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スタンド小説スレッド3ページ
1
:
新手のスタンド使い
:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●
このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。
◆このスレでのお約束。
○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。
○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。
○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
望ましくない。
○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
発動させるのも自由。
★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。
467
:
さ
:2004/05/28(金) 22:10
「―― モナーの愉快な冒険 ―― 吹き荒れる死と十字架の夜・その3」
@ @ @
店の外から、ヘリのメインローター音が聞こえた。
「…着いたみたいだょぅ」
ぃょぅは、カウンターから出る。
「じゃあ、行くか…」
ギコは荷物を抱えると、ソファーから立ち上がった。
「モナー君によろしくね」
コーラの入ったグラスを置いて、モララーが言った。
「モララー君… ぃょぅがいない間に、勝手にお酒を漁ったら承知しないょぅ」
ぃょぅが釘を刺す。
「や、やだなぁ… 僕がそんな事をするはずないよ…」
モララーは露骨に視線を逸らした。
「…」
そんなモララーを不審げに見た後、ぃょぅはBARから出ていった。
ギコが後に続く。
扉の開閉時の、カランカランという鐘の音が店内に響いた。
そのまま、ギコとぃょぅは駐車場に出る。
そこには、ギコの想像より遥かに大きなヘリが着陸していた。
機体は、黒みがかったグレーにペイントされている。
「H−60・ブラックホーク…?」
ギコは、呟きながらそのヘリを見上げた。
これは輸送ヘリじゃなく汎用ヘリだ。
無論、武装もしている。
こんなのでASAの艦に近付いたら、撃墜されるんじゃないか?
「さぁ、乗るょぅ」
ぃょぅはそう言ってヘリに乗り込むと、慣れた様子で操縦席に座った。
そして、ギコがASAから聞いた座標を地図に書き込む。
「…ちょっと遠ぃょぅ。途中給油が必要かもしれなぃょぅ」
そう呟きながら、計器類をチェックするぃょぅ。
「確か、このヘリは乗員が3名必要じゃないのか?」
ヘリに搭乗したギコは、操縦席のぃょぅに訊ねた。
「1人で操縦可能なように改良したょぅ」
ぃょぅは当たり前のように答える。
「じゃあ、テイクオフだょぅ!」
ギコとぃょぅを乗せたブラックホークは、たちまち空高く舞い上がった。
「…自衛隊に見つかったらどうするんだ?」
ギコは訊ねる。
「そうならない為に、五課のヒラ操縦士じゃなくぃょぅが操縦を引き受けたんだょぅ」
ぃょぅは正面を向いて言った。
ギコは、窓から夜の町を見下ろす。
戦争が始まろうが、眼下の風景は変わらない。
だが、この町にまで戦火が拡大すればどうなるだろうか。
「守るべき町…、か」
ギコは呟いた。
「昔、ヘリの操縦士をやってたって言ってたな? どこでだ?」
ふと、ギコは操縦席のぃょぅに訊ねた。
「…ソマリアだょぅ」
ぃょぅは即答する。
それからしばらく、2人の会話は無かった。
468
:
さ
:2004/05/28(金) 22:11
@ @ @
千葉県、嶺岡山。
この地に設置されたレーダーサイトが、最初にその異常を捉えた。
「海自では、今頃派手にやってるんだろうな…」
ずらりと並ぶディスプレイ。
それに向き合っていた航空自衛隊隊員の1人が、椅子にもたれて言った。
「第1と第2が総出だろう? これでASAの艦隊を潰せれば、戦争も終わるんだがなぁ…」
その隣の空自隊員が呟く。
「こっちにも特別要請が来たみたいだぞ。
アレを投下するから、F−2支援戦闘機を1機派遣してくれ…って」
それを聞きつけて、空自の1人が寄ってきた。
「アレって… アレだよな」
椅子にもたれていた隊員が、声を落とす。
「また、マスコミに叩かれるぞ。ウチの幕僚長、こないだも…」
そう言い掛けた隊員が、ディスプレイに目をやった。
「…おい、何だよこれ!!」
ディスプレイに広がる光点。
その数は、40を越えている。
「航空機の編隊…! ASAかっ!?」
隊員達が、一斉にそれぞれのディスプレイに向かう。
「アンノウン(正体不明機)、時速1000で接近中!! 距離140キロ、高度100!」
「機数、80を超過!!」
「IFF(敵味方識別機)反応なし!! フライトプランにも当該機なし!!」
「百里基地にスクランブル・アラート!!」
「米衛星より、画像来ました!!」
ディスプレイに、2種類の航空機が映し出される。
「…レシプロ機だって?」
その前時代的な機体外観に、隊員の1人が呟いた。
「両機とも照合不能!! 戦闘機と爆撃機の2種の模様!! おそらく、ASAの開発した最新機種と…」
「最新なものか…」
駆けつけてきたレーダーサイトの所長が口を開いた。
「メッサーシュミットBf109、爆撃機はJu87… 共にナチスドイツの機体だ」
「ナチスですって…?」
隊員は、ディスプレイに見入る。
「でも、60年も前の機体でしょう? それが、亜音速で…」
「改修機だろう… ASAは何を考えている?」
所長は顎に手を当てた。
海自からの連絡では、ASA艦隊をかなりのところまで追い込んだらしい。
それが、なぜ救援に行かない?
陽動… いや、そもそもこの航空編隊はASAの所属か?
