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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

367:2004/05/19(水) 17:01

「―― モナーの愉快な冒険 ――   そして新たな夜・その6」



 レモナは高速で飛翔していた。
 そのスピードは、すでに音速に達している。
 前方に、F−22が2機。
 ようやく追いついたようだ。

「さぁて…」
 レモナは、2機のF−22の動きをチェックした。
 航空機における最小戦術単位は、2機編隊である。
 1機がリーダーで、もう1機がウィングマン(寮機)として後方からの援護を行うのが普通だ。

「…リーダーはあっちね」
 レモナは並走して飛ぶ2機の内、片方に狙いをつけた。
 両機とも、高速接近してくるレモナの存在は感知しているはず。
 一般に、空戦においては背後をとった方が優勢。
 その点で、レモナは多少有利と言える。
 だが、まだ距離が遠い。
 仕留めるには距離が開きすぎている。

 向こうはどう出てくるか。
 得体の知れない追撃者に恐れをなし、この場から離れるか。
 それとも、仕掛けてくるか…

 2機の高度が上昇し始めた。
 高度を稼ぐためには、速度を犠牲にする必要がある。
「最適な上昇率。やる気みたいね…」
 レモナは呟いた。
 どうやら、向こうに逃げる気はないらしい。

 リーダー機が大きく旋回した。
 その速度が大きく落ちる。
「…今ね!」
 レモナは、高速でリーダー機に接近した。
 そして、リーダー機とウィングマン機を結ぶ直線上に占位する。
 これでウィングマン機はレモナに攻撃できない。
 リーダー機を巻き込む可能性が高い為だ。

 レモナに対して、完全に正面を向くリーダー機。
 F−22の固定兵装であるバルカン砲が稼動し始めた。
 通常なら、この距離でバルカン砲を掃射されれば勝負は決まる。

「もらった…!!」
 それにもかかわらず、レモナは呟いた。
 さらに接近速度を上げる。
 F−22リーダー機の間近まで…

 リーダー機のバルカン砲が火を噴いた。
 レモナは、臆する事なく突っ込んでいく。
 バルカン砲は、最大発射速度に達するまでに0.3秒を要する。
 そして、その速度に至るまでは弾道が安定しない。

 ――0.3秒。
 通常の戦闘機相手なら、問題にもならない時間。
 だが『レモナ』という兵器を相手にするのに、その隙は大きすぎた。

「落ちろッ!!」
 レモナはバルカン砲をかわしながら、大腿部から対空ミサイルを発射した。
 リーダー機との距離、僅か50m。
 向こうに抗う術もない。
 避けるどころか、パイロットの脱出する時間すら与えられないだろう。

 対空ミサイルが、F−22リーダー機の胴部に直撃した。
 爆発炎上するF−22。
 主翼が折れ、胴部から離れる。
 その機体は紅蓮の炎に包まれ、そのまま失速していった。
 レモナの視界が火の赤に染まる。

「あと1機…!」
 残るF−22に向き直ろうとするレモナ。
 その瞬間、彼女は異常な電波を感じた。
「これは… アクティブ・レーダー!?」
 レモナはウィングマン機に素早く視線をやった。
 F−22の胴体内兵器倉からは、既にミサイルが突き出ている。

 次世代中距離空対空アクティブレーダー・ホーミングミサイル、AIM−120C。
 通称『AMRAAM(アムラーム)』。
 100%に近い命中率を誇る、脅威の対空ミサイル…!

「こんな近距離でロックオンしてくるなんて…!!」
 レモナは速度を上げた。
 同時に、AMRAAMがレモナ目掛けて発射される。
 超音速で接近してくるAMRAAM。

 F−22は、そのままレモナに並走している。
 AMRAAMは、機体から誘導する必要はないにもかかわらず。
「撃墜を最後まで見届けようってわけ…!?」
 レモナはさらにスピードを上げ、憎々しげに呟いた。
 その背後にAMRAAMが迫っている。
 AMRAAMのマッハ4以上もの速度と脅威の追尾能力は、レモナの運動性を大きく上回っているのだ。
 このミサイルから逃れるには、ミサイル自体を撃墜するより他に方法はない。

