は『波紋法』だけではない。
試合に勝つための武術ではなく、戦場で生き残るための武術だ。
故に、格闘術は言うに及ばず武器から投擲までを多岐にわたり扱っている。
 そして、これもその内の一つ。
                 シノビヤ
  茂名式武術 投擲之型 "忍矢"。

 ざっ、と空中で一回転し、マルミミが右手をついて再び跳ぶ。

646丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:54


  ―――恐れていたのはただ一つ、スタンドでも失敗でもなく『逃げられる』ことだけ。
もしほんの十メートルでも距離を開けられてしまえば、放っておくだけで死にかけの僕は力尽きて気を失う。
だから、それだけは避けなくちゃいけなかった。
                       シノビヤ
 躓いたかのように見せたフェイントと"忍矢"で動きを止める…博打だったけど、何とか体も持ってくれた。

『さあ…どの内臓でも盗ってみろ。何処を盗んでも僕は止まらないぞ…!』

 ナイフを目の高さで構えて、唯一ヤバイ器官である脳はガードしている。
全ての力を左腕に収束させて、ッパへの距離を削り取る。

「ッこの……ドァァゾァァァアアアアアッ!!」
 ッパの叫びと共に、プライベイト・ヘルがラッシュを繰り出した。
だが、スタンド自体の破壊力は大したものでも無いから力負けもしない。
 能力にしても、頭部へのヒットは紙一重で避けている。
後は肝臓を盗られようが腎臓を盗られようが、駆け寄って斬りつけるのに支障はない。
もう一歩で、ほぼ密着の…マルミミの間合い。逆手に持ったナイフを、最後の踏み込みと共に右へと振りかぶり―――

「……ッ !?」

 ―――振りぬけなかった。
左腕から力が抜ける。反射的に視線をやると、信じがたい物が目に入った。

 だらん、とタコのように垂れ下がる自分の腕。
ちょうど、トレーナーの袖から腕だけ引っこ抜いたような感じ…
いや、肌色をしたゴム手袋とでも言うべきか。
              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『あっしの能力…誰が内臓をぶっこ抜くだけなんて言ったね?』

 ッパから発せられる『スタンド』の声。『プライベイト・ヘル』の六本指に、白く長い物が握られている。
確か、診療所に似たような物が飾ってあった。

 一本の上腕骨から伸びる、二本一組の前腕骨。
手関節から始まり、手首を構成する手根骨、掌を構成する中手骨、指を構成する指骨。
それらが、ぷらぷらとスタンドの手の中で揺れていた。

  ―――ッこいつ…左腕の骨を…!

 再び、連続した軽い衝撃。
ばしゃっ、と赤い液体がプライベイト・ヘルの掌から流れ落ちた。
「内臓だけじゃぁ無い…骨も血液も、こんな風に『盗れる』。
 あっしの能力を見極めた気になって、応用まで気が回らなかったのが坊やの敗因だよ」
「っあ…」
 心臓を盗られた上に大量の血液を失い、目の前が暗転する。

  ざしゃっ。

 自分の意思に反して膝が折れ、笹の葉の中に倒れ込んだ。

647丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:56




「…しっかし…バケモンかぃ、この坊や」

 心臓を奪われたにも関わらず、あそこまでの運動が出来るとは。
最初の不意打ちが失敗していたら、たぶんこっちが殺されていた。

 致死量ギリギリまで血を抜いておいたが、それでも気は抜けない。
マルミミの手を背中に回して手錠をかけ、本体の方はとりあえずこれで良し。残るはあのピエロのみだ。

 車椅子の嬢ちゃんなら、この竹林の中で大して遠くに行けるはずもない。
案の定、十メートルも進まない内に車椅子がひっくり返ってしぃの体が投げ出されていた。
坊やのスタンド能力か、ぐったりと深い眠りについている。
 成程、これなら遠慮無く丸耳の坊やも能力を使えたという訳か。


「さてと…出てきな!」
 『スタンドだけえぐり取れ』とプライベイト・ヘルに命令して、とっ、としぃの左胸を軽く叩く。
たゆん、とふくよかな乳房が揺れた。
「おぉ、目の保養…って…あらら?」

 眼福眼福と目尻を擦りかけるが、『プライベイト・ヘル』の掌には何も握られていなかった。
再び左胸を叩くが、やはり手応えが無い。
心臓が右胸にあるのかと思い右の胸を叩くが、結果は同じ。

  ―――スタンドが…いない?
                            エクス
 丸耳の坊やからスタンドが消えたのは判る。『X』さんから貰った資料によれば、
鼓動の生命エネルギーさえあれば誰にでも寄生できるそうだ。
ちょうど近くにいたお嬢ちゃんの鼓動を利用して、体を操って逃げた。それはいい。凄ーく分かる。
―――じゃあ、今は何処にいるんだ。

 …虫か何かの鼓動で動いてる?
(いや…いくら何でも無理がある)

 …偶然犬か猫でも近くを通りかかった?
(いやいや…ここいらは野良犬とか少ないしねぇ)

 …『生け捕り』と言う目的からすれば一番最悪の結論になるが…スタンドが死滅した?
(いやいやいや…エネルギー源の嬢ちゃんもいるし、そいつはおかしい。だったら何処に…)

648丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:57


「…誰ヲ、探シテイル?」
「―――――ッ!」
 声のした方から、慌てて飛び退く。
綺麗に手入れされた竹林の間、B・T・Bのヴィジョンが揺らめいていた。

「おいおい…鼓動がなけりゃ役立たずなんじゃありやせんでしたか?」
 緊張を走らせながら、再び『プライベイト・ヘル』を具現化させる。
B・T・Bの近くには、犬猫どころか竹しかない。
ひょっとしたら虫くらいはいるのかもしれないが、そんなモンで動けるとはとうてい―――

(いや…『竹』かい…!)

「…木ノ幹ニ 耳ヲ アテタ 事ハ アルカ?御主人様ハ、昔ココデ ヨク ソウシテイタ」
 よく見ると、B・T・Bの指がピアノを弾くように竹の表面を踊っている。

 ―――植物の鼓動。
生きとし生けるものである限り、『生命のビート』は存在する。

「…ソレハ微弱デ弱々シイ モノダガ…コノ竹林 全テノ 鼓動ヲ 揃エレバ ドウナルト思ウ?
 大人シク 御主人様ノ 心臓ヲ 返シテ、知ッテイル事ヲ 全テ 吐ケ。慣レナイ鼓動デナ…手加減ハ、シテ ヤレナイ」

 その言葉に、ッパが奥歯を噛み締める。
「ふざけたコト言っちゃいけやせんね。あっしにゃ人質があるんですよ?その上、今のアンタは慣れない鼓動でしか動けない…
 スピードなら勝てるでしょうが…そんな状態であっしの『プライベイト・ヘル』と渡り合えやすか?」
「ヤッテミロ…オマエハ 今ノ 言葉デ、生キラレル 可能性ヲ 自分カラ 摘ミ取ッタ」
  B ・ T ・ C
 静寂のビートはその特性上、僅かでもタイミングをずらすことが出来れば不発に終わる。
対してこちらは頭部か心臓を一発殴れれば、一発で勝ちを決められる。

(そう…アイツの言葉は全部ハッタリ。あっしが負ける可能性なんぞ、これっぱかしも無ぇんだ)

649丸耳達のビート:2004/06/19(土) 16:57

 ざっ、とッパが踏み込む。
(心臓を掴みだして捕まえて、こいつらを御大に持ってく…そうすりゃ、仕事は完了だ!)

「ドォォァァァゾァァァァァァァアアアアアア―――――ッ !!」
 『プライベイト・ヘル』が拳を握り、全力でラッシュを打ち込んだ。

 狙いはスタンドではなく、憑依していた『竹』。
B・T・Bの憑依していた竹が中身を抉られて脆くなり、ぱきりと折れた。
どんなスピードがあろうと、その『本体』となった物の動きには限度がある。
何に取り憑こうと、その取り憑いているモノを壊してしまえば―――――

「ヤハリ ソノ 程度ノ 考エカ」
「ッ!?」

 鼓動の源である竹を壊した筈なのに、B・T・Bから感じるスタンドパワーが消えていない。

『ワンパターンナ 作戦ガ、二度モ 三度モ 通用スルト 思ッタカ?コノ…』

 スタンドの声が頭に響く。
意味を理解する間もなく声にスタンドを向ける間もなく、背中に数発の軽い衝撃が叩き込まれた。
  雌 犬 ノ 仔 ガ ァ ―――――ッ
「Son・of・a・Biiiii―――――tcccch !! !! !! !!」
                  B ・ T ・ C
 正真正銘、手加減無しの『静寂のビート』。
単純な心臓麻痺とは訳が違う。『生命のビート』を止める―――
精神も肉体も全ての活動を停止させる、だれも覚ますことの出来ない永遠の眠り。
―――すなわち、『命』の停止。

スタンドが消滅し、抜き取られていた血液や骨、心臓が元へと戻る。
「…エネルギー供給ヲ 止メルト 言ウナラ、ソレニ 対応シタ 作戦ヲ 立テレバ イイダケダ。
 言ッタ ダロウ?『竹林全テ ノ 鼓動ヲ 揃エタ』…ト」

 竹という物は、全ての株が地下で繋がっている。
鼓動の源となっている竹を一つ壊されても、地下茎を伝って他の株へと移ればいい。
もし御主人様があの場で気絶したままだったら、こうして竹林全てを制御する暇は無かっただろう。

 御主人様が立ち上がったときにB・T・Bから注意をそらした時点で、彼の負けは決まっていた。


「私ト 御主人様…ソレゾレヲ 見クビッタ ノガ 貴様ノ 敗因ダヨ」




  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

650丸耳達のビート:2004/06/19(土) 17:02
        __
      ∠・ω)
   /~~⌒ヽⅡ ⌒~~\ * ■ +  ッパ
  ∠ Ⅱ_♀×♀ ||  + *
   ヽⅡ \†††   ヽ ⌒⊂m)
  ミ\_|ⅡⅡ /   ̄ ̄  ̄
     |ⅡⅡ/
     /=×=|
    |Ⅱ|Ⅱ|
    |Ⅱ|Ⅱ|
    / ノ \ \
   (_ノ     \ \
   ∧_∧  У   ヽ_ヽ
    (・ω・)丿 ッパ
.  ノ/  /
  ノ ̄ゝ


 ツバ カシジロウ
 津葉樫二郎

貧民街生まれの多指症。
迫害を受けて橋の下に捨てられていたが、拾われて『ディス』の一員となる。
表の顔はケチなプータロー、裏の顔もやっぱりケチなスリ師。
致死量ギリギリで血流を止めたり血液を抜いたりと、
『ディス』で拷問とかやってたんだろーなーと書いてて思った。
エセ任侠口調が素敵な三十五歳。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  スタンド名 プライベイト・ヘル                     ┃ 
┃  本体名  津葉 樫二郎(ッパ)                         ┃ 
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫ 
┃   パワー - C    ┃  スピード - A.     ┃ 射程距離 - E (2m) ┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃   持続力 - C  . ┃ 精密動作性 - B  ┃ 成長性 - C.       ┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃ 拳を握った状態で殴るときのみ発動する。                 ┃
┃ 殴ったモノの中身をッパと取り出すことが出来る。           ┃
┃ 本体が気絶するかスタンドを消すかすると、取り出したモノは.   ┃
┃ 元に戻る。これを利用し、財布をスリ取っていた。.            ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

   ∩_∩
  ( `д´)<うぉりゃっ!  ー二三━
 と      )      一二三━
  ノ  と/彡        ―二三━
 (__丿\_)

  シノビヤ
 "忍矢"

袖に隠し持った手裏剣を投げつける投擲術。
マルミミは手裏剣の代わりを五寸釘で代用している。
接近戦の武器にもなり、使い勝手は広い。
まだ下手なため、B・T・Bの補助無しでは複数本投げないと当たらない。

651ブック:2004/06/22(火) 00:30
遅くなりましたが、十五話〜三十三話までの人物紹介を。
『ときめきEVER BLUE』は明日あたりに。


『サカーナ商会』…サカーナ率いる人格破綻者の集まり(全員が全員ではないが)。
         何かとトラブルに巻き込まれる事をサカーナは嘆いているが、
         その原因の大半は自分の責任。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
オオミミ…最早存在意義が怪しくなりつつある本編の主人公。
   灰汁が無い分でぃより始末が悪い。
   活躍は大分先の話か?

スタンド…名称『ゼルダ』。近距離パワー型。
     自立意志を持ち、物語の主な語り手として活躍している。
     あと、突っ込み役としても非常に優秀で、
     暴走しつつある番外編『ときめきEVER BLUE』唯一の良心。
     能力は特殊な結界を張る事で、
     その結界の中では一つだけ自由にルールを定める事が出来る。
     制限としては、一歩でも動いたら死ぬ等、
     余りにも理不尽なルールは作れない事と、
     自身もそのルールの影響を受けてしまう事。
     何やら秘密が隠されている予感。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
天…オオミミ同様、空気になりつつあるヒロイン。
  だが、三十三話で重大な事実が明かされたため、
  これからは活躍が増える筈。
  主人公とヒロインの活躍が無くて辟易されている方がおられるかもしれませんが、
  下地が固まったら思い切り暴れさせる予定なのでしばしばお待ちを。
  あと、ヒロインのくせに猫耳じゃないのはどういう事ですか!?

スタンド…名称『レインシャワー』。
     ビジョンの無い、結界展開型スタンド。
     結界の中で雨より様々なものを作り出し、
     とある手法により力を与えて闘わせる。
     オオミミ以上に戦闘で活躍してない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
サカーナ…サカーナ商会の親分であり、『フリーバード』船長。
     豪快な面が目立つものの、実は結構小心者でもある。
     馬鹿なように見えるがやっぱり馬鹿。
     高島美和に頭が上がらない。

スタンド…名称『モータルコンバット』。
     近距離パワー型で、能力は力の指向性の操作…ではないです。
     本当は一定の範囲の空間の向きを変える事。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
三月ウサギ…主人公より目立っちゃってる人その一。
      感情の沸点が低い乗組員の多い中、一人遠巻きに見ているタイプ。
      剣術の達人で、スタンド能力が直接戦闘向きでない弱点を、
      自分を鍛え上げる事で補っている。

スタンド…名称『ストライダー』。
     三月ウサギはこのスタンドを使って自分の使う得物を大量に持ち歩いている。
     制限として、火・電気・スタンド等の純エネルギー体は入れられないらしい。
     それ以外の詳細は不明。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ニラ茶猫…ロ・リ・イ・タ、僕〜はロリ〜コ〜〜ン。
     もう何も言うまい。
     少々特殊な性的嗜好を持つ我等が同朋。
     誰がその趣味を責める事が出来るだろうか。
     でも彼女持ち。
     畜生が、殺すぞ。
     ジャンヌと何かしらの関係がある?