「…向こうは爆装している。通常の領空侵犯対処ではなく、迎撃任務だ。
百里基地に、第204飛行隊と第305飛行隊を出すよう連絡しろ!」
余計な思考を打ち切って、所長は指示を出す。
「はっ!!」
隊員の1人が、素早く無線機を手に取った。
469
:
さ
:2004/05/28(金) 22:12
@ @ @
枢機卿は、Bf109のコックピットで闇夜を眺めていた。
高速で流れていく周囲の風景。
こんな風に、戦闘機を操縦したのは何十年振りだろうか。
真っ暗にもかかわらず、視界は完全に良好。
「まあ、闇目の利かない吸血鬼など存在しないからな…」
枢機卿は笑みを浮かべて呟いた。
随伴機も、特に問題はない。
自機が、かなり先行している点を除いて…
「さて…」
ディスプレイに光点が表示された。
前方から接近物多数。
「目標確認。随分と団体で来たものだな…」
F−15J。
20世紀における最強の戦闘機、F−15・イーグルの航空自衛隊改修機。
その編隊が迎撃に駆けつけてきたのだ。
うち、敵機2機が先行。こちらに直進してくる。
この距離でミサイル攻撃を行ってこない理由はただ1つ。
「あくまで最初は威嚇射撃という訳か…」
枢機卿は呟いた。
自機の速度を落とさず、そのまま直進する。
先行している2機も、真っ直ぐに近付いてきた。
案の定、F−15Jに備え付けられたバルカン砲が虚空に向かって火を吹く。
敵機に当たる可能性がある攻撃は、威嚇とは見なされない。
よって、威嚇射撃は見当違いの方角へ放つ。
それが、この国のルールのようだ。
「筋は通す…か。その心根、悪くはない…」
枢機卿は冷たい笑みを浮かべた。
機内に備え付けられた国際無線が、お決まりの音声を放つ。
『警告する。貴機は、現在領空を侵犯している。至急…』
英語で告げているのは、先程威嚇射撃を行ったパイロットだろう。
「これだけの編隊を前に警告か。律儀な事だ…」
枢機卿はため息をついた。
「その愚かなまでの規則遵守… 我らゲルマンと通ずるものがあるな」
敵編隊の先頭機2機との距離は、どんどん縮まっていく。
枢機卿は無線機を手に取ると、そのスィッチを押して告げた。
「勇敢なる兵士よ、1つ問おう。命の意味とは何だ?」
『命の意味…? …繰り返す、貴機は、現在領空を侵犯している』
向こうのパイロットは少し動揺した後、先程の台詞を繰り返した。
枢機卿は無視して続ける。
「かけがえのない命… 本当にそうか? 例えば、ここから遠い地… アフリカにいる1人の人間。
消えて無くなったところで、世の中は変わるか?」
『警告に従わなければ、撃墜する。繰り返す…』
枢機卿の言葉に全く取り合わないように、パイロットは告げた。
「答えは…『何も変わらない』。その人間と関わりのあった者が悲しむのみだ。
そう。命の価値とは、他者との関連による言わば付加価値なのだよ」
枢機卿は、まるで日曜日の教会の神父のように話し続ける。
『貴機は、現在領空を侵犯している…』
「そもそも、かけがえのない命とは大いに語弊がある。
命など、日々失われているではないか。これは、財の損失か?
軍用機のコックピットに座る君になら分かるだろう。
そんな筈はない、『かけがえのない命』などは虚構であると…
人の命を奪う為の機械を操縦している君には分かるはずだ。この愚かなる欺瞞がな…!」
枢機卿は、目の前の2機をしっかりと見据えた。
この速度だと… あと20秒後にすれ違う計算になる。
『警告に従わなければ、撃墜…』
壊れたレコードのように、無線から伝わってくる声。
「――なぜ、そんな兵器などが作られた?
君が必死ですがっている、領空侵犯とやらのやり取りは何の為にある?
『かけがえのない命』ではなかったのか? これを偽善といわずして何という?
問おう。問おう。問おう。問おう。問おう。問おう。君に問おう」
枢機卿は、両袖から愛銃のP09を取り出した。
P08のフルオートカスタムが両手に1挺ずつ。
そのグリップを強く握る。
『黙れ! そんなのは関係ない! これが手続きだからだ!!
世の中はそういう風に出来てるんだよ!!』
とうとう我慢できなくなったのか、パイロットは怒声を上げた。
枢機卿は、満足そうに笑みを浮かべる。
470
:
さ
:2004/05/28(金) 22:13
「そう、世界はそのように構築された。だから私は哀れな魂に告げよう――」
先頭の2機が目前に迫る。
枢機卿の機体を囲い込むようにすれ違う瞬間、枢機卿は自機のキャノピーを押し開けた。
亜音速の空気抵抗が、もろに枢機卿の身体に吹き付ける。
「――Kyrie eleison(主よ憐れみたまえ)」
枢機卿は操縦席から立ち上がると、大きく両手を広げた。
まるで、十字を形作るように。
そして、その両手に構えたP09の引き金を素早く引く。
フルオートで発射された弾丸は、左右から挟みこむようにすれ違うF−15Jのコックピットを直撃した。
そのままキャノピーを貫通し、パイロットの頭部を貫く。
操縦士を失い失速する2機。
後は、地表に激突するのみだ。
枢機卿は、場の空気が変わるのを敏感に感じ取った。
後方に控えているF−15Jの編隊から照射される無数のアクティブ・レーダー、そして殺意。
様子見から迎撃へ。
彼等の任務は変更された。
これで、舞台は整ったというわけだ。
「さあ… 神罰に溺れよッ!!」
枢機卿は、手許のスィッチを押した。
機内のステレオから、勇壮な曲が大音響で流れる。
Ka-me-ra-den, wir mar-schie-ren in die neu-e Zeit hin-ein.