368:2004/05/19(水) 17:01

「当たれッ!!」
 大腿部から、対空ミサイルを発射するレモナ。
 その赤外線シーカーが、目標をロックした。
 レモナの放ったミサイルは、AMRAAM目掛けて高速直進する。
 ミサイル同士が激突する寸前、AMRAAMは大きく軌道を変えた。
 レモナが放ったミサイルを避けるように、左方に大きく旋回する。

「…かわした?」
 レモナは呟いた。
 AMRAAMには、迎撃ミサイルを避ける機能が備わっているのだ。
 彼女の放ったミサイルは、そのまま直進していった。
 レモナの間近にAMRAAMが迫る。

「ま、いいか… 相打ちだし」
 レモナは笑みを浮かべて言った。
 先程彼女が放ったミサイルは、AMRAAMの迎撃を目的にしたものではない。
 彼女の放ったミサイル『サイドワインダー』がロックしたのは、並走してくる敵機F−22である。

「最初にサイドワインダーがそっちのAMRAAMに向かったのは、ただの慣性移動。
 本当の狙いは、そっちよ…
 ミサイルにロックされてる私が、それを無視して敵機の方を狙うとは思わなかったでしょ?」
 レモナは、F−22を見据えた。
 その機体に、先程レモナが放ったサイドワインダーが迫る。

 レモナの身体に、AMRAAMが直撃した。
 マッハ4以上の動体の激突は、レモナの左半身を引き裂く。
 それに続く爆発をまともに喰らうレモナ。
 同時に、F−22ウィングマン機はサイドワインダーの直撃を受けた。
 F−22の機体は爆炎に包まれる。

 レモナの身体は失速していった。
 その目に、炎上しながら墜落するF−22の姿が映る。
「撃ってすぐに逃げてれば、自機撃墜なんてのは避けられたのにね…」
 落下しながら、レモナは呟いた。

 そのまま、レモナの体は地表に叩きつけられる。
 いかに頑丈なレモナの体とはいえ、AMRAAMの直撃と地表への激突衝撃には耐え切れない。
 各部が粉々に砕け、全身が四散した。
「…完全回復に、あと30分ってとこかしら…」
 頭部だけで、レモナは呟く。

 かなり離れたところで、大きな爆発が起きた。
「さっきのF−22か…」
 レモナは、爆発の起きた方向を見た。
 噴き出した炎が夜空を赤く染める。
 バラバラになった機体の破片が、周囲に散らばっているようだ。

「相打ちは相打ちだけど、その重みは全然違うわね…」
 レモナは呟く。
 撃墜した2機とも、パイロットが脱出した様子はなかった。

「さてと…」
 ダメージは大きい。しばらく、ここから移動できなさそうだ。
 レモナは周囲を索敵した。
 付近に航空機の類は全く見当たらない。
 脱出用のヘリが戦闘機によって撃墜される可能性は回避されたようだ。
 さすがに、2機のF−22以外の戦闘機は投入していなかったらしい。
「まあ、最強のF−22が2機とも撃墜されるとは思ってもみなかったでしょうけどね…」
 レモナは、そう呟いてため息をついた。

369:2004/05/19(水) 17:02



          @          @          @



 CH−47JA輸送ヘリが、空き地の真ん中に着陸する。
「まったく… どこが200mほど離れた地点なんだよ…」
 モララーは不満を込めて呟いた。
 首相官邸から200mほど離れた地点で、脱出用ヘリが待っている。
 官邸内で、リル子はそう言った筈だ。
 だが、ここは官邸から1kmは離れている。

「当初はそういう予定だったのですが、敵の数はこちらの予想を超えていました。
 用心の為、ヘリの着陸地点を遠ざける必要があったんです」
 リル子は表情を変えずに言った。
「いや、リル子さんに文句を言った訳じゃないからね!!」
 モララーは慌てて発言を撤回する。