スタンド…名称『ネクロマンサー』。
     体内に発動しているスタンドで、あらゆる物質に擬態する事が可能。
     ニラ茶猫の大脳皮質の皺が少なそうな言動とは裏腹、
     頭を使ったトリッキーな闘い方こそがその真骨頂。
     応用性が高く、攻撃から回復まで何でもこなせる。
     というか、自分で作ったキャラながら便利過ぎ。

652ブック:2004/06/22(火) 00:30
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高島美和…『フリーバード』のオペレーター。
     頭の螺子の緩い乗組員の面々の奇行に日夜頭を悩ませる、
     幸薄き大和撫子。
     サカーナと一緒に仕事をする事になったのが、彼女の人生最大の過ちか。

スタンド…名称『シムシティ』。遠隔操作型。
     蝙蝠みたいな羽のついた大きな四体の目玉がそのビジョン。
     別に発動したディスプレイに、
     目玉の視界が記号化、数値化されて映し出される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カウガール…高島美和の友人。
      『フリーバード』操舵士。
      今の所空気ですが、後でちゃんと活躍させるつもりではあります。
      今更ながら、キャラクター出しすぎたかもしれません。

スタンド…名称『チャレンジャー』。
     子鬼のビジョンをしており、能力は機械を故障させる事。
     遠隔操作型。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タカラギコ…主人公より目立っちゃってる人その二。
      というか、実質彼が第二の主人公かも。
      何故か異様に人気があり、その甘いマスクに奥様達もメロメロ。
      嘘です。

スタンド…名称『グラディウス』。
     銀色の小型球形飛行物体のビジョンで、
     光を自在に操作する事が出来る。
     光を操作して姿を消す、虚像を作り出す等、隠密行動に最適。
     また、光の収束により簡易レーザー砲を発射する事も可能。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

     ・     ・     ・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『紅血の悪賊』(クリムゾンシャーク)…この世界で屈指の勢力を誇る空賊集団。
        『帝國』より軍事機密を盗むも、サカーナ達に図らずも横取りされる。
        赤い鮫がそのシンボルマーク。
        その組織員の中には、吸血鬼もいる。

頭首…『紅血の悪賊』を束ねる男。
   名前はまだ無い。

スタンド…今の所不明。
     マジレスマンを触れもせずに殺した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
山崎渉…『紅血の悪賊』の中でもかなり上の位にいる実力者…だったのだが、
    スタンドも出さないうちにあっさりと退場。
    人生って儚いものね。
    あと、彼は吸血鬼ではなかったです。

スタンド…不明のまま死亡した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
マジレスマン…脳味噌筋肉男。
       その足りない頭の所為で失策を犯し、頭首に粛清される。

スタンド…名称『メタルスラッグ』。
     周囲の無機物を取り込み実体化する、同化実体化型。
     オオミミと闘うも、オオミミの機転によりまんまと逃げられる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
波平…言わずと知れた磯野家の大黒柱。
   だがこの作品ではただの敵キャラ。
   ニラ茶猫との戦闘により、爆死。

スタンド…名称『アンジャッシュ』。
     近距離パワー型で、その指先より打ち出した針を刺し、
     それを抜いた瞬間に周囲の物質を消失させる。
     針が刺さっている時間が長い程、消失する範囲は大きい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
福男…『紅血の悪賊』の一員である吸血鬼。
   地元の祭りで不正を行い、肩身が狭くなっていた所をスカウトされた。
   ニラ茶猫と闘い、追い詰めるも死亡。

スタンド…名称『テイクツー』。
     近距離パワー型で、拳で触れたものを圧壊させる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヒッキー…福男と共に『フリーバード』の中に潜入してきた吸血鬼。
     旧型の単発式狙撃中が愛用の得物。
     だが、オオミミによってあえなく撃退されてしまう。

スタンド…名称『ショパン』。
     赤い半透明の蛇みたいに動く管がそのビジョン。
     その管の中に入った物体は、管の中を通るように移動する。

653ブック:2004/06/22(火) 00:31
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

     ・     ・     ・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『聖十字騎士団』…聖王と呼ばれる人物が統治する集団。
         実体は不明。
         その中でも特に選りすぐりの四人に対しては、
         最大の誉れとして『切り札』(テトラカード)の称号が与えられる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
トラギコ…タカラギコと同じく男塾パワーで蘇った。
     蘇った先でも孤児院を守る為に闘い続ける苦労人。
     お金が何よりの好物で、番外編ではキャラが変わっている。
     『切り札』のA(エース)。

スタンド…名称『オウガバトル』。
     近距離パワー型で、射程内の空間を分断する事が出来る。
     その戦闘能力は恐ろしく、『聖十字騎士団』に入って一年足らずで、
     トラギコは『切り札』のAにまでのし上がる事が出来た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ギコ犬…『切り札』のK(キング)。
    落ち着いた男性で、しばし融通の利かないJ(ジャック)をたしなめる事が多い。

スタンド…今の所不明。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
セイギコ…『切り札』のJ(ジャック)。
     多少潔癖症な所があり、その所為かトラギコとは仲が悪い。

スタンド…今の所不明。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『切り札』のQ(クイーン)…今の所その実体は不明。

654ブック:2004/06/22(火) 00:32
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     ・     ・     ・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『常夜の王国』…女王により統治されている、吸血鬼の国。
        『紅血の悪賊』について探っているみたいだが…?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ジャンヌ…『ジャンヌ・ザ・ガンハルバード』の異名を持つ美しき女吸血鬼。
     身の丈程もある巨大な得物を振るい、使い魔も使役する。
     実は結構常識人?

スタンド…名称『ブラックオニキス』。
     第二部が始まってすぐに、その能力は明かす予定。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
     ・     ・     ・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『帝國』…武力により他国を制圧せんとする軍事国家。
     『カドモン』と呼ばれる物騒極まりない兵器を所持している。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
歯車王…帝國の統治者。
    全身の機械化により、延命処置を行っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
長耳の男…正式名称は今の所不明。
     歯車王の右腕として、暗躍している。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
奇形モララー…出来損ないと呼ばれ、蔑まれている男。
       馬鹿にする連中を見返すために行動を起こすも、
       『カドモン』の暴走により失敗。

スタンド…名称『ディアブロ』。
     詳細は不明。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
     ・     ・     ・
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ちびしぃ…トラギコを助けた少女。
     『聖十字騎士団』所属の司教の慰み者になっていた所を、
     トラギコにより救出される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
恰幅のいいおばちゃん…孤児院を切り盛りしている職員の一人。
           気前がよく、根っからの善人。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
司教…『聖十字騎士団』所属の男。
   ニラ茶猫にも劣るペド野郎。
   トラギコにより斬殺される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダディクール…その実体は謎に包まれている奇妙なAA。
       変幻自在、神出鬼没。
       その可能性は無限大である。


     人物紹介終了。

655ブック:2004/06/22(火) 00:33
     〜おまけ〜

まあ、ブックの猫耳への思い入れは凄まじいものがあるからな。

連載休止してる間に、何となく暇だったから、近くの古本屋に嫌々行ってみたんだが、
まずそこで買った猫耳古本が凄い。キロ単位で山積みで買ってくる。
隣に陳列されてたグラビア写真集を見て、「それじゃ萌えないよ、一般人」という顔をする。
真っ当な人間はいつまでも二次元に慣れないらしい、みたいな。
絶対、その猫耳古本4キロより、一ヶ月の食費の方が安い。っつうかそれほぼ陵辱ものじゃねぇか。

で、それを家に持って帰る。やたら持って帰る。
たまたま遊びに来てた友人もこの時ばかりはブックを尊敬。
普段、ろくに飯も奢らない友人がブッククールとか言ってる。
目当ては猫耳古本だけか?畜生、氏ね。

他の本も凄い、まずマニアック。小学生とか題名についてる。
売れ。逮捕される前に売れ。つうか人生やり直せ。

で、やたら読む。読んで友人と共に悦に浸る。良い本から読む。譲り合いとかそんな概念一切ナシ。
ただただ、読む。キモオタが読んで、オタがオタに本を回す。俺には回ってこない。畜生。
あらかた読み終えた後、「どうした読んでないじゃないか?」などと、
あからさまなハズレ本を寄越す。畜生。

で、廃人オタク共、4キロくらい猫耳本を読んだ後に、みんなでアニメとゲームの主題歌を聞く。
「今日はプリキュアにしよう」とかオタ友達が言う。
お前、一番どころか絶対二番まで熱唱出来るだろ?
隣の奴も、「ああ、STORM聞いちゃった。影山ヒロノブって素敵ね」とか言う。こっち見んな、頃すぞ。
プリキュアの奴が「買いすぎちゃったな」とか言って、隣の奴が「どうせブックの金だから大丈夫さ」とか言う。
さんざん人の本勝手に読んでたくせに意味がわかんねぇ。
畜生、何がおかしいんだ、氏ね。

まあ、おまえら、現在『EVER BLUE』には猫耳成分が足りないので、要注意ってこった。


     注)このコピペ改変は、ある程度フィクションです。

656ブック:2004/06/22(火) 21:36
     EVER BLUE番外編
     ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 交際編


 やあ皆、また会ったね。
 僕の名前は『ゼルダ』、夢ばかり見て現実を見ない廃人ゲーマーさ。
 今日はまたもや新しい美少女ゲーを買って来たんだ。
 早速始めるとしよう!

「さて、と…」
 ハード機体を起動して、ソフトを差し込む。
 今日買って来たのは『トゥルルルルルルンラブストーリー』。
 二重人格で道端に落ちてるものを電話と勘違いしてしまう、
 ちょっと気弱な男の子が主人公のゲームさ。
 全く、この前は変な糞ゲー掴まされて酷い目に遭った…

「ときめきEVER BLUE〜〜〜〜〜〜!!」
 だが、テレビのステレオから流れてきたのは聞き覚えのある男の声だった。
 ニラ茶猫だ。

「!?」
 急いでゲームのパッケージを確認する。
 やっぱり、何度見ても『トゥルルルルルルンラブストーリー』だ。
 なのに何でこの男が!?

「誰だ?って顔してるんで自己紹介させて貰うぜ。
 俺の名前はニラ茶猫、このゲームの案内役さ。」
 ちょっと待て。
 何でゲームの中身が変わってるんだよ!!

「何でパッケージと中身が違うのかは単純明快。
 お前の行きそうなゲームショップのゲームソフトの中身を、
 全部『ときめきEVER BLUE』にすり替えておいたのさ。」
 それは営業妨害じゃねぇかよ!
 お前警察に捕まるぞ!?

「つーわけで、前回の感想にデートの描写も見たいって感想があったんで、
 再び登場させて頂きました。
 このエンドルフィン駄々漏れの番外編に、
 何でここまでの反響があったのか作者も戸惑ってますが、
 お呼びがあるならば例え火の中水の中…」

 …ブツッ―――

 即座にゲームの電源を切る。
 反響があったか何だかは知らんが、これ以上あんなゲームに付き合ってられるか。
 すぐにお払いをした後粗大ゴミに捨てて…

「勝手に電源を切るな〜〜〜…」
 テレビから這い出して来るニラ茶猫。
 お前は貞子か!?

「人助けと思ってゲームスタートしてくれや、な?
 あとこの番外編の題名が『ときエヴァ』と略されてますが、あれか?
 主人公が汎用人型決戦兵器に乗って
 『逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ』とか言ったりする訳か?
 そんで最後には皆からおめでとうとか言われて…」
「分かったよ!
 始めてやるからさっさと帰れ!!」
 強引にニラ茶猫をテレビ画面の中に押し返す。
 本当は嫌だが、このままゲームを始めなかったら呪われそうなので、
 渋々コントローラーを握る。
 前回同様、主人公の名前はオオミミにしておいた。

657ブック:2004/06/22(火) 21:36


 ジリリリリリリリリリリリリ!!

 テレビから聞こえてくる目覚まし時計の音。
 どうやら自宅からスタートするらしい。
 ベッドの横では矢張り天が全裸で寝ていた。
 もう驚かない。
 慣れた手つきで窓から放り投げる。
 「げくっ」という呻き声と共に、天が道路を血で染めた。
 清掃業者さんごめんなさい。

「オオミミ、起きるラギ!!」
 部屋に入ってくるトラギ子。
 こいつ、サブマシンガンで撃ち殺した筈なのに、何で生きてんだ。
 というか、妹キャラだったのに、何か雰囲気違ってないか?

「復ッ活!!」
 いきなりトラギ子が絶叫した。
 こいつ、ついに持病の水虫が脳まで回ったか?
「トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!
 トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!
 トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!」
 狂ったように『トラギ子復活!』を連呼する。
 人間、こうなったらおしまいだな。

「ラギは寂しいと死んじゃうラギよ!?
 にもかかわらず、今回更なるパワーアップを遂げて帰ってきたラギ!
 この前は単なる妹キャラでしかなかったけど、今は違うラギ!
 妹萌えの時代はもう古い、これからは姉萌えの時代ラギ!
 よって、ラギは今度は姉属性キャラとして復活したラギ!
 さあ、オオミミ。
 今こそおねーたまと恥ずかし合体を…」


  1・釘バットで殴り殺す。
  2・日本刀で刺し殺す。
 →3・サブマシンガンで撃ち殺す。


 次の瞬間、オオミミのサブマシンガンが火を吹いた。
「ラギニャーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」
 血飛沫をあげトラギ子が蜂の巣になった。
 念の為、ガソリンをかけて焼却しておく。

「さあ、今日はタカラギ子さんとのデートの約束の日だ。」
 ゲーム開始早々二人の人間を殺しておきながら、爽やかな顔でオオミミが言う。
 こいつ、絶対悪魔か何かだよ。

658ブック:2004/06/22(火) 21:37



 兎に角場所は移り、タカラギ子との待ち合わせの公園のベンチ。
「ちょっと早く来すぎちゃったかな。」
 待ち合わせの午前十時まであと五分。
 まあ、これ位が妥当だろう。

「……」
 しかし、五分経っても十分経ってもジャンヌは来なかった。
 あのアバズレ、なにやってやがる。

「ごっめーーん、待った?」
 三十分遅れでようやく現れるタカラギ子。
 時間厳守という言葉は脳内に存在しないらしい。


『どう答えようか?』
 1・ううん。こっちも今来たとこ。
 2・待ちくたびれたよ。
 3・遅ぇんだよこの売女!その臭ぇ穴に俺のマグナムぶち込むぞ!!

 現れる選択肢。
 相変わらず、三番目のものは人として間違っている。
 まあしょうがない。
 ここで目くじら立てても、好感度が下がりそうだから取り敢えず1、と…

「ううん。こっちも今来たとこ。」
 選択肢通りに答えるオオミミ。
 ここは、懐の深い所をアピールしとかないとね。

「うっわ最低!
 じゃあ、もし私が遅刻しなかったら、私を待ちぼうけさせるつもりだったのね。
 信じられなーい!!」
 ぶち殺すぞこの糞女ァ!!
 手前社交辞令とかそういうのも分からんのか!!!
 こっちは待ち合わせの五分前にはとっくに到着しとったわ!!!

「それじゃあ、早速遊びに行こう。」
 あれだけの暴言にも関わらず、さして気にしない様子でオオミミが答える。
 何て野郎だ。
 天とトラギ子は容赦無く殺したくせに。


『どこに遊びに行こう?』
 1・ラブホテル
 2・ビジネスホテル
 3・人気の無い廃工場

 どれもこれも下心丸出しじゃねぇか!!
 特に一番下!
 お前犯罪者にでもなる気か!?
 もっとまともな選択肢無いのかよ!!


『ちッ、仕方ねぇなぁ…』
 1・遊園地
 2・ゲームセンター
 3・カラオケ

 うわ。今舌打ちしたよ、舌打ち。
 ゲームのキャラがプレイヤーに向かって舌打ちしたよ。
 せっかく警察のご厄介にならないように注意してやったのに、
 舌打ちしやがったよ。
 畜生、氏ね。
 それじゃあ3のカラオケだ。

「よし、遊園地に行こう。」
 元気な声で、オオミミがタカラギコに促す。
「ちッ。」
 お前まで舌打ちかよ!
 もういい。
 無理矢理にでも連れて行く。

659ブック:2004/06/22(火) 21:37



 そしてオオミミ達は遊園地に到着した。
 さて、これからどうしようか。

『まず何から乗ろうか?』
 1・ジェットコースター
 2・観覧車
 3・コーヒーカップ

 そうだな…
 ジェットコースターに乗って、恐怖によって新密度を上げるのもいいし、
 まずはまったりとコーヒーカップで肩慣らしという手もある。
 でもここは、観覧車から乗る事にしようか。
 2を選択、っと。

「観覧車に乗ろう。」
 タカラギ子と共に観覧車に乗り込むオオミミ。
 二人を乗せた観覧車が、ゆっくりと動き出す。

「…こうやって二人きりになるのって初めてだね。」
 タカラギ子が急にしおらしくなる。
 おっ?
 何か普通の美少女ゲーみたいになってるじゃないか?