「 戦友よ、 我等は 新しき時代へ行進する 」
メロディーに合わせて、枢機卿は口ずさんだ。
その曲は、無線機を通じて相手側にも伝わっているだろう。
敵編隊は、視界ギリギリの地点に展開していた。
吸血鬼の視力でギリギリという事は、向こうからの目視は不可能。
「有視界戦闘など、過去の遺物というわけか…」
枢機卿は呟くと、自機のスピードを限界まで上げた。
アフターバーナーを消費し、その機体速は音速を超える。
前方から、何発もの対空ミサイルが飛来してきた。
wir sind stets zum Kampf be-reit.
「 我等の戦いの準備は堅い 」
速度を落とさず、枢機卿はミサイルの雨を切り抜けた。
超音速で、数々のミサイルのホーミングを振り切る。
そして枢機卿のBf109は、敵編隊の正面に躍り出た。
その数、約60機。
空を覆い尽くす大編隊だ。
Lie-be Mag-de-lein, laB das Wei-nen sein;
「 愛する乙女よ、 悲しむのはやめよ 」
枢機卿は、素早く周囲に視線をやった。
全ての情報を分析し、確率・統計的に導き出された最適な行動パターンを割り出す。
自機の位置。針路。指示対気速度。真対気速度。対地速度。風向風速。射線の保持。Optimum Altitudeの確認。
敵機の動き。進入飛行経路。飛行高度。失速速度。最小操縦速度。最大運用速度。航空機の姿勢。バイパス比。
エレメンタルの組み合わせ。各機残存燃料の把握。編隊の有機的関連。各機の射程及び視程。
気温。気圧。CATの有無。気温逓減率。正規重力計算。遠心力計算。エトヴェシュ補正。
ランチェスター理論。クラウゼヴィッツ的『戦場の相互作用』の加算。集中効果の法則。
防御・隊列数分割式。命中率と砲外弾道計算。真空弾道の軌道計算。暴露時間と被弾確率。
そして、最低限の誤差修正――
「――戦状把握。これより神罰を執行する」
両手の拳銃で敵機のコックピットに狙いをつけた。
自機の機銃、機関砲、ミサイル、全てを編隊に照準を合わせる。
一斉に、バラバラに散る敵編隊。
もう遅い。全ての試算は済んでいる。
denn wir kampfen ster-ben furs Va-ter-land.
「なぜなら我等は祖国のため死ぬのだから」
枢機卿の機は、そのまま急上昇した。
それを追うように高度を上げる機体、守勢に回る機体、距離を置く機体、対応は様々だ。
まるで、枢機卿の割り出した行動モデルをなぞるように。
――射線確保。
そして、一直線に編隊の中へ突っ込む。
471
:
さ
:2004/05/28(金) 22:14
枢機卿は、両手の拳銃の引き金を引いた。
同時に、13mm機銃、20mm機関砲が火を噴く。
さらに、ミサイルを発射。
拳銃弾は、コックピット内のパイロットの頭部へ。
機銃弾や機関砲弾は、燃料タンクへ。
ミサイルは、機体の胴部へ。
ie-be Mag-de-lein, laB das Wei-nen sein;
「 愛する乙女よ、 悲しむのはやめよ 」
全機の行動を完全に読んだ偏差射撃に、F−15Jは次々に被弾していった。
だが、向こうも黙ってやられるはずがない。
敵機の中距離ミサイルが乱れ飛ぶ。
それでも、敵機の全ての動作は最初に割り出した行動パターンに符合していた。
電子機器による誘導は、機関砲の弾道より読むのは容易い。
ミサイルを避けつつ、敵機体を殲滅しつつ、枢機卿のBf109は敵編隊の間を縦横無尽に駆けた。
――オーバーシュート。
編隊を突っ切ってしまったようだ。
目の前に、飛行機1つない夜空が広がる。
急速旋回して、再び編隊の中に飛び込んだ。
その瞬間、機体に衝撃が走った。
「…!?」
枢機卿は、真上に視線をやる。
この機体よりもさらに高度に、1機のF−15Jの姿があった。
真上からバルカン砲を喰らったようだ。
「…ふむ、いい腕だ」
機体が大きく揺らぐ。
この角度で、そしてミサイルが乱れ飛ぶ中で、頭上から見事に射線を通すとは…
――どこで読み違えた?
おそらく、編隊を突っ切って18機目。
向こうの射線を遮るはずだった敵機を、つい落としてしまったようだ。
さらに衝撃。
一瞬の隙に、後方を突かれた。
エンジン付近に被弾。
おそらく、頭上の機体と2機編隊。
「素晴らしい連携だ… その技量を賞賛しよう」
枢機卿は、笑みを浮かべて呟いた。
Bf109の機体後部は炎に包まれている。
エンジンが発火しているようだ。
これ以上の飛行は不可能だろう。
機体は、とうとう落下を始めた。
枢機卿は座席から立ち上がると、機体の上に立つ。
SS制服の裾が、風圧で激しくはためいた。
「さて、困った…」
そう呟くと、一番近い位置にいるF−15Jに視線をやった。
「少し遠いが… 吸血鬼の肉体ならば、何とか可能か」
機体の上で助走をつけ、枢機卿はそのまま飛んだ。
そして、F−15Jの機首部に着地する。
コックピットの正面に立つ枢機卿。
「な…!?」
突然目の前に降り立った男の姿に、パイロットは驚きの表情を浮かべる。
denn wir kampfen ster-ben furs Va-ter-land.