「さて、急いで乗って下さい」
 局長は、要人たちに告げた。
 要人の列が、ヘリに向けて進み始める。

 ギコ達は、周囲に展開して目を光らせていた。
 ヘリに乗り込む時が、最も危ないと言われている為だ。
「どうだ、つー?」
 ギコは、敵意を感じ取ることのできるつーに呼びかけた。
「アア、ダイジョウブダ。500mイナイニハ、マッタク テキイヲ カンジネェ…」
 つーは言った。

「対空攻撃部隊には特に注意を払って下さい。離陸した瞬間に撃墜されでもしたら…
 私達は何とかなるにしても、要人は全員死亡ですからね」
 局長はギコ達に注意を促した。
 ヘリのタラップを駆け上がっていた要人の1人が、嫌そうな表情を浮かべる。

「全員、乗りました」
 リル子は局長に告げた。
「それでは…」
 局長が、ギコ達に呼びかけようとする。
 その瞬間、異常は起きた。

 ピシッという軽い音。
 ヘリの操縦席のガラスに、指先サイズの穴が開いた。
「…!?」
 局長は、操縦席の方に視線をやった。
 ガラスに、赤いものが粘りついている。
 それも、内側から…

「うわぁぁぁぁぁッ!!」
 操縦士の悲鳴が上がった。
 このヘリは、2人の操縦士を必要とする。
 操縦席のドアが開き、操縦士の1人が飛び出した。
「あ、相棒が撃たれたぁぁッ!!」
 操縦士は、叫びながらヘリから離れる。

「迂闊に動くんじゃない!!」
 局長は叫んだ。
「!!」
 ギコ達が身構える。
 その瞬間、外に飛び出した操縦士の側頭部に穴が開いた。
 身を反らせ、側頭部の穴から血を撒き散らしながら、操縦士は地面に倒れる。

「狙撃かッ…!!」
 ギコは周囲を見回した。
「コノ チカク ジャネェ!! モット トオクカラダ!!」
 つーは叫ぶ。
 第3撃はない。どうやら、狙撃は終わったようだ。

「…あそこからでしょうね」
 局長は、そびえたつ首相官邸を見上げた。
 一瞬、官邸の屋上に人影が見えたのだ。
 この距離から、ヘリ内部の操縦士を狙撃できるほどの男はただ1人。

「ソリッド・モナーク、先程のお返しという訳ですか…」
 局長は、首相官邸の屋上を凝視して呟いた。
 そこには既に人影はない。

「どうすんだ!? 操縦士が2人とも…」
 ギコは慌てる。
「私が何とかします。全員、ヘリに乗って下さい!」
 リル子は、開いているドアから操縦席に滑り込んだ。

「…?」
 困惑しつつ、ギコはヘリのタラップを駆け上がった。
 モララー、しぃ、つーが後に続く。
 全員がヘリに乗り込んだのを確認してから、局長はタラップを上がった。

「でも、どうするんだ…?」
 ギコは、操縦席に目をやる。
 リル子はシートに座ると、アタッシュケースを膝の上に置いた。
 そして、ケースから取り出したコードをヘリの操縦機器に繋ぐ。

「…管制システムとリンクしました。私のスタンドで動かせます」
 リル子は計器をチェックしながら言った。
「離陸します。多少揺れますので、注意して下さい」

 メインローターが回転し、ヘリの機体がゆっくりと浮かび上がる。
 そのまま、ヘリは北西の方向に移動し始めた。

370:2004/05/19(水) 17:02

「これで一息だね…」
 モララーが安堵のため息をついた。
「本当、緊張した…」
 しぃが呟く。
「まあ、ちょっと前まで女子高生やってた身分からすりゃ、パニック起こさなかっただけでも立派なもんだ…」
 『アルカディア』が、機体の内壁にもたれる。
「いや、今でも現役の女子高生なんだけど…」
 しぃは不服そうに呟いた。
 普段の調子が戻ってきたようだ。

 要人達も、やっと落ち着いたらしい。
 彼等の中の数人が、会話を交わしている。
 もっとも、蒼白のまま固まっている者も何人かいるが。

「…無線が入りました。レモナさんのようです」
 運転席のリル子は言った。
「レモナ? 俺が出る…!」
 ギコが操縦席に駆け寄った。
 そして、リル子の手から無線機をひったくる。

