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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

221 丸耳達のビート Another One:2004/05/04(火) 23:57



   一九八四年 四月十日 午前五時零分

                〜夜明けまで、残り三十分〜


  ―――――スタンドパワーの余波で、屋上に砂煙が上がる。
風化した粒子は細かく、視界の全てを覆いつくす程に舞い上がった。
「ハァ…ハァ…ッ!」
 額に脂汗が滲む。砂煙が晴れると、灰色の固まりが風にさらわれていった。
肉片一つ残さず風化させる、『デューン』の能力。

 震える腕を握りしめ、ガチガチと歯を鳴らしながら『デューン』を消した。
「俺は…間違ってなどいない…!」

「―――ああ、間違っちゃいない。…だけど、正しくもない」
「ニローン…」        フルール・ド・ロカイユ
 ギコの背後に咲いている『 石 の 花 』。
その中に、上半身だけになった吸血鬼を抱えた二郎が立っていた。
 先程崩れ去ったのは、『石の花』で作ったダミーか。
「お前さんの雇った奴らは全員ノして来た…もう止めろ、ギコ」
「―――――『もう止めろ』だと?お前はそれがどういう事だか理解しているのか…?
 ここで俺が退けば、今までしてきた事が…何の意味もなかったと認める事になる。
 俺の信じてきた事が、只の塵になる!俺が吸血鬼を殺したのが、只の我が儘になる!
 彼女を殺してしまったのが、間違いだった事になる !! !! !!
 …だから…俺はこの道を行くより他に無いんだ!」

 再び、『デューン』が咆吼した。
              フルール・ド・ロカイユ
自分たちを守るように『 石 の 花 』を展開させるが、触れた端から風化して足止めにすらならない。
 慌てて足下に花を急成長させ、自分たちの体を跳ね上げる。

222丸耳達のビート Another One:2004/05/04(火) 23:58



(オ逃ゲ下サイ、二郎様…!相性ガ悪スギマス)
「…駄目。アイツだって、石仮面の犠牲者なんだ。
 ここで逃げたらシャマードは助けられても、アイツは救えない」
(シカシ…!)
「シャマードは助ける…ギコも救う。両方ともやるのが、俺の我が儘だ」

 とんとんとん、とステップを踏み、『種』を植え付ける。

「だから…ギコ。お前もお前の我が儘を通してみろ。
 間違ってようが何だろうが、それに命を懸けられてたなら…そいつは我が儘じゃない。」


 べきべきと、コンクリートの床を突き破って一輪の花が咲いた。


「それは―――『信念』だ」

 細く、長く、堅く、そしてしなやかに、真っ直ぐに。
二郎の身長程度まで成長した花を、べきりと手折る。
 イメージ通り、即席の槍。

「来いよ、ギコ。受け止めてやる」

 ―――馬鹿な選択だとは、わかってる。
それでも、俺は馬鹿だから…こんな方法しかとる事はできない。

「行くぞ!」

「来い!」

 確かこのビルは、来週だか再来週だかに取り壊される予定。暴れても壊しても、なんら問題はない。
上半身だけのシャマードを『石の花』で繭のように包む。

 『デューン』が跳んだ。『フルール・ド・ロカイユ』で形成した槍を風化させながら受け流し、先程植えた『種』を発芽・成長。
二十本を超える、槍より鋭いつぼみが撃ち出された。狙いは『デューン』ではなく、本体のギコ。

  リュオオオオオンッ―――

 弦楽器のような声と共に、手近な五本が茎を風化させられた。
花のつぼみが二郎の制御下から離れ、ぱきんと割れる。
更に驚異的なダッシュで本体の元へ舞い戻り、全方位からのつぼみを全て塵へと還した。

223丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:01

(…速い…!)

 この距離では、フルール・ド・ロカイユの攻撃はほぼ完封される。
『デューン』自体にも、フルール・ド・ロカイユでは傷を与えられそうにない。
 かと言って、あんなモノに接近戦を挑むのは自殺行為。
シャマードのようなパワー・スピード・再生能力があるのならまだしも、こっちは生身の人間だ。
腕一本の犠牲どころか、本体のギコにたどり着く前に軽く二ケタは殺されてしまう。