「なぜなら我等は祖国のため死ぬのだから」
枢機卿は、コックピット内に銃口を向けた。
そのまま、頭部を狙って引き金を引く。
銃声と破壊音。
コックピット内に鮮血が飛び散った。
空を切る轟音。
枢機卿の乗るF−15Jに向かって、ミサイルが飛んできた。
機体の背に直立し、枢機卿はその飛来物に目をやる。
「随分と執拗だな。そうまで私の首が欲しいか…」
銃口をミサイルのシーカーに向けると、枢機卿は引き金を引いた。
銃弾が命中し、空中爆発するミサイル。
さすがに間近での爆風は強烈だ。
枢機卿の体は、機体の背から投げ出された。
「全部潰すつもりでいたが、早くもリタイアか…」
落下しながら、枢機卿は両手のP09を連射する。
3機のF−15Jのコックピットを撃ち抜いたが、それで限界だ。
そのまま、彼は高速で落下していった。
後方から鳴り響くジェット音。
Bf109、Ju87で構成される吸血鬼航空部隊がようやく飛来してきた。
頭上で、F−15Jとの交戦が始まる。
「先行しすぎた事が仇となったか…」
大空中戦の光景も、みるみる遠くなっていく。
落下速度は増す一方。
真下は海である。
この身体なら、充分に落下衝撃に耐え切れるだろう。
枢機卿の身体が海面に激突し、高い水柱が上がった。
「せっかくの一張羅が濡れてしまったな…」
枢機卿は、仰向けで海面に浮いていた。
そのまま、名残惜しそうに上空を見上げる。
真上では、『教会』の吸血鬼航空部隊と航空自衛隊が激突していた。
火花や爆発、機関砲の咆哮が響く。
「…さて、母艦に戻るか」
枢機卿は呟いた。
472
:
さ
:2004/05/28(金) 22:15
@ @ @
俺は、大きく深呼吸をした。
敵は合わせて16艦。こちらは2艦。
いくら戦いは数でするものではないと言っても、余りに分が悪い。
「…勝算はあります」
ねここは、緊張した表情を浮かべながら口を開いた。
「従来の艦隊戦のように、目視できない距離からの撃ち合いならば、こちらに勝ち目はありません。
でもASA本部ビルが奇襲された時、しぃ助教授は16発のミサイルを撃墜しています。
向こうはそれを警戒して、ミサイルの使用を控えると思うのです。
そうなると、近代ではありえないような艦隊接近戦になると思います」
接近すれば、こちらにはスタンドという強い武器がある。
少しだけこちらに有利に傾くかもしれない。
「…ミサイル16発を落としただと? なら、私はその3倍は落とす…」
リナーは、別の意味でやる気のようだ。
アヴェンジャー機関砲を掴む手に力が入っている。
とにかく、今は心強い。
「ん…?」
『アウト・オブ・エデン』が、しぃ助教授の艦の接近を捉えた。
艦同士の距離を狭め、連携を取ろうというのであろう。
そして、前方からも近付いてくる物体が…
「…来たモナ!! 右20度から、ミサイル2発!!」
俺は怒鳴った。
「副艦長よりCICへ!! スタンダードで迎撃を!!」
ねここが無線を手にして叫ぶ。
後方から轟音がした。
この艦から、まるで打ち上げ花火のようにミサイルが飛翔していく。
それは、そのまま前方へ高速で飛んでいった。
あれが、スタンダード対空ミサイル…
ミサイル同士が空中衝突し、両者とも爆砕した。
「当たったモナ! 向こうのミサイルを撃ち落したモナ!」
俺は興奮して叫ぶ。
ねここは、俺に視線を向けた。
「モナーさんが早く教えてくれたお陰です。ミサイルが来たら、この調子で…」
「…また来たモナ!!」
俺は、息つくヒマもなく叫んだ。
「…敵艦が2艦、こちらに近付いてきたモナ!! 後ろの艦からもミサイルが3発…」
「スタンダード3番、4番、5番!! 目標、敵対艦ミサイル!!」
ねここは素早く反応した。
再び、発射されたミサイルが前方に向かう。
「敵艦接近か…」
リナーが、アヴェンジャー機関砲を構えた。
眼前の海に、肉眼でうっすらと艦影が見える。
先頭に1艦。その後ろにもう1艦の縦列だ。
先頭艦の前部に備え付けられた単装砲が、素早くこちらを向いて…
「ありすッ!! お願い!!」
ねここは叫んだ。
周囲に、夜を裂くような爆音が響き渡る。
敵艦の単装砲… そして、リナーのアヴェンジャー機関砲が同時に火を噴いたのだ。
大きな掌、おそらくありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』が砲弾を弾く。
「うわぁッ!!」
その瞬間、『ヴァンガード』が大きく揺れた。
流石に全弾は防ぎきれなかったようだ。
艦の前部に砲弾が直撃…!!