「おい、レモナ! そっちはどうだ!?」
 ギコは無線機に呼びかけた。
『ちゃんと2機とも落としたわよ。でも、こっちもダメージ食らって、しばらく動けないみたい』
 あっけらかんとしたレモナの返事。
「動けない…? 大丈夫なのか!?」
 ギコは大声で訊ねた。
『30分もしたら全快するわ。全然大丈夫』
 当のレモナは、平気そうに告げる。
 どうやら、本当に心配はいらないようだ。

「…そうか。で、合流はできそうか?」
 胸を撫で下ろしてギコは言った。
『そっちの機体を補足してるから、回復次第そっちに向かうわ。そっちの周囲にも、敵機はいないみたい。
 暇つぶしに周囲の電波を妨害しとくから、そっちのヘリが敵に補足される危険もないはずよ』
 レモナは告げる。
「…それは助かりますね。乗り換えの手間が省ける」
 横から聞いていた局長が言った。

『私の活躍、ちゃんとギコくんの口からもモナーくんに伝えといてね。じゃ、また』
 そう言って、通信は途切れた。
 ギコは、無線機をリル子に渡す。
「電波妨害は本当に助かりますね。F−22クラスの戦闘機に補足されれば、輸送ヘリでは流石に手も足も出ませんから」
 リル子は無線機を受け取って言った。

「…そのスタンドがあれば、何でも運転できるのか?」
 ふと気になって、ギコはリル子に訊ねる。
「ある程度の電気的アビオニクス(統制機器)を搭載している機体なら、問題はありません。
 自動車とか、機能の特化したシステムになると無理ですけど」
 リル子は、前方を向いて言った。
「ふーん、便利なスタンドだなぁ…」
 ギコは呟く。
「その代わり、本体が高度な情報処理能力を持っていないと使いこなせませんが。フフ…」
 リル子は、自慢とも取れるような事を口にした。

「それで、このヘリはどこに向かってるの?」
 モララーは、局長に訊ねる。
 ギコは局長の方に視線をやった。
「…秘密基地ですよ」
 局長はニヤリと笑う。
「ひ、秘密基地だって!?」
 その甘美な言葉の響きに、モララーが目を輝かせた。
「ええ。ASAと『教会』が激突した時の拠点として用意していたんですが、こんな時に役に立つとはね…」
 局長は窓の外を見下ろして言った。
「あと20分で到着します。それまで、ゆっくり休んでいて下さい…」

371:2004/05/19(水) 17:03

 ヘリは、あるBARの駐車場に着陸した。
「店の規模の割りに、デカい駐車場だな…」
 ギコが呟く。
「ええ。ヘリが着陸できるようにね」
 そう言って、局長はヘリから降りた。
「さてみなさん、降りますよ…」

 ギコや要人達が、ぞろぞろとヘリから降りる。
「監視衛星とか、大丈夫なのか?」
 ギコは局長に訊ねた。
 駐車場にこれだけ人が集まれば、衛星にキャッチされても不思議ではない。
「問題ありませんよ」
 局長はそう言って、BARに向かって歩き出した。
 全員が後に続く。

 局長は、立派な木製のドアを開けた。
 カランカランと鐘の音が鳴る。
「BARぃょぅにようこそだょぅ… あっ、お帰りだょぅ」
 マスターらしき人物は、局長の姿を見て言った。

「要人奪還は成功しましたが… 米軍まで出張っていましたよ。厄介ですねぇ…」
 そう言いつつ、局長はつかつかとカウンターに歩み寄った。
 そして、カウンターの中に入る。
「米軍と自衛隊が共同で動いているとなると、政治的取引も難しくなるょぅ。
 米国も、スタンド使い排斥に動いているのかょぅ…」
 マスターらしきぃょぅは表情を曇らせる。
 そして、入り口に立つギコ達を見た。
「ギコ君達の事は、局長から話は聞いてるょぅ。そんな所で突っ立ってないで、中に入るょぅ」