 …やはり、強い。完璧な防御・『風化』の能力・本体を絶対守る忠誠心………


  ―――いや…待てよ。


 フルール・ド・ロカイユで屋上の床を花に変え、人が通れる程度の穴を開けた。
上半身だけのシャマードに向けて、『スタンド』の声を送る。
(B・T・B…手、貸してくれ)
(…何カ策ガ アルノ デスカ?)
 シャマードの肉体から、ひょこりとB・T・Bが顔を出した。
(ああ。ちょっぴり無茶するんだけど…)
 B・T・Bの頭に、二郎が考えている『作戦』をイメージで伝える。
瞬間、B・T・Bの白塗りメイクが蒼く染まった。
            フルール・ド・ロカイユ
(スタンドパワーは、 石 の 花 に送り込んでるやつを使ってくれればいい。頼んだ)
(…正気デスカ!?ソンナ無茶苦茶ヲ!)
(YES,YES,YES…当・然・だ。ほら、さっさと行かないと夜が明けるぞ!)
 ぱんっ、と壁際に手を置き、『種』を植えた。
根を伸ばしていくのをイメージし、そこにB・T・Bを入り込ませる。
    サノバビ――――ッチ
(サッ…SonofaBiiiiitcccch !!)



 『種』は、B・T・Bも制御できるようにプログラムしてある。
『根』を伸ばし、『根』を伸ばし、根を伸ばし根を伸ばし根を伸ばし根を伸ばし『根』を伸ばす。
『花』も『茎』もいらない。『葉』も、養分を集める最低限でいい。

(いつだったか…『釣り鐘』って話してやっただろ?)

224丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:02



「二郎ー。何コレー?」
 …思い出す。二郎様との出会いから、二週間ほど経ったある日のこと。
私の主人が、アパートの片隅にあったミニチュアの釣り鐘を指さしていた。
「ああ、それ?『鐘』って言ってな。医大にいる同僚への土産。
 こっちの言葉で言えば…『ジャパニーズ・ベル』かな?」
「ベル?教会とかにぶら下がってる?」
「そ。そんな感じの」
「…シカシ、中ノ玉ガ 無イデスネ。コレデハ 鳴ラナイノ デハ?」
 鐘の内側を覗き込みながら、不思議そうに私が聞く。
「ああ、こっちのとは違って外から叩くんだ」
二郎様がガラクタの山をまさぐって、付属の木槌を取り出した。
軽く叩いてやると、ごぉぉぉぉぉん…と低く鳴る。
「どうだ」
「オォ、渋イ音色」
「大晦日には一〇八回叩いて、悪い心を追い出す風習があるんだ。確か写真が…あ、あった」
「わー、凄ーい。大きいー」
「振り袖もあるから着てみるか?下着は付けずに肌襦袢を着るのが…
 いや待て冗談冗談冗談冗談、待って、ヘイ、ストップ、チョット、ア、ダメ、イヤン」
 ―――この後お約束の如く、主人が一〇八回の 鉄 拳 制 裁 を下したのは言うまでもないが、そんなことはともかく。



(…あれを指一本で振り子みたいに揺らす事ができる、って話があってな…)

225丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:03





   一九八四年 四月十日 午前五時十五分

                〜夜明けまで、残り十五分〜


  ―――――『デューン』に追い立てられながら、廃ビル内を走る。
取り壊しが決まっただけあって、中には人っ子一人いない。

 ―――良し…最高だ。

 『フルール・ド・ロカイユ』に抱えられたシャマードが、僅かに呻いた。
「待ってろ…もう少し…」


(例えば、釣り鐘をちょっとでも指で押せば、僅かだけど『揺り返し』が起きる。
 その『揺り返し』に合わせて押せば、またちょびっと…けど、最初より大きく『揺り返し』が起きる)


  そして、廃ビル内のほぼ全てに『根』が行き渡った。


(更に『揺り返し』に合わせて押して、そのまた『揺り返し』に合わせて―――
 これを繰り返せば、指一本で釣り鐘を揺らせる。
 …お前さんにやって欲しいのは、要するにそう言うこと)


「はっ…!はっ…!」
 『デューン』にいくらスピードがあると言っても、射程は十メートル程度。
ギコより十メートル早く走れば、何とか逃げ続けられる。
 シャマードは『フルール・ド・ロカイユ』に持たせているし、二郎自身は殆ど習っていないとはいえ波紋使い。
フェイントで更に一フロア下に降りたし、多分見つかることは無いだろう。
「…よーし…だいぶ引き離」


  ざぁっ。


 寄りかかって一休みしようと思っていた壁が風化した。
「してなかったッ!」
 シャマードを抱えている『フルール・ド・ロカイユ』に掴まって急ブレーキ、回れ右して階段の方へ再び逃げる。
三段抜かしで階段を駆け下りながら、9mm拳銃をギコに向けてクイック・ドロウ。
 『デューン』に叩き落とされるのを尻目に、踊り場を回る。

226丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:05

(まだだ…B・T・B…俺が『やれ』って言うまでは絶対に使うな…!)