「いや、相打ちだ」
リナーは、敵艦を見据えたまま言った。
「このアヴェンジャーで敵艦を撃沈するのは到底無理だが、固定兵装を潰す事はできたようだな…」
見れば、敵艦の前部単装砲が吹き飛んでいる。
でも、まだ後部の砲門が残っているはず。
敵艦は、転舵運動を…
「転舵させるな! 沈めろ!!」
リナーが叫んだ。
「ハープーン!! 目標、前方敵駆逐艦!!」
ねここは素早く指示を出す。
ミサイルが、轟音と共に撃ち上がった。
ハープーン対艦ミサイル。
亜音速で飛来、そして水上艦に激突・爆砕する強力なミサイル兵器。
転舵運動を取っている最中の敵艦に、避ける術はない。
ハープーンは、敵艦の艦橋に直撃した。
ミサイル自身の爆発。さらに、火薬庫か何かに引火したようだ。
敵艦上で誘爆が起こっている。あれでは、航行は不可能だろう。
「やった!!」
俺は叫んだ。
こっちに放たれた3発のミサイルも、こちらの対空ミサイルで撃墜したようだ。
473
:
さ
:2004/05/28(金) 22:16
しぃ助教授の艦『フィッツジェラルド』が、『ヴァンガード』の横に並んだ。
艦橋のてっぺんに立つしぃ助教授が見える。
そして、その後ろに影のように控える丸耳。
「気を抜くな! まだまだ来るぞ!!」
リナーはガトリングを構えて叫んだ。
俺は素早く前方に視線を戻す。
もっとも、俺が気合を入れても仕方がないが。
後ろの1艦が艦砲射撃を放ってきた。
ありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』の掌が、その砲弾を叩き落す。
「距離が遠い。これでは、あそこまで届かんな…」
リナーはアヴェンジャー機関砲を構えたまま呟いた。
『アウト・オブ・エデン』が、ミサイルの接近を感知する。
「ミサイルが来たモナ! 数は1、2、3、いや、もっと… 50発以上!!」
俺は叫んだ。
ねここも、ありすも、リナーも、驚きの表情を見せる。
隣の艦でしぃ助教授が息を呑むのが、無線越しに伝わってきた。
今から来るのは、まるでミサイルの雨だ。それが、あと30秒後に…!!
「…飽和攻撃! こちらのミサイル処理能力を上回る物量で押してきたか!」
リナーは、ガトリング砲を仰角30度に向けた。
「構わんさ。落とせるだけ、落としてやろう…」
「サムイ…」
ありすの周囲に、無数の巨大な掌のヴィジョンが浮かぶ。
かなり射程の長いスタンドだが… それでも、ミサイル攻撃に対しては余りにも不利だ。
ありすの身ひとつではなく、艦そのものを防衛しようと言うのだから。
ねここは無線を操作して言った。
「ウェポン・オール・フリー(全兵装使用自由)。砲雷長の判断で、迎撃及び攻撃を行って下さい」
『了解。 …そちらも健闘を祈ります』
CICからの応答。
「駄目な時は、総員の退艦を速やかに…」
そう告げて、ねここは無線を切った。
そして、前方を見据える。
「…来たぞ!!」
リナーは叫んだ。
視認範囲にミサイルの大群が…!!
それは、星のように正面に点在していた。
広がった点にしか見えない物体が、徐々に大きくなっていく。
前方の艦も、ミサイル攻撃とタイミングを合わせるかのように艦砲射撃を繰り出してきた。
空を切るようなミサイルの飛来音と、単装砲の太鼓のような音が闇夜に響く。
「はいだらー!!」
ねここは、ミサイル群を見据えて叫んだ。
『ヴァンガード』と『フィッツジェラルド』から、同時に多数の対空ミサイルが発射される。
こちらの対空ミサイル、リナーのアヴェンジャー機関砲弾、ありすのスタンド…
それらが、一斉にミサイルの大群に向かった。
前方で次々に巻き起こる爆発。
それは、まるで花火のように俺の目に映った。
それをかいくぐって、数発のミサイルが飛来する。
「この…ッ!!」
リナーが、素早くアヴェンジャー機関砲を向けた。
かなり付近まで接近していたミサイルが、弾丸を喰らって爆発する。
その爆風に、俺はよろめいた。
「まだ来るのか…!!」
リナーは、アヴェンジャー機関砲で接近してきたミサイルを次々と撃ち落していく。
だが、それでも迎撃が追いつかない。
『ヴァンガード』のCIWS20mm機関砲もフル作動しているが、それでも…
アヴェンジャー機関砲の射撃を逃れたミサイルが、寸前まで迫る…!!
轟音と共に、ミサイルはそのまま水没した。
こちらに迫るミサイルは、次々とあらぬ方向に逸れていく。
これは、しぃ助教授の『セブンス・ヘブン』…!!