「お、お邪魔します…」
 しぃは困惑しながら告げた。
 こういう店に入るのは初めてなのだろう。
「君も、公安五課の人?」
 モララーはぃょぅに訊ねた。
 ぃょぅは頷く。
「君の事は、バーテン仲間から聞いているょぅ。カツカレーは無ぃょぅ」
「ちぇっ…」
 モララーは視線を落とした。

 カウンターの中にいる局長が、大きな業務用の冷蔵庫を開ける。
「じゃあ、この中に入って下さい」
 局長はギコ達の方に振り返って告げた。

「…!?」
 ギコは困惑した。
 これは、どういう嫌がらせだ?
 だが冷蔵庫の中を良く見ると、地下へ続く階段のようなものが見える。

「…なるほど。それが秘密基地の入り口って訳か」
 ギコは言った。
 局長は頷くと、冷蔵庫の中の階段を降りていく。
 ギコ達が後に続いた。
「要人の皆さん方も、中にどうぞだょぅ」
 ぃょぅはカウンターをフルに開けると、要人達に言った。
 自分自身は降りないようだ。

 要人の最後列の人が、冷蔵庫の中に消えていく。
 ぃょぅはそれを確認して、冷蔵庫の扉を閉めた。
 ただ1人残った女が、カウンター席に座る。

「…ウォッカ・マティーニ」
 リル子は、ぃょぅに告げた。
「…大変だったみたいだょぅ」
 ぃょぅはため息をつきながら、背後の棚を開ける。
「でも、飲み過ぎは良くないょぅ。店内で暴れるのは、もう勘弁してほしいょぅ…」

372:2004/05/19(水) 17:04



          @          @          @



 長い長い階段を降りるギコ達。
 階段自体は、しっかりとしたものだった。
 だが照明が薄暗いので、足元がどうも不安である。
 降りるにつれ、空気が薄くなっていく感じ。
 無論、錯覚であることをギコは理解している。

 ようやく、階段の終わりが来たようだ。
 地下5階分は降りたであろう。
「公安五課、秘密基地へようこそ!」
 局長は振り返ると、仰々しく告げた。
「…その恥ずかしいネーミングはどうにかならないのか?」
 ギコは呆れて言った。
 もっとも、モララーは気に入っているようだが。

 ――だだっ広い事務所。
 そういう表現が、一番当て嵌まるだろう。
 部屋内に多くのデスクが並び、電話機やPCが備え付けられている。
 20人程度なら、余裕で収容できる広さはあるようだ。
 天井も高く、床は綺麗である。
 だが、地下特有の息苦しさは消えてはいなかった。

「窓がないってのは、落ちつかねぇな…」
 ギコは呟いた。
 モララーは、少し肩を落としている。
 おそらく、彼の脳内の秘密基地のイメージと違ったのだろう。
「結構、広いんだね…」
 しぃは感心したように呟いた。

 局長は、要人達の方を振り返る。
「皆さんには、しばらくここで暮らして頂きます。
 皆さんは今や完璧なお尋ね者ですから、なるべく外出は控えて下さい。
 地下である為、不便な点はありますが… 命の危険がない分、首相官邸よりはマシでしょう?」

「…仕方ないな。中央を追われた身はこんなものか」
 首相が嘆息する。
 要人達は、部屋中に置かれた椅子に腰を下ろした。

「先行きはどうなると君は考えている?」
 パイプ椅子に腰を下ろした官房長官が、局長に訊ねた。
 局長は僅かに表情を曇らせる。
「私の当初のプランでは…
 皆さんを保護した上でマスコミに働きかけ、自衛隊が独断で動いている事を明らかにするつもりでした。
 その上で国連に働きかけ、自衛隊の暴走を止めさせようとね」

 首相は口を開いた。
「君も見ての通り、米軍が派遣されている。アメリカ本国もスタンド使いの排除に乗り気だ。
 それだけではないね。他の国も、ASA及びスタンド使い打倒に動いていると見ていい。
 各国首脳、よほどスタンド使いの存在に手を焼いてたんだろうな…」
 そう言って、笑みを見せる首相。