「そういえば、私達ってお互いの事あんまり知らないよね。
 オオミミ君、何か聞きたい事ってある?」
 うんうん。
 やっぱりこうじゃなくっちゃ。
 救いようの無い糞ゲーと思いきや、ちゃんとしたイベントもあるじゃないか。
 さて、ここではどんな選択肢が出てくるんだろう。


『何を質問しよう?』
 1・好きな体位は何ですか?
 2・一人エッチは週何回?
 3・乳首何色?

 全部セクハラじゃねぇか!!
 こんな質問したら、一発で嫌われるぞ!!

「好きな体位は松葉崩し。
 一人エッチは週五回。
 乳首は黒ずんだピンクです。」
 お前も何答えてんだよ!!
 つうか、エロゲーでもこんな展開ありえねぇよ!!!

「そうなんだ。
 俺知らなかったよ。」
 そうなんだじゃねぇよ!!
 んな事知ってる方が恐ぇよ!!
 何なんだよその満足そうな笑顔は!!
 変態か!?
 お前は生粋の変態か!!?

660ブック:2004/06/22(火) 21:37

「おっと、もう観覧車が一周したみたいだな。」
 再び乗降り場に戻ってくるオオミミ達の観覧車。
 二人は観覧車から降りる。

「それじゃあそろそろお昼ごはんにしましょうか。」
 観覧車から降りた所で、タカラギ子が弁当箱を差し出す。
 こんな所だけはしっかりと王道だな…

「いいね。
 それじゃあ、どっかの建物の中で食べようか。
 それとも外の芝生にする?」
 オオミミがタカラギ子に尋ねた。

「嫌ぁ!!
 中は駄目!!!
 中は駄目!!!
 中はやめてえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
 あからさまに誤解を招く表現してんじゃねぇよ!!
 お前オオミミを逮捕させる気か!?

「分かった。
 それじゃあ外で食べよう。」
 お前もタカラギ子に何とか言えよ!!
 何でそんなにケロッとしてるんだよ!!

 そんなこんなで、舞台は遊園地の芝生に移った。
 ビニールシートを引き、二人はその上にちょこんと座る。

「はい、た〜んと召し上がれ。」
 弁当箱の蓋を開けるタカラギ子。

 いや、タカラギ子さん。
 あなたがオオミミの為に弁当を作ってくれたのはよく分かる。
 非常によく分かる。
 だけど、おにぎりとか鮭とかに書かれてある『毒』の文字は何なのかな?
 僕、そこだけはちょっと分かんないや。

「つべこべ言わずに喰えオラァ!!」
 無理矢理タカラギ子がオオミミに弁当を食わせようとする。
 やめろ!
 誰か、助けて!!
 殺され…

「!!!!!!!!!!!!」
 と、突如飛来した剃刀がタカラギ子の弁当箱を弾き飛ばした。
 オオミミとタカラギ子の視線が、同時に剃刀の飛んできた方向へと向く。
 そこにいたのは、スケバンルックに身を包んだ絶滅危惧種の女、三月ウサ美だった。

「愛と正義の美少女戦士、ブルセーラームーン!
 月に代わって、折檻よ!!」
 アブドゥル〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
 わしゃあもう泣きそうじゃあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!


     TO BE CONTINUED…

661ブック:2004/06/24(木) 01:16
     EVER BLUE番外編
     ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 死闘編


〜前回までのあらすじ〜

「さあ、今日はタカラギ子さんとのデートの約束の日だ。」
「好きな体位は松葉崩し。
 一人エッチは週五回。
 乳首は黒ずんだピンクです。」
「嫌ぁ!!
 中は駄目!!!
 中は駄目!!!
 中はやめてえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
「愛と正義の美少女戦士、ブルセーラームーン!
 月に代わって、折檻よ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さあ覚悟しなこの薄汚い雌犬め。
 抜け駆けしてオオミミを寝取ろうなんざ、いい度胸だな。」
 剃刀を指に挟んで構え、三月ウサ美が見得を切る。

「くっ…!
 あなたは東洋の紅蠍、三月ウサ美!
 まさかこんな所で出会うなんてね…!」
 パニッシャーを肩に担ぐタカラギ子。

「ふふふふふ。
 ここが貴様の墓場となる。
 死ねーーーーーーーー!!!」
 使い古された脅し文句と共に三月ウサ美が剃刀を投げつけた。
 パニッシャーでそれを受けるタカラギ子。
「ほう。
 よく今のを受け止めたな。
 ならばこれならどうだ。
 超絶無限覇王雷神青竜滅砕派ーーーーーーーー!!」
 何かいかにも小学生が考えたような名前の必殺技来た―――――!

「ぐあああ!!」
 エネルギー派を食らい、タカラギ子が吹っ飛ばされる。
「ふっふっふ…
 どうした、まだ十分の一の力も出してはいないぞ?」
 笑う三月ウサ美。
 お前その台詞…
 一体いつの時代の人間だよ。

「うう…
 大丈夫子、猫ちゃん。」
 見ると、タカラギ子はその胸に子猫を抱え、先程の攻撃から庇っていた。
 いや、その猫絶対さっきまで居なかったじゃん。
 それにしても何だこの展開は。
 黄金期のジャンプ漫画の世界にでもトリップしているのか?

「遊びはこれまでだ!
 今度こそくたばれ、超絶無限爆炎風神暗剣殺ーーーーー!!
 この技は核爆発を防ぐ金属すら破壊する!!!」
 名前変わってるじゃねぇかよ!!
 つうか、核爆発すら防ぐって、最強厨かお前は!?

「絶対無敵バリアー!!」
 しかし、タカラギ子の展開したバリアーがその一撃を受け止めた。
「何だと!?
 ありえない、富士山すら消し飛ばすこの技が!!」
 驚愕する三月ウサ美。

「あなたは強い…
 だけど、決定的なものが欠けているわ。
 それは人の愛よ!!」
 愛って…
 そんなの今日び週間少年マガジンの漫画でも言わねぇよ。

「これが人の愛の力というものよ!
 受けなさい、
 スーパーウルトラミラクルスペシャルハイパーゴールデンゴージャスワンダーマッハ
 ドラゴンタイガーフェニックスゴッドパワークラッシュブラストソードブレイドネオ
 カイザーキングスラッシュボンバーメテオラストファイナルアタック零式!!!!!」
 三月ウサ美以上に厨臭い必殺技だーーーーーーー!!
 ていうか愛全然関係無いじゃねぇかよ!!

「馬鹿な!
 この人を超えた私がーーーーーーーーー!!!」
 お約束過ぎる断末魔の台詞と共に、三月ウサ美は倒れた。
 しかし、どうやらまだ辛うじて生きてはいるようだ。

662ブック:2004/06/24(木) 01:16

「…どうした。
 止めを刺さないのか…?」
 息も絶え絶えに呻く三月ウサ美。

「…急所は外してあるわ。
 これからは今迄犯してきた罪を償いながら生きなさい。」
 お前は最近少年漫画で流行の、ろくに信念も無い不殺主人公か!!
 殺せ!!
 この世の為にきっちり殺しとけ!!

「!!!!!!!!」
 その時、三月ウサ美の頭を銃弾が打ち抜いた。

「全く…使えない奴だったわねぇ…」
 硝煙の昇る狙撃銃を片手に現れる女。
 また病人が現れやがった。
 誰か医者呼んで来い、医者。

「私の名前はサカー奈。
 魔王様に仕える四天王の一人。
 三月ウサ美を倒した位でいい気にならないでね。
 そいつは、四天王の中でも一番弱かったのよ。」
 うわすっげ。
 二十一世紀にもなって、こんなカビが生えたような台詞を聞くとは思わなかった。

「何で仲間を殺したの!?」
 タカラギ子が叫ぶ。
「仲間?
 くくく、とんだ勘違いだ。
 負けるような役立たずなど、仲間の価値などないわ!!」
 銃をタカラギ子に向けて構えるサカー奈。

「許さない!!」
 さっきあわよくば三月ウサ美を殺そうとしていた事など棚に上げて、
 タカラギ子が飛び掛かる。

「甘い!
0.2536秒遅いわ!!」
 だが、サカー奈は苦も無くタカラギ子の胸に銃弾を放った。
 心臓の位置で、タカラギ子の服が爆ぜる。
 つーか、もうこのゲームギャルゲーじゃねぇよ。

「!!!!!」
 しかし、タカラギ子が何事も無かったかのように立ち上がってきた。
 何故だ?
 今ので死ななかったのかよ?

「…!
 これはオオミミ君が渡してくれたワッペン。
 オオミミ君が守ってくれたのね…」
 渡してねぇよそんなもん!!
 いつそんな描写があったよ!?
 ていうかワッペンなんぞで銃弾が防げるか!!

「くっ…!
 これが愛の力か…!!」
 サカー奈が怯む。
 だから愛なんか関係ないだろうが!
 お前ら揃いも揃って痴呆か!?

「ならばその力の源を消し去る!
 死ね!!」
「!!!!!!!!!」
 次の瞬間、オオミミの胸部がサカー奈によって撃ち抜かれた。

「…!
 オオミミ君!!」
 駆け寄ってくるタカラギ子。
「うう…俺はもう駄目だ……
 せめてお前だけは幸せになってくれ、ぐふっ。」
 死んだ!
 主人公死んだ!!
 おい、死んだぞ!?
 死んだぞ主人公!!
 主人公殺しちまっ、一体どうすんだよ!!

663ブック:2004/06/24(木) 01:17

「オオミミ君…!
 許さない…あなただけは絶対に許さない!!」
 タカラギ子の周りにオーラが漂い、髪が逆立つ。

「何ぃ!?
 あいつのどこにこんな力が…!」
 何の脈絡も無く、怒りの力でパワーアップ来たーーーーー!!

「人は一人では生きていけない…
 だけど、だからこそ手と手を取り合って生きていける。
 それが人間の力!!」
 死ぬ!
 死ぬ死ぬ!!
 臭過ぎて死ぬ!!!
 頼むからもう助けてくれ!!!!
 お前どこのRPGのキャラクターだ!?

「受けなさい!
 スーパー(中略)零式!!!」
 大幅に必殺技の名前はしょったーーーーーーー!!

「うっぎゃああああああああああああああああああああ!!!」
 光の奔流に吹き飛ばされるサカー奈。
「うぐぐ…!
 見事ね!
 だが、本当に恐ろしいのはこれからよ!!
 残りの四天王は、私の百倍は強い!!
 あなたなど、一秒で殺されるわ!!」
 血を吐きながらサカー奈が口を開く。

「今日の所はこの辺で退いてあげる。
 だけど、次に会った時は覚悟していなさい!
 ギルガメッシュナイトと、馬鹿殿様のおっぱい神経衰弱の復活、
 果たしてあなたに止められるかしら!?」
 そう言い残し、サカー奈はワープでその場から消え去った。
 で、これって何のゲームだったけ?


「オオミミ君…!」
 絶命したオオミミに、タカラギ子が縋りついた。
「ごめんなさい、私が弱い所為で…」
 いや、お前、
 前回毒入りの弁当食わせようとしてたじゃん。
 いまさら何言ってんの?

「う…うう……」
 その時、オオミミの身体が僅かに動いた。
「!?」
 タカラギ子が目を見開く。

「タカラギ子さんの涙で生き返ったよ。
 これが愛の力さ。」
 生き返るかよ!!
 お前心臓打ち抜かれてただろ!!
 涙なんかで復活するか!!

「さあ、すぐに旅に出よう。
 俺達の闘いは、今始まったばかりだ!」

  〜第一部・完〜
  ブック先生の次回作にご期待下さい。

664ブック:2004/06/24(木) 01:20
:.,' . : : ; .::i'メ、,_  i.::l ';:.: l '、:.:::! l::! : :'、:i'、: : !, : : : : : :l:.'、: :
'! ,' . : i .;'l;' _,,ニ';、,iソ  '; :l ,';.::! i:.!  : '、!:';:. :!:. : : : :.; i : :'、:
i:.i、: :。:!.i.:',r'゙,rf"`'iミ,`'' ゙ ';.i `N,_i;i___,,_,'、-';‐l'i'':':':':‐!: i : : '、
i:.!:'、: :.:!l :'゙ i゙:;i{igil};:;l'   ヾ!  'i : l',r',テr'‐ミ;‐ミ';i:'i::. : i i i : : :i どっから見ても
:!!゚:i.'、o:'、 ゙、::゙''".::ノ        i゙:;:li,__,ノ;:'.、'、 :'i:::. i. !! : : !:  打ち切り漫画の終わり方じゃねぇか!
.' :,'. :゙>;::'、⊂‐ニ;;'´          '、';{|llll!: :;ノ ! : !::i. : : : : i :   あやまれ!!
: :,' /. :iヾ、   `        、._. ミ;;--‐'´.  /.:i;!o: : : :i :   読者の皆さんにあやまれ!!
: ; : ,' : : i.:      <_       ` ' ' ``'‐⊃./. :,: : : O: i. :
: i ,'. . : :',      、,,_            ,.:': ,r'. : , : : !: :
:,'/. : : . :;::'、     ゙|llllllllllllF':-.、       ,r';、r': . : :,i. : ;i : :
i,': : : :.::;.'.:::;`、    |llllH". : : : :`、    ,rシイ...: : ; : :/:i : i:!::i:
;'. : :..:::;':::::;':::::`.、  |ソ/. : : : : : : ;,! ,/'゙. /.:::: :,:': :./',:!: j:;:i;!;
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もう本当に好き勝手電波を垂れ流してごめんなさい。
というか生まれてきてすみません。
次からは本編に戻ります。

665 ( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:45
「魅せてやろう。ひれ伏せよジャップどもッ!『トットリ・サキュー』ッ!

―巨耳モナーの奇妙な事件簿―『トットリ・サキュー』

・・・?
今アイツなんていった・・?
『鳥取・・砂丘』・・?
「・・ネーミングセンスが無いな、貴様。」
殺ちゃんがため息をついて言う
「な・・貴様ッ!この極東の小島ごときに存在する唯一の名所『鳥取砂丘』をバカにするのかッ!」
・・コイツ日本大好きなんじゃないか?

「・・・・ブフッ。」
後ろで必死で笑いをこらえていたムックが耐えられず吹き出す
「キ・・サッマ・・ラァAHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!こンの種無しピーマン野郎がァァァァッ!」
流石のハートマンもブチ切れすっ飛んでくる
しかしハートマンの体はムックには全く届かない地面に落ちる
そしてその体はズブズブと地面に溶け込まれていった。

「・・ッ!これは・・」
俺の脳裏に病院での闘いのビジョンが蘇る。
あの恐ろしい能力がまたか・・ッ!
「『トットリ・サキュー』ッ!」
ハートマンが恥ずかしいスタンド名を叫ぶ

そしてムックの後方に巨大な手が現れる
ソレを紙一重で避けるムック
「・・・・?」
俺はその光景を見て疑問を覚えた。
「あの手・・・右腕・・?」
頭に病院戦の様子が思い出される

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんだこれは・・右腕が・・戻せんッ!」
ハートマンの右腕はブレ、砂になった
「あああああああああッ!ク・・ソ・・ッ!貴様・・何をォーッ!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

666( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:46
!!
そうだ!確かアイツの右腕は俺がジェノサイアで砂にしてやったはずじゃ・・ッ!
でも・・どうみてもあの腕は・・右腕にしか・・

そんな事を考えていると俺の後方にも腕が現れる
「――ッそ!」
ギリギリで避ける俺
しかし、これで奴の両手が揃ってしまった。
一体何故・・・ッ!?