「さすが、しぃ助教授!! 助かりました!!」
ねここは無線で言った。
『余り私を頼らないで下さい。遠距離になれば、当然精度も弱まりますからね…!』
しぃ助教授は告げる。
さらに、しぃ助教授は仮にも人間。
スタミナにも限界はある。
向こうは、それでも遠方から次々にミサイルを放ってくきた。
もう、100発はとっくに越えているはずだ。
リナーのガトリング、両艦の兵装、そしてしぃ助教授とありすのスタンドを持ってしてもなお、迎撃しきれない。
飛来したミサイルのうちの1発が、艦首部分に直撃した。
「うわァッ!!」
『ヴァンガード』がぐらぐらと揺れる。
「大丈夫、これくらいじゃ沈みません!!」
ねここは叫んだ。
474
:
さ
:2004/05/28(金) 22:17
「…弾切れだ」
アヴェンジャー機関砲を下ろして、リナーは呟く。
そこへ1発のミサイルが飛来した。
「…!!」
リナーはアヴェンジャー機関砲を持ったまま、砲丸投げの要領でその場で1回転する。
そして、ミサイル目掛けてアヴェンジャー機関砲の砲身をブン投げた。
頭上で爆発が起こり、砲身の直撃を受けたミサイルが海中に没する。
「…対艦ミサイルを、前方の艦に放つようCICに伝えろ。軌道は超低空だ」
リナーは、ねここの方に振り返って言った。
「は、はい… でも、間違いなく迎撃されると思いますが…」
ねここは、急な申し出に困惑して告げる。
「…構わん。急げ!」
リナーは言った。
ねここは素早く無線を操作する。
「前方敵艦にハープーン! 軌道は海面スレスレでお願いします!」
指示の直後、後部発射口からハープーン対艦ミサイルが撃ち上がった。
リナーは、その場から艦首に向けて真っ直ぐに走り出す。
まさか…!!
いったん真上に撃ち上がったミサイルが、誘導に従って下降していく。
加速をつけたリナーが、艦首から思いっきりジャンプした。
そのまま、敵艦へ直進するミサイルに飛び乗る。
前方の艦のCIWS機関砲が作動した。
たちまちのうちに、こちらが放ったミサイルは撃墜される。
だがリナーはミサイル撃墜の瞬間、敵艦に飛び移ったようだ。
「本気で、白兵制圧する気モナね…」
俺は思わず呟いた。
その瞬間、前方から爆発音が響いた。
直後に、艦が大きく揺れる。
艦の右舷にミサイルが当たったのだ。
損傷の規模からして、ありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』が爆発をある程度抑えたようだが…
「くッ…!!」
『ヴァンガード』は大きく傾き、俺はよろけた。
しぃ助教授の艦も、何発か喰らっている。
この艦よりも損傷は大きいようだ。
『ねここ!』
無線機のイヤホンから、ねここを呼ぶしぃ助教授の声。
『こちらの後部甲板にミサイルが直撃しました! 怪我人続出です! 至急、治療をお願いします!!』
「分かりました! ただちに向かいます!!」
ねここは、俺とありすに背を向けて駆け出した。
「…どうやって行くつもりモナか!?」
俺は叫ぶ。
「内火艇があります!!」
ねここはそう答えると、ブリッジの中に消えていった。
内火艇って、ボートに毛が生えたような奴じゃないか…
そんなもので、この銃弾やミサイルが飛び交う戦場を渡るのか…?
俺は、隣のありすを見た。
ゴスロリに身を包んだ少女は、必死な顔で前方を見つめている。
この艦に迫るミサイルを、もう何発落としたのだろうか。
「ありす、頑張るモナ!!」
俺は、ありすを激励した。
応援するしか、俺にできる事はない。
「…だいじょうぶ」
ありすは頷く。
その額に、一筋の汗。
あれほどの射程と力を持つスタンドである。
この小さい身体に、それを維持し続けるだけのスタミナはあるのだろうか…
「…?」
『アウト・オブ・エデン』は、不穏な気配を感知した。
後方から、何かが近付いてくる。
これは、航空機か…?
俺は、背後の空を見上げた。
1機の飛行機が、高速で飛来してくる。
その胴部と主翼には、見慣れた日の丸。
機体下部には、爆弾のようなものを装備している。
――妙だ。
これだけのミサイルの雨の中、わざわざ飛行機で爆撃しにくる必要など全くないはず。
あれは…
あの爆弾は、何だ?
『それ』は投下され、『ヴァンガード』の甲板前部に落ちた。
俺達のすぐ近くだ。
爆発など起きはしない。
ただ、その物体は甲板に転がったのみ。
飛行機は、そのまま速度を落とさずに前方へ飛んでいく。
これは… 何か、苦い香り…?
突然、ありすが膝を付いた。
そして、そのまま甲板に横たわる。
「ありす!!」
俺はありすに駆け寄った。
呼吸が荒い。手足が僅かに痙攣している。
これは――
――窒素性化学物質、シアン化水素。組成式はHCN。
化学兵器として有名で、米軍コードはAC。
吸入から15秒程で呼吸亢進。
15〜30秒後に痙攣。
2〜3分後に呼吸が停止、その後数分で心停止に至る――
本来、化学兵器を屋外で使う事は兵器運用上ありえない。
たちまち空中に四散してしまうからだ。
しかし、これは個人を狙った攻撃だな。
ASA三幹部ありすの命のみが狙いなのだろう。
君は吸血鬼だから大丈夫だが… この娘はいくら強大なスタンドを所持していようが、肉体は人間だ。
475
:
さ
:2004/05/28(金) 22:19
「化学兵器だと…!? 女の子なんだぞ!?