 更に階段を下ろうとした瞬間、咄嗟に脚を止めた。
階段を風化させながら、上のフロアから『デューン』が跳び降りてきた。
 前の階段には大穴があき、登りの階段からはギコが大口径の拳銃を構えている。
銀にアレルギーを起こす吸血鬼専用の、四十五口径純銀弾。
「…そこまでだ」
 喉元二ミリの位置に、『デューン』の手刀が突きつけられた。
ごろりと、シャマードが中に入ったフルール・ド・ロカイユの繭が転がる。
「流石だよ、ニローン。俺の『デューン』からそこまで逃げ延びた人間はお前が初めてだ」
「…ありがとよ」     ソウルイーター
「今ならまだ間に合う。『魂喰い』を引き渡せば、殺しはしない」
 ギコの問いに、二郎が大きく息を吐いた。
      デューン
「お前の『砂丘』…多分、俺が知ってる中じゃ最強のスタンドだよ。
 破壊力抜群の能力に、電光石火のスピード、主人に対しての忠誠…俺一人じゃ、とても敵わない」
脈絡のない二郎の言葉に、ギコが顔をしかめた。
 まさか、疲労で脳が動かないわけでもあるまい。
「質問に答えろ、ニローン。渡すか…渡さないか…どっちだ?」
「…けど…こっちにはB・T・Bが…シャマードがいる」

  ぐらり、と僅かに足下が揺れた。

「彼女を只の人食いとしか見てなかった…それがお前の敗因だよ」

  もう一度、揺れる。先程より大きい、どんっと突き上げるような揺れ。

「逃げる俺を追っかけて…必死こいて走り回ってたから、気付いてなかっただろ?」

  更にずずんっ、ともう一度。もはや大地震と言ってもいいような揺れになっている。

「小さく小さく…ビルが揺れ続けてるの」
「なっ…!地震!?」
「…ハズレ」

227丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:06



   一九八四年 四月十日 午前五時二十七分

                 〜夜明けまで、残り三分〜


  ―――――壁一面に張り巡らされた、フルール・ド・ロカイユの『根』。
それらを伝わって、情報がB・T・Bに流れ込んでくる。
                          フルール・ド・ロカイユ
(つまり、『根』の操作をやって欲しいんだ。『 石 の 花 』だって器用な方だけど、
 とても無数に伸ばした『根』の端っこまではその精度も保てない。…そこで、お前さんの出番。
 その精密動作で『釣り鐘揺らし』をやってもらう)

 根の始まりから先端までを、ほんの少しだけ脈動させる。
小さな小さな力の波がビルの壁面をめぐり、あちこちで反射する。
跳ね返る力に合わせて、また小さく脈動させる。
 少しずつ少しずつ、力が大きく膨れ上がっていく。


   力の波が反射する。それに合わせて脈動させる。

  反射する。脈動させる。
  反射する。脈動させる。
  反射する。脈動させる。
  反射する。脈動させる。
  反射する。脈動させる。
  反射する。脈動させる。



(いいか?B・T・B…)


 ふぅ、と溜息を一つ。
こんな無茶なスタンド利用法を思いついた人間など、過去に何人いるのだろう。


(このビル―――――ぶっ潰すぞ)

228丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:07



   一九八四年 四月十日 午前五時二十八分

                 〜夜明けまで、残り二分〜


  ―――――コップに注がれる水が溢れ出すように、蓄えきれなくなった衝撃がひときわ大きくビルを揺らした。



 踊り場の天井に、音を立ててヒビが走る。
ギコの方に、人の頭ほどもあるコンクリ塊が幾つも幾つも崩れてきた。
(まさか……ッ!)

  リュオオオォォォッ―――!

 『デューン』が一声啼く。二郎に突きつけた手刀を引っ込め、両手を広げてギコをコンクリ塊から庇った。
コンクリートは『デューン』に触れるたびに塵へと分解され、ギコに当たることはない。
無論、『デューン』のダメージになることもない。
 二郎が立ち上がる。だが、『デューン』が攻撃に移ろうとしない。

 ―――これが狙いか…!
  デューン
 『砂丘』は、宿主であるギコを守ることを何より優先する。
降り注ぐコンクリ塊と、素手の二郎。
 致命傷を与える可能性が大きいのはどちらかと聞けば、答えは明白。
しかし、『デューン』は知らなかった。二郎の父がどんな人間だったかを。

  コオオォォォォォッ
  Coooooooo―――――!