「・・『一体何故』そんな事を思っているな?巨耳モナー・・。」
ハートマンの口がニヤける
・・?何故だかわからんが相当不気味だ。
「教えてやろう。ソレはな・・。」

「すまぬ。特に興味は無い。――死ぬが良い。」
いつのまにかハートマンの死角にいた殺ちゃんの体から無数の重火器が現れ、
大きな音と閃光が走った。

何とかよけようとしたハートマンだったが、そのスピードは間に合わず、
半身が完全に砕ける。
そして横に倒れた。
「ふん・・・あっけない。」
殺ちゃんは銃に息を吹き、キメポーズをする

だが次の瞬間殺ちゃんの体は遥か彼方の道路に落ちた。
何だ?一体何が――?
「殺ちゃ・・っ」
俺が殺ちゃんのもとへと駆け寄ろうとすると巨大な手が現れる。
コレは・・『トットリ・サキュー』・・?

俺は即座にハートマンの死体へと目を向ける
――無い。
馬鹿な。
確かにアソコに――

考える暇も無く、俺の体は宙を舞い、地面に叩きつけられた
「ッグァッ!?」
マズい。背骨がイっちまったかもしれない。

そんな激痛が襲う俺の背中に更にパンチがくる
「『ソウル・フラワー』ッ!!」
無数のパンチと共に、花が咲き、養分が送られ、背中が元に戻る。
痛い。ぶっちゃけありがた迷惑だ。

意識が朦朧としながらも立ち上がると、ピンピンしたハートマンが目に入る。
馬鹿な。どうやっていやがる?幻覚?能力?残像?魂?
だがその時、俺の脳裏にある単語がよぎる
「―『吸血鬼』・・?」

ハートマンが微笑んだ。間違いない。コイツはそうだ。あの『狂いのバレンタイン』事件で見た
『吸血鬼』だ・・・。
馬鹿な・・。コイツはあの悪夢を・・また・・?
あの・・『悪夢』を・・?

「・・・YESYESYES・・。私こそ『吸血鬼』だよ・・。巨耳モナー・・。」
「『吸血鬼』・・『石仮面』と呼ばれる仮面によって生み出される悪魔・・。『骨針』により脳を刺激し・・
人間では出す事の出来ない領域の力を生み出す・・。日の光に当てるか、頭部を完全に破壊するまで再生し続けるバケモノ・・。」
俺はハートマンを睨みつける
「・・・『狂いのバレンタイン』を起こした忌むべき存在・・っ」
そして、低くつぶやいた。
「ほぅ。貴様。国によって掻き消され、うやむやにされた事件・・『狂いのバレンタイン』を知っているのか・・。」
「・・・『狂いのバレンタイン』・・とは?」
体をひきずり、殺ちゃんがやってきた。

「『狂いのバレンタイン』・・。日本で起きた最凶で最悪な事件だったよ・・。」
「ある人物・・今となっては誰かもわからんが、その者が吸血鬼になり、一人の女に最高の花火をプレゼントした。」
俺は拳を握り締めた
「そう・・あの女に・・あの・・女にッ―――!!」

「確か女の名は『ドキュソちゃん』・・。彼女の美貌に惚れた男が彼女に『花火が見たい。最高の花火が』。そういわれて・・。」
ハートマンの顔は少し笑っていた。
「吸血鬼の跳躍力で・・飛んでいる旅客機を・・・。」
「墜落させた。」
俺とハートマンは同時につぶやいた。
「それでHANABI・・。」
ムックはあっけにとられた顔をする。

「生存者は無し。犯人ですらドキュソの手によって太陽光で葬られてる・・。しかもドキュソの刑は証拠不十分で執行猶予がついた。」
嘲笑混じりで言うハートマン
「・・・そのドキュソも何者かの手によって葬られてる。」
俺は怒りを込めた声でつぶやいた。
「・・・しかもあの旅客機の中に・・俺の彼女が乗っていた。」
「ほぅ・・?」
ハートマン以外は驚愕の表情をする。

「・・・アイツに殺されたんだ・・『吸血鬼』に・・。」
俺は小さく、打ち震えつぶやいた。
「・・何故そんな大きな事件が消されて?」
「当時の情勢が複雑だったのでな。上の方のバカどもは人命より国が大事だったらしい。
そんな事件が起こったと知ったら観光客も減る、国民も恐れる、そしてその虚を狙いテロもあるかもしれん。」
「ヒドいですNA・・。」

667( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:46
「・・そうだ。面白い事を思いついたぞ。――貴様の『処刑』についてだ。巨耳モナー。」
ハートマンは物凄い笑みをみせつける。
「あの『悪夢』を再来させてやろうッッ!!」
ハートマンは思いっきりしゃがむとかなりの跳躍をし、夜空に消えた。
「馬鹿な・・やめろ・・・やめろォォォ―――ッッ!!!」
俺は空に向かって叫んだ

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ィッ!
もう・・止められんよォォォォォォォォォッ!HYAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
とてつもないスピードでハートマンと旅客機が垂直に落ちてきた。
まるで、ミサイルの如く。
俺はその場にへたり込み、震えた。
後ろからジェノサイアが出てくる。

「巨耳くんッ!立ってっ!たたないと・・死んじゃうッ!立ってッ!早く・・立って―――ッ!」
しかし俺にはもう何の声も聞こえない。
無理だ。俺はもう・・
今すぐそっちへ行くよ・・――マリア。

「ムック・・死ぬ覚悟は?」
「出来てませんZO。」
「よし。それでよい。神に祈るのは・・死んだ後で良いッ!!」
殺ちゃんは叫び、仁王立ちをした。

だが、その叫びはむなしくも、旅客機がついらくする轟音に掻き消され
その姿は閃光に飲み込まれるのであった。

←To Be Continued

668:2004/06/24(木) 21:58
ちょっと今日中に貼らないといけないので、新スレ立つまで待てませんよ…

669:2004/06/24(木) 21:59

かって、1人の神父がいた。
『覚悟する事が、人類の幸福に繋がる――』
そう結論付けた神父は、世界を1巡させたという話がある。
そうならば…
これから語られる話は、一体何巡した世界なのか分からない。
だが、ただ1つ言える事は…

この番外編は、モナ冒本編と関連性はありません。





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      「モナーの愉快な冒険」
       番外・モナヤの空、キバヤシの夏(前編)

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「――6月24日はUFOの日なんだよ!!」

 受話器の向こうで、キバヤシは告げた。

「…そ、そうモナか」
 俺は、呆れながら言った。
 早朝から電話がかかってきたと思ったら、いきなりこれだ。

 キバヤシは熱に浮かされたように話を続ける。
「1947年6月24日、ケネス・アーノ○ドという実業家は、飛行機の窓から信じられないものを見たんだよ!!」

「…ちょっといいモナか?」
 俺は口を挟んだ。
「なんで伏字を使ってるモナ?」

「…一応、実在の人物だからな。とにかく、彼は信じられないものを見た。
 編隊を組んで飛んでいた、9機の飛行物体をな。
 彼はこれを、マスコミのインタビューで『フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)』と呼んだんだよ!!」
 受話器の向こうで、キバヤシの顔がアップになる気配。
 だが、まだだ。
 『なんだってー!』にはまだ早い。

「物体との距離から判断して、それはマッハ1.5で動いていたと彼は証言した。
 これが… 世界初のUFOの目撃例なんだよ!!」
 キバヤシは大声を張り上げた。

「異議あり!!」
 俺は負けずに大声を上げる。
「最初の目撃例と言うが、火球やフー・ファイター(幽霊戦闘機)の目撃例は以前からあったモナ!!
 さらに彼は、『フライング・ソーサー』とは言っていないモナ!!
 彼は『ソーサー(皿)のような動きをしていた』と言っただけ…
 つまり水切りの要領で水面を跳ねる皿を想定していたわけで、形状ではなく動きについて語られたものモナ!」

「…!!」
 キバヤシが息を呑むのが、受話器越しに伝わってくる。
 俺は続けた。
「そして、彼が用いた『ソーサー』という言葉が独り歩きしてしまったモナ。
 『フライング・ソーサー』と言い出したのは彼ではなく新聞記者であり、そもそも誤謬があった言葉モナ!!
 さらに、彼が述べたマッハ1.5という表現も怪しいモナ。
 ベテランのパイロットでさえ、離れた距離にある物体の距離を判断するのは難しい…
 物体がもっと近かった可能性もあり、そうだと速度は遅くなるモナ!
 何より彼は… 自分が目撃したものを、ソ連の最新軍用機と思っていたモナ!!」

「…」
 キバヤシは黙っている。
 すかさず俺は畳み掛けた。
「このア○ノルド事件、現在伝わっているのは歪曲された姿モナ。
 再現フィルムなど、ジグザグに飛んでいたり、凄まじい光を放ったり…
 でも実際は、太陽光を反射して軽く光った程度モナよ。
 彼が見た物は今となっては分からないけど、観測気球の可能性が高いモナ。
 当時は、複数の気球をロープで繋いで打ち上げる方式があったモナ。
 それが気流に乗ってしまうと、かなり速いスピードで飛ぶモナ。
 ちょうど、彼が目撃した飛行物体のように…」

「くっ、モナヤ… やるようになった!」
 キバヤシは吐き捨てた。
「まあ、今のは話の触りだ。さっき、MMR宛に読者から手紙が届いたんだよ…」
 何やら、ガサガサという音が聞こえる。
 手紙とやらを取り出しているのだろう。
 と言うか、読者って何だ?

670:2004/06/24(木) 22:00

 少しの間の後、キバヤシは口を開いた。
「…読み上げよう。
 『拝啓。こんにちわ、ミステル・キバヤシさん。毎週、楽しみに見ております。
  私は、何の変哲もないドイツ人です。
  先日私は裏弐茶県の首吊り島にUFO基地があるという情報を掴み、潜入しました。
  ですが即座に発覚し、襲い来るエイリアンを5体までは撃退したのですが…
  流石に敵は大勢、涙を呑んで逃走しました。
  今にして思えば、撃退したエイリアンの数は10体だったかもしれません。
  ですが敵の追撃は厳しく、メガ粒子砲の直撃を受けてしまい怪我をしました。
  偶然、エイリアン達と交戦していたアメリカ宇宙軍に救助されましたが…
  その際にUFOの写真を撮影しましたので同封しておきます。
  おそらく、あの島には秘密があるに違いありません。
  そこでMMRの皆さんには、その首吊り島の調査をお願いしたいのです。
  どうか、よろしくお願いします。            Mr.Z』
 …という事だ。あと、詳細な住所が記されている。モナヤ、どう思う?」

「…拝啓で始まってるのに、敬具が抜けてるモナね」
 俺はとりあえず言った。
 どうやら、俺の知らないところで宇宙戦争は始まっていたらしい。
 かってない壮大なスケールだ。
「それで、UFOの写真っていうのは…?」

「かなり粗いが… 確かにUFOだな。下部には砲台もついてる」
 キバヤシは言った。
「そこでだ、モナヤ。MMRは、裏弐茶県に調査に向かう事になった」
「ええっ! モナも行くモナか?」
 返事を聞くまでもない。
 MMRには、俺とキバヤシしかいないのだから。
「…いつからモナ?」

「無論、今からだ。ちゃんと、首吊り島にあるペンションに予約を入れてある。
 安心しろ、費用は全てこちらで持つ」
 キバヤシは当然の事のように告げた。
 相変わらず、俺の予定など何も考えていない。
 俺は、少し考えて言った。
「…リナーを連れて行ってもいいモナ?」
「別に、何人随伴しようが構わんさ。じゃあ、午前10時に駅前で」
 そう言って、キバヤシからの電話は切れた。

「リナー!! 一緒に、島にバカンスに行かないモナ?」
 俺は受話器を置くなり、リナーの部屋に呼びかけた。
「…バカンス?」
 リナーが、部屋から目をこすりながら出てきた。
「別に構わんが… 何でいきなり?」

「6月24日はUFOの日だからモナよ…」
 俺はニヤリと笑って言った。
 まあ、リナーと2人っきりで休日を潰すのも悪くはない。
 …あれ、なんで今日は休日なんだ?



 そして、俺達は駅前に立っていた。
 予想通り、多くのオマケを連れて…
「で、ちゃんとしたペンションなんだろうなゴルァ!」
 大きなリュックを背負ったギコは言った。
 その脇には、しっかりとしぃもいる。
 しぃも例外なく、大きな荷物を抱えていた。
「…知らないモナよ。予約したのはキバヤシモナ」
 俺は憮然として答える。
 全く、リナーと楽しい2人旅だったはずが…

「清潔なところがいーなー!」
「あと、風呂が大きいところだね。20畳以上はないと、僕は風呂とは認めないよ?」
「アッヒャー!!」
 そして、当然のように喚き立てる三馬鹿。
 奴等の山のような荷物。
 モララーなど、自分の身長ほどもあるスポーツバックを背負っている。
 どう見ても、泊まる気マンマンだ。
 もういい、どうせこうなるんだ…

「オマエラ、俺の事を忘れてはいないかッ!!」
 きなり、大声で叫ぶ三角頭。
「随分と久し振りモナね…」
 俺は彼に視線をやって呟いた。
「…俺はいつまでも…、俺はッ…ううっ!!」
 突然、泣き出す三角頭。
 ウザい事この上ない。

 …あれ、おかしいな。
 確か、毎日学校で顔を合わせていたはずが…
 ってか、日中歩いて大丈夫なのか、俺?
 まあいい。
 UVクリームとかでOKだ。
 なお、この設定はモナ冒本編では適用されないぞ。

「待たせたな、モナヤ」
 背後からキバヤシの声。
 『MMR』と書かれたシャツを着込んだキバヤシが、5分遅れで到着したようだ。
 そして、彼は俺達を見回した。
「随分沢山いるな… まあいい、MMR出動だ!!」
 キバヤシは、背を向けて改札口を進んでいった。
 俺達も後に続く。
 首吊り島とやらの近くまでは、電車で行くようだ。

671:2004/06/24(木) 22:01



 電車の中で、俺は今回の調査の目的について説明した。
 本来はキバヤシの役割なのだろうが、奴が電車に酔って使い物にならなかったからである。
「…じゃあ、ここでこいつを窓から投げ落とせば、訳の分からん調査とやらはバカンスに早変わりか…」
 ギコは、目を細めてぐったりしているキバヤシを見た。
 いくら相手がキバヤシでも、その扱いはひどすぎる。

「いいじゃない? ミステリーの調査なんて、ロマンチックで…」
 レモナは目を輝かせて言った。
「モナーくん、私が宇宙人にさらわれたら助けに来てね!」

「お前を連れ去れる宇宙人なんかいたら、人類じゃ太刀打ちできないモナ」
 俺はため息をついて言った。
 つーは、どうでも良さそうに窓の外の景色を眺めている。
「UFOか… でも、そういうのってワクワクするね」
 モララーは、割と乗り気のようだ。
「ギコ君は、本当に宇宙人がいると思う?」
 しぃは興味深そうに訊ねた。
 ギコは腕を組む。
「俺達がここに存在している以上、結局は確率論だからな…
 広い宇宙のどっかにゃいるかもしれないが、わざわざ地球に来てる可能性はないと思うなぁ…」

「リナーはどう思うモナ?」
 俺は、リナーに訊ねた。
「定番の返答だが、UFOは異星人の乗り物を示す用語ではない。単に未確認飛行物体の英略だ。
 観測した本人が対象を定義できないなら、例え気球でもUFOになる」
 そう言って、リナーは顔を上げた。
「…だから、特に感想はない」

 しぃやレモナ、モララー達は、宇宙人の存在について議論していた。
 いつもなら真っ先に炸裂するキバヤシは、電車酔いで完璧にダウンしている。
「でも、私はUFO見た事があるんだよ!?」
 そう主張するしぃ。
「金星か何かの見間違いだろ? 普通は星なんかと見間違えないと思うだろうが、金星だけは特殊で…」
 ギコはしぃの意見を否定している。
 どうやら、わりと議論は白熱しているようだ。
 調査はこいつらにでも任せて、俺はリナーとペンションでのんびりしとこう…



「…凄い田舎モナね」
 駅から出た途端、俺は呆れて言った。
 目の前に広がる海。
 そして、かろうじて人が住んでいると分かる微かな建築物。
 まるでさびれた漁村だ。
 ここから、首吊り島への船に乗るらしいが…

「無人駅なんて、10年振りだよ…」
 モララーは、駅の方へ振り返って言った。
 そもそも、こんな所に船なんて来るのか?