「でも、スタンド使いだからって悪いことするとは限らないのに…」
 しぃは言った。
「国家を転覆させるだけの力を持つ者というのは、その存在だけで国家にとって毒なんだよ。
 当人の意思にかかわらずね…」
 要人の1人は、しぃを諭すように告げる。

 局長は口を開いた。
「とにかく、状況が違ってきています。
 常任理事国であるアメリカがスタンド使い排斥に動いている以上、国連決議に頼ったところで結果は見えている。
 やや手詰まりの感がありますね…」
「…」
 要人達は、揃って沈黙した。
「フサギコ…、やってくれますね。暴走しているように見えて、根回しは完璧だったとは…」
 局長は呟く。

373:2004/05/19(水) 17:05

「これもオヤジのせいだ。すまねぇ…」
 ギコは要人達に頭を下げた。
 この状況は、全て彼の父親が引き起こした事なのだ。
 しぃは、ギコの複雑な心中に気付いた。

「君は… フサギコ統幕長の御子息なのかね…?」
 首相はギコに視線をやった。
「…ああ」
 ギコは頷く。
 それを聞いて、首相はため息をついた。
「…頭など下げんでいいよ。こっちが悲しくなる。
 私の孫のような年齢の君が、親の責任まで抱え込む事はない」

「ギコ君…大丈夫だよ」
 しぃは、肩を落としているギコに呼びかけた。
 官房長官が口を開く。
「そこの娘さんの言う通りだ。軍人のクーデターで揺らぐほど、我が国は軟弱じゃない。
 50年に渡って中央政権に君臨し続けた与党の力、奴らに思い知らせてやるさ」
「そうですよ、ギコ君。責任論は事態が収拾してからでいい。今は前を向く時です」
 局長は、珍しく他人を思いやる旨の言葉を口にした。

 思いの他、要人達は協力的であるようだ。
 首相官邸に監禁されている間に、かなりの鬱憤が溜まっていたらしい。
 自衛隊員に銃を突きつけられる中、団結心も芽生えていたのだろう。
 彼等は、先の事について協議し始めた。

「まず外交ルートを駆使して、どれだけの国が自衛隊に賛同しているか調査する必要があるな…」
 外務次官が口を開く。
「相当数の筋は向こうに抑えられているだろう。意向を聞き出すだけで一苦労だな」
 官房長官がため息をついた。
「この年まで官僚をやってきたんだ。信頼できる独自のルートなんていくらでもある」
 そう言って、自身ありげに頷く外務次官。
 局長は、要人達に告げた。
「では、皆さん方は現状把握の方をお願いします。くれぐれも軽率な行動は慎むようにして下さい」

「マア、オレタチニハ カンケイナイ ハナシ ダケドナ…」
 つーは、大きなソファーに座り込んで言った。
 ギコは複雑な思いを抱いているだろうが、彼ら自身はあくまで助っ人なのだ。

「…ところが、そうは行きませんよ」
 局長は笑みを浮かべて言った。
「素顔をさらして首相官邸に乗り込んだんですから、簡単に素性が割れるでしょう。
 君達も、立派なお尋ね者ですよ。 …まあ、一蓮托生で頑張っていきましょう」

「テメェ! ハメたな!!」
 ギコは怒鳴った。
 思えば、それは当然の成り行きなのだ。
 ギコは、そんな事が見抜けなかった自分自身を反省した。

「じゃあ、僕達もしばらくここで暮らせってこと!?」
 モララーは局長に詰め寄った。
「…ええ。そうなりますね」
 局長はあっさりと認める。
「皆さんの家には、今頃は自衛隊員か米兵が詰め掛けているはずです」

「どうしよう…!! 家には、お母さんと妹が!!」
 しぃが悲壮な声を上げた。
「僕も、家にパパとママと妹がいるんだよ!?」
 続けてモララーも叫ぶ。

 局長は無線機を取り出すと、何やら操作した。
「心配は無用ですよ。既に公安五課が身柄を保護して…いない!?」
 局長は珍しく驚きの声を上げた。
 そして、無線機に語りかける。
「どういう事です!? …先に保護? 一体誰が…」