 独特の呼吸法。                              モナ ハジメ
見よう見まねの不器用なものではあったが、それは確かに彼の父・茂名 初の―――
           ムソウケン
「茂名式波紋法 "無双拳"」

 握りしめた拳が燐光を放ち、一撃でギコを昏倒させた。

「俺達の―――勝ちだ」

229丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:11






   一九八四年 四月十日 午前五時三十分

                          〜夜明け〜



  ―――――夜が、明ける。
                      フルール・ド・ロカイユ
 倒壊したビルの瓦礫から、一輪の『 石 の 花 』が咲いた。
ほどけたつぼみから、二人の人影がはい出てくる。
 これが美女だったら親指姫よろしくメルヘンな光景だが、残念ながら二人とも男。
瓦礫の一つに座り込んで、一人が煙草に火を付けた。
寝転がったままのもう一人が、起きあがろうとして失敗し、頭をぶつける。
 痛そうな音がした。
「…ニローン」
「よう…無理するなよ。まだ痺れてるだろ?」
「何故、殺さない。何が『信念を通せ』だ。この馬鹿が」
 憎々しげに言うギコに、殆ど吸っていない煙草をもみ消して二郎が向き直った。
「…ああ、気付いてなかったのか」
「何をだ?」
「シャマードが、お前さんの頭をコンクリに叩き付けただろ。アレ、おかしいと思わなかったか?
 『魂喰い』とまで呼ばれるシャマードなら、吸血鬼の爪一発で殺せるのに。なんでわざわざそんな事したと思う?」
…そう言われてみれば、そうかもしれない。
 表情の変化を見て取ったのか、二郎が誇らしげに笑った。
「あいつは…さ。あんな死線ギリギリでも、『人殺しをしない』って約束を守ったんだよ」
 その言葉にギコが目を丸くし―――次の瞬間、力が抜けたように呟いた。
「……………馬鹿…が」
「そ。アイツが馬鹿やったから…俺も命懸けでその馬鹿に付いて行くんだよ」

230丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:12

 瓦礫の隙間から、「二郎様ァ〜…」とB・T・Bの声。
ビル全体に張った根に指令を出して、フルール・ド・ロカイユの繭を掘り起こしてやる。
「シャマード?開けるぞ」
「はー…い」               フルール・ド・ロカイユ
 しゅるしゅると、繭を形成している『 石 の 花 』をほどいてやる。
「…悪いね…グロ画像みたいなカッコで」
「申シ訳アリマセン、ドウニカ 顔ダケハ 修復デキタノ デスガ…」
 言った通り、彼女の肉体は物凄い事になっていた。
下半身の殆どは風化し、腸がぷらぷらと揺れている。
かろうじて顔は再生を終えているものの、センスによってはギャップが余計に怖いかもしれない。
「大丈夫。こう見えても医学生だ」
「あ、そう言えばそうだね…ありがと」
 そのまま、二人ともしばし押し黙る。
たっぷり数十秒ほど無言で見つめ合い、二郎が後ろを向いた。
「ギコー。お前さんあっち向いてろー」
 突然話を振られて驚いたようだが、素直に二人から目をそらす。
「B・T・B。アンタも引っ込んでて」
 同様に少し間をおいて、B・T・Bがシャマードの体内に入っていった。

 更に数十秒見つめ合い、二郎が恥ずかしそうに口を開く。
「えーと…俺はなんて言うか馬鹿だから、気のきいたことの一つも言うことはできないんだけど」
「奇遇だね。私も馬鹿だよ」
 一呼吸の間をおいて、二人がくすくすと笑いあった。
笑いがおさまると、お互いの手と手を重ねた。指が絡み合い、ほどけ、互いに頬を撫ぜ合う。
言葉はいらない。

 顔に回した手をお互いに引き合い、唇と唇を、そっ…と―――――

「……馬鹿が…」

 ぽつりと漏らしたギコの呟きは、月と太陽の同居する夜明けの空へと吸い込まれていった。

231丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:14





  シャマードは知らない。
 数年後、自分が二郎と結婚して一人の息子が生まれることを。


  二郎は知らない。
 自分が医者になり、シャマードと一緒に茂名王町で診療所を営むことを。


  B・T・Bは知らない。
 自分が、彼等の息子に受け継がれることを。


  ギコは知らない。
 二人が、最後の最後まで『人を殺さない』という約束を守りきったことを。


  誰も知らない。
 十数年後、二人が一体のスタンドに殺されることを。

232丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:14
   一九八四年 十月三十日 午前五時三十分