「現地の人が、ボートで迎えに来るはずだ… ウップ」
 そう言って、キバヤシは気分が悪そうに錆びたベンチに腰を下ろした。
 ボートか…
 低予算だが、全てはキバヤシに委ねている以上、仕方ないのかもしれない。
 だが…
 あんまり妙なペンションは困るな。

「予約入れてるってのは、どんなペンションなんだ? 変なところじゃないだろうな?」
 俺と同じく不安に思ったのか、ギコは訊ねた。
「やけにこだわるモナね。ペンションに悪い思い出でもあるモナか?」

 ギコはため息をつく。
「それが大アリなんだよ。去年の冬に行ったとこなんか、風呂が滅茶苦茶汚くてなぁ…」
「 で 、 誰 と 行 っ た の ? 」
 ギコの言葉をしぃが遮った。

「…で、どんなペンションモナ?」
 俺は、ぐったりとしているキバヤシに訊ねた。
「…ん?」
 キバヤシは視線を上げる。

「…『砕ける』」
「ギコハニャーン!!」
 背後から妙な声が聞こえてくるが、気にしないでおこう。

「『マサクゥル』という名の、ナウいペンションだよ」
 力無く呟くキバヤシ。
「…『マサクゥル』か。名前は強そうだね」
 モララーは口を開いた。
 キバヤシは続ける。
「首吊り島にある唯一の建物で、屋敷と言ってもいいほど立派なペンションだ。
 もっとも、写真でしか見た事がないけどな…」
 キバヤシはそう言って、ため息をついた。
 顔色は、先程より良くなってきている。

「あんたら、都会から来なすったのかね?」
 ベンチの周囲に固まる俺達に、老婆が声をかけてきた。
 いかにも、古老といった感じだ。

「…はい。首吊り島っていうところに行くんですよ」
 しぃは頷いて答える。
「な…! 首吊り島となッ!」
 老婆は驚きの声を上げた後、顔を引き攣らせて固まってしまった。

「…?」
 その様子を見たキバヤシが、腰を上げて老婆に訊ねる。
 どうやら全快したようだ。
「…首吊り島に、何かあるんですか?」

672:2004/06/24(木) 22:01

「知らん! あんな呪われた島の事など、ワシは何も知らんぞッ!!」
 そう言って、老婆は背を向けた。
 そのまま、ちらりとこちらへ視線を向ける。
「あんたら、命が惜しかったらあの島に近付くでないぞッ!!」
 そう言い残して、老婆はそそくさと去っていった。
 まるで、関わり合いになりたくないといった具合に。

「…判で押したような反応だな」
 ギコは呆れたように言った。
 そして、おそらくボートで迎えに来た現地の人とやらが、この島の因縁について語ってくれるのだろう。

「…そう言えば、Mr.Zとやらが手紙に同封したUFOの写真ってのは?」
 俺は、キバヤシに訊ねた。
「おっと、忘れるところだった…」
 キバヤシはポケットから1枚の写真を出すと、俺に渡す。

 俺は、その写真を見た。
「どれどれ…?」
 ギコ達が、俺の背後から写真を覗き込む。
 不鮮明だが、妙な物体がかなり大きく写っていた。
 まさに、円盤型。
 キバヤシの言った通り、その下部には砲台のような物がついていた。
 まるで、戦車の砲塔を逆さにしてくっつけたみたいな…

「何だこれ、パンターじゃねぇか」
 ギコは言った。
「…パンター?」
 俺は振り返って訊ねる。
「ドイツが、ナチス時代に開発した戦車だよ」
 ギコは告げた。
 何だ、本当に戦車の砲塔だったのか…

「じゃあ、合成したトリック写真って事?」
 しぃは訊ねる。
「ああ、本当にこんなモンを作ったんじゃない限りはな…」
 ギコは馬鹿馬鹿しそうに言った。
 それも当然だ。
 未知の飛行物体を製造しておきながら、パンターの砲塔を逆さにしてくっつける馬鹿が存在するとは思えない。

「じゃあ、無駄足だったって訳?」
 モララーは不服そうに言う。
 俺は、そっちの方が有難いんだがな。
「あきらめない…」
 キバヤシは呟きながら顔を上げた。
「『あきらめない』というのが、俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ!!」
 …つまり、調査を止める気はないらしい。

「つーか、Mr.Zとかいうヤツ、怪しすぎないか…?」
 ギコは言った。
 何を今さら。その名前で怪しまない奴は失格だ。
「手紙の方も見せてくれないか?」
 ギコは、キバヤシに手を出した。
「ああ… どこに仕舞ったかな」
 カバンをごそごそするキバヤシ。
「あった、これだこれだ…」
 キバヤシは封筒から手紙を出すと、ギコに渡した。

「うおっ!! 怪しッ!!」
 それを見て、俺は思わず叫んだ。
 まるで一昔前の脅迫状のように、手紙の文字は切り抜いた活字の貼り付けだったのだ。
「…今どき、こんなことするヤツいるんだね…」
 モララーは呆れたように言った。
 字の大きさもマチマチで、所々ずれている
 もう、怪しさ大爆発だ。

「…ん、迎えが来たようだ」
 キバヤシは腰を上げた。
 海面に古臭いボートが浮いている。
 俺達全員+荷物が乗ったら、沈んでしまいそうな…

 現地の人と思われる筋肉質のニワトリが、キバヤシと視線を絡めた。
 ゆっくりと頷くニワトリ。
「じゃあみんな、ボートに乗ってくれ」
 そう言いつつ、キバヤシがボートに乗り移った。
 その衝撃だけでボートは大きく揺れる。

「オイオイ、こんなボロで大丈夫なのか? みんな乗ったら沈んじまうんじゃねーか?」
 三角頭は言った。
 ってか、いたのか。

「…」
 ニワトリが、三角頭を睨んだ。
 そして地上に飛び移ると、腕をクイクイさせる。

「左側の海苔頭! きさまの頭の形が気にくわん! 今から痛メツケテヤル!! …だそうだ」
 キバヤシはボートに腰を下ろして言った。

「はァ〜〜〜〜? おれのことか? なんだてめー! いきなり何いいだすのん? 頭パープリンなのか?」
 ニワトリを挑発する三角頭。
 パープリンなのは、間違いなくお前だ…

673:2004/06/24(木) 22:02



「じゃあ、出発だ!」
 キバヤシは言った。
 ニワトリはおもむろに海に飛び込むと、ボートの背面に回る。
 そしてボートを押しながら、激しくバタ足を始めた。
 その勢いで、ボートはゆっくりと進み出す。
 オールは、三角頭を叩き潰した時に折れてしまったのだ。

「…まあ、全員乗ってたら沈んでたかもしれないモナね。1人足りないくらいがちょうどいいモナ」
 俺は、ポジティブに物事を考える事にした。
「つーか、こんな重要な事を今まで聞かないのもアレだけど…」
 ギコはおもむろに口を開いた。
「何泊する予定なんだ?」

「この船が出るのは1週間に1回だ。つまり、次にこの船が来るのは1週間後だな…」
 キバヤシは澄まして言った。
 どうやら、海の上だと酔わないらしい…って、それどころじゃねー!!

「じゃあ、1週間は本土から帰れないのかい!?」
 モララーは叫んだ。
「その通りだが、心配する事はない。食料や生活用品は、1週間分以上は備蓄されてあるからな…」
 そう言って爽やかなスマイルを見せるキバヤシ。
 何と言うか、最もタチが悪いシュミレーションだ。

「まあ、大丈夫なんじゃないか?
 いざとなったら、モララーの『アナザー・ワールド・エキストラ』もあるし…」
 ギコは腕を組んで言った。
 確かにそうだな。
 仮にも俺達はスタンド使いだ。

「…ほら、島が見えてきたぞ!」
 しばらくして、キバヤシが水平線を指差した。
 うっすらと、首吊り島がその姿をあらわす。

「なかなか大きい島だな…」
 ギコは呟いた。
 つーが島を見てはしゃぐ。
 確かに大きい。人里離れている事といい、秘密基地を作るなら絶好の場所だろう。

 俺達は、この時は思いもしなかったのである。
 ペンション『マサクゥル』が、忌まわしい殺人事件の舞台となる事を…



 ボートが砂浜に乗り上がる。
 ここには、港はないらしい。

「よっと…」
 俺は、島に上がった。
 海の傍にもかかわらず、うっそうと茂った森が視界に広がる。
 獣道が、森の中を真っ直ぐに走っていた。

「…まさか、歩いていくの?」
 しぃはうんざりしたように言った。
 その気持ちは良く分かる。

「そう、ここから真っ直ぐに30分ほど歩けば『マサクゥル』に到着だ」
 キバヤシは言った。
 その背後で、ニワトリはボートを発進させた。
 ボートを押しながらバタ足で水面を蹴るニワトリの姿が、みるみる遠くなっていく。

「たかだか30分だろう、大した距離じゃない」
 リナーは言った。
 確かにそうだ。
 現在4時半。5時には『マサクゥル』に着く計算だ。
 俺達は、『マサクゥル』に向かって歩き出した。



 ――午後5時。

 俺の眼前に、大きな門がそびえ立っていた。
 …デカい。
 とにかくデカい。
 これはもはや洋館だ。ペンションとは言わんだろう。
 外観からして、3階建て。
 中世の貴族が舞踏会とか始めそうな雰囲気だ。
 キバヤシは立派な扉に歩み寄ると、無造作に呼び鈴を鳴らした。

 しばらくの間の後、ゆっくりと扉が開く。
 その間から、にこやかな笑みを浮かべた男が顔を出した。
 良く言えば立派な体躯、悪く言えば肥満した肉体。
 彼はゆっくりと扉から出てくると、キバヤシと握手をした。

「『マサクゥル』へようこそ。MMRの皆さんですネ。
 ワタシはこのペンションのオーナー、曙と言いマス」
 第一犠牲者… じゃない、曙はどこか英語めいた発音で言った。
「さあ、中へドーゾドーゾ…」

 見た目はいかついが、どうやら曙はいい人のようだ。
 俺達はペンションに入った。
 高級そうな内装。
 廊下には、高そうな調度品が並んでいる。
 落ちてくれば数人は命を落とすであろうシャンデリアも見逃せない。
 何か、リュックを背負っている俺達が気後れするほどに豪華だ。
 周囲を見回して、キバヤシは口を開いた。
「…いいペンションだ。ナウなヤングにバカウケだな」
「そうでショう? ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 キバヤシの言葉を聞いて、曙は豪快に笑った。

674:2004/06/24(木) 22:03

「さて、客室は2階になりマス」
 曙は、ロビーの正面にある階段を上った。
 俺達はぞろぞろと後に続く。
 立派な階段を上ったら、広い廊下が目の前に続いていた。
 両側には、客室のドアが延々と連なっている。

「8名様ですから… 205〜212室をご利用下さい」
 ドアを指して、曙は言った。
「朝食は午前8時。昼食は正午、夕食は午後7時です。間取り図が各部屋にあるので、見ておいて下サイ」
「…ああ、分かった」
 キバヤシは頷く。

「では…」
「あっ、ちょっと!」
 背を向ける曙を、俺は慌てて呼び止めた。
「…誰か、あなたを憎んでいる人間はいるモナ?」
 俺は訊ねる。
「…いきなり何を言っている?」
 リナーが眉を寄せる。
「いや、死人に口無しになる前に、重要な事は聞いておこうかと思って…」
 俺はポケットからメモを取り出して言った。

「…別に心当たりはないですネ。ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 曙は笑う。
「…分かったモナ」
 俺は『敵なし』とだけ書いて、メモを仕舞った。
 曙は軽く頭を下げると、階段を降りていった。

「さて、部屋だが…」
 ギコは口を開く。
「私はモナーくんの隣ねー!!」
「アアン! 僕も、モナー君の隣にするんだからな!!」
「じゃあ、モナはリナーと同じ部屋で!!」
「ノストラダムス…!」
 俺達は、口々に喚き立てた。

 ギコは両手をかざしてそれを制する。
「どうせ穏便にゃ決まらんだろうし、事件発生の前に無駄な犠牲を出すのもアレだからな…
 ここは潔く、ジャンケンでどうだ?
 いったん決まったら、後は誰と同室しようが個人の自由って事で…(俺は最初からそうするつもりだけどな)」
 …ギコの心の声が聞こえた。

 まあ、揉めずに決めるにはジャンケンが一番問題が無いだろう。
「…それもいいかもね」
 モララーは承諾する。
 レモナも黙って頷いた。

「じゃあ、ジャーンケーン……ホイ!!」
 ギコの音頭と共に、全員が手を出した。
 普通8人の大人数ともなると、あいこが連続するものだ。
 しかし、1発で勝負がついた。
 キバヤシだけがチョキ、残り全員がパーだったのだ。

「別にどこでもいいんだけどな… じゃあ、211号室にしようか。素数だしな…」
 そう言って、キバヤシは211号室へ入っていった。
 まさか、何かやったんじゃないだろうな…

「じゃあ行くぞ! ジャーンケーン……ホイ!!」
 続くギコの掛け声。
 何回かあいこを繰り返した後、俺、つー、しぃ、リナーがパーを出し、ギコ、レモナ、モララーがグーを出した。
「くそ――ッ!!」
 モララーが絶叫する。

 俺、つー、しぃ、リナーでジャンケンを繰り返し、リナー、つー、俺、しぃの順に部屋を選べる事になった。
「別に私はどこでもいいんだが… じゃあ、一番手前の部屋で」
 リナーは205室を指差した。
「アッヒャー! オレハ、212シツダ!!」
 つーは、一番奥の部屋に走っていった。
 そのまま、ドアを開けて室内に飛び込む。
 どうやら、端っこ狙いだったみたいだ。

「じゃあ、モナはリナーの隣で…」
 俺は206号室を指定する。
 残りは、207〜210号室。両脇2つずつが埋まり、ちょうど真ん中が空いてしまった。
「ん〜 どれにしようかな?」
 しぃが部屋を見回す。
 レモナとモララーの、『207号室は行くな…』という思念を背に受けながら。
「…じゃあ、210号室で」
 しぃは無難に選択した。

 後は、ギコ、モララー、レモナの3人だ。
「事実上、207号室の争奪戦って訳ね…」
 レモナはモララーを見据えた。
「ああ。容赦はしないよ…」
 それを睨み返すモララー
「…俺、残った部屋でいいわ。下手に恨みを買うのも御免だし」
 そう言って、ギコとしいは素早く210号室に入っていった。
 もう、特に言う事はない。

 一方、睨み合うモララーとレモナ。
 今にも浮遊しながらジャンケンを始めそうな雰囲気だ。

「…リナー、ペンションの探検に行かないモナ?」
 俺は、リナーに声をかける。
「そうだな。いざという時の避難経路も確かめておく必要がある」
 そういう事で、俺とリナーはその場から離れた。

675:2004/06/24(木) 22:03


「2階には、客室しかないっぽいモナね…」
 廊下に延々と続く客室を見て、俺は呟いた。
 部屋数はかなりの数になる。
 おそらく、50人は宿泊できるだろう。

 次に、1階に降りる俺達。
 ロビーにある大きな休憩用のテーブルに、見覚えのある4人がいた。
 しぃ助教授、丸耳、ありす、ねここ…
 なんと、ASAの面々だ!!