女の子1人を殺す為に、奴等は化学兵器なんか持ち出したっていうのか!?」
俺は憤慨して叫んだ。
そして、ゆっくりとありすを抱き起こす。
ぐったりとして、力が入っていない。
――か弱い女… とはとても言えんだろうがな。
やるなら急げ。
間に合わんぞ。
「お前に、言われるまでもないんだよッ!!」
俺はバヨネットを取り出すと、ありすの胸に突き刺した。
そして、大きく横に薙ぐ。
肺を犯しているシアン化水素『だけ』を『破壊』――
さらに、バヨネットで周囲を大きく一閃した。
これで、空気中のシアン化水素は残らず『破壊』したはず。
だが、あくまで毒素を取り除いたのみ。
ありすの容態は悪い。
俺は無線機のスィッチを押した。
「ありすが化学兵器… ACで倒れた! 急いで救護を!!」
俺は叫ぶ。
『艦長が…? 了解しました!!』
CICから迅速な返事が返ってきた。
その瞬間、艦が大きく揺れる。
左舷に、ミサイルの直撃を食らったのだ。
ありすが倒れた今、この艦はもう持たない…!
――『私』に替われ。
「黙れ! お前の力なんて、絶対に借りるか!!」
俺は叫んだ。
『殺人鬼』の奴、いつの間にしゃしゃり出てきたんだ?
「くッ…!!」
俺はありすの身体を抱えると、艦橋に向かって走った。
「ともだち…?」
ありすが、俺の顔を見上げる。
「黙ってろ! すぐに治るから!!」
俺は叫んだ。
「大丈夫ですか!!」
艦橋へのドアが開き、担架を持った艦員達が走ってくる。
「ACを吸ってる! 応急解毒は済ませたから、100パーセント酸素補給を!!」
俺は、素早くありすを担架に乗せた。
そして、艦員達を見る。
「この艦はもうダメだから、あんた達も避難を…」
艦員は、厳しい視線を向けた。
「艦を見捨てて逃げ出したりはしません。私達も戦っています」
「…」
俺は、思わず視線を逸らした。
「では、あなたも気をつけて!!」
艦員達はありすの乗った担架を持ち上げると、艦橋の中に走っていった。
そう。俺は見逃していた。
戦っているのは、俺達だけじゃない。
なぜ、この船は沈まない?
浸水を食い止めているクルーがいる。
傾く艦を必死で操舵しているクルーがいる。
敵ミサイルの撃墜の為に、CICでディスプレイと向かい合っているクルーがいる。
救急の為、艦内を駆け回っているクルーがいる。
みんな、戦っているのだ。
『私に替われ』。
そう、『殺人鬼』は言った。
奴の力など、借りたくはない。
だが… もしこのまま『ヴァンガード』が沈んだ場合、多くの犠牲者を出した場合、俺はどうなる?
醜い力に身を委ねないで良かった、と胸を張れるのか?
そんな筈はない。
そんなのは、俺個人のエゴだ。
俺は、この艦のみんなを――
そして、この艦のために戦っている人達を守りたい。
ありすはミサイルを防ぐ為に戦って、化学兵器に倒れた。
リナーは、たった1人で敵艦に乗り込んで戦っている。
しぃ助教授は、必死でミサイルを迎撃している。
ねここは、あっちの艦内を駆けながら怪我人を治療している。
丸耳は、副艦長として『フィッツジェラルド』を指揮している。
みんな…
みんな、戦っている。
――だから。
「――だから、俺も戦う」
俺は、俺の中の『殺人鬼』に告げた。
476
:
さ
:2004/05/28(金) 22:20
* * *
(――だから、俺も戦う)
私の中の『monar』は告げた。
「…ふむ」
正面から飛来するミサイル群を見定める。
「君は、ミサイルに対して何もできないと思い込んでいる。
確かにミサイルの破壊力の前では、吸血鬼の肉体とて抗う術はない。だが、それは――」
私は、甲板を蹴って高く飛んだ。
「――正面から向かった場合の話だ」
さらに艦橋を蹴り宙高く跳ねると、虚空をバヨネットで一閃した。
ミサイルから照射されるレーダー波をまとめて『破壊』する。
「対艦ミサイル・ハープーンのホーミングにはアクティブ・レーダーを使用している。
向こうの波を一時的に掻き消してやれば、目標を失い迷走するのみ」
私は、手元のバヨネットを回転させて告げた。
「君の戦い方は未熟だ。ミサイルが射程距離外にあるというだけで、『破壊』できないと匙を投げる。
もっと注意深く観察すれば、レーダーの波が視えたはずだ」
(…)
『monar』は無言で私の動きを見ている。
まるで、戦い方を観察しているように。
ミサイルの大半は目標を失い、海面に落ちた。
そんな中、大型のミサイルが向かってくる。
「そして、タクティカル・トマホーク巡航ミサイル。
これは、誘導にINS及び衛星データ・リンクを使用している。故に…」
私は、バヨネットを軽く振った。
「衛星からの通信を断つ。これで、トマホークは無力と化す」
そのまま、水没するトマホーク。
「――以上だ」
* * *
「ああ。分かった――」
俺は頷いた。
そして、バヨネットを構える。
「――後は俺がやる」
飛来してくるミサイル。
再び、照射されるレーダーの波を『破壊』した。
続けて、衛星からの電波をも『破壊』する。
衛星からは、常にデータが送られてくる。
『破壊』は一時的なものだ。
トマホークを無効化するには、絶えず『破壊』し続ける必要がある。
それでも…
俺は、戦える。
俺は大きくバヨネットを薙いだ。
四方から浴びせられるレーダーの波を次々に『破壊』する。
それだけで、ハープーンは無効化する。
なぜ、こんな簡単な事に気付かなかったのか…
『どうやら、そっちはモナー君だけみたいですね…』
無線機から、しぃ助教授の声がした。
「こっちは大丈夫。ミサイルは全部叩き落としてやるモナ!」
俺は言った。
『…期待してますよ』
しぃ助教授が告げる。
前方のミサイル群が、大きく逸れて海中に没した。
しぃ助教授の『セブンス・ヘブン』だ。
俺も次々にレーダー波を『破壊』する
これなら、何とか凌ぎきれる…!