「ッッッッッふ…んあぁ…ッ」
 ベッドの上で、マルミミが大きく伸びをする。
B・T・Bに命じて鼓動を制御、覚めない目を覚まそうとして、反応が鈍いことに気がついた。
「…どしたの?B・T・B。体調でも悪い?」
はっ、としたように、B・T・Bが我に返る。
「ア、イヤ、失礼シマシタ。チョット 昔ノ夢ヲ 見タモノデ」
「夢?」
興味深そうに問うマルミミに、B・T・Bが答えた。
「ハイ、御主人様ノ 父君ト 母君ノ 夢ヲ。懐カシイ夢デシタ」
「…そっか。幸せそうだった?」
「エエ。…トテモ」
 突然、茂名の張りのある大声が寝室に響いた。
「マルミミー!ランニング出かけるぞー!」
「シマッタ、時間ガ」
「うわっ…!おじいちゃん今行くー!」

233丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:16




  マルミミは知らない。
 この後、虐待を受けている大人びた外見の少女に出会うことを。


  茂名 初は知らない。
 数日後、息子達の仇である一体のスタンドに出会うことを。


  しぃは知らない。
 この日から、自分が大きな事件に巻き込まれることを。





「二郎様…シャマード様…貴方達ハ、イイ息子ヲ オ持チデスヨ」




  B・T・Bは知っている。
 二人の気高き心が、マルミミという少年に受け継がれていくことを。






                               『丸耳達のビート Another One』

                                                   〜FIN〜

234丸耳達のビート Another One:2004/05/05(水) 00:19









     〜あとがき〜
            ※ネタバレを含みます。注意。

 番外編『丸耳達のビート Another One』お付き合いいただきありがとうございました。
本編『丸耳達のビート』は、テーマが『受け継ぐ』となっております。
 ジジイとかショタとか801とかエロスとかも大切なテーマですが…げふんげふんげふ(ry
ともあれ、この番外編でマルミミの後ろにあるものを見てくれれば幸いです。
 …しかしこの番外編、戦闘描写にえっらい苦労しました。
シャマードのB・T・Bは本体がスタンド並みに強いせいで出番がないし、
ギコのデューンは『触れば風化』って設定のせいでがっぷり四つに組む戦闘が書けない。
 唯一使い勝手いいのは二郎のフルール・ド・ロカイユでした。使い捨てにしちゃうのが惜しいな。

 〜キャラについて〜

  二郎&シャマード・B・T・B

 単身アメリカに渡って頑張る医学生と、追っかけ回される吸血鬼です。
シャマードみたいな『〜だよ』『〜かな』といった口調のキャラは、
下手に媚びた口調より萌える気がするのは…私だけ、ではない筈。
 シャマードがフリ&ツッコミ、二郎がボケ、B・T・Bがツッコミです。
彼らの日常は書いてて楽しかったなぁ。
 二郎の戦闘スタイルはひたすらトリッキーに、
シャマードの戦闘スタイルはマルミミをもっとスピーディ&パワフルに…を心がけました。
 両親とも丸耳のモナー族と書いてしまったので(※スタンド小説スレ1ページ『丸耳達のビート』第3話参照)
固有名を名乗らせることに。モナーだかギコだか解らないキャラ名付けてしまったのはちょっと後悔。まあいっか。香水だし。
 彼らは既に結末が決定しているので、極力『明るく』を心がけました。
そのせいで、キャラ全員がトラウマ持ちの本編よりライトな雰囲気に。
ちなみに『指一本で釣り鐘を揺らして〜』には元ネタがあります。ワカルカナ?

  ギコ

 自分の恋人を殺してしまった可哀想なSPM構成員です。
『馬鹿が』が口癖なんだけど…ちゃんとわかって貰えてるんだろうか。
スタンドがエロいです。エーロティーック。
身につけてるのは革ベルトのみ、戦闘シーンは全部スッポンポン。キャー。
 なのに汁ネタの方にしか反応してくれなくて寂しかったです。
そんなにみんな汁好きなのか、単にアッピールが足りなかったのか…多分後者。
もっとエーロティーックを前面に出した方が良かったかな?
 しかし、番外キャラとはいえ単純にギコ猫を持ってくるあたりどえらく適当なキャラチョイスやってるナァ。

  それでは次回から、本編『丸耳達のビート』をお楽しみに。
                                                        ポロリモアルヨ…


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