「おや、モナー君じゃないですか」
 ティーカップを手にしていたしぃ助教授は、リナーを意図的に無視して言った。
「モナーさ〜ん! リナーさ〜ん!」
 俺達にねここが手を振る。
「しぃ助教授…? どうしてここへ…」
 それに応えながら、俺は呟いた。
 もしや、もう事件が発生したのか?

「休暇ですよ。1週間ほど、羽根を広げようかと思って」
 しぃ助教授は紅茶をすすりながら言った。
「…首吊り島なんていう不気味な名前のところに、好き好んでやってきたモナか…?」
 その悪趣味振りは、流石しぃ助教授だ。

「放っといて下さい。それより、モナー君達は何しに来たんですか?」
 しぃ助教授は、ティーカップをテーブルに置いて訊ねた。
「それが…」
 俺は、事情を説明する。
 その間、リナーは調度品を見回っていた。
 話を終えて、しぃ助教授は腕を組む。
「うーん、UFOの秘密基地ですか… 楽しそうな話ですね」

「私達も探しに行きましょうか!?」
 ねここは楽しそうに言った。
「止めはしませんよ、私は…」
 しぃ助教授は再び紅茶をすする。
 つまり、自分は行く気はないという事だろう。

「リナーさん、かなりヒマそうですよ…」
 ねここが、こっそりと告げた。
 見ると、確かに暇そうだ。
 心なしか機嫌が悪そうにも見える。

「そうモナね… じゃあ…」
 俺は、慌ててリナーに駆け寄った。
「待たせたモナね…」
 リナーもしぃ助教授も、互いを存在しないものとして扱っていた。
 両者とも、最大限の譲歩をしていたのだろう。
 大人になったものだ…
 腕を組んで、俺は大きく頷いた。

 ロビーを真っ直ぐに進むと、食堂の扉に突き当たる。
 扉は開いていた。
 かなり大きいテーブル。
 食堂と言っても、大衆食堂などでは断じてない。
 まるで中世ヨーロッパの大邸宅における食卓だ。
 食堂内では、メイド服を着たピエロとクマがハンバーガーを盛った皿を並べていた。
 何か、見てはいけないものを見てしまったような気が…

 俺は慌てて視線を逸らした。
 食堂の扉の左右にも通路がある。
 そこから、風呂や従業員達の部屋などに繋がっているのだろう。
「…って言うか、他の従業員はいるモナ?」
 俺はいぶかしんで言った。
「もちろんいるだろう。そうでなければ、ここまで大きいペンションなど維持できるはずがない」
 リナーはそう言うが、ここはペンションの定義から外れているような気がしてならないんだが…

 俺とリナーは通路を進んだ。
 壁に張られた案内プレートに視線をやる。
「で、こっちが大浴場モナね…」

 『ゆ』と書かれた大きなのれん。
 どう見ても、大きな純和風大衆浴場。
 洋館仕立てが台無し… と言うか、ミスマッチにも程がある。

「おや、お二人サン…」
 曙が後ろから声をかけてきた。
「フロはいつでも入れマスよ。30分も歩いてきたんですから、汗を流してみてハ?」

「風呂…」
 そう呟いて、ニヤリと笑う俺。
「そうモナね。たまにはみんなで銭湯気分も悪くないモナ…」

 ふと、俺は曙に訊ねた。
「他にも客は来るモナか…?」
 曙は腰に手を当てる。
「ASなんとかいう役所の人達が4人と… 上院議員さんが1人。
 釣り客の方が3人、警察の人が2人来る予定デス。それと、Mr.Zとか言う方も…」

「Mr.Zだって!?」
 俺は思わず大声を上げた。
 そいつは、確かMMRに手紙を送ってきたヤツだ。
 そもそも、俺達がここへ来た発端とも言える。
「…妙な話だな。調査して下さいと言っておいて、自分も出向くとは…」
 リナーは腕を組んで言った。

「これは、みんなに知らせる必要があるモナね…」
 俺は、リナーに告げた。
 ついでに、みんなを風呂に誘いにいこう。

676:2004/06/24(木) 22:04


 ロビーには、すでにASAの人達の姿は無かった。
 部屋に戻ったのだろうか。
 不意に、玄関の扉が開いた。

「へぇ… なかなかいいペンションじゃないですか」
 内装を見回して、そう口を開く男。
「ペンションと言うには、いささか大きすぎると思いますが…」
 そう言いかけた女の言葉が、俺と目が合った瞬間に止まった。
「…モナーさん!?」

 なんと… 女はリル子さん、男は局長だった。
 すると、曙の言っていた警察の人と言うのは…

「また、珍しいところで顔を合わせますね」
 局長はため息をついて言った。
 全くその通りだ。
「未成年が2人でこんな所に泊まるとは感心しませんねぇ…」
 しかも、誤解爆発である。

「あと6人来てるモナよ。ちゃんと引率もいるモナ…」
 そう言った後、俺は思った。
 キバヤシって何歳?
 若そうに見えるが、結構年食ってるのかもしれない。
 20は越えているのだろうが…
 でも、あれで30超えているのも何か嫌だ。
 …まあ、ムーミンみたい生物と同じようなものだと思おう。

「なるほど… それは、失礼しました」
 そう言いながら、局長はずかずかとロビーに踏み込む。
 食堂の方から、曙が走ってきた。
 そして、曙、局長、リル子の3人は階段を上がっていく。

「…あの人達、何しに来たモナ?」
 俺はリナーに言った。
「休暇か、それとも何かあったのか…」
 呟くリナー。
 まあ、リナーに聞いても仕方がない。
 俺達は、2階に上がった。


「…という訳で、みんなで風呂に行くモナ」
 一番奥のつーの扉を叩いて、俺は言った。
「ワカッタ。チョット マテ!」
 中から、つーの声。
 これで全員に告げた事になる。
 俺は、風呂セットを取りに自分の部屋に戻った。


 入浴セットを手に部屋から出ると、ねここに鉢合わせた。
「あれ? お風呂の準備ですか?」
 ねここは俺の抱えている風呂セットに視線をやる。
 どうやら、ねここの部屋は向かいの219号室のようだ。
「ちなみに、みんなの部屋番号とかは全く覚える必要がないモナよ」
 俺はおもむろに告げる。
「…誰に言ってるんですか?」
 首を傾げて訊ねるねここ。
「……さあ? 誰にだろ…」
 俺は呟いた。
 そうだ、それより…

「大浴場の風呂は、いつでも入れるみたいモナ。
 モナ達も、みんなで入りに行くモナ。ASAのみんなもどうモナ?」
 俺はねここに告げた。
「お風呂ですか… みんなで入るのは楽しそうですね!」
 ねここは両手を上げて、頭上で軽く叩く。
「じゃあ、こっちのみんなも誘ってきます!」
 そう言って、ねここは他の部屋をノックしだした。
 ククク… ククククク…

「じゃあ、行くか!」
 ギコは言った。
 俺達の方は全員揃ったようだ。
 こうして、俺達8人は大浴場へ向かった。


 『ゆ』と書かれたのれんの前で、俺達は2グループに分かれた。
 男湯組の俺、ギコ、モララー、キバヤシ。
 女湯組のリナー、しぃ、レモナ、つー。
 性別不詳のつーは、女湯で問題ないようだ。
 まあぶっちゃけ、つーのAAの構成要素の96%はしぃだしな。

 脱衣所で、俺達は即座に服を脱ぐ。
「…先客がいるようだな」
 カゴに入った服を見て、ギコは言った。

 服を脱ぐ俺を見て、ニヤニヤしているモララー。
 ホモと銭湯に行くのは、なかなかスリリングだ。
 視線の角度や向こうの動きを『アウト・オブ・エデン』で解析し、最適な位置に占位する俺。

「おや、みなさん…」
 脱衣所に、風呂セットを抱えた丸耳が入ってきた。
 ASAの一団も来たのだろう。
 思えば、向こうは4人中3人が女性である。
 言わばハーレム状態だが、銭湯などでは寂しいだろう。
「ご一緒させてもらうとしますか…」
 そう言って、丸耳は服を脱いだ。

 戸をガラガラと開けて、丸耳を含む俺達5人は浴室に入る。
 予想通り、かなり広い。
 大きい湯船に、広い洗い場。
 そして、壁で隔てられた向こうには…
 ククク、ククククク…!

「――『アウト・オブ・エデン』」
 俺は、スタンドを発動させた。
 その、全てを見通す目を。

「ギャー!!」
 その刹那、頭部に鋭い衝撃。
 俺がスタンドを発動させた瞬間に、ギコと丸耳が同時に後頭部を殴ったのだ。
 …なんで丸耳まで。

「次にやったら、『レイラ』でぶった切るからな」
「ASAの一員として、スタンド能力を悪用する者を見逃してはおけません」
 ギコと丸耳は同時に言った。

677:2004/06/24(木) 22:05

 洗い場に人影がある。
 先に来ていたらしい局長が、頭を洗っているのだ。
「風呂ぐらい静かに入れませんか?
 私達は知り合いだからいいようなものの、第三者に迷惑をかけるのは頂けませんね」
 局長は呆れたように言った。
 彼の眼鏡は、湯気で真っ白になっている。

「…眼鏡、外さないモナか?」
「後ろの彼もそうでしょう?」
 局長は言った。
 確かに、キバヤシも眼鏡を掛けたままだ。
「俺がメガネを外すと、死の線が見えたりオプティックブラストが暴発したりするからな…」
 キバヤシは視線を落として呟いた。

「って事は、リル子さんもあっちにいるの?」
 モララーは、女湯の方を指差して局長に訊ねた。
「ええ。ですが、劣情に走るのはお勧めしませんよ…」
 局長は頭を泡立てながら言った。
 確かに、覗きなどしようものなら恐ろしい事になりそうだ。

「ふ〜〜〜〜極楽極楽…」
 肩まで湯船に浸かる俺達。
 これに勝る快楽などない。

「モナ〜く〜ん! 聞こえる〜!?」
 不意に、女湯の方から声がした。
 レモナの声だ。
「聞こえるモナよ〜!」
 俺は返事をした。

「うわ〜 広いですね!!」
 ねここの声が響く。
「では、お待ちかねの… ねここチェーック1!!
 リナーさん、意外と胸大きく… ありませんね。がっかり」
「…悪かったな」
 こちらはリナーの声。
 そして、ザバーというお湯を流す音。

「ねここチェーック2!! しぃさんは… マル!! 合格!! ちゃんと揉んでもらってるんですね!!」
 ねここは大きな声を上げている。
「まあ、当然だな…」
 何故かふんぞり返るギコ。

「あっ! リナーさんが僅かに自らの胸元に視線をやったーッ! 気にしているッ! 確かに気にしてガバゴベブボ」
 ねここの声に水音が混ざる。
 恐らく、湯船に沈められたのだろう。

 その何だ、女湯のこういうのって、わざとやってんじゃないかって思うな。
 多分、わざとやってるんだろうけど。
「…対抗する?」
 シャンプーハットを被ったモララーが言った。
「男がやると、とんでもない事になるモナ」
 俺は突っぱねる。

「じゃあ、俺の出番だな…」
 突然、湯船の中から海坊主のように男が顔を出した。
 あれは… 阿部高和だ!!

「ホ、ホモだッ!! 変態がいるッ!!」
 モララーは、自分の事を棚に上げて叫ぶ。
 あんまりそういう言い方は、ゲイの方に失礼だぞ。

「行こうか、モララー君。たっぷりよろこばせてやるからな…」
 阿部高和は、モララーの足を掴んだようだ。
「イ、イヤアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ…」
 モララーは、そのまま湯の中に引きずり込まれていった。
「…」
 俺達は湯船から上がると、体を洗い始めた。

 再び、ねここの声が響く。
「話がまとまったところで、ねここチェーック3!! レモナさん…」
「私は、ある程度なら自由に可変できるわよ。モナーくんの好みに合わせてね…キャッ!!」
 レモナは大声でこちらに聞こえるように言った。
「恋する乙女のパワーだッ!! いやぁモナーさん、男冥利につきますね…!」
 ねここの嬉しそうな声。
 ギコが俺の肩にポンと手を置く。
 他人事だと思って…
「いや、つきないつきない…」
 俺は右手をヒラヒラと振った。

「ねここチェーック4!! つーちゃん………!? !!!!?」
 絶句するねここ。
 な、なんだ!?
 何を見たんだ!?

「さて、ねここチェーック5!! リル子さん… おぉッ!!」
 その刹那、凄まじい打撃音がした。
 静まり返る女湯。

678:2004/06/24(木) 22:06

「やれやれ…」
 湯船に浸かって局長が呟いた。
 その眼鏡は完全に湯気で真っ白で、前は見えていないだろう。
 体を洗い終えた俺達は、再び湯船に浸かる。

「いたた… ねここチェーック5!! しぃ助教授… は止めて、ありす!!
 うーん、年齢を考えれば、こんなもんですかねー」
 ねここチェックはまだまだ続く。
 胸編を終えた後は、全体の総括と今後の課題へと…

「結論から言えば、スタンドを使用すればあの程度の壁を登る事は可能だ」
 ギコは、おもむろに言った。
「そこまでは問題ありません。その後ですね。こちらはほぼ無防備、向こうの攻撃を回避できるとは思えません」
 丸耳が真面目な顔で呟く。

「いやお前ら、さっきモナを殴ったのは何だったモナ…?」
 俺は呆れて言った。
「あなたが利益の独占を狙ったからです。
 スタンドの能力でみんなが幸せになるのなら、ASAの理念には抵触しません」
 丸耳は悪びれずに告げる。

 ギコは話を元に戻した。
「俺の『レイラ』とモナーの『アウト・オブ・エデン』、そしてお前のスタンドで、向こうとどの程度戦える?」
 そう言って、ギコは丸耳に視線をやる。
「どの程度も何もありません。しぃ助教授1人にすら太刀打ちできませんよ」
 丸耳はさらりと言った。
 ギコはため息をついて腕を組む。
「そもそも、戦力に偏りがありすぎるな…
 リナー、しぃの『アルカディア』、レモナ、つー、しぃ助教授、ありす、リル子の『アルティチュード57』…」

 丸耳が捕捉した。
「ねここの『ドクター・ジョーンズ』も侮れませんよ。
 近距離パワー型ほどではありませんが、バランスの取れた遠距離型で厄介です」
 …確か、あの死神みたいなヤツか。
 こっちに比べて、女性陣が強力過ぎる。
 『ロストメモリー』が加われば、こちらにも勝機が見えてくるんだが…

「あんたはその気はないのか?」
 ギコは局長に視線をやった。
 局長は肩をすくめる。
「学生時代ならそういうノリも悪くはありませんが、この年になってしまうとねぇ…」

「…」
 丸耳は視線を落とした。
 彼も、年齢はよく分からない。
「…そろそろ出るか」
 ギコの声に頷くと、俺達は風呂を出た。

 ペンション備え付けのステッキーな浴衣を着用する。
「ヴァ〜〜〜〜〜〜〜」
 モララーが、回転する扇風機に向かって奇声を上げていた。

「おっ、自動販売機じゃねぇか… 牛乳でも飲むか」
 ギコが、洗い場の隅の方に歩いていった。
 本当に、ここだけ銭湯そのものだな…

「おやおや、皆さんは上がったところデスカ…」
 のれんをくぐって、曙が脱衣所に入ってくる。
「オーナーも風呂ですか?」
 眼鏡の湯気を拭きながら、局長は訊ねた。
「エエ。食事の前にはひとっ風呂浴びないとネ。ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 豪快に笑う曙。
 そして服を脱ぐと、浴室へ入っていった。