 しぃが、泣きそうな顔で局長を見つめている。
 局長は慌てて言った。
「いや、保護されているのは確かなようです。それが、公安五課の手によるものではないだけで…」

「おいおい、何だそりゃ。とんでもねぇ不手際だな…」
 ギコは怒気をはらんで言った。
 家族を保護するような人員をあらかじめ配置していた以上、全ては局長の予想通りと言ったところだろう。
 この男は、あらかじめ自分達を巻き込むつもりでいたのだ。その結果の不手際である。

「保護したのはASAって事はないの…?」
 モララーは焦りながら言った。
 流石に、彼も家族の事が気に掛かるようだ。

「その可能性は高いでしょうね。張り込んでいた局員も、ASAのスタンド使いの姿を見たと言っています。
 彼らも、自衛隊の動向に目を光らせているはずですし」
 局長は言った。
 しぃとモララーは、とりあえず胸を撫で下ろす。

374:2004/05/19(水) 17:06

 突然、内線電話が鳴った。
「…どうしました?」
 局長は受話器を手に取る。
『レモナさんと言う方が来てるょぅ。地下に案内していいかょぅ?』
 電話の向こうで、ぃょぅは告げた。
「ああ、もう着いたんですか。構いませんよ」
 局長はそう言って、受話器を置く。

「ヤレヤレ。メンドクセェ コトニ ナッチマッタナ…」
 そう言いつつも、つーは少し楽しそうである。
 これから、暴れる機会が増える事を予期しているのだろう。

「皆さんのロッカーも用意してありますよ」
 局長は、部屋の端を示した。
 大きなロッカーに、『ギコ』、『モララー』といったネームプレートが貼られている。
「…そんなもんまで用意してやがったのか。最初から、とことん抱き込む気だったんだな」
 ギコは、もう文句を言う気力もない。
 つかつかとロッカーに歩み寄ると、その中にM4カービンを仕舞った。

「女性の方には、ロッカーの代わりに個室を用意してあります。いろいろ大変でしょうからね…」
 局長は告げる。
 しぃは安心したような表情を浮かべた。
「…オレハ?」
 性別不詳であるつーは訊ねる。
「フレキシブルに対応できるよう、貴方には個室とロッカーの両方を用意していますが…」
 局長はそう言って腕を組んだ。

 しぃは、壁にかけられた時計を見る。
 午前6時。そろそろ明るくなる頃だ。
「モナー君達は大丈夫かなぁ…」
 しぃは呟く。
「心配はいらんだろ。ASAの奴等もついてるんだし」
 ギコは腕を組んで言った。
 彼らにも、この場所を連絡してやる必要があるな…

「まあ今頃、大海でバカンスを楽しんでるんだろうが…」
 ギコはそう言ってため息をつく。
 そんなはずがない事は、誰もが分かっていた。
 彼等は… 大丈夫なのだろうか。

「あんまり遅いようなら、少し様子を見に行ってやるか」
 ギコは言った。
「私も行く〜!!」
 いつの間にか来ていたレモナが口を挟んだ。
「オレモ!オレモ!」
 つーがはしゃぐ。
「おいおい、遊びに行くんじゃないんだ。それに、多人数で行くとここの守りが不安だろ?」
 ギコは2人を諌めた。
「それに、あくまで帰りが遅かった時の話だゴルァ」

 ギコは、広い部屋内を眺めた。
 要人達の多くは、電話機を手にして何かをしゃべっている。
 家族への連絡か、調査等の依頼や命令か…

 ギコはソファーに座り込むと、額に手を当てた。
 ヘリの中で、局長からモナークの話を聞いた。
 要人暗殺が目的だったにしては、腑に落ちない事が多すぎる。
 彼は、何者だ?
 あそこで、何をしていた?
 ギコは自問した。

 ――『教会』の影。
 そう。最も不気味な組織が、未だに表舞台に現れていないのだ。
 …奴等は何を企んでいる?

「…まあ、モナー達も大丈夫だろ」
 ギコは、言い聞かせるように言った。
 まるで、自身に根付いた嫌な予感を払拭するように。



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