――ドス黒い気配。
何だ、これは…?
何かが…
背後から、何か巨大な物が近付いてくる。
ミサイルや航空機なんて大きさじゃない。
この艦の1.5倍以上。
これは、戦艦…?
それも、間近だ。
俺とした事が、ここまで接近されてしまった。
このままじゃ、『ヴァンガード』の後部に激突する…!!
「CIC!! 全速前進だッ!!」
俺は、無線機に叫んだ。
俺の指示が通じるのかは分からない。
だが… 『ヴァンガード』は大きく前進してくれた。
それでも、間に合わない…!!
『『セブンス・ヘブン』!!』
無線機から、しぃ助教授の声が響く。
同時に、凄まじい衝撃が『ヴァンガード』を揺るがした。
艦後部から響く破壊音。
俺はよろける体を立て直した。
現在、なぜかミサイル攻撃は止んでいる。
「一体、何が起こってるモナ…?」
俺は、甲板を駆けて艦後部に向かった。
黒い威容。
戦艦の巨体が、『ヴァンガード』後部にめり込んでいた。
ヘリ着陸用の甲板が無惨にひしゃげている。
これだけの重量差があれば、通常なら確実にこちらの撃沈。
この程度の被害で済んだのは、『セブンス・ヘブン』が激突のショックを分散してくれたからであろう。
「これは…!」
俺は、謎の艦を見上げた。
威塊にして醜悪。
リナーは、戦艦は現代においてほぼ運用されていないと言った。
だが… これは、どう見ても戦艦だ。
自衛隊の艦とは思えない。
それに、どこか異様だ。この艦は気持ちが悪い。
477
:
さ
:2004/05/28(金) 22:21
「…?」
向こうの艦首に、人影が見えた。
そして、馬のいななきが聞こえる。
…馬だって?
こんな近代戦の最中に、馬?
そう。人影は馬に乗っていた。
そのまま、人影は高く跳んだ。
そして、こちらのヘリ甲板に着地する。
艦と艦の間を、馬で跳んだ…!!
そして、馬の背に乗っているあの男は…
その屈強そうな男は、立ち尽くす俺の姿を見定めた。
その眼光、普通じゃない。
一目で分かる。こいつ、恐ろしく強い。
『蒐集者』のような、化物じみた雰囲気とは質が異なる。
洗練された、戦士としての強さ。
これは、そういう類の人種だ。
「我が名は山田――」
男は馬から降りた。
その手には、大きな薙刀。
いや、青龍刀の亜種だろうか。柄がかなり長い。
俺の『アウト・オブ・エデン』は、その武器に何かを感じ取った。
山田と名乗った男は、ゆっくりとこちらへ歩み寄りながら口を開く。
「…士ならば構えよ。後ろを見せるなら、斬りはせぬ」
「…!」
俺は、素早くバヨネットを構えた。
「モナは…」
――その刹那。
一瞬の殺気の後、俺は地を這っていた。
何が起きた?
背中が冷たい。
俺は、倒れているのか?
そして、胸に刺すような痛み。
いや、実際に刺されたようだ。
心臓を貫かれたのか?
人間だったら、完全に即死だ。
山田は、倒れ伏す俺に目をくれる事もなく歩いていく。
艦橋へ向かっているようだ。
もはや、彼の目に俺は映っていない。
こいつは、リナーと同じ。
たった1人で、艦を制圧する気だ。
だが… これはASAの艦。
スタンド使いが多数乗っている事は明らか。
それでも、こいつはたった1人で――?
『アウト・オブ・エデン』ですら、先程の動きが視えなかった。
しかも、スタンドによる速さじゃない。
あの青龍刀にはスタンドが関与しているようだが、それすら使っていない。
こいつ自身の、磨きぬかれた速さだ。
俺には、最初から勝ち目などない。
でも――
「行かせるか…!」
俺は血を吐きながら立ち上がった。
心臓を貫かれている。
吸血鬼でなかったら、当然即死だ。
でも… みんなが戦ってるのに、こんなところで倒れていられるか!!
山田は口を開いた。
「ほう、お主も吸血鬼か…」
しかし、こちらを振り向こうとはしない。
それどころか、そのまま艦橋に歩いていく。
「待て! お前は、艦内には入れさせない…!」
俺はバヨネットを構えると、艦橋へ向かう山田に走り寄った。
その背中に、バヨネットを…
「その意気や良し。だが――」
山田の手にしている青龍刀が、僅かに傾く。
――そして、俺は再び甲板に転がっていた。
山田の青龍刀が、俺の胸を貫いたのだ。
俺の方を、一瞥すらせずに。
もう、殺気すらなかった。
蝿を払うのと大差はない。
足音が遠くなっていく。
「――実力が伴わなければ、どうにもならぬな」
山田の声が、重く響いた。
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. < To Be Continued... | |
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478
:
さ
:2004/05/28(金) 22:29
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|(†)ヽ
|)))))
| -゚ノi < …
と)ノ
|ハゝ × ― モナーの愉快な冒険 ― 吹き荒れる死と十字架の夜・その3
| ○ ― モナーの愉快な冒険 ― 吹き荒れる死と十字架の夜・その4
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