「おいッ!! 大変だ!!」
 突如、ギコが大声を上げた。
「この自販機、コインが入らねぇんだよ!!」

 ギコは、必死で円筒状の物体にコインを投下しようとしている。
「…それは、歯車王モナ」
 俺は告げた。

679:2004/06/24(木) 22:08


 局長を含む6人で、俺達は男湯を出た。
 女性グループも同時に出てきたようだ。
 何となく灰色な俺達に比べて、向こうは異様に華やいでいる。
 …浴衣! 
 …半乾きの髪!!!
 …身体からホコホコと沸き立つ湯気!! 
 もう、ハァハァものだ。

 合流した俺達は、2階の部屋へ向かった。
「…もうすぐ、夕食ですね」
 しぃ助教授は言った。
「部屋に戻って荷物を置いたら、すぐに再集合しましょうか」

 みんな揃って食堂へ行こうという事か。
 どうでもいいが、先程からリナーとしぃ助教授は一切目を合わせていない。
 まあ諍いを起こさないだけマシだろう。
 俺達はしぃ助教授の誘いに乗って、荷物を置くとみんなで食堂に向かった。


 食堂には、3人の異様な男が座っていた。
 あれが、曙の言っていた3人の釣り客だろう。
 だが、どう控え目に見ても釣り客には見えない。
 それより、軍人とか兵士とか戦士とか傭兵とか、そういう種族に見える。
 釣竿より、武器が似合う人種だ。
 まあ、所詮はバナナとダンボールとオッサンだが。

 …と言うか、どうやって来たんだ?
 船は週に1回しか来ないはず。
 既に設定が破綻してないか?
 取り合えず、思い思いの席に座る俺達。

「私は山田、ダンボールの彼がモナーク、あっちがハートマン軍曹だ。よろしく」
 山田と名乗ったバナナは、俺達に言った。
 あくまで最低限の自己紹介である。
 黙っているのも不自然だから名乗っただけで、こちらとコミュニケートするつもりはないのだろう。
 現にモナークとハートマンとやらは、視線を上げようとすらしない。
 あれ? そう言えば、風呂場で『ロストメモリー』がどうとか思ってた気が…
 まあいい、彼等とはあくまで初対面だ。

「…随分と、皆さんお集まりですな」
 立派な身なりをした紳士が、食堂に姿を現した。
 こいつが、間違いなく曙の言っていた上院議員とやらだ。

「…誰か、貴方を憎んでいる人はいませんか?」
 俺は、上院議員に訊ねる。
「意外と、こういうキャラが最後の方まで生き残ったりするもんだけどな…」
 そんな俺を見て、ギコは呟いた。

「憎んでいる人? こんな職をやっている限り、数え切れんほどいますのう。フォフォフォ…」
 上院議員は柔和な笑みを見せて言った。
 そして、テーブルに腰を下ろす。
「そう言えばこの食堂に来る時、通路でオーナーと会いましたぞ。6時40分ですな」
 唐突に、やけに正確な時間を口にする上院議員。
 
「6時40分までは生きていた、と… ただし、上院議員が偽証していない場合」
 ギコは手帳に素早くメモを取った。
 俺は時計を見る。現在、6時45分。
 それから俺達は他愛ない会話を交わした。


 7時の鐘が鳴る。
 曙は現れない。
 俺達の前には夕食のハンバーガーが並んでいるのだが、オーナーを差し置いて食事を始める訳にもいかないだろう。

「…寝てるのかな?」
 しぃは言った。
「さぁなぁ… このままだと、冷めちまうぞ」
 ギコは、食卓に並ぶハンバーガーに視線をやる。

「仕方ない、モナが様子を見に行くモナよ…」
 俺は、椅子から身体を起こした。
「私も行こう」
 リナーが立ち上がる。
 俺は、みんなを見渡して言った。
「念の為に、もう何人か来て欲しいモナ。出来れば、死亡時間の割り出しとかできる人が…」

「じゃあ、私とリル子君がご一緒しましょう」
 公安五課の2人が腰を上げた。
「丸耳、貴方も行きなさい」
 しぃ助教授は、隣の丸耳に視線をやった。
「了解しました」
 丸耳が立ち上がる。

「じゃあ、行くモナ…」
 俺を先頭に、リナー、局長、リル子、丸耳の5人がオーナーの部屋に向かった。

680:2004/06/24(木) 22:09


「すごく和風な扉モナね…」
 オーナーの部屋の前に立って、俺は呟いた。
 そして扉に手をやる。
 ノブが回らない。
「…鍵が掛かってるモナ」

「どれどれ… 本当ですね」
 局長がノブをガチャガチャと捻った。
「…どいてろ」
 リナーは拳銃を取り出すと、ドアの取っ手に発砲する。
 たちまち、ノブは弾け飛んだ。
 俺は、ゆっくりとドアを開けた。

 中は、立派な和室だった。
 そして、予想通りの風景。

 |    |         .|           そこには、曙さんがうつ伏せに倒れていた。
 |    |   @ソ  │           その弛緩した肉体、和室に伸びた体躯。
 |    |  (ゞl,ノ@   │             とうとう、事が起こってしまった。
 |    |   ヾl/)    |            彼は、死んでいるのだ。
 |    |/ [____]  ̄.|            背後から、皆の息を呑む気配が伝わってきた。
 |      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄           僕は…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         __,,,,,,               |> A:慌てて曙さんに駆け寄った。
     ,.-'''":::::::::::`ー--─'''''''''''''-、,,
  ,.-::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\     B:「誰もこの部屋に入れるな! 
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ ヽ-、::::::''ー'''"7  食堂にいるメンバーを確認するんだ!!」そう叫んだ。
  `''|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}      ``ー''"
    !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i          C:「この中に犯人がいます!!」
    '、:::::::::::::::::::'ー''ヽ、:::::::::::::ヽ、-─-、,,-::::ヽ   振り返って言った。
     \::::::/     ヽ--ヽ::::::::::::::::-----、::ヽ
                  ``"       \D:「イシャはどこだ! 先生! シリツをして下さい!」
                              取り乱して叫んだ。

「…Bモナね」
 俺は呟いた。
 とりあえず、現場保持だ。
 こういう局面では、誰が犯人で証拠隠滅を図るか分からない。
 誰も部屋に入れない事が重要だ。
 なおかつ、全員の状況を把握する。
 食堂にいるメンバーの確認が第一だ。
 殺害状況の把握など、その後でいい。

「誰もこの部屋に入れては駄目モナ! 食堂にいるメンバーを確認するモナ!」
 俺は叫ぶ。

「では、ここは私が見張っていよう」
 リナーはそう言って扉を閉めた。
 これで、証拠隠滅は不可能だ。
 まさか、リナーが犯人なんて事はないだろうし… 多分。
 俺、局長、リル子、丸耳は食堂に向かって走り出した。

「確かに、食堂には全員いたモナ!?」
 俺は走りながら言った。
「宿泊客は全員いたでしょうが… このペンションの従業員までは確認していませんねぇ」
 局長が告げる。
「従業員…?」
 俺は局長に視線をやった。
「ペンション備え付けの施設が、いくつかあるそうです。教会とか、BARとか…」
 リル子が答えた。
 なんでペンションにそんなものがあるんだ…?

681:2004/06/24(木) 22:10


 俺達は食堂になだれこんだ。
「大変モナ!! オーナーが殺されてるモナ!!」
 それを聞いて、ギコ、モララー、レモナ、キバヤシ、しぃ助教授、ねここ、そしてモナークが腰を上げた。
「お前はここにいろ、いいな!!」
 ギコはしぃに告げた。
「いよいよ事件発生って訳ね!!」
 どこか嬉しそうにレモナが口走る。
「(つーちゃん、ここに残るメンバーを見張っていてほしいモナ…)」
 俺は、こっそりとつーに耳打ちした。
「アッヒャー! マカセロ!」
 つーは右手を振り上げる。
 人数を増やした俺達は、再びオーナーの部屋に向かった。


「私が見張っている間、ここには誰も来なかった」
 リナーは言った。
 俺は、こっそりとドアに唾でくっつけた髪の毛に目をやる。
 ドアが開けば、この髪の毛が落ちる仕組みだ。
 別にリナーを疑っていた訳ではないが、念の為だ。
 いつの間にこんなものをくっつけたとか、そもそもモナーに髪の毛があるのかとか言ってはいけない。
 とにかく、髪の毛はちゃんとくっついていた。
 つまり、中は殺害時そのままに保たれている。

 俺は、中に踏み込んだ。
 次に局長が続く。
 後ろの連中は人数が多いので、列になってドアをくぐっていった。

 うつ伏せに倒れている曙は、完全に息絶えていた。
 頭に大きな傷がある。
 凹んでいると言っても良い。
 明らかに、これが致命傷だろう。

 よし、ここは『アウト・オブ・エデン』で過去のヴィジョンを…
 その瞬間、俺の目からモクモクと煙が出てきた。
 しまった! オーバーヒートだ!!
 これでは、あと1週間は『アウト・オブ・エデン』を使えない!
 もう他人の心も視えないぞッ!!
 何て御都合主義なんだッ!!

「窓の鍵が閉まってるな…」
 混乱する俺を尻目に、ギコは窓付近を確認して言った。
「私達が最初にここへ来た時、入り口の鍵も閉まっていましたよね…」
 丸耳が呟く。
「…ええ。確かにかかっていましたよ」
 局長は頷いた。

「密室殺人って訳ね! 面白くなってきたわぁ!」
 レモナは不謹慎な事を言った。
 まあギコもキバヤシも、どう見ても探偵気分な訳だが。

 机の上には、半分ほど水の入ったグラスが置かれている。
 風呂上りに、冷やした水を飲んだのだろう。
 まさか、毒じゃないよな…
 俺は、曙の死体に視線をやった。
 しかし、どう見ても撲殺だ。

 ノートが閉じた状態で机の上に投げ出されていた。
 もしや、これに何か秘密が…
 俺はノートを開いた。
 『春はあけぼの』で始まる文章が続いている。
 どうやら、何の変哲も無い日記のようだ。

 『ぬるぽ』と書かれた掛け軸が下がっている。
 まさか、これのせいで頭を殴られたのか…?
 掛け軸の後ろを確かめてみたが、別に秘密の通路も何もない。

 他には、花瓶に入った花。妙な形の壷。
 何かトリックが…
 調べてみたが、ごく普通。
 怪しいと思えば全てが怪しい。
 そもそも、これはそういう類のトリックなのか?

「呼吸音は… 聞こえませんね。呼吸はしていません」
 局長はそう言ってかがみこむと、耳を畳につけた。
「心音も聞こえませんね…」
 そして懐から拳銃を取り出すと、曙に向けて発砲した。
 弾丸が背中に当たり、一筋の血が流れ出す。
「どうやら、完全に死んでいるようですね…
 『死んだように見せかけて、実は生きてました』なんてトリックは却下です」
 そう言って、局長は曙の死体に歩み寄る。
「こうなっちゃうと、私のスタンドでもどうしようもないですね…」
 ねここはため息をついた。

682:2004/06/24(木) 22:11

「外傷は頭と… ちょっと、そっち持って下さい」
 局長は俺に言った。
 うつ伏せに倒れている曙を、仰向けにしようと言うのだ。
「いいのか? 勝手に動かしても…」
 モナークが訊ねる。
「私がOKを出します。問題ありませんよ」
 局長は言った。

「よっと…」
 俺と曙は、その巨体を引っくり返す。
 そして彼の死に顔を見た瞬間、俺は吐き気に見舞われた。
 周囲の人間も、思わず息を呑んでいる。
 それもそのはず、彼の体はところどころが切り取られているのだ。
 片目、両耳…
 そして、腹にも大きな傷がある。
 おそらく、内臓も…

「これは、思った以上の猟奇殺人モナね…」
 俺は、口元を押さえて呟いた。
「随分と綺麗に抉り取られてるな。まるで、鋭利な刃物で切り取ったみたいだ…」
 ギコが、切り口を観察する。
「…しぃを連れて来なくて良かったぜ」

「キャトルミューティレーション…!!」
 キバヤシが、思い詰めた顔で呟いた。
「それは何モナ?」
 俺は訊ねる。

 キバヤシは、まるで探偵のように全員を見回した。
「…キャトルミューティレーションとは、1970年代にアメリカで相次いだ牛の虐殺事件の事なんだよ。
 その特徴は、鋭いメスのようなもので内臓や眼球などが抉り取られている事。
 その報告は全米各地で1万件を越えていて、個人の悪戯などではありえない。
 一説では、これは宇宙人による生体実験だと言われているんだよ!!」

「な、なんだって――!!」
 俺は叫んだ。
 そして、曙の亡骸に視線をやる。
 確かに、キバヤシが告げた特長と酷似しているのだ。

「宇宙人による生体実験か… そもそもこの島にはUFOの秘密基地があると言う噂があります。
 この奇妙な符合、少し引っかかりますねぇ…」
 局長は、曙の亡骸の横にかがみこんで言った。
「馬鹿な事を言わないで下さい。これは、れっきとした人間による犯行です。
 全くの偶然か、もしくはキャトルミューティレーションを模しただけとも考えられます」
 リル子はため息をついて言った。

「見立て殺人か…!」
 モララーが呟く。
「何ですか、それ」
 ねここは、首を傾げてモララーに視線をやった。

「童謡とか俳句になぞらえて、死体を装飾したりする殺人だ。犯罪用語ではなく、推理小説用語だな…」
 答えたのは、モララーではなくモナークだった。
「例えば、アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』という小説では、
 『10人のインディアンが食事に出かけた。1人が喉を詰まらせて9人になった。
  9人のインディアンが夜遅くまで起きていた。1人が寝過ごして8人になった。
  8人のインディアンがデヴァンを旅してた。1人が残ると言い出して7人になった。
  7人のインディアンが薪を割っていた。1人が自分をかち割って6人になった。
  6人のインディアンが蜂の巣いじって遊んでた。蜂が1人を刺し殺し5人になった。
  5人のインディアンが法律学んでた。大法院に1人が残り4人になった。
  4人のインディアンが海に出かけた。燻製ニシンに1人が呑まれ3人になった。
  3人のインディアンが動物園を歩いてた。熊が1人を抱きしめ2人になった。
  2人のインディアンが日向に座った。1人が焼けて1人になった。
  1人のインディアンが残された。彼は首を吊り、そして誰もいなくなった』
 というマザーグースの歌が最初に提示される。
 そして、登場人物が歌と同じ死因で殺されていくという話だ」

「で、最後はどうなるモナか?」
 俺はモナークに訊ねた。
「生きて帰れたら… 答えを教えてやる!」
 モナークはそう言って背を向ける。

「見立て殺人…! 犯人は、キャトルミューティレーションに見立てて殺人を…」
 丸耳は呟いた。
「まだ断定はできませんよ。さらなる事件が起きない限りはね…」
 今まで黙って周囲を調べていたしぃ助教授が、首を振る。

683:2004/06/24(木) 22:12

「まあ殺人である以上、私達ではどうしようもないですね。ここは警察を呼ぶのが賢明でしょう」
 局長は全員に告げた。
「いや、アンタが警察モナ!!」
 俺はすかさず突っ込む。
「管轄が違いますよ。あくまで私達は、公安五課ですから…」
 そう言いつつ、局長は腰を上げた。
「ちなみに、死因は頭を殴られた事でしょうね。耳や目を切り取ったのは、出血量からして死後でしょう。
 そして、今から1時間以内の犯行です。6時40分に上院議員と会ったんですから、まあ当然なんですが。
 …これ以上は鑑識待ちですね」

「とは言え、このままにしてはおけんな… いつ発見されるか分からん」
 モナークは曙の亡骸の足を掴んでずるずると引き摺ると、押入れの中に詰め込んだ。
 職業病みたいなものだろう。

 俺達はぞろぞろとオーナーの部屋を出ると、電話があるロビーに向かった。
 局長は、ロビーの電話の受話器を手に取る。
「おや…?」
 受話器に耳を当て、局長は呟いた。

「どうした?」
 ギコが訊ねる。
 局長はギコに視線をやって言った。
「何の音も聞こえない… 電話線が切られたようですね」

「な、何だって!!」
 俺は思わず叫んだ。
「まあ、ここは文明の利器という事で。そう容易く推理小説のようには行きませんよ」
 局長は携帯電話を取り出した。
 そして、それを耳に当てる。
「…繋がらない。どういう事でしょうね。圏外でもあるまいし…」

「何かあったんじゃないのか…?」
 ギコはロビーのTVをつけた。
 ちょうどニュースをやっているようだ。
 アナウンサーが口を開く。
『繰り返します。裏弐茶県を震源とした地震が発生し、電話局が壊滅。
 さらにアンテナに雷が落ち、もう携帯電話は使えません。
 そして大火事が発生し、港は壊滅状態。
 とどめに自衛隊が出動し県内の重要拠点を攻撃、復旧は最低でも1週間以上はかかる見込みです…』

「地震雷火事オヤジ、全部揃っちまったな…」
 ギコは呟いた。
 さらにアナウンサーは続ける。
『また大規模な電波障害、空間歪曲が発生しています。
 これにより高速飛行での脱出や、スタンド能力での移動はいっさい不可能となっております』

「もう、意地でもこの島から出さないつもりモナね…」
 俺はため息をついて言った。
 まあ、予想は出来ていたことだ。

「仕方ありませんね。食堂に戻って、これからについて話し合いましょう」
 しぃ助教授の提案に、異論を挟む者はいなかった。
 俺達は、食堂に向かった。


「…という訳です」
 局長は、説明を終えた。
「…」
 しぃが絶句しているが、無理もない。
 俺はハンバーガーの包みを開けると、口に放り込んだ。

「例によって、この中に犯人がいると思われます」
 リル子は当然のように言った。
「…いや、最初は外部の人間による犯行を疑って、その後に内部に疑いを向けない?
 こういう場合のセオリーとしては…」
 モララーは口を挟む。

「そのものが鈍器になるくらい分厚い推理小説と比べないで下さい。
 各人の感情の変化や心情の機微までいちいち書いてたら、行数がいくらあっても足りません」
 リル子は、感情を害したように言った。

684:2004/06/24(木) 22:13

「…もしかして、お前の中の人じゃないのか?」
 ギコは、俺に視線を送る。
「モナの中の人は、番外には顔を出すタイプじゃないと思うけど…」
 完全には否定しきれない。
 中の人なら、もっと綺麗にバラせるような気もするが。

 キバヤシが黙っているのが不気味だ。
 キバヤシスパイラルは炸裂しないのか…
 と言うか、キバヤシが犯人だったら何でも出来るんじゃないか?
 犯人でなかったとしても、犯人当てなど容易いはず…

「俺の能力は、御都合主義なんで使えないんだよ!!」
 キバヤシは突然言った。
 そういうのが逆に御都合主義だと思うが…

「そもそも、スタンド使いが大多数なのに推理モノをやろうなんて時点で無茶なんだよ!!」
 キバヤシは立ち上がって大声を上げる。
 さっきから、地の文を読むな!!

 だが… 確かにスタンド能力を使えば、大抵の犯行は可能となる。
 『アナザー・ワールド・エキストラ』の瞬間移動を使えば、密室殺人など意味がないに等しい。
 『アルカディア』なんて何でもありだ。
 そもそも、スタンド能力が判明していない奴まで混じっているのである。

「現場には凶器は残されていませんが、パワー型のスタンドならば充分に可能です。
 位置関係を考えて、背後からぶん殴ってたと思われます」
 全員が黙るのを見計らって、リル子は告げる。

「まあ、他にもこのペンションには従業員がいるみたいですしね…」
 しぃ助教授はハンバーガーを頬張りながら言った。
 …そうだ。
 ペンション内に、教会やBARといった施設があると聞いている。
 BARはともかく、教会か… やだなぁ。
 そして、俺達をこの島に呼んだMr.Zとやらも無関係とは思えない。
 俺は5個目のハンバーガーを口に放り込むと、大きくため息をついた。
 こうして、悪夢の7日間は幕を開けたのである…

            __,,,,,,
       ,.-'''"-─ `ー,--─'''''''''''i-、,,
    ,.-,/        /::::::::::::::::::::::!,,  \
   (  ,'          i:::::::::::::::::::::;ノ ヽ-、,,/''ー'''"7
  /└────────┬┐:}     ``ー''"
. <   To Be Continued... | |::::i
  \┌────────┴┘/ヽ、-─-、,,-'''ヽ
       \_/     ヽ--く   _,,,..--┴-、 ヽ
※曙からのお願い        ``"      \>
 もし、犯人が分かっても… どうか、心に秘めておいて下さいね。
 もっとも、今の時点での特定は不可能ですが…

685:2004/06/24(木) 22:22
**お詫びと訂正**

曙が死んでいるにもかかわらず動いているシーンがありますが、
伏線でもなんでもなくただのミスです。申し訳ありません。

686N2:2004/06/25(金) 01:15

□『スタンド小説スレッド3ページ』作品紹介


◎完全番外編

.  ∧_,,,.
  (#゚;;-゚)
救い無き世界(完結)  (作者:ブック)
☆第二部
◇目的はただ一つ。愛する女を護るため。
降臨した『神』を、そして自身に宿る『悪魔』を抹殺すべく、でぃは最終決戦の地・東を目指す。
しかしその身体は着実に『デビルワールド』に支配されつつあった!
果たして彼はその身に渦巻く因縁を全て断ち切ることが出来るのか!?
ハイスピード連載で繰り広げられる壮大なストーリー、堂々の完結!!

 第六十二話・常闇 〜その一〜──>>3-7
 第六十三話・常闇 〜その二〜──>>11-14
 第六十四話・常闇 〜その三〜──>>32-35
 第六十五話・迷宮組曲 〜その一〜──>>43-45
 第六十六話・迷宮組曲 〜その二〜──>>46-48
 第六十七話・迷宮組曲 〜その三〜──>>49-53
 第六十八話・空高くフライ・ハイ! 〜その一〜──>>54-56
 第六十九話・空高くフライ・ハイ! 〜その二〜──>>57-59
 第七十話・空高くフライ・ハイ! 〜その三〜──>>70-74
 第七十一話・決死──>>75-77
 第七十二話・泥死合 〜その一〜──>>78-80
 第七十三話・泥死合 〜その二〜──>>86-89
 第七十四話・斗縛 〜その一〜──>>90-93
 第七十五話・斗縛 〜その二〜──>>94-99
 第七十六話・終結 〜その一〜──>>108-111
 第七十七話・終結 〜その二〜──>>112-116
 第七十八話・終結 〜その三〜──>>123-126
 最終話・祈り──>>127-133
 エピローグ・陽の当たる場所で──>>134-136

 人物紹介──>>366

687N2:2004/06/25(金) 01:16

               /!
          !\ ,-ー'-'、
  (\_/)  `ー/,ノノノハヽ
  ( ´∀`)   ./|iハ ゚ -゚ノ!
EVER BLUE  (作者:ブック)
☆序章
◇馬鹿が付くほどお人よしの青年オオミミと、彼のスタンド『ゼルダ』。
何でも屋のサカーナ商会に所属する彼らは
襲撃してきた空賊・『紅血の悪賊』(クリムゾンシャーク)の船内から謎の少女・天を救い出す。
だがその出会いから、彼らの運命は少しずつ大いなる流れへと巻き込まれてゆく…。
天空を駆ける船で繰り広げられる航空冒険ロマン!!

 第零話・VORTEX 〜始まりはいつも雨〜──>>148-151

 第一話・BOY MEETS GIRL 〜出会いはいつも雨〜──>>164-168
 第二話・ESCAPE 〜土砂降りの逃避行〜──>>180-186
 第三話・FATE REPEATER 〜黄泉還りし者〜 その一──>>194-201
 第四話・FATE REPEATER 〜黄泉還りし者〜 その二──>>217-220
 第五話・GUN=HALBERD 〜血塗れの鋼〜 その一──>>246-250
 第六話・GUN=HALBERD 〜血塗れの鋼〜 その二──>>251-254
 第七話・SMILE 〜貌(かお)〜──>>255-258
 第八話・RUMBLE FISH 〜疾風怒濤〜 その一──>>279-281
 第九話・RUMBLE FISH 〜疾風怒濤〜 その二──>>302-307
 第十話・NIGHT FENCER 〜夜刀(やと)〜──>>308-311
 第十一話・PUNISHER 〜裁きの十字架〜──>>322-326
 第十二話・FORCE FIELD 〜固有結界〜──>>327-330
 第十三話・BATTLE FORCE 〜力の矛先〜──>>337-340
 第十四話・WHO ARE YOU? 〜タカラギコ〜──>>341-348

 番外・されどもう戻れない場所 〜その一〜──>>349-352
                         〜その二〜──>>360-365

 第十五話・CLOUD 〜暗雲〜──>>388-390
 第十六話・TALK 〜探り合い〜──>>436-439
 第十七話・TROUBLE MAKER 〜歩く避雷針〜──>>447-449
 第十八話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その一──>>457-461
 第十九話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その二──>>462-466
 第二十話・BREAK 〜水入り〜──>>479-482
 第二十一話・ONE=WAY TRAFFIC 〜それでも進むしか〜──>>495-498
 第二十二話・REINCARNATION 〜生まれ還りし者〜 その一──>>499-501
 第二十三話・REINCARNATION 〜生まれ還りし者〜 その二──>>502-510
 第二十四話・BEFORE BATTLE 〜嵐の前の静けさ〜──>>517-522
 第二十五話・GUN&BLADE HIGH−TENSION 〜試し合い〜 その一──>>523-526
 第二十六話・GUN&BLADE HIGH−TENSION 〜試し合い〜 その二──>>527-530

 番外・ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜
    出会い編──>>531-533
    告白編──>>539-543

 第二十七話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その一──>>544-546

 番外
 ちびしぃの宿題の作文 〜私の家族について〜──>>547

 第二十八話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その二──>>553-555
 第二十九話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その三──>>556-558
 第三十話・LUCK DROP ~急転直下〜 その四──>>580-583
 第三十一話・MIGHT 〜超力招来〜──>>602-606
 第三十二話・SIDEWINDER 〜魔弾〜──>>607-612
 第三十三話・MADMAX 〜悪鬼再臨〜──>>627-635

 人物紹介・おまけ──>>651-655

 ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 交際編──>>656-660
                                  死闘編──>>661-664

688N2:2004/06/25(金) 01:16

    /´ ̄(†)ヽ
   ,゙-ノノノ)))))
   ノノ)ル,,゚ -゚ノi
モナーの愉快な冒険  (作者:さ)
◇ASAとの交戦、そして政府要人拉致・監禁。
フサギコ率いる自衛隊によって引き起こされた事態に、
モナー達は二手に分かれてASAと公安五課に協力することとなる。
だがその戦闘が激化した時、遂に『教会』が動き出した!!
三つ巴の壮絶なる大混戦が今、幕を開ける!!

 灰と生者と聖餐の夜・その6──>>8-10

 人物紹介・その3――>>15-21

 夜の終わり・その1──>>22-31
.          その2──>>60-67
.          その3──>>142-147
.          その4──>>187-193

 そして新たな夜・その1──>>259-268
           その2──>>293-301
           その3──>>312-315
           その4──>>331-336
           その5──>>354-359
           その6──>>367-374

 吹き荒れる死と十字架の夜・その1──>>375-379
                         その2──>>422-435
                         その3──>>440-446
                         その4──>>467-478
                         その5──>>511-516
                         その6──>>559-569
                         その7──>>577-579
                         その8──>>595-601

 番外・モナヤの空、キバヤシの夏(前編)──>>668-685

689N2:2004/06/25(金) 01:17

◎番外編(茂名王町内)

   ∩_∩    ∩_∩
  (´ー`)  ( ´∀`)
丸耳達のビート  (作者:丸餅)
☆丸耳達のビート Another One
◇マルミミの両親、二郎とシャマード。
アメリカ・ニューヨークでの二人の運命の出会いが
B・T・Bの記憶の中で鮮明に蘇る…。

 第一話──>>36-42
 第二話──>>100-107
 第三話──>>117-122
 第四話──>>169-179
 第五話──>>221-234

☆丸耳達のビート・本編
◇傷付き、弱った身体の中で徐々に抑えられなくなってゆく
マルミミに流れる『吸血鬼の血』。
理性と本能の葛藤の前に現れたしぃに、彼の取った行動は…。
そして、そのマルミミを狙う集団『ディス』が彼を得るべくその牙を剥く!!

 第12話──>>239-244
 第13話──>>282-291
 第14話──>>316-321
 第15話──>>380-387
 第16話──>>450-456
 第17話──>>534-538
 第18話──>>570-576
 第19話──>>587-594
 第20話──>>636-643
 第21話──>>644-650


   / ̄ ) ( ̄\
  (  ( ´∀`)  )
―巨耳モナーの奇妙な事件簿―  (作者:( (´∀` )  ) )
◇かつて自分を見捨て、一人『キャンパス』に下ったムックに
多大なる殺意を抱く『緑色の男』ことガチャピン。
恐るべき凶悪性を誇る彼のスタンド『ジミー・イート・ワールド』に
巨耳モナーは絶体絶命の危機に追い詰められてしまう…。
しかしその時、彼のスタンド『ジェノサイア』は新たなる次元へと到達する!!

 ディスプレイの奥に潜む恐怖──>>81-85
 『奪う力』と『与える力』──>>139-141
 『生まれし力』ジェノサイアact2──>>202-204
 『ピッチャーデニー』──>>483-494
 『トットリ・サキュー』──>>665-667


   ∧_∧
  (  ゚∀゚ )
合言葉はWe'll kill them!  (作者:アヒャ作者)
◇茂名王町内で実しやかに噂されている「吸血鬼殺人」。
しかしそれは紛れも無い真実であった!
偶然吸血鬼に遭遇してしまったアヒャは、脅威の運動能力を誇る吸血鬼達に
絶体絶命の危機に追い詰められてしまう!
死を覚悟したアヒャだったが、そんな彼の前に現れたのは…?

 初めての吸血鬼戦──>>236-238
 初めての吸血鬼戦その②──>>548-551

690N2:2004/06/25(金) 01:17

◎番外編(茂名王町外)

   ∩_∩
 G|___|   ∧∧   |;;::|∧::::...
  ( ・∀・)  (,,゚Д゚)   |:;;:|Д゚;):::::::...
逝きのいいギコ屋編  (作者:N2)
◇あのですね、女性が強いのはまあ良いと思うのですよ。
ですがね、その…今スレでのギコ屋編駄目じゃないかと思うのですよ。
だって、今回主人公目立ってないもん。リル子さんが主役みたいなんだもん。
そんな不条理が通るのもギコ屋編、嗚呼。

 リル子さんの奇妙な見合い その③──>>205-216
                    その④──>>391-420

 椎名先生の華麗なる教員生活 第3話 〜運命の出会い〜──>>613-626

◎本編(連載)

.      /
   、/
  /`
モナ本モ蔵編  (作者:N2)
◇『矢の男』の存在を知らされたひろゆき家臣団。
ひろゆきの勅令を受けた4人は『矢の男』抹殺に向け動き出すが、
彼らの間に生じた歪みは少しずつ拡大しつつあった…。

 2ちゃんねる運営委員会 ―始動― ──>>152-160


※敬称略


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